武闘会開始です!
ウイラム君はどうなるのでしょうか?
※銀以外の視点のお話があります。
大将を堂島さんにした理由。
それは久瀬曰く、
「相手は遥か格上、まぁ銀は例外だが。相手が普通の魔物で命がかかってんなら間違いなく堂島をパーティに加えるが、今回はあくまでも試合だ。折角の成長できるチャンスを守りの姿勢で望んでも意味ねぇだろ? だから今回は銀に後衛を務めてもらってサポートを受けながら攻めの姿勢で望みたい。まぁ、最悪銀が残ってるしな? 堂島には悪いが.........いいだろうか?」
との事だった。
全く、どれだけ成長するのに貪欲なんだよ。
「君が言えたことではないがな」
「そりゃそうだ」
僕らは今現在、ステージで試合が始まるのを待っていた。
隣には同じ後衛の浦町。
前方───中衛には青い槍を持った鮫島さん。
そしてそのさらに前には前衛として、穂花と久瀬。
そして後ろから「みんな頑張ってねーっ!」との快く大将を引き受けてくれた堂島さんによる応援が。
ふと相手側へと視線をやると、やはり大将はアックスだった。ウイラムが不満げだが、彼もアックスとの実力差は把握しているらしく文句は言っていない。
『さぁ、やって参りましたエキシビションマッチ! 黒髪の時代パーティは大将はサユリ選手、精鋭チームはアックスさんが大将です! レックス様、どうお思いですか?』
『我はてっきり違うやつが大将かと思ってたがな。まぁ守りの姿勢じゃ勝てないとでも思ったんだろ。あと、精鋭チームの方は妥当な判断だな』
『むむむ......、私にはよくわからないのです......』
『簡単に言うと、黒髪チームは防御無視の攻撃特化、精鋭チームは攻撃力は落ちるが防御を特化させた、たってことだな』
『さて! 黒髪の時代チームVS精鋭チーム! どちらが勝利をつかむのでしょうか!?』
───皆揃って僕の事を居ないもの扱いはどうなのだろう?
僕が思うに、このエキシビションマッチは
そんなことを思うと同時に試合が開始される。
『それではッ! 試合開始ッ!!』
───と、その時だった。
ドゴォォォォォォォォンッッ!!!!
「「「『『『.........えっ?』』』」」」
試合開始と共に、金色の瞳をした
───と言うか、犯人は僕だった。
僕は掌の上に転移してきた小石をポイッと捨てるとスタスタと後ろに控えていた堂島さんの隣まで下がるのだった。
「さぁ、お膳立てはしてやったぞ。四対四だ、勝てなくとも数人は落とせよ?」
───少し遅れて歓声が響いたのだった。
☆☆☆
僕と
───この僕があんな馬鹿と真面目に勝負すると思った?
まぁ、この後におそらく連戦が待ち構えてるからつまらない展開にはならないと思うけどな?
そんな事を誰に伝えるでもなく考えていると、
『な、なな、なんと!? その場から一歩も動かずにウイラム様を撃破ぁぁッッ!! あんなことを豪語していたくせに試合開始一秒も経たずに撃破されたァァァァ!!』
『な、何をしたんだアイツ!? 直前に変な石っころを魔法で作ったところまでは見えたんだが.........』
『す、すごいですっ!!』
どうやら司会も復活したようだ。
簡単な解説をすると、小型版のスチームエクスプロージョンをあのマヌケの足元の小石と位置変換させたのだ。
───スチームエクスプロージョンの放つ魔力が位置変換の魔力をうまく上書きしてくれるから、さすがの獣王でも気づかなかったろう。
もしこの手品に気づけるとしたら、
まぁ、そうして足元のスチームエクスプロージョンは周囲を覆う石礫を思いっきり爆散させ、ウイラムの──股間を主に──身体中を強打したのだ。
───後遺症残ってもいいんだもんな?
