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第一章【エンドロールの向こう側】
112『レベリング』

 向かってきた番人を、一蹴した後。


 レベリングを始めるにあたり。

 僕は、零巻で改めて自分の力を再確認した。



 灰村 解

 Lv.43[Bランク]

 異能[禁書劫略]

 技能[心眼][狼牙][転移][未選択][未選択]

 基礎三形

 活性[S]

 遮断[A]

 具現[C]



 新しく基礎三形を習得したおかげか、ステータスの表記が増えていた。

 また、技能は、Cランクを飛ばして2段階進化している。


 上級鑑定→心眼

 影狼→狼牙

 帰還→転移


 それぞれ、今までとは比べ物にならない能力みたいだ。

 心眼は、鑑定はもちろんのこと、視力の強化と相手の弱点や隙なども見分けられるらしい。

 狼牙は、完全に影狼技能の上位互換。

 転移技能は、1度言った場所、あるいは視界の中であればどんな場所にだって飛んで行けるらしい。


 ちなみに、現世へと転移できるのでは? って考えもあったけれど。


「やめといた方がいいよ。今のまま――魂のまま現世に上がったら、それこそ、その場で消滅しかねないからね。ここは正攻法しかないんだよ」


 との、霧矢の言葉だった。

 まぁ、仮にそんなことが可能だったとしても、僕は絶対にやらなかっただろうけどな。


 冥府には、借りをたっぷりと返さねぇといけない男がいる。

 あの男をぶっ潰す。

 こっちがやられたことをやり返さないと、気が済まない。

 少なくとも、この世界には、あの男を打倒するまでお世話になるつもりだ。


「で、どうするんだい? 新しい能力については」

「……あぁ。それについては考えがある」


 もう、強さに関する抵抗なんてものは無くなっていた。

 僕が目指すもの。目指すべき最凶の姿。

 そんなもの、かつて僕自身が設定し、10冊に書き連ねた【例の存在】を除いて他にはあるまい。

 もう自分の能力に関して、中二だなんだとグチグチ言うのはやめにした。

 心に蓋をして、僕は、禁忌へと迷いなく手を伸ばす。



「僕が習得すべきは……彼が持ち得た、7つの能力」



 一つ、人外へと姿を変えて身体能力を上げる力。


 一つ、周囲のもの全てを捩じ切る力。


 一つ、攻撃を受ける度にエナジードレインする力。


 一つ、配下全てを強化させ、指揮する力。


 一つ、手で触れたもの全てを即死、崩壊させる力。


 一つ、望む場所に瞬間移動できる力。


 一つ、理を略奪する力。



 そのうちの、変化、転移、禁書劫略は既に手に入れてある。

 これは偶然か、あるいは……僕もまた、無意識下に()()()()()()を受けていたのか。どちらなのかは分からない。

 それでも、僕は確信していた。

 中学二年生の、青春時代をぶっ潰して作り上げた怪物像。

 あれに勝るものなどない、と。


「そして、今早急に手に入れるべきものは」


 見た瞬間から、既に察しがついていた。

 あぁ、きっとこの力は、解然の闇に繋がっているのだ、と。


「捩じ切る【回転】と、耐える【耐性】」


 僕は、迷いなくその2つを選択した。

 異能種別で言えば、久理と志壁。

 それらの技能は僕のステータスへと記される。

 しかし、すぐにインフォメーションが響き渡り、それらの文字は変化した。


 《技能が進化しました》

 《技能が進化しました》

 《技能が進化しました》

 《技能が進化しました》

 《技能が進化しました》

 《技能が進化しました》


 一気に、EランクからBランクまで。

 数段飛ばしでそのスキルは進化を遂げる。

 僕は最新のステータスを開示すると、隣で霧矢が息を飲んだのが分かった。



 灰村 解

 Lv.43[Bランク]

 異能[禁書劫略]

 技能[心眼][狼牙][念波][反骨][転移]

 基礎三形

 活性[S]

 遮断[A]

 具現[C]



「……うっはぁー。実質異能6個持ち。やばいね、これ」

「……最高の褒め言葉だな」


 [念波]

 周辺のものを全て操作、捩じ切ることの出来る力。


 [反骨]

