今回はオールシリアスです!
ちょーっとギンが怖いかも知れませんが次回にはまた元に戻るのでご安心ください!
盗賊イベント。
それは護衛の最中や、森の中を歩いている最中に盗賊或いは盗賊に追いかけられている女の子にばったり出会す、というものである。
場合によっては村に攻めてきた盗賊団を壊滅させたり、逆に逃げた盗賊を追ってアジトを壊滅させたりと、まぁ、どっちが悪役か分からない様な悪魔のようなイベントである。
『ヒャッハー村だぜー』
『よしあの娘を追いかけよう!』
『ナンパだぜナンパ!』
『お、俺ちょっとコミュ障だから......』
『お、俺は童貞だし......?』
『そ、そうだよ!お前が声かけろよ!』
『はぁっ!? 俺か!?』
と、ドギマギしているシャイな盗賊たちに向かって、
『キャー、アーマーくん! 盗賊よっ!』
『見るのだ! あの下卑た目をっ!』
『きゃー、犯されるわっ!』
『さぁ行くぜアーマー!』
『うんっ! 僕らがあんなヤツら倒してやるさっ!』
まるで自分たちが絶対の正義とでも言わんばかりに遅いかかる
『なぁっ!? 何なんだアイツらはっ!?』
『た、たすけてく......ぐばらぁっ!?』
『お、俺には妻と子供がっ!?』
『うわぁっ!? 俺たちまだ結成して数時間...ぐはっ!』
『俺なんてたまたま道案内されてただけなのにぃっ!?』
相手の話など聞くわけもなく、
『僕はみんなを守るんだァァァっっ!!』
『そうだ! そら行くぜぇぇぇぇっっ!!』
『キャー! カッコイイですわぁっ!』
相手を皆殺しにした後に、
『くうっ......僕はっ.........僕はァっ!』
『あ、アーマーくん.........』
『大丈夫だ、アーマー。俺たちは悪を滅しただけだ』
『そうよっ! あんなヤツら人なんかじゃないわっ!』
まぁ、最終的にこうなるわけだ。
現・実・逃・避
───全くもって酷いヤツらである。
人を殺したのならば、きちんと自分でその責任を取れ。
相手は悪? そんなの関係ない。
相手は人間なんかじゃない? 馬鹿か? 精神論じゃなく現実論で語れよ。
お前が殺したのは魔物とか、人間とか、そういうのじゃない。
お前は一つ、命を奪ったんだ。
現実逃避? 笑わせるなよ?
「この僕でさえ殺した
「言ってることはとてつもなく正しいんだけど........いきなりどうしたの?」
隣に座っている恭香が眉を寄せてそんなことを聞いてくる。
何故かって?
「ここでひとつ、ハッキリさせておこうと思ってね」
何をハッキリさせるのか、それはほんの一行で済む。
「僕は殺しは好かない。命を奪う責任なんて、背負いたくない」
という事だ。
単純至極だろう?
「傲慢だなんだ言っても、僕の土台は"日本人"。僕がこっちでどういう経験を積もうとも、その土台が一から作り替えられるわけじゃない」
───まぁ、その土台ごと心が壊れてしまった奴は別だろうがな。
「命を奪うのはいけないことだ、というのは、日本での集団催眠だ。長い時間をかけて、歴史を積み重ねて、子供の頃から催眠をかけ続けている」
それがもう、二十年近く。
恐らく、僕は命を奪うことに慣れることは不可能だろう。
───それ程までに、子供の頃からの思い込みというものは強いものなのだ。
「だから、なんだかんだ言っても、今までに僕が殺してきたのは僕に対して殺意を抱いてきた奴らだけだし、それに、殺す価値もない奴は見逃してきた」
───このままにしておくつもりは無いが、アーマー君とかな?
