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後日談第三弾!

やっと第二章終了なるか!?

第二章 冒険者編
第98話

室内は、死屍累々としていた。




僕の左腕に抱きつく幼女。


机に伏してそれを見ている、血の涙を流す女子三人。


今にも泣きそうな顔で虚空を見上げる少年。


そして、それを黙って見ている、僕。




「.........先に進もうか」


「うんっ! そうだねっ!」


「「「く、くぅぅぅっっ!」」」


「.........つ、次こそはっ!」



とっても嬉しそうに笑う恭香に、何かを決心したような他の面々。レオンはまだしも.........アイツらが怖いな。



───なんかしてきたらグレイプニルで縛り上げておこう。



「そんじゃ、次だな。ロキからの報酬発表.........って、お前らやる気なさすぎだろ? 特にそこの女子三人」


「「「ふーんだ」」」


頬を膨らませて顔をプイっと背ける、女子三人。


.........めっちゃ拗ねてる。




───仕方ない、奥の手を使うか。




「はぁ、流石に可哀想だからこの会議が終わったら三人とはデート、レオンには串焼き百本をプレゼントしようと思ってたんだがな...........、まともに会議にも参加出来ないようなや......」


「うほぉぉぉっ!! 狡知神からの報酬じゃぁぁっっ!!」


「クハハハハハハハッ! 楽しみであるなっ!」


「うむっ! 報酬とは肉であるかっ!?」


「ふふっ、ロキ様からの報酬とは、期待ができますねっ!」




完・全・復・活



......コイツら、扱いやすすぎじゃないか?




そんなことを思った時だった。





(.........私って、勝者の意味、あるんだろうか?)


完全に意気消沈した、恭香の声が聞こえてきた。



いや、恭香だけには特別に(・・・)『デート中に手を繋ぐ権利』を贈呈しようかと思って......



「さぁっ! 早く報酬を見てみようよっ! 実は私も分からないんだよねっ!」




.........やはり、僕の仲間たちは扱いやすい。





「んじゃ、その報酬の発表だぁっ!」


「「「「「おぉぉぉっっっ!!」」」」」



最初よりもテンションが上がっている気がする。

.........少しやり過ぎたかな?



そんなことを考えながらも僕はアイテムボックスに手を突っ込む───何かこれって、時空の狭間に腕だけ飲み込まれてるみたいで怖いんだよな.........。



そんなこんなでガサガサやっていると、記憶にないような袋が手に触れた。


「おっ? この袋かな......?」



そう言って袋を出すと、どうやら紫色の大きな袋のようだった。


.........まさか卵とか入ってないよな?




「......んで? 誰がやるよ?」



もちろん聞くのは、この中に手を突っ込む役だ。


───覗いて確認するなんて、そんな野暮なことはしないさ。





「ふふっ、私は破壊不能属性もってるからね、私から行かせてもらうよっ!」



最初に名乗りを上げたのは恭香だった。


───攻撃は効かず、魔力は尽きないって、どこのチートキャラですか?


もしかしたら人型の恭香は世界最強なのではないかと思い始めた僕であった。



「えーっとね......ん? 結構たくさん入ってるみたいだね.........よし! これに決めたっ!」



そうして恭香が袋から取り出したものは、.........何だあれ? 十枚くらいの.........糸で包まれた白い布か?



「おおっ!? ギン、これは当たりなんじゃないかなっ?」


「......それってタダの布じゃないのか?」



そう言いながら、僕は鑑定を使った。





神の布 品質SSS

神が衣服を作る際に使用する布。

その衣服の使用者に応じて、形状、色彩、面積が変化する。

破壊不能属性付与。





.........これは、あれだな。


フェンリル───暁穂戦後に僕が思ったことを聞いてたんだろうな、あの野郎。


───まぁ、感謝はするけどさ。




「なかなかいいやつじゃないか? 僕は要らないから皆に一枚ずつ配れば............何でみんなこっち見てるの?」



何故だか、少し怒ったような顔で見てくる皆。




.........僕、何か悪い事したか?




「おいおい主殿。これは主殿が暁穂を捕獲した報酬であろう? それを要らないとは言わせんぞ?」


「うむ、主殿が貰わぬなら、自分も要らんのである」


「そ、そうじゃぞっ! それなら妾も要らないのじゃっ!」


「私も同意ですね」



.........なに、そういうこと?



いや、これからも仲間ができるかもしれないんだし、十枚しかないならそれまでとっておいたほうがいいんじゃ......



「ギンって傲慢を装ってるけど、根のところは謙虚なんだよね」


うぐっ!?


