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設定ペラッペラなこの作品。

よくぞ99話まで持ちこたえたものです。

いつも読んでくださってる皆様。

心より、ありがとうございます。

第四章【禁忌の劫略者】
409『灰村解VSポンタ』

「考えるより、とりあえず戦ってみればいいじゃない」


 とは、六紗の暴論。

 僕とポンタは『うへぇ』という顔をした。


「戦うって……」

「優ちゃん、さすがにそれは頭がおかしいぽよ。なんの能力も持たないやつに戦えとか……」

「な、何よふたりして!」


 六紗は僕らの意見を受けて頬をふくらませる。

 よし、これで奴の暴言は完封した!

 僕はポンタへとアイコンタクトすると、彼からも全く同じタイミングで視線が送られてきた。

 我ら、六紗優に弄ばれてきた同盟。

 これ以上、彼奴のいいようにさせてたまるか!


 僕らはそう決意したが。

 しかし、六紗の援軍は思わぬところから現れた。


「お、おで……せいとうはの王様に賛成だ」

「「んなっ!?」」


 お、おおお、おまえナムダ!

 もしや裏切ったのか!

 僕は彼を信じられないと言った目で見上げると、彼は真剣な表情を浮かべて口を開く。


「おで、あたまわるいだ。だから、いっしょうけんめい考えだけども。やっぱり……たたかってはじめて、ほしい力とか、わがる時もあると思うだ」

「お、お前……」


 確かに……言われてみれば。

 ナムダの言葉に納得しかけていると、今度は六紗とポンタから批判が飛ぶ。


「ちょっとあんた! なんで私の意見には反対で、暴走列車の意見は素直に聞いてんのよ!」

「そうぽよ! お前、暴走があまりにも穏やかで優しいからって心を許しすぎぽよ! そいつは良い奴なのは否定しないぽよが、そもそも戦うって時点で話が飛躍してるぽよ!」


 二人の言葉に思わず耳を塞ぐ。

 ナムダが何となく楽しそうに頬を弛める中、ポンタは呆れたように言葉を重ねる。


「そもそも、考えてみるぽよ。戦うにしたって、ちょうどいい対戦相手がどこにいるぽよ!」


 仮に戦うとしての、僕の対戦相手。

 確かに……ちょうどいい相手がいないと戦う意味もないだろうしな。

 そう考えた僕らの視線が、六紗へ向かう。


「えっ? 私がやったら秒も掛からず瞬殺よ」


 誰も否定も、肯定もしなかった。

 つまりはそういう事だ。

 僕らの視線が、ナムダへ向かう。


「お、おで……手加減にがてだ」


 3人揃って視線を逸らした。

 シャレになってなかったからな。

 そして、視線を逸らした先で……1匹の謎生物と視線が交差した。



「…………ぽよっ?」



 その謎生物は、不思議そうに首を傾げて。

 そして、すぐに嫌な予感に目を見開いた。


「おおっ、お! 男! まさかぽよ!」

「その、まさかぽよ、ね!」


 六紗が勢いよく立ち上がる。

 嫌な予感が迸った。

 彼女はポンタと僕の首根っこを掴むと、満面の笑顔でこう言った。



「アンタら、ちょっと戦いなさい!」



 どうしよう。

 ものすごく逃げたい自分がいる。




 ☆☆☆




 場所は変わり、正統派の持つ訓練場。

 昨日は自由解放されていたらしいが、今回、六紗からの直属命令が下ったらしく、訓練中の異能力者は全員、観客席へと退避となった。


「何が起こるんだ……?」

「ろ、六紗様だ……本物の」

「せっかくいい所だったのに……」


 不満やら好奇心やら。

 色々な感情の声が響いてくる中。

 僕は、訓練場のど真ん中、1匹の謎生物と相対していた。


 その謎生物は、今にも泣きそうな顔をしていた。


「お前……乗り気じゃないんじゃなかったのか?」

「当たり前ぽよ! 誰が勝って当たり前の戦いに乗り気になるぽよ! ボクはただ、『戦わなかったら殴るわよ』と低めに脅されただけぽよ!」


 ポンタの声が響く。

 観客席の六紗を見る。

 その額に青筋がくっきりと浮かんだ。

 ポンタの死が透けて見えた。

 ……こいつは一体、何度虎の尾を踏み抜けば気が済むのだろうか?


 僕は大きく息を吐き、拳を握る。

 さて、ポンタ。

 同情するよ。

 お前は勝っても負けても死ぬだろうから。


 前を向けば、ポンタは目を丸くして僕を見ていた。


「……まさか、お前」


 驚いたような彼を前に。

 僕は、大袈裟に肩を竦めて見せた。


「なぁに、僕だって対戦相手が決まるまではやる気じゃなかったさ。……ただ、ポンタ。お前とは1度、本気(マジ)で戦ってみたいと思ってた」

「ほ、本気ぽよか!」


 本気も本気よ。

 どーせ、六紗が言い出したんだ、止まらない。

 アイツは世紀の大暴君。

 これと言って決めたらテコでも動かない。

 そんなこと、僕よりお前の方がよく知ってんだろ?


 なら、せいぜい諦めるとするさ。

 だって、六紗の意見も一理あると思うからな。

 だから、彼女に反発するのはすっかりサラサラ諦めて。


 お前との戦いで、何かヒントを得るために頑張ろうと思う。


 僕は、拳を構える。


 それは、武術家が見れば鼻で笑うような幼稚な構えであったと思う。

 されど、ポンタはそれを笑わなかった。


「……本気(まじ)、ぽよな」


 その頬に、一筋の汗が伝う。

 カラコンを透過して、青い光が瞳に纏う。

 軽く動けば残光が軌跡を描き、僕は視界を完全に切り替える。


「これが本気でなくて、何に見える?」


 自然体。

 それは、一種の到達点だと僕は思う。

 なにせ、王の凱旋を使用した際も、僕は決まった型を一切作らず、用いなかった。

 それでも勝てた。

 それはきっと、自然体が馬鹿にできない構えだから、では無いだろうか?


