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本戦開幕......とはまだいかないようです。


第三章 帝国編
第136話

『それではっ、まずは本戦についての説明に入らせて頂きます!』



視界さんがそう言うとほぼ同時に、ヴィィィィンと壁に、計二十四(・・・)の空欄のあるトーナメント表が映される。

恐らくはトーナメント方式で本戦は行われるのだろう。


そのトーナメント表はA~Cの三ブロックに分かれており、一回戦、二回戦、三回戦、準決勝戦、決勝戦と、順調に勝ち進んでいけば最大で五回の試合が待ち構えているようだ。



───うち二名を除いての話だが。




『ご覧の通りシード権が二つございます! 片方は獣王レックス様が準決勝から参加するためのシード、もう片方は二回戦からのシードです! 完全にランダムですので出場者の誰か一人がシードを手に入れられます! つまりは完全に運ですねっ!』



その言葉とほぼ同時に二十四個並ぶ空欄の一番右側に、『レックス』という名が刻まれる。


どうやらランダムで残り二十三名の対戦カードを決め、それがあのスクリーンに映し出される、という仕組みのようだ。



Aブロックの勝者とレックスが。


そしてもう片方のシードはCブロックにて二回戦から出場することとなっている。



───個人的には獣王参加の方がビックリなんだが.........、あぁ、そう言えば前大会優勝者が出てないと思ったらレックスの事だったのかな?

まぁ、そう考えれば辻褄も合うか。



と、そんなことを考えたところで司会さんの声が再び聞こえてきた。




『今回は予選のように何時試合が始まるのか不明なスタイルではなくあらかじめ全て発表した上で第一回戦を開始したいと思います!』


『もちろん賄賂や試合前の攻撃行為──直接間接はもちろん問いませんよ。他にも試合相手が決まった上での不正行為は禁止ですよ?』



なるほど、と思うと同時に会場中から息を呑む音が聞こえる。



───どうやら、そろそろ発表のようだ。





どうやらその予想は当たっていたらしく、




『ルールは簡単! 殺したり必要以上に痛めつけたりしなければそれで良し! ルールを守って楽しく決闘ッ!! 血湧き肉躍る戦いがここに開幕! という訳で対戦カードの発表だァァァッッ!!!』




ヴィィィィンと音が鳴り、二十三個の空欄に、それぞれの名前が描かれてゆく。


そして数秒もせずに完成する、そのトーナメント表。





それを見て、僕はついつい、顔を歪ませてしまった。





───果たしてそれは、嫌悪か興奮か、それとも歓喜か。





だがしかし、一つだけ確かなことがあった。








第一シード 『獣王』レックス





《Aブロック》




第一回戦 『女王』鮫島 VS『戦姫』鳳凰院



第二回戦 『英雄』桜町 VS『白虎』ホリック



第三回戦 『魔王少女』桃野 VS『期待の獣人族』ベルナ



第四回戦 『獅子王(ししおう)』レオン VS『蒼天王(そうてんおう)』輝夜




《Bブロック》




第五回戦 『灰神王(かいじんおう)』マックス VS『緑金の勇者』アーマー・ペンドラゴン



第六回戦 『冥王(・・)』シル=ブラッド VS『黒炎』久瀬



第七回戦 『鬼神』小鳥遊 VS『破壊王』小島



第八回戦 『白雷王(はくらいおう)』アイギス VS『極魔』アルバ・ロード




《Cブロック》




第九回戦 『断罪者(・・・)』恭香 VS『魔皇帝』御厨



第十回戦 『炎王』的場 VS『完全無欠』浦町



第十一回戦 『天拳王(てんけんおう)』オリビア VS『魔拳』エルグリッド



第二シード 『白天王(はくてんおう)』白夜









とんでもない組み合わせに驚く前に、僕らはその、名前の前に書いてある二つ名に驚いた。




.........いつの間にこんな二つ名付いてたんだ?





───視界の端で、数人を除いたパーティ全員が、目を見開いて固まっていた。






☆☆☆





『今日の予定としては第一回戦から第五回戦を行うつもりです! 明日以降に残りの第六回戦から最後までを行い、明後日の三日目から勝ち進んだ選手達による勝ち抜き戦を進めていくということになっています! 第一回戦は一時間後から開始、それ以降は試合が終わり次第三十分毎に次の試合が開始されますので気をつけてくださいねっ!』


『それでは第一回戦。サメジマ様とホウオウイン様は準備ができ次第控え室にてお待ちください。何か質問等ございましたら会場係員の方まで......』


『あ、アルフレッドさん! なんだか私より司会者っぽいじゃないですかッ!?』




そんな放送を聞きながら僕らはトーナメント表───特に二つ名───について話し合っていた。




「『白天王』っ! なんだかカッコいいのじゃっ!」


「クハハッ! クハハハハハッッ!! 白夜と双対をなす『蒼天王』ッ! なかなか素晴らしいセンスではないかッ!!」


「『獅子王』......見たまんまであるな?」


「噂によると、私の二つ名は『暁天王(ぎょうてんおう)』らしいです。なぜ出てもいないのに二つ名があるのでしょう?」



いつもとは違った、正真正銘自分の二つ名に喜んだり落ち込んだりしてる従魔たち。

───それと暁穂、お前は色々とやらかしてるから絶対そのせいだぞ?


