写真
移ろいゆく時間を切り取ったもの
被写体が自由気ままに動き出す魔法族のそれは
見たままを映しだすという発明理由と反するものだ
されど、遺志を継ぐのにこれ程都合のよいものはない
「ほんとダフネちゃん大好き!」
ドロテアがダフネに抱き着いている。ダフネは困り顔で抱擁を返した。
灯りで帰るかと思えば、ジェラルドがロンドンまでは鉄道で帰ると言うので、それに倣って後輩狩人達もぞろぞろと列車に乗り込んだ。
「改めて礼を。誠にありがとうございました」
「そんなシュミット先輩……結局、純粋な7冠というわけではありませんでしたし」
ダフネは5点の加点を求めた。このままでは先輩達が快く卒業出来ないことと、在校生にも確執が残るからとのことだった。これには校長も何も言えなかった様で、獅子寮と蛇寮は同率首位となり、それぞれの首席生徒達が苦々しい表情で共に杯を掲げた。
他寮も納得以上に感心したらしく、パーティーの間はダフネに拝謁するための行列が出来ていた。その傍ら、ヘルマンは「あぁ疲れた。大勢に注目されるって緊張する」と腑抜けた事を言い、未だに泣いていたドロテアの頭を、子犬を扱う様な雑さで撫でていた。
「ヘルマンはお礼言ったの? あのまんまだったらグリフィンドールから何されてもおかしくなかったんだから」
「手紙でね」
「ツァイス先輩」
「ヘルマンでいい」
「そうですか、ヘルマン。あれ、感謝の意だったんですか?」
「私も読んだが、修辞が多すぎて肝心な部分があまりにも少なすぎたぞ。あの広間の演説も、何を言っているのか分からない生徒は居たんじゃないか」
ヘルマンは憮然とした表情で嘆息した。
「予行演習も無く校長に盾突くなんて、冷静でいられる訳ないだろう」
「ドロテアが泣いてたしな」
「うるさいですよディルク。貴方だってイングリットと一緒になって杖を掲げていただけでしょう」
「ホグワーツ城そのものの儀式魔術に干渉するのがどれだけ辛いか、一度やってみろ」
「疲れ過ぎて食事も出来なかったわ」
「お疲れ様でした」
全く労いを感じられないが、皮肉を言わないだけヘルマンも疲れているという事だろう。
「そうだ、ヘルマン。貴公にも礼を。普段はその憎たらしいよく回る舌に苛々させられますが、私の栄誉は貴公とグリーングラス様に守って頂いた。ありがとう」
ジェラルドの礼にはヘルマンも驚いた様で、その差し出された手を、須臾の間をおいて握った。
「照れるじゃないですか。そんな日頃から評価してもらっていたなんて」
「評価……?」
まぁ、いつもの事だ。その「いつも」も、後数時間すれば無くなってしまうことが、少し切ない痛みをもたらした。
英国らしい厚ぼったい雲が浮かぶ空を眺めながら、この空をハーマイオニーも眺めているのだろうと思う。その心はいかばかりか。ダフネも物憂げに車外を眺めていたが、生え始めた奥歯が痛いとのことだった。
結局、あの大演説の後、ヘルマンが全校生徒から陰険眼鏡呼ばわり――事実なのだが――される様になってから、ハーマイオニーとようやく話せたのはつい先刻、学舎のプラットフォームで乗り込む直前だった。
ハーマイオニーは変わらず、あの2人との付き合いをやめるつもりはないとのことだった。校長の言葉は確かにポッターの為の冒険にハーマイオニーを加えるためのものだったのだろう。だが、一方で、友人を増やさなければならないというのも事実であり、その過程で真に友人となる事を期待されていたのかも知れないとも。
それは幾分か人の善性を信じ過ぎではないのかと言えば、「ツァイス先輩だって、私の名前を言わなかったじゃない」と返すので笑ってしまった。
そこに通りがかったポッターは、「一応言っておく、ありがとう」と言うので、「ポッター、私はお前が嫌いで、憎んですらいるが、憐れんでもいる。お前の立場も、その……難しいものだろう」と返した。
ポッターは顔を顰めたが、「いいんだ。僕はここに自分の起源を知りに来たんだ。ハグリッドから貰ったアルバム、これが僕の起源なんだ。だから、僕はこれでいい。僕は交通事故で死んだイカレた夫妻から生まれたわけじゃなくて、英国中から尊敬される偉大な人間でもなくて、子を護ろうとする普通の親から生まれた、普通の子供だった。それを知る事が、あの鏡の答えだったんだ」と、手を差し出した。
握手は返さず、「またな」とだけ返した。
あの呪具に何を感じたかは知らないが、その答えはきっと、彼の夜明けとなったのだろう。
夜明け迎えてますが悪夢は巡るものなので秘密の部屋もやります。
まだマリアちゃん継承者になるかどうかも決めてないですが。