優秀な住宅営業マンを見極めるポイントとは(写真:TY/PIXTA)

注文住宅成功のカギを握っているのは、担当の住宅営業マンと言っても過言ではありません。レベルの低い住宅営業マンが担当についてしまうと、品質的にも金銭的にも、最終的に施主側が損をしてしまうリスクが高まります。

書籍『初めてでも失敗しない 家づくり超攻略法』の著者で、元大手ハウスメーカー勤務の住宅営業マン時代、全国トップの成績を獲得したこともある住宅系YouTuber・まかろにおさんが、優秀な住宅営業マンを見極めるポイントについて解説します。

担当営業によって家の「すべて」が左右される

注文住宅による家づくりは、担当営業によって家の性能と金額が決まり、担当設計士によって家の出来が決まり、担当工務によって家の質が決まります。そして、最初の窓口となる営業マンによって、担当設計士と担当工務が決まるので、結果的に、担当営業のレベルによって、すべてが左右されるのです。


(図版:Isshiki)

「担当営業によって家の性能が決まる」というのは、主に断熱・気密性能に関することです。リテラシーの低い営業マンに当たってしまうと、夏は暑くて冬は寒い、光熱費がかかる家になってしまう可能性が高まります。気密性能に関しても同様で、積極的に取り組んでいる営業マンと、そうでない営業マンがいます。

金額面に関しても、担当営業マンが社内外にどれだけ顔が利くか、または、どれだけ施主のことを真剣に考えて配慮できるかどうかで異なってきます。実際、私も営業マン時代、一部のキッチンメーカーから特別に値引きをしてもらっていました。このようなことは私に限ったことではなく、信頼と実績のある営業マンなら、誰でもあり得ることです。

一方、信頼も実績もない営業マンは顔が利きません。そうなると、価格調整の協力を得られず、結果的に施主側が損をすることになります。

これから家づくりをする多くの方が、「とりあえず住宅展示場に行ってみよう」と考えるでしょう。ただし、それには大きなリスクがあることを知っておく必要があります。そのリスクとは、担当営業マンが固定されてしまうということです。

実は、優秀な営業マンほど展示場には待機しておらず、オンラインで打ち合わせを済ませています(展示場には、コピー機を使いに寄る程度になっているというのが実情です)。

そのため、展示場には、基本的には若手か、あるいは手の空いている営業マンしか待機していません。また、展示場に行くと必ず、アンケートという名目で個人情報の記載を求められますが、これに個人情報を記載すると、そのとき目の前にいる営業マンが自分の担当営業になります。

ハウスメーカーによっては、最初にアドバイザーと呼ばれるスタッフが接客し、アンケートの記載を促した後、隣室で控えている住宅営業マンにバトンタッチするという方式を取っているところもあります。


(イラスト:ひらのんさ)

いずれにせよ、一度でもアンケートに個人情報を記載してしまうと、担当営業マンが決まってしまうということです。「改めて違う展示場に行けば、別の営業マンを担当にできるのでは?」と思われる方もいるかもしれませんが、あまり期待はできません。一度でもハウスメーカー側に個人情報を渡してしまうと、データベースに登録され、最初に接客を受けた営業マンから逃れることは難しくなります。

だからこそ、最初に住宅展示場に足を運ぶのはNGで、家づくりを成功させるための進め方は、下記の通りとなります。

① 基本的な住宅の知識(構法など)を施主が身につける
② ハウスメーカーを複数社に絞る
③ 優秀な住宅営業マンを担当につけてもらう

しかしながら、住宅営業マンの紹介サービスなどを利用せず、自分で営業マンを見つける場合や、すでに何かしらの方法でハウスメーカーと接触してしまった方は、自分で優秀な営業マンを見極めるしかありません。そこで、営業マンを見極める指標を、ここで3つご紹介します。

