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ちょっとした閑話です。

まぁ、内容的には全然"ちょっと"してないんですが。

結構意味不明なことを書いてあるとは思いますが、出来れば頭の片隅にでも置いておいてください。

第三章 帝国編
閑話 混沌と忘却の記憶

空は黒々とした雲に覆われ、光が一切差し込んで来ない。



その雲からは地上へと鳴り止まぬ雷鳴が降り続き、その度に地が震える。



そして、空中を漂う黒くて巨大な何か(・・)



鬼のような、人のような、悪魔のような。様々な動物を足してその数字で割ったような、どれとも判断のつかない醜悪な形相に、その身体から生える四本の腕。


背中から生える、左右非対称なドス黒い翼。


そしてその身体中にはギョロりと動く目の玉。



神でも悪魔でも、もちろん人間でも機械でもない。


───言い表すならば、混沌(・・)そのもの。



人の力でも、神の力でも抗えないであろうソレ(・・)は、圧倒的な───普遍的な世界のルール。




ソレを前にして、少年は地面へと視線を移す。




「......あれ? お父さん...? お母さん?」




少年と呼ぶ事すらも躊躇われるような年齢の男の子は、一人、燃え盛り、崩れ去る住宅街の一角に立っていた。


目の前には先程までの共に過ごしていた父と、それらを潰している崩れ去った我が家。母親の姿に至っては完全に瓦礫の下である。


唯一、家を囲む塀だけが残っており、そこの塀には『鐘倉』という家名と、十字架の描かれた(・・・・・・・・)魔法陣・・・という、現代日本においては実に奇妙で珍妙な家紋が描かれていた。



───だがそれは、間違っても小さな子供に見せられるような映像ではなく、男の子は泣くことも忘れてぼうっと突っ立っていた。




『あ、あれはまさかッ!?』


『───! 貴方だけでも早く逃げなさい!』


『うわぁっ!? お、押さないでよっ!』



それが、最後の記憶。


笑いながら振り返った彼は、家に押しつぶされた父の死体と、空中に浮かぶ混沌が視界に入り、今に至る。




「う、嘘だ......、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁぁぁっっ!!!」



誰も居ない───生きていない街に少年の悲鳴が響き渡る。



混沌によって破壊し尽くされた街において最後まで生き残ることの出来た少年は運が良かったのか、それとも......、




───少年の叫びは続き、それは混沌の耳にも届いた。




未だ五歳にも達していないであろう少年に『感情を押し殺して隠れる』などという方法が取れるわけもなく、感情のあまり喚き散らして、逆にその注意を引いてしまった。



それが、彼の運の尽きだった。







その数日後、日本中───世界中にとある悲劇が伝わった。




その内容とは、







『日本のとある都市が1時間で壊滅、生存者は一名(・・)、男の子で、未だ目覚める気配は無く......、』






───その壊滅の原因は、全くの不明である。






それが今から、およそ十数年前の出来事であった。






☆☆☆





少年が混沌に見つかってから数分後。


───その壊滅した都市に二人の男女が姿を現した。



「酷いわね.....。『混沌』が現れたからって直行したはいいけどそれ自体ももういないみたいだし......」


「......はぁ、まずは生存者の確認からだよ。僕はこっちを、君は向こうを別れて捜索しよう」


「了解したわ。それじゃ、生存者が見つかったら念話(・・)で連絡を頂戴ね? あ、電話でもいいわよ?」


「電話は通信料がかかるからね、念話にしておくよ」



そう言って彼らは身にまとったローブを風になびかせる。


その首からは見たことのないような宝石のアクセサリーに、その所に握られているのは長い杖だった。




───そう、彼らは魔導師(・・・)




