ハッピーハロウィーン!
今日も明日も仕事だぁ! やったね!(白目)
1ヶ月後の、正統派一武闘会。
それに誘われた僕は、とりあえず、その1ヶ月をどう過ごすか考えることにして。
ポンタと戦って数日。
授業合間の10分休み、僕は腕を組んでいた。
修行が一段落したこともあり、今までのように徹夜で修行しっぱなし……なんてことも無くなっていた。
そのため、日中も居眠りしなくても済むようにはなっていた。
……なって、いたんだが。
「ふはははは! なんという腑抜けか! 灰村解! お姉様の敵め!」
「そうだそうだ!『85位』のザコめ!」
「お姉様! その男はもはや抜け殻! 鬼迫無きその男についていても時間の無駄です!」
「うるせぇなこいつら……」
僕は、廊下から聞こえてくる光景に思わず呟く。
僕の隣には、
「済まないな……どうやら、貴殿が調子を崩していることがとても嬉しくてたまらないらしい」
「性格の悪い奴らだな。信じられねぇわ」
「「「お前が言うな……ッ!!」」」
僕の言葉に多くの言葉が帰ってくる。
既に、ダリア・ホワイトフィールドが二組に居ることにも慣れてきた。
シオンもいい加減張り合うのが疲れたのか、こうした一服休みは僕の机の上に座っている。
「あ? おいカイ。まだ本調子じゃねぇならオレ様が追い払ってやろうか? なんたってお前はオレの子分だからな!」
「ありがとう。そして足を閉じなさい」
僕の机にがに股で座るのはやめましょうね。
中身が見えるよ、興味無いけど。
僕はそう言うと、シオンは『なはは!』と笑ってスルーした。おいこら、足を閉じろと言ってんだろうが。
そして僕の机から降りてくれ。
そうこう考えていると、シオンは僕の机から降りて言う。
「ま、今のカイなら、守るべくもねぇだろうがな!」
……相変わらず、こいつは強さを測る特殊な能力でも持っているのだろうか?
まぁ、単なる勘だろうとは思うけど。
僕は苦笑し、廊下へと視線を向ける。
「まぁ、そうだな。ゴミ……って言ったらゴミに失礼か。おい、言い表しようもなく汚らわしい中二病共」
「き、ききき、貴様! 我ら親衛隊を汚らしいだと……!? 中二病だと言ったかッ!?」
その先頭に立つのは、僕を最初に負かしてくれた少女。
普通に強いし、異能も使えるみたいだし。
僕から3位を奪った後も、何度か敗北はしつつも、上位十名の中に入り込んでいる。
……おそらく彼女が親衛隊長的な存在なのだろう。
僕はそこまで考えて、思わず笑った。
「始業まで、あと三分か」
うむ。
まぁ、慣れないこの力だと少々時間はかかるかもしれないが、それでも、3分あれば十分だろう。
そう考えて、僕は少女にこう告げる。
「おい中二病。お前に序列戦を申し込む」
「馬鹿めが! 今度こそ、その腐り果てた性根を叩き直してくれるわッ!!」
少女はそう叫び。
そして、1分後には気絶していた。
灰村解【85位→6位】
☆☆☆
昼休み。
正々堂々、真正面から毒殺して(殺してはいないけど)10位以内を勝ち取った僕は、久々にVIPルームで飯を食っていた。
ちなみに、10位以下になっても、普通にVIP飯は食っていたけどね。
入試の時の約束は忘れちゃいない。
「へぇ! 闇の王……すごい強いね! さすが灰村くん!」
その席で、手放しに僕を褒めるのは成志川だ。
彼は心の底から嬉しそうにそう言っていて、興味津々といった様子だ。
「……とは言ってもな。神力の消耗量が激し過ぎるから、S級異能力者の異能コピーは乱用できないんだけどな」
六紗の【我が前に刻は要らず】もそうだった。
阿久津さんの【臨界天魔眼】、ポンタの【我、征服の獣なり】、シオンの【死搭載の我が身】、その他諸々、おそらく僕にコピーできない力はない。
ただ、神力消耗量がとてつもないんだ。
強い力であればあるほど。
他人の真似事であればあるほど。
僕が消耗する神力量は、尋常ではないものになっていく。
特に、阿久津さん、六紗、ポンタ辺りの『反則系能力』はだめだ。数秒で神力が燃え尽きる自信がある。六紗のコピーをしたときに嫌ってくらいに理解したからな。
「でもでも、それってアレじゃない! 天戒とやらに慣れていけばそれだけ消耗も抑えられるんでしょ? なら、修行あるのみ、じゃないのよ!」
「簡単に言うね、エニグマ先生……」
天戒は異能同様に、鍛えることで強化されてゆく。
僕の場合、異能は『膨大な想力量』があったから燃料切れの心配なく鍛え続けられた。
だけど、今は違う。
僕の神力は陰陽師全体で見ても、まだ下の方らしい。たとえ訓練しても、以前のような速度で成長することは――まず不可能。
「……もう、ショートカットできる所は全て超えてきたみたいでな」
ここから先は、地面に足をつけて、一歩、また一歩と歩いていくしかない。
それに、この眼も……。
僕は右手を目に添えると、見えていた『力の世界』を一時的に停止する。
完全な視界の切り替えを覚えてからは、こういう小技も少しずつできるようになってきた。
真眼は、誰も彼もが認めている強能力だ。
力の流れを見ることで、視界不良は一切効かず、どんな隠蔽、遮断をも一目で見通せる。
