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原神もfgoも、何故かピックアップ以外の星5が当たる作者です。

第四章【禁忌の劫略者】
425『参戦、成志川』

 まず最初に言っておくことがある。


 それは、今回の僕の成長は、『覚醒』とか『進化』とか、そういったものでは無いということだ。


 この3日間、深淵で何度も何度も奴らに挑み、その度に負けて泥を浴び、岩に噛みつき、それでも戦い続けた。


 その末に身につけた、驚異的なレベル。


 それと、闇の王や限定憑依の酷使による強制スキルレベルアップ。

 まぁ、言ってみれば習熟して少し強くなって、神力の消耗が減った、って感じかな。


 まぁ、つまり、何が言いたいかって言うと。



「別に、できることが増えたわけじゃねぇんだよなぁ……!」



 無数に繰り出される刀の嵐。

 それを何とか躱しながら、僕は廃墟の中へと身を潜める。


 と同時に、なんの躊躇いもなく廃墟丸ごと灰燼に帰すバカ侍。


「おいこら! 危ねぇだろうが! 廃墟の中に人が住んでたらどうすんだ!!」


 住んでねぇとは思うけど!!

 仮に近所の小学生が『秘密基地だー!』とか言って紛れ込んでたらどうすんだ!

 僕はそう叫ぶと、灰燼はヤケクソ気味に叫んで返す。


「う、うるさいでござる! もう、この手は汚れてしまった……もう、人殺しがなんでござるか! 間違って殺してしまったのなら、蘇らせればいい! あの男ならそれが出来る!!」


 あの男……鮮やか万死のことか。

 僕は奥歯を噛み締める。

 あの男の力――【無窮の洛陽(ロスト・ガヴェイン)】。

 あらゆる死に介入する力。

 確かにそれなら、死人を甦らせることだって出来る……()()()()()()


 だけどなぁ、灰燼。



「お前、本当にそう思ってんなら、此処で腹切って死んじまえよ」



 僕の言葉に、奴は大きく震えた。

 死ぬとか、殺すとか。

 簡単に口にすんじゃねぇよ。

 言ってもいいのは、1度でも死んだ覚えのあるやつだけだ。

 だから、僕はシオンに対しちゃ何も言わない。1度ならず2度も死んで、それでも『Go Ahead(先に死ね)』とか連呼してるバカだからな。諦めてるさ。


 だけど、お前は違う。


 僕ら拳を握り締める。

 と同時に、天戒を発動する。



「【限定憑依(リミット・オン)】――毒提灯グレアス」



 僕の全身を紫色の毒が包む。

 と同時に、僕は地面の中へと潜り込む。

 これが、毒提灯グレアスの【潜水】という力。彼の力を憑依した時だけに使える、()()()()()()()()()()()()()()()()という力だ。


 僕はそのまま地面を移動。

 灰燼の背後まで移動すると、浮上と同時に拳を振るう。


「はぁッ!」

「ぐ……ッ!?」


 咄嗟に刀の柄で受ける灰燼。

 彼はすぐさま居合の構えを取るが、それよりも先に僕は回し蹴りへと移行している。


「チェンジ・限定憑依――地竜アラガマンド!」


 紫色の毒の衣から、岩の鎧へ。

 一瞬で僕の体は切り替わり、強烈で重い回し蹴りが彼の体へと叩き込まれる。

 その体は大きく吹き飛ばされてゆくが……くそっ、()()()()()()。後ろに飛んで衝撃を殺しやがったな。


「……未熟」


 まだまだてんでダメだ。

 もっと鋭く、もっと速く、的確に。

 一撃で仕留めるつもりで動け、灰村解。


 でなけりゃ死ぬのはこっちだぞ。



「【限定憑依(リミット・オン)】――()()()()()()()



 岩の鎧が光と消えて。

 僕の全身から、煉獄の炎が吹き上がる。

 深淵竜ボイドを除き、深淵最下層最強の守護者。ありとあらゆるものを狩る死神、神霊デスサイズ。


 僕の手に炎が凝固し、大鎌が作り上げられる。

 それを見て、灰燼の侍は喉を鳴らす。


「……お前がまだ喋れる間に、一つ聞く。万死のクズはどこに行きやがった?」

「……そ、それは」


 僕の問いに、灰燼は一瞬だけ、ある方向へと視線を向けた。

 その方向へと視線を向けると……崩壊した廃墟と木々の隙間から、僅かに街並みが見て取れた。


 あの方角……なるほど、やっぱり学校に向かいやがったか。

 僕は大きく息を吐き、そして、笑った。


「なるほどな……あの馬鹿、よりにもよって()()()()()をしたわけだ」

「……最悪、でござるか」


 腰の刀に手を添えたまま、男は漏らす。


「戦闘中に強くなる。たった3日でここまで成長する。……そんな貴様より最悪の相手など、想像もつかないでござるが」

「だとしたら、お前の世界は幸せだな」


 でもって、僕の世界は残酷だ。

 なぁ、知ってたか、灰燼の侍。

 そして、鮮やか万死。


 僕の仲間に、僕はついぞ一度も勝ったことがないんだぜ。


 僕は、街の方向から視線を逸らす。

 改めて灰燼へと視線を戻すと、大鎌を下段に構えた。

 

