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第一章 始まりの物語
第3話『響く声』

 ――称号。

 うち一つは……まあ、なんとなく想像がつく。

 正直色々あって、もうここが『夢』か『違う世界』かしかないだろうな、と思い始めていたし、二つの内最初の称号に関して言えばまだ分かる。まだ分かるのだが――

 そう顔をしかめながら称号欄をタップすると、出てきたのは二つの説明文。




 ☆☆☆





【称号】


『迷い人』

 この世界とは別な異世界から迷い込んだ人。

 ごく稀に迷い込んだ際に体が変化する事がある。

 特殊技能:最初期ステータス減、成長促成、レベルアップ時ステータス増加大、自動通訳



『創造神の加護』

 創造神の加護を受けた証。

『創造』のスキルを手に出来る。

 特殊技能:レベルアップ時ステータス増加量大





 ☆☆☆





「……まあ、うん」


 簡単に言えば『いきなりチートとかちょっとあれだし、最初期のステータス下げといたよっ! ま、成長すればそういうの全部取り戻せるから安心してちょ!』って奴だろう死ね。

 何かアレだろ、創造神の加護とかいうから何か期待しちゃったじゃん。

 けどいざ箱を開けてみれば……ねえ?

 とりあえず、思ったほどじゃなかった。というかデメリットしか現状見当たらなかった。

 これなら普通に『何気に吸血鬼になってる事実』とかの方が衝撃大きかったね。というか大器晩成とか要らないから、今、平和に何事もなくこの洞窟を抜けられる力が欲しかったんだけど。

 そんなことを考えながらも、気分を変えるべく両手をパンッ、と打ち鳴らす。


「さて、と」


 なんか独り言が増えてきたような気もするし、心機一転、アイテムボックスの中に眠っていたアイテムたちを確認してみよう。

 そんなことを考えながら改めてアイテムボックスを発動させると、その中身を洞窟の中で比較的綺麗そうな床を見つけ、その上にぶちまけた。

 そのせいで多少ぐっちゃりした気もしないでもないが、とりあえず壊れ物とかはなさそうな雰囲気で。改めてそれらを確認してみると、アイテムボックスの中身は大まかに五つの種類に分けられた。


 ①着替えのセット。


 ②黒い鞘の短剣。


 ③金色の鎖のついたでっかい辞書。


 ④硬貨の入った布袋。


 ⑤食料と水筒


 ――以上、この五つだ。

 まずは最初の着替えセットについて。

 白い半そでのインナーに、黒っぽい長ズボン。

 それに加えて、裾が膝裏まで伸びる漆黒のコートに長いブーツ。

 そのコートの背中にはなんかカッコよさげな紋章が赤い文字で描かれており……まあ、一言で言うなら『中二病』ってやつだろう。内心『うわイカシてやがるぜ』と思ったのは秘密。

 さっそく着てみたがサイズもちょうどよく、コートがひらひらしてる割に動きも阻害されない範囲なので、十分に戦闘もこなせるのではないかと思う。こなしたくないけど。

 ――とまあ、そういうことでスキルの中に『鑑定』スキルがあったのを思い出した僕は、とりあえず試しにと言うことで今羽織っている黒いコートへと鑑定を発動する。

 そんでもって、その鑑定結果を見た僕は――




 死神のコート 品質SSS

 死神が着用していたとされるコート。

 他でもない死神の血液が大量にしみついており、何故か科学でも魔法でも解明できない『自動修復機能』が備わっている由緒正しき普通のコート。このコートをふざけて着ようとした奴らは大体すぐに死んでいる。ちなみに犯人は死神さん。




 ――迷うことなくそのコートを脱ぎ捨てた。

 背筋をせりあがってくる怖気に身を打ち震わせながら、思わず周囲をきょろきょろと見渡し、両腕で肩を抱いてそのコートから距離を取る。

 ……いや、別に怖いとかそういうのじゃないから。

 別にオカルティックなそういうのが苦手とかじゃないから。

 いや、ほんとにお化けとかマジ大丈夫だから。

 そんなことを内心考えまくりながらも、腕を精いっぱい伸ばしてそのコートをつんつんと突っついてみる。


 ……しばらく経って、数分後くらい。

 けれども死神のコートにはなんの変化もなく、というかなんかそこらへんに投げ捨ててたらそっちの方が怒られるんじゃないか、と言う気もしてきて、緊張気味にそのコートを拾い上げる。

 ま、まあ? 別に着ようと思ったのおふざけからじゃないし?

 そういう面で言えば僕が天罰喰らうとかまずないし?

 まあ、だけどさすがにお下がり着るのも気が引けるし? べ、別に着たくないとかそういうのじゃないけど、一応ね? 一応このコートだけはアイテムボックスの中に永久的に封印を――



『……ほう、見て見ぬふりとはいい度胸してんじゃねえか』



 ――瞬間、僕は光速にすら迫る勢いでコートを羽織る。

 ガバッと周囲へと視線を向けるが……だれもいないんだよなあ、これが。

 まず間違いなく幻聴と思われるその声……なんだけど、もし仮に幻聴じゃなかったら殺されそうな雰囲気が声の端々からにじみ出てたし……。


「と、取りあえず、着とくか」


 誰に言うでもなく死神のコートを着用することを宣言した僕は、なんだか気を逸らしたいという思いもあり、さっそく次の黒い鞘の短剣へと視線を向ける。そしてすぐさま鑑定すると、同じく僕の頭の中に説明文が浮かび上がってきた、のだが。




 ブラッドナイフ 品質SSS

 吸血鬼にのみ使用が許されるとされる伝説の短剣。

 魔力との親和性が高く、使用者の成長に応じて成長する生きた剣。

 血を吸うことで一時的に切れ味を増し、持ち主へと血を供給する。

 破壊不能属性付与。




 ハイハイ乙乙。

 なんかすごそうだけど死神のコートから受けた衝撃(インパクト)を前にしたら『で、なに?』くらい鼻くそほじりながら言えそうなレベルだ。品質なんかすごそうだけど。


 さて、と言うわけで最後行こうか。


 目の前にあるのはアイテムボックスの中に眠っていた一冊の本。

 黒い表紙に金色の金具と装飾。

 まるで御伽噺の中に出てくるようなその美しくも豪勢で、どこか幻想的な一冊の本を前に、なぜだか知らず間にゴクリと喉を鳴らしてしまう。


「……高そうな本だな」


 いいながらその本を拾い上げる。

 本の厚さは辞書と同等かそれ以上。大きさは完全にそれを上回るだろう。両手で持っているけれどずっしりとそれなりの重さが伝わってくる。

 その本には金色の錠がかかっているがその鍵はどこにも見当たらず、その他には背表紙の上端と下端をつなぐようにして金色の鎖が走っている以外、別段変なところも見当たらない。


「……いったい何なんだ、この本」


 そう、思わずつぶやいた僕の耳に、次の瞬間。



『こんにちはー! あなたが私のマスターですか?』



 そんな、明るい幼女の声がしかと届いた。



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