設定ペラッペラなこの作品。
よくぞ99話まで持ちこたえたものです。
いつも読んでくださってる皆様。
心より、ありがとうございます。
「考えるより、とりあえず戦ってみればいいじゃない」
とは、六紗の暴論。
僕とポンタは『うへぇ』という顔をした。
「戦うって……」
「優ちゃん、さすがにそれは頭がおかしいぽよ。なんの能力も持たないやつに戦えとか……」
「な、何よふたりして!」
六紗は僕らの意見を受けて頬をふくらませる。
よし、これで奴の暴言は完封した!
僕はポンタへとアイコンタクトすると、彼からも全く同じタイミングで視線が送られてきた。
我ら、六紗優に弄ばれてきた同盟。
これ以上、彼奴のいいようにさせてたまるか!
僕らはそう決意したが。
しかし、六紗の援軍は思わぬところから現れた。
「お、おで……せいとうはの王様に賛成だ」
「「んなっ!?」」
お、おおお、おまえナムダ!
もしや裏切ったのか!
僕は彼を信じられないと言った目で見上げると、彼は真剣な表情を浮かべて口を開く。
「おで、あたまわるいだ。だから、いっしょうけんめい考えだけども。やっぱり……たたかってはじめて、ほしい力とか、わがる時もあると思うだ」
「お、お前……」
確かに……言われてみれば。
ナムダの言葉に納得しかけていると、今度は六紗とポンタから批判が飛ぶ。
「ちょっとあんた! なんで私の意見には反対で、暴走列車の意見は素直に聞いてんのよ!」
「そうぽよ! お前、暴走があまりにも穏やかで優しいからって心を許しすぎぽよ! そいつは良い奴なのは否定しないぽよが、そもそも戦うって時点で話が飛躍してるぽよ!」
二人の言葉に思わず耳を塞ぐ。
ナムダが何となく楽しそうに頬を弛める中、ポンタは呆れたように言葉を重ねる。
「そもそも、考えてみるぽよ。戦うにしたって、ちょうどいい対戦相手がどこにいるぽよ!」
仮に戦うとしての、僕の対戦相手。
確かに……ちょうどいい相手がいないと戦う意味もないだろうしな。
そう考えた僕らの視線が、六紗へ向かう。
「えっ? 私がやったら秒も掛からず瞬殺よ」
誰も否定も、肯定もしなかった。
つまりはそういう事だ。
僕らの視線が、ナムダへ向かう。
「お、おで……手加減にがてだ」
3人揃って視線を逸らした。
シャレになってなかったからな。
そして、視線を逸らした先で……1匹の謎生物と視線が交差した。
「…………ぽよっ?」
その謎生物は、不思議そうに首を傾げて。
そして、すぐに嫌な予感に目を見開いた。
「おおっ、お! 男! まさかぽよ!」
「その、まさかぽよ、ね!」
六紗が勢いよく立ち上がる。
嫌な予感が迸った。
彼女はポンタと僕の首根っこを掴むと、満面の笑顔でこう言った。
「アンタら、ちょっと戦いなさい!」
どうしよう。
ものすごく逃げたい自分がいる。
☆☆☆
場所は変わり、正統派の持つ訓練場。
昨日は自由解放されていたらしいが、今回、六紗からの直属命令が下ったらしく、訓練中の異能力者は全員、観客席へと退避となった。
「何が起こるんだ……?」
「ろ、六紗様だ……本物の」
「せっかくいい所だったのに……」
不満やら好奇心やら。
色々な感情の声が響いてくる中。
僕は、訓練場のど真ん中、1匹の謎生物と相対していた。
その謎生物は、今にも泣きそうな顔をしていた。
「お前……乗り気じゃないんじゃなかったのか?」
「当たり前ぽよ! 誰が勝って当たり前の戦いに乗り気になるぽよ! ボクはただ、『戦わなかったら殴るわよ』と低めに脅されただけぽよ!」
ポンタの声が響く。
観客席の六紗を見る。
その額に青筋がくっきりと浮かんだ。
ポンタの死が透けて見えた。
……こいつは一体、何度虎の尾を踏み抜けば気が済むのだろうか?
僕は大きく息を吐き、拳を握る。
さて、ポンタ。
同情するよ。
お前は勝っても負けても死ぬだろうから。
前を向けば、ポンタは目を丸くして僕を見ていた。
「……まさか、お前」
驚いたような彼を前に。
僕は、大袈裟に肩を竦めて見せた。
「なぁに、僕だって対戦相手が決まるまではやる気じゃなかったさ。……ただ、ポンタ。お前とは1度、
「ほ、本気ぽよか!」
本気も本気よ。
どーせ、六紗が言い出したんだ、止まらない。
アイツは世紀の大暴君。
これと言って決めたらテコでも動かない。
そんなこと、僕よりお前の方がよく知ってんだろ?
なら、せいぜい諦めるとするさ。
だって、六紗の意見も一理あると思うからな。
だから、彼女に反発するのはすっかりサラサラ諦めて。
お前との戦いで、何かヒントを得るために頑張ろうと思う。
僕は、拳を構える。
それは、武術家が見れば鼻で笑うような幼稚な構えであったと思う。
されど、ポンタはそれを笑わなかった。
「……
その頬に、一筋の汗が伝う。
カラコンを透過して、青い光が瞳に纏う。
軽く動けば残光が軌跡を描き、僕は視界を完全に切り替える。
「これが本気でなくて、何に見える?」
自然体。
それは、一種の到達点だと僕は思う。
なにせ、王の凱旋を使用した際も、僕は決まった型を一切作らず、用いなかった。
それでも勝てた。
それはきっと、自然体が馬鹿にできない構えだから、では無いだろうか?
