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引きこもり令嬢なら引きこもりさせておけばいい
作者:高月水都

個人の見解です

 前世たまたま妹に勧められた小説があった。タイトルは忘れたけど、魔力暴走をさせてしまい、引き篭もってしまった姉を必死に説得して外に出す健気な妹の話だ。

 妹の健気さにいろんな男性が心惹かれていく恋愛小説だった。


(くだらない)

 魔法道具を黙々と作りながら、クロイツは前世で読み終わった時そんな事を思ったのを思い出した。


「ようは自己満だろう」

 そんな感想は流石に妹には言わなかったが、今でも思う。あれは物語の主人公の自己満であって感動できる話でもなんでもない。

 

 そんな前世で読んだ小説などを何故今更引き合いに出すのかというと………。


「姉さん!! 姉さんの好きなアップルパイを作ってきたの。一緒に食べましょう」

 必死にドアを叩いて呼びかける少女とその少女の肩に手を回し、

「ドルテア。いい加減出てくるといい。モルカがここまで必死に呼んでいるんだから」

 と少女を擁護する幼馴染の少年。それは前世読んだ物語の中盤のシーンで、その後アップルパイを見つめて目に涙を溜めて静々と帰る主人公のシーンに繋がる。


 で、だいぶ時間が経ってしまったアップルパイを持って帰って二人で食べるのだ。


「……姉さん。今日は帰るね。また来るから」

 と案の定小説のワンシーンのままに帰っていく主人公を慰める幼馴染。はっきり言ってどこが感動的なのやら。


「って、そんな主人公にほだされる姉が引き篭もっている小屋の近所で暮らす青年が俺なんてね~」

 なんの冗談か。

 クロイツからすればそんな主人公にほだされるわけない。


 手元にある一見腕時計にみえる魔道具を手にして、傷とかないか確認していく。


「お嬢」

 確認し終わるとさっきまで主人公が必死に呼びかけていた小屋の窓を開けて出来たばかりの魔道具を投げ入れる。


「試作品だ。壊れたら教えてくれ」

「…………」

 小屋の中にいる住人から返事はないが、もそもそと動く気配を感じたのでとりあえず家に戻る。


 ドアが開かないと必死に呼び掛けている主人公だが、窓は普通に開くし、物を入れられるのは実証済みだ。


 食事が心配なので気軽に食べられるホットドックとかサンドイッチをそっと渡したら食べた形跡があったからな。

 ………よく知らない人からもらったものを食べることに警戒心を持つようにと自分が渡したのに関わらずお説教してしまったが、まあ窓越しだから意味ないけど。


「いい子ちゃんアピールなんだよな。ほんと」

 アップルパイを食べてもらいたいなら玄関に置けば受け取ってくれるだろうし、こうやって窓から入れればいい。だが、ああやって必死に姉を説得していますとアピールして、周りにいい子だと思われたいのだ。小説を読んでいる時点ではそこまで描写されていなかったが、こうやって実際に見ていると分かる。


 姉に呼び掛けているように見せて幼馴染に健気ないい子だなと思われたいという感情が見え隠れしているし、引き篭もった姉が出られるような環境も作っていない。


「何だったかな。確か、魔力の弱い家族の中で唯一の先祖返りといえる魔力の強さに妻が不倫してできた子供だと思われて冷遇され続けて、ある日その冷遇環境に耐えられなくなった心に反応して魔力が暴走して家族を怪我させた。だったか」

 小説の冒頭をよく覚えていたなと自分に感心してしまう。


 そんな怪我をさせてしまった自分が怖くて引き篭もりという設定なのだ。で、怪我させられた家族の一人は主人公で、主人公は怪我を気にしていないよというアピールをしているけど、怪我をさせた事実があるから幼馴染が主人公を守るために傍にいる。

 

