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忙しすぎて間に合わなかったので、分割投稿します。

後半は後ほど投稿予定!

第四章【禁忌の劫略者】
430『守るべきもの』

簡単な話だったんだ。

なにも、迷うことは何も無い。


ただ、僕が何を望んでいるか。


僕がどうしたいのか。

それだけを考えればよかった。


両手を見下ろせば、今でも震えが収まらない。

父親をこの手で刺したこと。

この感触を、僕は一生忘れないと思う。

それだけ、あの一件は僕の中で大きかったし。


親殺しにこれだけの影響を受けている僕自身が、僕の望みを何より忠実に示していた。



「父さんを、守る」



刀を握る。

震えを押し殺し、前を向く。

親指の先で鍔をせり上げて、重心を下げて異能を放つ。



「『千却万雷』」



「……ッ!?」


その一撃に、少年は焦ったようにその場を回避する。

あぁ、正解だと思うよ。

今の僕は、かなり強いと思うから。

もう、恐れることは何もない。

今の僕が誇る全身全霊を賭けてでも、外道に落ちる覚悟は済んだ。


ありがとう、灰村解。

君のおかげで、僕は父さんの顔に泥を塗れる。



「たとえ、望まれていなくとも」



僕は、あんたに生きて欲しいんだ。

代わりにどれだけの人が死のうとも。

目の前の少年を……殺すことになったとしても。


たとえ助けを求めて手を取ったのが、悪魔だっていい。

アンタが生きてくれれば、僕はそれでいいんだ。




☆☆☆




「くっそ……!」


あまりの変貌に、僕は苛立ち混じりに廃墟を駆ける。

上空から飛来する無数の刀。

それらが僕の駆けた大地を一瞬遅れて串刺しにし、駆けた側から崩壊させてゆく。


あまりの速度、あまりの威力。

間違いない……僕と戦ったあの時よりも、さらに速く、強くなってやがる。


「何がどうなって……!」


僕は近くの廃墟に滑り込み、息を潜める。

荒くなった息を整え、気配を消して奴の位置を探ってゆく。

鋭く尖った第六感は、いとも簡単に灰燼の居場所を割り出した。



と同時に、僕に絶望を教えてくれた。



「【千却万雷】」



廃墟の壁越しに、そんな声が聞こえた気がした。

瞬間、僕が身を潜めていた廃墟は粉微塵に切り刻まれて、僕の体もまた木っ端微塵に崩壊して行く。


だが、ここで発動される【泡沫】技能。


僕の体は完全状態へと逆戻りし、それを見た灰燼は刀を片手に僕へと言った。


「これで、もう【次】はない」

「クソッタレめ……」


泡沫技能は最強の防御技能だ。

だが、強すぎるあまり相応の【クールタイム】が必要になってくる。

そしてそれは、たった一度の戦闘の中で回復するようなものでは無い。


「……まぁ、いいさ。これで、僕も腹を括って本気で挑める」


次に喰らえば、僕は死ぬ。

あまりにも大きすぎるリスクを前に、僕は、鎌を構えて獰猛に笑う。

ならば僕も、相応の【凶器】を携え、お前に挑もう。



「【限定憑依(リミット・オン)】――神霊(デスサイズ)×地竜(アラガマンド)



僕の体を、岩の鎧が包み込む。

それは紅蓮の炎に焼かれて変質。

真っ赤な血色の鎧となって顕現した。


これは諸刃の剣……()()()()()()()()()


僕の姿に、奴は静かに刀を構える。

それに対し、僕は拳を握って奴へと向き合う。



「さぁ……これが最後だ」



始めようか、僕らの終わりを。


僕とお前の戦いの、終止符を打つ。

今度こそ……今、此処で。



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