- 1二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 00:24:26
「お待ちになって」
「まだ何か────」
不意打ちだった。たまたまトレーニングの時間が一緒になって、いつものように少しだけ張り合って、少しだけ火花の散るような言葉を交わして、それだけだ。
いや、いつもより少し言葉に纏う火花が強かったような気もする。けれど、それだけのこと。たったそれだけの事のハズなのに、最早慣れ親しんだとも言えるいつも通りの私達のハズなのに、一体私の何が如何様にして彼女にそんな行動をさせたのか、見当もつかない。
「貴方ともあろうウマ娘が、ふざけているのかしら?」
だから、私を両の腕で絡め取って離そうとしない彼女に向かってそう訝しげに睨みつけたら、彼女は、あら、と一言。
その瞬間、彼女の表情が不意に大きく歪んだ。いや、顔の表情は変わっていない。瞳の奥に渦巻く感情の奔流が嵐のように蠢きだしたのが分かった。
「私がふざけていると、仰るの?」
「そうでなければ、この状況はどういう」
「ふざけてなど、いるものですか」
私の言葉を遮る程の感情を乗せた言葉。あまりにも急激な豹変に、どう言葉を返せば良いのか迷う。いつもは妹達の事で一喜一憂する脳内の私達が、一様に警戒を促している。勿論、私はそれに従って未だ訝しげに彼女を睨んでいた。ここで対応を間違おうモノなら、何が起きるか分からない。そんな異常なまでの緊張感が私と目の前の"貴婦人"……であるハズのウマ娘を包み込んでいる。
「ふざけてこんなことが出来るとお思いかしら? 出来ないわ、絶対に。ええ、そう。貴方に対してふざけるだなんて」
いつもの余裕たっぷりな女王の面影が、消えている。一体、私の何が彼女の琴線を引き裂いたのだろうか。そんな仄かな困惑が私の表情に浮かび上がった時、彼女はまた五月雨のように言葉を紡ぎ出す。
「ああ、貴方。違うわ、違う。その目ではないわ。その表情でもない。そんな感情ではないでしょう? 貴方が私に向けてくださるのは。さあ、もっと見せてくださらない? 貴女のその、敵意のような、殺意のような、決意を秘めた、美しい瞳を、想いを、激情を。さあ」 - 2二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 00:26:32
表情を歪ませ迫る彼女の気迫。これではまるで怨念だ。きっとこんな状態の彼女にレース場で出会ってしまったら、並のウマ娘では恐ろしくて一歩も動く事が出来なくなってしまうだろう。
けれど、私は違う。彼女を超え、頂点を目指す私ならば、この程度の気迫に圧されはしない。
でも、だからと言って、流石の私でも、今この状況を如何する可きか、答えは出ない。
そう、答えは出ないはずだった。だと言うのに、私の表情はあまりにも、あまりにも自然に、レース場で、ターフのラストスパートで、最後の最後まで頂点を目指し手を伸ばす時と同じ、彼女への激情を込めた顔を向けて見せた。
すると彼女は、一瞬感情の奔流を収めて破顔したかと思えば、私を両の腕で思い切り抱き寄せ、唇を一瞬で奪い去った。不意を打った先ほどよりも深く、深く。まるで自身を刻みつけるかのような口付けは、おおよそ"貴婦人"には似合わない乱暴なもの。いつしか唇を離して、それでも表情を変えなかった私を前に、彼女は本当に、本当に嬉しそうに微笑んだ。
「愛しているわ、ヴィルシーナ。貴女を」
彼女の瞳に映る"愛する私"というのは、レース場で彼女を見つめる私なのだろうか。貴方の背中を見続け、屈辱に塗れた私に対してこれほどまで乱暴な愛を向けるなど、一体何を考えているのか、今の私には全く理解できない。
彼女には、頂点に相応しい強さがある。速さがある。品格がある。誇りがある。美しさがある。気品がある。厳格さがある。そう、それらを兼ね備えた彼女が、ずっと自身の後ろに居た私にこれほどまでに暴力的な愛を向けるなど────。
だが、彼女について、そこまで理解していると言うのに、私が何故あまりにも自然に彼女の求めるままに激情を込めた表情を向け、何の抵抗も無く彼女の愛を受け入れたのか。
それもまだ、今の私には分からなかった。 - 3二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 00:26:53
と言った感じでずっとレースで突き刺すような激情を自分にぶちかましてくるヴィルシーナにびっくりするくらい心の底から惚れこんでしまったので思わず行動にでちゃったジェンティルドンナとそんな彼女に困惑しながらも彼女を理解しているからこそそれを何故か自然に受け入れてしまって実は自分も彼女を愛している事にまだ気づいていないヴィルシーナ
という大変複雑なジェンヴィルが見られると聞いてきたのですが - 4二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 00:27:36
ああ、良いもの見させてもらったよ
- 5二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 00:29:19
