【2024/2/29非公開予定】「宇宙世紀……じゃない? スパロボだ、コレ!?」 (永島ひろあき)
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第一話 「宇宙世紀……じゃない? ガンダムの世界じゃないのか!」

ある日突然、スパロボ時空にいる事に気付いてしまった不幸な主人公のお話です。ロボットには乗りません。スポンサー的ポジションの裏方主人公くんになります。

追記
指摘があったので主人公の独り言の大部分を心の中でのものに変えました。


「宇宙世紀……じゃない? ガンダムの世界じゃないのか!」

 

 プルート財閥の若き総帥ヘイデス・プルートが社長室でそう叫んだのは、浅く広くところどころ深くゲーム好きだった前世の記憶を思い出した時だった。

 癖のあるこげ茶色の髪と同じ色の垂れ目を持った容姿のヘイデスは、デスクの上に置かれた電子カレンダーの日付を見て、わなわなと体を震わせている。

 時に新代歴(しんだいれき)179年2月11日――地球連邦政府から独立を宣言したジオン公国軍が、住人を毒ガスで虐殺したスペースコロニーを地球に落とすという、ブリティッシュ作戦を実行してからおおよそ一カ月ほど経過している。

 ただし、これが機動戦士ガンダムの世界であったなら、暦は“宇宙世紀”でなければならないし、179年ではなく79年でないとおかしい。

 

「どう、どうなっているんだよ、これ!?」

 

 思わず腰を浮かせたヘイデスだったが、すぐにへなへなと脱力して最高級品の椅子にどかっと音を立てて腰を落とし、頭を抱え込む。

 今、ヘイデスには二十三年生きてきたヘイデスとしての人格に、二十一世紀を生きた日本人男性の記憶と知識が混濁している。ただ前世の人格に戻ったというわけではなく、ヘイデスが7、前世が3の割合で融合したという実感がある。

 そしてヘイデスが自分の居る世界が宇宙世紀でないのもそうだが、なによりもコロニーが落ちなかった事実が、ここがガンダムの正史世界ではないと実感させた。

 

 ありとあらゆる分野で世界経済の重役を担う大財閥の総帥として、ヘイデスには数多くの情報が迅速に届けられる。

 その情報の中に、スペースコロニーが地球へと向けて落下する最中、地球連邦軍でもジオン軍でもない何者かによって破壊され、微小な破片が地球に降り注ぐに留まったという一報があったのである。

 

「まさか……メテオ3? セプタギンか!? いや、マクロスの可能性も、でもあれはαの世界だとソロモン攻略の時にワープしてきた筈。後は何が考えられる? ひょっとしてパスダー、ゾンダーだったりするのか? もしそうならスパロボ世界か!?」

 

 思いつく限りの可能性を口にしてゆくが、たとえどれであっても地球存亡、人類絶滅の危機に繋がるとんでもない事態だ。

 

「そりゃスパロボは楽しんだよ、生涯の趣味だったよ。でもさあ、画面の向こうで遊ぶのと画面の向こうに来ちゃうのは別だろう!? スパロボとか修羅の世界じゃねえか。

 いや、初期のスパロボなら負けても地球が征服されるだけで済むかもしれんけど! 場合によったら銀河滅亡とか宇宙消滅とか、そこまでいくじゃん! ダメじゃん!」

 

 いいやああああ、と思わず叫んで頭を掻きむしるヘイデスだったが、一代で世界的財閥を築き上げた才覚を持つヘイデスとしての人格は騒いでも仕方がないと落ち着き始める。

 前世の人格がメインになっていたら、更に床の上で転がり回っていただろう。これまで随分とべらべら喋ってしまったが、幸いにしてこの部屋にはヘイデス一人だし、もともと彼の社会的立場を考慮して防諜を徹底している。盗聴の心配はあるまい。

 とはいえ、口に出せばどこから漏れるか分からないから、考えは頭の中でこねくり回すに留めるのが最善だ。

 

(いや、いや、考えても仕方がない。仕方がない。そうだ、まずは参戦作品を把握しよう! ファーストはまず確実だ。スパロボ御三家の内、ガンダムは確実。

 アムロは頼りになるけど、シャアはなあ。アクシズ落としをやる前のクワトロ時代の参戦で済めば助かるのに)

 

 味方の時はトップエースの一人だけど、敵に回ると勢力を一つ作るからなあ、とぼやきながら、ヘイデスはPCを操作してマジンガーZの光子力研究所、ゲッターロボの早乙女研究所、コンバトラーVの南原博士、ボルテスVの剛博士などなど、思いつく限りのスーパーロボットの開発者や研究施設を検索し始める。

 

(マジンガーとゲッターロボも作品次第でとんでもないことになるからな。できれば初代の第三次とか第四次とかのテレビ版の流竜馬とかが居て欲しい……)

 

 そうして作業を続けて一人、また一人とスパロボでおなじみの博士や単語がヒットして行き、その度にヘイデスは、ひい! いやああ、と成人男性としては情けない限りの声を上げながら自分の置かれた状況を把握していった。

 なにしろ参戦作品の数が多ければ多い程、敵対勢力は増えて行き、ヘイデスの命の危機も加速度的に増してゆくのだ。

 ヘイデスにとって、ここはプレイヤーがクリア可能な前提で用意されたゲームの中ではなく、本当に死んでしまう現実の世界となってしまったのだ。

 

(あひい、いや、前向きに考えよう。うん。とりあえずトップをねらえ!とイデオンは参戦していないと考えてよさそうだな。億単位の宇宙怪獣と戦わないで済んだのと、イデにリセットされるのは免れるか。

 あ、やだ、確かFの完結編でイデオン勢が二百年か三百年後くらいからタイムスリップしてきたんだっけ? ある日突然、ソロシップとバッフ・クランがこんにちはとか、勘弁してくださいよぉ)

 

 次から次へと思いつく厄介ごとに、ついつい死んだ魚の目になったヘイデスだったが、それでも自らに【気合】をかけてなけなしの気力を振り絞る。

 

(これからファーストガンダム通りの歴史が進むとして、今からV作戦に参加するのは難しいか。RX計画もとっくに進んでいるし。

 幸いウチは軍需産業にも手を出している。取り越し苦労ならいいんだが、モビルスーツ(MS)以外の脅威にも対抗できる機動兵器の開発を進めないと……ひょっとして俺は主人公のスポンサー枠だったりするのか?)

 

 大きな、それは大きな溜息を零して、ヘイデスはそれでもこの世界の住人としてこれから来る激動の時代を生き抜いて、平穏を手にするべく最善を尽くそうと行動を開始した。

 

 

 ヘイデスが前世のスパロボ知識を思い出して数日後のことである。

 プルート財閥傘下の軍事技術の研究と軍事兵器開発の一翼を担うヘパイストスラボに、ヘイデスの姿はあった。地球圏の経済に強い影響力を持つ財閥トップの訪問に、ラボの誰もが緊張に身を浸したのは言うまでもない。

 ヘイデスはラボの応接室で、自身より五歳ほど年上の北欧系美女を前にしていた。天才と呼んで差し障りのない才覚を持ちながら、エキセントリックな性格からどこの企業からも放逐されたこの女性が、ラボの所長だった。

 

 出されたコーヒーならぬ正体不明の紫色の栄養ドリンクを、クスハドリンクかよ、とヘイデスは正直な感想を零しながら口をつけなかった。

 所長はヘイデスがわざわざ紙媒体で印刷した資料を食い入るように見つめている。アイスブルーの瞳は、瞬きを忘れて随分と経っていた。

 

「……総帥は我がラボにMSをお望みなのかしら?」

 

 とびきり優雅なロシアンブルーの猫を思わせる美女の眼差しを受けて、ヘイデスはそのとおりと言わんばかりの笑みを浮かべる。プラチナブロンドを長い三つ編みにして垂らしている所長には、ヘイデスの笑みが以前よりも子供っぽく見えていた。

 

「そう! その通りさ。もともとウチは宇宙での作業用や月面の低重力下での作業用重機の開発と販売を行っているだろう?

 これからの時代、主要な軍事兵器は戦闘機や戦車からMSに移り変わるのは間違いない。ジオンのザクだって元を辿れば作業機器だろう? それなら我が財閥の誇るこのラボだって、負けないものが作れるさ」

 

「評価してくださるのは嬉しいですが、今から開発しても地球連邦の開発計画に参入するのは難しいのでは? あちらはアナハイムをはじめハービック社などが既に関わっておりましてよ」

 

「もちろん分かっているよ。だからその資料を持ってきたんじゃないか。君も意地が悪いな。僕が“この戦争中に連邦軍にMSを売り込むつもりがない”のは、その資料を読めばわかるだろうに」

 

 所長は悪戯っぽくにこりと笑むと、自分の分の紫色の粘っこいドリンクを一息に飲み干した。気力が下がる代わりに精神ポイントが回復しそうなドリンクだ。

 

「ええ、それにしても素人の思い付きといっては失礼かもしれませんが、この人体の骨格に見立てたフレーム構造……ムーバブル・フレームですか。非常に画期的ですわ。

 ジオンのザクはモノコック構造、つまりは昆虫などのように装甲が骨格も兼ねておりますが、それゆえの欠陥もあります。装甲の損失が多大な機能低下につながるなどのね。しかし、このフレームならば文字通り新世代のMSを開発できるでしょう。

 それにこのサブフライトシステムも興味深いですわね。宇宙と地球上とでMSを迅速に輸送し、展開する為には有用なんじゃありません?」

 

「まあね。ムーバブル・フレームはともかくサブフライトシステムはジオンあたりが実用化していてもおかしくはないけれど、研究しておいて損はないでしょう。上手くすればMS単体での飛行能力獲得につなげられるし」

 

「それに、総帥はこれからの時代は装甲よりも運動性重視とお考えでいらっしゃるようで」

 

「うん。MSがビーム兵器を携行し出したら、装甲はあまり頼りにならないでしょう。対ビームコーティングを施したシールドか、ビームを弾くバリヤーでも実用化しない限りは、防御より回避を重視した方がいいよ。はは、とはいっても僕も君も兵器のスペシャリストではないけれどね」

 

「でも先見の明はあるように思えますわ。この無限軌道を搭載した四つ足の機動兵器も面白そうですわね。曰く人間は銃器で武装してようやく猛獣と対等と言いますけれど、その理屈で言えば火器を搭載した鋼の獣は、MSに勝ることになりますかしら」

 

 ヘイデスは量産できる動物型の機動兵器として最初はゾイドを考えたが、ゾイドコアがないからとガンダムSEEDのバクゥのアイディアを持ち込んでいたのだ。

 

「扱いは難しそうだけれど、複数人で運用すればいけるんじゃないかな?」

 

「総帥はアイディアの宝箱ですわ。ちなみに総帥はどれくらいでこの戦争が終わるとお考えですか?」

 

「ん~、そうだねえ。一年」

 

「一年? 流石にそれは早すぎるのでは? ジオンのザクが連邦の宇宙艦隊をさんざんに蹴散らしたんでしょう? 規模を考えても十年かかってもおかしくないのでは?」

 

「宇宙ではね。地球の環境をジオンは知らなさすぎると個人的には思うよ。それに地球はスペースノイドが思うよりも広く、環境が多彩だ。それにジオンはMSでなにもかもをやらせようとし過ぎる。

 連邦がMSの量産を本格的に進めたら、あっという間に逆転さ。僕の考えの通りなら、この戦争は後に“一年戦争”と言われるだろう」

 

 フフン、と自慢げに笑う年下の青年に、所長は半分呆れ、半分もしかしたらと思いながら困ったように笑う。ここまで面白い人物だったろうか。

 

「分かりました。では出来得る限りのものを開発して総帥のご期待に応えましょう。総帥としては具体的にいつごろをめどにと考えておいでですの?」

 

「そうだねえ、八年後くらいかなあ」

 

 ファーストガンダムと照らし合わせれば、Zガンダムの時代、グリプス戦役の年代をヘイデスは意識していた。

 

(αもリアル系はグリプス戦役からだったし、Zもそうだったからな)

 

 

 

 

 

 

・サブフライトシステム

・バクゥ(もどき)

・ムーバブル・フレーム採用MS

 

 三つのフラグが立ちました。

 




主人公の会社が作るロボットですがバンプレストオリジナルからなるべく拾ってゆくか、版権ロボの改造機で進めてゆこうかなと思っています。
バクゥが出てきましたが、この世界はSEEDシリーズが含まれていません。
設定の誤りや誤字脱字がありましたら、こっそりとお教えください。なおわざと捏造したり都合よく変えている部分もあります。


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第二話 スパロボだけどやっていることはむしろギレンの野望

深く考えずにおおらかな気持ちで読めば楽しめると思います。

追記
独り言を心の中でのものに変更しました。


(ゲシュペンストとヒュッケバインのマオ・インダストリー、リオンシリーズのイスルギ重工、それにダニエル・インストゥルメンツ社、アシュアリー・クロイツェル社、モガミ重工……。

 ふーむ、参戦作品に宇宙世紀が含まれていないオリジナル企業は、こちらには存在しない確率が高い、か。今のところEOTI機関もないし、ショット・ウェポンも居なかったから、ダンバインシリーズの関わりもないと)

 

 スーパーロボット大戦がタイトルを重ねるごとに出てきたオリジナルロボットの開発元が、この世界にも存在するのかどうか、一カ月以上の調査で判明した限りの結果を、ヘイデスは自分に言い聞かせるように口にしていた。

 場所は財団の本社ビルの彼のオフィスだ。就業中は傍らに置いている秘書も遠ざけて、オフィスには彼一人だけが居る。

 防諜は考えられる限りのものを施してあり、あえて紙媒体にした調査資料を机の上に置いて、一つ深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

 流石に全てのオリジナル企業を記憶しているわけではなかったが、どうやら地球連邦軍の主力兵器は、一年戦争が終わった後もMSになりそうな調査結果だった。

 

 前世のスパロボ知識を思い出したヘイデスだったが、彼の知識には問題があった。スパロボ参戦作品の内、リアルタイムやレンタル、再放送を含めて未視聴の作品が多く、事細かな設定や時系列をいまいち理解していないのである。

 要するに、多くの参戦作品に対してスパロボで語られる範疇の知識しかもっていない場合が多いのだ。

 例えばサイド7がシャアの率いる部隊に襲われてアムロがガンダムに乗り込むことになるとは知っているが、ではそれが具体的に何月何日に発生したか、というとさっぱり分からない。

 

 今後、地球圏を襲うだろう大戦乱を思えばアムロには是が非でもガンダムに乗ってもらいたいが、それはそれとして民間人の被害を減らしたいくらいのことは人情として思う。

 サイド7でガンダムの開発が行われているのは把握していた為、建設途中のサイド7に建設労働者や住民向けの娯楽・飲食・医療そのほか諸々を含む巨大商業施設を建設し、ついでに住民の大部分を収容できるシェルターの建造も合わせて行う計画を、サイド7の行政機関に打診中だ。

 

(サイド7のフォローにできるのはこれくらいか)

 

 本社ビルの社長室で、ヘイデスは椅子の背もたれに体重を預けながら、天井を仰ぎ見る。天井のさらにその先に広がる宇宙へ思いを馳せているようだ。

 その向こうから嫌になるくらいの敵勢力が、地球を狙ってやってくるかと思うと、ついつい視線に怨みが籠ってしまう。

 

(ホント、スパロボの世界は修羅道も真っ青の地獄だぜ)

 

 愚痴を零しつつも、ヘイデスは記憶を取り戻して以来、戦後を見据えて医療、食糧生産、軍事の各産業に力を入れ、同時にスーパーロボットを開発する日本の研究所や博士達への積極的な資金援助も行っている。

 ヘイデスの唐突な行動に役員からは疑念の声も出たが、父の代までは甘めに評価しても中堅の重機メーカーだった会社を、世界的大財閥に成長させたヘイデスが熱弁と誠意を振るえば、強く反対する者はいなかった。

 

 ほかに力を入れている産業には、ジャンク屋稼業がある。これには一年戦争で大量に発生する宇宙艦艇やMSの残骸を回収し、自社の戦力・技術転用を目論んでのことだが、ほかにも八つ当たりめいた理由もあった。

 ブッホ・コンツェルンと聞いて、ピンと来るスパロボプレイヤーはどれほどいるだろうか。

 あのガンダムF91さらにはクロスボーンガンダムシリーズで鍵を握るクロスボーン・バンガードを組織し、コスモバビロニア主義を掲げたロナ家の母体となった会社だ。

 もともとはジャンク屋だったことに端を発するこの組織に対し、ヘイデスは手遅れとは理解しつつも自社の行動で少しでも邪魔が出来ればと、ジャンク屋業界に進出したのである。

 

 まあ想像通り手遅れだった。ヘイデスが行動した時には既にブッホ・コンツェルンは一大企業となり、その勢力は目を見張るものとなっていた。

 こうなれば裏でクロスボーン・バンガードの結成ないしは、その基盤となった組織の下準備が進められていると考えた方がいい、とヘイデスは判断している。

 

(だってここスパロボ時空だもんなあ。下手をしたらZガンダムからV2ガンダムまでが一年以内にロールアウトする世界だ。

 そうなると精々Zガンダムの時代にティターンズのマラサイやバーザムどころか、デナン・ゾンやゾンド・ゲーが出てくるのか。つくづく技術の発展速度がデタラメだな)

 

 まあ、だからこそのお祭りゲーであるし、味方もその分は強化されると考えれば、少しは救いもあるというものだ。

 

(地球連邦軍が味方勢力で居続けるとして、主力はジムⅢかジェガン、ひょっとしたらヘビーガンやGキャノンか。量産型のF91だったら万々歳だ。量産型のνガンダムもいい。個人的にはゼク・アインとかゼク・ツヴァイも使いたいなあ。

 あるいはザンスカール帝国も参戦するかどうかだな。αシリーズなら出てきたが、イエロージャケットとかギロチンとか、ザンネックとかエンジェル・ハイロゥとかは覚えているけど……

 マリア主義とガチ党とかを警戒すればいいのか? それにリガ・ミリティアとの協力関係の構築もどうにかしないと。

 MSを単独で飛ばすミノフスキークラフトの技術やビームシールドはぜひとも欲しいし、なんならウチでV2ガンダムを百機生産して、一斉に光の翼で突っ込ませてやる。V2一機でジェガンやジャベリン十機分のコストだとしても、V2の方がいいだろう。

 それに、地球クリーン作戦だったか、あれはない。バイク戦艦で街も人も引き潰すとか、人間のやることじゃないよ)

 

 それはそれとして自社製のロボットにも活躍して欲しいものだ。正直なところ、自分の考えたロボットがスパロボ時空で活躍する、というのは胸がドキドキとして興奮するし、楽しんでいる自分もいる。

 所長を相手に自分の考えた新型MSの概要やアイディア――他作品の流用だが――を語った時は、非常に楽しかった。自分の考えたロボットが現実に形になるかもしれないとなれば、そりゃあ興奮するというものだ。

 ただ、それもふと落ち着くとこれから嵐となって襲い来る版権の敵勢力やこれまでのスパロボオリジナルの敵勢力達の姿とその戦力が脳裏をよぎり、果てしなく憂鬱になるので楽しい気持ちは長続きしてくれない。

 

(ちくしょう、いったいどれだけ敵が来るんだよ。今は分かってないだけで後から後から追加されるかもしれないし、この世界が単発で終わる世界観ならいいけど三部作とかのシリーズものだったら、まだまだ悩みは尽きないってことになる。

 いや、それもそうだが問題はこの時空のラスボスは版権か? それともスパロボオリジナルか? とんでも設定のオリジナルは嫌だな。せめてバラン=シュナイルとかディカステスレベルで落ち着いてくれないかな)

 

 スーパーロボット大戦シリーズの中には、ラスボスが参戦作品のキャラクターだった例もいくつか存在している。

 その場合には、どうしたって対応する作品の主人公の力が必要になるが、それさえあれば勝利の見込みは高い。なにしろ原作で勝利しているのだから。

 スーパーロボット大戦オリジナルのラスボスとなるとヴァルシオンやバラン=シュナイル、ヴォルクルスやらツヴァイザーゲインなどなど随分と数があるが、これらの中にも対応した作品の主人公なくしては勝てない例もあるが、戦力さえ整えればゴリ押しで勝てそうな例も多い。

 

(ペルフェクティオは嫌だ、ペルフェクティオは嫌だ。トレーズを犠牲にしても結局倒せていないし、破滅そのものなんてどうすりゃいいって話だよ。

 ネオ・グランゾンもきっついな。レヱゼンカヰムに負けてちょっと格落ちした印象はあるけど、それでもそれ以上にパイロットを敵に回すのがヤバイ。

 今はいなくても何かの弾みで世界を移動してきそうなスペックだもん。ブラックホールの暴走とかなんとか言ってさ。

 ケイサル・エフェスだって、イングラムの乗ったアストラナガンを返り討ちにしているみたいだから、ヤバイ。……いや、たしかシンデレラガールズとのコラボイベントで、ゆるふわ無限力で浄化された筈。むしろ味方になってくれるかも?)

 

 版権だとアンチスパイラルなんかも本当勘弁してください案件だよ、とヘイデスはブツブツと呟き続ける。もし彼の傍らに秘書が居たら、神経と胃を心から心配されただろう。

 味方側としてもマジンガーZEROやゲッターエンペラーに繋がりかねないゲッターロボ作品も、ヘイデスにとっては頭痛の種だ。敵ばかりか味方にも地雷が埋まっているのだから、困ったものである。この世界はヘイデスの胃に優しくない。

 

(それと覇道財閥やアーカムシティが存在しないのは、ほんっとうによかった! 誰が嬉しくてクトゥルフ神話の邪神連中と関わりになりたいんだっつうの! デモンベインは好きよ、でもね、現実になるのと娯楽として楽しむのは違うでしょ!)

 

 デモンベインが存在しないという事は、かの邪神の構築した無限ループの世界に陥っていない証明になる。

 そうなれば無限ループの負の副産物として出現する、宇宙のリセット機構とでも呼ぶべきカリ・ユガと戦わずに済む。

 αシリーズのアポカリュプシスも真っ平ごめんだが、宇宙を構築するシステムの化身なんてもうお腹いっぱいだ。つくづくスパロボ時空は恐ろしい。

 

(はあ、出来れば並行世界だの異次元だの関わらない、この宇宙か出来れば地球圏の内輪で済む規模であって欲しいよ、切実に。なんならスパロボのプレイヤー部隊史上最弱でいいから、本当に)

 

 チクチクと胃の辺りが傷んでいるような気がして、ヘイデスは俺、まだ若いのに、と前世の知識を思い出した不幸の味を噛み締めるのだった。

 

 

 ついにヘイデスの待ち望んでいた情報が届いた。ブリティッシュ作戦において、地球に落下中のコロニーと激突し、木っ端みじんに粉砕したナニカの正体が分かったのである。

 南アタリア島に落下しながらも周囲へわずかなさざ波しか起こさなかったソレの名は、サンドスター。

 虹色にキラキラと輝く巨大な隕石であり、なんと動物に干渉する事で元となった動物の生物的特徴を有したアニマルガール、通称“フレンズ”へと変貌させる異常な力を持つ。

 サンドスターはスペースコロニーの中に放置されていた、毒ガスで虐殺された住人達を、老若男女を問わず強制的に女性化プラス人間のフレンズとして蘇生させ、彼女らは南アタリア島を闊歩しているという。

 条件付きではあるが、死者蘇生とでも言うべき現象は、人類社会に大きな影響を……

 

「ようこそジャパリぱ! ……夢か」

 

 思わず叫びながら、ヘイデスは横たわっていたリクライニングシートから上半身を起こした。彼は今、ヘパイストスラボへと向かう飛行機の中に居た。

 量を増した業務を連日こなす中、移動中のわずかな時間とはいえ睡眠はヘイデスにとって欠かせないものだったのだが……

 

「ふふ、本当に落ちてきたのがサンドスターだったらよかったのに」

 

 どんよりとした雰囲気を纏いながらそう呟くヘイデスは、肉体はともかく精神はだいぶ疲れているらしかった。

 

 

 新代歴179年7月某日、ヘイデスは再びヘパイストスラボを訪れていた。前回、ムーバブル・フレームやサブフライトシステム、バクゥを始めとした各種のアイディアを伝えてから、おおよそ五カ月が経過している。

 ヘイデスの迎えと案内は、再び所長が買って出た。

 所長は百八十センチオーバーの長身に真っ赤な縦セーターに白のホットパンツ、それに薄手のストッキング、黒のオーバーニーブーツの上から白衣を重ね着て、頭のてっぺんから手足の指先まで自身の手入れを怠っているところはない。

 

 ヘイデスは、とびきり美人の天才科学者とはまた我ながらよくスカウトできたものだと自分を褒めたくなる。

 いかにもロボットアニメっぽい経歴だし、スパロボのオリキャラに照らし合わせるなら、所長はOGシリーズのマリオン博士やZシリーズのトライア博士のポジションだろうか?

 

(そう考えると、俺はZシリーズのアクシオン財団と破嵐財閥を足して二で割った財力と兵力を持ちつつ、戦場に出ない万丈あるいは徹頭徹尾味方ポジションのカルロス・アクシオン・Jrってところか。

 そういやメカギルギルガンとか破嵐財閥がスパロボオリジナルの設定だって、しばらく知らなかったな)

 

 そう内心でこの世界における自分の役割めいたものを考えながら、ヘイデスは前を歩く自分よりもちょっぴり背の高い才女に声をかけた。

 目の前で揺れる彼女のプラチナブロンドの三つ編みを握ってみたい欲求は、努力して胸の奥にしまい込んだ。

 

「それにしても所長はいつ見ても身だしなみがしっかりしているねえ。このラボの所員は皆、身綺麗だけれど、所長は格別だ。職場と職員の衛生観念と美意識がしっかりしているのは、経営者として嬉しい限りだよ」

 

「誉め言葉として受け取っておきます。私の持論ですけれど、何かに熱中して成果を上げるのに、食事、睡眠、趣味嗜好、人間関係などの諸々を犠牲にする人間は、ソレに向いていないのですわ」

 

「向き不向きの問題なのかい? 天才かどうかではなくて?」

 

「ええ。“向いている人間”というのは、自分の楽しみを犠牲にしなくても結果を出せる人間を言うのです。

 あれもこれも犠牲にしてようやく成果を上げるようなのは、それがどんなに素晴らしい成果であったとしても、“向いていない人間”です。向いていないから犠牲なしには成果を上げられない、と私は考えておりましてよ」

 

「ふむ、一理ある。成果の大小ではなく犠牲の大小で適性を見るというわけだね。それじゃあ、所長やこのラボの所員達が社会人として最低限以上に身だしなみに気を使っているのも、普段からそう心掛けているからかい?」

 

「ええ。普段から他人の目を気にする余裕を失う程、切羽詰まらなければならない不向きな人間には、このラボの敷居を跨ぐ資格はありません。

 絶対にその期限までに成果を上げなければ自分や家族の生命の危機だとか、大げさに言えば人類の危機だとかそういう切羽詰まった状況なら、ま、考慮しなくもありませんけど」

 

「はははは」 

 

 きっとこれから切羽詰まった状況になるんだよ、とヘイデスは口でも心でも乾いた笑いを零した。そんなヘイデスを、所長は不思議そうに見ていたが気には留めず、ラボの地下にある機動兵器の製造場に案内した。

 広大な格納庫にはヘイデスが確保したザクⅠやC型のザクⅡ、さらにその大元となった人型の作業機械らが直立している。左右にサンプルのMSが並ぶ中、最奥にこの五カ月の成果となる新型の鉄の巨人が三機、直立してヘイデスの視線を受け止めている。

 

「いやぁ、早いね! 所長の能力には全幅の信頼を寄せていたけれども、半年かからずに成果を出すとは!」

 

 ヘパイストスラボ謹製の新型機の頭上に渡されたキャットウォークから見下ろして、ヘイデスは所長への称賛の言葉を惜しまない。所長はと言えばなんでもない澄ました顔をしているが、ほんのちょっぴり自慢げだ。

 

「とはいっても見本がありましたからね。この子達はムーバブル・フレーム採用のMSというわけでもありません。

 まずはザクに使われた技術をベースにした、既存のMSの延長線上の機体になります。ビーム兵器を携行させたかったのですが、現状では武装もザクとそう変わりもないのです。口惜しいものですわ」

 

 所長の言葉には、謙遜というよりもまだその程度の機体しか作れない自分への不満が滲み出ている。

 地球連邦のRX計画で培われた新素材や核融合炉のデータも、表には出せない取引で入手しているが、それを現実のものに反映させるにはもう少し時間が要るようだ。

 

「夏が終わるまでには更に研究を進めて、より優れた機体に仕上げてみせますわ。まずはビーム兵器の実用からです。これには関しては悠長にはして居られません。

 今頃、連邦も設計くらいは終えているでしょうし、現物の試作を進めているかもしれませんから」

 

「うんうん、向上心があるのは良い事だ。もちろん、今回の成果に対するボーナスは弾むから、所員の皆共々これからもよろしく頼むよ」

 

 しかしまあ、とヘイデスは眼下の新型機を見て、既視感と共に心の中でだけ素直な感想を漏らした。

 

(これってZシリーズのアクシオだよなあ)

 

 ブロック状の大きな肩に、ザクと比べれば直線の多い機体デザイン、オレンジ色のバイザー状のカメラアイ、機体色は灰色でそれぞれの左肩に1、2、3とナンバリングがされている。

 Zシリーズでは、ガンダム00シリーズに登場する国家AEUのコンペでMSイナクトに敗れた機体である。

 アクシオが陸戦主体であるのに対して、イナクトは単独で空が飛べるうえに軌道エレベーターからのマイクロウェーブを受信して、AEU管轄内では理論上無制限に活動できる機体だ。

 ヘイデスがコンペの主催者だったとしても、やはりイナクトを選ぶ。

 

 ただコンペに用いられたアクシオはVer.7とされるものだったのに対し、今、ヘイデスの見ている機体はVer.1になる。

 用いられている技術もZシリーズがおそらくガンダム00由来なのに対し、ラボ産のアクシオは宇宙世紀の技術だ。見た目は似通っても、中身は違いが出ていると考えるべきだろう。

 

「ちなみに動力は?」

 

「もちろん核融合炉です。装甲はチタン・セラミック複合材、武装はアサルトライフル、ロケットランチャー、リニアライフル、グレネードランチャー、それに格闘戦用にロングスピアとハルバード、ダガー、片手持ちのシールドとなります。

 武装のチョイスはパイロットの好みと状況次第になりますかしら。総帥のアイディアにあったディフェンスロッドはまだ研究中です」

 

 このアクシオもどきはつまるところ、動力は宇宙世紀MS、装甲と盾はジム、射撃兵装はザク、近接兵装は独自といったところか。

 

(確か原作というかZシリーズのアクシオの動力はプラズマバッテリーだったはず。バッテリーと核融合炉なら、核融合炉の方が出力は上だよな、たぶん。まあ、明確な数値が設定されていない以上、断言するのは難しいか)

 

 Zシリーズの主人公の一人だったクロウの乗っていたスペシャル機や、敵のファイヤバグのカスタム機の領域に達すれば、相当な高性能機になるポテンシャルがある、と前向きに考えておこう。

 

「格闘用武器はダガーを除くと長物なんだね。ザクは斧だったっけ?」

 

「間合いは長い方が有利でございますでしょ? 過去の人間同士の戦争でも、戦場で活躍したのは刀剣よりも槍ですもの。

 それにMSは極めて複雑な工業製品です。繊細なんですのよ。装甲を破壊できなくても中の電装を壊せれば、今のモノコック構造のMS相手なら十分です。ビーム仕様の格闘専用装備が出来れば、また話は変わりますけど」

 

 所長の言う通りこれからの時代、ビームが主役だ。ビームシールドの登場で通常のビーム兵器では出力不足に陥ることもあるが、それでもビームが戦場の主役を担う時期は長い。

 アクシオで人型機動兵器の技術を培い、それを用いてムーバブル・フレーム型のMSをガンダムMk-Ⅱよりも先んじて開発し、激動のクロスオーバー戦線を戦い抜く強力な兵器を作り上げなければならない。目の前のアクシオはまさにその第一歩だった。

 

「うん、所長の言う通りだ。ところで、この子たちに名前はあるのかな?」

 

「いえ、まだ正式な名前はありません。プルート財閥のMSという事でPMS一号機、二号機といった具合で仮称しています。もうお決まりで?」

 

「うん。この子達の名前は【アクシオ】だ。ヘパイストスラボで産声を上げた、プルート財団の誇る鋼鉄の巨人達さ!」

 

「ギリシャ語からの造語ですか? 異存はありませんわ。では正式に彼らをアクシオとして命名し、更なる改良と改善を目指してまいります」

 

「ああ、お願いするよ。予算、人材、資材は最優先で回す。アクシオから続く機動兵器の系譜が、この先の地球圏では重要になるから」

 

 あとは俺の平穏な生活と痛み始めた胃にとっても、とヘイデスは期待を込めて、異世界に誕生したアクシオ達を縋る思いで見下ろすのだった。

 

 

 そして約二カ月後の新代歴179年9月――宇宙世紀79年9月相当のある日、ついにヘイデスはその連絡を受けた。ジオン公国軍のサイド7襲撃と極秘裏に開発されていた地球連邦軍の新型MSがジオンのザクと交戦し、史上初の公式なMS同士の戦闘が確認されたのである。

 その日、バクゥもどきの四足MSの試作機の視察の為、ヘパイストスラボを訪れていたヘイデスは、ラボ内の所長室で直通の秘匿回線でその知らせを受け取った。傍らには所長の姿もある。

 ただし彼の想像を良くも悪くも外れる形となっていた。

 

「赤い彗星のシャアと連邦の白いMSの戦闘に、ウチのアクシオが加わったって!?」

 

「あら」

 

 と所長は素っ気ないが、自身の手掛けた作品が高名なジオンのエースと戦ったと聞いて、気にならない筈もない。ヘイデスが自分の携帯端末の向こうと続けているやり取りを興味深そうに、ヘイデスの対面に座したソファの上から眺めている。

 それから長い事、携帯端末で情報のやり取りを続けていたヘイデスがようやく回線を閉じ、ソファに深々と背を預けるのを待ってから、所長は例の紫色の栄養ドリンクの入った白磁のカップを勧めながら訊ねた。

 

「ふふふ、それで我がヘパイストスラボの申し子達は活躍出来まして? それともあの赤い彗星のシャアを相手に、痛めつけられてしまったのかしら?」

 

「うん、うん。そうだね。サイド7に大型モールを建設するのを口実に、ウチの輸送船をジャンジャン送り付けて、その影でこっそり宇宙仕様のアクシオのテストを行っていたけれど、それが功を奏して戦闘に介入したみたいだ」

 

「ザクのマシンガンくらいではそうそう撃墜されないよう装甲は厚めにしておきましたけれど、撃墜された機体はありまして? それになによりも戦死者が出てしまいましたか?」

 

「いや、戦闘に参加したのは、コロンブス級に武装を追加して改造したMS母艦サンタ・マリアと、それに搭載していた二機のアクシオだね。幸い、連邦のホワイトベースという戦艦と新型MSガンダムと協力して、無事にシャアを退けたようだ」

 

 ヘイデスは、あれ、ホワイトベースって戦艦でいいんだっけ? と首を傾げたが、今はそんな場合ではないと疑問を頭の片隅に追いやった。

 

「ふふふ、赤い彗星を退けたとなればアクシオも捨てたものではありませんわね。サイド7近宙でテストしていた機体となると、ビームランチャーを持たせていた筈」

 

「ああ、それでね、ガンダムだけれどマシンガンの直撃を受けてもびくともしない装甲と、ビームライフルで武装していたそうだ。ウチのランチャーよりも小型で、威力はほぼ同じくらい」

 

「へえ? 流石は地球連邦軍、そしてテム・レイ博士。やりますわね。私も負けてはいられません」

 

「はは、やる気になってくれたのなら幸いだ。サンタ・マリアだけど戦闘に巻き込まれた避難民を乗せて、ホワイトベースと一緒にルナツーへ向かうみたいだね。

 サンタ・マリア以外にもウチの輸送船があったから、物資は足りるだろうけれどこちらから連邦軍に根回ししておこう」

 

「人命第一は語るまでもないにせよ、貴重なMS同士の戦闘データが得られますし、間近で連邦軍のMSの威力を確かめられる機会ですものね。こちらもアクシオのデータを提供しなければならないでしょうが、アレはウチの本命ではありませんし」

 

「うん。それに今のルナツーに余分な戦力はない。ホワイトベースはジャブローへ向かうだろうから、地上に降りた場合に備えてウチも動けるようにしておくよ」

 

「あのシャアがそう易々とジャブローに降ろしてくれますかしら」

 

「鋭いね。大気圏に突入するタイミングで仕掛けて来てもおかしくないよ」

 

 思った以上に原作に関わってしまったが、おそらくホワイトベースは北米に降下するだろう。

 コロニー落としこそならなかったものの、地球の大半はジオン軍に制圧されており、北米にはジオン公国を支配するザビ家の末弟ガルマ・ザビが司令官として赴任している。

 地球の地軸を傾け異常気象を引き起こすはずのコロニー落としが失敗した分、地球市民のジオンに対する感情は原作よりも穏当だ。ガルマの占領政策も良家のお坊ちゃんとしての面が良い方向に働き、うまくいっている。

 

(ホワイトベースが北米に降下したら、テスラ・ライヒ研究所の代わりに立ち上げたバベッジ・エジソン研究所から物資か部隊を回せないか、打診しておくか)

 

 今回のサイド7での戦いが、この宇宙世紀を主軸とした世界でヘイデスという存在の影響が徐々に増してゆくその片鱗であったと気付いた者は、まだいない。

 

 

 ヘイデスが宇宙でのアクシオの介入の連絡を聞き届けるよりも前、襲撃を受けたサイド7を脱出したホワイトベースは、専用のザクⅡS型を駆る地球人類最高峰のパイロット、シャア・アズナブルの襲撃を受けていた。

 おそらく現時点の地球では最強のMSであるガンダムを操るアムロは、今はまだ偶然ガンダムに乗り込んでしまった民間人に過ぎず、通常の三倍のスピードで動くと評されるシャアのザクにいいように翻弄されている。

 恐怖のままにビームライフルを乱射するも、シャアのザクはあらかじめ射線が見えていたように回避し続け、ザクマシンガンを浴びせるだけに留まらず、懐に飛び込んで蹴りまで浴びせる圧倒的なテクニックをアムロに見せつけた。

 

「これでもまだ動くか。連邦のMS、何という性能だ」

 

 宇宙での戦闘にもかかわらず、軍服のままでザクを操るシャアは、ガンダムの堅牢さと運動性、そして圧倒的な火力を前に心底から驚嘆していた。

 パイロットこそ拙い腕前だが、仮に自分があの機体に乗っていたら、どれだけのザクを葬れるだろうか。

 

 サイド7の偵察に向かわせた部下の一人が暴走し、民間人にも被害が出てしまったのには、一個人として心が痛むが、やはりV作戦を追跡したのは間違いではなかったと、シャアは確信した。

 後からやってきた、通常のザクⅡに乗った部下のスレンダーに、ガンダムを挟み撃ちにするよう指示を出そうとした時、シャアの人並み外れた直感――ニュータイプの勘が危機を訴えた。咄嗟に機体の軌道を変化させた直後、そこを彼方から放たれた一条のビームが貫く。

 

「なんだと、他にもMSが居たのか。だがこの方向は例の戦艦とは別方向からだが」

 

 困惑したのはシャアだけではない。ガンダムを必死に操るアムロもまた、自分の知らない存在に戸惑い、メインモニターにビームの発射元を映す。

 

「な、なんだ。新しいMS? あれは、親父の部屋で見たぞ。たしかプルート財閥のアクシオだ!」

 

 プルート財閥はサイド7の住人であるアムロにはなじみのあるものだ。最近建設された大型モールは家に引きこもりがちなアムロでも興味があったし、彼好みの電化製品を安価かつ大量に扱う店舗もあって、幼馴染のフラウ・ボウと一緒に出掛けたものだ。

 ビームを発射したのは、右肩に大型のビームランチャーを担いだアクシオだ。もう一機のアクシオも同じくビームランチャーを装備している。

 

 さらに二機とも魚のエイを思わせる藍色の物体に、寝そべる形で乗っていた。アクシオと合わせてテストしていた、宇宙用のサブフライトシステム“ゾーリ”だ。

 MSの推進剤を節約し、行動範囲を広げて、移動速度を速めるだけでなく、これ自体にも単装メガ粒子砲一門とミサイルポッド二基が搭載されている。

 

「あらあ~外れちゃいました~。赤い彗星さんに避けられちゃいましたねえ」

 

 左肩にピンク色のウサギがペイントされたアクシオのパイロット――グレース・ウリジンは間延びした口調で、僚機を操るアーウィン・ドースティンに話しかけた。二人ともまだ十九歳の少年少女だが、アクシオのテストパイロットに選ばれた才ある若者達だ。

 オレンジ色の鷹がペイントされたアクシオを駆るアーウィンは、戦闘中にもかかわらず間延びした調子を崩さないグレースにペースを乱されながらも、自身もビームランチャーの照準を赤いようなピンクのようなザクへと定める。

 

「もう一機のザクは放っておけ。動きからして新兵だ」

 

「あたし達も新兵ですよ~」

 

「あっちは動きに動揺が見られる。だが、俺達はそうではない。その分だけ、こちらが上だ。それよりも連邦の戦艦とMSに連絡を入れておけ。助けに来て後ろから撃たれてはかなわん」

 

「ああ~、それなら艦長がやってくれてますう~」

 

「そうか」

 

 アーウィンは、どうして付き合っているのか自分でもよく分からない恋人へ短く言葉を返して、彗星の如き動きを見せるシャアのザクへとビームランチャーとゾーリのメガ粒子砲、ミサイルポッドを一斉に発射した。

 MSからこれだけの大火力を叩きつけられるのは、シャアをして初めての経験だ。いかに手練れのパイロットとはいえ、初めての経験となれば戸惑いが生まれる。それをどれだけ短時間で鎮められるかは、才覚と何より経験による。

 

「ちい、この機体もビームを扱うのか。スレンダー、退くぞ!」

 

 一発は当たると踏んだアーウィンの予想を凌駕して、シャアは全てのビームとミサイルを回避し、想定外の乱入に部下へ退避を命じる。だが、シャアの言葉に返事はなく、ガンダムの放ったビームライフルの直撃を受けたスレンダーの断末魔だけが、シャアへと届いた。

 

「だあー!?」

 

「ス、スレンダー。い、一撃で、一撃で撃破か。なんということだ、あのモビルスーツは戦艦並のビーム砲を持っているのか。それにあの機体、どうやら連邦とは旗色が違うようだが、あの機体までビームを使うとは。ええい、火力が違い過ぎる!」

 

 シャアは若く、自信に満ち溢れ、それに見合う以上の実力を持った傑物だが、同時に退き時を誤らない聡明さも兼ね備えていた。

 スレンダーのザクが撃墜された事で、アーウィンとグレースのアクシオも、シャアへ火力を集中させる動きを見るや、シャアは素早く母艦であるムサイ級ファルメルへと帰投するべく転身する。

 

「ついに連邦がMSを開発したか。この戦争、更に長引くか。それとも……」

 

 自ら体感したガンダムの戦闘力とまた別の所属であろうMSの存在は、シャアにこれからジオンの迎える苦境を容易に想像させた。

 これが、ヘイデスが受け取ったサイド7におけるシャアとの戦闘の顛末である。プルート財閥の開発したアクシオの初の交戦記録であり、アーウィンとグレース、そしてアムロとの初めての出会いでもあった。

 

 

・アクシオ(もどき)が開発されました。

・アクシオ(もどき)宇宙仕様が開発されました。

・ビームランチャー(大型だがガンダムのビームライフルと同程度の威力)が開発されました。

・宇宙用サブフライトシステム・ゾーリが開発されました。

・アーウィン・ドースティン(リアル系主人公・ニュータイプ)が入社しました。

・グレース・ウリジン(リアル系主人公・ニュータイプ)が入社しました。

・バベッジ・エジソン(チャールズ・バベッジとトーマス・アルバ・エジソンより命名)研究所が設立されました。

・パオロ・カシアス他、サイド7の民間人の多くが助かりました。

 




一年戦争はさくっと終わらせて、本番はグリプス戦役ごろ、αシリーズやZシリーズ第一作くらいの時系列をめどにしています。
見切り発車なので、次回がいつになるか分かりませんが、いつか投稿したら読んでくださるとうれしいです。
なお、本作の参戦作品は難易度としてはイージーを想定しています。決めていない設定も多いですが、皆さんもいろいろと想像してみてください。では、ありがとうございました。


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第三話 主人公は泣きたいが難易度がイージーだと知らない

主人公の独り言について、心の中で口にしているように一話、二話で修正しておきました。
感想、誤字脱字の御報告ありがとうございます。
矛盾とご都合と捏造のごった煮ですが、笑って楽しんでもらえれば幸いです。


 地球連邦軍の新型宇宙戦艦もとい強襲揚陸艦ホワイトベースは、宇宙要塞ルナツーにてパオロ・カシアス他、サイド7襲撃時に負傷したクルーを預け、一路、南米にある地球連邦軍総本部ジャブローを目指していた。

 その実態はブライト・ノア中尉を艦長とし、更には少なくない数の民間人をクルーとして運用するという驚くべき状況に置かれている。

 幸いなのは彼らホワイトベース一行に、プルート財閥の所有する人型機動兵器アクシオ二機とその母艦である武装コロンブス級サンタ・マリアが、大気圏突入までは同行したことだったろう。

 

 彼らを追撃するシャア率いるジオンの部隊は、派遣された補給が中途半端に終わってしまった為、アクシオの援護を受けながら大気圏へ突入するホワイトベースを攻撃しきれずに、地球への降下を許す事態となってしまう。

 この大気圏ギリギリでの攻防により、シャアは部下のザクを失い、彼自身もまた負傷して療養を余儀なくされる結果となる。

 

 かくしてホワイトベースは、アーウィンやグレースに見送られながら地球へと降下したのである。ただし、ヘイデスがスパロボ知識というか原作知識に基づいて予測したように、ジャブローではなく北米へと。

 現在、北米大陸はそのほとんどをジオンに制圧されており、その拠点は太平洋に面したキャリフォルニアベースとニューヤークシティに置かれている。

 ジオン公国を支配・指導するザビ家の末弟ガルマ・ザビは、友人たるシャアを退けたホワイトベースに対して、功を焦っている事もあり果敢に攻撃を仕掛けていた。

 

 砂塵の舞う乾いた大地にホワイトベース、ガンダム、ガンキャノン、ガンタンクが出撃し、頭上からはジオンの戦闘機ドップ、地上からは主力戦車のマゼラアタックと地上仕様のJ型のザクⅡが攻め立てている。

 宇宙で療養中のシャアと彼のザクの姿がこの場にないのは、ホワイトベースにとっては幸いであったが、その分、ガルマの戦意は高く、その戦意は部下にも伝わっていて、初めて地球での戦闘を経験するホワイトベース側を焦燥させるには十分だ。

 

「このお!」

 

 アムロはガンダムを大きく跳躍させて、ホワイトベースに仕掛けようとしていたドップを一機、ビームサーベルで袈裟切りにして撃墜する。現在、実用されている他のMSで果たして同じ芸当が出来たかどうか。

 ガンダムの性能とアムロの技量が合わさっての非常識な一撃だ。マゼラアタックの175mm砲とドップのミサイル、更にはザクのマシンガンとバズーカが次々と降り注ぐ中、ホワイトベース側は懸命に反撃を行っている。

 

「くそう、アーウィンとグレースが居ればなあ!」

 

 必死にガンキャノンを操って、ビームライフルを撃ち続けるカイ・シデンは、ヘルメットの中で冷や汗を流しながらいなくなった二人を思い出し、ついつい愚痴を零す。

 

「居なくなった人達をあてにしても、なんにもなりゃしませんよぉ」

 

 カイの耳に通信機越しに、怒鳴っているのと泣き言が半分ずつ混じった声を届けたのはガンタンクを操縦しているハヤト・コバヤシだ。アムロを含めて、カイもハヤトもついこの間まで民間人だった三人だ。

 慣れない環境下で味方から孤立したまま戦闘に突入すれば、泣き言の一つだって言いたくもなる。

 

 ハヤトと一緒にガンタンクを操縦している正規軍人のリュウ・ホセイも、ホワイトベースで拙いなりに必死に指揮を執っているブライトも、表に出さないだけで内心は似たようなものだろう。

 それでも強力なビーム兵器とホワイトベースの火砲は、周囲のジオンの部隊を着実に減らしている。流石に友人のリベンジと功を求めるガルマも、退くべきかと思案し始めた頃に、趨勢を決定付けるイレギュラーは侵入してきた。

 

 一機の高速シャトルが両軍の戦闘区域に突入してきたのである。三連装ビーム砲一門、二連装レーザー砲二門で武装したシャトルは、戦闘区域の頭上に差し掛かるとハッチを開いて、そこから二機の人型機動兵器を投下する。

 シャトルにはプルート財閥傘下のバベッジ・エジソン研究所のロゴが記されており、当然、投下されたのは地上仕様のアクシオ二機だった。

 サンドカラーの塗装が施されたアクシオの一機には、黒に近い紫色の髪と赤い瞳を持った青年レナンジェス・スターロード――通称ジェスが搭乗している。

 

「おおおお! これが、俺の必殺技! 究極、アクシオキック!!」

 

 空中で機体各所のバーニアを噴いて体勢を整えたアクシオは、あろうことかザクの一機へとめがけて右の飛び蹴りを敢行してのけた。

 シャアの情報にあった民間企業の開発した新型MSの登場に、ザクのパイロットは反応が遅れる。ザクにヒートホークが装備されている事から、ジオンでも対MS戦闘が想定されていないわけではない。

 しかし、空中から降下中のMSがこちらに飛び蹴りを仕掛けてくるなど、想定外に過ぎる!

 

「う、うぉおおお!?」

 

 ザクのパイロットは驚きの叫びをあげなら、モニターを埋め尽くすアクシオの足を避けようと愛機を動かしたが、回避は間に合わずに首の付け根にアクシオの足が深々と突き刺さり、そのまま大きく仰向けに吹き飛ばす。

 反動でアクシオの関節に重大な負荷が襲い掛かるが、格闘戦を想定して特別頑丈に作られた仕様の機体は、戦闘続行に支障はない。

 

「まずは一機撃墜!」

 

 仰向けに大の字に倒れたザクからパイロットが這う這うの体で脱出するのを見届けて、ジェスは残るザクやマゼラアタックに機体を向けなおす。

 右手にマシンガン、左手にシールド、背中のウェポンラックにはロケットランチャーとロングスピア、そして左右の腰部にはダガーという取り合わせだ。

 

 ガンダムに続く新型MSの出現にガルマ配下の部隊は混乱に陥り、そこにもう一機のアクシオが踊り込む。

 パイロットはジェスの恋人であるミーナ・ライクリング。緑色の髪を左右で細く編み込み纏めた少女は、愛機の両手に持たせたショットガンを空中で連射し、射程に入ったドップを一機、また一機と撃ち落とす。

 

「私の推理によれば、これは親の七光りと呼ばれるのを嫌うガルマ・ザビが、士官学校時代に次席だったシャア・アズナブルの敵討ちと、地球連邦の新型MS撃墜という戦果を求めた威力偵察ね!」

 

 空中で散弾の雨を降らし終えたミーナはショットガンを腰の左右に懸架して、背中のバックパック兼ウェポンラックから、グレネードランチャーとハルバードを引き抜く。

 

「この人達、アーウィンさんとグレースさんの同僚!?」

 

 思わぬ増援にアムロが安堵とわずかな警戒心を抱く中、ジェスがガンダムへと通信を繋げる。

 

「君がアムロ君か。アーウィンとグレースから聞いているよ。アーウィンも、あいつなりに心配していたよ。俺はレナンジェス・スターロードだ。これから俺達が北米大陸を抜けるまで、ホワイトベースを援護する」

 

 ジェスはそう告げて、いかにも熱血漢らしい笑みをアムロへと向けるのだった。

 

 

 ホワイトベースに地上仕様のアクシオ二機とその輸送機、更に食料と医薬品、弾薬といった援助物資が無事に届いた報告と既に数度に渡って行われたガルマ・ザビとの戦闘の詳報を確認し、ヘイデスは深々と執務室の椅子に背を預けた。

 ホワイトベースが大気圏に突入するタイミングでシャアが一時的にとはいえ戦線を離脱、というのは彼にとっても予想外であった。

 

 その結果として既にホワイトベースは、ジャブローからの補給を受け、ガルマ自らが戦闘空母ガウに乗って行った攻撃を潜り抜けている。

 ただプルート財閥の介入によって、パオロがルナツー到着後も生存して一命を取り留めたように、ホワイトベースに退けられたガルマもまた生存している。

 ホワイトベースを取り逃した失態と損失した戦力の多さに意気消沈しているのは間違いないが、機動戦士ガンダムの原作から外れた結果になったのもまた疑いようのない事実。

 

(ギレンの野望シリーズなら、ガルマが生き残る展開もある。そういうifが売りの一つである作品だからな。スパロボにだってそういう一面はあるが、ガルマが生き残る? うーむ、彼の生存が今後どう関わってくるのか。

 デギン公王がレビル将軍に和平を申し出なくなるか、それともガルマが新生ジオンを立ち上げるのか。ガルマが生存したとはいえ、ドズルならランバ・ラルを差し向けるだろう。ジェスとミーナにはこのまま北米大陸を抜けるまで同道させるとして、うーん)

 

 ヘイデスとしては第四次スーパーロボット大戦とスーパーロボット大戦Fとその完結編の八人の中から選ぶ主人公だった、ジェス、ミーナ、アーウィン、グレースの四名が存在していたのも、運よく入社してくれたのも嬉しい誤算だった。

 だが、彼らが四人も居るという事は同時に彼らがこのスパロボ時空の主人公ではない証明かもしれない、とヘイデスは考えている。

 少なくとも謎のエネルギーか新しいエネルギーを動力源としたロボットに乗った誰か、がこのスパロボ時空の主人公であるはずだ。

 あとは謎の組織が作った人造人間だとか、母星を失った異星人だとか、並行世界から転移してきた地球人だとか……あれ、パターン多くない? とヘイデスは途中で考えるのをやめた。タイトルを重ねてきた弊害であった。

 

 ともかくとして、機動兵器に乗る予定のない自分がそのポジションでないのを、ヘイデスは日夜、某プロデューサーと某企業に祈っている。

 生憎と彼は組織の長でありながら機動兵器に乗って、のこのこと前線に出てゆくようなタイプではないのだから。

 

(あるいはこれからも俺の行動次第で、ファーストガンダムの重要キャラの生死が変わるかも……なんて、調子に乗り過ぎか)

 

 ふう、と最近数の増してきた溜息を吐いて、ヘイデスは立ち上がって外出の準備を進める。彼が手の届く範囲で最も警戒している、コロニー落としを阻止したナニカについて、今度こそ夢ではなく現実で手掛かりを掴んだのだ。

 マクロス、セプタギン、あるいはパスダー、ひょっとしたらフューラーザタリオンかジェネラルガンダムかも、と日に日に彼は思いつく可能性の数々に悩まされていた。

 

(コロニー自体は木っ端みじんになって、大気圏での断熱圧縮でほぼ消失して地球への落下物はなかった。ではコロニーを破壊したナニカは? 地球に落下して眠っているのならそれでいい。モノによっては全然よくないが、それでも動かずにいる分まだマシだ。

 問題はどこにも落ちていない場合だ。コロニーを破壊し、大気圏を突入してなお即座に行動が可能な頑健さ、そして移動可能な存在となる。

 地球の誰にも気付かれないところに潜伏されて、こちらが気付いた時にはもう手遅れって状況に持ち込まれていたら最悪だ)

 

 一つの例として、スーパーロボット大戦オリジナルジェネレーション(OG)シリーズのメテオ3ことセプタギンを挙げよう。

 あれがもし地球人類の軍事技術向上と収穫を目的とした種子としてではなく、最初から人類抹殺を目的としていたなら、パーソナルトルーパーもアーマードモジュールもない上に、ガンエデンや超機人も冬眠状態であったはずだから呆気なく全滅していただろう。

 

 あるいはデビルガンダムやELSのように、浸食・同化するタイプの存在であったら、ある日、気付いたら地球丸ごと取り込まれていた、なんてことにもなりかねない。

 なぜならここは画面の向こうの娯楽の世界ではなく、お腹もすくし、眠りたくもなるし、胃も確かに痛む現実の世界なのだ。

 プレイヤー部隊が活躍する余地もなく滅びる可能性が、十分にあり得るのだと、不幸にもヘイデスは自覚していた。

 

「前向きになれる要素が欲しい……」

 

 マジンガーZの大敵であるDr.ヘルは既に行方を晦ませており、バードス島の捜索を方々の人脈も含めて行っているが成果はまだ出ていない。

 光子力研究所や早乙女研究所、南原コネクションを始めとしたスーパーロボット関係の施設は、不審がられるくらい熱烈に支援をしている。

 光子力、ゲッター線といった未知の新エネルギーを広く知ってもらうために、という名目でパリンと割れる光子力せんべいやゲッター線饅頭、超電磁キャンディーといったコラボ商品を販売するくらいの関係は築けている。

 

(博士やその子供達の年齢からして、やはり本格的に地下勢力や宇宙からの侵略者と戦うのは、七、八年後、Zガンダムの時代になってからか。こうなるとこの世界はαシリーズを下敷きにした世界なのかもしれない。

 Fだったら、Fシリーズだったらガンバスターが作れる可能性だって、一億分の一くらいはあったかもしれないのに! なによりあの世界は【トップをねらえ!】が参戦するのに、宇宙怪獣は出てこない! なんて素晴らしい!!)

 

 ヘイデスの知る限り、地球の科学力で建造されたロボットとしては最強の一角であるガンバスターが、その敵である宇宙怪獣と戦う必要なく暴れられるのである。

 ゲームとしての制約がない状況で運用出来たら、たとえアクシズが落とされようが、『アクシズ? ガンバスターなら簡単に粉砕できますが?』と余裕綽々の態度で居られる。

 ただし……

 

(あ、Fシリーズだとイデオンが参戦するのか。宇宙のリセットと天秤にかけたら流石にガンバスターとはいえ……ぬあ~~。頼む、コロニーを壊しながら落ちてきた誰かさんかナニカ! 君は俺の味方でいてくれ!!)

 

 そして例によってヘイデスは、ナニカを回収したヘパイストスラボを訪れるのだった。

 プルート財閥の機動兵器開発の要であるこのラボを訪れる以上、回収されたナニカもまた機動兵器に類する存在であるのは明白。

 正直、ラボの中を進むヘイデスの心臓は今にも破裂してしまいそうだった。スパロボプレイヤーだった部分は今にもこの場で吐き出してしまいそうだが、若き才人としてのヘイデスはいつもの温和で社交的な態度を崩さない。

 

「地球連邦の海軍もまだまだ健在なのに、よく見つけられたねえ。頭の下がる思いだ」

 

 今日の所長はメリハリの利いた肢体をベトナムの民族衣装アオザイ風の衣装で隠し、その上に白衣を重ね、プラチナブロンドをストレートに流している。ヘイデスは思わず拍手したくなるほど美しいと感激した。所長は、ヘイデスの傍らを歩きながら会話に応じる。

 

「もしコロニーが落ちていたら沿岸沿いの海軍の艦艇は軒並み全滅していたでしょうけれど、それを免れましたからね。

 ジオン軍はやけに水中用のMSを投入して、シーレーンの確保に躍起になっておりますから、海軍はそちらの相手に忙しくて民間のサルベージ会社になど関わっていられないのでしょう」

 

「コロニーを壊した何かを探しているのは連邦もだと思うけれど、コロニーと一緒に壊れていた可能性もあるし、今はジオンの脅威をどうにかするのが優先だからね。上手く隙を突けたのかな。彼らにも臨時ボーナスを弾まなきゃ」

 

「最近、あちこちの部署にボーナスを弾んでおいでで。功あれば褒賞あるべしとは思いますけれど、財閥の財政は大丈夫なのですか?」

 

「はははは、いざとなれば僕の資産を切り崩してでもボーナスは確保するとも」

 

「ふうん? 破産しない程度になさってくださいな。私には貴方が必要なのですから」

 

「うん。分かっているとも」

 

「……本当に分かっておいでかしら。それにしても以前に総帥がおっしゃった通り、ジオンはなんでもかんでもMSにやらせようとしますわね。わざわざ水中用のMSをあんな何種類も作る必要があるのかしら?」

 

 一年戦争期の主要なジオンの水中MSとなるとマリンザク(ザク・マリンタイプ?)アッガイ、ゴッグ、ズゴック、終盤にハイゴッグとズゴックEといったところか。現在投入されているのは、前者の四機種だ。ヘイデスとしてはハイゴッグが一推しである。

 

「地球の七割は海だし、過去の戦争もシーレーンの確保が重要だったから、注力するのは分からないでもないけれど。所長の見解は違うのかな?」

 

「素人の考えを聞いてもつまらないと思いますけれど、地球連邦の大きな軍事拠点はジャブローにベルファスト、ペキン。北米は地続きですしユーラシア大陸は、ベルファストとペキンから反攻を開始すればいいでしょう。

 アフリカ大陸だって、無理に海路を使わなくても、欧州と中東方面をどうにかしてから攻めればいいでしょう。無理に太平洋を横断する必要、あります?」

 

「う~ん、返答に困るなあ」

 

「確かにシーレーンの確保は重要ですけれど、地球連邦としてはジオンが思う程に力を入れていないように思うのです。“海”という地球の青を代表する存在を前にして、ジオンは迷走しているというか持て余している、という印象が拭えません」

 

 一年戦争後の宇宙世紀シリーズを見ても、確かに各タイトルの敵対勢力が水中用のMSやMAを投入はしても、地球連邦や視聴者側の勢力で水中用の機動兵器の投入例はヘイデスの記憶にはほとんどない。

 ヘイデスの知識が浅い可能性はもちろんあるが、それでも思いつくのは∀ガンダムのカプルくらいだ。ベアッガイやモモカプルはプラモデルだし。アクアジムと水中型ガンダムくらいのものか。

 後は漫画作品でアトラスガンダムなどもあるが、ヘイデスはガンダムの漫画における派生作品のあまりの多さに、白旗を挙げた口である。

 

「地球連邦がMSの勝手が分からなくて、緒戦で大敗を重ねたのと同じようなものか」

 

「膨大な国力とリソースのある地球連邦なら挽回も出来ますけれど、地球連邦の三十分の一の国力しかないとされるジオンで、リソースの割り振りを間違えるのは銃殺刑ものでは?」

 

(ジオンの水中用MSを推進したのは【特定の誰か】って設定されていたか? ギレンの野望のどのタイトルか忘れたけど、シーレーンの重要性を訴えてハワイの制圧を提案してくるのはキシリアだったような……。

 マッドアングラー隊の設立も提案してくるしな。しかし、所長の言う通りなら銃殺刑に処されるのはキシリアになるのかね。Fの完結編でギレンを暗殺するイベントを起こすと、ガトーがノイエ・ジールと一緒に仲間になる隠しイベントがあったっけ。あったよな?)

 

 ヘイデス自身の記憶もだいぶ薄れていて、曖昧になっているところが多い。ノイエ・ジールのデザインは大変好みだったので、自軍ユニットになったのが嬉しかったのは覚えているのだが、確か限界反応が低くて運用に四苦八苦したものだ。

 

(なんか、ノイエ・ジールにミノフスキークラフトをつけて、アムロを乗せていたような覚えがあるな)

 

 あくまで画面の向こうの世界の話として楽しめていた頃を思い出して、ヘイデスはしみじみと懐かしむ。そうしている間に所長に案内されたのは、ラボの中でも新型MSの開発区画と並ぶ最重要セキュリティの施された地下格納庫だ。

 今はアクシオのバージョンアップとサブフライトシステム、四足MSの開発も行われているが、その忙しい合間を縫って所長に回収したものの分析を依頼している。所長が必要になるという事は、つまり回収物は機動兵器に類する何かなのだ。

 

「これは随分とボロボロで……」

 

 格納庫に案内されたヘイデスは、トレーラーの上で仰向けに拘束されている機動兵器を見上げた。四肢が付け根近くから失われ、所々に金色の部分のある白い装甲は漏れなく罅が走っている。

 頭部には赤い一本角が生え、光を失ったツインアイとフェイスマスクはガンダムタイプに見えなくもない。リアル路線のロボットならそう珍しくはないか、とヘイデスは心の中で零す。

 

「コロニー粉砕時に地球への落下が確認できた落下物の中で、回収できたものの中で、もっとも目ぼしいものがこれだったそうです。回収の報告は私よりも先に総帥のところへ来ているでしょうから、ご存じでしたでしょ?」

 

「実際に目にするとまた違う感想が出てくるものだよ」

 

(うーむ、鬼械神のアイオーンやデモンベインではない。手足が揃っていたら三十メートル前後か?

 ひょっとしたらひょっとしてチェインバーか、原作の方のYF-21かSEEDDESTINYの外伝からストライクノワールか、スターゲイザーもあり得るとも思ったが、明らかに違う。でもなんだろう、見覚えがあるようなないような……)

 

 うんうん、とヘイデスが唸りながらソレの周囲を歩き回る。ヘイデスからすれば今後のこの世界の命運を占いかねない代物だ。いくらみても見飽きるという事はない。

 そんなヘイデスの様子に所長は何を思っているのか、ヘイデスの少し後ろをついて回りながら分析した範囲で分かったことを口にし始める。

 

「装甲の材質、動力、用いられている技術、はっきり申し上げてなにもかもが未知です」

 

「未知」

 

「未知です。オーバーテクノロジー、いえ、エクストラテクノロジー、アウターテクノロジーと呼ぶべき産物です。今の地球圏では逆立ちしたって作れるものではありません。信じがたい事ですが、これは宇宙からやってきた漂流者ですわ」

 

「……うん?漂流“者”?漂流物じゃなくて?」

 

 思わず足を止めて所長を振り返るヘイデスに、所長は自分の常識を打ち壊した存在へ目を向けながらこう言った。

 

「スキャンしたところ、内部に生命反応が出来上がりつつあります」

 

「うん? なんだか言い回しがおかしくはないかな。それではまるでコレの中で生命が作り出されている最中みたいだよ」

 

「その通りとしか言いようのない反応なのです。この機体そのものが人間を培養する道具として機能しているようですわ。人間かどうかは分かりませんけれど」

 

「人間を培養……」

 

 あれか、劇場版のガンダム00冒頭でティエリアが、ポッドの中で培養されていたようなイメージだろうかとヘイデスが考えたところで、彼の脳裏に閃くものがあった。【機体がパイロットを作り出しているのではないか】、と。

 

(機体がパイロットを作り出すって……シュロウガ? シュロウガ!? じゃあ、アサキムか、あのアサキム・ドーウィン?

 いやいやいやいや、これはどうみてもシュロウガじゃない…………んん? なんかヘリオースに、アドヴェントの乗っていたヘリオースに、似ていなくもない?)

 

 ヘイデスは全身にどっと冷たい汗を噴きだした。Zシリーズのラスボスを務めたアドヴェントも機動兵器シュロウガを駆ったアサキムも、どちらともトンデモ系に類される厄介なキャラクターだ。

 当然その機体もまた単純に極めて高性能かつ厄介な特性を持つ。目の前のズタボロのこれがシュロウガであれ、ヘリオースであれ、もし完全復活すれば良くも悪くも面倒なことになるに決まっている。

 

(アドヴェントは因果地平の彼方に自ら去ったはず。アサキムだってシュロウガと共に新たな地平へ去った。

 ならこれは両者ではないはずだ。まさか、その新たな地平でアドヴェントとアサキムが争った結果として、これが落ちてきたとかそういう設定? 設定なの、どうなの!?)

 

 ヘイデスは脳裏にZシリーズの敵を思い浮かべていた。ゲッター線に寄生するインベーダー、原作以上に強力かつ数を増した宇宙怪獣に加えて地球よりも巨大なエグゼリオ変動重力源、そして宇宙そのものとも称されたアンチスパイラル……

 

(…………………………うん、来るなよ、絶対に来るなよ!! 絶対にだぞ!?)

 

 

●レナンジェス・スターロード(スーパー系主人公)が入社しました。

●ミーナ・ライクリング(スーパー系主人公)が入社しました。

●?????を入手しました。

●?????が復活中です。

 

□光子力せんべい

 使用するとSPが10回復。

 

□ゲッター線饅頭

 使用すると一ターンの間、パイロットの地形適応が空・海・陸の内一つがランダムで『S』になる。

 

□超電磁キャンディー

 使用すると使用者を含む上下左右五マスのパイロットの気力を+5。




日刊ランキングを見た時、34位で、おお、すごいと思ったのです。それで今見たら2位、2位! 一話の時点だとそうでもなかったのに二話を投稿したら急に変わっていて、感想の多さも相まって怖いくらいです。でもありがとうございます。やる気がもりもり湧いてきました。

なお一年戦争編は次辺りでさくっと終わらせて、グリプス戦役までをちょろちょろっと済ませます。本番はZガンダム時代、グリプス戦役の頃を想定しています。
主人公は色々と危惧していますが、まだ難易度イージーなのでそこまでひどいことにはなりません。

最後に出てきた謎の機体と再生中の謎の人物は、某シリーズのキャラクターをベースにしてたキャラクターであり、ヘイデスとは違って完全な本作オリジナルというわけではありません。捏造ではあります。そしてZシリーズと関係のある機体と人物です。

追記
×南原コンツェルン → 〇南原コネクション


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第四話 一年戦争はチュートリアル

今更ですが参戦作品並びにスーパーロボット大戦のネタバレが山盛りです。ご注意ください。
また今回にて駆け足ではありますが一年戦争編はおしまいです。さらに下準備を挟んでから、本編プロローグとなります。


 南米ジャブロー。一年戦争序盤にてジオン公国がコロニー落としの標的と定めた、地球連邦軍総司令部がそこに存在する。

 ジオンが血眼になってその所在を探るジャブローのとあるオフィスで、でっぷりと太った高級将校の一人が、つい先日、通信で対応した青年を思い返していた。

 

 将官の名前はゴップ。地球連邦軍においてレビル将軍の推進するV作戦を後押しし、前線の兵士達が飢えないよう物資の手配の要を握る人物だ。

 たるんだ顎や丸いお腹を見ると、そこまでの重要な役割を任される人物なのかと疑う者も多いが、少なくとも彼の権勢は紛れもなく本物である。

 地球連邦軍の制服組のトップと呼んでも差し支えのないこの老人に、戦時下であることを考えれば通信越しとはいえ連絡を取れるのは、それだけで力の証明となる。

 

「さて、あの若者は毒となるか薬となるか……」

 

 ゴップは白髪を後ろに撫でつけた頭を左手で軽くたたきながら、カエルめいた顔に思案の色を浮かべる。

 爛熟を越えて腐敗した民主主義と官僚主義と揶揄される地球連邦政府、ならびに連邦軍の中にあって現在の地位を堅持する彼の手腕は紛れもなく本物だ。

 

 そのゴップの思考を多少なりとも占有するというのは、ただ事ではない。そしてその対象とは、プルート財閥総帥ヘイデス・プルートであった。

 もとより世界的財閥を立ち上げた経済界の風雲児、規格外の麒麟児と称された青年だが、今回は彼からコンタクトを取ってきたのである。もともとプルート財閥とは多少なり縁があったが、総帥自らというのは珍しい。

 

「提案それ自体はさほど奇抜ではなかったが……」

 

 ヘイデスはこれまでの研究成果であるサブフライトシステム(SFS)とアクシオを売り込んできたのだが、既に地球連邦軍にもコルベット・ブースターというMSの上半身に装着する形のSFS相当の装備があるし、正式な量産型MSであるジムも生産が始まっている。

 これが一年戦争勃発当初に売り込まれていたら、ゴップも一考の余地があったが生産ラインがフル稼働している今とあっては、手遅れという他ない。ビジネスチャンスを逃した、と言うべきなのだろう。

 

 だがその程度のことならば、わざわざゴップはヘイデスに思考を割いたりはしない。

 北米に降下後、太平洋に進む直前までホワイトベースに同行したアクシオの戦闘データには、ゴップも目を通している。

 ゴップはMSに特別詳しいわけではないが、それでもアクシオがジムに匹敵する性能であるという報告は重要視している。

 世界的財閥とはいえ民間企業が、地球連邦軍が総力を挙げて開発したMSと同等に近い性能と量産性を備えたものを作り上げたのだ。どうしてこれを軽視できようか。

 

「それにコルベットがあるとはいえ……」

 

 プルート財閥ヘパイストスラボの開発した地上用SFSシューズは、地球連邦軍のコルベットやジオンのドダイYSと遜色のない代物だったが、それに加えて宇宙用のSFSゾーリを実用化して、運用にまで至っている。

 決して目新しいものを提示してきたわけではない。だが、地球連邦とジオンという国家が総力を挙げて開発したものと同等のものを示してくるとは……。

 

 ゴップの灰色の脳細胞がフル回転をはじめ、彼は左手に持っていたタブレット端末を起動して、内容に目を通す。

 一年戦争以降のプルート財閥の動きを調べさせたものだ。

 ゴップがプルート財閥を改めて意識したのは、ホワイトベースへの支援を行い始めたのがきっかけだ。

 そして近日では、プルート財閥傘下のサルベージ会社が南アタリア島近海で怪しい動きを見せている、という報告を受けて、それとなく調査させている。ゴップが目にしているのはそれらを含めた調査の結果だ。

 

(日本の光子力研究所、早乙女研究所、南原コネクション、ビッグファルコン、それに日本人に限らず世界中の科学者に利益を顧みない異様な支援を行っているな。

 経営者としては失格だろうが、経営者としてではなく“何者”としてなら、このような選択を選ぶ?)

 

 よもや数年後に訪れるだろう地下世界並びに宇宙からの侵略者に備える為、とはさしものゴップとて想像は付かない。付かないが、拭えぬ違和感を覚える事は出来た。

 終始、画面の向こうで虫も殺せないような笑みを浮かべ続け、あくまでこちらを敬う態度を崩さず、自社の製品を売り込む若きカリスマ経営者の仮面。その下に蠢く――実際は心の中で汚い悲鳴をあげながら七転八倒している――見通せぬ本性。

 

(戦時中にMSを売り込むつもりはあるまい。既に間に合わんタイミングだ。なによりジオンが倒れれば、MSとて今ほどの需要はなくなる。

 軍需などより民需の方が余程金になる。軍事兵器はあくまで政府と軍と交渉する為の札にすぎんのだ。

 それを分かっているうえで、自社製のMSを見せて開発能力がある事を示してきた。軍がおおっぴらに開発できぬものなら任せろと?

 戦後のジオンの残党狩り程度では、新型MSを開発したところで儲けは出まい。儲けを度外視して連邦の軍事技術を欲している? ジオン残党以外に戦う相手がいると考えているのか?)

 

 ゴップはこれまでの経験と彼なりの今後の地球情勢の展望を踏まえて、ヘイデスの狙いを探りながらタブレット端末を操作してゆく。

 プルート財閥が新規にジャンク屋家業に力を注いでいるのは、戦場跡から両軍の兵器と技術を出来るだけ回収し、自社のものとする為に違いない。

 プルート財閥に限らず、合法非合法の手段で様々な企業が行っている事だ。V作戦に大きく貢献したアナハイム・エレクトロニクスも同じ穴の狢であろう。

 

(太陽光発電用のソーラーパネルの大量生産? ……まさかとは思うが)

 

 宇宙仕様のソーラーパネルの尋常ならざる大量生産とその配備を、プルート財閥は戦時下のエネルギー不足といった緊急事態に備えたものとしているが、ゴップにはどうしてもそれが気にかかった。

 現在、来る宇宙での決戦に向けてソロモンやア・バオア・クーといったジオンの要塞攻略の為の秘密兵器を準備しているのだが、ソレと重複する部分がある。

 考え過ぎだと一笑に付すべきその閃きを、ゴップは一笑に付さなかった。だから、彼はこの地位に就き、維持できている。

 

(分からんな。危険であるとも、そうではないとも感じられる)

 

 単に企業の利益に腐心する金の亡者と断ずるには意図の読めない行動が多く、さりとてゴップだから感じ取れた微細な焦りや不安を抱いている姿は、経歴と実績とはかけ離れた平凡さを感じる。

 危険を感じるにしても、ゴップにとってなのか、連邦軍にとってなのか、連邦政府にとってなのか、それともさらに大きなスケール? その逆に小さなスケールでの危険性なのかと判別がつかない。

 

 ヘイデス・プルートとは、こちらの思考を惑わすどうにもチグハグな青年であった。それも当然と言えば当然だ。

 世界的財閥を数年で築き上げた傑物と、平凡なスパロボプレイヤーの二つの人格が融け合って生まれたバグのような青年なのだから。

 

(今見えている範囲では連邦軍との濃密な関係を持ちたいと考えて、外れではあるまい。サイド7では、宇宙に放り出されたテム・レイ博士を含め、多くの人間を救出している。その借りもある。

 それにこれまでの実績もある。ジムがまだ具体的な戦果をあげていない中で、彼らは自社製のMSである程度の戦果をあげて見せたのだ。実働データが欲しいのはあちらもこちらも同じこと……)

 

 ゴップはある程度、連邦軍にとってもプルート財閥にとっても益が出る考えをまとめ、一つの決断を下した。

 

「売り込まれてきた商品の評価はしなければなるまい?」

 

 まもなく行われる地球連邦軍の一大反攻作戦“オデッサ作戦”に、小アジア方面から進出して参加する予定のホワイトベース隊に、プルート財閥の立ち上げた民間軍事会社“アレスコーポレーション”から四機のアクシオの派遣が決定した瞬間だった。

 テム・レイ博士の生存による原作を上回る速度でのMS開発の進捗と、原作にない戦力の追加を受けたホワイトベース隊の活躍は、想像するに難くない。

 そうとは知らぬまま端末の操作を進めるゴップは、とあるページで眉を交互に動かして困ったように笑った。

 

「これは、ますます何を考えているのか分からなくなったな」

 

 端末の画面には、プルート財閥傘下のアイドルの育成を手掛けるアポロン事務所から世界デビューを果たした【AEU48】、【人類革新連盟46】、【ユニオン娘。】という地球・宇宙を問わず大人気のアイドルグループについてのページが開かれている。

 こちらのアイドル事業も急に力を入れ出した新規事業だが、ヘイデスにその真意を問えば怖い程の真顔で、万が一、ゼントラーディやプロトデビルンが出現した時の為に自前で歌姫を用意しようと必死なだけですが、なにか? と答えただろう。

 

 ちなみにマクロスフロンティアに出演したバジュラに対しては、感応するのにはフォールド細菌に感染していなければならず、どうしようもないのでは? とヘイデスに声にならない悲鳴をあげさせている。

 アニマスピリチアならなんとかなるかもしれないが、こればかりは熱気バサラ相当の人物を見つけるか、何かの拍子で彼がこちらの謎のスパロボ時空世界に来てくれるのを祈るしかないのが現状だった。

 まあ、来たら来たで、マクロスシリーズの数も技術も能力もおかしい各作品の敵勢力も大挙してやってきそうで、恐ろしい限りである。

 

 

(過剰戦力、いや、オーバーキル?)

 

 それが、ヘイデスがオデッサ作戦終了後にその内容を知った時の感想だった。

 場所は例によってギリシャにあるヘパイストスラボである。本社も同じくギリシャにある為、行き来にはそれほど時間が掛からない。

 今後の繋ぎを求めて連邦軍に連絡を入れたところ、よもやよもやでゴップと通信越しでの会談を執り行う運びとなり、それとなく自社製品の売り込みと戦後の復興事業の際にはぜひお声がけを、とヘイデスとしては当たり障りのない会話をしてから一カ月以上が経過している。

 

 その後、オリュンポスの神々になぞらえた民間軍事会社経由でアクシオやSFSシューズの評価試験を打診された時は、へあ!? と変な声を喉の奥で押し殺したものである。

 所長室のソファに腰かけたヘイデスの手には数枚の紙資料と添付された写真があり、所長はヘイデスの右隣りに腰かけて彼に寄りかかるようにして一緒にその内容を確かめている。

 

 本日の所長は古代ギリシャの衣服であるペプロスを着用している。体のラインをうっすらと浮き上がらせるサフラン色に染めた生地に緑の線条があり、その上からいつも通りの白衣に袖を通している。

 白衣は防弾・防刃性能に加えて着衣型コンピューターの機能も併せ持っているから、ファッションによらず着用は必須だからだ。

 

 プラチナブロンドは編み込んでから後頭部で巻いて、金銀を使った粒金細工の巻ききり簪で纏めている。垂らした毛先の先端は解けていて、それがヘイデスの肩に乗っていた。

 本日は古代ギリシャ風コーデでまとめたようだ。

 ヘイデスは会う度に所長が違う服装で、白衣を除けば同じ服に袖を通しているのを一度も見たことがなかった。そして会う度にこの上ない目の保養をさせてもらっていると、拝みたいくらいに感謝しているのだった。

 

「もうオデッサ作戦が終わったからとはいえ、正式なルートでこの情報を貰えるなんて、どんな手品を使われたのですか?」

 

 所長は、ヘイデスが右肩に感じる人肌のぬくもりと香りに、この地獄の底のようなスパロボ世界の癒しだぜ、ひゃっほい! と内心で裸踊りをしているとは知らず、いつも通りの落ち着き払った声で問いかけてくる。

 

「前からの縁もあってゴップ閣下とつなぎが持てたから、そのお陰かな。現在の連邦軍の装備や物資の手配だと、もっと手前の担当者に繋がってもおかしくはなかったけれど、予想をずっと上回る大物に話がつながったのさ」

 

「ゴップ閣下ですか。あの方は連邦議会への進出も狙っている政財界の大物です。よく連絡が付きましたね。

 それでその結果が、ホワイトベースへのアレスコーポレーションからの戦力派遣ですか。名目上は弊社の技術評価試験と。無理があるのでは?」

 

「今回は激戦区への突入が確実だから、現場の社員には拒否権を認めたよ。それでも行ってくれたのには感謝しかない。幸い、ホワイトベースと共闘経験のある社員が今回の件を受託してくれたし……」

 

「ふうん? ゴップ閣下に借りを作ってしまいましたね」

 

「なに、あの方は最後まで生き残るタイプだよ。清濁併せ呑むといっても、濁の割合の多い方だがやる時はやる御仁だ」

 

 『ギレンの野望』シリーズだと能力が低すぎて、“ジャブローのモグラ”の一人である無能と、ヘイデスもかつては思っていたが、漫画作品での扱いなどもあり描写の問題であり、あれだけ巨大な組織であの地位に就く者が、そもそも無能なわけがないと考えを改めている。

 そして前世の記憶を取り戻すまでのヘイデスが知るゴップの人脈や能力、権威、そして通信越しに交渉して感じた印象から、それは間違いではないと確信している。

 実際、ジャミトフやブレックス、コーウェンやコリニーが去った後も残り、地球連邦議会の議長に就任した人物なのだから。

 

「総帥の評価は分かりました。それにしてもウチの社員はホワイトベースと縁がありますこと。この前は“青い巨星”のランバ・ラル隊と戦って、今度はあの“黒い三連星”を相手にドンパチですか。

 赤い彗星のシャアから始まって、ジオンの名だたるエースと戦っておりますのね。やはりガルマ・ザビを負傷させたのがきっかけでしたかしら」

 

「加えてガンダムの性能と戦果もあって、ますますジオンが躍起になっている印象はあるね。それにオデッサでも大活躍だったようだ」

 

 オデッサ作戦への参加を命じられたホワイトベースの戦力は、以下のとおりである。

 

・ホワイトベース

・ガンダム(アムロ・レイ)

・ガンキャノン(カイ・シデン)

・ガンタンク(リュウ・ホセイ)

・ガンタンク(ハヤト・コバヤシ)

 

 リュウとハヤトのガンタンクは単座式に改造済みだ。これに加えてプルート財閥傘下の民間軍事会社アレスコーポレーションより

 

・ストーク級空中戦闘母艦“ポダルゲー”

・アクシオ(レナンジェス・スターロード)

・アクシオ(ミーナ・ライクリング)

・アクシオ(アーウィン・ドースティン)

・アクシオ(グレース・ウリジン)

 

 が加わった陣容となる。リュウが生存しガンタンクに乗っているのもそうだが、概ねジム相当の性能を誇るアクシオが四機と、スーパーロボット大戦OGに登場するストーク級一隻の追加は劇的な戦力向上と言える。

 ストーク級は、本戦争が勃発後、記憶を取り戻したヘイデスが自社のヘパイストスラボと航空機メーカーや造船メーカーに声をかけ、大急ぎで建造させた母艦群の一隻である。

 てっきりこの世界独自の艦艇が出来上がると思っていたら、どういうわけでかスーパーロボット大戦OGシリーズの艦艇が出来上がったのには、ヘイデスも首を捻ったものだ。

 

 とはいえ動力や装甲素材はこの世界に由来している為、ストーク級にバリアの一種であるEフィールドは搭載されていないし、ビーム兵器はメガ粒子砲に置き換えられている。

 今のところはペガサス級を除けば、他のこの世界の空中母艦となるとガウやミデア、ザンジバルであるから、十分に戦える性能がある。

 

 また艦名である“ポダルゲー”とは“足の速い者”を意味する、ギリシャ神話に登場する怪物の名前だ。

 ハルピュイアという人間と鳥の混ざった怪物であり、西風の神ゼピュロスとの間に二頭の不死の馬を産んだとされている。

 この二頭の馬はアキレス腱の由来となった英雄アキレウスに贈られて、もう一頭の名馬と共に彼の愛馬として神話にその名を刻んでいる。

 

「オデッサ作戦の間だけとはいえ、一度は関わった相手の顔を見られて、レナンジェス君達が安心してくれるといいのだけれどね」

 

「幸い戦死者はでなかったようですし、働きに十二分に報いれば総帥が恨まれることもありませんでしょう。オデッサの大敗でジオンの目ぼしい拠点は、精々アフリカのキリマンジャロの他はトリントンくらいのもの。

 ここから地上でジオンが逆転しようとするなら、ジャブローをどうにかして制圧するくらいしか道はありませんね」

 

「それか宇宙での決戦を想定して、ジャブローの宇宙船用ドックと打ち上げ施設の破壊を目論む可能性があるくらいだろう」

 

 とはいえヘイデスに懸念がないわけではなかった。ホワイトベースと交戦したランバ・ラル隊も黒い三連星も、ホワイトベース隊の戦力が増強されたからこそ無理な戦闘は行わずに撤退しており、いずれも存命なのだ。

 厄介なことに宇宙では生き残った彼らと戦わざるを得ない。

 これはあれか、黒い三連星はドライセンに、ランバ・ラルはドーベンウルフに乗ったりするパターンか? とヘイデスは数年後までも彼らと戦い続ける展開を危惧している。味方になってくれると心強いのだが……。

 

「それにしてもこの勢いだと本当に総帥が言った通り、年内に決着が付きそうですわね」

 

「言ったとおりになるのを祈っているよ。連邦軍が宇宙でジオンに攻め込むなら、まずはソロモンとア・バオア・クーと来てから、サイド3だろう。ジャンクの拾い甲斐があるよ」

 

「ジャンクと言えば東南アジアでなにか面白いジャンクが出たとか。随分とお金を積まれているそうですね」

 

「ジオンの作った天女が地上に落ちてきたんだよ。連邦軍に任せると乱暴な扱いをされてしまいそうだから、どうにかウチで引き取れないかと思ってね」

 

 ヘイデスの言い方のなにかが気に入らなかったようで、所長は少しばかりムッとした顔になる。ヘイデスは察しきれなかったが、“天女”という言い回しが所長はお気に召さなかったのだ。まるで他の女に現を抜かしているようで……

 

「総帥がそこまで熱心だなんて、随分と魅力的な天女様なようですわね?」

 

 にこりと笑む所長に、ヘイデスは知り合ってから初めて背筋に冷たいものを覚えた。

 

「え、うん。ええとね、大気圏外から一気にジャブローに突入して火の海に変えられるくらいの性能を持ったモビルアーマー(MA)な天女様さ」

 

「……それが本当ならデタラメな性能ですわね。それほどのモノならば、連邦軍はそう簡単に手放そうとはしないでしょう。ずいぶんと吹っ掛けられるのではありませんか?」

 

 ここでヘイデスの言う天女とは、ガンダムの外伝作品のひとつ、第08MS小隊に出てくるMAアプサラスⅢだ。

 ヘイデスとしては、後々、戦うことになる戦闘獣やメカザウルス、マグマ獣といったスーパーロボット系の敵に対して、アプサラスの火力が欲しいわけだ。

 スーパーロボット大戦脳で考えると、スーパーロボット系の敵は装甲が厚く、耐久力に富み、MSが一撃で沈む攻撃を四度か五度は当てないと落とせないと睨んでいる。

 その為、ヘイデスはアプサラスのような大火力MAの大量配備や、欲を言えばMSの平均的な火力がZZ級になってもらいたい、と痛切に願っていた。

 

「連邦軍にああいうMAは不要だけれど、対策は必要だから資料的な価値はあるだろうし、ま、なんとか交渉を重ねてみるよ」

 

「総帥が必要とお考えなら反対は致しません。そんな権利と資格はありませんので。とはいえ、一つお伺いしてもよろしいですか?」

 

「なんだい?」

 

「戦後を見越したスペースコロニーの建造ですとか、ソーラーパネルの大量生産にマイクロウェーブ変電施設と送信施設の建設はともかくとして、火星にまで手を伸ばされるのですか。

 というかここ数世紀で苔とゴキブリをセットにして送り込んだ履歴がないかなんて、どうして調べているのか理解に苦しみますね」

 

 ヘイデスとしてもいくらなんでもないだろ、とは思っていたのだが、念のために火星に人型に進化したゴキブリ――テラフォーマーが居ないか心配になったのだ。

 スパロボと関係のない漫画作品だが、スパロボに油断するわけには行かない。それに火星は火星で、ガンダム作品のみならずスパロボ参戦作品でもなにかと舞台になる惑星だ。

 

 調査の手を伸ばすのは当然だったが、いかんせん距離がある為、詳細な現状を把握するのはヘイデスをしても難しい。

 とりあえず、過去にどんな開拓計画が実行されたのかを調査した。所長の苔とゴキブリ云々も、その調査の一環である。

 

「なにかの映画か漫画でそういう計画を見た覚えがあってね。つい調べてもらっただけだよ。結果が空振りに終わってよかったよ」

 

 現在、火星は新たな居住地としての価値が低く見積もられており、衛星フォボスに宇宙港が置かれ、地表にはラッピング構造体と呼ばれる構造の都市もあるが居住者は少ない。

 ヘイデスは、詳細までは記憶していなかったが、確かF90の時代にはオールズモビルというジオン系の武装勢力が潜伏していたはずだし、それ以前にも一年戦争で敗れた親キシリア派のジオン残党が占拠して、力を蓄えていた筈。

 そこにティターンズ残党やらなんやらが加わって、だいぶごちゃごちゃとした関係が出来上がっていたような、そうでないような……

 

(ただスパロボだと、月と並ぶ異星人に侵略されて拠点を置かれる場所筆頭だ。最終話や終盤のステージになる事も少なくない。

 今の開拓具合からいってガンダムAGEや鉄血のオルフェンズはないし、ナデシコの参戦もない。あの世界ほどテラフォーミングが進んでないようではな。

 今から出資して開拓を進めても、それを異星人にいいように利用されてこっちの首を絞める結果になるだけか。……今、火星で暮らしている人達に向けて、軍事物資の生産プラントに転用できないものなら、出資する事に決めたけどさ)

 

 おそらくこのスパロボ世界のラスボスを倒したころには、ミノフスキードライブの実用化もあり得る。それを搭載した高速船を開発すれば、地球・火星間の移動にかかる時間も短くなり、開拓事業活発化の芽も開くだろう。

 ひょっとしたら、なにかしらのワープ技術も実用化されるかもしれない。それを独占し、ジオン残党を始めとした諸勢力の支配を跳ねのけられれば、火星をプルート財閥の事実上の支配下に収める事だって出来るだろう。

 

(いや、それは…………面倒くさ! 第一、今の俺は財閥の社員の生活を守るだけでも責任の重圧に押し潰されそうなのに、この上、火星の住民の面倒まで見ていられるか!

 第一、そんなのはプレイヤー部隊にボコボコにされる敵役の典型的な思考だろうが。経済的に支配する分には、プレイヤー部隊にはどうしようもないかもしれんけど! ていうか誰がするか! あほか!)

 

 スーパーロボット軍団が敵に回る映像を思い描いて、恐怖のあまりブルブルと体を震わせるヘイデスを、所長は不思議そうに見ていたがよりかかるのは止めなかった。

 

「まあ、総帥の奇抜な行動は今に始まった話ではありませんわね。それと例のギフトについてですが」

 

 ギフト……あの南アタリア島近海でサルベージされたヘリオースもどきのコードネームだ。ヘイデスとしては、あれがこの世界における主人公ないしはラスボスではないか、と予想している。

 

「ギフトの解析は進めていますが、どうにも未知の技術の塊で難航しています。まあ、遅々とはいえ進んでおりますので、その内、応用くらいはしてみせます。とりあえず、四肢の代わりの設計と修理部品の調達と併せて進めていますわ」

 

「所長が頼みの綱だよ。本当の本当に。それでギフトの中の方はどうだい? ある意味、そっちが本命なわけなのだけれども」

 

「生命反応が順調に育っています。出産と形容すればよいのか怪しいですが、遠からず中の誰かが外に出てくると思いますわよ。出てきたらどうされます?」

 

「人間、まずは話をするのが大切さ。とびっきりのVIP待遇で迎えてあげよう。破損していたとはいえ、コロニーを吹き飛ばしながら落下してくるような機動兵器のパイロットかもしれないんだ。ある意味、地球圏で一番重要な人物といっても過言ではないよ」

 

「産まれてくるのが人間だと良いのですけれど」

 

「コワイコトイワナイデ」

 

 ヘイデスは心の底からそう告げた。

 

 

 この後、オデッサ作戦の終了と共にポダルゲー隊はホワイトベース隊と別行動を取り、ホワイトベース隊はベルファスト、ジャブローへと進路を取る。

 療養が終わり、ドズルに左遷されたところをキシリアに拾われたシャア率いるマッドアングラー隊により、ジャブローの位置が把握され、ヘイデスが指摘した通りにジオンは残る地上戦力をかき集めて、ジャブローの宇宙船ドックの破壊を狙って攻撃を仕掛ける。

 テム・レイ博士が健常な状態で保護されていたこともあり、ジャブローには原作以上のジムが配備され、元より堅固な防衛力とホワイトベース隊の奮闘もあり、侵攻したジオン軍の撃退に大成功している。

 

 そうして舞台は当然ながら宇宙へと移り、今度はレビル将軍からの要請により、アレスコーポレーションは第13独立部隊に任命されたホワイトベース隊に戦力を派遣する事となる。

 これから後に起きた一年戦争の戦いにおいて、ヘイデスの果たした役割はそう多くはない。

 ソロモン攻略戦に於いて大破したRX-79EX-1ゼファーガンダムとMS-19N カタールを、そしてア・バオア・クー攻略戦に於いて、アムロが乗り捨てたコアファイターと搭載されていた教育型コンピューターを回収したのが、特筆すべき成果であったろう。

 そして彼は後に知る。一年戦争はチュートリアルだった、と。

 

〇チュートリアルクリア!

 

・ゴップと深いつながりを得ました。

・ストーク級空中母艦が開発されました。

・ライノセラス級陸上戦艦が開発されました。

・キラーホエール級攻撃潜水艦が開発されました。

・ゼファーガンダム並びにゼファーファントムシステムを手に入れました。

・カタールを手に入れました。

・アプサラスⅢが手に入るかも?

・大量のソーラーパネルを生産しました。

・マイクロウェーブ送信施設を建設しました。

 

☆現在の参戦確定作品!

・ガンダム(宇宙世紀シリーズ)

・マジンガーZ

・ゲッターロボ

・コンバトラーV

・ボルテスV

・闘将ダイモス

・勇者ライディーン

・バンプレストオリジナル

・?????

 




ガンダムばっかりのチュートリアルですが、本編が始まればようやくクロスオーバーらしくできそうです。もうちょっとお付き合い下さい。
また戦う方の主人公もそろそろ出番が回ってきます。あくまでヘイデスが本作品の主人公ですので、あまり出番はありませんがキーパーソンなのは確かです。
では、また次回にて。


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第五話 予約特典についてくる前日譚のお話

もう少しだけ本編開始前の外伝的なお話を挟みます。
本編開始前に主人公の行った仕込みについて、ダイジェスト風味でつらつらと。


 新代歴179年12月31日、ジオン公国の宇宙要塞ア・バオア・クーが陥落し、ア・バオア・クーにて指揮を執っていたジオン公国総帥ギレン・ザビ、さらにその妹キシリア・ザビの死亡が確認される。

 これに伴いガルマ・ザビを首相とするジオン共和国臨時政府が、地球連邦政府に終戦条約の締結を申し入れ、地球連邦政府がこれを認め、新代歴180年1月1日、グラナダにて終戦条約が締結される。

 後の世に言うこのグラナダ条約によって、一年戦争は終結を迎えたのである。

 

 ジオン共和国の存在を認められないギレン派、キシリア派、またあるいは敗戦を認められない者達は、火星と木星の間のアステロイドベルトに存在する小惑星基地アクシズへ向かい、あるいは宇宙の闇や地上のいずこかへと潜み、地球連邦への反抗の火を燃やし続けた。

 それでも表立っては地球圏全土に及んだ大戦は終わり、多くの人々はようやく訪れる平穏な日々に胸を撫で下ろしたものだ。

 

 しかし悲しいかな、ヘイデス・プルートばかりは考えれば考える程危険しかないこの世界の未来に思いを馳せて、何時まで経っても心安らかにとはいかないのであった。

 どうにか平穏な晩年を過ごして天寿を全うする為に、彼は頑張るしかなかった。

 たとえこの世界が純粋な宇宙世紀のみの世界であったとしても、これからコロニーが落ちるわ、コロニーレーザーで地球が撃たれそうになるわ、核ミサイルの雨が降りそうになるわ、アクシズが落とされそうになるわと物騒極まりないのである。

 更に地下勢力・異星人・並行世界・未来ないしは過去勢力・異次元勢力からの侵攻や、宇宙のルールによる試練があるかもしれないのだから。なんともはやとんでもない世界に生まれ変わってしまったものである。

 

■新代歴180年2月某日

 

 一年戦争の終結からおおよそ一か月半後、ヘイデスはヘパイストスラボからの緊急連絡を受けて、それまでサインしていた書類を放り出して一目散に向かった。ギフトに関する緊急事態を告げる連絡であった為だ。

 ヘパイストスラボも常の余裕を半分ほど忘れた慌ただしさに包まれており、ヘイデスを迎えた所長の顔も険しさの割合が多い。

 

「ようこそ、総帥。ゆっくりとお話をしたいところですが、今はそれどころではございません。急ぎ、地下格納庫までおいでくださいな」

 

「ああ、分かっている。案内を頼むよ」

 

 開口一番、行動を要求する所長に対して、ヘイデスは一も二もなく頷き返す。いよいよこの世界の主人公との対面かと浮足立つ気持ちと、いよいよ地獄の蓋が開くのかという恐怖が彼の心の中にあった。

 ドイツはバイエルン州からオーストリアのチロル地方にかけての民族衣装であるディアンドルの上に白衣を着た所長は、プラチナブロンドを後頭部で大きな団子状に纏めたスタイルでヘイデスを先導して行く。

 

「それでどういう事態になりそうなのか、推測は着くのかい? それとも推測も出来ないような緊急事態かな?」

 

 ヘイデスとしては後者の方が厄介だ。思わぬ良い方向に転がる可能性もあるが、それ以上に悪い可能性に転がった場合のバリエーションが豊富過ぎる世界に生きているから、どうにか予測の着く範疇に収まってほしい。

 

「ギフト内部の生命反応が活発化しています。加えてギフト自体も緩やかにエネルギー反応を高めています。次に起こる事態の想像は着いておりますので、お呼びしました。まあ、危険なことにはならないかと」

 

「所長の事は信じているからね。君が危険はないというのなら、それを信じるだけさ」

 

「あら、プルート財閥の総帥ともあろう方が、そんなに簡単に信じると口にしてよいので?」

 

「ああ、所長ならいいのさ。僕の名前はギリシャ神話の冥府の神ハデスから取られたけれど、その僕にとって君はペルセポネだ。なにをしてでも自分の傍に置きたいと願った女神のようなもの。その君を信じない理由はない」

 

 迷いなく、恥じらいもなく断言するヘイデスに対して、所長が返事をするまでには随分と間があった。

 

「…………そうですか」

 

 通りすがりに二人のやり取りを耳にした独身所員の何人かは、けっ、と吐き捨てるか羨ましそうに二人を見ていた。

 なにはともあれ所長に先導されてギフトことヘリオースもどきを保管している格納庫に着けば、地鳴りを思わせる小さな音が機体から漏れ聞こえ、機体の装甲の隙間からも太陽を思わせる黄金の光の粒子が漏れ出ている。

 事前にパワードスーツとしての機能を組み込んだ気密服に着替え、二人は格納庫へと足を踏み入れた。鎧を纏ったノーマルスーツめいた気密服だったが、パワーアシスト機構が着いている為、重量はほとんど感じられない。

 同じ気密服を着こんだ所員達が解析装置やプチモビを持ち込み、ギフトの異変を調査中だった。

 

「この金ぴかの粒子って、触っても大丈夫?」

 

 ヘルメットの中にある通信機で所長に尋ねれば、せっかくのディアンドル衣装が隠れてしまった所長は、肩をすくめて答える。

 

「解析できませんでしたので、なるべく触れないようお気を付けください。何かしらのエネルギーの放出であるのは確かですが、なにかの物体に触れると自動で消えるのです」

 

(ゲッター線は緑色の光だったよな? ガンダム00のアルヴァアロンのGN粒子が金色だったけれど、あれは色がそうなるように調整したって設定だったっけ。まさかそのGN粒子ってわけもないだろうし……)

 

 大丈夫かなあ、でも所長を信じるって言ったしなあ、と心の中でおっかなびっくりしながら、ヘイデスと所長はブーム式リフト車のバスケットに乗り込み、ヘリオースの上へと回る。

 装甲の隙間から漏れる金色の粒子は心なしか量が増しており、二人がちょうど腹部の真上に来たところで、待ち構えていたように装甲の一部が開き始めたではないか。

 

「所長、あれはコックピットハッチだったりするのかな?」

 

 いよいよ主人公の登場か、と久しぶりに純粋な興奮に襲われたヘイデスが指さす先を、所長もバスケットから身を乗り出すようにしてのぞき込んでいる。

 そうして向こうからの行動がなにかあるかと待ってみたが、五分経っても十分経ってもなにも起きず、ヘイデスがどうしたものかと首を捻っていると、痺れを切らしたのか所長が大胆な行動に出た。

 

「ふむ、ならこちらから動くとしましょう。行きますわよ、総帥」

 

「へ」

 

 ヘイデスは一言漏らす暇こそあれ、所長に首根っこを掴まれた次の瞬間には宙を飛んでいた。所長がヘイデスを捕まえたままバスケットからジャンプして、ヘリオースもどきのコックピットハッチのすぐ傍に着地したのである。

 

「!?!?!?!?!?」

 

 いくら気密服にパワードスーツとしての機能があるとはいえ、ちょっと人間離れした所長の身体能力と行動力に、ヘイデスが目を白黒とさせている間に所長はコックピットハッチの中へと潜り込んでいる。

 

(やだ、頼りになる)

 

 頼もしい事この上ない所長の行動力に、改めてヘイデスがトゥンクと音を立てて胸をときめかせていると、コックピットに潜り込んだ所長がなにかを抱えてすぐに戻ってきた。

 所長は両手になにかを抱えたまま、ヘルメットの通信機を操作する。

 

「至急、医療班をこちらへ回して。ええ、すぐに、大至急。超特急で。一分一秒を惜しむ気概でおやりなさい。総帥、こちらを」

 

 ヘイデスが口を挟めずにいると、所長は両手に抱えていたモノの片方を押し付けてきた。

反射的に受け止めると気密服越しに、軽減された重みが伝わり、ヘイデスは自分が何を抱えたのかを知ると目を丸く見開いた。

 だって、こんな、あまりにも予想外過ぎる!

 

「あ、赤ちゃん? 双子の!?」

 

「男の子と女の子ですわね。ひょっとしてこの機体はこの二人の揺り籠だったのかしら?」

 

「え、いや、ええ~~~」

 

 ヘイデスと所長の腕の中で、生後一年程と見える金髪の赤ん坊はすやすやと穏やかな寝息を立てていた。

 

(なになになに! どういうこと!? 俺と所長でこの子達を育てろってことなのか? ん、まて、待てよ、揺り籠、赤ん坊の揺り籠?

 ソーディアンか? スクランブルコマンダーに出てきた、あの二人の嬰児を抱え込んでいたソーディアンを連想させるが、でもこれロボットだよな。ソーディアン関連ならどうしてヘリオースに似ている? 単なる偶然か。

 そういえばファフナーのマークニヒトと皆城総士も、エグゾダスで似たようなことになっていたっけ。ふーむ、そうなるとこの赤ちゃん達も既存のスパロボオリキャラの生まれ変わりか、あるいはまったく新規のキャラになるのか)

 

 ヘイデスの内心の混乱や推測を他所に、彼の腕の中の赤ん坊は世界の悪意や暴力をまるで知らぬ無垢な顔で、穏やかな寝息を立てていた。

 そんな顔を見ていると、ああ、どうしてこんな戦乱塗れのクロスオーバーワールドに生まれてきてしまったのだと、憐れみが勝った。ましてや主人公であったとしたなら、なおさら苦難の道が待ち受けているに違いないのだから。

 

(でもこの子達が主人公だとしたら……え、六、七歳で戦う羽目になるのか? そりゃ見た目は成人か十代後半でも、実質一桁年齢のキャラクターはいたけど、この子達を戦わせなければならない展開が、この先に待ち構えているのか?)

 

 ああ、とヘイデスは心の中で嘆息した。自分は良い。知らない方が良かったと後悔する事も多いが、それでも世界に大きな影響を与えられるだけの地位と財力と能力を与えられて、どうにか足掻きもがけているのだから。

 でも、だからといってこんな赤ん坊に世界の命運を委ねなければならなくなるのか? そうしたら、この子達はどれだけ傷ついて苦しみ、悲しむだろうかと、そう思わずにはいられなかった。

 

 ただしヘイデスの悲嘆は、全てが当たったわけではなかった。遺伝子的には地球人類と変わらないにもかかわらず、双子の赤ん坊は数倍の速度で成長していったのである。

 これにはヘイデスも所長も目を見張ったが、だからといって放り出す事は出来ず、非人道的な実験に供するわけもなく、二人はヘイデスの養子として育てられる事となる。

 

■新代歴182年

 

 地球のとある平原にて二機のMSが入れ代わり立ち代わり、それこそ目が追いつかない程の速さで動き回り、互いに銃口を向け合っていた。

 晴れ渡った空に君臨する太陽は、せっかく自分が照らしてやっているというのに無粋な奴らめ、と腹を立てていたかもしれない。あるいは尋常ならざる動きを見せる二機の戦いぶりに、声援のひとつも送っていたものか。

 

 戦っているのは同タイプのMSであった。黄色いV字型のブレードアンテナに人間の目を思わせるツインアイ、機体は白を基調としながら胴体は青く、四肢の各所にも同色の装甲が散らされている。

 RX-78NT-1あるいはガンダムNT-1、この試験場に居る関係者達からはもっぱらコードネームのアレックスの愛称で呼ばれる機体である。

 

 本来は一年戦争期にアムロ・レイの反応速度にガンダムが追従できなくなったのをきっかけに開発された、地球連邦軍初のニュータイプ対応機だ。

 一年戦争終盤にサイド6リボーコロニーの極秘工場で組み上げられるも、ジオンの特殊部隊の奮闘により大破し、軍事要塞ルナツーへと移送されアムロの手に渡る前に終戦を迎えている。

 

 この機動兵器運用試験用の平原で戦っている内の一号機は、正真正銘、ルナツーに保管されそのまま放置されていたものをプルート財閥があの手この手で引き取ってから修理し、現在のパイロット用に再調整を施したものだ。

 実機を用いた模擬戦の相手を務めている二号機も、一号機のデータをそのままにとある部分の改修を除けば、同等の性能を誇る。

 

 いわゆる第一世代MSであるアレックスだが、ニュータイプクラスの反応速度とG耐性を持つパイロットが操縦すれば、第三世代MS――可変型MS並みの性能を発揮する怪物マシーンだ。

 もしア・バオア・クー攻略戦でアムロがこの機体に乗っていたなら、更にニュータイプ伝説を助長させる戦果を挙げたのは想像に難くない。

 

 そしてこの試験場で行われている模擬戦は、アレックスの性能を完全に引き出したものであった。

 それほどのパイロットは、現状では地球連邦とジオン双方を合わせても、果たして十指に届くかどうかだろう。

 アレックス一号機の左肩には一本角を持つ馬――ユニコーンと「A」を組み合わせた赤いエンブレムが施され、二号機には鮮やかな緑の風を思わせるエンブレムが陽光に照らし出されている。

 

 模擬戦である以上、両者の右手に構えられたビームライフルからは、本物のメガ粒子砲ではなく当たり判定の為のレーザーが照射されている。頭部のバルカンや腕部のガトリング砲、バックパックのビームサーベルにしても同じことだ。

 とはいえ模擬戦仕様なのは武装だけで、二機のアレックス達は一年戦争を戦い抜いたベテランMSパイロット達でも度肝を抜かれる反応速度と、神がかった機体制御により、網膜に残像を残すかの如きハイレベルな戦いを演じ続けている。

 

 そんじょそこらのMSとパイロットでは、一個大隊でも鉄板にバターを押し付けるようにまたたくまに蹴散らされるに違いない。

 一号機のパイロットは自分の反応速度に追いついてくるアレックスに、そして思う存分動かせる状況を楽しんでいた。

 

 命のやり取りではなく実働データを取る為の模擬戦であることと、思う存分好きなだけ遊んでいい壊れない玩具を与えられたような気になっていたのが、彼の心を軽く、踊るように弾ませていた。

 彼にとって敵の攻撃は、センサーやメインカメラの捉えた映像よりも先に敵から放たれた殺気を感知し、避けるものだ。ロックオンされてから、相手の指がトリガーを引く前に避けているという常識外れの回避動作を行っている。

 

 しかし二号機から殺気の類は一度も放たれていない。一号機にロックオンされても怯えや焦りはなく、あらゆる感情の排された無機質な感触だけがある。

 逆説的に常よりも不利な状況にもかかわらず、一号機のパイロットは生まれ持った反応速度と多くの戦場で培った経験により、人体では耐えられない動きを平然と行う二号機と互角以上に渡り合っている事を意味する。

 

 フルポテンシャルを発揮したアレックス同士の模擬戦が行われる一方、別の区画では四対四の模擬戦が行われている。

 機体を黒に染め、一部に赤い線を引いたアクシオの最上位機アクシオ・バーグラー四機で構成される組と、アクシオ・バーグラー二機と四つ足の狼めいたシルエットの新型MS二機で構成される組だ。

 

 アクシオ・バーグラーはヘパイストスラボが拡張性の限界に挑み、仕上げたピーキー極まりない仕様の機体であり、現行の技術でアクシオをこれ以上強化するのは不可能と断言する性能を誇る。

 夜盗や強盗を意味する“バーグラー”とは、正規軍に卸すMSとして不適当だが、それは原作への敬意だからとヘイデスが譲らなかった名残だ。

 

 獣めいたMSは、実機の開発に至ったガンダムSEED世界のMSバクゥもどき――アルゴスである。

 古代ギリシャを舞台とするトロイア戦争の英雄オデュッセウスの愛犬からその名を取ったのは、主人の帰りを二十年以上に渡り待ち続けた犬の愛情と忍耐にあやかったからだ。

 

 アクシオ・バーグラー四機で構成される組は、レナンジェス、ミーナ、アーウィン、グレースらプルート財閥の誇るエース四人。

 一方、アクシオ・バーグラーとアルゴスで構成される組は、とあるプロジェクトの為に地球連邦軍から出向しているユウ・カジマ、ヤザン・ゲーブル、ライラ・ミラ・ライラ、ブラン・ブルタークら四人が搭乗している。

 

 無限軌道を活かして地上を疾走するアルゴスは、バクゥそのもののシルエットであったが、頭部はツインアイが採用されてより生物的な印象を強めている。腰の上には連装ビーム砲が装備され、メインウェポンとなる。

 模擬戦である以上、実際にビームが放たれることはないが、それぞれのパイロットのコックピットにはコンピューターが合成したビームの画像が映し出されており、自分が撃たれている事、自分が撃った事の双方が視覚的にわかりやすくなるよう設定されている。

 

「こいつはずいぶんとご機嫌なマシーンじゃないか、ええ!」

 

 アルゴスのコックピットの中で、ヤザンは獣性を剥き出しにした笑みを浮かべて、ロックオンした黒いアクシオへ連装ビーム砲を発射した。左右の砲身から交互にビームを放って、連射性を優先した撃ち方だ。

 それを標的のバーグラーは、ロックオンアラートが鳴り響くよりも早く回避行動を取り、仮想射線上から軽やかに退避する。

 

「きゅぴ~んと来ましたぁ」

 

 機体は素早く、しかし言葉はのんびりと、グレースはヘルメットのバイザーに映し出されるビームを一瞥し、お返しとばかりに乗機の右手にある新型のビームライフルを連射する。

 土煙をあげて疾走するアルゴスの影ばかりを貫くビームに、グレースはあらぁ、と呟いた。残念そうな呟きもぽやんとしている。

 

「ドムとはまた違った速さですねえ」

 

「いい狙いだが、それ以上に回避が上手い。これがニュータイプという奴か」

 

 無限軌道ばかりでなく四足形態での移動も交え、縦横無尽に動くヤザンのアルゴスを追従するグレースのバーグラーだったが、アルゴスが跳び越えた岩の影から飛び出してきたユウのバーグラーの放ったビームを咄嗟に左の盾で受け止めたものの、バランスを崩してしまう。

 脚部のスラスターを吹かしてバランスを保ち転倒こそ防ぐが、その為に使用した一秒にも満たない時間で、ユウはEMダガーを抜き放っていた。

 

「……!」

 

 言葉ではないユウの殺気を感じ、グレースが少しでも損傷を抑えようと思考を巡らせた瞬間に、横合いから飛び込んできたミーナのバーグラーが振り上げたビームハルバードがユウのバーグラーに叩きつけられる。

 ユウのEMダガーは受け止めたビームハルバードの刃を滑らせ、無理に受け切ることなくそのまま機体ごと後退する。ついでに左手で抜き放ったビームマシンガンの掃射を浴びせるのも忘れない。

 

「おりょりょ、今のを避けられるとは、ううん、私の推理ではユウさんはニュータイプじゃないんだけど、流石地球連邦のエースね!」

 

 軽口を叩きながらもきっちりとビームの銃弾を避けている辺りは、ミーナもまた一年戦争を戦い抜いたプルート財閥のエースに相応しい実力者であった。

 

「アーウィンやジェス君達もライラさんとブランさん相手に、いい感じに戦っていますねえ~」

 

 あちらはライラがバーグラー、ブランがアルゴスという組み合わせだ。

 なぜプルート財閥傘下の民間軍事会社アレスコーポレーションの四人と一機、それと地球連邦軍の正規軍人達がヘパイストスラボ印の機動兵器を駆っているかというと、ヘイデスが地球連邦軍に持ち掛けたあるプロジェクトの為である。

 新時代機動兵器技術研究計画――プロメテウスプロジェクト。

 ヘイデスが来たる多作品勢力との戦いを想定し、地球連邦軍の技術とエース達の戦闘データを収集し、またこちらのデータも提供する事で地球の軍事力増強を図ったプロジェクトである。

 

 もちろんこの真意を知るのはヘイデスのみで、この計画を持ち掛けられた地球連邦の軍人達は、戦後、ジオニック社などの債権をろくに買い上げられず、アナハイムに大きく溝を開けられたプルート財閥が焦っているのだ、と嘲笑したものだ。

 地球連邦軍の十年先を行っていると言われるジオンの技術を得られなかったのは、確かに今後のMS開発に於いて大きな痛手だが、ヘイデス個人はそこまで頓着していなかった。

 所長をはじめヘパイストスラボの技術を信頼していたし、ジオンとは別のところでMSに関する技術を手に入れる目途を立てていたからである。

 

 そうとは知らぬ地球連邦の人々は、プロジェクトに掛かる費用のほぼすべてをプルート財閥が負担する事もあって、憐れみと打算を持ってこのプロジェクトに協力を決め、アレックスを始めとした一部のMSや資材、パイロットの提供を行って今日に至る。

 もっともヘイデスに警戒と興味を半々ずつ抱いているゴップや、新組織の設立を虎視眈々と狙っているジャミトフ・ハイマンなど一部の将校や政治家達は、このプロジェクトを立ち上げる隠れ蓑の為に、わざと債権を買わなかったのではないかと疑っているが。

 

『各機、模擬戦を終了してください。繰り返します、各機、模擬戦を終了してください。機体は各ハンガーへ、パイロットはメディカルルームへ』

 

 模擬戦の様子を逐一チェックしていた管制室から連絡が入り、それまでの激しい戦闘が嘘だったように、合計十機のMSが戦闘を止めて、途中でパージした武装や放り投げた盾を回収しつつ、試験基地へ戻り始める。

 そんな中、アレックス一号機のパイロットは引き抜いていたビームサーベルをバックパックに戻しながら、対戦相手だった二号機を労う。

 

「今日はここまでか。君もご苦労、ゼファー」

 

 ヘイデスがもっとも苦心して監禁生活を送る寸前に本プロジェクト参加が決定した、一年戦争の英雄アムロ・レイは、二号機のコックピットブロックに収められている、無人機の完全自立制御を可能とするシステム“ゼファー”へまるで同僚の如く声をかけるのだった。

 音声や文章による応答機能を持たないゼファーから、アムロへの返事は当然なかったが、それでもこうして模擬戦の度になにかしら声掛けをするのは、アムロに限らずプロメテウスプロジェクトに参加している人員にとっては、当たり前の習慣となっていた。

 

 模擬戦を終了した機体とパイロット達が続々と帰還してくる中で、管制室に詰めていた所長は、アレックス運用に関するアドバイザーとして出向してきた女性に声をかけた。

 元々はアレックスのシューフィッターを務め、リボーコロニーではアレックス破壊を試みるジオンの特殊部隊サイクロプス隊のMSと激闘を繰り広げた女性だ。柔和な印象を受ける美貌からは、それだけの修羅場をくぐった軍人だとは想像もつかない。

 ちなみに本日の所長は、紫のロングスカートに白のタートルネックのセーターという出で立ちだ。

 

「いかがでした、クリスチーナ。アムロさんの一号機とゼファーの二号機の稼働データは、よいものがとれまして?」

 

 地球連邦軍の軍服に身を包んだクリスチーナは、本来搭乗を予定していたパイロットの操るアレックスの戦う様を何度も目にしているが、目にする度に驚きに襲われている。

 

「はい。アムロ中尉もそうですがゼファーも模擬戦を重ねる度に、機体性能の限界に挑んでいるようなものですから、このプロジェクトが発足しなかったら到底得られなかったデータが取れています。

 ただ、分かってはいましたけれど、やはりアムロ中尉は凄いパイロットです。ニュータイプというものについて、私は理解が及んでいませんが、私ではアレックスの数分の一程度しか性能を発揮できませんでしたから」

 

 クリスチーナはパイロットとして優秀な人材だ。だからこそニュータイプ専用機として開発されたアレックスのシューフィッターを務めたのだが、その彼女をしてあの過敏すぎる反応速度のアレックスに満足している様子のアムロを見れば、上には上がいる事を痛感させられる。

 トップエースとはかくも人間離れした存在なのか、と。

 

「技術畑の私の眼から見ても、アムロ中尉とその相手を務めるゼファーはずば抜けておりますわね。ま、プロジェクトに参加してくれたメンバーは全員、地球圏でも上から数えた方が早いエース揃いですけどね。

 ところでバーナード君、あのアレックスを大破に追い込んだザクのパイロットとしては、アムロ中尉とゼファーのアレックスを相手にどうすれば勝ち目があるとお考えかしら?」

 

 所長から意地の悪いロシアンブルーの猫みたいな眼差しを向けられたのは、クリスチーナの横で模擬戦のデータ収集に務めていた金髪の青年だ。ようやく青年と呼べる年になった若者で、バーナード・ワイズマンという。

 所長が口にした通り、元はジオン所属の軍人で、リボーコロニーにて多くのトラップを用いて瀕死になりながらアレックスを大破にまで追い込んだ当人である。

 

 その後、新型ガンダム破壊の為に、ジオンがコロニーに核ミサイルを撃ち込む予定であり、それを阻止する為にバーナード――バーニィが自身と部隊の仲間達の意地も含めてアレックス破壊に奔走したことが知れ渡り、リボーコロニーの英雄などと一部では持て囃されている。

 瀕死の重傷から目を覚ました頃には終戦を迎えていたバーニィがなぜここにいるのか、と言えばプロメテウスプロジェクトに、ジオン共和国も一枚噛んでいるからの一言に尽きる。

 

 敗戦国である以上、おおっぴらには新しいMSの開発が許されないジオン共和国にとって、次世代の機動兵器の開発と研究を表向きの目的とする本プロジェクトは渡りに船であった。

 当然、地球連邦側は良い顔をしないがジオニック社の技術を得られなかったプルート財閥の悪足掻きという油断と、ヘイデスが総動員した人脈と資金、地球連邦にもプロジェクトの成果が反映されるといった諸々の事情により、ジオン共和国もプロジェクトの出資者の一つに名前を連ねている。

 

 今はアレックスの関係者としてバーニィがこの場に居るに留まるが、しばらくすればジオン本国に残った技術者やエースパイロット達も加わり、かつての敵と味方の入り乱れる愉快な職場となるに違いない。

 強敵に悩むくらいならそもそも敵にしなければいいじゃない、とヘイデスが発想を転換させた結果ともいえる。

 さてそんなわけで地球におりて、クリスチーナとお互いにアレックスとザクのパイロットだった事実に驚き合ったバーニィは、所長の意地の悪い質問に顔を引きつらせた。勝てるわけない、がバーニィの率直な感想である。

 

「い、いやあ、そうだな、準備に時間を貰えればなんとか……」

 

 それでも素直に勝てないと口にしなかったのは、気になる女性が目の前にいるからか、軍の一部からあのガンダムを破壊したザクのパイロットと持て囃されているからか。

 

「おほほほほ、我ながら意地悪な質問でしたわね。トラップを仕掛けようが仕掛けまいが、アムロ中尉とアレックスの組み合わせをどうにか出来るパイロットなんて、この地球にどれだけいるのかって話ですわ。九割九分九厘のパイロットは傷も付けられませんわよ」

 

 ふふっと笑いながら告げる所長に、バーニィはほっと安堵の息を零した。それから結構な確率でこの試験基地を訪れるヘイデスが今日はいない事に気付き、その所在を所長に尋ねた。本人としては軽い気持ちの質問である。

 

「そういえば今日はヘイデスさんはどうしているんですか? あの人、やたらアムロ中尉に肩入れしているというか、英雄視ってんじゃないですけど、気に入っているからよく模擬戦とか訓練を見学に来ますけど」

 

「ああ、それでしたら今日はコルシカ基地に行く予定でしたわね。そろそろアクシオも限界ですから、新型MSの開発を行っていますけれどその役に立つ代物が眠っているのだとか」

 

 所長の言う通り、ヘイデスは地中海を臨むコルシカ基地を訪れ、その倉庫の中に未完成の状態で保存されていた、とあるMSを前に内心で踊り出したいくらいに喜んでいた。

 この世界にロームフェラ財団が存在した事から、あるはずだと予想して探し回り、見つけた後はどうにかして引き取る為に四方八方に手を尽くした機体が、目の前に佇んでいる。

 

「ついに見つけたぞ、トールギス!」

 

 

<続>

 

 

・一年戦争が終結しました。

・ジオン共和国(ガルマ・ザビ)が建国されました。

・■■■■■が双子の赤ん坊に生まれ変わりました。

・アクシオ・バーグラーが開発されました。

・アルゴス(バクゥもどき)が開発されました。

・ガンダムNT-1アレックスを入手しました。

・トールギス(未完成品・潮風で経年劣化)を入手しました。

・アムロ・レイが出向してきました。

・ヤザン・ゲーブルが出向してきました。

・ユウ・カジマが出向してきました。

・ライラ・ミラ・ライラが出向してきました。

・ブラン・ブルタークが出向してきました。

・クリスチーナ・マッケンジーが出向してきました。

・バーナード・ワイズマンが出向してきました。

・アムロ専用トールギスの開発フラグが立ちました。

・ゼファートールギスの開発フラグが立ちました。

 

☆新機動戦記ガンダムWが参戦確定しました!




アムロをはじめ地球連邦やジオンのエース・ベテランとの戦闘データを積み重ねたゼファーが搭載された、パイロットを気にせず20Gで動き回る無人機のトールギスとか、素敵だとは思いませんか?
アムロには監視兼護衛はついていますが、プルート財閥の懐の内ということもあり、アムロは原作よりも緩やかな状況に置かれています。趣味の機械いじりもラボの所員達と談義しながら行っています。また父親のテム・レイも健在ですので、V作戦の開発と戦闘双方の立役者という事もあり、軍内の立場もちょっぴりマシ。
次回、U.C.83~86までをざっくりと。
ついにムーバブル・フレーム型のMSが搭乗予定です。


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第六話 アムロとシャアはズッ友だよ!

サブタイトルでネタバレの回です。
スパロボが始まらない……


・人体の限界を超えた動きをする無人機と遭遇した、一般的なエースorニュータイプの反応

 

「殺気がない!? この動き、まさか無人機か!」 → 仲間との連携かトリッキーな戦法を用いて損傷を受けながらもどうにか撃墜。

 

・本作のアムロの反応。 

 

「ン、なんだ、無人機か。遅い!」 → ゼファーがアムロやユウ、ヤザン達を相手に成長しているのに合わせてアムロも成長しているので、会敵から五秒で撃墜。もちろん無傷。

 

■新代歴182年

 

 プロメテウスプロジェクト試験基地内部の格納庫の一つに、ゼファーアレックスの姿があった。

 直立した状態で固定されている機体の足元にはいくつもの機材が置かれ、そこには一年戦争中にゼファーの自我形成(プログラミング)を担っていた、若き女性オペレーターエリシア=ストックウェルとゼファーの開発者であるワルハマー・T・カインズ工学博士の姿があった。

 

 エリシアとカインズは一年戦争時に地球連邦軍第七艦隊旗艦ペガサス級トリビューンに乗り込み、ゼファーの運用と成長に携わってきた重要人物だ。

 ソロモン攻略戦に際してトリビューンの被弾の影響で、カインズ博士は重傷を負ったものの、近隣の宙域に潜んでいたプルート財閥の病院船で治療を受けた為、一命を取り留めてゼファー共々プルート財閥預かりの身となっている。

 

 今日、彼らはバーニィに遅れて派遣されたジオン共和国の技術者を迎える予定だった。ゼファーの足元なのは、それが先方の指定だったからである。

 そのジオン共和国の技術者――テレンス・リッツマン工学博士は、格納庫に入るや否や久方ぶりに顔を合わせるかつての仲間に、笑みを浮かべた。

 

「カインズ、久しぶりだな」

 

「ああ、お互いしぶとく生き残ったものだな」

 

 かつてはMSが登場する以前、新代歴160年~170年代に60フィート級ロボットシステムの開発に血道をあげた二人は、一度は分かれた陣営に身を置きながら再びこうして手を握り合う事が出来た。

 

「失礼、そちらのお嬢さんは?」

 

「初めまして、リッツマン博士。ゼファーのプログラミングとオペレートを担当している、エリシア=ストックウェルです」

 

 差し出されたエリシアの手をテレンスは握り返した。美女と呼んで差支えのないエリシアだが、その手はがっしりとして力強い。

 代々軍人の家系に生まれたエリシアの肉体はきっちりと鍛え込まれ、特に右手に関しては見事な銃捌きと引き換えに太く、本人が水着になるのを嫌がるほどだ。

 

「そうか、ミス・エリシアがカインズの無人機(ファントム)の……。それでこいつが俺のカタールを()った無人機か」

 

 テレンスは、ソロモンでゼファーガンダムが最後に戦ったMSカタールの開発者だった人物だ。カインズのゼファーとテレンスのカタールが戦ったのは、数奇な運命としか言いようがない。

 

「ああ、名前はゼファーだ。もっともゼファーを搭載している機体は当時と違うぞ。一年戦争の時はいわゆるファーストガンダムだったが、今は連邦がアムロ・レイ専用に開発したガンダムタイプに搭載している。当のアムロ・レイもこのプロジェクトに参加しているがね」

 

 ちなみにテレンスはガンダムがまだガンダーと呼ばれていた頃からV作戦に関与しており、テム・レイとの面識もある。

 テレンスのチームが築き上げたロボットシステムの基礎データがあればこそ、ガンダムは半年という短期間で形になったとテム・レイも認めるところだ。

 

「ニュータイプか。俺のカタールもニュータイプが搭乗したが、こいつの乗ったガンダムには及ばなかった。ゼファーファントムシステム、よくも作り上げたものだ。ところでカインズ」

 

「なんだ?」

 

「カタールを含めソロモンでの戦闘について、ジオンからもプルート財閥からも戦闘のデータを見させてもらったが、このゼファーが“敵機のコックピットを撃たなかった”のは、お前達のオペレートに従ったからか?」

 

 そればかりか、ゼファーはムサイの甲板に着陸するほど肉薄し、ブリッジにビームピストルの銃口を向けながらも、決して撃たなかった。

 カインズは我が子の失態が見つかったような、あるいはそれを誇っているような小さな笑みを口元に浮かべて首を横に振るう。

 

「直接指示をしたわけじゃない。全システムが正常に作動した上で、ゼファーがそう判断した。これ以上、人を死なせるなとそう願ってはいたがな」

 

「付け加えて言えば、倫理プロテクトも外してはいませんでした」

 

 エリシアもカインズと同じ心境なのか、笑顔を浮かべてそう口にした。倫理プロテクトは原則として人命を守る為の攻撃中止コマンドを指す。

 人の命を奪う戦争では矛盾するものである為、自力で解除も出来たが、当時のゼファーはこれを外してはいなかった。

 

「そうか。お前はのほほんと夢ばかり見ていると思っていたが、夢を形にしたか」

 

「まだ形になったばかりだ。ゼファーも私の夢も」

 

「こいつ、嬉しそうな顔しやがって。まあいい、また昔みたいにロボットシステムの未来について研究するとするか。幸いここのお偉いさんは話が分かるようだしな」

 

「その点は保証するぞ。手広くやっている上に成果を上げているから色々と言われてはいるが、少なくとも予算を出し渋るようなことはないし、現場へ視察に来ても口出しはしない」

 

「そいつはいい! 今のジオンじゃ戦後の復興に追われて色々とカツカツなんだ」

 

「まあ、ヘイデス総帥は何を見ているのか分からないところもあるが、どんな理由であれ戦争を望むタイプでもない。それとこれから例の機体について、パイロット達を含めて説明をする。お前も来るだろう?」

 

「ああ、例の機体か。あの博士達が関わっていたとはいえ、あんなモノが一年戦争以前に完成していたとはな。技術開発の歴史に波紋を呼び起こす代物だぞ」

 

 まったくだ、とカインズはテレンスの呆れ顔に全力で同意した。

 カインズとテレンス、エリシアは連れ立って隣の格納庫へと向かい、歩き出した。予定ではもう十分もすれば、とある報告がなされる。

 そしてその報告とは、このようなものであった。

 

「長期間、劣悪な保管状況に置かれていたようですわね。部品のことごとくが潮風の影響で著しく経年劣化しています。使い物になりません」

 

 怒りを孕んだ声でヘイデスにそう告げたのは、誰あろうヘパイストスラボの誇る才媛、所長その人である。

 体のラインも露なオーダーメイドの紫のスーツと白いドレスシャツ姿は、有能なキャリアウーマンのイメージそのものだ。白衣を纏っていなかったら、やり手の女社長かなにかと間違えられるだろう。

 首の後ろで二つに纏めて分けたプラチナブロンドも真っ赤に染まりそうな怒り具合は、ヘイデスがコルシカ基地から持ち帰ってきたトールギスのチェック内容の結果が原因だ。

 カインズの言っていた例の機体とは、トールギスのことであった。

 

 プロメテウスプロジェクトの基地内部にある格納庫には、トレーラーの上にトールギスが寝かせられ、近くには無数の整備員と技術者達、それにトールギスの話を聞きつけたアムロやユウ、アーウィン達パイロット連中も集っている。

 丸一日をかけたチェック結果は、ヘイデスをはじめとした各員に配られた専用端末内部に送信されており、その内容にパイロット達は顔を顰めている。

 自分達が戦場で命を預ける相棒とも言えるMSがここまで杜撰な保管されていたらと考えれば、穏やかではいられない。

 

「これは、一から部品を新調する必要があるんじゃないか? 所長」

 

 これは父親譲りなのか、MSの開発や設計にも才能を見せているアムロの発言だ。仮に今あるパーツでトールギスを組み立てたとしても、本来の性能を発揮できる状態ではない。

 

「ええ。アムロ中尉の言われる通り。一度、徹底的に分解して全てのパーツをチェックし、新しい機体を生産する方がいっそ手っ取り早いですわ。

 それにしてもジオンがMSに目をつけるよりもずっと早くに、こんな機体が作られていたとは。開発者達の才能と発想の奇天烈さには脱帽します。人体をもう少し省みてはと思いますけれどね」

 

 所長は怒りを一時期押し込めて、トールギスの性能とそれを作り上げた技術者達への称賛を吐露する。一年戦争以前に作られた人型機動兵器としては、信じがたい程の性能がトールギスにはある。

 この場に居るカインズとテレンスばかりでなく、他のジオン系の技術者や連邦系の技術者もそろってオーバーテクノロジーに近い産物に、目を丸くするなり顔を険しくしている。

 アムロに続いてライラも何度か目をぱちくりとさせて端末から顔を上げて、冗談だろうと言わんばかりに肩をすくめる。

 

「最大加速20G以上だって? パイロットの保護機構も装備もろくにない状態でそんな負荷がかかるようじゃあ、到底使い物にならないだろう」

 

 ちなみにガンダム00でグラハム・エーカーが阿修羅をも凌駕する存在になりながら、スローネアインの腕を斬り落とした際の超絶技巧による戦闘時には、連続12Gという負荷がかかり吐血している。

 

「ライラ中尉の言う通りでそこが問題になったのに加えて、開発チームが別の機体の開発に進んだことと行方を晦ましたのもあって、トールギスは放置され、それを目聡くウチの総帥が見つけて引き取ってきたというわけです」

 

 所長から視線を向けられたヘイデスは、他の皆からの視線の矢に刺されながら軽い調子で答える。

 

「アクシオの次のMSを開発したいウチとしては、ありがたい拾いものが出来たと思っているよ。

 けれど、トールギスを放置しないで生産性と安全性を優先した機体を開発出来ていたなら、ジオンもMSを頼みに戦争は起こさなかったかもしれないね。そういう意味ではこれを放置した人々の見る目の無さを恨みたいよ」

 

 この時、ヘイデスの頭の中に浮かんでいたのは、ガンダムWの作中で最初から最後まで登場していたMSリーオーだ。確かあれがトールギスを元にしていたんだよなあ、とぼんやり覚えている。

 リーオーは原作に於いて数十年に渡り、戦場で活躍し続けた寿命の長い機体であるが、この宇宙世紀をベースにしたらしいスパロボ時空においては、いまだに開発もされていない機体だ。

 一方でOZの存在は確認できているから、数年内に最新鋭MSとしてロールアウトするのではないか、とヘイデスは睨んでいる。まあ、最新鋭相応の性能にはなるだろう。

 

「それはそうですけれど。はあ、いずれにせよこのトールギスですが、近い内に何機か再生産してパイロットの皆さんにも試していただきますので、覚悟しておいてくださいな」

 

「え~、こんな機体に乗ったら体がぺっちゃんこになっちゃいますぅ」

 

「いや、【根性】と【不屈】の精神があれば耐えられなくもないかもしれない」

 

 グレースが至極まっとうに抗議するのに対し、レナンジェスはなにやら精神コマンドを思わせる単語を呟いて、トールギスの加速に耐えられる可能性を真面目に考えている様子だ。

 そんなレナンジェスにアーウィンは呆れ顔を隠さず、つい皮肉の一つも口にしてしまう。

 

「馬鹿かお前は。精神論に頼った国や軍の末路は、決まって悲惨なものだと古今、決まり切っている。トールギスに乗るパイロット全員にそれを押し付けるつもりか?」

 

「そこまでの事は言わない。ただ、アムロやブランさん、それに俺達ならそれで行けそうだとは思わないか?」

 

 至極真面目な顔でレナンジェスがこういうものだから、名指しされたブランも太い眉毛を八の字に寄せた。

 レナンジェスという若者は正義感のある熱血漢で好もしい人物なのだが、ブラン自身は自分をあくまで常識の範疇に収まる一軍人であると律している。

 

「レナンジェス、俺を巻き込まないでくれ。これでも真っ当な軍人なんだ。オカルトや精神論には縁がない」

 

「ジェス君の言うことですから~。それに軍なら代わりの利く誰でも使える兵器じゃないと~、意味がありません~。私達でも乗れそうにない機体では~無理ですよぅ」

 

 と常識的な抗議をするグレースに、所長は何を言うやらと呆れた様子。

 

「グレース、貴女はアムロ中尉とヤザン中尉とユウ少佐に次いでG耐性の高い元気印でしょう。きちんと専用の耐G装置やスーツも作りますから、グレースやジェス、それにブラン大尉なら四、五回も乗れば慣れます、たぶん。

 それからカインズ博士、ミス・エリシア、ゼファーにもトールギスを試してもらおうと考えているのですが、いかがかしら?」

 

「確かにゼファーなら加速の負荷を気にしないで済むが、ガンダム、アレックスと来て次はトールギスか。ゼファーは色々な機体を渡り歩くな」

 

 我が子の流転にしみじみとするカインズに対して、エリシアは至極真面目に意見を口にした。

 

「加速性能にどうしても目が行きがちですが、これだけの速度となるとゼファーにしても初体験になります。

 突撃艇に乗せてジオンの小衛星基地に突撃させたことがありますが、その時よりも速い。この速度を維持しながらの戦闘行動となると、情報処理にも相当の負荷がかかりますね」

 

「ゼファーに関しては兵器としてより、無人機としての運用データが欲しいのが理由ですし、戦闘行動は満足に取れなくても構いませんでしょ。ね、総帥?」

 

「うん。別にいいんじゃないかな。ゼファーの場合はトールギスの最大加速に長時間耐えられることが分かれば、そっちの方がプルート財閥としては収穫になるよ」

 

 最大加速での戦闘データをそう重要視していないと取れるヘイデスの発言には、カインズばかりか他の技術者やパイロット達も不思議に思いながら続く言葉に耳を傾ける。

 

「例えば海難事故や宇宙での事故の際に、トールギスばりの速度で現場に駆けつけられたら、これまでは助けられなかった命を助けられるようになる。

 人型を模したMSなら通常の作業ポッドよりも細かい作業が出来るし、ゼファーの判断能力ならオペレーターの指示なしでも臨機応変に事故現場の状況に対応できるように成長する見込みが高い。

 一刻一秒を争う事故現場において、トールギスの速度とそれが苦にならないゼファーのような存在はとても有用だと思うよ。

 それにこれからはまた開拓の時代だ。一年戦争で壊滅したサイド1、2、4、それにサイド7の復興、これまで軽視されていた火星や木星の開発がある。

 残念だけれどそういう現場では事故がどうしてもつきものだ。その時に、救命を目的としたトールギスの速度持ちの無人機はあるに越したことはない。そうだなあ、ゼファーレスキュー、あるいはレスキューファントムシステムってところかな?」

 

 兵器として運用されてきたからといって、これからもそのように使い続けなければならない道理はないと、そう断言するヘイデスに、カインズは眼鏡の奥の目を丸く見開いた。

 それはカインズの、いずれ人類が太陽系の外にまで進出した時、あらゆる環境下で人の思いつくすべての作業が出来る人型のロボットシステムが必要だという考えに共通するものを含んでいたからだ。

 

 人間の発想を受け入れられるロボット、それがカインズの理想であり、ゼファーはその可能性だ。そしてヘイデスはゼファーを兵器としてだけではなく、人を救う可能性としても考えている。

 例えこの場を取り繕うためのお為ごかしであったとしても、カインズが思わず喜びの感情を覚えるのには十分だった。ただ、少しだけヘイデスの発言には不足があった。

 

(これからはとは言ったけど、バーム星人にキャンベル星人にと宇宙からの侵略者問題を片付けてからだけどね!

 特にスパロボだと大抵バーム星人とは、火星を共同開拓するパターンが多かったと思うから、これまた利権やら何やらで揉めるよなあ。とほほほ。それに木星も……はああああああ~。もうやる事と調べる事が多すぎて、体が足りないよ! 物騒過ぎるわ、この世界!)

 

■新代歴183年

 

『それでアムロ、そっちの調子はどうだ?』

 

 アムロは通信機のモニター越しに見る父テム・レイに、苦笑しながら答えた。たまに連絡を取り合うと、必ずこう聞いてくるのがおかしく感じられたからだ。

 アムロとてもう十九歳だ。まだ十代とは言え、こうも健康を心配される年齢ではないと自分では思う。もっとも子供の心と親心とは別物なのだが、それをまだ実感できるアムロではなかった。

 

「大丈夫さ。MSの実機訓練をした後には必ずメディカルチェックとメンタルチェックをしているんだ。プルート財閥のアスクレピオスグループのドクターが、入念に診てくれている」

 

 これは前例のないプロジェクトに参加しているパイロット達の訓練後のデータが、今後の機動兵器パイロット達への心身のケアに役立つから、と入念に行われている。

 またアムロに関しては多感な時期に一年戦争を経験し、ララァ・スンを殺めた事へのケア効果もあればいいなあ、とヘイデスが考えた為でもある。

 気の置けない同僚達と趣味と実益を兼ねた仕事内容、充実した福利厚生と、原作の同時期に比べればアムロの置かれた環境はマシな筈だとヘイデスは自己評価している。

 

「父さんこそまた仕事に夢中になって、食事や睡眠を疎かにしたりしていないか? V作戦の時みたいに戦時中ってわけじゃないんだ。自分の体には気を遣ってくれよ」

 

『ああ、分かっているよ。まあ、確かに今の連邦軍は緊急性のある事態に置かれてはいないが、技術は常に進み続けなければいけないんだ。そうした積み重ねがいつの日か、役に立って誰かの命を救ったり、未来への扉を開く鍵になる』

 

「ふふ、今の父さんのようなセリフをヘイデス総帥やカインズ博士も口にしていたよ」

 

『カインズ博士か。V作戦では随分と世話になったものだ。博士が積み上げてきた基礎がなかったら、ガンダムもジムもあそこまで短期間で開発は出来なかった。カインズ博士の積み上げてきたものが、あの戦争を一年で終わらせた一助になったのは間違いない。

 もちろんお前の活躍もな。

 ただ、あの頃も、いや今でもそうだが、お前のような年の兵士が前線に立たずに済むようにと願ってガンダムを作ったのに、そのお前がガンダムに乗って戦い続けたのは、ひどくショックだったのを今も覚えているよ。

 息子を乗せる為にガンダムを作ったんじゃないと、何度も後悔した』

 

「そう言ってくれるなら、僕も救われる。それにあの時はガンダムが無かったら、あのままザクの襲撃でフラウ・ボウと一緒に死んでいたかもしれない。

 ガンダムに乗ったからこそ戦争に関わったけれど、ガンダムに乗ったからこそこうして生きていられると、今になってようやくそう思える。だから、父さんもそう気に病まないでくれ」

 

『そうか、お前がそう言ってくれると私も救われるよ』

 

 そう言うと、テムは眼鏡を外して浮かんだ涙を指で掬い取った。

 この通信も連邦軍が傍受しているだろうが、それはアムロもテムも理解した上だ。良くも悪くも一年戦争の鍵を握ったレイ親子に、一連邦市民としての自由は許されていない。

 それを分かった上でも、テムにとってアムロの言葉は目頭を熱くさせるのに十分だったし、アムロもまた父親のそんな姿を見て盗聴や盗撮のことなど些末だと頭の片隅に追いやった。

 

『恥ずかしいところを見せたな。そうそう、アレックスとネティクスだが凄まじいデータが届いたと評判だったぞ』

 

 “良いデータ”ではなく“凄まじいデータ”という表現が使われるあたり、連邦軍の技術者達の受けた衝撃が如何ほどのものであったか、暗に分かろうというもの。

 ネティクスとは、アレックスをベースに地球連邦軍が開発したニュータイプ用の試作機だ。ジオンのサイコミュ技術の検証と実験の為に、まずはオーガスタ研究所、次いでムラサメ研究所に引き渡されて完成した。

 

 背中に小型化が出来なかった為に、止むを得ず大型化した有線ビットを搭載しており、これのテストパイロットとして、アムロに白羽の矢が立ったのである。

 これにはアレックスのパイロットを務めていたのと、テレンス博士がカタールにおいてオールレンジ攻撃が可能な攻撃システムを実装していたこともあり、プロメテウスプロジェクトにネティクスが持ち込まれ、テストされたのだ。

 もちろん、プルート財閥はネティクスに使われた有線ビットの技術を、美味しくいただいている。

 

「役に立ったならいいが、ネティクスのビットは一般のパイロットでは扱えないだろう。誰でも使えるようでなければ、MSに持たせるには不適当だよ。ましてや連邦軍ではなおさらだ」

 

『ふふ、なまじお前が使いこなしたものだから、ムラサメ研究所の所員達も渋面を拵えていたぞ。あまりいい噂を聞かないところだが、妙な事をしなければいいのだがな。……そうだ、一つ、お前に聞きたいことがあったんだ』

 

「なんだい?」

 

『あのトールギスなんだが、本当にあの重量で間違っていないのか? 桁が一つ間違っていないか? いや、私も何度も調べたが、にわかには信じ難くてな』

 

 トールギスの重量は8.8トン、アムロの乗ったガンダムは本体重量43.4トン、ザクⅡF型は本体重量56.2トン。ガンダムのおおよそ四分の一の重量、ザクに至ってはおおよそ六分の一となる。いかにトールギスが軽いか、お分かりいただけるだろう。

 

「間違っていないよ。トールギスは本当にそれだけの重量しかない」

 

『そうか。そうか……うーむ、それにしても軽い。軽いなあ』

 

 アムロに事実だと告げられてもまだ納得できない様子のテムに、アムロはプロジェクトの皆もそうだったな、と苦笑した。

 

『とはいえ私がいくら納得しなくても事実は変わらないか。それにしてもアムロ、プロメテウスプロジェクトに出向してから、顔色が良くなったんじゃないか。声も表情も前よりも柔らかい』

 

「そうかい? そうなのかもしれないな。ここにいるとテストパイロットか、技術者としてメカと付き合って生きてゆくのが楽しく感じられるよ」

 

 そういえば、もうずいぶんとララァの夢を見ていないと、アムロはふと気付いた。

 

 

 テムと親子の会話をしていたアムロだが、彼は新代歴183年のある時期、宇宙に上がっていた。先程の通信も宇宙から地球の父親と交わしていたものである。

 プルート財閥の保有する工業コロニーを拠点として、ついに陽の目を見たムーバブル・フレーム型MSの宇宙でのテストを行うのが目的だ。

 プルート財閥の調達したコロンブスとジャンクからリペアしたサラミスとムサイ、更には戦艦のマゼランまでもが護衛についている。

 

 宇宙にはヘイデスや所長、テレンスらも上がっており、今はコロンブスに搭乗してテストの様子をブリッジで確かめているのだが、この時、可愛らしい珍客が二人、ブリッジに居た。

 太陽の光を思わせる煌びやかな金髪に、夕陽を思わせる鮮やかな瞳を持った天使のように愛らしい七、八歳の双子の子供達だ。

 

 男の子がシュメシ、女の子がヘマーという名をヘイデスと所長から付けられている。ヘブライ語でシュメシとは太陽の光、ヘマーとは太陽の熱を意味する。

 ギリシャ神話になぞらえた名前にしようとしたヘイデスだったが、双子の英雄などが居ないではなかったのだが、どうにもその逸話から養子とはいえ我が子につけるのは如何なものかと考え、こちらの名前に落ち着いている。

 

 子供用サイズのノーマルスーツを着た二人は、同じくノーマルスーツを着用したヘイデスを左右から挟んでいる。あのギフトことヘリオースもどきから出産された二人は、今年で三歳、しかし外見はその倍以上に成長していた。

 ヘイデスと共に暮らしているが、ヘリオースもどきの傍に居たがる為、多くの時間をヘリオースもどきを移送したプロメテウスプロジェクト試験基地で過ごしている。

 公式の基地祭などならばともかく、試験段階の軍事兵器が動く場に子供を連れてくるのはモラルを疑われるが、二人のたっての頼みをヘイデスは断れず、シュメシとヘマー兄妹はよくテストの光景を目にしている。

 

「二人とも、初めての宇宙だが怖かったりはしないかい?」

 

 二人を引き取ってから三年、多忙なヘイデスはそう構ってあげられる時間もなく、いい父親ではないと自嘲している。

 三割ほど混じっている前世の一般人の部分は、主人公疑惑のある二人にもすっかりと情が移っており、ちょっとした親バカになっていた。

 まだ二人が赤ん坊のころには、この世界におけるウルトラマン相当の人形を見せて、ユの字かどうか、そしてスーパーヒーロー作戦やαシリーズの参戦を確かめようともしたが、今となっては笑い話だ。

 

 コロンブスのブリッジでふわふわと浮いているシュメシとヘマーは、感情表現の乏しい子達ではあったが、まるっきり無感情というわけでもなくプロジェクトのマスコットのように可愛がられている。

 シュメシとヘマーはぎこちない感じの微笑みを浮かべて、義理の父を振り返った。

 

「うん、大丈夫、だよ、お父さん。僕達は怖くない、よ」

 

 シュメシが父を安心させるようにそう告げれば、ヘマーは

 

「ふわふわしていて、おもしろい、ね。雲の上で泳いだら、こう、なのかな?」

 

 ぱた、ぱた、とゆっくりとした動作で手を羽搏かせて、宇宙の無重力を楽しんでいる。その様子にヘイデスは大仰なくらいに安堵し、その様子を見ていた所長もまたにっこりと笑みを浮かべる。

 邪魔にならないようプラチナブロンドをまとめた所長は、柔らかな笑みを浮かべたまま双子に話しかけた。

 

「シュメシ、ヘマー、そろそろテストが始まりますから、席に着きなさいな。二人の好きなゼファーも動き出しますわよ」

 

 ゼファーの名前が出ると、二人はにかっと誰の目にも明らかな笑顔になる。この二人を見て天使の笑顔と称し、父性と母性を刺激されたプロジェクトスタッフはこれまで数知れない。

 

「うん、ゼファーの、動くところ、みたいな。ね、僕?」

 

「うん。見たい、ね。ゼファーも久しぶりの宇宙で、きっと楽しいと思ってるよ。ね、私」

 

 ね、とお互いの顔を見つめて笑いあう二人を見て、ゼファー専属のオペレーターであるエリシアはつられて笑顔になりながら二人に話しかけた。

 

「二人は本当にゼファーが好きなのね」

 

「うん。あのね、ゼファーは僕達と似ているから……」

 

「うん。違うところもあるけど、でも、とっても似ているの」

 

 エリシアは彼らが特殊な体質の出自だと聞かされていたから、万が一、シュメシらを傷つけないようにと深くは追及しなかった。

 二人が成長の早い特殊な体質であるというのは周知されているが、ヘリオース擬きから取り上げられたという点については、プロジェクトスタッフにも内密にされている。

 

「あ、お父さん、お母さん、動いた、よ。亡霊さんに乗って、黒いお星様がピカピカ」

 

「うん、動いた、ね。お星様達が亀さん達と遊び始めたよ。狼さんに雷さんも、ね。白いのと赤いのは、どっちが勝つかな、私」

 

「分かんないなあ。でもどっちもすごいね、僕」

 

 

 テスト宙域に黒をベースに紫の塗装が胴体や関節の一部に施されたMSが三機、衝突を心配しそうになる近距離で縦一列のフォーメーションを組み、高速で飛翔している。

 後方へと伸びたウサギの耳めいた部位とツインアイをバイザーで覆った頭部、大きく広がるスカートアーマーに太い足を持ったソレはヘパイストスラボ謹製、ムーバブル・フレーム型MS――ゲシュペンスト。

 

 ヘイデスが、エイクロスが出来上がるのなら分かるけど、なんでゲシュペンスト? と大いに首を捻ったのは、彼しか知らない。

 これまでギリシャ関連の命名だったのに、この機体に関してはドイツ語から採用されたのには、所長を始めとした多くの人間に訝しまれたが、バーグラーの時同様、原作への敬意としてヘイデスは譲らなかった。

 

「マッシュ、オルテガ、ジェットストリームアタックを仕掛けるぞ!」

 

 “黒い三連星”の異名で知られるジオンのエース、ガイア、オルテガ、マッシュらの必殺の連携攻撃を前に、胸部に亀のペイントがされたノーマルカラーのゲシュペンストと二機の僚機が同じようなフォーメーションで迎え撃つ。

 

「そっちがそうなら、こっちはトリプラーってなあ! ジェス、ミーナ、対応して見せろよ!」

 

 気炎を吐くのはヤザンだ。お互いのゲシュペンストには、模擬戦仕様ではあるが、ニュートロンビームライフルと、原作には無かったシールドが持たされている。

 

「了解! この人達とやり合うのはオデッサの時以来か!」

 

「あっちは三機、こっちも三機! 連携でも負けないんだから」

 

 一方でジェスとミーナの搭乗するゲシュペンストはライフルもシールドもなく、徒手空拳。

 これにはヤザン達のゲシュペンストが言ってしまえばリアル系仕様であるのに対して、ジェスとミーナは【MAを素手で解体できる】をコンセプトに開発されたスーパー系仕様であるからだ。

 当然、MAを相手に懐まで接近する為に、馬鹿げた推力と冗談じみた馬力が持たされ、メガ粒子砲の直撃に耐えられるシールド要らずの重装甲化が施されている。

 その代わり、これは大量生産するのはちょっと無理だな、とヘイデスと所長も認める高コスト化している。人間が重機を解体するようなものだから、ま、仕方ない。

 

「小僧に小娘め、腕を上げたか!」

 

 ガイアはこちらのフォーメーションに同じくフォーメーションで対抗してくるミーナ達に、驚きと奇妙な喜びを覚えていた。後者の感情についてはここが戦場ではなく、今や同じプロジェクトの同僚というのも大きいだろう。

 

「俺達が連邦の戦術教本に載っているってのも大きいだろうぜ」

 

 これは右目に傷が走り、隻眼というハンディキャップを持ちながら、エースとして君臨し続けるマッシュの発言だ。少し照れ臭そうでもあり、誇らしげでもある。

 

「はははは、今じゃジオンだけじゃなく連邦の教本にも俺達が載るとはな! ジェットストリームアタックもバリエーションを増やさんといかんな、ガイア、マッシュよ」

 

 黒い三連星最後の一人オルテガも自分達の名が知れている事に喜んで大笑いだ。ただそれを甘んじて見逃すジェスとミーナではない。二人のゲシュペンストが肩を並べて、胸部の装甲がスライドする。

 スーパー系仕様――通称ゲシュペンストS型固有の武器、ブラスターキャノンの砲口が露となる。

 

「二人合わせて!」

 

「ダブルブラスターキャノン!」

 

 それこそかのビグザムを思わせる強大なビームの奔流が、黒い三連星へと放たれた。ただし、例によってコックピット内に映し出されるCG合成だが。

 これを三方向へと散って避けるガイア達に、ヤザンがスプリットミサイルとニュートロンビームを乱射しながら襲い掛かる。

 

「フォーメーションを組み直す隙は与えん!」

 

「連邦のパイロットもやるな! だがな、真に宇宙の戦士たるはジオンのパイロットだと知れえ!」

 

 野獣の如く迫るヤザンを、ガイアが戦士の咆哮と共に迎え撃つ!

 

 

 黒い三連星対ヤザン・ジェス・ミーナの六名がテストを行っているのとは反対側の宙域では、こちらもまたバーニィ、テレンスに続き合流したジオン共和国の名だたるエース達と連邦のエース達とが、観客の少なさが勿体なく感じられる人類トップクラスのMS戦を実演中だ。

 胴を蒼く塗ったゲシュペンストにはユウ・カジマ、ガルバルディβと同じ塗装のゲシュペンストにはライラ・ミラ・ライラ、アッシマーと同じ塗装のゲシュペンストにはブラン・ブルターク。

 

 対するは青一色に塗装されたゲシュペンストを駆る“青い巨星”ランバ・ラル、白いゲシュペンストには“白狼”シン・マツナガ、そして真紅に塗られたゲシュペンストには“真紅の稲妻”ジョニー・ライデン。

 アクシズや潜伏を選んだジオンパイロットも少なくない中、黒い三連星と上記の三人はジオン共和国に籍を置いていた。

 

「ちい、流石に異名持ちのパイロットは動きがダンチだね」

 

 ライラはヘルメットのバイザーに浮かび上がる各種情報を一瞬で把握しながら、目まぐるしく位置を変える敵機の捕捉に神経を尖らせる。

 全天周囲モニターとリニアシート、更にヘルメットのバイザーへの情報投影と新しい技術が山盛りのゲシュペンストへの不慣れがあるが、それは相手も同じこと。文句は言えない。

 

「軍人なら宇宙だからといって、スペースノイドに後れを取るのが許されるわけではない!」

 

 ブランは奮起していた。

 彼はスペースノイドへの偏見を持っていたが、それもプロメテウスプロジェクトで数年を過ごせば、アースノイド、スペースノイド、ジオン、非ジオン、オールドタイプにニュータイプ、転生者がごちゃ混ぜの職場であったから、自然と偏見も吹き飛ぶ。

 それでもこのような発言が出たのは、やはり相手がジオンのパイロットであるからだろう。地球連邦の仮想敵の最たるものがジオンなのは事実だ。

 

「……!」

 

 一人、ユウは無言のまま蒼いゲシュペンストで宇宙を駆ける。彼の目に宇宙が蒼く見えていたのか、そうではないのか。

 相手の技量に闘志を燃やしていたのはライラ達ばかりではない。

 ガルマのジオン共和国に籍を置いてから、こうまで手強い相手と戦い、最新鋭のMSを駆る機会に恵まれたラルやマツナガ、ライデンは年甲斐もなく浮足立っていた。

 

「いい加減、ガルバルディαやゲルググも旧式だからな。こいつを輸出してもらえるんなら、ジオンもしばらくは安泰だ」

 

 上機嫌な様子を隠さないのはライデンだ。地球連邦がジム・カスタムやジムキャノンⅡ、ジム改と新型機を順調に配備して行っているのに対し、ジオンは戦争中に計画された機体や開発された機体を騙し騙し使っているのが実情だ。

 そこにこのゲシュペンストが回ってくれば、大いなる戦力増強となる。ただ、亡霊を意味するゲシュペンストという名前は、縁起が悪いけれども。

 

「ライデン少佐の言うことは分かるが、今はテスト中だ。私語は慎まれた方がよいのではないかな」

 

「はは! 相変わらず真面目だな、白狼は。だが動きで分かるぜ。あんたもウキウキとしてんだろ?」

 

「ふ、操縦に感情が出るとは、私もまだ青いな」

 

 他愛のない会話の間にも、エース達はこちらに向かって迫るスプリットミサイルの弾幕を回避し、反撃として正確な狙いでニュートロンビームライフルを連射する。

 エースがゲシュペンストの性能を引き出し、宝石よりも貴重なデータが洪水のような勢いで蓄積されてゆく。

 射撃戦が繰り広げられる中、一機が飛び出した。空の青、海の青を思わせるゲシュペンスト――ラルだ。左腕に三本ストックされているプラズマカッターの一本を抜き、プラズマの刃を形成する。

 

「そろそろ格闘戦のデータもとっておかねばな! 私の相手はお前か、カジマ少佐!」

 

「……ッ!」

 

 まるで予め打ち合わせていたかのように、ユウのゲシュペンストも飛び出して、青と蒼のゲシュペンストがプラズマカッターで斬り結ぶ。

 MSとは――ゲシュペンストはパーソナルトルーパーと呼ぶべきだが――おおよそ人体を模した動きをどこまで再現できるかが、性能の指標の一つに挙げられる。

 

 人体の骨格に相当するムーバブル・フレームによって、ゲシュペンストの動きの細やかさはより人体に近くなった。だが、同時にMSだからこそ人間には出来ない動きをしてこそ、でもある。

 とてつもない速さで敵味方の入り乱れる宇宙で、一瞬でさえ長く感じられる刹那にミスを許さぬ操縦を行う難易度は、筆舌に尽くしがたい。

 しかし、それが出来るからこそ彼らはエースなのだ。

 

「機体の性能に頼っているのではない。引き出して戦っている。恐ろしいのはあの坊やばかりではないな、カジマ少佐!」

 

「ッ!!」

 

 反発しあうプラズマを火花の如く散らしながら、異なるブルーを持つゲシュペンストが時代錯誤な剣戟を重ねていった。

 

 

 そして第三の宙域では、ゼファーが搭載されたトールギスが、アーウィンとグレースのリアル系仕様のゲシュペンストR型を伴い、プロメテウスプロジェクトのトップ達のテストの様子を監督していた。

 これはトールギスを解析し、新造したパーツから組み上げた新造機であり、本来の一号機はいずれ相応しいパイロットの手に渡る日を待って、地上で眠りに就いている。

 

 ゼファートールギスは、ゼファーガンダム、ゼファーアレックスのデータから、腰の両サイドにビームガンを二つ追加し、前面スカートアーマーの増設、また頭部を稼働できるように付け根から挿げ替えている。

 元々のトールギスは、あのガンダムに似たフェイスガードを外すと、四角いカメラアイを備えた頭部が露となるデザインで、首の可動域のないリーオー顔なのだ。

 赤い鶏冠めいたパーツは外されて、代わりにガンダムと同じ頭頂部のパーツがあり、カメラを内蔵したV字型アンテナが額に設置され、よりガンダムに近い顔となっている。

 頭部の挿げ替えと前面スカートアーマーの追加は、アムロ専用トールギス、更にもう一機の現在テスト中のトールギスとも共通する。

 

 ゼファーとグレース達が監督を行っているのは、合流したジオンパイロットの一人とアムロが模擬戦を行うとかなりの頻度でヒートアップして、止める者がいないと本人か機体に限界が来るまで無茶をしてしまう為だ。

 その分、有用なデータは取れるのだが、最近は二人の関係が幾分か丸くなった影響もあり、模擬戦中のやり取りがどんどん聞くに堪えない大人げないものになってきている。

 その為、二人の動きに追従できるゼファーと同じく高レベルのニュータイプであるアーウィンとグレースが駆り出されているのだ。

 

「今日でえっとぉ、通算百回目ですねえ~。戦績はどうでしたっけ~?」

 

「五十勝四十九敗でアムロ中尉が一つ、勝ち星をリードしている。あちらは合流してからまだ数カ月だが、アムロ中尉を超えるべく鬼気迫る勢いで腕を磨いている」

 

「それじゃあ、なおさら今日はヒートアップしそうですね~。ゼファー君、ゼファー君はあんな大人になっては駄目ですよ~。あれ、ゼファー君でよかったんでしたっけ? それともゼファーちゃん~?」

 

「……どちらでも間違いではあるまい。それにあの二人がパイロットとして尊敬に値するのは間違いないが、人間的には長所も短所もあるのも確かだ。ゼファーは、短所は反面教師にして、長所は素直に見習えばいい」

 

 恋人同士の気の抜けるやり取りの中も、ゼファーは機体のセンサーをフル稼働して、隕石やMS、戦艦の残骸といったデブリの中を飛翔する白と赤の輝きを映していた。

 まるで氷上のスケーターのように滑らかな曲線と機動兵器が行っているとは信じがたい鋭角の入り混じる動きは、それを行っている者達が“トップクラス”のパイロットなのではなく、“トップ”パイロットである証明だった。

 

 徹頭徹尾アムロ専用に調整が施された専用のトールギスは、大部分はゼファー機と共通ながらも額からはユニコーンを思わせる黄色い一本角が伸び、左胸には赤いユニコーンと「A」を組み合わせたエンブレム、腰にはサブウェポンとしてビームライフルと特殊な格闘武器がマウントされている。

 アムロ専用トールギス――トールギス・シューティングスター。

 両肩のスーパーバーニアと、脚部やリアアーマーに増設されたスラスターから噴射炎を噴きながら、一瞬の停滞もない機動で宇宙の漆黒に光の軌跡を描く。

 

「そこ!」

 

 シューティングスターのドーバーガンが盛大にビームを放ち、正面にロックオンしていた赤いトールギスに迫る。

 赤いトールギスはひらりと軽やかにその一撃を回避し、更にはデブリを避けながら同じく右肩に接続されたドーバーガンをシューティングスターへと撃ち返す。

 

「ちぃ、流石に反応が速い。また腕を上げたか、シャア!」

 

 ジオン共和国から派遣されてきたパイロット最後の一人、“赤い彗星”シャア・アズナブルは、専用に開発されたトールギス・コメットのコックピットに、専用パイロットスーツを着込み、座していた。

 シャアは、数カ月前に直に再会して以来の付き合いとなったライバルへ更に反撃を叩き込む。

 

「宇宙に出て鋭さを増したのがお前だけだと思うな、アムロ!」

 

 シャアのコメットに装備されたドーバーガンには二つの銃身があり、それぞれビームと実体弾を撃ち分けられる仕様となっており、名称はドーバーランチャーとされている。

 まずはシューティングスターの軌道を読み切った上で実弾が射出され、それをシャアがトリガーを引く前に察知したアムロが機体を急旋回して回避する。

 だがそれもシャアは織り込み済みだ。アムロの回避した先へと、今度はビームが放たれる。

 

「二段構えか、小賢しい」

 

 咄嗟に構えたシールドが胴体への直撃コースにあったビームを受け止めて、シールドの曲線に沿ってビームが分散し、後方へと流れてゆく。

 機体に走る振動に揺れながらも、アムロは【直感】に従ってドーバーガンを手放して、右手で右腰にマウントしている特殊武器を取る。

 

「違うな、アムロ、三段構えだ!」

 

 ビームを受け止め切ったシューティングスターへ、シールド裏のビームサーベルを抜き放ったコメットが迫る。実弾を避ければビームが、ビームを避ければビームサーベルが襲い掛かる三段攻撃!

 どの攻撃でも敵機を撃墜できるシャアの技量は凄まじいが、それをすべて引き出すアムロもまたニュータイプどうこう以前に隔絶した技量であった。

 

「ふ、それならこれは避けられるか!」

 

「なに!?」

 

 赤い彗星が白い流星を斬り捨てるまでの刹那に、流星から棘の生えた鉄球という原始的極まりない武器が投げつけられた。ブースター搭載の鎖付き棘鉄球――ハイパーハンマーである。

 ビームも弾く新素材で作られたハイパーハンマーは、その存在を知っていたシャアでさえ実物を前に度肝を抜かれたが、ビームサーベルが弾かれるのを理解して咄嗟に回避行動へ切り替えたのは流石の判断と反応の速さだ。

 そこへシューティングスターの頭部にだけ装備された、外付けのビームバルカンポッドが発射され、小さなビームの弾丸がコメットに着弾するも、すぐさま左腕のシールドがそれを遮る。

 

「牽制とはいえこの程度で、私は止められん」

 

「分かっているさ、だから次で仕留める!」

 

 奇しくもこの時、両方の機体の背中にマウントされていた特殊武装が同時に起動する。

 

「行け、リッパービット!」

 

 それは無線操作による回転する刃だった。シューティングスターから四基の回転刃が放たれれば、コメットもまた同じ武装を同じ数だけ撃ち返す。

 

「サイコミュの扱いならば、私に一日の長があるぞ!」

 

 ネティクス、そしてジオン系技術者から得られたノウハウで形となった、回転する刃状のビットだ。T-LINKリッパーあるいはスラッシュ・リッパーのビット版と言えるだろう。

 ビットの操作ばかりでなく機体の操縦も同様に行う二人の動きは、時間を経るごとに鈍くなるどころかますます鋭さを増して行き、かつてZシリーズの重要キャラクターガイオウが、アムロを銀河有数の戦士と評したのが間違いではなく、そのライバルたるシャアもまた同等の強者である事を証明するものだった。

 

 二人の戦いは、テスト終了が告げられてコロンブスに帰還した後も続き、コックピットから下りた二人がやいのやいのと周囲の目も憚らず口論した挙句、所長に怒鳴りつけられるまで続くのだった。それでも収まらない時には所長の鉄拳が火を噴く。

 このシャア、一度はアクシズへ赴いた後に調査目的の名目で一部の艦隊と人員と共にジオン共和国へ帰還し、ガルマと旧交を温めた上でこのプロジェクトに参加しているのだが、何があってどう過ごしたものか。今のシャアは良くも悪くも素をさらけ出していた。

 

 

 宇宙に上がったプロメテウスプロジェクトの愉快な皆の拠点となったコロニー“ヒッポクレーネー”内部には、当然ながらプルート財閥のオフィスがある。というか、内部の建物や人員全てが財閥の関係者だ。ほとんど財閥の私物と化したコロニーなのである。

 テストを終えたパイロットやメカニック、クルー達がコロニー内部の観光施設で休息を満喫している中、ヘイデスは港湾部に隣接するヘパイストスラボ、ヒッポクレーネー支所で、今後の予定について所長と話していた。

 

「今度は月に行かれるのですか?」

 

「うん。大規模なスカウトをしに行くんだ。一応、護衛として何人かは連れて行くけれど、残りのメンバーでテストは続けていてくれるかい? 所長も今は大事な時期なんだから、ここで待っていてね」

 

「あら、もう宇宙に上がっておりますのよ? 大事な時期というには遅いのでは?」

 

 所長は藍色のマタニティドレスを押し上げるふっくらとしたお腹を撫でながら、からかうように夫へ告げた。新代歴180年、終戦直後に所長からヘイデスへプロポーズをして早三年。所長は実子としては二人目となる新たな命を宿していた。

 

「だからせめてここで待っていておくれよ。シュメシとヘマーの傍には、僕か君がいないと不安だしね」

 

「ふうん? 私とシュメシ達を置いて行くとなると、それなりに危険なスカウト相手なので?」

 

「軍人の中でもかなり荒っぽいことを生業にしている人達だね。フォン・ブラウンの良いレストランを予約しておいたから、そうそう乱暴は出来ないさ」

 

「まったく、あまり危険な真似はしないでくださいな。貴方が倒れたら財閥はもちろん、私と子供たちの将来も真っ暗闇に落ちてしまうのですから」

 

「うん、十分に気を付けるよ。マハルを追われた軍人さん達を、なんとかスカウトして見せるとも」

 

 この時期、ヘイデスはデラーズ・フリートによる星の屑作戦が発動しないと判断している。というのも連邦軍のジョン・コーウェン中将によるガンダム開発計画がまだ始動していないのだ。

 こうなると星の屑の要であるガンダム試作二号機がそもそも存在していないのだから、星の屑が起きようはずもない。それに伴い、ティターンズの発足も遅れるかもしれないが……

 

(これはあれかな。グリプス戦役中に星の屑が起きるパターンか? もしそうならαシリーズの流れを汲んでいるな。このスパロボ時空で観艦式の戦力と人員が失われるのは、あまりに惜しい。この世界で実戦を知っている軍人は、宝石よりも貴重だ。

 星の屑を防ぐ為にもシーマ艦隊を引き入れておくに越したことはない。俺がやらなくてもグリーン・ワイアットが取引を済ませるだろうが、アルビオン隊が大ポカをやらかしてシーマとの取引をオジャンにする流れは阻止しなければ!

 これからどんだけ宇宙から厄介な敵が来ると思ってんだ、コンチクショウ!)

 

<続>

 

〇新代歴180年 所長、ヘイデスへプロポーズ。ヘイデス、これを快諾して両者は結婚。

〇新代歴180年 ヘイデス、シュメシとヘマーを養子として引き取る。ウルトラマン擬き

の人形を見せるも、これといってとくに反応なし。ユーゼスではない?

〇新代歴181年 ヘイデス・所長夫妻に第一子誕生

〇新代歴183年 ヘイデス・所長夫妻に第二子誕生(予定)

 

■ムーバブル・フレーム型MSゲシュペンストR型・S型が開発されました。

■アムロ専用トールギス・シューティングスターが開発されました。

■シャア専用トールギス・コメットが開発されました。

■ゼファートールギスが開発されました。

■ワルハマー・T・カインズが入社しました。

■エリシア=ストックウェルが入社しました。

■テレンス・リッツマンが出向してきました。

■ガイアが出向してきました。

■オルテガが出向してきました。

■マッシュが出向してきました。

■ランバ・ラルが出向してきました。

■ジョニー・ライデンが出向してきました。

■シン・マツナガが出向してきました。

■シャア・アズナブルが出向してきました。

 

☆頑張ってシーマ艦隊をスカウトしよう!

 




すみません、本編開始直前まで行きませんでした。何とか次回で終わらせます。
所長とヘイデスですが、最初は最終回まで内緒にしておくつもりだったのですが、まあいいや! と考え直して今回の暴露となりました。なお所長の名前は未公開です。最後まで所長で通す予定です。
次回はトレーズ閣下との遭遇、スパロボ系科学者達との懇親会、30バンチへの毒ガス事件などを取りそろえております。

追記
ジェスのアムロへのさん付けを修正
トールギス・メテオ→トールギス・コメット


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第七話 アンソロジーは勘弁してほしい

いつもご感想と誤字報告ありがとうございます。
一話ごとにここまで感想を頂戴するのは本作が初めてで、大変嬉しく同時に緊張してもいます。
返信こそしておりませんが、一つ一つ、喜びをかみしめながら読ませていただいております。これからもよろしくお願いします。

そして肝心の内容ですが、トレーズとの邂逅までしか進みませんでした。ごめんなさい。
キャラクター像や言葉遣いを掴みかねている人物も少なくないので、違和感ありましたらどしどしご意見ください。



■新代歴183年

 

 プルート財閥の保有するコロニー“ヒッポクレーネー”内部にて、今ではすっかり旧式化したアクシオ数機が、見慣れない三段のコンテナを背負って様々な地形を闊歩している。

 なんと贅沢なことにアクシオのパイロット達は、地球連邦とジオン共和国の誇る地球人類トップクラスのエース達だ。

 戦歴も知名度も実力も何もかもを兼ね備えた彼らが、今になってなぜアクシオに搭乗しているかと言えば、背中の新装備のテストの為である。

 

 コロニー内部の試験場を監督しているのは、瀟洒なレースが裾にあしらわれた赤いマタニティドレスに白衣姿の所長と、ゼファーのオペレーターであるエリシアとカインズ博士他、プロメテウスプロジェクトのスタッフ達だ。

 所長やエリシア達が情報収集用の専用トレーラー内部でチェックしているのに対し、パイロット組は日除けのテントの下で、思い思いに用意された椅子に腰かけるなり、モニターを眺めるなりしている。

 

 アクシオの搭乗待ちをしているパイロットの中にはアムロやシャア、ラルなどの姿がある。シャアは一年戦争時代のマスクを外し、額の傷が露となる大きめのサングラス姿だ。

 全員、プロメテウスプロジェクト関係者であることを示すグレーのジャケットを、出向元の軍服の上に重ねている。

 

「あれが例のホスピタルパックか。ザク以前の機体に乗っていた頃を思い出しますな、シャア大佐」

 

 日除けのテントの下でラルが傍らにクラウレ・ハモンを伴い、口ひげを弄りながら戦闘以外の行動を取っているアクシオを見て感慨深げに呟けば、コーヒーを堪能していたシャアが同じように懐かし気に答える。

 

「ああ。まだまだ洗練されていない、重機だと言い張れば押し通せるような代物だった。それを思えば、現在のMSの進歩には驚かされるばかりだ、ラル中佐」

 

「モビルワーカーを乗り回していた頃の話ですが、もうずいぶんと昔のようだ」

 

「人型ロボットの進歩というのは早いものだ。ところでラル中佐、コーヒーはどうかな? プルート財閥傘下のデメテルフード直送のスペースマンデリンだが、なかなか味わい深い」

 

 交代待ちのパイロット達が口にしているのは、デメテルフードで開発された軍用の非常食の一種だ。

 基本的に狭いMSのコックピットに入れられるようコンパクトにまとめられた一式には、一本で一万キロカロリーが摂取できるシリアルバーや本格的な味わいを楽しめるコーヒーや紅茶といった嗜好品飲料入りのチューブ、精神安定剤や睡眠導入剤入りのキャンディーやらと豊富な品が取りそろえられている。

 それらをターゲット層の一角であるパイロット達に試供品として、こうして提供しているわけだ。

 

「それならギャラクシーマウンテンを頂いておりますよ。非常食でこの味わいとは、食料生産用の農業コロニーを複数所有しているプルート財閥ならではの贅沢です。酒も軍のアルコールが入っているだけの合成品とは、根本的に別物ときている」

 

「ははは、衣食住に加えて嗜好品も随分と厚遇してくれているからな。アナハイムやロームフェラと並ぶ地球圏三大企業というのも、あながち間違いではない」

 

 組み立て椅子に腰かけたアムロは、ジオン二人組の昔話に耳を傾けながら、そういう時代もあったのかと、レモネードに口を付けながら聞き耳を立てていた。

 彼が最初に搭乗したのが予算度外視の超高性能MSガンダムだったのを考えれば、重機とそう変わらないMSというのはちょっと想像がつかない。いつだったか、戦後に見る機会のあったザニーという機体がアムロの脳裏に浮かんでいた。

 

「それにしても被災地への救援手段としてMSを使い、しかもそれ専用の装備をあそこまで本格的に開発するとは、民間企業ならではの目の付け所というべきかな、所長」

 

 アムロがトレーラーの開きっぱなしの側面のドアの向こうへ声をかければ、所長はモニターから目を離さぬまま声を大きくして答える。

 現在身重の体だが、この女傑はとにかくパワフルだ。お腹の子供に生命力を分け与えているだとか、そういう印象はない。新たな命を宿して、それをさらに倍増化させて自分と子供の間で循環しているようなエネルギーの塊である。

 

「例によってウチの総帥の発案ですわよ。今、ガイア少佐達にテストしてもらっているホスピタルパックは、MSの走破力と機動性を活かして迅速に現地へ到着し、到着後はMSを動力として三棟の病院を即興で用意する医療支援用ですわね。

 向こうでライラ中尉やユウ少佐に試して貰っているのは、被災地への食糧支援を目的として、厨房と食糧備蓄施設をセットにしたフードパック。

 それにジェスとミーナがテストしているのが、被災した方々の衛生状態を良好に保つ為の浴場設備を搭載したバスルームパックと洗浄設備のランドリーパック」

 

 これは元を辿れば『ガンダムSEED DESTINY ASTRAY』などに出演するザクウォーリアの換装システムウィザードのうちの一つ、ホスピタルウィザードがアイディアの大元となっている。

 ヘイデスは宇宙世紀シリーズのMSVはそう詳しくはないが、こういった被災地や戦地の環境改善や支援を目的としたMSを見た覚えがなかったので、作れば需要があるのではないかという安易な発想と、誰かの役に立つだろうという期待を込めて開発を決定した。

 

 一年戦争中に発表したアクシオは性能がジムと大差がない事もあり、予想通り連邦軍に少数が研究目的などで購入されたきりで、それ以降の大口注文はない。

 現在の主な購入先は、連邦政府に加盟してはいるが、駐留軍に最新のMSの配備が見送られている弱小国や自治を認められている地域で、小口の注文がちらほらといった具合だ。

 いずれにせよ戦力としては心もとないアクシオの新たなる活躍の場として、戦場以外に目を向けた『パックシステム』が導入され、テスト中というわけだ。

 

「それでヤザン中尉が試しているのが、アルゴスの後継機というわけか」

 

 アムロが、起伏の激しい荒れ地の試験場を走り、飛び回り、そしてターゲットに模擬弾を撃ちこんでいる四足のMSを見ながら告げた。

 現在、アルゴスはその走破性能と速度から東アジア、中東やアフリカなどで需要があり、なかなかの売り上げを記録している。

 アナハイムやロームフェラは新型MSの開発に力を入れているが、この四足MSに関しては勝手が分からないのか開発に二の足を踏んでいる。

 

「ええ、今のところ、ウチの独壇場です。正直、MSというには抵抗のある外見ですし、かといってMAというのもどうかという事で、分かりやすくモビルビースト(MB)とカテゴライズしています。モビルアニマルですといささか可愛らしすぎますから」

 

「MBか。アルゴスに比べると随分とボリュームが増した印象だな。それに造作も本物の動物に似てきている。ライオンがモチーフかな?」

 

 なお、実物を見たヘイデスはゾイドコアのないゾイドだな、と感想を抱いている。

 

「関節への負荷を考えると無限軌道ありきなのですが、そうすると近接戦での戦闘能力が今一つ伸びないのが課題ですわ。無限軌道なしで速度を維持しつつ、格闘戦に耐えられる関節の開発が出来れば、一段か二段、性能を上げられるのですけれどねえ」

 

「ゲシュペンスト、パックシステム、それにMBと子育てか。所長は本当にエネルギッシュな女性だが、無理はしないでくれよ。所長が倒れでもしたら、ヘイデス総帥はこの世の終わりだと言わんばかりに狼狽して、仕事が手につかないだろう」

 

「ほほほ、この程度、ハードワークの『ハ』の字にもなりはしませんわ。この私に疲れたと言わせたいのなら、この三倍は仕事を持ってきていただかないと」

 

「はは、そうか、頼もしい限りだな。僕もこの職場はとても働き甲斐のある場所だから、所長にはいつまでも健やかに働いていて欲しいよ。ヘイデス総帥もまだまだ精力的に働くようだし、プルート財閥の行く末はいっそ恐ろしくさえあるな」

 

 そうしてアムロはヘイデスが向かっている月のある方角へと、最後のレモネードの一口を飲みながら瞳を向けるのだった。

 

 

 その頃、ヘイデスはヒッポクレーネーからテストに不参加の面子に護衛を依頼し、月のフォン・ブラウン市にあるレストランの個室へと足を運んでいた。

 個室の外に漏らしてはならない情報をやり取りする際に、様々な業界の人間が利用する事で有名な創作料理のレストランである。

 個室の中にはオーダーメイドのスーツに身を固めたヘイデスと、アポイントメントを取った女性とその腹心である男性の三名がいる。

 

 女性は元ジオン突撃機動軍所属のシーマ・ガラハウ中佐。今は黒みがかった緑の髪をひっつめにし、スーツに身を包んでいる。きつい印象を受ける目元が目を引く美女だが、その経歴からか危険な雰囲気を漂わせている。

 大柄な男はシーマの副官を務めるデトローフ・コッセル。いかにも荒くれ者然とした外見で、無理に体を押し込めたスーツが悲鳴を挙げていそうだ。

 

 一年戦争序盤における毒ガスを用いたコロニー住人の殺害――コロニー潰しを現場で行った者の一部が、このシーマ達だった。それだけでなく一年戦争中の破壊工作や虐殺等の汚れ仕事を担っていた為、捕まえられればB級戦犯として処断される立場にある。

 本来の艦隊司令であるアサクラ大佐にそれらの所業の全責任を押し付けられたシーマらは、今日に至るまでアクシズへの逃亡も許されず、連邦軍へ投降しても戦犯として処される為、宇宙海賊に身をやつして生きてきたという事情持ちだ。

 

 ヘイデスもアレックスのデータ取りが終わった後もプロメテウスプロジェクトに参加しているクリスチーナやバーニィ、アーウィンやグレースを護衛に連れてきているが、彼らは隣接している別室で待機している。

 海兵隊として一年戦争を戦い抜いたシーマとコッセルなら、隣室から助けが来るよりも早くヘイデスを始末できるが、そこはヘイデスなりの害意の無さの証明として一人で対峙する事を選んだ。もちろん、内心は震える子犬よろしくビビりまくっている。

 

「今や地球圏で知らない者は居ない大財閥の総帥が、あたしらのような荒くれ者になんの御用で?」

 

 デザートまできっちりと平らげ、食後のコーヒーを口にしながら、シーマは険の強い瞳に警戒と値踏みする色を浮かべて対面のヘイデスを見やる。まだ睨むという程眼光が強くないのは、ヘイデスにとって幸いだった。

 

「そこまで評価してもらえるとは嬉しいね。それに僕なんかの名前も知っていてくれるとは」

 

「あまり冗談はお上手でないようだ。一年戦争以前から多分野で業績を上げ、一年戦争中から戦後にかけては、アナハイムと並んで進出していない分野はないと言っても過言ではない上に、その全てで成果を上げている経済界の風雲児の名前は、あたしらのような日陰で生きている者だからこそ知っておかなきゃねえ?」

 

「うん、恥ずかしながら欲張って色々と手を広げているけれど、幸いどれも上手く行っている。戦争によって荒廃したサイドや地球各地の復興事業も、地球環境改善の為の環境プラントの増設も、ついでにアイドル事業も。

 けれど今日、貴女達とアポイントメントを取ったのは、もちろん僕の自慢をする為じゃない。元ジオン突撃機動軍所属の海兵隊、通称シーマ艦隊をスカウトしたいと思っている。その点については、既にお伝えしてあるはずだ。ガラハウ中佐」

 

「あたしらの航路を割り出して、食料、衣類、医薬品、推進剤を満載した無人の輸送船を放置して、専用の連絡端末と通信コードだけ艦橋に残しておくなんて真似をされたら、多少は興味を惹かれるってもんさ。本物の金持ちはやることが違うね」

 

「それ位、インパクトのある真似をしなければガラハウ中佐とはコンタクトが取れないと判断したまでさ。ガラハウ中佐、僕は貴女達を非常に高く評価している。ジオン共和国に帰順していない旧公国の勢力の中で、シーマ艦隊は宇宙の勢力の中では五指に入る大勢力だ。

 一年戦争を戦い抜いた生え抜きの海兵隊であるし、数十を数えるMSを保持し、ザンジバルを含む艦艇もまた複数在籍している。

 それにガラハウ中佐は真っ当な補給の期待できない環境で今日に至るまで艦隊を維持し、隊員をまとめる人望と指揮能力を持ち、更には極めて優秀なMSパイロットだ。

 軍事産業に手を出している僕が、是が非でもとスカウトするのは当然の話だよ」

 

 シーマ艦隊の陣容はザンジバル改級一隻、後期型のムサイ級七隻、パプア級輸送艦一隻、ゲルググM(マリーネ)三十機以上の他、ザクⅠなどのMSも含むという大所帯である。

 そしてパイロットはもちろん、艦隊の船乗り達も全員が実戦経験豊富なベテランぞろいと来ている。本来ならジオン残党やジオン共和国も、喉から手が出る程欲しい人材の集団だ。

 だが現在、ジオン残党の最大勢力であるアクシズにさえ、シーマ艦隊が合流していない――出来ない理由を、シーマ達自身が他の誰よりも理解している。

 

「コロニーに毒ガスを流したB級戦犯を相手にかい? スカウトしたっていう事実だけでも、それなりに痛いスキャンダルだろう」

 

「うん、そうかもしれないね。その時にはアナハイムのオサリバン常務も道連れにして、アナハイムの株価が暴落するように仕向けよう。ロームフェラの一人勝ちになったら悔しいから、抱えているスキャンダルをばらまくだけばらまこうかな。はははは」

 

 ヘイデスがかなりの対価を支払ってまでシーマとアポイントメントを取ったのは、シーマが既に原作通りオサリバンとも独自のパイプを築いているのを察知したのも、理由の一つである。

 グリーン・ワイアットとのコンタクトに関しては、出来ればヘイデスが一枚噛んでゴップを始めとしたヘイデスのつながりのあるジャブローの将校経由で取りたい。そうすれば、星の屑成功阻止に向けるアクションが起こしやすくなる。

 そういった思惑を知らぬシーマだが、内密にしているオサリバンとの繋がりを平然と口にするヘイデスに、警戒心を一段、そして敵に回した場合の厄介さを二段ほど上げた。

 

「ふん、大抵、評判ってのは話半分で考えるべきだが、あんたはそうではないらしいね。腹も膨れた、ジャブの打ち合いもした。ならそろそろビジネスの話をしようじゃないか。

 あんたも知っている通り、あたしらには他にもスカウトの目はあるんでね。いい条件の方に付かせてもらうよ」

 

「うん、もちろん。プルート財閥で用意できる限りの条件を整えてきたとも。基本的な労働条件はこちらの書面に纏めてあるから、戻って艦隊の皆さんで確認してもらいたい。

 それ以外の条件については、こちらの人脈と財力の全てを用いて艦隊全員分、一人残らず新しい戸籍を用意しよう。一年戦争の混乱で特に軍関係のデーターベースが失われているから、確認の取れていない軍人に成り代わるケースが多くなるね」

 

 元々シーマ艦隊の面々は、サイド3の30バンチにあるマハルコロニーの出身者で、ジオン公国時代に戸籍登録さえ出来ていなかった者達がほとんどを占めている。

 一年戦争中の汚れ仕事によって被った汚名により、ジオン残党への合流は拒否され、ジオン共和国には帰順できず、故郷のマハルはコロニーサイズの巨大レーザー兵器“ソーラ・レイ”に改造されて帰る事も出来ず、宇宙海賊として生きる以外に道を選べなかったのがシーマ達だ。

 

 時には同じジオン残党を襲って糊口を凌ぐ生活から脱却するには、シーマ達が別人に生まれ変わるのが最も手っ取り早く確実だ。ヘイデスの口にした内容は、まさにシーマ達の急所を突くものである。

 これがそこらの金持ちや将校程度が口にしたならシーマも鼻で笑い飛ばしたろうが、相手がプルート財閥総帥ヘイデス・プルートとなれば話は別だ。

 

 地球圏の富の四分の一、あるいは三分の一を支配する怪物だ。その名の如く、富を統べる王と称する者さえいる。オサリバンよりもよほど大物だ。

 動かせる財力も権力も、こちらの方がはるかに上だし、噂ではゴップを始めとしたジャブローの上級将校達との繋がりも深いという。

 

(目の前にぶら下げられたエサは、さて毒入りかねえ?)

 

 問題は毒入りか、罠かもしれないという点だ。ある程度使い潰したところで後腐れなく始末しようと動いてもおかしくはない。シーマ達はそういう稼業に身をやつし、生きてきている。

 後ろのコッセルは戸籍の話が出てから、しきりにシーマに視線を送っているが、副官の分かりやすい変化にシーマは内心で呆れていた。これであえて演技で浮かれているふりをしているのなら感心するのだが、この場合は本気で浮かれてしまっている。

 いや、正直に言えばシーマもかなり浮かれてしまっている。目の前に提示されたエサに飛びつきたいのを、艦隊を預かる責任感と理性が抑えている。

 

「それから僕の方から約束できるのは、これだな。決して、貴女達に民間人を殺せとは言いません」

 

 その言葉は驚く程シーマの心の奥へと入り込んできた。汚れ仕事に慣れ切った自分達になんとまあ、甘っちょろい事を言うやら。

 口だけだと吐き捨てるのは簡単だが、シーマはもう少しこの甘ちゃんの皮を被った奇人の正体を見てみたい衝動に駆られた。

 

「どうせあたしらにやらせるのは汚れ仕事だろうに、守れない約束を口にするものじゃないよ」

 

「そうだね、少し話は変わるけれど、僕は最初正義の味方をやろうと思っていたんだよ」

 

「はあ?」

 

「まあ、最後まで聞いて。でも僕はロボットに乗って前線で戦うのには向いていなくってね。だから戦うのは別の人達に任せて、僕は正義の味方を助ける側に回ろうとしているわけです。

 僕は正義の味方をスポンサー的な立場から助け、シーマ艦隊の皆さんには正義の味方を影から助ける役割をお願いしたいのさ」

 

「はん、金持ちの酔狂もここまでくりゃ大したもんだが、それに付き合わされるとあっちゃ堪ったもんじゃないよ。第一、このご時世でどこのどいつが正義の味方を名乗れるっていうんだい。名乗るような間抜けもいやしないさね!」

 

 付き合いきれない妄想だとシーマが声を荒げ、眼光鋭く睨んでくるものだから、ヘイデスの一般人部分は震えて縮こまったが、経済界の怪物であるヘイデスはこれを柔和な笑みのままに迎え撃つ。彼の人格の融合は奇跡的な配分と言ってよかった。

 

「はは、まあ、私設のカウンターテロ部隊と思ってください。ガラハウ中佐のような事情が無く、今もジオン共和国に帰順しないジオン公国の方の残党は筋金入りだ。

 ザビ家への忠誠から、あるいは武力によるスペースノイドの自治権獲得を本気で目指している連中ばかり。一年戦争後から今もなお活動しているくらいだもの」

 

「ジオンの残党はジオンの残党に潰させるって? 合理的なやり口だねえ」

 

 気に食わない、と表情に思い切り書いているシーマと、ハラハラとした様子のコッセルを見て、ヘイデスは表面上だけは動揺しないまま答える。

 

「そうとも言えるけれど、問題はこれからだよ。筋金入りのジオン残党を相手に、その鎮圧をお題目に掲げた武闘派組織を設立する動きが、連邦内で活発化している。一年か二年、早ければ今年の内にも本格的に創設されるだろう」

 

 これはティターンズの事だ。

 デラーズフリートの星の屑作戦により、地球にコロニーが落下して、大きな被害を齎したのをきっかけに強権を得て設立されるティターンズだが、星の屑作戦が発生しなくても設立する流れが出来ているのを、ヘイデスは確認して頭を抱えたものだ。

 星の屑が発生していない以上、賛同者を得にくい土壌の筈だが、これまでジオン残党による連邦軍基地への攻撃やテロ活動は地上・宇宙を問わず発生しており、第二のジオンをスペースノイドが生む、というジャミトフ・ハイマンの訴えに全く信憑性がないわけではない。

 

「残党狩りかい」

 

「ええ。連邦のエリートパイロットを集め、潤沢な予算と最新鋭の機体と設備を贅沢に投じて、大々的に立ち上げるようだ。地球至上主義を標榜し、ジオン狩りを題目にして、すぐにスペースノイドの弾圧を始めるよ」

 

「ふん、あたしらも今の家業のままじゃやっていられないって言いたいわけだ」

 

「半分くらいは。ただ、もし僕の提案を受け入れてくださるのなら、取りあえず錨を降ろせる港を用意する。ただ、高い確率でその新組織の行きすぎた行動を止める為に動いてもらう事になるのを、頭に入れておいて欲しい」

 

「正規軍の行動を邪魔するのが正義の味方のやる事かねえ」

 

「強権を笠に着て暴走した時には、それを止める力が必要だと考えているのさ。大義名分があれば、この宇宙に進出した時代であっても人類がどれだけ他者の命を軽視して、残虐な行いを出来るのか。ガラハウ中佐の方が詳しいだろう」

 

「……コロニーを落とすか、毒ガスを使うってか。そんな真似、いくらなんでも」

 

「やらないと言い切れないのが、今の時代だ。中佐達にはいざという時、それを止める側にいてもらいたい」

 

「かもしれないって予測ばかりで、よくもぺらぺらと喋られる」

 

「僕は臆病なものでアレやコレやと色んな可能性を考えては、それに備えているだけだよ。癖というか、そういう生き方をせざるを得ない感じかな。人に聞かれたら笑われるようなことまで、本気で心配して備えているものだから」

 

 そりゃあ古代ミケーネ帝国の遺産を流用した巨大ロボット軍団だとか、そのミケーネの生き残りの軍団や地下に避難していた恐竜が進化し、人類に生存競争を挑んで来るだとか、宇宙の彼方から地球を征服する為に角の生えた異星人や、移民先を求めて翼の生えた異星人がやってくると言えば一笑に付されるのが当たり前だ。

 

「僕の妄想に付き合うだけで別人としての戸籍が得られて、追われる暮らしをしないで済むと思えば安いものでは? 我ながらお得なスカウト案件だと思いますので。どうかな?」

 

「ふん。……艦隊の連中に今の話をしてからさ。断るにしろ受け入れるにしろ、一度は連絡するから、すぐに出られる用意をしておくこった」

 

「ええ。吉報をお待ちしていますよ」

 

 そう言って仮面ではない笑みを浮かべるヘイデスに背を向けて、シーマとコッセルはレストランを後にした。コッセルは会談中、一言も発しなかったが、レストランを出てしばらくしてから敬愛する上官にただこう告げた。

 

「シーマ様の御意志が俺達海兵隊の意志でさあ。やりたいようにやってください」

 

「ふん」

 

 コッセルの言葉にシーマは言葉にもならない返事をしたが、そう満更ではなさそうだった。この会談の後、シーマはヘイデスのスカウトを受け入れ、そして世界ではジャミトフ・ハイマンの提唱した新組織“ティターンズ”が設立される。

 奇しくもそれらは同じく新代歴183年12月のことであった。

 

■新代歴184年

 

 地球・プロメテウスプロジェクト試験基地のメイン格納庫にて、プロジェクトの主要なメンバーが集い、ハンガーに固定されたゲシュペンストを見上げていた。

 薄い桃色の生地に朝顔を散らした浴衣の上に白衣を着て、長いプラチナブロンドは鼈甲の簪で纏めた所長が、自ら設計・開発を担ったゲシュペンストを背に、パイロットやメカニック達、それとヘイデスを前に口を開く。

 

「まずこの正式モデルのゲシュペンストが完成したのは、皆さんの多大なる尽力があればこそ。その点についてはいくら感謝しても足りませんわ。

 皆さんのお陰で有用なデータが集まり、私一人では生まれなかった発想が次々と生まれて、ゲシュペンストをより優れた機体へと押し上げる一助となったのです」

 

 これまでに集めたゲシュペンストR型、S型のデータとパイロット達、メカニック達の意見を踏まえて再設計された、量産を前提とした正式モデルのゲシュペンストのお披露目が、今日の集合の理由だった。

 

「このゲシュペンストP(Product)型ですが、基本的にR型を踏襲した機体となっております。S型のコンセプトを考えれば当然ですわね。

 テストした皆さんが揃って口にした左腕のプラズマカッターは三本もいらない、という意見を反映して、左腕の突起はそのままに接触した敵機にプラズマを叩き込んでダメージを与える、プラズマステークへ変更してあります。

 プラズマカッターは手首の内側にビームガン兼用で内蔵してあります。装備個所の候補は背中や腰のサイドアーマーや太ももの装甲内部と色々ありましたが、試したところ手首の内側が一番早く抜けますから」

 

 プラズマカッターの位置に関しては、パイロット達が口を揃えて、三本も要るのか、左腕に持たせるときに使いにくい等々意見を出してきたので、真っ先に変更が加えられた個所である。

 

「シールドに関しては肘付近に接続用のハードポイントを設けましたので、基本はそこに接続しての運用になりますわ。

 それにシャア大佐やアムロ中尉、アーウィンとグレースのテストしたリッパービットのデータをベースにしたスラッシュ・リッパーをリアアーマーに六基。バックパックにスプリットミサイルを二基、加えてニュートロンビームライフルが基本装備になります。

 我がラボの開発した武装も諸々ありますが、そこはアクシオ同様パイロットの好みに合わせてチョイスしてもらう仕様です。

 核融合炉以外にも機体各所にプラズマバッテリーを内蔵していますし、ムーバブル・フレーム構造と相まって、これまでのMSとは一線を画す出力と運動性を併せ持った新世代機であると自信を持って断言します」

 

 それは所長ばかりでなくプロジェクトメンバー全員が同意するところだ。実際、これまでのMSを第一世代と呼ぶならば、このゲシュペンストはR・S・P型全て第二世代に相当する。

 このゲシュペンストの完成をもって、プロメテウスプロジェクトは一つの節目を迎え、大きな成果を上げたと声を大にして言えるだろう。

 事実、満を持して発表されたゲシュペンストP型は、地球連邦軍やティターンズをはじめ、地球圏内の各勢力に激震を走らせる高性能ぶりを発揮し、各陣営の機動兵器開発競争が激化の一途を辿る一因となるほどだった。

 

 

 ゲシュペンストが発表され、プルート財閥の保有する技術力と軍事力に世界から警戒と関心の目が向けられる中、ヘイデスはまた一歩近づいてくる本格的スパロボ時空の洗礼を前にして、次世代エネルギー並びに特殊技術開発者の交流を題目にした懇親会を開催していた。

 この催しは、世界中というかほとんど日本に集中しているスーパーロボットの博士達を、『本編』が始まる前に顔合わせをさせて、予め交流を持たせておこうというアイディアに端を発する。

 ヘパイストスラボの日本支所を開催場所に、あらゆる費用を財閥が負担する形で博士達を呼び寄せて、各々の研究成果やプルート財閥で進められている地球環境改善の為の技術や、宇宙・地球開発のロボット技術の発表と議論を行うという内容だ。

 

 所長も認める各分野における第一人者にして紛れもない天才達の集いに、所長やカインズ、テレンス達もこぞって参加した発表会は、一応出席したヘイデスには半分も理解できない新機軸の理論や研究成果が発表されて、実に白熱としたものだ。

 学会や普通の科学者達とは折り合いの悪い癖のある人物も少なくないが、今回集められた人々は誰もが良識を持ち、自分達の技術による人類の発展と世界平和への貢献に対する熱意も本物で、お互いにとって実に素晴らしい友人と巡り合う機会にもなっていた。

 

「いやあ、皆さん、止めなかったらいつまでも喋っていそうだねえ……」

 

 発表会が終わり、懇親会が開かれている会場の片隅で、ヘイデスははっきりと疲れた様子で、オレンジジュースを片手にあちこちで繰り広げられているディスカッションに、誰もがいい年なのに元気だな、と呆れ半分感心半分だ。

 その傍らで所長は何を言うやら、という表情を浮かべている。出産を終えて元に戻った驚く程起伏に富んだ肢体にうっすらと青みがかったカクテルドレスを纏い、髪は本物のプラチナ製のバレッタで纏めている。

 僕のお嫁さんは宇宙一の美人、とヘイデスは心の中でにこにこ笑顔だ。

 

「科学者という人種のエネルギーを甘く見過ぎましたね。私という例が近くにあったでしょうに」

 

「いや、君だけが特別エネルギッシュだと思っていてね。まさか僕らの親でもおかしくない年齢の方達でも、あそこまでパワフルだとは思わなかったよ」

 

「まあ、皆さんも懇親会の後でホテルの個室に戻ったら、すぐに電池が切れたみたいにベッドに倒れ込むでしょうけれどね」

 

「はは、疲れが後からどっと押し寄せてくるってわけね。それじゃあ、本命の方達が都合よく集まってくださっているし、挨拶してこようか」

 

 持っていたオレンジジュースを飲み干し、空いたグラスをウェイターの青年へと預けて、ヘイデスは所長と共にとある一角でにこやかに意見を交わしている科学者の一団へと向かう。

 

「お邪魔します。今日は皆さん、実に活き活きと意見を交わしていらっしゃる。今回の発表会を企画して成功でした」

 

 そこに居たのはマジンガーZの弓教授、ゲッターロボの早乙女博士、コンバトラーVの南原博士に四谷博士、ボルテスVの剛夫妻に浜口博士、左近寺博士、闘将ダイモスの竜崎博士に和泉博士といった錚々たる面子が揃っている。

 ある意味ではプレイヤー部隊の最大の味方と言える面々だ。

 何人かはスパロボでさえ亡くなる者も含まれており、生前の彼らが一堂に介する場面は極めて貴重だろう。

 

「おお、ヘイデス総帥。いや、恥ずかしながら年甲斐もなくつい熱中してしまいました」

 

 最初にヘイデスに気付き、恥じ入るように答えた弓教授のみならず、他の博士達もこれだけ実になる時間を過ごしたのはいつ以来かと充実した様子だ。

 

「いえいえ、謙遜される必要はありません。僕は皆さんの研究は必ず人類の未来に役立つと確信していますから、こうして皆さんが交友を深められる様子を見られるのは喜びに他なりません」

 

 そこでヘイデスはちらっと早乙女博士を見た。でっぷりとした体形はどの作品も共通だろうが、黒々とした髪や穏やかな目つきから察するに、少なくとも今は初期のスパロボに参戦していたTVアニメ版ゲッターロボの早乙女博士であろう。

 漫画版や数々のOVA作品でゲッター線に取りつかれた狂気と知性が入り混じった、あの恐ろしい風貌ではない。まあ、この先どうなるか分からない怖さが、ゲッター線にはあるわけだが。

 

(ラ=グースとか時天空が関わってきませんように。アンソロジーコミックのネタも関わってきませんように。

 銀河サイズに進化したゲッターエンペラーと、同サイズの成人女性の姿に成長したラ=グースの戦いとか、関わっていられるか!

 なんだ、『四百万光年』先からのゲッタービームって! ビックバンが時間稼ぎにしかならない時天空含め、いちいちスケールがでかすぎるんじゃい!)

 

「どうかされましたか、ヘイデス総帥?」

 

 ヘイデスからの視線に気付いた早乙女博士が訝しそうにするのを見て、ヘイデスはあくまでゆったりと首を振る。

 

「いえ、また皆さんとこうして顔を合わせられて安心していたところです。僕自身仕事が忙しいのもありますが、皆さんも実に多忙ですから。こうした機会を設けても、何人がおいでくださるかと気を揉んでいた次第です」

 

 さて、光子力やゲッター線は次世代のエネルギーとしての期待が寄せられ、またゲッターロボ自体も元をただせば宇宙開発用のロボットだ。ダイモスも惑星開発用のトレーラーを改造したものである。

 そこでヘイデスがよく分かっていないのが、超電磁ロボ・コンバトラーVと超電磁マシーン・ボルテスVの事だ。

 

 放映を生で視聴しておらず、スパロボ上でしかほぼ知らないのが理由なのだが、この二機に関しては完全に侵略者撃退用に作られたのか? ならば超電磁エネルギーを地球防衛以外に役立てる目的が作中で語られていたのか? というのが分からないのである。

 キャンベル星人とボアザン星人を撃退した後、超電磁テクノロジーはなにか人類に寄与したのだろうか? 教えて詳しい人! というのがヘイデスの本音だ。

 

「交流と言えば南原博士に剛ご夫妻の皆さんは、同じ超電磁エネルギー研究の第一人者でいらっしゃる。このような場を設けなくても、お会いになる機会はあったでしょうか?」

 

「お互いの論文を目に通し、議論を重ねたことはあります。ですがこうして他のテクノロジーを研究されている方と言葉を交わすと、思わぬ発見や着想が得られて実に有意義ですよ」

 

 とは南原博士の言だ。四谷博士は会場に用意された多種多様な酒を飲みながら、それでもしっかりと意識を保ち、理性を宿した瞳でヘイデスをじろじろと見ている。

 世界中の有望だが陽の目を浴びていない科学者や、まだまだ研究の進んでいない技術に携わる科学者に多大な額の出資を行い、見返りを無理に求めないヘイデスをあまりに都合が良すぎると警戒しているのかもしれない。

 これにはヘイデスも異論は唱えにくい。

 スパロボのオリジナルキャラのルド・グロリアやダイマ・ゴードウィンのような、徐々にうさん臭くなり、最終的にラスボスかその一歩手前辺りのボスキャラムーヴをこれでもかとキメていると自覚はしている。

 

(まあ今の俺の手札でやれることと言ったら、ゼファーのシステムをコピーして搭載した無人機部隊の大量導入とか、疑似サテライトシステムをその無人機に搭載させて、あらゆる戦場でサテライトキャノンをぶっ放すとか、それくらいかね。

 ラスボスとしてはちょっとインパクトが弱いよな。スパロボ基準で考えたら、ショボい方だろう。気軽に星が壊れるとか、宇宙が滅びるとか言うし。

 それにしても剛博士か。俺は今、ボアザン星の重要人物と対面しているわけで、何気に異星人との初対面なんだな)

 

 四谷博士の警戒を当然と受け止めながら、ヘイデスはしみじみと内心ではそんな事を考えていた。

 

「僕としても皆さんが新しい技術を開発してくだされば、なによりですよ。壊滅したサイドの復興と地球環境の改善が進めば、次は火星や木星といった惑星開発を本格的に進めなければなりません。

 宇宙開発用のゲッターロボはもちろん、竜崎博士と和泉博士の開発されている惑星開発用巨大トレーラーにも、僕は大きな期待を寄せているのです。

 特に火星はせっかく都市が築かれたにもかかわらず、いまだに大気の浄化装置にも不備が多く、移住した方々も苦労されているという話ですからね。

 いまも地球圏は決して安全というわけではありませんが、僕も子を持ち人の親となりました。子供達の為に明るく、そして楽しい未来を託せるように尽力します。そしてその未来には、皆さんの知恵と技術と良心が必要なのです。

 僕に出来るのは経済的なバックアップくらいのものですが、どうか、これからも自らの良心に恥じることなく、研究を進めていってください。僕はただそれを望みます」

 

 あと、侵略者に負けない強くて格好いい正義のスーパーロボットも作って! とヘイデスは心の中で叫んだ。

 神様、仏様、ご先祖様、アムロ大明神様とアムロとの初対面において心の中で拝んだように、ヘイデスは目の前の科学者達に向けて心の中で土下座せんばかりに祈っていたりする。

 

■新代歴185年

 

 昨年のゲシュペンストの発表とその衝撃の影に埋もれたハイザックの正式採用に続き、この年にもロームフェラ財団が開発を主導したMSリーオー、トラゴス、エアリーズ、パイシーズといった新型が次々と発表され、OZをはじめ欧州方面軍を中心に配備すると大々的に宣伝したのである。

 この発表のパーティーに、ロームフェラ財団からすればアナハイムに並ぶ商売敵であるヘイデスが招かれていた。

 

 プルート財閥は、ほぼヘイデス一代でなされた新興勢力であり、欧州貴族ら歴史ある特権階級で構成されるロームフェラ財団からすれば侮蔑と軽視が真っ先に来る相手だ。

 ゲシュペンストという他勢力を突き放す傑作機を世に出したプルート財閥に向けて、多種多様な新型MSを見せつけて、優越感を満たそうとしたものか。

 

(こっちを甘く見てくれる分には、油断につけ込めるから歓迎だけれどね)

 

 周囲の豪奢に着飾った貴族然とした衣装の人々から向けられる軽侮の視線に、ヘイデスは愛妻を連れて来なくて良かったと安堵する。彼女の心が傷つくというよりは、挑発に応じて舌戦を展開して相手を打ちのめしてしまいそうだったからだ。

 

(それにしても招いておいて放置とは、ホストとしての役割を放棄するのはどうかと思うが。まあ、リーオーをはじめ良い機体が見られたのは収穫だ。

 単独で空を飛べるエアリーズも、新しい水中用MSであるパイシーズも、今の連邦軍に足りていない部分を補ってくれる)

 

 それだってトーラスやビルゴが出来上がれば取って代わられるだろうし、短い春なのは間違いない。主催者であるデルマイユ公への挨拶は済ませ……汚物を見る目で見られたが、用事はほぼ済んだと言っていい。もう退出しようかとヘイデスは本気で考えていた。

 それを阻んだのは、この会場の中でひときわ輝く存在感と高貴さを醸す青年将校だった。佇むその姿だけも絵画の如く映えるその青年は、OZ総帥にして地球連邦軍トレーズ・クシュリナーダ准将その人に他ならない。

 ヘイデスが個人的にシャアや東方不敗マスターアジアと並び、今後のガンダムシリーズで二度と出てこない不世出の人物と考えている相手だ。

 

「パーティーは楽しんでおられるかな、ヘイデス・プルート総帥」

 

「これは、トレーズ・クシュリナーダ閣下。私などにお声をかけていただけるとは、光栄です」

 

「ふ、私の名前を存じておいでか。それと、どうぞそのように畏まらないでいただきたい。軍人とはその階級を問わず民間人を尊ばねばなりません。故に私の方こそ貴殿に率先して敬意を示さねばならない立場です」

 

 なるほど、原作であれだけ信奉する者が現れるわけだと、現実の存在となったトレーズを前に、ヘイデスは内心で唸る。こうして顔を合わせ、わずかに言葉を交わしただけでもこちらの精神を揺さぶる圧倒的な輝きと気品が醸し出されている。

 スパロボユーザー成分を除けば、このヘイデスとて希代の人物だが、目の前の青年は地球の命運を左右できる能力とカリスマ性を兼ね備えた傑物なのだ。

 

「遺憾ながらこの場に居る者達でノブリス・オブリージュの精神を弁えている方は少ない。先程からの貴殿に対する不躾な態度を、皆に代わり私が謝罪いたします」

 

「それこそますます委縮するばかりです、閣下。貴方のような方の謝罪を受けては、私はどれだけの恨みを買う事やら。貴方を信奉する方は軍、民を問わず大変に多い。その理由をこうしてお会いした事で、よく理解いたしました」

 

「身に余る評価です。私こそ、冥府の神の名に相応しき英断と活躍をされる貴殿には、かねてよりお会いしたいと考えておりました」

 

(うっへ、トレーズに目を付けられていたとかおっかないわあ。でも分からなくはない。なにしろ無人機であるゼファーを抱え込んでいるものな、俺。モビルドールを忌むこの人なら、悪い方の意味で俺を捉えてもおかしくはない)

 

「かの一年戦争に於いては軍人、民間人を問わず多くの生命が失われ、更には国家の持つ工業力はもちろん、都市、文化、精神もまた多くが失われました。

 前線の兵士や指揮官の混乱や暴走により、失われるはずのなかった生命もまた多くが失われた事でしょう」

 

「閣下の仰る通り、感情を持つがゆえに人間は時に合理性に欠き、倫理を忘れた行動に走るものです。しかし、閣下は失われたものへの悲哀だけを説いておられるのではないのでしょう?」

 

 ヘイデスの指摘に、トレーズはうっすらと微笑した。あるかなきかの笑みは、我が意を得たり、と喜んでいるようにも、これからしなければならない問いを悲観しているようにも見えた。

 

「失われる生命を惜しみ、悲しむならば必然的に人は失う生命のない兵器を求める。これは旧世紀から続いてきたことです。失われる生命がないのは、確かに喜ばしい。それは一面に於いて事実です。

 しかし失われる何かがあるからこそ人類は戦いを恐れ、平和を維持しようと努力するのもまた事実。失われる命のない戦争は、同時に命の価値を貶め、戦争を軽々と引き起こしかねない。意志も気高さも生命もない鉄の人形達が、ただただ争うだけの虚しい戦争遊戯を」

 

 トレーズはニュータイプならずとも人の心の奥底まで見通すような視線で、じっとヘイデスの瞳を見つめる。

 

「貴殿の持つ“風”が、その遊戯の如き戦争の火を煽りはしないかと私は憂いているのです。ヘイデス総帥」

 

 ゼファーとは西から吹く強い風、またあるいは西風の神ゼピュロスを示す。トレーズの言う風が何であるかは、語るまでもあるまい。

 

「……お話は分かりました、閣下。閣下の仰ることは私にも理解できます。私がゼファーを回収させなければ、無人機の研究は地球連邦に於いて大きく遅れたか、あるいは停止されていたかもしれません」

 

 もっともロームフェラ財団がモビルドールを開発させるだろうが。

 

「しかしながら、カインズ博士が提唱し、作り上げたゼファーは決して人形同士の戦争を促進させるものでも、生命の価値を貶めるものでもありません。

 あれは、人類が宇宙という新たなステージに向けて張った帆を進める風です。そして人類と寄り添い、共に在ってより良き未来を作り出す為の存在です。

 一年戦争に導入され、成果を上げた事実は否定しません。また戦争に於いて有用な存在となるのも否定しません。ですがこれだけは断言します。ゼファーは人を救う為の存在です。

 戦争の狂気の中で人間の憎悪が際限なく増大し、過ちを犯そうとした時、歪まなかった人間と共にその過ちを止める人ならざる者。

 それがゼファーであり、そうあってくれると私は信じ、期待しています。それがどんなに滑稽な夢想であろうとも」

 

 トレーズは、自分の視線に怖じることなく、ゼファーとそれに関わる人々を信じると断言するヘイデスを見つめ、小さく満足したように一度瞳を閉じてから笑みを深めた。

 

「貴殿の言葉に偽りは感じられない。ならば私もまた見定めるとしよう。風がどこへ人類の未来を運ぼうとしているのかを。貴殿との語らいは実に有意義なものでした。次の機会があれば、同じような時間を過ごしたいものです」

 

「私も閣下と言葉を交わしたこの時間を生涯忘れないでしょう」

 

 ヘイデスの言葉を最後に、トレーズは背を向けてパーティー会場のどこかへと消えていった。

 

(猶予期間をもらった、というところか。しかし、社交辞令とは言えトレーズに敬語を使われるとか、改めて俺ってすごい立場にいるんだな。まあ民間人だしね。

 それにしてもエレガント、か。そうして律さねば人は容易く堕落する。モビルドールもまたそれを助長する存在なのかもしれん。俺も気を付けないとな)

 

 それは同時にヘイデスの心に打ちこまれた楔であった。彼がそれを忘れない限り、地球人類の未来に対する脅威とならずに済むのかもしれない。

 

<続>

 

■シーマ艦隊が入社しました。

■ゲシュペンストP型が開発されました。

■パックオプション(≒ストライカーシステム・ウィザードシステム)が開発されました。

■アルゴスの後継機(ゾイドもどき)が開発中です。

■光子力テクノロジー(初級)を入手しました。

■ゲッター線テクノロジー(初級)を入手しました。

■超電磁テクノロジー(初級)を入手しました。

■ダイモライトテクノロジー(初級)を入手しました。

■トレーズ・クシュリナーダに注目されました。

 

●強化パーツ

・デメテルフードパック

 使用するとSP+20、気力+5。使い捨て。

 

追記

カロリー修正。

 




地の文が多いのと書きたい場面が多くて話が進まず、すみません。
地の文を削って会話文で回していった方が良い感じですかねえ。
流石にそろそろ本編のプロローグに辿り着きたい……

追記
ゲシュペンストをM型からP型へ変更しました。
ミケーネの遺産云々を修正しました。
ゲシュペンストP(mass-Product) → Product へ変更しました。

マンダリン → マンデリン へ変更しました。ご指摘ありがとうございました。


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第八話 プロメテウスの火は消えて

ゲシュペンストP型について

●ゲシュペンストM(Mass-product)



●ゲシュペンストP(mass-Product)



●ゲシュペンストP(Product) ←イマココ!

 というわけでゲシュペンストの正式な量産型はP型です。



■新代歴185年

 

 工業コロニー“ヒッポクレーネー”に近い宙域にて、プロメテウスプロジェクトのメンバーが乗るゲシュペンストP型三機が倍の敵機に囲まれていた。

 と言っても実戦ではなく、これは模擬戦である。

 三名ずつランダムに即席のチームを組んで、ヘイデスの用意したプロジェクト外のメンバーと数的不利を抱えた状態というシチュエーションでデータを取っている。

 現在はヤザンのゲシュペンスト、ラルの青いゲシュペンスト、バーニィのザクカラーのゲシュペンストが、六機の敵を相手に奮闘中だ。

 

 プロジェクトメンバーと模擬戦の相手とは今回が初顔合わせで、模擬戦相手が一方的にプロジェクトメンバーの力量を知っている状態だ。

 対アムロ、対シャア、対ジョニーなど個々のエース達の機動パターンを徹底的に研究し、対策を練ってきた模擬戦相手達は、地球最高クラスのエース二人と水準以上の力量に成長したバーニィを相手に善戦している。

 

 今回の模擬戦相手が搭乗しているのもまたゲシュペンストであった。

 カラフルな三機のゲシュペンストを囲い込む六機の特別仕様のゲシュペンストと、それを操るパイロット達の練達の技量を見て、昨年、新しくプロジェクトに招聘された連邦士官が、傍らのオブザーバー席に座すヘイデスに問いかけた。場所は艦橋だ。

 プルート財閥の保有するペガサス級ベイヤードの艦長として招かれた、元ホワイトベース艦長ブライト・ノア中佐である。

 

「総帥は、あれ程の手練れの集団をどこで見つけて来られたのですか?」

 

 今の地球連邦軍でもあれ程の手練れはティターンズか、あるいは教導団を探さなければ見つけられないだろう。

 加えて年季の入ったコンビネーションまで見せているとあっては、各地からバラバラに集めたというわけでもないのは明らかだ。

 

「存在自体は一年戦争中には把握していた有能な人材でしてね。場合によってはスカウトする間もなかったのだけれど、どうにか間に合ったのですよ。

 あちらとこちらと、お互いにとって最良の条件で、アレスコーポレーションに入社してくれました。腕利き揃いでしょう?」

 

「私見になりますが、ベテラン揃いです。時と場合によっては宝石よりも貴重な人材ですよ」

 

 ブライトにはそれほどの腕利きを集めてどうするのか、という疑問はあるが、閑職に回されていたところをこうして懐かしさを感じる艦を任され、久方ぶりに旧知の仲間と同じ職場で働く機会を与えてくれたのには感謝している。

 それに一年と少ししかまだ働いていないが、随分と厚遇を受けているのが分かるし、実際、職場の雰囲気も心地よい。一年戦争中に、殺すか殺されるかの戦いを繰り広げた相手と肩を並べて働くのにも、いい加減慣れてきたことであるし。

 

「あの動き……ジオンのパイロットだな」

 

 と呟いたのは、専用の黒いパイロットスーツに身を包んだマッシュである。他にも艦橋には紅色のパイロットスーツ姿のジョニーと連邦のパイロットスーツ姿のライラ、ゼファーのオペレートをするエリシアとカインズ博士らの姿がある。

 マッシュやジョニー達は既に担当分の模擬戦を行い終えて、ガンルームを出てブリッジから模擬戦を見学中だ。マッシュの呟きに、チューブに入ったエナジードリンクを飲んでいたジョニーが同意する。

 

「ああ、腕っこきだ。それに操縦に荒っぽさがちょいちょい顔を出している。前線で相当荒っぽく戦ってきた連中だ」

 

 ジオン組の二人からすれば腕っこきの同胞という事になるので感心するだけだが、地球連邦所属のライラからすると、その荒っぽさを向けられる側になるので、素直に感心も出来ない。

 

「相手があたしらじゃなかったら、可哀そうになる相手だね。ヤザンの奴は笑いながら戦っていたけど、さ」

 

 いずれにせよ、ライラもまた模擬戦相手の実力を認めているのは確かだ。彼らがエースでなかったら誰がエースなのか、というくらいのエース達が太鼓判を押すものだから、ブライトとしてはその相手を用意したヘイデスの手腕に興味が引かれる。

 それに十九歳という若さでホワイトベースを指揮して、ジオンの精鋭と戦ったブライトは、模擬戦相手のゲシュペンストが正式モデルのP型とは異なる仕様であるのを、早々に看破していた。

 

「ところで総帥、あちらのゲシュペンストですが、装甲以外にもなにかカスタム化した仕様では?」

 

「流石の慧眼です、ブライト中佐。マッシュ大尉の言う通り荒っぽい戦い方に沿った仕様でして、関節回りの強化とバイタルエリアの装甲材を特殊なのにしています。それに電子戦用の装備もかなり良いのを積んでいますよ。

 長期戦を想定した仕様ではないので、その分、推進剤の消費量を増す形で機動性を上げていましてね。P型よりちょっと高いんです。名前はゲシュペンストM(マリーネ)

 

 模擬戦相手――シーマ艦隊用にカスタムした海兵隊仕様のゲシュペンストが、ゲシュペンストMである。

 シーマ艦隊の結束を考慮して極力パイロットの死亡を避けられるように最高性能の脱出装置の搭載と、バイタルエリアにはガンダニュウム合金が用いられている。武装自体はP型と共通だ。

 

「プロジェクト側のP型よりも撃墜判定がされにくくなっているのは、そういう理由です。性能面ではいくらか上ですが、それでも倍の数でも善戦止まりになる辺りは、流石は我がプロジェクトメンバーの皆さんです。相手もかなり驚いていると思いますよ?」

 

 ヘイデスは面白そうに言ったが、シーマ本人達からすれば“かなり”で済む話ではなかった。

 いい加減、旧式化も甚だしいゲルググMから自分達の為に誂えられたゲシュペンストMを受領した時には、夢にまで見たおもちゃを買い与えられた子供のように喜んだものだが、今戦っている連中の腕前と来たら!

 相手の多くが名の知れたトップエースとはいえ、数で勝るシチュエーションと、終戦後も過酷な環境で三年以上に渡り戦い抜いた自負が海兵隊の荒くれ共にはあったが、いやはや、それを砕くのに十分な強敵達ばかりである。

 

「まったくだらしがないねえ。いいかい、あんた達、次でこの模擬戦も最後だ。気張っていきな! もし情けない姿をみせようもんなら容赦しないからね!」

 

 そう声を張り上げて通信機越しに発破をかけるのは、別人の戸籍を得たアレスコーポレーション所属のシーマ・ガラハウその人である。

 専用のゲシュペンストMカスタムのコックピットから発破をかけるその顔は、ヘイデスのスカウトを受ける以前よりも随分と活き活きしており声にも張りがある。

 

 スカウトを受けてからおおよそ一年と数カ月が経過しているが、今のところヘイデスは極めて誠実な雇用主であり、雇用条件もきっちりと守り、シーマ艦隊は入社以降民間人に手を出したことはなく、海賊行為も行わずに今日まで来ている。

 行き届いた補給に堂々と帰ってこられる港、またサイド3に残してきた海兵隊員達の家族に対してもヘイデスは手を尽くし、戦犯の家族として迫害され生活に困窮していた人々を助けている。

 

 スカウト前に海兵隊の家族の救済を条件に付け加える事も出来たが、それではまるで人質だとヘイデスは口にしなかった。

 結果としてヘイデスの誠意の表れとして功を奏し、シーマのみならず海兵隊各隊員が、ヘイデスには一方ならぬ恩義を感じる結果となっている。

 

 憂いがことごとく除かれて、ヘイデスから紹介されたメンタルカウンセラーとのカウンセリングや、安心して羽を伸ばせる環境を得られたこともあり、シーマは心身共々、一年戦争以降初めてといって良いレベルで充実していた。

 今もヘイデス直々の指名を受けた模擬戦に向けて、シーマの気力は漲っていた。さしずめ【気合】、【不屈】、【集中】が毎ターン発動中といったところか。

 

「はん、それにしても“白い流星”と“赤い彗星”、それに無人機とやらを相手に三十対三とは、舐めてくれた……と言いたいが、あの総帥が提案してきたってことは、本当にそれでまともな勝負になるってわけだ。くわばらくわばら」

 

 シーマは現在、愛機に搭乗して、リリーマルレーンから出撃の時をいまかいまかと待っていた。周囲には近代改修を加えられた後期型ムサイ級やコロンブス級輸送艦の艦影もある。

 シーマが口にした通り、模擬戦の締めはアムロのトールギス・シューティングスター、シャアのトールギス・コメット、そしてゼファートールギスの三機を相手に、シーマ艦隊のゲシュペンストM三十機の戦いだ。

 

 おそらく現在の地球圏で最高峰の性能を誇るMSと最高の技量を誇るパイロット達と、部隊単位の平均技量では上位中の上位に位置するシーマ艦隊の激突である。

 ブライトやヘイデスの乗るペガサス級ベイヤードの前方に突き出たカタパルトデッキが開き、模擬戦の締めとして登場を待たされていたプルート財閥最高のMSと最高のパイロット達の登場の幕が開く。

 艦橋に詰めるオペレーターのウェーブ(女性士官)が、ゼファーを除く二人へのオペレートを開始した。凛とした気品を感じさせる黒髪の美女だ。

 

「トールギス・シューティングスター、発進どうぞ!」

 

『アムロ・レイ、トールギス・シューティングスター、出るぞ』

 

「トールギス・コメット、続けて発進どうぞ!」

 

『ふ、シャア・アズナブル、トールギス・コメット、出る!』

 

 まるで馬の脚のようなカタパルトデッキから白と赤の星が飛び出し、見る間に人体の限界に挑むような加速で遠ざかってゆく。そうして最後にエリシアのオペレートに従って、ゼファーの操るゼファートールギスがベイヤードを飛び立つ。

 

「ゼファー、アムロ中尉とシャア大佐の援護を。敵の数は十倍だけれど、貴方なら出来るわ。行って!」

 

 アムロの発進したカタパルトから飛び出したゼファートールギスは、先行する二機を上回る速度を叩きだし、こちらは人体の限界点――マンポイントを超えた加速と機動だ。

 プルート財閥に回収され、エリシアとカインズ博士と再会してからのゼファーは連邦・ジオンのエース達の動きを学習し続け、更に無人機運用のシステムとしても経験を積み、徐々に誰にも予想できない未知の領域へと達しつつある。

 自分達に見る間に追いつくゼファーを確認し、アムロは交戦エリア到達までの短い時間をシャアとの会話に費やした。

 

「シン少佐やラル中佐の言う通り、相手は元ジオンのパイロットだと思うか?」

 

「まず間違いあるまい。それにジオンのパイロットとの戦闘経験は、アムロ、お前の方が多いだろう?」

 

「それもそうか。ここからでもこちらに伝わってくる気迫だ。今回の模擬戦への入れ込みようは普通じゃないな」

 

「ふむ。アレスコーポレーションの所属だったか。我々とは別にヘイデス総帥がスカウトしたそうだが、おそらく裏仕事を任されている部隊だろう。気迫の違いは、ボーナスでも出るのかもしれんぞ?」

 

 冗談めかしていうシャアに、アムロは小さく笑った。実戦ではないのもあるが、ここまで緊張していないのも、それなりに問題かもしれない。

 人間が乗っているとは信じがたい速度で迫る三つの反応に、シーマは好戦的な笑みを浮かべて、いっそう声を張り上げた。

 

「野郎共、獲物が網に掛かりに来たよ! 一年戦争からこっち宇宙で鳴らした腕を見せつけてやんな!!」

 

 へい、シーマ様! と海賊そのものの返事を耳にしながら、シーマは愛機を加速させて、心地よいGを感じながら、通常機よりも大きく強化されたセンサー類と光学装置の捉えた三機のトールギスを見て舌なめずり。

 

「バッタみたいに動くMSだねえ。だったらその足と羽をもいで、飛び跳ねられなくしてあげようじゃないさ!」

 

 愛機に握らせたメガニュートロンビームライフルから、戦艦の主砲並みに太いビームをぶっ放し、シーマと部下達は獰猛な肉食獣の群れの如くアムロ達へと襲い掛かるのだった。

 なお、シーマはこの模擬戦の後でヘイデスに対して「どんな機体とパイロットが相手でも怖くなくなったが、あいつらとだけはもうこりごりだ」と愚痴を零している。

 身長百九十五センチのシーマが小さく見えるようだった、とヘイデスは最愛の妻にこっそりとその時の素直な感想を漏らした。

 

 

 ヘイデスは新代歴185年――宇宙世紀85年に相当するこの年に、どこで何が起きるのかを覚えていた。

 サイド7が襲撃されて、アムロがガンダムに乗るのを覚えていた時のように、具体的に何月何日とまで覚えていなかったが、それでも彼なりにその“事件”に対して出来るだけのことをしていた。

 ティターンズによってサイド1の30バンチへ毒ガス散布され、住人千五百万人が虐殺されるという事件だ。

 

 シーマ艦隊のスカウトは純粋な戦力増加と、対星の屑作戦以外にもこの毒ガス散布阻止も大きな目的の一つだった。

 コロニー落としもそうだったが、ヘイデスは融合したスパロボプレイヤー成分が、現実となったこの世界で行われる虐殺行為に対して、極めて強い拒否反応と嫌悪感を抱く傾向にあった。

 

 コロニー落としは手を出すまでもなく、シュメシとヘマーを内包していたヘリオースもどきが木端微塵にしたことで図らずも防げたが、これから起きる非人道的行為を防ごうとするならば、自分の力でどうにかしなければならない。

 30バンチ事件もまたそのうちの一つであった。

 さて、なぜティターンズが毒ガス散布という凶行に走ったかと言えば、当時、30バンチでは反地球連邦政府のデモが行われており、この鎮圧を地球連邦軍がティターンズへと要請し、バスク・オム大佐が毒ガスの散布を決定したのだ。

 ただ今回の件を含め、後にZガンダム本編で行われるティターンズの非人道的行為の多くは、現場のバスクやジャマイカンらの判断で行われており、ジャミトフにしても意に沿わない行いであった点は留意するべきだろう。

 

 30バンチへの毒ガス散布はその非人道性から、作戦に参加しているティターンズ将兵でも実態を知っている者はごくわずかだ。輸送中の護衛を担った者でさえ自分達が何を護衛し、何を運搬しているのか知らない者がほとんど。

 しかしヘイデスはそれを知っていた、というよりは憶えていたというのが正解だろう。

 そうして彼は復興に関わったコロニー全てに、緊急時の避難シェルターの大量設置とジオン公国のコロニー潰しを引き合いに出し、有害物質をすぐさま検知して徹底的に排除する改良型循環システムの設置を病的なまでの執念で実行に移した。

 

 コロニーそのものへの毒ガスに対する対応力の向上に加え、毒ガスの散布それ自体の阻止にもまた力を入れたのは、語るまでもないだろう。

 なによりもかつて自分達の犯した罪を目の当たりにして、平静ではいられない人材をスカウトしている事からも、それは明白であった。

 例えばそう、関与を疑われない為に用意された宇宙用のリーオーを駆るシーマ・ガラハウのような人材だ。

 

「このあたしの目の届くところで、コロニーにそいつを撒こうってかい」

 

 外見こそリーオーだが、中身はカリッカリにチューンした特別仕様機のコックピットの中で、シーマの形相はまさに悪鬼のそれと化していた。

 なまじプルート財閥にスカウトされ、多くの重圧から解放された後であった分、目の前で再現されようとしているかつての悪夢には、ことさら怒りと悔恨の念を掻き立てられる。

 

「上等だよ! ここまであたしを怒らせて、タダで済むと思うんじゃないよ!!」

 

 30バンチのコロニー近域に接近中のアレキサンドリア級重巡洋艦数隻と、発艦したハイザックやジムⅡ部隊へと、シーマのリーオーを筆頭に同じくリーオーやハイザック、ジムⅡで偽装したシーマ艦隊がSFSを駆り、憤怒の悪鬼と化して襲い掛かった。

 この時、シーマ艦隊の母艦群は戦闘宙域から遠く離れた場所で戦闘の状況をモニタリングしていた。万が一にも発見されない為と、SFSによって推進剤の節約が叶った為、通常よりも遠い位置にてMS部隊の帰還を待つ事が可能だった為だ。

 そして、今回の毒ガス散布阻止の作戦の助っ人達が、特別にリリーマルレーンのブリッジに専用機材と共にいた。

 

「ゼファー、12時の方向からコロニーに接近する艦影を探知したわ。別動隊よ。貴方はそちらの部隊を何としても阻止して」

 

 ゼファーのオペレーター・エリシアと生みの親であるカインズ博士だ。

 地球連邦とジオン共和国から出向してきている面々を今回の作戦には参加させられない為、プルート財閥所属の二人とゼファーに極秘の指令としてヘイデスが頭を下げて、作戦への参加を嘆願したのである。

 いくら地球至上主義を標榜するティターンズとはいえ、コロニーの住人に毒ガス攻撃など、と話を聞かされた当初は信じられない様子だった二人も、ヘイデスがかき集めてきた情報の詳細と現実にコロニーに迫るティターンズ艦隊を見れば、人の悪意の悍ましさをまざまざと見せつけられて、顔色を青くしている。

 周囲の海兵隊員達が、憤怒の赤色に顔を染めているのとは対照的だ。カインズは今まさに目の前で行われようとしている蛮行に、苦痛を堪えているかのような表情を浮かべていた。

 

「戦争が終わっても育まれた憎しみと偏見、恐怖が容易く人間の箍を外す。際限なく膨れ上がる狂気を止めてくれ。そして、人を救え、ゼファー!」

 

 既にゼファーは別動隊を止めるべく出撃し、無人機ならではの超加速をもって急速に接近しつつあった。

 ゼファーのモニターにはティターンズの別動隊の画像のみならず、30バンチ内部で行われている大規模なデモや、デモには参加せずに日常生活を営んでいる人々の姿も映し出されている。

 

 エレカを運転してデートに出かけている若い男女。公園で談笑している老人達。サッカーボールを追いかけている子供達。

 ダイナーで旦那の稼ぎに愚痴を零している主婦達、メインストリートの屋台でホットドッグを購入している若者、壇上で熱弁を振るうデモ主催者に熱狂する人々……

 

 デモに関わった者もいる。そうでない者もいる。男がいる。女がいる。老人がいる。子供がいる。その全ての人々を一切の区別なく、平等に毒ガスは殺す。

 ヘイデスの入手した情報が確かなら、ひとたび毒ガスが撒かれれば住人達は気付く事も逃げる事も叶わずに死んでゆくだろう。

 

 ゼファーは言葉を発しない。文字を起こさない。しかし、今回の作戦の為に用意された機体に増設されたブースターに許される速度の限りを尽くしていた。

 別動隊はアレキサンドリア級一隻、サラミス級二隻に加え、ハイザック十数機からなる部隊である。MS並みに大きな毒ガス散布用のポッドを、二機一組のハイザックが運んでいる。

 ポッドは全部で三基あり、それを残る十機以上のハイザックが護衛している形だ。

 

 別動隊の指揮を担うアレキサンドリア級の艦長は、オペレーターの発した報告に少なからず驚きを見せた。

 輸送中もどこで嗅ぎつけてきたのか、ジオン残党に襲撃を受けてきたから、今更、新たな襲撃を受けたところで驚きはしないが……

 

「せ、接近する大型熱源を確認。MAと思われます! そ、速度は……秒速三十九キロメートル!」

 

 これはガンダム00セカンドシーズンに於いて、MSガラッゾがブースターを用いて主人公達へ奇襲を仕掛けてきた際の速度の半分ほどだ。

 

「MS部隊に対応させろ。対MS近接防御陣形を取る。敵のMAはなんだ? ザクレロか、それともビグロか。まさかビグ・ザムではあるまい!」

 

 なおビグ・ザムの最高速度はマッハ七とされているが、いくらでも後付けで変わる可能性もあるので信憑性は今一つだ。

 

「ライブラリに照合あり、敵機は……ヴァル・ヴァロです」

 

「随伴機もなしにMA一機で奇襲などと、自殺行為だと教えてやれ!」

 

 一年戦争前から連邦宇宙軍に所属していた歴戦の艦長は、多くの戦友を一年戦争で失ったが為に、ジオンへの憎悪をスペースノイドへの憎悪へと拡大させていた。

 皺の目立ち始めた顔には、毒ガスをコロニーへ注入する事への罪悪感よりもそれを邪魔された不快感の方が色濃く浮かび上がっている。

 

 ゼファーヴァル・ヴァロは機体後部に増設した使い捨ての改造ブースターを切り離し、こちらへ銃火を向けるハイザック部隊へと突撃を敢行する。

 欲を言えばトールギスを用いればより確実であったが、このヴァル・ヴァロも今回のような奇襲戦においてはいまだ有用だ。

 

 ビームあるいはマシンガンの銃弾が雨となって降り注いでくる中、ゼファーヴァル・ヴァロは甲殻類を思わせる赤い巨体からは想像もつかない軽やかな機動を見せ、一発の被弾もなく見る間に距離を詰める。

 ゼファーはヴァル・ヴァロに内蔵されている二門のビームガンと四門の110mmバルカン砲を同時に起動し、その全てで別々のハイザックをロックオン。次の瞬間には六機のハイザックの頭部や手足が吹き飛び、コントロールを失った機体が彼方へと吹き飛んでゆく。

 

 一瞬で六機の味方が戦闘能力を失った事実を、残るティターンズのパイロット達が認識した瞬間には、ゼファーヴァル・ヴァロの展開した二本の蟹の鋏めいたクローが新たな獲物を挟み込み、見る間にハイザックの下半身が握り潰される。

 流線形の外見は変わらずとも内部のパーツやエンジンが最新のものへと変えられたゼファーヴァル・ヴァロは、ティターンズの主力MS相手でも簡単に挟み潰すパワーがあった。

 

「コックピットへの攻撃は避けている? な、我々を馬鹿にしているのかあ!」

 

 MS部隊の隊長は舐められた、と激高しながらゼファーヴァル・ヴァロへとビームを乱射する。生き残りの他の機体や艦隊からも火砲が集中するが、有人機のMAでは到底出来ないような鋭角の回避機動と急加速・急減速を実行して見せる赤いMAの残像を貫くばかり。

 ゼファーヴァル・ヴァロが、次の狙いを護衛のハイザック部隊から毒ガスの輸送部隊へと移して機首を巡らせるのを見て、輸送部隊の内、二機のハイザックがポッドを手放して時間稼ぎをするべく向かってくる。

 毒ガスの散布はこのヴァル・ヴァロを撃退してからでも間に合うと判断したか、残りの二基の毒ガスでコロニー住人を皆殺しにするには十分だと判断したのか。

 

「こいつ、赤いカブトガニが、ああ゛あ゛あ゛!?」

 

 毒ガスを運んでいた残る四機のハイザックのパイロットの一人が、堪らず悪罵を吐き捨てた時、ゼファーがブースターを切り離した際に軌道をプログラミングして発射していたミサイルが彼らに襲い掛かり、ハイザックを小破から中破へと追い込む。

 当然、MSよりも脆弱なポッドとなれば、ミサイルの爆発に耐えられずに爆散して、宇宙空間へと毒ガスを無駄にばらまく。

 その状況にティターンズ将兵が一瞬意識を奪われる中で、ゼファーだけが行動を止めていなかった。機体のカバーが開いてメインウェポンであるメガ粒子砲の砲口が覗き、放たれた光の奔流が残る毒ガスのポッドを飲み込んだ。

 

「くそ、ポッドが!」

 

 たまらずアレキサンドリア級の艦長がアームレストに握り拳を叩きつけ、怒りの視線をゼファーヴァル・ヴァロへ向けるが、目的は果たしたと言わんばかりに宙域から離脱を始めており、改造されたMAの速度に追いつける機体は別動隊には存在していなかった。

 憤るシーマ艦隊もまたティターンズ艦隊の毒ガスポッドの全破壊を成し遂げ、またMSと艦隊にも大打撃を与える戦果を挙げており、30バンチへ毒ガス散布を行うべく派遣されたティターンズ艦隊の目論見は潰えたのだった。

 

 30バンチへの毒ガス散布に合わせて、ヘイデスもまた情報戦によるティターンズへの妨害行動を大々的に行っており、作戦中に回収した毒ガスのポッドや戦闘中に記録された画像を地球、コロニーの報道機関へ提供してティターンズの非道を訴えようとした。

 しかし、ジャミトフ・ハイマンもさるもの。

 これらの情報戦は地球連邦の情報統制によって厳しく取り締まられて、ティターンズは反地球連邦デモ鎮圧の為に催涙ガスを用いようとし、直前で命令が撤回された為にコロニーから引いて行った、というのが世間一般での通説となった。

 

 ティターンズの権限の凄まじさを裏付ける結果ではあったが、その為にジャミトフが各方面へと作った借りと失った手札の多さもまた想像するにあまりある。

 幸い30バンチ以外への毒ガス攻撃も行われなかったことで、死者を防げたことからヘイデスはこれ以上の成果を求めるのもよくない、とティターンズへの情報戦を止めて、シーマ艦隊とゼファー達への労いに意識を切り替えるのだった。

 

 

 30バンチ事件から数日後、ヨーロッパのとある地域の湖畔を望む古城の一室に、トレーズ・クシュリナーダの姿があった。

 数百年の歴史を感じさせる重厚な趣のデスクの上には、室内の調度品との融和を意識して作られた特別優美なデスクトップPCがあり、トレーズはそこに映し出されるゼファーヴァル・ヴァロの戦闘記録を見ている。

 彼の手腕によって一年戦争中から先日の30バンチ事件に至るまで、ゼファーの関わった事件の叶う限りの映像記録や資料がトレーズの下へと届けられ、彼は自らが口にした“見定める”という言葉を遵守していた。

 

「そうか、忌むべき蛮行を防いだか。人の尊厳を踏みにじる悪意を風が払った。その事実を私もまた認めよう、ヘイデス総帥。ゼファーファントムシステム……単なる無人機を生み出す機構で終わるのか、あるいはそれ以上の新たな可能性の扉を開く存在となるのか。

 ふ、私も世界に対してまだまだ学ぶべきものが多い。自らの至らなさを恥じ入るばかりだ。ゼファー、老人達の妄執する心無き人形との違いを君は自らの行動で証明し続けなければならない。ただオペレーターの指示に従っているだけではないと、そう確信させるなにかを」

 

 画面の向こうのゼファーへとそう語り掛けて、トレーズは椅子に背を預けて目を閉じ、自らの思考の深奥へ潜った。

 

 

 ゲシュペンストの完成を持ってひとまずの節目を迎えたプロメテウスプロジェクトも、そろそろ潮時かとヘイデスは考えていた。

 地球連邦とジオン共和国のトップエース達を数年に渡って集結させ続け、膨大なデータを生み出して両陣営と自社へ提供し続けたプロジェクトだが、いかに有用とはいえこれ以上の長時間の拘束は難しい。

 もちろん、彼らとて四六時中プロジェクトに詰めていたわけではなく、特にジオンのエース達は必要に応じて本国へ戻り、数カ月席を空けていたこともある。

 

 それにティターンズの暴挙を知った地球連邦軍人やコロニー住人達の間で反地球連邦運動が活性化し、エゥーゴが設立されたという情報を得たのもあり、そろそろ本格的な対異種、対異星人用の兵器開発に力を入れるべきだとも考えていた。

 プロメテウスプロジェクトではどうしても手に入るのはMSとそれに関する技術であるから、おおっぴらにMSとは明らかに別コンセプトのスーパーロボットやMSを相手にするには過剰な大火力兵器の開発は口実に苦しむ。

 事件が起きたのは、そのようにヘイデスが悩んでいた頃であった。

 

 その日、地球連邦からの出向者達は元々の所属からの呼び出しを受けて試験基地を離れ、ジオンからの出向者達はゲシュペンストに続く新型機の実地検証の為に、試験基地を離れて中東やアフリカを数カ月に渡って旅する途上にあった。

 プロジェクトの試験基地には所長を始めとしたスタッフの他は居ても、プロジェクトのパイロットはほぼ不在の状態であった。

 

 残されたスタッフ達はヨーロッパの冬の訪れを空調の行き届いた基地の中からモニター越しに眺め、ヘリオースもどきの解析とゲシュペンストの後継機、そしてMBの新たな可能性について論議していた。

 地下に設置された大会議室の一つで顔を突き合わせ、各分野の優れた頭脳達が予算とアイディアと実用性の戦いを繰り広げていた時に、試験基地内部に危急の事態を告げる警報が鳴り響いたのである。

 

 ヘイデスが不在の為、事実上のトップは所長が務めるが、彼女は自身が戦闘や戦争に関してはズブの素人であるという自負がある為、基地防衛部隊の司令に指揮を預けて機動兵器のエキスパート兼スペシャリストとして助言をするに留めた。

 やはり地下に設けられた基地司令部にて、退役した地球連邦軍人だった防衛部隊の司令は顎の輪郭を覆う豊かな顎鬚を撫でながら、階段状になっている司令部最上段の席から正面の立体モニターの映像を眺めていた。

 その傍らに黒い軍服ワンピースと白衣姿の所長が居る。

 

「ヨハン司令、敵はどちら様かお分かりになりまして?」

 

 自分の娘でもおかしくない年齢差のある所長の問いに、ヨハン司令は氷の如く落ち着き払った態度のまま情報を共有する。

 

「三方向からMSの部隊がこちらへ向けて接近中だ。ドム、ドダイに乗ったグフといったジオン系に、ジムⅡにトラゴス、リーオー、ゲシュペンストの姿もある。

 全て合わせて二十四機。旧式が多いが、おおよそ一個大隊相当の戦力だよ。MSの混成具合は出所を絞らせない為だろうな」

 

「オデッサやア・バオア・クーで戦い抜かれた貴方が言われるのなら、そうなのでしょう。では敵の狙いは? この基地の資料や開発中の機体でしょうか。それとも基地の壊滅?」

 

 もし敵が所長の考えている通りの勢力であるのなら、ゲシュペンストを使ったのは30バンチ事件の際にハイザックを使った意趣返しか、あるいはゲシュペンストの開発元であるプロメテウスプロジェクトへの嫌がらせのどちらかだろう。

 

「あるいは、ニュータイプであるアムロ中尉の抹殺が目的かもしれん」

 

 一年戦争の英雄など、邪魔なだけの過去の遺物ということか。所長はヨハン司令の意見を耳にして、右の眉をピクリと動かした。

 

「なるほど? そう言えば地球連邦からの出向組の皆さんは、“偶然にも同じタイミング”でそれぞれ所属元に一時戻られておりましたわね。

 もしそうなら、大元締めの方がするにしては直接的すぎますわ。そこまで浅はかではないと思いますが、ヨハン司令はどのように思われますか?」

 

「私も所長と同意見だ。現場の暴走か独断だろう。彼のやり方には沿わない。さて、迎撃システムは予定通り稼働中だ。光子力バリヤーとIフィールドもいつでも発生させられる。

 仮に鹵獲しても全機自爆するだろう。遠慮せず全機撃破してしまって構わんかね?」

 

「技術の宝庫であるこの基地の襲撃を想定して備えてきましたが、実際に使う事態になるとは、何が功を奏すか分からないものですわね。遠慮なく……あら?」

 

 所長が言葉を止めたのはオペレーターの一人が、格納庫からの連絡を伝えてきたからだ。この基地にはプロジェクト参加メンバー以外にも、アレスコーポレーション所属のパイロット達が控えており、十二機のゲシュペンストP型が控えている。

 しかし通信を繋げてきたのは、防衛部隊ではなくトールギス・シューティングスターに搭乗したアムロからであった。

 

「司令、一番格納庫のアムロ中尉から通信です」

 

「繋げてくれたまえ」

 

 はい、とオペレーターが返事をした直後に正面の立体モニターに、パイロットスーツを着込んで機体に搭乗したアムロの映像が映し出される。オレンジがかったバイザーの向こうから、アムロはヨハン司令の瞳をまっすぐに見た。

 最高のニュータイプの一人と目されるアムロと、検査でニュータイプの素養があると判断されたヨハン司令は視線の交錯だけで、どれだけの情報をやり取りしたのか、所長は幾ばくかの興味があった。

 

『司令、こちらはいつでも出撃の準備は整っています』

 

 ヨハン司令は退役軍人である為、今は一般人だが、アムロの口調は上官に対する敬意の滲むものだった。

 ヨハン司令はさして悩む素振りも見せず、同じ格納庫で待機しているゼファーの状態をモニターで確認した後、即座に命令を発する。

 

「分かった。トールギス・シューティングスターとゼファートールギスは速やかに出撃し、迎撃行動に入りたまえ。中尉は二時方向の部隊を、ゼファーは九時方向の部隊を迎撃せよ。迎撃後、残る六時方向の部隊の迎撃に当たれ。

 迎撃システムは六時方向の敵部隊に対してのみ起動。防衛部隊は発進準備を進め、基地内部で待機」

 

『了解。ただちに迎撃行動に移ります』

 

 

 試験基地に対して六時方向から接近する部隊の隊長は、最後のデザートに指定されたとは知らぬまま、ゲシュペンストのコックピットの中で、今回の任務の為に用意された機体の高性能ぶりに感心し同時に嘆いてもいた。

 

(まったくこれだけの機体だというのに、ジオン共和国が開発に携わっていると宣伝されてしまっては、堂々と採用も出来ないか。ハイザックも悪い機体ではないが、ゲシュペンストが優秀過ぎる)

 

 彼の本来の所属であるティターンズの主力MSは、新代歴185年時点でハイザックだ。採用から一年が経過してもまだ数の少ない機体だが、エリート部隊であるティターンズには優先して配備されている。

 一方で通常の連邦軍はというと欧州方面はリーオーを主力MSとし、極東方面や中東、アフリカといった地域ではゲシュペンストが主力MSとなっている。

 こうして考えるとエリート部隊であるはずのティターンズが、性能の劣るMSを主力にしているという逆転現象が起きている。

 

 それもこれもプルート財閥がゲシュペンストの開発に関して、地球連邦のみならずジオン共和国の多大なる協力があったと堂々と宣言して、開発の手柄を一人占めしなかったのが原因だ。

 地球連邦政府並びに連邦軍では、ティターンズに代表される地球至上主義の声が大きくなってきているが、同時に民・官共にスペースノイドとの戦後の新たな融和を主張する声も小さくない。

 そういった風潮もあり、ゲシュペンストは新世代の性能と相まって一般の部隊に積極的に導入されている。

 

 どうせ青筋を浮かべて反対しているのは、バスク大佐だろう、と隊長は内心で愚痴を零した。

 隊長はジオン公国に対してはいくらでも罵倒の言葉をひねり出せるが、命を預けるMSに関しては出自を問わず性能の良いものを配備して欲しいと願う程度には、思想よりも現実を優先している。

 

 民間企業であるプルート財閥が予算のほとんどを捻出し、場所も資材も負担して開発されたゲシュペンストに対して、ティターンズは危機感と対抗意識をこれでもかと燃やして、ムーバブル・フレーム搭載のMSをあくまで地球連邦主導――ひいてはティターンズの下で開発するべく躍起になっている。

 そして次代のフラグシップとすべく、一年戦争で奇跡的な戦果を挙げた『ガンダム』の後継機として開発されているという噂を隊長は耳にしている。

 ニュータイプとして名の知れたアムロではなく、ティターンズのパイロットが乗るガンダムを次の時代の地球のシンボルとすべく、鼻息を荒くして技術者達に発破をかけているらしい。

 

(だからアムロ・レイを殺せって? ガンダムのパイロットのイメージを払拭しようってか。せこせこと小狡い真似をするぜ、ティターンズって名前が泣いてらあ)

 

「隊長、試験基地から熱源体が……は、速い!」

 

 同伴した部下から通信が届いた直後、ドダイに乗っていたグフ三機の反応が消失する。

 

「な、秒殺か!?」

 

 基地の地下に仕込んでいたカタパルトから直上へ向けて出撃した二機のトールギスは、ヨハン司令の指示通りに二手に分かれ、アムロが捉えたグフへと向けてビームライフルを三射し、たったそれだけで三機のグフはドダイごと撃墜されたのである。

 グフが戦闘不能になったのを見届けるまでもなく、アムロは慣れ親しんだ機体を、眼下で疾走するドムとトラゴスの編成部隊へと急降下させる。

 

「遅いな。反撃位、想定できていただろうに!」

 

 ドーバーガンと比べて取り回しの良さから、アムロはサブウェポンのビームライフルを機体の右手に握らせ、彼からすればあまりに遅い動作でバズーカとキャノンを向けてくる敵機へ、更に二発放ったビームがドムの胸部とトラゴスの頭部を撃ち抜く。

 地面に激突する寸前でスーパーバーニアの推進方向を切り替え、舞い上がる粉塵が機体の姿を包み込んだ。

 残るジムⅡ二機は手にしたビームライフルを遮二無二、砂塵の中へと撃ち込んだが、砂塵を割ってきたハイパーハンマーの一撃でシールドごと纏めて左半身を叩き潰され、もう一機は両手両足を一秒以内の四連射という早業で撃ち抜かれて、その場に倒れ込んだ。

 

 ゼファートールギスと対峙した三機のリーオーとゲルググ二機、グフ、陸戦型ジム二機もまた、抵抗らしい抵抗を行えずにいた。

 ゼファートールギスが上空を高速で移動しながら、両手に握られたビームガンが火を噴き、正確無比な狙いによって手に持った武器が撃ち抜かれ、次いで四肢を撃たれて仰向けうつぶせになって無様に大地の上で横になる。

 

「は、速過ぎる。一発も当てられなかっただと!?」

 

 機体こそ旧式が多いが、今回の襲撃に選抜されたパイロット達は確かな腕を持つ精鋭揃いだった。今回は彼らの狙った相手とその機体のどちらとも、隔絶した組み合わせであったのが彼らのどうしようもない不運だ。

 十六機のMSが戦闘不能に陥ったのを理解し、隊長は自分がひいては今回の襲撃を企画した一部の上層部が、あまりに敵を見縊っていた事、そしてあまりに知らなさ過ぎた事を理解した。

 

「全機、ロックオンしていなくても構わん。足を止めるな、ひたすら撃ち続けろ!」

 

 気付けばそう叫んでいた。少なくとも撃っている間はまだ生きているという事なのだから。

 同行する四機のジムⅡと三機のゲシュペンスト達は、隊長の叫びにほとんど反射的に従って、レーダーに捉えている二機のトールギスへとビームを連射するが、MSが出し得るとは信じがたい速度と変態的機動で飛び回る二機の影すら捉える事さえ出来ない。

 

「ろ、ロックオンも出来ないのか!?」

 

 隊長が信じがたい事実に驚愕の叫びをあげた時、ゲシュペンスト三機の胴体がビームに撃ち抜かれ、ジムⅡ四機が四肢を撃ち抜かれていた。

 

「馬鹿な、こっちは動いているんだぞ、止まったままの的じゃないんだ!?」

 

 隊長の叫びは虚しくコックピットの中で響くだけだった。

 驚愕と恐怖と後悔に支配される隊長の耳は、急速接近する熱源に対する警報を聞き、直後、直上から舞い降りる白い流星の如きトールギス・シューティングスターと、その機体が振り下ろす鎖付き棘鉄球を目にする。

 

(二十四機のMSが一分と持たずに!?)

