やっとマックスVSアーマー君です!
事前に言っておきますが、ほんの少しだけこの戦いは長引くかも知れません。
どうもこんにちは。件の影分身です、どうも。
最近他の影分身が「ちょっとお前最近調子乗ってない? そもそも影分身の癖に何語ってんだよ」とか言って来て泣きそうになってる影分身です。
......あの時、出しゃばらなきゃ良かったぜ。
と、そんなことを思っていると、やっと二人の入場が始まったらしい。
『それでは選手の入場です! まず最初に現れたのはエルメス王国の騎士にして執行者ギン=クラッシュベルの眷属! さらには『灰神王』の名で知られるAランク冒険者、マックス選手だァァっっ! 超絶イケメンですねッ!!』
最初に入場してきたのはマックスだ。
黒い軍服にマントを着用し、その腰に一振りの長剣を携えたその姿は、"騎士"と言うより"軍人"だろうか。下手にイケメンだからサマになっている。
『マックス様には私も剣を教えた覚えがありますが、彼はかなりの才能を秘めていたと記憶していますね。それがギン様の眷属となって種族が変わることによってさらに開花した、という感じでしょうか? まず間違いなく国営軍の軍隊長クラスにまでは上り詰めて来てますね』
『な、なんと!? 情報によると迷いの森警備に当たっていたところをたまたま現れた執行者と意気投合、その後執行者の監視役としてその旅に同行しているそうです! どうやらその頃は下っ端の兵士だったようですが......おおっと!? マックス選手、遠い目をして涙を流しておりますっ! きっと執行者さんによる訓練が辛かったのでしょう! 同情してこちらも泣きそうです!!』
───毎度毎度変な噂を流されるこっちが泣きたい気分だよ。
『続きましてこちら! ギルドを追放された元イケメンの少年! ですが顔面が破壊されているのにも関わらずその美形は未だ健在!『緑金の勇者』との二つ名を持つアーマー・ペンドラゴン選手です!』
続いて登場したのは、アーマー君。
白銀の鎧に白い鞘の長剣を腰に携えたその姿は、マックスとは違って『聖』騎士然としていた。あれだけ顔面を破壊したのに未だ僕よりイケメンとか舐めてんのだろうか?
『彼は噂によると、とんでもない事件を立て続けに起こし、最終的にその場にたまたま居合わせたギン様に喧嘩を売った結果返り討ちにあった、という情報がありますね。その所どうなのでしょうか?』
『おおっと!? アーマー選手顔を逸らしたッ!? ここは執行者さん本人に聞いてみたいところですが......、アルフレッドさんは彼の居場所知ってたりしませんか?』
『ええ、残念ながら』
流石はアルフレッド。どこかの馬鹿のように勝手に僕の情報を漏洩させたりしないようだ。
───まぁ、ここで僕の正体をバラしていたら、バラされるのは僕の正体だけでは
示し合わせた訳では無いだろうが、マックスとアーマー君はステージ中央で十メートル前後距離を開けて立ち止まる。
二人の目は真剣そのもので、それぞれの集中力が次第高まっていくのかピリピリとした空気が感じられる。
『という訳で第五試合はマックス選手VSアーマー選手です! お二人共っ、準備はよろしいですか!?』
二人がそれぞれ首を縦に振り、自らの腰に差した長剣へと右腕を添える。
───そして、
『それではッ! 試合開始です!!』
それと同時に駆け出し、抜き放った二人の剣が、ステージ中央で激突したのだった。
☆☆☆
最初は小手調べ。
マックスは魔剣を召喚せず、まずは剣術のみでの接近戦を仕掛けた。
ステージ中央で剣同士が衝突し合い、それが均衡していると思い至った途端に左足に力を入れ、残った右足でアーマー君の胴体に前蹴りをくらわせる。
「ぐっ......、はぁっっ!!」
一瞬怯んだものの、持ち前とその鎧の頑丈さによりほぼノーダメージであったアーマー君はマックスが蹴りを放った時に出来たその隙をついてマックスの剣を押し退け、その身体へと横薙ぎに一閃する。
───がしかし、マックスは仮にも吸血鬼。空が雲に覆われ太陽の光は届かない日中では、人族にステータスで劣るわけもない。
マックスはその横薙ぎの一閃を姿勢を低くすることで躱すと、低空飛行する猛禽類の如く目を光らせて、アーマー君の懐へと潜り込む。
身体の真横に構えた剣を、潜り込むと同時に身体の回転も加えてアーマー君へと放つ......、