強化された第六感と合わせて、周囲360度の把握。不意打ちを未然に察知することだって出来る。
加えて、力の流れを先読みすることで簡易的に未来も見える。
神力操作の修行にも使えたし、正直なところ、ほとんど文句の付けようもない。
僕は目頭を押え、大きく息を吐く。
……あとは、僕がこの眼の『消耗』に慣れればいい話だ。
そうこう考えていると、一足遅れてシオンがいつものステーキ定食を持って席までやってくる。
「なはははは! 余り物にはフクがあるって話を聞いたぜ! だから、一番最後に使うであろう肉を焼いてもらったぜ! オレ天才!」
「そうだねぇー」
僕はテキトーに返事をすると、シオンは嬉しそうに『おう!』と返した。
彼女は僕の隣に座り、ステーキに食らいつく。
シオンはいつも残すため、漬物類と味噌汁は僕が貰う。代わりにザンギ定食のザンギを一つシオンの皿へと置いてやる。
「おう! 毎度すまねぇな!」
「なに。僕も漬物は好きだからな」
そう言いながら、ボリボリとたくわんを口にする。
そんな僕らを見ていたエニグマ先生は、困ったように吐息を漏らす。
「ほんっと。なんでそんなに仲がいいのに恋仲に発展しないのかしらね……」
「僕は黒い眼帯している奴と恋仲にはならないな」
「こいなかってなんだ! 食えんのか!?」
「あ。ごめん。聞いといてなんだけど、今この瞬間に理由が分かったわ」
そう言って自己解決した様子のエニグマ先生。
僕は彼女から視線を外すと、箸を手に残る二人へと視線を向ける。
「ま。それはそうとして……なあ。実は正統派一武闘会とかいう、ふざけた名前の異能戦の大会があるらしいんだけど……お前ら、出る気ないか?」
その言葉に、シオンと成志川が顔を上げる。
「あ? んだよそれ、おもしれーのか?」
「思いっきり某漫画のイベント名をパクってるよね……」
二人の反応からして……あまり乗り気じゃなさそうだな。
まあ、僕がどうしても、って言えば参加してくれるんだと思うが。
どうせなら、二人にやる気を出してもらったほうがいいと思う。
僕は小さく息を吐き。
そして、二人に言った。
「――ちなみに僕は参加するんだが」
その言葉に、二人は目に反応する。
力の世界を覗いてみれば、先ほどまで穏やかだった二人の体内に、燃え盛るような真っ赤な熱量が灯っている。……まあ、僕が言いたいことは分かってくれたみたいだな。
「正直、今の僕は力を失う前の、数歩手前くらいまではたどり着いてる。まあ、階級にすればS級になるんだろうが……一切の誇張表現なく、僕が参加したら僕の優勝でケリがつく」
唯一の不安要素が、六紗の護衛である『シーラ・ハイフン』だ。
彼女はごりっごりのS級異能力者。
おそらく、実力的にもシオンや成志川に近しいものがある。
が、同時に『咄嗟の状況判断力に劣る』と判断した。
六紗とのデート時、襲撃されたときも、なんだか動きが鈍く感じたし。
それが、わずかなりとも彼女を見て、観察して導き出した結果だ。
そこを突けば、勝てないということはない。
まあ、他にも多くの異能力者が参戦するとは聞いてはいるが。
おそらく、六紗の護衛ということは正統派最強ということだろう。
彼女以上がいないというのなら、よほどのイレギュラーがない限り僕の優勝だ。
――その意味、お前らならわかるだろ?
「……つまり、カイ。テメェはオレ様に喧嘩を吹っかけてきてるわけだ」
シオンが、獰猛な笑顔で僕を見た。
僕が優勝できるということは――シオンらも、負けることはないということ。
つまり、順当に勝ち進んでいけば……確実に、
僕が二人に提示する『参加のメリット』こそ、その部分だ。
陰陽師・灰村解との、真剣勝負。
二人とも、過去に僕を負かしている。
敗者が勝者にリベンジマッチ……と、形だけ見ればそうなんだろうが。
僕は鼻を鳴らし、嘲笑うように二人へ言った。
「まあ、参加しなくてもいいんだぜ? 公衆の面前で
なあ、二人とも。
今の僕は……少なくとも、お前らに負けた当時よりはずっと強いよ。
その言葉にシオンは笑い、成志川も苦笑した。
「なはははは! 清々しいくらいの喧嘩腰! いいぜ、オレも参加してやるよ!」
「そうだね。灰村くんには悪いけれど……友達だからこそ手は抜かない。全力で潰させてもらう」
よし、成功。
二人ともやる気スイッチが入ったようだ。
これで、正式にリベンジマッチの目途が立ったし。
それになにより……二人が参加することで、他の異能力者たちがより本気の異能を見せてくれる……かもしれない。そして、一度でも見てしまえば、
「う、うわぁ……コイツ、めちゃくちゃ邪悪な笑顔してるわよ」
エニグマ先生が、僕の顔を見てそんなことを言っていた。
が、此処にそんな言葉を聞いているモノは一人もおらず。
「クックック……」
「なはははは!」
「なんだか、楽しくなってきたね」
三者三様に笑い声を漏らし、僕らは食事を再開する。
そんな光景を見て、エニグマ先生は机をたたいた。
「つーかアンタたち! 一か月後って学園祭よ! わかってんでしょうね!?」
無論、参加しないに決まってる。
まさに悪役ッ!
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