 でも、鈍感な主人公は気付いていない。だったか。


「鈍感じゃなくて空気が読めていないだけだろうな」

 悪態をつきつつ、今日制作した魔道具が何日後に壊れるか楽しみにしていた。



 一か月後。またあの主人公が必死に呼び掛ける様を幼馴染ではなく別の少年が見守っている。何人かの男性が健気な主人公に恋をする設定だったからそのうちの一人だろう。そこらへんは覚えていないが。


 主人公がしばらく呼び掛けて、天気が悪くなったから帰ろうと呼びかけられて帰っていくシーン。今日は雨が降る予報だったのだから最初から傘を持ってくればいいだろうと突っ込みしつつ小屋に近付く。


「お嬢」

 呼びかけると窓が開き、壊れた魔道具をそっと箱に入れて差し出される。顔を見せないで手だけだが、かなり勇気が必要な行為だったんだろうなと感じ取れる。


「ああ。魔力を吸収する宝石が限界になったんだな。取り外しできるようにして、ある程度一杯になったら交換すれば負担が軽減されるか」

「…………」

 魔道具をしみじみと観察して呟くと中からわずかに反応がある。


「それにしてもお嬢の魔力はすごいな。宝石に魔力を注げば魔石の出来上がりだろう。魔石一個あれば豪邸一戸立てられるし、この町の住民が宴会を一か月行ってもまだお釣りがくるほど儲かるぞ」

