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輝夜の新能力が明らかに!?

第三章 帝国編
第100話

僕の右腕に刻まれたタトゥー。



───正確には、肘から手の甲にかけて、と言った方がいいのだろうが、ここでは右腕に、ということにしておこう。



波打つ三本(・・)の黒い『鎖』が、手の甲に描かれている『炎の中の十字架』を雁字搦めに封印している、という一風変わった模様をしている。


恐らくはこの炎と十字架が本来の神器で、それを第一形態───聖刻モード、とでもしておこうか。その聖刻モードである今現在は、第二、第三、第四形態という三つの鎖で本来の力を封印している、という図なのだろう。






ただ、言いたいことが、ただ一つ。









「わざわざ分かりづらい所に作るなよッ!?」



「うん......最もな言い分だね」


「「「「は、ははっ......」」」」




......この怒りは一体、どこへ向ければいいのだろうか?




そんなことを真面目に考えた、僕であった。





☆☆☆





翌日。正確には翌()




「.........なぁ、やっぱり僕、第一夫人はこの布団にするわ」



やはり僕は、布団から出れずにいた。


ぬくぬくしていて暖かくて、まるで僕を包んでくれる聖母のような、彼女(ふとん)。もうね、彼女と僕ほど相性のいいカップルなど存在しないのではないだろうか?



「いや、布団に負ける私たちの気持ちにもなってくれない?」


僕の布団の上で仁王立ちしている、女子部屋からこちらへと直行してきた恭香。

.........スカートじゃないのが悔やまれる。



───まぁ、ロリの下着には微塵も執着はないんだけどね。




「ふっ、僕を起こしたくば、輝夜、暁穂、アイギスの下着。それも下の方を三種類すべて持ってくるんだな。僕は幼女は大好物だが、その下着ではなんの感慨も受けないのさ」


「...、もう、ロリコンを隠す気は無いんだね」


「はぁ、めんどくせぇから早く出てこいよ、ギン」


「そうであるぞ。そもそも布団とは結婚出来ないのではないか?」



ぐうっ!?


純粋な疑問が、僕の心臓へと槍となって突き刺さる。



───自己嫌悪って、怖いですね。




「だ、だがしかしっ! 僕はこの聖母からは離れな......」





「あ、聖母って、冒険者時代のルーシィさんの二つ名だよ?」


「あぁっ! いい朝だなぁっ!? いい朝すぎで昇天しちまいそうだぜっ!」



もちろん飛び起きた。



「.........あの人、聖母なんて呼ばれてたのか......?」


「まぁ、想像できるのである」





レオンの言葉と共に、僕の脳内にも聖母ルーシィが浮かびあがる。




後光とともに現れたのは、薄っぺらい女神の羽衣を見に纏い、右手にはキノコ、左手にはアワビを持って、慈愛の表情を浮かべる、ルーシィ。


───ちなみに、何故かBGMは『ハレ○ヤ』であった。


その羽衣は、ルーシィの身体にはあまりにも小さく、既にピッチピチで、薄っぺらいから中身が透けて見えている。


盛り上がった胸筋、八つに割れた腹筋。




────そして、








ビリビリィッ!!








「な、なな、何てものを想像しているんだ僕はっ!?」


「......多分、皆同じようなモノを想像したと思うよ?」


「......俺のところはアワビとキノコ持ってたぞ」


「うむ、最後に服が破れていたのだ」



思わず、先程のあまりに生々しい映像を思い出し、胃の中身を吐きそうになるが、何も入っていなかったのか、胃がキュゥっと締め付けられる。


───くっ、この感覚だけは慣れないな.........。




「......はぁ、飯、食いに行こうか」


「.........そうだね」


「朝から酷いもん見たぜ......」


「......本人には言えないであるな」




まぁ、そんなこんなで。



期せずして同じような映像を見てしまった僕たちは、吐き気を抑えながらも食堂へと向かう。







────途中、すれ違ったルーシィの顔に、妖しげな笑みが浮かんでいたのは気のせいであろうか?






