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ペガサス発見なるか!?

第三章 帝国編
第102話

探し始めること、はや六時間。


時刻は既に午後七時を周り、既に日は落ちた後だった。



───のだが、




「.........全然見当たらねぇな?」



未だに、ペガサスの影も形も、それでいてペガサスの代わりとなる馬車引き用の魔物も見当たらなかった。


───ユニコーンや、体長六メートルの大熊、三メートル超のバッファローに、二十メートルほどの大蛇とか、そんな化け物みたい奴は見つかったんだけどな.........。



やはりというかなんというか、ペガサスは見つからなかった。



恭香の言葉が頭を過ぎる


───多分、ギンの運をもってしても見つけられる可能性は......10%も無いよ?



「.........10%、ねぇ......」



言い換えれば1割、10分の1等々。

期待はしてもいいが、過度な期待はするな、と言ったところだろうか?



「だけど、まぁ、やるだけやってみるさ」



───オリビアを泣かせるわけにはいかないしね。


そうして僕は、さらに加速する。


暗く、日の落ちた森の中に、一筋の赤い光が流れる。




───タイムリミットまで、残り七時間と四十二分。





☆☆☆




それからどれだけ時間が過ぎただろうか?



それは、僕がようやく未開地の西端───つまりは大陸の西端に到着した頃のことだった。




ヒヒィィィィンッッッッ!!


グラァァァァァァァァァァッッ!!!




突如、僕の耳に届いた二種類の鳴き声。


僕には、片方が馬で、もう片方がドラゴン......いや、どうだろう? まぁ、間違いなく怪物の鳴き声に聞こえた。



───だが、問題はそこではない。




「こ、この鳴き声.........、まさかペガサスかっ!?」


今までに幾度となく聞いてきたユニコーンの鳴き声とは違い、声質に気品を感じるようで、それでいて力強い馬の嘶き。


それは、間違いなくペガサスのものであった。




「今のは......海の方か!」



空間把握で突き止めた先は、この大陸(・・)から少し離れた、海の真上───つまりは空中であった。


Lv.2に上がった空間支配で調べられた、その魔物二体の特徴としては、翼の生えた体高五メートル近い白馬───ペガサスが一体。それに.........、なんだ、あれは......?




漆黒の翼にゴツゴツとした身体───鱗と言った方がいいだろうか?

白夜の二倍(・・)はあろうかというその大きさに、禍々しいオーラを纏った、巨竜。




気配を消しながら翼を戻して空中へと飛び上がった。





(『鑑定』ッ!)




ペガサスは、今は問題ではない。


正直、神器有り、神化有り、世界構築有りなら余裕で勝てる相手だ。今の(・・)暁穂よりはかなり弱そうだしな。



だからこそ、僕はその巨竜を鑑定した。



───そして、僕が見たものとは





「.....よし、逃げるか」






名前 未定 (4860000400)

種族 世界竜バハムート

Lv. ???

HP ???

MP ???

STR ???

VIT ???

DEX ???

INT ???

MND ???

AGI ???

LUK ???


ユニーク

???


アクティブ

???


パッシブ

???


称号

試練を与えし者 ???







確かにオリビアの願いは叶えたいが、それでも、まだ死にたくはないからな。



僕は全力で気配を消しながら、脇目もふらずに逃げ出した。







────のだったが。






☆☆☆





『小さき者よ、汝は試練を望むか?』


「あ、いえ、結構です」



それじゃ、と手をあげて全速力で方向転換した。


神化、影纏、疾風迅雷、ベクトル変化、活性化 etc..


僕が現在使用できる全ての力を振り絞って、さようならをした。





───まぁ、そんなのが通じるわけもないが。




『.........汝は試練を望むか?』



先程聞いた、中性的な声が再び聞こえてくる。


ふと前を見れば、いつの間にか先回りしていた黒い巨体が僕の前に立ちふさがっていた。




───そう、バハムートさんである。



あの後、僕は本気で───それこそ、僕の最も得意とする気配の隠蔽を使った逃走を図ったのだが、このバハムートはペガサスを一瞬で沈めると僕を追いかけてきたのだ。


───まるで、新しいおもちゃを見つけた子供のように。





だからこそ、僕もこう応えよう。





「いや、マジで結構ですから、帰してくれませんか?」


『汝は試練を望むか?』





ほら聞きました? コイツ、完全に頭が沸いてるんですよ。




アンタは何者だ→試練を与える者だ。


試練はいいから退いてくれない?→汝は試練を望むか?


いや、望まないって→汝は試練を望むか?


......結構です→汝は試練を望むか?


.........はぁ→汝は試練を望むか?




こう考えてみると、"選択肢にはyesとnoがあるのに、noを選んでも強制的にyesを選ばせるNPC"みたいな奴だな、コイツ。



───まぁ、要するに面倒くさい奴だ、という事だ。



敵意が感じられないのが唯一の救いだがな。






『汝は試練を望むか?』



全ての強化を解除して考え込んでいると、再び同じ質問をしてくるバハムート。



......このままじゃ埒が明かないし、質問を変えてみるか。



「その試練って、何なんだ?」



先程までは、試練は受けない、という姿勢を貫き通してきたが、今回は試練を受ける前提で話を振ってみた。




すると、どうだろう?




