原神もfgoも、何故かピックアップ以外の星5が当たる作者です。
まず最初に言っておくことがある。
それは、今回の僕の成長は、『覚醒』とか『進化』とか、そういったものでは無いということだ。
この3日間、深淵で何度も何度も奴らに挑み、その度に負けて泥を浴び、岩に噛みつき、それでも戦い続けた。
その末に身につけた、驚異的なレベル。
それと、闇の王や限定憑依の酷使による強制スキルレベルアップ。
まぁ、言ってみれば習熟して少し強くなって、神力の消耗が減った、って感じかな。
まぁ、つまり、何が言いたいかって言うと。
「別に、できることが増えたわけじゃねぇんだよなぁ……!」
無数に繰り出される刀の嵐。
それを何とか躱しながら、僕は廃墟の中へと身を潜める。
と同時に、なんの躊躇いもなく廃墟丸ごと灰燼に帰すバカ侍。
「おいこら! 危ねぇだろうが! 廃墟の中に人が住んでたらどうすんだ!!」
住んでねぇとは思うけど!!
仮に近所の小学生が『秘密基地だー!』とか言って紛れ込んでたらどうすんだ!
僕はそう叫ぶと、灰燼はヤケクソ気味に叫んで返す。
「う、うるさいでござる! もう、この手は汚れてしまった……もう、人殺しがなんでござるか! 間違って殺してしまったのなら、蘇らせればいい! あの男ならそれが出来る!!」
あの男……鮮やか万死のことか。
僕は奥歯を噛み締める。
あの男の力――【
あらゆる死に介入する力。
確かにそれなら、死人を甦らせることだって出来る……
だけどなぁ、灰燼。
「お前、本当にそう思ってんなら、此処で腹切って死んじまえよ」
僕の言葉に、奴は大きく震えた。
死ぬとか、殺すとか。
簡単に口にすんじゃねぇよ。
言ってもいいのは、1度でも死んだ覚えのあるやつだけだ。
だから、僕はシオンに対しちゃ何も言わない。1度ならず2度も死んで、それでも『
だけど、お前は違う。
僕ら拳を握り締める。
と同時に、天戒を発動する。
「【
僕の全身を紫色の毒が包む。
と同時に、僕は地面の中へと潜り込む。
これが、毒提灯グレアスの【潜水】という力。彼の力を憑依した時だけに使える、
僕はそのまま地面を移動。
灰燼の背後まで移動すると、浮上と同時に拳を振るう。
「はぁッ!」
「ぐ……ッ!?」
咄嗟に刀の柄で受ける灰燼。
彼はすぐさま居合の構えを取るが、それよりも先に僕は回し蹴りへと移行している。
「チェンジ・限定憑依――地竜アラガマンド!」
紫色の毒の衣から、岩の鎧へ。
一瞬で僕の体は切り替わり、強烈で重い回し蹴りが彼の体へと叩き込まれる。
その体は大きく吹き飛ばされてゆくが……くそっ、
「……未熟」
まだまだてんでダメだ。
もっと鋭く、もっと速く、的確に。
一撃で仕留めるつもりで動け、灰村解。
でなけりゃ死ぬのはこっちだぞ。
「【
岩の鎧が光と消えて。
僕の全身から、煉獄の炎が吹き上がる。
深淵竜ボイドを除き、深淵最下層最強の守護者。ありとあらゆるものを狩る死神、神霊デスサイズ。
僕の手に炎が凝固し、大鎌が作り上げられる。
それを見て、灰燼の侍は喉を鳴らす。
「……お前がまだ喋れる間に、一つ聞く。万死のクズはどこに行きやがった?」
「……そ、それは」
僕の問いに、灰燼は一瞬だけ、ある方向へと視線を向けた。
その方向へと視線を向けると……崩壊した廃墟と木々の隙間から、僅かに街並みが見て取れた。
あの方角……なるほど、やっぱり学校に向かいやがったか。
僕は大きく息を吐き、そして、笑った。
「なるほどな……あの馬鹿、よりにもよって
「……最悪、でござるか」
腰の刀に手を添えたまま、男は漏らす。
「戦闘中に強くなる。たった3日でここまで成長する。……そんな貴様より最悪の相手など、想像もつかないでござるが」
「だとしたら、お前の世界は幸せだな」
でもって、僕の世界は残酷だ。
なぁ、知ってたか、灰燼の侍。
そして、鮮やか万死。
僕の仲間に、僕はついぞ一度も勝ったことがないんだぜ。
僕は、街の方向から視線を逸らす。
改めて灰燼へと視線を戻すと、大鎌を下段に構えた。
「ボイド……は、バカ正直に校門の前で構えてるだろうし、シオンは馬鹿だから一週間後を信じてるよな。六紗も同じく、僕の言葉を疑わない」
疑うとしたら……
僕は苦笑し、大鎌を強く握りしめる。
おい、ナルシスト。
どーせ、お前が出張ってきてんだろ。
全く、少しは『素直に人の言葉を信じる』ってことを覚えて欲しいもんだけれど。
