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勇者サイドです!

第二章 冒険者編
閑話 その頃、勇者達は

これは丁度、ギンがエルグリッドの依頼を受けたのと同時刻の出来事だ。



ミラージュ聖国と、グランズ帝国の国境線を超えた辺りに、勇者達は居た。


───とうとうミラージュ聖国の脱出に成功したのだ。



「よっし! やっとミラージュ聖国を出られたなっ!」



そう、声を上げるのは皆のリーダー久瀬竜馬。


何故彼がリーダーなのかは、ただ単純に、向いているからである。



「それにしてもあの国......酷かったね。僕なんて変な二つ名付けられちゃったし」


「くくっ、カッコイイじゃねぇか『英雄』さん?」


「うるさいよっ!」



そう、彼らはそれぞれの代表格が二つ名を得ているのだ。



『黒炎』『戦姫』『英雄』



Eランク冒険者で二つ名を得るのは、ギンを入れても初めてのことである。


───まぁ、ギルド登録から二つ名命名の期間が短かったのはギンの方なのだが。



「それにしても凄かったですわね......私たちはギルドに1日しか滞在していないにも関わらず二つ名が出来てしまいましたし......」


「それだけ異世界人が目立つ、ってことだろ? まぁ、それならアイツ(・・・)も二つ名くらい、有名になっててもいいのになぁ」


「名彫り石には銀の名前は無かったしねぇ......」



彼らはミラージュ聖国のあまりの面倒臭さに、全員でギルド登録をして、一日の間で金を稼ぎまくったのだ。それこそ、グランズ帝国へと辿り着けるほどの大金を。


早くここを脱出したいという気持ちが先走ったのか、彼女らはギルドに登録した直後に名彫り石を見ただけで、出発する直前には確認していないのだ。


───彼らの二つ名の真上に『執行者』の文字があるとも知らずに。





「ま、次の街についた頃にはアイツも二つ名くらい、貰ってるだろ」



久瀬は数少ないギンの友人だ。

それこそ、桜町よりかはずっと長い付き合いだ。



───だからこそ、彼のことを信じている。必ず会えると。







だが、




「で、でもっ、銀ってばもしかしたら生身でこっちに来たのかもよ!?」



「「「「「あっ」」」」」



桜町のその言葉に思わずフリーズする、一同。




「......生身って、あれか? 日本にいた頃の身体能力で、ってことか.........?」


やっと声を絞り出すが、額を冷や汗が流れる、久瀬。



彼らは既に知っていた、この世界の恐ろしさを。



───それこそ、生身で魔物の前に出れば、どうなるかを。



「う、うん......死神さんはそういうこと教えてくれなかったからね.........僕、ずっとそれが心配で......」



思わず涙を浮かべる桜町。



彼女は、この世界の恐ろしさを知ってからというもの、ギンが火事で死んだ時の様子が流れ続けていた。


『もし、ギンが死んでいたら』と、そんな考えばかりが頭を過ぎる。そして何より、苦しさに胸がはちきれそうになる。





だが、そんな彼女にも、仲間がいた





「だ、大丈夫だよっ! 火事からも生還した銀くんなら、絶対いきてるよっ! た、たぶん」


「こら、あまり不安にさせるのは良くないわ。そもそも何を心配する必要があるのかしら? 神様って生身で一般人を放り出すほど非道では無かったはずよ?」



「「「「「あっ」」」」」



鮫島の言葉に再びフリーズする、一同。



彼らは、それも知っていた。


───神様たちの予想以上の優しさを。



実際、彼らを担当した神は、死神、魔導神、鍛冶神、破壊神、そしてあの創造神(エウラス)だ。名前はかなり物騒だが、皆かなり温和な方なのだ。


まぁ、怒らせれば別なのだが。



「だから銀さんも、勇者召喚された私たち程ではないでしょうけど、それでも生きていけるだけのステータスを持ってるはずよ」


「ふふっ、銀くんならばステータスが無くてもオークくらいは倒せそうなものですけどね」


「あははっ、御厨くん、それは言い過ぎだよぉっ」







────実はこの話、御厨の方が正しいのだ。




彼の本領は作戦を立てた上での罠を始めとした奇襲の数々。



作戦を幾重にも考え、奥の手を必ず用意し、逃げ道を確保し、罠を張り巡らせ、その上で全力で暗殺をする。



それこそ彼の、真骨頂。


それも、御厨以上の頭の回転率、久瀬以上の身体能力がなせる技である。





───性格さえ良ければ、主人公に相応しかったのであろう。





もしも彼が生身の状態で魔物と会ったとしたら、先ず最初にゴブリンでも罠に嵌めて殺し、レベルアップなるものを実感した後に、そのままどんどん、加速度的に強くなっていったのだろう。


