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マックスVSアーマー君!

果たしてどちらが勝つのでしょうか?

※ギン以外の視点有りです。

第三章 帝国編
第147話

マックスとアーマー君の攻防は続き、剣を交える度に黒、金、緑の三色の魔力が周囲へと溢れ出す。

───ちなみにマックス本来の魔力は二つ名の通り灰色なのだが、黒色で塗りつぶされているようだ。



「はァァァっ!!!」


「どらぁぁぁっ!!!」



再び神剣と魔剣が衝突し、魔力が飛び交う。



今の今まで僕が二人の試合を見てきた感じだと、二人の今の実力は全くの互角と言ったところだった。


元々の強さではマックスの方が一歩先、武器による身体能力の強化で言えばアーマー君の方が一歩先を行くのだろう───後者に関しては、お互いがお互い武器の能力を最大限生かしきれていないことも関係しているが、もしも二人共武器の能力を完全に使いこなせていれば、草薙剣は間違いなく僕を一瞬で消滅させられるだけの強さを誇っているのだろうし、マックスに関しては他のもっと強い魔剣を召喚しているのだろう。


だからきっと、そんな"もしも"に意味はなく、ただ今は互角、という以外の考え方は存在しないのだ。



そう考え、僕はもう一度彼らを見る。



魔力量と速度はマックスが、体力と腕力はアーマー君が勝っている。



それぞれが知力と体力をフル動員させて集中力を途切れさせないようにしながらの、綱渡りの攻防。




───もしも、その均衡が崩れるとすれば......、





「武器の能力を使った時......だね」



そう、恭香が呟くのが聞こえる。


実はあの二人、未だに身体能力強化以外の武器の能力を使っていないのだ。

───正確には、今のアーマー君の異常なまでの感知(・・)能力はその能力の一つなのだろうが、それを抜かせば二人共使っていないのだ。


草薙剣は二つの能力を既に使用していることからも、残りの能力は二つ.....、多く見積もっても三つだろうとおおよその仮定ができる。


それに比べてマックスのダーインスレイヴば未だに身体能力強化以外の能力を使っていない......と思われる。今のダーインスレイヴがあの草薙剣よりも少し劣っていると仮定しても残りのストックは三つ。



以上のことから二人の実力は均衡しているとも考えられる。




だがしかし、先程のマックスの言葉。




────ある程度(・・・・)本気を出してやるよ。




それはつまり、そういうことなのだろう。





僕の視界には肩で息をするアーマー君と、未だに速度の衰えないマックスの姿が。




───どうやらこの試合も、終盤を迎えようとしているようだった。





☆☆☆





体力がマックスよりも高いアーマー君。


そのアーマー君が常に全速力で走り回っているマックスよりも先に体力が切れ、逆にマックスの体力は有り余っているように見える。


それらの事から、きっとダーインスレイヴの能力は、既に発動していたのだろう───いや、もしかしたらそれは能力という呼び方は相応しくないのかもしれない。


例えば名のある剣───例えば、草薙剣が金塊を一刀両断した所で、それは能力ではなくただの切れ味だ。


それに加えて恭香が言った『呪われている』との言葉。



だからこそ、ダーインスレイヴのそれは、きっと能力ではなく、単なる設定───呪いの類なのではないかと思う。




───それも、使用者ではなく敵対者を蝕む種類の呪いだ。




だがしかし、確かにその力は驚嘆に値するのかもしれないし、かなり厄介なことに変わりはないが、それでも吸血鬼キラーと言うには些か力不足だろう。


例えばその呪いの正体が、相手の体力や魔力を消費させるとか、それらを奪ってそのまま自分に供給するとか、そう言う類の呪いだったとしても、そもそも僕の回復力はそれを鑑みても充分すぎる。


だからきっと、その能力とは......、




───別の能力があるのだろう、と。その思考を先回りするように、




「ダーインスレイヴの主な能力は力吸収(・・・)と、回復阻害(・・・・)だね」



と、恭香の声が被せられる。



へぇ、やっぱり吸収系の能力だったか。

それと......回復力阻害? そんな能力が吸血鬼キラーって言えるのだろうか?




