現在のパーティメンバー
①中二病を見ると怖気が走る主人公。
②自称一般人を名乗る明らかに一般でないおっさん。
おっさんは、自分を霧矢ハチと名乗った。
彼いわく、自称一般人との事だったが……。
「自称○○、って輩は信用出来ないな」
僕はその場に座り込み、断固拒否した。
あっ、ちなみに、死んだせいか服は着ていなかった。
全裸だ。
心底、ここに阿久津さんや六紗がいなくて良かったと思う。
全裸的な意味合いでも、死んでなくて良かった的な意味合いでも。
「おやっ、
理由? んなもん決まってんだろ。
明らかに中二臭いからだよ、このおっさん野郎。
自分を『自称○○』とか、えっ、何それふざけてんの?
自分を他の何者かだと思い込んだり、自分で自分が一般人でないと分かっているのに、あえて『自称一般人』とか言っちゃったり……もうね、聞いてるだけで寒気がするよ。
「特に、おいお前。今、理由と書いて『ワケ』と読み、聞くと普通にいえばいい所を、意味がちょっとおかしくなるのに格好つけのためだけに『聴く』と言っただろ。そういう輩は中二病、つまりは関わらないようにしようと決めているんだ」
「……君は、何かの能力者なのかな?」
「ハッ、痛いオーラなんざ目を瞑っていても分かるさ」
僕を舐めてもらっては困るぞ、おっさん。
この僕は、元中二病としてはプロもプロ。
中二病への危機察知能力はピカイチさ。
無論、完璧ではない。
いくら気をつけていようと不意の
「つまり、なんだ。君は中二病に対して嫌な感情を持ちえていると? ……えっ、よく異能みたいなもんに手ぇ出そうと思ったね。あんなもん、傍から見てたら中二病以外の何物でもないでしょ」
「そうなんだよ……!」
本当だよもう!
黒歴史ノートが出回ってなければこんな世界来てないよ!
なんなのもう! お母さん!
なんで僕の黒歴史を売り払ったのよ!
黒歴史は封印しておくって言ったじゃん!
何度も言ったよね!
せっかく書いたものだし、捨てるのはちょっとアレだから、封印しておくね? あ、でも絶対に触らないでよ、いやマジで。って言ったじゃん! 人の話ちゃんと聞いておいてよもぉ!
「ま、俺としてはラッキーだったけどなー。お前さんが死んでくれてマジで助かったぜ。ほんと、死んでくれなかったらどうしようかと思ってた」
「は? ぶんなぐるぞお前?」
僕は青筋を浮かべ、腕を影狼へと変化させようと力を込めた。
……しかし、ここに来て僕は、異変に気がついた。
「……ん? えっ、あれっ?」
「どうやら、気付いたみたいだな、少年」
――影狼技能が、使えない。
それだけじゃない、禁書劫略も似たようなもんだ。
腕に力を込めても能力が一切発動しない。
唯一使えそうなのは……右手の甲へと浮かんでいた【活】という文字。
禁書劫略で、奪った能力。
その文字は皮膚の下へと沈んでゆき、僕は拳を握った。
暴走列車、ナムダ・コルタナが保有していた【活性】の力。
禁書劫略は、元々の保有者が死んだ場合、その人物から奪った能力は永遠に自分のものになる……という設定をしていたはず。
その逆は考えていなかったが……みたところ、似たような現象が起きるらしいな。僕が死んでも、奪った能力は戻らない。
僕が暴走列車から奪った能力は、もう動かない。
完全に、僕のものへと昇華されたわけだ。
「この世界に来るにあたって、所有物の全ては失われているからね。正確に言うと、現世においてきている。君の場合は……想力使用の源……そう、鍵。アレをここには持ち込んでいないわけだろう? 使えないよ、異能そのものは」
活性の力を使えるのは、既に体へ定着しているからか。
よく分からないけれど、鍵である零巻が無いと技能も使えないってことは分かった。今度からは気をつけるとしよう。
それに……この男も。
へらへら笑って信頼できそうな雰囲気の欠片もない。
けど……話してみて分かった。こいつ、中二じゃねぇわ。
中二じゃないってことは、多少は信じてもいいかもしれない。
と、そう考えてると、おっさんは言った。
「ま、兎にも角にも、まず1番にすべきことがあるね」
「……1番にすべきこと? ……あぁ、なるほど」
僕は自分の体を見下ろしそういった。
霧矢は大きく頷くと、自分の服を指して口を開いた。
「レッツ劫略! 冥府の人達から服を強奪してみよう!」
☆☆☆
冥府には、そこに棲む者が居る。
人間のようで、人間とは全く別種な何か。
姿形から、言葉、倫理観まで全てが一緒。
なのに、決定的に違う。
それが何かと問うてみれば、霧矢は『強さ』だと答えた。
「彼ら……そうだね、『番人』と呼ぼうか。彼らはあからさまに人間なのに、人間じゃないんだ。まぁ、見たらわかるよ。彼らは少々強すぎる」
「……そんなのに、勝って服を奪えてか」
何たる無茶ぶり。
馬鹿なんじゃないのこのおっさん。
そうは思ったが、コイツが服を着ていることが、何とかなるという証拠だろう。
「お前のも、奪ったやつか」
おっさんは、黒一色のローブを着ていた。
僕がおっさんに対して『中二病かもしれない』と考えた、1番の要因。
フード付きの黒いローブは、まるでカラスのような様相だ。偏見100%言ってしまえば『普段は一般人だが、実は裏組織の幹部』的な人が、幹部状態の時に身につけるみたいな服装だ。
言っていることが分かるだろうか?
