11月から、ちょいとリアルが多忙を極めております。
毎日18:00投稿は守っていきたいのですが……場合によっては遅れたり、短くなったりするかもしれません。
申し訳ありませんが、ご了承くださいませ。
先にしかけたのは灰燼だった。
たったの一息。
その間に数百の斬撃が飛んでくる。
それら一撃一撃が掠っただけで即死の攻撃。
僕は思わず頬を吊り上げ、拳を振り抜く。
「【
瞬間、僕の拳から放たれたのは岩の衝撃波。
それは姿を変え、地竜アラガマンドの姿を取る。だが、今回はソレで終わりではない。
地竜が燃え上がり、紅く染まる。
轟々と燃え盛り、それを見て目を剥く灰燼に。
僕はたった一言、呟いた。
「燃え尽くせ――
『ガァァァァァァァッッ!!』
衝撃が空気を裂く音が、炎竜の咆哮のように聞こえた。
それを前に、全ての斬撃は飲み込まれ、消えてゆく。
正確に言えば……燃やし尽くされてゆく。
その光景に歯噛みした灰燼は、刀から手を離し、前方へと手を伸ばす。
それに思わず顔を顰めた僕は……次の瞬間、猛烈な嫌な予感に突き動かされた。
「【千却万雷】」
そして、声が響いて。
僕の目の前で、炎竜が跡形もなく掻き消えた。
「ぐ……っ」
咄嗟にその場を飛び退くと、僕のいた場所を10本近い刀が串刺しにした。
そのうちの数本は燃えて原型を失っていたが、それでもあまりある脅威。
というか、炎竜をたったの10本で相殺できるこの威力……頭おかしいと思います!
「このやろ……」
「『千却万雷』」
上空から飛来する無数の刀。
それらを最小限の動きで回避しつつ、奴へと向けて一歩踏み出す。
……この男と戦う上で、近接戦闘は何よりの悪手に見える。
刀に触れるだけで発動するリーチ無限の居合。
その速度は目にも追えぬほど。
真眼を使ってようやく捉えることが出来るレベルだ。そんなもんを至近距離から放たれれば……回避するのは至難の業。
と来れば、遠距離から距離を置いて戦うのがベスト……と、普通ならそう考える。
だが、戦って見たらわかるさ。
この男に関して、距離を取るなど無意味極まりない行為である、と。
確かに攻撃は回避しやすくなるだろう。
だが届く。
回避しやすくなったにせよ、攻撃は届くのだ。
どれだけ距離を取ろうと……下手をすれば、地球の反対側にいようと刃が届くのかもしれない。
そんな化け物相手に距離で戦おうという輩など、余程遠距離攻撃に自信のある奴くらいだろう。
でもってこの僕、灰村解。
生まれてこの方……まぁ、遠距離攻撃が出来た時期もあったけれど、そんな器用なことが出来るほど優れちゃいない。
多才であれど、多彩には追いつかない。
現実は残酷で、できること、できないことはハッキリと明確化されている。
その中で、僕にできること。
死んで、冥府で鍛え上げ。
生き返ってからも、走り続けた。
鍛え続けた、この拳で、この脚で。
ただ、思いっきり殴り、蹴り捨てる。
それだけしか、僕にはできない。
なら、迷うことなく前を向け。
恐怖を拭って、走り出せ。
「『
全身を覆う鎧が弾ける。
と同時に無数の斬撃が僕へと迫った。
掠れば、死。
その事実に歯を食いしばり、僕は目を見開いて大地を駆けた。
「【深淵犬ケルベロス】」
足の筋肉が一気に肥大化する。
深淵犬ケルベロス。
神霊デスサイズに次ぐ、深淵屈指の守護者。
その強さは速度と攻撃力に特化しており、こと速度に関してだけいえば……あのボイドとも戦える。
そして、これだけでは終わらない。
こいつの力は借りたくなかったが……もう、そんなことを言ってられる状況でもない。
「【
特異世界クラウディアの影響で、悪しき変化を遂げてしまった白い塊。
その見た目は……まぁ、Gのようにも見えるけれど、その本質はその甲殻にある。
腕を、脚を、白い甲殻が包み込む。
それはまるで軽鎧のよう。
全身を包む黒い毛並みに。
白銀色の軽鎧。
僕が最も――【速度】に特化した状態だ。
「フッ――――」
一気に加速。
視界が一息で切り替わる。
あまりの速度に真眼すら対応が遅れる。
それでも遅れたのはコンマ1秒足らず。
一瞬で僕は灰燼の目の前まで迫り。
そして、奴が反応し、目を見開くより先に右脚を振り抜いた。
「【
それは、寸分たがわず奴の胴体を蹴り抜いた。
一瞬遅れて衝撃が轟き、灰燼の口から大量の鮮血が吹き上がる。
「謝るよ、もう。一切の手加減はできない」
カッコイイことも言いっこなしだ。
ただ、少しでも手を抜けばこっちが殺される。