もうほぼ書いとるやんけありがとう
- 6二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 00:29:42
お前店開け
- 7二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 00:30:38
これはおかわりが欲しいのサインだよ
- 8二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 00:33:11
シェフを呼んでくれたまえ
とても良い品だった… - 9二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 00:41:48
- 10二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 00:56:28
付き合ってるのに二人で一緒に居ると周りの体感温度が5℃くらい下がりそうなジェンヴィル良き
- 11二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 09:08:19
自分に屈しないタイプの子が好みの貴婦人マジ貴婦人
- 12二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 09:15:44
良いものを見た
誰か俺にもっとジェンヴィルを浴びさせてくれ - 13二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 09:33:04
- 14二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 18:17:55
分かってないのに分かってる行動が出ちゃうの良いよね(語彙)
- 15二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 01:22:51
すみません、ここに来れば
「お隣、よろしいかしら」
「……どうぞ」
不意に頭上から降ってきた他を圧倒する威厳に満ちた、かつ実に嬉しそうな雰囲気を纏った言葉。私は声のする方に振り向くでもなく、目の前に並んだ彩り豊かで栄養満点のランチと向かい合ったままその声に応えた。
彼女が現れれば、ここがトレセン学園の憩いの場である食堂であっても周囲のウマ娘に多少の緊張感が過ぎる。この学園に絶対強者たるウマ娘はそれなりに在籍しているが、その存在に纏わり付く緊張感は様々だ。
とは言え、ターフで何度も刃を交えた相手の纏う緊張感というのは、イヤでも身体が覚えてしまうもの。それが敗れた相手ともなれば尚更だ。その上、彼女────ジェンティルドンナはこの昼時の喧噪にも関わらず私の姿を目ざとく見つけ、真っ直ぐ私の隣にやってくる。今更その声の主が誰なのかなど、最早確認するまでも無かった。
「では、失礼?」
ともすれば冷徹とも取られそうな私の態度に対し、威厳を保ちつつ嬉しそうに弾む声色を出せるのは彼女の才能なのだろうか。今日は随分と機嫌が良いらしい。とは言え、そんな日こそ油断は禁物だ。
「……っ!?」
掛けた椅子を不意にこちらへ寄せてきたと思えば、彼女の尻尾が私の尻尾を捉え、くるりくるりと絡め取る。腕力が強ければ尻尾の力も強いのか、そのままぐいと尻尾で私の身体を自身へ引き寄せてきた。
尻尾ハグ。ウマ娘同士の特別な親愛表現であり、罷り間違ってもこのような場でする事ではない。
全く以て油断も隙もありはしない。堪らず彼女を鋭く睨んでみたが、そんな私の視線を受け止めた彼女は大変満足げに微笑んでいた。
「あら、どうかなさって?」
「……公共の場では如何なものかと思いますわ」
一応咎めてはみるが、それで私の意思が通るならそれはジェンティルドンナでは無い。笑顔の裏側、瞳の奥に滾る感情が、今にも吹き出しそうになっているのが手に取るように分かる。
「────こうすれば、貴女は私の方を向いて下さるでしょう?」
そこで彼女は言葉を止めるが、その先に隠した言葉はだいたい分かる。
『貴女を私に振り向かせられるなら、場所の選択など取るに足らない事ではなくて?』
おおよそ、こんな所だろう。 - 16二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 01:29:46
「……どうぞ、お好きに」
「ふふふ……ええ、勿論そのように」
溜め息も交えて複雑な感情を込めた言葉にも、感情の奔流を口許から零して嬉しそうに笑う。随分と器用なもので、まるで手を握るかのように尻尾を動かし続け、手を繋ぐ恋人同士のように私の尻尾を絡め取りながら優しく撫でて来るのだから、始末に負えない。
先日のトレーニングルームでの一件以来、彼女は私の意識を、視線を、兎にも角にも自身へ向けないと気が済まなくなりつつある、ように思う。併走トレーニングのスケジュールに彼女の名前がずらりと載るようにもなったのは、正直どうかと思う事もあるのだ。