と、僕はそれを聞きそんな疑問を抱いてしまった。





───だが、その後に続いたそれらの説明が、かなりやばかった。





「力吸収は、刀身に直接間接関係無しに触れている敵対者の魔力と体力を吸い取って使用者へと供給する能力で、回復阻害は......、まぁ、簡単に言うと不老不死の吸血鬼(・・・・・・・・)でも殺せちゃうくらいには阻害されるね」



恭香はさらっと爆弾を僕らへ投下し、爽やかな笑みを浮かべだ。




「「「「「「「.........えっ?」」」」」」」



その言葉を発したのを最後に僕ら影分身と従魔たちの間を沈黙が支配し、それを聞いてしまった勇者たちまでもがその能力に顔を真っ青にする。



そうしてしばらくの間、その沈黙はその場に居座り、その間に僕らが心に決めた内容は、奇遇にも同じものだった。





───よし、マックスには逆らわないようにしよう。




と、そんなことを思い、まずはマックスの月々のお小遣いを上げることから考え始めるのだった。




だが、残念なことに───本っ当に残念なことに、僕はその単語を聞き逃すことが出来なかった。





───主な(・・)能力.........だって?




きっと、聞き間違いでありますようにと、僕は初めて神に祈りを捧げた。




あと、アーマー君。無事生きて帰ってこれるかな。






☆☆☆





「ぐふぅっっ!?」



マックスの膝蹴りが鎧越しにアーマー君の鳩尾に突き刺さる。

そのまま流れるような動作で下がってきた顎へとアッパーを放とうとしたマックスだったが、咄嗟に草薙剣の振りかぶったアーマー君の行動をみて後方へと下がる。


年齢も召喚した剣の使い方も、種族も、さらには経験も全てがマックスの方が勝っていて、優れている。


───その事実を考えれば、ある意味この状況は当たり前だったのかもしれないし、この状態が逆だったとすれば僕はきっとマックスを叱咤している事だろう。



ステージの中央をもう一度注視する。



アーマー君はもう立っていることだけでも精一杯なのか、膝はガクガクと笑っており目は半分閉じている。傷だらけの顔に更に傷を作り、満身創痍という言葉がよく似合っていた。