 

 試験基地を襲った二十四機のMSが、アムロとゼファーによって壊滅した直後、残っていた機体が手動かあるいは自動で自爆した映像をモニター越しに見て、所長は深々と溜息を吐いた。

 無為に失われた生命への憐れみ、憤り、悲しみ、嘆き、そういった感情全てを凝縮した溜息だった。一見冷徹に見える容姿と雰囲気の女性だが、その実、情の深さや他者への共感性に関しては人一倍だ。

 

「今回の襲撃は上手く退けられましたけれど、これで終わると思われますか、ヨハン司令」

 

「今の情勢では、襲撃自体はこれで終わるだろう。だが力で攻めて駄目ならば、別の手を打てばいい。ジャミトフ・ハイマンは本来そちらの側の人間だよ、所長」

 

「はあ、そうなりますとウチの総帥の得意分野になりますわね。さて、どんな無理難題が吹っ掛けられるやら」

 

「なあに、そう無体なことは要求してこないさ。プルート財閥の影響力はロームフェラやアナハイムに匹敵する。たとえティターンズでも、早々無茶を通せる相手ではない。それにどういう結果になるとしても、ヘイデス総帥ならば悪い事にはならないよ」

 

 ようやく肩の荷が下りた、と隠居を決め込んだ自分をこうして引っ張り上げた若者の顔を思い、ヨハン司令は愉快気に笑うのだった。

 

■新代歴186年

 

 この年、プロメテウスプロジェクトの愉快な仲間達は一カ月をかけて世界一周旅行を楽しんでいた。“プロジェクトの解散”に伴って、これまで多大な貢献を成してくれたメンバーへのヘイデスなりの感謝であった。

 本社のあるギリシャからヨーロッパ、中東、アジアと回り、今は日本を訪れて各地の研究所に挨拶がてら観光を楽しんでいる。この旅行にはシュメシとヘマー、そして所長との間に設けた二人の子供達も同行している。

 

 今は宇宙科学研究所と隣接するシラカバ牧場というところを訪れており、ランバ・ラルはクラウレ・ハモンと共に馬に乗ってさっそうと駆け、黒い三連星は牧場産のチーズやミルクの試食をさせて貰っている光景が見られる。

 スペースコロニーでは早々体験できない経験に年齢を忘れて楽しむ者が多くを占め、プロメテウスプロジェクトという最高の遊び場を取り上げられることに不平不満を漏らしていたヤザンも、不満顔こそ浮かべているが大人しいものだ。

 

 ヘイデスは牧場主の牧葉団兵衛氏に挨拶と今回の訪問に応じてくれたお礼を重ねて告げてから、愛する妻と子供達の下へと向かった。なお、牧葉氏には困った時にはいつでもご連絡ください、と名刺を渡している。

 シュメシとヘマーは相変わらず通常の数倍の成長速度を見せて、今では十三、四歳ほどの絵に描いたような美少年と美少女へと成長している。

 

 ヘイデスの実子である次男クリュメノス(“気高き者”の意)と次女コレー(“娘・少女”の意)は、年相応の外見である為、実年齢以上に歳の離れた兄弟であるように見える。

 シュメシとヘマーはこの血のつながらぬ弟と妹を、殊の外、可愛がっていた。

 ゼファーだけ仲間外れにしては可哀そうだ、と双子が主張した事で、ゼファーの外部端末として作られたゼファーハロを抱えたヘマーがクリュメノスと手を繋ぎ、シュメシがコレーと固く手を繋いでいる。

 

 所長やカインズ博士、テレンス博士達は昨日、宇宙科学研究所の宇門博士の下を訪れて、実に有意義な話が出来たとホクホク笑顔だ。

 牧場を訪れるとあってブルーのスラックスに白いブラウス、それにルーズVネックベスト姿の所長の下へ、ジーンズにセーター姿というごくありふれた姿のヘイデスが近寄る。

 

「やあやあ、お待たせ」

 

「いえ、待ってはおりませんわ。それにしても土地が変われば馬も牛も変わるものですわねえ。観察しがいがありましてよ。

 それにこの牧場の子達はきちんと優しい気質ですから、こちらが節度を守れば危なくありませんもの」

 

「そうかい、それは良かった。博士達はちょっと眠たそうにしているけれど、宇門博士との話し合いの成果かな?」

 

「ええ、流石は宇宙研究の大権威。身になる話ばかりでした。これも宇宙科学研究所に出資してくれていたお陰です」

 

「君の役に立ったならなによりさ。シュメシ、ヘマー、クリュメノス、コレー、お馬さんや牛さんはどうだい。近くで見るととっても大きいだろう? それに優しい目をしているねえ。このご時世にこれだけ大きな牧場を経営しているのだから、牧葉氏は大したものだ」

 

 ヘイデスは普段、ビジネス関係の人間ばかりを相手にしているものだから、こうして腹の探り合いをする必要のない動物達を前にして、少し気の抜けた様子である。

 柵に手をついてのびのびと草を食む牛や馬達の姿を、穏やかな眼差しで見ている。お父さん、お父さん、とじゃれついてくる子供達の相手をしていると、自分が居るのが地獄の如きスパロボ時空だというのを忘れそうになる。

 まあ、ちょくちょく視界の中にシャアやらアムロやらユウやら、ソフトクリームを食べさせ合っているクリスチーナとバーニィやらが入ってくるので、完全に忘れるのは無理だったが。

 

「ねえ、お父さん、星の王子様が来たよ。独りぼっちになってしまった、可哀そうな王子様」

 

 と言葉が流暢になったシュメシが牧場の入り口の方を指さすので、ヘイデスは素直にそちらを振り返った。

 するとヘマーもまたゼファーハロを抱えたまま、人形のように整い過ぎた程に美しい顔に悲しみの色を浮かべる。

 

「故郷を追われて、大好きな人達を失って、辛くて苦しくて悲しんでいる人」

 

「姉さん?」

 

「どうしたの、お姉ちゃん」

 

 今にも泣きだしそうな表情になっているヘマーを見て、クリュメノスとコレーもつられて悲し気になるのを見て、ヘマーは微笑して首を横に振る。

 

「大丈夫、私が悲しいわけじゃないから。ね?」

 

 そうして子供達が語り合う中、ヘイデスは振り返った視線の先に見えた人影に、ひぐ、と喉の奥で変な音を出しかけ、慌てて飲み込んでいた。

 宇門博士を訪れた際に見かけたので分かってはいたのだ。宇宙科学研究所だけでは思い出せなかったが、彼を見た事でようやく“アレ”もかとヘイデスは認識したものだ。

 黄色いシャツに革のベストを着込んだ青年、宇門大介がヘイデスの瞳に映っていた。宇門博士の息子であり、このシラカバ牧場には頻繁に手伝いに来ている。

 だがヘイデスは彼の本当の名前を知っていた。デューク・フリード、『UFOロボ グレンダイザー』の主人公を務めるフリード星の王子であるが……

 

(まだマジンガーZの原作が始まっていない時系列だけど、彼ってもう地球に来ていたんだっけ? スパロボでしか知らないからあんまりよく分かんないんだよなあ。しかし、まあ、あれだ。宇宙征服を狙える規模の敵勢力の追加か……ああああああああああああ)

 

 プロジェクトメンバーと家族の為の旅行で、胃を痛める更なる要因と遭遇した彼の心痛は並みならぬものであった。子供達を心配させない為に笑顔こそ維持していたが、心の中では血涙と鼻血と吐血のコンボを決めて、のたうち回っていたのだから。

 

 

 さて、その夜、貸切ったホテルのバーカウンターでプロメテウスプロジェクトの主要パイロットが集まり、思う存分、お酒の味を楽しんでいた。

 

「なあ、総帥よお、どうしてこんなにあっさりとプロジェクトの解散を決めちまったんだあ? 俺にとっちゃ最高の職場だったんだぞ? それを取り上げる権利があんたにあるのか」

 

 と随分と酒臭いヤザンが、カウンターのスツールに腰かけていたヘイデスに溜め込んでいた不満を思い切りぶちまけた。

 山梨の甲州ワインの入ったグラスを手にしていたヘイデスは、ここで不満が爆発したかあ、と苦笑いを浮かべる。

 

 昨年の冬に発生した試験基地の襲撃を切り抜けた後、プロジェクトに出向している地球連邦のメンバーに異動の辞令が発せられて、プロジェクトからの離脱が強制的に決まっていた。

 また連邦からの資材や技術提供の収縮と打ち切りも決まった為に、ヘイデスはプロジェクトはもはや役目を果たしたとして、プロジェクトそのものの解散を決めたのだった。

 

「ふふ、ヤザン中尉にそこまで気に入っていてもらえたのなら、プロジェクトを立ち上げた甲斐がありましたよ。

 ジオニック社の債権を買えなかった焦りだ、とか色々と言ってきた連中の鼻は明かしてやりましたし、成果も十分上がりましたからね。これからはそれぞれの陣営で技術を発展させてゆく段階だってことです」

 

「ちっ、連邦とティターンズにまともな機体が作れりゃいいが、この面子程の腕っこきが集まるかよ」

 

 子供っぽく下唇を尖らせるヤザンは、ヘイデスの摘まんでいたシラカバ牧場産のチーズを鷲掴みにすると、乱暴に口の中に放り込んで味わいも何もない豪快な食べ方をする。

 流石に見逃せる範囲を超えていると、ブランとライラがヤザンの両腕を抱えて無理やり立たせる。二人もそれなりにお酒を口にしているが、酔う程ではなかった。

 

「ヤザン、そこまでにしておけ。お前の不満は分からないではないが、軍からの命令では俺達も逆らえん」

 

「ブラン大尉の言う通りさ。あんたがヘイデス総帥に愚痴を言ったって、プロジェクトの解散は取り止めになりゃしないんだ。すみませんね、総帥。ただあたしらもヤザンと同じ気持ちが多少はありますよ。ここは随分刺激的で退屈しない場所でしたから」

 

「うん、そう言って貰える事が僕にとっては、何よりの報酬です。貴方達と知り合えたのも、このプロジェクトで得られた財産です。また別の機会でお会いする事もありますよ」

 

「ええ、出来れば穏やかな場でお会いしたいものです。そら、ヤザン、行くぞ」

 

 そうしてブランとライラは、まだ言い足りなさそうなヤザンを引っ立ててゆく。そうすると別のソファでウイスキーやブランデーを飲んでいたジョニーとシン、黒い三連星達がヘイデスを振り返った。

 

「なあ、総帥、ゲシュペンストの次が出来たらこっちにも卸してくれよ。それまではゲシュペンストをジオンらしく改造して、やりくりしていくからよ」

 

「ライデン中佐の言うようにティターンズやOZが新しい機体を開発している以上、我々も同じところで足踏みはしていられん。そういう意味ではこのプロジェクトへの参加は、大変、意義のあるものでしたぞ、総帥」

 

 お酒が入っても真面目なシンに、ヘイデスはもちろんと頷き返す。既にゲシュペンストMk-ⅡやゲシュペンストS型をベースとしたスーパーロボット系列機などの新型機の開発はスタートし、少しでも戦力の向上を目指している。

 ヘイデスの睨むこのスパロボ時空の本編が始まる来年までに、どこまでの事が出来るか、ヘイデスは毎日を必死に働いて過ごしていた。

 

(まあ、ガルマのジオンならアクシズに協力するようなことにはならんだろう。ミネバに関してはユニコーンか、ムーンクライシスか、それとも逆襲のギガンティスか、どの末路になる? ギガンティスルートだけは止めてよね、ホント。ホントのホントにさあ……)

 

 結局、ミネバ・ラオ・ザビは後から出てくる作品によって行く末が変わるし、公式非公式色々とあるのだろうけれど、全部影武者で実は本物はどの作品にも出ていなかったって事でいいんじゃないの、とヘイデスの思考はあらぬ方へと移ろっていた。

 そこへ、ヘイデスを挟んでシャアとアムロがスツールに腰を落とす。シャアはウイスキーの入ったグラスを、アムロは地元産のビールを片手に持っている。プロジェクト発足当時は未成年だったアムロも、今ではすっかりお酒を飲める歳になっていた。

 

「おや、今度はお二人ですか。今日の僕は人気者ですね」

 

「これから話す機会も減るようだから、この際に総帥とこれまでしてこなかった話をしようと思ってね」

 

 そう告げると、アムロはリラックスした表情でビールに口をつけた。

 

「ヤザン中尉が言っていたように、僕にとってもこのプロジェクトはやり甲斐のある仕事だったよ。改めてこれからの自分の将来に向けて、向き合う機会にもなったと思う。それとシャアに対して過剰な期待を抱いていたのも、痛感できた」

 

「まるで幻滅したような言い方だな。だが、それは私も同じだ。どうも私達はお互いに対してもっと出来る筈だと、押しつけがましい考えを抱いていたようだったからな」

 

「ああ、例えば連邦を内部から改革するだとか、ジオンかあるいはスペースノイドの旗頭になって、新しい時代を切り開く革命者になれるはずだとか?」

 

 ピンと来たヘイデスがそう口にすれば、アムロとシャアはそろって苦笑いを浮かべてお酒を飲む。

 ヘイデスの見たところ、二人とも現場の指揮官あたりが性に合っているだろう。一つの勢力を率いる立場に立つのは、本人達からすれば望ましくはなさそうだ。

 まあ、したくないからといって、しないで済ませられる立場であるのを、なかなか許してもらえない二人ではあるが。

 

「お互いの事が分かる機会を提供できたならよかったですよ。それに、そういう意味ではお二人ともまだまだこれまでの人間と変わらないってことです」

 

「ほう、そういえば総帥の考えるニュータイプについて、これまで伺ったことがなかったが、良ければ聞かせてもらえないか?」

 

 シャアの瞳はサングラスの奥に隠されていて、今、本気なのか酒の席の話で済ませるつもりなのか、ヘイデスには読み取れなかった。

 まあいいさ、とヘイデスは誤魔化す選択肢を放り捨てて、正直に胸の内を語った。スパロボプレイヤーとしての客観的な意見と、そしてこの世界に生を受けた人間としての主観を交えた感想である。

 

「ニュータイプですか、そうですねえ、人類が宇宙環境に適応して進化するってのはあり得る話です。だって、アースノイドはいわば地球環境に適応した人類なんですからね。だったら宇宙にだって適応するでしょうよ。

 その適応の仕方が宇宙という広大な空間で、認識力が拡大化するという説も納得できますよ。だからといって慈愛に満ちた精神を得られるだとか、スムーズに相互理解が出来るようになるか、というとかなり難しそうです。

 言語という意思表示の為のツールを得た今の人類が、どれだけの歴史を重ねてきてもなお誤解と相互不理解を繰り返してきたかを考えれば、宇宙という新たな要素を加味しても早々上手くはいかんでしょう。

 誤解しないでいただきたいのは、僕は故ジオン・ズム・ダイクン氏のニュータイプの定義を否定しているのではなく、そこに至るまでにいくつかのステージを経るのが自然ではないかと考えているという事です」

 

「ほう?」

 

「アムロ中尉やシャア大佐、それに一年戦争中にニュータイプとされた人々は、その第一世代、はしり、変わり始めの方達だと僕は思っています。ニュータイプという蝶になる為の蛹、といったところでしょうか。

 僕はオールドタイプという言い方が嫌いなのでアースノイドと言いますが、アースノイドからニュータイプへと進化する過程の人々じゃないんですかね。

 お二人には、通信機器や言葉を介さずに相手の精神と共感し、意思を伝えあった経験があるそうですが、では分かり合えましたか? “分かる”のと“分かり合える”のはまったくの別物ですよ」

 

 アルコールが回り始めたのか、いつになく饒舌なヘイデスの言葉を、アムロとシャアは黙って聞き続ける。

 

「一方的にただ相手を分かるのは、ノックもせずに土足で相手の家に上がるようなものですよ。相手を傷つけず、分かり合える慈愛と相互理解の精神を備えるのがニュータイプだとして、お二人は自分をそうだと胸を張って言えますか?」

 

 ヘイデスの問いにアムロとシャアは苦笑いを浮かべるか、首を横に振るって小さく否定した。

 

「いや、とてもではないが胸は張れないな。伝えるだけと伝わるだけでは、確かに相互理解からは程遠いだろうな」

 

 過去の苦い思い出を想起し、アムロは悲し気に視線を伏せる。

 

「そう急がなくてもこのまま人類が衰退せずに、生活圏を宇宙へと広げていけばニュータイプに近い人々が放っておいても増えて、世代を重ねるごとにジオン氏の定義する真のニュータイプかそれに近い何かへ変わっていきますよ。

 ひょっとしたら、もっと良い生き物になる可能性だってあるんですから。自分の生きている内に人類の革新を目の当たりにしたいとなると、これはまた面倒ですが」

 

「いっそコールドスリープでもして、百年後くらいに解凍してもらえばいいのかもしれないな」

 

 冗談交じりに告げるアムロに、ヘイデスは大きく笑った。

 

「あははは、それは良いかもしれませんね! 寝て、起きて、上手い事、人類が革新を迎えた時代だったら、楽して儲けたってもんですよ。

 進化なんてもんは長い時間をかけて行うものなのですから、急ぎ過ぎない、後の世代に託す、ここら辺が待つコツですよ」

 

 ゲッター線あたりの進化は急すぎるし、物騒だし、虚無りかねないしね! とヘイデスは心の中で付け加えた。

 自分の言葉などで二人にどこまで影響を与えられるか分かったものではないが、少しは前向きになれると良い、とヘイデスは切に願いながら甲州ワインの最後の一口を飲み干した。

 

 

 地球連邦軍極東支部。日本を中心とした地域を管轄する連邦軍の拠点であり、数多くのスーパーロボット研究所が存在する事から、紛れもなく激戦区となるのが約束された支部である。

 その支部に支部長であり、ボルテスVのパイロットの一人、岡めぐみの父・岡長官、プルート財閥総帥ヘイデス、ヘパイストスラボの所長、弓教授、早乙女博士、剛博士夫妻、竜崎博士、南原博士、四谷博士、宇門博士、ムトロポリスの東山所長、そして連邦軍所属の葉月孝太郎博士といった超頭脳の持ち主達の姿がある。

 

 各員の手元にはそれぞれの博士達が抱え込んでいたとある資料が纏められ、配布されている。その資料に記載されている驚愕すべき内容に、博士達の表情は揃って苦々しく、渋いものとなっている。

 あらかじめそうなると知っていたヘイデスはともかく、他の博士達にとって、世界はこれほどまでに絶望に満ちていたのかと突き付けられたようなものなのだから。

 

「古代ミケーネの遺産を悪用するDr.ヘル、ゲッター線から逃れるために地下へと逃げた恐竜達の文明、古代の文献に記された眠れる異星人、そして宇宙の彼方で侵略行為を行っている異星人達……。

 一つ一つでも頭の痛い事態ですが、皆さんがそれぞれ連邦政府と協力して対抗策を練っていたものをすべてまとめると、これだけの量になるわけです。連邦政府が軍備を増強するのも納得でしょう?」

 

 ヘイデスは不謹慎ながらも自分の胃痛とストレスを多少共有できる状況に、ちょっと嬉しそうであった。

 異種や異星からの脅威が一つきりではなかったと思い知らされた博士達は、揃って重々しい雰囲気だが、それも無理はない。

 下手をしたら資料に記載された脅威がまとめて地球と人類に襲い掛かってくるかもしれないと考えれば、ヘイデスのようにたとえハッタリでも笑顔を浮かべられるわけもない。

 

「今回、皆さんにお集まりいただいたのは、この資料にある通り近い将来、これらの内のいくつか、あるいは全て、またあるいは更なる未知の存在を含めた“悪意ある敵”の襲来に備える為です。

 既に皆さんの中には独自に地球連邦政府と協力し、対抗手段の開発や建造に着手されている方もいらっしゃいますが、プルート財閥と地球連邦軍極東支部の全面的バックアップの下、より大々的かつ強力な計画を推し進めるべく、協力を仰ぎたいのです」

 

 ここで正面の大型モニターの画像が切り替わり、地球を背景にとある文字が表示される。

 

「地球の頭脳達の相互協力による、地球人類を守る鋼の守護神を作り出す為の計画、それが“SRG(Super Robot Guardians)”計画です。

 アースノイド、ルナリアン、スペースノイド、マーシャン、ジュピトリアンの区別なく、全地球人類を守護する剣にして盾を作り出す為に、そして平和な未来を得る為に、どうか皆さんの知性をお貸しください。残念ながら、人類に逃げ場はないのですから」

 

 

「……あ~」

 

 SRG計画発足の為のお膳立てと根回しを済ませ、顔色を青くした博士達と別れ、ギリシャにある本社へと戻ったヘイデスは、これで自分に出来る大体のことはし尽くしたな、と気を緩めていた。

 彼の机の上には、所長から提出されたさる兵器の資料が並べられていた。MBとして確立したバクゥもどきだが、早乙女博士との協力関係の構築から進化した恐竜との戦いが想定され、開発の方向性に恐竜型が追加されたのだ。

 これまではライオン、虎、狼などの動物型だけだったのに対し、恐竜型と昆虫型も所長の部下に当たるトミイ・タカラダ氏から提案されている。

 

(ゾイドというとシールドライガー、セイバータイガー、ブレードライガー、ジェノザウラー、デスザウラー、デススティンガー、ゴジュラス、レッドホーン、アイアンコング、ヘルキャット、コマンドウルフ……あんまり覚えてないもんだな。

 というかゾイドって滅茶滅茶多くなかった? ええっと、スパロボにも数作が参戦していた筈。

 確か、俺はアニメの三作品くらいは見ていたっけ? デスザウラーとデススティンガーがとにかくでかくて強かったのは覚えているけど、ヤザンあたりが乗ったら似合いそう)

 

 ヘイデスはアニメのデスザウラーとデススティンガーが特別なのであって、量産されたノーマル仕様とは全くの別物だということを知らない。加えてバトルストーリーという架空戦記の内容をほぼ知らず、アニメとスパロボでの知識しかなかった。

 

(恐竜帝国のメカザウルスを相手にするなら、少なくとも同じサイズにはしておきたいし、ゴジュラスやデスザウラーは全高五十メートル級にしてもらおう。

 ゾイドコアはないけれど、ゼファーファントムシステムを流用して、実際の動物のモーションを学習させた補助AIを開発して搭載か。恐竜に関してはシミュレーションになるわな)

 

 そうして達成感で動きの鈍くなった脳を動かして、改めて提出された開発計画の資料を見る。

 

「そうだな。モビルビーストではなくモビルゾイド(MZ)とカテゴリーを改めよう、うん」

 

 ヘイデスは、モビルはともかくなぜゾイドなのかと聞かれたら答えに困るが、たとえ形だけでもゾイドを真似る事への敬意と謝意を含めて、モビルゾイドの呼称を改める気はなかった。

 30バンチ事件の阻止、プロメテウスプロジェクトの解散、SRG計画の発足、MZの開発開始とヘイデスはおよそ彼の記憶と財力の及ぶ限りにおいて、手を打ったと言っていい。

 そう、だから、後は迎えるだけだ。新代歴187年、地獄の蓋が開くその時を。

 

<続>

 

■ゲシュペンストMが開発されました。

■ゼファーヴァル・ヴァロが開発されました。

■プロメテウスプロジェクトが解散しました。

■出向していた人々が元の所属へ戻りました。

■ゼファーハロが開発されました。

■SRG計画が発足しました。

■モビルビーストがモビルゾイドへ名称変更されました。

■モビルゾイドの開発が決定されました。

■ゲシュペンストMk-IIの開発が始まりました。

■ゲシュペンストS型の後継機開発が始まりました。

 

☆UFOロボ グレンダイザー が参戦しました!

☆超獣機神ダンクーガ が参戦しました!




本編に突入せずにここで終わらせてもよいのでは?


たぶん、居るだけ参戦もいくらか出るんじゃないかなあと思います。
とりあえずデスザウラーとデススティンガーとゴジュラスを並べて、メカザウルスと取っ組み合いさせたら絵になりそうだなと思います。
ちなみに好きなゾイドはレッドホーンです。


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第九話 本編に進むのが怖い主人公と作者

サブタイトルの通り本編に入る前の開発状況などを少々(´・ω・`)
本編を始めたいような始めたくないような……


「あれだけの成果を上げたプロジェクトを解散とは、随分と潔い判断だったな、ヘイデス総帥」

 

 ヘイデスの対面のソファに座し、そう告げたのは地球連邦軍統合参謀本部議長であるゴップだ。数年に渡る付き合いとなった老練なるゴップと、ヘイデスはジャブローにて会談中であった。

 

「落としどころとしては双方にとって妥協できるところでした。ただ、ジャミトフ閣下は配下の手綱を握りきれておりません。その点において、今後、ご自身の首を絞める結果に繋がるのではないかと案じております」

 

 ヘイデスの脳裏にはバスクとジャマイカンの顔が浮かんでいた。スパロボではおおむねジャミトフに忠誠を誓っている二人だが、原作を見るにジャミトフの意向に沿わない過激な独断行動に走っている。

 正直、この二人をさっさと更迭してもっとマシな人材を確保した方がよかったのではと思わないでもない。

 

 ただ、バスクほどの過激さであればスペースノイドの弾圧には適任であろうし、苛烈な作戦にも躊躇がないのは使い勝手の良さでもある、とはヘイデスも認める。

 ジャミトフの真意が、地球経済を破綻させて大混乱を引き起こし、地球に住む人々の大規模な粛清と地球環境の再生を果たす、というものであるのをバスクが知らぬのは、ほぼすべての作品で共通するところだ。

 

「ふっふ、君の助言を聞き入れる度量が彼にあればよいが、そのような機会はあるまいよ」

 

「ジャミトフ閣下はともかく、バスク大佐からは嫌われておりましょうから。私の助言がジャミトフ閣下の耳に届く前に潰されてしまうでしょうね」

 

 ヘイデスとしては、バスクに関してジオンに拷問を受けた過去は同情に値するが、その後の憎悪と怒りの発露の仕方が度を越している。

 地球人類規模で危急の事態に陥ったとしても、彼は己の感情を優先した行為に走りかねない。

 それこそスパロボMXで状況を省みず、ギルガザムネで戦場に乗り込んできたダイモスの三輪長官のように。三輪長官もたまに少しはマシなところを見せる事もあるのだが……。

 

「それに君もなんの報復もしなかったわけではないだろう。ティターンズの運営していたパイロット養成機関“スクール”を解散に追い込んだのは、君の差し金かね?」

 

「はは、どうでしょう。しかし、外科手術や投薬、暗示による記憶操作に肉体改造など外道の所業でしょう。

 歴史を振り返ってみればそういった行為の前例が枚挙に暇がないのは人類の悪性の証明ではありますが、だからといってこの時代になってまで率先してやる必要はありますまい。

 優秀なパイロットを得る為、あるいは人工ニュータイプを作り出す為という名分は、免罪符足り得ないと考えます」

 

「ふふ、オーガスタやニュータイプ研究所の連中は、次は自分達の番かと焦ったかもしれん。だがスクールをトカゲの尻尾代わりにしたことで、警戒の度合いは増した。次は同じようには行かんぞ」

 

「もしスクールを世間にリークした実行犯と会う機会があったなら、そうアドバイスいたします」

 

 澄ました顔で答えるヘイデスだが、目の前の御仁にはスクールに対して行った情報戦について、根拠の有無は別として読み切っているな、と手に汗を握りながら判断した。そう考えて言葉を選ばねば足を掬われるだろう。

 正直、この世界にもスクールが存在したのには驚いたが、スクールがティターンズ傘下の組織であったから、ここではOGシリーズの設定ではなく第二次スーパーロボット大戦αの方の設定が現実に組み込まれているのだろうと判断している。

 第二次αではスクールの生き残りであるアラド・バランガとゼオラ・シュバイツァーが、ティターンズ残党となったヤザンの下に配属されていたのを、ヘイデスは憶えていた。

 

 それはそれとして強化人間の研究をしている連中を一網打尽に出来なかったのは悔しくもあり、同時にフォウ・ムラサメやロザミア・バダムといった人々の運命を変える恐怖もあった。

 まあ、この世界ではコロニーが落ちていないから、コロニー落としの恐怖を利用した暗示を受けている人々は、原作とは異なる人生を歩んでいる確率が高いわけだけれど。

 

「スクールに関わっていた研究者や軍人は拘束されたが、スクールの生徒達、この場合は被害者と言うべきか、彼らは君のところで引き取ったそうだな、ヘイデス総帥」

 

「ええ。元々、難民や戦災孤児向けの支援事業を手広く行っておりましたし、スクールのような特別な事情を持った子供達となれば、一般の孤児院や養護施設では手に余ります」

 

「ティターンズの為に命の全てを捧げるよう教育していたようだからな。存在自体が機密の塊だ。真っ当な場所では養えんし、また世に出す事も憚られる。その点、君の懐の内ならば地球連邦としても一定の信用は置ける。

 これは皮肉として受け取ってほしくはないのだが、引き取られた子供達も君ならばそう不幸な目には遭わせまい。違うかね? 例え機動兵器のパイロットとしてしか、生きる術を知らなくてもだ」

 

 ゴップの言葉はヘイデスの胸の内をグサリと刺した。プルート財閥で引き取ったスクールの子供達は、オウカ・ナギサ、ラトゥーニ・スゥボータ、アラド・バランガ、ゼオラ・シュバイツァーを筆頭に数十名。

 スクールが摘発された際に保護された子供達は、全てプルート財閥が引き取っている。

 ラトゥーニに関して言えば、失敗作としてスクールから放棄されたのを善良な連邦軍人の男女に助けられたという経緯があり、他の三名とはその点で異なる。

 

「確かに今の彼女達はそれしか知りませんが、一年後、五年後、あるいは十年後であっても彼女らが望む夢や目標を叶えられるように、あの子達の可能性の芽を育てる手伝いをするつもりです。

 話が逸れましたが、閣下、SRG計画へのご支援、改めて感謝申し上げます。閣下の鶴の一声が無ければ、岡長官の協力があるとはいえ、極東支部で大々的に計画を推し進める事は出来なかったでしょう」

 

「必要だからしただけの話だよ。わしも初めて地球内外の敵性知性体を纏めた資料に目を通した時には、我が目と正気を疑ったよ。その次にはこの世界の正気を」

 

「心から同意します。あの資料こそが間違いであったなら、全地球人類にとってなによりでした」

 

「ティターンズもいざ人類以外の脅威が現れれば正規軍らしく戦って欲しいものだが、いずれにせよわしが退役する前にこのような事態を迎えるとは、人生は何があるか分からん。だからこそ、対抗策として目下最有力のSRG計画への全面的支援を行うのだ。

 一年戦争では地球連邦とジオンのどちらかが倒れるまで争ったが、今回は地球人類が一人残らず全滅しかねん事態だ。一人でも多くの地球人類が、少しでも長く繁栄できるよう、わしなりに力を尽くそう。今日まで随分と甘い汁を吸わせてもらってきた礼代わりにな」

 

「随分と……正直な話をしていただいて恐縮です」

 

 他人の目と耳のないゴップのオフィスとはいえ、ヘイデスとしては予想を超えて胸襟を開かれた気分であった。そんな若者の驚いた顔にゴップは楽しそうな笑みを浮かべる。

 

「なに、柄になく奮起しているのかもしれん。まさか自分がアニメーションの向こう側の世界の住人のように、地球圏の未来を担う戦いに関与することになるなどと夢にも思わなかったよ。

 ジオンとは地球人類同士の争いで、あれも十分、SFの部類だったが、これから起こる戦いはファンタジーのようでさえある。しかし、紛れもない現実なのだ。そうだろう?」

 

「残念ながら」

 

「ふふ、一年戦争を経てスペースノイドとの新たな融和を謳いながら、ティターンズによるスペースノイドへの弾圧を黙認した地球連邦が、どこまで異なる種族と異なる星の侵略者に抗えるか。地球人類の底力の見せどころといったところだな、ヘイデス総帥」

 

「プルート財閥の全てを持って、悪意ある侵略者を撃退する助けになってみせましょう。孫の顔を見ない内に死にたくはありませんから」

 

 これまでは穏やかな晩年を過ごしたい、と考えていたヘイデスの最近増えた新しい欲望が、それであった。可愛い我が子らの可愛い可愛い孫の顔が見たい、これである。

 本気でそう告げるヘイデスに、ゴップは目の前の不気味なほどの先見性の持ち主が、途端に人間味を帯びた若者に変わった事実がおかしくて堪らなかった。人間、様々な面があるものだと、改めて痛感させられた瞬間である。

 

「アナハイムやロームフェラなどよりよほど信頼できると、今の言葉で確信したよ、ヘイデス総帥。確かにそれでは死ねんだろうさ」

 

 

 ゴップとの会談は、トレーズとはまた異なる意味でヘイデスにとって重圧を感じるものであったが、それでも彼が地球連邦軍内の最大の支援者兼理解者であるのは、間違いなく大きな力となる。

 ヘイデスはゴップから今後もSRG計画への協力の確約を取り付けられた結果に安堵し、我が家と同じくらい馴染みのあるヘパイストスラボの格納庫で、地球圏の超頭脳達から得た協力の成果物を眺めていた。

 格納庫の高い位置に渡された可動式のキャットウォークの上から、ヘイデスは所長と肩を並べている。所長はタイのヤオ族の民族衣装と白衣の組み合わせだ。

 見事な藍染めの生地に鶏頭(けいとう)の花を思わせる、もこもことした赤い襟巻き状の袖が特徴的な衣装である。

 

「二十メートル級のロボットに大火力を持たせて敵軍を正面突破、というコンセプトを与えた結果ですが、これでは量産には向きませんわねえ。元から量産前提ではないとはいえ、ゲシュペンストMk-Ⅲの名称は別の機体のものにすべきでしょう」

 

 所長とヘイデスが視線を向けているのは、赤い装甲に箱状の肩、右腕には回転弾倉と杭を組み合わせた武装、そして頭部には赤い角を持った機体だ。サイズ的にはMSの部類だが……。

 

「それじゃあ、テスト時のコードネーム通りにアルトアイゼンでいいかい?」

 

「うーん、時代に逆行した質量兵器を主武装にした機体ですし、ドイツ語にあやかるならテスト時のコードネーム“アルトアイゼン”をそのまま付けるのが、適当というのは分かりますが、少々蔑称めいています。本当によろしいので?」

 

「ゲシュペンストベースの機体だし、ドイツ語を使いたいところさ、それにアルトアイゼン、つまりは“古い鉄”でも僕達はこれだけの機体が作れるっていう意味でどうかな?」

 

「それでいいのなら、私もこれ以上は言いません。では、私達得意のMSをベースにSRG計画で得た技術とノウハウを投じた最初の機体の名前はアルトアイゼンで登録いたしますわ」

 

 アルトアイゼン――スーパーロボット大戦COMPACT2第1部で初登場した、同作品の主人公機だ。その後はOGシリーズに常連として出演し、スパロボプレイヤーに知られた機体だ。

 癖のありすぎる機体特性から正式量産機には採用されなかった機体だが、SRG計画においても量産を前提とした機体ではなく、作り慣れたMSにスーパーロボットの技術を応用するのを目的とした試験機といった位置づけだ。

 そのような経緯を経て開発された機体であるから、外見は本家アルトアイゼンに酷似していても、中身や武装は天地程にもかけ離れている。

 

「それじゃあ、解説をお願いしてもいいかな?」

 

「では始めさせていただきます。敵部隊に正面突破を仕掛けるコンセプト上、機体を頑健にすべく、装甲には実弾・ビームを問わず高い耐性を有するガンダニュウム合金を採用しています。

 また関節を主に柔軟性を要する部位にはゲッター合金を使っています。動力には光子力エンジンを搭載。

 推進器にはトールギスで培ったスーパーバーニアを発展させたバーニアとスラスターを搭載し、直線の加速性能ならばトールギスにも勝ります。トールギスを研究し、改造してきた成果ですわね。もちろんミノフスキークラフトも搭載しました。

 武装は右腕のリボルビング・ステークZ。超合金Z製の杭をビームカートリッジの爆発力で敵機体に打ち込み、ゲシュペンストのプラズマステーク同様、内部から高温高出力のプラズマで焼き尽くします。相手が無機物だろうと有機物だろうと効果は絶大ですわ」

 

「あの右腰に付いている箱型の物体は?」

 

「ステークのスピードローダーを装填する為のサブアームです。ビームカートリッジが六発までの装填となりますから、撃ち尽くしたら再装填の必要がありますの。

 ただ、ビームライフルのEパックより装填に手間のかかる代物ですから、いっそ再装填用の装備を用意しました。せっかく空いている左手を再装填に費やして塞いでしまっては、それこそ無駄ですもの」

 

「合理的だね。それじゃあ両肩の箱状の装甲は? いかにもパカッと開きそうだよ」

 

「あれも正面突破用の武装を詰め込んであります。特注のタングステン製ベアリング弾をみっしり詰め込んでありまして、それをシャワー状に発射して点ではなく面での破壊を行います。名称はスクエア・クレイモア」

 

 チタンじゃないんだ、と心の中でヘイデスは漏らした。まあ、チタンは軽量金属だから、重量金属のタングステンの方が破壊力はありそうだ。

 

「左腕の武器は普通のマシンキャノンかビームキャノンかな?」

 

「普通のというのも変ですが、まあ、アルトアイゼンの武装の中では平凡な部類でしょうね。三連装のマシンキャノンです。手首内側に仕込んだビームサーベル兼用のビームガンと並び、この子のメインとなる射撃武装ですわね」

 

「ビームガンとビームサーベルの兼用は、すっかりウチの十八番になったね」

 

「あら、パイロットの皆さんには好評ですからいいんじゃありません? あとは光子力エンジンを採用した恩恵で、メインカメラアイから光子力ビームが撃てます。流石は光子力、威力はそこらのメガ粒子砲の比ではありません。

 頭部の赤い角も高熱化して敵機を溶断するヒートホーンとして使えますし、またそれ自体が放熱板として機能して、ホーンファイヤーという摂氏二万四千度の熱線が放てます」

 

 ちなみに本家マジンガーZのブレストファイヤーは、摂氏三万度である。本家の八割ほどの威力のようだ。

 

「これまで聞いた限りだとステークとクレイモアで正面を突破する感じかな。そうなるとガンダニュウム合金の装甲でも少し怖いね」

 

「ええ。なので気休めですが光子力バリヤーを装備させておきました。MSクラスのマシンガンや並みのビームなら、光子力バリヤーで防げます。

 その間にトールギス譲りの加速で一気に距離を詰めて、クレイモア、ステーク、光子力ビーム、ホーンファイヤーを一斉に叩き込む戦法になりますわね」

 

 ヘイデスは、うわあ、と心の中で漏らした。原作以上の重装甲と高火力である。ひょっとしたら加速性も上回るかもしれない。ワンオフの特注機とはいえ、いきなりどえらい代物が出来たものだ。

 

「でもそうなると加速する為の距離が必要になりそうだね。火器を叩き込んだ後に距離を詰められると、相当厳しいんじゃないかい?」

 

「そこは竜崎博士の御協力で解決しています。竜崎博士と和泉博士の開発されているロボットの技術を応用して、アルトアイゼンは限りなく人体に近い動きが可能になっています。

パイロットに心得さえあれば、空手、柔道、ジークンドー、システマ、なんなら新体操や社交ダンスだってやってのけますわよ。

 接近戦では邪魔になるクレイモアの弾倉はパージできますし、お腹の辺りにオレンジのパーツがありますでしょ?

 そこにドムの拡散ビーム砲をヒントに、光子力ビームシャワーを仕込んであります。短距離用の火器ですが、MSなら穴だらけになる出力は確保してありますわよ。

 仮にステークの弾倉を掴まれるか不具合で撃てなくなったとしても、そうなったら手首のビームガンを撃つかサーベルを起動すれば、あら不思議、即席のビームステークの出来上がりです。

 右手のステークを掴み止められたなら、空いている左手で敵機を掴み返し、ビームステークを打ち込めば一発逆転です」

 

 ふむふむ、とヘイデスは相槌を打ちつつ、アルトアイゼンがソウルゲインに距離を詰められて大破された時のシーンを思い浮かべていた。

 それを目の前の魔改造アルトアイゼンに置き換えると、近づいてきたソウルゲインに弾倉を掴み止められたら、“かかったな、あほが!”と光子力ビームシャワーを浴びせ、装甲を焼きつつ目潰しをし、そこで相手の行動が遅れたなら一気に光子力ビームとホーンファイヤーを叩き込み、トドメに左手のビームステークをお見舞い、といったところか。

 

(これは……リーゼにはならないかも? 最初から成果を出し過ぎでは?)

 

「とはいえ近距離戦に特化していますし、運用するのなら正面から突っ込むこの機体を援護する中~長距離戦に優れ、機動力に長けた機体とペア運用するのが有用でしょう」

 

「で、そのパートナーがこっちの翼付きの白い機体というわけだ。こっちは……うん、ヴァイスリッターかな」

 

 白を主体としたカラーリングに優美な曲線を描くフォルムの機体が、アルトアイゼンの左隣に立っている。背にはいかにも飛行用といった翼があり、優れた機動性を有しているだろうと期待できる外見だ。

 

「白騎士ですか。アルトアイゼンに比べると随分とまともなネーミングですわね。ご明察の通り、こちらがパートナー機です。

 アルトアイゼン同様ミノフスキークラフトを搭載し、ガンダニュウム合金製の軽量かつ堅牢な機体で自由自在に空を飛ぶ機体です。まあ、トールギスよりは重いですが、ガンダムよりは余程軽い機体ですわよ。

 武装は左腕の固定式ビームサーベル兼用の三連ビームキャノンに、実弾とビーム弾を撃ち分けるオクスタンランチャー。トールギス・コメットのドーバーランチャーのデータが活きました。

 こっちも光子力エンジンを積んでいますから、ビームは全て光子力です。Iフィールドは意味を成しませんね。

 光子力バリヤーは、機体の防御以外にも空中での空気抵抗を軽減する為にも積んでいます。マグネットコーティングに超電磁テクノロジーを融合した超電磁コーティングを施してありますから、機体の運動性、反応速度はゲシュペンストMk-Ⅱを上回ります」

 

「空戦性能はトールギス以上に仕上がったと期待していいのかな?」

 

「はい。トールギス以外にも、連邦空軍のGT-FOURとジオンのザクスピードやエアリーズのデータが役に立ちました。

 一年戦争時に可変MSを実用していた事実には、地球連邦とジオン公国侮りがたしと技術陣一同驚愕したものです」

 

「この間ロールアウトしたゲシュペンストMk-Ⅱは現場では好評だけれど、アナハイムと連邦のサナリィも負けじといい機体を出してきたものね」

 

「ジムⅢにジェガン、ヘビーガン、Gキャノンですか。確かにあれらは良い機体です。当たり前と言えば当たり前なのですが、アナハイムと連邦にも優秀なスタッフが揃っていますね。

 まあ、ウチのゲシュペンストMk-Ⅱは基本武装こそ据え置きですが、ミノフスキークラフトで飛べますし、ビームシールドも両腕に搭載しましたから? そうそう負けはしませんわ!」

 

「うん。僕もあれはゲシュペンストに次ぐ傑作機だと思う。それで話を戻すけれど、アルトアイゼンとヴァイスリッターの性能はSRG計画の名に恥じない代物だと思うよ。後はパイロットかな?」

 

「そこです、問題は。スペックをフルに発揮したなら、セット運用で数個大隊とだって渡り合えるMSの皮を被ったスーパーロボットですが、パイロットを激しく選ぶという兵器としての欠点を抱えこんでいます。ジェスやミーナ、アーウィンとグレースなら扱えるでしょうけど……」

 

「ジェスとミーナはゲシュペンスト・リーゼのテスト中だったよね?」

 

「ええ」

 

 ゲシュペンスト・リーゼとはリーゼ=巨人の名前の通り、対機械獣、対メカザウルス、対化石獣etcを目的とした巨大スーパーロボットを開発する為のテスト機として、五十メートル級にサイズアップしたゲシュペンストS型だ。

 装甲、エンジン諸々SRG計画で得られた新装備をてんこ盛りにしてあり、こちらもまたスペックをフルに発揮すれば、局地的な戦況を単機でひっくり返せる怪物マシーンだ。

 

「アーウィンはビルトシュバイン、グレースはスペースゴジュラスのテスト中ですから、この子達を任せるのは酷です」

 

(スペースゴジュラス、あのスペースゴジラというかスペースメカゴジラみたいなのか……)

 

 ビルトシュバインはゲシュペンストから随分とガンダムに近い外見になった機体で、ヘイデスはその後に開発される機体について、おおよそ察しがついていた。

 ヒュッケバインである。ただ、今のところブラックホールを制御する技術はないから、動力が何になるのか分からない。ヘリオースもどきから面白いデータが取れた、とは耳にしているが……。

 

「そういえばゾイド……MZの進捗はどう?」

 

「ええ、まあ、動物型と昆虫型のモーション取りは順調です。トミイさんの設計したシールドライガー、セイバータイガー、コマンドウルフ、ゴジュラスをはじめ既に完成した機体は多いです。ただ基本的に格闘戦ありきの機体なのですが、コックピットの位置が……」

 

「そこまで言い淀むとなるとよほどまずいの?」

 

「シールドライガーを例に挙げますと、頭部にコックピットがあるのです。仮に爪か牙で敵機に飛びかかったとして、攻撃が外れてカウンターの一撃を貰うとします。その時に、頭部にコックピットがあったら?」

 

「格好の的だね……。こう、グシャっと」

 

「そうなりますでしょ? せめて胴体内部か背部に回せないかと設計を見直しているのですが、そうなると全体のバランスが崩れてしまって、せっかくの持ち味が活かせません。

 最悪、コックピットの位置はそのままにキャノピーの素材を強化するか、コックピット限定でバリヤーを備えるかしないといけません。グレースに任せているスペースゴジュラスは、コックピットブロックを特別頑強にしておきましたけど……。

 移動や格闘戦時の衝撃はリニアシートである程度緩和できるのですけれど、悩みどころですわ。まあ、トミイ氏のセンスに任せるのが一番だとは思います」

 

「いい解決案が出ると良いね」

 

「実際に乗って戦う方の事を考えると、名案が出るようにと切に願っています。連邦の葉月博士のアイディアに大いに助けられているところもありますし。ただあちらの獣戦機? という兵器ほど複雑怪奇にはならないでしょう」

 

 所長には珍しく獣戦機の話になった途端、頭が痛いとばかりに額に左手を当てて溜息を零す。

 

「流石に一つの機体に戦闘機や車両形態、獣形態、人型形態の変形機構と更には合体機構まで盛り込むのは、君でもびっくりか」

 

「びっくりというか、それを実現して見せる葉月博士の才能と努力には称賛しかありませんが、盛れば盛るほど実用からは遠のきますから。最初から合体した状態の機体を作ればいいのでは? とか三つも形態を持たせる必要がある? とかついつい考えてしまいます」

 

「ゲッターロボや超電磁マシーンもそうだけれど、スーパーロボットはどれも個性の爆発だからね」

 

「話を聞けば、確かに必要があるからそうしていると分かるのですけれど、カインズ博士も私共々随分と首を捻りましたのよ?」

 

「心から同意するよ。でも、誰も彼もあっと驚くような才人だったでしょう? もちろん君自身もね」

 

「ふふ、確かに世界の広さを思い知るくらいには素晴らしい方達ばかりでした。才能だけの技術者なら多くを目にしてきましたが、才能と人格を両立した稀有も稀有な方達ばかりでしたしね。

 それはそれとして、SRG計画はアルトアイゼンとヴァイスリッターに続く新しい機体の開発を進めていますし、ゲシュペンストMk-Ⅱの次の機体の設計もほぼほぼ済んでいますわ。後は侵略者との戦いに間に合うかどうかです」 

 

「そう、それが一番の問題かもしれないね。間に合うのかどうか」

 

 機械獣やメカザウルス、マグマ獣、化石獣、円盤獣そのほか諸々の敵勢力が、現在地球連邦の主力兵器であるゲシュペンストやジェガン、ハイザック、リーオーでも十分に戦える性能である事を祈るばかりだ。

 原作でそれらに勝利したスーパーロボットがあるとはいえ、スパロボ時空では一機だけだった敵機が量産されてくるわけで、原作と同じシチュエーションでも物量には格段の差が出てくる。

 スーパーロボット達の必勝を期するには、彼らを助ける味方もまたそれ相応の力が必要なのだ。

 ヘイデスは、正義の味方を助けるスポンサーを自負する自分には、それを用意する責任があると固く決意していた。

 

<続>

 

■アルトアイゼン(殺意マシマシ)が開発されました。

■ヴァイスリッター(殺意チョイマシ)が開発されました。

■ゲシュペンストMk-Ⅱが開発されました。

■ゲシュペンスト・リーゼが開発されました。

■ビルトシュバインが開発されました。

■スペースゴジュラスが開発されました。

■セイバータイガーが開発されました。

■シールドライガーが開発されました。

■コマンドウルフが開発されました。

■ゴジュラスが開発されました。

 

■オウカ・ナギサが保護されました。

■ラトゥーニ・スゥボータが保護されました。

■アラド・バランガが保護されました。

■ゼオラ・シュバイツァーが保護されました。

 




アルトアイゼンとヴァイスリッターの中身はまったくの別物となりました。パイロットどうしよう。

私、正直に申し上げるとゾイドのバトストに詳しくないのですが作中に出た機体以外で比較的初期の技術で量産できそうなゾイドってなんになりますでしょうか。作中の状況を考えるとあまり種類は出せないし、他にもうこういう機体があるから開発する必要性が薄い、となると出しにくいですし。
とりあえず開発済みの機体に加えてデスザウラーとデススティンガーやジェノザウラー、ブレードライガー、ウルトラザウルス辺りは出したいところ。
デスシリーズとウルトラザウルスはアニメ版準拠の百メートル単位の大きさにする予定です。

後、開発の時系列は気にしない方向で。その内、ジェムズガンやジャベリンも実装されますしね。でもティターンズの主力はまだハイザック。後々マラサイやバーザムですね。ガンバ!


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第十話 タイトル画面でスタートボタンが押されたらしい

ゾイドの御意見ありがとうございました。
ゾイド好きの皆さんが想像をはるかに超えて多くいらっしゃって、半ばアンケートめいてしまったとはいえ感想が百件を超えるとか、ちょっと怖いくらいでした。
本家のゾイドからはかけ離れた設定になってしまいますが、ちょこちょこと出番を用意できればと思います。


プロローグ「燃える日本」

 

 新代歴187年。

 ジオン公国残党の最大勢力アクシズがジオン共和国の要請を一切無視し、地球圏へ急速に接近。

 またスペースノイド弾圧を繰り返すティターンズやOZに対する反発から、反地球連邦組織エゥーゴやカラバ、またコロニー活動家らによる独自の抵抗運動が活発化した年。

 

 しかし地球連邦政府ならびに連邦軍、そしてSRG計画の関係者達にとっては地球人類の内輪揉めより、よほど気を割かなければならない非常にして緊急の事態が発生した年である。

 地球人類の歴史上、初めて公的に地球外生命体、そして地球内異種生命体による侵略行為を受けた年となったからだ。

 

 人類有数の頭脳を持つDr.ヘル率いる機械獣軍団は、世界征服の為に富士山麓に眠るジャパニウム鉱石を求めて重要目標とした日本へ侵略を開始。

 かつて古代の地球で栄えながらも降り注ぐゲッター線に耐えきれず地下に逃げ、独自に進化したハチュウ人類の恐竜帝国は、天敵たるゲッターロボを有する日本を侵略対象の第一歩とした。

 一万二千年以上の昔、栄華を誇ったムー帝国と争い、共に海の底へと沈んだ妖魔大帝バラオ率いる妖魔帝国が長き眠りより目覚め、悪魔世紀を実現する為に地球人類へ暴虐の牙を剥き、同じく眠りから目覚めたムー帝国の守護神ライディーンの撃破を第一の目標に掲げた。

 

 永い眠りから醒め、地球征服活動を始めたキャンベル星人は世界中に侵略の魔手を伸ばしながらも、南原コネクション擁する超電磁ロボ・コンバトラーVに尖兵を撃退されたことをきっかけに、コンバトラーVを大きく敵視。

 角無き生物は労奴以下の生物であるから、角あるボアザンに支配されるべきと宇宙に植民地を広げるボアザン星人もまた角持つ髑髏という特異な旗艦に乗り、地球への侵攻を開始。

 

 地球連邦はコロニー落としが避けられた事で人口と工業施設、連邦海軍その他諸々が無事であった為、原作に比べればはるかに恵まれた状態だったが、複数の侵略者を相手にするにはありったけの国力と戦力を投入する必要に迫られた。

 ヘイデスからすればまだこれで全てではないから、堪ったものではなかったが、それでも世界中の人々と心を一つにしたのは間違いない。

 すなわち――いっぺんに来るんじゃねえよ! だ。いかんせん、地球人類への宣戦布告の時期と内容も若干被り気味だったので。

 

「お互いに潰し合えばいいのに、あいつら。そうなると実際、どの勢力が一番強いんだろう? 星間国家のキャンベルかボアザンが妥当か?」

 

 とヘイデスは思わず執務室で零したものだ。下手にスーパーロボット軍団で返り討ちにし続けていると、これは手強いと見た勢力同士で手を組んだりするから厄介だ。

 ボアザン星人は角の有無が階級制度のアイデンティティになっているから、同じ異星人勢力とはいえ、いや、だからこそキャンベルとは手を組みにくいのではあるまいか。地球の次は貴様らだ、とお互いに考えてもおかしくない。

 星間国家という規模を考えればDr.ヘルや恐竜帝国、妖魔帝国といった地球勢力は征服先の武装勢力であるわけだから、相当に追い詰められるまでは手は結びにくいに違いない。

 

 ヘイデスの私見に過ぎないが、あり得るとしたら地球側のDr.ヘル・恐竜帝国・妖魔帝国の三者連合か。

 ボアザンとキャンベルがバーム、ムゲ・ゾルバドス、暗黒ホラー軍団と星間連合を組んだ例もあるが、お互いにピンピンとしている内は手を組むまい。

 バーム、ベガ、ムゲ・ゾルバドスはまだ確認されていない。どれも来ないで主役ロボだけが居るだけ参戦ならいいのに、とヘイデスは日々祈り、その祈りが無駄になった場合に備え続けるだけだった。

 

 

 侵略者達はそれぞれの戦略に則って世界各地に攻撃を仕掛けていたが、先に述べた通り最も重点的な攻撃を受けたのは、地球連邦軍極東支部のお膝元にしてスーパーロボット達の存在する日本だった。

 スーパーロボットの名前に相応しく、MSが可愛く思える超性能を誇るそのロボット達のパイロットは今のところ全員が民間人だというのだから、政府や軍関係者はすわアムロ・レイの再来かと驚き、また良識ある者は民間人に重圧を担わせる現実を嘆いた。

 そして今日も日本は侵略者達に蹂躙されんとしていた。

 

 山々の合間をエレカ用の高速道路が蛇行して渡された山間部に、おおよそ二十メートル前後の異形の兵器――機械獣達が数十体もの数で展開している。

 ジオン水泳部にも勝る奇怪なシルエットは、昨今のMSを見慣れた者からすれば冗談としか思えないが、秘めたる戦闘能力はDr.ヘルが世界征服の野望に燃えるのに相応しいものだ。

 機械獣の頭上にはどう形容したらよいのか、銀色の鯨めいた胴体から武骨な翼を開き、赤い目と鶏冠を備えた飛行要塞グールの姿がある。

 グール内部では紫のフード付きマントをすっぽりと被った、男女の半身が結合したこれまた奇妙な姿のあしゅら男爵が機械獣達の指揮を執っていた。

 

「行けえ! 機械獣軍団よ、今日こそマジンガーZと兜甲児の首を偉大なるDr.ヘルに捧げるのだ!」

 

 頭部の左右から鎌を生やした骸骨の巨人ガラダK7、爬虫類めいた二つの首を生やしたダブラスM2、キングダンX10、アブドラU6などが複数生産されて軍勢を成し、眼前で進軍を阻む鉄の城マジンガーZへと一斉に駆け出す。

 特徴的な胸部の赤い放熱板、MSとは全く異なる人面に近い顔、超合金Zで作られた無敵の体を持つスーパーロボットは、弓教授の娘・弓さやかのアフロダイAと親友ボスの乗るボスボロットと共に敢然と立ち向かう。

 

「やいやい、あしゅら男爵、また性懲りもなくやってきたな。このマジンガーZが相手になってやる。今日も負けたら、今度こそDr.ヘルに愛想を尽かされるんじゃないのか!」

 

「ほざけ小僧! 邪魔な地球連邦や異星人共を片付ける為に、今日こそ貴様らを倒してジャパニウムをDr.ヘルのものとするのだ! 者共、かかれ!!」

 

「来い、おじいさんのマジンガーZはお前達なんかに負けやしないぞ! 行くぞ、さやかさん、ボス!」

 

 大地を揺らしながら、正義と悪のロボット軍団が戦意を滾らせて走る! しかし、もしこの場にヘイデスのようにスーパーロボット大戦のプレイヤーが居たならば、あるいは原作のマジンガーZを知る者が居たならば、我が目を疑ったに違いない。

 マジンガーZの背中から伸びる二門の巨大なキャノン! 足には巨大なミサイルポッドが括りつけられているではないか!

 

 マジンガーZばかりではない。さやかの乗る女性的なデザインのアフロダイAもまた両腕にマシンガンを持ち、腰にはガンベルトを巻いてホルスターには武骨なリボルバーが収まっている。

 ボスのボスボロットに至っては武蔵坊弁慶よろしく背負った籠から無数の刀やら槍やら、ロケットランチャー、ビームライフル、ミサイルランチャーが覗いている。

 MSの増加装甲の要領で開発された外付け武装が、マジンガーZらの装備した武器の正体だ。機体本体には一切手を加えず、任意にパージできるように工夫された火器群はSRG計画のオプションであった。

 

「くらえ、光子力ビームキャノン! 光子力ミサイルもだ!」

 

 甲児の操縦により、マジンガーZの肩に背負われた大口径の光子力ビームキャノン二門が光子力の奔流をぶっ放し、足のミサイルポッドから二基で合計十八発の光子力ミサイルが噴射煙を空中に描きながら機械獣軍団へと群がる。

 

「まだ終わらないぜ、光子力ビーム! 冷凍ビーム! ドリルミサイル!」

 

 これに加えて元々マジンガーZが内蔵している火器も発射される。瞳からは光子力ビームが、耳にあたる突起物からは冷凍ビームが、機械獣へと向けて突き出された腕が肘から折れてそこからはドリルミサイルが!

 ヘパイストスラボの所長をはじめMS開発者を驚愕させた、マジンガーZ単独でMS一個中隊にも匹敵しよう膨大かつ高火力の武装の数々よ!

 

「マジンガーZだけじゃないわよ!」

 

 さやかがマジンガーZに続けとアフロダイAの両手に持たせた光子力ビームマシンガンを撃てば当たるとばかりにトリガーを引きっぱなしにし、さらにブルンと金属であるはずのアフロダイAの乳房めいた部位が震えると、それは光子力ロケットを内蔵したミサイルの正体を露にして発射される。

 元々はジャパニウム採掘用のロボットだったアフロダイAは、戦闘用に転用されてなおパワー不足を指摘された為、マジンガーZ以上に武装オプションが整えられていた。ボスボロットの竹で編んだような背負い籠の武器のいくつかはアフロダイA用のものだ。

 さやかは光子力をチャージしたマガジンが空になると、すぐにマシンガンごと手放して、アフロダイAの腰に巻かれたホルスターから光子力ビームマグナム二丁を抜き、一丁に付き六発ずつの圧縮した光子力のマグナム弾を連射する。

 

「ええい!」

 

 本当に元は採掘用だったのか怪しくなる火力を発揮するアフロダイAの隣で、ボスはというとスクラップから作られた(!)ボスボロットを器用に動かし、さやかが放り捨てたマシンガンを回収し、新たなマガジンを装填し直す。

 ボスはこうしてさやかや甲児が撃ち終えた武器の弾薬の補充と、手が足りなくなった場合には自らも火器を取り、火線に加わる役割分担をしていた。

 

「よおし、ヌケ、ムチャ、ボスボロットも続くだわさ!」

 

「はい、ボス!」

 

 ボスは一緒に乗っている子分のヌケとムチャに景気よく声をかけ、ヌケとムチャも揃って元気よく返事をする。

 背負い籠に収容していた大口径バズーカを二つ取り出して、ボスボロットの両肩に担がせる。すぐにボスの景気の良い声がスピーカーを通じて外部に響き渡る。

 

「くらえ~~ボスボロットウルトラデラックスデンジャラスバズーーーーカ!!」

 

 実際には、MS用のバズーカを転用した光子力ロケット砲弾を発射する光子力バズーカである。最大装填十発のこのバズーカは、ジオンのMSドムのジャイアント・バズのマジンガーZ版と言えば分かりやすいか。

 ろくな照準補正装置のないボスボロットだが、バズーカそれ自体にそれなりの照準用センサーが装備されている為、ボス達が目視と勘で撃つよりはマシな命中精度になる。

 

 陸上戦艦の二隻や三隻なら跡形もなく吹き飛ぶような光子力の嵐に襲われて、それでも生き残った機械獣達が爆炎の中から飛び出してくる。

 ガラダK7が頭の鎌を手に取り、マジンガーZの頭部に居る甲児を目掛けて一気に振り下ろしてくる。

 

「させるか!」

 

 既にガラダK7とは何度も交戦した経験から、甲児からすればその動きは知っているものだ。鎌を真剣白刃取りでもって挟み止め、動きの止まったガラダK7の胸から上を光子力ビームキャノンが容赦なく吹き飛ばす。

 その一発で光子力ビームキャノンのバッテリーが空になり、甲児はキャノンと撃ち尽くした脚部のポッドをパージして、マジンガーZを素の状態へと戻す。

 身軽になったマジンガーZは、まるで人間のようにぐるりと肩を回す。ウォーミングアップはおしまいだと告げるようなその動きに、グールで指揮を執るあしゅら男爵は歯噛みした。

 

「ええい、数を揃えてもあの火力は厄介か。だが、機械獣はまだまだ……」

 

 あるいはあのような火力の使用できない市街地や工業地帯に誘き出して、とあしゅら男爵の頭脳が次の戦略を瞬時に練り出したその瞬間、グールの巨体が大きく揺れて、あしゅら男爵は直ちに状況の把握に努めた。

 

「ぬうう!? 何事か! ちい、連邦政府の犬共め! マジンガーZ共々ことあるごとに邪魔をしおって」

 

 グールの光学観測機器は、遠方からメガ粒子砲を連射する極東支部所属のストーク級空中母艦二隻を捕捉していた。そしてストーク級が姿を見せたのなら、当然、艦載機も出撃しているわけだ。

 

「マジンガーZばかりに任せるな! 彼らは民間人だと忘れるなよ、軍人の本懐を果たせ!」

 

 ストーク級空中母艦“しょうほう”、“ずいほう”から出撃したゲシュペンストMk-Ⅱのパイロット達は、緑色のパーソナルカラーに塗装された隊長機の檄に応じて遅滞のない動きを見せる。

 

「ゴースト小隊は俺とマジンガーZに続け。スペクター小隊はアフロダイA、ボスボロットと共に火線を形成、撃ち漏らしを叩け!」

 

「了解!」

 

 地球連邦極東支部はスーパーロボットの研究所が複数存在する重要性から装備に恵まれ、支部単位の平均的技量においてはティターンズやOZのような精鋭部隊と肩を並べる。

 ましてや異種・異星勢力の齎す被害が集中しているのが極東、特に日本である為、侵略者に対する敵対心と闘争心もまた極めて高い。

 そしてSRG計画の恩恵を最も強く受ける支部でもあり、支部単位でのゲシュペンストMk-Ⅱ配備率に至っては地球・宇宙を含めてトップだ。

 

「甲児、遅れてすまん!」

 

 隊長は既に下の名前で呼ぶくらいには共闘した年下の少年に詫びを入れながら、飛びかかってきたアブドラU6の首と右手を取って足を払い、背負い投げの要領で投げ飛ばすや、仰向けに倒れ込んだ敵機に左手のプラズマステークを叩き込む!

 

「ジェットマグナム!」

 

 アブドラU6の頭部を叩き潰した緑のゲシュペンストMk-Ⅱに向けて、ダブラスM2をロケットパンチで仕留めた甲児は笑みを浮かべる。

 

「キタムラさん! 助かります! こいつら、今日は数を揃えてきているから」

 

 甲児が明るい声を出したところで、ダブラスM2の爆炎の向こうから、四つ足の生えた台座に角と顔のある機械獣トロスD7が凄まじい勢いで突撃を仕掛けてくる。

 恐るべきことにトロスD7の角を用いた突撃は、超合金Zの装甲すら貫通する威力を誇る。マジンガーZの一瞬の隙を突いたトロスD7を止めたのは、速度の関係上、ゲシュペンストMk-Ⅱ隊に先行して出撃していたMZレッドホーン三機だ。

 

 スティラコサウルスをモチーフに開発されたこの機体は、対メカザウルス用として全高十五メートルと原作の倍近い巨体かつ単座式でロールアウトしている。

 レッドホーン達は頭部に装備するホーンクラッシャーで、トロスD7を三方向から串刺しにして受け止めたのだ。

 左右からトロスD7を貫いたレッドホーンが後退し、正面のレッドホーンは痙攣するトロスD7へと向けて、背中の大口径三連“ゲッター”ビームキャノンを発射し、頭から尻までを容赦なく吹き飛ばした。

 

「MZも一緒なんですね」

 

 そう言う甲児のマジンガーZの隣に、隊長――キタムラの指示に従ったノーマルカラーである青いゲシュペンストMk-Ⅱが控え、レッドホーンの他にも出撃していたコマンドウルフ三機が戦線に加わる。

 MSより重装甲、高耐久、大質量を有するのが想定される侵略者達との戦いに備え、コマンドウルフやゲシュペンストMk-Ⅱの装備している火器は、いずれもMS相手には過剰なまでの大口径、高火力のものばかりだ。

 

「狙ってではないだろうが、機械獣やメカザウルスが同じ戦場に出る事もあるからな。メカザウルスにはゲッターロボとMZが一番効果的だ。対メカザウルスを抜きにしても、MZのパワーは頼りになる」

 

 マジンガーZ、アフロダイA、ボスボロット、そしてゲシュペンストMk-Ⅱ八機、レッドホーン三機、コマンドウルフ三機らロボットが合計十七機、ストーク級二隻と残る飛行要塞グール、機械獣数十体が改めて対峙する。

 

「フン、忌々しいマジンガーZと兜甲児と小うるさい地球連邦の犬を、このあしゅら男爵と機械獣軍団が叩き潰してくれる!」

 

 ストーク級と激しく撃ち合っているグールから、あしゅら男爵が自信に満ちた声で宣言してくるのに対して、甲児は欠片も臆さずに答えた。

 

「へん、お前がそういうのはこれで何度目だ。これまでみたいにほえ面をかくのはお前の方だぜ、あしゅら男爵!」

 

 マジンガーZは頭上のグールを指さし、そしてパイロットである甲児は熱烈と叫ぶ。それは幼い頃に誰もが思い描く正義の味方の姿、そのものだった。

 

 

 同刻、日本海から出現して糸魚川近隣へ上陸しようとするメカザウルスの軍団を、早乙女研究所のゲッターロボを筆頭とするMZとMSの混成部隊が迎撃していた。

 OZのパイシーズやキャンサー、ジオンから鹵獲したズゴックなどを除けば新型ないしは強力な水中用MSに欠ける地球連邦は、水中戦に向けたMZを開発し投入している。

 

 投入されたMZはレッドホーンと同じく原作に比べて倍近い大きさになっているが、魚型のウオディック、イトマキエイ型のシンカーの二機種だ。

 共に海中で六十ノット超の速度を誇る二機種は、海中で蠢くメカザウルス達にホーミング魚雷やソニックブラスターを発射し、これ以上の進撃を阻まんと必死の態勢だ。

 

 水中のメカザウルスは生身の恐竜とメカの首の二つ持ったズーをはじめ、首長竜などかつて地球の海で暮らしていた恐竜を改造したタイプが多くを占めている。

 水中型に限らずメカザウルスは全高四十~五十メートル級の巨体に加えて、機械獣に負けず劣らずのインパクト満載のビジュアルとこちらを食い殺さんばかりの勢いを見せる巨大恐竜の殺意は、MSや機械獣とは異なる恐怖感を戦う者に与えてくる。

 

 MZ乗り達がそれでも奮起している中でひときわメカザウルスを相手に奮闘しているのは、下半身がキャタピラとなっているゲッター3だ。

 三機のゲットマシンの合体パターンによって三種の変形機構を持つ画期的なロボは、メカザウルスの天敵であるゲッター線を主動力としている事もあり、メカザウルスから集中的な攻撃を受けている。

 そんな中でもゲッター3のメインパイロットを務める巴武蔵は、同乗している流竜馬、神隼人と同様、小指の先も臆さずに民間人だったとは信じられない勇猛さで戦っている。

 

「おらおら、かかってこい、蜥蜴共!」

 

 武蔵は、名前の分からないワニめいたメカザウルスが開いた大顎に、ゲッター3の両腕を突っ込み、そのままゲッターロボ三形態最大のパワーを引き出して、メカザウルスを上下に引き裂いた。

 血液とオイルが海中に広がり、すぐさま爆発する中、海底をキャタピラで疾走するゲッター3は攻撃の手を止めずに頭部両脇のゲッターミサイルをろくに狙いを定めずに発射。

 それに続いてウオディックとシンカー隊の放った魚雷とゲッターミサイル、ソニックブラスターが獲物に群がる肉食魚の如く水中メカザウルス部隊に襲い掛かる!

 

「よっしゃ、次は空だ! オープンゲット!」

 

 水中で生じた大爆発によって水面が吹き飛び、その中にメカザウルスの生身とメカの部分が混じる中、分離した三機のゲットマシンが飛び出す!

 続いてオープンチャンネルで発せられたのは、新たな形態への変形合体を示す竜馬の叫びだ。

 

「チェェェンジ、ゲッター1! スイッチオン!」

 

 竜馬のイーグル号、隼人のジャガー号、武蔵のベアー号の順で激突するように合体し、どこがどうなったらそうなるのか分からない変形過程を経て、空中戦用に特化したゲッター1が姿を現す。

 頭頂部から左右に伸びる赤い角と真っ赤なマントを翻すゲッター1へ、空を飛んでいた黒紫色の翼竜型メカザウルス・バドの群れが殺到する。

 

 ゲッター1へと殺到するマグマ弾やミサイルの雨の中を、ゲッター1は中のパイロットがミンチになるような変則機動で回避してみせる。

 MSの技術者が目を疑うような機動を見せるゲッター1に注意を引かれるバドへ、その隙を突いて極東支部の機動兵器部隊が苛烈な攻勢を仕掛けた。

 ミノフスキークラフトで空を飛ぶゲシュペンストMk-Ⅱがスプリットミサイルやニュートロンビームライフルを叩き込み、MZプテラスも空対空ミサイルやゲッタービーム機銃を発射して次々に命中させてゆく。

 

「よし、俺達もやるぞ、ゲッタートマホーク!」

 

 竜馬の叫びと共に胴体肩部に収納されている小ぶりな斧が飛び出し、ゲッター1の右手に握られる。連邦軍が放つビームやミサイルから逃れるバドへ斬りかかり、ゲッター1のパワーで振るわれた斧が次々とバドの頭を叩き割り、翼を斬り落としてゆく。

 

「リョウ、細かいのが来るぞ」

 

 竜馬に警告を飛ばしたのはジャガー号の隼人だ。戦線後方の空母型メカザウルス・グダから発艦した恐竜ジェット戦闘機の大群が、見る間に距離を詰めてきているのに、いち早く気付いたのだ。

 

「それなら敷島博士のとっておきだ、ミサイルマシンガン!」

 

 どこに収納されていたのかゲッター1は背中から取り出した巨大な銃器を取り出して、銃弾代わりに小型ミサイルが猛烈な勢いで発射されてゆく。

 ゲッター1に続いてゲシュペンストMk-Ⅱ、アッシマー、プテラスといった極東支部所属の機動兵器部隊が恐竜ジェット戦闘機の編隊を叩き潰すべく動く。

 

 空中ではストーク級が、また地上ではライノセラス級陸上戦艦が指揮管制ならびに砲撃支援を担い、メカザウルスの本土上陸を全力で阻止する構えだ。

 更には波打ち際を蹴散らして駆け上がろうとする、サイやスティラコサウルスにも似た外見のメカザウルス・ザイとメカザウルス・サキに、ヘパイストスラボ謹製の巨大ロボットが真っ先に襲い掛かった!

 

「究極! メガ・ゲシュペンストオオオオ、キイイックウ!」

 

 一度上空へと飛び上がり、五十メートル超の巨体の大質量を、ブースターによる加速も加えた飛び蹴りでザイへと叩き込むのは、レナンジェスの駆るゲシュペンスト・リーゼ。

 

「必っ殺! メガ・ゲシュペンスト・パァアンンチィ!!」

 

 ほとんど同時のタイミングでサキの顔面へ必殺の拳を叩き込んだゲシュペンスト・リーゼは、ミーナの操縦する機体だ。

 ゲシュペンスト・リーゼ――亡霊の巨人はヘパイストスラボがいずれスーパーロボットを開発する際の試験用として、五十メートル超の巨躯へサイズアップされたゲシュペンストS型の発展機である。

 

 超合金Z製のムーバブル・フレームにガンダニュウム合金の装甲、更に搭載した巨大核融合炉はコンバトラーV同様に超電磁エネルギーを生産し、プラズマステークから超電磁ステークへと強化された三本の突起物は両腕に装備されている。

 胸部のブラスターキャノンはより大口径大火力化した事でメガブラスターキャノンに改められ、ゲシュペンストMk-Ⅱ同様ミノフスキークラフトを搭載し、両肘にはより高出力広範囲のビームシールドを内蔵している。

 元はMSだったがSRG計画による技術交流の産物である為、MSではなくスーパーロボットに分類された初のゲシュペンストだ。

 

「ゲッターチーム、陸はこっちに任せてくれ!」

 

「その代わり、あの空母を頼むよ。ズバリ、あれが沈めばメカザウルスは退くでしょう!」

 

「了解です。こちらは頼みます。行くぞ、ハヤト、ムサシ!」

 

「ふ、熱くなりすぎるなよ、リョウ」

 

「同士討ちするんじゃないぞ!」

 

 頼もしいレナンジェスとフフン! と探偵の如く推理を披露するミーナのアドバイスに従い、ゲッター1がゲシュペンストMk-Ⅱやプテラスと共にグダを目指して空を飛ぶ。

 

「よし、後は俺達がこいつらを片付けるだけだ、行くぞ、ミーナ」

 

「うんうん、メカザウルスからしたら“毛の無い猿”が天敵である“ゲッター炉心を搭載している”上に“自分達を模したロボット”に乗っているんだから、作戦も何も忘れて遮二無二になって攻撃してくるのも当然よね」

 

「MZに乗っている人達のカバーには気を付けなくっちゃな!」

 

「後、味方の弾に当たらないようにしないとね。ライノセラスにカノントータスばかりじゃなくって、ガンタンクタイプも引っ張り出してきているし!」

 

 後方のライノセラス級陸上戦艦と昆虫型MZモルガとカメ型MZカノントータス、更にはガンタンクⅡまでも引っ張り出して形成された火線は、水中から顔を覗かせたメカザウルス達へ平等に熱烈な歓迎を加える。

 それでもなお進軍してきたメカザウルスへは、極東支部に雇用されたジェスとミーナのゲシュペンスト・リーゼが圧倒的な攻撃力で機先を制する。

 そこにゲシュペンストMk-Ⅱ部隊と、ゴジュラス一機に付きその小型版ともいえるMZゴドス二機で組んだ複数の小隊が飛び込んで、メカザウルス達の怒りと断末魔の叫び、爆発の音が響き渡る。

 何度目かになる恐竜帝国の侵攻による、糸魚川防衛線はさらに夕日の沈む時刻まで戦闘が続くも、幸いにしてゲッターチームと地球連邦極東支部の勝利に終わるのだった。

 

 

 このようにマジンガーZやゲッターロボをはじめ、極東支部はスーパーロボットと連携しながら襲い来る侵略者達を相手に日夜激闘を繰り広げていた。

 まさに、極東は燃えていたと言うべきであろう。

 そして侵略者との闘争の火は極東ばかりではなく、プルート財閥の本拠地ギリシャへも伸びていた。

 プロメテウスプロジェクトの解散により連邦とジオンのエースが去り、自社のエース達もまた地球と宇宙の各地へと散り、守りの薄くなったヘパイストスラボが謎の勢力による襲撃を受ける数日前のことであった。

 

<続>

 

■アクシズが地球圏に接近中です。

 

■Dr.ヘルが宣戦布告しました。

■恐竜帝国が宣戦布告しました。

■キャンベル星人が宣戦布告しました。

■ボアザン星人が宣戦布告しました。

■妖魔帝国が宣戦布告しました。

 

■マジンガーZが参戦しました。

■アフロダイAが参戦しました。

■ボスボロットが参戦しました。

■ゲッターロボが参戦しました。

 

■レッドホーンが開発されました。

■ウオディックが開発されました。

■シンカーが開発されました。

■プテラスが開発されました。

■モルガが開発されました。

■カノントータスが開発されました。

■ゴジュラスが開発されました。

■ゴドスが開発されました。

 

〇強化パーツ

・光子力バリヤー

 1,500以下のダメージを軽減、発動ごとにENを5消費。マジンガーシリーズが装備するか、超合金Zシリーズの強化パーツを装備していると更に1,000ダメージを軽減。

 

・超電磁コーティング

 運動性+15、照準値+10

 

・超合金Zムーバブル・フレーム

 HP+1,000、装甲+150、EN+50

 

〇換装武器

・光子力ビームキャノン

・光子力ミサイルポッド

・光子力ビームマグナム

・光子力バズーカ

・Zカタナ

・Zナギナタ

・Zオオタチ

・Zスピア




モビルビーストまではモビルスーツ系列の機動兵器でしたが、モビルゾイドに改められてからは対メカザウルスの性質が強まったので、ゲッター炉心を積んでいます。
スパロボにおいて、クロスアンジュのアウラの民がゲッター線を上手く抑制したというか付き合っているように、モビルゾイドもほどほどにゲッター線と付き合ってゆけると良いのですね。
なおゲッターはTVアニメ版ですので、竜馬は優等生風の性格になっています。

侵略者の皆さん
「なんか地球人強くない? 強くない?」

追記
コールサインを修正しました。
×超電磁マシーン・コンバトラーV → ○超電磁ロボ・コンバトラーV


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第十一話 地獄に落ちること間違いなし

書きたいことを詰め込んだらえらく長くなりました。
五千字くらいでコンパクトにまとめて早めに更新したいとも思うのですが、一話で纏めるとなると長くなってしまいますね。
なお、今回、”ぼくのかんがえたさいきょうのろぼっと”とパイロットに近いものが登場します。


第一話 堕ちた太陽

 

 時は遡って新代歴186年末、地球に五つの流星が降り注ぐよりも前のこと。

 宇宙に浮かぶとあるコロニーのとある一室にて、明かりを落とされた暗い部屋の中で煌々と光るいくつものモニターを前に、目元を覆うゴーグルと義手が目を引く老人が届いたばかりのメッセージに目を通していた。

 何重にもセキュリティを施した暗号だ。暗号解読のスペシャリストでも、そう易々とは解読できない厳重さはそれを受け取る老人の立場と内容の重要性に依る。

 

「ハワードの奴め、サルベージ業にだけかまけておれば良いものを。ピースミリオンの建造ばかりでは飽き足りんか。業突くじじいめ」

 

 ハワードとは老人と縁の深いとあるサルベージ屋兼技術者だ。推進器や姿勢制御関係のスペシャリストで、この分野においては地球圏屈指の人物である。

 今は地球上を主な拠点として活動している筈なのだが、稀にこうしてかつての伝手を辿って連絡を寄越してくる。

 暗号化されたメッセージには、ハワードが参加している地球連邦主導の計画についての情報が記載されていた。極秘性の高さからその概要と名前程度しか記載されていないが、それでもハワードが送るだけの意味のあるものだった。

 

「SRG計画か。例のプルート財閥がスポンサー、参加しているのは、ほ、これは豪華な面子じゃな。こいつらが協力して機動兵器を開発すれば、とんでもない代物が出来上がるじゃろう。コロニーにとって、とてつもない脅威にもなりえるが……」

 

 老人は、かつてジオン・ズム・ダイクンやヒイロ・ユイと共にコロニー独立運動に参加し、今もある程度手段を選ばずにコロニーの独立を願い、行動している人物だ。

 その証拠に、老人は一部のコロニーひいてはスペースノイドの独立を謳うとある組織の力を利用して、独自に強力なMSを開発している。

 

「しかし、ハワードの奴め、“面白いことになっているからなるべく手を出すな”とは……光子力、ゲッター線、超電磁エネルギー、ダイモライト、どれも戦争に利用するよりも人類の発展と宇宙開拓を前提としたものじゃ。

 それをロボットに応用するとは、まるで戦うべき相手が宇宙からやってくると言わんばかりか。どうせわし以外にもあの爺共にも同じメッセージを送っておるだろうが……ふむ、一当てする必要はあるじゃろうな」

 

 老人は金属製の左手で顎鬚をしごき、一年戦争以後のプルート財閥の行動を思い起こす。

 地球連邦政府・軍双方に積極的に近づき、機動兵器開発や壊滅したサイドの復興事業、スペースノイドの地位向上、火星や木星の開発支援と手広く始め、不気味なほどにその全てで成功を収めている。

 

「正当な対価を求めるばかりでそれ以上を暗にも望まぬとは気味の悪い聖人ぶりだが、ヘイデス・プルート、その皮を剥けば何がある? 獣の本性か? 真っ黒い欲望か?

 トールギスを完成させた挙句に改良し、少数とはいえ生産。おまけにゼファーファントムシステムまで実用しおった以上、楽観視は出来ん。ハワードが何を見たのかは分からんが、見定める必要はあるだろうな」

 

 そして自分以外にもハワードからのメッセージを受け取った四人の科学者達も、似たような結論に至るだろう。老人――ドクターJは別のモニターに映っている、自身の作品であるガンダムタイプのMSを眺め、コロニーの未来に思いを馳せるのだった。

 

 

 新代歴187年、人類史上例を見ない大戦乱の巻き起こっている地上であるが、極東こと日本がその最激戦区であるのは誰もが否定しえない事実だ。

 だが戦場となっているのは日本ばかりではなく、アフリカ、北米、南米をはじめ、ロームフェラ財団の影響力の強いヨーロッパにおいても少ないものの機械獣、メカザウルス、どれい獣、化石獣、獣士らが都市や軍事基地を襲って被害を齎している。

 

 その例の一つとして、地中海を臨む沿岸沿に建設された小さな軍事基地が、キャンベル星人のどれい獣ガルムス五体と妖魔帝国の戦闘用生物ドローメ十数体の襲撃を受けていた。

 ガルムスは目の上に口のある四角い頭に茶色い体表、背中には二つに割れた棘付きの鉄球を背負っており、元はケント星の生物を改造したどれい獣だ。

 すでにコンバトラーVと戦って一敗地に塗れているが、クローン技術かなにかで量産したものだろう。現在、キャンベル星人の兵器として最も数多く地球圏で目撃されている。

 

 一方のドローメは薄紫色の空飛ぶクラゲか蛸といった姿をしており、妖魔帝国が都市破壊や前衛戦力として頻繁に用いている。妖魔帝国の主戦力は化石獣であるから、あくまで補助的な立場にある。地球連邦で言えばボールあたりか。

 ガルムスとドローメであるが、キャンベル星人と妖魔帝国が手を結んだわけではなく、たまたま同じ基地に襲撃を掛けたという偶然だ。その証拠に基地から出撃してきたリーオーやトラゴスを相手にしながら、お互いに攻撃を加えている。

 

「くそくそ、くそ!」

 

 緑色のリーオーを駆るパイロットは、105mmライフルを上空のガルムスへと向けて発砲し続けていた。ガルムスは五十メートル超の巨躯を誇り、それ相応の分厚い装甲はライフルの弾丸がいくら命中しても然したる効果はないように見える。

 ガルムスは編隊を組むドローメが吐き出す火炎弾とリーオーの弾丸を浴びながら、巨大な腕を振り回してドローメを叩き落とし、胴体の皮に隠れていたミサイル発射口を開いて、地上のリーオーやトラゴスへと向けて棘のようなミサイルを発射する。

 一発一発がMSからすれば冗談のような大きさのミサイルが降り注いでくるのを、基地側は必死に撃ち落としてゆく。

 

「ライフルじゃ話にならん。バズーカかトラゴスのキャノン砲で相手をするんだ! くそう、こっちはOZなんだぞ!」

 

 襲撃を受けていたのは地球連邦軍欧州方面で幅を利かせるOZの基地で、迎撃しているMS部隊もまたOZに所属する者達だ。

 ロームフェラ財団主導によって開発されたリーオーは、生産性、整備性、汎用性とどれも高い水準を持つ傑作機といって良かったが、仮想敵はあくまでもMSだ。

 異星の技術によって作り出されたMSに倍する巨体や重装甲、パワーを有する兵器との戦闘など想定外である。

 

 奇しくも通常の連邦軍がゲシュペンストシリーズやMZ、またオプションとして開発された大口径・高火力武装により対抗出来ている現状とは真逆の光景が広がっている。

 それでも基地の守備隊とドローメからの集中砲火を浴びたガルムスの一体が爆散し、ようやく脅威が減ったとリーオーのパイロットが安堵したのも束の間、残りのガルムスの内の一体が、体を丸めて棘付きの殻を被り、激しく回転しながら落下してきたのだ!

 進路上にあるものすべてを粉砕する回転鉄球に基地の建物や逃げ遅れたトラゴスが粉砕される悪夢の光景に、パイロットは恐怖の叫びをあげる。

 

「うわああああ!?」

 

 今年に入ってから頻発していた謎のガンダム五機によるOZの軍事基地襲撃も、侵略者達の襲来でぐっと減り、少しだけ安堵していたというのに、ここに来てのその侵略者達に襲われた挙句に機体ごと轢き殺されるなんて!

 

「こんな死に方あるかよぉ!!」

 

 リーオーのパイロットである彼女は、まだキスだってしたことがないのに!

 コックピットに響き渡るばかりで誰にも届かない筈の彼女の叫びは、しかし、超音速で飛来した一機のMSに確かに届き救いを齎す事に成功する。

 回転しながら迫りくるガルムスの横っ腹に、疾風の如く襲い掛かったMSの構えていた回転する槍が深々突き刺さり、そのままガルムスを空中高くへと持ち上げて見せたではないか!

 

「へ?」

 

 咄嗟に両腕を目の前で交差して自分を庇っていたパイロットは、自分がまだ生きている事に驚き、続いてモニターに映る頭上の光景に声を失った。

 殻ごと串刺しにされたガルムスが空中に放り出され、地上に落ちる前に爆散し、その炎の照り返しを浴びて、巨大な槍を携えたMSが空に佇んでいる。

 プルート財閥ヘパイストスラボ所属――ゼファートールギス。プロトタイプリーオーとも呼ばれるトールギスを操る西風(ゼファー)が、系譜たるリーオーとそのパイロットの女性の救い主であった。

 

 右手に携えるはSRG計画の産物たる超電磁ドリルランス。見た目は中世の騎士が馬上で用いた円錐形の槍だ。ヘイデスはFG〇のオルタの方のロンゴミニアドじゃん、と初めて目にした時、内心でそう感想を零している。

 コンバトラーVの必殺技超電磁スピンを携行兵装で可能な限り再現した代物で、超電磁エネルギーを生み出す原子力エンジンを内蔵したドリルランスは、二十メートル近いサイズながらガルムスを一撃で葬った事でその威力の程が窺い知れる。

 新たな乱入者にガルムスや生き残りのドローメが戦況の変化を敏感に察する中、ゼファートールギスはその名に相応しい速度で動いていた。

 

 超電磁ドリルランスの穂先をガルムスへと向けると、勢いよく回転し出した穂先から赤い超電磁エネルギーの嵐が吹き荒れて、残りのガルムスの内一体を飲み込んでたちまちの内にその動きを拘束する。

 本家コンバトラーVの超電磁タツマキならぬ超電磁トルネードだ。小型化した原子力エンジンを使っている為、拘束力と持続時間は超電磁タツマキに劣るが、ゼファーの無人機ならではのマンポイントを超えた機動とゼファートールギスの加速性能がそれを補う。

 ソニックブームを発しながら両肩のスーパーバーニアを噴かしたゼファートールギスが空中を駆け、超電磁トルネードに拘束されたガルムスのどてっぱらに大穴をぶち開けてゆく!

 

 これで三機のガルムスが撃墜され、残りの二体がゼファートールギスの残像を追うようにミサイルを発射するも、ゼファーは鋭角と曲線の入り混じる軌道で避け、左肩のシールドにマウントしていた巨大なチェーンソーを機体の左手に持たせる。

 超電磁ドリルランスと同じく原子力エンジン内蔵の超電磁チェーンソーである。ガルムスの左首筋に超電磁チェーンソーが叩きつけられ、耳障りな音を立てながらガルムスの装甲が削り取られてゆく。

 苦悶の叫びをあげるガルムスの顔面に、アタッチメントに接続されたドーバーガンの銃口が突きつけられて、高圧縮状態のビーム砲弾がガルムスを口の中から吹き飛ばす!

 

「はえ、あ? すごい……。あ、危ない!」

 

 戦闘中でありながら呆然とゼファートールギスの戦いを見上げていたパイロットだが、最後のガルムスとわずかなドローメが、ゼファートールギスを最強の敵と認識して、期せずして集中砲火を浴びせようとしていたのだ。

 パイロットは咄嗟に愛機を動かしてライフルを撃とうとしたが、遠方から放たれた高出力のビームとミサイルの嵐が先んじてガルムスらを撃破する。

 

「あれは……噂のゲシュペンストMk-Ⅱ! 本当に空を飛んでいる。いいなぁ……」

 

 リーオーのメインカメラは、遠方の海上を飛行するゲシュペンストMk-Ⅱ六機とストーク級空中母艦一隻を映し出していた。

 欧州方面の連邦軍やOZの手が回らない襲撃に対し、プルート財閥傘下のアレスコーポレーションは官民問わず要請に応じて防衛活動に出撃しており、今回は別の都市への襲撃を防いだ帰りにたまたま救援に駆け付けたのである。

 ストーク級ポダルゲーのブリッジでは、カインズとエリシアがゼファーのオペレートを行っていたが、敵機の全滅を確認して帰還命令を出したにもかかわらず、ゼファーが基地上空から動こうとせずに海中にセンサーを走らせるアクシデントが生じていた。

 

「ゼファー?」

 

 オペレート用の特設席に座したエリシアに、カインズがシート越しにモニターを覗き込む。

 

「どうした? ゼファーがなにか?」

 

「それが海中をセンサーでチェックしているようです。どれい獣と化石獣(※ドローメの事)の反応は全て消失しているのですが」

 

「ふむ……古い話だが、ソロモンの時もゼファーはなにかを感じたような反応を見せたな」

 

 一年戦争の頃だから、もう八年も昔の話である。そうしてエリシアとカインズに独自行動を許されたゼファーは、テレンスの開発したカタールと交戦し、カタールに搭乗していたニュータイプのパイロットを生かしつつこれを撃破したのだ。

 

「あ、ゼファー、帰還コースに入ります。海中に敵機が潜んでいた、というわけではないようですね」

 

「やれやれ、世界中どこを見ても侵略戦争ばかりか。宇宙はまだ静からしいが、アクシズが接近しているというし、いずれは宇宙も騒がしくなる。ゼファー、お前はいつまで戦えばいいのだろうな」

 

 ゼファートールギスとゲシュペンストMk-Ⅱ部隊がポダルゲーに帰還し、ヘパイストスラボへと帰投し、襲撃を退けた基地は大急ぎで負傷者の救助と瓦礫の撤去、OZ本部への連絡に慌ただしくなる。

 そして基地近海の海中には、ゼファーが怪しみながらも捕捉しきれなかった存在――黒いガンダムがまだ潜んでいて、そのパイロットがコックピットの中で先程の戦闘を反芻しているところだった。

 コロニーから送り込まれた五機のガンダムの内の一機、ガンダムデスサイズのパイロット、デュオ・マックスウェルは、やれやれと息を吐いてシートに背を預ける。

 

「や~れやれ、まさかこれから襲おうって基地にキャンベルと妖魔の連中が姿を見せるってのは、どんな星の巡り合わせだ?

 そいつはまだいいが、あれが例のゼファーファントムシステムとSRG計画のオプションか。MSって呼んでいい代物じゃないが、いざとなりゃあれもどうにかしないといけねえんだよな。さて、あっちの基地は、まあ、死神の気まぐれに感謝しなよ」

 

 無事なのはリーオー一機くらいのもので、今も懸命に救助作業が行われている基地を再襲撃する気にはなれず、デュオはヘパイストスラボの戦力確認の任務へと意識を切り替え、相棒を動かした。

 

 

 現在、ヘパイストスラボは世界で注目されている兵器開発研究施設の一つである。

 一年戦争以降、次々と強力な機動兵器を開発し、今では極東支部主導のSRG計画のスポンサーとなり、“民間の善意の協力者”であるスーパーロボット達と世界平和の為に侵略者達と戦う正義の味方としてのイメージさえ抱かれつつある。

 これにはプルート財閥と地球連邦政府が手を組んで、スーパーロボット達が侵略者を退ける勇姿を積極的に地球・宇宙を問わず配信してイメージアップに努めている効果もある。

 お陰で各地のスーパーロボットの研究所には、世界中から寄付が絶えず送られてくるようになっている。

 

 さてそんなヘパイストスラボであるが、今日も今日とてラボ内では所長やMZの生みの親であるトミイ・タカラダ氏を筆頭として新たな地球を守る剣達の開発が進められている。

 世界中の科学要塞研究所やビッグファルコンといった防衛機能を備えた研究施設を参考にして、更なる資金と資材が投入されて要塞化が進められた結果、ラボの規模は一回りも二回りも増して巨大化している。

 

 地下に設けられていた機動兵器格納庫の数も増え、サイズや動力源別の括りで分けられている。

 人類防衛の要の一つとなったゲシュペンストMk-Ⅱに続くゲシュペンストMk-Ⅲ、あるいはまったく別の新型機の開発の他、SRG計画の機体や装備の研究も進められるプルート財閥の超重要施設となった。

 

 そのラボの格納庫の一角に、所長の姿があった。今年で三十五歳になる女傑だが、活力に満ちた類まれなる美貌は年齢による衰えを微塵も感じさせず、優雅なロシアンブルーを思わせる雰囲気も変わらずで、一年戦争の頃からまるで年をとっていないように見える。

 本日はネパールやインドなどで着用されているサリーを着用している。ピンクに近い赤色の生地に金糸の刺繍や色とりどりのビーズが散りばめられ、その上にいつもの白衣、プラチナブロンドは首筋の後ろで纏めて大きなお団子状に纏めていた。

 

 今、所長が格納庫に居るのは、最終テストを終えた次期主力量産機候補の機体が帰投し、そのテストパイロット達を自ら出迎える為だった。

 所長が待つ格納庫に隣接するブリーフィングルームに、帰投後の着替えを終えてヘパイストスラボの所属を示す黒を主にした制服姿の四人が姿を見せる。

 

 毛先を切りそろえた緑がった黒髪が目を引くオウカ・ナギサ、銀髪のショートカットを持つゼオラ・シュバイツァー、癖のある紫色の髪とひと際小柄なラトゥーニ・スゥボータ、四人中唯一の男性である紫色の髪を持つ快活そうなアラド・バランガ。

 昨年、解散したティターンズのパイロット養成機関“スクール”から保護された四人だ。

 ヘイデスらの下に引き取られてから一年弱が経過した現在、四人は社会常識や一般教養を学びつつ、スクールで培った操縦技術を活かす為にテストパイロットの職を得ていた。

 

「所長、グランド・スター、帰還いたしました」

 

 スクールでもラボでも最年長、最高の技量の持ち主としてリーダー格であるオウカが、息を呑む美貌に親愛の笑みを浮かべて所長に帰還の挨拶を告げる。

 グランド・スターとは、オウカら四名のテストパイロットに与えられたチーム名だ。スパロボZシリーズの主人公の一人、セツコ・オハラの所属していたグローリー・スターにあやかったものである。

 

「ええ、オウカ、ゼオラ、ラトゥーニ、アラド、四人ともお疲れさま。今回も事故が無くて何よりでした。貴方達のお陰で必要なデータは集まりましたし、今すぐにでも実戦に投入できるレベルまで仕上がりました。本当にありがとう」

 

 心から称賛の言葉を告げる所長に、オウカをはじめ四人全員が照れくさそうな表情を浮かべる。スクールではこのように素直な称賛の言葉を受ける機会は少なかったのだろう。

 

「へへ、それなら臨時ボーナスとか出たりして」

 

 とお調子者というか迂闊なところのあるアラドが口にすれば、公私ともにパートナーを務めるゼオラがすぐに顔を赤くして叱りつけた。

 

「馬鹿! 何言っているのよ。私達はお仕事をこなしただけでしょう」

 

「いや、でも、俺なりに頑張ったし……」

 

 技量に劣るアラドを優秀なゼオラが様々な場面でフォローする光景は、スクールでもラボでも変わらないものの一つだった。オウカもラトゥーニもアラドの発言に呆れた顔を隠さないが、所長は気分を害した様子はなく柔らかな笑みを浮かべる。

 

「ふふ、構いませんわよ。貴方達の意見は出来る限り尊重するつもりですし、貴方達の働きはとてもありがたいものです。ボーナスを進呈するのには十分な成果ですから、私から総帥の方に進言しておきます」

 

「やった! ほら、言ってみるもんだろう?」

 

 得意げな顔になるアラドだったが、オウカは眉を潜めて気遣わし気に所長に尋ねた。

 

「しかし、本当によろしいのですか? アラドもああして喜んではいますが、本心では驚いていると思いますが……」

 

「子供が遠慮をするものではありません。たとえテストパイロットとはいえ、貴方達を機動兵器に乗せるのさえ躊躇われるところを、無理をさせているのです。報いる機会があれば報いたいのはこちらの方ですよ」

 

「報いるなどと……。他に生きる術を知らない私達に、所長や総帥は過分な待遇を施してくださっています。感謝の言葉こそあれ、他に言うべき言葉などありません。私達だけでなくスクールの仲間達にも、心を砕いてくださっているではありませんか」

 

「オウカ、貴女はもっと我儘に、もっと欲深くなるべきですわねえ。その点、素直に欲求を告げるアラドはまだ見どころがありますわね」

 

 嘆息する所長にラトゥーニがおずおずと意見を口にした。スクールから廃棄処分されてしばらくはひどい人間不信に陥った少女も、彼女を救った連邦軍人の夫妻とスクールの家族らとの再会のお陰で随分と人間性を取り戻している。

 

「所長、そういう事を言うとアラドが調子に乗るから……」

 

「ははは、ラトゥーニに褒められたぜ」

 

「アラド、褒めてない」

 

「ふふ、いいんですのよ。それでアラド、臨時ボーナスが出たとして、貴方は使い道を決めておりますの? 将来の為に貯金でもいいですけれど」

 

 これで明確な目的の一つでもアラドが口にすれば、所長としては僥倖だ。

 アラドは、スクールに拾われる以前の記憶がない事や自分達が機動兵器のパイロットとしてしか生きる術がないのを悲観せず前向きに受け止めているが、所長やヘイデスはそうしなければ生きていけないという諦観から来ているのではないかと危惧している。

 特にヘイデスは画面の向こうで見ていた時には、アラドの楽観的な性格を好意的に捉えていたが、実際に面と向かい合いスクールでの境遇などを合わせてみると、アラドはアラドで人格の根底に闇なり傷なりがあると思わずにはいられなかったのである。

 

「そうだなあ、とりあえず食堂のメニュー全制覇っすね。後は街のレストランを片っ端から食べて回るのも良いな!」

 

「あんたねえ、目先の食欲にとらわれてばかりで、もっとまともな使い方は思いつかないの!?」

 

 大食漢のアラドらしい答えが返ってきたことに所長が安堵する一方で、ゼオラはアラドの欲望に正直すぎる回答にガミガミと雷を落としたが、次のアラドの言葉で窮する事になろうとは夢にも思わなかっただろう。

 

「それじゃあ、お前の考えるまともな使い方ってなんだよ? そこまで言うからには何か立派な考えがあるんだろうな?」

 

「それは、えっと、し、所長が言ったみたいに貯金とか、後は……」

 

 ゼオラはなにも思いつかないと傍目にも分かる様子でしどろもどろになる。その様子に軽い気持ちで言い返したアラドも所長も、自分の欲求すら分からない状態であるのを察して表情を曇らせた。

 アラドがすぐさま話題を切り替えたのは、スクールからの自立と確固たる自我の形成という二点においては、ゼオラよりも彼の方が健全な形で進んでいるからだろう。

 

「わははは、ならボーナスが入ったら俺が奢ってやるから、感謝しろよ。その時までに何が食べたいか、考えておくんだな。まあ、食べ過ぎてまたその胸が大きくなって、服のサイズが合わなくなっても知らないけどな!」

 

「な、なんですってぇ! あんたはいつもいつも、どうしてそう私の胸のことばかり~!」

 

 漫画かアニメだったら頭から湯気を噴くような怒り方をするゼオラを見て、アラドがほっとしたのを、所長もオウカもラトゥーニも見逃さなかった。

 そして所長はオウカへと目をやり、彼女が首を横に振るのを見て痛まし気に目を細める。オウカもまたゼオラ同様に、お金を得たとしてもそれの使い道が分からないのだ。

 その点、彼女らよりも早くスクールの外の世界と人の善意に触れたラトゥーニの方が、健全な成長をしている。

 

(人並みの欲求を抱くのですらまだまだ前途多難ですわね。ティターンズもよくもまあ、こんな真似を。人間の罪深さは、なんと底知れないことか……)

 

 こればかりは長い目で見るか、価値観をガラリと変えるような出来事がないと好転はしないか、と所長は意識を切り替えて話の話題を彼らの将来設計へと変える。

 

「アラドは食べるのが好きですけれど、それならいっそ作る側に回ってみるのも良いかもしれませんわよ?

 少なくない美食家が自分で料理を作るようになりますし、アラドも食べるばかりではなく、自分で最も美味しいと感じる料理を作ってみるのもいいかもしれません」

 

「レストランのコックかあ。でも俺じゃあ、我慢できずに摘まみ食いしちまいそうだな」

 

「お客さんに出す為の食材を全部食べちゃいそうだものね」

 

 簡単に思い浮かべられる光景にゼオラが呆れた顔で釘を刺すのを、所長はニマニマと見ていた。

 

「それならゼオラがアラドの手綱を握ればいいでしょう。貴女の場合、当然のようにアラドの傍にいるでしょう?」

 

「え、わ、私は別にアラドのことなんて……その……」

 

「ほほほほ、いいじゃありませんの。私や総帥をはじめラボの誰の目から見ても、貴方達はお似合いのペアです。お金を貯めて、二人でレストランでもカフェでも好きなようにすればよろしい。

 オウカとラトゥーニはウチの財閥の専属モデルか、それとも女優業に興味はありませんか。二人とも大変に愛らしいですからね。少しメイクやファッションを勉強すれば、あっという間にあちこちから引っ張りだこになりますわ」

 

 所長は本気で告げたのだが、オウカとラトゥーニはと言えば自分達がテレビや雑誌の表紙を飾るかも、という未来を想像できず困った顔でお互いを見ている。

 

「ま、可能性の一つとして頭の隅っこに留めておいてくださいな。貴方達の未来はまだまだ続くのです。なりたい自分、したい事、叶えたい夢、欲しいもの、それらがこれからいくらでも出てくるでしょう。

 オウカやラトゥーニなら世界で二番目に良い男とだって巡り合えます。ゼオラはまた別ですけれど」

 

 ゼオラの場合、良くも悪くもアラド一筋であるし、この話からは除外していいだろう。ここでラトゥーニが所長の『世界で二番目』という言葉を不思議に思って尋ねる。

 

「所長、では世界で一番とは誰の事なのですか?」

 

「もちろん、私の旦那です。そこそこ欠点のある方ではありますが、贔屓目がメガ盛りギガ盛りテラ盛りの私からすれば、ヘイデス・プルートが世界一良い男ってわけですわね!」

 

 おほほほ、とゼオラよりも大きな胸を揺らして笑う所長に、ラトゥーニは目をパチクリとさせてキョトンとしている。

 

「ああ~、ほら、ラトゥーニ、所長やヘイデスさんは隙があれば惚気てくるから、言葉には気を付けないとだぜ」

 

 アラドが困った人だと言わんばかりに苦笑いを零すと、ブリーフィングルームの扉が開いて、ちょうど話題になった人物が顔を見せた。

 

「やあやあ、オウカ、ゼオラ、アラド、ラトゥーニ、お疲れ様。ちょっと顔を見に来たよ」

 

 そういうヘイデスの両手には、お土産としてギリシャ伝統のお菓子バクラヴァ(バクラバ?)の紙袋がどっさりと持たれている。

 バクラヴァは胡桃やピスタチオなどのナッツ類を蜂蜜に絡め、パイ生地で挟んで焼き上げたものだ。強烈な甘みをもったお菓子で、食後のデザートとして定番である。

 

「あ、世界で一番良い男」

 

 と思わずアラドが呟くと、ヘイデスは少し不思議そうな顔をしたがにんまりと笑みを浮かべる。脈絡もなにもないが、とりあえず褒められたと受け取ったらしい。

 

「ははは、急にどうしたんだい? 何かのおねだりかな。お給料は相場よりも高めに設定しているけれど、ボーナスでも欲しくなったのかい?」

 

「いやそういうわけじゃないんすけど。あのつかぬ事を聞きますけど、総帥にとって所長はどういう存在で?」

 

「んん? 唐突だね。そりゃあ、世界で一番良い女である僕の奥さんさ! コレーやヘマー、オウカにゼオラ、ラトゥーニは同率の二位かな! あ、これはお土産のバクラヴァ。後で、四人で食べてね」

 

 にこにこと人好きのする笑顔で入室するヘイデスに続き、十五、六歳の年齢にまで成長したシュメシとヘマーも入室する。

 シュメシは艶やかなシルクの白シャツに黒のベストとスラックスとシンプルな服装だが、中性的な容姿と浮世離れした雰囲気が相まって、性別を問わずドキリとさせる不思議な色気を醸し出している。

 ヘマーはフリル付きの赤いブラウスにブラウンのビスチェ、黒い膝丈スカートに白いオーバーニーソックスという取り合わせだ。自分で決めたかあるいは所長に見繕ってもらったのか。

 

 この双子もまたスクールの四人と同じく輝くような美少年と美少女であった。もっとも、シュメシとヘマーの実年齢はまだ六歳程度だけれど。

 この双子の成長速度が何時まで常人の数倍のままであるかは、ヘイデスと所長が不安に感じている点でもあった。ともすれば親の自分達よりも先にこの双子が天寿を迎える可能性があるのだから。

 

「こんにちは、お邪魔するね」

 

 とシュメシが自分も持っていたお土産の袋を近くの机に置く。四人に対して随分な量だが、アラドの食欲を考慮すれば妥当な量だった。ヘマーは赤いエナメル靴で床を踏みながら、愛する母のすぐ傍へと歩み寄った。

 

「お母さんもお疲れ様。お土産、たくさん買ってきたよ?」

 

 双子の見た目の年齢はゼオラやアラドと変わらないが、中身はまだまだ母親に甘えたがりの甘えんぼうだ。

 

「ええ、ありがとう。後でお茶を淹れていただきましょう。総帥、お忙しい中、ご足労頂きありがとうございます」

 

 身内しかいないとはいえ場所が職場であることもあり、所長はあくまで社員としての立場で言葉を選んだ。瞳に宿る愛情ばかりは隠せないが、それを指摘する者はこの場に居ない。

 全員が席に着き、改めてヘイデスと所長は雇用主と従業員として仕事の成果について話し始める。

 

「所長に任せているのは、自分で足を運んで確かめないといけない案件さ。ゲシュペンストMk-Ⅲの方は、Mk-Ⅱのバージョンアップにするか、アルトアイゼンとヴァイスリッターの良い所取りにするかで保留中だっけ?」

 

「北米のバベジン研(※バベッジ・エジソン研究所の略称)に預けた二機が活きの良いパイロットに恵まれた事で、有用なデータが湯水のように送られてきておりますから、近日中に方針を決定いたします。

 あの二機の性能を引き出せるパイロットがプロメテウスのメンバー以外にも居たとは、連邦軍の人材も捨てたものではありませんわね」

 

 北米と言えばアムロは原作通りシャイアン基地に配属となり、退役間近の老軍人達に囲まれているらしい。ただし、基地の中で“色々としている事”は原作通りというわけではない。いまやシャイアン基地はアムロ派、あるいはレイ親子の庭となりつつある。

 

「うん、それなら安心だ。適性でいえばアラドにアルトアイゼン、ゼオラとラトゥーニにヴァイスリッター、オウカなら両方使いこなせるけれど、負担の大きな機体だ。君達に余計な負担を掛けられないよね」

 

 SRG計画によって開発されたアルトアイゼンとヴァイスリッターはマジンガーZやダンクーガ同様、MSサイズながら、機体の出力や戦闘能力はスーパーロボットの領域にある。

 それだけに、MSの操縦技術をスクールで叩き込まれてきたオウカ達には馴染みのないもので負担が大きく、二機がロールアウトした頃には療養中だった四人を乗せるわけにはいかないと見送られていた。

 

「それで先程までオウカ達に預けていたもう一方の新型ですが、テスト項目は全て終えました。四人の尽力のお陰で実用レベルに至っています。後はパイロットを選んで、実戦でのデータを得れば、ゲシュペンストMk-Ⅲより先に完成となりますわ」

 

「あの、所長、総帥」

 

 どこか遠慮がちに、けれどしっかりと意思の光を宿したオウカの瞳に、ヘイデスも所長も嫌な予感が心の中で鎌首をもたげる。

 

「出来れば実戦でのテストにも、協力させてください。まだお役に立ちたいのです」

 

「オウカ姉様がそう言うなら私も」

 

「私も、まだ役に立てます」

 

「オウカ姉さん、それにゼオラとラトまで。まあ、俺だって総帥達に恩返ししたい気持ちは分かるけど」

 

 オウカがそう言えばゼオラ達もそれに続くのは自明の理だ。アラドだけはヘイデス達がそれを望んでいない事を尊重し、多少言葉を濁すが、家族の安全と未来を約束してくれるヘイデスに感謝している気持ちは同じだ。三人の意志を強く否定する事は出来ない。

 

「ああ~、う~ん、気持ちだけ受け取っておくよ。アムロ・レイみたいな前例はあるけれど、僕には君達を率先して実戦に向かわせようという気持ちが微塵もないのは分かっているでしょ?

 少なくとも今はそういうきれいごとを口にするだけの余裕があるし、だから、今は気持ちだけ、ね?」

 

「……はい。勝手を申し上げました」

 

「そんなに申し訳なさそうにしないでおくれ。君達が僕らに恩返しがしたいっていう気持ちは、思わず涙ぐんでしまいそうになるくらいに嬉しく思っているよ。ね?」

 

 とヘイデスの視線を受けた所長は同意だと首を縦に振り、慈愛に満ちた瞳で四人の傷ついた子供達を見る。あるいは自分達が傷ついている事にも気付けない子供達を。

 

「そうですね、人類の人口が一割を切るだとか、いっそ高性能の機体に乗って戦場に出る方がまだ生存の芽があるとか、そういう状況にならない限り私達が貴方達を実戦に投入するのは渋りに渋ると覚えておいてくださいな」

 

 ヘイデスと所長から続けてこう言われてはオウカ達もそれ以上は意見を口にしなかったが、ヘイデスは内心では実は年齢を理由に戦場に出るのを拒否するのは、あまり説得力がない事を理解していた。

 一つの例を挙げるならば、コンバトラーVのパイロットの一人である北小介は小学生であるし、ボルテスVの剛日吉は八歳。他にも日本で大活躍しているスーパーロボットのパイロット達の多くは、高校生程の年齢である。

 グランド・スターの四名中最年長のオウカで十七歳、ゼオラとアラドが十五、六歳前後、ラトゥーニが十四歳であるから、スーパーロボットのパイロット達を許容するのならば、彼女らの年齢は戦場に出るのを拒否する理由にはならないのだ。

 ヘイデス達とオウカ達の間に流れる悲痛な雰囲気を感じて、ヘマーが泣きそうな顔になりながら拙い言葉を口にし、シュメシも同じように続いた。

 

「あのね、お父さんもお母さんもオウカお姉ちゃん達が嫌いだから駄目って言っているんじゃないよ。大好きだから、傷ついて欲しくないから駄目って言っているんだよ」

 

「うん、ヘマーの言う通り、皆のことが大好きだから言ったの。だから、お父さんとお母さんを嫌いにならないで」

 

 外見はそう変わらないのに、精神はスクールの弟妹達を思い起こさせる幼い双子の言葉に、オウカ達はそろって目元を柔らかくし、オウカはヘマーの頭を優しく撫でる。

 

「ええ。それは分かっています。ごめんなさいね。シュメシとヘマーには喧嘩をしているように見えてしまったのね。大丈夫よ、私も総帥達もお互いを嫌いになったりはしていないわ。ただ、お互いに望んでいる事が少しずれてしまっただけ」

 

「本当? 喧嘩していない?」

 

「ええ。仲直りする必要なんてないくらい、私達は総帥と所長のことが好きなままよ。シュメシも、不安な思いをさせてしまってごめんなさい」

 

「ううん! 皆が喧嘩をしていないなら僕はそれでいいよ。仲が良いならそれが一番だから。ね、ヘマー」

 

「うん、そうね、シュメシ」

 

 そう言ってお互いの顔を見合わせてにっこりと笑う双子を見て、所長はやれやれと息を吐く。

 

「私達もオウカ達も泣く子には敵いませんね。さて、それではお土産を頂戴して空気を変えるとしましょうか」

 

「へへ、それじゃあ早く準備しなきゃ」

 

 とアラドが舌なめずりせんばかりの勢いで机の上の紙袋を手に取り、大量のバクラヴァを取り出す。頭を殴られるような甘みが特徴のバクラヴァだが、大らかな味覚を持っているアラドにとっては、口いっぱいに頬張っても全く問題のないお菓子だ。

 いつもと変わらない様子のアラドに場の空気が和らいだ時、その空気をぶち壊しにする緊急事態を伝える警報が鳴り響いた。

 

「これは嫌なアラートだね!」

 

 いよいよか、とこれまで何度も思った事を考え、ヘイデスはせめてもの見栄として笑みを浮かべるが、頬を伝う冷や汗を隠せずにいた。

 

「シュメシ、ヘマー、オウカ、ラトゥーニ、ゼオラ、アラド、貴方達は一番近くのシェルターに避難なさい。六人なら立て籠もっても半年は持つ備蓄がありますし、安全です。反論は許しません、いいですね! 総帥」

 

「うん、分かっている。いいかい、所長の言うことをよく聞くんだよ。大丈夫、怖いものはすぐにいなくなる」 

 

「お父さん、お母さん!」

 

 ヘマーの呼ぶ声を背中に受けて、けれども振り返らずにヘイデスと所長は駆け出した。ヘイデスが恐れ続け、胃と神経を痛め続けてきた、来るべき時の襲来だ。

 物語はもう止まる事を知らない。流れ続ける中で、果たして生き残れるのかどうか、それはヘイデスが死力を尽くしてなお確証を得られぬ難題である。

 

 

 ラボの防衛を担う司令部に辿り着いた二人は、プロメテウスの試験基地からラボへと異動になっていたヨハン司令に状況の確認を求めた。

 階段状になっている巨大な司令部には、ラボの第一防衛線に侵入し配置された防衛兵器と交戦中の敵機の映像が数々のモニターに映し出されている。

 

「やあ、ヨハン司令。無粋な敵は機械獣かい? それともメカザウルス?」

 

 挨拶もそこそこに詳細を訪ねる雇用主に、青みがかった髭で顔の下半分を覆おうヨハン司令は、アレスコーポレーションの社章が飾られた軍帽を被り直し、険しい眼差しで答えた。

 

「未確認の機体ですな。おおよそMSと同等のサイズですが、デザインラインがまったく別のものだ。キャンベルやボアザンに続く異星人の勢力かもしれん。メインモニターを」

 

 ヨハン司令の言葉に従い、メインモニターを見たヘイデスの瞳に、下半身は蜂、上半身は天使を模した異形の機械が映る。数十を超えるそれらが両手からエネルギー弾を連射して、各所に配置されたビーム砲台やトーチカを次々と破壊している。

 

(あれは確か……デイモーン!? それじゃあサイデリアル、最悪、御使いの残党か? Zシリーズの後の時間軸なら、サイデリアルの残党は副隊長達が取りまとめているはずだし、御使いの残党なんているのか? 明らかに別な宇宙であるこちら側に転移してこられるのか?

 最悪、何かしらZシリーズとは設定の異なるサイデリアルと御使いが健在の場合もあるが、スフィアだってない筈だろうに!)

 

 シュメシとヘマーを内包していたヘリオースもどきを回収した時に抱いた疑念を再び燃やし、ヘイデスは目を細めてモニターの向こうに映る人体と蜂を合体させたような異形を睨む。

 ラボ周辺に配置された防衛システムと出撃したゲシュペンストMk-Ⅱ十二機が、二十、三十と数を増やすデイモーンを次々と撃墜している。幸い、手も足も出ないような強敵ではないようだった。

 

「あの様子を見るに性能はそれほど脅威ではありませんね。それにあの動き……」

 

 所長が冷静に分析をするのを横目に、ヨハン司令が尋ねた。

 

「無人機かね?」

 

「ええ。有人機特有の動きの癖がなく画一的に統一されていますし、ダメージを受けても怯む様子がありません。パイロットの感情の揺らぎがまるで見られない」

 

「私も同じ意見だよ。電子戦用意。無人機のセンサーを撹乱してやれ。敵の目的は不明だが、慌てることはない。アレスコーポレーションへ救援要請を。増援と我々で連中を挟み撃ちにするぞ」

 

 ラボに配備された防衛部隊はその重要性に応じてかなりの規模と質を誇る。デイモーンの物量はすさまじいが、アレスコーポレーションや連邦軍の応援が来るまで守り抜くのには十分なものだ。

 だが、その前提を覆す報告が、黒人女性のオペレーターから齎された。

 

「司令、七時の方向から新たな高熱源体反応、数二十八、十五体はアンノウン1、十三体は未確認の機体です。大きい、MA!?」

 

 新しくモニターに映し出されたのはデイモーンと、艦艇のような下半身の上に両腕が穂先のような砲身になっている人型が乗っているアンノウン2――ティアマートだ。

 ティアマートはデイモーンと同じくサイデリアルで運用されていた量産型の人型兵器で、デイモーンよりも巨大で火力と耐久力に優れる。デイモーンが量ならば、ティアマートは質を担う無人機である。

 

「二十八機か、多いな。モンスターキング中隊に四番ゲートから出撃命令を。スカイブルー小隊、クラウドホワイト小隊に空中支援を徹底させろ!」

 

 ゴジュラス四機、ゴドス八機からなるモンスターキング中隊が素早く四番ゲートから出撃し、飛行能力を持たない彼らを援護する為に、プテラス四機からなるスカイブルー小隊とゲシュペンストMk-Ⅱ四機からなるクラウドホワイト小隊が、地下に格納されていたカタパルトから緊急発進する。

 数の上では二十対二十八、地の利はこちらにあるとはいえティアマートまで投入された以上、質の面でも不利に立たされたと言えるだろう。

 

「攻勢に出る必要はない。防衛システムと連携して時間稼ぎに徹するのだ。第一防衛線を破棄し、第二防衛線まで後退。総帥、所長、地下のゲートを通じて退避の用意を。このラボで最も価値があるのはどの兵器や人員よりもお二人だ」

 

 これ以上の敵の増援の可能性を考慮すれば、最悪の事態を想定するべき段階に達しつつある。ヨハンは冷静に状況を判断し、軍人の常として最悪の事態を想定した行動に移ることにした。

 ヘイデスは子供達やラボのスタッフらを置いて行く事に強い抵抗を示し、所長は唇を噛み締めて屈辱に耐えている。

 指揮官らしき機体や母艦の姿をいまだ確認できない状況では、ヨハンの危惧する通り更なる増援の可能性も考慮しなければならない。ヘイデスがヨハンに答えようとした時――

 

「! 五番ゲートが開いています。これは……グランド・スターから出撃要請が」

 

 思わずこちらを振り返るオペレーターには応えず、ヘイデスと所長は怒りと悔しさの入り混じる表情でメインモニターに重ねてポップアップされた四つのモニターを食い入るように見つめる。

 

『司令部、こちらスター1、オウカ・ナギサ、グランド・スターに出撃許可を』

 

「オウカ!」

 

 ヨハンの返事を待たずに怒声を発したのは所長だ。専用のパイロットスーツに身を包んだオウカ達が、モニターの向こうから少しだけ申し訳なさそうにヘイデスと所長を見ている。

 

「シェルターに避難しなさいと、そう言ったでしょう!」

 

『指示を守らず申し訳ありません。ですがこの状況で戦力を遊ばせている余裕はない筈です』

 

『オウカ姉様の言う通りです。総帥、所長、私達が戦場に立つことをどうか許してください』

 

 ゼオラもまた悲痛な声で懇願する中で、アラドもまた自分達の意志をはっきりとヘイデスと所長に伝える。彼らの我儘をこんな形で聞きたくはなかったと、二人は心の底から後悔していると、オウカ達が察せられたかどうか。

 

『すみません、一応、俺も止めてはみたんですけど、やっぱり俺も総帥達を守りたいし、スクールの落ちこぼれでもMSの操縦は出来ますから!』

 

 にっかりと白い歯を見せて笑うアラドもまたこれが自らの選択であると、誇りを抱いて口にするのに、ヘイデス達は言葉もない。

 スパロボプレイヤーだった記憶のあるヘイデスからすれば、有用なパイロット達が自ら戦うことを宣言する都合の良いイベントであり、また感動を誘うイベントだとも分かるが、ゲームではなく現実としてこの場に立つ者として、高揚も喝采も感動も微塵もない。

 こうなるかもしれないと分かっていて、それを防ぎえなかった自分への苛立ちばかりがあった。なんという茶番を演じているのだ、俺は! 自らへの怒りと苛立ち、そして罪悪感が募る。

 

『後でたくさん謝ります。だから、今は戦わせてください。そうでないと、私はジャーダとガーネットに胸を張って会えなくなってしまいます』

 

「ラトゥーニまで……」

 

 グランド・スターを構成する四人が揃って出撃を要請する現実に、ヘイデスは力なく首を横に振った。感情を抜きにすれば四人の技量と搭乗している機体ならば、現状を打破する一手として十分だ。

 “肉親の情”ゆえに言葉を紡げない二人を後押しするように、あくまでラボ防衛の観点からといった口ぶりで、ヨハン司令が事態を動かそうと口を開く。一年戦争以前から連邦軍で戦い抜いた歴戦の老将は、この一分一秒が宝石よりも貴重であると理解している。

 

「総帥、所長、戦力という観点から見てグランド・スターは有用です。今は私の権限と責任によって彼女らの出撃を……」

 

「いや、それには及ばないよ、ヨハン司令」

 

「総帥!」

 

 苦汁を飲んでいる最中と言わんばかりの表情を浮かべるヘイデスに所長は詰め寄らんばかりだが、彼の眼差しに伸ばしかけた手を止める。彼も自分も望んでいない言葉を、ヘイデスが自らの責任として口にしようとしているのを理解したから。

 

「ヘイデス・プルートの権限においてグランド・スターに出撃を命じる。接近するアンノウン部隊を撃退し、必ず全員無事に帰還する事。いいね?」

 

『はい。必ずやご命令通りに』

 

 一瞬、オウカが悲しそうに顔を歪めてから、凛とした表情に改めて頷き返す。オウカ達の顔を映していたモニターが消え、オウカ達の発進シークエンスが進められる。ヘイデスは大きく息を吐いた。体の中の全てを絞り出すような息だった。

 

「殴っていいよ」

 

 とヘイデスは傍らの所長に告げた。

 

「いいえ。私も貴方も同罪ですから。結局、私は止められなかったし、止めなかったのですから」

 

「そう。結局、ティターンズと変わらない、か」

 

 

 接近するデイモーンとティアマートの混成部隊に対し、出撃したプテラスとゲシュペンストMk-Ⅱ部隊が空対空ミサイルやメガ粒子砲を撹乱目的で放ち、続いて地上に布陣したゴジュラスとゴドスが優秀なFCSに支えられた豊富なビーム砲や対空レーザー、速射砲で対空砲火の網を形成する。

 対メカザウルスを想定し開発されたMZであるゴジュラスは、原作で全高二十一メートルのところを倍の四十二メートルとゲッターロボ並みの巨躯を誇り、ゴドスもまた原作で全高八・二メートルから十六・四メートルと倍加している。

 

 巨大化した機体には相応に大口径化した火器が搭載され、また無限に降り注ぐゲッター線に支えられたゲッター炉心は特に侵略者を相手にする時には、すこぶる調子がいい。

 良くも悪くも不安定なゲッター線利用の兵器以外にも、安定性を求めて装備されたレーザー兵器やメガ粒子砲から成る色とりどりの光の雨は、デイモーンらの群れの勢いを大きく減ずることに成功する。

 トミイ氏の努力に次ぐ努力に次ぎ、強化されたオレンジのキャノピー越しに、ゴジュラスを操る中隊長は空の戦況に歯噛みする。

 

「やはりプテラスでは火力が足りないか。新しい空戦用のMZが開発中だとは聞くが、してもな、ないものねだりを!」

 

 上空のデイモーン数機からエネルギー弾が雨あられと降り注がれて、中隊長と随伴していたゴドス二機に次々と命中して行くが、直撃を受けても共に装甲に傷はない。

 鹵獲したメカザウルスを参考にしたモーションの改修や、キャノピーの改修に合わせた装甲や内部部品のアップデートを済ませたゴジュラスとゴドスは、この程度の攻撃では動じない!

 

「どこのどいつか知らないが、ゴジュラスを舐めるなよ!」

 

 中隊からの火砲が一層激しさを増し、撃墜されるデイモーンが散見される中、中隊長は司令部から入った通信に目を通して苛立たし気に吐き捨てた。

 

「あの子らを出撃させるのか! アムロ・レイじゃあるまいに!」

 

 中隊長の三人いる子供らはちょうどオウカやアラドらと同年代であった。ヘイデスや所長と同じように悔恨の念を抱く中隊長の視線の先で、五番ゲートから緊急発進した四機のMSが戦場に加わる。

 背中にミノフスキークラフトを内蔵したVの字型のウイングユニット――VWFS(V Wing Flight System)を搭載し、右手には機体に匹敵する巨大な長方形の武装を携えている。

 機体は深い青色に染まっており、ライン状のカメラアイを備えた頭部や全体的なデザインは既存のMSと比べれば随分と異質だ。

 

 極めて堅牢なフレームとどんなエースパイロットの操縦にも反応する高い追従性、そして全領域に対応する汎用武装システム「ガナリー・カーバー」を持つ新型機、その名をバルゴラという。

 スーパーロボット大戦Zのリアル系主人公セツコ・オハラの搭乗する機体で、その後のZシリーズでも重要な位置を占めた機体だ。

 Zシリーズにおいて詳細こそ不明なれども宇宙世紀ベースの地球連邦軍が開発した機体であるから、一応はMSに分類されてもそれほどおかしくはないだろう。

 

 ゲシュペンストMk-Ⅲと並ぶ次期主力量産機候補がこのバルゴラであり、オウカ達がテストパイロットを務めていた機体でもあった。

 リーダーであるオウカの機体だけは両肩の一部のパーツが金色で、他の三機は銀色のパーツが使われている。

 

「アラドは私と先行して敵機に突撃します。敵部隊は既に陣形が乱れています。統制から離れた機体から叩き潰します。ゼオラはアラドのフォローを。ラトは狙撃支援を。ただし敵機の接近には細心の注意を払いなさい」

 

 オウカは、これまで何度も養子にならないかと誘ってくれたヘイデスと所長との会話による感傷を振り切って、素早く弟妹達に指示を飛ばす。

 全領域に対応する複数の兵装を内蔵するガナリー・カーバーだが、アラドは接近戦に特化した才能の持ち主であるから、パートナーであるゼオラのフォローが欠かせない。加えてオウカも共に前に出れば、アラドが撃墜される可能性は減らせる。

 

「おっしゃあ! 当たって砕けろだ!」

 

「ばか、砕けてどうするのよ!? そんなことになったら総帥と所長に怒られるわよ!」

 

 さっそくVWFSのバーニアを全開にして加速し、ガナリー・カーバーに内蔵されている実体刃ジャック・カーバーを展開するアラドに、慌ててゼオラが追従して実弾射撃兵装ストレイターレットと腰部にマウントしていたビームガンの一種レイ・ピストルで弾幕を張ってフォローする。

 

「オウカ姉様、どうかお気をつけて」

 

 ラトゥーニもまたオウカの指示に従って、ビーム兵装であるレイ・ストレイターレットを低出力・連射モードで起動し、隙を見せる敵機の撃墜と牽制を行い始める。

 

「ええ、私は大丈夫よ。ラトこそ気を付けなさい」

 

「あの、さっき、ゼオラは総帥達が怒ると言ったけれど、私はそれよりも悲しむと思う。あの二人が怒るよりも、悲しむ方が私はずっと嫌です」

 

「そうね、本当にそう。私達の誰も欠ける事無く戻らなければ、お二人を悲しませてしまうわね。なら、なおさらこんなところで負けられないわ!」

 

 機体を加速させたオウカは、ロックオンしたデイモーンの放つエネルギー弾を舞うように回避し、すれ違いざまにビームで刃を形成するバーレイ・サイズで胴を一閃。

 天使の上半身と蜂の下半身を両断し、腰部のレイ・ピストルを抜くや、そのデイモーンの背後で下半身のキャノンをこちらへ向けていた別のデイモーンを蜂の巣にする。

 穴だらけにされたデイモーンが爆発する中、他のデイモーンがオウカのバルゴラへ下半身のビームキャノンを向ける。

 正式にはスタウロス・キャノンと呼ばれる武器を撃とうとした直前、ラトゥーニのバルゴラの撃ったレイ・ストレイターレットがデイモーンの胸部を撃ち抜き、オウカは的確なタイミングで援護してくれる妹の働きに微笑する。

 

「流石ね、ラト。アラドは……相変わらず危なっかしいけれど、ゼオラが十分にフォローしてくれている。それに」

 

 先に出撃していた防衛部隊やMZのパイロット達が、積極的にバルゴラの支援に当たってくれている。司令部からの指示もあるだろうが、年少者に対する大人達の気遣いと意地だとオウカは納得し、感謝した。

 戦況はバルゴラ四機の参入とソレに奮起する防衛部隊により、優勢に変わりつつあった。

 

 デイモーンの撃墜は容易だが、MAと誤認されかけたティアマートがそれを補うように高い耐久性と火力を持つ分手こずっている。しかし急ぎこちらに向かっているゼファートールギスや他の部隊の合流が間に合えば、どうとでも処理できる。

 少なくともオウカやヨハン司令はそう判断していたし、それは間違いではない。その前提が崩れるまでは。

 

「どわ!? は、速い!」

 

「アラド!?」

 

 通信越しに聞こえた弟と妹の悲鳴と、浅いとはいえ機体のそこかしこを斬り裂かれたアラドのバルゴラの姿に、オウカは怒りを理性で抑え込みながら下手人の姿を求めた。

 

「オウカ姉様、上です!」

 

「これは!?」

 

 ラトゥーニの声に体が反応し、咄嗟に頭上へ振り上げたバーレイ・サイズが倍以上ある大きさの鎌を受け止める。

 コックピットのメインモニターいっぱいに目が真っ黒に塗り潰された男の顔が映し出され、オウカは不気味な迫力に息を呑んだ。

 なによりバルゴラを押し込んでくるそのパワー! オウカは真っ向から組み合う選択肢を捨てて、機体前面のスラスターを噴射し、敵が鎌を押し込む力を利用して大きく後方へと下がる。

 

 そうして男の全身像を見てみれば、なんと奇怪な姿だろう。全身が鎧めいた装甲に覆われて、頭部から首筋にかけてはそのまま巨大な蛇のように後ろへと伸びている。

 大鎌を携えた半人半蛇の異形。バルゴラに倍する巨体は生物の生々しさを備え、機械獣やどれい獣、化石獣などと言ったこれまでの異形兵器とは一線を画す雰囲気があった。

 

「パワー、スピード、それにこのプレッシャー。これまでの敵とは格が違う!」

 

 戦慄するオウカには、モニターに映し出された光景を見て、ミケーネ神! というヘイデスの心の中の叫びは届いていなかった。

 光子力研究所との交流やDr.ヘルの機械獣軍団の様子から、初代テレビアニメ版と判断していたヘイデスを襲う混乱の凄まじさたるや。ましてや天敵であるはずのサイデリアルの兵器とミケーネ神が共闘している理由とは!?

 

 戦場で対峙するオウカや驚愕するヘイデスを他所に、新たに姿を見せたミケーネ神は地上へと降り立つと、とある一点に視線を寄せて鎌の先をその地点へと向ける。

 すると残存していたデイモーンとティアマートの全てが動きを止めて、一斉に鎌の示す地点へと向けて全ての武器を撃ち始めるではないか。あまりに隙だらけであるから、攻撃を受けて次々に損傷して行くのにも構わず、攻撃だけを繰り返す。

 

「なんなのこいつら? ラボを壊す事を優先しているの?」

 

 一見、非合理に見えるデイモーンらの行動に混乱しながらも、ストレイターレットを連射してティアマートやデイモーンを撃墜するゼオラだったが、集中砲火を浴びているのが第七ゲートであることに気付き、その奥から突如として巨大なエネルギー反応が発生したことに新たな驚きをあどけない顔に浮かべる。

 ビームの嵐の只中からソレが勢いよく飛び出して、ゆるゆると地上へ降り立つ。

 

 全高三十メートル超の巨体は所々に緑を交えた白い装甲で覆われ、ツインアイと端正なマスクを備えた頭部には赤い一本角が伸びている。

 右肩には一回り巨大なガナリー・カーバー、左肩には巨大なモンキーレンチのようなライアット・ジャレンチがマウントされ、背中には四つの輪が重なり、日輪の如く背負われている。

 今度こそ堪えきれずに司令部のヘイデスはモニターへと向けて叫んでいた。

 

「あれは、フェブルウス! なら乗っているのはシュメシとヘマーか!?」

 

 この世界ではギフトのコードネームで呼ばれていたヘリオースもどきに与えられた名前、それがフェブルウスだ。古代ローマで執り行われていた慰霊祭の主神たる月の神、また死者の霊と関係が深い事からプルート神と同一視された神でもある。

 オウカ達ばかりかシュメシ達までとヘイデスが悲嘆に暮れる中、フェブルウスの直立式コックピットの中ではシュメシとヘマーが横並びに立ち、静かに語り合っていた。

 

「きっとお父さんとお母さんは悲しむね」

 

 私服のまま右側のコックピットに乗り込んだシュメシは、すぐ傍らに立つヘマーとフェブルウスへ語り掛ける。

 

「うん。でも私達は戦わなきゃ。お父さんたちは私達に名前をくれたね。たくさん遊んでくれた。たくさん美味しいものを食べさせてくれた。子守唄を聞かせてくれた。絵本を読んでくれた」

 

「うん。たくさんの事を教えてくれたね。僕達の家族になってくれた。僕達を家族にしてくれた。なら、戦わなきゃ。それにアレは僕達を狙っていると分かるのだから」

 

「うん。私達には戦える力があるから、だから戦わないと。知らないのに知っているよ。アレはオリュンポスの神々じゃない。彼らの姿を真似た偽りのもの。負の力に飲まれた彼らの皮を被ったまがい物」

 

 そして二人はその名を同時に口にした。

 

「お前の真の名はイドム!」

 

 シュメシとヘマーの声が聞こえていた筈はないが、それでも狙ったようなタイミングでイドムと呼ばれたミケーネ神は大鎌を手にフェブルウスへと斬りかかった。

 機械神と称されるオリュンポスの神のイミテーションとはいえ、その動きは既存のロボットのどれよりも俊敏で苛烈であった。大地をも斬り裂く絶命の一撃を、フェブルウスは左肩のライアット・ジャレンチでもって受け止める。

 冗談のようにフェブルウスの立つ場所を中心にして大地が陥没し、大きく地盤が砕ける。

 刃と巨大レンチごしに視線を交錯させるミケーネ神が、悪意を込めた思念をフェブルウスへと叩きつける。一種のテレパシーであり、感受性の強い者が悪意ばかりのそれを受けたら、下手をすれば精神を砕かれるだろう。

 

「我は無限の一部、我は混沌にして秩序。暗黒へと世界を進める為、再びあるべき場所へと戻るべし。至高神ソル(・・・・・)!」

 

「ソル……知らない名前だ。けれど、うん、どこか懐かしいね」

 

 ミケーネ神の姿を模したイドムの告げるその名前に、シュメシは聞き覚えがあるのを確かに認めるが、その顔には不快な色が浮かんでいた。それはヘマーも同じだった。

 

「うん、懐かしいけれど、でも嫌な感じのする名前。私達はソルじゃない。私達はヘマー、シュメシ、そしてフェブルウス!」

 

 フェブルウスの左腕が一閃するのと同時にミケーネ神は大きく弾き飛ばされ、空中で回転しながら着地すると再び神速の動きでフェブルウスへと斬りかかる。それを今度は右肩のガナリー・カーバーを手に取り、連射したブイ・ストレイターレットで牽制する。

 バルゴラのストレイターレットよりも単純に巨大である事、そしてより強化された武装である為に、その威力たるや一回りも二回りも増している。

 その弾丸をミケーネ神は大鎌を振り回して弾いて行く。弾かれた流れ弾がデイモーンやティアマートに命中し、一撃で撃破する光景でその威力が推しはかれる。

 

「肉を捨てよ。再び至高神としての姿と役目に回帰するべし」

 

「嫌よ。私もシュメシもフェブルウスも今の私達が好き。私達を育ててくれた全てが好き」

 

「だからお前達の言う通りにはならない。知らない貴女、貴女の力を借ります。ハマリエル・ザ・スター!」

 

 シュメシがその洗礼名を口にした途端、フェブルウスの右手に握られていたガナリー・カーバーの内包するエネルギーが跳ね上がり、地面すれすれを這うように近づいていたミケーネ神へと砲口を向ける。

 

「えい!」

 

 とそこへ割り込むようにヘマーの可愛らしい声がして、ミケーネ神の顎をライアット・ジャレンチがかちあげてその巨体を天高く吹き飛ばす。

 

「シュメシ!」

 

「うん、フェブルウス、行くよ!」

 

 ラボへ影響のない空中に飛ばされたミケーネ神へ、フェブルウスのガナリー・カーバーからレイ・ストレイターレットとは比較にならない出力の光の奔流が放たれて、ミケーネ神を飲み込むばかりかそのまま彼方に浮かぶ雲までをも貫く。

 スーパーロボットと共闘し慣れていない者からすれば信じがたい破壊力に、戦場の誰もが唖然とする中、ミケーネ神の皮を被ったイドムの消滅を皮切りに残存していたデイモーン、ティアマートが急速に離脱し始めていった。

 

 これを追う余力のないラボ側は負傷者の救出と収容、デイモーンとティアマートの残骸回収に勤しむ事となる。

 そしてなによりも戦場に出たオウカとシュメシ達と、彼らを戦わせてしまったと悔やむヘイデスらの話し合いが彼らを待っていた。

 

<続>

■バルゴラが開発されました。

■フェブルウスが修復されました。

 

■サイデリアル残党?が参戦しました。

 

■換装武器

・超電磁ドリルランスが開発されました。

・超電磁チェーンソーが開発されました。

・ガナリー・カーバーが開発されました。

・ライアット・ジャレンチが開発されました。

 

☆本作の戦う方の主人公、シュメシ&ヘマー&フェブルウスの設定について

・スパロボZシリーズが終了する→結末を見届けたソルの意志は安堵。

・人間の可能性と輝きを見せたZ-BLUEと地球の人々に感動、憧憬、羨望の念を抱いたソルは自身もまた人間へと生まれ変わることを望む。

・よっしゃ人間になったろ! と思ったらそこで本作の黒幕の襲撃を受ける。ここで戦闘用のボディとしてかつてのコア・ヘリオースを模したロボット形態へ。これがフェブルウス。

・なんとか戦闘に勝利するもボロボロになったソルが転移したのが、コロニーが落下中の本世界。人々を救う為、ソルは残された力を振り絞ってコロニーを破壊し、南アタリア島近海へ落下。この際、津波や地震などが発生しないように尽力する。

・機体を再生しつつ内部で人間としての自分を生成。これが太極を形成する陽たる男性、陰たる女性へと分かれた。後のシュメシとヘマー。

・つまり元々はフェブルウスこそが本体であり、フェブルウス=ヘマー=シュメシという関係だったが、各々に名前を与えられ、性差などによる感覚の違いから、三者三様の自我が形成される。現在はフェブルウス≒ヘマー≒シュメシといったところ。

・至高神ソルとしての記憶はほとんど喪失しているが、創造主を止めてくれたZ-BLUEへの感謝の念は深く、特にスフィアリアクター四名の印象は根強い。フェブルウスのメモリーに残っていたコレを所長が発見し、ガナリー・カーバーやライアット・ジャレンチの作成に繋がった。

なお武装として

・ハマリエル・ザ・スター(バルゴラ系)

・ウェルキエル・ザ・ヒート(ガンレオン系)

・ズリエル・ジ・アンブレイカブル(ブラスタ系)

・アムブリエル・ジ・オーバーライザー(ジェニオン系)

以上、四名のスフィアリアクターとその機体を参考にしたものを備える。現在は精々、スフィア一つ分の出力が限界。

 

 

☆メインパイロット(第3次スーパーロボット大戦Z天獄編基準)

〇シュメシ&ヘマー

 

☆精神コマンド

〇シュメシ・プルート

集中 直感 直撃 魂 愛

〇ヘマー・プルート

必中 ひらめき 熱血 覚醒 勇気

 

☆特殊スキル

超能力L9、極、三回行動、アタッカー、SP回復、プレッシャーL4、底力L9、気力限界突破

 

☆フェブルウス

〇特殊能力

オールキャンセラー、HP回復(中)、EN回復(大)

〇移動タイプ

空・陸

〇サイズ

L




というわけでシュメシとヘマー、ヘリオースもどきの正体はZシリーズ終了後の至高神ソルでした。
第五話の感想でクルージングさんに見事当てられちゃいましたね。

次期主力量産機候補の一つはバルゴラでした。
こちらはムロンさんに言い当てられちゃいましたね。

お二人ともお見事!

アルトアイゼンとヴァイスリッターは北米で活躍中です。パイロットはキョウスケ・エクレセレンもよし、いっそアクセル・レモンのペアでもよし、と考え中の作者でした。

追記
何度か誤字脱字の報告をちょうだいしていますが、ゴジュラス中隊長の
「~~してもな、ないものねだりを!」
の台詞は仕様ですので、そのまま訂正せずお読みください。そういう口調というわけです。


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第十二話 今日から本気を出す×2

ゼファーが沈黙を貫いているのは、カインズ博士の死亡時に咆哮を上げた以外に言葉を発さなかったゼファーを喋らせていいものか、ゼファーは沈黙のままでよいのではと私が悩んでいるからです。
REONやALICEならまあ喋ってもいいよねと思うのですが。
ゼファーとREONに性別を設定するのはありかなしかとも悩みますし、ゼファーとREONとALICEで人工知能三姉妹とかありか? とかも考えています。


 敵勢力が撤退し、出撃した部隊が続々と帰投する中、所長は黙って司令部を退出した。そうして廊下に出るや否や全力で走り出す。それを止める者は誰も居なかった。ただ、ヘイデスだけがヨハン司令にこう懇願するのだった。

 

「今だけは彼女が母親であることを優先するのを、どうか許してくれないかな?」

 

「私は貴方も父親であることを優先して構わないと思うがね。自分の子供が戦場に立つのを見ていたのだ。本当に親であるのなら平静ではいられまい。そして貴方達は本当の親だ」

 

 ヨハン司令は雇用主と従業員としてではなく、年長者としてヘイデスへ率直な意見を返した。それがどれだけヘイデスにとってはありがたく、背中を押してくれるものであったことか!

 

「感謝します」

 

 足早に司令部を去るヘイデスの足音が聞こえなくなってから、ヨハン司令は制帽を深くかぶり直した。

 

「かつてはホワイトベースに乗り込んだ民間人をそのまま戦わせ続けた私が、今更になって何を言うのか。まったく、ままならんな」

 

 かつて一年戦争に於いてV作戦の発動に身命を賭し、戦後、退役した元地球連邦軍大将ヨハン・イブラヒム・レビルは己をあざ笑う。

 侵略戦争の勃発した昨今でせめてもの救いは、孫のチャアミン・ブラウンが一年戦争に従軍しながらも無事に生き残り、部隊の同僚だった疑似NTの女性と結婚し、レビルの曾孫にあたる子供を設けて辺境の地で静かに暮らしている事だろうか。

 辺境であるがゆえに昨今の侵略者達の魔の手から逃れているが、それもいつまでも安全が保障されているわけでもない。孫と曾孫の安全を守る為にも、ヨハン司令ことレビルは退役後も戦う術と立場を用意してくれたヘイデスに感謝しているのだった。

 

 

 サイデリアル残党かその関係者と思しき侵略者を撃退したオウカらグランド・スターとシュメシ、ヘマーは十番ゲートへの帰投を命じられていた。

 スーパーロボット用のゲートとハンガーがあり、三十メートル級のフェブルウスと四機のバルゴラを収容しても余裕があるからだ。

 予定になかった実戦を経験したバルゴラと、それ以上に予定外であったフェブルウスの実戦投入に際し、専属のメカニックと医療班が先んじてゲート内の格納庫に集っており、壁際に設けられたハンガーに固定された機体に群がっている。

 

 司令部を出た途端に全力疾走をしたヘイデスが辿り着いた時、彼の目に映ったのはフェブルウスの足元に集まっていた子供達を抱きしめる愛妻の姿だった。

 周囲にはメカニックや医療班の姿もあるが、彼らの目をはばかる事無く所長は目いっぱい子供達を抱きしめ、その無事を喜んでいる。

 

 周りの者達も大なり小なり心境は所長やヘイデスと似ている。彼らもまたスクールの子供らや双子との付き合いは長いのだから。

 所長がシュメシ、ヘマー、オウカ、アラド、ゼオラ、ラトゥーニを潰さないように手加減しながら抱きしめた後に、ヘイデスもまた呼吸を整えてから同じように子供達を抱きしめてゆく。

 双子だけではない。スクールの子らもヘイデス達にとっては、実の子も同然だった。

 

「貴方達は本当に! 本当に、本当に、親の気持ちも知らないで……。でも、無事でよかった。本当に、よかった……」

 

 所長は最後に抱擁したアラドを解放してから、かろうじて涙こそ零さなかったが震える声でそれだけを口にする。ヘイデスは言いたいことを先に言われてしまって、何も言えないまま声だけでなく肩も震わせる最愛の人を抱き寄せた。

 オウカ達は戦闘前も戦闘中も所長やヘイデスの怒りを想像し、心構えを備えていたつもりだったが、こうしてこれまで見たことのない悲しみに打ちひしがれた“母”の姿を見れば、想像もできなかった罪悪感が胸の中に積もり始める。

 

「申し訳、ありません。私達がお役に立てると思い、先走ってしまいました」

 

 子供達を代表して顔を伏せながら謝罪の言葉を口にするオウカに、所長はそれ以上この場では何も言えなかった。だからヘイデスが精一杯平静を装って子供達に言葉を掛ける。

 

「言いたいことは山ほどあるけれど、今は君達が無事に帰ってきてくれた事がなによりも嬉しい。戦闘中、命令するまでもなく君達の支援を買って出てくれた部隊の方々にも、後でお礼を言わなければならないよ」

 

「はい。必ず」

 

「うん。よし、まずはメディカルチェックを受けるんだ。話をするのはそれからだ。その頃にはお互いに頭も冷えているだろう。彼女達を頼むよ」

 

 周りで状況を見定めていた医療スタッフに声をかけ、ヘイデスは所長の肩を抱き寄せたままその場を後にした。

 このスーパーロボット大戦めいた世界に転生あるいは憑依をしたと気付いた時には、この世界の未来の危険性ばかりを不幸だと嘆いたが、我が子が命を賭けて戦場に出るのがここまで辛く苦しい事だったとは!

 この苦しみに比べれば自分の未来だけを考えていればよかった一年戦争の頃は、なんと気楽だったのだろう!

 

 それでもヘイデスは所長と結婚しなければよかったとも、シュメシやオウカ達を引き取らなければよかったとも決して思わない。

 何故なら、彼女達と出会ったことで得られた幸福の方がずっとずっと大きいのだ。

 そして戦いを終わらせた暁には、家族らと今度こそ未来の侵略に怯えずに幸福な日々を積み重ねられるだろうから。だから、ヘイデスはこの瞬間にも胸が張り裂けそうな悲しみや苦しみに襲われていても、出会いを不幸だとは決して思わない。

 

 そうしてヘイデスと所長が落ち着いたのは、戦闘前にゼオラ達と話していたブリーフィングルームだ。あの時、お土産に持ってきたバクラヴァはない。シェルターか更衣室に置きっぱなしになっているのだろう。

 ヘイデスが椅子に座らせて暫くすると、所長も落ち着きを取り戻し、一度深呼吸をすると傍らに立つ夫へ向けて謝罪の言葉を口にする。

 

「申し訳ありません。取り乱してしまいました」

 

 夫婦二人だけで、他に誰も居ないというのに所長の口ぶりは仕事中と変わりがない。ヘイデスは羞恥と自らへの怒りを滲ませる所長に、にへらと笑う。ヘイデスのこの笑みが、所長は好きだった。

 一年戦争以前にスカウトされた時には、上っ面だけの人を馬鹿にした笑みだと毛嫌いしていたものだ。

 ところがMSを作って欲しいと頼みに来たあの日以来、すっかり人間らしさが宿るようになって一年と経たずに心を奪われてしまったのだから、人間、何が起こるか分からない。

 

「謝る必要なんてないよ。僕だって心穏やかではいられなかったし、今も冷静だなんて口が裂けても言えない。必死に冷静になれと自分に言い聞かせて、どうにかそれらしく振舞っているだけだ」

 

「それが出来るだけで私よりも上等です。それにしても、機動兵器の中から生まれてきた子供達、そして機動兵器に乗るべく教育された子供達。

 万が一の事態が訪れないようにと力を尽くしてきたつもりですが、思えばオウカ達にテストパイロットを許してしまった時点で、私達は万全を尽くしたと胸を張っては言えませんね」

 

「うん。あの子達を戦争から完全には遠ざけなかった。シュメシとヘマーはフェブルウスと特別な繋がりがあると感じ、オウカやラトゥーニ達はまだスクールで施された教育や思想から脱し切れていなかった。

 だからいきなり機動兵器や軍の事から切り離しては、かえって傷を深くしかねないと医療スタッフとも協議してそうしたけれど、実際にあの子達が戦う姿を目の当たりにすると何を悠長なことを言っていたのかと後悔ばかり募るよ」

 

「……すみません。愚痴に付き合わせてしまいました」

 

「いいさ。君の愚痴が聞けるなんて他の男には許せない特権だからね」

 

「貴方には敵いませんね」

 

「ふふ、ソレが僕の数少ない自慢だよ」

 

 他にも自慢できることはそれこそ山ほどあるだろうに誇らしげに笑う夫を見て、所長はようやく本当に落ち着く事が出来た。それから数分の後に、グランド・スターの黒を主体とした制服姿に着替えたオウカ達と私服姿のままの双子達が部屋を訪れてきた。

 一様にその表情は、親に叱られるのに怯える子供の要素が半分、残りの半分は自分達に出来る事を見つけた安堵が半分を占めている。彼らに出来る事が、戦場で戦う事であるのはヘイデスと所長にとってはこの上ない皮肉だったろう。

 

「所長、皆を止められなかったのは俺だ! だから」

 

 壁を背にヘイデス達の前に並んだ六人の中で、真っ先に皆を庇う発言をしたのはアラドだった。しかし、所長が悲しげな眼差しを向けるとそれ以上口にするのを制止する。

 アラドを止めようとしていたオウカやゼオラも、所長の視線を受けて伸ばしかけていた手や開きかけていた口を閉ざす。

 

「貴方達が私達を守る為に戦ってくれた事は分かっています。それについては、私達のために戦ってくれてありがとうと、お礼を言う他ありません。

 けれど、それでも私と総帥だけでなく、貴方達を引き取ってから関わってきた財閥の全ての人間が、戦わせたくはなかったと思っていたのをどうか理解してください」

 

「はい」

 

 アラドがそれだけを口にしてしゅんと落ち込む。出来れば二度と彼らを戦わせたくない、と誰の目にも分かるくらいはっきりと表情に浮かべる所長へ、オウカがその思いを裏切らなければならないのを苦痛に感じながら口を開いた。

 

「所長、総帥、お二人が私達を実の子供の如く想ってくださっているのを、今日までどれだけ感謝してきたことか。そして私達に関わってくださった方々も、どれだけ心を砕いていただいてきたことか。

 スクール以前の記憶の無い私達にとって戸惑いも多く、そしてそれ以上に幸福な日々でした。だからこそ私達は戦うのです。

 戦う術しか知らないからではなく、私達を慈しんでくれた世界を守る為に戦います。所長、総帥、貴方達と共に戦いが終わった先にある世界で生きる為に、私達は戦うのです」

 

「貴女はどこでそんな物言いを覚えて……」

 

 くしゃりと顔を歪ませる所長に、オウカもラトゥーニもゼオラも泣き笑いの表情を浮かべていた。愛妻の肩に手を置いて、ヘイデスは困った微笑を浮かべながら愛しい子供達に語りかける。

 

「君達がただ僕達を守る為だけに戦うと言ったなら止めようと思っていたけれど、戦いが終わった後の世界で共に生きる為と言われると、これは困ったな。君達が未来を考えてくれた事は嬉しいのにね」

 

 親の見ていないところで子供は育つ、という事か。ただこの育ち方は親の心と神経に大変悪い育ち方だ。結局、スクールの子供達が戦場に出るのを止められないのか――いや、止めないのか、とヘイデスは心の軋む音が聞こえた気がした。

 互いを想い合っているのにけれどもすれ違い、噛み合わないのは侵略者達の悪意にさいなまれる世界の残酷さ、過酷さゆえか。

 

 悲壮な決意と諦め混じりの覚悟に満たされる室内で、シュメシが今度は自分達の番だと意を決した顔になる。

 フェブルウスと共に戦場に出て、至高神ソルの名を聞いた影響なのか、帰還したシュメシとヘマーはこれまでとはぐっと雰囲気が変わっていた。

 これまで外見は十五、六歳でも中身は六歳程度と釣り合いの取れない幼さが雰囲気となっていたのに、今は見た目相応の雰囲気を感じさせる。肉体の成長に精神が追いついたのかもしれない。

 だが、ヘイデスは戦闘中にミケーネ神の皮を被ったイドムとシュメシらの間で交わされた会話の内容を知らない。もし二人が至高神ソルの生まれ変わりであるとこの時点で知っていたなら、さて、彼はいったいどうしただろう。

 

「お父さん、お母さん、僕とヘマーからも話があります」

 

(ん? なんだか二人の雰囲気が大人びたかな?)

 

「ラボを襲ってきた敵は僕達を狙ってやってきたものです」

 

 ミケーネ神の行動からそうではないか、と察していた所長は表情を一層険しく変えて愛息子と愛娘を見る。シュメシに続いてヘマーもまた先程の戦闘で思い出したことを告げる。

 

「うん、あのね、全部を思い出したわけではないけれど、私とシュメシとフェブルウスを求めて、あいつらはまたやってくるよ。だから私達はどうしても戦わないといけないの。知らないけど、あいつらを知っている。あいつらは私達が戦わないといけない敵なの」

 

 双子がフェブルウスの中から赤子の状態で取り出され、そして常人の数倍の速度で成長する特異体質である事は、アラドやラトゥーニ達にも知らされている。

 その上であのアンノウンが双子達を狙ったと聞かされれば、誰でも驚くだろう。

 唯一、ヘイデスばかりは双子がこのスパロボ時空の主人公ではと睨んでいた為、そう驚きはしなかった。ただ、狙ってきた相手がサイデリアル残党(?)であったのには、心底驚いたけれど。

 

「貴方達を狙って……否定するよりも肯定する要素の方が多いなんて、まったく」

 

 プルート財閥の情報網をもってしても、アンノウンの情報は今日まで所長の耳には届いていなかった。

 そのアンノウンが最初に狙ったのがヘパイストスラボで、明らかにフェブルウスに反応していた。所長が口にした通り、ヘマーの言葉を肯定する要素ばかりが揃いやがる(・・・)

 

「それでもあなた達はまだ六歳なのですよ?」

 

 シュメシは笑って答えた。

 

「僕達は普通の六歳じゃないよ」

 

 ああ、こんな時に笑いながらそんなことを言わないで欲しい! ヘイデスと所長は溢れる痛ましさに心臓が止まってしまいそうだった。

 ヘイデスは年単位で傷み続けている胃や神経が更なる悲鳴を上げ、所長もまたいよいよ夫の二の舞になりかねない心的苦痛に苛まれ始めている。

 ヘマーはシュメシと互いの手を握り合いながら答える。かつてはフェブルウスと合わせて一つだった子供達は、いまや三つの意志を持つ別人に分かれていたが、それでもこの一点においては意志を一つにしていた。

 

「大丈夫だよ、お父さん、お母さん。戦いは怖いけれど戦わないで大切な人達を守れないことの方が、ずっと怖いの。だから、どんなに止められても私達は戦うから」

 

 所長は普段の快刀乱麻を断つかのような口ぶりは鳴りを潜め、口にするべき言葉を探している。

 その横でヘイデスは、これまでこの世界を地獄だと思って来たが、そんなものは子供達が戦場に出なければならない今に比べれば、何ということもなかったのだと痛感していた。

 本当の意味で理解と実感が足りていなかったのだ。そしてそれを悟った時にはもう遅かった。

 

「決意は固いか。自分の身を守る為に戦うことまでは否定はできない。けれど、どうか僕達大人が君達を守ろうとするのを許してほしい。いや、許されなくても勝手にするんだけれどね」

 

「総帥?」

 

 夫の声音に響く硬質なものに、所長が訝しげに横顔を見上げる。

 

「だから僕も、うん、金持ちの本気を侵略者共に教えてやる」

 

 そして所長は理解した。これまで夫の中にどこか残っていた遠慮がなくなったのを。つまりキレたのだ。

 これまでスパロボプレイヤーあるいはユーザーとして心の中にあったこの世界への憧憬や恐怖、不安の全てをかなぐり捨てて、参戦作品の各イベントがどうなろうがもはや知った事ではない。

 

 誰が死のうが、誰が助かろうが、それは子供らの未来の幸福の前ではささやかなもの。

 地球圏の富をアナハイム、ロームフェラと三分するプルート財閥の総帥が、本気で持てる資金と資源と権限の全てを使い尽くしてでも悪意ある侵略者共を倒す、と決めたのだ。

 例えメンタルは平凡な一般人でも、一度振り切れれば何をしでかすか分からないもの。まあ、だからといって今すぐ何が出来るわけもないのが玉に瑕ではあるけれど。

 

 極力オウカやシュメシ達に有人機との戦闘を行わせず、侵略者との戦いで自衛する場合においては戦いを認めるという妥協がなされ、彼女らが退出した後、ブリーフィングルームにはヘイデスと所長だけが残った。

 所長が肺の空気をすべて絞り出すように溜息を零してから立ち上がると、ヘイデスとお互いに向き合う。

 

「とりあえずけじめはつけておこうか」

 

 とヘイデスが切り出す。

 

「気持ちの切り替えと言えば聞こえはいいですけれど、お互い、気持ちを楽にする為かと思うとつくづく救われませんね」

 

「仕方ないよ。僕らも心が鉄で出来ているわけではないんだ。そういう風に振舞っているだけだよ」

 

「それもそうですか。では、そろそろ。三……二……一……」

 

 二人はお互いの右腕を振り上げ

 

「ゼロ!」

 

 所長がゼロと口にした瞬間、所長の右拳がヘイデスの左頬に深々と突き刺さり、ヘイデスの右拳は所長の左頬にちょこんと触れた。

 所長がヘイデスの首から上が吹き飛ばないように手加減したとはいえ、愛妻の鉄拳を受けたヘイデスはその場でたたらを踏み、壁に手をついて崩れ落ちそうになるのを防ぐ。

 “けじめ”の一発を叩き込み合った夫婦だが、所長は呆れた顔で夫を見た。夫の膝は、生まれたての小鹿のように震えている。

 

「呆れた。ひょっとしたらとは思っていましたが、本当に手加減なさるとは」

 

「ハハ、いやあ、そこはほら、男の意地というか見栄? 夫の面子かも。妻に手をあげる気にはなれなくてね」

 

「ふう、それでは不公平の極みです。私は断腸の思いであなたを殴りましたのに。ですので、こう致します」

 

「あ!?」

 

 ヘイデスが止める間もなく、所長は各関節の捻りを利かせた自分の右拳を自分の右頬に叩き込んだ。鉄のハンマーで思いきり鉄の塊を殴ったような音がし、ヘイデスはひえ、と我ながら情けない声を出していた。

 プロメテウスプロジェクト時代、ヒートアップしたアムロとシャアの頭に数々のたんこぶを作り上げた鉄拳を引き、所長は赤くなった右頬をそのままに淡々と口にする。

 

「総帥がお金持ちの本気を出されるのなら、私も技術者としてこれまで以上に本気になりましょう。もちろん以前から本気でしたが、そこは見栄というものです」

 

「大人は見栄を張らないとね。特に子供の前だと、さ」

 

「まったくで」

 

 そうしてこの後、シュメシとヘマーの言葉が事実だと保証するように、ヘパイストスラボにはサイデリアル残党疑惑のあるアンノウン――後にUI(Unknown Invader)と呼称される新たな敵が度々襲撃を仕掛けてくる事となる。

 

第二話 宇宙から来る災い

 

 新代歴187年3月某日・宇宙。

 地球近海の宇宙で反地球連邦組織エゥーゴにより、コロニー・グリーン・ノア1からティターンズの開発していた新型MSが奪取されるという事件が発生していた。

 ティターンズひいては地球連邦軍の次の旗頭となるべく開発したMSガンダムMk-Ⅱを取り戻すべく、ティターンズはエゥーゴの強襲用宇宙巡洋艦アーガマに追手を放つ。

 

 アーガマはガンダムMk-Ⅱ奪取の際、行き掛かり上エゥーゴに同行する事になった少年カミーユ・ビダンや、人質としてティターンズに利用されたカミーユの母ヒルダ・ビダン技術中尉や、グリーン・ノア襲撃によって発生した難民の一部を加えていた。

 一時期、カミーユの父親でありガンダムMk-Ⅱの開発に携わったフランクリン・ビダン技術大尉もアーガマに居たが、彼は自らの保身の為に再びティターンズに帰還しており、カミーユや妻と決定的な決別を迎えていた。

 そうしてアーガマは月面都市アンマンへ寄港、その後、ティターンズの軍事拠点と化したジャブローを攻略すべく、地球降下作戦を行うべく行動していた。

 そして――

 

「どうした、腕が落ちたんじゃないのか! ええ、大佐殿!」

 

「今の私は大佐ではない、ヤザン・ゲーブル!」

 

 地球の青と見えない重力を感じる距離にまで迫った宇宙で、アーガマのMS隊を指揮するクワトロ・バジーナ大尉のMS百式とティターンズのヤザンが駆る四機目のガンダムMk-Ⅱが互いに向けてビームを撃ち合っていた。

 ヤザンの属するティターンズはジャマイカン・ダニンガン少佐の乗るアレキサンドリア級を筆頭にサラミス二隻とMS部隊が展開し、エゥーゴはアーガマとカミーユの乗るガンダムMk-Ⅱ、クワトロの部下であるアポリー、ロベルト、それにティターンズからの離反者であるエマ・シーンが乗るリック・ディアス三機が出撃している。

 

「ラムサス、ダンケル、お前達は手を出すな。片手間に落とされかねん。それだけの相手だからな、この金ピカのパイロット殿は!」

 

 ヤザンは胴体を深い青、その他は薄い青で塗装されたガンダムMk-Ⅱを操り、直属の部下に指示を飛ばしながらクワトロの百式を相手取る。

 ヤザンの部下はラムサスとダンケルだけで、他のパイロット達はジャイマカンの指示に従ってアーガマへと攻撃を仕掛けている。この時、ティターンズ部隊に配備されたMSはジオン製かと疑う外見のマラサイというオレンジのMSだ。

 ミノフスキークラフトやビームシールドこそ搭載されていないが、信頼性の高い枯れた技術をメインに、ジムⅢやジェガンを経て培われたノウハウが投入されており、対MS用のMSとしては素晴らしい性能を誇る。

 

「ヤザンめ、更に腕を上げたか。カミーユ、エマ中尉、アーガマの防衛を頼む。青いMk-Ⅱは私がなんとしても抑え込む」

 

「頼みます、クワトロ大尉!」

 

 ついこの間まではグリーン・ノア1に住む民間人だったカミーユは、戦場の緊張感に神経をひりつかせながら、倍する数で攻めてくるマラサイにビームライフルを撃っていた。

 敵部隊の中には、名前をからかわれたのをきっかけに何度も交戦したティターンズの若きパイロット、ジェリド・メサの姿もある。同僚であるカクリコン・カクーラーと共に、新鋭機マラサイで奪われたガンダムMk-Ⅱへと襲い掛かった。

 

「ガンダムMk-Ⅱ、そいつを奪われてから俺のツキは離れっぱなしだ。今日こそ終わらせてやる!」

 

「熱くなるなよ、ジェリド。あっちには裏切ったエマ・シーンも居るんだ」

 

 熱くなっているジェリドをいさめるカクリコンも、エリート部隊としてのプライドをズタズタに引き裂いてくれたエゥーゴとカミーユへの闘志は高い。

 地球が侵略者達によって戦いの炎に包まれている中、目を向けられていない宇宙では人類同士が争い合う余裕があるのだった。

 ビームライフルの連射から一転、ビームサーベルを抜き放ち斬りかかるヤザンに、クワトロもまた百式の左手にビームサーベルを握らせてこれを受けた。

 

「む?」

 

 プロメテウス時代に使っていた暗号コードでの通信が入っている事に気付き、クワトロはこれを受信した。

 

「久しぶりだな、大尉殿。お互い新しい職場が見つかったようで何よりだ」

 

「ふ、貴様は昇進したようだな。ティターンズは一階級上の扱いと聞く。ならば貴様は少佐として遇さねばならんかな?」

 

「ふん、下らんローカルルールにエゥーゴが従う必要はあるまい。それに俺とアンタがやり合わなきゃ、お互いの部下が全滅しかねん。もう少し付き合ってもらおう。そうそう、あのモノアイもどきの機体とその金ピカ、まあ悪くない機体なんじゃないか!」

 

 鍔迫り合いから距離を置いた二機が再び、全身のスラスターと重心移動を巧みに織り交ぜた機動でビームサーベルの剣戟を重ねてゆく。一撃一撃がそこらのパイロットなら避ける間もなく斬り捨てられる精度と鋭さだ。

 

「ただのMSとしては、な。大尉こそ新しいガンダムパイロットとは随分と名誉な役回りではないかな?」

 

「加速性は悪くない。パワーもそちらのジオンの面影のある機体よりは上だろう。ムーバブル・フレーム搭載のMSとしては手堅かろうよ。尖ったところのない退屈な機体だが」

 

「開発者も同じ意見だったぞ。フランクリン・ビダンもそう零して、こちらの機体を奪おうとした」

 

 ヤザンはクワトロの言葉に奪ったリック・ディアスからノーマルスーツで放り出され、這う這うの体で回収され、そのままティターンズに戻った男の顔を思い出し、気に入らんとばかりに吐き捨てた。

 

「そちらの坊ちゃんの父親か。俺の知った事ではない」

 

「ヒルダ・ビダンの入れられたカプセルを回収し、こちらに流したのは大尉だろうに。こちら側に付く気はないか? ティターンズは大尉にとって居心地の良い組織ではないと見たが?」

 

「思想の無い男が思想集団につくものではないと思い知ったがな! そう易々と誘いには乗れん。今は貴様との戦いを……ぬっ!?」

 

 戦場に居る誰よりも圧倒的な技量で格闘戦を繰り広げる二人に見惚れていた者達も、そしてヤザンもクワトロも戦闘宙域に急接近してくる巨大物体に気付いた。

 特にニュータイプとして知覚領域の広いクワトロとカミーユはドロドロと蠢く悪意の塊に、神経を弄り回されるような不快感に顔を顰める。

 

「なんだ、この不快感は。他者への悪意しかない」

 

 歴戦の勇士として強靭な精神を持つクワトロはそれでも行動を鈍らせなかったが、クワトロ以上に鋭敏な感性と繊細さを併せ持つカミーユは、思わずヘルメットのバイザーを上げたくなるほどの息苦しさを憶えていた。

 

「ぐう、これはなんだ、人間がこんな純粋な悪意を放てるものなのか?」

 

 ライブラリに存在するデータと照合しない物体に戦闘が停止する中、ついにその正体を自ら露とした。それは、ケンタウロスめいた胴体の上に遮光器土偶を思わせる巨大な頭部が乗っていた。

 実に全長六百メートル以上。一年戦争時最大の宇宙空母ドロスの全長四百九十五メートルを大きく上回る巨大艦だ。なによりその異様なシルエット、さらにその周囲に展開するMSとは似ても似つかない生物めいた異形の巨大兵器群。

 

「こいつら、新しい宇宙人か!」

 

 ヤザンとクワトロが同時にもっともありがたくない可能性に気付いた時、その巨大艦あるいは要塞の内部では指揮官である薄緑色の肌の巨漢が、争い合っていた地球人の様子を見て喝采を上げる。

 

「ホ~ホホホ、なんじゃなんじゃ、下等種族の同士討ちはもうおしまいか? それならワシが盛り上げてやろう。おお、ワシはなんと親切なのじゃ。寂しくないよう全員殺してやるからのう。ホホホホ」

 

 巨大戦闘要塞バンドックの指揮官キラー・ザ・ブッチャーは、バンドックの周囲に展開していた自軍の兵器メカ・ブースト達を戦場へと突入させた。

 鳥の頭に胴体の左右から斧状の刃の付いた触手を生やすメカ・ブースト・ドミラ、胴体に人面のある鳥人型メカ・ブースト・ガビタンが、一斉に電撃やレーザーを放ちながら、おおよそ全高六十メートル以上というMSの三倍以上という巨体で襲い掛かってくる。

 地球の連邦軍とは違い、侵略者の異形兵器との戦いに慣れていないティターンズ・エゥーゴ双方のパイロット達は、想像もしなかった事態に混乱に陥るがこの中で即座に対応したのはクワトロ、ヤザン、それにアーガマ艦長のブライト・ノアだった。

 

「艦長、MS隊と連携してアーガマの主砲であの怪物の相手を。我々の装備ではあれだけの巨体の兵器にどこまで通用するか、分かったものではない」

 

「了解した。MS隊各機はアーガマの砲撃前の警告に気を付けろ。MAが可愛く見えるサイズの敵だ。アーガマのメガ粒子砲で叩くぞ!」

 

「ラムサス、ダンケル、お前達は艦の護衛に回れ。ジェリド中尉、カクリコン中尉、貴様らもだ。母艦を沈められては話にならん!」

 

「しかしゲーブル大尉、エゥーゴの連中が」

 

「ジェリド中尉ィ、地球人類と地球人類かどうかすら定かではない相手と、どちらと戦うべきかの判断もつかんのか! ジャマイカン少佐が文句をつけてきたら、母艦を守る為と言っておけ。それでも足りなければ俺に命じられたと言え!!」

 

 ヤザンはドミラの放ってくるレーザーを見るまでもなく避け、ジェリドを怒鳴りつける合間にビームライフルを叩き込み、割と効いている様子に意外そうな顔をした。

 

「サイズの割に装甲の強度は高くないのか? 偵察用か?」

 

 先程までの激しい剣戟はどこへやら。ヤザンのガンダムMk-Ⅱとクワトロの百式は肩を並べて、お互いに息の合った様子で距離を詰めてくるメカ・ブーストの頭部や口内といった脆弱と思える部位を狙ってビームを命中させ続けている。

 地球人類トップエースクラスの二人こそ簡単にあしらっているように見えるが、まだ戦闘経験の浅いカミーユを含めて、ティターンズ・エゥーゴ両陣営のMSパイロット達は、アニメやモンスター映画から飛び出してきたようなデザインと迫力のメカ・ブーストを相手に及び腰になっている。

 クワトロとヤザンにとっては、ないものねだりをしたくなる状況であった。

 

「ち、ゲシュペンストかラボ製の武器があればな!」

 

 ビームライフルを三発、四発と直撃させてようやく撃破できるドミラの耐久性に、ヤザンはEパックを交換しながら不満を口にした。これにはクワトロも同意するところであった。攻撃が全く効かないわけではないし、思ったよりは効いているがこれは厳しい。

 シャアの名前で参加していたプロメテウスで、何から何まで彼の為に調整されたトールギス・コメットに乗っていたら、メカ・ブーストの群れを突破して敵母艦に奇襲の一つもかけられるものを。

 

「気持ちは分かるが言っても仕方がないぞ、ヤザン」

 

「ふ、俺も焼きが回ったかあ?」

 

 巨体を活かし、両腕の鎌を振るって襲い掛かるガビタンの攻撃を避け、その鳥頭を左からピンポイントで撃ち抜きながら、ヤザンは周囲を取り巻くメカ・ブーストとバンドックから発射された巨大なミサイル群を認める。

 バンドックからのミサイルは、先端の誘導装置が目玉の形状をした気色の悪いものだ。

 

「母艦なのか拠点なのかは知らんが、あの訳の分からんデカブツはここで叩いておきたいが」

 

「仮に我々が戦力を結集させたとしても難しいだろう。“彼ら”の手を借りても撃退が関の山だ」

 

「彼ら? ニュータイプの勘はメカよりも正確か」

 

 不敵に笑うヤザンは、クワトロの発言から遅れて機体のレーダーが捉えた反応を認めた。

 バンドックに続いて戦闘宙域に到達したのは、ペガサス級とアレスコーポレーション所属のスペースノア級壱番艦シロガネであった。

 ペガサス級からは蒼いゲシュペンストMk-Ⅱを隊長機とし、マゼンタカラー機を副隊長機とするゲシュペンストMk-Ⅱ全六機とシロガネからはビルトシュバイン、そして両肩に水晶状のパーツを取りつけたスペースゴジュラスが出撃済みだ。

 

「こちら地球連邦軍第十独立遊撃部隊ライラ・ミラ・ライラ大尉。本隊は地球圏に接近中のアンノウン撃退の任を帯びている。展開中の部隊に対し、速やかに戦闘を停止し、協力を要請する」

 

 通信越しに聞こえてきた懐かしい声と馴染みのある感覚に、クワトロは知らず口元に微笑を浮かべる。

 

「ライラ大尉、それに蒼い機体はユウ中佐か」

 

 ヤザンとクワトロが切望した機体と装備を兼ね備えた援軍の到来に、ティターンズとエゥーゴ双方の部隊が大いに安堵した事だろう。

 そうしているとアーウィンの乗ったビルトシュバインと共に、グレースの乗ったスペースゴジュラスが二人に距離を寄せてきて、二十代半ばとは思えない若々しい顔立ちのグレースが二人に通信を繋ぐ。

 

「ぎゃおーんと参上ですよ~。ヤザンさんと……」

 

 ニュータイプの直感か、あるいはシャア・アズナブルが公的にはどうなっているのかを知っている為、グレースはクワトロをなんと呼ぶべきか決めかねたようだ。

 

「今の私はクワトロ・バジーナ大尉だ。協力、感謝する」

 

「ああ、クワトロ大尉ですねえ。連邦軍の皆さんと協力して悪い人達をやっつけるのがお仕事ですからあ」

 

 気にしない、気にしない、とスペースゴジュラスの手を振るグレースの無駄に高い技量に、クワトロはプロジェクトに参加していた頃を思い出し、懐かしさを心の中で広げてゆく。

 のほほんとしたグレースの雰囲気に飲まれそうになるが、それをゲシュペンストからはるかにガンダムに近いデザインになったビルトシュバインを駆るアーウィンが引き締める。

 

「クワトロ大尉、ヤザン大尉、再会を懐かしむ余裕はなさそうだ。こちらの増援にあちらがやる気を“無くした”。宙域を離脱して地球へ向かい始めている」

 

 アーウィンの声音が険しくなるのも当然だった。メカ・ブーストで下等種族を皆殺しにして楽しもうとしていたブッチャーだったが、思いの外、腕の立つ者が混じっていたのと新たな増援が姿を見せた事で遊びが陳腐になったと感じ、さっさと地球に向かい出している。

 ペガサス級とシロガネはバンドックの地球降下を阻むべく進路を取り、メガ粒子砲と連装衝撃砲、ミサイルを次々と発射しながら追いかけている。

 虚仮にしてくれるとヤザンがこめかみに青筋を浮かべた時、ユウの乗るゲシュペンストMk-Ⅱから元プロメテウスメンバーの機体に暗号文が届けられる。

 

「これは、ふふ、いいだろう。戦場の同窓会か、俺達らしい」

 

 愉快気に笑うヤザンが機体を翻してユウの機体に追従し、クワトロも百式を同じ方向へと向かわせる。

 

「ふ、機体の性能差は技量で補って見せよう」

 

 アーウィンとグレースも殿を務める形でクワトロ達に続き、対侵略者用のメガ・ニュートロンビームライフルと、スペースゴジュラスのゲッタービームキャノンに大口径のメガ粒子砲が立ちふさがるメカ・ブーストに直撃して行く。

 自然とユウ、ライラを先頭にヤザン、クワトロが続き、アーウィンとグレースが殿を務めるフォーメーションが組みあがり、十重二十重と立ちはだかるメカ・ブーストの防衛線を食い破ってゆく。

 

「ユウ中佐の粋な計らいですねえ、ウィン~」

 

「粋か? これでヤザン大尉とクワトロ大尉の機体がもっとマシだったら形になったのだがな」

 

 一年近い期間が空いたとはいえ、かつては当時最高峰のMSに乗って鎬を削ったトップエース達は、初見の強敵が相手であるにもかかわらず冗談のようにメカ・ブーストを食い散らかしてゆく。

 斬り込み役を担うユウは、愛機の全長にも等しい超電磁バッテリー内蔵のVキャノンを肩に担ぎ、メカ・ブーストの巨体にも有効な大火力を豪勢にバラまいている。

 

 今はユウの副官を務めるライラはこちらもMSには巨大なメガ・ニュートロンビームライフルの残弾を考えない勢いで連射し、メカ・ブーストの列を次々と乱してゆく。

 その乱れた列に火力では数段劣るヤザンとクワトロがビームライフルを正確無比な狙いで撃ち込んで、メカ・ブーストが陣形を立て直す隙を与えない。

 

 そうして列を乱され、損傷を負ったメカ・ブーストを、アーウィンのビルトシュバインとグレースのスペースゴジュラスが完膚なきまでに叩き潰している。

 ガビタンが胴体を破棄して頭部と背部を構成していた鳥の本体に分離するのも、さして驚きもせずにきっちりとゲッター線やメガ粒子の塊を叩き込み、雑草を引っこ抜くような手軽さで片付けている。

 ライラは自分の部下達も厳しく鍛え上げてはいるが、やはりあのプロジェクトのメンバーには及ばないな、とヘルメットの奥で愉快そうに笑う。

 

「二人とも鈍らに落ちぶれちゃいないね。ティターンズとエゥーゴになんか所属しちまって。退役して総帥のところにでも駆け込めばよかったものをさ!」

 

 ドミラの伸ばしてきた触手をスラッシュリッパーで斬り払い、そのふざけた鳥頭をニュートロンビームで吹き飛ばし、ライラは徐々に近づいてくるバンドックに照準を定めた。

 

「地球に降りようって魂胆だろうけれど、そいつはさせられないんだよ!」

 

 ライラのメガ・ニュートロンビームライフルだけでなく、ユウ機のVキャノン、シロガネの連装衝撃砲、更にペガサス級やアーガマの主砲も火を噴いて、そのうちのいくつかはバンドックに命中した。

 だが、メカ・ブースト数体を巻き込みながら放たれた攻撃は、バンドックの装甲に命中する直前に展開されたバリアによって阻まれて、バンドックの巨体こそ揺らしたものの大きな損傷を与えられずに終わる。

 

「ほ、ホホホホ! 小癪な地球人共め。思わず焦ってしまったわい。だが貴様らの手は間に合わなかったな! ホホホ、ワシにはガイゾックの神がついておる。神の意志に従って貴様らは一人残らず皆殺しよ! その時を震えて待っておるがいい!」

 

 残ったメカ・ブーストを足止めに残し、加速するバンドックにシロガネもユウらも追いつけず、バンドックに地球降下を許してしまうのだった。

 

<続>

 

■無敵超人ザンボット3が参戦しました!

 

■ガイゾックが地球に降下しました。

 

■スペースノア級が建造されました。

 

■ヨハン・イブラヒム・レビルが入社していました。

 

■換装武器

・Vキャノンが開発されました。

 

■ヘイデスがキレました。

■所長がキレました。




ダイモス関係の技術をどうにか利用しようと考えたのですが、動力であるダイモライトは宇宙探索で見つけたものだから、補充するには再び宇宙探索に出る必要があり、量産向きではないと私が考え、作中で活用できずにいます。今のところ操縦系統くらいですね。
私が知らないだけでダイモライトは補充を考慮する必要がない程、ダイモビックに大量に存在するのでしょうか?
ジャパニウムは鉱脈が一つしかないとはいえ、枯渇の話題はとんと耳にしたことがありませんし、ゲッター線はそれこそ宇宙からじゃんじゃか降り注いでいますし、超電磁エネルギーは原子力エンジンで生み出せるし……。
ライディーン系統も解析応用は難しいですね……。うーん。

追記
所長の正体について、をご助言いただいたので活動報告に移しました。
トールギス・メテオ → トールギス・コメットに修正しました。


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第十三話 スパロボの醍醐味のひとつよね

今回はインターミッションになります。
また最後にアンケートがあります。4/8の19:00までの締め切りでよろしければご意見を下さい。


◇インターミッション

 

 謎の侵略者の乱入によりエゥーゴを取り逃したティターンズ艦隊は、実働部隊の最高司令官であるバスク・オム大佐の指示に従い、地球上空で再度エゥーゴに仕掛けるべく戦力の再編を急いでいた。

 先程の戦闘よりも前にエゥーゴ艦隊に仕掛けていたパプテマス・シロッコのメッサーラも加わり、今度こそスペースノイドの反攻の芽を摘むと多くの隊員達が息巻いている。

 アレキサンドリア級のMSデッキに佇むマラサイのコックピットに座すジェリドも、そんな一人であった。彼はコックピットの中で先の戦闘の映像を繰り返し見ていた。

 

「これがプロメテウス帰りの実力かよ」

 

 一年戦争後に発足したプルート財閥と連邦軍、ジオン共和国軍の合同プロジェクトに参加したパイロット達は、プロメテウスメンバーやプロメテウス帰りなどと呼ばれ、トップエース同士で磨き合ったその実力を畏怖されている。

 若きエリートとしてティターンズに招聘されたジェリドは年齢相応の傲慢さも備えていたが、ヤザンが職場に居た事もあり、プロメテウス帰りを筆頭に上にはいくらでも上が居ると思い知って多少角が取れていた。

 だが、ゲシュペンストMk-Ⅱやエゥーゴの金ぴかと即興でフォーメーションを組んだ時に見せたあの動きは……

 

「加減されていた? それとも俺達の実力に合わせて手を抜いていたってことか。そうされても仕方ないってのは分かるが、気分のいいものじゃない……」

 

 ガンダムMk-Ⅱの模擬戦などで散々思い知らされたヤザンの実力の底が、更に二段も三段も深いものだと突きつけられて、ジェリドは面白くない事この上ない。

 不意に開けっ放しにしているコックピットハッチから、同僚であり友人でもあるカクリコン・カクーラーが顔を覗かせた。お互い、黒を主としたティターンズの軍服姿である。

 

「ジェリド、あまり根を詰めすぎるとこの後の戦闘に障るぞ」

 

「ああ、そんなにコックピットに籠っていたか?」

 

「俺が様子を見に来るくらいにはな」

 

「ん、悪いな」

 

 ジェリドはコックピットのモニターに映していたガイゾック戦の映像を消し、無重力のMSデッキの床へとカクリコンと共に降り立つ。

 そこへヤザンとチームを組んでいるダンケルとラムサスが通りかかる。作戦を前に自分の機体の調子を見に来た帰りだろうか。

 青い髪の方がダンケル・クーパー、薄い金髪に眉の無い方がラムサス・ハサである。先の戦いではジェリドら同様、ヤザンらプロメテウス帰りの戦いを指を咥えて見ているだけだった二人でもある。

 

「よう、なんだ、エゥーゴのガンダムMk-Ⅱの動きでも研究していたのか?」

 

 とジェリドに話しかけたのはラムサス。別に皮肉でも何でもないのだが、奪われたガンダムMk-Ⅱに乗るカミーユには、名前をからかって以来縁のあるジェリドには面白くない。思わず眉間の皴を深くしながら、それでも答えるのは相手が同僚だからだろう。

 

「いい加減、エゥーゴなんて小さな組織との因縁は終わらせたいからな。俺達はティターンズなんだ。宇宙人共が来ているってのに、反乱分子風情に手間取ってなんかいられるものかよ」

 

「確かにな。あんな訳の分からない連中と似たようなのが、地球のあちこちで暴れ回っているって話だ。エゥーゴも地球に降りるつもりらしいが、地上のティターンズを叩くつもりなのかね?」

 

「なにをするつもりだろうと、次で俺達が奴らを叩き潰せばそれで終わりだ。そうしたら我が物顔で地球を滅茶苦茶にしている侵略者共を、ティターンズが潰してやれば済む話だ」

 

 ジェリドらティターンズは彼らなりに地球人類の守護者としての自負を、各々の隊員達が差異はあれども抱いている。ただ、優先順位に関しては疑問符の付く者をちらほら見かけられるけれども。

 四人が話をしているその場へ、ダンケルとラムサスの分のドリンクを持ったヤザンが姿を見せた。軍服をラフに着込んでおり、表情は比較的上機嫌だ。久しぶりに自分と同格のパイロット達と暴れられて楽しんだからだろう。

 

「次の作戦に向けて気合が入っている様子だな、ジェリド中尉、カクリコン中尉」

 

 エゥーゴ追撃部隊のトップパイロットでもある上官に声を掛けられて、ジェリドとカクリコンはその場で敬礼した。

 

「は、ヤザン大尉。次こそは奪われたガンダムMk-Ⅱを撃墜し、エゥーゴの企みを粉砕してやります」

 

「そうか。目標が定まっているのは良い事だ。それと済まんが貴官とカクリコン中尉の分はない。ダンケル、ラムサス」

 

 ヤザンがひょいっと放ったドリンクを、ダンケルとラムサスは受け取る。ありがとうございます、と礼を言う部下にヤザンは視線を返し、それから、と付け加えた。

 

「それから俺のガンダムMk-Ⅱだが、ジェリド中尉、次からは貴様が乗れ。俺はあれから降りる事になった。細かい調整はメカニックがやってくれている。後で顔を出して礼を言うのを忘れるなよ」

 

「は! ……は?」

 

「ふふん、ダンケル、ラムサス、お前達にも付き合ってもらうぞ。俺達はアレキサンドリアから異動だ。ああ、それとエゥーゴの追撃は中止になった。バスク大佐よりずっと上からのお達しでな」

 

 ヤザンから立て続けに語られる衝撃的事実に、ジェリドとカクリコンは上官の前だというのに言葉を失い、お互いの顔を見つめ合うのだった。訳が分からない、と彼らの顔には書いてあった。

 

 

 その日、Dr.ヘル一派が本拠地としているバードス島では雷鳴の如き怒号が響き渡っていた。青紫がかった肌に豊かな白髪と顎鬚、そして類まれなる知性と好奇心、野心を兼ね備えた猛禽類の如き瞳を持つ老人、それがDr.ヘルだ。

 地球征服が遅々として進まず、最大の障害と目したスーパーロボットの打倒が叶わないのは、Dr.ヘル陣営に限らず全ての陣営において共通であり、それぞれの勢力のトップが失敗を重ねる部下達を叱責する光景も共通であった。

 例外は、侵略者をことごとく退け続けているスーパーロボット軍団と地球連邦軍極東支部くらいのもの。

 そしてバードス島ではというと、紫のローブ姿のあしゅら男爵が主人であるDr.ヘルの前に跪き許しを乞うていた。今回も彼? 彼女? はマジンガーZと連邦軍に敗北し、命からがらバードス島へと帰還したのである。

 

「お許しください、Dr.ヘル! 次こそ、次こそは必ずやマジンガーZと兜甲児の首を!」

 

「あしゅらよ、お前の台詞を耳にするのはこれで何度目になる? 此度も貴重な機械獣軍団を失い、マジンガーZをはじめとしたスーパーロボット軍団に勝利の美酒を振舞っただけではないか!」

 

「まことに、まことに申し訳ございません、Dr.ヘル!」

 

 累計百体以上の機械獣を失ったあしゅら男爵に対して、Dr.ヘルは口でいう程怒ってはいなかった。というのも現状の地球圏が潜伏期間中に想定していたものとはあまりにもかけ離れていて、これでは上手く行かなくても無理はないと認めていたからである。

 一年戦争によって疲弊した地球連邦政府が予想を上回る速度で復興を成し遂げ、地球・宇宙の各地に次々と強力な新型MSを配備している。

 戦後となれば当然軍縮の流れとなり、規模は縮小しているはずだが質が十分すぎる以上に減った数を補っている。加えて縮小の規模もまたDr.ヘルの予想よりも小さなものだった。

 

(そしてマジンガーZ以外のスーパーロボット達と、それをバックアップする連邦軍の充実した装備と体制! 地球連邦単独でも予想をことごとく覆されたが、なによりも厄介なのはこのDr.ヘル以外にも地球を征服しようという輩が同時に複数存在した事だ)

 

 地球産の恐竜帝国、妖魔帝国、宇宙産のボアザン、キャンベル、更にDr.ヘルの情報網は先日新たな異星人が襲来したとの情報をキャッチしている。

 今でさえDr.ヘルを含むすべての勢力が他勢力との交戦状態に陥り、各々の想定を超える消耗戦を強いられている。

 

 ますます地球情勢の混迷の度合いは深まっており、仮に日本を征服してジャパニウムを独占してもそれで後々の戦いがすんなりとはいかない状況になっているのを、Dr.ヘルの卓越した頭脳は随分前から認識していた。

 この時点ではDr.ヘルに他の侵略勢力との同盟という選択肢はない。まだお互いの戦力や人員、本拠地を含めて情報が不足しており、交渉の手札を用意するのも難しい同盟以前の状態であるのも理由の一つだ。

 

「Dr.ヘル?」

 

 瞑目して思考に耽る主君におずおずとあしゅら男爵が声を掛ける。同じくDr.ヘル配下のブロッケン伯爵が今も日本に侵攻しており、あしゅら男爵としては再び機械獣軍団を賜り、ライバルに負けてなるものかと出撃したいのだが、主の許しなしに行えるものではない。

 

「あしゅらよ」

 

「ははっ」

 

「今のままマジンガーZをはじめとしたスーパーロボットを抱える日本を攻め続けても、例え征服が叶おうとも強いられる犠牲は多大なものとなるだけだ。その状態ではトカゲや妖魔共、そして宇宙人共に漁夫の利を与えるだけとなる」

 

「……」

 

「ゆえに戦力の増強を行うと共に、お前はきゃつらの戦いを支える生命線を断つのだ」

 

「生命線となれば……目障りなSRG計画の主導者プルート財閥でございますか?」

 

「その通りだ。プルート財閥の総帥ヘイデス・プルート、奴を捕縛し我らの傀儡と変えるか、最悪の場合は殺害して構わん。プルート財閥の頭であるあの男を葬れば、極東支部とSRG計画を支える屋台骨が崩壊し、奴らの戦いは苦しいものとなる。

 おそらく我らだけではなく他の勢力の者共もいずれはヘイデス・プルートの重要性に気付くだろうが、今ならばまだもっとも地球の情勢に明るい我らに利がある。

 ゆめゆめ油断するではないぞ。まるでこの地球の現状を予期していたかの如く対抗手段を講じていた男だ。我が身が狙われる事態も当然想定していよう。行け、あしゅらよ!」

 

「ははあ! このあしゅら男爵、必ずやその大役を全うして御覧に入れまする」

 

 

 ティターンズの追撃を振り切って、ジャブローへと降下したアーガマを含むエゥーゴの部隊は、ティターンズと一切交戦する事なく迎え入れられて補給と休息を与えられていた。

 ティターンズの軍事拠点と化している筈のジャブローを攻略しに来たはずであるのに、蓋を開けてみれば降下中にジャブローの管制から誘導がなされ、罠と警戒しつつも実際に降下してみれば一発のビームもミサイルも発射されずに、かつてはホワイトベースも格納された地下ドックへと管制官に誘導された。

 

 怪しい、あまりにも怪しすぎた。ジャブローはティターンズの軍事拠点と化していたのではないのか? 事前にスパイとして送り込んだレコア・ロンドを始めとした人員の所在は? ティターンズそして連邦軍は何を考えている?

 スポンサーであるアナハイムとは連絡がつかず、指導者である連邦軍准将ブレックス・フォーラも同じだ。必然的に現場の判断は最も階級の高いアーガマ艦長ブライト・ノア中佐とMS部隊の隊長であり、影響力の強いクワトロ・バジーナ大尉に委ねられた。

 

 戦うべき敵がおらずまるで予め決まっていたように迎え入れられては戦闘も出来ず、疑心暗鬼に陥るエゥーゴのメンバーであったが、万が一戦闘を起こせば連邦軍本隊との戦闘になる危険性から、アーガマを中心に集まってじっと待ちの一手だ。

 これが長く続けばエゥーゴのメンバーもいつかは暴発してしまったかもしれないが、幸いにしてすぐに連邦軍側からアプローチがあった。

 

「それで僕達を呼び出したゴップって人は、連邦軍のどういう人なんですか?」

 

 呼び出しを受けたブリーフィングルームへ向かう道すがら、一応は民間人であるはずのカミーユが隣を歩くクワトロに尋ねた。ゴップの下へ向かっているのはカミーユ、クワトロ、ブライト、エマの四名だ。

 

「地球連邦軍統合参謀本部の議長、つまり制服組のトップにあたる人物だ。現場には出てこないが戦争に必要な物資の調達、将来を予期した開発計画の承認、各種予算の手配などを行っている。いわば人体に血液を巡らせる立場にある」

 

「それって連邦軍の中のほとんどトップみたいな人ってことですよね?」

 

「ああ。政府にも大きな影響力を持つ人物であるのは間違いない。エゥーゴにもティターンズにも肩入れをせず、独自の派閥を作り今の地球情勢を見定めているはずだが、我々と何を話すつもりなのか、よく見極めなければならん」

 

「どうして僕が呼び出されたんでしょう」

 

「さてな。……もしかしたら、カミーユをアムロ・レイの再来かと気にしているのかもしれないぞ」

 

「僕を? ですか?」

 

「それまで訓練を受けた事も無い民間人が最新鋭の機体に乗り込んで、見事に操縦して戦果を挙げているのだ。誰だってアムロ・レイを思い出すさ。連邦からは白い流星、ジオンからは白い悪魔と畏怖された彼をな」

 

「大人達は勝手なんですよ」

 

「そうだな。確かに勝手だ。だがティターンズの横暴を許せないという気持ちは、私達が押し付けたものではなく、君自身の心から生まれ出たものだ。

 そうして行った行動の結果と責任から目を背けるのが許されない程度には、君ももう子供ではない。私やブライト艦長も出来るだけの手助けはするが、肝に銘じておいてくれ。後悔はしないで済むに越した事はない」

 

 十七歳の少年を相手に説教とは、私も年を取った、と今年二十七歳のクワトロはしみじみとするのだった。彼の場合、生い立ちと受けた教育の影響でかなり老成しているせいだろう。

 

「……はい」

 

 カミーユはまだ随分と言いたいことがある様子だったが、目的の部屋のすぐそばまで来た事と、クワトロの言い分が分からないわけではなかったからこれ以上の抗弁は避けた。

 そして辿り着いたブリーフィングルームでは、呼び出した張本人であるゴップがモニターを背に椅子に座って彼らの到着を待っていた。

 

「ようこそ、ブライト・ノア中佐、クワトロ・バジーナ大尉、エマ・シーン中尉、それにカミーユ・ビダン君。なに正式な場ではない。気楽に構えてくれたまえ」

 

 全員分のミネラルウォーターのペットボトルが置かれた席へ、四人が腰かけるのを待ってからゴップは口を開いた。彼らが余計な前口上を望んでいないのは分かっている。

 

「君達を招いたのは私、ゴップだ。エゥーゴとして活動しているのは重々承知しているよ。それにスポンサーの意向で君達がティターンズを叩いて、ジャブローを制圧しようとしたのもな」

 

 言ってしまえばティターンズもエゥーゴも地球連邦軍内の派閥であり、彼らの争いは派閥争い、内ゲバなのである。本流である連邦軍のトップにも等しいゴップが双方の内情を知悉していても、おかしな話ではない。

 なにもかも知った風な態度を取るゴップに、カミーユが不快の色を深める中、口火を切ったのはブライトである。ゴップと直接対面するのは一年戦争以来だ。

 

「閣下がそこまでご存じであられるのなら伺いたい。ジャブローのティターンズはどこへ? それとも元から居なかったのでありますか? 我々は誤情報に踊らされたと?」

 

「ティターンズは居たとも。といってもジャブローの一部に間借りする程度の規模でね。彼らも連邦軍の一部だ。それくらいはしていてもおかしくはなかろう?

 もっとも君達を引き込んで核を使おうなどとしたものだから、慌てて叩き出したよ。核を使われたところで司令部の中枢を焼かれる程度で済んだが、地球内外の侵略者が多い昨今だ。わざわざ使える設備を手ずから破壊する必要はないだろう?」

 

「ではなぜ我々をジャブローへ迎え入れるような真似をなさったのです。ジャブローにティターンズが居なければ、我々もこのような行動は起こさなかったでしょう。ティターンズの不在の情報をこちらに流すくらい、閣下ならば容易く行えたはず」

 

「叩き出してからの情報が回らなかったのか、君達の情報源が黙殺したのではないかね?

 君達のスポンサーもジャブローを落としたという実績を得られれば、箔がつくと思ったのだろう。そうなれば混迷を深める地球圏での発言力が大きく増すのは間違いない。

 私達からすれば地球の状況はコロニーや月にとっても対岸の火ではないのだから、現状を理解できていないと言わざるを得んがね。

 もしそうならばと考え、私達も一計を案じたわけだ。実戦の場に出ている君達から、エゥーゴの上層部へ地球の現状を伝えてもらおうかと考えてね。君らもジャブローが空ぶったからとはいえ、すごすごと宇宙へは戻れんだろう?

 ティターンズの拠点は地球に多いからな。ただ気を付けたまえよ。地球で跋扈する機械獣、メカザウルス、どれい獣、獣士、化石獣、それに加えて君達が宇宙で遭遇した新しい侵略者も居る。MSだけで対処するのは困難を極めよう」

 

 これまでスペースノイドにとって地球の侵略者達はテレビ画面やネットの向こう側の存在であったが、この場に居るエゥーゴの面々からすればその厄介さを体感したばかりだ。

 そんな厄介な連中がひしめいている地球の状況がとんでもないものであるのは、嫌でも想像がつく。カミーユが掌で踊らされた事実と地球の地獄めいた状況に言葉も出ずにいると、ブライトが口を開いた。

 

「対抗できているのは一般の連邦軍と極東支部ですか?」

 

「ん? ふふ、流石は元プロメテウスメンバーだな、ノア中佐。察しが良い。そうだ。プロメテウスプロジェクトとSRG計画の産物を用いている部隊は、侵略者達を相手に互角以上に戦えている。

 そうでなければ地球上のいくつかの都市や地域は、彼らの勢力下に組み込まれていただろう。ティターンズとOZも一部は対抗できているよ。

 OZはデルマイユ公派閥とクシュリナーダ准将派閥に分かれているが、クシュリナーダ准将の薫陶が行き届いている部隊は迅速に対応し、成果を出している」

 

 どこも幹部級の功績争いや謀反の可能性を秘めた問題ありの勢力ばかりだが、こと地球連邦の統一の取れてなさは群を抜く。

 連邦軍本隊、ティターンズ、エゥーゴ、OZと分かれている上にさらに派閥の中に子派閥があり、子派閥の中に孫派閥があり、とヘイデスは現状を知った時には参戦作品の設定を遵守するならそうなるのは分かるが、ふざけているのか!? と半ば本気でキレた程である。

 連邦軍だけでもこれなのに、スペースノイド間やジオン残党内部でも更に派閥が分かれている。これは特にガンダムの外伝作品が出る度に、新型MSと新組織と新エースパイロットが登場するのとスパロボがクロスオーバー作品である弊害の最たるものだろう。

 

 宇宙の侵略者達から惑星統一も出来ない下等種族、と言われても反論するのが難しい最大の理由と言っていい。

 内ゲバが酷過ぎて地球外への進出などもってのほかとか、宇宙に出る以前にまずすることがあるでしょう、と他所の星の人に言われたら、まあ、うん、と口を濁すしかねえや、とヘイデスもちょっと思っている。

 

「それであなたや軍の偉い人は僕達になにをやらせようってんです?」

 

 ここでぶっきらぼうな声音でゴップに言い募ったのはカミーユだ。隣のエマがカミーユ! と短く窘めたが、ゴップが気分を害した素振りはない。カミーユが中尉待遇とはいえ民間人であるのと、いかにも思春期の子供然としているからか。

 

「私達から君らに下す命令はないよ。君らの上官筋、ブレックス准将に命令を仰ぐと良い。ただ、そうだな。情報は提供しよう。現在、連邦軍内の元プロメテウスメンバーに再招集をかけている。もっともジオンのパイロットばかりは集められないがね」

 

 ゴップはちらっとクワトロを見た。大きめのサングラスをかけたこの男の正体を、どこまで知っているものか。クワトロはゴップの視線に答えるようにこう口にした。

 

「ジオン共和国のあるサイド3は、一年戦争の戦災を免れた。ジオニック社やツィマッド社の株式の一斉売却で得た資金で賠償も完済している。

 その為に温存した工業力で戦後の復興の大部分を担い、今や宇宙で最も栄えているサイドだ。故にジオン共和国は地球連邦から厳しい監視の目に晒されていた。

 しかし、それがこの数年で劇的なまでに緩和され、兵器の保有に関しても事情がまるで変わった。閣下、それは地球外の侵略者を予期してのことですか?」

 

「ふむ、そうなるな。地球から最も遠く救援の手が届きにくく、それでいて最も工業力を備え、機動兵器開発のノウハウと生産設備を持ち、それらを運用するパイロットや技術者も豊富。これほど地球侵略の橋頭保として相応しい場所はそうそうあるまいよ。

 だからこそ万が一の時にジオン共和国には自衛出来るように、ゲシュペンストをベースにしたジオン式ゲシュペンストMk-IIの開発を許したし、たしかムサカといったか、新型艦の建造も認めたとも。

 ジオンのプロメテウスメンバーを招集できないのも、彼らには母国を守ってもらわなければならないからだ。

 予想とは異なって侵略者達はスペースコロニーにはほとんど手を付けていないが、それも時間の問題と考えた方が良いだろうな」

 

 エゥーゴは基本的にスペースノイドの側に立つ組織だ。万が一、ゴップの言う通りに侵略者が宇宙に目を向けたなら、スポンサー達が我が身を守る為に大慌てで呼び戻そうとするだろう。

 

「さて、話が逸れたが、プロメテウスメンバーの招集に関しては、シャイアン基地で新型ガンダムを開発しているアムロ・レイ大尉も、もちろん対象だ。アナハイムを手玉に取って随分と資材や資金を搾り取ったそうだぞ?

 ノア中佐、君にとってはプロメテウスが解散して以来となるのだから、久しぶりに会いに行ってもいいのではないかね」

 

 

 ところ変わってヘパイストスラボ。所長室に詰めた所長は我が子らの戦闘以来、機動兵器開発の指針を改めていた。

 所長は機動兵器のコンセプトに関して、大きく分けて三つあると考えている。

一つ、『一人でも多く生き残らせる』。

二つ、『一体でも多くの敵を倒す』。

三つ、『一秒でも長く戦い続けられる』。

 この三つだ。

 これまでの彼女は『一人でも多く生き残る』を第一のコンセプトに置いていたが、今はこれを撤回するに至っている。

 

「一人でも多く生き残らせて、一体でも多くの敵を倒して、一秒でも長く戦い続けられる。すべてを兼ね備えたコンセプト機とは、我ながら無茶ですが……」

 

 ヘマーやオウカらが戦場に出る以上、味方の戦死者は一人でも少なくし、敵は一体でも多く倒し、戦場においてはパイロットの負担を小さくして長く戦えるようにする、と無謀にも全コンセプトの両立ならぬ三立を目指すに至ったのである。

 明らかに無茶なコンセプトではあったが、それをやってのけようという気概が所長の美躯からは溢れんばかりだ。

 

 シンガポールの伝統衣装サロンケバヤ――青地に細やかな花の刺繍が施されたスカートであるサロンと薄桃色のVネックの上着ケバヤに白衣を重ねた所長は、デスクの上に浮かぶホロモニターの内の一つを瞬きと視線で操作する。

 そこに映し出されたのは、昨今の戦闘の結果とパイロット達からの意見を受けたトミイ氏が新たに打ち出したMZ達の新規開発計画プランの数々だ。

 

「恐竜帝国が投入するだろう決戦兵器に対抗する為の超大型機、ねえ。総帥も予算を奮発したものです。よもや数百メートル単位のMZとは。まあ、アレに比べれば微々たる額というもの。それにしても戦後はどうするのかしら?」

 

 ウルトラザウルス、デススティンガー、デスザウラーと名を与えられた超大型機体の他にもブレードライガー、マッドサンダー、ストームソーダー、ジェノザウラー、ディバイソン等々、次々と新型の開発プランが提出されている。

 実際にMZが運用された結果、プテラスはコアブースターやアッシマー、カノントータスやモルガはガンタンクがあれば不要ではないか、という意見が出ているのに加え、コマンドウルフ、セイバータイガー、シールドライガーも三機種も作る必要があるのか? と疑問視されており、用途別に機種の再検討も行われる運びとなっている。

 可能な限り部品や弾薬の共通規格化は進めているが、それにも限度はある。種類を増やしても、持て余してしまっては資源と人材と時間の無駄だ。トミイ氏を始めとしたMZ組はさぞや頭を悩ませているだろう。

 

(まあ、私も人の心配をしていられる余裕はありません。ヒュッケバインとグルンガストにその強化武装の開発、アルトとヴァイスの後継機にゲシュペンストMk-Ⅲ、バルゴラの正式モデルの開発。それにSRG計画も次のステージに進めなくては。

 マジンガーの量産機については兜博士に委ねるとして、コンバトラーとボルテス、それにライディーン、ダイモスの量産計画はそれぞれの博士達と相談しなければなりませんし、そも量産する必要があるのか? というところから始めませんと)

 

 地球に平和を齎す為のロボット開発の道のりは、決して楽なものではない。侵略者達も度重なる敗北によって次々と新しく強力な兵器を繰り出しており、お互いに追いつけ追い越せと競い合うイタチゴッコが始まりつつある。

 所長は塩バター茶で喉を潤してから、改めて気合を入れ直した。所長は技術の分析や応用には自信があるが、独創性という点においてはスーパーロボットを開発した博士達に劣ると自己分析している。

 

 マジンガーZを作り上げた兜十蔵博士やゲッターロボの早乙女博士、ダンクーガの葉月博士をはじめ、スーパーロボットと呼ばれるロボットの生みの親に比べれば、自分のオリジナリティのなんと乏しい事!

 世界が平和でないと家族が穏やかに過ごせない以上、少しでも強力かつ三つのコンセプトを兼ね備えたロボットの開発は必須であるが、所長は同時に少しばかり自身の技術者としての意地も込めて、研究と開発に熱中しているのであった。

 

 

「ウェルキエル・ザ・ヒート!」

 

 デイモーンの群れに囲まれた中心で、フェブルウスの中のヘマーが洗礼名を口にするのと同時に、フェブルウスの左手に握られたライアット・ジャレンチから莫大なエネルギーが放出され、フェブルウスも装甲や関節の隙間から炎のようなエネルギーを噴きだす。

 

「……えっと、うんと、あ! ガンガンモードだよ、フェブルウス!」

 

 炎のようなエネルギーを纏って、パワーとスピードを上げたフェブルウスは左手のライアット・ジャレンチと右手のガナリー・カーバーを縦横無尽に振るって、当たるを幸いとデイモーンの群れを片っ端から粉砕して行く。

 暴風の如く暴れ回るフェブルウスに翻弄されるダイモーンやティアマートを、フォローに回っていたオウカ達のバルゴラが的確に撃墜していて、彼らの部隊としての連携練度も徐々に高まっているのが見て取れる。

 

 今回で何度目かになるサイデリアル残党を撃退したヘパイストスラボ防衛部隊と子供らの映像を司令部のモニター越しに眺めていたヘイデスは、思わず止めていた息を吐きだして今回も死傷者なしで勝てた結果に大いに安堵した。

 シュメシとヘマーが告げたように、デイモーンらは今のところヘパイストスラボのみに襲撃を仕掛けており、世界の都市や軍事基地には姿を見せていない。やはり狙いはシュメシらなのだと認めざるを得ない状況にある。

 

「はあ」

 

「悩みの種は尽きず、かな、総帥」

 

 ヨハン司令もといレビル司令は指示の合間を縫って、深い溜息を吐く雇用主に話しかけた。心の中を吐き出させた方が少しはストレス解消になるだろう、という気遣いもある。

 

「ええ、まあ」

 

「あの子らが戦いに出るのはもはや止められまいよ。それと溜息の理由は例の新しい宇宙人についてかな?」

 

「その通りです。追跡させてはいますが、正確な所在はまだ掴めていないので」

 

 ヘイデスとしてはベガ星間連合軍やムゲ帝国軍が来たのかと思ったが、蓋を開けてみればその残虐行為でスパロボプレイヤーの心を抉ったガイゾックと来た。

 勢力の規模や戦闘力とはまた別に来て欲しくなかった敵勢力の筆頭で、もしガイゾックが姿を見せたなら、ザンボットの主人公である勝平らの成長やら何やらはすべて無視してでも叩き潰すと決めていた。

 

 こんな時にシーマ艦隊を動かせればいいのだが、彼女らには彼女らにしか出来ない仕事を頼んでおり、動かす事が出来ない。

 原作通り神ファミリーの擁するザンボット3とキングビアルらに頼りつつ、プルート財閥の保有戦力と極東支部、それにスーパーロボット軍団にガイゾックが出現した際には、即座に倒してもらえるよう頼み込むしかない、とは思いたくないのだが……

 

「司令、やはり一度ハガネに乗って日本に行こうと思います。侵略者との戦いの最前線であるあの場所が、今どうなっているのか、現場の声を知っておく必要があります。

 アナハイムのカーバイン会長やロームフェラのデルマイユ公と違って、フットワークが軽いのが僕の唯一勝っている点ですからね」

 

「総帥の場合は軽すぎるがね。ハガネの足なら日本まですぐだが、相応の護衛はつけねばならんぞ」

 

 ちなみにホワイトベースの大気圏内の最高速度がマッハ12である。ギリシャから日本までが概ね九千四百キロメートルほどであるから、ホワイトベースの最高速度が許されるならば一時間と掛からずに到達できる。

 大気への影響やら何やらを考慮すれば、そうは行かないのが現実である。道中の戦闘の可能性を考慮すれば、一日か二日程度の道程になろうか。

 

「それと航路はどうするね? ユーラシア大陸を横断するか、それとも北米大陸と太平洋を横断するルートの二つがある。

 ユーラシア大陸では侵略者達と遭遇する可能性が高まるが、防衛活動を行っているスーパーロボットと合流する事も出来るだろう。

 北米大陸を経由して行くのならば、バベジン研究所に立ち寄ってみるのもよいのではないかな? あそこではSRG計画の機体をテストしているのだろう?」

 

「ええ。そうですね、ハガネは……」

 

→北米を通過する(カミーユ、クワトロ、アムロらと合流。リアル系ルート)

 

→ユーラシア大陸を通過する(竜崎一矢、ひびき洸らと合流。スーパー系ルート)

 

<続>

 

■分岐が発生しました。

 

■ウルトラザウルスの開発が開始されました。

■デスザウラーの開発が開始されました。

■デススティンガーの開発が開始されました。

 

■スペースノア級弐番艦ハガネが建造されました。

 

■ヤザン、ラムサス、ダンケルがティターンズから異動になりました。

 

■ジャブローからティターンズが追い出されていました。

 

■アムロが新型ガンダムを開発しています。

 

資金:50,000,000




今回ですが北米ルートとユーラシアルートで分岐します。
アンケート形式を取らせていただいて、締め切りは4月8日19時00分(水)までとさせていただきます。
なおダイモスの一矢ですが、まだバームは来ていないものの既に実戦経験をバリバリ積んでいる状態です。
存在だけは知っていたビクトリーファイブとゴッドバードを履修しました。それとガンダムのC.D.Aも最近ようやく読んだのですが、あれを読むとシャア【が】ハマーンを許すのは、ほぼほぼ無理では? アクシズ時代はそもそも恋人でも何でもないですね、と思う作者でした。

追記
自軍部隊の陣容についての感想を受けて、フォローを入れておきました。あくまでプレイヤーが操作できるユニットの一覧ということでご容赦を。
追記2
部隊の一覧を消しました。


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第十四話 醍醐味その二はこれかなと思うヘイデス

まずアンケートのご協力ありがとうございました。
アンケートの結果により、北米ルートが少々続く事となります。どうぞ深く考えずふんわりと受け止めてお楽しみください。


 ヘイデスが極東支部へ向かうにあたり移動の足にはハガネが用いられ、護衛にはフェブルウス、グランド・スター小隊、ゼファー、それにゲシュペンストMk-II一個中隊十二機とストーク級二隻にそれぞれの艦載機が同行する。

 合計すればスーパーロボットに相当するフェブルウス一機、MSが三十機以上にもなる大所帯である。民間人の護衛としては過剰なほどで、相当な武装勢力並みのトンデモ戦力だ。

 ただそれを納得させるだけの重要性があるのがプルート財閥総帥ヘイデスという個人であり、極めて危険な地球情勢でもあった。

 

 フェブルウスが同行するのは、デイモーンらに所在の割れているヘパイストスラボに留まり続ける危険性を考慮したのと、ハガネ艦隊の戦力と共に行動する方が安全であると判断された為だ。

 北米、太平洋を通過して極東支部に至るまでの道中、どれだけの襲撃があるかは分からないが、三隻規模の小艦隊としては地球圏最高クラスの戦力を保有するわけで、そう簡単に危険な状況には陥るまい。

 

「シュメシ、ヘマー、ハンカチとポケットティシュー(※ティッシュの事)はきちんと持ちましたか?」

 

「うん、ちゃんと新しいのを持っているよ、お母さん。僕もヘマーも忘れ物はないよ。ねえ、ヘマー」

 

「うん、あのね、フェブルウスにも緊急キットとか非常食とか、ちゃんと積んであるから大丈夫だよ、ねえ、フェブルウス」

 

 まるで遠足の前のようなやり取りをしているのは、シュメシとヘマーの双子とヘパイストスラボの所長である。

 ヘパイストスラボの地下ドックにて、これから搭乗するスペースノア級ハガネを傍らに、出発前の別れの挨拶をしているところだった。

 

 場所と状況さえ違えばやけに年の近い親子の微笑ましいやり取りを、グランド・スター小隊の黒を主体とした制服に袖を通したオウカ、ゼオラ、アラド、ラトゥーニ、スーツ姿のヘイデスが眺めている。

 ヘイデスはこれまで秘匿していた戦艦の出航とか、スパロボ的には戦闘が発生しそうな、いかにもなシチュエーションだけど大丈夫かなあ、という不安を必死に押し殺している。

 

 所長と双子は更に二言三言言葉を交わしてから、ぎゅうっと熱い抱擁を交わす。ヘイデスはこの後も双子と行動を共にするので、双子との別れの挨拶はなしだ。

 抱擁から頬へのキスをして双子を解放した所長は、今度はオウカ達の前へと歩いてきて、足を止める。ラボへの襲撃によって、数度の実戦を経験したオウカらの雰囲気は幾ばくか精悍になったように感じられるのが、所長とヘイデスには悲しかった。

 

「さて、オウカ、ラトゥーニ、ゼオラ、アラド、貴方達もこれからハガネに乗船して極東支部まで行くわけですが、叶うなら一度も貴方達がバルゴラに乗らずに済むことを祈ります。そしてなによりも無事の船旅を心から祈ります」

 

「ありがとうございます、所長。ハガネの速度なら極東支部まですぐですし、定時連絡も入れますからどうかご安心を」

 

 四人を代表して答えるオウカに、所長は力なく笑い返す。スクールから保護した数十名の中では最年長者で大人びているオウカだが、それでもまだまだ親心が分かるような年齢ではない。

 彼女達が親心の分かるような年齢まで何としても生き延びさせねばならないのに、戦場に赴かせる真似になるとは……。

 

「例えどれだけ安全が保障されていても、能力を信頼していても、それでも心配になるものなのですよ、オウカ、アラド、ラトゥーニ、ゼオラ。ハガネには貴方達以外にも腕利きの大人達を乗せてあります。存分に頼りなさい。貴方達に頼られれば奮起する面子ですから」

 

「はあ……」

 

「腑に落ちていないという顔ですわね。ここでは貴女だけが頑張らなければいけない必要はありません。貴女が助けを求めればいくらでも助けの手が伸びますし、なんならお節介のレベルで手を貸す大人がたくさんいるのです。ここはスクールとは違いますから」

 

「はい」

 

 それはオウカ達が引き取られてから、プライベートの場でも戦場でも度々感じてきたことだ。慈しまれ、愛され、大事にされている。導かれている、ともいえるだろう。

 恩義を感じているからこそオウカ達は自ら戦場へ出るのを厭わないでいるのは、なんとも皮肉であった。

 

「オウカくらいの年齢で軍人になっている人間も少なくないとはいえ、貴女をはじめ皆をバルゴラから引きずり下ろすべきなのでしょうね。とにかく貴女達も無事に帰ってきて顔を見せてください。それが私の願いです」

 

「あっ」

 

 そうしてオウカもまた双子同様に抱きしめられて、ゼオラやラトゥーニも続く。全員がくすぐったそうに笑みを浮かべて嬉しそうにするが、アラドばかりは恥ずかしそうに所長の抱擁に待ったをかけた。

 

「いや! 俺はその、大丈夫っすから!」

 

「なんです、思春期の男の子らしい反応ですわね。こう見えて私は今年で三十六歳。貴方くらいの子供が居てもおかしくはない年齢なんです。気にしない、気にしない。いえ、だからこそ気にするのかしら? アラドくらいの年齢で母親とハグするなんて気恥しい?」

 

「ま、まあ、照れ臭いというか。というか、別に俺はその……」

 

 本当の親子じゃない、とまではアラドにも言えなかった。言葉でも行動でも所長とヘイデスが親代わりを務めてくれているのは分かったし、この場にはいないスクールの弟妹達と合わせて我が子同然の扱いをしてもらっているのを、アラドはよく理解していた。

 

「血の繋がった親でも何でもない? ってあたりですか。けどま! それは私や総帥にとっては些細な事です。私が貴方達の親でありたいと思っているのが重要なのです。貴方達にノー! を突きつけられたら引き下がるしかありませんけど」

 

「別に、その、嫌ってわけでも……」

 

 もにょもにょと口ごもるアラドの見せた隙を見逃す所長ではなかった。アラドでも反応できない速度で正面からアラドを抱きしめて、そのままひょいと持ち上げる。二人の身長差は二十センチ近い。

 

「ほほほ、隙ありですわ!」

 

「お、降ろしてくださいよ、所長! ていうか力強い!」

 

「私がアフリカゾウとだって正面から殴り合えるフィジカルモンスターであるのをお忘れ? 大人しく抱きしめられていなさい、可愛らしい我が子!」

 

「ぐえええ」

 

 そうして潰れたカエルみたいな声を出すアラドを見て、ヘイデスは笑いながらため息を零した。所長はアラドをたっぷり十秒ほどホールドしてから解放し、最後の最後に夫の前に立った。

 

「なんだかまだまだ新しい侵略者がやってきそうで、やれやれと言いたい気分です」

 

「はは、宇宙には夢と希望だけがあって欲しいけれど、そう都合よくはいかないね」

 

 これまで確認できている参戦作品を考えれば、グレンダイザーのベガ星連合軍とダイモスのバーム星の勢力がやってくる可能性がある。

 バーム星は当初の指導者リオン大元帥が穏健な人物であるから、地球上での共生区の設立やコロニーの提供、あるいは火星の共同開拓などを提案すれば戦わずに済む道はある。

 

 問題はダイモス主人公竜崎一矢の父・竜崎博士との会談の際にリオン大元帥が毒殺され、それに激高した息子リヒテルによって竜崎博士が殺害され、さらにバームとの本格的な戦争に発展してしまう展開だ。

 今後、バームが地球圏を訪れた際に会談でのリオン大元帥の毒殺阻止とバーム側の危険人物オルバンと腹心ゲロイヤーの策謀を暴ければ、敵を増やさずに済む。

 

「お互い技術者とお金持ちとして本気を出すと決めた以上、新しい敵が出てきても対応できるよう尽力いたしましょう。さしあたってはシュメシとヘマー、それにオウカ達の事、よろしくお願いしますね」

 

「ああ、任せておいて欲しい。それとクリュメノスとコレーの事をよろしく。通信が難しい状況に陥る可能性もあるし、君にケアを頼る事になる」

 

「夫婦ですからね。役割分担してゆきましょう。……なにより貴方も怪我一つしないでくださいね」

 

「もちろん! フェブルウスをハガネに持ち込んでゆく以上、アンノウンがラボを襲う可能性は低くなると思うけれど、君こそ気を付けて」

 

「ええ。設備と資材の試験基地への移動を進めておきます。ラボではいくら要塞化するとしても限度がありますから。……そろそろ時間ですね。それでは、いってらっしゃい」

 

「うん。行ってきます」

 

 そうして夫婦は、子供達にしたよりもほんの少しだけ長く抱擁とキスをした。

 

 

 ヘイデスやシュメシらが搭乗し、今後を見越した多量の物資の積み込みを終えたハガネは地下ドックから出航の時を迎えていた。

 ブリッジの艦長席には司令職を辞して艦長職に専念する事になったレビルが座し、傍らのオブザーバー席にはヘイデスの姿がある。

 ヘイデスはこの状況を、ガンダムSEEDでナタル・バジルールが艦長を務めたドミニオンに乗り込んだムルタ・アズラエルみたいだ、と感想を抱いている。

 

「ハガネ、離水します。核融合炉、光子力エンジン、ゲッター炉心、共に異常なし。ミノフスキードライブ、正常に稼働中」

 

 ブリッジクルーの報告に耳を傾けながら、レビルは次の指示を出した。

 

「主翼展開、微速前進」

 

「主翼展開、微速前進、よーそろ」

 

「艦長、ポタルゲー、アイアイエーを確認。本艦の側面に移動します」

 

「うむ。これより本艦は北米バベッジ・エジソン研究所、ならびに地球連邦軍極東支部へと向かう。数多くの侵略者が地球圏へ飛来している現状では、道中多くの困難と危機が待ち構えている事だろう。諸君らの奮闘に期待する」

 

 全長五百メートル超という巨艦ハガネを先頭に二隻のストーク級が続き、プルート財閥の艦隊は進路を西へと取る。まずはバベジン研究所にてSRG計画の成果を確認し、その後にハワイを経由して極東支部へと向かう。

 まず道中の交戦は確実と予想され、パイロットはもちろんブリッジクルーに至るまでが緊張に身を浸している。そんな中で、ヘイデスは艦長席のレビルに声をかけた。

 

「艦長席がお似合いだね。ヨハン司令、いや、いまはレビル艦長か。しかし、司令職を辞してよかったのかな? 兼任でも問題はなかったと思うけれど」

 

 ヨハン艦長と呼ぶべきなのだろうが、やはりこの老人に対してはレビル将軍という名前が強くヘイデスの中に根付いており、レビルと呼ぶのがしっくりとくる。

 

「なに、いつまでも老人が居座っていてもよいことはないよ。アレスコーポレーションでは後を任せられる人材には事欠かなかったのも幸いした。

 それにここだけの話だが、一度、戦艦の艦長をしてみたかったのだよ。司令や将軍としてのしがらみを忘れてね」

 

 そう悪戯っぽく笑いながら告げるレビルに、ヘイデスは困った方だと笑い返すのだった。

 そしてそんなハガネ艦隊を海中から見上げる目があった。Dr.ヘルからヘイデス捕獲ないしは暗殺を命じられたあしゅら男爵である。

 彼/彼女は今、海底移動艦サルードに乗り、仕掛ける好機を狙っていた。狙っていたのだが……。

 

「むうう、あれ程の巨大な戦艦を隠し持っていたか。おそらく相当数の機動兵器を搭載している筈。この場で仕掛けてもこちらの頭上を抑え込まれているか。加えて……」

 

 大西洋にはパイシーズやキャンサーといった水中用MSに加え、ウオディックやシンカーといったMZがウヨウヨとひしめいている。

 仮に大西洋を航行中のハガネ艦隊に仕掛けたとしても、すぐさま連邦軍やアレスコーポレーションの増援が駆け付けて、袋叩きにされるのがオチだ。

 

「仕方ない。グールを数隻ばかりDr.ヘルにお借りし、北米で仕掛けるか。場合によっては搦め手も考えなければなるまい」

 

 現状で仕掛けてもいたずらに戦力を喪失するだけと判断したあしゅら男爵は、進路を本拠地であるバードス島へと取り、Dr.ヘルの命令を果たす為の準備に取り掛かるのだった。

 

■北米ルート 第九話 ガンダム、空に君臨す

 

 ゴップとの会談を終えたエゥーゴのメンバーは、ブライトが指揮を執るアーガマにクワトロ、カミーユ、アポリー、ロベルト、エマがMSパイロットとして残り、他のパイロット達はこのジャブロー経由で宇宙へと帰還する手筈となった。

 会談後に連絡の付いたブレックスとの相談の末、宇宙からでは分からない地球の現状確認と地球で活動しているカラバという反地球連邦組織との連携、また地球上のティターンズ、OZへの攻撃も視野に入れての選択である。

 

 ジャブローで歓迎されたのにはカミーユをはじめ誰もが拍子抜けしたのが本音であるし、どうもうまいように踊らされている感は否めないが、それでもジャブローでの待遇は休息を取るには十分だった。

 一応、盗聴なりを警戒してアーガマの中になるべく留まっているのだが、艦内の一室でその地球組が今後の活動の前に情報共有をしようと、日本で日夜繰り広げられているスーパーロボットと極東支部の精鋭達の激戦の記録映像を鑑賞していた。

 コーヒーや紅茶を飲み、カラフルなケーキを食べながらなので、ぱっと見はティータイムに見えるが本人達は至って真面目である。エゥーゴは民間の協力者も多く、正規の軍隊と比べてアットホームな雰囲気がある。

 そんな中、ムスっとした顔のカミーユがまずこう言った。

 

「……同じMk-IIにしたってこのゲシュペンストの性能が高すぎませんか? 親父は何をやってたんだ。仮にも新しいガンダムを任されたんだろうに」

 

 ガンダムMk-Ⅱの開発者である父フランクリン・ビダンに、文句が山ほどありそうだ。

 恥知らずにもリック・ディアスを盗み出してティターンズに戻ろうとした父に対して、元からカミーユの感情は冷え冷えとしていたが、開発者としても後塵を拝していたとあっては更に冷え込むというもの。

 カミーユの対面に座っていたクワトロが、コーヒーを一口飲んでからフォローの言葉を口にする。彼にしてもゲシュペンストシリーズは感慨深い機体である。

 

「アレは元になったゲシュペンストが傑作機だったからな。それに当時最高と呼べる環境で集まったパイロット達の運用データが蓄積されている。

 開発したプルート財閥は、連邦やアナハイムの入手したジオニック社などの技術がない分を補って余りあるものを手にしていたからな。それを全て投入して作り上げた機体だ。ティターンズとはいえ、そうそう簡単に凌駕する機体はつくれないさ」

 

「ティターンズのMSが弱い分には文句は言いませんよ。それにちゃんと侵略者と戦う正規軍のMSは強い方が良いに決まっているんですから」

 

「流石のティターンズもこの状況で侵略者を放置していれば、ジャミトフ・ハイマンの手腕でもどうしようもないほど非難される。私達もティターンズばかりを目の敵にしていると、自分達の首を絞める事になると理解しなければならない」

 

 今でさえ複数の侵略者勢力の脅威に晒されているが、これから更に新しい侵略者がやってこない、とは誰にも断言できない状況だ。

 アナハイムを筆頭とする出資者達もエゥーゴにティターンズばかりを相手にさせてよいのかと、膝を突きつけ合って意見を交わしているだろう。

 

 そうして話をしていると先にジャブローに降下し、行動に制限こそあるもののVIP待遇で拘束されていたレコアと一年戦争後にジャーナリストになったカイ・シデンがひょっこりと顔を見せた。

 カイは元ホワイトベースのクルーという事もあり、ブライトに対して気安い調子で声をかけた。

 

「よお、ブライトさん。お久しぶりで。お互い、またジャブローで顔を合わせる事になるなんて夢にも思わなかったなあ」

 

 テーブルの上のケーキを皿に取り、自分の分のコーヒーも手早く用意したカイは、空いていた椅子に腰かける。一年戦争とジャーナリスト活動の賜物か、彼を知らない面々から不審げな視線を寄せられても動じていない。

 

「カイ、お前がジャブローで拘束されていると聞かされて、ひどく驚いたぞ。位置を知っているとはいえよくもそこまでジャブローに近づけたものだ」

 

「へへ、俺もこれで結構苦労してンのよ。お陰で色々と器用な真似が出来るようになってさ。ま、見つかってそのまま拘束されちまったんだから、世話ないけど。そこでそっちのレコア・ロンドさんと顔を合わせたってわけ」

 

「ええ。正直に言えば手荒な尋問をされてもおかしくはなかったのだけれど、不気味なくらいに丁重に扱われたものだから、お互い顔を見合わせたものだわ」

 

 そう言って自分の失態を恥じ入るレコアの顔色は、多少の窮屈さは否めないが十分に取れた休養のお陰でずいぶんと良い。原作のように彼女の尊厳が辱められる事はなかったのだ。

 

「そうそう自己紹介してなかったな。俺はレコアさんに色々教えてもらったからおたくらの事を知っているけどよ。俺はカイ・シデン。一年戦争の頃はそこのブライトさんの下でガンキャノンに乗っていたパイロットさ。今じゃフリーのジャーナリストね。よろしく」

 

 カイの元ホワイトベースクルー、それもガンダムに並ぶガンキャノンのパイロットだったという経歴に誰もが驚く中、カイは驚きを見せていないクワトロに視線を向けて固定した。

 

「それで、おたくがクワトロ・バジーナ大尉?」

 

「そうだが、なにか私に関する愉快な話でも聞かされたのかな?」

 

「いいや? ただ、なんとなく思っただけさ。あんたはシャア・アズナブルじゃないかって、勘がね、そう囁くのさ」

 

 カイの一言にクワトロの事情を知るアポリーとロベルト、ブライトはわずかに表情を硬くし、それ以外の面々は一年戦争時代のビッグネームが出てきたのに驚いている。

 

「ほう、ジャーナリストの勘かな?」

 

「それも含めて、さ。ア・バオア・クーを脱出する時、頭ん中にアムロの声が聞こえてきたことがあってね。それ以来、たまに勘が働くのさ」

 

「そうか、ならそれは大切にすると良い。そして私がシャアかという話だが……」

 

 ここでクワトロは少し声を潜めた。アーガマの室内であるから盗聴の心配はないが、それでもこの場に居る以外の面子には聞かせられない話をしようとしているのだ。

 

「この場に居る皆を信頼して答えよう。私はかつてシャア・アズナブルと呼ばれていた男だ。間違いではないよ」

 

「へえ? はぐらかされるかと思ったが、ずいぶんと素直に認められるんで? ジオンのシャア大佐ともなれば、残党を取りまとめて一つの勢力を旗揚げするくらいは出来るだろうに」

 

 ガルマが率いるジオン共和国は旧公国兵の帰還を強く希望しているし、地球連邦も追い詰め過ぎた残党が意固地になるよりも、さっさとサイド3に帰還してもらった方がはるかに楽であるから、残党の投降を積極的に認めている。

 これはコロニー落としがならず、地球の人々のジオンへの憎悪が原作よりも薄いのも起因しているだろう。その為、今もジオン残党として活動している者達は、筋金入りだ。

 そこにシャアのネームバリューを用いれば、瞬く間にちょっとした勢力が出来上がるのは間違いない。

 

「一年戦争が終わった後、私はアクシズに身を寄せていた。そこで新代歴183年まで過ごしてから、共和国となったジオンへと帰還した。

 その後のことは公にもなっているから隠し立てするまでもないが、ブライト艦長より先んじる形でプルート財閥のプロメテウスプロジェクトに参加したよ。

 そこでアムロ・レイやブライト艦長と直に対面しているし、ブライト艦長の居る前でシャアであることを否定しても滑稽なだけだろう?」

 

 アポリーとロベルトがそこまで明かされるのですか? という視線を向けてくるのに、クワトロは大丈夫だとも、と小さく頷き返して答える。それからカップの中に残っていたコーヒーを飲み干す。

 思いがけず素直に答えられて拍子抜けした顔のカイを他所に、カミーユが食い入るようにして問いかけた。

 

「赤い彗星とまで言われた人が、どうしてエゥーゴに参加しているんです? 反ティターンズの組織と言っても地球連邦の派閥ですよ? ジオンに居たままでも何かできたんじゃないんですか?」

 

 年頃を考えれば無理はなくとも、遠慮なく相手の事情にずかずかと土足で踏み込んでくるカミーユの物言いは、レコアとエマが咄嗟に窘めようとするには十分だった。クワトロは二人の気遣いに感謝しながら手でそれを制止し、少し恥ずかしそうに答えた。

 

「実は……共和国軍をクビになってな」

 

「は?」

 

 実際にこう口にしたのはカミーユだけだったが、ブライトやカイ、レコアにエマだって同じ気持ちだった。あのジオン公国のトップエースの一人、シャア・アズナブルが軍を解雇された?

 

「恥ずかしい話でしかないのだが、プロメテウスプロジェクトが解散となり、黒い三連星や青い巨星と共にサイド3へ戻った私は、ある日、1バンチにあるズム・シティの首相官邸に呼び出されてね。

 ガルマ首相直々に解雇通知を突き付けられたのだ。何分、急な話だったから大いに困惑したがクビになったものは仕方がない。養わなければならん家族もいる。

 そこでフリーになった私にある筋を通して声をかけてきたのが、ブレックス・フォーラ准将だった。

 私はティターンズやOZを警戒するブレックス准将の懸念や思想に共感を覚え、こうして幾人かの同志を巻き込んでエゥーゴに参加するに至ったわけだ。クワトロ・バジーナという地球連邦軍人の籍を得た上でな」

 

 首相官邸は首相の住居も兼ねているのだが、庭でデギン元公王とガルマとイセリナ婦人の間に生まれた子供達が呑気に遊んでいてな、壁一つ隔てた向こうはまるで異世界のように穏やかだったよ、ハハハ、というクワトロの笑い声は、なんとも言えない空気に虚しく響いていた。

 とはいえクワトロの話を額面通りに受け取ったのは顔を引き攣らせているカミーユくらいのもので、ジオン共和国が表立ってティターンズと事を構えられない以上、シャア・アズナブルの軍籍を除外し、クワトロと名乗らせた上でエゥーゴに所属させて対抗措置の一つとしたのだと、この場に居る大人達は暗に察していた。

 激化するティターンズのスペースノイドに対する弾圧と、母体であるロームフェラ財団の権益拡大の為にコロニーへの圧力を高めるOZは、ジオン共和国にとっても脅威に他ならないのだから。

 

 

 ヘイデスらハガネ艦隊が北米を目指し、カミーユやクワトロらアーガマ組も北米はシャイアン基地を目指してジャブローを出立した。

 地球連邦軍と数々の侵略者、そして侵略者同士の消耗戦が地球全土で引き起こされて、もはや地球圏に安全な場所はないと言っても言い過ぎではない状況に陥っている。

 

 それでもアムロ・レイが配属されたシャイアン基地は、退役間近の老軍人達が集められた終末の地めいた場所であり、今の状況にあってなお平穏と言えた。

 アムロは幼馴染のフラウ・ボウとホワイトベースに乗り込んでいた子供達と再会し、フラウの出産の為に日本行きのチケットを手配した後、カツ・コバヤシを伴って基地へと戻っていた。監視兼護衛の屈強な軍人もセットだ。

 

 民間人であるカツがアムロの伝手があるとはいえ、軍事基地に堂々と入れるのは奇妙なことではあるが、基地の誰も窘める事をしなかった。

 基地内を案内されながら、カツは数年ぶりに会ったアムロへ声をかけた。かつてはガンダムに乗って出撃するアムロを、ただ無力な子供として見送るしかなかったが、今は少しでも自分が変わっていると願わずにはいられない。

 

「アムロさんはこれからどうするんです? 地球はいまじゃどこもかしこもしっちゃかめっちゃかだ。まだこの基地で燻ぶっているんですか?」

 

 監視役が離れた位置でこちらを見ているのを良いことに、カツは基地内の廊下を歩きながらアムロに言い募った。かつてのヒーローに再起して欲しいと考えているにしても、率直な物言いだ。

 

「カツは手厳しいな。確かにこの基地は片田舎にあるような場所だが、そう捨てたものじゃないぞ。ほとんどの人員は退役間近だが、退役間近ということはそれだけ人脈があるという事だし、大局の中で注目されにくい立地だから隠し事をするにはちょうどいい」

 

「隠し事?」

 

「ああ。まあ、半分くらいは公にやっている事だけれどな。俺と父さんの趣味で色々と。それに俺もそろそろ動かないといけなくなる、そんな気がするんだ」

 

「ニュータイプの勘ですか?」

 

「よく言われるよ、それ。だが俺は自分を本当の意味でのニュータイプだとは思っていないよ。せいぜい意識の拡大という変化を学び始めただけの人間だ。ちょっと勘が良い程度の話さ。本当のニュータイプは、戦争なんてしないで済む人々の筈だ」

 

「それでもホワイトベースに乗っていた僕やキッカ、レツからしたら、貴方は特別なんです」

 

「ン、俺もカツの前では格好をつけないといけないと思っているよ。気が引き締まるというのかな。そうだ、PX(軍隊内における購買施設・酒保)で何か買ってゆくか?」

 

 アムロが久しぶりに会った親戚の子供を甘やかすような気分で曲がり角の右側を指さした時、基地内に滅多にならない警報が鳴り響いた。

 途端にアムロの顔が引き締まり、カツもまたホワイトベースでの旅路を思い出して表情を険しくする。

 アムロはすぐさま近くの壁に設置されている通信端末を操作して、基地司令部へと繋げる。

 

「こちらアムロ・レイ大尉、司令部、何があった?」

 

 答えはすぐにあった。老齢のオペレーターではなく基地司令の中佐だ。シャイアン基地の司令に相応しく退役間近の老人である。黒い肌に刻まれた皺の深さが、彼の軍人として生きた年月の長さを物語っている。

 

『おお、レイ大尉か。それがティターンズの連中がやってきてな。この基地で開発しているガンダムと君の身柄を引き渡せと言ってきておるのだ。大人しく従わなければ強硬手段に打って出るとまで言いおった』

 

「ティターンズ、そこまで増長しているのか。それでどちらのガンダムを? 両方?」

 

『ただ開発しているガンダムとしか言わなかったよ。連中もそこまでしか把握しておらんとみた。どうするね? 迎撃システムはいつでも起動できるが?』

 

「仮にも友軍相手にミサイルやメガ粒子砲を撃つわけにも行かないでしょう。俺がガンダムで出ます。せっかくですから実戦形式のテストに付き合ってもらいますよ」

 

『ははは、白い流星にしてプロメテウスの1人たる君のテスト相手とは、彼らもさぞや名誉なことだろう。うむ、ジャブローから君への招集命令も来ていた事だし、いささか乱暴になるがこれでお別れかな』

 

「短い間ですが、お世話になりました」

 

 通信端末の小さな画面に映し出される基地司令に向けて、アムロは綺麗な敬礼をした。

 

『うむ、こちらこそ礼を言わねばならん。大尉が赴任して以来、老人共の倶楽部と化していた当基地に活力が蘇った。退役間近の爺と婆共の集まりだが、昔取った杵柄でこれからも出来る限りの事をしよう。では、アムロ・レイ大尉、武運長久を祈る』

 

 そうして司令側が通信を切ってから、これまで黙っていたカツが我慢しきれずにアムロに食い入るように問いかけた。

 

「アムロさん、ガンダムって、それに両方って二機あるんですか!? この基地に!」

 

「ああ。一機はアナハイムが深く関わっている試験機で、もう一機は俺と父さんの趣味を形にした機体だ。おそらくティターンズが求めているのは試験機の方だろう。あちらの方が真面目だからな」

 

「真面目?」

 

「ふふ、言ったろう、趣味を形にしたって。カツ、君は基地の安全な場所に隠れているんだ。俺は司令に告げた通り、実戦形式でティターンズの連中にMSの扱いというものを教導してくる」

 

 そう告げてニヤリと笑うアムロの横顔を見て、カツはティターンズの連中が酷く哀れに思えてならなかった。今のアムロには殺意こそないが闘志が漲っている。そんな彼を相手にしなければならないのだから。

 

「君、この子を頼む。こう見えてホワイトベースに乗ってア・バオア・クーまで一緒だったんだ。家族みたいなものなんだ」

 

 そうアムロに頼られた監視兼護衛の黒服は力強く頷き返すと、お手本のような敬礼をした。

 

「アムロ・レイ大尉、ご武運を」

 

「ありがとう。君とも短い付き合いだったが、どうか体を大切にしてくれ。俺はガンダムで出る」

 

 気安い調子で黒服に別れを告げて、アムロは格納庫へと向けて走り出す。その背を見送りながら、カツは黒服を見上げた。

 

「あの、貴方はアムロさんの監視だったんじゃないんですか?」

 

「普通は聞きにくい事を聞くものだな、カツ・コバヤシ君。確かに監視と護衛が自分の任務だが、こうなっては彼にはMSに乗ってもらった方が身の安全を守れるというものだ。それに、いや、これ以上は言わぬが花だ。さ、こっちへ!」

 

「はい!」

 

 シャイアン基地を半ば脅迫しているのは、地球に降りたカクリコン・カクーラー中尉率いるマラサイ十二機からなる部隊であった。

 機体のジェネレーター出力に影響を与えないよう敢えてビームシールドは装備せず、信頼性の高い技術で固めたマラサイは重力下でも優れた性能を堅持している。一機ずつSFSのベースジャバーに搭乗し、基地上空を旋回している。

 

 部隊長を任されたカクリコンは基地からの応答がないのにも慌てず、事態の推移を待った。かのガンダムを開発したテム・レイやアムロ・レイの関わる新型ガンダム奪取の任務だが、シャイアン基地に脅威となる戦力はない筈だ。

 それにこれだけのマラサイを率いていれば、仮に新型ガンダムが出てきたとしても鹵獲は容易い筈だという常識的な判断がカクリコンにはあった。

 

「ん、基地の地下に動き……。各機、警戒しろ。何か出てくるぞ」

 

 基地の一角が左右に開き、地下の格納庫からリフトに乗った物体が姿を露にする。それにアムロが乗っているのだ。

 

「なんだ、ガンタンクの新型か? ガンダムはどうした!?」

 

 それは白と赤を基調としたタンク型の機動兵器だった。四本の長大な砲身が正面を向いており、サイズからしてガンタンクの新型機とカクリコンが誤認したのも無理はない。その間にゆっくりとホバー移動を始めたタンクから、ティターンズ各機に通信が入る。

 

『こちらシャイアン基地所属アムロ・レイ大尉だ。貴官らの要請に答え、当基地で開発している新型MSを持ってきた』

 

「アムロ・レイ? 本物か? ……こちらはカクリコン・カクーラー中尉だ。我々はガンダムを開発しているという情報を入手している。そのような機体で誤魔化そうなどと、白い流星と呼ばれたパイロットのすることか!」

 

『嘘はついていないさ。ただこちらとしてもせっかく開発した機体をおめおめと渡すのは面白くない。貴官らにはこの機体の性能を直に味わってもらいたく思う。どうだ?』

 

「なるほど、我々ティターンズにそのような態度を取るのが、アムロ・レイか。了解した。ただし実弾を用いる。それでよろしいか?」

 

『ああ、感謝する』

 

 短く告げてアムロが通信を切るのに、カクリコンはこめかみがひくつく程の怒りを覚えながら部下に命じた。

 

「全機、あの機体を撃破しろ。その後で新型ガンダムを探して接収する!」

 

 ホバー移動しているとはいえ所詮タンクタイプの機動性だ。空を飛ぶこちらに圧倒的な利がある。カクリコンはすぐさま蜂の巣にするべく、部下のマラサイと共に一斉にビームライフルの雨を降らす。

 頭上から降り注ぐ殺意と破壊の意志を感じ取り、アムロはタンクのコックピットで少しだけ深く息を吸う。

 

「殺意のプレッシャーを浴びせられるのは久しぶりだな。RF(リファイン)ガンタンク、アムロ・レイ、行く!」

 

 アムロがフットペダルを踏み込むとRFガンタンクが一気に加速し、雨霰と降り注ぐビームの中を軽やかに回避して行く。【集中】するまでもなく容易く避け、アムロは機体の運動性と追従性、反応速度にまずまずと感想を抱く。

 

「同じ連邦軍、殺さずといきたいが!」

 

 頭上でランダムな機動を取るベースジャバーに狙いを定めて、RFガンタンクの四つの砲身から次々とビームが放たれる。

 射角もろくに取れないような砲身だが、アムロの精密無比な砲撃は二機のベースジャバーを撃ち抜き、そこから落下するマラサイ二機の両足を吹き飛ばして地面に叩きつける。

 鈍重な機体からの思わぬ反撃にカクリコンを含む残りのパイロット達が驚愕するも、それでもビームライフルを放つ指を止めないのは、流石によく訓練を受けている。

 

「ええい、タンクタイプなら動きは鈍い筈だ。ギガス1、2はサーベルで仕留めろ、援護する!」

 

「了解!」

 

 ベースジャバーから二機のマラサイが飛び降り、空中でバーニアを噴射しながらRFガンタンクを目指してビームサーベルを抜き放つ。それを援護する八機のビームライフルを、RFガンタンクは右に左に、上に、と信じがたい機動で一発の被弾もなく避け続けている。

 機体に回避運動を取らせながらの反撃で、更に三機のマラサイの右腕部と頭部を吹き飛ばしたところで、ビームサーベルを振りかぶったマラサイが迫る。

 

「貰った!」

 

「落ちろお!」

 

 それぞれのマラサイのパイロットが気炎を吐く中、RFガンタンクが浮き上がり機体を立ち上がらせると見る間にその形を変えてゆく。

 

「へ、変形した!?」

 

「隊長、こいつはガンタンクでは!」

 

「RFガンキャノン、中距離用だが接近戦が出来ないわけでは!」

 

 それは両腕にシールドとビームライフル、背にビームキャノンを装備し、バイザー式のカメラアイを持った機体だった。なるほど、顔のデザインはガンキャノンを思い起こさせるそれだ。

 RFガンキャノンは抜刀と斬撃を全く同時に行い、斬りかかってきたマラサイの両手首を正確に斬り落としてそれぞれの機体の胴体に蹴りを叩き込んだ。

 スカートアーマーはホバー機構を内蔵した巨大なもので、とても近接戦など出来そうにないものだが、アムロは苦も無く操って見せる。

 

 四本の砲身の内、二本が両腕に移行した事で射角が大きく増し、アムロの射撃はますますカクリコンらを追いこんでゆく。

 本来なら命中するところを、わざと牽制程度に抑えているのは教導めいた気持ちになっていたのと、精鋭と名高いティターンズパイロットのレベルを確かめる為だ。

 

「くそ、なんだこの機体は。MAに変形する機体ならともかくガンキャノンとガンタンクを使い分けて何に……いや、ガンキャノンとガンタンク、まさか、その機体は!」

 

 何かに気付いたカクリコンの目の前で、アムロは答え合わせをするようにRFガンキャノンを飛翔させて、更なる変形を行う。前後が反転し、簡素なマニュピレーターが引っ込むと、MSらしい五本指を備えたマニュピレーターが出てくる。

 ガンキャノンめいた頭部が装甲内部に引き込まれると、反対側からはV字アンテナを備えたあの伝説のMSに酷似した頭部があらわとなる。

 

「RFガンダム。口幅ったいがガンダムの扱いなら誰にも負けない自負があるぞ、カクリコン中尉」

 

<続>

 

■ハガネ艦隊が出航しました。

 

■アムロ・レイ(Lv60)が参戦しました。

■RFガンダム/ガンキャノン/ガンタンクが開発されました。

■???ガンダムが開発されました。

 

■ナタリー・ビアンキが生存しています。

■シャアとナタリーの間に子供が生まれています。

 

☆隠しユニット

☆RFガンダム/ガンキャノン/ガンタンク

 

 アムロ・レイとテム・レイが趣味と実益を兼ねて開発した機体。かつてのV作戦で開発されたRXシリーズ三機を一つの機体に纏めたもので、最新の技術も投入されており、ミノフスキークラフト内蔵。熱核融合炉を両肘に二基搭載しており強大な出力を誇る。

 その複雑な変形機構と操縦性の難度から生産性を全く考慮しておらず、一から十までアムロ専用に調整されている。

 元ネタはリボーンズガンダム・オリジン。コンセプトは一人V作戦。

 

武装

・ビームバルカン×8※RFガンキャノンのマニュピレーター爪先に内蔵。

・エグナーウィップ×2

・ビームサーベル×2

・ビームライフル×2

・ビームキャノン×2

・フィンファンネル×4

・ハイパーハンマー

 

入手条件:『第二話 宇宙からの災い』でクワトロ、ユウ、ライラ、ヤザン、アーウィン、グレースが合計十機以上敵機を撃墜する。

 

#もし本作品がゲームだったら? オマケ

●ヘイデスショップ

 資金と引き換えにヘイデスがユニットを用意してくれる。ラインナップはステージ事に変わる。たまに強力な機体や珍品が並ぶ。今回は以下の通り。

 

・ザニー ・ジム ・ジムキャノン ・ハイゴッグ ・ズゴックE ・ザクⅡG型

・グフカスタム ・ケンプファー ・アクトザク ・ジムⅡ ・ハイザック

・アッシマー ・ギャロップ ・ガウ ・ミデア ・ダブデ ・ビックトレー

・プテラス ・ゴドス ・シンカー ・コマンドウルフ

 

※MZにはアムロらMSパイロットも搭乗可とする。

 

好きな機体を購入して乗せ換えて遊ぼう!

 




作中の話数が第二話→第九話と飛んでいるのは、話になっていない裏でマジンガーZ、ゲッ
ターロボ、コンバトラーV、ボルテスV、ライディーン、ダイモス、フェブルウスで一話ずつ話があった、という仮定に基づいています。
話数が飛んでいる時は裏で描写されないステージがあった、と解釈してください。

追記
ド・ダイ改→ベースジャバー 修正いたしました。お恥ずかしい。


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第十五話 プロメテウスの残り火

正直に申し上げますとリバーシブルガンダムを知らなかったので、オセロみたいな機体? と思いながら調べました。うん、リバーシブルガンダムと言われるわけだと納得しました。何と言いますが、ビルドシリーズのあくまでガンプラとして登場している機体を人殺しも有り得る本作に出すのは、自分でもよく分からない抵抗がありまして、ガンプラ系の機体は出ないと思います。
コンバットガンダムとかガンキラーとかサイコタンクとかガンマスターとかレッドウォーリアとかを出したかったのも事実なのですけれどね。


「が、ガンダム、これがシャイアン基地のガンダムか!」

 

 カクリコンは、マラサイのコックピットで震えながら伝説のMSの名前を口にした。

 あのアムロ・レイの力量は同じプロメテウスメンバーだったヤザンの技量から推察していたが、まさか新型ガンダムが既に実戦投入可能な段階にまで開発が済んでいたとは!

 

「アナハイムは組み上げたばかりで動かしてもいないと、ジャマイカンは言ったんだぞ!」

 

 そう乗る機体が無ければどんなに優れたパイロットでも意味はないと、そう判断したのに!

 同じく地上に降りて侵略者とエゥーゴ撃滅の為に動いている上官の言葉を思い出すカクリコンの視界の端で、きらりと光が瞬いた。それはRFガンダムの持つ二丁のビームライフルの発射光であった。

 直後、カクリコンの使っていたベースジャバーがコントロール不能に陥り、咄嗟に空中に飛び出す。

 

「くそ、動揺している余裕などないか!」

 

 パイロットスーツの中で一気に噴き出した汗にも気付けず、カクリコンはビームライフルの照準をRFガンダムへと向け、直後、至近距離にまで迫っていたRFガンダムの蹴りをもろに胴体へと受けて大きく後方へと吹き飛ばされた。

 

「ぐわああ!?」

 

 リニアシートをはじめ数多くの耐G措置や衝撃緩和装置があるとはいえ、数十トンの巨大質量の一撃に、コックピットの中のカクリコンは必死に耐えるしかない。

 一方でV作戦の集大成と言えばいいのか、RFガンダムを駆るアムロは敵から意識を逸らしたカクリコンへ短く叱責の言葉を発していた。

 

「敵から意識を逸らすなど迂闊な」

 

 この時点ではティターンズもまた地球防衛の為に有用な戦力であり、アムロとしてもパイロット達を生かして返すつもりであるし、カツや基地司令に告げた通り教導めいた気持ちで操縦桿を握り、フットペダルを踏んでいる。

 

「機動兵器に乗っていて機動を忘れてどうする! ここが本物の戦場だったら死ぬぞ!」

 

 残るティターンズパイロット達はRFガンタンクの出現から瞬く間に倒されてゆく味方の姿に、わずかな隙を作っていた。並みのパイロットが相手なら十分にリカバリー可能な短い隙だが、地球圏最強クラスの機動兵器パイロットの一人アムロを前にしてはあまりに迂闊。

 RFガンダムの背面側にあった砲身から放たれたビームが、瞬き一つ分の時間だけ隙を見せていたマラサイの頭部と右腕部を容赦なく吹き飛ばした。

 

 カクリコンのマラサイは既に体勢を立て直しているが、この時点でマラサイは八機が大きく損傷していて、無傷なのはたったの三機である。戦闘開始から一分弱、ティターンズ側は戦力の七十五パーセントを喪失していた。

 異常だ。RFガンダムの性能の高さもあるだろうが、それ以上にパイロットの技量が隔絶しすぎている。こちらの心を読んでいるのか、あるいは未来を知っているかのような機動に、全方位に視界があるかのように的確に当ててくる射撃精度。

 

「ニュータイプは化け物かっ」

 

 恐怖に震えるカクリコンの言葉は、シャイアン基地にやってきたティターンズパイロット全員の心からのものだったろう。正確にはニュータイプが化け物というよりも、アムロ・レイの技量が化け物なのだけれども。

 周囲のマラサイから向けられる殺意が急速に薄れ、怯えが広まるのを感知したアムロは久しぶりに実機での戦闘だったとはいえ、もっと手加減すればよかったか? 教導としては失敗だな、などと、まあ、どこまでも余裕だ。

 残りのマラサイにさっさと帰投するように通告しようかと考えるアムロの脳裏に、稲妻のようにビジョンが閃き、神経に不快な感触が触れる。

 

「んっ!? これは」

 

 RFガンダムからRFガンタンクへと変形し、四本の砲身があらぬ方向へと向けられると、高出力のビームが連射されて空中にいくつもの爆炎が生じる。

 

「お、俺達を狙ったのではない? なにを!?」

 

 カクリコンがマラサイの各種センサーとレーダーに目を向ける中、シャイアン基地側も接近する新たな敵影に気付いて迎撃システムを稼働させていた。

 

『アムロ大尉、九時の方向より未確認の飛行物体が接近中だ。飛行物体より更に機動兵器が発進中だ。数は既に三十を超えている。ライブラリに照合、敵勢力は……ボアザンだ!』

 

 先程別れを告げたばかりの司令からの通信に、アムロはやはりかと臍をかみながらRFガンタンクのビームキャノンを更に放つ。

 基地のレーダーよりも早く敵意の接近を感知したアムロの知覚能力の凄まじさは、一年戦争で開花したニュータイプ能力を今も彼が鈍らせずにいる証拠だ。

 

「ボアザンの戦力は、獣士と呼ばれる生物型のロボットに円盤型の兵器だったな。カクーラー中尉、ティターンズは退け! 対MS戦を想定したその装備では足手まといだ」

 

『な、なにを』

 

「躊躇している暇はないぞ。不十分な装備で異星人と戦って命を無駄遣いしたければ好きにしろ!」

 

『ええい、各機撤退するぞ! 作戦は失敗だ!』

 

 まだ動けるマラサイが損傷した味方に肩を貸し、無事なベースジャバーに乗って大急ぎでボアザンの接近してくるのとは逆方向へと逃げてゆく。

 その間にもRFガンタンクのビームキャノンは、高速で接近しつつあったボアザン円盤を撃つはしから撃墜している。

 スパロボではすっかりやられ役のザコだが、このボアザン円盤、何気にワープ航法で恒星間航行が可能というとんでもない品だ。その為、残骸は貴重な研究資料として連邦軍やヘパイストスラボで引っ張りだこである。

 

「落とせたのは九機か」

 

 ボアザン円盤の残りは十三機、獣士も十機あまりが残っている。そして敵艦は、巨大な角付き髑髏の上に城を乗せたスカールークというボアザンの戦艦だ。

 全長百六十メートル、全高百六十五メートルと、ハガネと比べると小型だがボアザン円盤からも分かる通り、用いられている技術の高さは改めて語るまでもない。

 

 既に出撃済みの獣士は人型の蛾を思わせるドクガガ、名前そのままの姿のカニガン、鎖で繋いだ棘付き鉄球を持ち、角の生えたネコ科の猛獣を思わせるバイザンガの三種。

 シャイアン基地に備え付けられた迎撃システムが稼働し、普段は地下に収納されているミサイルやビーム砲台が地上へせり出して、接近中のボアザン部隊へと容赦なく火砲を放っている。

 アムロもまた距離が詰まってきたことから機体をRFガンキャノンへと変形させて、中距離での砲撃戦へと移行する。

 

(やはり装甲が厚い。獣士級相手となると一撃では落とせないか、だが戦いようはある)

 

 先鋒を務めるボアザン円盤の奥から姿を見せたドクガガが、腹の二門と口から小型ミサイルを発射してくる。小型とはいってもドクガガのサイズからすればの話で、MSからすれば大型と言っても問題はない。

 それがアムロの狙いだった。侵略者の兵器と戦うのはこれが初めてだったが、その戦闘データは逐次受け取っている。

 

「そこだ!」

 

 狙いすましたビームは発射寸前のミサイルを直撃し、ドクガガは自らのミサイルによって内側から爆散した。それがボアザン側の逆鱗に触れたかのように、ボアザン円盤から放たれる破壊光線や獣士達から放たれるビームとミサイルがRFガンキャノンへと殺到する。

 アムロは回避した弾が基地に当たらないよう配慮しながら回避機動を取り、一機のボアザン円盤へとエグナーウィップを射出。

 

 装甲を食い破ったクローを通じて高圧電流を流し込み、機能を停止したボアザン円盤をチェーンハンマーを振り回していたバイザンガの顔面に叩きつける。

 さらにそこへビームライフルとビームキャノンを立て続けに撃ち込み、ボアザン円盤の爆発と同時にバイザンガの頭部が吹き飛ぶ。

 

「この距離なら」

 

 更に間合いが近づいたことでRFガンダムへと再変形し、アムロは叫んだ。

 

「行け! フィン・ファンネル!!」

 

 二丁のビームライフルの銃身と二門のビームキャノンの前半分を構成していた板状のパーツが外れ、アムロのイメージに従って自在に重力下の空を飛翔する。

 充填された推進剤を消費しながら飛翔する赤いフィン・ファンネルは、内蔵されたジェネレーターからメガ粒子砲を次々と撃ちだす。

 計四基のフィン・ファンネルとビームライフル×2、ビームキャノン×2、合計八つのビーム兵器が戦場を乱舞して、獣士を一撃では沈められないものの見る間に損傷を与えてゆく。

 

 これが単独のMSの戦い方とは信じられない密度、精度による砲火は、これまで数多く地球連邦軍と戦ったボアザンをして初めての経験であったろう。

 この時、シャイアン基地を襲ったボアザン軍は、地球で最強のパイロットの一人が軟禁されているという情報から派遣された威力偵察部隊だ。

 スカールークにもボアザンの司令官プリンス・ハイネルや腹心のルイ・ジャンギャル将軍は搭乗しておらず、完全な無人制御だ。

 

 威力偵察の部隊でスカールークをはじめ獣士を含む数十機の部隊は大規模過ぎるが、現在の地球情勢を考えると拠点から離れた遠方に派遣するとなればこうならざるを得ない。

 侵略対象である地球連邦軍はもちろんのこと、他の侵略者達が地球のあちこちで活動している為、小規模な戦力では派遣した先から壊滅して無駄に終わるだけだと、ボアザン他、侵略者全勢力が身に染みて理解させられたのである。

 侵略者同士が同盟を組まずに全方位敵だらけの状況に陥っているのは、地球人類側にとっては不幸中の幸いであった。

 

「これでもまだ決め手に欠けるとは!」

 

 四方八方からフィン・ファンネルの砲撃を浴びせかけ、体勢を崩したドクガガの頭部を左腰にマウントしていたハイパーハンマーを叩きつけて潰して、ようやく行動不能に陥る姿にアムロは核融合炉をもう一基か二基積むべきかと考えた。

 RFガンダムともう一機のガンダムはアナハイム系の技術をメインに開発したから、昨今のMSやスーパーロボットのような大火力を持たない。

 もしSRG計画がなかったなら、高火力MSと評されるくらいには重武装なのだが、いかんせん敵が恒星間航行可能な技術レベルの兵器だ。これでもまだ物足りないのが現実であった。

 

「おおお!」

 

 それでも既にボアザン円盤全機を叩き落とし、獣士を一機、また一機と撃墜して行く姿は、まさしく一年戦争の英雄的パイロットという他ない。

 基地の迎撃システムはボアザン側の反撃で稼働率を落としながらも、アムロとの連携によって基地の規模からすれば驚くべき成果を上げている。

 負ける気はしないが長丁場になる、そう覚悟するアムロが二つの方角から近づいてくる感覚に気付く。

 

「シャア? それ以外にも誰か……。こっちはヘイデス総帥、それに、まさかシュメシとヘマーか!? どうしてあの二人が戦場に!」

 

 この時、アムロが感知した通り南方からはジャブローを出立したアーガマ隊が、そして東方からはヘイデスの座乗するハガネ艦隊がシャイアン基地での戦闘を確認して急行してきたのだ。

 当然、それらの艦隊に搭載された機動兵器も最大速度で戦場に向かっており、既にハガネからはレンジ内に捕捉したスカールークや獣士相手に牽制として、連装衝撃砲が次々と発射されていた。

 戦場を貫くハガネの連装衝撃砲に続いて、ストーク級アイアイエー、ポダルゲー、アーガマから放たれたメガ粒子砲も交錯して、ただでさえアムロの奮闘によって予想外の大苦戦を強いられていたボアザン側はにわかに浮足立つ。

 

 そこへ、人体の限界をやすやすと超える超加速でゼファートールギスが突撃を敢行する。

 どれい獣や獣士を相手にしても通用する超電磁チェーンソーが、反応の遅れたカニガンの左右の鋏を斬り落とし、超電磁ドリルランスが胴体のど真ん中に大きな穴を開ける。

 そこにヘイデスの護衛であるゲシュペンストMk-II部隊が、ニュートロンビームライフルとスプリットミサイルを贅沢にバラまきながら駆け付ける。

 

「ゼファー、相変わらずいい動きをする。シャア達は少し遅れてか。……シャアと言ったか、俺は?」

 

 アーガマから発進したMS部隊は一機ずつド・ダイ改に乗り、クワトロの百式を指揮官機としてカミーユのガンダムMk-Ⅱ、エマ、アポリー、ロベルトのリック・ディアスが続く。

 各機ミノフスキー・クラフトを搭載しているが、それでもSFSに搭乗しているのは単純な速度ならSFSの方が上であるのと、推進剤の節約、いざという時の盾ないしは身代わりという理由がある為だ。

 

「あの機体、アムロか? いい機体に乗っているな。それにあちらのスペースノア級の艦首モジュールは特装砲仕様。それを使用しているのはプルート財閥の一隻だけのはず。それにこの気配はヘイデス総帥……。わざわざ艦に乗ってやってくるとは」

 

 アムロと同じように、クワトロもまた別方向から接近中のハガネ艦隊にヘイデスの存在を感じ取っていた。ヘイデスが自ら進んで戦場に出るような性格ではないと知っていたが、そうせざるを得ない事情があったのだろうとすぐに理解する。

 アーガマ隊に加えてハガネ艦隊の参戦により、艦艇と機動兵器の双方の数で人類側が上回ったことになる。さらに言えば増援部隊の質もまた極めて高いときている。

 

「クワトロ大尉、僕達はどう動けば?」

 

 初めて異星人の兵器を前にしたカミーユは、あまりに異質なデザインとその巨体に戸惑っているようだ。圧倒されているわけではない分、まだマシな反応だろう。

 

「私とカミーユはあのガンダムの援護に回る。アポリー、ロベルト、エマ中尉はアーガマから離れ過ぎないように気を付けてくれ。ジャブローで武器の都合がついたとはいえ、相手は異星人の技術だ。見た目に惑わされれば命を落とすぞ!」

 

「はい!」

 

 アーガマ隊にとって幸運だったのは、ジャブローに降下した際に対異星人用に開発されたMS用の武装を融通してもらえたことだ。

 ゲシュペンストMk-IIが使用しているニュートロンビームライフル、超電磁エネルギーを発射するVキャノン、大口径のリニアレールガン、ハイパービームキャノンなどを受領して火力が大幅に上昇している。

 同時にこれだけの火器を装備してようやく渡り合える侵略者の兵器の質の高さに、誰しもがその脅威を察して唸ったものだ。

 

 既にボアザン円盤は全て撃墜され、獣士達もスカールークを守るべく消極的な動きを見せ始めている。

 そこへハガネ艦隊とアーガマ隊の到着となれば、これはもはや戦いの趨勢は決定したと言っていい。

 特にグランド・スター小隊に囲まれながら敵機との戦闘に突入していたフェブルウスと双子達は、顔馴染み達との再会に浮足立っていた。

 

 フェブルウスを含めシュメシとヘマーはほとんど忘れてしまっているが、彼らはスーパーロボット大戦Zシリーズに参戦した作品の人物とロボットに対して、無自覚に大きな親愛と感謝の念を抱いている。

 故にアーガマ隊のクワトロやカミーユ達、それにアムロは最初から好感度の高い対象であるのに加え、クワトロとアムロはプロメテウスプロジェクト時代の付き合いもあってとてもよく懐いている。

 

「アムロさん、それにシャアさん、ブライトさんもいるね、シュメシ、フェブルウス!」

 

 フェブルウスが搭載するガンレオンとジェニオンの模造機能を担当するヘマーは、戦闘中ながらも喜びを抑えきれずに笑みを浮かべながら半身達へと語り掛ける。

 

「うん。三人共元気だね、よかった! 戦場だけれどまた会えて僕も嬉しい!」

 

 バルゴラとブラスタの模造機能を制御するシュメシもまたヘマー同様に笑みを浮かべ、バイザンガの投げつけてきたチェーンハンマーをガナリー・カーバーのジャック・カーバーで斬り落とし、即座に距離を詰めてヘマーの操るライアット・ジャレンチがそのネコ科の頭部を挟んで圧壊する。

 

「間に合って良かったね。早く顔が見たいな!」

 

 ヘマーの言葉に呼応したフェブルウスは出力を上げて、振り上げたライアット・ジャレンチをスカールークの左側の角へと思い切り叩きつける!

 スカールークの五分の一少々の大きさのフェブルウスの質量とフルパワーが乗せられた一撃は、ボアザン星人の象徴でもある角に罅を入れて、そこにクワトロとゼファーがニュートロンビームライフルとオクスタンランチャーを集中して叩き込み、見事に折ったではないか!

