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ギンVS輝夜!

果たして勝利を掴むのはどちらでしょう?

第三章 帝国編
第135話

「『流水風牙』ッッ!!」


僕は懐かしの魔法をブラッディウェポンに纏わせると、そのまま居合斬りの要領で辺り一面を一掃する。



───が、その隙を狙って()が飛び出してくる。



グゥラゥァァァァァ!!と低い声と殺気を放ってこちらの首を狙ってきた爪の攻撃をしゃがむことで何とか躱す。


そしてしゃがんだ先では目の前に迫る大鎌───ソウルイーター。



「クソッ!『影分身』ッ!」



僕はケルベロスの真下空中に影分身を生み出し、その影分身と位置変換。


輝夜の鎌によって影分身は致命傷を負い、消え去るが、それと同時に僕は未だ空中のケルベロスの腹に思い切りパンチを繰り出す。



───が、それも読まれていたのだろう。



「『エアロック』!!」


瞬間、僕の拳が空気の塊に激突し威力が衰え、さらに僕の腕の周囲の空気も固められた。



「チッ、どれだけ僕のスキルを使いこなしてんだ......よっ!!」



ヤケクソ気味にそれらを打ち破ってパンチを打ち込むが、威力が半減したパンチではケルベロスに与えられるダメージは非常に少なく、奴はケロッとしたまま魔物の群れに溶け込んだ。


空間把握で捕えることは可能だが、何分ほかの魔物が邪魔をして後を追えない。その上輝夜は僕の位置変換の能力が連続で使えない(・・・・・・・)ことに気づいたのだろう。


───さっきからその使用不能時間にばかり集中攻撃してくるのはそのせいだ......と思う。




確かに僕の『位置変換』の能力は、幾ら熟練した所で、少なからずクールタイムが必要になるし、熟練出来てなければ制限も付く。


ちなみに今の僕には『自分と物』『自分と他人』『物と物』の三種類を変換できる。やはりというかなんというか、未だに『他人と物』には制限がかかっている。



そして、今現在のクールタイム。それは.........、







一分間(・・・)、主殿は能力を使ってから一分間は、位置変換が使えないのであろう?」



「はぁ......、やっぱりバレてたか」




そう、僕の今のクールタイムは一分間。


この一ヶ月間、色々と位置変換を試してみたところ、そのクールタイムが丁度一分間だと分かったのだ。

それはコッソリ恭香に図ってもらっても、ピッタリ寸分のズレもなく、完全に六十秒だった。


───まぁ、その他にも炎十字(クロスファイア)のタトゥーがほかの場所に移せることや、神器を使い過ぎると体への負担が洒落にならないこととかも分かったのだが、正直今は関係ないだろう。




と、ダメだな。まだ雑念が頭の中に入ってる




「ふぅ......」




一度状況を、整理しよう。




目を閉じ体を脱力させる。



───瞬間的に魔物達が襲いかかってくるが、空間把握で完全に攻撃をいなして、躱す。




今の状況は?


考えるまでもなく最悪だ。




相手との実力差は?


近接戦闘は活性化をしてもブーストなしの輝夜に劣る。




自身の強化は?


正義執行は......今は正義じゃなくて意地で戦っているから使えない。神化は流石にこの世界を壊しかけないから輝夜も使わないだろう......、なら残りは風神雷神だけだろうか。




思考の渦に飲まれながらも、僕の身体は一層キレを増す。


躱しざまに首を跳ね飛ばし、さらに振り向いたと同時に後ろの魔物達の首を一刀のもとに切り跳ねる。




僕が彼女に勝っていることは?


体力と器用さ以外のステータス、それに神影、空間支配の熟練度。それに加えて輝夜以上に無尽蔵の魔力に回復能力。そして神器と、妖魔眼───最後に、エナジードレイン。




他には?


武器のスキルは......まぁ除外するとしても、せいぜいが僕の方が頭の回転が早いことだろう。





どんどん僕の意識は思考の泉に沈んでゆき、感覚はより一層鋭敏となり、身体のギアが一段階上がる。





考えろ。



僕が持つ能力の中で、未だに輝夜の知らない能力で、それでいて完全に意表をつける。


───それでいて一撃で沈められるような能力はあるか?





