みっ、ミスったぁぁぁぁぁああ!!
明日の分を予約しようと思ったら普通に投稿ッ!
おのれ睡魔め!
というわけで、明日の分です。
11/2の前日投稿だと思ってください。
最強の代名詞。
様々な場所で語られる議題だと思う。
異能の界隈において、最強は『時間停止』と『即死』だと言わている。
それに、僕やナムダの『強奪』を含め、その三つこそが最強の代名詞と呼ばれるに相応しいのでは? と僕は思う。
ちなみに、僕のコピーは反則的なチートにこそ思えど、最強には程遠い。
前者のいずれかに特化した能力者が現れれば、きっと今の僕には太刀打ちできない。
だからこそ、様々な策を練っていた。
……
「それを実行に移す前に出てくるなよ……!」
僕は思わず叫んだ。
前方には、ふんどし一丁で怒り満面の変態侍。彼は僕に対して殺意を向け、腰の刀へと手を伸ばす。
「あんな目に遭ったのは初めてでござる! 優しくトイレまで連れていってくれるのかと思ったらあの始末! 許さんでござる! その首此処でた叩ッ斬るッ!」
――瞬間、第六感が痛い程に警鐘を鳴らす。
王の凱旋による余波は、何もこの眼だけじゃない。
第六感に、体のキレ。
その他諸々、純粋な身体機能なら以前僕を遥に上回っている。
僕はその場を大きく飛び退くと、僕のいた場所へと縦に斬撃が通り抜ける。
……無論、何も見えなかった。
この真眼をして、奴が刀を抜き放ち、再び鞘へと戻すまでの所作が何も見えない。
かろうじて見えたのは……本来なら見えない斬撃の【力の流れ】だけ。
「………ッ!」
僕が見たのは、緑色の力の流れ。
彼の身体中から溢れ出す緑色の力。それが、刀に左手が触れた――その瞬間、巨大な斬撃の形になって放たれる。
僕は上体を逸らして躱すと、後方の木々が一瞬にして断裂。切れた部分が塵となって消えてゆく……。
「か、カイくん!」
「ナムダ……コイツはヤバいぞ。格好はダサいが、強さはちょっと笑えない!」
「格好がダサいとか言うなでござる!」
再びの斬撃。
今度は、一度に三度の斬撃が飛ぶ。
その延長線上にはナムダの姿もあり、僕は奥歯をかみ締め、再びシオンの力を借りる。
「完全模倣――【影操作】!」
瞬間、ナムダの足元から影が競り上がる。
僕は横っ飛びに緊急回避すると、三つの斬撃は上手い具合に僕らを躱して飛来してゆく。
アスファルトが裂け。
住宅の屋根が吹っ飛び。
周辺から多くの悲鳴が飛び交う。
それを前に、僕は拳を握りしめた。
「こ、この……! 何故躱せるでござる!?」
「うるせぇド変態! 街中でそんな危ないもんぶっぱなすな! 公園と住宅街が大変だろうが!!」
お前といい、暴走状態のナムダといい。
こう……なんだろうねぇ! 最強の代名詞を持ってる奴らは、なんでこう、周辺住民への配慮をしないのかなぁ!
人に迷惑をかける奴は、中二病の次に大嫌いです!
「それ以上暴れんなら、ぶっ潰すッ!」
「話を逸らすなァ! 今は拙僧のう〇この話でござる! 住宅街と拙僧のう〇こ! 一体どっちが大切でござるか!」
「住宅街ッッ!!」
瞬間、斬撃が飛んでくる。
僕は横に回避すると、後方から悲鳴が聞こえる。
クソッタレ……この野郎、全っぜん話聞きやしねぇ! これ以上こんな場所で戦ったら、被害なんて計り知れねぇぞ!
