忙しすぎて間に合わなかったので、分割投稿します。
後半は後ほど投稿予定!
簡単な話だったんだ。
なにも、迷うことは何も無い。
ただ、僕が何を望んでいるか。
僕がどうしたいのか。
それだけを考えればよかった。
両手を見下ろせば、今でも震えが収まらない。
父親をこの手で刺したこと。
この感触を、僕は一生忘れないと思う。
それだけ、あの一件は僕の中で大きかったし。
親殺しにこれだけの影響を受けている僕自身が、僕の望みを何より忠実に示していた。
「父さんを、守る」
刀を握る。
震えを押し殺し、前を向く。
親指の先で鍔をせり上げて、重心を下げて異能を放つ。
「『千却万雷』」
「……ッ!?」
その一撃に、少年は焦ったようにその場を回避する。
あぁ、正解だと思うよ。
今の僕は、かなり強いと思うから。
もう、恐れることは何もない。
今の僕が誇る全身全霊を賭けてでも、外道に落ちる覚悟は済んだ。
ありがとう、灰村解。
君のおかげで、僕は父さんの顔に泥を塗れる。
「たとえ、望まれていなくとも」
僕は、あんたに生きて欲しいんだ。
代わりにどれだけの人が死のうとも。
目の前の少年を……殺すことになったとしても。
たとえ助けを求めて手を取ったのが、悪魔だっていい。
アンタが生きてくれれば、僕はそれでいいんだ。
☆☆☆
「くっそ……!」
あまりの変貌に、僕は苛立ち混じりに廃墟を駆ける。
上空から飛来する無数の刀。
それらが僕の駆けた大地を一瞬遅れて串刺しにし、駆けた側から崩壊させてゆく。
あまりの速度、あまりの威力。
間違いない……僕と戦ったあの時よりも、さらに速く、強くなってやがる。
「何がどうなって……!」
僕は近くの廃墟に滑り込み、息を潜める。
荒くなった息を整え、気配を消して奴の位置を探ってゆく。
鋭く尖った第六感は、いとも簡単に灰燼の居場所を割り出した。
と同時に、僕に絶望を教えてくれた。
「【千却万雷】」
廃墟の壁越しに、そんな声が聞こえた気がした。
瞬間、僕が身を潜めていた廃墟は粉微塵に切り刻まれて、僕の体もまた木っ端微塵に崩壊して行く。
だが、ここで発動される【泡沫】技能。
僕の体は完全状態へと逆戻りし、それを見た灰燼は刀を片手に僕へと言った。
「これで、もう【次】はない」
「クソッタレめ……」
泡沫技能は最強の防御技能だ。
だが、強すぎるあまり相応の【クールタイム】が必要になってくる。
そしてそれは、たった一度の戦闘の中で回復するようなものでは無い。
「……まぁ、いいさ。これで、僕も腹を括って本気で挑める」
次に喰らえば、僕は死ぬ。
あまりにも大きすぎるリスクを前に、僕は、鎌を構えて獰猛に笑う。
ならば僕も、相応の【凶器】を携え、お前に挑もう。
「【
僕の体を、岩の鎧が包み込む。
それは紅蓮の炎に焼かれて変質。
真っ赤な血色の鎧となって顕現した。
これは諸刃の剣……
僕の姿に、奴は静かに刀を構える。
それに対し、僕は拳を握って奴へと向き合う。
「さぁ……これが最後だ」
始めようか、僕らの終わりを。
僕とお前の戦いの、終止符を打つ。
今度こそ……今、此処で。
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