 攻撃を受ける度、相手の想力を削る力。


 間違いない、この力で正しかった。

 この力は間違いなく、僕の最強へと繋がっている。


「……だけど、まだだ」


 まだ、あの男には勝てない。

 こんな程度じゃ、全然敵わない。


 身をもって、奴との実力差を知った。

 教えてくれた。

 他でもない、シオンが。

 伝えて、託してくれた。


 彼女の意に答えるためにも。


 僕はもっと、強くならなきゃいけない。


 そのためには、やっぱりレベリングが大切なわけで。


「……霧矢。上層に上がるぞ」

「……早速だねぇ。もうちょっと中層で……って。まぁ、異能が使えるようになった今、上層でも全然通用するとは思うけどさ」


 そう言って、彼は懐から鍵を取りだした。

 こいつのことだ。中層守護者から鍵を奪ってるはずだと思ってた。

 彼は、上層への扉へと、鍵を差し込む。


「いいかい。上層は、言ってみればイミガンダのお膝元。出てくる番人は全員がA級クラス。正直、ちょっとの判断ミスが命取りになるよ」

「……そうだな。なら、常に気を張ってればいい」


 僕はそう答え、ほぼ同時に、扉が開き始める。

 特に迷いはなく、僕は歩き始めた。


 征くは、上層。



 目指すべきは、冥府の王イミガンダの、その命。



 僕は上層を見上げ、口の端を吊り上げる。

 僕を見ていた霧矢が、顔を青く染めあげた。


 ……お前が、白けたと吐いたこの命。

 興が醒めた、程度が知れたと鼻で笑ったこの牙は。

 もう折れない、二度と曲がらず、砕けもしない。


「見逃したのは、ただのトカゲが、竜の子供か」


 さて、僕はどっちだろうな。

 僕は零巻を握りしめて、階段へと足をかける。



「絶対に後悔させてやるよ、クソッタレな屑王様よ」



 かくして、僕のレベリングが始まった。




 ☆☆☆




 上層は、より地上へと近しい光景が広がっていた。

 洞窟の部分の方が、逆に少ない。

 高い天井ギリギリまで建物が立ち並び、それ以外はほぼ全てに森が広がっている。そして、住まう番人たちは今までとは別格の存在だ。


 一人一人が、中層守護者と同格の化物。

 そんなのが、ごちゃごちゃと居る。

 しかも、そいつら全員が超一級の中二病と来たもんだ。



「唸れ、弾けろ! 我がソウルに抱かれし怪異の名は真祖の吸血鬼! 受けるがいい我が異能!【血濡れし我が名の下に(ヴァンパイア・ロード)】!」


「火よ、水よ、風よ、土よ。星の精霊よ! 我が元に力を! 眼前の敵を屠れるだけの星の力を!【七星の帝(セブンスロード)】!」


「Road my soul……我が魂の叫びを聴け。我が叫びは世界に届き、世界は我が叫びに応じ――貴様を屠る。【我が叫び、我が力(ロード・マイデストラ)】」


「多くは望みません。ただ、私は祈るだけ。全てを癒し、全てを支える救世の煌めきを。我が主よ、この身を捧げます【愛しき我が神の奇跡を(イエス・マイロード)】」


「この剣は悪しき力の特異点。暗黒の中に生まれし白銀、善性に生まれし意思ある魔剣。災い転じて福となれ、【理壊せし白き聖剣(ロードエクスカリバー)】」



「お前ら『ロード』好きすぎぃ!」


 僕は叫んだ。お前らは中二病の見本市か!

 吸血鬼っぽい男を躱し、飛んできた岩やら炎やらを防ぎ、音波が飛んできたため堪らず飛び上がる。

 祈るだけ、とか言いながら思い切り殴りかかってきた女を投げ飛ばして、最後の剣を真剣白刃取り! コイツらキツいよ! 物理的にも精神的にも!


「お前らなんなの!? ロードって言葉好き過ぎだろォ!! 読み込みと皇帝的な意味をかけてるわけ!? 確かにロードって言葉がついてるだけでカッコイイとは思うけどぉ! 確かにカッコイイけどもぉ! さすがに乱用しすぎなんだよこの馬鹿ども! 程度を知れィ!」


 かく言う僕も、中二の頃はロードを乱用しておりました。

 あれってもう、癖なんだよね。

 意味は通ってなくても、思わず読み方(ルビ)に【ロード】って付けとけばかっこよくね? みたいな思考停止が癖になっちまうんだよ。

 誰とは言わないが、僕は能力名にロードを多用する作家を知っている。


 えっ、僕自身の事じゃないかって?


 ……しっ、仕方ねぇじゃんかよぉ!

 だってもう、読み方考えるだけでも一苦労なんですぅ!

 小説書いてて、その1回しか出てこないモブの能力名考えるのに何分掛かってると思うんですか! 君たちの想像してる数倍かかってるからね!

 それくらいの思考停止は許してくださいぃ!


「……なんと適切な添削! もしやお主、同志か?」

「ぶっ殺す!」


 僕は、白刃取りした白い剣に力を込めて、目の前のエクスカリバー野郎の腹へと膝蹴りを叩き込む!

