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果たしてギンが二人に提示した条件とは!?

まぁ、ほんの少し下の方をご覧いただければ分かります。

第三章 帝国編
第138話

「"ベルクを自分の医療の実験台にする"と、"自分の知人がこの地を訪れた際、出来うる限りでその人物に協力すること"......ねぇ? 随分と上手いこと考えたものだね?」



帰るなり串肉を頬張っている恭香が先程の条件について語り出した。



「医療の実験台、って言うのは病気を治すための表向きの理由で、自分の知人、って言うのはどっかで拾った天魔族の女の子のことでしょ? あの子今現在進行形でこっちに向かってるらしいし」


「えっ? そうなのですか?」


「そうなんですよ」



恭香はゼロのためと言うが、実際には僕はその条件をゼロのために設けた訳では無い。

───確かにそれを想定しなかったか、と言われれば、否、と答えざるを得ないがな。



それに、



「ギン殿のパーティは結構満員ですからね。彼女たち二人の天才はあちらのパーティに引き取ってもらった方がいいかと」


「なるほどねぇ。確かにこれ以上はライバルは要らないかな?」



そう言って恭香はあたりを見渡す。


白夜、輝夜はもちろん、オリビア、アイギス、暁穂、それに浦町か。ネイルが僕に向けているのは"親愛"だろうしね。



「それだけじゃないんだけど......気づいてないの?」


「......へっ? まだいるのですか?」



おっと、今のは失言だったな。

シル=ブラッドというのは"全知"というキャラ付けなのだ。今のは宜しくない発言であろう。



「......コホン、もしかしなくとも鳳凰院殿の事ですな? 確かにとてつもないお胸様ですがギン殿ならば.....」


「ほんとに気づいてないみたいだね? ......もしかして向こうでは鈍感キャラとかだったの?」



......鈍感?


一体コイツは何を言っているのだろうか?




と、そんなことを考えたが、その思考は司会さんの声によって遮られた。




『さぁ、いよいよ本戦の開幕です!! 司会は引き続き私とこの人!』


『どうも、アルフレッドです。どうぞ宜しくお願いします』


『固いっ! 言葉が固すぎるっっ!! と、言うわけで引き続き私たちがお送りしますっ!』



......仲いいなコイツら? もしかして出来てんのか?


と、そんな場違いなことを思う。



だがしかし、そんなことを考えている間も放送は続く。



『それでは第一回戦! 『女王』と二つ名を持つ精霊魔法の使い手!ミツキ選手!! それに相対すは『戦姫』の二つ名よりもその暴力的なまでのお胸様で有名なマキコ選手です!』



若干失礼で、それでいて信じられないくらい共感出来るその放送とともに現れたのは、昨日と同じく蒼いローブに身を包んだ鮫島さんと、盾と長剣を手にして聖騎士然とした姿の鳳凰院。


......お胸様が鎧の胸部を押し上げて、とんでもない事になっております。

眼福眼福。これはしっかり目に焼き付けておか......




「......『封印の鎖(シールズチェーン)』」




瞬間、僕の仮面を突き破って僕の左右の眼球に二本の鎖が深々と突き刺さる。




「って、何してるんですかッッ!? 我輩だからまだ良かったものの一般人なら失明してましたよ!?」


「......いや、普通は一般人でなくとも失明してるぞ?」



久瀬の反論が聞こえたような気もしたが、きっと気のせいだ。



───っと、今はそれよりもお胸様を.........、








.........はっ?







