ラッシーで狂った話の詳細

寝る準備をするのが何だか面倒くさくなり、ボーっとアラームをセットしようとするが何故かカメラを立ち上げるのを数回繰り返す。どんだけ疲れているんだ?とおかしくなって1人でムフムフ笑う。
セットする時間を考えるのがとてもだるく、やっとの思いでアラームをセットし、眠りにつこうとするが何だかぼーっとしてしまう。横にはなっているものの、寝る行為もめんどくさいのでしばらく待っている。

外の音が妙に騒がしい。変な音楽がなっている。ミョーンミョーンのような音とそのイメージが青い針金のハンガーが踊るようにポワンポン。新年だから変な音楽が流れるのかと思ったが、距離感やタイミングが妙だ。なんかでっかい担ぐ木琴?を担いだ男と、それを取り巻く3-4人の集団が音を鳴らしてるイメージなのだが、それらが100m距離に来たかと思えば300m距離になったり。
それに、その音に耳を傾けると妙に浮遊感というか、ボーっとする。

これが地獄の始まり。
次第に耳を傾けなくてもぼーっとするようになり、自分の意識を自分でコントロールできなくなる。自分の空想の世界へ強制的に連れていかれる。勿論、体は現実の世界にあるのだが知覚する世界が全く別の所にある。音、視覚、感覚、変だ。これはまずい。連れていかれる。現実の世界に感覚も引き戻さないと取り戻せなくなると感じ、必死に体に力を入れたりするも身体も鉄になったかのように重く、変な体制になっても全く動けない。すかさずやっとの思いでスマホを取り、電話する。どこか別の所に飛んでいく前に現実の人間と意思疎通をすることで現実に引き戻してもらわないといけない。

遠のく現実感と、意識を保とうとする力が戦う。自分の幻想がものを言っていることは分かっているので自分は強い、自分は強い……と暗示をかける。
どれくらい経った頃か、急に吐き気を催し、一気に吐き出した。勝った。そう確信した。
それからは大量に買いためていた水5リットル程を可能な限り飲み、可能な限り吐き出す。意識がギリギリあったので最大限に集中して何度も水を飲むという行為をする。

ふと鏡を見ると顔面蒼白な自分が真顔で立っていた。ガンギマリしている自分だ。なんかめちゃくちゃガン見してくる……自分だ。視界が朦朧としており、自分がスリムになったり消えたりする。慌てて向きを変えるも、トイレの壁のブツブツが脳にこびり付き、ブツブツの合わせ鏡の世界に入り込んだようでこちらもやばい。
1番情報の少なそうなベッドの方に向き直して落ち着く。
次第に変なイメージができ始める。エラく吐いているため、その声が外に漏れて皆がホテルの周りを囲って笑いものにしている。
吐く度に歓声が起きたり、名前を叫ばれて笑われたり。同じホテルに泊まっている人が吐く真似をしてきたり。
聞こえるなら助けろよ、と思いhelp me! help me!と叫ぶ。電話の相手も笑いながら「人ってこんな気持ち悪い声出すんだな」と言っている。(後で聞いたらそんな事言ってないらしい)

およそ飲んでから3時間程か、
ひと通り吐ききったと思い、ボーっと突っ立つ。これからどうしようか。ホテルからクレームで今日宿泊した人分の宿泊費、ホテルのクチコミに書かれた損害賠償の請求、嘔吐したことにより詰まった排水管の工事代、払い切れるだろうか。まずホテルの周りを囲まれて有名人になった今、空港まで送ってくれる人がいるだろうか?

‪バラナシ中のニュースになってるに違いない。リクシャーは法外な値段を請求して笑われながら送ってくれるだろうか。‬今日一緒に写真を取った人との写真がネット中にばら撒かれる。日本に帰れるだろうか。生活保護になるのだろうか。
‪取り敢えず、本来のチェックアウトは明日だが今日付けで強制チェックアウトだろうと‬思い、慌てて掃除する。損害賠償を減らす為に。持ってきたタオルを水で濡らし、地面の拭き掃除を始める。
来た時から既に床はベタベタしていたのでタオルはあっという間に真っ黒になった。何度も絞り、何度も拭く。部屋に嘔吐の匂いが充満していた。麻薬中毒でも礼儀正しいさすが日本人だなと、笑われながら見られているイメージが続く。
本当に客観的に見たらガンギマリしたゲロまみれの人が狂ったように部屋を掃除するという状況。
朦朧とする意識の中可能な限り拭き、ゲロを流し、1度休憩でぼーっとした。少し休んだら水を買ってチェックアウトしよう…今はホテルの周りを囲まれているから。
とりあえず荷物を整理する。スーツケースの鍵を取りにカバンへ。鍵を取るとスーツケースを開ける前に今度はゲロが気になる。ゲロを拭くタオルを取りに行く。その前にお土産が目に入り片付けしないと……という感じで結局何もしてないまま部屋の中をウロウロする。
その上、体が重たすぎて10歩歩く為に1分くらい気合いを入れる時間が必要だった。

一気に疲れが来たのでゲロまみれになった服を脱ぎ捨てて倒れるようにうつ伏せでベッドに横になる。(実際ゲロはほとんどトイレに流していたのでそれほど付いていなかった)
体が硬直してくる。物凄くだるく、勝手に体全体に力が入る。つま先は上を向き、白目になり、歯を食いしばる。抗おうとするも、とても集中力が必要だ。歯だけは砕かれてたまるかとしばらく耐えていたが、意識が遠のき、もう良いだろう…途中までは抗ったが諦めて寝てしまった。

およそ1時間後の5:50、アラームにより目が覚める。今日はジェイくんと朝のプージャを見る約束があった。まだ眠いが取り敢えず人と会いたい。ガイドもどうでもよく、ただそれだけだった。
電話するが繋がらない。これだけゲロで有名人になったので彼も連絡を切ったのだろうと絶望する。するとジェイくんから電話が来るも、一瞬で切られる。と同時に外で笑い声が。おちょくられているのだろう。それでもいい、知り合いと話したい。何度も電話するが出ない。着替えて、チェックアウトできるように部屋を掃除して何度か電話しているうちにようやく出た。
意外にもジェイくんは至って普通の対応だった。
今どこにいる?私の事知ってる?有名人になってるでしょ?みんなホテルの周りにいるでしょ?そんなことを立て続けに聞いた。
あなたの宿の近くにいるし有名人になってない、みんなって誰のこと?などと返される。おかしい。

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