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アーマー君VSマックス!

はたして草薙剣の能力とは!?

第三章 帝国編
第146話


草薙剣(くさなぎのつるぎ)



みんなも一度はその名前を聞いたことがあるのではないかと思う。もし知らない人がいたら申し訳ないが。


だが安心なされよ。心優しい僕はそんな人たちのために、一応覚えている範囲で説明をしておこうと思うのだ。



日本での草薙剣とは、たしかこんな感じだったと思う。



大昔も大昔、それはそれは大昔の話だ。かの有名なスサノオが、どこかで何やら悪事を働いたらしいヤマタノオロチを退治しようとし、激闘の末にスサノオはその身体を切り刻んだ───切り刻まなくたってよかったのではないかと思うが、きっと僕以上のトンデモ再生力だったのだろう、考えただけでゾッとするぜ。


そしてこの時、尾を切る際にスサノオの使っていた天羽々斬(あめのはばきり)とかいう神剣だか聖剣だかわからない剣の刃が欠けたのだ。まさかこの蛇は尻尾の中にヒヒイロカネでも仕込んでいるのか!? と思いそこを探ってみると、なんとその尾の中から一振りの剣が出てきたではありませんか。


何故この蛇は尻尾に剣を埋め込んでいたのか、普通は胃の中とか腸の中ではないのか、そもそもなんで蛇が俺の持ってる天羽々斬よりも優れた剣を持ってるんだ、というかそもそもヤマタノオロチって何? 等々、様々な疑問が尽きなかったスサノオだが『ま、どうでもいいか。って言うかこの剣、多分さっきの蛇が食った物だろ? だったら普通に汚くね?』と考えを放棄し、汚くて自分の所有物にするのもなんだから自分の上司に献上物として押し付けることにしたのだった。



おわり。



とまぁ、こんな感じのお話だ。



上記の長文を読むのを断念した人のために草薙剣を簡単に説明すれば、『蛇の体内から出てきた汚い剣』って感じだ。



───この説明文だけならめっちゃ弱そうなんだけどなぁ。



そう考えながらも、僕は再びステージ内へと視線を移す。




アーマー君の持つそれは、黒い柄に翡翠色の魔力を帯びた白銀の刀身という外見で、おそらくその()は、僕のような特殊体質でなくとも視認可能だろうと思えるほどに強く、眩しく、何よりも美しかった。


───全く、これを汚いと思ったスサノオは頭がおかしいのではないだろうか?


まぁ、もしも万が一に本人(スサノオ)が存在するのだとしたら、絶対に即土下座しなければならないような酷い考えだがな。



そんなことを考えていると、(影分身)の発動している『地獄耳』にこんな声が届いた。




「こ、これはちょっとばかしキツイかもしれねぇな......」



そう言って剣を構えたまま一歩、また一歩とじりじり下がってゆくマックス。下がってゆくと言うよりは少しでも距離をとって魔剣召喚への時間稼ぎをしたいと言ったところだろうか。




だが、そこへ勇者様から直々にお声がかかった。




「噂でしか聞いてないけど、マックス君は魔剣使い......ってことで合ってるかな?」




その言葉にピクリと反応を示すマックス。


だが、その質問に返答はしない───きっと、返答することで隙を作るのを防ぎたいのだろう。



その様子を見て、少し息を吐いて草薙剣を地面へと突き刺すアーマー君.........って、




「「『『『「「.........あれっ?」」』』』」」




その思いもよらぬ行為に目を見開いて驚く僕達(影分身)

それは観客たちや司会者たちにマックス本人、さらには本体までもが同じだった。



確かに昔の彼なら『勝負は正々堂々としなきゃね。待ってあげるから、魔剣を召喚してみなよ』とでも言うのだろうが───いや、その前に魔剣と聞いた段階で『この悪者めっ! 退治してくれるっ!』とか言って襲いかかったかもな。



まぁ、とにかく昔の彼ならともかく今の彼ならそんなことは思わないだろうし、何よりも同情や油断、慢心なんてしないだろう。仮にも先程までマックスにボコられていた訳だし。


少なくとも彼なりに考えた結果、その行為に至ったわけだろうが、少なくとも僕にはそんなものは想像出来なかった。



それはマックスも同じようで、



「......一体どういうつもりだ? アーマー・ペンドラゴン」



そう、少しドスの効いた声を出す。

───舐められたとでも思ったのだろう。珍しく本気で怒っているようだ。



それを見たアーマー君は焦って手をブンブンと振りながら、


「べ、別に君を舐めてるとかそういう訳じゃないからね!? だって普通に戦ったらさっきみたいにやられちゃうし、多分君に魔剣を召喚させられたらさっきと似たような状況になるんだと思う」


そう言って再び悔しそうに顔を歪めるが、




───だけど、と彼は言う。




「だけど、僕は()と戦いたい。そのためには君には勝たないといけないし、本当なら今この瞬間にでも切りかかった方がいいんだとも思う。......だけどさ」




と、そう言う彼の顔にもはや悔しさは感じられず、ただ純粋な覚悟のみが見て取れた。






「僕は楽して勝ちたいんじゃない。必死で戦って、彼ともう一度戦う権利を勝ち取りたいんだ」




───傲慢で、偽善的だと思うかい? と彼は言う。





僕はその姿を見て、思わず目を疑った。



......これがアレ(・・)と同一人物か、と。



もしもあの過去が無ければ、僕はきっと、彼をカッコイイ少年だと褒めたたえたかもしれないし、久瀬と同じくらい───種類は違うが───主人公らしいと言ったかもしれない。


