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新章開幕!

───のはず何ですけどね。

グランズ帝国へと旅立つのは暫しお待ちを。


準備期間です!

第三章 帝国編
第99話

エルグリッド曰く、



「俺は本来グランズ帝国の武闘会に参加しなくてはならなかったんだ。だが、突如現れたお前みたいな、将来化ける───っていうかもう化けやがった馬鹿を見に来てやったら頭のお硬いコイツ(・・・)がわざわざ走って(・・・)きやがってよ? 仕方なーくこっちから直接グランズ帝国に向かうことになったんだが.........責任とるよなぁ?」



との事だった。



───いや、こっちに来たのは100%お前の自己責任だろ?



そんなことを思った。




依頼内容の詳細としては、


①エルグリッド・フォン・エルメスの護衛

②正確な期間は不明。パシリア→グランズ帝国王都→エルメス王国王都までの往復期間の護衛。依頼人の許可があった場合のみ護衛を離れられる。

③同行人は、監視人の三名+国王直属護衛団団長アルフレッド以下騎士たち数名。

④馬車から食料、テントに至るまでまで自分で揃える。

⑤出発は三日後の明朝。それまでに領主宅とギルドに向かい、今回の大戦の報酬を貰うこと。



もう色々と依頼に関係ないことまで言われた気がするが、まぁいいだろう。


───それにしてもあの金髪の御者さん、国王直属護衛団の団長さんだったのか。確かにあの人なら護衛も務まりそうだ。






まぁ、そうして依頼内容を確認したのが、今からおよそ二時間前のことである。







そして今、僕たちは何をしているか、と言うと。





「まぁ、神器を作りに南の草原まで来たわけだが......」



ふと、後ろを振り返れば、お義父さん(エルグリッド)に、アルフレッド。それに加えて騎士組をはじめとした騎士たち───つまりは護衛メンバーが全員集まっていた。



「なんでついてきたの?」


「は? テメェらただでさえエルザさん(・・)を引っ張って来ないと止められないくらいの戦力になってるってのに、そのリーダーがとうとう神器まで自作するとか、一国の国王としては見過ごせるわけねぇだろうが」


「国王様、言葉にお気をつけください」


「うるせぇぞアルフレッド。コイツに猫被る必要性なんて皆無だってこの数日間でよく分かったからな」


「ほう、それはそれは。危険人物でなくて何よりですね。暗殺しなくて済みました」




.........今この人、さらっと凄いこと言いませんでした?




「クハハハハハハッ! そもそも今の主殿は暗殺することも難しいだろうがなっ?」


「ふふっ、そうですね。私たちがついていますし.........万が一があれば、私たち、間違いなく大陸滅ぼしますから」


「そうだね、流石に私も含めたパーティ全員でやればエルザさんも行けそうだし。大陸は無理だろうけど、この国やミラージュ聖国くらいなら楽勝じゃないかな?」



......こちらもこちらでかなり物騒なことを言ってやがる。


ほんと、エルザを敵に回すとか、やめてね?



「ハッハッハ! ほら見たかアルフレッド、暗殺なんてしない方がいいだろ? 国が滅ぶぞっ! ハッハッハ!」


「笑い事ではないですが、まぁ、確かに危険人物では無さそうですね。彼女たちや、王がそこまで仰るのならば、本当なのでしょう」



......はぁ、コイツらと居るとほんと、疲れる。



「んじゃ、そろそろ神器制作するからみんなちょっと離れといてくれ」


「了解だよ〜」


そんなテキトーな返事と共に、離れていく皆。



───なぜ僕を囲うように円を描く? 何?リンチ?



そんなどうでもいいことを考えながらも、僕はペラペラと神器制作キットを流し読みしていく。この本には前に話した能力だけでなく、神器を作成するにあたっての手順や注意事項も書かれているのだ。



えーっと?



