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ギンはどうなるのか!?


最初は分身視点です!

第二章 冒険者編
第93話

そこから少し、時間を遡ること数分。


場所は変わり、魔物軍との決戦地。




そこに、僕は居た。



───まぁ、分身なんですけどね。




「ちょっと! あなたの本体大丈夫なんでしょうね!?」


そう僕に問うのは、一緒にフェンリルから避難してきたフラン。流石にアレを間近で見ただけあって、かなり混乱している様子だ。



「あぁ、僕の本体の『影分身』って魔法は、経験や考え、それに見たものとかをすべて共有してるんだよ。それに本体がやられれば僕ら(分身たち)も消滅する」



だから、少なくとも僕がここにいる間は、本体も無事だってことだ。


───慢心や油断なんて、微塵もしていない僕だけど、それでも覆せない状況というのは存在する。



.........頼むから死ぬなよ、僕の本体。





そんなことを考えていると、上空から巨大な何かが降りてきた。



「「「「うわぁぁぁッッッ!?」」」」


同じくフェンリルから避難してきた冒険者達が、思わず、と言った感じで悲鳴をあげる。


だが、それも仕方のないことだろう。


だって、本体の半分ほどのステータスしかない僕ら分身にとっても、まず勝ち目のない相手なのだから。





金色を帯びた白銀の身体に、金色の瞳。


翼を広げた全長は百メートルを優に越している。


身体中を大きな鱗でビッシリと覆われた、白金の巨竜。




───そう、白夜だ。




「う、うふふっ.........、さ、流石はEXランクね......味方じゃなかったら私達、間違いなく死んでたわよ?」


「こんな奴が俺らの宿に泊まってたんだなぁ......」



白夜を見上げてしみじみと呟くルーシィとエルビン。


.........エルビンが喋ったの、随分と久しぶりじゃないか?




『カカッ、上手くいったようじゃの? 主様よ』


「クハハハハハハハッ! そこの主殿は分身だがなっ!」



ついでとばかりに味方を避けながらあたりの魔物を殲滅していく二人────僕ら全員が未だに戦死者を見ていないのは気のせいだろうか?


あぁ、ちなみにこの戦場の中には影分身が五十体くらい紛れ込んでるよ? 影分身も影分身を使えるからね。......まぁ、簡単に計算しても本体の半分の能力を持ってるのは、僕を含めた最初の九体だけなんだけどさ。





そんなことを考えていた時だった。








Dbyfxnkkihtcnooeszbaaaaaaaa!!!






そんな叫び声がこちらまで響いてくる。


「.........向こうも始まったみたいだね」



本体の視界の中では、どうやらフェンリルがやっと追いついてきたらしい───併走とか調子乗ってんな、この糞狼。



どうやら本体も同じことを思ったらしく、雷龍、不死鳥、水龍の三体を同時召喚したようだ。



だが、



「.........ここから見える大きさとか、どんだけ魔力込めたんだ? 本体は」



今現在、本体はここからは百キロ以上離れた地点に居るにも関わらず、その三体の姿はここからでも確認できた。


───正確にはシルエットや色だけなのだが、それでも白夜より二回りほど大きいのではないだろうか?




「「「「「『.........何あれ?』」」」」」



白夜や輝夜、冒険者諸君の声が重なる。


そう言えば白夜たちにも見せるのは初めて.........と言うか、ゼウス家で開発した魔導だし、ゼウスと恭香しか知らないのではなかろうか?



「まぁ、なんでもいいじゃないか。それより白夜、輝夜。上から見た感じだと、敵はあとどれくらいなんだ?」


「......あ、あぁ、我らも味方のいないところに砲撃しまくっていたからな.........恐らくは半分.........いや、四分の三は削ったのではないか?」


「「「「「.........えっ?」」」」」



.........今日は冒険者たちの声がよく被りますね。


いや、今のは僕も入ってたんだけどさ。




「.........もしかして後続の魔物は......?」




思わずそう聞いた───聞いてしまったフラン。


彼女を責めることは出来ないだろう。





「『そんなの開始数秒後には全滅しておったぞ?』」





あぁ、向こうは派手にドンパチやってるのに裏方はこんなにテキトーでいいんだろうか?