い、言い返せねぇ.........。



「.........はぁ、分かったよ。そろそろこの黒一色の服もダサいかなって思ってきたし、折角だから新調するとするよ」



うん、実は今の僕って上から下まで黒一色なのだ。まぁ、背中に赤い紋様だけ描かれてるけど、それと肌と瞳以外は、完全にススワタリ状態なのだ。


そろそろ僕も、服装を変える季節がやって来たのだろう。



────そういうことにしておこう。






「それじゃ、次行くか。恭香、他にはどんなの入ってた?」



取り出すのはいいが、その中の個数と取り出す人数が合わないと最後の人が悲しい目にあってしまうだろう。


───ちなみにこの袋の中は空間支配でも調べられなかった。



そういう意味で聞いたのだが、心配は無用だった。



「うーん、詳細は手を入れてからのお楽しみだけど、この布の他に、丁度五個入ってたはずだよ? もしかしたら見落としがあるかもしれないけど」


「......ってことはみんなが一回ずつ引ける、ってことか」



僕、白夜、輝夜、レオン、暁穂。丁度こちらも五人だ。



.........もしかしてロキはここまで読んでいたのだろうか?




「まぁいいか。......もうめんどくさいからみんなで一気に手を突っ込んで同時に引くか?」


なんだか一回一回引いてその度にコメントするのは......、うん、かなり疲れそうだ。


そう思っての発言だったが、



「うむっ! それでいいのじゃっ!」


「クハハハハハハハッ! 我の引きの強さを見るがいいっ!」


「自分はこんな感じでパーティに入ったのであるか?」


「うふふっ、なんだか面白そうですねっ!」



どうやら反対意見は無いらしい。

.........多分コイツらも面倒だったんだな。



そう考えて、僕は袋の中に手を入れる。


他の皆も席を立ち、同じように袋の中に手を入れた。



「よし、それじゃ、皆決まったか?」



タイミングを見計らってそう問うと、皆頷いてくれた。




「それじゃあ引くぞ? いっせいのーでっ!」




そんな掛け声とともに、僕ら五人は一斉にその何かを取り出す。





「おおっ!? なんじゃこれはッ!?」


「ぬっ? なんだ、指輪か.........指輪っ!?」


「ふむ、自分は本であるな」


「これは.........片眼鏡でしょうか?」



皆、それぞれ楽しそうに自分の引いたものを見ている。




───のは、いいのだが。




「おい、恭香」


「ん? どうしたの?」


とってもニヤニヤしている恭香。

───もちろん、その理由は分かっているさ。



だって、僕が引いたのは............









「これ、アイテム六個じゃなくて、五個だよね?」







白夜が引いたものと対になった、片方の靴だったからだ。







☆☆☆







あの後、全てを鑑定してみた。







ロキの靴 品質error

何処へでも行ける靴。

ありとあらゆる障害物を突破する。

形状変化、万物踏破、破壊不能属性付与




ソロモンの指輪 品質EX

消費魔力大カット。

万物との会話が可能。

形状変化、破壊不能属性付与、好感度上昇率大




神器制作キット 品質error

初回神器製造時にのみ使用可能。

神器作成時間の消滅と、神器の能力上昇極大が可能。

破壊不能属性付与




誠実の片眼鏡 品質EX

ありとあらゆる嘘を見破る片眼鏡。

心までは読めないが、嘘ならば神相手でも見破れる。

形状変化、破壊不能属性付与




本当にびっくりである。



「まさか自分の脱ぎたてほやほやの靴をプレゼントしてくるとは思わなかったな。あの変態め」


「とか言いながら結構気に入ってるね、その靴。もう形状変化して履いちゃってるし」



.........まぁな?



あの後、結局僕はそのアイテムを各人に振り分けた。


───流石に全部僕が使うのも何だったからさ。




神の布はそれぞれに一枚ずつ配る予定だ。


ロキの靴と神器製作キッドは、僕に。


ソロモンの指輪は、輝夜に。


誠実の片眼鏡は、暁穂に。


ほかの面々には後々、僕の手作りの武器でも授けよう。



それで今僕は形状変化で色と形を変えたロキの靴を履いているのだが.........これがなかなか素晴らしい。


見た目は足の裏に赤い線の入った黒ブーツに変更し、サイズを僕に調整するようにさせただけで驚きの履き心地。



決して蒸れず、それでいて厚みがある。

その上、衝撃をある程度まで吸収し、履き心地も抜群。

さらに空でも海でもマグマの上でもどこでも歩ける優れものと来た。




───ありがとう、ロキさん。あんたの靴最高だぜ。






そんなことを思っていると、恭香がこんなことを言い出した。




「私としては神器製作キットの方が気になるけどね.........」



......神器製作キット?



「あぁ、あのレオンが引いたペラッペラの本か?」


あの本......なんか信用出来ないんだよなぁ......。




そんなことを思った。









───のだが、









「いや、あれって間違いなく創造神様と全能神様......今回は狡知神様まで加わって作ってるよ?」








.........はっ?




「......そ、それってかなり効果あるんじゃないか?」



「うーん......神器って言うのは経験値みたいなのがあってね? それが一定量を超える度に進化して強くなって、更に使用者の強さにも応じて強くなるから...............初期だとかなり弱いんじゃない?」



「......そうなの?」



実は僕って神器に関しては何も知らないんだよね。


ゼウスの家で調べてたのはほとんど神話とギルド、スマ○ラについてだったし。



「はぁ......、例えば全能神様の雷霆(ケラウノス)。ギンは多分、その神器の第一形態は見たと思うんだけど、神器って言うのは、どの神器であっても全部で四つの形態があって、さっき言った進化によってどんどん使えるようになっていくのさ。そこまでは分かるよね?」



.........またも驚愕の新事実。



第一形態のフ○ーザに怯えてたベ○ータの気待ちがよく分かりました。


もしも......というか、確実にあの雷霆は第一形態だったのだろうけど、第四形態なんて、どんな化け物みたいな能力なのだろうか.........?