☆☆☆






「.........何も全員ついてくることは無かったんじゃないか?」


「いや、ギンの神器の初使用でしょ?」


「うむ、気になるのじゃっ!」





時と場所は変わり、実験や訓練の代名詞になりつつある、パシリア南部の草原。




あの後みんなで話し合った結果、今日の予定の予定としては僕の神器の確認、食料の買い込み、馬車の購入、寝袋或いは布団の類の購入等々、ということに決まったのだった。



そういうわけで、僕は全員で別れて行動するつもりだったのだが.........。




後ろを振り向けば、恭香を初めとする従魔たち全員+騎士組三人が何故か集合していた。


───何故か全員が共通して、目をキラキラと光らせていた。




「さすがギン様なのですっ! 神器たのしみなのですっ!」


「そうですねっ! 私もギンさんの神器、気になりますっ!」


「......あら? アイギスさんとは少しだけ口調が被ってますね、私」


「ああっ!? ほ、ほんとですねっ!?」


「うふふっ、何故だかアイギスさんとは気が合いそうな気がします」


「あっ! わ、私もです! なんだかそんな気がしてました!」


「ふふっ、それでは今度、一緒に食事でもどうですか?」


「よ、喜んでっ! それでは私が店を調べておきますねっ!」




どんどん神器とは関係ない方向に(ガールズトーク)が進んでいく。



───アイギスよ、友達ができたからって泣くんじゃない。





「それよりギン。お前、自分の神器なんだから能力くらい分からないのか?」



ガールズトークにはお構い無しとばかりに、マックスがそんなことを聞いてきた。



「うーん......何となくは分かるんだけど......実際に使ってみないとわからないことが多過ぎてね。今のところは名前と能力だけしか分からない状況だね」



実は、領主宅を去った後、突如頭に、神器の情報が流れてきたのだ。




その情報の内容としては主に三つ。




一つ、この神器の名称。


一つ、神器第一形態の能力。


一つ、その使い方



の計三つだ。




恭香曰く、


「神器の能力や潜在能力に関しては全能神様でも知り得ない情報なんだよ。正確には可能性の分岐先は知ってはいるけどそのどれになるのかは分からない、って感じだね」


との事。


ゼウスも、どんな能力になる可能性が◯◯%、こんな能力になる可能性は○%、とそんな風になら予測は建てられるが、それでも確実性はない。



───つまり、この神器の詳しい能力や潜在能力の強さは誰も知らない、という事だ。




「へぇー......それで? その神器の名前とか能力ってどんなのなんだ?」


「あっ、それ、私にも教えてくれなかったやつでしょ? 私もすっごい気になるんだけど」


「ほう、その模様ならば『大黒十字韋駄天丸』であ...」


「あーーーーっ! そうだっ! 我も試したいスキルがあったのだっ! 主殿、使い心地を確かめるついでに一勝負どうだ?」


「おお、輝夜も新しいスキル覚えたのか!? それは楽しみだなぁっ!」



───なにより、(レオン)に台詞を最後まで言わせなかったことに感謝をしたい。


そもそもなんだよ、大黒十字韋駄天丸って。韋駄天どこから出てきたんだ?


(韋駄天......足が速い......? いや、それだと.........んん? いくら考えても分からないね)


どうやら全知もどきの恭香さんでも分からないようである。



───もう、あれは一種の才能だね。




そんなことを思っていると、



「それで? 能力は見てたら分かるとしても、その神器の名前って何なんだ? まさか韋駄天丸みたいなダサい名前じゃないよな?」


「だ、ダサっ!?」


マックスの何気ない一言で止めを刺されたレオンが、ドサリと崩れ去る。


.........仕方ないさ。自業自得だもの。




だけど、まぁ、




「くっくっくっ、僕の神器はかなりカッコイイ名前だぜ? 思わず中二病を再発させるかと思ったくらいだ」



僕が、この僕が夜道を歩いている最中にこの名前が頭に浮かび、思わずはしゃぎたくなってしまった程だ。


それだけ、僕はカッコよく思えたのだ。



この、神器の名前が。





───それこそ、雷霆(ケラウノス)と同じくらいには





「な、なんだとっ!? 主殿よっ! そ、その名前はなんなのだァっ!?」



案の定、釣れた輝夜。






ふっふっふ、聞くがいいっ!





「この神器の名前はっ!」








そうして僕は、もう一つの相棒の名を、口にした。













炎十字(クロスファイア)





それこそが、僕が生涯の相棒とする、神器の名前だ。






☆☆☆






場所は変わり、『深夜の処刑場』内のステージ。





「あー、決闘のルールとしては、

①殺すなー

②ズルするなー

③武器は使うなー

④ギンはこの世界の力を使うなー

⑤神化はつかうなー、の五つだ」




やる気がなさそうにそう宣言するのはマックス。


───やる気がなさそうに見えてあれでも監視の目を光らせてるから油断できないんだよな。この男は。



ん? 僕がマックスをそんな風に思ってたのかって?



