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炎十字の能力とは!?

第三章 帝国編
第101話

「何が『冥府の門とかまじチートすぎ』だっ!? その我相手に圧勝とかどういう強さをしておるのだっ!?」



「いや、.........なんかごめん」




あの後、バトルは数秒(・・)で終了した。



炎十字(クロスファイア)二つの能力(・・・・・)のうち一つを使うことで、オルトロスを一体も倒さずに王手をとったのだ。


───輝夜からしたら気付けば首元に鎌が添えられていた、という感じだったろうか?




「......ごめん、全然しょぼくなかったね」


「な、何が起こったのですっ!?」


「わ、妾のようなテレポートでは無かったのじゃぞ!?」




観客席から驚きに目を丸くした面々がこちらへと向かって来た。




だけどまぁ、分からないのも仕方ないだろう。



神器"炎十字"の能力の内一つは、テレポートではないのだから。





僕の神器、炎十字の第一形態の能力の一つ。







───それは、『位置の交換』




時空間魔法『テレポート』の、劣化版でもあり、上位互換でもある能力だ。



相手と自分の位置を入れ替える。


目の前の犬と相手の本体を入れ替える。


相手の後ろの大きな門と自分を入れ替える。



そんな能力。



何も無い場所には効果は無い使い勝手の悪いスキルだが、何かがある場所においては、圧倒的な効力を持つ。

発動速度、移動速度等の点においてテレポートをはるかに上回る、上位のスキルだ。




───何が使い勝手が悪い、だよ。めっちゃ使い易いじゃねぇか。



(......いや、前から思ってたけど、空間支配とか位置交換とか、普通の人じゃ使いこなせないからね?)



.........ん? どういうこと?



「僕ってこれでも普通だってことには自信があるんだけど」



「「「「「.........えっ?」」」」」



───何故声が被る?



「いや、ギンって自分では気づいてないかもしれないけど、運動神経はまだしも、思考能力はかなりの化け物級だからね?」



.........前に、僕のこと凡才だってほざいてなかった?



「うーん......運動神経ならここにいる誰よりも下、って意味だったんだよね......。まぁ、身体能力だけでも秀才のギンを上回ってる存在ばっかりが集まってるのがこのパーティなんだけど」





............はっ?





「い、いや、でも称号にはそういうのは......」





そう、僕の称号の欄には、秀才も、天才も、天賦の才も、神童も無いのだ。



ならば、恭香の言っている事の方がおかしいのでは?










そう思って聞いたのだが......







「天才系の称号は体と頭の才能が釣り合ってないと現れないようになってるんだよ。ちなみにギンは頭脳は神童以上、身体は天才より少し下、って感じだね」









......前から思ってたけどさ、この世界って人を小馬鹿にしてる感じが否めないよね。




「.........」




恭香からは、ノーコメントだった。







まぁ、そんなこんなで、僕と輝夜の新しい能力の披露会は無事終了した。




───もう一つの能力は、使ってないけどさ。






☆☆☆






「ふぅー、こんなもんかな?」




あれから数時間後───恐らくは十時過ぎであろうか? 僕と恭香、オリビアは、馬小屋へと来ていた。


───正確には馬小屋ではなく、馬と馬車の販売店なのだが。




あの後、手分けして準備に取り掛かろう、というわけで、僕、恭香、オリビア班は馬車と馬の確保、白夜、輝夜、マックス班は生活用品の確保、アイギス、暁穂班は食料調達へと向かったのだ。



それで、僕が馬小屋で何をしていたか、と言うと、




「ほぉぉぉっ!! なんだか凄そうなのですっ!」


「......まさか記憶だけで作っちゃうとはね」



恭香とオリビアの目の前には一台の黒塗りの馬車。





───そう、僕が作った馬車である。




この世界には無い技術を大量に使用し、僕の記憶力を頼りに少し───いや、かなりの改良をした上で色を変色したら、こうなった。



タイヤはもちろんゴムタイヤを使用し、更にはサスペンションも同時に採用。馬車内は魔導による『空間拡大』を付与させ、さらに空調も万全。隠し金庫も搭載済だ。



漆黒色のボディに、所々に銀色の装飾が目立つ馬車。


その側面には、銀色の十字架と、魔法陣。




本当に、『万能創造』様々な結果である。




ふと後ろを振り返れば、その馬車の様子を見ていた店員さんたち一同が口を開けて唖然としていた。


───まぁ、彼らからすれば木の板と馬車の見学しかさせてないわけだし、これを見て驚くな、という方が酷なのだろう。





そんな事を考えていると、




「流石はギン殿.........と言ったところでしょうか。噂には聞いておりましたが、まさか生産方面でもここまで逸脱した才能をお持ちだとは、......いやはや脱帽ですな」



額の汗を吹きながら僕にそう話しかけてきたのは、小太りの男───店長のマルサさんであった。


だが、言葉とは裏腹に、彼の顔には困ったような引きつった笑顔が浮かんでいた。




「あっ、何か問題でも......」


「いえいえっ、特に問題は無い......わけではないのですが」




妙に言いよどむマルサさん。


.........何かあるのだろうか?





