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今回は混沌についてです!

滅茶苦茶わかりづらいと思いますが、そういう事なんだ、と思ってください。

第三章 帝国編
第157話

バジリスクの姿焼きをなんとか食べ終え、米は難しそうなのでパンで腹を膨らませてから、僕は彼女らにことの顛末とその裏にあるであろう事情について聞いてみることにした。


コホン、と数回わざとらしい咳をし、皆の視線が集まったのを確認してから、



「聞きたいことがかなりあるんだが、もちろん答えてくれるよな? ゼウス、死神ちゃん?」



そう、質問ではなく確認を行った。


食事中に聞いた話では僕が気絶してからもう既に三日が経っているらしい。

常識的に考えても神様が三日間も下界に滞在するだなんて、何かの理由があるに決まっている。


───恐らくはそれが、僕への説明なのだろう、と僕は考えたのだが......、


少し不安になって彼女らの顔色を伺うが、どうやら嫌な顔や驚いたような顔をせず、普通に頷いてくれた様子からも僕の予想は合っていたのだろうと分かった。



彼女らが僕の質問に答えてくれると分かった時点で、まず僕は一番気になっていることから聞いてみることにした。





「そもそも、あの『混沌』って何なんだ?」




───それは最も根本的なことで、かなり重要なことであった。






☆☆☆





かつて、それこそ原初の何も無い、無のみが支配する空間に、二柱の神がいた。



───それこそが最高神の二角を担う、最高神エウラスと、地母神ガイアの二柱である。



彼らは大地を創造し、次に生命を創造した。


彼らはまず神界を作り出し、その次に生命を生む際、彼らは自らよりも圧倒的に優れた───神々の王となるべき神を生み出した。




その時に生まれたのが、"最高神"と呼ばれる彼ら彼女らよりも、さらに上位の存在である......、





───世界神。



そう呼ばれる神の上に立つ神だ。




最初に生まれたのが、神王ウラノス。


続いて、獄神タルタロス、寵愛神エロースが生まれ、この三柱を総じて『世界神』と呼ぶ......らしい。


───実際にゼウスも神王以外には殆ど会ったことが無いらしいし、あったとしてもそれらは幼少期の頃に偶然会っただけだったらしく、世界神がどんな力を持つのかまでは知らないらしい。


ちなみにゼウスの推測では「寵愛神になら勝てる」との事だったが、残りの二柱には難しいとのことだった。




その後、神王ウラノスの子である時空神クロノスが生まれ、さらにはその子である冥府神ハデス、海皇神ポセイドン、全能神ゼウスなどが生まれ、次々と神界は発達し、発展していった。






───そして、とある悲劇が起きた。





神王ウラノスはその優しそうで整った顔つきに、彼以上の善人はいないとまで言われたほどの心優しいその内面も相まって神界ではさぞモテたそうだ。


彼自身はかなりのマザコンで、母であるガイアを慕い、実際にはその間にも子をなしてはいたが、それでも尚モテたというのだから相当なものだったのだろう。





───だがしかし、それをよしとしない神がいた。






それは、彼の息子の時空神クロノスである。





ウラノスはモテた。


モテすぎたのだ。



───それこそ、人様の想い人すらも期せずして奪ってしまえるほどには。




彼───クロノスの長年想い続けてきた婦人は、ウラノスを一目見ただけでウラノスに惚れてしまった。


父親に好きな人を奪われた恨みはとても計り知れたものではなかったのだろう。




彼はウラノスへの恨みを募らせ、最終的にウラノスを殺そうと思い立ったはいいが、ウラノスは神王の名に相応しく、その強さも伊達ではない───それこそ今のゼウスよりも強かったというのだから、神の王、という名に相応しいのだろう。