 

 スカールークを制御する人工知能は損害と彼我の戦力差から撤退が間に合わないと判断し、スカールークのドリルを用いた特攻へ行動を切り替えた。狙いは全長がスカールークの三倍近い巨大艦――ハガネだ。

 直撃すればさしものハガネと言えど大損害は免れないが、それを許さない面子がこの場には数多くいた。まず敵艦の行動の変化を察したアムロが、フィン・ファンネルを含む全火器をスカールーク頭部の城塞へと神速の連射で叩き込む。

 

「落ちろお!」

 

 更にグランド・スター小隊のオウカ、アラド、ゼオラ、ラトゥーニもアムロの動きから敵艦の意図を察し、ドリル基部のスカールーク口内へとガナリー・カーバーの銃口を向ける。

 

「小隊各機、照準を私にリンクさせなさい。総帥には指一本触れさせません!」

 

 オウカは内心では荒ぶりながらレイ・ストレイターレットの照準を定め、レーザー通信で照準をリンクしたゼオラ達も表立っては口に出来なくとも実の親の如く慕う相手を傷つけさせないと、眦を険しくしながらエネルギーの充填を進める。

 

「レイ・ストレイターレット、発射!」

 

 オウカの号令と共にバルゴラ四機分のレイ・ストレイターレットがスカールークのドリル基部へと突き刺さり、さらにアーガマとハガネ艦隊の主砲、副砲、各種ミサイルが角持つ髑髏の城へと突き刺さってゆく。

 さしものスカールークといえどもこれだけの集中砲火を浴びれば牙城は維持できず、艦内各所から小規模な爆発を起こしながら浮力を失い、地上へと落下して行く。

 

 残っていたわずかな獣士達は指揮系統の喪失に隙を見せ、それを一年戦争経験者のアポリーとロベルトが見逃さず、エマと共にリック・ディアスに持たせたリニアレールガンやハイパービームキャノンを叩き込み、それぞれが初の異星人兵器撃墜スコアを獲得した。

 ゆっくりと地面に落下し、ついには爆発したスカールークをハガネの艦橋から認め、ヘイデスは止めていた息を大きく吐き出し、オブザーバー席の背もたれに体重を預ける。

 

「はあああ~~」

 

「ふふ、総帥には刺激が強かったかな?」

 

 艦長席のレビルはアーガマやシャイアン基地と通信を交わす合間に、年下の上司へ笑いかける。

 

「はは、なにしろインパクトのある外見の敵ですからね。それに子供達が怪我を負わずに済んでなによりですよ。幸いこちら側に負傷者も出ていませんし。後は、ボアザンの残骸を全て買い取らせてもらえれば重畳です」

 

 特にスカールークが撃沈されたのは今回の戦闘が最初の例であるはずだ。ワープ航法や獣士製造のメカニズムのその一片でも得られる絶好の機会となる。ヘイデスは相当の代償を支払ってでも手にする価値はあると認めている。

 

「あの髑髏の艦は複数が地球に降下していると予測されているから、まだ他にもいるとしても今回の戦果は大きな一歩となる。

 それにエゥーゴとの共闘となれば彼らとのパイプ作りにも、ティターンズを責め立てる材料にもなるだろう。ボアザンが来る前に起きていた戦闘は、ティターンズとシャイアン基地側で行われていたのは明白でもあるしな」

 

 まあ、ティターンズとエゥーゴとどちらと手を結ぶと問われて、原作とスパロボを知っているのなら概ねエゥーゴを選ぶのではないだろうか。

 それに今の地球連邦政府はかつてない未曽有の危機によってお尻に火が着き、上層部から末端に至るまで本気も本気、原作では一年戦争以降一度も出さずに終わった本気を出し続けている状態だ。あるいはそれ以上の火事場の馬鹿力まで出している。

 ガンダムWのリリーナやトレーズのような存在もあるし、宇宙世紀の原作のような腐敗街道まっしぐらとはならないとヘイデスは祈るように願っている。

 

「艦長、総帥、シャイアン基地より降下許可が下りました。当基地への来訪を歓迎する、とのことです」

 

 女性通信士からの報告に、レビルはかつて地球連邦軍を統べた者の威風と共に命じた。

 

「歓迎感謝する、また私とヘイデス総帥が感謝を告げに赴きたいと返信を」

 

「了解しました」

 

「では総帥、機動兵器部隊が戻ってきたら懐かしの顔を見に行くとしよう」

 

「ええ、一人、表向きとはいえ無職になっていますが、無事の再会はなにより言祝ぐべきものです」

 

 

「れ、レビル将軍!?」

 

 と邂逅一番思わず叫んだのはエマ、アポリー、ロベルトの三名である。シャイアン基地司令への挨拶を済ませ、基地内部の格納庫へと案内されたハガネ艦隊首脳部は、そこでアーガマ隊の主要人物らと面会したのである。

 ブライト、アムロ、クワトロらはレビルがプルート財閥に身を寄せて一時期同僚だったので存在を知っていたが、それを知らないエマらが驚くのも当然だ。

 カミーユもこの場にいるが、元々民間人である為、連邦軍の超大物退役軍人を前にしても職業軍人の三人程は驚かない。

 

()将軍だよ。今はただの一艦長に過ぎないし、軍人ですらない。どれだけの付き合いになるかは分からないが、よろしく頼む」

 

 穏やかに応じるレビルだが、ヘイデスは傍らで先程基地司令らとも同じやり取りをしたのを目撃している為、この老人がこのやり取りを楽しんでいるのに気付いていた。これだけの大物が悪戯っぽいと困りものだ。

 カミーユが所在なさげにしていると、不意ににこにこと笑みを浮かべてこちらを見ている双子に気付いた。思わず目を見張るような美少年と美少女だ。シュメシとヘマーである。

 

「こんにちは、私はヘマー・プルート」

 

「初めまして、僕はシュメシ・プルート」

 

 驚く程親愛の情の籠った笑みと声の二人の態度は、カミーユにとって不思議ではあるが不快なものではなかった。見た目だけなら二人はカミーユとそう年は変わらない。

 カミーユにとって同じ年ごろの少年少女といえば、親しいのは幼馴染のファ・ユイリィくらいのもので、他のクラスメイトなどはカミーユを“エス(レズビアンの隠語)”、“石の少女”と陰口を言う連中だったものだ。

 その為、同年代でこの双子のように悪意なく接してくる相手というのは極めて珍しかった。

 

「俺はカミーユ・ビダン。今はエゥーゴでガンダムMk-Ⅱのパイロットを」

 

 双子の差し出した右手を順番に握れば、その心地よい柔らかさと熱がカミーユの右手を通して彼の心に伝わる。それは月の光のように優しく、太陽の光のように暖かなイメージをカミーユに齎した。

 

「あなたがあのガンダムさんのパイロットね。ボアザンの人達のロボットと戦ったのは初めて? とても変わっているからびっくりしたでしょう」

 

 何が嬉しいのかずっと笑顔を向けてくるヘマーの自ら輝くかの如き美貌に、カミーユは思春期の少年らしくドギマギとする。

 ニュータイプでもここら辺は変わらないらしい。幼馴染のファがこの光景を見ていたら、頬の一つも膨らませただろうか。

 

「僕達もボアザンのロボットと戦うのは初めてだけれど、アムロさんがたくさん頑張ってくれていたから、そんなに苦戦しなくてよかった。これから一緒に行動すると思うから、よろしくね」

 

「ああ、シュメシ、ヘマー、こちらこそよろしく」

 

 不思議なくらいに邪気がなくて無垢な二人は、自らの意思もあるとはいえ戦争に巻き込まれてささくれ立っていたカミーユの心を、そっと癒してくれた。

 最初からカミーユに対して好感度の高い双子が、大好きなアイドルに会えた純朴な田舎の子供みたいに接している一方、アムロはかつての強敵でありライバルでもある男とあるMSの足元で対峙していた。

 

「どうして地球に降りてきたんだ?」

 

 鋭い眼差しで問うアムロに、サングラスを外しながらクワトロは答えた。

 

「君を笑いに来た――そう言えば君の気が済むのだろう?」

 

「殴るぞ」

 

 アムロの目は本気だった。流石に所長の鉄拳には及ぶまいが、MSパイロットとして抜かりなく鍛えたアムロに殴られるのは、クワトロにしても勘弁願いたかった。

 

「すまない、懐かしい顔に会えたのでつい、な。端的に言えばスポンサーがいいように利用されてジャブローに降下したのさ。その降下先で思わぬ仕事を任されて、こうしてブライト艦長共々君の顔を見に来た」

 

「エゥーゴは地球の情勢に疎いのだな。だがそのお陰で助かった。ボアザンを相手に、俺一人では少し時間が掛かったろう」

 

「戦闘中の動きは見させてもらった。機体の反応や運動性は良いが、武器一つ一つの火力をもう一回り強化したいところだな」

 

「ああ。今後の課題だよ。お前こそ機体のあの金色はビームコーティングかなにかか? 武器はヘパイストスラボのものだよな?」

 

「アナハイムはまだMSの常識の枠に捉われているのだ。かといって他の企業の機体には安易には乗り換えられんよ。スポンサーは面白くないだろう。

 だが、同じアナハイム製ならまだ誤魔化しも利くかもしれん。こちらのガンダムもアナハイム製か。設計には君も関わっているのか?」

 

 クワトロが見上げた先には白と黒のツートンカラーを基調とし、全高が二十メートルを超えるガンダムタイプのMSが佇んでいた。放熱板を思わせる板をバックパックの左側に六枚装備している。

 

「アナハイム主導の機体で、名前はνガンダムだ。正確にはその試験機だな。

 背中の板が見えるだろう? あれはフィン・ファンネル。RFガンダムにも搭載したサイコミュ兵器だ。あれを大気圏内の重力下の環境でも運用できるか、他にも色々と試験する為の機体だ。

 ティターンズはここで開発している新型ガンダムの奪取を目論んでいたが、連中が情報を掴んだのはこちらだろう。RFガンダムは俺の趣味の機体だが、こちらはアナハイムとの提携による真っ当な機体だからな。開発に携わったスタッフはGPνと呼んでいたよ」

 

 重力下試験用νガンダムといったところか。サイコフレームは搭載されておらず、どちらかと言えば漫画『機動戦士ガンダム ジオンの再興』に登場したνガンダムの試作機PX-00531(あるいはRX-00531)に近い。

 なおPX-00531は一般指揮官向けにデチューンされた陸戦用重装型サザビーと戦い、オーバーヒートを起こしたところをシュツルムファウストで上半身を吹き飛ばされている。

 また本機はサイコフレーム未搭載である為、本家νガンダムと比べればフィン・ファンネルの運用に要求されるニュータイプ能力のハードルが高い。

 

「ミノフスキー・クラフトとビームシールドは?」

 

「搭載してある。ビームシールドの発振器は実体の盾に内蔵した。盾の方はビームキャノンとミサイルを積んであるから、ウェポンラックも兼ねているな。後は頭部のバルカンとバズーカ、ビームサーベルにビームライフル。特に目立つような武器はないぞ」

 

 火力については、ヘパイストスラボ製の大火力兵装を使えば補える。

 

「ふむ、アムロはハガネに出向するのだったな?」

 

「ああ。連邦のプロメテウスメンバーに招集命令が出ていたが、どうやら俺達をまたプルート財閥に預けるらしい。半民半官の独立部隊でも作るのかもしれない」

 

「極東支部と連携して活躍しているスーパーロボットとの協力か。確かに侵略者達の常識外れの兵器を相手にするには、彼らの助力が必要ではある」

 

 そう呟きながら、クワトロはカミーユと和やかに話しているシュメシとヘマーへと視線を移した。

 かつてはプロメテウスプロジェクトのマスコットだった愛らしい双子が――今も大変愛らしいが――スーパーロボット相当の機体に乗り、戦場に立った事実にクワトロもアムロも大いなる衝撃とそれを上回る悲しみを覚えていた。

 そしてそれを決して許すはずのないヘイデスと所長がそれを許している事実に、二人の心を苛む苦痛を思えば不憫でならなかった。二人ともヘイデス夫妻が愛する子供らを進んで戦わせるわけがないと、信じて疑っていなかったのだ。

 

<続>

 

■レベル表

Lv60 アムロ、クワトロ

Lv30 ブライト

Lv10~20 その他のパイロット

 

☆重力下試験用νガンダム(以降GPν)を入手しました。

 RFガンダムの入手条件を満たさなかった場合、アムロが同ステージで搭乗する。RFガンダムを入手した場合でもステージクリア後に入手できる。

 重力下でもフィン・ファンネルを運用できるがサイコフレームを搭載していない為、必要とされるニュータイプ能力は高め。武装は本家νガンダムと共通するが、ミノフスキー・クラフトとビームシールドを装備している。

 

■強化パーツを入手しました。

・冥府総帥

 装備した機体が敵機を撃墜する度に一機につき資金+100,000獲得。経験値を+100獲得。

 

・冥府女王

 装備した機体が敵機を撃墜する度に獲得経験値を+10%。改造費用を-20%。

 

・プロメテウスの火

 ステージ上に居る味方ユニットの攻撃力+200。

 

・人に堕ちた至高神

 装備した機体が敵機を撃墜する度に一機につきステージクリアまで攻撃力+100。

 

・人に成った至高神

 装備した機体が敵機を撃墜する度に一機につきステージに居る味方の気力を+3、ENを10回復。

 

・落陽の果てに昇る月

 ステージ上に居るZシリーズ参戦作品のユニット・パイロットの全ステータス+10%(小数点以下第一位まで繰り上げ)。

 

☆エースボーナス

・シュメシ&ヘマー

 全十二種のスフィア・アクトを獲得。「いがみ合う双子」に関してはジェミニオン・レイ相当。詳細はwikiなどにて。

 

☆フル改造ボーナス

・フェブルウス

 特殊能力「真化融合(偽)」を獲得。

 効果:味方の気力上限・SP最大値+30、ユニットの武器の攻撃力+1,500。

 ※偽があるなら真もある。

 

■ヘイデスショップ(第九話クリア後)

※購入前ならば資金と引き換えにラインナップを更新可能としました!

 

・マゼラアタック

・ドップ

・ルッグン

・トリアーエズ

・Gアーマー

・ザクスピード

・ジム・インターセプトカスタム

・ジム・ストライカー

・陸戦型ジム

・イフリート

・ファットアンクル

・ガンペリー

・ジムⅢ

・カノントータス

・モルガ

・バリゲーター




粗が目立つようになってきましたね。
こりゃ手に負えないやと書きながら思って、いくつか参戦作品は減らす事としました。主にガンダム系ですね。多すぎますって。
これからも暇なときにでも読んでいただければ幸いです。ありがとうございました。

PS
ヘイデスと所長に新しく子供が生まれたら、アデーレとマカリオスという名前にしようかと思う今日この頃です。

追記
マラサイのミノフスキー・クラフトを修正。
追記2
スカールークを無人機にしました。また『プロメテウスの火』を下方修正しました。


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第十六話 そろそろ胃薬飲もうかなぁ

作中にて『ヒーロー戦記』の重大なネタバレが存在します。ご注意ください。


 シャイアン基地地下格納庫でクワトロとの話を切り上げたアムロは、そのまま双子と話していたカミーユの元へと足を向けた。

 

「カミーユ・ビダン? アムロ・レイだ。よろしく頼む」

 

 ヘイデスがアムロ大明神と崇め、縋り、頼る宇宙世紀最強パイロットの一角であるアムロは、かつての自分のようにガンダムというMSに関わった少年に穏やかな微笑と共に右手を差し出した。

 

「あなたがアムロ・レイ……。カミーユです」

 

 カミーユがどこか遠慮するように握手をした時、二人は刹那の間に果てなく広がる宇宙やそこで息づく数多の生命の息吹、あるいは刻と呼ぶべきイメージを見た。

 肉体という実体を持つ彼らにはその全てを受け止め切ることも、完全に理解することもできなかったが、それでも彼らが一人だけでは見られなかった世界を見たのは確かだった。

 驚きに目を見開くカミーユに、アムロは変わらぬ穏やかな笑みを向ける。

 

「アムロ、さん、今のは、あなたが?」

 

「凄いな、君は。俺やシャア、いやクワトロなどよりもずっと本物のニュータイプに近いのかもしれない。ただ不躾な物言いで気を悪くしたら済まないが、君はとても繊細だな。

 人の心に寄り添えるのは美徳だが、誰かの思いを抱え込み、受け止め続けるのは大きな負担になる。俺に出来る事は少ないだろうが、力になりたいと思うよ」

 

「俺……僕はそんなに優しい人間じゃないですよ」

 

「こんな時代だ。自分以外の誰かに優しくできる人間はそうはいない。それでも優しくできるのなら、心の強い人間である証拠だ。人間は誰だって弱いさ。だから強くなれる。俺も君も」

 

「あなたは一年戦争の伝説的なパイロットじゃないですか。ガンダムに乗ってジオンのMSをたくさん撃墜した。そんなあなたが弱いんですか?」

 

「ああ。確かに操縦は人よりは出来るだろう。だがそれくらいのものさ。連邦の人々は俺をニュータイプと恐れたが、俺は自分をニュータイプと誇れはしない。

 俺がしたことは、結局、世の人々にニュータイプはMSのパイロットとして適性を持った人間か、ミュータントだと印象付けただけだったからな」

 

「アムロ大尉はガンダムに乗ったことを後悔しているんですか?」

 

「いや、あの時はそうしなければ生き残れなかった。もしも、あの時からもう一度やり直せたとしても、やはりガンダムに乗るだろう。

 ただ俺も聖人君子じゃない。他にやりようがあったんじゃないかとは思うし、戦後にニュータイプという言葉に不適切な定義を与えてしまったと後悔はしている。君にはそうなって欲しくないから、こうしてつい口出しをしてしまっている」

 

 苦い後悔を滲ませるアムロの口調に、カミーユは軽々しく踏み込んではいけない領域なのだと口を噤んだ。

 カミーユは、苦悩を抱えるアムロの姿を見て、一年戦争直後はマスコミで持てはやされながらもすぐに話題から消えた伝説のエースが、自分と同じように血の通った人間なのだと感じる事が出来た。

 

 そこへ、エマやアポリーらエゥーゴ組とあいさつを終えたヘイデスがやってきた。オウカ、アラド、ゼオラ、ラトゥーニらスクール組も一緒である。

 一応、身体能力が高く一人でSP数人分の働きをするオウカらが護衛を兼ねているのだが、見る限りは年若い父親か年の離れた兄について回っている子供達といったところ。

 

「アムロ大尉、話が弾んでいるところを失礼します。こちらがカミーユ・ビダン君? こんにちは、ヘイデス・プルートです」

 

 アムロ大明神、クワトロ“逆襲するんじゃねえぞ”大明神に続くカミーユ大明神を前に、ヘイデスはいよっしゃ、と有能な味方が増えた喜び、カミーユの精神崩壊を防ぐ手段はどうすればいいのかという苦悩、年端もいかぬ少年が戦場に出る悲しみやらが混じった心境だった。

 最後の感情は、彼が画面の向こう側から画面の中の存在になったからだろう。カミーユはアムロとの会話に引かれていた意識をヘイデスへと向け、地球圏で三指に入る資産家であり慈善家としても知られる男を前に緊張と警戒の混じる意識が表に出る。

 

「貴方の事はテレビやネットでよく目にしていますよ、プルートさん」

 

「ヘイデスで構いませんよ。僕も君の事はちょっと小耳に挟んでいました」

 

「僕を?」

 

「一番大きな理由は君のお父さんがガンダムMk-Ⅱの開発者なので、その周囲を調べて知っていたからです。二番目は君がジュニアモビルスーツの大会で優勝したからです。

 有能な人材はいくらいても困らないですからね。未成年であれ将来有望な人材には目を光らせているのです。スポーツ界などでは将来プロとしてスカウトする為に、有望株の学生に目を光らせるなんてのは何百年も昔からされてきたことですよ。

 そういうわけで僕としては君のMSの設計や開発に関するセンスに目を付けて、スカウト候補に入れていたのです。ふたを開けてみたら、こうしてエゥーゴの協力者という立場になった君と対面しているわけですが」

 

 ヘイデスはスパロボ知識から十中八九こうなるだろうと予想はしていたので驚いてはいないが、繊細な少年らしく面識のない相手にちょっとピリピリしているとは感じていた。

 

「あなたはティターンズの横暴について、どう考えているんです? プルート財閥は地球連邦軍とも関係が深いと聞きました。あなたの立場ならティターンズに対して何か出来る事があったんじゃないんですか?」

 

「カミーユ、言い過ぎだ」

 

 率直に過ぎるカミーユの言葉に、アムロが思わず声をかけたが、ヘイデスは気にしないで下さいと手を上げて制止し、カミーユに答える。

 

「ティターンズの横暴については大反対ですよ。創設当初に謳われた対テロ、対ジオン残党を目的とした鎮圧部隊というだけならまだしも、今のティターンズの現場は半暴走状態に陥っています。

 中にはまっとうな方々も居るでしょうが、それにしても人道に反した行為や現在の地球圏の状況を理解していない振る舞いが目立ちます。それが分かっているので、こう見えて裏ではあの手この手でティターンズには嫌がらせをしているんですよ。

 今も彼らが尻尾を出したらそれを掴んで引きずり出し、世界中に公表して糾弾する準備は整えてあります。

 なのでエゥーゴの皆さんには僕としても大変期待しているのです。残念ながらエゥーゴはアナハイムの意向が強いので、表も裏もなかなか支援しづらいのが玉に瑕なのですけれどね」

 

 今年に至るまで地球圏は侵略を受けていなかったわけで、エゥーゴの敵する勢力はティターンズだけであったから、プルート財閥の支援を受けるなど遮二無二になって組織を強化する必要性に迫られていなかったのだ。

 今となってはエゥーゴの運営に関して、ブレックス准将にゴップをはじめ地球連邦上層部から影に日向に支援の話が出されているが、アナハイムがどこまで折れるか。

 

「あなたの話を信じてもいいと、そう思います」

 

 この時、カミーユがヘイデスから感じ取ったのは、奇妙なくらいの親愛と喜び、感謝、それにこちらに縋りついてくるような感情だった。

 スパロボプレイヤーとしてカミーユとZガンダムや乗り換えた機体での活躍を知るからこその信頼と、そして実際にこの世界の住人として対面し、二十歳にもならない少年に頼る自分への苛立ちや情けなさがブレンドされたヘイデスの心理であった。

 

「ふふ、そう言ってくれたら僕も幸いです。まだまだ地球には敵が多いですが、一日でも早く平和を取り戻すために僕個人としてもプルート財閥としても、エゥーゴに協力を惜しみませんよ。そうそう話は変わりますが、こっちのアラドがアムロ大尉に用があるとか」

 

 どこか浮かれた調子のアラドが一歩前に進み出て、アムロにまっすぐな視線を向ける。

 面識のない相手から向けられる熱い視線に、アムロが不思議そうな表情を浮かべると、アラドはどこにしまっていたのか色紙とサインペンを取り出してこう言った。

 

「アムロ大尉、アラド・バランガです。実は……サインください!」

 

 サインペンと色紙を突き出して頭を下げるアラドに、直後、ゼオラから雷が落ちたのは語るまでもない。

 

「アラド、このお馬鹿!」

 

 

 ハガネの私室に戻ったヘイデスは財閥傘下の各種電子報告書を眺めていた。最悪の事態を想定して彼が居なくても財閥の機能が停止しないように苦心してはいるが、ヘイデスという経済の怪物によって成り立っている面が多岐に渡る為、なかなかうまくゆかずにいる。

 民需と軍需共に右肩上がりが続いているが、一年戦争後に力を入れたアイドル事業とゲームアプリ事業の利益が大きく伸びている。

 

 アイドルグループ『222/77(ナナジュウナナブンノニヒャクニジュウニ)』のデビューシングル『命中率95%は当たらない』に続きセカンドシングル『命中率20%が避けられない』、サードシングル『踏み込みが足りん』がビリオンヒットを記録しているし、ゲームアプリ『Destiny/Great Order』、『パズル&モンスター』、『アイドルグランドマスター』シリーズなどが地球・宇宙を問わずに業績を上げている。

 一般の家電や太陽光発電事業ではアナハイムに後塵を拝しているが、その他の事業で追いつくべくプルート財閥の社員達は努力していた。

 

「戦争が無ければもっと利益が上がったか。各地で受けている被害もやはり馬鹿にならない」

 

 兵器だけを作っているならともかく、プルート財閥やアナハイムのような複合企業にとっては、やはり大規模な戦争など起きないに越したことはない。

 軍事兵器で儲けが出るなどお伽噺もいいところだ。ヘイデスは立ち上げていたPCの電源を落として、重い腰を上げる。

 

「さて、頼りになる大明神達に説明をしに行きますか」

 

 アーガマとハガネ艦隊がシャイアン基地で羽を休めている最中、ハガネのブリーフィングルームに招かれたアーガマ隊の首脳陣ブライト、クワトロとジャブローから出向命令を受けていたアムロは、レビルにヘイデスの二人と向き合っていた。

 図らずも、ではなくプロメテウスプロジェクトに関わった旧知の人員だけが表向きには行動を共にする上での状況確認としているが、実際には双子やスクールの子供らの事情について説明する為だった。

 口火を切ったのはクワトロである。ブリーフィングルームの椅子に腰かけ、サングラスを外したクワトロの視線は厳しい。彼自身、子を持つ父親として厳しく問わねばならない使命感と友人への情の狭間で揺れていた。

 

「ヘイデス総帥、率直に伺いたい。シュメシとヘマーがどうして戦場に出ている? あなたと所長があの子らを戦場に出すのを許すとは到底思えないが、事実から目を逸らすわけにもいかん」

 

「……ええ、僕も妻もあの子達がいずれは戦場に出るかもしれないと危惧してはいましたが、まだ六つのあの子達を戦わせることになるとは思ってもいませんでした。そしてそれを止められないとも」

 

 常に柔和な笑みを浮かべているのがヘイデスという青年であったが、この時ばかりは今にも血反吐を吐きそうなほどに苦しむ表情を浮かべている。そこに嘘や演技が一片もないのを、アムロとクワトロは認めた。

 

「総帥、なぜあの二人が戦場に出るかもしれないと考えていたんだ?」

 

 これはアムロである。正規の連邦軍の軍服に身を包み、襟に大尉の階級章を飾る彼は一年戦争時とは見違える精悍さを備えていた。

 

「これはプルート財閥でもごく一部の者しか知らない機密情報ですが、シュメシとヘマーは普通の生まれの子供ではありません。あの子達はヘパイストスラボに回収したフェブルウスの中から、僕と所長が発見しました」

 

「あの二人が総帥達の養子であることは知っていた。それに成長が異様に早い特異体質だから、なにか生まれに謂れがあるのも。その話が本当なら、フェブルウスとはなんなんです?」

 

「分かっている事は多くありません。フェブルウスはジオン公国が地球に落とそうとしたコロニーを木っ端微塵に砕きながら地球に落下し、そしてしばらくの間、海底で眠り続けていた機動兵器です。

 いつ、どこから、どうやって地球圏にやってきたのか? それとも作られたのかは分かりません。

 それを僕達が発見し回収しました。回収した段階では四肢を失って大破した状態でしたが、時間が経つにつれて自動で損傷が修復されてゆき、ある時、異常な反応を示したのを調査したところ、コックピットの中からシュメシとヘマーを見つけたのです」

 

「ではシュメシとヘマーは異星人の可能性もあると?」

 

 昨今の地球外侵略者の情勢に関連があるのかと、招かれた三人が大なり小なり疑問を持っているのは明白だった。ともすればフェブルウスを追ってボアザンかバームがやってきたのでは? という可能性を否定する材料がクワトロ達にはないのだから。

 

「遺伝子は地球人類のものと変わりありませんでした。子供だって作れます。異常な成長速度の理由はいまもなお不明ですがね。

 それでもあの子達は僕らにとっては可愛い我が子です。血の繋がりも生まれも関係ありません。本当の親を名乗る人達が出てきたら、ま、話し合いには応じますけれどね」

 

 それまで苦痛に苛まれている表情だったのが、親馬鹿な感情に支えられたふてぶてしいものに変わるのを見て、アムロ達はほっと胸を撫で下ろした。彼らの知るヘイデスはこうでなくては。

 

「それであの子達がいずれ戦うと感じていたのは、フェブルウスが大破していたというのが理由か? 地球への落下やコロニーを破壊した影響で損傷した可能性もあったのではないか?」

 

 当時、コロニーを落とす側だったクワトロとしてはなんとも奇妙な話であったが、この場では話を進める事を彼は選んだ。

 

「その可能性も考えましたが、損傷の具合を調査したところやはり戦闘によるものだと判明したからです。いずれフェブルウスを傷つけた何かと戦うことになると、僕らが考えるのも道理でしょう?

 そして実際にそうなりました。これは先日、ヘパイストスラボを襲撃してきた部隊との戦闘映像です」

 

 それは初めてフェブルウスとシュメシ、ヘマーが戦闘を行った際の映像から直近のハガネ艦隊の出向直前の戦闘までを記録した映像だった。

 そこに映し出された既存の侵略者達とは異なる機械系統の兵器群、そして明らかに異色な偽のミケーネ神の姿と戦闘力にアムロ達はそろって眉を顰める。

 ミケーネ神の俊敏性やパワーはこれまで地球連邦軍が撃退してきた侵略者の兵器と一線を画し、またそれを容易に撃破したフェブルウスの戦闘能力も尋常ならざるものであった。

 

「これがシュメシ達の戦わなければならない理由であるのなら、こいつらの狙いはあの子達だと?」

 

 明らかにフェブルウスを意識した動きを見せた偽ミケーネ神、そしてヘパイストスラボ以外には姿を見せていない謎の兵器群。それらの狙いがシュメシ達であるなら、ヘイデスがあえてハガネに双子達を乗せた理由にも察しがつく。

 だからこそ渋い顔になるクワトロに、ヘイデスはそれ以上のしかめっ面を浮かべて見せた。

 

「宣戦布告もなにもなしに無人機をひたすら投入してくるだけですが、残骸を調べたところ、基礎的な技術ではこちら側を上回っています。仮にUI(Unknown Invader)と呼んでいます。連中がフェブルウスを捕獲したいのか、それとも破壊したいのか、それも謎です」

 

 仮にUIがサイデリアルか御使いの残党であったとして、ヘイデスの想定しうる限り連中が持ち出してくる兵器の中で最悪のものはゼル・ビレニウムだ。

 なんとこの機体、天の川銀河内の恒星間航行可能な文明ならたったの二機で滅ぼせるという並みのラスボスをはるかに凌駕する化け物だ。スパロボの参戦作品のほとんどは、この機体に滅ぼされてしまう。

 万が一、残党がこの機体を所有して万全な状態を維持していたなら、現状の地球圏では抗う間もなく滅ぼされる。

 

「ヘマー達をハガネに乗せたのは所在の割れた場所に留まらせ続けるよりも、強力な戦力と共に移動し続ける方が安全だからだな、総帥?」

 

「ええ。クワトロ大尉の言う通りです。ヘパイストスラボはいくら改修を続けても防衛力に限度がありますしね。それにシュメシ達もUIに対して強い敵意と闘志を抱いています。彼らを打倒する事が自分達の使命であると、そう考えている節があります。

 ともすれば僕や妻が止めても勝手に飛び出して、世界を転々としながらUIと戦い続けかねないと、そう判断して諦めざるを得ないくらいにね」

 

「それは……難儀なことだな。親の心、子知らずとはいうが、この場合はあまりに危険すぎる。総帥自身もいつ既存の侵略者達から狙われてもおかしくない身の上だというのにな」

 

「僕が狙われるのは仕方のない事です。分かっていますからきちんと護衛もつけていますしね」

 

 ヘイデスの口にした護衛という言葉を耳にして、ブライトが思い出したようにオウカらについて尋ねた。プロメテウスプロジェクト時代には見なかった顔だが、あの年頃の少年少女を戦闘員としてヘイデスらが雇用するのは考えにくい事であったから。

 

「あのオウカ、ラトゥーニ、ゼオラ、アラド達四人ですか。彼女らはかなり高度な訓練を受けていたようですが、いったい?」

 

「彼女達は去年、ティターンズ系の非人道的な研究施設が摘発された際にウチで保護した子達です。

 その出自から普通の暮らしをするのは極めて難しいので、それでもパイロットにならずに生きてゆけるよう支援していたのですが、それも無駄に終わりました。彼女らもまたシュメシ達同様に、戦う術があるのなら戦うと戦場に立ってしまった子らです。

 僕も妻も揃って子供らを止められなかった駄目な親ですよ」

 

 そう自嘲するヘイデスに、アムロはつい先程格納庫で話をした四人の事を思い出しながら慰めの言葉を口にした。

 

「俺があの子達と話した時間は短かったが、あの子達が総帥を慕う気持ちは純粋なものだと感じたよ。ヘイデス総帥、戦いは必ず終わる。今、後悔しているとしても戦後、あの子らを導くのがあなたの役目だ。それをどうか忘れないでくれ」

 

「ええ、アムロ大尉の言う通りです。まずはこの戦いを終わらせなければなりませんが、親である以上、子供らが巣立つまでその未来を考え続けるのが責務ですから」

 

 ヘイデスは少しだけ救われた表情でアムロに答えるのだった。

 

 

 その頃、所長はヘパイストスラボから重要な情報や資材、研究設備を移転した旧プロメテウスプロジェクトの試験基地へと居を移していた。移転と基地の目的の変更に伴い、正式な名称をエリュシオンベースと改めている。

 ヘパイストスラボに比べて大規模な機動兵器格納庫や生産・修理設備が最初からあり、また防衛設備も充実していて、今後、敵対勢力からの襲撃を考慮した場合にはこちらの基地の方が適切だったからだ。

 

 地上施設の格納庫の一室で、所長は来客を迎え、かねてから依頼していた品を受け取っている最中である。

 長いプラチナブロンドを三本の三つ編みに分けて垂らし、赤いニットのロングセーターに白いタイツとオーバーニーの黒いブーツ、それに白衣姿の所長は、格納庫に運び込まれるコンテナを見届けた後、来客と向かい合う。

 

 紫色の髪をヘアバンドで特徴的な髪型に纏め、白い改造軍服に袖を通した若い軍人である。名をパプテマス・シロッコという。

 重要な資源であるヘリウム3を筆頭に木星に資源採掘に出向く大型輸送艦ジュピトリスのキャプテンを務めたこの男は、今、こうして地球圏に姿を見せていた。

 

「所長、依頼の品を確かに届けましたよ」

 

 自らに対する絶大な自信に満ちたシロッコは、白皙の美貌に溢れんばかりのカリスマを持つ青年だ。

 いっそ傲岸なほどの態度にも所長は“天才と言われる人物によくあるパターン”と気にも留めていない。世間の中でやってゆくのは難しいだろうな、とは思っていたが。

 

「ええ。よくぞ間に合わせてくださいました。稼働データも確かに頂戴しました。条件的に地球圏では作れない品でしたから、木星船団のキャプテンが快諾してくれたのには、ウチの総帥も喜んでいましたよ」

 

「プルート財閥にはジュピトリス用の新型ブースターや採掘用の新型機材、航路上の補給ポイントの新設と多大な支援を受けたのだ。これくらいの用には応じよう。それに私としても実に面白い品だった。GNドライヴ、名前はいささか気に入らないが」

 

「なら太陽炉とお呼びくださいな。あまり量産できる代物ではありませんが、侵略者連中からすれば地球人と違って木星からのヘリウム輸送を邪魔しない理由はありません。いつ、今の核融合炉が使えなくなるか分かったものではありませんからね。代わりは用意しておいて損はありませんわ」

 

 地球と木星を往復する木星船団は現在のミノフスキー文明とでも呼ぶべき地球に於いて、絶対不可侵の保護対象として一年戦争時にも連邦、ジオン双方から保護対象とされている。

 しかし、それは地球人類の事情であって、今後、キャンベルやボアザンら地球外勢力からの攻撃を受ける可能性は低くない。それを見越して、プルート財閥ではヘリウム3に依存せず、かつ機動兵器のジェネレーターとして運用可能な新動力の開発に余念がない。

 光子力、ゲッター線、超電磁エネルギー、ダイモライトに続き、GN粒子を生成するこのGNドライヴもまたその一つであった。

 

「所長、私はこれで失礼しよう。お互い忙しい身だ。時間は有意義に使わねばな」

 

「そうですわね。ただ、あなたも機械獣やメカザウルスにはお気をつけて。連中はこちらの都合などお構いなしに攻めてきますからね。移動中に襲われて死亡なんて、願い下げでしょう?」

 

「ふ、忠告はありがたく受け取っておこう」

 

 そう告げてシロッコは颯爽と所長の前から去っていった。シロッコはエリュシオンベースの駐車スペースに停められていたエレカに乗ろうとし、そこで足を止めた。他の車に乗っていた護衛達が動こうとするのを、シロッコは視線で止める。

 隣に停められていた黒いエレカのウィンドウが下りて、そこに乗っていたウェーブがかった紫の長髪の青年が顔を見せる。地球連邦軍情報部所属――

 

「ギリアム・イェーガー、道案内には感謝する」

 

「木星船団のキャプテンが自ら納品に向かうとなれば、道案内の一つも必要だろう。ましてや届け先がプルート財閥となればな」

 

「詳細な位置については知らされていたが、やはり地理に詳しい者が案内をしてくれれば迅速に物事が済む。こう見えてこのパプテマス・シロッコは感謝している」

 

「ふ、ならば素直に受け取るとしよう。ところでティターンズには新型MSの開発などで協力をしているようだが、本格的な協力は避けているな。君は今後どう動くつもりだ?」

 

「今の地球圏はカオスだ。あらゆる物事が起こり得る無秩序でもある。地球という水の星から誕生した人類の歴史のターニングポイントに、私達は立ち会っている。その中でこの私がどこまでの存在であるのかを確かめようとしているのだよ」

 

「危険だな。だが、自らの力がどこまで通用するのか、それを追求する姿勢は誰もが抱くものだ。一個人としてはシロッコ大尉の力が人類にとってより良い形で振るわれるのを祈るばかりだ。それでは任務があるので俺はこれで失礼する」

 

「ギリアム少佐」

 

「なにか?」

 

「いや……息災でな」

 

「ふ、シロッコ大尉こそ」

 

 そうしてギリアムの車が遠ざかってゆくのを見届けてから、シロッコは彼には珍しく顔を顰める。ギリアムの身を本気で案じる言葉を口にするなど、パプテマス・シロッコにはあまりに不似合いな発言だと感じたからだ。

 

「どういうことだ。ギリアム・イェーガー、このパプテマス・シロッコが、なぜか“あなた”には心を砕きたくなるなど」

 

 この世界のシロッコは知らない。かつてとある世界で、自分がシャドームーン、異次元人ヤプールと共にギリアム・イェーガーに対して、心からの忠誠を誓い信頼をしていたことを。その影響が“虚憶”として今の自分に顕れていることを。

 もしもこの世界にシロッコ同様にシャドームーンやヤプールが居たなら、彼らもギリアムに対して不思議に思いながらも絶大な信頼と忠誠心を抱いただろう。そしてギリアムが何かしらの組織を設立したなら、喜び勇んでその傘下に加わったに違いない。

 

 シロッコが去った後、所長は木星で製造されたGNドライヴを重要区画の格納庫へと運び込み、自身は基地の中核へと向かっていた。

 地下から攻めて来られる可能性を考慮し、基地の中核部は地上施設と地下施設の中間地点に設けられ、内部への立ち入りには所長とヘイデス、シュメシとヘマーの四名のみが許されている。

 

 広大な格納庫にはぎっしりと量子コンピューターが並べられており、その中核には二メートルほどの黒い物体が置かれている。棺めいたその物体へ無数のコードが接続されていて、休むことなく膨大なデータのやり取りがなされている。

 それはある日、フェブルウスから提供されたメモリーユニットだった。フェブルウスは損傷によって多くのデータを喪失していたが、それでも残っていたデータがプルート財閥の切り札の一つである。

 

 至高神ソルとして無限にも等しい多元世界を知覚し、記録し続けたデータの中にはGNドライヴだけでなく、この地球ではいまだ概念もない技術や知識、さらには検証データさえあり、これによってプルート財閥はあり得ない技術とあり得ない兵器の開発に成功している。

 当初は基礎となる工作技術に差があり過ぎて宝の持ち腐れ状態に陥っていたのだが、それもいつのまにか知らぬうちに設置されていた工作機械によって、大部分が解決するという訳の分からない事態に見舞われている。

 

 これはいずれ転移前に自分を襲った者達との戦いを予見したフェブルウスが、自身に残るメモリーすなわち“黒の英知”を大好きなお母さんに託したのであるが、当の所長やヘイデスにはイマイチ伝わっていなかった。

 なおこのメモリーユニットはフェブルウスと常時接続されており、格納庫でお留守番していることの多いフェブルウスが密かにお母さんといっしょ、と喜んでいるのも伝わっていなかった。

 

* 北米ルート第十話「IMPACT」

 

「撃て撃て撃て、機械獣なんぞにでかいツラをさせるな!」

 

 通信機越しに聞こえてくる隊長の怒声に鼓舞されて、MSパイロット達はクソッタレのド腐レ侵略者共が、と悪罵を吐きながらトリガーを引き続ける。

 場所はアメリカ西海岸。バードス島に一度帰還し、飛行要塞グール数隻を調達したあしゅら男爵が、とある目的の為に市街地を目指してわざと目立つように襲撃を仕掛けて、速攻で現地の連邦軍に苛烈な抵抗を受けていた。

 

 ジェガンを隊長機とするジムⅢの部隊は、いずれも大型のビームランチャーや大口径のビームマグナムを標準装備し、ジムⅢの両肩に装備されたミサイルポッドには、一年戦争時なら対艦ミサイルに区分される大型ミサイルが装填されている。

 俊敏な獣の如き動きを見せる機械獣を相手に、連邦軍は面で制圧するべくとにかく撃って、撃って、撃ちまくっている。

 

 後方ではカノントータスがずらりと並んで大口径の砲弾を雨霰と降らせ、ビッグトレーやライノセラス級陸上戦艦らも弾薬を空にするのが義務だと言わんばかりの砲火だ。

 沿岸部ではワニ型モビルゾイドのバリゲーターの大群が、上陸しようとする機械獣に対して最大の武器であるバイトファングで噛みついて水中に引きずり込み、かみ砕き、尾で殴り、背に負ったゲッターミサイルやゲッタービームキャノンを叩き込み、奮闘を見せている。

 

 あしゅら男爵は飛行要塞グールの艦橋から地球連邦軍の見せる奮戦ぶりを眺めていた。彼/彼女としてはここで連邦軍の部隊を壊滅させるのが目的ではない。

 北米大陸に上陸したハガネ艦隊をこちらに呼び寄せるのが第一の目的だ。それを果たす為にある程度はダラダラと戦いを続けるつもりだったのだが、ここであしゅら男爵に誤算が生じていた。

 

「ええい、OZの中にも歯ごたえのある者がいたか!」

 

 それはOZ内部で急速に勢力を拡大しているトレーズ・クシュリナーダの懐刀、ゼクス・マーキス特佐(中佐相当)が少数ながら部隊を率い、増援として参戦していたことだ。

 かつてのシャア・アズナブルのように仮面を被るこの若者は、コロニーから送り込まれた五機のガンダムと縁が深く、従来のOZのMSでは対抗できないガンダムと戦う為、プルート財閥が保管していたトールギスを受領し、これを愛機としていた。

 引き渡しの際、トールギスは全ての部品が新品に差し替えられ、数機分の予備パーツも用意されるという至れり尽くせりぶりであった。ヘイデスからのトレーズとゼクスへのプレゼント、といったところか。

 

 ゼクスのトールギスには彼の同期であるルクレツィア・ノインが大型のビームカノンで武装したエアリーズで同行し、同武装のエアリーズと大口径ビームライフルを装備したリーオーが数機姿を見せている。

 トールギスのぶっ飛んだ加速性能を十全に生かすゼクスの操縦技術により、飛行要塞グールは機械獣の防衛線を突破されて、度々被弾している。

 

 そして連邦軍でもOZでもない二機のガンダムも、あしゅら男爵の軍勢に牙を剥いていた。

 一機は大きな翼を背に持ち、赤いシャープなシールドと信じがたい大火力火器を持ったウイングガンダム、それにビームの大鎌を振るい、陸に上がった機械獣を斬り刻んでいるガンダムデスサイズだ。

 

 侵略者達の活動が活発化してからは、OZやティターンズへの攻撃を控えていたガンダムが侵略者に襲われている都市や民間人を助ける例がいくつか確認されており、今回もそれに倣ったものだろう。

 因縁のあるウイングガンダム――OZではガンダム01と呼ばれる機体の姿に、トールギスを駆るゼクスは内心で思うところはあったが……。

 

「この状況では目を瞑るしかないか。決着は別の機会につけるぞ、ガンダム01!」

 

 もしゼクスがそれを通信でウイングガンダムに伝えていても、パイロットのヒイロ・ユイは無言を貫いただろう。

 ヒイロやデュオらガンダムパイロット達の行動の変化は、当然、あしゅら男爵を含む侵略者達の存在による影響だ。

 彼らの跳梁跋扈により、曲がりなりにも地球側の戦力であるOZやティターンズの戦力を削るのはコロニーにとっても不利益となるとして、極端な行動を取る一部への攻撃を除き、コロニーのガンダム達は行動方針を大きく変化させているのだった。

 

「ターゲット確認、破壊する」

 

 ヒイロはグールの一隻をロックオンし、物質化寸前まで圧縮されたエネルギーをバスターライフルから容赦なく発射する。

 大気圏内では減衰するはずのビームは、それでもなおビームの軸から半径百五十メートルのプラズマ過流を形成し、数十キロメートルに及ぶ灼熱の奔流が地上から空中へと放たれる。

 スーパーロボットの必殺技と言われても信じる他ない常識の枠を超えた一撃は、狙い過たず数機の機械獣を巻き込みながら、あしゅら男爵直属の配下である鉄仮面の兵士達が乗り込むグールの胴体に大穴を開けて轟沈させる。

 

「おお、なんだアレは!? ガンダムは化け物か!」

 

 そして最後にあしゅら男爵にとって手痛い誤算となったのは、二機のスーパーロボット紛いの怪物が居た事だ。

 地上ですさまじい勢いでタングステン製の特注弾をばらまいて機械獣を穴だらけにし、その圧倒的な加速性能で通常の倍近いサイズの巨大機械獣を押し返し――

 

「どんな装甲だろうと、打ち貫くのみ!」

 

 右腕に装備された超合金Zの杭でスーパー鋼鉄の装甲をぶち抜き、その際の衝撃で内部の機器をことごとく粉砕する、赤いMSサイズのスーパーロボットと言うべきアルトアイゼン。

 撃鉄に叩かれたビームカートリッジが衝撃波を発生させ、撃ち込んだステークを通じて内部に衝撃波とプラズマを叩き込まれた巨大機械獣が爆散する中、足を止めたアルトアイゼンはそのまま赤熱化した頭部の角から摂氏二万四千度の熱線を周囲の機械獣へと浴びせかける。

 

「ホーンファイヤー、耐えられるか!」

 

 見る見るうちにドロドロと溶けてゆく機械獣を尻目に、アルトアイゼンは更に手首内側のビームガンや左腕の三連マシンキャノン、カメラアイの光子力ビームを発射して、さながらマジンガーZの如き暴れっぷりを見せる。

 そして上空から光子力エネルギーを圧縮したビームと実弾を発射し、的確なタイミングで妨害と撃墜の双方を重ねているのが、自在に空を飛ぶ白き騎士ヴァイスリッター。

 携えたるオクスタンランチャーの射撃は、凄まじい機動の最中にあって信じがたい精度と威力を発揮し、SRG計画の成果がいかにすさまじいものであるかを知らしめている。

 

 SRG計画の概要は知ってもその詳細を知らなかったゼクスやデュオらは、MSサイズながら出鱈目な性能を見せる両機に、表に出るかどうかはともかく驚いていた。

 ウイングガンダムの馬鹿火力を見せつけられたアルトアイゼンとヴァイスリッターのパイロットも、似たようなものではあったが。

 

「わお! OZのトップエースが居るのにも驚いたけど、あっちの羽付きと鎌持ちのガンダムちゃんて噂のコロニーからの物体Xちゃん、その一とその二じゃない? こっちの味方をしてくれるなんて、どういう風の吹き回しかしら?」

 

 ヴァイスリッターのパイロット、エクセレン・ブロウニングは明るい声でモニターに映る二機のガンダムを見ながら、アルトアイゼンのパイロットであり恋人のキョウスケ・ナンブへ問いかけた。

 エクセレンは口調こそ軽いものだが、圧倒的火力と高機動性を両立しているウイングガンダムも、直前までレーダーに一切映らなかったガンダムデスサイズにも警戒の意識を向けている。もし二機が敵対姿勢を見せたら即座に狙撃するように神経を張り詰めている。

 

「単に見過ごせなかったというだけの事はあるまい。このままで終われば都合の良い通りすがりの援軍で済むが……」

 

「OZの仮面特佐も今は手出しを控えているし、因縁の薄い私達が勝手に攻撃しちゃ空気読めてないわよねえ」

 

 とはいえエクセレンの瞳には冷徹な光が宿っており、いざとなればトリガーを引くのに躊躇はないと判断しているのを、キョウスケは見抜いていた。

 

「機械獣の動きも妙だ。奴らは日本の光子力研究所以外はヨーロッパで少々暴れているだけだったはずが、なぜこの辺りに姿を見せた? こちらにジャパニウム鉱石の鉱脈があるのか、それともなにか狙いがあるのか」

 

「私達で考えても分からないことよぉ? 今は目の前のお仕事お仕事♪」

 

「ふ、そうだな。応援要請を受信して駆け付けたのが俺達だけでなかったのも幸いした。どうやら今回はツキがあるらしい」

 

「分のある賭けでよかったわね。キョウスケ的には面白くないんでしょうけど。それに、あらやだ、びっくり仰天の大物まで来てくれたじゃない!」

 

「なに? ……なるほど、これは大物だ」

 

 ヴァイスリッターとアルトアイゼンのレーダーには、北東方向から急速に接近してくるハガネ、アーガマ、アイアイエー、ポダルゲーの巨大熱源が映し出されていた。

 そしてそれこそがあしゅら男爵の狙いだったのだと、この時の彼らに知る由はない。

 

<続>

 

■パプテマス・シロッコが参戦しました。所属:???

 シロッコ→ギリアム

 友好度  90/100

 信頼度  90/100

 忠誠度 120/100

 

■キョウスケ・ナンブが参戦しました。

■エクセレン・ブロウニングが参戦しました。

 

●GNドライヴが開発されました。

●GNドライヴ[T]が開発されました。

●バリゲーターが開発されました。

●隠しユニット『W0ライザー』の入手フラグ1が達成されました。※W0は誤字ではありません。

●黒の英知(副作用なしの安全安心フィルター付き)を入手していました。

●エリュシオンベースが建設されました。

 




GPνだとインパクトが弱かったみたいですね。ナラティブとかGP0とかゲシュペンストのニュータイプ仕様とか、パーフェクトガンダムにすればよかったのかな。
そうそうそれと所長ですが、ARMSという漫画のコウ・カルナギ(+水の心)というキャラクターやトライガンのGUNG-HO-GUNS下位メンバー位の戦闘能力をイメージしています。

追記
コウ・カルナギ云々をちょっと修正。

追記2
『222/77』にルビを追加。


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第十七話 Zシリーズの成分が濃いな、この世界

前回のネタについて
222/77(ナナジュウナナブンノニヒャクニジュウニ)
 デジタル声優アイドルグループ『22/7』が元ネタ。作者は芸人の三四郎のお二人がMCを務める番組で初めて知りました。アニメ化したりアプリが配信予定だったりです。



「フハハハハ、のこのこと姿を見せたか、ヘイデス・プルート! 我が主、Dr.ヘルの大望を果たす為、貴様を我らの手駒へと変えてくれる。……しかし」

 

 あしゅら男爵は二隻に減ったグールの艦橋で、自分を鼓舞する為に無理に高笑いをしていたが、正面モニターに映るハガネ艦隊の陣容に表情は苦々しく歪められていた。そこにはあしゅら男爵の知らない艦――アーガマが映し出されていた。

 

「なぜ増えている!? 地球連邦の新型か、それともプルート財閥の新型か? ええい、計算外の事態ばかり起こりおって、だがまだ諦めるわけにはいかん!」

 

 まるで敵に追い詰められた主人公のようなセリフを口にするあしゅら男爵の顔には、冷や汗こそ流れていたものの諦めの光は宿っていなかった。まさにここが彼/彼女にとっての正念場であった。

 グール二隻に対し、現状の地球圏では最大最強の戦艦の一角に数えられるスペースノア級とストーク級二隻、アーガマと艦隊戦力だけでも倍の差があり、機動兵器の数にしてもハガネ艦隊とアーガマ隊の四十弱が加わって、こちらでもあしゅら男爵側が劣る。

 兵器の質が数の不利を覆せるほど上回っているわけでもない以上、従来ならばあしゅら男爵は撤退を決断する場面であった。

 

 そして、それは機動兵器の展開を終えたハガネ艦長レビルも理解するところである。すでに地元の連邦軍と通りがかったOZ、詳細不明のガンダム二機、そして応援要請を受けて駆け付けたSRG計画の産物により、機械獣軍団は敗色を帯びつつある。

 Dr.ヘル一派のみならず地球上の各勢力は全方位敵だらけであるから、ここまで戦力を消耗すれば温存の為に撤退するのが共通の行動パターンとなってきている。

 しかし目の前の機械獣軍団はそのパターンから外れつつある。これを訝しむのは当然であろう。

 

「ミノフスキー粒子は既に溺れる程散布されているな。各機、敵艦ならび機械獣の挙動、また周辺への警戒を緩めるな。なにかしらの策、分かりやすいところでは伏兵の可能性がないとは言い切れん。グランド・スター小隊とフェブルウスは本艦の直衛に回れ」

 

 レビルは手早く指示を出して、破壊光線を発射してトールギスを追い払おうとしているグールを険しい眼差しで睨む。グールはサイズこそハガネやホワイトベースよりも小さいが、奇怪なフォルムとそれを支えるテクノロジーは決して侮ってよいものではない。

 

「総帥、艦首特装砲のテストは必要だったかな?」

 

 オブザーバー席でガンダムW勢とスパロボIMPACT主人公勢の姿に驚けばいいやら喜べばいいやら、アインストを思えば叫びたかったりと複雑だったヘイデスは、レビルからの問いかけにギョッとしたが、それを表に出さずにビジネスマンの顔で答える。

 

「テストは必要ですが、今行う場面ではないと見受けます。もちろん僕は戦争の素人ですから、レビル艦長が必要だと判断されたら撃っていただいて構いません。ただ、指揮下にない味方の入り乱れている状況で撃つのは、かなり難しいというか危険なのでは?」

 

 最悪の場合、OZやガンダムパイロット達が巻き込まれる恐れがある。ヘイデスはそれも懸念していたし、またスペースノア級の特徴である艦首モジュールに関しても、実際に発射するとなるとどうなのか、と気にしている。

 このスペースノア級にはSRG計画の技術の粋とフェブルウスから供与された黒の英知こと『パンドラボックス』から得られたデータが用いられている。

 

 パンドラボックスは、ギリシャの大神ゼウスの命令により鍛冶神ヘパイストスが作り出した、人類最初の女パンドラと、彼女が地上に降りる際に与えられた、神々からの贈り物を仕舞った箱(あるいは甕)に由来する。

 諸説あるが、パンドラは人類に災いを振りまく為に遣わされたとされ、後に天界から盗んだ火を人類に与えたプロメテウスの弟エピメテウスと結婚し、ある日、好奇心に負けて箱の蓋を開けてしまい、仕舞われていたあらゆる災害が解き放たれ、箱には最後に希望が残されていたというお話だ。

 

 最後に残された希望を善きものと捉えるか、それこそが最大最悪の災いだったと捉えるかは人それぞれだが、ヘイデスと所長は少なくとも前者として解釈し、人類が生き残る為に役立てている。

 それにしてもプロメテウス、ヘパイストス、ヘイデス・プルート、パンドラ、フェブルウスと、いやはや古代ギリシャやローマに縁のある事だ。

 

 さて話を戻してハガネに装備された艦首モジュールだが、OGシリーズとは異なりこちらの世界ではトロニウムが発見されていない為、艦首モジュール内部に特装砲専用の動力源が三基搭載されている。

 それぞれが超高出力を誇る巨大核融合炉に巨大光子力エンジン、巨大ゲッター炉心である。どれ一つをとっても文明を創造し、維持し、破壊しうる動力であるから、インドの三神一体理論よりトリムールティドライヴと名付けられている。

 

 このドライヴの制御が尋常ではなく難しい為、ハガネにのみ搭載された特装砲は、核融合炉単独のメガ粒子砲だけでコロニーレーザーにも匹敵するという化け物兵器で、これに光子力エネルギーとゲッター線が加わればどうなるか。

 ただそれでも惑星を木っ端みじんにするほどの威力はないので、ヘイデスは惑星を吹き飛ばすバトル・フロンティアのマクロスキャノン(あるいはメガマクロスキャノン)未満かあ、と残念な思いに駆られていた。

 

 現在の戦場は都市部から離れ、まばらに民家が点在しているが、住人の避難は完了している。すでに戦場の趨勢はこちらに傾いているし、比較的安全なこの状況で実戦中のテストを実行するのもまったく無い話ではない。

 オリジナルのハガネのブレード状の艦首には二つの謎の球体があったが、こちらのハガネの艦首にはなく、その代わりに逆三角形の配置で三つの穴が開いていた艦首のデザインとなっている。そこから放たれる主砲なら、グールを跡形もなく消し飛ばせる。

 

「う~ん、やはりこの状況で撃つ必要はないかと。通常の火砲で事足りる場面ですよね」

 

「私も同感だよ。どうやら子供達が戦場に出ても冷静な判断が下せているようでなによりだ」

 

「ははあ、テストしたのは僕の思考の方でしたか」

 

「そろそろ慣れてもらわなければな。総帥がいつまでも不安がっていると、出撃している子供らにも悪影響が出る」

 

「なるほど、肝に銘じておきます」

 

 肝に銘じたらすぐに行動に反映できればいいのになあ、とヘイデスは心の中で溜息を吐く。

 同じオブザーバー席に座っているだけとはいえ、ガンダムSEEDのムルタ・アズラエルは終盤を除けばよくもあそこまで落ち着いて戦況を眺めていられたものだとつい感心してしまう。

 

 艦橋でのやり取りが行われている頃、ハガネ艦隊のゲシュペンストMk-II部隊は前面に進み出ていた。

 続いてハガネに居を置いたアムロのRFガンタンクも出撃する。機械獣軍団の奇妙な動きへの警戒から、変形により全距離に対応できるRFガンタンクを艦の近くに残したわけだ。

 

 またアーガマからもクワトロの百式を筆頭にアポリーとロベルトのリック・ディアス、それとエマにパイロットを変えたガンダムMk-Ⅱ、そしてカミーユの乗るGPνが出撃する。

 シャイアン基地からそのまま持ち出してきたGPνは、アムロとクワトロの意向によりカミーユへと譲られていた。

 

 これにはカミーユの操縦技術の高さと反応速度にガンダムMk-Ⅱが徐々に遅れだしていた事、そして試験段階のフィン・ファンネルをかろうじてカミーユが動かせたゆえの判断である。

 カミーユはシャイアン基地を出立し、バベジン研究所を経由するまでの間にアムロから受けたレクチャーを思い出していた。意図的に口にして聴覚も刺激する。

 

「サイコミュのサポートがあっても、今の俺が負担なしで動かせるフィン・ファンネルは三枚。基本的に使い捨てだっていうし、むやみに使える武器じゃないな」

 

 ファンネル――正式にはファンネル・ビット、あるいはファンネル型ビットとも呼ばれるオールレンジ攻撃用兵器は、今の技術をもってしても内蔵できる推進剤の問題などから大気圏内の使用可能時間は短い。

 アナハイムから色々と搾しゅ――げふんげふん、協力を得て開発したレイ親子も現状、この問題点の劇的な解決策を見出せずにいた。

 ただフィン・ファンネルを抜きにしても、ジオンから吸収したサイコミュ技術やアムロがテストしたネティクスの技術を用いた地球連邦製サイコミュが搭載されたGPνは、抜群の反応速度でカミーユによく馴染んだ。

 

「機械獣……ボアザンの獣士より小型だけど、すごい見た目なのは同じだな。エマ中尉、Mk-Ⅱの調子はどうです?」

 

「大丈夫よ、私は元々ガンダムMk-Ⅱに乗ってエゥーゴに降ったのよ、お忘れ?」

 

「いえ、大丈夫ならいいんです」

 

 再びガンダムMk-Ⅱのパイロットへ戻ったエマは、お下がりであるにしろ、ガンダムタイプを操縦する誇りに満ちているようだった。

 そしてエマの乗っていたリック・ディアスは、アムロを訪ねていたカツ・コバヤシが搭乗して、アムロのRFガンタンクの傍に控えている。

 アムロはウイングガンダムとガンダムデスサイズに注意を払いつつ、初陣のカツへ声を掛ける。ベテランからの気配りといったところだ。

 

「カツ、迂闊に飛び出しさえしなければ問題はない。敵は機械獣だけに絞れているとはいえ、指揮系統の異なる複数の勢力が入り乱れているんだ。下手に狙えば同士討ちになる。俺達はエゥーゴとハガネ艦隊艦載機の援護と艦の直衛に徹すればいい」

 

「は、はい。あ、アムロさんもやっぱり初陣の時は緊張を?」

 

「ああ、もちろんしたさ。サイド7が襲撃された時、俺はマニュアルを読みながらガンダムを動かさなければならなかったんだ。緊張どころの話じゃないさ。大丈夫、あの時の俺に比べれば、カツはシミュレーターと実機に触れているし、敵よりも味方の方が多い」

 

「分かりました。とにかく敵を近づけなければいいんですよね!」

 

「ああ、それでいい。……こんなところでカツになにかあっては、フラウとハヤトに合わせる顔がない」

 

 バベジン研究所に立ち寄った時、カラバからの遣いとしてベルトーチカ・イルマという女性が訪ねてきて、カラバに参加したハヤトとの合流が提案されていた。

 この機械獣軍団との不意の戦闘の後で、ハヤトとカラバの一団と合流するのだが、その場にカツを生かして連れて行くのが、アムロが自身に課した使命であった。

 戦場になだれ込むハガネ艦隊とアーガマ隊の圧倒的暴力は、それまで着実に機械獣軍団を削っていたゼクス、ヒイロ、エクセレンらの目から見ても驚嘆に値する。

 

「ゼクス、アレがトレーズ閣下の仰っていた……」

 

 本来はOZの次期主力MSトーラス用のビームカノンを持たせたエアリーズを駆るノインが、オリジナルトールギス顔負けの速度で突っ込み、直角に近い殺人機動で暴れ回るゼファートールギスを見て、ゼクスに思わず声を掛けた。

 

「ああ、一年戦争時から実用化されていた無人機か。モビルドールの全てがあの基準に達するとは思いたくないが……」

 

 OZの人員の大半がトレーズについた事実に焦ったデルマイユ公がお抱え技師ツバロフらに開発させているモビルドールは、多種多様な侵略者との戦いに対する人員の確保につながると一部支持を受けているが、その真の目論見がロームフェラ財団による地球掌握であるのは容易に想像がつく。

 いずれ地球人類にも牙を剥くだろうモビルドールが全てゼファークラスであったなら、と考えればゼクスをして背筋に寒気を覚える。そして、それはゼファーの戦闘を目撃するのが二度目となるデュオにしても同じ気持ちであった。

 

「あ~あ、やっぱりアレは敵にしない方が絶対に賢いよなあ。敵になるような真似をしないでくれよな。さて、あっちの御同輩らしいのはどう考えているのかね?」

 

 背後から突進してきたトロスD7を左ステップで避け、置くようにかざしたビームサイズがトロスD7の人面から斬り込み、尻までを鮮やかに真っ二つに斬り裂く。

 デュオはマシンキャノンでこちらににじり寄るダブラスM2を牽制しながら、バスターライフルを撃つタイミングを見計らっているウイングガンダムを一瞥した。

 

「スペースノア級弐番艦ハガネ、ゼファートールギス、フェブルウスを確認。アーガマ隊、エゥーゴに新型ガンダム……。ミッションプランNE2からFA4へ修正」

 

 ヒイロは事前の情報にはなかったRFガンタンクとGPνのデータ収集をしながら、この戦闘後の行動について思案していた。それでもウイングガンダムの操縦には一部の乱れもなく、この少年が尋常ではない精神力と技量の持ち主である事を証明している。

 ハガネ艦隊の参入により、機械獣軍団は熱した鉄板に押し付けたバターのように駆逐されていたが、あしゅら男爵はまた新しい冷や汗を流しながらも諦めてはいなかった。

 

「絶望するには、まだ早いのだ!」

 

 そう意気込むあしゅら男爵が乗るグールの至近を、ハガネ艦隊の放ったメガ粒子砲の束が掠めて大きく揺らす。あしゅら男爵は倒れ込まないように踏ん張りながら、この時の為に伏せていた機械獣へと命令を出した。

 

「飛べ、そして落ちるのだ、機械獣達よ!」

 

 それは地元の連邦軍を相手に戦端が開かれても温存し続けた飛行型機械獣達だった。高高度で待機していた希少な飛行型機械獣達は、一斉に眼下に捉えたハガネを目指して急降下して行く。

 

「オウカ姉様、直上から急速に接近する熱源反応、数は二十三!」

 

 いち早く上空から接近する脅威に気付いたラトゥーニが小隊長のオウカへ警告を発し、グランド・スター小隊は迅速に降下中の機械獣の迎撃に移る。

 

「ハガネにカミカゼでもするつもり? ゼオラ、ラトゥーニは私と共に降下中の敵機の撃墜を。アラド、貴方はやりやすいように戦いなさい。シュメシ、ヘマー、貴方達も上空の敵の迎撃を!」

 

「うん、わかったよ、オウカお姉ちゃん。シュメシ!」

 

「うん、SPIGOT展開!」

 

 シュメシの操縦と意志に応え、フェブルウスの背中にマウントされていた四つのリングが解放され、フェブルウスの周囲を自在に飛び回り始める。

 このSPIGOTは巨大なビームチャクラム、あるいはビーム増幅のデバイスとして利用できる。本来なら『揺れる天秤』のスフィアを搭載したブラスタというロボットの随伴装備である。

 

「おう! 当たって砕けてくるぜ!」

 

 合点承知、とアラドはバルゴラの左手にヘパイストスラボ特製のMS用武器ブーストハンマーを握り、意気揚々と降下してくる機械獣へと突っ込んでゆく。

 

「砕けてどうするのよ! 砕くのは敵だけにしなさい!」

 

 あまりに不穏な発言をするアラドをゼオラが叱り飛ばすが、きっちりと照準を付けて機械獣に向けてトリガーを引いており、さりげなくアラドを支援する動きを取っているのは流石のコンビネーションだ。

 

「サンキューな、ゼオラ!」

 

 ハガネとアイアイエー、ポダルゲー、それにアーガマとRFガンタンク、カツのリック・ディアスも頭上へと向けて高密度の火線を張り巡らす。

 ブリッジを遮蔽し、艦内の戦闘ブリッジへと移行したハガネの中で、ヘイデスは敵の意図が読み切れずに眉を寄せていた。

 

(ふうむ、あらかじめ空を飛べる機械獣を伏せていたと。ウイング勢やアルトとヴァイスが参戦したタイミングで投入してもおかしくない、というか予め伏せていたのだから、狙いはハガネか僕か?

 今更あの数の機械獣を投入してどうにか出来る戦況か? 指揮官があしゅら男爵かブロッケン伯爵かは分からないが、それが分からないような相手でもないはずだ。ハガネを沈めるのが目的ではないのかも?)

 

 ヘイデスが思考する間にも張り巡らされる対空射撃の豪雨を浴びて、機械獣達は次から次へと撃墜されてゆく。その中には漫画で戦闘機に撃墜された機械獣も居た。

 ヘイデスの疑念の通り、この機械獣達はハガネの撃沈を目的としたものではない。猛烈な対空射撃によって撃破された機械獣達は、爆散した残骸に紛れて一抱えほどの金属の箱をばらまいていた。

 爆発に飲まれて多くの箱が吹き飛んだが、いくつかの箱はそのままハガネへと目掛けて飛散し、それは途中で内包していた物体を開放する。

 それに気付いたのはレイ・ストレイターレットとレイ・ピストルを連射していたオウカだ。

 

「あれは、ハガネ、こちらスター1。機械獣は内部に兵員を抱えています。おそらく人造の兵士かなにか! 敵の目的はハガネの撃沈ではなく、制圧の可能性が高い!」

 

 オウカが視線の操作でズームした画像には、金色のツインテールと黒いマントを風になびかせて、ハガネへと着地しようとする人型の少女達――女性型アンドロイドのガミアQ達が映し出されている。

 オウカからの情報にレビルは素早く反応し、艦内の人員の退避と迎撃部隊の出撃を手配する。その一方でヘイデスはこの事態に記憶の一部を刺激され、あるイベントを思い出していた。

 

(OGでシャドウミラーがシロガネを制圧する時に使った手か!)

 

 何機か破壊されながらもぐんぐんとハガネに迫るガミアQに対し、ヘイデスは素早く行動に移った。いまや地球圏の要人となったヘイデスを狙う勢力が出てくるのは想定内であり、対策を講じていた。

 ヘイデスが素早く左手に巻いた時計型多機能デバイスを口元に寄せて、とあるコードを音声入力した時、彼の背後の空間が陽炎のように揺らめくのを、艦長席のレビルは目撃していた。

 

 ヘイデスが思い出したイベントのように、あしゅら男爵の取った策とは機械獣の腹の中に隠したガミアQによるハガネ内部の制圧並びにヘイデスの誘拐である。

 最悪の場合、ヘイデスの殺害も視野に入れた本作戦は、一時的にヘイデスの身柄を確保し、Dr.ヘル一派の操り人形となるように脳に細工を施した後、あえて救出させてから洗脳済みの彼を介してプルート財閥を意のままに置くという目的を据えて実行されている。

 

 ヘイデスを戦場におびき寄せる第一段階、そしてガミアQを敵艦に潜入させヘイデスを拉致ないしは殺害する第二段階へと到達したのだ!

 人間にしか見えないガミアQの一体がハガネの左舷単分子ブレードウイングに着地し、膝立ちの姿勢から顔を上げたその瞬間、飛来したプラズマの鎌が胸から上を縦に斬り裂いて機能を停止させる。

 

 他のガミアQ達がハガネに着地する中、戻ってきたプラズマサイズを左手に再接続したソレは与えられた命令を達成すべく、バイザーの奥のツインアイを光らせる。

 それは全高約三~四メートルにダウンサイジングされたゲシュペンストの改造機、ゲシュペンスト・ファントムだ。

 

 OGシリーズと関係のある無限のフロンティアシリーズを出自とするこの機体が、ヘイデスの影の護衛の一つであった。例によってアイディアはヘイデスが出し、実用にこぎつけたのは所長以下ヘパイストスラボの面々である。

 このファントムと同様の機体とプルート財閥傘下のアテナセキュリティガードの社員達が、財閥の要人達を影に日向に護衛している。

 

「!」

 

 ファントムはヘイデスから与えられた命令に従い、ハガネを目指して落下してくるガミアQを殲滅するべく動く。通常のMSの五分の一程度のサイズながらビーム兵器を内蔵し単独飛行すら可能と、なにげにとんでもない技術の塊である。

 一方でガミアQ達もハガネに侵入する最後の壁としてファントムを認識し、人体を骨ごとスライスする金属線の束である金髪をざわざわと動かし、戦闘態勢を整える。

 レビルはハガネの至近距離や甲板で戦闘を始めた人造物達の戦いをモニターの一つに映しながら、ヘイデスの背後へと目をやる。何も映らないそこに光学迷彩で姿を隠したファントムが潜んでいたのだ。

 

「要人警護用とはいえ、あの大きさであそこまで戦えるロボットをつくるとは。私も話には聞いていたが、ラボの技術力には脱帽だよ。総帥、まだほかにも護衛を残しているのかね?」

 

「三機程ね。無事にハガネに着地できそうな敵のアンドロイドは少ないみたいですし、ファントムで手が回らないようだったら、他の護衛も動かします。

 しかし、これで相手の意図が読めましたね。グールも機械獣もすべてが囮。本命はあのアンドロイドを艦内に潜入させての制圧か、あるいは乗員の殺戮……」

 

「加えて総帥の身柄確保だろう。プルート財閥の総帥であるあなたの身柄を押さえられれば、連中の悪巧みには大いに役立つ。人気者はつらいな」

 

「嬉しくない人気です。僕に限らずスーパーロボットのパイロット達にも同じことが言えますけどね」

 

 備えあれば憂いなしだな、とヘイデスが嘆息する一方で、ガミアQ達によるハガネ制圧が阻まれたのを悟ったあしゅら男爵は迅速に撤退を決めた。

 お膳立てしたガミアQによるハガネ制圧に固執せず、戦力の損耗を最小限に抑える選択肢を即座に選べたのは、悲しいかな、これまで各地で味わってきた敗北の積み重ねの影響といえる。

 残る機械獣ともう一隻のグールを殿に、あしゅら男爵のグールが撤退する動きを見せたのを、キョウスケとエクセレンは見逃さなかった。

 

「ここまでやっておいて逃げられると思うか!」

 

 立ちはだかる機械獣を両肩のスクエア・クレイモアの残弾全てをばらまいて穴だらけにし、回頭中のグールへと照準を合わせて光子力エンジンの出力を最大に引き上げる。この世界のアルトアイゼンに搭載された最強の射撃兵装――それは!

 

「逃がさん、光子力ビィイーーーム!!」

 

 まるで小さな太陽が生じたように辺り一帯を照らすほどの強烈な光の奔流が、アルトアイゼンのカメラアイから放たれて、あしゅら男爵の乗るグールを目掛けて一直線に走る。この動きにエクセレンもまた同調していた。

 オクスタンランチャーの砲口をグールへピタリと固定し、その砲身が左右に開いて解放され、光子力エンジンの生み出す膨大なエネルギーが巨大な球形へと圧縮・形成されてゆく。

 

「オクスタンランチャー、ハイパーグレネードモードのお披露目ね!」

 

 それは『マクロスF』に出てくるVF-27ルシファーのビームガンポッドの速射モードと、対艦用ハイパーグレネードモードの機構をオクスタンランチャーに組み込んだ仕様だった。

 このままではあまりに火力が低いとオクスタンランチャーに組み込まれた機構は、その名の通り戦艦でさえ一撃で沈める大火力をヴァイスリッターに付与することに成功している。

 

「いわゆる溜め撃ちよ! 遠慮せずに持ってっちゃって!」

 

 十メートル近い巨大なエネルギー砲弾と化した光子力が放たれ、進路上に存在した飛行型機械獣を消し飛ばしながらグールへと迫る。

 髪の毛一本残らないような大火力の殺到に、さしものあしゅら男爵も死を覚悟した時、彼/彼女を救ったのは、残るグールであった。

 すでにトールギスやゼファートールギス、RFガンタンクからの攻撃を受けて大破していたグールは、指揮官を生かして帰すべく盾になったのである。

 

「ありゃりゃ、落としたい方のグールを沈められなかったわねえ」

 

 光子力ビームに貫かれ、ハイパーグレネードの直撃を受けた手負いのグールはそのまま内部の動力や爆弾が誘爆し、空中で巨大な爆発の花を咲かせた。

 

「Dr.ヘルの戦力を削れたのは確かだが、指揮官を仕留められなかったのは痛いな」

 

 ぐんぐんと遠ざかり、こちらの射程外へ逃げたグールを尻目に、キョウスケは残る機械獣を掃討するべく意識を切り替える。現状に合わせて己の最善の行動を選択する、兵士としてキョウスケの優れた資質と言える。

 そして残ったわずかな機械獣の掃討などあっという間に片付き、破壊された数棟の住居の撤去や荒れ果てた海岸線の掃除など、後片付けの方がよほど大変なほどであった。

 

 素早くプルート財閥経由で住人や地元連邦軍への支援物資や重機の手配を済ませたヘイデスは沖合に停泊したハガネの艦橋で、ゼクスからの挨拶を受けていた。

 なおこの間にウイングガンダムはバードモードに変形するや、戦場から離脱して行方知れずとなり、ガンダムデスサイズもハイパージャマーを用いたステルスで姿を消している。

 

『ご挨拶が遅れ、申し訳ありません。機上から失礼いたします、OZのゼクス・マーキス特佐であります。ヘイデス・プルート総帥』

 

「あのライトニング・カウントに憶えていただけているとは、光栄です。お送りしたトールギスを乗りこなしてくださっているようで、大切に保管していた甲斐がありました」

 

『トールギスの件はこちらからの突然の申し出にもかかわらず、快く応じてくださったことには感謝しかありません。お陰で侵略者を相手に互角以上に戦える機体と巡り合えました』

 

 この場合、ゼクスの言う侵略者にはコロニーが送り込んだ五機のガンダムも含まれているのかもしれない。

 

「良いパイロットには良い機体に乗ってもらわねば。トールギスはじゃじゃ馬ですから、プロメテウスプロジェクトのメンバーでも乗りこなすのには苦労したものです。送った後も少々心配していたのですが、それが杞憂だったとこの目で確かめられてよかったですよ」

 

『私情になりますが叶うならば自分もそのプロジェクトに関わりたかったものです。では、自分達はこれより基地へ帰投します。予定外の戦闘での消耗が激しかったので』

 

「ええ。ロームフェラ財団とは難しい関係ですが、今のようにOZの変革が進むならぜひとも轡を並べたいですね。トレーズ総帥にもよろしくお伝えください。トールギスのパーツも必要なものがあればいくらでも用意しましょう」

 

『数々の御厚意、感謝いたします。それでは』

 

 ゼクスが通信を切った直後、トールギスとエアリーズ、それにSFSに搭乗したリーオーが艦隊から離れてゆくのを確認してから、ヘイデスは待たせていたキョウスケ達へと回線をつなぎ直す。

 アルトアイゼンとヴァイスリッターは、現在、ハガネのカタパルト上で待機していた。

 

「どうもお待たせしました。ヘイデス・プルートです、キョウスケ・ナンブ中尉、エクセレン・ブロウニング中尉」

 

『は、バベッジ・エジソン研究所に出向しておりますキョウスケ・ナンブ中尉であります』

 

『エクセレン・ブロウニング中尉であります』

 

 エクセレンが真面目な表情と声音を出しているのにヘイデスは猛烈な違和感を覚えたが、ヘイデスが普段の調子で対応していい相手かどうかを計っているのだろう。普段のノリの良さと言動に隠されているが、本質的にこの女性は聡明で観察眼が鋭い。

 

「お二人の我が社のSRG計画への協力の数々には、かねてから感謝していました。僕は軍人ではありませんし、どうぞ普段通りの態度をとってください。僕はこれからもっと助力を乞う立場なのですしね」

 

『了解しました。ではそのように』

 

 それでもキョウスケは畏まった物言いのままだが、エクセレンの方はそれなら遠慮はせずに、とさっそく言葉遣いが変わる。

 

『あら~話の分かるセレブって素敵よ。お隣のレビル元将軍にも驚いたけど、ヘイデス総帥の気さくさにも驚きね』

 

「あっはっは、エクセレン中尉はこれまで僕の周りや今の部隊には居なかったタイプですね。艦内が明るくなりそうでよいことです。ぜひムードメーカーをお願いしたい。

 あ、そう言えばバベッジ・エジソン研究所からハガネ艦隊への異動については、連絡を受けていましたかね?」

 

『本来ならバベジン研究所で合流する手筈だったのは承知しています。機械獣の襲来の救援要請を受けて救援に向かい、結果的にスケジュールが乱れた事は……』

 

「ああ、いや、謝罪は不要ですよ、キョウスケ中尉。人命優先が第一です。僕のモットーは『正義の味方のスポンサー』ですので、頻繁に軍人らしくない任務をお願いする機会も増えるかと思いますが、これからよろしくお願いします。ようこそ、ハガネ艦隊へ」

 

 にこやかに告げるヘイデスに、キョウスケは肩の力を抜いた様子で小さく笑い返した。

 

『歓迎を感謝します。それでこれからの行動について、簡単に聞かせてもらっても?』

 

「ええ、この後、ハヤト・コバヤシさんが艦長を務めるクラップ級と合流し、それから僕の会社の用事になりますが、リモネシア共和国に納品に向かいます。それから極東支部に向かって一区切りです」

 

<続>

 

■カツ・コバヤシが合流しました。

■キョウスケ・ナンブが合流しました。

■エクセレン・ブロウニングが合流しました。

 

■ゲシュペンスト・ファントムが開発されました。

■ガミアQの残骸を複数入手しました。

 

■黒の英知はパンドラボックスと名付けられました。

 

●換装武器

・ブーストハンマーが開発されました。

 

★リモネシア共和国が存在しています。

 

第十話クリア後 ヘイデスショップ

 

・リーオー

・トラゴス

・パイシーズ

・キャンサー

・エアリーズ

・スーパーソニックトランスポーター

・パワードジム

・ジム寒冷地仕様

・ジムコマンド地上用

・ジムⅢ

・ジェガン

・ヘビィ・フォーク級陸上戦艦

・デプ・ロック

・ドン・エスカルゴ

・フライマンタ

・ヒマラヤ級対潜空母

 




ガミアQが手に入ったので外見を変えてなにかしら運用できないかなと思うのです。
こんな感じで。そのままの容姿ではなくイメージです。
・所長似(戦場のヴァルキュリアのセルベリア・ブレス)
・シュメシ似(穏やかな目つきのFate/Apocryphaのジークくん)
・ヘマー似(穏やかな目つきの戦姫絶唱シンフォギアの雪音クリス)
・ガミアQそのまま
・ゼノサーガのKOS-MOSとT-elos(パンドラボックス経由のスパロボ世界→無限のフロンティア世界つながりで)

とか。まあ、全部作ればいいかな? 出番があるかは分からない。
中身はゼファーとかフェブルウスとかREONとかALICEを突っ込めばいいんじゃなかろうか、と思う今日この頃でした。


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第十八話 ガイゾックに与える慈悲はない(私情)

お休みが続いたのでちょっと早めに次話投稿。
本作はZシリーズともう一つ、別のスパロボをベースにしております。
あと、ジョニー・ライデンの帰還の影響を強く受けています。


「ひいひいひい、なんて頭の悪い機体なんだ、アルトアイゼン……」

 

 そう言いながら這う這うの体でシミュレーターから出てきたのは、アラドだ。

 キョウスケとエクセレンを正式に迎え入れ、カラバと合流する道すがら、グランド・スター小隊の四人が交流ついでアルトアイゼンとヴァイスリッターのシミュレーターテストを行っていた。

 敵と激突しかねない距離まで踏み込む圧倒的加速力に振り回されない反射神経と頑丈な肉体、光子力エンジンに物を言わせた馬鹿馬力にこれでもかと詰め込んだ武装の数々を適切な間合いで瞬時に使い分ける判断力……使いこなすには求められるものが多すぎる機体だ。

 

 そしてそれはアルトアイゼンよりはマシとはいえ、ヴァイスリッターにしても同じことがいえる。

 重力下とは信じられない機動力をフルに活かしたマニューバーを行うには、常人離れした操縦技術が必須な上に、戦闘を行うとなれば機動中でも正確に敵機のみを狙い撃ちできる目の良さと度胸も同時に求められる。

 アルトアイゼンとペアを組めば、高いシナジーを見込める機体ではあるが、操縦難度の極めて高い機体でもある。

 

「アルトアイゼンを実戦で使えそうなのはオウカ、訓練を積めばアラドも可か。思った以上の収穫だな」

 

 とアルトアイゼンの正規パイロットであるキョウスケが、呼吸を整えているアラドと、先にテストを済ませて平然としているオウカを見ながら、嬉しそうに口角を少し吊り上げて言う。

 おそらく幼少期から『スクール』で訓練と肉体強化を受けたグランド・スター小隊の面々でも、アルトアイゼンを乗りこなせる可能性があるのはこの二人だけであった。

 

「ヴァイスちゃんの方はオウカちゃん、ゼオラちゃん、ラトゥーニちゃんの三人ね。うかうかしていたらリストラされちゃいそうだわ。

 後はアムロ大尉やクワトロ大尉、カミーユ君なんかも見込みありそうだけれど、三人にはガンダムとスポンサー事情があるものね」

 

 バベジン研究所出向組として専用に用意されたきわどい軍服に身を包んだエクセレンは、目の前の見どころのある若者達に柔和な笑みを向けている。

 それにオウカが答えた。アルトアイゼンとヴァイスリッター双方の操縦に最も適性を見せたのは、流石は元スクールナンバーワンといったところか。

 

「ありがとうございます。キョウスケ中尉、エクセレン中尉、私達には総帥から任されたバルゴラがありますが、いつ、なにが起きるか分からない情勢です。私達に出来る事は全てしておきたいという私達の我儘を受け入れてくださり、改めて感謝いたします」

 

「構わん。なにが起きるか分からないというのは、まさにその通りだ。逆に俺達がバルゴラに乗る可能性もある。不測の事態に関しては、ちょうど先程の機械獣達との戦いで思い知らされたばかりだしな」

 

「まさか全裸マントのアンドロイドで艦を制圧しようなんて、無茶をやるわよねえ。海兵隊とかなら、直接敵艦に乗り込むとかそういうのもあるんでしょうけど、それにしてもどういうセンスなのかしらね、あのファッション」

 

「首と胴体が泣き別れになっているようなのと、体が縦半分で性別の異なるようなのが幹部の連中だ。世間からズレているのは確かだろう」

 

「ま、このご時世に世界征服をしようなんて目論む人達だしね。オウカちゃん達若い世代の可能性にお姉さんは時代の流れを感じているところだけど、ゼファーちゃんも流石ね。一年戦争から今日まで戦い続けてきた歴戦のツワモノって感じ」

 

 エクセレンらの居るシミュレータールームには、額(?)にZの一文字が刻印されたゼファーハロを抱えるエリシアとカインズ博士もまた同席していた。というのも人体を持たない為に無茶な機動の反動を無視できるゼファーでのテストも行われたからである。

 

『ハロ、ハロ!』

 

「ソロモンで大破した時には機体のガンダムだけではなく、ゼファーの損傷もひどくてもうダメかと思いましたけれど、カインズ博士とプルート財閥の皆さんの尽力で何とか持ち直しました。

 それからプロメテウスプロジェクトにSRG計画、ゼファーレスキューシステムの構築と、ゼファーも多くの経験を積みましたからね。確かにツワモノです」

 

 抱えたゼファーハロを撫でるエリシアは、我が子か年の離れた弟妹の成長を喜ぶ身内のようにも見える。

 プルート財閥の病院船に救われて以来、プルート財閥とは長い付き合いになったカインズ博士も自身の手掛けたゼファーの予測を超えた成長には、多くの感慨を抱いていた。

 

「もうずいぶんと前から私達のバックアップは必要なくなっているような気もするが、こうも学習し成長する姿を見ていると、ついついもう少し、もう少しと欲が出てきてしまってね。こうしてハガネにも乗艦させてもらっている」

 

 機体に自我が宿る、特にAIを搭載した機体にはプログラムを超えたものが芽生える可能性をよく知るヘイデスにとっては、ゼファーのバックアップの為にとエリシアとカインズが同行してくれるのには諸手を挙げて歓迎している。

 ヘイデスはスパロボのZシリーズの要素を見かけるこの世界で、【真化融合】の観点から原作のソロモン戦ですでに自我に近いものを宿していた描写のあるゼファーの存在を重要視している。

 そうでなくとも自我に目覚めたロボというのは、一種のロマンであるし。

 

「二人ともゼファーの成長が嬉しそう……」

 

 ふとそう口にしたのはラトゥーニだ。エリシアとカインズの様子は、スクールで生徒達の『性能』が向上するのを喜ぶ科学者達とはまるで別物で、この二人とスクールの人達はどうしてこうも違うのかと不思議なくらいだった。

 ラトゥーニが思わずといった調子で零した呟きに、エリシアは嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「ええ。いつかゼファーが戦いの軛から解放された時、きっとこの子はたくさんの人達の助けとなってくれる。そう信じられるから」

 

『ハロ!』

 

 エリシアの腕の中で丸い蓋のような耳のようなパーツをパタパタ動かすゼファーハロが、エリシアの言葉にそうだそうだ、と賛成しているようでなんとも微笑ましい。

 

「ふふ、ゼファーもエリシアさんに同意しているみたいね」

 

 ゼオラが口にしたその言葉を否定する者は、この場には誰も居なかった。

 

* 北米ルート第十一話「リモネシアクライシス」

 

 南洋にぽつんと存在するリモネシア共和国。マクロス世界のマヤン島と位置を同じくし、地球連邦政府加盟国の一つであるこの国は、風光明媚な土地と漁業によって成り立つ典型的な小国だ。

 一年戦争時にコロニー落としが成功していたら、今頃はその余波だけで滅んでいただろう。侵略者達からも戦略的な価値が低い事と極東に拠点を置くスーパーロボット達との因縁を優先している為、まるっきり無視されていて幸いにして被害もない。

 今の世界情勢に於いて数少ない平和を享受できている国家だ。

 

 今も潮風が吹き、波の打ち寄せる海岸線を学校の教師が幼い生徒達を引率しながら歩いている。

 情勢が情勢である為、他国からの観光客はその数を減らしているが、漁業とプルート財閥からの多大な支援によって経済は支えられ、幸いにして失業者が街に溢れているようなことはない。

 

「せんせー、なんだか海の方がへんー」

 

 と引率している生徒の一人が海を指さして言うものだから、癖のあるセミロングの銀髪の教師はつられてそちらを見た。今日も青い空の下に広がる美しいリモネシアの海のはるか遠方が不意に盛り上がり、その下から金属製の怪物達が姿を見せたのだ。

 無数の水飛沫を散らして姿を見せたそいつらがリモネシアを目指して進み始めるのを見て、教師は思わず発しそうになった悲鳴を、生徒達を動揺させないようにと必死に押し殺した。

 

「ひっ! ……み、みんな、先生の後についてきて、急いで、でも慌てないでここから離れるのよ。あれはとてもよくないものだから!」

 

 平和を享受するリモネシアだが、一年戦争の教訓から島内各地に避難用のシェルターが複数建設されており、シェルター内部の循環システムと生活物資が備蓄されている。

 複数のMSが暴れても大丈夫な堅牢さが売りのそこを目指して、教師――シオニー・レジスは子供達を逃がそうと急いだ。

 警戒網を潜り抜けて姿を見せた怪物達に驚き、恐怖したのはシオニーだけではない。島民達はついに自分達にも伸びてきた侵略者の魔の手に恐怖し、パニックになる寸前であった。

 

「ほほほ、地球人共め、慌てておるわい。ほ~ほっほっほっほ、もっとみっともなく慌てふためいて逃げまどえ。あー、弱い者いじめは楽しいのう、楽しいのう!」

 

 海中に潜伏中のガイゾック総司令官キラー=ザ=ブッチャーが、逃げまどうリモネシア国民をモニター越しに眺めて、その凶悪な顔に愉悦の笑みを浮かべていた。

 地球に来てからというものブッチャーは不機嫌が続いていた。

 地球に降下する際にさんざん追い掛け回され、地球に降りた後もかつてガイゾックに滅ぼされたとかいうビアル星の生き残りが現れた上、現地の地球軍と結託して邪魔をしてきてメカ・ブーストを何機も破壊されている。

 加えて人類以外の地球種族や異星人勢力らの存在も、地球征服を狙う彼らとは異なり、地球人類を皆殺しにして地球も破壊するのが目的のブッチャーにとっては目障りこの上ない。

 

「それにしてもキャンベル星人にボアザン星人といったかのう、あの青白いガルーダとか言うのとハイネルとか言うの。地球の連中を皆殺しにしたら次は奴らかのう。

 ほほほ、目障りこの上ないが自ら次の獲物に志願してくるとは、殊勝な奴らよ。地球の次は奴らの母星をじ~っくり、た~っぷり時間をかけて滅ぼしてやろう。ほほほほ!」

 

 この世界に於いて、ガイゾックの危険性は星間国家であるボアザンとキャンベルには知られており、ガイゾックが戦場に表れた場合にのみ、普段は争い合うボアザンとキャンベルは一時的に戦闘を停止してガイゾックに攻撃を仕掛けている状況だ。

 副官らが余計な口出しをしないようにと黙っている間もブッチャーの愚痴やらなんやらは続いていたが、いよいよメカ・ブーストの部隊がリモネシアの海岸線に接近したのを見ると愚痴を止めて、観戦モードに入る。

 贔屓のスポーツチームの活躍を今か今かと待ちわびるファンのようで、それが人々の殺戮と都市の破壊への期待であるのが、この男の残虐さと反吐の出る嗜好の表れであった。

 

「ん~~? ほっほっほ、よしよし、まずはあそこのガキ共を連れておる虐め甲斐のありそうな女を殺してやろう。

 いや待て、先にあのガキ共を一人一人プチプチ潰して、自分の守ろうとした者を目の前で全て殺してからじゃな。その方がイイ顔をするぞ。ほほ、ほほほほほ!」

 

 バンドックのブリッジにブッチャーの高笑いが響き、指示を受けた一体のドミラが海中を進んで、必死に島内部へと向かって走るシオニーらを狙って迫る。

 迫りくる巨体の威圧感と恐怖に子供らが泣きながら走り、一番後ろを進むシオニーも目尻に涙を浮かべながら走っている。

 まだ距離はあったが、ブッチャーがシオニーらを怖がらせようとわざとドミラに鎌付きの触手を振り上げて威嚇させれば、生来、気の弱いシオニーの口からは抑えきれない悲鳴が零れる。

 

「ひっ!?」

 

「ほ~ほっほ! ほほ、ほほほ! こうでなくてはつまらん。地球人共はどう滅ぼしてやろうか。宇宙との往来を封鎖して隕石を落としてやろうか。その時にはきっちりタイムリミットを伝えて、自分達の無力さを噛み締めさせてから落としてやろう。

 それともメカ・ブーストを使って一人一人丁寧に掃除していってやろうか。山奥、海の底、地下深く、どこに逃げても見つけ出してやるぞい。どれもよいなあ、迷うなあ!」

 

 シオニーの涙目の表情を見てブッチャーがひと際愉快そうに笑った直後、シオニー達に接近していたドミラの頭部へ高出力のビームが突き刺さり、そのまま首から上を吹き飛ばした。

 たまたま周辺を哨戒中だったリモネシア所属のゲシュペンストMk-II一機が、背部のバーニアを全開にして、メカ・ブーストに接近しながら手に持ったニュートロンビームライフルを遮二無二連射する。

 

「ま、間に合った。後は増援が来るまで、なんとか!」

 

 リモネシア共和国軍のゲシュペンストMk-IIのコックピットの中で、気品はあるが気弱げな容姿の青年は、指先まで震える恐怖と戦いながら必死で機体を操縦していた。

 モニターに映し出される怪物達は恐ろしい事この上なく、こいつらと戦って自分が死んでしまうのも怖い。けれどだからといって守るべき国民を見殺しにする方が、ずっと怖い。

 

「わ、私だってリモネシアの軍人だ。戦う覚悟はある!」

 

 メカ・ブーストからお返しとばかりに放たれるミサイルや、いまも原理不明のよく分からない光線に晒されながら、ゲシュペンストMk-IIのパイロット――ユーサー・インサラウムは母国と国民を思う慈愛の気持ちを支えとして必死に愛機を操った。

 異なる世界の一つでは聖インサラウム王国の聖王にしてスフィアリアクターの一人だった青年は、この世界ではリモネシア共和国軍の一軍人であった。

 

 ユーサーの数代前までは王制が敷かれていたが、時代の趨勢にそぐわないと当時の国王が自ら玉座を降り、国民に惜しまれながら共和制に移行したのが今日のリモネシア共和国である。

 それ以来、インサラウム家はかつての王家として国民から敬慕され、リモネシア共和国きっての名家となっている。当代インサラウム家当主の嫡子であるユーサーがなぜ軍人になっているのかといえば、彼が自らの甘さを是正したいと軍隊の門を叩いたことによる。

 それでもまさか地球内外からの侵略者と戦う事になるなど、ユーサーもそれを許した周囲も予想外もいいところだったけれど。

 

「なんじゃつまらん横やりを入れおって。先にあの邪魔者を消してしまえ!」

 

 憤慨するブッチャーの命令に従い、ドミラやガビタンを筆頭に何種類ものメカ・ブーストがユーサーのゲシュペンストMk-IIを目掛けて襲い掛かってくる。

 自分を囮にして時間を稼ぐつもりのユーサーとしては願ったり叶ったりだが、それはそれとしてやはり恐ろしいものは恐ろしい。ましてや彼にとって命懸けの実戦はこれが初めてだったのだから。

 

 メカ・ブーストから降り注ぐミサイルの雨を、背部パイロンにセットしてあるスプリットミサイルで迎撃し、とにかく相手を近づかせないことを念頭にニュートロンビームライフルをエネルギーと排熱の許す限り連射する。

 間違ってもお互いの射線がリモネシア本島に向かないように位置取りに細心の注意を払いながらとなると、ユーサーの腕前と経験値では回避に神経を割くので手いっぱいで、メカ・ブースト達にはろくな命中弾が出ない。

 

「うわああ!?」

 

 ユーサーは思わず悲鳴を上げながらも、こちらに接近してきたドミラの振り回す触手を、ゲシュペンストMk-IIの左手で抜いたプラズマカッターでなんとか斬り結び、いなしてゆく。

 そうして何とか戦い続けているユーサーだが、徐々にメカ・ブーストの包囲網は狭まっており、ブッチャーはこのヒーロー気取りをどういたぶってやろうかと考えて、ニンマリと嫌な笑みを浮かべる始末。

 

「ほほほ、度胸はあっても腕前はそこそこ止まりじゃのう。地球に降りる前にしつこく追いかけてきた連中に比べれば未熟未熟。さあ、メカ・ブースト達よ、その耳の長いロボットを八つ裂きにするのだ! 今夜はウサギ鍋じゃ!」

 

「ブッチャー様、ブッチャー様」

 

 鼻息を荒くするブッチャーに武器士官であるギッザーが声を掛けた。緑色の軍服めいた服に軍帽を被り、左目には眼帯をし、顔中に傷跡がある。青白い肌と垂れた耳がギッザー他、バレター、ズブターというガイゾック士官の共通点だ。

 

「なんじゃい、いいところなんだぞ!」

 

「急速に接近する物体ありです。これは魚雷?」

 

「なぬう、こちらが観戦しとるところを狙うとは卑怯な! かわせ!」

 

 ヘイデスがこのセリフを聞いていたら、卑怯などとどの口がぬかす、と青筋を浮かべていっただろうか。

 

「ギョイ、ブッチャー! あ、あ~……当たります。避けられません」

 

「はあ? バカチン、言うのが遅いわ!」

 

 直後、海中で潜伏中の為にバリアーを張っていなかったバンドックに数十本の魚雷が命中し、その巨体を大きく揺るがした。

 

「ええい、緊急浮上、(のち)バリアーを展開! 残しといたメカ・ブーストも出撃!」

 

「ギョイ・ブッチャー!」

 

 海面を割って出現したバンドックから次々と新たなメカ・ブースト達が出撃してくる中、ユーサーは待望していた味方と合流するのに成功している。

 この時、ガイゾックはリモネシア本島のあちこちにメカ・ブーストを出撃させ、全方位から攻撃を仕掛けていて、共和国軍は四方に散っている状況に置かれていた。

 そんな中でユーサーと合流したのは、近代化改修を施したアクシオ・バーグラーで構成された傭兵部隊だ。

 

「若様ったらちょっと無茶をし過ぎなのではなくて?」

 

 からかうように、あるいは鼠をいたぶる猫のような声で問いかけたのは、傭兵団ファイヤバグ隊長マリリン・キャット。近代化改修の恩恵で飛行能力を得たアクシオ・バーグラーは、彼女の他にも何機か姿を見せている

 バンドックに魚雷攻撃を仕掛けたのは、何処から調達したのかウオディックに搭乗した彼女の部下達である。

 

「無茶だったのは確かだが、それでも私がしなければいけなかったから」

 

「もう、自分の手に余るような事をしていたら、命がいくつあっても足りなくってよ?」

 

 ユーサーはモニターに映る黒のゴシックロリータファッションのマリリンに、困ったような表情を返すばかり。確かに彼女の言う通りで、未熟な自分が全力を尽くしたとてガイゾックを退けられるわけもない。

 けれど、シオニーと子供達がシェルターに避難している画像をみて、ユーサーは限りない慈愛を伺わせる笑みを浮かべていた。

 

「ありがとう、マリリン殿。いくつあっても足りない命だが、今回は貴殿のお陰で拾えたようだ」

 

「もう、どうも若様を相手にすると調子がおかしくなるのよねえ。そうそう聞かれる前に答えておきますけれど、他の戦闘が発生している場所はジェラウド将軍やシュバルおじさま、マリマリお姉様、ウェイン君達が頑張っているから、大丈夫じゃないの?」

 

「そうか、それなら大丈夫だ」

 

 リモネシア共和国最強のパイロットであるジェラウドやシュバル、マリマリことマルグリット、それにウェイン、いずれもスパロボZシリーズに登場した聖インサラウム王国の重要人物で、この世界においてはリモネシア共和国を守る精鋭である。

 彼らの実力と人となりを知るユーサーは、もうそれだけで大丈夫だと信じ切ってしまうのだから、マリリンはつくづく人が好いというか甘ちゃんね、と呆れを隠さない。

 

「さあさ、時間稼ぎをもう少し続けましょう。連邦軍の増援と近くに来ていたプルート財閥のお金持ちさんが大急ぎで来てくださるそうよ」

 

「よし、なんとかなるような気がしてきたな」

 

 改めてライフルを構え直すユーサーのゲシュペンストMk-IIに合わせ、マリリンもまた乗機のアクシオ・バーグラーに持たせたビームランチャーを構え直す。

 一般的な地球連邦の艦船の二、三倍近い大きさのバンドックは武装の強力さもさることながら、その耐久性も高い。兵力であるメカ・ブーストもそれは同じで、これくらい強力な火器が無ければ通じづらいのが実に面倒だ。

 

(プルート財閥がどうしてかガイゾックには特別高い懸賞金をかけているのよねえ。居場所を突き止めたら五百万、あの変な形の要塞だか戦艦だかを沈めたら一千万。そんなに危険な相手なのかしら? いくら外宇宙からやってきたとはいえ単艦の勢力なのに……)

 

 もちろんガイゾックという勢力はそれでも強力であるし、バンドック内部に潜むコンピュータードールも神勝平に施されたビアル星由来の睡眠学習を瞬時に解くなど侮れない力を持っている。

 戦闘力の高さはもちろんだが、それ以上にヘイデスがガイゾックを危険視しているのは、恐竜帝国のように種の存亡をかけているわけでもなく、Dr.ヘルのように野心に燃えているわけでもなく、ブッチャーの趣味嗜好によって戦略的には全く不必要な悲劇を引き起こしては楽しむ点だ。

 

 特にスパロボに触れてから初めて知った『人間爆弾』の所業は、ヘイデスにとって拭い難いトラウマとなっている。だからこそ万が一の人間爆弾対策として、充実したコールドスリープ施設を整えもしたのだ。

 ただ傭兵界隈で最悪の評価を欲しいがままにしているマリリンの目には、バンドックは金塊の山と変わりがない。

 

「せっかくボーナスが向こうから出て来てくれたんだから、取り逃がす理由はないわよねえ?」

 

 マリリンは舌なめずりをしてバンドックを睨んだ。

 

 

 その頃、ハヤトのクラップ級と合流し、急行するハガネ艦隊とは別にリモネシア共和国襲撃の知らせを受けて急遽向かっているMSの一団があった。

 元々はティターンズ所属機である可変MA(あるいは可変MS)ギャプラン三機と他の機体を合わせた四機だ。

 MA形態のギャプランは元々リモネシアを目指していたわけではないが、ガイゾックの襲撃とハガネ艦隊がリモネシアに向かっているのに合わせて彼らも進路を変更している。

 三機のギャプランの内、小隊長を務めるヤザン・ゲーブルがティターンズから引っ張ってきた部下のラムサスとダンケルに檄を飛ばす。

 

「ラムサス、ダンケル、お前達のギャプランはリミッターを掛けた一般兵仕様だ。乗りこなして見せろよ!」

 

「はっ、お任せください。ティターンズから引っ張っていただいた恩に報いて見せますよ!」

 

「隊長の足手まといにはなりません」

 

「よぉし、その意気だ。ところで姫、ハガネ艦隊との合流前にガイゾックと一戦交えますが、よろしいか?」

 

 ヤザンの問いかけは、彼のギャプランをSFS代わりにしているヘビーガンダムのパイロットに向けたものだ。連邦製サイコミュを組み込んだこのガンダムのパイロットは、見た目は十代前半の少女である。

 名前はイングリッド0。元々はジオン公国の有名な“キマイラ”と呼ばれる部隊に所属していた強化人間だ。

 一年戦争終結後の混乱の中、イングリッドは終戦間際にコールドスリープし、そのまま地球連邦軍に接収されて現在はゴップの養女とされている。

 

「はいはい、聞こえているわよ、おっちゃん。放っておくわけにもいかないでしょ。それにしても今の地球って本当にあんなのがうろついているのね。あたしが寝ている間に外の世界がとんでもないことになっているわね」

 

 早くジョニーに会いたいと、イングリッドはジオン共和国軍に籍を移したと聞くジョニー・ライデンを想い、リニアシートや全天周囲モニターを導入されたコックピットの中で一人溜息を吐いた。

 

「フフン、あれはまだ氷山の一角だ。人間を相手にするのとは勝手が違う。油断してうっかり落とされませんように」

 

「分かっているってば。養父(おやじ)殿もこき使ってくれるわね、まったく!」

 

 ヘビーガンダムの光学カメラはゲシュペンストMk-IIとアクシオ・バーグラーの部隊が、メカ・ブーストの大群を相手に一歩も引かずに勇戦している光景を捉えていた。

 ゲシュペンストMk-IIの動きはまあまあ程度だったが、そのほかのアクシオ・バーグラーの動きはキマイラに所属していたイングリッドをして驚嘆させるレベルだ。特に隊長機と思しい機体の動きはトップエースのソレである。

 

「あの動き、あっちにも強化人間がいる? だったらキマイラの強化人間の方が上だって、いいところ見せないとね」

 

「降ろすぞ、間違って海に落下するなよ!」

 

 いよいよ戦闘区域に突入するとあって、素の口調に戻るヤザンにイングリッドはそっちの方が合ってんじゃん、と思いながら答える。

 

「オッケー、おっちゃん達こそ落とされないでよ! 帰りの足がなくなるからさ!」

 

「ふん、小生意気な!」

 

 言葉とは裏腹に楽し気なヤザンは、ギャプランをくるりと回転させてイングリッドの乗るヘビーガンダムを落とした。

 イングリッドの乗るヘビーガンダムは同機の二号機をベースに、近代化改修を施したものだ。

 

 武装面では頭部にバルカン砲、背部右側にジェネレーター直結のビームキャノン一門、背部左側にビームサーベル一本、左腕部にビームシールド、そして右の前腕部を嵌め込むようにして装着する六銃身のビームガトリング砲と四連装ミサイルランチャーを一体化させたフレーム・ランチャー。

 マグネットコーティングの発展形である超電磁コーティングはもちろん、ミノフスキークラフトも搭載しているし、サイコミュは獣戦機に用いられている野獣回路を応用したいわばアナハイム、シロッコに続くSRG計画系のバイオセンサーがその正体だ。

 

「コールドスリープしてから初めての実戦よ。精々付き合ってちょうだい!」

 

 イングリッドは幼い顔立ちに好戦的な笑みを浮かべ、ヘビーガンダムを最大加速でメカ・ブーストの群れに突っ込ませた。

 

<続>

 

■ユーサー・インサラウムがスポット参戦しました。

■マリリン・キャットがスポット参戦しました。

■イングリッド0が参戦しました。

 

■シオニー・レジスは教師をしています。

 

■ファイヤバグがリモネシア共和国に雇われています。

■ガイゾックにプルート財閥から懸賞金が掛けられています。※単位は円ではないです。スパロボでいうと(ゴールド)

 

■バイオセンサーVer.SRGが開発されました。

 




ギャプランって結局可変MAか可変MSなのか資料によりけりなので、あのような表記となりました。
リモネシア共和国は本来ゲシュペンストMk-IIが配備されるような場所ではないのですが、プルート財閥の支援を受けて分不相応な装備を有しています。
本作のリモネシア共和国は、聖インサラウム王国→リモネシア共和国になったという歴史です。

ガミアQの外見案で所長やシュメシらがあがったのは、

・フェブルウスの外部端末にしよう

 ↓

・フェブルウスもヘイデスの身内なので家族に似た外見が良いだろう

という流れからの発想でした。

そろそろ共通ルートに戻ります。ちなみにユーラシアルートだと

・妖魔帝国が襲撃しているロシアで現地連邦軍イヴァン、アナスタシア・ニブタメンマ・ホソメンヴァ、カドックらのゾイドマンモス部隊に助力。ゾイドマンモスと条件を満たせば隠しユニットでエレファンダーが手に入る。

・妖魔帝国に襲撃を受け、ライディーン、ダイモスが救援。その後サイデリアル残党の襲撃を受けてアクセル、レモンがスポット参戦する。機体はゲシュペンスト・リーゼとゲシュペンストMk-II。

・日本に到着するもベガ星連合軍が襲来してグレンダイザーが本格参戦。

・共通ルートへ

ざっとこんな感じでした。

追記
」漏れを修正。


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第十九話 嬉しくないにも程があるスパロボあるある

 ほぼ新造といえるヘビーガンダムはイングリッドにフィックスしたサイコミュにより、イングリッドの肉体の延長線上であるかのように動いた。

 上空の敵はヤザンらに任せ、海面スレスレをホバー移動するヘビーガンダムは、こちらに向き直るドミラ数機へ右肩のビームキャノンとフレーム・ランチャーの照準をコンマ一秒以下でセットし放つ。

 

「うっわ、近くで見るとますます意味わかんないデザイン! 初めてザクを見た連邦の人もこんな感じだったのかしら?」

 

 イングリッドは放たれたメガ粒子を浴びてもんどりうつメカ・ブーストには目もくれず、反撃に放たれる光線や火炎放射を強化人間でなければ耐えられないような機動で回避してゆく。

 

「親父は良い機体を用意してくれた! 技術の進歩は早いですな!」

 

 着弾によって機体の周囲に立ち上る水柱を縫って、イングリッドは先に交戦していたゲシュペンストMk-IIとアクシオ・バーグラーを見やる余裕もあった。

 少数とはいえ援軍が来たことがユーサーの緊張をほぐし、張りつめた糸を切りそうになったが、そこは経験豊富なマリリンがフォローを入れて不運に見舞われないよう立ち回っている。

 それはギャプランで上空をひっかきまわしているヤザンの目にも明らかだった。

 

「フン、地球にもまだ腕の立つ奴が残っている。懐かしい機体だが、あそこまで改造された機体を使う連中……ファイヤバグか」

 

 メカ・ブーストのジドビラーが発射したミサイルを避け、反撃にバインダーに内蔵されたメガ粒子砲を食らわせてやり、ヤザンはラムサスとダンケルに命令した。

 

「奴ら、やはり頑丈だ。直撃させたからと言って油断するな! 鳥頭の奴は分離するのを忘れるなよ。宇宙で俺が戦った時のことを思い出せ」

 

「はっ! 隊長、分離する鳥頭のメカは落とせばスコアは二機分ですか?」

 

 ガビタンとすれ違いざま、ラムサスはギャプランをMSへと変形させ、無防備なガビタンの首と翼の付け根を狙って素早くビームサーベルで斬りつける。

 まるで生物のような悲鳴を上げるガビタンへ、編隊を組んでいたヤザンとダンケルがメガ粒子砲を浴びせかけた。

 改造が加えられたギャプランのメガ粒子砲は通常機を上回る出力だ。具体的に言うと既に八段階は改造が済んでいる。

 

「ラムサス、言うじゃないか! 分離する前でも後でも二機でカウントしてよかろう」

 

 戦場での“生意気”はそう嫌いではないヤザンは、ラムサスの提案を笑って受け入れて、爆散するガビタンを尻目にジドビラーやドミラへとメガ粒子砲の雨を降らしてゆく。

 海中のファイヤバグ隊員の操縦するウオディック達が飛行能力を持たないメカ・ブーストへ果敢に攻撃を仕掛けており、空と海とから浴びせ掛けられる攻撃にガイゾック側は浮足立った状態を立て直せないでいる。

 

「ぐむむむ、あれっぽっちの援軍で好き勝手やりおって~~。地球人のくせに生意気な!」

 

 バンドックのブリッジでブッチャーは一人憤慨しているが、同時にいくつもの星々を滅ぼしてきた経験から、地球人の戦力が侮れないのを改めて理解していた。

 ザンボット3やそのほかの特異なロボット達だけでなく量産されている兵器も文明レベルと比較して、異様な性能を誇っている。

 

(ガイゾックの神がこの星を危険視したのはこの為か?)

 

 ブッチャーが太い顎に手をやって思案する間にも状況は刻々と変化していた。ガイゾックの士官の一人であるバレターがレーダーを見ながら、ブッチャーに新たな報告を告げる。

 

「ブッチャー様、他の戦場のメカ・ブーストですが地球人の部隊に足止めされてしまい、島内部への侵入が果たせておりません。また敵空中母艦二隻がそれぞれ別の方角から現れ、発艦した機動兵器群と合わせて後背を突かれております」

 

「ぬぬぬ、通りでどこからも火の手が上がらんと思ったら。こんなちっぽけな島のくせにやけに兵力が充実しておるな。あの日本とかいう島国にも多くのロボット共がおったが、ここにもなんぞあるのか?」

 

「調べてみないことにはなんとも。あっ! レーダーに反応あり、巨大熱源が接近中です」

 

「ええい、また援軍か。なんだか面倒くさくなってきたのう。誰も殺せておらんし、つまらん」

 

「またそんなこと言って。……敵の援軍は地球に降下する前に交戦した例の艦の同型艦です。他にも二隻、戦艦がいます」

 

 これはアーガマと合流したハヤト・コバヤシが艦長を務めるクラップ級の事だ。 

 

「無力な島攻めのつもりで用意した戦力だからな。あの戦力を相手にまともにはやれんわい。よっしゃ、残りのメカ・ブーストを囮にして戦域から離脱! リモネシア? だったか? あの島はまた気分の乗った時に燃やすぞい」

 

「ギョイ・ブッチャー!」

 

 これまで魚雷を食らって海上に浮上したままだったバンドックが南西方向へと向きを変え、戦場を離脱する動きを見せ始める。

 それを見たイングリッドは立ちはだかるメカ・ブーストを斬り伏せて接近しようと試みたが、直後に彼女の強化された感覚に触れるモノに意識を奪われた。

 

「なに、あたしの意識に触れる? 感覚を刺激するのか。おっちゃん、なんかすごいのが来る!」

 

「なに? ……フフフ、ハハハハハ!」

 

「え、ちょ、なによ、急に笑い出して?」

 

「いやいや、これは失礼。なにあいつらがどう凄いのかは、俺の方がよく知っているさ。それにジオンのパイロットだったなら、無視できん連中だぞ。アムロ・レイにシャア・アズナブルが轡を並べてやってきたんだからな! ハハハハハ!」

 

「アムロ・レイ? ホワイトベースのガンダムか。それにシャア? シャア・アズナブル、赤い彗星がどうして連邦のパイロットと轡を並べる!?」

 

 つい最近、七年に渡るコールドスリープから目覚めたばかりのイングリッドにとっては、ジオン公国に悪名高きガンダムのパイロットが自軍のトップエースと陣営を同じくするなど、寝耳に水だろう。

 かくいうイングリッドも、キマイラ所属の強化人間が今では連邦軍制服組トップの養女という身分ではあるが。

 

 イングリッドがその存在を感じたように、急行するハガネから発進したアムロ、シャアことクワトロ、カミーユもまた戦場で戦う紅いヘビーガンダムのパイロットの存在を感知していた。

 加えてアムロとクワトロはプロメテウスプロジェクトで慣れ親しんだヤザンの存在も感じ取り、変わらぬ野獣の如き生命力と強烈な意志の強さに思わず笑みを零していた。

 

「この感じ、人の手から成るものを感じる。連邦の強化人間か?」

 

 所感を口にしたのはアムロである。これまで彼が接してきたのは天然のニュータイプのみであったから、イングリッドのような強化人間は初めてだ。

 そのイングリッドも一年戦争時のジオン系強化人間であるから、現在のティターンズに所属する強化人間とはまたアプローチが異なるのを、彼らはまだ知らない。

 

「嫌な感じではないな。こちらを圧迫するような悪意もない。ゴップ議長がヤザンに寄越した手駒か」

 

 ド・ダイ改に百式を乗せたクワトロもまたアクシズ時代に在籍していた頃、研究されていたニュータイプ被験者を思い出していたが、薬物や暗示による意識の操作といったものをイングリッドから感じることはなかった。

 そして二人以上に“繊細”であるカミーユも、幸いにしてイングリッドが情緒不安定なティターンズ系強化人間とは正反対の安定かつ健全な精神の持ち主であったことから、彼女の意識に触れても不快感を覚えてはいなかった。

 

「なんだ、この感じ。アムロさんやクワトロ大尉とは違うけど、不愉快ではない? 女の子? 女の子と口にしたのか俺は?」

 

 旧友との再会、未知なる存在との接触への警戒や困惑を三人が覚える中、のほほんと無邪気な感想を抱いたのがシュメシとヘマー、フェブルウスだった。

 サイデリアル残党に次いで強い嫌悪感と拒否感を抱くガイゾック相手とあって、ハガネの直掩を離れて突き進むフェブルウスの中で、双子は味方の識別信号を発するヤザンのギャプランをモニターの一つに映している。

 

「わあ、ヤザンおじちゃんだ。今日も元気でよかったね、シュメシ、フェブルウス」

 

「うん、あの子、ギャプランと一緒に楽しそうに戦っているよ、ヘマー。でも僕はガイゾックのこと嫌いで気になって仕方ないや。知らない筈なのに知っているんだ。あの戦艦の奥に隠れているモノは、命あるものにとってよくないモノだって」

 

 それは多元世界で至高神ソルとして、彼らが幾度となく見たガイゾックの蛮行の記憶が朧気に残っているからこその嫌悪だ。

 目の前のガイゾックの非道ぶりは表向きの指揮官であるブッチャーの嗜好によるが、仮にブッチャーがいなくともガイゾックの惑星単位での虐殺行為は行われる。

 ブッチャーが居ない分、より効率的かつ合理的な方法でもって地球人を根絶やしにしようとするだろう。

 

 それが分かるから――いや、それを朧気ながらも憶えているから、双子とフェブルウスは義父たるヘイデスに負けず劣らずガイゾックを嫌悪している。

 双子の意見に同意してフェブルウスもまたぐんと加速し、背を向けつつあるバンドックをメインカメラを兼ねる双眸に映す。

 バンドックが魚雷で受けた被害は小さく、バリアーを展開しながら徐々に速度を上げている。このままでは修理の為に潜伏ししばらくは大人しくするだろうが、取り逃がしてしまう。

 

「行くよ!」

 

「うん!」

 

 双子とフェブルウスはメカ・ブーストを無視してバンドックの撃墜、これに標的を絞った。

 一方、ポダルゲーとアイアイエーをリモネシアの他の戦域の援軍に差し向けたハガネは、ゲシュペンストMk-II六機を直掩に残し、ガイゾックの巨大艦バンドックの姿をメインモニターに映していた。

 ハガネに匹敵する巨艦はすでにこの戦闘で得られる物はないと割り切り、逃げだす構えだ。ハガネの速度をもってしても振り切られる位置と速度だ。相手が惑星間あるいは恒星間航行を可能とする艦と考えれば、それも当然と言えば当然だ。

 オブザーバー席のヘイデスはこれまでに見せたことがない硬い表情を浮かべ、怨敵の如くバンドックを睨んでいる。まだ原作ないしスパロボにおける所業はほとんど行われていないが、だからといって容赦する気になる相手ではない。

 

「レビル艦長、艦首特装砲の使用を提案します」

 

 先の戦闘とは逆にヘイデスから提案されたその内容に、レビルだけでなくブリッジクルーにも緊張が走る。

 

「なぜかね? ガイゾックは撤退の構えを見せている。この場で追撃をしかけて更なる損害を与える利益は分かるが、特装砲の使用を提案する根拠は?」

 

「ガイゾックの唯一の拠点があの遮光器土偶モドキの戦艦だからです。Dr.ヘル、妖魔帝国、キャンベル、ボアザンの根拠地はいまだ捜索中、恐竜帝国は地下を移動する大型拠点と推測されています。

 そんな中で唯一拠点が判明し、かつ叩いてしまえばそれで壊滅させられる可能性が高いのが、あのガイゾックなのです。

 すでに損傷を受け、こちらに背を向けて逃げようとしているあの艦を落とす絶好の機会です。衝撃砲だけでは火力が足りません。ここは特装砲を使ってでも落とすべき場面だと判断します。……素人考えですが」

 

 バンドックひいてはブッチャーがここで逃げるという選択肢を取らず、徹底抗戦の構えを取るのであれば、特装砲は使わずとも時間をかけて倒せるだろうが、残念ながらブッチャーは逃げるつもりだ。

 ザンボット3に関する原作イベントを消化するならば、このままガイゾックを逃がすべきなのだろうが、ヘイデスにとってここは画面の向こう側ではない。本当の命と死が存在する世界だ。ならば倒せる時に倒す以外に選択肢があろうか。

 

 幸いと言うべきか、あるいはひどい言い草になるが、ザンボット3にはパイロットの意志に応じて明確に性能が向上する武器や、進化してさらに強力な機体へと変化するといった仕様は存在しない。

 パイロット達の精神的成長の与える影響が比較的少ない作品だ、と言い訳もできる。ある意味、バイオセンサーやサイコフレームで諸々のオカルト的現象を発生させる宇宙世紀系ガンダムの方がファンタジー&オカルトといえる。

 

「我々の知らないところで基地を作られている可能性もあるが、奴が地球に降下してからまだ日が浅い。総帥の言う可能性は高いな。

 各員傾聴! 本艦はこれより艦首特装砲を使用する。射線上の友軍各機に退避を通告せよ。発射シークエンスを開始!」

 

 レビルの発する命令に従い、一時は動揺していたブリッジクルー達も乗艦の最強最大兵器を安全かつ迅速に使用するべく、頭に叩き込んだ作業を行い始める。

 ハガネからの通告を受け取った艦隊艦載機は慌てて射線上から離れ、ユーサーとマリリンもまた詳細は不明ながら、初めて見る巨大艦がなにかをやらかすと察し、素直に通告に従う。

 猛禽類の獰猛さでバンドックに襲い掛かっていたフェブルウスも、これは危ないと慌てて離れた。

 

「エネルギー弁閉鎖。トリムールティドライヴ、エネルギー充填開始」

 

「セイフティーロック解除。ターゲットスコープ、オープン。距離測定、照準補正……」

 

 艦長席のレビルの手元に照準用の拳銃型モジュールが競りだし、目元に投影されたホロスコープ内にバンドックの姿が映し出される。

 艦首モジュールに搭載されたトリムールティドライヴは稼働開始からこれまでにない量のエネルギーを創出し、それを凶悪なる三本の牙とすべく鼓動を激しくする。

 

「熱核融合炉、光子力エンジン、ゲッター炉心、全機関エネルギー充填80……90……100……120%!」

 

「総員、対ショック、対閃光防御!」

 

「最終セイフティー、解除。艦長、いつでも発射できます!」

 

 不幸中の幸いとしてバンドックの逃走方向にリモネシア共和国の本島や領土となる小島はなく、万が一外れたとしても巻き込む相手はいない。

 オリジナルのハガネとは異なる三つある艦首の穴、その奥から膨大なメガ粒子、光子力、ゲッター線がまだかまだかと解き放たれる時を待ち、周囲に絶対の破壊を想起させる光を発している。

 アムロやクワトロ、カミーユにイングリッドはあまりに強大すぎるその破壊の力を敏感に感じ取り、畏怖に近い感情をハガネへと向けていた。せめてもの救いはその力が何かを倒してとはいえ、誰かを守る為に使われる力であることか。

 

「よろしい。艦首特装砲……ファイナルダイナミックキャノン、発射!!」

 

 いまだ! どれか一つだけでも戦艦一隻を跡形もなく消滅させられる極大のエネルギーが三つ、メガ粒子のピンク、光子力の黄金、ゲッター線の緑の三色で構成された奔流となり、バンドックへとまっすぐに向かってゆく。

 

「まさか、ソーラレイとでも言うのか!?」

 

 アムロはかつてア・バオア・クーで垣間見た光の奔流を思い出し、思わずそう叫んでいた。

センサーが自動で調整していなかったら、こちらの目が潰れるのではないかと危ぶむほどの光量だ。

 大気を撹拌し、海面を蒸発させ、射線上に居たメカ・ブーストをこの世から消滅させて、“ファイナルダイナミック”の名を冠する超ド級エネルギーがバンドックへと襲い掛かる!

 

「な、なんじゃああ!? おま、大気圏内で使っていい兵器か、それ!? バリアー出力最大、急速潜航!!」

 

「ぎょ、ギョイ、ブッチャー!」

 

 さしものブッチャーも驚愕する威力のファイナルダイナミックキャノンに、バンドックは垂直落下に近い角度で海面へと向かい、最大出力のバリアーが極大ビームの奔流に触れて激しいスパークを周囲へと散らす。

 

「あばばばばばばば、い、急げ!」

 

 このまま沈め、コンピュータードールの出番などないまま沈んでしまえ! そう願うヘイデスの視界から徐々にファイナルダイナミックキャノンの光が消えて行き、立ち上がった彼の視線の先には、右舷と言って良いのかどうか特徴的な艦体の右側を抉られ、右の脚を二本とも半分近く喪失したバンドックの姿が映る。

 

「照準がぶれたかっ」

 

 苦汁を滲ませるレビルの声に、ヘイデスはまだだと叫んだ。

 

「まだです。ダメージを与えたのは確かなんだ。バリアーも展開できていない! ありったけの火器でアイツを沈めてください!」

 

「ファイナルダイナミックキャノンの第二射は?」

 

 レビルの静かな問いにブリッジクルーの一人が首を横に振る。初めて実戦で使用した艦首特装砲は予想通りに大きな反動を受けていたのだ。

 

「トリムールティドライヴの出力が安定しません。通常の戦闘には支障ありませんが、特装砲の再度の使用はドックで本格的なメンテナンスをしてからでなければ不可能です!」

 

「機動兵器部隊に攻撃命令を通達、敵機動兵器はファイナルダイナミックキャノンに巻き込まれ、相当数を撃墜した。ガイゾック艦の撃沈を最優先とせよ!」

 

 想像を超えて強力なファイナルダイナミックキャノンは味方にも衝撃を齎していたが、半死半生状態のバンドックの姿を見れば、ここで決着とする絶好の機会であるのは誰の目にも明らかだ。

 レビルからの一喝に近い命令を受けた機動兵器部隊は、残るわずかなメカ・ブーストはほとんど無視してバンドックを目指す。

 

 バンドックが損傷個所を隔壁と何とか捻出した低出力のバリアーで覆い、ようやく海面に足を付けた時、既にフェブルウスはハマリエル・ザ・スターのコードと共に力を解放したガナリー・カーバーを構えていた。

 トリガーを預かるシュメシは必殺の意志を込めて、海面に半ばまで潜ったバンドックを睨む。しかし、その時、ハガネのブリッジクルーがセンサーの感知した反応に目を剥きながら仕事を果たす。

 

「戦闘空域上空に空間歪曲反応、重力震探知、複数の何かが出現します!」

 

「なんだと、このタイミングで?」

 

 咄嗟に見える筈もない頭上を見上げるレビルの横で、ヘイデスは苦み走った表情を浮かべていた。

 

(まるでガイゾックを逃がそうとするかのようなタイミング、なんだ、まさかもう同盟勢力がある? スパロボらしいといえばらしいが、ここはゲームじゃなくて現実なんだぞ、クソが!!)

 

 子供達には聞かせられない悪罵を心中で発するヘイデスの頭上で、次々と新たな敵が姿を露とする。

 

「ライブラリ照合、UI――デイモーン、ティアマート、更にアンノウン多種多数出現! 高エネルギー反応を検知、攻撃来ます!」

 

「上舷AAW(対空戦:Anti-Alr Warfare)オート撃ち方はじめ、VLSホーミングミサイル全管発射! 機動兵器部隊を呼び戻せ!」

 

「あれは!」

 

 まるでガイゾックを助けるかのように出現したサイデリアル残党の中には、包帯を巻きつけた人型の如きアンゲロイ、そして『六神合体ゴッドマーズ』の敵勢力ギシン帝国の戦闘機やエスパーロボ、それに『太陽の使者 鉄人28号』の敵勢力宇宙魔王軍の攻撃円盤やスペースロボ1号、2号が姿を見せている。

 

(サイデリアルの残党だけじゃない? ……いや、あいつらにはなにか共通点が、Zシリーズの参戦作品というだけじゃないなにかが。…………そうか、アレだ!

 第三次Zで終盤のカオス・コスモスに侵入したハーデス・ズール・宇宙魔王の連合! あの勢力の兵器が再利用されている!?)

 

 ヘイデスの予測は正鵠を射ていた。突如として姿を見せたサイデリアル残党はそのすべてがイドムによって操られるコピーであった。

 

(それならこいつらはサイデリアル残党と呼ぶべきじゃない。間違った真化を遂げた連中の怨念、バアルの残党か!)

 

 ある意味ではもっと性質の悪い敵の出現に、ヘイデスは眉根を顰めた。

 既存のUIとはまるでデザインラインの異なるアンノウンにヘイデス以外のメンバーは動揺を隠せずにいたが、あちらはこちらの呼びかけを一切無視して攻撃を仕掛けてきており、対話の余地がないのは明白。

 

「なんだ、こいつら、氷みたいに冷たい悪意、命の暖かさを憎んでいる!? やらせるかよ、フィン・ファンネル!」

 

 敵の正体を直感的に悟ったカミーユは、骨を蟻に噛まれているような悪寒を振り切ろうとGPνの背部ラックから三基のフィン・ファンネルを飛ばし、デイモーンやギシン星戦闘機にメガ粒子砲を浴びせかける。

 

「ちい、上を取られたか。一隻たりとも沈めさせるものか。アポリー、ロベルト、仕掛けるぞ!」

 

「はい、大尉」

 

「お供します!」

 

 ド・ダイ改に機体の推力も加え、クワトロの百式を筆頭にリック・ディアス二機が敵部隊の頭上を取るべく飛翔する。行きがけの駄賃とばかりにメガビームライフルや大口径レールガン、ビームランチャーを浴びせかけ、少しでも数を減らすべく次々とトリガーを引く。

 幸いだったのはバアルがリモネシアの島上空には展開していないことだ。

 他の区域でガイゾックと戦っていたリモネシア軍やストーク級二隻も直にこちらへ援軍を寄越すと考えれば、窮地と言う程ではないはずだ。

 

「うわ、おっちゃん、あれも敵なの?」

 

 ファイナルダイナミックキャノンを見て、MSだけでなく戦艦の進歩も凄いわ、と呆れるイングリッドだが、襲ってくるアンゲロイにフレーム・ランチャーのビーム弾を浴びせながら頭上のギャプランに通信を繋げた。

 

「撃ってきているということは、そういうことだ! 第一もう撃ち返しているだろう!」

 

「だってこいつら、あたしらの事、殺す気満々だよ?」

 

「ふん、だったら殺される覚悟もあるだろうよ。姫、ラムサス、ダンケル、ハガネ艦隊と連携して迎え撃つぞ。この乱戦だ。フォーメーションにはこだわらず、お互いのフォローだけ考えておけ」

 

「はい、大尉の尻は守って見せますよ」

 

「ふ、それなら俺は姫の頭にタンコブが出来ないようにやるさ」

 

「ふはははは、貴様ら言うじゃないか。口にしたからにはそうしてみせろよ!」

 

「男どもは好き勝手言うなあ」

 

 ヤザン達もまたすぐさま迎撃態勢を整える中、事態の推移について行くのも必死なユーサーは、あまりに過酷な初陣にあっという間に消耗していた。

 ユーサーをカバーするマリリンは歴戦の強者中の強者だったが、彼女にしても初見の敵が複数襲ってくる状況では限度がある。

 

「若様!」

 

「あ、しまっ」

 

 ユーサーのゲシュペンストMk-IIの正面から、赤いカブトムシめいたスペースロボ2号が突進を仕掛けていた。咄嗟にニュートロンビームライフルの銃口を向けるが、ひたすら撃ち続けていた銃身は焼き付いて、オーバーヒートを起こしていた。

 スプリットミサイルは残弾ゼロ、ならばと左手首のビームガンをセレクトした時には、赤い角がモニター一杯に広がっていた。

 

「SPIGOT!」

 

 瞬間、某光の巨人の八つ裂き光輪の如きSPIGOTが四方からスペースロボ2号へ襲い掛かり、見る間に八つ裂きにする。

 更にフェブルウスがライアット・ジャレンチを振り回しながら周囲のアンゲロイやエスパーロボの編隊の中へと突っ込んで、当たるを幸いとばかりにかつて御使いとバアルの使った兵器を破壊して行く。

 

「大丈夫ですか?」

 

 ユーサーにそう問いかけたのはヘマーである。可憐という概念が人間になったような美少女――ヘマーの顔が、ゲシュペンストMk-IIのコックピットのモニターに映し出された。

ヘマーが通信している間はシュメシとフェブルウスの自意識が操縦をカバーしている。

 

「ああ、すまない、助かったよ」

 

 ユーサーは戦場には似つかわしくない少女に虚を突かれたが、すぐに生来の優しさの滲む笑みを浮かべる。その笑みを向けられるのがどうしてか『申し訳なくて』、ヘマーはすぐに通信を切ろうとした。

 

「無事ならよかったです。まだ戦闘中ですから、これで失礼します」

 

 怪獣か恐竜めいたスペースロボ1号をバーレイ・サイズで十字に斬ってから、シュメシは元は同じ魂から分かたれたヘマーへとこう声を掛けた。

 

「ねえ、ヘマー、あのお兄さんのこと、僕達は知らないけれど知っているよね?」

 

「うん。あの人の事も私達は知っているのに知らない。知らないのに知っている。あの人だけじゃない。このリモネシアもインサラウムも、どうしてだろうね。分からないのに分かるの」

 

「うん。僕達はあの人達にとてもひどい事をしてしまったね。僕達の所為であの人達はとても辛くて苦しい思いをしたって、どうしてだろうね、分かるんだ」

 

 それは聖インサラウム王国が『尽きぬ水瓶』のスフィアを所有していた為に、多くの災難に見舞われ、また並行世界の同位置に存在したリモネシア共和国もまた壊滅的な被害を受けたのを、双子もフェブルウスもうっすらとだが憶えているからこその罪悪感だった。

 至高神ソルであった時に直接手を下したわけではなかったとはいえ、スフィアさえなければ、御使いさえいなければ、自分さえいなければと双子とフェブルウスは思わずにはいられない。

 

 そしてリモネシア軍とポタルゲー、アイアイエーが合流してまもなく、突如として出現したサイデリアル残党なのかバアル残党なのかよく分からない敵は駆逐され、リモネシアの脅威は去るのだった。

 

<続>

 

■サイデリアル残党orバアル残党? へいですはこんらんしている!

■ガイゾックを取り逃がしました。→ ☆“#$%*>!! byヘイデス

■聖インサラウム王国&リモネシア共和国の皆さん ← シュメシ&ヘマー&フェブルウス「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。本当にごめんなさい(´;ω;`)ウッ…」。

 

■ハガネ艦首特装砲「ファイナルダイナミックキャノン」が使用可能になりました。

 

■ヤザン、ラムサス、ダンケル、イングリッドが合流しました。

■ヤザン・ゲーブル Lv58。

■ギャプラン三機、ヘビーガンダムを入手しました。

 

ヘイデスショップ 北米ルート第十一話クリア後

 

・アクシオ

・アクシオ・ナイトバード

・アクシオ・ヘパイストスSP

・アクシオ・バーグラー

・ドラゴンフライ

・ファンファン

・ディッシュ

・ジム・トレーナー

・ガンタンクⅡ

・ガンキャノンⅡ

・ラムズゴック

・ゾック

・グラブロ

・ユーコン級攻撃潜水艦

・マッドアングラー級水中母艦




双子達は個人としてはユーサーや聖インサラウムのアークセイバーの人々を好いていますが、漠然と罪悪感と申し訳なさを抱いている為、直接対面するとなればよそよそしい態度になってしまいます。悲しいね。

追記
ハガネ・アーガマ・クラップと分かるように一部修正。

追記2
タイトルを修正。
AWW→AAWに修正と補記。


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第二十話 状況が悪化しているのか好転しているのか分からない

隠し機体やオリジナルロボットを考えるのは楽しいものです。やり過ぎないように気を付けないと。


 シェルターを揺らす振動が絶え、同じように避難して身を寄せ合っていた人々が恐る恐る見えない空を見上げるように顔を上げてゆく。

 その様子を、シオニーは子供達を抱きかかえながら見ていた。

 生物兵器や化学兵器に対する備えも十全に備えられたシェルターの一つに避難したシオニーらは、同じように避難してきた子供らの家族の一部と合流して戦禍が通り過ぎるのを待っていた。

 ぐずぐずとすすり泣く子供達を慰め、励まし、シオニーは自身も顔色を青くしながら教師としての責務をひたすらに全うしている。

 

「せん、先生、もう怖いのどこか行ったかな?」

 

「ええ、きっと、リモネシアの兵隊さん達がやっつけて追い払ってくれる。だからもう少しだけ我慢しましょう。怖いのがいなくなったら、お外に出られるからね」

 

「うん」

 

 生来の気の弱さや臆病さはこちらのシオニーもZシリーズの彼女と大差はあるまい。

 それでも懸命に子供らを励ますその姿は、経験や母国の辿った歴史の違いもあるが、今の彼女を見るに一国の大臣を務めるよりもこのように子供らの未来を育む教職の方が天職だったのだと思わせる。

 そんな子供達を慰め、元気づけるシオニーの姿を、シェルターの片隅に居た大男が静かな瞳で見ていた。鎧と評すべき鍛え抜き、鍛え終えた筋肉の鎧を纏い、獅子の鬣を彷彿とさせる紅い髪を持つ大男だ。

 

 常人離れした雰囲気の持ち主であるが、奇妙なことに彼の周囲に居る人々はその存在に気付いていないような振る舞いをしている。

 あるいはそれは大男の持つ特殊な能力か、技術によるものなのかもしれない。大男は不意にシェルターの天井を見上げ、ぽつりと呟いた。

 

「御使い共め。どこかの誰かに滅ぼされたかと思えば、下らん置き土産を残していたか」

 

 いつかどこかの世界では破界の王ガイオウそして次元将ガイオウとも呼ばれた男だが、ここにいる彼は違う。

 Zシリーズにおいて聖インサラウム王国に転移したZ-BLUEと遭遇して、考えを改めたガイオウもとい次元将ヴァイシュラバが、この場に居る彼であった。

 その後、彼のあずかり知らぬところでZ-BLUEに御使いが打倒された為に、様々な世界を渡り歩く旅人となったのだが、この世界に於いて御使いの残り香とでも言うべき存在を見つけ、再び闘争に身を投じんとしているのだった。

 

 

 リモネシア共和国上空にワープによって出現したバアル残党は、リモネシア軍とハガネ艦隊の不意を突いたが、気力の上がり切っていた彼らはガイゾックを逃してしまった鬱憤を晴らすかのように苛烈な反撃を加えて、多少の損傷と消費だけでこれを撃滅せしめた。

 ユーサーは海岸に愛機を着陸させ、ようやく張りつめていた神経を緩める事が出来た。ヘルメットを外し、びっしょりと頬を濡らす汗を乱暴にパイロットスーツの手の甲で拭う。

 

「あらあら、若様はもうお疲れかしらあ?」

 

 精も根も尽き果てた様子のユーサーに対し、一年戦争以前から百戦錬磨のマリリンは涼し気な顔だ。彼女から余裕の仮面を剥がすには、少なくともガイオウ級の強者やイレギュラーな事態を起こす必要がある。

 

「もうクタクタだよ。国土と国民を守る為と戦っている間は自分を奮い立たせられたけれど、戦いが終わってしまえばもうダメだ。情けないところをマリリン殿には見せてしまったな」

 

「女は自分にだけ弱いところを見せる男に弱いものよお。いつか気になった女性が出来た時の為に憶えておくといいわ」

 

「はは、助言、ありがたく頂戴しよう。ところでガイゾックだがあなたの部下達で追撃は出来ないか? 海にはウオディックに乗ったファイヤバグの隊員達が居た筈だ」

 

「難しいわね。さっきの新しい敵が追撃を邪魔するように海中にも布陣してきたから」

 

「そうか。それにしてももしかすればまた新しい侵略者の出現とは、ますます地球人同士で争っている場合ではなくなったな」

 

「そうは考えても旗を振るのは自分でなくてはならない、そう考える人が多いのよねえ」

 

「私よりよほど世界を知っているマリリン殿がそこまでしみじみと言うのだから、そうなのだろう。悲しいことだけれど」

 

「まあ、次に死ぬのが自分かもしれないってなれば、誰だって我武者羅になるでしょうけれど。あら? 若様にお客様かしら?」

 

 マリリンは愛機でさりげなくユーサーのゲシュペンストMk-IIを庇いながら、こちらにゆっくりと降下してくるフェブルウスを見上げる。

 リモネシアのスポンサーと呼んでも差し支えの無いプルート財閥所属機ではあるが、マリリンの勘は彼我の大きな力の差を感じ取り、警戒を促している。ただ、ユーサーはそうとは感じずに母国の救援に来てくれた者達の一人と捉え、好意的である。

 

「プルート財閥のフェブルウス、か。私はユーサー・インサラウム少尉だ。貴殿らの助力に心から感謝の意を述べたい」

 

 ユーサーの目の前のモニターに先程言葉を交わしたヘマー、それにシュメシの顔が映し出される。

 

(やはり若い。昨今ではこの子らのような年齢のパイロットも珍しくはないが、幼げな雰囲気も相まって子供にしかみえない)

 

「お礼なんて言われる資格はありません。私達の方こそもっと早く貴方達の助けになれたらよかったのに」

 

 ヘマーの言う『早く』は果たしてこの戦いだけを指しての事だったろうか。もっと早く、そう例えば記憶を失ったガイオウが聖インサラウム王国を滅ぼす前に助けられたなら、と双子らが無意識のうちに後悔していてもおかしくはない。

 

「僕からもごめんなさい。なんとか敵はやっつけられたけれど、ガイゾックは取り逃がしてしまったし、きっといつかまたリモネシアにやってくると思います。

 アレは誰かにひどい事をするのをとても喜ぶモノだから、ここで倒しておかなければならなかったのに」

 

 シュメシもまたヘマー同様にユーサーに、ひいてはインサラウムとリモネシアに対する後悔や罪悪感に突き動かされた言葉を口にする。

 ユーサーは二人が奇妙なくらいに自分自身を責めているのを察したが、慰めるのは容易くないとも理解できる負の雰囲気を双子らは発していた。

 

「どうやら君達は私の知らない多くの事を知っているらしい。あのガイゾックを名乗る者達の危険性は朧気ながら私も体感したが、その上で私が言うべきなのはやはり君達への感謝だ。

 貴殿らの助力により忌むべき侵略者の魔の手からリモネシアの国土は守られ、国民への被害も最小限に留められたのは疑いようのない事実。だからどうか言わせてほしい。ありがとう、と」

 

「っ、私達にはもったいない言葉です。ごめんなさい、でもありがとう」

 

 泣き出す一歩手前の表情に変わるヘマーに驚きながらも、ユーサーはつとめて優しく、慈しむように尋ねた。

 

「ところで君達の名前を教えてはくれないか。恩人達の名前を知りたいんだ」

 

「……私はヘマー・プルートです」

 

「僕はシュメシ・プルート。それにこの機体がフェブルウスです」

 

「プルート? ひょっとしてヘイデス・プルート氏の?」

 

「はい。親子です。血は繋がっていないけれど」

 

「そうか。ヘイデス氏ばかりではなく子供の君達にも救われたのだね。リモネシアは君達親子に頭が上がらないな」

 

 ユーサーの笑顔につられてか、シュメシとヘマーもほんの少しだけ笑う。どこか救われたような笑みは、ユーサーにとって奇妙なものだった。彼にとってはごく当たり前のことを口にしただけで、子供らの心をいくばくか救うものだったとは、夢にも思わないことだった。

 ちょうどその時にフェブルウスにハガネへの帰投命令が届き、双子とフェブルウスは名残惜しさを感じながらその場を離れる。

 

「ごめんなさい、帰っておいでって連絡が届いたからこれで失礼します。またなにか困った時には、私達はいつでも駆け付けます。必ず」

 

「ありがとう、ユーサーさん。貴方と話せてよかった。どうか貴方とリモネシアとそこに生きる人々が幸せに暮らせるよう祈っています」

 

「うん、ありがとう。君達にもどうか多くの幸福が訪れん事を願うよ」

 

 そうしてフェブルウスが名残惜し気に背を向けてハガネと戻ってゆくのを見届けてから、マリリンが不思議そうな表情でユーサーに尋ねた。

 

「若様、随分とあちらから気にかけられていた様子でしたけれど、以前になにか恩でも売りました?」

 

「いや、今日初めて会った相手だよ。ただマリリン殿が不思議がるように、どうしてだかシュメシ殿とヘマー殿は私やリモネシアを案じてくれているようだった。なにかしら思い入れがあるのだろうか? それにあの表情は罪悪感を抱いているように見える」

 

「へえ? つくづく奇妙な子達ねえ。プルート財閥総帥の養子なんて、なにか訳ありといっているようなものねえ」

 

「マリリン殿、あまり詮索をしてはいけないよ。我々にとっては恩人でもあるのだからね」

 

「はいはい。若様の言う通りに致しますわ。あれだけの財閥の腹となると、下手に探ると何が出てくるか分からないですし」

 

 双子らの心に幾ばくかの救いを与えた邂逅の後、ハガネに帰投した双子らには嬉しい再会が待っていた。ゴップの手配でティターンズから異動し、出向してきたヤザンである。

 先に着艦していたギャプラン三機とヘビーガンダムに横づけるようにフェブルウスが腰を落ち着けて、コックピットからキャットウォークに降りた時、そこではアムロやヘイデス、レビルらとヤザン達が言葉を交わしているところだった。

 

「ヤザンおじちゃん!」

 

 ヘマーがにぱっと無邪気な笑みを浮かべて駆け寄ってゆくと、ヤザンは可愛がっていた姪っ子に再会したような表情を浮かべ、ヘマーのパイロットスーツの両脇に手を差し込んでそのまま持ち上げる。

 

「おう、久しぶりだな、ヘマー。また大きくなったか?」

 

「うん。またね、背が伸びたよ~」

 

 ヤザンに持ち上げられたヘマーはにこにこと満面の笑みだ。顔なじみとはいえ十五、六の少女がヤザンのような容貌の男にされて喜ぶ行動ではないが、中身の幼いヘマーは構ってもらえて喜ぶばかり。

 そんなヤザンにもヘマーにも、ラムサスやダンケル、イングリッドは怪訝な顔だ。ヤザンは上司としては頼りになる男だが、女子供を相手にこのような対応をする男とは知らなかった。

 

「シュメシも少しは精悍な顔つきになったか」

 

「男らしくなった?」

 

「ああ。まだまだガキだが、少しはな」

 

 ヤザンはヘマーを降ろすと、傍に来ていたシュメシの頭をくしゃくしゃと乱暴に撫でる。シュメシは髪型が崩れるのにも構わず、やはりヘマー同様にきゃっきゃっと笑っている。

 今よりもっと心も体も幼かった頃から構ってもらっていた双子にとって、ヤザンはまさしく大好きな親戚のおじちゃんのような存在なのだ。子供らの明るい顔に、ヘイデスはほっと安堵の息を吐く。

 バアル残党の出現やガイゾックを取り逃がした事実に内心では嵐の吹き荒れていたヘイデスだが、子供達の様子がおかしいのを見過ごすほど間抜けな父親ではない。そしてヤザンの存在を今日ほどありがたく思ったことはなかった。

 

「シュメシ、ヘマー、それにフェブルウスもお疲れ様。今日は色々とあったからゆっくりと休みなさい。明日は夕方までリモネシアで休息するから、街へ観光に行ってもいいし、ハガネの中でゆっくりと休んでいてもいいよ」

 

 はぁい、と父親に甘える子供の声を出して、シュメシとヘマーはその場を去ってゆく。ヘイデスは無傷で帰還してきた――自己修復能力があるので小さな損傷は戦闘中に修復が終わる――フェブルウスへもお疲れさまと視線を向けた。

 そこへヤザンの底冷えのする声が掛けられる。アムロやイングリッドは噴火する直前の火山を連想し、ラムサスとダンケルは上官がとびきり怒っている時の声だと察して、それとなく距離を置いていた。

 

「それでヘイデス・プルート総帥、どうしてあの子らが戦場に出ているのか、聞かせてもらおうか?」

 

 それは拒否を許さぬ鉄の意志に支えられた『命令』だった。ヘイデスは分かっている、と頷き返してアムロやクワトロにもしたシュメシ達の素性を語るべく、ヤザンだけを連れて艦内の一室へと向かう。

 残されたダンケルやイングリッドなどは、お互いの顔を見合わせて肩をすくめる他なかったが、レビルがその場をとりなした。

 

「さて、貴官らは以前ティターンズに所属していたという話だが、現在、我々はエゥーゴの部隊と協力関係にある。我々は正規軍ではなくあくまで一企業であるから強制する権利はないが、なるべく穏便な対応を心掛けてもらえるとありがたい」

 

 退役したとはいえ一時期は地球連邦軍の頂点に立っていたレビルが相手である。また退役したからといって影響力がなくなるような業種でもなし、ラムサスとダンケルは天と地ほども隔絶した権力者からの提案に一も二もなく敬礼していた。

 

「はっ! 自分達は正式な命令を受けてこの場におります。部隊の和を乱すような行いは慎みます」

 

「ティターンズであったのは過去の事。現在はアレスコーポレーションへ出向中の身であります。閣下におかれましてはどうぞご懸念なく指揮を執っていただきたく」

 

「そうか。それなら助かる。それと今の私を閣下と呼ぶ必要はない。レビル艦長とでも呼んでくれ。さて、貴官らの部屋と歓迎会の用意は済ませてある。案内はこちらの彼女がしてくれる」

 

 とレビルは控えていたスタッフに目配せをした。ラムサスらは緊張を強いられる大物の前から離れられると、心の中でほっと安堵した。

 そしてイングリッドは目の前の最高峰のニュータイプの一角の顔を、まじまじと見ていた。あいにくとカミーユとクワトロはアーガマに居る為、この場で対面することはなかった。

 

「あの時の感覚は君からか。アムロ・レイだ。ジオンの?」

 

「ふうん、あなたがね。イングリッドよ。おっしゃる通りジオンの女。今ではゴップ家の養女なんて身分だけど」

 

「戦場では良い動きをしていた。これからの戦いでも頼りにさせてもらおう」

 

 アムロは、イングリッドの幼い容姿をそのまま受け止める対応をしなかった。イングリッドの経歴を知っているわけではないが、見た目通りの年齢ではない事を直感的に悟っていたのだろう。

 交感や共鳴という程の精神的交流はないが、お互いの優れた洞察力によってその程度の事は察せられる。

 

「養父殿の頼みだからね。よっぽどおかしな命令じゃなければ貴方達に力を貸してあげるわ。いつかジオンに戻るまでは、ね」

 

「元はどの部隊に居たんだ? もしシャア・アズナブルに縁があったなら……」

 

 アーガマのクワトロを紹介しようとアムロは口にしたのだが、途端にイングリッドがしょっぱい顔になったので、賢明にも口を閉ざした。嫌われているわけではなさそうだが、どうやら歓迎されていないのは確からしい。

 シャアの奴、なにをしたんだ? とアムロが不審がるのも当然だ。

 

「お生憎様、私が縁のあるのは“真紅の稲妻”ジョニー・ライデンよ!」

 

「彼か。幸い一年戦争で戦う事はなかったが、プロメテウスプロジェクトでは同僚としてしばらく働かせてもらったよ」

 

「そう、それ! あたしも親父から簡単にしか聞かされていないのだけれど、ヤザンのおっちゃんも参加していたっていうそのプロジェクト、ちょっと聞かせてもらえる?

 大人しく親父のいう事を聞くにしても、あたしが眠っている間のジョニーの話でも聞かなきゃやっていられないわ」

 

「ふ、よほど彼の事が慕わしいらしい。俺が知る限りのことを話そう。俺以外にもヘイデス総帥やカインズ博士、ヤザンやアーガマに居るクワトロあたりにも話を聞くと良い」

 

「ふうん、関係者が多い部隊なのね。退屈はしないで済みそうでなによりだわ」

 

 

「あの新しく出てきた連中はシュメシとヘマー、そしてフェブルウスが狙いだと?」

 

「十中八九間違いありません」

 

 自室でヤザンと一対一で対面したヘイデスは、アムロ達にしたのと同じ説明をして、どうにかヤザンの怒気を鎮めるのに成功していた。

 話を聞き終えたヤザンは軍人としての節度を守った言葉づかいではなく、気心の知れた相手に対する砕けた口調で話し始める。

 

「俺は女子供が戦場に出るのは好かん。率直に言って気に食わん。だがどういう風の吹き回しか、今では腕が立つとはいえ女の護衛を任されちまった。お守りでない分、まだ気は楽だがな」

 

 イングリッドのことだ。強化人間でもある彼女のパイロットとしての技量は、トップエースの仲間入りをするのに十分なものがある。それでも戦場ではなにがあるか分からない。

 偶然当たった流れ弾、数の不利に押されての敗北、古今、戦場で孤立すれば例え英雄であろうとも討ち取られるものだ。ヤザンらはイングリッドがそうならぬようにと、ゴップからフォローを頼まれた立場である。

 

「イングリッドさんか。彼女は眠る前からすでに軍人としての経験は積んでいましたし、実年齢もヤザン大尉より三つか四つ、年少という程度ですから、まだマシな方なんでしょうね」

 

「ふん、末恐ろしい子であるのは認める。総帥、今更お守りをする子供が一人、二人増えても変わらん。シュメシとヘマーのフォローはしてやる」

 

「! それは大変助かります。あの子達の技量とフェブルウスの性能は贔屓目なしに見てもかなりのものですが、それでも大尉のような方が世話を焼いてくれるのなら、親としてこれほど心強いものはない」

 

「俺もヤキが回ったもんだ。それはそれとして敵が随分と多い。総帥、プルート財閥でなにか情報は掴んではいないのか? 特にUIとかいう連中だ。宣戦布告もなにもなしに只襲い掛かってくるだけの敵とあっては、根本的な対策が取れんぞ」

 

「そこは僕も頭を痛めているところです。どこかに拠点を構えているとは思うのですが、それがゼブラゾーンや火星の暗礁地域なら、探せばいつかは見つかるのですけどね」

 

 これがムゲのように別次元であるムゲ宇宙に居るだとか、特殊な空間に潜んでいるとなるとそこに攻め込まなければ打倒できず、戦いが長引く危険性が高い。

 ここでヘイデスは手元の携帯端末を操作して、壁面に埋め込まれている立体画像を起動してとある映像を再生する。

 

「それと僕としてはもうお腹いっぱいなんですが、よかったらおかわりをどうぞ」

 

「なにい? …………これは」

 

 ヘイデスが再生した画像には宇宙科学研究所近くの空を飛ぶ全長三十メートルはあるミニフォーの編隊と、円盤獣ギルギルを筆頭とした異形達とそれに立ち向かうグレンダイザー、マジンガーZ、極東支部のMS部隊。

 そしてダムの溜め池中央に立つ獣戦機隊基地に向けて殺到する、ヘリコプター型のドル・ファーとやや人型からかけ離れたゼル・ファーというムゲ・ゾルバドス帝国の戦闘メカの群れと、それに立ち向かう獣戦機隊にMZ部隊、ライディーン、ダイモス達。

 

「最初に映したのがベガ星間連合軍で、次に映したのがムゲ・ゾルバドス帝国と名乗った連中です。宇宙科学研究所に所属するグレンダイザーというスーパーロボットと獣戦機隊を中心に戦い、これまで行われた襲撃は全て退けています」

 

 もちろん残骸は極東支部とアレスコーポレーションの日本支部が破片一つ残さずに回収し、リバースエンジニアリングに勤しんでいる。

 

「UIに加えてベガとムゲの二勢力の追加か。いくらなんでも地球は狙われ過ぎだと言いたくもなる」

 

「本当にその通りですよ。これで地球もコロニーも一致団結していたらもっと戦いようはあるのに……」

 

「ティターンズにエゥーゴ、それにOZとコロニーのガンダムか? そういえばアクシズも妙な動きをしているという話だな」

 

「後、ブッホ・コンツェルンも独自に兵器を開発して、OZのデルマイユ公と接近しているみたいですよ。

 この戦いが終わって宇宙に本格的に進出する時代が来ても、戦国乱世のような戦いが広がってばかりいてもおかしくありません。しばらくは惑星規模で軍備増強に務める時代が続くでしょう」

 

「負ければ征服されて奴隷か、あるいは根絶やしにされる時代か。一年戦争を上回る地獄の到来だな」

 

「地獄の時代の後には天国とはいかなくても、せめてささやかな平穏が待っていると期待したいところですよ」

 

「俺は所詮パイロットだ。戦場での全力は尽くすが、それ以外の場所での戦いには総帥のような人材が欠かせんだろうよ。今のように戦艦に乗って戦場に出るような真似は控える事だ」

 

 ヤザンは腰かけていたソファから立ち上がった。

 

「そのベガとムゲの戦闘データ、回してもらえるんだろうな?」

 

「もちろん。部屋に用意した端末からアクセスしてください。UIやコロニーのガンダムのデータも入れてあります」

 

「相変わらずの手際の良さだが、ゴップ議長といいそういうところは頼りになる」

 

「それしか出来ませんから」

 

「他の奴に総帥と同じ真似は出来んよ。それじゃあな」

 

「ええ。今日はお疲れさまでした」

 

 そう言ってヤザンが部屋を退出した後、ヘイデスはおもむろに立ち上がって洗面台に水を溜めるとそこに思い切り顔を突っ込み

 

「!“#$%&‘()=~|!!!」

 

 ついに参戦したベガ星連合軍とムゲ・ゾルバドス帝国に対するストレスを、ありったけの大声に変えて叫ぶ。洗面台の水がヘイデスの溜め込んだストレスと共にごぼごぼと泡を立てる。

 これ以上彼にストレスが加われば、サンドスターが降ってきて、MZやメカザウルスがフレンズになったらどうなんだろう? よーし、ジャパリ・ゾイド・パークやふれあいメカザウルスランド作っちゃうぞ! と半分死んだ目で語り出すだろう。

 

 

 翌日、ヘイデスはハガネ、アイアイエー、ポタルゲーに積んでいた新品のゲシュペンストMk-II九機とパーツ、換装武器一式を納品し、次の戦いに備えるべく各種方面への手配に明け暮れていた。

 幸いにしてシュメシとヘマーはユーサーとの会話や昨夜のヤザン歓迎会のお陰で持ち直し、明るい表情を取り戻している。

 それは歓迎会の後、ヘイデスと一緒に寝たいと部屋にやってきて、川の字になって寝ている時に自分達がイドムに至高神ソルと呼ばれた事、それが記憶はないが事実であると認めている事を、ヘイデスに告白したのも影響しているだろう。

 双子らの告白によってヘイデスが更に頭を抱える事態となったのは確かだが、道理でサイデリアルやバアルの残党が狙ってくるわけだと納得もいったものだ。

 

「ジェラウド将軍にビルトシュバイン、シュバル卿とウェイン卿にゲシュペンスト・リーゼの引き渡しが終了、と。リモネシアの防備はこれでどうにかなるとして、いよいよグレンダイザーとダンクーガが本格参戦か」

 

 ヘイデスはハガネの私室で納品リストから顔を上げて、大きく溜息を吐く。

 

「対悪霊というかオカルト対策を念の為にしておいてよかった」

 

 具体的には、サイバスターを参考にプルート財閥系の兵器には分子レベルで世界中のありがたい経典や呪文が刻み込まれている。

 実際に効果があるのか確かめる機会には恵まれなかったが、こうなっては仕方がないと割り切ったヘイデスはリモネシアとの取引で得たモノがどれほど役に立つか。それを考える事にした。

 

「コックピットブロックだけが無かったが、ウェインの遺体と魂は故国に還ったと信じたいな。そして骸を辱めるような真似をするのをどうか許してほしい。そしてもし許せなくても恨むのならどうか僕だけを恨んでくれ」

 

 リモネシアの国土から突如として出土した謎の機動兵器。それが今回の納品の対価だった。凄まじい激闘の果てに破壊されたそれはコックピットブロックだけがなかったが、その正体をヘイデスは知っていた。

 聖インサラウム王国の精鋭アークセイバーのナンバー1に代々引き継がれてきた機動兵器ディアムド。それが壊れ果てた状態でリモネシア本島の地下から発掘されたのだ。

 

 ヘイデスは発掘されたこの機体を第2次スーパーロボット大戦Z再世篇で、ウェインが乗り込み自軍に敗れた機体であると推測している。かつてインサラウムの旧王都で敗れた機体が、この世界のリモネシアで出土したのもなにかしらの縁であるだろう。

 スフィアを巡るアイム・ライアードの陰謀によって滅びたインサラウムの機体を、至高神ソルの生まれ変わりであるシュメシとヘマー、フェブルウスの為に使おうというのは、恨みを買っても仕方ないとヘイデスは思っていた。

 

 それはそれとして敵対勢力が増えた以上、こちらでも出来る限りの戦力強化手段を講じなければならないという厳しい現実がある。

 鹵獲したガミアQと引き取ったディアムドはエリュシオンベースに送り、修復か改良を依頼。

 なおこの際、なぜか二十代のアンブローン・ジウスが引き渡しを強固に拒絶したのだが、ヘイデスはあれ、マリリンとユーサーとアンブローンの三角関係ルート? と斜め上の発想をしていたりする。

 原作や多くのスパロボ通りにベガ軍が月面にスカルムーン基地を建設しているとして、フォン・ブラウンやグラナダを抑えられるとかなり厄介だ。駐留している連邦軍だけで守り切れるか不安であるし、こちらからもどうにか戦力を回さねばなるまい。

 

 それにシーマ達海兵隊に潜入を依頼したデラーズ・フリートも、最近ではアクシズとのやり取りが活発になり、大規模な作戦を起こす前兆があると報告を受けている。

 ジョン・コーウェン中将の提唱した新型ガンダム開発計画も順調に進んでいるという。アムロの開発したGPνの『GP』は、おそらくGPシリーズを知るアナハイムのスタッフがもじって付けたものではないかとヘイデスは睨んでいる。

 テム・レイ博士は現在サナリィに出向して辣腕を振るっているというし、この世界のガンダムF91に何かしらの形で関与する可能性が高い。

 

 コロニー落としやスペースコロニーへの毒ガス注入も外道の所業だが、バグによる無差別殺人も屑オブ屑の行いだとヘイデスは嫌悪している。

 ブッホ・コンツェルンへはあの手この手で数年がかりの嫌がらせを行ってきているし、原作とは異なる時系列の流れを経ているから、クロスボーン・バンガードの規模が縮小していると良いな、とヘイデスは祈っている。

 ただそれを補おうとしてデルマイユ公とある程度妥協した取引を結ぶ行動に繋がったのかもしれず、これまでの行動が裏目に出ている可能性もあるのだからなんとも悩ましい。

 

 またこちらの世界にキョウスケやエクセレンばかりか、アクセルやレモン、ヴィンデル、ギリアムの存在も確認できてしまっている。

 シャドウミラー組に関しては、現在の地球連邦は平和による腐敗など、そんな贅沢をする余裕がどこにあるんじゃボケェ! と政府・軍の高官達が声を揃えて怒鳴るような状況であるから、今はクーデターなど考えていまい。

 ただキョウスケ達の巻き込まれたシャトル事故は発生しており、いつかアインスト達が行動を起こす可能性はある為、これにも備えなければならない。

 

(しかし、レモン・ブロウニングはいったいなんなんだ? OGシリーズの設定を踏襲しているのなら、同じ世界の出身でエクセレンとの共演は不可能だ。

 エクセレンの双子の姉妹というわけでもないようだし、レモンだけが並行世界からやってきた? それとも、まさかアルフィミィが居ない代わりにレモンがアインストによって生み出されたとか? アルフィミィもいるがレモンもなにかしらの理由で存在している? 

駄目だ。推測ばかりで証拠がない。アインストもなあ、宇宙を作り直すだけの機能を持っているみたいだし、何を触媒にされるかで単純な強さも変わるよな)

 

「はあ~~~~~~」

 

 ヘイデスが、物体だったら一トンはありそうな溜息を零すと、壁面の通信端末が着信音を鳴らし、そこにハヤト・コバヤシの顔が映し出される。

 

『総帥、ハヤトだ。こちらの艦への荷物の積み込みは終わった。予定通りに出港できる。アーガマのブライトからも問題はないと連絡が来ている』

 

「ああ、ハヤト艦長。同行していただけるのはありがたいのですが、本当に良かったのですか? カラバがエゥーゴの協力組織とはいえ、僕らは正規の地球連邦軍に協力する立場ですよ」

 

『カラバの上層部も色々ともめたようだが、ブレックス准将の判断もあって貴方達となら行動を共にしてもいいだろうとなったよ。

 それに貴方達は良くも悪くもティターンズやOZから目を付けられている。いつか理由をでっちあげてでも奴らが狙ってくるだろう』

 

「なるほど、僕らと一緒に行動をしていれば自然とティターンズの戦力を削ぐことになると予測しているわけですね。まあ、日本にはムラサメ研究所なんかもありますし、強化人間の大量投入の危険性も考えられますからねえ」

 

『そういうことだ。それにこの地球の情勢だ。あまりに侵略者が多すぎて正規の連邦軍との繋ぎは残しておきたいのも人情だろう』

 

「それはそうですね。ベガやムゲの連中が宇宙に興味がないとは限りませんし、そろそろコロニーや月が戦禍に巻き込まれてもおかしくはありません。

 ま、ジャミトフ閣下が評判通りの“地球”至上主義なら、ティターンズもその内、解散なりなんなりすると思いますよ。そうすれば動かせる戦力が増えます」

 

『地球人至上主義ではなく、か?』

 

「ええ。地球という聖域をより良い形で保全する為に、地球に住んでいる余計な人間は減らしてしまいたいのが、あの方の本音です。

 戦争による経済破綻や治安悪化により、地球上から余計な人間を排除する為の手駒としてティターンズを立ち上げたというのが、僕なりの推測です。

 ところがウチの投資した環境改善プラント数十基の大活躍に、地球環境回復プロジェクトのお陰で地球環境は随分と良くなりましたし、次々と姿を見せる侵略者達の群れと、ジャミトフ閣下の狙いは色んな意味で破綻しました」

 

『ヘイデス総帥のいう事がもしも本当であるのなら、過程に大きな違いはあるが地球保全をイデオロギーの一つとするエゥーゴと共通する点さえある。皮肉だな』

 

「ジャミトフ閣下は極端すぎますし、急ぎ過ぎですけれどね。今頃はティターンズの膿を出すか、あるいはバスク・オム大佐の私兵と化しつつあるティターンズそのものを膿として切り捨てるのも、視野に入れているんじゃないですかねえ?」

 

 そうなったらヘイズルとかTRシリーズが使えるようになるのか? とりあえずインレとサイコ・インレの量産も視野に入れよう、ゼファーインレとか鬼に金棒って感じだし、とヘイデスは外伝漫画のT3チームやレジオンの事を思い出しながらハヤトに答えるのだった。

 ただヘイデスはTRシリーズに使われている準サイコミュ系OSが、胸糞の悪くなる代物であるのを、この時、失念していた。

 

 

 

 ヘイデスがハヤトと打ち合わせをしている一方で、ハガネ艦隊のパイロット達はそれぞれが短い休暇を楽しむべく、リモネシアの市街へと繰り出していた。カミーユやカツ、エマ、オウカにラトゥーニ、アラドやゼオラも気晴らしに出かけていた。

 そうしてあまり使う機会のない給料をパーッと使い、ショッピングと愛想の悪い恋人とのデートを楽しんだエクセレンは上機嫌な顔のまま、なにやら紙袋を抱えたシュメシとヘマーを見つけた。

 ハガネの接岸しているリモネシアの軍港でのことである。

 

「あら、おチビちゃん達もお帰り?」

 

 見た目が十五、六の双子だがその精神年齢を考えれば、エクセレンがおチビちゃんと呼ぶのもあながち間違いではない。双子はエクセレンとキョウスケに吸い込まれるようにして近づいて行った。

 オーストラリアのウォンバット並みに人懐っこく、警戒心の無い小動物めいている。

 

「うん。この島は色々と見て回りたかったから、二人であっちこっち見てきたんだよ。お父さんと一緒に回れなくてちょっと残念。でも仕方ないよね、お父さんのお仕事でたくさんの人が助かるんだもの」

 

 とシュメシ。もちろん光学迷彩機能をフルに使った見えざる護衛がついていたが、幸いにして彼らの出番はなかった。

 キョウスケは双子の顔を見て、観光を楽しんできたというような明るい顔色ではなかったがなにか良い事があったのだと察した。

 この二人が観光を楽しんできたのなら、矢継ぎ早に楽しかったことのマシンガントークが始まる筈だ。短い付き合いだが、それ位は分かる濃さの付き合いをしている。

 

「それで二人が持っている紙袋はどうした? そんなに何を買い込んだんだ?」

 

「これ? これはねえ、ホットドッグだよ。子供はこういうのを食っとけって、紅い髪に大きな体のおじちゃんが買ってくれたの」

 

 はい、とヘマーが紙袋の中身を見せれば、個別に包装された多くのホットドッグが覗く。

 

「あらら、おチビちゃん達、知らない人にものを貰っちゃだめよ~。その大男さんは善意だったかもしれないけれど、世の中、悪い人間はいるものなのだから。二人はとっても可愛いからどこかに連れていかれちゃうかもしれないわよ~?」

 

「うん。でもね、どこかで会った事のある気がする人だったの。向こうも私達を見てなにかに気付いたような顔をしていたんだよ、ね、シュメシ」

 

「うん。僕達が忘れてしまった記憶の中で、きっと会ったことがあるんだと思う。なんだか複雑そうな顔をしていたから、あんまりいい関係じゃなかったのかもしれないけれど」

 

「お前達の失った記憶か」

 

 キョウスケとエクセレンも目の前の双子とフェブルウスの事情は聞かされている。流石に至高神ソルや御使い、スフィアといった情報は伝えていないが、この子らが特異な出自であるのは既知だ。

 

「ならヘイデス総帥にもそのことをきちんと伝えておくんだ。今のお前達の父親はあの人なのだから」

 

「うん!」

 

 キョウスケの言葉にもちろんだと、双子らは父親をさらに悩ませる情報をこの直後に伝えるのだった。

 

<続>

 

■北米ルートが終了しました。次回から共通ルートに入ります。

 

■ムゲ・ゾルバドス帝国が宣戦布告してきました。が、獣戦機隊とスーパーロボット軍団と極東支部とアレスコーポレーションにボコボコにされました。

 

■ディアムドの残骸を入手しました。コックピットブロックはありません。インサラウムの旧王都でウェインの墓標となっていることでしょう。

 

■カラバと正式に協力関係を構築しました。

 

■次元将ヴァイシュラバがこの世界に居ます。

 

■強化パーツ

・平和の味ホットドッグを入手しました

・使用すると使用者の気力・SPが+5、強化パーツの装備枠に含まれない。

一度入手するとステージクリアごとに自動で一個手に入る。

 

ベガ「あのさあ……」

ムゲ「地球人がさあ……」

ベガ&ムゲ「強くない? むしろ強すぎない? なんで?」

先に参戦していた侵略者の皆さん「それな!」

 

隠し機体をインレ(サイコ・インレも可)×ガデラーザとして、パイロットはアムロ、クワトロ、カミーユ、ジュドー、シーブック、サブパイロットにゼファーなんていかがでしょう。トランザムとミノフスキードライヴあたりも搭載したいですね。

 




追記
TRのOSについて描写追加。外伝が出る度に闇の深まるティターンズぅ……。
追記
鞘云々を削除。


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第二十一話 はあ!?

いつも感想、誤字脱字の御報告ありがとうございます。返信はしておりませんが全て目を通させていただいております。大変、励みになります。月並みですがこれからもよろしくお願いします。


「また新たな勢力が出現しただと?」

 

 恐竜帝国の支配者たる帝王ゴールは、本拠地であるマシーンランド内の謁見の間にて腹心たるガレリィ長官を筆頭に将軍級のキャプテン達からの情報を耳にし、明らかに不機嫌な声色に変わる。

 ゴールがそう反応するのも無理はない、とガレリィは彼自身も心の底から同意しながら報告を続ける。

 

「はっ! 恐れながら月よりベガ星連合軍なる宇宙人共の侵略兵器が日本へと侵攻し、これを円盤へと変形するスーパーロボットとマジンガーZ、地球連邦軍極東支部が撃退しております。

 また地球全土にムゲ・ゾルバドス帝国を名乗る者達の戦闘兵器が出現し、日本においては獣戦機隊基地を襲撃してこれが撃退され、そのほかの地域においてはOZ、ティターンズ、また現地連邦軍と救援に駆け付けたスーパーロボット達により敗退しております」

 

 意気揚々と侵略しにやってきた連中が負けたのは胸のすくような話だが、同時に地上のサル共の想定をはるかに超えた軍事力を思い知らされて、ゴールは喜べばよいやら歯噛みすればよいやら自分でも分からなかった。

 ガレリィに続きバット将軍も新たな情報を口にする。

 

「ベガ並びにムゲとはメカザウルス部隊も突発的な遭遇戦を行っており、これまでに両勢力の機動兵器四十七機を破壊したものの、メカザウルス二十四機が撃墜、十機が大破、七機が中破の損害を被っております」

 

「ええい、サル共とだけ戦えばよいものを! 我らにも牙を向けるか! ゲッター線を利用したゲッターロボのみならずMZ共の存在だけでも腹立たしいというのに、ことごとく我らハチュウ人類の悲願を邪魔するか」

 

 激高するゴールの怒号に居合わせた者達は思わず委縮する。ゴールは失敗した者や裏切り者をマグマに落として処刑する冷酷な気性の主だ。

 この場に呼ばれるほどの家柄や能力を持つ者を癇癪で殺す事は流石にしないだろうが、八つ当たりで骨の一つ二つ折られるかもしれない、と心配くらいはする。

 まだ怒りの収まる様子の無いゴールであったが、一度、心の整理をつけるように瞼を閉じて深く呼吸をすると意を決して、これまであり得ぬとしてきた考えを口にする。

 

「こうなれば手段は選んではおられぬ。口惜しいが地上のサル共と宇宙人を殲滅する為に、一時の屈辱に耐える時が来てしまったようだ」

 

 事前の想定をはるかに超える消耗は、ゴールやガレリィ、バット将軍などの指導者層が顔を青くするほど膨大で、かつすさまじいペースを今日まで維持しており、補充の為の生産が間に合っていない。

 パイロットとなる兵士達の損耗も目を覆いたくなるほどで、人工知能搭載型のメカザウルスの割合が劇的に増えている。

 

 幸か不幸か、この窮状は恐竜帝国に限らず機械獣軍団、妖魔帝国、キャンベル、ボアザンも共通しており、新規に参戦したばかりのベガとムゲは例外である。

 ゴールが言わんとしている事を察し、心中の屈辱を慮って、ガレリィは顔を俯かせる。バット将軍もまたキャプテン一同を代表するように苦渋の色を浮かべる。

 

「Dr.ヘルと妖魔帝国に繋ぎをつけよ。奴らとて我ら同様苦しい状況に置かれているはずだ。この地球の外から来た連中はともかく、せめて同じこの星で覇を争う者共と同盟を組むものとする!」

 

 それは共通の敵を打倒したならばすぐさまに破綻し、お互いに滅ぼし合うのを前提とした歪な軍事同盟の構想だったが、そうであるからこそこの後、間もなくしてDr.ヘルとバラオは軍事同盟の締結を受諾するのだった。

 妖『魔』帝国、恐『竜』帝国、『機』械獣軍団から一字ずつをとり、後に『魔竜機(まりゅうき)連合』と呼ばれる巨大勢力が誕生する数日前の事であった。

 

 地球に根を張る三大勢力が同盟を組んだ頃、地球外から侵略にやってきたボアザンとキャンベルもまた事前の想定をはるかに超える損耗と自軍の懐事情に、顔色を青くしていた。いやまあ、ガルーダあたりは元から青いが……。

 殊に数万年前、地球に辿り着きながらも氷河期であった為、最近まで眠りに就いていたキャンベル星の司令官オレアナは、本国に地球侵略が遅々として進まぬ状況を報告するのを恐れていた。

 

 成果をまるで挙げられていないとオレアナを更迭し、後任の司令官が配属されるのを恐れた為である。地球侵略の司令官であるこのオレアナは巨大コンピューター像に人格をコピーしたものに過ぎない。

 生粋のキャンベル星人からすればただの道具程度にしか見られまい。ならば呆気なく破棄されてもおかしくはない。

 

 そしてまたオレアナが危惧しているのは、自身の安否のみではない。仮に後任のものが来たとしても、ひょっとしたら地球を攻略できないのではないか、とどうしても考えずにはいられないのだ。

 オレアナが地球にやってきたのは数万年前、当時、氷河期に入っていた地球である。

 その為、つい最近まで眠りに就いていたのだが、当然、数万年の時間経過により母星がどれだけ技術の進歩を迎えていたかと期待してみれば、なんということかろくに進歩していないではないか。

 

 オレアナやガルーダの使っているどれい獣と後任の女帝ジャネラ(女帝とはいうが実体は中間管理職)の用いるマグマ獣の性能差分くらいの進歩はあるが、それにしたってあんまりだ。いくらなんでも技術の進歩が停滞しすぎでは? と思わざるを得ない。

 まあ、数万年もあれば繁栄と衰退を繰り返していてもおかしくないし、同一国家が滅亡せずに継続しているだけでも偉業だと考えておこう。ガンダムシリーズの地球も黒歴史やらなんやらで、繁栄と衰退を繰り返していることだし。

 

「ガルーダ、ガルーダはどこか」

 

 地球の地底内部に設けられたキャンベル星の拠点で、荒波の真っただ中に立つ巨大な像たるオレアナの声に応じ、彼女の右手に通されたエレベーターを使ってガルーダが姿を見せた。

 このガルーダ、これまでどれい獣を用いた多くの作戦を行い、一度はコンバトラーVのメインパイロットである豹馬の腕を奪いもしたが、それもクローン技術の応用で再生されるなどイマイチ成果を挙げられずにいる。

 

「偉大なる母オレアナよ、ガルーダはここに」

 

「ガルーダよ、我らがこの地球をキャンベル星人の楽園とすべく行動を開始してどれだけの月日が経ったことか。しかしいまだ地球には原住民共が我が物顔でのさばっている」

 

「ははっ、全てはこのガルーダの不徳の致すところ。しかし、このガルーダの身命を賭して必ずや母上ひいてはキャンベル星人の大願を成就して御覧に入れまする」

 

「それは当然のこと。改めて繰り返し言葉にするまでもない。しかしガルーダ、現実としてコンバトラーVやボルテスVといったスーパーロボット共を筆頭に、地球人の戦力が凄まじいことも認めなければならない。ましてやベガやムゲの如きものまで現れたとあっては……」

 

「ムゲ・ゾルバドスなる者共はいまだ調査中ですが、ベガなる者達は我らが眠りに就いている間に勢力を伸ばした新参者であるとか」

 

「左様、母星でもかの者らとの小競り合いを繰り返している。この地球は我らが数万年の昔より見初めた星。それをむざむざと他の者共に奪わせてはならない。しかし……ガルーダよ、現在の我が方の戦力は?」

 

「……母上の耳に入れるにはあまりに心苦しきことなれど、どれい獣の生産に注力して数の補填を急いでおります。またより強力な機種の開発も命じておりますが、いくばくかの時間が必要になるかと」

 

 申し訳なさとふがいなさ、地球人への闘志で表情を歪めるガルーダの報告に、オレアナはしばし沈黙した。

 

「仕方ない。たとえ相手が銀河の辺境で栄える小物といえど、今は無用な敵を作る時ではない。むろん、ガイゾックなどという害獣は論外だが」

 

「母上!? それは、そのお考えは!」

 

「黙れ、ガルーダ! 反論は許されない。そもそもお前が司令官としての責務を果たし、地球を我らの掌中に収めていれば、かような屈辱的な行いに手を染める必要はなかったのだ」

 

「ははっ!」

 

 敬慕する母の叱咤に、ガルーダは顔を俯かせて力の限りに拳を握る。本来であればとっくに地球はキャンベルの楽園となる筈だったのに、ろくに占領地域の一つも得られずにいる。

 

「我らキャンベル星人はボアザン帝国と一時、同盟を結ぶのだ!」

 

 地球系侵略勢力が軍事同盟を結んだように、地球外からやってきた侵略勢力の内、キャンベルとボアザンが急速に接近して、腹の内ではお互いを罵り合いながらも軍事同盟を締結するのだった。

 これもそれもどれも、ひとえに被侵略対象である地球連邦軍と民間のスーパーロボットが強すぎて、原作ブレイクを挟みつつ返り討ちされ続けるのが悪いのだ――これを人は逆恨み、お門違いと言う。

 

 

 新規に地球侵略に加わったムゲとベガが初戦の敗北に驚きながらも橋頭保をコツコツと作り上げ、既存の侵略勢力が同盟関係を結び始めている頃、ヘイデス・プルートとハガネ艦隊一行は無事に日本へと到着していた。

 アーガマとハヤトのクラップ級を伴ったまま太平洋を臨む地球連邦軍極東支部へ向かい、基地の港湾ドックで五隻の艦が羽を休める。

 ヘイデスは一行と共に極東支部内にあるミーティングルームの一つに足を運び、多くの人々と対面していた。

 

「初めまして、僕がヘイデス・プルートです。皆さんには日頃から世界の平和と人々を守ってくれて、本当にありがとう。僕なんかの頭では足りないけれど、頭の下がる思いだ。いや、本当に」

 

 この時、ヘイデスや愉快な仲間達が訪れた際に極東支部には、支部長である岡長官からマジンガーZ、ゲッターチーム、コンバトラーチーム、ボルテスチーム、ライディーンのひびき洸、ダイモスの竜崎一矢、グレンダイザーの宇門大介、ダンクーガの獣戦機隊といった錚々たる面々が揃っていた。

 プルート財閥の主導するSRG計画と関わりが深く、また地球防衛活動に関しても予算・広報・護衛etcetcとバックアップしている為、彼らとの関係は深い。

 世界的に著名な大金持ちとの対面に不思議がる少年少女達だったが、先程の挨拶と共に一人一人しっかりと握手をし、曇りなき感謝の視線を向けられると悪感情はないが困惑はする。

 

「ど、どうも?」

 

 ヘイデスの存在や支援に関して博士達から事前に聞かされていたとはいえ、あまりの低姿勢に手を握られる一矢は困惑気味だ。一矢に限らず満面の笑みと感謝の言葉を受けた他の面々も同じ反応である。

 握手を終えたヘイデスの様子を見て、同席した岡長官がごほんと分かりやすい咳払いをして、場の空気を改める。

 

「これで皆との対面は済んだな。それではヘイデス総帥、皆を集めた理由についてご説明を願えますかな?」

 

 スーパーロボットのパイロット達だけでなくシャピロ・キーツ少佐や双子にゼファーハロ、ブライトやクワトロ、カミーユにヤザン、イングリッドやアムロ等々、ハガネ艦隊のパイロットの一部も一堂に会しており、極東支部の最高戦力が集まったと言ってもいい。

 

「ええ、念願叶って挨拶と感謝の言葉を伝えられましたからね。忙しい皆さんに集まってもらったのは、これから日本を中心に巻き起こる可能性が高い注意点について、あらかじめお知らせした方が良いと思ったからです」

 

 ヘイデスは経済人としての自分を強く意識しながら手元のリモコンを操作し、背面のパネルを操作する。それはアメリカ西海岸での戦いで、ハガネ艦隊に降下するガミアQ達の映像だ。

 レビル艦長や岡長官に対するのとは違い、民間のパイロット達相手という事もあって、口調も素の砕けたものになっている。

 

「これは機械獣軍団との戦闘を記録したもので、この戦闘では僕の身柄を押さえるべく連中は行動を起こしていた。戦闘の最中の戦艦にこの女性型アンドロイドを侵入させ、対象を捕縛ないしは殺害する目的であったと推察できるわけだね」

 

「プルート財閥の総帥がのこのこと戦場に出てきていると知ったなら、罠を張る価値もあるか」

 

 棘のある意見を口にしたのはゲッターチームの神隼人だ。漫画版のような学生テロリストではないが、シニカルな一面は共通している。隣に腰かけた人の良い巴武蔵が窘めるように声を掛けた。

 隼人の指摘を耳にして、シュメシとヘマーはしゅんとして悲しげである。Zシリーズで活躍した多くのパイロット達の同位体との邂逅に、無意識下でウキウキとしていた気分がすっかりと委縮している。

 

「おいおい隼人、そこまで言わなくても」

 

「いやいや隼人君の指摘はもっともだよ。少し面映ゆいけれど、地球圏三大財閥の総帥として、地球連邦政府と軍に最も貢献している自負はあるけれど、ちょっと考えればそんな財閥の総帥が前線に出るなら狙うのは当然さ」

 

「ははぁん、その口ぶり、狙われるのも計算づくって口ぶりやなあ」

 

 これはコンバトラーチームの浪花十三。ライフル射撃に優れた才能を示し、十八歳ながら超一流のスナイパーとしての能力を持つ合理主義者だ。当初は豹馬と対立する事もあったが、すでに数十回と戦いを繰り返した今となってはチームの一員として打ち解けている。

 

「十三君の言う通り、正解です。僕は自分がいつか狙われると予測していた。デルマイユ公やメラニー会長と比べてフットワークが軽いし、戦場に顔を出す事もあるからね。僕を上手く人質にするか、殺害すれば地球連邦にそれなりの混乱を招ける。

 いち早くそれに気づいて実行してきたのがDr.ヘル一派だったわけで、これからも同じように狙ってくる勢力はあると思う。そして僕は餌兼囮としてしばらく日本に腰を落ち着ける予定なのさ」

 

「それはかなり危険な事なのでは?」

 

 案じるように声を掛けてきたライディーンの洸に、ヘイデスは気にしない気にしない、と内心では死ぬほどビビりながら、にこやかに手を振って答える。

 

「大丈夫大丈夫、君達と正義のスーパーロボット達、極東支部の皆さん、それにウチの社員の皆さんを信頼しているから。そうでなければ自分の命をチップにして賭け事をするような真似は出来ないよ。

 僕の方こそ、君達に謝らないといけない。僕の目論見通りならばこれから日本での戦闘は激化する可能性が見込まれる。そうなれば君達にこれから更なる負担がかかる可能性が高いわけで、それについては謝るほかない。

 僕に出来る限りの支援を約束する。だからどうか、戦う力を持たない人々を守る力となって欲しい。君達もまた本来なら平和を享受するべき人々だと分かった上で、こう願うことしかできない僕を許してほしい」

 

 改めて頭を下げるヘイデスを、少なくともこの場に集まった若きパイロット達は軽蔑していないようだった。思っていたよりも肝の座っている人だな、と感心しているのかもしれない。

 

「この案件とは違うが、私からも少し話がある」

 

 こう切り出したのは岡長官である。

 

「実験的な意味合いが強いが、プルート財閥から出向してきたハガネとブレックス・フォーラ准将から派遣されたアーガマを母艦として、諸君ら民間のスーパーロボットと連邦軍の一部による混成独立遊撃部隊の設立が検討されている。

 まずはその様子見として、しばらく合同で作戦に当たってもらい、戦局の変化などを鑑みて設立に踏み切る予定だ。

 これからますます侵略者達の攻勢は激しくなるだろうが、いずれ世界の平和を取り戻す日の為に、改めて諸君らの力を貸してほしい。ヘイデス総帥が言ったように我々地球連邦軍極東支部も、全力を以て君達の支援に当たる」

 

「そういうことならヘイデスさん、岡長官、俺達に任せてくれよ。今まで通りどんな敵が来たって、この兜甲児とマジンガーZがやっつけてやる。ムゲやベガの連中だってそうさ!」

 

「甲児君、ベガを、いや敵を甘く見てはいけないぞ。複数の勢力から一度にこれだけの侵略を受けているんだ。いくらマジンガーZが強くても、たった一人と一機では出来ることに限りがある」

 

 それはグレンダイザーという強力なスーパーロボットを有しながら、ベガに敗北して母星を占領された宇門大介ことデューク・フリードならではの重みを持った言葉だった。

 

「へへ、分かってるって、大介さん。それにマジンガーだけじゃなくてたくさんのスーパーロボットが集まっているし、あのアムロさんも居るんだ。ちょっとやそっとの敵が相手じゃ、負けたりなんかしないぜ!」

 

「はは、アムロ大尉、だそうですよ?」

 

 ヘイデスに声を掛けられたアムロは軽く肩をすくめて見せた。民間人からすればアムロは一年戦争で多大な戦果を挙げたスーパーエースなのだと、甲児の反応で改めて分かる。

 

「それなら期待には応えないとな。RFガンダムは良い機体だが、流石にマジンガーZのようなスーパーロボットには負ける。それでも期待されているに応じた結果は出して見せよう」

 

「アムロ大尉もそうですが、本当に皆さんには期待しているんだ。僕としては孫や曾孫に平和な世界で穏やかに生きて欲しいからね。地球史上例のないこの大戦乱も皆さんと力を合わせれば生き残れると、心から信じている」

 

 原作とスパロボシリーズでの実績もあるが、こうして現実となった世界でも目の前の少年少女達とスーパーロボット達の戦う姿は申し訳なさこそあるが、やはり頼もしい事この上なく、彼らの力なくしてこの戦乱を戦い抜けないと認めざるを得ない。

 だからこそヘイデスは改めて決意する。歴代のスパロボシリーズで前例のないくらいに、好待遇を受けるプレイヤー部隊にして見せる、それがせめて自分に出来る事だと固く誓うのだった。

 

 だが世界はヘイデスの誓いをあざ笑うかのように残酷だった。

 ヘイデスが極東支部に到着して数日後のことである。外宇宙からやってきたバーム星人と地球側の使節団の会談が地球上で行われる運びとなった。

 ダイモス原作の始まりか! と腹を括ったヘイデスは使節団の代表に選ばれた竜崎勇博士に万が一なにかがあった時の為に、と医療用ナノマシンの投与と防弾繊維製の衣服や気体状の装甲スプレーの提供などなどありったけの身を守る手段を提供し、ゲシュペンスト・ファントムを始めとした三メートル級ロボットの護衛も着けたほど。

 

 原作においてリヒテルとエリカらバーム兄妹の父であったリオン大元帥は穏健な人物で、太陽系への移住も急いではおらず争うくらいなら離れると明言するほどだ。

 悲しいかな、考えがそぐわず野心に燃えていたオルバンとその腹心ゲロイヤーの謀略によりリオン大元帥は毒殺され、竜崎博士もゲロイヤーの狙撃によって殺害されている。

 

 現状の地球にバーム星人十億の民を受け入れる余裕は、スペースコロニーや火星、木星位にしかないが、それでも暗殺さえ防げればバームとの敵対は防げるはずだ。

 使節団の中にリリーナ・ドーリアンの父親であるドーリアン外務次官が含まれていたのには一抹の不安を覚えたが、彼を暗殺したレディ・アンはいないので同時に暗殺事件が発生する事はあるまい。

 

 ヘイデスはそう高を括っていたのである。使節団には竜崎博士やドーリアン外務次官も知らぬところでプルート財閥の権力を使って予定を上回る護衛と最新装備を都合したし、万が一の事態に備え、ハガネとアーガマ隊、極東支部の戦力も同行している。

 バームとてこんな侵略者との戦争真っただ中の地球に移住したいとは思わないだろうし、事態が終息するまで静観するよね、と思っていたヘイデスの横っ面を叩いたのは、このような報告であった。

 

「は? 会談は行われずにその場で“オルバン”大元帥の名前で宣戦布告された?」

 

 その時、ヘイデスは日本近海に浮かぶメガフロート施設であるアレスコーポレーション極東支部の一室で、その報告を聞かされた。

 聞けば会談にリオン大元帥は参加せずにオルバン大元帥とゲロイヤー、沈痛な面持ちのリヒテルなどが顔を並べ、挨拶もそこそこに地球へ降伏を迫ってきたのだという。

 

 バームの兵器である一つ目のエイのような母艦ガルンロール艦隊と一つ目のガンタンク擬きの戦闘ロボ・ズバンザー、そしてバルマーの兵器であるはずの“メギロート”の大群が会談を行った施設を包囲したものの、使節団の救出とバーム軍の撃退には成功したのが不幸中の幸いであろう。

 この際、竜崎博士はゲロイヤーによる狙撃こそ受けたものの生還し、ドーリアン外務次官も瀕死の重傷を負い、昏睡状態に陥りながらも生還している。

 

 会談に赴くにあたりリリーナ・ドーリアンを同行させており、ヘイデスとしてはこの際にリリーナの出自を伝えたのでは? と衝撃が抜けた後になってから思い至った。

 そうして混乱するヘイデスに更なる予想外の報告が齎された。それは地球に急接近してきたアクシズがサイド3――ジオン共和国に攻撃を仕掛けたのだという。

 しかもエンドラやムサイという母艦に加えガザC、ガザD、ガルスJ、ズサというおなじみのMSに加えてこちらにもメギロートが大量に含まれていた。

 

 幸いこちらもサイド3の自前の戦力で撃退に成功しているが、各サイドへアクシズが戦力を派遣し、制圧する危険性を考えなければならなくなった。

 そしてなによりバームとアクシズが歩調を合わせたように揃って地球へ攻撃を仕掛け、しかもメギロートを運用しているという事実に、ヘイデスは一人、私室で思考の迷宮に陥らざるを得ない。

 そうだ、母星を失って宇宙を放浪するバームも、地球圏から離れた場所に位置していたアクシズも、地球侵略の為の橋頭保とするにはなんと都合の良い事か!

 

「まさかゼ・バルマリィ帝国がこちらにいる? イングラムもリュウセイもいないんだぞ、この世界……」

 

 まさかサイコドライバーやSRX、トロニウムなしでバルマーとやり合う羽目に? いや、しかしとヘイデスが情報量の少なさとスパロボ知識がある為に考えられる可能性の多さに混乱していると、その日、最後の爆弾が彼に投じられた。

 

『ヘイデス総帥』

 

「レビル艦長? どうされました?」

 

 通信端末にレビル艦長が映し出される。その緊迫した表情にヘイデスは果てしなく嫌な予感に襲われたが、聞かずに済む立場ではなかった。これ以上何が起きたのか、と思いながら彼はレビルの言葉を待つ。

 

『どの通信帯でもいい。今すぐ外部と繋がっている通信機器を立ち上げるのだ。アクシズとバーム、そして彼らの主からの再度の宣戦布告だ』

 

「失礼!」

 

 ヘイデスはレビルからの通信を切り、端末を操作して外部との通信帯に切り替える。そうすればすぐにレビルの告げたモノが映し出された。荘厳な雰囲気の広間の片側に翼を持つバーム星人達が居並び、反対側には旧ジオンの軍服に身を包んだ軍人達が列を成している。

 

「バームとアクシズか! リヒテルにゲロイヤー、オルバン大元帥、それにミネバとハマーン!」

 

 オルバンとゲロイヤーは優越感に浸るような笑みを浮かべ、リヒテルは屈辱に耐えた顔だ。幼いミネバは必死に表情を取り繕い、その傍らに立つハマーンは無表情を維持しているように見えるが、その内心は屈辱に耐えているかのよう。

 そしてミネバの傍らに立つ壮年の男性に、ヘイデスは首を捻る。あんな男がZガンダムやZZガンダムに出ていただろうか? しかし、どこかで見覚えが……そうだ、外伝漫画!

 

「あのアクシズの……エンツォ、エンツォ・ベルニーニ大佐か!」

 

 ハマーンの父であるマハラジャ・カーンが統治していた頃のアクシズに於いて、力でもってスペースノイドの独立を勝ち取らんとする急進派の代表だった男だ。

 お膳立ては上手いが詰めが甘く、宇宙世紀83年にマハラジャの危篤などをきっかけにクーデターを起こすも鎮圧された筈の男である。原作でも鎮圧された後の処遇については不明だったが、この世界では生かされていたのだろうか?

 

「いや、それにしてもなぜさもアクシズの指導者だと言わんばかりの得意満面の顔であの場にいる?」

 

 心に海があったなら超ド級の嵐に襲われているヘイデスの耳に、何度も聞いた覚えのあるイケメンボイスが届く。バームとアクシズの兵士が並ぶその奥、豪奢な玉座に一人の男が腰かけていた。

 端正なる顔立ちに威厳と傲岸な雰囲気を併せ持ったその青年が、バームとアクシズを従える主なのだと一目でわかる。

 

「余はバルマー・サイデリアル連合帝国皇帝ラオデキヤ・ジュデッカ・ゴッツォ。地球人そして青き星に群がる異星の者達よ。汝らには二つの選択肢がある。

 我が帝国がこの銀河のみならず全宇宙の覇者となる為、余の下へと下り、共に覇道の道を歩むか、あるいは余に逆らい、敵となってこの宇宙から抹消されるか。

 しかしこの選択肢を選ぶ前に汝らは強者としての資格を得なければ、選別の場に立つ資格もない。故に争え。戦い、闘い、争い、より強者たることを示すが良い。そうして真に強者たる事を示したものにだけ、余は改めて先程の選択を問おう。

 青き争いの星よ、このラオデキヤの名とバルマー・サイデリアル連合帝国の名を死するその時まで常しえに刻むが良い」

 

(ラオデキヤが来た? α世界からのラオデキヤか? いや、バルマーとサイデリアルの連合? どういうこと? この世界のバルマー? それとも別世界のバルマー? 訳が分からん。

 いや、それよりもユーゼスの野郎はどこだ! ラオデキヤ艦隊の黒幕で一番ヤバい奴は!! こちとらサイコドライバーもアストラナガンもないんだぞ!)

 

 α世界の機動兵器を研究して進化した初代αのズフィルード、ゼントラーディの基幹艦隊を単独で壊滅できるズフィルード・エヴェッドも手に余る強敵だが、未完成とはいえ因果律を操作するクロスゲート・パラダイム・システムを搭載するジュデッカとそれを開発するユーゼスの知性と精神性を、ヘイデスはなによりも恐れていた。

 

 

「ラオデキヤが姿を現したか」

 

 どことも知れぬ場所、機動兵器のコックピットの中で銀の髪を持つ少年が誰に告げるでもなく呟いた。彼の声を聞くのは乗っている機動兵器のみ。

 

「イングラム・プリスケン、レビ・トーラー、リュウセイ・ダテ、彼らの存在しない世界であろうと、クォヴレーという存在は許されるのか。それを試す時は近い」

 

<続>

 

■魔竜機連合が結成されました。

■キャンベル・ボアザンが軍事同盟を締結しました。

■バーム星人が参戦しました。

■アクシズが参戦しました。

■バルマー・サイデリアル連合帝国が参戦しました。最低でもサイデリアル残党、バアル残党、バーム、アクシズによる連合勢力です。

■謎の少年が参戦しようとしています。

 




主人公大混乱!
α世界のズフィルードは真ゲッターやマジンカイザー、ガンバスターなんかも参考にしているはずですから、ヘイデスが警戒するのもそこらへんが理由ですね。特にガンバスター。
ゼントラーディ基幹艦隊を単独で返り討ちにするズフィルード・エヴェッドも滅茶苦茶ヤバイ、とヘイデスは大絶賛絶叫中です。
双子とフェブルウスが至高神ソルの力を完全に取り戻さないと危ないかも?

追記
スパンダー → ズバンザー へ修正。


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第二十二話 地球と宇宙ではこんなことが起きていたってさ

ヘイデスの知らなかったバームとの会談とサイド3襲撃に関してのお話です。


■共通ルート 第十二話 翼持つ者の嘆き

 

 バルマー・サイデリアル連合帝国の宣戦布告より時は遡る。

 バーム星人と地球側の使節団による最初の会談が行われたその場所は、いまや戦場と変わらぬ様相を呈していた。

 オルバン大元帥が挨拶もそこそこに自らの名前の下に地球へ降伏勧告とそれを飲まぬなら即時開戦という無茶な要求を突きつけ、それに地球側の使節団――竜崎勇博士やドーリアン外務次官は絶句しながらもなんとか話し合いを続けようとした。

 

 それをオルバンは不遜、不敬、不服と最初から一方的に攻めるつもりだったこともあり、連れて来ていた兵士達に使節団を人質とする為に拘束を命令し、これには地球側も抵抗した。

 幸い使節団とバーム兵の間に会談の行われていた部屋の外で待機していた護衛達がバーム兵ともみ合いながら突入し、そこへハガネから急遽駆け付けたゲシュペンスト・ファントム、アルトアイゼン・ナハト、ヴァイスリッター・アーベント、アークゲインらダウンサイジングロボットが援護に入り、なんとか使節団をその場から離脱させることに成功している。

 

 オルバンやゲロイヤーは使節団を容易くとらえられると油断していただけに、突入してきたロボットらには仰天し、その場で始まった大立ち回りに我が身が危ないと即座に施設からの離脱を決めていた。

 離脱するオルバンにはリヒテルも同行しており、施設の外に出て待機させていた小型艇に乗り込む段になって、オルバンは足を止めてリヒテルを振り返る。

 

「リヒテルよ、バームの先陣としての役割をお前に任せる。地球人共を血祭りにあげ、その身の程を弁えさせるのだ」

 

「……はっ」

 

 意気込むオルバンに対してリヒテルの返答は芳しくなかったが、オルバンはそれを叱責するのではなく諭すように語り掛ける。

 

「誇り高きそなたのことだ。帝国の尖兵であるかのように、地球人と戦うのに納得がゆかぬのだろう。だが今はその矜持を捨てるのだ。

 見よ、この青き空を。小バームとは異なる本物の空だ。感じよ、この風を、大地を! 循環システムの作り出す浄化された大気ではない。作り出された人工の大地ではない。

 ラオデキヤ皇帝はバームとアクシズに対し、この度の地球侵略で大いに貢献した方に、この星の統治を任せると仰せになられた。

 同じ星の同胞を裏切ったアクシズの者共よりも先に我らが地球征服を成し遂げれば、冷凍装置で眠る十億の同胞にこの地球という星を与える事が叶うのだ!」

 

 母星を失い、恒星間航行が可能な小バームという人工天体に乗り宇宙をさ迷うバーム星人にとって、新たな母星を見つけ出す事は種族全ての悲願だ。

 放浪の最中バルマー・サイデリアル連合帝国と遭遇し、圧倒的な質と物量の前に屈服して、こうして地球侵略の尖兵として利用されているが、その褒賞として地球が得られるのならば戦う価値はあると、オルバンはさも正論、これこそがバームの正義であるかのように語る。

 

「帝国との戦いの最中、急病に倒れ今も昏睡状態に陥っておられるリオン大元帥も、地球が我らの新たな母星となった事をお知りになれば、ましてやそれが実の息子であるそなたの手でなされたとあればお喜びになる」

 

「申し訳ありません、閣下。このリヒテル、バーム十億の民の為、私心を捨てて戦う覚悟を忘れておりました。今、閣下のお言葉を耳にして目の醒めた思いでございまする。

 こうなればラオデキヤ皇帝の約定を信じ、アクシズよりも早くこの星を我らの手で攻略して見せましょうぞ」

 

「分かってくれたか。まだ年若きそなたであるがバームに於いて最も優れた指揮官であることを知っておる。だからこそそなたを地球攻撃軍の総司令官に任命したのだ。そなたを信じるぞ、リヒテルよ!」

 

「ははっ!」

 

 ようやく覚悟を決めたかこの若造が、とオルバンは内心で毒づきながらゲロイヤーを伴って小型艇に乗り込み、大元帥専用のガルンロールへと帰還する。

 地球人への宣戦布告の為、わざわざこうして危険な前線に出てきたが、本来、大元帥というバームの指導者の地位にある彼が前線に出る必要はない。故にオルバンはそそくさと会談場を後にするのだった。

 それを見送り届けてから、リヒテルは副官のライザが乗るガルンロールが頭上に来たのを見上げ、そして大量のメギロートとズバンザーの布陣に対し、果敢に戦いを挑もうとしている地球のロボットらを見て呟いた。

 

「地球人よ、許せとは言わぬ。だがバーム星人を憎むのならこのリヒテルただ一人を憎んでくれ」

 

 リヒテルの胸の内には原作において父を暗殺し、惑星統合もままならぬ未開の種族という地球人への憎悪と偏見はなく、連合帝国に敗れ、その走狗となり果てて戦う自分への無力感と地球人への罪悪感に満たされていた。

 一方、リヒテルのそんな心境など知らず、これまでの侵略者同様に対話の余地もなく宣戦布告してきたバームに対し、地球側は戦意を燃やしていた。

 これまでの侵略者の先例を鑑み、戦闘を想定して控えていたのは、おなじみのスーパーロボット部隊にハガネ、アーガマ・クラップ級からなるエゥーゴ・カラバ部隊、それに極東支部のMS、MZからなる機動兵器部隊である。

 

「父さんは、使節団の人達は無事なのか!?」

 

 一矢は既に数十回の実戦を重ねたダイモスに乗って出撃し歴戦の戦士となっていが、使節団の代表を父である勇が務めていたとあって、心穏やかではいられなかった。

 彼に答えたのはハガネのレビ田……じゃなかった、レビル艦長である。落ち着けと諭すのは簡単だが、それよりも彼の求める情報を伝えて宥める方が効果が高いと経験上知っている。

 

「竜崎博士をはじめドーリアン外交官ら使節団の方々はこちらで保護した。竜崎博士は重傷を負ったが、一命は取り留めている。本格的な治療を行う為にもこの場の戦闘を切り抜ける必要がある。分かるな?」

 

「くっ、父さん。分かりました。……バームめ、会談を求めておきながら一方的に宣戦布告した上に使節団の人達を手にかけようとするとは。許さん、絶対に許さんぞ!」

 

「一矢さん、カッカしすぎて飛び出すんじゃないぜ! 俺達も連邦軍の人も居るのを忘れないでくれよ!」

 

 そう言ってセイバータイガー隊と共に飛び出したのは、マジンガーZ、アフロダイA、ミネルバX、ボスボロットだ。ただしマジンガーチームはそれぞれが光子力エンジンを積んだバイクに乗り、ボスボロットだけはバギーに乗っている。

 目下、マジンガーZに飛行能力を与えるべくジェットスクランダーのテストが行われているが、その間、急場しのぎとして用いられているのがこの光子力バイクと光子力バギーだ。

 

 マジンガーチームはロボットのサイズがMSと近く、従来のSFSの使用も可能だったが、超合金Zの堅牢さを頼りに一手に敵の攻撃を引き受けながら無尽蔵のエネルギーと膨大な火器で敵を蹴散らすその戦い方から、SFSではすぐさま撃墜されると判断し、マジンガーチーム専用のサポートマシンが開発されるに至った。

 

 元々甲児らがバイクに乗っていたこともあり、彼らの乗り慣れたバイクをそのまま巨大化したような外見だが、前輪と後輪の左右に光子力砲を一つずつ合計四つ備え、ライト部分には光子力バルカン、後部には光子力ミサイルポッドで武装している。

 ボスボロットの光子力バギーも光子力連装砲や光子力ミサイルポッドで武装し、マジンガーZやアフロダイAのみならず各機動兵器へ武器弾薬を補給する移動武器庫も兼ねている。

 

「甲児君こそマジンガー用のバイクが手に入ったからって、調子に乗ったら痛い目を見るぞ!」

 

「分かっているさ、大介さん。けど俺は悔しいぜ。せっかく話の出来る宇宙人と出会えたと思ったのに、結局はこうして戦うことになるなんて。この宇宙にいつか親しい友人になれる人達は居るのかって、不安になっちまう」

 

「甲児君。……確かに今の地球はあまりに多くの異星人からの侵略を受けている。けれどどうか諦めないでくれ。この広い宇宙には地球人と良き隣人になれる種族もたくさんいる筈だと」

 

「……ありがとう大介さん。そうだな。いつか宇宙のどこかで出会う日の為に、今は戦うぜ!」

 

「ああ、そうだ。宇宙には地球の人々と仲良くなりたいと願っている宇宙人もいるさ」

 

 一矢は勇の無事と甲児からの声掛けで多少は落ち着きを取り戻し、目の前のズバンザーとメギロートの軍勢を睨み据える。ガルンロールは離脱したものを除けば六隻、機動兵器の総数は百機を超えるだろうか。

 ズバンザーのアームキャノンの雨を掻い潜り、肉薄した状態から次々と空手の技で破壊して行く一矢は、ふと感じた疑問を口にする。

 

「こいつらいかにも地球外の兵器らしい見た目だが、目玉戦車と白いカブトムシとで印象が随分と違うな?」

 

 この時はラオデキヤからの宣戦布告前だったが、実際に戦場で戦闘ロボを目の当たりにする一矢や他のパイロット達からしてみても、ズバンザーとメギロートは同勢力が開発したとは信じがたい差異が見受けられた。

 何気に飛行も可能なズバンザーとメギロートの砲火、そして後方に控えるガルンロールからの攻撃と、それに対するハガネ艦隊らの反撃によって戦地となった会談場は見る間に荒れ果ててゆく。

 

「超電磁ヨーヨー!」

 

「超電磁ゴマ!」

 

「ゴッドゴーガン!」

 

 ダイモス同様すっかりと実践慣れしたコンバトラーV、ボルテスV、ライディーンからも襲い来るメギロートとズバンザーへ必殺の武器が放たれて、地球の科学力の破壊力を見せつけている。

 そんな中でコンバトラーVのメインパイロットである豹馬は、光子力バイクを乗り回すマジンガーZを見てついつい愚痴を零す。

 

「いいよな、マジンガー。次から次に新しい武器やバイクを作ってもらってよ」

 

「ほんまやなあ。コンバトラーやボルテスなんか、ほとんど変わっとらんで」

 

「そんな愚痴を言っても仕方なか。コンバトラーVもボルテスVも凄かロボットたい」

 

「二人とも本気で言っているわけじゃないんでしょう? ほら、戦闘中にお喋りしていないでよ!」

 

 大作とちづるに宥められる豹馬と一平に、自身も各スーパーロボットの研究と強化に携わっている小介がフォローを入れる。

 

「コンバトラーVもそうですがほとんどのスーパーロボットは変形・合体機構がありますから、内部に手を入れるのも増設装備を用意するのも難しいんですよ。

 ゲッターもそうですが、コンバトラーVとボルテスVを強化するならバトルマシンそのものを改造するか、合体に新たなバトルマシンを組み込むかしないと。でもそうなると合体シークエンスの見直しも必要になるから、一朝一夕では出来ないんです」

 

「ちぇ、それじゃあ勝平達のザンボット3もおんなじ理由で難しいんだろうな。でもよ、それならライディーンは? あれは変形するだけだろう」

 

 豹馬は口を動かしながら、メギロートの放つミサイルをコンバトラーVに両腕をクロスして受け、お返しとばかりにVレーザーを放って纏め二機のメギロートを撃墜する。

 

「それが、ライディーンは動力から装甲から古代ムーの産物ですから、現代の技術では再現できない部分ばかりなんです。それにライディーン自体が武器の増設を拒否していて、なんでも付け加えようとした武装が高熱で溶かされたとか。ですよね、洸さん」

 

「ああ、どうもライディーンは納得してくれなくてね。ヘイデス総帥からは無理にライディーンを説得する必要はないと言われているよ。おっと、ゴッドプレッシャー!」

 

 ライディーンの放った圧力波にズバンザーが破壊される中、メギロート達が四方八方から組み付いて動きを拘束しようとするが、コンバトラーVは超電磁タツマキを放ちながら振り回して絡め捕り、勢いよく地上のズバンザー達へと叩きつける。

 

「グランド・スター各機、コンバトラーが動きを止めた敵機へ照準合わせ、撃て!」

 

 損傷によって動きの止まった敵機へオウカらグランド・スター小隊のストレイターレットの銃弾が殺到し、次々と撃墜する。射撃下手なアラドも動きを止めた敵機を相手に外しはせず、撃墜スコアを一つ二つと稼ぐ。

 

「うへえ! そういや洸がライディーンには意志があるみたいなことを言ってたっけ」

 

「一応、洸さんがフェードインした後で、作っておいた武器を手に持つくらいなら大丈夫なんですけれど、元々ライディーンには強力な武器が内蔵されていますから、必要性は薄いと判断されています」 

 

「ふうん。だからマジンガーZは色々と都合がつけやすいってわけか。そこまで言われりゃ仕方ねえと納得するしかねえや」

 

 それだけ言うと豹馬は気分を切り替え、地上でズバンザー達を次々と左手のドリルで貫いているゲッター2へと加勢に向かった。

 

「うおおおお!」

 

 ようやく友好的な宇宙人と遭遇か、という期待を裏切られても心は折れず、それをバネに燃やして闘志と気力を上げる面々の中で、やはり怒りに燃える一矢とダイモスの奮闘ぶりはすさまじい。

 まるで新作アニメの第一話で主人公ロボの強さをアピールするかの如く、ダイモスの拳と足が振るわれるたびにズバンザーとメギロートが物言わぬガラクタへと変わってゆく。

 

 元々ダイモスと一矢にはそれだけの力があったが、この世界においてはこれまでに数十回の戦闘を経験し、ダイモスで戦い慣れていたのも理由の一つだ。

 元々メギロートは単一編成の軍団だけで惑星を制圧可能な高性能機だが、スパロボ知識と圧倒的な資金力による技術と戦闘能力の底上げがなされた機動兵器部隊と一騎当千のスーパーロボット軍団を前にしては、役者が不足している。

 

「ダイモスばかりにいい格好をさせられるかよ!」

 

「忍、一人で突っ込むんじゃないよ!」

 

「沙羅もつられて飛び出していたら、一緒だよ!?」

 

「フッ、獣戦機隊らしいと言えばらしいが……」

 

 ダイモスの奮闘ぶりは獣戦機隊の藤原忍にも火を着けて、彼のイーグルファイター、沙羅のランドクーガー、雅人のランドライガー、亮のビッグモスがそれぞれノーマル、アグレッシブ、ヒューマノイドの三形態に自在に変形しながら敵陣へ突っ込んでゆく。

 いささかならず協調性の欠ける彼らを援護するのも、スーパーロボットのパイロット達や極東支部の面々からすれば慣れたもので、またかあいつらと思いながら的確に援護射撃や壁役を担ってゆく。

 

「またあいつらか! ゴースト2、ゴースト3、獣戦機隊のフォローに回るぞ!」

 

「了解、直接火力支援開始します!」

 

「カウント3、2、1……ファイヤ!」

 

 こう命令を発したのは極東支部所属のキタムラ少佐だ。

 彼のゲシュペンストMk-Ⅱは、最近開発された換装装備である格闘戦特化のタイプGに換装されていた。

 両腕のプラズマステークが強化型のプラズマバックラーへ換装され、胸部にはメガ・ブラスターキャノンを搭載と格闘戦能力を強化しつつ全体的な火力の強化と耐久性の向上、増加スラスターにより運動性の強化にも成功している。

 

 強化のタネはゲシュペンストMk-Ⅲと正式仕様のバルゴラ配備までのつなぎとして、現行のゲシュペンストMk-Ⅱの延命と強化の為に計画されたハロウィンプランの成果である換装装備“ハロウィン・コスチューム”略称HCだ。

 カイとは異なりC型のHCを装備したゲシュペンストMk-II二機が、フリー・エレクトロン・キャノンを一射した後、カイの機体を筆頭として獣戦機隊の後へと続く。

 

「問題児共め。斬り込み役には適任だが、アラドあたりには悪い見本だ、まったく!」

 

 そんな中、獣戦機隊の隊長を任されたシャピロ・キーツ少佐は、例によって原作の機体よりも倍のサイズに巨大化されたMZシャドーフォックスに搭乗しながら、メギロートに意識を割いていた。

 既存の獣戦機と重複しないよう選定された新型ゾイドはこれまで素晴らしい性能を発揮して、主にムゲ帝国の機動兵器を破壊してきたが、シャピロはその戦闘能力を発揮するよりも分析に重きを置いていた。

 

(あの甲虫型の白い機体、装甲が再生している? それにどう見てももう一方の機体とは技術系統からして違う。場合によってはバームだけでは済まんな)

 

 メギロートには装甲材に自律金属であるズフィルード・クリスタルが用いられている為、それなりの自己修復機能があり、それをシャピロの観察眼は見逃していなかった。

 ただまあ、地球側の機体が基本的に大火力の火器で武装している為、修復が間に合わない程の損傷を負うか撃墜されるメギロートばかりであったから、修復機能もあまり功を奏してはいなかったりする。

 

「ふ、いずれにせよ俺が居る限り、たやすく地球を征服できるなどと思わないことだ」

 

 シャピロは不遜ともいえる笑みを浮かべながら、シャドーフォックスの30mm――ではなく“240”mm徹甲レーザー“ガトリング”でメギロートを蜂の巣にする作業に移った。

 この世界においてシャピロの宇宙からの脅威に対する警告が真摯に受け止められ、彼の能力と先見性を大いに称賛された事で、その自尊心が大いに満たされている。

 

 事前にヘイデスが、あいつ裏切るからそうならないように評価するのと、鼻っ柱をへし折るのが一番だと考えて色々と行動した結果だ。

 現在、彼の鼻っ柱は今一つ折れていないが、少なくとも評価はしてきたのに加え、侵略者達を相手に地球が大奮闘している事もあって、今のところ裏切る予兆は見られない。

 

 ヘイデスの思いつく、この世界に居るシャピロの鼻っ柱をへし折れる天才となると、シロッコやトレーズなのだが、彼らとシャピロの面談のセッティングが出来ずに今日に至っている。

 シャピロの持つ情報を考えるとカウンタートラップとして利用するにせよ、こちらの心臓には大変悪いので、どうにか裏切らせないようお膳立てしなければ、とヘイデスは苦心している。

 

 数の上ではバーム側の半分ほどの地球連邦軍と善意の協力者達であったが、彼らの戦闘能力は数の不利を補って余りあった。見る見るうちに撃墜されてゆく自軍の兵器に、ガルンロールに移ったリヒテルは腕を組んで思案している様子。

 そのリヒテルの様子を、額に小さな蛇の飾りを付けたリヒテルの副官ライザは、心配そうに見ている。

 リヒテルを救出してから部隊に戦闘を命じたライザだが、今戦っているのが地球人の中でも最強の戦力の一つと事前の調査で知ってはいたが、かくも強力だったかと空恐ろしい気持ちになっている。

 果たして気性の荒いところのあるリヒテルの目にはどう映っているものか……。

 

「強いな。かような勇者達があの時、小バームにおればあるいは……」

 

「リヒテル様?」

 

「忘れよ、世迷言を口にしたまでだ。メギロートは残り四割、ズバンザーも残余は二割か。各艦に通達、初戦はこれまでだ。これより海底魔城へと帰還する。一時、大気圏外まで上昇し、地球人に海底魔城の位置を悟られぬようにせよ」

 

「よ、よろしいのですか、リヒテル様!?」

 

「構わぬ。ただし余のガルンロールはヘルモーズへと向かわねばならん。ラオデキヤ皇帝の宣戦布告に同席するよう命じられておるからな。ライザよ、余が不在の間、海底魔城はそなたとバルバスに任せる」

 

「はは」

 

「地球軍に通信を繋げよ」

 

 リヒテルがガルンロールから戦場に居る地球側の機体に通信を繋げた時、シュメシとヘマーはバアル残党程ではないが、嫌な感じのするメギロートを狙って入念に破壊している最中にあった。

 

「あ、翼のお兄さんからだよ、ヘマー」

 

「うん、なんだかすごく悩んでいるみたいだね、シュメシ」

 

『地球の戦士達よ、余は栄えあるバームの地球攻撃軍総司令リヒテルである。すでに我らが指導者オルバン大元帥の名のもとに地球への宣戦布告がなされた。

 我ら眠れるバーム十億の同胞の為、そなたらの母星たるこの地球を我らのものとせんと、今日より我らは修羅となってそなたらと矛を交える。

 だが、まずはそなたらの精強さを褒め称えよう。我らの戦闘ロボ・ズバンザー、そしてメギロートの大群を相手に数で劣りながら一歩も退かぬ戦いぶりは天晴という他ない。

 そなたらが母星と同胞の為に戦うように我らもまた同胞の為に戦う覚悟がある。地球人よ、このリヒテルの顔と名を努々忘れるな。これよりそなたらを打ち倒し、地球を新たなバームの母星へと変える者の顔と名をな!』

 

 かくてバーム星人との初戦はリヒテルからの宣言を最後にバーム側が撤退し、平和的友好を目指した会談が宣戦布告の場となる不幸と使節団のメンバーに負傷者が出るという不幸はあったが、戦闘自体は地球側の勝利と言える内容で終わるのだった。

 なおズフィルード・クリスタルは一欠けらも残さずに、プルート財閥が回収した。

 

■共通ルート 第十三話 真のジオン

 

 時をほぼ同じくしてジオン共和国首都のあるサイド3のとある宙域では、ジオン共和国所属の技術試験部隊がその職務を全うしている最中にあった。

 旧ジオン公国技術試験課に所属していた第603技術試験隊は共和国へと移行した後、母艦の名前を取ってヨーツンヘイム隊に新生し、技術試験を主とした任務に就いている。

 

 元は民間の貨物船だったヨーツンヘイムは、一年戦争の間も見事に戦い抜いた歴戦の船だ。パプア級を上回る積載量と確かな実績を買われて、今も共和国の大切な艦として運用されている。

 そのヨーツンヘイムの艦橋では、オリヴァー・マイ・キャディラック技術大尉とヘパイストスラボ・ムンゾ支所所属のクリスチーナ・マッケンジー・ワイズマンがテスト中の機体の様子をモニタリングしていた。

 

 以前、ゴップが言及していたジオン式ゲシュペンストMk-IIと新しく再設計された機体がヨーツンヘイム艦橋のメインモニターに映し出され、あらゆるデータが収集されている。

 ジオン式ゲシュペンストMk-II――正式名称ゲクト(おそらくザク、ゲルググ、ゲシュペンストあたりをミックスした名称ではないか、とヘイデスは推測している。あるいは武者ガンダムシリーズの殺駆頭?)は、頭部が耳はそのままにギラ・ドーガを思わせる線を描き、当然のようにカメラアイはモノアイへ。

 

 右肩にはザクⅡよろしくビームシールド発振器を内蔵した可動式実体盾を、左肩にはプラズマステークならぬプラズマホーン搭載の肩アーマーを備えている。

 プラズマステークは両手から、ビームシールドは右肘から撤去され、代わりに左手には右肩同様ビームシールド発振器とシールドマシンガンを内蔵したウェポンラック兼用の実体盾を装備し、盾にはシュツルムファウスト二本、ビームアックスを懸架している。

 スラッシュリッパー六基は外され、その分、大型化したバックパックを採用し、大量の推進剤を詰め込む事で宇宙空間における運動性や継戦能力が向上している。

 

 その他に手首内側にビームサーベル兼用のビームガンとビームマシンガンを標準装備している。オプションにはザクⅡを模倣するかのように三連装ミサイルポッド、実弾式のゲクトバズーカ、クラッカーなどのラインナップがある。

 あくまでジオン共和国防衛の為の機体として割り切った改修が行われた結果、宇宙空間での運用を前提とした仕様となっている。

 ヘイデスなどはゲシュペンストとギラ・ドーガを足して二で割ったような外見だ、と感想を抱いている。

 

 今回、オリヴァーとクリスがモニターしているのは、ゲクトと共に宇宙空間を飛翔し、ランダム機動を取る標的のポッドに攻撃を加えている機体だ。

 オリヴァー同様に一年戦争時代からヨーツンヘイムに乗っていたモニク・キャディラック少佐とヒデト・ワシヤ大尉が乗っているヅダ――の再設計機RF(リファイン)ヅダだ。

 

 ヅダはザクと主力機の座を争った機体だが、『エンジン推力を一定以上に引き上げると制御が効かず機体が分解する』という致命的な欠陥とザクの1.8倍のコストにより、コンペ落ちした機体である。

 欠陥機の烙印を押されたヅダであるが、現在、ゲクトなどの例外を除いておおっぴらに新型機を開発できないジオン共和国では、一年戦争中に開発された機体を現在の最新技術でリファインし、生産と試験を行っている。

 

 戦場が限定される為、本格的に生産される機種は絞られているが、既にRFザクとRFゲルググの生産は決定されており、ゲクトとRFゲルググがハイローミックスのハイとして。RFザクがローを担うものとして順次、パイロット達の機種転換が行われている。

 これまでのジオン共和国の主力機はゲシュペンストの他は払い下げのハイザックと新規開発されたゴブリンという小型MSである。このゴブリン、通常のMSの製造コストの2/3ながら一年戦争時のMSより高性能な為、ジオン共和国では長い間、重宝されている。

 

 このような事情からジオン共和国では主力機の一刻も早い更新が求められていた。地球連邦からゲクト開発が公的に認められ、旧式MSのRF計画が実行に移されたのはまことに慶事であった。

 RFヅダもヨーツンヘイム隊の試験結果次第では、少数生産ないしは主力機として採用の可能性もある。

 

 さてこのRFという単語を見れば、ガンダムF90に関係する火星に拠点を置くジオン残党オールズモビルが連想されるが、何の因果かRFザク、RFゲルググ共にオールズモビルで運用されていたものと全く同じデザインとなっている。

 宇宙世紀120年代が舞台となった原作ではクロスボーン・バンガードの技術協力があるが、こちらではプルート財閥と地球連邦軍の技術協力によって開発されている。もちろんこのスパロボ時空における異常な開発速度があればこその機体だろう。

 

 RFヅダは原型機同様、他のRFシリーズを凌駕する加速性能を有し、常人の乗れるトールギスもどきといった風情だ。

 デブリの合間を高速で駆け抜け、次々と標的を撃ち抜いて行くRFヅダは新規開発された冥王星エンジンの制御も予定通り問題なく行われていて、RFの名に相応しい再生と新生を果たしたのがはっきりと分かる。

 

「ふう」

 

 予定スケジュールを順調にこなしてゆくRFヅダの姿に、優しげな風貌のオリヴァーは安堵の吐息を零す。戦闘の危険性が無いとはいえ、機動兵器の試験とはどんな事故が起きるか分からないと、彼は経験上よく知っていた。

 オリヴァーのそんな様子にゲクトのモニターをしているクリスは、小さな笑みを浮かべる。

 ヨーツンヘイム隊に出向してきた当初は、かつてガンダムNT-1のシューフィッターを務めたエリートパイロット、そしてあのプロメテウスメンバーということで随分と距離を取られたものだが、ジオン出身の旦那のお陰もあって今では打ち解けている。

 

「ふふ、緊張しますか、オリヴァー大尉」

 

「あ、これはお恥ずかしい。ヅダは一年戦争でも関わった機体ですし、機体の経歴が経歴ですからね。最新技術と最新素材を用いているとはいえ、やはり油断はできません」

 

「そうかもしれませんね。それにこれからジオン共和国を守る大切な役目があるのですから、この試験で少しでも良い機体であると分かると良いですね」

 

「ええ。他の隊でもグフやドム、ギャン、ケンプファー、イフリート、ヒルドルブ、ズゴック、ゴック、ヨルムンガンドと例を挙げればキリがありませんが、多くの機体のRFテストが行われています。

 共和国の国力を考えると追加できるのは多くても三種程度でしょうが、それが国家と国民を守るとなると気は抜けません」

 

「ご立派です。侵略者達は地球に目を向けているけれど、いつ宇宙にも手を伸ばすか分かりませんものね」

 

「ですからゲクトの開発と生産が許可されたのは幸いでした。ジオンの人間としては口惜しいですが、元となったゲシュペンストの設計が優秀だったお陰で、ゲクトは凄い機体に仕上がりました。

 特にプロメテウスプロジェクトに参加していたテレンス博士が開発計画に参加してくださったお陰で、多くの新技術と既存の技術の刷新が叶いましたからね」

 

「そう言ってもらえるなら、ヘパイストスラボから出向してきた甲斐がありました。テレンス博士も“俺のカタールを上回る機体を作ってやろうじゃないか”とおっしゃっていましたし、それにバーニィも故郷の役に立てたと喜びます」

 

 そのバーニィはというとゲクトに乗り込み、RFヅダと共に宇宙を駆けている最中だった。

 予定されたスケジュールはそのまま無事に完了し、RFヅダは優良な試験結果を記録する事に成功する。

 実用化の可否を判断するのはオリヴァーの仕事ではないが、正しい記録を伝えるという仕事の本分を誤ることなく果たすのは間違いない。

 ヨーツンヘイムの艦橋に満ちていた緊張の糸がゆるりとほぐれる。

 推進剤を半分以上残すゲクトとRFヅダ二機がヨーツンヘイムへの帰投コースに機体を乗せた時、同時に試験していた観測ポッド・バロール三世のデータを受け取った開発者のリヒャルト・ヴィーゼ元技術大学教授が、緊張を滲ませる警告を発した。

 

「艦長、バロール三世が艦影を捕捉したぞ! 連邦のものでも旧ジオンのものでもない!」

 

 リヒャルトの報告にヨーツンヘイム艦長マルティン・プロホノウはにわかに表情を険しくする。二十年以上を船乗りとしてキャリアを積み、一年戦争以後は不本意ながら軍属としてヨーツンヘイムの艦長を務めてきた男の勘は、この報告に危険な臭いを感じ取っていた。

 

「バロール三世の観測データをこちらへ! ゲクト、RFヅダは急ぎ帰投し推進剤と弾薬の補充を急げ。各員第二種戦闘配置! 近海のパトロール艦隊と本国へ連絡を」

 

 マルティンの勘は正しく、ジオン共和国首脳部へこの一時間後、アクシズのエンツォ・ベルニーニ“大将”からミネバ・ラオ・ザビを主君とする真ジオン公国の建国と地球連邦政府並びにジオン共和国、各サイド自治政府への宣戦布告が突きつけられたのである。

 大急ぎで帰投したゲクトとRFヅダの補給と点検がかろうじて終わったタイミングで、バロール三世の捉えた未知の艦影群がヨーツンヘイムとの距離を狭め、にわかに艦内の空気が戦場のソレに変わる。

 

「目標艦捕捉、距離45,700、数五、ライブラリに照合する艦影なし。MSと思しき熱源の発艦を確認。方位3-5-2より本艦へ急速に接近中」

 

「総員、第一種戦闘配備、MS隊を緊急発進させろ。ビーム撹乱幕を本艦の前方二十kmに展開。友軍が駆け付けるまでの時間を稼ぐ。MS隊は無理をするな」

 

「艦長、私も出ます」

 

 オペレーター席に座していたクリスが立ち上がれば、マルティンは重々しく頷き返した。

 

「民間人である貴女に頼むのは気が引けるが、よろしくお願いする」

 

「お任せを!」

 

 トン、と床を蹴ってクリスは格納庫で眠る自分のゲシュペンストMk-IIへと急いだ。先に発進したバーニィのゲクト、モニクとヒデトのRFヅダは未知の艦隊から出撃した機動兵器のインターセプトコースに入る。

 

「いよいよ噂の侵略者がジオンにもやってきたのかな?」

 

 と普段は部隊のムードメーカーであるヒデトが未知の敵への恐れを滲ませて、つい堪えきれずにモニクとバーニィへと語り掛ける。

 

「地球じゃ相当酷いことになっているって話ですからね。前からいつかジオンにもと言われていましたし」

 

 バーニィは一年戦争時よりも階級が上がり、中尉となっているがこの面子の中では一番下だ。それに兵士としてのキャリアも一番短い。

 

「二人とも、話はそこまでだ。敵機動兵器が加速した。そろそろ来るぞ」

 

 モニクが叱咤を飛ばし、機体の正面にリンクしたバロール三世の光学観測映像を注視する。そこには砲台に足を生やしたピンクとパープルが基調の機体――ガザCとメギロートの混成部隊が映し出されていた。

 ガザCは三機編隊を厳守し、メギロートはガザCを守るように布陣している。この時、ヨーツンヘイム隊以外のパトロール部隊もガザDやガルスJ、ズサといったMSを擁する真ジオン公国軍の奇襲を受けていたのである。

 

「数はピンクの機体が九、白い虫が十二か。クリスのゲシュペンストMk-IIを入れても二十一対四とは、ア・バオア・クーの時を思い出すな……」

 

 モニクがヘルメットの中で険しい表情を浮かべる間に、遅れて発進したクリスのゲシュペンストMk-IIが追いつく。

 彼女の下にもHCは届いており、ベーシックなN型に換装している。長銃身を折りたたんで二種類の攻撃方法を使い分けるフォールンディング・ツーウェイ・キャノン(F2Wキャノン)が主武装だ。

 

「モニク少佐、ヒデト大尉、バーニィ、クリスチーナ・マッケンジー・ワイズマン、戦線に加わります」

 

「助かる。バーナード、言うまでもないがお前が彼女のフォローをしろ。腕前はクリスの方が上だがな」

 

「分かっていますよ!」

 

 とモニクにからかわれたバーニィが大きな声で返事をするのに、クリスはくすりと笑う。

 ジオン共和国側が迎撃態勢を整える一方で、真ジオン公国艦隊の司令は、かつての母国へ攻め込む境遇に苦虫をまとめて百匹も噛み潰したような表情を浮かべていた。

 とても軍服とは思えないデザインの軍服に袖を通し、胸元にバラを飾ったやや気障ったらしい美形の青年である。

 

「マシュマー様、こちらの第一陣が敵MS部隊と交戦を開始しました」

 

 クリスの放ったF2WキャノンのロングレンジビームがガザCとメギロートを撃墜したのを皮切りに、両陣営は遠慮のない砲火を交わし合い始める。

 マシュマーに報告を告げたのは副官であるゴットン・ゴーだ。ゴットンは苦行の最中にあるような上官に他のブリッジクルーには聞こえないよう声を潜めて尋ねた。

 

「よろしかったのですか? 第一陣は全て無人機ですが……」

 

 メギロートを含めガザCにパイロットは一人も乗っていない。帝国からの技術供与によって開発された人工知能によって、動かされているのだ。この艦隊の機動兵器の内、有人機の割合は三割にも満たない。

 

「構わん。こんな戦いでパイロットを失ってたまるか」

 

「マシュマー様……声をもっと小さく!」

 

「ふん! ハマーン様とミネバ様を人質にとられていなければ、今すぐにでもあの不忠者の首をこの手で!」

 

「マシュマー様、だから声が大きすぎますってば!」

 

 ゴットンが慌ててブリッジの様子を見回すが、幸いマシュマーの心の底からの本音を聞いていた者はいないようだった。もっとも、聞こえていたとしても聞こえていないふりを誰もがしただろう。

 かつてクーデターに失敗して拘束されていたエンツォが、バルマー・サイデリアル連合帝国にアクシズが制圧されたのをきっかけにミネバの摂政の地位を得て、アクシズの新たな指導者となったのを快く思わない者は少なくない。

 

「マシュマー様、接近する熱源を感知。ジオン共和国のムサカ級と思われます!」

 

「む、数は?」

 

「ムサカ級二、不明艦一の三隻です。MSが先行して発艦しています。先の貨物船から発艦したMS部隊と合流する動きを見せています」

 

「残りの無人機部隊を投入しろ。有人機は艦隊直掩に徹せよ。今回はいわく挨拶程度だそうだからな。あくまで本番ではないぞ」

 

 とことん不機嫌なマシュマーの指示に従い、各エンドラ級は残していた無人機部隊を展開する。その一方で、数の不利を機体の性能差と技量で補っていたヨーツンヘイム隊へ、救援に駆け付けた共和国のMS部隊が合流していた。

 

「待たせたな、ヒヨッコ共!」

 

 懐かしい声で通信を繋げてきたRFゲルググに、モニクとヒデトが反応する。対艦ビームランチャーやビームマシンガンを撃つRFヅダの手が止まり、思わずそちらへと機体のカメラアイを振り向ける。

 

「カスペン大佐!? 援軍ってカスペン大佐の部隊だったんですか!」

 

 ヘルベルト・フォン・カスペン大佐。ア・バオア・クーの決戦を前に第603技術試験隊を編入したカスペン戦闘大隊を率いていた指揮官だ。

 モビルポッド・オッゴに乗る年少兵達を率い、オリヴァーらと共にア・バオア・クー決戦を戦った人物で、最終的に撤退する際に地球連邦軍に包囲されるも、双方が停戦命令にすぐさま従ったことで一命を取り留めている。

 

「貴様らよりも小さいヒヨッコ共の指導を行っているところだったのだがな。旧知の貴様らの危機とあっては駆け付けぬわけにはゆくまい! ギルボア、エルヴィン、私に続け!」

 

 気炎を吐くカスペンのRFゲルググに続いて、マシュマー側が不明艦としたガランシェールという元は航宙貨物船だった改装艦に所属するギルボア・サントと――

 

「エルヴィン?」

 

 モニク・キャディラックの実弟であるエルヴィン・キャディラックの乗るRFザクが、ジオンの名を騙るガザC部隊とメギロートへと挑みかかる。また彼ら以外にもムサカやガランシェールから発艦したゲシュペンスト、RFザクが続く。

 

「こんな時になんだけれど、義兄さんによろしく!」

 

 カスペンに続くエルヴィンのRFザクから一方的に伝えられた通信内容に、モニクは思わず戦場であるのを忘れて呼びかけていた。

 

「待ちなさい、エルヴィン!」

 

「モニクさん、気持ちは分かりますが戦闘が終わってからでないと!」

 

 残された唯一の肉親であるエルヴィンに、思わずモニクの動きと心が乱れるのをすかさずクリスがフォローを入れて立て直させる。これで目の前でエルヴィンが戦死したといった状況なら、それでもモニクは茫然自失としたろうが、幸いそこまで事態は深刻ではない。

 

「す、すまない。思わず取り乱してしまった。ヨーツンヘイム隊はこれよりカスペン大佐の部隊と協力し、敵性勢力を撃退する。各員、全力を尽くせ!」

 

 こうしてヨーツンヘイム隊がカスペン隊との協力によって、やる気のないマシュマーの部隊を退けたように、同じく別部隊から侵攻を受けていた他のジオン共和国の部隊もまたジョニー・ライデン率いる新生キマイラや黒い三連星、ランバ・ラル隊、シン・マツナガ隊、バーニィの古巣であるサイクロプス隊、荒野の迅雷ヴィッシュ・ドナヒュー隊などの活躍により撃退されるのだった。

 

 

 真ジオン公国による襲撃を撃退後のムンゾにある首相官邸にて、ガルマ・ザビ首相は父であるデギン元公王とプライベートな会話を行っていた。護衛も室外で待機しており、広い室内には暖炉型のヒーターを前に椅子に腰かけて対面している二人だけだ。

 

「ミネバはなんと憐れな事よ。真ジオン公国などの神輿に担ぎ上げられるとはな」

 

 公王の座を退き、孫の世話をする穏やかな生活を送っていたデギンにとって、真ジオン公国からの宣告は久方ぶりに心痛を覚える事態であった。意気消沈するデギンにガルマは心からの同情を寄せる。

 

「幸い真ジオンの撃退は叶いました。現場からは相手の戦意が酷く低かったと報告が上がっています。エンツォ・ベルニーニはあまり人望が無いようですね。確かエンツォの細君は……」

 

「うむ。お前の母ナリスの姪にあたる。あやつめ、目端の利く男だったがこのような形で牙を剥いてくるとはな。……ドズルの奴が知れば相当荒れような」

 

「ええ。私も可愛い姪を利用されて怒り心頭です。今でこそ兄上は昏睡状態ですが、目を覚まされれば戦艦かMSに乗って飛び出しかねません」

 

 デギンの子でありガルマの兄たるドズル・ザビは、一年戦争におけるソロモンの戦いでMAビグ・ザムに乗って殿を務め、アムロの駆るガンダムによって撃破されている。

 この際、脱出に成功したドズルだが救出までの間に負傷を負い、一命こそ取り留めたものの今も意識不明の昏睡状態に陥っているのだった。

 

<続>

■ミネルバXが仲間になりました。

■シャドーフォックスが開発されました。

■隠しユニット:シャドーフォックス

・入手条件:第十二話『翼持つ者の嘆き』で獣戦機隊、シャピロが十機以上敵を撃墜する。

 

■マジンガーZ、アフロダイA、ミネルバX、ボスボロット専用換装武器

・光子力バイク

・光子力バギー

 が開発されました。

 

■ゲシュペンストMk-II専用換装武器『ハロウィン・コスチューム』が開発されました。

・タイプG

・タイプN

・タイプC

 以上、三種類です。

 

■強化パーツ「観測ポッドバロール三世」

 二ターンに一度指定したマスを中心とした半径二マスに偵察、分析、かく乱を発動する。

 

■ゲクトが開発されました。

■RFザク、RFゲルググ、RFヅダが開発されました。

 

■第603技術試験隊→ヨーツンヘイム隊としてスポット参戦しました。

■ヘルベルト・フォン・カスペンが生存しています。

■エルヴィン・キャディラックが生存しています。

■サイクロプス隊隊員が生存しています。

■ドズル・ザビが生存しています。ただし意識不明の昏睡状態です。

 

■アクシズ→真ジオン公国を名乗りました。

 

■ズフィルード・クリスタルを入手しました。

 

☆第十二話『翼持つ者の嘆き』クリア後 ヘイデスショップ

・ブルーガー

・ガルバーFXⅡ

・コマンドウルフ

・セイバータイガー

・シールドライガー

・プロトゲッター1

・プロトゲッター2

・プロトゲッター3

 

☆第十三話『真のジオン』クリア後 ヘイデスショップ

・RFザク

・RFゲルググ

・RFヅダ

・ゴブリン

・ザクレロ

・ビグロ

・ヨルムンガンド

・ヅダ

・ビグ・ラング

・ヒルドルブ

・オッゴ

・ムサカ

・ゲクト




グローブ事件は起きていません。ああいう悲しい話は苦手なので。

追記
ちょこちょこ修正。

追記2
ご指摘いただいたのでコープランダー→ブルーガーに修正。


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第二十三話 誤解でござる! 話せばわかる、話せば!

共通ルート 第十四話「影の救世主」

 

 これまで地球人類に牙を剥いていた機械獣軍団、恐竜帝国、妖魔帝国、ボアザン、キャンベル、ガイゾックらが一時的に戦力補充の為に行動を控えた為、地球圏の争乱は仮初の平穏を迎えた――と思われたのはごく短い期間に限られた。

 侵略行為の頻度が落ちてきたと思った矢先にムゲ・ゾルバドス帝国とベガ星連合軍、極めつけにバルマー・サイデリアル連合帝国からの宣戦布告が行われたからである。

 

 宇宙に地球人類以外の異星文明が存在するのかを夢見ていた時代は終わり、地球の中にも、そして星の海の彼方にも悪意を持って襲い来る脅威が無数に存在する事が証明された時代が来てしまったのだ。

 それでも地球人類は戦う。

 悪意に挫けず、膝を屈さず、正義のスーパーロボット軍団と一年戦争時よりはるかに強化された地球連邦軍は今日も地球人類の独立と尊厳、自由と平和を守る為に戦い続けている。

 

 ユーラシア大陸の開けた平原地帯で、デイモーン、ティアマート、メギロート、更にゼ・バルマリィ帝国の人型機動兵器ゼカリム、バームの球体から頭部を生やした戦闘ロボ・ダリ、ズバンザーからなる混成部隊を地球連邦の特殊部隊が迎え撃っていた。

 ゲシュペンストMk-IIを主力とした少数精鋭部隊だが、その中でも目を引くのは二機のスーパーロボットだろう。

 その内の一機、青を基調としたカラーリングにマッシブなデザイン、額と口元に髭のようにも見えるブレード状のパーツを持った機体――ソウルゲインは両手から生体エネルギーを増幅させた光弾を前方のゼカリムの小隊へと放つ。

 

青龍鱗(せいりゅうりん)!」

 

 ゼカリム隊は倍近いサイズのソウルゲインの攻撃に、緑色の装甲を破壊されながら次々と爆発して行く。その中、無事なゼカリムが一気に加速してオプティカル・ライフルから光弾を放ちながら、レーザー・ブレードを抜き放って接近戦を挑んだ。

 

「俺とソウルゲインに接近戦を挑むとは、悪手だな、こいつは!」

 

 ゆらり、とソウルゲインが人体のように柔らかな動きの後、大地に巨大な亀裂を刻む程の踏み込みでこちらもゼカリムへと猛獣の勢いで挑みかかる。

 武装らしい武装を持たずパイロットの生体エネルギー“気”と四肢をもって敵を撃滅するソウルゲインの真骨頂は接近戦ことに格闘戦にある。距離を詰めてくるゼカリムなどは、ソウルゲインとそのパイロットであるアクセル・アルマーにとって格好の獲物だ。

 

「でぇええい!!」

 

 アクセルは避けきれぬ被弾はある程度の再生能力を持つEG合金の装甲で受け、懐に飛び込んでくるゼカリアへソウルゲインの拳の乱打を見舞う。

 巨体の質量と莫大な運動エネルギーを併せ持ったソウルゲインの拳は、ゼカリアの頭、胸、腹、腕と部位を選ばずに当たる端から粉砕して行く。

 

白虎咬(びゃっここう)!」

 

 エネルギーを纏った拳が更なる破壊力を発揮し、原形を留めていないゼカリアの残骸が撒き散らされる中、接近してきた第二波のゼカリアへソウルゲインの両掌が合わされて、そこから増幅された気が炸裂!

 新しいゼカリアの残骸の山が作られ、貴重なサンプルを生産したソウルゲインの頭上で、もう一機のスーパーロボット、青を交えた黒い鎧の騎士といったデザインのヴァイサーガがMSよりも大きな五大剣を振るい、メギロートの輪切りや切断されたダリの首を次々と宙に舞わせている。

 

「ふん、ヴァイサーガか。そいつの具合も悪くはなさそうだな、ヴィンデル」

 

 ヴィンデル・マウザー……異なる世界ではシャドウミラーと呼ばれる部隊の隊長を務めた男であり、他の世界でもこの世界でもアクセルの上司にあたる屈強なる軍人だ。

 一部の作品ではラスボスを務めた経験のあるヴィンデルは、この部隊の隊長兼ヴァイサーガのパイロットの身である。

 

「貴様もな、アクセル。ゲシュペンスト・リーゼよりも気に入ったか、その機体」

 

「俺用に調整されていればな。次から次へとやってくる侵略者共を片付けるのに役立つ機体だ、こいつは」

 

「ならば後でレモンに礼を言っておけ。ヴァイサーガとソウルゲインをプルート財閥と交渉し、バベッジ・エジソン研究所から手に入れてきたのは彼女だ」

 

「分かっている。労いの一つもするさ」

 

「ならばいい。部隊の人間関係は円滑でなければな……ふん!」

 

 アクセルと会話するヴィンデルに隙を見出したのか、上空から触手を伸ばして襲い掛かってきたダリを、ヴァイサーガの五大剣の刃が三日月の切っ先を描き、触手ごとまとめて斬り捨てた。

 

「所詮、AIか。誘いに容易く乗ってくる」

 

 管理された永遠の闘争という思想をいまだ持たないこのヴィンデルは、周囲を囲む侵略者の尖兵達へただただ冷徹な闘志を秘めた眼差しを向けるのみだった。

 

 

『とまあ、そういうわけでソウルゲインとヴァイサーガの調子はパイロット共々上々よ。改めてお礼申し上げるわ、所長さん』

 

 場所は要塞化の進むエリュシオンベースの所長室。ブルガリアの民族衣装スクマーンにいつもの白衣を合わせ、プラチナブロンドを先端で緩く赤いリボンで縛った姿の所長は、ヴィンデルの部下であるレモン・ブロウニングと立体映像越しの通信を行っていた。

 所長は通信相手が最愛の夫の胃痛の種の一つとは知らない。

 

「こちらこそ良質な戦闘データの提供、ありがとうございます。それにしてもアクセル・アルマー大尉にヴィンデル・マウザー少佐でしたか、それにレモン、あなたも含めてこれほどの腕利きが居たとは。地球連邦の人材は底が知れませんわねえ」

 

『あら、ふふふ、あのプロメテウスメンバーを知るあなたにそう言われるなら、私達も鼻が高いわ。

 私達の部隊はそれなりに権限を与えられているけれど、天下のヘパイストスラボやバベッジ・エジソン研究所程の研究施設や生産設備はないから、あれだけ高性能な機体を用意するのは骨が折れるのよ』

 

「そんな謙遜はいりませんわよ。あなたの乗っているゲシュペンストのタイプNTは、もともとは我がラボで開発したニュータイプ対応機ですが、独自の改修が施されて中身はほぼ別物ではありませんか」

 

 ゲシュペンスト・タイプNT。それはゲシュペンストMk-II開発以前にアムロやシャア、アーウィン、グレースといったプロメテウスメンバー内のニュータイプ達にテストしてもらった、サイコミュ対応機である。

 さしずめOGシリーズの量産型ゲシュペンストMk-II・タイプTTのこの世界版といったところ。

 タイプTTが“T-LINK TEST TYPE”の略であるのに対し、NTは“NEW TYPE TYPE”の略で、TYPEが重複しているが、細かい事は気にしないとしてそう命名された。

 

 リッパービットを始めとした形状やコンセプトの異なるサイコミュ兵器の試験を行っていた機体で、ほんの少数が生産されてテストの終わった今ではレモンに譲った一機を除いてプルート財閥が保管している。

 ソウルゲインとヴァイサーガよりも先に引き取っていたこの機体を、レモンが独自の改造を施した事で、外見はまだ白いゲシュペンストだが中身の方は別物となっている。

 これを知ったヘイデスの感想は“お、アシュセイヴァーとヴァイスセイヴァーの開発フラグかな?”だ。

 

「パイロットとして一流であるのに加えて、技術者としても超のつく一流とは、恐れ入りました」

 

『あなたほどの才媛に言われてもあまり説得力はないわね。私の方こそヘパイストスラボ製の機動兵器を知る身としては、所長さんは謙遜が過ぎると思うけれど?』

 

 トミイ・タカラダ氏が主導しているMZは別としても、ゲシュペンストシリーズにSRG計画のアルトアイゼン、ヴァイスリッター、またアクセル達の手に渡ったソウルゲインとヴァイサーガもSRG計画の産物である。

 更に実戦投入間近の“サイズ詐欺”、“マジンガーと同様に大きさはリアル系なのに中身はスーパー系”、“MS? 嘘こけ”と後に評価されることになるヒュッケバインと王道の変形機構を搭載し、戦況を変えられるポテンシャルを秘めたスーパーロボット・グルンガストもある。

 レモンが所長を評価するのもある意味では当然だろう。

 

「日本のスーパーロボットを開発した方々と日ごろ接していると、些細なプライドや自負など木っ端みじんになりますわよ。ま、私はそこらへんにこだわりはありませんから、自分の得意分野で頑張るだけです」

 

『確かに。スーパーロボット達が一年戦争時に完成していて、地球連邦軍に在籍していたら、ジオンはもっと早期に白旗を上げることになったでしょうね。今は侵略者相手に大いに役立ってくれて、なによりだわ。

 ところでスーパーロボットの量産の話はどうなっているのかしら?

 マジンガーZの系列機が第一候補に上がっていると耳にしたけれど、他にもライディーンを科学で再現したザマンダー、二体の超電磁ロボ統合機のマグネスファイブ、ダイモスの量産型マルスと計画は立ち上がっているのでしょう?』

 

「情報通でいらっしゃること。あなたの居る部隊を考えれば、それもそうですかしらね。

 どれも変形合体機構を廃しておりますから、量産に向けてコストカット出来たとはいえ、ある意味、強みを殺してしまったとも言えます。

 それにスーパーロボットはMS以上にパイロットの技量、そして精神状態に性能を左右される傾向があります。せっかくの機体を活かせるかどうか。例え量産型でも機体以上にパイロットの選定は難しいものだと危惧しております」

 

『ダンクーガは? アレは軍属の葉月博士の作品なのだから設計図も整備マニュアルも、軍が抑えているでしょう』

 

「野獣回路がクセモノなのです。怒りをはじめとした精神の動きをエネルギーに変換する画期的な発明ですが、ダンクーガを量産するにしても野獣回路を搭載するなら、現獣戦機隊並みの適性持ちか、もっと効率のいい回路を開発してからでないと。

 ザマンダー、マグネスファイブ、マルスと比べてどうにもパイロットに求められるハードルが高いのです。例え量産機でもスーパーロボットはMS以上にパイロット次第になってしまって、困ったものです」

 

『パイロット次第、ね。どんなに優れた機体を作っても結局のところ、動かすのはパイロットだもの。パイロットを作り出せない以上は仕方のないことよ』

 

「ふうん? そのパイロットを作っているあなたがそれを言いますの? ガミアQ、Dr.ヘルは大したものを作ったと思いませんこと? 送ったサンプルはそれなりに役に立ちまして? Wシリーズの開発は順調と聞きましてよ」

 

『うふふふ、所長さん相手に隠し事は出来ないわね。そうね、古代ミケーネの技術力、それを復活させ利用するDr.ヘルの知性、発想力、技術力、そのすべてに称賛を贈りたい気分だわ。

 私のWシリーズ、量産型はほぼ完成したのだけれどちょっとスペシャルな“子”を作りたかったの。ちょうどいい刺激になってくれたわ。近い内にあなたにもお披露目できると思うわよ。その時にはあなたのとっておきも見せて欲しいものね』

 

「おやま、あなたも十分に怖いこと。そうですね、いつか自慢の子供達を見せ合いっこするといたしましょうか」

 

『ええ、約束よ? それじゃあ、有意義なお話、ありがとう。またね』

 

「ええ、また」

 

 所長はエリュシオンベースの所員達から密かに“魔女の集会”と噂されているレモンとの定期通信を切り、座っていた椅子の背もたれに体を預けた。

 ソウルゲインとヴァイサーガのデータは残っているので、扱いやすいようにデチューンしての量産体制にはすぐにでも入れる。

 いずれはパイロットを選定して宛がうスケジュールも並行して組んである。量産型でも真価を引き出すとなると生半可なパイロットでは務まらないから、やはり困ったものだ。

 

「ヴィンデル、アクセル、レモン、侵略者を相手にしてくれている限りは頼りになりますが、なんだか危険な香りのする方達ですこと。

 あら、コレーのお遊戯会の時間ですわね。今からなら三十分前には着きますか。総帥もレーザー通信で見学するとおっしゃっていましたけれど、大丈夫かしら?」

 

 人生でこれまでになく多忙な所長であるが、彼女は自分に出来ないことは他人に頼れる人格であるので、他人の手を借りながら仕事も母親であることもどちらも選ぶ道を邁進中であった。

 なにより子供達に仕事にかまけてばかりで、構ってくれなかったと後になって言われる場面を想像したら、ゾッとする。

 

「恨まれたくないものですわね。さて、着替えていきますか」

 

 なお自分の今の格好でお遊戯会に行くのは非常識だ、とTPOを弁えている所長であった。

 

 

 所長が一部のスパロボでラスボスと黒幕をこなした勢力と連絡を取っている裏側では、極東支部近くの都市で、スーパーロボットのパイロット達の内、都合のついた面々が集まってプロのモデルかアイドルのように写真撮影を行っていた。

 業界における超一流どころのスタッフが集められ、機材も同じく超一級と世界クラスのプロ待遇だ。人当たりの良さで知られるカメラマンを中心に、弓さやかや南原ちずる、岡めぐみといった各チームの女性陣にグランド・スターの面々とヘマーの姿がある。

 

 プルート財閥のアポロン事務所が手配した本家アイドル、プロモデル用の衣装を着て、世界トップのメイクアップアーティスト達による化粧を施されて、戦場とはまた違った非日常の体験に恥じらいと喜びを覚えている。

 正規の軍人である獣戦機隊とザンボットチームやムトロポリス組、ゲッターチームなど一部メンバーの姿はなく、参加した男性陣は普段とは違う可憐さ、美しさで輝く女の子達をデレデレとした顔で見ている。

 例外はまだ幼い小介や日吉、シュメシくらいのものか。そんな彼らも普段とは違う輝きを放つ女の子達を純粋に綺麗、と褒めている。

 

「ヘイデスさんが撮影会をしようなんて言い出した時には意味が分からないと思ったが、皆があんな風に喜ぶのならいい気晴らしになったな」

 

 スタジオに用意された休憩スペースで、日ごろの戦闘での重圧や気負いを忘れて笑う女性陣を見て、ボルテスチームのリーダー、剛健一は穏やかに笑う。

 彼自身も撮影開始当初は怖気づいていたものの、そこはプロのスタッフにおだてられてすっかり乗せられ、何枚ものフォトデータを撮り終えている。

 健一の対面に座っているシュメシが話しかけた。

 

「エゥーゴの皆も来ればよかったのにね」

 

 にへら、と笑う彼の手にはオレンジジュースのペットボトルが握られている。健一は末弟日吉と同じかさらに幼い印象を受けるシュメシに当初は戸惑いもあったが、今ではようやく応じ方を覚えてきたところだ。

 これは健一に限らずハガネ艦隊と合流したばかりのスーパーロボット組に共通する。

 

「カミーユやクワトロさん達の立場を考えると、そう簡単に名前や顔を露出は出来ないし、状況が変わるまでは難しいのも仕方ないさ」

 

 基本的にスーパーロボットのパイロット達は未成年である事、本人の身柄や親族、友人などの安全の為に氏名や顔を伏せられているのだが、各研究所を狙っての襲撃が重なればどれだけ隠そうとも自然と関係者は割れてしまい、最近では個人情報を機密として伏せる意味がほとんどなくなってきている。

 というか既に敵勢力には各ロボットのパイロット達が特定されており、その身を狙う行動も何度か発生している。幸い連邦軍とプルート財閥の手配した護衛達によって、事なきを得ているのが不幸中の幸いだ。

 

 これまでのスーパーロボットの活躍に関しては、あくまで開発を行った研究所とロボットそのものを取り上げていたのだが、こうなってはむしろパイロット達を周知する事の方がかえって彼らの安全につながるという意見も出てきている。

 ならもう開き直ってしまおうか、とあのスーパーロボットのパイロット達の素顔はこれだ! といった具合に銘打ってまず軍の広報誌に、ついで民間にこちら側で統制したメディア露出を計画されている。今回の撮影会はその第一歩である。実行されるかどうかは検討中だ。

 

「そっかあ。でもこっちに来た皆が笑顔で僕は嬉しいなあ。お父さんがいたらもっと嬉しかったのだけれど、仕方ないかなあ」

 

「そういえばそのお父さんは今日はどうしたんだい? 戦場でもないのに君達と別行動というのは珍しいな」

 

「お父さんはね、勝平君達のお父さんやお爺ちゃん、おばあちゃんとお話をしに行ったよ。大切なお話があるんだって。真剣な顔をしていたから、本当に大切な事を話しに行くと思うなあ」

 

「ヘイデスさんが真剣だったのなら、かなり重要な話なんだろうな」

 

 健一とてヘイデスの人となりを詳しく知っているわけではないが、今は行方不明の父と今も健在の母が時折その名前を口にして、かなり好意的な話をしていたのは憶えている。

 実際、ボルテスVのパイロットとなり戦いに身を投じるようになってからは、極東支部の岡長官や関わりのある軍人達からヘイデスが政府と軍、更には市民生活に至るまで大きな影響力を有する地球圏の重要人物であるのを知らされて、仰天したものだ。

 

 そんな人物が神ファミリーに話というのだから、健一はきっと想像もつかない話なのだとごく自然に考え付いた。

 なにか今の状況を好転させられる話だといい、と健一が手の中のスポーツドリンクに口を付けたところで、フリルとレースの権化と言いたくなるようなファッションのイングリッドがくたびれた雰囲気で休憩スペースにやってきた。

 

「つっかれたあ。ねえ、なにか飲み物ちょうだい」

 

「オレンジとリンゴとグレープならどれがいい?」

 

 とシュメシ。机の上に置かれたペットボトルを見ながら問い返した。

 

「じゃあ、リンゴ」

 

「はい」

 

「あんがと」

 

 受け取ったペットボトルのキャップを外し、並べられていたお菓子の中から個別に包装されたチョコレートをいくつか確保。イングリッドはそれから青森産リンゴの百パーセントジュースを飲んだ。

 

「ちょっと面白いけど、慣れない事をするもんじゃないわねえ。肩が凝るっての」

 

 そう言ってぐりぐりと肩を回す十代前半の少女が見た目に反した戦闘能力の持ち主であるのを、健一もシュメシも既に知っているが、こうして見ていると少々おてんばなだけの女の子に見えるのだから不思議なものである。

 

「イングリッドちゃんのね、フォトデータはゴップさんに送るんだって。娘のおめかしした姿は、親なら見たいだろうってお父さんが言っていたよ」

 

 悪気の無いシュメシの言葉だったが、イングリッドはというと嫌っそうな顔に変わっている。

 

(あの狸親父、手籠めにした少女を養女にした色ボケって悪評をわざと広めるつもり? またそうやって自分を侮り、油断する連中を増やすつもりなのかしら?)

 

 イングリッドの考えは半分は当たっていた。かつてゴップはイングリッドを連れて職場を歩き回り、わざとそのような誤解を広げて真実を見抜けぬ者とそうでない者をふるいにかけた事がある。

 今回もその一環ともう半分はヘイデスがシュメシに伝えたように、ゴップが養父として相応にイングリッドを扱っているのが理由だ。少なくとも彼女が死んだら、きちんとゴップ家の墓に入れるつもりではある。

 クローン技術で生み出されたジオンの強化人間が地球の名家であるゴップ家の墓に入るとは、いやはや、なんとも言えない奇縁だ。

 

「シュメシのところの親父さんもウチの親父殿も食えないわねえ」

 

「でもイングリッドちゃんはゴップさんのこと、嫌いじゃないんでしょう?」

 

「まあ、人間扱いしてくれているしね。悪い人間ではないんじゃないの? コールドスリープしていたせいで世間を知らない女の子をこき使う狸だけどね」

 

「狸さんかあ。ぽんぽこ?」

 

「? ぽんぽこ? なにそれ? ケンイチ、貴方は知っている?」

 

「ふふ、そうだな、狸の鳴き声というか狸そのものを指す擬音みたいなものか。犬をワンワンと言ったりするのと同じだよ」

 

「ふうん、本物の狸って見たことないけど、親父に似ているのならあんまり可愛くなさそうね。それとシュメシ」

 

「なぁに?」

 

「本当、ふわっふわとした子ね。あのね、私の方が年上なんだからイングリッド“ちゃん”は止めなさい」

 

「でも見た目は僕の方が年上っぽいよ。三つか四つくらいは上じゃないかな?」

 

「中身は私の方がずっと大人でしょ」

 

 そんな二人の会話を見る健一はイングリッドには聞かせられない感想を抱いていた。

 

(俺からするとどちらも子供なんだが、それは口にしない方がよさそうだ)

 

 

 その頃のヘイデスは岡長官や護衛と共に駿河湾に面する港町を訪れていた。ユウ・カジマやヤザン、エゥーゴとの戦闘後に地球へ降下したガイゾックが真っ先に襲ったのがこの港町である。

 ガイゾックへの敵意に満ちるヘイデスがアレスコーポレーションの部隊を待機させていたのと、極東支部のMS部隊が迅速に駆けつけた事もあり、原作第一話の襲撃からザンボット3への合体に至るまで港町への被害は極々軽微なものに抑えられている。

 

 駿河湾沖には今は滅びたビアル星人の遺産である恒星間移動要塞兼移民基地キング・ビアルの威容があり、更に沖合にはキラーホエール級が潜んでガイゾックを始めとした侵略者の襲撃に備えている。

 原作に比べればないような被害で済んでいる為、神ファミリーと香月組を始めとした人々との軋轢は生じていないとヘイデスは報告を受けている。

 

 まあ、そのまま鵜呑みにするのは楽観的すぎるし、ヘイデスがスーパーロボットの活躍は華々しく宣伝し、侵略者から人々を見守る人造の守護神、鋼の救世主、正義の味方と刷り込むようにアピールしているのだって、少なからずザンボット3の存在が影響している。

 そんな神ファミリーのお膝元と言える港町で、神ファミリーの経営する神水産にヘイデス達は足を運んでいた。

 神ファミリー側は神勝平、神江宇宙太、神北恵子らパイロットの子供らに、ファミリーの長老神北兵左衛門(勝平ではなく恵子の祖父)、神梅江(勝平の祖母、兵左衛門と夫婦ではない)、神源五郎、神花江、神一太郎といった主要メンバーが揃っている。

 

「キング・ビアルの運用に必要な資材は予備を含めて取りそろえておきました。こちらが一覧です。それとガイゾックの直近の動きです。リモネシア共和国に攻撃を仕掛け、撃退されてからは動きを潜めていますね」

 

 勝平の父源五郎の営む神水産のオフィスで、ヘイデスは数枚の紙を小さなアタッシュケースから取り出して、対面の源五郎と兵左衛門に差し出した。

 ガイゾック襲来の少し前に海底に眠っていたところを起動されたばかりのキング・ビアルには、諸々の資材が不足している。原作でも何度か描写された問題だが、この世界では連邦軍とプルート財閥の全面的協力により呆気なく解決したところであった。

 

「これはありがたい。しかし、本当に無償でよろしかったのですか、ヘイデス総帥。これだけの資材となると相当な金額になると思いますが」

 

 地元の網元であり神水産を経営する源五郎は、キング・ビアルの為に用意された資材の総額が膨大なものであると分かる。目の前の垂れ目気味の胃痛と頭痛持ちの優男は、へにゃりと笑う。それはシュメシとよく似た柔らかな笑みだ。

 

「あなた方神ファミリーの協力とキング・ビアル、ザンボット3の助力を得られると考えれば、これくらいは安いものです」

 

 ヘイデスの言葉に勝平はへへん、と自慢げだ。宇宙太と恵子はそんな勝平に呆れている。

 ヘイデスは花江の淹れてくれた緑茶で口の中を潤してから言葉を続けた。

 

「既に勝平君、宇宙太君、恵子さんの乗るザンボット3にはガイゾックに限らず、侵略者を相手にたくさんの協力を得ていますし、これからも出来ればお力を借りたいと思っていますからね。

 その為に出来る事はなんでもするつもりです。今回の資材提供もその一環ですから、気にしないでください」

 

 ちなみにガイゾックに賞金を懸けているように、侵略者達を撃墜したり有益な情報提供があれば、その都度報奨金を出しており、スーパーロボットのパイロット達は今や結構なお金持ちだ。これは神ファミリーにも言える。

 兵左衛門は提供された紙資料と机の上に置かれた立体映像を投影する小さな機器に映し出されたリモネシアでの戦闘を見ながら、ううむと唸って顎鬚をしごく。手元には愛用の煙管があるが今は控えている。

 

「リモネシアでガイゾックは相当な被害を受けておる。これならもうしばらくは動かんじゃろう。その間にキング・ビアルの機能を百パーセント発揮できるように修復し、ザンボット3を強化できんか調べるとするか」

 

「へえ、ザンボットがもっと強くなるのかよ! やるじゃん、じいちゃん!」

 

「そんな都合よくいくか? ザンボットはマジンガーやボルテスと違って俺達が作ったもんじゃないんだぜ。ご先祖様の遺産なんだ」

 

 兵左衛門の言葉に勝平は乗り気だが、冷静な宇宙太はザンボットの事情を冷静に指摘してきた。確かに古代ムーの遺産であるライディーン同様、ザンボットも半ばロストテクノロジーの産物であり、解析なども現在進行中だ。

 最低限の修理用の部品などはキング・ビアルに残されていたが、これから戦闘の激化を考えるとザンボット3とキング・ビアルの部品を量産できる体制を整える必要があるのは明らかだ。

 

「ザンボット自体は強化できなくても、マジンガーZみたいに外付けの武器を用意してもらったり、MSみたいに追加の装甲を作ってもらえばいいんじゃないかしら? 合体後を前提にして用途を限れば開発もしやすいだろうし」

 

「ふむ、恵子さんの意見が現実的ですね。コンバトラーやボルテスもいつまでも機構が複雑だからと強化を後回しにするつもりはありませんし、ザンボットももちろん今後を考えれば勝平君達の安全の為にも強化は必要です」

 

 勝平や子供らを見る花江や源五郎の身を案じる眼差しに、ヘイデスは大いに共感している。彼個人の事情で言えばシュメシとヘマーの乗るフェブルウスも、エクストラテクノロジーの塊である為、強化改造の困難な機体なのだ。

 どうも自意識のある節の見られるあの機体のライブラリから発見されたデータを用い、ライアット・ジャレンチやガナリー・カーバー、SPIGOTを開発しているが、それ以上の強化はどうするか、と悩んでいるところだ。

 

「ところで勝平君達の今後についてですが、君達には他のスーパーロボット乗りの人達同様にあくまで侵略者との戦いにおいてのみ協力をお願いします。それでよろしいのですよね、岡長官」

 

「うむ。極東支部としても正式に協力を要請するが、ガイゾックを始めとした侵略者との戦闘に専念してもらいたい」

 

 あえて侵略者と強調したヘイデスと岡長官の言葉に兵左衛門と源五郎の目が細められた。それは暗に地球人同士の戦いが起きると告げたも同然だからだ。

 スパロボ的な展開を考えれば、これからティターンズ、OZ、真ジオン公国ら地球人勢力と激突するのは明白。

 

 スパロボの常とう句として“高性能の脱出装置が搭載されているからコックピットを直撃しなければ大丈夫”という文言があるが、これはこの世界にも適用されるもののスーパーロボットの高出力と大質量が合わさると、それも案外難しい。

 軍人でもない子供らに人殺しをさせたくないとなれば、そもそも地球人勢力とは戦わせないのが確実だ。

 

「頼りにしてくれよな、ヘイデスのおっちゃん! 岡長官!」

 

 ヘイデスと岡長官ら偉い大人に頼られたと解釈した勝平は胸を張って得意そうだ。頼りにしているのは事実だ。自らも娘がボルテスに乗り込む岡長官は極東支部主導のスーパーロボット量産計画について口を開いた。

 

「ところで兵左衛門さん、極東支部主導で各スーパーロボットの量産計画が進められています。ザンボット3もその一つに加えたいのですが、なにか問題はありますかな」

 

 ザンボット3は神ファミリーの所有物扱いだ。マジンガーやボルテスともまた違う扱いで、強いて言えばライディーンに近いがあちらはムトロポリスというれっきとした後ろ盾がある。対して神ファミリーにはそれがない。

 言ってしまえばもっとも接収しやすいスーパーロボットと言える。ティターンズなどに強制接収される前に極東支部とプルート財閥が後ろ盾になり、未然に防ごうという目論見が今回の提案には含まれている。

 

「そうですな、ザンボット3を扱うには若い反射神経が必要です。わしらが孫娘達に半年の期間を掛けて睡眠学習を施し、ザンボット3のパイロットとしたのもその為です。

 量産を前提とする以上、地球の科学で再現できる代物になるでしょうが、そう簡単にパイロットは見つからんでしょう。ご先祖であるビアル星人の科学を用いても、勝平らにザンボット3の操縦方法を学習させるのに半年を擁したのです」

 

 また勝平の兄である一太郎は十七歳だが、彼でさえザンボット3のパイロットに選ばれていないことを考えれば、十五歳の宇宙太がザンボット3のパイロットを務められる上限ギリギリなのだろう。

 この“若い反射神経”というハードルをそのままにしては、とてもではないがザンボット3の量産などできはしない。パイロットの確保が出来ない兵器が何の役に立つ?