そう直感した。
だから、もう手は抜かない。
全身全霊……お前を【倒す】という気概じゃまだ届かない。お前を確実に【殺す】覚悟で、僕はお前に挑むとするよ。
「行くぞ格上。これが陰陽師、灰村解の全力だ」
僕の言葉に、たたらを踏んで……それでも男は踏みとどまった。
その腹へと飛び蹴りをかます。
直撃を受けた男から、悲鳴にもならない声が上がる中、僕は足の甲殻から気圧を噴射する。
遥かなるGの能力。
それは圧倒的な防御力と、気圧噴射によるジェット加速。
胴を中心に回転すると、勢いそのまま右足で回し蹴りを叩き込む。
そして、そこに加わるのが、ケルベロスの純粋無垢な脚力だ。
「……ッ」
死を予期したか、灰燼は咄嗟に鞘で回し蹴りを防御する。
それでも突き抜けた衝撃は刀を壊し、その体を大きく吹き飛ばしてゆく。
既に、その体には多くのダメージが溜まっている。
人間、3日間では傷は癒えない。
前回の戦いから引き継いだ傷に加えて、今回、僕は多くのダメージを与えたと思ってる。
いくら強くても……そろそろ、お前も僕のレベルまで【堕ちてくる】時間だろう。
「悪いとは思うよ」
ただ、一切の容赦はしない。
殴り。蹴り。
無数の乱打に、灰燼は刀で攻撃を防御する。
それでもあまりある威力は、確実に男の体内へとダメージを蓄積させて行ったが。
「はぁっ、はぁっ……ッ!」
荒い息と、鋭い視線に気が締まる。
……それでも、決定的な一打だけは確実に回避している。
それを理解しているからこそ、一切の油断も僕の中には存在しなかった。
「らぁッ!!」
僕の懇親の右ストレート。
それを柄で防御した灰燼は、数メートル吹き飛ばされ、それでも膝を屈することなく耐え忍ぶ。
「……なにが、お前を――」
既に、死んでいてもおかしくない傷だ。
にも関わらず、この男から迸る闘気はなんだ。
何がこの男を、ここまで強く突き動かす。
思わず問うたが。
少し考えれば、自ずと言葉が導き出せた。
「お前、爺ちゃんのことを……」
僕は思わず呟いて。
次の瞬間、奴の全身から想力が湧き上がる。
「お前が……何を、背負って立つのかは……分からない。けれど、断言できる。君の想いは、僕の願いには敵わない」
この男の願い。
それは、たった一人の男を救うこと。
それ以外の全てを捨てたとしても。
全てを敵に回したとしても、救う覚悟がこの男にはある。
その姿に……僕は、嫌悪感すら抱いた。
カッコ良さなど微塵もない。
その姿は、ただ無様。
何者にもなれはしない。
お前はただ、自分も皆も全て不幸にして自爆するだけの病巣だ。
「うるせぇよ、意気地無し。助けたいとほざくなら、手ぇ伸ばしてから言いやがれ」
地面に零れる水を、お前は見捨てようとしている。
拾えるかもしれないそれを。
助けられるかもしれない一滴の水を。
お前は見送り、新しい水をコップに注ごうとしているだけ。
僕はそれが、とても気に食わない。
僕は思わず牙を向き。
男は、相も変わらず諦めきった瞳で覚悟を告げる。
「そうかい。じゃあ、死んでくれ」
そして、男は居合の構えをとった。
瞬間、溢れ出したのは膨大な想力。
知覚したのは、常軌を逸した量の【刀】。
斬撃ではなく、本物の刀。
防御不可避のチカラの塊。
それが、視界を埋め尽くすほどに召喚され、僕の方へと飛ばされた。
「――ッ!?」
防御は……まず不可能。
回避以外に道はなく。
僕は、
そう。動き出した。
その、刹那。
僕は、僕の第六感に強く突き動かされた。
僅かな【視線】を感じて背後を振り向く。
目は、限界まで見開かれていたかと思う。
……そうさ、現実は残酷だ。
都合のいいことなんて起こりはしない。
こういう時。
必死になって戦う僕らへ。
僕が振り向いた先で。
それを見た、その瞬間。
僕は、毒提灯の憑依を、解除した。
僕が守るべきもの。
僕が、成すべきこと。
そんなもんは決まってる。
黒歴史ノートを葬ること。
僕の過去を、秘匿のまま守り通すこと。
そうに決まってる。
そうだ。
それ以外は見捨ててしまえ。
少なくとも、僕はそう思う。
「…………そう、思ってた、のになぁ」
胸に、鋭い痛みが弾けた。
身体中から鮮血が舞う。
目の前には、僕を見あげる子供たち。
その瞳には涙が映ってはいたけれど。
傷一つない彼らの姿に、僕は笑って大地に倒れた。
僕の全身には、無数の凶刃が突き刺さっていた。
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