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第三回戦開幕なるか!?......と思いきや?

第三章 帝国編
第140話

第二回戦は、穂花の勝利、というまさかまさかの結果に終わったわけだが、そうそうこんな大番狂わせが起こるわけもなく。



今現在、ステージの上にいるのは件のベルナとマイエンジェルこと桃野和彦である。




『それでは第三回戦! 試合開始ッッ!!』




第三回戦は、その声がかかってから数秒で勝負が決まった。



───もちろん、ベルナの勝利で。




『試合終了ーーっっ!! なんと一撃っ!! 第一回戦で男性たちの精神を尽く破壊してきた魔王少女モモノ選手も同性の前では無力だったようです!』


『......あの、モモノ様は一応男性(・・)ですよ?』


『嫌だなぁ、あんな可愛い女の子がそんなわけな.........』







───司会さんの声が、途切れた。




どうやら司会さんは選手登録表を見ているらしく、その瞳は限界まで見開かれていた。


はぁ、と再びアルフレッドのため息が聞こえ、




『第三回戦、勝者はベルナ様です』




瞬間、男達のなんとも言えないうめき声が会場中に谺響した。


それは、桃野とベルナの容姿を考えれば、ある意味当たり前のことだったのだろうし、仕方のないことでもあったのだろう。





───僕はうめき声をあげながらも、男が美少女よりも可愛いという現実の、理不尽と不条理を呪ったのだった。





☆☆☆





というわけで今現在。


あの後昼休憩を挟んでいるから......、恐らくは一時を少し過ぎた頃だろうか?




僕は今、物陰で二人へと最後の注意をしていた。



「お前ら、きちんと手加減して戦えよ? レオンはまだしも、輝夜は一割だ、一割。分かったか?」



そう、次の試合はレオンVS輝夜なのだ。


───レオンはまだ何とかなるとしても、輝夜はダメだろう。

それこそ一撃で結界を壊しかねない。




そう思っての注意だったのだが。




「ふむ、それは良いのだが......時に主殿よ。今朝恭香が言っていたのだが、勝ち残れば頭を撫でてくれるというのは本当であろうな?」



輝夜がいきなり、そんなことを言ってきたのだ。


確かにそんな噂は流れているようだし、現に勝ち残った穂花だって僕の姿を探している───あいつ、そういう行動が男を勘違いさせるって分かってないのかね?



だがそれは所詮、噂に過ぎない。



───つまりは、だ。僕はそんなこと一言も言っていないのだ。



だから僕は訂正しようと......、




「ん? いや、別にそんなことは......」




したのだが。




「時に主殿よ、続けて言わせてもらうが白夜や我、更には恭香にすら未だ唇を許していないとはどういう事だ? しかも噂によれば他の女と接吻したのだろう? まさかとは思うが、恋人相手に夜這いも接吻もダメ、その上撫でることすらも拒否するのでは...」


「喜んでやらせていただきます!」


「ふむ、よろしいっ!」



やはり、恋する乙女には敵わないようです。


と言うか言い訳をさせてもらいますが、ぶっちゃけると僕だってそういうことはしたいと思う時もあるのですよ? だけどね? タイミングと言うかなんと言いますか、なんかそういうムードになったとしてもその時に限って僕を入れても三人以上がその場にいるのですよ。


.........一体どうすればいいってんだよ?



と、そんな言い訳をしているとはつゆ知らず、輝夜はレオンに向き直る。



「クハハッ、レオンよ。お主の夢はここで破れることになりそうだな?」


「何を馬鹿なことを......、自分は串肉の為ならば神にだって喧嘩を売るのである。それこそそんじょそこらの輝夜如きに負ける自分ではないのである」


「ほう? 言うようになったではないか、後輩(・・)


「テイムされた時期でいえばタマゴの時期があった自分の方が先輩であるぞ? 後輩(・・)



珍しく輝夜とレオンが睨み合い、バチバチと火花を飛ばす。


───確かにコイツらって先輩後輩が曖昧なんだよなぁ、と思いながら、僕は少し嫌な予感がした。




だから、少し釘を打っておくことにした。




「もしも結界を破壊すればレオンは五日飯抜き、輝夜はデートしてやらないからな」


「「り、了解です!!」」




まぁ、こうして二人の色々を賭けた、仁義なき戦いがここに始まろうとしていた。



───真面目に結界破壊しないでくださいね?