「僕は基本的に、命は奪いたくない」
それは僕の中では普遍的なルール、法律だ。
「だけどそんな甘い考えじゃ、この世界は生きていけないだろ?」
「......うん、まぁ、そうだね」
気付けば全員が僕を見つめ、話に聞き入っていた。
「まぁ、長々と話してきたが、結論としては、こうだ」
───僕は、仲間たちを見つめて、こう結論づけた。
「僕はこちらに敵意を向けない奴は、どんな奴であろうと殺さない。逆に少しでも敵意を向けたり、その行動によってこっちがかなりの損する場合には、僕は容赦なく相手を
周囲から息を呑む音が聞こえる。
「日本人、という土台をそのままにこの世界で生きていく上で、最大の線引きがここら辺だろう。例外はあるかもしれないけど、僕が今現在できる線引きとしては、ここら辺が限度だ」
何か文句あるか? と、周囲に問う。
「まぁ、最善ではないけど、いい考えだと思うよ?」
「うむ、恐らく最善とは歯向かう者を皆殺しにする事じゃろうしな?」
「クハハッ! 確かにそれは身を守る上では最善だが、人間としては最悪だな」
「主殿にしては真面目に考えたのであるな」
「ふふっ、異論はありませんよ、マスター」
どうやら、仲間たちからは異論は無いらしい。
言っちゃ悪いが、僕が完全に仲間として信用しているのは恭香、白夜、輝夜、レオン、暁穂の五人だけだ。
オリビア、マックス、アイギス、伽月、藍月については、仲間であっても、完全に信用するには値しないだろう。
騎士組は、もしもエルグリッドが裏切れと言えばそれに従うだろう。万が一にもありえない事だが、皆無とは言えない。
伽月、藍月については......、まぁ、時間の問題か。
───それにしてもどうしたよ、僕。いつに無く真面目モードじゃねぇか?
「それくらい、自分で分かってるでしょ?」
「......まぁ、そうなんだけどさ」
目の前に広がるは人の群れ───盗賊の群れ。
空間把握をしてみたが、人質に扮している奴は居ても、腰や袖に隠しナイフを何本も仕込み、ニヤニヤと盗賊と笑いあっていたし、これは盗賊の群れで相違ないのだろう。
先ほどはコミカルに盗賊を表現したが、あんな盗賊なんて存在するわけがない。それこそ、海賊やってるのに海賊をしていない麦わら帽子の少年みたいなものだ。
だけど、もしかしたら存在するかもしれないし、一応聞いてみようか。
「なぁ、お前たち、気になる娘をナンパにでもしに来たのか? 白夜の一匹くらいならくれてやってもいいぞ?」
「なぁっ!? 何を言っておるのだっ!?」
後ろからすごい驚きの声が聞こえてきたが、気にしない、気にしない。
今のは冗談だとしても、僕の仲間に、盗賊に売り渡していい奴なんて一人たりとも居ないしな。
さぁ、それで? 盗賊たちの回答は?
「ンなわけねぇだろ、ばぁぁぁぁぁっかっ!!」
「ケヒヒッ! 頭でも沸いてんのかあのガキはっ!?」
「用があるのは王様とそっちの嬢ちゃんたちだけだぜぇ?」
「そいつらと有り金を全部置いてったら許してやんよっ!」
「ゲハハッ! それにこっちには人質が居るしなぁっ!」
「た、助けてくれっ!! 僕には家族がいるんだッ!」
「お前らが条件を呑まなきゃあコイツは血祭りだぜぇっ! ちょっと前に
「「「「血祭りだ! 血祭りだ! 血祭りだッ!」」」」
「ひ、ひぃぃぃぃっ!? た、助けてくれぇぇっっ!!」
(人質関連は嘘ですが、こちらに対する殺意と村を滅ぼしたのはは真実ですね。間違いなく逃がす気は無いでしょう)
誠実の片眼鏡を付けた暁穂から、そう念話が届いた。
はぁ......どうやら、嫌な予感は的中したみたいだ。
「アハハっ、そうですねっ、それじゃあ有り金全部渡しますんで、盗賊団のリーダーさんはどちらですか?」
(おいお前ら、見たくないやつは見なくていいぞ)
盗賊団ににこやかに話しかけるとともに、味方全員に念話をする。
信用出来ないとはいえど、僕も、騎士組やエルグリッドには好意を抱いてるからな、一応忠告だ。
特にオリビアなんかは間違いなくショックを受けるだろう。
「ゲハハッ! なんだテメェ! 物分りいいじゃねぇかッ! この団のリーダーは俺様! エレベスト様だっ! 気に入ったぜ、お前さえよけりゃあ仲間の一人に......」
「
瞬間、リーダーを除く全ての盗賊が燃え上がる。
それは、銀の炎。
叫びはなく、痛みもなく、ただ、
───僕が、人殺しなんか、する所を見たら、さ?