そんなことを思わざるを得なかった。




いや待てよ.........?


きっと誰も僕達のことなんて気にしてないんじゃないだろうか?「早く本編に戻れよ」とか皆思ってるんじゃないだろうか? 冒険者編が終わってから閑話にでもしてやれよ、とか思っちゃってるんじゃなかろうか?




うん、僕達(分身)に期待する奴なんて居ねぇだろ。




────()良ければすべて良し、って言うもんね?




やはり分身も、僕は僕であった。






「四分の一.........ってことは、残りは......」



えーっと、一万を四で割ればいいんだから......




「それから減ってると考えても残り二千ってところだな」


「今のところ殉職者もいないのですっ!」




そうそう、二千五百で、減ってるとしても二千.........





.........あれっ?





声の主の方向を振り向けば、そこには水色の髪の親子(愚王とオリビア)がいた。



.........なんでこんな所に居る?



───どこか遠くでとてつもない爆音が響いた気がしたが、多分今のは本体の攻撃だろう。多分水雷月禍かな?




「あ? なんでこんな所に、って顔だな? 俺らみてぇな戦闘民族がこんな戦いを見て黙っていられるわけがねぇだろうがよ? ......ってか今の何?」


「はいなのですっ! 私もオークを倒せたのですっ!」


「はっはっはっ! 流石は我が娘だっ! 格上にも挑むその根性に免じて狡知神様に喧嘩を売ったことは許してやろうっ!」


「あ、ありがとうなのですっ!」



.........おい、オリビアが負けてたらどうするつもりだったんだよ? 多分とんでもない事になってたぞ?



「おいエルグリッド、僕のオリビアにあんまり無茶させるんじゃないぞ?」


「あぁん? いつからオリビアはテメェのものになったんだァ? ぶっ殺されてぇのか?」


「くくっ、僕は分身だが.........今は夜だぞ? お前如きに勝てるかな? この愚王が」


「この野郎ッッ! ぶっ殺して......」


「わ、わ、わわわ、私......ギン様の.........?」


「なぁっ!? お、オリビアァァァァァッッッ!?!?」




はぁ、こういう馬鹿どもの執行(対応)は本体に任せたいのだが.........って、あれ?





僕はそんなことを思いながら、ふと、本体の視界を覗いた。







────そこには、炎の槍に貫かれた、本体の姿が。







そして本体の思考が流れ込んで来る。





『影魔法は.......熱のある所では、使えない......?』







───ッッ!?





僕は咄嗟に視界を本体から自分に戻す。


それと同時に本体の思考までもがシャットアウトされる。






「白夜! 輝夜!! 急いで僕の本体の元に向かってくれ!!」



「ど、どうしたのだ......? そんなに慌て......」








「このままだとっ! 僕の本体が死ぬ!!」







「「「「「「『.........へっ?』」」」」」」





その直後、先程の水雷月禍よりも尚大きな爆発が起こり、





「くっ......あとは頼んだぞっ!」



ボンッ、と音を立てて分身は消えていったのだった。







───その後に残されたのは、顔を真っ青に染めた、彼の仲間たちだった。







☆☆☆







それと同時刻、計九発もの蒼炎が、彼の身体を直撃した。




───それは、間違いなく、直撃した。



もしエウラスや死神といった神族がその場を見ていても『当たった』と言うであろう。



それ程までに、確実に(・・・)直撃した。



その上、フェンリルが放った蒼炎は、本人の魔力のほぼ全てを使用して作り上げたものだ。それも使用したのは魔導である。


1発ならばまだしも、それが九発すべて当たったのだとしたら、彼は間違いなく消滅したのであろう───文字通り、跡形もなく。



───神祖の吸血鬼であっても確実に消滅する程に、先ほどの攻撃は凄まじい威力であった。




しばらく経って、爆心地の煙が晴れる。


フェンリルはその血走った、狂ったような瞳でその爆心地を見つめる───まるで、不測の事態にも対応できるかのように。




そうしてフェンリルが見つめる爆心地からは煙が少しずつ晴れてゆき.........