☆☆☆





『さぁやって参りましたAブロック最後の第四回戦! それでは選手の登場です!!』



その放送と共にそれぞれの入口から本気(マジ)な顔をしたレオンと輝夜が現れる。


───果たしてそれ(・・)は、目標を達成するための覚悟によるものか、それとも僕の脅迫に怖気付いた為か。




......うん、きっと後者だろう。




『まずはコチラっ! あまりの強さに『獅子王』の二つ名を冠したレオン選手です! その強さは間違いなくSSSランクを超えているとのことですが.........あぁ、そういえばアルフレッドさんはレオン選手に負けたんでしたっけ?』


『......すごく答えづらい質問をしてきますね? 確かに負けましたけれども』



きっとあれだな、司会さんって天然なんだな。

───でないとこんな惨いこと言えないだろう。それも本人に向かって。



『続いてはこちら! 予選ではその強さを見せませんでしたがたまに打ち出されていた魔法のあまりにもケタ違いな威力とその蒼い瞳から、『蒼天王』との二つ名を冠する輝夜選手! 戦闘を見るのは今回が初めてですが、彼女は一体どんな戦いぶりを見せてくれるのでしょうか!?』


『彼女はあれでも"滅亡の使徒と傲慢大陸"の昔話でも知られたナイトメア・ロード本人で、更には進化までしているらしいですよ? それこそレオン様では勝ち目が薄いのでは?』


『なぁぁァっっ!? そ、それ私初耳なんですけどっ!? 滅亡の使徒って、あ、あの滅亡の使徒本人ですかっ!?』


『本人です』



会場中からざわめきが聞こえる。


───流石に"滅亡の使徒"の噂までは広がっていなかったようだ。もう手遅れだけど。



『と、言うわけでAブロックの最後を飾るのは『獅子王』レオン様と『蒼天王』輝夜様です。お二人とも、準備は宜しいですか?』



瞬間、レオンは体を漆黒のライオンへと変化し、輝夜はソウルイーターを取り出す。




───そして、





『それでは、試合開始です』





歓声が鳴り響き、この武闘会始まって以来の、正真正銘化け物同士の戦いが始まった。




───さて、レオンはどこまで粘れるかな?





