挿絵表示切替ボタン

配色








行間

文字サイズ

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
155/667

余談ですが、何だか初期に想定していた内容から大分ズレてきました......。

本当は輝夜の登場がもっと後だったんですよ?


さて、これからどうなってしまうんでしょうか?

僕自身にも全く分かりませんが。

第三章 帝国編
第139話

あの後、鳳凰院は職員たちによって救出され、今現在進行形で僕の血を飲んで休息をしているらしい。


───そう、さっき血相を変えて走り去って行って追い返された的場からの情報である。




だけどまぁ、今はそれは別にどうでもいい。


それよりかなーーーり重要な案件が今の僕には存在しているのだった。




───それはもちろん、




「シルさん? 私、銀さんの居場所が分かってしまったのだけれど......、正解よね?」


「えええっ!? 美月ちゃんわかっちゃっ......た......」



そう、我らがツインテール女王、鮫島さんである。


───なぜだか、彼女の左右の青みがかったツインテールが、その心情を表すかのように荒ぶっていた。


それを見た穂花が何も言わずにここを離れてステージへと向かったのは言わずもがな。



僕は鮫島さんの心中を察して、まずは鮫島さんのご機嫌取りをしようと思ったのだが、



「さ、鮫島殿...」


「殿?」


「......鮫島()


「よろしい」



とってもいい笑顔で首を傾げながら聞き返されてしまった。

はぁ......、この人やっぱり女王様だよ。



と、そんなことをしているとやっと鮫島さんも落ち着いてきたのだろう。ツインテールが荒ぶりをおさめ、重力に従って真下へと下がる。


そして彼女は、ふふっと笑った。



「私は他の人に言うつもりはないわ。だからせめて教えてくれるかしら? 私の答えが正解かどうか」



それは質問ではなく、ただの確認だったのだろう。



───だからこそ、僕は半ば諦められた。




「おめでとうございます、鮫島様。貴方がギン殿に辿り着いた、二人目(・・・)です」


「あら、嬉しくない言い方するわね? 道化さん」




そうして僕は、鮫島さんに正体を見破られたのだった。



───案外、三人目が現れるのももうすぐなのかもしれない。





☆☆☆





『激闘の末に勝利をミツキ選手が掴んだ一回戦を終え、マキコ選手も治療が進み、もう立ち上がれるようにまで回復したそうです』


『というわけでっ、続いて第二回戦を開始したいと思います!! やっぱり間隔が短いっていいですねっ!』



と放送が入り、僕達は自分の座っていた席へと戻ってゆく。



───のはいいのだが、



「おい鮫島。その席は私の席だ。詳しく言うならば彼の隣は私のものだ。勝手に座るんじゃない」


「あら? この席にお名前でも書いてあるのかしら? それに貴女の愛情......重いわよ?」


「......私は、お前のことが嫌いになったぞ」


「うふふっ、私は貴女のこと、可愛らしくて好きだけれどね?」




そんないい争いが、僕の隣から聞こえてきた。



ふと視線をずらすと、僕の右隣に座って腕に抱きついてきている鮫島さんと、それを見て青筋を浮かべる浦町。


逆隣には余裕綽々の恭香に、『またか』と言わんばかりの仲間達。


そして目を見開いてこちらを見つめている勇者たち───特に堂島さんが今にも泣きそうだ。




......んで? 何今の状況?


色々と解説はしてみたものの、状況が何一つうまく捉えられない。



分からないものは仕方ないだろう、ということで僕は鮫島さんに直接聞いてみることにした。



「鮫島殿? 何故こんな......」


「呼び捨てでいいわよ? それに理由なんて好きになっちゃったからに決まってるじゃない」




.........ふぅ、落ち着け僕よ。状況をもう一度整理するんだ。



鮫島さんとの出会いは?

⇒叔父に一緒に捕まった。


鮫島さんとの関係は?