───その寸前になって、マックスは前転の要領で緊急避難を行い、その直後にアーマー君の周囲にいつか見た時とは威力も精度も見間違えるほどに成長したライトボールが打ち込まれる。
「へぇ、なかなか強いじゃねぇか。ギンやブルーノ隊長から聞いてた話とは全然違う......いや、成長したのか?」
それを瞬時にアーマー君自身による自爆という名の防衛行為だと判断したマックスは、そう言って楽しげに顔を歪ませる。
それとほぼ同時に、殆ど無傷と言った様子のアーマー君が煙の中からマックスへと突撃してくる。
「ハハッ、お前とはいい
マックスはそう言うと、再び剣を構える。
───その瞳は、僕と同じように
☆☆☆
吸血鬼にとっての『吸血』というものには大まかに分けて二種類の目的に分けられる。
一つが生命を維持していくための吸血。
これは人間にとっての水や空気と同じようなものであり、描写は避けているが僕も週に一回ほど誰か彼かの血を吸血させてもらっている───もちろん野郎の血は飲んでないがな。
そしても一つが、眷属を作る為の吸血───まぁ、マックス達に施したものと同じものだ。
ただ、この吸血は"眷属"を作るためのものなのであって、自らの"子孫"を残すためのものではないことを言っておかねばならないだろう。
だからこそ彼ら三人は僕の子孫ではないし、何より純粋な吸血鬼でも無い。言うなれば、人工的に───強制的に生み出された吸血鬼、とでも言うのだろうか。
だからこそそういう純粋でない吸血鬼には影も出来るし、吸血鬼の特徴である八重歯や赤い瞳も見られない。
───例外はあるのだが。
吸血鬼の本質は"戦闘を楽しみ、勝利し、敗者から血をいただく"というものらしい。それはつまり、吸血鬼とは戦闘中───それも楽しんでいる時に最も力が発揮される......のだとか。
難しいかもしれないから簡単に言うと、『吸血鬼とは戦闘狂の集まりで、その戦闘を楽しめば楽しむほどにその力が増す』という事だ。
もちろんそれは眷属にも言えることであり、もしもその眷属が翼と尻尾以外の吸血鬼の特性を持っているのだとすれば───きっとそれは......、
「はァァァァっ!!」
アーマー君の長剣が先程までマックスの居た空を切る。
マックスの本来の戦い方は闇魔法での撹乱とその持ち前の素早さを生かしたヒットアンドアウェイでの不意打ちと暗殺だ。
───例えるならば、魔力だけを残して賢さを全て速度に回した僕、のようなものだ。
それは実際に相手にしたことのある僕だからこそ分かるのかもしれないが、従魔や眷属たちが僕と同じレベルまで強くなったとしたら、その中で一番戦いたくないのはマックスだ。
それ程までにマックスは強いし、実に面倒だ。
───もしもマックスの相手が互角の相手だったとしたら、その相手側としてはたまったもんじゃないだろう。
───まさかこのまま終わりじゃないだろう、アーマー君?
その思いが伝わったわけではないだろうが、状況が動いたのはこの少し後のことだった。
☆☆☆
突如、アーマー君の魔力が迸る。
その
「『我が呼ぶは太古の剣』」
瞬間、彼の身体からはもう一つの
───なるほど、例の二つ名はこういう事か。
そう思い至って納得したと同時に、これはマックスも本気を出さねば不味いだろうと、すこし顔が引き攣る。
「『我が願うは悪を滅ぼす正義の刃』」
そこには数ヶ月前の、馬鹿で間抜けで正義を振りかざしていただけの少年の姿はなく、勝利に貪欲で自らの歩むべき道を自らで決めた、心の強い少年の姿があるのみ。
「『我が正義に従い顕現せよ!』」
彼を中心として、金色と緑色、二色の魔力の奔流が渦を描いて溢れ出し───彼はその
「『
バチバチッと二種類の魔力が放出され、その手に一振りの剣が形成される。
───それを見た途端、僕の背中に冷たい汗が伝った。
黒い柄に、翡翠色の光を放つ両刃の長剣。
───その潜在能力は、恐らくアダマスの大鎌以上であった。
「だ、誰かは知らんが、アーマー君になんて
どこぞの
とうとう出ましたアーマー君の奥の手です!
因みにやっぱり草薙剣をアーマー君にさずけたのは創造神エウラスです。
......ろくなことしないおじいちゃんですね。
次回! マックスの新たな魔剣が明らかに!?
魔剣ティルヴィングの次はどんな魔剣を召喚できるようになったのでしょうか?
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