まぁ、そんなわけで四対四の図が出来上がったわけだが、何故か誰も動こうとしない。
内股で倒れ伏すウイラムを目を見開いてみている精鋭チームと、さり気なく堂島さんの隣に座っている僕を同じく目を開いてみているこちらのチーム。
.........はよ試合しろよ。
そんな思いが通じたのかどうかは分からないが、やっと両チームが正気を取り戻したらしい。
「ベル! エクス! オルベル! どうやったかは知らないけれど彼は今油断しているわっ! 今のうちにほかのメンバーを倒すわよっ!!」
「了解っす!」
「は、はは、本当にバケモンだな......」
「りょーかい」
「よく分かんねぇが一番面倒くさそうな奴が居なくなった! 桜町は熊、鮫島は狼、浦町は鷹を!それぞれ標的を狙いながら連携だ! 相手には徹底的に連携させるなよ! あと銀! 後で覚えてろよ!?」
「わ、わかったよ!」
「な、何が起こったのかしら......」
「くくっ、さすがは未来の旦那様、やることが違うなっ!」
まぁ、こうして茶番は終わり、本番が始まった。
───さて、何人倒せるかな?
未だにフリーズしてる堂島さんの肩を揺らしながら、そんなことを考えるのだった。
☆☆☆
「それじゃ、俺から行かせてもらうぜ!」
最初に動いたのは久瀬だった。
久瀬の身体から
「『ダークネスファイア』!!」
瞬間、久瀬の手のひらからはファイアボールが可愛らしく見えるほど熱量を持った、大量の
───込める魔力が多かったのもあるだろうが......黒炎魔法もかなりチートらしいな。
そんなことを客観的に見て思った僕だったが、相手側からしたらそれどころじゃないだろう。
「───ッッ!? オルベル!」
「りょーかい! 『アクアウォール』っ!」
瞬間、彼らの目の前には水の壁が立ち塞がり、黒炎と水の壁は衝突し、辺りに水蒸気を撒き散らす。
───咄嗟に反応したオルベルによって黒炎は相殺されてしまったが、一度限りの奇襲とはいえ、なかなかどうして相手の肝を冷やす攻撃であったろう。
───だがしかし、こちらも久瀬だけじゃない。
「『僕の願いに応じて顕現せよ!』」
瞬間、辺り一帯を覆っていた水蒸気がとある一点を中心として晴れてゆく。
───そこには左拳を胸の中央に軽く当て、詠唱を唱える穂花の姿。
彼女はその拳を体の前まで持ってゆき、その瞑っていた瞼をゆっくりと開ける。
ニヤリ、と悪戯の成功した子供のような表情を浮かべた彼女は、
「さぁ行こう!『聖剣デュランダル』!!」
次の瞬間、彼女の手には一振りのロングソードが握られていた。
それは、模様の入った金の柄に、両刃の長剣。
───マックスの魔剣にどことなく似ていたが、その魔力の質は魔剣とは違って、限りなく澄み渡っていた。
僕には、その透明な風のような魔力に桜色の魔力が散って、まるで桜並木を歩いているような、そんな不思議な懐かしさを感じた。
「さぁ行くよっ! はァァァっ!!!」
穂花は魔力を更に込めたその聖剣デュランダルを上段から思い切り振り下ろすと、その衝撃によって斬撃が
デュランダル自体はエクスカリバーには到底及ばないが、それでも仮にも聖剣。舐めて相手どれるような代物ではない。
だが、相手側も黙ってはいない。
「はぁ、今度は俺が適任かな。『ライトニングボルト』!」
それを空中を旋回中のエクスが魔法で相殺する。
───Lv.3を無詠唱とは、さすがは精鋭たちだな。
そんなことを思っている間も、更に試合は加速する。
「ベル! エクス! オルベル! 黒炎と英雄は私が引き受けるわ! その間に残りの二人を倒してきてちょうだい!」
「ははっ、そりゃ急いだ方が良さそうっすねー」
「だろうな、さすがにイグムスでも二人の相手はキツイだろ。とっとと片付けるぞお前ら!」
「あいあいさー」
どうやら実力の最も勝っている副団長イグムスが久瀬と穂花を足止め───もしくは撃破か。
その間に残りの三人で浦町、鮫島さんの二人を沈めてしまおう、という魂胆らしい。
「流石は現役の騎士だな。今さっき作戦を決めたばかりの僕たちとは練度が違うか......」
「ど、どうしよう銀君!? こ、このままじゃみんなやられちゃうよ!」
「......まぁ、そうかもしれないな」
「ええぇっ!? 助けに行かないの!?」
......やっぱりこの娘もアホの子らしいな。
「そもそもこういう展開は久瀬の望んだことでもあるし、他の皆も何だかんだ言って文句言ってきてないのは心の底では望んでいた展開に喜んでいる証拠.........の可能性が高いってことは分かるか?」
「うーん......うん、なんとなく分かるよ?」
「そんな中、僕が入っていったらどうなると思う?」
「どうなるって.........、あっ!」
十中八九、『何してくれてんだ!?』って言って黒炎や斬撃、銃弾が飛んでくるに決まってる。
───まぁ、死にはしないだろうが面倒くさいし、コイツらの実力を測るには丁度いいだろう。
特に、浦町。どうせ聞いてるんだろ?