───だが、そのウラノスにも一つだけ、弱点があった。





それは、心の弱さ。



優しくて、善人で、正義を信じて疑わない。


それこそ、かつてのアーマー君のような歪んだ正義ではなく、正真正銘の正義の味方だ。



誰かを守りたい。その誰かを守るためならばその命すらも簡単に捨ててしまうような、そんな正義の味方。



完璧だからこそ、一欠片の歪みもないからこそ、逆にとてつもなく歪んだその正義に、





───時空神クロノスは、その方法を見つけてしまった。





クロノスはウラノスの"母親への信頼と愛情"を利用することにした。


クロノスはウラノスの子を数人拉致し、獄神の支配する奈落へと突き落とし、その上でウラノスの母であったガイアへとこう告げたそうだ。



「ガイア! 親父のヤツ、自分の息子たちを『醜い』と罵って奈落へと突き落としやがった!!」と。



それをおかしくを思ったガイアだったが、実際に獄神が


「あぁ、数人が突き落とされてきたな。面倒だったから神界(こっち)に連れ戻しといたぞ」


と報告に来たことからもそれを信じざるを得ず、心を鬼にしてウラノスの討伐を決意した。



もちろん、彼のことを知っている神々はそれに反対した。

祖父として少なからず神王の事だけは知っていたゼウスも、もちろん幼いながらにそれに反対した。





───が、結局は、その反対意見が通じることは無かった。





地母神ガイアは時空神クロノスへと、咄嗟にその場にあった一振りの大鎌を授け「去勢した後にここへ連れてきなさい。最悪殺しても構わないわ」と言い放った。




そして、その鎌こそが僕の持つ『アダマスの大鎌』である。




当時の時空神クロノスはかなりの力を持っていたらしく、もちろんアダマスの大鎌の力をすべて引き出すことが可能で、彼自身も「この大鎌さえあれば」と、ウラノスの殺害を確信できた。









───けれど、神王は格が違った。





総勢数百の神々の部隊を数隊に分けて、それらを率いてウラノスの討伐へと向かった時空神クロノスは、彼を前にして嘲笑した。





だけど、神王ウラノスの反応は想像とは違っていた。






「なるほど。僕が信じた正義なんて、存在しないのかもな」





視界を埋め尽くす上級神以上の大軍を前に、神王ウラノスは一瞬目を見開いたかと思えば悲しげに目を伏せ、そう呟いた。


そこにはもう既に優しくて、皆の憧れた神王の姿はなかったのだろう。




神王ウラノスは、指をパチンッ、と一回鳴らし......、







───そして、次の瞬間には、クロノス以外の全ての神が、既に息絶えた後だった。




それを見て、クロノスは思ったそうだ。



「なぜ自分は、こんな化物相手に勝てると思っていたのだろうか」 と。



そんなことを他所に彼は指で時空へと切れ込みを入れ、最後にクロノスへとこう告げたそうだ。





「僕はもう行くよ、宛先はないけれど。クロノス、君が追いかけてくるのは自由だけど.........」





───次は、殺すよ?







そうして神界から一柱の世界神が姿を消し、それに伴って残りの二柱の世界神も姿を消した。


獄神は奈落へ引き篭もり、寵愛神はぶらりと旅へ出かけたとされている。実際にゼウスは寵愛神があちこちを旅しているのを全知で知っているらしいし、全知は効かないが奈落の底から馬鹿みたいな量の魔力が溢れてくることからも、獄神が奈落とやらに居ることも確かなこと......らしい。


さらに言えば、ゼウスといえども祖父である神王の行方は完全に分からないそうだ。彼女曰く「おじいちゃんなら、多分どっかの世界で、人間にでも紛れて遊んでる」との事だったが、残念ながらそれでも憶測の域を出ないらしい。




とまぁ、それが今回のメインとなるお話。




あれ? 混沌、出てきてなくね? とか。


何? 神王が混沌の正体なの? とか。



そんなことをお思いの方もいるかもしれないが、残念ながら混沌が生まれるのはもう少しあとのお話。




その後のことだ。



世界神達が姿を消し、何かあるのではないかと幼いながらに思ったゼウスは、未完成ではあったものの『全知』の力を持っていたらしく、それを必死に使って事実を突き止めた。


それは幼かったゼウスにはとてもじゃないが抱えきれるようなものではなく、彼女は兄と姉であるハデスとポセイドン、更には祖母でありその件に関わってしまったガイアへと相談した。