「じ、実は.........」





僕の顔色を伺い、正直に話した方がいいと思ったのだろう。


マルサさんはその事実を話し出した。






───その言葉を聞いて、僕は、少し後悔することになる。










「そ、そのサイズの馬車に見合う馬は......間違いなくこの国には居ませんぞ?」








......あぁ、調子に乗ってデカイ馬車を作らなきゃよかった。







僕はそう思いながらも、体高三メートル超(・・・・・・)の馬でないと引けないような、超大型の馬車を見つめるのだった。






☆☆☆






その数時間後、僕は一人、樹海に立っていた。




深々と茂った木々。


少し湿気った足元の土に、水溜まり。


ふと、横を見れば、三本の爪のあとが木にくっきりと残っている。



───その爪のあとがついている位置が地上からおよそ五メートル地点なのだから、笑えない。




そこら中の茂みや地面から色々な気配がする。



虫、兎、蛇、猪、.........それに魔物か。




だが、僕に襲いかかるような生物は、今の今まで存在しなかった。まぁ、野生の感、というやつだろう。



───案外、それ(・・)も侮れないものだな






そんなことを思っていた時だった。





───僕は、こんな大自然にも馬鹿どもは存在するということを知るのだった。






ピギャァァァァッッッッッ!!





そんな鳴き声とともに、僕へと影が差す。




.........またコイツらか。




しかめた面を頭上へと向けると、いつか見たようなワイバーンの群れ。



ワイバーン、ワイバーン、ワイバーン、ドラゴン、ワイバーン、ワイバーン、ドラゴン・ロード、ワイバーン、グレートドラゴン、ワイバーン、ワイバーン、ワイバーン、エンペラードラゴン、ワイバーン。




古代種、最古代種以外のドラゴン大集結である。






───その数、合わせて三百体(・・・)以上。







「くっくっくっ、前回と前々回の御礼参り、ってわけか?」









場所は"未開地"の東部。





時刻は、午後一時。タイムリミットは、明日の午前三時。








目的は、馬車に見合う馬を捕まえる(テイムする)ことだ。







「仕方ねぇな、お前らのお礼は受けとってやるよ」










───炎十字の、経験値としてな?








瞬間、僕の両腕を銀色の炎が纏う。








「『銀滅炎舞』」







それこそ、僕の神器の、もう一つの能力。








「さぁ、執行.........じゃないな......」





こういう場合は.........、






あぁ、そうだ、これなんかいいんじゃないだろうか?









「さぁ、処刑開始だ」







☆☆☆






僕がここに来た経緯に、もう少し詳しく触れておこう。



あの後、流石にあの馬車を解体するのは心が許してくれそうになかったので、恭香、オリビアと話し合ったのだ。




すると、




「そういえばっ! 私がまだ子供だった頃に読んだ昔話で、お馬さんの魔物が出てきていたのですよっ!」



オリビアが突然、そんなことを言い出したのだ。



「うーん......多分それはペガサスの事だね。白銀の体に大きな翼をもつ海皇神様の神器───まぁ、狡知神様にとっての私やお姉ちゃんみたいなものだよ」


「そうなのですっ! 白い翼の生えたお馬さんなのですっ!」



聞いた話によると、どうやらオリビアはペガサスという存在を見てからは、いつかはペガサスに乗ってみたい、という願望が現れ始めたらしい。



それで、今回の事件、というか、ミスだ。



オリビアは、是非ともそのペガサスを捕まえてきてほしい、と言うわけだ。







───まぁ、そんなことを言われてしまったら、やるだけやってみよう、ということになるだろ?




だから、明日の午前六時の出発に間に合うように、一体───いや、二体のペガサス、或いはペガサスの代わりを務められる魔物を探しに、わざわざここまで来た、と言うわけだ。




───ちなみに恭香は、オリビアのお守りに残してきた。



正真正銘、久々のぶらり一人旅である。






さぁ、満喫しようではないかッ!






とも、思えるはずもなく、僕はワイバーンの群れを数分で全滅させると、そのまま空間支配の探知範囲を三十キロに拡げて、走り始めた。





僕は、恭香の言葉を思い出す。



「本来、ペガサスって言うのは海皇神様の神器なんだけどね。ごく稀に自然に産まれてくるペガサスっていうのも居るんだよ。正確にはユニコーンの変異種、ってことになるんだけど、まぁ、ペガサスだね」



どうやらユニコーンの変異種そのものがペガサスなのだとか。


通りで似ているわけだ、と感心していたが。




───本題はここからだった。




「ただ、ユニコーンが変異する可能性は0.0000012%───文字通り、万に一つも有り得ない可能性なんだよ」




そうして、彼女は続けた。




「ちなみにユニコーンの生息地は未開地全域だよ。未開地は、このエルメス王国と同じくらい大きいから.........多分、ギンの運をもってしても見つけられる可能性は......10%も無いよ?」





それでも、行くの? と。





ふっ、そんなの決まってるじゃねぇか。








「待ってろよオリビア、お前専用(・・)のペガサスと馬車引き用のカッコイイ魔物、二体とも(・・・・)捕まえて帰るからなっ!」








───ペガサスの一頭くらい、軽々とプレゼントしてやるよ。







そんなことを思いながら、僕は森の中を駆ける。








────その後、未開地では生物が激減し、逆に僕のレベルが上がっていたというが、今の僕には知る由もない事だった。



次回! 新キャラ登場!?

お楽しみにっ!

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