 

「ダンクーガの野獣回路に次ぐハードルの高さですな。無人機運用思想もあながち的外れでもないか」

 

 岡長官はちらっと隣のヘイデスを見た。兵左衛門の睡眠学習云々の話を耳にしてから少し機嫌が悪いというか、悲しげなのである。

 恒星間航行を可能としたビアル星の科学による睡眠学習の解除は、現在のプルート財閥の技術では容易にはできない。また神ファミリーを戦力として頼る状況では、睡眠学習の効果を解除するのは悪手となる一面もある。

 積極的に少年兵を利用しているかのような状況には、思うところが山ほどもあるが戦況がそれを許してくれず、日々、ヘイデスの胃と神経をストレスという名のヤスリが削っている。

 

「ともあれ勝平達が他のスーパーロボットや軍の方々と一緒に戦えるというのは、心強い事です。場合によっては、我々だけでガイゾックと戦うようなことになっていてもおかしくはなかった。

 それにガイゾックの襲撃による被害を最小限に抑えられ、被害の補填を積極的に行ってくださったあなた方には頭が上がりません。

 我々が居たからガイゾックが襲ってきたのだと、我々が元凶だと誤解している人達も少なからず居たが、それもあなた方の尽力で誤解が解けている。

 守ろうとする人々に責められ、石を投げつけられるのは大人の我々でも堪える。ましてやこの子らにはあまりにも辛い経験だ。経験しないで済むのならそれに越したことはない」

 

 そう告げて頭を下げる源五郎の言う通り、神ファミリーへの風当たりは原作に比べれば涼風のようなものだが、それでも当たりの強い者は居る。

 そんな中で彼らに協力的な岡長官にヘイデス、同じような境遇の各スーパーロボットのパイロット達の存在はどれだけ心強い事か。ヘイデスは穏やかな声で源五郎に答えた。

 

「あなた達の役に立てたのなら何よりです。この地球はあまりにも敵が多い。だからこそ地球の平和の為に戦ってくれる人達は、どんな宝石や黄金よりも貴重なのです。

 お金しか持っていない僕には、戦いの場以外でしか助けになれませんからね。勝平君、宇宙太君、恵子さんは心から尊敬します。この子達を支えるあなた達家族もね」

 

 かくて地球連邦極東支部とプルート財閥は神ファミリーの正式な協力を得て、彼らの後ろ盾となるのだった。

 

 

 地球連邦政府南欧方面の主要基地の一つアビアノ基地の一角にヴィンデル・マウザー、アクセル・アルマー、レモン・ブロウニング、そしてパプテマス・シロッコを伴ったギリアム・イェーガーの姿があった。

 ヴィンデルらは新部隊設立にあたりそのメンバーとして招集を受けていたのである。ブリーフィングルームの中で、ギリアムはかつての並行世界で悪縁のあった面々を前にして、内心では苦笑いの一つも浮かべていた。

 

「ヴィンデル・マウザー少佐、アクセル・アルマー大尉、レモン・ブロウニング大尉、よく来てくれた。俺はギリアム・イェーガー“中佐”、そして俺の副官であるパプテマス・シロッコ大尉だ」

 

 型通りの言葉を口にするギリアムにしかめっ面のままのヴィンデルが応じる。

 

「定型の挨拶は不要だ。イェーガー中佐、我々は上層部からの命令に従ったまでの事だ。我々を貴官の創設する特殊任務実行部隊への編入……それで相違はないか?」

 

「ああ、その通りだ。地球連邦軍特殊任務実行部隊シャドウセイバーズ。それが俺が創設し、貴官らが所属する新部隊の名前だ。この地球を脅かす侵略者を撃退し、今も悪意を隠している者達を打ち破るための影の救世主だ」

 

「救世主とは随分と御大層な名前だな」

 

 皮肉を交えてそう評価するアクセルに、ギリアムはニヒルな笑みを浮かべて答えた。

 

「それくらいの気概を持って任務に当たるという事だ。それに本当にそうなるかもしれんぞ?」

 

 この時、ギリアムの脳裏に未知の筈の侵略者を相手にあまりに的確な対応を行い、地球戦力の強化に貢献し続けるヘイデス・プルートの顔が浮かんでいたかどうか。

 そして彼のように一見地球の為に活動しながら、その裏で暗躍していた人物達が連想されていたかもしれない。

 シャドウミラーとガイアセイバーズを組み合わせたような名前の部隊は、ともすれば悪意の牙を秘めているかもしれないヘイデスに対し、ギリアムが用意したカウンター部隊であった。

 

<続>

 

■ソウルゲインが開発されました。

■ヴァイサーガが開発されました。

 

■ザマンダーが開発中です。

■マグネスファイブが開発中です。

■マルスが開発中です。

 

■ザンボット3の設計データを入手しました。

■キング・ビアルの設計データを入手しました。

 

■地球連邦軍極東支部とプルート財閥が神ファミリーの後ろ盾になりました。

 

■ヘイデス・プルートカウンター部隊シャドウセイバーズが創設されました。

 

■主人公は絶賛勘違いされ中です!

 

※共通ルート第十四話「影の救世主」クリア後 ヘイデス・ショップ

・ガルダ

・RX-81

・水中型ガンダム

・プロトタイプ・リック・ディアス

・ネモ

・メタス

・グリフォン(マラサイのバリエーション)

・ハイザック・カスタム

・メッサーラ

・ゲシュペンスト・タイプNT

 




ヘイデスのラスボス疑惑、ユーゼス疑惑、ウーゼス疑惑諸々を作中の人物も感じた結果でございます。

プレイヤーからするとヘイデスの心情描写が無くて、これまでの描写と今回のギリアムの判断を合わせて見ればラスボスか隠しボス確定といったところでしょうかね。


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第二十四話 言い訳というか説明会というか

一年戦争裏話
☆ソロモン攻略戦前
ヘイデス→地球連邦軍へ情報提供+セールス
「ジオンがソロモンに“一人でも多くの敵を道連れにする為の嫌がらせみたいなMA”を配備したようですよ。
 全方位へ高出力のメガ粒子砲をバラまきつつIフィールドで守りを固めているみたいですね。これ、普通に味方にもメガ粒子砲が当たりそうですよね。ジェネレーターへの負担がとんでもないから短時間しか動けないみたいですけど。
 対策として一部のMSにバズーカやマシンガンを持たせてはいかがでしょう。ボールを温存しておくのもいいと思います。廃棄予定の戦闘機なんかを遠隔操作で突っ込ませるのもありでは?
 ああそれと、特別価格でビーム撹乱幕に各種ミサイルとMS用の武装を用意してあるのですが……」

●結果
ドズル
「ビグ・ザムのビームが散らされた!? 連邦め、この期に及んでまだビーム撹乱幕を残していたか! これが国力の差というものか」

 ビグ・ザムに集中するボールやジムの実弾兵器+艦隊からミサイル。

「閣下、お早く脱出を! ビグ・ザムはもうもちません!」

「くうう、時間稼ぎも出来んか! 遺憾ながらビグ・ザムを放棄する。各員脱出せよ!!」

 この後、ビグ・ザムから脱出するもその途中でドズルは負傷。一命を取り留めたが意識不明の昏睡状態となり本編に続く。
 この際、ヘイデスは多数の病院船などを近域に伏せており、カインズ博士の救助やゼファーの回収を行っている。ティアンム提督他、原作でビグ・ザムに轟沈された艦の将校などが生存。

☆ア・バオア・クー攻略戦前
ヘイデス→地球連邦軍へ情報提供
「ジオンがスペースコロニーを丸々一基使って戦略級の兵器を作っているみたいですよ。住人達を強制的に疎開させていますね。連邦軍がソーラーシステムを使ったように、それ相応の代物を作っているのでしょう。
 搬入されている資材やジオン国内の物流の変化からして、コロニーサイズの光学兵器であると僕は推測しています。まとまっていると艦隊単位で消滅する可能性がありますから、気を付けてください。
 ア・バオア・クーを攻略する前に事前調査をした方がよろしいかと。流石にコロニーサイズの光学兵器をどうにかできる装備はご用意できませんから(笑)」

 ●結果
 原作通りデギン公王からの和平交渉を受けるも事前調査でソーラー・レイの存在を察知していた連邦軍は艦隊の布陣を変えており、ソーラー・レイによる被害は艦隊の10%(ギレンの野望参照)に留まり、レビル将軍、デギン公王等々が生存。
 地球連邦軍とくに宇宙軍ではヘイデスの情報取集能力とまるで未来を知っているかのような先読みに一目も二目も置かれ、プルート財閥の総帥は敵にしたら危険だと強く認識される結果に……。
 ヘイデス本人は原作を知っている人間が自分の立場になって、連邦寄りだったら誰でも出来ることだ、程度にしか認識していないので良くも悪くも高く評価されているのに気付いていない。



「ふふっ」

 

 日本近海の海上にあるアレスコーポレーション極東支部の私室で、ヘイデスは先日のパイロット撮影会のフォトデータを眺め、父親の顔になって笑みを零していた。

 最初はぎこちなくカメラに笑顔を向けていたオウカやラトゥーニ、ゼオラ、アラド達が枚数を重ねるごとに柔らかな笑みを浮かべ、モデル顔負けのスタイルで多種多様な衣装を着こなす様子は、父親として喜ばしい限りである。

 特にゼオラの笑顔でスタジオに居るアラドへ向けられたものは、はっきりと分かるほどに輝いて見える。

 さっさと戦争を終わらせて、彼女らに平穏な日常を送らせてあげたいものである。

 

 シュメシとヘマーも次々とファッションを変えながら、各スーパーロボットのパイロット達と積極的にフォトを撮っていたようだ。

 アムロやクワトロ、カミーユらは不参加だったが、彼らも参加していたら双子達は積極的に撮りに行っていただろう。

 激しい戦いの続く中でこのように子供らの笑顔が見られる時間は、なにものにも代えがたい貴重なものだ。

 

 まさか子供を持ち、ここまで子煩悩になるとは前世の記憶を思い出したばかりの頃からは、考えもしなかったことである。

 今回は未参加だったエゥーゴ組やパイロット達も、今回の戦乱が終わった後にもう一度撮影会を行って記念品として配るのもありだろう。

 

(決着をつけるにしてもまだ百鬼帝国とミケーネ帝国が動いていないから、追加の敵勢力があるのがなあ。それにこの世界、ワーバラオは出てくるか?

 “彼女”が居るのは確認したが……。ゴッドバードとビクトリーファイブって公式作品なのか? それともクロスオーバーの記念作品であって、半公式くらいの扱い? いや、どちらにせよこの世界でも関わってくるのなら厄介だ。

 結局のところ、原作でもワーバラオの端末を倒しただけだったし、ハイネルと剛兄弟が和解する前に乗り込んでこられたら、倒し方も別のものにならざるをえないしなあ)

 

 それに、とヘイデスはついさっき手元に入ってきた機密性の高い情報に目を通す。

 地球連邦軍情報部のエース、ギリアムがシロッコを副官とし、シロッコの部下とヴィンデルの率いていた部隊を引き抜き、中核とした部隊を創設したという情報だ。

 

(なんか、ラスボス経験者が三人も居る。……う~ん、でもまあ、ヒーロー戦記後のギリアムなら大丈夫だろう。参戦しているスパロボだとプレイヤーの味方だし、今回も平気でしょう)

 

 人はそれを油断という。そう、ヘイデスはスパロボプレイヤーとしての経験と思い込みにより、ギリアムは味方であると信じて疑っていなかったのである。

 スパロボ作品におけるギリアムがプレイヤー部隊の味方の立ち位置だとしても、ヘイデス自身は既にプレイヤーでもなんでもないという事実が、スポンと頭の中から抜け落ちていたのだ。

 

 そしてヘイデスはこう考えてしまっていた。シロッコやヴィンデルらを配下に加えた部隊を創設したとはいえ、間違いなく能力のある者達が集っているし、シロッコもシャドウミラーも状況によっては味方側として戦ってくれる可能性は大いにある。

 今のところ地球側は侵略者を相手に八割くらいの部隊が優勢に戦えているし、木星圏がまだ抑えられていないこともあり、シロッコやシャピロといった他作品での前科持ちがバルマーなどに就く可能性は低い。

 シャドウミラー組にしても、他のスパロボのような思想を芽吹かせる状況ではない、と。

 

(ギリアムが上手く手綱を握って地球防衛の強力な戦力としてくれている……そう考えるのが妥当かな。おそらくWシリーズやツヴァイザーゲインも今回の戦乱中には間に合うんじゃないか)

 

 この時、経済人としてのヘイデスの部分はギリアムの部隊を安易に味方だと決めつける事への警鐘を鳴らしていたが、プレイヤー成分がいやいや、大丈夫だって、とその意見を退けていた。

 まさかギリアムのシャドウセイバーズが、ヘイデスが地球支配などに乗り出した場合のカウンター部隊であるなどと、この時のヘイデスは夢にも思っていなかったのである。

 なんともはや悲しいすれ違いというか、お互いの前提と視点が異なり過ぎたが故の勘違いの炸裂であった。

 

「さて、お仕事の時間か」

 

 ヘイデスはフォトデータの入っている携帯端末をポケットにしまい込み、勘違いの是正されぬまま極東支部へと向かうのだった。

 

 

 極東支部には岡長官を筆頭とした指揮官クラスや量産型スーパーロボットの開発に携わっている技術陣、ハガネ艦隊やスーパーロボットのパイロット達、エゥーゴ・カラバ組、また各研究所の博士達はほとんどがモニター参加している。

 その中にはエリュシオンベースに居る所長の姿もあった。

 健一達の父親である剛健太郎ことラ・ゴールは一年前から姿をくらましており、原作通りにズ・ザンバジルに脅迫されてボアザン星に戻り、そこで労奴解放運動を起こしているのだろうか。

 

「それでは、スーパーロボットの量産計画について現状の進捗に関する報告を行いたいと思います」

 

 極東支部の技術スタッフが音頭を取り、ブリーフィングルーム正面の巨大スクリーンに画像が映し出される。

 

「左から順に量産型マジンガー・イチナナ式、量産型超電磁ロボ・マグネスファイブ、量産型ライディーン・ザマンダー、量産型ダイモス・マルスであります。

 今回はシミュレーション映像を中心とした報告をさせていただきたく思いますが、ご質問があれば挙手の上、ご発言ください」

 

「なあなあ、隼人さん、ゲッターの量産型はないのかい?」

 

 スクリーンに映し出されたロボットの中にゲッターが含まれていないのを不思議に思い、勝平が前の席に座っている隼人に尋ねる。

 ザンボット3量産の話も出ているが、時期的にまだ出来ていないのは勝平も承知しているから、この点については不思議には思わなかった。

 

「ゲッターにはMZという例があるからな。あれもゲッター炉を搭載しているだろう? 人型じゃないがゲッターの系譜なのは間違いない。

 それに分離と合体なら他のスーパーロボットでもするが、合体パターンで機体特性が大きく変わるのはゲッターロボだけだ。それを量産機で再現するのは難しいだろう」

 

「へえ、ゲッターロボがいりゃ一機で空でも陸でも海でも戦えるようになるから便利だと思ったけど、そんだけ作るのが難しいってわけね」

 

「スーパーロボットなんて代物はどれだって量産するのは難しいが、複雑であればあるほど面倒になるものさ」

 

 その点、MZはゲッター炉を搭載しているとはいえ、変形も合体も分離もしないのでゲッターロボをそのまま量産するよりも難易度は低かったし、非人型の機動兵器の開発例があったのも一助となった。

 そんな中、カミーユがMSとはまるで違うからこそ興味を惹かれて、手を挙げて技術スタッフに尋ねた。

 

「すみません、イチナナ式には翼があるようですが、これは原型機のマジンガーにはありませんよね? イチナナ式だけの仕様ですか?」

 

「ええ、これは現在、光子力研究所でほぼ開発の終わったジェットスクランダーのデータを参考にしたものです。マジンガーの飛行データが十分に蓄積された後で、イチナナ式にも反映させる予定です。現状は絵に描いた餅です、はい」

 

「ありがとうございます。……甲児、マジンガーが空を飛ぶのももうすぐだな」

 

「へへ、光子力バイクもいいけど他の皆が空を飛んでいるからさ。羨ましがるのも終わりだぜ!」

 

 マジンガーはなんであのサイズ(現在18m)であれだけのパワーと火器を搭載しているの? 化け物なの? あ、スーパーロボットだったわ、というのが評価される時の一連の流れである。

 標準的なMSのサイズながら超合金Zによる理不尽な装甲性能、そもそも携行火器を必要としない全身武器庫仕様、そのくせ殴る蹴る、体当たりと五体を駆使した格闘戦を行っても動作に支障の出ない堅牢さと信頼性を併せ持った元祖トンデモマシーンだ。

 

 それでもそのほかのスーパーロボットが飛行可能である点において、パイロットの甲児は密かに羨んでいたものだ。なにしろMSだって、最新機なら単独飛行が当たり前のご時世であるからして。

 カミーユと甲児がにこにこと笑っているのを見て、アムロは後輩達の友情を伺わせるやり取りに微笑みながら、挙手をして発言の許可を求める。

 

「はい、アムロ大尉。ご質問をどうぞ」

 

「イチナナ式以外の機体はそれぞれ二例あげられているが、それぞれ“簡易”量産版と量産版とある。その違いは具体的には?」

 

 アムロの言う通り、イチナナ式のみ一例だ。ちなみにヘイデスからするとマジンガーの量産型と言われると量産型グレートマジンガーが思い浮かぶが、こちらも絶賛開発中である。

 グレートマジンガーは最初から収容可能な翼スクランブルダッシュを搭載しており、現在はこの装備が開発途中である為、今回の量産計画には含まれていない。

 イチナナ式、ザマンダー、マグネスファイブ、マルスが第一期スーパーロボット量産計画に相当し、量産されたならばグレートマジンガー、ザンボット3、ダンクーガが第二期に相当するだろう。

 なおグルンガスト、ソウルゲイン、ヴァイサーガも量産されるなら第二期組だ。

 

「ええ、それにつきましてマグネスファイブは原型機であるコンバトラーV、ボルテスV同様の分離合体機構を残したものが量産版、ザマンダーはムーの技術を科学で再現したゴッドバードへの変形機構を別ユニットとして搭載した仕様が量産版となります。

 簡易量産と銘打ってありますバージョンはその分離合体と変形機構を排し、機体の剛性や生産性の向上を優先した仕様です。量産版となりますとどうしても製造工程が複雑で、組み上げや部品の製造そのものの難易度が高くなります。コストのほうもそれ相応に……」

 

「さしずめ、ガンダムをコアブロックシステムや装甲材をそのままにして量産するようなものか。では簡易量産版がジムに相当すると考えても構わないか?」

 

「ええ、そうなります。色々と複雑なシステムを排したので製造に必要な時間の短縮とコストカットに成功しました。操縦のしやすさや整備性も上がっています。当初は簡易量産型で計画を推し進める予定だったのですが……」

 

 くたびれたサラリーマンといった風貌の技術スタッフの言葉の続きを、アムロはおおよそ察した。

 小柄な技術スタッフの顔には今日までの苦労がありありと浮かび上がっており、今にもパタリとその場に倒れてしまいそうだ。研究所の協力ありきとはいえ、複数種のスーパーロボットの量産計画など、正気の沙汰ではなかったろう。

 

「それではもはや別物だと、待ったが掛かったのかな?」

 

「ええ、はい、そうです。ええ、コンバトラーチームの葵豹馬さん、簡易量産版のマグネスファイブですが、どう思われますか?」

 

「うーん、大変な思いをして作ったってのが分かるからあんまり言いたくねえんだけどよ、やっぱりここまで持ち味を削ってちゃ、コンバトラーやボルテスとは別物だぜ。

 数を揃える為に作りやすくしたってのは俺だって分かるけど、それでもコンバトラーの量産型である意味がなくなるくらい変えちまっちゃあ本末転倒って奴だろう?」

 

「豹馬さんの言う通りの意見が現場でも出てきたものでして、それでこの簡易量産版と量産版の二つが並行して進められているわけです。

 コストはまた別として単純な性能だけでしたらシンプルな構造の分、簡易量産版の方がいくらか上ですが、戦術の幅や戦闘時の手札の多さでは量産版の方が上ですね、はい」

 

 そうして超電磁ロボについての説明が終わると、ダイモスのパイロットである一矢が挙手をした。傍らにはアフロにサングラス、日本刀と個性の激しい夕月京四郎、癖のある金髪を左右で結い上げた和泉ナナの姿がある。

 

「ではマルスについてですが、こちらも他の機体同様に簡易量産版は例えばトレーラーへの変形機能を排してあるとか、そういった処置がされているのですか?」

 

「ええ。もともとダイモスは惑星開発用の巨大トレーラー・トランザーをベースにした機体でありますから、一からロボットとして再設計したのが簡易量産版です。量産版はトランザーへの変形機構を残してあります。

 ただまあ、このトレーラー形態への変形機構の是非については議論の分かれるところであります。

 ダイモスのように格闘戦をメインにするなら、変形機構を排して機体の剛性や関節の強度を強化するべしという案と、トレーラー形態では貨物室となる個所に状況に応じた武器を搭載することで、あらゆる状況に対応できるマルチファイターにするべしという案が出ておりまして。

 簡易量産版ならダイモスに近い格闘特化型に、量産版ならダイモスとは異なる全距離対応型のスーパーロボットになる予定です」

 

 最近のロボット界隈では珍しくとも何ともない換装システムに似たものだが、ダイモスなどのスーパーロボットで行うのは比較的珍しいだろうか。

 ガンダムSEEDのストライカーシステムやSEED DESTINYのシルエットシステム、ライガーゼロのチェンジングアーマーシステムと近しいものが目標なのだろう。

 

「それに他の機体以上に動力の問題があるんですね?」

 

「どうにか人工ダイモライトが作れないかと研究を重ねていますが、目下、難航中であります。したがってダイモライトは現在ある分がすべてなのです」

 

「つまり量産するにしても数に限度があるってわけだ」

 

 と言ったのは京四郎だ。人工的にダイモライトを製造できたとして、マルスの動力源として使用に足るかどうかは、まず作ってみなければ分からないと、量産を実現するのに越えなければならない壁はまだまだ多い。

 それからもさらにこの場に居るヤザンやクワトロといった歴戦の機動兵器パイロットからも、スーパーロボットと共闘するMSパイロットとしての意見や質問が出て、シミュレーション映像を眺めながら報告会は長く続いた。

 

 適宜休憩を挟みながら続けられた報告会が終わりに近づいたころ、エリュシオンベースから中継衛星を介したレーザー通信越しの所長の番に回ってきた。

 ほぼ毎日、顔を合わせてはいるがやはり顔を見られれば嬉しいシュメシとヘマーは、大好きなお母さんに向けて小さく手を振る。

 小介や日吉と同じ……いやそれ未満の年少組と認識されている双子の行為に、ほっこりとするものはいても咎める者はいなかった。

 所長も血は繋がらなくとも愛する子供らの笑顔につられ、所長は三十代後半に入ったとは信じがたい若々しい美貌に、限りない慈しみに満ちた笑みを浮かべる。ヘイデスも父親として同じ笑みを向けていた。左右をシュメシとヘマーに挟まれて座っている。

 

『ふふ、さて次は私の方からいくつかこの機会にご報告をさせていただきます。

 バルマー・サイデリアル連合帝国――通称“バサ帝国”の運用している機動兵器ですが、コードネーム・バグス、ソルジャー、ファットマンとティアマート、デイモーン、アンゲロイの六種が彼ら製の機動兵器とみて間違いないでしょう。

 ただ私達がコードネームで呼んでいる前者三種と後者三種とでは根本的な技術体系が異なります。連合帝国の名の通りバルマーとサイデリアルという別々の勢力による連合が、バサ帝国の中核と推測されます』

 

 ヘイデスからするとそりゃそうだ、となる報告内容である。問題はその帝国の皇帝がラオデキヤであり、ユーゼスの姿が確認されていないこととサイデリアル(あるいはバアル)のネームドキャラが見当たらないことである。

 連中の黒幕がユーゼスか、あるいは御使いやその配下の生き残りであるか、それとも新規のオリキャラなのか確証が持てないことの方がヘイデスとしては悩ましかった。

 

『ところでこのバグスですが装甲材に再生能力があるのは交戦した方々ならご存じだとは思いますが、他にも自己増殖と自己進化と凄まじい機能を併せ持っているようです。現在、この装甲材は解析・研究中ですが、遠からずこちら側の兵器に応用できるでしょう。

 またゲシュペンストMk-II用のHCの生産も順調です。現在、地球圏にあるゲシュペンストタイプへ行き渡るのも、そう先の話ではありません』

 

 ただでさえミノフスキー・クラフトやビームシールドに加え、スーパーロボットの技術を使ったオプション武器を持つゲシュペンストMk-IIが強化されるのだから、商売敵のアナハイムやロームフェラは面白くないに違いない。

 

「そいつは羨ましいな。ギャプランは良い機体だが、戦う相手を考えるともう一つ二つ、武器が欲しいぜ。ヘイデス総帥、俺達にも何か新しい機体はありませんかね?」

 

 とヘイデスに声を掛けたのはラムサスだ。現在、ダンケル、ヤザンと共にギャプラン三機の高機動小隊を組んでいるが、いくら改造してもメガ粒子砲とビームサーベルだけで侵略者のトンデモ兵器と戦い続けるのは厳しいと感じている。

 普段は無口なダンケルも気前の良いスポンサーに期待する視線を隠さない。ヘイデスは肩をすくめながら愛妻に答えを問うた。

 

「資金と資材なら僕がいくらでも融通しますよ。で、どうでしょうか、所長?」

 

『派生機のギャプラン改やシュツルム・イェーガーでは満足してくださらないでしょうし、今すぐ用意できる機体となるとビルトシュバインか、あるいはトミイ氏の開発した新型ゾイドで良ければすぐに都合がつきますわ。極東支部へも追加の機体を納品予定ですしね』

 

「ゾイド? MZではなく?」

 

 そう尋ねたのはヤザンである。彼自身、MZの前身であるMBのテストパイロットを務めていたこともあり、それなりに愛着がある。

 

『ゲッター炉を積んでいますし、そろそろモビルスーツの亜種として“モビル”ゾイドと名乗るのもカテゴリー違いの感が否めませんから。

 それに最近ではトミイ氏率いるグループの創作意欲が凄まじくて、量産に向かない機体が多いのですが次から次へと新型機が提案されているのです。正直、少数生産止まりが大量発生しそうですわ。

 おっと愚痴だなんて失礼な真似を致しました。お詫びと言ってはなんですが、現在、製造中の決戦用ゾイドの情報を開示いたしましょう。恐竜帝国との決戦までには間に合わせますので、運用はハガネ艦隊と極東支部に一任する予定ですわよ』

 

 参加者達の手元に全高200メートル超のデスザウラーや全長が100メートル単位になるデススティンガー、全長555メートル、全高333メートルに達するウルトラザウルスのデータが映し出される。

 オリジナルと違い動力兼用のゾイドコアが非搭載といった違いがあるが、ヘイデスによって極秘裏に恐竜帝国の無敵戦艦ダイと単独で戦い勝利しうる性能を求められたそれらは、戦略級の超兵器となる予定だ。

 一通りデスとウルトラの名を冠した超ド級ゾイドのデータを見たヤザンは、呆れを隠さない顔で所長に感想を伝えた。

 

「こいつらを考えた連中は馬鹿なのか?」

 

『そうですわねえ、ゾイド馬鹿といったところでしょうか。なにしろ相手が進化した恐竜なんていう常識外の相手ですから、こちらも常識外のやり方をしないといけません。馬鹿なくらいでちょうどいいわけです。

 ですけれどシャピロ少佐に渡したシャドーフォックスをはじめ、アイアンコングやブレードライガー、ヘルキャット、ディバイソンと良い機体も開発していますから、有能なのは間違いありません。

 個人的には、母艦としての運用もあるウルトラザウルスはともかく、デスザウラーとデススティンガーはヤザン大尉が適任だと考えておりますけれど?』

 

「冗談はよせ。大きい機体や重い機体は性に合わん。こいつらがゲッター2並みに速く動くのなら、乗っても構わんがな」

 

『それは残念。そこまでの速度は出せない子達ですから。他にすぐ用意できるとなったらゴジュラスMk-Ⅱの量産機はともかく、ゴジュラス・ジ・オーガとゴジュラスギガの試作機は、ちょっと難しいかしら?

 ジェノザウラーとジェノブレイカー、バーサークフューラー、ライガーゼロは開発中ですし、キングゴジュラスに至っては設計途中でしたわね……』

 

 次から次に所長の口から出てくる新型ゾイドの名前に、ヘイデスが困った顔で苦笑いする。

 

「ゾイドの開発は数を絞る筈だったんだけれどねえ」

 

『トミイ氏曰く量産型の種類は絞っている。今設計しているのはエース用、決戦用、技術試験用……とあの手この手で新型機の開発を続けている始末ですから。実際、どれも素晴らしい機体です。少数生産かワンオフ前提での運用になる未来しか見えませんけどね』

 

 というかゲッター炉を積んだゾイドを次々と生産すると、ゲッター線次第で今後どうなるか分からない怖さがある。

 それを承知した上でMZの生産を決意したのは他ならぬヘイデスだが、大丈夫かなあ、と常に一抹の不安があるのも事実。

 その不安を忘れるようにヘイデスが話を変えた。

 

「ゾイドの話になってラムサス中尉やアポリー中尉達には退屈だったかもしれませんが、僕の掴んだ情報ではアナハイムがZプロジェクトなる可変機の開発計画と新型サイコミュを使ったガンダム開発を推し進めて、実機が完成間近だそうですよ。コーウェン中将の計画の産物もとある基地に納品される頃合いですし。

 連邦軍のサナリィでも、飛行可能でビームシールドを標準搭載した新世代の小型MSが開発されていますし、ジェムズガンに続く量産機も順次配備が始まっていますから。中尉達にも良い機体が回ってきますよ」

 

 ウチのゲシュペンストMk-Ⅲやバルゴラもね、とヘイデスは自社の宣伝も欠かさなかった。

 

 

 その頃、ジャミトフ・ハイマンに見切りを付けられ、切り捨てられる準備が進められているティターンズでは、そうとは知らぬ一部の者達が極東支部に居座るエゥーゴとカラバ、そして民間のスーパーロボットを接収するべく行動していた。

 日本に存在するムラサメ研究所からフォウ・ムラサメ、レイラ・レイモンド他のパイロット達が搭乗するサイコガンダム数機、プロト・ゼロの乗るガンダムMk-II試作0号機他、マラサイ、ハイザック、アッシマーで構成される部隊が編成されつつあるのだった。

 

<続>

■モビルゾイド → ゾイド へと後期開発の機体から名称が変更されました。

 

■アイアンコングが開発されました。

■ブレードライガーが開発されました。

■ヘルキャットが開発されました。

■ディバイソンが開発されました。

■ゴジュラスMk-II(量産型)が開発されました。

 

■ジェノザウラーが開発中です。

■ジェノブレイカーが開発中です。

■バーサークフューラーが開発中です。

■ライガーゼロが開発中です。

 

■イチナナ式が開発中です。

■グレートマジンガーが開発中です。

■量産型グレートマジンガーが開発中です。

■ザマンダー、マグネスファイブ、マルスがそれぞれ量産版(原作)、簡易量産版(本作)の二パターンで開発中です。

 

☆強化パーツ

・パイロットの写真集

 気力限界+20、初期気力+10、最終与ダメージ+3%、最終被ダメージ-3%。

 




バイオゾイドのヘルアーマーをどうすれば再現できるのか悩み中。
作中で所長が言っていましたが、ゾイドは主力量産機は数を絞り、用途別の高級機として複数種を少数・ワンオフ生産になる予定です。出来るだけたくさん出したいなあという欲求が出てきたもので、はい。

ズフィルード・クリスタル×ゲッター炉でゾイドコア擬き出来ますかね? おまけで自己進化と自己再生と自己増殖もついてきますぜ! そうしたらデビルガンダム×デスザウラー的な何かが出来るのかしら?


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第二十五話 そろそろ同窓会が開けそう

 地球では息を潜めていた魔竜機連合とボアザン・キャンベル連合が再び息を吹き返し始め、宇宙では月を中心にベガ星連合軍が、各コロニーに真ジオン公国の魔の手が伸び始めていた。

 そんな折、ティターンズ創始者であるジャミトフ・ハイマンはジャブローのオフィスへわざわざ地球へと呼び寄せた部下の一人と対面していた。

 

「こうして顔を合わせるのは久しぶりだな。ペデルセン大佐」

 

「はっ。閣下におかれましてはお変わりなく」

 

 オットー・ペデルセンはティターンズに所属する歴戦の艦長だ。普段はアレキサンドリア級アスワンの艦長として、ソロモンを拠点にティターンズ専用の新兵器の開発・テストを行うティターンズ・テスト・チーム(通称T3)を率い、任務に当たっている。

 各種侵略者の来襲以降は通常のテスト任務と侵略者撃退任務を並行して行い、ろくにテストもしておらず信頼性の低い新規パーツや装備に振り回されながらも、優秀なスタッフに支えられて今日まで確かな成果を積み上げている。

 ティターンズの横暴と暴走に拍車をかけているバスク・オムとは異なり、スペースノイドに対するこれと言った偏見や妄執を持たぬペデルセンは、ティターンズの中の良心といえるだろうか。

 

「地球で装備の試験中だったとはいえ、貴官をわざわざジャブローに呼び寄せたのには、もちろん相応の理由がある」

 

 アスワンの部下達やT3のパイロット達には、ジャブローの整った施設でリフレッシュする良い機会にはなったが、とペデルセンは舌の上で言葉を転がした。

 これまでT3のテストしてきた装備は対MSを想定した代物であったが、昨今では侵略者達の使用する奇抜で巨大で強力な兵器に対抗するべく、高火力・大出力の装備が目立ち始めている。

 その分、これまでのノウハウが通用しない装備も増えて、テストに掛かる負担は増しているのだ。

 

「バスクめの増長、宇宙に居る貴官の方がより多く感じていよう」

 

 バスクの増長は彼の持つジオン公国ひいてはスペースノイドへの憎悪を核にしているが、ジャミトフという強力な庇護者の存在有ればこそだ。これまでジャミトフはバスクの増長を苦々しくは思っても利益になる点に目をつぶってきた筈だが、今の発言は……。

 

「それは、答えにくい事を聞かれますな」

 

「宇宙で争いの喧騒が轟くようになったが、この地球ではそれよりも早く過去の遺物や星の海の外からやってきた汚らわしい者共が牙を剥いている。

 その中にあってバスクのやり方は時勢に取り残される愚かなやり方だ。なによりアレでは人類を守り切れるか怪しいものだ」

 

「バスクの血管が切れそうな物言いをなさる。閣下、ことはバスクの更迭だけでは済まないと?」

 

「貴官の察しの良さは買っているところの一つだ。少なくとも私は地球の環境保全と人類の存続を願っている。ならばそれが叶うように動くのは当然の話だろう?」

 

 そう告げて細められるジャミトフの瞳に、ペデルセンはT3を改名しないといけなくなるな、と部下達の顔を思い浮かべながらそんなことを考えていた。

 

 

 その日、息を潜めていた魔竜機連合は高らかな笑い声と共に人類へと牙を剥いた。光子力研究所、ムトロポリスへ膨大な戦力を投入して一気呵成に殲滅すべく襲い掛かってきていた。

 光子力研究所を目指して太平洋からあしゅら男爵、ブロッケン伯爵の乗る飛行要塞グール二隻と機械獣、それぞれ剣、槍、鉄球を得意とする歴戦のキャプテンの乗るメカザウルス・グダ三隻と恐竜ジェット機の大編隊にメカザウルスの混成軍団が迫っていた。

 

「ふはははは、愚かな地球人類どもよ、我ら魔竜機連合! その威光に畏れひれ伏すがいい!」

 

 ヘイデス暗殺こそ失敗したものの、その後はお咎めもなく魔竜機連合の初戦を任されたあしゅら男爵が混成軍団の異様な映像を、オープンチャンネルで放送しながら軍団を進める。

 共に出撃したブロッケンも普段の確執は脇において、まずは忌々しい光子力研究所、続いて早乙女研究所を制圧する為の大軍団の指揮を執れることに興奮している。

 

「我らが主Dr.ヘルの英知と恐竜帝国、そして妖魔帝国の空前絶後の力を前に屈するのだ!」

 

 幸い、大部隊ゆえに早期に発見された為、進路上の市民の避難は完了しており、進路上の市街の破壊こそ免れなかったものの民間人への被害は皆無であった。

 この時、魔竜機連合軍は機械獣やメカザウルスといった機動兵器ばかりでなく、あしゅら男爵配下の鉄仮面軍団、ブロッケン伯爵の鉄十字軍団と恐竜兵士らからなる歩兵戦力も展開していた。

 

 魔竜機連合の動きは光子力研究所のみに留まらず、ムトロポリスへもまたプリンス・シャーキンが直々に乗り込んだ艦を含むガンテ五隻に多数の化石獣を主力とし、機械獣とメカザウルスを含む強力な軍団が侵攻していたのである。

 この事態に折あしくキングビアルとザンボット3は極東支部にて解析中であり動けず、残る民間のスーパーロボット軍団と極東支部、そしてハガネは戦力を二分して対処しようとした……が!

 

 ここにきてムラサメ研究所からの戦力提供を受けたティターンズが、状況を鑑みずに極東支部へエゥーゴとカラバの殲滅並びにスーパーロボットの引き渡しを求めるという行為をかます(・・・)

 後にこの報告をジャブローで受け取ったジャミトフは、何も言わずに椅子に深々と腰かけると、顔を手で覆い肺の中身をすべて絞り出す溜息を吐いたという。

 

 そして激戦の場となった日本ではこの事態にどう動いたかと言えば、アーガマ隊(ハヤトのクラップ級と艦載機含む)、アルトアイゼン、ヴァイスリッター、ヤザン、ラムサス、ダンケル、イングリッド、アムロがティターンズの撃退へ。

 マジンガーチーム、ゲッターチーム、獣戦機隊を含む極東支部部隊、ヘイデスの手配したアレスコーポレーション(AC)日本部隊が光子力研究所へ。

 ライディーン、ダイモス、ボルテスV、コンバトラーV、グランド・スター小隊、シュメシ・ヘマー、ゼファー、ハガネ艦隊はムトロポリスへ。

 このように戦力を三分割し、元々重要施設として配備されていた防衛戦力と連携して、今回の戦いにあたる事となった。

 

共通ルート 第十五話 ムラサメの人間達

 

 バスク・オムの厳命を受けて行動したティターンズ地上部隊は、はっきりいって今回の任務に乗り気ではなかった。宇宙でスペースノイドの弾圧に励む部隊と違い、地上での彼らは他の正規軍同様に侵略者を相手に命懸けで戦い続けてきた猛者だからである。

 対テロ、対ジオン残党鎮圧という目的は大いに結構だし、一年戦争の被害を考えれば賛同するが、この状況だったら侵略者の撃退を最優先しろ! というのが地上の前線でバリバリ戦う彼らの共通認識である。

 

 ベン・ウッダー大尉が指揮を任された兵士達はおおむねそのような心情であったが、事情が異なるのは協力を要請され、研究成果の披露と予算獲得の為に加わってきたムラサメ研究所の人々とそこに所属する強化人間達だった。

 精神と肉体を散々に弄繰り回した成果である強化人間達は、プロト・ゼロ、レイラ・レイモンド、フォウ・ムラサメの他にも数名が加わっており、ゼロの他にはサイコガンダムとギャプランが用意されている。

 

 地球連邦軍に広く採用されているストーク級、また大型MSやスーパーロボットの運用の為に数を増やされたガルダ級による艦隊が編成されている。

 その中のガルダ級の格納庫で、ゼロは与えられたガンダムMk-Ⅱ試作0号機のコックピットから、ワイヤーでけん引されているサイコガンダムの一機に通信を繋げていた。

 

「レイラ、サイコガンダムの調子はどうだ?」

 

 モビルフォートレスとも呼ばれるMA形態のサイコガンダムからは、落ち着いた様子の女性の声が返ってきた。レイラはジオンに亡命したゼロを研究し、フラナガン機関によって生み出された強化人間だが、一年戦争が終結した後、二人ともフラナガン機関共々、ティターンズ系の研究施設に収容されて今に至る。

 

「ええ、大丈夫。機体のサイコミュとも馴染んでいるから」

 

「ならいい。相手は地上に降りたエゥーゴだけじゃない。スーパーロボットまで相手にするとなると、楽な話じゃない。自分のコンディションには常に気を配るんだ」

 

「ふふ、まるで私のお父さんね」

 

「からかうのはよせ。成果をあげれば研究所の連中が俺達の記憶を戻すと言っているのは、君だって知っているだろう」

 

「フォウはそれに縋ってさえいるものね」

 

 レイラはそう言うと別のストーク級にけん引されているサイコガンダムのパイロットを思い、悲しげに目を細める。

 ムラサメ研究所の保有する最も完成度の高い強化人間フォウ・ムラサメは、自分から失われた記憶を取り戻すことに躍起になっている。

 ジオンで作られたレイラには記憶や過去にそれほどの思い入れはないが、フォウはムラサメ研究所に囚われてからの数少ない同胞と言える相手であるから、やはり気にはなる。

 

「俺達をいい様に使う為に研究所の連中も手を変え品を変え、ご苦労なことだ」

 

 かくいうゼロも本作戦が上手く行けばプロト・ゼロからゼロ・ムラサメに名称を変更してやる、とまるで商品の名前を変えるような感覚で所員から通達を受けている。

 成果を上げた道具ならば、研究所の成果として『ムラサメ』の名を与えて正式に認めてやる、というわけだ。

 ゼロはまるで魅力を感じなかったが、自分の立場がよくなればレイラや他の強化人間の待遇が良くなるかもしれないと考えて、ぐっとこらえた。

 

「エゥーゴにはアムロ・レイも参加しているのよね? 出てくるかしら」

 

「ふん、伝説のニュータイプか。実際がどんなものか、俺と0号機が確かめてやるさ」

 

 ゼロが強化された自分の能力に対して誇りを抱いているかは定かではないが、絶対的な自信を持っているのは確かだ。

 一年戦争から今日まで時にジオンを、時にティターンズにとって邪魔な存在を、そして時に侵略者を相手に戦い、常に勝利を重ねてきた実績が彼の自信を強固なものにしている。

 

 ゼロにとって研究所の連中にいい様に使われるのは腹立たしいが、自身の能力を知らしめるためにアムロやエゥーゴと戦うことに忌避感はないのだ。

 この通信も所員らが傍受しているだろうが、ゼロは知った事かと無視している。所員共もゼロが戦闘意欲に燃えている分には咎め立てすまい。

 

 この時のゼロやレイラ達は、既に日本各地が魔竜機連合による同時攻撃を受けて、接収予定のスーパーロボットのほとんどが極東支部を留守にしている事、また侵略者の行動から作戦の中止を訴えるベンの意見を、ティターンズの上層部が棄却したのを知らない。

 取捨選択された情報しか与えられないゼロ達は、極東支部からアーガマ隊が迎撃の為に出帆した事で想定よりもはるかに早く戦端は開かれた。

 

 MA形態のサイコガンダム五機がワイヤーから解放され、ストーク級で指揮を執るベンの指示の下、強化人間の駆るギャプラン隊の他、通常のパイロットが乗るアッシマー隊、SFSに乗るハイザックとマラサイ隊、そしてミノフスキー・クラフト内蔵の増設ユニットを背部に装備した0号機が出撃する。

 このサイコガンダムだが原作に比べてこの世界の情勢に合わせた改良が施されており、ミノフスキー粒子以外のビームが氾濫している事からIフィールドは撤去され、代わりにビームバリヤーが装備されている。

 

 サイコミュ装置を小型化できずに巨大化した機体も、侵略者の運用している兵器のサイズを考えればむしろこれでも小さいくらいだと問題視はされず、最新のミノフスキー・クラフトと熱核融合炉が搭載され、装甲は高純度のガンダリウム合金と原作以上の重装甲だ。

 コスト? ティターンズは正規軍よりも予算が優遇されているので問題はない。今はまだ。

 機体の開発過程やらなんやらに目を瞑れば、侵略者らのトンデモ兵器を相手にスーパーロボット級の活躍が見込めるスペックはある。引き出せるどうかはまた別として。

 

 眼下に日本の山々を臨む中、ストーク級のブリッジでベンはこちらへ向けて迫りくる大型熱源の報告に、すぐさまミノフスキー粒子を戦闘濃度で散布させる。

 ミノフスキー粒子の散布など市街地で行えば市民の生活にどれだけの支障が及ぶか分かったものではないが、幸い都市部から離れた地域である為、被害は最小限に抑えられるだろう。

 また予想される戦闘地域に、事前に極東支部からの避難勧告が通達されていたのも不幸中の幸いであった。

 

 もしジャミトフがティターンズを見切り、ペデルセンを新たな懐刀にする計画をもっと早く推し進めていたなら回避できた戦闘が、今、行われようとしている。

 アーガマやクラップ級から出撃したMS部隊の中から感じられるザワザワとした感触は、程度の差こそあれ双方のニュータイプ・強化人間達に干渉し、彼らの神経をささくれ立たせる。

 

 その不快さに急かされるようにして口火を切ったのは、MA形態のサイコガンダムを操るフォウ・ムラサメだ。

 ジオングのように頭部の中にあるコックピットの中で眉間に皺を寄せて、不快感に身を捩りながら叫ぶ。

 

「私に触れる奴! お前達はなんだ!? お前達を倒せば、私は私になれるんだ!」

 

 サイコガンダムの腹部の三連装拡散メガ粒子砲が強烈な閃光を発し、射程距離に入っていたヤザンらのギャプランがひらりと回避する。フォウに続いてレイラ機を含む四機のサイコガンダムが拡散メガ粒子砲を一斉に発射して、両艦隊を光の雨が繋いだ。

 

「デカブツはエゥーゴと姫に任せる。ラムサス、ダンケル、俺達は敵のギャプランとアッシマーを片付けるぞ!」

 

「了解」

 

「流れ弾の多い戦いになりそうだ」

 

 MA形態の推力を活かして見る間にティターンズ部隊と距離を詰めるヤザンらに、ヴァイスリッターを駆るエクセレンも追従する。ちょうど彼女の見ている前でサイコガンダム達はMSへと変形していた。

 

「黒いガンダムちゃんたら、ゲッターと殴り合いが出来そうなサイズじゃない。イメチェンにしても大胆過ぎじゃないかしら?」

 

 サイコガンダムの両指から放たれた十本のメガ粒子砲をひらりと蝶のように舞って避け、Eモードのオクスタンランチャーを試しと撃ち込んだ。

 光子力エンジンから供出される光子力エネルギーの槍は、サイコガンダムに直撃する数メートル手前でビームバリヤーの干渉を受け、周囲へと無数の稲光のように散らされて威力が大きく減少する。

 それでもビームバリヤーを突破した一撃は、サイコガンダム胸部の重装甲へと直撃し、その巨体を大きく揺らすに留まった。

 

「ふうん? ま、今どきIフィールドなんて積むだけ無駄だし、代わりは用意してある、か。落とすには溜め撃ちかそれとももっとシンプルにウチのダーリンみたいなのが有効かしらね?」

 

 サイコガンダムの崩れた体勢をパイロットの強化人間が素早く立て直す間に、一気に加速したアルトアイゼンが回避の間に合わぬ距離まで詰めていた。

 むろんサイコガンダムもただでやられるわけもない。即座にアルトアイゼンに振り向いて、腹部の三連拡散メガ粒子砲からビームの雨を降らしてくる。

 

「俺とアルトを止めたければこの三倍は持ってこい!」

 

 展開された光子力バリヤー、そして純正のガンダニュウム合金からなるアルトアイゼンの装甲は、拡散メガ粒子砲をことごとく弾き飛ばし、無傷のまま超合金Zのステークがサイコガンダムの左膝に叩き込まれる。

 

「ステーク!」

 

 キョウスケがトリガーを引き、激発したビームトリガーによって打ち出された杭は、サイコガンダムの左膝をぶち抜いて、直撃部分からフレームごと纏めて装甲を粉砕する。

 ミノフスキー・クラフトを搭載しているとはいえ、片足を失い、更にステークの衝撃とプラズマに内部の電装をズタズタにされたサイコガンダムはなすすべなく崩れ落ちる。

 そのままヒートホーンでサイコガンダムの胸部を切り上げようとしたキョウスケは、直上から三連射された高出力ビームライフルに気付き、愛機にバックステップを踏ませる。

 

「ち、横槍が入ったか!」

 

「三号機、さっさと下がれ!」

 

 サイコガンダム三号機の危機に割って入ったのは、ゼロのガンダムMk-Ⅱ試作0号機だ。

元よりペガサス級数隻分に匹敵する製造コストを必要とする高性能機は、ムーバブル・フレームや連邦製サイコミュをはじめ、最新技術が盛り込まれた事でガンダムMk-Ⅱをはるかに凌駕する超高性能機だ。

サイコガンダムのメガ粒子砲に耐えるアルトアイゼンも、直撃を避けるべき威力のビームがその証拠の一つだ。

 アルトアイゼンの肩部装甲が開き、特注のタングステン製弾がぞろりと顔を覗かせる。一発一発の威力は低くとも、まとめて当たればサイコガンダムの重装甲でもどうなるか!

 

「させん!」

 

 ゼロは既に左手でビームサーベルを抜いていて、シールドをハードポイントに接続した状態で0号機のバーニアを吹かし、アルトアイゼンへと肉薄する。

 その動きはキョウスケがトリガーを引くよりも早く、トップクラスの強化人間としての面目躍如と言えたろうか。

 

「ちぃ!」

 

 同時にアルトアイゼンの胸部を狙って突き込まれるビームサーベルを、左手首内側のビームサーベルを起動して受け止めるキョウスケの反応もまた、ノーマルな人間としては称賛に値する。

 しかし拮抗状態はすぐさま崩壊した。コストを度外視した超高級機たる0号機は、それでもMSだ。しかし今、対峙しているアルトアイゼンはSRG計画の産物、マジンガーの系譜にも連なるスーパーロボットの亜種なのだから。

 

「なんだこのパワーは!? MSじゃないのか!」

 

 アルトアイゼンの左腕の一振りで0号機はおもちゃのように吹き飛ばされ、ゼロが堪えきれずに驚愕を言葉にした時、アルトアイゼンから放たれる新たなプレッシャーに、ゼロは愛機を垂直方向へと急上昇させた。

 

「逃がさん!」

 

 アルトアイゼンの腹部に内蔵された光子力ビームシャワーが発射され、直感に突き動かされた0号機こそ逃したものの、その背後から援護に近づいてきていたハイザックとマラサイが正面からもろに浴びて穴だらけになる。

 アルトアイゼンばかりではない。ヴァイスリッターも高機動と高火力の組み合わせによりサイコガンダムを見事に牽制し、そのついでとばかりにSFSを一機、また一機と撃墜して敵MSの機動力を奪っている。

 

 そんな中で、アムロ、クワトロ、イングリッド、そしてカミーユはサイコガンダムやギャプランを駆る強化人間達、そしてゼロの存在にも気付いていた。

 特にカミーユはサイコガンダム一号機を操るフォウと波長が合うのか、あるいは原作補正とでもいうのか、しきりに気にする素振りを見せている。あるいはGPνに搭載されたサイコミュによる恩恵/弊害か。

 

「ああ、お前か、さっきから私を引っ張るのは? 私を引き寄せて、何をする!」

 

 フォウのサイコガンダムが腹部、両指、額と全身に仕込んだメガ粒子砲を連射し、それは恐るべき精度で自力飛行するGPνを狙い続けている。

 

「君は、戦っている? いや、違う、戦わされている!?」

 

「ザラっとしたこの感覚、頭の中で蛇がのたうつ、のたうって、私の心をかき乱す! 近寄るな!」

 

「黒いガンダム、パイロットを戦闘に駆り立ててお前達は何がしたいんだ!」

 

 カミーユはACから譲り受けた超電磁チェーンソーを機体の左手に持たせ、サイコガンダムに果敢に挑みかかる。

 カミーユとフォウがまるで磁石のように惹かれ合っているのを感じていたアムロ、クワトロ、そしてイングリッドは周囲の敵機を牽制しつつ、二人の動きを注視していた。

 特に戦いの中でララァを失ったアムロとクワトロは、かつての悲劇の再現を目の当たりにしているような心持ちとなり気が気ではない。

 

「カミーユ、戦場で敵と同調するのは危険だぞ! シャア!」

 

 周囲へフィン・ファンネルを展開し、単独で複数機の火力を実現する超人技を発揮中のアムロは、機体をRFガンキャノンからRFガンダムへと切り替えて、カミーユへの加勢に向かった。

 

「分かっている。サイコミュの気配を感じるマシーン。ティターンズめ、ここまでの代物を作り上げたか」

 

 クワトロは乗っていたド・ダイ改をMA形態のアッシマーへとぶつけ、体勢を崩したところにビームライフルの連射を叩き込み撃墜。

 更に斬りかかってきたハイザックのヒートホークを、柄を握る手に回し蹴りを叩き込み、体勢を崩したところに更にビームライフルの一撃。

 流れるような、ではなく一切の淀みがない流れる動作で二機を撃墜したクワトロは、しかし、フォウの援護に動いていた0号機に割り込まれた。

 

「金色の、貴様もニュータイプか! アムロ・レイではないが、やると見た!」

 

「ちぃ、これはニュータイプに似て非なる! ニュータイプを、いや、人間を戦争の道具にするなど傲慢な」

 

 百式で0号機を相手に性能で劣る分は技量で補いながら、クワトロは歯痒さを感じつつゼロの拘束に成功する。

 クラップ級から出撃したネモ部隊とアポリー、ロベルト、エマ、カツがマラサイとハイザック隊を引き受けている間に、イングリッドはフォウのサイコガンダムの背後を取っていた。

 

「機体とパイロットをサイコミュで繋いでいる……だけじゃないか。ヤダヤダ、連邦のやることは野蛮だこと!」

 

 こちらを阻止しようと、空中で変形して殴りかかってきたアッシマーのメインカメラに ビームサーベルを突き込み、放り投げてから、フレームランチャーの照準をフォウのサイコガンダムの背中側に折りたたまれた帽子めいたパーツへと向ける。

 フレームランチャーの火力でサイコガンダムの装甲が抜けるかは難しいが、やらないよりはマシだろう。

 

「こっちにも横槍!? おっちゃん達に文句言えないなあ!」

 

「やらせるかあ!」

 

 イングリッドのヘビーガンダムにビーム砲の嵐を叩き込んだのは、普段とは打って変わって攻撃的な言動が表出するレイラのサイコガンダムだ。

 次々と地面に突き刺さるビームを避け、イングリッドはフレームランチャーの照準をレイラのサイコガンダムへと切り替える。

 ヘビーガンダムのサイコミュとサイコガンダムのサイコミュが混線しているのか、ノイズのように頭痛がイングリッドの思考を乱す。

 

「っつう、ニュータイプ同士の共鳴っての? お互い強化人間だけれどさ、もうちょっと優しくしてよね。女の子同士じゃない?」

 

「落とす!」

 

 サイコガンダムと強化人間達の奮闘は、スーパーロボット抜きのアーガマ隊を相手に十分に善戦していた。

 部隊の指揮を執るベンは五機のサイコガンダムに加えてこれだけの戦力を投入しても押しきれず、むしろ劣勢の状況に冷や汗をかいている。

 

 ベンからすれば奇妙なことに、フォウのサイコガンダムに対してエゥーゴのガンダムが二機、妙な手心を加えているような戦い方をしていなかったら、今頃は落とされていてもおかしくはない。

 ベン自身MSパイロットとしての経験を持つだけに、敵方の一部のパイロットの技量が人間を止めているような連中であることを悟り、想定が甘すぎたのを噛み締めている。

 

(くそ、これならば無理にでも機械獣や化石獣の撃退を優先させればよかった! これではむざむざと戦力を減らしに来ただけではないか!?)

 

 数を増やされたとはいえガルダ級はいまだ貴重であるし、ストーク級も使い勝手の良さから連邦地上軍では重宝されている空中母艦だ。このような連邦軍内の内ゲバで失うには惜しい艦である。

 秒ごとに不利な状況に追い込まれるティターンズへの悲報は、オペレーターから泣きそうな声で齎された。

 

「新たな熱源を二つ探知。方位1-3-5より接近中の機体はガンダム01、羽根つきです。もう一機は方位5-5-8より接近中、ライブラリに照合アンクシャです。識別コードは……あ、いえ、更に一機出現、これはガンダム02、鎌持ちです。凄いステルス性能だ!」

 

 オペレーターが驚愕した通り、ガンダム02……ガンダムデスサイズは既に戦闘区域に侵入し、間合いに入ったハイザックの胴を薙いでようやくその存在を探知されたのだ。

 

「やれやれまたお前さんと一緒かよ。こっちはエゥーゴにつけって命令が来たんだが、そっちはどうなんだ、ええ、ヒイロ?」

 

 バードモードで戦闘空域に高速で侵入し、MSへと変形したウイングガンダムを操るヒイロは、デスサイズのデュオからの通信に答えなかった。

 その代わりに出力を抑えたバスターライフルを発射し、こちらに狙いを定めたティターンズのギャプランを一機撃ち落として見せた。

 

「状況を確認。作戦パターンをA-2-8へ移行。エゥーゴを援護し、ティターンズを排除する」

 

 そして残る一機……アッシマーの後継機たるアンクシャの先行量産機を駆るのは、元プロメテウスプロジェクトメンバーであるブラン・ブルターク少佐であった。

 

「やれやれようやくアンクシャのテストが終わったかと思えば、即座に実戦投入とは。だがまあ、懐かしいメンバーとあの子らの居る戦場なら、否やはあるまいな」

 

 緑色の円盤、フードを被ったジェガンといった装いのアンクシャのコックピットで、ブランは見覚えのある戦闘機動を取る数機のMSに向けて男臭い笑みを浮かべるのだった。

 

<続>

 

■サイコガンダムが開発されました。

■アンクシャが開発されました。

■ガンダムMk-Ⅱ試作0号機が開発されました。




ブラン、デュオ、ヒイロの加入回ですね。

追記

ティターンズ上層部
「エゥーゴとカラバを壊滅させろ! ついでに極東支部のスーパーロボットを接収するのだ! ムラサメ研究所の強化人間共を使わせてやる!」

ベン・ウッダー
「し、しかし、現在、日本では魔竜機連合を名乗る侵略者からの攻勢を受けており、状況を考えれば我々も魔竜機連合の撃退を優先すべきです」

ティターンズ上層部
「そんなものは極東支部の連中にやらせておけ。今は我々に逆らう勢力の撃滅と戦力の摘発が優先される。指示に従えばよい!」

ベン・ウッダー
「……(絶句)」

ムラサメ研究所の皆さん
「よし、我々の研究成果を披露する時だ。これで戦果を挙げて更なる予算と権限を獲得するぞ!」

その後、事の顛末を知ったジャミトフ
「…………マヂムリィ」

ふわっとした感じですが、こんな具合にティターンズの現場のまともな人達は無理を強いられました。


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第二十五・五話 アインストさんチはアットホームな職場です

三千字程度の突発ネタです。短いけれどもご容赦を!
ムゲフロネタを含みます。


 赤みがかった奇妙な、しかし静寂に満たされた空間が延々と広がっている。

 時折ストーンサークルや大小無数の結晶体が浮かんでいる他には星や太陽もなく、宇宙空間と言うのも難しい場所だ。

 ここを住まいとする存在があった。人型と呼ぶのがはばかられる異形で、全高は百メートルをゆうに超えるだろう。

 緑の鞭のような触手を持った右腕に、巨大な爪を何本も生やした歪な左腕、いかにも怪物然とした巨体と左右に伸びる黄色の角と額から赤い角を伸ばすそれは、二つの目こそあれ鼻も口もない。

 

「地球……生命の生まれし星。青き根源。水の始原。憎み合い、闘い、殺し合い、滅ぼし合う生命。否。不合格……不適格……不適切……やはり失敗。だが成功の定義は……。未来の……可能性は……。

 特異点……太極の化身、次元将、虚憶の保持者、因果律の番人、呪われし放浪者。可能性の交わる世界、破滅、創造、再生、進化、閉塞、開花、いずれに至る……」

 

 一部のスパロボ作品を遊んだプレイヤーには、あるいはアニメを見た視聴者ならば、それの名前がノイ・レジセイアと呼ばれる存在であることを看破しただろう。

 そしてこの世界にアインストと呼ばれるスパロボオリジナル勢力が存在しているのも、改めて確信するだろう。

 

「そして世界の外より来る者。いや、モノよ。理外を知る。世界の枠の外を知る。なにを齎す? 破壊者か、再生者か、創造者か、それとも救世を成す者、か。……我が推したる地きゅ」

 

 アインスト空間に響き渡るノイ・レジセイアの思念だったが、それもヘイデスらの居る宇宙からこちらへと帰還してきた新たな住人によって遮られる。

 

「おとかあ様~、なんだか変なのが落ちていたから拾ってきましたの~」

 

 ノイ・レジセイアをお父様とお母様を足して二で割った【おとかあ様】という造語で呼ぶのは、アインスト・アルフィミィ、青いウェーブのかかった髪が特徴の少女型のアインストである。

 現在は、赤い鬼面の鎧を纏う骨といった外見のペルゼイン・リヒカイトという生体兵器型のアインストに搭乗し、ペルゼインの右掌に人間大の物体を一つ、左腕にはほぼ残骸と化した機動兵器を大事そうに抱えている。

 

「アルフィミィよ、何度も言っているが落ちている物をむやみに拾ってきてはいけない」

 

「でもそこらの隕石やジャンクとは一味違いますのよ」

 

「お前はそう言っては次から次へと拾い物をしてくる……」

 

 アインスト空間の一角には、大破したグワジン級の残骸を改装したアルフィミィのプライベートルーム【アルフィミのおへやですの】があり、そこにはアルフィミィが外の世界から好奇心引かれて拾ってきた様々なガラクタもといお宝が仕舞われている。

 機動兵器の残骸などはノイ・レジセイアが分析と複製の為に引き取っているが、破壊されたコロニーや輸送船から溢れた漂流物はそのままアルフィミィのものとなり、グワジン級の豪奢な内装の一室を改装してそれなりに女の子らしい部屋が出来上がっている。

 

 おまけにどこからかテレビ放送やネットワーク回線にも繋がっており、時折、アルフィミィはネットサーフィンをしたり、ラジオに耳を傾けて、余暇を楽しんでいる。

 ノイ・レジセイアはそれを咎めてはいないが拾い物のペースと量が増しており、そろそろ釘を刺そうかと考えていた。

 

 以前、ビグ・ザムを中心に無数のMSの残骸が合体していた怪物を拾ってきた時には「捨ててきなさい……いや、この場で消滅させる」と断言したものだ。

 怨霊か何かが動かしていた痕跡があり、既に何者かの手によって撃破された抜け殻であったが、傍に置いておいて気持ちの良いものではなかった。

 

「でもでもなんだかこちらの方とは面識がないのに、なぜだかお会いしたことがある気がしますの。こんなことは初めてですのよ? それにこの方達もきっとおとかあ様の言うイレギュラーではないですの?」

 

「フム?」

 

 まずはアルフィミィが見覚えがあるという方を見る。おそらくは虚憶の関係であろう、とノイ・レジセイアは推測しながらペルゼインの右掌の中を見る。そこには右腕と両足を失い、色素の抜けた女性型の人造物の姿があった。

 ノイ・レジセイアはその女性の人型へしゅるしゅると細長い触角を聴診器のように伸ばし、調査を素早く開始する。

 

「魂の器。人造の躯体に宿った意思。二つの意思を持つ器物。いや、更にもう一つ。三つ? 秩序を意味する人型。なるほど、お前ではないお前と因果の糸が結ばれている」

 

「まあ、そうですの。時折、おとかあ様の言われる別世界の私と仲良しさんでしたのかしら?」

 

「そこまでは分からぬ。あの宇宙は次元境界線が不安定化している。呪われし放浪者と太極の化身の来訪、そして理外の者の覚醒。

 この者らも不安定化した境界線に飲まれ、お前に見つけられたのだろう。あるいは引き寄せられた? 静寂を乱す新たな分子、異なるルーツの来訪、次元単位で起源を別とする異種との交差……」

 

「おとかあ様は難しいことばかり考えられますのね。こちらのロボットにも殿方がいらっしゃいましてよ。こちらはもう亡くなっておられますけれど、おとかあ様ならどうにかできませんこと?」

 

「新たな生命……命を生む母をモデルとして生み出したお前達は、アルフィミィ、お前を除いてつがいたり得る相手を見つけた。ならば次は命を育てる父を生むか?」

 

「あら、ひょっとして私のお相手さんとお考えで? それなら結構ですの。男友達や兄弟というものには興味がありますけれど、今のところ、私の興味はキョウスケとアクセルですのよ」

 

「…………キョウスケはエクセレンの、アクセルはレモンの番であるが?」

 

「略奪愛も愛の内ですの。なんて、二人が選んだ相手に興味があるだけですの。私もレモンもエクセレンをルーツにする存在。ルーツであるエクセレンと同じ派生であるレモンの好みがどんなものか、乙女心は好奇心で揺れ動いておりますの!」

 

「アルフィミィよ、サブカルチャーを嗜好するのもほどほどに」

 

「お仕事はきちんとしておりますの。それでこちらの女性とロボットと男性は助かりますの?」

 

「容易き事。こちらの者【 KOS-MOS(コスモス)】とそちらのロボットの解析データはレモンに送る。アレの作る人型の開発に役立つであろう」

 

「うふふ、レモンはずっと出っぱなしですし、エクセレンは私達との繋がりがほとんどありませんし、これでようやく寂しいこの空間にも新たな家族が増えますの。賑やかなのは良いことですわ」

 

「静寂……静寂が遠ざかる。……しかし、これもまた新たな可能性、進化の道筋、そして真化の光明。獣の血、水の交わり、風の行き先、火の文明、太陽の輝き、異なる宇宙の概念が太極の化身によってもたらされた。ならば、汝らは何を齎す?」

 

 ノイ・レジセイアは触手の中に捕らえたKOS-MOSへと、静かに問いかけるのだった。KOS-MOSは瞼を閉ざしたまま答えない。

 

<続>

 

■アインストが暗躍しています。

■ノイ・レジセイアが登場しました。

■アインスト・アルフィミィが登場しました。

■ペルゼイン・リヒカイトが創造されていました。

■KOS-MOS(本編終了後)がアインストに回収されました。

■ESアシェルの残骸が回収されました。

■ジン・ウヅキの遺体がアインストに回収されました。

■レモン・ブロウニングはアインストの一員でした。

 

■アインスト・KOS-MOSフラグが立ちました。

■アインスト・T-elos(テロス)フラグが立ちました。

■アインスト・ジンフラグが立ちました。




 ビグ・ザム云々はタイトルを失念してしまいましたが、ガンダムの短編漫画で一年戦争で恋人の居る難民キャンプを、退路を確保するために砲撃したのがトラウマになっているザクのパイロットが、戦後にジャンク屋かなにかをしている時に遭遇した怪物の事です。
 たしかコンバトラーVも取り込まれていたような。分かった人いるかな?
 なんだかもう思いついてしまったのでネタは新鮮なうちに、と思い更新しました。細かい事は気にしない、気にしないの精神でお願いします。


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第二十六話 ドラケンEの知名度は如何ほどか

前回の悪霊ビグ・ザムについて数々の情報提供ありがとうございました。
いや、まさかライドンキングの作者さんの作品だったとは驚きです。そしてご存知の方がたくさんいらっしゃたのも嬉しい驚きでした。自分と同じものを他の人も知っていると不思議と嬉しいものです。ありがとうございました。


「金色のMS、ふざけた色だが!」

 

 ガンダムMk-Ⅱ試作0号機はクワトロの百式に対し果敢に斬りかかり、お互いの反応速度と先読みによって空中に幾重にも斬撃の軌跡を描き、光の粒子を散らしている。

 その合間にもクワトロは左手のビームライフルを使い、ハイザックやマラサイの頭部、手足を撃ち抜いて無力化するという離れ業をやっており、強化人間として極めて高い能力を誇るゼロをして驚愕せしめる技量を見せている。

 

 クワトロ以外にもそうするだけの余裕がある者、特にイングリッドなどは殺さずの戦いをしているが、あくまで出来る範囲での話だ。

 今後の地球圏の防衛を考えれば、ティターンズ入りするレベルのパイロットには、軍人としての本分の方で死ぬほど働いてもらうのが良いに決まっている。

 これはティターンズ側のパイロット達の士気が恐ろしく低かったのも影響している。具体的に言うと、通常気力100でスタートするところが、70ほどである。

 

「操縦に感情を乗せている。動きが読みやすいな、ガンダムのパイロット」

 

「こいつ、この僕を、この俺を!?」

 

 百式の足元を払うような低い軌道の蹴りを、0号機はバーニアを吹かしながらバックステップで避ける。サーベルの間合いから外れたその瞬間、両機の頭部からバルカンの発射炎が噴き出した。

 炸薬の改良などにより、旧式のMSならばシールドごとまとめて装甲を穴だらけにする威力だ。回し蹴りとそれを避ける動作から十分の一秒以下で行われたバルカンの発射を、クワトロもゼロも機体にサイドステップを踏ませて回避したのは、流石の一言に尽きる。

 

 ヘルメットの中で悪罵を吐こうとした時、ゼロはレイラのサイコガンダムへとバスターライフルを向けるウイングガンダムに気付いた。

 サイコガンダムのビームバリヤーは強力だが、あのコロニーのガンダムの最大火力は異常だ。直撃を受ければビームバリヤーを抜かれる。

 

「クソッ!」

 

 百式の足を止める為に狙いを定めずにビームライフルを連射し、推進剤を贅沢に燃やしてウイングガンダムへと狙いを移す。0号機からのビームを回避した百式は、追撃を加えるのではなく、まだ数の居るティターンズ機の無力化に動いた。

 

「やはり技量の水準は高い。言えた義理ではないがスペースノイド、アースノイドと言っている場合ではないか」

 

 ハイザックのビームライフルを握る右腕を左手のビームサーベルで斬り落とし、相手のハイザックが既に左手で振りかざしていたヒートホークには、その左肩を至近距離からビームライフルで撃ち抜いて対処。

 両腕を失ったハイザックのコックピットに横蹴りを叩き込み、倒れ込むハイザックを跳び越え、こちらを狙っていたMA形態のアッシマー二機へビームライフルを三発ずつ叩き込む。

 

「固いなっ」

 

 しかし対MS戦を想定して通常のビームライフルを装備してきたのだが、あろうことかアッシマーは直撃を受けて装甲がへこむ程度で、動きに支障はない。

 なにしろアッシマーと来たら、原作において変形中に装甲の無い箇所にビームを直撃させてもさしてダメージにならない頑丈な機体なのだ。

 

 クワトロは即座に狙いを修正した。こちらの頭上を通過するアッシマーの背後を見て、ビームライフルの銃口は糸で繋がれたようにスラスターへと向けられる。

 二度、百式のビームライフルが輝き、高速で飛行している最中のスラスターを撃ち抜かれたアッシマーは、操作不能に陥ってそのまま落下して行く。その途中でMSへと変形して、かろうじて落下の速度を緩めたのは、アッシマーのパイロット達を褒めるべきだろう。

 

(あの黒い大型のガンダム、一機はアムロとカミーユが抑えている。イングリッドも一機、足を失った機体を含む三機はキョウスケとエクセレンが上手くやってくれている。強化人間と専用の機体の性能は馬鹿に出来たものではないが……)

 

 MSクラスの出力ではサイコガンダムのビームバリヤーを突破するのは難しい。それでもサイコガンダムが攻撃を行う際にはバリヤーが解除されるので、その隙を狙うなどやりようはある。

 

「だが部隊の指揮が消極的だ。現場と指示を出したものとで思惑が異なるようだな」

 

 クワトロはメインモニターの一角に映したガルダ級とストーク級を見て、感じたモノを口にしていた。そしてパイロットとしてもニュータイプとしても能力を磨き続けた彼の感覚は、正確だった。

 ベン・ウッダーをはじめティターンズの面々が作戦の失敗を強く意識する中、ムラサメ研究所の研究員達だけは強化人間が戦果をあげるまでは、性能を示すまではと諦めきれずにいる。

 

「カミーユ、ファンネルを同調させるんだ!」

 

 そんな中、フォウのサイコガンダムを相手取るアムロは、カミーユへ一つの指示を出した。具体性のない指示だったが、カミーユはそれだけで彼が何を求めているのか、何をするべきかを悟った。

 

「出来るのか? いや、分かりました。行けよ、フィン・ファンネル!」

 

 RFガンダムとGPνのフィン・ファンネルの動きが一変する。アムロとカミーユが【集中】し【直感】を働かせ、同調した事でフィン・ファンネルの動きはそれまでとはまるで別物だ。

 

「なんだ、二人の思念がひとつに? 一つになって、あ、私を襲うのか!? 来るなあああ!」

 

 なまじ強化人間として高度に完成しているからこそ、フォウは目の前の二機のガンダムとパイロットの思念の変化を感じ取り、未知の恐怖に精神をかき乱す。

 フォウの変調はサイコガンダムにも影響して、MS形態のサイコガンダムは全身のメガ粒子砲をがむしゃらに連射するが、それを周囲にピラミッド状に配置されたフィン・ファンネルの形成したバリヤーが阻む。

 

「このまま動きを止める。カミーユ、俺のファンネルは預けるぞ。その間に他の黒いガンダムを仕留める、いや、動きを止めてくる」

 

「分かりました」

 

「カミーユ、あまり心を寄せ過ぎるな」

 

「……はい」

 

 固い声音になったカミーユに、アムロは少しだけ柔らかい声で告げた。

 

「助けが要るならすぐに声を掛けるんだ。大丈夫、俺やシャアも居る」

 

「はい!」

 

 ララァと永別したあの時、アムロは一人だったが、ここでは違う。それなら違う結果を掴み取る事も出来る筈だと、アムロはそう信じたかった。

 例え共感できても、分かり合えても、それでも手を取り合えないことがあるのだと理解させられたあの時とは、違う結果になる。そうでなければ、あまりにも、あまりにも……救いがない。

 

 MSとしては極めて強力なウイングガンダムとガンダムデスサイズ、地球圏で五指に入るトップパイロット達、そしてアルトアイゼンとヴァイスリッターらは、スーパーロボット抜きにしてもティターンズ空中艦隊を一方的に壊滅へ追い込むのに十分すぎた。

 戦場の空気が変わるのを、ヤザンは敏感に感じ取る。特にティターンズのパイロットとムラサメ研究所の強化人間達とでは、戦闘への姿勢がはっきりと分かれている。

 研究員からの指示で変わらず戦い続ける強化人間と、明らかな劣勢に気後れするパイロットとでは動きからして違う。

 

「ふん! 歯ごたえの無い」

 

 ヤザンは超電磁コーティングを施して反応速度と剛性を引き上げたギャプランで、敵ギャプランをすれ違いざま、バインダーを二つとも撃ち抜いて残り一機にまで数を減らす。

 

「次は俺とラムサスが猟犬を務める。ダンケルが仕留めろ。そうしたら後は敵さんの艦を叩くぞ」

 

「了解であります、大尉」

 

「連中、ギャプランは扱えても連携は取れていませんね」

 

「そういう事だ。やる気がないのならさっさと部隊を下げればいいものを、無駄に損害を出す。ん? なんだ、MA? 新型か、アンクシャ……?」

 

 高速で戦闘区域に侵入してきたアンクシャの識別コードは、ティターンズではなく地球連邦軍のもので、どちらの味方とも判じ難い。ティターンズ、エゥーゴ、極東支部共に連邦軍であるが故の弊害である。

 行動を起こしたのはサイコガンダムに乗った強化人間だった。味方と断定できないのであれば敵である、とばかりに指先のビーム砲をアンクシャへと放ったのだ。

 それを空飛ぶ円盤めいた姿のアンクシャは悠々と避けた。

 

「強化人間とやらでも、そんな狙いではな」

 

 アンクシャのコックピットで、ブラン・ブルターク少佐は鼻で笑い飛ばし、ビーム砲を放ったサイコガンダムへとアンクシャの機首を巡らせる。サイコガンダムは狙いを付けられたと理解し、更なるビームで迎え撃たんとする。

 それを巧みに避けて見る見るうちに距離を詰める戦闘機動に、ヤザンやクワトロ、アムロらはパイロットが誰であるかを悟った。

 

「あの動きは、彼か。頼りになる男が来てくれた」

 

「ふ、ここで合流とは。ゴップ議長の計らいか?」

 

「あのモミアゲ太眉野郎、どこでチンタラしていやがった」

 

 アムロ、クワトロ、ヤザンの順である。ヤザンに関してはブランから、それならお前は眉無し野郎だ、と笑われるかもしれない。

 アンクシャの武装は両腕のムーバブル・シールド・バインダー内部のビームライフル二門と、両膝のビームサーベルの二基だ。系譜であるアッシマーやギャプラン同様に可変機故か武装は少ない。

 それでもブランが操れば、サイコガンダムを相手に痛打を与えるのには十分すぎる。

 ひらりひらりとビームを避けたアンクシャが、地面と激突するスレスレでMSへと変形し、重心移動とスラスターの併用によって不規則な機動を取った。

 

 操縦桿の角度を一度間違えるだけで地面と激突する動きに、サイコガンダムのパイロットの反応が遅れ、ブランは腹部の拡散メガ粒子砲の発射口へビームライフルの接射を撃ち込む。

 ビームライフルの直撃にも耐えるサイコガンダムの重装甲も、メガ粒子砲の発射口は構造上どうしても脆弱になり、機体の内部をビームに蹂躙される。

 内部から小さな爆発を起こしながら両膝を突くサイコガンダムを前に、アンクシャは悠然と佇んでいる。目の前のサイコガンダムの口の部分のハッチが開き、パイロットが這う這うの体で出てくるのを見てから、ブランは後方のティターンズ艦隊へと通信を送った。

 

「こちらは地球連邦軍統合参謀本部付きブラン・ブルターク少佐。ティターンズの指揮官は応答せよ」

 

『本艦隊の指揮官ベン・ウッダー大尉である。本艦隊は正式なティターンズの作戦行動中にある。ブルターク少佐、こちらの作戦行動を妨害した意図を伺いたい』

 

「それはこちらの台詞だ。現在、日本は複数の敵対勢力に攻撃を受けている。これらを放置し、あまつさえ極東支部預かりの部隊と交戦している理由はなんだ?」

 

『それは機密事項にあたる。貴官に伝える必要はない』

 

 苦々しいといえばこれ以上ない程苦々しいベンの声に、ブランはここまで納得のいかない作戦に従事している軍人と初めて会った。

 おそらく作戦を命じられた時には、心の中で作戦を命じた上司への罵倒が嵐となって噴き荒れたに違いない。ゴップ直々に聞かされていたが、これはティターンズの未来は明るくないなと感じる声音である。

 

「そうか。だが、こちらは参謀本部より正式な命令を受けて行動している。これ以上の戦闘を続行するのならば、ティターンズと参謀本部双方で話し合う必要があるだろう。

 ゴップ議長と事を構える覚悟があるのなら、このまま戦闘を継続しても構わんぞ。その時は俺も相応の処置を取らせてもらう」

 

 実のところ、ブランが戦場に到着した頃にはジャミトフに今回の一件が伝わっており、バスクをすっ飛ばしてジャミトフ直々の停戦命令が届くのは十分後の事である。

 

『……遺憾ながら作戦を中止する。全機、帰投せよ。繰り返す、全機、帰投せよ』

 

「ふ、賢明な判断だ。アーガマ、こちらブラン・ブルターク少佐。ブライト・ノア中佐、応答願います」

 

『アーガマ艦長ブライト・ノアだ。久しぶりだな、ブラン大尉、いや、今はブラン少佐か』

 

「ノア中佐におかれましてはご壮健そうでなによりです。先程のウッダー大尉との通信は届いておりましたかな?」

 

『ああ。あちらが退くのであれば我々もこれ以上追撃は行わない。既に機動部隊には戦闘の停止を通達してある。これから負傷者の救出活動へ移る』

 

「そうしていただけるとありがたい。ティターンズとはいえ現場の者達は真っ当な者も少なくない。特に地上勤務の者達は」

 

 ブランはそう言いながら可能な限り殺傷を控えて撃墜されたティターンズの機体を見回し、アムロとカミーユに拘束されたままのサイコガンダムでアンクシャのカメラを止めた。

 ムラサメ研究所の所員が後退中の艦の中でどんな指示を出したのかは不明だが、サイコガンダムのジェネレーターは落とされて、開かれたハッチからパイロットが出てきている。

 

 ヘルメットを外したパイロットがまだ少女と呼ぶべき年齢であるのを見手取り、ブランは男らしく太い眉を顰めた。

 あのヘイデスと所長が目に入れても痛くないほど可愛がっている双子や、民間のスーパーロボットのパイロット達の多くが二十歳にもならない若者で、しかも軍属でないのを思い出したからだ。

 軍属ですらない子供に地球の防衛の中核を担わせているなど、まっとうな軍人ならば恥じ入るべき事態に違いない。

 

「ヘイデス総帥の胃に穴が開いていなければいいがな……」

 

 幸いまだ穴が開いてはいない。傷んでいるだけである。

 

* 共通ルート 第十六話 紅の翼ジェットスクランダー

 

 今回の光子力研究所襲撃に関して、犬猿の仲に近いあしゅら男爵とブロッケン伯爵は手を組み、恐竜帝国から供出されたメカザウルスだけでなく、鉄仮面軍団、鉄十字軍団、恐竜帝国兵といった歩兵戦力も大規模に展開していた。

 機械獣やメカザウルスが囮として派手に暴れ回っている間に、列を成した三つの軍団が三方から光子力研究所を目指して進軍している。

 

 これまで機動兵器を用いた大規模な破壊活動からパイロットを狙った暗殺と、語られていない裏で多様な手段を用いてきた侵略者達は、今回はいわば戦争らしいやり方で光子力研究所の攻略に乗り出していた。

 サイボーグの一種である鉄仮面軍団や鉄十字軍団、また人類種と比べてはるかに強靭な肉体を持つ恐竜帝国兵(ゲッター線問題はあるが)は、地球連邦軍の標準的な装備の歩兵にとってかなりの強敵だ。

 

 各研究所は重要施設として軍用パワードスーツを惜しみなく投じた強力な防衛部隊が配備されているが、魔竜機連合側も戦車代わりの武装恐竜とアンドロイド軍馬、独自規格の重火器を大量に持ち込み、侮れない数と質となっている。

 光子力研究所周辺の森林や地下にはミサイルや各種砲台が秘匿されており、魔竜機連合の兵士達を相手に次々と発射されて、戦闘開始から機動兵器以外の出す爆音と轟音が絶え間なく続いていた。

 

「進め、進め、進め! 光子力研究所を制圧するのが我らの使命だ!」

 

「第二騎兵隊連隊突撃! 我に続け!」

 

「油と鉄臭い連中に後れを取るな、我らは過酷なマグマの中で進化し、生き抜いてきた恐竜帝国の誇りある兵士だ!! 行け行け行けえ!!」

 

 車両サイズの機械獣のような戦車やアンドロイド軍馬、四足歩行の多脚戦車に見立てた武装恐竜を先頭に進む三つの軍団は、機動兵器部隊が事前に配置されていた極東支部のMS・MZ部隊に進軍を阻まれた為、援護を受けられないという過酷な状況で進み続けている。

 アークゲインなどの三~四メートルサイズの自律型ロボットは数が少なく、ごく限られた重要人物の護衛に回されており、光子力研究所内部で待機している状態だ。

 そして現在、三軍団の兵士達を地獄送りにしているのは……

 

「来たぞ、四時の方向!」

 

「パンツァーファウストを持ってこい、モタモタするなぁ!」

 

「対MS用誘導弾準備ぃいー! 早くしろ!」

 

 地面を削る猛烈な擦過音、そして土煙と共にソレらが姿を見せた。これまで三軍団の再三の攻撃を退け、死体の山を作り出した鉄の怪物共。

 全高四メートル少々、胴体や背中のブロック状のコックピットは黒く、頭部と四肢は紫色に染められ、脚部には高速で回転して大地を掛けるランドスピナー、後方へと伸びる二本の角状の部位が特徴なソレの名はサザーランド。

 本来ならば『コードギアス 反逆のルルーシュ』シリーズに登場する、ナイトメアフレーム(KnightMareFrame)と呼ばれる機動兵器だ。

 

 フェブルウスから提供されたパンドラボックスのデータと、ヘイデスのアイディア、そしてミドルモビルスーツ・ドラケンEをベースに開発されたヘパイストスラボ産である。

 元のドラケンEが約五メートルほどでありながらビームサーベルを運用可能という代物であった事や、クロスオーバーテクノロジーが用いられた為、原作とは異なる【ガワだけサザーランド】となっている。

 

 この世界ではサクラダイトが産出されなかったが、代わりに超電磁バッテリーを動力源としている。

 ランドスピナー、ファクトスフィア、スラッシュハーケン、ケイオス爆雷などは共通だが、基本武装はビームマシンガンにビームトンファーとビーム兵器で構成されている。

 そのほかに実弾のアサルトライフルやロケットランチャー、ガトリングガン、火炎放射器、レールガンなど。

 

 恐竜帝国や妖魔帝国また異星人勢力の人類とは明らかに異なるだろう歩兵対策としてMSではオーバーキル&オーバーサイズとして開発されたサザーランドは、今、その目的に従って三軍団の兵士達に対する切り札として機能していた。

 サザーランドがビームマシンガンの銃口を向けてくるのに応じ、鉄仮面軍団や鉄十字軍団の騎馬隊が声も高らかに駆け、兵士達の盾となるべく角竜型を始めとした大型恐竜達が進み出る。

 

 お互いの銃器が火を噴く寸前、三軍団の頭上から青い兜のような頭部と白い西洋鎧を思わせる四肢を持つKMFが襲い掛かった。

 一部のエース用に少数が生産された高性能KMFランスロット・クラブだ。

 角の生えた青い兜めいた頭部が特徴のこの機体は、敵歩兵集団のど真ん中に着地すると狙撃モードと切り替え可能な可変ビームライフルを右手、両刃のビームランスを左手に持ち、周囲が反応する暇を与えずに青と白の入り混じる死の風となって、見る間に殲滅してのけた。

 例え瞬きをせずとも動きを追う事も困難な早業に、駆け付けたサザーランドのパイロット達は大なり小なり呆れ顔だ。

 

 ヘイデスがスパロボに出てないし、どうせならこっちで作ってみるか、と採用されたランスロット・クラブとサザーランド隊、光子力研究所の防衛設備と防衛隊の連携により、三軍団の兵士達による侵攻は防がれている。

 一方、その頭上では機動兵器同士の戦いも決着の色を濃く帯びつつあった。それは、飛行要塞グールで指揮を執る二人の指揮官のこんな叫びからも如実に表れている。

 

「馬鹿な、おお、馬鹿な、マジンガーZが!」

 

「空を飛んでいるだとぉおお!?」

 

 空を飛ぶ機械獣ジェノサイダーF9をはじめ、飛行能力を持つ兵器の配分を多めにして襲撃したのもいまだマジンガーZが空を飛べなかったからであり、完成目前と聞きつけたジェットスクランダーを破壊するのも今回の目的の一つだった。

 だがゲッターチームや獣戦機隊、キタムラ少佐率いるハロウィンプランによる強化済みゲシュペンストMk-II部隊、ACから派遣されたMZ部隊により阻まれ、あしゅら男爵らはついに目的を果たせなかったのである。

 

「好き勝手やってくれたな、これはそのお礼だ、スクランダーカッター!」

 

 現時点ではマッハ3に達する速度を持つジェットスクランダーは翼そのものが鋭利な刃として機能し、すれ違いざまに次々とジェノサイダーF9やバド、恐竜ジェット機を真っ二つにしてゆく。

 

「おっと、地上に落としはしないぜ、光子力ビーム!」

 

 ジェノサイダーF9に内蔵された爆弾を地上で落下させない為、甲児はマジンガーZを落下中の敵機の下へ回り込み、空を薙ぐようにして光子力ビームを照射し、無数の爆発の花を空中に咲かせる。

 ただでさえ手に負えなかったマジンガーZが自在に空を飛び、更には武装が追加されて無双するその姿に、あしゅら男爵とブロッケン伯爵は恐れおののく心を抑えきれなかった。

 

 指揮官の動揺が配下に広がる愚を知らぬ二人ではなかったが、それを立て直すよりも早くその隙を突く指揮官が、光子力研究所側に居た。

 キタムラである。HCタイプGを装備した愛機の胸部装甲を開き、メガ・ブラスターキャノンの発射体勢を取る。

 

「ゴースト小隊、スペクター小隊、エデ・イー小隊、各機敵機動兵器群に向けて一斉砲撃用意!」

 

 タイプGで纏められたゴースト小隊はメガ・ブラスターキャノン、タイプNのスペクター小隊はF2Wキャノン、タイプCのエデ・イー小隊はツイン・ビームカノンの照準を正面に見据える魔竜機連合の機動兵器へ!

 

「全機、発射!!」

 

 キタムラ機を含み、三個小隊で全十二機のゲシュペンストMk-IIから放たれたスーパーロボットの準必殺技級の破壊の奔流が叩きつけられて、地形を変えんばかりの爆発と衝撃波が周囲に広がる。

 ダイアナンAへ乗り換えた弓さやかと武蔵坊弁慶のように武装したボスボロットもそれに続く。

 原作においてスカーレットモビルという特殊バイクが頭部にドッキングし、そのままむき出しだったダイアナンAだが、この世界においてはマジンガーZ同様透明化処置の施されたキャノピーが装備され、安全性が増している。

 ダイアナンAとボスボロットに加えてシャピロのシャドーフォックスを筆頭に、アグレッシブ・ビーストモードの獣戦機隊四機も砲撃を受けた直後の機械獣とメカザウルスの群れへと突っ込んでゆく。

 

「各機、敵機を殲滅しろ」

 

「魔竜機連合だか何だか知らねえが、結局いつも通りじゃねえか!」

 

「統率が乱れている今の内に叩くよ」

 

「へへ、マジンガーの活躍のお陰でやりやすいね」

 

「ふっ、奴さん達、相当慌てているようだ」

 

 野獣回路の変換するエネルギーにより、小柄な獣戦機でもメカザウルスを相手に互角以上に渡り合う中、別の戦場の空域ではゲッター1が一体のメカザウルスと熾烈な戦いを演じていた。

 コブラめいた頭部と空を飛ぶ翼を持ったメカザウルスの名はシグ。翼と飛行能力を有するのは原作における強化後だが、スパロボではよくある事だ。そしてこのシグは量産型ではなくキャプテン・ラドラの搭乗するオリジナルだ。

 

 シグの振るう鋭い爪を、竜馬はゲッタートマホークで、あるいは腕についているカミソリ状のゲッターレザーで捌いて行く。

 これまでに数十、あるいは百を超える敵機動兵器を破壊してきた歴戦の竜馬をして、一瞬の油断も許されぬ熾烈な攻防が続いている。

 

「こいつ、これまでのメカザウルスとは性能も動きも違うぞ!」

 

 ヘルメットの中に伝う冷や汗の感触も忘れ、竜馬は正面に映るシグを睨み返す。その瞬間、シグの口の奥に赤いものが!

 

「オープンゲット!」

 

 竜馬は即座に動いた。ゲットマシンに分離し、そこをシグの口から吐き出された火炎が薙ぎ払った。その動きをシグのパイロット、キャプテン・ラドラは純粋に称賛した。

 

「これがゲッターロボ! 初見の攻撃に対応するとは、戦い慣れているな。センスもある!」

 

 上空から一気に地上へと降下するゲットマシンを追い、シグも急降下に掛かる。急速に視界に広がる地面に激突する寸前、叫んだのは武蔵だった。

 

「チェンジゲッター3! スイッチオーン!」

 

 ジャガー号を下に、イーグル号、ベアー号が合体・変形し、ゲッター3が地面を陥没させながら着地し、急降下してくるシグへ蛇腹状のゲッターアームを伸ばして掴み止める。

 

「ふん! 馬力ならゲッター3は負けねえぞ!!」

 

「水中戦向けの機体と聞いたが、やるな!」

 

 ズドン! と隕石の落下を思わせる轟音が発生し、ゲッター3とがっぷり両手を掴み合う姿勢でシグが地面に降り立ち、押し切ろうとするゲッター3もまたキャタピラを全力で回す!

 

「根性を見せろ、ゲッター!」

 

「力だけでは……!?」

 

「ところがどっこい、技もあるんだぜ、武蔵さんにはよ!」

 

 人間とは明らかに構造の異なるゲッター3で柔道の技術を再現し、回転体当たりの要領でシグの左腰と左足を崩し、姿勢を崩す。思わぬ技巧にラドラは驚愕するも、シグが地面に叩きつけられる寸前に、シグの尾で地面を叩きその反動で飛び上がる。

 

「なにい!?」

 

「ははは、分離と合体は出来んが、メカザウルスにはこういう芸当が出来るぞ!」

 

 シグの目から放たれた破壊光線がゲッター3の胸部に命中し、装甲はもったが機体は大きく後方に吹き飛ぶ。

 

「こなくそ!」

 

「武蔵、ゲッター2で行く。速度でかく乱するぞ!」

 

「分かった、任せるぞ、隼人!」

 

 再び分離するゲットマシンが地面からわずか一、二メートルの高さで飛ぶのを、シグは命知らずな敵だ、と嬉しそうに追いかける。

 

「チェーンジ、ゲッター2!」

 

 右手が万力型のアーム、左手には巨大なドリルを備えた細身のシルエットへと変化したゲッターロボに、シグはひるまずに挑みかかる。

 

「それも知っているぞ、ゲッター!」

 

「ゲッター2の速さについてこられるか!」

 

 ゲッター2のふくらはぎ部分に収納されているブースターが点火し、機体を一気に加速させる。地上を走るロボットとしては破格の速度を誇るゲッター2に、ラドラとシグはかろうじて反応した。

 コックピットを兼ねるシグの頭部を貫く狙いのドリルは、シグの左肩を抉るにとどまった。ラドラは急制動を掛けて機体を停止、即座に反転して火炎と破壊光線を狙いを定めずに背後へ!

 

「当たらんだろうな!」

 

 だがラドラはこれが当たるとは思っていなかった。背後にゲッター2が居ると判断した、そう思わせる為のブラフだ。

 

「ち、恐竜帝国のキャプテンにも骨のあるやつがいるな」

 

「空の速さと陸の速さはやはり別物だ。これまで多くのキャプテン達が破れたのも納得の強さよ、ゲッター! そして人類!」

 

 そしてそのままシグの右腕を振り上げて、背後から突き込まれたゲッタードリルを受け止める。

 後に恐竜帝国との決着が着くまで、何度もゲッターチームと死闘を繰り広げる恐竜帝国有数の戦士、キャプテン・ラドラとの初戦は、マジンガーZにさんざんにやられたあしゅら男爵らが撤退を告げるまで続いたのだった。

 

<続>

 

■サザーランドが開発されました。

■ランスロット・クラブが開発されました。

 

■ブラン・ブルタークが加入しました。

 

ヘイデスショップ 第十五話 ムラサメの人間達 クリア後

 

・サザーランド

・ドラケンE

・アンクシャ

・ジーラインライトアーマー

・ジーラインアサルトアーマー

・ジーラインフルカスタム

・ヌーベル・ジムⅢ

・ネモⅡ

・ネモⅢ




ランスロット・クラブについてはPSPで発売されたコードギアスのゲームから。あれの続編かスパロボ参戦をこっそりと夢見ています。あと、シュンジ・イザワが主人公を務めた聖戦士ダンバイン聖戦士伝説の続編かリメイクも! それかエルガイムでスパロボか聖戦士伝説かギレンの野望風のゲームも! 後はスーパーファミコンのバトルコマンダーのリメイクとかも!


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第二十七話 そろそろ分岐すっか

いつも誤字脱字修正の御報告と感想をありがとうございます。
そろそろ以前のヘイデスの裏方パートに戻したい頃ですね。


共通ルート 第十七話 妖魔の王子 ムーの王子

 

 ティターンズの強襲、魔竜機連合による光子力研究所への襲撃、更にシャーキンを司令官とした魔竜機連合によるムトロポリスへの同時攻撃は、この状況でなお地球人類同士が戦う愚かしさと連合を組んだ侵略者達の強大な戦力を知らしめることとなった。

 砂場金吾という転校生として潜入し、ライディーンのパイロットひびき洸を挑発したシャーキンは正体を偽ったまま洸を海岸へ呼び出し、そこで抹殺せんと企んでいた。

 

「ひびき洸よ、ラ・ムーの血を引く怨敵よ、貴様の命運を絶ち、バラオに捧げてくれよう!」

 

 正体を現したシャーキンは禍々しい装飾の施された長剣を手に、また周囲には妖魔帝国兵が十重二十重と囲い込んで、洸を逃がさない構えだ。洸は丸腰のまま目の前のシャーキンから放たれる殺気にじりじりと圧されている。

 

「砂場金吾、それがお前の本当の姿か! みすみすお前の挑発に乗ってしまうなんて」

 

「フフ、我ら妖魔帝国にとって一万二千年の因縁を持つライディーンの操者も、生身ではそこいらの人間とはまるで変わりがないな。そのまま大人しくしていれば、せめてもの情けとして一太刀で殺してやろう」

 

 自身の絶対的優位を確信するが故、笑みを浮かべるシャーキンに向けて、洸は恐怖に汗を滴らせながらも折れない意思を秘めた瞳で睨んでいた。

 彼が自らの秘める強大な超能力を自在に操れればまた話は違っただろうが、今の彼はまだそこまでの域に達してはいない。

 

「時間を稼いで助けが来るのを待とうとも無駄だ。見よ、我ら魔竜機連合の軍勢の威容を!」

 

 勝利を確信するシャーキンがマントを翻しながら海の方を示せば、海中から巨大な水柱を立てながらガンテ五隻に無数の化石獣、機械獣、メカザウルスが姿を現した。それはまさに魔竜機連合という三勢力の結集に相応しい大戦力だ。

 連携が取れているかどうかは甚だ怪しいとしても、ベクトルの異なる異様な外見の怪物達が軍勢となって姿を見せる光景は、過酷な訓練を受けたプロの軍人でも足の竦むものがある。

 

「シャーキン、Dr.ヘルや帝王ゴールと手を組んだのか!?」

 

「お前達地球人類を排除するまでの一時的なものだ。いずれは雌雄を決し、この星をバラオのものとする。そしてボアザンやキャンベル、ムゲ、ベガ、バルマー・サイデリアルらも滅ぼして、この宇宙をバラオに捧げよう! ひびき洸、まずは貴様からだ!」

 

 そうしてシャーキンが長剣を振り上げて今にも斬りかからんとした時、彼らの頭上に巨人の影が掛かり、シャーキンや妖魔兵達へとビームの銃弾を降らせる。

 

『護衛が付いていないわけないだろうが!』

 

 KMFもといミドルモビルスーツ・サザーランドだ。ひびき洸の護衛として用意された部隊がタイミングを見計らって、ようやくの登場となったのだ。

 

「む、小癪なブリキ人形如きが!」

 

 周囲の妖魔兵がビームマシンガンによって穴だらけにされる中、シャーキンだけは流石の身のこなしでビームの銃弾を避け、洸を取り囲む三機のサザーランドを睨み据える。

 と、海上の魔竜機連合にも動きがあった。海中で彼らの動きを捕捉していた連邦海軍のキラーホエール級とそこから発艦したシンカー隊が一斉に牙を剥き、百単位のミサイルの雨を降らせたのである。

 

「なに? 我らの接近を察知していたのか!?」

 

『備えていただけさ。ロボットを倒せないからパイロットを狙うなんて、情けない真似をするのは目に見えていたからな!』

 

 サザーランドからの集中砲火はさしものシャーキンも容易に捌ききれるものではないが、すぐ近くの海中に潜ませていたドローメを呼び出し、シャーキンはそれへと数十メートルものジャンプで飛び移る。

 

「ふっ、流石は戦闘種族と呼べるだけの歴史を紡いできた人類と言っておこう。ならば正面から貴様らを撃滅してくれる。ひびき洸、そしてライディーンもな!」

 

 ドローメが触腕を振るって砂浜へと叩きつけ、更にはマグマ弾をバラまいてくるのを、サザーランドは洸の盾となって防ぐ。幸いこの場からの逃走を重視した攻撃であったから、命中弾はなかった。

 その一方で海上では瞬く間に魔竜機連合の軍勢をミサイルの爆発が飲み込み、異形の陰影が爆発の中に浮かび上がる。これだけでも相当数の敵機に損傷を与えられたはずだ。

 

 またムトロポリスからゲシュペンストMk-II隊、更にはライディーン専門の支援機ブルーガーで構成されるコープランダー隊も出撃している。

 さてこのブルーガーであるが、スーパーロボット作品にはつきものの支援機の一つだ。しかしこのスパロボ時空においてはMSのような人型機動兵器がありふれており、操縦の適性が無いなどの事情が無ければ、ライディーンと同じ人型の方が連携も取りやすいだろう。

 

 それでもこうして開発されたからには、このブルーガー、当然このスパロボ時空らしい性能となっている。未来工学研究所の所長であり科学要塞ムトロポリスを建設した東山大三郎が基本設計を担当し、極東支部とヘパイストスラボによる強化が施されている。

 ミノフスキー式熱核融合炉を搭載し、スパロボでおなじみ20mmバルカンはビームバルカンに置き換えられ、左右の翼に懸架されたミサイル、爆雷は全て最新の炸薬、弾頭を採用して可能な限り強化済み。

 

 機体の左右から展開するキャリアアームは先端の三本のクローにガデラーザのようにビームバルカン兼ビームサーベルを内蔵し、普段は機体内部に収納する旋回式の連装メガ粒子砲を上下二基装備。

 この世界に存在しないVFの代わりじゃ、とばかりに強化されたブルーガーは、現在配備の始まったストームソーダーと並ぶ航空戦力の上位機だ。あくまでもムトロポリス配備分の少数生産に留まるけれど。

 

『洸君、無事だな? ライディーンは呼べるか?』

 

「は、はい! さっきまではなにかに妨害されているような感じで、ライディーンに声が届かなかったんですが、今なら!」

 

『急な話で済まないが、奴らを上陸させるわけには行かん。すぐにダイモスやコンバトラーVも来てくれる。こんなことは本来言うべきではないが、頼む、洸君!』

 

 苦汁の滲むサザーランドのパイロットの声に、洸は意を決した表情で応えた。若き勇者の声には確たる決意があった。

 

「任せてください。必ず守ってみせます!」

 

 連邦海軍の奇襲を受けて体勢を崩した魔竜機連合は、更にムトロポリスから展開した極東支部の通常戦力+コープランダー隊、そしてものの数分で駆け付けたダイモス、コンバトラーV、ボルテスV、そしてライディーンによって撃退され、無数の残骸が海面に漂う事となるのだった。

 

 

 魔竜機連合の初披露に伴う襲撃とティターンズ上層部の暴走事件から数日後、ところは変わってサイド3の防空宙域の一角に、残骸となったメギロートやゼカリア、それに無人機仕様のガザCが無数に浮かんでいた。

 再び侵攻し、返り討ちにされた真ジオン公国軍の部隊である。その残骸の中にたたずむ黒い大型MSの姿があった。

 共に迎撃に出たRFザク部隊は残存敵機が居ないか、周囲を警戒している。

 黒い大型MSの名称はカタール(ツヴァイ)。プロメテウスプロジェクト解散後ジオンに戻ったテレンス・リッツマン工学博士が、心血を注いで開発した戦術ステルス機である。

 

 一年戦争の時点でオールレンジ攻撃可能な攻撃端末、対ビーム装甲、光学・熱探知を無効化するステルス性能を誇ったカタールをベースに、プロメテウスプロジェクトによって得られたノウハウが惜しみなく投入されている。

 全高23mオーバーの大型機だが、ステルス性能はさらに向上して潜宙モードの本機は最新の光学・熱探知センサーをもって探知はほぼ不可能だ。

 

 コンバトラーやボルテスに用いられている超電磁テクノロジーとマグネットコーティングを融合させた超電磁コーティング、小型高出力化した熱核融合炉の齎すエネルギーとニュータイプの神速の操縦に追従する反応速度、吟味し抜いた頑強なムーバブル・フレーム。

 更に防御性能を高めたABC(アンチビームコーティング)済みのガンダニュウム合金製の装甲を持ち、機体そのものの強度はトールギスやウイングガンダムに匹敵する。

 

 新型サイコミュの搭載によってより精密に操作可能になり、同時に負担軽減に成功した筒型のS(ショート)ビットを六基バックパックに装備しているが、形状は後に開発されるサザビーのそれと酷似している。

 またジェネレーターを内蔵したブレード状のL(ラージ)ビットもバックパックの左右に搭載しており、こちらはジェネレーターの恩恵で高い攻撃力を誇る。

 更に頭部には60mmバルカン二門、口部に小型ビーム砲一門、両肩にビーム砲六門、両太腿内部にビームシールドもぶった切る有線式ビームブレード二基、両前腕部内側にはそれぞれ110mm機関砲を内蔵し同じく前腕部外側にはビームシールド発振器を二基、腹部にメガ粒子砲一基を装備している。

 

 初代カタールを踏襲する形で最新の技術により、グレードアップした仕上がりとなっている。これに加えてRFシリーズやゲクトと共通規格の武器を携行しており、現在はビームライフル二丁を手に持っている。

 パイロットがニュータイプか強化人間に限定されることを前提とした、高コストながらそれを補って余りある高性能MS。逃げて生き延びるのではなく戦い抜いて生き延びる機体、それがこのカタールⅡだ。

 

「それにしても真ジオンなんて、何考えてんだろうね、エンツォ大佐?」

 

 どこか緊張感に欠けた声で自問自答したのはカタールⅡのパイロット、ヤヨイ・イカルガ少尉だ。髪を二つ結びにしたこの女性は少なくとも二十代を数えているはずだが、幼い精神性とあどけない顔立ちが相まって今でもハイティーンにしか見えない。

 シャアのアクシズ時代を描いた外伝漫画出身のヤヨイは、軍人としての適性がまるっきりなく体のいい雑用係だったのが、実は優れたニュータイプとしての適性を持っている。

 

 エンツォがアクシズでクーデターを起こした際には、本人の強い承認欲求をくすぐられる形でエンツォ側に属し、いかにもマッドサイエンティストといった風貌のマガニーという老研究者に薬物を投与された上で出撃し、ハマーンと交戦した。

 その際にかねてから親交のあったロベルトことリカルド・ヴェガの説得に応じかけたのが、そこをハマーンに攻撃されて戦死している筈の少女だ。

 それがこの世界では幸い戦死を免れて、シャアがアクシズを離れる際に同行し、以降はそのままジオン共和国に籍を置いている。

 

「前から戦うのが好きな人だったけれど、エイリアンの手先になってまでするような人だったかなあ? 襲ってくるのも無人機ばっかりで、人が乗っている機体はぜんぜん出てこないしなー。やる気がないのかな?

 んー、考えても分かんないよ。難しい事は偉い人達に任せよう。それにしてもオッサンは元気にやっているかな? そろそろ顔が見たいよ~」

 

 そうしてヤヨイは二十機以上の敵機を撃墜しながらも無傷の愛機のメインカメラを、ロベルトの居る地球へと向ける。

 別段、二人が恋愛関係にあるわけではない。なんとなく腐れ縁が続いて、なんとなく親しい間柄がずっと続いている不思議な二人の関係だった。

 

 

 士気の低いティターンズを手加減しつつ退け、意気揚々と襲い掛かってきた魔竜機連合を叩いて潰して家畜の餌にもならないミンチにした後の極東支部の一角では、いつもとは異なる光景が広がっていた。

 カミーユと共に空手の訓練をすることもある竜崎一矢は、戦場で保護されたエリカという記憶喪失の美少女と共に行動し、ではカミーユはというと先の戦闘で保護されたフォウ・ムラサメと監視兼護衛付きで市街に出かけ、傍目からはデートにしか見えない行動を取っている。

 

 先輩格であるアムロとクワトロは、かつての自分達とは違う結末を迎えられるのではと二人に目を掛けているようだった。

 その二人もアムロはサナリィで大暴れ中の父テム・レイと連絡を取り、MSに搭載可能なミノフスキー・ドライブやF91と呼ばれる新型MSについて激論を交わしている。

 クワトロはサイド3に残してきた愛妻ナタリーと我が子と久しぶりに画面越しに再会して、父親としての顔になっていた。

 

 合流したブランは幸いにして色々と事情を事前に聞いていた為、ヤザンほどヘイデスに詰め寄ることはなく、ヘイデスはちょっと胃液が逆流して喉の奥が酸っぱくなるだけで済んだ。

 ブランの扱いはヤザン、ラムサス、ダンケル、イングリッド、アムロと同じくSRG計画への出向というもので、出向組ではもっとも階級が高いが、現場ではレビルが指揮官という事で落ち着いている。

 

 さてそんな極東支部だが、この日、荷物を満載したストーク級三隻とシロガネ型のスペースノア級からなる混成空中艦隊を係留ドックに迎えていた。

 シロガネそのものは極東支部への納品であり、ストーク級にも開発した新型MZや装備を満載している。更にそれらの装備以上に重要な人物が同乗していた。

 

「私、到着ですわ!」

 

 とヘパイストスラボ所長は出迎えた愛しい夫と愛しい子供らを前に、大きな胸を張って嬉しそうに告げた。

 プラチナブロンドの髪を夜会巻きにして、一部の隙もない黒いスーツと白衣を着た所長は、こちらに向けて駆け寄ってくる双子を正面から抱きしめた。シュメシとヘマーが子犬か子猫のようにじゃれてくるのを、所長は母親の顔で受け入れる。

 

「お母さん、久しぶり~」

 

「いつまでこっちにいるの?」

 

「今回は納品と引き取りが目的ですから、それほど長くはおりません。それでもまあ、鹵獲したサイコガンダムとやらの分析は少々手間取りそうですし、十日くらいはいるでしょう」

 

「そっかあ、もっと一緒に居たかったなあ」

 

「でもお母さんがずっとこっちにいると、クリュメノスとコレーが寂しがるよ」

 

「それじゃあ仕方ないね。お父さんがこっちにいるから、二人はただでさえ寂しいのだもの。お母さんまでとったら、二人が可哀そうだもの」

 

「私もそれほどコレー達をかまってあげては居られませんが、それでもシュメシとヘマーがお兄ちゃん、お姉ちゃんらしく考えてくれるのは嬉しいですわ。ありがとう、二人とも」

 

 ぎゅっと優しく双子を抱きしめる妻を見ながら、ヘイデスは自分の傍らで足を止めている元スクール組、オウカ、アラド、ゼオラ、ラトゥーニの背中を押すように告げた。

 

「遠慮をしないで君達も彼女の胸に飛び込んでいいんだよ? 彼女は僕の奥さんであると同時に君達の母親でもあるのだから、遠慮はなしだ」

 

 ついこの間まではオウカ達にウチの子供になりなよ~と折に触れて誘っていたヘイデスが、今となってはすでに自分達の子供扱いを隠さなくなってきている。

 ただラトゥーニに関しては、ヘイデスらよりも先に彼女を救ったジャーダ・ガーネット夫妻も養子にと誘っている事もありやや控えめである。照れ臭いのかオウカでさえ少し頬を赤らめながら、弟妹を代表して答える。

 

「いえ、お誘いは嬉しいのですが、父や母を知らぬまま育った私達にはどうしても気恥ずかしくて……。でも、いつかは、とそう考えております」

 

「そうか、うん。君達が僕らの正式な子供になり、あの子達の新しい兄妹になってくれるのを前向きに考えてくれている。それだけで僕は嬉しいよ。最近ではあのフォウという子とムラサメ研究所の事もあって、君達も心穏やかではいられないところだったから、余計にね」

 

 ちなみにフォウ以外にもサイコガンダムやギャプランに乗っていた何名かの強化人間が保護されているが、その中にヘイデスの知る限りにおいてネームドキャラはいなかった。

 いわゆるモブ相当の強化人間というわけだ。それでもこの世界においては確かに生きている生命であるのだから、無碍に扱ってよい理屈はないのは語るまでもない。

 

「さて、とりあえず岡長官にご挨拶申し上げなければなりませんわね。総帥、ご案内いただけまして?」

 

「もちろん、喜んで。我が麗しのペルセポネ」

 

 母ではなく妻として恋人としての顔を向けてくる所長に、ヘイデスは満面の笑みで応えた。まあ、極東支部からの案内役も居るのだが、空気を読んで押し黙っている。夫婦の惚気を見せつけられているのだから、なんとも気の毒な事である。

 極東支部への納品であるゴジュラスMk-Ⅱやディバイソン、ライトニングサイクス、ケーニッヒウルフ、ブレードライガーといったゲッター線駆動兵器、追加のゲシュペンストMk-II用HCなど持ってきた物資は多い。

 納品の確認が済み、鹵獲したサイコガンダムと保護した強化人間達のデータを確認し、思い切り不機嫌になった後、所長は極東支部に用意された一室でヘイデスと向き合っていた。

 

「さて、総帥が極東支部に向かわれてから大して時間は経っていませんが、なんとも濃密な時間を過ごされておりますわね。

 侵略者の連中もこのままでは敵わないと手を組んできたようですし、バサ帝国なんて厄ネタもあってはそろそろ人類も意思を一つにして戦わないとまずい局面では?」

 

 せっかく夫婦水入らずなのになんとも味気のない会話だな、とヘイデスは苦笑しながら答えた。所長からの指摘は心の底から同意するところであった。

 

「まずいね。火星がバームに抑えられたと連絡も来ている。各コロニーや月は連邦軍の駐留艦隊やアナハイムの私兵が頑張ってまだ陥落してはいないが、人類同士で向け合っている戦力を回せればどれだけ楽になるか……」

 

「火星ですか。こちらにも連絡は入っていますが、住民の脱出は叶ったのでしょう?」

 

「いざという時の為に備えていたからね。生産プラントと衛星も機能をロックして解除しようとすれば自爆するように設定してあるから、バームでもそう簡単に利用は出来ないよ」

 

 火星への投資について悩みに悩んでいたヘイデスだが、結局は火星の将来を見越して投資を決め、バームに占領されるまではプルート財閥の庭と化していた。

 ガンダムシリーズとは異なりキシリア派やギレン派の残党が火星に来ることはなかった為、実にやりやすかったのはヘイデスにとって好都合だったが、恐れていた通り侵略者達に制圧されてしまったわけである。

 

「火星を脱出した避難民を乗せた船団の出迎えは大丈夫ですの?」

 

「事前にそれ用の艦隊の編成を連邦軍に強く打診してあるし、ACの各サイド支部から戦力を抽出しているよ。時間的にも戦力的にも十分な筈だ。保険は掛けておくけれどね」

 

「世に災いの種は尽きず、ですわね。こちらも戦力を拡充していますが、どうにも勢力単位で敵が増えていて、戦力が間に合っているのやらいないのやら」

 

「ティターンズの風向きがだいぶ変わってきているから、次はOZひいてはロームフェラに変わって欲しいところさ。エゥーゴやコロニーの独立運動派ともどうにか連携を取って、出来れば一丸となって地球人類の存続に邁進して欲しいね」

 

「そう都合よくいきますかしら? そうそう例のギリアム・イェーガー中佐の創設した特殊部隊ですが、ヴィンデル少佐の部隊も編入されて、今はユーラシア大陸を中心に戦果を挙げているそうです」

 

「レモン大尉からの情報提供?」

 

「ええ。彼女は注目に値する才能の持ち主ですし。SRG計画の機体を預けてもいるのですから、特別視するのは当然でしょう。預けてあるのもゲシュペンスト・リーゼをたたき台にして初めて完成させたスーパーロボットなのですから、気に掛かりますし」

 

 ちなみにゲシュペンスト・リーゼはSRG計画に含まれていない。かといって無関係でもないので、微妙な立ち位置にある機体だ。

 

「ソウルゲインとヴァイサーガね」

 

 スパロボシリーズのタイトル発表順とは異なり、ソウルゲインらがヒュッケバインやグルンガストよりも先に完成したのには、ヘイデスはなんとなく奇妙な気持ちになったものだ。

 実機とパーツも渡してあるのだから、その内レモンがツヴァイザーゲインを組み上げるくらいは、ヘイデスも予測している。

 

 SRG計画の一号機はアルトアイゼン、二号機はヴァイスリッター。二機はMS開発で培ったノウハウをメインに、各スーパーロボットの技術を反映させた機体としてロールアウトしている。

 三号機ソウルゲイン、四号機ヴァイサーガに関してはゲシュペンスト・リーゼで培った巨大機のノウハウがベースとなった機体だ。

 

 まずソウルゲイン。初期にはあらゆる攻撃を拳と肘で行うとされた機体だが、この世界では五体で戦う格闘戦特化のスーパーロボットとなっている。

 多少の修復機能を持つEG合金や両肘のブレード『聳弧角(しょうこかく)』、玄武剛弾、青龍鱗や白虎咬、舞朱雀、麒麟などの武装、技は共通である。

 

 パイロットの動きをトレースする『ダイレクト・アクション・リンク・システム(DALS)』は、ダイモスの操縦方法(上半身のみのトレースだが)を参考に、パイロットの思考を機体の動きに反映させる『ダイレクト・フィードバック・システム(DFS)』は、サイコミュを参考に開発された。

 パイロットの生体エネルギー“気”を動力と武装に用いるシステムに関しては、精神をエネルギーへと変換するダンクーガの野獣回路がベースとなり、このソウルゲインはダイモスとダンクーガの系譜に連なる機体と言えよう。

 

 そしてまた両腕以外にも武装を搭載すべく、足にも武装が追加されている。

 膝にある円柱状の突起物はプラズマ発生器を内蔵し、ガオガイガーのドリルニーよろしくプラズマニーとなり、足裏にはガンバスターの如くチェーンソー状の刃を備えた履帯が内蔵された。

 なによりの目玉は、パンドラボックスから得られたGNドライブのデータから開発・搭載された原作(スパロボA、OGシリーズ)とは異なる機能だろう。

 

 パイロットと機体の生体エネルギーを増幅する事で、一時的に機能を強化するシステム“界王拳(命名者ヘイデス)”である。

 ガンダム00の世界で、GNドライブ並びにGNドライブ[T]搭載機が持つトランザムシステムの模倣だ。最低でも1.5倍の性能向上が保証されているが、パイロット次第では倍率を上げられる可能性を持つ。

 アクセルは現状で二倍の界王拳までは使いこなせているようだ。めざせ二十倍界王拳!

 

 また生体エネルギーの応用でなぜかソウルゲインに飛行機能が付与され、こちらは「舞空術」と呼称されている。

 これに関しては開発者である所長も「生体エネルギーを操作したら何故か飛べるようになりました。人体とは神秘の塊ですわね」と困惑した顔でコメントしている。

 

 四号機ヴァイサーガにも界王拳と舞空術、ダイレクト・アクション・リンク・システムが搭載されており、ソウルゲイン同様生体エネルギーを用いた格闘戦用スーパーロボットのくくりになる。

 原作でヴァイサーガの持っている剣の名称は「五大剣」。どうも刃はエネルギーが実体化したものだそうで、それだと果たして鞘の必要性があるのか疑問だが、こちら側製のヴァイサーガには必要なものだ。

 

 超電磁テクノロジーの応用により、五大剣を鞘に納めた状態から刃と鞘の磁気の反発を利用して放つ抜剣術(ばっけんじゅつ)――超電磁抜剣により近接戦闘において破格の攻撃速度を実現している。

 五大剣それ自体もボルテスVの天空剣を参考に、物質化した刃に分子構造を分解する超電磁フィールドを纏わせており、斬撃性能を強化している。

 ヴィンデルの剣術の心得次第でとんでもない強さを発揮するだろう。

 

「その二機に関してはDALSとDFS、特にDFSがサイコミュと同等のマン・マシーン・インターフェイスとして活かせるのが成果だったかな?」

 

「あのサイコガンダムの仕様を見た後だとなおさらそう思いますわ。アレはパイロットが機体を操縦するのではなく、機体がパイロットを部品として操縦するような、そんな非人道的なシステムです。

 まったく、ムラサメ研究所の連中は、自分でパイロットを犠牲にしなければ成果を上げられない無能です、と宣言していると理解できないのかしら? こうなれば私とラボ、極東支部の手で徹底して改造し、目にもの見せてやります」

 

「君のやる気に火が着いたのならなによりだ。サイコミュ関係には怖いところもあるし、安全性の確保できた思考制御システムが完成すれば、これからの戦いで大きな一助となるからね」

 

「先は長そうですからね。これだけ多数の戦力との戦いとなると、ロームフェラ財団の推している無人機構想も人材が払底しかねないことを考えれば、間違った選択ではないのかもしれません」

 

「僕らより進んだ技術を持っているバサ帝国をはじめ、無人機がほとんどなのは事実ではあるね。だからといって安易にゼファーをコピーするような真似はしたくないけれど」

 

「他所の連中には少なくともプロメテウスに来てからのゼファーのコピーは取られていませんが、それ以前は分かりません。もしゼファーが利用されるとしたなら、何時のゼファーがコピーされたかも問題になるでしょう。あの子は成長著しいですから」

 

 ゼファーの初陣は一年戦争中地上にて行われている。またそれ以前にもジム系タイプの機体が暴走事故を起こしており、一年戦争中の混乱期にゼファーがコピーされたか、データが盗まれている可能性はある。

 ロームフェラ財団のモビルドールやあるいは他の無人機制御システムに、ゼファーのコピーデータが悪用される恐れは十分にあった。

 

「力を蓄えた魔竜機連合とボアザン、キャンベル、来たばかりでまだまだ意気軒高なベガ、ムゲ、バーム、真ジオン公国、そしてバルマー・サイデリアル。一年戦争中には考えられない状況で、頭が痛いね、まったく」

 

 ヘイデスは心の中でミケーネ帝国と百鬼帝国、それにまだ影も形も見せていないアインストもか、と嘆息した。

 彼はまだ知らなかった。心血を注いだSRG計画のソウルゲインとヴァイサーガを預けたシャドウセイバーズにいるレモンが、よりにもよってアインストの幹部格である事を。

 そしてトリントン基地が地上に降下した真ジオン公国に襲撃され、搬入されていたGP02が戦略核を装備したまま奪取された事も。

 

<続>

 

■フォウ・ムラサメが捕虜になりました。

■エリカ(記憶喪失)が保護されました。

■カタールⅡが開発されました。

■ヤヨイ・イカルガが生存していました。

■サイコガンダムを入手しました。

■サイコガンダムの改造が開始されました。

■ダイレクト・アクション・リンク・システムが開発されました。

■ダイレクト・フィードバック・システムが開発されました。

■ブルーガーが魔改造されました。

 

●ヘイデスショップ 第十六話 紅の翼ジェットスクランダー クリア後

・ボスボロット

・アフロダイA

・ジム・スパルタン

・デザート・ジム

・EWACジム

・グフ・ハンター

・グフ複合試験型

・グフ戦術強攻型

 

●ヘイデスショップ 第十七話 妖魔の王子 ムーの王子 クリア後

・ブルーガー(魔改造)

・ヘビーガン

・Gキャノン

・ジェムズガン

・スタークジェガン

・キラーホエール

・シンカー

・プロトタイプサイコガンダム(所長カスタム)




アンジュルグはどうしようかなあ。
ガンダムUCに関しては実はいまでも扱いに迷っています。バナージらを早く生まれたことにして登場させるか、それとも宇宙世紀87年相当の年齢にして幼いプルトゥエルブや綺麗なフル・フロンタル共々出すか……。


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第二十八話 これもまたスパロボオリジナル

今回から
どれい獣 → マグマ獣
に表記を変更しました。


 地球連邦軍極東支部内にあるブリーフィングルームの一つに、岡長官、ブライト、アムロ、クワトロ、ヘイデス、レビルといった半民半官部隊の主要人物達が集まっていた。

 彼らの対面には、コロニーの送り込んだガンダムのパイロットである四人の少年が顔を並べている。

 

 ヒイロとデュオはティターンズとの戦闘で、トロワ・バートンとカトル・ラバーバ・ウィナーは光子力研究所の戦闘で、また張五飛もムトロポリスの戦闘で協力してくれたが、その後、姿を消したという。

 これまで戦闘が終われば姿を消していた彼らが残り、協力を打診してきたのには情勢の変化が大きく関わっているだろう。口火を切ったのは岡長官である。元連邦軍トップのレビルを差し置いて自分が音頭を取る奇妙な状況にも、そろそろ慣れてきた頃合いだ。

 

「では君達はエゥーゴへの協力という名目で、我々に協力を申し出てきたというのだね? カトル君は投降の申し出だが……」

 

 少年らは一応連邦軍の正規軍であったティターンズやOZに散々攻撃を仕掛け、大きな被害を出してきたテロリストであるのは間違いないのだが、この極東支部にしてもつい先日ティターンズに理不尽な要求を出され、武力衝突している。

 また侵略者達の攻撃が本格的になってからは、五機のガンダムはOZらへの攻撃を控え、侵略者に襲われる民間人の救助や連邦軍に対する援護を行うなど、行動が大きく変化していたこともあり、拘束もされずに岡長官らと対面するという対応に落ち着いている。

 

「はい。現在の情勢を考えれば例えOZやティターンズが相手でも徒に攻撃を加えれば、巡り巡って地球圏全体の首を絞めかねない。その結論に達するのに時間はかかりません」

 

 四人の少年パイロットを代表するように答えたのはカトルだ。戦闘員、非戦闘員を問わず襲い掛かってくる侵略者を相手に、民間人の救助を積極的に行っている姿が数多く目撃されており、本人の温和な雰囲気もあってその言葉には一定の説得力がある。

 前髪が特徴的なトロワは腕を組み壁に寄りかかったまま沈黙を守り、ヒイロはヘイデスらの心の底を見抜くかのような視線を向けている。

 カトルの言葉を擁護するように口を開いたのは、先日、ブレックス准将から連絡を受けていたクワトロだ。

 

「彼の言葉に嘘がないとブレックス准将から連絡を受けている。コロニー独立派といっても一枚岩ではないが、彼らの乗っているガンダムを送り込んだグループはこれ以上の武力行使に関して慎重な考えなのは確かだ。

 そちらの三つ編みの少年はスイーパーグループからの推薦もあったと、聞き及んでいる。こちらの指揮下には入るがあくまでも一時的な協力だともな」

 

 サングラスの奥に隠れるクワトロの視線に何が込められているかは不明だが、クワトロの言葉を耳にしてデュオは陽性の笑みを浮かべる。ただしまだこの場に居る者達の信頼関係を考えれば、上辺だけのものだろうか。

 

「ま、そういう事だ。俺達もお互いをそう知ったものじゃない。たまに戦場で出くわす事もあったから、顔と名前くらいは知っているって程度の仲だぜ。

 それでもこうして同じタイミングであんたらに協力を申し出るなんて、ガンダムの縁って奴なのかね? へへ、目の前にはあのアムロ・レイもいるしな」

 

 少なからず敬意の含まれたデュオの視線に、アムロは意外そうな顔を浮かべてからこの場にはいないガンダムのパイロットについて、カトルやデュオらに問いかけた。

 

「ところで右腕が龍のガンダムについてだが、君達は彼について何か知らないのか?」

 

「いや、俺達もあいつとの接点は少ない。話せるのは、パイロットが張五飛という男であることだけだ。コードネームか偽名かもしれないがな」

 

 そう言ったトロワの言葉を受けて、これまで沈黙していたヘイデスが口を開く。

 

「それなら僕に心当たりがありますよ。中華系の『龍財閥』次期当主候補の一人が、同じ名前だったはずです。あの一族が管理するコロニーが一度OZに攻撃されたことがありますし、行動を起こすのに十分な動機があります。

 それにコードネームというのなら、トロワ君の名前もそうでしょう。トロワ・バートンとは、あのバートン財団総帥デギム・バートン氏のご子息の名前なのですから。

 多少事情に通じている人間なら知っている名前をガンダムのパイロットが名乗るとなれば、これは情報戦の様相を呈します。おまけにバートン財団はコロニー活動家の裏のスポンサーと噂されていますから、なおさらです。

 五飛君にしてもカトル君ほどではありませんが、経済界でなら名前くらいは調べればすぐに見つかるでしょう。

 まさかウィナー財団の嫡子がガンダムのパイロットとは、と驚くべきなのか。それともOZと対立しているウィナー財団の関係者なら、と納得するべきでしょうか」

 

「僕がガンダムのパイロットとして戦ったのは、あくまで僕の意思です。むしろ父は僕に反対するでしょう。……ヘイデス総帥とは以前に父と共にお会いしたことがありましたね」

 

「ええ。ウィナー家所有の資源衛星の共同開発と販路の開拓で、お互い有益な取引が出来ましたね。確かに君の言う通り、お父君は君の行いを許されないでしょう。

 君が信頼のおける人格であるのは、僕が保証します。ここまで大胆な行動を起こすと見抜けなかった僕の保証ですがね」

 

 まあ、ヘイデスは元々彼らの事を知っていたのであるが、五飛とカトルに関しては経済界のつながりで知っていたという体裁を装ったわけだ。

 それに技術協力してくれたハワードのつながりで、ガンダム開発者の五人の博士達にもメッセージを送れている。博士達がどう受け止めたのかは不明だが。

 少し表情を引き締めたデュオがシリアスな雰囲気で話し始める。

 

「それに敵はティターンズだけじゃなくなった。ムゲやベガ、ボアザンなんかもコロニーを攻撃しやがった。こうなると俺達だけじゃ手が足りない。組織としての戦力が必要だ。

そうなると俺達が身を寄せられる選択肢は少ない。なにより俺達はテロリストだからな。そんな中で頼れそうだったのが、半民半官の混成戦力を運用していて、エゥーゴの中核戦力も協力している極東支部だったってわけだ。

 俺達のガンダムは地上用に調整されているから、宇宙で戦えない分は地上で暴れている奴らを叩く事で補おうってわけさ」

 

「なるほど。それは君も同じかな、ヒイロ・ユイ君?」

 

 ヘイデスは緑のタンクトップという見慣れた格好のヒイロへ水を向け、ヒイロは感情の凪いだ瞳で、地球圏で三指に入る資産家を見つめる。

 一年戦争で壊滅した各サイドと地球各地の復興を率先して行い、数えきれないスペースノイド達の雇用を創出し、その生活を支えている――見方を変えれば支配している男を。

 なんともはや良い方向に評価してもらえないのが、ヘイデス・プルートという男の悲しい特徴であった。

 

「コロニーを脅かす敵を排除する。俺に与えられた任務に変わりはない。極東支部への協力も、その一環だ」

 

「ふむ。手段と過程は変わっても目的に変化はないという事か。しかし、ヒイロ・ユイと言えばジオン・ズム・ダイクンと並ぶコロニー独立運動の指導者の名前だね。ニュータイプと並ぶ“宇宙の心”という概念を提唱した人物だが、いやはや」

 

 ヒイロ・ユイの名前を持つ少年とジオン・ズム・ダイクンの息子が同席する場、しかも二人ともMSのパイロットと来た。スパロボでは珍しくないが、実際に生きている世界でそういった邂逅の場に居ると因縁めいたものを感じてしまう。

 果たしてヘイデスの保証がどれほど役に立ったかは分からないが、アムロとクワトロがヒイロらに悪意は無く、虚偽も述べていないのを保証した事もあって、張五飛とシェンロンガンダムを除く四人のパイロットと四機のガンダムは極東支部預かりとなったのである。

 対外的には侵略者との戦闘に介入してきたガンダムを鹵獲し、その際にガンダムのパイロットは死亡、現在のヒイロらはエゥーゴつまりはブレックス准将の人脈によって手配されたコロニー系のパイロットというカバーストーリーがでっち上げられる事となる。

 

 ガンダムWの少年達が一名を除いて極東支部預かりとして認められた頃、食堂の一角ではフォウ・ムラサメとオウカ、ゼオラ、アラド、ラトゥーニら、ティターンズによって記憶を奪われ、精神と肉体を弄られた子供らが対面していた。

 机の上には、人数分の紅茶とやや不格好なチョコチップやレーズン入りのクッキーのお皿が並べられている。

 

「スクールか。ムラサメの人間が口にしていたのを聞いた覚えはある。あいつらは子供達がどうなったかは口にしなかったけれど、プルート財閥の下で戦わされているのか」

 

 そう呟いたフォウは所詮強化人間の行く末など、とでも考えたのだろう。憂いに満ちた表情で長い睫毛を震わせて、口を付けずにいた紅茶に小さな溜息を落として水面に波紋を立たせた。

 フォウの理解が誤解であるとはっきり告げたのは、フォウの対面に座したオウカである。金色の目には確たる自身の意思の光が宿り、凛とした美しさがあった。

 

「いいえ、違います。戦わされているのではありません。私達の意思で戦っているのです」

 

「ヘイデス総帥や所長は、私達が戦うのをひどく悲しんでいます。今は納得してくれているけれど、きっと今でも反対しています」

 

 オウカの左隣に座ったラトゥーニも人見知りなりに精一杯自分の意志を伝えようと、たどたどしく言葉を続けた。二人の言葉にムラサメ研究所のような人格操作の気配を感じず、フォウは真実であると受け止めた。

 

「そう、それならさっきの言葉を撤回する。あなた達は良い人に巡り会えたのね」

 

「はい。とても良い方に巡り会えました。そして今はこうして貴女と話す機会を得られました。フォウ・ムラサメさん」

 

 誤解が解けて少し緊張の解れたオウカに、フォウはこう言葉を続けた。

 

「私に何を言えと言われた? それともあなた達が私と話したいと思ったのか? 同じティターンズに関わりのある者だから」

 

 きっかけはフォウの言う通りだったが、こうして話をしようと決断したのはヘイデスから聞かされたフォウの戦う理由だ。ゼオラがずいっと前に乗り出る。

 

「あなたが失った記憶を対価にムラサメ研究所の指示に従って戦っていると聞かされ、それでいてもたってもいられなかったのよ。プライベートな事なのに、勝手に詮索してしまったことは謝ります」

 

「いいわ。私は捕虜だもの。こうして拘束もされずに自由に行動させて貰っているだけでも破格の扱いだわ」

 

 つい先日にはカミーユとデート紛いのことまでしているから、実際、フォウの待遇は随分と甘いが、ティターンズとエゥーゴの戦いは内ゲバであるし、フォウ自身はムラサメ研究所の被害者という見方もある。

 フォウのサイコガンダムによって死傷者が出なかったのも、彼女の扱いに対する不満が出るのを防ぐのに貢献している。

 

「私は過去が欲しい。フォウと与えられた名前とは違う、本当の名前、本当の記憶。それが欲しいのよ。それがなければ私という人間はいつまでも仮初のままだもの」

 

 改めて自分の戦う理由を告げるフォウに、ラトゥーニが顔色を暗く変えながら言った。

 

「けれど、それもムラサメ研究所の人達が貴女を強化したせいで失ったものでしょう? ムラサメの人達が本当に約束を守るとも思えない……」

 

 かつてスクールで廃棄処分とされたラトゥーニからすれば、フォウや他に捕虜にされた強化人間達に過酷な処置を施したムラサメ研究所の人間の言う事など、信じるに値しないのだ。

 

「確かにムラサメ研究所のやつらが私という道具に言うこと聞かせる為の餌を、そう簡単に手放すとは思えないし、本当に記憶を取り戻せるのかも怪しい。それは分かっている。分かっているけれど、それが私のよりどころなんだ。私が私を好きになる為の、さ」

 

 あまりに切実なフォウの言葉にオウカもゼオラもラトゥーニも二の句を告げずにいた。

 彼女達もまたスクールで昔の記憶や本当の名前も奪われて、スクールに所属してからの歯抜けの記憶と与えられた名前で生きているが、ヘイデスと所長夫妻に救われて以降の幸福な記憶が生きる気力と希望になって活かしている。

 けれどフォウは違う。いつかは誰かに支えられて、あるいは自ら踏み出して過去と決別するかもしれない。けれどもそれは今ではない。まだフォウは過去という存在の根幹となるものを求めて足を止めている。

 重たい沈黙を破ったのはアラドだった。場の重たい空気を知った事かと無邪気な笑みで吹き飛ばし、フォウにクッキーを勧める。

 

「まあまあ、俺達だって別にフォウさんを責めたいわけじゃないんス。俺なんかは過去を割り切っていますけど、誰だってそうできるもんじゃないってのは分かっていますから。

 今日はまあ、どんな風に考えているか知れただけでもオッケーってことで。それとコレ、どうぞ。手作りなんでちょっと不格好ですけれど」

 

「手作りって、君達が?」

 

 フォウはチョコチップ入りのクッキーを摘まみ上げた。焦げたりはしていないが、なるほど形が不揃いで市販品ではないだろう。

 

「ええ、最近料理を勉強し始めていてそれで作ったもんなんです」

 

 照れ隠しするように笑うアラドに優しい目を向けて、フォウは摘まんだクッキーを一齧り。小さな口を動かして食べ終えると、うん、と一言。

 

「美味しいよ。誰かの手作りした食べ物なんて何時以来だろう」

 

「へへ、実はヘイデス総帥にパイロット以外の道も考えなさいって言われて、そんで俺は食べるのが好きだから作る側にも興味が湧いてて、今日はお菓子だったけど普段は色々手を出してるんです。

 調べてみると地球のあちこちやコロニーごとにもいろんな料理があって、次から次に作って食べてみたい料理が増えて困ってます」

 

「そう、君達は未来に進めているのね。なら、これは未来の味なのかもしれないわね」

 

 そうしてまたアラド手作りのクッキーを齧って、フォウは美味しい、と呟くのだった。そんなフォウの柔らかな表情を見ながら、オウカは食堂の入り口を見た。心配そうにこちらを覗いているカミーユとそれに付き合うカツ・コバヤシの姿がある。

 

(カミーユったら。フォウも未来に目を向ければ決して暗いものではないと、すぐに分かっていただけると思うのだけれど……。私達は力になれるのかしら。それとも私達などが力になりたいと考えるのは、傲慢?)

 

◆インターミッション

 

 ヒイロらと協力関係を築いて数日が経過し、キタムラと極東支部の軍人達に混じってゲッター3のパイロット巴武蔵やバトルチームの西川大作が、思う存分柔道の練習をしていたとある日の事。

 極東支部の機動兵器格納庫の一角で、一部のパイロット達がそこに搬入された機動兵器を見て驚愕の色を浮かべていた。

 

「ガラダK7、ダブラスM2、それにあれは完全に機械化されたメカザウルスのサキ、バド、ザイにズー?」

 

 これまでさんざん撃破してきた敵の機体を驚きと共に見上げているのは、デューク・フリードこと宇門大介である。

 彼以外にも兜甲児や竜馬、隼人、大作を除くバトルチームをはじめとしたパイロットらが集っている。敵の兵器の名前を知っているのは、初めて戦闘に投入された際に敵側の指揮官がわざわざ知らせてくるか、あるいは調査によって判明しているからだ。

 

「こっちにはキャンベル星人のマグマ獣にボアザンの獣士まであるぜ」

 

 と目をパチクリさせているのは豹馬だ。先日、ガルーダに呼び出されて両腕を失う原作イベントが発生したものの、洸のようにサザーランド隊と極東支部の特殊部隊の介入により、かすり傷一つで済んだ為、ピンピンしている。

 

「どれも完全に機械化されているし、カラーリングが違うな。それに地球連邦軍のロゴが入っているぞ」

 

 そう口にする隼人の言う通り、ガラダK7らには肩や胸、頭など目立つ部分に「E.F.F.(Earth Federation Force=地球連邦軍)」の文字がデカデカと刻印されている。

 驚愕を隠しきれない彼らに向けて、格納庫から姿を見せた所長が声を掛けた。本日はタジキスタン系の民族衣装と白衣の組み合わせである。

 アトラス模様の絣を利用したウズベキスタン風に、孔雀のように艶やかで色鮮やかなワンピースにベストとカザフスタン風の衣装構成だ。

 

「みなさんごきげんよう。さっそく驚かせることが出来てなによりです。年甲斐もなく悪戯心に従った甲斐がありました」

 

「年甲斐もなくって、所長さんはいくつなんですか?」

 

 とついデリカシーに欠ける質問をしてしまったのは、カツである。隣に立っていたハヤト・コバヤシにこら、と窘められ、女性陣からは呆れた眼差しが向けられている。

 

「ふふ、もう少しデリカシーを学ばないといけませんね、カツ君。ま、私は気にしませんけれど。

 もうアラフォーのおばちゃんですわ。カツ君やカミーユ君くらいの子供が居てもおかしくはない年齢です。気持ちだけはまだまだ若いつもりですけどね」

 

 三十代後半という実年齢が所長の口から明かされると、まだ二十代前半にしか見えないその美貌にこの場に居た面々は驚きを隠しきれない。特に同年代だと思っていたエクセレンを筆頭に、女性陣の反応は顕著である。

 今日に至るまでに何度か戦闘に参加したガンダムW組の四人もこの場に居たが、はっきりと驚きを顔に出しているのはカトルとデュオくらいだ。

 

「さて話を戻しますわ。これまで皆さんの活躍によって数多くの侵略者達の兵器を撃退してきました。そのお陰で多くの残骸が手に入り、今日までそれを解析して今後の戦闘に役立てるべく日々多くの技術者が分析してきました。

 この場にある機械獣やメカザウルス達はその成果です。スクラップになっても下手に手を出そうとすると自爆する物もあって手を焼かされましたが、こうしてガワを整えるくらいは出来るようになったのです」

 

「鹵獲機あるいはリバースエンジニアリングの成果、か?」

 

 とこれはアムロ。侵略者の兵器には有機的な外見やパーツを備えたモノも少なくないが、格納庫に並べられた機体は全て完全な機械化が施されている。

 機体色の変化もあって、微妙な違和感が存在している。ガンダムとにせガンダム、あるいはライディーンとギルディーンくらいには違う。

 

「ええ。技術調査以外にも目的はありますけれど」

 

「というと?」

 

「例えばガラダK7などの機械獣は元々積んであった電子頭脳を取り外し、簡単な戦闘プログラムをインストールした人工知能を積んでありますが、これだけを見ればデッドコピーです。敵に操られて寝返られては元も子もないので、それを避けるための処置です。

 それに外部から状況に応じて指示を送らなければなりませんから、ミネルバXやゼファーに比べればリモコンに近い運用になります。

 しかし動力には光子力エンジンを採用し、装甲はDr.ヘルの合成したスーパー鋼鉄ではなく超合金Zを採用しています。機体出力と火力、装甲の硬度に限って言えばオリジナルをはるかに超えました。

 メカザウルスは生体パーツのクローニングを危惧し、完全に機械化しました。こちらは動力にゲッター炉を使用し、装甲にはゲッター合金。

 恐竜の生体脳による原始的な闘争本能が抜けた分、戦闘技能は落ちましたがハチュウ人類の恐れるゲッター線を完全に克服するどころか活用するメカザウルスの出来上がりです」

 

 戦闘力よりも優先したと思しい動力源や装甲などを聞いている内に、察しの良い者達はこれらの機体の意図するところを理解し、苦笑や呆れた表情を浮かべ始める。ここで化石獣の姿がないのに気付いた洸がおずおずと所長に問う。

 

「化石獣が見当たりませんが、あいつらもこんな風に再利用しているんですか?」

 

「いえ、残念ながら妖魔帝国の化石獣に関しては霊的な方面からのアプローチが必須でして、芳しくありません。

 アフリカの原始魔術やヨーロッパのウィッチクラフト、北欧のルーン魔術、中国の道術、日本の陰陽術、インドのバラモン、北米と南米のシャーマンなど、人類側の霊的精鋭に協力を仰いでいますが、バラオの魔力の凄まじさから下手に調査しようとすると呪詛返しでボン! となるのです。

 ですから化石獣の再利用ではなく、何重にも安全策を張り巡らせたうえでの妖術の解析にシフトしています。ごめんなさいね」

 

「い、いえ。というか人類側にもそういう人達がいるんですね……」

 

「あら原初の人類の歴史は呪術の歴史です。人類が宇宙に進出し、生まれ育ち死ぬ時代になってもその息吹は健在です。

 それに科学と言うのは突き詰めて行けば行く程、世界の成り立ちに何者かの意思の介在を意識せざるを得ませんしね。オカルトとは切っても切れない縁なのですよ。

 化石獣は上手くいきませんでしたが、マグマ獣や獣士には超電磁テクノロジーによる強化を施してあります。ガイゾック系、円盤獣や戦闘ロボ、ムゲ、バサ帝国の兵器に関してはまだサンプルが足りず、組み直すほどの量を確保できていません」

 

 ただしメギロートからはきっちりズフィルード・クリスタルを回収しているし、真ジオン公国のガザCに関してはジオン系統の技術である為、早々に解析が進んでいる。

 

「さてわざわざこうしてこれらの機体を強化再生したかというと、例えば機械獣ですがこれらはDr.ヘルに対し“お求めの超合金Zと光子力で動く機械獣を作ってみましたけど、ねえねえ今どんな気持ち? どんな気持ち?”と挑発する為の機体ですね。

 メカザウルスにしてもそうです。“ゲッター線を糧にして動くメカザウルスを作ったけど、どう? どう? どう?”と存在そのものが煽りになります。恐竜帝国に対してはMZがありましたが、この改造メカザウルスなら更に挑発効果が見込めます」

 

 そうして怒りに我を忘れて攻撃してくれば、処理しやすいでしょう? と締めくくる所長に対して、パイロット達の反応は呆れたり、激闘を予感して好戦的な笑みを浮かべたりと多種多様であった。

 

<続>

■ヒイロ・ユイが加入しました。

■デュオ・マクスウェルが加入しました。

■トロワ・バートンが加入しました。

■カトル・ラバーバ・ウィナーが加入しました。

 

■インターミッションクリア後 ヘイデスショップ

〇ガラダK7Z

〇ダブラスM2Z

〇ゲッターサキ

〇ゲッターバド

〇ゲッターザイ

〇ゲッターズー

〇ガルムスV

〇ドクガガV

〇バイザンガV

〇ガルドV

※上記のユニットは基本的に母艦から半径十マス以内でのみ行動可能な無人機か、乗り換えによって運用可能。




魔改造メカザウルスに関してはゲッターロボアークのゲッターザウルスの亜種のイメージです。モビルゾイドを散々作ってきた成果なのです。

メカギルギルガンもいつか味方として運用したいですね。

追記
トロワが五飛の名前を口にした個所についてちょこちょこ文章を追加。


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第二十九話 二十数話ぶりに触れるあのMA

説明不足でしたが、挑発用の機体は量産の予定はありません。
するとしても廉価版のお安い仕様になるかなと思います。


共通ルート 第二十話 四度空を翔ける天女

 

 所長並びにヘパイストスラボによって、挑発目的のリビルドされた機械獣やメカザウルスが極東支部に運びこまれて更に数日後のこと。

 カトルやデュオが民間のスーパーロボットパイロット達と順調に交流を深める中、ヒイロやトロワは寡黙な性格もあって、周囲の面々はどう接するのが良いかと戸惑いがまだ残っている。

 アムロやクワトロ、シュメシやヘマーなどは気にせず声を掛けているが、本当の意味で彼らが打ち解けるのはまだ先の事になるだろう。

 

 その日、極東支部からハガネを中心に出撃するアーガマやクラップ級の姿があった。先日、退けたムラサメ研究所からの救援要請を受けての事である。

 研究所にはベン・ウッダーが指揮を執る空中艦隊が今も駐留していたが、それでもなお手に余る敵勢力の猛攻に晒されていたのだ。

 

 こちらを目の敵にして襲おうとしていた連中をどうして助けるのか、と誰だって大なり小なりそう思っていただろうが、ムラサメ研究所には被害者と言うべき強化人間達が居るし、フォウの記憶の事も考えれば放っておけるものではない。

 それに一応は地球連邦軍に属している味方……うん、まあ、味方でもあるので、ハガネ艦隊は許される限りの最高速度でムラサメ研究所の救援へと急いだ。

 

「ムラサメ研究所を襲撃しているのは、魔竜機連合の機動兵器部隊だ。母艦複数に百機以上の機動兵器が確認されている。高機動型の機動兵器部隊を先行出撃させ、敵部隊の横腹を突くぞ。出撃、急げ!」

 

 ハガネの艦橋からレビルが指令を下し、すぐさまギャプラン三機、アンクシャ、ゼファートールギス、ウイングガンダム、グレンダイザー(スペイザー)、ゲッター1、マジンガーチーム、コンバトラーV、ボルテスV、ザンボット3、ダイモス、ライディーン、ダンクーガらが各艦のカタパルトから出撃し、大気を切り裂いて飛んでゆく。

 どれもこれも軽く超音速の数値を叩きだす移動速度を有し、日本国内という短い範囲での移動であればあっという間に目的地に到着する。

 

 この時、ムラサメ研究所の防衛の為に展開していたベンの部隊は、ストーク級一隻、ガルダ級一隻、サイコガンダム二機、ガンダムMk-Ⅱ試作0号機一機、そのほか無事だったマラサイとハイザックの混成部隊二十余機。

 スーパーロボットの接収失敗と参謀本部からの通達により作戦が撤回された為、戦力の増強はされず、そのままムラサメ研究所で何をするでもなく戦力を遊ばせていた状況であった。遊ばせているんじゃねえよ!? と他所の支部の面々が知ったら激怒しただろう。

 

 まあ、そのお陰で地球連邦側の重要な研究情報と資材を奪取すべく襲い来た魔竜機連合を迎え撃ち時間を稼げたのであるから、怪我の功名と言えなくもない。

 先行して出撃した部隊は、幸いベンが素直に援軍への感謝と協力を申し出たお陰で、いらぬ諍いが現場で起き貴重な時間を無駄にするのは避けられた。

 

「攻撃を仕掛けた相手に今度は窮地を救われるか。とんだ恥晒しだが、命には代えられん」

 

 とは、被弾したストーク級の艦橋で必死に指示を飛ばしていたベンの言葉である。

 レイラと調整の済んだもう一人の強化人間のサイコガンダムを軸に、ゼロのガンダムMk-Ⅱ試作0号機を矛として運用し、かろうじて部隊の壊滅を遅延させていたティターンズにとって、無敵のスーパーロボット軍団の到着は闇の中に差し込んだ希望の光そのものだった。

 ただ0号機を駆るゼロはそうでなければ助からないと分かってはいても、決して面白くはなさそうだったが。

 

「クソ、僕の力だけではレイラ一人も守れないのかっ! ……それにしてもなんだあの古臭いメカは?」

 

 さてゼロの疑問と関連する事なのだが、先行する部隊にはダイアナンAとボスボロットが含まれていた。ジェットスクランダーを手に入れたマジンガーZならともかく、なぜこの二機も居るのかといえば、答えは至って簡単でこの二機にも飛行手段が用意されたからだ。

 ダイアナンAにはジェットスクランダーの二号機が用意され、更にダイアナンという名前からローマ神話の月の女神ダイアナにちなみ、ダイアナンアローという光子力の矢を放つ超合金Z製の弓が装備され、火力の向上に一役買っている。

 大弓を手にするその姿はライジングガンダムさながらであり、またあるいは異なるマジンガー世界に存在するアルテミスAをどこか彷彿とさせるもので、ヘイデスは、マジンガーZEROはこっち来ないよね、来ないよね!? と密かに戦慄したものである。

 

 そしてゼロの口にした古臭いメカとは、ボスボロットのことだ。このボスボロット、「UFOロボ グレンダイザー」内でボススペイザー(ボロットスペイザー?)というプロペラの付いた紫色の円盤状の装備によって空を飛ぶことが出来た。

 この世界ではまだ兜甲児はTFOを作ってはいないが、スペイザーと宇門博士の存在そしてグレンダイザーを強化できないなら装備を作ればいいじゃない、という発想から地球製スペイザーが前倒しで開発されており、このボススペイザーもその成果である。

 

 原作との違いは、胴体の左右にちょこんと生えた短い翼の端に旋回式光子力ビーム砲×2が装備され、翼にはドリルミサイルポッドが懸架されている事。

 そして背中側にはプロペラの代わりにYF-29デュランダルの如く旋回式連装光子力ビーム砲×1が装備され、ぱっと見は原作と同じでも火力面においてはかけ離れたスペイザーが出来上がっていた。

 ボスボロット自体も、MSガッシャから流用したハンマー・ガンとビームシールド発振器を直接手に持って武装している。

 

「むふふふふふ、都合よく機械獣共がいるわさ。ムチャ、ヌケ、例の奴をお披露目よ~!」

 

「合点承知の助!」

 

 ホバーパイルダーのキャノピーと同じ素材が嵌め込まれたコックピットの中で、ムチャとヌケは息ぴったりの返事をし、出撃前に所長から預けられたなんともまあ、古めかしいリモコン装置を取り出す。

 かまぼこ型の土台から二本のレバーが飛び出し、申し訳程度にいくつかのスイッチがあるだけのおもちゃめいた品で、音声で指示を伝える為のマイクが土台から伸びている。

 

「ガラダK7Z!」

 

「ダブラスM2Z!」

 

 この時、ボススペイザーは背中にマジンガーZの眷属と化した機械獣……魔神機械獣(ヘイデス命名)二体を乗せていたのだ!

 

「ゴー!」

 

 ヌケとムチャがマイクに叫ぶのに合わせて、簡易戦闘プログラムをインストールされた機械の獣達がボススペイザーから飛び降り、機体各所のバーニアを吹かしながら地面へと降り立つ。

 所長が言っていたようにリモコン操作必須の機体であるが、性能面だけを見ればDr.ヘルが作らんとしたジャパニウムに根差す兵器として相応しいレベルだ。

 赤い胴体に紫色の四肢だったガラダK7は白い四肢に黒い胴体とマジンガーZとおそろいのカラーへ。紫の胸と腰、二本の首と手足は緑だったダブラスM2は青い胸に赤い腹、残りの部位は白となぜかガンダムとおそろいカラーだ。

 

「わはははは、Dr.ヘルが青筋浮かべる光景が目に浮かぶようだわさ!」

 

 ボスの高笑いを他所に、地面に降り立ったガラダK7ZとダブラスM2Zは量産された原型機達が群がってくるのに正面から立ち向かい、ヌケとムチャのリモートコントロールに従ってところどころ危なっかしいものの撃墜スコアを重ねる活躍を見せる。

 パイロットの差はそう無いにせよ、装甲と動力が変わればこうまで戦闘能力に差が出るのかと言わんばかりの暴れっぷりは、なるほど、Dr.ヘル一派への挑発効果を見込めそうだ。

 

 今もガラダK7Zが右側頭部から外した超合金Z製の鎌が、オリジナルのガラダK7が受け止めようと構えた鎌を真っ二つにし、その勢いのままに機体を縦半分に斬り裂く。

 ダブラスM2Zはオリジナルの放った破壊光線に対し、四つの目から放ち、途中で一つにまとまった光子力ビームを正面から当てて、そのまま出力差にものを言わせて押し切り、ダブラスM2の胸を貫いて爆散させた。

 

 ギャプランで戦場を引っ掻き回すヤザンは、これまで散々戦ってきた鎌ドクロと二つ首トカゲが味方として暴れる光景に、愉快気に笑う。

 アンクシャを駆って今度はサイコガンダムやマラサイを援護する側に回ったブランは、敵と味方を勘違いしてしまいそうな光景に鹵獲機の運用の難しさを噛み締めている。

 

 なにはともあれ超級のエース達と一騎当千のスーパーロボットの戦力は、数量の桁が一つ上の敵部隊を相手にして不足はなく、守勢に回っていたティターンズ部隊も奮起して機械獣やメカザウルス、化石獣へ果敢に反撃を加えている。

 撃破されたいくつかはボスボロットのパーツとなり、また魔神機械獣やゲッターメカザウルスとして再利用されるだろう。

 

 駆け付けた先行部隊がティターンズと協力して時間を稼ぐこと数分、ハガネ、アーガマ、クラップ級が到着し、艦内で待機していた機動部隊が次々と出撃して行く。

 その中には魔神機械獣以外にもハガネのオペレーターにコントロールされるゲッターバド、同じく艦橋の脳波測定ロボット・ロペットのコントロール下にある超電磁マグマ獣ガルムスV、超電磁獣士ドクガガVも含まれていた。

 

 ティターンズの面々は、カラーリングや微細なデザインの変化、地球連邦軍を示す大きなロゴが入っているとはいえ、これまで敵として知られてきた兵器が味方側としている事に戸惑いを隠せなかったが、IFFは味方であると示している。

 ベンは実際、こちらの味方として戦っている以上、目で見たものがいかに信じがたくとも信じる他ないと判断して、生き残っている部下達に新しい指示を飛ばした。

 

 ただハガネ艦隊は今回に限って不運に見舞われた者達が居た。

 元々予備のパーツが少なったアムロのRFガンダム、カミーユのGPνのメンテナンスが難航し、クワトロの百式も0号機との戦闘での負荷が祟って出撃できなかったのである。

 極東支部には所長が持ってきたゲシュペンストMk-IIがあり、HCを装備したそれらを借りてもよかったのだが、スクランブルのかかったタイミングが悪く、三人はとりあえずすぐ戦闘に投入できる機体を急遽借り受ける他なかった。

 その結果、こうなった。

 

「MZに乗るのは何年ぶりだ? 操縦の感覚は忘れていないのが救いか」

 

 ブレードライガーのコックピットに乗ったアムロである。なおカラーリングは元のままで、白と黒のツートーン、あるいはトリコロールカラーではない。残念。

 MZへの搭乗経験はプロメテウスプロジェクト時代のみだが、膨大なデータが集まりOSのアップデートが繰り返された機体は、アムロの反応速度ありきとはいえ扱いはそう難しくないように感じられた。

 エース級かよほどのベテランでなければ操縦できないブレードライガーに対してそんな感想が出てくるのだから、普通のパイロットが聞いたら開いた口が塞がらないだろう。

 

「こちらの機体はいささか鈍足だが、パワーは流石にMSの比ではない。曲がりなりにもゲッターロボの系譜というわけか」

 

 クワトロが乗っているのはレッドホーンだ。高速機であるブレードライガーに遅れつつ、背中のゲッタービームガトリング砲からビームの銃弾を連射し、ゲッターバドやゲッターザイに群がるメカザウルスを牽制している。

 ゲッター線防御装置を搭載しているメカザウルスには、ダメージの無い状態でゲッター線兵器を命中させてもさして効果は見込めないが、本能的にゲッターを嫌悪するメカザウルスの注意を引くには十分だ。

 

 そうして隙を見せたメカザウルスに対し、アムロのブレードライガーが懐に飛び込み、ストライククローとレーザーブレードで散々に斬りつけて行く。

 なまじ生物としての特徴を残すメカザウルスであるが故に、アムロはメカザウルスの殺意を鋭敏に感知し、ゲッター合金製の獅子を縦横無尽に走らせて、こちらの装甲には傷一つ付けない。

 

 ブレードライガーの攻撃で装甲をズタズタにされダメージを負ったメカザウルスに向け、改めてクワトロのレッドホーンからゲッター線の銃弾が叩き込まれ、今度こそ穴だらけにする。

 そうして崩れ落ちるメカザウルスの上に、どこかから吹き飛ばされたメカザウルス・サキと化石獣バストドンが折り重なって、その場で大きな爆発を起こした。

 

「カミーユか。私達と違ってMZへの搭乗経験などないだろうによくもやる」

 

 クワトロの目には、巨大な右腕を振り上げたアイアンコングの姿が映し出されていた。

 アイアンコングはゴジュラスに発覚した、腕が短くメカザウルス相手の格闘戦では不利、という弱点を補い、かつ砲撃能力の強化をコンセプトに、ゴジュラスを上回るゾイドとしてトミイ・タカラダ氏のグループが開発したゴリラ型MZである。

 この場合、カミーユ×アイアンコング=空手×ゴリラとして機能し、初搭乗のアイアンコングでメカザウルスと化石獣をノックアウトする結果になったわけだ。

 

「アムロ大尉、クワトロ大尉、まだほかにも来ます!」

 

「魔竜機連合の増援……いや、ボアザンとキャンベルか。三つ巴の戦場か、あまり好ましくはないな」

 

 カミーユが感じ取ったモノをアムロもまた感じ、魔竜機連合の後背を突く形で戦場に高速で接近してくる悪意を見つける。

 クワトロは交戦中の魔竜機連合と接近してくるキャンベル・ボアザン同盟に、これまで何度か交戦した敵指揮官の気配が感じられないのを悟っていた。

 

「どうやら偶発的な混戦のようだな。こちらのスーパーロボットが勢ぞろいしていたのは不幸中の幸いではある」

 

 キャンベル・ボアザンの戦力を合わされれば、二百機超の敵との戦いだ。士気を持ち直したとはいえ、疲労が著しいティターンズ部隊は後方に下げるべきだろう。

 特にサイコガンダムと0号機を操縦するレイラやゼロ達はパイロットも機体も消耗が激しすぎて、これ以上戦わせてもあまり戦力として機能すまい。

 

 ロペット達のコントロールするガルムスVやドクガガVの姿に、キャンベル・ボアザン側の部隊にわずかな動揺の動きがみられたが、すぐさまそれを怒りに変え、後背を突いた魔竜機連合を無視して殺到し始める。

 今回の戦闘が終わればこれら鹵獲改造機の存在が敵勢力の指揮官や技術者に伝わり、所長の見込んだ真の挑発効果を発揮するだろう。

 

 グレイドンとスカールークといった母艦に加え、ボアザン円盤を尖兵にマグマ獣と獣士達が一気に展開して、魔竜機連合とハガネ艦隊、ティターンズを撃滅し、ムラサメ研究所を制圧、そして鹵獲改造機を粉砕せんと襲い掛かる。

 ハガネとアーガマ、クラップ級、更にベンのストーク級が異星人同盟の出先を挫こうと主砲とミサイルの歓迎をするが、ボアザン円盤が盾代わりとなって援護防御する事により、メインターゲットであったマグマ獣らへの被害が最小限に抑え込まれる。

 勢いを増して迫りくる異星人の兵器へ高出力のメガ粒子砲が横殴りの雨の如く叩きつけられたのは、まさに援護防御するボアザン円盤が絶えたその瞬間であった。

 

「なに? あれはMA? ライブラリに該当……アプラサスⅣ?」

 

 敵機をアイアンコングの両肩に装備したミサイルで迎え撃とうとしていたカミーユは、極東支部の方角から新しく接近してくる巨大熱源と膨大な数のメガ粒子砲の軌跡に呆気にとられていた。

 それはジオン公国の奇才にして鬼才、鉄の子宮を求めた狂気の技術者ギニアス・サハリンの作り出したMAアプサラスⅢの残骸を一年戦争後にプルート財団が回収し、今日に至るまで改修し続け、ついに陽の目を見たアプサラスⅣである。

 

 アプサラス――インド神話における水の精、あるいは天女とされ、美しい女性の姿を持つと言う。

 その名に相応しくザクⅡの頭部があった個所には、ナシム・ガンエデンの如き白い女神型のMSユニットが埋め込まれている。あるいは木星帝国の開発したディオナに似ている。

 パイロットが男性の場合気まずくなるかもしれないが、一応、非人間型のMSユニットも作ってはある。

 これまで緑だった装甲は純白に染まり、内蔵されたジェネレーターはリックドムⅡ三機分なんてケチな事は言わずに、大型艦船用のジェネレーターが積み込まれ、最新のミノフスキー・クラフトとビームバリヤーを搭載。

 メガ粒子砲発射時に、わざわざ球形のパーツを降ろして接地する必要もなく、撤去されている。

 

 山に大穴を穿つ威力を持ったメガ粒子砲の出力は一回りも二回りも増し、また死角を補うために迎撃用のビームファランクスとミサイルランチャーが機体各所に仕込まれた。

 元々高精度を誇ったロックオンシステムは、更にその精度はもちろんのこと、同時捕捉ターゲット数も拡散発射で256だったのが、320まで増やすことに成功している。

 翼持つ玉座に座する女神と見紛う麗しき姿を得たアプサラスⅣは、その一方で眼前の敵に無慈悲な死を容赦なく賜る残酷さを併せ持つ兵器として完成していた。

 

「まさか、あれに乗っているのはフォウ、フォウなのか!?」

 

 極東支部を出立する際には調整中として出撃を見送られたアプサラスⅣには、自ら出撃を志願したフォウ・ムラサメが搭乗しているのだった。

 カミーユから繋げられた通信に、フォウが答えた。

 

「私は私の為に戦う。私の記憶を取り戻すために。でも、今は優しくしてくれた人達の為にも戦うよ、カミーユ」

 

 そうして答えたフォウの口元には、彼女がフォウと呼ばれてから初めて浮かべたかもしれない優しい微笑があった。

 

<続>

 

■ジェットスクランダー2号機が開発されました。

■追加武装ダイアナンアローが開発されました。

■ボススペイザー(魔改造)が開発されました。

■アプサラスⅣが開発されました。

■換装武器ハンマー・ガンが追加されました。※MSガッシャの持っているアレ。

 




共通ルートが三話とんでいますが、語られていないステージが三話あったとご理解ください。

VISPさんのスパロボ作品をいつも楽しく拝読しているのですが、その影響で最近はデルマイユ公をどうにか浄化できないかと考えている昨今です。あのインフェルノな世界(褒め言葉)に比べれば、本作は本当に優しいイージーモードだとしみじみ思います。

そうそうスパクロでマジンガーZEROがナイアさんに一泡吹かせたようで、終焉の魔神がどこまでもヤバくなってゆく状況に乾いた笑いしか出ませんでした。
ZEROを出してたら、本当に所長を黒山羊の女神として本格投入しなければならない事態に陥ったかもしれませんね。


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第三十話 デフォルトプレイヤー部隊名はこれ!

アンケートがあります。ご意見お願いします。
期限は22日水曜日20:00まで!


「この機体のサイコミュ、サイコガンダムよりも私にフィットする。私の中に入ってこないからか?」

 

 フォウは強引に乗り込んだアプサラスⅣの快適と言っていい乗り心地に戸惑いながら、魔竜機連合、ボアザン・キャンベル連合の機体を次々とロックオンして行く。

 ギニアス・サハリン謹製のマルチロックオンシステムは、強化人間であるフォウの能力とSRGバイオセンサーにより、その真価を十全に発揮している。

 アプサラスⅣ機体中心部の開口部に強烈な光が宿り、こちらへと向けて殺到してくる魔竜機連合とキャンベル・ボアザン同盟――以下、地球連邦からの通称“異星同盟”と呼称――の軍勢へと向けて大出力のメガ粒子砲が雨霰と降り注ぐ。

 

 MSとは比較にならぬ装甲と耐久力を誇る機械獣や獣士であっても、アプサラスⅣのメガ粒子砲の威力は絶大でなおかつ恐ろしい精度で命中してゆく。

 被弾による煙を上げている機体はまだマシで、直撃を受けて爆散している機体も少なくない。それを見逃すような戦下手はこの部隊には……カツはまだ経験が不足しているが、ほぼいない。

 

「私に近づくな!」

 

 アプサラスⅣの背面と頭上に回り込んでいたボアザン円盤に向け、フォウはアプサラスの巨体に内蔵されたビームファランクスの銃座を展開し、ミサイルランチャーの照準を即座に合わせる。

 決して人型とは言えないアプラサスⅣの隅々にまでフォウの意識は行き届き、それでいて彼女に負担らしい負担はかかっていない。

 パイロットを一人でも多く生き残らせる、パイロットを少しでも長く戦わせる、敵を一機でも多く倒す、この三つのコンセプトの並行成立を掲げた所長とヘパイストスラボ謹製のSRGバイオセンサーは、見事にその役割を果たしていた。

 

 全幅百メートルを超えるアプサラスⅣから放たれるのは、ビームとミサイルの形を持ったフォウの拒絶の意思。パイロットに優しい安全・安心・快適のSRG印のバイオセンサーに助けられたフォウの反撃は、ことごとくボアザン円盤へと命中して行く。

 そこへ下方から新たなミサイルが加わった。カミーユの操るアイアンコングの放ったミサイルだ。

 

 まさにゴリラそのものの走り方をするアイアンコングとそこに感じられるカミーユの気配に、フォウは一瞬理解が追いつかずに混乱したが、すぐに新型のMZだと思い至って正気に戻った。

 先程は通信越しだったので気付かなかったのだが、カミーユがガンダムではなくゴリラに乗っている現実は、フォウを混乱させるのに十分だった。そらまあ、MS全盛期の時代に機械仕掛けのゴリラを見るとは思いませんわな。

 

「フォウ、どうして君が戦場に。まさか岡長官かそれともヘイデス総帥に頼まれたのか?」

 

「違うわ。大丈夫安心して。私が頼んだのよ。ムラサメ研究所には私が求めるものがあるし、それにあなた達が大軍を相手に戦っているって知ったから。最初はサイコガンダムで出撃しようとしたのだけれど……」

 

 ところが鹵獲されたサイコガンダムは既に解体され、ヘイデスがどこからか入手してきたプロトタイプサイコガンダムも『いのちだいじに』がモットーのヘパイストスラボの逆鱗に触れた為、今となっては『ぼくわるいプロトタイプサイコガンダムじゃないよ』仕様になっていて、フォウの思念に反応することはなかった。

 ならばと空いているMSを求めたフォウだったが、立ち塞がった所長に気付いたら組み伏せられ、そこで言葉の応酬の果てに溜息を吐く所長に預けられたのがこのアプサラスⅣだ。

 

 万が一に備えて緊急停止コードの設定されたこのMAならば、フォウが暴走したとしても被害が出る前に停められる、という判断もある。コードは既にレビルに送信済みだ。

 仮にも強化人間であるフォウを組み伏せた所長の実力に、カミーユはあの女性はいったい何者なのだと疑念を深めたが、それよりも今は目の前のフォウとアプサラスⅣである。

 

「そうか。それじゃあ、その機体を操縦してもフォウに負担はかからないんだな?」

 

「ええ。機体の方が私に合わせてくれる、ううん、気遣ってくれている。そうとすら感じるわ」

 

 後に今回の出撃に関してフォウの提出したレポートを読んだラボの面子は、期待通りに自分達のバイオセンサーが機能した事に喝采を上げたという。

 

「分かった。それなら今は何も言わない。ただ、無理はしないでくれ。それだけは約束して欲しい」

 

「分かっているわ。大丈夫、私は死にに来たわけじゃないのよ。自分とあなた達の為に戦いに来たの」

 

 そうしてアプサラスⅣの形成する対空火器にアイアンコングが加わり、ますますもって生まれ変わった天女は堅固な守りと苛烈な攻めを侵略者達へ味わわせるのだった。

 

「旧ジオンのMAか。残骸をプルート財団が回収していたというが、なるほど、凄まじい性能だ」

 

 こう口にしたのはトロワである。

 ハガネの甲板上で愛機ガンダムヘビーアームズの全身に仕込まれた火器を群がってくる敵機に放ち、弾切れとなればすぐさま格納庫へと戻って作業用ロボットと整備員の手により、迅速に補給を済ませて再出撃している。

 他の機体もアプサラスⅣの火力が凄まじすぎて、敵味方の識別が出来ていると分かっても接近戦を挑む者はなく、メガ粒子砲の範囲外の敵機や敵母艦へと攻撃を集中させている。

 

「ヒイロ、岩石型の敵母艦への射線が開いています。そちらへ君のガンダムのライフルを。その後で僕とデュオが突撃します」

 

 カトルとデュオは、ドダイ改を借りサンドロックとデスサイズに仮初の飛行能力を得て、その腕前を存分に振るっていた。またカトルはあくまで協力者という立場であったが、コロニーのガンダムチームの臨時指揮官として機能していた。

 ヒイロらもお互いにそれほど面識のない相手であったが、立場としては同じオペレーション・メテオの実行者であり、カトルの見せた能力から従うのに否はなかった。

 

「了解した。発射のタイミングに合わせろ。カウント3から始める」

 

「お願いします」

 

「ったく、五飛の奴も付き合わせたかったぜ」

 

「3……2……1……0」

 

「相変わらず愛想のない奴だな。答えるだけトロワの方がマシだ!」

 

 デュオの愚痴には付き合わず、ヒイロは最大出力のバスターライフルをガンテへと目掛けて発射した。

 相変わらずスーパーロボットの最強の一撃かなにかか、と言いたくなる膨大なエネルギーが発射され、直前に高エネルギーを感知して回避行動を取ったガンテの親指から人差し指の付け根にかけてまでが吹き飛ばされる。

 さらにその余波で周囲にいたドローメが巻き添えを食い、何一つ再利用できない価値のない消し炭へと変わって地上へ落ちてゆく。

 

「デュオ、行きますよ!」

 

「ああ、悪魔人だか妖魔人だか知らねえが、死神様の鎌からは逃げられねえって教えてやらあ!」

 

「はいはい、美少年諸君、お姉さん達も手伝ってあげるわよ! 御代はカ・ラ・ダでね!」

 

 SFS搭乗機どころかミノフスキークラフト搭載機とも一線を画す機動で空を舞うヴァイスリッターが、パイロットの如何わしい台詞と共にサンドロックらに加わり、オクスタンランチャーと左腕のビームキャノンの援護を加える。

 

「そこはロハだろ? 一応、俺達は味方だぜ?」

 

 デュオはスイーパーグループでこの手の冗談のやり取りに慣れているのか、ボルテスVよりも巨大なボアザン円盤を斬り裂きながら、エクセレンへ即答する。打てば響くとばかりの速さだ。

 

「いやん、肉体労働で返してねって意味よぉ? それに倒せば倒すだけプルート財閥からの報奨金も出るのよ。カトル君はともかくデュオ君は先立つものが多いに越したことはないでしょう? ほら頑張った頑張った。将来は湖畔を臨む一等地の別荘で隠居暮らし!」

 

「へいへい。ま、金のありがたみは知っているがよ。それならジャンク屋か何でも屋、なんならバイクで一人旅でもしたいね!」

 

 カトルはと言うと二人のポンポンと交わされる言葉に口を挟むタイミングを見つけられず、二人の好きなようにさせるのがよいと判断し、くすりと品よく笑ってからサンドロックの操縦に専念する。

 その代わりにエクセレンの相方が尻拭いをするように通信を入れてくる。

 

「デュオ、カトル、エクセレンの発言は聞き流して構わん。敵母艦を叩くことに集中しろ」

 

 デスサイズとヴァイスリッターを追い抜き、真っ赤な流星の如く突貫するアルトアイゼンに、エクセレンから抗議の声が届くが、キョウスケはそれに答えずに眼前に立ち塞がる化石獣に右腕の超合金Zのステークを叩き込む。

 

「俺とアルトをその程度で止められると思うな!」

 

 更に一体、もう一体とアルトアイゼンのトールギスタイプを上回る狂気的な推進力により、止めに入った化石獣を押し切りそのまま傾いているガンテの中指の頭へと突撃し、トリガーを引く!

 

「ステーク! 貫けない装甲はないぞ!」

 

 MSのコックピットにも破砕音が届きそうなくらい盛大にガンテの真ん中の頭と、アルトアイゼンに押し込まれた三体の化石獣がプラズマと共に木端微塵に吹き飛んだ。

 ガンテの一隻が沈む傍らで、ダイモスを駆る竜崎一矢はいつもの空手の技にキレがなく、バイザンガに正中線四連突きを叩き込みながらも、踏み込みの甘さから撃墜できないほどだった。

 

「ぐっ!?」

 

 角の生えた獅子の如きバイザンガは正中線を拳の形に陥没させながら、ダイモスへと掴みかかる。勇猛なその姿に相応しく、バイザンガは消えゆく命の灯の最後の輝きでダイモスの両肩を掴み、その動きを封じ込めようとしていた。

 爆散するその瞬間までダイモスの動きを止め、爆発に巻き込んでダメージを与え、周囲に集まった獣士達の攻撃で止めを刺す――そういう覚悟の見える動きであった。

 

「ジャックカーバー!」

 

「天空剣!」

 

 周囲に集まっていた獣士を駆け抜け様に斬り捨てたのは、ガナリー・カーバーから実体刃を展開したフェブルウスと天空剣を構えたボルテスV。

 そして――

 

「スピンソーサー!」

 

 スペイザーと合体した状態のグレンダイザーの放った小型円盤がダイモスを拘束していたバイザンガの腕と背中を斬り裂き、瀕死だった勇猛な獣士に最後の慈悲を与えた。

 

「大丈夫? 一矢お兄さん」

 

 ダイモスの右前に出てカバーに入ったシュメシが不調の一矢を気遣い、天空剣を右八双に構えて残りの獣士やマグマ獣を牽制する健一も続く。

 

「もしダメージがあるならいったん下がってください。あの大きなMAの増援で形勢はこちらに傾いています。余裕のある内に修理や補給を」

 

 気遣われているな、と感じながらそれでも一矢は戦える、と口にした。バームの連中がいないとはいえ、ここで自分が下がってよい理屈はない、少なくとも彼にはそう思えたのである。

 

「すまない。少し油断したみたいだ。だが、次は……」

 

 だが一矢の虚栄を宇門大介は許さなかった。母星を失い今また第二の故郷を失う危機に立ち上がった戦士は、鋭い眼光で心乱れた一矢を見ている。

 

「まだ彼女の事が気に掛かっているのだろう」

 

「!? それは……いや、そうだな。ここで嘘を吐いても仕方がない。俺は、エリカの事を戦場でさえ忘れられずにいる」

 

 ヘイデスにとっては予定調和めいているのだが、先だって極東支部近隣にて発生したバーム軍との戦闘の最中、保護されていたエリカがバーム星人としての記憶を取り戻し、自分の正体を告げてそのままバーム軍と共に去る、という事件が起きていた。

 エリカがスパイだったのではないか、という疑念やエリカの面倒を見ていた一矢にも疑惑の眼差しが向けられるも、エリカを診断した医師達やこれまでのエリカと一矢の行動からスパイの可能性は極めて低いと結論付けられ、一矢はこうしてダイモスに乗り続けている。

 だがそれでも一矢の心に落ちた暗い影は、こうして残っているのだ。

 

「一矢君、エリカさんを今すぐに忘れろとは言わない。それが無理な事は僕の目から見ても分かる。だが、君とそして何より仲間達に傷を負わせたくなければ、戦場でだけでも忘れるんだ。それが出来なければ艦に戻れ」

 

 厳しく断じる大介の言葉にボルトチームも双子も何も言わない。大介の言葉が優しさの裏返しであるのは、彼らにも痛い程分かっている。

 

「……すまない。不甲斐ない所を見せちまったな。エリカを擁護してくれたヘイデス総帥や所長に申し訳ない。その分はこれからの行動で挽回して見せる!」

 

 自らの頬を叩き、気合を入れ直す一矢に呼応し、ダイモスの瞳がギラリと光る。傍目にもダイモスの纏う空気が変わったと分かる変化であった。

 

「うおおおお!」

 

 勢いよく飛び出すダイモスにフェブルウス、ボルテスV、グレンダイザーも続き、残り百機を下回った敵軍に突っ込んでゆく。

 勢いづいたダイモスを筆頭に既に次のガンテに取りついていたアルトアイゼンとヴァイスリッター、W勢の大暴れにアプラサスⅣの大火力が加わり、意図せず複数の勢力と混戦との戦いになったムラサメ研究所救出戦はほどなくして彼らの勝利で終わる。

 

 無事に侵略者の撃退に成功し、ムラサメ研究所の所員達は歓喜に沸いたが、それも短い間の話だった。表に出せない非人道的な研究内容が露見して、摘発の為の部隊が研究所へ突入し、抵抗する間も与えずに鎮圧したからである。

 これは元々ムラサメ研究所からの救援要請がなくとも、鎮圧する手筈が参謀本部との間で取り決められていたからだ。

 

 ベン・ウッダー率いるティターンズの空中艦隊に研究所から助けが求められたが、その前にジャミトフの側近から連絡が入り、研究所をそのまま鎮圧させ、彼らはティターンズの地上基地への撤退が命じられた。

 ハガネ艦隊にエゥーゴが協力しているのは明白であったが、助けられた事実に目を背けるベンではなく、去り際にレビルやブライトらに丁重に礼を述べていったのが、礼を言われたブライトらには印象深かった。

 TVアニメでは容赦なくニューホンコンシティを戦場にしたベンだが、目下、その必要性が無ければこういう態度をとる男であるようだった。

 

 ムラサメ研究所の摘発と今回の防衛戦により、研究所に所属していたゼロやレイラを含む強化人間達が保護されて、身柄は極東支部預かりとなった。

 強化人間用の試験機やサイコガンダムの予備機も回収され、人命と人権を無視したその仕様にスーパーロボットの各博士や所長達が激怒するのだが、それはまた別の話。

 

 極東支部敷地内にある軍病院の特別病棟にレイラが運び込まれ、ピンピンしているゼロが付き添っていた。

 特設された病室のベッドの上でレイラが横になり、枕元にはゼロが腰かけ、フォウが見舞いとしてフルーツセットの籠を持って訪ねている。

 

「レイラ、調子はどう? ゼロも付きっ切りなのは良いけれど休憩を取らないとだめよ」

 

「大丈夫よ、フォウ。お見舞い、ありがとう」

 

「ふん、僕の勝手だ」

 

 この場所が戦場ではないのと見知った顔だけだから、レイラとゼロの二人とも穏やかな反応だ。

 自分達の扱いに疑問があったとはいえ、ムラサメ研究所が閉鎖される運びとなり、不安を抱いていないと言えば嘘となるが、それでも戦いを強要されない環境は彼らの心を落ち着かせていた。

 

「ゼロも一見大丈夫そうだけれど、これまでの戦いの疲労が蓄積されているのかもしれないのだから、ゆっくり静養なさい」

 

「僕だけの話か? お前もあの巨大なMAに乗って戦っていただろう。お前の意思が強く感じられたから、戦わされたわけじゃないのは分かっているが、記憶はいいのか?」

 

「良くはない。良くはないが、あの時はああしたいと私が願ったんだ。だからそうしただけよ」

 

「そうか。僕はもう僕に興味はない。レイラが無事ならそれでいい。だがまあ、お前や研究所のあいつらも無事であるのに越したことはない」

 

「ふふ、ゼロったら素直じゃないわね。フォウ、私たちも私たちなりに自分の身の振り方を考えてみるわ。ずっと周囲に振り回されて生きてきたけれど、これからは自分の意志で生きたいものね」

 

 微笑みながらベッドの上で告げるレイラの望みは何と小さく、しかしこれまでの彼女達には何と難しかったものであろう。

 

 ムラサメ研究所での戦闘が終了し、強化人間達が保護された頃、東南アジアの一角でシェンロンガンダムのパイロット張五飛は、懇意にしている武器商人から弾薬や推進剤他、MSを運用するのに必要な物資の補充を受けていた。

 

「ありがとう。助かります」

 

 大河から外れた川の岸辺に寄せられた船から次々と降ろされるコンテナを尻目に、武器商人は五飛に向けて気にしなさんなと手を振る。

 

「代金を貰っての事さ。お互いに対等な取引だよ。それと今回はこれをお前さんに返してやってくれと頼まれていてな」

 

 痩せぎすの武器商人が手に持っていたアタッシュケースを五飛の前で開き、その中身を見せる。そこには見事な黄金細工の二つの頭を持った龍が収納されていた。五飛の一族の秘宝である。

 地上に降りる際に一族の長老から弾薬などの購入の足しにせよ、と授けられてその意を汲んで一度は売り払った品だ。五飛にしても断腸の思いで手放したソレが、今再び彼の下へと戻ろうとしていた。

 

「なぜこれを?」

 

 当然、五飛は訝しむ。目の前の武器商人がコロニー独立派のシンパだったとは記憶にない。

 

「プルート財閥の総帥からだよ。お前さんの裏にいる奴とも話をつけているっていうから、その内、連絡が来るんじゃないか? ああ、この細工物の代金については気にすんなよ。十分な金額を先方から受け取っているからよ。

 それと伝言な。“これは施しではなく投資、早とちりしないように”だとよ。噂には聞いていたが、アナハイムとロームフェラ相手に真っ向からやり合うだけはあるぜ。味方につけといて損はねえだろうさ」

 

 五飛は葛藤がなかったとは言えないが、武器商人から一族の宝が入ったアタッシュケースを受け取り、その場を離れて愛機の元へと戻る。

 かつて一族のコロニーがティターンズとOZに襲われた際に介入してきた、所属不明のMSと歴戦の兵士達。

 シェンロンガンダムの開発者である老師Oや一族の情報網から、他にも30バンチへの毒ガス注入や抗議集会の鎮圧などが度々妨害されており、同勢力によるものと判断している。

 それらはエゥーゴの手によるものもあったが、別の勢力の介入も確認されており、それがプルート財閥の私兵集団であると薄々察していた。

 

 本来ならその事件で死亡するはずだった五飛の妻・妹蘭は重傷を負いつつも生還しており、今も故郷のコロニーで養生している。

 そして妹蘭の信念が機体に宿っていると信じ、五飛は自分が名付けたシェンロンガンダムをナタクと呼んでいるのだ。これは妹蘭が自身をナタクと称した為である。

 

「ヘイデス・プルート……悪ではない。だが悪でないことが正義を意味するわけではない。ならば正義か、そしてその正義はどこにあるのか。なにより俺もこのままではいられんな」

 

 先だっては他のガンダムパイロット達とは異なり極東支部に合流しなかった五飛だが、現状の地球圏の混迷具合から単独での戦いの限界を悟っている。どこかしらの勢力に身を寄せて力を得る必要性も理解している。

 

「……ナタクよ。お前にも新しい力と新しい戦場が必要なのかもしれん」

 

 

「ふむ、地上のティターンズはジャミトフ大将の息が掛かりなおったか。これならバスクを始めとした上層部の命令には従わないだろう」

 

 極東支部長官室にて岡長官、獣戦機隊長官ロス・イゴール、プルート財閥総帥ヘイデス・プルート、ブライト・ノア、ハヤト・コバヤシ、ヨハン・イブラヒム・レビルといった指揮官級以上の人物達が集っていた。

 ティターンズの動向について告げたのは岡長官である。

 

「そうなるとティターンズは拠点であるグリプス2を中心に活動をするでしょうか?」

 

 ハヤトの問いかけにイゴールが厳しい表情のまま答える。

 

「宇宙でもT3を中心に権限を与え、ティターンズの解体を極秘裏に進めているようだが、バスクはあれで指揮下の人間からは人望がある。彼がグリプス2を占拠して、ティターンズの解体を拒否すれば無視できない戦力が残るだろう」

 

「ことはそう簡単には運ばないというわけですか」

 

「そうなる。宇宙のティターンズも真ジオン公国にバーム、ベガを相手に通常の連邦軍と連携して戦わざるを得ない状況に置かれているが、ティターンズであることを鼻にかけて横暴な態度に出る者が少なくないようだ。

 それにOZの宇宙要塞バルジや月の工場が慌ただしい。MSの生産が宇宙と地球各地で行われているのは今更だが、OZ系列の工場では新型のトーラスと呼ばれるMSの量産が始まっていると聞く」

 

 強力なビーム兵器を装備し、MDによって人体の限界を超えた機動が可能となるトーラスは、運用方法を誤らなければ大きな成果を上げるだろう。エゥーゴにとってティターンズに並ぶ敵であるOZの内情は、ブライトも耳にしている。

 

「トレーズ・クシュリナーダ准将とデルマイユ公の間で不和が広がっていると耳にしていますが、この状況で内紛を起こすほどではないと?」

 

「ああ。流石にな。地球と人類を征服しようなんて連中が畳みかけるように出現していれば、源流を同じくする者同士で争う気にはなれんだろう」

 

 決して明るいとは言えない話題が続いたが、そんな中で岡長官がヘイデスとレビルに視線を向けて、ある報告をした。

 

「話は変わるが今日に至るまで運用された半民半官部隊についてですが、正式に認可がおりました。独立遊撃部隊として地球圏各地で戦ってもらうことになります」

 

 退役したとはいえ相手がレビルである為、岡長官の口調は恭しいものだ。これにヘイデスはほっと安堵の息を吐いた。いわゆるプレイヤー部隊の本格的な成立というわけだ。画面の向こうの立場だったら、プレイヤー部隊名を入力する画面が表示されているだろうか。

 

「ありがとうございます。これもパイロットの皆さんと博士達、そして岡長官達の御尽力あればこそです」

 

 機嫌よさげに告げるヘイデスに、岡長官は続いて部隊の名称について告げる。

 

「部隊は連邦軍のいかなる防衛隊にも属せず、有事には遊撃部隊として機能する権限を有する。第13独立部隊として登録されるが、なにか部隊名称について案があれば伺おう。ヘイデス総帥、レビルしょ、艦長、どうですかな?」

 

「ふむ、私の方からはなにも。しかしその名を聞くとかつてのホワイトベース隊を思い出すな。そうではないかな、ブライト中佐」

 

「は、確かに懐かしい名前です」

 

「奇しくも当時のメンバーも何人か含まれている。総帥、なにか案はありますかな? ギリシャ風が好みでしたから、アルゴノーツとでも?」

 

 アルゴノーツとはヘラクレス、メディア、イアソン、ディオスクロイ、アタランテ、アスクレピオス、カイニスと挙げればきりがないくらい大勢の英雄達がアルゴー号という船に集った集団の事だ。

 だが栄光のアルゴー号は旅の果てに陸に打ち上げられてそのまま朽ちて、老いたイアソンを圧し潰し、アルゴノーツの多くも悲惨な末路を辿っている。

 アルゴノーツという名前は、正直、ヘイデスも何度か思い浮かんだのだが、どうにも良い結果になりそうにないと棄却していた。

 

「でしたら僕から一つ。この地球というかけがえのない母星と宇宙に広がった人類の生息圏から侵略者を撃退する力として、“ディバイン・クルセイダーズ”の名前を提案いたします。もちろん、宗教色はありませんよ?」

 

 神聖十字軍を意味するディバイン・クルセイダーズ――通称DCはαシリーズでは味方勢力だったが、そのほかのシリーズでは悉くプレイヤー部隊の敵勢力だった名称だ。

 この名前を用いたのには、結局αシリーズでDC総帥ビアン・ゾルダークと彼の乗機ヴァルシオンを使えなかった未練が理由だったかもしれない。

 

 

 時には『兜甲児と愉快な仲間達』などと案のでる事もあるプレイヤー部隊の名前が決まった頃、極東支部の艦船用ドックにペガサス級の七番艦アルビオンの姿があった。

 トリントン基地が真ジオン公国の襲撃を受け、ガンダム開発計画の産物であるサイサリスを奪取された後はその奪還を目指して戦っていたのだが、真ジオンのエンドラ級に回収され大気圏離脱用のブースターによって宇宙への脱出を許してしまう。

 原作と異なりガルマやデギンの呼びかけに、アフリカはキンバライト鉱山基地のノイエン・ビッター少将が応じて降伏していたのだが、今回はかような経緯でアナベル・ガトーとサイサリスは宇宙へと上がったわけだ。

 

 これを受けてガンダム開発計画の責任者ジョン・コーウェン中将より、極東支部の協力を得て宇宙に上がるよう命令を受けたのだ。

 この時のアルビオンの艦載機は、このスパロボ時空の技術と時系列の変化によって、原作よりも強化されているガンダム試作一号機ことゼフィランサス、パイロットはコウ・ウラキ。

 サウス・バニング、アルファ・A・ベイト、ベルナルド・モンシアはグスタフ・カール、チャップ・アデルとチャック・キースはジェガン重装型に搭乗している。

 

 アルビオン艦長であるエイパー・シナプス大佐は岡長官の下に挨拶に出向き、パイロット達は休息を与えられていた。

 艦載機がアルビオンから搬出され、基地の施設で本格的な整備を受けているゼフィランサスの前に、専属のシステムエンジニアである若き才女ニナ・パープルトンの姿があった。

 自分の担当したGP02――サイサリスが奪取されて一時期は気が動転したが、落ち着いた今となっては優秀なシステムエンジニアとしての顔を取り戻し、予定外の実戦を経験した機体の状態をチェックしている。

 とそこへ近寄る長身の人影が一つ。

 

「ふうん、これが御社の請け負った新型ガンダムですか。ファーストガンダムの純粋な発展機といったところかしら? あくまで実験機の趣がありますわね」

 

「誰? どちら様ですか?」

 

 思わずニナが振り返った先に居たのは、蛍光グリーンの事務服に黄色いネクタイ、黒いタイトスカートといつもの白衣を着用し、プラチナブロンドを三つ編みにして先端に赤いリボンを結んだ所長だ。どこかのプロダクションのアシスタントのようなファッションだ。

 

「失礼。私、こういうものです」

 

 と所長は防弾処理により、一発なら近距離で銃弾を撃ち込まれても防げる特製名刺をニナに差し出す。ニナは戸惑いながらも名刺を受け取る。

 

「頂戴します。……ヘパイストスラボの!?」

 

 アナハイムにとって最大の商売敵の右腕たる人物の登場に、ニナは驚愕を隠せなかった。まだ若い彼女に腹芸を求めるのは酷であろう。

 

「どうしてここに、などとお聞きにならないでくださる? ウチの商品を納品がてら鹵獲機の分析やら何やらでしばらく滞在しておりまして。御社のガンダムのデータを盗もうなんて思ってはいませんわ。ただの見学です」

 

「は、はあ」

 

 若き才媛ながら、ニナにとっては他社とはいえあまりに地位が上の相手だ。果たしてどう対応すればよいのやらと頭の中は混乱している。また所長の機動兵器開発に関する才能と実績には、純粋に敬意を抱いている。

 

「見たところこのガンダムはまだ地上用装備。アルビオンはこれから宇宙に上がるのでしょう? でしたら調整は必須ですわね。

 ハヤト艦長とカラバの皆さんはこれから別行動になると別れてしまいますが、ブライト中佐のアーガマが同行するでしょう。

 それに宇宙に上がればウチのシロガネが合流しますから、クラップ一隻が抜けた戦力は十分に補えますからね。調整をそう焦らなくても大丈夫でしょうけれど」

 

 思わぬ邂逅に言葉の出てこないニナを見て、所長は小さく笑った。一回りも年下のエンジニアのあどけない様子が面白かったのだ。場合によっては、デラーズフリートに潜入しているシーマ達を呼び寄せることになるかもしれない。

 シーマ達にはスペースノア級三番艦クロガネを預けてあるが、デラーズフリート潜入にあたっては、ザンジバル改級リリーマルレーンやムサイ、ゲルググMを使っている。

 そして所長はニナをさらに混乱させるようなことを口にした。

 

「そうそう御社のZプロジェクトの関係で、ウチの総帥を相手に交渉に来ている方がいらっしゃいましてよ。そちらのお話は伺っておいでかしら?」

 

 ニナは今度こそはっきりと首を横に何度も振った。

 

(それにしても、総帥は随分とZプロジェクトに対して譲歩するおつもりのようでしたけれど、よほど良い機体が出来上がると確信している? 時々未来を知っているような振る舞いをされる方ですが、今回もそれかしら。

 カミーユ君やその母君も一枚噛んでいると聞きますが、Zプロジェクトとやらで、さてどんな機体が出来上がるのか楽しみですわね)

 

 楽しみだと心中で零す所長の瞳には、必ずそれ以上の機体を作り上げて見せるというプライドと意地の炎が燃えていた。

 

<続>

■プロト・ゼロが保護されました。

■レイラ・レイモンドが保護されました。

■ムラサメ研究所が摘発・閉鎖されました。

■エリカがバーム軍に保護されました。

■アルビオン隊と合流しました。

 

■ヘイデスがアナハイムとZプロジェクトについて交渉しているようです。

 

〇共通ルート 第二十話 四度空を翔ける天女 クリア後ヘイデスショップ

・ペガサス級強襲揚陸艦

・グレイファントム

・アプサラス

・アプサラスⅡ

・アプサラスⅢ

・グスタフ・カール

・スタークジェガン

・ジェガン重装型

・STガン

・プロトタイプZガンダム




最近話のキレが鈍って悩み中です。こんにちは。
残念ながらZプロジェクトはアナハイムのプロジェクトなのでプルート財閥系の技術が使用できません。ジェムズガンを製造できる技術レベルでZガンダムを作ったら? という機体になるイメージです。プルート財閥がZプロジェクトを共同開発するか、まるっと買収すればあるいは魔改造機が出来上がる想定です。
フォウはまだ治療の為加入はしません。

■分岐について
今回、ヘイデスは地上に残ります。
・レビル、双子、アムロ、ヤザン、ラムサス、ダンケル、イングリッド、ブラン、キョウスケ、エクセレンらが地上と宇宙のどちらに行くか、を選択する形です。

■地上部隊
マジンガーチーム、ゲッターチーム、ライディーン、ダイモス、ダンクーガ、コンバトラーV、ボルテスV、ザンボット3、ガンダムW勢。
※ジェス、ミーナと合流。

■宇宙部隊
アーガマ隊、アルビオン隊、ゼファー、グレンダイザー。
※アーウィン、グレースと合流。

追記
キョウスケとエクセレンについて追加。


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第三十一話 ヘイデスの知らないところでヤバイ

 他社の人間と会うならと比較的まともな格好で姿を見せた所長は、ゼフィランサスのチェックをしていたニナに向けて、機密漏洩にならない範囲で技術者としての会話を交わしていた。

 最初は所長に委縮していたニナも話を続けるうちに緊張がほぐれて、不意を突かれたZプロジェクトに関する疑問を所長に尋ねていた。

 

「私とは部署が違いますが、弊社のZプロジェクトと御社がどのように関わるのでしょうか?」

 

「ウチがSRG計画で培った技術を転用したいのでは? 可変型のMSというとギャプランやアッシマーがもう運用されていますしねえ。御社も新世代MSの開発に邁進するのは当然です。

 こちらも可変型MSには手をつけていませんが、一年戦争中に開発された可変機の実機とデータは持っておりますし、得られるものはあるとそちらの上層部が考えられたのかもしれません」

 

 所長が口にしたのは、一年戦争中に連邦空軍の開発したGT-FOURとジオンのザクスピードの事だ。実機と稼働データもろもろを手に入れて数年が経って研究はし尽くしてあるから、時代遅れの部分もあるが有用ではあろう。

 ニナは格納庫の離れたところに見えるMS形態のアンクシャに目をやり、眉間に皺を寄せる。

 

「SFSとミノフスキー・クラフトの普及で、大気圏内で飛行能力を有するMSがスタンダードになっている今、可変機に求められるハードルは極めて高いものです。ましてやアッシマーの後継機が既に連邦軍内部で開発されているとなれば……」

 

「フォン・ブラウンとグラナダとどちらで開発しているかは知りませんが、あなたの同僚は相当苦労しているでしょうね。かくいうあなたもせっかくの機体を強奪されて、それを奪取しなければならないのですし、違った意味で大変ですよ」

 

「言わないでください。自分でも思い至って落ち込んでいるんです……」

 

(若いのにまあ苦労を背負っていますこと。それでも民間人がいきなりロボットに乗らされて、命懸けで戦わされるよりはマシかしら)

 

 ちなみにヘパイストスラボは可変型のMSを新規開発していないが、グルンガストの開発で既に経験済みであり、SRG計画で散々変形、分離、合体をこなす浪漫と冗談を掛け合わせた機体を相手にしてきた成果を出している。

 そうしてニナと会話を続けていると、二人の若い士官がニナへと声を掛けてきた。黒髪の少年らしさを残した青年とオレンジの色入り眼鏡をかけた青年だ。

 

「ニナ! ちょっとこっち来てくれないか。いろんなMSに知らないガンダムもある!」

 

「おい、コウ、なんだか話し込んでいるみたいだぞ」

 

 声がサイヤ人の王子な主人公コウ・ウラキと、ナイメーヘン士官学校からの友人チャック・キースだ。まだまだ新米のヒヨッコだが、GP02強奪事件に際してアルビオン隊に配属されている。

 

「ちょっとコウ! こちらを誰だって思っているの!?」

 

 と慌てるニナの様子に、コウもどうも自分がやらかしてしまったかと慌てて背筋を正す。相手が民間人とは言え、いや、軍人であればなおさら模範的な対応を心掛けるのが当たり前なのだから。

 キースと揃って居住まいを正すコウの姿は初々しい事この上なく、知っているパイロットと言えば百戦錬磨のベテランかスーパーロボットの民間パイロットの所長にとって新鮮なものだ。ブライトかレビルが居たら、コウとキースを一睨み位はしたかもしれないが。

 

「若い士官さんですね。初めまして、こういうものです。以後、どうぞよろしく」

 

 と所長は緊張しているコウと(すげえ美人!)と伸びそうになる鼻の下を頑張って引き締めているキースに、ニナに渡したのと同じ名刺を渡す。

 

「ええ、あのゲシュペンストとトールギスのカスタムタイプを開発した!?」

 

「ひえ、大物じゃないですか!」

 

「ほほほ、それはどうも。お褒めに預かり光栄です。それでお二人は?」

 

「失礼いたしました。自分はアルビオン所属コウ・ウラキ少尉であります」

 

「同じくアルビオン所属チャック・キース少尉であります!」

 

「ウラキ少尉とキース少尉ですね。アルビオン所属なら、これから激戦の真っただ中に放り込まれるわけですか。ところでウラキ少尉の言っていたMSにガンダムは、これらのことで?」

 

 所長はウェアラブルPCである白衣の左胸の部分に触れて、自分の左手に立体映像の操作画面を投射し、それを操作してプロトタイプリックディアスやプロトタイプサイコガンダム、プロトタイプZガンダムらの画像データを開いた。

 

「はい、これです! 他にも置いてありましたがこれらの機体で間違いありません!」

 

 ガンダムと聞かされればニナも興味を惹かれ、プロトサイコガンダム以外のアナハイム社製とはいえ部署が違う為初見の機体をじっくりと観察する。所長がしょっぱい顔をしているのには、キースだけが気付いていた。

 

「この内、このプロトタイプサイコガンダムは先日閉鎖が決まったムラサメ研究所が主体となって開発した強化人間用の機体です。サイコミュを搭載した機体ですが、まあ、ろくなもんじゃありませんよ」

 

 そうして画面を操作してプロトタイプサイコガンダムの問題点を列記したページを見ると、コウもニナもキースも、これを実戦投入するのは……と揃って所長同様にしょっぱい顔になるのだった。

 

 

 愛妻がアルビオンの若い男女と交流を深めている頃、ヘイデスはというと自分を目的に訪ねてきた人物を迎えていた。

 ビジネスの方の話であるから極東支部内ではなく、プルート財閥の所有物であるハガネの中にわざわざ場所を移しての交渉だ。

 防諜装置を稼働させた室内で、ヘイデスの対面の椅子に腰かけた、眼鏡をかけた黒人男性が恭しく挨拶をした。

 

「フークバルト・サマターと申します。本業はアナハイム・エレクトロニクス本社の主計局次長をさせて頂いております」

 

「本社となると北米からおいでになられた? てっきり月からと思っていましたが、いえ、どちらにせよ主計局の次長とは、ずいぶんと大物がお出でになったものだ」

 

 大らかに笑う年下のヘイデスをまっすぐに見て、フークバルトはこれがプルート財閥の総帥、経済界の怪物かと改めて気を引き締め直す。

 今日の自分はネゴシエーターではなく、メッセンジャーとしての役割を負ってきている。ヘイデスの意向を伺うだけで役割を果たせるのだ。

 

「ご冗談を。私などプルート総帥と比べれば大したものではありません。また、弊社との技術交流の件につきましては、前向きにご検討いただけたこと改めてお礼申し上げます」

 

「いや、我々にとって、そして地球圏にとって有益な取引だったという話ですよ」

 

「ありがとうございます。それとこちらが今後の御社との関係について、弊社上層部の意向となります。どうぞご査収ください」

 

 フークバルトは、携えていたタブレット端末をヘイデスへと手渡す。ヘイデスはスパロボプレイヤーではなく経済人としての自分を強く意識しながら、何が書いているのか分かっていると言わんばかりのうさん臭い笑みを浮かべて受け取った。

 漫画作品の『ジョニー・ライデンの帰還』の中で、ルナツーにてフークバルトがゴップと交渉していた場面みたいだなあ、と頭の片隅でとぼけたことを考えていたりもした。

 映し出された画面にある提案と要求を見ながら、ヘイデスはフークバルトにこう話しかけ始める。

 

「Zガンダム、ZZガンダム……Zプロジェクトの主軸となるのはざっとこの二機。派生機や試験機を含めれば軽く十機種は超えるでしょうが、その成果をもって御社は可変型MSの基幹となるノウハウを得ることとなる。

 カミーユ君のアイディアと彼の母君であるヒルダさんの活躍もあるのでしたね。エゥーゴに保護された後、御社のエゥーゴ派閥に席を置かれたと聞いてから、どうなったかと気を揉んだものです」

 

「は、私はMSの開発に関して門外漢ですが、カミーユ・ビダン少年の柔軟な発想とガンダムMk-Ⅱの開発に携わっていたヒルダ氏の技術と知識は、大いに役立ったものかと」

 

「ええ。七年前、地球連邦と二分したジオンの技術の不足を十分に補ってくれるものと、僕もそう思いますよ。

 キマイラ隊が守護していた拠点艦ミナレットは、いまも行方が知れずに宇宙のどこかを彷徨い、そこに眠るデータが得られない以上、御社の苦労は同じく基礎技術を持たない弊社もよく分かります」

 

 もっとも、かの作品にて他ならぬこのフークバルトの口から、アナハイムがZプロジェクトを経てもMS開発技術には欠けているものがあると語られてしまっていたりする。

 

「ご冗談を。一年戦争の時点ですでにオリジナルMSを開発する技術力に加え、プロメテウスプロジェクトによって蓄積されたデータは、ミナレットに眠るデータと同等以上のもの。それらを有する御社と弊社を同列には語れません」

 

「ふふ、少し意地の悪い事を口にしてしまいましたか。ああ、ところでALICEとイオタガンダムの進捗状況はいかがです? 御社が総力を結集して開発する究極のガンダムの性能には、こちらでも注目が集まっていますよ」

 

 フークバルトが答えるまでに一瞬の間があった。彼が知らない情報だったのか、それともヘイデスが知らないはずの――知っていてはならない情報だったからか。

 なおイオタガンダムとはS(スペリオル)ガンダムのコードネームである。

 Sガンダムの事件はZガンダムとガンダムZZの合間に起きたものであるから、まだ多少の時間的猶予はあるはずだが、いかんせんスパロボ時空なのでどうなるか分かったものではない。

 またヘイデスはALICEやMDには、初期のゼファーのコピーがある程度流用されているのではないか? と推測していた。

 

「申し訳ありません。私の知らぬ単語と機体名です」

 

「そうですか。御社ほどの巨大な企業ともなると内部でも色々とおありでしょう。そうそうZプロジェクトもですが、アムロ大尉の絡んでいるνガンダムの開発にも大きく関心を寄せていますよ。

 アムロ大尉経由でプロメテウスプロジェクトの成果の流用を認めましたし、どれだけ素晴らしい機体になるものかと、連邦市民の一人として期待を寄せております」

 

「プルート総帥ほどの方にそう言っていただけるのであれば、社の者も奮起するでしょう」

 

「なにしろ海軍戦略研究所――サナリィに転属されたテム・レイ博士も新しい小型ガンダムを開発しているのですから、異なる所属でレイ親子の開発した機体となればどうしても比較したくなりますし、注目も集めます」

 

「おっしゃるとおりかと。我が社でもサナリィについては強く関心を寄せております。それは御社でも同じことでは?」

 

「ええ。サナリィはこれまで中立の立場をとっていましたが、本格的に軍事MS産業に参入してきましたからね。地球を守る剣はより強く、より多くあるに越した事はありません。

 御社、弊社、ロームフェラ財団とも異なる立場と視点からどのような機体が開発されるのか、楽しみでなりません」

 

(まるで自社の利益を求めていないような口ぶりだが……)

 

 ヘイデスが本気でサナリィの新型機開発を喜んでいると見て、フークバルトは大財閥の総帥らしからぬ利益を求めぬヘイデスの姿に疑念を抱く。それはアナハイムの上層部の一人と言えるフークバルトからすれば、極めて奇妙な振る舞いに他ならなかった。

 

「そうそう小型MSと言えば少々申し上げにくいですが、サナリィのF90とのコンペに使ったMSA-0120を提供いただいたのには感謝しております」

 

 名称すら与えられなかったMSA-0120とは、見た目がMSとは思えないとある機体のことだ。

 ゼントラーディの兵器と言われた方が納得する見た目のこの機体を手に入れたのは、メガ・ブーストという瞬間的にジェネレーター出力を増大させるシステムと、ミノフスキー・クラフトを利用した疑似重力を敵に叩きつけるハイインパクトガンの技術を欲したのが主な理由だ。

 重力兵器の開発の一助となったので、ヘイデスは良い買い物をしたと自分を褒めたものである。

 

「御社のお役に立ったのなら、開発を担当したジオニック事業部の者も、少しは留飲が下がるでしょう」

 

「ええ、我が社でも次々と襲い来る侵略者から地球人類の独立と未来を守る為に、新たな技術開発には余念がありません。

 それでも手段を選ぶ余裕は持っておきたいと心掛けておりますよ。先だってムラサメ研究所が摘発されましたが、あの研究所のような人間を犠牲にするのを前提とした機体の開発などはしたくありませんね」

 

 この世界は初代アニメ版だからまだマシだが、漫画版だったら早乙女研究所がもろにパイロットを犠牲にしても構わないような機体の開発方針だ。

 だがそこはそれ、特に強化手術をするでもなく操縦に耐えられるパイロットの存在が約束されているので、目を瞑っておこう。大人は狡いのだ。

 

「サマター次長、老婆心から申し上げますが、これからは量産機であっても対MSではなく、従来のMSでは対応できない怪物を想定した兵器開発も並行してなさった方がよろしいかと。

 冗談でも比喩でもなく地球を侵略されるか、人類が滅亡しては商売も何もありませんから。言葉の通じない侵略者と言うのは、おそらく僕達の考える以上に多いでしょう」

 

 本気であると分かるヘイデスの言葉に、フークバルトは体の芯がゾッと冷えるのを感じながら首肯した。荒唐無稽と笑い飛ばすには、現状の地球圏はあまりにも厳しいものだ。

 

「ご忠告、痛み入ります」

 

「いえ、差し出がましい事を口にしました。これからも御社とは良い関係でありたいものです」

 

「は。私が口にするには過ぎたるものですが、私もそう心から思っております」

 

 そうしてフークバルトはヘイデスとZプロジェクトを始めとした各案件についてのメッセージを伝え終え、運転手付きの社用車に乗り込んでから制服の襟を緩めた。

 

「やれやれ、“都合のよい関係”の間違いだろうに。しかし、あの方はどこまで知っているのか。文字通りの超能力者と言われても信じてしまいそうだ」

 

 そのように原作知識を勘違いされているヘイデスはと言うと。

 

「ああいう髪型ってなんて言うんだっけ? あれもソフトモヒカンでいいのかな?」

 

 とフークバルトの髪型について考えていたりする。時々、どうしようもなく抜けるというか、おバカちゃんになるのがこの男の特徴であった。

 

「この後は発足の叶ったディバイン・クルセイダーズの見送りとシャドウセイバーズのお出迎えか。やることが多いが、いやあ、ついに本物のギリアム・イェーガーと対面だなあ。画面の向こうの存在と直に対面するって言うのは、今になっても感慨深いや」

 

 そう、DCを地上と宇宙の二部隊に分けて見送った後、ヘイデスはシャドウセイバーズ指揮官ギリアム・イェーガーとの面談が予定されていたのである。

 シャドウセイバーズがヘイデス用のカウンター部隊というのはギリアムの胸の内に秘められておりヴィンデルやシロッコ、レモンも知らされておらず、表向きはあくまで新設の特殊部隊だ。

 

 ギリアムにしてもヘイデスの怪しさが露骨すぎる事もあって、万が一、億が一に備えて部隊を創設したので、ヘイデスが本心から地球人類の平和と未来を考えているのなら、それに越したことはないと考えている。

 その確信を得る為に、ようやく時間の空いたヘイデスにアポイントを入れたのだ。

 ギリアムが地球屈指の大財閥が敵に回る可能性を憂慮しているのに対し、そのヘイデスはと言えばテレビタレントに直に会うファンみたいな心境でいるのだから、ヘイデスの本心を知ったら流石のギリアムも開いた口が塞がらなくなるだろう。

 すれ違い宇宙が解決すると良いね、二人とも。

 

共通ルート 第二十一話 次元将と黒い天使と監視者と

 

 星の光が黒く瞬く白い空間で、銀に輝く筋骨隆々とした巨人が、鋭い刃を思わせるパーツで構成された黒き天使と苛烈な戦いを繰り広げていた。

 

「おおらあああ!!」

 

 巨人、それは次元獣ヴィシュラカーラと融合し、次元将形態となったガイオウことヴァイシュラバである。膨大な次元力の行使者たる次元将の戦闘能力は、言語を絶する。

 ヴァイシュラバ(厳密には分岐したガイオウの方だが)自身が生身でマクロス・クォーターの甲板に損害を与え、序盤とはいえプレイヤー部隊の総攻撃を生身で受けて無傷という破格の存在であるのに加え、人型の機体と玉座型のヴィシュラカーラの融合による強化が加われば、その性能はラスボスとして相応しいソレに達する。

 

 ならばそのヴァイシュラバと渡り合う天使は?

 黒き天使――アストラナガンは緑光の片刃を持つZ・O・ソードを振るい、ヴァイシュラバの右ストレートを斬り払う。拳と刃の衝突の瞬間、行き場を失った膨大なエネルギーが周囲へ衝撃波として伝播し、空間を轟かせる。

 その衝撃波だけで、宇宙戦艦でさえ轟沈してしまいそうな破壊力である。

 

「ふん!」

 

 ヴァイシュラバの左足が人間の目が捉えられるとは思い難い速度で振るわれ、それをアストラナガンは背の翼から光の羽を撒き散らしながら後方へ飛びさがって回避する。並みのスーパーロボットの装甲では、そのまま胴を両断されてもおかしくない一撃だ。

 アストラナガンを追うヴァイシュラバの頭上から、翼の生えたリボルバーの如き物体が二つ襲い掛かる。回避と同時に射出されていたガン・ファミリアという遠隔操作兵器で、サイバスターのハイ・ファミリアを一部参考とした代物だ。

 

「しゃらくせえ!」

 

 ガン・ファミリアの銃弾とアストラナガンの背の翼から放たれる無数の光の羽T-LINKフェザーを、ヴァイシュラバは次元力と闘気を周囲に放つ【相克・絶】でまとめて薙ぎ払う。

 特殊なこの空間に荒れ狂う破壊の嵐の向こうで、アストラナガンが右手をヴァイシュラバへと向けた。緩く開かれたその右手の先に、ダークマターを構成するアキシオンが生成される。

 それはグレートアトラクターと呼ばれる巨大重力圏へ繋がるワームホールだ。竜の如き赤い稲妻と蠢く黒い渦の形をとり、ワームホールがヴァイシュラバを目掛けて放たれる!

 

『アキシオン・キャノン』

 

「ふん、小賢しいぜ。たかが重力圏如き! はああああ!」

 

 全方位に放たれた【相克・絶】とは異なり、ヴァイシュラバの右手に物質化してもおかしくない密度の次元力と闘気が圧縮され、虹色に輝く拳が空間を震わせながらアキシオン・キャノンへ!

 右手首までをワームホールに飲み込まれながら、ヴァイシュラバは更なる闘気を右拳へと注ぎ込む。

 

「はあっ!!」

 

 その瞬間、ワームホールがあまりに膨大な次元力と闘気に耐え切れず、内側から粉々に砕け散った。

 果たして物理的にあり得る現象なのか怪しいが、次元力とは事象を制御し、法則を変換する力。ならばその膨大な次元力の塊であり行使者たるヴァイシュラバならば、可能なのだろう。

 アストラナガンのコックピットの中で、仮面の奥から男のものと思われるくぐもった声が零れる。

 

『次元将……興味深いサンプルだ。次元力の解析の役に立ってもらおう』

 

「ちっ、因果律の番人か。聖人が予言し、賢人が予測した存在と戦うことになるとはな。だが、こいつは……」

 

 額の文様を輝かせるヴァイシュラバは、自らをこの空間に引き込み襲い掛かってきたアストラナガンを睨み、長い次元将としての生の中でも極めて特異かつ強力な存在に警戒と違和感を抱いていた。

 

『T-LINKフェザー……む?』

 

 再びアストラナガンの背の翼が開き、美しい光の羽が舞い散らんとした時、この世界そのものが震え、何者かが外部から干渉してきたことを証明した。

 アストラナガンとヴァイシュラバが新たな介入者に警戒の念を向ける中、大小の岩の柱で構成されたストーンサークルが出現し、そこから赤い球体状のコアを持つアインスト達が無数に出現する。

 

『狂った監視者共か』

 

「この地球にも存在したか、アインストよ」

 

 アストラナガンのパイロットは淡々と断じ、ヴァイシュラバもまたアインストは既知の存在だったようだ。

 そして蔦の絡み合ったようなアインストグリート、動物の骨を組み合わせたようなアインストクノッヘンの軍勢を率いる指揮官級の存在が四人、姿を見せる。

 一つはご存知、アルフィミィとその半身ペルゼイン・リヒカイト。

 

「お楽しみのところお邪魔いたしますの。私はアインスト・アルフィミィ、以後お見知りおきを」

 

 そしてアルフィミィに続いて、アインスト物質によって再生を果たしたKOS-MOSにT-elosが姿を見せる。

 双方共にアインストによる再生を経た為にか、アインストコアを思わせる球体を嵌め込んだペンダントやピアスなどのアクセサリを見に付けるなど、美貌はそのままに多少外見に変化が出ていた。

 彼女達にはペルゼイン・リヒカイトにスケールアップした武器を装備させ、搭乗者とおそろいのカラーリングにしたノイエ・ザッハリヒカイトが与えられている。その名は新即物主義を意味するドイツ語だ。

 

「……」

 

「ふん」

 

 OSやブラックボックスと言える個所には一切手をつけずに再生された二人だが、KOS-MOSは沈黙を守り、KOS-MOS内部からサルベージされ、アインスト物質百パーセントの肉体を与えられたT-elosは不機嫌そうに鼻を鳴らしている。

 そして最後の一人は、こちらもアインスト物質によって蘇生したジン・ウヅキだ。大破していたアシェルを彼の戦闘スタイルに合わせ、近接戦闘用に改修したアシェル(じん)に搭乗している。

 また三人の乗る機体には、アシェルに補機として搭載されていたエルデカイザーのジェネレーターを自爆装置込みで複製したものと、アインストコアが動力として使われている。

 

「ほら、二人とも名乗りくらいはあげたらどうですか。私はジン・ウヅキ。こちらのアルフィミィに助けられた者です」

 

 涼やかだがその奥にある孤高と鋭さを感じ取り、ヴァイシュラバもまた目を細める。アストラナガンのパイロットは、アルフィミィらアインストの敵意が自分に向けられている事を察し、一秒にも満たない思考をしてから結論を下した。

 

『次元将、そして狂った監視者。興味深いが、排除するのは今ではないか』

 

 誰に語り掛けるでもなく、そう結論付けたパイロットはアストラナガンの転移機能を起動して、自分が作り出したこの異空間から瞬時に消え去った。

 

「手抜きのぬるい戦いをしやがって。しかし、アレが本当に因果律の番人か? ……それで、アルフィミィと言ったか。お前達の用件はなんだ?」

 

 アストラナガンとの小手調べと言うにはあまりに激しい戦いの直後でも、ヴァイシュラバの闘気には寸毫の衰えもない。スフィアリアクターだったアイム・ライアードに『圧倒的な源理の力』と称されたのは、伊達ではない。

 

「私達のボスもといおとかあ様ことノイ・レジセイアが、あなたとの会談を希望しておりますの。もしよろしければこのまま私共の下へ足を運んでいただきたく思いますの。美味しいお茶とお菓子でおもてなしいたしますのよ」

 

 アルフィミィの声音を聞く限りにおいて嘘はないと察したヴァイシュラバは、毒気を抜かれた顔でアルフィミィとKOS-MOS、T-elos、ジンを見回す。

 

「アインストの眷属、それに……随分遠い世界からの漂流者とは、愉快な面子じゃねえか。いいだろう。所詮、俺は外様の流れ者だ。この世界の地球を見守り続けてきた監視者が会いたいというのなら、会うのが筋ってもんだろうよ」

 

「ありがとうございますの。それではこちらのストーンサークルの中においでください」

 

 アルフィミィは敵意がない事を示すように、グリートとクノッヘンをアインスト宇宙に帰還させ、KOS-MOSら四人だけでヴァイシュラバを待つ。ヴァイシュラバがストーンサークルに入る直前、これまで沈黙を保っていたKOS-MOSが短く問いかけた。

 

「ヴァイシュラバ、あなたは修羅ですか?」

 

「俺は生きたまま修羅道に堕ちたようなものではあるが、お前の問う修羅とはそういう意味ではないようだな」

 

「はい。地球人類に酷似した容姿の修羅というヒューマノイドタイプの生命体です」

 

「なら違うな。どの星の言葉に置き換えても、俺は違う種族だ」

 

「そうですか。質問に答えてくださりありがとうございます」

 

「どこのどいつが企んだのかは知らんが、お前達はややこしい事情を抱えているな」

 

 ヴァイシュラバの指摘はKOS-MOSとT-elos、そしてKOS-MOSと彼女の中のマリアそのほか諸々を指してだろう。彼とて詳細を把握しているわけではあるまいが、次元力に干渉する力故か並みならぬ洞察力と理解力を有するようだ。

 そうしてアルフィミィの誘いに乗り、ストーンサークルを経由してアインスト宇宙へと転移したヴァイシュラバだが、まさか――

 

「評判の品ですのよ。あなたのお口に合うと幸いですの」

 

 ――と最高級玉露と最高級羊羹で本当にもてなされるとは、思いもしなかった。やはりこの世界のアインストはなにかがこう、変だ。

 

<続>

 

■アストラナガン(?)が出現しました。

■ヴァイシュラバとアインストが接触しました。

■KOS-MOS、T-elos、ジン・ウヅキが復活しました。

■ノイエ・ザッハリヒカイトが創造されました。

■アシェル刃が開発されました。

■アインストは狂っているそうです。

■エルデカイザーのジェネレーターが複製されました。

■アニマの器は絶賛停止中です。

 

★ヘイデスとギリアムが接触します!

 

◇共通ルート 第二十一話 次元将と黒い天使と監視者と クリア後 ヘイデスショップ

 

〇MSA-0120

〇ジム改

〇パワード・ジム

〇ジム・カスタム

〇ジム・キャノンⅡ

〇ザクⅡF2型

〇ザメル

〇ドム・フュンフ

〇ドム・トローペン

 




少し前の話ですが銅銭さんから強化されたソウルゲインが修羅神の原型に~と感想を頂いて、ティンと来た作者です。ダイノゲッターを調べたけれどどうも今は読めないようでしょんぼりしております。こんばんは。
ついに登場したアストラナガン。イングラムの居ない筈の世界、ヴァイシュラバの抱いた違和感、さてこのアストラナガンとパイロットの正体やいかに。
そしてアインストは本当に狂っているのか? 何に対してどう狂っているのか?
乞うご期待。


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第三十二話 君はどこからやってきた?

※今回はギリアムに関する捏造設定があります。
なお戦闘は省略省略。

アンケートありがとうございました。
それでは宇宙ルートにてお話を進めます。


■共通ルート 第二十二話 ディバイン・クルセイダーズ

 

 ヴァイシュラバとアインストの会談が行われているなど、もっと言えばゼノサーガシリーズからの漂流者が居るなどと露とも知らぬヘイデスは、極東支部の一室でいつものメンバーを前に極めて真面目な顔で新部隊発足について告げている最中だった。

 

「……というわけでこれから皆さんには、地球連邦軍第十三独立部隊“ディバイン・クルセイダーズ”、通称DCとして人類の平和と未来の為に戦っていただきたく思います。

 僕に戦う力はありませんが、資金、資材、環境その他、あらゆる面での支援を惜しみません。どうかよろしくお願いします」

 

 スパロボプレイヤーには馴染みの顔に深々と頭を下げるヘイデスに、地球圏で三指に入るお金持ちとの付き合いも長く、濃いものになってきた面々は遠慮なく思い思いの意見を口にし始める。

 

「ちぇ、俺だったら兜甲児と愉快な仲間達って提案したんだけどな」

 

「甲児君、本気で言っているの?」

 

「そうそう、それならボスとその子分達がいいわさ!」

 

 冗談半分だと思いたい名前を口にする甲児を尻目に、竜馬らゲッターチームも新部隊発足の知らせを受けて話し合っている。

 

「部隊名か、一応は軍に属しているから真面目なものじゃないとまずいんじゃないか? そう考えるとDCに決まってよかったのか」

 

「フッ、とはいえ俺達が軍人になるわけじゃない。それにこれまで以上に広告塔としての意味も求められている」

 

「つまり堅苦しい名前じゃなくって、分かりやすい名前が良いってことか?」

 

 と室内では流石に工事現場用のヘルメットを外している武蔵の指摘に、隼人は首を縦に振るう。と、そこへ後ろの席で話を聞いていたザンボットチームの勝平が隼人に声を掛けた。

 

「じゃあヘイデスのおっちゃんの言った“でぃーしー”は悪くねえのかい? 隼人の兄ちゃん?」

 

「ああ。ディバイン・クルセイダーズ、略してDC。DCなら短い名前だから勝平でもすぐに覚えられるだろう?」

 

「なんだい、俺ならって。馬鹿にしちゃってさ!」

 

「無免許で他人のバイクを盗んで乗り回し、挙句に錨をぶん回して決闘なんてする奴は馬鹿だろう」

 

「昔の話だよ、昔の……」

 

 ちなみに甲児や豹馬も決闘はしていないし、無免許でもないだろうが、原作第一話でバイクを乗り回して警察を相手にちょっかいをかける、ノーヘルで対向車に突っ込み跳び越えるなどの行為はしている。

 まったくの余談だが、公式チャンネルで第一話を立て続けに視聴した作者は、スーパーロボットのパイロットは第一話から犯罪に手を染めないといけない決まりでもあったのかとドン引きした。

 

「ちぇ、なんだか旗色が悪いや。なあなあ、大介兄ちゃんはどうだい? もしヘイデスのおっちゃんに相談されていたら、なにか名前を考えたかい?」

 

 あんまりおっちゃん、おっちゃんと言われるものだから、ヘイデスはついつい苦笑を零していた。まあ、三十過ぎの男など勝平からすればおじさんだろう。ちなみにヘイデスの方がヤザンやモンシア、クワトロよりも三つ四つ年上である。

 フリード星のネーミングセンスはどんなものか、とヘイデスが聞き耳を立てる中、大介は流石は王族、絵になる仕草で考えた後で意見を口にした。

 

「そうだな、ファイナルダイナミックフォースなんてどうだい? 僕らは地球の人々にとって希望となるべく集められた戦力なのだろう?

 なら最後の砦、最終防衛線という意味からファイナル、そして侵略者の魔の手には屈指ない力強さという意味でダイナミック。特別な部隊である事も踏まえて、ファイナルダイナミックスペシャルフォース。

 DC風に略せばFDSFか。なんならFFとかもっと短くしてもいい」

 

「へえ、そっちも格好いいじゃん。俺はそっちでもよかったかな!」

 

「僕はディバイン・クルセイダーズも悪くないと思う。地球という聖地を奪われない為の軍、という意味なのだろうし」

 

 故郷を奪われた大介が口にすれば、それに伴う重みは格段に増すというものだ。勝平達神ファミリーもビアル星を滅ぼされてはいるが、それは遠いご先祖様の話であって、勝平達の世代からすると実感はないだろう。

 

「大介君、フォローありがとうございます。もちろん地球だけでなくスペースコロニー、月に火星、木星を含め地球人類の全生存圏の守護を願っていますよ」

 

 ファイナルダイナミックといえばグレンダイザーの動力である光量子エネルギーをハガネの艦首モジュールに組み込み、ファイナルダイナミック“スペシャル”キャノンに強化するプランが実行中なのをヘイデスは思い出した。

 現在、ハガネが装備しているモジュールとは別にエリュシオンベースで組み立て中の筈だ。長引くだろう今回の戦乱の最中で、いつか使用する事もあろう。

 

「さて、発足して間もないDCですが、昨今の状況を鑑みまして部隊を二つに分ける予定です。ここからは門外漢の僕からではなくブライト艦長からお願いします」

 

「では説明を引き継がせてもらおう。諸君、地上では魔竜機連合、異星同盟が活動を再開させ、バームも動きを見せている。ガイゾックはまだ大人しくしているが、ブッチャーという指揮官の性情からして必ずや復讐を目論むだろう。

 一方で宇宙でもベガ星連合軍が地上のみならず各コロニーへ戦力を送り込み、また真ジオン公国とバームを含むバサ帝国が動きを見せている。これに対抗するべく我々DCも部隊を二つに分けようと、こういう話になったわけだ」

 

「確かに、DCほどスーパーロボットの集中している部隊はありませんしね。MSだって他所にはない試作機やワンオフ機、パイロットもベテランからスーパーエースが集まっていますし」

 

 と意見を口にしたのは洸だ。今や歴戦の猛者と化した洸だが、他の支部からの救援要請に応じて世界中に出撃する事があり、他の連邦軍にスーパーロボットが存在していないことを直に目で確かめてきたからこその発言である。

 大型のMZなら準スーパーロボットと言えなくもないが、やはりゲッターロボやダイモスなどと比べると突破力や破壊力が今一つ物足りないのは否めない。

 

「うむ、洸君の言う通りだ。この規模の部隊として地球圏最強の戦力が結集していると考えて間違いはない。だが侵略者の魔の手が宇宙と地上双方から伸びている以上、我々も同時に対応しなければならん」

 

 ブライトは手元の端末を操作して、自分の背後にある大型スクリーンにDC所属となったハガネ、アーガマ、キング・ビアル、そしてアルビオンと各機動兵器が表示される。

 

「またジョン・コーウェン中将からの要請により、宇宙へ向かう部隊はアルビオン隊と行動を共にしてもらう。それと宇宙ではアレスコーポレーションのスペースノア級シロガネと合流する。

 宇宙部隊の母艦は最低でもアーガマとアルビオン、シロガネの三隻だ。さて、ここでアルビオン隊の主だった方々を紹介しよう。お入りいただきたい」

 

 ブリーフィングルームの扉が開き、アルビオン艦長エイパー・シナプス大佐をはじめ、サウス・バニング、アルファ・A・ベイト、ベルナルド・モンシア、チャップ・アデル、それにコウ・ウラキとチャック・キースが姿を見せる。

 レビル元将軍にあのアムロ・レイにホワイトベース艦長だったブライトと、連邦軍の有名どころが居る場所だけに、シナプスやバニング、また普段から素行の悪いモンシアにしても緊張の色が見られる。

 コウとキースは若干浮足立っている。教科書の中の人物と直に対面しているような気持なのだろうか。

 

「アルビオン艦長のエイパー・シナプスだ。今回は岡長官とプルート総帥の御厚意で協力を快諾いただけたこと、艦を代表してお礼申し上げる」

 

 シナプスは悪戯の成功した子供のような顔をしているレビルを一瞥し、引き攣りそうになる頬を抑え込むのに苦心した。ブライトやハヤトはそうだろう、そうだろうとシナプスに対して心の中で同意している。

 それからバニングらの紹介を進めた後、彼らも空いている席に着き、ブライトが説明を再開した。

 

「アルビオン隊が負っている任務は、トリントン基地で真ジオン公国に奪取された新型ガンダムの奪還だ」

 

 そこに獣戦機隊の忍が口を挟んだ。ブライト相手でも物怖じしないのは彼らしいが、獣戦機隊の面子は雅人を除けば皆そうだから、問題児の集まり扱いされるのもある意味当然だった。

 

「いくらガンダムって言っても、MS一機じゃねえか。そいつを奪い返すのにアルビオン隊だけじゃ不足なのかよ? ペガサス級に一年戦争からのベテラン、それに奪われなかったガンダムだってある。戦力としちゃあ十分だろう」

 

 言い方には難があるが、忍の意見は分からないでもない、とシャピロは敢えてスルーし、返答を待つ。幸いブライトは忍の態度に思うところはあったが、それを表に出さずに説明を続けた。

 この場には民間人が多いが、これはDCへ協力要請をする際に情報開示の許可をコーウェンに条件として伝えてあるから、問題はない。ただし聞かされた面々が外部の者達へ伝えるのは厳禁だが。

 

「うむ、これは口外禁止となる重要機密だ。決して他言してはならないと肝に銘じて欲しい。まず新型ガンダムを奪取したのは“ソロモンの悪夢”の異名を持つ旧ジオン公国のエース、アナベル・ガトーだ。

 これまでジオン共和国に帰順するでもなく身を潜めていたようだが、真ジオンに合流し、行動したようだな。そしてなによりの問題だが、奪われたガンダム――GP02サイサリスには、戦術核が搭載されている。

 かつてジオン公国が一年戦争序盤にザクで核兵器を運用したように、核兵器で武装したガンダム、それを奪われてしまったのだ」

 

 核、その言葉は室内の雰囲気をざわつかせるのには十分だった。中にはそれを使用した側も含まれていたが、この新代歴においても強力な兵器であるソレが、侵略者の尖兵と化した真ジオンに渡ったというのは穏やかな話ではない。

 

「マジかよ。だがよ、言っちゃなんだが核兵器自体は別に珍しかねえだろう。ルナツーにだって戦術核から戦略核まで山積みだろうし、ジオンのアクシズだったか、そこにだって貯蓄があってもおかしかねえ。ガンダムが運用するってところがまずいのかよ?」

 

 意外と論理的というか的を射ている忍の発言に周囲の人間が目を丸くするが、幸い忍は気付いていない。気付いていたら椅子を蹴倒して立ち上がって、大声位あげたかもしれない。

 

「そのとおりだ。ガンダムタイプのMSはもはや象徴的な存在と化している。連邦軍の肝いりで開発した新型機が侵略者の尖兵となり、連邦軍あるいは連邦市民に牙を剥いたとあっては政府と軍の面子は丸つぶれとなり、信用も落ちて当然だろう」

 

 ブライトの口から語られる言葉を耳にする度、取り逃がした張本人であるアルビオン隊の面々の表情はどんどん厳しくなっている。

 彼らからすればつい最近犯したばかりの痛恨の失態を、かつての連邦軍トップや守るべき民間人に聞かれているのだから、心穏やかではいられまい。

 

「さて、納得はいったかな。藤原中尉」

 

「おう」

 

「よろしい。では部隊分けについて話を戻そう。宇宙へはアーガマ隊、アルビオン隊、それにハガネ隊とグレンダイザーが向かう」

 

 プルート財閥からの協力者であるハガネ隊の動向について、ヘイデスは口に挟まず隊の面々に任せ、その結果、宇宙行きが決定している。

 

「大介さん、宇宙に上がるのかい?」

 

 ここで甲児が声を上げたが、他のメンバーもおおむね似たような気持だったろう。

 

「ベガ星連合軍の拠点は宇宙、おそらく月にあるという話を耳にしてね。一度、僕も宇宙に上がって状況を直に確かめてみたかったのさ。それに円盤獣やバサ帝国の機動兵器を相手にするなら、フェブルウス以外のスーパーロボットも居た方がいいだろう」

 

「そういうわけか。となるとダイモスも宇宙に上がらなくてよかったのか、一矢さん」

 

 他意のない甲児の発言は、バームの拠点と思しきピラミッド型の移動要塞が火星軌道上に腰を落ち着けて、放棄された移民都市を利用し始めたことを知っているからだ。

 エリカに思いを残す一矢ならば、宇宙に行けばまた再会の目があると考えた上での発言である。一矢も甲児の善意を理解しているから、声を荒げたりはしない。

 

「ああ、バーム軍はほとんど地上にしか出現していないし、彼らにとって特に因縁があるのは俺とダイモスだ。なら俺は地上に残るべきだ」

 

 瞳に強い意思の光を宿して告げる一矢に、甲児はそうか、と短く答えてそれ以上を口にしなかった。

 

「話を続けるぞ。今回、ハヤト・コバヤシと艦のクルーは別行動を取る。そして地上部隊は神ファミリーのキング・ビアル、そして獣戦機隊のガンドールを母艦として行動する」

 

 獣戦機隊基地の地下で建造されていたガンドールは全長1,400mを誇る巨大艦で、原作においては動力関係の問題で183日しかもたないという短命の艦だが、この世界では……さて?

 元々スーパーロボットは地球圏内なら母艦なしでどこにでも辿り着ける航続距離と、超音速の移動速度を誇るのも、地上部隊の母艦が少ない理由だ。加えてそれぞれの開発元の研究所が地球上に存在しているのも大きい。

 

「戦力としては地上部隊がマジンガーチーム、ゲッターロボ、コンバトラーV、ボルテスV、ダイモス、ライディーン、獣戦機隊、神ファミリーそれにウイングガンダム、ガンダムデスサイズ、ガンダムサンドロック、ガンダムヘビーアームズとスーパーロボットが主体となる。

 対して宇宙部隊はアーガマ隊、アルビオン隊、ハガネ隊にグレンダイザーだ。MSが主力となるが宇宙で交戦する可能性の高い敵勢力を考慮すれば、妥当な戦力配分だろう。

 地上と宇宙それぞれでACからの増援が加わる予定だが、各員には油断せず戦いに臨んでもらいたい。また地上では敵勢力の迎撃を主任務とするが、宇宙ではGP02の奪還並びに真ジオン公国の動向の確認を主任務とする。

 敵性勢力の中で地球圏の内情に最も明るいのが真ジオンだ。なぜガンダムを奪ったのか、どのような目的で利用するのか? 疑念は尽きないが警戒を怠ってはならん」

 

 付け加えるならばティターンズは戦力を宇宙へと徐々に移し始め、またムゲ帝国も地球全土のみならず宇宙にも部隊を進め、連邦軍、ベガ、バサ帝国との小競り合いが勃発している。

 ガイゾックも勢力としては単艦なので小粒だが、それ以上に指揮官であるブッチャーが何をしでかすか分からない危険性があり、決して見落としてよい存在ではない。

 

 一通りブライトからの説明が済むと、話を聞いた面々がワイワイガヤガヤと今回の部隊分けや核兵器を奪取した真ジオンの目的、新入りであるアルビオン隊について、とにわかに話しだし始める。

 アルビオン隊の面々も極東支部にエゥーゴの関係者が居ると聞かされており、スペースノイドを宇宙人と差別的に言ってはばからないモンシアなどは、うさん臭そうに見まわしたり、あるいは子供達の姿にコウやキースなどは驚いたりと反応は様々だ。

 

 これから物資の積み込みと宇宙部隊は各機を宇宙仕様への調整、それにアルビオン隊とそれに同行しているアナハイムスタッフとのレクリエーション、DC発足のお祝いパーティーと激戦前に英気を養う為の時間が設けられている。

 ますますスパロボらしくなってきた光景に、ヘイデスは肩の荷が百分の一ほど降りた心地であった。だが、GP02による観艦式襲撃とコロニー落としを防げなければ、0083関連の案件は安心できない。

 

(ふう、まずはGP02による核攻撃を防ぐのがまずするべきことか。観艦式をやっている場合じゃないけれど、アクシズ攻略の為にソロモン鎮守府に宇宙軍の艦隊を集めているから、おそらくそこに原作に近い襲撃が起きる可能性が高い。グリーン・ワイアット大将もいるし。

 向こうに潜入中のシーマは居心地が悪くって仕方がないって言っていたけれど、この世界では真ジオンなんていうイレギュラーがある。

 デラーズがハマーンのアクシズならまだしも、エンツォの真ジオンに与するとは思えないよなあ。それでも星の屑作戦をするなら、いったい何を狙う?)

 

 おそらくデラーズの行動原理は変わらずとも、行動そのものには変化が発生するはずなのだ。ガトーとてこの状況でスペースノイド独立という大義、ジオンへの忠誠などと口が裂けても言えまい。

 ガルマや意識不明とはいえドズルが生きている以上、デラーズフリートが真ジオンにとって獅子身中の虫としてあえて手を貸しているのならありがたいが、それは希望的観測に過ぎるだろうか?

 

(流石に異星人や異種族に地球が征服されそうな状況なら、一旦は矛を収める度量があると信じたいけれど……)

 

 下手に甘く見ると後で痛いしっぺ返しが待っているに違いない、とヘイデスは気を引き締める。ここはスパロボ時空だがクリアできるように調整されたゲームの中ではない。現実となってしまった世界であるのだから。

 そんなヘイデスの覚悟とDCの実力を試すかのように、敵勢力の機動兵器部隊の接近を知らせるアラートがけたたましく極東支部の中に響き渡ったのは、不幸中の幸いにもノンアルコールの歓迎パーティーが終わった後であった。

 こういった襲撃のタイミングはいかにもゲーム的なのだが、迎撃の内容次第では死人も出るとなれば愚痴を零すわけにいかない。

 

 他勢力から奇襲、強襲にも慣れた今までの面子と、実力を見せるいい機会だと鼻息を荒くするアルビオン隊の面々はすぐさま行動に出た。

 極東支部所属の各部隊は既に出撃し、近隣の市民への避難警報の発令やシェルターへの誘導を行っている。

 DCの指揮官を任されたのはハガネのレビルで、その経歴を考えれば文句の出ようもない。レビルはハガネの艦橋に着くと岡長官へと通信を繋げた。

 

「岡長官、接近する敵機の迎撃は我々に任せてはもらえないだろうか?」

 

『ふむ、DCの初陣に相応しい相手だと?』

 

「それもあるがまるで我々を試すかのようなタイミングでの行動だ。もしそうであるのならば連中の目標は我々となる。我々が基地の奥に引っ込んでいては、更なる増援が送り込まれる可能性もある」

 

『状況証拠のみか。レビル将ぐ……いや、レビル艦長』

 

「ヘイデス総帥の進言もあってな。それに接近中の敵機の中には我々とのみ交戦記録のある機種が含まれている」

 

 これはアンゲロイ、デイモーン、ティアマートらサイデリアル系の機体を指す。そう接近中の敵機動兵器群はバルマー・サイデリアル連合帝国の無人兵器達なのだ。

 エスパーロボやミケーネ神、スペースロボ、宇宙魔王軍の小型円盤も含まれており、真ジオンのガザシリーズやバームの戦闘ロボの姿は見られない。

 サイデリアルで運用されていた全長423.5mのアドラティオ級戦艦が二隻、それにバルマーのフーレ級一隻も後方に姿を見せている。

 特に厄介なのはフーレだ。全長5,400mを誇る巨大艦は衛星軌道上から都市を一撃で壊滅させる主砲を有し、現地球圏の技術を大きく上回る産物だ。

 

『そうか。……分かった。接近中のバルマー・サイデリアル連合帝国軍の迎撃をDCへ要請する!』

 

「承った。これよりDCはバルマー・サイデリアル連合帝国軍に対する迎撃行動を取る」

 

『健闘を祈る』

 

 画面の向こうで敬礼する岡長官に、レビルもまた見事な敬礼を返して、部隊の指揮へと意識を集中させた。極東支部にはヘイデスと所長夫妻が来訪中であり、常よりも重要性が増しているのがレビルに緊張を強いていた。

 接近中のバサ帝国軍にはバルマー系の上級機動兵器エゼキエルが含まれ、艦船のみならず機動兵器の質もまたこれまで以上に高い水準となっている。

 

 極東支部が迎撃の為に雨霰と発射したミサイルや実弾、ビームを突破し、高速で極東支部との距離を詰めるバサ帝国軍に向けて、強大な光の奔流が正面から襲い掛かる。

 ハガネの艦首モジュールから放たれたファイナルダイナミックキャノンは、最も脅威と認識したフーレを沈めるべく発射されたのだ。

 

 数多の敵機を飲み込んで迸るFDキャノンは、咄嗟に回避行動に移ったフーレの鼻先もとい船首に直撃し、やや斜め気味に貫通していくつもの爆発を誘引した。

 一撃で指揮と陣形を崩されたバサ帝国軍に向けて、スーパーロボットを先頭にDCの精鋭達が一斉に牙を剥いて襲い掛かる。

 その中でアルビオンから発艦したグスタフ・カール三機、ジェガン重装型二機、GP01からなるバニング隊は気合の入り方が少し違っていた。

 

「お前ら、ここで情けない姿は晒せないぞ。コーウェン中将とアルビオン隊の名前に泥を塗るような真似をするなよ!」

 

 檄を飛ばすバニングに素直に反応したのはコウとキースだ。ここら辺は新兵ゆえの初々しさか。

 

「は、はい。バニング大尉」

 

「気を付けます!」

 

「二人とも真ジオンの連中と何度もやり合っているんだ。お前達はもう実戦を知っているという事を忘れるな!」

 

 バニングのヒヨッコではないんだぞ、と暗に告げている励ましに気付いているのかどうか怪しい二人に、ベイトがへっと好戦的な笑みを浮かべながら言った。

 

「ウラキ、キース、足を引っ張るなよ。金持ちの道楽で集められた部隊の連中に舐められるのは、面白くねえからな」

 

「へへ、まあそういうこった。美人も多かったし、ここで一つ本物の腕前って奴を見せてやるか」

 

「ベイト中尉、モンシア中尉、絶対に私達以外の耳のあるところで似たようなことを言わないでくださいよ」

 

 ベイトとモンシアの問題のある発言に、思わず頭を抱えそうになるアデルと絶句するコウとキース。先程のミーティングでこんな事を口にしていたら、いきなり軋轢が生まれていただろう。

 流石にバニングが怒鳴りつけようとした矢先、バニング隊の脇を白と赤、二色の彗星の如き人型が飛んでいった。

 

「あれはトールギス・シューティングスターにトールギス・コメット!? すごい、あのトールギスのスペシャルカスタム機だ! プルート財閥が保管しているって聞いていたけれど、本物が見られるなんて!」

 

 興奮するコウを他所に、ヘイデスの手配した懐かしい機体に搭乗したアムロとクワトロは体に伸し掛かる強烈なGにも顔色を変えず、敵部隊から人間らしい情動を感じられない事実を確認していた。

 

「やはり無人機部隊か」

 

 アムロはドーバーガンで宇宙魔王軍の小型円盤を纏めて三機、四機と撃墜し、ハイパーハンマーで襲い掛かってきたスペースロボ1号の頭部を叩き潰した。

 シャアもといクワトロも最新技術によってグレードアップしたトールギス・コメットで敵陣をかき回し、ドーバーランチャーが火を噴く度に敵機の頭部や胸に爆発が生じる。

 

 二人のトールギスは最新装備にアップグレードされ、全体的な性能向上に成功している。

また実験的な武器だったリッパービットは外されて、ヘパイストスラボが独自開発した小型ジェネレーター内蔵ファンネルが六基、リアアーマーに搭載されている。

 このファンネルはネティクスやカタールの攻撃端末の他、パンドラボックスから引き出された宇宙世紀系ファンネルやソレスタルビーイングのビット、イノベイターのファングなどのデータが参照されている。

 

 常人では到底耐えられない速度と戦闘機動を見せ、巨大なモンスター然とした外見の敵にも果敢に挑みかかり、怪物退治の英雄のように次々と撃破して行く白い流星と赤い彗星に、さしものバニング達も一瞬、声を失っていた。

 また二人に並ぶ逸材として期待を寄せられているカミーユは、海上での戦闘となる事からアイアンコングを降りて、ヘイデスが趣味がてら調達してきたプロトタイプZガンダムで出撃している。

 Zの一文字を名前に冠してはいるが、ムーバブル・フレームと可変機構も搭載されていない機体だ。リック・ディアスよりもわずかに性能が上という事もあり、間に合わせの機体として採用されたのである。

 懐かしい機体に乗って少しだけ浮ついているアムロとクワトロに続き、アルトアイゼンがその冗談じみた推力をフルスロットルにして突撃を敢行し、ペアを組むヴァイスリッターが混沌のるつぼと化した敵陣に突っ込む。

 そこへ最近、この二人に影響を受けつつあるオウカらグランドスター小隊、それにゼファートールギスが一回りも二回りも巨大な敵機に怯まずに挑まんと続いていった。

 

「こいつぁ、甘く見ていたのは俺達か」

 

 バニングは自戒を込めて呟くと“不死身の第四小隊”と呼ばれたころからの部下達と、新しく増えた部下二人に檄を飛ばし、愛機のフットペダルを更に踏み込んだ。

 

「どうしたお前ら、ぼやぼやしていたから一番槍を取られちまったぞ。これ以上後れを取るつもりか? それなら俺も含めて全員、腕立て伏せ二百回だ! 軍人が民間人に後れを取っちゃならん。それとウラキ!」

 

「はい!」

 

「経緯がどうあれお前はガンダムに乗っている。敵からも味方からも注目される。そいつを肝に銘じて操縦しろ。チームとしてフォローはしてやる!」

 

「了解!」

 

 いっそう気合を入れてミノフスキー・クラフトを使って飛ぶGP01を見て、バニングは小さく笑う。

 

「俺もロートルだなんだと言い訳していられんなっ!」

 

 バニングは下方からこちらを狙って急上昇してくる小型円盤に流れるような動作で照準を定め、無駄のないビームの一撃で撃ち落とした。年季と経験がものをいう玄人の一撃であった。

 正式に発足したDCの実力を確かめるために派遣されたバサ帝国の部隊は、この後にDC側に加わった思わぬ増援により文字通りの全滅に追い込まれ、数多の残骸をDCと極東支部へ提供する結果に終わる。

 

 

 無事にフーレをはじめアドラティオ、エゼキエルといった新顔を撃破し、サンプルの入手とDCの初陣を圧倒的勝利で飾ることに成功したヘイデスの心は実によく弾んでいた。

 ハガネ隊――ひいてはフェブルウスとシュメシ、ヘマー、そしてオウカ、ラトゥーニ、ゼオラ、アラドが宇宙に上がり、ついに人間を相手に実戦を行う可能性が高まったのには吐き気を催すストレスを覚えたが、とりあえず目先の勝利を素直に祝おうと気持ちを切り替えたのだ。

 

 さてそんなヘイデスは戦闘終了から二時間が経過した現在、“思わぬ増援”その人であるシャドウセイバーズ指揮官ギリアム・イェーガー中佐と私的な会談の機会を得ていた。

 部隊を率いて、ではなく限界までカスタマイズしたゲシュペンストMk-IIタイプNで駆け付けてくれたのだ。

 場所は極東支部内の一室であり、例によって防諜処置の行き届いた特別な部屋だ。ギリアムの希望で一対一での会談となり、ヘイデスとしては初めて生のアムロやシャアと対面した時と同じ心境にある。要するに浮かれ気味だ。

 

 ギリアムがヘイデスを場合によっては地球圏を脅かす脅威かもしれないと危惧し、覚悟を持ってこの日を迎えているなどとはまるで知らないのだから、いやはや。

 約束の時間の十分前に姿を見せたギリアムに、ヘイデスは内心でわっひょい、と喝采の声を上げる。緩やかにウェーブして右目を隠すように流れる紫の長髪、中佐の階級章が輝く地球連邦軍の制服に身を包む姿は、衣装以外はヘイデスの記憶と相違がない。

 

「お初にお目にかかります、ギリアム・イェーガー中佐。プルート財閥の総帥を務めさせて頂いているヘイデス・プルートです」

 

「地球連邦軍特殊部隊シャドウセイバーズ指揮官、ギリアム・イェーガー中佐です。プルート総帥、今回は突然のお願いにもかかわらず時間を作っていただいたこと、お礼申し上げます」

 

「いいえ、とんでもない。どうぞおかけになってください」

 

 ギリアムが自分の対面に腰かけるのを待って、ヘイデスは話の口火を切った。いつかは接触を持たねば、と思っていたギリアムの方から連絡があったのには驚いたが、実際、彼はどんな話があるのだろう?

 

「僕の方でも耳に挟んでおりますよ。連邦軍内でも特に能力の高い特殊部隊を引き抜き、また木星船団のキャプテンとして出向していたパプテマス・シロッコ大尉を副官に据え、新たな特殊部隊シャドウセイバーズを創設され、多くの侵略者達を退けているのを。

 それについ先程はバサ帝国の連中を相手に援軍に来てくださり、感謝します。お陰でDCの初陣の勝利をより確実なものに出来ました」

 

 ヘイデスの口から“DC”の単語が出た時、ギリアムの鋭い眦が更に細められたのだが、浮かれ気味のヘイデスは見事に見逃した。平凡なスパロボプレイヤー成分が前に出てくると、彼の目と思考は悲しいくらいに鈍るし曇るのだ。

 

「プルート総帥、あなたの事は私も随分前から気に掛かっていました。一年戦争が終結した後、各サイドへの復興事業、マイクロウェーブ発電施設を利用した各サイドを含め地球圏を網羅するサテライトシステムの構築、プロメテウスプロジェクトからSRG計画に至るまで、あなたが地球人類に齎した恩恵は計り知れない」

 

「いやははは、そこまで持ち上げられるとくすぐったく感じられますね。地球連邦市民として、また多少、裕福な人間として出来る限りのことをしたまでです。成果については力を貸してくださった方々のお陰でして、僕の力ではありません」

 

「あまりに適切な対応を取る為に、ご自身が未来を知っているとまで噂されているのはご存じで?」

 

「ええ、まあ、それも過大評価です。僕なりの情報網と分析によって出来る限りのことをしているのです。十個仕掛けたとして、別に十個すべてが成功しているわけではありません。二十、三十、もっと言えば百と仕掛けた中でいくつかが成功している程度ですから」

 

「百発百中というわけではないと?」

 

「もちろん。もし僕の考えた通りに全てが上手く行っていたなら、地球圏はもう少し平穏になっていた筈です」

 

 実際、ヘイデスの推測を超える事態は多く、ムラサメ研究所やオーガスタ研究所などで行われていた非人道的な研究の事前の摘発が行えなかった件やバームとの平和的接触の失敗、ガイゾックを討ち漏らした戦いなど、どうしても上手く行かなかった案件はある。

 

「世界はヘイデス総帥の予測を超えているわけですか」

 

「ええまあ、僕は予知能力を持っているわけではありません。いわゆるエスパーやニュータイプと呼ばれるような人種でもありませんし」

 

 にしても、とヘイデスはギリアムの表情と態度が硬いままであることにそろそろ気付き始めていた。まあ、情報畑出身の人間だから民間人とは言えプルート財閥総帥相手となればなにか探るような態度になっても仕方ないかな、と思う。

 

「しかしあなたとプルート財閥の自らを省みない献身により、地球圏は持ちこたえられているのも事実。日本各地のスーパーロボットが戦乱初期から連邦軍とうまく連携を取れているのも、本格的な戦乱が勃発する前にあなたが働きかけた成果です。

 どうしてそこまで的確に対処する事が出来たのか、一部隊を指揮するものとして秘訣があるのならぜひお伺いしたい」

 

(なんだか詰問されているみたいだな。……あれ、怪しまれている?)

 

 ギリアムはまだ敵意を向けてはいないが、警戒と疑念は見せ札としてそこはかとなく出している。スパロボプレイヤー成分が原因で鈍るわ曇るわ、ポンコツ化しているヘイデスも、本来の敏腕経営者成分が息を吹き返してようやく思考が普段の鋭いものと変わる。

 それこそラスボス疑惑を持たれても仕方ないくらいに有能なモードへ、ようやく切り替わったのだ。まあ、ギリアムの前でそのモードへ切り替わるのがいいのか悪いのかは、うん、まあ、ねえ?

 

(俺がこれまでしてきた事を怪しまれている? さっきギリアムの言ったとおりにしてきただけだけれど……いや、確かに予めどんな敵が来るのか分かっているように、研究所へ投資し、パイロットと研究所、軍の間を取り持って連携が上手く行くように取り計らい、原作以上に迎撃態勢を整えて市民の避難経路の確保とシェルターの増設、広報活動も積極的に行って、ネガティブキャンペーンなんかが付け入る隙の無いようにしたが)

 

 確かにやり過ぎなくらいに成果を出している。あるいは参戦作品の内容を知っているかのような対処をしている、ヘイデスは我が身を振り返る。

 ヘイデスとしてはこれでもまだ不足で、実際、頭を何度も抱え、胃も痛めているのだが第三者から見ればギリアムの言ったとおりの評価になると改めて理解する。

 

(………こうして振り返ってみるとLのなんだっけ、ルド・グロリア大統領とかTのダイマ・ゴードウィンあるいはエイム・プレズバンドを思わせる行動だし、高い確率で敵対するディバイン・クルセイダーズを組織しているし。……あれ!? 誤解してくれと言わんばかりの行動だな!?)

 

 自分が黒幕と勘違いされても仕方のない行動を取り続けていたことに、ようやくヘイデスは思い至る。

 確かに表向きの行動は地球の平和と防衛に大きく貢献しているが、実はその裏で、という行動をしているキャラクターはロボットアニメやスパロボでは珍しくもなんともないではないか!

 そして多くの世界をさすらってきただろうギリアムならば、思い至る実例をいくつも知っているに違いない。ひょっとしたら並行世界のヘイデス・プルートさえ。

 

(あわわわ、今から挽回できるか? 汚名挽回……馬鹿! それは第四次スパロボであしゅら男爵が言い間違えたヤツ! いやジェリドの方が先か。……いかん、冷静になれ、落ち着け、平常心、へーじょーしんンンン!!)

 

 荒れ狂う内心に反して表情は友好的な微笑を保てているのは、本来のヘイデス成分あればこそだ。

 

(いや、こうなったらもう明かすしかないか? 怪しまれているとはいえまさかこの場で殺されるわけはないと思いたいけれど、この先、ギリアムに怪しまれながらというのは精神的にキツイし、今のギリアムのところにはヴィンデル、シロッコっていうラスボス経験者がいる。主人公経験者のアクセルだっているんだ。

 ギリアムはなんとしても味方につけたい。目の前の彼がヒーロー戦記や第四次、FシリーズやOGシリーズ以外にどんな経験を経ているのか知らないけれど、それに、そろそろ俺の事を知る相手が居てもいいか……)

 

 プレイヤーとしての認識と知識を持つヘイデスの秘密を知るのが、多くの世界を漂流しなければならない“呪われた放浪者”たるギリアムだというのはある意味では最適であり、どこか皮肉的でもあった。

 それまでの微笑が消え、見る間に緊張に身を固くしていくヘイデスにギリアムはここが分岐点だ、と彼自身もまた適度な緊張で神経を尖らせる。

 ヘイデスはまずなにから口にするべきかを迷い、強く印象に残っていたある言葉を選んだ。こういう時、彼はポカをするしガバる傾向にあるが……。

 

「“実験室のフラスコ”。あなたが口にしたこの言葉は、実に言い得て妙だと思います。僕の知る限りにおいて、この世界をはじめその他の世界もまさにそう呼ぶに相応しい、あり得ない邂逅がなされた世界ですから」

 

「! その物言い、ヘイデス総帥、あなたは」

 

 ギリアムから感じられる圧が増し、危険な色を帯びるのを感じながら、ヘイデスはありったけの根性と気合と勇気を総動員し、最後まで仲間への情を捨てられなかった元ラスボスへ語り続ける。

 

「僕は全てではありませんが、あなたがアポロンとして行った事も、そしていくつかの世界で体験した戦いを知っています。あなた風に言うのならフラスコの実験の過程と結果のいくつかを知っている、となりますか」

 

「ではあなたはフラスコの外から、実験室からやってきた存在なのか」

 

「そこが説明の難しいところで、僕は対価と引き換えに実験結果を閲覧し、知る立場の存在でした。実験そのものを企画した存在ではありません。実験室の外に居る実験とは関係のない他業種の存在、ですかね」

 

 画面の向こうの存在が現実世界にやってくる、という設定はアニメやゲームでも時折見かけた覚えがあるが、自分は向こう側に行く立場だったな、とヘイデスは言葉を探りながら考えていた。

 

「この世界をはじめ、多くの世界の運命や住人達の人生をモノのように、あるいは文字通り実験の題材として取り扱っているのか?」

 

 ギリアムの声音に嫌悪と怒りが滲むのを、ヘイデスはそれはそうだろう、と受け入れた。

自分達の意思や行動が、何者かによって全て作られて、脚本をなぞっているだけなのだと言われれば、それを理不尽に感じる心と自由がこの世界の人々には確かに存在している。

 

「不愉快に感じられるとは思いますが、そういう見方は出来ます。ある程度定められた運命と限界を与えられたフラスコの住人達に干渉し、どのような結果を迎えるのか。

 どんな場面でのどんな選択によって異なる過程と結果を巡るのか? 僕達はそれを知る為に実験を求めたのですから」

 

「ではあなたがこれまでに行ってきた不自然な行動の数々は、予め起きる事を知っていたからこそか?」

 

「予知とは違いますよ。経験則と知識と言うべきです。ギリアム中佐、いえ、ギリアムさん、あなたもこれまで巡ってきた世界で体験した事から、ある程度、この世界にこれから訪れる事態を推測しているのではないですか?

 Dr.ヘルの機械獣軍団を壊滅させた後は闇の帝王が率いるミケーネ帝国。帝王ゴールの恐竜帝国を退ければ次には百鬼帝国が出現する可能性がある、とね。

 キョウスケ・ナンブとエクセレン・ブロウニングが存在し、例のシャトル事故が発生している以上、アインストが潜んでいる可能性が極めて高い事も。

 僕は、この世界にそういった勢力が出現するように設定したのではなく、それらが出現した時に家族や身近な人々、そして叶うならば世界を守れるように備えたのです」

 

 実際、ヘイデスはユーザーでありプレイヤーであって、実験者=開発陣というわけではないが、それがどこまでギリアムに通じるものか。一方のギリアムもヘイデスの言葉通り、これまで巡ってきた世界に共通していた事項を鑑み、備えていたのは事実だった。

 シャドウセイバーズの裏の目的は対ヘイデスであるが、表向きには現状並びに将来出現する敵勢力への対抗手段であるのだから。

 

「ヘイデス総帥の言う通り、これからさらに姿を見せるだろう勢力の見当は俺にもある程度はついている。イレギュラーの可能性は否めないが、ミケーネと百鬼、そしてアインストの出現する可能性は高いだろう」

 

「ミケーネの戦闘獣や百鬼メカは機械獣やメカザウルス以上です。物量はゼントラーディや宇宙怪獣に比べれば可愛いものですが、それでも今のように地球人類同士で争っている場合ではありません」

 

「その点は俺も同意する。それにバルマーの行動は、俺の知るものと差異が多い。ヘイデス総帥にとっては既知のものか?」

 

「いいえ、僕も疑問があります。皇帝を名乗ったラオデキヤは、バルマー帝国のハイブリッドヒューマンで間違いないとは思っていますが、なぜバルマー・サイデリアル連合帝国と名乗ったかは謎です。

 サイデリアルの残党を取り込んだとしても、ゼ・バルマリィ帝国が健在であるのなら皇帝を名乗るのは奇妙です。

 僕はラオデキヤを作り出したユーゼスが、そう命じて名乗らせているのではないかと見ています。ラオデキヤ艦隊とサイデリアル残党が合流した勢力ではないかと……」

 

「……サイデリアル、か」

 

 そのギリアムの反応に、ヘイデスはさて聞くべきかどうかと悩む。このギリアム・イェーガーという人物は、極めて謎の多い人物だ。

 いくつもの世界をさ迷い、なにかしらの使命を有しているのは確かだが、実際の年齢や種族は不明だし、また聖戦や至高天、十二の鍵などZシリーズを想起させる単語をOGシリーズ内で口にしている。

 だがヘイデスの知る限り、ギリアムのZシリーズへの関わりや詳細な経歴、出自は謎のままなのだ。

 

「聞かれる前に答えておきますが、至高神ソルと御使い、そしてスフィアを巡る戦いは御使いが倒され、多元世界が新生したことで終結しています。

 御使いが全ての多元世界で最初に次元力に触れた文明である以上、いくら並行世界でもそうそう彼らの同位体や至高神ソルが出てくるとは思えません」

 

「……そうか」

 

(ギリアムの沈黙の間が怖いいぃい。彼の関わっていた聖戦は御使いの四人が関わっていたアレなのか? それとも別のなにか? 並行世界での御使いとか、考え出すとキリがないのがスパロボ時空の頭の痛いところだわ)

 

「ユーゼス・ゴッツォ、あるいはアルテウル・シュタインベックか。アルテウルに相当する人物はこの世界で探し出せなかった。また因縁の深いイングラム・プリスケンやSRXチームもだ。

 ならばユーゼスだけがイングラム達との因果の鎖を外し、この世界に居るということか? ヘイデス総帥、あなたはこういう展開の実験に心当たりはないのか?」

 

「いいえ。バサ帝国に関しては正直度肝を抜かれました。この世界のバルマーやサイデリアルならばまだ納得がいきましたが、どうも別世界の彼らがこの世界に来て一つの勢力となったように見受けられるので、はっきりいって混乱しています」

 

 なにしろラオデキヤの宣戦布告を目撃した時、思わず吐きそうになったくらいなのだから!