そんなことを考えている間も恭香の話は進む。



「それに加えて、神器っていうのは制作された時の使用者の強さに応じてスペックが変わるんだけど........そこも分かる?」



まぁ、うん。


神器作成の説明にも書いてあったからね。



「それでね? 多分だけど、神器製作キットは神器そのもののスペックを最大限まで引き出した上で、一瞬で作る、って言うとんでもないチートアイテムなんだよ。ギンが全能神様と同じくらいまで強くなれば、多分だけどその神器も雷霆越すと思うよ?」




.........つまりは、なんだ?




①神器は使えば使うほど経験値が溜まり、それによって新しい形状が解放される。

②使用者が強ければそれだけスペックや能力も上がる。

③神器作成キッドを使えば雷霆以上のスペックの神器が出来上がるが、初期は弱っちい。



ってことでいいのか?




「まぁ、簡単に言えばそうだね。全魔力消費しちゃうけど作っちゃったら?」


確かに使えば使うほど強くなる最高スペックの神器が即出来るのなら、是非とも作るべきなのだろう。


「うーん......、もし作るとしたら、神化とかした方がいい?」


「もちろん。最上位の神器が出来るのだとしても、魔力は多いに越したことはないよ」






.........この後、草原にでも行ってから作ろう。





そう、心に決めたのだった。




───流石に街中ではやりづらいしね。






☆☆☆






今後の方針は神器を作成した後に、騎士組もふくめて考えよう、という結論に至った僕たちは、昼飯を食べるべく宿屋から出て来た。





───のはいいのだが。





「おう! 待ってたぜテメェらっ! .........って、そっちの二人、誰だ?」




いや、分かってましたよ。


僕が部屋から出て階段を降り始めたくらいで、常時発動してる3Dマップの効果範囲内に入ってたからね。


───ちなみに常時発動型の3Dマップの範囲は十五メートルである。あんまり広範囲にしたら疲れるからね。



話を戻そう。




「何でここにいる? エルグリッド」



そこには仁王立ちしたエルグリッドが居たのだ。



───正確には、エルグリッドの後ろに一台の馬車。その中には騎士組三人とブルーノ.........というか、あの金髪の御者さん、めっちゃ強くないか? エルグリッドと互角だろ。




そんなことを考えていると、エルグリッドが大声でこんなことを言ってきた。



「ハッハッハ! お前らに一つ! 依頼がした...「遠慮します」 ......話を最後まで聞けっ!」



だって同じようなセリフ、この前ロキから聞いたばっかりなんだもの。



「これは俺個人.........いや、国王としての立場からの依頼でもある。............報酬は弾むぞ?」



「.........幾らか聞こうか?」






────どうやら僕たちは『予定を決める』という行為自体が無駄なようだ。


世界の強制力的な何かが働いて無理矢理にでも新しい予定が出来てしまう。






エルグリッドは僕の耳に口を寄せ、その値段を口にした。



「...............だ。それに加えて今回の大戦での報酬も王宮から()出そう。合計で..................だ。どうだ? 受けるな?」




.........今の値段、聞いた?




(聞いちゃった)


(聞いたのじゃ)


(聞いたぞ?)


(聞いたのである)


(下界の通貨はよく分かりませんが、聞きました)




全員が同意したところで、



「詳しく聞かせてもらおうか?」


「ハッハッハ! そうでなけりゃぁなっ!」



いや、あんな値段言われたら.........ねぇ?





「それで? 僕たちに依頼って......何なんだ?」









僕が異世界に来て、今日で.........八日目。多分。


───正確には十一日目だろうか?



とんでもなく短い間に、とんでもない密度の時間を過ごしてきた。




ダンジョンもどきをクリアし、



国に喧嘩を売り、



イケメンを殴り飛ばし、



冒険者になり、



慢心して死にかけ、



神様たちと知り合いになり、



仲間ができ、



────何より、好きな人ができた。





その間、それが十一日間。



.........普通なら信じられねぇよな。








だけど、まぁ、これから暫くは、長い旅になりそうだ。










「お前らへの依頼は二つ! 俺の護衛と、グランズ帝国での武闘会への参加だ!」









地球で、夢にまで見ていたこの世界。



魔物がいて、魔法があって、スキルがあって、レベルがある。



───そして何より、仲間がいる。





ふっ、少し前の僕に言っても、信じてくれないだろうな。








さぁ、次の目的地は、獣人族の国『グランズ帝国』






そこでどんな出会いが待ち構えているのか。






────それこそ、(ゼウス)のみぞ知る事であろう。

第二章が終了しました!

閑話を一話挟んで第三章開始です!


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