営業を見極めるポイント①過去の営業実績

まず確認してほしいのは、その営業マンの過去の営業実績です。

やはり、ある程度の経験値を積んでいないと臨機応変に対応できませんし、社内外でうまく立ち回ることもできません。特に、社内でうまく立ち回れるかどうかで、巻き込める設計士のレベルが変わります。また、社外での立ち回り次第で、金額を多少安くすることも可能になります。そのため、まずはその営業マンが過去に何件成約をしたことがあるのか、これは必ずきいておきましょう。

ただし、注意点が2つあります。1つ目は、過去の営業実績が良くても、必ずしも優秀とは限らないということです。時代は移り変わります。過去にたくさんの家づくりに携わっていても、日々新しいことを柔軟に学び、アウトプットし続けていなければ、過去の栄光にすがるだけの営業マンになってしまいます。

2つ目の注意点は、肩書きがあるからといって優秀とは限らないという点です。どの業界・会社でもそうですが、社内政治でうまく出世していくタイプの人は数多くいます。そういう人は家づくりに対して特にこだわりはなく、売れれば良いと考えていることが多い場合があります。これらのことに注意しつつ、過去の実績を、営業マンを見極める一つの指標としましょう。

営業を見極めるポイント②案内できる物件があるか

営業マンを見極める指標の2つ目が、案内できる物件があるかどうかです。その営業マンが、今までに契約した施主の自宅を案内できるかどうか、ということです。

施主にとって、完成した自宅が満足のいく内容になっていて、なおかつ担当営業マンに感謝している状態でない限り、入居中の自宅を見学させてくれることはありません。そのため、これまで適当な家づくりをしてきた営業マンは、まったくと言って良いほど、今まで契約した施主の自宅を案内することができないのです。

そのような営業マンが担当になると、建売現場か、あるいは別の営業マンが担当した物件を見に行くことになります。一方、優秀な営業マンほど、自分が契約した施主の自宅を案内する場合が多いです。そうすることで、営業マンではなく、そこに住む施主自身が自宅の魅力を語り、こだわった部分などを説明してくれるので、説得力も増します。


(イラスト:ひらのんさ)

私は今まで全国各地の住宅営業マンと交流してきましたが、これはどのハウスメーカーでも共通しています。ですので、担当営業マンに「今までご自身が契約した物件で見学できる場所はありますか」と、きいてみると良いでしょう。

また、実例宅の見学は、その営業マンと今後の打ち合わせをしていく際の共通言語にもなります。たとえば、間取りの広さに関して、畳数で説明されてもいまいちピンとこないと思いますが、実例宅をいくつか見学していれば「あのとき見学した〇〇さんの家と同じ広さ」といった具合で営業マンとコミュニケーションが取れます。

営業を見極めるポイント③話に根拠があるか

営業マンを見極める指標の3つ目が、話に根拠があるかどうかです。

住宅営業マンは、昔から気合・根性・勘で仕事する文化が根強く、根拠のない「大丈夫です」「問題ありません」「十分です」という言葉を多用する傾向があります。

本当に問題ないなら良いのですが、たとえば、標準的な断熱仕様が明らかに劣っているにもかかわらず「大丈夫です!」と言ってみたり、アルミ樹脂複合サッシと樹脂サッシの特性もよく理解していないのに、「アルミ樹脂複合サッシで問題ありません!」と言ってみたり……。一歩間違えれば、これから家を建てる人に多大な迷惑をかけるような発言を、安易にしていることもよくあります。


(イラスト:ひらのんさ)

本来ならば、ハウスメーカー側がきちんと仕組みをつくり、営業マンの教育をしっかり行っていればいいのですが、現状、多くのハウスメーカーではそうなっていません。さまざまなしがらみがあり、なかなか難しいようです。


近年では、インターネットの発展も手伝い、営業マンのリテラシーもだいぶマシにはなってきましたが、それでも日々学ばない人や、ただ家を売ることだけにフォーカスをしている人などは、話に根拠がない傾向があります。 

もし、担当営業マンが自分たちの質問に対し、納得できる根拠もなく、押し切ろうとしてきた場合は、十分な注意が必要です。

そのような状況になってしまったら、施主自身が勉強して、住宅営業マンをリードするしかありません。

(まかろにお : 住宅系YouTuber )