 

「そうか。ではなぜ奴らはあなたを狙うように行動している。これまでの調査でサイデリアル系統の兵器群があなたを狙って行動しているのを把握しているが、理由について心当たりは?」

 

 ヘイデスは思わず息を呑んだ。ヘイデス自身、これまでのスパロボには存在しなかったタイプのイレギュラーだが、サイデリアルとミケーネ神、宇宙魔王軍、ギシン帝国軍の真の狙いは、いまや彼の愛する子供らなのだから。

 そして子供らの正体を、聖戦に参加した経験のあるギリアムに告げてよいものかどうか。

 短いが一秒が一日にも十日にも感じられる苦悩の果てに、ヘイデスは口を開いた。いざとなれば刺し違えてでもギリアムを止める覚悟を固めるのには、数秒ほど必要だった。

 

「僕がイレギュラーである自覚はありますが、彼らの狙いは僕ではありません。狙いはシュメシとヘマー、そしてフェブルウスです。どうして狙われているのか、それも把握しています。

 しかし、これをあなたに伝えるのには大きな勇気と覚悟が必要だ。そして、それを知ったあなたにも」

 

「聞かせてもらおう」

 

 即答するギリアムに流石ラスボス、と言っては失礼か、とヘイデスは自嘲してから口を開いた。

 

「あの子達はかつて御使いの作り上げた至高神ソルの意思、その生まれ変わりです。御使いが滅びたのを見届けた後、ソルの意思は人間に生まれ変わろうとし、そこで何者かに襲われて傷つき、この世界に漂着しました。

 一年戦争で地球に落ちる筈だったコロニーが大気圏外で謎の崩壊を起こしましたが、あれはこちら側に転移した直後のフェブルウスが残る力を振り絞り、人々を救う為にコロニーを破壊したのです。

 そしてソルの意思はフェブルウスというかつての似姿、シュメシとヘマーという人間の子供に生まれ変わった。ただし今のあの子達にソルだった頃の記憶や能力はほとんどありません」

 

「スフィアとなにかしらの関係があるとは思っていたが、まさか……」

 

「なぜ気付いて、いや、戦闘中にフェブルウスがスフィアに近い力を使ったからですか」

 

「そうだ。あれは紛れもなく次元力の行使。俺も久しくこの目にしていなかった力だ。あそこまで強力かつ精緻に行えるとなれば、覚醒したスフィアリアクターか真化の領域に足を踏み入れた者以外にあり得ない」

 

「あなたが参戦したという聖戦が何なのか知りませんでしたが、御使いやスフィアの関わる聖戦でしたか。

 ギリアムさん、今のあなたが自分の境遇をどう捉えているのか、僕に知る術はありませんが、もし万が一、僕と妻の子供となったあの子達に危害を加えようというのであれば、僕は自分の持てるすべてを持ってあなたを止める。

 あの子達はもう至高神と呼ばれ、祭り上げられ、利用されていた存在ではない。この世界で確かに生きている命なのです。そして僕の大切な子供達だ。出自がどうであれ、僕はあの子達の親なのです」

 

 内心の恐怖を押し隠してギリアムを見つめるヘイデスの瞳に、ギリアムは何を見ただろうか。生きた年月も積み重ねた経験もはるかに上回るギリアムが瞼を閉じ、沈黙すること数秒、彼は改めてヘイデスを見つめ直して口を開いた。

 

「本気でそう口にしているのだな。あなたも知っているかもしれないが、あの世界でシステムXNを破壊してから、俺はもう覚悟を決めている。

 システムを介さずとも俺は世界を放浪する定めを負っているが、その定めと共に繰り返す出会いと別れを受け入れるという覚悟を。

 先程の戦いぶりと漏れ聞こえた通信の内容を鑑みれば、確かにあの子らはもはやソルではない別の人格として存在を確立させたのだろう。あなたの言葉をひとまず信じる。しかし、そうなるとあなたはどうなのだろうな」

 

「?」

 

「あなたはこれまでフラスコの外の世界に居た。それが今はこうしてフラスコの中へと移っている。こちらに居るあなたに万が一のことがあった時には、やはり外へと戻るのか?」

 

 もしそうであるのならヘイデスだけは命の保証がされた安全な立場から、この世界の運命に介入しているという事になる。ギリアムの眼差しが厳しくなるのも当然だろう。

 この問いかけに、ヘイデスは胸の奥に秘めていたある考えを口にした。それは足元から世界が崩壊するような錯覚を覚えるほど、恐ろしい考えだった。

 

「それは僕にも分かりません。ですが僕はこの世界で生きていると、はっきりと実感を得ています。この世界で生きてそしていつか死を迎えると感じています。僕のような存在の前例を僕は知りません。

 なによりも僕が本当にフラスコの外から来たという証拠は、僕自身の認識以外にはないのです。そして、僕が【フラスコの外から来たという設定を与えられたフラスコの住人】でないと否定できない」

 

「ヘイデス総帥、それは、もしそうであるならあなたは」

 

「まあ、SFではよくある設定ですよ。上位の存在、あるいは優位な立場にあると思っていたら実は自分も、なんてね。大抵は悪役がそうなんですけれど、僕もそうかもしれませんし、そうではないかもしれません。なにしろ僕の認識しか判断材料がありませんから」

 

 ヘイデスがある日、ふと思い至り、それからずっと胸の内に秘めてきた考えとは、自分が本当はフラスコの外からやってきたのではなく、そういう設定を与えられたフラスコの中の住人なのではないか、というものだ。

 肯定も出来ない、否定も出来ない。だからこそヘイデス自身がどう考えるか、それ自体が答えとなる問いであるだけに、ヘイデスの心に深く刺さり抜けない棘となっていた。

 

「ギリアムさん、この考えは僕にとって小さくない悩みではありますが、行動に影響を与えるものでもありません。僕と僕の愛する家族、そして地球人類が平和と繁栄を享受する為に、そしてその頼もしき力となるDCの人々のスポンサーとして力を尽くします」

 

「そこまであなたがこの世界に、この世界で出会った人々に心を砕いているのなら、俺も貴方の言葉を信じよう。いつかは俺もこの世界から離れなければならないが、危機にある状況を見過ごせるわけもない。

 これまで巡ってきた世界の一つ一つに愛着と思い出があるように、俺もまたあなたのようにこの世界を愛しているのだから。

 ヘイデス総帥、あなたを信じ俺もまた力を尽くそう。シャドウセイバーズはもしもの時にあなたを止める為の力として創設したが、どうやらその裏の役目を果たさずに済みそうだ」

 

 ギリアムの口から語られたシャドウセイバーズの思わぬ創設目的に、ヘイデスはぎょっと目を見開いたが、自分のこれまでしてきた行動を思い返すに、それも仕方がないと自分を納得させる。

 世界征服を目論むDC総帥ビアン・ゾルダークが、実は真のジン・ジャナハムで抵抗勢力のリガ・リミティアを創設した、という例があるがそれの逆バージョンが自分のやってきた事に近いし。

 

「ギリアムさん、ならどうかそのまま部隊の強化に勤しんでください。僕が僕のままであるのなら、正義の味方のスポンサーとして全身全霊を尽くしますが、もしこの戦いの最中で僕が僕でなくなったその時には、どうかシャドウセイバーズの裏の目的を果たしてください」

 

「! そうか、あなたは多くのものを抱えているのだな。分かった、もしもあなたが皆の知るヘイデス・プルートでなくなったら、子供達に危害を加える前に、そして子供達があなたを手にかける事がない様に俺が終わらせる」

 

「そうなった時には、どうかよろしくお願いします」

 

 ヘイデスは今にも砕けてしまいそうな硝子細工を思わせる笑みを浮かべ、ギリアムに頭を下げた。

 

<続>

■トールギス・シューティングスターを入手しました。

■トールギス・コメットを入手しました。

■アドラティオの残骸を入手しました。

■フーレの残骸を入手しました。

■エゼキエルの残骸を入手しました。

■ハヤト・コバヤシとカラバクルーが離脱しました。

 

★ディバイン・クルセイダーズが発足しました!

 

★ギリアムと対話しました!

 

■第二十二話 ディバイン・クルセイダーズ クリア後ヘイデスショップ

●メギロート

●バルバラ

●スペースロボ1号

●デイモーン

●グラーティア級輸送艦

 

☆宇宙ルート 隠しユニットの一部

アムロ

・νガンダム → Hi-νガンダム → リ●●ン●νガン●●(声繋がり)

クワトロ

・サザビー → ナイチンゲール → ガ●●●ギア●(名前繋がり)

 

 

◇こそこそ裏話 もし本作がゲームだったら?

・ヘイデス黒幕ルート

 まずシュメシかヘマーのどちらかを主人公として選択。名前、誕生日を設定可。

 次にリアル系かスーパー系かを選択。フェブルウスの装備がリアル系ならバルゴラ+ブラスタ、スーパー系ならガンレオン+ジェニオンになる。

 主人公はヘイデスの下を出奔した所長と共に二人暮らしで、出奔時に強奪したフェブルウスが地下に秘匿されている。

 そこへ選ばなかった方の主人公が選ばなかった方のリアル系/スーパー系仕様のコピーフェブルウスと無人機を引き連れて襲撃。

 これを主人公が迎撃するところから物語は始まる。

 

例)

主人公ヘマーでスーパー系を選択すると、ライバルはシュメシの乗るリアル系コピーフェブルウスとなる。

 

・ヘイデス黒幕化の影響(本話までで判明している範囲で)

 アクシオ、ゲシュペンストシリーズ、トールギスのカスタム機、モビルビースト、モビルゾイド、ストーク級、ライノセラス級、キラーホエール級、スペースノア級、アルトアイゼン、ヴァイスリッター、ソウルゲイン、ヴァイサーガ、ビルトシュバイン、ヒュッケバイン、グルンガスト、太陽炉、疑似太陽炉、アプサラスⅣが開発されない。

 ファーストガンダム並びにアウターガンダムが原作通りの展開に。

 所長が双子の片割れとフェブルウスを強奪して出奔する。

 ヘパイストスラボが閉鎖。

 エリュシオンベースが建設されない。

 プロメテウスプロジェクトが発足しない。

 SRG計画が発足しない。

 その為、連邦軍の主力MSは原作沿いのジムⅡ、ジムⅢ、ジェガン止まり。当然ビームシールドもミノフスキー・クラフトも未搭載。

 プロメテウスプロジェクトが発足しないのとテム・レイの死亡により、GPν、RFガンダムが開発されない。

 資金50,000,000がもらえない。

 シーマ艦隊が原作通り。

 30バンチ事件が発生する。

 リモネシア共和国の軍備が悲しい事になる。

 各サイドの復興がグリプス戦役時相当に――などなど。




ヘイデスショップがそろそろネタ切れです。こんにちは。
なおヘイデスの口にしたフラスコの外から内に~~という例ですが、スパクロのG-BARIこと大張正己さんが前例と言えば前例になるのかもしれませんね。
ヘイデスはかたくなにスパクロことスーパーロボット大戦X-Ωを話題にするのすら避けていますが、これはトップを狙え!からデモンベイン、果ては少年アシベにクレヨンしんちゃん、ポプテピピックとも交差する、そのほかのスパロボ作品がタッグを組んでも及ぶか分からない混沌の権化となっているあの世界を無意識に畏怖している為です。後、私が手に負えないと判断しているのもあります。

ヘイデスのこの設定については、果たして作中で語るべきか否かずいぶん悩んだものですが、ギリアムと対面するにあたり、これを吐露するべきとして結果こうなりました。

ゲッターザウルスはゲッターロボアークを読んだので知っております。ダイノゲッターとは別物ですよね。某所のαナンバーズがBETAと香月博士の常識を破壊するお話同様、更新の再会を願っています。


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第三十三話 このルートにハッピーエンドがありますように

登場キャラクターの年齢の件、すっかり失念していました。
ガトーとコウ、ニナ達0083については、うーん、考え中です。


 シャドウセイバーズの保有する機動兵器試験場では、シャドウセイバーズへ籍を移したパプテマス・シロッコ少佐が、自らの手掛けた新型MSの試験を眺めていた。

 生産した疑似太陽炉ことGNドライブ[T]と核融合炉を併用した機体で、主動力は核融合炉を用い、GNドライブ[T]は推進力やGNフィールドの展開用に使用している。

 

「サラ、シドレ、テストは終了だ。二人ともよくやってくれた」

 

「はい、パプテマス様」

 

「パラス・アテネ、帰投します」

 

 サラ・ザビアロフのボリノーク・サマーンとシドレのテストしているパラス・アテネは、両機とも木星から地球に帰還するまでの間に製造され、異なる二種の動力機関での運用を前提としている。

 地球と宇宙を問わず活動できる汎用性を持ち、またGNフィールドを標準装備し、なによりも、今、テストが終わったばかりのトランザムシステムが目玉だ。

 ガンダム00の機体とは異なり、核融合炉との併用である為、トランザムを使っても性能を三倍にまで引き上げる事は出来ず、GNフィールドの強化と推進力の強化に特化したものである。

 

 核融合炉から電力供給を受ける事で疑似太陽炉はGN粒子を生成し、また圧縮されたGN粒子の持つ毒性も解決済みだ。

 ボリノーク・サマーンとパラス・アテネの疑似太陽炉から放出される粒子はオレンジがかった赤色で、毒々しい赤ではない。

 

「トランザムは問題なく稼働したが、課題はシステム終了後の性能低下か……」

 

 モニタールームでシロッコは一人、観測したデータを眺めながら鼻の付け根を左の人差し指で軽く叩く。メインが核融合炉である為、トランザム使用後に性能が低下しても通常のMS以上に戦える機体だ。

 目下、シロッコ製疑似太陽炉のトランザムは一度使用すると途中で使用をカットできない為、基本的に戦闘中に一度きりの切り札となっている。幸い、トランザムをしたらそのまま壊れる、という事は無い。

 ふとシロッコは、フフフ、と思わず胸中の笑いを零した。

 

(木星へ行く前にヘパイストスラボから預けられた太陽炉と疑似太陽炉の設計図、そしてトランザムシステムの概念。あの時感じた直感は間違いではなかった。実に面白い素材だ。

 唯一、不満という程ではないが、謎があるとすればGN粒子のGNとは何の意味かという点だが、ふ、些細なことだ)

 

 シロッコ自身はGN粒子を場合によってはミノフスキー粒子に匹敵する代物である、とその知性をもって看破しているが、同時にGN粒子と太陽炉などを考案したヘパイストスラボの所長について疑念を抱いてもいる。

 

(彼女もまた紛れもなく才ある者だが、ヘパイストスラボで開発された各種機動兵器と並行してGN粒子の研究を行う余裕があるか、と言えば流石に疑問符が付く。

 ヘパイストスラボ、プルート財閥……いや、あの所長とヘイデス・プルートには尋常ではないなにかがある)

 

 実際、シロッコの推論はほぼ的を射ている。所長やヘパイストスラボが異常な速度で次々と新型機動兵器や新機軸の技術を開発出来ているのは、欠損が目立つとはいえ多元宇宙の記録を保有するフェブルウスの“パンドラボックス”の恩恵が大きい。

 スパロボZシリーズに参戦した作品の各種技術や概念のみならず、過去に参戦していたとしてもおかしくない作品の技術も収められており、この世界における反則的な存在だ。

 

(疑似太陽炉と核融合炉の併用をクリアしたとしても、現状の地球圏を襲う侵略者を退けるとなればまだ力を求めねばなるまい。地球を離れ恒星間航行にでも着手するかと思っていた時期もあったが、どうやら私もまだまだ時勢の見極めが足りんようだ)

 

 現状、多くの侵略者の本拠地の所在も掴めておらず、基本的に受けに回るしかない。はっきりと分かっているのは、火星軌道上の小バームと地球圏に到達したアクシズくらいのものだ。

 

「む、我らが指揮官のお帰りか」

 

 連絡が来たわけでもないのに、シロッコは木星で磨かれたそのニュータイプ的な感性により、ギリアムが日本から戻ってきたのを察し、口元を綻ばせた。

 出立前には異様な緊張と決意に固められたギリアムの精神が、今は常の冷静さと穏やかさを取り戻しているのを感じ取ったからだ。

 

「私の感覚が拡大されている? これもGN粒子の影響か……」

 

 シロッコは一人呟きながら格納庫へと足を向け、トランザムのテストを終えた部下達を労いに行った。ギリアムへは後程、話を聞きに行けばそれでよい。

 そうしてシロッコが格納庫の一つへ向かう傍ら、帰還したギリアムは模擬戦を監督中のレモンのところへ顔を出していた。アクセルやヴィンデルの姿はなく、強化硝子の張り巡らされた管制塔にレモンの姿があった。

 

「あらお帰りなさい。その顔、どうやら収穫があったようねえ」

 

 いつもどこかアンニュイな様子を纏うレモンだが、顔を見せたギリアムの晴れ晴れとした様子には素直に喜びを見せた。指揮官のメンタルが好調であるのに越したことはない。

 

「いくつか懸念が解消されたのでな。Wシリーズと新型機の調子はどうだ?」

 

「見てのとおりよ。アクセルとヴィンデルが相手を買って出てくれたお陰で、思った以上のデータが取れているわ」

 

「W16エキドナ・イーサッキとW17ラミア・ラヴレス。それにアンジュルグとラーズアングリフか。アシュセイヴァーは君の専用機扱いか?」

 

「アシュセイヴァーに限らず予備機は何機か組み上げる予定よ? ソウルゲインとヴァイサーガの後継機の設計も進んでいるし、これからの戦いにはまだまだ戦力が必要でしょ?」

 

 シロッコ謹製のMSと別の区画で模擬戦を行っているのは、アクセルのソウルゲインとヴィンデルのヴァイサーガに対し、甲冑を纏った女性天使のようなスーパーロボット・アンジュルグと戦車を無理やり人型にしたような赤い機体ラーズアングリフだ。

 アシュセイヴァーを含めた五機全てがスーパーロボット大戦Aの主人公機として選択できる機体で、レモンが開発したのもなにかの縁と言える。ギリアムにとっては、かつて訪れた世界で敵味方双方の立場として関わった機体群である。

 

「アンジュルグとラーズアングリフの動きは正確で迷いがないが、その分、読みやすいな。正確一辺倒なのはエキドナとラミアの経験値が不足しているせいか」

 

 ギリアムが口にしたのは、無人機や才能はあるが経験の無いパイロットに見受けられる欠点だ。それはレモンも承知しており、特に悔しがる様子を見せずに鷹揚に頷き返す。

 ギリアムが指摘した通り、感情の揺らぎが見られない正確、精密な連携を見せるアンジュルグとラーズアングリフを、ソウルゲインとヴァイサーガは危なげなく対処している。

 経験不足の指摘されたラミアとエキドナだが、それでも現時点の二人は並みのパイロットを大きく上回る技量を見せている。レモンがどれだけ優れた技術者であるか、そしてWシリーズがいかに高性能であるかを物語っている。

 

「今乗っている機体以外の機体の操縦マニュアルや優れたパイロットの操縦データをインプットしてあるのだけれど、それを統合して実際の操縦に反映させるにはまだまだ実際の操縦経験が足りないもの。

 でもそれは人間もあの子達も変わりはないわ。経験はこれから積み重ねて行けばいいのよ。違うかしら?」

 

「いや、違ってはいない。問題は経験を積む時間が残されているのかどうか、だ」

 

「それは私達だけではどうしようもない問題ね。他の連邦軍とDCの活躍に期待するしかないわね」

 

「彼らなら充分にやってくれるさ。ところでヘパイストスラボから送られてきたガミアQは、なにか役に立ったのか?」

 

「ええ。以前からWシリーズの開発を進めていたけれど、ちょうどいい刺激になったわ。量産型のMWも製造は順調よ。兵員の少なさを十分に補えるわ。それで成果は懸念の解消だけなのかしら?」

 

「プルート財閥の建造しているトライロバイト級万能ステルス母艦の一隻、ギャンランド受領の確約を取り付けてきた。スペースノア級と渡り合える艦だ。これからの俺達にとっては有用な母艦になる」

 

「へえ、ストーク級でも母艦としては十分だけれど、これからは宇宙も活動の視野に入れるのね」

 

「そう覚悟しておいてくれ。戦場は地球と宇宙へと次々広がってゆく。俺達も本腰を入れて活動しなければ、地球人類の滅亡も冗談では済まなくなる」

 

 すっと細められたギリアムの瞳に射抜かれるように見られ、レモンは表には出さずにやっぱりねえ、と納得していた。

 レモンは初めてギリアムと顔を合わせた時から、常人とは異なる何かを持っているのを、アインストとしての感覚から薄々察していたのである。

 

(ボス曰く、異世界からの来訪者の一人。これまで地球人類に対して有益な行動だけをしていたから軽度の監視対象としていたと聞くけれど、ここに来て本腰を入れて活動し始めたようね。

 それに彼も私の事を怪しんでいるわよねえ。前にヘイデス総帥とモニター越しに少し話をした時も似たような反応があったけれど、ギリアムもそう。

 私がアインストだと気付いているか、それともどこかの勢力と繋がりがあると判断していると考えてよさそうだわ。今のところ、私は人類にプラスになる活動だけをしていると自負しているけれど、いつか排斥に動くかもね)

 

 それに結局のところ、アインストの中でレモンは中間管理職に過ぎない。絶対権力者であるノイ・レジセイアの意思一つで、どうとでも行動方針が変わるのは否めない。

 

(アルフィミィは色々と拾い物をしているというけれど、ボスはこの状況をどう見ているのかしら? 一年戦争前後から急速に複数の世界の因果が混ざり始めているというし、地球人類にとって、そして私達アインストにとっても分水嶺の年になりそうね)

 

 レモンはギリアムから視線を外し、ビームバリアーで覆った試験場の中で飛び回るアンジュルグとラーズアングリフを見る。

 レモンの愛娘とも言えるエキドナとラミアは、天性のセンスと歴戦の経験を併せ持つアクセルとヴィンデルに抑え込まれ、劣勢は誰の目にも明らかだ。

 

(どうなるにせよ、あの子達には自分の意志で進む道を選んで欲しいわね。まずは自分の意志を得るところからだけれど)

 

 ほどなくして機体とパイロット双方の試験が終わり、ギリアム、シロッコ、ヴィンデル、レモン、アクセル、ラミア、エキドナがブリーフィングルームの一室に集められていた。

 サラとシドレはシロッコがニュータイプ候補生として直々に引き抜いてきたとはいえ、殻の取れていないヒヨコも同然である為、この場にはいない。今頃はレポート作成を兼ねた休憩中だ。

 会合の目的はギリアムがヘイデスと会談を持つ前から行われていた試験の結果について、そしてヘイデスとの会談の成果を報告する事である。

 

「皆、俺が留守の間、よく部隊を守ってくれていた。まずはそのことに感謝する。ではこれまで行った試験の成果について報告をしてもらおう。シロッコ」

 

「疑似太陽炉と核融合炉の併用試験はおおむね順調と言える。どちらも機体の主動力として併用すれば無視できない不具合が生じるが、それぞれに異なる役割を持たせて運用する限りにおいては、支障は少ない。

 またGN粒子を推進機構に用いることによって、推進剤を必要としない機体の実現も十分手に届く範囲となっている。GNフィールドとトランザムシステムの実用試験の結果は、それぞれの端末に送ったデータの通り、こちらも課題は残しつつも順調だ。

 また緊急時にGN粒子を武装へ転用する技術については研究中だが、疑似太陽炉の生産体制も含め、総じて順調であると報告しよう」

 

 既にボリノーク・サマーン、パラス・アテネだけでなくメッサーラにも疑似太陽炉を搭載し、シロッコみずからが重力下での試験運用を終えている。シロッコの愛機として名高いジ・Oも疑似太陽炉のデータ収集が終われば、製造が行われる予定だ。

 

「流石の手際だな。疑似太陽炉の研究と開発はそのまま行ってくれ。ヘパイストスラボの所長が研究している、オリジナルの疑似太陽炉のデータ取引の確約も取り付けてきた。

 これがあちらの現在の研究データだ。後で目を通しておいてくれ。それとレモンからWシリーズの進捗状況は聞いているが、実際に手を合わせてみてどうだった、ヴィンデル、アクセル?」

 

 ギリアムの問いに答えたのはアクセルだ。ヴィンデルは信頼を置いているアクセルならば、自分の言いたいことを全て言うだろうと傍観に徹する態度を取っている。

 

「操縦技術だけは一丁前だが、それを活かしきれていない。並みの相手ならそれでも通用するだろうがな」

 

 アクセルの口から出来てきたのは、壁際に並び立つラミアとエキドナへの辛口の評価だ。

 

「見ていた俺とレモンも似たような評価だが、そこはレモンの技術力を信用する。経験を積めばエース格にまで成長する素養はあると認めているのだろう?」

 

「ふん、結局のところ、使える価値があるかどうかを証明するのは奴ら自身だ。それに変わりはない」

 

「一から兵士を育てるよりも手間が省けるのは利点だと認めよう。MWナンバーの量産は許可してもらえるのだろうな、ギリアム中佐?」

 

 現在、シャドウセイバーズの多くの人員は元々ヴィンデルが指揮を執っていた部隊員で、その他にギリアムが引き抜いてきた他の複数の部隊の人員による混成だ。そこにMWが加われば、ますます部隊内でのヴィンデルらの比率は増す事となる。

 ヴィンデルらの発言力の増加の危険性を認識したうえで、ギリアムはヴィンデルからの問いに首肯する。

 

「ああ。機動兵器のパイロットとしてもそうだが、それ以外の役割も任せたい。侵略者達の拠点制圧もこれから発生する可能性が十分にある」

 

「レモン?」

 

「ええ、任せて頂戴。もう設備は整っているのだから、必要な資材と時間さえもらえればご要望に応えて見せるわ。ところでこの子達ばかりではなくアンジュルグとラーズアングリフについても意見を聞かせてもらえる?」

 

「ラーズアングリフは砲戦型MSとしては及第点以上の仕上がりだろう。よりMSとしての運用に適したガンタンクとも言えるが、それだけに類似の機体との差別化を図る必要がある。機動性や運動性は維持したまま更なる火力と装甲の確保は、最低限行わなければなるまい」

 

 ヴィンデルがこのようにラーズアングリフを評価し、アクセルがラミアの乗ったアンジュルグをこう評価した。

 

「アンジュルグだが、スーパーロボットとして、MSでは対抗しきれない大質量機や重装甲の敵機を相手に出来るだけのパワーとスピードはある。装甲はやや心もとないが、その分、動きはヴァイサーガよりも速い。悪くないが、しかし外見がいささか趣味的すぎるぞ」

 

 そう告げるアクセルの顔は渋面になっている。レモンの開発したアンジュルグは翼の生えた女騎士か前述のとおり甲冑を纏う女性天使を思わせるデザインをしており、アフロダイAやミネルバXと同じく女性的なボディラインだ。

 スーパーロボットと言えばどれも独特なデザインだが、アンジュルグは仮にも連邦軍が正式に開発したものとなる。それがこうも趣味的なのは、と抵抗があるらしい。

 

「いいじゃない。美人の女の子を美人の機体に乗せる。DCのような広報も兼ねた部隊だったら、宣伝効果絶大で人気の出る組み合わせでしょ。実際、機体もパイロットも強いし、そう簡単には落ちないのをあなた自身が理解してくれていると思うけど?」

 

「お前は相変わらず口が回るな」

 

「ふふ、あなたならよく知っているでしょう。そういうわけだからエキドナ、ラミア、あなた達には期待しているわ。無茶をしない程度にがんばりなさい」

 

「はっ」

 

 創造主であるレモンに目を向けられた二人は、表情をわずかも変える事無く短い返事をするだけだった。

 いずれにせよシャドウセイバーズの戦力は着実に増しており、ギリアムがヘイデスに託された万が一の保険としての役目を果たすのに少しずつ前進している。それを受けてギリアムが音頭を取って話を進める。

 

「疑似太陽炉、Wシリーズ、新型機、どれも進捗は順調のようだな。お前達もすでに知っているだろうが民間のスーパーロボットとプルート財閥の全面的バックアップにより、地球連邦軍第十三独立部隊“ディバイン・クルセイダーズ”が結成された。

 Dr.ヘルや恐竜帝国、妖魔帝国を始めとした地球内外の勢力と関係の深い機体を一か所に纏め、敵勢力の注目を惹く意図と侵略者に対して決して負けない常勝の部隊を作り上げ、戦時中の英雄として連邦市民の希望とする意図を含む部隊だ。

 彼らだが、部隊を二つに分けて行動するようだ。宇宙に上がる部隊はエゥーゴのアーガマ隊を含め強奪された新型ガンダム開発計画の機体を追うアルビオン隊と共に、真ジオンへの追撃と調査を主任務にベガの動向を探る。

 地上部隊はグレンダイザーを除くスーパーロボットが残り、コロニーが送り込んだガンダムが同行する。鹵獲したコロニーのガンダムにブレックス准将を通じて派遣されたパイロットが搭乗している、という建前だ」

 

「それでOZやティターンズが納得するとは思えんな」

 

 シロッコの意見には、ヴィンデルとアクセルも同意だった。

 その二つの組織ならば、コロニーのガンダムと行動を共にしているのを理由にDCへ攻撃を仕掛けてくるのも、あるいはスーパーロボットの強引な接収を目論んでもおかしくはない。

 まあ、スパロボではよくある事だ。宇宙や異次元からの侵略者が攻めてきている中で、地球人同士が争うなど愚かしい、と嘆きながらも争うのが当たり前のクロスオーバー世界なのだから。

 

「DCなら問題あるまい。だがDCが部隊を二つに分けた事で、総合的な戦力は低下している。これを好機と見て魔竜機連合や異星同盟が積極的に攻撃を仕掛ける可能性は高い。

 俺達はその隙を突き、奴らの拠点の調査と敵勢力の撃破を狙う。DCという大きな輝きに目を奪われた連中を、影の中から刃で一突き、だ。俺達に相応しい戦い方だろう?」

 

 シニカルに告げるギリアムに異を唱える者は、誰も居なかった。

 

 

「行ってしまいましたねえ」

 

「君もそろそろここを出立するんだよね?」

 

「ええ。私が直接見る必要のある機体のチェックは終わりましたし、納品も滞りなく。エリュシオンベースに戻って、残りの新型機の開発を終わらせておきます」

 

 東京湾上に浮かぶアレスコーポレーション極東支部の一室にて、窓から覗く青空を見上げながら、肩を並べるヘイデスと所長の会話である。

 彼らの愛するシュメシとヘマー、そしてオウカやアラドら元スクールの子供らを乗せたハガネがアーガマやアルビオンと共に宇宙へ上がり、彼らの胸には寂寥が領土を広げていた。

 

「ところで随分とまあ、大きな秘密を抱えていらしたのですねえ?」

 

「あ、ああ~、まあ、ね。誰にも明かすことはないと思っていたのだけれど……」

 

 所長には珍しく、ヘイデスをじとっと睨んでいる。理由は察せられるだろうが、ヘイデスがギリアムに彼の素性を伝えたのをきっかけに、最愛なる女性にもこうなれば伝える他ない、と腹を括った為である。

 そうしてヘイデスはギリアムに万が一の時は自分を殺してでも止めるように、と依頼した件を除いて、彼の秘密を所長に伝えたのだった。その結果が、所長のジト目なのだ。

 

「はあ、随分と大きな秘密を抱えていたのも、それを最初に明かしたのが私でないのも、はっきり申し上げて業腹業腹大業腹ですが、どうりでと納得はしました。一年戦争の直前、あなたがアクシオの開発を私に依頼してくる前まで、私、あなたの事が嫌いでした」

 

「へあ!? そうなの!」

 

「そうなのです。あなたと来たら上辺だけの笑みを浮かべて、他者を役に立つか立たないかで判断している節がありありと見受けられましたからね。

 万が一、追跡されないように仕込みを終えたら姿を晦ましてやろうと準備していたのに、あら不思議、いきなり人の心の分かる別人になっているのです。頭でも打ったのかと冗談ではなく疑ったものですよ」

 

「そう。……ううん、確かにまあ、振り返ってみれば典型的な人の心が分からないというか、分かっていて無視するタイプの人間だったからね、僕」

 

「そうするだけの能力があったから、なおさら厄介で嫌味で憎たらしさを百倍にしていましたよ。ですからまるで別人になったのには心底驚いたものです。警戒しながら観察していましたけれど、演技でも何でもないと判断するのに時間はいりませんでしたね。

 変わった方のあなたは分かりやすいくらいに平凡で、ありふれた善良性を持った普通の良い人でしたから」

 

「うーん、褒められている?」

 

「褒めていますよ。ヘイデス・プルートという地球圏屈指の権力と資産の持ち主になっても、それに溺れずにいるのは十分にすごい事です。まあ、酒色に溺れるよりもそもそも人類滅亡案件が多すぎたせいかもしれませんが」

 

「正直、いつ胃に穴が開くかな、と思いながら生きている感じだよ。でも君と子供達と自分と、それと後味が悪くない程度に世界も平和にしたいから、必死に頑張っている」

 

「後味が悪くない程度に、ですか。それで今日まで頑張ってこられたのです。あなたは十分に立派ですよ。例えあなた自身があなたを認めなかったとしても、他の誰かがあなたを非難したとしても、私はあなたの側に立ちます。駄目なものは駄目と言いますけれどね。

 それにシュメシとヘマー、クリュメノスとコレーもあなたの味方で居てくれますよ。いえ、もっと居るでしょうかね。

 あなたはあなたとしてこの世界で生きて、そして幸せを求める努力をこれからもなさってください。あなたの幸せが私にとっての幸せでもあります。

 それ位には自分が愛されていると自覚なさってくださいな。自分で言っていたら世話はありませんが、私、少しは他人様より見られる容姿と才能があると自負しております。その私にとっての最愛があなたなのですから、ご自分の価値を決して貶めないでくださいね」

 

 堂々とあなたを愛していると改めて告げたも同然の所長に、ヘイデスはぽかんとした顔になってから、良い大人のくせに顔中真っ赤になった。自己の存在を肯定された幸福感も相まって、彼の心はこの上なく満たされていた。

 

「いやあ、子供でもあるまいし恥ずかしがるのもなんだけれど、でも、そう言ってもらえると嬉しいものだね。心がうんと軽くなったよ。ありがとう。君と結婚したのは僕の一番の幸福だ」

 

「ええ。もっと誇ってくださっても構いませんよ。私もあなたに告白した事を、人生で最良の判断だったと誇っておりますから。さて、あなたの素性は分かりました。

 残るはあなたの抱えている知識です。フラスコで行われていた実験について、教えてもらいましょう。あなたの危惧している事態を把握すれば、私も新型機と新技術の開発すべき傾向を明確に出来ますからね。

 それにしても、異なる世界を交錯させ、混ぜた世界とは……。ま、昔ながらの古典的な設定ですわね」

 

「ありゃ、そういう感想になるのかい?」

 

「何百年も昔から娯楽界隈で取り扱われていた題材ですわよ。自分達が生きているのがそういう世界だ、という驚きこそあれ、フラスコのコンセプトそれ自体は別に珍しくないですわ」

 

「……うん、そう、かも。でも、最初は夢から始まったんだと思う。もし、あの時、あのキャラとロボットが居たら、とか彼と彼だったらどんな話をするだろうとか、彼が居てくれたらあのキャラは死なずに済んだかもしれないとか、ハッピーエンドを迎えられるかもしれない。

 そんな夢の競演が見たくて始められただろう実験だ。バッドエンドもあるけれど、それでもハッピーエンドが基本だよ。よりよい夢と結末を求められて作られた世界なんだ。だからこの世界でも、必ずより良い未来を掴み取れると僕は信じたい」

 

「ロマンチストと言いたいですけれど、フラスコの外に最も詳しいのはあなたですからね。あなたがそういうのなら、私も希望を持ってそう信じます。

 さて、そうなると問題はあなたの抱えている知識です。これからどんな危険が起こり得るのか、この世界ではどんな対抗策が実現できるのか。あなたが胸の内に抱えてきた不安の全てを、私にも共有させてくださいな」

 

「ふふふ、ありがとう。君には生涯頭が上がらないな。分かった。けれど覚悟をして聞いて欲しい。問題と同時にソレに対する解決策もセットなのが基本だけれど、異なる世界の混ざり合ったこの世界では、どう変質しているか分からないから」

 

 そうしてヘイデスが語り出すインベーダー、ゲッター艦隊、マジンガーZERO、宇宙怪獣、宇宙超獣、ゼントラーディ、プロトデビルン、外なる神々、カドゥム・ハーカームやアインストと言ったバンプレストオリジナル等々……と手加減しろ馬鹿! と言いたくなるほどの数えきれない脅威を聞かされて、さしもの所長も宇宙を背景に背負った猫のような表情になるのだった。

 

<続>

 

■ボリノーク・サマーン(核融合炉・疑似太陽炉併用型)が開発されました。

■パラス・アテネ(核融合炉・疑似太陽炉併用型)が開発されました。

■サラ・ザビアロフが登場しました。

■シドレが登場しました。

■アンジュルグが開発されました。

■ラーズアングリフが開発されました。

■W16エキドナ・イーサッキが開発されました。

■W17ラミア・ラヴレスが開発されました。

■MW(量産型Wシリーズ)が開発されました。

■トライロバイト級万能ステルス母艦が開発されました。

 

☆ヘイデスが所長に素性を伝えました。

☆所長の気力が+50した後、-30しました。

 

◇こそこそ裏話 もし本作がゲームだったら?

 

・ヘイデス黒幕ルート

・ヘイデス主人公→人格乗っ取りからの黒幕ルート

 

※上記二つのルートではヘイデスと所長が死亡します。

 

・ヘイデス主人公ルート

上記ルートでのみヘイデスと所長は生存します。

 

ヘイデスと所長を生かしたい場合にはフラグ管理をはじめ諸々の要素を満たして、ヘイデス主人公ルートをクリアしましょう!

 



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第三十四話 敷島博士はただのマッドではない。狂ったマッドである※加筆修正

いつも誤字脱字のご指摘とご感想ありがとうございます。
夏らしく暑くなってきた日々の中、たいへん励みになっております。

8/10 サブタイトル変更

・たまに敵が可哀そうになるのもスパロボらしい
  
 ↓

・敷島博士はただのマッドではない。狂ったマッドである。

私の勉強不足によりG3スペイザーが原作の各スペイザー未満疑惑が生じたので盛りました。せめて火力は上回らないと敷島博士の顔と名前に泥を塗ってしまいますからね。


 その日、ヘイデス・プルートは周囲を護衛でガチガチに固めた車中にあった。

 光学迷彩を使用中のアークゲインやヴァイスリッター・アーベントらはもちろん、軍用パワードスーツを着込んだ屈強の兵士を腹に抱えた装甲車の姿もあり、どんな要人や軍事機密を運んでいるのかと言いたくなる陣容である。

 実のところ、ヘイデスは地球連邦政府ならびに連邦軍の主要スポンサーと言っても過言ではない滅私奉公の要人なので間違いではなかったりする。

 そして当のヘイデスはというと……

 

(いくら秘密を共有できる相手が増えたとはいえ、一度に話し過ぎたな。ギリアムの件から続いて少し気が緩んだというか、タガが外れかけたというか、猛省せねば!)

 

 つい先日、自分の素性と恐れている可能性について愛妻である所長に暴露した件を振り返り、送迎車の中で一人反省会を開催していた。

 ヘイデスの場合は前世においてあくまで娯楽の一種として、かつ一作ごとにインターバルを置いてスパロボを遊んでいた為、小分けに情報を得ていた。

 しかし所長の場合は一度にやれイデオン、やれ黒歴史、やれアポカリュプシス、やれスパイラルネメシス、やれ虚無る、と濃すぎる情報量を一度に流し込まれたのだ。

 

 そりゃあ、ヘイデスをして初めて見る宇宙猫的な表情にもなろうというもの。所長はヘイデスが話し終えてから五分ほどで再起動を果たしたが、これは流石の胆力だった。

 一応、パンドラボックスもとい黒の英知から、多元世界の存在を朧気ながら理解していたのも早々に再起動する一助となっただろう。

 

 そうして所長は“やってやりますわ、人類の底力を御覧にいれましょう!”と自棄になる二歩手前くらいの気合を見せて、エリュシオンベースへと帰っていったものだ。

 パンドラボックスは自動工作システムもセットになっているから、本来ならこの世界では作りえない素材や精度の工作が可能となっている。オーバーテクノロジー、ロストテクノロジー、エクストラテクノロジーてんこ盛りの機体が爆誕する可能性もある。

 

(おそらくパンドラボックスは黒の英知に相当するはず。それを利用できる以上、所長ならかなりのものを作ってくれる。

 その為の最高・最良・最適の環境を用意するのが俺の役目だ。とはいえ、それ以外の方法で少しでも地球圏の戦力を増やしておくのに越したことはない。だから……)

 

 車が止まり、ヘイデスは目的地である科学要塞研究所――偉大なる勇者グレートマジンガーの拠点に到着したのを悟った。

 

「原作よりも早く腰を上げてもらいますよ、剣造博士」

 

 機械獣軍団の大元となったミケーネ帝国の復活に備える科学の城塞へ、ヘイデスは護衛を引き連れて足を踏み入れた。

 科学要塞研究所所長の兜剣造はマジンガーZの開発者兜十蔵の実子であり、表向きは実験中の事故により死亡したとされている。

 しかし十蔵の手によってサイボーグとして復活し、故人のまま世間の目と甲児、シローら実子の目すら欺いて、いずれ復活するミケーネ帝国に対抗すべく密かに活動を続けて今に至る。

 

 ヘイデスと剣造の付き合いは、各研究所の博士達との交流会にまで遡る。

 原作における科学要塞研究所の具体的な位置などはすっかり忘れていたヘイデスだが、弓教授や十蔵との付き合いと世界中の科学者への膨大な支援が目に留まり、剣造との関わりも得ていたのである。

 なお原作では科学要塞研究所は伊豆半島の海岸沿いにある、という設定だ。

 

 まあ、敵がミケーネ帝国どころか太古に覇を唱えていた異種族や星の彼方からやってくる異星人複数と来ては剣造も焦った事であろうし、更なる資金と資材、人員を求めて信頼のおけるスポンサーを得ようとするのはおかしな話ではない。

 所長室に通されたヘイデスは剣造と向かい合い、出されたコーヒーを半分ほど飲んでから口を開いた。

 所長の精神に負荷をかける形となり申し訳なさが際限なく湧いてくるが、秘密を最愛の女性と共有したヘイデスの心は軽く、語り出しは実に滑らかであった。

 

「お久しぶりです、剣造博士。ご壮健そうでなによりです」

 

「ヘイデス総帥こそ、以前よりなにか雰囲気が明るくなられましたな」

 

「ふふ、肩の荷を分け合える相手が出来ましてね、そのお陰です。ご子息の甲児君と父君のマジンガーZの活躍のお陰でもあります」

 

 ちなみに十蔵は命こそ拾ったが、意識不明の重体である。

 

「ええ、甲児とマジンガーZの戦いは私も目にしています。不肖の息子を助けてくださっている弓教授やご息女のさやか君、それに共に戦ってくれている仲間達。そしてヘイデス総帥、理解者であり支援者でもある貴方の存在が大きいでしょう」

 

「そう言っていただけるなら、僕もこれまで頑張ってきた甲斐があったというものです。さて、そこまで褒めて頂いていてこう申し上げるのは心苦しいのですが、剣造博士、グレートマジンガーの進捗は如何ですか?」

 

 率直に問うヘイデスの瞳に悪意は無く邪気は無い。しかし、戦況をよりよくする為ならば、原作の流れなぞもはや知らぬわ、という覚悟があった。まあ、第一話からガンドールが使えたり、ベガ星連合軍が壊滅寸前だったりするスパロボもあるしね。

 剣造はヘイデスの言わんとしているところを察し、椅子の背もたれに体を預けて数秒だけ思考に時間を割いてから口を開いた。

 

「マジンガーZのジェットスクランダーのデータをはじめ、グレートマジンガーを実戦投入するのに必要なだけのデータは得られた、と申し上げましょう。パイロットである鉄也もグレートマジンガーの力を十全に発揮できるよう、過酷なトレーニングを欠かしていません」

 

「素晴らしい、流石は兜剣造博士と剣鉄也君です。マジンガーと縁のある方達は、皆、人類の宝と言いたくなるくらいに優れている。いえ、優れているからこそマジンガーと縁を結ぶのかもしれませんね」

 

 大抵の人間が口にすれば歯の浮くようなお世辞だと思われるようなセリフも、原作における描写や設定、ゲームでの活躍を知っているヘイデスからすれば、そうでなくちゃ困るんだよお~という血の涙を伴う思いがあるので、本気で口にしているのだと誰もが実感する。

 

「ですが以前にも申し上げた通り、私はグレートマジンガーを来るミケーネ帝国への切り札と考えています。そして世界の情勢を考えると敵はミケーネ帝国だけとは限りません。

 幸い、連邦軍や世界各地のスーパーロボットとの協力により、今明らかとなっている敵とは互角以上に戦えています。もしグレートマジンガーを表に出すとしても、今戦っている若者達が真の苦境に追い込まれる時まで、伏せておくべきではないでしょうか?」

 

「お考えは僕もよく分かります。ミケーネ帝国だけでなくムゲ、ボアザン、キャンベル、ベガといった異星人達にはまだ本星からの援軍もあり得ますし、バサ帝国も本腰ではありません。地球内に眠る勢力も追加がないとは断言できない状況です。

 まさか僕達の住む地球がここまで地獄の修羅道も真っ青な危険地帯だったとは、魂まで震えてしまいそうですよ。

 しかし各研究所の開発したスーパーロボットとそのパイロット達は、この状況において紛れもなく地球人類にとっての希望です。

 それを異星人達も理解しているから、手段を問わず彼らを倒そうと躍起になって多くの戦力を割いています。そのお陰で通常の戦力に掛かる負担が減っているのも事実です」

 

 もちろんDCやシャドウセイバーズに限らず、表に出ていないだけでエース達や経験を積んで技量を上げた軍人達の奮闘があればこそ、地球圏は侵略者の支配を跳ねのけて今日に至っている。

 ヘイデスが地道に地球人類の戦力を底上げする為に私財を削り、身を削り、神経を削り、胃壁を削った成果もある。

 

「博士、ご子息は、これまで以上にDr.ヘルの機械獣軍団をはじめとした侵略者からの猛威に晒されます。もちろん彼には頼もしい仲間がいますし、我がプルート財閥と地球連邦軍も全力でバックアップします。

 しかし、それでも十分とは言い切れない恐ろしさが昨今の地球情勢にはあるのです。兜甲児君とマジンガーZの為、彼らに憧れ、期待する子供達の為、そして貴方自身の為にもここで立ち上がっていただきたいのです」

 

「私自身の為と申しますと?」

 

「分かっておられるはずだ。命懸けの戦場に立つ以上、甲児君の身にいつ不幸が降りかかってくるとも限らないことを。そうなった時、貴方は必ずや後悔されます。それこそ血を吐くような後悔を。

 甲児君とシロー君に父親として再び会いたい気持ちが無いなどと、同じ子を持つ親として言わせはしませんよ」

 

「……しかし、グレートマジンガーは世界の為に作った力です。それを我が子可愛さに私情で投入の時期を決めるなど」

 

 うーむ、流石の責任感というか真面目さというか、とヘイデスは心中で唸った。孤児だった鉄也とジュンを引き取り、パイロットとして過酷な訓練を課して彼らから子供らしい時間や青春時代を奪っている事にも引け目を負っているだろう。

 その点についてはオウカや双子らを戦場に立たせてしまったヘイデスも、大いに共感するところだが……。

 

「個人的に私情でも大いに結構と申し上げますが、ではグレートマジンガーを現在の状況で投入するメリットについて、お伝えしましょう。

 マジンガーZはスーパーロボットの中でも特に著名な機体で、子供達からの人気も極めて高い。あの機体と甲児君の活躍が、どれほど市井の人々と前線で戦う兵士達にとって救いとなっているかは語るまでもありません。

 そんな彼らが窮地に陥るだけならまだよいのです。窮地からの逆転劇はますます彼らの英雄性を高め、人々がマジンガーZへと向ける信頼と誇らしさを高めることに繋がりますからね。

 しかし万が一にでも敗れる事となれば、これまでの活躍の分、人々の心に圧しかかる絶望や恐怖は計り知れないものとなります。

 これはマジンガーZに限った事ではありませんが、“負けないでという祈り”が“負けてはならないという呪い”に変わりかねないほどにです」

 

「マジンガーに敗北は許されない。しかし現実はそこまで甘くはない。だから、グレートマジンガーという新たな力を手遅れになる前に世界に知らしめよと、そうおっしゃるか」

 

「ええ。加えてもう一つ、他人の僕の目から見て博士が鉄也君やジュン君に厳しく接する一方で、我が子同然に愛情を抱いているのは分かります。二人が貴方の事を慕っているのも間違いありませんしね。

 あなた達だけの話なら、その関係に口を挟むつもりはありません。しかし甲児君とシロー君が絡むとなれば、話は別です。あなたを父の如く慕う鉄也君と血は繋がっていても長らく死んだと思っていた甲児君。これはもう絶対に拗れます。間違いなく」

 

 だって原作でもスパロボでも、特にスーパーロボット大戦α外伝でこの問題は爆発しているもんなあ、とヘイデス。

 鉄也も甲児もまだ二十歳にもならぬ少年で、戦場に立って戦う尋常ではない環境に置かれているのだから、理性で分かっていても抑えれきれない感情が不意に爆発したって無理もないと同情することしきりである。

 

「ですからグレートマジンガーが登場しなければならないほど切迫した状況になる前に、甲児君と鉄也君、そして貴方の顔合わせを済ませ、これまでの事情を説明して信頼関係の再構築を図るべきなのです。

 下手をすれば戦闘の最中に鉄也君と甲児君がお互いへの嫉妬を爆発させて、思わぬ被害が出るのが僕には目に見えるようです。

 博士、人間は感情で動く生き物です。脳の作りからして理性が感情を抑えるように出来ていますが、それでもまず感情ありき、心が原動力となる生物です。

 例え十年間に及ぶ訓練を積んでも、例え数多の戦場を経験しても、鉄也君は甲児君と貴方との血の繋がりに嫉妬し、甲児君は鉄也君と貴方が過ごした時間に嫉妬します」

 

「そう、だろうか……」

 

 科学者としてはともかく父親としての経験値においては人並みか、事情によってそれ未満の剣造は初めてヘイデスの前で弱気な表情を浮かべる。半ば機械と化した体を持った天才科学者とはいえ心は人間のままなのだ。それがヘイデスには好ましい。

 

「博士は鉄也君からどれだけ慕われているかを、一度把握された方が良いですね。鉄也君とジュン君に対して恥ずかしいかもしれませんが、きちんと愛情と感謝をお伝えなさい。

 そして甲児君とシロー君は死人が目の前に出てくるとなれば動揺するでしょうから、どうして姿を消していたのか、どうして今になって姿を見せたのか。省略しないできちんと、一から百まで、余すところなく伝えてください。

 そして甲児君と鉄也君の間には必ずわだかまりが出来ますから、それを少しでも和らげるように心を砕いてください。これは“四人”の父親である貴方にしか出来ないことなのです」

 

 ヘイデスは身を乗り出して、目の前の一回りも二回りも年上の男性の手を取った。冷たいサイボーグの手には、当然、温かい血など通ってはいないが、それでも心は通っている。

 

「親というものに正解は用意されていません。ですが正解のない行動であっても、より良くあれと覚悟し、行動しなければ何も始まりません。むしろ悪化する事さえあるのが世の中です。博士、どうか貴方の子供達の為に勇気を出してください」

 

 そう励ますヘイデスに、剣造は力強く頷き返すのだった。

 剣造博士から色よい返事をもらい、そのままグレートマジンガーの状態を確認し、鉄也達と親睦を深め、ヘイデスはやるべき事をやったという充足感を胸のうちに抱きながら、車の座席で情報端末に目を通す。

 ガチガチのセキュリティを施した手のひらサイズの端末の画面には、とある少女とその祖父らしい老人が映し出されている。

 

「次はグレース・マリア・フリードさんとお話をしに行くか。それにそろそろエゥーゴのスポンサーの地位をアナハイムから頂戴する用意もしないとな」

 

 デューク・フリードの実妹マリアが原作通り従者と共にこの地球に逃げ延びていたのを、プルート財閥の情報網が掴んだのだ。

 彼女だけでなく早乙女ミユキこと恐竜帝国帝王ゴールの娘ゴーラ王女をはじめとした悲劇のヒロイン達についても、可能な限りの情報収集に務めている。

 スパロボでは生存ルートがあったりなかったり、そもそも登場しなかったりと扱いは様々な彼女達だが、原作主人公達のメンタル面を考慮すれば出来る限り生存の可能性を模索したいと、ヘイデスは手を打っているのだった。

 

(戦力的に見れば彼女達を助けても大きなプラスにはならないかもしれん。だから俺の自己満足と言われれば否定は出来ないが、顔も名前も素性も知っている相手だ。助けられるなら助ける方が良いに決まっている)

 

 

 一方その頃、宇宙に上がったDC艦隊はシロガネとの合流地点に向かう最中、各機動兵器の宇宙環境での訓練を並行して行っていた。

 地上戦用装備のままであったGP01は格納庫に仕舞われたまま、パイロットのコウは予備機のグスタフ・カールに搭乗している。

 

 原作ならばこの時点で増長の兆しのあったコウは、シーマ艦隊との遭遇戦でGP01が地上戦用装備のまま、自分の用意したプログラムで動かそうとしてニナに散々窘められる。

 では、アムロやクワトロ、ヤザンにブランといった一年戦争経験者のエースがずらりと揃ったこの部隊で増長できるのか、というと答えはノーだ。

 コウとキースはMSパイロットの頂点に君臨するウルトラエースを含んだトンデモ部隊の一員として、モンシアやベイト達にしごきにしごかれていた。

 モンシアのグスタフ・カールが進行方向に背を向けたままデブリを掻い潜って見せるのに度肝を抜かれ、これがベテランかと驚嘆したのはまだ可愛いもので、フェブルウスを仮想円盤獣・戦闘ロボとみなし、

 

「がおー! 食~べ~ちゃうぞ~!!」

 

 とシュメシとヘマーの気の抜ける脅し文句と共に追い掛け回された時には、声とはちぐはぐな速さとデタラメな機動に二人そろって冷や汗をかいたものだ。

 そんなコウとキースをゲラゲラ笑って眺めていたモンシアとベイトも、自分達が同じ目に遭わされると笑う余裕はなくなっていたが、付き合わされたアデルばかりは哀れであった。

 

「あのガキンチョども、可愛い顔して遠慮がねえな!?」

 

 とはグスタフ・カールのコックピットでチューブドリンクを飲んだ後のモンシアの言葉だ。特に何もしなくとも地上、地中、水中、マグマの中、宇宙、ワープ空間と全領域で活動可能なフェブルウスは、今はゼファーのトールギスと追いかけっこをしている。

 

「あっちは本気で遊んでいるつもりらしいが、追いかけられるこっちからしたら堪らんぜ」

 

「付き合わされた私の身になってから言ってくださいよ」

 

 モンシアに同調するベイトも、思わず愚痴を零すアデルの声にも、彼らがこれまで経験した事のない疲労が滲んでいる。ベテランの彼らでさえこうなのだから、コウとキースの疲労はなおさら大きく、またそれを落ち着かせる方法も習熟していない。

 そんな愚痴大会に口を挟んだのは、スクール組から一人置いて行かれたアラドである。オウカ、ゼオラ、ラトゥーニはアポリーとロベルト、イングリッドに宇宙でのレクチャーを受けている最中だ。

 

「シュメシとヘマーはちょっと事情があって中身が幼いんス。久しぶりの宇宙だし、プロメテウスプロジェクトの時の知り合いが増えて、舞い上がってんですよ。勘弁してやってください」

 

「事情ねえ、アラド、おめえも事情ありだろう。あっちのオウカ嬢ちゃんやおめえの相棒、ちびっ子もな。プルート財閥はとんでもねえ金持ちなんだ。いろんなところに顔が利くわなあ?」

 

 モンシアの声には揶揄するような響きと探るような響きの二つが混じり合っていた。今、彼らの乗っている機体はアナハイム系列の機体だが、プルート財閥系の機体についても当然知悉している。

 あれだけの代物を景気よく用意するプルート財閥はかえって不気味でさえある。

 そして今や連邦にアナハイムと同等以上に根を張っている財閥となれば、後ろ暗いことの一つや二つあってもおかしくない。実際、アラドらスクール組もシュメシらも事情はこれでもかというくらいにあることだし。

 

「ヘイデス総帥はそういう悪い事が出来る人じゃないっすよ。もし、本当に悪い事をしようとしたら、死ぬまで悩んで結局実行できないような人です。そんで安心して笑って死にます。

 俺らが戦っているのだって、俺らが無理を言ったからだし、今の状況なら戦場に居る方がかえって安全なくらいだからって、無理やり説得したんス」

 

 アラドの言葉遣いはとても軍人らしいものではないが、一応、彼は軍属ではないのでベイトらは窘めない。まあ、モンシアとベイトは人には言えないくらい普段の素行が悪いのもある。

 ベイトは器用にも機体にも肩を竦ませて、相棒に話しかけた。

 

「ずいぶんと肩を持つが、まあ、そうだろうよ。俺らからすればあんだけの資産家がスポンサーについてくれんなら、補給の心配はいらねえ。それでいいじゃねえか、モンシア」

 

「スポンサーが豪華な分には文句を言わねえでおいてやるよ。ガキのお守りもするたあ、思わなかったが、思ったよりもやるガキだしな。おら、ウラキ、キース、ガキンチョよりも先にへばってんじゃねえぞ!」

 

 グスタフ・カールとジェガン重装型からは、口の悪い上官への威勢の良い返事があった。

 

「はい、コウ・ウラキ、まだまだいけます!」

 

「チャック・キース、同じくであります!」

 

「俺って人より頑丈なんで、あんまり気にしなくて大丈夫ですよ?」

 

「アラド君、そういう気遣いはかえって逆効果ですよ」

 

「そうなんですか、アデル少尉? それなら以後気を付けます」

 

「けえ、これで軍属ならぶん殴って修正しているところだぞ、アラド。にしても宇宙人と一緒かよと思ったら、本物の宇宙人が居る部隊とは俺もわけわかんねえところにきたもんだぜ」

 

「モンシア中尉、差別発言ですよ」

 

 とモンシアを窘めるアデル。

 ただ、まさかエゥーゴの部隊と共に行動するとはアデルやベイトだって驚いたし、極めつけに本物の宇宙人と同じ部隊になった事への驚きは、カツやエマ、カミーユの面倒を見ているバニングやアルビオンのシナプス艦長も抱いているに違いない。

 そしてモンシアとアデルの言うところの宇宙人ことデューク・フリード(地球人名:宇門大介)は、宇宙科学研究所×敷島博士×ヘパイストスラボの合作オリジナルスペイザーのテスト中だった。

 

「しっかしありゃあ、要塞でも落とす気か? とんでもねえバケモンじゃねえか」

 

 そのようにモンシアが呆れた声を出した時、アーガマ、アルビオン、ハガネから彼らに戦闘の光を確認したという緊急連絡が入った。

 にわかに緊張が走る中、即座に動いたのはゼファートールギス、トールギス・シューティングスター、トールギス・コメット、フェブルウス、ヴァイスリッター、そしてグレンダイザーだ。

 DC宇宙部隊でも特に速度に優れる機体が、部隊に先行して戦闘の発生している宙域を目指す。これに訓練後、推進剤を補給中だったヤザンらのギャプランは出遅れた。

 移動中、フェブルウスからアムロとクワトロへこっそりと通信が繋げられた。

 

「あのね、アムロさん、クワトロさん。僕達、なんとなく感じているのだけれど」

 

「どうした、シュメシ」

 

 アムロが最新技術でアップグレードされたトールギス・シューティングスターのGにも顔色ひとつ変えずに問い返すと、ヘマーが答えた。

 

「私達の向かう先に居るの、シーマちゃんだと思うの」

 

「彼女達か。総帥からデラーズ・フリートに潜入中だと聞いていたが、アクシデントでもあったのか?」

 

「下手を撃つようなタマではないからな。しかしシーマ“ちゃん”か。彼女は何度も訂正を求めていたと記憶しているが、シュメシとヘマーだから許される呼び方だな」

 

 SRGバイオセンサーに加えダイレクト・フィードバック・システムを搭載し、以前より追従性と反応速度の向上した赤いトールギスにご満悦のクワトロが、懐かしく微笑ましい記憶に口元を緩める。

 

「だってシーマちゃんはシーマちゃんだよ? ねえ、ヘマー」

 

「うん。シーマちゃんだもの」

 

 どうも双子にとっては自分達の母親でもおかしくない年齢のシーマを、ちゃん付けで呼ぶのに疑問はないらしい。ふ、と小さな笑みを零し、クワトロはヴァイスリッターとグレンダイザーへ通信を繋げた。

 

「エクセレン、デューク、速度を上げるぞ。ついてこられるか?」

 

「オケオケ、大丈夫よ~、ヴァイスちゃんも私も余裕よん」

 

「クワトロ大尉、僕も問題ない。新しいスペイザーも流石の出来だ。そちらの機体に十分追従できる」

 

「そうか。ならば急ぐぞ」

 

 クワトロら先行隊は、必然的に経験を積み、全体的に精鋭になっている連邦軍のパイロット達が我が目を疑うような速度で宇宙を駆けていった。

 そして先行隊の向かう先ではザンジバル改級リリーマルレーンとムサイ四隻からなるシーマ艦隊、グリーン・ワイアット大将の乗るプルート財閥印の全長1,200m超を誇るアルバトロス級宇宙戦艦デューク・オブ・ヨーク、アレキサンドリア級重巡洋艦三隻が戦闘中であった。

 

 デラーズ・フリートへの潜入の為、旧式の装備を使用しているシーマ艦隊は、シーマからして専用のゲルググMであったし、隊員達も同じく懐かしきゲルググMだ。

 せめてもの救いは、ワイアット艦隊のMSがアナハイム系最新鋭機のジャベリンと、HC装備のゲシュペンストMk-IIで構成されている点だ。

 彼らに襲い掛かっているのはベガ星連合軍の円盤獣とミニフォーの大群だ。

 

「ちっ、よりにもよってバケモンとかち合うとはね! ま、事情を知らない連邦の兵士に見つかるよりはマシかい」

 

 シーマは大型のビームライフルを連射し、デブリを弾き飛ばしながら襲い掛かってくる円盤獣を牽制する。ミニフォーでも一撃では撃墜できないのに、それが群れを成して襲い掛かってきているのだ。

 ビームライフルでも有効打足り得ないのに、部下のゲルググMが装備しているマシンガンでは豆鉄砲だ。

 

「しっかしま、総帥んところの兵器は流石だけど、アナハイムの最新型もやるじゃないさ」

 

 原作より四十年近く早く配備されたジャベリンは、特徴的なジャベリン・ユニットからショットランサーを撃ち、大型のビームバズーカで襲い来る円盤獣に確実にダメージを与えて追い払う活躍を見せている。

 シーマがワイアットと落ち合ったのは原作再現ともいえるし、そうでもないとも言える。

デラーズが実行中の“星の屑”作戦の詳細を伝える為に出向いたのは間違いないが、この世界におけるデラーズが原作同様に連邦の宇宙艦隊への核攻撃や地球へのコロニー落としを目論んでいるかと言うと、ヘイデスにしても疑問が拭えない。

 

「まあいい、英国紳士気取りの大将には渡すものを渡したんだ。あたしらは頃合いを見て逃げるさね」

 

 いまだ一機も落とされていない部下達と無事な艦隊を確認し、シーマは撤退のタイミングを見計らい、まるで不意を突くように特殊な暗号回線から聞こえてきた声に思わず“は?”と漏らした。

 

「シーマちゃ~ん!」

 

 それは何度注意しても自分の呼び方を直さなかった、あの愛らしい双子の声に違いなかった。

 

「は? ……ああ、総帥の言っていたDCかい。よりにもよって助けに来たのがあの子らとはねえ。総帥と所長の胃に穴が開いてなきゃいいけど。

 懐かしい顔も揃っているみたいだが、話をしている暇はないか。お前達、ここいらで引き上げるよ!」

 

 シーマは撤退を意味する信号弾を打ち上げ、名残惜しさに後ろ髪を引かれながら、急速に接近してくるDC先行隊に背を向けてリリーマルレーンへと機体を飛ばした。

 シーマ艦隊が撤退する素振りを見せるのに、フェブルウスとシュメシとヘマーはそろってしょんぼりとした。プロメテウスメンバーとの再会が続き、シーマともまた会える、と無邪気に喜んでいただけに、彼女らが遠ざかってゆくのにはどうしても落胆してしまう。

 アムロがワイアットの艦に通信を繋げ、救援に来た旨を伝えている間に気持ちを切り替えたフェブルウスが速度を上げ、何より敵がベガ星連合軍と知ったデュークが新型スペイザーで円盤獣軍団に突っ込んでいた。

 

「ベガの悪魔どもめ。この地球をやらせはしないぞ!」

 

 デュークが駆る新型スペイザー、それはグレンダイザーの腹部までを埋め込む形で運用する大型機だ。

 長大な箱型をしており、後部からは二本の杭のようなパーツが伸び、前方にもガンダムSEEDのミーティアユニットを彷彿とさせる二本のウェポンアームが伸びて、全長は150mを超す巨体だ。

 

 グレンダイザーのエネルギーを消耗させない為、スペイザーそのものに複数の動力と大容量のコンデンサを積んでいる。

 その内容はメインに光量子エネルギーを採用。三基の疑似太陽炉を繋いだ直列型疑似太陽炉二基に加え、大型ゲッター炉一基、小型前のブラックホールエンジン一基、ディアムドからコピーしたDエクストラクター一基、また他の地球製スペイザーと同じ反重力エンジンを搭載という破格ぶりだ。

 

 武装はボディの上に箱型のコンテナを六つ装備。内訳は全方位に発射できる楔型ミサイル合計256発入りが二つ、ゲッター炉内蔵旋回式砲塔のゲッタービームキャノンが二基、同じく旋回式砲塔のガトリングレールガンが二基。

 またグレンダイザーの下部にはガンダム00に登場したMAレグナントと同じ、軌道を曲げられる大型GNビーム砲一基とそれ専用の疑似太陽炉一基を装備。

 

 ボディの左右にはガデラーザのように三本の爪の先端にGNビームバルカンとビームサーベルを装備した疑似太陽炉内蔵サイドアームが二本、下部には大型GNビーム砲を挟んでゲッタードリルとゲッタートマホークを装備したゲッター炉内蔵サブアームが二本収納されている。

 ゲッタードリルの基部にはGNランスやベルガ系のショットランサー同様にゲッタービーム発射口が二門、ゲッタートマホークにもデスアーミーの棍棒型ビームライフルのようにゲッタービーム発射口が一門備え付けられている。

 

 これに加えてグレンダイザーを挟むようにして伸びる核融合炉内蔵ウェポンアームには、基部に十二連装ミサイルポッドが一機ずつ、アームにはグラビトンブレード兼用のグラビトンランチャーを内蔵。

 過剰なまでの武装を十全に使いこなすために、アプサラスⅣに使用されたマルチロックオンシステムの改良型と専用のFCSとサポートメカを搭載し、パイロットであるデュークへの負担を最小限に抑える工夫が施されている。

 

 防御面では専用の疑似太陽炉を用いたGNフィールドとDフォルト、Gウォールの三重防御、装甲にはメインに超合金Zを使用し、その上に追加装甲としてPS装甲を重ねるなど、なるほどモンシアがバケモンと評するのも納得である。

 せめてトランザムが未実装なのが救いか。いやまあ、味方ではあるので、救いといっては妙だが……。

 このスペイザー、当初はジェノサイド、デストロイ、スローター、カラミティ、ディザスターとそろいもそろって物騒な名前が候補に挙げられたが、ゲッターのG、GNドライヴのG、そしてグレンダイザーのGを取り、G3スペイザーという名前に落ち着いている。

 このスペイザーを知ったヘイデスは心中でこのように評した。

 

 ――ミーティアとレグナントとガデラーザとデンドロビウムを融合させて、グレンダイザーを乗せた挙句、そこに敷島博士を足しちゃったの? なにこの合体事故。馬鹿なの?

 

 と。しかし当の敷島博士はブラックホール爆弾の百発も積んどらんじゃろうが、と大いに不満を漏らしていたという。

 

<続>

 

■アルバトロス級宇宙戦艦が開発されました。

■G3スペイザーが開発されました。

■直列型疑似太陽炉が開発されました。

■Dエクストラクターが開発されました。

■ブラックホールエンジンが開発されました。

■PS装甲が開発されました。

 

●シーマ・ガラハウがグリーン・ワイアットと無事に接触しました。

●ヘイデスが兜剣造博士と接触しました。

●ヘイデスがグレース・マリア・フリードと接触しようとしています。

●ヘイデスはエゥーゴのスポンサーとなるべく行動中です。

 

 

☆G3スペイザー メモ※追記修正

分類:複合技術試験用スペイザー

全長:150m以上

装甲:超合金Z+PS装甲

動力

・光量子エネルギー

・Dエクストラクター×1

・直列型疑似太陽炉×2(一基につき疑似太陽炉三基使用※ガデラーザ参照)

・大型ゲッター炉×1

・ブラックホールエンジン×1

・大容量コンデンサ×複数

・反重力エンジン

 

武装

・256発入り楔型ミサイルコンテナ×2

・ゲッター炉内蔵旋回式ゲッタービームキャノン×2

・旋回式ガトリングレールガン×2

・疑似太陽炉内蔵サイドアーム×2(GNビームバルカン×3、GNビームサーベル×3内蔵)

・疑似太陽炉内蔵大型GNビーム砲×1

・ゲッター炉内蔵サブアーム×1(ゲッタードリル×1、ゲッタービーム×2内蔵)

・ゲッター炉内蔵サブアーム×1(ゲッタートマホーク×1、ゲッタービーム×1内蔵)

・ウェポンアーム×2(十二連装ミサイルポッド×1、グラビトンブレード兼用グラビトンランチャー×1内蔵)

 

防御装備

・GNフィールド

・Dフォルト

・Gウォール

 

特記事項

☆動力と武装用のエンジンを合計すると

・光量子エネルギー

・Dエクストラクター×1

・直列型疑似太陽炉×2(一基につき疑似太陽炉三基使用※ガデラーザ参照)

・疑似太陽炉×4

・大型ゲッター炉×1

・ゲッター炉×4

・ブラックホールエンジン×1

・大容量コンデンサ×複数

・反重力エンジン×1

 

 となる。ここまでしてお値段はサラミス級二隻分。ヘイデスとしては機動兵器と艦艇の役割の違いは分かるもののグレンダイザーの活躍込みで考えれば、安い! というのが正直な気持ち。

 

・自爆装置完備※脱出についてはグレンダイザーを使用されたし。

 

これが戦場を時速云十万キロメートルでかっ飛ぶ。




そういえばなかなか難易度イージーと信じてはいただけませんが、
・宇宙怪獣がいない
・インベーダーがいない
・ゼントラーディがいない
・プロトデビルンがいない
・イデオンがいない
・バッフクランがいない
・アンチスパイラルがいない
・マジンガーZEROがいない
・外なる神々がいない
とこれだけ”いない尽くし”なのですから、イージーな感じがしませんか?
実のところは、イージーの理由は上記とは別だったりしますけれども。

追記
1 敷島博士の不満が不謹慎過ぎたことに気づいて修正。
2 いないシリーズに修正と追加。
3 感想よりG3スペイザーについてご指摘を受け修正。


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第三十五話 要らん事する人っているよね

お久しぶりです。
ようやくこちらに手が着きました。ある程度まとまったので投稿します。



第二十三話 Zの鼓動

 

「サポートを頼んだぞ、スペイザーハロ!」

 

『了解、了解! 任サレテ!』

 

 パイロットスーツに身を包み、グレンダイザーのコックピットに居るデュークからの呼びかけに答えたのは、G3スペイザー側に居る専用サポートメカ・スペイザーハロだ。

 バスケットボールほどの球体のボディはグレンダイザーを思わせるカラーリングで、専用に特化させた演算処理能力を与えられている。なおハロを販売しているメーカーはプルート財閥が買収したので、特許権は心配しなくていい。

 

『六時ノ方向、ミニフォー編隊接近中、接近中、距離二五〇〇!』

 

「よし、迎撃するぞ! ウェッジミサイル!」

 

 G3スペイザー上部のコンテナの一つが開き、そこから楔型ミサイル七十六発が放たれて、デブリを掻い潜って迫りくるミニフォーの編隊へ飢えた肉食魚の如く群がる。

 ミニフォーを制御する人工知能の能力を超えたミサイルの群れは、半数を撃墜し、回避した内の更に半数がデブリと激突して新たなデブリへと変わる。かろうじてウェッジミサイルの洗礼を免れたミニフォーへ、ベガへの怒りに燃えるデュークから容赦のない攻撃が加えられる。

 

「逃がさない、ゲッタービームキャノンだ!」

 

 ミサイルコンテナに並ぶコンテナが開き、新たにゲッター炉内蔵の巨大な砲身を持つゲッタービームキャノンが出現する。

 恐竜帝国のメカザウルスとは異なり、ゲッター線防御装置を持たないミニフォー達は、デブリごと薙ぎ払うように放たれるゲッタービームに耐え切れず次々と緑の光の中に飲み込まれ、爆発していった。

 

『デューク、正面、円盤獣、円盤獣ギルギル、ゴルゴル、フイフイ複数!』

 

「来たか! それならばこれだ。グラビトンランチャー、マキシマムシューッ!」

 

 グレンダイザーの両腕が握るウェポンアームの先端から重力を圧縮した漆黒の奔流が放たれ、それはまっすぐに触れるものすべてを圧壊しながらフイフイを捉えた。

 デブリはおろかMSやミニフォーよりも頑健な円盤獣が重力の奔流の中でもがき苦しむも苦痛は長くは続かず、ぐしゃぐしゃに丸めた紙のような形状になり果て、数瞬後には爆発を起こして四散する。

 

 味方のフイフイが倒されたのを怒るように残る複数のギルギル、ゴルゴルからミサイルと破壊光線がG3スペイザーへと殺到する。

 しかしこのG3スペイザー、装甲では原作の地球製スペイザーに劣るかもしれないが、Dフォルト、Gウォール、GNフィールドの合計三つの防御システムが守りの要として機能する。

 命中と同時に広がる爆炎の中から、Dフォルトによって守られて傷一つ着いていない宇宙の王者が飛び出す。更にウェポンアームからは二百メートルを超える長大な重力の刃が伸びていた。

 

「グラビトンブレード!」

 

 すれ違いざまに叩きつけられた超重力の刃がフイフイの胴体をすり潰しながら切り裂き、原作においてゴーマン大尉の引き立て役となった円盤獣は物悲しい断末魔を残して爆散した。

 ギルギルはスペイザーの下へ潜り込むように逃げ込んで斬撃を回避していたが、そんなギルギルをスペイザーハロの操作するサブアームのゲッタードリルとゲッタートマホークが捉えた。

 ギルギルの口の中を高速回転するゲッタードリルが容赦なく抉り、身もだえるその首をゲッタートマホークが刎ね飛ばした。

 そうしてコントロールを失ってふらふらとするギルギルに、残る二本のサブアームからGNバルカンが数十発と浴びせかけられて、哀れギルギルはズタボロの姿になり果てていった。

 

「グレンダイザーとデューク・フリードはここに居るぞ!」

 

 獅子の如く高らかに吠えるデュークは攻撃の手を緩めることなく、ガトリングレールガン、大型GNビーム砲、ウェッジミサイルの残弾全て、そしてスペースサンダーを一斉に放射し、その進む先々で円盤獣とミニフォーを破壊し続けていった。

 宇宙の王者のあまりにも苛烈な攻めに、ベガ星連合軍の部隊は怯えるかのように包囲の網を揺らすのだった。

 

 そして異星のスーパーロボットと地球の科学力の合わさった機体が大暴れする姿を、グリーン・ワイアット大将はデューク・オブ・ヨークのブリッジで、内心はドン引きしながら見ていた。

 一年戦争緒戦における大敗からMSが戦場の主役となり、そして今また新たなカテゴリーの人型機動兵器が戦場の常識に新たな風を吹かせている。

 それにしたってこの新たな風――いや嵐は衝撃が多すぎやしないだろうか? とそれくらいのことを愚痴る権利くらいはありそうだ。

 ワイアットが内心はどうあれ、それでも表には出さず余裕のある笑みを維持しているのは、英国紳士としての矜持であろうか。

 

「やれやれスーパーロボットの多くは民間の研究機関で開発されたと聞くが、その中でも異星の機体とあってどんなものかと思えば、なるほどかの財閥が開発に力を入れるわけだ」

 

 今もワイアット艦隊のMS部隊はグレンダイザーにつられて数を減らしたベガ軍と交戦中だが、最新鋭機であるジャベリンやゲシュペンストMk-IIが霞んで見えるグレンダイザーの戦いぶりに思わす目を奪われて操縦が疎かになるパイロットが散見されるほど目立っていた。

 

「だが味方であればこれは心強い。ましてや乗っているのが星を越えてやってきた亡命者とあっては、その境遇に悲しみ、そして戦ってくれている事実に感謝の言葉を告げなくてはなるまい。もちろん君らの救援にも感謝を。アムロ・レイ大尉」

 

 ワイアットの座す艦長席の手元には、救援の一報を告げてきたアムロの顔が映し出されていた。

 

『光栄です、閣下』

 

「なに私こそ一年戦争の英雄とこうして対面出来て、光栄だよ。ディバイン・クルセイダーズといったか。善意の民間の協力者を多数含む前代未聞の部隊だが、君のような英雄が居るのなら多少は信頼できるというものだ」

 

 皮肉の響きの混じるワイアットの言葉に、アムロは表情一つ変えなかった。

 地球連邦政府並びに連邦軍最大のスポンサーとはいえ、プルート財閥の肝いりで結成された民間人混じりの部隊など、本職の軍人からすれば眉唾物で信用もならんというのは、その通りといえばその通りだ。

 

「とはいえ我が艦隊もそれなりのものがあると自負している。貴君らと共に地球圏防衛の範たるものを示したく思う。よろしく頼むよ」

 

『はっ!』

 

 ワイアットは短く返答したアムロの顔が手元のディスプレイから消えるのを見届けて、ふ、と軽く鼻から息を吐いた。

 

「ニュータイプと言えども腹芸は人並みか。アレでは腕の良いMSパイロットで終わる方が幸せだろう」

 

 それがこの短い通信の間にワイアットがアムロへと下した評価だった。

 一方でまるで慣れない事をした、とアムロは唇を舌で舐め、意識を切り替えているところだった。僚機のクワトロはエゥーゴの重要人物であり、エクセレンはTPOを弁えているが分かっていて軽い調子を維持するおっかないところがある。

 ゼファーとシュメシとヘマーに至っては論外である。そうなるとどうしてもアムロが現場の責任者として、ワイアット艦隊に一報入れないわけにはいかなかったのだ。

 

「ふふ、連邦の白い流星も苦手なことはあるようだ」

 

「からかいはよせ。なら次はお前が対応してくれるのか?」

 

「私と君の立場の違いというものだ。ブレックス准将が相手なら喜んで引き受けるが」

 

 軽口を叩き合うアムロとクワトロだが、その間にも二人の専用トールギスは常軌を逸した速度で爆発の光が瞬いては消える宇宙を駆け抜け、グレンダイザーにかき乱されたベガ軍に猛攻を加えていた。

 二人が口を動かしている間にもドーバーガンとドーバーランチャーは狙い過たず敵を撃ち、駆け抜け様に振るわれるビームサーベルは確実に円盤獣を捕らえ、異星の怪物の重厚な装甲に斬撃痕を無数に刻んでいる。

 

 白と赤の流星の描く軌跡に触れて無傷のベガ軍はおらず、動きを鈍らせようものならば、先の二機に劣らぬ超機動と人体の限界を超えた速度で突っ込んで来るゼファートールギスの餌食だ。

 超電磁ドリルランスと超電磁チェーンソーは本日も勢い激しく回転し、分厚い金属を無理やり引き裂き、貫いて準スーパーロボット級の敵機動兵器に止めを刺してゆく。

 

 ゼファートールギスのカメラアイが強い光を発し、地球圏最高峰のパイロットと宇宙の王者によって散々に蹴散らされているベガ軍の中から、次の標的を見定めていた。

 ワイアット艦隊のMS部隊があまりに強力な援軍に安堵と畏怖のミックスされた感情を抱く中、残るスーパーロボット級戦力であるフェブルウスとこの世界においてはマジンガーの血統を色濃く継ぐヴァイスリッターが参戦する。

 

「ぱんぱかぱ~ん! っとこれは私の持ちネタじゃないかしら?」

 

「ぱんぱかぱ~ん!」

 

「ぱんぱかぱ~ん!」

 

「ふふ、でもおチビちゃん達には好評みたいね。さあさあ、星の王子様が従者もなしじゃ格好がつかないわ。おチビちゃん達、エクセレンお姉さんの白騎士についてらっしゃいな」

 

「は~い!」

 

 元気よく答える双子を引き連れて、エクセレンの駆る白騎士は砲撃ばかりでなく驚くほどの近距離からの射撃も交え、後にトップエースの一人に数えられる卓絶した技量を惜しみなく行使した。

 この時、ベガ軍は司令官級の乗るマザーバーンや強力な円盤獣が存在しておらず、十機にも満たないとはいえ個々の質があまりに高すぎる援軍に対応しきれず、次々と落とされてゆく。

 しかしDCも決して順風満帆の救援というわけではなかった。アムロらに続いてこの宙域に向かっていた本隊に、ガブスレイに搭乗したジェリド、マウアー、カクリコンを含むジャマイカン率いるティターンズ艦隊が襲い掛かっていたのである。

 

 ワイアットとジャミトフが別派閥だからとはいえ、自軍の高級将校の窮地を助けようとしているDCに横槍を入れるなど正気を疑うところだが、そこはそれティターンズである。

 ましてや公然とジャミトフの意向を無視して、バスクが実効支配する宇宙のティターンズとなれば、自勢力以外の将校や艦隊、その人員がどうなろうと知った事ではないと態度で示しているわけだ。

 

 後にこの知らせを聞いたヘイデスは我が耳を疑い、ジャミトフに忠実なバスクはゲームのスパロボの中だけなんだなあ、と変な感想を抱き、ジャミトフは口の中一杯に梅干しを頬張ったような表情になり、ティターンズの一刻も早い解体とペデルセン大佐を中核とする再生の決意を固めるのだった。

 ジャマイカン率いるティターンズ艦隊は、救援に駆け付けたレコア・ロンドとファ・ユイリィのメタス二機、そして戦闘中にプロトタイプZガンダムからZガンダムへ乗り換えたカミーユが迎え撃ち、またオーガスタ研究所から提供されたガンダムMk-V(アッシマーカラー)を駆るブラン・ブルダーク、そしてエリートの証であるティターンズに選ばれなかったのを、実は根に持っていたモンシアのグスタフ・カールが特に奮戦していた。

 かくてワイアット艦隊救援の為に向かったDC先行部隊、そして自軍の大将の窮地を無視して襲い掛かってきたティターンズを迎え撃つDC本隊とに分断され、地球外侵略者と本来、地球を守る同胞である勢力との戦いを強要されるのだった。

 

<続>




ブランを何に乗せるか悩んだのですが、オーガスタ繋がりでマークファイブになりました。三機の内の一機ですね。アンクシャの宇宙対応改修でもよかったかなあ、とは思うのですが、閃きを優先いたしました。


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第三十六話 序盤勢力はそろそろさようならかな?

「のこのこ宇宙に上がってくるとはな。ここで落としてやるよ、カミーユ!」

 

 ジェリドは憎悪を込めてガブスレイのフェダーインライフルを連射した。戦闘中に戦場で機体を乗り換えるという荒業――スパロボでは珍しくないが――を敢行したカミーユは、真新しいZガンダムを軽やかに動かし、高出力のメガ粒子を避けて見せる。

 

「ジェリド、お前って奴は憎しみのままに引き金を引いて! 地球は今、侵略されているんだぞ。それが分かっていてそうするのか!」

 

 カミーユのアイディアを盛り込み、アナハイムが開発したZガンダムは搭載されたバイオセンサー、そしてカミーユの優れた感性と適応力により、初めての搭乗から数分と掛からずしてそのポテンシャルを発揮しつつあった。

 カミーユに固執するジェリドは、以前、ヤザンが部隊を離れる際にガンダムMk-Ⅱを受け取っていたがその後の侵略者やエゥーゴの戦いの中で、シロッコ協力の下、軍事要塞ルナツーで開発されたガブスレイに乗り換えていた。

 アナハイムの技術者達は連邦軍の技術陣、サナリィ、ヘパイストスラボといった強力な競合相手に奮起し、Zプロジェクトの成功を誇示すべくZガンダムを可能な限り高性能化している。

 

 SRGバイオセンサーやダイレクト・フィードバック・システム、ジオンのサイ・コミュニケーター技術をも研究して開発したバイオセンサーは、リミッターが存在しない為パイロットの精神に過負荷をかける危険性こそあれ、機体の反応速度を劇的に向上させている。

 新世代機である可変機として、既に完成度の高い複雑ながら極短時間で行われる変形に大気圏突入可能で、大気圏内では戦闘機に勝るとも劣らぬ空戦能力を誇る。

 ウェイブライダーに変形する際に機首となるシールドには、ビームシールド発生器が内蔵され、MS形態では物理・ビーム両用のシールドとなり、WR形態ではビームバリアーを展開して空気抵抗を減少させて、超音速飛行を可能としていた。

 ガブスレイは優秀な機体だが、同時にZガンダムはそれ以上に優れた機体なのである。

 

「その前に地球の争乱の火種を絶やしてやるってんだよ、おれが、ティターンズで!」

 

 宇宙の闇に光の軌跡を描くフェダーインライフルだが、カミーユの操縦にほとんどタイムラグなしで反応するZガンダムを捕捉できず、反撃に長銃身のビームライフルから放たれたメガ粒子砲はガブスレイの左肩から伸びる砲身を貫いた。

 

「そのティターンズのやり方に疑問を抱けと言っている!」

 

 ジェリドの回避した先には既にグレネードランチャーが発射されており、ジェリドは咄嗟に機体の左腕で胴体を庇う。

 

「ぐおお!?」

 

 ガブスレイの左肘から先が破壊され、爆発の煽りを受けてガブスレイが仰向けに吹き飛ぶ。Zガンダムのバイオセンサーはカミーユの操縦を的確にサポートし、既に止めの一撃を撃つべくビームライフルの照準は定められていた。

 

「ジェリド!?」

 

 ジェリドとスリーマンセルを組んでいるマウアーのガブスレイが咄嗟にジェリド機を受け止め、カクリコンが追撃しようとするカミーユへ牽制の射撃を加えて行く。

 

「まずい!」

 

「前に出てくるから!」

 

 カクリコンのガブスレイが降らすメガ粒子の雨に向かい、カミーユはあろうことかZガンダムを突っ込ませ、火線の方に自ら突撃しかつ全て回避して反撃を加えるという常識外れの行動をとる。

 アムロやクワトロなどトップエースのみが可能な行動だ。カクリコンは攻撃するこちらに正面から距離を詰めてくるZガンダムに対し、我が目を疑いながらトリガーを引き続けた。

 Zガンダムの撃ったビームがカクリコンのガブスレイの両腕を吹き飛ばし、ジェリド機を庇うマウアー機の左膝を撃ち抜く。

 

「くっ、他の連中はどうした!?」

 

 瞬く間にZガンダムに追い詰められるジェリドが味方の姿を求めて、全天周囲モニターとレーダーに目を凝らす。

 この時、DC宇宙艦隊へ襲い掛かってきたのはアレキサンドリア級二隻、サラミス改級七隻、ネルソン級MS軽空母四隻からなる艦隊で、MSはマラサイとバーザムの二機種を主力とした六十機超だ。

 これに対してDC宇宙艦隊はアーガマ、アルビオン、ハガネの三隻。機動兵器はZガンダム、ガンダムMk-Ⅱ、リック・ディアス三機(カツ機含む)、グスタフ・カール四機、ジェガン重装型二機、ギャプラン三機、ヘビーガンダム、ガンダムMk-Ⅴ、アルトアイゼン、バルゴラ四機、それに増援のメタス二機を加えた二十三機。

 数の上では三分の一弱。またティターンズ側のパイロットがエリート組織に相応しい練度であり、相当の強敵である……ある筈なのだが。

 

「ひい、対空砲火を集中させろ。あのギャプランをこちらに近づけさせるな!?」

 

 艦隊指揮官であるジャマイカン・ダニンガンは、乗艦であるアレキサンドリア級の艦長席で人目も憚らずに叫んだ。指揮とは呼べぬ指示だが、それでもこちら側の防衛線を易々と突破し、接近してくるギャプラン編隊を目の当たりにすればそうもなろう。

 

「骨のあるのが残っているものだ。異星人を相手に少しは腕を磨いていたと見える!」

 

 ギャプランを駆るヤザンはバーザムの小隊から浴びせかけられるビームを予め見えていたように回避し、敵機の股下から捻り込みを加えて上昇し、見事に背後を取って見せる。

 MAからMSへと変更し、ビームサーベルを抜剣するヤザンのギャプランに、バーザムが素晴らしい速度で反応し、振り返りながらこちらもビームサーベルを抜く。

 ヤザンがそれなりに評価するだけの事はあると、一目でわかる動きだが、同時にヤザン機に注意を寄せ過ぎたのが彼らのミスだった。

 

「貰ったぜ」

 

「背中ががら空きでは」

 

 ヤザンの僚機であるラムサスとダンケルのギャプランがメガ粒子砲をバーザムへと叩き込み、背後から狙い撃たれたバーザム達は頭部や四肢を撃ち抜かれて見る間に戦闘能力を喪失する。

 味方の敵討ちに燃えるマラサイ達がビームライフルの照準をギャプランへと向けるが、その時にはMAへと戻ったヤザン機を筆頭に、ギャプラン小隊は速度を活かして離脱し、ネルソン級へと襲い掛かっている。

 慌てて後を追おうとするマラサイも、イングリッドのヘビーガンダムに懐へ潜り込まれて、振るわれるビームサーベルの軌跡をパイロット達の網膜に焼き付けながら、機体の四肢を斬り飛ばした。

 

「おっちゃん達に気を取られすぎ。動きは良いけど赤点スレスレね!」

 

 キマイラ隊の遺産とも呼べる少女の評価は辛口だ。

 実のところ、この時期のティターンズにはカミーユやヤザン、イングリッドなどとも“戦闘”が成立する腕前のパイロットがまだまだ残っている。

 しかしワイアット大将の救援に向かう途中の一応は友軍に奇襲を仕掛けている状況にパイロット達が大なり小なり困惑している事、ジャマイカンが戦闘前の予想を覆される苦戦ぶりに艦隊の指揮が疎かになっている事が重なり、その技量を十全に発揮できずにいた。

 

 だからこそ地球圏を守るパイロットは多い方がいいと、DC側が可能な限りティターンズパイロットを殺傷しないよう心掛ける余裕が生まれたのだから、皮肉としか言いようがない。

 もちろんそう言った事情を込みにしても、DCに集められた人員の技量と装備の質は、つい先日まで一般人だったカツや新兵のコウとキースなどを除けば、ずば抜けたものであるのは疑いようもない。

 オーガスタ研から送られてきたガンダムMk-Ⅴを駆るブランは、もちろんずば抜けている内の一人である。

 

「インコムとやら牽制にはいい。アンクシャやアッシマーに積むのは難しいかもしれんがな」

 

 有線制御の攻撃端末――インコムの出力は決して高くはなく、トールギス・シューティングスターのジェネレーター内蔵のファンネルと比べれば、ブランの言う通りMS相手でも牽制レベルの威力だ。

 装甲の無い剥き出しの部分にビームを受けても支障のないアッシマーの頑健さを知るブランからすれば、インコムの火力はサブウェポン止まりであろう。

 

 ガンダムMk-Ⅴを前後、下の三方向から囲い込むバーザムの内、背後を取ったバーザムに対し、ガンダムMk-Ⅴのバックパックから射出された円盤型のインコムからビームが放たれ、回避を余儀なくされる。

 そうして包囲の一角が崩れた瞬間に、ブランは両肩部のマイクロミサイルポッドからミサイルを発射し、正面に補足していたバーザムの下半身を吹き飛ばした。

 

 原作においてガンダムMk-Ⅴの肩部マイクロミサイルポッドは、不調に陥ったインコムの代替品として装備されたものだが、この世界においてはDCに納入された後、円盤獣や戦闘メカのタフネスを考慮し、少しでも火力を増強させる為にインコムと並行装備されている。

 弾頭のバリエーションも通常の対MS用のものから、光子力ミサイル、ドリルミサイル、ゲッターミサイル、ビッグブラストの小型版リトルブラストが揃っている。ティターンズパイロット達にとって幸いなことに、この時のミサイルは対MS仕様の通常弾頭だ。

 

 ブランがインコムとミサイルで前後のバーザムに対処する合間に、下方を取ったバーザムがビームサーベルを突き出した姿勢からバーニアを吹かし、ガンダムMk-Ⅴを股間から串刺しにすべく距離を詰めていた。

 残酷な串刺し刑を黙って受ける謂れの無いブランは、機体を九十度倒してバーザムを正面に捉え、胸を貫く軌道のバーザムのビームサーベルを、ブースター内蔵のシールド先端でサーベルを握る手を打つ事で捌く。

 そうして体勢を崩したバーザムの頭部をガンダムMk-Ⅴの右足が蹴り飛ばし、死に体になるバーザムの胸部へ強烈な左足の蹴りが叩き込まれて大きく装甲が陥没する。

 

「ふん、バーザムか悪い機体ではないが、俺達の相手をするにはパイロットも機体も不足が多いぞ!」

 

 イングリッドを含むヤザン隊とキョウスケのアルトアイゼンがジャマイカン艦隊に肉薄し、カミーユと援軍のファ、レコアがジェリドらティターンズのエースを抑え込み、こちらの艦隊の防衛はアーガマ隊とアルビオン隊、それにオウカらグランド・スター小隊が引き受ける形だ。

 手加減をする戦いにおいてキョウスケのアルトアイゼンは、光子力エンジンの齎すハイパワーと武装の威力から少々難しいが、ステークはカートリッジを激発させずに超合金Zの芯を叩きつけ、クレイモアの使用を控える事で対応している。

 これもまた一つの経験ではあるだろう。

 

「異星人相手に戦っていないわけではないそうだが、なりふり構わなくなるようでは組織としては終わりだな」

 

 キョウスケはネルソン級の右舷格納庫にステークを叩き込み、カートリッジを激発させるまでもなく、格納庫の壁面はアルトアイゼンの馬力に圧されてそのまま艦体中央部にまで激突する。

 驚嘆すべきはそのままアルトアイゼンの背部から膨大な光が放たれ、その推進力のままネルソン級が押し込まれて、近くを漂っていた大きなデブリに左舷側から叩きつけられたことだ。

 たった一機のMSサイズのロボットが軽空母を押し込む光景は、アルトアイゼンがMSに分類して良い存在でないと証明するかのよう。軽空母としての機能を喪失したネルソン級を後にし、キョウスケは次なるターゲットをアレキサンドリア級の一隻に定めた。

 

 見る見るうちに数を減らしてゆくMSと砲塔や機関部を攻撃され、継戦能力を失う艦艇にジャマイカンの顔色が気の毒なほど青く変わった頃、そこへ更なる凶報が舞い込む。

 DCと合流予定だったシロガネとその艦載機が戦闘を確認し、戦闘宙域に参戦したのである。空母としての機能に特化した艦首モジュールを装備したシロガネから出撃したのは、たった二機の機動兵器だった。

 かつてプロメテウスプロジェクトに参加していた、ユウ・カジマ中佐とライラ・ミラ・ライラ大尉の搭乗するゲシュペンストMk-II・タイプNである。

 かつてガイゾックが初めて地球圏に侵攻し、ティターンズとエゥーゴに戦闘停止を呼びかけたように、シロガネからジャマイカンのアレキサンドリア級へと通信が繋げられる。

 

「ティターンズ艦隊指揮官へ。こちらは地球連邦軍第十三独立部隊ディバイン・クルセイダーズ、シロガネ艦長ロレンツォ・ディ・モンテニャッコ。ただちに戦闘を中止せよ。我々に貴官らと戦う理由はない。

 繰り返す戦闘を停止せよ。我々は参謀本部より独立行動を認められた正規部隊である。異星人からの侵攻を受けている今、地球人同士が戦う理由はない」

 

 ロレンツォは片眼鏡をかけた壮年の男性であり、元々はOGのコミック出身のキャラでDCの幹部だった人物だ。

 そこからゲームのOGシリーズにも出演したもののプレイヤー部隊と決着を着けるまでもなくフェードアウトした疑惑があるなど、なんとも微妙なキャラでもある。

 ただこちらの世界ではプルート財閥にスカウトされ、シロガネの艦長の籍を預けられており、こうしてこの場に姿を見せたわけだ。

 

「艦長、いかがなさいますか」

 

 おそるおそるこちらを見てくるオペレーターに、ジャマイカンは八つ当たりで怒鳴りつけたくなるのを堪え、スペースノア級が一隻増え、更に連邦軍内でも名高いエースのユウ・カジマとライラ・ミラ・ライラが姿を見せた事を加味して、大急ぎで考えを巡らせる。

 今回のDC宇宙艦隊への攻撃は、ティターンズの後ろ盾であるジャミトフに自分達の存在価値を知らしめる為にバスクが命じたものだ。

 プルート財閥とゴップをはじめとした参謀本部の意向が強いDCを叩けば、威光の陰り始めたティターンズの力を示せると考えたからだ。

 

(しかし、奴らは強すぎる。六十機を超すMSだぞ!? パイロットだって宇宙で実戦を積んでいるベテランだ。新兵など一人もおらん! 全員が水準を上回る実力者の筈だ。機体だってバーザムだぞ。ニューギニア工廠で開発された新型なんだ)

 

 しかし、それが実際に戦ってみればジャマイカンに突きつけられた現実は、あまりに過酷であった。一方でDC側もエゥーゴの部隊を抱えてはいるが、だからといってこの状況で仕掛けてくるのか、自業自得だと言い分はある。

 いずれにせよ、ジャマイカンにとってロレンツォからの通告は艦隊を撤退させるのに都合がよく、またDCにとってもはっきりいって余計な戦いをするよりも、ワイアット艦隊への救援に向かいたい為、ここでジャマイカンが退くのならばそれに越した事はなかった。

 

「MSに帰投命令を出せ。艦隊を退くぞ。今後の戦いの為に少しでも戦力を温存しなければならんのだ!」

 

 ノーマルスーツのヘルメットに内側から唾を飛ばしながら指示を出すジャマイカンに、ブリッジのオペレーター達は色々と思うことはあったが、即座に指示に従った。彼らもまた、少なくともこの場ではジャマイカンの指示は正しいと思ったからだ。

 ティターンズ艦隊が撤退する動きを見せ、それをDC側が油断せずに見送る中で、ベガ軍と交戦中の先行艦隊とワイアット艦隊にも、数は少ないが増援が来ていた。

 シロガネがDC艦隊の救援に向かう中、SFSを利用して急速で向かった二機はデブリと破壊された円盤獣、ミニフォーの残骸が漂う中を迷いなく進み、既に壊滅的な被害を受けていたベガ軍に止めの二撃を加えた。

 

 青い胴体に水色の四肢、背中から伸びるウイング型のバインダー、ガンダムタイプに酷似した機体は、新型ブラックホールエンジンを搭載したSRG計画の申し子ヒュッケバイン。

 他の世界ではブラックホールエンジンの暴走により多大な被害を齎して、バニシングトルーパーと不名誉なあだ名を与えられた機体だが、この世界ではまだ不名誉な事故を起こしていない最新鋭機だ。

 

 小型化に成功したブラックホールエンジンの齎す圧倒的なハイパワー、それに耐える頑健なムーバブル・フレーム、Zガンダム同様各種のサイコミュを搭載して抜群の追従性と反応速度を実現している。

 ウイングバインダーにはサナリィで研究が進められているミノフスキードライブユニットが組み込まれ、莫大な推進力と速度を確保しつつ、重力の刃を後方に向けて放出し、さながら黒い光の翼の如く展開して、接触した物質を圧壊する重力の翼を副産物として備えている。

 

 超エース級の搭乗を前提としたハイスペック機である為、操縦に対する追従性を追求し超電磁コーティング、SRGバイオセンサー、ダイレクト・フィードバック・システムを標準搭載し、遊びの無いピーキーな仕上がりとなっている。

 防御面ではPS装甲に加え、グラビコンシステムによってGウォールを備える事でMSの枠を超えたレベルに達していた。

 

 武装面では両手にサークルザンバー兼ビームガン兼ビームシールドの発生器を装備、ウイングバインダー基部にはマイクロミサイルを内蔵、リアスカートに遠隔操作兵器であるリープスラッシャー一基、手首内側にフォトンガン兼用のロシュセイバーを一基ずつ。

 頭部に60mmバルカン二門、そしてフォトンライフルないしはグラビトンランチャーを標準武装としている。これにオプションとしてまだ開発中のブラックホールキャノンが存在している。

 

「リープスラッシャー起動、切り裂け!」

 

 ヒュッケバインのリアスカートから光の刃を備えたリープスラッシャーが飛び立ち、グレンダイザーに気を取られていたミニフォー三機の合間を縫うように切り裂き、爆散させる。

 ヒュッケバインのパイロットは高レベルのニュータイプであり、また一年戦争からのベテランパイロットでもあるアーウィン・ドースティンだ。

 ガイゾックの地球侵攻阻止時にはビルトシュバインに搭乗していたが、かねてよりヒュッケバインのパイロットとして目されていた通り、ヒュッケバインの完成と共に乗り換えている。

 

 散開するミニフォー達にフォトンライフルを撃ち込み、漆黒の銃弾を避けたミニフォー達が瞬間的に密集するよう誘導したアーウィンは、そこへウイングバインダー基部からマイクロミサイルを発射し、爆発の中に飲み込ませる。

 損傷しながら爆炎の中から一機のミニフォーが飛び出すも、それさえアーウィンの手の内であった。ヒュッケバインの左手のビーム発生器が起動し、光輪が形成される。

 

「サークルザンバー!」

 

 ミノフスキードライブで瞬時に加速したヒュッケバインが左手を一閃させれば、光輪によって真っ二つに切り裂かれたミニフォーが制御を失い、そのままデブリに衝突して爆発を起こした。

 

「お前達にとっての凶鳥が来たぞ!」

 

「でもでもぉ、もうベガ星の皆さんは数えるくらいしかいませんねえ」

 

 気炎を吐くアーウィンに言葉を重ねたのは、もう一機の新型機に搭乗するグレース・ウリジンだ。こちらが搭乗しているのは全高50メートルに達するスーパーロボット相当の機体である。

 SRG計画で培った技術で設計・開発された本機はガンダムタイプの頭部を持ち、全体的

に太い印象を受ける四肢だ。手甲部分には超振動クローと誘導ミサイルを装備、手首内側にはハイメガビームガン兼用のハイメガビームサーベルを内蔵。

 両肩にはフィン・ファンネルを巨大化・高出力化させた板状の誘導兵器タオーステイルを十八枚装備、胸部には最大の威力を誇るメガスマッシャーを内蔵し、タオーステイルを展開して使用する広域殲滅兵器バスターキャノンなども装備している。

 

 EXや魔装機神シリーズと異なりフルカネルリ式永久機関や補助動力である対消滅機関こそ搭載されていないが、メインにディアムドクラスのDエクストラクターを搭載し、補助にブラックホールエンジン、疑似プラーナ発生装置の代わりにソウルゲインと同じ生体エネルギー増幅装置を内蔵してスーパーロボットクラスの出力を確保している。

 GウォールとDフォルトによる鉄壁の防御に加え、科学要塞研究所から提供された超合金ニューZによる装甲の合わせ技は、スーパーロボットのカテゴリーに相応しい堅牢さだ。

 

 その名をデュラクシール。本来ならば魔装機神シリーズの舞台である地下世界ラ・ギアスで開発された機動兵器であり、初出のスーパーロボット大戦EXでは地上から召喚された機動兵器を参考に開発されている。

 その結果としてガンダムタイプそのものの頭部を持ったが、後発の作品では頭部デザインが差し替えられている。なおこの世界においてはガンダムと言われれば誰もが信じるデザインをしており、どうやらEX仕様であるらしい。

 

 ラ・ギアス関係者が確認されていないこの世界でデュラクシールが開発されたのは、パンドラボックスにあったデータと、本家デュラクシール開発にあたって参考にされた機体の類似データが存在したからだろう。

 そういったある程度の要素があったとはいえ、酷似した外見と内容の機体が開発されたのはほぼ偶然の一致である。

 

 もちろん本物のデュラクシールを知っているヘイデスは、この機体の完成予想図を見た時に思わず吹き出しかけたのは言うまでもない。これまでいったいどこにラ・ギアスや魔装機神シリーズの要素があったの!? と狼狽したのもしょうがない。

 ラボでアクシオやゲシュペンストなどスパロボオリジナル関係の機体がなぜか開発されるのに慣れたヘイデスも、ラ・ギアスひいては開発者であるセニアとの関わりなしでこの機体が開発されたのには、油断しているところに顎にアッパーカットを叩き込まれたようなものである。

 ましてや名称がガンダムデュラクシールとあっては、なおさら吹き出すというものである。

 

 所長やラボの開発陣がセンサー類の配置を検討した結果、頭部がどうしてもガンダムタイプになるのとサイコガンダムのような大型MSの存在を知ったことから、50mサイズのガンダムが存在してもいいじゃない、という結論に至ったからである。

 それと当時の彼女らは次々と同時進行で行わられる新型開発に、ちょっと疲れていた所為もあろう。

 

 そうして魔装機系を見る事はないだろなあ、と油断していたヘイデスを盛大に驚かせた機体は、SRG計画初のガンダムタイプ、ガンダムデュラクシールとしてこの世界において陽の目を見たのである。

 見た目で言ったら更にガンダムタイプなヒュッケバインだが、SRG計画ではガンダムタイプに分類されていない。

 ゲシュペンスト、ビルトシュバインの系譜に連なっているのもあるだろうが、決定的な理由はヘイデスが『これはガンダムではない』とやけに力説したからとも言われている。

 

 話を戻してガンダムデュラクシールは、ロールアウト後に重力下での試験運用後、宇宙で戦っていたグレースの下へと送られ、彼女のニュータイプ能力と積み重ねた戦闘経験値によって圧倒的な戦闘能力を発揮するに至った。

 スーパーロボット級のヒュッケバインとガンダムデュラクシール、そして性能を十全に引き出すパイロット達がDC艦隊本隊への救援に向かわなかったのは、ジャマイカン達にとっては不幸中の幸いだった。

 

「ええい!」

 

 と叫ぶもどこかのんびりとしているグレースは、ガンダムデュラクシールの超振動クローで噛みついてきたギルギルの喉元を切り裂き、両肩の宝玉状のパーツから放った拡散ビームで穴だらけに変える。

 そうして残る数少ない敵機をレーダーとニュータイプの感性で把握し、全十八枚のタオーステイルを機体から射出し、ガンダム00のケルディムやサバーニャのビット芸を思わせる動きを取らせる。

 

「まとめて片付けますよ~。タオーステイル、行ってくださ~い」

 

 惣流ないしは式波・アスカ・ラングレーと中の人が同じ声でグレースが合図を発するのに合わせ、十八枚のタオーステイルは五枚組の砲身二つ、四枚組の砲身二つを形成し、デュラクシールの頭上に並び立つ。

 

「バスターキャノン! 乱れ撃ちますよ~!」

 

 Dエクストラクターから供給される膨大なエネルギーが、四つの緑色の奔流となって軸線上に居た残り数少ないベガ軍の兵器を容赦なく吹き飛ばしてゆく。直撃コースから外れていた機体も膨大なエネルギーの余波を浴び、装甲が数瞬と持たずに砕かれてゆく。

 それは異星技術の結晶たるグレンダイザーと並び、MSに続く新たな兵器の時代の到来をワイアットに実感させるのに十分な光景であった。

 

 

「そうですか、シーマさんは無事に仕事を果たしてくれましたか。それにしてもティターンズはここまで短慮に走る組織だったかな? バスクが舵を取っているからかも?

 ジャミトフが居ても月にコロニー落とそうとしたり、コロニーに毒ガスを流し込んだり、コロニーレーザーで破壊したりする組織だもんな。

 バスクの専横がまかり通ったら、これくらいは可愛い方なのかもしれない。正規軍の戦っている宙域に核ミサイルを撃ち込んだり、コロニーレーザーを照射してくる可能性も視野に入れておくべきか……」

 

 味方ごと討つ、というとSEEDのパトリック・ザラと続編DESTINYでギルバート・デュランダルがそれぞれジェネシス、ネオ・ジェネシスを味方ごと撃つ判断を下したのが思い出されるヘイデスであった。

 そりゃ死を覚悟して戦場に出ているにせよ、だからといって敵と戦って戦死するのと背後から味方に討たれて戦死するのとでは雲泥の差だ。そんな事をしては他の友軍が前に出るのを躊躇って当たり前だし、正気の沙汰ではない。

 

「ただガンダムというか、ロボットものだと別に珍しくないのが頭の痛いところだ……」

 

 はあ、とヘイデスは溜息を零して椅子の背もたれに体重を預けた。場所はアレスコーポレーション極東支部にある彼の執務室。まあ、いつも通りだ。

 DC宇宙艦隊と地上部隊の情報を確認したところなのだが、なんともはや地球人同士の戦いとは頭が痛い。

 

「地上部隊では魔神機械獣や超電磁マグマ獣で散々煽った成果で、積極的にウチの部隊を狙ってくるようになっているな。その分、他の部隊への圧力が減って連邦軍全体の戦力を増強する好機になっているのも予定通り、と」

 

 宇宙艦隊にヒュッケバインとガンダムデュラクシールが合流したように、地上部隊に星型頭部のグルンガスト一号機と獅子型頭部のグルンガスト二号機が、レナンジェス・スターロードとミーナ・ライクリングが合流している。

 

「それに早乙女ミユキこと恐竜帝国の王女ゴーラか。ゲッター(クイーン)を盗もうとしたものの、メカザウルスとの戦闘中にゲッターロボを庇い重傷を負ったか」

 

 原作ではそのまま死亡する王女ゴーラだが、なにかのフラグを立てていたのか、それとも原作以上に戦力が充実していた影響か、ゴーラはそのまま軍病院に収容されて治療を受けている。

 早乙女一家にすれば養女とはいえ五年前に行方を晦ませていた家族、そして帝王ゴールにしてもしっかりと愛情を抱く娘でもある。彼女の身柄がこちら側の手にある事実が、どう影響を及ぼすものか。

 

(AとAPの時はもう恐竜帝国が滅んだ後だったもんな。まだ帝国が健在の状況だとどうなる?

 ゴール相手に人質にしようなんて考えを持つ輩も出てきそうだけれど、早乙女博士から反感を抱かれるだろうし、メリットよりもデメリットの方が圧倒的に大きい。それと誰かの子供を人質とする行為が単純に嫌だ)

 

 三輪長官あたりが提案してきそうな考えは却下却下、とヘイデスは自分の中で答えを出し、地上部隊と宇宙部隊への更なる増援について自分に手配できる戦力はないかと思考に沈む。

 この世界は現実になったが、それでもスーパーロボット大戦の要素を色濃く持つ世界だ。だから今が第何話あたりか、そろそろ序盤の勢力が壊滅する時期ではないか、とヘイデスはプレイヤー知識からの推測を行っている。

 

(Dr.ヘル、恐竜帝国、デラーズ・フリートあたりはそろそろ壊滅してもおかしくない。そうなればミケーネ帝国に百鬼帝国という上位互換の出現だ。それにキャンベルとボアザン、妖魔帝国も後期の上位兵器が出てくる頃合いだろう。

 地球側も相当に強化したという自負はあるけれど、決して油断はできない。最後の最後に立ち塞がるのが誰なのか、それすらまだ分かっていないんだ)

 

<続>

 

■アーウィン・ドースティンが加入しました。

■ミーナ・ライクリングが加入しました。

■レナンジェス・スターロードが加入しました。

■グレース・ウリジンが加入しました。

■ユウ・カジマが加入しました。

■ライラ・ミラ・ライラが加入しました。

■ロレンツォ・ディ・モンテニャッコが加入しました。

 

■早乙女ミユキ/王女ゴーラが保護されました。

 

■Zガンダムを入手しました。

■ヒュッケバインを入手しました。

■ガンダムデュラクシールを入手しました。

■グルンガスト一号機/二号機を入手しました。

■シロガネが加入しました。

 

デュラクシールは地上の機動兵器を参考にしたという設定からイケるのでは? と思いガンダム化して登場です。サイコガンダム枠ですね。エウリードに関してはザムジードとグランヴェールを参考にしている筈なので、開発されない予定です。

 

 




小ネタは小ネタ置き場に移動しました。


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第三十七話 乗り換えて遊ぶのもスパロボの醍醐味

とりあえず切りの良いところまで書けたので更新です。
進捗は今一つです。


 宇宙でワイアット艦隊の救援を果たし、アナハイムからZガンダムの受領、シロガネ隊との合流を果たしたDC宇宙艦隊。

 地上では攻勢を増してくるDr.ヘルや恐竜帝国との決戦の気配が臭いたち、早乙女ミユキこと恐竜帝国王女ゴーラの救助を行ったDC地上部隊。

 

 宇宙と地上を問わずに侵攻を重ねるムゲ・ゾルバドス帝国への対処に、地球連邦軍とアレスコーポレーションはほとんど休みなく出撃し続け、それを支える後方の人員と工場で働く人々もまた終わりの見えないハードワークに挑んでいる。

 軍事を最優先としなければならない現状だが、ここがスパロボ時空だと察してからヘイデスが軍事技術と並んで力を入れた食料生産プラントと太陽光発電設備の大量生産が功を奏し、一般市民が日常生活で電力や食料不足に陥るのをなんとか防いでいる。

 

 ヘイデスは戦前、このスパロボ時空の大戦争を地球圏の人々が生き残れるのなら自身が財政的に破滅するのもやむなし――社員の再就職先の確保などは行うとして――と考えていたが、プルート財閥系の兵器が侵略者の撃退に一役買っている事や正義の味方、人類の守護者として宣伝しているスーパーロボット軍団のスポンサー、身を削って地球圏を守らんとする姿勢が知れ渡っている。

 その影響によって、現在、プルート財閥はヘイデスの予想を覆して利益を得ている。そうして利益をさらに連邦市民、連邦政府、連邦軍へと還す事により、望ましい循環が生まれている。

 

 それでも工場ではMSの部品と武器弾薬、電子部品などありとあらゆる物資が休みなく作り出され、資源を確保する為に改めて地上の鉱脈が掘り返され、宇宙に浮かぶ衛星に有用な資源がないかと調査している。

 また一年戦争で大量に生じたジャンクも、ブッホコンツェルンへの妨害と退役軍人の再就職先として起業したプルート財閥直系のジャンク回収業者がせっせと集めては資源に変えている。

 

 そうした現場を支える裏方の苦労があれば、膨大な情報と物資の流通、需要と供給の調整そのほか諸々を支える人員にも負担がかかり、参謀本部議長のゴップをはじめとした連邦軍の人々は一年戦争よりもさらに過酷な事務地獄に没頭している。

 現状、地球圏をなんとか守り切れている連邦軍だが、それと敵対する勢力の内、初期から戦闘を行っていたDr.ヘル、恐竜帝国は特に戦力の欠乏の前兆が見られ、妖魔帝国もいくら妖魔大帝バラオの妖力によって化石獣を補充できるとはいえ、損失のペースがあまりにも早い。

 本国からの大規模な増援が見込めないボアザンや本国からの増援=現場からの更迭を意味するキャンベルも、決して余裕はなかった。なお唯一の母艦バンドックが大破したガイゾックは、今もってなお行方が知れていない。

 

 参戦の遅れたバサ帝国とその傘下にあるバーム、真ジオン、それにベガ星連合軍、異次元に本拠地を持つムゲ・ゾルバドス帝国はまだまだ余裕があり、彼らは新たな侵略者が地球連邦と戦力を消耗し合うのを好機と見て雌伏の時を選んだ。

 しかし、そうして雌伏する間に地上での圧力が減った間に地球連邦は更なる戦力の増強を行い、宇宙でも真ジオン攻略の為の大艦隊をソロモン鎮守府に集結させ、新型MSの開発も順次行うなど、予想を裏切る底力を見せている。

 

 これに初期侵略者達――魔竜機連合と異星連合は焦りを見せた。このままではこちらが戦力を整える以上のペースで地球連邦が戦力を整え手が付けられなくなる可能性の方が高い! と忌々しく思いながらも認める他なかったのである。

 ましてや戦場には鹵獲された自分達の兵器がより強化された姿で現れ、にっくきマジンガーZ、ゲッターロボ、コンバトラーV、ボルテスVに忠実な僕の如く振舞うときて、彼らの怒りは頂点に達していた。

 

 唯一、恐竜帝国ゴールは治療を終えたゴーラの身柄が無事に返還されたこともあり、ほんの少しだけ怒りを和らげたが。

 これは漫画原作において百鬼帝国を滅ぼした後も、プロフェッサー・ランドウの支援を受けてとはいえ女帝ジャテーゴが恐竜帝国を率いて姿を見せ、更にそれを倒した後にもゴールの息子ゴール三世が帝国を率いるのだが、とにかく恐竜帝国はしぶといのだ。

 

 スパロボではそこまでのしぶとさを見せてはいないが、この世界ではどうなるか分かったものではないとヘイデスは一計を案じた。

 王女ゴーラが生き残れば上手く行けば恐竜帝国との休戦、それが叶わなかったとしてもジャテーゴやゴール三世との間で次期皇帝の座を巡る権力者闘争に陥れば、自滅の可能性もある。

 

 というかジャテーゴが出てきて、真ゲッターに北極圏ごと取り込まれて火星に飛び立つ、という案件が発生しないか、ヘイデスとしてはそちらの方が気掛かりである。

 下手をすればこの世界におけるゲッターエンペラー誕生フラグに繋がるのだから、彼が恐竜帝国の衰亡に神経を尖らせるのも無理はない。

 

 まあ恐竜帝国の決戦に百鬼帝国やそのほかの勢力が乱入し、マシーンランドごとまとめて恐竜帝国を滅ぼす可能性も十分にあるわけだが。

 とにかくこうした打算と家族としての情を抱く早乙女博士らが、ゴーラことミユキが利用されるのを嫌っているのを察し、彼らとの友好関係そして正義の味方のスポンサーとしてのスタンスから、ヘイデスはこれを黙認した。

 これだから民間人混じりの部隊は、と連邦軍の将校からは散々に言われたが、ヘイデスが仕事の合間を縫ってとりなし行脚を敢行し、ゲッターチームをはじめとした現場のパイロット達に悪意が向くのを防ぐことに成功する。

 

「はあ。歴戦のスーパーロボットのパイロットとはいえ、正義感に溢れる少年少女達なんだ。彼らが負い目を感じたまま戦場に出たらどれだけ悪影響が出るやら。それに軍人でもない子供達をただでさえ戦場に立たせているのに、これ以上、重圧を与えてどうするんだ」

 

 ヘイデスは今日もアレスコーポレーションの自室で椅子の背もたれに体重を預けながら、取り成しと弁護の連続による疲労からつい愚痴をこぼす。

 はあ、と更に重い溜息を零してから、ヘイデスはほうじ茶を啜り、大きな砂糖粒の輝くザラメせんべいをぼりぼり音を立てて齧る。

 

「ああ~美味しい。しかしまあ、ゴーラ王女の引き渡しか」

 

 あれだ、ガンダムSEED作中においてユニウス7で保護したラクスを、キラと友人達が独断でアスランに引き渡したイベントが思い起こされる。

 あちらは曲がりなりにも人類同士だったが、こちらは異種の戦争相手で前提が違うし、仮にスパロボで今回のようなイベントが実装されたら、それはそれでプレイヤー間で賛否両論ありそうだ。

 

(上手いこといってゴールとバット将軍とガレリィ長官が亡き者となり、キャプテンラドラと手を組んで親人類政権になってくれれば助かるが、恐竜帝国の所業を考えれば人類側もそう易々とは許せないよな。

 まあ、人類だって人種、宗教、経済、土地、歴史諸々の理由で漫画版恐竜帝国顔負けの所業を人類同士にやっているし、ガンダムシリーズとOGシリーズだとそれが顕著だし、人体実験とかバンバンやっているし……)

 

 ああ、だめだ、疲労で思考が迷走している、とヘイデスは残りのほうじ茶を飲み干して、目を瞑って目元を揉み解す。

 机の引き出しから脳に必要な栄養補充を目的に開発されたシリアルバーを取り出し、ブルーベリー味とレアチーズケーキ味の二本を平らげ、即効性の高いブドウ糖ラムネをぼりぼり齧る。

 

「あ~~~~脳にブドウ糖が染みる~~~気がする~~~~。……さて、シーマさんが掴んでくれた情報が確かなら、デラーズはあくまでもザビ家に忠を尽くすという立場を崩さずか。そうなると真ジオンの本当の目的についても、考え直さないといけなくなるな。

 連邦の宇宙艦隊が核で吹き飛ばされなければ、今後の宇宙の敵との戦いは楽になる。出来れば月に立ち寄ったついでにスカルムーン基地を叩きたい。そうすればベガの連中の動きを牽制できる」

 

 アルトアイゼン、ヴァイスリッター、ヒュッケバインのデータから開発されたラピエサージュ、ビルトファルケン相当がロールアウト間近だ。

 ゲシュペンストMk-IIと各HCのデータを統合したゲシュペンストMk-Ⅲも同じで、ロームフェラのモビルドールのトーラスやビルゴと共に地球連邦軍の主力として、侵略者達に苦汁を味わわせるだろう。

 バルゴラの正式仕様機もオウカ達グランド・スター小隊の収集したデータを統合し、ゲシュペンストMk-Ⅲと並ぶ次期主力機として陽の目を見る時は近い。

 

(宇宙ではおそらくジュドー達ガンダムチームとZZ、それにシーブックとセシリーにF91とビギナ・ギナ、GP03あたりが更に追加か? おそらくティターンズとの決戦はもう少し後になる筈だが、それでもあまり追い詰め過ぎれば原作以上にバスクが大暴れして、コロニーレーザーと毒ガスを乱用するかもしれないな。

 それとムーン・クライシスのタウ・リンとヌーベルエゥーゴ、月のなんだっけ、ハインライン作戦? も実行されれば目も当てられないような事態になる。そうなるとこの世界のミネバは……)

 

 スパロボ時空では珍しくないが宇宙世紀シリーズのような続き物のタイトルが一堂に会する場合、各タイトルの主人公達がほぼ同年代の生まれになるか、異なる世界か時間軸から集められるケースがある。

 場合によってはカミーユよりアムロが年下という現象さえある。そしてこの世界ではバナージ・リンクスはこの時点で原作相当の年齢にまで成長し、ウッソ・エヴィンは生まれてさえいない。その一方でシーブック・アノーは既にF91原作相当の年齢となっている。

 

(こればかりは俺がどれだけ財力を得ようとどうしようもない事だな。ブッホコンツェルンは原作より時間も準備も何もかも劣っているはずだが、コスモバビロニアをやるつもりなのか?

 原作そのままの戦力で展開をなぞるのなら無謀極まるし、宇宙人に侵略を受けている時にやる事じゃないわな。となると自警団か、連邦に変わるスペースノイドの守護者気取りでもやるか。

 セシリーのお爺さんは一見、良識があるように見えて人類の口減らしを鉄仮面に命じた元凶……なんだよな?

 そうなるとロナ家はドレルとセシリー以外、まともなのが居ないっぽいし、そんなのの台頭を許した地球連邦の弱体化もひどいって話かね。まあ、この世界の地球連邦は腐敗も弱体化する余裕もないんだけど)

 

 そこまで考えてから、ヘイデスはふと思い出した内容にありえない、と小さく笑った。

 

「ラストバタリオン、DCの親衛隊の指揮官は鉄仮面だったか。DCの、ねえ?」

 

 そのDCはもちろんこの世界のDCとは異なる初期のスパロボでの話だ。それでも何かしらのスパロボの縁が関わってくるのが、クロスオーバー時空の恐ろしいところだ。

 まあ、クロスボーン・バンガードがこちらに接触を図ろうとしても、話だけは聞いて門前払いになるだろうけれど。

 

「心の底から来て欲しくないわぁ・・・・・・」

 

 

 DC宇宙艦隊はワイアット艦隊救援後、各サイドのコロニーに姿を見せる真ジオン公国軍にGP02を強奪したガトーの部隊が合流すると踏み、プルート財閥と連邦軍、アナハイムから潤沢な支援を受けながら宇宙を飛び回っていた。

 その過程でコロニー・シャングリラを訪れて、真ジオン公国のマシュマー・セロ率いるエンドラ艦隊と幾度か交戦し、ご存じジュドー・アーシタをはじめとしたガンダムチームを艦隊に加えている。

 

 部隊の平均年齢を大幅に下げる少年少女の参加は良識を持つ大人達に大いに反対されたが、アムロやカミーユを彷彿とさせるジュドーの才覚と、二人とは全く異なるバイタリティが惜しまれて、結局エゥーゴに参加するという形で合流と相成ったのである。

 原作主人公の加入とモニターの向こうだったら喜べるところだが、モニターの中に来たような状態のヘイデスからすれば、失われれば戻らない命であり、ましてや自分の半分も生きていない子供らとあって、罪悪感に胃壁が悲鳴を上げるようだった。

 

 戦力的に見ればまだ卵の殻の付いたヒヨッコレベルとはいえジュドー、ルー、エル、ビーチャ、モンド、イーノというニュータイプパイロットが加わり、MSもZZガンダム、メタス改(ルー機)、新造されたガンダムMk-Ⅱと百式、メガ・ライダー二機を補充して戦力を強化している。

 それにしてもこの部隊ほどメンバーの年齢差と力量の上下さが激しい部隊は、そうそう他にはあるまい。

 なおジュドーの妹リィナもアーガマに搭乗し、クルーは子供を乗せる事に罪悪感を抱きながらも時にジュドーを叱り、小さな体で一生懸命に働く少女の姿に絆されていた。なお精神年齢の近いシュメシとヘマーが喜んだのは言うまでもない。

 

 そしてガンダム試作一号機ことGP01ゼフィランサスの本格的な宇宙仕様への改装の用意が整い、DC宇宙艦隊は月面都市フォン・ブラウンに羽を落ち着けていた。

 ジオン系の技術者を多く抱えるグラナダとアナハイムのMS開発部門を二分するフォン・ブラウンでは、DCに同行していたニナが大いに高めた見識とセンスを発揮し、可愛いGP01の改装に勤しんでいる。

 

 月にはベガ星連合軍の前線基地があるのは半ば確定事項として連邦では語られているが、月にはフォン・ブラウンにグラナダ、ロームフェラ財団の大規模なMD生産工場が存在しており、防衛の為に配置された戦力は膨大なものになる。

 そうして薄氷の上に立つ平穏をなんとか維持していた月だったが、それもエゥーゴとティターンズ、そして旧ジオン、ベガ星らの思惑が絡み合い破られることとなる。

 

 ことはベガ星のスカルムーン基地を預かるガンダル司令が部下のブラッキー隊長に、自らのホームにグレンダイザーがのこのこやってきたと攻撃を命じたことに端を発する。

 DC宇宙艦隊にマジンガーZをはじめとしたスーパーロボットがほとんどおらず、あくまで地球人の量産型兵器が部隊の多数を占めている事と、あのグレンダイザーを破壊するか鹵獲すれば褒美は思いのままと手柄を求めたのも大きな理由だ。

 

 そうしてマザーバーンに乗ったブラッキー自らが率いるベガ星連合軍は、かつてない大軍勢でフォン・ブラウンへと侵攻していった。入念にもスカルムーン基地の位置を知られない為に、一旦、月を離脱してから再突入するという手筈まで整えている。

 ブラッキー以外のマザーバーンも複数あり、無数のミニフォーとブラッキーの指揮下に置かれた円盤獣の中には、ゴスゴスに搭乗するフリード星人ナイーダの姿もあった。

 原作では死亡してしまうが、スパロボでは助かる道も用意されているデュークの幼馴染の女性である。

 

 大攻勢を見せるベガ星連合軍に対し、フォン・ブラウンから出撃するDC艦隊の中には、原作とは異なり大破していないにもかかわらず、ユニバーサル・ブースター・ポッドを装備し、フルバーニアンと呼称される事となったGP01の機影もある。

 技術の歪な進歩と進化の著しいこの世界において、フルバーニアンの特徴的な背部のポッドには既にミノフスキードライブのひな型と呼べるものが搭載され、コックピットブロックを守るピンポイントビームバリアがコアファイター側に装備されている。

 ウェイブライダーやGフォートレス、トールギスタイプ、ヴァイスリッターに勝るとも劣らぬ速度を得たフルバーニアンは、パイロットであるコウに内臓破裂の危機感を抱かせるほどだ。

 

「おうウラキ、お前のガンダムが新しくなったからって調子ン乗るなよ!」

 

 とフルバーニアンと小隊を組むモンシアは通信越しに告げるが、その声音はいつもよりどこか浮ついている。コウはフルバーニアンの齎すGに耐えながら、一杯一杯の声音で答える。

 

「も、モンシア中尉もガンダムに乗っているじゃない、です、か!?」

 

「わはははは。だからお前は安心してそのバッタちゃんで遊んでな! その間に俺様がこのガンダムでエイリアンを蹴散らしてやっからよ!」

 

 有頂天と言えばこれ以上ないモンシアであるが、それもそのはず。

 フォン・ブラウンにてアルビオン隊には新型MSが支給されており、モンシアにはガンダムMk-Ⅲ(地球連邦版)、ベイトにはガンダムMk-Ⅳ(オーガスタ研産)、アデルとキースにはFAZZが支給されていた。

 アポリーとロベルトはシュツルム・ディアスに乗り、カツにはGディフェンサーが回されて、エマのガンダムMk-Ⅱとドッキングしてスーパーガンダムとなり、戦場に出ている。

 

「モンシア、戦闘を前に随分と余裕だな! 帰ってきたら腕立てを百回でも二百回でもやってみるか!」

 

「ひえ、ば、バニング隊長、そんなただの後輩への激励ですって。隊長こそ新型の具合はいかがなもんで?」

 

「フン、お前ももう少し落ち着けば小隊の一つも任せられるんだがな。こいつ、シルヴァ・バレトか。ブルダーク少佐のガンダムMk-Ⅴ系列機だというが、ガンダムヘッドに恥じない性能はある」

 

 なんだかんだで、地球圏では特別視されているガンダムの系列機に乗り、性能がご機嫌という事もあって、バニングもまたモンシア同様に内心では浮かれているのだった。




あなたは
アムロをFAZZに乗せてもいい。
カミーユをシルヴァ・バレトに乗せてもいい。
クワトロをガンダムMk-Ⅲに乗せてもいい。
ジュドーをガンダムMk-Ⅴに乗せてもいい。
コウをガンダムMk-Ⅳに乗せてもいい。
ゼファーをフルバーニアンに乗せてもいい。

想像するのは楽しいものです。

追記
自らら → 自ら

(みずか)らら 自分達、自分等と同じニュアンスで使っていたのですが、誤字脱字の報告を複数頂いたので変更しました。使わないのか……そっか。


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第三十八話 ちょっと地球を強くし過ぎたかも?

宇宙ルート 第二十六話 ムーンファイト

 

 FAZZ(ファッツ)を受領したチャップ・アデル中尉は、同じくFAZZを受領し、まさかのガンダムタイプに舞い上がっているチャック・キース少尉に注意喚起を兼ねて指示を出した。

 アルビオン隊のMS部隊はバニング、モンシア、ベイト、コウらの四機編成小隊と、それを支援するアデルとキースの二機編成小隊に分けられている。

 

「キース少尉、艦隊の砲撃後、我々もデータリンクに基づき、ハイパー・メガ・カノンによる砲撃を実行します。第一射は私が、続いてキース少尉が。そうして交代しながら三度、砲撃を行います。いいですね」

 

 浮かれているとはいえ既に実戦を何度も経験しているキースは、当然、アデルに言われたことを頭の中に叩き込んでいたが、改めて上官に口頭で指示を出されれば、気を引き締めて自分の役目を強く意識する。

 アデルからの指示は、幸いキースが記憶していたものと相違ない。FAZZの全高にも匹敵するハイパー・メガ・カノンは、ヘパイストスラボの開発したMS向け大火力武器の大半を上回る大火力だ。ベース機のZZガンダムから引き継いだ大出力ジェネレーター様々である。

 

「はい! 砲撃後はアルビオンと共に砲撃支援に専念します」

 

「よろしい。FAZZは近接戦闘を想定していません。DCから頂いた武器も気休め程度に考えておいてください」

 

 FAZZの武装は60mmのバルカン二門、機体各所に装備されたミサイル・ポッド、背部ビーム・カノン二門、右肩に担ぐようにして持っているハイパー・メガ・カノン、ハイパー・メガ・カノン排除後の使用を前提とし右前腕部に固定しているダブルビームライフルだ。

 頭部と腹部に装備されたハイメガキャノンはダミーで発砲は出来ず、装甲材も一般の量産機に比べ高性能とはいえ、ZZガンダムのソレよりもワンランク品質が落ちる。

 

 これはもともとZZガンダムのフルアーマー形態の重量バランスの検証を目的として、アナハイムが連邦軍に試験を依頼した機体であり、使い捨て前提で十数機が生産されたからだ。

 一騎当千のスーパーロボットめいたZZガンダムとは、そもそもコンセプトからなにからが別物なのだ。

 今はDCから支給されたビームランチャーをアデル機が、ビームガトリングガンをキース機がそれぞれ空いている左手に持っている。

 

(キース少尉はこの機体をガンダムタイプだと信じてはしゃいでいるが、実体はそうではない。ジュドー君の乗っているZZと外見が同じなだけの……)

 

 

「ハリボテですわねえ」

 

 とエリュシオンベースに戻っていた所長は、アナハイムから購入したFAZZを前にして溜息と共に零した。重量バランスの検証目的で製造された機体なのだから、それは当然なのだがガンダムの外見を持つ機体がそれでよいのかと思わないでもない。

 

「ハイメガキャノン抜きでも目を見張る火力があるのは、流石と言うべきかしら」

 

 所長の居る格納庫にはFAZZ以外にも、アナハイムのZプロジェクトで開発されたZ系列の機体の量産機やデータをコピーして製造した機体がずらりと並んでいる。

 アナハイムがヘパイストスラボ製の機体を購入して研究しているように、こちらもアナハイムの機体を正規の取引で購入し、研究しているわけだ。

 流石にプロジェクトの大成果であるZガンダムやZZガンダムは購入できなかったが、プロトタイプや少数とはいえ量産を前提とした系列機などは購入できている。

 

 長袖で前開きのゆったりとしたガウン――トルコの民族衣装カフタンの女性向けを着用し、その上に白衣を纏った所長は手に持った極薄のタブレットを操作しながら、ふむん、と艶やかな唇から一言発した。

 ベース機とは異なりGフォートレスへの変形機能も合体・分離機能もないFAZZだが、それでもベース機の性能を逆算して推測する事は出来るし、実機を得るのは十分に利益になる、と所長の技術者としての勘は判断している。

 

「まずはこのFAZZをウチらしく改造させていただきましょうか。鍛冶神ヘパイストスの名を冠するラボの名に恥じない機体に仕上げて見せませんと、アナハイムから嫌味の一つも言われそうですし」

 

 アナハイムの技術力の確認と新たな技術の開発、そのほか諸々の用途の為にこの格納庫に集められたFAZZやZプラスといったZ系列機は、親元を離れて所長達の下で新たな姿へと作り変えられる運命にあった。

 それはそれとしてあまり高性能に仕上げたら、それもまたアナハイムに対する嫌味になりそうだ。案外狙ってやるかもしれないが。

 

「量産する必要はないですね。宇宙組への戦力と考えて、んー、装甲はガンダリウム・コンポジットからガンダニュウム合金に交換して、バイタルエリアはPS装甲にしますか。

 頭とおへそのハイメガキャノンも使用可能な状態にして、背部のビーム・カノンもサーベルとして運用できるようにしましょう。

 一応頭部のバルカンも四門すべて使えるようにするとして、超電磁コーティングとダイレクト・バイオリンク・センサーを搭載して運動性と反応速度の向上、ジェネレーターはどうしましょうかしら?」

 

 ダイレクト・バイオリンク・センサー通称DBSは、SRG製バイオセンサーとダイレクト・フィードバック・システムで培った技術的経験値により開発された、SRG計画の新型操縦補助システムだ。

 正式採用のバルゴラやゲシュペンストMk-Ⅲにも搭載が決定しているシステムで、宇宙組に合流したヒュッケバインやデュラクシールにも搭載されて、パイロットと機体を結ぶ一助となっている。

 

「ブラックホールエンジンかDエクストラクター……超電磁エネルギーや光子力も一通り試しますか。

 それにGN粒子をコンデンサか貯蓄タンクに詰めて搭載すれば、軽量化した機体と合わせて軽やかに動いてくれるでしょうし、トランザムも出来ますね。ふふ、ベース機に負けない性能になるかもしれませんねえ」

 

 そうして所長の視線はFAZZやZプラスらへと向けられる。もし機体に意志があったなら、これから自分達に降りかかる未来を想像して恐怖に震えたかもしれない。

 大丈夫、一応、MSではいられるはずだし、性能が上がるのは間違いないから。MSの皮を被ったナニカにはなるかもしれないが、陽の目は見られるだろう。たぶん、きっと。

 

 

 場面は再び月面へと戻る。DC宇宙艦隊とFAZZ、ヴァイスリッター、グランド・スター小隊のバルゴラ四機、そしてマザーバーン艦隊の間で無数のビームとミサイルの応酬が行われた後、双方の機動兵器部隊は互いを殲滅するべく月の空を舞い飛んでいた。

 特にベガ星連合軍から集中的に狙われるのは、言うまでもなく彼らと因縁のあるグレンダイザーだ。G3スペイザーは異なる技術をぎゅっと詰め込んだ反動で、使用する度に丁寧なメンテナンスが求められる為、今回は装備していない。

 

 円盤獣に殺意と共に群がられる中、グレンダイザーを操るデュークは円盤獣ゴスゴスに意識を集中させていた。より正確に言うならば、彼の幼馴染であるナイーダ・バロンの説得に全神経を割いていたというべきか。

 薄緑の髪に血の通わぬかのような白い肌を持つ美しきフリード貴族のナイーダは、デュークにとって久しぶりに再会する事の出来た幼馴染であり、同じフリード星人だ。

 それだけにデュークはナイーダとの再会に喜び、彼女が自分を憎む姿には小さくない動揺を抱いた。

 

「デューク、デューク・フリード、あたし達を、フリード星を見捨ててグレンダイザーで逃げ出した卑怯者! 今日、この場であたしが貴方を討つわ!」

 

 半月状の円盤から手足を生やした方のゴスゴスは、手にした電磁ランサーを連続してグレンダイザーへと突き込む。

 デュークの動揺によってグレンダイザーの動きは精彩を欠いていたが、それでもダブルハーケンで刺突のことごとくを叩き落とすのは、デュークの体に染みついた戦闘経験の成せる業であった。

 

「く、ナイーダ、聞いてくれ、たしかに僕はフリード星から逃げた。逃げてしまった。だがそれは力を尽くしても足りず、フリード星が敗れてしまったからだ。力及ばず敗れてしまった事実には謝罪の言葉もない。だが人々を守る為に全身全霊を賭したのは偽りじゃない!

 決して君達を、フリード星の人々を見捨てて逃げたわけじゃない! こうして地球に来てから戦いを決意した以上、必ずフリード星も開放してあの美しい星に平和を取り戻して見せる!」

 

「嘘よ、逃げた貴方の言葉をどうして信じられるというの!?」

 

「くっ!」

 

 ゴスゴスの猛攻に乗じて周囲から放たれる破壊光線やミサイルの豪雨に、グレンダイザーを後退させてデュークは仕切り直しを試みた。例え降り注ぐ攻撃を受けたとしても、宇宙合金グレンは耐え切るだろうが、デュークの精神が状況の変化を求めたのだ。

 

「逃がさない!」

 

 ナイーダのゴスゴスを筆頭に円盤獣がグレンダイザーを追うが、そこに大出力のビームの嵐が吹き荒れて、ゴスゴス以外の円盤獣に損傷を負わせて足を止めさせた。

 

「なにやっているんだよ、デュークさん!」

 

 グレンダイザーの窮地を救ったのは、ZZガンダムのジュドーを筆頭としたシャングリラ・チルドレンだ。ジュドーはダブルビームライフルとミサイルを一斉に発射し、円盤獣の進撃を押しとどめる弾幕を展開する。

 加えてルーのメタス改、ビーチャの百式、エルのガンダムMk-Ⅱ、イーノとモンドのメガライダーの火線も加わって、さしもの円盤獣も耐久性に任せて進むことが出来ない。

 

「ジュドー君、すまない、不甲斐ないところを」

 

「そんなのはいいって。大人だって上手く行かない時はあるでしょ。俺が言いたいのはさ、あの槍を持っている円盤獣のパイロットが何を言ったのか知らないけれど、あのパイロット、なんだか普通じゃないよ」

 

「なんだって?」

 

「具体的にどうって言えないけどさ、デュークさんはあっちと知り合いだったんでしょ。だったら本当にそんな事を言う人か、あんたなら分かるでしょ! 洗脳とか、偽物で騙そうとしているとか、そういうのって考えられないの?」

 

「それは……」

 

 しかし、それは都合が良すぎるのではないか? おめおめと生き延びた自分の事を恨み、ナイーダは本気で自分を恨んでいるのではないか? そうデュークの心は囁いている。

 そうであって欲しいという願望かもしれない。ナイーダは心から自分を恨んでいるのかもしれない。

 

「だが、そうだ、ナイーダはだからといってベガの手先となり他の星を侵略するような女性ではない。ありがとう、ジュドー君。なんとしてもナイーダを止める。他の誰でもない、この僕とグレンダイザーの手で!」

 

「へへ、そうこなくっちゃ。それなら周りのうるさいのは俺達が何とかするから、上手くやってくれよ」

 

「ああ! 行くぞ、グレンダイザー! ナイーダ、例え君が本当に僕を憎んでいたとしても、それはこの星の人々には関係のない事だ。ベガを退け、この地球から魔の手が払われた時、僕は君の責めを甘んじて受け入れよう」

 

「覚悟を決めたか、デューク・フリード! やあああ!」

 

 グレンダイザーがまっすぐに向かってくるのに対し、ナイーダは電磁ランサーを突き出した構えでゴスゴスを突撃させた。宇宙合金グレンといえど十分に加速し、相討ち覚悟の一撃ならば傷をつけられる、とナイーダは判断していた。

 

「はああ!」

 

 ぐんぐんと距離が縮まり、グレンダイザーの心臓部を狙う電磁ランサーを、ダブルハーケンが下方から弧を描いて弾き飛ばし、その勢いを利用したグレンダイザーが回転しながらの斬撃でゴスゴスの右腕の肘から先を斬り飛ばす。

 

「きゃあ!?」

 

「ハンドビーム!」

 

 更に死に体になるゴスゴスの左腕をグレンダイザーから放たれたビームが付け根から吹き飛ばし、瞬時に追い込んでゆく。

 

「まだよ!」

 

 ゴスゴスの額からベガトロン冷凍光線が発射されるが、既にそれを察知していたデュークはグレンダイザーをゴスゴスにタックルさせて回避。さらにはゴスゴスの動きを拘束してのける。

 

「くうう、離しなさい、離して!」

 

「いいや離さない。このまま君を拘束させてもらう! 君をこのままベガの手の内に置いてはいけない!」

 

「ふん、そうして円盤獣を倒すのね。いい事を教えてあげるわ、デューク。貴方と貴方のお仲間達が調子に乗って倒していた円盤獣にはね、フリード星の人々をはじめとした多くの人達の脳が使われているのよ! 貴方は平和を守るとうそぶきながら、同胞を殺してきたの!」

 

「! そうか。……ふふふ、はははは!」

 

「な、何がおかしいの!?」

 

「君がベガによって洗脳されているのが分かったからさ! ナイーダ、これまで僕と地球の人々が何十、何百の円盤獣を倒してきたと思う。

 敵の兵器を解析するのは当然だ。確かに円盤獣には制御系に生物の神経や脳が用いられていた。だが、それはどれも同じ規格のものだった。この意味が分かるかい? 培養された生体部品という事だ。

 ならば、君の口にしたフリード星の人々の脳が使われているという話は嘘となる。僕と親しかった君に僕への憎悪を植え付けて、僕の動揺を誘う、そんなところだろう!」

 

「あ、ああ、それは、違う、私は!」

 

「ベガの催眠をそう簡単に解けるとは思っていない。だが、今日、この場で君をベガから奪い返す!」

 

 グレンダイザーの右腕が振り上げられ、ゴスゴスの額にあった冷凍光線の発射口を叩き潰し、拘束を解いてナイーダがゴスゴスを操る一瞬前にその両足をダブルハーケンが斬り飛ばす。

 立て続けに機体に襲い掛かる衝撃に、コックピットのナイーダが気絶したのを通信回線越しに確かめて、デュークは改めてゴスゴスをグレンダイザーで抱え直す。

 

「よし、これで」

 

「デュークさん、こっちは俺達に任せておいてよ。レビル艦長なら話も通じるだろうし、早くハガネに戻りなって」

 

「ああ、すまないがそうさせてもらうよ。ジュドー君、ありがとう。君の激励のお陰で僕は間違いを起こさずに済んだ」

 

「いいって、いいって。なんか嫌な感じがしたのを伝えただけなんだから」

 

 照れた調子の混じるジュドーの声に、デュークは微笑を浮かべてそれ以上の賛辞を止めた。少しスレたところのあるシャングリラ・チルドレンには、別の機会に食事でもおごってお礼をするのが一番だろう。

 デュークは心の中でジュドーをはじめとしたシャングリラ・チルドレンに重ねて礼を告げて、ハガネへ通信を繋げて事情を説明し一旦、前線を離れる許可を取るのだった。

 グレンダイザーがゴスゴスを抱えたまま後方へ下がるのを確認し、マザーバーンの一隻で指揮を執っていたブラッキーは、ナイーダが事を仕損じたのを理解した。

 

「ええい、グレンダイザーを仕留められなかったか。だが奴が下がったのは好機。今のうちに何としても地球人共のロボットを破壊し、艦隊を仕留めねば!」

 

 更なる攻撃を命じるブラッキーの指揮に従い、ミニフォーの大編隊と円盤獣の群れはDC宇宙艦隊へ襲い掛かり、レビル艦長をはじめとしたDC側はこれにありったけの火力を叩きつけて迎え撃つ。

 ガンダムMk-Ⅴからドーベンウルフを経由せず、ガンダムMk-Ⅴから直接開発されたシルヴァ・バレトを駆るバニングを筆頭に、ガンダムタイプに浮かれるモンシア、慣れぬインコムに四苦八苦しながらガンダムMk-Ⅳを操るベイト、そして尋常ではない速度に耐えながらフルバーニアンを操縦するコウも、次から次へとおかわりのくるベガを相手に奮闘している。

 

「こいつでどうだ!」

 

 シルヴァ・バレトのビームライフル、シールド下部を占めるビームランチャー、肩部ビームキャノン×2、ミサイルランチャー、対艦ミサイル、インコムと豊富にそろった武装を襲い来る敵機の群れに的確に放ち、一年戦争以来のベテランの力量と高機動・高出力・重武装MSの組み合わせがいかに強力であるかを知らしめている。

 そこへバニングのフォローに入るモンシアのガンダムMk-ⅢとベイトのガンダムMk-Ⅳも、オプションであるメガ・ビームライフルとビームランチャー、更に固定武装のビームキャノンと一基のインコムも加えたビームが、はるばる宇宙からやってきた侵略者に歓迎の光雨(こうう)となって降り注ぐ。

 

「本物の宇宙人共がよ、土産の一つも持って挨拶に来いってんだ!」

 

「はん、侵略者の土産なんぞ、毒入りで口に入れられねえよ」

 

「違いねえ!」

 

 がははは、とモンシアとベイトが笑い合う傍らで、コウはフルバーニアンの機動性を買ったバニングの指示で、三機へヘイトを集めるベガ軍に対し、上下、左右からの奇襲役を任されていた。

 バッタの様に跳ねるかのごとく宇宙を飛ぶフルバーニアンを、コウはよく操縦していたと褒めるべきだろう。自分の体に伸し掛かる圧力に耐えながら、バニングらに意識が集中しているミニフォーの編隊へ上方から稲妻のように襲い掛かり、ビームライフルの連射を浴びせて二機、三機と撃墜して行く。

 

「落ちろおお!」

 

 更にすれ違う瞬間にビームジュッテで四機目を撃墜し、コウは機体が月面に激突する直前で急上昇させ、今度は円盤獣の背後から襲い掛かる。

 機体がガンダムタイプだから、ただそれだけでは済まされない見事な奇襲と操縦だ。そうして円盤獣の一体に狙いを定めた時、コウは戦闘宙域に二つの方向から急激に接近してくる熱源に気付いた。なにより彼にはその内の片方に思い当たる節があったのだ。

 

「あれは……ヴァル・ヴァロ、ケリィさんか!?」

 

 かつてゼファーが搭載されたことのある赤い甲殻類のごときジオンのMA、それはフォン・ブラウンでの休暇中、コウが出会ったジャンク屋のケリィ・レズナーが整備していた機体に間違いなかった。

 元ジオン軍のパイロットであるケリィは原作の通り、フルバーニアンへの改修が済んだタイミングでヴァル・ヴァロを駆って姿を見せ、そして原作とは異なりベガ星連合軍という侵略者から愛する者の居るフォン・ブラウンを守るべく出撃したのだった。

 そしてもう一つ違いを加えるのなら、ただ一人で出撃したケリィに対して、今回は味方が複数いた事だ。

 

「ケリィ・レズナー、あんた、先走るなら先走るであたしらに断りを入れてからにしな!」

 

「ガラハウ中佐!?」

 

 ケリィが驚きを上げるのも無理はない。彼は単独で出撃したつもりであったから、ガーベラ・テトラを駆るシーマやズサ、ガザD、ドライセンなど二十機あまりのMS部隊が自分に合流するなど夢にも思っていなかったのである。

 ワイアットとの取引後、シーマらはデラーズを通じて真ジオン公国に対し旧式のMSでは戦っていられない、と当たり前の要求を出し、景気よく支給されたのが今乗っているMSと後方で控えているエンドラ級五隻だ。

 もちろんデラーズフリートへの潜入が終わったら、これらアクシズもといネオ・ジオンもとい真ジオン公国の兵器は、まるっとプルート財閥送りである。

 

 原作においてケリィを、ではなくヴァル・ヴァロ目当てで接触したシーマ達であるが、この世界において彼女らはプレイヤー部隊側の存在であるし、ヴァル・ヴァロにもケリィにも固執する理由はない。

 一応、ガトーからの要請に端を発したデラーズの命令なのでケリィと接触し、またDC宇宙艦隊との接触に気を配りながら月にやってきて、アナハイムのオサリバン常務からガーベラ・テトラを受領し、これで終わりだ、と考えていた矢先にケリィのコレである。

 

 シーマ達としてはベガの接近を知った時点では、アレスコーポレーションフォン・ブラウン支部でゲシュペンストMk-IIを借り受け、DC宇宙艦隊の増援に向かうつもりだった。

 そこへケリィとの連絡要員に残していた部下から出撃の準備を進めている、と連絡が入り、急遽、偽装の為に真ジオン公国の一員としてこの場に姿を見せたわけである。

 

「ガラハウ中佐、独断での行動は慎んで詫びる。だがこの状況を俺は!」

 

「ああもう、はいはい。皆まで言いなさんな。あたしらも地球侵略を目論む一派の末席だけど、あんたはついさっき加わったばかりだしそんな実感はないだろうからね。

 それに相手はあたしらの大元締めであるバルマー・サイデリアル連合とは、違う旗を掲げた宇宙人なんだ。あたしらが戦ったってお咎めはないだろうさ。

 ただしこの状況で連邦に仕掛けるのはやめときな。ベガ相手に一時共闘って形であっちに申し込むからね。流石にあたしのこの判断にまで口を挟ませるわけにゃいかないよ?」

 

 ケリィは大尉でシーマは中佐と階級が二つ離れ、尉官と佐官という違いもある。それにこの状況下ではケリィもフォン・ブラウンを守る連邦軍つまりはDCを敵に回すのは、本意ではない。

 

「それで十分だ。中佐、心から礼を言う!」

 

「はいよ」

 

 くわっと圧のある表情になるケリィからの通信を切って、シーマはガーベラ・テトラのコックピットで大きく溜息を吐いた。

 

「まったくガトーの親友だってのが分かる暑苦しさだねえ。類は友を呼ぶ、か。コッセル、DCのレビル艦長に連絡入れときな! こっちは撃たないからそっちも撃つなってね!」

 

 まったく割に合わないアクシデントばかりだ、とシーマは心の中で何度も愚痴を吐き捨てるのだった。

 そしてシーマ艦隊とは別に戦闘宙域に接近していたのは、ティターンズの艦隊であった。アレキサンドリア級一隻、サラミス改級六隻の合計七隻から成る艦隊が姿を見せたのである。

 

 ティターンズの旗を掲げる艦隊の接近に、DC宇宙艦隊の誰もがまたかよ、よりにもよって、と苦々しく思ったのは語るまでもない。

 ただ、ティターンズ艦隊の司令から通信を受けたレビル艦長は、すぐにその苦々しさを消す特権に預かっていた。なぜなら……

 

「それでは貴官らはグリプスの意向とは別に我々に対して協力を申し込むと、そう解釈して良いのかな? オットー・ペデルセン大佐」

 

 ここでレビルの言うグリプスとは、バスク・オムを指す。

 

「はい。間違いはありません。レビル将軍」

 

「私はもう民間人だ。将軍ではないよ、ペデルセン大佐」

 

 ハガネのブリッジでレビルがいつもの悪戯混じりに通信している相手は、ティターンズ艦隊の指揮官オットー・ペデルセン大佐。

 またティターンズのコンペイトウ方面軍司令にしてティターンズ・テスト・チーム通称T3部隊を預かる人物であり、アレキサンドリア級重巡洋艦アスワンの艦長でもある。

 

 ジャミトフからバスクに代わる人物として目をかけられており、本人もスペースノイドへの偏見がなく、部下からの人望厚く、時勢や戦局を見る大局的な視野を持つ有能な指揮官である。

 これまではその為にジャミトフとバスクとは折り合いが悪かったのだが、ジャミトフが時勢の変化を読み取り、これからはペデルセンのような人物こそ重用すべしと考えを改めた結果が、この状況である。まあ、そんなペデルセンでもレビルを前にすれば緊張の一つくらいはする。

 

「ジャミトフ大将の動きについては、ヘイデス総帥とゴップ議長を通じて我々も把握している。故に貴官らの行動についても、そうおかしいとは思わんよ。

 正規軍である貴官らの協力は、いささか偏見を抱きつつある我々の部隊の若い者達にも認識を改める良い機会となる。ハガネ艦長として、またDC艦隊司令として貴官からの協力の申し出に心から感謝を述べたい」

 

「ありがたい。現状はどうあれ、地球外生命体の侵略行為に対する防衛行為は、バスク・オムであろうと文句は言わせません」

 

 そうしてお互いに敬礼を交わして、通信は切られた。予め知らされていたとはいえ、面と向かってレビルと通信した事で、ペデルセンは想像以上の緊張に襲われていた。しかし、ここが戦場である以上、いつまでも呆けてもいられない。

 ペデルセンはすぐさま通信士のケイト・ロスに指示を飛ばした。

 

「MS部隊を出撃させろ。我々とDC宇宙艦隊、それに真ジオン公国の部隊とでベガ星連合軍を三方から叩く。本戦闘において真ジオン公国は相手にするな。間違っても撃つなと厳に命じる!」

 

 アスワンから発せられた指示に、他のサラミス改級六隻も即座に応じて搭載したバーザムを中心としたMS部隊を発進させる。対円盤獣として、従来のビームライフルではなくメガ・ビームライフルなどを装備している。

 そして艦隊副司令兼T3部隊副司令に任じられている、サラミス改級巡洋艦艦長トーマス・シュレーダー大佐もまた、彼の艦で預かるT3部隊を象徴するMS部隊――マーフィー小隊を出撃させていた。

 ティターンズによって開発運用された独自兵器をテストするマーフィー小隊は、新技術、新兵器と言えば聞こえはいいが検証不足で信頼性の低い機体を扱い続け、近年では侵略勢力相手に戦い続けた歴戦の実戦部隊としての面も併せ持つ。

 

「よし、色々と気まずい相手もいるが、大佐からの命令はきちんと守れよ。特にカール」

 

 そうからかうように言うのは、かつてアルビオン艦長のシナプス直属の部下でもあったウサギ好きのウェス・マーフィー。機体はギャプランTR-5フライルー。

 マーフィーにからかわれたカール・マツバラは、白人系の多いティターンズには珍しい日系のダブルだ。

 多少皮肉屋だが、仲間思いで明るく素直な性格をしている。マーフィーがからかったのも、いくつもの勢力の絡み合う戦場に向かう緊張を和らげる以上の意味は込められていない。

 

「分かっていますって。トリガーを引きたくなる相手が居るのは否定できませんが、それをすることの意味が分からないほど、青臭いガキじゃありませんよ。エリアルド、お前は大丈夫か?」

 

 ヘイズル・アウスラ・フルアーマー形態を駆るカールはそう小隊長へと返答し、僚機にも通信を繋げた。

 真面目で責任感が強く、ティターンズの掲げる正義を信じていたエリアルド・ハンターは、マーフィーと同じギャプランTR-5フライルーの二号機に搭乗している。

 

「ああ、大丈夫さ。ティターンズの掲げた正義が変わったとしても、それでも俺が信じた正義を俺が捨てなければ、俺はまだ戦える」

 

 エリアルドは秘めたる闘志と共に純粋で甘さを併せ持った青年だが、ティターンズ創設者のジャミトフ自身がティターンズを否定するという事態に直面しても、自分の意志で道を選ぶだけの経験と成長を重ねていた。

 

「そうか、お前らしい甘い答えだが、それでいいんじゃねえの?」

 

 そう言ってコックピットの中でカールは分かっていたよ、と言わんばかりに笑んでいる。

そうした二人の空気を、現実を伝えて引き締めに掛かったのは、Gパーツ・フルドドに搭乗し、主に援護を担っている四人目の小隊メンバー、才色兼備の女性軍人オードリー・エイプリルだ。

 

「はいはい、二人とも! 十年は遅い青春ごっこをやっていないで、戦闘に集中しなさい。そろそろこっちにも敵が来るわよ!」

 

 エリアルドとカールよりも先輩のエイプリルの言葉に、エリアルドは黙って、カールはへいへい、と口にしながら従う。部下の精神状態の把握とコントロールは小隊長であるマーフィーの役目だが、そのお株を奪うエイプリルの手際の良さだった。

 

「俺の役目なんだがな。っと、来たか。マーフィー小隊、各機散開、フルブラスト!」

 

「了解!」

 

 マーフィーの掛け声と共に小隊各機は散開し、また他のアスワン艦隊のMS部隊も彼らへと向かってくる円盤獣にメガ粒子とミサイルを思う様浴びせ、反撃に放たれる破壊光線や冷凍光線、レーザーにミサイルを避け、防ぎ、またあるいは直撃を受けた。

 そうして奮闘し始めるT3部隊を見て、元ティターンズのヤザンは古巣にも骨のある奴らがいた、と嬉し気だ。

 

「居るところには居るじゃないか、腕の立つのが。バスクの奴は人望がないか。ふん! このマシーン、得体の知れないものを感じるが、使いこなしてやろうじゃないか。ラムサス、ダンケル、仕掛けるぞ。姫、あまり無茶はなさりませんように!」

 

「はいはい。好きに暴れてきたら、おっちゃんズ」

 

 呆れた声を出すイングリッドはヘビーガンダムのコックピットから、おっちゃんズ――ヤザン、ラムサス、ダンケルがシャドウセイバーズから提供された新型機、ハンブラビで円盤獣と激しくやり合う姿を見送った。

 さてこのハンブラビ、シロッコが開発した機体を協力関係にあるDCへ送ったわけだが、この時空のシロッコ謹製ゆえに彼の開発したバイオセンサーを搭載、更に主動力の核融合炉とそこから電力を得てGN粒子を発する疑似太陽炉を補助動力として搭載している。

 ボリノーク・サマーンやパラス・アテネ同様、ミノフスキー粒子とGN粒子を併用した機体なのだ。ヤザンが得体の知れないものを感じる、と口にするのも当然かもしれない。

 

「はっはあ、トランザムとやらを試す!!」

 

 MA形態のハンブラビが赤く発光し、推進系とGNフィールド用に搭載されている疑似太陽炉が一斉にオレンジ色のGN粒子を吐き出し、三機のハンブラビは獰猛な海の捕食生物の様にベガ星連合軍へと襲い掛かった。

 

「ぶ、ぶぶ、ブラッキー隊長、地球人の攻撃が止まりません! 我が方の損耗率七十八パーセントを超えました!?」

 

 マザーバーンの艦橋でなんとも言い難い軍服姿のベガ兵からの報告に、ブラッキーは地球人離れした青黒い肌にびっしりと冷や汗を浮かべ、ピンク色の目を恐怖と驚愕に震わせていた。

 ミニフォーと円盤獣合わせて二百機越を誇った部隊は、既に機動戦力の四分の三以上を失っていたのである。

 

「ナイーダが失敗したとはいえ、グレンダイザーを後方に下げる事に成功したというのに、地球人の増援がこうも立て続けにくるとは、なんたる不運。おお、天は我々を見放したか!?」

 

 ブラッキーがそう叫んだ直後、グレンダイザーがハガネから発進して戦線に舞い戻った事で、ブラッキーの心はポッキリと折れて、彼はなりふり構わず戦闘宙域からの撤退を行うのだった。

 

<続>

 

■ZプロジェクトVerヘパイストスラボが開始されました。

■ハンブラビ(疑似太陽炉搭載型)三機を入手しました。

■ナイーダを確保しました。

■T3部隊が一時的に協力してくれました。正式加入ではありません。

 

第二十六話 ムーンファイト クリア後 ヘイデスショップ

〇サラミス改

〇マゼラン改

〇パブリク

〇セイバーフィッシュ

〇量産型Zガンダム

〇量産型ZZガンダム

〇ガンダムTR-1ヘイズル

〇ガンダムTR-1ヘイズル改

〇ジム・クゥエル

〇バーザム



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第三十九話 倒しても敵、倒しても敵。つまり経験値と資金である

ただしヘイデス的には敵勢力の追加はゴメンである。



 ベガ星連合軍を撃退後、デュークいや大介はフォン・ブラウンに停泊中のハガネの医務室を訪れて、救出したナイーダの様子を尋ねていた。久しぶりにあった同郷の幼馴染が洗脳されて利用されたのだ。どうしたって容体は気になる。

 幸いにして今のところは命に別条がないと保証されており、後は洗脳を解くだけだと大介はひとまずの安堵を得られる。医務室を出た直後、大介はジュドーに声を掛けられた。戦闘中に発破をかけたジュドーとしては、少々気になったらしい。

 

「大介さん。知り合いの人の容体はどうだい?」

 

「ジュドー君。ああ、先生は大事はないと言ってくれたよ。後は洗脳だけが問題だが、それも決して解けないものではないそうだ」

 

「そうなの? それならよかった。せっかく知り合いと会えたんだ。助けられるのが一番だもんな」

 

「あの時、君が励ましてくれたお陰だよ。情けない話だが、委縮してしまった僕の心に火をつけてくれたのは君の言葉だ。改めてありがとう」

 

「よしてよ、俺だってついつい勢いで言っちゃっただけなんだからさ」

 

「お礼を言うだけでは僕の気が収まらないのだが、あまりこだわってしまっても君を困らせるだけだからね。お礼を言うのはここまでにしておくよ」

 

「そうしてよ。そうそう、大介さん、ティターンズの人達がしばらく一緒に行動するって話はもう聞いた?」

 

 ペデルセン率いるT3部隊の事だ。フォン・ブラウン防衛線の後もしばらく行動を共にすることとなり、その点についてブレックス、ジャミトフからレビル、ロレンツォ、ブライト、クワトロらへ連絡が入ったのである。

 

「ああ。これまでティターンズとは戦う事ばかりだったから、驚いているよ。ティターンズの中でも今までのやり方に反発する派閥の人達だというし、ジャミトフ大将もティターンズを切り捨てる方針だというしね。少なくとも僕達を背中から撃つような人達ではないだろう」

 

「ヤザンさんやエマさんだって元ティターンズだし、それにシャングリラでティターンズに嫌な目に遭わされたわけでもないから、俺達は別に気にしないけどさ。クワトロ大尉とかカミーユさんみたいにエゥーゴの人の方が難しいんじゃないの、一緒に戦うの」

 

「特にカミーユ君はティターズの横暴が原因でエゥーゴに参加したというし、その点は僕も気になっているよ。ティターンズの中にも今の地球の状況を鑑みて、一致団結して戦うことが重要だと考えている人々が居ると分かるのは良い事なのだけれどね」

 

「ていうかティターンズと言ったって、地球連邦軍の一部なんだからさ、侵略されているんならそっちを相手に戦うのが普通だと思うんだけれどなあ」

 

 ごもっともな意見だ、とヘイデスが居たらジュドーの言葉に苦笑いを浮かべただろう。地球内外の勢力から侵略を受けても、地球人類同士で内ゲバを繰り広げるのが、スパロボ時空における地球人類の残念なクオリティなのだ。

 

 大介とジュドーがこれからについて話をしている頃、ハガネのブリーフィングルームではDC宇宙艦隊の首脳部とペデルセンやマーフィー小隊、イズミール艦長シュレーダーなどが顔を合わせていた。

 ティターンズ側の人員とDC側の人員が対面で座す形だ。既に自己紹介を済ませた面々の内、ペデルセン大佐が口火を切る。

 

「ジャミトフ閣下の指示により、一時的にですがシュレーダー大佐のイズミール以下マーフィー小隊を貴艦隊にお預けします」

 

 ペデルセンからはジャミトフからの指示書のデータが予め提示されており、彼の行動が本当にジャミトフからの指示に基づくもので、連邦の参謀本部も認めたものであると証明している。

 

「確かに、そのように指示を受けておられるようだ。我々にもブレックス准将から連絡がありました。ジャミトフ大将がティターンズの解体を行うべく、奔走していると……」

 

 微量の疑念を抱いてそう口にしたのはブライトである。ただクワトロと共にブレックスからの連絡を受けたのも彼で、本当にティターンズが変わろうとしている――一部を切り捨てようとしていると頭では分かっている。

 

「トカゲの尻尾切りのようなものとお考えかな? グリプスのバスク・オムは不服であるようですし、アレはジャミトフ閣下の意向を無視して独断で動き過ぎた。

 私的な意見を申し上げるのなら、軍人の分を超えて私怨で兵を動かし、あまりに怨みを買い過ぎたと言わざるを得んでしょう」

 

「ペデルセン大佐は、正直な方で居られるようだ。元ティターンズとなれば大佐にも風当たりはキツそうだが」

 

 これはパイロット組から出席となったクワトロである。彼の周りにはアムロやバニング、ブラン、ヤザン、ユウなど小隊長格以上のパイロット達が集っている。

 

「貴官はクワトロ・バジーナ大尉だったか。それは仕方のない事だ。私個人としては部下を含め恥じ入るような任に就いたことはないが、同じ旗を掲げたものが犯した非道については、厳しい目で見られるのを甘んじて受け入れる他ない。

 ジャミトフ閣下がティターンズの解体を決定された以上、エゥーゴの主目的は果たされたとみてもよいだろう。私としては君達がこれからどうするのか興味がある。この場で尋ねるのはマナー違反かな?」

 

 ペデルセンがクワトロを見る目は、彼をただの一パイロットではなくエゥーゴ内部において重要な人物であると認識している目だ。一年戦争以前からの歴戦の軍艦乗りの観察力は、クワトロが望めばパイロット以上のものになれると看破している。

 

「組織としての意向ではなく私個人の意見で恐縮ですが、一パイロットとして地球圏の平和と未来の為に戦い続ける所存です、ペデルセン大佐」

 

「そうか。貴官の操縦技術については超一級と評判だ。そんな貴官がこれからも戦ってくれるのなら、なによりだ。さて、ティターンズの解体だが正式に通達されるのには、まだしばらく時間があるだろう。

 今回、T3部隊の派遣に関してはコーウェン中将の一件での兼ね合いもある。

 強奪されたガンダム試作二号機の回収か破壊されるまでが目途だが、デラーズ・フリートが核を有効に使うのなら、狙いはルナツー、ソロモン、ゼダンの門、グリプスといった連邦側の軍事拠点。あるいはジオン共和国の存在するサイド3」

 

「生産拠点を叩くという意味では、フォン・ブラウンとグラナダも選択肢に入るな。まあ、そちらの可能性は低いだろう。それよりも」

 

 とレビルが手元の立体モニターを操作して、宙域図を映し出した。ペデルセンが一度口にしたソロモンである。それを見てロレンツォがモノクルの奥の瞳を細める。

 

「真ジオン討伐の為の艦隊が集結中でしたな。先のワイアット提督を総指揮官とする大規模艦隊ならば、一発きりの核を使う価値はあるでしょう」

 

 原作通りにアナベル・ガトーが多くの味方の犠牲と引き換えにGP02で突撃を敢行し、ソロモンの観艦式に集結した連邦艦隊を攻撃する可能性は高い、とヘイデスは推測し、地球連邦軍もワイアット艦隊への核攻撃を視野に入れている。

 ベガ星連合軍やムゲ・ゾルバトス帝国、バーム軍が宇宙でも活動している為、各サイドに防衛用の艦隊が相当数残されているが、それでもソロモンに集う艦隊は連邦宇宙軍の相当数に達する。

 当初、GP02奪還の任を受けていたアルビオン艦長のシナプスは、渋面を拵えて立体モニターに浮かぶソロモンを睨むように見ていた。

 

「艦隊がソロモンを出航するよりも早くGP02と核の所在を突き止めるか、あるいは奴らの襲撃を防ぎきるかの二択というわけか」

 

「陽動のつもりなのか、各サイドのコロニーへ真ジオン公国が接触を図るケースが増えています。穏便な形での接触がほとんどですが、その一方でバーム軍は武力行使を厭わずにコロニーを恫喝するなど、バサ帝国内での温度差が見られる対応ですね。

 今のところ表立って真ジオンへの恭順を示したコロニーはないようです。ミネバ・ザビを擁する以上、ザビ家派閥の旧ジオン関係者が支援する可能性は考えられていますが、エンツォ大将の傀儡であるのが見て取れますから、支援する者も居ないでしょう」

 

 シナプスに続いたのはブライトで、シャングリラやロンデニオンなど数か所のコロニーを見て回って得た実感をもとに語る。

 実のところ、シーマから情報を得たワイアットを中心とした連邦側はソロモンに集結した艦隊を餌にして、襲い来るデラーズ・フリートを中核とするだろうバサ帝国の戦力を撃滅する予定を立てている。

 

 小惑星を改造した要塞であるアクシズの生産能力は、一軍事拠点としてはまだしも一国家としては貧弱もいいところだ。

 それをバサ帝国からメギロートを中心とした無人機の配備と、生産施設の貸与によって自前の戦力を整えている現状にある。一度、大戦力を失うとそれを回復するのが極めて難しいのだが、ワイアット達はそういった事情を正確に見抜いていたのである。

 

 一方でバサ帝国内のライバルであるバームも小バーム内部での兵器生産には限度があるが、彼らは火星の植民都市を制圧して製造プラントを利用する事で真ジオンに勝る自前の生産能力を確保していた。

 そうして各自の意見が出る中で、やはりかつての地球連邦軍を率いた人物として一目置かれるレビルが口を開く。

 

「我々DC宇宙艦隊は独立遊撃部隊として存在している。ならば宇宙軍が動けぬ間に、宇宙各地を飛び回り各地の火種を消し、潜んでいる悪意ある侵略者を討ち果たすのが役目だろう」

 

 まるでかつてのホワイトベースのようにな、とレビルはからかうようにブライトを見てそう締めくくるのだった。

 

 

 DC宇宙艦隊がサラミス改級イズミールとマーフィー小隊を一時的に戦力として加えた頃、サイド5の暗礁宙域に密かに建設された軍事拠点“茨の園”では、デラーズ・フリートの首魁エギーユ・デラーズ中将(ジオン共和国はこれを認めず大佐としている)とGP02を核弾頭と共に無事に持ち帰ったアナベル・ガトーとが、二人きりで執務室に居た。

 コロニーや戦艦の残骸、ジャンクを寄せ集めて作った茨の園には、一年戦争終盤ア・バオア・クーの戦いを途中で離脱したデラーズの艦隊や、その後に合流した旧ジオンの残党達の艦艇が係留されている。

 

 その中には、ヴァル・ヴァロとケリィ・レズナーと共に帰還したシーマ艦隊のエンドラも含まれている。

 真ジオンから新型MSや艦艇の提供を受けているとはいえ、シーマ艦隊の戦力はデラーズ・フリートにおいて欠かせない重要なものだ。まもなく真ジオンのエンツォからの全面協力の下で、彼らの乾坤一擲の作戦“星の屑”が次のステージに進む。

 

「ガトーよ。お前の戦友が戦列に加わったそうだな」

 

「はっ。ケリィ・レズナー大尉であります。実に頼りになるMA乗りです。彼ならば必ずや我らとそしてスペースノイドの力となってくれましょう」

 

「うむ、お前がそこまでの信頼を寄せるのならばわしもまた信じられるというもの。しかし、良かったのか、そのような者を星の屑に巻き込んで?」

 

「彼ならば必ずや我々と志を共にしてくれます。真なる星の屑完遂の為、そしてスペースノイドの未来の為に」

 

「そうか。ならばもはや我らに迷いは不要。後世において我らの名前は地球人類への卑劣なる裏切り者と記録されるだろう。しかし、我らの行いが地球圏のひいてはアースノイドとスペースノイドの垣根を超えて、未来への礎となるのを願い行動するばかりよ」

 

「何時の日にか我らの行いの真意を知る者が現れてくれます。そして我らの行いが未来において決して無駄ではなかったのだと、重ねた歴史の果てに理解されましょう。その為にも……」

 

「うむ。まずはソロモンに集う連邦艦隊への核攻撃。これを“失敗しなければならん”。そう星の屑そのものが成功してはならぬのだからな」

 

 

「こんなのFAZZとZプラスじゃないわ! FAZZとZプラスの皮を被ったナニカだよ!」

 

 ヘイデスが思わずネタに走ってしまうくらいに、ヘパイストスラボから送られてきたZプロジェクト機の改造計画は酷かったというか、突き抜けていた。

 DC宇宙組にラピエサージュやビルトビルガー、ビルトファルケンといった新戦力を送る為の手はずを整え、ベガやバームの攻撃で被害を受けたコロニーへの支援。

 

 いよいよ決着のつきそうな魔竜機連合と異星連合、いまだ息を潜めるガイゾックへの警戒と消耗される物資の補充、連邦政府要人や軍高官との会合と彼のスケジュールは秒刻みである。

 スーパーロボットパイロット達とその親族や友人へのケア、各研究所への支援とセキュリティの随時更新も加わり、所長印の栄養ドリンクに頼る生活の続くヘイデスにとって、この改造計画書は新たな頭痛の種でもあり、同時にスパロボプレイヤーでありそこそこにガンダムに触れてきた者としては心躍る代物でもあった。

 

「直列式疑似太陽炉を丸々搭載したハイパー・メガ・GNカノンとハイパー・メガ・カノンの二刀流――二砲流? とそれを補助するサブアーム。両腕には固定式のダブル・ビームライフルとビームシールド発振器。

 頭部と腹部のハイメガキャノンを実用可能にして、左右の腰にZプラス同様のビームカノン、肩部左右にフレキシブルバインダーを追加してそこにミサイルとビームキャノンとレールガンの搭載……見た目はダブルオーライザーの肩みたいだな。

 胸部と肩部と脚部とバックパックにミサイルを内蔵して九十六発って、バルキリーじゃないんだから……。

 背部ビームカノンのハイパービームサーベル化は、まあ、妥当だわな。トランザムとGNフィールドと推進力用に疑似太陽炉を搭載するのが、最近の流行りなのかな?」

 

 装甲もウイングガンダムなどと同じガンダニュウム合金を使い、一部にPS装甲、そして超電磁コーティングやDBS(ダイレクト・バイオリンク・センサー)の搭載など量産を前提としていない仕様だ。SRG計画のエッセンスを加えたZプロジェクト機になるだろうか?

 メインジェネレーターにDエクストラクター三基積みで、副産物としてDフォルトを搭載し、装甲だけでなくバリア機構の装備に成功して劇的に防御性能を高めている。

 

 愛する妻なりに本家ガンダムZZに負けない機体を目指しつつ、高火力を突き詰めて設計したのだろうが、いやはや、FAZZの三倍、いや五倍、あるいはそれ以上の火力ではなかろうか。

 そしてFAZZもそうだが、アナハイムから購入したZプラスも相当に手を加えられていた。元々はカラバ主導で開発された大気圏内用のA1型だったのが、大気圏内外対応への改造から始まり……。

 

「メインジェネレーターの搭載箇所はZガンダムと同じ左右の脛か。しかしブラックホールエンジンのダブルドライブとは贅沢な。それに超電磁エネルギーも使われているな。

 コンバトラーもボルテスもあの形状でマッハ11とかそれ以上の速度で飛行するから、参考にしたのかな?」

 

 こちらも基本的に装甲材や超電磁コーティング、DBSの搭載はFAZZと共通している。

 携行火器はC1型のビーム・スマートガンならぬ(グラビトン)スマートガンになり、こちらはヴァイスリッターのオクスタンランチャー同様、ハイパーグレネードモード搭載だ。調整次第では長大な重力の刃として短時間ならば振り回す事も出来るときた。

 

これの他に基本武装としてロシュセイバー×2、頭部フォトンバルカン×2、大腿部Gカノン×2、おまけに頭部には超電磁エネルギーを発射する超電磁メガキャノンを内蔵している。

 背部ウィングバインダーに疑似太陽炉を一基ずつの合計二基搭載しているが、変形機構の邪魔にならぬよう機体のデザイン自体はほぼ変更がない。

 FAZZが更なる高火力化に突き進んだのに対し、原型機がZガンダムを安価の量産機に練り込むというコンセプトであったのに対して、こちらのZプラスはそれらをすべて無視して重力制御と超電磁エネルギーの申し子と化している。

 

 さらに特筆するべき点としては、頭部の超電磁メガキャノンから発射した超電磁タツマキで敵機を拘束し、ウェイブライダー形態に変形して機首となるGスマートガンからGドリルを形成して回転しながら突撃する“超電磁Gチャージ”が必殺技として実装されている事だ。

 いうまでもなくコンバトラーV最大の必殺技超電磁スピンにヒントを得たものだろう。

 アルトアイゼンとヴァイスリッターがマジンガーの系譜なら、Zプラスは超電磁の系譜に連なる機体に仕上がる予定らしい。

 

「いや、これからの戦いを勝ち抜くためにはこれくらいでなければならないか。それに十数機程度ならすぐに前線に回せるし、良い機体を作ってくれたと思おう。うん」

 

 開発と生産に必要な予算と資材を確認して脳内の算盤を弾き、ヘイデスは気合を入れ直してDC地上組の状況の確認に務めた。

 ゴーラ王女を恐竜帝国へ返した後、女戦士ユンケの襲来など、マジンガーZやゲッターロボをリアルタイムで視聴していないヘイデスにはちんぷんかんぷんなイベント戦闘を挟みつつ、状況は動いていた。

 

 Dr.ヘルの地獄王ゴードン率いる機械獣軍団、マシーンランドと無敵戦艦ダイを投入した恐竜帝国、巨大化したプリンス・シャーキンを含む魔竜機連合がかつてない大戦力で極東支部へと侵攻し、獣戦機隊の母艦ガンドールを加えたDC地上部隊との間で一大決戦が行われたのだ。

 双方数百単位の機動兵器が暴れ回る決戦は、どうにかDC側の勝利で終わり、Dr.ヘル一派は壊滅し、プリンス・シャーキンも討たれたとヘイデスは報告を受けている。

 

 そしてヘイデスの予想通りにこのタイミングでミケーネ帝国と百鬼帝国が出現したのだ。百鬼帝国の大帝ブライは虫の息だった無敵戦艦ダイと乗っていたゴールに止めを刺し、ミケーネ帝国共々、疲弊したDC地上部隊に止めを刺そうとした。

 これを間一髪で救ったのが剣鉄也のグレートマジンガーと炎ジュンの武装マシマシのビューナスA、そして早乙女達人と早乙女ミチルの乗るプロトゲッターの強化改造機グレイゲッターだった。

 

 恐竜帝国の初出現時に大けがを負った早乙女博士の長男達人はようやく戦線に復帰する事が叶い、後輩達の救援に駆け付けたのだ。

 このグレイゲッター、いわば変形できるブラックゲッターのような機体だ。ゲッターGに搭載予定のゲッター線増幅装置の試作機を搭載し、プルート財閥から提供された最新機材を投入してプロトゲッターから劇的なパワーアップを果たしている。

 新たなマジンガーとゲッターの出現により、極東支部とDCは息を吹き返して新たな侵略者の尖兵達を叩きのめし、地上侵略が容易でないことを散々に思い知らせることに成功している。

 

 代償として巴武蔵が無敵戦艦ダイとの戦いで重傷を負って、一時的に後方に下がらざるを得なかったが、命が助かったのは不幸中の幸いだった。

 なおアニメ版のゲッターロボでは恐竜帝国の真の支配者、大魔人ユラーがダイに踏みつぶされて死亡するのだが、この世界でどうなったのかヘイデスに知る術はない。

 なにしろユラー自体がゴールや直属の部下であったユンケの他には、知る者のいない謎の存在であるし、ヘイデスにユラーを知っているかと聞いても、ユリ・ゲラーさんかポケモンのユンゲラーのこと? と首を捻るだけだ。

 

(とにかく表面上はDr.ヘルと恐竜帝国は壊滅。妖魔帝国はシャーキンが討たれたから、次は豪雷と激怒の巨烈兄弟が出てくる。ヒマラヤで目覚めるのは分かっているんだ。起き抜けにたっぷりと火力をお見舞いしてやる。

 さて順当にいけば次はキャンベルとボアザンが動くか。そろそろボアザンのあの鎧を着た新しい幹部が来て、天空剣が通じなくなる頃合いだろう。

 キャンベルはこの間、ミーアの乗ったマグマ獣を倒したから、ガルーダとオレアナと決着になる。デスザウラーとデススティンガーにはミケーネと鬼退治で活躍してもらおうか)

 

 倒した端から新たな敵が出てくる状況には溜息しか出てこないが、それでもヘイデスの頭脳はフル回転してこれから起こり得る展開を想像して、万事に備えようと足掻く。

 

(OZのコロニーに対する動きが気になるな。ヒイロ達が戦う意義を見出せなくなる時期かもしれないし、それに万が一、デラーズ・フリートに核を有効活用されてしまったら、宇宙がえらい事になる。

 バサ帝国もバームと真ジオンに戦わせるばかりで妙に大人しい。あいつらの黒幕と目的だけでも分かれば、分からないという不安を拭えるんだが)

 

 ただこの時点でもなおヘイデスはKOS-MOSらゼノサーガからの来訪者、そしてアストラナガンがこちらの時空に存在している事を知らない。

 彼がこの世界における戦いの最終局面=最終話を推測できるようになるまでは、まだまだ姿を見せない敵が多いのだった。つまりとても大変ということである。

 

<続>

 

■サラミス改級イズミールとマーフィー小隊が一時的に加入しました。

■Dr.ヘル一派が壊滅しました。

■恐竜帝国が壊滅しました。

■プリンス・シャーキンが死亡しました。

■ミケーネ帝国が出現しました。

■百鬼帝国が出現しました。

■剣鉄也&グレートマジンガーが加入しました。

■炎ジュン&ビューナスAが加入しました。

■早乙女達人&早乙女ミチル&グレイゲッターが加入しました。

■巴武蔵が負傷しました。一時的に戦線離脱します。



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第四十話 分かりやすい原作崩壊の例

いつもご感想、誤字脱字の御報告ありがとうございます。
励みとなっております。
今回感想の方から着想を得てちょっとだけアナハイム側の描写を入れてみました。


 久しぶりに徹夜をしてしまってから一夜、ぐっすりと睡眠を取って朝の乳酸飲料を飲んだ所長は、先日、愛する夫に送ったFAZZとZプラスの改造プランの設計図を見て、こう呟いた。

 

「これはひどい」

 

 まあ、予算も下りていますし、百二十パーセントの出来に仕上げて見せますけれど、とヘパイストスラボを束ねる才媛は、久しぶりにリフレッシュした頭を切り替えるのだった。

 

 

「こちらがプルート財閥の開発した新型機に関する報告です」

 

 ここは原作ならば長らく殿様商売を続けて地球連邦とその敵対勢力の間で金を稼ぎ続けた天下のアナハイム、そのフォン・ブラウン支社の一角。

 

「…………君、この報告に間違いはないのかね?」

 

 壮年男性の上司が報告書を持ってきた若い痩せぎすの社員に問う。プルート財閥からアナハイムに伝わっても問題ないとされた情報なのだが、にわかには信じがたいもので、上司は聞き返さずにはいられなかった。

 報告を持ってきた部下は、その気持ちは分かるという顔になったが、それでも現実は変わらないから心を鬼にして報告を繰り返す。

 

「まことに遺憾ではありますがその報告に偽りはありません」

 

「疑似太陽炉? GN粒子? なんだこれは、ミノフスキー粒子並みの発見じゃないか!? しかもすでにMSのジェネレーターとして運用できるレベルのものが開発されているのか!」

 

「はい。プルート財閥でもまだ一部の機体に使用しているだけですが、いずれは核融合炉に代わるかあるいは併用した機体の量産の開発もあり得るかと」

 

「くそ、ミノフスキー博士が粒子を発見してから実用に至るまで、どれだけ時間が掛かったと思っているんだ、あのラボは! 一年戦争以前から発見して研究していたならまだ分かるが……。いや、それだけじゃない!」

 

 上司はデータの入っているタブレットの画面を軽くコンコン、とノックするように叩き、焦りと怒りを混ぜたものを浮かべる。

 

「なんだこのブラックホールエンジンって! 本当にブラックホールなのか、ブラックホールを使った動力源を実用化したのか!? そこは、それ、まだこの宇宙時代でもSFの分野だろう?」

 

「しかし、プルート財閥は実際に運用しております。例のSRG計画で開発されたヒュッケバインをはじめ、G3スペイザーという支援装備には確実に搭載されています。それによって重力兵器と重力を用いたバリア機構が実装されています」

 

「以前、我々もMSA-120のハイインパクトガンで疑似重力武装を作ったが、その技術を応用されたか?」

 

「参考にはなったかと……」

 

「しかしブラックホール、ブラックホールか。サナリィはミノフスキードライブを実用化させたというし、うちもここで一つ、大きな山を当てんと後塵を拝すぞ」

 

「ιガンダムとθプラス、それにνガンダムもあります。あれらなら……」

 

「ああ。だがフラグシップ機だ。次期主力量産機にはならんさ。我々も負けちゃいられんさ」

 

 この時、上司と部下は、その次期主力量産機にしても既にヘパイストスラボでは、ゲシュペンストMk-ⅢとバルゴラGS(グランド・スター)の設計が完了し、先行量産体制に入っている事を知らなかった。

 

 

「武蔵君は命に別状はなしか。お見舞いには……二日後の午後にいけるな、うん」

 

 ヘイデスが恐竜帝国との決戦で重傷を負った武蔵へのお見舞いのスケジュールを確認している頃、DC艦隊は宇宙で散発的にバームやベガ、真ジオン、ムゲら四勢力と交戦を重ねていた。

 この間にソロモンに集ったワイアット艦隊は編成を終えて、数日後にはアクシズ攻略に向けて出撃する予定となっている。ただし、これは表向きのもので出撃のタイミングに前後して襲い掛かってくるだろうバサ帝国勢力の撃滅を真の目的としている。

 

 コロニー・ロンデニオン、ヒッポクレーネー、フォン・ブラウン、グラナダ、ドック艦ラビアンローズを拠点としながら、各地で転戦するDC宇宙艦隊の活躍は広くスペースノイドに知れ渡り、一年戦争後の地球・宇宙を問わぬ市民の生活を支えるプルート財閥がスポンサーとなっている事と合わさって、各コロニーの住民達からは好感情を向けられている。

 曲がりなりにもティターンズの部隊が同行しているのには驚く声も上がったが、それもティターンズの変化かあるいはプルート財閥が連邦政府と連邦軍に働きかけたのだろう、という妙に説得力のある噂が自然発生し、イズミールのクルーとマーフィー小隊はコロニー市民からあまり厳しい視線を向けられずに済んでいた。

 

 ハガネ、シロガネ、アーガマ、イズミール、アルビオンはいよいよソロモンへの攻撃が近いだろうと推測し、いわば本番前の最後の補給と修繕をヒッポクレーネーで行っていた。

 プロメテウスプロジェクト時代に様々な機体と装備を試験したコロニーだ。今では要塞化が進み、数多の武装を保有し移動も可能と立派な機動要塞と化している。

 

 港湾施設に停泊した各艦には弾薬と資材が次々と運び込まれ、クルーやパイロット達は次なる激戦に備えてコロニー内のスパリゾートやショッピングモールを利用して英気を養っている。

 地球で一、二を争うお金持ちが完全なる善意でスポンサーになってくれるとこうも環境に恵まれるものか、と誰もが思う程至れり尽くせりだ。

 

 そうして十分なケアを受けて万全の用意を整えるのは、人間達ばかりではない。当然、機体もそうだ。

 ファとレコアは新しく補充されたメタス改二機に乗り換えて、カツもまたエマのガンダムMk-Ⅱが基本的にスーパーガンダム状態での運用が決まった為、Gディフェンサーから量産型Zガンダムに乗り換えている。

 その他にはビーチャの百式が百式改へ、エルのガンダムMk-Ⅱがフルアーマー装備へ、イーノとモンドの二人はメガライダーから量産型ZZガンダムを新たな相棒としていた。

 

 艦から降ろされた各機はヒッポクレーネーの整備施設で時間の許す限り最高の整備を受けていて、それはT3部隊から出向してきたマーフィー小隊も同じことだ。

 ティターンズで独自開発された彼らの機体のパーツも十全に用意されていたのには、機密も何もないな、とマーフィーやエリアルド一同苦笑を浮かべるなり呆れるなりしたものである。

 

 そんな整備施設の一つ、無重力ブロックにあるそこではメンテナンスベッドに寝かされたゼファー用のトールギスの姿があった。周囲にはハロの制御するハロワーカーや整備員、それに専属スタッフであるエリシアと開発者のカインズ博士の姿もある。

 そこに見学を希望し、許可されたマーフィー小隊のエリアルドの姿があった。出航当初は、ティターンズ専用の軍服を着て出歩くのに余計な緊張をしていたものだが、今ではすっかりとなれた。まあ、エゥーゴ組と顔を合わせる時には流石に硬くなるが、それも仕方ない。

 

 そしてどうしてかここにはシュメシとヘマーの双子の姿もある。ぷかぷかと無重力空間に浮かびながら、じたばたと手足を動かして遊泳し、ゼファーに向けて話しかけている。一年戦争の期間を含めれば八年近く稼働し続けるゼファーは、今も具体的な対話機能を持っていないが、話しかけられている内容を理解している節は多々見受けられる。

 エリシアとカインズ以外であっても、ゼファーがリアクションによるコミュニケーションらしき行動を取るのを多くの者が理解している。

 ゼファーの状態をモニタリングしているエリシアは、専用の端末を操作しながら、ほう、と小さな息を吐いた。

 

「やっぱりゼファーの操作にトールギスの挙動が遅れています。ゼファーがこれまでの学習データから自己アップデートを行った結果ですが……」

 

「このトールギスを更に強化するとなると、かなり難しいな。既に超電磁コーティングもムーバブル・フレーム化も実施済みだ」

 

 一年戦争よりも更に昔からロボットシステム計画に携わっていたカインズをして、ゼファーが搭載されているトールギスは無人機と言う事もあり、アムロやクワトロの使っている機体よりもパイロットへの負担を考えない殺人マシーンなのだが、それですら今のゼファーにはまだ遅いのだ。

 そんな二人の会話を耳にしていたエリアルドは、これまでゼファートールギスの殺人機動を何度か目撃し、シミュレーターでも散々撃墜されてきただけに驚愕を隠せなかった。

 

「ゼファーの操縦に追いつけないって、あれだけの動きが出来ているのにですか!?」

 

 エリアルドの技量は紛れもなく一流だ。元々精鋭を選抜して結成されたティターンズに古くから在籍し、信頼性の低い新型機や技術を用いた武装を扱い、実戦も幾度となく経験している彼が水準程度の技量であったならとっくに戦死して二階級特進している。

 

「ええ。プルート財閥預かりになってからもガンダムタイプをはじめいろいろな機体を扱ってきましたけれど、今の戦乱が起きてからは戦う相手のバリエーションが豊富なせいもあってか、ゼファーの成長が著しくて……」

 

 エリシアのいう通り、新代歴187年に入ってからゼファーの戦ってきた相手は、地球の常識の外にある異星人や異次元人、ロストテクノロジー系の敵ばかりで、MSを相手にしていた一年戦争とは別ベクトルの経験値をこれでもかと積んでいる。

 それ以前のプロメテウスプロジェクト時代でも、アムロやシャアというウルトラエースを筆頭に地球圏最上位パイロットらと濃縮された経験を積んできたのだ。

 

 それらが合わさってアップデートを行ったゼファーの技量は、エリシアとカインズの予測を越えて急激に成長している。

 予めプログラミングされたとおりに動くモビルドールと異なり、指針に従って現場では自己で判断する自己制御型のゼファーならではの嬉しい誤算と言えよう。

 

「あれだけの動きが出来てもだよ、ハンター中尉。機体の反応速度そのものを上げるとなればサイコミュが手っ取り早いんだが、ゼファーでは搭載してもな……」

 

 昨今、各企業や研究所で躍起になって開発されているのが、パイロットの操縦を補助するサイコミュシステムだ。アナハイムのバイオセンサーをはじめ、サナリィのバイオコンピューターやヘパイストスラボのDBSもそうだ。

 さかのぼればジオン公国のフラナガン機関をはしりとするその技術は、あくまでも人間のパイロットを対象に効力を発揮するものであり、ゼファーには有用たりえない。カインズは当然、そう判断した。

 したのだが、心のどこかではもしかしたら、とも考えている。それはカインズと並びもっともゼファーと長く接しているエリシアも同じで、ゼファーの乗る機体にサイコミュを用いれば、効果が出るのではないかとそう思えてならないのだ。

 

「博士、博士」

 

「ん、どうした、シュメシ、ヘマー」

 

 ふわふわとした雰囲気と動きでこちらに近寄ってきた双子に、カインズは身内に向ける視線を送った。手を繋いだ双子は真剣な眼差しでカインズとエリシアを見る。そしてゼファーも。

 

「ゼファーなら大丈夫だよ。サイコミュを積んであげて。そうすればそれがゼファーの力になって、ゼファーが博士のお願いを叶える力になるから」

 

 ヘマーの瞳は至って真剣だった。本当にそうなのだと確信している。それはかつてはゼファーのように一つのシステムだった至高神ソルが自我を獲得し、自壊し、そうした果てに今の自分達に至ったのを知っているから。

 ましてやゼファーは双子達と出会う以前、ソロモン攻略戦の頃には既に自我を芽生えさせていたのだ。

 

「しかしゼファーにサイコミュは……」

 

「博士も本当は効果があるかもしれないって考えているでしょう? 最初の頃のゼファーだったら駄目だったけれど、今のゼファーになら効果はあるの。私とシュメシが保証するから。それにゼファーも博士達の力になりたいって願っているから」

 

「……」

 

「カインズ博士、どうしますか? DBSなら余分がこのコロニーにありますから、出向時刻までにトールギスに搭載する事は出来ます」

 

「物は試しか。検証する価値はある。結果が怖くもあり、そして楽しみでもあるのは、どうしようもないな」

 

「私もゼファーにサイコミュの効果があることの意味を考えると、正直、悩ましいです」

 

 シュメシとヘマーの言葉がエリシアとカインズの背中を押して、ゼファー用トールギスへのサイコミュ搭載が決定された。一連の会話を目の前で耳にしていたエリアルドは、DCに合流してから最大の謎の一つである双子に視線を向ける。

 外見は十五、六歳ほど。兵士というには数年若いが一年戦争時でも彼ら位の年齢の兵士はいたし、エリアルドが抱いた驚きは小さかった。DCでは二十歳以下の年齢のパイロットが珍しくない、という事情を教えられたのもある。

 二人は目を見張るような美少年と美少女で、あのヘイデス・プルートの養子が機動兵器のパイロットとして最前線で戦う部隊に居る事には、本気で驚いた。連邦政府の大統領や首相、アナハイムの会長の息子がパイロットをしているようなものなのだから。

 

「えっとシュメシ、ヘマーでよかったかな」

 

「うん、そうだよ、僕がシュメシで」

 

「私がヘマー。こんにちは、エリアルド中尉。これまであまりお話しできなかったね」

 

 双子からエリアルドに向けられる感情は好意的だ。まあ、初対面の相手でも大抵はそうなのだが、ソル時代にどこかの並行世界でT3部隊の戦いを観測したのか、いわゆる作品の主人公に対する好感度の高さからスタートしている。

 

「二人ともゼファーにサイコミュが使えると断言していたけれど、それは二人のニュータイプ的な感性がそう言っているのかい?」

 

 見た目は十代半ばだが、中身はそれよりも幼いのを知っているエリアルドは自然と柔らかな口調になる。コンバトラーチームの小介やボルテスチームの日吉が相手でも、同じようになるだろう。

 二人がニュータイプであるという情報はないが、それでも不思議な雰囲気を纏い特殊なスーパーロボットのパイロットである以上、ニュータイプや超能力者の類でも不思議ではない、と考えるくらいにエリアルドはこの部隊に馴染んでいた。

 

「う~んう~ん、ニュータイプ的かな?」

 

 と首を傾げるヘマー。シュメシも同じように首をかしげて腕を組んで考える。宇宙世紀世界におけるニュータイプの解釈と双子は全くの別物ではあるが、それをエリアルドにうまく説明できるかと言うと、双子には無理である。

 フェブルウスに搭乗し戦闘した影響で、多少精神年齢は成長しているが、それでも理路整然と物事を順序だてて説明するのは二人にはまだ難問だ。

 

「ちょっと? けっこう? うーんとね、アムロ大尉やカミーユ君とはね、私達は結構違うの。だからゼファーの言っている事が分かるのは、違う理由なの」

 

「長年の付き合い? というか、うんと、一緒に暮らしている家族相手だと、ちょっとした仕草とか『ねえ』とか『ん』とか、一言だけで何をしてほしい、こうしたいんだって分かるでしょう? 私達の場合はそっちの方が近いかなあ」

 

「ゼファーを相手にかい?」

 

 不思議そうに瞬きをするエリアルドにシュメシは大きく頷き返した。

 

「うん。エリアルド中尉もゼファーの動きに癖があるのは分かるでしょう? それってエリアルド中尉がニュータイプだからじゃないよね」

 

「ああ、それはMSパイロットである程度経験を積めば出来る事だな」

 

 そうして相手の機体の動きから、パイロットの性格などを把握する者もベテランやエースと呼ばれる者には少なくない。ただ、殺し合いをしている相手を良く知る事が、より強いストレスへと繋がるケースも多々あるわけだが……。

 

「君達がゼファーの言いたいことが分かるのは、そういう理由だって?」

 

「うん、そうだよ。慣れ?」

 

「慣れかなあ。慣れだね、慣れだよ」

 

「そういうものかな」

 

 双子自身も正確に答えを告げられそうにないのだな、とエリアルドは察して視線をメンテナンスベッドに固定されているゼファートールギスとその中のゼファーへ向ける。

 

「ゼファーにとって機体は自分の肉体そのものだ。僕達が機体を操縦するのとはそもそも前提が違う。パイロットの操縦を機体の挙動に反映させる速度を向上させるのがサイコミュなら、ゼファーに使ってもなんの意味がある?」

 

 人間に例えるなら脳から送られる電気信号の伝達速度が劇的に速くなる、というような現象がゼファーに生じるのか。それともゼファーの思考そのものが操縦と同化するとでもいうのか。

 いや、サイコミュが効果を発揮するというのなら、それはゼファーもまた人間と同等の精神や思考を持つという証明になるのではないだろうか。エリアルドが思わず口をつぐむと、ヘマーが悲しげな顔でこう言った。

 

「エリアルド中尉、フライルーを、ヴァニスを大事にしてあげてね」

 

「ヴァニスってOSの?」

 

「うん」

 

 ヘマーはそれ以上を言わなかった。強化人間の心をデータ化して蓄積し、その命が潰えた瞬間に完成を見た強化人間人格OSたるヴァニス。

 ティターンズのほぼ全ての機体に搭載される、非人道的な経緯を持つソレに、もはや心がない事を理解しながらもシュメシとヘマーはそう言わずにはいられなかった。

 

「……OSってどうすれば大事にしている事になるんだ?」

 

 と悩む辺り、エリアルドは実に真面目で素直な青年であった。

 

 

 宇宙要塞ソロモン。いまや地球連邦軍に接収されソロモン鎮守府とも呼ばれる歪な星型の岩塊は、その周囲に数百隻を数える連邦宇宙軍の大艦隊が整然と並んでいた。

 度重なる改修を受けていまだ現役のサラミス改級を主に、クラップ級、アレキサンドリア級の艦影も多く見受けられ、艦隊の中核を担うのはグリーン・ワイアット大将の座乗艦アルバトロス級デューク・オブ・ヨーク、プリンス・オブ・ウェールズ、モナーク、バーミンガム改級バーミンガム他同級数隻、またラー・カイラム級機動戦艦も複数が参列している。

 

 展開するMS部隊は各種強化装備を纏うゲシュペンストMk-II、ジャベリン、ジェムズガン、グスタフ・カール、ヘビーガンなど連邦軍で運用されているMSの上位機種が勢ぞろいしている。

 そしてそれらが展開しているということは、このソロモンで戦闘が行われているのを意味する。シーマから齎された情報の通りに、そしてワイアットの目論見の通りにデラーズ・フリートと真ジオン公国はアクシズ攻略の為に編成されたこの艦隊へ襲撃を仕掛けていた。

 

 デラーズ・フリートが独自開発したドラッツェや旧式のザクⅡやリック・ドムⅡ、ゲルググまでも動員し、バサ帝国から供給されたメギロートの大部隊によって数を補い、更にはゼカリアやハバククまでも姿を見せている。

 もちろん真ジオンから供給されたガ・ゾウムやズサ、ガルスJ、ガザD、ガザEといったアクシズ産の機体も見受けられる。

 

 高濃度ミノフスキー粒子がたっぷりとまかれた戦場で、ワイアット大将は精鋭艦隊を思う様指揮し、攻撃衛星とソロモンの要塞砲、ミサイルなどの装備が猛烈な破壊の嵐となって吹き荒れて、襲い来るバサ帝国を散々に撃ち落としている。

 一年戦争時の地球連邦軍とジオン公国の最盛期の宇宙艦隊を同時に相手取っても勝てる、とワイアットと参謀達が断言する程、兵器の質が上がり、数も場所も整った戦場だ。バサ帝国が余程のイレギュラーを繰り出さない限り、圧倒的戦力のワイアット艦隊は被害らしい被害を負うまい。

 

「デラーズ・フリートは自殺志願者の集まりだ、と言いたくなるような状況だな」

 

 デューク・オブ・ヨークのブリッジで、ワイアットは自分の艦隊によって順調にすり減ってゆく敵戦力にほくそ笑んで告げた。一年戦争以来、ソロモン近海は地球連邦軍の庭と化し、もはや抜け道などありはしない。

 ソロモンに駐留しているティターンズ艦隊も居るが、敵の勢いの薄いフィールドの守りを任せている。ソロモン方面軍司令のペデルセンはワイアットの目から見ても有能な軍人だが、ジャミトフが息をかけ直しているとあり、重用するつもりはない。

 

「とはいえ油断して鼠に噛まれる猫にはなりたくないものだ。ことにバサ帝国の機動兵器には未知数の要素がある。ビグ・ジムはどうか?」

 

 ビグ・ジム、それはかつてドズル・ザビが搭乗した最後のMAであり、ヘイデスからの情報がなければソロモンにおいて連邦艦隊に大打撃を与えた可能性のあるビグ・ザムをベースに開発されたジオン残党への皮肉を込めた機体だ。

 ビグ・ザムのあちこちにジムタイプのバイザーが配置され、カラーリングも白と赤を基調としている。

 原型機が戦場での最大稼働時間が二十分であったのに対し、こちらは二百分以上稼働可能で、Iフィールドも実弾・ビーム双方に対応するビームバリヤーに換装されている。

 このビグ・ジムが四機生産されて、現在のソロモン攻防戦に投入されていた。なお地上ではカラバが地上用に改修したビグ・ザムを最低でも八機は生産しているという。

 

「ビグ・ジム各機、現在まで問題なく稼働しています。また現在、ソロモンに現れている敵機のほとんどは無人機との報告も」

 

「うむ。旧ジオン残党の人員は少ない。あれだけの数を投入するとなれば、やはり無人機頼みになるだろう。我が方で計画されているモビルドールの目指すところか……。そう言えばDC艦隊は」

 

 今回の防衛線に参加しているDC宇宙艦隊の状況を確認しようとしたワイアットの耳に、待ち望んだ本命出現の知らせが入る。

 

「Sフィールド、3-12-5ブロックに新たな敵影、エンドラ級一、ムサイ級四、チベ級二、MS六十、MA十二。ガンダムです、奪われた試作二号機を確認!」

 

「来たか! MS部隊を回せ。それとDC艦隊にも連絡を。コーウェンの失態を拭ってやるとするか」

 

 不敵に笑うワイアットの顔には、満腔の自信で満ち溢れていた。

 そしてGP02出現の報を受けたDC宇宙艦隊で最も奮起をしたのは、言うまでもなくトリントン基地から因縁の続くアルビオン隊である。この時、DCはGP02の出現したSフィールドとは別の宙域で交戦中だった。

 しかし核攻撃を断固として防ぐべく、ガンダムデュラクシール、ヒュッケバイン、フェブルウス、グレンダイザーなど圧倒的突破力を持った機体を先頭に、強引に戦闘宙域を横断するという荒業を取った。

 

 一方でほとんどを無人機で構成された突撃艦隊と共に襲撃を敢行したアナベル・ガトーは、GP02のコックピットの中で苦渋の表情を浮かべていた。

 一つは地球連邦軍がこれほどまでに精強になり、一年戦争時から更に質も量も強大化している事。一つはビグ・ジムというこちらの神経を逆なでするような存在に、思わず核弾頭を命中させたくなった自分を理性で抑えなければならなかったからだ。 

 

「ソロモンよ、かつて散った英霊達よ。私は帰ってきた。しかし、私の行いを君達は許すだろうか。許さざるならば冥府魔道で私を責めてくれ!」

 

 ケリィの乗る近代化改修を施したヴァル・ヴァロと一年戦争からの副官であるカリウスの乗るドライセンと共に、ガトーはGP02を連邦艦隊中枢のデューク・オブ・ヨークを目指して宇宙を飛翔させる。

 そしてガトーらを目指し、DC宇宙艦隊は猛烈な勢いで距離を詰めていた。

 なんとしても戦略核による攻撃を防ぎ、地球連邦艦隊の被害を少しでも抑えるために。そしてバルマー・サイデリアル連合帝国の戦力を少しでも削ぐために。

 この二点において、ガトーやデラーズと目的が合致しているとDC側で知る者は少ない。




追記
カラバのビグ・ザムについては漫画の、カイ・シデンのレポートにおけるキリマンジャロ攻略戦で投入された、かんじき装備の機体の事です。


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第四十一話 SRPGあるある

第二十七話 ソロモンを焼く光

 

 アナベル・ガトーとGP02出現の報は、当然、DC艦隊にも齎された。

 真ジオンの大多数を占める無人機のメギロートやゼカリア、人工知能搭載型に改修されたドラッツェやザクⅡなどの旧式MSを数ダース撃墜していたDC宇宙艦隊は、狙いをGP02へと絞り、速度に秀でた機体を先行させる決定を下す。

 艦隊旗艦ハガネの艦橋でレビルは管制官に状況を問うた。

 

「二号機の出現地点と速度、デューク・オブ・ヨークまでの最短距離、並びに核の射程距離から二号機の阻止限界点を割り出せ!」

 

「はい!」

 

「機動部隊の状況を報告。動ける機体は」

 

 この時、フェブルウス、グレンダイザー、グランド・スター小隊は艦隊の直掩についており、その他の部隊が襲い来る敵部隊に積極的攻勢による迎撃行動をとっている。

 管制官は速度に優れた機体を予めピックアップしており、すぐさま調べて報告する。

 

「……アルビオン隊、ウラキ少尉のフルバーニアンが最も近い位置にいます。そのほかの機体は接近中の敵機動兵器を迎撃中です」

 

「よろしい。各艦に通達、フルバーニアンを二号機による核攻撃阻止に向かわせるのを最優先とする」

 

 圧倒的な戦闘力ゆえに敵機が雲霞の如く殺到するDC艦隊だが、彼らはそれを真っ向から迎え撃って叩きのめすだけの人員と装備と用意を備えていた。

 アーガマから出撃したMS部隊は、クワトロの指揮下でメタス改三機、ZZガンダムを並べてハイメガ級の火力による掃射を行い、艦艇でも耐えられない破壊の嵐が吹き荒れ、それを避けようとしたMSやメギロートをエマにカミーユやシャングリラの悪ガキ共、アポリーにロベルトと言ったベテラン勢が逃さずに落としている。

 ヤザンは妙に手応えのない感覚を覚えながら、ラムサスとダンケル、そしてイングリッドを含んだ四人でのフォーメーションで敵機を蹴散らしていた。

 

「妙な手応えだ。やる気がないのか、こいつら?」

 

 そうは言ってもメギロートにメガ粒子の塊を叩き込むのを怠らないのは、流石のヤザンだ。既に彼が撃墜した機体は十を超えている。

 加えてイングリッドも戦場に満ちる欺瞞の空気を、バイオセンサーの補助を受けて敏感に感じ取っていた。

 

「どうも嘘くさいわねえ。やる気はあるけどやる気がない? なにをやる気なのかしら」

 

 そしてそれは、フェブルウスとシュメシ、ヘマーの三者も同じことだった。至高神ソルが自壊した後、“偽りの黒羊”という“嘘”を力の根源とするスフィアが発生している。その大元だったソルの生まれ変わりたる三者なら、さもありなん。

 

「ヘマー、フェブルウス、僕達は余力を残しておいた方がいいね」

 

「うん。嘘を通そうとする感じと嘘を嘘で無くそうとする感じがする。火の文明は火の文明が止めてくれるから、大丈夫」

 

 フェブルウスもまた内部の双子の考えに呼応するようにカメラアイを光らせ、四つの特殊武装に回す出力を上げて、津波の如く迫りくるメギロートとソレに緑の斑点のように混じるゼカリアを、オウカらとともに迎え撃った。

 

「ラト、ゼオラ、私とアラド、フェブルウスで敵編隊に仕掛けます。突入の支援を!」

 

「おっしゃ、行くぜ、オウカ姉さん!」

 

 オウカとアラドのバルゴラが背のVWから盛大に推進剤を消費して、機体を一気に加速させて、倍する数のゼカリアへ向かう。

 オウカのバルゴラはガナリー・カーバーに加えて、ヴァイスリッターの予備のオクスタンランチャーを持ち、アラド機は例によってブーストハンマー持ちだ。部隊の誰もがアラドの射撃センスを伸ばすのを諦めつつある中、接近戦に特化するのは必然の流れだった。

 

「ラト、左からソルジャー1~12と呼称。1~6を私が引き受けるわ」

 

 ちなみにメギロートやゼカリア、ハバククは原作通りにバグス、ソルジャー、ファットマンと呼称され、以前に撃墜したフーレもフラワーと連邦軍内では呼ばれている。

 

「了解、ソルジャー7~12はこちらが牽制する」

 

 ゼオラとラトゥーニのバルゴラはレイ・ストレイターレットモードのガナリー・カーバーを構えて、まずは高出力なビームでゼカリアの編隊を崩しにかかる。

 続いてオウカとアラドが間合いを詰めるまでの間に、実弾のストレイターレットを連射し、オプションとして装備しておいたビームランチャーやロングレールガンも合わせて残弾を気にせずに撃ちまくる。

 

 ヒッポークレーネーで休養した際に、各メーカーの武器弾薬を満載してきたのだ。艦に戻ればまだまだいくらでも補充できる。まさに金持ちの戦い方の一つであった。

 そしてレビルからの指示に最も奮起したのは、GP02強奪に因縁の深いアルビオン隊だ。バニングのシルヴァ・バレトが肩部のマイクロミサイルとビームライフルの連射で二機のゼカリアを火だるまに変え、わずかに開いた穴をこじ開けるようにモンシアとベイトも続く。

 

「へ、美味しいところをウラキの奴にくれてやるとはよ」

 

「あいつの機体が一番足が速いからな。ぼやく暇があんならもっと撃て」

 

 愚痴を零すモンシアだが、それでもガンダムMk-Ⅲの操縦に影響はなく、ビームライフルとビームキャノンの連射は狙い過たずハバククの胴体を貫き、ペアを組むベイトのガンダムMk-Ⅳも右手のビームライフル、そしてオプションである左手のGレールガンによる弾幕でメギロートの編隊を牽制して穴を埋めさせない。

 爆弾を抱えて艦に体当たりしようとしてくる無人ドラッツェの小隊を、アデルとキースのFAZZがハイパー・メガ・カノンで丸ごと蒸発させ、思うところはそれぞれあれども部隊は一丸となってコウとフルバーニアンの為の道を開く。

 

「キース少尉、続けてドムが三、ゲルググが二、ミサイルで弾幕を張りますよ!」

 

「はい! 次から次にこいつらぁ」

 

 旧式もいいところの機体に向けて、二機のFAZZからサーカスの曲芸飛行のような軌道でミサイルが発射され、たった五機のMSに対してはオーバーキルもいいところの爆発の中に五機の無人機は飲み込まれて撃墜される。

 その爆発の中を二機のゼカリアが突っ切ってきたが、そのうちの一機はこれに即座に反応したバニングのシルヴァ・バレトがビームサーベルで袈裟斬りに、もう一機の上半身をゼファートールギスのドーバーガンが消し飛ばす。

 ゼファーはドーバーガンを撃つと同時に、結果は分かっているとばかりにもう次の敵を狙い定めて行動していた。

 

「いけ、ウラキ!」

 

 バニングの通信越しの叫びを受けて、コウはフルスロットルでフルバーニアンを飛ばす。ミノフスキードライブの技術を組み込まれた背中の特徴的なポッドは、パイロットの意志に応えるように機体を加速させる。

 

「ウラキ少尉、吶喊(とっかん)します!」

 

 フルバーニアンがTMS顔負けの高速で進むのを見送り、バニングはトリントンから続く因縁の終わりを期待して、目の前の敵を落とすのに集中した。

 狙い通りフルバーニアンが艦隊を離れてGP02とそれを護衛する真ジオン部隊へと向かってゆくのを見届けて、レビルは続けて指示を飛ばす。

 

「艦隊の守りが薄くなっても構わん。TMSやトールギスは急ぎフルバーニアンに続け!」

 

「マーフィー小隊のフライルー一号機、二号機、間もなくフルバーニアンに続きます!」

 

「よし。艦隊もフルバーニアンに……」

 

「艦長、アムロ大尉とクワトロ大尉、それにシュメシとヘマーから意見具申が」

 

「なに? 回線を回せ」

 

 艦隊きってどころか地球圏最強パイロットの二人と訳あり系の双子からの意見とあれば、前者二人とも後者二人とも付き合いの濃いレビルが軽んじる筈もない。

 そして四人に続いてブライトを経由してカミーユとジュドーから、またアーウィンとグレースからも、更にはエリシアとカインズからもゼファーの挙動が妙、との連絡が入る。

 エリシア達はまるでソロモンのあの時のようだ、と感じていた。

 

 

 真ジオンに合流後、近代化改修の施されたヴァル・ヴァロで出撃していたケリィは、異常な速度で接近してくるフルバーニアンに気付き、これを迎え撃つべく七機に減っていたビグロマイヤーの編隊から離れた。

 コウもまた相手がケリィのヴァル・ヴァロと気付き、機体の速度を一切緩めないままあの赤いMAを落とす、と顔見知りであろうと自らの責務を噛み締めて、淀みなく機体を操作する。

 

 ヴァル・ヴァロの装甲各所が開き、大型メガ粒子砲、ビームガン、ミサイルポッド、バルカン砲と多種多様な火器がフルバーニアンに向けられる。

 一方でフルバーニアンもまた専用のビームライフルの銃口を、重厚な対ビームコーティングを施されたヴァル・ヴァロへ!

 

「貴様か、ウラキ!」

 

「やはりケリィさん」

 

 交差までの数秒、オープン回線でケリィが叫び、コウもまた相手がケリィであることを改めて知る。言葉はそれだけ。二人はモニター越しにお互いの瞳を見て、そして機体の挙動から迷いがない事、迷う必要がない事を互いに理解する。

 戦士と戦士が出会った。敵として、戦場で。ならば命と誇りを賭けて戦う以外になにがある?

 

「おおおお!」

 

 それはどちらの男の発した声であったか。獣のように獰猛で、戦士の鋼の意志を感じさせる声。

 サラミス級ならば一撃で轟沈する大型メガ粒子砲とビームガン、それらに遅れて時間差で襲い来るバルカン砲とミサイルの作り出す破壊の雨の中で、コウはDBSの補助を受けながらフルバーニアンを飛び跳ねるように操作し、どうしても避けきれないバルカンとビームガンをビームシールドで受け、大型メガ粒子砲は避け、ミサイルは避けるか頭部の60mmバルカンで撃ち落とす。

 フルバーニアンの連射したビームは立て続けに三発がヴァル・ヴァロに命中したが、赤い装甲に施された対ビームコーティングを剥がし、表面を融解させるに留まった。

 

 この十秒にも満たない攻防の間に両者の距離は詰まり、展開されたヴァル・ヴァロのクローがフルバーニアンを左右から挟み潰しにかかり、それはヴァル・ヴァロの上方に跳ね飛んだそのつま先をかすめるだけだった。

 百分の一秒か、それとも千分の一秒か、はたまた……地上では考えられない速度で交錯するその瞬間に、コウの肉体は望みどおりに動き、フルバーニアンはコウの望んだとおりの動きで応える。

 

 ビームライフルの銃身からビームジュッテの刃が伸び、先のビームライフルで融解した装甲に突き刺さり、そのままヴァル・ヴァロの機体を大きく切り裂いた。

 ヴァル・ヴァロの内部から小さな爆発が連続して生じるのを放置し、コウはGP02を、ガトーを求めて機体を操る。

 

「ち、ウラキの奴め、俺を歯牙にもかけんか。いっぱしのパイロットになりやがって……」

 

 かろうじて操縦は出来るが戦闘行動は不可能な状態に陥ったヴァル・ヴァロのコックピットで、ケリィは悔しさと称賛の入り混じった笑みを浮かべていた。

 

「……ガトー、青二才と侮ればお前でも喰われるぞ」

 

 シーマ艦隊と共にデラーズ・フリートへ合流し、星の屑の真の狙いを知らされた後も、ケリィに親友と共に闘う事への後悔や躊躇はないが、コウ程のパイロットとは後腐れなくガトーが本気で戦える状況でまみえて欲しかったと、そう思わずにはいられない。

 そして残るビグロマイヤー部隊やガトーの護衛部隊が、コウの後を追って駆け付けたマーフィー小隊との戦闘に突入した頃、コウはワイアット艦隊中核へ迫るGP02をレンジ内に捕捉していた。

 

「見つけたぞ、ガトー!」

 

 即座にビームライフルを連射しながら、コウは怨敵を目指す。一方でガトーもまたケリィのヴァル・ヴァロを大破せしめたのが、トリントンからの脱出行であしらったパイロットとGP01の改修機であるのを知り、警戒していた。

 であるから彼からして下方から流星の如く迫りくるGP01にすぐさま気付き、ちょうどいいと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべてバズーカを収納し、腰のビームサーベルを抜き放つ。ビームサーベルはアイドリング状態で保持し、GP02をワイアット艦隊ではなくフルバーニアンへと向ける。

 

「いつぞやの男か。機体の動き一つをとっても良くなっているのが手に取るようにわかる。私が相手をする価値があると見た!」

 

 両肩のフレキシブル・スラスター・バインダー(FTB)が向きを変え、莫大な推進力が同一方向に集中し、GP02の重厚な外見を裏切る速度が発揮される。

 GP02が連続して放たれるビームを避け、反撃に60mmバルカンを叩き込めば、バーニアの噴射炎がモニターの向こうで輝いて回避されたのが分かる。

 核攻撃とそこからの生還を大前提としているGP02には、バルカンとビームサーベルしか武装がない。周囲のデブリを活かしつつ距離を詰めなければ如何ともしがたいが、そこはアナベル・ガトーという非凡なるパイロットの才覚と経験がものを言う。

 

 見る間に二機のガンダムの距離は詰められてゆき、漂うコロニーの残骸の影に隠れたガトーはサーベルを発振した状態のビームサーベルを囮として放り、コウは咄嗟にソレに向けてトリガーを引いた。

 ビームがサーベルを貫いて小さな爆発を起こした時、コウは“やったか”とすら思わずに自分が罠に引っかかったのだと即座に理解する。こればかりはDC合流後にニュータイプ・オールドタイプを問わぬエース達に鍛えられた成果という他ない。

 

「そこだあ!」

 

「ほう?」

 

 フルバーニアンは背後を振り向くと同時に、コロニーの残骸から回り込んで接近してきていたGP02へビームを浴びせかける。ビームがGP02の左のFTBをかすめるが、機体の勢いは衰えない。

 バルカンによる牽制をコウもまた回避し、お互いが相手に向かって突撃する。それぞれの距離が詰まったと同時、フルバーニアンはビームライフルを腰裏にマウントしてビームサーベルを抜刀。

 ピンク色のサーベルがGP02の黄色いサーベルを受けた。共通規格のフレームを持つ機体のパワーは互角に近く、激しいスパークが二機の機体表面を焼く。

 

「聞こえているんだろう、ガトー! 5.82だ。答えろ!」

 

「ふん、いいだろう。ここまで私を追ってきた執念には敬意を払う」

 

 ガトーの指が回線のチャンネルを操作し、コウの指定した周波数に合わせられて、トリントンからの因縁を持つ二人はモニターにお互いの顔を映し、声を聞く。

 

「貴様と話す舌など持たぬと言ったが、その成長、その執念に免じて応じてやったぞ」

 

「ガトー、貴様に核は撃たせない! 核を撃たれることは二号機を奪われた俺達にとってこれ以上ない屈辱なんだ!」

 

「ふん、だろうな。だが言葉で私は止まらん。私が核の引き金を引く前に力で止めるがいい。止められるものならな!」

 

 ガトーはカリウスのドライセンとMA隊がマーフィー小隊と交戦に入ったのをモニターの一つで確認し、FTBの推進方向を左右で前後逆にして、機体を強引に回転させてフルバーニアンを大きく吹き飛ばす。

 

「ぐうううっ、その為にここまで来たんだ。止めて見せる! お前達こそ今になってどうしてこんなことをする!」

 

「決まっている。デラーズ閣下の演説を聞いていなかったのか? 我らスペースノイド独立の悲願を果たす為、そして腐った連邦に大義の鉄槌を下す為だ! 一年戦争の後、連邦の作り出したティターンズ、そしてOZがスペースノイドに何をした」

 

 大上段から振り下ろされたGP02のビームサーベルをフルバーニアンはビームシールドで受け、そのまま滑らせるようにして受け流し、GP02の左脇腹を薙ぐ。それをGP02は、再びFTBで強引に後方へ移動して避ける。

 

「確かにそれは否定できない。だがそれが連邦政府の全てじゃない。スペースノイドに対する待遇の改善を求めている人々が増えているのも事実だ。実際、政府もそれに向けた動きを見せているだろう!

 ジオン共和国だって一年戦争のコロニー潰しの所為で、生き残りのスペースノイドから忌避されている状況を改善しようと必死だ。お前達がやろうとしている事は、多くのスペースノイド達にとって害悪にしかならない! それぐらい、分かれよ!」

 

 コウの言葉にガトーがほくそ笑んだのを、コウは見る事は無かった。なるほど、この一兵卒程度でもそういった認識があるのなら、偽りの星の屑を行う価値もあったか。

 

「語るだけならばいくらでも叶おう。ならば、お前の言う害悪たる私の行為を止めて見せろ、コウ・ウラキ!」

 

「言われなくてもぉおお!」

 

 GP02のサーベルの一閃がフルバーニアンの左ポッドを斬り飛ばし、反撃の一閃がGP02の左顔面を抉る。通常、MSでの戦闘では起こりえない超至近距離での戦闘は、刃を交わすごとにお互いの機体を切り裂き、貫き、破壊して行く。

 【集中】し【直感】を働かせ【ひらめき】に従い、そして【熱血】の思いと共に振るわれるビームサーベルがフルバーニアンの左腕を付け根から斬り飛ばし、返礼の刃がGP02の巨大なシールドに深々と突き立てられる。

 

「なに!?」

 

「このシールドが無ければ核攻撃は出来まい!」

 

 核爆発の際に機体を守る冷却装置とアトミックバズーカのバレル基部を収納するラジエーターシールドの喪失は、核攻撃能力の喪失を意味する。トリントン脱出行でもシールドを狙われた事があったが、今まさにそれが再演された状況だ。

 

「逃がすかぁあ!」

 

 コウは更に機体頭部のバルカンを浴びせかけ、GP02の頭部が吹き飛び、胸部を中心に次々と着弾して行く。

 

「やってくれるな、ウラキ!」

 

 次の瞬間、リミッターを解除されたGP02のビームサーベルがフルバーニアンの左頸部から胴体中央までを一気に斬り下ろす。コックピットも両断する一撃だが、ガトーは手応えの軽さに即座に気付く。

 

「ぬ、脱出ポッド、いやコアシステムとやらか!?」

 

「落ちろお!」

 

 フルバーニアンから分離したコア・ファイターⅡがGP02の真上から襲い掛かり、ビームガンの連射がGP02の右肩、バックパックとサブアームで繋がっているアトミックバズーカの砲身に着弾して行く。

 だが同時にこれまでの戦いで損傷を受けていたコア・ファイターⅡもまた万全とはいかず、ビームガンを撃った直後にジェネレーターが不調を起こして、機体の各所から小さな爆発が生じて黒煙を吹き出す。

 

「く、くそ、ここまでか!?」

 

 勢いのままにコア・ファイターⅡは大破状態のGP02と激突し、コウはコックピットからの脱出を余儀なくされる。そうしてハッチを開いた時、そこには同じくGP02から脱出したガトーの姿があった。そしてカリウスのドライセンとエリアルドのフライルーの姿も。

 カリウスとエリアルドはお互いに味方を救出するまでは仕掛けない、と暗黙の了解を結んでいる様子で対峙している。

 咄嗟に拳銃を手に取ろうとするコウにガトーが近づき、お互いのヘルメットがゴツっと音を立ててぶつかり、ガトーの鋭い視線がまだ動揺しているコウの瞳を貫く。

 

「コウ・ウラキと言ったな。その名、二度と忘れん」

 

 ガトーは短くそれだけを告げて、カリウスのドライセンへと向けて移動し、コウから離れて行く。コウはその背中へ向かい、制止の声を掛ける事しかできなかった。GP02もフルバーニアンもいつ爆発してもおかしくない状態なのだ。

 

「くっ、待て、ガトー!」

 

「ウラキ少尉、早くフライルーに移るんだ。機体がいつ爆発してもおかしくない」

 

 コウは苦汁の表情のままランドムーバーを使って、エリアルドのフライルーの左手の平に飛び移る。コウとガトーの交戦地点には他にもキースのFAZZもメガライダーに乗って向かってきている。

 GP02の撃破によりデラーズ・フリート主導による連邦艦隊への核攻撃は阻止され、襲撃してきた機動兵器も大多数が撃墜された。この結果を見ればバサ帝国特に真ジオンの戦力を大きく削ることに成功したと言える。

 カリウスのドライセンのコックピットの脇に乗り込んだガトーは作戦失敗により、撤退を始める友軍――無人機はそのまま殿を務めさせ使い捨てにしている――を確認する。

 

「星の屑が終わる時、どれだけの同胞が生き残っている事か」

 

 そしてその生き残りの中にガトーは自分を含んでいなかった。

 

「少佐、これは転移反応!? 我々の正反対側にバサ帝国の艦隊が出現します!」

 

「なんだと!? 馬鹿な、彼らの艦隊が動くなど予定にはなかったぞ!」

 

 ガトーが焦りを込めた声を発した時、GP02の迎撃を優先して手薄になった宙域に、六隻に及ぶフーレとそれを護衛するアドラティオ艦隊、更にスペースロボやエスパーロボ、偽ミケーネ神、ダイモーンやティアマート、ゼカリアやエゼキエルまでもが姿を見せる。

 それは核攻撃失敗に備えてバサ帝国が独自に配備した戦力だったのか、あるいは核攻撃を成功させるつもりがない事を見抜いて、ラオデキヤかあるいは姿を見せていないユーゼスが手配した戦力だったのか。

 

 いずれにせよ一撃で都市を壊滅させる主砲を持ったフーレが、ワイアット艦隊中枢を狙い艦首を向けているのは間違いなかった。

 あまりに効果的な奇襲だ。GP02撃墜の知らせに緩んでいた緊張の糸を張り直す暇もなく、フーレ内部のエネルギーが高まってゆく。

 

 ワープ直後でエネルギーを消耗した状態から、主砲の最大出力まで急速にチャージされる。発射されるまで然したる時間はかかるまい。

 フーレの主砲とアドラティオ艦隊からの一斉砲撃が加われば、ワイアット艦隊の中枢は大打撃を受け、連邦軍は大混乱へと陥るだろう。

 

 しかしバサ帝国艦隊へ殴り込みをかける少数の艦隊があった。ハガネ、シロガネ、アーガマからなるDC艦隊だ。

 アルビオンとイズミールはマーフィー小隊とコウの回収に向かわせ、残りの三隻がバサ帝国の出現を読んでいたかのように直上方向から襲い掛かったのである。

 

「艦首特装砲ファイナルダイナミックスペシャルキャノン……発射!!」

 

「ブラックホールキャノン、発射する!」

 

「バスターキャノン、いっきますよ~!」

 

「ハロ、照準補正を頼む。スペースサンダー、グラビトンランチャー、ゲッタービームキャノン、大型GN粒子砲、一斉発射!」

 

「ハイメガキャノン、いけー!」

 

「ハイパー・メガ・ランチャーを使う!」

 

「グランド・スター小隊各機、照準をリンク、レイ・ストレイターレット発射!」

 

「ハマリエル・ザ・スター、ズリエル・ジ・アンブレイカブル起動。ガナリー・カーバー砲身展開!」

 

「SPIGOT直列配置、エネルギー増幅率増大!」

 

「行くよ、フェブルウス、ヘマー。ザ・グローリースター、フルバースト!!」

 

 DC宇宙艦隊と機動部隊から叩き込まれる超ド級の火力の直撃を受けて、バサ帝国艦隊は出現から一分と掛からずにその大半を轟沈されるという喜劇じみたオチを迎えるのだった。

 

<続>

 

■第二十七話 ソロモンを焼く光 クリア後 ヘイデスショップ

 

・アルバトロス級

・バーミンガム級

・バーミンガム改級

・ハーディガン

・Gキャノンマグナ

・ボール

・先行量産型ボール

・高機動試作型ザク

・NT試験用ジム・ジャグラー

・プロトタイプジャベリン

・量産型Zガンダム

・量産型ZZガンダム

 

バサ帝国の出オチは増援の出現のタイミングが分かっていれば、予めユニットを配備できるので問題なし、というスパロボやSRPGあるある。



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第四十二話 ヒャッハー! 新型機ゲットの時間だぜ!

所長の愛娘・愛息子への保護欲の爆発を添えて


 まだ地球人類の持たないワープ技術による奇襲と言う緊急事態が、ものの数分でDC宇宙艦隊によって打破され、その成果としてバサ帝国の艦隊と機動兵器のほとんどがスクラップと化して宇宙を漂う光景に、ワイアット艦隊の将官から兵卒まで度肝を抜かれてしまった。

 例えばソーラー・システムやソーラー・レイのような広域破壊兵器を用いたのならばともかく、少数の艦艇と機動兵器でそれを成してしまったのだから、彼らの驚愕も無理はない。

 

 だがまだ敵の残っている状況で何時までもそうしていられるわけもなく、真っ先に正気に返って艦隊各員に檄を飛ばしたのは、紅茶の提督と一部で知られるグリーン・ワイアット大将その人であった。

 媒体によって小物だったり有能だったりする――小物寄りが多いか?――彼だが、少なくとも原作よりも深刻な修羅道を体現するこの宇宙では、実戦経験豊富な現場を知る将官の一人だ。

 

「ふ、ふはははは。いやはや大艦巨砲主義が廃れたかと思えば、そうでもなかったか。さあ、諸君、なにをぼんやりとしているのかね? 妖精の悪戯から目を覚まして残る残党を蹴散らそうではないか。

 見たまえ、ジオンの残党ばかりでなく忌むべき侵略者を落穂拾いのように平らげる好機ではないか」

 

 余裕を含ませた笑いと共に命じるワイアットにブリッジのクルーらも自らの職務を思い出し、次々と艦隊と連絡を取り、DCの準備万端MAP&最大火力攻撃により文字通り壊滅しているバサ帝国艦隊を根こそぎ平らげるべく迅速に動き始める。

 戦力を集中させていた宙域とは逆方向である為、部隊の移動に時間が掛かるのが予測されたが、この時、皮肉な事に戦果を挙げないようにと配置されていたペデルセン率いるティターンズ艦隊が最も早くバサ帝国に追撃を仕掛けられる位置にあった。

 

「核でもなく艦艇と機動兵器に搭載した火器であれだと? あれで大量生産が可能なら、戦艦は本当にただのキャリアーへと成り下がるほかないな」

 

 ワイアットはDCの保有する艦艇と機動兵器の異常な戦力に対する警戒の念を強くした。彼の座乗しているアルバトロス級やゲシュペンストMk-IIの供給、それにスペースノア級やトライロバイト級と新たな艦艇の配備も決まっている。

 プルート財閥は地球連邦政府というよりは地球人類全体の利益を考えて、献身的なまでに支えてくれてはいるが、こうまで圧倒的な戦力を揃えられる技術力と資金力はやはり脅威であった。

 

「皆が紳士の心を持てば地球は平和になる。そして侵略者に対しても紳士的に一丸となって戦えば、この地球はそう易々と負けはせん」

 

 グリーン・ワイアットは紳士であり、紳士とは優雅に、上品に、誠実に振舞うものだ。だからプルート財閥が率先して協力を申し出てくれている内は、笑顔と共に右手で握手を求め、背中に隠した左手にはナイフを持って接するのだ。

 いざとなれば左手のナイフを相手の心臓に突き立てられるように備えながら。

 

 

 デラーズ・フリート並びにバサ帝国によるソロモンに集った連邦艦隊への攻撃は、ワイアット艦隊とDC宇宙艦隊の化け物じみた活躍によって失敗と終わり、その戦力を激減させている。

 ジオン共和国に恭順せず、連邦に一矢報いる為ならば異星人に膝を屈した真ジオンの下へすり寄っても構わないというもはや目的を見失った者達や、他に居場所のない質の悪いテロリストの類はこの一連の戦いで多くが生命を失った。

 

 茨の園を出航したデラーズ・フリートの残存艦隊はソロモンから生還した兵らを回収し、またアクシズから送られてきた増援艦隊と合流して“星の屑作戦”の次なる段階へ進むために、最後の休息を取り、準備を進めていた。

 デラーズ・フリート旗艦グワジン級グワデンにて、エギーユ・デラーズとシーマ・ガラハウが直接対面して、デラーズはシーマへ最後の頼みをしていた。

 

「貴官らの艦隊にとってはかなりの危険を伴う事ではあるが、他に頼める者もおらん。頼んだぞ、ガラハウ中佐」

 

「これでもジオンの禄を食んでいた身ですからね。中将たっての頼みとあれば、断るわけにも行かんでしょう。しかし、よくもこんな作戦を実行するつもりになられましたねぇ。自分の命に価値を見ない者が多いので?」

 

「そうではない。己の命を用いてでもなさねばらぬ義があり、信念があるのだ」

 

「は、命よりも大切なものですかい。あたしら薄汚い海兵隊なんぞには理解できない高尚さですな」

 

「ガラハウ中佐、正直に言えば、はじめ儂は貴殿らを導こうと考えていた。アクシズから拒絶され、我らと合流せず、独力で戦後の宇宙を生き抜いていた貴殿らに志を持たせようと。真にジオン公国の意思を継ぐ者の一員としてな」

 

 なんとも自分勝手な言い草だ、とシーマは反吐を吐き捨てたい衝動に駆られた。そうして自分達を巻き込んで四方八方に迷惑と負債を押し付けて、自己満足の果てに死ぬつもりだったのだろう――数年前までは。

 

「だが、今の地球圏を見ればそうも言っていられん。スペースノイドの独立を実現し、地球圏を連邦が掌握するのを阻止するという我らの大義は、現在の地球を考えれば時代に即したものとは言えん。

 よもや地球の内側と外側の両方から異種、異星の侵略者が現れるなど誰に予期出来たろうか。彼らと戦うのにアースノイドとスペースノイドの対立を深めたところで、侵略者に益を与えるのみ」

 

 シーマがデラーズと接触した時点で、デラーズは地球圏の状況からこれまでのテロ活動や反連邦運動について、価値が喪失している事を理解している様子が見られ、シーマは事前の想定が変わったのをヘイデスに連絡していた。

 

「おそらく一連の戦いが終わった時、地球人類がまだ地球圏において主権を維持していたならば、そこにスペースノイドとアースノイドと区別する余裕は残っておるまい。地球人類が人材と資源を最後の一滴まで絞り切らねば、どうにもならぬ」

 

「一年戦争中とは随分とお考えが変わられたようで……」

 

「あまりに世界の在り様が違うのだ。ティターンズが台頭し、それに対抗してエゥーゴが設立された後に侵略者達が姿を見せなければ、我らは当初のまま腐った連邦を打倒する為に行動したのだがな。

 今やその連邦さえ自浄作用が働いて、かつての腐敗から新たな芽を出している。こうなると我らはもはや新たな時代の礎になるほかあるまい」

 

「ご自分が新しい時代に生きようとは、お考えになられないのですか」

 

「……儂を含め、この艦隊には生き方を変えられぬ者がほとんどだ。スペースノイドが武力に依らぬ新たな時代を迎えられるとしても、我らは力による独立を願い、戦うことを選んだ者達だ。今更ジオン共和国に合流する事も、新たな生き方を選べる事も出来ん」

 

「死ぬその瞬間までジーク・ジオンと、亡くなった国に命を捧げるつもりかい?」

 

 艦隊の皆を生き残らせることに腐心してきたシーマにとっては、死に場所を求めて生き急ぐデラーズらの行動は、この上なく癪に障るものだ。だからついつい話し方も素に戻っている。

 

「笑ってくれて構わん。だが、その代わりになんとしてもあの方を、きゃつらの魔の手から救ってもらいたい。我らと志を同じくする者達が、星の屑の裏でアクシズからお連れになる手筈となっている」

 

「……あたしらはア・バオア・クーで最後まで戦った。散々、汚れ仕事を押し付けられて、ジオンの恥晒しだと味方に蔑まれてもね。

 あの戦場じゃ、ついこの間までハイスクールに通っていたガキ共も学徒兵として戦っていた。そいつらが殿を務める中で、あれだけの戦力を纏めて戦場を離れたあんたは気に食わない相手さ。

 だが本当の雇い主にも色々と頼まれているんでね。あんたからの依頼は、あちらさんにとっても利益に繋がる話だ。アクシズを脱出するミネバ・ラオ・ザビ姫の保護、確かに承ったよ」

 

 

 ソロモンを襲ったデラーズ・フリートを撃退した後、ワイアット艦隊はそれを追撃するべく艦隊の半数をもって編成し、出撃させていた。

 もっとも、シーマからの連絡により、デラーズらがコロニージャックによるコロニー落としを実行するのを知っている為、コロニー落としを阻止する為に残るワイアット艦隊と別艦隊が切り札と共に行動を開始している。

 

 そしてDC艦隊もまた次の戦いに備えて、アナハイムの派遣したドック艦ラビアンローズにてガンダム試作三号機とヘパイストスラボから送られてきたコロンブス級から新型機を受け取っていた。

 原作と違い各派閥の思惑が絡み合わずに済んだため、試作三号機――GP03ステイメンとその専用装備であるオーキスで構成されるデンドロビウムの引き渡しは、スムーズに行われている。

 

 オーキスは全長140m超の内、メガ・ビーム砲の長砲身がそのほとんどを占めるとはいえ、連邦系としては珍しいMAクラスの巨大兵器だ。

 それ自体が高性能MSであるステイメンをコアユニットとして、大型ビームサーベルを備えたクロー・アーム二つに、フォールディングバズーカや各種ミサイル、爆導索を内蔵したウェポン・コンテナ六つを機体上部に備えている。

 巨大な機体を守る為に当初はIフィールド・ジェネレーターの装備が計画されていたが、異星人の出現やプルート財閥がビームシールドやEフィールドを次々と発表した事に影響を受け、艦艇用のビームバリヤーに変更されていた。

 

 機体に積まれているジェネレーターも最新のものを使用して、原作の38,900kwを上回る出力を誇る。

 推進系には大型のミノフスキードライブユニットの採用が決定され、オーキスユニットの左右にランスのように分割されて接続されている。ユニットそのものにもビームカノンとミサイルランチャーが増設され、火力の向上にも一役買っていた。

 

 なにしろ最大の商売敵であるヘパイストスラボがゲシュペンストMk-IIやモビルゾイドをはじめ、同じMSから始めた筈なのに訳の分からない技術が異常な速度と完成度で発表されるものだから、アナハイムの開発陣は厚遇と引き換えにブラックを煮詰めたような職場環境に陥っているほどだ。

 そんなアナハイムであるから、デンドロビウムは並々ならぬ意欲を持って開発されており、当初のプランでは生産と運用には従来のMSの百倍のコストがかかると言われた本機は、百五十~二百機相当のコストにまで跳ね上がっている。

 性能を百パーセント引き出すパイロットが居て、適切な戦場に投入できたならそのコストに見合った成果を出す怪物MSではあるが、それにしたってあんまりにアレで、社内でも存在を疑問視されているほどである。

 

 大破したフルバーニアンに引き続き、デンドロビウムを任されたコウは、ラビアンローズの中から係留されているデンドロビウムを、システムエンジニアのルセット・オデビー、それにニナ・パープルトンと共に眺めていた。

 具体的にはルセットから、機体の説明を受けていたのである。ニナはおまけに近いが、彼女からもデンドロビウムの運用についてはアドバイスが入っている。

 

「凄い機体だ。運用が難しすぎるけれど。それに火器管制のパイロットに対する負担が従来の機体の比じゃない。武装の死角が多いのも気になるな……」

 

 カタログスペックの凄まじさを認めつつも、実際に乗る側としては色々と言いたいことのあるコウは、素直な評価を口にした。それを受けてルセットはむう、と唸る。

 これまで社内の人間から散々言われてきたが、実際に機体を預ける人間位まで言われるとまた話は別らしい。

 

「ですがウラキ少尉ならこの子の性能を十二分に引き出せるはずです。デラーズ・フリートはともかく、バサ帝国の機動兵器を相手にするのにこのデンドロビウムの力は必要になりますよ」

 

「コウならデンドロビウムを使いこなせるわ。それに最悪の場合、ステイメンで出撃するのでも十分な戦力になるわよ」

 

「ちょっと、ニナ! オーキスを装備してこそデンドロビウムなのよ? 余計なことを言わないでよ」

 

「だからってこの子はコウに対してあまりに負担をかけすぎるわ。一度や二度の戦闘ならまだしも、今回は場合によっては長期戦も想定されるのよ? パイロットの不調は機体のパフォーマンスにも影響を与えるわ」

 

「ま、まあまあ、オデビーさんもニナも落ち着いて。俺はデンドロビウムに乗るよ。他にも頼りになる仲間は多いけれど、俺も少しでも力が欲しいからね。それにガトーとの決着も着けなければならない。

 二号機を失ったアイツが、アクシズから何か新しい機体を得ている可能性もある。それに備えたいんだ」

 

「コウ……」

 

 ソロモンの悪夢の異名を持つジオンのエースパイロットから好敵手と認められる程に、コウは成長している。それが頼もしくもあり、ガトーと個人的なつながりのあるニナにとっては複雑でもあった。

 まあ、ルセットにとって、コウがデンドロビウムで活躍してくれることが第一であったけれども。

 

「ところでルセットさん、デンドロビウムにG3スペイザーのハロみたいなサポートロボはないんですか? あれがあると操縦と火器管制が一気に楽になるって、デュークさんが言っていたんですけれど」

 

「う、じ、G3スペイザーですか。いや、デンドロビウムはサポートロボットの搭載を想定していませんでしたので……」

 

 ルセットの言葉が濁ったのは、デンドロビウムの上位互換か、と思わず絶望したのがG3スペイザーだったからに他ならなかった。

 

 

 同じころラビアンローズに搬入されたのはデンドロビウム以外にも、ビーチャの百式改とモンシアのガンダムMk-Ⅲ用のフルアーマーパーツ、またフォン・ブラウンとグラナダ支社からアムロとクワトロ宛てにサイコフレームを搭載した新型機も含まれていた。

 主に連邦相手のフォン・ブラウンとジオン系技術者を多く含み、ジオン残党へもしょっちゅう便宜を図っているグラナダは財布の違う夫婦のようなものだが、どちらも大元のアナハイム自身が鬼の形相で機体開発を命じてくるから、表と裏の両方で技術交流が進んでいたりする。

 

 アムロとクワトロは自分達に用意された新型機受領の現場に立ち会っていた。それぞれの機体開発に携わったチェーン・アギとナナイ・ミゲルの二人もアーガマの格納庫に姿を見せている。

 ナナイは原作時点よりも時間軸が約六年前であり、逆襲のシャア時点と比べると若々しい。元々はフラナガン機関でニュータイプ研究の被験者でもあった彼女は、現在、ジオン共和国の技術士官として籍を置いて、グラナダへ出向中の身だ。

 

「お久しぶりです、アムロ大尉!」

 

「クワトロ大尉もお変わりなく」

 

 青いショートカットの女性士官であるチェーンは、アムロの顔を見ると明るい表情になって格納庫の床を蹴って近づいてくる。

 ナナイもチェーンに比べれば落ち着きはあるが、プロメテウスプロジェクト以前、シャアがまだアクシズに籍を置いていた頃からの付き合いであるから、クワトロにかける声は柔らかい。独身のアムロはまだしも既に妻子のあるクワトロを見る目が、ちょっと怪しくなるナナイの声色である。

 

「チェーン、待ちかねたよ」

 

「いい仕事をしてくれたようだな、このサザビーは」

 

 そう言って笑顔で二人の女性を迎えるトップエース達だが、彼らの瞳は格納庫に寝かされている二機のMSをちらちらと見ている。いくつになっても新しいおもちゃを与えられたらウキウキとはしゃがずにはいられないのが、男の子という生き物なのかもしれない。

 女達は男共のそんな甲斐性のない反応にも慣れたもので、この人達は何時まで経っても子供だ、と呆れながら機体の説明に入る。まずはチェーンからだ。

 

「こちらはアムロ大尉が設計に関わられたνガンダムです。新型ジェネレーターの搭載で出力は6,000kwを越えます。ヘパイストスラボから提供された超電磁コーティングにDBS、それにGPνのデータから新規開発されたフィン・ファンネル六基を左背に装備。

 フィン・ファンネルはエネルギーとプロペラントをマウント中に補充し、繰り返し使用できる仕様です。他の装備はスタンダードなものですね。

 Eパックではなく本体供給式のエネルギーCAPを使った専用ビームライフル、ビームサーベルはバックパック右側にメイン一本、左腕シールドマウント基部に予備が一本。

 頭部90mmバルカン、専用のニュー・ハイパー・バズーカ、またビームシールド発振器内蔵のシールドには裏側にハイパービームサーベル兼用のビームキャノン一本と各種ミサイル四発を装備です。

 装甲はガンダニュウム合金で、ある程度のビームならば直撃にも複数回耐えられる堅牢さを確保しています。またそのお陰で本体重量は十トンに収まっています。

 そして装甲以外にもサザビーと共通しているものとして、新型のサイコミュ思考操縦システム“インテンション・オートマチック・システム”とムーバブル・フレームに代わり、フル・サイコフレームが用いられています。サイコフレームとサザビーについては、開発されたナナイさんからご説明を」

 

「クワトロ大尉、アムロ大尉、サイコフレームとはサイコミュの基礎機能を持ったコンピューターチップを、金属粒子レベルで鋳込んだMS用の構造部材です。

 元々はコックピット周辺や機体各所に分散配置して運用する予定でしたが、百式やRFガンダム、トールギスの運用データを鑑みて、ムーバブル・フレームそれ自体をサイコフレームに置き換えて、お二人の操縦に対する追従性と反応速度を高めることとなりました」

 

「新型装備が山盛りだな」

 

 機体の設計そのものに関わったアムロは、νガンダムを新型ガンダムでありながら現場での実用性と整備性を重視し、堅実なつくりとしたのだが、なかなかどうして新型機構が盛り込まれたわけだ。

 νガンダムの隣に立つ二十メートル越えの重MSのサザビーもまた装甲素材や操縦系統はνガンダムと同等のものを持ち、その性能はνガンダムと同格であるはずだ。新しい愛機を見上げるクワトロは、ナナイへ説明の続きを促した。

 

「機体が私達の操縦についてきてくれるのなら、それに越した事はない。ナナイ、私のサザビーの方はどんな機体に仕上がっている?」

 

「はい、大佐、いえ大尉。νガンダムに比べればより攻撃力に優れた機体となっています。もちろんパイロット保護の観点からも運動性を損なわない限界ギリギリの範囲で堅牢さを求め、格闘戦にも対応した頑丈さと関節の柔軟性を併せ持っています。

 武装はビーム・ショット・ライフル、また両方の手首にビームガン兼用のビームサーベルを収納しています。νガンダム同様ビームシールド内蔵のシールドには裏面にビームトマホーク兼用の大型ビームサーベルと小型ミサイル三発を装備。

 背部のバックパックには新規開発した円筒型のファンネル六基を搭載しています。こちらもフィン・ファンネルと同じく電力と燃料の充填式となっています。ジェネレーター出力は6,500kw超。

 ミノフスキークラフトの搭載で大気圏内でも飛行可能です。こちらはνガンダムも同じですね。

 νガンダムがフォン・ブラウンの最高傑作なら、サザビーはグラナダの最高傑作と言える機体です。お二人にとって最良の機体となると、アギ准尉共々自負しています」

 

 アナハイムと地球連邦軍、アムロの協力によって開発された歴代ガンダムタイプの傑作機がνガンダムならば、グラナダに籍を置く旧ジオン技術者達が技術を結集して作り上げたのがサザビーだ。

 どちらも、一つの時代の頂点に立つに相応しい超高性能MSである。それがこれから偽りの星の屑を行うデラーズ・フリートへと牙を剥くのだ。

 

 そうしてアナハイムが心血を注いだ新型機が受領されている一方で、ヘパイストスラボが開発し、エリュシオンベースから輸送されてきた四機の新型機がグランド・スター小隊の四名へと引き渡されていた。

 スペースノア級ハガネの格納庫にオウカら四名が集められ、メンテナンスベッドに寝かされている四機を見下ろしている。残念ながら所長は宇宙に上がる余裕がなかった為、レーザー通信でのオンライン参加だ。

 スパロボのαやOGシリーズのプレイヤーなら見知ったビルトビルガー、ビルトファルケン、OGシリーズのラピエサージュ、そしてZシリーズの主人公機であったバルゴラのこの時空版バルゴラ・グランドスターの四機である。

 

『まず四人共今日まで怪我一つせず、無事でいてくれたことに何より感謝します。それに安堵もしました』

 

「いえ、私達の責務を果たしたまでです、所長」

 

 と生真面目に告げるオウカに所長は残念そうな顔をした。

 

『ママでもお母様でもお母ちゃんでも構わないのですけれど、まだ所長呼びですか?』

 

「いえ、あの、その、それはこのような状況ですし」

 

「オウカ姉さんもそこまでこだわらなくてもいいと思うけどなあ」

 

「そうは言うけれどアラドも所長をお母さんと呼ぶのは、抵抗があるでしょう?」

 

「まあ、抵抗っていうか気恥ずかしいっていうかな。悪い理由じゃないんだけど。ゼオラもそうだろう?」

 

「あたしに振るの? アラドの言う事は分かるけれど、やっぱりまだ恥ずかしいっていう気持ちがあります、所長」

 

『そうですか。いつかあなた達がそう呼んでくれる日を夢見て、頑張る原動力にしましょう。シエンヌ達はもうとっくに私をママンと呼んでいますけれどね』

 

 シエンヌ達とは、エリュシオンベースの防衛についているスクール出身のブーステッド・チルドレン達だ。

 アルジャンクラスと呼ばれるグループに属していた三人は、スクール解体前に接触したプルート財閥に保護され、ヘイデスと所長による飴と鞭によってすっかり角の取れた性格となり、今ではオウカに準ずる腕前を活かして専用カスタム機に乗って、ママンと慕う所長の警護を担っている。

 

「あの子達が馴染んだのは私としても喜ばしい事ですわ、所長」

 

『こちらではミケーネのサイボーグが欧州で暴れていますから、あの子達も八面六臂の活躍中です。お互い、次に出会った時には変化に驚くかもしれませんよ。

 さてそれでは機体の解説を済ませておきましょう。四人共、事前にマニュアルのチェックとシミュレーターテストは済ませていますね? ではまずはラトのバルゴラ・グランドスターから』

 

「はい、所長」

 

『あなた達のお陰でバルゴラはついに完成を迎えました。背中のVWFS(ブイウイングフライトシステム)XWFS(エックスウイングフライトシステム)に改良し、単純計算で推力が倍増しています。

 また翼の先端部から最長五百メートルのビーム刃が展開可能です。使いようによってはビームの翼として攻防一体の運用も可能な装備ですわ。

 ガナリー・カーバーに大きな変化はありませんが、これまでの熱核融合炉からDエクストラクターに機体の動力を変更した影響で、出力が大幅に向上しています。

 それに推進系の補機として疑似太陽炉を搭載しています。トランザムを使えば三倍とまではいきませんが、短時間の間は性能を向上させられますよ。

 装甲材はガンダニュウム合金とPS装甲の複合です。加えてDフォルトとGNフィールドを実装していますから、機体の耐久性はこれまでの量産MSとは一線を画します。

 超電磁コーティングとDBSも標準搭載しています。これからの機体なら、これくらいは当たり前の時代になるでしょう。このバルゴラGSはゲシュペンストMk-Ⅲと共にその先駆けとなる機体であると自負しますわ』

 

「ありがとうございます、所長。この機体で皆を守ってみせます」

 

『もちろん、皆の中にはラト、あなた自身を含めるのですわよ?』

 

「はい。私も、もっと生きていたいですから」

 

『花丸な答えです。あなた達はもっともっと幸せになるべきなのですからね。さて次はアラドのビルトビルガーとゼオラのビルトファルケンです。こちらはアルトアイゼンとヴァイスリッターをベースに、ペア運用を前提として開発しました。

 ラトのバルゴラGSは次期量産機として生産性と整備性を重視した内容ですが、他の三機に関してはSRG計画の産物として、量産を想定していません。外見こそMS系統ですが、アルトアイゼンらと同じスーパーロボットとお考えなさい』

 

「ウッス! 気合入れて乗ります」

 

「そんな機体を預けられるなんて、責任重大ね」

 

『二機とも装甲はメインに超合金ニューZを使用しています。グレートマジンガーと同じですね。MSクラスのビームやミサイルなら、ダース単位で貰っても撃墜されません。

 特に近づいてなんぼのビルトビルガーはPS装甲製のジャケットアーマーを被せてありますし、アルトアイゼンよりも高出力の光子力バリヤーもありますから、安心して突っ込みなさい。

 二機とも光子力エンジンで動いていますが、ガワとコンセプトの違うグレートマジンガーと言い換えていいかもしれません。

 ビルトビルガーの武装は光学兵器の苦手なアラドに合わせて、実弾系の武器で揃えましたよ。左腕には超合金ニューZ製のビルトマジンガーブレードと三つのレールガトリングガンを束ねた三連レールガトリング砲。

 右腕には大鋏で相手を引きちぎるスタッグ・ビートル・クラッシャーを装備しています。こちらも当然、超合金ニューZ製です。この大鋏ですが、ジオンのヒート系の武器とブレストファイヤーとブレストバーンを組み合わせたヒートシザースとしても機能します。

 挟んだ敵を摂氏三万五千度の高熱で溶かしながら斬る、というわけですね。閉じたまま振るって、鈍器として運用するのも可です。鋏の中心部には単分子ブレードを仕込んでありますから、そちらでズブリとやるのもいいでしょう。

 それとM90レールマシンガンをグレネード込みで持たせてあります。アラドなら牽制として弾丸をバラまいて、距離を詰める使い方になりますかしら?

 もっと射撃兵装を積み込みたかったところですが、アラドの適性を考えればこれくらいのバランスが適切と判断しました。そうそうブーストハンマーもハイパーブーストハンマーにパワーアップしておきましたから、時と場合によって使い分けなさい』

 

「わっかりました。至れり尽くせりで俺は感激の底なし沼っす!」

 

「底なし沼ってなによ、底なし沼って!」

 

『いつもの夫婦漫才はそこまでになさいな。大変残念ですが、時間的な余裕はありませんからね。ゼオラ、あなたのビルトファルケンはビルガーがあんな具合ですので、射撃に重きを置いているのは言うまでもありませんね?』

 

「はい、それは予想が着きます。それにヴァイスリッターの系譜という話ですから」

 

『では装甲と動力、防御機構についてはもう説明しましたね。ファルケンは頭部光子力バルカン砲二門、手首内側の光子力ビームガン兼ビームサーベル二基、両肩と両膝の装甲内部にスプリットミサイルHを内蔵。

 またカメラアイは光子力ビーム発射機でもあります。ファルケンの両腕にはサンダーブレークの発射機構を内蔵。本家の三百万ボルトには届かない二百五十万ボルトですが、雷をそのまま放射するもよし。渦巻かせて盾とするもよし。鞭や剣のように振るうもよしです。

 ファルケンとビルガーのウイングはスクランブルダッシュを参考にして、超合金ニューZ製ですから、そのまま敵にぶつければ大概の相手は真っ二つですし、マジンガーZと同じようにサザンクロスナイフを内蔵しています。

 サザンクロスナイフは射角が限られていますから、使いどころには注意するように。

 最後にメインウェポンであるオクスタンライフルですが、オクスタンランチャーの上位互換と考えて構いません。

 あちらと同じ光子力ビームと実弾の撃ち分けとハイパーグレネードモードによる砲弾撃ちが出来ます。

 後はウイングガンダムのバスターライフルを参考に、巨大な砲撃を放つバスターモードを追加しておきました。ビルガーとファルケン専用の攻撃パターン『ツイン・バード・ストライク』については?』

 

「網膜に焼き付く程確認しておきました!」

 

『よろしい。まあ、元から息の合っていた二人です。TBSについて大して心配はしていません。最後にオウカのシンデレラですわね』

 

「シンデレラ? 開発コードはラピエサージュだったはずでは?」

 

 訝るオウカに、所長は美の極致の唇をへの字に曲げる。

 

『愛娘の乗る機体に“継ぎ接ぎ”なんて意味の機体を与えるのは、私の趣味ではありません。なので正式名称はラピエサージュ・シンデレラ。通称シンデレラ、です。灰被りの姫なら最後はハッピーエンドですから、許容範囲です』

 

「ふふ、童話のお姫様ですか。“継ぎ接ぎの灰被り姫(ラピエサージュ・シンデレラ)”ですね」

 

『オウカの名前を考えると和風の名前がいいかもしれませんけどね。さてこのシンデレラですがSRG計画の各種技術、アルトアイゼン、ヴァイスリッター、それにレモン博士から提供されたアシュセイヴァーのデータを統合し、開発した機体です。

 単機でファルケンとビルガー二機を上回る性能に至りました。装甲は全面超合金ニューZ、動力は光子力エンジンとゲッター炉心のダブルドライブ。補助にゲッター線増幅装置と超電磁エネルギー。

 例によって光子力バリヤー搭載です。超電磁コーティングやDBSは言うまでもないでしょう。

 大人しめなのは左腕の五連チェーンガン、両肩のビッグブラスト・ディバイダーあたりですね。右腕の鉤爪状のマグナム・ビークは超合金ニューZ製で超電磁エネルギーを纏わせて、超電磁クローとしても運用できます。

 メインの射撃武器はオーバーオクスタンランチャー。その名の通りオクスタンランチャーの上位互換です。機能はファルケンのオクスタンライフルとほぼ同じですが、出力、連射性、射程とあらゆる面で上回ります。

 それとEモードは光子力エネルギーですが、Vモードは超電磁エネルギーを扱うモードです。破壊力というよりは、超電磁タツマキのように敵機を拘束する意味合いの強いモードですし、敵機の電子機器を壊滅させる電子兵器でもあります。

 背中の大型ウイングはブレードも兼ねていますが、こちらは合成鋼Gを使い、ゲッタードラゴンのマッハウイングを参考にしました。ゲッターマントに変形しますから、盾や目くらましにお使いなさい。

 それとダンクーガの野獣回路をベースに、パイロットの精神力や気力をエネルギーに変換するサイ・コンバーターを全機積んであります。ダンクーガに比べればガンダムとジム以上の差ですが、少しは機体の性能向上に役立つでしょう。

 以上であなた達に送った機体の解説は終わりです。どれもあなた達が戦いを生き残る手助けとなります。……直接戦場には立たない私には、これくらいの事しか出来ません。オウカ、アラド、ゼオラ、ラト、どうか生き抜いてください。なにがあっても生きる事を諦めないで』

 

 普段の超人めいた所長からは想像の付かない悲哀の籠る願いの言葉に、オウカは舞い散る桜のように美しく笑って応えた。

 

「はい。必ずやシュメシとヘマーも含め、全員が生きて戻ります、お母様」

 

《続》

 

■百式改、ガンダムMk-Ⅲのフルアーマーパーツを入手しました。

■ガンダム試作三号機デンドロビウムが開発されました。

■サイコフレームが開発されました。

■フル・サイコフレームが開発されました。

■インテンション・オートマチック・システムが開発されました。

■νガンダムが開発されました。

■サザビーが開発されました。

■バルゴラ・グランドスターが開発されました。

■ビルトビルガーが開発されました。

■ビルトファルケンが開発されました。

■ラピエサージュ・シンデレラが開発されました。

■サイ・コンバーターが開発されました。

 

■シエンヌ・アルジャン・プルートが加入していました。

■シアン・アルジャン・プルートが加入していました。

■シオ・アルジャン・プルートが加入していました。

 

そろそろアルトアイゼンとヴァイスリッターのパワー不足が目立つ頃ですね。こちらも強化せねば。

またアルジャンクラスの三名は、本作では勝ち組についておりました。心身ともに健やかに育ち専用カスタム機でバリバリ戦っています。

 

●SRG計画の系譜

・マジンガーZ        → アルトアイゼン、ヴァイスリッター

・グレートマジンガー     → ビルトビルガー、ビルトファルケン

・ゲッターロボ        → モビルゾイド、ゾイド

・コンバトラーV、ボルテスV → Zプラス改造機、超電磁コーティング、超電磁武器

・ブラックホール系      → ヒュッケバイン、デュラクシール、Zプラス改造機

・Dエクストラクター系    → バルゴラ、FAZZ改造機

・ダンクーガ         → サイ・コンバーター

・GN粒子          → FAZZ改造機、バルゴラ、シロッコ

・複合技術          → トリムールティドライブ、G3スペイザー

ラピエージュ・シンデレラ

 

 それにソウルゲイン、ヴァイサーガもありますね。アンジュルグとラーズアングリフ、アシュセイヴァーはレモン製です。あとはダイモス、ザンボット系の技術か。どうしましょうね。




というわけでこの時空版のデンドロビウム、νガンダム、サザビーが開発されました。いきなりフル・サイコフレームにしてみましたよ!
さて救出されるミネバですが、Z/ZZ版、UC版、ムーンクライシス版のどのお嬢さんになるでしょう。
ところでベクトラはグワダンを参考に建造されたそうですね。ハガネやアルバトロス級を参考にした、とすれば登場させても大丈夫かな?

