ニュース転載・ネタバレ:
国産初「冷却原子(中性原子)方式」量子コンピュータ開発へ 産業界の10社と事業化に向けた連携を開始(大森賢治グループ) – お知らせ | 分子科学研究所 (ims.ac.jp)
【抜粋】当PFへの参画企業はblueqat株式会社(東京都渋谷区)、株式会社日本政策投資銀行(東京都千代田区、DBJ)、富士通株式会社(東京都港区)、株式会社グルーヴノーツ(福岡県福岡市)、浜松ホトニクス株式会社(静岡県浜松市)、株式会社日立製作所(東京都千代田区)、日本電気株式会社 (東京都港区、NEC)など計10社(表記はアルファベット順)です。
【2024/2/26日経電子版】
次世代の高速計算機、量子コンピューターの商用化に向けて国内の産学が2024年度に新会社を立ち上げる。産業界からは富士通や日立製作所、NECなど約10社が参画し、30年度までに新しい方式の高性能商用機の実現をめざす。日本が強みとする独自技術を生かし、将来の産業競争力や経済安全保障の強化につなげる。
新会社は国の研究機関である自然科学研究機構・分子科学研究所(分子研)主導で設立する。「冷却原子方式」と呼ばれる新しいタイプの量子コンピューターを手がける。まず26年度に試作機をつくり、30年度までに世界に先駆けて本格的な商用機を提供する計画だ。
分子研はこのほど事業化に向けた協議体を立ち上げた。日本政策投資銀行や富士通、日立、NEC、浜松ホトニクスなど約10社が参画する。各社は新会社への出資などを通じ、人材や技術の面で支援する。
新会社は分子研のある愛知県岡崎市に拠点を置く。経営陣は分子研のメンバーが中心となり、社名や企業からの出資条件などは今後詰める。スーパーコンピューターにとっても困難な問題を瞬時に解くと期待される量子コンピューターの実用化に向け、産業界と連携する体制を整える。
開発する冷却原子方式の量子コンピューターは、絶対零度近くに冷やしたルビジウム原子を基本単位となる「量子ビット」として扱い、その状態を操作して計算を実行する。ルビジウム原子は計算に必要な状態を作り出すのに適している。
冷却原子方式は計算の根幹となる操作に時間を要するのが課題だったが、分子研の大森賢治教授らは、独自のレーザー技術を用いてこの基本操作を10ナノ(ナノは10億分の1)秒以下の短い時間で超高速に実現し、22年に英科学誌に発表した。
海外では米ハーバード大学や同大関係者らが設立した新興企業、クエラ・コンピューティングが冷却原子方式に取り組む。現状では分子研とハーバード大などの陣営が2強を形成する。分子研は新会社設立を機に開発の加速をめざす。
量子コンピューターは19年に米グーグルがスパコンで1万年かかる問題を約3分で解き、実現への期待が高まった。ただこの成果は実験用の特殊な問題が対象で、素材や薬の開発、金融分野の高度な計算への対応にはなお課題は多い。
グーグルや同社と競合する米IBMは電気抵抗のない「超電導」の回路で計算する方式を採用する。超電導方式は日本の理化学研究所なども手がける現在の主流だ。冷却原子方式の新会社が立ち上がることで、国内で世界と闘う体制が整いつつある。
冷却原子方式は超電導方式より量子ビットの安定性が高く、複雑な計算に対応する量子コンピューターの大規模化にも優位とされる。一方、多くの企業が将来の活用を見据えた研究を始めている超電導方式に比べ実用化への取り組みでは後れを取る。超電導方式と同様、計算時に生じるエラーの克服など技術的な課題も残る。
ボストン・コンサルティング・グループは、技術が成熟する35年ごろに量子コンピューターは最大で8500億ドル(約130兆円)の経済価値を生み出すと予測する。米企業も30年前後に高性能の量子コンピューターの実現を掲げている。