☆☆☆





試合開始早々、レオンがぶっぱなした。




『魔導砲全門展開』



ガシャンガシャンと、レオンの背中から砲台(・・)が五台ほど現れる。



『全門オールグリーン、半永久魔導砲、連続発射、である』




瞬間、レオンの背の砲台から、ドドドドドドドッと、休むまもなく連続して砲弾が打ち出される。


それは魔力を纏ったブラッドメタル製の砲弾の嵐。


───どうやらレオンは、自分の体の中でブラッドメタルを生成することに成功したようである。





だがしかし、そんなものでは今の輝夜は止められない。





スッと踏み込んで砲弾に大鎌を当てて着弾位置を逸らす。


ダンッと踏み込んで砲弾を力任せに弾き飛ばす。


クルッと一回転して力を乗せ、その砲弾を弾き返す。



賢さと器用さの伴った輝夜にとって、それくらいは朝飯前だろう。

それに今の輝夜の武器は、ソウルイーター。

未だ鑑定はしていないが、その魔力量は間違いなくアダマスの大鎌と同格。


───鬼に金棒とは、まさにこの事だろう。敵に回したくないことこの上ない。



ドドドドドッとレオンの背中から音がし、その度にそれらを防ぎながら距離を詰める輝夜。



輝夜はハンデとして冥府の門をソウルイーター召喚以外に使わないだろう、ということを仮定しても、このままじゃ確実にレオンは負ける。




「さて、どうしますかレオン殿?」




そう、僕は楽しげに声を弾ませて呟くのだった。






☆☆☆





ドドドドドッと、背中から魔導砲を連射しているのだが、やはりこれでは輝夜には通用しないようである。


───一応、この砲弾は全てがブラッドメタル製で、さらに魔力までこもっているのであるが......、やはり経験やステータスの差というものは大きいのだろう。


現に、今の輝夜でさえ一割五分出しているかどうかである。




自分は、そんな彼女らを見て、こう考えてしまう。




───もしも、もしも自分が、その隣に立つことが出来たら、と。



もしも彼女たちの隣に立つことが出来たのならば、自分の敬愛する主殿の事も、助けられるのではないか、と。




生まれた時からずっと共にいた主殿。


誰よりも強くて、格好よくて、少し間抜けで、



───それでいて、最高にかっこよかったその背中に、憧れた。





それと同時に、自分はこうも思った。




『一体、自分と共に戦える仲間が居ないというのは、どれだけ寂しいものなのか』と。




主殿は「パーティで一番強いのは暁穂だ」と断言しているが、実際の所は誰ひとりとしてそんなことは思っていない。


確かに暁穂は強いが、それでもずっと主殿の背中を見てきた自分はそうは思わなかったし、他の皆もそうなのであろう。



───このパーティで一番強いのは、間違いなく主殿である。



それは揺るぎない事実でもあり、それと同時に彼の立場の象徴でもあるのだ。




パーティのリーダーで、全ての決定権を委ねられ、そして自分たちの中で一番強いという、その立場。


それはつまり、すべての責任を一人で背負い、強敵相手にも一人で挑まねばならないということ。





───それは一体、どれだけ辛いのだろう?




主殿はこの世界に来てから自由になった、と言ってはいるが、それは逆なのではないだろうか?



恭香、白夜、輝夜、暁穂、伽月、藍月、それに自分の主。


オリビア、マックス、アイギスに監視され、


更には最高神にさえ、監視され続ける人生。



そしてその責任は誰とも共有できず、すべて一人で背負うのだ。





同情はしない。それは彼自身に対する冒涜になるから。





───だけど、






もし自分がその立場だったらと考えると、背筋がゾッとなる。





『主殿には、それに相応しい仲間が必要である』



自分の様に弱い仲間ではなく、それこそ主殿よりも強いような、そんな仲間が。


その言葉は輝夜にも聞こえたのだろう。

「本当に、その通りだな」と、肯定の言葉が帰ってくる。



───やはり、皆が皆同じことを思っているのであるな。



輝夜の言葉に自分と同じ感情を感じた自分は、少しほっとして、それと同時に少し、笑ってしまった。



確かに、今の主殿に最も近いのは彼女たちであろう。


だから、最初に主殿を支えるのは、彼女たちに任せよう。






『だが、潜在能力ならば、自分が一番である』





───だからこそ、最終的には、その座は自分が貰い受ける。





『この試合、勝てはしなくとも一矢報いさせてもらうのである!!』




これを自分が主殿の隣へと向かうための、第一歩としよう。



自分は一度人型へと戻り、新たな姿へと姿を変える。





「モード『憧憬(・・)』!!」




瞬間、自分の周囲を赤と黒の渦が纏う。



───それは、憧れへと近づくための───憧れを越すための、強くなるための変身。





変身は数秒で終わり、渦が消失、自分の新しい姿が明らかになる。






『『「「「「.........えっ?」」」」』』






その姿を見た、主殿たちの驚きの声が聞こえた。

レオンVS輝夜です!

圧倒的な実力差をレオンはどうするのか!?

果たして『憧憬モード』とはいかに!?


次回! 恐らくは決着!!

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