追記
νガンダムについてビームライフル、フィン・ファンネルの説明追加と60mmバルカンを90mmへ修正。スパロボだと90mmっぽいので。


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第四十三話 思い通りにいったらあんまりスパロボっぽくない気がする

「大丈夫かなあ、大丈夫だろう、大丈夫だ。うん、大丈夫だ。そう信じよう」

 

 部屋の中を行ったり来たりしながらそう口にするのは、例によって地球の行く末と子供らの無事が心配で堪らないヘイデスである。

 コロニー落としというガンダムシリーズ屈指の大量虐殺行為の成否を決める闘いが、もうまもなく頭上で行われようとしている。

 

 その場にシュメシやヘマー、オウカにラトゥーニ、ゼオラ、アラドといった子供達が居るし、スパロボでおなじみの版権キャラクター達も奮闘しているのは間違いない。

 いざという時にブラックホール・クラスターでコロニーを消滅させてくれるシュウ・シラカワはいないが、ソーラーシステムⅡ以外にもコロニーの落下を防ぐ手札はヘイデスとて用意している。

 DC宇宙艦隊とは異なるその手札が完全に機能すれば、コロニーの一基くらいは何とかなる筈なのだ。

 

「はあ、宇宙もそうだがこっちもてんやわんやの大騒ぎだ。中盤の山場の一つを迎えたってところか」

 

 AC極東支部執務室にて、ヘイデスは今日に至るまでに起きたスーパーロボット軍団の苦難を思い返す。

 遂に破られたボルテスVの天空剣、そしてそれを補強する新技術を齎した鷹型メカ、新たに姿を見せたキャンベル星の女帝ジャネラ、三将軍を筆頭にした攻勢を強めるムゲ、強力な百鬼メカを繰り出してゲッター線増幅装置を奪取せんとする百鬼帝国、ミケーネの七大軍団もまた地上各地を戦場に暴れ回っている。

 

 バームもといダイモス関係では、武術指南役ガーニィ・ハレックと一矢・ダイモスの正々堂々たる一騎打ちの果てに敗れたハレックの保護に成功して捕虜とし、また地球人との共生区を模索していたバーム星和平派との平和的な接触を行い、バーム内部が一枚岩でない事の確認が出来た。

 ちなみにハレックは生身での戦闘の後、一度、海底魔城へ戻ってから戦闘ロボクラインに搭乗し、一矢との再度の一騎打ちを申し出てきた。

 原作通りならばシャイフルドという戦闘ロボに乗る筈だが、第二次スーパーロボット大戦αのように、亜空間への移動能力を持ち、バーム星の科学力でも二度と作れないと言われた傑作機に乗ってくるとはこれもスパロボ展開であろう。もちろんクラインは戦闘後にありがたく回収している。

 

 プリンス・シャーキンが討たれた妖魔帝国は広いヒマラヤのどこかに眠っていた轟雷巨烈、激怒巨烈の妖魔幹部が復活して戦力の立て直しが図られている。

 ただし復活直後に網を張っていた地球連邦地上軍とAC部隊の一斉砲火が火を噴き、蘇ったばかりの巨烈兄弟は天と地を埋め尽くす規模で行われた爆撃・砲撃・射撃の洗礼を受けて、それでもなんとか這う這うの体で妖魔島に辿り着いたのだから流石と言う他ない。

 

 そしてそれ以上にヘイデスにとって悩ましかったのは、ムトロポリスが怒りと憎悪に燃える巨烈兄弟の率いるメカガンテとガンテ、化石獣、巨烈獣の大軍団の侵攻を受けた際、ひびき洸が事前に潜入していた妖魔兵の襲撃を受けて負傷し、ライディーンが出撃できなかった事。

 街で暴れる妖魔帝国をDC地上部隊と現地防衛隊が迎え撃つ中、ムー帝国帝室の血を引かなければ動かせないライディーンが洸ではなく、別の近い年頃の少女によって起動され、危なっかしい動きながら妖魔帝国撃退に一役買った点にあった。

 

(さえずり)(あきら)。勇者ライディーンの生誕三十五周年記念作品のゴッドバードの主人公。クロスオーバー作品だから半公式くらいの作品だと思うけれど、実在しちゃったか。こうなるとバラオの背後にワーバラオとかいう宇宙規模の厄介なのが控えるな。

 こうなるとプリンス・シャーキンが討たれたのが痛いな。その内、バラオが蘇らせるかもしれないが、晶の血統を伝えればシャーキンが味方になる可能性はあるし……それに月のライディーンを確保出来れば、主役級ライディーンが二体手に入る。

 いや、それでも敵の強さと特性の厄介さの方が大きいか? オカルト系は本当、原作主人公達の活躍に頼る面が強くて申し訳ないったらありゃしない)

 

 ムー帝国の神秘科学は、ヘパイストスラボの技術力をもってしても解明の糸口すら掴めていない。あるいはシュメシとヘマー、フェブルウスが至高神ソルとしての能力を完全に発揮できていれば話は別だが、ないものねだりをしても仕方がない。

 一方で地球人類内の動きでは、OZが表向きはコロニーとの平和路線に舵を切り、各コロニーもそれに乗った事でOZに対する攻撃行動を中止しなければならなくなったヒイロ達が離脱している。

 コロニーのガンダムを開発した例の五人の博士達がOZに囚われた、という情報もヘイデスの耳に入っている。モビルドールの生産も既にある程度は済んで、極東と並ぶ激戦区となった欧州で大量に実戦投入されていると聞く。

 

(ヴァイエイトやメリクリウス、ビルゴ、それにガンダムのカスタムタイプが開発されるのには必要な事かもしれないが、あの博士達には出来ればウチに来てもらって、所長と一緒に開発に勤しんでほしかったが、どうやらWの開発系譜に関しては原作に近いものになるのか?

 それにウィナー財団との付き合いもある。カトルの家族に不幸が訪れないように、出来る限りの事をしよう。ウイングゼロはカトルが建造したはずだが、設計図さえあればウチだってOZだって、最悪、侵略者でさえ作れるのが厄介なところだ)

 

 前向きになれる情報としては、剣造博士に発破をかけておいた成果で甲児と鉄也の関係がギスギスとしていないことだった。

 グレートマジンガーの本格参戦に伴い、マジンガーZも装甲やエンジンの改良が推し進められて、機械獣をはるかに上回る戦闘獣の攻撃に晒されても“鉄の城”の堅牢さを発揮できている。

 また部隊としても、バン・バ・チュンを艦長とする超巨大ゾイド・ウルトラザウルス、ゼロ・ムラサメとレイラ・レイモンド、フォウ・ムラサメがそれぞれガンダムMk-Ⅱ試作0号機の改造機、アプサラスⅣ、サイコガンダムに搭乗して合流している。

 

 以前に話の出たマグネスVを始めとした各スーパーロボットの量産型&簡易量産型も試作機がロールアウトし、敵の策略でオリジナルが出撃できない時にはバトルチーム、ボルテスチーム、一矢が量産機に搭乗して敵と戦うという一場面もあったものだ。

 ただボアザンやキャンベルが次々とボルテスやコンバトラーの弱点を突く戦法を繰り出してきており、マグネスVの量産を進めるにあたってはオリジナルの弱点の洗い出しが終わってからという話になり、量産計画は停止中だ。

 

 経営者の観点からすればヘイデスとしてはグルンガストを量産化しやすいように変形機構の一部をオミットし、量産を前提としたグルンガスト弐式に連邦軍の正式なスーパーロボットとして採用されて欲しいところだ。

 新たに性能は据え置きの量産型グレートマジンガー、変形・合体・分離をオミットした量産型ゲッタードラゴン、ゲッターライガー、ゲッターポセイドンも量産機の候補に挙げられており、スパロボ的ではあるが、どうにも迷走しているな、とヘイデスには感じられる。

 ともすれば、本大戦中に正式な量産型スーパーロボットの採用は間に合わないかもしれない。

 

(それはそれだ。そうなるとやはりスパロボのようにスーパーロボットと一点物のリアルロボットを集中運用して、敵勢力の首狩り戦術で事態の打破を狙うのが最善か。

 そういう観点から見れば、今の地上部隊と宇宙部隊は思った以上の精鋭部隊に仕上がっている。地上の方もなんとかなっていると思いたい。

 宇宙の問題はバサ帝国がどう動くかだ。デラーズ・フリートに積極的に支援を仕掛けるようなら、極端な話、ヘルモーズの主砲を地球に直接撃ち込んでくる可能性さえあるのが悩ましいんだよなあ。

 イージス計画規模のシールドはまだ実用できてないし、そもそも展開が間に合わないだろう。

 どうなる? いざとなったら、一年戦争からコツコツ進めてきたサテライトシステムのお披露目だが……ガンダムX、この世界では地球とそこに住む人々、そして地球人類の守護の為に力を使ってもらうぞ)

 

 スターダストメモリーにおけるコロニー落としは、シーマ艦隊によるコロニージャック、月に落とすと見せかけたコロニーの推進装置に向けてアナハイムとの裏取引によりレーザーでの点火がなされ、地球落下軌道に入る、というものである。

 しかしこの時空においてはシーマ艦隊からの内通により、コロニージャックに関しては護衛の艦隊が配備されており、それによってシーマ艦隊はコロニージャックに失敗して行方を晦ませるというシナリオがある。

 

 ただしシーマ艦隊がそのままアクシズへと向かい、バサ帝国支配下のアクシズから脱出するミネバらを救出する予定であるのを、地球連邦側は知らないわけだが。

 地球連邦に対する評価を改めたデラーズとはいえ、流石にザビ家の姫を預ける程の信頼を置けなかったのだろう。ギレンに対する狂信者とも評価されるデラーズがここまで譲歩しただけでも、十分な変化としておこう。

 

 さてコロニージャックが防がれ、原作ではシーマ艦隊によって殺害されたコロニー公社のスタッフが助かったという副次効果もあったわけだが、ではコロニー落としはどうなるのか?

 答えは、フーレから照射されるトラクタービームによって牽引される廃棄コロニーの姿だ。周囲には無数のバサ帝国系の兵器とアクシズ系の兵器が重厚な守りを敷いており、それと合流したデラーズを総指揮官として、地球へのコロニー落下を実行しつつあった。

 

 真ジオン公国の戦力の大部分はこのコロニー落としに割かれ、アクシズという拠点には最低限の戦力が残されるばかり。

 デラーズ・フリートには原作通りに大型MAノイエ・ジールが送り届けられて、この戦場を死地と定めたガトーは万感の思いで最後の乗機となるノイエ・ジールを見上げていた。

 場所は、ノイエ・ジールを始めとした大型MAを運用する為の大型輸送艦の格納庫のキャットウォークの上で、格納庫にはノイエ・ジール以外にも新旧様々なMAが寝かされている。

 

 羽を広げたアゲハ蝶のようにも、あるいはジオンの国章のようにも見える薄緑色のノイエ・ジールは原作に比べ、技術の進歩によって装甲はガンダリウム・コンポジットが用いられ、ジェネレーター出力も75,800kwを大幅に上回っている。

 アクシズで培われた遠隔操作兵器を筆頭とした技術蓄積により有線クローアームの他、大量の火器を抱えるノイエ・ジールの操縦性は大幅に改善され、パイロットであるガトーへの負担は激減している。

 

 メガカノン砲、偏向メガ粒子砲、ミサイルランチャー、ビームサーベルとメガ粒子砲内蔵の有線クローアーム、そしてMSの四肢を引きちぎるパワーのあるサブアームと武装のラインナップは原作通りだが、性能面では全て原作より向上しているのは言うまでもない。

 防御面においてIフィールドジェネレーターは昨今の武装事情から出番の少なさが指摘されて、ノイエ・ジールのサイズに合わせた高出力ビームバリヤーが搭載されている。

 ノイエ・ジールは攻撃、防御、運動性全てにおいて優れた強力なMAだが、その開発には純地球製技術のみが用いられていて、異星の技術は一切使われていないのが特徴の一つだ。

 

「ノイエ・ジール、私と最期の時まで運命を共にしてもらうぞ。ケリィ、君もそれで本当に構わないのか?」

 

 ガトーは傍らに立つ親友兼戦友に問えば、褐色の偉丈夫は馬鹿な事を聞くな、と鼻で笑った。彼とて月に恋人と言う未練があるが、それでも戦友と共に命を賭けるのに躊躇はない。

 

「言わずもがなな事だ。そうだな、だが……」

 

「だが?」

 

「あのバサ帝国の連中をこの手で叩き潰せなかったのは、未練かもしれんな」

 

「ふ、そうか。そうだな、私もだ」

 

 ははは、と格納庫の中で男二人の笑い声が木霊した。

 

 

 一年戦争序盤の通称“一週間戦争”の際にコロニー潰しによって住民を皆殺しにされたコロニーの一つが、今回のコロニー落としで用いられる“弾頭”だった。

 早くからその存在を把握していた地球連邦は、断続的に移動中のコロニーに攻撃を仕掛けていたが、これはどちらかと言えば威力偵察としての面が強く、コロニー奪取を目的とした攻撃ではなかった。

 

 コロニーを迎え撃つ地球連邦宇宙軍の主力艦隊を率いるのは、一年戦争での戦死を免れたマクファティ・ティアンム大将。

 アルバトロス級一番艦アルバトロスを筆頭に膨大な数の戦闘艦が布陣する様子は、一年戦争以降、増強された地球連邦軍の力を誇示するものだった。

 

 更にはコロニー落下阻止の為の切り札としてソーラーシステムⅡを用意しているばかりでなく、アルバトロス級と並ぶ地球連邦軍の誇るベクトラ級宇宙空母の姿がある。

 原作であるムーンクライシスではネオ・ジオン(ハマーン)のグワダン級のデータを盗用したが、本時空ではスペースノア級のデータから再設計・建造された超大型戦闘艦にして外惑星圏空母である。

 

 熱核反応炉の六十四倍の出力を誇るDD(ダウンデッド)機関を十二基備え、戦略・戦術・戦場核を搭載し、反乱行動への抑止として複数の監察官が搭乗と異例づくめの艦だ。

 搭載しているMS部隊も最新の機体を中心に、現時点では――きっと将来的にも――希少なZ系MSが多く配備されており、ZプラスやΖ>(ゼータプロンプト)、ZZの派生機である三十一メートル超のZZ通称ジークフリート、と他の部隊では中々お目に掛かれない機種が見られる。

 

 連邦宇宙艦隊の象徴とも期待される巨艦は就航以来、数少ない出番にベクトラ艦長ロウ・シン大佐や地球低軌道艦隊司令兼ベクトラ司令のフョードル・クルムキン准将以下、ベクトラスタッフの士気と緊張は高まっていた。

 ゼータライダーの新人としてΖ>を乗機とする二十歳の青年士官、タクナ・新堂・アンダースン少尉もその一人であった。

 

「レスキュー部隊志願だったのに宇宙軍入りして、まさかこんな大事に立ち会うなんて。でも、これも広く見ればレスキューだよな」

 

 タクナは時折走る頭痛を緊張によるものだと考えながら、迫りくるコロニーと実戦の時に備えて、先輩のゼータライダーが待つガンルームへ向かった。

 

 

 コロニー落としを防ぐための切り札をDC側も用意し、万全の態勢でデラーズ・フリートを迎え撃つ態勢を整える中、コロニーが複数のフーレ級の牽引と地球製のものより高性能な加速装置と推進器により、極めて短時間で地球に迫りつつあった。

 コロニーを厳重に警護するデラーズ・フリート並びにバサ帝国の機動兵器群が射程に入った瞬間、ティアンム艦隊は既に展開済みのソーラーシステムⅡの照射を敢行した。

 

「友軍は全て離脱しているな? フラワー(フーレのコードネーム)ごとコロニーを焼くぞ。黙示録の如き所業をやすやすと許してなるものか!」

 

 アルバトロス級ネームシップのブリッジで、一年戦争では謎の事象により防がれたコロニー落としを今度は人類の手で防いでみせると、ティアンムの気迫は凄まじい。

 八年前のコロニー落としは、まだ三つに分かれる前のフェブルウスによって防がれたが、今の彼らにそこまでの力が残されているかは怪しい。

 

 そして人の手で作り出された“アルキメデスの鏡”、その二代目の眩い光は迫りくる廃棄コロニーへと向けられて、巨大な要塞にさえ甚大な被害を与える膨大な熱量が焦点を結ぶ。

 デラーズにとってソーラーシステムⅡあるいは核などの大量破壊兵器で廃棄コロニーが破壊され、偽りの星の屑が失敗し、今の地球圏に馴染めない自分達旧きジオンは掃討され、バサ帝国の戦力を少しでも減らし、更にアクシズに囚われたミネバを救出するといういくつもの目的が同時に達成されるはずであった。

 

 しかし無数の鏡によって集められた太陽の光は、廃棄コロニーを牽引するフーレ級とその前に盾として突出したアドラティオ級らによって阻まれることとなった。

 地球側の誰もが目を疑う中、廃棄コロニーの先端部を覆うようにして強力なEフィールドとDフォルトが展開されて、ソーラーシステムⅡの陽光が届くのを防いだのだ。さながら地上に刺し恵む陽光を遮る分厚い雲のように。

 

 この事態に驚きを見せたのはティアンム他、エイノーなどの連邦側の提督ばかりではなく、廃棄コロニーの後方にて布陣していたデラーズ・フリートのデラーズや真ジオンから援軍して派遣されていたグワンザン艦長ユーリ・ハスラーも同じであった。

 コロニージャックとアナハイムへの脅迫ではなく、バサ帝国を利用して失敗を前提としたコロニー落としを実行していた筈が、そのバサ帝国によって失敗を決定付ける一撃が無効化されてしまったのだから!

 

<続>

 

■Ζ>が開発されました。

■ベクトラ級宇宙空母が建造されました。

■ガンダムMk-Ⅱ試作0号機が改造されました。

■サイコガンダムが修復&改造されました。

■マグネスVの試作機&簡易量産機が開発されました。

■マルスの試作機&簡易量産機が開発されました。

■ザマンダーの試作機&簡易量産機が開発されました。

■ウルトラザウルスが開発されました。

■ガンダムXが開発されました。

■サテライトシステムが開発されました。

 

■囀晶が仲間になりました。

■ゼロ・ムラサメが仲間になりました。

■レイラ・レイモンドが仲間になりました。

■フォウ・ムラサメが仲間になりました。

■バン・バ・チュンが仲間になりました。

■ガーニィ・ハレックが捕虜になりました。

■タクナ・新堂・アンダースンが登場しました。

 

 

一応、ガンダムシリーズに出た機体をヘパイストスラボが開発する事のないよう気を付けています。Ζ>やZプルトニウス、ユニコーン三兄弟、Sガンダムなんかもそうですね。

またSガンダムを筆頭にした愉快なアーガマ級ペガサスⅢもコロニー落下阻止艦隊の一員として、小便漏らしながら戦っています。初陣がジオン残党と異星人の混成部隊と難易度が跳ね上がったから仕方ない、仕方ない。

ゼファーの次の機体はどうしようかな。




追記
×ゲッタージャガー → ○ゲッターライガー
なんか、ジャガー号と混線していました。お恥ずかしい。

またティアンム大将のコロニー落としを防ぐ事への意気込み部分について、コロニー落としを再現するような文章だったので修正いたしました。

アーガマ→ペガサス

誤字脱字他ご指摘ありがとうございました。


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第四十四話 オリ勢力の傘下に降った版権勢力同士の仲が良い事は滅多にない

「コロニーを守るフラワー級を排除する! 戦力を抽出して側面から叩くんだ。ソーラーシステムⅡの再調整を急げ。フラワー級を排除後、即座に再照射を行う! 呆けている暇はないぞ! 艦隊各員、死力を尽くせ! 地球にコロニーを落とすな!」

 

 旗艦アルバトロスに座乗するティアンムの対応は迅速だった。コロニー落下阻止の切り札ソーラーシステムⅡが無効化されても、呆けた時間は一瞬にも満たなかったろう。

 レビル将軍退役後、地球連邦軍の屋台骨を支える歴戦の名将の指示は艦隊の末端にまですぐさま行き渡り、フラワー級を排除する為の戦力が即座に編成される。

 しかし、それをバサ帝国側が想定していない筈がない。コロンブス級がベースのコントロール艦の制御で、ソーラーシステムⅡを構成する無数の鏡が微調整される中、無数のミサイルとビームが降り注ぎ、次々と鏡が破壊されていったのだ。

 

「て、提督、バームを中核としたバサ帝国艦隊、方位5-9-1より急速に接近中。機動兵器の発艦を確認! 数、三百……四百、なお増大!」

 

「やってくれる。そこまでしてコロニーを地球に落としたいか! 各員、奮起せよ! 地球人類の命運はこの一戦に懸かっているぞ!!」

 

 この時、ティアンム艦隊に襲い掛かったのは、ピラミッド型の艦体の四隅から大型のコブラが生えているコブラードという母艦を旗艦とし、ガルンロールとアドラティオで構成されるバサ帝国の艦隊だ。

 彼らもまたデラーズには存在を知らされずに用意されていた戦力である。

 この時点で、デラーズは自分達が意図的にバサ帝国の戦力を消耗させ、地球連邦とジオンにとって有害となる人材を排除し、アクシズから囚われのミネバを救出するという目的が露見したのを悟った。

 

「うおおおおああ!?」

 

 口ひげの生えた剣闘士風のミケーネ神に右腕を斬り落とされたジェムズガンのパイロットは、画面いっぱいに映る虚ろな瞳のミケーネ神の姿に絶叫した。

 一年戦争でも何度死ぬと思ったか分からなかったが、こんな訳の分からない化け物に殺されるなんて考えもしなかった。だが、それよりも――

 

「訳の分からねえ連中が、地球をどうこうしようなんざ、百万年早いんだよお!!」

 

 ビームサーベルを抜き放ってミケーネ神の剣と一合、二合と斬り結ぶ。姿形を真似られただけのミケーネ神だが、単純な戦闘能力は本来のソレに匹敵する。誤った真化に至った偽神の戦闘能力は最新のMSを容易く凌駕した。

 ジェムズガンのビームサーベルが宙を舞い、それでもパイロットは絶望を拒絶して、頭部バルカン砲をバラまきながら偽ミケーネ神の胴体に組み付いた。その間に、パイロットの指はよどみなく自爆シークエンスの操作を進める。

 

「くたばれ、髭野郎!」

 

「早まるなよ、ジェット・マグナム!」

 

 勇敢なパイロットの命が機体と偽ミケーネ神ごと散る直前、味方の窮地を察したゲシュペンストMk-II三機が必殺の一撃を偽ミケーネ神の頭頂部、背中、胸部に叩き込み、最大出力のプラズマの放出と合わさって偽ミケーネ神を撃破する。

 偽ミケーネ神の消滅と共に組み付く相手を失ったジェムズガンに、救い主のゲシュペンストMk-IIタイプNの一機から通信が繋げられた。

 

「後方に下がって機体を乗り換えるか、手当てを受けてこい」

 

「すまん、命拾いをした」

 

「礼はいいから急げ、敵は多い。それにコロニーが速い!」

 

 ゲシュペンストMk-IIのパイロットの言う通り、フーレにけん引されるコロニーの速度は緩まず、その軌道は地球連邦軍の最大規模を誇る軍事基地ジャブローを目指して進んでいる。

 コロニーが落ちればジャブローばかりでなく、地球人類と地球そのものへ甚大なダメージが与えられるのは明白。億単位の死者が出るなどと、考えるだけで恐ろしい。地獄絵図が描かれるかどうかは、彼らの戦い次第であった。それは想像もつかない重圧に違いない。

 

■宇宙ルート 第二十八話 星屑の墜つる果て

 

 この時、バーム艦隊を率いていたのはオルバン大元帥の腹心ゲロイヤーである。原作では地球との会談の際にリヒテルとエリカの父リオン大元帥に毒を盛り、地球側が暗殺したように見せかけた張本人だ。闘将ダイモスにおける諸悪の元凶の一人といって良い。

 コブラードに乗ったゲロイヤーは、今にも火を噴きだしそうな怒り心頭のデラーズからの通信を受けていた。

 

「これはこれはデラーズ殿、どうされたのかな。まさか我々の行動を手柄の横取りなどと邪推されたか?」

 

「ゲロイヤー殿、煙に巻かれるつもりは毛頭ない。前回のソロモン攻撃の時も今回のコロニー落としも貴官らの増援について、我々には一切情報が伝わっていない。

 確かに作戦遂行の助けとなっているが、こちらにはこちらの都合というものがある。また同じバルマー・サイデリアル連合の傘下である以上、同じ戦場で戦う上においては最低限の筋を通すべきであろう」

 

「ふふふふ、はははははは! 筋、筋と言ったか? 裏切り者がたわけた事を言う。ふふふ、いや、最初から降ったふりをしていたのなら裏切り者ではなくスパイとでも言うべきか?」

 

「……やはり我らの真意を悟っていたか」

 

「くくく、所詮は何年も前に敗れていながら負けを認められずに内輪揉めの火種となって、くすぶり続けてきた敗残者よ。ラオデキヤ皇帝陛下は貴様らの浅慮などとうにお見通しだ。

 今日まで貴様らを泳がせていたのも、貴様らの最期に相応しい舞台が整うのを待っていただけの事。貴様らがアクシズから逃がそうとしているミネバ姫も、今頃はエンツォが、おっとエンツォ殿が拘束いやいや保護して、内通者のハマーンは処刑されるだろう。

 貴様らの悪足掻きは何もかもが無駄なのだ。なにも残せず、なにも成せず、貴様らはここで宇宙の塵となれ。ははははは!」

 

 そしてゲロイヤーと彼の主君であるオルバン大元帥は、コロニー落としによって地球連邦に大打撃を与える以外にも、地球で展開中の他勢力への攻撃と海底魔城で指揮を執る目障りなリヒテルの抹殺を画策していた。

 そうしてゲロイヤーが一方的に通信を切った直後、バーム艦隊もといゲロイヤー艦隊、更にはデラーズ・フリートに含まれていたバサ帝国系の兵器達までもが、一斉にデラーズ・フリートへと攻撃を仕掛け始める。

 デラーズ・フリートのMSと艦艇に次々とビームの豪雨が降り注ぐ中、ブリッジでデラーズは不敵に笑った。

 

「もはや我らの進退は窮まった。ハスラー准将のグワンザンの退路の確保、並びにコロニーの落下阻止を最優先目標とする。連邦艦隊に暗号通信を送れ。これより我らは修羅へと入る。総員、血の一滴まで絞り尽くして戦うぞ。ジーク……いや、地球人類の栄光の為に!」

 

 状況の変化はすぐさま連邦艦隊やDC宇宙艦隊にも伝わる。なにしろ目の前でデラーズ・フリートがバームとバサ帝国に容赦のない攻撃を受け始めたのだから。

 更にティアンム艦隊へシーマ経由で伝えられていた暗号通信が送られた事で、一変した状況とその対応が艦隊各員に伝わった為である。事前にデラーズのバサ帝国に対する裏切りを知らされていなかった者達にとっては、にわかには信じがたい情報だ。

 だが実際にデラーズ・フリートの部隊が連邦側を無視して、バサ帝国と戦闘を始めて、コロニーを破壊するような行動をとり始めれば、多少の疑いは晴れる。

 

 改造されたデンドロビウムを駆り、ガトーのノイエ・ジールと怪獣映画さながらの激戦を繰り広げていたコウにとっても、その情報はまさに青天の霹靂であった。

 猛烈なビームとミサイルの応酬を繰り広げていたノイエ・ジールの攻撃が止み、突然、デンドロビウムに興味を失ったようにコロニー後部の推進器を目指して、機体を加速し始めたのである。

 

「ガトー!? こっちを無視するのか。いや、まさか、本当にあの通信が?」

 

 コウが訝しみながらもデンドロビウムで後を追えば、コウと共に闘っていたバニングのシルヴァ・バレト、モンシアのフルアーマーガンダムMk-Ⅲ、ベイトのガンダムMk-Ⅳが続いてゆく。

 一方で目論見が潰えたことにガトーは歯を食いしばりながら、ノイエ・ジールに最大加速を命じて体に掛かるGに耐える。

 好敵手と見込んだコウとの決着に未練はあるが、デラーズ・フリートの同胞の最後の命の輝きを少しでも強くするために、彼は戦わなければならない。

 

「バルマー・サイデリアルめ。やはり我らの動きを察していたか。そして我らに止めを刺すのにバームを動かすとは、エンツォ殿とオルバンの功績争いに利用しているのだろうが、このままでは終わらせん!」

 

「ガトー! 一人で急ぐな」

 

「少佐、我々もお供いたします」

 

 ノイエ・ジールに追従したのはケリィのMAゾディアック量産型、それにカリウスのドライセンの二機だ。

 

「ケリィ、カリウス、すまん。行くぞ、これから我らは真に討つべき敵共に一矢を報いらねばならん。これより修羅となりて屍を築く。スペースノイドの輝かしい未来の為に!」

 

「ふ、アクシズから送られてきたコイツは、コロニーやバサ帝国のデカブツを相手にするにはちょうどいい機体だったな」

 

 二機の大型MAとMSに他のデラーズ・フリートの生き残りも合流し、コロニーまでの道を阻む戦闘ロボ・ズバンザーやダリ、メギロート、ダイモーンの壁に突っ込んでゆく。

 コウはその背後を突く形で続いており、後ろからメガ・ビーム砲の引き金を引くのは容易かった。

 いつもならモンシアなどはとっくに引き金を引いていたが、ティアンム艦隊とレビルから伝えられた命令により、攻撃されない限りにおいて攻撃を加えられないのだ。

 

「今なら撃てる、撃てるのに。……くそ!」

 

 デンドロビウムのメガ・ビーム砲とミノフスキードライブユニットに装備されたビームキャノンが、ノイエ・ジールらに群がるゼカリアを吹き飛ばした。それを皮切りにバニングらもデラーズ・フリートを無視して、バサ帝国への攻撃を開始する。

 唯一、コウを私人として知るケリィがモニターに映る後方のデンドロビウムを見て、謝罪するように呟いた。

 

「ウラキ、悔しいだろう。だが、軍人ならば引き金を引く相手を間違えるなよ。お前とガトーの決着をつけさせてやりたいとは思うが、な。すまん」

 

 そしてケリィはトリガーを引き絞り、ゾディアック量産型の機体下部の大型メガ粒子砲が発射されて、ハバククの上半身に直撃して吹き飛ばした。

 ソーラーシステムⅡの鏡が破壊されるペースは落ちたが、それでもこのコロニー落としを成功させる為に用意されたバサ帝国の部隊は数が多く、質も悪くはない為にその壁を突破するのは連邦軍の精鋭をもってしても容易くはない。

 

 いくばくか前向きな情報があるとしたならば、この場でコロニー落とし阻止に動いているのがティアンム艦隊とDC宇宙艦隊のみではなかった事である。

 この時、バスクをトップに置くグリプスのティターンズも阻止側として、ティアンム艦隊の端っこに参戦していた。

 

 孤立を深めているティターンズだが、コロニー落としの阻止にさえ動かないとなれば、今も支援している数少ない地球至上主義者はもちろん、バスクに従っているティターンズの兵からも離反者が続出しただろう。

 もっとも、バスクとていくらなんでもコロニー落としを見過ごすつもりはなかったが。

 もしも動かなかったら、ジャマイカンの指揮下でガブスレイに乗って戦闘中のジェリドやマウアー、カクリコンも、ジャミトフが再生する新ティターンズに鞍替えしていたところだ。

 

 そしてもう一つ、別に動いていたのはジオン共和国から派遣された精鋭部隊である。デラーズ・フリート並びに真ジオン共和国は、旧ジオン公国から出た身内の恥であり、膿みということになる。

 それを放置したままでは今後のジオン共和国にとって、政治的に不利なこととなる。

 だからこそ貴重な戦力を抽出して、各サイドのコロニーを中心に火消しを命令し、ただでさえ一年戦争で生き残ったサイドから、スペースノイド最大の虐殺者として向けられている悪感情をこれ以上悪化させないよう努力している。

 

 この時、ジオン共和国のガルマ・ザビ大統領の命令で派遣されたのは、ザンジバル級を改装したキマイラとムサカ級三隻にヨーツンヘイムを含む五隻から成る艦隊だ。

 新生キマイラ隊である。かつてキマイラ隊に在籍したパイロットや人員を可能な限り再結集し、そこに別部隊のエースを加えた紛れもないジオン共和国最強の部隊である。

 

 臨時編成のキマイラの司令を務めるのは、真紅に染めたRFゲルググを駆る“真紅の稲妻”ジョニー・ライデン。

 所属の隊員としては有名どころで、RFグフカスタムを駆る“青い巨星”ランバ・ラル。

 白いRFギャン・クリーガーに乗る“白狼”シン・マツナガ。

 RFドムに乗る黒い三連星ガイア、オルテガ、マッシュ。

 黄色いRFゲルググに乗る“荒野の迅雷”ヴィッシュ・ドナヒュー。

 青いRFゲルググには旧キマイラ所属の“青い雷光”ユーマ・ライトニング。

 

 彼ら以外にもランバ・ラル隊のメンバーや旧キマイラのエースらが所属しており、MSのみで構成された部隊とはいえ、その戦争能力は地球圏有数のスーパーエース部隊である。

 また艦隊にヨーツンヘイムの名前がある事から分かるように、元第603技術試験隊も加わっており、オリヴァー、モニク、ヒデト、更にはACムンゾ支部から出向中のクリスとバーニィの姿もここにあった。

 

 RFヅダやゲクトで出撃中の彼らを含め、地球の命運をかけた決戦の場にて旧プロメテウスプロジェクトのメンバーが再結集したのだった。

 そしてプロメテウスメンバー以外にも思わぬ再会はあった。アーガマの直近でシュツルム・ディアスを操り、相棒のアポリーと共に押し寄せるズバンザーとメギロードを撃墜していたロベルトである。

 

 ゼカリアやダリ、スペースロボなどのより強力な機体がちらほらと姿を見せ始め、カツの量産型Zガンダムやレコア、ファのメタス改、エマのスーパーガンダム、モンドとイーノの量産型ZZガンダムとの連携で必死にそれらの攻勢を押し返している。

 ベテランのアポリーとロベルトのフォローと指揮により、高性能MSを操る若いパイロット達は些細なミスを犯しても手痛い被害は受けずに戦えていた。

 

「こいつら、どいつもこいつも無人機か? 死ぬのが怖くないって戦い方をしてくるぞ」

 

 アポリーはビームランチャーのEパックを交換しながら、雲霞の如く襲い来る敵機の群れに思わず愚痴を零した。ジオン時代にも国力に物を言わせた地球連邦の戦力には参ったが、今はそれ以上の状況と言える。

 相棒の愚痴を聞きながら、ロベルトはアポリーのEパック交換に必要な数秒をカバーしながら応じる。

 彼のシュツルム・ディアスが両手に持ったクレイ・バズーカが、鉄球を放ってきたズバンザーに命中し、大きな目玉を思わせる頭部とキャタピラを備えた下半身を破壊する。

 

「動きは画一的なんだがな。しかし、宇宙でキャタピラとは、どういうセンスだ」

 

 まあ、地球連邦もガンタンクを宇宙で運用した事があるので、バーム星人と一部似通ったセンスがあるのだろう。

 

「大尉達はフラワーにまだ取りつけないのか!?」

 

「流石に敵の守りも厚い。デラーズ・フリートもバサ帝国の連中に攻撃を加え始めちゃいるが、向こうも用意万端整えてきているんだ。そうそう上手く行かんだろう」

 

「それもそうだが、ロベルト、ナイトだ。右から来るぞ!」

 

 ナイトのコードネームで呼ばれているのはエゼキエルだ。エゼキエルの腰の左右からエネルギー収束機が競り出して、二人のシュツルム・ディアスに照準を定める。

 放たれるのは光子魚雷だが、【トップをねらえ!】のような縮退兵器でない分、威力はまだ可愛らしい。

 MSには十分すぎる脅威であるのには変わりなく、撃たせまいと二人はクレイ・バズーカとビームランチャーの弾幕を形成し、エゼキエルの率いているゼカリア数機に命中したが、肝心のエゼキエルに命中弾はない。

 

「くそ、アーガマに撃たれたら艦がもたんぞ!?」

 

 エマ達は、オルガ・キャノンを構える別のエゼキエルや複数のティアマートの対処に追われている。ここは何としても二人でエゼキエルを仕留めなければ、アーガマが小さくない被害を負うだろう。

 こうなりゃ機体を盾にして、腕の二本くらいでなんとか受け切れるだろうと二人が判断を下した時、急速に接近してきた機体によってエゼキエルを筒型のSビットとブレード状のLビットが四方からメガ粒子を浴びせかけて撃破した。

 

「あん? あれはサイコミュ兵器か?」

 

 そう呟くアポリーの視界の中で二種のビットがそれを操る機体へと戻ってゆく。ロベルトもそちらに視線を振り向き、ジオン系MSと思われるデザインの大型MSに気付く。所属はジオン共和国、モニターに表示された機体名はカタールⅡ。ジオン共和国の開発した数少ないNT対応MSである。

 

「あははは、おっちゃん、危なかったねえ~」

 

「んん、その声、ヤヨイか!?」

 

「なんだ、知り合いか?」

 

「ああ、アクシズに居た頃にな。共和国に行ったのは知っていたが、MSのパイロットをやっていたのか?」

 

「ふふん、こう見えてあたしは立派なニュータイプなのだ。だからこのカタールⅡを任されたってわけ。これまで何度も悪い奴らをやっつけて、共和国を守ってきたんだよ」

 

「ははあ、お前がパイロットとしての適性が高いのは知っていたが、まさか戦場で助けられる側になるなとはなぁ……」

 

「あははは、これからはあたしが守ってあげるから安心しなよ。ジョニー大佐からもこっちの支援に回れって言われているしね!」

 

「キマイラか。まさかヤヨイと戦場で再会するとは思わなかったが、猫の手も借りたい状況だ。ありがたく頼らせてもらうぞ」

 

「はいはい、ヤヨイさんにお任せだよ。その代わり後で高いの奢んなよ~」

 

「MSのパイロットならお前だって高給取りだろうに」

 

「久しぶりにおっちゃんと飲みたいだけってわからないかなあ。そんなんで髭も生やしているから、結婚も出来ないんだよ!」

 

「お前、生意気なのは変わらないなあ! お前だってもういい歳だろう」

 

「レディにそんな事を言うなんて、デリカシーもないね。この髭のおっちゃんはさ!」

 

 言い合いながらも機体の操縦に支障はなく、迫りくる新たな敵を迎え撃っているのは流石と言えた。もっとも気の置けない友人同士のやり取りに、それを聞かされるアポリーや他の面子は呆れ顔になっていたが。

 

 

 ティアンム艦隊の中にはアーガマ級ペガサスⅢも混じっており、同艦にはZプラス、FAZZ、ネロといった新進気鋭の機体の他、Z計画において究極のMSとして開発された(スペリオル)ガンダムもまた所属していた。

 現時点における究極のMSの一機、νガンダムとは異なりサイコフレームの搭載は見送られているが、その代わりに学習コンピューターシステム【ALICE】が搭載されている。

 

 本来ならば封印状態で戦術補助AIとして機能するはずのALICEは解放状態で機能しており、例えパイロットが新人であろうとベテラン並みの操縦技術を与える程のサポートを行っている。

 Sガンダムのパイロットに選ばれたリョウ・ルーツは正式なテストを経て選ばれたパイロットではあるが、人格・技量ともに未熟極まりなく、はっきりいって究極クラスのガンダムのパイロットとしては誰もが首を傾げるレベルだ。

 今も原作よりもさらに厳しい状況の初陣を迎え、過酷極まりない現実に飲まれて出撃前の威勢を完全に失っている。

 

「うあああああああ!?」

 

 出撃しているMSの中でも抜きんでた性能を持つ一機として、Sガンダムはバサ帝国側の機動兵器に執拗に狙われている。

 このスパロボ時空における歪な技術進歩によって、Sガンダムもまた原作でもトンデモ性能だったのが更なるトンデモになって、一歩も二歩も突き抜けた怪物となっている。だが、それもパイロットが素人同然の新兵とあってはろくに性能を活かせない。

 ヤクザの予備軍、兵とも呼べぬ与太者と散々な評価のリョウだが、全長40m超のアンゲロイを中心とした部隊に、獲物を食らう肉食獣のように襲われ続ければ彼が悲鳴を上げるのを、誰もみっともないとは思わないだろう。

 

「来るな来るな、来るんじゃねえ!」

 

 Sガンダムの主武装であるビームスマートガンと大腿部のビームカノンをめったやたらに連射して、アンゲロイの接近を少しでも遅らせようと足掻く。

 ペガサスⅢから出撃したネロ部隊やFAZZ、ZプラスらもSガンダムを執拗に追いかけるアンゲロイに攻撃を集中させているが、ロボット大図鑑で地球製の機動兵器とは一線を画すると明言されているのは伊達ではない。

 

 放たれるメガ粒子の塊やミサイルを避け、あるいは迎撃して包帯に見える装甲を変形させて次々とSガンダム目掛けて射撃を加えている。

 メタノイア・ショットの弾幕を潜り、両手をブレードに変形させたアンゲロイが突撃してくるのを目に映し、リョウは背筋に走る恐怖のままに叫んだ。

 

「うわあああ、死にたくねえよおお!!」

 

 恐怖のあまりに失禁さえするリョウが機体の操縦を忘れ、死を目前に泣き叫ぶ中、Sガンダムの中の“彼女”が束の間の目覚めを迎えた。

 リョウの手が操縦桿を握り動かぬまま、Sガンダムは迫りくるアンゲロイに正確無比な狙いでビームを叩き込み、姿勢を崩したところへビームサーベルで斬りかかり、倍近いアンゲロイの巨体に深々と斬痕を刻む。

 

 パイロットが別人になったかのような劇的な変化にも、残るアンゲロイに動揺はなく、射撃を加えていた機体が接近戦に切り替えようと装甲を変形させた時、そこにドーバーガンが撃ち込まれて一機、また一機とアンゲロイが頭部や胸部に穴をあけて行く。

 Sガンダムのコントロールを奪った彼女――ALICEの目の前で、接近してきたゼファートールギスが超電磁チェーンソーで鮮やかにアンゲロイの一機を解体し、超電磁ドリルランスがまとめて二機のアンゲロイの胴体を抉り貫く。

 ドーバーガンによる正確無比な射撃と、スーパーバーニアによる比喩ではない殺人的加速で急接近してからの流れるような撃墜劇。アムロやクワトロと互角に渡り合えるウルトラエースとして申し分のない、ゼファーの操縦技量の表れである。

 

 ゼファーとALICEとが機体越しに交差し、お互いの機体のカメラアイが相手を視認する。この刹那の交差で両者が何を感じたかは分からない。

 ゼファーは後ろ髪を引かれるようにSガンダムへ機体各所のカメラを向けた後、すぐさま別の敵を求めて機体を翻す。

 窮地に陥るSガンダムを見つけ、その命を守るべく駆け付けたのだから、次の助けるべき相手と倒さねばならない敵を求めるのは当たり前だった。

 

「あ、ああ? て、敵はどこ行った? なんだ、俺がやったのか?」

 

 いつまで待っても訪れない自分の死に鼻水と涙で顔をぐしゃぐしゃにしたリョウは、自分でも全く信じていないことを口にして、再びSガンダムのコントロールを取り戻していた。

 ゼファーと刹那の交錯を終えたALICEは再び眠りに就き、リョウの操縦の補助に回っていたからだ。

 この時代においてMSを動かす人工知能の中でも、奇跡的な存在と言える両者の初対面は、地球にコロニーが落ちるか否かの瀬戸際という極限状態で果たされたのである。

 

<続>

 

■デラーズ・フリートがNPCになりました。

■ペガサスⅢが建造されました。

■Sガンダムが開発されました。

■ALICEが開発されました。

■RFグフカスタムが開発されました。

■RFギャン・クリーガーが開発されました。

■ゾディアック量産型が開発されました。




久しぶりにジオン共和国メンバーの登場です。
黒い三連星にアルトアイゼンを乗せるか悩みましたが、光子力関係のパーツの補充が難しいと判断し、RFドムとしました。
策を読まれていたデラーズは腹を括り、コロニー落下阻止の為に動き出しました。ゲロイヤーはそれを見て、ますますオルバン大元帥ひいては自分の立場がバサ帝国内で良くなると判断し、喜んでいます。
アクシズのハマーンとミネバの安否が気掛かりですが、彼女らを救出に向かったシーマ艦隊はどうなるのか?
そしてリョウ・ルーツにはごめんなさいね。ALICEに出番を作る為に貧乏くじを引いてもらいました。
またサザビーについて腹部メガ粒子砲の存在をうっかり忘れていました。次回、νガンダム共々暴れる予定ですが、ちょこっとネタバレとして、

●腹部メガ粒子砲 → 腹部ハイメガキャノン

にしようと思います。

また最近文字数が増えてきた事もあり、これまでの小ネタを別枠で投稿し直そうと思います。来週ごろまでにボチボチ始めようと思います。もう小ネタの範疇ではなくなってきていましたし、寄り道が過ぎてしまいました。反省。

ラピエサージュやビルトビルガー、ビルトファルケン、バルゴラGSの活躍などは次回にお披露目の予定です。イングリットもヘビーガンダムから乗り換え予定です。F90やシルエットガンダム、ネオガンダム、クラスターガンダムも登場させたいですが、原作パイロットは出ないかも。


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第四十五話 ヘイデスの存在意義について

 魚のエイのようなガルンロールの放つ破壊光線がサラミス艦首のビームシールドを直撃し、僚艦の受けたダメージに怒りを燃やしたクラップ級から反撃のメガ粒子砲が放たれる。

 ラー・カイラム級の連装メガ粒子砲とアルバトロス級の連装ビーム砲がアドラティオ級の艦体を貫き、爆散するアドラティオ級に巻き込まれたズバンザーやハバククが跡形もなく消し飛ぶ。

 

 宇宙魔王軍のスペースロボ3号や5号の猛攻を、ジェムズガン小隊がビームシールドを展開して必死に防ぎ、その隙を突いたジャベリン小隊がショットランサーを次々と発射し、艦隊の甲板上に展開していたスペースゴジュラス部隊の放った長射距離キャノン砲の弾雨を浴びせかけて止めを刺す。

 旧式のザクⅡF2型やリック・ドムⅡ、ドラッツェにガルスJやガザE、ガ・ゾウム、ズサの入り混じるデラーズ・フリートの部隊は、つい先程まで守っていた廃棄コロニー後部の推進器の破壊に動き、それを阻む偽ミケーネ神やゼカリアなどと命を捨てた戦いを繰り広げている。

 

 その中には真紅に染められたRFゲルググを駆り、一騎当千の働きを見せるジョニー・ライデンの姿もある。

 ジオン共和国から派遣された地球人類トップクラスのエース達からなる新生キマイラ隊は、立ちはだかる敵機を次々とスクラップに変える縦横無尽の活躍ぶりだ。

 

 旧ジオン公国が行った地球人類史上最大の虐殺行為、この世界では防がれたソレが再演されようとしている事実は、公国関係者であった彼らにとっては一種の悪夢に等しい。

 故に奮起するのは当然だったし、付け加えて言うならばなにかと各サイドのコロニーにちょっかいを出してくるバサ帝国は、昨今の彼らにとって煩わしく忌まわしい敵でもあったので、戦意の向上はなおのことであった。

 

 リファインされたドムを駆り、パターンを増やしたジェットストリームアタックで次々と大物を撃破して行く黒い三連星、部隊全体の動きを把握して的確にフォローを行って被害を最小限に、敵への打撃は最大にしてゆくランバ・ラルとヴィッシュ。

 旧キマイラのメンバーとシン・マツナガが敵陣を貫く槍の矛先となって会敵する先から撃破し、それを免れた者達に後続のモニク達のRFヅダ、RFビグ・ラング、それにバーニィのRFザクやクリスのゲクトが隙のない布陣で落穂拾いをしてゆく。

 

 ジョニーはユーマのRFゲルググとペアを組んで、撃墜スコアをすさまじい勢いで増やしていたが、敵の中にエゼキエルや偽ミケーネ神、キュルタクスやギャンドーラ、コールガッチといったエスパーロボなどの高性能機や大型機の比重が増してくると、流石に進撃の勢いも衰えてくる。

 四方八方から地球のエース部隊が攻撃を仕掛けて確実に数を減らしているのだが、それでもなお敵陣の守りが厚く、推進器ないしはコロニーを守るフーレ級に辿り着けずにいる。

 ソーラーシステムⅡのミラーが破壊される速度は落ちてきたが、フーレ級が健在である限り、再度照射しても効果は得られまい。最終防衛線まで、廃棄コロニーはじわじわと近づいてきている。

 

「ジョニィイーーー!!」

 

 そんな緊迫した戦場にはそぐわない女の子の声が、ジョニーのRFゲルググの通信機越しに盛大に聞こえてきた。思わずジョニーが音量設定を間違えたか、と思う程の大声はDC艦隊所属のとある機動兵器から繋げられていた。

 ヤザン達の乗るハンブラビにブランのガンダムMk-Ⅴを引き連れて、戦場を横断してやってきたのはイングリッドの駆るガンダムF89。サナリィが次世代の小型MSを開発する以前、現状のMSの技術を結集して完成させた機体である。

 

 F89は、基本性能においてF90以上、F91未満のものでロールアウトした機体の一つをヘパイストスラボが取引によって入手して、イングリッド用に独自に改造を施したものだ。

 サイコミュの搭載と疑似太陽炉の追加、ミッションパックの作成が行われて、真紅に染められたF89には、長方形のブースターとGNキャノン、GNミサイル、シザービットを内蔵したハルートパックが装備されている。

 これ以外にも大多数との戦闘を想定したサバーニャパック、大火力による艦艇級への攻撃を想定したラファエルパック、格闘専用のクアンタパックが用意されている。

 

「その声、イングリッドか!?」

 

 ジョニーはイングリッドがDCに出向しているのは知っていたが、よもや再会がこの戦場とは思わなかったジョニーは、イングリッドがガンダムタイプに乗っているのも合わせて大いに驚いた。

 それはイングリッドと同年代で旧キマイラ時代にはしょっちゅう喧嘩をしていたユーマも、イングリッドには驚いていた。

 

「なんだよ、イングリッド、お前、ガンダムになんて乗って!」

 

「あらユーマ君も居るのね。ちぇ、あたしもジョニーから離れたくなかったわ」

 

「ん? というかお前、ぶははははは! なんだ、小さいままじゃないか!」

 

 ユーマはモニターに映る十代の少女姿のままのイングリッドに容赦のない笑い声を浴びせ、背後から襲い掛かってきたメギロートにメガビームライフルを二発当てて撃墜する。

 

「うるさいわね。コールドスリープしていたんだから仕方ないでしょ! ユーマ君こそ見た目だけは大人になったけど、まだ子供趣味なんでしょ?」

 

 ヘビーガンダムから引き継いだフレームランチャーが火を噴いて、ユーマのRFゲルググに迫っていたスペースロボのミサイル群を撃ち落とし、更にコンテナから射出されたシザービットがスペースロボ五号の顔や四肢を切り裂く。

 そこにハンブラビのフェダーインライフルの連射とガンダムMk-Ⅴのマイクロミサイルにビームが加わって、スペースロボ五号とそれに続く戦闘ロボ・ダリを貫く。

 

「姫、古巣の知り合いとの再会を喜ぶのは結構! しかし、油断されては困りますな」

 

 ヤザンのからかい混じりの言葉に、イングリッドは操縦の手を休めずに口を尖らせて不満をあらわにする。代わりにジョニーが笑みを浮かべてヤザンに通信を繋いだ。

 

「ヤザンか。それにブランもいるじゃないか。連邦側の懐かしい顔が見られたな。まさかとは思うが、総帥や所長も来ていたりするのか?」

 

 古なじみとの再会からの直後、ジョニー、ヤザン、ブランはプロメテウス時代のコンビネーションを即座に取り戻し、機体性能も特性もチグハグの三機は見る間に周囲の敵機に手傷を与え、撃墜してみせる。

 ジョニーに答えたのはインコムを巧みに操り、敵機群の隙を突くブランだ。

 

「二人とも今は地球だ。コロニーが落ちればどうなるか分かったものではないがな!」

 

「そうかい。まあ、コロニーを落とすつもりなんざ欠片もないが。しかし、アムロもシャアもユウもライラも、それにゼファーも来ているんだろ? プロメテウスの連中が勢ぞろいしていてコロニーの一つも止められなきゃ、格好がつかねえな!」

 

「シュメシとヘマーもこの戦場に居ることだしな」

 

「あのおチビちゃん達か。連絡は受けていたけれどよ、まったく因果なもんだぜ」

 

 

 ウイングを展開したビルトファルケンが光の軌跡を描きながら宇宙を駆け抜け、狙い定めたオクスタンライフルBモードを連射する。

 超高速で射出された弾丸はティアマート数機に命中し、装甲を貫いて機体内部の構造を破壊し、ティアマートの動きが鈍る。そこへ阿吽の呼吸でアラドのビルトビルガーが突っ込んでゆく。

 

「いくぜ、ビルトマジンガーブレード!」

 

 左腕にマウントしてある超合金ニューZの刃が引き抜かれ、動きの止まっているティアマートの胴を薙ぎ、首を断ち、縦に斬り捨てて行く。迎撃の弾幕が張られず、回避行動をとられていない事もあり、アラドは思うままにティアマートを斬って捨てられた。

 

「おっしゃ、次だ次! 当たって砕けてゆくぜ!」

 

「アラド、ジャケットアーマーと超合金ニューZがあるからって、当たっていいわけないんだから、気を付けなさいよ!」

 

 アラドの失言を心配しつつ、ゼオラは突撃してきたスペースロボ二号にタイミングを合わせ、繊細な操縦で相対速度を合わせて間合いを調節し、左腕を突きつける。

 するとビルトファルケン内部の放電装置が起動して本家には劣るが二百五十万ボルトの稲妻が放たれる!

 

「サンダーブレーク!」

 

 高機動型グレートマジンガーと呼べばいいのか、MS型グレートマジンガーと呼べばいいのか、そんな代物になったビルトファルケンから放たれた稲妻は蜘蛛の巣のように広がって、スペースロボ二号だけでなくそれに続いていたズバンザーをも巻き込んで破壊した。

 

「バルゴラもいい機体だったけれど、ファルケンはまさにスーパーロボットね……。凄い機体を任されたものだわ」

 

 外見は新型のMSと言われれば納得のゆくビルトファルケンだが、その操縦桿を預けられたゼオラの感想がまさにこれだった。

 持てるスペックを全開にすれば艦隊さえ撃滅できる超戦力。

 単体で戦場の勝敗を左右しうる規格外兵器。

 なんの冗談かその大半は民間人がパイロットを務めているというなんとも奇妙な代物。

 そんな全く新しいロボットのパイロットに、ゼオラはなったのだ。

 

「だからってやるのがアラドのフォローなのは変わらないのよね!」

 

 アラドは調子に乗って突っ込み、メギロートに樹液に群がる甲虫のようにまとわりつかれていた。ラトゥーニのバルゴラGSから正確無比なストレイターレットの援護射撃が放たれているお陰で被弾はないが、ビルガーの装甲と速度に甘んじた結果だろう。

 まったく、とゼオラは文句を言いながらファルケンを向かわせたが、言葉に反して感情はそう悪いものではなかった。私が居なければアラドは駄目ね、という感情は……はてさて。

 

「姉様、アラドとゼオラのフォローは済みました。私達はハガネのフォローか、それともフラワーへの道を開きますか?」

 

 新生したバルゴラGSの莫大なパワーと変わらぬ操縦性に感激しながら、ラトゥーニは長姉へ問いかけた。オウカはラピエサージュ・シンデレラの性能を引き出して、無数の敵機を鉄くずに変えている。

 

「私達はこのままフラワーへの道を開きます。カジマ中佐からもハガネのフォローはマーフィー小隊とイズミール、シロガネに任せ、フェブルウス、G3スペイザーと共に敵機の壁を突破します。

 コロニーの推進器破壊はデラーズ・フリート側に向かったアルビオン隊に委ねます。アラド、ゼオラ、ラト、私とラピエサージュ・シンデレラに続きなさい! お母様とお父様、そして私達の家族の居る星にあんなものを落とさせはしません!」

 

 オウカの言葉にスクール出身の三名は士気高く応え、ラピエサージュ・シンデレラは大型ウイングを展開し、四機の中でも図抜けた速度でフラワー級ことフーレを目指して飛翔する。

 当然、それを阻むべくデイモーンとメギロートの混在する群れが雲霞の如く襲い掛かるが、オウカの対応は迅速かつ苛烈だった。

 

「ゲッターマント!」

 

 音声認証システムにより、ラピエサージュ・シンデレラの大型ウイングが見る間にブレード状の形を変化させて、黒いマントへと変わって機体を包み込む。

 そのままオウカはオーバーオクスタンランチャーのEモードを発射し、マントと装甲に反射した光子力エネルギーは無数の光線に分裂してマントから放たれ、道を阻むデイモーン達を次々と貫く。

 後にこの光景を見たヘイデスは、ブラックゲッターのスパイラルゲッタービームか!? と驚いたという。この場合は、スパイラル光子力ビームになるだろうか?

 

「鋼の花弁となって散りなさい!」

 

 ゲッターマントを開き、そのまま巨大な蝙蝠の翼の如き形状へと変化させると、すれ違う敵機を次々と切り裂きながら、ラピエサージュ・シンデレラは一切速度を緩めずに敵陣を貫いて行く。

 オーバーオクスタンランチャーからは圧倒的な光子力ビームの奔流が放たれ、光子力の洗礼を免れた敵機にはビッグブラスト・ディバイダーと五連チェーンガンが叩き込まれ、オウカに続くアラド達はすることのない鬼神の働きだ。

 しかし、オウカが桜の下で踊る鬼神であるならば、彼女よりも先を行って敵機を蹴散らす二人はなんなのか?

 

 白い流星に赤い彗星。一年戦争の後、最強のMSパイロットは誰かと話題になった時、真っ先に名前の挙がる異名だ。

 ことに一年戦争の後に勃発した本大戦におけるアムロ・レイとクワトロ・バジーナことシャア・アズナブルことキャスバル・レム・ダイクンの活躍が、彼ら二人のパイロットとしての地位を確固たるものとする。

 その活躍の一つが、今、この戦場で行われていた。

 

 マシンガンの如く降り注ぐピンク色のメガ粒子の塊がゼカリアを穴だらけにし、その爆発に巻き込まれまいと横に避けたアンゲロイに、フィン・ファンネルから放たれたメガ粒子の槍が二つ、三つと突き刺さる。

 ならばと直上から砲撃を加えようとしたハバククの小隊が砲身にエネルギーが充填し始めた時には、既にハイパーバズーカとシールドに搭載されたビームキャノンを撃ち込まれ、なにをするまもなく爆散していた。

 

 その一方、筒状の比較的小型なファンネルはたった六基でありながら、張り巡らせるメガ粒子の雨がそれ以上の侵入を敵機に許さず、迂闊に接近する者達は装甲の薄い箇所やバーニアを人外の精度で狙い打たれ、糸の切れた人形のように制御を失ってゆく。

 そうした隙だらけの姿になったエゼキエルやアンゲロイ、エスパーロボへビーム・ショット・ライフルが撃ち込まれて、次々と爆発の中に飲み込んでゆく。

 制御を失い、不規則な動きを取る敵機がまるで吸い寄せられるようにビームに当たってゆくのは、なにかの手品か夢のようでさえあった。

 

 これらを成したのは、原作よりも出力が数千kw単位向上し、装甲はウイングガンダムなどと同じガンダニュウム合金、フル・サイコフレーム仕様でロールアウトしたνガンダムとサザビー、そしてパイロットであるアムロとクワトロだ。

 以前から彼らの実力を知る者達であっても、この戦場で見せる彼らの操縦には目を見張るだろう。それは彼ら自身にとっても同じだった。

 

「俺は今、操縦したか? 機体と俺の間にラグがないような、俺の意識が広がる感覚。これがサイコフレームか」

 

 アムロは機体が動く度に操縦してから動いたのではなく、動きをイメージした瞬間に反応しているのに驚いていた。

 どんな機体であっても存在するタイムラグをまるで感じない。機体の反応速度が速いという次元ではない。これではまるで機体が本当にアムロの肉体の延長線上になったかのようではないか。

 

 人間の肉体はバーニアを噴射して動き回るようには出来ていないし、フィン・ファンネルのような遠隔操作する部位を持たない。

 それでも今のアムロには、νガンダムのあらゆる機能が生まれつき持った自分の肉体であるかのように自然と扱えていた。自分と機体の境が曖昧になる錯覚を覚える程、ある意味では危険な一体感がアムロを包んでいる。

 

「フル・サイコフレームか。サイコミュの行き着く果てを俺に見せる存在なのかもしれない」

 

 ともすれば自分が自分でなくなる――人間ではなくなるかのような感覚に、アムロは一抹の不安と恐怖を感じていた。まあ、その間もνガンダムは慣れ切った作業のように初見の敵機さえもサクサクと片付けていたのだが。

 フル・サイコフレームへの感嘆と畏怖の混じる感想を抱いたのは、クワトロもまた同じであった。廃棄コロニーを守るフーレに接近すればするほど、接近を阻む弾雨は密度を増して、避ける隙間もないように見える。

 

 クワトロとサザビーはその避けられない筈の弾雨をするりするりとすり抜けて、充填を終えたファンネルが再び放出されて、本体と合わせて展開されるメガ粒子の返礼は一発の外れもなくバサ帝国側の戦力を削り続ける。

 対空砲火をすり抜けて、アドラティオの甲板にサザビーを荒々しく着地させると同時、腹部のハイメガキャノンが火を噴いて、400m超の艦体に大穴が開いた。

 ハイメガキャノン発射後、すぐさまアドラティオから離れ、背後で大爆発を起こす敵艦を置き去りにして、クワトロはぐんぐんとフーレとの距離を詰め、後に続く者の為の道を開く。

 

「これはまるで未来さえわかるような……。サザビーは私に(とき)さえ見せようというのか?」

 

 誰に言うでもなく呟くクワトロの声は、アムロと同種の畏怖を含んでいた。それでも二人は地球圏最強パイロットに相応しい活躍によって、比喩ではなく一騎当千の働きをもって敵機をなで斬りにしてゆき、コブラードで指揮を執るゲロイヤーに脂汗をかかせていた。

 

「お、おのれ、ダイモスをはじめスーパーロボットどもこそ最大の障害と見ていたが、よもやMSなどにここまで戦力を削られるとは!?」

 

 また一機の戦闘ロボが破壊され、また一隻のアドラティオやガルンロールが轟沈する。

 平均的な兵器の質では上回るバサ帝国側も、突出した個という点で見ればDC側に大きく軍配が上がる。この戦場の趨勢を左右するのに、彼らは十分すぎる戦力を備えているのだから。

 オウカら四名とアムロ、クワトロによって力づくで開かれたフーレ級までの道を突き進むフェブルウスも突出した戦力の一つであった。

 SPIGOTを展開し、マグナモードを常時展開しながら、フェブルウスと双子らは父母と弟妹の住む地球を何としてでも守るべく、気力の限界さえ突破して、進撃を阻む全ての敵を蹴散らしてフーレを目指す。

 ガルンロールの残骸の一つにフェブルウスが着地し、機体を固定させて右手のガナリー・カーバーに集中するエネルギーが一桁跳ね上がる。アムロらの獅子奮迅の活躍によりできた絶好の狙撃ポイントを、双子達は見逃さなかった。

 

「ガナリー・カーバー展開! 出力最大!!」

 

 ヘマーが出力制御をフォローし、フェブルウスも自身の体の限界まで力を絞り出す。そうして集められたエネルギーがガナリー・カーバーの内部を満たし、完全覚醒したスフィアと同等以上の数値に達する。

 トリガーを預かるシュメシは、今も廃棄コロニーを守りながら地球に突き進むフーレ級数隻をターゲット内に捉える。

 “悲しみの乙女”のスフィアに適合したあの世界の彼女を脳裏に思い描きながら、シュメシは大切な家族を守る為にトリガーを引ききった。

 

「ターゲットインサイト、ザ・グローリースター、フルバースト!!」

 

 すわ新型の砲艦か大型兵器かと勘違いするような膨大なエネルギーの奔流がフーレを目掛けて突き進み、進路上に存在したあらゆる兵器や物質を粉砕して行く。

 光の速度で進む膨大なエネルギー流はフーレの巨体を貫くのは間違いないと誰もが思う刹那、アムロとクワトロを皮切りにゼファー、カミーユ、ジュドー、そして他ならぬ双子とフェブルウスがとてつもない“圧”を感じた。息苦しさを覚え、血の流れが淀むような、そんな“圧”だ。

 

 フーレに直撃するコースを突き進んでいたエネルギーの奔流に、突如として翼を広げた漆黒の機体が割り込み、強大な重力操作と空間干渉によってザ・グローリースターが受け止められ、その後方へと拡散されてしまう。

 フーレ級には直撃せず、代わりに廃棄コロニーや周囲の敵機に命中していくばくかの被害を出したが、本命には遠く及ばない戦果だ。

 

「ふっ、サードステージのスフィアリアクター以上の力とは……。流石は己自身ということか、至高神ソルよ」

 

 広げた漆黒の翼から翡翠色の光を発しながら、スパロボオリジナル機体の中でも最強格の一機、アストラナガンがそこに居た。コックピットには仮面を被る男の姿がある。

 更にアストラナガンだけではなく、アンゲロイシリーズのオリジナルであり、三十倍の戦闘能力を持つアンゲロイ・アルカを伴っている。

 おそらくこれまでのアンゲロイとのあまりの違いに、多くのプレイヤーを驚愕させただろう機体の出現は、ひそかにヘイデスが恐れていたものの一つだ。硬いんだよ、あいつら!

 

「こ、これはプリスケン宰相閣下。このような戦場にお出でになられるとは」

 

 アストラナガンの出現に驚愕したのは、ゲロイヤーも同じであった。ラオデキヤ皇帝の腹心中の腹心にして帝国ナンバー2の宰相が、自ら機動兵器に乗って戦場に姿を見せたのだから。

 

「こちらに構わなくともよい。私なりの思惑があってのことだ。アレの相手は私がする。お前はコロニーを落とす事だけに集中しろ」

 

「は、ははあ!」

 

 かつて宇宙を漂流していた小バームを襲い、出撃した防衛部隊を見る間に蹂躙していった漆黒の天使の姿は、ゲロイヤーばかりでなくリヒテルやエリカ、オルバンの脳裏に鮮明に刻まれている。

 ゲロイヤーは自分達を敗北させた怨敵を前に、心底からの恐怖と共にモニターの向こう側で頭を垂れた。屈辱と恐怖を噛み締め、何時かは下克上してくれると憎悪を燃やしながら。

 

「地球人類の諸君、お初にお目にかかる。私はバルマー・サイデリアル連合帝国宰相イングラム・プリスケンである」

 

 強制的に通信を繋ぎ、地球連邦側に声と四つ目の仮面を被った男の画像が表示される。イングラムと名乗った仮面の男は、言葉を信じるならば帝国のナンバー2と言える。

 思わぬ大物の出現に、ティアンムばかりでなく多くの人々に衝撃が広がる中、けたたましい音が彼らの耳を打った。それはロックオンアラート!

 

「挨拶は済んだ。では、さようならだ」

 

 アストラナガンの翼から溢れる光が輝きを増す。いわゆるMAP兵器だが、それがロックオンしたのがこの場に居る地球連邦艦隊全艦艇、全機動兵器となれば圧倒的に隔絶した精度、射程、出力の全てを兼ね備えている証左だ。

 だがイングラムとてこれが通るとは思っていない。誘いだ。これを見過ごせば味方が全滅するぞ、と。これにむろん双子とフェブルウスは応じた。

 

「殺ったぞ!」

 

 しかし、フェブルウスよりも早くキョウスケの駆るアルトアイゼンが、最大速度でステークを叩き込んでくる方が早かったのは、イングラムにしてもささやかな驚きではあった。

 

「ほう。迅速な判断力だ。胆力もある」

 

 そうして突き出されたアルトアイゼンのリボルビングステークZは、易々とアストラナガンの左手によって掴みとめられ、勢いをつけてぶん投げられる。

 凄まじいGの中でキョウスケはアルトアイゼンを制御し、二百メートルの距離が開いた時点で立て直し、両肩のカバーを開く。

 

「これでどうだ、クレイモア!」

 

 タングステン製の特注ベアリング弾がアストラナガンに殺到し、これに漆黒の天使は重力の散弾アトラクター・シャワーによって、ベアリング弾全てを迎撃する。

 イングラムの狙いはそれだけではなかった。アルトアイゼンの突撃をフォローしようと、エクセレンの撃ったオクスタンランチャーEモードの連射もまた、重力の散弾に飲まれて無効化したのだ。

 

「わお、これはちょっとシリアスにならないといけないお相手かしらぁ?」

 

「光子力を採用した機体か。マジンガーの系譜、面白い。だが、本命はお前達ではない」

 

 アストラナガンがZ・Oソードを抜き放った瞬間、光のような速さでライアット・ジャレンチとジャック・カーバーを展開したフェブルウスが襲い掛かっていた。

 元至高神ソルとイングラム・プリスケンの作り出した究極の機動兵器は、真っ向から激突する。

 

「邪魔をするな、コロニーが落ちちゃうだろう!」

 

 普段のポワポワとした雰囲気からは信じられない怒気を滾らせて、シュメシは叫ぶ。

 

「コロニーが落ちるか落ちないかはお前達次第だ。私としてはどちらでも構わんがな」

 

 Z・Oソードが思い切り押し込まれ、フェブルウスがわずかに後退した瞬間に、アストラナガンは光の羽を撒き散らしながらその場から離脱し、背中からガン・ファミリアを射出。

 翼の生えた拳銃のような小型端末がフェブルウスへ、獰猛に襲い掛かる。すぐに体勢を取り戻したフェブルウスは、SPIGOTでガン・ファミリアを相手取りながらアストラナガンを追う。

 

「お前は、憶えているぞ。こっちに来る前に私達を襲ったナニカと同じ気配がする!」

 

 ヘマーの操作によって振り上げられたライアット・ジャレンチをアストラナガンはZ・Oソードで受け流し、その次に首を斬りに来たジャック・カーバーの刃の根元を左手で受ける。

 

「面白い。お前達はソルの生み出した生体端末か? 機動兵器として再構築した自分を効率よく動かす為のツールが役割か? だが、それでもこのイングラムとアストラナガンには及ばん」

 

 鍔迫り合いの状態に陥ったフェブルウスの背に、先に射出されていたT-LINKフェザーが次々と突き刺さり、小爆発を連鎖して起こす。フェブルウスの装甲はその程度では抉られなかったが、機体に走る衝撃は小さくない。

 

「きゃあ!?」

 

「くうう」

 

「本来の力を失ったお前達ではこの程度か」

 

 揺らぐフェブルウスの腹部にアストラナガンの蹴りが叩き込まれ、その勢いのままにフェブルウスは高速で吹っ飛んでゆき、いくつもの残骸とデブリに衝突してからようやく姿勢を取り直してアストラナガンを睨むように正面に据える。

 

「お前は何を狙っている? 何が望みだ!」

 

 吠えるシュメシにイングラムは冷笑を返した。

 

「敵に問いかけて素直に答えが返ってくるとでも?」

 

「私達だった至高神ソルを狙っていたのは分かっている。理由は分からない。分からないのは、もう一つ」

 

「ほう。至高神ソルでも分からぬことがあるか?」

 

「お前は本当のイングラム・プリスケンじゃない。その黒い機体も本当のアストラナガンじゃない! 名前と機体まで偽って、何がしたいの?」

 

 ヘマーの言葉にイングラムが仮面の奥で浮かべていた冷笑を消した。

 

(いささか過小評価しすぎたか。至高神ソルの残骸、成れの果てとはいえ侮れぬところはある。私が『イングラムではない事』を初見で看破するとはな。だがそこまでだ。

 私がイングラムを名乗り、アストラナガンに乗っている限り、この世界にイングラムはやって来られん。

 そして奴の後継である新たな並行世界の番人も、悪魔王の名を冠する銃神もな。奴らがこの時空に来る為には、私の真の名を看破し、イングラムでないという事実を顕在化させなければならないのだから)

 

 このイングラムを名乗る仮面の男の真の名前は、この世界においてラオデキヤすら知らない。彼の真の名前を知るとしたなら、それこそこの実験室のフラスコの外から来訪し、超メタ視点を有する何者かでなければ不可能だろう。

 

 

 

 

 

 

「そろそろ私達の出番ですの。用意はよろしくって? コッスィー、テッシー、ジンお兄様」

 

「コンディションオールグリーン。戦闘行動に支障ありません」

 

「……? ! ちょっと待て、テッシーとは私の事か!?」

 

「まあまあ、アルフィミィなりの親愛の示し方ですから」

 

<続>

 

■イングラムは偽物です!

■アストラナガンは偽物です!

 

今回の屁理屈について

 

●イングラム・プリスケン(偽)とアストラナガン(偽)が存在している限り、この時空にイングラムとクォヴレー、アストラナガンとディス・アストラナガンは来訪できない。

 

●イングラムないしはクォヴレーの来訪には、偽イングラムの本当の名前を看破してその存在を顕在化・固定化させなければならない。

 

●それが出来るのはフラスコの外、超メタ視点を有する者でなければ難しい。イングラムではないと否定できても、真名を看破する事が難しいから。

 

ヘイデス「ヘックシ!」

 

 

★以下の中に本当とウソが混じっているよ!

・フェアリオンはラトゥーニとミネバが運用する。

・ガンダムXは中の人繋がりでパイロットはアルベルト・ビスト。サブにバナージ七歳、ミネバ七歳。

・ゼファー、ALICE、Reonは三姉妹である。

・ゼファー、ALICE、Reonは三兄弟である。

・ゼファー、ALICE、Reonは全て無性ないしは中性である。




アストラナガンが並行世界に一機しか存在しないというのはデマなんですってね。

追記
六つ目 → 四つ目 に修正しました。



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第四十六話 これもソーラーシステムのちょっとした応用だ

「くそ、こいつら速さも硬さもこれまでの敵とは段違いだぞ!!」

 

 ジェリドは同僚のカクリコン、マウアーと共にガブスレイ三機編成の小隊を組み、ティターンズ艦隊のエースとして必死に戦っていた。

 彼ら以外にもバスク派から抽出されたサラミス改やマゼラン改、アレキサンドリア級で構成される艦隊とバーザム、ハイザック・カスタム、マラサイ、バイアランで構成されるMS部隊が応戦しているが、新たに出現したアンゲロイ・アルカの一線を画す性能に押されに押されている。

 

「ジェリド、マウアー、ガブスレイのライフルでもろくに効いちゃいないぞ!?」

 

 ヘルメットの中で冷や汗を垂らすカクリコンは、確かに命中弾が出ているのに怯む様子もなく斬りかかってくるアンゲロイ・アルカに恐怖と驚愕の混じった叫びをあげていた。

 スパロボZシリーズのラスボス勢力“御使い”の運用するアンゲロイ・アルカは、量産兵器でありながら作品の世界観の関係上、その戦闘能力は“真化”と呼ばれる高次存在へのステップアップを経ていなければ大きな脅威である。

 

 イングラムを名乗る偽物が引き連れてきたアンゲロイ・アルカは、それまでゲロイヤー率いる援軍をじりじりと削っていた連邦軍に大打撃を与えている。

 ヘイデスの根回しにより、連邦軍全軍規模で用意された対侵略者用の大口径・高火力武器ですら、アンゲロイ・アルカの数値で言えば三千二百に達する装甲値(同作品のマジンガーZの初期装甲値は二千二百)の前に、カクリコンの言う通りろくにダメージを与えられていない。

 

「戦艦の主砲を当てるしかないわ。ジャマイカン少佐に進言して、艦隊と連携を取りましょう!」

 

 現実的な対策を口にしたのはマウアーだ。敵機を近づかせない為に必死にガブスレイのフェダーイン・ライフルやメガ粒子砲を乱射しながら、自分と仲間達が生き残る為の方策を懸命に探している。

 最大の懸念はジャマイカンが自分の命惜しさに乗艦以外の艦艇とMSを盾にして、後方に下がろうとする事だが、背後には地球の重力圏がある状況では大して距離を稼げない。

 必死になって敵を倒す事が唯一の希望だと否応なく気付くだろう。

 

 地球人類にとっては悪報でしかないが、アンゲロイ・アルカによって苦境に追い込まれていたのはティターンズの派遣艦隊ばかりでなくティアンム艦隊全てに言える事だった。

 配備されているMSの性能やパイロットや艦隊全体の練度で言えばティターンズ派遣艦隊を上回っていたが、それはアンゲロイ・アルカの前では大きな違いとは成り得なかった。

 

 その中でベクトラはDD機関の生み出す膨大なエネルギーを利用した大出力砲撃と破格の性能を活かして、アンゲロイ・アルカを前にまだ戦えていた。

 艦載機もゼータライダーズがその機動性と運動性を活かしてアンゲロイ・アルカを引っ掻き回し、ベクトラと砲撃型MSやスペースゴジュラスを筆頭とする火力至上主義の権化に止めを委ねて何とか抗っている。

 

「なんなんだ、こいつは! さっきまでいた機体と色違いにしか見えないのに、性能が完全に別物だ」

 

 Zの系譜に連なるΖ>を駆るタクナもアンゲロイ・アルカによって、これまでにない窮地に追い込まれている者の一人だった。

 WR形態からMS形態への変形による機動の急激な変化でアンゲロイ・アルカの追撃を避け、その背後を取った直後にビームを浴びせかけるが、アンゲロイ・アルカは命中弾にも多少よろめくだけでダメージを負った様子はない。

 

 装甲だけでなく運動性も圧倒的なアンゲロイ・アルカはほとんどその場で背後を振り返り、タクナのΖ>へ向けて、背中から棘を伸ばしてエネルギーを開放し、更に右腕の装甲を変形させて作った砲口を向けてくる。

 心臓を鷲掴みにされるような恐怖にタクナの精神は震えたが、苛烈な訓練を血肉に変えた彼の体は操縦の手を止めず、放たれたカリス・シュートをなんとか避ける。

 

 あの赤黒いエネルギーの砲撃が、ビームシールドで受けたジャベリンの左半身を吹き飛ばしたのをタクナは目撃していた。

 Ζ>は他のZ系列機に比べて耐熱装甲が高く、大気圏内なら従来のMSのビーム兵器をほとんど受け付けないほどだが、この相手にはその事実がなんの慰めにもならない。

 タクナは直接神経に触れられているような不快感に苛まれながら、赤黒いエネルギーの回避に成功する。Ζ>の装甲がカリス・シュートに照らされて、赤黒く染まるような近距離での回避であった。

 

「タクナ!」

 

「すみません、援護頼みます!」

 

 タクナの窮地にZプラスを駆る仲間達が駆け付けて、居並ぶZプラス四機によるスマートガンの連射がアンゲロイ・アルカに降り注ぐ。

 立て続けにスマートガンの大口径ビームを浴びたアンゲロイ・アルカが死に体になった隙に、全高三十メートルオーバーのZZ系列機ジークフリートが牙を剥いた。ベクトラMS部隊の切り札である。

 

「こいつで終わりだあ!」

 

 非NTパイロットでも扱えるように仕様変更されてはいても、その怪物的出力に変わりはない。

 ダブルビームライフルがアンゲロイ・アルカの頭部と腹部を立て続けに撃ち、止めとばかりに頭部のハイメガキャノンが放たれて、アンゲロイ・アルカは上半身を喪失して機能を停止する。

 ここまでしてようやく一機撃墜だ。

 

 DC艦隊においても苦戦は変わらず、地上部隊にそのほとんどを振り分けたスーパーロボット部隊がもっとこちらに居ればどれだけの助けとなった事かと、メンバーの誰もが考えていただろう。

 最新鋭機、試作機、実験機と分類を問わずに性能を第一にした機動兵器を揃えたDC艦隊でも、アンゲロイ・アルカを相手に優位に戦える機体は少ない。

 その内の機体とパイロット達は、イングラムの駆るアストラナガンと次元違いの戦闘を繰り広げていた。

 イングラムという名前も機体も偽りだとしても、バサ帝国の重鎮であるのには間違いない。ここで討てれば、おそらく最大最強規模の敵勢力に大打撃を与えられるのだから、見逃す手はなかった。

 

「傷だらけの獅子、悲しみの乙女、揺れる天秤よ!」

 

 シュメシとヘマーが声を揃えてかつて自分達から分散された心の欠片の名を叫び、フェブルウスとの同調により出力を高め、スフィアアクトを発動させる。

 その猛攻を受けるアストラナガンはZ・Oソード、ガン・ファミリア、T-LINKフェザー、アトラクターシャワーを駆使して、怒涛の攻撃を余裕の態度で受け流している。

 

「至高神ソルとしての記憶をいくばくか取り戻しているようだな。なればこその擬似的なスフィアの発動か。ふふ、もっとだ。もっと次元力の真髄を私に示すがいい」

 

 アストラナガンのコックピットに表示される各種データを見ながら、イングラムは着々と目的の一つを叶えられる状況に満足げだ。次元力を理解する事は、彼にとって大願成就の為に欠かせない要素なのだから。

 そんなイングラムの愉悦を崩さんと、コの字型と円筒型の物体がT-LINKフェザーによる攻防一体の刺突防衛網をするりと潜り抜けて、メガ粒子砲の洗礼を無数に浴びせかける。

 本当に光と化さなければ避けられないような必中の連携攻撃が、アストラナガンの強固な念動フィールドに立て続けに命中し、その守りを大きく揺るがせる。

 

「シュメシ、ヘマー、熱くなりすぎるな!」

 

「帝国の宰相が自ら前線に出るとはな。それだけの自信があるということか」

 

 翡翠を砕いたような光の粒子を纏い始めたνガンダムとサザビーによる援護だ。アムロとシャアは、眼前の黒き異形の人型から発せられるプレッシャーに戦慄さえしていたが、それでも戦意は衰えていなかった。

 そして揺らぐ念動フィールドに目掛けて、ゼファートールギスがスーパーバーニアを全開にし、超電磁ドリルランスを構えて突撃を敢行していた。

 本家コンバトラーVの超電磁スピンを彷彿とさせる一撃は、エネルギーの飛沫を散らしてじりじりと念動フィールドを削ってゆく。

 

「しかし、真化の(きざはし)に足を掛けた存在が他に三つもあるとはな。アムロ・レイ、シャア・アズナブル、お前達は存在する世界において大きな役割を担う傾向にあるが、ソレとは初遭遇だ。興味深い。ソルめ、同類とみて気を掛けているのか?」

 

 イングラムはアムロとシャアもといクワトロがプロメテウス時代の経験とフル・サイコフレーム、そして双子とフェブルウスの影響を受けてZの終局――真化の段階へ着実に歩みを進めているのを看破していた。

 それでもこの二人ならば十分にあり得る事だと、イングラムは納得して驚いてはいなかった。マジンガーZ、ゲッターロボと並びガンダムは数多くの世界で中核を担う存在だ。そしてアムロとシャアは高い確率でガンダムと共に存在し、大きな影響力を有する。

 

 その二人が至高神ソルの成れの果てと行動を共にしているのならば、真化に至るのはむしろ道理だろう。あるいは『新たな御使い』になったとしても、不思議ではない。

 だがゼファーは違う。一年戦争時代に開発され、運用された人工知能、無人機制御システムに過ぎないそれが、ワープ技術すら持たない地球人類の技術で作り出されたそれが、真化の兆しを見せるとは!

 

「ふふふ、やはり地球という星は多くの並行世界の中にあって、特異な存在であるようだ」

 

 イングラムがゼファートールギスに興味を乗せた視線を向ける中、アムロとクワトロは動いていた。アストラナガンを左右から挟み込み、サザビーの腹部ハイメガキャノンが、νガンダムが腰裏にマウントしてきたハイパー・メガ・ライフルを撃った!

 本来のサザビーにはないZZの火器とνガンダムのHWS(ヘビー・ウェポン・システム)から流用された装備の挟み撃ちは、ついに念動フィールドを破壊して、アストラナガンに回避を選択させる。

 

 アストラナガンの動きに即座にゼファートールギスが反応し、ハイメガキャノンとハイパー・メガ・ライフルを避けながら追いかける。

 黒い天使(アストラナガン)西風を降ろした降霊術師(ゼファートールギス)の激突は、戦闘の光芒煌めく宇宙の闇の中で光の螺旋を描いて行く。

 

 サイコミュの搭載により更なる変化と成長を見せるゼファーは、偽りのアストラナガンと偽りのイングラムを相手に超電磁ドリルランスと超電磁チェーンソーを振るい、一歩も退かぬ戦いぶりを見せる。

 フェブルウス、νガンダム、サザビー、ゼファートールギスの四機がかりでようやくアストラナガンの動きを拘束しているのが、現状であった。

 

 フェブルウスらと同様にアストラナガンと戦える力を持つスーパーロボット・グレンダイザーは、G3スペイザーとドッキングした状態でアンゲロイ・アルカを引き受けて、味方への被害を減らすべく必死に戦っている最中だ。

 グランド・スター小隊もまたスーパーロボットクラスの性能を誇る新型機と、抜群の連携を誇るコンビネーションでアンゲロイ・アルカを相手に互角以上に戦っている。

 

 戦場全体を見渡せば優勢に戦えているのはほんのごくわずかで、キョウスケとエクセレンもそのわずかな例外だ。双子達に加勢すべく機体を立て直した二人が動こうとした時、イングラムの呼び込んだ新たな脅威が、彼らを阻んでいた。

 赤い胴体と青い頭部に四肢もすべてがDEC(ディメンション・エナジー・クリスタル)で構成された、怪獣の如き百三十メートル超の文明破壊・生命体殲滅型重機動兵器エル・ミレニウム。

 

 Zシリーズのオリジナル敵勢力御使いの運用する兵器の一つであり、かつてヘイデスの危惧したゼル・ビレニウムほどではないにせよ、アンゲロイ・アルカをはるかに上回る戦闘能力を持ち、銀河において『審判の巨獣』と恐れられた災厄の化身だ。

 登場時にはプレイヤー部隊『Z-BLUE』を絶望の淵に叩き込んだ巨獣が、アルトアイゼンとヴァイスリッターの前に立ち塞がっている。

 

「ち、後出しの好きな連中だ」

 

「いい感じのアクセに加工できそうなゾイドもどきだけど、こっちもシリアス案件かしら、キョウスケ」

 

「……分の悪い賭けであるのは否定せん」

 

「ダーリンの嫌いじゃない奴? ならまだ勝ちの目はあるって事で。それに他の皆も余裕はないわ。私達でこの派手派手な怪獣をどうにかしないとマズイわね」

 

「速攻で片付けるぞ!」

 

「ラージャ!」

 

 アルトアイゼンとヴァイスリッターを最初の獲物と判断したエル・ミレニウムが、怪獣めいた頭部からブレスを足元の空間へと放射し、そのまま二機の方へと向けて薙ぎ払う。

 それ自体は余裕を持って回避したキョウスケとエクセレンだが、次の瞬間、ブレスを浴びた空間から次々と杭のように鋭い巨大な水晶が生えてくる光景には我が目を疑った。

 

「ちょっと、宇宙空間に水晶が生えてきちゃったわよ!?」

 

「物理法則を無視しているのか、それともそう見えるだけか。サマ師の類かもしれんが、これまでの相手とは毛色が違うと覚悟しなければならんか!」

 

 宇宙空間に生える水晶という異常な光景の動揺を抑え込み、アルトアイゼンとヴァイスリッターは光子力ビームとオクスタンランチャーで牽制しながら、この初見の強敵を打破すべく動く。

 

「あの巨体だ。懐に飛び込めばやりようはあるだろうが、あの水晶状の装甲、変形の一つくらいはしかねんな」

 

 アルトアイゼンから光子力ビームと三連マシンキャノンを浴びるエル・ミレニウムは、それらを意に介さずにアルトアイゼンを狙って宇宙空間を進んでゆく。

 時折コマ落としのように姿が消えて距離を詰めており、キョウスケらの常識から外れた相手だと更に強く認識させられる。

 

 エル・ミレニウムは黄色い爪を振り上げて、いかにも怪獣らしい動作で襲い掛かってくる。

同サイズのゾイドがいたならさぞや見ごたえのある怪獣決戦になったろうが、キョウスケは険しい表情のままアルトアイゼンを操り、周囲に放たれる水晶の吐息や五倍以上の巨体が繰り出す格闘攻撃を避ける。

 ヴァイスリッターも左腕の三連ビームキャノンとオクスタンランチャーの巧みなモードチェンジを駆使して、審判の巨獣に命中弾を重ねて行く。

 

「攻防共に圧倒的ね! それに移動方法も不可解だし、私達の知らないテクノロジーの機体か。次の時には所長さんにはぜひとも分析してもらって、一発逆転解決手段を開発しておいてほしいわね」

 

 ハイパーグレネードモードの光子力砲弾がエル・ミレニウムのブレス――“愚者の墓標”と激突し、相殺される光景を見て、エクセレンの顔からはいつもの微笑と余裕が消えた。

 

 

「フラワーはまだ撃沈できんか」

 

 メギロートやデイモーンの大群に群がられるハガネの艦橋で、レビルはアームレストを強く握り締めて焦燥を押し殺した。

 ルウム戦役とはだいぶ様相が異なるが、コロニーが落ちるかどうかの瀬戸際という意味では変わらない。あの時はイレギュラーによって、コロニーは破壊されたが、今回も都合よくいくことを期待などできない。

 

 なんとしてもコロニーを破壊する為にも、ソーラーシステムⅡを防いだフーレ級を破壊しなければならないのだが、新たに出現したアストラナガンと引き連れてきた援軍によってこちらの進撃が止められている。

 ハガネのFDSキャノンも対空砲火の展開に必死な状況では、満足にエネルギーの充填を進める事も出来ない。

 

(オーバーブーストで距離を詰めて、近距離から砲撃を叩き込むか? 進路を取るにしてもまだ敵の数が多い。ナンブ中尉達が相手取っている水晶の機体とイングラムと名乗った男の機体が、確実に邪魔をしてくるな)

 

 レビルは手持ちの戦力で取り得る手段を考え続け、どれも実行に移すには成功の目が小さすぎる事を認めざるを得なかった。コロニー後方の推進器破壊も新たな援軍に阻まれて、デラーズ・フリートとアルビオン隊の進撃が一進一退を繰り返している。

 

(やはり犠牲を覚悟して我々が突撃を敢行するのがもっとも被害を小さく、そしてコロニー落下を阻止する可能性が高い手段かっ)

 

「か、艦長!? 戦場全域にアンノウンが!!」

 

「なに!? センサーに反応は!」

 

「それが、反応はありません。これまで確認されたワープとは異なる出現パターンです!」

 

(ぬう、万事休す、か)

 

 レビルが苦汁を滲ませる中、ブリッジクルーが告げた通りに戦場全域に二十メートル級の骨や草の化け物、それから四十メートル近い鎧の化け物が出現したのだ。

 その中でも指揮官級と思しき四機の内の二機が三連バルカン砲とハンドガンを手に、バサ帝国へと襲い掛かった!

 その二機に続いて地球では見られないデザインラインのロボット然とした機体が、大小の日本刀を模した実体剣でアンゲロイ・アルカを相手に刃を交わし始める。

 

「なに、敵ではないのか?」

 

 事情を知らぬレビルが戸惑うのも無理はない。新たに出現したのはこの星のアインスト達であり、バルカン砲とハンドガンで武装した指揮官機ノイエ・ザッハリヒカイトは、異世界からの来訪者KOS-MOSとT-elosが操っている。

 日本刀持ちの機体は、こちらの世界でアインストによって蘇生されたジン・ウヅキの駆るアシェル刃である。

 

「目標バルマー・サイデリアル連合帝国所属機、アンゲロイ・アルカ。殲滅を開始します」

 

「有象無象共め、目障りだ。消えろ!」

 

「並みならぬ重圧ですが、斬り捨て御免!」

 

 ノイエ・ザッハリヒカイトとアシェル刃はパイロット達の技量とアンゲロイ・アルカを上回る性能により、苦境に陥っていた連邦軍を次々と助けて行く。T-elosに限ればそういった意識は薄かったが、結果は同じだ。

 骨の如きアインストクノッヘン、蔓草の如きアインストグリート、鎧の如きアインストゲミュートらもまた自身への被弾を省みずにアンゲロイ・アルカや戦闘ロボ、ゼカリアやハバククに襲い掛かって、ソーラーシステムⅡのミラー防衛と廃棄コロニー破壊に向けた行動をとり始める。

 新たな勢力の出現に困惑したのはバサ帝国側もティアンム艦隊も同じであったが、先程のイングラム同様に戦場の全勢力に向けて、アインスト側の指揮官機ペルゼイン・リヒカイトから強制的に通信が繋げられ、少女の姿が各機のモニターに映し出される。

 

「お邪魔いたしますの。私達はアインスト。とてもとても、とても昔からこの星を見守ってきた監視者。この度は地球への蛮行許し難し、と地球人類の皆様に味方すべく参上いたしましたのよ。

 私達から手を出す事は致しませんから、地球連邦の皆々様にも手控えをしていただきたいですの。コロニーの落下を阻止したいのは、私共も同じなのですから。それではよしなに~」

 

 一方的に言いきって、アルフィミィはペルゼインをエル・ミレニウムへと向ける。エクセレンはまだ自覚がないが、アインストとしてのつながりを持つ彼女とキョウスケは、アルフィミィにとっては特別な存在だ。

 

「それではエクセレンとキョウスケをお助けしますのよ。あちらの怪しい方は用心棒さんにお任せですの」

 

 そうして戸惑う地球連邦軍へのフォローを後回しにして、ペルゼインはエル・ミレニウムへ意気揚々と斬りかかってゆく。

 アインストの介入はイングラムも想定していた可能性の一つだが、こうも堂々と地球人類へ味方するというのはいささか予想外だった。彼がこれまで観測してきた世界において、アインストはおおむね人類を粛正・排除する側に立っていたからである。

 

(こちらのアインストもどうやら活動の時を決めたか。ある意味ではこの宇宙で特に厄介な相手となる)

 

 アストラナガンと熾烈な戦いを繰り広げるヘマー達もアインストの出現には驚いていたが、彼らの鋭敏な感性はアルフィミィらに敵意がない事を察知して、アストラナガンとイングラム撃破を優先している。

 

(ソルの再覚醒の度合いはこちらの想定よりも進んでいる。いずれは銀河をも自在に消滅させた至高神の力を取り戻すだろう。そうなれば収穫の時だ。だが、面倒なのはやはり次元将の生き残りか……)

 

「はっはあ! 見つけたぜ、あの時の黒いの!」

 

 アストラナガンがフェブルウスのバーレイ・サイズとライアット・ジャレンチのコンボを弾き返したところに、正面から握り締めた拳を振り上げた次元将ヴァイシュラバが襲い掛かった。

 アストラナガンのZ・Oソードとヴァイシュラバの右拳が激突し、行き場を失った衝突のエネルギーが宇宙空間に荒れ狂って、両機は互いに大きく後方へと弾かれる。

 

「あ、ホットドッグのおじちゃん!」

 

 突然の乱入者にアムロとクワトロは不可解なデジャ・ヴュを抱きながら警戒したが、直後にヘマーの発した緊張感のない一言が警戒心を少しばかり解した。

 それはそれとして、巨大な銀色の巨人めいた外見のヴァイシュラバから発せられる圧倒的な力を前にすれば、完全に警戒を解く事は出来なかったが。

 双子らはリモネシアで出会ったヴァイシュラバに、驚きと懐かしさを感じて声を掛けたが、当のヴァイシュラバからの返答は硬い声音だった。

 

「お前達、どれだけ思い出した?」

 

 もはやシュメシとヘマーは無垢な子供ではなく、フェブルウスもまたこれまでの戦いと出会いを通じて、失っていた至高神ソルとしての記憶をいくばくか取り戻している。

 そうなればかつて至高神ソルを生み出した“御使い”達と敵対していたヴァイシュラバにとっては、見過ごせない因縁のある存在となる。

 御使いとは違い、彼らの行動を否定したソルは明確な敵とは言い難いので、ヴァイシュラバとしてもすぐさま敵対行動に出るつもりがないのがせめてもの救いか。

 

「あの人達を止めてくれた事。僕達がソルと呼ばれていた誰かだった事」

 

「私達がもうソルに戻る必要はない事。おじちゃんがあの人達と戦っていたことも思い出したよ」

 

「そうか。ふん、ならそれ以上思い出す必要はねえだろう。そのまま忘れちまえ」

 

「それでいいのかな?」

 

 シュメシの許しを乞うような声音に、ヴァイシュラバはふん、と鼻を鳴らした。

 

「お前らのしたいようにしろ。お前らには間違えても、尻拭いして叱ってくれる親が居るんだろ? なら色々と迷って間違えても、どうにか取返しはつくだろうさ。そうやって生きていくもんだろ、人間ってのは」

 

「うん、うん! ありがとう、おじちゃん」

 

「まったくソルの成れの果てとこんな話をするとは、未来って奴はどうなるか分かったもんじゃねえな。それよりあのイングラムとかいう名前を騙る野郎は、俺が足止めをしてやる。さっさとあの大根だか球根だかみたいな奴をぶっ壊しな」

 

「うん、分かった!」

 

 ヴァイシュラバの加勢にイングラムは加減をした状態での戦闘は流石に不利と判断してか、攻勢は鳴りを潜めてアムロ、クワトロ、ゼファーによる連携とヴァイシュラバによる圧倒的な次元力の力による攻撃を前に、守勢に転じざるを得なかった。

 その間にフェブルウスは再びガナリー・カーバーを展開し、砲口の先にSPIGOT四基を直列配置する。

 

「ガナリー・カーバー展開、出力最大!」

 

「SPIGOT配置完了、砲撃フォーメーション、まるっとオッケー!」

 

「今度こそ行くよ、ザ・グローリースター、フルーバーストー!!」

 

 今度こそ邪魔の入らない最大出力の砲撃が放たれて、そのまま射線上に居る敵機を撃墜しながらフーレ級の斜め後ろから突き刺さり、そのまま艦体を貫いた砲撃は長大なビーム刃の如く振り抜かれて、廃棄コロニーを牽引していた他のフーレ級やアドラティオを巻き込んで破壊して行く。

 

「えええええい!」

 

「いけええ!」

 

 『魂』の籠った叫びと共にフェブルウスから放たれた渾身のエネルギー砲撃が止んだ時、両断された複数のフーレ級が内部から爆発を起こして、ようやく廃棄コロニーを守る花の盾が失われた。

 その光景を前に連邦軍やDC艦隊の誰もが歓喜の声を上げる中、イングラムはミラーがあちこちで欠けたソーラーシステムⅡを見て、淡々と呟く。

 

「ソーラーシステムを運用するだけのミラーは残っていないようだが、次はどうする?」

 

 答えたのはティアンムの座乗するアルバトロスの甲板に降り立った、有線制御で運用される一機のMSだった。正式なパイロットが決まらぬままコロニー落とし阻止の為の切り札として、急遽ティアンム艦隊に送られたのがこのMSだ。

 いつかこのような事態を想定し、一年戦争直後にプルート財閥が各コロニーや月面都市に構築した発電設備とサテライトシステムを利用し、戦略級超破壊兵器を運用できるMSとして開発された機体の名は――ガンダムX。

 

「Xのセーフティーを解除する。サテライトシステムのリンクはどうか?」

 

 ティアンムは手元にせり上がってきたスリットにカードキーを滑らせ、更にこの艦隊ではティアンムだけが知る暗号パスコードを手早く入力して行く。

 

「駄目です! ミノフスキー粒子だけではなくバサ帝国側のジャミングにより、Xとサテライトシステムのリンクが妨害されています! リンク可能な中継衛星が見つかりません」

 

「むう、ヘイデス総帥はここまで見越していたというのか? 分かった。ならばサテライトシステムとのリンクから“ソーラーシステム”とのリンクへ切り替える!」

 

 アルバトロスの甲板に立つガンダムXの背中のリフレクターが開き、サテライトキャノンの砲身が展開される。

 ガンダムXにはアルバトロスからケーブルが接続されて、破損したミラーの受けたエネルギーが変換されて瞬く間にガンダムXへと供給されてゆく。

 ガンダムXの投入が万が一の事態ならば、サテライトシステムの使用不可能もまた万が一の事態。万が一の事態が重なる不運を、ヘイデスはあり得るとして危惧していた。

 

 それを見越したヘイデスがガンダムZZの外伝漫画に登場したラーフ・システムとガンダム00の太陽光発電システムをヒントにして、ソーラーシステムないしは太陽光発電からもエネルギー供給を受けられるように改良を指示していたのだ。

 そしてかつては世界崩壊の引き金となったガンダムXは、この世界においてサテライトキャノン――この場合はソーラーキャノンを正しく地球とそこに生きる人々を守る為に、迫りくる廃棄コロニーへと放った!

 

「おおお、信じられん。これがシステムありきとはいえ、たった一機のMSの成す事か!?」

 

 ティアンムはアルバトロスの艦橋で、あの忌まわしいソーラ・レイすら彷彿とさせる膨大な光の奔流を見て、心底からの驚愕を口にしていた。これを見てしまえば強奪された核弾頭すら可愛く思える。

 戦場に居る全ての者は見た。ガンダムXの放った戦略級の超出力ビームがまっすぐに廃棄コロニーを貫き、km単位の巨大構造体をその内部から崩壊させて、見る間に破壊して行くのを!

 

 これほどの破壊を成す兵器を果たして人類は正しく扱えるのか? 今は有線制御で扱われたが将来的に一パイロットにトリガーを預けられる際に、パイロットはあまりにも重い引き金を引く事が出来るのか?

 パイロットの心に伸し掛かる重圧を想像すれば、癒えない傷を与えかねないものだと想像力に乏しい人間ですら考えが及ぶだろう。

 

 やがてソーラーシステムⅡとアルバトロスのジェネレーター、艦に積載していたソーラーキャノン用のジェネレーターからのエネルギー供給が終わり、ソーラーキャノンの放出が止まる。

 射線上に居た全ての敵機は跡形もなく吹き飛ばされ、ゲロイヤーは地球側の用意したとんでもない隠し玉に言葉を失って、イングラムがまだ戦場に残っているのにもかかわらず、作戦失敗を告げて逃げ出している。

 廃棄コロニーから離れ、ソーラーキャノンの砲撃によって破壊された廃棄コロニーを眺めながら、イングラムは然したる動揺も抱いていなかった。

 

(デラーズ・フリートならびに真ジオン公国は戦力の大部分を喪失、バームも投入した戦力の九割近くを失った。流石に帝国もしばらくは様子見に徹するか。ソルの残骸の成長具合も順調だ。収穫の時はそう遠くはない。

 厄介なのはバラオとムゲ・ゾルバドスだが、これまでの世界通りライディーンとダンクーガが始末するだろう)

 

 廃棄コロニーの破壊に乗じて距離の開いたフェブルウスをモニターに捕捉しながら、イングラムは誰に聞かせるでもなく言葉を発した。あるいは自らに言い聞かせる為だったか。

 

「既にイングラムとの決着は終えている。イングラムとの因縁は終わった。奴の後継が因縁を引き継ぐ可能性はあるが、奴もまたこの世界には来訪できない。

 その間に私はアカシックレコードも、オリジン・ローも掌握し、それらを超越した存在となる。因果律の番人など所詮は世界の奴隷に過ぎん。奴隷は奴隷のまま、いずれ私の手で滅ぼされる時を待つがいい」

 

《続》

 

■ガンダムXが開発されました。

■サテライトシステムが開発されていました。

■ソーラーキャノンが開発されました。

■アインストが参戦しました。

■DECを手に入れた。

 

●宇宙ルート 第二十八話 星屑の墜つる果て クリア後ヘイデスショップ

・アルバトロス級

・ムサカ

・Zプラス

・Ζ>

・RFビグ・ラング

・メギロート

・ゼカリア

・ハバクク

・デイモーン

・ティアマート

・アンゲロイ

 




ガンダムXのパイロットが決められず、今回は有線制御による無人機運用となりました。ふむ、アルベルトをどうやって乗せたものか
アルトアイゼンとヴァイスリッターですが、今回のエル・ミレニウムでパワー不足と見做され、その内、パワーアップ予定です。
①アインストと合体事故→ブラスター化
②マジンカイザー化
のどちらかを予定しています。


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第四十七話 ヘイデスの胃耐久チャレンジ

これまで投稿していた小ネタを独立させたので、話数が変わっています。


 ガンダムXによって廃棄コロニーが破壊されるよりも少し時を遡る。

 エル・ミレニウムを相手取っていたキョウスケとエクセレンは、かつてない強敵を前に大苦戦を強いられていた。

 マジンガーZに肩を並べる戦闘能力を誇るアルトアイゼンとヴァイスリッターだが、昨今では超合金Zすら破壊するミケーネ帝国の戦闘獣をはじめ、強力な敵が増えてきた事もあり装甲とエンジン、武装をメインに強化の必要性が取りざたされている。

 エル・ミレニウムは、その必要性をひしひしと感じさせる攻防共に優れた強敵であった。

 

「ちい、簡単に懐へは入れんか!」

 

 キョウスケはガンダニュウム合金の装甲をやすやすと斬り裂くエル・ミレニウムの爪を避け、その傍らを通り過ぎた。エル・ミレニウム胸部にステークを突き立てんとした狙いを読まれ、カウンターを叩き込まれる寸前での回避である。

 機体の性能がずば抜けているなら、機体をコントロールする人工知能も他所の勢力のものよりもずば抜けているときた。爪を避けた直後、機動を読んで振るわれていた尻尾がアルトアイゼンの左半身に叩きつけられる。

 咄嗟に受けた左腕の三連マシンキャノンの砲身が全て折れ曲がり、凄まじい勢いでアルトアイゼンが吹き飛ばされ、当然、追撃しようとするエル・ミレニウムにヴァイスリッターから雨のような実弾とエネルギー弾の連射が降り注ぐ。

 

「色男さん、ヴァイスちゃんと遊んでかない?」

 

 頭上から降り注ぐオクスタンランチャーWモードの連射に、エル・ミレニウムは鬱陶し気に首を上向けて、そのDECで出来た頭部から『次元力の炎』を吐き出した。

 モニターを埋め尽くす炎を避けたヴァイスリッターは、空になった弾倉を変えながら、エル・ミレニウムの周囲を飛び回る。

 

「ちょっといやんな感じの敵ね。どうにかしないとコロニーを止める方には行けそうにないか……」

 

 エル・ミレニウムがその外見に相応しい怪獣めいた鳴き声を上げ、次元力によって宇宙を疾駆する。巨体に見合った鈍重さは次元力により理不尽なまでの機動性を得て、ヴァイスリッターへと迫りくる。

 

「肉食恐竜に追われる草食動物の気分って奴? 味わいたくはなかったわね!」

 

「エクセレン!」

 

 体勢を立て直したアルトアイゼンもその凄まじい加速でエル・ミレニウムと距離を詰め、ヴァイスリッターを援護する為にカメラアイから光子力ビームを立て続けに連射する。

 おもちゃのように派手な色の怪獣が白騎士を追い掛け回す中、白騎士を助けたのは二枚の鬼面を従える骨の鬼――ペルゼイン・リヒカイトだ。

 ふわりと浮かび上がった鬼面オニボサツから眩い光の奔流が放たれて、エル・ミレニウムの胸部に直撃してそのまま一気に弾き飛ばす。

 

「ライゴウエ……。眩しいのはご愛嬌、ですの。エクセレン、キョウスケ、助太刀いたしますのよ」

 

 キョウスケとエクセレンは通信に割り込まれ、モニターの片隅に浮かび上がるアルフィミィの姿と声に一瞬気を引かれたが、自分達以外の連邦軍も突如出現したアインスト達によって助けられている光景を見て、とりあえずの敵対は避ける事とした。

 

「随分と声に親しみが籠っているが、俺はお前に見覚えはないんだがな」

 

「うふふ、私が一方的に二人を知っているだけだから、気にしないで欲しいですの。私はアインスト・アルフィミィ。キョウスケ達を含め、地球連邦軍の皆様の味方ですのよ。特にキョウスケとエクセレンに関しては、ファン? みたいなものですかしら」

 

「あら嬉しいこと言ってくれるじゃない。戦いが終わったらサイン書いてあげましょうか?」

 

「機会がありましたら、お願いしますの」

 

 エクセレンはころころと笑うアルフィミィから視線を外し、戦場全域で連邦軍に加勢しているアインスト達を見回す。

 

「それにしても骨やら植物やら鎧やら、まるでモンスターパレードね。こういうの日本だとヒャッキヤコーっていうんでしょ、キョウスケ?」

 

「宇宙でも行われるとは聞いた覚えはないがな。それよりもアルフィミィといったか。コロニーの落下を阻止するまでは敵対しないと考えていいな?」

 

「ええ。そこは保証いたしますのよ。コロニーの落下はなんとしても防ぎたいですし、それを促している黒幕さん達は敵ですので」

 

 アルフィミィ達はそれ以上会話を続けることはできなかった。エル・ミレニウムが巨大な顎を開いて、再び次元力の炎を吐き出してきたからだ。

 

「あらあら、レディの会話に割り込むなんて躾がなっていませんのね」

 

 ペルゼイン・リヒカイトから離れたオニボサツが巨大な骨の腕と翼を出現させ、左右からエル・ミレニウムを挟み込んで拘束に掛かる。

 ペルゼイン・リヒカイトが二十メートル少々のサイズである為、巨大化したオニボサツもエル・ミレニウムに比べれば小さいが、左右の腕を拘束するくらいのことはできる。

 

 そしてアインストの加勢によって余裕の出来た状況で、アストラナガンに次ぐ脅威として、エル・ミレニウムを認めたエース達が更に加勢に来てくれていた。

 わずかに動きを鈍らせるエル・ミレニウムに向けて、ラトゥーニのバルゴラGS、オウカのラピエサージュ・シンデレラからレイ・ストレイターレットとオーバーオクスタンランチャーが放たれて、堅牢なエル・ミレニウムの巨体を大きく揺らせる。

 

「キョウスケ中尉、エクセレン中尉、グランド・スター小隊、これより加勢いたします!」

 

「オウカとラトゥーニか、助かる!」

 

「それじゃお姉さんも加わりましょうかしら!」

 

 ヴァイスリッターのオクスタンランチャーも加わり、次々とエル・ミレニウムの巨体に攻撃が降り注いで、流石のDEC製のボディにも罅らしきものが徐々に広がり始める。

 

「皆さま、そろそろオニボサツの拘束が限界ですの。力持ち、ですのね」

 

 アルフィミィの呆れたような警告の直後、エル・ミレニウムが両腕を振り回してオニボサツを吹き飛ばす形で拘束を解除し、次々と姿を見せる邪魔者達を始末しようと次元力の炎を四方八方に放射し始めた。

 掠めるだけでも装甲に甚大なダメージを受ける攻撃に、キョウスケ達をして緊張を強いられるが、それでも怯まずに果敢に反撃の一手を加えて、徐々にエル・ミレニウムにダメージを積み重ねて行く。

 そうしてエル・ミレニウムが暴れる隙を縫って、背後からビルトビルガーとビルトファルケンが迫っていた。

 

「ジャケットアーマーパージ! スクランブルウイング展開! 突撃するぜ!」

 

「ウイング展開、ドライブ全開! ブースト!!」

 

 重量のあるPS装甲のジャケットアーマーを外し、身軽になったビルガーが軽々と飛翔するのを、ファルケンがオクスタンライフルによる正確無比な射撃で的確に援護して行く。

 背後から浴びせかけられる銃撃にエル・ミレニウムの注意が向くが、そうすればラピエサージュ・シンデレラやヴァイスリッターがこちらを忘れるなとばかりに攻撃を加え、審判の巨獣を翻弄する。

 

「アイン!」

 

 引き抜かれたビルトマジンガーブレードがエル・ミレニウムを斬り、痛みに悶えるように背を反らすエル・ミレニウムにビルトファルケンが襲い掛かる。

 

「ツヴァイ!」

 

 射撃戦メインの機体でありながらエル・ミレニウムの巨体に『着地』してほとんど距離の無い状態からBモードの徹甲弾をありったけぶち込んで、周囲にDECの破片が舞い散る。

 Bモードが空になるのと同時にビルトファルケンが離れ、Eモードのエネルギー弾をぶちまけながら距離を取り、弧を描いて旋回してきたビルトビルガーが右腕のスタッグビートルクラッシャーで、すれ違いざまにエル・ミレニウムを端から斬り刻んでゆく!

 

「ドライ! ツイン・バード……」

 

「ストライク!!」

 

 ビルガーとファルケンが幾重にも光の軌跡を重ね、螺旋を描き、エル・ミレニウムにクロスした一撃を叩き込む! オクスタンライフルが跳ね上げたエル・ミレニウムの左腕を、ビルガーのスタッグビートルクラッシャーが見事に一瞬で挟み千切る!

 

「良くやりました、アラド、ゼオラ! マグナムビーク!!」

 

「私も続きます、バーレイ・サイズ!」

 

 四肢の一つを失ってバランスを崩すエル・ミレニウムに、オウカとラトゥーニが畳みかけてエル・ミレニウムの胸部に深々と亀裂が刻まれて、ようやくここまで畳みかけてこのDECの怪物にダメージらしいダメージが入ったのを確認できる。

 一撃を叩き込んだラピエサージュ・シンデレラとバルゴラGSが下がった直後、二機の居た空間をエル・ミレニウムの右腕が薙ぎ払い、一瞬の差で空を切る。

 

「攻め時ですの。マブイタチ、一つと言わず二つ三つと差し上げます」

 

 ペルゼイン・リヒカイトが刀――オニレンゲを振るい、そこから発せられた飛ぶ斬撃が次々とエル・ミレニウムの装甲を切り裂き、ぴったりと息の合ったコンビネーションでヴァイスリッターの射撃も突き刺さってゆく。

 

「内助の功って奴ね。怪獣退治はスマートに行きましょう!」

 

 エル・ミレニウムは咄嗟に胸部を右腕で庇い、それ以外の箇所にオクスタンランチャーの実弾が命中し、次々と装甲を貫いてめり込んでゆく。それに留まらずビルガーとファルケンからも射撃が重なり、四方八方からエル・ミレニウムを削ってゆく。

 

「全弾持っていけ!!」

 

 そうして隙を作るエル・ミレニウムへアルトアイゼンが一直線に突っ込む! 既に両肩のクレイモアの残弾はなく、左腕の三連マシンキャノンと手首内側のビームガンは機能不全に陥っている。

 決め手は右腕のリボルビング・ステークZ! 加速に加速を重ねるアルトアイゼンにエル・ミレニウムが気付いた時には、既に眼前にあった。

 

 超合金Z製のステークは全力でエル・ミレニウムの口内へと突き込まれ、キョウスケは一瞬の躊躇もなくトリガーを連続して引く。

 この時、ステークに装填されていたのは、敵勢力の幹部級が搭乗するスーパーロボットクラスの兵器を想定し、限界ギリギリまでビームを圧縮したマグナムカートリッジだ。一発ごとにフレームに甚大な負荷をかけるそれを、キョウスケは全六発叩き込む!

 

 全てのマグナムカートリッジを撃ち尽くした時、アルトアイゼンの右腕にはスパークが走り、コックピット内にはアラートと警告を喚起する表示が次々と出ている。

 エル・ミレニウムの頭部は内部から奔る衝撃の凄まじさに耐え切れずに砕け散り、衝撃の伝播した胴体や四肢もまたこれまでのダメージと相まり無数の破片に砕けた事で、エル・ミレニウムはようやくその機能を停止した。

 フェブルウスによってフーレ級が沈められ、ガンダムXのソーラーキャノンによって廃棄コロニーが破壊されたのはこの直後の事である。

 

 オニボサツを戻し、オニレンゲも収めたアルフィミィは戦闘が終息したと判断し、KOS-MOS、T-elos、ジン、それにヴァイシュラバへと帰還の連絡を入れてから、ボロボロになったアルトアイゼンとヴァイスリッターを振り返る。

 二機の周囲にはスクールのチルドレンらや後方から合流してきたユウとライラのビルトシュバイン、カミーユとジュドーのZやZZも合流しており、アルフィミィに向けて弱い敵意と警戒の意識を向けている。

 アルフィミィは、もうちょっと砕けた態度になってもいいと思いますのに、とちょっぴり不満だったが、自分達のいかにも悪役然としたビジュアルを思い出して、溜息を零した。

 

「これでひと段落つきましたの。おとかあ様からも帰還命令が出ておりますから、私共はこれでおさらば致します。キョウスケ、エクセレン、今日はお会いできて嬉しかったですの。今度、お会いする時はもう少し落ち着いた状況かプライベートな時間で」

 

 キョウスケとエクセレンの返事を待たず、アルフィミィだけでなくノイエ・ザッハリヒカイトやアシェル刃、ヴァイシュラバ、その他のアインスト達も霧に紛れるようにして姿を消して行く。

 今回の出現・消滅パターンを記録しておけば、今後、アインスト達の転移にもある程度は対応できるようになるだろう。

 

「呆気なくいなくなっちゃったわねえ。なんなのかしら、あの子? 本当に私達のファンだと思う、キョウスケ?」

 

「話半分に聞いておけ。少なくともバルマー・サイデリアル連合と敵対しているのは確かだろう」

 

「私達の味方だ、とは断言しないのね」

 

「今の地球圏は楽観視できる状況ではない。肩透かしを食らうよりは備えておけ」

 

「悲観的すぎって言いたいんだけど、否定できる要素がないのよねえ。らじゃらじゃ」

 

 エクセレンは珍しく溜息を零し、愛機に掛かった負荷の大きさと消耗ぶりに目も当てられなかった。あの巨大な怪獣モドキとの一戦でこれだけ消耗したのだ。今後、あれだけのレベルの敵との戦闘が連続したなら、どうなる事か。

 地上部隊の戦っているミケーネ帝国の戦闘獣、百鬼帝国の百鬼メカ、妖魔帝国の新たな巨烈獣等々、どれも強力な兵器でマジンガーZですら装甲素材とエンジンの強化を必要とされ、ゲッターチームも十倍以上の性能を誇るゲッターGで戦わなければならない状況だ。

 マジンガーZの系譜であるアルトアイゼンとヴァイスリッターも、本家“鉄の城”同様に強化しなければ今後の戦いにはついていけないかもしれない、と聡明なエクセレンはひしひしと予感していた。

 

 

 コロニーが破壊される前後にバサ帝国の戦力は撤退し始めており、既にアストラナガンもその姿を消している。デラーズ・フリートの残存戦力はハスラー少将のグワンザンを筆頭とする“アクシズ”艦隊に合流し、戦闘宙域からの撤退行動に移っていた。

 連邦艦隊としてはこのアクシズ艦隊を追撃してしかるべきであったかもしれないが、アインストという謎の勢力の出現や想定を超えた戦力の消耗により動けなかったのである。

 あまりの損耗にティアンムは頭を抱えたいほどだったが、まだ動いている部下達が居る以上、指揮官がそんな情けない真似を見せるわけにも行かない。

 

「Xの状態はどうか?」

 

「機体内の電装系は全滅です。リフレクターのエネルギー変換システムに重大な損傷が発生しており、砲身の排熱も上手くは行っておりません」

 

「やはりソーラーシステムとの両用を行う為の突貫作業には、無理があったか。突貫作業を行った甲斐はあったとはいえ、Xを含むサテライトシステムの運用には大きな課題が残るな」

 

 原作のガンダムXではサテライトシステムのリンクには、DOMEのお陰で正確にマイクロウェーブの照射を受けられたが、この世界ではそうとも行かずに中継衛星とのリンクにしても、ジャミングを受けると運用に重大な支障を来してしまう。

 またあまりに威力が強大すぎる為、実際に戦場で使用するにはティアンムがそうしたように部隊の司令官によるセキュリティ解除と事前の運用申請が必要と、運用には慎重に慎重を期している。まあ、サテライトキャノンの威力を考えれば必要な措置だ。

 

「量産を前提とした機体にしてはあまりに過剰な兵器を乗せているとは思ったが、バサ帝国の兵器があれだけの性能となると、むしろ必要なのかもしれんな」

 

 ティアンムは複数のガンダムXとGビットによるサテライトキャノンの同時多数運用プランについて、あまりにやりすぎではと危惧していたが、今回の戦闘ではあのレベルの兵器が必要だと意見を翻さなければならないと考えていた。

 幸い、プルート財閥が一年戦争の再興計画として各コロニーに太陽光発電システムを導入しているから、マイクロウェーブの供給源に困る事はないのだがジャミング対策が今後の最大の課題となるだろう。

 

「やれやれ、ままならんな……」

 

 

(いやユーゼスじゃん)

 

 星の屑作戦阻止後、ひとまず取りまとめられた情報を受け取った直後のヘイデスの反応である。

 デラーズ・フリートの企てた偽りの星の屑がバサ帝国に見抜かれ、妨害が加えられるのは想定内だがその場にアストラナガンが出現し、帝国宰相イングラム・プリスケンを名乗ったという報告には度肝を抜かれた。

 ガイオウ……正確にはヴァイシュラバとアインストの出現も合わさって、抜かれた肝が一周回って元に戻り、変に落ち着いたのが現在のヘイデスの精神状態である。追い詰められ過ぎて落ち着かざるを得なかったのだ。

 

(なによ、アストラナガンて。ええ? いや、確かにイングラムとセットだろうけれど、しかしシュメシとヘマー曰く偽物か。偽物だったら、ユーゼスしかいないよな?

 他所から来たのか、この世界のユーゼスかは分からないが、アストラナガンが絡んでくるんだからα世界と関係のある可能性が高い。アルテウルの偽名を使っていた時のユーゼスじゃなさそうだし。

 ラオデキヤ艦隊とつながりがあるのもαのユーゼスだ。ズフィルードクリスタルは破片一つ残っていればパイロットごと再生するんだから、そういう感じでα後のユーゼスがこっちで再生したとか、そんな感じ?)

 

 しかしまあ、フェブルウスとゼファートールギスとνガンダムとサザビーの四機がかりで互角とか、とんもでねえ悪夢である。

 下手をこけばアストラナガンかジュデッカの量産という事態もあり得る。SRXチームもSRXもない状況で戦うとか、本当に勘弁してほしい。

 

(胃が、胃がキリキリするううううう。神経がじりじりと炙られているような、おぼああああああああ。こんなん、本当、どないせえっちゅうんじゃあああああああ)

 

 こういう時の本物のイングラムとクォヴレーだが、いい加減、ユーゼスも自分で自分の首を絞めたり、足元を掬ったりするフラグを乱立する真似はしないのではないか、とヘイデスは危惧している。

 これまでの例に倣って自分で失敗フラグをせっせと立てていてくれたらよいのだが、もしα世界のユーゼスだったなら?

 

(負けたとはいえもうイングラムとの因縁を終わらせている、とも取れる。死んだ事で生きている間に受けていたデバフを解除できる、というわけだ。

 そうなると負けフラグが過去の事になっているから、今度は実力で排除しなければならないと屁理屈はつけられる。

 だが、それをクォヴレーが見逃すか? ユーゼスとクォヴレーに直接の接触はないにしろ、ユーゼスが居なければ存在できないクォヴレーが、その存在を見逃すとは考えにくい。

 並行世界……いや因果律だっけ? いずれにせよ、そういうなんやかんやの番人であるクォヴレーとディス・アストラナガンなら気付いてくれる可能性はある筈だ。

 まあ、俺も異物として排除される可能性もあるわけだけれども!)

 

 HAHAHAHA! とヘイデスは本当は笑っていられない可能性を思い浮かべ、執務室の椅子にぐったりと背を預けた。きっついわあ、と溜息を吐いたら一緒に血も吐きそうな精神状態と胃の具合だが、そんな中でも救いはある。

 

(たぶん、きっと、おそらく、アインストが味方ムーブをしてくれている……ような気がする。ただなあ、一緒に行動していたっていうペルゼインの系列機とこの……ゼノサーガのアシェルっぽい機体はどういうこってす?

 そりゃね、ムゲフロシリーズでね、共演はしてますよ。してまっせ。だからといってあっちの世界からこっちの世界に来ちゃうの? 来ちゃったの? 来ちゃったかあ。日本刀装備のアシェルってことはジン・ウヅキか?

 うーん、物語の途中から参戦、いや、アシェルが思いっきり改造されているし、エピソード3クリア後の線が濃厚だ。するってえと最終決戦の状況を考えると、大破したKOS-MOSが来ているかも。むしろアルフィミィとの縁を考えるなら彼女こそ本命か)

 

 だったらどうしてペルゼインの系列機が二機おるねん、となるのだが――

 

(まさかKOS-MOSからT-elosが分離したとか、そんな与太話はなかんべ)

 

 ところがそんな与太話があるのだ。そうとは知らぬヘイデスは、ああ、やだやだと念仏のように呟いて、最近、デスクに常備している所長印の栄養ドリンクを取り出して一気に飲み干した。

 クスハ汁もかくやのバイオテロめいた外見の所長ドリンクだが、幸いにも味は普通に美味しかった。味は一本ごとに異なり、今回飲んだのはサツマイモベースの甘い味付けのものだ。

 

(ふう、こればっかりは対策の立てようもないよな。本当の名前を言い当てたからって、なにか意味があるとは限らんし。

 それより地上と宇宙のこれからを考えるか。アンゲロイ・アルカが思ったよりもずっと強かったのは誤算だった。せっせと連邦軍の軍事力の底上げをしてきたけれど、それでもまだ全然足りないとは。トホホホ)

 

 以前はZZガンダムを量産して一斉にハイメガキャノンを連射してやるだとか考えたことのあるヘイデスだが、まさか本当にそれくらいやってのけなければならない状況に置かれたのは、頭痛で済む話ではない。

 連邦軍の主力兵器であるMSにZZやユニコーンクラスの火力を持たせなければ、バサ帝国の本当の主力クラスとは渡り合えない可能性すら出てきたのだから、ヘイデスの悩みは深い。

 

(連邦軍の正式採用機云々は無視して、グルンガスト弐式の量産とゲシュペンストMk-Ⅲ、それにバルゴラGSの量産を独自で進めておくか。それに縮退炉の開発も上手く行っているから、核融合炉との換装がスムーズに行えるように手はずを整えておくべきだ。

 各コロニーに設置した太陽光パネルを即席のソーラーシステムに改良できるように働きかけるとして、後、俺は何を用意できる?

 物資はいくらでも準備できるが、おそらく出てくるだろうジュデッカやアストラナガン、あるいはアダマトロン、下手をすれば超神ゼストの上位互換を相手に勝つには、一体どうすればいい?

 特にゼストが相手となるとウルトラ兄弟総出レベルの戦力がいるやんけ。相性もあるけど……。ディス・アストラナガンとアストラナガンの競演くらいは成し遂げないと無理では?)

 

 軽く絶望の海に浸るヘイデスであったが、欧州でミケーネとムゲによる大攻勢の勃発、クロスボーン・バンガードと過激派コロニー独立運動組織ホワイトファングによるサイド4コロニー群制圧事件の連絡が齎され、ヘイデスがその場で卒倒したかった、と後に述懐する精神的ダメージを負うのだった。

 そして地球連邦軍からDCへクォヴレー・ゴードン少尉という少年パイロットが、量産型νガンダム・インコム装備と共に派遣され、ヘイデスの胃と思考は捻じれに捻じれるのである。

 

<続>

 

■クロスボーン・バンガードとホワイトファングが手を組むようです。

■縮退炉が開発されました。

 




まずこれまでのご愛顧に感謝を。頂いた感想、誤字脱字の報告の全てが糧でした。
これから年末年始にかけまして、公私ともに忙しくなる予定でして、しばらく更新が遅れます。恐れ入りますが、また投稿を再開するまでしばしお待ちください。


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第四十八話 スポット参戦キャラだけで挑むステージ

お久しぶりです。一カ月近くが経ってしまいましたが、落ち着いてきたので久しぶりの投稿です。


共通ルート 第三十一話 ハマーン・エグゾダス

 

 地球圏近海にてコロニー落下阻止作戦が佳境を迎えていた頃、遠く離れたアクシズ近海宙域ではそこから脱出した艦隊とそれを追う艦隊との間で、命を削る攻防が繰り広げられていた。

 サダラーン級機動戦艦を旗艦とし、エンドラ級に旧式の輸送艦などを含めた十隻あまりの艦隊である。

 この他にもグワダン級やグワンバン級を旗艦とする同規模の艦隊が三つ存在し、それぞれが異なる航路を取って、追跡部隊の目を晦ませるべく行動している。

 

 そんな中、サダラーン艦隊を指揮するのは、バサ帝国に敗北しエンツォが復権するまでは、実質的にアクシズの統治者であったハマーン・カーンである。

 アクシズの象徴であったドズル・ザビの娘ミネバ・ザビをアクシズより連れ出し、真ジオン公国からの脱出行の最中であった。

 

 正確を期するなら、三つに分かれた艦隊の全てに“ミネバ・ザビ”が乗っている。本物一人に影武者二人、あるいは三人全員が影武者で本物は別ルートで脱出しているかもしれない。

 そうして何よりもミネバの身を最優先して、脱出艦隊は三つに戦力を分散するという危険な真似をしたのだ。

 

「追跡してくる者達の様子はどうか?」

 

 ハマーンはサダラーンの指揮官席から、ブリッジクルーに艦隊を追跡してくる部隊について問いかける。

 ハマーンの艦隊には彼女を崇拝するマシュマー・セロやその副官ゴットン・ゴー、キャラ・スーン、ニー・ギーレン、ランス・ギーレン、ラカン・ダカラン、イリア・パゾムと強者が揃っているが、それでもなお油断も慢心も出来ない。

 

「はっ! アドラティオ級七、ガルンロール級五、エンドラ級十一、機動兵器三百以上、なおも本艦隊に接近中です。既にセロ隊、ダカラン隊、スーン隊、プル隊が交戦中ですが、距離は……徐々に縮まりつつあります」

 

 ハマーンに答えた若い女性士官は内心の焦燥を押し殺して、厳しい現実を口にした。追手の部隊は無人機で構成されていて、こちらを生け捕りにしようという気配は微塵もなく、アクシズを脱出したハマーンらを皆殺しにする命令を受けているのは明白だ。

 

「私も出る。キュベレイの用意をさせておけ」

 

「ハマーン様!?」

 

 パイロットとして真ジオン公国――いや、アクシズにおいて最強の一人であったハマーンの言葉に、女性士官ばかりでなくその他のクルーらも悲鳴混じりの声を出し、ブリッジから出ようとする若き指導者へ視線を向ける。

 

「優先するべき事を見誤るな。大事はミネバ様の御身である。私はあくまでも摂政、ミネバ様が長じられるまでの代理に過ぎん。

 いざとなればミネバ様の盾となるのになんの躊躇いがあるものか。お前達もそう心得よ。ミネバ様、そしてスペースノイドの未来こそ第一だ」

 

 今度こそハマーンを止める声も視線もなく、まだ二十歳の女傑は命を散らす覚悟さえ固めて格納庫へ急いだ。

 キュベレイ、それがハマーンの愛機となるMSであり、多くのガンダムファンやスパロボプレイヤーにとっては既知の機体だろう。

 優美な曲線を描く白い四肢は、既存のMSに比べて異色でありながら確かな美意識が感じられ、搭乗者のハマーンも加えてアクシズのフラッグシップ機としての役目も持つ機体だ。

 

 武装は手首に内蔵されているビームサーベル兼用のビームガン、左右の肩バインダーに内蔵されている大型ビームサーベル、そして最大の武器であるファンネルビット――ファンネル十基とこの時期のMSにしてはシンプルなラインナップとなっている。

 サイコミュを用いて機体を制御しており、パイロットに高いニュータイプ能力が求められるが、真ジオン公国において最高のニュータイプであるハマーンが搭乗する事により、同勢力内では随一の戦闘能力を発揮する。

 

 バサ帝国により制圧される前からエルメス2として開発されてきたこのキュベレイだが、バサ帝国の軍門に降った後も開発と改良は継続されて、真ジオン公国の技術力で解析されたバサ帝国のEOT――エクストラ・オーバー・テクノロジーが導入されており、このスパロボ時空らしく中身は相当弄られている。

 量子波動エンジンの供与こそなかったものの、技術解析により核融合炉は安全性を維持しつつ出力は大幅に向上し、地球側では火力が低いと問題視されているファンネルも戦艦級の火力の確保に成功している。

 カルケリア・パルス・ティルゲムを始めとした念動力系の技術の解析と応用により、サイコミュも大きく改良する事に成功して、キュベレイの本体のみならずファンネルもハマーンにとっては生まれた時から備えている肉体の一部の如く扱えるようになっている。

 

 サダラーンのカタパルトから射出されたキュベレイのコックピットで、特徴的なパイロットスーツに身を包んだハマーンは、一切のGを感じる事もなく機体を後方の戦闘宙域へと向ける。

 現在、友軍のMS部隊はマシュマーのハンマ・ハンマやキャラのR・ジャジャ、ラカンのザクⅢ、それにプル達のキュベレイMk-Ⅱを筆頭としたエース達が奮闘している。

 

「意志を持たぬ無人機如きが我らを阻むか。甘く見てくれたものだな、ラオデキヤ!」

 

 ハマーンの強い意思が機体を走り、射出された十基のファンネルとキュベレイの両手首からスーパーロボットの装甲にも通用する高出力ビームが乱舞して、次々とゼカリアとアンゲロイの機体各所を貫いて爆散させる。

 あえてアクシズと呼ぶが、アクシズ最強パイロットと最強機体の出現に、追手と戦っていたパイロット達の士気は高まり、また一部の者達はハマーンを戦場に立たせてしまった事実にほぞを噛む者もいた。

 

「ハマーン様、我らの力が及ばぬばかりに戦場に赴かれるとは、このマシュマー、一生の不覚!」

 

「今は良い。それよりも目の前の敵を撃つことに集中せよ、マシュマー、我が薔薇の騎士よ。

 そしてアクシズの兵達よ、我らは偽りのジオンの旗を掲げるエンツォの下を離れ、より良きスペースノイドの未来を切り開く為、なんとしてもミネバ様を送り届けなければならない。各員の奮闘を期待する!」

 

 ハマーンのキュベレイに、エルピー・プルとそのクローンであるプルツーを始めとしたニュータイプ部隊が近づく。

 プルとプルツー用のキュベレイMk-Ⅱ、三人目以降のプル達にはアクティブ・カノンを背部に二門追加した量産型キュベレイで構成される全四機のキュベレイタイプが、ハマーンに同調してファンネルを展開する。

 ハマーン機とプル、プルツー機でファンネルが三十基、量産型キュベレイ二機がそれぞれファンネル三十基を搭載している為、合計九十基のファンネルが乱舞して追手部隊に襲い掛かって、戦闘宙域に無数の爆発が生じる。

 

「今のうちに体勢を立て直せ。一時しのぎに過ぎん。第二波が来る!」

 

 ごく短時間で生じた膨大な戦果にアクシズの諸兵が歓声を上げそうになるのを、ハマーンは厳しい声で引き締めた。

 エンドラやアクシズで生産したMSを除けば、追手部隊を構成するのは恒星間航行可能な異星文明の兵器だ。気を緩めればどんな被害が齎されるか分かったものではない。

 

(それでも追手が差し向けられるまで、こちらの想定よりも時間が掛かっていた。そのお陰で距離を稼げたが……エンツォに感謝しなければならんな)

 

 キュベレイを操り、接近してくる追手部隊の先鋒にビームの雨を浴びせかけながら、この状況を作り出す為に恥辱の苦杯を飲みながら耐えていたエンツォの事を考えた。

 バサ帝国に屈してからいつかこの日がくるのを見越して、ひそかにミネバを脱出させる手はずを整えてきたハマーンは、デラーズという外部協力者と偽りの星の屑計画を立ち上げて、真ジオン公国の戦力の大部分を抽出して手薄になったこの時に、脱出計画を実行していた。

 

 その時、ハマーンはミネバと親衛隊を連れて軍港で待機しているサダラーンを目指してアクシズの内部を進んでいた。

 真っ先にラオデキヤと偽イングラムに首を垂れたエンツォの一派を除けば、アクシズ内部の将兵はほぼ反バサ帝国派で、脱出計画の立案それ自体は難しくはなかった。

 脱出艦隊とそれぞれに満載した兵器に軍需・生活物資の類は、星の屑後の地球のジオン残党との合流並びに連邦宇宙軍との戦いの為と進言すればあっさりと認可が降りたし、アクシズの居住区であるモウサに半ば人質とされていた兵士の家族達を艦隊に乗り込ませるのも、決して難しくはなかったほどである。

 

 そうして最重要人物であるミネバを連れ出せば、本格的な脱出行の始まりとなる。サダラーンへと繋がる格納庫を走りながら、ハマーンは計画が順調に行っていることに信じても居ない神に祈りたい気分だった。

 もっとも、曲がり角の先で待ち構えていた男の顔を見た瞬間に、祈ろうとした神を罵倒したが。そこには拳銃を構えたエンツォが待ち構えていたのである。

 

「どこに行こうというのかね、ハマーン・カーン」

 

 にわかに親衛隊が殺気づいて、携行していたマシンガンを向ける。エンツォは一人だ。ここで始末するのは容易いが、だからこそそれを分かっている筈のエンツォが一人で行動している事には違和感しかない。

 

「エンツォ・ベルニーニ、貴様か」

 

「ふふ、ミネバ様を連れてこのアクシズを離れるつもりか。エギーユ・デラーズが協力者なのだろう? 地球にコロニーを落とすふりをして連邦とバルマーの目を引きつけつつ、その隙にこのアクシズからミネバ様をお連れする。実に大胆な真似だ」

 

「お前が我々の計画をやすやすと通してくれたお陰で、決行に至るまで実にスムーズだったぞ」

 

 ハマーンの知るエンツォなら、こうも言われれば表情を変える狭量さがあったが、目の前のエンツォは涼しい顔のままだ。

 

「そうか、それならば何よりだ。そして事がここに至ったならば、私のするべき事も決まっている」

 

 するとエンツォは拳銃の銃口を天井へ向けると脇に退いて、道を開けて見せた。親衛隊の誰もが怪しむ視線をエンツォにそそぐ中、ハマーンだけはそれをおかしいとは感じなかった。こうして対峙してからずっと、エンツォからは自分達への害意を感じられない。

 

「脱出の用意は済んでいるのだろう? ならば急いで行け。追手は少なくともこのアクシズからは出さない。可能な限りバサ帝国やバームへの連絡も遅らせはするが、あまり期待はしてくれるな。連中の目と耳をどこまで欺けるかは、流石に自信がない」

 

 まるでハマーン達の味方だと言わんばかりの台詞に、親衛隊の面々や女官が困惑する仲、ハマーンは目を細めて数年前に一度はクーデターを起こして拘束された男を見る。

 

「バルマー・サイデリアル連合との戦いで拘束を解かれた貴様がアクシズの主権を掌握し、降伏したのはやはりミネバ様、引いてはアクシズの中のジオンの(ともしび)を絶やさぬ為か」

 

「そうでなければ誰が異星人などに頭を下げるものか。あの時のアクシズの者達は、勝ち目がないと分かっていてもなお最後まで抗おうと血気に逸った馬鹿者が多かった。それではいかんと分かっていた者は、ハマーン、お前を含めてわずかだったろう。

 だから私がアクシズを掌握してラオデキヤに屈したのだ。全てはジオンという勢力を残し、ミネバ様のお命を守り、スペースノイドの独立という悲願を達成する為、あえて苦汁を飲み、屈辱に耐えたのだ!

 このエンツォ・ベルニーニ、腐ってもジオン公国の軍人である! 例え膝を屈そうともバルマー・サイデリアル連合帝国になど真の忠誠を捧げるものか!」

 

「だから我々の脱出を見逃すと?」

 

「そうだ。地球連邦は我々の想像をはるかに超えて強大になったが、それでもバサ帝国を相手にして勝てるかはわからん。だが、まったく勝ちの目がないわけでもない。そう判断したからこそデラーズ中将とお前達の計画に便乗し、ミネバ様の脱出を促したのだよ」

 

「ならばこうして私達の前に姿を見せたのは、見送りに来たとでも言うつもりか」

 

「見送りが理由の全てではない。ラオデキヤやイングラムへの連絡が遅れた言い訳づくりをしに来ただけだ。お前達が連れて脱出する市民の中に、私の妻と子が含まれていたのが理由の一つ」

 

(なるほど、エンツォの奥方は確かザビ家所縁の人物。我々が取った人質という名目の他に、バサ帝国に利用されるのを防ぐつもりか。相変わらず身内には甘い男だ。だがその甘さに助けられるとはな……)

 

 ハマーンの内心を知らず、エンツォは銃口を自分の腹へと向けて――

 

「そしてもう一つは脱出しようとしているお前達を見つけ、制止しようとしたものの力及ばず逃げられたというカバーストーリーの為だ!」

 

 誰かが止める前もなくエンツォは引き金を引いて、自分の腹部へ一発、二発と銃弾を撃ち込む。たまらずその場に崩れ落ちるエンツォだが、駆け寄ろうとする親衛隊を視線で制止すると壁に寄りかかり、息も絶え絶えに口を開く。

 

「なに、防弾ベストを着込んでいる。精々、あばらの、うぐ、三、四本が折れた程度、だろう。さ、さあ、早く行くのだ。わたし……が、連絡を遅らせたところで、ラオデキヤ、や、あのオルバンが……ぐっ、喜々として追手を差し向ける、ぞ」

 

「分かっている。ミネバ様を早くお連れせよ! エンツォ・ベルニーニ大佐、貴君の忠誠に感謝を」

 

「ふふ、ならば必ずやミネバ様を……」

 

 そこまで口にして、エンツォはついに耐え切れずに意識を落とした。アクシズの中には彼のシンパも少数存在しているし、予め手配もしているだろうからこのまま放置してもエンツォは死にはすまい。

 ハマーンにとってエンツォは穏健派の父マハラジャ・カーンが慎重であるのを良い事に、アクシズ内部で好き勝手した挙句にクーデターを起こしたろくでもない人物だが、少なくとも自ら汚名を被ってミネバを助け、侵略者に抗おうとした姿勢だけは評価しなければならない。

 

 エンツォに背を向けて再び駆け出したハマーンら一行は、準備万端整えられたサダラーンへと辿り着き、バサ帝国に獅子身中の虫として残る決意をしたごく一部を除いて、脱出に成功したのである。

 しかしながらエンツォが告げたようにバサ帝国からの追手に追いつかれ、準スーパーロボット級の機体を含む追手部隊を相手に苦戦を強いられている。

 

「ゴットン! 弾幕が薄いぞ、なにをやっているか!」

 

 マシュマーはハンマ・ハンマのメガ粒子砲とビーム砲でゼカリア三機と撃ち合いながら、副官のゴットンが艦長を務めるエンドラに指示を飛ばすが、ゴットンはゴットンで体当たりも厭わずに襲い掛かってくる敵機の迎撃に必死だ。

 メガ粒子砲とミサイルのみで武装しているエンドラは、近接防御火器の類が乏しく近づく敵機を追い払うのに一苦労する仕様なのも原因である。

 

「こっちも必死でやっていますよぉ、マシュマー様! トト少尉、エンドラを援護するんだ!」

 

 ガ・ゾウムに乗り込んでいた名門トト家の青年士官グレミー・トトは、世間知らずのお坊ちゃん然とした顔に緊張を走らせて、必死に接近してくるデイモーンとズバンザーにハイパー・ナックルバスターを撃ち込んで追い払おうと足掻く。

 

「あ、当たりません!」

 

「当てなくても追い払えればそれでいいんだ。撃ちまくれ!」

 

「はいぃ!」

 

 ようやく新兵と呼ばれなくなる程度に経験を積んでいるグレミーは、更に機体のミサイルポッドからミサイルを発射し、エンドラのブリッジに取りつこうとしていたメギロートを撃ち落とし、艦底側に回り込もうとするアンゲロイにハイパー・ナックルバスターを撃ち、休む暇もなく動き続ける。

 

「もう、もうもう! まだ居るの~? 喉が渇いたぁ!」

 

 一方で黒紫色のキュベレイMk-Ⅱのコックピットでは、十歳前後の幼い少女が戦場の緊張感を感じさせない声でないものねだりをしていた。

 アクシズで進められていたNTパイロットのクローン計画によって、生み出された第一号のエルピー・プルだ。高い機動兵器パイロットとしての素養を持つプルだが、内面は外見相応に幼い点が少なくない。

 パフェが食べたい、ケーキが食べたい、シャワーが浴びたい、と諸々の欲求を口にしつつ、襲い来る敵機を相手取る機体の動きに乱れがないのだから、プルのパイロットとしての能力の高さは本物だ。

 

「おい、プル。いちいち騒ぐんじゃない。通信を切っていてもこっちにはお前の思考が伝わってきて鬱陶しいんだよ」

 

 プルと背中合わせになって戦う赤いキュベレイMk-Ⅱには、プルシリーズ二号・プルツーが乗り、プルシリーズでも最高峰のニュータイプ能力と好戦的な性格とあいまって、プル以上の動きを見せている。

 もっともプルのあれがしたい、これが欲しい、という思考が戦闘中にも関わらず伝わってきてしまう為、プルツー以外の姉妹達も同様であった。

 

「だって、だって、本当にもうずっと戦いっぱなしなんだもん! プルツーだってそうでしょう?」

 

「……そりゃあそうだけれど」

 

 それはそうだし、プルツーだってパイロットスーツの中の汗を流したい欲求はある。お腹だって減っている。他の姉妹達も大なり小なり同意しているものだから、なおさら厄介だ。

 ハマーンのキュベレイの参戦により、一度は優位に立ったアクシズ側だが、ワープ機能を有するバサ帝国側は次々と戦力を結集させてきて、延々と続く戦いを強要されていた。

 もとより戦闘能力を持たない軍人の家族を、腹にたっぷりと抱えた輸送艦を含む艦隊だ。これを守りながら、疲れも恐れもない無人機の大群に包囲された状態で戦い続けるのは、歴戦の猛者でも根を上げる。

 ましてやアクシズのパイロット達の多くは、戦を知らぬ新兵が多いのだから。

 

 当然、それはハマーンをはじめ、一年戦争を経験している艦隊の司令や古参の艦長クラスも同様だ。可能な限りローテーションを組んでパイロットに休みを取らせているが、そろそろ限界も近い。

 その中にあってハマーンのキュベレイはまさに獅子奮迅の活躍を見せて、寄る敵は大型ビームサーベルで斬り捨て、遠い敵にはビームガンとファンネルの洗礼が浴びせかけて、凄まじい戦果を叩き出している。

 

「星の屑にも相当戦力を割いている筈だが、やはり我々の常識の通じる相手ではないか」

 

 ハマーンは今もレーダーに増え続ける敵機の数に、眉間に皺を寄せる。そうする間にもエゼキエルの胴を大型ビームサーベルで薙ぎ、その背後からエゼキエルを巻き込んで砲撃を放ってきたアドラティオにファンネルを飛ばして、四方八方から戦艦の装甲にも通用する高出力ビームが突き刺さって、瞬く間に轟沈させる。

 キュベレイに施されたサイコミュの齎す負担は極めて軽微だが、輸送艦とミネバの乗るサダラーンを守りつつ、さらに指揮をしながらの戦闘となればハマーンへの負担は大きい。

 

「この調子では他の艦隊も危ういな」

 

 差し向けられた追手はハマーンの居るこの艦隊を本命視して、もっとも質・量ともに優れた部隊が送られている。その分だけ他の艦隊の負担は小さいが、同時にハマーンの有無というものは戦力的に考えて、極めて大きい。

 無事に脱出できるかどうかは、厳しいと言わざるを得ないだろう。

 キュベレイもエネルギーはまだしも推進剤は補充しなければならないし、ハマーン自身も休息を取らなければならない。最強クラスのNTパイロットであり、超人的な精神力の持ち主だが、その肉体はあくまで人間の範疇に収まるのだから。

 敵の増援が途絶えるか、来るはずのない味方の増援が無ければ変えられぬ戦況は、幸いにも後者によって覆されることとなった。

 

「海兵隊の御到着だよ!」

 

 脱出艦隊の向かう先から放たれた高出力ビームがアンゲロイ二機をまとめて撃ち抜き、それを皮切りにビームとミサイルの嵐が次々とバサ帝国の部隊を撃沈して行く。

 

「なんだと?」

 

 想定外の事態に訝しむ状況に戸惑うハマーンは、サダラーンから回されてきた画像を見て更に困惑を深めた。

 地球圏側からトランザムブースターを使って急速に接近してきたのは、艦首に巨大なドリルを備えたスペースノア級参番艦クロガネ――リリー・マルレーン二世、更にクラップ級巡洋艦七隻から成る新生シーマ艦隊だ。

 

 トランザムブースターを搭載したSFSで先頭を進むのは、海兵隊仕様にカスタマイズされたゲシュペンストMk-II・M(マリーネ)だ。”M”が二つある事から通称は“ゲシュペンストM2(エムツー)”。

 更に省略してGM2(ゲムツー)と呼ばれた事もあるが、ジムⅡと被りがちという理由から呼ばれることは少ない。

 

 そして紫とカーキ色のカラーリングのゲシュペンストM2を駆るのは、アレスコーポレーション所属シーマ・ガラハウその人だ。

 地球圏でデラーズ・フリートと別れた後、アクシズを脱出するミネバらを支援する為、トランザムブースターを用い、艦隊規模で超加速を掛けてはせ参じたのである。

 

 いずれも歴戦のパイロットが操る新鋭機ゲシュペンストM2三十機超、スペースノア級を有する八隻の艦隊の参戦は、アクシズ側にとって何よりも待ち望んだ増援といえた。

 シーマはF2Wキャノンで敵機を散らしながら、サダラーンのブリッジにレーザー通信を繋げて、こちらの所属を明らかにした。

 

「聞こえるかい? こちらはアレスコーポレーション所属の傭兵部隊さ。雇い主の意向とエギーユ・デラーズへの義理であんたらを支援する!

 あたしらがやってきた航路を進みな。そっちは掃除済みさね。生かしたい相手がいるなら、うだうだ言わずに言ったとおりにおし。それとユーリ・ハスラー少将の艦隊とあたしらの同僚が、あんたらの他の艦隊の救援に向かっているから安心しな! 以上、通信終了!」

 

 正直に言ってシーマからすればアクシズという勢力や場所には、良い印象がない。一年戦争のア・バオア・クーで敗走した時、シーマ艦隊は戦争犯罪者、ジオン軍人の恥と散々に罵られた挙句、アクシズ行きを拒まれたのだ。

 そうしてシーマ達は海賊行為をして生活する事を強いられ、後ろ暗い時間を過ごしたのである。まあ、今となってはそのお陰でプルート夫妻やあのおチビちゃん達とも出会えたので、それほど強く恨んではいない。恨んではいないが腹立たしくはあるけれども。

 

「それにしてもあの白い機体、アムロ大尉やシャア大佐を思わせるねえ。アクシズにも相当に腕の立つニュータイプが残っていたか。それに周りの同型機もあんだけ贅沢にファンネルを使うとは、よっぽど後ろ暗い事をしていそうだねえ?」

 

 そう言うのはヘイデスと所長が第一に嫌うところだが、さてアクシズの連中の扱いはどうなる事やら。とはいえ、とシーマは舌なめずりをして意識を切り替える。

 

「誠実な依頼主から任されたお仕事さ。だったら誠意をもって臨まないとねえ」

 

 真っ先に突撃するシーマのゲシュペンストM2に続き、シーマ海兵隊のMS部隊が追手艦隊に恐れを知らぬ突撃を敢行して、戦況を覆すのだった。

 

<続>

 

■ゲシュペンストMk-II・Mが開発されました。

■キュベレイ(EOTカスタム)が開発されました。

■プル専用/プルツー専用キュベレイMk-Ⅱが開発されました。

■量産型キュベレイが開発されました。

■プルシリーズが量産されました。

 

■プルシリーズは元気です。

 

■ハマーン一派が真ジオン公国から離脱しました。

■ハマーン艦隊がシーマ艦隊と合流しました。




お久しぶりです。今回はその頃のハマーンとシーマ艦隊です。内心、アクシズ組に関しては不満のあるシーマ様ですが、関係良好な依頼主からの依頼なので誠実に対応する社会人です。

ひょっとしたらDSのようにシーマはターンXに乗るかもしれませんね。

追記
エンツォですが基本的に原作通り狭量で有能かと言われると微妙な人物です。
ただ本作では生存を最優先して再クーデターを起こし、どうにか生き残る道を求めました。また地球連邦の想像以上の戦力に光明を見出し、バサ帝国側に自分が、地球側にハマーンやミネバを残してどちらが勝ってもジオンが残る道筋を見出しています。
まあ、一番が自分の率いるジオンが地球連邦を打倒してスペースノイドの独立を勝ち取る事であるのは変わりありません。

追記2
プル隊の数をハマーン艦隊ではプル、プルツーを含めて四名に変更しました。
各艦隊に四名ずつプルシリーズが配属に変更した為です。


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第四十九話 女傑と女傑

前回のプル達の配置ですが、ハマーン艦隊にプル、プルツー、プルスリー、プルフォー、メイファ艦隊にプルファイブ~プルエイト、オードリー艦隊にプルナイン~プルトゥエルブまでが分散して配置に変更いたしました。


「教科書よりマシな動きをしているのがほとんどで、動けている連中はクセが強いねえ。それ以外にはいかにもニュータイプって動きだ。どうにも両極端な質の兵隊どもだ」

 

 シーマはヘルメットのバイザーに投影されるハマーン艦隊各機の動きを一通り見て、そのように評価を下した。マシな動きをしているのがマシュマーやラカン、ギーレン兄弟、ニュータイプな動きをしているのがプル姉妹やキャラである。

 

「それにしたってあの白いのは動きが違うが、周りの動きからして相当地位の高いパイロットが乗っているみたいだね!」

 

 シーマは操縦桿とフットペダルを巧みに操り、秒間十数回の操作で正面から浴びせかけられたビームの光弾を回避し、一瞬の停滞もしないまま愛機の右手に握らせたG(グラビトン)ランチャーから漆黒の返礼をくれてやる。

 長銃身から撃ち出された漆黒の重力の槍がゼカリア二機の胴体を圧壊させ、緑色の無人機はそのまま爆散して、シーマに撃墜スコアを献上した。

 新手に出現したシーマ艦隊を手練れと見做し、追撃艦隊の機動兵器部隊は疲弊を見せるハマーン艦隊を後回しにして殺到し始めている。

 

「はっ! こちとらゴロツキあがりでね。乱暴なやり方しかできないよ、招いてもいないゲストさん方!!」

 

 シーマが円熟した美貌に凶悪な笑みを浮かべた矢先、追手側のガ・ゾウム三機がMA形態で急速接近し、MS形態への変形に合わせてビームサーベルで斬りかかってくるのを、シーマは鼻歌でも歌い出しそうな気軽な調子で捌いた。

 大上段にビームサーベルを振り上げる正面のガ・ゾウムの胴体に、左のプラズマ・ステークを叩き込んで胴体を泣き別れにしてやり、その背後でビームサーベルを構えていた二機目にはGランチャーを撃ち込む。この間、一秒と経過していない。

 三機目のガ・ゾウムが下方からスラスターを細かく噴射しながら、弧を描いて腰だめにビームサーベルを構えて突き込んでくるのには、くるりとゲシュペンストM2を回転させ、その頭部を左足で思いきり蹴り飛ばし仰向けになったところで、ガ・ゾウムの胸を左肘のビームシールドで撫で切りにする。

 

「お前達、プロメテウスのエース共と比べりゃこんなのは赤ん坊の手を捻るようなもんだ。こんな連中を相手に機体に傷一つ付けてごらん。次のボーナスはなしだよ!」

 

「へい、シーマ様!」

 

「そいつぁ困るぜ、ボーナスが入ったらかかあに指輪を買ってやる約束なんだ」

 

「俺はガキにプラモデルを買う予定だぜ」

 

「あたしはヨツコシのデパートでブランド物を買い漁るのよ!」

 

 

 シーマ艦隊の荒くれ共からは正規の軍人からは決して返ってこないような答えがあり、シーマは頼もしい馬鹿どもだ、と笑ってティアマートの胸部にスプリットミサイル八発を命中させて、その巨体をガラクタに変えてやった。

 ゲシュペンストシリーズの中でも特に高性能なゲシュペンストM2、そして一年戦争から戦い続け、プロメテウスプロジェクトの怪物エース達ともやり合った歴戦中の歴戦パイロット達。

 

 この組み合わせによる三十機余りのMS部隊は、実質的な戦闘能力においては平均的な練度のMS部隊と比べれば五倍、あるいはそれ以上に相当しただろう。

 そんなシーマ艦隊の獅子奮迅の活躍を前に、若い士官の多いハマーン艦隊側は小さくない困惑に襲われていた。ハンマ・ハンマを駆るマシュマーも、操縦にミスこそ出さなかったが、困惑自体はしていた。

 

「あれは地球の同胞達からの援軍なのか!? 機体は連邦で採用されている機体のようだが、それにしてもなんたる技量!」

 

マシュマーの感嘆を他所に、グレミーは喜色を滲ませる。

 

「ゴットン様、これでなんとか助かりそうですね!」

 

 後年の野心を目覚めさせた頃には程遠い純真無垢な頃のグレミーは、いかにも良家のお坊ちゃんという笑顔でエンドラの指揮を預かるゴットンに話しかける。

 普通ならこんな内容で戦闘中に通信を入れるなというところだが、ゴットン自身も本気でもうダメだ、と諦めかけていたところなので、グレミーを咎める余裕がなかった。

 

「そうだな、そうだな。……いや、いいや、油断するな。まだ戦闘が終わったわけじゃないんだぞ。弾幕を絶やすな! ミサイルは撃ち尽くして構わないぞ!」

 

 この戦いが終わったら、実弾でもレーザーでもビームでもいいから、エンドラ級に機銃などの近接防御用の火器の増設かバリヤーなどの防御装置の実装を具申しよう、とゴットンは心の底から固く誓っていた。

 予定になかった援軍に浮足立つハマーン艦隊だったが、ハマーンは鉄の精神力で平静を取り戻してすぐさまサダラーンを始めとした各艦に指示を飛ばし、生き残る為の最善の策を選ぶ。

 ミネバが第一ではあるが、ハマーンとてむざむざ死ぬつもりはないのだから、自分を含めて一人でも多く生き残れる道があるのなら当然そちらの方が良いに決まっている。

 

「各艦は例の艦隊の知らせた航路に舵を取れ! 殿(しんがり)は我々が務める。マシュマー、ラカン、キャラ、イリア、プル隊各機は私に続け。アレスコーポレーションとやらの部隊と連携して追手の艦隊を足止めする」

 

 ファンネルを従僕の如く従えて、ハマーンは希望の見えた状況に各員となにより自分自身に喝を入れて、また数を増やした追手部隊に闘志をむき出しにする。

 バサ帝国にアクシズを制圧されるまでは、ハマーンもまた武力と政治を交えたスペースノイドの独立を考えていたが、地球連邦側の戦力であるシーマ達の動きを見れば、早計だったとこんな状況だがつい思わずにはいられない。

 地球連邦側の主力は偽りの星の屑阻止と地球上の敵勢力の対応に追われている筈だが、非正規部隊でこれだけの技量と規模を有する戦力が伏せられていたとあっては、他にも同様の戦力がある可能性を捨てきれない。

 

「そこの指揮官機、艦隊を預かるハマーン・カーンである。応答せよ!」

 

 ハマーンのキュベレイがプル達を引き連れてシーマのゲシュペンストM2に接近し、レーザー通信での通信を試みる。お肌の触れ合い通信を行うには、戦況が混沌としている。

 シーマはハマーンの名前が、アクシズの重要人物リストにあったのを思い出し、機体の速度をわずかに緩めて通信を受けた。

 

「わざわざすみませんねえ。ならずもの上がりなんで、口が悪いのにはご容赦を、ハマーン殿」

 

「咎め立てするような場面ではない。誰の手配した援軍かはわからんが、我々は感謝しなければなるまい」

 

「ふふ、あたしらの雇い主殿にも相応の下心はあるでしょうが、あなた方を悪く扱いはしないでしょう。立場の割には随分とお甘い方なんでね」

 

「ほう、ならば直接会って礼の一つも言わなければなるまい。その為にもまずはこの有象無象共を蹴散らしてからだ」

 

「その点は同意しますよ。わざわざ宇宙の向こうからやってきて、戦争なんざ吹っ掛けてくる連中だ。地球に手を出しちゃならんと高い授業料を払わせないと、釣り合いが取れやしない」

 

 それはアクシズの支配権を奪われ、こうして追われることになったハマーンにしても同じ考えだ。まだまだ地球圏内で勢力争いをしている時勢なのに、わざわざ外宇宙からやってきて余計な真似をしてくれたのだから、怒り心頭である。

 シーマとハマーンとが共闘態勢を取って敵機動兵器部隊に襲い掛かり、思う様に食い荒らしてゆくのに、海兵隊の面々は喜々として続き、ハマーン艦隊の面々は慌ててそれに続いた。

 

「あははは、そらランス、ニー、あたし達もハマーン様に続くんだよ! R・ジャジャをアイツらの返り血で染め直してやるんだよ!」

 

 現段階でキャラ・スーンは強化手術を受けていないのだが、MSに乗ると激しい興奮状態に陥り、言動がエキセントリックになる性癖は変わらない。

 そんなキャラには原作では強化後に監視役を兼ねたギーレン兄弟が部下となるのだが、今の内から部下となっているのは原作との縁というものかもしれない。

 

「キャラ様、周囲を良く見てください!」

 

「我らもお供いたしますので、突出なさいますな!」

 

 ランスとニーは胴体を赤と青に塗られたR・ジャジャに搭乗しており、対戦闘ロボなど大型機を想定したブースター付きのヒート・ランスで武装している。ノーマル装備のキャラ機と合わせたR・ジャジャ三機の小隊編成で、ハマーンとシーマに大急ぎで追従して行く。

 そこに援軍の手を借りなければ窮地に陥っていた事実に苛立つラカンも続いた。自らの技量に絶対の自信を持つラカンにとって、助けを必要としたこの状況が面白い筈もない。とはいえ――

 

「命拾いしたのも事実か。バルマーの連中め、このラカン・ダカランが必ずや報復してくれる!」

 

 ラカンは恥辱を燃料に怒りと憎悪の炎を激しく燃やし、手当たり次第に間合いに入ったデイモーンやズバンザー、メギロートへ銃剣付ビームライフルやフロントスカートに内蔵されたビームキャノンを次々と浴びせる。

 生の感情を激しく露出しつつも操縦に悪影響が出ないのは、流石は一年戦争を戦い抜いた歴戦の勇士たるものだった。

 勢いに乗ってバサ帝国の追手に反撃を加えるハマーン艦隊の激闘に、シーマは口笛の一つも吹いてやりたくなった。

 

「逃げ延びた連中の集まりがアクシズだったはずだが、なかなかどうして勢いに乗せりゃやれるもんじゃないさ。ふふ、総帥には良い報告が出来そうだ。それにそろそろ頃合いかね、コッセル!」

 

「アイアイ、マム! 機関全開、各砲座、照準をつけ次第ぶっぱなせ! 海兵隊の戦い方を見せるぞ!!」

 

 コッセルの号令に従って、リリー・マルレーン二世の艦首モジュール『対艦対岩盤エクスカリバードリル衝角』が勢い凄まじく回転を始める。

 リリー・マルレーン二世が加速を始めるのに同調し、クラップ級七隻も艦首に増設されたビームシールドとビームラムを起動し、VガンダムのリーンホースJrさながらの様相を呈する。

 シーマ艦隊の次の行動を予測したハマーンは、あまりの荒唐無稽な予想に口を閉ざす事が出来なかった。

 

「まさか、本気でやるつもりか!?」

 

「そのまさかさ! 見ときな、こいつが地球圏で生き残ってきた海兵隊のやり方だよ!」

 

「リリー・マルレーン二世ならびに艦隊全艦、全速前進! 突撃ィイ!!」

 

 超抗力金属で作られた超巨大なドリル、それに高出力のビームラムを構えた七隻の艦隊が、トランザムブースターに貯蓄したGN粒子を使い尽くす勢いで加速し、各砲座からメガ粒子砲と衝撃連装砲が四方八方に後先考えずに撃たれ、更にミサイル発射管からは新開発された弾頭が残弾を気にせずに撃ちまくられる。

 爪に火を灯して暮らすような節制を余儀なくされることもあった宇宙海賊時代では、とうてい考えられないとんでもなく贅沢な戦い方は、コッセルを始めとした各艦のクルーの脳内に大量のアドレナリンを分泌させていた。

 

 スペースノア級を先頭に敵艦隊に突き進むシーマ艦隊の行動は、頭のねじが外れたと言われても仕方のないものだったが、各艦がそれぞれ強固なビームシールドやEフィールドで艦体各所を守りつつ、全力で火器をフル稼働させて突っ込んでゆくものだから敵側の被害は加速度的に増して行く。

 更に敵艦隊と機動兵器に大きな被害をもたらしたのは、ミサイルに搭載した新型弾頭が、局所的な重力異常を引き起こすブラックホール弾頭だった事に一因がある。

 

 アドラティオ級やエンドラ級、ガルンロールを漆黒の球体が飲み込んで磨り潰し、圧壊させてゆく光景を他所にエクスカリバー衝角に巻き込まれた戦闘ロボやMSが原形を留めない破片に粉砕され、ビームラムから逃れられなかったティアマートがまとめて貫かれてゆく。

 シーマ艦隊による突撃の凄まじい突破力と破壊力は、仮に相手が旧作版エヴァンゲリオンの第六使徒ガギエルが相手であっても撃破が叶っただろう。ブライトもびっくりだ。

 

「よおっし、急速反転、土産を置いてトンズラこくぞ! シーマ様とロクデナシ共の回収を忘れんなよ!」

 

 リリー・マルレーン二世を筆頭に各艦は搭載したグラビコンシステムの恩恵もあって、慣性を重力制御で抑制しながら急速反転し、正面から突っ切ったバサ帝国艦隊の背後でくるりと向きを変えて見せる。

 無防備な背後を晒す事になったバサ帝国の艦隊に、一発一発がとてつもなく高価なマイクロブラックホールミサイルと主砲・副砲が容赦なく浴びせかけられて、艦列を乱されたバサ帝国の艦隊がおもちゃのように吹き飛んでゆく。

 

「艦長、各艦のブースター、GN粒子が尽きやすぜ」

 

「ようし、敵艦隊を追い抜いてから距離一五〇〇でブースターを切り離せ!」

 

 今度は背後からバサ帝国の艦隊を追い抜いたシーマ艦隊は、事前の指示の通りに機動兵器部隊の相手を務めていたシーマや海兵隊のロクデナシ共、ついでにハマーン艦隊のMSも回収し、その直後に各艦の艦尾から切り離されたトランザムブースターが凄まじい勢いで爆発し、追撃に入ろうとしていた敵艦と機動兵器を巻き込む。

 予めトランザムブースターに内蔵されていた高性能爆薬満載の爆弾は、その役目を無事に果たしたのだ。

 

 ハマーンは後方で盛大に発生する爆発の中に、バサ帝国の連中が飲み込まれるのを後方を映すモニターで確認し、更に戦闘宙域に満ちていた薄靄のような悪意が晴れたのを感知し、ようやくそろそろと息を吐いた。

 シーマのゲシュペンストM2と共にリリー・マルレーン二世に着艦した為、完全に肩の力を抜ける状況ではないが、それでも目の前のジオン訛りをわずかに含む女が敵対するつもりがないのは分かっている。

 

「救援には感謝しよう。それでこれから私達になにを求める?」

 

 シーマはハマーンが棘のある声音とはいえ、感謝を口にしたことに少し驚いた。戦場でのMSの動きを見るに、もっと強情なタイプの女性だと感じていたからだ。まあ、少しも気を許していないのは予想通りなのだが。

 総帥に初めて話を持ち掛けられた時のあたしみたいなもんかね、とシーマはハマーンの心中を想像してから口を開く。害意がないのを示すように、ゲシュペンストM2のGランチャーは愛機の右肩にもたせ掛けている。

 

「とりあえずあんた方をアクシズから逃がせられれば、デラーズへの義理立てはおしまいだね。他の二つの艦隊を含めて、仮の拠点を提供する用意も出来ているよ。そこで腰を落ち着けたら、後はあたしらの雇い主とちょいと交渉してもらいたいね」

 

「デラーズ、エギーユ・デラーズか。お前達は星の屑の協力者というわけだな。それだけではなさそうだが、地球に残ったジオンの者か?」

 

「ジオンに居る事も許されなかった下っ端さね。幸い、びっくりするほど誠実でお人好しな雇い主と出会えてねえ。それ以来蜜月の間柄で、デラーズ・フリートにもスパイのつもりで参加したんだけれど」

 

「……」

 

「おっと、そう殺気立つもんじゃないよ。デラーズはあたしが本気でジオンの為に戦っているわけじゃないってのは、すぐに理解してね。だからこそあんたらの脱出計画について、協力を仰いできたのさ」

 

「……お前達が動くのが忠義ではなく利益と悟ったからか」

 

「へえ、よくお分かりで。アクシズじゃ傭兵だなんだとは縁がないだろうに。まあ、そういうわけでね。デラーズからの頼みはあたしと雇い主双方に利益があると踏んで、こうしてあんたらを助けに来たわけさ」

 

「星の屑はどうなった?」

 

「さてね。あたしらはその途中でこっちに来たから結果は知らないよ。ただあんた方の脱出がバレていたんだ。だったら、デラーズがコロニー落としを失敗するつもりだってのもバレていたろうから、今頃は地球の周りで派手にドンパチやっているのが道理じゃないかい?」

 

「だろうな。ラオデキヤめ、流石に抜け目がない」

 

「まあ、あんた方の脱出で真ジオン公国の戦力と信用はガタ落ちさ。バルマー・サイデリアル連合に痛手を食らわせるのには成功したんだ。それは朗報だろう。アクシズから連れ出したかった方も連れ出せたんだから、デラーズも喜ぶだろうね」

 

「ならば良いがな。それでこれから向かう先はどこだ? ジオン共和国でも、いや、ジオン公国の残党である我らはジオン共和国だからこそ受け入れられまい。ドズル閣下やガルマ様の御心がどうであってもだ」

 

「デラーズが一年戦争からこっち潜伏していた拠点さ。他の艦隊と合わせて駐留して、とりあえず生活する分には困らないだけの設備があるよ。

 拠点名は“茨の園”だが、雇い主殿が色々と都合をつけて、いっぱしの軍事拠点になる予定さね。本物の金持ちってのは凄いから、あっという間にザビ家の姫君が居てもおかしくない御殿が出来上がると保証するよ」

 

 シーマが心から自慢げに言うものだから、ハマーンはニュータイプとしての感受性を抜きにしても、この女に心から信頼される雇い主とは何者なのかと疑問を抱く。

 

「ではこれから世話になるかもしれない相手の名前くらい、教えてもらっても構うまい。それと貴公の名前もな。おそらくジオンの関係者であろう?」

 

「これは自己紹介もせずに失礼を。あたしはシーマ・ガラハウ。以前はキシリア・ザビ閣下配下の海兵隊の一つを預かっていたしがない元中佐で、付け加えて言えばさんざん汚れ仕事をやらされたB級戦犯さ」

 

 シーマが敢えて自らの経歴を露悪的に伝えたのは、あのマハラジャ・カーンの娘であり、この艦隊の頭であるハマーンが、旧ジオンの恥部とも汚れとも取れる自分を相手にどんな態度を取るか図る為だ。場合によってはヘイデスに忠告しなければなるまい。

 そういった自分の考えに思い至り、シーマは自分が相当ヘイデスに入れ込んでいることに気付いて、心の中で小さく笑んだ。良い相手に巡り会えた、と素直に思える今の自分がシーマは嫌いではなかった。

 

「ほう。ならばそのようなお前達を抱え込む雇い主とやらは、大層な器量の持ち主でいるようだ」

 

 シーマはハマーンからの答えに流石に演技が上手い、と組織の長として及第点だと心中のノートに書き記してから、自慢の雇い主の名前を口にした。

 

「ヘイデス・プルート。プルート財閥の総帥様さ。一年戦争の時から地球連邦に多大な支援をしていた方だが、今もそれは一緒さね。総帥本人は正義の味方のスポンサーをやりたいって、口癖みたいに呟いているよ」

 

 そういや最近顔色悪くって心配だねえ、とシーマは心中でぼやいた。

 

<続>

 

■ハマーン艦隊がアクシズ脱出に成功しました。

■シーマ・ハマーン艦隊は“茨の園”へ向かっています。

■“茨の園”はプルート財閥によって改装予定です。立派になるでしょう。

 

●第三十一話 ハマーン・エグゾダス クリア後ヘイデス・ショップ

 

・エンドラ

・ガザC

・ガザD

・ガザE

・ガザW

・ガ・ゾウム

・ガルスJ

・ハンマ・ハンマ

・R・ジャジャ

・ズサ

・ドライセン

・ザクⅢ

・バウ

・リゲルグ

・量産型キュベレイ

・シュネー・ヴァイス

・トゥッシェ・シュヴァルツ

 




とりあえずアクシズ脱出組はこんな感じで。この世界のハマーンは共闘・味方ルートですね。よほどのことがなければ。

追記
イリヤ → イリア に修正。


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第五十話 カタルシスを、カタルシスをくれ byヘイデス

 宇宙で星の屑を巡る策謀と死闘が繰り広げられていた頃、地球上でも多くの侵略者達とスーパーロボット軍団との熾烈な戦いは続いていた。

 DCに参加するスーパーロボット軍団の拠点が多く存在する日本列島が、地球上で一、二を争う激戦区となってしまったのは言うまでもない。

 敵と味方とが着々と戦力を増やし、いくつかの大局から見れば小さな決着もあったが、同時に欧州に住む地球の人々は過酷な運命の只中にあった。

 

 欧州の地下に本拠地を置くミケーネ帝国と異次元からの侵略者ムゲ・ゾルバドス帝国が、欧州への大規模侵攻をほぼ同時期に行ったからである。

 DC地上部隊はバーム、ボアザン、キャンベル、ベガ、ミケーネの一部、百鬼、妖魔の相手を一手に引き受ける形で極東地区に拘束されていた為、大規模な戦力の応援を送れずにいた。

 

 地球連邦軍欧州方面軍はベルファストやオデッサ、アビアノといった有力な基地の他、プルート財閥の頭脳である所長とパンドラ・ボックスの保管されているエリュシオンベースといった民間施設を反撃の拠点として、二大勢力の侵攻に立ち向かっている。

 この時期、ティターンズ地上部隊は再編が進んでいる最中であった為、ミケーネとムゲの大侵攻に対応するのが遅れてしまったのは、間が悪かったとしか言いようがない。

 その代わりに侵略者達に立ち向かったのは通常の連邦軍とシャドウセイバーズのような特殊部隊、そしてデルマイユ公派とトレーズ派による内部対立が進んでいたOZである。

 

 既にダニのような形の戦闘空母とムゲ戦艦で構成されるムゲ帝国艦隊が欧州各地に降り立って、そのまま基地として機能し、地球側とミケーネを相手に日夜休む暇のない激戦を行っている。

 ミケーネ側も単体の戦闘能力が高い戦闘獣とそれを率いる七大将軍が、主君たる闇の帝王の威光を知らしめるべく欧州各地で暴れ回っているのだから、住人達は堪ったものではない。

 各地で発生した避難民の収容や壊滅したインフラの復旧に侵略者の撃退等々、地球連邦政府に掛かる負担は大きく、カラバとエゥーゴが協力体制を取ってくれているのは不幸中の幸いであった。

 

 内部抗争の矛を一旦収めたOZに話を向けると、トレーズは高貴なる者の義務を、そして軍人としての義務を果たす為に人類最高峰の知略と武力、カリスマの全てを動員して、恐るべき侵略者との戦いに注力している。

 そしてデルマイユ公もまた地球圏で三指に入る巨大財団総帥に相応しい能力と人脈、そして古き青き血を継ぐ貴族としての誇りと責務を原動力に、精力的に行動していた。

 父祖から受け継いだ鉄と血の果てに得た土地と文化、歴史を守る為に古老はその老練な手腕を思う存分に発揮している。孫娘も驚くほどの活躍ぶりだ。

 

 ジャミトフとバスクの間で連携の取れていなかったティターンズと違い、持てるポテンシャルをフルに発揮したOZでも、ワープ技術をはじめ基本的な技術力において上回る二勢力を相手に勝利を得るのは至難の業だった。

 これはそんな欧州戦線のとある一幕である。

 ある都市を襲撃したミケーネとムゲの両軍を相手に住民を避難させる為に、OZの部隊は連邦軍と連携して必死に足止めを行っていた。

 

 準スーパーロボット級の戦闘獣にも有効なドーバーガンを装備したリーオーやトラゴス、エアリーズといった既に旧式扱いされているOZの機体と連邦軍のゲシュペンストMk-II、ジェガン、ジェムズガンらが肩を並べてとにかく持てる火器を撃ち続けて必死に戦線を支えていた。

 連邦軍が次々と新型MSやゾイドをロールアウトさせる傍らで、OZもまた開発した新型機を戦線に投入している。

 

 大気圏内外両用の可変型MSトーラスだ。

 原作ではMDでの運用時、有人機のリーオーを相手に猛威を振るい、またガンダムW最強パイロット説もあるルクレツィア・ノインの愛機としてのイメージもある機体だろう。

 音速の数倍で戦闘するエアリーズを上回る機動性に、直撃させればガンダニュウム合金も破壊可能なカートリッジ式ビーム砲“トーラスカノン”で武装した本機は、有人機は指揮官を優先に、その他はMD運用で戦線に投入されている。

 

 超人将軍ユリシーザーと猛獣将軍ライガーンの率いる超人・猛獣型戦闘獣とムゲのゼイ・ファー、ドル・ファーというおなじみの兵器が戦っているが、個々のスペックでは戦闘獣側に軍配が上がる。

 超合金Zを容易に破壊する攻撃力を持つのが戦闘獣であるから、それも当然と言えば当然だろう。質で勝るミケーネと数で勝るムゲの戦いに巻き込まれぬようにと、OZ側は薄氷の上を歩くような緊張感と恐怖を強制されている。

 

「くそ、化け物同士で好き放題に暴れて!」

 

 そんな中、一機の機体が航空機形態のトーラス三機を引き連れて、パイロットの悪罵と共に必死に戦い続けていた。

 両肩に接続された大型のバーニアに右肩にアタッチメントで接続されたドーバーガン、左肩にはビームシールド発生器を内蔵したラウンドシールド。

 ガンダニュウム合金で作られた機体は、兵器らしからぬ白で統一され、頭部は中世の騎士の如きバケツヘルムもといグレートヘルム型だ。

 

 プルート財閥の善意によって返却されたトールギス一号機を解析・再設計し、エースパイロット用にある程度デチューンして開発した量産型トールギスと言える機体だ。

 トールギスをデチューンして量産機としたのは本来リーオーの立ち位置なのだが、リーオーでは力が不足しているのは明白で、そうした経緯から開発されたのがこのテウルギストだ。トールギスの名前の由来である降霊術師を意味する単語である。

 

 トールギスよりデチューンしたとはいえ、それでも乗りこなせるのは限られたエースパイロットで、少数が生産されているに留まるテウルギストを預けられたこのパイロットが優秀なのは疑うべくもない。

 その腕前は、ヘリ型の戦闘メカであるドル・ファーの編隊から発射されたミサイルを掻い潜り、テウルギストの左手に持たせていたメガ・ビームライフルの反撃の連射で返り討ちにしたことからも分かる。MDさながらの正確な射撃だ。

 

 そこからさらに8G超えの加速をして、都市の空を我が物顔で戦っている戦闘獣達へドーバーガンと引き連れたトーラス達のトーラスカノンを撃ち込んで、溜め込んだ鬱憤を叩き込む。

 いくつか生じた大きな爆発の中から飛び出してきた敵機を視認し、パイロットは舌打ちをしながらメガ・ビームライフルを腰にマウントしてビームサーベルを抜き放つ。

 

「かかってこい、こらあ! この土地から叩き出してやる!」

 

 このパイロット以外にもテウルギストを与えられた手練れ達、そしてOZの誇るエースであるゼクス・マーキスはトールギス一号機を駆り、この都市ならず欧州戦線各地を転戦して激闘を重ねている。

 両勢力との戦いで徐々に追い込まれている連邦軍とOZにとって助けとなったのは、MDだった。

 人員の損失を考慮する必要がなく、大量に用意できる特性からOZ内部の反対意見を押し切って大量に生産され、今日に至るまで戦線へ投入されていた。

 

 テウルギストのパイロットばかりでなく、この都市撤退戦のあちこちでトーラスから果てはリーオー、エアリーズにも搭載されたMD達は後方からの指示に忠実に従い、撃破されるのもいとわずに戦っている。勇猛果敢とも使い捨ての道具とも見える戦い方だ。

 この時のテウルギストのパイロットも、量産型のグラシオスを始めとした戦闘獣――オリジナルだったら負けていただろう――とムゲの兵器を相手に、MD制御のトーラスを大いに頼って戦って、かろうじて撃破するのに成功している。

 

「はあ、はあ、なに撤退? 避難は出来ているけれど、まだ距離が足りない! ここで私達が退いたら、あっという間に追いつかれる! まだ戦わないとだめじゃない!!」

 

 後方から伝えられた撤退の指示は、これ以上の戦力損耗が今後の戦略に大きな影響を齎すものである以上、妥当だとパイロットも認めるところだが、避難民に被害が及ぶ可能性を許容できない。

 それでも繰り返し発せられる撤退命令と既にその命令に従って下がり始めている友軍、その代わりと言わんばかりに接近してくる敵機の反応に、パイロットはヘルメットの中で血が出るほど強く唇を噛む。

 

 ここで自分一人が命令違反を犯して戦ったところで、助けられる命があるかどうか。彼女だって自分の命は惜しい。それでも軍人としてここは戦わなければならない場面ではないのか?

 宝石よりも貴重な数秒という時間を消費しても決断を下せないパイロットを他所に、彼女に付き従っていたトーラス達がユリシーザーとライガーン、そしてデスガイヤーの搭乗するザンガイオーが激突している戦場の中心に向けて、命令もしていないのに移動し出した。

 

「ちょ、なによ、止まりなさい! そんな指示は出していない!」

 

 この時、この戦場で命令を無視して独自行動に移ったのはMDの中のごく一部だった。それらは一斉に敵指揮官同士の戦いに介入するべく進路を取り、並みのMDとは一線を画す動きで道中を阻む戦闘獣と戦闘ロボットにトーラスカノンを撃ち込んでいった。

 トーラスを動かした彼あるいは彼女達には、かつて宇宙で聞いた親しい人の言葉がリフレインしていたのかもしれない。

 

 ――『■■■■、人を救え』

 

 もしこの時、アムロやクワトロ、ヤザンといったプロメテウスプロジェクトのメンバーが命令違反を犯してまで人を救おうと動くトーラス達を見たなら、まるで昔のゼファーのような動きだと感じただろう。

 都市撤退戦にて命令違反を犯し、全機撃墜されるまで戦い続けたのと引き換えに敵指揮官に痛打を浴びせ、見事、避難民の完全離脱の時間を稼いだトーラスは全十四機。

 このトーラス達に搭載されていたMDは一年戦争終結後の混乱に紛れてコピーされたゼファー・ファントム・システムをベースに改良・開発された特別仕様であったことが後に報告されている。

 そして報告されなかった事実の一つとして、テウルギストのパイロットであった女性は、かつてゼファートールギスによって救われたリーオーのパイロットだ。彼女は二度、ゼファーによって命を救われたのであった。

 

 

「……以上が欧州戦線の現状ですか」

 

『ああ、大変に厳しい状況にあると言う他ないな』

 

 ヘイデスはすっかり慣れ親しんだ極東支部の一室で、岡長官やゴップを始めとした連邦の高級将校らと今後の地球圏の情勢について会談を行っていた。目下、激戦区は日本を中心とした極東地区と欧州だ。

 

「プルート財閥のエリュシオンベースをはじめ、各地のシェルター建設やアレスコーポレーションからの戦力提供がなければ、更に被害は拡大していたでしょうな」

 

 岡長官がおべっかなどではなく、純粋な事実を口にする。一企業としてはあまりに過剰な戦力を有するプルート財閥だが、今回はそれが功を奏している。

 例によって未来が見えているかのように万事に有効な手立てを打っているヘイデスに、参加者の何人もが理解の及ばない何かを見る目をしているが、ヘイデスからすればスパロボ時空なんだからどれだけ備えたって、足りないんだよ! と不貞腐れたいところだ。

 

「Drヘルが古代ミケーネの遺産を悪用していましたから、ミケーネが復活するなら欧州が戦場となると予測するのは容易でしたよ。剣造博士からの調査報告書は連邦政府も把握していらっしゃるでしょう?

 ましてや我が財閥の本拠地はギリシャです。当然、防備を厚くしておくものです。とはいえ本当に懸念が現実のものとなると、思った以上に肝を冷やしましたよ。

 エリュシオンベースに襲撃があったと知らせを聞いた時には、息をするのを忘れました」

 

 エリュシオンベースには、黒の叡智(安全仕様)ことパンドラ・ボックスという切り札が保管されているのもそうだが、やはりヘイデスにとっては最愛の女性の身が危険にさらされたという事実の方が肝を冷やした。

 幸いアルジャントリオをはじめ、連邦軍の重要拠点並みの戦力と防衛設備を有するエリュシオンベースは幾たびかの襲撃を乗り越えて健在である。

 なにかあったらヘイデスばかりかシュメシ、ヘマー、フェブルウスがどんな反応を示すものか。

 

『君の愛妻家ぶりは良く知っているとも。奥方になにかあれば君がなりふり構わず復讐に走るのではないかと気を揉んだよ。冗談ではなく本当に』

 

 言葉通り本気で心配していたらしいゴップに、ヘイデスはその通りだと自分でも思ったから、反論の言葉は口にしなかった。その代わりに欧州戦線で本格的に導入されたMDについての報告書に改めて目を通す。話を逸らしたとも言う。

 プレイヤー部隊と敵対するガンダム系勢力の使うケースが多いMDだが、いざスパロボ時空の世界に生まれた身としては、次々とやってくる敵対勢力を相手に人員の損失を気にしないで済むMDは有用だと認める他ない。

 まあ、敵勢力は普通に人工知能搭載のロボット兵器を投入してくるし、戦争がゲームになる云々と言っていられる状況でもない。なにしろ人間対人間ではなく人間対異種族ないしは地球人対異星人という構図と規模なのだから。

 

「それにしても命令を無視したMDが、よりにもよってゼファー・ファントム・システムを利用したものですか。逆にそれなら納得がゆきますよ。

 一年戦争の頃からゼファーはシステムでありながら勘のようなものを発揮してきましたし、人命救助を第一にしていますからこういう風に行動するでしょうよ。

 後方からの指示に従って動くMDと現場で自己判断する自律可動式のゼファー・ファントム・システムの差異もありますが、MDとはモノが違います。ツバロフ技師がやったのか他の技師がやったのかは知りませんが、カインズ博士達が怒りそうな真似をするものです」

 

 連邦軍も連邦軍でSガンダムにALICEなんて代物を乗せているけどさ、とヘイデスはスーパーファミコンの第4次スーパーロボット大戦でSガンダムやEx-Sガンダムを使って遊んだ記憶を思い出していた。

 ブラッドテンプルと戦えたり、水中に居るドラゴノザウルスを相手にライラがケンプファーを持ってこいと命じたり、ヒュッケバインがやたら強かったという記憶も連鎖して思い出される。

 

「総帥の言う通りDCとして活動する以前から、ゼファーはかなり柔軟な自己判断を行っているな。だからといって命令を無視してまでとなると、ゼファータイプのMDは今後の運用について危険視されるだろう」

 

『命令に忠実な機械であることがMDの長所なのだからね。岡長官の言う通りになるだろう。ただ今回の欧州危機からも分かる通り、連邦軍の手の回り切らないところをMDをはじめとした人工知能で補う動きが進む可能性は高い。

 ミノフスキー粒子をはじめ、各種の通信妨害技術がある以上は、MDの運用も想定程広く行えないだろうが、前線の兵士達の負担を減らせれば御の字だ。

 もっともティターンズの片付く目途が立ったところで、余計な火種を撒いてくれた厄介者共も居るがね。そちらのせいで上層部にも現場にも余計な負担が増えたよ』

 

「クロスボーン・バンガードとホワイトファングですね。コロニーの独立ならびにコロニー国家コスモ・バビロニアの建国を標榜していますが、現状、地球連邦と本気で腰を据えて戦う姿勢は見せていませんね。

 サイド4のコロニー駐留軍とも本格的な戦闘は極力控えて、コロニーの住人に被害が出ないように戦っていますし、この混乱に乗じて独立国家としての体裁と実権を得るのが目的でしょうか?」

 

『それで済めばよいがね』

 

「と申しますと?」

 

『彼らの狙いには当然それも含まれているだろうが、彼らは新たなスペースノイドの思想になろうとしているのだよ。象徴化、信仰と言い換えてもいい』

 

 ゴップの言葉にヘイデスは一度口を噤み、老獪な軍政家が何を言わんとしているのかを察する。おそらく間違ってはいまいとオリジナルヘイデスの明晰な頭脳は判断していた。

 

「コロニー指導者ヒイロ・ユイとジオン・ズム・ダイクンのニュータイプ思想に取って代わるコスモ貴族主義思想ですか。

 ジオン公国はジオン共和国となり、ザビ家の血筋は地球連邦との協調姿勢を見せ、ダイクンの血筋は父の跡を継ぐことを考えておらず、ダイクン派と呼ばれた人々は財力や権力を一部残しつつもそこまで大それたことを行う力はない。

 ヒイロ・ユイの思想を受け継ぐ方達はいらっしゃいますが、その中でも特に過激なのがホワイトファングのカーンズ氏ですね。

 新旧の思想を融合し、新たなスペースノイドのムーブメントとなる事で、戦後により有力な立場を確保しようとしていると?」

 

『彼ら単独では侵略者を相手に生き残れないから、こちらと本格的に事を構える愚は犯さないのだろうさ。戦中はあくまでスペースノイドによるスペースノイドの為の自警団程度に振舞って、スペースノイドの味方、救世主だと印象付けるのに腐心しよう。

 厄介なことだよ。こちらもクロスボーンを相手に回す戦力の余剰はない。なにしろ彼らは自警団どころではすまない戦力を保有しているからね』

 

 地球連邦軍の総力を考えれば、クロスボーン・バンガードとホワイトファングの連合とはいえ、そこまで厄介な相手ではない。一年戦争時のジオン公国を相手にするよりもよほど楽だ。

 

「彼らが保有する独自のMSと艦艇は、どうやら優秀なようですからね。装備を見るに対ビームシールドを想定しているのと、コロニー内での戦闘を想定して被害が出にくいように配慮されています。機体の性能それ自体はジャベリンクラスといったところですか。

 調べた限りでは機動兵器は最大で二百前後、加えて厄介なのがホワイトファングにウルカヌスを奪取された点です。ツバロフ技師やデルマイユ公はさぞやお怒りでしょう」

 

 ウルカヌスとはMDの開発者であるツバロフが廃棄コロニーを利用して作り上げた、MD製造プラントだ。元はガンダムWの外伝漫画に登場した代物で、内部の資材を用いれば四百機以上のビルゴを製造可能という代物だ。

 ホワイトファングは原作で月面のMD生産工場を制圧したが、この世界では月面が魔境であった為、こちらを諦めてどうにかしてウルカヌスの情報を得て稼働したばかりのコレを奪取し、クロスボーン・バンガードに合流したのだった。

 

『ふむ、相変わらず君の情報網は恐ろしい程だな』

 

 ゴップはこの場で口にこそしなかったが、ヘイデスがクロスボーン・バンガードの大元であるブッホ・コンツェルンに対して、何年も前から商売敵の範疇を超えた対応を取っていたのを掴んでいる。

 まるで彼らが武力蜂起を起こす未来を知っていたかのような行動は、ヘイデスの能力を良く知るゴップをして空恐ろしくなる。ヘイデスからすればただの原作知識です、と気まずそうに視線を逸らしただろう。

 

「たくさんの社員を抱えていますし、色々と手を広げていますから、彼らを路頭に迷わせない為にも情報の価値はとても重いのです。もっとも、閣下を相手に偉そうに言えたものではありませんね。

 さて、サイド4を我が物顔で制圧している彼らにしても今回の複数の侵略者の襲来は予想外で、事前の計画は大破綻したに違いありません。

 そこからどうにか目的を叶えようとして博打に打って出た結果、現在の状況に落ち着いたと解釈してよろしいかと愚考致します」

 

『マイッツァーやカーンズが地球人は勝ち残ると信じている、と皮肉を込めて前向きに解釈しておこうか。そうそう、君のところで味方をしてくれそうな相手を見つけたのだろう? お嬢様方のご機嫌は如何かね?』

 

 ゴップの発言を受けて、一年戦争ではジオンと戦った岡長官が複雑そうな表情でヘイデスを見る。相変わらずゴップの耳は早い。ヘイデスは降参だと言わんばかりに肩を竦めて、手元の端末を操作してアクシズを脱出した艦隊の戦力を表示する。

 

「真ジオン公国から離脱した旧ジオン系の勢力ですが、便宜上アクシズと仮称します。アクシズはミネバ・ザビを頂点にハマーン・カーンが摂政として統率する勢力ですが、現在は三手に分かれて脱出した艦隊を再度合流させている途中です。

 戦闘艦艇だけでおおよそ三十隻あまり。機動兵器は二百五十ほどと報告を受けています。兵の質は少々心もとないですが、一年戦争以来のベテランや独自に研究を進めていたニュータイプ関係の人材は高い能力を示しています。研究それ自体は不愉快極まりない内容ですが。

 現在はデラーズ・フリートが潜伏していた拠点を提供し、そこに合流してもらう手筈になっています。一応、私のところが窓口代わりになっていますが、連邦としてはどう扱うおつもりなのですか?」

 

『なに、ザビ家が率いたジオン公国は正式に敗戦を受け入れて、今やジオン共和国となっている。生き残ったガルマ・ザビ氏は共和国の大統領としての職務に忠実で、デギン元公王も事を起こす気力はない。ドズル・ザビ元中将はいまも昏睡から目覚めず。

 ハマーン・カーンとミネバ・ザビがジオン公国の残党であることを辞め、ジオン共和国に恭順すれば大きな問題はないよ。細々とした問題が残るだけさ』

 

(その細々とした問題を大きく変えかねないんだよなあ、地球連邦。うーん、スパロボならハマーンが地球連邦の議員になったり、キャスバルがコロニー連合国家の初代大統領になる展開もある。この世界ではどう転ぶか……)

 

 キャスバルもといシャアもといクワトロは、妻子あり、現場で機動兵器部隊の指揮官とパイロットをやればいい現在の状況を気に入っているだろうから、よっぽどまずい事にならなければ、逆襲を始めたりはしないだろう。

 タカ派と言えるハマーンらにどうにか地球連邦に恭順するように説得しろ、と暗に言われているような気がして、ヘイデスはクワトロやムンゾコロニーのガルマ、デギン、ドズルらに丸投げしたい気分になっていた。

 こうもはっきりと外宇宙勢力の脅威が明らかになったのだから、地球人同士で争う展開にはなるまい、と言えないのがスパロボ時空の業の深さである。ヘイデスはまた重荷を背負ったなあ、と苦いものを飲み込んだ。

 

「ではミネバ姫やハマーン閣下に、アースノイドへ好印象を抱いていただけるように尽力いたしましょう。ジオン共和国の方にも協力を仰ぎますが、連邦軍と連邦政府にある程度の御助力をしていただけるものと期待いたします。よろしいですね?」

 

『ふふふ、民間人の君が貢献してくれるのだから、それに見合う努力をこちらもさせてもらうとも。それと君のところのDCだが宇宙と地上の部隊が合流する予定だと聞いたが、確かかね?』

 

「ええ、星の屑の件もとりあえずは片付きましたし、宇宙に上げた部隊を地上に降ろして各地の火消しに活躍してもらう予定です。ただエゥーゴ組に関しては、艦の刷新などもあって少しだけ別行動になります。

 欧州の事もありますが一度、地上にはびこっている敵対勢力を叩いて、一時でも平静を取り戻す必要があるかと思います」

 

 DCの宇宙・地上部隊が合流すればその戦闘能力は同規模の部隊の中では、ぶっちぎりで地球最強と呼ぶに相応しくなる。

 エゥーゴ組が遅れての合流とはいえ、それでもなお数多のスーパーロボットに最高クラスのエースとMSを擁する部隊は、敵対勢力にとって恐怖と絶望の権化と成り得る。

 宇宙と地上どちらも戦力を増した部隊を合流させ、極東方面で暴れる敵対勢力を一蹴後、欧州へと向かって現地の方面軍とOZ、アレスコーポレーションと協力し、ミケーネとムゲの戦力を徹底的に叩く作戦は既に立案され、岡長官を含めた連邦参謀本部で検討が重ねられている。

 

 その間、まだグリプスに引き籠っているバスク派のティターンズやクロスボーン・バンガードが、余計な真似をしないのを祈るばかりだ。

 そうでなくてもアインストの出現や明らかに偽物であるイングラムの存在もあって、ヘイデスはここで一発ドカンとスーパーロボット軍団の活躍を見て、カタルシスを感じたい精神状態に陥っていた。

 愛妻の無事は確認できているとはいえ、まだ欧州が激戦区であるのも彼の精神に多大なストレスを掛けている。

 

 明るい材料としてはバーム、ボアザン共に一枚岩でないと知れたことがあげられる。

 バームからはガーリィ・ハレックやオルバン大元帥の甥であるメルビ、スパロボ未登場の和平派リーダーのバランドークと言った面々と接触し、バサ帝国の尖兵となったオルバン大元帥と対立する和平派と手を結ぶのに成功している。

 ボアザン関係では和平派のダンゲ大将軍の救出と彼を慕う剣闘士ギルオンの救助などにも成功しており、スパロボ補正らしい影響が出ている。彼らの生存がどれほど影響を与えるかは分からない。

 だがこの世界ではリヒテルは地球侵攻に消極的だし、バーム関係では原作より良い結果を出せる光明が差し込んでいる。

 

「ミケーネに百鬼、妖魔あたりは地球産ですから、ここいらでしばらく立ち直れないくらいの大打撃を与えてやりたいですね。こちらも用意できる戦力は全て投入します」

 

 この時、ヘイデスの脳裏にはトミイ・タカラダ氏から完成の報告が届けられた超ド級決戦ゾイド二体の存在がちらついていた。あれ、暴走しそうで怖いんだよなあ、という一抹どころではない巨大な不安を伴うのが、運用にあたる最大の欠点だが。

 デスザウラー、そしてデススティンガー。アニメ版に出てきた百メートル単位のシャレにならない巨体と質量、化け物じみたエネルギーを併せ持ったまさに破滅の魔獣達。

 それはそれとして例え隠しユニットでも、アレらを味方で使えるというだけでも、セールスポイントになるな、と思うあたりはスパロボのプレイヤーらしい発想だったが。

 

 

「目覚めよ、目覚めよ、ガルーダ」

 

「むう、誰、だ。誰が、私を……俺を呼ぶ? 俺はコンバトラーVに、葵豹馬に敗れたはず……」

 

 自らの分身ビッグガルーダに乗り込み、コンバトラーVと勇戦した果てに敗れた大将軍ガルーダは呼びかけられる声に、暗黒の淵からゆっくりと意識を覚醒させた。

 ゆっくりと瞼を開いたガルーダは自分が金属製の寝台の上に乗せられ、そして腰から下がなく皮膚の下から剥き出しになっている機械の体内に、無数のチューブが繋がれているのを見た。

 それは自分が生粋のキャンベル星人ではなく、アンドロイドに過ぎないという辛い事実を改めて突きつけてくる光景だった。

 

「くっ」

 

 思わずガルーダは瞼を閉ざして、修理されている途中の自分の体から目を逸らした。

 

「ホッホッホ、どう目を逸らしたところでお前の体が機械仕掛けである事実は変わらんのにのう。わしみたいに悠然と受け入れるのが度量の見せ所よのう」

 

「誰だ!」

 

 周囲を明滅するモニターや金属製の壁と床で囲まれた部屋の中で、でっぷりとした体形の巨漢がガルーダをニタニタと不愉快な笑みを浮かべながら眺めている。

 ガイゾックの指揮官ブッチャーだ。リモネシア共和国沖の戦闘以来、所在不明だったこの男が、敗北したはずのガルーダを回収した張本人であるらしい。

 

「わしの事はガイゾック一のイケメン指揮官キラー・ザ・ブッチャーと覚えておけ。気軽にブッチャー様と呼ぶが良いぞ。ほっほっほ」

 

 ガルーダをあざ笑うブッチャーだったが、彼もまた無事ではなく体のあちこちの中身がむき出しになり、天井から伸びたロボットアームによる修理を受けている最中だった。

 ブッチャーは元々は痩せた惑星に住む蛮族の出身で、ガイゾックの神に見出された後に体を機械へと置き換えられたという素性の主なのである。

 

「ガイゾックだと? 文明の破壊者達がこの俺になんの用だ!」

 

「わしとしてはお前なんぞ放っておいても良いのじゃが、我らがガイゾックの神がお前に関心をお寄せになったのだ。今、わしらがおるのはお前達が使っておった地下の基地よ。そこにバンドックを寄港させて、設備を利用させてもらっている」

 

「オレアナ城を? またここに戻ってくるとは。ではオレアナはどうした? お前達が始末したのか?」

 

「あの人格を移植したコンピューターならば地球人共に倒されたわい。お陰で楽々とこの基地に侵入できた。キャンベルの後任の連中がやってきているが、別の拠点で地球人と戦っているでな、こちらには気付いておらんぞ」

 

「そうか。ならば豹馬がやったのだろう。それで俺を蘇らせてなんとする。このガルーダ、例えこの体が造りものであろうと、人形の如く利用されることはない!」

 

 もはや失うものは己の命のみとなったガルーダは、残る矜持のままに啖呵を切る。それをブッチャーは負け犬の遠吠えとばかりにせせら笑うが、次にこのメンテナンスルームに響き渡った声に、薄ら笑いを引っ込めて可能な限り平身低頭する。

 

「そこまでにせよ、ブッチャー」

 

「は、ははあ! 我が神よ」

 

「貴様がガイゾックの神か」

 

「こら、貴様、神に対して口の利き方がなっとらんぞ!」

 

「ブッチャー」

 

「へへえ、ただいま黙ります!」

 

 ガイゾックの神は姿を見せず、声だけを響かせてガルーダに語りかけてくる。

 

「大将軍ガルーダよ、お前を修復したのはガイゾックの戦力強化の為。その為に聖なるバンドックへとお前を招き入れ、その破壊された体とメモリーを修復したのだ」

 

「俺をスカウトするつもりか?」

 

「そうだ。キャンベル星人もまた地球人同様に抹殺の対象だが、お前はオレアナの下を離れ自らの意志で戦った。キャンベル星人でもなければ地球人でもない存在。故にお前の力に注目したのだ。このオレアナ城を利用するにあたり、お前の知識も有用である」

 

「ふん、だが俺は貴様の部下になるつもりなど欠片もないぞ。俺は俺の為にのみ戦う!」

 

 ガルーダは生殺与奪の権利を握られた状態でも臆さずガイゾックの神に告げ、それを耳にするブッチャーは怒りと恐怖で震えていたが、ガイゾックの神はガルーダの答えを予め見越していたようだった。

 

「ならばお前に再びコンバトラーVと戦う機会を与えよう。コンバトラーVと戦うのならば、奴らに味方する地球人達とも戦わなければならない。そいつらもまとめて戦えるとは、お前とて口には出来まい」

 

 コンバトラーVのみならずあのDCという部隊には、いずれも劣らぬ強者が揃っていて、さしものガルーダも単身で戦いを挑めば結果がどうなるかは火を見るよりも明らかであったから、口を閉ざさざるを得なかった。

 

「これは命令ではない。大将軍ガルーダ。取引だ。お前の力と将器と我々の提供する戦力による取引だ。ガイゾックは地球人殲滅の為に、お前はコンバトラーVと再び戦う為に手を結ぼうではないか」

 

「……いいだろう。だが俺を二度と大将軍ガルーダなどと呼ぶな。俺がキャンベル星の最高司令官だったのは、愚かな操り人形だった頃の話。今の俺はただのガルーダなのだからな!」

 

「ならばそのように取り計らおう。ガルーダ、ブッチャーよ。今は修理に専念するがいい。そしてこの基地の設備を掌握した後こそお互いの目的の為に戦うのだ」

 

<続>

 

■量産型トールギスことテウルギストが開発されました。

■モビルドール・タイプ・ゼファー・ファントムが開発されていました。

■スペース・アーク並びにレアリーらが加入していました。

■ホワイトファングがウルカヌスを手に入れました。

■ガルーダがガイゾックにスカウトされました。

■ガイゾックがオレアナ城を占拠しました。

 




ボアザンとかキャンベルとかどうにも基地の名称が分からないのです。
オレアナ城とかレッド・ゾーンとかは調べて分かり増したが、女帝ジャネラの三面鬼岩? とかどういうビジュアルなのか調べても出てこなくって。

また今回が今年最後の投稿になるかと思います。
まさかここまで長く続くとは、そしてご愛顧いただけるとは夢にも思っていませんでした。たくさんの感想を頂戴して、ものすごく嬉しくて、それが原動力となって今日まで書き続けることとなりました。
本年は大変お世話になりました。来年もよろしくお願い申し上げます。皆さま、よい一年を。

追記
三面鬼岩ならぬ三面鬼殿でした。また画像を見つけられました。ありがとうございます。


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第五十一話 チキチキ☆敵勢力皆殺し大陸横断レース

新年あけましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりました。
今年も変わらぬご愛顧を頂けますようお願い申し上げます。


「それじゃあ総帥にはよろしく言っておいてくれ」

 

「俺達用にアルトアイゼンを三機、早急に頼むぜ」

 

「色も俺達に合わせて塗装しておいてくれよな!」

 

 地球降下へ向けて補給と装備の点検を進めるDC宇宙艦隊。その旗艦ハガネの格納庫でこのようにキョウスケに話しかけたのは、ジオン共和国のエース“黒い三連星”のガイア、オルテガ、マッシュの三人だ。

 この三人はどうやら先の戦闘におけるアルトアイゼンの尖った性能と戦い方が大いにお気に召したらしく、キョウスケにアルトアイゼンの操縦のコツなどを聞きにハガネに入り浸り、シミュレーターでの訓練までしている。

 ルウム戦役でレビルを捕虜とした黒い三連星が、そのレビルが艦長を務める艦に味方として乗り込んでいるのだから、数奇なものだ。

 

「総帥に伝えてはおきますが、あまり期待はしないでください」

 

 他国とはいえ階級上では上官となるガイア達からの無茶ぶりに、さしものキョウスケも苦笑いを浮かべている。

 シミュレーターとはいえアルトアイゼンを良く扱って見せた三人の腕前は流石だが、アルトアイゼン三機で小隊編成を組み戦うという彼らの発想には、奇抜というか無茶というか、呆れと感心を半分ずつ抱いた。

 ちなみにキョウスケのアルトアイゼンは修理中だが、次の作戦には間に合わない為、しばらくは予備機で戦闘に参加する事が決まっている。

 

「光子力で動いている分、補給が難しいかもしれんが、それならあっちのヒュッケバインといったか。アレに積んであるブラックホールエンジンに換装してもらえば、出力問題は解決できるだろう」

 

「後は費用だな。アルトアイゼン一機でRFドム何機分になるか分からんなぁ。RFシリーズは良い機体だが、異星人共の大型機相手だとパワーが足りないのが、今回の戦いで露呈しちまったからな」

 

「なあに、俺達がアルトアイゼンにかかった費用以上の戦果を挙げればいい。黒い三連星にアルトアイゼンの組み合わせなら一個大隊、いや一個師団分の働きが出来るぜ。ガハハハハ」

 

「アルトには相応の射撃武器も内蔵されていますが、ヴァイスリッターのような機体と組まないと厳しい場面がありますよ?」

 

「白狼かジャコビアス辺りにヴァイスリッターを回して貰えれば、ちょうどいいかもしれんが、そこは俺達の経験と知恵と工夫で乗り切るさ! さてそろそろ艦に戻るぞ、オルテガ、マッシュ」

 

「おう。長居して悪かったな、ナンブ」

 

「お前さんのお陰でいい話が聞けたぜ」

 

「いえ、こちらも一年戦争の勇士のお話を聞けて光栄でした」

 

 共和国へ帰還する時刻が迫り、黒い三連星は歴戦の猛者の風格が滲む敬礼をした。なんとも絵になる姿である。キョウスケもまた敬礼を返し、尊敬に値する戦士と向かい合う。

 

「貴官らの武運を祈る。生き抜けよ、キョウスケ・ナンブ」

 

「宇宙の侵略者共を叩く時には、共和国にも声を掛けな。俺達が手を貸すぜ」

 

「それと俺達やマツナガ、ライデンの分までチビ達の面倒をよく見てくれよ。頼むぜ!」

 

 オルテガの言うチビ達は言わずもがな、シュメシとヘマーらの事だ。キマイラの中に居るプロメテウスメンバーがこちらに来た時、双子達は久しぶりに親戚のおじちゃん達に再会したという態度で接し、彼らもそれを喜んで受け入れたものだ。

 黒い三連星をはじめ元プロメテウスメンバーは、シュメシとヘマーを猫かわいがりしていて、ガイア達ばかりでなく名前のあがった二人にクリスやバーニィ、ラルもそれは同じことだ。

 

「総帥と所長にも念を押して頼まれています。戦場でのことですから必ずとは言えませんが、微力を尽くします」

 

「おう、無茶を言っているのは俺達の方だからな。そう返事をくれるだけで十分だ。それではな!」

 

 黒い三連星が母艦に戻る為に移動用のランチに向かい始めた頃、そのランチでは部隊指揮官のジョニーがイングリッドとなにやら揉め事を起こして、キャンキャンと騒いでいた。

 その場にはジョニー、ユーマ、イングリッド、それにヤザンの姿もある。どうして騒いでいるのかと言えば、やはりイングリッドがキマイラに帰属できない事に尽きる。

 

「なんであたしがジョニーについていっちゃダメなのよ!?」

 

「いやあ、俺もイングリッドを引き取るのは全然構わないんだが、ほら、お前、ゴップ家の養女になっているだろう? おまけに今は連邦軍籍でDCに参加しているから、共和国軍に引き抜くのは政治的にしがらみが大きすぎるんだと」

 

「あんの狸親父いい~~!」

 

 怒り心頭と言わんばかりにプリプリと怒るイングリッドを、ユーマは腹を抱えて笑っており、それが余計にイングリッドの怒りに火を注ぐ。ユーマは既に二十代の立派な青年なのだが、強化措置を施された影響なのかメンタル面において稚気を残している。

 

「はははははは、イングリッド、安心しろよ。お前がそっちで戦っている間、ジョニーの片腕は俺が務めてやるからさ!」

 

「ユーマ君、あなたねえ、自分がキマイラに残っているからって調子に乗って!」

 

「恨むんならお前をコールドスリープから起こした連邦の人間を恨めよ?」

 

「分かっているわよ!」

 

 普段、DCに居るころに比べて感情を爆発させるイングリッドの姿は見た目相応で、ここが戦艦の中である事やイングリッドの出自を考えなければ微笑ましく見える。

 そしてDCでイングリッドを宥める役は一番付き合いの長いヤザンだ。

 

「ここで我儘を言っても何も始まらんぞ。ライデン大佐の言う通り、姫の出自は政治に絡んでくるものだからな。我儘を通したいなら、ゴップ閣下が首を縦に振るしかないくらいの戦果を挙げることだ。地球にはいくらでも武功になる連中が居るぞ?」

 

 イングリッドはヤザンをじろりと睨んだが、彼女の理性は確かにヤザンの言う通りだと認めている。ゴップの面の厚い顔を思い出して、イングリッドはノーマルスーツのヘルメットの中で大きな溜息を零す。

 

「分かった、分かったわよ。新型機も回されているんだし、地上で暴れている連中をギッタギタに叩きのめして、義父殿への借りを全部返した上でキマイラに戻るわ」

 

「そうそう、その意気だ。イングリッド。俺の方でも上層部に掛け合っておく」

 

「頼むわよ、ジョニー。ジオンの方は地上の連中がやって来ないでしょうけれど、その分、バルマー・サイデリアルとかベガの連中と戦う機会が多いでしょうし、気を付けてね。ついでにユーマ君も」

 

「俺はついでかよ。ふん、ジョニーと俺が居るんだ。キマイラもジオンも何も問題はないさ」

 

「ふ、そういう事だ。それじゃあな、イングリッド。お前こそ気を付けろ。一年戦争の比じゃない厳しい戦いがこれからも続くんだからな」

 

「分かってる。そういう意味じゃ、心強い部隊に所属している自覚はあるし、ジョニーこそピンチの時には呼んでよね。今のあたしには、貴方を助けるだけの力があるのよ」

 

「子供の成長は早い、か。覚えておくよ。それでも出来るだけ助けを呼ばずに済むようにするけどな」

 

 共闘したジオン共和国の精鋭部隊と別れの時を迎える中、それはティターンズから派遣されたイズミールとマーフィー小隊においても同じだった。

 バスク派閥とは籍を別にしているとはいえ、スペースノイドからすればティターンズの名は悪名でしかない。

 イズミールがソロモン鎮守府に帰還するにあたり、キマイラ隊とは時間をずらすように調整されている。

 

 とは言えだ。イズミール艦長のトーマス・シュレイダーをはじめ、マーフィー小隊の面々はティターンズにもああいった人々が居るのか、とDC各員にとって印象深い人々だった。

 マーフィー小隊からしても、DCに参加している面々の実力の高さと地球圏を襲っている侵略者の脅威をまじまじと体感し、貴重な時間を共有できたと言える。

 

「ではな、シュレイダー大佐。当艦隊における貴官らの活躍を我々は忘れまい」

 

 レビルがハガネの艦長席から正面スクリーンに映るシュレイダーに、偽りのない言葉を送り、それを受けるシュレイダーもまたかつての連邦軍トップを前に若干の緊張を抱きながら感謝の言葉を返した。

 

「我々もティターンズの中にいたままでは得られなかった貴重な教訓を学びました。ソロモン鎮守府に戻り次第、ペデルセン大佐とも共有し今後の地球圏の安寧の為に活用いたします」

 

「そうしてもらえれば何よりだ。バスク・オム大佐もいよいよ自分が進退窮まった事を悟る頃合いだろう。グリプスの暴発にはくれぐれも注意してくれたまえ」

 

「はっ! ご忠告感謝いたします。それでは貴艦隊の武運長久を祈ります」

 

「我々もイズミールとマーフィー小隊の武運を祈る」

 

 そうしてイズミールとマーフィー小隊、新生キマイラがDC艦隊から離れて本来の所属場所への帰路に就く。

 またアーガマ隊……ブライト、カミーユ、クワトロ、アポリー、ロベルト、エマ、カツ、ファ、レコア、ジュドー、ルー・ルカ、ビーチャ、エル、モンド、イーノ、リィナ、スペース・アークのレアリーやシーブック、セシリー、ビルギットといったメンバーも一旦は別行動だ。

 再び合流した時、彼らは新型艦を得て更に戦力を増強し、頼りになる仲間となってくれるだろう。

 

 そしてヘイデスと連邦軍の将校や政府高官との会合が済んだ後、地上では欧州奪還を狙う大規模作戦が発動していた。

 OZ総帥トレーズ・クシュリナーダ発案による『オペレーション・レコンキスタ』である。

 日本にある極東支部を出立したDC地上部隊を、囮兼遊撃戦力として活用しつつ、欧州方面軍とOZ、ユーラシア方面軍、極東方面軍の動員可能な戦力をつぎ込んで行われる乾坤一擲の作戦だ。

 

 その作戦の一幕から物語を始めよう。

 極東支部をDC地上部隊が出立する前、各敵勢力が確実に傍受できるようにオープンチャンネルや国際救助チャンネルで、堂々とこれからの彼らの行動が発表された。

 意訳すると各勢力に対して、『わざわざこちらの行動を教えても戦いを挑む勇気のない腑抜けはいないだろう? いい加減決着を着けようではないか』というものだ。

 

 地球制圧に向けて障害となる最大戦力を誇るDCを無視して極東を狙う事への侮蔑と嘲笑をたっぷりと含んだ挑発は、各勢力のトップや幹部クラスから末端の兵士にまで波及して大きな影響を与えたのは言うまでもない。

 それでも戦略的にはDCからの挑発を無視して極東地区制圧に向けて動く可能性も考えられたが、先行してロールアウトしたゲシュペンストMk-Ⅲを優先配備されたキタムラの部隊をはじめ、グルンガスト弐式を回して極東方面軍の戦力底上げを行う事で対処している。

 

■ 共通ルート 第三十二話 戦いのシルクロード

 

 最初の標的となったのは、旧中国四川省地区に建設されたミケーネ帝国の基地だった。近隣に百鬼帝国の基地もあり、連邦軍を含めた三つ巴の戦いが頻発している一帯である。

 その日、基地司令のミケーネ兵は、哨戒に出た戦闘獣からの報告に耳を疑い、ついで送られてきた画像データに血の気を失った。

 

「ば、馬鹿な……」

 

『……えす、……繰り返す! 敵は地球連邦軍、そ、空が黒い! 敵が七に空が三! 至急救援を、救援……ぐわぁあああ!?』

 

 最後に送られてきた画像には空を埋め尽くすストームソーダー、サラマンダー、コアブースターⅡ、アッシマーにアンクシャ、推進剤節約の為にSFSに乗ったジャベリン、ジェムズガン、ジェダ、ジェガン、ゲシュペンストMk-II、更に少数だがΖプラスにジークフリート、アプサラスⅣの姿もある。

 その後方にクラップ級やストーク級、ガルダ級、ホエールキングといった母艦艦隊が控え、それぞれが強力な火砲と戦場上空に展開した衛星とのデータリンクで戦場をサポートしている。

 

 空中戦に対応した戦闘獣の種類は多く、個々の戦闘能力の高さは折り紙付きであるが、強力な支援のもとに青空を埋め尽くす規模で展開された連邦軍の部隊とは、あまりにも数が違い過ぎた。

 偵察に出ていた戦闘獣達が抵抗を諦めて、逃げるのを即座に選択した程の戦力差は、しかし無慈悲にも空だけではなかった。

 

 地上に目を下ろし、右を見ればディバイソン、ディバイソン、ディバイソン! とんでもない量の火器を満載した重武装MZの群れ!

 左を見れば量産型ガンタンクやガンタンクⅡなど一年戦争から活躍した、連邦軍の長距離支援MSの代表格が所狭しと並んでいる。

 前を見れば冗談じみた数のカノントータスが整然と並び、後ろを見ればゴジュラスMk-Ⅱ量産型の巨体とそれに見合った巨砲が太陽の光を浴びて燦然と輝いている。

 それ以外にもMS登場以前の自走砲や戦車、自走ロケット弾発射機などなどがありったけ用意されていた。

 

 DC地上部隊を無事に欧州へ送り届ける為、進路上に存在する敵勢力の基地という基地、部隊という部隊を壊滅させ、DCに群がる敵勢力を地獄の底に叩き落とす為に用意された連邦軍の底力の一つである。

 地形が変わろうが知った事かと言わんばかりの天災じみた火力の殺到は、小さな基地ならば跡形も残らずに消滅させるほどだ。

 

 確かな指揮系統が構築され、入念に検討を重ねた作戦計画に則り、戦力並びに弾薬の消耗、人員の疲労は想定内に留まり、日を追うごとに敵勢力の機動兵器と人材はこの世から消滅していく。

 しかし相手もさるもの。地球人の戦力増強を知ってなお地球征服に挑む猛者共だ。

 勢力を問わず五つほどの基地をこの世から抹消した頃になると、各勢力は連邦軍の進撃を阻むべく大規模な戦力をまとめ上げて、示し合わせたように一斉にぶつけてきたのである。

 

 航空支援と砲火支援を受けながらシールドライガー、セイバータイガー、ライトニングサイクス、コマンドウルフ、ケーニッヒウルフ、アイアンコング、レッドホーンなどのMZ部隊とGコマンダーやGレイといった希少な機体に、ゲシュペンストMk-IIとジャベリンの二枚看板から成る地上部隊が果敢に戦いを挑んでゆく。

 一発撃っては生まれ育った土地を奪われた怒りを込め。

 一発撃っては家族を、恋人を、友人を奪われた憎しみを込め。

 地球連邦軍の兵士達は無垢なる刃(デモンベイン)とは呼べぬとも正しき怒りと憎悪を胸に、種の生存競争にも直結する異種・異星・異界の敵を相手に、恐怖を乗り越えた戦いを挑む。

 そして大戦力を揃えた敵を前に一番槍の栄誉に預かったのは、地球圏最精鋭部隊ディバイン・クルセイダーズに所属する民間からの善意の協力者達!

 

「今まで散々やってくれたな! 獣戦機隊が借りを百倍にして返してやるぜ!」

 

「忍、味方に当てないように気をつけなよ!」

 

「いきなり突撃しすぎだってば。爆撃に巻き込まれたらどうするの」

 

「ふ、忍に言っても逆効果だろう。それに他の連中も同じようなもんだ」

 

 突出したダンクーガが断空剣の一閃で猛獣型の戦闘獣を縦に真っ二つにして、忍はこれまで貯め込んだ鬱憤を晴らすかのように気合の叫びをあげる。

 沙羅や雅人は宥めるが、亮はと言えばダンクーガばかりでなく、数々のスーパーロボットも気力全開で立ちはだかる敵を次々と葬り去ってゆく光景に、頼もしさを覚えていた。

 

 グレートマジンガー同様に装甲を超合金ニューZ、ピカピカの新型光子力エンジンを搭載し、機体も巨大化したマジンガーZにダイアナンA、ボスボロット、ミネルバX、グレートマジンガーにビューナスA。

 百鬼帝国を相手に熾烈な戦いを続けているゲッターロボG、それに早乙女達人、早乙女ミチル、負傷から復帰した巴武蔵の操るグレイゲッター、百鬼帝国側から所属を移したメカ胡蝶鬼、メカ鉄甲鬼、メカ白骨鬼。

 

 強化されたコンバトラーVとボルテスV、ライディーンとサイコミュを積んだサイコザマンダーに加え、ブルーガーからザマンダーに乗り換えた神宮司、ダイモスとガルバーFXⅡよりマルスに乗り換えた夕月京四郎と和泉ナナ、ザンボット3も意気揚々と続いている。

 母艦のガンドール、キング・ビアル、ミノフスキークラフトユニットを搭載したウルトラザウルスもスーパーロボットを運用可能な巨体が齎す威圧感で敵を圧倒し、味方には頼もしさをこれでもかと振りまいている。

 

「どいた、どいた、勝平様とザンボット3のお通りだい!」

 

 メインパイロットの勝平の操縦に従い、地上に降りたザンボット3はザンボットブローを勇壮と振り回し、襲い掛かってくる猛獣型戦闘獣をサイズ差も活かして次々と撫で切りにする。

 長い事ガイゾックと会敵せず、宿敵との戦いから遠のいていた神ファミリーだが、ガイゾック以外にも地球を襲う脅威には事欠かず、催眠学習なしにしても彼らは立派な戦士に成長している。人によっては成長してしまったと嘆くだろうか。

 

 機械獣の上位互換と言える戦闘獣からの猛反撃を、ザンボット3は巨体に似合わぬ軽やかさで回避し、避けきれぬ攻撃はザンボットブローで弾き落とし、あるいはザンボットグラップに分離させて、サイの形をした武器を器用に振り回して捌いて見せる。

 さらにそこへ無数のメガ粒子砲が降り注いで、ザンボット3に集中砲火を浴びせていた戦闘獣の集団に痛打を浴びせる。

 

「サンキュー、ゼロ兄ちゃん、レイラ姉ちゃん、フォウ姉ちゃん」

 

「僕達のフォローがいつだってあるわけじゃないんだぞ。気を付けろ」

 

 ザンボット3のフォローを行ったのは正式にDC所属となったゼロ・ムラサメ、レイラ・レイモンド、フォウ・ムラサメだ。フォウはアプサラスⅣ、レイラはサイコガンダムMk-Ⅱに搭乗している。

 そしてゼロはというと、アナハイムから流出したサイコフレームのデータを用いてティターンズが開発した、サイコガンダムMk-Ⅳ通称Gドアーズを新たな機体としていた。

 大元は漫画作品の『機動戦士MOONガンダム』に登場した機体で、この世界においては開発経緯に若干の変更がなされる形でロールアウトし、そのうちの一機がジャミトフからDCへの誠意としてサイコガンダムMk-Ⅱ共々、提供されていたのである。

 

 背中にまるでドアのように背負ったサイコミュ兵装『サイコプレート』は全十六枚。メガ粒子砲などは内蔵しておらず、分離・飛翔して打突武器やシールドとして活用できる。

 バンプレストオリジナルメカのR-3のストライクシールドや、ガンダム00のケルディムガンダムのシールドビットのような運用が可能な代物だ。

 

 サイコプレートを味方の盾として利用しつつ、ゼロはGドアーズで味方のスーパーロボットのフォローに回っている。火器はメガ・ビームライフルに換装してあるが、Gドアーズそれ自体の火力は平均的なMSの範疇に留まる為だ。

 火力面においてはやはり強化人間の感覚でマルチロックオンし、多数を一度に撃ち抜けるアプサラスⅣやサイコガンダムMk-Ⅱが頼りになる。

 

 今もアプサラスⅣの機体中央部の砲門から発射された複数のメガ粒子砲の火線が戦闘獣達に直撃し、撃破ないしは多大なダメージを与え、サイコガンダムMk-Ⅱも全身に内蔵したビーム砲で絶え間ない火線を描いている。

 それでいて味方に誤射の一つもないのは、見事な技量という他ない。コロニーのガンダムチームつまりヒイロ、デュオ、カトル、トロワ、五飛が抜けた分の負担を、ゼロ達元ムラサメ研究所組はよく補っていた。

 

「敵後方に大型反応、万能要塞ミケロス三隻を確認したわ。それに七大将軍の一人、怪鳥将軍バーダラーもいる!」

 

 レイラの乗るサイコガンダムMk-Ⅱのメインカメラは、ミケロスの一隻の上に立つ敵幹部の姿を捕捉していた。バーダラーの周囲には彼の配下である鳥類型の戦闘獣がオリジナル、量産型を問わず大量に展開している。

 

「小癪な人間共め。わざわざこちらに情報を流してまで攻めに転じた度胸は認めてやるが、この怪鳥将軍バーダラーが戦場に出たからには、お前達の命運は尽きたも同然。覚悟しろ! 行け、我がミケーネ帝国の精鋭達よ!!」

 

 バーダラーの号令の下、新たに出現した戦闘獣軍団がミサイルや破壊光線、火炎放射に電撃とバリエーション豊かな攻撃を放ちながらDCと連邦軍へと襲い掛かる。返礼は数倍の数のメガ粒子砲や荷電粒子砲、レーザーにミサイル、様々な口径の砲弾だ。

 視界を埋め尽くす規模の連邦軍の弾幕に飲まれた戦闘獣が数十機爆散するが、それでも彼らの勢いは衰えず空と地上の戦いは更に激化の一途をたどる。

 

「将軍自らのこのこと前線に出てくるとはな。そっちこそいい度胸だが、この剣鉄也とグレートマジンガーが相手になってやるぜ!」

 

「鉄也さんには負けてらいられないな! さやかさん、ジュンさん、援護を頼むぜ!」

 

 バーダラーを目掛けて挑むのはもっともミケーネと因縁の深いマジンガーチームだ。ダイアナンAとビューナスAが慌てて援護に入る中、更にダイモス、マルス、ライディーン、サイコザマンダー、ザマンダーも鉄也と甲児に続いた。

 

「こっちの目論見通り、誘い出されてくれたな!」

 

 一矢のダイモスは巨体の質量とパワー、そして空手を活かして群がる戦闘獣を殴り飛ばし、蹴り飛ばし、マジンガーばかりではないぞと言わんばかりの暴れっぷりだ。そこに特別にシシオウブレードを用意されたマルスに乗る京四郎とナナも続く。

 ダイモスの兄弟機と言えるマルスに乗る京四郎は、プライベートでも一矢と付き合いが深い事もあって、息の合ったコンビネーションでお互いの死角をカバーしあっている。

 

「あれだけ挑発したんだ。幹部クラスの首の二つや三つはとらないと、割が合わんぜ!」

 

「前を見ても横を見ても敵ばっかりじゃない!」

 

「なに、後ろを見れば凄い数の味方が居るんだ。いつもの皆だけじゃなくって、連邦軍の人達も居るんだからどうってことはないぞ、ナナ!」

 

「うう~、ワン!」

 

 ナナは半分はやけくそで口癖を言ったのだが、一矢はそうは受け取らなかったようで、腹が立つくらい朗らかにこう言った。

 

「ようし、その意気だ!」

 

 連邦側の優位な点は圧倒的な数と突出した個――スーパーロボットの存在だ。

 バーダラーの出現を皮切りに部隊は事前の打ち合わせ通りに、スーパーロボット軍団とバーダラー軍団が正面衝突するように陣形を速やかに移行し、その他の敵部隊が割って入れないように部隊と砲撃を展開し直す。

 ウルトラザウルスの艦橋で部隊の指揮を預かるバン・バ・チュンは、オペレーターからの新たな報告に大きな傷跡を刻む顔に闘志を浮かべた。

 

「九時の方向より敵影多数確認! ボアザン軍です。更に十一時の方向より急速に接近してくる敵影、ライブラリ照合、百鬼帝国の軍勢を確認。距離四〇〇!」

 

「大漁大漁というところだな。ボアザンには超電磁チームとグルンガストチームを、百鬼帝国にはゲッターチームとライディーンチームを向かわせろ。マジンガーチーム、ダイモスチーム、ザンボット3はそのまま敵将への対処を任せる。

 ムラサメチームにはそのまま艦隊の直衛ならびに友軍の支援を任せる。武装コンテナは順次要請があり次第射出を。本艦隊は前進、敵勢力を勢いづかせてはならん!」

 

 先の挑発で怒り心頭になりながらも、好機を逃す手はないと出撃したボアザン軍と百鬼帝国だが、現状ではまだ様子見程度だろう。

 漁夫の利を狙うなら戦線が伸び切って、欧州に達し、連邦軍とDCがミケーネやムゲを相手に疲弊したところに主戦力を投入するのが合理的だからだ。

 派手に敵機を撃墜し、撃墜スコアをすさまじい勢いで伸ばしているスーパーロボット軍団が居る一方で、直接戦う以外の形で活躍している者も居る。

 

「ほらほら皆、補給はこのボス様にお任せだわさ! 艦に戻る余裕がないロボットはこっちに来な!」

 

 なぜか頭にねじり鉢巻きを巻いたボスボロットが巨大な光子力トラックを運転し、コンテナに満載した予備のライフルや各種規格のミサイル、実弾を提供していた。

 ボススペイザーでなく光子力トラックで出撃しているのも、短期間に戦闘を連続で行うのを見越したからこその選択だ。光子力トラックとボスボロットを護衛するのは、着々とその数を増やした魔神機械獣や超電磁マグマ獣達である。

 

 時には自らを盾とする彼らに守られながら、ボスとボスボロットは推進剤や弾薬の尽きた腹ペコ共に腹一杯食わせてやり、戦線維持に大いに貢献するのだった。

 ボスボロット以外にも戦場の各地には展開すれば簡易防壁になるコンテナが射出・投下されていて、中には予備の武器や弾薬が詰め込まれており、継戦能力の維持に一役買っている。

 

 極東地区から始まったオペレーション・レコンキスタの戦果は、ブリテン島に臨時拠点を置いたOZもまた来るミケーネ並びにムゲとの決戦に向け、着々と準備を進めていた。

 トレーズ・クシュリナーダ自ら乗り込むトールギス二号機の専用カスタマイズ機をはじめ、絶対的エースのゼクス・マーキスの駆るトールギスⅢ、暗黒の破壊将軍ヴァルダー・ファーキル用にカスタマイズされたダークトールギスⅡ、量産されたテウルギスト、トーラス、少数ながら配備されたビルゴ。

 これらOZの総力を結集した戦力もまた、奪われた誇りを取り戻すための戦いの時を今か今かと待っていた。

 

<続>




DC地上部隊は日本からフランス辺りまでひたすら戦い続け、連邦軍は地域ごとに別部隊にバトンタッチして戦ってゆくイメージです。宇宙部隊は最高のタイミングでよこっつらを殴り飛ばす為に準備を整えております。

追記
月のライディーンはまだ早かったので修正しました。うっかり。

追記2
ダークトールギス → ダークトールギスⅡ へ修正しました。


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第五十二話 道具は使いよう モビルドールも使いよう

追記
前話のダークトールギスをダークトールギスⅡに修正しました。


 極東地区から始まったオペレーション・レコンキスタ第一段階は、各地区を担当する連邦軍とDC地上部隊の連携により、破竹の勢いで並み居る敵軍を蹴散らして進んでいった。

 恒星間を航行する技術を持った侵略者達も、太古の地球で覇を唱えていた古強者(ふるつわもの)達も、今を生きる地球人類が振り絞る力を前に敗退を重ねている。

 

 進路上に存在する敵軍と基地を片っ端から潰して回る連邦軍を、プルート財閥をはじめ地球圏のありとあらゆる企業とそこに所属する人々が死に物狂いで支えて成立した本作戦の成否は、誇張抜きに今後の地球上での覇権を占う一戦であった。

 新しく地球侵略に参加したキャンベルの女帝ジャネラ一派、ボアザンのド・ズールやグルルなどは地球人の底力に驚愕して、自軍の被害に開いた口がしばらく塞がらなかった。

 復活直後に痛打を浴びせられた妖魔帝国の巨烈兄弟は、屈辱と憎悪に燃えた。

 Dr.ヘルの敗北を知るミケーネ帝国、恐竜帝国の敗北を知る百鬼帝国は底力を発揮する地球人類に表情を歪め、ムゲ・ゾルバドス帝国はここが分水嶺と三将軍らが命を賭した戦いを覚悟していた。

 

 猛烈に苛烈、勇壮にして悲壮なる地球人類の反撃だが、それが行われるまでに出た被害がなくなるわけではない。

 欧州が戦火に焼かれて故郷を追われた人々は、現地連邦軍や近隣の方面軍からの助けを得て避難していて、その一部は難民と化して北欧や中東、アフリカ、西アジアなどへ流入している。

 

 彼ら避難民の暮らしを支えたのは、連邦政府官僚らがこういった事態を想定して進めていた備蓄物資や避難所、多くの企業や政府加盟国からの支援である。

 命からがら持てるだけの荷物を持って故郷を脱出した人々が、最新素材のプレハブ小屋や冷暖房完備のテントで暮らし、そこにはかつてプルート財閥の開発した病院や炊事、洗濯、浴場などの施設をバックパックとして装備したMSやMB、特殊車両の姿がある。

 ガンダムSEED DESTINYの外伝漫画にヒントを得た災害救助用の各種バックパックを装備したアクシオやジム、ザニー、ザクと言った旧式機達は、戦場ではなく力を持たぬ人々を救う戦いに身を置いていたのだ。

 

 そして侵略者達は家を焼かれて逃げ出した人々を容赦なく追い立てて、奴隷にするか、改造して兵士にするか、あるいは単純に害虫を駆除するように殺害しようとする。

 とある避難キャンプでは、空の彼方に姿を見せたキャンベル星の戦闘母艦グレイドンとブランブル、それらから出撃したマグマ獣軍団に人々は怯えを浮かべて悲鳴を上げる。

 

 逃げまどい始める人々の中に、小さな男の子が一人いた。褐色の肌に癖のある黒い髪、アラブ系の血を引く避難民だろう。

 両親と暮らしていた街の人達共々、連邦軍の誘導でこの避難キャンプに辿り着き、一部では故郷よりも便利な暮らしにも慣れた頃だというのに、恐ろしい侵略者達の魔の手はここにまで伸びてしまったのだ。

 

 避難キャンプを守る連邦軍の護衛達は即座に行動し、ジムⅢやネモキャノン、ゲシュペンストMk-IIらが対空砲火の展開を行い始める。機動兵器達が的となってマグマ獣達の注意を引き寄せる一方で、連邦の兵士達は避難民の誘導を行う。

 男の子は家族や友人と離れていたのだが、人々が流れとなって逃げる中、その場に立ち止まって空を覆う悪意ある侵略者達を見上げている。

 故郷を追われた悔しさ、家族や友人ら大切な人々を悲しませる者達への憎しみ、何もできない自分への怒り……幼い子供には不似合いな感情が彼の心の中を吹き荒れて、赤い瞳は燃えるような視線は空を見上げて離れない。

 

 鬱陶しい護衛のMS達を排除すべく、グレイドンの一隻がミサイルを発射しようと艦体の発射孔を開く。突き出た七つの突起の先に目玉があるという奇抜な外見の母艦に、地上を右往左往する地球人への慈悲など一欠けらもありはしない。

 グレイドンの目論見に気付いた護衛部隊のゴドスと後継機ドスゴドスが装備した火器を集中させるが、マグマ獣の壁がそれを阻む。

 

「この世界に神は……」

 

 男の子がその続きを口にしようとした時、あらぬ方向から発射されたミサイルがグレイドンに直撃し、大したダメージこそないもののその行動を中止させる。

 そして男の子は見た。

 

 見よ、紅の翼を広げて空を飛ぶ鉄の城と偉大なる勇者を!

 三つの心を一つにする進化の化身を!

 古代ムー帝国が遺した守護神を!

 人の如く四肢を振るい戦う闘将を!

 人を越え、獣を越え、出でたる神の戦士を!

 星と獅子を象った頭部を持つ、二体の超闘士を!

 そして空に描かれる光り輝く二つの勝利のVサイン!

 

「来たか、ディバイン・クルセイダーズ!!」

 

 待ち望んだ敵の出現に、戦闘母艦ブランブルに搭乗する、キャンベル星の総統ワルキメデスは真っ白い顔に笑みを浮かべる。

 ワルキメデスはDCの軍隊とは思えぬお人よし的な性質を利用して、避難キャンプを襲撃する事で彼らを釣り出そうとしていたのだ。

 避難キャンプを背にするか、足元に来るように布陣して戦端を開けば、DC側はろくに攻撃も出来ないと判断してのことである。

 慎重派である彼が自ら出撃したのは、力押しの戦術を得意とする弟ダンゲル将軍が、今回の彼の作戦に反対して自ら独自に部隊を編成して行動している為だ。

 

「ダンゲルめ、大人しく私の言うことを聞いておればいいものを」

 

 ただ釣り出すだけではこれまでのように敗北の可能性が濃厚だが、ワルキメデスはこれまでの戦いで二機の超電磁メカに被害を無視して攻撃を集中し、疲弊させることに成功している。

 地球人類が手厚い支援体制を整えていたとして、今回の戦いでコンバトラーVとボルテスVの出撃はないと分析している。一騎当千のスーパーロボットが二機不在となれば、侵略者側にとってはそれだけでも明るい材料だ。

 だが、この戦場の空には地球人類の勝利を約束するかのように、Vサインが輝いている!

 それに気付いたワルキメデスの顔が見る間に歪んでゆき、ダラダラと冷や汗を流して声を荒げて叫ぶ。

 

「おのれえ、そんなのありか!? 反則だ!」

 

 お前らだって原作じゃワンオフだったマグマ獣を量産しているだろう! とヘイデスに突っ込まれるところだが、ワルキメデスの目論見通り攻撃を集中されたコンバトラーVとボルテスVは、今もガンドールの格納庫に収納されている。

 ではこの場のVサインの正体、それは!

 

「へへ、コンバトラーVとは勝手が違うが、それでもマグマ獣には負けないぜ!」

 

「皆、お互いのフォローをしながら戦うぞ、慣れない機体だ。それに避難している人達がすぐ傍にいる!」

 

 超電磁ロボ能力結合機マグネスファイブ! 超電磁系列の量産型として設計され、少数が製造されたこのロボがバトルチームとボルテスチームの予備機として、DC地上部隊に配備されていたのだ。

 本家超電磁ロボと超電磁マシーンには若干劣るものの、それでもスーパーロボットと呼べる性能は確保している。

 五台のマシンに分離していたマグネスファイブがワルキメデスとそして避難民達の見ている中、堂々と合体シークエンスを実行に移す。

 

「レッツ・マグネ・イン!」

 

 豹馬と健一の声が重なって、二人の乗る戦闘機タイプのマシンに次々と他のマシンが合体し、装甲が展開して収納されていた足や手が現れ、最後に頭部が形作られる。

 地球人類の絶対的守護神、物語の中の正義の味方のようなスーパーロボットへと合体し、ポージングを決めながら高らかにその名を叫ぶ。

 

「マグネスファイブ!」

 

 一見、無駄のあるように見えるポージングや名乗り上げだが、スーパーロボットは戦略級兵器であると同時に象徴的な存在だ。それも兵器としてではなく、人類の味方、平和を守る正義のロボットとしての英雄的象徴である。

 だからこそ、その存在を誇示する事には大きな意味と価値がある。スーパーロボットが来た! それは守られる者達にとって大いなる希望、共に闘う者達にとって大いなる勇気となるのだから。

 

 ワルキメデスの動揺はマグネスファイブの存在もそうだが、想定よりも頑強な抵抗を示す護衛部隊によって、自軍の布陣が想定外のものとなった事、そしてDCの到着が予想よりもはるかに速かったことである。

 

「ええい、ムゲ共とぶつかるように手配したはずが、なんの足止めにもならなかった。だらしのない!」

 

 今回の避難民を人質とする作戦において、DCの足止めの為に進路上にムゲの部隊が来るように事前に調査して、計画のタイムスケジュールを組んでいたのだが、三将軍不在の通常編成のムゲ部隊は、連邦軍を含むDCを前に呆気なく一蹴されたのである。

 

「てめえらのせいで住む場所も家も追われた人達の代わりに、俺達がてめえらを叩きのめしてやる!」

 

 恐怖に怯える避難キャンプの人々の姿をモニターの片隅に見つけ、マグネスファイブのメインパイロットを務める豹馬は、今にも炎を吹き出しそうな怒りの表情でマグマ獣軍団を睨みつける。

 豹馬だけではない。着の身着のまま逃げ出してきた人々がようやく落ち着く事の出来た場所を、わざわざ戦場にしようとしたワルキメデスの思惑はDCと連邦軍の誰もが理解しており、ただでさえ闘志を漲らせていたのが更なる怒りまで加わっている。

 

 戦場での布陣に失敗し、避難民を人質にする目論見が破綻したワルキメデスにとって、それは致命的な失敗だった。

 スーパーロボット軍団を怒らせればどうなるか、それがどれほど愚かであるかをワルキメデスはこの戦いで骨身に刻むだろう。

 

 量産型として落とし込まれたスーパーロボットはマグネスファイブばかりでない。

 漫画作品出身のムー王家の血を引く(さえずり)(あきら)、更に化石獣の気配を察する力を持つ超能力者の明日香麗のサイコザマンダーが二機、ノーマルのザマンダーには神宮寺力と桜野マリといったお馴染みのライディーン関係者が乗り込んで運用。

 闘将ダイモスと肩を並べ、特大日本刀を振るって戦うマルスは夕月京四郎、パイロットの操縦技術を鑑みて危険性の低い射撃兵装マシマシのマルスには和泉ナナ。

 

 このようにDC地上部隊はブルーガーやガルバーFXⅡといった戦闘機が、スーパーロボットに置き換えられて戦力を激増している状態だ。

 新しく車弁慶を迎えたゲッターロボG、それに復帰した巴武蔵をグレイベアー号のパイロットに迎えた早乙女兄妹のグレイゲッターもチームとしての熟練度を高めていて、目を瞑っていても合体・分離の出来る領域に達している。

 

 今回は速度を重視してボススペイザーで出撃したボス、ムチャ、ヌケのトリオはミネルバX、二機のスペイザーと共にマジンガーチームの一員として大暴れ中だ。

 ダイアナンAとビューナスAがそれぞれ大幅強化されているのに合わせ、ミネルバXもまた専用の装備を与えられて、強化を果たしている。

 

 マジンガーZ同様、装甲とエンジンを換装して演算能力も強化されたミネルバXは、灰色のボディに赤い翼を持った大型バイクないしは小型艦のような装備に跨っている。

 その名も光子力SFS“ミネルバライダー”。武装は艦首に内蔵した大型光子力ビーム砲“タンホイザー”、二連装光子力ビーム砲“トリスタン”×2、三連装実弾砲“イゾルデ”、更にミサイル発射管多数と光子力バルカン砲塔×12、魚雷発射管×4となる。

 

 見る者が見れば一発で分かるこのSFSのモデルは、機動戦士ガンダムSEED DESTINYで活躍……? う~ん、まあ、活躍した惑星強襲揚陸艦ミネルバだ。

 ザフトの開発した新型艦であるこのミネルバを、名前繋がりとパンドラボックスのデータから機動兵器用のSFSとして再設計し、ロールアウトしたのがミネルバXの跨っている代物である。

 

 開発や名称にはヘイデスのスパロボユーザーとしての遊び心も混じっているが、スーパーロボット軍団を強化する為の外付け装備の開発計画によるもので、きちんと真面目な理由も存在している。

 コンバトラーVやボルテスVを強化する新たなボルトマシンやグレートブースターを超えるグレートマジンガーの強化案にも、ミネルバライダーのデータは役立っている。

 

 さて他の話をしよう。スペイザー小隊として編成され、ボススペイザーに続いているのは、デューク・フリードの実妹グレース・マリア・フリードのドリルスペイザーと戦場に立つ決意を固めた牧葉ひかるのマリンスペイザーだ。

 ロボットでこそないものの、超合金ニューZ製の地球製スペイザーは信じがたい強度と25~30mクラスのサイズ、反重力エンジンと光量子エネルギーによる圧倒的パワーから、地球連邦軍内では強力なMAのような扱いを受けていたりする。

 こんな代物を連邦政府やプルート財閥からの熱烈な支援、グレンダイザーというサンプルがあったとはいえ、民間の研究所が開発するのだから、流石は宇宙有数の戦闘種族・地球人類の面目躍如だろうか。

 

「避難民の誘導と保護を優先じゃ。勝平、敵を撃墜するより戦域の外に叩き出すのが優先じゃぞ!」

 

「わかってらい! そうら、イオン砲を食らえ!」

 

 キング・ビアルの艦長を務める神北兵左衛門は孫たちに指示を飛ばし、ガンドールの葉月博士や着地して地上に展開していたマグマ獣を数体踏みつぶしたウルトラザウルスのバンも、同様の指示を飛ばしている。

 ウルトラザウルスの超重量はマグマ獣も容易く踏みつぶして、360mmリニアカノンをはじめ、全身に武装した山ほどの火器で避難民の頭上を取ろうとする他のマグマ獣やグレイドンを牽制している。

 

 圧倒的な勢いをもってキャンベル軍団を押し込むDC地上部隊に続き、現在、彼らのエスコートを担当している地球連邦軍も続々と駆け付けている。

 極東方面軍独立機械化連隊の連隊長コジマ大佐は、連隊司令部兼用の旗艦ラー・カイラム級機動戦艦に乗り、四個大隊で編成される連隊の指揮を執り、DCを積極的にサポートする。

 

「やれやれ、彼らを可能な限り消耗させずに欧州まで送り届けるのが我々の役目なのだが、彼らがあの調子では後を追うので精一杯だな」

 

 コジマはラー・カイラム級の戦闘態勢に移行したブリッジで、連隊の一翼を担うアプサラスⅣを見て、かつて一年戦争中に経験した戦いを思い出した。

 当時の連隊長イーサン・ライヤーを含む連隊上層部が、以前のアプサラスタイプの砲撃で蒸発し、当時、敵だったジオン公国の兵士との内通を疑われた元部下が色々とやらかしたものだ。

 

 戦後、その元部下についてコジマは多くを知らない。今も詳細を把握しているのは、大隊の一つに所属しているテリー・サンダースJr.くらいのもので、彼は専用のカスタマイズを施されたジャベリンで今も奮闘している。

 元部下を思い出したのは、半民半軍とはいえDCの面々が率先して人助けを行っている甘さを目の当たりにしたからかもしれない。

 軍人としてはある意味では羨ましく、ある意味では危ういその甘さが、コジマは決して嫌いではない。流石に時と場合によるとは思うが。

 

「各大隊は前線を押し上げろ。スーパーロボット乗りとは言え彼らは民間人だ。軍人が民間人の後ろにいるなど、あってはならんのだ」

 

 そうしてコジマは檄を飛ばし、人質作戦の失敗したワルキメデスを、DC地上部隊と連携して、いっそ哀れになるほど叩きのめすのだった。

 

 

 オペレーション・レコンキスタを完遂する為、ブリテン島に結集し編成されたOZの軍勢は、DCと連邦地上軍の動きに合わせて欧州奪還に向けて出撃の時を迎えていた。

 イングランドやアイルランドを守る連邦軍やティターンズの部隊も一時的にトレーズの指揮下に置き、五百機以上のMS、MD、MZ、MAを含む大部隊である。

 旗艦となるストーク級プリンス・オブ・ウェールズにて、愛機とするトールギスⅡのコックピットの中でトレーズは瞑目していた。これまでの軍民を問わぬ戦死者の冥福を祈っているようにも、あるいは彼らに勝利を誓っているようにも見える。

 

 生まれ持った知性、カリスマ、血脈、容姿、軍人としての才覚、およそ考え得るあらゆる才覚を生まれ持った超人トレーズ・クシュリナーダをして、ミケーネ帝国とムゲ・ゾルバドス帝国の同時大侵攻は対処能力を超えた事態だった。

 そんな中で対立関係を深めていたデルマイユ公との会談が、トレーズの脳裏で再生されていた。欧州各地が両勢力の大軍勢に焼かれ、トレーズを含むOZが敗走を重ねた後に行われたものである。

 

 ロームフェラ財団の腐敗した性質を体現するようなデルマイユだが、それでも地球圏を代表する巨大財団の代表として相応しい能力はある。

 その彼をして理解の範疇を半分越える古代種族や異世界人からの侵略という事態は、極大の疲労と焦燥を植え付けて、十歳も二十歳も老け込んだように見えた。

 そして程度の差こそあれ、それはトレーズも似たようなものだ。現在、地球圏を襲う敵勢力の強大さは文字通り計り知れない事もあり、警戒を強めていたがそれでも上を行かれ、各戦線で敗退を重ねる結果となった。

 

 副官のレディ・アンを筆頭とした優秀な部下達に支えられ、トレーズは全力で指揮に当たり、寸毫の慢心も油断もなく働き続けて現在に至る。

 超人的な体力と優れた智謀を活かし、可能な限り被害を抑え、防衛戦を何度も行い、落伍した兵士達や敗走する部隊をまとめ上げて、避難民を守りながらなんとかベルファスト基地への撤退を成功させたが、それが限度であった。

 そしてロームフェラ財団の保管していた希少な人類の宝である美術品や、上層部らと共に同じくブリテン島に避難していたデルマイユと、膝を突き合わせたのである。

 

「トレーズ、我らの父祖が鉄と血と共に歴史を築き上げた欧州の大地が、あのような奴らに奪われた。奪われてしまったぞ」

 

 幾百、幾千年の歴史の結実たる豪奢な貴賓室で、デルマイユは激高する気力もないのか、溜息を零すように言った。これまでのデルマイユを支えていた傲慢なまでの誇り、滑稽すれすれの増長がごっそりと消え去っている。

 

「我らの力が及ばず、恥じ入るばかりです。デルマイユ公」

 

 立ったまま頭を下げるトレーズの頬はこけて、目の下には幾日も不眠不休で働き続けた証拠の隈が色濃く浮かんでいる。

 不眠不休で働くことが最高効率となるギリギリを見極め、働き続けて食事も栄養摂取だけを目的としたもので済ませ、指揮を執り、時には自ら前線に立ったトレーズの疲労は極限の域に達していた。

 常人ならとうに気絶してベッドの上の住人になるところを、疲労を表に出すだけで済ませている辺りは、トレーズならではだ。

 

「言うな。お前とお前の部下達が言葉通り命を削って死力を尽くしたのは、儂にも分かる。高貴なる者の義務、軍人の義務、お前達はそれを懸命に果たそうとした。だから、儂もこの老いさらばえた身で、らしくもなく出来るだけのことをした」

 

「公のご尽力で救われた兵士、そして救われた人々は数多くおります。古き血を継ぐカタロニア家当主として、ロームフェラ財団代表として、なによりも一人の人間としてご立派でありました」

 

 それはトレーズからの心よりの称賛だった。デルマイユは一回りも二回りも年下の男からの賛辞に何を覚えたのか、瞼を閉じ深く息を吐きながら背もたれに体を預けた。そうしてしばし沈黙してから、瞼と共に口を開く。

 

「トレーズ、MDを使え。お前の才覚でアレを最大限に利用するのだ」

 

「デルマイユ公」

 

「お前がアレを忌避しているのは十二分に分かっておる。儂もアレの有用性は認めているが、心から信用しているわけではない。お前をはじめエースと呼ばれるパイロット達には、敵わん代物だからな。

 だがな、アレの有用性も弱点もお前ほどの男ならとっくに理解しているだろう。儂も戦場での報告を読んでから理解した話だが、アレは状況が著しく変わる戦場では対応力に欠ける。

 またミノフスキー粒子をはじめとしたジャミングを受ければ、後方からの指示の伝達に大きな支障が生じる。どうしても現場の戦場で、有人機からの指示を受けられる範囲での運用でなければ、本領は発揮しきれんのだ」

 

「その通りです。加えて機体を操る制御システム、あるいは人工知能については各敵勢力の方が上でもあります」

 

「だが、それでも人間とは違い、例え失われても取り返しがつく。生物としての成長とパイロットとしての育成に時間のかかる人間と違い、短期間で大量に戦場に動員可能という点において、MDは人間に勝る。

 有人機の盾にしろ、敵の要塞や基地に突入する時に矢面に立たせてカナリアの代わりにしろ、あるいは特攻させて敵の兵力を削れ、捨て石にせよ。

 儂でさえこれくらいは思いつく。お前ならもっと出来る筈だ。血の通わぬMDを忌むのなら、人間を活かすように使え。アレは道具なのだ。ならば道具は使い方次第だろう。

 制御プログラムを始めとした運用方法はツバロフに問え。お前にとってはMD同様に侮蔑の対象だろうが、奴が最もMDに通じている。儂からもツバロフには言っておく」

 

「分かりました。デルマイユ公がそこまで譲歩されるのならば、私も応じるのが筋というもの。それにしてもまるで人が変わったかのようななさりよう。今回の前例のない事態もそうですが、他にも刺激を受ける事がございましたか?」

 

「ふん、生意気なプルート財閥の小僧があそこまで身を粉にしては、貴族を称する我らが後れを取るわけには行かん。口惜しいが今の地球が持ち堪えて居られるのは、実際に戦っている兵達はもちろんプルート財閥の献身的な支えが大きな理由の一つだ。

 もう二度と侮りを込めて小僧などとは呼べんだろう。そして真に欧州に根を張り、真に歴史を保ってきた我々ロームフェラ財団が奴らに後れを取る事は、根幹たる存在意義を揺るがすものだ。

 我々こそが真に地球圏を背負って立つのだと、奮起するのは当然だろう? それでもこと軍事においては、お前を頼らねばならん。情けないと笑うがいい」

 

「いいえ。デルマイユ公は私には出来ない事をなされた。私はロームフェラ財団とデルマイユ公がこの状況に於いて、真に貴族たらんとなされたことを嬉しく思います。オペレーション・レコンキスタの完遂をもって、私の務めを果たして御覧に入れましょう」

 

「頼んだぞ、トレーズ」

 

 そうしてトレーズは過去の回想を終えた。開かれたコックピットハッチの向こうで、レディ・アンがこちらを見ている。

 彼女もまたトレーズに付き従い、若さでもカバーしきれない疲弊の泥沼に陥ったが、反撃の時を迎えて気力が充溢しているのが分かる。

 

「トレーズ様、お時間です」

 

「ああ、ありがとう、レディ」

 

 トレーズは深く深く息を吸い、それをゆるゆると吐く。それからトールギスのコックピットから立ち上がって、オペレーション・レコンキスタ第二段階の発令を待つ諸兵へと呼びかけた。

 トレーズのその姿を用意されたカメラがとらえ、各艦、各機動兵器で時を待つ兵士達へとその姿と声、なによりも強き意志を届ける。

 

「まずこの場に集った全ての兵士達に感謝を述べたい。我々は軍人としての責務を果たせなかった。ミケーネ帝国とムゲ・ゾルバドス帝国の攻勢を前に力及ばず、敗走し、守るべき民衆と国土を奪われた。

 そう、我々は皆等しく敗者となったのだ。私もそして諸君らも敗者となった。弱者なのだ。だが、それは絶望を意味するわけではない。我々が侵略者達に屈したままで良い理由にはならない。

 トレーズ・クシュリナーダがここに宣言する。オペレーション・レコンキスタ第二段階を発動する。さあ、行こう。勇敢なる兵士達よ。奪われた国土を取り戻し、人々にあるべき平穏と繁栄を取り戻す為に。我らは掴むのだ。敗者の栄光を」

 

 トレーズの号令をきっかけにこの日の為に用意されたありとあらゆる水上艦艇、空中戦艦、潜水艦隊がベルファスト基地を始めとしたブリテン島の軍事基地から出撃した。

 膨大な数の機動兵器群達はミケーネ帝国やムゲ・ゾルバドス帝国に即座に察知されて、レコンギスタ本隊がドーバー海峡に達する頃には、これを迎え撃つミケーネ帝国の大昆虫将軍スカラベスと魔魚将軍アンゴラス、更に獣魔将軍の三つの軍団が動員された。

 

 海中ではパイシーズ、キャンサーといったOZ系水中用MSに加えてシンカー、ウオディック、更に新型機ハンマーヘッドが投入されて魔魚軍団と戦い、その頭上では空母や空中戦艦から出撃したMSやMAの大部隊が獣魔軍団、大昆虫軍団と激突している。

 その戦場の中には、ライトニング・カウントの異名を持つゼクス・マーキスの姿もある。

 彼の愛機として戦ったトールギス一号機は、激烈な戦闘により成長を遂げるゼクスの操縦に追従できなくなったこと、そして新たな侵略者達を相手には性能不足であると判断されて、現在は予備機となっている。

 

 トールギスが一年戦争以前に設計されながら、現在でも一線級の高性能機であるのは紛れもない事実だ。しかし、それでもMSという枠は超えられないし、設計当時の技術が古いものであるのも否めない。

 その為、トールギスの後継機として開発されたのが、現在トレーズの愛機となったトールギスⅡとゼクスの現搭乗機トールギスⅢだ。

 

 装甲素材に最高精度のガンダニュウム合金、ムーバブル・フレームの採用、全身に超電磁コーティングを施し、ヘパイストスラボ製の操縦補助システム・DBSを導入。

 更に加速性能と最高速度を増したスーパー・バックパック・バーニア、新規開発された高出力核融合炉の搭載、更には基本的に装備の無かった背中にグラビコンシステムを内蔵したバックパックが追加され、これによりG・テリトリーの使用が可能となっている。

 

 武装は更に大口径・高出力を実現したドーバーガン兼Gランチャー、ビームサーベル×2、更に左手に超電磁ランス、シールドも重力場を展開する機能が追加されている。

 暗黒の破壊将軍ヴァルダー・ファーキルの搭乗する暗黒に染めたダークトールギスⅡも、基本的にはトレーズのトールギスⅡと同等の性能を誇る。

 ゼクスのトールギスⅢは頭部にバルカンの追加に加え、ドーバーガンを超高火力のメガキャノン兼Gキャノンに換装され、左のシールドは円形から鋭角的なものに変えられてヒートロッドが搭載されるなど、全体的に攻撃力が強化されている。

 

 そして母艦であるストーク級から、ゼクスが副官ノインとオットーを引き連れて今まさに出撃せんとしていた。

 トールギスⅢにはメリクリウス、ヴァイエイトという新型機が随伴している。これはプルート財閥のコネを通じてOZと取引の末、技術協力を認めたコロニーの博士達とハワードが開発した機体だ。

 

 赤い雷神めいた姿のメリクリウスは実弾、ビームを問わずに防ぐプラネイトディフェンサーというフィールドを形成する円盤ユニットを背負った防御特化型。

 青い風神めいた姿のヴァイエイトは、ウイングガンダムのバスターライフルを超えるビームキャノンとそれに繋がる大型ジェネレーター内蔵のバックバックを背負った砲撃特化型。

 

 オットーがメリクリウスに乗り、ノインはヴァイエイトに乗っている。他にも同型機がヴァルダーの部隊にも配備されている。

 なおこの二機の性能を統合し、量産化したのがビルゴである。このスパロボ時空ならではの事情として、メリクリウス、ヴァイエイト、ビルゴにミノフスキークラフトによる飛行能力がある。

 艦隊から放たれたミサイルとビームの牽制の後に、ストームソーダーにサラマンダー、飛行形態のトーラスが次々と出撃してゆく姿にいよいよゼクス達も続く。

 

「ノイン、オットー、我々も出撃するぞ。我々の戦いはここだけで終わりはしない。二人とも私よりも先に死んでくれるなよ」

 

「ふ、それならご安心を。あなたの傍でならどこまでも着いて行きますが、それと自分の命を惜しまないのは別ですよ」

 

「ゼクス特佐、我々も地球圏を守る者の端くれ、命は惜しみませんが、特佐がそう言われるのなら努力いたします」

 

「私が自らの両翼と頼れる者は少ない。お前達はその数少ない翼なのだからな。行くぞ、ゼクス・マーキス、トールギスⅢ、出撃する!」

 

<続>

 

■トールギスⅡが開発されました。

■トールギスⅢが開発されました。

■ヴァイエイトが開発されました。

■メリクリウスが開発されました。

■ビルゴが開発されました。

■サイコザマンダーが開発されました。

■ハンマーヘッドが開発されました。

■ミネルバライダーが開発されました。

■ドリルスペイザーが開発されました。

■マリンスペイザーが開発されました。

■マグネスファイブが開発されました。

 

■ウルトラザウルスが追加武装「圧し潰し」を入手しました。

■サイコガンダムMk-Ⅱを入手しました。

■Gドアーズを入手しました。

 

●共通ルート 第三十二話「戦いのシルクロード」クリア後 ヘイデスショップ

 

・ストームソーダー

・サラマンダー

・ディバイソン

・ケーニッヒウルフ

・ホエールキング

・ジムⅢ

・ジェダ

・ガンタンク

・Gファイター

 

☆プルート財閥から資金10,000,000が提供されました。

 




地上ルートを選んでいると第三十二話にフェブルウスが参戦しています。
入れ忘れておりましたが、宇宙ルートを進んでいる場合、共通ルート三十一話クリア後にハガネ隊ルート(レコンキスタ参加)かエゥーゴ隊ルート(オードリー、メイファ、フォーミュラー系、ガンダムW系)に分岐します。


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第五十三話 そりゃそうなるでしょうよ

いつも誤字脱字の報告、感想、メッセージなどありがとうございます。
基本的に返信はしておりませんがいつも大変助けられております。感謝感謝です。


 太陽系のどこかに侵入しているバルマー・サイデリアル連合帝国艦隊のその中心、そこに母艦にして首都である27.8kmを誇る巨大艦ヘルモーズがあった。

 その中心部にある謁見の間にて、皇帝ラオデキヤの前に傘下にあるバーム代表オルバン大元帥と真ジオン共和国総帥エンツォ・ベルニーニの通信映像が映し出されていた。

 

「ふむ、ではミネバ・ラオ・ザビならびに摂政ハマーンを中心とした一部の者達の地球圏への脱出は、防げなかったというわけだな。エンツォよ」

 

『ははっ! アクシズの全権をお与えいただきながらこの度の失態を犯しましたこと、心よりお詫び申し上げます』

 

 映像の向こうで深々と頭を下げるエンツォの顔色は悪い。圧倒的な支配者を前にした恐怖と委縮もあるが、それ以上に防弾ベスト越しに自ら銃弾を叩き込んだ影響で肋骨が折れている影響がある。

 鎮痛剤を打ってはいるが、極度の緊張のせいもあってか鈍痛がぶり返しているような気がする。

 脂汗を滝のように流すエンツォを前にラオデキヤは表情を変えていないが、反対側に映し出されているオルバンはライバルの失態に侮蔑と愉悦を隠せずにいる。

 

「真ジオン公国から離脱した戦力は決して少なくはないが、我が帝国の全体から見れば微々たるもの。エンツォよ、貴様には療養を含めしばし謹慎を申し渡す。また残る真ジオン公国の戦力についても、無人機に関しては一旦こちらに引き上げて別の者に差配を委ねる」

 

『へ、陛下、この程度の負傷、なにほどの事がありましょう。私はまた……』

 

「余の命である。これに逆らう権利は(けい)にはない。分かるな?」

 

『は、ははぁ。分を弁えぬ振る舞い、平にお許しくださいませ』

 

「よい、許す。我が帝国は臣従せぬ者には容赦をせぬが、一度膝を屈したる者には幾度かの機会を与える程度の度量はあるゆえ」

 

『寛大なるお心に感謝いたします、陛下』

 

「さて、オルバンよ」

 

『は!』

 

 ライバルの失態にほくそ笑んでいたオルバンだが、彼とてあまり余裕を持ってラオデキヤと拝謁していられる状況ではなかった。

 バームは火星を制圧し、建設されていた都市や工業プラント、フォボスなどの衛星を利用して作られた基地を手中に収めていたが、肝心の地球制圧に関しては遅々として進んでいない。

 

 地球に前線基地を建設し、各地に戦力を派兵して戦ってはいるものの、ダイモスを筆頭としたスーパーロボット軍団を擁するDCや精強な連邦軍を前に、支配地域を増やせずにいる。

 最近ではオルバンと対立する派閥のバーム星人が密かに地球に降下して、連邦政府と協力体制を整えつつある事実を、オルバンはラオデキヤに報告せずにいる。

 

(今はまだこやつらに反旗を翻す時ではない。バーム十億の民を儂に忠実な兵士に洗脳し、そして地球の百億近い愚民共も我が手足に作り替えてからなのだ!)