マックスはたしかに馬鹿だが、あれでもエルグリッドが選出した監視人なのだ。

あの三人の中で唯一エルグリッドがミスしたのはオリビアくらいだろう。


.........ほんと、なんでオリビアが選ばれたのだろうか?

獅子は子を谷に突き落とす的な事だとか、オリビア自身の願いだったとか、まぁ、そういうことも色々と考えられるが.........まぁ、あまり踏み込まない方がいいであろう。




そんなことを思っていた時だった。




「クハハハハハハッ! 何を考えているかわからんがっ! 我を前にそんな油断をしていても良いのかなっ!?」



僕の前十数メートルに仁王立ちしている輝夜が高笑いをしはじめる。


.........何を当たり前のことを聞いているんだ? コイツは。



「誰が油断してるって? お前相手に油断なんてしてたらそれこそ一瞬で勝負、決まっちゃうだろ?」




───それに、未だ正体不明の新スキルもあるしな。




恐らくは加護によって会得したユニークスキルなのだろうが......問題は誰の(・・)加護で、どんな(・・・)加護か、だ。



加護が最高神のものだとしたら────ハデスか?



ま、予想は立てられるが、鑑定するのはやめておこう。それはフェアじゃない。




だけど、その言葉、そのままお前に返そう。





「ま、お前こそ油断するなよ?」





正義執行と、風神雷神を発動させる。








───召喚、アダマスの大鎌。








「でないと────死ぬぞ?」






なにせ、今の僕は、今までにないくらい、









────調子が、良さそうだからな。






☆☆☆






「それではッ! 試合開始っ!」



合図と共に観客席へと移動したマックス。





───まぁ、正解だな




「『影刺』ッ!!」



瞬間、輝夜の周囲の影から幾千もの影の剣が飛び出す。





だが、





「クハハハハハハッ! 我は神影を共有しておるのだぞ!? そんなものが通用するかッ!」



幾千もの影は、輝夜の体に届く前にドロりと形を失い、溶けてゆく。恐らくは神影で僕から影の所有権をぶんどったのだろう。


まぁ、マジックキャンセルは日本の学生であった僕の知識だからこそ理解出来ることだから、輝夜が魔法を相殺するにはそれしかないであろう。





───だけどまぁ、僕もこんなこと考えている暇は無さそうだな。





「クハハハハハハッ! 次は我の番だなっ! 受けよっ! これぞ我が新スキル!」





僕はとっさに影纏に活性化を使用する。






───そして、









「クハハハハハハッ! 開け開けよ! 我が深淵の門! 冥府の力ッ、ここに集わんッ!!『冥府の門(ヘルズゲート)』発動ッ!!」





瞬間、輝夜の背後に漆黒色の禍々しい門が顕現する。




───その魔力量は、明らかにアダマスの大鎌と同格だった。






「さぁさぁお立会いッ! この門は冥府の存在を現世へと呼び出す黄泉返りの外道門ッ!!」



同時に魔力がさらに吹き出し、その漆黒に塗られた門の入り口から二つの犬の首が現れる。



「此度呼び出すのは番人が一人、オルトロス!」




グギャァァァァァァッッッ!!!




そんな悲鳴にも似た声を上げながら門から現れたのは、双頭の巨犬、オルトロス.........









えっ.........?








さらにその後からもどんどん現れる、双頭。







「その数ッ! 十体(・・)以上!」





グギャァァァァァァッッッッッッ!!!


ガァァァァァァァッッッッッ!!!


グラァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!





「さぁさぁ! EXランクが総勢十体以上、それに加えて我を相手にッ! 我が親愛なる主殿はどう戦うのだっ!?」








クハハハハハハッ、と、処刑場の中に彼女の笑い声が響く。







───ハデスさん? どんなチートスキルを与えてるんですか。




僕は顔も知らぬ冥府神ハデスを恨むのだった。


冥府の門でした!

スキルレベルが上がればケルベロスとかよべるんでしょうかねぇ......?


次回! 神器「炎十字」の能力が明らかに!?

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