彼女と私の距離を推し量る事が出来るというメリットはあるものの、彼女の私に対するそんな我侭めいた感情に全身を滅多刺しにされ続けるのは堪える。死力を尽くしてハナ差で併走に勝利した時に至っては、息も絶え絶えの私に徐ろに近寄って来たと思えば唇を奪ってトドメを差してくるのだから手に負えない。
ゴールドシップとオルフェーヴルの二人から真剣な表情で彼女との関係について心配されるウマ娘など、学園広しと言っても私くらいなモノだろう。
詰まるところ、彼女の私に対する意識は理解しているので、私も積極的にアクションは起こさない。しっかりと絡み合ったままの私達の尻尾を食堂に集まったウマ娘達に晒す事になるが、致し方無い。まず間違い無くどんな状況に陥ろうが、彼女が互いのランチが終わるまで私を解放する気が無い事など、火を見るより明らかなのだから。
「……貴女、口許にソースが付いていてよ?」
「あら、それは失れ────」
挙句、ヴィブロスのような手を使って不特定多数の集まる食堂であっても不意に口付けを交してくるのようになったのだから、同じ立場にならなくても私の苦労が分かるというものだろう。
「ふふ、御馳走様」
「……どういたしまして」
相も変わらず威厳を失わず、相も変わらず嬉しそうに、怪訝な表情で睨む私を彼女の瞳は映していた。
だが、彼女を仕方なく受け入れているハズだった私の頬が口付けの度にほんのりと熱を持つようになり、剰え唇を伝って胸の奥に暖かいモノが灯るようになりつつあるのか。
それが何故なのか、私は未だ確信を持てずにいるのだった。 - 17二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 01:30:17
と言った感じで愛を告白して唇を奪って以降滅茶苦茶好き好きアピールして来るようになったジェンティルドンナを、諦め込みでこの間からこの人は全く何を的な目線で受け入れているつもりだったハズが尻尾ハグや口付けの度に少しずつ気付いてなかった自身の感情を刺激させられていくヴィルシーナ
という大変複雑なジェンヴィルが見られると聞いてきたのですが - 18二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 01:31:05
そこにあります!!!
- 19二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 01:36:30
- 20二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 04:21:05
良質なジェンヴィルは健康に良い
- 21二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 05:25:50
用法用量を守らない暴力的なジェンヴィルの過剰摂取は人を頃す
- 22二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 09:17:24
- 23二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 10:25:09
これ以上何を求めようと言うのか
- 24二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 10:45:43
ゴールドシップとオルフェーヴル目線の話も!!!ください!!!!!!!(強欲)
- 25二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 11:05:19
自給自足しててすごくすごいです
どうせ釣りだろと思って開いたのにおこぼれを貰ってしまって寧ろ申し訳ないと申しますか - 26二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 16:18:04
これはアレか、尻尾ハグ見せつける事で他のウマ娘にアピールしてる訳だ
(やる命知らずが居るかはさておき)ヴィルシーナに誰も手出し出来ないように - 27二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 01:44:26
ほしゅ
- 28二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 01:52:21
すみません、ここに来れば
「……」
誰しもその日その時の調子や何かで機嫌不機嫌というモノがあるが、少なくとも今日この時のジェンティルドンナに関して言えば、恐ろしく不機嫌であると言って差し支え無いだろう。そして、彼女程の圧倒的な実力者が滲み出る負のオーラを纏っていたならば、周囲のウマ娘の反応も推して知るべしと言える。
「ね、ねえトレーナー=サン……」
「ウム。今日は屋内での筋力トレーニングにチェンジだ、モブガヤエキストラ=サン。身体が元気でも首を刎ねれば死ぬ、ミヤモト・マサシの残したコトワザである。今日は耐えるのだ」
「アイエエェ……」
君子危うきに近寄らずとはこの事である。この時期のターフグラウンドは予約の倍率も高いというのに、これでは流石に可哀想と言うものだ。