 

「エンツォはかくのごとくだが、地上制圧を委ねた卿もまた進捗は芳しくないようだな」

 

『は、我がバームの精強なる兵達もってしても地球侵略が進まぬ事、恥じ入るばかりでございます』

 

「ふ、これは地球人達が、我らが目をかけるだけのことはあると褒めるべきやもしれぬな。

だが卿らも知る通り地上ではミケーネ、百鬼、ムゲ、妖魔、ボアザン、キャンベル、ガイゾックといった諸勢力のパワーバランスが崩れつつある。オルバンよ、これを活かすかどうかは卿の度量次第と心得よ。

 そしてまた宇宙において地球人達の勢力が分裂し、ベガの者達が戦力を増強させつつある。エンツォに謹慎を申し渡している間、卿も火星にばかりかまけずに我が帝国に対する貢献を示すが良い」

 

『は、はは! このオルバン、必ずや陛下のご意向に沿う成果をお目にかける事を身命を賭して誓いましょう』

 

「ふ、それが言葉だけで終わらぬことを期待しよう。ではこれに本日の議題を終了とする。両名、我が帝国の臣下として相応しき働きを心掛けよ」

 

『ははあ!』

 

 エンツォとオルバンの二人の映像がプツリと切断されてから、ラオデキヤは新たに通信映像を開き、この場には居ない宰相イングラムを呼び出した。

 

「聞いていたな、イングラムよ」

 

 四つ目の仮面を被る自称イングラムは、表面上は臣下として振舞い恭しく答える。

 

『は。二人とも腹に含むものがあるようで』

 

「であろうよ。どちらも情勢次第では余の寝首を掻かんとする野心が瞳の奥で燃えている。そうであるからこそ我が帝国の手駒として扱うのに相応しいのだ。

 もっとも奴らの苦戦はこちらの想定を上回るものであるのは事実。イングラムよ、この度の征伐は思いの外、帝国に消耗を強いるものであるな?」

 

『真ジオンとバームを使い潰してでも手に入れる価値があるかと』

 

「ふふ、余も同意見だ。地球人の闘争心、兵器開発に特化した技術力、機動兵器や戦争に対する極めて高い順応性、そして特異な能力を発する個体の割合の高さ、どれも帝国の尖兵として相応しい。宇宙でも有数の戦争に適した生物と言えよう」

 

 偽イングラム自身、ラオデキヤの語るところには頷くところが多い。単体の生物としてみれば地球人を上回る生物は宇宙にいくらでも存在しているが、種として見た時の多様性や戦闘能力、潜在能力は非常に高い。

 多くの世界において銀河規模、あるいは宇宙規模の争乱において重要な位置を占めたポテンシャルは、この宇宙においても同じなのだ。もっとも偽イングラムとしては地球人を尖兵とする件については、どうでもよいのだが。

 

「オルバンには地球人と戦い、彼らの戦闘レベルを引き上げる捨て駒の役割をさせればよい。オルバンに敗れるのならば地球人はその程度だったまでの話。その時には約定通り地球の支配を奴に任せよう」

 

『それでよろしいかと。奴が飼い犬の振りをしている間は、適当に餌を与えてやれば十分でございましょう』

 

「うむ。時にイングラムよ、例のアインスト共の動きはどうか?」

 

『は。変わらず不定期に我らの艦隊に攻撃を仕掛けてきております。エル・ミレニウムと交戦した指揮官型こそ姿を見せてはいませんが、我々の戦力の把握かあるいは足止めを狙っての行動かと』

 

「古き地球の観測者、いや記録者か。守護者めいた真似をするとは、どうやら機能に不具合が生じているようだな。地球人以上にアインストの方が厄介と見える。十分に備えよ」

 

『はっ。それでは私はこれにて失礼いたします。件のDCに送り込む人員につきましては、既に抜かりなく事を進めておりますれば、陛下はどうぞお心穏やかに吉報をお待ちくださいませ』

 

「卿ならば抜かりはあるまい。勤めに戻るがいい、イングラム」

 

 ラオデキヤの目配せを受け、イングラムは小さく頭を下げて通信を切った。玉座に一人残ったラオデキヤは、目の前に現在の地球の情勢を反映させた地球の立体映像を映し出し、欧州で行われている激戦の様子を拡大する。

 

「地球のあらゆる生命が闘争に燃えている。余にしても見事と称賛に値する輝き。闘争の種子を持つ者達よ、我らに収穫されるその時まで存分に大きく実るがいい」

 

 自らを傀儡とは露とも知らぬラオデキヤは与えられた性情に従い、傲岸不遜にして好戦的な皇帝として地球人類の収穫の時を待ちわびるように()んだ。

 

 

 オペレーション・レコンキスタ第二段階の発動により、トレーズ・クシュリナーダを総指揮官とする本隊は、暗黒大将軍率いるミケーネ帝国が仮の拠点を置くパリ解放を目指して、被害をものとものせずに進軍し続けている。

 MDを楔として敵戦列に打ち込み、そこへテウルギストやブレードライガー、ライトニングサイクス、グルンガスト弐式などで構成されるエース部隊が突入して、敵陣を壊乱させることでミケーネ帝国の戦闘獣を次々と撃ち破っている。

 

 この戦いの中でMDが飛躍的な活躍を見せたのは、この戦いにおいてトレーズが通常の部隊への指揮と並行して、エピオンシステムを用いてMDに指示を送っていたことだ。

 ミノフスキー粒子を始めとした電子妨害が発生している為、トレーズ自身も前線に立ってなお指示を送れたMDの数は全体から見れば少なかったが、それでも通常のMDをはるかに上回る動きを見せて、ミケーネ帝国の戦線を食い破る大きな助けとなったのだ。

 ミケーネの総司令官である暗黒大将軍は、瓦礫の山と化したパリの真っただ中で、各戦線の苦境を知らされて二つある顔を揃って顰める。

 

「DCの連中とムゲ・ゾルバトスを相手に戦力を分散させたことが仇となったか」

 

 暗黒大将軍の前には倒壊したビルの上に立ち、彼に報告するゴーゴン大公の姿がある。下半身が虎の壮年の男性という奇抜なビジュアルのゴーゴン大公だが、ミケーネ帝国では特別おかしな姿ではない。

 

「やはりムゲ帝国のギルドロームが率いる怪奇軍団への対処が尾を引いておりますな。ハーディアス将軍の悪霊軍団は今も?」

 

「うむ。ギルドロームの精神攻撃は人間どものみならずサイボーグである我々ミケーネの者達にも有効だ。対抗するには同じく幻術を得意とするハーディアスと奴の配下が最も良い。である以上、ハーディアスはギルドローム以外の相手には動かせん」

 

「アンゴラスとスカラベス、獣魔将軍も不甲斐ないことで」

 

 ゴーゴンが苦汁を呑むように口にした通り、レコンキスタ本隊の上陸を阻むべく出撃した三将軍の軍団は奮戦虚しく食い破られ、敗走を重ねている。

 まあ、ビューナスAの光子力ビームで倒されたアンゴラスをはじめ、将軍格だからといって通常の戦闘獣より圧倒的に強いというわけでもないので、いわば『気力200固定』状態の連邦軍の勢いを止められなかったのも仕方ない。

 

「不幸中の幸いなのはムゲの者共も人間達の猛攻を受けて、戦線を後退させている事だ。その分、我々も戦力を人間達相手に集中させられる。奴らの本命はこのパリ、そしてこの俺の首だ。逆にこの戦いで奴らを打ち倒せば、人間共の希望を砕く事が叶う」

 

「窮地こそ好機というわけですな」

 

「そういう事だ。ゴーゴン大公、貴様は下がっておれ。その代わり影に隠れて小細工を弄している人間共の掃討は任せるぞ」

 

 暗黒大将軍の告げる小細工を弄している人間共とは、地球連邦軍所属の各特殊部隊やダンクーガの関連人物であるアラン・イゴール率いる黒騎士隊などゲリラたちを指す。彼らはオペレーション・レコンキスタの発動に合わせて、占領された欧州各地で表に出ない活躍をしている。

 ミケーネ帝国の諜報部門に所属するゴーゴンからすれば、まさに宿敵と言える相手だ。

 

「お任せを」

 

 現在、ミケーネ帝国軍は北西からレコンキスタ本隊、南東からはDC地上部隊とそれを援護する連邦軍、また東においてはムゲ・ゾルバトス帝国と連邦軍ロシア方面軍を相手取り、更にDCの挑発に乗った各勢力の派遣した軍勢との偶発的な戦闘が散発している。

 その為、人工知能を乗せた量産型の戦闘獣とサイボーグ型のオリジナル戦闘獣の両方が、想定を上回る速度で消耗の一途を辿っている。

 このまま、戦力が減り続ければ今後の戦略に大きな支障を来す危険性が高い。

 

「やはり奴らを一気に引き込んで片付けるのが、残された逆転の一手か」

 

 歴戦の将軍としての嗅覚と経験から、暗黒大将軍は自分達の追い込まれた窮状を理解し、激闘の予感に武人としての血を沸き立たせていた。

 

 

■共通ルート 第三十四話 破滅の魔獣

 

 一方その頃、暗黒大将軍の配下である妖爬虫将軍ドレイドウは、配下の爬虫類型戦闘獣軍団を率いて、プルート財閥が保有するエリュシオンベースに攻め込んでいた。

 エリュシオンベースはあくまで民間企業の建設した施設であるが、その実態は大規模な軍事基地に匹敵する防衛設備を有し、兵器開発並びに生産施設も充実した一大軍事拠点と言える。

 ここで開発された兵器の活躍ぶりは軍事関係者にはよく知られており、七大将軍の一人が攻略に派遣されてしかるべき場所だ。人類の抵抗を挫くという意味でも、後々の戦闘に備えて高度な軍事技術を接収する意味でも重要性が高い。

 

「行け行け、何を攻めあぐねている。この程度の基地一つ、我が軍団ならば攻め落とすのは容易な筈だ!」

 

 竜を模した頭部を持つドレイドウは配下の戦闘獣ゴブリウスやジャラガ、センザン、イグニアス、ゴモドラー、ギドニアスといった戦闘獣達に進軍を命じる。

 彼がエリュシオンベースの攻略を命じられてから三日、無数の防衛設備と強力な機動兵器を多数保有する防衛部隊の奮戦によって、目的を果たせぬまま今日に至っている。

 

(獣魔将軍やスカラベスが失敗した今、ここでエリュシオンベースを陥落させれば、俺に対する闇の帝王様の覚えもよくなるというもの!)

 

 エリュシオンベースには元から配備されていた防衛部隊に加え、欧州大侵攻時に敗走した連邦軍やOZの部隊も収容しており、それらが協力して防衛線を描くことによりエリュシオンベースはドレイドウやそのほかの勢力の侵攻を跳ねのけ続けて今日に至る。

 地下に収納されていた光子力/ゲッター線/メガ粒子砲などの各種ビーム砲やミサイルランチャー、レールキャノン、リニアランチャーといった砲台の数々に加えて、簡易AIを積んだ機動砲台バレルアントが所狭しとエリュシオンベース近隣に配置されている。

 それらを盾役にゲシュペンストMk-IIやMZで構成される防衛部隊、さらにトーラスやリーオーのOZ、ジェムズガンやジェガンの連邦軍らが戦闘獣軍団に容赦のない攻撃を加えている。

 

 主人公達の基地が襲撃されるのはロボットアニメの定番であり、スパロボでも同じことで、現実となったこの世界においてもエリュシオンベースの重要性の高さもあって、ヘイデスは可能な限りの防備を施していた。

 愛妻が腰を据えているのもそうだし、下手にこの基地が陥落して技術や機体が流出したとなれば後でどんな面倒なことになるのかと危惧していたからである。

 そして今、エリュシオンベースに入念に用意された防衛部隊はその真価を遺憾なく発揮していた。

 

 ヘイデスの判断で量産が開始されたグルンガスト弐式をベースに、Dエクストラクターの搭載を始めとしたカスタマイズの施された新たなグルンガストが三機、防衛部隊の中でも特に目立った働きを見せている。

 灰色をベースにした機体色で、変形機構を排した代わりに機体の剛性が増し、両肩にはまるで犬や狼の頭部を思わせる『ケルベロスヘッド』と呼ばれる巨大なパーツがある。

 

 グルンガスト弐式のカスタム機『グルンガスト冥式(めいしき)』だ。

 三機それぞれに細かい色の違いの他、指揮官機使用の冥式は両腕に射撃・格闘兵装兼用のターネイルを装備。標準仕様の冥式は左腕のみターネイルを装備し、電子戦仕様の冥式はターネイル一基とジャマー関係の装備を搭載している。

 アラド達とは別口で「スクール」を脱走していたブーステッド・チルドレンのシエンヌ・アルジャン、シアン・アルジャン、シオ・アルジャンらの駆る専用機だ。

 

「あたしの番だ。こいつを食らいな! ターネイルドリルナックル!」

 

 リーダー格である白い髪をベリーショートにした三白眼の少女シエンヌが、冥式の両腕のターネイルを激しく回転させ、そのまま腕ごと撃ち出して前方から迫ってきていた量産型のイグニアス二体を頭からぶち抜く。

 さらにその隣に立つ冥式には、頭にバンダナを巻いた体格の良い男シアン・アルジャンも、勝ち組と言えるこの場所を守るべく目の前の戦闘獣達に敵意を剥き出しにしている。

 

「オラオラオラ、消し飛びやがれ、ケルベロス・ブラスター!」

 

 冥式の胸部と前方に傾いた両肩のケルベロスヘッドの口が開き、それぞれの奥から真っ赤に輝く光の奔流が放たれる。

 大型Dエクストラクターの生み出すビームは、センザンコウのように丸まって突撃してきたセンザンを飲み込み、見る間に跡形もなく吹き飛ばす。

 残る冥式に搭乗しているシオ・アルジャンは、バイザーで覆った瞳に現在の戦況を移し、飽きもせずに攻撃を繰り返すミケーネに溜息を零す。彼は生来の面倒くさがり屋であった。

 

「面倒だけどここが落ちた方が面倒だよね。それに個人的にはここを失いたくないし」

 

 シオはアクティブステルスによって戦闘獣内部の電子機器に干渉しながら、アイソリッド・レーザー、スプリットミサイル、ピークシューターといった射撃兵装を連射して前に出るシエンヌとシアンの二人を援護する。

 まだ年若いが一線級の操縦技術を持つアルジャントリオを筆頭に、ノーマルのグルンガスト弐式部隊、さらにはゲシュペンストMk-Ⅲ、バルゴラGSといった少数の最新鋭機も戦闘獣を相手に戦う姿が散見されている。

 

 そして少数しか生産されていないゴジュラスギガ、ゴジュラス・ジ・オーガ(オーガノイドシステム非搭載)部隊も暴れ回っている。

 原作のゾイドシリーズとは異なり、対メカザウルスを想定して開発されたゴジュラスギガとオーガは共に倍以上の大きさでロールアウトしており、三十~四十メートル級の大きさを誇っている。

 戦闘獣からすれば自らを上回る巨大な怪物相手だ。もはやモビルゾイドの枠を超えたとしてゾイドと呼ばれるようになった新たなゴジュラス達は、そのパワーにおいてスーパーロボットクラスに達しており、その暴威をぶつけられた戦闘獣達は尾の一撃で吹き飛ぶものや噛みつかれてそのまま頭を砕かれる者が続出している有り様だ。

 

 加えてエリュシオンベースの防衛設備から放たれるビームやミサイルの雨は一向に止まず、妖爬虫軍団の屍の数は時間を追うごとに増えている。

 鬱陶しい砲台を黙らせようにもエリュシオンベースの主要部分には光子力バリヤーやゲッター線バリヤー、超電磁バリヤーにビームバリヤーと多種多様なバリヤーが張り巡られ、更に砲台の射線軸のみの部分的な解除も可能という厄介な代物で、本当にこれで軍事基地でないのかと疑いたくなる鉄壁ぶりだ。

 

「天に凶星、地に精星、計都瞬獄剣!」

 

「ディバイソン第三小隊をこっちに回せ! ガンブラスターもだ」

 

 なおこのガンブラスターとはMSではなくゾイドの方のガンブラスターだ。

 

「カムペー1がやられた、これから回収する。援護を頼む!」

 

「カウント3で一斉射! 回収を援護するぞ!」

 

「グラビトンランチャーを三時方向の敵に四斉射、ブレードライガー隊はその後に突っ込め!」

 

「70秒後にギル・ベイダーが発進する! 空を開けるぞ、撃ちまくれ! なに? 完成していたのかって? 試作機だよ! 戦力がいるだろ? プロトタイプでも強えんだ、出すんだってよ! マジバケモン性能だしよ」

 

 レビルがハガネの艦長に赴任した後、後任を任された新たな司令官は実によく指揮を執っていた。

 敗走してエリュシオンベースに逃げ込んできたOZや連邦軍の指揮官クラスも、かのプルート財閥の息のかかった施設とあっては下手な真似は出来ないし、加えて敗走の最中に遭ってもなお真っ当な判断の出来る人物達であったのが幸いした。

 

 地表と空中で激しい戦いが繰り広げられている中、エリュシオンベースの格納庫ではメカニック達が補給や修理の為に戻ってきた機体や新たに出撃する機体の発進作業にと忙殺の勢いだ。

 欧州陥落以降この日を想定して備えていた彼らは、直接戦場には出なくとも歴戦の兵士の如く勇気を振り絞って自分達の出来る仕事を最大限行っている。

 そんな格納庫にエリュシオンベースの最重要人物である所長が姿を見せた。人間の体現しうる最高の美の一つといってよい美貌には凄烈な意思が宿り、その眼光に睨まれたら並大抵の人間は卒倒してしまいそうだ。

 

「所長、どうしてこの格納庫に? いえ、そのお姿は!」

 

 所長に気付いた女性メカニックのベベニが眼鏡型デバイスの奥の目を丸くし、更に所長の出で立ちに気付いて大声を上げる。所長は豊かなプラチナブロンドを一つにまとめ、いつもの白衣の下には黒を基調としたパイロットスーツを着込んでいたからである。

 

「あら目敏いですわね、あなた」

 

「まままま、ましゃか出撃されるおつもりですか!?」

 

「一応、シミュレーターと実機での模擬戦はしておりましてよ?」

 

「そりゃまあ、人体の限界の反応速度を叩き出したり、人造骨格と内臓と心肺じゃねえのって疑うくらいにデタラメなお体なのは存じておりますけれど、ご自分の立場をお考え下さい!」

 

 ベベニを含むエリュシオンベースの関係者の間では、所長は素手で戦車を解体できるんじゃないかと半ば本気で語られている超人だ。パイロットとしても身体能力の数値だけを見れば超一級品である。

 

「試作機も戦線に上げている状況です。戦えるパイロットを出し惜しみしている場合でもないでしょう」

 

「所長は技術者です! 非常識なのは発明品だけにしてください! そのパイスーを着ていても分かる大きなおっぱいに脳みそが吸われたんですか!?」

 

「動揺しているからとはいえ好き勝手言ってくれるものですわね、ベベニ。私としても自分の価値は弁えているつもりです。

 それを考慮してもここが陥落した後を一層憂慮しているのです。パンドラボックスが流出すればどうなるか、想像もつかないほどですし。それに私も命は惜しいので機体は選んで乗りますわ」

 

「ええと、そうなると……デススティンガーはレコンキスタ本隊に向けて送り出しましたし、あ、まさかURG-1を、ヴァルシオーを!?」

 

「ええ。まだ調整中の段階ですし、戦いながら各種調整を施さなければなりませんから、私でないと操縦と調整を両立できません。貴女もあの機体に乗るのなら安心できるでしょう?」

 

「そ、それはヴァルシオーが本来の性能を発揮できればの話です! 究極ロボの開発コード通り、あれは単独でマジンガーやゲッターロボ、超電磁メカに獣戦機メカ、ダイモスにライディーン、ザンボット3、グルンガストといったスーパーロボット軍団と正面からやり合える機体です。

 でもそれはあくまで開発コンセプトで、実際にそこまでの戦闘能力を発揮するかは未知数ですし、武装もまた中途半端で諸々調整中ですよぅ」

 

 さて、二人の口にするヴァルシオーだが、その名前から察せられるとおりに第二次スーパーロボット大戦でラスボスを務め、その後も複数のタイトルに出演したバンプレストオリジナルメカ“究極ロボ・ヴァルシオン”の流れを汲む機体である。

 この世界では所長主導で開発が進められていたこの機体は、SRG計画で培ったあらゆる技術と各スーパーロボットを参考に、更にパンドラボックス内部の異世界技術をふんだんに盛り込まれている。

 

 もし設計通りに完成し、性能を完全に引き出せるパイロットが乗り込んだなら、現在のDC全戦力を相手に戦えるだろう。

 なお名前が“ヴァルシオー”なのは下手にヴァルシオンという名前をそのまま採用すると、万が一、ヴァルシオン検定一級のシュウ・シラカワがこちらに来た時、ヴァルシオンに思い入れのある彼に変に睨まれるかもしれないから、とヘイデスがビビったのが理由である。

 

「ヴァルシオーのバリヤーは機能していますし、固定砲台くらいの役割は出来るでしょう? 今はそれで充分です」

 

「ででででもですよ、所長に万が一のことがあったら総帥が復讐の鬼と化すのが目に見えていますぅ。プルート財閥の総帥が復讐の為に持てる権力と財力の全てを使ったら、どうなるか分かりませんよ」

 

「…………大丈夫、私が死ななければそれでまるっと収まります」

 

「マズイって自覚しているじゃないですか、ヤダー!」

 

 うわあん、と今にも泣きだしそうなベベニにさしもの所長も白旗を上げようか、と頭の片隅によぎった時、けたたましいアラート音が格納庫に響き渡り、二人が揃って険しい顔になる。

 

「なにごとです! 状況報告!」

 

 アラート音に負けない声を出す所長に、壁に埋め込まれた端末を操作した中年のメカニックが答えた。所長のパイロットスーツ姿にぎょっとしたが、口を動かすのは忘れなかった。

 

「はい! 九十九番格納庫から出撃申請が届いています!」

 

「九十九番? デスザウラーが!?」

 

 さしもの所長が驚きを隠せないのには理由があった。デスザウラーとデススティンガーは搭載した大型ゲッター炉の影響なのか、有人では起動すらしなかった為に戦場で指揮官機や母艦からの短距離での無線操作が予定されていたのである。

 そのデスザウラーが自律起動して出撃要請を送ってくるとは!? ヘイデスが知ったら、マークニヒトじゃないんだからさあああ!? と悲鳴を上げただろう。

 だがそれも仕方がない。なぜならデスザウラーにはブラックホールエンジンにゲッター炉を積むわ、装甲にはズフィルードクリスタルを解析して作り出した自己修復機能を持つマシンセルを採用するわ、そもそもアニメ版の巨大デスザウラーだわとこれはもう暴走してくださいと言わんばかりの要素がてんこ盛りなのだから。

 

<続>

 

■ガンブラスター(ゾイド)が開発されました。

■ギル・ベイダーが開発されました。

■ゴジュラス・ジ・オーガが開発されました。

■ゴジュラスギガが開発されました。

■グルンガスト冥式が開発されました。

■バレルアントが開発されました。

■マシンセルが開発されました。

 

■アルジャントリオは元気です。

 




皆さんが度々危惧していたある意味予定調和のデスザウラー自律起動。暴走かどうかはまた次回にて。ひょっとしたら徹頭徹尾味方かもしれませんしね。

追記
御指摘がありヴァルシオーの型番をUR→URGへ。

追記2
グルンガスト冥式の名前からクロートー/ラケシス/アトロポスを外しました。


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第五十四話 だって味方版が見たかったから

前話の感想を見るに皆さんの予想は

1 そりゃ暴走するよ
2 パンドラボックス経由でフェブルウスが操作?
3 実は味方の良い子

の三つに分かれている印象ですね。

またエゥーゴ組にスペース・アーク組もついていった形に修正しました。


「トミイさんは!」

 

 デスザウラーからの出撃要請という異例の事態に、所長はゾイドシリーズ全ての設計・開発に携わった同僚について通信端末の向こうに居る部下に問い質したが、返ってきた答えは無常だった。

 

『白目を剥いて泡も吹いてぶっ倒れましたあ!』

 

「でしょうね」

 

 トミイ・タカラダはことゾイドシリーズの開発に関しては所長を上回る天才だが、さしもの彼もシリーズ史上最強の機体が自らの意志で起動し、出撃要請まで求めてくる、という想定外の事態に脳の処理が追いつかなかったらしい。

 所長はすぐに白衣の袖に触れて、着衣型コンピューターでもある白衣は外部の戦況とデスザウラーの座す九十九番格納庫の状況を立体映像として眼前に映し出す。

 瞬時に頭の中でデスザウラーを出撃させるメリットとデメリットを計算し、通信端末に新たな指示を出す。

 

「デスザウラーの発進シークエンスを進めなさい。司令部には私から話を通しておきます」

 

『……よろしいのですか? デスザウラーの実戦投入は初めてですし、下手をすればこちらの指示を受け付けない危険性も。マッドサンダーもまだ試作段階ですし』

 

 原作においてデスザウラーに対抗するために開発されたトリケラトプス型ゾイドのマッドサンダーは、デスザウラー最大の武器である荷電粒子砲を弾くシールドを持ち、デスザウラーの重装甲も貫くドリル状の角マグネーザーを有する。

 デスザウラーとデススティンガーがあまりに高性能過ぎたことに加え、パイロットを乗せた場合には起動しないという問題が発覚した後、無人機運用での暴走に備え、対抗策としてこの世界でも開発が進められていた。

 

 ただしこの世界ではデスザウラーがブラックホールエンジンとゲッター炉を搭載している為、荷電粒子砲ばかりに対策しているわけにも行かないので、開発は至難を極めている。

 所長はマッドサンダーの開発が間に合っていない事実に頭の痛い思いだったが、最悪の事態に陥る可能性ばかり考えても仕方がないと思考を切り替える。

 

「わざわざ出撃を要請してくるくらいです。こちらの指示を無視して無差別に暴れ回るつもりはないはず。それに妖爬虫軍団だけならばともかく、百鬼帝国と妖魔帝国の部隊も接近中なのです」

 

『そんな!?』

 

「それでもしばらくは持ちこたえられますが、デスザウラーが想定通りの力を発揮してくれるなら、三つの勢力を相手にしても余裕が持てます。

 責任はすべて私が負いますから、作業を急ぎなさい。それとトミイさんは水をぶっかけてでも起こしなさい。ゾイドにもっとも詳しいのはあの方なのですからね!」

 

 デスザウラーの想定外の行動に格納庫内が慌ただしさを増す中、所長は的確に指示を飛ばしつつこっそりとヴァルシオーの格納庫へと駆け出す。万が一の時にはヴァルシオーを固定砲台として運用する考えを捨ててはいなかったのである。

 一方で、デスザウラーの起動を知らないドレイドウとエリュシオンベース防衛部隊は、変わらぬ激闘を続けていた。

 

 ドレイドウは今回の攻略作戦について配下の戦闘獣軍団で正攻法の攻めを行う一方、複数の戦闘獣ゴモドラーの尻尾から吸血殺人トカゲを大量に放出させ、エリュシオンベースの人員抹殺を策していたのである。

 幸い各種バリヤーによってエリュシオンベースへの侵入を阻むことに成功しているが、戦闘終了後に隠れていた吸血殺人トカゲに侵入されたら一大事であるから、見つけ次第始末するよう厳命が下され、その為に余計な労力を割かれていた。

 

「ええい、またトカゲが出たぞ! 火炎放射器持ってこい!」

 

「ジムのスプレーガンが欲しくなる日が来るなんて」

 

 見かけた吸血殺人トカゲの群れをリーオーがMSサイズの火炎放射器で焼き払い、トラゴスがまとめて轢き殺し、ジェガンはオプションのハンドグレネードを投げつけて吹き飛ばし、チマチマと処理を進めている。

 妖爬虫軍団の損害は相当だが、それでもドレイドウに退く素振りは見られず、彼がこの施設の攻略に力を入れているのは明白だったが、それとて限界はある筈だ。

 

 攻め寄せる戦闘獣と忍び寄る吸血殺人トカゲの対処を進めている彼らに、司令部からエリュシオンベースのバリヤー範囲外の発進口から友軍機が出撃する旨の知らせが届けられる。

 こんな状況だ。友軍は一機でも多い方がありがたいが、彼らは大なり小なり違和感を覚えた。なぜならその発進口は機動兵器用のものではなく、陸上戦艦や空中戦艦の発艦・着艦に用いられる場所だったからだ。

 

「なんだ、ラー・カイラム級かそれともスペースノア級でも出てくるのか?」

 

 どちらも強力な戦艦だ。相手側にミケロスという母艦が居る事もあり、戦艦系でも大歓迎というのが防衛部隊の偽らざる心情だったろう。

 しかし同時にドレイドウもまたバリヤーの外で動いている発進口に気付き、二つの顔に笑みを浮かべる。

 

「馬鹿め、俺が今まで無策で攻め続けてきたと思うか。今更何が出てこようが遅いわ! こちらの策は整ったのだ! ははははは、やれ、ミケロス! バリヤーごと纏めて地上の施設と邪魔な奴らを吹き飛ばしてしまえ!」

 

 正攻法の攻め、吸血殺人トカゲによる内部の壊滅に続くドレイドウ第三の策とは、万能要塞ミケロスの上部にある円盤を分離し、そこに満載した特製爆弾をエリュシオンベースに落下させて、地上施設とバリヤー、防衛部隊をまとめて吹き飛ばすというものだった。

 エリュシオンベースの主要施設が地下にあるのを踏まえ、地上施設ならば跡形もなく吹き飛ばして構わないし、これまでの攻撃の間にミケロスを前線に進められたので実行の時と判断したのだ。

 全高五百メートルを超すミケロスの上部円盤ともなればどうしたって目立つ代物で、アルジャントリオはもちろん防衛部隊も突如分離してバリヤー目掛けて飛来する円盤に気付き、咄嗟にそれを撃ち落とそうとするが、周囲の戦闘獣達の妨害が入って失敗に終わる。

 

「おいおい、どうみたってなんかあるだろ、あの円盤!」

 

 慌てた様子のシアンがグルンガスト冥式のアイソリッド・レーザーやピーク・シューターを連射するが、量産型の戦闘獣が自ら盾になり、またあるいは防御を捨てて襲い掛かってくる為に照準がどうしてもぶれてしまっている。

 シオやシエンヌも同じで、特にグルンガスト冥式で大暴れしていた彼女らには多くの戦闘獣が殺到しており、絶対に円盤を落とさせてなるものかという気概すら感じられる。

 

「くそ、こうなったら無理やりにでも突破してあの円盤を!」

 

 シエンヌは冥式からウィングガストへの変形機構が廃されている事に苛立ちながら、我が身を省みない半分特攻めいた博打に出るのも辞さない。だがそれをエリュシオンベースからの通信を受け取ったシオが止める。

 

「待って、シエンヌ、シアンも。これ、退避勧告が出ている。なに、この射線?」

 

「なんだって? あの九十九番発進口から出てくる奴がなにかするのか!?」

 

 九十九番発進口内部では隔壁が次々と開き、数百メートルクラスの物体用の巨大エレベーターが地上部分へと高速で昇ってきている。

 敵味方の無数の残骸があちらこちらに転がり、青い空を汚す黒煙と毒々しい大輪の炎の花が無数に咲き誇っている。

 ビームにミサイル、電流に火炎、毒液に砲弾、ビームサーベルにアイアンクロー、プラズマ・ステークに牙とお互いの武器という武器の応酬がひっきりなしに繰り返されている。

 激しい戦闘の様子を物語り続けているその一角にある九十九番発進口の最後の隔壁が開き――

 

「みすみす見逃すと思ったか!」

 

 目敏く新たな敵の出現に気付いていたドレイドウが自らの口からファイヤーブレスを放ち、更に周囲に残っていた護衛の戦闘獣達も破壊光線や電撃、毒液、ミサイルの雨を半ばまで開いていた隔壁の向こう側へと発射する。

 例え艦船であろうとも直撃すれば轟沈は免れないと分かる破壊の嵐は、数百メートル規模の巨大な爆発を引き起こした。

 

「くそ、あれじゃあっ!」

 

 せっかくの援軍もこちらの支援が足りなかったばかりに無駄死にだとシエンヌが表情を歪ませ、そしてその直後に愛機の捉えた莫大なエネルギー反応と巨大な爆炎の中から放たれた荷電粒子の奔流によって歪んだまま表情が強張る。

 計器の故障だと勘違いしてしまいそうな数値を叩きだしたエネルギーは、荷電粒子砲となって爆炎を貫き、そのままエリュシオンベースに迫っていたミケロスの円盤を貫いて内部の爆弾を誘爆させる。

 

 直後に戦場全域を震わせる大爆発が発生し、機体越しにも伝わる振動に思わず眉をしかめたシエンヌは見た。

 爆炎を貫いた荷電粒子砲がそのまま勢いよく振り回されて、上部円盤を外したミケロスの人面部分に横殴りに叩きつけられるとわずかな抵抗の後には、そのままミケロスを上下に分断してのけたのを!

 

「ああ!? ば、馬鹿な、俺のミケロスが!!」

 

 ドレイドウは一瞬にして作戦の破綻だけでなく母艦すら失った事実を受け止め切れず、驚愕に目を見開いてから荷電粒子砲の発射元へ視線を転じた。

 ミケロスとさらにその周囲の戦闘獣を巻き込んで破壊した荷電粒子砲の放射は止み、それを放った存在が爆炎を割ってゆっくりと歩み出していた。

 

 機動兵器の足音だとは信じがたい重低音と振動を一歩ごとに発し、あれだけの攻撃を浴びながらも傷一つないソレが戦場の全ての者達の前に姿を見せる。

 光をも飲み込む深き黒を主体に、鮮血を思わせる赤色の装甲を鎧としたティラノサウルス型ゾイド――しかしあまりにも巨大すぎた。大きすぎた。圧倒的であった。

 

「なん、だと? 恐竜帝国の遺産か? 馬鹿げた大きさだぞ、俺の十倍、十五倍、それ以上か!?」

 

 ドレイドウが驚愕するのも道理。実に全高三百メートルを超すその巨体は、これまで地球連邦軍側の勢力が開発した機動兵器の中では、ウルトラザウルスと並ぶ最大級の大きさだ。

 動力に超高出力ゲッター炉とブラックホールエンジンを備え、ゼファーファントムシステムをベースとした自律回路を搭載、また装甲には自己再生機能を持つマシンセルを用い、高出力のEシールドの他、グラビティ・テリトリーといった防御装備も持つ。

 

 ミケロスを轟沈せしめ、多数の戦闘獣を一掃した口部の荷電粒子砲を始め、凶悪な鋭さのハイパーキラーバイトファング、両前脚の巨大なハイパーキラークロー、ゆらゆらと揺れる加重力衝撃テイルといった大質量を活かした五体そのものが凶悪な武器だ。

 それに加えてグラビコン・システムによる重力操作により、命中時に重力を増す事でインパクトを増大させてよりダメージを与えるという細工まで可能と来ている。

 

 それ以外にも対地レーザー機銃や十六連ミサイルランチャー、ビームガン、リニアレーザーガン、レーザー機銃にミサイルポッドと無数の火器が巨体を飾っている。

 近づいても死、離れても死を与える圧倒的破壊者、戦場における絶対の殲滅者、対峙すれば逃れようもなき破滅の魔獣――デスザウラー。

 

「グオオオオオオ!!」

 

 人を乗せず自らの意志で動き、自らの意志で戦う超巨大規格外ゾイドは、惑星Ziではなくこの地球でその産声と呼ぶにはあまりに凶悪な咆哮を戦場に轟かせる。

 戦場に居る誰もが意識を奪われるほどの力に満ちた咆哮に畏怖を覚える。真っ先にその畏怖を振り払ったのは、曲がりなりにもミケーネ帝国の七大将軍たるドレイドウだった。

 

「あれだけの出力の砲撃だ、そうそう連射は出来んはずだ。かかれ!」

 

 ドレイドウの指示に従い、戦闘獣ギドニアスやイグニアスを始めとした爬虫類型戦闘獣が一斉にデスザウラーの足元へと群がってゆく。

 並大抵の兵器であったらドレイドウの見立ては間違いではなかっただろう。しかし彼はデスザウラーを知らなかった。

 

 デスザウラーの背にある荷電粒子を供給する為のファンが唸りを上げて回転し続ける限りにおいて、デスザウラーはほとんど間を置かずに発射中の角度変更や連射すら可能だった。

 そして原作のデスザウラーとは異なるこのスパロボ時空で作り出されたことにより、クロスオーバーテクノロジーをふんだんに導入されたデスザウラーは荷電粒子砲以外にも必殺と呼ぶべき兵器を備えていた。

 

「ゴオオアア!」

 

 自らに迫りくる戦闘獣を王者の風格で見下ろしたデスザウラーが新たな咆哮を上げるのと同時に、デスザウラーを中心として漆黒の衝撃波が発生し、近づいていた戦闘獣達を三千倍に達する人工重力が圧し潰しにかかる。

 重力兵器ベタンだ。機能的には重力の魔神グランゾンのグラビトロン・カノンに近いが、こちらはあくまでも重力の衝撃波である。

 

 さしもの強靭なる戦闘獣も自重が突如として三千倍にもなれば、動けなくもなる。ただ三千倍の重量がのしかかっているのではなく、内部の繊細な電子機器も含めた自分自身が三千倍の重さになっているのだ。

 人間で言えば内臓も脳みそも重量が増しているとなれば、耐えられるわけもないと理解し得よう。

 

 そのまま圧壊するまでほとんど時間はかからないが、デスザウラーはなおも無慈悲で容赦がなかった。

 デスザウラーが一時的に三千倍の重力を解除し、戦闘獣達が半死半生の青息吐息となったところへ、デスザウラーの開いた口の奥から放たれた黒紫色の奔流が容赦なく襲い掛かり、原形を留めない形へと圧し潰す。

 ブラックホールエンジンの恩恵による超重力衝撃砲だ。OGシリーズに登場する戦艦ヒリュウ改の主砲と同質の代物で、仮に荷電粒子砲が使用不可能な状態に陥ってもこちらは問題なく使える。

 

 妖爬虫軍団の悲劇はこれで終わらなかった。飛行していた為、重力衝撃波から逃れていたジャラガやゴブリウスらへと向けて、デスザウラーが三度口を開き、今度は緑色のエネルギーの奔流が放たれて必死に逃れようとする戦闘獣達を飲み込んでゆく。

 元々は対恐竜帝国用兵器であったゾイドの系譜に連なる以上、当然搭載されているゲッター線利用武器――ゲッターメガキャノンだ。

 

 原作・スパロボ知識のあるヘイデスとしては、無敵戦艦ダイを想定したサイズとなったデスザウラーの放つゲッタービームだ。恐竜帝国がほぼ滅亡したも同然の今では、両者の直接対決を見る事は叶わないだろう。

 荷電粒子砲、超重力衝撃砲、ゲッターメガキャノンの攻撃が終わった後、擦り減っていた妖爬虫軍団は壊滅的な有り様だ。だが、それでもデスザウラーは攻撃の手を緩めはせず、重々しい音を立てて歩行を開始し、全身の火器と五体で残る戦闘獣達へと襲い掛かる。

 

「識別信号は、味方? 機体名称はデスザウラー……ママン達はなんてものを作ったんだ」

 

 その巨体もあるが単機で妖爬虫軍団を殲滅に掛かるデスザウラーの姿に、シエンヌは味方と表示されていても冷たい汗が全身を濡らすのを止められなかった。

 戦場のシエンヌを始めとした者達がデスザウラーの圧倒的戦闘力に驚愕する一方で、所長もまたヴァルシオーのコックピットでモニタリングしながら、デスザウラーのシミュレーションを超える戦いぶりに険しい視線を寄せている。

 

「このヴァルシオーと並ぶ我がラボの最高傑作のひとつとは言え、こちらからの指示のない自律戦闘でここまでの戦いぶりを見せますか。

 幸い味方に攻撃はしていませんが、ゼファーを参考に組んだ倫理プロテクトが効いている? カインズ博士は気休めにしては効果的と言っていましたが、本当ですわね」

 

 今もデスザウラーは荷電粒子砲の射線軸上に居たアンクシャ小隊に退避勧告をして、退避が終わるのを待ってから発射し、味方殺しをきちんと避けているではないか。

 

「それにしても供給ファンが破壊された時のことを考えて、ゲッタービームと重力兵器を扱えるようにしましたが……う~ん、やりすぎたかしら?」

 

 しかしデススティンガーも似たり寄ったりの装備であるし、ウルトラザウルスも火力不足を補うためにグラビティキャノンや1200mmウルトラキャノンを用意してあるのは、敵対勢力がそれだけ強大だからだ。

 だからこそ、このヴァルシオーとて同族の地球人類相手には過剰なまでの性能を持たせて開発したのだから。

 決して地球人を相手には使っていけないレベルの機動兵器は、あくまでも侵略者を相手にこそ力を振るうことが許されるのだ。

 これまで散々、次代の先を行く兵器を開発し続けてきた所長をしてデスザウラーはちょっぴり反省の念を抱かせる怪物だった。

 そんな怪物の相手をさせられているドレイドウは、秒ごとに減ってゆく部下達の姿に、悔恨と憎悪を否応なく掻き立てられていた。

 

「ぐうう、こうなってはもはや攻略など出来るものか。総員、撤退だ! パリへ退くぞ!」

 

 両手の指で数えられるまでに減った部下達に撤退を大声で伝え、ドレイドウは歯ぎしりをしながらデスザウラーに背を向ける。

 そうして戦場から全速力で撤退する最中、背後からいつ荷電粒子砲を始めとした化け物砲が撃たれるか、気が気ではなかった。当然、デスザウラーのみならずエリュシオンベース側は追撃を仕掛けてしかるべきだったが、それを阻む者達が新たに戦場に侵入していた。

 所長が言及していた百鬼帝国と妖魔帝国の軍団である。まるでドレイドウの窮地を救いに来たかのようなタイミングだ。

 

 ミケーネ帝国の撤退に合わせて補給と整備に戻ろうとしていた防衛部隊は、すぐさま緊張の糸を張り直し、デスザウラーもまた動力の調子を整えて、戦闘継続に備えている。

 ほどなくして戦域に侵入してきたのは、百鬼帝国の最高軍事責任者ヒドラー元帥が自ら乗り込む空母型百鬼メカのメカ要塞鬼、そこから発艦した百鬼戦闘機、それに量産タイプのメカ一角鬼、メカ白髪鬼、メカ暗黒鬼、メカ三面鬼等々多彩なラインナップだ。

 

 また妖魔帝国はと言えば巨烈兄弟の弟激怒巨烈がメカガンテに乗り込み、ガンテ艦隊と巨烈獣グレート・ザ・フンヌ、巨烈獣ガントス、巨烈獣ガンダーなどの巨烈獣、化石獣の大群を引き連れての登場である。

 百鬼帝国の戦闘機だけでも三百、そこに百鬼メカと巨烈獣、化石獣が合わせて百五十以上という軍勢だ。

 

「凄まじいゲッター線反応があったから何かと思えば、例のプルート財閥の施設で開発された機体か」

 

 ヒドラーはメカ要塞鬼内部のスクリーンに映されたデスザウラーの威容に、忌々しさと恐れを等分で混ぜた表情となる。

 百鬼帝国は奴隷兵士への月に一度のエネルギー補充と百鬼メカの更なる大量生産に向けたエネルギー源確保の為にゲッター線増幅装置を狙っている関係上、膨大なゲッター線指数を叩き出しているデスザウラーは否応なく注目せざるを得ない。

 既に開戦前に用意していた百鬼メカが恐ろしいペースで失われているが、地上の他勢力に宇宙の勢力を合わせて考えれば、百鬼メカは今後、千単位、万単位で用意しなければならないのは明白で今更戦いを止められずにいる。

 

(これほどのゲッター線となればよほど性能の高いゲッター炉か、ゲッター線増幅装置を使っている筈。最悪、残骸からでも回収できれば帝国の役に立つ。だが……)

 

 そもそも勝てるのか? とヒドラーはミケーネ帝国を相手に見せたデスザウラーの暴れぶりに、手持ちの戦力ではデスザウラーを破壊できない可能性が濃いと判断していた。大きさからしてメカ要塞鬼をはるかに上回る巨体に加え、冗談じみた馬鹿火力の権化だ。

 よくもあんな化け物を作ってくれたな、と開発者をこの手で絞め殺したい気分だ。あんなものを作られてしまうなら、もっと早くにエリュシオンベースを制圧するべきだったと強く思う。とはいえ、愚痴を言っても始まらない。ヒドラーは激怒巨烈の乗艦メカガンテへと通信を繋げた。

 

「ヒドラーだ。激怒巨烈、分かっているだろうが我々百鬼帝国とお前達妖魔帝国の盟約を忘れてはいないだろうな?」

 

 するとつながった通信映像の向こう側で、鬼よりも更に人間離れした風貌の激怒巨烈が不愉快そうな顔を隠しもせずにヒドラーに答えた。

 

『言われるまでもない。だがあくまで対等な共闘が条件だ。貴様の指示には従わん! 俺が従うのはバラオ様だけよ! 俺達悪魔人の戦いを観ているがいい!!』

 

 それだけを告げると激怒巨烈は通信を切り、ヒドラーは思わずその場で癇癪を起しそうになった。

 

「くそ、一万二千年以上も眠りに就いていた化石の分際で、百鬼帝国元帥たるこの俺になんて口を利くのだ! だがこれもすべてはゲッターロボ、そしてDCを倒す為、攻撃開始だ、怯むな、敵はミケーネ帝国との戦いで疲弊しているぞ!」

 

 かつて機械獣軍団、恐竜帝国、妖魔帝国が軍事同盟を結んだように百鬼帝国と新たな幹部を復活させた妖魔帝国、そしてミケーネ帝国はオペレーション・レコンキスタによる大損害を受け、急遽、共闘関係を結んで戦力の相互供給を行う関係を構築していたのだった。

 ドレイドウの窮地に駆け付けたのも、同盟関係に基づく救援だったわけである。もっともそれが原因でデスザウラーの自律起動に繋がり、とんでもない怪物を目覚めさせたのだからとんだ皮肉もあったものだ。

 

 二つの帝国の軍勢の攻勢が始まるのに、エリュシオンベース防衛部隊は気合を新たに迎え撃つ。二つの帝国は揃ってエリュシオンベースの南西方向から攻め寄せ、北西方向に逃亡したドレイドウを追おうとしていた防衛部隊は急遽南下して激突が始まった。

 激怒巨烈はゴリゴリの力押しを好むタイプだが、ドレイドウとの戦いでデスザウラーの火力の凄まじさを見せつけられた上で馬鹿正直に突っ込む程ではない。

 

 妖魔軍団は砲撃を加えられて一度に壊滅しないよう部隊は散開しているし、デスザウラーが砲撃の動作を見せたら即座にメカガンテ、ガンテによる集中砲火を加えられるように準備を整えている。

 アルジャントリオのグルンガスト冥式にグルンガスト弐式部隊が合流し、スーパーロボット部隊とゴジュラスギガ、ゴジュラス・ジ・オーガ、ゴジュラスMk-Ⅱ量産型からなるゴジュラス部隊が前面に出る一方、デスザウラーはじっとその場で足を止めていた。

 

 ヒドラーも激怒巨烈もデスザウラーの動きがない事に疑問を抱いていたが、不意に両者の艦の計器が局所的な重力異常を捉えたのだ。デスザウラーが足を開いて腰を落とし、その眼前の空気が陽炎のように揺らぎ始めて、巨大なレンズのように空間が歪められる。

 知る者が見ればヤバイ、と思わず呟く理由は、直後にヒドラーと激怒巨烈自身が味わう羽目に陥った。デスザウラーが重力レンズへと向けて荷電粒子砲を撃ち、レンズを通過した荷電粒子の奔流は無数に枝分かれして、妖魔軍団と百鬼軍団へ襲い掛かったのだ。

 艦砲による妨害がつけ込む隙の無い発射速度であった。まあ、砲撃を加えてもEシールドとG・テリトリーに阻まれて、直撃弾は出なかったろうが。

 かつてアニメ版において惑星全土を射程に収めた天災の如き一撃は、一切の慈悲なく鬼と妖魔の軍勢に襲い掛かる。これでは部隊を散開させた意味などなく、百鬼戦闘機はおろか百鬼メカも巨烈獣にも次々と被弾し、母艦群にも甚大な被害が発生する。

 

「ぐううわあああああ!? 一撃で我が軍団が……」

 

「おおお、ライディーンすらいない戦場で、俺の巨烈獣がぁ!」

 

 二人の指揮官の悲鳴のような叫びも仕方がない。デスザウラーが混戦状態となれば味方を巻き込みかねない主砲類は使えない、と判断して事前に拡散荷電粒子砲を発射し、これによって敵戦力は文字通り半減している。

 可哀そうになるくらいに呆気ない程の光景に、防衛部隊の面々は一瞬我を忘れるが、敵を叩くのにこれほど絶好の機会はない。すぐに気を取り直して壊乱状態の両軍団へ容赦のない攻撃が加わる。

 

 エリュシオンベースの砲台群もここが仕事のしどころだと言わんばかりに撃ちまくり、百鬼メカと巨烈獣の残骸の山が次々に出来上がってくる。

 これに勢いづいて防衛部隊が士気を高める中、デスザウラーも射線からの退避勧告を出しながら威力を絞った荷電粒子砲や全身の火器を撃ちながら前進を開始し、本来なら強力な筈の百鬼メカや巨烈獣がおもちゃのように破壊されてゆく。

 

 せめてドレイドウと協調して行動していればデスザウラー起動前にもっと戦いらしい戦いになったのだろうが、ドレイドウは自分だけの手柄を求めて動いていたし、ヒドラーも激怒巨烈もお互いを助け合うといった意識は欠片もない。

 彼らが自勢力の利益ではなく同盟全体の利益を考えて協調するには、それこそ三つの帝国全てが存亡の危機に陥らない限りは無理だろう。

 そうしてヒドラーは早々の撤退を、激怒は怒りに任せて更なる攻撃を行おうとしていたところに、彼らよりも更なる上空から放たれた艦砲とミサイルの雨が降り注いで、泣きっ面に蜂の状態を作り出す。

 

「ああああ、今日はなんという厄日だ。呪われているのか、ワシは!?」

 

 ヒドラーの目に映ったのは、エリュシオンベース襲撃の知らせを受けて宇宙から降下してきたDC宇宙部隊!

 アーガマとスペース・アークが抜けたとはいえ、それでもハガネ、シロガネ、アルビオンを擁し、そこから出撃する機動兵器部隊はスーパーロボットこそ少ないものの、質は地上部隊と変わらぬ地球圏最高峰のもの。

 

「へっ、あいつら、宇宙でくたばらなかったみたいだな」

 

 グルンガスト冥式でメカ一角鬼を殴り飛ばしていたシアンは、ハガネから出撃する機体の中に、かつて同じくスクールに所属していたアラドらの乗る機体があるのに気付いて、憎まれ口を叩くのだった。

 気に入らない連中ではあるが、アラドやラトゥーニになにかあったら、パパやママンが悲しむからな、とシアンはアラドらの無事を喜ぶ自分にそう言い訳した。

 そしてこの数分後、元々エリュシオンベースで補給を受ける予定だったDC地上部隊が合流し、ヒドラーと激怒巨烈は這う這うの体でなんとか戦場から脱出する事に成功するのだった。

 

<続>

 

■マッドサンダーが開発されました。

■DCが合流しました。アーガマ隊、スペース・アーク隊は未合流です。

 

■ギル・ベイダーを入手しました。

■サラマンダーを入手しました。

■ガンブラスターを入手しました。

■ゴジュラスギガを入手しました。

■ゴジュラス・ジ・オーガを入手しました。

■ゴジュラスMk-Ⅱ量産型を入手しました。

■グルンガスト弐式を入手しました。

■ゲシュペンストMk-Ⅲを入手しました。

■バルゴラGSを入手しました。

 

■デスザウラーが加入しました。

 

■ミケーネ帝国、百鬼帝国、妖魔帝国が同盟を組みました。

 

●第三十四話 破滅の魔獣 クリア後 ヘイデスショップ

 

・ハンマーヘッド

・ストームソーダー

・ディバイソン

・アイアンコング

・ダークホーン

・ケーニッヒウルフ

・Zプラス

・メタス改

・Gコマンダー

・Gレイ




というわけでデスザウラーは味方ルートです。
暴走する方がらしいかもしれませんが、味方で使いたいという願望が勝りました。
物足りない方にはごめんなさいね。
またデスザウラーですが、荷電粒子砲の連射はもちろん
荷電粒子砲 → 超重力衝撃砲 → ゲッターメガキャノン(順不同)でローテーションを組み、更に連射速度を早めたり、荷電粒子砲が使用不可能になっても悪夢のような火力は維持されます。

追記
デスザウラーの大きさについて以前は二百メートルだったところを間違えてしまいましたが、装備をもりもり積んだ結果、設計段階より巨大化して三百メートルになったということでご容赦ください。

追記2
スペース・アークとホワイト・アークがごっちゃになっていたので、スペース・アークに統一いたしました。


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第五十五話 ガンダムのおかわり、お待ち!

Gジェネ書いているんだっけ? と思いながら書きました。
ほとんどキャラの口調や性格を忘れていますが、まあ、二次創作だし出したければ出せばよし、と思っていろいろ詰め込みました。今回は箸休めです。

追記
感想で質問があったのですが、シーブックらF91組は第四十七話のクロスボーン・バンガード決起の知らせがあった後、加入しています。なおジュドーらと同じく特に加入した描写はありません。いい加減、一言くらい喋らせないといけませんね。


 端的に言って宇宙からDC宇宙部隊が降下してきた段階でヒドラーは元から折れていた心が粉状に磨り潰され、激怒巨烈も流石にこれは退くしかないと認めざるを得なかった。

 デューク・フリードのスペイザー、アムロのνガンダム、ユウとライラのビルトシュバイン、ブランのアンクシャ、イングリッドのF89ハルートパック、ヤザン・ラムサス・ダンケルのGNハンブラビ、アーウィンのヒュッケバイン、グレースのデュラクシール etcetera。

 

 百鬼帝国と妖魔帝国の両軍が万全の状態であっても恐るべき強敵であるのに、デスザウラーの無慈悲な猛攻で消耗したところにこの戦力の追加だ。

 更にはほどなくして、これまで何度となく苦汁を飲まされてきたDC地上部隊までもが、この戦場に姿を見せた事で二人ともここが死に場所だと少なからず覚悟したのは疑いようがない。

 

 地上部隊のガンドールやウルトラザウルス、キング・ビアルから発艦した部隊が味方よりもはるかに少なくなった百鬼・妖魔軍団へと襲い掛かる姿は、いっそ哀れなほどだった。

 ガンドールからカタパルトで射出されたメカ白骨鬼は、ヒドラーのメカ要塞鬼を目指して一目散に突進して、両腕のアームマシンガンと角の破壊光線を容赦なく連射している。

 百鬼帝国から離反した白骨鬼に気付いて、ヒドラーは絶望的な状況に追いやられた恨みを込めて通信越しに思い切り罵ろうとした。

 

「おのれ白骨鬼、ブライ大帝に忠誠を誓った言葉は偽りだったな、よくもおめおめとこのワシの前に姿を見せられたな!!」

 

「何をぬかす、ヒドラー! 私に百鬼帝国を裏切らせたのは貴様らの仕打ちだろう。貴様のその卑劣さはムシケラにも劣るわ!」

 

 白骨鬼の操るオリジナルのメカ白骨鬼は量産型の百鬼メカとは流石にものがちがう。しかもDC側についてからは、剣造博士や早乙女博士、弓教授に葉月博士、南原博士に四谷博士、剛光代博士などなど名だたるスーパーロボット関係者による強化まで行われている。

 健気にもメカ要塞鬼を守ろうとする残り僅かな量産型百鬼メカは、哀れなほどに呆気なく撃墜されていった。

 そうしてメカ要塞鬼までのルートが開けたところ、六機のゲットマシンがメカ要塞鬼の展開する対空砲火をやすやすとすり抜けて行く。

 

「チェンジ! ライガー! スイッチオン!!」

 

「チェンジ、グレイゲッター2! スイッチオーン!」

 

 神隼人のゲッターライガー、そして早乙女ミチルのグレイゲッター2が空中で形を成し、そのままメカ要塞鬼へと着地する。

 

「あんまりぼうっとしていると置いて行くぜ、ミチルさん」

 

「あら、そういう隼人君こそ私に置いて行かれても知らないわよ」

 

 言うが早いか二機のゲッターはそれぞれの腕のドリルを回転させて、メカ要塞鬼の上を走り回って装甲を削り、翼や角に大穴を開けて行く。

 メカ要塞鬼を襲う振動とこちらに銃口を向けるヴァイスリッターやシルヴァ・バレト、FAZZらに気付いたヒドラーは躊躇なく脱出艇に向けて駆け出した。この危機に陥った際の決断の速さが彼の命を救った。

 そしてメカガンテもまた撃沈の危機を迎えていた。神宮寺力と桜野マリのノーマルザマンダーを筆頭に、地上部隊のスーパーロボットが巨烈獣と化石獣を足止めしている間に、ライディーンとサイコザマンダー二機、合計三機が止めを刺す用意を整えていた。

 

「二人とも、一斉にいくぞ!」

 

 何本も矢を束ね持ったライディーンからの号令に、同じ体勢を取っていたサイコザマンダーの晶と麗から答えが返ってくる。

 

「いつでもいけます!」

 

「こちらの準備も整っています」

 

「よおし、ゴッドゴーガン三段束ね撃ちだあ!」

 

 ライディーンのゴッドゴーガンに続き、サイコザマンダーも同サイズの無数の矢を射かける。

 ザマンダーシリーズは古代ムーの神秘科学を用いない純粋な科学兵器だが、大質量の矢がレールガンの原理によって超音速でぶっ飛んでくるのだから、その威力たるやすさまじい。

 ガンテの上位互換たるメカガンテにしても、ハガネやアルビオン、シロガネからの艦砲射撃に加えて大敵ライディーンとその模倣機の合体攻撃に首を次々と失って、内部から次々と爆発を引き起こして行く。

 

「おのれえ、この屈辱、百倍にして返してくれる。この激怒巨烈の怒り、ゆめゆめ忘れるなよぉ!」

 

 メカ要塞鬼、メカガンテの撃沈に伴う敵指揮官の離脱により、百鬼・妖魔軍団は壊滅に至り、残敵は文字通り全滅するまで攻撃を加えられた。

 戦闘区域から敵性反応が全て消滅し、そうなるとDCの両部隊が注意を注ぐのは足を止めて佇むデスザウラーである。正直に言ってごく短い時間で終わった戦闘中も気になって仕方のない存在だったが、識別信号は味方を示していても気を抜ける見た目をしていない。

 デスザウラー自体は待機モードに出力を落とし、ミサイルポッドの蓋を閉め、機銃の類も銃口を下げている。少なくとも戦闘態勢にはないが、その視線はゲッターライガーとグレイゲッター2へと注がれていた。

 

「奴さん、俺達、いやゲッターが気になるようだな」

 

 隼人は味方(?)らしいデスザウラーからの視線に、かつてない重圧を感じながらも愉快と言わんばかりに笑みを浮かべている。竜馬もデスザウラーの視線に気づいており、人知れず操縦桿を握る手に力を込めている。

 

「ああ。おそらくゾイドの一種なんだろう。それならゲッター炉が積まれている筈だ。こっちのゲッター線に注意を引かれたのか?」

 

 竜馬が推測を口にすればポセイドン号を預かる弁慶が驚いた声を出す。

 

「ゾイド、あんなにでかいのがか!? ゲッターの四、五倍はあるんじゃないか?」

 

「ウルトラザウルスがあるだろう? あれも大きさで言えばあのデスザウラーというゾイドといい勝負だ。それにしても味方とは言えこっちをああも見られちゃ落ち着かないな」

 

 そう言って操縦桿を握る手を緩めた竜馬だったが、デスザウラーが自律稼働している最中であり、ゲッターライガーとグレイゲッター2を見ていたのが、自らの意志によるものだと知ったならまた彼の反応は違っただろう。

 良くも悪くも、最もゲッター線に愛される男ならば、ゲッター線によってデスザウラーがどんな影響を受けているのか、分かる日もあるだろうか?

 三機のゲッター炉搭載機が緊張を孕む対峙を続ける中、この場に新たに近づく機影が二つあり、デスザウラーはそちらへと視線を映して動力の波形をピクンと跳ね上げた。

 

「ゼファー、それにフェブルウス?」

 

 思わぬ取り合わせへと隼人がライガーのカメラアイを向ければ、ゼファートールギスとフェブルウスは滞空しながらデスザウラーと視線を交差させている。

 この時、まだ隼人やゲッターチームは、デスザウラーにゼファーファントムシステムベースの自律回路が組み込まれているのを知らない。

 

「大きいね。ゼファーの兄弟、それとも姉妹? それともいとことか親戚かな?」

 

 とヘマーはデスザウラーを見ながら無邪気に口にする。この双子は人の手で生み出された者としてゼファーに親近感を抱いたように、デスザウラーに対しても親近感を抱いているようだ。

 ゾイドに性別はないが、全てのゾイドは子を産めるのでしいて言えば女性よりの性格になる、という説もあるが、現在のデスザウラーはゾイドコアを有していない為、その説からも外れる存在となる。

 元は一つだった存在が男女の双子に分かれた事で陰陽を体現したシュメシとヘマー、陰と陽に分かれる前のデスザウラーとゼファー、奇妙な対比を成す組み合わせだ。

 

「ゼファーもあの子が気になるの? 僕達もだよ。友達になれるかな? なれるといいね」

 

 シュメシの声にゼファーは答えなかったが、もしゼファーが何かを思考していたならば、案外、シュメシと似たようなものであったかもしれない。

 ゲッターロボGとゲッターロボ、フェブルウス、ゼファーとの短い対峙の後、デスザウラーは自ら帰投要請を発し、管制官の指示通りに無事だったエレベーターに乗って格納庫へ帰っていった。

 どうやら本当にエリュシオンベースの危機に呼応して目覚め、防衛の為に戦うのが目的だったらしい、と所長を含むゾイド関係者は胸を撫でおろしたものである。

 もしや暴走かと危惧した彼女からすれば肩透かしを食らったような気もするが、それ以上に安堵の方が大きく勝った……良かったね!

 

 一部の面々が極大の緊張を伴ってデスザウラーの帰投を受け入れた一方で、DC宇宙・地上部隊は再会を喜び、また機体の修理と補給、休憩の為にエリュシオンベースへの着艦を要請していた。

 その最中、グルンガスト冥式のアルジャントリオからオウカ、アラド、ゼオラ、ラトゥーニらへと通信が繋げられていた。

 ほとんど出番はなかったが、一応出撃していたオウカらは周囲への警戒を行いながら、激戦の痕跡が見て取れるグルンガスト冥式の姿を瞳に映している。

 

「シエンヌ、シアン、シオ、エリュシオンベースとお母様を守ってくれてありがとう。ご苦労様でした」

 

 オウカからの労いにシエンヌは皮肉っぽく笑って返した。

 

「別にあんたらの為に戦ったわけじゃない。ママンとあたし達自身の為に戦ったのさ」

 

「それでもこの場所とお母様を守ってくれた事に代わりはありませんから、お礼を言うのは当然でしょう?」

 

「は、そうかい。あんたらしい優等生な言い方さ。ま、好きにしなよ」

 

 シエンヌはやや突き放した言い方をしているように聞こえるかもしれないが、それでもスクール時代に比べれば別人のような柔らかさだ。それの分かるオウカであるから、ラピエサージュ・シンデレラのコックピットで淡く笑みを浮かべる。

 いわば長女ポジションの二人が通信している間に、シアンもまたアラドやゼオラらへおそらくは彼なりの労いだろう言葉を掛けている。

 

「ようアラドにゼオラ、ついでにラトゥーニも。せっかくもらった新しい機体を無駄にしていなくてよかったぜ。お前らはともかく、その機体はパパやママン達の大事な商品だからな」

 

「顔を合わせた途端にそれ? シアン、あなたねえ、もう少し気の利いた言葉が言えないの?」

 

 ムッと表情を変えたゼオラが舌鋒鋭く言い返すのに、アラドも続けてシアンのダメージを受けたグルンガスト冥式を、ビルトビルガーで指さしながら反論する。

 

「お前の方こそ、そのグルンガストの系列機、随分傷ついているが、撃破されなくてよかったな。せっかく改造してもらったんだから、大事に使えよ!」

 

 そのままキャンキャンとけたたましく言い合いを始めるシアンとアラド、ゼオラを横目にラトゥーニは人知れず溜息を零した。

 かつてアルジャンクラスに居たシアンらからすれば、アウルムクラスに居たオウカは超えるべき踏み台としか見ていなかったし、アラドや自分達の事は露骨に見下していたものだ。

 それが相変わらず口は悪いが心底からの軽蔑や悪意が言葉には含まれていないのだから、驚くべき変化である。

 

(私はスクールから捨てられた後、ジャーダ達に救ってもらえて、それから総帥と所長にも助けてもらってこうして姉様達にも会えた。シアン達も総帥達のお陰で暖かな居場所を得られた。だから、こんな風に他愛のない口喧嘩が出来る)

 

 そうは思うのだが、それにしても通信機から漏れ聞こえるアラド達とシアンのやり取りには、やれやれと溜息を吐きたい気持ちになる。そうしているとこれまで黙っていたシオが仕方なさそうに通信に割り込んだ。

 

「あのさぁ、もういいんじゃないの。アラド達はともかく僕達の機体は整備が必要だし。DCの受け入れもあるから、ここでぐだぐだしていたら、ママンにも迷惑が掛かるし」

 

 シオの言う通りである。シエンヌもシアンもママンと慕う所長に迷惑をかけるのはまったくもって本意ではなかったから、シオの言う事には素直に従った。

 

「それもそうだね。シアン、シオ、機体を戻すよ。オウカ、アラド、ゼオラ、ラトゥーニ、あんたらの事は別にどうなったって知ったこっちゃないけど、あんたらが帰ってこないとパパとママンが悲しむんだから、これからも気を付けるんだね。それとシュメシとヘマーを無事に連れて帰ってきたのは、評価してやるよ」

 

 そんな言葉を最後に告げて、アルジャントリオはスーパーロボット用の格納庫へと向かってゆくのだった。

 無事にミケーネ帝国、百鬼帝国、妖魔帝国の襲撃を退け、DCが合流した後、エリュシオンベースのブリーフィングルームの一角では、合流した部隊の面々がお互いの無事と新顔との顔合わせを行っていた。

 

「そうか、聞いてはいたがヒイロ達は部隊を離れたか」

 

 アムロが顔の見えなくなったコロニーのガンダムパイロット達の行方を尋ね、甲児が悲し気な表情で答えを告げていた。

 

「OZが方針を変えてコロニーとの協調路線を取った事やティターンズが著しく弱体化したから、状況が変わったみたいで」

 

「確かにな。ホワイトファングやクロスボーン・バンガードといったイレギュラーはあったが、コロニーと地球連邦で対立していられる状況じゃない。彼らが部隊を離れるのも相応の理由があってだろう。だが、平和の為に戦っていたなら、いつかまた彼らと会う時が来る」

 

「俺もそう思います。手段はどうあれあいつらもあいつらなりに平和の為に戦っていたのは、間違いないと思いますから」

 

 アムロや甲児ばかりでなくブリーフィングルームの中では、百鬼帝国からこちら側についた鉄甲鬼や白骨鬼とその娘のリサ、胡蝶鬼といった目立つ面々について紹介を受けたり、宇宙でのバサ帝国とコロニー落としを巡る戦いやアインストの出現と言った話が交わされたりしている。

 宇宙と地上の二つに分かれた部隊がそれぞれ濃密な戦いを経験したからこそ、お互いに話題は尽きない様子だ。

 わいわいと半民半官と言うべき部隊特有のやや緩めの空気の賑やかさを引き締めたのは、共に入室してきた艦長勢と所長の姿だった。

 

「お母さん!」

 

 と思われたが大いに慕う母の姿を見つけて、シュメシとヘマーがぱあっと明るい笑顔を浮かべて小さく手を振るい、所長も愛しい子らのいとけない仕草に相好を崩す。

 

「こほん、シュメシ、ヘマー、後でオウカ達ともどもたくさんハグしてあげますから、今はお行儀よくなさいね?」

 

 母親の顔と声で告げる所長に、精神年齢が十歳にも満たない双子らは、はぁい、と素直に従った。双子らの事情を聴かされていた白骨鬼は、自分とリサとの過去を思い返してから、三人のやり取りに柔らかな笑みを浮かべている。

 

「はい、皆さん、お待たせしました。久しぶりの再会の挨拶はお済みになりまして? この後、慰労会兼壮行会を催しますから、話し足りない方はそちらでお話しくださいな」

 

 パイロット達の正面に所長やレビル、モンテニャッコ、葉月博士、バン・バ・チュン、シナプス、兵左衛門らが並ぶ。また機動兵器部隊の隊長を務めるシャピロとユウもこちらの席だ。

 今回のブリーフィングはDC合流後の動きとオペレーション・レコンキスタの現状を説明する為だ。

 口火を切るのは所長だ。ミケーネ帝国とムゲ・ゾルバドス帝国の大攻勢が始まってから、今日に至るまでこのエリュシオンベースに留まり続け、侵略者の猛攻を体感してきた人物であるし、レコンキスタに際して連邦軍とOZとの間に綿密な横の関係を構築する一助も成している。

 

「まずは地上部隊、宇宙部隊どちらの皆さんも今日に至るまで数々の戦いを勝ち抜き、無事に再会できたことを心から嬉しく思います。そんな中でまた次の戦いの話をするのは心苦しいのですが、必要がありますのでさせて頂きますわ。ご容赦を」

 

 そう言うと所長は手元のタブレット端末を操作して、背後に巨大スクリーンを投影させる。映し出されたのは欧州の地図とそれぞれの勢力図、またレコンキスタの進行状況を示す矢印や戦力を示す駒などだ。

 

「現在、ミケーネ帝国はフランスのパリ、ムゲ・ゾルバドス帝国はサンクキングダムの首都に拠点を置いて侵攻を繰り返しています。オペレーション・レコンキスタがこの二つの都市の奪還を最終目標としているのはご存知の通りです」

 

 するとブリテン島から出撃し、パリへ進軍しているトレーズのレコンキスタ本隊を示す駒が大きくパリへと向けて進められる。

 

「現在、トレーズ・クシュリナーダ少将の率いるレコンキスタ本隊がパリへ向かって進軍し、七大将軍と獣魔将軍の率いる軍団と交戦中ですが、順調に進軍を重ねています」

 

 サンクキングダムの本格的な解放はパリ解放後を予定されているが、ムゲの横槍を阻むためにレコンキスタ本隊から一部の戦力が割かれて進軍しており、こちらにはゼクス・マーキス、ルクレツィア・ノイン、オットーらが参加している。

 

「皆さんには今日一日、英気を養っていただいた後、明日一五:〇〇よりパリ奪還作戦参加に向けてエリュシオンベースを出立していただく予定です。皆さんに合わせてレコンキスタ本隊もパリへ本格的な侵攻を進めます。

 既にパリに民間人はいませんから、人質を取られる心配はありません。百鬼や妖魔、ボアザンやキャンベルも最近の戦闘でかなりの戦力を消耗していますから、パリ奪還作戦中に介入してくる可能性は低いと連邦の参謀本部は判断しています。

 連邦軍も今回のレコンキスタで予備の予備まで戦線に投入していますから、地球上にはアメリカ方面とオーストラリア方面くらいにしか戦力の余裕がない状態ですし、そうあって欲しいですわね」

 

 所長が一通り説明を終えたところで、エクセレンがシュバっと勢いよく挙手した。

 

「所長さん、補給と整備だけでも大助かりでサンキューなんだけど、ここでイッパツ、スーパーエクセレントな機体の補充とかないのかしらん? キョウスケのアルトちゃんの修理は流石に間に合わないでしょう?」

 

 エクセレンの言う通りアルトアイゼンのダメージは深刻で、新しい機体を製造した方が修理するよりも早い気がするくらいだ。今はハガネから降ろされてエリュシオンベースに預けられている。

 キョウスケは現在予備機のゲシュペンストMk-IIを借りて戦っているが、HC装備の格闘戦仕様で運用してもアルトアイゼン程ピーキーな機体ではないので、キョウスケは若干の物足りなさを覚えている。

 

「破損した四肢を取り換えればそれで済むというものでもありませんからね。これまでのデータの蓄積もありますし、ちょいちょいと強化くらいはしておきましょう。

 なにしろガンダニュウム合金ですら簡単に壊してくるような敵が増えてきていますし、アルトのコンセプトを考えるとさらに頑丈にしないとやっていられませんからね。キョウスケ中尉にはこの後、機体を見繕っておきます」

 

 所長としてはゲシュペンストMk-Ⅲを用意しようと考えていたのだが、ヴァイスリッターとのペア運用やアルトアイゼンとの比較で考えると、いささかいい子ちゃん過ぎる機体だ。もっと尖がった機体の方がキョウスケには合うだろうと頭の中のリストを見直し始める。

 

「ですって、よかったじゃない、キョウスケ~」

 

「礼を言っておく」

 

「もっと分かりやすい表現でもいいのよ~」

 

 別にエクセレンが言わなくてもアルトアイゼンの代わりの機体を用意してもらえたとは思うが、ここは素直に礼を言っておいた方がいい、とキョウスケは判断した。

 エクセレンと所長の話が一区切りついたと見て、今度は竜馬がスルーするにはあまりに問題のある話を所長に振った。彼が口を開かなくても別の誰かがきっと尋ねただろう。

 

「それで所長、教えて欲しいんですが、あのデスザウラーという巨大なゾイドは一体何なんですか? ゲッターロボに反応していましたが、あれもやはりゲッター炉を積んでいるんですか?」

 

「あれは、あの子は元々は恐竜帝国が繰り出してくるだろう決戦兵器に対抗する目的で開発された特別なゾイドです。ウルトラザウルスもそうですが、我がヘパイストスラボではウルトラザウルス、デスザウラー、デススティンガーという三機の機体を開発しました。

 結局、恐竜帝国との決戦には間に合いませんでしたし、連中の無敵戦艦ダイとやらと戦えなかったのは、今でも未練ではあります。

 恐竜帝国との決戦には間に合いませんでしたが、不幸にも敵勢力は途絶えませんでしたので今回のレコンキスタに投入する事になったのです。クシュリナーダ少将のレコンキスタ本隊にはデススティンガーを援軍として送っていますしね。

 ただ想定外の事態が発生したのを黙っているわけにも行きません。実のところ、今回のデスザウラーの起動は我々が命じたものではありませんでした。デスザウラーが自らの意志で起動し、出撃を要請してきたのです」

 

「所長、それはデスザウラーに自分の意志があるという事ですか? あるいは暴走?」

 

 竜馬や隼人、弁慶、達人、ミチル、武蔵らはゲッター乗りであるから、デスザウラーの暴走という話題は決して他人事ではない。またデスザウラーの馬鹿げた戦闘能力を戦場で目の当たりにしたDCのメンバーも、あれが暴走の結果ならと警戒の念を露にする。

 例外はシュメシとヘマー、それになんとなくデスザウラーの思念を感じ取っていたアムロやグレースらニュータイプ組だ。

 

「暴走というと聞こえが悪いですね。こちらの想定外の動きをしたのは事実なので、半分はその通りなのですが……。こほん、正直に言えばデスザウラーの今回の戦闘に関しては、イレギュラーです。

 幸いなのはゼファーのようにこちらの指示に従ってくれているのと、こちらの想定通りの敵味方の識別をしてくれている点です。こちらとしては元々ゼファー同様に現場で指示を出しながらの無人運用を想定していたのですけれどねえ。

 現在、トミイさんにデスザウラーのカウンセリングをお願いしていますが、今後はガンダムX同様にセキュリティをいくつも重ねて運用して行く方針ですよ。ちなみにパリ奪還にも同行させますが、主砲三種は市街地ですし使用を控えないといけませんね」

 

「作戦の性質を考えると速度が重視されると思いますが、デスザウラーはついてこられるんですか?」

 

「ええ。ブラックホールエンジンの恩恵でグラビコン・システムを搭載していますので、飛行可能です。流石にボルテスのようにマッハ20は出ませんが、ミノフスキークラフトで飛行するウルトラザウルスに追従するくらいなら可能です。

 整備に関しても自己再生機能のあるマシンセルを使っているので、実弾の補給以外はあまり気にしなくてよい為、あの巨体でも割と運用コストは低いのです。それで済むはずだったのですけれど、しかしまあ、どうして自律稼働したのか? こればかりは謎です」

 

 ゲッター線の影響でしょうかねえ、とポツリと零した所長の言葉に、ゲッター線を主動力にしている機体に乗る二つのゲッターチームの顔色は苦いものに変わった。

 

「デスザウラーがこちらの設けるリミッターを受け入れたなら、あの子が同行しますのでその点は予め覚悟しておいてくださいな。それとついでのようで少し心苦しいのですが、別行動中のエゥーゴ組の方でも動きがありましたので、お伝えしておきますね」

 

 スクリーンが切り替わり、エゥーゴ組の航路が映し出される。後々、レコンキスタに参加する予定となっているエゥーゴ組だが、彼らは彼らでいざこざに巻き込まれていた。

 

「ラー・カイラム級の一番艦をルナツーで受領後、アーガマはエゥーゴに引き渡されたのですが、その後でティターンズとクロスボーン・バンガード、ホワイトファングの戦闘に巻き込まれたようですわね。

 その際にアナハイムとサナリィと関わり、ガンダムF90一号機と二号機、アナハイムのシルエットガンダムにネオガンダム二号機、輸送艦のブレイウッドが成り行き上、行動を共にすることに。ネオガンダム一号機はティターンズのバズ・ガレムソン大佐の手に渡ったそうですね。

 またその過程でヒイロ君達と合流したようですよ。新しいコロニーのガンダムも加わったようです。ええっとウイングガンダムゼロ、ガンダムデスサイズヘル、アルトロンガンダム、それにヘビーアームズとサンドロックも改造したものが加わったようですわね。

 それに資源衛星都市MO-Vで開発されていたガンダムタイプも、参加したとか。ふうむ、都市一つでこれだけの機体が開発できるとは、居るところには有能な人材が居るものですわねえ」

 

 しかしまあ、ガンダムだらけである。地球で一番、ガンダムを抱えた部隊の完成と言っていいだろう。そして所長の話はまだまだ続く。どうやらエゥーゴ組もかなり波乱万丈な宇宙の旅を続けているらしい。

 

「真ジオン公国から離脱してきたアクシズの人々とある拠点にてクワトロ大尉が会合を持ち、一部戦力が参加したようでMSが何機か合流です。

 それから更にコロニー・インダストリアル7にて真ジオン公国の部隊と交戦し、ユニコーンガンダム、それと修理の為に極秘で輸送していたガンダムXが起動し、そこに居合わせたネェル・アーガマ、Sガンダムを運用していたペガサスⅢとジオン共和国のガランシェールが合流……どういう経緯なんでしょうね、コレ?

 ユニコーンガンダムにはまるで伝統芸の如く民間人の少年が乗り込み、ガンダムXはアナハイムの関係者が搭乗? ビスト財団の……ますます訳分かりません。エゥーゴ組は戦力以上に摩訶不思議な関係の人員が増えたものですわねえ」

 

 整理すると地上部隊の艦艇だけでもガンドール、キング・ビアル、ウルトラザウルスの三隻。

 宇宙部隊はハガネ、シロガネ、アルビオンの三隻。

 そしてエゥーゴ組がラー・カイラム、スペース・アーク、ブレイウッド、ネェル・アーガマ、ペガサスⅢ、ガランシェールの六隻。

 全部隊が合流すれば全十二隻の艦艇からなる大部隊の出来上がりだ。規格がまちまちの凸凹部隊だが、抱え込んだ戦力は方面軍や一個艦隊をはるかに凌駕する。

 

「また民間人が増えていますねえ。エゥーゴ組はサンクキングダムを解放する頃には合流してくれるでしょう。さて皆さん、欧州解放まであとわずかです。私達に出来るのはあなた達を全力で支援する事。明日からの戦いに備えて、今夜はゆっくりと休んでくださいな」

 

 輸送中のデススティンガーが襲撃に遭い、高度一万千メートルから墜落して行方不明の知らせが入り、所長の顔とトミイ・タカラダの顔が凍り付く一時間前の話だ。

 この知らせを耳にしたヘイデスは、高度一万一千メートルからの墜落、マシンセルの二つからとあるガンダムを連想した。

 

「アルティメットガンダムがデビルガンダム……。DG細胞はマシンセル? 墜落の衝撃で暴走? デススティンガーがデビルデススティンガーに? それともデビルスティンガー?」

 

 デビルガンダムのように無数のデスアーミーに変わる小型のデススティンガーを従えるデススティンガーの姿を思い浮かべ、ヘイデスはあまりの衝撃に卒倒した。

 そんな彼を秘書が見つけて悲鳴を上げるのは、それから更に三十分後の話である。

 

<続>




久しぶりに感想が七十を越えました。これもデスザウラーのお陰です。皆さん、デスザウラーがお好きですね。
今回は箸休め的なお話で物足りなかったかと思いますが、次回にはデスザウラーとデススティンガーの活躍を描写したいものです。暗黒の破壊将軍や暗黒大将軍の勇姿も出したいところ。

また私はGユニットを旧作の方しか知りません。最近のリメイク版はノータッチです。ご容赦を。後ティアードロップとかF90のもノータッチです。

それではまた次回にて!

追記
デビルガンダムを連想したヘイデスのエピソードを追加しました。

追記2
これまでゾイドの方のバンやフィーネ、アーバインなどのネームドキャラを出してこなかったのは、だって彼らは惑星Ziの住人であって地球人じゃないし、と思っていたからです。
しかし、二次創作だし、地球人設定で出してもいいのでは? と考える事が増えました。つきましてはその是非を読んでくださっている皆様に尋ねたく思います。アンケートを追加いたしましたので、2/5の金曜日中までご意見を募集いたします。よろしくお願いします。

追記3
アナハイムの重役から関係者に修正しました。

追記4
エンドラを除外しました。


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第五十六話 ほらイージーモードでしょう? ね、ね?

色々とごめんなさいね。

アンケートありがとうございました。
意外と反対の方が多かったなと個人的には感じております。
フィーネの声優の大本さんですが個人的にはスペクラルフォースシリーズのリトル・スノーを思い出す作者です。


「ゼファーの新しい機体ですか」

 

 所長は、合流したDCメンバーの慰労会兼激励会が終わり、久方ぶりに再会した子供らを構い倒した後で、ゼファーの開発者であるカインズとエリシアに相談を持ち掛けられた。

 先の台詞の通り、ゼファーの新しい機体についてである。サイコミュを導入したトールギスは不足なくゼファーの操縦に適応しているが、二人はそこから先の話を持ち掛けてきた。

 

「ああ。トールギスは設計時期を考えれば信じられないほど優秀な機体だが、設計当時の素材や技術が古いものであるのは否めない。OZでも最新の素材や技術を使って再設計しているのは、周知のとおりだ」

 

 カインズの言う通りトレーズとヴァルダーの愛機となっているトールギスⅡは新規の技術や素材を用いてリファインしたものだし、ゼクスのトールギスⅢはさらにその先に一歩踏み込んだ機体だ。

 カインズに続いて、エリシアも最近のゼファーに対するナビゲートを振り返り、意見を口にする。

 

「サイコミュを搭載して反応速度を上げる試みは成功したのですが、今度はトールギスの機体そのものの性能について壁に当たってしまいまして、今後のバルマー・サイデリアル連合帝国との戦いを考えれば、トールギス以上の機体が必要になるのは明白です」

 

「ゼファーの成長は予想以上と予想外の両方で進んでおりますわね。特にあのブラックエンジェル(※アストラナガン)を相手に、アムロ大尉やクワトロ大尉と共に闘った際の成長は、目を見張るものがあります。

 今後の成長も考えれば、ゼファーに託すべき機体は中途半端なものではいけません。ゼファーには人でないからこそ、成せる事もありましょう。当面は間に合わせの機体で凌ぐとして、ゼファー用の機体の調達も進めておきます。

 総帥もゼファーを気にかけていますから、大概の要請は吞んでくれるでしょうし」

 

 所長は左の袖に触れて、空中に立体映像を投射する。その中には、シロッコに製造と持ち帰りを依頼したオリジナルGNドライヴを用いた機体をはじめ、ヴァルシオー二号機、マシンセルと縮退炉を搭載したターンタイプを彷彿とさせる機体のデータがあった。

 どれ一つをとっても戦略級の能力を有する、地球側の切り札となる機動兵器達だ。それだけにデスザウラーやデススティンガー、ガンダムXと並んで運用には慎重を要する顔ぶれである。

 

「これらの機体が必要になるほど、今の大戦に長引いて欲しくはありませんが……。取り急ぎ、サイコミュが移植可能でゼファーと相性のよさそうな機体を用意します。突貫作業になりますので、お二人にも働いていただきますがよろしいですか?」

 

「もちろん。こちらから申し出た事だ。所長が家族の時間を作れるくらいには、働いて見せるさ」

 

「ゼファーも既に了承しています。私とカインズ博士は先に作業を進めておきますね」

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

 その日の所長をはじめDC各部隊に同行していたメカニックとエリュシオンベースのメカニック達は、明日の決戦に向け整備ロボットも総動員して作業に当たったのは言うまでもない。

 そんな過酷な戦場に勝るとも劣らない状況にあって、所長が双子やゼオラら、アルジャントリオらと食事と就寝を共にするだけの余裕を持って仕事を全て終わらせたのは、彼女の執念と才覚の成せる業であった。

 

 シュメシとヘマー、オウカやラトゥーニ、そしてアルジャントリオらが所長と親子家族水入らずの一夜を過ごした後、可能な限りの補給と修理、そして休息を得たDCは予定通りにエリュシオンベースを出立した。

 既にトレーズ率いるレコンキスタ本隊はパリへと進軍を再開し、残存戦力を結集させたミケーネ帝国との戦いの火蓋がいつ切って落とされもおかしくない状況にある。

 

 所長は大人しくこちらの言う事を聞いているデスザウラー共々出撃した我が子らを、落ち着いた様子で管制室から見送っていた。

 昨日にデススティンガーの消息不明の知らせを受けた直後には天与の美貌を強張らせたものだが、今の彼女にその時の驚愕はない。

 結局、子供達を戦場に立たせてばかりだ、と所長は人知れず溜息を零し、ついでしみじみと正直な感想を零す。

 

「それにしても空を飛ぶデスザウラーとウルトラザウルスの姿は、こう、なんというかシュールですわねえ」

 

 所長の言葉を傍らで同じく見送っていた防衛隊の司令パオロ・カシアスが拾う。

 

「あれで翼の一つも付いていれば、まだ空を飛ぶのも納得のゆく見た目になりましたかな?」

 

 かつてホワイトベースの艦長を務めながら、シャアの部下の襲撃によって負傷し、宇宙要塞ルナツーで艦を降りた老軍人は、一年戦争終結後に退役し、今度こそ悠々自適な隠居生活を送ろうとしていた。

 そこへレビルの後任としてプルート財閥からスカウトを受けて、ヘパイストスラボならびにエリュシオンベース防衛部隊の司令の座に就いていたのである。承諾したのはレビルが直接、パオロの下を訪問したのも大きな理由だろう。

 現在の連邦軍の将官クラスに知己の多いパオロは、軍人としての能力の他にも人脈という点でも重宝している。

 

「かつてのホワイトベースやアルビオンのように、さながらペガサスの如くですか?」

 

「馬と恐竜とではまた話は違うが、空を飛ぶ者には翼があるものだ。とりわけ地球に生まれ育った人々にはその方が受け入れやすい」

 

「なるほど、一理ありますわね。鳥も飛行機も翼有りきですし、ミノフスキークラフトで空を飛べるようになっても、やはり翼のある方が大気の恩恵を受けやすいから。

 ウルトラザウルスを完全に飛行空母として運用する改造案もパーツも用意してありますが、ミケーネ相手なら地上に降りてどっしりと進軍する方が威圧感マシマシで良いと判断されましたから、まるで空を歩いているかのように進んでもらいましょう」

 

「グラビティキャノンといったか。例の兵器は積まなかったのかね」

 

「時間が足りませんでした。それに住人の避難は完了しているとはいえ、パリの近くで戦闘となります。グラビティキャノンや1200mmウルトラキャノンを使っては、せっかく残っているエッフェル塔や凱旋門に街並みを吹き飛ばしてしまいますから」

 

 デスザウラーの荷電粒子砲やハガネのファイナルダイナミックスペシャルキャノンに比べると、威力の調整が困難であったのも原因の一つだ。

 

「人類の手で華やかなるパリを消し去るのは避けたい、か」

 

「語弊のある言い方になりますが、幸いにしてなりふり構わなくなるほど、人類はまだ追い詰められてはいません。手段を選ぶ余裕はまだかろうじて残されています」

 

「一年戦争で得た教訓、各地のスーパーロボット達の協力、そして君達プルート財閥の献身か。ヘイデス総帥には一体何が見えているのかと、ジャブローとダカールのオフィスでは噂されているだろうな」

 

「あの人はそこまで超人ではないのですけれどね。人の不幸を悲しんで、人の幸福を喜べる普通の人ですよ。経済関係に関しては、怪物であると同意します」

 

 感性的にはのび太君である。

 

「ふふ、味方にすればなんとも心強い。味方ならば英雄、敵からすればまさしく怪物であるだろうな」

 

 本人としては英雄や勇者、あるいは正義の味方のスポンサーポジションを自認している。勇者を送り出す王様枠か主人公の属する組織のトップ枠といったところか。

 

「私からすれば夫兼恋人兼最良の理解者兼最大のスポンサーです」

 

「“兼”が多いな。私としても雇用主の家族関係が良好で安心するよ」

 

 この夫妻、どちらかが非業の死を遂げたら残った片方が“えらいこっちゃ”になる、というのが人となりを知る者達の共通見解である。

 

「パオロ司令も悠々自適な老後生活の為に、今は気張ってくださいましな」

 

「一年戦争ではブライト君やアムロ君に対し、私が不甲斐ないばかりに苦労を掛けてしまった。償いというわけではないが、今の私に出来る限りをしよう」

 

「その言葉を聞ければ充分です。ブライト大佐やアムロ大尉も喜ばれるでしょう」

 

■共通ルート 第三十五話 死闘! 暗黒大将軍!

 

 パリへと向けて進軍するレコンキスタ本隊。その中核となるトレーズの本陣に暗黒の破壊将軍の異名を取るウルトラエースの一人、ヴァルダー・ファーキル大佐の姿があった。

 決戦を前にトレーズから呼び出しを受けたのである。トレーズの乗艦であるストーク級プリンス・オブ・ウェールズの格納庫には、二人以外に護衛も整備の者も居ない。

 そして二人は格納庫に並ぶトレーズのトールギスⅡの横に並べられた赤いガンダムタイプのMSを見上げていた。トレーズが開発させたガンダムエピオンと呼ばれる機体だ。

 

「ヴァルダー、これはエピオン。決闘の為に刃を振るうべき機体だ。だが同時に決して兵器ではない。これは私の思い描く兵士の姿を反映させた存在であるからだ」

 

「兵器であるMSを決闘用と囀るか。貴様らしい物言いだ。ならばこれは公人としての貴様ではなく、私人としての貴様が求めた機体か。戦場でトールギスⅡに乗るのもそれが理由だな?」

 

「トールギスⅡは兵士達と共に戦場に在り、そして地球人類の自由と尊厳を守るべく勝利を得る為の兵器としての役割を求められている。私が一軍人として立つ限りにおいて、トールギスⅡこそ戦場には相応しい」

 

 ヴァルダーはトレーズに対して強い競争心を抱いている。一方的なライバル視かもしれないが、少なくともトレーズからまったく無視されているわけではない。そうでなければこうしてわざわざ決戦を前に前線から呼び寄せて、エピオンを見せたりはしない。

 このエピオンにはリアルタイムで変化する戦況を演算処理し、瞬間ごとの最良の戦術、実行後に予測される結果を複数、強制的に搭乗者にフィードバックし、疑似的な未来予測を行うエピオンシステムが搭載されている。

 

 また脳内神経伝達物質の分泌にも介入し、強制ドーピングによってパイロットに限界を超えた操縦を強要する。

 常人では自らの死のパターンすら無数に含まれる情報に翻弄され、廃人と化す危険なシステムだ。宇宙でヒイロが入手したウイングゼロにも同様のゼロシステムが搭載されており、スパロボシリーズでも良くも悪くも活躍する、悪名高いシステムだ。

 

 トレーズはこのエピオンシステムを用いて戦況を把握、予測し、MDと通常部隊の指揮を並行して行うという離れ業を続けてきた。

 つまりこのオペレーション・レコンキスタにおいて、エピオンは極めて重要なキーなのだ。それを自軍の佐官とはいえ見せているのだから、見方によればトレーズからヴァルダーへの信頼の表れであるかもしれない。

 

「ヴァルダー、君がこの時代における最強の称号を求めているのは、私なりに理解しているつもりだ。そして私が君にとって打ち勝つべき相手の一人と見做されていることも。いずれ相応しき時、相応しき場でこのエピオンで君の前に立とう」

 

「ほう。…………くく、貴様からそんな言葉が出てくるとはな。私は貴様のことをまだまだ理解しきれていなかったようだ。いいだろう。このエピオンと貴様との決闘に相応しい機体を用意して、貴様を打倒してくれる。その時までミケーネやムゲ如きに討たれるなよ」

 

 トレーズの用件は終わったと判断したヴァルダーは、喜悦を滲ませながらトレーズとエピオンに背を向けて格納庫を後にする。

 その脳裏では、配下のドクター・ペルゲに開発させているハイドラガンダムの進捗状況が何度も思い起こされていた。

 地球と人類を脅かすゴミ共を一掃した後、トレーズと決闘し、そして勝利する。ヴァルダーにとっては確定したその未来が、彼の心をこの上なく高揚させた。

 そんなヴァルターを見送ってから、トレーズは私人としての愛機となるエピオンを見上げて語りかける。

 

「エピオンよ、お前はパイロットを勝者としてはならない機体。しかし、私がただ一人の人間として決闘に臨むのならば、お前は兵器ではなくただ一振りの剣、我が乗機となる。どうか私の我儘に付き合ってくれ」

 

 そして現在――パリ近郊の丘陵地帯でレコンキスタ本隊は、暗黒大将軍率いるミケーネ帝国軍との戦闘を開始していた。

 

「くそ、だめだ、やつらビームシールドを抜いてきやがる!」

 

「ゴーレム2、ゴーレム4がやられた。これから救出する、ビルゴを回してくれ!」

 

 パリ近郊の標高が低い丘陵地帯では、遮蔽物がほとんどなくお互いに射線を邪魔するもののない剥き出しの状態で戦闘が行われている。

 超合金Zすら容易く破壊する戦闘獣の攻撃は、ビームシールドでもそう簡単には防ぎきれず、破壊光線で左腕を付け根から吹き飛ばされたジャベリンが不時着し、それをカバーしようとしたトーラスも両足を電撃で破壊されて落下する。

 

 まだ生きている上半身を動かして、ビームライフルとトーラスカノンで応戦する二機に、救出に向かったトーラスとジェムズガンに随行したMDビルゴがプラネイトディフェンサーを展開しながら、壁となって守りに動く。

 前線の小隊にはトレーズの指揮から離れたMDが預けられ、ビームシールド以上の防御力を誇るプラネイトディフェンサーを壁兼盾として用いる運用が頻繁に行われていた。

 

 戦闘獣からの集中砲火にビルゴが耐えている間に、不時着した二機からパイロットが救出されて、ジェムズガンの掌に乗せられて大急ぎで後方へ退避して行く。

 更に後方からトラゴスやカノントータス、量産型ガンタンクといった古今東西の砲撃系の兵器からなる砲火支援が山のように放たれて、地上に展開した戦闘獣へ雨霰と降り注いでゆく。

 

 単体ではスーパーロボットに準ずる戦闘獣達も、流石にこれは堪らんと一旦下がり、追撃を諦めて砲火の雨をやり過ごすほかない。

 上空の怪鳥軍団を筆頭とする飛行可能な戦闘獣達も、変形したトーラスや少数のテウルギスト、アンクシャ、そしてストームソーダーとサラマンダーを主軸とするモビルゾイドの編隊を相手に互角の攻防を繰り広げ、お互いに死力を尽くしているのは誰の目にも明白であった。

 

 夜明け前から戦端の開かれたパリ奪還作戦は、双方共に一進一退の激闘を繰り広げながら、正午に達しても継続していた。

 ストーク級やライノセラス、ホエールキング、ビッグトレー、ヘビィ・フォーク、クラップ級からなるレコンキスタ艦隊とミケーネ側のミケロス艦隊は、機動兵器同士の戦闘が始まれば砲撃よりも破損した機体の修理や弾薬、推進剤の補給にパイロットの休息、治療にと足に火の着いたような慌ただしさに包まれている。

 

 人間の血肉であったなら大地の肥やしになるが、積み上げられるのが鋼鉄の骸とオイルでは大地を汚染するばかり。敗れた者達の怨嗟と苦痛がしみ込んだ大地は、いつ清らかになるものか。

 そんな戦いの中でひときわ激しく攻防の火花を散らしているのは、ヴァルダーのダークトールギスⅡとミケーネ側の指揮官である暗黒大将軍だった。

 

 トレーズとの決闘の約定を交わした事で士気を高めたヴァルダーは、腹心のアルモニア姉妹が乗るヴァイエイトとメリクリウス、そしてビルゴ部隊を率い、防衛線のわずかな隙を見抜いて集中攻撃を重ね、食い破ることに成功した。

 しかしミケーネもさるもの。七大将軍や獣魔将軍が対応に追われる中、真っ先にヴァルダー麾下の部隊の突破力を危惧した暗黒大将軍が腰を上げて、自らこれを迎え撃ったのである。

 

 バーニアを全開にして凄まじい速度で空を飛ぶダークトールギスⅡから、眼下の暗黒大将軍へと向けて、ドーバーガンが幾度も火を噴く。原作ではビルゴすらまとめて吹き飛ばした大火力に対し、暗黒大将軍は右手のダークサーベルを振るって対応した。

 ドーバーガンから放たれたオレンジ色の光の奔流が、ダークサーベルによって真っ二つに切り分けられ、その周囲の大地を吹き飛ばすのをヴァルダーは冷徹な瞳で見ていた。

 戦闘開始から既に何度も繰り返した光景であり、周囲には流れ弾に被弾した戦闘獣やビルゴが何体か転がっている。

 

「流石はミケーネの指揮官。地位と武力は比例するようだな」

 

 ヴァルダーはダークトールギスⅡに空中で弧を描かせて地表スレスレまで高度を下げ、土煙を巻き上げながら暗黒大将軍の周囲を旋回する。

 さながら海中で獲物の周囲を回遊する鮫を思わせる動きにも、暗黒大将軍は欠片も動揺しない。やや頑迷な武人気質のところのある暗黒大将軍だが、その実力は本物だ。

 

「人間の指揮官か。自ら前線に出てくる気概は認めてやるが、この俺の首を獲れると思った浅はかさを教えてくれる。ぬうん!」

 

 ダークサーベルが唸りを上げて振り回され、そこから見る間に巨大な竜巻が生じて周囲を飛ぶダークトールギスⅡを飲み込まんと迫る。スーパーロボット系の敵にありがちな物理法則に喧嘩を売る現象であった――ガンダム系列にも若干見受けられるが……。

 

「ちっ、だがこの程度の芸当でこの私は止められん!」

 

 凄まじいダークハリケーンの圧力の中でダークトールギスⅡは殺人加速――殺人的加速ではない――を頼みに強引に突っ込み、暗黒大将軍へと肉薄する。

 左手には超電磁技術を用いた超電磁ドリルランスが唸りを上げ、右手には膨大な出力を束ねたビームサーベルの変則二刀流!

 

「俺の間合いに入るか、愚かな奴め!」

 

 対する暗黒大将軍もどっしりと腰を落としてダークサーベルを構え、一部の隙も無くダークトールギスⅡを切って捨てるべく気炎を吐く!

 

「ここで貴様を倒し、その名もまた私の異名としよう! “暗黒の破壊『大』将軍”ヴァルダー・ファーキルとな!」

 

 暗黒大将軍の全高は三十五メートル、ダークトールギスⅡの倍近い巨体だがその動きは生身の人間と変わらぬ滑らかさと虚実を交える技巧が一体となっている。

 

(ミケーネの戦闘獣共、サイボーグなのは伊達ではないな。人機一体か、だが、この私が最強であるのを証明する為の通過点なのだ、貴様は!)

 

 ダークトールギスⅡのビームサーベルでもダークサーベルを受けられるのは数瞬が限度、それを一合で見切ったヴァルダーは左サブアームで接続されたシールドも組み合わせて、暗黒大将軍の怒涛の連撃をいなし続ける。

 ビームサーベルとシールドでいなす中、マグマ獣や獣士相手にも有効な威力を持つ超電磁ドリルランスが暗黒大将軍の胸を狙って突き出される。そこにはサイボーグ化される前の暗黒大将軍の顔があり、誰がどう見ても弱点にしか見えない。

 

「かあっ!」

 

 しかしそんな事は暗黒大将軍のみならず顔を二つ持つミケーネの戦闘獣ならば、十分に知悉している事。暗黒大将軍は目から超破壊光線を放ち、超電磁ドリルランスごとまとめてダークトールギスⅡを吹き飛ばさんとする。

 ダークトールギスⅡはスラスターとバーニアの推力を活かした強引な動きで直上に飛んで超破壊光線を回避し、空中から暗黒大将軍の左首筋にビームサーベルを振るった。

 

「ぬん! この程度で俺の首が獲れるものか!」

 

 ダークトールギスⅡのビームサーベルは、暗黒大将軍が盾代わりに掲げた左腕の籠手に阻まれていた。じりじりと高出力のビームが籠手を赤熱化させるが、それよりもダークサーベルの紫電を散らす一撃の方が速い。

 左肩のシールドの下半分を斬り落とされるのと引き換えに、ダークトールギスⅡは後方に飛びずさって胴体から真っ二つにされる運命から逃れた。

 

「図体ばかりの木偶の坊ではないというわけか」

 

 ヴァルダーはパワー、装甲、柔軟性においてダークトールギスⅡを上回る暗黒大将軍の力と技量を認め、眦を鋭く引き締めた。

 

「羽虫の分際で鬱陶しい。大人しくこの暗黒大将軍の刃の錆びとなれ!」

 

 ミケーネの防衛線に斬り込んだヴァルダー隊はこの後、三十分以上に渡り交戦し続けるも暗黒大将軍によって進撃を阻まれ、他の部隊が攻勢を弱めて一旦下がるのに合わせて後退を余儀なくされる。

 それから更に数十分後、まだ長距離砲撃や艦砲による攻撃こそ継続されているが、レコンキスタ本隊からの圧力が減じたのに合わせて、暗黒大将軍は自軍の状況把握に務めていた。

 

「状況を報告しろ。戦える者はどれだけいる!?」

 

 一体のオリジナル戦闘獣が廃墟の中から進み出て、暗黒大将軍の目の前で膝を折る。

 

「ははぁ、恐れながら申し上げます。七大軍団の残存戦力は七十八パーセント、獣魔軍団は六十二パーセントにまで落ち込んでおります。また修理が終了次第戦線に復帰可能な戦闘獣は、四十四体でございます。

 万能要塞ミケロスは二隻撃沈、三隻が大破、二隻が小破。無傷のものは一隻も残ってはおりません。しかし、我らまだ士気軒昂、恐れを知りませぬ」

 

「ふん、人間共め、流石にやりおるわ。正面からの圧力は下がったが、決して警戒を怠るではない。まだ奴らが来ておらん。忌まわしきグレートマジンガーとマジンガーZ、そして……」

 

 暗黒大将軍の言葉は、慌てた様子で駆け込んできたミケーネスによって遮られた。

 

「暗黒大将軍様! こちらへ向けて急速に接近する艦隊を捕捉いたしました!」

 

「来たか、奴らが! 人類の切り札、ディバイン・クルセイダーズが!」

 

 この時、レコンキスタ本隊はパリから見て北から西にかけて、弧を描くように布陣して進軍していたが、ディバイン・クルセイダーズはその反対、南東方面からミケーネ軍団の後背を突くべく進軍してきたのだ!

 全長千五百メートルに達するガンドールを筆頭に、ウルトラザウルス、キング・ビアルという特異な外見の艦に、ハガネ、シロガネ、アルビオンといった連邦軍でも採用されている正規の艦が続く。

 

 そして部隊に所属している数多くのスーパーロボットと強力なMS部隊、それらを乗りこなし、連携して百パーセント、いや百二十パーセント以上の性能を引き出すパイロット達。

 まさしく暗黒大将軍が人類の切り札と評価するに値する、最高の勇者達が集う地球圏最強の部隊! その戦力ははるかに数の多いレコンキスタ本隊に匹敵するか、それ以上だろう。

 

 艦隊の先鋒を務めるハガネと豪快な地響きと共に地面に降り立つデスザウラーを目視し、暗黒大将軍は唾を飛ばしながら部下に命じた。

 それはドレイドウの持ち帰った戦闘データを見てから、口を酸っぱくして部下達に言い聞かせ、部下達もまた耳にタコができる程に聞いた命令だった。

 

「空を降りろ! 撃たれるぞ!」

 

 ハガネの艦首特装砲、そしてデスザウラーの口内にある三門の砲口には特大のエネルギーが満ち満ちて、それは向けられたものに絶対の破滅を確信させた。ハガネの艦橋でホロスコープを覗き込み、照準を合わせたレビルが叫び、トリガーを引く。

 

「艦首特装砲ファイナルダイナミックスペシャルキャノン、発射ァア!!」

 

 メガ粒子、光子力、ゲッター線、光量子の四つがミックスされた極大のエネルギー流がハガネの艦首から放たれ、

 

「グオアアアア!!」

 

 怪獣の王を彷彿とさせる咆哮を上げたデスザウラーの口から荷電粒子、超重力、ゲッター線からなる三色の光の奔流が放たれて、レコンキスタ本隊の圧力が減じて若干気を緩めていた飛行中の戦闘獣達を容赦なく飲み込んでゆく。

 暗黒大将軍の命令に反射レベルで従い、高度を下げた者達でも余波に巻き込まれて原形を留めずに融解した者が少なからずいて、直撃を受けた者は跡形も残らない。当然、事前に退避勧告を受けていたレコンキスタ本隊は、この砲撃に巻き込まれていない。

 

「艦首特装砲並びにトリムールティドライブの冷却を急げ、ハガネを一旦下げる。機動兵器部隊出撃! トレーズ司令に暗号文を送れ、『サジタリウスの矢は放たれた』!」

 

 大気や戦闘で巻き上げられた粉塵、土煙による減衰など微塵も感じさせない砲撃は、最高指揮官である暗黒大将軍の存在をもってしてもミケーネ軍団の士気を挫くのには十分なものだった。具体的に言うと気力がマイナス二十といったところか。

 マシンセルによる自然環境回復計画がなかったら、後々、地球環境に悪影響を及ぼしそうな極大砲撃の後で動きの鈍いミケーネ軍団へ、スーパーロボット軍団は一気呵成に挑みかかる!

 それを座して待つ暗黒大将軍ではなかった。まだ呆けている戦闘獣やミケーネスも散見される中、暗黒大将軍はその名に相応しい威厳ある声で指示を飛ばす。

 

「やってくれたな、DC。アンゴラス、ドレイドウ、スカラベスはレコンキスタ本隊を迎撃せよ、奴らもすぐに仕掛けてくるぞ! 残りの者どもは俺に続け! ここをマジンガーとDCの墓場としてくれるわ!!」

 

 ダークトールギスⅡとの戦闘による消耗を微塵も感じさせない気迫で、暗黒大将軍はDC艦隊から飛び立つダブルマジンガーを睨み据えていた。

 

「暗黒大将軍、このグレートマジンガーと剣鉄也が相手だ!」

 

「マジンガーZと兜甲児も居るぞ!」

 

 真っ先に飛び出したのはミケーネとの因縁が深い鉄也と甲児だ。

 それぞれの愛機も今回の決戦に際し、光子力ビームガトリングガンや光子力ミサイルマシンガンを手に持ち、スクランブルダッシュやジェットスクランダーには取り外し可能な光子力ビームキャノンやレールキャノン、脚部にも四連装ミサイルポッドなどで武装している。

 フルアーマーマジンガーか、それともヘビーウェポンマジンガーとでも言うべき状態だ。

 

「俺様とボスボロットを忘れてもらっちゃ困る! いっくわよ~ん!」

 

 そしてボススペイザーで出撃したボスもいつも通りヌケとムチャを引き連れて、飛び出して行く。また妹マリアと再会したデュークもドリルスペイザーとマリンスペイザーと共に三機一個小隊を編成して、ダブルマジンガーの援護に動いている。

 ミケーネ帝国が、多少非効率であろうともダブルマジンガーに攻撃を集中させるのは目に見えている。ならばこちらもダブルマジンガーに群がる戦闘獣を片っ端から撃墜していてやるまでだ、とDC側は意気込んでいる。

 

「機動兵器部隊各機、ダブルマジンガーの援護を担当する機体以外は予定通り敵指揮官の排除に向かえ。指揮系統から崩してゆくぞ」

 

 シャピロが慣れ親しんだシャドーフォックスに乗りながら出した指示の通り、DCは複数のスーパーロボットを活かして、暗黒大将軍と七大将軍並びに獣魔将軍の撃破による斬首戦術を選択していた。

 

「よおっし、バニングのおっちゃん、よろしく頼むぜ!」

 

「おい勝平、お前なあ」

 

「すみません、バニング大尉。勝平にはあとできつく言い聞かせておきますから」

 

 自分の半分も生きていない子供達の謝罪を、バニングは苦笑を浮かべて受け止めた。

 

「気にするな、それよりも戦闘中だ。宇宙太、恵子、戦闘に集中しておけ。アルビオン小隊各員、これより俺達はザンボット3のエスコートを行う。雑兵は全て俺達で引き受けるぞ!」

 

 シルヴァ・バレトのバニングの号令にガンダムMk-Ⅳのベイト、フルアーマーガンダムMk-Ⅲのモンシア、FAZZのアデルとキース、そして地上仕様に戻ったゼフィランサスのコウが応じる。

 

「うひひひ、チビ共、俺のガンダムちゃんが守ってやっから安心しとけ!」

 

 すっかり愛着の湧いたフルアーマーガンダムMk-Ⅲに乗り、確実に地球の歴史に残るだろう戦いに参戦している事実にモンシアは緊張とそれを上回る高揚に包まれているようだった。

 もちろんそれに気づかないバニングではなく、鋭い一喝がモンシアの鼓膜に突き刺さる。

 

「モンシア、調子に乗ってミスをしたら腕立て百回どころではないからな!」

 

「わわ、分かっていますって。これでも一年戦争からこっち戦いまくってんでさ。そんな間抜けな真似はしませんて」

 

「どうだかな。ベイト、アデル、ウラキ、キース、勝平達の前で情けない大人の姿なんか見せるなよ! ウラキ、久しぶりの一号機だろうが、落ち着いてやれ。普段通りにやれば、それでお前は戦える」

 

「はい!」

 

 バニングに声を掛けられたコウは、宇宙で操縦したオーキスに比べればはるかに扱いやすいゼフィランサスにちょっとした感動さえしていた。

 オペレーション・レコンキスタへの途中参加が決まった時から、ゼフィランサスに乗り直す為に調整は済ませてある。戦闘獣の異様な姿を前にしても、コウの心に動揺はない。宇宙での激戦の数々が、彼を一級の戦士へと鍛え上げていた。

 

 怪鳥将軍バーダラー率いる怪鳥軍団はデスザウラーとハガネに頭上を抑えられ、得意とする空中戦を行えない状況でダイモスチーム並びにヤザンチームが襲い掛かっていた。

 MA形態のまま丘陵地帯をかっとぶGNハンブラビに、サバーニャパックを装備したF89が追従してダイモスチームの道を開く。

 

「ラムサス、ダンケル、今日は姫ばかりでなくダイモスの案内役をやる。重力下での機体の操縦だ。つまらんミスをするなよ!」

 

「肝に銘じています」

 

「言われるまでもなく!」

 

 操縦桿を傾ける角度のわずかなずれで地面と激突する恐怖など微塵も感じていない様子で、ヤザンらはGN粒子を撒き散らしながらビームガンとフェダーインライフルを連射して、戦闘獣の群れの中を飛び交う。

 それにシールドビット、ライフルビットを展開するF89が続き、イングリッドはバーダラーの首を狙ってダイレクトバイオリンクセンサーで拡張された意識を周囲へと発する。

 

「いた! 一矢、もじゃもじゃサングラス、わんこちゃん、敵指揮官の位置を送るわよ!」

 

「ありがとう、イングリッド!」

 

「いい加減名前で呼べ!」

 

「あたしにも和泉ナナって名前があるんだけど!?」

 

「だったら髪型を直してサングラス外しなさいよ、わんこちゃんは“ワン!”って言う癖が無くなったら、ナナって呼んだげるわ!」

 

 色々と言いたいことのある京四郎とナナだったが、いかんせん戦闘中であるから仕方なくイングリッドへの抗議は止めて、一矢のダイモスに続いてバーダラーを目指して機体を加速させる。

 原作ではまともに戦って討ち取られた数少ない将軍であるバーダラーは、この世界では果たしてどのような結末を迎えるだろう。

 

「グルンっと回ってガスっと変形するから!」

 

 ミーナの操縦するグルンガストは全力疾走からジャンプし、空中でウィングガストに変形するとそのまま強力なエネルギーを纏って戦闘獣の真っただ中に突っ込んでゆく。それをミーナに続いていたジェスが援護する。

 

「グルンガストだ! これはガストランダーだけどな!」

 

 ドドン、と地響きを立てて地面の上を跳ね、ガストランダーがキャタピラを激しく回転させながら、オメガ・キャノンとビッグ・ミサイルが次々と火を噴く。

 二機のグルンガストが突っ込んで切り崩した防衛線にはアーウィンのヒュッケバイン、グレースのガンダムデュラクシールが突っ込み、食い破った穴を広げて行く。

 

「凶鳥の羽搏きが聞こえるか? お前達に災いを齎すヒュッケバインだ!」

 

 ヒュッケバインの手に握られたフォトンライフルから次々と放たれる光弾とウイングバインダーの付け根から発射されたマイクロミサイル、さらに投擲されたリープスラッシャーは馬鹿げた破壊力を発揮している。

 MSと同サイズのマジンガーZ同様に、機体サイズ詐欺のスーパーロボットと称されるのも当然の戦いぶりだ。

 

 更に名前と顔こそガンダムタイプだが、五十メートル級の巨体と大出力はMSとは信じられないデュラクシールも同様である。

 暗黒大将軍と比較してもジャベリン一機分はデュラクシールの方が大きい。その巨体が猛烈な勢いで襲い掛かってくるのだから、戦闘獣にしてもなまじサイボーグだからこそ圧倒的な威圧感にしり込みしてしまう。

 

「悪い子にはお仕置きですよ~」

 

 デュラクシールの両手から伸びる超振動クローが縦横無尽に振るわれて、当たった端から量産型戦闘獣の胴や顔、手足が引き裂かれ、バラバラになって飛んでゆく。

 さらに分離したタオーステイルが周囲を旋回して、ニュータイプの素養を持つグレースの思念に従って砲撃を加えている。

 レコンキスタ本隊との数時間に及ぶ戦闘による消耗も加わって、ミケーネ軍団は燎原の火の如く被害が広がってゆく。

 

 ムゲとの戦線から戻されたハーディアスの悪霊軍団には、彼らの操る呪術や幻術に対抗できる可能性のある、古代ムーの神秘科学の結晶ライディーンと晶、麗の乗るサイコザマンダーにフェブルウス、アムロのνガンダムが向かっている。

 かつては戦闘獣ダンテの幻術により鉄也と甲児の精神がかく乱され、同士討ちに発展した事もあったが、兜剣造博士の言葉と二人の覚醒により幻術を振り切り、オリジナルのダンテは倒されている。

 ハーディアス自身と量産型のダンテらという脅威は残っているが、極端な話、アウトレンジから徹底的に叩けば問題ないと判断されている。

 

 獣魔将軍の率いる七大軍団の混成軍団には、ラピエサージュ・シンデレラ、ビルトビルガー、ビルトファルケン、バルゴラGS、更にブランのアンクシャ、エクセレンのヴァイスリッター、そして修理中のアルトアイゼンの代わりの機体を用意してもらったキョウスケが襲い掛かっていた。

 頭上から降り注ぐヴァイスリッターの援護射撃に助けられながら、キョウスケは一時的な愛機を操り、眼前に立ち塞がった翼の生えた虎のような戦闘獣を仕留めに掛かった。

 

「やるぞ、ギガ!」

 

 キョウスケに用意された機体とはゴジュラスギガ。

 まだ数えるほどしか生産されていない希少な機体で、原作では全高が格闘モードで十七メートルに対して倍の三十四メートル、装備はギガクラッシャーファング、ハイパープレスマニュピレーター、ロケットブースター加速式クラッシャーテイルと見事に格闘用のもので統一されている。

 

 アルトアイゼン以上に極端なゴジュラスギガだが、それでもキョウスケとの相性は悪くなく、ハイパーEシールドを展開しながら敵陣に突っ込み、補助アンカーで脚部を固定しながらクラッシャーテイルをぶん回せば、直撃した戦闘獣が内臓代わりの部品をバラまきながら吹っ飛んでゆく。

 クラッシャーテイル使用後のロケットブースターカットの隙を狙い、ハイエナ型の戦闘獣が群れを成して食らいついてくるのにもキョウスケは冷静に対応した。

 

 ゴジュラスギガのマニュピレーターはハイエナもどきの首を締めあげて深々と爪が突き刺さり、更に凶悪極まりないギガクラッシャーファングは容赦なく戦闘獣の装甲に食い込み、強靭な咬合力によって無残な断末魔を上げながらハイエナ型戦闘獣は食いちぎられた。

 飢えた恐竜が小さな動物に襲いかかっているかのような、なんともむごい光景が広がっている。

 

「うっわ、キョウスケ、ギガちゃんってばちょっとヤンチャが過ぎない?」

 

「ふ、敵勢力に対する示威効果は抜群だな」

 

「それで済ませていい問題かしらん? 一応、私達って地球人類側の正義の味方よね?」

 

 あくまで地球人類にとっての正義の味方という言い方をするあたりが、エクセレンらしい。

 

「これくらいの方が頼もしく映るだろうさ。それよりもレコンキスタ本隊も動き出した。このまま攻勢を加えるぞ。援護を頼む」

 

「はいはい。私もMZを都合してもらった方が良かったかしらね」

 

 ちらりとモニターの片隅に視線を送ったエクセレンは、ゼファーギル・ベイダーの姿を見た。

 通常サイズの空戦型ゾイドとして現在最強とされるギル・ベイダーは、両翼の重力砲四門、頭部の角に内蔵されるツインメーザー、胴体正面部のニードルガン、喉部のプラズマ粒子砲、更に両翼と背部に大小四基装備されるビームスマッシャーと、とんでもない重武装と極めて高い基本性能を併せ持った傑作機だ。

 特にビームスマッシャーは荷電粒子を円盤のビームに成形し、発射して敵機を切断する強力な武器だ。

 

 MSの使用するビームサーベルよりもはるかに強力なこの武器は、サイコミュの導入とゼファーの制御によって、ミケーネ軍団に恐るべき脅威となって襲い掛かっている。

 特筆すべき点としてデスザウラーの自律回路がゼファーベースである為か、ハリネズミのような火線を展開しているデスザウラーとゼファーギル・ベイダーは、お互いの動きを分かり切った連携で足を止める事無く進軍し続けている点が挙げられる。

 

 地上部隊と宇宙部隊の合流したDCは機動兵器の層と数が格段に増して、ミケーネ帝国の防衛線は波に攫われる砂の城のように崩れて行く。

 ユリシーザーは配下の人間型戦闘獣達と共に決死の覚悟で戦い、必死に指揮を執っていた。先日、軍事同盟を締結した妖魔帝国と百鬼帝国がDCを挟み撃ちにする予定だが、果たしてその時間まで防衛線を維持できるか怪しい気配すらする。

 

「防衛線を第三防衛線から第二防衛線に下げるぞ! 援軍が来るまでの時間を稼げ!」

 

 気力の減少著しい部下を鼓舞して、ユリシーザーは両手にナイフを握って猛烈な勢いでこちらに接近中のゲッターチームとそれを援護するユウとライラ、ムラサメチームに備える。

 原作では明確な死亡の描写もなく、スパロボでもブレンパワードのジョナサンにあっさり殺されるなど待遇の悪いキャラクターだが、今の彼が見せる闘志に偽りはない。

 そんな時だ。戦場となっている丘陵地帯を局所的な激しい地震が襲い、ハガネにある通信が届いたのは。オペレーターがすぐさまレビルへと通信内容を告げる。

 

「艦長、暗号通信です。解凍終了、『アンタレスはオリオンを刺した』! 繰り返します、『アンタレスはオリオンを刺した』!」

 

「分かった。各機に予定ルートの変更を通達! 一気に押し込むぞ、ハガネを前進させろ!」

 

 DCならびにレコンキスタ本隊に解凍された暗号が通達され、すぐさま行動に変化が生じるのと同時に丘陵地帯の地面から巨大な四枚の刃が飛び出た。黒く光るソレは重力の刃であった。

 思わぬ事態にミケーネ軍団が動きを止める中、刃の長さ二百メートルを超す重力刃が勢い凄まじく挟まれ、ジョキン! と悍ましい音を立てて逃げ遅れた戦闘獣達が両断される。

 

 更に振動が増して地中から巨大な蠍の尻が出現し、それに続いて数百メートルクラスの巨大な人造の蠍が姿を見せた。

 それは輸送中に高度一万一千メートルで襲撃に遭い、行方不明とされていた戦略級兵器にしてデスザウラーと同格の超規格外ゾイド・デススティンガー!

 デススティンガーは地中を掘り進み、この戦場の地下から姿を現したのだ。

 

 自分で掘った穴から勢いよく飛び出したデススティンガーは、周囲の戦況を再度精査し、両前脚のストライクレーザーシザースを威嚇するように振り上げる。既に展開していたグラビティシザースは解除済みだ。

 デススティンガーは最大の武器である尾に備えた荷電粒子砲、ゲッターメガキャノン、超重力衝撃砲を撃てるように備えながらミケーネ軍団へと襲い掛かった。

 両前脚と尾以外にもバルカン砲、リニアキャノン、ハイパーレーザーガン、ハイパービームガン、2連装ショックカノンと多彩な武器が巨体に見合った高出力・大火力で放たれて、予想もしなかった超戦力の出現はミケーネの防衛線をたちまちの内に崩壊へと導いて行く。

 

 ヘイデスや所長、トミイに衝撃を与えたデススティンガー行方不明の報せだが、ヘイデスが卒倒した後で、所長とトミイは思い出していた。そもそもデススティンガーが空を飛べるのを。

 そして例え落下したとしてもEフィールドとG・テリトリーがあるからダメージはなく、仮に傷ついたとしてもマシンセルが修復すると結論に至り、すぐに気を取り直したのである。

 

 加えて言うならば、デススティンガーは原作アニメにおいては母艦ハンマーカイザーの爆発に巻き込まれ、更に墜落した上で無傷という怪物なのだ。

 所長達を決定的に安堵させたのは、当のデススティンガーが無事に着地した後でエリュシオンベースに連絡を入れて、現在の状況と今後の行動について報告と相談をしてきた事である。

 

 昨日、所長が子供らと夕食を摂る前にはもうデススティンガーと連絡が取れており、デススティンガーには着地した場所から、パリ奪還作戦途中での合流を指示していたわけだ。

 勢いよく地中から飛び出したデススティンガーは、シャキシャキと音を立てて鋏を鳴らし、デスザウラーだけでも途方もない脅威と考えていたミケーネにとっては、予想もしていなかった強敵の出現だ。これはもう絶望するなという方が無理だろう。

 

 デススティンガーがデスザウラー、ゼファーギル・ベイダーと合流するべく穴を離れるとその穴の中から一機のシールドライガーとコマンドウルフが飛び出した。

 シールドライガーのコックピットには頭頂部の髪を逆立たせ、その他の髪は後ろで縛った快活そうな少年と左右に大きく膨らんだ金色の髪が目を引く少女が乗っている。どちらも明らかに未成年で、軍人ではない民間人と分かる服装だ。

 

「ここがミケーネの奴らのど真ん中か!」

 

「バン、見て。デススティンガーと同じくらい大きなゾイドが二体もいるわ」

 

 シールドライガーのメインパイロットを務めるバン・フライハイトは既に戦闘中の状況に緊張し、後部座席の少女フィーネはウルトラザウルスとデスザウラーに感嘆の声を上げる。

 そんな二人のお守りをするようにコマンドウルフは周囲への警戒を怠らず、パイロットを務める左目に眼帯をした青年、アーバインはどうしてこうなったのか半分自棄だった。

 

「バン、フィーネ、周りは敵だらけなんだ、油断するなよ。ったく、美味しい仕事だと思ったら戦闘中のパリに突っ込む羽目になるたあ、後で会社に文句つけてやる」

 

 アレスコーポレーションの雇われテストパイロットであるアーバインは、パイロットを補助する特殊なAIと試験的に装甲にマシンセルを使用した特別仕様のシールドライガーを輸送する任務を知己のムンベイという女性と共に行っていたのだが、そこをムゲの部隊に襲われて、たまたま落下後に通りがかったデススティンガーに助けられている。

 更には居合わせた避難民のバンとフィーネが他の避難民を守る為にシールドライガーに乗り込み、これを起動してしまったため、企業秘密と軍事機密に触れたとして拘束せざるを得ない状況に陥り、連邦軍とアレスコーポレーションの協議の末、そのまま戦闘に参加させる事態となった。

 一年戦争のアムロと同じ境遇というわけだ。

 

 そして最後にこの一団の中で唯一正規軍人として同行していた少年が、量産型νガンダム・インコム装備に乗って地中の穴から飛び出した。

 ヘルメットに収めた癖のある銀髪を揺らしながら、パイロット――クォヴレー・ゴードンは戦況を確認する。

 

「想定内の状況か。予定通りDCに合流しなければ」

 

 地球連邦軍参謀本部からDCに出向する人員として事前に通達されていたパイロットであり、そしてヘイデスの目玉をひん剥かせた張本人である。

 クォヴレーは感情を覗かせぬ涼やかな表情で、激闘を繰り広げているスーパーロボット達を見つめ、それからフェブルウスを睨むように見るのだった。ビルトビルガーとビルトファルケンには一瞥もくれなかった。

 

<続>

 

■ゼファーがギル・ベイダーに乗り換えました。

■キョウスケ・ナンブがゴジュラスギガに乗り換えました。

■バン・フライハイトが参戦しました。

■フィーネが参戦しました。

■アーバインが参戦しました。

■クォヴレー・ゴードンが参戦しました。

■デススティンガーが参戦しました。

 

■シールドライガー(補助AI/マシンセル装備)が開発されました。

■コマンドウルフ(マシンセル装備)が開発されました。

 

■W0ライザーが開発中です。

■ヴァルシオー二号機が開発中です。

■ターンタイプが開発中です。

 

※『ボーナスシナリオ 第三十四・五話 バンは野蛮のバン デススティンガー珍道中を添えて』が解放されました。

※なお意訳です。

 

デススティンガー

「お船が落とされちゃった(*´з`)。次はどうすればいいですか?」

 

 無事着地したデススティンガーからエリュシオンベースに連絡が入って。

 

所長

「……? は? はい? …………怪我はありませんか?」

 

 珍しいきょとんとした顔になり、たっぷりと間をおいてから所長はとりあえずデススティンガーの安否を尋ねた。

 

デススティンガー

「(*´艸`)だいじょーブイです!」

 

所長

「ええっと、では現在の落下地点を教えてください。その後、こちらの状況と合わせてアナタの行動を決めましょう」

 

デススティンガー

「ラジャ(‘◇’)ゞ」

 

所長

「(予想外過ぎてあれですが、よしとしましょう! うん)」

 

・・・・・・・

・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

移動中のデススティンガー

「なんだか襲われている人達が居るので助けてきます(`・ω・´)」

 

所長

「む、ウチの輸送隊ですか、気を付けておやりなさい」

 

※ムゲに襲われている輸送隊+アーバイン、ムンベイ、避難民キャンプ。

シールドライガーに乗り込んだバンとフィーネ、通りがかった(?)クォヴレーが戦闘中。

 

デススティンガー 参戦!

「(-`ω-)>>>おりゃおりゃおりゃ!」

 

ムゲの皆さん

「ぎゃあああああ!?」

 

デススティンガー

「勝利(V)o¥o(V)」

 

 その後、なんやかんやあってデススティンガーに一行が同行することに。

 

デススティンガー

「パリにいくぞー!(/・ω・)/」

 

バン

「俺達の故郷を襲った奴らか! 俺がやっつけてやる」

 

フィーネ

「バンだけじゃ心配だわ。私もいっしょに行く」

 

アーバイン

「え、俺も?」

 

クォヴレー

「(マシンセルを使ったゾイドか……)」

 

 そして第三十五話へ!




デスザウラーとデススティンガーは幼女よりの無性幼児のイメージです。
とはいえあくまで本作における個人的な設定ですので、皆さんも好きなイメージで解釈なさってください。
ありがとうございました。

ちなみに七十話前後の単発作品のイメージで本作を書いております。

追記
大破壊将軍 → 破壊大将軍に変更いたしました。

追記2
シールドライガーに積んであるのをOSからAIへ変えました。


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第五十七話 余計な事をするとひどい結果になるというお話

前話のシールドライガーに搭載されたOSをAIに変えました。後々のことを考えるとAIの方が都合が良さそうなので。
それとハーディアスがお好きな方にはごめんなさい。彼はひどい目に遭います(´・ω・`)。


 デススティンガーの奇襲はミケーネ防衛線に致命的な破綻を齎した。

 デススティンガーは尾の荷電粒子砲などの使用こそ控えているが、百メートル単位の巨体が冗談じみた火力と格闘性能を併せ持ち、それをフルに活かして縦横無尽に暴れ回られては手に負えたものではない。

 ましてデススティンガーのみならずデスザウラーと各スーパーロボットとそれを支援するサポートメカ、MS部隊、強力な火線を展開する艦隊による猛攻を受けている最中なのだ。

 

 レコンキスタ本隊との戦闘後、およそ七割に落ち込んでいたミケーネ軍団はDCとの戦闘開始からものの数分で、六割弱近くまで数を減らされている。

 そして勢いに乗り七大将軍らの首を獲らんと迫るスーパーロボットの迫力と威圧感には、DCの味方であるはずの連邦軍の諸兵ですら思わずミケーネ側に同情してしまうものがあった。

 その中にあってこの戦場でもっとも未熟な少年は、周囲の異形達を前に怯まずに蛮勇を振るっている。

 

「行くぜ、ストライククロー!!」

 

 デススティンガーに続き、ここまでの道中に数度の戦闘を経験したバンとフィーネが乗る特別なシールドライガーが隙を見せた人間型戦闘獣に襲い掛かり、両前脚の爪で一気に胸から腹にかけて引き裂く。

 

「お、おのれぇ!」

 

 切り裂かれた傷口から血液代わりのオイルや機械の部品を零して、人間型戦闘獣は苦悶の表情のまま仰向けに倒れ込み、機能を停止する。

 

「これで二つ。かかって来やがれ!」

 

 バンが乗り込んでパイロット登録されたシールドライガーの武装自体は、ストライククローの他に牙のレーザーサーベル、背部と尾部の二連装ビーム砲、腹部の三連衝撃砲、腰両部の展開式ミサイルポッドとスタンダードなラインナップだ。

 元々は対メカザウルスを想定していた時期の機体である為、メカザウルスよりも強力な戦闘獣や百鬼メカが相手ではいささかパワー不足だ。

 それをマシンセルに変えられた装甲の耐久性と出力の上がったEシールド、パイロットを補助する特別なAIがカバーしている。

 連邦軍で開発されている『ALICE』やMD、ゼファー、ロペットなどを参考に開発されたこのAIは、機体の性能を最大限に引き出し、なおかつパイロットの補助を主目的とする。

 

「バン、左前方から来るわ、たぶん、破壊光線!」

 

 フィーネの指摘通り、倒した戦闘獣の向こうからマジンガーに似た戦闘獣グレシオスの量産型が接近してきており、その両目から怪光線を放とうとしていた。

 フィーネの警告に従ってバンが操縦するよりも早く、AIがシールドライガーに回避行動をとらせ、右に飛んで避けたシールドライガーの脇を怪光線が通り抜けていった。

 

「こいつはお返しだ!」

 

 バンはAIに助けられたことを理解しながら、グレシオスに腹部の三連衝撃砲を発射し、グレシオスの胸部に爆発が生じて仰向けに倒れ込む。

 それだけでは仕留めきれず、即座に上半身を起こすグレシオスに、バンが止めを刺すよりも早く後方から発射されたロングレンジライフルの実弾が、グレシオスの頭部を吹き飛ばした。

 

「アーバイン!」

 

「怒るなよ。仕留めきれずに痛い反撃を食らうほど、つまらない話はねえ。それより俺達もさっさとDCと合流するぞ。

 デススティンガーが大抵の相手は引き付けてくれちゃあいるが、今まで戦ってきた奴らよりよっぽど練度の高いのが相手だ。いつまでも俺達だけじゃどうなるか分かったもんじゃない。そうだろう、少尉さんよォ?」

 

 ゴジュラス用のロングレンジライフルを見事に命中させたアーバインは、自分達のやや後方で周囲に牽制のビームを放っている量産型νガンダムに通信で呼びかけた。

 量産型νガンダムのパイロットであるクォヴレーは、アーバインに淡々と答える。その間にも右手のビームライフルにバックパックのビームキャノン二門、更には重力下圏内でも使用可能に改造された四基のインコムをフル活用し、見事な弾幕を展開している。

 

「そうだ。デススティンガーが露払いをしているが、連携の取れていないこの状況では味方の流れ弾が何時、どこから飛んでくるのかも分からない。敵ならともかく助けに来た味方に撃たれて死ぬのは『つまらない』だろう?」

 

「へ、そういう事だ。少尉さん、アンタはDCへの出向者なんだろう。向こうの指揮官に連絡ぐらい取れねえのか?」

 

「もう取っている」

 

 にべもないクォヴレーの返答にアーバインがへそを曲げそうになった瞬間に、この状況でどこか呑気なフィーネの声がアーバインの耳を打った。

 

「DCの機体がこっちに来るわ。数は二機、MSかしら?」

 

「ガンダムっぽいけどトリコロールとはちょっと違うし、DCの新型じゃないか?」

 

 フィーネとバンが見上げる中、大急ぎの様子でこちらに寄ってきたのは、オウカとラトゥーニから離れて急遽援護に駆け付けたアラドとゼオラ、そして乗機であるビルトビルガーとビルトファルケンだ。

 まあガンダムっぽいと言えばガンダムっぽくあり、ガンダムっぽくないと言えばガンダムっぽくない機体だ。サイズ的にもMSの範疇に収まるのも、二人を悩ませた一因だろう。

 

「クォヴレー・ゴードン少尉にアレスコーポレーションのアーバインさん、それに民間人の方ですね? こちらはDC所属ゼオラ・シュバイツァーとアラド・バランガです。援護に来ました!」

 

 一応ゼオラも民間人ではあるが、特例的にシールドライガーに乗っているバンとフィーネは本当につい先日までずぶの素人ということもあって、尋ねる口調は丁寧だ。

 

「こちらはクォヴレー・ゴードンだ。多少予定に変更はあったが、民間人三名と共にこれより貴隊に合流する」

 

「バン・フライハイトだ。よろしく頼むぜ!」

 

「フィーネです。ゼオラさん? 私達と同い年くらい?」

 

 ゼオラに対して自己紹介するバンとフィーネの様子を見ながら、アーバインは表情を険しいものに変えた。

 

(あの子が総帥夫婦の引き取ったっていうティターンズの犠牲者達か。戦場に出ていると噂で聞いちゃあいたが、こんな激戦の場にも居るのかよ。バンとフィーネも年は大して変わらねえが……)

 

 かくいうアーバイン自身も二十歳にもなっていない若者だ。

 DCに所属するスーパーロボット関係者のパイロット達は十代後半が多く、下を見れば十歳未満まで居るという有様だ。

 今回のような人類種の命運を左右する特殊な状況下でなければ、特に十代中半以下の年頃の子供が戦場に出るのは許されないだろう。

 アーバインの複雑な胸中を知らず、アラドはブーストハンマーを左手に持たせたビルトビルガーを着地させて、気安い調子で話しかける。

 

「えっとアーバインさんはアレスコーポレーション所属なんすよね。それなら俺達の同僚って事ですか」

 

「あ、ああ。そうなるな。俺は短期契約のテストパイロットだから、正社員とはちょっと違うがよ」

 

 モビルゾイドの操縦適性がずば抜けて高かったアーバインは、それはもう厚遇されており少し前の偶発的な戦闘がなかったら、契約の更新を考えていたところである。今はちょっと考え直しつつあるが……。

 

「アラド、話をしたい気持ちは分かるけれどそこまでよ。ゴードン少尉、バンさん、フィーネさん、アーバインさんはこのまま私達グランドスター小隊と合流し、獣魔将軍撃破の為に行動してください」

 

 時を惜しんだゼオラがレビルから送られてきた指示を伝えれば、クォヴレーはなにも問題がないと言わんばかりに応じる。

 

「了解した。俺はこのまま彼らに合流するが、バン、お前達はどうする? 軍属でないお前達が無理に戦場に出る必要はないだろう」

 

「いや、俺は戦うぜ。あいつらのせいでみんなが苦しめられたんだ。戦う力を手に入れて何もしないままじゃ帰れないぜ。だけどフィーネは」

 

「私はバンと一緒よ。バンとこの子とシールドライガーが一緒なら、大丈夫でしょ?」

 

 バンとフィーネがやる気を見せる姿に、アーバインはやれやれと言わんばかりに溜息を零してから口を開く。少しは保護者めいた気持ちでも湧いているのだろうか。

 

「……俺も給料は貰っているからな。その分は戦うぜ。ちと割が合わねえ気もするが」

 

「へへ、四人共戦うってことでいいんだな。それじゃこのままオウカ姉さん達のところに合流しようぜ!」

 

 獣魔将軍とその軍団はラピエサージュ・シンデレラ、バルゴラGS、ヴァイスリッター、ゴジュラスギガを相手に奮闘中だ。そこにバンらが加われば、一気に獣魔将軍の首に近づくことが叶うだろう。

 

「でもそれだとデススティンガーとは別行動になるのかしら? あの子は私達と離れても大丈夫かな?」

 

 フィーネがまるでデススティンガーを幼い弟妹のように扱う発言に、同じコックピットの中のバンは自分達から少しずつ離れて、ストライクレーザーシザースと全身の火器を使って、戦闘獣の残骸の山を作っているデススティンガーを見る。

 彼ないし彼女は目下、デスザウラーとゼファーと合流するべく進路を取っているようで、ちょうどミケーネ防衛線のど真ん中を目指して横断するルートになる。

 

 荷電粒子砲といったメインウェポンが使えない代わりに尾部から全長五百メートルはある荷電粒子・ゲッター線・超重力の刃を展開し、ぶんぶん振り回して近づいてくる敵を真っ二つにしている。

 ガンドールさえ輪切りに出来そうな凶悪な武器を操るデススティンガーの姿に、バンは心底味方でよかったと思いながらフィーネに答えた。

 

「あれなら俺達が力を貸さなくったって大丈夫だろう。実際には俺達がずっと助けられてきたけどな。それにしても見るたびに思うけど、本当にとんでもないゾイドだぜ」

 

 畏怖と畏敬とそして頼もしさの混じるバンの言葉の後に、フィーネがデススティンガーと通信を繋げた。

 

「デススティンガー、私達はこの人達と一緒に行くわ。少しの間だけれど貴方とは離れ離れになる。あの日、私達を助けてくれてありがとう。気を付けてね」

 

 フィーネの通信を受けて、デススティンガーはわざわざ足を止めてフィーネ達を振り返り、バイバイと言わんばかりに右のハサミをブンブンと振る。なんともはやその巨体と海サソリめいた外見でなければ、無邪気とも取れる行動であった。

 そんなデススティンガーに対して、フィーネもコックピットの中で小さく手を振り返すものだから、バンはなんだか良くも悪くも肩の力が抜けるのだった。

 

 

 当初の予定とは異なる形でデススティンガーが戦場に加わり、一気にミケーネ側が苦境に立たされた頃、レコンキスタ本隊旗艦プリンス・オブ・ウェールズでも大きな動きがあった。

 

「トレーズ閣下のご出陣である! 各員、道を開け!!」

 

 プリンス・オブ・ウェールズの艦橋ではトレーズの副官レディ・アンが鋭い声音で指示を発し、敬愛する上官の花道を整えるべく頭脳をフル回転させている。

 本来であれば本作戦における最高指揮官であるトレーズの出撃など認めるべきではなく、また一個人としてもレディ・アンはトレーズに危険な前線に出て欲しくはない。

 

(しかし、しかし! トレーズ様の矜持とそのお在り様を考えればここでお止めする事など出来る筈もない。トレーズ様、トレーズ様! ああ、どうか無事の御帰還を!)

 

 レディ・アンが胸の中を複雑に交差する激情の炎で焼き焦がしている一方で、トレーズはトールギスⅡに乗り込み、出撃の時を静かに待っていた。

 砲火飛び交う戦場に身を投じる直前とは信じがたい程に沈着冷静なそのたたずまいは、彼が絵画の中の人物であるかのような錯覚さえ見る者に与えるだろう。

 

「デスザウラー、そしてデススティンガー、かの系譜に連なる機体か」

 

 カタパルトにトールギスⅡが乗せられ、着実に発進準備が進められる中、OZの軍服に身を包むトレーズは戦場の光景を映したモニターの一つに目をやり、そこで侵略者達を蹂躙する巨大なゾイド達を見ていた。

 オペレーション・レコンキスタの発案者であり指揮者であるトレーズの下には、当然、デスザウラーとデススティンガーの起動からこれまでの行動に関するすべての情報が集められている。それを知った上でトレーズはこう口にするのだ。

 

「ふっ、君達は時に私の想像もつかない結果を齎す。願わくは君達が人類にとって最良の戦友とならんことを祈ろう。ゼファー、デスザウラー、デススティンガー。

 トレーズ・クシュリナーダ、トールギスⅡ、出撃する」

 

 プリンス・オブ・ウェールズから飛び立つトレーズのトールギスⅡに、十二機のテウルギストが追従する。そしてそれらのテウルギストを動かすのは、ゼファーファントムタイプのMDだった。

 現場指揮官の命令を無視して撤退の時間を稼ぐために特攻した、という前例の為に採用が見送られたこのタイプは、しかし、トレーズの鶴の一声によって彼の直接の指揮下に置かれるMDに搭載される形で残されたのである。

 トレーズやゼクスを始めとしたOZ所属の腕利き達との訓練により、その経験値とエレガントさを増したゼファータイプは、今再び戦場に立つ機会に巡り会ったのだ。

 

 レコンキスタの最高指揮官であるトレーズの前線への出撃は、参加している諸兵の中でも特にOZ所属の兵士の士気を大いに高めたのは言うまでもない。

 それは前線で指揮を執る七大将軍達にとっても如実にわかる変化で、彼らがパリの陥落を強く意識したのは誰にも責められないだろう。

 それが例え盟約に従って、妖魔帝国の轟雷巨烈と百鬼帝国が救援に駆け付けてきた状況でもだ。

 

 トレーズの出撃とほぼ時を同じくして、DCの背後を突いて姿を見せた百鬼帝国は百鬼百人衆が乗り込むオリジナル百鬼メカの他、量産された百鬼メカの大群が押し寄せていた。

 エリュシオンベース戦がトラウマにでもなったのか、ヒドラーの姿はない。ただその中に含まれる量産型メカ鉄甲鬼の姿が、オリジナルのメカ鉄甲鬼を開発した鉄甲鬼の逆鱗に触れた。

 彼はグレイゲッターと共に怒りを露にして白骨鬼や胡蝶鬼共々、蹴散らしに向かっている。百鬼帝国の相手ならば、これに艦隊の支援が加われば十分だ。

 

 事情が異なるのが妖魔帝国側であった。メカガンテに乗り、パリ東部方向から進撃していた轟雷巨烈はかねてからの打ち合わせ通り、ハーディアスの率いる悪霊軍団と合流する形を取った。

 これは共にオカルト的な妖魔帝国と悪霊軍団の性質によるものだ。ライディーン、サイコザマンダー、ザマンダー、νガンダム、フェブルウスからの猛攻を受けていた悪霊軍団は、得意の呪術の効果も薄くじりじりと圧し込まれていた。

 

 悪霊軍団が展開している戦域には彼らの放つ呪術が蔓延し、踏み入る者達を幻覚で惑わし、恐怖で肉体を縛る。これに対して地球連邦側はかつて妖魔帝国対策に地球中の霊能力者をかき集めた経験が活きた。

 オリジナルのダンテを相手にした時には鉄也や甲児に負担をかけてしまったが、改めて対策を練り直し、DC他、可能な限りの機体に施しうる霊的防御の付与によって呪術に対抗措置とした。

 さらに現在、地球では最高の念動力者の一人であるひびき洸、更に同じく古代ムー王家の血を引く囀晶、それに超能力者である明日香麗の存在が、呪術トラップの効果を大なり小なり減じる事に運よく成功している。

 

 とりわけハーディアス側からして厄介だったのは、呪術対策の他にもνガンダムを操るアムロの人外の操縦技術と感覚だった。

 戦域を満たす呪術の発生源である地面に描かれた魔法陣に対し、アムロは呪術の知識など欠片もないだろうに要となる部位を直感的に見抜き、ビームライフルの一射で撃ち抜いて破壊、呪術を行使しようとする戦闘獣が居れば即座に察知して撃墜と神がかった操縦でハーディアスの目論見を大いに妨害していたのである。

 

「よくもここまで俺達を追い込んだ。誉めてやろう。だが最後に戦場に立っているのは我らミケーネだ!」

 

 この時、この瞬間、ハーディアスが切り札としたのは妖魔帝国の妖術のバックアップを受けて強化した呪術だ。特別にバラオからの許しを得た轟雷巨烈がメカガンテに祭官ベロスタンを同道して、ハーディアスに加担したのである。

 

「偉大なるバラオよ、人間共に災いあれ、呪いさずけよ~!」

 

 メカガンテの艦橋でベロスタンがバラオに祈りを捧げ、彼を媒介として妖魔帝国の本拠地からバラオの魔力が放たれる。それを受けたベロスタンがハーディアスへと更に力を注ぎ込む事で、彼の呪いの力を強化するのだ。

 

「これだけではないぞ。戦場に散った我らミケーネの勇者達の怒りと恨み、存分に思い知るがいい!」

 

 このパリ近郊の戦いにおいてレコンキスタ本隊とDCによって討たれた戦闘獣達、その骸に宿る怨恨の念がハーディアスの力となって、彼の呪術を数段上のものへと引き上げる。

 呪わしい力を増すハーディアスの姿に洸やアムロが、内臓を冷たい手で掴まれるような悍ましさに襲われた瞬間、ソレは放たれた。

 ハーディアスの突き出した左手の先に何重にも紫色の魔法陣が描かれて、そこから紫色のガスのような呪いが奔出し、見ただけで精神に恐怖の牙を突き立てながらライディーンやνガンダムを飲み込まんと襲い掛かる。

 

「これはっ!?」

 

「駄目、あの気持ち悪いのは!」

 

「まずい、いくらライディーンでも」

 

 ライディーンとサイコザマンダーを操る三人が明確な脅威を感じ、全身の血が氷水に変ったような感覚に陥る中、アムロもまたアレは人間の魂さえ汚す悪意だと理解して、眉根を寄せる。

 

「ちい、サイコフレーム、やれるか!?」

 

 νガンダムの装甲の隙間から零れる翡翠の粒子が勢いを増す。人の心の力を増幅し、世界に広げるサイコミュ、それは果たしてミケーネの怨念に抗しうるか? だがそれよりも早く動いたモノがあった。

 フェブルウスだ。SPIGOTを展開しながら、ライディーンやνガンダムの盾となって膨れ上がったカースの奔流を真っ向から受け止める。

 

「それはダメ!」

 

「皆はやらせないよ!」

 

「よせ、二人とも! 君達の心が持たないぞ!」

 

 呪いの奔流を受け止めるフェブルウスの姿に晶が小さな悲鳴を上げ、アムロは即座にフィン・ファンネルを動かして、ハーディアスの排除に動く。

 だが要たる術士の存在が重要である事など、ハーディアスが誰よりも知悉している。彼の周囲を残る悪霊型戦闘獣や巨烈獣、化石獣が取り囲んで分厚い防衛線を再構築済みだ。

 

「ははははは、そやつらの心が腐れ果て、魂が砕ければ次は貴様らだ。自分達の番が来るのを指を咥えて待っているがいい!」

 

 ハーディアスの哄笑にシュメシとヘマーの苦しむ声が重なる。

 

「ううううううう、僕達の心に入ってくる!」

 

「痛み、苦しみ、憎しみ、あああああ!?」

 

 いかに歴戦の猛者であろうと心ばかりは容易に鍛えられない。ましてや双子らは人間として生まれ変わってから十年も経っていない。その心は柔らかく脆い。双子とフェブルウスの心が崩壊するまで、さしたる時間はかからないだろう。

 双子とフェブルウスが……至高神ソルの生まれ変わりでさえなかったら。

 

「あああああああ!?」

 

 双子の重なる悲鳴にハーディアスが喜びの表情を浮かべ、直後に呪いの奔流を介してハーディアスは双子とフェブルウスの魂に触れてしまった。そう触れるものに絶望を齎してきた『黒の英知』そのものと言える彼らに。

 

「あ あ あ  あ   あ    あ         あ?」

 

 ハーディアスは見た。

 数多の戦場で戦うマジンガーZやグレートマジンガー。ダブルマジンガーと共に闘う見知ったスーパーロボットに見知らぬスーパーロボット。

 見たことのあるガンダムが居る。見たことのないガンダムが居る。

 月光の翼持つ蝶の如き白いMSが文明を崩壊させた。

 月を背に輝くXを背負ったガンダムがコロニーを吹き飛ばした。

 極寒の地獄を齎す黒い悪魔と灼熱する白いオーバーマンが対峙している。

 地球に落とされんとする要塞を巡ってνガンダムとサザビーが死闘を演じている。

 月に建設されたスカルムーン基地に数多の異星人達が集い、地球人に悪意の牙を剥く。

 

 蠢く金属、堕ちた天翅、星を渡る者達、螺旋の戦士、黒いメガデウス、黒歴史……。

 いくつもの星が砕け、いくつもの太陽が死に、いくつもの銀河が消滅して行く。延々と繰り広げられる破界と再世、存在と消滅、生と死。

 輝くゼウス、闇の帝王の如きハーデス、ブラックホールの化身たる宇宙魔王、悪意の化身ズール皇帝、ゴッドマーズ、ゲッター艦隊、インベーダー、宇宙怪獣、太陽の使者鉄人28号、太陽の翼アクエリオン、銀河を揺るがす歌、熱気バサラ!

 数えきれない光景が、言葉が、情報が、ハーディアスの精神を蹂躙した。

 

「や、やめてくれえ!? もう、もう無理だ、これ以上はああああああ!!!」

 

 御使い。

 カオスコスモス。

 スフィア。

 聖戦。

 黒の英知。

 メトロポリス。

 オリジン・ロー。

 渚カヲル、ゼウス、不動GEN、ジ・エーデル・ベルナル、宇宙魔王、ズール皇帝、ハーデス、正しくシンカしたものと歪んだシンカを迎えたもの。プラスとマイナス、正と負の力。

 

「そ、そうか、シンカとは、シンカの意味、ケモノノチ、ミズノマジワリ、カゼノユキサキ、ヒノブンメイ、タイヨウノカガヤキ、ゼットノシュウキョク。ああ! 闇の帝王様、奴に、奴に触れてはなりません!」

 

 ハーディアスは魂の砕け散るその寸前に見た。星々をも上回る光り輝く巨体。大きく広げられた翼、神々しくも禍々しく、光り輝きながら昏い闇を宿す矛盾したその姿!

 

 

『ミ』

 

 

『タ』

 

 

『ナ』

 

 

 ソレが意志を発した。声だったのかそれとも思念だったのか、ハーディアスには分からない。だが銀河を揺るがすほどの力を秘めた意思に、ハーディアスの魂は決定的な破滅を迎えた。

 

「し、至高の神、全宇宙の因果を超越した、怪物、至高神Z、違う、チガウちがuお、まえ、は至高神ソル!!!! ううう、ひ、ひひひひ、ひゃいははははははははは!?」

 

 至高神ソルが観測し続けた膨大な多元宇宙の記録を刹那よりも短い時間の中で流し込まれ、ついにハーディアスの魂は耐え切れずに発狂し、砕けた。その彼の体にνガンダムの放ったビームが立て続けに命中し――

 

「ゴッド・アルファアア! ラァァアアイ!!」

 

 動きを止めたハーディアスにライディーンの放った念動光線ゴッド・アルファが直撃し、哀れな悪霊将軍の全身を破壊して苦しみを終わらせたのは、せめてもの救いであったかもしれない。

 

「あああああああ!!」

 

「ベロスタン、どうした!?」

 

「ば、バラオざまぁああ、おだずげぐださいぃイ…………」

 

 そして呪術を介して至高神ソルの膨大な記憶とそこに含まれる数多の絶望と恐怖の影響を受けたのは、ハーディアスばかりではない。

 ハーディアスをバックアップしていたベロスタンもまた、その影響を受けて九穴から悪魔人の血を吹き出してぶっ倒れていたのである。化石獣を生み出すのに貴重な人材であるベロスタンの瀕死の有り様に、妖魔帝国側もまた動揺に見舞われた。

 ハーディアスの爆散と共に呪術は効果を失い、呪いを受け止めていたフェブルウスは脱力した様子でゆっくりと降下して地面に着地する。その傍らに二機のサイコザマンダーが寄り添った。

 

「シュメシ君、ヘマーちゃん、大丈夫?」

 

 双子を案じる晶にフェブルウスから弱弱しい声が返ってくる。幸いその間は神宮寺とマリのザマンダーがカバーに入ってくれている。

 

「う~ん、頭の中をかき混ぜられた感じ? うん、深呼吸をしたら楽になったよ。ヘマーは大丈夫?」

 

「ふみゅう。……ん、ん~、だいじょうぶ~。あのね、うん、本当に危なくなる前になんとかなった感じかなあ。私もシュメシもフェブルウスも、大丈夫だよ」

 

「そうだね、まだまだ戦えるよ。元気印百倍!」

 

 ムン! と力こぶを作るようなポーズをフェブルウスが取り、二人と一機は健在ぶりをアピールして見せる。二人の声から判断するに大丈夫そうではある。

 ハーディアスの完全撃破を確認したアムロと洸も一旦、フェブルウスの周りにまで下がってこちらの面子では最年少の少年少女を案じる。

 

「二人とも無理をしてはいけないぞ。俺達の目標である悪霊将軍の撃破には成功した。このまま一旦ハガネに戻っても支障はない」

 

「ああ。戦場の嫌な空気は消えているし、それにメカガンテも下がる動きを見せているから、俺とライディーンに任せてくれていいんだぞ」

 

「大丈夫! 心配しないで。初めて精神攻撃をされたから驚いただけで、僕達はまだ戦えるから。それにこのまま下がっちゃったら、申し訳なくなっちゃうもの」

 

「……分かった。だが少しでも不調を感じたらすぐに艦に戻るんだ。これを約束できるのなら、二人の言うことを信じよう」

 

 厳しいものを滲ませるアムロの声に双子達は素直に従った。

 

「はい、アムロ大尉の言う通りにします。ね、シュメシ」

 

「はい、ヘマーと同じく調子が悪かったらすぐに報告すると約束します」

 

「くれぐれも約束を破るんじゃないぞ。約束は守る為にするんだ」

 

 双子の状態を案ずる気持ちを残しながら、アムロは戦意を喪失している悪霊型戦闘獣の残存部隊とひどく混乱している様子の妖魔帝国へと緑色に輝く愛機を走らせた。

 洸や神宮寺達もなるべく早く敵を排除する方が、双子らの安全と本作戦の目的に叶うと判断し、再び機体を敵部隊へと向かわせる。

 

 フェブルウスも再びふわりと空に浮かび上がり、右肩のガナリー・カーバーと左肩のライアット・ジャレンチを手に取り、それから背中のSPIGOTを展開する。

 この時、これまで精々がスフィア一個分のエネルギーしか有さなかったフェブルウスは、そのエネルギー量を格段に跳ね上げていた。

 

「ねえ、ヘマー。思い出しちゃったね」

 

「うん。全部、ね。だからはっきりとわかったよ。あの偽物のイングラムは」

 

「僕達のソルとしての力を、機能を狙っている」

 

「そう、彼からも、あの黒い機体からも、因果律を操作する力を感じた。私達の至高神の力を手に入れて、その機能を更に高めるつもりなんだ、きっと」

 

「ますます負けられない理由が増えたね。もう僕達はソルじゃない。お父さんとお母さんの子供なんだ。僕達は人間としてこの限りある命を生き抜く」

 

「ええ。この世界にZ-BLUEは居ないけれど、彼らが私達の創造主の過ちを止めてくれたように、私達もこの地球を守るわ。絶対に!」

 

 シュメシ、ヘマー、フェブルウスが至高神ソルとしての記憶を取り戻したことにより、彼らは実にスフィア四つ分の力を取り戻していた。一つでも主人公格のスーパーロボットに匹敵する力が単純計算で四倍だ。

 ハーディアスと妖魔帝国の必勝の策は、眠っていた人造神の覚醒を促すというとんでもない裏目に出たのだった。

 

<続>

 

■シュメシ、ヘマー、フェブルウスが至高神ソルの記憶を完全に取り戻しました。

■悪霊将軍ハーディアスが退場しました。お疲れさまでした。

■ヘパイストスラボが解禁されました。

 

◇ヘパイストスラボについて。パンドラボックスに記された多元世界の兵器を資金を投入して開発する事で、次のインターミッションで入手できます。

今回のラインナップは以下の通りです。ヘイデスショップと併用して自軍の戦力を整えましょう!

 

〇ストライクダガー(ガンダムSEED 5000

〇メビウス・ゼロ(ガンダムSEED) 4500

〇ジン(ガンダムSEED)      5000

〇シグー(ガンダムSEED)     5500

〇ドートレス(ガンダムX)     5000

〇セプテム(ガンダムX)      5000

〇ウァッド(∀ガンダム) 3000

〇カプル(∀ガンダム) 3500

〇パンサー(キングゲイナー) 3000

〇ドゴッゾ(キングゲイナー) 3000

〇VF-1バルキリーA型(マクロス) 6000

 




地球の資源についてですが、αシリーズで太陽系の開拓途中にも関わらず銀河中心殴り込み艦隊を編成出来ていたので、この地球にもそれくらいの資源があるものと仮定しています。まだまだ余裕ですね!
 エルトリウム、エクセリオン含めて総数八千七百隻の大艦隊ですからね。作中世界ではそこまでの艦隊はまだまだなので。エウレカセブンの世界でも万単位の艦隊があるようですし。
シャドウセイバーズはもう一つの戦場で頑張り中です。

◇ヘパイストスラボの設定を【一つ】から【資金】式に変更しました。


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第五十八話 流石にプレイヤー部隊の機体数が多すぎでは?

エゥーゴ組にエンドラが加わったのをなかったことにしました。機体とパイロットだけ合流に修正です。


 地下に広がるミケーネ帝国の最奥にて、帝国の支配者たる暗黒の主、赤き地獄の炎たる闇の帝王は、腹心の部下である暗黒大将軍とその配下達が戦うパリ近郊から発せられた波動を察知し、誰に聞かせることもなく呟いた。

 それは並行世界の彼が冥府の神ハーデスとして、ソレ(・・)と関わっていたからかもしれない。

 

「ぬう? この波動は・・・・・・どうやら異物が混じっているようだな」

 

 青い海の中、人の手と目の届かぬ未知の領域に存在する妖魔島で、巨烈獣よりも巨大な上半身のみを晒した姿の妖魔大帝バラオは、海を隔てた遠い大陸の地で行われている激戦の最中で起きた変化を、配下たるベロスタンを介して感じ取っていた。

 ベロスタンを経由してハーディアスに与えていた妖力が突如として弾き返され、ハーディアスは魂のレベルで発狂し、ベロスタンは呪詛返しによって瀕死に追い込まれている。

 バラオにも強烈な次元力のフィードバックが襲い掛かってきたが、咄嗟に展開した妖力の結界が妖魔大帝の肉体と魂を守り、事なきを得ていた。

 

「ムートロンとは別種だが、なんたる凄まじさ。敵はライディーンのみにあらずか」

 

 異なる次元であるムゲ宇宙にて配下の三将軍の戦勝の報せを城で待つムゲ帝王もまた、人造の神たる至高神ソルの覚醒を感知した存在の一人だった。

 とある宇宙では負の無限力の一柱、またあるいは黒の英知に触れた者の一人でありズール皇帝と並ぶ暗黒の王と称されたことを考えれば不思議ではない。

 

「この力……やはりあの青い星、地球は特異点と呼ぶべき場所か。ふふふ、このムゲ・ゾルバドスの新たな戦場に相応しい」

 

 そしてイングラム・プリスケンを名乗る男もまた、かつての力には程遠いものの強大な力を覚醒させ、記憶を取り戻した双子らの様子を観測して満足げに笑んでいた。

 彼もまた因果律制御に関するシステムを開発していたが、至高神ソルの生まれ変わりである双子とフェブルウスは、そのシステムの完成度を高めるのにうってつけの研究材料兼資料だった。事象制御や因果律操作の一つでもしてくれれば、なお素晴らしい。

 

「我が大望成就への道は着々と進んでいる。お前達には期待しているぞ。ソルの成れの果て共よ」

 

 

「シュメシ、一気に片付けるよ!」

 

「うん、ガナリー・カーバー砲身展開、フェブルウス、やるよ!」

 

 至高神ソルとしての記憶を取り戻した双子と一機は、文字通り跳ね上がった出力を天井知らずに上昇させて、戦場の勝敗を決定付ける一撃を繰り出そうとしていた。

 フェブルウスと共にハーディアスの呪いの奔流を受け止めて、落下していた四基のSPIGOTがフェブルウスの直上に一列に並ぶ。

 ガナリー・カーバーの砲身がSPIGOTへと向けられて、発射された最大出力のビームがSPIGOTを通過するたびに更にブーストされ、四基目のSPIGOTを通過した直後、無数に枝分かれしたビームが残るミケーネ、百鬼、妖魔帝国の軍団へ頭上から襲い掛かる。

 

「な、なにい、ぎゃあああ!?」

 

「いかん、避けろぉおぉ!」

 

「も、もういやだヴァっ!?!?」

 

「あびゃああ!」

 

「たわばっ!?」

 

 エリュシオンベース防衛戦でデスザウラーが見せた拡散荷電粒子砲を彷彿とさせる一撃は、敵味方を識別するMAP兵器と化して数十の敵機を一度に排除してのける。

 それだけの大出力砲撃を放った直後にも関わらず、パワーダウンの様子を見せないフェブルウスは、妖魔軍団の旗艦メカガンテを目指して一直線に突っ込んだ!

 メカガンテの艦橋では九穴から血を噴いて倒れたベロスタンに動揺した轟雷巨烈も、こちらの首を狙って猛烈な勢いで接近してくるフェブルウスに注目せざるを得ない。轟雷巨烈は、配下の巨烈獣と化石獣に陣形の再構築を手早く指示した。

 

「各艦は本艦の盾になれ。化石獣共は奴に体当たりしてでも止めろ! 巨烈獣は奴が足を止めたところに総攻撃だ。本艦は全力で戦域を離脱! この目で見た奴の力をバラオ様にご報告申し上げなければならん!」

 

 なりふりを構わぬ轟雷巨烈の指示に妖魔軍団が躊躇なく従うその真っただ中へ、フェブルウスは一切の躊躇なく突っ込む。その全身の装甲からは炎のような膨大なエネルギーがあふれ出ている。

 眼前に立ち塞がる量産型の化石獣・巨烈獣軍団にヘマーが燃える闘志を宿した瞳を向けて、その華奢な喉奥からあらん限りの力を込めて叫ぶ。

 

「ペイン・シャウター!!」

 

 その瞬間、フェブルウスの全身から全方位へと向けて膨大な力が衝撃波となって放出される。かつて“傷だらけの獅子”のスフィアを搭載したロボット・ガンレオンが用いた武装の一つを、再現したものである。

 ガンレオンがこれを使用する際にはパイロットに尋常ではない激痛が走るのだが、スフィアそのものである双子とフェブルウスには、そういった負担は一切ない。ガンレオンのパイロットであるランドが知ったなら、どう反応しただろう。

 

 フェブルウスの眼前に十重二十重と壁を作った化石獣達、更に背後に回り込もうとしていた生き残りの戦闘獣達は、包囲が完成する直前に放たれたペイン・シャウターの直撃を受けて、次々と肉体を砕かれて爆散して行く。

 ほんの数分前と比べて出力が四倍になったなどと知らぬ彼らにしてみれば、とんでもない災難である。

 フェブルウスの異常なパワーアップは共に闘っているアムロや洸達にも驚きを齎したが、それ以上に双子とフェブルウスの気配が変化した事が彼らには気掛かりだった。

 

「アムロさん、あの子達のこの感じ、ライディーンも反応しています。大丈夫なんでしょうか?」

 

「ああ、君達も感じたか。ハーディアスの一撃を受け止めた時に憔悴した様子だったが、彼女達の中の何かを目覚めさせたのかもしれない」

 

 元々双子とフェブルウスの出自はアムロらにしてもすべてが開示されたわけではなく、謎が多く秘められている。

 知っているのは少なくとも総帥と所長夫妻が我が子同然に愛している事、異常な成長速度の為、寿命が短いと推測されている事、謎の動力で動くスーパーロボットである事、双子は実年齢相応の無邪気な子供である事、端的に挙げればその程度だ。

 だがアムロや洸、晶に麗も感じていた。双子とフェブルウスが揃って発する気配は、力強くそれでいて穏やかなものだ。太陽を思わせるほど強大でありながら、決してこちらを焼く事のない優しいぬくもり。

 

「どうやら俺が思った以上に複雑な事情が裏にあるらしい。貴方はそれを理解しているのか、ヘイデス総帥」

 

 アムロは突出してきたガンテをビームライフルにビームキャノン、フィン・ファンネルの集中砲火で穴だらけにしながら、ヘイデスへの疑念を口にした。

 ヘイデスからしたら“知っていますけど? お陰で胃を痛めましたけど!? 今となっては可愛い我が子達ですけどね!”と逆ギレ気味に答えただろう。

 しかし、アムロもアムロである。フル・サイコフレームの影響か、明らかにカタログを大幅に超えた出力のビームを放ち、推進剤の消耗を上回る動きを見せ、慣性の法則や重力を無視しがちなのだから。

 

 デススティンガーの奇襲とフェブルウスのMAP兵器の使用により、妖魔帝国と百鬼帝国の増援を得てもなお戦線の維持が困難となったミケーネ帝国であったが、更なる凶報が舞い込んだ。

 レコンキスタ本隊最高司令官トレーズ・クシュリナーダみずからが先頭に立っての全力攻勢である。

 トレーズのトールギスⅡには一糸乱れぬ連携でゼファータイプのテウルギスト十二機が続き、一年戦争から共に闘い続けたベテランもこうは、と思わせる戦いぶりを見せている。

 

 MDを好まないトレーズがゼファータイプとはいえMDを重用する事にOZ内部でも疑問の声が上がったが、DCでも多大な活躍を見せるゼファータイプである事、またエース級の技量は確かであったから深く追及されることはなかった。

 全十二機のゼファータイプは、アーサー王の率いた円卓の騎士やシャルルマーニュ十二勇士など古今東西の十二という数字に縁のある英雄達の名前が候補に挙げられていた。

 補給と修理を終えたヴァルダーのダークトールギスⅡと腹心の姉妹を含む部隊も再び前線に出撃し、彼らを抑えるべく出撃したアンゴラスやスカラベス、ドレイドウら三将軍とその軍団は勢いを止められず、その数を見る見るうちに減らしている。

 

 もはや進退は窮まった。かくなる上は一体でも多くの兵士を逃し、後のミケーネ帝国の反撃の為の戦力を温存するべきだと暗黒大将軍は早々に判断していた。

 殿となって自らの首をもって敵を引き付け、部下を逃がす覚悟も彼にはあった。だが、それを偉大なる勇者の激烈な猛攻の数々が許さない。マジンガー、それはもはやミケーネにとって忌み名に等しい名前となりつつあった。

 

「ダークネスハリケーン!」

 

「グレートタイフーン!」

 

 対峙する両者の放った竜巻がぶつかり合い、周囲の土砂を巻き上げて頭上の空をもかき回す局所的な天災と化している。周囲の戦闘獣は甲児とマジンガーZやダイアナンA、ビューナスA、ボスボロット、グレンダイザーチームが一手に引き受けている。

 吹き荒れる破壊の嵐の最中、鉄也はわずかな隙も好機も見逃しはない。この世で最もグレートマジンガーの操縦に長けた男は、偉大な勇者を自分の肉体も同然に動かして見せる。

 

「くらえ、ネーブルミサイル!」

 

 グレートマジンガーの腹部から、内部製造の大型ミサイルが驚くほどの連射速度で発射される。一発一発がMSはおろか戦闘獣ですら破壊する破壊力だ。それを暗黒大将軍はダークサーベルの一閃から放った剣圧によって、空中で粉砕してみせる。

 

「小細工がこの俺に通じるものか!」

 

「百も承知だ!」

 

 ネーブルミサイルの発射と同時に地を蹴り、間合いを詰めていたグレートマジンガーがネーブルミサイルの爆炎の中から姿を見せて、暗黒大将軍の左頸部を狙ってマジンガーブレードを叩きつける。

 易々と首を斬られる暗黒大将軍ではない。ダークサーベルがマジンガーブレードを受け止め、両者の激突によって迸った衝撃波が大気を揺るがし、大地を砕いた。余波一つで並みの機動兵器など破壊されかねない戦闘領域が、そこに存在している。

 

 音さえも置き去りにして二機の間に無数の剣華が咲いては散る。

 十合、二十合と刃を重ねる数が増すにつれて精神的にじりじりと追い詰められているのは、暗黒大将軍であった。

 彼が宿敵を相手に激戦を続ければ続けるほど、配下の戦闘獣達は数を減らして被害が広がっている。対する鉄也はここでミケーネの大幹部である暗黒大将軍の首を上げれば、一気に対ミケーネ戦において優位に働くと気炎を吐いている。

 

「ドリルプレッシャーパンチ!」

 

 グレートマジンガーの空いている左腕から螺旋状に刃が飛び出し、高速で回転し始める。本来ならそのまま腕を射出するが、鉄也は接続したまま暗黒大将軍を殴りつけた。

 これを咄嗟に左掌で受け止めたのは、流石の反応速度だったが、鉄也はそこまでを読んでいた。強敵に対するある種の信用と言えるかもしれない。

 

「お前ならそうすると思っていたぜ! 左腕、貰った!」

 

 暗黒大将軍が受け止めるのを待ってから発射されたドリルプレッシャーパンチは、そのまま暗黒大将軍の左腕を貫き、指先から肘までを粉砕した。

 ばらばらと暗黒大将軍の左腕の部品が宙を舞う中、痛覚を遮断した暗黒大将軍は自分と同じく隻腕状態のグレートマジンガーの腹を全力で蹴り飛ばす。

 

「ぐううう!?」

 

「砕け散れい!」

 

 さらに追撃として暗黒大将軍から放たれる超破壊光線を、鉄也は上空に飛び上がって回避し、ネーブルミサイルの連射で返礼する。

 

「ネーブルミサイル、乱れ撃ちだ!」

 

「ぐぐううう!」

 

 暗黒大将軍の回避行動を予測し、広範囲に発射されたネーブルミサイルの絨毯爆撃の中で、暗黒大将軍は直撃こそ避けたものの周囲から襲い掛かってくる爆炎や土砂をマントで防ぐ。

 

(おのれ、グレートマジンガー、おのれ、剣鉄也!)

 

「ここがお前の死に場所だ、暗黒大将軍!」

 

 空中で射出した左腕とドッキングしたグレートマジンガーが、スクランブルダッシュから火を噴いて加速し、一気に暗黒大将軍を目掛けて降下する!

 

「俺の命が尽きるともミケーネ帝国の火は絶えん! グレートマジンガー、貴様の首を貰うぞ!」

 

 左腕を破壊された不利を感じさせぬ、不退転の気迫を滲ませる暗黒大将軍は、まさに追い詰められた獣と死地に勝機を見出した武人の気迫が合わさり、ひと際巨大に見えるほどだった。

 しかし暗黒大将軍の気迫は、彼らの足元の荒れ切った地面の中から現れた巨大な物体によって無駄に終わった。

 

 暗黒大将軍を巻き込んで地面を吹き飛ばし、姿を見せたのはデススティンガーよりも更に巨大な全長630メートルに達する無敵要塞デモニカ。ミケーネ帝国の誇る万能の移動要塞である。

 気の抜ける、良く分からない生き物の顔がついた巨大要塞は、デスザウラーやハガネの主砲を食らわないように高度を低く保ちながら、超合金ニューZすら破壊するミサイルと各部の大砲を乱射し、敵を寄せ付けない。

 

「暗黒大将軍よ! このデモニカに乗り込め。急ぎこの戦場から撤退するぞ!」

 

 デモニカの艦橋に立つ巨大な人影の指示に、暗黒大将軍はわずかな逡巡を見せた。命の捨て場所と覚悟を決めていた事、残っている他の部下達を置いて行ってしまう事への躊躇である。

 それを見て取ったデモニカの指揮官は、低く凍えた声で言葉を続けた。アルゴス長官やゴーゴン大公ではない。だが漏れ聞こえるその声に、マジンガーZの兜甲児はまさか、とコックピットで一言漏らしていた。

 

「貴様の命は闇の帝王様のもの。これは闇の帝王様の御下命と心得るがいい」

 

「ならば従う以外に道はないか。剣鉄也、勝負を預けるぞ!」

 

「待て、暗黒大将軍!」

 

 この時、数隻のデモニカが地中から姿を見せて、既に全体で二十パーセントを下回っていたミケーネの生き残り達を回収し、死に物狂いで地中に潜り直して戦場から離脱せんとしていた。

 デモニカの這い出てきた穴とデモニカのカタパルトからは無数の機械獣が姿を見せて、追撃を仕掛けようとするダブルマジンガーを筆頭とするスーパーロボット軍団の足止めを狙う。

 

「Dr.ヘルの遺産か?」

 

 疑問を抱きながらも甲児が飛びかかってくるガラダK7にマジンガーZの鉄拳を叩きつけ、鎌の生えた髑髏の頭部を粉砕した瞬間、ガラダK7の体内に仕掛けられていた自爆装置が作動し、マジンガーZを巻き込んで盛大に爆発した。

 これはガラダK7ばかりでなく一定のダメージを受けた機体や、自ら組み付いてきた機械獣が次々と自爆していったのだ。最初から足止めだけを目的に使い捨てを前提とした機械獣の運用に、さしものDCも足を止められてしまう。

 

 妖魔帝国軍と百鬼帝国軍もまたDCの反撃に晒されて、ズタボロになりながら逃げだしていた。レコンキスタ本隊とDCも可能な限りこれを追撃して撃墜数を増やしたが、轟雷巨烈や暗黒大将軍を逃してしまった。

 とはいえパリ近郊で行われていた決戦は、DC参入からものの数時間で勝敗が決し、地球人類はミケーネに奪われたパリの奪還に成功したのは間違いなかった。

 

 勝利こそしたもののあまりに膨大なリソースを割いて行われたパリ奪還作戦の終了後、レコンキスタ本隊に逃げた三帝国に追撃を仕掛ける余裕はなく、その後の後始末に奔走されることとなる。

 そんな中で獅子奮迅の活躍を見せたマジンガーZの兜甲児は、帰艦して休息を取る中、あのデモニカという大型艦から聞こえてきた声がどうしても耳から離れなかった。

 

「まさか、まさか生きているのか、Dr.ヘル?」

 

 ヘイデス辺りは『ああ、地獄大元帥ね』で済ませてしまいそうだ。スパロボプレイヤーだとね、すっかり慣れちゃっているから仕方ないね。

 

 

 オペレーション・レコンキスタの目標はパリ奪還とサンクキングダム王国首都ならびに囚われたリリーナ・ピースクラフト女王の奪還と解放である。

 サンクキングダム奪還作戦にはゼクス・マーキスを含むOZと連邦軍欧州方面軍で構成される部隊が向かっており、サンクキングダムに集結したムゲ・ゾルバドス帝国の大軍団を相手に熾烈な戦いを繰り広げている。

 

 パリ奪還さるの報せはサンクキングダム奪還部隊の士気を大いに高めて、サンクキングダム首都を守るムゲの大部隊との戦いは激化の一途を辿っている。

 レコンキスタ本隊は、パリ奪還後に部隊の再編に追われてすぐに戦力を抽出してサンクキングダム奪還部隊にすぐさま増援を送る事は叶わずにいた。

 DCにしてもユーラシア大陸を戦い続けながら横断した結果、艦艇と機動兵器、パイロットにメカニック、クルーとあらゆる人材が疲労を溜め込んでいる。

 

 三将軍を筆頭に大部隊を抱えるムゲを相手取るのに、休息を取らずに激戦を重ねるのはいかに無敵のスーパーロボット軍団でも負担が大きいとし、一日の休息が命じられていた。

 その代わりというわけではないが、サンクキングダム奪還部隊には多くの特殊部隊が支援に動いており、首都近郊に設けられたキャンプにもその特殊部隊の一つが腰を据えていた。

 

 野戦用の防弾ジャケットを纏った縦ロール髪の女性と金髪の端正な顔立ちの青年とが、これからの動きについて打ち合わせをしていた。

 女性はサリィ・ポォ、青年は黒騎士隊というゲリラ部隊を率いるアラン・イゴールだ。オペレーション・レコンキスタで派手に戦うその裏側で、二人は戦線を支えている重要な裏方だ。

 

「では予定通りに援軍が来るのね?」

 

 とサリィ・ポォ。サンクキングダム奪還部隊が全戦力を投じて首都奪還に挑む直前の為、キャンプから撤収する用意を進めている中での会話だ。

 

「そうだ。レコンキスタ本隊とDC本隊はまだパリから動けずにいるが、宇宙に残っていたDCの別動隊が作戦時間中に降下してくる予定だ」

 

「DCね。噂じゃコロニーのガンダムも参加しているっていう特殊部隊か……」

 

「含むところのある声だな。知り合いか、それとも仇か?」

 

「少なくとも仇ではないわね。それとシャドウセイバーズを始めとした特殊部隊も動くのでしょう? そうなると首都が灰になってしまわないか、それも心配だわ」

 

「特にシャドウセイバーズは複数のスーパーロボットを運用している部隊だからな。ムゲの大部隊を相手にするのには心強いが、戦場は相当荒れるだろう」

 

「そう。完全平和主義、今の時代には夢物語で終わるのかしら」

 

「さあな。平和が尊い事は俺にも分かるが、夢で終わらせるか実現させるかはリリーナ女王次第だろう」

 

「そうね。平和を勝ち取る為にも今は戦うしかない時代だわ」

 

「そういう事だ。さあ俺達も引き上げるぞ。戦闘が始まる前の仕込みは終わった。次は戦闘が始まってからの仕事が俺達を待っている」

 

「はいはい。分かっているわ」

 

 連邦軍に味方するゲリラ部隊が動きを見せていた頃、サンクキングダム王城の一角では幽閉されたリリーナが、今は静かな郊外を幽閉された一室のテラスから眺めていた。

 父ドーリアンがバームとの会談の際に瀕死の重傷を負って以来、自分が滅びたサンクキングダム王国の姫と知ってから、リリーナはサンクキングダム王国の唱えた完全平和主義を求めて王国を再興するに至った。

 

 十代半ばの少女がかつての王国の家臣や支援者の助けがあったとはいえ、亡国を再興して見せたのだからリリーナという少女の高いカリスマ性と手腕の凄まじさが窺い知れる。

 地球連邦がサンクキングダム王国の復興を認めた事やヘイデスが色々と悩みながらも大きな支援を決めたのも、少なからず寄与していただろう。

 

 ヘイデスに限って言えば、このような星間規模の戦乱の時代だからこそ、リリーナと彼女の唱える完全平和主義は存在するだけでも価値があるとそう信じたからだ。

 部屋にはリリーナ以外にも留学してきたデルマイユ公の孫娘、ドロシー・カタロニアの姿もあった。特徴的な眉とゼロシステムを使ってMDを指揮する才能を持つ傑物だ。

 

「静かですわね、リリーナ様。きっと嵐の前の静けさだわ」

 

「嵐の前……。さらに激しい戦いがこの地で行われようとしている。完全平和主義を謳ったこの国で」

 

「だってムゲ・ゾルバドスやミケーネ、百鬼からすれば、サンクキングダムも他の国も同じ人間に括られてしまいますもの」

 

「主義主張など関係なく、淘汰し支配する対象でしかないと?」

 

「だってそうでしょう? 皆殺しにされるか、奴隷として支配されるか。彼らの行動や主張を考えれば、彼らが私達人類にする事はその二つです。そんな相手の思想なんて彼らには関係がないのですわ」

 

「興味がない。どうでもよい。その部類なのですね。ですが、それでも私は話し合う余地を諦めたくはありません」

 

「ふふ、それでこそリリーナ様。力をもって野望を成そうとする方々に言葉が意味を持つかしら?」

 

 リリーナは口を閉ざして、窓の向こうに見える灰色の空を見上げた。

 

(ヒイロ、今も貴方はどこかで戦っているのでしょうか。私も、私の出来る戦いをします。銃を握らない私の戦いを)

 

■共通ルート 第三十六話 戦火のサンクキングダム

 

 パリ奪還の翌日、太陽が昇る前の薄闇に包まれたサンクキングダム首都郊外で、決戦の火蓋を切る火砲が放たれた。

 数十を数えるムゲ戦艦に生き物めいた戦闘空母数隻からなる艦隊が構築した陣形に、複数の陸上戦艦と空中戦艦からなるサンクキングダム奪還部隊の艦隊から、無数のミサイルと砲弾が発射されたのだ。

 

 散々地球連邦軍とやり合ったムゲ側は、これがただの挨拶程度であることを知悉している。本命は高性能化著しい機動兵器部隊による突撃だ。

 しかるに艦隊からの飽和ミサイル攻撃の迎撃こそ機能していたものの、一部のムゲ兵士達の動きは鈍かった。

 

 事前に潜入していた黒騎士隊やサリィらといった特殊部隊が、連日連夜行った妨害工作により、輸送部隊の襲撃や格納庫の爆破、更には食料品や飲料水への毒物混入等を受け続けて、一部の兵士達がろくに動けない状況に追い込まれていたからだ。

 艦隊や支援兵器による薄闇を払拭する爆炎と閃光のカーテンが途切れてから、ようやく機動兵器の出番となる。

 

 ゼイ・ファーとドル・ファーの大部隊がムゲ戦艦から出撃して、瞬く間に首都近郊を埋め尽くす。

 これに対して連邦側もはるか地平線に覗く陸上戦艦や空中艦隊から、ゼクスのトールギスⅢやノインのヴァイエイト、オットーのメリクリウスを筆頭とした機動兵器部隊が燃えるような士気と共に姿を見せる。

 

 モニター越しにもはっきりと分かる連邦軍の士気の高さと決戦を意識した攻勢ぶりに、デスガイヤー、ヘルマット、ギルドロームら三将軍もここで奴らを殲滅すれば欧州の支配に大きく進むと気合を入れ直した。

 強敵との闘争を好むデスガイヤーは愛機ザン・ガイオーに乗り込み、人の心を操る精神攻撃を得意とするギルドロームは乗機ギルバウアーへ、そしてヘルマットはムゲ戦闘空母の艦橋で手ぐすねを引いて戦いを待つ。

 両軍の緊張と高揚が最高潮に達したその時に、彼らは大気圏を降下しながらやってきた。

 DC別働部隊、通称エゥーゴ組!

 

 エゥーゴ関係者を中心とした構成の為、所属する機動兵器はMSばかりだが、他所の部隊では見られないような最新鋭機や扱いは難しいが高性能な機体など、高性能機が揃っている。

 指揮官であるブライト・ノア大佐のラー・カイラムを筆頭にネェル・アーガマ、ペガサスⅢ、スペース・アーク、ミノフスキークラフトを搭載したブレイウッド、ガランシェールの艦隊からは、既に可変機を筆頭とした機動兵器部隊が出撃済みだ。

 

 カミーユのZガンダムやジュドーのZZガンダム、クワトロのサザビー、シーブックのF91といったお馴染みの顔ぶれに加え、ペガサスⅢのSガンダム、ガンダムF90のミッションパックAタイプとVタイプ装備、ネオガンダム、シルエットガンダム改、ハーディガン、Gキャノン・マグナといったフォーミュラー関係者。

 それにヒイロのウイングゼロ、デュオのデスサイズヘル、カトルのサンドロック改、トロワのヘビーアームズ改、五飛のアルトロンといったコロニーのガンダム達。

 更にアクシズからの協力者であるマシュマーのハンマ・ハンマ、グレミーのバウ、プルとプルツーのキュベレイMk-Ⅱ二機、ゴットンのズサも加わっている。

 

 それにバナージ・リンクスの乗るユニコーンガンダムにジオン共和国のギルボア・サントが乗るRFザク、メタスのノウハウを組み込んだリゼル部隊の姿もある。

 そしてなによりアルベルト・ビストというアナハイムエレクトロニクスとビスト財団の関係者が、パイロット登録されてしまったガンダムXディバイダーの姿もある。

 

 部外者であり問題のある組織と繋がりのあるアルベルトに戦略兵器を搭載したMSを預ける不安から、サテライトキャノンは外されて代わりに機動力を強化するバックパックとビームマシンガン、ハモニカ砲兼シールドのディバイダー仕様となっている。

 素人である彼をフォローする為に、監視も兼ねてガランシェール隊所属のプル・トゥエルブが操縦席を増設して同乗している。

 

「どうして私がこんな戦場に出なければならんのだ!? 自慢ではないが素人だぞ、私は!」

 

 ムゲ部隊の放つ対空砲火の凄まじさに心底から恐怖を感じながら、アルベルトは本音を隠さずに叫ぶ。彼の後ろに座すプル・トゥエルブもといマリーダ・クルスは溜息を零す。

 プルツーほどではないが好戦的で気の強い彼女は、もう何度か戦闘を経験したのに変わらず弱音を零すアルベルトに、呆れを隠せない。

 自分がメインパイロットを代われれば、と何度思ったことか。それもこれも自分のキュベレイMk-Ⅱを失い、インダストリアル7でのゴタゴタで、この情けない青年と同時にガンダムXのコックピットに乗り込んでしまったせいなのだが……。

 

「うるさいぞ、おじさん。ダグザ少佐に鍛え直して貰ってもまだ足りないのか? バナージだってジュドーだって、おじさんよりも年下なのに立派に戦っているだろう? 自分だけグチグチ言っていて、恥ずかしくないのか?」

 

「分かっている、分かっているんだ、それくらい! しかしだな、マリーダ、君を含めてまだティーンの彼らが戦場に出るのはチャイルドソルジャーという問題があってだな。私の怯懦な態度とはまた別の問題なんだ」

 

「あ、誤魔化そうとしているな? そういうの、私達はすぐに分かるからな。そら、目の前に集中しなよ。ヘリコプターみたいのが来たぞ!」

 

「ええい、私は軍人ではないというのに!」

 

 先行して現地入りしているダグザ・マックールらに鍛え上げられた成果で、後年の姿よりもはるかにシュッとしたアルベルトは、なけなしの勇気を振り絞ってドル・ファーの編隊へ連射モードのビームマシンガンを撃った。

 そして発艦した部隊の中でも可変機が先行して敵艦隊中枢に切り込んでいるのだが、その中には地球突入直前の遭遇戦により、成り行きでDCに加わったタクナ・S・アンダースンとその乗機Ζ>の姿もある。

 

「Ζ>で地上戦か! 凄い弾幕だ。こんな戦場に当たり前のように突っ込んでゆくなんて、なんて部隊なんだ!」

 

 彼は大気圏外の戦闘で襲われていた貨物船から射出された脱出ポッドを回収したものの、重力に引かれて地球に降りる他なかったところ、同じく降下中であったネェル・アーガマの甲板に避難して、そのままサンクキングダム奪還戦に参加したという次第である。

 そして彼のそんな行動によって、今、ネェル・アーガマの艦内にはオードリー・バーンとメイファ・ギルボードという二人のミネバが居る事に、タクナもバナージも知る由はなかった。

 

<続>

■アルベルト・ビスト(若)が加入しました。

■マリーダ・クルス(プル・トゥエルブ)が加入しました。

■タクナ・S・アンダースンが加入しました。

■オードリーとメイファが合流しました。二人はミネバ!

 

■ガンダムXディバイダーが開発されました。

 

フル・フロンタルの扱いに今でも悩んでいます。普通にジオン共和国の軍人で仲間入りするか、敵対するか。




〇ミネバ関係ですが、それぞれ原作通りの容姿と年齢なので

メイファ(ムンクラ) > オードリー(UC) >ミネバ(ZZ)

と大中小が揃っています。年齢が異なるのは重要人物なので誕生日について欺瞞情報が流されていた、というスパロボZ(たぶん)の設定を流用しています。
三人のうち誰かが本物かもしれませんし、全員が影武者かもしれません。


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第五十九話 ムゲは宇宙統一級の超巨大勢力であってますかね? ※おまけ多め

 二話前の『ヘパイストスラボ』については資金制に変更しました。確かに図鑑を埋めるのがこれだと大変だ! と思いましたので。また、ステージが進むにつれて開発できる機体がより高性能になってゆく予定です。フリーダムとかジャスティスとか、プロヴィデンスとかガウェインとかザブングルとかウォーカーギャリアとかVF-19とか。
 ラインナップとしてはZシリーズの機体で、本作には参戦していない作品のものをメインにする予定です。



 DCの先鋒を務めるのは、可変機で構成された高速部隊だ。

 カミーユのウェイブライダー、ジュドーのGフォートレス、リョウの飛行形態のSガンダム、テックスのZプラス、ヒイロのウイングゼロ、ファとレコアのメタス改、ルーとカツのZⅡ、リディのデルタプラス、グレミーのバウ、タクナのΖ>等々。

 機種も推力もてんでバラバラな滅茶苦茶な機体構成であるが、それでも構成メンバー上位陣の技量と機体性能の高さは瞠目に値する。下位陣は初陣を終えたばかりの新人だったりするのだから、本当にピンキリが激しい。

 

「リョウさん、あんまり無茶しないでよ。地球で飛ぶの初めてでしょ?」

 

 先輩風を吹かせているのはジュドーだ。彼だって地球に降りて戦うのは初めてだが、DCに所属したのは先であるし、コロニー・シャングリラの下町育ちの彼にとって原作でヤクザの予備軍呼ばわりされたリョウは、気真面目一辺倒の軍人よりかは付き合いやすい。

 この世界ではリョウの母親が謀殺疑惑のある事故死を遂げず、ギリギリで命が助かり多少は家庭を省みるようになった影響もあって、リョウ自身原作よりかはマシな性格に落ち着いている。それでもモンシアやベイト級の問題児だが。

 

「お前だって同じだろう。ビビってションベン漏らしても笑わないでおいてやるよ!」

 

 地球の重力と大気の影響に四苦八苦しながら、リョウは悪態を吐くのは忘れずにモニターに拡大されたドル・ファーの編隊の映像に喉を鳴らした。緊張か、恐怖か、彼にも分からない。

 サンクキングダムの首都を背にして布陣するムゲ部隊に向けて、最初の一撃を放ったのは先行部隊で最大の火力を有するウイングゼロだ。ネオバード形態の機首左右に連結したツインバスターライフルの照準を正確には定めず、相手の陣形を崩す目的で放つ。

 

「目標を確認。ターゲット、非固定。発射する」

 

 最大出力ならスペースコロニーも一撃で破壊するツインバスターライフルだが、今回はサンクキングダムに被害を齎すわけにも行かず、出力はほどほどに抑えられている。

 それでさえ戦艦の主砲を思わせるビームが二十メートルに満たない機動兵器から発射されるのだから、敵対陣営からすれば極めて大きな脅威という他ない。

 

 ムゲ帝国側はビーム撹乱膜を散布していたが、それを貫いたツインバスターライフルによって少なくない数のドル・ファーとゼイ・ファーが爆発の花と変わる。ムゲ戦艦も一隻が直撃を受けて、大きな爆発の後で右舷から黒煙を噴火の勢いで噴き出し始める。

 歴戦のムゲ帝国はすぐに陣形を整え直して反撃を試みるが、そこにウイングゼロに続く高速部隊が傷口をこじ開けるようにして飛び込んでゆく。

 

 更にアディンの空戦ユニットを装備したガンダムジェミナス01やVパック、Aパック装備のF90デフ機、シド機、レイラのシルエットガンダム改、トキオのネオガンダム、ビーチャのフルアーマー百式改やエルのフルアーマーガンダムMk-Ⅱ等々が続く。

 今回、モンドとイーノは補給や救助を行う為に量産型ZZガンダムからメガライダーに機体を戻している。

 

 アディンは工業都市であるコロニーMO-Vの出身で、MO-Vで開発されたガンダムジェミナス01のパイロットを務める少年だ。

 本気でコロニーとの和平・関係改善に動き出したOZ並びにロームフェラ財団に協力する姿勢を取ったMO-Vは、宇宙での騒乱に巻き込まれてそこをエゥーゴ組が救援に駆け付けて以降、DCにアディンとプログラマーのルシエ、ジェミナス01が参加している。

 

 アディンの兄であるオデルもジェミナス02の優秀なパイロット兼技術者だが、こちらはMO-V防衛の為にコロニーに残っていた。

 ジェミナスは胴体をコアとして頭部や四肢、装備を換装する事での汎用性を重視した機体で、現在はアナハイムとサナリィの技術者達、更にヘパイストスラボの技術提供により、次々と新たな換装ユニットが完成している。

 現在装備している大気圏内用の空戦ユニットもその内の一つだ。

 

「本物の宇宙人……じゃなくって、異世界人が相手なんて、地球は宇宙よりも滅茶苦茶な事になっているんじゃないか」

 

 アディンは故郷のMO-Vでもティターンズやベガ星人やバーム星人を相手に戦ったが、この地上で闊歩している敵対勢力のバリエーションの豊富さには目の回る思いだ。

 MO-V襲撃戦ではデルマイユ公(侯?)直属のOZプライズ“星屑の三騎士(スターダストナイツ)”やDC艦隊エゥーゴ組の助力で事なきを得て、同時に世界の広さと混迷具合を知った。

 本当の意味でMO-Vを守る為に世界を知ろうとDCに同道したが、地球に降りた途端にサンクキングダム奪還作戦という大仕事に関わり、気負うところもある。

 

 それでも同年代や年下のパイロット達がガンダムを操り、ムゲを相手に臆さぬ戦いぶりを見せられて、アディンは負けられないと自らを鼓舞して操縦桿を握り直す。

 特に同年代のパイロット達の中では、OZを相手に孤軍奮闘していたというコロニーのガンダムパイロット達には、アディンとしても思うところがある。意識してしまうのも無理はなかった。

 

 因縁があると言えばアディンとは関係ないが、F90関係のサナリィからの出向者達とアナハイムから出向してきているブレイウッド組はやや気まずい雰囲気がある。

 今はシーブックがパイロットを務めているF91に酷似したシルエットガンダム改には、非合法に入手したフォーミュラー計画機のデータが盗用されており、アナハイム側にとっては内々に秘匿しなければならない代物であるからだ。

 

 盗用されたサナリィと盗用したアナハイムとなれば、それは気まずいのも当たり前である。盗用された側のサナリィにホワイトベースのクルーであり、アムロやブライトと旧知の間柄であるジョブ・ジョンが居るのも、アナハイム側の負い目や引け目を強めている一因だ。

 戦時下である事と現場スタッフに大きな罪や責任があるわけでないとして、表面上は最低限の付き合いはあるものの双方の上層部ではそうはいかないだろう。こればかりは仕方がない。

 

 本来はあくまでも実験用の機体で量産の予定も何もなかったシルエットガンダムの存在が露見し、回収の上、運用が継続されているのは、ひとえに今はティターンズに籍を置くバズ・ガレムソンとクロスボーン・バンガードのダーク・タイガー隊との不本意な交戦とそれにDCが関わったのが理由だ。

 おまけにネオガンダムの一号機をガレムソンに持ち逃げされるわ、データ盗用が明るみに出るわ、プルート財閥は次々と頭のおかしい機体を開発するわ、アルベルトは軍事機密に触れたとして拘束されるわ、とアナハイムとしては踏んだり蹴ったりである。

 

 ネオガンダムのパイロットを務めるトキオ・ランドールやシルエットガンダム改に乗っているジオン残党の少女レイラ・ラギオールらにとっては、アナハイムの椅子にふんぞり返っているような連中がどうなろうと知ったこっちゃないだろうけれど。

 いやはや、それにしても常軌を逸した機体のバリエーションの数々だ。とてもまともな思想で運用されている部隊とは思えない有り様である。

 これでは部品や推進剤、エネルギーの補充とて一苦労どころではない。強力無比な戦力である分、その節操の無さからくる補給の難しさがDC、ひいてはスパロボプレイヤー部隊の弱点の一つだろう。

 

 さて対ムゲとの戦いにおいてDCのみならず地球連邦軍を手こずらせたのは、シンプルな強さを持つデスガイヤーでも圧倒的多数による物量戦を得意とするヘルマットでもない。

 精神に干渉する特殊能力を持ち、同士討ちすら強要できるギルドロームだ。彼の精神攻撃によって幻覚を見せられ、同士討ちをさせられた兵の数は多く、これまでサンクキングダム奪還を阻んできた大きな障害である。

 

 ミケーネ帝国もギルドロームの特殊能力には手を焼き、原理は異なるが結果は似通るハーディアスと悪霊型戦闘獣軍団に対処を一任する他なかったことからも、その厄介さが分かる。

 もしフェブルウスと双子達の参戦がパリではなくサンクキングダムであったなら、発狂したのはハーディアスではなくギルドロームになっていただろう。

 

 愛機ギルバウアーに乗るギルドロームは、明らかに自分を狙った侵攻ルートを取るDC高速部隊に対し、ひび割れた肌を持つ顔に笑みを浮かべる。彼からしてみれば自ら罠に掛かりに来た獲物も同然。

 地球連邦側の有効な対策の一つとしては、ギルドロームの知覚の外から一方的に狙撃・砲撃によって抹殺する事が挙げられる。

 しかしすぐ傍にサンクキングダムの首都があり、周囲を盾となる量産機で固めたギルドロームを狙うのはあまりに難しい状況が出来上がっている。

 

「DCか、地球人共の頼みの綱だというが、貴様らも我が手の内に落ちて味方同士で殺し合うがいい、ハハハハ!」

 

 パイロットの高笑いと共にギルバウアーの腹部にある巨大な一つ目から、精神に干渉する特殊なビームが発射された。狙いはDC部隊の先頭を行くウイングゼロだ。先程のMSとは思えない火力を味方に撃たせれば、凄まじい被害を短時間で齎すのは明白。

 ギルドロームの目にはウイングゼロが一直線にサンクキングダムを目指しているのが見え、いくら速くても動きが単調ならば精神波ビームを当てるのは難しい話ではなかった。

 

 ヒイロはゼロシステムの見せた未来の通りにウイングゼロに狙いを定められたのを確認し、精神波ビームが直撃する寸前で機体をネオバードモードから変形させてこれをわざと受けた。

 ゼロシステムの見せる膨大な未来予測の中から、ギルドロームの一撃を回避する未来を選択できたにもかかわらず、ヒイロがそうしなかったのにはむろん、理由がある。

 

「さあ、お前もわしに心を操られる傀儡となれ!」

 

 精神波ビームの直撃を受けたウイングゼロが分割していたツインバスターライフルを連結するのを見て、ギルドロームは今回も自分が相手の心を見えない糸で縛って見せたと確信した。

 膨大な推進力にモノを言わせ、滞空するウイングゼロはツインバスターライフルをゆっくりと持ち上げる。そのコックピットの中で、ヒイロは撃つべき敵を狙い定めていた。

 

「ゼロ、俺に未来を見せろ」

 

 ギルバウアーの精神波ビームを受けた事で、ウイングゼロはムゲ軍団のターゲットから外れて、周囲からビームやミサイルが殺到する事もない。まさに万全の態勢でツインバスターライフルを撃てる。

 

「だが、進むべき未来は俺が選ぶ!」

 

 ヒイロはゼロシステムから強制的に流し込まれる膨大な未来予測の情報により、ギルドロームの精神干渉を強制的に上書きし、ギルドロームにロックオンした。

 どうすればギルドロームに想定できただろう。よもや操縦者を半ば洗脳するシステムが存在し、そのシステムが自分の精神干渉を上書きし、さらにそのシステムをコントロールする強靭な精神の持ち主が居るなどと。

 ましてやそれが自分の敵として現れるなどと!

 洗脳を洗脳で上書きし、かつ正気を維持する。ヒイロから事前に作戦の概要を聞いていたブライトやクワトロにしても、あまりの危険性と博打要素の大きさから、本当に実現できるかどうか半信半疑だったが……。

 

「なにっ! 貴様、わしの精神波を!?」

 

 ウイングゼロの狙いはギルバウアーに微塵の揺れもなく固定され、ジェネレーターから供給される常軌を逸したエネルギーを放出した!

 流石に最大出力ではないが機動兵器一機を消し飛ばすのに十分すぎる破壊の光は、容赦なくギルドロームをこの世から消滅させた。

 

「て、帝王様、ばんざぁああ……!?」

 

 ギルバウアーの撃墜の光景をむざむざと見せられ、指揮下にあった部隊が混乱を見せる中、カミーユとジュドーは一気に切り込む。

 特にニュータイプ能力と操縦技術に秀でた二人は、大気圏内の運用に向いているとは言い難い機体でも見事に操縦し、ドル・ファーとゼイ・ファーをロックオンする端から撃墜して行く。

 

「ヒイロ、大丈夫か? 無理なようだったら、ラー・カイラムに戻っても」

 

 ギルドロームを撃墜してから数秒、動きを見せないウイングゼロとヒイロに声を掛けたのはユニコーンとパイロットのバナージだ。

 ユニコーンガンダムは基本的に原作通りではあるが、既にジャベリンが実用化されているこの世界では、ユニコーンにもミノフスキークラフトが搭載され、自由自在に空を飛ぶことが出来る。

 

 見方を変えれば宇宙世紀120年代+クロスオーバーテクノロジーの技術で再製造されたユニコーンになるだろうか。

 ただし残念ながら∀のような縮退炉やナノスキンは未搭載だ。上手く行けば(下手をすれば?)フルスペック∀×ユニコーンの爆誕という未来もこの世界ではあり得る。

 

「問題はない。任務を継続する」

 

 ヒイロの心身を案ずるバナージに返ってきたのは、いつもと変わらぬ鋼鉄を思わせる声音だった。ウイングゼロはそのまま先行したウェイブライダーやGフォートレス、Sガンダムを追って、再加速していった。

 

「ヒイロ! 声は問題ないように聞こえたけれど、消耗していない筈はないのに……」

 

「ふん、放っておけ。なにやらサンクキングダムの女王とは学友だったとか、海で溺れていたのを助けてもらっただとか、わけのわからん噂のある奴だ。それでも何かしらかかわりがあるのだろう」

 

 ユニコーンの横にバックパックにディバイダーを接続し、推力を増したXディバイダーが並んだ。

 

「アルベルトさん」

 

 話している間もギルドローム部隊へ向けて進んでいるが、短い会話をする程度の余裕はある。アルベルトの場合は後ろのサブシートでマリーダがカバーしてくれているからだが。

 

「まあ、男という生き物には見栄がある。ヒイロもあの鉄仮面の下で見栄を張っているのかもしれないぞ」

 

「そうは見えませんね、彼の場合」

 

「ふん、トロワといい感情を押し殺し過ぎだ。思春期なぞ、彼らからはよほど縁遠いか、あるいは自ら押し殺したのかと思ってしまうわ」

 

 その点、お前はまだ健全だな、とアルベルトはモニターに小さく映るバナージを見る。そしてすぐに、自分がこの機体に乗り続ける羽目になった、叔母であるマーサ・ビスト(クソババア)を思い出して眉毛を八の字に、口をへの字に曲げた。

 ちなみに生え際は父親そっくりだぞ! バナージもいずれはそうなるかもしれない。

 

(あのババア、他人事だと思ってそのままユニコーンとバナージを監視しろだの、DCの内情を探れだの無茶を押し付けやがって! 戦闘で命を賭けるのは私なんだぞ!?)

 

 内心で怒り心頭のアルベルトだが原作小説ではマーサとキンでシンでソウでカーンな関係にあったが、この世界では特にそういう関係にはなくアルベルトの貞操は守られている。

 なんなら三十歳をこのまま迎えれば、魔法使いになれる可能性だってある。その為、マーサとは『ワンマン上司とそれにこき使われる下っ端』というのがこの世界における関係性だ。

 

 そのまま頭から湯気を噴き出しそうなくらい叔母への不満を募らせるアルベルトだったが、ゲシっとやや強めに後ろからシートを蹴られて我に返る。

 文句を言おうと振り返るよりも早く、マリーダの叱責の声がアルベルトの鼓膜を強く叩いた。

 

「おい、おじさん。余計な事を考えているだろ? あんたは本当の本当に素人に毛が生えたくらいのパイロットなんだから、目の前の戦いに集中しなきゃどうなっても知らないぞ。

 おじさんが落とされる分には自己責任だけど、あたしは巻き添えになるつもりはないんだからな。それにこの機体はとっても大事なものなんだから、人のものを預かっている自覚をキチンと持て。バナージ、お前はこういうおじさんになっちゃだめだぞ」

 

「あはは、気を付けるよ」

 

「私とバナージとの扱いの差はなんなのだ、マリーダ君!」

 

「人柄だ。そんな事も分からないのか? ほら、前からゼイ・ファー七、八、いや十機、来るぞ!」

 

「ええい、バナージ、ユニコーンに傷をつけるなよ! 最近はこんな事ばっかりだ、くそお!」

 

 半ばヤケクソになったアルベルトはビームマシンガンと胸部のマシンキャノンを撃ちまくり、バナージもまた火力を求められるこの時代でも上位の威力を誇るビームマグナムを、ゼイ・ファー部隊へと向けて撃った。

 ビームマシンガンの細かな弾丸を回避したゼイ・ファーにビームマグナムの『馬鹿じゃないの』と言いたくなるエネルギー量の弾丸が突き刺さり、更にはその余波で二機がまとめて爆砕される。

 

 ビームマシンガンで散らして動きの鈍ったところをビームマグナムで撃ち抜く。半人前の二人が宇宙でも行ってきた連携の一つだ。この逆にビームマグナムの威力で相手を委縮させ、そこにハモニカ砲を撃ちこむというパターンもある。

 まだMSに乗って間もない二人にはこれくらいのシンプルさでなければ実行できそうにもなかったし、またこれはこれで有用でもあった。

 

 そこそこの連携でなかなかの戦闘能力を発揮する二機のガンダムに、ゼイ・ファー部隊が注意を引かれる中、ユニコーンとXディバイダーの上部後方からビームが連射されて、気を取られていたゼイ・ファーが一機、二機と撃墜される。

 初心者マークの取れないバナージとアルベルトのフォローを任されたギルボアのRFザクと、地球が誇るウルトラエース・クワトロのサザビーだ。

 

「バナージ、アルベルト、その調子だ。細かいフォローはこっちでするから、目の前の敵に集中しろ」

 

「ありがとうございます、ギルボアさん」

 

 親身になって面倒を見てくれるギルボアをバナージは良く慕っていたし、アルベルトもなんだかんだで頼りにしているのは間違いない。

 

「ギルボア中尉、我々の背中は任せるぞ。本当に頼むぞ! 特にクワトロ大尉、貴官の腕には我々の命がかかっていると思っていただきたい!」

 

「ふふ、それは責任重大だな。可能な限りその責任を全うしよう。ギルボア中尉、これまで通り二人のフォローを頼む。私はアポリーとロベルトと共に敵艦を減らしてくる」

 

「了解。ご武運を、大佐」

 

「私は大尉だよ」

 

 ジオン関係者ならではのやり取りをしてから、クワトロはサザビーをアポリーとロベルトの乗っているシュツルム・ディアスの下へと向かわせた。

 フル・サイコフレーム機であるサザビーと、プライベートが充実し精神的に安定・充足、更に技量面においてもトップエース格と磨き合ってきたクワトロの組み合わせは、冗談抜きに通常のMSならば百機にも勝る戦力だ。

 長い付き合いのアポリーとロベルトの痒いところに手が届く支援があれば、クワトロの上げる戦果はさらに増すだろう。

 

 ウイングゼロによって厄介な相手だったギルドロームが排除され、混乱の隙をついて一気にムゲ防衛線を食い破る勢いがついたのを、サンクキングダム奪還部隊は見逃さない。

 ゼクスやロブ・ハーマン、カール・リヒテン・シュバルツらは、DCの進撃に歩調を合わせ、一気に決着をつけるべく部隊を進めている。

 ロブのゴジュラス・ジ・オーガを筆頭としたゴジュラス系部隊、カールのアイアンコングMk-Ⅱを筆頭としたアイアンコング系部隊、そしてゼクスのトールギスⅢを筆頭とするOZ系MS部隊は、ヘルマットの大部隊と小細工なしに正面から激突する。

 

 ムゲ・ゾルバドス帝国側にとって不利に働いたのは、地球連邦との戦端が開かれて以来、主力兵器であるゼイ・ファー、ドル・ファーが今に至るまで使い続けられており、地球連邦側にその性能が把握されている事だ。

 指揮官級の機体は新型機が姿を見せる事もあるが、戦線を支える主力兵器がちょっとしたマイナーチェンジ程度で使い続けられている為、対処法が一度確立すれば与しやすいのは言うまでもない。

 これに関しては、多種多様な新型機をバカみたいな短期間で送り出してくる地球側の方がおかしいのだけれども。

 

「コロニーのガンダム、新たな力を得たか。ノイン、オットー、我々も敵旗艦を落とす程度はやってみせるぞ!」

 

「了解しました、特佐!」

 

 メリクリウスのオットーからは従順な返答があり、ヴァイエイトのビームキャノンで敵艦に甚大な被害を与えているノインは、ゼクスの心を問うような言葉を返した。

 

「よろしいのですか、ゼクス。リリーナ様の救出の功を一番に手にしなくても?」

 

 ノインはゼクスとリリーナの関係を知る数少ない人間の一人だ。だからこそリリーナを真っ先に助け出さなくてもよいのか、と問いかける事も出来る。

 

「むろん、軍人としてリリーナ・ピースクラフト女王の救出には全力を尽くす。だが、この場では私達よりも彼らの手に委ねた方がより迅速で確実であると判断したまでだ。口惜しさがないと言えば、偽りになるがな」

 

「フ、分かりました。余計な事を聞いてしまいましたね」

 

「君にだから言ったことだ。忘れてくれ」

 

 サンクキングダム奪還部隊とぶつかり合うヘルマット将軍の部隊がジリジリと戦線を下げているのと、ギルドロームの部隊がDCに一方的に食われて瓦解し始めているのを、三将軍の一人デスガイヤーは冷徹な目で見ていた。

 機械の怪物然とした外見のザンガイオーのコックピットで、デスガイヤーはゼクスのトールギスⅢやクワトロのサザビー、ヒイロのウイングゼロなど特に目覚ましい戦いぶりを見せている機体を値踏みしている。

 

「凄まじい戦士達がこうも居るとはな。ムゲ帝王様と共に闘った日々の中でも、滅多になかったが、もっとだ。もっと俺の血を滾らせる戦士はいないのか?」

 

 デスガイヤーは命の削れる音が聞こえるような強敵を求め、戦場の隅から隅まで見回し続ける。

 ムゲ帝王へ厚い忠誠を捧げている為、これ以上、友軍が不利な状況となれば自身の欲求を抑え込んで主にギルドローム部隊への掩護に回るが、そのギリギリまでライバルを求めるのがデスガイヤーという戦士だった。

 そして彼の望みは叶えられた。ザンガイオーが戦場の南西方向から急速に接近する複数の動体反応を捉え、その中に何度も戦い最大のライバルと認めたスーパーロボットが居たのだ。

 

「はっはっはっはっは、来たか、ダンクーガ! このサンクキングダムで貴様を血祭りにあげて、ムゲ帝王様に捧げてやろう!」

 

 パリ奪還作戦終了後、ほとんどの部隊員が疲労に襲われている中、サンクキングダムを占拠するムゲ野郎をぶっ潰してやる! と気合を見せた獣戦機隊が、援軍として送り込まれたのだ。

 そして援軍はダンクーガばかりではない。無人機であるがゆえに肉体的疲労を持たないゼファーギルベイダー、更にデスザウラー、デススティンガー、そしてトレーズから指揮権を預けられたゼファーテウルギスト十二機だ。

 ゼファー達への指示はスーパーソニックトランスポーターに間借りしたテレンス博士とエリシアに委ねられ、部隊全体の指揮自体はエゥーゴ組のトップであるブライトに任せられている。

 

「ブライト大佐、獣戦機隊ならびにゼファーファントムシステム、デスザウラー、デススティンガー、テウルギスト十二勇士、ただいま戦域に到着いたしました」

 

 エリシアはラー・カイラムのブリッジに通信を繋げて、ブライトに援軍の旨を伝える。降下前に予定外の戦闘をこなし、若干の不安を覚えていたブライトだが降下後の戦闘が順調に進み、強力な援軍が到着した事に表には出さないが安堵を覚えていた。

 

「テレンス博士、エリシア女史、お久しぶりです。パリ奪還作戦の直後でお疲れのところ、感謝します。それにしてもアレが噂のデスザウラーとデススティンガーですか。データでは目にしていましたが、凄まじいインパクトですね」

 

 ブライトが引き攣ったような目で、戦い始めたデスザウラーとデススティンガーを見ながら言うのに、エリシアとテレンスは何も言えなかった。

 彼らも所長からゼファーを参考に制御システムその他を開発されたあの二機の存在は知らされていたが、実際に戦う姿を見ると数百メートル単位の巨体と機械の生物然とした外見の齎すインパクトは、予想をはるかに上回るものだった。

 正直、Dr.ヘルや恐竜帝国、ボアザンなどとの交戦経験が豊富なブライトとしては、そういった敵対勢力の繰り出してきた切り札と言われた方が納得できる。

 

「私達もトミイ氏や所長の頭の中がどうなっているのか、一度見てみたくなりましたよ。見たら見たで後悔もしそうですがね」

 

「テレンス博士の言う通りな気がしますよ。ところでそちらのテウルギストは? 確認しましたが、OZ所属の機体では?」

 

「それなんですが、我々がサンクキングダムに向かうと知ったトレーズ閣下から、直々に預けられましてね。今回の戦いが終わったらお戻ししますが、おそらくオリジナルのゼファーと行動を共にさせる事で、どんな変化が生じるのか確かめられたいのでしょう。

 それにデスザウラーとデススティンガーもゼファーの系譜に連なりますから、試金石としての意味合いもあるかもしれません」

 

「味方で居てくれるのなら頼りになります。現在、エコーズを含む特殊部隊によるリリーナ女王救出作戦を遂行中です。目下、我々の目的は陽動を兼ねた時間稼ぎです。よろしいか?」

 

「ええ、こちらもゼファー達にその旨の指示は出しています。デスザウラーとデススティンガーばかりでなく、ゼファーを乗せたギル・ベイダーも相当の怪物です。救出よりも先にムゲの部隊を壊滅させるかもしれません」

 

「時間稼ぎの筈が敵を壊滅させる。DCならやれそうですね。ただこちらは最近部隊に加わった者も多い。スーパーロボットやデスザウラー達のような規格外との共闘経験のない者が多い点が懸念と言えば懸念です」

 

「そこは我々とクワトロ大尉でカバーしましょう。幸い獣戦機隊の隊員の士気は高いです。敵将軍を引き受けてくれています。シャピロ中佐は欠席ですがね」

 

 そう肩を竦めるテレンスだが彼はその他にも、ゼファーやMDとは別に地球連邦軍がMSの完全自動兵器化を目指して開発された『発展型論理・非論理認識装置』すなわち『ALICE』を搭載したSガンダムへ小さくない興味を惹かれていた。

 これはエリシアにしても同じことで、コロニー落としを防ぐ戦いの折に、ゼファーとALICEが一瞬の交錯を果たし、ゼファーが小さいが反応を示していたからだ。同類を見つけたからか、それとも別の理由があるのか。

 二人にとって実に興味深い出来事だ。というかプロメテウスプロジェクトで拾われてから、興味深い事しか起きていないのだけれど。

 

 ムゲ・ゾルバドス帝国三将軍の内ギルドロームが討ち死にし、ヘルマットはここが勝負の決め所と一心不乱の大攻勢を仕掛けるサンクキングダム奪還部隊を相手に奮闘し、そしてデスガイヤーはダンクーガと血肉を削る戦いを繰り広げている。

 今のムゲ側でスーパーロボットを相手に単独で戦えるのは、ザンガイオーとデスガイヤー以外に存在しない。

 

「力こそ正義、そしてもっとも強き力たるムゲ・ゾルバドス帝王様こそ正義なのだ! 死ねい!」

 

「へ、だったら俺達がムゲ野郎をぶっ飛ばせば、俺達の方が正義って事だよな? そういうのはよ、負けたら途端に情けなくなる奴が言うセリフなんだぜ!」

 

 デスガイヤーの闘志に呼応するように戦うザンガイオーを相手に、断空剣を抜き放ったダンクーガもまたパイロットである忍を始めとした四人の精神を力に変えて、一歩も譲らぬ戦いを演じている。

 果たしてリリーナが救出されるのが先か、三将軍らが率いるムゲの部隊を全滅させるのが先か。それが分かるのにそう時間はかからないだろう。

 そして影に潜み、影より忍び寄り、影より出でずる刃もまた――

 

「行くぞ。我々の出番だ。シャドウセイバーズ、全機出撃せよ」

 

<続>

 

 度々話題に出てくるエゥーゴ組の大気圏突入前の戦いは、メイファを追ってきたタウ・リンの部隊との交戦についてです。エゥーゴルートだと判明するステージですね。

 別任務の帰りだったタクナがまずメイファの乗っているシャトルを守る為に戦い、そこに後からエゥーゴ組が参戦という流れです。

 

◎DC幼稚園 遠足の目的地『サンクキングダム』

・参加者一覧

・引率のおじさん テレンス ・引率のお姉さん エリシア

・園児班長:ゼファーくんちゃん

・園児:デスザウラーくんちゃん、デススティンガーくんちゃん

・OZ保育園からの特別参加園児 ゼファーテウルギストくんちゃん×12

・上記保護者トレーズお兄さん

・現地合流 ペガサスⅢ保育園 園児ALICEくんちゃん(性別:なし 菩薩)

・上記保護者リョウお兄ちゃん

 

■この世界の地球連邦の戦力について

 なんでもガンダム原作でGMⅡが一万機以上生産されていたと言うので、侵略者の存在から軍備増強モリモリのこの世界の地球連邦はフェブルウスの初陣の辺りでモビルスーツが新旧諸々含めて一万五千~二万機くらい、モビルゾイドが一千~二千機くらい配備されているイメージです。

 ジャンジャン壊されて、ガンガン作って、のサイクルが続いています。バッフ・クランやゼントラーディ、宇宙怪獣を相手にするには心もとないですね。全てがシズラーとかだったらまだいけそうなのですが……。

 この世界の地球連邦がこのまま上手く存続した場合の主力量産機は

・ターンタイプ(月光蝶なし)

・ダブルオータイプ(トランザムバーストやクアンタムシステムなし)

・ウイングゼロタイプ(ゼロシステムなし)

・上記三タイプを足して三で割ったような機体

 あたりが数年内で有力ですかね。これくらいでないと星間国家級の敵とガチンコの戦争は厳しそう、という偏見によります。これに加えてスーパーロボット込みで頑張ればなんとかなるでしょう。ゲシュペンストとバルゴラはどうなることやら。

 

◇特機と準特機の分類について

<スーパーロボット・特機> 

特徴:滅茶苦茶強い。基本的にワンオフ。人類の希望、最後の切り札、鋼の勇者。撃墜されたら絶望もの。

 マジンガーZ、グレートマジンガー、グレンダイザー、ゲッターロボ、ゲッターロボG、ライディーン、コンバトラーV、ボルテスV、ダイモス、ダンクーガ、ザンボット3、グルンガスト、グルンガスト冥式、フェブルウス、ソウルゲイン、アンジュルグ、ヴァイサーガ、ディアムド、一部のモビルゾイドとゾイド

 

<セミスーパーロボット・準特機>

特徴:かなり強い。少数生産向き。頼みの綱。落とされるとショック。

 ダイアナンA、ビューナスA、地球製スペイザー各機、ザマンダー、サイコザマンダー、マグネスV、マルス、グルンガスト弐式、ゲシュペンストタイプS、中型以上のモビルゾイド※一部を除く

 

■この世界の敵味方の勢力比較

●宇宙統一級(?)※ムゲ帝王の作り出した宇宙である事、全貌が詳細不明の為、不正確。

ムゲ・ゾルバドス帝国

●星間国家級 銀河統一は出来ていないが有力な勢力

バサ帝国 ボアザン キャンベル ベガ

●単一惑星国家級

地球連邦政府 アインスト(その気になればもっと上?) バーム(母星を失っている為)

●惑星内の一勢力

ミケーネ帝国 百鬼帝国 妖魔帝国 Dr.ヘル軍団 恐竜帝国 ガイゾック

 

後忘れていた前話のヘイデスショップです。

 

■共通ルート 第三十五話 死闘! 暗黒大将軍! クリア後のヘイデスショップ

〇ホワイトアーク級

〇ゴジュラス・ジ・オーガ

〇アイアンコングMk-Ⅱ

〇ガンスナイパー

〇スナイプマスター

〇ジム・スナイパー

〇ジム・スナイパーカスタム

〇ジム・スナイパーⅡ

〇トーラス

〇ビルゴ

〇プロトタイプジャベリン

〇STガン

〇デナン・ゾン

〇デナン・ゲー

〇エビル・S

 




ムゲの全貌が分からないのでどの程度の勢力として扱えばいいのか、正確な答えが分からないのですが、とりあえず大勢力としております。ダンクーガに壊滅させられていますけれども。

追記
バーム → キャンベルに修正しました。


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第六十話 気付いた時にはラボが魔境と化していた件

サブタイトルを変えてみました。


「断空剣・牙突! からのVの字斬り! んでもってこいつは断空剣・大地斬だ!」

 

 野生と機械と人の融合たる超獣機神ダンクーガの振るう断空剣が何度も振るわれて、その度にデスガイヤーのザンガイオーは赤い装甲と有機的なボディを断たれ、穿たれ、破壊される。

 

「ちい、これでもまだ再生しやがるか!」

 

「どうした、もう息切れか、獣戦機隊!」

 

「しつこい奴だね。忍、こりゃあ再生のタネか再生能力そのものをどうにかしないと、いつまでやっても倒せないよ」

 

 沙羅の分析を耳にしながら、忍は好戦的な表情を浮かべたまま唇を舌で舐めた。ふてぶてしいまでの態度は忍の闘志が微塵も衰えていない表れだ。

 

「再生か。そういやDCのシミュレーターにそういう連中相手のデータがあったなあ?」

 

 DCのシミュレーターにはヘイデスが思い出せる限りのロボアニメの特殊能力持ちのロボやキャラクターが登録されており、ザンガイオーのようにシンプルに再生能力が高い敵のデータもいくつかある。

 忍はその時の訓練を思い出しながら、目の前のモヒカンマスクムゲ野郎をどう片付けようかと、闘争本能を全開にする。

 

「くたばるがいい、ダンクーガ!」

 

 ザンガイオーの断面と断面がぐちゃぐちゃと水音を立てながら再接合し、不死身を思わせる再生能力を見せつける。さらに肩を始めとした装甲各所が開き、断空剣の間合いに居たダンクーガへとミサイルを乱射する。

 噴煙を噴いて乱れ舞うミサイルの爆発の範囲にはザンガイオーも含まれているが、機体の再生力を知悉するデスガイヤーは機体へのダメージを無視していた。

 

「まずいよ、忍! 流石にあれだけ食らったら!」

 

 沙羅の警告はダンクーガの操縦を預かる忍にとっては、言われるまでもない事だ。他のスーパーロボットに比べて複雑な変形・合体機構を有し、特殊な防御機構を持たないダンクーガは比較的耐久力に欠ける。

 

「全部は避けられないよ!」

 

「ならば、前に出ろ、飛び込め!」

 

 雅人の言う通りにこの至近距離ではミサイルの雨を全弾回避するのは不可能で、亮がこの場の最適解を口にするのと同時に忍は断空剣でミサイルを斬り払いながら、ダンクーガを突進させた。

 

「上等だ。やってやるぜ!」

 

「そうくるか、ダンクーガ!」

 

 自身もミサイルのダメージを受けながら、ザンガイオーの背中から何本もの触手が飛び出して、ミサイルの爆炎と爆発に包まれる中で命の削り合いを再開する。ムゲ帝国屈指の大戦士とダンクーガ――すなわち断空我との戦いは天井知らずに過熱していった。

 ギルドロームが戦死し、デスガイヤーが宿敵との戦いに熱を上げている状況に於いて、ムゲ軍を支えているのはヘルマットと言っても過言ではなかった。

 

 彼の麾下にある軍団だけではなく壊滅しつつあるギルドローム軍にも指示を飛ばして、何とか戦線を保っている。

 そうしてヘルマットに負担がかかればかかるほど、ムゲ軍全体の動きは鈍り地球側はその隙を当然のように突く。OZを中心とした本隊とラー・カイラムを旗艦とするDC艦隊は、機動兵器の補給・修理と並行して艦砲射撃も積極的に行っている。

 

「メガ粒子砲、敵艦α-1へ向けて三斉射! ダンクーガの状況はどうか?」

 

 ラー・カイラムやアルビオン、ネェル・アーガマの周囲にはムゲ艦隊からのビームやミサイルが乱舞し、近距離での爆発も生じている。

 ブライトは立て続けの振動に揺らされ、爆発の光に照らされながら、ようやく馴染んできた艦長席のシートからトーレスに問いかけた。

 

「獣戦機隊は依然として敵指揮官機と交戦中。敵機の再生能力に攻めきれずにいるようです!」

 

「再生能力? MSでなければそういうのもあるか」

 

 なお、そう遠くない未来にMSでも多少の再生能力を有するようになるが、この時点でブライトにそんな未来が予想できるわけもない。出来るとしてもスーパーロボットの話だろうと、ブライトでなくてもまともな軍人なら誰だってそう考える。

 機動兵器同士の戦いにおいては戦闘区域が離れているとはいえ、コロニーのガンダム五機とOZのビルゴやトーラスが同じ戦場で同じ陣営として戦っているという奇妙な光景が見られているが、少なくない被害を出しつつもムゲ軍の戦線を押し込んでいる。

 

 なによりその原動力となっているのはトップクラスのパイロット達の乗る高性能MS部隊と、超規格外のゾイド二体を含むゼファー部隊の活躍が大きい。

 本当に味方? 本当? と何度も確認したくなる外見と性能を誇るデスザウラーとデススティンガーは、サンクキングダム首都近郊とあって先のミケーネ帝国戦同様に主砲の最大火力を封じているが、それがなんの慰めになるのかと嘆きたくなる火力と大質量による格闘戦で進む先に残骸の山を築き上げている。

 

 ミケーネの戦闘獣と違いムゲ軍の兵器はほぼ無人機で構成されている為、あちらとは違って一切の恐怖もなく指示に従ってデスの文字を冠する災厄の化身に襲い掛かるが、撃ったビームもミサイルも重力場やEフィールドによって阻まれて、装甲に届きすらしない。

 出力を絞った荷電粒子や圧縮ゲッター線、重力弾が機関銃宜しく毎分一千発超の速度で反撃に撃たれれば、ムゲ機は原形を留めぬ金属のミンチめいたものになるばかり。

 

 一応、その巨体ゆえに小回りが利かないという弱点がある事はあるのだが、この場においてはデススティンガーとデスザウラーに対してほぼ完璧な連携が可能な僚機が存在していた。

 オリジナルのゼファーファントムシステムを搭載したギルベイダー、そしてトレーズ・クシュリナーダの下でノーブルとしての品性と作法を身に付けて、独自の成長を遂げたゼファータイプMDである。

 

 テレンス博士とエリシアが随時モニタリングしている中、ゼファーを指揮官機としたDC無人機部隊は無人の荒野を進むが如くムゲ軍の抵抗を屁とも思わない戦いぶりだ。

 今も地上からジャンプしたデスザウラーに飛びつかれたムゲ戦艦の一隻が、荷電粒子機関砲とでも言うべき乱射を食らいながら強制的に墜落させられ、轟沈している。

 いったん空中に飛び上がってから降下したデススティンガーに乗りかかられたムゲ戦闘空母は、荷電粒子の針を形成した尻尾でめった刺しにされた挙句、重力の刃を展開した鋏でジョキンジョキンと恐ろしい音が一つ鳴る度にバラバラに斬り刻まれている。

 ムゲ宇宙統一の為に数多の戦いを経験したムゲ・ゾルバドス帝国とはいえ、ここまで頭のおかしくなるようなやられ方を経験したことがあっただろうか?

 

 デスザウラーとデススティンガーに比べれば、ゼファーギルベイダーはまだ兵器らしい代物だった。

 ゼファーが一時期の肉体としたギルベイダーは重力兵器からなにから搭載した武器のほぼすべてが必殺級の威力だが、飛びかかったり鋏で解体したりはしなかったからである。

 とはいえノーマルサイズのゾイドでは最強の一角に数えられる機体を、一年戦争から戦い続けたトップパイロット並みの経験値とトップニュータイプ並みの技量を持つゼファーが、無人機ならではのパイロットへの負担を無視した動きで操縦するのだから手が付けられない。

 

 いまだMDには夢の話の有人機と変わりのない柔軟性は、ゼファーのシステムとしての優秀さとそれだけでは説明できないナニカがあるとテレンスやエリシアをはじめ、ゼファーと付き合いの長い面々に思わせている。

 そしてゼファーが気にかけているのは敵ばかりではなかった。先行している高速部隊の中に混じり、ZやZZと同格以上のスペックを持つSガンダムに搭載されているシステムがその対象だった。

 

「くたばれ、××××!」

 

 DCに多い未成年者には聞かせられない言葉を恐怖と共に吐きだし、リョウ・ルーツはMS形態に合体し直したSガンダムのビームスマートガンを立ちはだかるゼイ・ファーに何度も撃った。

 地球上に侵攻したムゲ軍のほぼ全軍が集結している戦場で、あまりの敵の数の多さにしり込みしていたものの、戦闘が続く中で脳内物質の分泌が進み、リョウは気性の激しさを剥き出しにして、生の感情を四方に発する荒々しい獣のようだった。

 

「まるで獣戦機隊だな。忍さんと同じ……いや、だからこそ獣戦機隊に選ばれたんだから、ルーツ少尉もSガンダムのパイロットに選ばれた理由があるのか?」

 

 無鉄砲に近いSガンダムの動きを、カミーユはMS形態のZガンダムを巧みに操縦しながらフォローしていた。カミーユとてプチモビの操縦経験こそあれ素人だったが、ガンダムMk-Ⅱ強奪事件に関わってからの実戦経験はリョウを大きく上回る。

 その分、彼はこうしてリョウとSガンダムという組み合わせに付きまとう違和感を戦場で推測するだけの余裕があった。

 カミーユがSガンダムをフォローしている頃、ジュドーはクワトロのサザビーと横並びになり、ZZガンダムの額のハイメガキャノン、サザビーの腹部ハイメガキャノンを同時に発射して、敵防衛線に大きな穴を開ける事に成功する。

 

「やったね、大当たり! このまま女王様を助けに行こうじゃないの!」

 

「ジュドー、油断はするな。連中にとってもこのサンクキングダムを奪還されるかどうかは、今後の地球侵略の戦略に大きく影響する分水嶺だ。伏兵の一つも警戒しておいて損はない」

 

「分かってるってば。それじゃあって……」

 

 二機のハイメガキャノンが開いた突破口をウイングゼロが颯爽と駆け抜けていった。ギルドロームの洗脳とゼロシステムによる強制解除により、ヒイロに襲い掛かった負担は相当なものだったはずだが、今の彼は消耗を感じさせない。

 

「待っていろ、リリーナ」

 

 サンクキングダム王城へのルートが開けてしまったことに気付き、戦闘空母で指揮を執るヘルマットは焦りを隠せなかった。

 ギルドロームの精神波による同士討ちを誘発させ、地球人側に消耗を強いる戦略は破綻し、こちらの最強の個であるデスガイヤーは獣戦機隊にかかりきりだ。

 そもDCはパリ奪還戦で消耗し、こちらの戦闘には参加しないと踏んでいたが宇宙から降下してきた一部の部隊と、報告のあった巨大兵器までも姿を見せた事で前提が大きく覆されている。

 

「いかん、そのMSを止めろ! 各艦、各機、攻撃を集中……!? なんだ!」

 

 突如として空母を揺らした衝撃と僚艦を包み込む爆発に気付き、ヘルマットがブリッジクルーに問えば返ってきたのは絶望的な内容だった。

 

「敵増援です! す、既に本艦隊の内側に潜り込まれています。こ、高度なステルスによるものかと!」

 

「いかん!」

 

 それはギリアム率いるシャドウセイバーズ、そして彼らと合流したアラン・イゴールのブラックウイングによる奇襲攻撃だった。

 

「青龍鱗、でぇえい!」

 

「ターゲットロック、シャドウランサー!」

 

「目標敵艦に固定。フォールディングソリッドカノン、ファイア」

 

 シャドウセイバーズの誇るスーパーロボット、ソウルゲインとアンジュルグの放った攻撃がムゲの戦闘メカを次々と爆発の中に飲み込み、その間隙を縫うようにしてエキドナの乗る人型戦車めいたラーズアングリフの砲撃がムゲ戦艦の一隻を貫いた。

 ステルスを解除したトライロバイト級万能ステルス母艦ギャンランドが姿を見せ、平べったいギャンランドの上にはヴィンデルのヴァイサーガ、レモンのアシュセイヴァー、それにギリアムのゲシュペンストMk-Ⅲの姿がある。

 

「DCか。あれで部隊の一部とは凄まじいものだな」

 

 ギャンランドの上でマントをたなびかせるヴァイサーガのコックピットの中で、ヴィンデルは同じ陣営ではあるが半民半官の部隊であるDCを決して愉快とは思っていない様子だ。

 別世界の因縁もあるかもしれないが、民間人の影響が強すぎるDCを良く思えないことそのものは無理のない話である。一方で技術者としてヘパイストスラボの所長と良好な関係にあるレモンは、そんなヴィンデルの腹の底を読み取り、小さく笑う。

 

「うちの部隊の戦力増強にも貢献してくれている相手よ。それにムゲ相手に頼もしい戦力じゃない。そんなに不愉快そうな声色を出さなくってもいいでしょうに」

 

「ふん」

 

「変なところで子供っぽいんだから。それでギリアム、私達もこのまま戦闘に入っていいのよね?」

 

「ああ。ムゲの本国は異次元に存在する以上、こちらに来ている部隊を叩いても根絶は出来ないが、今、ムゲを叩いておけば地上における敵勢力の勢いは大きく衰える。シロッコ、お前の小隊は好きに動け。機体の性能を確かめたいのだろう?」

 

 ギリアムらの上空では疑似太陽炉を搭載した三機のMSが展開していた。GNボリノーク・サマーン、GNパラス・アテネ、そしてシロッコが直々に乗り込んでいるGNメッサーラだ。

 高出力の核融合炉の他に疑似太陽炉六基を搭載したメッサーラは重力下の大気圏内での運用も可能になった改造機であり、複数積みの恩恵で機動性や運動性、火力の向上には目を見張るものがある。

 

 そしてシロッコからの返事がある前にギリアムもまたゲシュペンストMk-Ⅲに宙を舞わせ、ムゲ軍団へと挑みかかる。

 地球連邦軍の次期主力量産機を目指して開発されたこの機体は、SRG計画で開発されたアルトアイゼンとヴァイスリッターを筆頭に各種データを投入して開発されたものだ。

 黒を基本色とした機体でデザインラインはゲシュペンストMk-IIの順当な発展機といったものだが、頭部にブレードアンテナを有し、肩には箱状のパーツを備えている。補給と継戦能力を問題視され、ベアリング弾からビームに置き換えられたビームクレイモアユニットだ。

 

 主動力は縮退炉一基に補助として疑似太陽炉一基を装備し、GNフィールドの展開とGN粒子によるガンダニュウム合金の装甲強化や推進系の強化を担っている。

 今は当たり前のミノフスキークラフトの他、ダイレクト・バイオリンク・センサー、ダンクーガの野獣回路をベースとしたサイ・コンバーター、超電磁エネルギーとマグネットコーティングの融合発展技術である超電磁コーティングといった次世代のスタンダードとなる装備を搭載してパイロットを万全にサポートしている。

 

 武装に関しては手首内側のビームガン兼用ビームサーベル二基は続投、プラズマステークはデッドウェイトとなる点を考慮して取り除かれ、その代わりに超電磁エネルギー発生器が搭載されている。

 これにより超電磁フィールドを腕部に纏わせることで超電磁ステークや超電磁ブレードを形成可能と応用性を増した上に、ビルトファルケン同様、グレートマジンガーのサンダーブレーク発射機構を内蔵し、威力は劣るがプラズマブレークとして使用可能ときている。

 

 先にも触れた両肩のビームクレイモアは同時により長射程のビームシャワーとしても使用可能で、腹部にはメガ・ブラスターキャノン、背部のウイング付きバックパックにはツイン・ビームキャノン二門、スプリットミサイルを標準装備。

 メインウェポンはF2Wキャノンをダウンサイジングした上で改修を施し、実体弾の発射も可能としたF2WO(フォールディング・ツーウェイ・オクスタン)ライフル。

 

 量産機としてはややコストが高めではあるが、ガンダニュウム合金製のビルゴが大量生産されている昨今、コストを上回る圧倒的な性能を考えれば十分に生産する価値のある機体と言えるだろう。

 初代ゲシュペンストのゲシュペンストショック以来、シリーズ機が発表されるたびに業界をざわつかせてきたゲシュペンストシリーズだが、このゲシュペンストMk-Ⅲもまたアナハイムを筆頭とした機動兵器業界を驚愕させる機体として完成した。

 逆に言えばこれくらいの性能がなければ地球外侵略者の更なる出現が危惧される昨今では、地球を守護する剣足りえないと判断されたわけである。

 

「行くぞ、ゲシュペンスト!」

 

 ギリアムからするとある世界で遭遇した量産型ゲシュペンストMk-II改を連想させる機体だが、搭載した武装の豊富さと威力、エンジン出力のバカみたいな数値、搭載した各種スーパーロボットに由来する多種多様な装備はギリアムをして唸らせる。

 ギリアム用に調整されたゲシュペンストMk-Ⅲは機動性と運動性を強化されており、通常仕様機の三十パーセント以上の上昇がみられている。GN粒子を用いる事で搭載する推進剤の量を減らせた恩恵で、継戦能力もそれほど低下していない。

 

「ふふふ、ならばその通りにさせて貰おう。サラ、シドレ、私に続け。私の言う通りにすればよい。なに、お前達を死なせはしない」

 

「はい、パプテマス様!」

 

 自らに強い忠誠と敬意を向ける二人の言葉を背に受けて、シロッコは出来たばかりの新しい玩具で遊ぶべく、瓦解の兆しが見え始めたムゲ軍に襲い掛かる。同時に彼はこの戦場に着く前から感じていたプレッシャーの持ち主達に意識を向けた。

 

「この私にプレッシャーを感じさせるセンスの主。やはりDCに多いか。ふふふ、地球の重力に魂を縛られた者達と笑うところだが、あるいは地球の重力が魂を鍛えたか? やはり木星を離れた価値はあったな」

 

 さらに強化された大推力で大気を切り裂いて飛ぶGNメッサーラに翻弄されるムゲ機動兵器部隊に、後続のサラとシドレがメガ粒子砲やビームライフルを放つ戦い方で、シロッコは口にした通り経験の浅い二人をフォローしていた。

 この時、シロッコの参戦を敏感に感じ取っていたのは、やはりというべきかカミーユが筆頭であり、更にジュドー、シーブック、クワトロらも名を連ねる。

 

「なんだ、この息苦しさ。誰かが戦場にやってきたのか?」

 

 不気味さすら感じるプレッシャーにカミーユが思わず気を取られている隙に、フォローが疎かになったSガンダムがゼイ・ファー部隊から集中砲火を浴びて、ビームの乱射が殺到し始める。

 

「いけない、ルーツ少尉!」

 

「うおおあああ、こなくそがああ!!」

 

 リョウは必死に機体を操り、一発二発三発とビームを回避し、ビームスマートガンで応射するが一旦冷静さを失った状態のリョウでは正確な狙いを定められずに命中弾はほとんどでない。

 咄嗟にカミーユがフォローに回るよりも早く、Sガンダムの中に眠るALICEが目覚めた。

 

――私の方が上手く操縦できる!

 

 その瞬間、Sガンダムは目まぐるしい細かなスラスター噴射とAMBAC機動を駆使し、殺到するビームを紙一重で回避して行く。

 

「うああああ? ああ?」

 

 機体に一発の被弾もない事にリョウが気付いた時、彼はそれが自分の操縦によるものとは疑うも信じるもなかった。

 フォローに戻ったカミーユや続いたレコアやファのメタス改の射撃が降り注いで、ゼイ・ファーの半数近くを爆散させたからだ。

 自分を脅かした敵が撃たれる姿をみれば、がぜん闘志の湧くのがリョウ・ルーツという人間である。

 

「ビビらせやがって、クソッタレどもがよ!」

 

 そこから敵部隊へと向けて吶喊しながらビームスマートガンを撃ち、間合いを詰める端からビームサーベルで斬りかかってゆく。洗練さなど欠片もない乱暴な動きは、実戦経験の少ない新兵らしいものだ。

 リョウにとって幸いしたのはAI仲間とでも思ったのか、ゼファーギルベイダーを筆頭としたゼファー部隊が駆け付けて、周囲を包囲しつつあったムゲ軍団に大火力を叩きつけてくれた事である。

 

「なんだ、あれがゾイドって奴か? マジで地球じゃあんなの使ってんのかよ」

 

 モビルゾイドシリーズは基本的に地上での運用が前提である為、宇宙での配備数は少ない。付け加えて言えばこの時にリョウが目撃したのはデスザウラーとデススティンガーなのだから、彼が正気を疑うのも当然と言えば当然だった。

 瞬く間に周囲をゼファータイプに囲まれて、味方とは言え尋常ではない威圧感にリョウが苛まれる中、ゼファーとALICEがお互いをどう意識したのかは、彼/彼女らにしか分からなかったろう。

 

「な、なんだよ? 襲ってこねえよな?」

 

 なおゼファーギルベイダーやデススティンガー、デスザウラー達から視線を向けられて、コックピットの中のリョウは生きた心地がしなかったという。

 

 戦闘開始から続く振動や轟音はサンクキングダム王城にも届いており、リリーナとドロシーはムゲ兵による拘束もなく、一室で事態の推移を待っていた。彼女らを人質に使う可能性もムゲ帝国側にはあったが、少なくとも室内に彼女ら以外の人影はない。

 今の時代にそぐわぬ完全平和主義を掲げるリリーナを救出するべく、連邦軍側も手を打っていた。

 DCに同行していたエコーズ、サリィ・ポォや黒騎士隊といった現地部隊、シャドウセイバーズが行動を起こし、王城内部に残っていたムゲ兵を排除しながら動いていたのである。

 

 シャドウセイバーズからは以前回収したガミアQのデータを活かされた量産型Wシリーズが多数投入され、人的消耗を抑えながらリリーナ達の部屋を目指す。

 ダグザ・マックールを隊長とするエコーズは小型MSロトを用いて王城に突入し、順調に敵を排除して行ったが、他の黒騎士隊や量産型Wらと合流して目的の場所に辿り着いた時、彼らは遅きに失した事を悟った。

 なぜなら幽閉されていた部屋の扉を開いたその先では――

 

「来てくれたのですね、ヒイロ」

 

 バルコニーに立つリリーナと向かい合うようにして降り立ったウイングゼロの姿があったからだ。彼らの“囚われた女王を一番に救出した”という栄誉は、星の王子様にとられてしまったのである。

 

 

「そうですか、オペレーション・レコンキスタの完遂、まずはおめでとうございます。これで肩の荷が下りた気持ちですよ。まあ、まずは復興と軍需物資の補給に血道を上げないといけませんね。もちろん、最大限の便宜を図らせてもらいますよ」

 

 パリ並びにサンクキングダムの奪還、リリーナ女王の救出成功の報せを受けて、ヘイデスは大きな安堵の息を吐いてから通信端末を切った。

 彼の居場所は変わらずアレスコーポレーション極東支部執務室。

 エリュシオンベースとそこに務める社員達にパンドラボックス、愛妻の安否諸々の確認も済み、今回の戦闘でミケーネ帝国とムゲ・ゾルバドス帝国の地上戦力はほぼ壊滅し、作戦中に攻撃を仕掛けてきた各勢力もことごとく返り討ちにし、確認できている基地を潰したお陰でしばらくは軍事行動をとれまい。

 

(まあ、それは人員と物資を根こそぎ動員した地球側も同じなんだけれど。それになによりデスザウラーとデススティンガー! デビルガンダムみたいに暴走したかと心配したけれど、安心安全のゼファー印!

 ゼファーやエリシアの言うことをよく聞いてくれたみたいだな。どう考えても敵になる設定と元ネタだったけれど、想定通り味方として行動してくれてほんっとうに良かった。トミイさんに何度許可を出さなければよかったかと不安になった事か!

 まだ各勢力の本拠地を叩けてはいないが、この間におおよその位置は把握できている地球系の敵勢力の位置を洗い出して、順次撃破していきたいな。

 どうも魔竜機連合みたいに同盟関係を結び直したみたいだし、想定外の隠し玉を使われる前に終わらせるべきだ。その下ごしらえくらいしか、俺には出来ない)

 

 考えるべきことは多い。再合流したDCは新規加入メンバーが多く、てんでバラバラな機動兵器間での連携精度を高め、親睦を深める時間と休息が必要だろう。

 その間にヘパイストスラボに所属しているミナーゴ・ロッシーノ・トミノやシッロ・イホウノ・トミノ、トミイ・タカラダ、マサミ・O・バリといった優秀なスタッフには、開発中の機体をどうにかロールアウトにまで漕ぎつけてもらいたい。

 

(リモネシア沖以来、動きを見せないガイゾック。実は中間管理職な女帝ジャネラのキャンベルは原作通りに和平派が実権を握ってくれればともかく、好戦派が実権を握ったままならジャネラを退けても戦いは続く可能性が高い。

 その点、バームやベガは指導者を仕留める機会に恵まれるだろうし、現地指揮官のハイネルが皇帝に睨まれているせいで一枚岩じゃないボアザンは、ザンバジルがこれといった特殊能力を持っているわけでもないし、まだ戦いやすい方か。

 未知数なところのある闇の帝王とバラオは厄介だし、洸のお母さんのレムリア王女だったかな? 彼女と協力関係を結べなければバラオの打倒はかなり難しくなりそうだし)

 

 最悪の場合、人類の種を存続させる為に色々と便宜を図っている木星圏とのやり取りや一応、こちらの敵ではないらしいアインストとの関係、そして未知の要素が多いバサ帝国への対処とヘイデスの悩みはまったく減らない。

 

(目下の問題はアラドやゼオラに対して、なんの思い入れも見せない対応を取っているクォヴレー・ゴードンか)

 

 裏はとっている。一年戦争時のコロニー潰しで故郷を失った戦災孤児であり、軍に入隊する前後の経歴もきちんと記録されている。その穴の無い経歴がヘイデスからすればうさん臭いことこの上ない。

 ヘイデスは、必ず反応がある筈のゼオラへの対応から、この世界のクォヴレーの正体についていくつかパターンを推測していた。

 

1:第三次スーパーロボット大戦α後の正真正銘のクォヴレー。ただし使命に精神が擦切れて感情が死んでいる。

 

2:正真正銘のクォヴレーだが私情を露にしない為、並行世界の同位体であるゼオラらに必要以上のコミュニケーションを取らないようにしている。

 

3:バサ帝国産の人造人間『バルシェム』などであり、原作でも地球に潜入しようとしていたアイン・バルシェムである。つまりバサ帝国の回し者。

 

4:ただの偶然で本当にこの世界出身の純地球人クォヴレー・ゴードン。

 

(考えられるのは三番、あれはイングラム・プリスケンと融合する事の無かったアイン・バルシェムであり、潜入工作の任務を受けてこちらに潜り込んできたってパターン。

 狙いはDCの内情調査、より正確には至高神ソルだったシュメシ達とフェブルウスの強奪あたりか?)

 

 第三次αでもアイン・バルシェムがクォヴレー・ゴードンとして潜入しようとしていたし、連邦軍・連邦政府にバサ帝国の息のかかった人間が居るか、あるいは成り代わられている可能性も考慮しなければならない。

 せめて人類側だけでも一致団結したいのだが、クロスボーン・バンガードとホワイトファング、バスク派のティターンズは本当に余計な事をしてくれたものである。

 ヘイデスはこれら三つの勢力に対して、本気の殺意を覚えていた。

 

<続>

 

■パリを奪還しました。

■サンクキングダムを奪還しました。

 

■ロトが開発されました。

 

■共通ルート 第三十六話 戦火のサンクキングダム クリア後

〇ヘイデスショップ

・ガンタンクR44

・ゲシュペンスト

・ゲシュペンストタイプS

・ゲシュペンストMk-II

・ゲシュペンストMk-IIタイプM

・ゲシュペンストMk-Ⅲ

・ランドグリーズ

・量産型アシュセイヴァー

 

■第三十六話 クリア後 ヘパイストスラボ※資金を投入する事で次話クリア後に入手。

 

◇ガンダムXより

〇ガンダムエアマスター 8,000

〇ガンダムレオパルド  8,000

〇グランディーネ    15,000

 

◇ガンダムSEEDより

〇ストライクガンダム 8,000

〇デュエルガンダム  8,000

〇バスターガンダム  8,000

〇ブリッツガンダム  8,000

〇イージスガンダム  8,000

〇シグー       7,000

 

◇ザブングルより

〇ダッガー  3,500

〇カプリコ  3,500

〇ギャロップ 3,500

 




ちょっと駆け足気味ですが、あまり詳細な戦闘は必要とされないかなと思って飛ばしました。元々はヘイデスの裏方仕事がメインだったわけですしね。

ご指摘のあった過去の話のバナージの年齢を修正しました。


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第六十一話 インターミッションっぽいお話。

そういえば投稿開始から一年以上経過していました。まさかこんなに長く書き続けることになろうとは。いやはや。皆さんのご愛顧のお陰です。これからもよろしくお願いします。



「ではバン君、フィーネさん、お二人ともシールドライガーを降りる気はないと? 別に降りなくても、安全な後方でその機体に積んだAIの習熟に協力してもらうという選択肢もありますよ」

 

 ヘイデスはモニター越しにバンとフィーネと会話をしているところだった。パリとサンクキングダムの奪還に成功したDCはエリュシオンベースへと帰投し、そこで本格的な整備と補給を受け、パイロット達は休息を取っている。

 そんな面子の中、パリ奪還作戦の途中で加わってきたバン達は参戦した経緯が経緯なだけに、DCのスポンサーであり彼らの乗っている特別なシールドライガーの権利者でもあるヘイデスとの面談となったのである。

 他にも所長やバン達がシールドライガーに乗り込む現場に立ち会っていたアーバインも、今回の通信に顔を出している。

 

『今回はあいつらをやっつけられたけどさ、まだ戦いは終わっていないんだろ? ライガーに乗って戦ったのは、一回や二回どころじゃないんだ。一度始めたところは途中で放り出すつもりはないぜ!』

 

『それにまたミケーネやムゲの人達が戦いを仕掛けてきたら、今度こそバンの故郷の人達が危険な目に遭うかもしれません。その時に何もできないままではいたくない』

 

 確固たる意志を感じさせる二人の言葉に、ヘイデスは鉛のように重い溜息を吐いた。覚悟を決めた子供というものに、彼の情緒は乱されやすい。

 自分の半分も生きていない子供が、既に戦場を経験した上でなお戦いを選んでいるのだ。そんな今の世界の有り様に異議を唱えたいし、間違っていると大声で叫びたい。

 例えこの世界が、子供が命懸けで戦うなどありふれた状況でしかないアニメーションを複数混ぜ合わせた代物であろうとも。

 

「今さら、年齢を理由に君達の覚悟を否定するのは、本当に、今さらそれを言うのかって話ですかね……。分かりました。ですが、バン君達の件は父君であるダン・フライハイト少佐に連絡させてもらいます。

 連邦軍のゾイド乗りでも五指に入るゾイド適性者が父親とは、血に受け継がれる物があるんですかね。

 僕は所詮商人なので、戦場でのことは分かりません。ですのでDCに参加する以上は、部隊の指揮官の命令に従ってください。可能な限り多くの命を救う事を多くの敵を倒すよりも優先する、そんな部隊ですから」

 

『おう、分かったぜ!』

 

「元気があってよろしい。それで、所長、シールドライガーに積んだAIの様子はどうなのかな? トミイさんはそちらとデスザウラー達に掛かりきりだというけれど、少しは進展があったかな」

 

『ええ。これまでのテストと比べて並外れた結果を示しています。パイロットごとに相性が存在するとなると、それはそれで問題なのですが、良い意味で予想外の結果が出ていると言っていいでしょう。ギリで』

 

「ギリかあ。となるとそのAIとシールドライガーは現状、バン君とフィーネさんの専用機として扱うのが最適解になるか」

 

『そうそう、トミイさんから提案がありましてバン君達とAIの親和性とゼファーという前例を考慮して、固有名称をつけてはと。

 AIに独自の機体を与えるので、その名前を二人に考えて欲しいのです。躯体としてはこれまでのゾイドの蓄積データから小型の恐竜タイプを予定しています。こちらです』

 

 所長がなにか操作する動きを見せて、ヘイデスとバン達の前に白い恐竜を思わせるメカが表示される。ヘイデスは『ジークだな』と予定調和のような流れに驚きもしなかった。

 ヘイデスにとっては予定調和で既知のことであっても、バンとフィーネにとっては別となる。二人が短い期間とは言え、命を預けて戦った機体に積み込まれたAIの名づけという大事な仕事を任せられたのだ。

 

『名前か。ライガーと同じ相棒だからな、良い名前を考えてやらなきゃ』

 

『この子はライガーとは違う子って事でいいんですか?』

 

『ええ。シールドライガーはシールドライガー。このAIはシールドライガーに依らず、別の機体に移し替えてパイロットを補助出来る仕様にする予定ですから、別のものと認識してください』

 

 これでDCの古株だったらゼファーのようなもの、と説明すれば一発で分かるのだが、まだ新入りのバン達には言っても伝わらないだろう。

 後にこの世界初となるオーガノイドの一号機『ジーク』は、このようにして誕生の経緯を迎えたのだった。バンとフィーネが通信を切り、また年若い新入りを迎え入れたDCメンバーにわやくちゃにされている間に、ヘイデスは待たせていた別の人間と通信を繋げる。

 片眼に眼帯を着けた年若い青年――アーバインだ。元々、バンが今乗っているシールドライガーとAIの護衛を任せていたこの青年は、立場上、ヘイデスに雇われている側となる。

 

「お待たせしました、アーバイン君。君のこれまでの戦いに関する情報には目を通させてもらいました。かなり苦労したようで、せめて臨時ボーナスは出させてもらいますよ」

 

『そいつはどうも。それで俺はこのままDCに出向って辞令が届いたんですが、なにかの間違いではなく本当に俺にあの部隊に行けと?』

 

 雇い主相手とあって、アーバインの言葉遣いはバンやフィーネに対するものよりは少しだけ丁寧だ。

 

「あくまでウチは企業なので強制できるものではありませんけれどね。君のお陰でバン君は上手く戦えていたようですし、これからも彼のフォローをしつつDCの一員として戦ってもらいたいというのが僕の本音です」

 

 ヘイデスは手元の端末を操作して、これまでの給料とは文字通り桁の違う金額を載せた報酬の一覧をアーバインへと送る。

 元々機動兵器のテストパイロットというものは貴重な人材で高給取りなのだが、今回の報酬はそれを加味しても破格の金額であった。

 

『! 流石はプルート財閥の総帥、ここまで太っ腹な依頼主は初めてだ』

 

「君にはそれだけの大役を任せているってことです。同時に期待も寄せているわけですよ。ただ、これからDCの戦う敵はどんどん強くなってゆくでしょうから、苦労を強いるとは思いますけどね」

 

『あのデススティンガーやデスザウラーは、DCに参加させないんで? それか考えづらいが、量産する予定とかは? あいつらが列を成せば、少なくとも地球の中の敵勢力は壊滅させられそうですがね』

 

「元々は対侵略者用の決戦兵器として少数生産の予定はあったんですが、不確定要素が重なったのもあって一旦、生産計画は中止です。それに生産しなくてもなんとかなりそうな目途が立ちましたしね。

 あの二機の運用に関しては連邦の参謀本部が決めるでしょう。

 僕の想像ではミケーネの本拠地がヨーロッパにある以上、どちらかの機体はユーラシア大陸に残す事になると思いますよ。個人的には、デススティンガーには太平洋の調査と監視を頼みたいところです。

 妖魔帝国やボアザン、キャンベルと所在地不明の連中が、本拠地や基地を構えている可能性の高い場所ですから、抑えとしてデススティンガーを頼りたいわけで」

 

『連中もオペレーション・レコンキスタでの暴れっぷりを見れば、デススティンガーとデスザウラー、それにDCを最大の障害と捉えてやっきになって排除しようとするか、徹底的に避けるか、二つに一つになるか……。分かりました。仕事の範疇で全力を尽くしますよ』

 

「それはよかった。後でムンベイ君に補給物資を預けて送りますので、そちらもよろしく」

 

 アーバインの顔が通信画面と共に消えるのを待ってから、ヘイデスは小さく息を吐いた。今回、DCの地上、宇宙、エゥーゴ組の合流により大幅に人員と戦力が増強されたのと同時に、部隊の統制の難しさもグンと増している。

 特にエゥーゴ組がオードリーとメイファという二人のミネバを抱えこんでいるのは、ジオン共和国やアクシズ、真ジオン公国との関係において面倒な火種だ。

 

(ガンダム系の作品は外伝でもそうだが気軽に地球を壊滅させたり、コロニーに壊滅的な被害の出る大量虐殺の作戦をしょっちゅうやるんだよな……。

 話の展開的にだいたい阻止されるけどさ。一年戦争の頃からなんでそんなに大量虐殺したいの? ってくらいバリエーション豊かに出してくるもんなあ。スーパーロボット系の敵勢力よりも一部の地球人が邪悪過ぎる。いや、邪悪というか冷酷過ぎるのか?)

 

 クォヴレーというほぼ毒であろう人物まで内側に抱え込んでいる状況だ。なにかしらの些細なミスが部隊の崩壊につながりかねない危うい状況にある、というのがヘイデスの認識だ。

 

『お疲れですわねえ、総帥』

 

「僕より君の方がよほど大変だよ。パオロ司令が指揮を執ったとはいえ、エリュシオンベースが攻められて大変だったろう。シエン達が居たとはいえ、僕は生きた心地がしなかった」

 

『これで、貴方という血を送り出す心臓を潰すか、厄介な代物を作り出す脳であるエリュシオンベースを潰すか、敵勢力の狙いが二つに増えますね。ま、それより先にジャブローやダブリン、日本のスーパーロボット研究所を優先するかもしれませんけれど』

 

「どうにも後手に回っているのが現状だ。オペレーション・レコンキスタもやられたのを倍返しにしただけの話だ。そろそろこちらが主導権を握りたいところだよ。

 宇宙に展開していたムゲ軍は地上の大敗をきっかけにして消極的になるだろうが、ベガがこの前の月面の戦いで疲弊したとはいえ、いささか大人しすぎる。地上がある程度落ち着いた後は、宇宙の情勢に目を見張らなければならないってわけさ」

 

『Dr.ヘルと恐竜帝国を片付けたと思った矢先にミケーネと百鬼が出てきましたし、大局的に見れば地球圏はまだまだ戦乱の最中ですか。終局にすら達していない状況とは、これから先が思いやられますね』

 

「かといって絶滅も奴隷化もごめんだからね。血を吐くようなマラソンを続けるしかないさ。出来れば僕達の代で終わらせたいマラソンだ」

 

『そりゃあそうでしょう。一カ月くらいは休息と準備に使いたい、というのが一技術者兼母親としての意見ですけれど、実際、総帥のところにはどんな情報が入ってきていますか?』

 

 所長の言葉を受けて、ヘイデスは腕組みをして背もたれに体重を預けてしばし考え込んだ。現在判明している敵勢力の中で、情報を得られている相手から順次決着をつけてゆくとして……。

 

「……手をつけるならミケーネと百鬼からと考えているようだよ」

 

『その心は?』

 

「詳細な位置が判明していないとはいえ、ミケーネの本拠地がエーゲ海の辺りにあるのはほぼ間違いない。また百鬼帝国についてもこちら側についてくれた鉄甲鬼や白骨鬼からの証言と調査で、表向きは三十年前に成立した軍事国家だと判明している。

 こちらが主導権を握って戦えそうなのは、目下、この二勢力だからね。相当の激戦が予想されるから、現在の消耗した状態からどれだけ早く立ち直れるかが、今後の地球上の勢力図の趨勢を担う要素になる。

 宇宙で取り掛かるとしたら月のベガだ。月のどこかに大規模な基地を構えているのはほぼ確定事項だ。本星からの援軍があるかもしれないが、これまでの戦闘での疲弊を考慮して基地を見つけ次第、攻略を進めた方がいい」

 

『アインストとバサ帝国が大きな動きを見せていないのが気になりますが、まだガイゾックもいますし外患は多いですわね。ついでに内憂も残っていますね。

 バスク派のティターンズにクロスボーン・バンガードとホワイトファングの連合。この三つの勢力は宇宙で小競り合いをしているようですけれど、ティターンズに関してはそろそろ息の根を止めてもよいのでは?

 素人考えですとグリプス2を占拠されているとはいえ、大した戦力も残っていないでしょうし、ルナツーかソロモンから戦力を派遣すればそれで方が付きそうなものに思えますけど』

 

「そこはジャミトフ閣下がけじめをつける為に動いているそうだよ。目的の為には手段を選ばないタイプだが、選んだ手段が間違いだったと認めているし、これ以上その間違いを放置し続けるわけにも行かないとお考えだろう。

 ソロモン鎮守府のアスワンやT3といった旧ティターンズのメンバーを主軸にした討伐部隊を編成すると聞いている。バスク派は腐ってもティターンズ、出来るだけ腕の立つパイロットはこちら側に引き込みたいね」

 

『不穏分子だとレッテルを貼りつけて行き場を奪った結果、テロに走られても困りますか』

 

「そういう事情だよ。それと人材はあって困る事がないってのも本当さ。そういう意味だとホワイトファングとクロスボーン・バンガードも困りものだよ。

 この窮地に独自の軍事力を持ってコロニー群を守り、スペースノイドの支持を得て戦後に地球連邦からの独立をと目論んだのかもしれないけれど、彼らの想定を超えて状況は混沌としている。今頃は時勢を見誤ったと後悔しているかもね」

 

 ヘイデスがスパロボ的展開だからなのか仕方ないと思っても、それにしても納得がいかない。彼らの戦力があったら、どれだけ余裕が持てた事か。三つの勢力を恨むように頭上を見上げるのを、彼は止められなかった。

 バスク派ティターンズもクロスボーン・バンガードもホワイトファングも、一応は地球人類であるし手心を加えて戦うべき相手だ。ここでいう手心とは、警告なしでの核兵器などの使用を指す。

 

 ヘイデスとしては、ティターンズの通常戦力よりもグリプス2が保有しているだろうコロニーレーザーが気掛かりだ。

 ホワイトファングは原作と違い月面のMD製造工場やリーブラを手に入れていないが、その代わりにウルカヌスを手に入れている。ウルカヌスの設備を利用して、今も新しいMDを製造しているに違いない。

 クロスボーン・バンガードも戦力増強に余念がない。相手もこちらも正面切って戦うつもりがないのが救いだが、彼らの勢力を放置して戦乱が終わるのもそれはそれで問題なのだから面倒な事この上ない。

 

(それに……クォヴレーと様子の変わったというシュメシとヘマーの問題だってある。シュメシとヘマーはハーディアスの呪詛を受け止めたっていうが、それがなにかのトリガーになって覚醒した?