───いや、その過去を鑑みても、その立ち姿と雰囲気は主人公然としていた。




僕と同じように彼の姿に目を丸くし、その言葉の内容を理解したマックスは、耐えきれなかったように少し吹き出し、こう返した。






「なんだよお前、最高にカッコイイじゃねぇかっ!」




マックスの身体から魔力が溢れ出したのは、それとほぼ同時の事だった。



───どうやらマックスは、彼のことを認めてしまったようである。






☆☆☆






今現在、マックスは三振りの魔剣を召喚することが出来る。



一つは前に僕と戦った時に使用した『魔剣ティルヴィング』


そして残りの二つは「いつかお前を倒す時が来るかもしれねぇから秘密にしとく」とか言って教えてくれなかったし、僕が見ている訓練中もティルヴィングしか使わなかった。


───まぁ、ティルヴィングにはトンデモ切れ味と体力を消費することでの馬鹿げた身体強化の二つが備わっていたからそれだけでも十分だったのだが......、



僕はもう一度アーマー君の方へと視線を戻す。



その神剣と身体から感じられる威圧感はティルヴィングよりも強く、力量のあまり離れていないマックスでは、まず間違いなくティルヴィングでは太刀打ちできないだろう。




───ならば一体、どうするか。





「あんまし見せたくはなかったんだがな......」




マックスのその言葉とともに、その身体から黒い(・・)魔力の奔流が溢れ出す。


───黒く、黒い、何よりも黒い。


不純なものなど何一つ無いかのようにも思える、深い漆黒色。それこそレオンの魔力何かよりもずっと黒い、そんな色だ。




「『我が声に従い顕現せよ!』」




瞬間、その漆黒色の魔力が一気に膨らみ上がり、








「魔剣!『ダーインスレイヴ(・・・・・・・・)』ッ!!」





瞬間、マックスの手の中に一振りの大剣が生み出される。



黒い柄に黒い刀身。刀身は長く、二メートルには程遠いがそれでも長い方でありながら、片手でも扱えるような絶妙な大きさであった。

更にはその漆黒色の刀身は黒いオーラが吹き出しており、




───いかにも、呪われた魔剣と言った感じであった。




こ、これってヤバイやつじゃねぇの......?



そんな考えが頭をよぎったが、時既に遅し。





「お前に敬意を評してある程度(・・・・)本気を出してやる。簡単に死ぬんじゃねぇぞ?」





僕の瞳には、冷や汗をかくアーマー君と、早く血を吸わせろとばかりに赤いオーラを強める魔剣(ダーインスレイヴ)が映った。





───アーマー君、死んだかもな。




そんなことを思った。






☆☆☆





草薙剣の魔力量と威圧感に驚き、そして次に出てきたダーインスレイヴにもっと驚いた僕達一同(影分身たち)の表情を横目で見てきた恭香が、はぁ、と溜息をついた。



「魔剣ダーインスレイヴって言うのは確かに呪われた魔剣なんだよ。だけどさ、神話とかそう言う中では『一度鞘から抜けば敵の生命を奪うまで静まらない』とか言ってるけど、本当はそんな能力ないんだよ? 呪われてるけど」


「ふむ? あのなんとも呪われていそうな剣のことかの?」


「確かに呪われていそうだな......、なんかカッコイイからマックスから譲り受けたいものだ」



それを僕には教えていることを分かっていてあえて話を合わせる白夜たち───コイツらもいつの間にか僕の隠蔽を見破れるようになってたからな。初めてバレた時はめっちゃ焦ったのを覚えている。



「それじゃああの魔剣にはどんな能力があるのです? 私も王宮で勉強した時にはその説明をされたのです」


「ははは......、私は名前しか聞いたことないですね」


「自分は名前も知らぬのである」


「......誠に不甲斐ない限りではありますが、私もです」



おいギルド職員、ちゃんと勉強しなさいな。



と、そんなことを思ったが、やはりこの世界でも学校というものは少なく、お金持ちか能力の高い者しか通うことが出来ないのだとか。


妖精族ならまだしもそのハーフで精霊魔法が比較的苦手なネイル。


そんな生まれでなお博識で能力も高く、その上パシリアギルド支部のお偉いさんにまでなっていたのだから、それはとてつもない努力の成果であろう。



───まぁ、今度何か奢ってやろう。もしくは休暇をやろう。



と、そんな僕の意見を知ってか知らずか、恭香は僕の方へと視線を向けてクスッと笑うと───これは知ってますね───視線をステージの中へと戻した。




「だけどまぁ、殺さないと収まらないなんてデメリットはないけれど、その代わりにかなり厄介な能力が備わってるんだけどね」




───強いていうなら、吸血鬼キラー(・・・・・・)かな?




そう彼女は言って、もう一度視線を僕の方へと向けてきた。




少し───いや、かなり嫌な予感がして、顔が思わず引き攣ってしまう。





まさかマックスさん? 本気で僕のこと殺ろう(・・・)とかしてませんよね?





ステージでは、丁度マックスとアーマー君が激突した所であった。



出ましたね新しい魔剣、ダーインスレイヴです。

ある程度、ということはこれの上があるのでしょうか?

次回!決着直前までは行くと思います!

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