①自分が思い描く魔法陣を自らの血で描きます。

②その魔法陣の中央に自らの体の一部を捧げます。

③頭の中に浮かぶ詠唱を唱え、全魔力を注ぎます。

④完成です(๑>؂•̀๑)



これ作ったの、たぶんロキだな。


途中まではゼウスかなぁ? って思ってたけど、最後で完全に確信した。これを作ったのはロキだ。



でも、まぁ、わかりやすくて何よりだ。




「よし、始めるか。『正義執行』『影纏』『雷神風神』『活性化』『神化』」




僕の身体をとてつもない量の赤い渦が包む。



その渦はすぐに消え去り、その中からは本気モードの僕が現れた。


白髪に軍服、赤いマント。雷鳴と暴風に影を纏った上から赤いオーラがバチバチと放出している。


もうね、見た目は完全に赤一色です。

雷に風、影まで赤色に変色してるから、更に赤い色が目立ってしまっているのだ。



ま、カッコイイからいいんだけどさ。




そんなことを考えていたら、仲間達の声が聞こえてきた。





「な、な、なんなのじゃっ!? あれはっ!?」


「わ、我に聞かれても知らんぞっ!? な、何なのだあの魔力!? 間違いなく最高神レベルだぞっ!?」


「お、オリビア! 騎士マックス! 騎士アイギス! ぎ、ギンのあの姿は一体なんだ!?」


「わ、分からないのですぅっ!」


「「じ、自分もわからないですっ!」」


「........最早、私たちが対応できるレベルを超えてますね」


「.........あの時は本だったから分からなかったけど、お姉ちゃん、こんなのとやり合ってたんだね」


「ふふっ、あの時はさすがの私でも死を覚悟しましたよ。全力の攻撃を指一本で止められた時は心臓が止まるかと思いました」


「「「「「「指一本でっ!?」」」」」」




........はぁ、うるさい奴らだな。







もういいや、神器作っちゃおう。






僕はまず、左手の指を一本ちぎり取る。



騎士たちから、息を呑む音が聞こえる。


───いや、血で魔法陣描かないといけないならこっちの方が絶対いいでしょ?




そうして僕は、草原の土の見えた場所へ行くと、地面に魔法陣もどきを書き始めた。



左手の人差し指をペンみたいにして描くのは、マントの背中の紋様。


丸い魔法陣。その中心に一つの十字架。そしてそれに少し文字やら模様やらを描いて.........うん、出来上がり。



出来上がったのは半径三十センチくらいの、見事な魔法陣もどきであった。魔法陣とは書いてあるけど、これでも十分であろう。



───それにしても、まさかこんな所で僕の特技の一つ"模写"を披露することになるとは思いもしなかったな。






「えーっと、次は僕の肉の一部をこの魔法陣に......っと!」




今度は左手の手首から先を切り落とす。手刀で。



またもや聞こえる、息を呑む音。


───仕方ないじゃない。あんまし痛くないんですもの。



そうして切り落とした手首と、ついでにさっきの人差し指を魔法陣の上に乗せる。


ちなみに僕の左手は既に回復して元通りになっている。

魔法陣の上には未だに左手が置いてある。


つまり二つ、僕の左手があるわけだ。



───質量保存の法則に喧嘩売ってるけど、まぁ、そういうものなのだろう。ファンタジーだし。




ま、次進もう、次。





「えーっと、次は詠唱か?」



すると、頭の中に詠唱が浮かんできた。これを言えばいいのか?



.........こういうの、輝夜が好きそうだな。





そんなことを思いながらも、僕は魔力を込めつつ詠唱に入る。







「『我が矛、我が盾、我が眷属よ。我が血肉を喰らい、その十字架へと捧げ、ここに顕現せよ! 神器創造!』」




瞬間、僕の身体からとんでもない量の魔力が一気に放出される。


その魔力のほとんど全てが魔法陣に飲み込まれた形になったのだが、それでも少しだけ飲みこぼしがあったようだ。



バタッ、バタバタッ



騎士たちが数人、倒れる音がした。



───ほう、凄いな。オリビアは真っ先に倒れるかと思ったが、何とか立っているじゃないか。


御褒美に後で添い寝でもしてあげよう。



(もし私より先にそんなことしたら許さないからね?)



