実は身近にたくさんあるんです!みんなの為のユニバーサルデザイン。

営業部
2019年7月15日

 

「ユニバーサルデザイン」という言葉をご存じですか?

ユニバーサルデザインとは、年齢、性別、障害や能力の差、また国や文化、言語の差を問わず、誰でもわかりやすく、使いやすい物を作るためのデザインのことです。少しまでは少なかったですが、今では街のいろんなところで見ることができるようになりました。

 

たとえば、

・視覚障害者のための点字

・車いす利用者や足の不自由な人のためのバリアフリー設計

・言語が違っても表示だけで理解出来る絵文字

・パソコン画面の音声案内

・左右どちらの手でも使えるハサミ

・シャンプーとリンスの違いが突起で分かる仕組み

・背が低くても使える自動販売機

 

など、便利なものから、健康な私たちでは気付きにくいような利便性が追求された「すべての人のためのデザイン」のことを、ユニバーサルデザインといいます。ちなみに、ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いは,「デザイン対象を障害者に限定していない」点になります。障害の有無・年齢・性別・国籍の違いをはじめ、怪我をして一時的に車椅子に乗る人や、子育てのために一定期間ベビーカーを利用している人など、様々な人が利用しやすいようにデザインすることがユニバーサルデザインなのです。

 

今回は、このユニバーサルデザインの由来や具体的な例、原則、また、印刷物におけるユニバーサルデザインがどのようなものなのかをご紹介したいと思います。

 

ユニバーサルデザインの始まり

この考え方は、1980年代にノースカロライナ州立大学(米)で建築や物のデザインを研究していたロナルド・メイス教授によって明確にされました。自身も障害をもつ彼は、「障害者など特別な人のための対応」と考えるバリアフリーに違和感を持ち、気持ちの上でのバリアを生み出さないデザイン手法を研究していたと言われています。

 

ユニバーサルデザイン7原則とは

ロナルド・メイス教授は、「ユニバーサルデザインの7原則」というものを提唱しました。それが日本に入ってきたのは1990年代。

この考え方によって、ユニバーサルデザインの多くが設計されています。

 

1.公平性

使う人誰もが、いつでもどこでも、同じように操作できる公平性が必要です。

たとえば、自動ドアは、誰でも自動ドアの前に行くだけで使用することができます。子供からお年寄りまで、車いすの方にも使える公平性があります。

 

2.自由度

使用にあたって、利用する人の好みや能力に合うように高い自由度が求められます。

たとえば、右ききの人でも、左ききの人でも使えるハサミ、高さの違いで複数ボタンが設置された自動販売機やエレベーターなどが考えられます。

 

3.直感的

ひと目で、使い方が理解できるように、簡単に作られた直感性が求められます。

たとえば、足で踏んで点灯させるライトや開け方が明記してあるプルタブ缶などが考えられます。

 

4.明確性

利用する人の視覚、聴覚などの感覚能力に関係なく使い方がわかる明確性が求められます。

たとえば、文字での説明、電光掲示板、点字での説明などが考えられます。                      

 

5.安全性

間違った使い方をしてしまっても、危険につながらないよう配慮された安全性が求められます。たとえば、ロック式の給湯ポットや二重ゲートで事故が起きない考慮がされた新幹線ホームなどが考えられます。

 

6.持続的

長時間使っても疲れないデザイン、体への負担が少ない持続性が求められます。

たとえば、SUICAを使って改札を通過できる仕組みや開けやすい歯磨き粉のフタなどが考えられます。

 

7.スペース

使う人の大きさや動きに関係なく使えるためのスペースが求められます。

たとえば、多目的トイレやコイン投入口が大きい自動販売機などが考えられます。

 

ユニバーサルデザインの7つの原則すべてに、当てはまるものを作りあげるのはとても難しいことですが、少しずつできることから着手し努力していくその積み重ね大変重要だと言えます。

 

具体例

ごく一部ではありますが、ユニバーサルデザインの例をご紹介します。

 

スロープ

車椅子やベビーカーが通れるスロープは、公共の場所では一般的になっています。スロープがあれば「持って運ぶ手間」が省けるので、大きな労力を使わなくて済みます。自転車でも通れるように、自転車用の細いスロープを設置しているところもあります。

 

シャワートイレ

シャワートイレはもともと、病院で手術後などのために使われていた医療機器でした。それを「一般の人にもシャワートイレの心地良さを享受できるように」とシャワーの位置・水温などを改良したのが始まりとされています。今では一般的なものとして広く普及しました。

 