それに対してマックスはほぼ無傷。体力魔力共にほぼ全快で、まだまだ集中力も保てている。その上油断や慢心が全く見受けられない。



一般人であってもこの状況を見れば、この試合、どちらが勝つかは明らかであろう。




───彼らの使っている武器が、普通の武器ならば。




マックスの視線が鋭くなり、ダーインスレイヴに込められる魔力がその量と質を増す。

ぐっと重心を下げ、足に力を入れる姿を見れば、彼が本気で勝負を決めに行くことがわかるだろう。




「アーマー、お前に対する敬意を表して、最後は正真正銘の全力で散らせてやる。安心して逝け」




何やら文字がおかしかったような気もするが気にしないでおこう。



「は、ははっ、僕はまだ死ねないからね......、そもそも前提からして間違ってるよ、この試合、勝つのは僕だ」



マックスの言葉に思わず乾いた笑いを浮かべるアーマー君だったが、数瞬後にはしっかりと顔を引き締め、満身創痍の身体で剣を構える。




その姿を見て、ふっ、と軽く微笑んだマックス。






「悪ぃな。今ので完全に油断が無くなっちまったわ」





瞬間、マックスの身体を溢れんばかりの魔力が覆い、そのステータスを爆発的に強化してゆく。



そんな本気の(・・・)様子に目を剥くアーマー君。






────だが、それが命取りとなった。






彼は、ザッ、という音と共に自分の懐へと高速移動して潜り込んできたマックスの姿に、再び目を剥くこととなった。




腰だめに構えたダーインスレイヴが、黒いオーラの塊を纏う。






───そして、









「『黒魔式・一閃』」






黒い斬撃がアーマー君の体を捉え、爆発と共に舞い上がった土煙が僕らの視界を遮った。






☆☆☆






僕は、ミラージュ聖国の、ある名のある家に生まれた。



僕はどうやら顔立ちが優れていたようで、様々な面で贔屓され、褒められ、そして認められた。


当時の僕は幼いなりにその状況に疑問を抱いたものだったが、いつからか、僕の頭の中にはそんな疑問は存在しなくなっていた。




悪とは、罪だ。


正義とは、正しいことだ。


常に正義の味方であるべきだ。


正義を遂行するためならば、多少の無理は押し通るべきだ。


正義の定義は、主神様の代行である聖女様がお決めになる。


正義は、何よりも優先すべきであり、その正義そのものである聖女様は何よりも正しい。




そんなことを、僕は幼い頃から常識として頭に刷り込まれ、そしていつの日か、その常識がおかしなものではなくなってしまっていた。



常識の通じない国外が異常に見えた。


自分の正義を貫けないこの世界を呪った。


正義の邪魔をする悪を許せなかった。


悪の味方をする民が、許せなかった。



───つい最近までそんな状態だったなんて考えたくもないが、それでもそれはきっと、一生忘れられない黒歴史として僕の心の中に刻まれることだろう。



幼い頃の正しかった僕は、いつの日から居なくなってしまったのだろう、とそんなことをふと思った。



───いや、違う。きっとその僕も居なくなってなんかいないのだろう。



僕は僕だ。それが変わることはない。


だからこそ、僕があの狂った常識を知り、それを認めてしまったのは僕自身が弱かったからだ。

弱い僕が、その流れに身を任せ、楽をして生きてきたからだ。



だから、僕が狂っていたのは国のせいじゃない。


間違いなく、自分のせいだ。




───だから、きっと僕は天罰を受けたのだろう。




僕の頭の中に、彼と出会った時の記憶が流れた。




剣を一撃でへし折られ、全魔力を使った魔法の連撃にも無傷。体術は目で追うだけで精一杯、その上身体の急所ばかりを狙ってくる。




あぁ、彼は強かったな、と再び実感する。



少なくとも、今僕へと斬撃を放ってくるマックス君よりも、ずっと強かった。





───ここで負けてもいいのか?



そう、心の声が問うてくる。





それに対する僕の答えは、既に決まっていた。






「ごめんね、僕は君には負けられないみたいだ」





僕の身体へと斬撃が直撃したのは、それとほぼ同時の出来事だった。






☆☆☆





俺はその爆発による砂煙から脱出するため、走っていた。


ギン程の吸血鬼の瞳ならばこの視界の中でも周囲を確認できるのかもしれないし、空間支配とやらでどうとでもなるのだろうが、生憎と俺はまだまだ駆け出しの吸血鬼。空間支配とやらも難しすぎてとてもじゃねぇが扱いきれねぇ。


だからこそ、俺が今すべきは歓喜や油断などではなく、ただ相手の敗北が決定するまで気を抜かないことだ。



走り続けて数秒後、俺はやっと砂煙の中から脱出する。



少しその場から離れて爆心地へと視線を向ける。





『ごめんね、僕は君には負けられないみたいだ』



アイツは斬撃を受ける瞬間、そう言った。



───それに、この技はただの魔剣の特性を持った魔力での斬撃だ。普通は爆発なんて起こらない(・・・・・・・・・・)



それはつまり、この爆発は奴の仕業で、十中八九奴はまだ戦闘不能に陥っていない、ということだ。



砂煙へと視線を向け、少しの動きも逃さぬよう、しっかりと目を見開く。




「さぁ、来れるものなら来てみやがれッ!!」




それは、俺が未だ煙の中にいるであろうアイツ(アーマー)へと言ったセリフだ。








「それじゃあ、本気で行くよっ!」






───間違っても、その返答が頭上(・・)から来ていいわけがない。




俺がその声に頭上を見上げるのと、空を駆ける(・・・・・)アーマーの草薙剣が炎の形を模した膨大な魔力を纏ったのは、ほぼ同時の出来事だった。







「『緑炎斬』ッ!!!」





次の瞬間にはアーマーは空気を蹴り、とんでもない速度で俺へと迫ってきた───それこそ、俺の全力よりもよっぽど速い速度で。





「ま、まずっ......」






───まずい、そう俺が言い終わる前に草薙剣は振り下ろされ、俺とアーマーを巻き込んだ、件の爆発が起こった。



草薙剣もダーインスレイヴもかなりチートな能力ですね......。これで使用する彼らがギン並に強くなったらどうなってしまうんでしょうか?

次回! やっと決着です!

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