そもそも大前提として……この反則野郎に勝てるビジョンが浮かばない。
「カイくん! おで、突撃するだか!?」
「やめとけナムダ! 相性が最悪過ぎる……!」
相手は即死の【杯壊】系異能。
いくら回復力お化けの僕やお前でも、掠っただけで致命傷と考えるべきだ。
深淵でも、僕の【消滅】は回復力に長ける地竜アラガマンドにだって通用していたからな。
「……今回、あいつの【即死】は規格外。攻撃は強く、速く、不可視で――リーチは無限と考えるべきだろう」
後方を振り返れば、斬撃はどこまでも続いている。
回復できないということは、この攻撃に1度も掠らず、勝利しなければならないということ。
「……最強は『杯壊』と『界刻』……か。最強がその2つだって言われてる意味、今ここに来てハッキリわかったよ」
僕はそう言って、腕を捲る。
「覚悟を決めろよ、ナムダ。コイツは此処でぶっ潰す。最高に僕の嫌いなタイプだ」
「……んだ。これ以上、被害をひろげるのは見過ごせねぇ」
ナムダの言葉を受け、腹から神力を汲み上げる。
それは、異能力者としての僕ではなく。
陰陽師としての、
「【我らが神の名において、此処に秘匿の法を敷かん】」
周囲数百メートルを、僕の神力が包み込む。
これは、陰陽師の世界に代々伝わってきた【秘匿を守るため】の技術。
物の怪を祓う際。
呪いと相対した際。
人を避け、中に居るものを外へと逃がさず、被害と秘匿を衆目から守るために編み出されたもの。
「――包み込め【陣】」
瞬間、僕らの周囲を白い壁が包み込む。
変態侍はそれらを見て驚いたようだが、直ぐに僕へと視線を戻して殺意を漏らす。
「なんの真似だかわからんでござるが……拙僧の斬撃は貴様のような悪党に破れるものでは無いでござる!!」
そう言って、変態は再び斬撃を連射する。
僕はナムダを庇いながらそれらを回避。
斬撃は僕らの後方まで通り抜けていくが……されど、僕の張った【陣】の向こう側にはたどり着けない。
陣に触れた斬撃はその場で消失し、それを見た変態は驚いていた。
「な……!?」
「驚くことじゃない。……ずっと昔、平安時代より前から、ずっと、お前みたいなはた迷惑な野郎を封じ込めるために改良されてきた技術だ」
言ってみれば、年季が違う。
変態侍は僕を睨み、僕は拳をにぎりしめる。
僕が拳を奴へと向けたのと、奴が居合の構えを取ったのは、ほぼ同時。
ふざけた野郎だが……その強さだけは本物。
間違いなく、今まで戦ってきた中でも最強格。
そんな奴を前に、僕はさらなる強さを求める。
「ぶっつけ本番……【新しい力】試してみるか!」
滅びの斬撃が、僕へと向けて放たれた。
☆☆☆
『そもそも、コピーで最強にはなれないと思うんだ』
僕が闇の王を習得して間もなく。
僕は、爺ちゃんを前にそう話した。
『……いや、十分イカれた力だと思うが』
『能力がどれだけイカれてても、僕個人としてはさほど優れちゃいないわけだろ? 喧嘩が強いわけでもなく、頭脳も飛び抜けていい訳じゃない』
神力量が多ければ、僕もコピー能力だけで満足していたかもしれない。
だけど、僕には優れた神力量はなく、劣化コピーを量産したところで、鍛え抜かれた絶対的な【個】を前にすれば、為す術もなく倒れるだろう。
闇の王は、禁書劫略と似通った力。
二つだけ奪うか、際限なくコピーするか。
その違いはあれど、根本的には同じ。
ならば、使い方とで同じでいいはず。
……最初から、分かってたことだ。
『闇の王は、
禁書劫略と違い、個で戦えないわけじゃない。
使いようと使う人によっては強いだろう。
だが、僕は違う。
僕はこの力をメインに使っても、ある程度までは行けても、頂きには届かない。
多分、阿久津さんや六紗、ポンタ、シオン達には届かない。
だからこその、決断。
『僕は、新しい力を開拓する』
その言葉に、もはや爺ちゃんは驚かなかった。
ただ、呆れたように、静かに問うた。