「グゲハッ……!」という妙に中二臭い悲鳴。

 僕は額に青筋を浮かべてその頭を掴むと、その手へと【狼牙】技能を発動する。

 瞬間、右腕がピンポイントで狼のものへと変わる。

 影狼の頃より、大きく、強く、太い腕。

 一目見ただけで、格が違うとすぐにわかる。

 それほどまでの威圧感が、その右腕からは放たれていた。


「ま、まっ――」


 何かを察して、涙をうかべるエクスカリバー。

 僕は満面の笑みを浮かべると、奴の顔面掴んで振り回した。


「この世にエクスカリバー持ってる奴、何人いると思ってんだぁぁぁああああああああああ!!」

「ひぎゃぁぁぁああああああああああああ!?」


 僕はやつの体をぶん投げると、神様に体を捧げるとか言ってた女に直撃。2人並んで失神し、僕はAランクを一撃で気絶させられる【狼牙】技能に戦慄した。ヤベェなこの力。力加減間違ったら大事故だぞ……。


「……! お前ら、よくも俺の友達を――」

「てめぇ英語使ってた野郎だろ! 設定忘れてんじゃねぇか!」


 Road my soulとか言ってた野郎にドロップキック。

 面白いくらいに吹き飛んでゆき、壁へと直撃。

 呻き声を上げて動かなくなった。


「残るは二人……!」

「……っ! やらせないわ! 星よ、私たちを助けて!」


 余裕がなくなってきて、一人称『我』設定も忘れてきたか。

 女が叫び、無数の岩が僕へと迫る。

 その量は……目を見張るほど。

 これを回避するってなると……かなり厄介だな。

 僕は狼牙スキルを両腕に用いて防御を固める。

 その上から、凄まじい衝撃が僕を襲った。


「ぐっ……!」


 凄まじい質量と速度。

 僕は悲鳴をあげながらも耐え続ける。

 そして――最初に膝を着いたのは、相手方だった。


「な、なん、で……!」

「……やっと尽きたか。【反骨】技能」


 攻撃を受ける度、相手の想力を削る技能。

 そりゃ、あれだけ乱発してれば尽きるに決まってる。

 その女は想力不足がたたってか、その場で倒れて気絶する。

 でもって、残ったのは1人だけ。


「く、くくく……! 想定以上の強さよな! だがしかし! その強がりも長くは続かないだろう! 我らは上層に棲まうAランクの中でも最低位! ぶっちゃけ言ってしまえばBランクに毛が生えた程度の雑魚よ!」

「自分で言うことじゃねぇわな」

「ええい黙れ! とにかく、貴様ではこの階層は生き残れんだろう! 間違いなく、残酷に、凄惨に! あっさりとぽっと出の格上に殺される! 間違いなく、だ!」


 吸血鬼野郎はそう叫び。

 僕は、鼻を鳴らして嘲り笑った。



「あっ、そう。レベリングのやり甲斐があるじゃねぇか」



 僕は、一息に男の懐へと踏み込んで、狼の拳を振り抜いた。

 男の顔面から真っ赤な鮮血が吹き上がり、レベルアップのインフォメーションが鳴り響く。


「とりあえず、5人」


 あと何人倒せば、イミガンダに追いつける。

 あと何年やれば、イミガンダをぶっ殺せる。

 そんなことは分からないし、興味もない。



 ――あの野郎に勝てるまで、続けるだけだ。



 僕は背後を振り返ると、霧矢に向かってこう言った。



「霧矢。長丁場になるから、覚悟しとけよ」

「余裕だよ。君の何倍生きてると思ってるんだい?」


 霧矢はそう答えて、僕は笑った。




 ☆☆☆




 その後も、僕は敵を狩り続けた。



 基礎三形の練度を上げて。


 ありとあらゆる技術をみにつけ。


 異能をより高位へと鍛え上げ。




 ――シオンが殺されてから、1年半後。



 僕は、Sランクに手が届く高みへと上り詰めていた。



時は、1年半後へ。




それと、本編制作側のちょっとした小話です。


【作者の苦悩小話】ルビの文字制限。


この作品を書く上で一番苦しめられているのが、ルビの文字制限。

簡単に言うと、技名なんかに読み方を振る場合、読みも書きも10文字以内でなければならないみたいです。


例えば『我が名に応えよ、鳴き灯篭』という技名に《スカイオブ・コムローイ》という読み方を振りたいとします。ちなみにどんな能力なのかは不明。

ですがここで問題になってくるのが文字制限。


書きが12文字。読みが11文字。

共に10文字オーバーで、仕様的に使えなくなってしまいます。

そこで悩みに悩んで、いろんな単語を削って。

なんとかサイトの設定に合わせて、モブの中二病な能力とかを考えています。


今回のモブ数名の技名だったり、今後の登場人物の異能だったり。

”あっ、中二”と思しき能力名が出てきた時には、”へぇ、10文字以内でなんとかやってんじゃん”と思いながら読んでくださると、少し楽しみが増えるかもしれません。



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