決戦開始ッ!
「『影分身』ッッ!!」
僕の周囲に九人の影分身が現れる。
いきなり目の前の仲間がやられたことに驚愕し、さらに僕の魔法を見てぎょっとする魔物たち。
───そんなことしている暇があるなら逃げた方がいいんじゃないのか?
そんな考えとは裏腹に、影分身は僕の腕を掴むとクルクルと回転し出す。そして数回転の後に、僕を魔物の群れに向かって投げ飛ばした。
.........いや、もちろん僕の命令ですからね?
他の影分身も同じようにしてペアをあちこちに放り投げている。
ひとまずはこれであちこちから魔物の群れを滅茶苦茶に出来るはず。みんなの命......じゃなかった、経験値もたっぷりがっぽりであろう!
『ふふっ、バレっバレのツンデレさんだね、ギンは』
.........うっせっ!
そんなことを考えている間に、僕本体も群れの中へと突入したようであった。
この始祖特異種の器のおかげだろうか。フルスイングで回転させられて投げられたのにも関わらず、僕への影響はほとんどないに等しかった。
「Gyalalalalalalala!!!」
僕が着地したすぐ先にはなんと懐かしのレッドオーガ。
僕が奴を
───お前
「テメェの同族のパンチの恨みだァァァっっ!!」
僕は迎え撃つように渾身のパンチを繰り出し、周囲の魔物ごとレッドオーガを粉砕する。
『......輝夜に隷属されていたレッドオーガのパンチくらったの覚えてたんだね』
だってあのダンジョンで攻撃くらったのって白夜とアイツの2回だけなんですもん。
───あれっ? なんか呼び捨てになってるのは気のせい?
『ふふっ、
ちょうど今のセリフと時を同じくして、戦場の各地で五つの爆発音が響く。
───どうやら他の投げられた影分身もやらかしているようだ。
今もなお、各地に投げ飛ばされてる残りの影分身たち。
上空から降り注ぐ銀色の魔法と、七色の魔導。
レッドオーガを素手で殴り飛ばす筋肉。
キラースコルピオンを二対のレイピアで仕留めるフラン。
その他の雑魚たちを掃討してゆく、エルビンやマール。
───未だ、神狼の姿は見えない。
くっくっくっ、もしかしたらお前が到着する頃にはお仲間は全滅してるかもしれないぜ? フェンリルさんや。
☆☆☆
「『ヘルプリズン』ッッ!!」
瞬間、僕の影が膨張し、僕の周囲一帯の地面を埋め尽くす。
神影Lv.1 (影魔法Lv.4)
『ヘルプリズン』
広範囲に渡って、地面に自分の影を拡張、その中に相手を引き摺り込む魔法。
殺傷能力は低いが、その分命中率と攻撃範囲が広く、影魔法の使い手でなければ使用者の許可無しに影の中からの脱出は不可能。
※敵味方関係なく影に引き摺り込む。
まぁ、簡単に言えば
殺傷能力はゼロだが.........引き込まれたら飯無しでの永久投獄だぜ? くっくっくっ、それが仲間でもなぁッ!!
という事だ。まぁ、見境なしの拷問みたいなもんだ。
───因みに僕がいつも出入りしている影とは違う部分に沈めるみたいだから、"影に入ると目の前には知らないゴブリンが!?"みたいな展開にはならないのでご注意を。
『いや、誰もそんなの期待してないからね?』
.........こほん、ほ、本来、この魔法は仲間まで対象となる超危険技だったので今の今まで封印してきたが、今、僕の周囲には魔物しか居ない。
なら使わなきゃ損でしょ!
ということで、僕を中心にした円のように拡大した影を踏んだ魔物達は一体残らず影の中に飲み込まれてゆく。
まるでそれは、僕の影を踏んだ者へと罰を与えるかのように。
───そして数秒後には、僕を中心とした半径三十メートル程には魔物は存在していなかった。
『......Lv.4でこの能力とか......Lv.5の影魔法ってどんな魔法なんだろうね......』
.........さぁ?
この魔法でさえ仲間を巻き添えにするというリスクを抜かせばかなりヤバイやつだし.........リスク無しの超魔法か、リスク有りの超絶魔法かのどっちかかな?