完全に晴れた、その場所からは、






───誰かのコートと、一冊の本だけ(・・)が見つかった。






勝った。



勝った、勝った。



勝った、勝った、あの吸血鬼に、勝った。





ウォォォォォンッッ!!!



自我の失われたフェンリルが、そのあまりの達成感に、思わず遠吠え───いや、それは雄叫びのようでもあった。


まるで、自分と死闘をしその果てに殉職した、自らのライバルを弔うように、それでいてそのライバルを倒せた達成感に喜びを感じるかよように。



自我の失われたフェンリル───その中級神に無理矢理自我を喪失させられたフェンリルが、一時的にとはいえ、その自我を取り戻す程に、彼は強かった。





───それこそ、いずれ最強へと届きうる程に。






そんな事を、フェンリルが思った時だった。






「Guruuuuu.........?」



何か、違和感を感じた。





───誰かに見られているような。


───何か、大切なものを見落としているような。


───とてつもない罠に嵌ってしまったような。




そんな違和感。





探せ、探せ、探せ。




首を振り、眼球を動かし、脳を最大限に回転させ、その違和感の正体を探してゆく。





───そして、ようやく見つけた。






フェンリルは、それをじっと見つめる。





───爆心地に残された、死神のコート(・・・・・)を。



......あの時、あの男はコートなど着ていなかった。




フェンリルは思い出す。

奴が蒼炎をくらう、その直前の奴の姿を。



白い髪に黒い......何処かの国の軍服だろうか? それに赤いマントを羽織った、男の姿を。





────銀色の六芳星が描かれた、その紫色の左眼を。





......紫色? あの男の瞳は......確かに赤色...




────ッッ!?




その瞳の変化を思い出した瞬間、急激に"見られている"という感覚が強くなった。


まるで、巨大な何かに見つめられているような.........



フェンリルは再び顔を振る。




探す。



探す。




そして、見つけた。



今度は先程よりも、簡単にみつかった。





フェンリルが見つめているのは、遥か上空。



快晴だった夜空には雲がかかり、その隙間からは、満月が覗いていた。





───いや、満月ならばどれだけ良かった事だろうか?




そこに、満月の代わりにあったのは、銀色の六芒星が浮かび上がった、紫色の瞳。


雲の隙間から覗いている、その様は、






───間違いなく人間のそれだった。







ゾワゾワッ、と。


フェンリルは身体中に鳥肌が立つのを感じた。



脳裏に浮かぶのは、炎を食らう直前の、男の顔。



驚愕に目を見開いて、その蒼炎を見つめる───いや、違う。


あの時、男は自分を見つめていた。





───あの、紫色の瞳で。








その答えに至った次の瞬間、フェンリルは見覚えのない場所に立っていた。



ど、どこだここは!?




丸いステージに、それを囲むかのように座席が高く並んでいる。



日本人ならば"コロッセオ"とでも表現するのだろうか?


───だが、その中心のステージだけが、少し違った。



ステージは、片方が低く、大きなステージ、もう片方は段差を十段ほど挟めて、少し高く、小さなステージなっている。


それらをすべて含めたとしても、全長およそ十キロはあるであろう、二つのステージ。



自分は今、そのステージの低い方に立っている。


とりあえず、その事だけは分かった。




階段の先を見つめると、そこには一本の十字架。



空は雲一つ内満点の夜空。だが星も無い。


───唯一あるのが真っ赤に染まった満月のみ。





そんな、よく分からないこの場所(世界)を見て、フェンリルは一つの言葉が頭に浮かび上がった。




何故かは分からない。





だけどここには、その言葉がしっくり来る気がした。








────そう、ここは、処刑場のようだ。








「くっくっくっ、お気に召してくれたかな?」



「Guaaaaa!?」





思わず、驚愕した。





いつからそこに居たのだろう?




見上げるは上のステージ、その十字架。








───その上には、あの男が立っていたのだから。

少し慢心してたギンでした!

......まぁ、反省を全て生かせと言われても難しいですよね。



次回、フェンリル戦に終止符が!?


もしや一時的な俺TUEEEE展開に!?

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