その結果、時空神クロノスの仕出かしたことは神界中に、下手すれば下界にすらも広まり、最終的にはクロノスは娘であるゼウスが当時開発していた『神器』という新たな兵器によって命を落とした。


───だからこそ、それ以前にあったアダマスの大鎌は神器ではないらしいし、その三柱の世界神とやらは神器を持たないらしい。





ハッピーエンド等ではなく。


その過程に何か幸せがあったかと聞かれても否と答えるような、どす黒くておぞましいそのお話。


歴史から抹消し、消し去りたいであろうそのお話。






───そのお話から、混沌(カオス)が生まれた。






「私の父、時空神クロノスは、最後の最後に......、世界へと呪いを施した」



ゼウスは悔しげに、悲しげにそう言った。



「自身の......神王ウラノスへの恨み、クロノスに騙された神々、騙されてウラノスに殺された神々の怨念、......そして世界の不条理への、憎しみ」




───それらと、自らの命を使って、アレ(・・)を生み出した。





「有限にして無限、最高にして最悪、充実的にして何よりも虚無そのもの。形はなく性別もなく、命もない絶対にして強欲の象徴」





それこそが『混沌(カオス)』なのだ、と全能神ゼウスは言った。



その呪いはあまりにも強く、自我や意志を持って世界を呪い、全てを滅ぼしてゆく。


それは全知全能であるゼウスにも抗うことは出来ず、今の所はその解決策すらも見つかっていない。更にはその混沌に関する情報はゼウスにも読み取れないのだとか。




ただ、混沌の使う能力だけは、明らかなのだとか。






「混沌の唯一の能力......。それは『終焉(ジ・オーラス)』」




全てを奪い、自らの糧とし、世界を確実に破滅へと導く最悪にして最強の能力。世界の普遍的ルールに介入し、改竄し、いづれ全世界を破滅へと導く。そんな馬鹿げた能力なのだとか。


さらに言えばその能力は、一時的に誰かに分け与えることが可能で、ルシファーやウイラム君のあの魔力もそのせいなのだとか。




そう最後に言って、ゼウスは混沌の説明を終えたのだった。





☆☆☆





あまりにも重たい話に言葉を失っていると、死神ちゃんが苦笑いをしながら補足をしてくれた。



「まぁ、俺様はかなりの新参者だからそんな歴史は知ったこっちゃないがな。それに俺達が下界に干渉できてるのも、神界の法律に『混沌が関わった場合を除く』って条があるからだ。ま、この三日間下界に滞在したのは拡大解釈、って奴だがな?」



死神ちゃんはそう言うと、ニヤニヤと笑みを浮かべてゼウスへと視線を向ける。


ギクッ、としたゼウスは死神ちゃんに避難の視線を浴びせたが、何やら頭の中でやり取りをしているらしく、ワタワタしたりしている。読心持ち同士の会話はやっぱり分からないな。



と、そこまで考えたところで未だに不明な点がたくさんあることに気がついた。



①二人と一緒に来てた神様、あれって誰?


②悪魔って、何?


③ルシファーはどうなったの?


④僕の腕とステータスはやっぱり元通りにはならないの?




一先ずこれだけ挙げてみたが、僕はそれよりもよっぽど重要な案件があることを、忘れてはいなかった。




気づけば死神ちゃんとゼウスは苦笑いを浮かべてこちらを向いており、その表情から察したのか獣王もニヤニヤと笑みを浮かべている。

ちなみにシャルロット様は船を漕いでいる。眠たいなら寝ればいいのに。




閑話休題。





それで、僕が一番気になっていたことなのだが、と事前に前置きして僕はその疑問を投げかけた。









「あの馬鹿ども、どこ行きやがった?」




───そう、僕が起きてから今の今まで、あの騒がしい仲間達の姿を一度も見ていないのだ。

今回は神話と混沌について、でしたね!

実際の神話とは少し違う......というか影も形もないのですが、この物語内ではそういうことになっています。


当時の強さで言えば、


神王>獄神>寵愛神>時空神


という感じですね。今のゼウスは獄神と寵愛神の間に入ります。まだまだゼウスも成長途中ということです。


次回! ギンがさらに色々と聞いちゃいます!

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