「…………」

「まあ、それくらい儲けになるためには壊れるぎりぎりを見極めないとな。魔力を注げば色が変わる石を使用するか。そういうのもあったし」

 今度探してみるなと伝えると魔道具を持って帰る。


 じっくり家に置いてある道具で壊れた魔道具を調べてみると壊れたのは宝石だけで後は壊れていない。


「今回は一か月持ったな」

 しかもかなり成果があった。


「じゃあ、次は限界値が分かるような仕掛けと取り外せるようにと……」

 創作意欲が増す。いろんなアイディアが浮かぶので試してみたくなる。


 雨の音をバックミュージックにしながら作業をしているが、雨の向こうで同じように雨の音を楽しんでいる彼女がいるような気がした。






「改良してみたけど、試してくれ。大きな宝石の周りに小さな宝石が散りばめられているけど、この周りの宝石の色が変化したら替え時って分かりやすくしてみた」

 いつも通り窓から入れると、そっと受け取る気配。


「交換する宝石も一緒に渡しておくな。あっ、替えた宝石は魔石として売れるから何か欲しいものがあるのならそれを買うけど」

 何か欲しいのがあるかと尋ねると少し戸惑ったような気配がしたと思ったら。


【宝石も高いでしょう。貴方のものだから私に使わなくていい】

 と走り書きした紙を渡される。


「…………っ!!」

 初めて彼女からのコンタクトに内心感動しているがそれを押し隠す。


「そっか。……じゃあ、日持ちするお菓子を買っておく。アップルパイが好きなんだっけ?」

 主人公がそう言ってよく持ってきているしと確認すると、

【……好きでも嫌いでもない。何日食べても悪くなりにくかったから】

 と再び紙を渡される。


「…………」

 悪くなりにくい物。か……。それだけで彼女の今までの暮らしぶりが想像つくというものだ。


 小説の設定にあった先祖返りゆえの魔力の高さで不義を疑われて冷遇された子供。そんな子供がまともな食事が出来るわけないか。


 幸か不幸かたまたま食べられたアップルパイを好物と思い込んだのか。つくづく偽善だ。


「じゃあ。何が食べたい?」

 尋ねると戸惑ったような気配を感じる。しばらく返事がないので今日はここまでかと立ち上がり掛けたら、すっと紙を渡される。

【どうして……。こんなに親切にしてくれるんですか?】

 不安げにぶれている文字。


「親切にした覚えはない」

 そうだ。そんなつもりはない。


「魔道具の制作に協力してもらっているだけだ」

 それだけだと伝えると、窓の中でじっと考えるように音が止まった。さすがに傷付いたかと言葉を選ぶべきだったなと反省していると。


「でも…………宝石も魔道具を作る道具も高級品です。それが壊れた数だけで考えたら協力というには無理があり過ぎです」

 小さなか細い声だった。必死に言葉を紡いだような……。


「お嬢の妹さ。お嬢に“出て来い”とか“引き篭もっているのはおかしい”という感じだけど、違うんだよな」

 前世本を読んだ時から思っていた感想。


「お嬢は()()()()()引き篭もっているんじゃない。()()()()()()外に出ないだけだ」

 魔力暴走で誰かを傷付けないように、それを逃げだという者も居るだろう。だが、俺はそれを守ろうとしたと思えたのだ。


「まあ、所詮は俺の思い込みだけどな」

 長居し過ぎたと改めて立ち上がる。そういえば結局何を食べたいか聞けなかったな。アップルパイが好きでも何でもないのならそれ以外でもいいだろう。


 後日魔石になった宝石を手にして日持ちをするお菓子数個とふとなんでか分からないが、いや、たぶんそれを町で見つけたからだろう。


 前世大好きだったこの世界にはないと思い込んでいた物。でも、前世の小説の世界で異世界ファンタジーならあってもおかしくないかと蓬餅を見付けて恐る恐る味を確かめてからそっと、お嬢に渡した。


 日持ちしないからすぐに食べろと伝えて。 


【美味しかった。ありがとう。……………また食べたい】

 そんな嬉しい返事が来た時は少し笑ってしまったのは内緒だ。


 そんな日々を過ごしながら魔道具を改良していく、

「お嬢。お嬢の魔力の新しい活用法を思いついたから試してくれ」

 いつも通り窓から声を掛けると、窓がそっと開かれる。だが、相変わらず顔を見せない。


「…………」

 だけど、しっかり傍で聞き耳を立てているのは気配で感じ取れる。


「お嬢は犬と猫と鳥は好きか?」

 いきなり何を言い出すのかと戸惑ったような気配。


 しばらく待っていると。

「…………………好き」 

 ぼそっと小さな声で返答がある。それについニヨニヨしてしまうのを必死に抑えて、

「なら、ちょうどよかった」

 と窓から試作品を中に入れる。


「きゃっ!!」

 びっくりしたような声がして入れ方に気を付ければよかったなと反省する。


「これは何? 猫に犬っ⁉ 小鳥まで」

 驚いた声だが、嬉しそうなものだったのでほっとする。


「充電……いや、充魔力式おもちゃだ。おなかにある魔石で動く魔道具……というかロボット……使い魔。なんでこの世界に使い魔とか式神がいないんだ。この手のファンタジーだとお約束だろう。まあ、魔力さえ注げば半永久的に動けるお嬢の家族だ。学習機能もあるから人の言葉はしゃべれないけど、こちらの伝えたい事も学んでいくし、言わなくてもしてくれるようになる」

 AIとか自動プログラムとか言われても分からないだろうから説明が難しい。


「…………………家族」

 小さな声。


「そっ。名前を付けて呼んでやればお嬢が困っている時に助けてくれる」

 最初はア〇ボのつもりで犬だけ作ったが犬が嫌いだった時のことを考えて猫も作った。それから鳥も作れば空も飛べるし便利だろうという思い付きで結局三体作ってみた。


「あと、これも」

 スマホもどきも差し出して、

「ここの魔石に触れると魔力が装填される。使い方はいろいろあるけど、お嬢に必要なのは」

 犬、猫、鳥。どれでもいいが一つだけ動物のアイコンに触れさせる。


「えっ⁉ なんで私……」

「お嬢に渡した三体のどれのアイコンを押したか分からないが動物の目からの情報が画面に映される。

これを使えばもっといろんな光景が見れるだろう。後」

 一度言葉を切り、

「魔力をいくらでも使用できる。暴走させる可能性も低くなるだろう」

 常に使っている状態なら魔力を暴走させるほどの魔力は体内に残らない。魔力制御装置よりも彼女の状態にぴったりだと試したかったのだ。


 だから、彼女のためではない。


「お嬢がどんな使い方をするのか楽しみだ」

「…………」

 彼女は答えなかった。だけど、渡したばかりの猫がそっと窓の外に出てきてじっと覗き込んでくる。もしかして、猫を通してこちらを見ているのかもしれないと思ったが、渡したばかりでそこまでコントロールできないよなと疑ったことを反省した。