⇒医者と患者......かな? かなり人間不信になってたところを数週間通いつめてやっと治すことができたから、それなりに話したりはしてるけど......、うん。


鮫島さんは今なんと言った?

⇒『好きになっちゃった』


......何故?

⇒分らない。



───つまりは、どういう事だ?



(つまりはあれでしょ? 人間不信に陥って自殺も考えていた時にギン助けてもらったことによって『恩を返したい』って思いと、それでも募る『恋心』が芽生えちゃった、ってことでしょ?)



......やっぱりそういう事ですか?



いやね、薄々はそんな気もしないでもなかったさ。


鬱で心を閉ざしてしまった人たちは、助けてもらった場合にその人間に依存しやすい。

実際に僕も何人にも依存され、その度にそれも矯正してきた。


───そして今回、僕は鮫島さんの依存に気づけなかった。ただそれだけの話であろう。



つまり、だ。



最悪の場合は、僕の苦手な『ヤンデレ』が出来上がるのだ。


───ツンデレよりも、クーデレよりも、暴力系女の子よりも、アホの娘よりも、ポンコツよりも、何よりも苦手な『ヤンデレ』である。


......あれは僕には荷が重すぎるよ。



と、そう考えていると、鮫島さんが耳元に口を寄せてきた。



「銀さんがこういうの好きじゃないのは知ってるわ。それでも私は貴方に恩を返したい。それが私の生き甲斐よ」


───それに勝ち残ったら頭撫でてくれるんでしょう? ならそれの代わりだとでも思ってちょうだい。


そう囁いて、彼女はうふふっと笑う。



......はぁ、そんな事言われたら断れないじゃないか。



「今は穂花たちが危なっかしくてそちら側に付いてあげたいから、愛の告白はもう少し待ってちょうだいね?」



そう最後に言い残して、彼女は席を立って堂島さんたちの方へと戻って行った。



───僕の顔が仮面に包まれてて良かったと思うのと同時に、鮫島さんの横顔が真っ赤になっていたのを僕はしっかりと目撃した。




はぁ.....、やっぱりツインテール似合ってるよ、鮫島さん。




僕はその後ろ姿に向かって、心の中でそう呟いた。





☆☆☆





『さぁ本戦二回戦の出場者の入場です!!』



その放送と同時に、二つの入口からそれぞれ二人の出場者が現われる。



『まずはこちら! 一回戦は白夜選手による不戦勝のため出番はありませんでしたがその実力はかなりのもの!『白虎』の二つ名を冠する現Sランク冒険者! アックスさんの息子! ホリック選手だァァァっっ!!!』


最初に紹介されたのは、前大会準優勝のホリックだ。


アックスと同じように白い髪に鋭い瞳。筋肉の質や量、体格もまだまだアックスに比べれば劣ってはいるが、それでも間違いなくSランク以上の強さはあるのだろう。


───まず、勇者たちでは太刀打ち出来ない相手だろうな。例えるなら直属護衛団のベルと同じくらいであろうか?

まぁ、単純にそれだけ強いってわけだ。



『続きましてはこちらっ! 予選では同じくアルフレッドさんとレオン選手の活躍により不戦勝となりましたが、つい先日のエキシビションマッチは記憶に新しいところです! ありとあらゆる聖剣を召喚する『英雄』! Bランク冒険者! ホノカ選手だァァァっっっ!!』