───結局、どういう最初であれど、いずれは最強へと至る資格を持つ者なのだ。奴は。




鮫島の言葉に安心したのか、桜町も涙を拭き、笑って見せた。



「うんっ、きっと生きてるよねっ!」


「ふっ、当たり前ですよ」


「そうね、当たり前だわ」


「まっ、アイツが生きてる保証も出来たわけだし、さっさと近くの街に行こうぜっ! そろそろ食料も尽きかけてるし......」


「......次の街まで三日以上かかるのですが?」


「「「「「「「えっ!?」」」」」」」


「食料はあったはず.........久瀬君、君、つまみ食いしたわね?」


「なぁっ!? な、なんで俺が疑われてるんだァっ!?」






まぁ、そんなこんなで、彼らもまた、グランズ帝国へと入国した。




────次の街で、真っ先に彼の噂を聞くことになるとはつゆ知らず。







☆☆☆






時は流れ、四日後。



彼らはグランズ帝国最初の街へと到着した。


───あまりの空腹に猪の魔物やオークなどを狩って自給自足していたら、想定以上に時間がかかったのだ。








それで、彼らは街へと着いたわけだが.........、







「すまない、門を通してもらってもいいか?」



「あぁ、もちろ.........おおっ! アンタらっ、もしかして黒髪の時代かっ!? し、執行者さんはいるのかッ!?」


「執行者さんだと!? ど、どこにいるんだっ!?」


「おいっ! 執行者さんに迷惑だろっ!」


「すいません執行者さん、連れが迷惑を......」


「んで? 誰が執行者さんなんだ?」



「「「「.........さぁ?」」」」




いきなり門番たちにこんな歓待を受けたのだ。



話しかけた久瀬としてはかなりのビックリイベントである。


彼としては『黒髪の時代かっ!? ってことは《黒炎》や《戦姫》《英雄》までいるのかッ!?』とか呼ばれるかも、と思い、目立つことに少し、憂鬱になっていたのだ。



だが、現状はどうだろう?


執行者......? 誰だそれは?




「.........なぁ、確かに俺たちは黒髪の時代だが......その『執行者』とやらは誰なんだ?」


「そうね、私たちの誰かに付いた新しい名前かしら?」


「でも......そんなキャラ、僕たちの中にいないよね?」


「もしかして僕のことでしょうか?」


「あら、御厨くんならそうかもしれないわね」



これも、ある意味当然の結果だ。


彼らは今までの長旅で噂などには疎いのだから。




「ま、まさか!? アンタら! 黒髪の時代の最代表格である『執行者』さんのこと知らないのかっ!?」



.........最代表格?


勇者達の頭に、はてなマークが浮かぶ。



「? よく分かりませんが、僕たちは今の今まで、十日間歩き続けだったものですからね。噂には疎いのですよ」


「あぁ! そういうことかっ! ......あれっ? 良く考えたら、お前達の中には執行者さんは居なさそうだな?」


「えっ、執行者さん居ないの!?」


「なんだよぉ、期待して損したぜ〜」



門番たちだけでなく、野次馬として寄ってきていた商人や冒険者たちも一気に興味をなくした様子だ。


.........どういう事だ?



彼らの頭の中は、最早はてなマークでいっぱいだった。







────だが、その中でも数人だけ、『執行者』とやらの正体に感づいていた者がいた、





「あ、あのっ! そ、その執行者さんの名前って、わかりますかっ!?」



思わずそう叫んだのは、桜町だった。


それに対して久瀬、鮫島、御厨も頷く。





ここには居ない、異世界人。


ここに居る誰よりも、高みへと登れる人物。


執行者、の二つ名。




頭の中のピースが一つの絵を完成させてゆく。






────そして、






「あぁ、執行者さんの名前は、ギン(・・)=クラッシュベル、って言うんだぜ? ギルド登録から四日でSランク(・・・・)まで登りつめた、十九歳の男みたいだぞ?」







頭の中で、すべてのピースが埋まった。





その絵は、とある男の後ろ姿。




それは、いつも見ていた、後ろ姿。




いつも一人で、



それなのに面白くて、



少し、ロリコンで、




────それでいて、最高にカッコよかった。





間違いなく、それは、ギン(憧れ)の後ろ姿だった。






「どうやら近々、エルメス王国の王様を護衛して、グランズ帝国の王都まで来るらしいからな.........もしかして武闘会に出るのかもなっ! ハッハッハ!」



その言葉に、彼らは思った。



───王都に行けば......彼に会えるのか......? と。




「あ、ありがとうございましたっ!」


「よしっ! 早く金稼いで王都行くぞっ!」


「ふふっ、その前に特訓せねばならないでしょう?」


「そうね。私ったら、銀さんを下だと思ってただなんて、......かなり恥ずかしいことをしたわね」




最早、そこには彼の安否を心配する、空腹な少年少女の姿は無かった。




「よし! 次の目的地はグランズ帝国の王都だっ! それまでにCランク位にはなるぞテメェらっ!」



「「「「「「おおおぉぉぉっっっ!!!」」」」」」








そうして彼らもまた、グランズ帝国の王都を目指す。







───彼らの道が交わるのは、もう少し後のお話。

そろそろ彼らとの邂逅も近づいてきましたね。


次回! グランズ帝国編開始なるか!?



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