 それから平穏な日々が続いた。彼女は見事に使い魔を操ることが出来るようになったようで、使い魔が魔石を運んでくることが増えた。で、そのお返しにと蓬餅を渡すこともたびたびあった。


 そんなある日。

「姉さん。今日は姉さんの誕生日よ!! お祝いをするから出て来てよ。ねっ、お願い!!」

 懇願してくる主人公の声が外から聞こえる。喧しいなと思って外を見ると主人公の傍には数人の男性がいる。


「なんだあれ……」

 と呟いてすぐに小説のワンシーンに似たような光景があった。確か、主人公が姉のために細やかなお祝いをしようと準備して、その主人公の健気さに感動した男たちが主人公に協力して無理やりドアを開けさせて……。


 どこが健気な妹だ。器物破損だろうし、住居侵入だろうと思ったのだ。そして、それに恐怖した姉が…………。


「お嬢!!」

 慌てて作業をしていた手を止めて彼女の住んでいる小屋に向かう。男たちが健気な妹に感動して無理やりでも顔を合わせられるように扉に手を掛けて……。


 ぽわんという音がしたような気がした。男たちが扉に触れようとしたが何か弾力のあるクッションのような物で弾かれて触れられなかったのだ。


「な、何よこれ……魔力の塊? えっ、()()()()()

 今まで姉を案じる妹の顔だったのに、嫌悪感を顕わにして小屋を睨む。


「何よこれっ!! 気持ち悪い!! こんな気持ち悪いものも魔力なのっ!! 最低!!」

 近づくのも嫌だとばかりに距離を置く主人公。


「魔力持ちでかわいそうだから親切にしてあげているのに」

 上から目線のおそらく本音だろうそれが漏れる。


「モ、モルカ……」

 主人公の言葉に彼女の傍にいた男性陣は聞き間違えなのか不安げに主人公を見る。それによって自分が失態を犯したと気付いた主人公が慌てて表情を取り繕う。


「ち……違うの……感覚がなれてないから気持ち悪くて……」

 生理的に嫌だっただけで他意はない。そう告げている主人公を見て、半信半疑の男性陣。


 小説と異なる流れになったのを見て、どういうことだと首を傾げるが、とりあえず彼女が無事だったことに安堵する。


「お嬢!! 無事か?」

 いつも通り窓から声を掛けようとするが、窓から小鳥が出てきて、

「“ドアから入ってきて”」

 と彼女の声をそのまま送り込んでくる。


 ドアから入っていいのかといや、それよりもこの修羅場の中を潜り抜けてドアノブに手を掛けるのも嫌なんだがと思いつつも、彼女からのお誘いだ。


 そっとドアノブに触れる。触れられた。


「えっ⁉ 誰っ!! 格好いい♪」

 主人公がいきなり変なことを言い出して、こっちに向かってくる。


「あの……姉さんの知り合いですか?」

 目を輝かせて上目遣いに尋ねる様にどこか気持ち悪いものを感じる。もともといい印象を持っていなかったのがますますひどくなったと思える。


「あの……姉さんどうしていますか。魔力持ちでよく暴走させてしまっているので」

 心配ですと案じるような言葉に感動している男性陣。そんな一派に冷めた目で。


「魔力暴走は精神的に安定している状態、心身ともに健康な場合起こりにくい。特に身体が弱っている時……食事をまともに取れない状態で過酷な環境に置かれると暴走しやすい。あんたらが引き篭もっているお嬢を出したいと思っているのなら彼女を怖がらせるのは逆効果だ」

 まるで暴走してくださいと言っているようなものだろう。


「そ……そんなつもりは……みんな姉さんのことを……」

「――第一」

 小説を読んでいた前世から思っていたことがある。


「魔力暴走が怖いから引き篭もっている姉に何の対策も考えないで一方的に外に出すのはおかしいだろう。そんなに外に出てもらいたいなら暴走を防げる対策を考えてから言いに来い」