『仮にも彼女は私を倒して先に進んでいったのですからね。是非とも頑張ってほしいものです』



続いて紹介されたのは、先程逃げ出した穂花である。

僕の見た感じだと実力はせいぜいがAランク上位、聖剣の力はまだ完全に引き出せてはおらず、かと言って全然引き出せていないわけでもない。


───実力差は歴然だが、もう一つの聖剣の能力によっては可能性も見えてくるだろう。


そうでなければ、この試合はホリックの圧勝だ。




それぞれの入口から入場してきたホリックと穂花が、十数メートル間隔を開けて、立ち止まる。




『それではお二人とも準備は宜しいですか!?』



その放送とともにその長剣を構えるホリック。




───そして。




「『僕の願いに応じて顕現せよ!』」




穂花は最初から全力で行くようだ。






「さぁ行こう!『聖剣クラウソラス(・・・・・・)』ッ!!」





瞬間、穂花の目の前の空間が光り輝き、その空間から一振りの聖剣が現れる。


それは、端部が金色の純白の柄を持つ、両刃の長剣。

刀身の中心には金色の模様が描かれており、その鍔はまるで黄金色の翼のようでもあった。



───それは、まさに絵に描かれたような聖剣。



それもそのはず。中二病なら一度は聞いた覚えのあるであろう、あの『クラウソラス』なのだから。




『.........へっ?』



司会さんの間抜けな声が聞こえる。



そして、アルフレッドのため息一つ。




『それでは。試合開始です』





そんな、淡々としたアルフレッドの声によって、試合の幕は切って落とされたのだった。





☆☆☆





相手ははるか格上。


逃げ道はなく、隠れる場所もない。


仲間もおらず、助っ人もこない。


逃げ回ろうにも早さも体力も力も向こうが上。


その上、相手には油断の欠片もない




───ならば、どうするか?





「意表をついた一撃必殺しかないよねっっ!!」



つまりはその通りである。




今の穂花に残された勝機とは、聖剣クラウソラスの能力のみだ。

厳密に言えばその他にも"運良くホリックが自爆する"だとか、"ホリックが穂花の強さを勘違いして棄権する"だとかあるのだろうけれど、そんな可能性は一パーセントも無いだろう。


それならば、自分で掴みに行った勝利の可能性の方が、よっぽど高いのであろう。




だから、この試合は───結果はどうあれ、一瞬で決まる。





穂花はクラウソラスの剣先を相手へと向け、少し半身になって腰を降ろしてから、頭の横で聖剣を固定する。


右手はしっかりとその柄を握りしめ、左手で相手へと剣先を微調整。



───その様は、姿形は違えど大弓を引き絞っているようにも見えた。




その姿に危険を感じたのか、ホリックは目を見開いて穂花を凝視する。


一挙手一投足を見逃さないように瞼を開き、その視線を穂花へとしっかりとロックオン。更にはいつでも動けるように身体には必要なだけの力を入れている。




恐らくは、今の状態で何か能力を使ったとしても、きっとそれは無駄に終わるだろう。




もしも、それが勝利に繋がるとしたら......、





ホリックが目の疲れを感じ、一瞬瞬きをしたのと、穂花が動き出したのは偶然にも(・・・・)同じタイミングだった。





「それこそ、天運が味方しているとしか思えませんね」





次の瞬間、ホリックの目の前まで(・・・・・)移動した穂花の聖剣は、ホリックの喉元に添えられていた。





「ふふん! 僕の勝ちだねっ!」





一拍遅れて、歓声が鳴り響いた。




───やはり、真の勇者は油断できなさそうだ。


ホリックは全く出番がありませんでしたね。何気に一度もセリフがありませんし。

果たして出番は訪れるのでしょうか?


次回! 第二回戦開幕!!

ブックマーク機能を使うには ログインしてください。
いいねで応援
受付停止中
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。
感想を書く
感想フォームを閉じる
― 感想を書く ―

1項目の入力から送信できます。
感想を書く際の禁止事項についてはこちらの記事をご確認ください。

※誤字脱字の報告は誤字報告機能をご利用ください。
誤字報告機能は、本文、または後書き下にございます。
詳しくはこちらの記事をご確認ください。

⇒感想一覧を見る

名前:



▼良い点

▼気になる点

▼一言
《番外編》 Silver Soul Online~もう一つの物語~ チート(スキル系)ほぼ無しの技術と頭脳でVRMMOの世界を突き進みます! よろしければご覧ください。 SSO
X(旧Twitter)・LINEで送る

LINEで送る

+注意+

・特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はパソコン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
作品の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
▲ページの上部へ