『その者に見合う試練を我輩が与え、それを乗り越えた者に褒美を授ける、という試練だ。汝は試練を望むか?』




どうやら、この巨竜は、僕にその試練とやらを受けさせたいようだ。


口調や答え方なんかは馬鹿(輝夜)みたいだけど、コイツも案外まともな奴なのかもしれない。





「もし、万が一僕が試練を受けるとしたら、その内容は『我輩と戦うことだ』.........ですよねぇ」




訂正しよう。


───コイツはただの戦闘狂だ。




「......試練のルールとしては?」



言っても聞かなそうな目をしていたので、仕方なく僕は試練の詳細を聞いてみることにした。



すると、バハムートは初めてニヤリと笑い、こう言った。



『試練の内容は単純明快だ。我輩と貴様が決闘をし、貴様が敗北を認めるか、我輩がお主を認めるかすれば試練終了だ。安心しろ、手加減(・・・)はしてやるし、殺しもせぬ』






ブチッ






「へ、へぇー、もしも万が一、僕がお前のことぶっ殺しちゃったらどうするのかなぁ?」


『ふん、有り得んな。馬鹿か貴様は?』






ブチブチッ






「もしも億が一、兆が一、僕がお前に勝ったらどうするつもりだ? デカダンゴムシ野郎」



『ふん、その時は貴様(羽虫)の奴隷にでもなってやろう』






ブチィッッ!!






「誰が野郎の奴隷なんぞいるかッ!! このクソッタレゴミ虫ドラゴンもどきがッッッ!!!」


『ほう、我輩にそんな口を聞いたのは貴様が初めてだぞ? この稚魚めが』






まぁ、こうして。



僕はバハムートの試練を受けることとなった。








────時刻は午後十一時を回った所であった。






☆☆☆






『それでは試練開始だ。何処からでもかかってこい』



そんな声と共に僕の試練は始まった。





僕がこの試練を受けた理由は主に三つ。




一つ、ただ単純にコイツが気に入らなかった為。



一つ、その褒美とやらで馬車引き用の魔物とペガサスを貰えれば一石二鳥だと思った為。



一つ、死ぬ可能性が無いのならばコイツはかなりの経験値として見て大丈夫だろう、と思った為。




まぁ、勝てるか勝てないかで言えば圧倒的に後者なのだが、それでもコイツは『我輩が貴様を認めるか』と言ったのだ。



つまり、この試練はコイツ相手に今の自分の実力を見せる為のもの。

それに加えて頭のキレ具合や、状況判断能力、洞察力等も同時に測るのだろう。




それに応じて、コイツは挑戦者に対して報酬を与える。




───たぶんコイツは、この世界においてそういう役割を果たしているのだろう。





まぁ何より、無害でないとお人好しなアイツら(神々)が放っておくわけが無いからな。だからこそ、安心して勝負に挑めるってもんだ。






「『全ブーストオン』」



瞬間、僕の身体が一瞬にして神化、正義執行、影纏、雷神風神、活性化等の全ブースト状態へと移行する。








僕はこの世界に来てからというもの、相手を本気で(・・・)殺そうと思って戦ったことことがない。




ゴブリン


キラースコルピオン


グレートドラゴン


オートマタ


白夜


レッドオーガ


ナイトメア・ロード


アーマー・ペンドラゴン


バジリスク


エルグリッド・フォン・エルメス


マックス


ゼウス


フェンリル


輝夜


ワイバーン


ユニコーン





今まで戦ってきた相手を見ても、僕は今の今まで、本気で相手を殺しに行ったことがないことが分かる。


日本にいた頃の癖......というか法律?が、まだ頭の隅に残っているのだろうが、何よりも、僕が全力を出してもまだ勝てないと思えるような()が居なかった為であろう。





白夜戦では、仲間に殺意を抱けなかった。



輝夜──ナイトメア・ロードと戦った際は、白夜が居た。



アーマー戦では、文字通りの敵ではなかったし、眼中にもなかった。



バジリスク戦では、格下相手だと油断していた。



エルグリッド戦では、そもそも勝負にすらならなかった。



ゼウス戦では、アイツを敵だと認識出来なかった。



フェンリル戦では、勝てると思った。そして少し油断した。



輝夜戦では、神器の練習ということで、お互い手を抜いた。




それ以外の相手は、殆どが格下だった。

格上もいたが、それでも勝てない程では無かったし、事実として勝ってきた。


まぁ、イラつきはしても、心の底から殺意を抱くほどではなかった。






───だが、コイツはどうだろう?





コイツには、どう足掻いたとしても勝てる見込みがない、


それこそ、皆無、0%、という意味で、可能性が無い。



全力を出し切り、知略と気力を振り絞っても、それでも届かないだろう。





さして仲が良いわけでも無く



相手は遥かに格上で



こちらに死の危険性が無いと分かった上で



相手に一応の信頼を置いている。







───だからこそ、僕も初めて(・・・)、殺す気でやれるのだろう。







「本気で行く。死んでも後悔するんじゃねぇぞ?」


『ククッ、此度の挑戦者は面白そうだ』





次の瞬間、僕らの身体がブレる。







───そして、








ドゴォォォォォンッッッッ!!!







───夜空に、爆音が響いた。

バハムートさんでした!


次回! 正真正銘、ギンのガチバトルです!

お楽しみにっ!

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