産婦人科2022-11-09
質問したきっかけ
婦人科に勤務する新人看護師です。私の勤める病院では、ピルが処方された患者さんに対して、副作用である血栓症のリスクについて看護師が説明しています。私も患者さんへ指導をしていたのですが、ある患者さんから「なぜピルを飲むと血栓症のリスクがあるの?」と聞かれてうまく答えることができませんでした。
質問したいこと
なぜピルを服用すると、血栓症のリスクが高まるのでしょうか。
ひとこと回答
ピルの含有成分であるエストロゲン(女性ホルモン)に凝固作用があるためです。余剰なエストロゲンは肝臓に回され、肝臓で凝固系を活性化させるため、VTE(静脈血栓塞栓症)のリスクが上がります。
詳しく説明すると
ご質問ありがとうございます。看護師仲間でも月経コントロールをするためにピルを内服している方がいるので、今回の質問は興味のある方も多いと思います。
ピルには、エストロゲンとプロゲステロンが配合されています。この中のエストロゲンには、血栓症になるリスクを高める作用があるとされています。
では、自然に分泌されるエストロゲンには血栓症のリスクがないのに、なぜ服用するピルでは血栓症のリスクが高くなるのでしょうか。それは、ピルの薬剤効果と患者さんの卵巣機能の均衡が崩れているからです。
卵巣機能が正常な場合はエストロゲンの量が調整されていますが、ピルとして服薬する場合は基本的に一定の量を体に取り入れることになります。ピル服用の対象者は、40代以降であれば、誰しも卵巣機能がある程度低下しています。
そこに一定量のピルを服薬するとなると、その量は相対的に多すぎることがあります。不要な量の女性ホルモン(合成ホルモン)は肝臓で処理されることになるのですが、このエストロゲンは凝固系を活性化させる働きを持ちます。
そのため、ピルを服用する方で特に40代以降(ほかにも喫煙歴がある、肥満、高血圧や血栓症の既往があるなど)は、血栓症のリスクが高まるというわけです。ただし、必ずしもピルの服用で血栓症になるというわけではなく、統計によると1万人に7~10例とされています。
ピルを服用していない方の血栓症の発症率が1万人に対して1~5例で、2~3倍のリスク上昇といえます。これは、ピルが起因で血栓症を起こすことが「ごくまれに」あるといった副作用です。
しかし、血栓症発症のリスクがゼロではないため、血栓症の前兆を伝え、早期に対処できるようしっかり指導することが大切です。
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