おっと、怖い怖い。


大丈夫だって、心配しなくてもせいぜいがデートに誘うくらいだよ。



(ふーん? ならいいんだけどね?)




そんな話をしていると、僕のブーストが全て解除され......、







.........えっ? 解除された?





だが、それでも尚止まぬ、エネルギーの吸収。




ぐぅっ........それ(魔力)以外も空っぽまで持ってく気かよっ!?




そんな心の叫びも虚しく、さらに僕の魔力は吸収されていく。





残り魔力、100。







ま、まだ何とか......。







残り、50。








くっ......、い、意識が遠のいてきた。









残り、10。








どうやら魔法陣に変化が訪れたようだ。









残り、5。








魔法陣が光り輝き、僕の血肉が消滅する。











残り、1。








───そして、









残り、0。






僕の意識は暗転した。








───さ、最近、気絶してばっかじゃないですかね?




最後にそんなことを思った。






☆☆☆






「はっ!? 知らない天井......が無いな?」



「まぁ、屋外だからね」




目覚めると、眼の前には幼女がいた。



......重要な事だからもう一度言おう。



目覚めると、眼の前には幼女がいた。


───しかも超絶美幼女ときた。素晴らしい。パーフェクトだ。




「んで? あれからどれくらい経った?」


「何事も無かったかのように.........まぁいいや。多分だけど気絶してから一分も経ってないよ?」



どうやら予想以上に気絶していた時間は短かったようだ。



───まぁ、それだけ馬鹿げた回復力をしてる、ってことだろう。




僕は重くなった身体を起こすと、周りを見渡した。



アルフレッドや騎士たちは気絶した騎士たちの介抱を。


エルグリッドと騎士組三人は何やら話し込んでいる。


ついでに僕の従魔たちも話し込んでいる。



......まさか気絶した僕を介抱してくれるたのが恭香だけだったとは.........ふふっ、僕って案外、どうでもいい存在なのかもな......ハハッ。



あぁ、鬱になってきた。


───まぁ、本物の(・・・)鬱ならこの程度じゃ済まないが。





「それで? 僕の神器はどこなんだ?」



そう、問題はそれだ。


僕はあたりを見渡すが、剣も手甲も、盾も鈍器も、鞭も銃も、それらしきものは何も見当たらなかった。


───まぁ、きっと誰かが持っているのだろう。





そんなことを思いながら、僕は恭香にそう聞いた。








────のだが。






「ギン......よく聞いてね?」





そうして僕は、とても申し訳なさそうな、それでいて真剣な顔した恭香から、ことの真相を聞いたのだった。














「はぁっ!? し、失敗っ!?」






僕の初めての神器製作は、失敗した。














───はずだった。






☆☆☆






時は変わり、僕と恭香、それに従魔たちと騎士組三人は今、領主宅へと来ていた。




どうやらアーマー君+今回の大戦で、かなりの報酬が出るらしく、神器製作に失敗した後にこちらへと来たのだ。


───まぁ、明日は一日まるごと旅の準備に費やしたいからね。





それにしても何か忘れているような.........。



まぁ、気のせいかな。






それで、僕たちは今現在、領主宅で何をしているか、と言うと.........、






「うわっ!? この肉めっちゃ美味いなっ!? 口に入れた途端に解ける肉に、ブワッと弾ける肉汁......もうここは天国かっ!?」


「ぬほぉぉぉぉっ!? 主様っ! こっちの果実もとんでもないぞっ!?」


「じ、自分はもうっ! 死んでも満足であるっ!」




目の前に広がるのは、豪華絢爛な料理の数々。



バジリスクのタンドリーチキンや、オーク肉のステーキ。夏野菜のスープに選り取りみどりの果実たち。そしてこのキンッキンに冷えた果実ジュースetc..


これはもう、白夜やレオンがいても食いきれる量じゃないだろう。




───え? 神器製作ミスったんだからもう少し悲しめよ、って?