一応……ありがとうと、そう言うよ。
僕が中二病に感謝だなんてらしくもないし。
あんな野郎に二度と感謝なんてしたくもないが。
お前のおかげで、今、この男に集中出来る。
「さぁ、話は終いだ。殴られる覚悟は出来たか、灰燼」
僕はそう言うと、男は歯を食いしばり、居合の構えを取った。
☆☆☆
いつも、その背中を見ていた。
その少年は、強かった。
その少年は、優しかった。
言葉も態度も厳しいけれど。
その根底には、気遣いがあった。
ありがとう、灰村くん。
君は僕を友達なんて認めちゃくれないかもしれない。
だって、僕は元々敵だったんだから。
だけどね、灰村くん。
少なくとも、僕は君の親友になりたいと思うよ。それだけのものを、君に教わり、君に貰った。
返しても返しきれないほど大きな恩。
その一部にしかならないだろうけれど。
この男の首を持って、君への恩返しの第一歩としようと思う。
「【僕らの周囲に、一般人は近寄れない】」
僕の言葉を受け、街中の人達が、不思議そうに、慌てたように逃げ出してゆく。
裏路地からそれを一瞥し、鮮やか万死は不快そうに目を細める。
「どーゆーつもりかなぁ? 君、僕の前で想力を無駄使いするだなんて……随分と余裕じゃあないか」
そう、苛立ちを露わにする万死。
そんな彼に、僕は嘲笑を向けた。
「冗談。
数年前、僕はこの男から第参巻を奪い取った。……いいや、提供されたと言ってもいいかもしれない。
全力で戦い、そして負けた。
その時の僕の必死さが、この男の琴線に触れたのだろう。彼は満面の笑顔で僕に参巻を差し出した。
その時から、分かっていた。
満面の笑顔のすぐ裏側に張り付いた、満面の狂気。
心の底から愉悦に揺れるその瞳を見た、あの瞬間、僕はこの男を理解した。
「お前は、他者を貶めてしか生きられないゴミ屑だ」
僕は彼の背後へと指をさす。
それを見て後方へと視線を向けた彼は、拳を振りかぶった『
「うわぉ」
彼は驚いたように声を漏らして。
その体を、その大鬼はぶん殴る。
その際に、僕は言葉で威力を引き上げる。
「【その一撃はとても重い】」
瞬間、大鬼の筋肉が一気に膨れ上がる。
振り抜かれた拳と、万死の体から嫌な音が鳴り響く。
奴は凄まじい勢いで上空へと吹き飛ばされてゆき、それを見上げて僕は顔を顰める。
「わぁ! すごいすごい! それって何かなぁ、もしかして使い魔ってやつかなぁ!?」
「……全く堪えてない、か」
なんという肉体強度。
僕の使い魔『オーガ』は、使い魔の中でも比較的上位に位置する物の怪だ。
かつては、真正面から灰村くんに押し負ける程度の力だったが、今は違う。
あれからさらに成長し、今では超級……上から二番目の階級に属する物の怪へと成長していた。
――だが、相手は王級。
「【銃はこの手に】【太陽は弾丸となりて】【弾丸は敵を穿ち貫く】」
三重で言葉を重ね、右手を上空へ向ける。
僕の手の中に小さな拳銃が生まれ落ちる。されど、その中には太陽の弾丸が込められており、それを見た上空の万死は目を丸くした。
「おやっ。死霊系の僕の天敵みたいな武器だねぇ。もしかして殺す気なのかな?」
「無論。僕は今からお前を殺すよ」
灰村くんは、こういうセリフは好きじゃないと思う。
だけどね、あえて言わせてもらうよ。
お前を殺す。今ここで。
悪いけれど、灰村くんを待つ気も無い。
「お前は僕の親友に喧嘩を売った。そして、その人がお前を殺すと断言した」
なら、それだけでいいじゃないか。
僕は上空を睨み、引き金を引く。
「お前を殺す理由なんて、それだけで十分だ」
僕は弾丸を打ち放ち。
鮮やか万死は、気持ち悪そうに顔をゆがめた。
「嫌だなぁ……お前、殺したいくらい気持ち悪い」
同感だな、僕もだよ。
一応補足。成志川と鮮やか万死の過去については、成志川の過去編にて書いてます。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。・特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はパソコン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
作品の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。