「僕の両隣は既に予約済みでな。僕の隣を奪い取りたかったらちょっとくらい根性見せてみろ」
お前は仮にも、僕の助手だろう?
───砂埃の隙間から一瞬見えた彼女の横顔は、とても恐ろしい笑みを浮かべていたようにも見えた。
☆☆☆
はぁ、全く君も、無茶なことを言ってくれるものだな?
私は彼の脳内の妙にカッコつけた台詞を読み、ため息が溢れると同時に、思わず笑ってしまった。
「ふふっ、やはり
───つい先日までは君を先立たせてしまった事が最大の失敗だったのだがね。
やはりというかなんというか、近くにいた鮫島が怪訝な表情を浮かべていた。
何だか少しイラッとした。
「なぁ、鮫島。お前は銀の事が好きか?」
「ええっ!? い、いきなり何よっ!?」
そのため私は、しばしの間復讐をすることにした。
───砂埃のお陰か、臭いも姿も捉えきれない私たちを相手が発見するまでには数十秒ほどありそうだからな。
「ちなみに私は銀が大好きだ」
「なぁっ!?」
そう、私は彼が大好きだ。
初めてあった時はどうでもいい存在だった。
たまたま私が事故を起こした際に運悪く巻きこまれた唯一の被害者、と言うだけだった。
だが、彼の境遇を聞いて、少しだけ、救われた気がした。
───あぁ、私と同じ考えを持つ奴も居るのか、と。
───私と孤独を共有できる奴がやっと見つかった、と。
私は孤独は好きだが、孤独に耐えられなかった、という事だろう。
そんなことで私は彼に興味を持った。
そうして彼と行動を共にしていくうちに、それはどうやら、恋心なのかもしれないと思った。
君ともっと一緒にいたい。
君が他の女と一緒に居ると、胸がモヤモヤする。
君の笑顔が愛おしい。
───君の全てが愛おしい。
あぁ、これは恋なのか、と気づいたのは大学に上がってからだった。
それからというもの、「結婚しろ」だとか「子作り」だとか言ってみたが、彼は反応を示してくれなかった。
彼が少なくとも私に対して好意的であることは分かっていたから、それは私のアプローチがいけなかったのだろうが......正直言って、何が悪かったか未だに分からない。
───恋など初めてなのだ。そこは大目に見てほしい。
そんな時だったろうか。彼が死んだのは。
泣いた。
私は生まれて初めて涙した。
あれほど好きだったのに、あれほど愛おしかったのに。
───その最期にすら立ち会えず、彼は死んだ。
最初に悲しみが来て、次に怒りが来て、最後に虚無感と絶望だけが残った。
父も母も既に死んだし、その最期には立ち会ってきたが、ここまででは無かった。
───泣くほどではなかったし、絶望など味わったことがなかった。
そんな中、ただただ流されるままに大学へと通い、彼の居ない食堂でいつも彼が頼んでいたメニューを頼む。
珍しく、その時食堂にいた奴らは、ほとんどが皆、同じメニューを頼み、悲しげにしたのを覚えている。
そんな中、突如食堂の床が輝き始め......、
───そうして現在に至るわけだ。
「全く、君にこの気持ちが分かるかね?」
「何のことかわからないけれど......」
一度は悲しみ涙して、諦め切れなかったものを無理やり諦めた。
だが、信じたことすらなかった神は、どうやら私たちに味方をしてくれたようだ。
それこそ、私を担当した創造神とやらに感謝してやってもいい。
───こうして君ともう一度会えたのだからな。
「何が、根性を見せてみろ、だ。笑わせるなよ?」
私はもう、大切なものは手放さないと心に決めた。
あんな惨めな思いは、もう充分だ。
───だから、
「
昔、どこかで聞いたような、そんな台詞と共に私は銃を構えるのだった。
以上、ウイラム君の爆死(主に股間が)と、浦町了視点でのお話でした。
注)このお話にヤンデレは登場する予定がありません。
次回! 久瀬視点......たぶん!
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