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ハッピーハロウィーン!

今日も明日も仕事だぁ! やったね!(白目) 

第四章【禁忌の劫略者】
412『参加と不参加』

 1ヶ月後の、正統派一武闘会。

 それに誘われた僕は、とりあえず、その1ヶ月をどう過ごすか考えることにして。


 ポンタと戦って数日。

 授業合間の10分休み、僕は腕を組んでいた。


 修行が一段落したこともあり、今までのように徹夜で修行しっぱなし……なんてことも無くなっていた。

 そのため、日中も居眠りしなくても済むようにはなっていた。

 ……なって、いたんだが。


「ふはははは! なんという腑抜けか! 灰村解! お姉様の敵め!」

「そうだそうだ!『85位』のザコめ!」

「お姉様! その男はもはや抜け殻! 鬼迫無きその男についていても時間の無駄です!」


「うるせぇなこいつら……」


 僕は、廊下から聞こえてくる光景に思わず呟く。

 僕の隣には、新第三席(ホワイトフィールド)の姿があり、彼女は困ったように笑っていた。


「済まないな……どうやら、貴殿が調子を崩していることがとても嬉しくてたまらないらしい」

「性格の悪い奴らだな。信じられねぇわ」

「「「お前が言うな……ッ!!」」」


 僕の言葉に多くの言葉が帰ってくる。

 既に、ダリア・ホワイトフィールドが二組に居ることにも慣れてきた。

 シオンもいい加減張り合うのが疲れたのか、こうした一服休みは僕の机の上に座っている。


「あ? おいカイ。まだ本調子じゃねぇならオレ様が追い払ってやろうか? なんたってお前はオレの子分だからな!」

「ありがとう。そして足を閉じなさい」


 僕の机にがに股で座るのはやめましょうね。

 中身が見えるよ、興味無いけど。

 僕はそう言うと、シオンは『なはは!』と笑ってスルーした。おいこら、足を閉じろと言ってんだろうが。

 そして僕の机から降りてくれ。

 そうこう考えていると、シオンは僕の机から降りて言う。


「ま、今のカイなら、守るべくもねぇだろうがな!」


 ……相変わらず、こいつは強さを測る特殊な能力でも持っているのだろうか?

