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「ハリウッド版実写ガンダム」の知られざる舞台裏 困難極めた制作…富野監督が送ったエールとは

苦労極めた制作…富野監督が送ったエールとは?

「1/144 G-SAVIOUR SPACE」(BANDAI SPIRITS)
「1/144 G-SAVIOUR SPACE」(BANDAI SPIRITS)

 ですがこの実現はとても大変なことで、百戦錬磨のハリウッド映像関連者たちを相手に制作に臨んだ実スタッフの苦労はとてもひと言では説明できません。しかし、その苦労があったからこそ、これまで一度もアメリカ側で「ガンダムっぽいロボット作品」は作られていないのです。

 ちなみに『ガンダム』の富野監督もこれを理解し「それなら僕の名前は入れない方がいいよ。大変だろうけど、がんばって作ってきて」とエールを送ってくれました。この「名前は入れない方がいい」がガンダムの名称を冠していない意味でもあります。

 25年前の映像は、今見れば見劣りもするでしょう。しかし、たった1分のCG映像を計算するだけで一昼夜かかるような時代に、実際の俳優や大道具もそろえて仕上げられた本作は、決して恥じるものではないと申し上げます。

 なお、画面内のモビルスーツの動きを「モーションキャプチャ」と思っている方もおいでですが、それは誤解です。

 モビルスーツ関係の画像は、20周年に向けて2年前に同じCGプロダクションで作ったパイロットフィルムの時のものを使用しており、この時には『機動戦士ガンダム0083』の監督、今西隆志さんがスーパーバイザーとして渡米、日本独特のロボットアニメの動きや見せ方等をきっちりと指導。つまりCGの動きはすべて、手描きのアニメと同様に人の手で打ち込まれているものです。

 また、制作(製作)がカナダと表記されている誤情報も散見されますが、カナダは「実写部分の撮影」を行っただけで、制作はあくまでもアメリカです。

 やがて出来上がるのだろう実写版ガンダムをご覧になる時が来たら、その礎石となった『G-SAVIOUR』のことも、ちょっとだけ思い出していただければと、関係スタッフのひとりとして願ってやみません。

(風間洋(河原よしえ))

【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規スタッフとして『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。

【画像】えっ、カッコいい! これがハリウッド実写版に登場するMS「G-SAVIOUR」です(3枚)

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