いや、確かに期待はずれ感は満載だったけどさ、それでも神器の製作が失敗するなんて、物理的、魔法的にも有り得ないことらしいし.........まぁ、何か理由があるのだろう。


ま、僕はゆったりと最強でも目指してみるさ。





「ほっほっほっ、喜んでもらえたかのぅ?」



そんなことを考えていると、上座の方からそんな声が聞こえてきた。


そちらを向けば、長めの白髪に、長い髭。まさに仙人のような老人がそこには居た。





───というか、彼こそがワーカー・ブリンドル伯爵。つまりはパシリアの領主である。





簡単に今の状況を説明すると、


領主宅へと来た僕たち。領主と面会し、意気投合(特にある人物の悪口で)。そのまま流れでアーマー君の報酬は貸しにして、今回の報酬はお金でもらった僕たちは、そのまま夕食へと招待された。


という事だ。



───もう夜だぜ? 普通はこれくらい密度薄くないとやっていけないよ。



(いや、今日1日だけでも、ミラージュ聖国の訪問、みんなの人化、国王様からの依頼、国王直属護衛団の団長との邂逅、神器製作に、領主宅訪問だよ? かなり密度濃いからね?)


.........そのうちネタが無くなるのではないだろうか?


まぁ、なんのネタかは分からないけれど。





「いやぁ、満足過ぎなんだけどさ、ホントにこんなもの食べちゃっていいのか?」



もうみんな食べ始めた後だけど。



「ほっほっほ、それだけ今回と前回のことには感謝しておる、という事じゃよ。なにせ、街の危機と国の危機を救ってくれたのじゃからな。先程の報酬金と貸し一つなどでは到底払いきれんほどの感謝をしているのじゃよ。だから遠慮など.........しておらんようじゃな、ほっほっほ!」




チラッとあたりを見渡すと、そこには酷い光景が広がっていた。




人化して二回目の食事にテンションがあがって食い漁ったはいいが、ちょっとリバースしかけてる恭香。


まだ数分なのにも関わらず大皿を三つも平らげた白夜。


ナイフとフォークを魔導で浮かせて、料理を口以外動かさずに食べている輝夜。


この数分で肉料理のおよそ三分の一を平らげた、レオン。


そこら辺のメイドさんを捕まえて礼儀作法について習っている暁穂。


そのメイドたちに鼻の下を伸ばしているマックス。


領主の前でどうすればいいか分からずあたふたしているアイギス。


そして、笑顔のオリビア。





.........なんか、すいません。特にうちの馬鹿(従魔)共が。





そんなことを考えていると、何故だか僕の目の前の料理まで無くなってきた。




───ま、まさか!? この量を食べきるのか!? あの二人はっ!?




くっ、こうして入られないなっ! 僕も少し本気を出さねばっ!






僕は右腕のコートの裾を捲ると手に持っていたフォークを握り直す。




「よし、僕もいただきま............」













.........えっ?








料理へと、そのフォークが刺さる前に、僕はそれ(・・)に気が付いた。



僕の様子に気付いたほかの面々も、こちらを見て疑問符を浮かべた直後に、僕の身体のある一部(・・)を見て、目を丸くする。










───のだったが。








「ぎ、ギン......うぷっ.........そ、それって......ううっ......ま、まさ.........うぇぇぇっ! も、もうっ、げ、限界......」


「恭香ーーっ!! だ、誰かっ!? 医者はおらんのかッ!?」


「うむ、自らの力量を測り損ねたせいである」






僕の現状よりかなり一刻を争うような問題が発生したようだ。




白夜ならまだ失禁しても許される(笑)だが、ヒロインの中のヒロインであられる恭香がリバースなど、正直言ってファンが激減するに違いない。






───うん、コレは......まぁ、後回しでいいよ。







僕は、右腕(・・)に刻まれた、そのタトゥーを見ながら、そう思った。











───神器(・・)よりも、リバース防止の方が重要だ......よな?


※神器が武器や防具、道具の形をしていないのは異例のことです。


次回! 神器の名前が明らかに!?

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