 それだけ告げるとドアを開けて中に入る。………入れてしまった。


「お嬢。鍵を……」

 言い掛けた言葉が突進してきた彼女によって途切れる。


「怖かった…………」

 必死に抱き付いている身体は震えていた。


「でも、魔力を暴走させなかったんだな。すごいな」

 つい頭を撫でてしまって、子供扱いだったな……というか頭撫でる行為もセクハラと訴えられていた前世の世界の政治家を思い出して手を止めるとじっとこっちに不満げに見てくる視線に気付く。


 ああ、やっぱり駄目だったなと思って、

「悪かっ」

「もっと!! 撫でてくださぃ……」

 最初は勢い良かったがぷしゅうと空気の抜けた風船のように勢いを無くして、最後はか細い声になっていた。


「嫌じゃないか?」

「嫌じゃ、ない……す……」

 どんどん勢いを無くしていく様につい笑いが込み上げてしまうがここで笑ったら失礼だなと我慢しておく。


 それに、

「やっと顔見れたな」

 小説では挿絵が無かったし、いつも窓越しだった。


 銀色……白銀ではなく、青味掛かった銀色に目の色がころころ変わる。遊色というんだったかな。オパールみたいだな。


「…………っ」

 真っ白い肌は少しがりがりで、ぼろぼろなのは食事をまともに取っていなかったからだろうか。日にも当たっていないからな。


「引き篭もるのはいいけど、太陽の光は浴びておけよ。病気になりにくくしてくれるからな」

 身体をある程度鍛えないと魔力暴走が起きやすいと調べた時に書かれていた。


「……言うことがずれていると言われませんか」

 ぼそぼそとそんなことを言われてしまうが、まあ、それは自覚ある。じゃなかったらあの主人公に賛同して無理やり外に出しているだろうし。


 小屋の中は物がほとんどなかった。でも、傷とかはない。あっても、すごく古い傷だ。

「えらいな。魔力暴走させなかったんだな」

 必死に抑えていた。コントロールを練習したんだなと伝わってくるのは傷はないが魔力が充満しているからだ。


「貴方のおかげです……」

 お嬢の両腕には魔力制御装置。そして、足元には三頭の使い魔。


「この子たちとこの腕輪のおかげで魔力を抑えられて、操れるようになりました。小屋の周りに危害を加える人は入れないように案じてくれる人は入れる結界を作ってみたら出来るようになりましたし!! この子たちのおかげで外の様子も分かるようになりました!!」

 それで妹を含む家族の様子を知ることが出来たと教えてくれる様に、家族の何を知ってしまったのかどこか悲しげに下を向く。


「貴方の顔も……」

 じっとこちらを見て、顔を赤らめる。


「あ……実物を見てがっかりしただろう」

 小説の登場人物だからもっといいかと思ったけど、前世とあまり変わっていなかった。髪の色も目の色も普通だったし、もっと変な色だと期待したんだけど。…………魔道具は作れるが魔力はなかったし。


「……………自覚ないのですか? 妹も騒いでいたのに」

 信じられないと呟かれるが、いったい何を言っているのか。


「ちょっと、姉さん!! わたしも入れてよっ!!」

 外から聞こえる声に危害を加える人は入れないと聞いた矢先だったのでああやっぱりという感想を持ってしまうのは仕方ないだろう。


 お嬢は結界に防音機能も追加したのかすぐに声が聞こえなくなる。


「――改めまして、自己紹介を。クロイツ・シュミットと言います」

 どこか揶揄うようにすましたセリフを告げると、

「ドルテア・アークヘヴンと申します」

 と綺麗なカーテシーを見せてくれたのだった。



ここから小屋を出て普通に暮らすか引き篭もったままなのかはどちらでもいいと思って続きは書きません。


ようやく、ここで初めましてが出来たというだけで。

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