「おい恭香殿。一体我輩に何をした?」



僕はその眼球に映った映像を見て思わずキャラが壊れかける。


───いや、正確には映像ではないか。





だって、僕の目には、鳳凰院のお胸様が映っていなかったのだから。





「『封印の鎖(シールズチェーン)』、相手の特定の行為を一時的に封じる能力だよ。少なくともこの試合の間は鳳凰院さんの胸は見れな......」




その言葉を途中まで聞いて、僕は膝から崩れ落ちた。






☆☆☆






『それではッ、試合開始っっ!!』



その試合開始のゴングと共に相手へと駆け出す両者。




───そして、




「死ぬといいですわッ! この貧乳ッ!」


「生き恥を晒さずさっさともげなさいっ! この駄乳っ!」



ガキィィィンッ、両者の武器が激突し、とここまで聞こえるような金属音が響く。





と、試合は始まったものの、僕はその試合を見ようとは思えなかった。




ぼけーっとしている僕の視界に映るのは、何故か真っ黒に塗りつぶされた鳳凰院の胸部。



───つまりは、おっぱ○だ。おっ○い。



僕が鳳凰院に期待しているのはおっ○いだけなのであって、正直言ってあいつから○っぱいを取ってしまえば、もうそこにはお○ぱいはなく、ただの貧乳ツンデレ巻き毛お嬢様しか残らないのだろう。


確かにツンデレ巻き毛お嬢様ならば貧乳でも許容できる程のキャラ付けなのだが、それでもあのおっ○いを一度見てしまえばもうそれは、鳳凰院であっても鳳凰院たりえないのだ。



───ならば鳳凰院とは何だ?



鳳凰院真紀子。


名家鳳凰院家の一人娘にして、鳳凰院家始まって以来の天才。


傲慢のようで根は優しく、心の弱い女の子。


それでいて、僕の患者の一人でもあった。



金髪の巻き毛にぱっちりとした瞳。



そしてツンデレで、





────なにより、おっ○いが大きいのだ。





以上の事から一つの真理が明らかになる。






結論。



鳳凰院真紀子はおっぱ○である。






「......ねぇ浦町さん? この人ってこんなに巨乳が好きだったっけ?」


「いや......、ふむ、確かに巨乳には目を引かれていたな。特に鳳凰院の」



恭香たちのささやかなガールズトークが開かれているが、まぁ聞かなかったことにしてやろう。

ククッ、話がささやかなだけじゃなく胸までささやかなんだがな?



───この貧乳どもめがっっ!!




「......なんか、キャラ変わってない?」


「はぁ......、()が彼にあんな残酷なことをしたからだぞ? 最悪の状況は、時に人の性格すらねじ曲げることがある......と昔に銀が言っていた」


「って私ってそんなに酷いことした!?」




そんな会話を聞きながら、僕の冷静な部分はしっかりと彼女たちの戦いを目に焼き付けていた。





☆☆☆





戦況を一言で言えば『鳳凰院が不利』というものだろう。



精霊魔法を駆使しながら長いリーチを持つ槍で襲撃する鮫島さんに、その剣に炎を纏い、盾で防御をしながら突撃する鳳凰院。


───穂花以外の全員が二つのユニークスキルを持っているのだとしたら、恐らくは鳳凰院のユニークスキルのうち一つはあの炎の剣に関係するのだろう。例えば......、魔法を対象に纏わせる能力、とかかな?


それに加えてもう一つの能力を使っている形跡が無いことから、もう一つは目に見える形で現れない能力とか、支援専門の能力とか、そんな感じなのだろう。



と心の中で考えていると、浦町が驚いたような顔をしてこちらに寄ってきた。



「流石だな......。鳳凰院のユニークスキルは『纏術』と『鼓舞支援』の二つ。君の言う通り、前者は魔法を対象に纏わせて対象を強化するという能力で、後者は味方全員のステータスを上昇させる、という能力だ。流石はこの世界での先輩、と言ったところかな?」



その言葉を聞いて、僕は思わず眉を顰めた。


───もちろんそれは、思わず"先輩"という言葉に反応してしまった、というわけではなく、



「鼓舞支援......、完全な支援専門の能力ですか。鮫島殿はユニークスキルは二つとも覚醒しておるのですか?」



そう、下手すればこの試合はワンサイドゲームになりかねないからだ。

もしもこれで鮫島さんが二つ目の能力を覚醒させていて、その上纏術の能力が炎しか使えないのであれば、この試合は決まったも同然だろう。


───なにせ、相手は氷の(・・)女王様だからな。



と、そんなことを思ったが、どうやらそうはならなさそうだ。




「そうらしいが使っているところは見たことがないな。どうやらその能力を使えばしばらく精霊魔法が使えなくなってしまうらしい。それに鳳凰院は全属性(・・・)持ちだ」






.........えっ?