回れ右でグラウンドから帰って行ったウマ娘とトレーナーを遠目に見送りながら、急遽本日の併走相手に抜擢されたウマ娘が溜め息交じりに口を開いた。
「ドンナちゃんさぁ、そろそろ機嫌直してくれても良いんじゃねーの?」
「あら、ゴールドシップ。この私が、併走相手がトレーニング直前に突然変わった、その程度の事で機嫌を損ねているように見えて?」
「いやどう見たって不機嫌じゃねーかよ」
ゴールドシップに対し、彼女は微笑みながら応えてはいたが、突き刺すような鋭い瞳と共にナイフのような切れ味を纏った言葉を向けられては流石のゴールドシップも何と対応したものかと考えあぐねているようだった。
とは言え、ジェンティルドンナの不機嫌の原因はハッキリしているので、解決しようと思えば出来なくもなかった……の、だが。
「さあ、こうして話しているだけではトレーニングの時間を無駄にしてしまうわ。始めましょう、ゴールドシップ」
「へいへい……」
結局、ジェンティルドンナに促され、ゴールドシップは肩を落としつつまずはウォームアップに取り組むのだった。
そも、事の起こりはと言うと、連絡の行き違いである。本来なら、ジェンティルドンナの併走トレーニング相手は今日もヴィルシーナであるハズだった。
だが、ヴィルシーナは本日休養、授業が終わってからシュヴァルグランとヴィブロスを伴って街へ繰り出して行った。ここまではよくある事だし、ジェンティルドンナもヴィルシーナの姉妹仲については承知している。
- 29二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 01:55:10
ただ、この件が事前にジェンティルドンナに伝わっていなかったのが悪かった。ジェンティルドンナからすれば、ターフコースで自身を待っているハズのヴィルシーナが居らず、その場で初めてヴィルシーナの本日不在を聞かされた形になったのである。これが、彼女の逆鱗に触れてしまった。
たかだかライバルとの行き違いくらいで……と思う事かもしれないが、今のジェンティルドンナとヴィルシーナの関係を知っていれば、そんな事は口が裂けても言えないのは、ゴールドシップでも知っている。
「さて、想定は阪神レース場、芝2200m右回り。よろしくて?」
「ん?……おう。いつでも行けるぜ」
「……グランプリの栄誉、いつまでも貴女に独り占めさせる訳にはいきませんものね?」
「ほっほぉ、言ったな? そういう事なら、受けてやるよ」
不敵な笑みを向けるジェンティルドンナに対し、ゴールドシップも挑戦的な笑みを返す。どうやら併走トレーニングに集中する事で、彼女も多少は機嫌が上向いたようだ。それを察したゴールドシップは、内心安堵の溜め息。
実はな、ココだけの話ゴルシちゃんさ、前同じような事があった時に『そんなに会いたきゃ今からヴィルシーナ一本釣りしてきてやろうか? ゴルシ様にかかればあの三姉妹を見つけ出すのはアサリの真珠を見つけるより簡単ってモンよ!』と大手を振った事があったんだよ。そん時のドンナの笑顔と来たら、これが激マブ用語で言う所の100万ドルの笑顔ってヤツかぁ、って思わず感動したっけ。
ま、同時に『あ、ゴルシちゃん死んだわ』とも思ったんだけどな。
ホラ、『ウマ娘ちゃんとウマ娘ちゃんの間に挟まる輩は問答無用でキリステ・ゴーメン』ってデジタルのヤツがよく言ってるだろ? 多分その手の地雷原でマイケル・フラットレーしちゃったんだなって。ゴルシちゃん反省♪
とは言え、あんな恐ろしい目に遭うのは二度と御免被るので、一先ずゴールドシップはジェンティルドンナの挑発に乗り、芝2200mを揃って全力で掛けていくのだった。
その後、連絡の行き違いを知ったヴィルシーナがお出かけから帰った後態々ジェンティルドンナに愛に……じゃなくて会いに来たらしく、ジェンティルドンナはすっかりご機嫌な様子だった、とゴールドシップは自身のトレーナーにぽつりとこぼしたと言う。 - 30二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 01:55:44
と言った感じで併走トレーニングの相手が事前連絡無しで急にヴィルシーナから別の子に変わった時だけ恐ろしく不機嫌になるジェンティルドンナと、そのせいで死ぬ思いをした事があるので迂闊な事はせず真面目に対応するゴールドシップ
という割と愉快なジェン(ヴィル)+ゴルシが見られると聞いてきたのですが - 31二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 02:14:09
アッアッ゛アッアア゛!!!!!!!!!!!💥💥💥💥💥(最高です!!めちゃくちゃ好きです!!!!!)
- 32二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 02:16:46
このレスは削除されています
- 33二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 03:18:25
これは良質なジェンヴィルスレ
ゴルシちゃんもカップルに巻き込まれてかわいそかわいい