シャンプーとリンスのボトル

同じ形のシャンプーとリンス。両者の区別をつけるために、シャンプーの容器に突起がつけられています。一時期はメーカーによって突起の場所が異なりましたが、あるメーカーが化粧品業界全体に働きかけたことにより、現在ではどのメーカーを使ってもそれがシャンプーだとわかる目印として、容器の同じ位置に突起をつけることで統一されています。これなら健常者が目をつぶった状態でも、目に障害がある方でも利用できますね。

 

幅の広い改札

改札が広ければ、車椅子・松葉杖・ベビーカーを利用している人から旅行者で荷物がたくさんある人まで誰もが余裕を持って通過することができます。この広い改札のおかげで、多くの人が駅を利用しやすくなります。

 

センサー式蛇口

センサー式蛇口は、握力の弱い人や手に障害がある人も無理なく利用する事ができます。特に公共のトイレでは、蛇口に触れずに手を洗えるので衛生的。まさに障害者から健常者まで、「誰もが快適に使える」というユニバーサルデザインのコンセプトそのものです。

 

車椅子に乗りながら購入しやすい自動販売機

(ジャパンヴィバレッジ https://www.jbinc.co.jp/vending/universal/)

 

通常の選択ボタンの他、低い位置にもボタンを設け、車椅子に乗ったままでもドリンクが買える自動販売機は、車椅子の人だけでなく、子どもや背が低い人にとっても便利です。他にもこの低位置のボタンのほか、受け皿付きコイン投入口や、商品が取り出しやすい高めの取り出し口、購入した商品を置くテーブルの設置などさまざまな工夫が施されているものもあり、、誰にでも使いやすいデザインになっています。

 

標識

「非常口」「禁煙」マークなどの標識(ピクトグラム)は、誰が見てもわかるようにデザインされています。車椅子のマークや、女性トイレ・男性トイレなど、街を歩けば至るところにあります。

 

ノンステップバス

ノンステップバスとは、床面を超低床構造にして乗降ステップをほとんど無くしたバスのこと。これにより、高齢者や小さな子供でも乗り降りが簡単になります。

さらに補助スロープを使えば、車椅子での乗降も可能です。

 

自動ドア

車いすを使用する方など、
身体に不自由がある方が容易にドアを通ることができます。

両手に荷物をもっていたり、子供を抱えていたりするとき、
すごく助かります。

 

牛乳パックのくぼみ

子供が毎日飲む牛乳。
パックの上部(開け口の反対側)に丸い切り込みが入っています。
この商品が「牛乳」であること、
「開け口」が切り込みの反対側にあることが
触って判別しやすくなっています。

 

このようにユニバーサルデザインは、様々な場所で全ての方の役に立っています。

 

 

印刷にもユニバーサルデザインは必須!

ユニバーサルデザインは製品だけではなく、存在する商品すべてが対象になる得るため、印刷業界でも対応が進められています。特に印刷物は、目で見ることが万人に共通した仕様です。

残念ながら、視覚障害で完全に目が見えない方への対応は難しいのですが、それ以外の方には使いやすい、見やすいユニバーサルデザインに基づいた印刷物を作る必要があります。

以上を踏まえ、印刷物を目で見ることに対して、何らかの不利な特徴を持つ人達をピックアップし、その方々にどうやって対応したユニバーサルデザインにすれば良いかを考えていきましょう。

 

弱視の方に対する印刷物

弱視の方は、周囲の明るさや印刷物のコントラストによって、見え方が異なります。

 

印刷デザインの注意点

・デザインを崩さないように大きな文字で作成する

・場合によっては拡大版も用意しておく

 

色弱の方に対する印刷物

色の見え方が一般的な見え方とは異なります。色弱の多くの方が赤~緑の波長域で色の差を感じにくいため「赤緑色盲」と言われ、薄い赤はグレーっぽく、濃い赤が黒に見えるなどの特徴があります。

 

印刷デザインの注意点

・重要箇所に赤を多用しないようにする

・重要箇所は色以外の別要素でも目を引くようにする

・白黒コピーでも情報を認識できるようにする

 

高齢者に対する印刷物

高齢者は年を重ねる毎に弱視になっていきます。また同様に、色覚も低下していくため、色弱者同様に気をつける必要があります。

 

印刷デザインの注意点

・デザインを崩さないように大きな文字で作成する

・場合によっては拡大版も用意しておく

・重要箇所に赤を多用しないようにする

・重要箇所は色以外の別要素でも目を引くようにする

・白黒コピーでも情報を認識できるようにする

・カタカナや英語、略語などをなるべく使わないようにする

 

子どもに対する印刷物

ある程度の年齢であれば、見ることに問題はありませんが、難しい内容を読み取ることはできません。

 