日本在住の、当時世界最強(ゼウス以上)だった超生物という名の一般人、二人である。





───それと同時に、()の両親になる人物でもある。






☆☆☆





その数分後、気配察知のスキルによって生存者一名を見つけた二人は、その少年の状態に息を呑む。



「......酷い状態ね」


「右腕に左眼、更に右の肺の概念を奪われた(・・・・・・・)みたいだね......。正直言って生きてるのが不思議なくらいだよ」



そのまだ五歳にもなっていないであろう少年の身体からは、右腕と左眼が消え去っており、右の胸骨が不自然な程に陥没している。


───その上、それらの傷からは血が噴出することはなく、まるで『それが当然』とばかりに少年の生命を縮めてゆく。



少年ももう既に意識は無いのか、浅い呼吸だけを繰り返していた。



おそらく、このままでは少年の生命はあと数分と持たないだろう。




「うーん......」



それを察した女魔導師は、顎に人差し指を当てて考え込む。


更にその女魔導師の様子を見た男魔導師に、唐突に嫌な予感が襲いかかる。





───そして、





「よし! 神剣シルズオーバー(・・・・・・・・・)を使いましょう!」


「......はぁ、そういうと思ったよ」



まるでそうなると分かっていたかのように男魔導師はアイテムボックスから一振りの短剣を取り出す。



白銀に輝く刀身に、黒塗りの柄。

刀身には何やら赤い文字列が描かれているが、気にするほどのものではなく、それは正しく『芸術』という名に相応しいものであった。



───それはもちろん、性能も含めて、だ。





「"神剣シルズオーバー"、使用者の魔法の才能と引き換えに、対象のありとあらゆる傷と状態異常を回復、ありとあらゆる才能の完全開花、更には成長率超上昇の付与に、その他諸々と、代償がとてつもなく大きいことを抜かせばかなりのチートアイテムなんだけどね.........、本当に使うの?」



本来、混沌の『強奪』は"傷"ではなく"改竄"と呼べるものだ。


元々あった腕を、元々無かったものとして(・・・・・・・・・)改竄・・した上に、その傷に見合わぬステータス、最悪の場合はスキルまで強奪する───そんな回復不能な最悪の能力。



───それこそ神の力でも、件の神の髪でも回復不能な、最凶最悪、そして何より最強の能力。



だが、この『シルズオーバー』ならば、それすらも治すことが出来る。


それどころか才能の開花と成長率超上昇のオマケ付き。

その他にも好感度上昇やら運勢が上昇など、ミニなオマケも付いている。


その代わり"一度使えば神剣は破壊される"、という但し書きが付いているが。



───だが、今の少年が助かるにはそれしかない。




「最後にもう一度聞くよ? 今まで培ってきた魔法の才能をすべて投げ打ってでもこの男の子を助けるつもり?」



至って真面目で、それでいて責めるような声で問い詰める男魔導師だったが......、



「何を当たり前のことを。私は正義の味方(・・・・・)だよ? この子の生命が助かるならこんな才能なんて、要らないよ」



───分かってるでしょ? と、そう彼女は即答する。



やっぱりそうか、と頭を抱える男魔導師。



「はぁ......、この偽善者め」


「偽善じゃない正義なんて気持ち悪いでしょ?」



そりゃそうだ、と男魔導師はため息をつく。



「じゃあこうしよう。僕と君の二人が『使用者』として神剣シルズオーバーを使用する。そうすれば運さえよければお互いにそのリスクを分担できる」


「おお! ありがとねーっ」


「......はぁ、何か『そ、そんなことさせられないよ!?』とかそう言う反論はないんですかね?」


「ふふっ、夫婦なんだから一心同体でしょ?」



───恥ずかしげもなく、良くもまぁそんなことが言えるな、とまたため息をつく男魔導師だった。




「それでは時間もないことだし、さっさと始めてしまおうか」


「了解っ!」





そうして少年は、世界最強である二人の魔法の才能のうち、殆ど(・・)と引き換えにして生き延びた。





この後、生き延びた彼は記憶喪失となり、この日のことを───血の繋がった両親の死やそれ以前の記憶を失ってしまう。



そうして哀れに思った魔導師二人が養子に貰い受ける所から彼の新たな物語は始まった。





果たして、彼がその記憶を取り戻す日は来るのかどうか。





───それは神すらも知らぬ事である。


以上、『彼』の始まりの物語でした。

果たして彼は一体誰なんでしょうか?


次回、本戦再開なるか!?

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