考える。




───ある。それも二つ(・・)ほど。



それは、神影とエナジードレイン。


二つとも、未だに恭香にしか見せていない僕の───文字通りの必殺技だ。






さらに考える。




必殺技。


エナジードレインならばまだ手加減ができるが......、神影の方は明らかに手加減が出来ない。


───そもそも、アレ(・・)はまだ使いこなせないだろう。僕にはまだ、過ぎた能力だ。







そして、考え至る。





───僕は彼女に敬意を表するために、どうするべきか。









「なぁ、輝夜」




その呼びかけに、返事は求めない。


これはただの確認だ。



一瞬にして僕の影から現れた無数の影の剣が辺り一辺の魔物を一掃する。





───そして、






「僕はお前に最高の敬意を表れとして、」





パンッと手を合わせ、全魔力を放出させる。






視界の端で、楽しげに、それでいて嬉しそうな、最高に引きつった笑みを見せている輝夜が見えた。








「本気でお前を叩き潰す」






───我が呼びしは悪鬼の王。



それはバハムート戦でも見せなかった、僕の冗談抜きでの、本気の魔法。




───天界にて暴虐を尽くし、冥府に降りても敵は無い。




それこそ、詠唱を使わなければ発動すらできないような、超魔法。




───その名は最強にして最凶。





影魔法、Lv.5。





───我が名はギン=クラッシュベル。






「『召喚に応じ顕現せよ!』」






そうして僕は、その鬼神を呼び覚ます。







「『悪鬼羅刹』ッッ!!!」






☆☆☆






一刀のもとに両断された魔物の死体の山。


ドラゴンゾンビ、リッチー、ヴァンパイアロード、ナイトメアロード、オルトロス......、そしてケルベロス。



そのどれもが既に動かぬ死体と化していた。



めくれ上がった荒野に、無数の斬撃による傷痕。


木々は根本から完全に吹き飛ばされ、雲も斬撃によって割れていた。


雷の音はもう聞こえず、雲の間から光が差す。





───そして、大の字に横たわる輝夜と、それを見下ろす僕がいた。






「まだまだ僕の方が強かったみたいだな?」


「く、クハハッ......、なんて能力を隠し持っておるのだ...。これでは完全に出来レースではないか」



───それを聞いて、何を今更、と僕は笑う。




そもそもこの勝負は元々出来レースなのだ。


今更それを蒸し返すこともなかろう。





「それでは約束通り、我に願いを聞かせてみるがいい。なんでも一つ、叶えてやろう」



そう言って彼女は笑う。



───お前は○龍かよ、とも思ったが、珍しい事に、今はふざける気分ではなかった。






「それじゃ、僕の恋人になってくれ、輝夜」



「クハハッ! 命令されては致し方なしっ! その願い、喜んで引き受けよう!!」



そう言って僕らは、硬い握手を交わす。





まぁ、こうして僕らの秘密の決闘と、秘密の告白は幕を閉じたのだった。





「さぁ、帰るぞ?」




そう言って、ふと、彼女の背後を見た際に、







────この世界ごと外界の草原をも切り裂いた、斬撃の痕が見て取れた。







☆☆☆






「......悪鬼羅刹使うとか馬鹿じゃないの? あれって本気でヤバイやつだから使うの禁止って決めたよね?」


「......返す言葉もございません」




世界構築を張っていた近隣の草原から帰ってきた途端、僕は恭香から説教を受けるハメになった。



何故なら、実はあの痕が見つかり、ちょっとした騒ぎになったのだとか。

───どうやら音も思いっきり漏れていたようである。



しかも獣王本人も出動して原因を解明しようとしたそうだが、


『この魔力は......ぐははっ! そういうことかっ!』


とか言って捜査を打ち切りにしたそうだ。




───はぁ、しばらく獣王とは会いたくないな。




そんなことを思って食卓へと目を向ける。




「ふむ! この玉子焼きは()に上げるのじゃっ!」


「あ、ありがとう......」


「ふふっ、あの白夜さんが珍しいこともあったものですね?」


「妾たちは仲間じゃからな! というか輝夜。さっきからニヤニヤしてわりとキモち悪いのじゃ」


「くふふっ、そうかそうか、我も乙女だな」


「......笑い方からしてもう違うのじゃ」




昨日まで少しぎこちなかった食卓には、そんな微笑ましい光景が見られた。




「なぁ、恭香」


「......なにさ?」





僕はこの光景を見て、心からこう思えた。






「僕は、皆で楽しくやれるなら国にだって喧嘩を売れる気がするよ」



───この光景を守れるなら、きっとどんな事でも......







「いいからさっさと土下座しなさい」





その日の朝食のお供は、僕の土下座だった。






☆☆☆






「ねぇシルさん! 昨日銀が逃げ出したんだけどどこいったか知らない? というか知ってるよね! お願い教えてっ!」


「はて? 物凄く嫌ですな」



その数秒後、穂花の猿のような鳴き声が響いたというが、残念なことに僕の耳には届かなかった。


───正確には、届いたが聞き流してしまった。



まぁ、どっちにしろ聞かなかったということだ。




場所は変わって闘技場。


あの後、僕は土下座を続けて許してもらった。しかも愛すべき八歳児の踏みつけと罵倒付きだ。御褒美でしか無かったね。


───そういう性癖ではないけれど。



そんなことを考えていると、一日ぶりに聞く司会さんの声が聞こえたきた。




『さぁ皆さんおはようございます! 昨夜はよく眠れたでしょうか!? うるさくて無理でしたねッ!』



この人さらっと僕の心に棘を指してくるんだよな、十中八九気のせいとかたまたまなんだろうけれど。



『今日の司会は私と!』


『おはようございます、予選敗退したアルフレッドでお送りします』


『ということでッ! 獣王武闘会の本戦開幕ですッッ!!!』





昨日一昨日と同じように、国中から雄叫びが上がった。





アーマー君、穂花、久瀬、浦町、小鳥遊、白夜、レオン、エルグリッド、そして恭香。



僕が戦って見たい奴は沢山いる。





───さてさて、本戦はどうなる事やら?






この時の僕は、まだ知らない。






この武闘会で、この先何が起こるのか。





───そして、僕らが無事でいられるのかどうかを。



ギンの勝利でしたね。

悪鬼羅刹......どんな能力なのでしょうか?


次回! 本戦の試合形式の発表です!

もしかしたら彼ら彼女らのアレが明らかになるかもです。


───それにしても嫌な予感がする終わり方ですね。

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