印刷デザインの注意点

・イラストや写真を多用し、図版率を意図的に上げる

・わかりやすい言葉、内容で表現する

・漢字を使う場合は、必ずひらがなルビをつける

 

このように、印刷物によってさまざまな工夫が必要となります。

 

カラーユニバーサルデザイン

印刷物は、当然見た時の印象がとても重要になります。

そこで、「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」についても少しご紹介します。

 

カラーユニバーサルデザインとは

人間が、見たものの色を脳で認識するときの感じ方(色覚)には、厳密に言うと個人差があるといわれています。そのため、一般的に同じ色に見えているものが、色覚の差で人によっては同じと感じられないケースも少なからず存在します。

人の色覚には大別して5パターンがあるとされており、それぞれ色の感じ方に差があります。特に、一般的に感じられる色味とまったく異なる色の感じ方をする「色覚障がい」を持つ方は、男女合わせて約100人に1人の割合で存在するといわれています。

したがって、不特定多数の人に対し、視覚で伝える情報を必ず含む印刷物には、個人が持つ色覚の違いに影響なく、情報を正しく平等に伝えるための配慮が必要となるのです。

個人の色覚によって、伝える情報の認識に差異を与えないため、印刷物や掲示物などにあらかじめ人間の色覚の多様性が考慮された配色を行うことを、「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」と呼んでいます。

製品や立体物に比べると、印刷物のユニバーサルデザインは比較的簡単です。

まとめてしまうと、文字が読みやすいか、色が煩雑でなく見やすいか、重要箇所がわかりやすいか、難解な内容ではないか、効果的に写真や図を使用しているかといった、極めて普通のことを守るだけなのです。

印刷物の見栄えや見やすさのために「色味」を重視した原稿データを作っても、色の使い方次第で、見る方によっては確かな情報として受け取ってもらえないことがあります。「誰に対しても見やすく、分かりやすい」印刷物を作るためには、色の見分け方に特に注意を払わなければなりません。

 

カラーユニバーサルデザインの基本ルール

カラーユニバーサルデザイン(CUD)には、3原則といってもよい3つの基本ルールがあります。

 

1.配色を行う際は、どのような人でも極力見分けやすい色選びをする

色覚障がいを持つ人は、「だいだい色と黄緑色」「空色と紫色」のような色の組み合わせ方をするといずれも同じような色に感じられてしまうため、見分けが難しいといわれています。もう少し分かりやすくいえば、「暖色と暖色」「寒色と寒色」の組み合わせは区別しにくいということになります。これらの組み合わせを避け、また色の明度にも差をつけることで、どのような方にも見分けが容易な配色が行えると考えましょう。

 

2.たとえ色の見分けが難しくても、伝えたい情報が伝わるよう配慮する

それぞれの情報の差異を色の見分けだけで伝えようとすると、色覚が異なる人にとっては正確さを欠いた情報になってしまいます。色分けに左右されない、文言や絵などを上手に用いて、色が違って見えたとしても見た人すべてに正確に伝わる情報を載せるようにしましょう。

 

3.どうしても色分けで表現したいときは、色の名前を載せるなどして情報伝達の修正をかける

色分けを取り入れなければ情報として成り立たない場合は、色以外の文字部分などで「用いた色の名前」が分かるようにし、誰にでもスムーズに配色の意味が伝わるよう工夫しましょう。色覚によって認識が曖昧になるとの予測が明らかにつく内容を掲載するときには、それを見る人とのコミュニケーションを、色名によって図ることが有効になります。

 

カラーユニバーサルデザインの使用例

CUDは、私たちの生活に欠かせない掲示物にも多く用いられています。

例えば、先ににご紹介した公衆トイレを表すマークは男子用と女子用で色分けされていますが、色だけでなく絵柄の違いでも男女を見分けられるようにしています。

また、折れ線グラフの線は基本的に色分けで表現しますが、加えて線自体を「実線」と「点線」に分けるなどして、それぞれを区別しやすくしている場合があります。また、文章中の文字を色で分けるだけでなく、太字や網掛けを用いて見分けさせるなどの工夫も、CUDの活用例といえるでしょう。

このように、身近な暮らしの中でもCUDは効果的に用いられているのです。

(あさひ高速印刷株式会社 https://www.ag-media.jp/)

 

おわりに

日常生活の中で、ユニバーサルデザインがさまざまなところに広がっていることを実感できます。公共の施設を使うとき、移動するとき、買い物をするときなど、以前よりもずっと便利になったと感じます。今後もこのような、便利で誰もが過ごしやすい環境を作っていくためには、全ての人がお互いを尊重し、周囲の人々のことを少しでも理解しようとする一人一人の意識が最も大切だと言えるでしょう。