僕の妄想力についてこれてる?
「というか、強いだけならただの人間だろ。そんなヤツらから身ぐるみ剥がないと行けないのは……ちょっとな」
「いやいやいや、見ればわかる。あれは人間じゃないよ。人間やめてるとしか思えないもん」
霧矢は執拗にそう言ってくる。
「ほら、あの先……番人の休憩室になってるんだ。覗いてご覧」
「……大丈夫なのか?」
番人が強いって、今言ったばかりだろうに。
僕は足音を消して、抜き足差し足で曲がり角の向こうへ視線を向けた。
――そうして僕は、理解した。
「我が
「ふっ、くくく、ははははは! 何たる脆弱、愚鈍な思考か!」
「我が、ここで膝を屈すると思うたか? 甘いわッ! 貴様が油断するこの時、この瞬間を――待っていた。必殺【
「ふん、下らん。このような児戯……一体何が面白いのか」
「とでも考えていたのだろう? その思考すら我が掌の上だと……なぜ分からん?」
「我、理を統べる者。此度の勝者を予期しよう。そう、此度の勝者はこの我よ」
「やれやれまったく、なぜ我に勝てるとでも思ったのか。理解に苦しむな」
「おいおい、我を誰と心得る。前世は聖剣王アルフレッ――」
僕は見るのをやめた。
無言で、後方の霧矢のもとへと戻ってきた。
そして一言。
「よし、帰ろう」
「いやだめでしょ」
霧矢は言った。
僕は発狂しそうになった。
「ふざけんなよ!? なんだあれ、もはや人間じゃねえよ、黒歴史製造機だよもはや! 馬鹿じゃねえの、バカじゃねえの!? あんなこと年中やってんの? 僕の心を殺しに来てんのか!?(小声)」
僕が見たのは、黒づくめの集団による闇の宴であった。
やってることはとてもシンプル。ただのカードゲームに見えた。
が、言ってることと、カードゲームのやり方が常軌を逸していた。
まず第一に、言ってること。
まあ、お聞きになった通りイカレてるよね。
頭が沸いてるとしか思えねぇわ。
イタさがもはや天元突破してるもの。
あまりにもイタすぎるあまり、逆にダメージが少ないくらいだ。
そして、ゲームのやり方。
あるものは玉座で足を組み、あるものは壁に背を預けて手札を開き、あるものは我関せずと後ろを向きながら、それでもカードゲームに参加している。
極めつけは、理を統べる者(笑)、見た目主人公(苦笑)、前世が聖剣王(痛)だ。
なんなの? 中二病って本当になんなの。
なんで『統べる者』に憧れるの? なんで『やれやれまったく=主人公』みたいに思ってるの? ポンタの時も言ったけど、前世って何、お前らなんで決まって有名な人の生まれ変わりなわけ? 世の中に聖剣王の生まれ変わり何人いると思ってんだ。僕の中学時代の知り合いにも一人いたよ?
「ね。言ったしょ? 彼らは人間じゃないんだよ」
霧矢の言う通りだった。
あいつら人間じゃねえよ。
黒いって時点で僕にとってはゴキブリ同然。
阿久津さん、六紗、ポンタもなかなかにキツくてイタかったけど、こいつらはその上を行ったぜ。あの光景を見た今なら、なんなら六紗に告白しろって言われてもできる気がする。
「えっ、もしかして僕、中二病の着た服を着るわけ? 中二菌が移るよ」
「すごい憎悪。徹底してるね~」
霧矢はそう言いつつ、帰りそうな気配はなかった。
僕は頬を引き攣らせると、霧矢は言った。
「でもさ、フルチンで生活するわけにはいかないしょ? 必要経費と割り切ろうよ」
「……………………まあ、そう、だな」
フルチンと中二病。
どちらをとるかと聞かれればフルチンだ。
だが……中二病の着ていた服を着る、程度なら、まだ辛うじて中二がフルチンに勝る。
……えっ、番人から服を奪い取ることに対しての抵抗?
んなもんないよ。だって、相手は中二病だもの。
「わかった。それで、僕はどうすればいい。……真正面から勝てるとは思ってないが」
僕の問いかけに、霧矢はとってもいい笑顔を浮かべた。
とってもいい笑顔で、サムズアップし。
親指で、首を掻き切るようなしぐさを放った。
「うん! 寝込みを襲おう! ついでに備蓄も奪っとこうか!」
僕も僕とてかなりアレだとは思うけど。
コイツはそれ以上だ。
霧矢ハチ。
コイツ、超絶ド級のクズ野郎だ。
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