『今度死神様に聞いてみようかな.........』
まぁ、死神ちゃんがこの魔法使えるってのは僕の予想だけどね......。
そんなことを考えていると、どうやらフランやマール、それにエルビンやルーシィたち冒険者十数人が僕に追いついてきたようだった。
「あなたは本物かしらっ!?」
「お「うふふ♡ 私の女の部分がそう告げているわっ! あなたこそは愛しのギンちゃんねっ!!」.........すいません、本物あっちです」
僕はそう言ってテキトーな方向を指さす。
───たまたまその先には白い狼がいた。
.........白い狼?
「「「「『「.........えっ?」』」」」」
全員の声が重なる。
その白い狼は全長三十メートルはゆうに超えており、なぜ今まで気づかなかったのか疑問に思うほどの威圧感を放っていた。
僕の変身した黒狼よりも線は細く感じるが、それは筋肉が無いからではない。
───限界まで圧縮した筋肉と、異常なまでのインナーマッスルの為だ。
身体から溢れる魔力、威圧感共に
防御力では圧倒的に勝る白夜だが.........恐らくは勝てはしないだろう、それくらい目の前の白狼は、異常な強さだと、直感が告げている。
.........狼の魔物でそんな馬鹿げた能力をもってる奴なんて、僕は一体しか知らないぞ?
『ふぇ、フェンリルッ!?』
「Gyahalanalukalaggalanatunakadaltuuuuuuuuu!!!」
恭香の叫び声に応じるかのように、まるで狂ったような雄叫びを上げる神狼が、そこにはいたのだった。
☆☆☆
「『百鬼夜行』ッッ!!」
僕は咄嗟に魔力を十万程込めて百鬼夜行を使用する。
同時に召喚される黒鬼たち。
───その数計百体。
恭香曰く『百鬼夜行って言うのは元々百体の鬼を召喚する魔法でしょ? それを無理に千体とか召喚しても......多分かなりロスしてるよ?』との事だったので、今回は百体に六万の魔力を注入し、召喚した。
どうやらその予想は正しかったようで、召喚されてくる鬼たちは、どれもSSランク以上の化け物じみた魔力を保有していた。
───もしかして
「行けっ! 黒鬼たちっ! みんなが避難するまでフェンリルを足止めだっ!!」
「「「「「「Guuoooooooo!!!」」」」」」
僕の合図と同時にフェンリルへと向かっていく黒鬼たち。
.........せめて
「ほらっ! 私たちも早く逃げるわよッッ!!」
「わ、わかりましたっ!」
流石はルーシィと言ったところだろうか。
僕が魔法を唱え終わった直後には避難を開始させていた。
さて、それじゃあ僕も参戦と行こうかね?
「でもその前に、恭香.........さっきのどういう原理かわかる?」
そう、奴はいきなりそこに現れたのだ。
それも、転移、召喚の類ではなく、偽装、隠蔽の類だ。
気付けばそこに居る。
技術こそ拙いものだったが、
───それは間違いなく、エルザの手法だった。
「.........まさかあの人が裏から糸を...」
『それは無いよ』
.........へっ?
『それはエルザさん本人の正体を知れば分かることだし、ギンはあの人が街を滅ぼす理由でも見つかるの?』
僕があの人と会って分かったこととしては、"子供たちを愛している"という事だ。
.........たしかにそんな人が街を滅ぼす様なことするわけないか。
「......でも恭香はあの能力知ってるのか?」
『能力自体は知ってるけど.........うん、やっぱりフェンリルにそんな能力はないよ。少なくとも私の中ではそうなってるね.........』
.........やっぱりね。
なら封印中にそういう系統のスキル.........は不可能か。
────誰かからスキルを譲り受けた?
そんな考えが頭を過ぎった時だった。
「Guraladalaamaanamaahayanalalanalanakaha!!!」
先ほどよりも尚一層狂ったような遠吠え───いや、これは悲痛な叫び声だ。
苦しい。
助けて。
自分を止めて。
もう、殺してくれ。
そんな感情が見え隠れしている。
───そんな気がする。
そちらを見れば最後の黒鬼がフェンリルに噛み殺されている所であった。
「恭香」
『うん、分かってるよ』
戦闘が僕が受け持つ。
その代わり、解析は
───僕が、強くなって初めて使える、最高の戦法だ。
「Guralullululuulalalalalalalalalala!!!!」
さぁ、行こうか。
「執行開始だっ!!」
次回! ギンVSフェンリル!?
やっと俺TUEEEE開始なるかっ!?
......大丈夫でしょうか?
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