忘れたい記憶だったので封印していたが、彼女は旅の道中で街へと寄ると「それでは買い物ついでにお金稼いできますね」とか言ってそこら一帯の魔物を全滅させてギルドへと売り込んでいたのだ。二つ名がつかないわけがない。




「『灰神王』....ねぇ? 俺ってそんなに煤けてるか?」


「......苦労してそうですからねぇ」


「......うっせぇよ、『白雷王』」


「はわわわわわっ!? て、てて、『天拳王』!?」


「オリビアさん、落ち着きがないと子供っぽく見えますよ?」


「......ギルド職員が王女に向かってその口はどうなんだ?」



そして煤けたマックスとアイギス。ビックリしすぎてネイルに注意されているオリビア。それを難しい顔で見つめる浦町。


───ちなみに伽月と藍月はおねむである。




更には、




「ふっふーん! 黙ってたけど私の二つ名『断罪者』なんだよね! 可愛くないけど。なんだかギンとおそろいって感じしない!? ぜんっぜん可愛くないけど」



本音が見え隠れしてる恭香に、





「......最初ッから手品師とかよ......運が悪かったと諦めるしかねぇかな?」


「俺は..................、よし、降参するか」


「ちょっと小島君! 私は貴方とも戦って見たいんだから本気で来なさい!」


「あら? 最初の相手は......『駄乳』? 目が悪くなったかしら?『駄乳』にしか見えないわ。それでその『駄乳』さんってどなた?」


「おーっほっほっほ! .........調子に乗るのではないことよ? 貧乳ツインテの分際で」


「あら? その無駄に大きな乳と変な寝癖のついた髪の毛しか自慢のない鳳凰院さんじゃないかしら? 何か私に用かしら? 嫉妬?」


「これは寝癖ではありませんことよっ!! ふ、ふんっ、逆に貧乳の貴女が私に嫉妬してるのではなくて?」


「この娘......、自分に私が嫉妬するような部分あると思ってるのかしら......?」


「......喧嘩を売っているのですわね? 分かりましたわ。ちょーっとツラ貸して頂けるかしら?」


「け、喧嘩はやめようよっ! ......ねっ? お願いっ」


「「うっ......、も、桃野君......」」


「断罪者ですか......、銀君の彼女さんともなれば相手に不足はありませんね?」


「......ホリックって誰だっけ?」




もう好き放題やっている勇者たち。



───やっぱりあっちに行かなくて良かったぜ。





と、そんなことを思っていた時だった。






「ふむ? あれは確か......」





僕の目が、視界の端っこに映った影を捉える。




茶色いボサボサの髪の毛に、犬耳の生えた危なげな女の子。



───確か、ベルナ......だったか。





「失敬、少し用事を思い出しました」



僕はそう言って立ち上がると、返事も聞かずに彼女のあとを尾行する。




彼女からは患者(・・)独特の雰囲気というか......強いていうならば『他人を信用出来ない』『何とかしなきゃ』『覚悟は出来ている』と言ったような末期患者とよく似た雰囲気を放っていた。

ステージ上から客席までビンビン伝わってくるほどには、ね?




───それこそ、何かをやらかしそうな位には危ない状態だ。




(恭香、他の皆を頼むわ)


(了解だよ。ちょっと嫉妬しちゃうけど頑張ってね?)



はぁ......、後でいくらでも頭撫でてやるから許してくれよな?




そう言って僕は気配を薄めてゆく。






───さり際に恭香が「ギンが大会で勝ち残ったら頭撫でてくれるって!」と言ってたのは気のせいだろう。



それで何故だか桃野が反応してたのも気のせいだ。





......割と真面目に桃野ルートに突入しちゃうからやめてよね?






☆☆☆





「ただいまーっ」



場所は王都グリムの外縁部に位置する貧困街の一角。

そこに建てられている、ボロボロの今にも崩れそうな一軒家にベルナは住んでいるようだった。


───いや、正確にはベルナたち(・・)だろうか?



「ゴホッ...ゴホッ......、お、おかえりお姉ちゃん」


「ベルクッ!? ダメじゃない! きちんと布団に入ってなきゃ!」



その家の中に居たのは、十三歳程のやせ細った少年で、その顔には青い色の斑点が浮かび上がっていた。




───魔力病。



僕の頭の中にその病気の名前が浮かんだ。




魂と器、本来はそれぞれが丁度いいサイズで産まれてくるとロキは言った。

そしてその器が大きすぎた例が、僕のようなイレギュラーだとも言った。



───ならば、その逆はありうるのだろうか?



魂が大きすぎてその器に入りきらない


つまりは魔力が多すぎて体に収まりきらないということだ。




そして、僕はそれについて、恭香に聞いたことがあった。



そうして返ってきた返答は、こうだった。





『存在するよ? 但し、そのイレギュラーは万に一つも助からないだろうけどね』





魔力病、それは生まれつきの魔力過多によって起こる病気。


───いや、単なる現象だ。



多すぎる魔力は封印することも出来ず、その過多分は常に垂れ流しにされ続けている。


それはつまり、生まれながらにして魔力の止め方を知らないということでもある。






『魔力過多が原因の消費過多の魔力枯渇。それを魔力病と呼んでいてね』





───そうして、彼女は確かに口にしたのだった。







『今の所、解決策の見つかっていない、最悪の病気だよ』



新しい二つ名と対戦カード、ベルナ家の事情でした。

やっと従魔たちにもちゃんとした二つ名がつきましたね。


次回! どうするベルナ!? どうするギン!?

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