 そう考えて、僕自身が生み出した新たな構え。

 老巧蜘蛛の爺ちゃんからはお墨付きだぜ。


 それを前に、ポンタは大きく息を吐き。


「……後悔しても、遅いぽよ」


 そして、最強の異能を行使する。




「【我、征服の獣なり(ロード・イスカンダル)】」




 瞬間、彼の体中を膨大な力が包み込む。

 ……それは、今まで目にしてきた中でも最強格。

 なんの力もない小さな生き物が。

 膨大な力を渦を見に宿す、怪物へと変化する。


 その姿を今の目で見て、冷や汗が流れた。

 ……分かってはいたんだ。

 こいつは強い。僕より強い。

 そう、漠然と考えていた。


 だけど、これは。

 時間制限があったにしても……あまりにも。



 ――あまりにも、色の質が強すぎる。



 あまりの光に、眩さに。

 僕は一瞬、視覚を元の状態へと戻した。



 その時には、ポンタの姿は消えていた。



「……ッ!?」



 視界の端に、白髪が映る。

 青い瞳が僕を見下ろし、背筋が粟立つ。

 凱旋を使って以降、初めての【死の覚悟】。

 僕は咄嗟に両腕で防御を回し。

 その腕へと、ただの拳が叩きつけられた。



「ならば、ボクもまた本気で応えよう」



 その言葉に、返す言葉が出てこない。

 否、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 痛みには慣れている。

 衝撃だって受け慣れた。


 にも関わらず。


 その一撃は深々と僕の防御を貫通し。

 その威力を、僕の体内にまで浸透させた。


「発勁……と呼ばれる技術を知っているか?」


 ……知っている。

 元中二病なら、確実に知っている技術だ。

 打突を瞬間的なものではなく、長く深く相手の体へと叩きつける特殊な技術。

 その純粋な威力は、おそらく普通の拳と変わらない。


 だけど。

 その拳は、なんの躊躇もなく僕の体内への侵入してくる。


「が……はっ!」

「そい!」


 内臓がちぎれ飛びそうな痛み。

 思わず口から吐血して、その横っ面をポンタの回し蹴りが撃ち抜いた。


 今再びの衝撃。

 僕の体は大きく吹き飛ばされ、ポンタは音もなく着地する。


 僕は何とか着地するも、体勢を整えることが出来ずに崩れ落ちる。

 僕は歯を食いしばって前を向けば、そこには一人の男が立っている。

 味方にすればこれ以上なく頼もしく。

 敵にすれば、誰より厄介な時間制限野郎(イスカンダル)



「純粋な殴り合いで、ボクに勝てる生命体は存在しない」



 だろうな。

 何の誇張もなく、そう思った。

 だからこそ。

 僕は歯を食いしばり、拳を握る。

 一方踏み出せば、ポンタは吐息を漏らす。


「……短い付き合いじゃない。だから、無駄を承知で忠告する。止まれ。それ以上踏み出せば、ボクとて容赦は出来なくなる」


 それはきっと、ポンタなりの気遣いなのだろう。

 そして、『容赦は出来なくなる』という、その言葉。

 本当に弱者が相手なら、手加減のしようなんていくらでもあるだろうに。


 彼は、依然として油断なく僕を見ていた。

 その態度を見て、僕は苦笑する。

 ちったぁ油断してくれたっていいのにさ。


 ()()()()()()()()、お前らしくないじゃないか。


 そう笑って、僕は問うた。


「……なんだ。ビビってんのか? 征服王」

「……馬鹿が」


 呆れを見せたポンタは、一気に加速。

 一時、姿さえ見失いそうになる超速度で僕へと接近し。

 僕は、思いっきり拳を握った。



「……残念ながら、僕も接近戦(なぐりあい)なら自信があってな」



 拳を繰り出す。

 それは、なんの強化もないただの拳。

 常人には速くとも、超人には遅い拳。

 ポンタがその拳を見て、笑みを浮かべたのが見えた。


 それは、刹那の光景。

 ポンタは拳を振り抜いて。



 彼の顔面を、僕の拳が撃ち抜いた。



「らぁ……ッ!」


 拳を振り抜けば、鮮血が吹き上がる。

 それは、ポンタの顔面から溢れたものと。

 耐えきれず、僕の腕が壊れたものと、ふたつの鮮血だった。


「んな……!? ちょ、嘘でしょ!?」


 ポンタの強さを誰より知ってる六紗から、焦ったような声が響く中。

 吹き飛んで行ったポンタは、ダメージを感じさせることなく立ち上がる。

 ……実際、ダメージは少ないんだろうさ。

 なんせ、今の僕は非力も非力。

 ただ、Lv.120のステータスしかないのだから。


「……Lv.120でも、まだ弱いってんだから笑えないよな」


 拳を握ると、砕けた腕が修復してゆく。

 ポンタは驚きを含んで僕を見ていたが、やがて、その感情は怒りへと変わる。


「お前……」

「どうした征服王。ハエが止まるぜ?」


 以前は強がりで言った言葉を。

 今回は、本音そのまま口にしよう。


 ざわついていた観客席は、いつの間にか静まり返っていて。

 僕は、圧倒的な格上へと拳を向けた。



「さぁ、いつも通り、足蹴にさせてもらうぜポンタ」



 無能力者、灰村解。

 記念すべき、最初の下克上と行こうじゃないか。



次回、いよいよ100話。

に合わせて、灰村解の覚醒回!


次回【闇の王】

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