 まぁ、単なる勘だろうとは思うけど。

 僕は苦笑し、廊下へと視線を向ける。


「まぁ、そうだな。ゴミ……って言ったらゴミに失礼か。おい、言い表しようもなく汚らわしい中二病共」

「き、ききき、貴様! 我ら親衛隊を汚らしいだと……!? 中二病だと言ったかッ!?」


 その先頭に立つのは、僕を最初に負かしてくれた少女。

 普通に強いし、異能も使えるみたいだし。

 僕から3位を奪った後も、何度か敗北はしつつも、上位十名の中に入り込んでいる。

 ……おそらく彼女が親衛隊長的な存在なのだろう。

 僕はそこまで考えて、思わず笑った。


「始業まで、あと三分か」


 うむ。

 まぁ、慣れないこの力だと少々時間はかかるかもしれないが、それでも、3分あれば十分だろう。

 そう考えて、僕は少女にこう告げる。



「おい中二病。お前に序列戦を申し込む」


「馬鹿めが! 今度こそ、その腐り果てた性根を叩き直してくれるわッ!!」



 少女はそう叫び。


 そして、1分後には気絶していた。



 灰村解【85位→6位】




 ☆☆☆




 昼休み。

 正々堂々、真正面から毒殺して(殺してはいないけど)10位以内を勝ち取った僕は、久々にVIPルームで飯を食っていた。

 ちなみに、10位以下になっても、普通にVIP飯は食っていたけどね。

 入試の時の約束は忘れちゃいない。


「へぇ! 闇の王……すごい強いね! さすが灰村くん!」


 その席で、手放しに僕を褒めるのは成志川だ。

 彼は心の底から嬉しそうにそう言っていて、興味津々といった様子だ。


「……とは言ってもな。神力の消耗量が激し過ぎるから、S級異能力者の異能コピーは乱用できないんだけどな」


 六紗の【我が前に刻は要らず】もそうだった。

 阿久津さんの【臨界天魔眼】、ポンタの【我、征服の獣なり】、シオンの【死搭載の我が身】、その他諸々、おそらく僕にコピーできない力はない。


 ただ、神力消耗量がとてつもないんだ。


 強い力であればあるほど。

 他人の真似事であればあるほど。

 僕が消耗する神力量は、尋常ではないものになっていく。

 特に、阿久津さん、六紗、ポンタ辺りの『反則系能力』はだめだ。数秒で神力が燃え尽きる自信がある。六紗のコピーをしたときに嫌ってくらいに理解したからな。


「でもでも、それってアレじゃない! 天戒とやらに慣れていけばそれだけ消耗も抑えられるんでしょ? なら、修行あるのみ、じゃないのよ!」

「簡単に言うね、エニグマ先生……」


 天戒は異能同様に、鍛えることで強化されてゆく。

 僕の場合、異能は『膨大な想力量』があったから燃料切れの心配なく鍛え続けられた。

 だけど、今は違う。

 僕の神力は陰陽師全体で見ても、まだ下の方らしい。たとえ訓練しても、以前のような速度で成長することは――まず不可能。


「……もう、ショートカットできる所は全て超えてきたみたいでな」


 ここから先は、地面に足をつけて、一歩、また一歩と歩いていくしかない。


 それに、この眼も……。


 僕は右手を目に添えると、見えていた『力の世界』を一時的に停止する。

 完全な視界の切り替えを覚えてからは、こういう小技も少しずつできるようになってきた。


 真眼は、誰も彼もが認めている強能力だ。


 力の流れを見ることで、視界不良は一切効かず、どんな隠蔽、遮断をも一目で見通せる。

 強化された第六感と合わせて、周囲360度の把握。不意打ちを未然に察知することだって出来る。

 加えて、力の流れを先読みすることで簡易的に未来も見える。

 神力操作の修行にも使えたし、正直なところ、ほとんど文句の付けようもない。


 僕は目頭を押え、大きく息を吐く。


 ……あとは、僕がこの眼の『消耗』に慣れればいい話だ。


 そうこう考えていると、一足遅れてシオンがいつものステーキ定食を持って席までやってくる。


「なはははは! 余り物にはフクがあるって話を聞いたぜ! だから、一番最後に使うであろう肉を焼いてもらったぜ! オレ天才!」

「そうだねぇー」


 僕はテキトーに返事をすると、シオンは嬉しそうに『おう!』と返した。

 彼女は僕の隣に座り、ステーキに食らいつく。

 シオンはいつも残すため、漬物類と味噌汁は僕が貰う。代わりにザンギ定食のザンギを一つシオンの皿へと置いてやる。


「おう! 毎度すまねぇな!」

「なに。僕も漬物は好きだからな」


 そう言いながら、ボリボリとたくわんを口にする。

 そんな僕らを見ていたエニグマ先生は、困ったように吐息を漏らす。


「ほんっと。なんでそんなに仲がいいのに恋仲に発展しないのかしらね……」

「僕は黒い眼帯している奴と恋仲にはならないな」

「こいなかってなんだ! 食えんのか!?」

「あ。ごめん。聞いといてなんだけど、今この瞬間に理由が分かったわ」


 そう言って自己解決した様子のエニグマ先生。

 僕は彼女から視線を外すと、箸を手に残る二人へと視線を向ける。


「ま。それはそうとして……なあ。実は正統派一武闘会とかいう、ふざけた名前の異能戦の大会があるらしいんだけど……お前ら、出る気ないか?」


 その言葉に、シオンと成志川が顔を上げる。


「あ? んだよそれ、おもしれーのか?」

「思いっきり某漫画のイベント名をパクってるよね……」


 二人の反応からして……あまり乗り気じゃなさそうだな。

 まあ、僕がどうしても、って言えば参加してくれるんだと思うが。

 どうせなら、二人にやる気を出してもらったほうがいいと思う。


 僕は小さく息を吐き。

 そして、二人に言った。



「――ちなみに僕は参加するんだが」



 その言葉に、二人は目に反応する。

 力の世界を覗いてみれば、先ほどまで穏やかだった二人の体内に、燃え盛るような真っ赤な熱量が灯っている。……まあ、僕が言いたいことは分かってくれたみたいだな。


「正直、今の僕は力を失う前の、数歩手前くらいまではたどり着いてる。まあ、階級にすればS級になるんだろうが……一切の誇張表現なく、僕が参加したら僕の優勝でケリがつく」


 唯一の不安要素が、六紗の護衛である『シーラ・ハイフン』だ。

 彼女はごりっごりのS級異能力者。

 おそらく、実力的にもシオンや成志川に近しいものがある。

 が、同時に『咄嗟の状況判断力に劣る』と判断した。

 六紗とのデート時、襲撃されたときも、なんだか動きが鈍く感じたし。

 それが、わずかなりとも彼女を見て、観察して導き出した結果だ。


 そこを突けば、勝てないということはない。


 まあ、他にも多くの異能力者が参戦するとは聞いてはいるが。

 おそらく、六紗の護衛ということは正統派最強ということだろう。

 彼女以上がいないというのなら、よほどのイレギュラーがない限り僕の優勝だ。


 ――その意味、お前らならわかるだろ?



「……つまり、カイ。テメェはオレ様に喧嘩を吹っかけてきてるわけだ」



 シオンが、獰猛な笑顔で僕を見た。

 僕が優勝できるということは――シオンらも、負けることはないということ。

 つまり、順当に勝ち進んでいけば……確実に、()()()()()()()()()()

 僕が二人に提示する『参加のメリット』こそ、その部分だ。


 陰陽師・灰村解との、真剣勝負。


 二人とも、過去に僕を負かしている。

 敗者が勝者にリベンジマッチ……と、形だけ見ればそうなんだろうが。


 僕は鼻を鳴らし、嘲笑うように二人へ言った。



「まあ、参加しなくてもいいんだぜ? 公衆の面前で()()()()()()()()()()()()()




 なあ、二人とも。

 今の僕は……少なくとも、お前らに負けた当時よりはずっと強いよ。


 その言葉にシオンは笑い、成志川も苦笑した。


「なはははは! 清々しいくらいの喧嘩腰! いいぜ、オレも参加してやるよ!」

「そうだね。灰村くんには悪いけれど……友達だからこそ手は抜かない。全力で潰させてもらう」


 よし、成功。

 二人ともやる気スイッチが入ったようだ。

 これで、正式にリベンジマッチの目途が立ったし。

 それになにより……二人が参加することで、他の異能力者たちがより本気の異能を見せてくれる……かもしれない。そして、一度でも見てしまえば、()()()()()()()()()()


「う、うわぁ……コイツ、めちゃくちゃ邪悪な笑顔してるわよ」


 エニグマ先生が、僕の顔を見てそんなことを言っていた。

 が、此処にそんな言葉を聞いているモノは一人もおらず。


「クックック……」

「なはははは!」

「なんだか、楽しくなってきたね」


 三者三様に笑い声を漏らし、僕らは食事を再開する。

 そんな光景を見て、エニグマ先生は机をたたいた。



「つーかアンタたち! 一か月後って学園祭よ! わかってんでしょうね!?」



 無論、参加しないに決まってる。




まさに悪役ッ!

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