『……その力は、本当に強い力だ。君以外じゃ誰も使えない唯一無二の力。……そんな力を、自ら進んで捨てるというのか?』
『もちろん。それで強くなれると言うなら』
それに、捨てる訳じゃないさ。
あくまでも、闇の王はサブウェポン。
僕はこれから、これを上回る主武器を探す。
それに、さ。
誰もが羨むような、反則チートだ。
『これがサブだなんて、世界最高の豪華だろ?』
僕の言葉に、爺ちゃんは呆れたように笑っていた。
☆☆☆
それからずっと、探していた。
闇の王を上回る、僕にしか使えない力を。
「カイくん!」
「分かってるッ!」
変態侍から、無数の斬撃が飛ぶ。
ナムダには特殊な力こそなくとも、これまで培ってきた経験がある。大凡の直感で斬撃を避けているが……これがまた、恐るべき正答率だ。
今じゃ、ほとんど僕が手を貸さずとも対応している。
「……ほんと、どいつもこいつも」
「ええい! しつこい者共めが! いい加減くたばるでござるッ!」
かくして、無数の斬撃が放たれる。
それは、僕ら二人をして『物理的に回避不可能な物量』だった。
まるで、空間そのものを埋め尽くすような斬撃の嵐。
それを前にナムダは覚悟を決めたように拳を握り。
そして、僕は静かに呟いた。
「【
他の誰も持っていなくて。
僕だけが持っているもの。
そう考えた時に頭を過ったのは……中学時代、必死になって書き連ねた10冊のノート。その設定の数々だった。
もしも、あの設定が今も生きていて。
僕の知らないところで、現実になっているのなら。
深淵竜ボイドだけじゃない。
僕があの場で戦った、全ての守護者たち。
彼ら彼女らは今も生きていて。
きっと、王の言葉を待っている。
「来い」
静かに呟く。
常軌を逸した妄想は、時に現実との区別を無くす。
僕の逸常極まる妄想力と。
持ち得る全ての才能、経験、知識を用いて、此処に奇跡を描きあげよう。
それは、僕の黒歴史。
中学二年生の僕が描いた――最強の守護者たち。
「『地竜アラガマンド』」
その言葉が響いた瞬間。
妄想の守護者の姿が、現実に具現した。
『グォォォオオオオオオオアアアアアアアッ!!』
目の前に巨大な姿が顕現し。
そして、響き渡ったのは威力ある咆哮。
それらは、迫り来る全ての斬撃を相殺する。
ナムダと変態侍は、その姿を見あげて唖然とする。
以前戦ったよりも、ずっと強く。
ずっと、頼もしくなったその姿。
『王よ、何なりとご命令を』
以前は感じなかった知性を、その目には感じた。
なんだ、喋れるんじゃねぇか。
というか、もしかして前戦った時は力を抜いてたのか? そう考えて苦笑はしたが、よく考えると支障もないので笑い飛ばした。
「あぁ、最初の命令だ、アラガマンド」
僕は前方へと視線を向ける。
そこには、警戒したように刀へと手を伸ばす変態が居て。
「あの変態をぶっ飛ばす。力を貸せ」
『承知致した』
そう言って、地竜アラガマンドは牙を剥く。
【
それは、深淵の守護者を呼び出す力。
呼び出す際にのみ僕は神力を消耗し、留まる際には……申し訳ないが、守護者たちに消耗を背負ってもらう。
そのため、守護者の保有する『燃料』と『強さ』によって召喚できる時間は限られる。
故の、限定召喚。
完全な召喚ではない。
だからこそ、僅かな活動時間に全てを費やす。
少しでも、その爪痕を現実へと残そうと足掻く。
「行くぞ変態。今の僕は……
力を失って、走り続けて。
今やっと、かつての背中に手が届いた。
不思議とそんな、実感があった。
最強かに思えた『闇の王』すら、サブ武器に。
新たな力を引っ提げて、さらなる強さを求め続ける。
最強の召喚獣と、豪華すぎるサポート能力。
これで、最低限の『下地』は整った。
ここからさらに、駆け足で、
遥かなる頂きへと、手を伸ばそう。
次回【熾烈】
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