その言葉に思わず目を見開く。



「ぜ、全属性......、流石の我輩でも全属性は持っていませんでしたよ...?」



そう。この世界において"全属性持ち"というのは滅茶苦茶珍しいのである。


それこそ『え? 異世界行ったら自動的に全属性持ちになるんでしょ?』とかそんな考えが通じないくらいには珍しい。



例えば僕なら『水』『風』の二属性を元々持っていた。

───その他にも月光丸にも使用している付与魔法や、僕の代名詞である影魔法なんかも使えていたが、それでも全属性中の二属性しか使用出来なかった。



この言っている意味が分かるだろうか?



ある程度強いであろう僕でさえも『二属性』の適性しかなかったのだ。

それを全属性扱えるなど......、もう狂ってるとしか言いようがない。



「は、ははっ、全属性持ちって神族の中でも二割未満なんだよ?」


とは恭香の言。



───まさか勇者たちの中に他にも全属性持ちが居るとか言わないよな?





その疑問に浦町は答えなかったが、それでもその口元が笑っている事を、僕は見逃せなかった。





僕よりも先にコイツらの方が最強に至っちゃうんじゃ無いですかね......?



と、そんなことを思ってしまった僕だった。






☆☆☆





そんな衝撃の事実を僕が知るとほぼ同時刻、第一回戦は終盤を迎えようとしていた。



「『纏術・雷』ッッ!!」


瞬間、鳳凰院の身体と剣を雷が纏う。

───どうやら纏術を使った際には、身体へのダメージは無いようである。


と、少し安心したはいいのだが、恐らく、相手からしたらたまったものじゃないだろう。

なにせ、僕の『活性化』のさらに強化バージョンを魔力消費だけのリスク無しでやってのけるのだ。


僕の予想通り、鳳凰院のギアが数段階上昇する。

先程までの炎だと力だけが強化されていたようだが、どうやら雷だと『活性化』同様に力と速度が大幅に上昇するらしい。


───推定......1.5倍位かな? まぁ、僕がLv.1の執行者モードに入ったと思ってくれればいいか。



鳳凰院は先ほどとは比べものにならないような速度で鮫島さんに肉迫する。


その剣を振り上げ、速度をそのままに鮫島さんへと振り下ろす。



流石の鮫島さんでも、流石にこれには反応出来まい。





───誰もがそう、思ってしまった。



それは僕はもちろん、鳳凰院本人ですら同じことだったろう。







だからこそ、鮫島さんは正々堂々と罠を仕掛けられたのだろう。







「残念ね、私の勝ちよ」




鳳凰院の剣が鮫島さんを捉えた瞬間、その身体が水へと変わり、あたりへと飛び散る。




それを見て、僕の頭にはとある映像が浮かんでいた。


───それは、バハムート相手に僕が使った戦法。



「なるほど......、水分身(・・・)ですか」



僕が思い至ると同時に、鮫島の分身たちが辺り一面へと現れる。


それだけなら良かったのだろう。



だが、僕にとって最悪な事態が起きてしまった。





───その分身のうち一人と、目が合ったような、そんな気がしたのだ。






そして、その分身は笑みを顔に浮かべてこう言った。







「せっかく銀さん(・・・)が見てくれているのだから、最後は景気良く勝負を飾ってあげましょうか」





その言葉を聞いた途端、僕の額に冷や汗が滲み出る。



───あれ? これって......




「バレてるねぇ......」


「ふっ、どうやら二人目(・・・)は鮫島のようだな」




そんな恭香と浦町の声が聞こえ、







「精霊さん、力を貸してちょうだい」






まぁ、こうして第一回戦は幕を閉じた。







「『アイアンメイデン』」





そこには、氷山の中に生きたまま冷凍保存された鳳凰院と、こちらを見て微笑んでいる鮫島さんが居たのだった。




───最後に、鮫島さんの目が笑ってなかったことだけ記しておこう。

第一回戦終了です!

二人目は鮫島さんでしたね。

※ベルクの治療はまた今度です。まだまだ余裕がありそうですし、まだ治療法を見つけていませんからね。


次回! 荒ぶる鮫島産ツインテール!? 果たしてギンは無事生還できるのか!?

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