「ボイド……は、バカ正直に校門の前で構えてるだろうし、シオンは馬鹿だから一週間後を信じてるよな。六紗も同じく、僕の言葉を疑わない」


 疑うとしたら……()()()くらいか。

 僕は苦笑し、大鎌を強く握りしめる。


 おい、ナルシスト。

 どーせ、お前が出張ってきてんだろ。

 全く、少しは『素直に人の言葉を信じる』ってことを覚えて欲しいもんだけれど。


 一応……ありがとうと、そう言うよ。


 僕が中二病に感謝だなんてらしくもないし。

 あんな野郎に二度と感謝なんてしたくもないが。


 お前のおかげで、今、この男に集中出来る。



「さぁ、話は終いだ。殴られる覚悟は出来たか、灰燼」



 僕はそう言うと、男は歯を食いしばり、居合の構えを取った。




 ☆☆☆




 いつも、その背中を見ていた。


 その少年は、強かった。

 その少年は、優しかった。

 言葉も態度も厳しいけれど。

 その根底には、気遣いがあった。


 ありがとう、灰村くん。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()


 君は僕を友達なんて認めちゃくれないかもしれない。

 だって、僕は元々敵だったんだから。

 だけどね、灰村くん。

 少なくとも、僕は君の親友になりたいと思うよ。それだけのものを、君に教わり、君に貰った。


 返しても返しきれないほど大きな恩。


 その一部にしかならないだろうけれど。

 この男の首を持って、君への恩返しの第一歩としようと思う。



「【僕らの周囲に、一般人は近寄れない】」



 僕の言葉を受け、街中の人達が、不思議そうに、慌てたように逃げ出してゆく。

 裏路地からそれを一瞥し、鮮やか万死は不快そうに目を細める。


「どーゆーつもりかなぁ? 君、僕の前で想力を無駄使いするだなんて……随分と余裕じゃあないか」


 そう、苛立ちを露わにする万死。

 そんな彼に、僕は嘲笑を向けた。


「冗談。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ただ、それについて怒っているだけだろう、お前は」


 数年前、僕はこの男から第参巻を奪い取った。……いいや、提供されたと言ってもいいかもしれない。

 全力で戦い、そして負けた。

 その時の僕の必死さが、この男の琴線に触れたのだろう。彼は満面の笑顔で僕に参巻を差し出した。


 その時から、分かっていた。

 満面の笑顔のすぐ裏側に張り付いた、満面の狂気。

 心の底から愉悦に揺れるその瞳を見た、あの瞬間、僕はこの男を理解した。



「お前は、他者を貶めてしか生きられないゴミ屑だ」



 僕は彼の背後へと指をさす。

 それを見て後方へと視線を向けた彼は、拳を振りかぶった『大鬼(オーガ)』を見た。


「うわぉ」


 彼は驚いたように声を漏らして。

 その体を、その大鬼はぶん殴る。

 その際に、僕は言葉で威力を引き上げる。


「【その一撃はとても重い】」


 瞬間、大鬼の筋肉が一気に膨れ上がる。

 振り抜かれた拳と、万死の体から嫌な音が鳴り響く。


 奴は凄まじい勢いで上空へと吹き飛ばされてゆき、それを見上げて僕は顔を顰める。


「わぁ! すごいすごい! それって何かなぁ、もしかして使い魔ってやつかなぁ!?」

「……全く堪えてない、か」


 なんという肉体強度。

 僕の使い魔『オーガ』は、使い魔の中でも比較的上位に位置する物の怪だ。

 かつては、真正面から灰村くんに押し負ける程度の力だったが、今は違う。

 あれからさらに成長し、今では超級……上から二番目の階級に属する物の怪へと成長していた。


 ――だが、相手は王級。()()()()()()()()()()()()()


「【銃はこの手に】【太陽は弾丸となりて】【弾丸は敵を穿ち貫く】」


 三重で言葉を重ね、右手を上空へ向ける。

 僕の手の中に小さな拳銃が生まれ落ちる。されど、その中には太陽の弾丸が込められており、それを見た上空の万死は目を丸くした。


「おやっ。死霊系の僕の天敵みたいな武器だねぇ。もしかして殺す気なのかな?」

「無論。僕は今からお前を殺すよ」


 灰村くんは、こういうセリフは好きじゃないと思う。

 だけどね、あえて言わせてもらうよ。

 お前を殺す。今ここで。


 悪いけれど、灰村くんを待つ気も無い。


「お前は僕の親友に喧嘩を売った。そして、その人がお前を殺すと断言した」


 なら、それだけでいいじゃないか。

 僕は上空を睨み、引き金を引く。



「お前を殺す理由なんて、それだけで十分だ」



 僕は弾丸を打ち放ち。

 鮮やか万死は、気持ち悪そうに顔をゆがめた。



「嫌だなぁ……お前、殺したいくらい気持ち悪い」



 同感だな、僕もだよ。


一応補足。成志川と鮮やか万死の過去については、成志川の過去編にて書いてます。

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