「な、何しやがっ......ぐふぅ!?」
「喋るな」
リーダーの眼前にあった小石と場所を変換させた僕は、男に向かって右手で喉輪をしかけ、地面へとその背中を叩きつけた。
「僕は面倒くさい事が大嫌いでね。僕がお前に質問するから、お前は首を縦か横に振れ。喋ることは許さん」
喋ると殺すぞ、と威圧をかける。
コイツらは"国王"と言ったんだ。間違いなく誰かから差し向けられたものであろう。
───拷問するには恐怖が一番だろ?
「一つ、お前らは僕らを待ち伏せしていたか?」
首を横に降る盗賊。
首を絞める手に力を込める。
「一つ言い忘れていた。僕は人の心を読むことに長けていてね。詳しくは分からないが、それでも嘘を見破ることくらい、朝飯前なんだよ」
そう、微笑んでやる。
今のは真っ赤な嘘だが、コイツにはきっと、真実にしか思えないだろう。
仲間が一瞬で殺されたこと。
僕が圧倒的に強いこと。
嘘を一瞬で見破ったこと。
そしてこの自信。
「もう一度聞くぞ? お前達は待ち伏せていたな?」
そうして、奴は首を縦に振る。
───恐怖は埋め込んだ。後は騎士たちに任せよう。
面倒だし、何よりこれから先は依頼外だ。
そうして僕は、その盗賊を引きずって馬車へと戻る。
───死んだ者たちが安らかに眠れるように、そう願って。
☆☆☆
そこで僕を待っていたのは、予想外の出来事だった。
「すげぇなギン! お前あれどうやったんだよ!?」
「そうなのですっ! かっこよかったのですっ!」
「私ならあれをどう防ぐか.........勉強になりますね」
.........えっ?
「お、おい......僕はこれでも人を殺したんだぞ? かなり怖かったと思ったんだが.........?」
僕はあの時、本気だった。
でないと生命を───ましてや人間なんて殺せやしない。
───そこまで僕は、強くない。
だから、僕は本気で殺った。
正真正銘、僕が持ちうる最大火力で、一瞬で消し炭にした。
それは、苦しむ人の姿が見たくなかったのか、人を殺した現実を見たくなかったのか、それとも......、
そんなことを考えている時だった。
「まぁ、確かに怖かったが......普通だろ? あんなモン」
「えぇ、ギンさんの故郷のことは分かりませんが、騎士の中で人を殺したことがない者などいませんよ。まぁ、オリビアさんは別ですが」
「わ、私だって、それくらいの覚悟はできているのですっ!」
「はいはいそうでちゅねー」
「むぅぅぅうっ! マックスくんは意地悪なのですっ!」
......ど、どうなってんだ?
僕が人を殺した事など気にしたそぶりもない、一同。
もしかして僕って
そんな疑問に頭を悩ませていると、恭香がその答えを簡潔に答えてくれた。
「いや前に言わなかったっけ? こっちじゃ命の価値は小さいんだよ。それこそ、金で売買出来るぐらいにはね」
───あぁ、そういう事か。
頭の中を過ぎるのは、街中でレオンと一緒に見かけた、奴隷の男の子の姿。
それは、痩せこけた身体にボロ布を1枚だけ羽織ったような男の子だった。
確かあの時は、串焼きを数本食わせて帰したんだったか?
───僕は、どこかの
僕がするのは、せいぜいが目的へと向かう手助けくらいだ。
閑話休題。
「まぁ、怖がられなくて良かったんだどさ」
そう言いながらも、空間把握を一瞬だけ
ズキンッ、ブチブチッ、と頭に重い鈍痛が走り、頭の血管が数本切れた音がした。
「おいエルグリッド、少しトイレに行ってくるから先に進んでてくれないか?」
痛みを全く面に出さず、思考も無に、それでいていつも通りにエルグリッドへと話しかける。
───恐らく今の僕の思考は、恭香でも読み取れないだろう。
「ま、まぁ、いいが......トイレって馬車に付いてなかったか?」
先程の『灰塵滅却』の威力に目を見開いて驚いていたエルグリッドが、なんとか、という様子でそう問い返す。
「馬車のトイレはまだ調整中なんだよ。それじゃあちょっと行ってくるよ」
僕は返事も聞かず、ロキの靴で空へと駆け上がった。
───さぁ、長いトイレの始まりだ。
そうして僕は、ここから百六十キロ程離れた目的地へと向かうのだった。
......はぁ、三百も使うんじゃなかったぜ。
トイレの為だけにそこまでするでしょうか?
まぁ、バレバレだとは思いますが、次々回くらいにはそれについての閑話を入れるのでお楽しみに!
次回! 果たしてギンは大蛇召喚に成功したのか!?
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