そう考えて、僕自身が生み出した新たな構え。
老巧蜘蛛の爺ちゃんからはお墨付きだぜ。
それを前に、ポンタは大きく息を吐き。
「……後悔しても、遅いぽよ」
そして、最強の異能を行使する。
「【
瞬間、彼の体中を膨大な力が包み込む。
……それは、今まで目にしてきた中でも最強格。
なんの力もない小さな生き物が。
膨大な力を渦を見に宿す、怪物へと変化する。
その姿を今の目で見て、冷や汗が流れた。
……分かってはいたんだ。
こいつは強い。僕より強い。
そう、漠然と考えていた。
だけど、これは。
時間制限があったにしても……あまりにも。
――あまりにも、色の質が強すぎる。
あまりの光に、眩さに。
僕は一瞬、視覚を元の状態へと戻した。
その時には、ポンタの姿は消えていた。
「……ッ!?」
視界の端に、白髪が映る。
青い瞳が僕を見下ろし、背筋が粟立つ。
凱旋を使って以降、初めての【死の覚悟】。
僕は咄嗟に両腕で防御を回し。
その腕へと、ただの拳が叩きつけられた。
「ならば、ボクもまた本気で応えよう」
その言葉に、返す言葉が出てこない。
否、
痛みには慣れている。
衝撃だって受け慣れた。
にも関わらず。
その一撃は深々と僕の防御を貫通し。
その威力を、僕の体内にまで浸透させた。
「発勁……と呼ばれる技術を知っているか?」
……知っている。
元中二病なら、確実に知っている技術だ。
打突を瞬間的なものではなく、長く深く相手の体へと叩きつける特殊な技術。
その純粋な威力は、おそらく普通の拳と変わらない。
だけど。
その拳は、なんの躊躇もなく僕の体内への侵入してくる。
「が……はっ!」
「そい!」
内臓がちぎれ飛びそうな痛み。
思わず口から吐血して、その横っ面をポンタの回し蹴りが撃ち抜いた。
今再びの衝撃。
僕の体は大きく吹き飛ばされ、ポンタは音もなく着地する。
僕は何とか着地するも、体勢を整えることが出来ずに崩れ落ちる。
僕は歯を食いしばって前を向けば、そこには一人の男が立っている。
味方にすればこれ以上なく頼もしく。
敵にすれば、誰より厄介な
「純粋な殴り合いで、ボクに勝てる生命体は存在しない」
だろうな。
何の誇張もなく、そう思った。
だからこそ。
僕は歯を食いしばり、拳を握る。
一方踏み出せば、ポンタは吐息を漏らす。
「……短い付き合いじゃない。だから、無駄を承知で忠告する。止まれ。それ以上踏み出せば、ボクとて容赦は出来なくなる」
それはきっと、ポンタなりの気遣いなのだろう。
そして、『容赦は出来なくなる』という、その言葉。
本当に弱者が相手なら、手加減のしようなんていくらでもあるだろうに。
彼は、依然として油断なく僕を見ていた。
その態度を見て、僕は苦笑する。
ちったぁ油断してくれたっていいのにさ。
そう笑って、僕は問うた。
「……なんだ。ビビってんのか? 征服王」
「……馬鹿が」
呆れを見せたポンタは、一気に加速。
一時、姿さえ見失いそうになる超速度で僕へと接近し。
僕は、思いっきり拳を握った。
「……残念ながら、僕も
拳を繰り出す。
それは、なんの強化もないただの拳。
常人には速くとも、超人には遅い拳。
ポンタがその拳を見て、笑みを浮かべたのが見えた。
それは、刹那の光景。
ポンタは拳を振り抜いて。
彼の顔面を、僕の拳が撃ち抜いた。
「らぁ……ッ!」
拳を振り抜けば、鮮血が吹き上がる。
それは、ポンタの顔面から溢れたものと。
耐えきれず、僕の腕が壊れたものと、ふたつの鮮血だった。
「んな……!? ちょ、嘘でしょ!?」
ポンタの強さを誰より知ってる六紗から、焦ったような声が響く中。
吹き飛んで行ったポンタは、ダメージを感じさせることなく立ち上がる。
……実際、ダメージは少ないんだろうさ。
なんせ、今の僕は非力も非力。
ただ、Lv.120のステータスしかないのだから。
「……Lv.120でも、まだ弱いってんだから笑えないよな」
拳を握ると、砕けた腕が修復してゆく。
ポンタは驚きを含んで僕を見ていたが、やがて、その感情は怒りへと変わる。
「お前……」
「どうした征服王。ハエが止まるぜ?」
以前は強がりで言った言葉を。
今回は、本音そのまま口にしよう。
ざわついていた観客席は、いつの間にか静まり返っていて。
僕は、圧倒的な格上へと拳を向けた。
「さぁ、いつも通り、足蹴にさせてもらうぜポンタ」
無能力者、灰村解。
記念すべき、最初の下克上と行こうじゃないか。
次回、いよいよ100話。
に合わせて、灰村解の覚醒回!
次回【闇の王】
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