 あの子達のことは疑うも何もないが、苦しむような事にならなければいいが……バサ帝国の狙いがあの子達となれば、護衛を兼ねてDCに所属させておくのが今は最良の判断か)

 

 次に打つべき手はなにか、ヘイデスは必死になって頭を巡らせる。ロボットに乗って戦うだけの技量はなく、念動力者や超能力者、野生の本能など持たないこの男に出来るのは財力と権力と人脈を使って、戦う者達をサポートする事だけなのだから。

 

 

 ヘイデスが頭痛を覚えていた頃、話題に上ったクロスボーン・バンガードの首魁であり、ロナ家当主のマイッツァー・ロナは中世貴族趣味を窺わせる絢爛たる部屋の一室で、ホワイトファングの指導者カーンズと何度目かの会談を行っていた。

 現状、コスモバビロニア建国を目指して蜂起した彼らは、予定通りに戦力を増強しているが勢力の拡大は予定通りに進んではいなかった。

 

「地球連邦は思ったよりも真摯にその役目を果たしているな」

 

 コスモ貴族主義をジオニズムに代わる新たなスペースノイドのムーブメントとしようという彼の目論見は、新代歴187年前後から目を覚ましたように行動を改めた地球連邦の動きによって遅滞を余儀なくされている。

 カーンズと袂を分かったコロニーの博士達も今は地球連邦に条件付きの協力体制を見せており、彼らを通じてコロニー独立運動家達にも地球連邦政府の体質の変化と今後の展望に関する期待が寄せられている。

 

 ホワイトファングの影の支援者であるバートン財団の支配者デキムの援助こそ続いているが、他の運動家達からの支援は途絶えてきている。

 かといって現状に変化を齎すべく地球連邦軍に戦いを挑むにしても、原作と違って腐敗する前にバリバリの武闘派にならざるを得なかった連邦政府と軍は、必死にスペースノイドもアースノイドも侵略者から守っている以上、戦いを挑んで勝利しても然したる支持は受けられない。

 加えて言えば両軍にはスーパーロボットは一機もありゃしないのだ。大型MAの開発やウルカヌスから接収したビルゴの改良発展型の開発や量産こそ進めているが、突出した『個』が少ない。連邦全軍と侵略者達の兵器を相手するには、更なる兵器の質を高める時間が必要だ。

 

「我々にとっては忌々しい限りです。しかし一年戦争以前のスペースノイドを植民地の奴隷扱いした歴史に変わりはないのです。例えこの戦乱を戦い抜いたとして、彼らの本質が変わるものではありません」

 

 カーンズは自分に背を向けて窓の外を見るマイッツァーに自分達の大義を説いた。彼の言う通り、これまで地球連邦政府がスペースノイドに強いてきた理不尽な仕打ちは消えてなくなったりはしない。

 だが同時に今の地球連邦政府がティターンズの台頭を許した、などの失態こそあれ侵略者達からの攻勢が強まるにつれて、腐っている場合じゃないとばかりに奮起しているのもまた事実。

 

 そして多くのスペースノイド達はこれまでの空気税や重力税といった課税見直しを計り、地球人類の守護者たらんと必死に働いている地球連邦政府を再評価しつつある。

 かつて暗殺された指導者ヒイロ・ユイの復讐を心の奥底で願っているカーンズや、コロニーを通じて地球の支配を目論むデキムにとっては、それが面白くない。

 

「しかし民衆とは明日の生活を第一に見るものだ。それゆえに我々の手が届かぬ者達は自らを庇護する者達だけに目を向けて、新たな地球と宇宙の思想を受け入れる余裕を持たない。

 コロニーの友邦を増やし、コスモ貴族主義の広がりとともにスペースノイドを人類の主流とするのには、我々の力はまだまだ足りない。何か一つ、人々の目に我らの輝きを映すような功績を上げる必要があるかもしれん」

 

 ゆくゆくは後継者にと考えたベラ・ロナはマイッツァーの手元になく、スペースノイドの守護者たらんとするクロスボーン・バンガードの活動もまた順風満帆ではない。

 地球連邦との戦力差は、あちらが本腰を入れれば敗北は必至な程だ。連邦が侵略者との戦いを優先しているからこそ、クロスボーン・バンガードとホワイトファングはサイド4を支配地域に収めていられる。

 

「ロナ公の御心に沿うように我らホワイトファングも死力を尽くしましょう。さしあたってはティターンズのグリプス2、そしてロームフェラの圧政の証であるバルジといった要塞群の攻略も成して御覧に入れます」

 

「吉報を期待しよう」

 

 そうしてカーンズが退室してからマイッツァーはひとりごちた。

 

「地球圏のこの有様では、人類の人口を十分の一にしろなどと命じずに済むのは、不幸中の幸いであるかもしれんな」

 

 老人は他人事のように無責任な言葉を口にした。

 

 

 タウ・リンはかつてジオン公国に所属し、ひょっとしたら初めて連邦のMSを撃墜したかもしれない優れたパイロットであり、戦略家である。

 金の鷹の眼を意味する名前のこの男は、過激派組織「ヌーベルエゥーゴ」の首魁であり、その手腕と相まって極めて危険なテロリストとして手配されている。

 この男の存在をどこで知ったか、バルマー・サイデリアル連合帝国宰相イングラムはスカウトし、エンツォを事実上更迭した後で真ジオン公国に招き入れていた。

 

 タウ・リンがメイファの身柄を狙ったのも、本物のミネバの可能性がある内の一人を手に入れんとした為である。そのタウ・リンは地球軌道上でタクナ並びにDCエゥーゴ組と交戦後、地上に降りて潜伏しようとしていたのが、その彼に牙を剥く厄介な敵がいた。

 地上降下に向けて準備を進めていたタウ・リンの部隊に、地球連邦軍の部隊が襲い掛かっていた。バサ帝国から供与されたメギロートとアクシズで生産したガザシリーズを展開し、タウ・リンもまたエゼキエルで出撃して戦っている。

 

「ところがぎっちょん!」

 

 四方から組みかかりに来たメギロートを、奇妙な声と共に振るわれたビームサーベルがことごとく斬り伏せる。地球連邦軍の部隊の中から突出してきた機体を狙わせたのだが、呆気なく返り討ちだ。

 

「ハハハハハ! 最高だなあ、ガンダムって玩具はよぉ!」

 

 血をぶちまけたような赤い塗装が施されたSガンダムのコックピットで、ゲイリー・ビアッジ大尉はこの上なく楽しそうに笑う。

 四機製造されたSガンダムの内の一機を依頼主から与えられたゲイリーは、機体のテストも兼ねてタウ・リン率いる真ジオンの部隊と交戦に突入していた。

 ヌーベルエゥーゴの開発した無人大型TMSヴォルテールやファントムが展開し、有人機の部下達に指示を飛ばすタウ・リンは、聞き覚えのある声と戦い方に獰猛な笑みを浮かべた。

 自分のような屑には相応しい屑が寄ってくるというわけだ!

 

「てめえか、戦争狂い!」

 

「そうよ、この俺よ! ええ、タウ・リン、久しぶりだなあ!」

 

「ち、とっととくたばってりゃいいものを。しぶとい奴だな、屑!」

 

 タウ・リンはエゼキエルに握らせた特注のビームライフルを乱れ撃ちながら、赤いSガンダムとその背後に続く連邦軍の部隊に素早く目を走らせる。そうして優秀なタウ・リンの頭脳はすぐに答えを導きだした。

 

「アナハイムの犬どもか。貴様の後ろの連中も真っ当な軍人じゃないな?」

 

「ご名答って言って欲しいか、ええ、金色の鷹の眼? 天下のアナハイムなんだぜ? 俺達のような奴らがいて当然じゃねえか!」

 

「は! んな事は分かっているんだよ、戦争屋。残念だったなあ、てめえの好きな戦争はもうこれ以上味わえんぜ。ここでくたばるからな!」

 

 天性の操縦技術と適応性に加え、強化人間でもあるタウ・リンは、与えられたエゼキエルの性能を完全に引き出している。一方でゲイリーもまた人間の域を超えた戦闘能力を見せて、最高の玩具であるSガンダムの性能を引き出し、エゼキエルと渡り合う。

 

「そうかい、そっくりそのままてめえに同じ言葉を返してやるよ! いけよ、インコム!」

 

 

 状況の変化に生き残りを図って必死になっていたのは、なにも地球人類ばかりではない。

 

「ではここにバーム、ベガ、ボアザン、キャンベルの同盟による銀河列強連合の結成を宣言する!」

 

 火星アルカディアを制圧したバームのオルバン大元帥は、秘匿回線越しにベガ大王、女帝ジャネラ、ド・ベルガンらに向けて高らかに宣言した。

 これはオルバンらバームを支配するバサ帝国にも通達済みの同盟であり、地球侵略後には彼らとの同盟を破棄して打倒するとラオデキヤとイングラムに伝えているが、もちろんそれは真実ではない。

 

 オルバンの真意はこの同盟によって邪魔な地球連邦軍とダイモスを排除し、その後にバサ帝国に反旗を翻して勝利するというものだ。

 オルバンとてこの同盟相手達を心から信頼しているわけではないが、それはお互い様だ。全員が自分達に都合の良いように相手を利用して、地球侵略を自分達の手で成さしめようと狙っている。

 

 ミケーネ、百鬼、妖魔帝国が新たな軍事同盟を結成したように宇宙からの侵略者達もまた地球のあまりの強さを前に、水面下で敵意を滾らせた軍事同盟を締結して新たな戦いの局面を迎えるのだった。

 なおベガ星は既に原作通りに崩壊した。

 

<続>

■オーガノイドシステムが考案されました。

 

■銀河列強連合(銀列連)が結成されました。

■タウ・リンが真ジオン公国に所属しました。

■ラオデキヤとイングラムはオルバンの翻意に……?

■ベガ星は崩壊しました。




ご感想お待ちしています。二年目突入前には終わる、かな?


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第六十二話 居るだけ参戦 居るだけ機体

今回も幕間的なお話です。
そうそうシン・エヴァを観てきました。
アスカ役の宮村優子さんですが、作者としてはスペクトラルフォースシリーズのヒロが一番に思い浮かびます。大魔王の娘が主人公というのは、当時は比較的珍しかったのではないかと思います。


ALICEを発見して周囲を囲んだ際のゼファー一族の反応

 

ゼファー

「…………」

 

デスザウラー

「……同類と思わしき存在を発見(`・ω・´)」

 

デススティンガー

「囲むじょい(/・ω・)/ ものどもであえ、であえ\(゜ロ\)(/ロ゜)/!」

 

ALICE(ゼファーギルベイダー、デスザウラー、デススティンガーに囲まれて)

「!?」

 

ゼファーテウルギスト×12

「おやおや、援護をする為とはいえ……」×4

「大きな体で急に周囲を取り囲んでしまっては……」×4

「あちらの方を驚かせてしまいますよ?」×4

「戦場にあるからこそ振る舞いには気を付けなければ。そう、品性、あるいは優雅と呼ばれるものを忘れてはなりません」×12

 

デスザウラー

(あの子達はちょっと変わっているなぁ。育った環境の違い(´・ω・)?)

 

デススティンガー

「ひんせい、ゆうが、おぼえた(●´ω`●)!」

 

ALICE

「あなたたち、なに?」

 

ゼファー

「……」

 

カインズ

「何が起きている? 援護しているだけではないようだが……」

 

エリシア

「しきりにSガンダムにセンサーを走らせています。ゼファーがなにかを感知したのでしょうか?」

 

リョウ・ルーツ(ゼファー達に囲まれ中)

「俺、ここで死ぬのか?」

 

*****

 

「なあ、クォヴレーはこのままDCに合流するのか?」

 

 エリュシオンベースの研究区画の通路を歩きながら、バンは少し前を歩くクォヴレーに話しかけた。クォヴレーは冷たい銀色の髪や切れ長の瞳と相まって冷淡な雰囲気の少年だが、何度か戦闘を共にしているバンに気後れする様子はない。

 バンと並んで歩いているフィーネにしてもそれは同じことで、バン達からすると彼はムゲに襲われていた自分達を助けてくれた恩人であるので、好感度が最初から高い。それに多少不愛想でもあれくらいの年頃なら、別に珍しくはない。

 

「それが命令だからな」

 

「ふーん、俺と大して年も違わないのに窮屈な生き方してんな」

 

「必要だからしている」

 

 クォヴレーとしてはここでバンを無視してもいいのだが、それでもかまわずバンとフィーネが話しかけてくるのを短い付き合いから学んでいる為、最低限の返事をすることで不要な労力を極力減らしている。

 

「私とバンもこのままDCに協力するわ。少しでも早く戦いが終わるように、出来る限りのことをするの。だからクォヴレーも一緒だと嬉しい。アーバインとデススティンガーとクォヴレーが私達にとって、最初の戦友だから」

 

「そうか。お前達はお前達の目的を果たす為に力を尽くせ」

 

「おう、言われるまでもねえ。おっと、ここだよな」

 

 バンは左右に分かれた通路にある案内板を見て、自分達の現在位置を確認する。

 

「お前達は所長に呼ばれているのだったな」

 

「ああ。俺達が乗ったシールドライガーは特別仕様だから、そのことで相談があるんだってよ」

 

「クォヴレーは機体の調整だったかしら?」

 

「そうだ。俺の機体はこの部隊の中ではさほど強力とは言えん。これからこの部隊が戦うと想定される状況や敵勢力の規模を考えれば、出来る限りのことをしておく必要がある」

 

「珍しい機体とか最新の機体ばっか集まっているんだろ、この部隊。ガンダムもたくさんあるっていうし、クォヴレーにもまた新しい機体が用意されるんじゃないか? じゃあ、俺達はこっちだから」

 

「またね、クォヴレー」

 

「ああ」

 

 クォヴレーは所長とトミイらの待つ部屋へと向かうバン達と別れ、量産型νガンダムを預けてある格納庫へと足を向ける。

 彼の乗る量産型νガンダムはれっきとしたアナハイム製で、パーツも純度百パーセントの地球圏内製造品だ。

 

 アナハイムがジェガンやジェムズガンが早くも性能不足を指摘され、ジャベリンも物足りないと言われるまで時間の問題だと焦り、次世代主力量産機の一つとしてアムロのνガンダムに目をつけて、再設計した代物である。

 先行して量産された一機をクォヴレーが受領した、というわけだ。オールドタイプ用に大気圏内でも使用可能に調整されたインコムを装備しているが、実際に戦闘で使用したクォヴレーとしては、あくまで補助として扱うのが妥当といった感想になる。

 

「……」

 

 無言で廊下を進むクォヴレーは、向こう側からこちらを見つけて笑顔で手を振ってくるアラドとゼオラを見つけて、かすかに眉根を寄せた。不愉快だったのか、苛立ちを表しているものか……。

 この世界においてα世界ほどの因縁はないにもかかわらず、並行宇宙の縁とでもいうのか、二人は同年代という事もあってかクォヴレーになにかと世話を焼きたがっていた。

 当のクォヴレーは表には出さずとも、迷惑に思っているようだったが。

 

 一方、クォヴレーと別れたバン達は途中で迎えに来た研究員と合流して、とある格納庫の一つに到着していた。

 そこにはマシンセル装甲など特別仕様のシールドライガーが固定され、またその足元には見慣れない成人男性よりも大きな白い恐竜ロボットが鎮座している。

 所長は灰色のツナギの上に白衣を纏い、長い髪を緩く巻いてまとめた出で立ちだった。整備の難しいスーパーロボットの修理を含め、大忙しの中で時間を見つけてこの場に居る。

 

「バン君、フィーネちゃん、良く来てくださいました。本来ならトミイ氏も同席するはずだったのですが、あの方は過労で倒れる兆候が見られたので睡眠カプセルに突っ込みました。不在を許してください」

 

「別に俺は構わねえけど所長さんも忙しいんだろ。大丈夫なのかよ?」

 

「私は特別頑丈ですからね。経験則からしてあと五日程度なら水さえ飲んでいれば、パフォーマンスは落ちません。さて、時間は貴重です。あなた達と親交を深めるのも有意義ですが、今日はこの子が主役ですからね」

 

 そういって所長は傍らの恐竜型ロボットの首筋を優しく撫でる。形状は大きく違うがアークゲインやゲシュペンスト・ファントムといった3~4mサイズの兵器を開発した経験が、この“オーガノイド”の機体開発に役立った。

 

「二人にお願いしていたこの子の名前、考えてくださいまして?」

 

 所長の問いにバンとフィーネはお互いの顔を見合わせて、心を通わすように頷いてから所長と向き合う。自分の子供でもおかしくない年頃の二人に、所長は優しい眼差しを向けて彼らの答えを待った。

 

「私とバンで話し合って決めました。ジーク。この子の名前はジークにします」

 

「ジーク、ええ、良い名前ですね。北欧の竜殺しを思わせる強い名前です。強く優しい子になってくれると願いたいですね。ではジークで登録、と」

 

 所長が左手に持っていた端末を操作して、ジークと特別製のAIに名前を登録して起動を促す。これまでテストを除けばバンとフィーネをサポートし続けてきたAIは、これからも彼らの支えとなり、力となり、そして最高の相棒となってくれると、そう所長は願った。

 唸り声のような駆動音の後、この世界初のオーガノイド・ジークの瞳に光が灯り、もたげていた首を持ち上げ、周囲に首を巡らせて視覚情報の取得を始める。そうしてすぐにバンとフィーネに視線を向けると金属製の足音を立てて一歩、二歩、と彼らに歩み寄る。

 

「ふむ」

 

 ジークはちょこちょこと歩き方を確かめるようなおぼつかない足取りでバンとフィーネに近寄り、鼻先を寄せるようにそっと首を突き出した。バンとフィーネはジークの見せる仕草に、揃って微笑みを浮かべて彼/彼女の鼻筋を撫でた。

 

(予想通りとはいえジークとあの子達の相性が良くてなによりですわね)

 

 所長はふう、という息と共に肩から力を抜く。

 シールドライガーに搭載していた特別製のAIを移植し、更にシールドライガーとの合体・変形機構を含めた端末の設計は中々に骨が折れたが、パイロットとの親和性が問われるオーガノイドシステムを活用する為の試験として、ジークのような端末の開発は必要な事だった。

 これから何機かはオーガノイドシステム前提の機体開発や、既存機の対応仕様への改造も行わなければなるまい。

 

「トミイさん、ここのところ忙殺の勢いですけれど、大丈夫かしら? 貴方達のことも多少影響があるのですけど」

 

 所長は、シールドライガーの右後ろ脚の影に隠れて、こちらを見ているゼファーハロ、同じくハロサイズのデスザウラー、デススティンガー、さらにゼファーテウルギスト十二機の入ったハロ達という異様な集団を呆れたように見て呟くのだった。

 トレーズの下で教育されたゼファータイプMDも、なんというか、面白い方向に成長している。どうにもゼファー一族は、この世界ではそれぞれが面白進化を遂げる宿命にあるらしい。

 

 

 ところは変わってアナハイムのフォン・ブラウン支社。次世代MS開発を命じられた各部署の主要メンバーが一堂に会した会議室では、沈痛な空気が流れていた。あるいは空気が淀んでいたと表現してもいい。

 以前、ヒュッケバインや初のプルート財閥系ガンダムのガンダムデュラクシールの情報が共有された時にも、このような沈痛な空気が出来上がったものだが、今回もその時に勝るとも劣らない痛ましさである。

 誰か何か言えよ、という嫌な譲り合いの空気の中で口火を切ったのは年かさの男性だ。縮れた髪こそ白くなっているが、恰幅が良く健康的な肌つやをしており、あまり技術者らしくない。天敵は生活習慣病だろう。

 

「皆、既にヘパイストスラボが次期主力量産機として開発したゲシュペンストMk-ⅢとバルゴラCSのデータが回ったと思う。それを踏まえてわが社が次に開発すべき機体の共通目的を設定するべく本会議が開かれた。そこは皆、分かっている事と思う」

 

 オウカらグランド・スター小隊で試験運用され、改良の加えられたバルゴラGSだが、正式に連邦軍に提出されるにあたり、所長が「バルゴラGSはあの子達の機体の名前なのでこちらは名前を変えるべきです」と主張し、正式な量産機としての名称はバルゴラ・セレスティアル・スターとなり、略称としてバルゴラCSとなっている。

 とはいえ基本的な仕様は現在ラトゥーニの使っているバルゴラGSとほぼ変わりはないので、ゲシュペンストMk-Ⅲと肩を並べる高性能量産機である。

 

「かたやブラックホールエンジンから派生した縮退炉、かたやスーパーロボットのメイン動力に使えそうなDエクストラクターで動く“量産機”。ワンオフとか、せめて少数のエース用とかならともかく……量産機か。本当に量産機?」

 

 ちなみにゲシュペンストMk-Ⅲの縮退炉は、後々バージョンアップを重ねて将来的にターンタイプに二基搭載予定の代物だ。流石にバスターマシンクラスの出力を持つ縮退炉は、まだ作れていない。

 シズラーやガンバスターが作れるようになったら、地球型惑星程度なら簡単に破壊できるレベルの機動兵器が開発される時代の到来となるだろう。あそこまでゆくと、コロニーレーザーやジェネシス級の破壊力が、機動兵器の一武装レベルにまで落ち込む。

 

「量産機ですって。スーパーロボット関係の技術がこれでもかと投入されているわね」

 

「我々には未知の領域だな。超電磁コーティングあたりはマグネットコーティングの発展技術だから扱えるが、精神力をエネルギーに変換するサイ・コンバーターとか、腕部のグレートマジンガー系の発電装置なんかはお手上げだぞ」

 

 サイコフレームやバイオセンサーを作っておいて、その言い草はないだろうと宇宙世紀のガンダムが引き起こした現象を知っている者なら指摘するところだが、それを指摘する者はこの場に居なかった。

 

「数万機単位での量産を想定しているらしいぞ」

 

「えぇ? ……これを万単位で? なにと戦うつもりなのあの人達?」

 

「まだ見ぬ宇宙人と異世界人。地球人相手じゃないだけマシと考えるべきか、こんなのが必要な相手が出てくるかもしれないと想定している危機感に呆れればいいのか……」

 

「これから更に侵略者の追加が来るかもしれないし、むしろ当然、なのか? 一年未満で片手じゃ余る敵勢力が出現しているんだ」

 

「我々も未知の宇宙人相手にも通じる機体を作らにゃならんぞ。どうする?」

 

「ジェガンの陳腐化のあまりの早さに驚いていたのが、遠い昔のようですね。……ハハ」

 

「ロームフェラのビルゴもガンダニュウム合金の装甲に高出力のビームキャノン、PD装備でかなりのものでしたが、ヘパ研のこの二機は多少コストがかかるとはいえ性能が高すぎますよ! なんですか、これは!」

 

 GP計画、Z計画、νガンダム関係者、フォーミュラープロジェクト関係者といった面々が顔を突き合わせる中で、彼らの共通認識はヘパ研はやり過ぎだ、とか未来を生きている、といった驚きを通り越した呆れが大きい。

 一年戦争から十年と経たずにジェガンやジェムズガン、ジャベリンという傑作を次々と輩出したアナハイム技術陣をして、ヘパ研の技術力はパンドラボックスありきとはいえ異質にして異常極まりない。

 原作より数十年早く新型機を送り出しているアナハイムとて、おかしいのだけれども。

 

「サナリィの連中も頭を抱えているんじゃないのか?」

 

 厳しい現実を見るのが嫌で、同じくライバルであるサナリィの事を口にする者もいたが、あちらの方がこちらよりマシだと別のスタッフが口を挟む。

 

「だがサナリィにはテム・レイ博士がいる。それにヘパ研とプルート財閥との関係が良好なのは周知だろう。あっちは我々と違ってプルート財閥にとって競合企業じゃないからな」

 

「アムロ・レイが我々と協力して、RFガンダムやνガンダムを作ってくれたのがせめてもの救いか。グラナダ支社はハマーン・カーンら真ジオンからの離反組と協力しているのだったか?」

 

「ええ。あちらはギラなんとかという機体を開発しているようです。当初はジェガン相当のスペックを目指したようですが、それでは時代遅れと設定目標を変更して悪戦苦闘しているようですよ。それと大型MAの開発にも力を入れているとか」

 

 つまりハマーンとシャアがそれぞれ率いたネオジオン製のMS・MAが、グラナダと茨の園で開発中というわけである。

 それはそれとして、そりゃ悪戦苦闘するよ、だって私らだって悪戦苦闘しているもの、とフォン・ブラウン支社の面々はそろって思ったことだろう。

 

「ではサナリィの方は? やはりF91関連の機体が目玉か?」

 

「どうやらF91をほぼそのまま、量産機として運用する計画を提出したようだ。あの機体なら火力も運動性も申し分ない」

 

「ウチの量産型νガンダムと似たような発想か……。残念ながらZ計画の機体は主力量産機にはなり得んからな。可変機としてはかなりいい線を行っているが、やはり少数生産止まりだし」

 

 ZプラスやΖ>、リゼルなどは発注が来ているが、ミノフスキークラフト搭載MSが早々に登場したこの世界では、TMSの需要というものは今一つなのだ。

 

「現代のMSはミノフスキークラフトが標準装備ですし、大気圏内となるとモビルゾイドの空戦機の性能が高いですからね。それにMSはもちろんですがスーパーロボットに相当する一騎当千の兵器も必要とされています。

 これに関してはSRG計画で、各スーパーロボットのノウハウを持つヘパ研に何歩も先を行かれているのが現状です」

 

「一応、ZZ系列のジークフリートがスーパーロボット代わりに配備が進んではいるが、アレに満足していては今後の開発競争に置いて行かれるのは間違いない」

 

「ZZの系列機としてシータプラスとメガゼータが開発中です。どちらもピーキーな機体ですが、スーパーロボット相当と考えれば問題の無い範疇です。メガゼータの出力はZZのゆうに二倍がありますし、シータプラスも並みのMS一個中隊相当の戦力です」

 

「そうか、そうなるとこれらの機体のノウハウを活かしつつ、ガンダムデュラクシールやサイコガンダムのように機体を大型化させれば、出力向上を見込めるし質量を活かした格闘戦にも対応した機体が作れるかもしれん。

 スーパーロボットに使われているトンチキ技術に頼らなくても、従来のMSやMAの技術でスーパーロボットを作ってみせようじゃないか」

 

 彼ら自身、えらいハードルの高い事を言っている自覚はあったが、そう言わざるを得ないのが昨今の地球圏の軍事兵器開発業界なのである。今時珍しい本当にただの眼鏡をかけた小柄な女性が小さく手を上げて、意見を口にした。

 

「あの~デスザウラーやデススティンガーみたいな機体も開発するんですか?」

 

「…………………………」

 

 しん、とそれまでざわめきや意見を交わす声に満ちていた部屋が、一瞬で静かになる。発言した女性もこうなると分かってはいたが、言わなければならないと心を鬼にしての発言である。

 痛々しい沈黙を齎した責任を取るように女性は発言を続ける。

 これまでアナハイムが開発してきた機体の中で、デスザウラー達のような頭のネジが何個も外れて、その代わりになにか嵌めてはいけないパーツを嵌めて開発した代物はほとんどなかったが、強いて言えば近しいものを見つけていた。

 

「あれらはもはやスーパーロボットの範疇を越えた戦略兵器の域に達した大型機ですが、わが社のこれまでのデータを漁り、対抗馬になりそうなものを見つけました。

 ガンダム試作三号機とアームド・ベース“オーキス”、またSガンダムの強化プランの一つディープ・ストライカーを更に洗練し、強化改修すれば我々でも開発は可能と提言します」

 

 洗練とはいうがあるいはもっと頭の悪い機体を作れば、対抗は可能かもしれない。

 

「検討に値する意見だ。ただメガゼータの話でもそうだったが、今回の議題の本命は我々が開発するべき次世代主力機についてだ。価値のある意見だが、一旦その話は横に置いておこう」

 

「はい。失礼しました。……そういえばDCにアナハイムとビスト財団の関係者が合流したと耳にしましたが、なにか有益な情報は得られているのですか?」

 

 要するに産業スパイめいた真似はしているのか? という問いにメンバーの一人が首を横に振りながら答えた。

 

「いや、なにしろ実戦に参加させられていてそれどころではないらしい。MSでの戦闘などまるで考えていなかったのに、そうする必要が出たのだから無理もない。

 それに戦闘を補助するという名目で監視が付けられているようだから、迂闊な真似は出来ん。ヘパ研の情報を入手するには、従来通りの方法しかないだろう」

 

 従来通りとは産業スパイや地球連邦高官への賄賂等々だ。仮にアナハイムがヘパ研の情報を違法な手段で入手したとして、それに値する強力な機体を開発できればヘイデスと所長はある程度は見て見ぬ振りもするだろう。もちろん戦後の報復は忘れないぞ!

 

「十中八九、量産型νガンダムでもまだ足りん。それこそSガンダムや本家νガンダムクラスの性能を維持しつつ、汎用性と整備性、量産性を兼ね備えた機体でなければこれからの地球連邦軍で、主力機の座を担うことはできないだろう。

 ライバルは極めて強大だが、我々アナハイムもまた太陽系最大の企業だ。その自負を持って新世代の機体開発に邁進して行こう。アナハイムの栄達が我々の栄達でもあるのだから」

 

 世間では死の商人の筆頭とも語られるアナハイムであるが、そこに所属する技術者達の知識と技術力は紛れもなく本物だ。それは彼らがこれまで開発した機体が証明している。

 彼らの技術力と圧倒的な生産力は、これからの地球圏に欠かせないものなのだ。ただ首から上か、あるいは中身を入れ替えてやろうと、そう考える者が少なくない程度には多方面から恨みを買っているのもアナハイムらしさだが。

 

◇◇ボーナスシナリオ 第三十六・五話 春の機体開発祭り◇◇

 

 月でアナハイムの人々が次期主力量産機の話をしていた頃、束の間の休息が訪れたエリュシオンベースでは、多数のエースとベテランパイロット達が居るのをいい事にパンドラボックスから得られた多次元世界の技術を用いた技術検証機のテストを頻繁に繰り返していた。

 機体の限界を試すような機動や戦闘を想定したテストは、やはりエースやベテランでなければそうそう行えず、金や宝石よりも貴重なデータを得るにはうってつけなのだ。

 さながらかつてのプロメテウスプロジェクトの再演のような状況であった。

 

 クワトロはガンダムヴァサーゴに、アムロがガンダムアシュタロン、カミーユはガンダムエアマスター、ジュドーはガンダムレオパルドへ乗り込み、まだ経験値の低いシーブックやバナージ、アルベルトは元の乗機のまま訓練に参加。

 コロニーのガンダムパイロット達にも協力が要請されて、ヒイロはストライク、デュオはブリッツ、カトルはイージス、トロワはバスター、五飛はデュエルのテストを担当している。

 

ガンダムSEED系の機体が技術検証の為に開発されたのは、万が一木星と地球間の航路を押さえられ、ヘリウム3の供給が断たれた事態を想定し、備えとしてバッテリー駆動機の開発が提案されたからである。

 いくら万全の状況が用意され、優秀だがクセのある人材が揃っているとはいえ、パンドラボックスがなければこうも短期間で開発は出来なかったろう。

 また同じ理由でガソリンエンジン駆動のウォーカーマシン(以下WM)も開発されており、兜甲児がザブングルを、鉄也がブラッカリィを、ボス・ヌケ・ムチャはガラバゴスに乗り込んで好き放題に走り回っている。

 

 WM系列の技術では、他にも百メートル越えのスーパーロボット兼用陸上戦艦アイアン・ギアー級の建造も計画されている。

 戦艦としては二百メートルに満たない小型艦だが、ビッグ・トレーやダブデに代わる新型陸上艦候補として、また不測の事態にはスーパーロボットとして運用するというコンセプトがある。

 

 こういった新型機の中でも特異なのは、どことなく昆虫を思わせるデザインの10m未満の空飛ぶ機体だろう。三機が開発されたソレらは、ミナーゴ・ロッシーノ・トミノが開発した生体エネルギーをメイン動力とする新系列の機動兵器である。

 ソウルゲインとダンクーガのテクノロジーを応用・発展させたサイ・コンバーターを更に改良したオーラコンバーターを搭載し、ヴァルシオー二号機にも使っている人工筋肉といった有機的なパーツを多用した機体は、オーラバトラーと呼ばれ、大地を疾駆するナイトメアフレームとは対照的に空中を主戦場とする小型機である。

 

 カラーリングの異なるオーラバトラー“試作型ダンバイン”には、新ゲッターチームの竜馬、隼人、弁慶が乗り込んでいる。

 生命エネルギーという意味では獣戦機隊もテストパイロット候補だったのだが、彼らはサンクキングダムでも大暴れした事から長めの休息を言い渡されていた為、エリュシオンベース内のスパやトレーニング施設を利用中だ。

 

 パイロットの生体エネルギー次第で性能が向上するという特性を、ダンクーガ以上に前面に押し出したオーラバトラーシリーズは、技量以外の面をパイロットに強く求めるという個性派の機体だ。

 生体兵器としての一面が濃く、例えば生体兵器以外は機能が停止・抑制されるような環境では頼りになる。そういった場面がある事を、スパロボだけでなくスクランブルコマンダーシリーズを嗜んでいたヘイデスは知っていた。

 

 いつまで経っても油断できないこのスパロボ時空の中で、ヘイデスはどうにかハッピーエンドを迎えるべく、それこそ隠しフラグをすべて立ててスパロボマジックによる原作死者救済を、手の届く範囲で成し遂げる覚悟で日々を邁進している。

 敵勢力のほとんどは続編の勢力下、あるいは初期幹部の交代が終わっている。それぞれの原作における折り返し地点を過ぎたと言っていいだろう。

 だからこそ地球人絶滅だとか地球破壊だとか、そういった当初の侵略目的を忘れた行為に出る可能性や敵勢力の同盟といった事態があり得る。

 ヘイデスが明日を悩まずに眠りに就ける日は、まだまだ見通せない闇の彼方にあるのだった。

 

<続>

■オーガノイド・ジークが誕生しました。

■ガンダムヴァサーゴが開発されました。

■ガンダムアシュタロンが開発されました。

■ガンダムエアマスターが開発されました。

■ガンダムレオパルドが開発されました。

■コルレルが開発されました。

■ブリトヴァが開発されました。

■ガブルが開発されました。

■デュエルガンダムが開発されました。

■バスターガンダムが開発されました。

■イージスガンダムが開発されました。

■ブリッツガンダムが開発されました。

■ストライクガンダムが開発されました。

■ザブングルが開発されました。

■ブラッカリィが開発されました。

■ガラバゴスが開発されました。

■試作型ダンバイン(聖戦士伝説より)が開発されました。




なおダンバイン原作と魔装機神シリーズのキャラクターは登場する予定はありませんあとGガンダム勢やガンダムX、ガンダムAGEなどもですね。スパロボZシリーズに登場した機体なら登場する可能性はありって感じです。オーラバトラーに関しては、こう、閃き?

デンドロビウム×ディープ・ストライカーならきっと素敵な機体が出来ると思うのです。運用コストは考えないものとして。

追記
バルゴラSS → バルゴラCS に修正いたしました。お恥ずかしい限り(;^ω^)


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第六十三話 当たって砕けたるわい!

「それにしても五飛が今回のテストを引き受けたのは、意外でしたね」

 

 そう発言したのはイージスを操るカトルだ。カトルを含むコロニーのガンダムパイロット達は、ヘパ研の開発したCE系ガンダムのテストを委ねられ、ヴァサーゴやアシュタロン、エアマスターやレオパルドに乗ったアムロ達を相手に軽めの模擬戦中である。

 エリュシオンベースから少し離れた場所で、模擬戦中の流れ弾による事故を防ぐ為にリング状のEフィールドが展開されている。Gガンダムの地球を覆うリングや白面の者を閉じ込めた結界をイメージすれば概ね間違いない。

 アサルトシュラウドを装備したデュエルを預けられた五飛は、そういう質問が来ると分かっていたからか、特に不機嫌になる様子もなく淡々と答える。

 

「ヘイデス総帥には色々と借りがある。それだけだ」

 

 例えば故郷のコロニーがOZに襲撃された時、それを防ぐ為に動いたアレスコーポレーションの秘匿部隊や資金確保の為に手放した一族の秘宝を返却された件など、ヘイデスが借りと思っていない案件のことだ。

 既にアルトロンガンダムを手にした五飛が、彼専用の予備機として持ってきたトールギス始龍(シロン)に乗るでもなく、デュエルに乗っているのはその借りを返すという意識があるからに他ならない。

 

 五飛の言う“借り”の詳細までは語らないと分かっていたので、カトルはそれ以上追求しなかった。

 借りという点で言えば自分も同じようなものだ。コロニーがOZとの歩み寄りを見せて、自分達の戦う意味を見失った時、カトルは一度故郷のコロニーに戻っている。

 そうしてサンドロックと共に戻った故郷でこれから進むべき道に迷い、悩んでいる時にベガ星連合軍が襲い掛かってきたのだ。地球の侵略とグレンダイザー撃破が上手くいかない為、コロニーを制圧して外堀を埋めようとしてきたのである。

 

 奮闘するコロニー駐留艦隊がじりじりと押される中、見かねて出撃したカトルだったが地上戦仕様のサンドロックではまともに戦えず、故郷が蹂躙される未来に絶望した。

 そこを救ったのがアレスコーポレーション所属の部隊、そしてOZに潜入してヴァイエイトとメリクリウスのテストパイロットをしていたヒイロとトロワだった。

 彼らの協力によって、この時のベガ軍の撃退に成功している。

 

 皮肉にもこの事件によって、カトルは改めて故郷の人々を含め侵略者の魔の手から力なき人々を守ることに意義を見出し、ガンダム開発者の博士達と共にサンドロックの改修とウイングゼロの建造に着手したのである。

 この世界では、これにデュオや五飛も一枚噛んで、晴れてデスサイズヘル、アルトロン、ヘビーアームズ改、サンドロック改、設計図のみだったウイングゼロが誕生したわけだ。

 もっともウイングゼロを巡っては、どこからか情報をかぎつけてきたティターンズと一戦交え、エゥーゴ艦隊と合流する流れとなったのだから、何が功を成すか分からないものだ。

 

 そういうわけで間接的にではあるが、カトルもまた故郷を守ってもらったという点において、プルート財閥ひいてはヘイデスに借りがあると思っている。

 あの時の戦いで、OZとロームフェラ財団が見せかけではない本気での、コロニーひいてはスペースノイドとの関係改善を望んでいるのが分かったのも幸運であった。

 

(ヘイデス総帥は不思議な人だ。以前から財閥同士の付き合いはあったけれど、一年戦争が終わってからは未来が見えているかのように色んな手を打っている。

 その時には無駄としか思えない事も後になって、ベストかベターの手になるのだから。あの人の見ている未来が一体なんなのか気になるけれど、それを知る事が恐ろしくもある)

 

「カトル、意識が散漫になっているぞ!」

 

「クワトロ大尉!」

 

 おそらくこの世界がゲームだったら、まだプレイヤーから黒幕疑惑を向けられていそうなヘイデスにカトルが意識を割いた一瞬を狙い、ヴァサーゴに乗ったクワトロがクロービーム砲を連射してきたのだ。

 模擬戦であるから実際にビームを発射しているわけではなく、コンピューターがモニターに再現したCGであり、振動や音も再現したものだ。命中判定後の被害計算によって機体にロックがかかる仕組みである。

 

 カトルとて、宇宙の心を感知する繊細な感受性と非常に優れた技量のパイロット。隙を突かれたとはいえ、アンチビームコーティングを施したシールドで受けつつ、多角的に襲い来るビームを直撃無しで回避に成功する。

 カトルの顔に余裕はない。模擬戦とはいえ、彼らが相対しているのは人類最強のMSパイロット二人と、次世代ニュータイプパイロットの星たる二人なのだから。

 イージスからの反撃のビームを、クワトロはヴァサーゴの優れた運動性を十二分に発揮させて、ひらりひらりと回避する。ビームの粒子が装甲に触れないギリギリの回避は神技に近い。

 

「ガンダムとは思い難い外見だったが、性能は流石に折り紙付きだな」

 

 クワトロのヴァサーゴとアムロのアシュタロンは、既存のガンダムタイプと比べると尖ったデザインをしており、初見時には少し驚いたものだ。まあ、スーパーロボットやゾイドを見慣れた今となっては、そこまで驚くほどでもないかと思うけれど。

 伸縮する腕や腹部に仕込まれた大火力のメガソニック砲など、意欲的な装備を搭載した機体はいかにも魔窟のヘパ研らしい。

 

「! デュオか」

 

 左後方から感じる敵意に、クワトロは思考よりも早く肉体が動いてヴァサーゴをその場から退避させる。わずかに遅れてヴァサーゴの居た空間を、細長い杭とも槍とも見える三本の物体が通過した。

 

「そこだ!」

 

 クワトロはモニターにはなにも映っていない空間へクロービーム砲を撃ち込み、その直前に蜃気楼のように空間が揺らぎ、黒い装甲のガンダムが姿を見せて、慌てて回避運動に入る。

 デュオが乗り込んだブリッツガンダムだ。彼本来の愛機であるデスサイズヘルとは異なり、光学迷彩の施されたブリッツの位置を正確に把握するあたりは、流石のニュータイプ、加えて歴戦の猛者が実戦で培ったカンもあるだろう。

 

「くそ、熱センサーと振動センサーに感知されないよう神経尖らせてたってのに、これだからニュータイプは!」

 

 ビームの熱探知を考慮して、実体弾のランサーダートを使ったのだが、結果は御覧の通りである。デュオは電子・光学迷彩による奇襲の選択肢を破棄し、カトルと組んでヴァサーゴを抑え込みにかかる。

 トロワとジュドーは互いに重火力機同士の撃ち合いを展開している。

 ヘビーアームズに比べて火器の種類が少なく、ミサイルやマシンキャノンではなく腰部のランチャー二基がメインウェポンのバスターに対し、全身にミサイルから機関砲からグレネードと弾薬庫めいた武装のレオパルドの撃ち合いである。

 

「レオパルドの方がヘビーアームズっぽいよね、どっちかというとさ!」

 

 ジュドーはZZと比べると流石に鈍重なレオパルドを乗りこなし、左腕を収納した長大な砲身を持つインナーアームガトリングでビームの弾丸をバラまいている。

 PS装甲による実弾に対する絶対的な防御性という優位こそあれ、バッテリー駆動ゆえの継戦能力と出力の低さという不利がバスターにある。

 それでもトロワは類まれなる操縦技術を持って、ガンランチャーとライフルを使い分けてレオパルドを釘づけにしている。

 

「否定は出来んな」

 

 レオパルドの放った各種ミサイルを、バスターの両肩の六連ミサイルポッドで迎撃し、トロワはジュドーに静かな同意の言葉を発した。

 カトルが随時戦闘と並行して指揮をする中、彼を悩ませたのはMAとMS形態を使い分けて戦場を引っ掻き回すアムロのアシュタロンだ。

 

 モノアイとデザインによってジオン製MAに見えるアシュタロンを、アムロはかつて自分が戦ったMAを思い出しながら操っていた。ビグロは参考に、ザクレロは反面教師に!

 これにカミーユのエアマスターも加わってあちらこちらからビームの雨を降らしてくるのだから、厄介極まりない。

 

「ターゲットロック、発射」

 

 その名の通りに空を飛ぶエアマスターを襲ったのは、ランチャーストライカーを装備したストライクからの砲撃だ。“アグニ”と火の神の名を与えられた火砲は、青空の彼方までも貫く。

 

「そこ!」

 

 ファイターモードからMS形態へ素早く変形したエアマスターは、両手に持ったバスターライフルの連射を地面のストライクへ叩き込む。ヒイロは既にアグニを発射し終えた時点で巨砲を手放し、ランチャーストライカーをパージしていた。

 模擬戦区域の中に持ち込まれているストライカー射出装置から、赤い翼とブースターで構成されるエールストライカーが射出されて、ストライクの背部に接続。エールストライクは一気に加速し、ビームライフルを手にエアマスターへと向けて勢いよく飛び立つ。

 

 七トンに満たない超軽量級機体であるエアマスターを、十倍以上の重量を持つエールストライクが追いかける。

 CE系にしろX系にしろ、ヘパ研製であることからこのクロスオーバー時空ならではの技術で設計・開発がなされており、ミノフスキークラフトの搭載や超電磁コーティング、サイ・コンバーターの搭載などは当たり前に行われている。

 それでもこの重量差は、空中戦では大きなハンディキャップと言えるだろう。

 

 Zガンダムに比べればシンプルな変形機構に大気圏内運用の適性が高い形状のエアマスターを相手に、エールストライクが速度で競う真似をしても勝負にはならない。

 人型のまま空を飛ぶことを活かして小回りや旋回性能、大気圏内AMBAC機動でどこまでカバーできるのか。技術検証機のテストとしては十二分な内容の模擬戦となるに違いない。

 

 

 ガンダムタイプ同士の模擬戦が行われているのとはまた別の地域では、シーブック、バナージ、アルベルト、デフにシド、トキオやリョウ、セシリー、タクナなどなど、DCエゥーゴ組に合流した新人達が集められていた。

 DC参加者としては新人と、本当に機動兵器パイロットとしては新人が混在している編成だ。X系MSのコルレル、ガブル、ブリトヴァも居て、これにはプル、プルツー、マリーダがそれぞれ乗り込んでいる。

 

 そんな彼らの前にはキョウスケのゴジュラスギガとエクセレンのサラマンダーにロングレンジバスターキャノンを装備したマーキュリー、そしてジェノザウラーとサックスティンガーの姿がある。

 ジェノザウラーは全高23.4m、全長46m、サックスティンガーは全高21.6m、全長40mと原作の倍の巨体でその他のゾイド系列機の例に倣っている。

 凄まじい威圧感のゴジュラスギガとジェノザウラー、サックスティンガーを前にした時点でデフやシーブックらの頭の中では警鐘が乱打されている。

 

「はぁい、子猫ちゃん達。これからスイートティーチャー・エクセレンお姉さまとアイアンフェイスティーチャー・キョウスケお兄さんによるホットでスパイシーでデンジャラスなレッスンの始まりよ~」

 

 い~い笑顔を浮かべるエクセレンに、軍人嫌いのデフを含め、レッスン組の誰もがこの人は本当に軍人なのかと疑問を抱いた。こんなんでもOGの方ではトップエースの逸材であるし、有能なのは疑いようもない。

 相方のキョウスケお兄さんの深い溜息の後に、至って真面目な口調で今回のレッスンの目的が語られた。

 

「これから俺達を侵略者達の使用する巨大兵器と仮想した模擬戦を行う。オペレーション・レコンキスタで敵戦力を大幅に減らしたが、その分、奴らも次から決戦の意気込みで戦いを挑んでくるだろう。

 その前に比較的、準スーパーロボットとの交戦経験が少ないお前達を慣らしておくのが、今回の模擬戦の狙いだ」

 

 そんなわけでティーチャー側のラインナップが威圧感マシマシの面子となったのだが、確かにそういった目的で行うのならば、適切な機体と言えるだろう。

 対メカザウルスから始まったゾイド系列機の外見と性能は、高性能機なら準スーパーロボットからスーパーロボットの域に達する迫力と性能を誇る。

 

 これからの戦いを考えれば、この模擬戦の意義は十分に理解できるのだが、それはそれとしてちょっと待ったと言いたくなるのも人情である。

 口火を切ったのはアルベルトだ。普段は操縦を補助してくれるマリーダが今はブリトヴァに乗っているので余計に不安が煽られて、文句を言わずにはいられなかったのだろう。

 

「ちょっと待ってくれたまえ、アイアンフェイスティーチャー!」

 

 キョウスケをそんな風に呼ぶあたり、意外と順応性が高いのかもしれない。

 

「ナンブ中尉と呼んでくれ」

 

「分かった。ではナンブ中尉。言い分は分かる。エイリアンのセンスで作られた兵器を想定して慣れておくのは、確かに重要だとも。だがな、しかしな、もう少し手心を加えてくれてもいいと思うのだが!? いきなりハードルが高すぎやしないか?

 私なんかMSに乗って一カ月と経っていないんだぞ、キミィ! バナージやシーブック、セシリー嬢も同じだ。

 いくら機体が扱いやすくできているからって、殻の取れていないヒヨコを相手に過剰戦力過ぎだろう。バナージ、君だって言いたいことはあるんじゃないのか!?」

 

 アルベルトに話を振られたバナージは咄嗟に言葉が出なかったが、アルベルトの言い分は分からないでもない。正直、目の前に並ぶゾイドの威圧感はパイロット込みでとんでもないものがある。

 

「アルベルトさんの言う事も分かります。実戦では甘えた事は言えないっていうのも分かってますけど、それでも、やっぱり緊張するというか……」

 

「だろう!? 百歩譲ってナンブ中尉とブロウニング中尉はよしとして、そちらの小さな、いや、小さくはないのだがデスザウラーとデススティンガーはなにかね!?」

 

「それは俺も気になっていた。小さくないけど小さいその機体は?」

 

 Vタイプのミッションパックを装備したF90から、デフが至極当然の疑問を口にするとネオガンダムのトキオも声を揃えて質問する。

 軍人嫌いでサナリィから出向しているデフと左遷されたとはいえ軍人のトキオだが、所属元や機体の因縁はあるものの、現場で生死を共に預け合っている間柄とあって、険悪な関係ではない。

 

「俺も。十分大きいけれど、デスザウラー達の戦いぶりを知っていると、どうしても気になるな」

 

「エクセレンお姉さんが教えてあげるわん。こっちの小さなザウラーちゃんがジェノザウラー、あっちの小さなスティンガーちゃんがサックスティンガー。

 デスデスコンビを通常のゾイドサイズで再設計した機体だそうよ。遠隔操作で動かしているのは本家ザウラーちゃんとスティンガーちゃんよ」

 

 エクセレンの紹介に合わせてデスザウラーinジェノザウラーは、短い前脚? 手? を動かしてシャドーボクシングの動作を真似し、デススティンガーinサックスティンガーは反復横跳びしてやる気を見せている。カサカサと微妙に気持ち悪い動きだ。

 やる気のある二機とエクセレンはそれでよくとも、戦わなければならないシーブックやタクナからするとたまったものではない。

 十分の一近くにまで小型化されているとはいえ、デスザウラーとデススティンガー相手となると、いくらこちらの数が多くても勝てる気がしない。だからこそまだスーパーロボット系の敵との戦いに慣れていないシーブックらを鍛えるのには、最適なわけだが。

 

 そんな彼らの頭上ではリディや豹馬やバトルチームに健一達ボルトチームがVF-01Aに搭乗し、三つの形態に変形を繰り返しながらテストを重ねている。

 バルキリー乗りは総じてエリートパイロットだが、これまでの機動兵器開発で培った操縦補助技術の数々により、バトル・ボルトマシン以外には搭乗経験のない大作や小介らといったメンバーも操縦できている。

 

 そのまた一方では試作型ダンバインに乗った竜馬、隼人、弁慶を相手にオーラバトラー一号機ゲドに乗った達人、ダンバインに乗ったミチル、サーバインに乗った武蔵が大雪山おろしの伝授や運動性や速度のテスト、あるいはオーラソードを抜いての斬り合いを演じている。

 オーラバトラーの傑作量産機と言えば最終決戦まで現役だったドラムロだが、果たしてこの世界ではどの機体が量産されるのか?

 

 主力級の量産機となるとドラムロ、ビアレス、レプラカーン、あるいはボゾン、ボチューン、リの国のアルダムという選択肢もある。高級量産機としてライネックやズワース、ゼルバインといった選択肢もある。

 希少な機体という意味ではギトールやガドラム、ヴェルビン、ズワウス、あるいはブブリィやガラバもいつかは開発されるかもしれない。そこまで必要されるかどうかは、また話が別だが。

 

 

「F90のミッションパックしかり、ストライカーシステムしかり、機体をベースとして換装による機体特性の変化を持たせるのは、昨今の流行りか?」

 

 義手義眼の老科学者が、胴体だけになってトレーラーの上に固定されているジェミナスと周囲の換装ユニットを見回しながら感情の籠らぬ感想を零した。

 その他にも茸のような髪型に長い鼻の老人、瘦身の体躯に逆立った髪に鼻当てが特徴的な老人、ピンと尖った髭と丁寧に整えた黒髪が目を引く老人、寡黙な雰囲気を放つ禿頭の巨漢の老人、さらにハワードといったW系マッドサイエンティストが結集している。

 

「これだけの機体を開発するとはな。MO-Vの技術力も侮れん」

 

「開発者はドクターペルゲか。……偽名か?」

 

「わしらも似たようなもんじゃろう。だがMO-Vか。マーク某という腕のいいエンジニアが居たコロニーではなかったか?」

 

「ああ、確か宇宙船用の新型エンジンを開発していたとか。もし生きておれば現代の宇宙船は更に優れたものとなっておったろうな」

 

「一年戦争で利用されるだけで終わったかもしれんがな。わしらと違ってまともな神経の持ち主だったら、気に病んだかもしれんぞ」

 

 パイロットであるアディンとプログラマーのルシエは、いきなりやってきてジェミナスをハードもソフトも調べ回る六人の博士達を制止しようとしたが、時折、彼らの口から自分達の故郷やらアディンの両親やらの話が出るから、どうにも口を出せずに観察していた。

 また彼らがあのコロニーのガンダムの開発者であり、OZが方針を変更した今となっては外部協力者として地球連邦政府に条件付きの協力を行っているのを知らされているので、微妙に強く出られない。

 

「お嬢さん、こいつのプログラマーは君かね?」

 

 コックピットシステムのエキスパートであり、様々な機構に精通しているH教授に声を掛けられて、ルシエは自分の父親よりも年寄りな奇人変人達におっかなびっくり近寄ってゆく。

 

「はは、はい!」

 

「これだけ大胆な換装機構を動かすプログラムの構築、一筋縄では行かなかったろう」

 

「サナリィやアナハイムのような人海戦術も出来まいし、火器管制システムも大したものだ」

 

「外でやり合っておる技術検証機も興味深いが、こちらもなかなか。OZにくれてやるのは勿体ないな」

 

「坊主。こいつの二号機とメインのメカニックやらはMO-Vに残っておるんじゃったな?」

 

「あ、ああ。兄さんをはじめスタッフのほとんどはMO-Vに残っている。今じゃ宇宙も物騒だし、俺とルシエを含めた少数のスタッフがデータ収集も兼ねて、DCに参加しているんだ」

 

「ま、DCに参加しておれば余計な政府と軍からのやっかみは防げるからな。いい選択肢だったろうよ。正解かどうかは知らんがな」

 

「ウイングゼロまで必要とされる戦場だ。これからどうなるか分かったものではない世の中だからな」

 

 口を動かす間も六人の老人達の知的好奇心は止まらず、アディンとルシエは今日の予定を大幅に変えさせられるのだった。

 

 

 このように賑わいを見せるエリュシオンベースに、その日、極東からの来訪者があった。四機のスーパーロボットを整備できる超電磁戦艦マグネバードの他、ストーク級を含む艦隊だ。

 さらにマグネバードには、ライディーン専用母艦チヨノフがその艦首部分に接続されている。

 主にコンバトラーV、ボルテスV、ダイモス、そしてライディーンを運用する為に建造されたこの戦艦は四谷博士を艦長に迎え、遂にDCと合流となったのである。DCに参加する関係上、スーパーロボット以外の運用も視野に入れてスタッフも鍛え上げられている。

 

 またマグネバードには弓教授、兜剣造博士、早乙女博士、敷島博士、四谷博士、剛光代博士、左近寺博士、猿丸、和泉博士、宇門所長などなど各スーパーロボットに関わるスペシャリスト達と各種素材に工作道具も乗っていた。

 エリュシオンベースにはシャドウセイバーズのレモンやシロッコもまだ滞在しており、この機会に地球の誇る頭脳達による、マッドの匂いが香る技術交流会が設けられる予定だ。

 グレートブースターや新たなバトルマシン、ボルトマシン、ダイモス用の強化装備などもこの機会に一気に実装してしまうつもりなのである。

 

 そしてこのマグネバードにはヘイデスもまた搭乗していた。敵勢力に対する囮として長らく極東支部に腰を落ち着けていた彼だが、オペレーション・レコンキスタによる敵勢力の壊滅的な被害を鑑み、しばらくは襲撃もないとしてこちらに顔を見せる決断をした。

 それは目下、彼の最大の胃痛案件であるクォヴレーの正体を確認する為でもあった。果たしてクォヴレーはやはりユーゼスなのか、それとも摩耗したクォヴレー本人か、仕事モードのクォヴレーか、あるいはそれ以外のなにかなのか?

 ヘイデスは見えている地雷原に自ら飛び込むような気持ちで、エリュシオンベースを訪れるのだった。

 

(来ちゃった……)

 

 シュメシやラトゥーニら子供らと所長と会う分には『来ちゃった♡』だが、クォヴレーの正体を突き止めるという意味では『来ちゃった(ノД`)』というのが、彼の偽りのない本音であった。

 

<続>

 

■超電磁戦艦マグネバード・チヨノフが建造されました。

■ジェノザウラーが開発されました。

■サックスティンガーが開発されました。

 




次回、遂にクォヴレーと対面するヘイデス。
銀の髪は憑依された証か否か。部隊の強化、敵勢力の同盟が進む中、彼は胃痛の一つを解決できるのでしょうか?


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第六十四話 時に嵐は向こうからやってくる

 死んだ。

 リョウ・ルーツは心底から思った。この短時間の間に何度も思った。思い過ぎてもう死んでいるのでは? とさえ勘違いした。

 

 しょきん

 

 し ょ き   ん

 

 ジョ キン

 

 しょきん

 

 ジャキン!

 

 体の奥の方からゾッとする耳障りな音は、ヘルメットのスピーカーから聞こえてくるばかりでなく、モニターを埋め尽くす巨大な鋏の画像が及ぼす視覚効果による。

 

「うおおおおおお!?」

 

 もしもこれが模擬戦でなかったら、リョウの肉体は機体ごと何度も切断されていたろうか。

 本質的にヘタレチキンとも称されるリョウであるが、短期間で死にそうな目に何度も遭遇したお陰(?)で、例え精神が絶望と恐怖の嵐に飲まれようとも、体は生存に向けて最善を尽くすのが全細胞レベルで染みついている──染みつかざるを得なかったとも言う。

 だからといって急激に操縦技術が向上するわけもないので、Sガンダムがサックスティンガーの連続攻撃から逃れているのは、ALICEによる手厚いサポートがあればこそ。

 

「クソサソリがあ!」

 

 あんまりにALICEがサポートするものだから、周りの人間は全員がどう見てもリョウの操縦でないのには気付いていたし、なんならリョウ自身も機体が勝手に動いているのを理解していた。

 どうしてケツの青い新兵の自分がこの最新鋭機のパイロットに選ばれたのか、その答えをおぼろげながらにも理解した。したのだが、だからといって目の前の死の具現のような蠍の猛攻がどうにか出来るわけではないのだから、世の中世知辛い。

 鋏の連続攻撃を細かいスラスター噴射とビームサーベルで捌くSガンダムの頭上に、細長い影が差した。ゲッタービームのランスを展開した尾が頭上から串刺しにせんと構えている!

 

「!?」

 

『……!!』

 

 リョウもALICEさえも驚愕したその不意の一撃を防いだのは、ジオン残党の少女レイラ・ラギオールのシルエットガンダム改だ。

 正規の訓練を受けたわけではないが、高い操縦適性を見せて半ば流れのままにガンダムタイプを預けられた少女は、腕前をメキメキと上達させている。

 

「地球ってこんなに怖いところだったの!?」

 

 ただし本人は思い描いていたのとはまるで違う地球の事情に、ヘルメットの中で半泣きになっていた。泣きたくなるほど怖いサックスティンガーが本来は味方であるだけマシと言うべきか、ご愁傷さまと言うべきか難しいところだ。

 ヴェスバー改と同軸付きのビームライフルはサックスティンガーの尻尾に命中判定を出し、コンピューターの計算に従って尻尾が大きく弾き飛ばされる。

 

 破壊判定を受けなかったのは、ビームが命中するよりも速く命中箇所に限定してEフィールドを展開したサックスティンガーの神技的手腕による。

 人間をはるかに凌駕する演算能力は、サックスティンガーを操縦するデススティンガーやデスザウラーの強みだ。

 破壊判定に持ち込めなかったとはいえ、サックスティンガーにダメージを与えられた好機を、ネオガンダムのトキオやハーディガンのケビン、Gキャノン・マグナのカールは見逃さず、一気に畳みかけようと火器を全開にした。

 

「泣くなって、レイラ! 俺だって泣きたくなるだろう!?」

 

 と弱気な発言をしつつ、天才的な操縦技術を持つという原作設定に偽りのないケビンは、廉価版ヴェスバーと呼べるビーム・ランチャーの狙いを定め、カールは一年戦争時にジオンで戦ったベテランらしい安定した操縦技術を発揮し、ビームキャノンとダブルビームガンで絶え間ない火線を描く。

 ただし、カールの皺の多いその顔には、目の前の蠍の放つ重圧によって冷や汗の珠粒がいくつも浮かんでいる。

 

 サックスティンガーは通常のゾイドサイズ(原作の倍)である事と量産を前提としている為、主動力はゲッター炉一基のみとなっている。よって、GテリトリーやGウォールといった重力系の防御機能が使用できない。

 唯一Eフィールドのみが使用可能で、装甲はマシンセルからゲッターロボGと同じ合成鋼Gに変更された為に再生能力を失っている。

 耐久面で考えれば大きく低下しており、デススティンガーに比べれば、破壊する難易度ははるかに低いだろう。

 

 ただし、操縦を担うデススティンガーが、降り注ぐビームの類を銃口の向きと内部エネルギーの変化から命中箇所を瞬時に割り出し、ゲッター線を纏った鋏で悉く弾き、実弾を当てて相殺するという超一流のパイロットしかできない離れ業を、鼻歌を歌うような気軽さでかまさなければ、だが。

 ガンダムSEEDのキラ・ヤマトがフリーダムガンダムに乗り込んでから披露した神技であり、機能としてはガンダム00のフラッグやイナクトのディフェンス・ロッドと同一の原理である。

 我が目を疑う光景に思わずリョウ、レイラ、ケビン、カールが固まる中、動いたのはトキオとALICEだった。

 

「MAが可愛く思える相手だな!」

 

 ネオガンダムの主武器であるGバードが唸りを上げて、サックスティンガーの左側面に大穴を穿つべく大気を焼いて迸る。ラー・カイラム級でも、命中箇所によっては一撃で轟沈させる巨大な火力を、サックスティンガーは正しく脅威と認めた。

 一度は弾かれた尾を振り回し、展開中のゲッタービームランスでGバードの奔流──CGによる再現だが──を受け止めて機体への直撃を防ぐ。

 トキオは、目の前の光景を想定していても本当に実行されると驚きを隠せなかったが、サックスティンガーの動きを拘束出来れば上出来だと割り切った。

 

「その頭だか背中だかに穴開けてやるぜ、サソリ野郎! ガンダム、力を貸せ!」

 

『私はガンダムじゃない。私は、私は!』

 

 追い込まれた事でヤケクソ混じりのクソ度胸を発揮したリョウは、Sガンダムのバーニアを吹かして空中に飛び上がり、リミッターを解除したビームサーベルの狙いをサックスティンガーへ定める。

 リョウの動きにカールやケビンらも気を取り直して、サックスティンガーの動きを少しでも拘束しようとビームを横殴りの雨のように連射している。

 これが模擬戦であるのを忘れて、リョウは目を血走らせて刹那でも早くサックスティンガーにビームサーベルを突きつけるべくスロットルを全開にし、フットペダルを限界まで踏み込む。

 

「くたばれええええ!」

 

『くたばれ!』

 

 リョウの影響を受けてすっかり口の悪くなってしまったALICE。ある意味、一心同体というか、良いパートナーとなる傾向がみられたと考えられなくもない。

 しかし、この模擬戦の区域に居るのは彼らばかりではないのを、サックスティンガーの重圧に晒されたリョウとALICEは失念していた。

 

「残念無念また来週~」

 

 モビルゾイド・マーキュリーから発射されたロングレンジバスターキャノンは、ALICEをもってしても回避できない絶妙なタイミングで襲い掛かり、Sガンダムに大破判定を与えてその機能の多くにロックがかかる。

 かろうじてロックされていないバーニアで姿勢を保ちながら着地した機体の中で、リョウは悪態を吐きながらサラマンダーのバリエーション機を悔し気に睨み上げる。

 

「クソ! あと一歩だったのによ!」

 

「目の前の相手に集中しすぎるのも問題よ~? 視野は広く持たなくっちゃ。後ろと上と下と左右にも目を持つのがコツかしらね」

 

「どんなバケモンだよ!?」

 

「アムロ大尉とかクワトロ大尉とか? 頑張ってね、ヒヨコちゃん!」

 

 マーキュリーを軽々と操るエクセレンからの激励なのか煽りなのか判断に迷うセリフの後に、リョウは機体のセンサーが感知した高エネルギー反応への対処を優先せざるを得なかった。休む暇などありはしない。

 

「なんだよ!?」

 

『上空から新しい反応!? 回避を!』

 

 CGで再現されたメガ粒子砲とGN粒子によるビームの雨を、Sガンダムは傷ついた体を転がすようにして避けた。

 上空からの不意のビームの雨はSガンダムやネオガンダム、シルエットガンダム改ばかりでなくサックスティンガーやジェノザウラー、ゴジュラスギガも襲っていた。

 

「予想していなかった第三勢力による奇襲! 戦場ではそんなのはざらだ。特にDCの行く戦場ではなあ!」

 

 楽し気に笑うヤザンの声がデフやトキオ達の鼓膜を揺らし、はるか上空から流星のように飛来する数個の影が地上へと落ちる。

 不意打ちを仕掛けてきたのはGNハンブラビ三機一個小隊とラファエルパックを装備したF89、更に専用カラーのヒュッケバインMk-Ⅱに搭乗したユウとライラである。

 

 グルンガスト弐式がグルンガストの量産型であるように、ヒュッケバインMk-Ⅱもまたヒュッケバインを量産機に落とし込むべく改良・試作された機体だ。

 ブラックホールエンジンより出力は低いが扱いやすく、量産性も高い専用の縮退炉を搭載し、グラビコンシステムによってGウォールやGインパクト・キャノンが使用可能とヒュッケバインの名に相応しい性能を保持している。

 攻撃力だけを見れば準スーパーロボットクラスであり、エース用の少数生産機というコンセプトだ。

 

「!」

 

 相変わらず無口なユウも新たな“ブルー”の性能には満足しているようで、ガンダムタイプのひしめく模擬戦の場にフォトンライフルを片手に挑みかかる。

 それに追従する胴体はグリーンで四肢はマゼンタカラーのライラ機も、換装武器であるレクタングルランチャーを手に新入りどもをしごいてやる、と士気が高い。

 

「そらそら、ここで情けない姿を晒すようじゃ、これから先の戦いについてこられないよ」

 

 降り注ぐ実弾と重力弾、ビームの数々にサナリィ組もシルエットフォーミュラー組も、慌ただしく回避行動に入る。

 サックスティンガーとジェノザウラーも予定にない乱入者に驚いた様子を見せたが、すぐに対応するべくキョウスケのゴジュラスギガ、エクセレンのマーキュリーと体勢を立て直す。

 

「ヤザン大尉か。楽しそうな声を出してくれる」

 

 ゴジュラスギガでは高速で上空を飛翔するGNハンブラビとは相性が悪い。キョウスケはそれに加えてヤザン小隊の練度の高さに、舌打ちをしたい気分だった。

 想定外の敵勢力の奇襲は十分に考えられるので、ヤザン小隊の奇襲も今回の模擬戦の趣旨に沿うのがまた腹立たしい。ヤザンはただの戦闘狂ではないのだ。

 

「イングリッドちゃんはF90の方にご執心みたいよお? F89がF90の関連機だから因縁吹っ掛けにいったのかしらね?」

 

「随分とキツイ模擬戦になったな」

 

「カジマ中佐とライラ大尉の相手もしないとだわね。デスデスコンビは準備おけまる?」

 

 エクセレンの声掛けに、ジェノザウラーとサックスティンガーはそれぞれ短い前脚と鋏を軽く振って答えた。これまで圧倒的な火力と防御力、巨体で敵を蹂躙するだけだった二機にとって、この状況は実に新鮮だ。今後の戦いに有用なデータを山ほど得ている。

 そしてエクセレンの言ったとおりにイングリッドはデフとシドのF90二機に狙いをつけて、獰猛な笑みと共に襲い掛かっていた。

 

「基本性能はこっちの方が高いみたいだけど、二機がかりなら話は別でしょう? 私に手も足も出ないようなら、その機体は二機とも私がもらうから!」

 

 ラファエルパックの巨大な砲身が展開し、GNビッグキャノンが勢いよくぶっ放される。MSなど簡単に飲み込む大きさのビームの奔流は、例えCGで再現されたものでも背筋が震える迫力だ。

 

「なんだ、あのミッションパックは。サナリィの仕様書にあんなのあったか!?」

 

 機体本体よりよほど重そうなラファエルパックは未知のものだ。ハルートパックにしろサバーニャパックにしろ同じことだが、F90のパイロットとして短くない時間を過ごしたデフにとって、驚きに値するのは間違いない。

 

「いや、あんなのはねえ! だったらヘパ研で独自開発したもんなんだろう。バカみたいな火力持たせやがって!」

 

 二基の疑似太陽炉とミノフスキークラフトの恩恵により、百トン越えのラファエルF89の動きは実に軽やかだ。初期の強化人間であるイングリッドの操縦はその性能を十二分に引き出しており、F90二機を翻弄しはじめる。

 

「そらそら、あっという間に落ちちゃわないでよ!」

 

「舐められたままで!」

 

「終わってたまるか!」

 

 フォーミュラータイプの激突も加わり、実際にビームやミサイルが飛び交っていたら凄まじい事になっていただろう。区域の整備を引き受けるエリュシオンベースの関係者はほっと胸を撫でおろしているに違いない。

 そしてそれは、模擬戦を監督しているサウス・バニングとストール・マニングスにしても同じだった。DC参加者の中でも古参に属する二人は、部隊内の新米パイロット達の教育と指導を引き受ける立場にあり、ペガサスⅢ合流後は意見を交わす機会が多い。

 

「ゲシュペンストMk-IIやジェガンでも一年戦争時に比べれば大したものだと思ったもんですが、それすら型遅れになると、時代の流れの早さを思い知らされますよ。ああいう光景を見ると」

 

 本来の宇宙世紀と比べれば数十年先の機体が飛び交う状況であるから、バニングの感傷も間違いではないのだが、おかしいのはこの世界なのであまり気にしないで欲しいものだ。

 

「確かに、特にあのサックスティンガーやジェノザウラー、ゴジュラスギガなどを見ていると、なにか自分が別の世界にでも紛れ込んだ気持ちにされてしまう」

 

「まったくで。一年戦争にはスーパーロボットもモビルゾイドもなかったですからな」

 

「その分、異星人も居はしませんでしたがね。ははは」

 

 モニタリングしている装甲車の中で、バニングとストールは小さく笑い、あんなのが敵ではなくてよかったと、心の底から思うのだった。まあ、これからは彼らもあんなのが必要な相手と戦わないといけないのだが。

 

 

 ヘイデス・プルートという人物の経歴を見れば、世界中の人々は親から引き継いだ重機メーカーを世界で三指に入る超巨大財閥に成長させた怪物であり、数多くの慈善事業の立ち上げや寄付に留まらず、私財を投げ打って一年戦争で荒れた地球圏の復興に血道を上げる好人物となるだろうか。

 類まれなる美貌と才能に恵まれた科学者の妻と子供にも恵まれ、公私とも充実した人物ではあるが、同時にあの笑顔の裏で何を考えているか分かったものではない、善人過ぎて逆に怪しい、むしろ悪だくみをして欲しくさえある、と理不尽な評価を受けていたりする。

 

 ただ、数多の侵略者に襲われている地球圏において、プルート財閥が軍民共に支えているのは間違いなく、特に人類守護の象徴的存在として宣伝された各スーパーロボット達の参加するDCのスポンサーという事もあり、連邦市民からの支持は地球・コロニーを問わず大きい。

 自分と家族の幸せの為に必要な事をしているだけという認識のヘイデスだが、その彼の行為がひいては地球圏の力の底上げにつながり、人々からの支持に繋がるのだから、情けは人の為ならずとは真理を突いた言葉である。

 

 SEEDのムルタ・アズラエルやスパロボLのルド・グロリア、スパロボZシリーズのカルロス・アクシオン・Jrを足して三で割ったような事をしているなあ、と自覚するところのヘイデスはというと、超電磁戦艦マグネバードから降りてついにエリュシオンベースへと足を下ろしていた。

 彼以外にも各スーパーロボット作品の博士達が同行しているが、例えばマジンガーZのもりもり博士、のっそり博士、せわし博士や南原博士など一部の博士達は各研究所やコネクションに残り、防衛の指揮やそこでなければ行えない研究を行っている。

 

「ふ、来たぜ。エリュシオンベース」

 

 大規模な軍事基地にも等しい研究・開発施設に投じた資金の事など忘れ、ヘイデスは妻子に会える喜びとついに悩みの種と正面切って相対する緊張に、情緒をぐちゃぐちゃにされていた。

 ドレイドウやヒドラーの攻撃による被害から立ち直り、すっかり元通りになったエリュシオンベースに少しの感慨を抱いてからタラップを降りたヘイデスを迎えてくれたのは、所長とシュメシ、ヘマー、オウカ、ゼオラ、アラド、ラトゥーニ、シオ、シアン、シエンヌといった家族達だ。

 フェブルウスだけは格納庫でお留守番だが、双子と感覚的に繋がっているので間接的にお迎えに出られている。それでもやっぱり少しは寂しいかもしれない。

 

「やあやあ、皆、久しぶりだね。大変な事態が続いたけれど、誰一人欠ける事なく、大きな怪我もなく今日を迎えられて心から嬉しく思うよ」

 

「私達も自分を囮にしていた貴方の無事な姿を見られて、安心しましたよ。ま、オペレーション・レコンキスタ以降、連中の標的はDCに移りましたしね」

 

「そう、そのオペレーション・レコンキスタも皆の大活躍は耳にしているよ。お陰で地球圏にしばらく平穏が訪れるだろう。

 さあ、早く中に入ろう。そしてたくさん話を聞かせて欲しい。何時からかはまだ分からないけれど、これからもっと忙しくなるのは目に見えているからね。今みたいな時間は宝石よりも貴重だ」

 

 おそらくまだこの戦争は折り返し地点を越えた程度という認識が、ヘイデスにはある。地球圏全土を覆う戦乱の嵐は、まだまだ晴れそうにないのだ。だからこそ家族と過ごせる時間を、ヘイデスは限りなく愛おしんでいた。

 戦力増強の為の博士と物資搬入以外にもヘイデス来訪の目的はあるのだが、何はともあれ家族との歓談によってメンタルを整えて、ヘイデスはそれとなくクォヴレーとの面談に向けて話を進めんとした。

 

 DCメンバーやエリュシオンベースの社員達への激励と慰労、感謝の言葉を数時間かけて伝え終え、ベース内の私室でアラド、ゼオラの二人を呼び出して話をする機会を設けた。

 ヘイデスが何を目的として呼び出したのか分からない二人は首を傾げたが、父親として認めた相手からの声掛けであったから、不満や不安はない。

 

「二人とも済まないね。トレーニングやミーティングと忙しいだろうに。ささ、座って座って」

 

 年頃のティーンらしい服装の二人に席を進めて、ヘイデスは日本で買い込んできた和菓子をずらりと机の上に並べ、手ずから最高級の玉露を淹れる。

 スパロボプレイヤーとしての彼は一般庶民である為、こういった作業はされるよりも自分でする方が落ち着く。

 世界で三指に入る大金持ちらしからぬ振る舞いにもアラドとゼオラは慣れたもので、薦められるままに座り、アラドはさっそく目の前のどら焼きに手を伸ばした。ヘイデスが咎めないのを知っているので、ゼオラもアラドの無作法を咎めない。

 

「ゼオラも食べて。地元で評判の品だよ。和菓子は食べ慣れないかもしれないけれど、口に合うと嬉しい」

 

 ヘイデスはそう告げて自分もまた切り分けた羊羹に爪楊枝を刺して、口に運ぶ。それを見てからゼオラも華やかな練り切りの小皿を選んで、上品に口に運んだ。

 

「それでは、いただきます。……ん、美味しい」

 

 ふわっと華やいだゼオラの微笑に、ヘイデスは優しい笑みを浮かべる。ゼオラの隣のアラドは六個めのどら焼きに取り掛かっていた。

 

「二人の口にあったようで何よりだ。もちろん他の皆の分も買ってきてあるから、遠慮はしなくていいよ。どんどん食べて欲しい」

 

 ヘイデスが、子供の喜ぶ顔が自分にとっての何よりの喜びだと、そう感じる位には親であった。どんどんとお土産の和菓子が無くなってゆく中で、ヘイデスは本物の笑顔を浮かべて彼らの近況を巧みに聞き出し、会話を弾めていった。

 世界有数の経済人としてのスペックはこんな時にも大いに役立ってくれる。

 特にアラドらと同世代のパイロット達については、コロニーのガンダムパイロットや宇宙世紀の主人公組、なぜかいたバンやフィーネと相手に事欠かず自然と彼らとのコミュニケーションについての話題に至る。

 

「ジュドー君やカミーユ君だけでなく、バナージ君にシーブック君、更にはバン君とフィーネ君と君達の周りに同世代の人が随分と増えたものだね。そんな中で正規の軍人なのはクォヴレー君くらいのものだけれど、彼はどうだい? とっつきづらかったりはしないかな」

 

 ゼオラは口の中のバナナ大福を飲み込み、少し考えこんでから答える。

 

「私達に限らず誰にでもある程度の壁があると思います。軍人としての仕事は果たすけれど、プライベートは別だと分けているタイプかと」

 

 芋羊羹を丸々三本食べ終えたアラドも食べるのを止めて、相方と同じく自身の所感を口にする。

 

「ゼオラの言う通りっスね。必要最低限の会話はするけど、それ以上は自分からしようとはしないなあ。バンの奴が良く話しかけているけれど、それでも心を開いているって感じはしないし。あの調子ならまだヒイロの方が俺達と打ち解けているぐらいッス」

 

「ふうん? DCは人類史上屈指のイロモノ部隊だからね。真面目な軍人さんほど拒否反応があってもおかしくはない。民間人との合同部隊である事実と他にない雰囲気に早く馴染んでくれるのが、彼の為でもあるのだけどねえ」

 

「どうっすかね。地球を守るぜ! とか侵略者は許さねえってタイプにゃ見えないんすけど。俺だって地球とか世界ってスケールがでかくなるとピンとこないけど、家族の為とかならやる気は起きるのに」

 

「事情は人それぞれよ。クォヴレーだって戦闘や訓練では真剣だし、手を抜いている様子はないわ。少しでも戦力は多いに越したことはないし、あんまり詮索するものじゃないわよ」

 

「へーへー、優等生な意見だな。まあ、色々とあるのは俺らの方だけど。でも、仲違いなんてバカみたいな真似をするつもりはないんで、クォヴレーとも折り合いをつけてやっていきますよ」

 

「そうかい。君達にばかり苦労を掛けて申し訳ないけれど、無理と無茶をしない範囲で頑張って。ぼくも出来る限りと考え得る限りの支援はするからね」

 

「それは疑った事なんてないっす」

 

「できる限りのことをしてくださっているのは、私達だけでなくオウカ姉様もラトもシュメシやヘマーだって皆が理解しています」

 

「そう言ってもらえると僕も助かるよ。正義の味方のスポンサーとして相応しいだけの仕事は、これからもさせてもらうつもりだから」

 

 クォヴレーとの因縁が深い筈のアラドとゼオラの発言に、ヘイデスはやはりか、と内心で臍を噛む。

 あるいは第三次αで主人公の一人を務めたクォヴレーが、あえて関係を深めないようにと振舞っている可能性もまだあるが、ヘイデスとしては早々都合よくいくとは思っていない。

 常に考え得る最悪の可能性を前提とするべきで、現実は更にその斜め上を行くからだ。ヘイデスはこれがアラド達との最後の親子の会話にならない事を切に祈った。

 

 

 シーブックは模擬戦を終えて、エリュシオンベースの汎用格納庫に固定されたF91のコックピットに居た。周囲には同じようにトレーラーの上に固定されたセシリーのビギナ・ギナやビルギットのジャベリンの他、DC所属のMSの姿がある。

 シーブックはつなぎ姿のまま、コックピット内部と配線を繋いだ端末をチェックしている母モニカ・アノーに声をかけた。

 

「母さん、バイコンの具合はどう? 他の機体のサイコミュと干渉したりはしていないかい?」

 

「……いえ、大丈夫よ。バイオ・コンピューターはパイロットへの悪影響が発生しない仕様だし、他のサイコミュからの干渉も見られないわ。

 でもバイオセンサーやサイコフレームで拡張された貴方の意識が他の機体やパイロットの意識を感知する可能性はある。なにか調子がおかしくなったら、すぐに言うのよ、シーブック」

 

「ああ、それは分かっている。戦場で敵に落とされるのはごめんだけど、機体の影響を受けておかしくなるのだって、同じくらいごめんなんだから。父さん、装甲の方はどう?」

 

 かつては金属工学の権威であり、自らの技術が軍事利用されるのを厭って溶接工の職に就いていたレズリー・アノーは、CVの襲撃以降、妻モニカ、娘リィズと共にスペースアークに乗り込み、F91のパイロットになってしまった息子シーブックを献身的に支えている。

 結果的に戦争に関わらざるを得ない状況に陥ってしまったが、息子の命を守る為にと内心の葛藤を押し殺し、他のメカニックに混ざって奮闘している。

 その金属工学の権威としての知識と発想力、溶接工として現場で培った技術力を併せ持っているレズリーはDCでも重宝し、ヘパ研の技術者からも高い評価を受けており、好待遇での勧誘が行われているくらいだ。

 カミーユからすれば複雑な心境に陥るのは間違いないアノー一家の結束ぶりだ。愛人を作るわ、仕事に没頭してろくに会話をしないし、帰っても来ない。母はエゥーゴ、父はティターンズと所属陣営すら別にしたビダン夫妻とは正反対である。 

 

「こちらも問題ないぞ。この基地には機動兵器用のあらゆる装甲素材が山ほど保管されているようだな。サナリィと協力関係にあるから、MCA構造に明るいスタッフが多い。お陰でお前の乗るF91を万全の状態に整えられる」

 

「それに他のサナリィのスタッフも居るし、部署違いではあるけれどある程度機密を気にしないで協力を求められる相手が居るのは、助かるわ」

 

 モニカの言葉を受けて、シーブックは隣のトレーラーに寝かされている二機のF90とSTガン、そしてそれらの機体を診ているサナリィスタッフをモニターの一つに映した。

 サナリィスタッフの中には二十代に突入したジョブ・ジョンの姿があり、技術スタッフ兼F90の予備パイロットを務めている。

 今は一年戦争以来の知己であるアムロと気安い様子で会話をしている。νガンダムの基本設計を担ったアムロとは、技術者としても話が弾むのだろう。

 

 そしてヘイデスがクォヴレーを訪ねたのも、そんな一幕の最中だった。この時、クォヴレーは量産型νガンダムに装備した強化パーツとのマッチングをチェックする為、仰向けに寝かされた機体の傍にいた。

 シーブックやデフ、ジョブらも同じ格納庫に居る中、見えざる護衛を引き連れたヘイデスはトキオやカール、レズリーらにもにこやかに声をかけて、最後にクォヴレーへと話しかけた。

 

「こんにちは、ゴードン少尉。僕はヘイデス・プルート。一応、DCのスポンサーなどをさせてもらっています」

 

 逆襲のシャア基準の軍服に身を包むクォヴレーは、冷たい印象を受ける銀のくせ毛を揺らしながらヘイデスを振り返った。民間人相手の為、敬礼はしなかったが居住まいを正す姿はヘイデスを相応の上位者と認めている様子だ。もちろん、心の内は分からない。

 

「クォヴレー・ゴードン少尉であります。参謀総本部の命令によりDCに出向して参りました」

 

 う~ん、冷ややかな瞳、とヘイデスは心の冷や汗を流す。元から冷淡な印象を受けるキャラクターではあるが、これは性根もまた氷のように冷たいに違いないと思わざるを得ない。

 スーパーヒーロー作戦経由のユーゼスならば、ギャバンと知り合いで、イングラムを自分の捨てた良心と捉えたり、善悪の葛藤があるなど人間味のある人物なのだが、αシリーズやOGシリーズ経由のユーゼスとなると目的の為には手段を選ばない冷酷非情な人格となる。

 

(さてさて、中身はユーゼスか、人造人間アイン・バルシェムか? 髪の色が元々の青ではなく銀色だし、イングラムかユーゼスが憑依している可能性が高いと踏んでいるんだが、わざわざ潜入してくるのなら狙いはやはりシュメシ達かパンドラボックスだろう)

 

 アラドとゼオラからの事前の情報収集でクォヴレーがαシリーズの彼ではない、と半ば確信しているヘイデスだが、その『半ば』を外す為にクォヴレーとの対話を続ける。大穴でクォヴレー本人という可能性も一応、現時点ではまだゼロではないことだし。

 

「激戦地を渡り合う部隊ですからね。腕の立つパイロットは一人でも多く欲しいところです。参謀本部からの推薦とあれば期待が持てますし、パリ奪還作戦での腕の程も報告を受けています。これからも頼りにさせてもらいますよ、ゴードン少尉」

 

「若輩の小官には過分なお言葉です」

 

「いやいや、過分なものですか。この部隊は良くも悪くも敵主力と激突し、これを撃破する事を求められる。現代における斬首戦術の具現みたいなものだね。

 そんな部隊であるから非常識なくらいに多種多様な機体が集められているし、多数のスーパーロボットが所属してもいる。そしてスーパーロボットと因縁の深い各勢力から目の仇にされるのも当然の話さ」

 

「それは、その通りかと」

 

「そ。そういうわけだからまだ若くて将来有望な君のような人材が来てくれるのを、僕は両手を挙げて歓迎する。その量産型のνガンダムもいい機体だけれど、君が望めば可能な限り都合をつけて新たな機体を用意する」

 

「ありがとうございます。ですが、この部隊には自分より経歴も技量も優れた人間が居ます。そちらを優先していただければ、なにより地球圏の平和を守ることに繋がるかと」

 

「ははは、謙虚なんですね、君は。先任や階級が上の者より君を優先しては、余計な軋轢が生じるかもしれませんし、まあ、話だけは覚えておいてください。それで謙虚なゴードン少尉に興味本位の質問なんですが」

 

「小官などで答えられることなら」

 

「そう肩肘を張らずに。一兵士たらんとする君の意見を参考までに聞きたいってだけですから。地球系の敵勢力はともかくとして、宇宙系の敵勢力の動きについて君はどう考えますか? 正体不明のアインストも含めてね」

 

 あくまで世間話の体で話すヘイデスに対し、初めてクォヴレーはほんの一ミリか二ミリほど表情筋を動かした。

 

「小官の推測でよろしければ」

 

「ええ。一般的な視点が知りたいというわけなので構いませんよ」

 

 絶対、一般的な視点じゃないよな、とヘイデスが心の中で舌を出しているのは彼だけの秘密だ。

 

「月に基地を持っていると推測されるベガ星連合軍は、連邦側が月に配備した戦力の大きさとこれまでの敗戦から拠点を動かす可能性が高いものと思われます。本星からの援軍と合流し、攻勢を強める可能性が考えられます。

 ボアザンとキャンベルに関しては、これまでの同盟関係を維持したまま、コンバトラーとボルテスの破壊を最優先に攻勢を仕掛けてくるものと愚考いたします。バルマー・サイデリアル連合帝国は、バームと真ジオンを使い捨てにしながら地球側の戦力の評価を続けて行くでしょう」

 

「ふむ、基本的にはこれまで通りというわけだ。真ジオンの方はミネバ姫の逃亡を許した事でエンツォ元帥の立場が弱まった節が見られる。彼らの内部で派閥争いや権力闘争が行われているのなら、こちらにとってはつけ込む隙になる」

 

「は。バルマー・サイデリアル連合傘下にあるバームが他の異星人勢力と手を結ぶ可能性は、あまり考えられません。

 火星に拠点を置くバームを除けば、その他の異星勢力の拠点を突き止めて、これを撃滅する必要があるかと。また動きを見せてはいませんが、ガイゾックもいつかは動き出すでしょう」

 

「なるほど、ごもっともな意見ばかりです。地上の勢力は妖魔帝国のオカルト対策に手こずってはいますが、ライディーンがありますしなんとかなる目途は立っています。となると宇宙では虱潰しに探すところから始めますかね」

 

「アインストに関しては申し訳ありません。判断を下すには情報が不足しています」

 

「いえいえ、正体不明もいいところですからね。地球の言語が通じるだけまだマシですが。ところでクォヴレー君はこれだけの戦乱が続く中で、世界には何が必要だと思いますか?」

 

「世界に、でありますか?」

 

「ええ、ちょっと曖昧な質問ですみませんね。例えば今回の大戦や一年戦争で荒廃した地球環境を改善する為の画期的な発明とか。まあ、これはマシンセルという切り札の開発に成功したので、改善が見込めていますが」

 

「……」

 

「それもズフィルードクリスタルという貴重なサンプルを得られたお陰ですよ。その点については、バサ帝国に感謝してもいいかもしれません」

 

 ヘイデスの言葉にクォヴレーの反応はない。かつて地球環境の改善に血道を上げたユーゼス・ゴッツォなら、少しは反応があったろう。

 

「またあるいはあまりに混沌としたこの状況に光明を指し示す調停者、あるいは教導者、救世主。奇跡のような存在、有体に言えば神のような超越者が必要とは思いませんか?」

 

「随分と話が飛躍されましたね」

 

「我ながら奇妙な話をしている自覚はありますが、Dr.ヘルと恐竜帝国との決着がついたと思ったらこれですよ? ティターンズはまだ悪足掻きをしているし、CVとWFなんて余計な真似をする集団まで現れる始末。

 こうとなっては人知を超越した存在、圧倒的で絶対的な力で敵を滅ぼし、人心を安定させるしかない。そんな末期的な考えが浮かぶようにもなりますよ」

 

「……私見ですが、確かにこの混沌とした地球の状況を考えれば、秩序を齎す超越者を求める心理が発生しても無理はないでしょう。

 しかし混沌を齎す者達は外宇宙からやってきました。ならば超越者の力は地球に留まらず宇宙にまで及ぶ必要があるでしょう。そうでなければ真の意味での調停者とは呼べないかと」

 

「ふむ、なるほど、金言ですね。外宇宙から脅威が来ているのなら、調停者は外宇宙をも平定できる力を持たなければならないのは、道理ですね。

 僕の世迷言に付き合ってくれてありがとう。なまじスーパーロボットのデタラメぶりを目の当たりにすると、わりと出来る気がするんですよ」

 

「聞かなかったことにしておきます」

 

「はは、重ねてありがとうと言っておきます。それじゃ、仕事中に邪魔をしてしまいましたね。これからも地球の為に頑張ってください」

 

 クォヴレーの答えを待たずにヘイデスは踵を返した。彼が地球の為には戦わないと確信出来ていたから。

 

 

 クォヴレーとの邂逅を終えたヘイデスは、つい数時間前までアラドとゼオラと三人で和菓子を突いていた私室へと戻っていた。背後に映像の花畑が映し出される部屋で、背もたれに体重を預けて椅子に深く腰掛けている。

 この世界に居るだろうユーゼスが過去作品の亡霊であるならば、全宇宙の運命をおのれの手中に収める野望や、己を縛る因果の鎖からの解放を目論んでいるのは間違いない。

 先程までの会話の中で、あくまで世間話の体裁に留めながら彼が反応を示したのは、絶対の調停者について。

 なにより話をしている間のこちらを実験動物のように見ている目。巧妙に隠されていた彼の心情は、傑出した経済人であるヘイデスの観察力とスパロボプレイヤーとしてのヘイデスの知識が合わさっていなければ気付けなかった。

 

(やはりという結果になったな。あれはどの世界産かは知らないが、ユーゼス・ゴッツォだ。どうしてだかサイデリアルの勢力を取り込み、ラオデキヤ艦隊を率いている。皇帝を名乗るラオデキヤも操り人形だろう。

 アストラナガンに乗っていたのは本当にイングラムで、こちらにユーゼス自身が潜入してきている可能性。あるいはアストラナガンに乗っていたイングラムも、こちらに潜入している自称クォヴレーも、どちらもユーゼスで一人二役をこなしている可能性もあるか)

 

 もし帝国宰相イングラムの中身がどこかの世界のイングラムであったなら、記憶さえ取り戻させれば心強い味方になるが、この世界にリュウセイもライディースもアヤも存在していないし、Rシリーズの開発だって行われていない。

 そうなるとイングラムを正気に戻す手がなく、敵のままで終わる。だがスーパーヒーロー作戦においてユーゼスに止めを刺したのは、イングラムとSRXチームだ。

 彼らの絆がある限り、ユーゼスの居るところにイングラムがあり、イングラムの居るところにはSRXチームが存在するはず。

 そのSRXチームのメンバーが確認できない以上は、この世界にユーゼスとイングラムは存在しておらず、こちらに来ているのはどこかの世界で因果を終えた後のユーゼスらであると考えるのが妥当だ。

 

(はっきり言えるのは、今ここでクォヴレーを始末するのは悪手。こちらに来ているのがクローンである可能性もあるし、バックアップを取っていてもおかしくない相手。バサ帝国の総力を挙げて攻撃されれば、おそらく勝ち目は限りなく小さい。

 それにユーゼスの場合は自ら正体を晒したところを倒すのが、これまでの彼の敗北の因果をなぞる形になるからより確実な勝利につながる筈だ)

 

 必死に頭を巡らせて考えるヘイデスだが、同時に自分自身がプレイヤーとしての知識のせいで多くの選択肢を考えすぎて、逆に束縛されているのに気付いてもいた。端的に言えば考えすぎている。

 

「だからといって考えを止めるわけにもなあ。……ん? どうぞ」

 

 その時、来客を告げるチャイムが鳴り、腕に巻いた時計型端末で来客者を確認してすぐに招いた。来客はシュメシとヘマーの双子だ。

 

「どうしたんだい、二人とも。なにかお話したいことがあるのかな?」

 

「うん。そろそろかなと思って、お父さんのところに居た方がいいかなって」

 

「うん。これからの地球について、とても大事な話をする時期が来る頃だと私達もフェブルウスも演算したから」

 

「そう。……とても気になる話だけれど、二人とも少し大人びた雰囲気になったね。色々と経験したからかな」

 

 悪霊将軍ハーディアスとの戦い以降に見られた双子達の変化は、当然、ヘイデスも把握している。どうしてそうなったのか、という経緯は分からなくてもなんとなくこの子達がどのような状態に至ったのかを理解していた。

 

「うん。色々と言ったら、色々かな」

 

「色々としか言いようがないかな?」

 

「そう、記憶を取り戻したとか、かい?」

 

「! お父さん……」

 

 驚きと共に同じ言葉を口にする双子に、ヘイデスは自嘲気味に笑って言う。

 

「そういうことが分かるくらいには、僕も数奇な人生を辿っていてね。この世界が実験室のフラスコの中なら、僕はそれを観測していた記憶を持っている。いくつも、いくつもの実験の記録を。御使いと至高神Zの迎えた結末も」

 

 それは所長とギリアム以外に初めて伝えたヘイデスの抱え込んだ秘事だった。

 二人は至高神ソルとしての記憶を取り戻した時に、ある程度は事情を察していたのかもしれない。さして驚いた様子もなく、父と慕う男からの告白を静かに受け入れていた。

 

「お父さんが未来を見たかのように事前に備えられていたのは、未来を知っていたからじゃなくて他の世界の似たような記録を知っていたからなんだね」

 

「だからこんなにもたくさん悩んで、こんなにもたくさん苦しんでいるのね」

 

「ふふ、君達に慰められるとは父親失格かな。あっさりと受け止められるんじゃないかと、心のどこかで期待していたけれど、本当にそうなってしまうとなんだか申し訳なく感じる」

 

「いいんだよ、親子なんだから。頼ってくれるのが嬉しいもの」

 

「うん。私達も私達のことを予め知っていてくれたって分かって、安堵しているもの。人間ですらなかった私達が、人間の真似事をしていて、嫌われたらどうしようって怖かったから」

 

「そうか、それなら僕達は似た者親子だ。お互いの本当が知られて嫌われるのが怖かったのだからね。それならこれからは隠しごとは無しだ。もっといい親子になれるとも。……ところで、二人とも会いに来たのはこの話をする為かい?」

 

「あ! ううん、違うよ。そろそろあの子達が来る頃だから一緒にいた方がいいなって思ったから」

 

 うっかりしていた、とばかりに声を上げるシュメシにヘイデスが訝し気に眉根を寄せる。厳重な防諜対策に対オカルトを含めた警備体制を整えたエリュシオンベース最重要区画にまで侵入するなど、仮に妖魔帝国の幹部格でも困難を極めるだろう。たぶん。

 

「あの子達?」

 

「うん、ほら来たよ」

 

 ヘマーが部屋の中央を振り返るのにわずかに遅れて、空間が波打つように揺らいでそこから五つの人影を吐きだす。

 その姿を認めた瞬間、ヘイデスは呼吸を忘れた。部屋に仕込んだレーザーガンや重機関銃、小型ミサイルに火炎放射器の類がまるでおもちゃのような頼りなさだ。

 

「ごきげんよう。初めまして、ヘイデス・プルート総帥。私はアインスト・アルフィミイ。こちらはKOS-MOS、T-elos、ジン、それに食客のヴァイシュラバ。お見知りおきを」

 

 アルフィミィを筆頭とするアインスト勢力のネームドキャラ達。いずれも並みの機動兵器を上回る戦闘能力を持つ、超常の存在達である。ヘイデスなど指先一つで殺害できるトンデモ連中だ。

 ステルスを解除して姿を見せたゲシュペンスト・ファントム、アルトアイゼン・ナハト、ヴァイスリッター・アーベント、アークゲインがヘイデスを守る配置に着いたが、アルフィミィの顔には終始にこやかな笑みが浮かんでいた。

 

「ええ~~」

 

 ここで? という意味を含めて、ヘイデスの口からはそんな声が絞り出されるのだった。それしか彼には出来なかったのである。

 

<続>

 

■ヒュッケバインMk-Ⅱが開発されました。

 




年に二回ある繁忙期に突入していました。お久しぶりです。
アインストと接触するヘイデス、覚悟していなかった悩みの種の襲来ですね。ガンバ!


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第六十五話 胃って溶けるんだぜ?

和やかに終わると言いね、対アインスト交渉の始まりです。


「あら?」

 

 と科学者というには艶めかしい美貌と服装のレモン・ブロウニングから、そんな平凡な言葉が零れ落ちたのは、エリュシオンベース内に同類が転移してきたのを感知したからである。要は“つい言葉が零れた”というわけだ。

 

「レモン大尉、なにかご不明な点でも?」

 

 レモンの一言を耳で拾い、そう尋ねてきたのはレモンと同じ円形のテーブルに座した早乙女博士だ。

 早乙女博士以外にも各スーパーロボットの権威達やエリュシオンベースの技術者達が顔を出しており、地球圏最高クラスの頭脳達による第二次スーパーロボットガーディアン計画が進行中なのだった。

 

「いえ、なんでもありませんわ。SRG計画の立役者である皆さんと同じ場に居る事に、柄にもなく緊張しているのかもしれません」

 

「機会を用意してくださったヘイデス総帥のお陰ですよ。お互いに名前と研究の概要くらいは知っておりましたが、なかなか直接顔を合わせる機会もありませんでしたからな。

 それが今となっては頻繁に連絡を取り合い、お互いの研究に刺激を受け合う仲なのですから、なにがあるか分からんものです」

 

 早乙女博士は娘でもおかしくない年齢のレモンに、和やかに笑ってみせる。この博士は、1974年から放送のアニメ版ゲッターロボの早乙女博士であるから、その風貌もOVA版や漫画後期の狂気を感じさせるものとはまるで別人だ。

 各研究所や基地に残っている博士達も、今回はワープ技術を利用したタイムラグの無い通信で会議に参加している。概ねマクロスシリーズのフォールド通信と同じものだ。

 ボアザン円盤をはじめスカールークやグレイドン、ムゲ戦艦と異星・異世界の兵器を散々破壊して、残骸を回収・分析した成果の結実と言えよう。

 この世界ではマクロスシリーズの作品は確認されていないが、フォールドブースターならぬワープブースターやワープ技術の完成も間近だろう。

 

「早乙女博士のおっしゃる通りですな。私もヘイデス総帥には甲児と鉄也の件も含め、色々と世話になっていまして頭が上がりませんよ」

 

 恥じ入るように口にしたのは兜剣造博士だ。瀕死の重傷から復活した父・十蔵博士も参加している中で、サイボーグと化した賢者は親子関係の改善にまで助力してもらったことを感謝しつつ恥じ入っているのだった。

 

「それにレモン大尉は素晴らしい知識と技術をお持ちだ。ソウルゲインやヴァイサーガの開発に協力され、開発されたアンジュルグもスーパーロボットとして申し分のない性能を誇っているではありませんか。この会議に出席されてもなにもおかしくはない」

 

「お褒め頂き光栄ですわ。おだてても何も出ては来ませんよ」

 

 と社交辞令を返しつつも、レモンはツヴァイザーゲインや専用機ヴァイスセイヴァーを開発しているのだからしたたかだ。

 今回の会議ではSRG計画の産物であるガンダムデュラクシールやグルンガストシリーズ、ソウルゲイン、ヴァイサーガに加え、豊富な実戦経験を積んだ各スーパーロボット。

 

 更にマジンガーZのラインX1をベースに改良・量産された量産型ラインX1や北米方面軍開発によるゲッターロボのステルバー、ステルボンバーといった機体についても参考とされている。

 なおラインX1の電子頭脳を務めるアンドロイド・ローレライは生存しており、本体と分離してシローの護衛兼ガールフレンドを務めている。

 

「ではバトルマシン6号機バトルアーマー、ボルトマシン6号機ボルトスピナー、7号機ボルトローラーの開発は順調なのですね?」

 

 二体の超電磁メカの強化プランは超電磁大戦ビクトリーファイブに出てきた強化案と同じものだ。同作品にて登場したマグネバードが建造された以上、当たり前と言えば当たり前か。

 和泉博士にマグネバードの艦長も務める四谷博士が頷いて答えた。新たなマシン三機共に自動操縦が基本で、新たなメンバーの追加はない。非常時にはバトルアーマーにロペットが乗り込んで操作する可能性は考慮されてはいるが、そこまでだ。

 

「うむ。シミュレーション上での分離合体は問題ない。後は実戦に耐えうるか実機でテストするばかりじゃよ。和泉博士、そちらもダイモス二号機の完成が間近と聞いておりますぞ。それに竜崎博士も無事に回復されて、現場に復帰しているとか」

 

「ええ、マルスとは異なるダイモスと同等の性能を持った機体、烈将フォボス。ダイモスとソウルゲインのモーションパターンと操縦データを反映した事で、パイロットの格闘能力がより顕著に反映されます。

 その分、パイロットを選びますがスーパーロボットとは元からそういう代物です。それにパイロットの選考についても有力な候補が見つかっております。遠からず戦力化できる見込みです」

 

「ダンクーガもブラックウィングとの最終合体プログラムのインストールが終わりました。後は双方の野生のエネルギーが合体に必要な規定値にまで達する事、そして獣戦機隊とアラン・イゴールの相性が課題ですかな」

 

「ガンドールの心臓の交換も順調なようですし、幸い第二次SRG計画は好スタートを切れそうですね。相変わらずライディーンは現代兵器の装備すら認めてくれませんけれど……」

 

 唯一、外付けの強化が上手く行かないライディーン関係者の猿丸だけはトホホ、と口に出してしょんぼりとしている。

 マジンガーZとグレートマジンガーが外付けの武装で強化されているし、ゲッターに関しても達人、みちる、武蔵の乗るグレイゲッターは灰色のゲッターロボGへ乗り換え、ザンボット3もイオン砲のエネルギー高効率化を始めとした改良と武装の追加作業中だ。

 

 参加メンバーでは最年少の猿丸に、他のメンバーは同情的だ。ライディーンに関しては修理を受け付けてくれるだけ、まだマシと考える他ない。

 ライディーンを強化できず溜まる鬱憤はザマンダーに向けられて、晶と麗用のサイコザマンダー開発へと繋がったから、何が吉と出るか分からないものだ。

 

「更なる攻勢を強めてくる侵略者達との戦いの重責を若者達に担わせる以上は、我々も出来る限りのことをしなければなりません」

 

 我が子を戦わせている剛光代博士の言葉に、参加し、熱心に口を動かしていたほとんど賢人達が頷く中、ふと、誰かがある事に気付いた。

 

「そう言えば所長さんは?」

 

 各分野のナンバーワンにはなれないが、トップスリーからファイブくらいにはなれるオールラウンダーの所長は、SRG計画で非常に重要な役割を果たしたが、その所長の姿がこの場にない。会議の始まった時には居た筈なのだが……

 

 

 アルフィミィ率いる──とヘイデスは判断した──アインスト一行の空間転移による出現は、まさにヘイデスにとって寝耳に水、そんなのあり? と言いたくなる出来事だ。これがゲームだったらバグを疑うし、負けイベントかなにかと首をひねるだろう。

 しかし、ヘイデスにとって目の前の少女や世界観を間違えていそうなKOS-MOSとT-elos、ジン・ウヅキも紛れもない現実なのである。

 偽りの星の屑作戦における最終局面でアインストはバサ帝国に攻撃を仕掛けたが、ヘイデスからするとだからといって完全に味方だと判断はできない。

 スパロボでは途中までは味方だが、最終的には道を違えるキャラクターや勢力には事欠かない。目の前のアルフィミィ達がその例に含まれないと、断言する材料がないのだ。

 

(いや、アルフィミィ達が敵ではないと考えられる材料が、星の屑での行動以外にも一つあるか……)

 

 ヘイデスは特に警戒心を覗かせていない双子らの背中に、一度ずつ視線を送った。今や至高神ソルとしての記憶を取り戻し、スフィア四つ分の力を持つに至った双子はフェブルウスと離れた状態でも、スフィアリアクター四人分に匹敵する超常の力を行使できる。

 そこまで正確な事情はヘイデスも知らないが、ニュータイプやイノベイター、あるいは超能力者的な勘の類なら持っていてもおかしくない、と以前から察している。

 その双子らが警戒や敵対の意思を見せていないのだから、会話の余地はあると思ってもよいのではないか? と考えられる。

 

(ふむ)

 

 その一言で腹を括れたのは【ヘイデス・プルート】という人格の成せる業で、スパロボプレイヤーとしての彼は、胃壁の溶ける音を聞いていた。幸い、幻聴である。

 仮に本当に溶けていたとしても、彼の代わりを短期間ならともかく長期間務められる人材はいないので、病床の身で無理をしなければならない羽目になるだけだが。

 

「ようこそ、エリュシオンベースへ。僕をご存じのようですから自己紹介は省きましょう。どうぞそちらにおかけください。アポイントなしでの突撃訪問ですから、大したおもてなしも出来ませんが、ご容赦を」

 

 ヘイデスは手を振ってファントム達を下がらせる。アルフィミィは素直にヘイデスの言葉に従って、来客者用のソファにちょこんと座る。その左隣にヴァイシュラバが腰かけて、残りの三人(二機と一人?)は後ろに並び立つ。

 ヘイデスは右にシュメシ、左にヘマーという配置で対面に腰かけた。状況的には追い詰められたと形容していい。単体での戦闘能力が上位の機動兵器級の相手ばかり。シュメシとヘマー、ファントムらといった面子が揃っていても、ヘイデスの命を取るくらいは出来るだろう。

 そんな極限の状況下において、ヘイデスの頭脳は生命の危機を前にして生存の目を見つけるべく、フル回転している。

 

「あなた方、アインストから接触があるとは想定外でしたよ。それにしてもどうして僕に? ああいや、それとも別の誰かに用があってそのついでですかね」

 

 ヘイデスの脳裏をよぎったのは左右の双子と格納庫のフェブルウス、そしてエクセレンとキョウスケだ。アインストと言えばキョウスケとエクセレンである。あちらに干渉する為の陽動としてヘイデスに顔を見せた可能性も、ないとは言い切れまい。

 

「ふふ、私達の本命はあなたですのよ、ヘイデス総帥。そちらのシュメシとヘマーも。この世界とは異なる因果の糸を持ってやってきたあなた方に、私達もそろそろ接触しようと考えましたの」

 

「なるほど、この星の監視者たるアインストとしては外宇宙からの侵略が激しくなる昨今、イレギュラーな要素の実態を把握したいと考えられたわけですか。納得の理由ですね」

 

 ヘイデスは頭脳をフル回転させ、加えて背水の陣を敷かされた状況にクソ度胸を発揮していた。半ばギャンブルのように、自身の持つスパロボ知識というメタ要素のアドバンテージを開示するまでに至っている。

 

「やはりあなたはこの世界の理の外に幾ばくか触れている方ですのね。最初、私達は地球人類の言うところの一年戦争、そこで行われたコロニー落としを防いだ漂着者に注目しておりましたの。

 同時に漂着者を追ってやってきた者達も。そうしてしばらくは監視を続けていたのですけれど、ちょうどそこでこちらのヴァイシュラバと接触し、漂着者であるそちらの双子さんの正体を知りましたのよ」

 

「ウチのシュメシとヘマーは人気者のようですね。この子達を追ってやってきた者達はバサ帝国で?」

 

 ヘイデスは気さくな調子で肩を竦め、内心の不安や動揺を欠片も見せずに言葉を重ねる。ヴァイシュラバは押し黙ったまま双子とヘイデスに視線を向けたきり。

 黙ったままでいるのが却って恐ろしいタイプだが、同時に理性のある相手であるのもヘイデスは理解している。精々気休めだが、その気休めとてあるのと無いのとでは段違いな状況だ。

 

「ええ。彼らも別宇宙からこの宇宙へとやってきた来訪者。厄介なのは彼らに悪意があるという事ですの。その点、そちらの双子さんやヴァイシュラバは違うようなのですけれど」

 

 双子とヴァイシュラバという言い方に、ヘイデスは引っかかりを覚えた。その中にKOS-MOS達が含まれていない。となると彼女らは……?

 

「ではそちらに控えているKOS-MOSさんとT-elosさん、そしてジンさんは望まぬ来訪者ですか。あるいは遭難者と言う方が正しいでしょうかね。ああ、ひょっとしたら的外れな意見かもしれませんが、KOS-MOSさん、T-elosさん」

 

「……」

 

「なんだ?」

 

 KOS-MOSは無機質な瞳を、T-elosは氷のように冷たい瞳をヘイデスへと向ける。それだけでもヘイデスは心臓が縮む思いだが、彼の言葉は止まらなかった。

 

「ファントムやアークゲインに見覚えがあるかもしれませんが、彼らはれっきとした我が社製の機体です。かのエンドレス・フロンティアとは関係がありません。先にそれを明言しておきますよ」

 

「……なぜあなたがその名前を?」

 

「ふん、色々と腹に隠し持っているようだな。力づくで聞き出すか?」

 

「そこまで気色ばまなくても結構。例えていうならこの世界も、エンドレス・フロンティアも、そしてロスト・エルサレムを持つあなた達の世界も実験室のフラスコの中身です。そして僕はそのフラスコの実験を観察する側の視点を“持っていた”というわけでして」

 

 今はもうその視点を持っていないと言外に告げるヘイデスに、KOS-MOSは無機質な印象のままに言葉を重ねる。

 

「上位次元の観測者であったと?」

 

「あるいはそう設定づけられたキャラクターですかね。僕の主観としてはこの世界に生きて、そして死ぬ、そういう当たり前の命の一つだと自己を定義しています。

 僕がエンドレス・フロンティアやゾハル、ロスト・エルサレムを巡るあなた達の世界を知っているのは、こちらで生まれる前に知識として知っていたから。そしてその知識をこちら側で生まれて、一年戦争の頃に思い出したから。もちろんアインストのことも。

 まあ、僕の知識との差異なんて細かく見れば山ほどあるとは思うんですけど、そちらのトップはノイ・レジセイア? それともシュテルン・ノイレジセイア?」

 

「あらあら、こちらの思っていた以上のジョーカーをお持ちでいらしたのですね。私達のトップはノイ・レジセイアと申しますの。貴方のご指摘の通り古き地球の監視者。地球に誕生した生命の行く末を記録し、観察するシステム」

 

「地球に発生した生命を失敗作と評価していらっしゃる?」

 

「ふふ、評価はアインストの役割ではありませんわよ。でも、本来の役割から外れているという点では、間違いではありません。

 アインストはここまで育った地球人類の命運が尽きる事を憂いておりますの。地球人類に対しての評価は失敗作とはその逆。その行く末の果てまで見続けたいという欲求を抱きました。

 それでも極力監視行動に徹していましたが、最近になってこの宇宙の理外の侵略者が現れました。ムゲやバサ帝国ですわね。ですから私達は地球人類に助力すると決めましたの」

 

「つまり失敗作だから排除するという考えとは真逆の、失われるのが惜しいから助力すると解釈してよろしいので?」

 

 マジで? とヘイデスは内心で繰り返し呟いていた。アインストと言えばスパロボオリジナルのラスボス勢力であり、打倒した後も人類から実験対象として好き勝手されて後々に厄介な火種となる存在だ。

 ヘイデスは一応主人公側の人物と自分を認識しているので、アインストとは一戦交える覚悟を固めていた。それが無意味になったばかりか強大な味方が増えるとなれば、それはそれで都合が良すぎるのでは、と素直に信じられない辺り、彼の苦労が偲ばれる。

 

「よろしいですの。とはいえあまり頼りにされても困るので、ほどほどに加減して手助けさせていただきますわ。見たところ、貴方にあるのは知識だけ。絡みつく因果の糸が齎す特異な力はなさそうですのね」

 

 ここでヘイデスは少し口調を変えた。胸襟を開いたというアピールの一環だ。

 

「手厳しいな。だが、アルフィミィ、君の言う通り。僕にあるのは知識くらいのものさ。それだってこの状況じゃどこまで当てはまるか分かったものじゃない。だから君達が敵に回らないというだけでも、大いに助かる」

 

「うふふ、貴方がなにか怖~い手札を隠していなければ、ですけれど。それに知識しかないとはいえ、知識の有無によるアドバンテージは語るまでもないでしょう。決して軽視は出来ませんのよ」

 

「そうかい。一から百まで信用する、と言われてもこちらも困る。少しの警戒心を抱きながら歩み寄るくらいが、お互いにとってちょうどいいのかもね。

 真偽は好きに捉えてくれて構わないけれど、バサ帝国について僕の知る限りの情報をお伝えしよう。それが僕なりの誠意と受け取ってもらえれば幸いだ」

 

 そしてヘイデスは推測だが、と断りを入れてからバサ帝国の本当の首魁は宰相イングラム・プリスケンであり、皇帝ラオデキヤは傀儡でしかない事、バルマー本星はなく今あるだけの戦力がバサ帝国の全戦力と思わしい事、クロスゲート・パラダイム・システム、こちらに潜入しているクォヴレー、ズフィルードet cetera。

 スパロボ知識という手札を切ったのは、アインストを可能な限りこちら側に寄った勢力にしたい思いと、それがだめならばアインストとバサ帝国で戦って消耗してくれれば、という打算込みだ。

 

「ユーゼスはイングラムと結ばれた因果の鎖からの解放、そして超越者に至る事を目的としている可能性が高い。その為に次元力制御システムの完成形である至高神ソル、その生まれ変わりであるこの子達を狙っていると僕は考えている。

 地球の支配そのものには然したる興味もないだろう。興味がないから地球が砕けようが、人類が滅びようが構わないと思っているだろうね」

 

「なるほどぉ、仮にあなたの仰る事が全て事実だと仮定したなら、バルマー・サイデリアル連合帝国の内情は薄いものですけれど、ユーゼス・ゴッツォの目的と能力は想定を超えておりますの。おとかあ様と一度膝を詰めてお話しなくては。

 ふふ、ヘイデス総帥の見極めの為に足を運びましたけれど、思った以上の収穫を得られましたの。アインストとしてはこれからも地球人類にはなるべく穏便に、かつ文化的に発展していただきたいんですの。ですからこれからも期待させていただきますわ」

 

 アルフィミィは言葉の通り思った以上の収穫に喜び、同時にバサ帝国──ユーゼスへの警戒度を最高に跳ね上げて退出するつもりだった。

 同胞であるレモンとまだ目覚めぬエクセレンが居るが、彼女らとの繋がりを知られてもいい事はない。目の前の男ならば知っていてもおかしくはないが、そこはそれ、念には念を入れてだ。

 すぐにノイ・レジセイアの下へ戻ろうとしたアルフィミィだが、なぜか今回の突撃訪問に同行してきたと思ったら、ずっと黙ったままだったヴァイシュラバが口を開いた。

 

「思い出さずに忘れたままでいればいいものを思い出したか」

 

 生身でマクロス・クォーターの甲板をぶち抜く次元将の瞳は、ヘイデスの左右に座る双子を射抜いていた。敵意? 闘志? あるいは憐憫? ヘイデスにも読めぬ感情がヴァイシュラバの瞳に浮かんでいる。

 

「うん、思い出したよ。次元将ヴァイシュラバ。かつて僕達が創造主“御使い”の下で行ってきた事」

 

「私達が自らを砕いた後も続いた蛮行の数々。そして戦いを挑み続けたあなた達を含む多くの戦士達」

 

「そして御使いは討たれた。どこの誰かは知らんが、根源的災厄として多元世界を脅かしていた奴らは既に無い。創造主を失い、お前達は何を望んだ。なぜ、その姿を取った?」

 

 腕組みをしたまま座るヴァイシュラバからの圧がグンと増した。ヘイデスはそのまま磨り潰されてしまうと本気で思った。

 

「僕達は……命になりたかった。生まれて、育って、老いて、死ぬ、そんな当たり前の命になりたかったんだ」

 

「人間になりたかったのよ。御使いのように喜怒哀楽を分かつのではなく、全ての感情を、矛盾を孕みながら併せ持つただの人間に」

 

「ふん、あらゆる並行世界で無数の命を滅ぼしてきたお前の望みが、ただの人間に生まれ変わる事とは、真戦で御使いに敗れた者達や御使いが聞けばどんな顔をするだろうな」

 

「……」

 

 至高神ソル自体はシステムであり道具だったとはいえ、御使いの意志のままに無数の銀河を滅ぼし、数え切れぬ生命を奪ってきたのもまた事実。

 その行いの悲惨さに耐え切れずに自害したとはいえ、ヴァイシュラバの指摘はシュメシとヘマー、そしてフェブルウスの心に暗い影を落とすのに十分すぎた。そしてそれを見過ごせない程度には、ヘイデスに父親の自覚があった。

 

「そこまでにしてもらえますかね、ヴァイシュラバさん。この子達がかつて至高神ソルだった事もその記憶を持っている事も、揺るがぬ事実。しかし、今、この子達はシュメシ・プルートとヘマー・プルートなのです。

 ソルが死を迎え、この子達に生まれ変わった時点で、もうこの子達は至高神ソルではないんですよ。

 御使いがどれほど醜い存在であったかは僕も知っていますから、貴方が至高神ソルに対して敵意を向けるのは止められません。しかし、この子達に敵意を向けるのは許容できない。それは間違っていると断言させてもらいますよ」

 

「ほう、言うじゃねえか。岩一つ砕けんその拳で俺に挑むか?」

 

「力を振るうのは僕の本分ではないけれど、それしかないのならそうしますよ」

 

「ふん、そういうセリフは拳を震わせながら言うもんじゃねえぜ」

 

「なにしろデスクワークに特化しているものでね。でも、子供の前で虚勢の一つも張れない親にはなりたくないんですよ」

 

「そうかい。止めだ、止め。そう身構えなくていいぜ。次元将の一人として至高神ソルに思うところがないわけではない。だが、かつて至高神ソル“だった”者に、含むところはない。かつての御使いの行いを繰り返そうとしない限りはな」

 

「……そう言ってくれると安心できますね」

 

 ヘイデスは力いっぱい握り締めた拳を緩め、どっと冷や汗を噴き出した。ヴァイシュラバから放たれるプレッシャーは、確実にヘイデスの寿命を縮めただろう。

 

「ヴァイシュラバ、もうご用事は済みまして?」

 

 困った顔になったアルフィミィに咎める視線を向けられて、ヴァイシュラバは意に介した様子もなく答えた。

 

「ああ。記憶を取り戻す前ならば知らぬままに力を持った子供、記憶を取り戻した後でも力を持っているのには変わらんが、周りにマシな連中が居るのが分かった。それで俺の目的は果たせた。後は俺の気に食わん奴をぶっ潰すまでの話だ」

 

「気合十分でなによりですの。お聞きしたズフィルードの特性が真実であるのなら、あまり貴方には前に出ないでいただいた方がよろしいかもしれませんね」

 

「もう遅い。俺はさんざんあのアストラナガンとやらとやり合っている。リヴァイブ・セルを使っていない以上、それを真似される可能性はないだろうが、相応に手強い機体が仕上がるだろうよ」

 

「これ以上、頭の痛くなる話を聞かさないでくださいまし。地球人類との共闘路線、もう少し積極性を高めるべきかもしれませんの。……こほん、ヘイデス総帥、シュメシ君、ヘマーちゃん、この度は突然の訪問でお騒がせいたしましたの。

 実りの多いお話でした。次に会う時はきっと戦場でしょうから、その時にはどうぞよろしく。それと扉の向こうで控えている方も。ではごきげんよう」

 

 言うが早いかアルフィミィを筆頭にこれまで口を閉ざしていたジンが目礼し、その他の面子も会釈するなり無視するなりして、来た時と同じように転移によって姿を消す。

 人数だけでなくその存在の放つ圧によって、悲鳴を上げていたかのようなヘイデスの執務室はもし意志があったなら唐突過ぎる圧の消滅に、虚を突かれただろう。そして部屋の主も似たような心理状態に陥っていた。

 

「やれやれ生きた心地がしなかったな……」

 

 ヘイデスの口からは、そのまま魂が抜け出てしまいそうな溜息が吐き出される。

 

「お父さん、お疲れ様。庇ってくれてありがとうね」

 

「ふふ、お父さん、格好良かったよ」

 

「そうかい? それなら見栄を張った甲斐があったよ。それにしてもとんでもない重圧だった……。彼らが敵ではない事実に今日ほど安堵した事はないよ」

 

 あんなのが全部で四人にバジュラ、ゼウス神、ミケーネ神、ロージェノム、ゲッター軍団、堕天翅らが挑んで勝てなかった御使いは、なんだかんだ言って強大だったのだと、彼らを内心で小物扱いしていたのをヘイデスは恥じた。

 まあ、ゲッター軍団に関してはもっとやばいのを見つけて、そちらとの戦闘を優先したのが作中で語られているし。ラ=グースか? いや、ゲッターエンペラーでもまだ参戦資格があるか怪しい戦闘規模の連中だし、実はこれといって決まっていない相手かもしれない、そうだといいな、と思うヘイデスであった。

 ふうっと息を吐いて脱力したヘイデスが背もたれに体重を預けると、不意にヘマーが扉の向こうへと声をかけた。

 

「お母さんももう大丈夫だよ」

 

「ん?」

 

 そう言えばアルフィミィが“扉の向こうで控えている方”と言っていたな、とヘイデスが目を向けた先で、扉を開いて入ってきたのは歩兵用のパワードスーツの上に白衣を着こみ、両手には二つの銃身を銃把でZ形に連結し、2丁使えば前後左右に同時射撃可能な機関銃ダブルファングを装着した所長だ。

 背には全長二メートル、口径30mmに達する巨銃センターヘッドを背負っている。侵入者に気付き、可能な限りの重武装を施した上で駆け付けたのだが、結果としてそれが無駄に終わったのは何よりの幸いであった。

 

「慌てて駆けつけてみましたけれど、無駄骨に終わったようでなによりでした。正直、生身での戦いでこれは勝てないと思ったのは、生まれて初めてでしたよ。先程までこの場に居た五名、全員がまさしく人外ですわね」

 

「その内二人はアンドロイドみたいなものだけれど、全員が機動兵器を生身で破壊できるレベルの怪物達さ」

 

「それはそれは……貴方も厄介なのに目を着けられて」

 

 呆れる妻に、ヘイデスは肩をすくめるだけだった。もうそれ位しか反応する余裕がなかったのである。

 

「明るい未来の為には、それでも頑張るしかないさ」

 

 それでもこう言えるだけ、ヘイデスは慣れたくもない苦境に慣れたと言えるかもしれない。

 それにしてもクォヴレーの正体をユーゼス・ゴッツォとほぼ断定しただけでも神経を削る行動だったのに、それに加えて不意を突いてのアインスト訪問と来て、ヘイデスの精神と肉体は多大なダメージを負っていた。

 流石にこの状態から回復するには、丸一日休養が必要だとヘイデス自身が確信する程だった。

 だが、世界はそんなに優しくはなかった。

 メカ・ブーストとマグマ獣の混成軍団の日本襲撃の報せが、翌日、齎されたのである。すなわちブッチャーとガルーダによる連合軍がついに表に立つ準備を終えた事を意味する。

 スーパーロボット達による大戦は、まだ終わらない。

 

《続》

■バトルマシン6号機バトルアーマーが開発されました。

■ボルトマシン6号機ボルトスピナーが開発されました。

■ボルトマシン7号機ボルトローラーが開発されました。

■烈将フォボスが開発されました。

■グレイゲッターロボGが開発されました。

■量産型ラインX1が開発されました。

■ステルバーが開発されました。

■ステルボンバーが開発されました。

■ケルベロスシリーズ・ライトヘッド、レフトヘッド、センターヘッドが開発されました。

■デスホーラーが開発されました。

■ダブルファングが開発されました。

■パニッシャーが開発されました。

 

■ガイゾック&ガルーダ軍が動き出しました。

 




ご愛顧ありがとうございます。
所長が装備していたダブルファングはトライガンシリーズを、センターヘッドはガングレイヴシリーズで検索すると、詳細が分かるかと思います。
そのうち、SEEDではない方のプラントも開発されそうですね、この世界。

追記
ゲッター軍団回りを微修正。


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第六十六話 パンドラボックスは主張したい

■共通ルート 第三十七話 月と日輪とV

 

 かつてキャンベル星人の拠点だった十字島やオレアナ城を占拠し、戦力の回復と増強に努めていたガイゾックと、ガイゾックの神によって回収され、復活したガルーダは手を組み、遂にその悪意の牙と闘志の炎を地球人類へと向けた。

 オペレーション・レコンキスタによる壮絶な戦いにより、勝利を収めながらも疲弊した地球連邦軍、そして戦力の大多数と幹部を複数失った敵対諸勢力の動きが極めて鈍化した隙を逃がさぬ電光石火の行動だ。

 

 ドミラ、ガビタン、ドヨズラー、ガルチャック、アンモスガー、トラシッド、ダンガルン、ゾンダアと様々なメカブースト、更にはガルーダによって量産されたマグマ獣ガルムス、ゴルゴ、バリバリ、ザンギャル、ゲルゾ、ゴルダーらによって構成される混成部隊が主力だ。

 またバンドックもデチューンはされているが複数建造され、グレイドン数隻と合わせて艦隊を構築している。どの勢力から見ても侮れない戦力と言っていいだろう。

 

 ガイゾックの神の指示とは言え、ガルーダと手を組むのはブッチャーとしては面白くなかったが、心もとない戦力の増強と地球上での拠点確保の利点は理解していたし、なにより神からの命令に逆らう度胸は彼にはなかった。

 そしてあの目障りなザンボット3を始めとしたスーパーロボット達が不在の日本を荒らし回れるチャンスの到来は、ブッチャーに一時的に不満を忘れさせて、上機嫌にするには十分すぎるものだった。

 

 最大の障害の居なくなった日本列島を荒らしまわり、慌てて戻ってきたDCの連中の悲嘆と絶望に暮れた顔を大笑いしながら見てやろうと、ブッチャーは今にもよだれを垂らしそうな顔で考えていたのである。

 神ファミリーと初めて戦った駿河湾を目指し、太平洋側から侵攻したガイゾック・ガルーダ連合軍は、今、海上にて地球連邦軍極東支部からの手厚い歓迎を受けていた。

 

「ブッチャー様、三時の方向より接近する飛翔物体多数! 潜水艦からのミサイル攻撃と思われます!」

 

 レーダーの捉えた反応に泥のような汗を流しながら報告するギッザーに、ブッチャーは大量の唾を飛ばしながら指示を出す。

 日本列島近海に展開していたキラーホエール級攻撃潜水艦艦隊から発射された地対空ホーミングミサイルと対艦ミサイルの群れは、彼らなりのガイゾックへの挨拶だ。

 内容は“ようこそ日本へ。では死ね!”といったところか。

 

「メカブースト達に迎撃させい! 発射元の特定を急げ。大元を叩かんと何時までも撃たれるぞ!」

 

 ミサイルを撃ってくるのは潜水艦艦隊ばかりではない。空海両用の優秀なMZシンカー部隊が海中から顔を覗かせては、バンドックの下方から魚雷から換装した対艦ミサイルを発射して脅かし続けている。

 悲報はさらに続いた。メカブーストの指揮も行っているバレターが、進行方向から検知された高エネルギー反応に怯えながらブッチャーに報告してきたのだ。

 

「正面より高エネルギー反応、敵艦隊、発砲! 直撃コースです!」

 

「回避!」

 

「間に合いません!」

 

「ええい、こなくそ、バリアー全開! 急げ!」

 

「御意、ブッチャー!」

 

 バレターは迅速にブッチャーの指示に従い、バンドックのバリアーの出力を最大に引き上げ、彼方から飛来したメガ粒子砲やゲッタービーム、光子力ビーム、GN粒子といった様々な破壊エネルギーをかろうじて受け止める事に成功する。

 射線軸に巻き込まれたメカブーストやマグマ獣が数珠繋がりに爆発して、空中に大輪の爆炎の花をいくつも咲き誇らせる。

 

「グレート・ブッチャー、ワンダフル・ブッチャー、ビューティフル・ブッチャーは反撃! 撃ちまくれ! デンジャラス・ブッチャー、パワフル・ブッチャー、プリティ・ブッチャーはわしらを守れ。このバンドックに傷一つ付けさせるでないぞ!」

 

 それぞれ新たに建造したバンドックの名前だ。オリジナルバンドックよりバリアーの強度やエンジン出力の低下など劣る点はあるが、クルーの生活区画を必要としない分、ダメージコントロールや生産コスト面で優れている。

 この時、ガルーダは再生産したビッグガルーダに乗り込み、グレイドン艦隊の内の一隻の甲板に出ていた。分身ともいえるビッグガルーダからその名の通り巨大な弓矢であるビッグボウを射って、接近を試みる連邦の部隊を牽制していた。

 

「ふふ、ブッチャーめ。慌てふためいて指示を出しているな。遊ぶ余裕は欠片もない様子だが、ふふふ、その気持ちは分からないでもない。狙った場所が悪かったと言えるかもしれんが……」

 

 ガルーダの言う狙った場所が悪かった、これの意味はオペレーション・レコンキスタにおいてDCをエスコートした各方面軍の中にあって、最初にエスコート役を務めた極東方面軍は、その分、早い段階で戦力の再編成と補充を行えた為、現在、疲弊した各方面軍の中にあって平時に近い状態にまで立て直しが済んでいたことを指す。

 他にもスーパーロボットの研究所がいくつもある為、襲撃の頻度が高いのをスパロボ知識から知悉しているヘイデスがアレスコーポレーションの戦力を重点的に配備しているのに加え、極東支部自体の戦力も高いとあって、ブッチャーは思ったとおりの虐殺も人間爆弾量産計画も初手から躓いていた。

 

 正面からはストーク級雲龍、天城、葛城、更にクラップ級古鷹、加古、青葉、衣笠らを中核とした機動艦隊が展開し、迫りくる敵艦隊を押し留めようと休みなくビームとミサイルの雨を降らし続けている。

 機動兵器も少数のゲシュペンストMk-ⅢとバルゴラCSを筆頭に、ゲシュペンストMk-II・HC装備、ジャベリン、アンクシャ、サラマンダー、ストームソーダー、グルンガスト弐式と強力なラインナップだ。

 

 これら正規軍に加えてAC極東支部から派遣された部隊も加わり、日本列島上陸を狙うガイゾック・ガルーダ連合を必死に迎え撃っている。

 その中でも目覚ましい活躍を見せているのは、専用のグリーンカラーに塗装したゲシュペンストMk-Ⅲを駆るカイ・キタムラ少佐だ。

 

「超電磁ガントレット、超電磁グリーブ、セット!」

 

 ボイスコマンドに従い、カイのゲシュペンストMk-Ⅲの四肢が超電磁エネルギーに覆われて、ピンク色の光に包まれる。超電磁タツマキと同じ色だ。

 バックパックのブースターが爆発的に炎を噴き出し、更にオレンジ色のGN粒子も一気に放出されて、緑色の巨人は軽々と音の壁を突破して踏み込んだ。

 サイ・コンバーターがカイの気力をエネルギーに転換し、ダイレクト・バイオリンク・センサーが熟達したカイの操縦技術をサポートして、人機一体の高みへと導く。

 

「この拳一つを甘く見るなよ! 超電磁プラズマボルト!」

 

 一撃一撃が必殺に近い威力を持つ四肢の連打は、ガビタンに分離する余裕を与えずに全身を粉砕し、髑髏めいたデザインのゴルゴを木端微塵にして原型を残す事さえ許さない。

 機動兵器による格闘戦において、地球連邦軍屈指のエキスパートとして、カイはその技量を思う存分発揮し、日本近海に破壊された敵機の残骸をバラまく作業を続行する。

 

 また格闘戦に限らずともツイン・ビームキャノン二門にスプリットミサイル、メガ・ブラスターキャノン、F2WOライフルを標準装備するゲシュペンストMk-Ⅲは、射撃戦においてもめっぽう強く、強力な素粒子レーザーを持つダンガルン部隊と苛烈な撃ち合いを演じている。

 そこにバルゴラCSのレイ・ストレイターレットによる大火力砲撃も加われば、いかなマグマ獣やメカブーストであろうと苦戦は必至だった。

 

 カイ率いるゲシュペンストMk-Ⅲ部隊やバルゴラCS部隊以外にも活躍が目覚ましいのは、ACから派遣された機動兵器部隊──特務四課である。

 課長イサムは神隼人の幼馴染であり、原作アニメでは暴竜鬼という鬼へとなり果てた青年である。この世界では鬼にはならず、新宿を根城にしていた折にスカウトされ、今は特務四課課長の席を任せられている。

 

 そんな彼が乗り込んでいるのは、少数が試作された変形機構を排したゲッターロボGの内の一機、量産型ゲッターライガーである。

 スパロボ的には、敵勢力に利用されてプレイヤー部隊に倒される為に存在するような機体だが、たまには味方側で運用出来てもよいだろう。

 超音速で海面を走るという他のスーパーロボットではちょっと真似できない芸当で戦っている姿は、ゲッターライガーの超スピードあればこそだ。

 

「雁首揃えて火事場泥棒か。へ、総帥が警戒していた通りだな。宇宙人っつってもやる事はセコイもんだぜ」

 

 現代換算で年収ウン千万円の男となったイサムはガルムスの腹をドリルアームで穴だらけにしながら、フン! と鼻で笑う。

 イサム率いる特務四課にはヘパ研製の強力な機動兵器が多数配備されており、さながらマクロスFのSMSめいた戦闘能力を誇るが、今回は特例として預けられている者達の姿もある。

 

 一人は百鬼帝国から離反し、早乙女博士預かりとなった少年の鬼、地虫鬼が直接操縦するメカ地虫鬼、さらに兜シローのガールフレンドでありアンドロイド・ローレライと彼女が電子頭脳を務めるオリジナルのラインX1だ。

 元々、隼人をして不死身と驚嘆させた高い防御力を持ち、更に早乙女博士と鉄甲鬼、敷島博士、地虫鬼自身により強化されたメカ地虫鬼に、開発者であるシュトロハイム博士と兜十蔵博士によって強化改造が施されたラインX1は強力の一言である。

 

 グルンガスト弐式やAC籍のゲシュペンストMk-Ⅲ、バルゴラCSの援護を受けつつ、メカ地虫鬼とラインX1はSFSに乗って戦闘に参加している。

 各研究所預かりになった二人がACに出向し、連邦軍からの要請に応じて出撃している、という屁理屈による戦場への参戦であった。

 

「地虫鬼、ローレライ、お前達はあんまり前に出るなよ。お前らに何かあったら、早乙女博士と兜博士から何言われるか分からんし、元気とシローも悲しむからな」

 

「はい! イサムさんの指示には従います。また元気くんと一緒に遊ぶ為にも、ここで死ぬつもりはありません」

 

「私も地虫鬼と同じ気持ちよ。でもシロー君と彼の家族、そしてパパの生きるこの世界を守る為に、戦うのをやめるつもりはないわ!」

 

「ガキのくせに腹括ってやがるぜ。よし、ならこのイサム様がケツを持ってやる! ボーナスも出るし、二人とも今言った友達に土産の一つも買って帰りな」

 

 余裕のある生活と成果を出せば、その分報われる状況のお陰か、イサムのメンタルは随分と落ち着いている。

 量産型とは言えパイロットを選ぶゲッターライガーを与えられ、それを乗りこなしているのは生来の身体能力の高さもあるが、やはりメンタルが安定しているからこそだろう。

 

 量産型とはいえ民間製のスーパーロボットのパイロットを任せる以上、経歴、力量、人格は厳正に審査される。イサムは正直怪しいところもあったのだが、暴竜鬼フラグ潰しとしてスカウトしたのが切っ掛けである。

 イサムの成長それ自体はあまり期待していなかったのだが、原作ネームドキャラは伊達ではないという事か、メキメキと頭角を現して現在に至る。

 

 量産型スーパーロボットにオリジナル百鬼メカ、マジンガーZに匹敵するスーパーロボットも加わった極東方面軍の防備は堅く、ガイゾック・ガルーダ連合は戦闘開始からそれ以上進むことが叶わずにいる。

 もっとも、必死なブッチャーに対して、ガルーダは宿敵の姿が戦場に無い為に、本気の攻勢は見せておらずあくまで地球人の戦力把握に務めている様子だ。

 

「どうした、葵豹馬、コンバトラーV。激戦に次ぐ激戦に精も根も尽き果てたか。自分達の居ない間に母国を焼かれても──焼かれてはいないか。襲われてもなにもしないままで終わるつもりか? もしそうならばこのガルーダの目も……」

 

 曇ったか、と続けようとしたガルーダだったが、グレイドンのレーダーが捕捉した反応に言葉を止め、代わりに獰猛な笑みを浮かべる。

 

「ふふふ、どうやら俺の目は曇っていなかったようだな。来たか、我が宿敵達よ!」

 

 むろん、グレイドンが捕捉したモノはバンドックも捕捉しており、ブッチャーはその報告を耳にした途端、苦痛を堪えるように歯を食いしばっていた表情を緩め、代わりに残虐極まりない顔になる。まさにこれこそキラー・ザ・ブッチャー!

 

「ムホホホホ、来おった、来おった。ビアル星人の残り滓がネギを背負って、鍋の具になりにきよったわい」

 

 大西洋を横断し、アメリカ大陸を通過し、休養を切り上げて大急ぎで救援に来たキング・ビアル、マグネバード、そしてザンボット3、コンバトラーV、ゲッタードラゴン、グレイゲッタードラゴン他、MSを筆頭とした機動兵器部隊だ。

 強化改造中のスーパーロボットの多くと今度は戦力の減ったエリュシオンベース襲撃を想定し、DCの戦力の大半はエリュシオンベースに残った状態での救援派遣である。

 因縁のあるザンボット3の勝平達とコンバトラーVの豹馬は、知らせを受けていたとはいえ直に宿敵の姿を見れば驚きを隠せない様子だ。

 

「やいやいブッチャー! 今の今まで大人しく隠れておいて、今頃になって姿を見せるなんて、覚悟を決めやがったか!?」

 

「バ~カタレぃ! このブッチャー様が地球人類を絶滅させる前に死ぬわけがなかろう。固める覚悟があるとするなら、それはお前達を楽しく愉快に残酷に滅ぼすという覚悟だけじゃわい。台所の油汚れのようにしつこいビアル星人の血は、地球人類とまとめて消毒せんとな」

 

「ガルーダ!? お前はあの時、確かに倒したはず」

 

「ふ、ふふふ、確かに俺も死を……そう、死を覚悟した。だが、何の因果かガイゾックの神に拾われて、こうして再びお前達と戦う機会を得た。

 だが、勘違いはするな。俺はガイゾックの配下に加わったのではない。あくまでお互いに利用価値があると見込んで、手を組んでいるだけの話だ」

 

「ちっ、そうかよ。だからといってやっている事が地球の侵略なら、俺達が相手をするぜ!」

 

「ふふ、ははははは! そうだ、それでいい! 葵豹馬! オレアナに続いてやってきた女帝ジャネラなど知った事ではない。俺は俺の意志で戦いを選んだのだ! コンバトラーV、今度こそ貴様を破壊する為に!」

 

 ビッグガルーダはよどみない動作でビッグボウに新たな矢をつがえて、コンバトラーVを目掛けて立て続けに射かける。ロボットの動作とは信じがたい流麗さによって放たれた矢を、コンバトラーVは分割したツインランサーで弾き返しながら距離を詰める。

 

「今度こそ引導を渡してやるぜ、ガルーダ!」

 

「それはどうかな? このガルーダ、同じ相手に二度も敗れるほど軟弱ではないぞ!」

 

 コンバトラーVの放つVレーザーを飛び上がって回避し、グレイドンが被弾するのを背にビッグガルーダはウイングソードを抜き放ち、コンバトラーVの頭上から猛禽類の如く襲い掛かる。

 豹馬は味方だったらと願った敵との再戦に闘志を燃やし、機体越しにも闘志を漲らせるガルーダとの戦闘に意識を没頭させた。

 

 少数とはいえ地球最強戦力の一部が参戦した事で、極東方面軍の勢いは一気に増した。

 コンディションは決して万全とは言えないが、それでも意気軒高たる救援部隊は、久しぶりの激突となったメカブーストを相手に、破竹の勢いで戦い始める。

 ぶっつけ本番に近い形で実戦投入となったグレイゲッタードラゴンと、それをフォローするゲッタードラゴンはややおとなしめな戦い方をしていた。

 新旧ゲッターチームが万全ならざるコンディションを連携で補う中、ライガー号に乗る隼人はヘイデスから幼馴染の近況を聞かされていたことから、戦闘中のわずかな余裕を見て量産型ゲッターライガーへ通信を繋げた。

 

「イサム、少しはマシな操縦が出来ているじゃないか。俺からすればまだまだだが、ヒヨッコくらいは卒業したんじゃないのか?」

 

「隼人か! ふん、こいつはお前の乗っているゲッターの量産型なんだってな。そこで見ていな。俺の方がよっぽどコイツを上手く使えるってな!」

 

「ふっ、それだけ大口を叩いたからには、まともな操縦の一つもして見せろよ」

 

「そこで見ていやがれ! 俺はここでのし上がるんだ。侵略者共をぶちのめした英雄としてな!」

 

 いかにも主人公の目の前で功を焦り、敵にやられるキャラクターの台詞だが、死ぬと決まったわけでもなし、名前を捨てて鬼になるよりはマシだろう。

 DCメンバーの参戦、特に滅ぼし損ねていたビアル星人の末裔であるザンボット3の出現に、ブッチャーはガイゾックの神から授けられた切り札中の切り札の投入を躊躇なく決めた。

 

「出でよ、ガイゾックの守護騎士、ガイゾックの敵を葬る死の騎士達よ!」

 

 ブッチャーの呼びかけに応じて、バンドックの中から姿を現したのは全長50mに達する、青と赤の騎士然とした姿の兵器だ。

 ただし下半身を馬の頭を持ったキャタピラ状になっており、青騎士ヘルダインは双頭の槍を、赤騎士デスカインはシミターを、それぞれ盾を持っているのは共通だ。

 メカブーストを切っては捨て、叩いては捨て、潰しては捨てていたザンボット3は、新しく姿を見せたメカブーストに気を取られ、一旦足を止めた。これまで多くの戦いを経験した勝平や宇宙太、恵子はソレらが並みならぬ敵であるのを一目で看破したのである。

 

「ほっほほほほ、下等な地球人とビアル星人の混ざりものでも、青騎士ヘルダインと赤騎士デスカインの強さは分かるようじゃのう。

 貴様らはやり過ぎたのだ。何時まで経っても粛々と滅びを受け入れぬ貴様らに、ガイゾックの神はお怒りである。ヘルダインとデスカインはその怒りが具現化したものと心得て、無様な命乞いの声を上げて死ねい!」

 

 ガイゾックの神から加えられた叱責を思い出したブッチャーの声音は、後半になるにつれてブッチャーらしからぬ恐怖と焦りがこれ以上なく込められたものとなっていた。

 その異様な雰囲気は通信越しにも勝平達に伝わり、睡眠学習で恐怖を除去された彼らに緊張となって伝播する。

 

「へん、ヘルダインだかデスカインだか知らねえが、そんなのちっとも怖くねえや。お前らがこそこそ隠れている間に、俺達が皆と一緒にどれだけの敵と戦ってきたと思ってやがる」

 

「へ、こういう時は勝平の無鉄砲なところが役に立つな。いくら強かろうが、敵に呑まれるほど今の俺達は柔じゃない」

 

「そうね。ガイゾックはご先祖様の仇の特別な敵だけれど、地球を守る為に戦わないといけない敵の一つに過ぎないわ」

 

「恵子の言う通りだ。俺達にとっちゃ、お前達なんてもう通過点なんだぜ!」

 

 ザンボットブローを取り出し、ザンボット3は勝平達の気合を乗せてヘルダインとデスカインへと斬りかかる。ザンボット3を援護するキング・ビアルと同行していたMS部隊からの火線に阻まれて、その他のマグマ獣とメカブーストは動けない。

 先に動いたのは同じ長物を使うヘルダインだ。ザンボットブローとランサーが幾度となくぶつかり合い、空中に斬撃の軌跡と激突の火花がたちまちの内にいくつも生じる。

 

「ブッチャーの奴、負け惜しみを言ったわけじゃないみたいだな!」

 

 ヘルダインの動きの精妙さ、技巧の高さはこれまでの戦いで技量を高めた勝平だからこそ分かるものだった。そしてデスカインもまた絶妙にヘルダインをカバーし、ザンボット3の死角から隙を突き、ヘルダインの隙はデスカインが必ず補ってくる。

 シールドでザンボットブローの穂先を弾かれ、ザンボット3の躯体が泳いだところに突きこまれるランサーを、勝平はザンボット3をそのまま前方に転がるように動かして避けたが、その先にはシミターを振り上げるデスカインの姿があった。

 

「こんにゃろう!」

 

 シミターが振り下ろされ、ザンボット3の首を斬り落とすよりも速く、くるんと回転したザンボット3の踵落としがデスカインに襲い掛かったのは、諦めなかった勝平の見事な手練による。

 不意を突いた踵落としもデスカインのシールドに防がれ、ザンボット3は機体各所のブースターを動かしながら体勢を立て直し、バスターミサイルとブルミサイルの連射で二体の騎士を牽制する。

 命中するかと思われた瞬間に、デスカインとヘルダインの掲げたシールドからビームが放たれて、何発ものミサイルは瞬く間に撃ち落とされる。

 

「やるな、こいつら!」

 

 爆煙から飛び出し、上方からはデスカインがシミターを振り上げ、下方からはヘルダインが腰だめにランサーを構えて、中世の騎馬の如く突撃してくる。

 

「神勝平様とザンボット3を舐めるない!」

 

 両手に構えたザンボットグラップでシミターの刃をからめとり、突きこまれるランサーの切っ先は力を受け流して反らし、勝平は二体との距離を詰めて、嵐のような連撃を加えて死の騎士達に連携を取る隙を与えまいと試みる。

 ザンボットグラップの切っ先が幾度か騎士達の装甲をかすめるがわずかなダメージを与えるのみで、シールドバッシュとシミター、ランサーを巧みに操る騎士達の攻撃は連携を取らずともザンボット3に着実にダメージを積み重ねてくる。

 

「勝平、一対二じゃ厳しいぞ!」

 

「竜馬さんや達人さん達と連携しないと、ザンボット3でも!」

 

 宇宙太と恵子の意見が正しいと勝平も理解していたが、豹馬はガルーダと互角の戦いを演じ、新旧ゲッターチームはブッチャーを称える名前が付けられたバンドックを沈めに動いている。

 助けを求めればすぐに駆け付けてくれるだろうが、ささやかな男の意地と自分達がこの強力な二色の騎士を引き付ければ、それだけ戦況が有利になるのを勝平は理解していた。

 デスカインのシミターがザンボット3の左肩を浅く抉り、ヘルダインのランサーがザンボット3の右頬に一文字の傷を刻む。じりじりと追い込まれる中、キング・ビアルから勝平の父・源五郎の通信が届けられる。

 

『聞こえるか、勝平! これから例のモノを撃ち出す! キング・ビアルで援護するから、その隙に何とかフォーメーションを組むんだ! いいか、カウント5から始めるぞ。5……4……』

 

 勝平が返事をする暇もなく、キング・ビアルは自らを盾にするように前進して、ザンボット3に煙のようにまとわりつくデスカインとヘルダインにイオン砲とミサイルを発射する。

 あわやザンボット3にも命中しかねなかったが、功を奏して二体の騎士はザンボット3からわずかに距離を取る。

 

「父ちゃん、分かったぜ! やるぞ、宇宙太、恵子、ぶっつけ本番だろうが、成功させるんだ!」

 

「しょうがねえ、そいつが俺達の勝ち目だってんなら」

 

「やるしかないわね。いいじゃない、DCらしいもの!」

 

 青騎士と赤騎士のシールドビームがキング・ビアルに命中し、強化パーツによって展開されるGテリトリーを貫通して艦体を破壊して、大きく揺らす。その最中でも、この状況を覆す切り札は、神ファミリーの尽力によって発射された。

 

『……2……1! 受け取れ、勝平! ザンファイター、ザンタンク発進!』

 

 キング・ビアルから飛び立ったのは、どこかで見たことのあるようなデザインをした巨大な戦車と戦闘機だった。この二機は無人機で、単体でも相応の戦闘能力を持つが、作られた最大の目的はザンボット3との合体による強化にあった!

 

「いくぞおおお! ザンボット・コンビネーション……ダイターンクロス!」

 

「ワン!」

 

 と千代錦が吼え、宇宙太と恵子がそれぞれ続く!

 

「ツー!」

 

 ダイファイターもどきのザンファイターとダイタンクもどきのザンタンクが左右に分かれ、

 

「スリー!」

 

 分割されたザンファイターは変形しながらザンボット3の両腕を覆う新たなアーマーとなり、ザンタンクは脚部と合体、更にザンボット3の胸部を金色の十字星が輝く赤い装甲が覆い、背中には日輪を思わせるパーツが接続される。

 そしてザンボット3の特徴的な三日月状のパーツに、日輪の輝きそのままの円盤型のパーツが合体する。そして勝平は新たな姿を得たザンボット3の名前を高々と世界に叫ぶ!

 

無敵超鋼人(むてきちょうこうじん)……ザンボット3×3(サザンクロス)!!」

 

 ダイターン3を思わせる胸部の追加装甲には、なるほど名前の通り金色の十字が輝き、名前には他にもザンボット3の『3』とダイターン3の『3』を掛け合わせた意味があるのだろう。

 ビアル星人の遺産であるザンボット3の強化プランを探る中で、パンドラボックスが弾きだしたのがこの合体強化形態だった。ザンボット3の相棒と言ったらダイターン3に決まっている、とパンドラボックスは主張しているのかもしれない。

 ぶっつけ本番での合体だったが、キング・ビアルの援護のお陰で無事に合体を済ませた勝平は、凄まじいエネルギーの上昇を見せるザンボット3×3に喝采を上げて、不意にどこか懐かしくて頼りがいのある声を聞いた。

 

「ひゅー、こいつはすげえや! おニューのザンボット3は無敵だぜ!」

 

──そうだ。日輪と月の力が合わされば、敵は無い。頑張れ、勝平。

 

 それはこの勝平にとっては聞き覚えの無い声だった。なのに勝平の魂はその声を知っていると告げ、そしてこの上ない頼もしさが彼の心を満たした。

 

「分かっている。見ていてくれよ、万丈兄ちゃん!」

 

 知らない筈なのに知っているその名前を自分が口にしたことに、勝平は気付かなかった。

 

<続>

■量産型ゲッターライガーが開発されました。

■ザンファイター、ザンタンクが開発されました。

■無敵超鋼人ザンボット3×3が開発されました。

 

●イサムが参戦しました。

●地虫鬼が参戦しました。

●ローレライが参戦しました。

 

 

パンドラボックス「(`・ω・´)ザンボット3の相方はダイターン3!」(鋼の意志)

 




ザンボット3×3については昨日、思いついた本作オリジナルです。それまではイオンライフルとかイオンライザーソードとか考えていたのですが、ダイターン3を思い出し、超電磁大戦ビクトリーファイブやゴッドバードを読んでいて、合体させればいいのでは? と思いついた結果です。
オリジナルのダイターン3ではない、万丈が乗っていない、などの理由で戦闘能力は、

・ザンボット3+(ダイターン3×0.5)くらいのイメージになります。


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第六十七話 逃げ足が得意でなければスパロボでは生き残れない

私からするとダイターン3が参戦しないのは確定事項でしたが、読者の方からするとそこはまだ芽の残っていた話だったので、前回の話でそれが完全に潰えた事になる、という可能性を考慮していませんでした。
参戦作品リストとか出した事はありませんでしたものね。いるだけ参戦とか技術・機体のみ参戦が多いから……。


「伸びろ、ザンボットジャベリン!」

 

 ダイターンジャベリンもといザンボットジャベリンが追加パーツから射出され、勝平のボイスコマンドに従ってザンボット3×3よりも長い槍へと変わる。

 日輪の力を身にまとった無敵超鋼人は、それこそ機体が百二十メートルに膨らんで見えるほどの気迫を迸らせて、ガイゾックの守護騎士達へと挑みかかった!

 

「そらそらそら!」

 

 ヘルダインは叩きつけられるザンボットジャベリンをシールドで受け止めようとし、一瞬も受け止め切れずにそのまま大きく吹き飛ばされてしまう。同胞の窮地にデスカインは素早く反応し、ザンボット3×3の背後からシミターを振り上げて斬りかかった。

 スーパーロボットの装甲でも油断できない切れ味を発揮するシミターに、勝平は恐怖を微塵も感じなかった。今のザンボット3×3と自分達ならば、例えガイゾックの守護騎士だろうがなんだろうが敵ではない! 驕りや油断ではなく純粋な事実として理解していた。

 ザンボットジャベリンがそのまま勢いよく引き戻され、柄尻がそのままデスカインの馬の頭部を強烈に叩いた。振り返りもせずに行われたザンボット3×3の反撃に、デスカインが上半身を浮かせて、隙を生む。

 

「ザンボットザンバー!」

 

 ザンボット3×3の左手に握られた新たな武器が振り向きながら真一文字に振るわれ、デスカインの馬の首をまるで水でも斬るように、抵抗を許さずに断った。赤い馬の首が宙を舞い、断面から覗く機械はバチバチと音を立ててスパークを始める。

 デスカインは苦痛に耐えるように身を捩らせ、シールドをザンボット3×3へ突きつけるように押し出した。シールドから迸る轟雷の如きビームを前に、勝平にも宇宙太にも恵子にも焦りはない。

 

「こいつを食らえ! サンレーザー! ムーンレーザー!」

 

 ザンボット3の特徴的な額の三日月、更にそこに加わった日輪を思わせるパーツが同時に輝き、太陽光とイオンエネルギーから生み出された極大のレーザーが発射され、デスカインのシールドビームを蹴散らし、シールドへと直撃!

 これまで多くの文明の兵器を受け止めてきたデスカインのシールドは、月と日輪のレーザーも受け止めて見せた……だが、それも五秒と耐えられなかった。シールドに罅が入ると、それは一気に広がり、デスカインの左腕ごとシールドは砕け散る。

 

「ああああ、デスカインの腕が!?」

 

 ガイゾックの神の与えたもうた切り札の無残な姿に、バンドックの艦橋でブッチャーが汚い悲鳴を上げた。

 デスカインが大ダメージを負う間に、一度は吹き飛ばされたヘルダインがランサーを腰だめに構え、ザンボット3×3の背を貫こうと突撃を敢行していた。

 心は太陽のように燃え、しかし頭は月光のように冴えていた勝平は、不意を突くヘルダインの攻撃に気づいていた。右手のザンボットジャベリンをくるりと回転させると、ジャベリン──投槍の名前の通りヘルダインに投げつける!

 

「おっと、お前のことだって忘れちゃないぜ!」

 

 高速で投擲されたザンボットジャベリンはヘルダインの胸のど真ん中から背中を貫き、青い騎士に致命のダメージを与える。デスカインに続きヘルダインまで、怒涛の勢いで蹴散らして行くザンボット3×3の姿は、先程までの苦戦が信じられないほどの呆気なさだ。

 

「ザンボットハンマー! こいつでまとめて片付けてやるぜ!」

 

 ザンボットザンバーを収納し、新たに取り出した鎖付き鉄球をブンブンと勢いよく振り回してヘルダインへと投げつけ、鉄球で砕くのではなく鎖を巻き付けて雁字搦めにし、ザンボット3×3のパワーを活かしてヘルダインごと振り回してデスカインへと叩きつける!

 

「いかん、メカブーストよ、デスカインとヘルダインを守れえぇええ!」

 

 焦りしかないブッチャーの叫びに応じて、数体のメカブースト達が青と赤の騎士を救うべく一斉に動き始める。カイのゲシュペンストMk-Ⅲやイサムの量産型ゲッターライガーがそれの阻止に動こうとするが、こればかりはメカブーストの方が速い。

 

「勝平、来るぞ、七体!」

 

「エネルギー充填率九十八、九十九、何時でも撃てるわ!」

 

「よし、こいつを食らえ! サンリングスライサー!」

 

 ザンボット3×3の背にある巨大な日輪状のパーツが輝きを増し、そこから黄金の光輪が何枚も発射されて、近寄るメカブースト達を次々と輪切りにしてゆく。

 発射せずともフラフープのように機体を軸にして回転させれば、そのまま攻防一体の鎧となる新兵装だ。邪魔するメカブーストを片付け終えた勝平は、ザンボットハンマーを回収し、ザンボット3×3の必殺技の準備に入る。

 ザンボット3×3の両手から額の月と日輪の飾りへとエネルギーが流れ込み、更に、更にと増幅されてゆく。

 

「これがザンボット3×3の必殺技だ! 日輪の力を借りて輝く三日月を食らえ! 今、必殺の……ザンボット・サンアンドムーン・アタック!!」

 

 ザンボット3×3の額飾りから放たれた三日月はいくつもの残像を描きながらデスカインとヘルダインを取り囲み、その動きを拘束する。ただ拘束するだけではなく、旋回するごとに三日月の刃が装甲を切り裂き、その防御力と耐久性を著しく削ってゆく。

 更に三日月の包囲網の中心にサンアタックが直撃し、ガイゾック最強の騎士達に例え万全であっても一撃で破壊された程のダメージが齎される。

 

「こいつでトドメだ! ザンボット……クラァァッシュ!!」

 

 サンアタックとムーンアタックの同時攻撃を受けて、既に破壊されたも同然だったヘルダインとデスカインにザンボット3×3が一気に加速して、急降下ドロップキックをかまし、一気に二体の騎士を纏めて貫く!

 空中で制動をかけて足を止めるザンボット3×3は、貫くどころか木端微塵に吹き飛んだデスカインとヘルダインの爆発の中に輝く三日月と日輪を背負っているかのようだった。

 

「あああああ、そんな馬鹿な!? ヘルダインとデスカインが、ガイゾックの守護騎士が、ああああああ!?」

 

 ガイゾック最強の兵器が破れるさまを見て、驚愕していたのはブッチャーだけではない。ザンボット3強化プラン“ダイターンクロス”を知っていた神北兵右衛門や神源五郎もまた、実際にその戦う姿を見て想定をはるかに超えた子供らとザンボット3×3の強さには、驚きを禁じ得なかった。

 

「むう、なんという強さじゃ。所長や博士方が想定していた強さをはるかに超えておる。ご先祖様が力を貸してくださったのか?」

 

「カタログスペックをはるかに超えていますからね。それに勝平達も新しい姿のザンボットのパワーに振り回されずに、完璧に使いこなしている。学習装置を併用していたとはいえ、新しい姿や新しい武器に戸惑わないかと心配していましたが、無用な心配でしたね」

 

 被弾したキング・ビアルのフォローに回った極東支部所属のゲシュペンストMk-ⅢとゲシュペンストMk-IIの混成部隊も、自分達が苦戦したガイゾックのメカブーストを蹴散らすザンボット3×3の勇姿には、目を奪われていたに違いない。

 二色の騎士が倒された後は、ザンボット3×3が残るメカブーストを相手に手を付けられない暴れぶりを見せ、雌伏の間に増産したせっかくの機体が異星の技術で作られたジャンクに変わるばかり。

 その光景を尻目にビックガルーダとコン・バトラーVの戦いは、新たな展開を見せようとしていた。

 

「やはり強くなっているな、コン・バトラーV! そうでなければ蘇った甲斐がないというもの!」

 

 ウイングソードを巧みに操り、流麗な剣技で斬りかかるビッグガルーダを相手に、コン・バトラーVは分割したツインランサーで迎え撃ち、両者の全身には浅い傷がいくつも刻まれている。

 深手には至らない傷をお互いにいくつも与え、二体の巨人とそれを操るパイロット達の闘志は衰えるどころかますます燃え盛るばかり。

 

「お前こそな! だがよ、ガルーダ! オレアナはもういない。お前だってアイツには反旗を翻していただろう! だったらキャンベル星の為に戦うなんて言わねえよな? お前が戦うのは何のためだ!」

 

「笑止! それは愚問だな。既に我が胸中にオレアナへの忠誠はない。ましてやキャンベル星など知った事か。俺は俺の心の命ずるままにお前達に戦いを挑んでいるのだ。その後の事は、お前達に勝ってから考えるとしよう。

 地球もキャンベル星も支配し、ガルーダ帝国でも建国するか、あるいはミーアの下へ行くのもよいやもしれん。だが、今だけは、この瞬間だけは、コン・バトラーV! 葵豹馬! お前達を倒す事だけが我が全て!!」

 

 アンドロイドでありながら魂の込められた、と表現するほかないガルーダの気迫は機体にも移り、大上段から叩きつけられたウイングソードの威力に、コン・バトラーVは空中でたたらを踏みながら後方へと吹き飛ばされる。

 このビッグガルーダは、ガイゾックが接収した旧オレアナ城の工場に残されていたものを回収して改造したものだが、その性能は確かに向上しているようだった。

 

「勝利を得る為ならば神でも悪魔でも魂を捧げよう! そして勝利の暁には捧げた神も悪魔も滅ぼしてくれる! 見るがいい、これが愚かなアンドロイド、ガルーダの新たな力よ!」

 

 ビッグガルーダから送られた指示に従い、グレイドンの一隻から黒い翼を広げて巨大な機械の鳥が飛び立った。マグマ獣とはデザインセンスの随分と異なる黒い機械鳥は甲高く鳴くといくつかのパーツに分離し、ビッグガルーダと合体した!

 背負っていた矢筒は腰に移り、その背中に黒い翼が開き、肩や胴体、脚部と新たな鎧が追加されてゆく。そしてビッグガルーダの顔が仮面のように外れると、奥からはガルーダと瓜二つの顔があらわとなる。

 右手には持ち手の無い黒一色の盾が装着され、頭部は赤い角をそのままに黒い兜が被せられた。それは天を翔ける翼を持つ黒い騎士の如き、武威に溢れた堂々たる姿だった。

 

「ふふ、お前達地球人の歴史では、黒騎士とは主君を持たぬフリーランスの傭兵を指すそうだな。甲冑の手入れにも事欠き、困窮を隠すために黒く塗ったと言うが、まさに今のこの俺のようだ。

 仰ぐ主人を持たず、紋章によって示すべき出自を持たず、ガイゾックの手助けなくば戦場に立つこともままならぬのだから。しかし、このガルーダ、戦場に立ったからには修羅と化すぞ、コン・バトラーV!

 大将軍ガルーダは死んだ。ここに在るは戦場の修羅、黒騎士ガルーダよ! そして我が半身、新生したるビッグガルーダ、すなわちブラックビッグガルーダ!」

 

「黒い、翼のあるビッグガルーダ……!」

 

 豹馬のわななく声は目の前の敵から迸る闘志を感じ取り、その脅威を魂で理解したからた。十三もちずるも大作も小介も、誰もが理解していた。目の前のガルーダもビッグガルーダも、彼らの知っているそれとはもはや別次元の存在だと!

 もしここにシュメシとヘマー、そしてフェブルウスが居たならば気付いたかもしれない。それはシンカの兆しだと。

 

「行くぞ、コン・バトラーV! ウイングブレード、とあああー!」

 

 両刃の長剣だったウイングソードには羽を思わせる刃が何枚も重ねられ、巨大な翼状の大剣へと変わっていた。

 黒い翼の生み出す推進力の凄まじさに、両者の間に開いていた三百メートルの空間は瞬きよりも速く詰められていた。

 

 ──速い!

 

 豹馬が言葉にして口に出すよりも速く、ウイングブレードはコン・バトラーVの左肩口を狙って振り下ろされた。パワー、スピード共にこれまでの比ではない。特殊サーメット製のコン・バトラーVのボディをやすやすと斬り裂く事だろう。

 ショートソード状のツインランサーを交差させて咄嗟に受け止められたのは、豹馬の全細胞に染みついた戦士の勘の賜物だ。あまりのパワーの凄まじさに、ツインランサーを砕かれるのと引き換えに、豹馬はコン・バトラーVの頭部の角からレーザーを発射する隙を得た。

 

「パルスショック!」

 

 指先からの放出ではないので、超電磁スパークではない。顔面にレーザーの直撃を受けたブラックビッグガルーダはわずかに首を仰け反ったが、ダメージらしいダメージはまるでない。

 電気には構わず左手の盾でコン・バトラーVを殴りつけ、右頬をしたたかに撃たれたコン・バトラーVは仰向けになって空中を吹き飛ぶ。

 

「この野郎! ビッグブラスト! ロックファイター!」

 

 腹部からは大型ミサイルが、両手の指先からは小型ミサイルが発射され、追撃を仕掛けるブラックビッグガルーダへ飢えた肉食魚の如く襲い掛かる。

 

「小癪な!」

 

 ぐわっと大きく開かれたブラックビッグガルーダの口から、猛烈な勢いで火炎が放射されて殺到する大型・小型ミサイルの群れを纏めて飲み込み、誘爆を引き起こす。

 目の前で広がる爆炎を突っ切り、ウイングブレードを振り上げたブラックビッグガルーダは、しかし、そこにコン・バトラーVの姿がない事に気付く。

 

「ふ、目くらましか。だが、それで終わる貴様らでは!」

 

 直後、ガルーダは上空に凄まじい速さで飛翔するコン・バトラーVの姿に気付く。一見すれば、それは思わぬ強敵ブラックビッグガルーダに背を向けたかのようだ。

 だが、そんな臆病者であったなら、ガルーダは、オレアナはコン・バトラーVに何度も煮え湯を飲まされたりはしなかった。何度も戦った強敵に対する、ある種の奇妙な信頼である。

 そしてコン・バトラーVの動きにマグネバードの四谷博士も応じた。強化プランはザンボット3同様、コン・バトラーVも進められていたのだから!

 

「豹馬、これからバトルマシン6号機バトルアーマーを発進させる! 戦闘中じゃが、お前達ならば必ず成功する!」

 

「へへ、任せときな、おっちゃん。勝平達だってやってのけたんだ。俺達が成功させなくてどうするってんだい!」

 

「よし、お前達を信じる。バトルアーマー、発進!」

 

 マグネバードのカタパルトで加速し、青い空に飛び立ったのはしいて言えばバトルクラッシャーに近い形状の新たなバトルマシンだ。自動操縦のバトルアーマーは分離をはじめ、それぞれのパーツを超電磁エネルギーがつなぎとめている。

 バトルアーマーの作る楕円形の輪の中に、コン・バトラーVが躊躇なく頭から突っ込んでゆく!

 

「いくぜ、新合体! アーマードコンバイン!」

 

 分離したバトルアーマーのパーツはコン・バトラーVの両足ふくらはぎ、両腕、そして胸部と背面へと接続して、コン・バトラーVに新たな力と名前を与える。

 

「コン・バトラー……V6!」

 

 ザンボット3×3に続き新たな力と名前と共に降臨した超電磁ロボの姿に、ガルーダの口からはそうでなくてはならないと、堪らないとばかりに哄笑があふれ出た。

 

「フフフハハハハ! やはりお前達は俺の期待通りの好敵手! さあ、行くぞ、コン・バトラーV、いやコン・バトラーV6! このブラックビッグガルーダとどちらが上か、真っ向勝負だ!」

 

「こっちの台詞だ! 超電磁ヨーヨーハイパー!」

 

 脚部に接続されていた円盤型のパーツが外れ、それはさらに強力な超電磁ヨーヨーハイパーとなり、ブラックビッグガルーダへと叩きつけられる。

 

「フェザーソーサー!」

 

 ブラックビッグガルーダの羽の数枚が翼から撃ち出され、形状を円盤状に変化させると勢いよく回転してそのまま超電磁ヨーヨーハイパーと激突! そのまま超電磁ヨーヨーハイパーはコン・バトラーV6の手元に戻り、フェザーソーサーは粉々に砕けた。

 

「はあああ!」

 

 加速の勢いそのままに突きこまれるウイングブレードを紙一重で避け、豹馬は強化されたコン・バトラーV6のパワーを全開にしてブラックビッグガルーダの腹をけり上げた。

 尋常な生物ならその内臓が破れるような衝撃も、アンドロイドであるガルーダならば耐えられる。ブラックビッグガルーダはウイングブレードを手放し、腹に叩き込まれたコン・バトラーV6の足を掴んでお返しとばかりにパワー全開でフルスイング!

 

「おおおお!」

 

 竜巻のような勢いの回転の後、放り投げられたコン・バトラーV6が体勢を立て直す前に、ビッグボウに矢をつがえてコン・バトラーV6の全身を貫くべく、巨大な矢が神速で連射される。

 

「回転なんざ、超電磁スピンで慣れっこだぜ。俺達の三半規管を甘く見るなよ! ダブル……Vレーザー!!」

 

 崩された体勢のままコン・バトラーV6は頭部と胸部のバトルアーマーにあるV字型のパーツの二つから、レーザービームが照射されて大小二つのVが矢を次々と撃ち落とす。

 

「それでこそ!」

 

 バサっと翼を打つ音と共にブラックビッグガルーダが加速し、コン・バトラーV6へと格闘戦を挑みかかる。体勢を立て直したコン・バトラーV6で迎え撃ちながら、豹馬は心の中で届かない声を上げた。

 

(ガルーダよ、お前が味方だったら、そう思っていたんだぜ、俺はよ。だけどよ、それでも!)

 

「地球の平和を脅かすってんなら、この葵豹馬とバトルチームが相手になってやるってんだよ!」

 

 新たな力を得たザンボットとコン・バトラーが戦いを続ける中で、戦況を動かしたのは同行していた新旧ゲッターチームだった。

 ゲッタードラゴン、グレイゲッタードラゴンが立ちはだかるメカブーストとマグマ獣をイサム達の援護を受けて突っ切り、バンドックの一隻に迫る。

 オリジナルには劣るがそれなりの強度のバリアーは、ストーク級とバルゴラCSの砲撃によって破られ、その隙間に二体のゲッターロボGは勇敢に飛び込んだ。

 

「行くぞ、竜馬君!」

 

「合わせます、ゲッタービーム!」

 

 アニメ第一話ではメカ一本鬼に押し返されたゲッタービームも、度重なる強化によって相当に出力を増しており、バンドックの周囲を旋回する二機のゲッタードラゴンから浴びせかけられるゲッタービームに耐え切れず、内側で次々と誘爆を引き起こして行く。

 

「ぐうう、プリティ・ブッチャーが!? ヘルダインとデスカインも敗北するとは、おお、神よ、ここは退くしかありませんぞ。わしゃ、こんなところで死ぬつもりはないわい! これは撤退ではない。転進であ~る! さっさと急がんかい! ガルーダの奴はほっとけ!」

 

 およそブッチャーの逃げ足の確かさは、侵略者勢力の中でも一、二を争う見事さだ。

 これまで数多くの星を一方的に滅ぼす側であった為、自分が逃げる側になるのは久方ぶりのことだが、自分の命が大事なブッチャーはガイゾックの神から制止がかからないのを良い事に残りのメカブーストを盾に、煙幕や各種ジャマーを全開にして背を向ける。

 ガルーダ率いるマグマ獣とグレイドン艦隊はその動きにわずかに遅れを見せていた。ガルーダ自身がコン・バトラーV6との激戦に意識を割いていたからだが、気に食わないが利用関係にある相手が背を見せる姿に、ガルーダも今日はここまでだとあっさりと割り切る。

 

「尻尾を巻いて逃げ出すのも無理はないか。戦力が疲弊したはずの地球人がこれほどの強さを見せてはな。葵豹馬、そしてコン・バトラーVよ。このガルーダの復活を片時も忘れるな。今日は顔見せと挨拶のみよ。いずれ遠からず決着を付けようぞ!」

 

「待て、ガルーダ!」

 

「待たん! フハハハハハハ!!」

 

 いっそ潔いくらいの高笑いを上げて、ガルーダはマグマ獣を殿に配置して、旗艦としていたグレイドンに飛び移ると速度を上げて戦域を離脱して行く。

 口にした通り、ガルーダにとってはあくまで挨拶止まりの戦いだったからだろう。逆にブッチャーとしては今度こそ地球人を蹂躙しようと意気込んだところで、この大敗である。清々しい気分のガルーダとはまったく逆の心境だろう。

 ブッチャー・ガルーダ連合が戦域を脱したのを見届けてから、豹馬は再び姿を見せた宿敵の背中にぽつりと言葉を漏らした。

 

「黒騎士ってそういう意味だったのか。知らなかったぜ……」

 

「豹馬、ワイもや」

 

「俺は漫画の資料を集めとった時に、知り申した」

 

 豹馬と十三と大作の戦闘直後とは思えない呑気な発言に、ちづるや小介が呆れたのは言うまでもない。

 

<続>

 

■コン・バトラーV6が開発されました。

■ザンボット3×3が開発されました。

 

■敵勢力:ブラックビッグガルーダが開発されました。

 




無敵シリーズと言えばトライダーG7。さてどうしたものか。


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第六十八話 タウ・リンと聞くとユ〇ケルを連想します

お久しぶりです。
余裕が戻ってきたので、短めですが更新を再開いたします。
これからもご愛顧のほどよろしくお願いします。


 地球連邦軍極東支部を襲ったガイゾック・ガルーダ連合が、ゲッターチームやザンボット3×3の活躍によって撃退されたころ、欧州のエリュシオンベースは異様な緊張感に満たされていた。

 オペレーション・レコンキスタによって消耗したスーパーロボットやMSといった機動兵器の修復、人員の補充と休養を済ませるのに、並みの軍事拠点を上回る規模を誇るエリュシオンベースはうってつけの場所だった。

 

 DC所属の面々がこれまでの激戦によって流石に気を抜いて体と心を休めていたところに、今回の活躍に対して感謝の言葉を贈りたい、とOZ総帥にして地球連邦軍将校トレーズ・クシュリナーダが訪問してきたのである。

 それだけならばよかった。

 元地球連邦軍大将を部隊の指揮官に頂くDCだ。軍のお偉いさんが来訪するくらいは、今さらどうってことはない。

 

 トレーズがいかにも冷血な鉄の女然としたレディ・アンを引き連れていただけならば、それでも少しは緊張したかもしれない。

 しかし、その後にゼファータイプのMDがリモート操作するハロ十二体がコロコロと転がりながら付き従う姿があまりにミスマッチで、緊張感が吹き飛んでしまうのだ。

 ではなにがどうして基地の中に緊張感が走ったのか? それはヘイデスやレビル、パオロといったエリュシオンベースの重要人物らとの会談を終えたトレーズが、パイロット達との交流を希望し、移動している最中に起きた。

 

 通路の一角の向こう側から五飛が姿を見せたのである。

 DCと合流以前にはトレーズを相手に暗殺を仕掛けた事もある少年に、トレーズに付き従っていたレディ・アンはにわかに警戒心を抱き、案内役を務めていたヘイデスはそう来たか、と納得の色が深い。

 ヘイデスが困惑しなかったのは、五飛が青龍刀なりで武装していなかったからだろう。もしもこの場で斬り合いが始まろうものならば、今も光学迷彩を起動して控えているファントム達の出番になるところだった。

 緊張感発生の原因は、この五飛とトレーズの対峙にあった。五飛の表情は険しく、一方でトレーズの表情はいつもと変わらぬ優雅さと余裕に満ちていたが、ヘイデスはそれに加えて嬉しそうだなと見ていた。

 

「張五飛、地球の為に戦ってくれた事に礼を述べたい」

 

「俺は俺の正義の為に戦った。これまでもこれからも。貴様に感謝される謂れはない」

 

「ならばこそだ。自らの定めたルールに従い、行われる君の戦いは戦う力を持たぬ人々を守り、地球を侵す敵を討つ事に繋がっている。君の戦いには紛れもなく正義がある」

 

「貴様が俺の正義を決めるな! 俺の正義は俺が決める! そして俺だけのものだ」

 

「そうだ、それが正しい。君の正義によってもたらされる平和も破壊も、全ては自分の責任だと君は口にする。他者に責任を委ねないその姿勢は、私にとって尊ぶべきものだ」

 

「貴様はそれを世界の誰もに求める。……正義を貫けるのは強い者だけだ。世界は弱者によって成り立っている。弱者に強くある事を求めるのは酷だ」

 

「私は人々の戦う姿勢に人間の美しさを見る。輝きを見る。だがそれを求める事を、君はエゴだと断ずる。五飛、君のような存在は本当に稀だ。私は得難いとさえ感じている」

 

「戦いに臨む人間に美を見出しながら、平和もまた同時に希求する。それを矛盾せずに内包する貴様を理解できる人間は少ないだろう。

 だが、俺はお前を正義とは認めない。お前が戦争を引き起こそうとする限り、貴様は絶対の悪だ。誰がお前を肯定しようとも、俺は貴様を否定する!」

 

 刃にも勝る鋭い視線と共にトレーズを悪と断言し、五飛は踵を返す。

 彼もまた現在の地球圏が侵略者相手に勝利を得る為には、トレーズの軍事の才能とカリスマ性が必要であると認めてはいるのだ。この戦いの後に五飛が再びトレーズの命を狙うかどうかは、トレーズのこれからの行い次第であるだろう。

 レディ・アンなどは今にも食って掛かりそうな勢いだったが、その足元にハロ達が群がって必死に止めていたので、レディ・アンと五飛に格闘戦が演じられるのは防がれた。

 その代わりというわけではないが、ヘイデスは去り行く五飛の背中を見送りながらトレーズに話しかけた。

 

「友人と感じていらっしゃる?」

 

「ヘイデス総帥には私の心が見通されているようだ」

 

「少し鋭い人間なら分かりそうなものですよ。ただ、五飛君の方は一欠けらもそうは思っていませんよ。理解者だと思われていると知ったら、不機嫌のあまり眉間に消えない皺が刻まれそうですし」

 

「では私の一方通行な感傷だと肝に銘じておかなければならないな。ふ、ヘイデス総帥も私の事をよく理解してくれているようだが?」

 

「第三者的な立場からモノを見ていると、色々と分かるものなのです。きっと他のガンダムパイロットやコロニーの博士達も、五飛君とトレーズ閣下とのやり取りを興味深く見ているでしょう」

 

「少し前の状況ならば、私は是が非でも排除したい対象に違いない。いや、今も優先順位が変わっただけか」

 

「僕の眼から見るとトレーズ閣下も戦争前と比べると、幾分か変わられたと思いますよ」

 

「もしそうであるのなら、私も喜ばしく思う。変化は劣化と成長、二つの可能性を内包しているのだから」

 

「こういっては礼を失しますが、トレーズ閣下の場合は少しくらい劣化した方が、周囲の人間は理解しやすくなりそうですね」

 

 そう告げるヘイデスにレディ・アンから刺すような視線が向けられたが、ヘイデスの言葉に一部の理くらいは見ているのか、五飛に向けていた視線よりは少しだけ鋭さが鈍っている。

 

「ヘイデス総帥も同じだと私には思えるがね」

 

 トレーズにそう返されて、ヘイデスは、スパロボプレイヤー分は平凡であると自負していたものだから、虚を突かれた顔になる。

 他者からすれば一代で世界的財閥を形成し、世界の混乱を予見して数々の対抗手段を打ってきたヘイデスもまた理解の及ばぬ超人なのだ。

 トレーズという超人の輝きを前にして、ヘイデスは自分を俯瞰的に見るのを忘れているようだった。

 

 

「ようやく我々にも新しい機体が来たか。ハンマ・ハンマは悪い機体ではないが、MSとしての完成度は決して高くはなかったし、重力下での運用には不向きだからな」

 

 エリュシオンベースの格納庫の一角で、マシュマー・セロは茨の園から運び込まれた自分の為の機体を見上げて満足そうに呟いた。

 プルート財閥がゲシュペンストMk-ⅢやバルゴラCSといった機体の供与も提案されたが、自分をハマーンの騎士、ジオンの人間であると自負するマシュマーはこれを謹んで断り、ジオン製の機体が持ち込まれるのを待っていたのだ。

 

「マシュマー様にはザクⅢ、私がズサ・カスタム、グレミーにはバウと。しかし、私はまだズサですか……」

 

「なにを不満に思う事がある、ゴットン。ズサ・カスタムはより汎用機に近い仕上がりになっているのだ。これまで以上に扱いやすい機体になっているではないか」

 

「それは否定しませんが、マシュマー様のザクⅢのように専用のカスタマイズが加えられたわけでもありませんし……」

 

 ゴットンが口にした通り、搬入されたザクⅢは緑色のカラーリングで、頭部にバルカン砲が追加され、サイコミュの導入などがなされたマシュマー専用のカスタマイズ機だ。

 原作では強化人間と化したマシュマーに合わせて作られた機体だが、この世界のマシュマーは強化措置を受けていない状態であり、ミノフスキークラフトの搭載をはじめ原作とは異なる部分が多い。

 

「ええい、愚痴ばかり言うな! お前もこのDCという部隊が戦う敵のレベルの高さは肌で感じているだろう! 少しでも優れた機体を手に入れた事をもっと喜ばんか!」

 

「そんな大声を出さないでくださいよ~」

 

 アクシズから出向している二人は格納庫の片隅でやいのやいのと騒いでいるせいで、格納庫で働いているメカニックやパイロットの為に、弁当を配達に来たスタッフの中にオードリーとメイファの姿があるのをものの見事に見逃すのだった。

 オードリーとメイファがそれぞれミネバ・ラオ・ザビその人か、あるいは影武者であるというのはDC内部では周知の事実だった。その上であくまでもアクシズの民間人オードリーとメイファとして扱うのが暗黙の了解となっている。

 さてそうなってくるとこの半民半官の部隊は、ある種の遠慮が無くなる。分かりやすく言うと“働かざる者食うべからず”が適用されるのである。

 

 歴史は浅いったらありゃしないが、それでも正統なるザビ家の姫君を平気で働かせようとするDCの面々にジンネマンやマシュマーらはぎょっと目を見開いたものだ。特にマシュマーの反発たるや凄まじいものがあった。

 しかし、表立って貴人扱いできないのだからしょうがない、これも社会勉強、いざという時に一人で活動できるよう自分の面倒を自分で見られるようにした方がいい、と手八丁口八丁で言い包めてくるDC陣。

 

 本物のミネバと親交のあったクワトロもといシャアの後押し、更にはジンネマンとマシュマー達もオードリーとメイファが本物のミネバかどうか知らなかった、といくつかの要素が絡み合った結果、オードリーとメイファはDCに保護された民間人がそのままアルバイトとして生活班の手伝いに採用された、という体裁で働いている。

 彼女らにとってはほとんど縁のなかった生活班の仕事だが、行動力と度胸に関してはどの媒体でも発揮している彼女らは、クワトロやジュドー達の励ましもあってあっという間にDC生活班に馴染んでいる。

 まあ、それはそれとしてオードリーとメイファは、お互いに相手が本物のミネバで自分は影武者のクローンか何かかもしれないと考えると、どうしても複雑な心境になってしまうという問題は解決されないままだったが。

 

「次は鉄甲鬼さん達のところね」

 

 出来立てのランチボックスと飲料ボトルを詰め込んだ電動カートを押しながら、メイファはカートに備え付けられたタブレットの示す次の配達先を隣のオードリーと確認し合う。

 二人きりで顔を合わせる時でも任された仕事をしている間は、余計な事を考えないで済むのは助かる。それにこれまでの人生になかった経験をするのを、楽しむだけの柔軟性が二人にはあった。

 

「今日は白骨鬼さんにリサさん、それに早乙女博士達もいらっしゃるから、数は多くなりそうですね。こちらはまだ余裕がありますが、そちらは?」

 

「私の方も大丈夫。ゲッターチームの方達はたくさん召し上がられるから、博士達と一緒にいらしたら、足りなくなるかもしれないけれど」

 

 ミネバかもしれないしミネバではないかもしれない二人は、かつて現役の軍人顔負けの勢いで大量の食べ物を平らげているゲッターチームの姿を思い出し、くすくすと忍び笑いを零した。

 ゲッターチームに限らずスーパーロボットのパイロットは成長期の十代であることが多いのと、スーパーロボットを乗りこなす身体能力を支える為にか、大食いの傾向にある。

 MSパイロットも体が資本なのでよく食べるが、それにしてもスーパーロボットのパイロットはいささか度が過ぎている。

 

「それにしても不思議な気分です。こうして私達が出会い、顔を突き合わせながら、ランチボックスを配って回っているだなんて。ハマーンが知ったら、どんな反応をするか」

 

 遠く茨の園でアクシズの脱出組をまとめ上げ、今もバサ帝国への反撃の準備を整えているだろうハマーンを思い、オードリーは茨の園があるだろう方向へ視線を向けた。

 あちらにももう一人のミネバが居て、皇室警護の者達に囲まれてザビ家の姫君らしく日々を過ごしているのだろう。

 このオードリーにもメイファにも、ハマーンに世話になった記憶がある。それが本物なのか複写された偽物なのかは分からないけれど。

 

「出会っただけならまだしも、ランチボックスの配達には声を荒げそうね。クリーニングにお掃除までしているなんて知られたら、キュベレイで乗り込んでくるかもしれないわ」

 

 お互いの“真偽”は二人にも分からない事だからいくら話し合っても仕方のない事だと、オードリーもメイファも理解している。

 なのでこうしてアルバイトとして働いている間は、共通の知人を持つオードリーとメイファとして接している。

 幸いジオン関係者以外にも二人を気遣ってくれる者はこの部隊に多く、一年戦争でジオンと骨肉の争いをしたベテラン達も、幸いにして悪意を持って接していなかった。

 戦闘能力の高さもある事ながら、モラルの高さもまたプレイヤー部隊に相応しい水準にあったのは、二人のミネバにとって幸いだったろう。

 

 さて二人の仕事に話を戻すと、現在、鉄甲鬼は未完成状態での運用を余儀なくされていた愛機メカ鉄甲鬼の本格的な改修作業に入っていた。

 メカ鉄甲鬼は元々百鬼帝国時代に対ゲッターロボG用に開発された機体であり、ゲッタードラゴンやゲッタライガー用の装備を備えている。ちなみにゲッターポセイドン用の装備は開発が間に合わなかったとされている。

 

 鉄甲鬼は戦いがひと段落したこの状況を利用して、本格的に手を入れる決断をしたのである。これには、百鬼帝国が量産型のメカ鉄甲鬼を戦闘に投入してきた事への怒りも原動力となっている。

 エリュシオンベースに蓄えられた豊富な資材に古今東西ありとあらゆる機動兵器のデータ、地球圏最高峰の頭脳達、これらも総動員してメカ鉄甲鬼は新たな力と姿を得ようとしていた。

 

 その改修に、ゲッターロボGの開発者である早乙女博士が協力に名乗りを上げているのはなんとも皮肉だが、スーパーロボットが複数集まった環境に奮起して、世界最強のメカ鉄甲鬼を作ってみせると息を巻いている。

 鬼という種族の特性上、人間よりもはるかに頑強なのをいい事に、鉄甲鬼は何日徹夜をしてでも完成させようと奮闘中だ。

 

 最初、鉄甲鬼や白骨鬼を見た時にはアースノイドの中には角が生えている人もいるのかと、オードリーとメイファのみならずアクシズ関係者が盛大に誤解したのも、今では笑い話だ。

 まあ、百鬼帝国の鬼はミュータントないしは後天的に角を移植した者で構成されており、アースノイドであるのは紛れもない事実なので、完全に誤解かというとまた違うのがややこしい。

 

 このようにエリュシオンベースでは奇縁によって集まった人々が時を過ごしていたが、この世界はそう簡単に平穏のままでいさせてくれるほど優しくはなかった。

 ヘイデスからすると、はいはい、また襲撃ね。はいはい。と死んだ顔でリアクションするしかないのは、スパロボプレイヤーの悲しい性質である。

 

 DCの部隊員は疲弊して消耗していても、エリュシオンベースの防衛部隊は十分に機能しており、基地の防衛システムも数々の襲撃を受けてもわずかに稼働率を下げるだけに留まっている。

 それを突破しただけでも称賛ものだが、襲撃者を知った時にはヘイデスはそろそろ本腰を入れてきたか、と呟いた。

 

 襲撃者は無数のメギロートにダイモーン、ティアマートを盾にして、ゼカリアやハバクク、アンゲロイ、アドラティオ、更にはミケーネ神やエスパーロボなどで構成されていたのだ。

 そして指揮官機はタウ・リンの駆る専用エゼキエル。ヌーベルエゥーゴの機体も混じっており、無人機のファントムやヴォルテール、更にはアウーラ級戦艦までも姿を見せている。

 

 エリュシオンベースの指揮所に足を運んだヘイデスは、既に指揮を執っていたパオロに黙礼して指揮所の立体モニターに映し出された映像に素早く目を通した。

 ムーン・クライシス原作ではラー・カイラム級を一撃で撃破可能なビーム砲の他、宇宙世紀最強格の艦船であるベクトラの主砲斉射に耐える広域展開ビームバリアを備えるアウーラの姿に顔を顰め、エゼキエルのパイロットが誰なのかを悟る。

 

 シアンらを始めとした防衛隊はエリュシオンベース外部に展開中の囮部隊を押し留めており、タウ・リンの率いる部隊は少数とはいえ、転移能力を有するバサ帝国の戦力だ。いくらでも増援を見込めるだろうと、ヘイデスのみならずパオロもそれを見込んで指揮を執っていた。

 問題なのはDC所属機のほとんどは修理ないしは改装中で出撃できず、予備機での出撃を余儀なくされる点だ。特にスーパーロボット乗りは愛機に乗ってこその超戦力という面が強く、代替機では半分も力を発揮できれば上出来だろう。

 そんな中、真っ先に迎撃に出撃した機影が一つ、エリュシオンベースの空に浮かび上がる。

 

「出撃した機体はなにか!」

 

 パオロの問いかけにオペレーターの一人が迅速に答えた。一切の遅滞の無い応答は、練度の高さをうかがわせた。

 

「出撃した機体は……サーバイン。オーラバトラー、サーバインです!」

 

「サーバイン!? ぱ、パイロットは?」

 

 流石に実験中の生体エネルギー駆動兵器の詳細までは知らず、パオロは怪訝な顔になりながら、続けてパイロットの素性を問い質す。以前は生命力に満ち溢れるゲッターチームが担当していたが、今回の実戦では……

 

「俺だ」

 

 サーバインのコックピットから通信が繋げられ、指揮所のモニターに映し出されたのは特徴的な前髪と薙いだ声色の持ち主、トロワ・バートンだった。

 

(中の人繋がりか!!)

 

 サーバインの原作パイロットであるシオン・ザバとトロワの声帯を務めた声優さんが、同一人物であることを知るヘイデスは、思わず心中でそう突っ込んでいた。

 

(そんなまるでボン太くんの中からキリコやヒイロが出てきた時みたいな台詞言わんでも!)

 

 ヘイデスはそう突っ込まざるを得なかったが、果たしてトロワに生体エネルギーつまりはオーラ(ちから)を期待していいのか不安はあるが、無防備に攻撃を受ける危険は防がれたと安堵するべきだろう。

 既にデスザウラーとデススティンガーはユーラシア大陸と太平洋に向かって出発しており、留守だ。

 今のエリュシオンベースにはトレーズという重要人物がいる事もあり、なおさら防衛には気合を入れなければならない。

 

(ユーゼスの命令で攻め込んできたなら狙いは子供らか、パンドラボックス。タウ・リンの考えによる襲撃ならメイファか、トレーズが狙いか? ユーゼスの内部工作も気を付けないとか……)

 

 ヘイデスは格納庫の一角を手元のモニターに映し、量産型νガンダムで出撃準備を進めているクォヴレーへ険しい視線を向けるのだった。

 

<続>




メカ鉄甲鬼は超メカ鉄甲鬼か真メカ鉄甲鬼、メカ鉄甲鬼Gなどなにかしらパワーアップする予定です。
対ポセイドン用の武装が完成していたら、何になるのでしょうね。フィンガーネットかゲッターサイクロンか、TNT爆薬3kt分の破壊力があるストロングミサイルか。


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第六十九話 普段使わない機体を使わされる系のステージがたまにある

■共通ルート 第三十八話 魔窟

 

 エリュシオンベースへの奇襲に成功したタウ・リン達は、立ちはだかるように空に飛び出したサーバインを見て、わずかに困惑した。

 タウ・リンとはヌーベルエゥーゴ時代からの付き合いである部下の一人が、R・ジャジャのコックピットモニターに映し出されたサーバインをライブラリと照合し、アンノウンと表示された結果に眉根を顰める。

 

「なんだ、大きさはナイトメアフレーム程度だが、ライブラリにないタイプの機体だな。見た目通りの羽虫だと思うか、タウ・リン?」

 

「まさか。頭のネジがおかしな具合で締まってるヘパ研の連中が作った機体だぞ。あの白いのがスーパーロボット並みのパワーと硬さを持っていても、俺は驚かん」

 

「だな。それ位に考えていた方がいいか」

 

 タウ・リンの本当の目的を知りつつも行動を共にしている仲間達は、リーダーの意見に同意を示してオーラソードを抜くサーバインに全力の警戒を示す。

 エリュシオンベースの防衛システムが稼働しはじめて、サーバインを援護するべくビーム砲や対空機銃、ミサイルランチャーの類が雨後の筍みたいに次々と生えてくる。

 これでよくも民間の施設だと言い張れるものだ。まあ、スーパーロボットの研究所という施設は大抵こう(・・)なのだが。

 

 タウ・リン達が油断なく警戒を深めているのをモニター越しに眺めながら、トロワは機体の状態の確認を終える。

 MSとは大きく操縦形態が異なるが、ヘパ研が独自に定めたオーラ力さえあれば、基本的な操縦が可能というサイコミュの極致めいた仕様である。

 その為、オーラバトラーに関しては素人のトロワでも、操縦にはなんの支障もない。

 

「他の機体が上がってくるまで、防衛システムと連携して時間を稼ぐか。ふ、楽な戦いではないがいつものことか」

 

 彼我の戦力を分析し、ヘビーアームズ単独でOZの基地を襲撃するよりも孤剣で基地を防衛しなければならないこの状況の方が、はるかに難易度は高い。

 時間さえ稼げれば援軍の望みがあるのだから、決して絶望的ではないのが救いだろう。トロワはこちらに突出してくるアンゲロイの小隊を、最初のターゲットとして定めた。

 無造作に突出してきたアンゲロイは、未知の機体であるサーバインの性能を計る為の囮だろう。

 

(MSを含むバサ帝国の機動部隊。真ジオンの連中か。狙いはミネバ・ザビ?)

 

 背中の特徴的なオーラ・コンバーターに内蔵された推進器が出力を増し、巨大な昆虫の騎士めいたサーバインがあっという間に音速を越えてアンゲロイへと斬りかかる。

 アンゲロイが42.4mに対し、サーバインは約9m。実に4.5倍以上の巨体を相手に、サーバインはあまりに小さく、頼りない。

 

 無人機のアンゲロイ小隊の乱射するメタノイア・ショットの弾雨を、サーバインが昆虫さながらの柔軟な軌道で飛びぬけ、見る間にその懐にまで飛び込んでいた。

 トロワのオーラ力とサーバインの相性は、テストパイロットを務めた新旧ゲッターチームの面々よりもずば抜けて高く、サーバインの性能をどこまでも引き出していた。

 

「ターゲットロック」

 

 サーバインがオーラソードを振り抜いた時、アンゲロイの胸部から腹部に掛けまるで抵抗などないように刃が通り抜け、装甲とフレームを纏めて切り裂いた。

 ヘビーアームズのアーミーナイフでエアリーズを切り裂くよりも呆気ない手応えに、コックピットのトロワはかすかに眉を動かした。

 

 パイロットのコンディション──オーラ力と定義された生命力によって、性能が著しく上下する未知数の兵器と知ってはいたが、それを踏まえても驚かされる攻撃力である。

 モニターの一つに数値化したトロワのオーラ力が表示されているが、出撃してから少しずつ上昇している数値は同時にサーバインの性能が向上している事を意味する。

 

「性能が安定しないという意味では、兵器として扱いづらいが……」

 

 爆発を起こすアンゲロイから離れ、トロワは次のアンゲロイへと斬りかかる。他のアンゲロイはサーバインに至近距離に潜り込まれ、装甲をアポイナ・ソードに変形させて対応しようとしている。

 だがここでサーバインの小さな機体が有利に動いた。ヘビーアームズとはまるで違うサーバインだが、オーラ力によって動くオーラバトラーはトロワに肉体の延長線上のような感覚を与えていた。

 

 振り下ろされ、突き込まれ、薙ぎ払われるアポイナ・ソードを避け、あるいは受けていなし、反撃のオーラソードが稲妻を弾くかの如く振るわれて、次々とアンゲロイを斬り捨てて行く。

 見る見るうちに数を減らして行くアンゲロイに、タウ・リンは少しだけ機嫌を損ねた顔になると、エゼキエルで音速の戦闘を続けるサーバインを指さして古い付き合いのロクデナシ共に見た事かと言う。

 

「ほら見ろ、あそこから出てくるのは全部イカれた兵器ばかりだろ? あそこは魔窟みたいなもんだ。本格的に動かれるまでに片付けるぞ」

 

 タウ・リンは防衛システムから発射されるビームに実弾、ミサイルの雨を無人機を盾にして防ぎながら一気に中枢部制圧を目指して部隊を進める。

 エリュシオンベース内部に秘匿されているEOTのデータボックス(パンドラボックスのことだ)の回収が、タウ・リンらに任された任務の一つである。

 他にはミネバ・ザビと思わしき二名の女性の身柄確保の他、一年戦争でコロニー落としを防いだというフェブルウスの回収も命じられている。

 ただし、どれも可能であればというものであり、タウ・リンはイングラムが自分達を当て馬程度に考えているのを看破していた。

 

(それでも構わんさ。俺の目的を果たすのにバルマー・サイデリアルは役に立つ。アースノイドとスペースノイドが融和しようとしまいと、俺の目的は変わらんさ!)

 

 タウ・リンの引き連れてきたバサ帝国の機動兵器の中で最も強力なのは、中身を伴わないとはいえやはり三種のミケーネ神だ。

 元が誤った真化を遂げた存在であるから、コピーとは言えその戦闘能力は並大抵のスーパーロボット系の敵を凌駕する。

 飛行能力を持たないながらも凄まじい跳躍力により、ミケーネ神の一体が空中を自在に飛ぶサーバインを目掛けて大剣を振りかざして襲い掛かった。

 

「■■■■■!!」

 

 怨念と呼ぶほかない感情の籠った叫びをあげて、口ひげを生やしたミケーネ神の振り下ろす大剣をオーラソードが受け止める。

 さしものサーバインも一瞬、ミケーネ神に押し込まれたが、トロワの眼差しが鋭くなるのと同時にオーラ・コンバーターが出力を上げ、大剣を一気に弾き返す。空中で体勢を崩すミケーネ神の腹部を、オーラの光を纏うオーラソードが横一文字に斬り裂く!

 

「オーラ斬りといったか」

 

 爆発するのではなく消滅しながら落下して行くミケーネ神を尻目に、バサ帝国の部隊は次々とサーバインを、あるいはその先にあるエリュシオンベースを目指して進撃して行く。

 いくらサーバインが高性能であろうとも孤剣一振り。並みの射撃武器どころか広域攻撃兵器を持たないサーバインは、どうしたって一対多の防衛線には不向きなのだから。

 

 サーバインの奮闘を司令部から見守っているパオロは、防衛システムの猛攻を前にしても被害を無視して進み続けるバサ帝国の部隊に違和感を覚えながらも、防衛部隊とDC機動兵器部隊の出撃状況を確認する。

 トロワ一人の身を戦わせている状況は、当時はまだ少年だったアムロを言い包めてガンダムに乗せ、戦わせた過去を否応なく想起させる。それに対する苦い後悔の味が、パオロの口の中に広がっていた。

 

「陽動部隊と交戦中の部隊の状況を知らせ!」

 

「敵、陽動部隊は四つのグループに分かれ遅延戦闘を継続中です。これを撃退するまで部隊の帰還は困難と思われます」

 

「無視すればこちらを包囲する形で攻めてくるか……。では出撃できる機体はどうだ?」

 

「あ、アムロ機が、今!」

 

 オペレーターの一人が告げたように、サーバインを無視して基地に向かうゼカリアとハバククの混成部隊に、正確無比なビームの連射が吸い込まれるように命中して行く。

 出撃時に狙い撃たれないよう保護する装甲板の裏から、ビームライフルを構えたゲルググ顔のMSが姿を見せる。エゥーゴの協力組織であるカラバから持ち込まれたディジェだ。

 νガンダムの整備が追い付かなかった為、アムロは急遽この機体に搭乗している。

 

 リック・ディアスをベースに開発されたこの機体は、操作性はピーキーな仕上がりとなったが、性能はアムロ機として相応しい水準に達している。

 ただ、フル・サイコフレームのνガンダムに乗り慣れたアムロにとっては、それでもまだ物足りなさを覚える機体だが、こればかりは比較対象が悪すぎる。

 

 右手にビームライフル、左手にクレイ・バズーカを持ったディジェは、トロワのサーバインを援護すべく、前方から放たれるゼカリアのオプティカル・ライフルやハバククのメタリウム・キャノンを軽やかに回避して、ビームと実弾の雨をお見舞いしている。

 未来が見えているかのようなアムロの動きは、彼が非凡なるパイロットである分かりやすい証明だ。無人機相手でもコレなのだから、ニュータイプの感応性とは別のところで、アムロは非凡極まりない。

 そして出撃したのはアムロだけでなかった。ディジェ同様カラバ製のMSガンキャノン・ディテクターが三機、更に上空にはWR形態のZプラスD型が二機戦場の空に飛びあがる。

 

「いやはやアムロは相変わらずすごいねえ、俺達っている?」

 

 一年戦争時よりもさらに磨きのかかったアムロの技量に、ガンキャノン・ディテクターのコックピットでカイ・シデンは本気で呆れているらしい。同じくガンキャノン・ディテクターを預かったリュウ・ホセイは、そんなカイを年長者らしく窘めた。

 

「いくらアムロだって一人じゃ出来る事は限られているだろう。ハヤトは久しぶりのMSだろうが、操縦は大丈夫か? 最近じゃクラップやアウドムラの艦長席に座り慣れていただろう」

 

「大丈夫、俺だってやってみせますよ。この状況じゃアウドムラもクラップも出撃しようにもできませんし、ある程度は敵機を減らさないと」

 

 かつてのように、しかしかつてとは違い、ジャーナリスト稼業を一時休止したカイ、一年戦争を生き延びたリュウ、カラバから再合流したハヤトらは、ガンキャノン・ディテクターを乗機としてアムロの助けとなるべく戦場で轡を並べた。

 顔をそろえたかつてのホワイトベース隊は、カイら三人だけではなかった。

 別の部隊で活躍していたスレッガー・ロウ、更には財団を立ち上げてNPO活動に勤しんでいたセイラ・マスもオペレーション・レコンキスタを機に再集結していたのである。

 

「アムロ君の頑張りに応えますか。これでも人生の先輩なんだしね。セイラちゃんも久しぶりの戦場だろう? あんまり無理しなさんな」

 

「お気遣いありがとうございます。けれど生半可な覚悟で操縦桿を握ったのではなくてよ?」

 

「へへえ、俺の知っているセイラ・マスらしい台詞だ。それなら俺から言うことはないね。いい機体を回してもらったんだ。それに見合う成果を出さないと、ベテランの面子ってもんが立たないよね」

 

 WR形態のZプラスD型二機から発射されたビーム・カノンとビーム・スマートガンは、サーバインを囲い込もうとするヴォルテールやファントムを散開させ、そこにサーバインが改めて切り込み、次々と切って捨て始める。

 戦闘機としても一級品となるように調整されたZプラスD型は、コアブースターやGアーマーで一年戦争を戦ったスレッガーとセイラにとって、相性の悪くない機体だったのは幸いした。

 

 新生ホワイトベース隊のMSの活躍により、バサ帝国の進撃速度が鈍り始めた隙を突くようにして、今度はエゥーゴMS部隊の一部が出撃した。

 アクシズから送られてきた赤いザクⅢ改に乗ったシャア──じゃなかったクワトロとノーマルのザクⅢを受領したアポリーにロベルトだ。

 

「久しぶりのザクとなると、こう浮足立つような気持ちになりますね」

 

 とアポリー。リック・ディアスやシュツルム・ディアスもジオンの系譜を感じさせる機体だが、今乗っている機体ははっきりと名前からして“ザク”と名付けられているから、かつてのジオン公国時代をどうしたって思い出す。

 ロベルトも用意されたザクⅢの反応を確かめながら、上々な反応に口元を綻ばせている。

 

「ヘパ研のゲシュペンストシリーズや地球連邦のジャベリンも優れた機体だが、このザクⅢだって負けちゃいません。大佐、いや失礼しました。大尉の機体はいかがです」

 

「こちらの調子も悪くはない。流石にサザビーと比べれば不満もあるが、百式よりも上だろう。ふ、ナガノ博士には聞かせられないな」

 

 クワトロを筆頭とするザクⅢ小隊に加え、徐々に準備の整った機体が出撃し始めていた。

 マシュマー達アクシズ組にアルベルトとマリーダのガンダムXディバイダー、バナージのユニコーン、タクナのΖ>。

 そして五人の博士達によって好き放題にいじられてしまったガンダムジェミナス、その新しい姿が日の下に晒されていた。

 

 頭部とメインジェネレーターこそそのままだったが、サンドロックの頑健性と駆動出力、索敵・分析能力、ヘビーアームズの優れた火器管制能力、デスサイズの電波妨害装置ハイパージャマー、シェンロンの高い俊敏性と中国武術の動きを再現可能な関節可動域、ウイングの機動性を支えたウイングユニット。

 これら全てを兼ね備え、ウイングゼロへの先祖返りとしての一面を持ちつつ、ジェミナスを主軸としたことで仕上がりはまるで別物だ。

 

 右腕には折り畳み式のフレームと火炎放射器内蔵のドラゴンハング、左腕にはヒートショーテル二振りを備えたバスターシールド、胸部ガトリング砲、頭部バルカン砲に左肩にマシンキャノン、腰部と脚部ランチャーポッドにはそれぞれマイクロミサイルとホーミングミサイルを内蔵している。

 格闘用の武器としては手首内側にビームガン兼用のビームサーベル二振り、腰裏にビームグレイブ兼ビームサイズ一基、ウイングユニットに増設されたサブアームにバスターライフル、シールド付きビームガトリングガンが接続されている。

 

 色々とやり過ぎだろうと、ジェミナスのパイロットであるアディンとメインプログラマーのルシエは胡散臭いマッド共に抗議したのだが、まるで効果はなく結果としてジェミナスはえらいこっちゃな姿になっていた。

 子供がプラモデルを好き勝手に組み合わせたかのような、コロニーのガンダムの良いところ取りを目指して手足を組み替えた見た目だ。

 ドクトルSの組んだ火器管制システムとルシエとエリュシオンベースのスタッフが協力して組んだ専用OSが無ければ、いくらアディンでも戦闘行動は不可能という頭の悪い仕様である。

 

「くっそー、よりにもよってこんな状況で実戦かよ!? カタログスペックだけを見れば凄いんだけどな、この機体!」

 

 重武装によって増した重量を大出力のスラスターで無理やり動かすこの機体は、見方によってはスパロボOGシリーズのマリオン博士のようなちょっとアレな臭いがプンプンする。

 一見最強形態に見えて、バランスが悪いV2アサルトバスターに通じるものもあるだろう。

 

「とにかくアディン・バーネット、ガンダムジェミナス、当たって砕いて行くぜ!」

 

 名づけるならガンダムジェミナス01MSS(マッド・サイエンティスト・スペシャル)となるだろうか。アディンは恐る恐る、しかし仲間を守る為にえらいこっちゃになった愛機で、戦場に飛び込むのだった。

 

<続>

 

■クワトロ専用ザクⅢ改を入手しました。

■ザクⅢ二機を入手しました。

■ディジェを入手しました。

■ガンキャノン・ディテクター三機を入手しました。

■ZプラスD型二機を入手しました。

■ガンダムジェミナス01の換装装備『MSS』を入手しました。

 

■カイ・シデンが加入しました。

■リュウ・ホセイが加入しました。

■ハヤト・コバヤシが加入しました。

■スレッガー・ロウが加入しました。

■セイラ・マスが加入しました。




リュウやスレッガーはギレンの野望でエゥーゴに所属している時のイメージです。
ジェミナスMSSはハチャメチャなバランスですが、エリュシオンベースのスタッフが無理やり口を挟んので、パイロットのことを少しは考えてあります。操縦性は劣悪ですけども。


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第七十話 最初のラスボス

「加減はしないぜ!」

 

 アディンはジェミナス01MSSのサブアームを展開し、頭上に展開しているアドラティオに狙いを定めて、バスターライフルを発射した。

 本家ウイングガンダムと同出力を誇り、最大出力ではカートリッジに内蔵した膨大なエネルギーを三発で使い切る、という点も同じである。

 極大の光の柱と形容する他ないビームの奔流は、エスパーロボやファントムを巻き込みながら突き進み、無数の爆発を生み出す。

 そのまま遮るものもなく、バスターライフルはアドラティオの右舷を抉り抜き、その巨体は浮力を失って落下を始める。

 その落下中のアドラティオに二発目のバスターライフルが撃ち込まれ、空中に巨大な爆発が広がるとアドラティオは無数の破片となって、エリュシオンベースに降り注いだ。

 

「三ぱ……くっ!?」

 

 今度は初めて見た敵の新型戦艦──アウーラを狙ったアディンだったが、頭上から降り注いできたメガ粒子砲の槍を避けるべく、回避行動を余儀なくされる。

 重武装によって増加した重量を大出力のスラスターで無理やり動かすジェミナス01MSSだが、背部のウイングユニットと強靭なフレーム、機体出力に支えられ、その動きは実に軽やかで重量を感じさせないものだ。

 それでも操縦するアディンからすると、操縦桿を傾ける角度をコンマ一ミリ間違えただけでも転倒してしまいそうな重量と推力のバランス比には、この換装ユニットを開発した五人の博士達を殴っても許されるに違いないと本気で思うくらい苦戦を強いられていた。

 

「少しでも、機体を軽くしないと、こいつはキツイ!」

 

 無人機故に我が身を省みないファントムやヴォルテールが特攻の勢いで肉薄してくるのに合わせ、アディンは左右の腰と脚部ランチャーユニットを開放し、ホーミングミサイルとマイクロミサイルを残弾ゼロになるまで照準を定めぬままに撃つ。

 その間も機体は地表スレスレを高速で移動し、サブアームのビームガトリングガンと胸部、左肩のガトリングガンとマシンキャノンが冗談のような弾幕を形成し、ミサイルの雨を掻い潜ってきた無人機達に弾丸のシャワーをプレゼントする。

 

 屑鉄のようになって地面にたたきつけられ、爆発して行く無人機には目もくれず、アディンは敵指揮官機とその周囲の有人機に視線を巡らせる。

 エリュシオンベースの戦力の大部分は囮部隊の撃退の為に出撃しているが、こちらに残っている防衛部隊とて生半可な戦力ではない。

 

 トロワやアムロのように代替機での出撃を余儀なくされているパイロットは多いが、その代替機とて一級品の性能を誇る。本調子でなかろうとそう簡単に負けはしないと、アディンは自信を持って断言できる。

 ZプラスD型二機の援護を受けて戦うディジェやガンキャノン・ディテクター、ザクⅢ改らの動きは特に目覚ましく、ゼカリアやハバククと言った銀河有数の勢力の技術で作り出された機動兵器を次々と返り討ちにしている。

 

 ミサイルを撃ち尽くしたポッドをパージして身軽になったジェミナス01MSSは、左手のヒートショーテル付きバスターシールド、右手に握ったビームサイズ兼ビームグレイブで格闘戦へ移行する構えだ。

 そのジェミナス01MSSを狙って、真ジオン公国のMS部隊が加速して迫りくる。

 こちらも無人機だが、ドライセンやガ・ゾウム、R・ジャジャ、ガルスJ、ガルスK、ズサといったラインナップになる。

 有人機が含まれていないのは、タウ・リンの真意を知った上で、なおかつバサ帝国に降ってもなお行動を共にする人員は貴重で、さしものタウ・リンも安易に死なせないように配慮しているからだ。

 

「動きが画一的だ。これならゼファーの方が百倍怖い!」

 

 ドライセンのトライ・ブレードは身を屈めて避けて、一気に懐に飛び込んだジェミナス01MSSが大きく振るったビームグレイブがドライセンの胴体を真っ二つに裂き、側面から展開されたビームサイズがアームパンチを叩き込もうとしていたガルスJの胸から上を刎ねる。

 R・ジャジャがビームライフルの銃剣を突き込んでくるのをバスターシールドで打ち払い、その動作に連動してヒートショーテルで袈裟懸けに斬り捨てる。

 ハイパーナックルバスターを構えるガ・ゾウムにビームガトリングガンの洗礼を浴びせ、穴だらけになった機体に更に火炎放射を浴びせかけてトドメを刺せば、機体内部の推進剤やミサイルに誘爆して一気に巨大な爆発が起きる。

 

 多少(?)倫理観が緩いとはいえ、優秀極まりない五人の博士達が趣味を前面に押し出して開発したMSSユニットは、扱いにくさと引き換えに素晴らしい性能を持っており、アディンは他の換装ユニットと比べて二~三割増しの負担と引き換えに見事な戦果を積み上げてゆく。

 格闘戦を挑んだ機体がことごとく撃破された後、ジェミナス01MSSに対して弧を描くようにしてズサ達が囲む。全身に仕込んだミサイルの照準は、過たずジェミナス01MSSを捉えている。

 

 ずらりと並んだズサ部隊の放った無数のミサイルの雨は、MSの一個小隊や二個小隊くらいならまとめて吹き飛ばす火力がある。

 白煙を噴いて百を超えるミサイルが次々と放たれる。スーパーロボットでもこれだけのミサイルの直撃を許したら、罅の一つや二つは入るだろう。MSなら何をかいわんや。

 

「ガンダニュウム合金でもあれだけ食らったらまずいよな!」

 

 アディンはモニターに映し出されるミサイルの群れを次々とロックオンし、頭部バルカンと肩部マシンキャノンで撃ち落とし始める。バスターライフルの最後の一発を使えば、簡単に全て撃ち落とせるが、それはいささかもったいなかった。

 余剰スペースの関係上、バルカンとマシンキャノンの残弾が心もとなかったジェミナス01MSSの背後から、何条ものビームや実弾が放たれてミサイルのことごとくを空中で撃ち抜いて行く。

 カラカラとマシンキャノンが虚しく空回りしてしまった為、アディンにとってはまさに絶好のタイミングでの救いの手であった。

 

「アディン、遅くなった。すまない!」

 

 バナージである。年の近いアディンに対しては、比較的砕けた話し方をする。お互いに民間人同士という共通点も気安い態度を取る理由の一つだ。

 今回はユニコーンガンダムがメンテナンス中である為、バナージもまた代替機としてガンダムMk-Ⅱに搭乗しての出撃だった。

 本来はティターンズ製の機体だが、エルやエマの使用しているガンダムMk-Ⅱの予備機としてエリュシオンベースが研究目的も兼ねて再設計・生産した機体である。

 

 他にも機体がある中で、バナージがガンダムMk-Ⅱに乗っているのは、外伝やら続編やらで乗った機体の繋がりであろう。

 シルヴァ・バレトも候補に上がるが、まさかビームマグナムを撃つ為だけの改造を施す理由もない為、ガンダムMk-Ⅱもバニングが乗っているシルヴァ・バレトもノーマル仕様である。

 

 なおカラーリングはエゥーゴともティターンズとも異なり紫を基調とした色合いで、おまけにアメジストのような煌めきを纏っており、ド派手さでは百式に勝るとも劣らないインパクトがある。

 ヘイデス(=ハーデス)の名前にひっかけて、聖闘士星矢の冥闘士の冥衣を彷彿とさせるものだ。百式を見慣れているDCの面々にしても、初めて見た時には我が目を疑った色彩センスである。

 バナージも、このガンダムMk-Ⅱ(エリュシオンベース産)に乗るのには、小さくない躊躇があったに違いない。

 

「うわ」

 

 援軍が来たというのに思わずアディンが漏らしたこの一言が、エヴァンゲリヲン初号機よりも紫なガンダムMk-Ⅱを見た誰もの心境を代弁している。

 虚飾の無いアディンの一言を耳にして、バナージは何か言われると覚悟していたのだがそれでも少し傷ついた。アディンはすぐに自分の失言に気付き、慌ててフォローの言葉を口にする。

 

「い、いやあ、百式みたいにエースだから乗れるカラーリングの機体だよな。バナージだったら、それに乗っても文句の出ない腕だから、おれはいいと思うぜ。本当に」

 

「……無理にフォローしてくれなくていいよ。おれもこの機体を初めて見た時には、標的用のカラーリングだと思ったんだから」

 

「なんか、ごめんな」

 

「いいって」

 

 もうこれ以上その話をしないで欲しいという雰囲気を暗に醸し出すバナージと申し訳なさげなアディンに、更に続けて出撃してきた機体とパイロットが合流を始めた。

 重武装(ハリースペシャル)仕様のモビルゾイド・ダークホーンに乗ったアルベルトとガンダムXのニュータイプ用MSベルティゴに乗ったマリーダ、それにSガンダムのリョウ、Ζ>のタクナだ。

 

 他の出撃ハッチからも獣戦機隊の忍が試作されたばかりのバスターイーグル、沙羅がヘルキャット、雅人がブレードライガー、亮がエレファンダーを獣戦機の代替機とし、シャピロのシャドーフォックスに続いている。

 アルベルトは高出力ビームランチャーと6連ガトリングユニットで迫る敵機を牽制しながら、どことなく戦意が低い様子の若者達を叱咤した。いい加減、地球内外の侵略者を相手に戦い続けて、この青年も肝が据わってきている。

 

「何をしんみりとしているのかね? そんな余裕があるならさっさと引き金を引かないか!」

 

「今回ばかりはおじさんの言う通りだぞ、二人とも。特にバナージ、そのガンダムMk-Ⅱはオリジナルを参考にヘパ研が細かく手入れしているから、エルとエマ中尉が乗っている機体よりも性能は上なんだ。二人よりも活躍して見せないと、情けない事になるぞ」

 

 マリーダの言う通りヘパ研製のガンダムMk-Ⅱは、基本構造や装甲素材に変わりはないが、電子部品やOS、推進剤その他諸々が改良されており、いくばくかの性能向上に成功している。

 

「分かっている。やれるだけやってみせるよ」

 

「その意気だぞ、バナージ。それとおじさん、今回はXに乗れなかったから別々になったが、私のフォローがないんだからいつもよりずっと気を付けて操縦するんだぞ。そのダークホーンは特別な装備を付けているけれど、重量過多で動きが鈍いんだから」

 

「言われずとも分かっている。前の方は身軽な君らに任せる。こいつはゲッター炉のハイパワーを活かして、敵の大型メカの相手をするのが妥当だろう。適材適所だ、そら全員動いた動いた。時は金なりと言うぞ!」

 

 年長者だからというわけもあるまいが、この面子の中では軍人のタクナでもリョウでもなくアルベルトが仕切る流れになっていた。

 エリュシオンベースから残っていた機体とパイロット達が次々と出撃し、如実にバサ帝国の侵攻ペースが落ち始める。この基地の陥落だけが目的であったなら、タウ・リンも作戦失敗を考え始める勢いだ。

 

「アクシズの薔薇騎士マシュマー・セロ推参! ゴットン、グレミー、私に続け! この薔薇にかけて、アクシズを簒奪した忌まわしき者共に正義の鉄槌を下すのだ!」

 

「はい、マシュマー様! このグレミー・トト、どこまでもお供いたします!」

 

「ちょっと二人とも!? 三機だけでツッコむのは無茶ですよ、無茶!」

 

 鼻息荒く真ジオンの部隊に突っ込んでゆくマシュマーのザクⅢ改にグレミーのバウが続き、慌ててゴットンのズサ・カスタムが続いて必死にフォローする。

 パオロはマシュマーの無謀な突撃に気付き、急いでウォーカーマシンを始めとした安価な無人機部隊を回す。その他にも多脚の下半身にレールガンやビーム砲、ミサイルポッドを乗せただけのよくある無人兵器もわらわらと姿を見せている。

 バサ帝国の足止めの成功により、地下ドックで控えていた艦船も安全に出撃が可能と判断され、ライノセラス級やアイアン・ギアー級といった地上戦艦をはじめ、DCからガランシェールとラー・カイラムが出航しはじめている。

 

「出られたのはガランシェールとラー・カイラムだけか!」

 

 艦長席に腰かけたジンネマンに、操舵手を務めるスコールが答えた。

 

「他にもライノセラスやアイアン・ギアーが出ていますが、DC籍の艦船はガランシェールとラー・カイラムの二隻だけで……おっと」

 

 船体を傾けたガランシェールの至近をアウーラの主砲が掠めて、地平線の向こうまで射線が伸びて行く。ヘパ研の協力によって、偽装貨物船として破格の戦闘能力を得たガランシェールだが、アウーラが相手では分が悪い。

 傾いた船体の中で、ひじ掛けを強く握って体勢を維持していたジンネマンはラー・カイラムへ通信を繋げるよう指示を出した。地球連邦軍への確執あるいは敵対心が全く無になったわけではないが、戦場で生死を共にした相手を別枠扱いするくらいは出来る。

 

『ジンネマンキャプテン、そちらも無事に出航できましたか』

 

 本来の軍籍では階級はブライトの方が上だが、キャリアはジンネマンの方が上である。現在、オードリーの護衛任務を任されているジンネマンは、民間人として振舞っている特殊な立場にある。

 ブライトはジンネマンに関しては兵右衛門や四谷博士相手のように、年上の民間からの善意の協力者に対する口調で対応する事に決めていた。

 

「そちらもまずは空に出られてなによりだ。真ジオンの新型艦の火力とシールドの硬さはかなり厄介だな。貨物船には荷が勝ちすぎる」

 

 言葉の割にはそれほど苦には感じていない様子のジンネマンに、ブライトも同意した。

 

『フラワー級を見た後ですから、あれを相手にするよりはまだいいでしょう。こちらは獣戦機隊、エゥーゴMS部隊の指揮とバックアップに回ります。ガランシェール隊にはアクシズのMS部隊の他、彼らを頼みたい』

 

 ラー・カイラムから送られてきたリストにはバナージやタクナ、リョウ、アルベルトらの名前が載っている。ジオン関係者と民間人の割合が多いのは、ジンネマンの心境に配慮した為かどうか。

 

「了解した。敵の攻め手が妙にぬるい。パイロット達にはあまり突出しないように注意を促した方がいいな」

 

『こちらが万全でない状況を知っていたにしては、戦力が少ないと?』

 

「せめてあの五倍はなくては。転移で戦力を送り込めるとはいえ、とっくにそれをしていいタイミングじゃないか?」

 

『バサ帝国自体が単純に地球征服を目的としているわけではなさそうですが、それも関係しているのかもしれないか。いずれにせよ警戒を怠る事は出来ませんね』

 

「そうなる。エリュシオンベースにはVIPも来ている事だしな」

 

 いつもならヘイデスと所長くらいのものだが、今はトレーズやスーパーロボットの権威達までも来ている。いつもより少ない戦力でいつもより重要人物が多くいる施設を守らなければならない状況は、厳しいものであるという他ないだろう。

 ジンネマンとブライトの危惧は当然のものであったが、現実はあっさりとそれに異を唱えた。

 エリュシオンベースからトレーズのトールギスⅡ、レディ・アンのビルゴ、ゼファーテウルギスト十二機、更にゼクスのトールギスⅢ、ノインのトーラスが出撃したからだ。

 

 本来ならエリュシオンベースの最も安全な場所で守られているべき将校が自ら前線に立つのだから、彼を守ろうと考えている側からすれば堪ったものではないが、それがトレーズ・クシュリナーダであった。

 続けてトレーズ達の傍にカトルのイージス、デュオのブリッツ、五飛のデュエルAS、ヒイロのパーフェクトストライクも出撃し、意図せぬままトレーズやゼクスと共闘するような位置に着く。

 

「よりにもよってと言いたくなる出撃位置になっちまったなあ」

 

 状況次第ではトレーズの首を狙うのに絶好の位置だけに、デュオの言葉には複雑な感情がいくらか滲みだしている。

 

「状況が変わりましたからね。それに今はOZも方針が変わりましたし、コロニーにとっては憂いが一つ減ったと思えばいいじゃないですか」

 

 デュオを宥めるカトルだが、彼もそう簡単に割り切れない事は理解している。

 地球人類以外からの侵略という想定外の事態により地球人類はまとまりつつあるが、この戦乱を乗り越えた後に再び状況が戦前のコロニー弾圧思想に戻らないとも限らないのだ。

 トレーズはともかく、OZとロームフェラ財団がコロニーとの融和路線を取り続けるのか、その不安はある。

 

「今はそう思って納得しとくかね。五飛が静かなのがおれにとっちゃ気になるがね」

 

「目の前の敵に集中しろ。お喋りを続けて舌を噛んでもおれは助けんぞ」

 

 言うが早いか、五飛はデュオやトレーズにも視線をくれず、デュエルASで敵部隊へと勇猛に向かってゆく。トレーズへの無反応は意外であったが、ヒイロも五飛に続くのを見て、デュオとカトルも続く。

 

「しかし、ヌーベルエゥーゴのタウ・リンか。テロリストの中でも特にヤバイ奴が、異星人に与するとはね。使い捨ての駒で終わるような奴じゃないだろうが、碌な事にならねえぞ、こいつは」

 

 以前、タウ・リンに襲われたメイファからの証言や地球連邦とプルート財閥の調査により、過激派組織ヌーベルエゥーゴが活動を停止し、首魁タウ・リンとごく一部の人員が戦力ごとバサ帝国に降ったのが判明している。

 デュオは自分達の参加したオペレーション・メテオも大概だったが、タウ・リンはもっとろくでもない事を考えるに違いないと溜息を吐くのだった。

 幸いトロワはスレッガーとセイラが上手くフォローしてくれている。カトルらは地上の敵機に集中すればいい状況だった。

 

 オーラバトラーは他にもドラムロによく似たガドラムやビランビー系のギトール、アルダム、ゼルバインなど原作アニメでは見かけなかった機体が出撃し、エリュシオンベースの防衛に当たっている。

 これらの機体はオーラバトラーと呼ばれ、見た目もそのままだが、サイ・コンバーターの発展形としてオーラコンバーターが開発された事もあり、素材は原作と違って恐獣と呼ばれる大型生物のものではなく、地上由来の素材と人工筋肉などで構成されている。

 生体エネルギーを利用するソウルゲインのデータも利用されており、原作のオーラバトラーそのままの代物とは到底言えないものだ。

 

 また、エリュシオンベースにまだ残っていたシャドウセイバーズの機体も順次出撃しており、ギリアムのゲシュペンストMk-Ⅲ、ヴィンデルのヴァイサーガ、アクセルのソウルゲイン、レモンのアシュセイヴァー、ラミアのアンジュルグ、エキドナのラーズアングリフを筆頭とした顔ぶれが戦場に姿を見せている。

 強力なスーパーロボットを含む彼らの参戦は、一気に戦場の流れをエリュシオンベース側に傾かせるのに十分すぎた。

 どういう基準で開発されたのかイマイチ分かりにくいオーラバトラーの奮戦もあり、その隙を突いてタウ・リンのエゼキエルに到達した機体もちらほらと出始めている

 

「この動き、メイファのシャトルを襲っていた奴か!」

 

 タクナはΖ>をWRからMSへと変形させ、ビームライフルをエゼキエルへと連射。それを悠々と回避するエゼキエルの動きと放たれるプレッシャーが、タクナの脳裏にDCに合流するきっかけになった強敵を思い出させた。

 一方でタウ・リンもメイファ確保を邪魔した珍しいZタイプのMSと見覚えのある操縦のクセに、あの時の機体とパイロットだと気付いて獰猛な笑みを浮かべる。

 

「見覚えのあるΖタイプだが、重力下での動きは随分と鈍い!」

 

 タウ・リンのエゼキエルは砲身を収納して取り回しを良くしたオルガ・キャノンを撃ち、Ζ>の動きをけん制する。耐熱装甲の高さから、並みのビームならほぼ通じないΖ>も相手が異星文明の機動兵器となると心もとなくなる。

 加えてタウ・リンの指摘の通りΖ>が重力下の動きが得意でないのは、その通りだった。

 

「やはり、こいつ、戦いに慣れている!」

 

「こっちの相手もしやがれ、インベーダー野郎がよ」

 

 回避行動を取るΖ>をリョウのSガンダムが援護に入り、ビーム・スマートガンの連射が次々とエゼキエルに放たれる。避けきれぬ射撃はG・ウォールで受け、エゼキエルはダメージ無しでSガンダムの攻撃を凌ぎ切った。

 

「サーシェスの野郎と同じ機体か。だがパイロットの方は大分落ちるな?」

 

 エゼキエルから発射されるフォトン・バルカンを回避しつつ、リョウは軽快な動きを見せる敵機に警戒心を高めた。

 バサ帝国との交戦記録から『ナイト』と呼称される目の前の機体が、敵機の中でも上級の機体であると判明している。スーパーロボットや部隊のトップエース不在の面子で戦うのに、リョウが緊張するのは当然だった。

 

 またタウ・リンの周囲を固めていた元ヌーベルエゥーゴのメンバーは、かつての大戦を生き抜いたベテランで占められており、フルチューンしたR・ジャジャやザクⅢは代替機で出撃したバナージやアルベルト達を手こずらせるのに十分すぎた。

 

「真ジオンの手先共め、このマシュマー・セロの鉄槌を受けるがいい!」

 

 バナージと撃ち合いを演じるR・ジャジャに、マシュマーのザクⅢ改のビームライフルから発射されたメガ粒子の束が直撃し、その胸と腰を貫いて爆散させた。その勢いのままマシュマーは機体を疾走させる!

 

「マシュマーさん!」

 

「バナージ少年、このマシュマーが来たからには安心したまえ!」

 

「マシュマー様、アンダースン少尉、ルーツ少尉、このグレミーが援護いたします!」

 

 未だ野心の覚醒していないグレミーは良家の坊ちゃん然とした人の好さを滲ませて、バウを操って同じアクシズ製MSの戦いに割って入る。

 それをカバーするゴットンの苦労はそれなりにあるが、アルベルトのダークホーンも援護に回っているから、実際の労力はそれほどでもないのは救いだ。

 ビームサーベルを抜剣したマシュマーのザクⅢ改に対し、タウ・リンもまたエゼキエルの左手にレーザー・ブレードを持たせてこれを受けた。

 

「DCに合流した逃亡者クンかい。ふ、ハマーン・カーンはまだ粘っているらしいが、他にも手を打っていたわけか。エンツォよりは遣り手だな」

 

「貴様如きがハマーン様を語るな! その舌を切り取ってくれる!」

 

「直情傾向だな。操縦にも感情が表れ過ぎだ」

 

 アクシズでも間違いなく屈指のパイロットであるマシュマーの猛攻を余裕を持っていなし、タウ・リンはSガンダムとΖ>に牽制のオルガ・キャノンを撃ち込み、更にベルティゴから発射されたビットをフォトン・バルカンで撃ち落とす芸当さえやってのけた。

 久しぶりにサイコミュ兵器を操作したとはいえ、大気圏内とはいえ、ビットを複数落とされた事実に、ベルティゴのコックピットでマリーダは驚愕を禁じ得なかった。

 

「私のビットを落とす? こいつ、ニュータイプ、いや、強化人間か!?」

 

「おいおい、そいつは差別的な物言いだな。悲しくなるからやめてくれよ。お前さんだって似たようなものだろう」

 

 タウ・リンがまだまだ余裕を持って捌き続ける中、予想外の事態としてトレーズとシャドウセイバーズの出撃があったが、それでもこの男の余裕を奪うまでには至らない。

 エゼキエルの捕捉した新たな反応がタウ・リンにフィードバックされ、タウ・リンは自分の役目が終わりに近づいたのを悟る。

 

 捕捉した反応のひとつはエリュシオンベースから出撃してきたフェブルウス。そしてもう一つは頭上に生じたバサ帝国のワープアウト反応だ。

 戦場の上空に重力震が発生すると次々と光を伴って、機動兵器の姿が現れる。

 アンゲロイ、ゼカリア、エゼキエルを中核とする編成の只中に、赤い鬼めいた風貌に機械の手足、悪魔のような翼を持った異形の姿がある。

 

「お前らにいい事を教えてやるよ。あれはバサ帝国の惑星制圧用生体兵器ギルギルガンだ。おれ達はあれの出撃準備が整うまでの時間稼ぎに過ぎん」

 

 まあ、それ以外にも任務はあったんだが、とタウ・リンは全ては伝えずにさっさと撤退する為の準備を進める。

 

「ギルギルガン!? 大きい、七十メートルはあるか?」

 

 タクナが反射的に頭上のワープアウト反応に目を向けて、ギルギルガンの姿に素直な感想を零せば、リョウはそれに反発するように声を荒げた。

 

「はん! あの程度のデカブツ、これまで何度もぶっ倒してるぜ。今更ビビるかよ!」

 

「そうかい、威勢のいい奴は嫌いじゃないぜ。だったらその台詞の通り、ギルギルガンを倒してみせな! DCのエリートさん達よ!」

 

 タウ・リンの台詞と同時に周囲の無人機がタクナやバナージに向けて特攻を仕掛け、生き残っている有人機達は牽制の為だけに残った火器を乱射し、同時にジャマーを全開に稼働してスモークまで焚く。

 これまで生身でも機動兵器に乗っていても、逃げだすのにタウ・リンとその仲間達は慣れていた。だから過激派テロリストの最右翼としてマークされながら、今日まで生き延びて来られたのだから。

 引き連れてきた無人機だけを置いて撤退するタウ・リンらと引き換えに、ギルギルガンが大気を揺るがす咆哮を上げた。

 第一、第二形態をすっ飛ばし、第三形態で姿を見せたこの生体兵器には、まず間違いなくスパロボオリジナルの第四形態が備わっている事だろう。

 

<続>




ギルギルガンについてはスーパーロボット大戦αにおけるギルギルガンです。

本作におけるオーラバトラーは、地上に上がった後のオーラバトラーは、地上由来の素材に順次置き換えられていったという話があるらしいのと、地上世界製ということでオーラバトラーの名前と外見と似た機能を持ったモドキというべきなのでしょうね。
もし作中でヘパ研により魔装機が作られるなら、ラ・ギアスにおける精霊ではなく地上世界における精霊や神話の存在との契約による加護を得る機体になるでしょう。
例えばサイバスターは風の精霊サイフィスと契約を交わしていますが、ヘパ研製となれば地上の霊能力や魔女達の協力を得て風に由来する精霊シルフィードやエアリアル、風の神ヴァーユやエンリル、パズズやスサノオ、ケツァルコアトルなどと契約を交わした機体となるでしょう。そうなれば魔装機であって魔装機でないモドキの出来上がり。


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第七十一話 ラスボスとラスボスとラスボスとラスボスとラスボスとラスボス

タイトルはギルギルガン、ギリアム、シャピロ、シロッコ、ヴィンデル、????を指して。

終わったと思った仕事が終わっていなかったので、二週間ぶりの更新です。

追記
シロッコとシャピロもラスボス経験者だったので、タイトルに追加しました。


 ギルギルガン。もとは劇場版マジンガーシリーズにおいて、地球征服を目論む謎の宇宙人により送り込まれた宇宙怪獣である。同作ではゲッター1とグレートマジンガーの活躍により敗北している。

 そして同時に記念すべき第一作目である『スーパーロボット大戦』では、なんとラストボスを務めたというスパロボの歴史に於いて欠かせない存在でもある。

 

 その後も様々なタイトルのスーパーロボット大戦シリーズに姿を見せ、多くのプレイヤー達を苦しませてきた強敵だ。

 劇場版で披露された第一、第二形態がスパロボでは滅多に出てこないという悲運もあるが、スパロボ側が勝手に第四形態を作り、その後定着するなど不遇なのか優遇されているのかよく分からないところもある。

 

 今、エリュシオンベースを襲うギルギルガンは劇場版における最終形態──第三形態の姿を取っている。

 さてこのギルギルガンはスーパーロボット大戦αにおいて、エアロゲイターつまりバルマーの兵器として登場しており、今回もその設定のギルギルガンが出現したと考えていいだろう。

 

 バサ帝国の人型機動兵器を無数に引き連れてエリュシオンベースの頭上に出現したギルギルガンの威容は、例え歴戦の勇士でも初見であれば息を呑む迫力がある。

 しかしDCの精鋭達は今日に至るまでに散々異星人や異次元人の用いる常軌を逸した兵器と戦い続け、勝ち抜いてきた鋼の勇者達である(中にはヒヨコのような新人も含むが)。

 鬼のような形相を持つギルギルガンがバサ帝国の切り札の一つなのだと容易に推察できても、それだけで怯みはしない。

 

 それは救援の為に出撃したシャドウセイバーズの面々も同じことだ。サンクキングダム奪還戦からDCと共闘する機会の増えた彼らは、これまでも裏に表に侵略者達と戦い続け、最も戦果を挙げた特殊部隊の一つである。

 保有するソウルゲインやヴァイサーガ、アンジュルグといった強力なスーパーロボットはもちろん、レモンやシロッコが独自に開発した機動兵器の性能の高さ、人員の高い練度、プルート財閥から提供されたトライロバイト級など、DCに次ぐ戦闘力を持つと言っていい。

 

「ああいう手合いには俺達が当たるのが妥当だろうな、これが」

 

 アクセルはソウルゲインのモニターに映し出されたギルギルガンを一目見て、冷ややかな笑みを浮かべる。

 ソウルゲインやヴァイサーガを超える巨体が相手で、初見ゆえの警戒心もあるが、小細工抜きの戦力でならばそう負けはしないと予測している。

 ヴィンデルもヴァイサーガに握らせた五大剣の切っ先を右下段に流しながら、頭上の怪物を分析がてら凝視していた。

 

「敵の陽動部隊にも追加が来たようだ。出撃した部隊がこちらに帰還するのには、時間がかかるだろう。我々だけであの連中をすべて片付けなければならん。大佐、基地からの指示は?」

 

 ヴィンデルがギリアムのゲシュペンストMk-Ⅲにつなげれば、ちょうどパオロと話が着いたタイミングだったようで、ギリアムは“見慣れた”ギルギルガンにセンサーを走らせながら答える。

 

「我々はこのまま基地の指揮下に入る。トレーズ少将も同じだ。一時的にパオロ司令が最高指揮官と言う事になる」

 

「それはそれは。レビル元将軍も居る基地の最高指揮官とは、パオロ司令には同情を禁じ得んな」

 

 冗談を好まないヴィンデルの言葉には、本気の同情が込められていた。

 野心的な一面を備える彼だが、流石に階級が二つも上のトレーズや元地球連邦軍のトップが居る中で、突如、彼らに指示を出さねばならない立場に置かれたらと考えれば、緊張しないでいる自信はなかった。

 ギリアムはあのギルギルガンが、自分の知る“どのギルギルガン”に近いか、記憶を探りながら自分の副官にも指示を出す。

 

「シロッコ、サラとシドレへの指示はいつも通りお前に任せる。DC部隊との連携は無理に意識しなくていい。元々共闘経験も乏しい上に、代替機で出撃している彼らとでは即興の連携は逆効果にしかならないだろう」

 

 ゲシュペンストMk-Ⅲの背後に恰幅の良いシルエットのMSが浮かび上がり、それに乗ったシロッコからの返信があった。

 

「かの高名なDCとの共闘となれば、私も腕を振るう甲斐があると思ったが、止むを得まい。それにこの機体の実戦テスト代わりにはなるだろう」

 

 地上での歩行にも走行にも適していない脚部、縦長の頭部にモノアイ、顔面部分はマスクタイプ、ガンダムファンやスパロボプレイヤーお馴染みのジ・O……の系列機ジ・OⅡ。

 宇宙空間での戦闘に本領を発揮するジ・Oに代わり、『このスパロボ時空では』重力下の運用を想定してシロッコの開発した機体だ。

 

 元ネタとしては『ジオンの再興』という漫画などに登場した機体であり、ジ・Oの開発に関わったジオン系技術者によって開発されている為、本来ならシロッコが関わっている可能性はほぼない。

 ジ・Oが巨大なホバークラフトユニットを牽引しているような機体で、全高は30mにも達しよう。

 武装はMS並みの大きさがある実弾のマシンガンにGN粒子を用いたビームライフル、胸部の二連装砲、後部ユニットの地対空ミサイルに脚部の隠し腕とビームソードとゲシュペンストMk-ⅢやバルゴラCSと比べれば至ってシンプルにまとめられている。

 

 巨体通りの超重量機だが、複数搭載した疑似太陽炉の恩恵により重量は百トン少々に収まり、これで実は飛行も可能な上にGNフィールドにトランザム機能を搭載。またシロッコが独自開発したバイオセンサーを搭載している為、実に軽やかな動きを見せる。

 随伴機は、シロッコ子飼いのニュータイプ候補生サラ・ザビアロフとシドレが搭乗するブレッダ二機が務めている。

 

 このブレッダも漫画出身の機体で、ジ・Oの小型版と言うべき見た目をしており、ビームサーベル×2、肩部の50mmバルカン×2、ビームライフルとこちらもまた武装はシンプルだ。ここら辺はシロッコの設計思想の影響かもしれない。

 原典との違いはシロッコにより疑似太陽炉の搭載とGN粒子利用の装備保有、それにバイオセンサーの導入といったところ。ジ・Oの流れを汲む機体として、基本性能の高さは同時代のMSの中でもトップを争うものがある。

 

「サラ、シドレ、あのギルギルガンとやらはヴィンデル中佐らに任せる。我々はその周囲の羽虫を叩き落とすぞ。二人ともブレッダには慣れたが、単独で突出するような真似は避けろ」

 

「はい、パプテマス様」

 

「ご期待を裏切るような真似は致しません」

 

「ん。それでよい。さてこのジ・OⅡの初戦の相手としてはいささか物足りない感が否めないが、このシロッコの役に立つ栄誉をくれてやろう」

 

 ホバーユニットと脚部からオレンジ色のGN粒子を噴き出し、ジ・OⅡはその巨体からは信じられないほど滑らかに加速し、頭上から飛来するアンゲロイとゼカリアへマシンガンとビームライフル、二連装砲を百発百中の精度で叩き込み始める。

 地対空ミサイルもおまけにつけて、見る間に空中に爆炎を広げるジ・OⅡに続く二機のブレッダも、バイオセンサーによって反応速度と追従性が格段に増し、広がる感覚に従って爆炎の向こうの更なる敵機へビームを叩き込んでいる。

 シャドウセイバーズ内でもヴィンデル派とシロッコ派とでもいうべき派閥が出来ているが、それを抜きにしてもこの三機の働きはしょっぱなから目覚ましいものがあると、ヴィンデルとアクセルも認めるところである。

 

「シロッコばかりを働かせては後で何を言われるか分からん。アクセル、我々も仕掛けるぞ」

 

「それは構わんが、狙うのは大物の首でいいんだろうな?」

 

「ああ。DCの出撃している機体を見ても、私とお前、それにW17で当たるのが最適解だ。W17、私とアクセルに合わせろ。W16はレモンと共に支援に当たれ」

 

 ヴィンデルの指示にラミアは実体剣モードのミラージュ・ソードをアンジュルグに握らせ、エキドナもラーズアングリフの各種火器の照準設定の優先度を調整しながら答える。

 

「了解しました」

 

「了解しました」

 

 個性のない淡々とした人形らしい返事を受けて、ヴィンデルは意識を眼前の敵に切り替えた。

 

「行くぞ!」

 

 五大剣を握るヴァイサーガが先頭を切って走り出し、ソウルゲインとアンジュルグがそれに続く。その場で足を止めたラーズアングリフとレモンのアシュセイヴァー、さらにシャドウセイバーズ所属のゲシュペンストMk-Ⅲ部隊が支援に動き出す。

 ギリアムのゲシュペンストMk-Ⅲもまた全体の動きを俯瞰できるよう、前線からやや距離を置いて砲撃支援に徹する動きだ。そんな中で、量産型アシュセイヴァー部隊を率いるレモンは心中で疑問を呈していた。

 

(妙ね。私のアインストとしての感覚が違和感を抱いている。敵の動き? 味方の動き? いえ、それとも戦場の空気にかしら?

 アルフィミィの提言でおとかあ様は地球人類、特にDCへの積極的協力を決めたというし、この戦いもいつでも助けに入られるよう観ているのでしょうけれど、なにか良くない予感がするわね)

 

 レモンの不安を他の誰も知らぬまま、戦いの新たなラウンドを告げるゴングが鳴らされて、最初の一撃をギルギルガンに見舞ったのはアクセル達ではなくWR形態のまま奇襲を仕掛けたセイラとスレッガーのZプラスD型のビームスマートガンだった。

 ギルギルガンの周囲を固める機動兵器の隙間を縫い、長大な銃身から放った強力なメガ粒子の塊はギルギルガンの鼻っ面を直撃した。

 ビグザムをも超えるデカブツ相手とは言え、いきなり決まった一撃にエリュシオンベースの面々が大なり小なり喝采を上げるが、直撃を食らわせた二人はすぐに違和感に気付いた。

 

「動きが鈍いってわけじゃないみたいだけど、MSに比べりゃ当てるのは……ん?」

 

 スレッガーの優れた動体視力がビームを受けた後のギルギルガンの様子を確かに捉え、セイラもまた同じものに気付いた。

 

「あの機体、ビームでダメージを受けていない?」

 

 装甲の厚みやバリアとは違う手応えをすぐに見抜くのは、腐っても一年戦争を戦い抜いた歴戦の猛者ならではの観察力だ。そしてギルギルガンは自分に一撃を食らわせた“灰色の”を最初の獲物に選ぶ。

 

「ギュオオオオオ!!」

 

 砲塔のようになっている五指を備えた金属製の両腕をZプラスD型に向けると、そこからスーパーロボットでも直撃を受ければ危うい破壊光線が勢いよく放たれる。

 戦艦の主砲かそれ以上の威力を持っているのは間違いない破壊光線を、スレッガーは機体の急旋回で回避し、セイラはMS形態への変形による不規則な機動で回避して見せた。

 流石の腕前を披露する二人を、アムロのディジェとクワトロのザクⅢ改が颯爽と援護に入る。ディジェのビームライフルとクレイ・バズーカ、ザクⅢ改のビームライフルが嵐のような速度でギルギルガンの顔面や胸部を乱打する。

 

「見えたな、アムロ?」

 

 見えたか? とは聞かない事が、クワトロのアムロに対する信頼の表れだ。

 

「ああ、ビームは吸い込まれたが、バズーカの方はそのまま爆発した。そして爆発で受けたダメージが回復している。元々の装甲がかなりのものだからわずかなダメージだったが……」

 

「ビーム兵器を吸収し装甲の修復に当てる、か。原理は分からないが驚異的なテクノロジーだ」

 

「こちら側の機体はビーム兵器が多い。やりづらい相手だが、そうなるとシャドウセイバーズのスーパーロボットを中核にして当たるしかない」

 

「ああ。だがそれだけで済む相手とも思えん。総帥もなにかしらこういう時の備えをしていると思いたいが」

 

「どうも、あの人に頼る癖がついてしまうな」

 

 ヘイデスの未来が見えているような手回しの良さは、アムロもクワトロも認めるところだ。その所為でどんな苦境に陥っても、彼が何かしらの有効策を用意しているとついつい頼ってしまう。

 そして当のヘイデスはと言うと、まだ第三形態のギルギルガンがビームを吸収した事に小さく困惑していた。エリュシオンベース内部を移動しながら、手に持った端末で外部の戦況を確認している最中である。

 傍らには当然の如く所長がいて、光学迷彩を解除したアークゲインらも一緒だ。

 

(αのギルギルガンにビーム吸収なんてついていたか? バルマーのギルギルガンにさらに手が加えられていると考えるべきだな。だが、おそらく中性子爆弾は仕込まれたままだろう。

 解除ないしは起動前にギルギルガンごと破壊すればなんとかなると思いたい。αだと主人公のサイコドライバー能力で疲弊した味方ユニットが回復したからなんとかなったが、さてこの世界では……)

 

 DC本来の戦闘能力を発揮できる状況ではないが、シャドウセイバーズにトレーズらも居る。ギルギルガンの撃破には十分な戦力は出来る筈だ、とヘイデスは判断している。問題はギルギルガン以外になにかを仕掛けられた場合だ。

 ヘイデスは格納庫に繋がる扉のスリットにカードキーを滑らせ、その先に進みながら傍らの愛妻に尋ねた。

 

「二号機の方も念の為に準備しておこう。パイロット無しの自動操縦でもある程度は動くと聞いているけれど、実際のところはどうかな?」

 

「一号機とのバディモードならスペックの七割くらいを発揮できる見込みですが、使わざるを得ないほどの強敵だと考えているのですね」

 

「う~ん、思い過ごしである可能性があるけれど、バサ帝国はいくら警戒しても足りない相手だから。いざとなったら地球ごと僕達を木端微塵にする力があるわけだしね」

 

「相手が手加減をしてくれているから、戦いが成り立っているわけですか」

 

 バサ帝国の本気を出させるに至ってはいないとも取れるヘイデスの発言に、自分や各博士達の技術力に自負のある所長は少しばかり機嫌を損ねた様子だ。

 

「機動兵器単位での戦いなら、勝っているくらいなんだけれどね。それ以外の面では流石に一枚上を行かれているよ」

 

 会話を交わしながら進むヘイデスと所長達の行く先には、URGシリーズの眠る格納庫が待っていた。

 

 

「待て、タウ・リン!」 

 

「しつこい小僧だ。ギルギルガンの相手をする場面だろうがよ」

 

 DCやシャドウセイバーズがギルギルガンを含むバサ帝国の増援の対処に追われている一方で、撤退を目論んだタウ・リンらを逃がすまいとタクナやバナージ、アルベルトは追撃していた。

 ギルギルガンは未知数の敵だが、同時にタウ・リンも可能な限りこの場で倒しておきたい危険因子である為、パオロから追撃を指示されたのである。

 

 WR形態のΖ>が空中で変形し、ビームの連射をタウ・リンのエゼキエルへと浴びせ掛ける。

 技量と機体性能で上回るタウ・リンは危なげなくビームの連射を避けるが、そこにマリーダの操るベルティゴのビットが回り込み、死角から次々とビームを狙ってくる。

 ビットの出力が低い事と加えて、エゼキエルの持つ重力障壁に阻まれて、命中してもほとんど装甲に届かないで終わってしまう。

 

「バリアを張っている間は反撃できないだろう!」

 

 だがマリーダはその程度はとっくに承知だ。重力の壁を展開中、反撃に移れないエゼキエルを拘束し、その他のアクシズ製MSに向けて、後方のアルベルトが放った高火力ビームやマシュマーらが襲い掛かって、一機、二機と撃墜して行く。

 もっとも厄介なのはタウ・リンだが、彼の意図を汲んで行動できる彼の仲間も厄介だ。まずはその手足となる人員をもぎ取り、タウ・リンの力を削ごうという目論見だった。

 

「やってくれるな、ガキ共が」

 

 一瞬の隙を見出し、G・ウォールを解除したタウ・リンは、ベルティゴのビットに数発の被弾を許しながら、オルガ・キャノンとスパーク・トーピード、さらにはフォトン・バルカンとエゼキエルの全火器を巧みに使い分けて、タクナ達に二の足を踏ませる。

 エゼキエルの優秀な火器管制システムもあるが、タウ・リンの強化された肉体と技量によって支えられた巧みな弾幕だ。光子魚雷やビームの雨を縫って飛び出せたのは、バナージのガンダムMk-Ⅱだけだった。

 たまたま近くの格納庫に置かれていたのを借りただけの機体だが、実際に乗って見れば素直な追従性と反応速度、悪くない加速性がありカラーリング以外は良い機体だとバナージは評価している。ユニコーンに比べれば、今一つなのも事実だったが。

 

「あなたは危険だ。争いを呼ぶ気配がする!」 

 

「そうかい、おぼっちゃん!」

 

 ガンダムMk-Ⅱとエゼキエルの間で次々とビームの応酬が続き、バナージが避け損ねたフォトン・トーピードがガンダムMk-Ⅱの左肘から先をシールドごとまとめて吹き飛ばした。

 エゼキエルは二発ほどビームライフルの直撃を許したが、元の装甲性能の高さにより大きなダメージとはなっていない。

 

「く、まだ、まだまだ!」

 

「下がれ、バナージ!」

 

 被弾の影響で機体の動きに支障が出るガンダムMk-Ⅱと入れ替わるように、リョウのSガンダムが飛び出す。

 

『私が落とす!』

 

 既に起動済みのALICEによるフォローを受けるリョウは、タウ・リンにしても片手間に落とせる相手ではない。

 

「野郎、神経に障るガンダムを持ちだしてきてくれるぜ」

 

 タウ・リンからすれば、地球降下前後から複数回交戦したゲイリーことサーシェスの真っ赤なSガンダムを彷彿とさせてくるから、余計なストレスを与えてくる面倒な相手だ。

 機体性能に大きな差はないが、パイロットの方は別人だ。単純な技量ならばサーシェスに軍配が上がるが、ALICEの存在がそれを補っている。

 

「せっかくアクシズくんだりから地球に来たんだ。このまま骨を埋めて行けよ!」

 

「ハッ! 生憎とこちとら地球生まれの地球育ちだ。とっくにこんな水とカビで出来た星なんざ、見限っているよ」

 

「だったら骨も残さずに死ね!」

 

「三下の言い回しだな。ガンダムのパイロットには品格が求められてねえってか?」

 

 言葉を交えながら射撃と格闘を織り交ぜた高度な戦闘を繰り広げる中、タウ・リンは無人機部隊の一部に指示を出して自分達の撤退を援護させた。

 本来なら指定された地点に退くまでの間、時間稼ぎをさせる為のものだったが、背に腹は代えられない。ギルギルガンに仕込まれたブツが発動したなら、タウ・リン達も巻き添えになってしまう。

 

 そうして呼び寄せたデイモーンやメギロートが、駆け抜けた一陣の風と砲火によって次々と撃破される姿にタウ・リンは舌打ちを零す。

 遅ればせながら出撃したバンとフィーネ、ジークのシールドライガーに、アーバインのコマンドウルフだ。

 

「こいつが最初に襲撃してきた敵の指揮官か!」

 

 意気込むバンに基地のレーダー施設と連動した機体のレーダーの反応を見たフィーネが、注意を促す。

 

「インディゴ2、ブラボー7から新たな敵部隊が降下中よ。バン、気を付けて」

 

「こいつを逃がすつもりか。そうはさせないぜ。アーバイン、援護頼む!」

 

「ったく、おれはお前の部下じゃねえんだぞ」

 

 アーバインはそう愚痴りつつも、バンが体勢を立て直したΖ>やSガンダムと共にエゼキエルに挑むのを、渋々と、しかし的確にロングレンジバスターキャノンを使って援護をし始める。

 バン達は幸い代替機での出撃とはならず、慣れ親しんだ相棒で出撃できている。地上の移動速度ではMSをゆうに上回るゾイド、それも高速型の参戦にタウ・リンは、わずかに焦りを募らせる。

 ALICEのようにジークによるフォローがあるシールドライガーは、本来の技量で上回る相手に対しても十分な勝負が出来る。

 更にマシュマーやゴットンの援護もあり、いかに手練のタウ・リンといえど易々とは逃げきれない状況が出来上がりつつある。

 

(ちっ、こんなところでギルギルガンの巻き添えになるなんざ御免だ。DC以外にアレだけ強力な戦力があったのも予想外だが、どう切り抜けたものかね)

 

 タウ・リンの視線の先には、トロワのサーバインを始めとしたオーラバトラー部隊、ソードストライカーに換装したヒイロのソードストライク、グランド・スター小隊を加え、ギルギルガンに猛攻を仕掛けるソウルゲイン、ヴァイサーガ、アンジュルグ、そしてフェブルウスの姿が映っていた。

 破壊光線の威力もさることながら、ギルギルガンはこれまでDCが交戦してきた大型兵器でもトップクラスのパワーと装甲を兼ね備え、破壊光線やグラビトンウェーブといった強力な武装を備えている。

 

 これ以上、エリュシオンベースを破壊されてはたまらないと、防衛側のメンバーは可能な限り接近戦を挑んでいた。

 ギルギルガンの十分の一前後のサイズのオーラバトラーのパイロット達は、流石のサイズ差に腰の引ける者もいたが、トロワはその例外の一人だった。

 

「質量差は大きいが、戦えないわけではない」

 

 トロワのサーバインはオーラソードを片手に、ギルギルガンの巨躯へ恐れげもなく斬りかかっている。

 ギルギルガンは腹部の左右に生えている鎌を抜き取り、両手に構えてサーバインやソードストライクを真っ二つにしようと、膂力に任せてぶんぶんと振り回す。

 技術もなにもない攻撃は、ギルギルガンのパワーが十分に補って余りある。

 ギルギルガンの巨体から繰り出される一撃の迫力はすさまじい。

 PS装甲で守られたソードストライクでも、直撃を受ければ装甲はもっても内部の電子機器やパイロットへのダメージは相当なものになるだろう。ましてなお小型のオーラバトラーならば結果は目に見えている。

 

 オーラソードによる小さな傷がいくらか刻まれたギルギルガンに、バルゴラGSで出撃したオウカ達が襲い掛かった。

 サーバインの動きに注意を逸らされているギルギルガンに仕掛けるのには、十分すぎる隙が生まれている。

 ゼオラとラトゥーニはストレイターレットによる実弾射撃、オウカとアラドはジャックカーバーによる近接戦闘を仕掛ける。

 

「ゼオラ、ラト、援護を。アラド、私と二人で仕掛けます!」

 

「おう!」

 

「ストレイターレット、ターゲットロック。いつでも援護できます」

 

「アラド、オウカ姉様、行って!」

 

 ゼオラとラトゥーニばかりでなく基地の迎撃システム、更にシャドウセイバーズの隊員らも含めた実体弾による援護が行われ、ギルギルガンの巨体には常に何かしらの爆発が起きている状態だ。

 そこに複雑な軌道を描きながら飛ぶバルゴラGSが、すれ違いざまにジャックカーバーで斬りつける。ギルギルガンの首筋にはそれなりの深さの切り傷が刻まれ、ダメージの小ささにオウカはその美しい柳眉を顰める。

 

「硬ってえ~! 斬撃が通らないならこいつでどうだ! ハイパーブーストハンマーだぜ!」

 

 ギルギルガンの背後で反転したアラドのバルゴラGSが鎖付き鉄球を取り出すと、勢いよくぶん回してギルギルガンの後頭部へと投げつける。途中でブースターに火が着き、超音速に達したハンマーは回転しながら直撃した。

 

「グオオオ!?」

 

「おっしゃ!」

 

「フェブルウス、マグナモード! いっくよーー!」

 

 体勢を崩して前のめりになるギルギルガンに、マグナモードとなって出力を全開にしたフェブルウスが襲い掛かる。

 ライアット・ジャレンチがアッパー気味に振るわれ、凄まじい音と共にギルギルガンの顔面がかち上げられ、仰け反ったギルギルガンの腹部にガナリー・カーバーのストック部分が全力で叩き込まれる。

 30m級のフェブルウスよりもはるかに巨大なギルギルガンも、スフィア四つ分の出力を全開にするフェブルウスの一撃にノーダメージとはいられず、顔面と腹部がはっきりと窪んでいる。

 

「後はお願いします!」

 

「それじゃあ、お願い」

 

 そこからフェブルウスは追撃を仕掛けず、代わりにヴァイサーガが疾風の如く斬り込んできた。赤いマントを翻し、五大剣を構えるヴァイサーガに躊躇はない。

 

(あれがフェブルウスか。マジンガーや超電磁ロボと比較してもそん色のない性能だ。EOTそのものとも聞くが……)

 

 ヴィンデルは刹那の間に浮かんだ余分な思考を消し、痛みに悶えるギルギルガンのみを視界にとらえる。

 

「狂風に貫かれるがいい、風刃閃!」

 

 狂風で動きを止めるモーションを省き、最高速度で突っ込み、突き出された五大剣の切っ先はその半ばまでギルギルガンの赤い胸部に突き刺さる。そのまま上下に刃を動かして傷を抉りながら、一気に五大剣を引き抜く。

 そのまま機能を停止してもおかしくない深手の筈だが、ギルギルガンは両腕を大きく広げると破壊光線を指先に溜め込んだままヴァイサーガを拘束しようと両腕を動かす。

 

「ちっ、無駄に頑丈な機体だ」

 

 ヴィンデルは慌てず、五大剣を引き抜いてそのままヴァイサーガを後方へと跳躍させて、ギルギルガンの死の抱擁を回避する。腕が空を切ったギルギルガンは、すぐさま両腕を前方へと突き出して、破壊光線の発射へと行動を切り替える。

 

「狙いは外さん。ファントムフェニックス!」

 

「照準固定、吹き飛べ。フォールディング・ソリッドカノン、ファイア!」

 

 未だ自我の希薄な二体のWシリーズの放った必殺の一撃がギルギルガンの両腕に直撃し、蓄えられていた破壊光線のエネルギーを巻き込んで、大爆発を起こす。

 

「グウオオオオ!?」

 

「レモンの人形達、流石にいい動きをする! そろそろ退場してもらうぞ。ソウルゲイン、フルドライブ!」

 

 青い稲妻の如き速度で距離を詰めたソウルゲインが、両こぶしに生体エネルギーを炎のように纏いながら、神速の連打をギルギルガンの胸部へと叩き込む。

 ソウルゲインの腕が増えたと錯覚するほどの連撃は、ガナリー・カーバーによって陥没した箇所を正確に狙い、見る間にギルギルガンの生体装甲に罅が広がってゆく。

 

「砕け散れい! 白虎咬!」

 

 連打の最後に両掌による打撃を“気”と共に叩き込めば、ギルギルガンは冗談のように吹っ飛んで、エリュシオンベースの敷地の上で何度も飛び跳ねる。

 生体兵器と言えどこの手の敵機は爆発を起こすのが相場だ。

 念の為、距離を置いたアクセルだが、ギルギルガンからのエネルギー反応が一定以下にはならず、何度か身震いした後、むくりと体を起こす動作に、舌打ちを零す。

 

「詰めが甘かったか。ならば今度こそ引導を渡してやろう」

 

 ソウルゲインが腰を落とし、ギルギルガンと距離を詰めるべく体勢を変える。ヴィンデルやラミア、エキドナ達、更にはオウカやシュメシ達もそれは同じだ。

 いかにギルギルガンとはいえ、ヴィンデルやギリアムといったラスボス経験者らを含む戦力を相手に、ほぼ単独で戦うのは無謀だったという事だろう。

 そしてそれが分からないイングラムではなかった。

 再びエリュシオンベース上空にバサ帝国系の転移反応が生じ、司令部を通じて戦闘中の各員に警告が発せられる。

 アドラティオやフーレのような巨大質量の反応はないが、その中にとてつもないエネルギーを内包した機動兵器の反応が含まれているのが問題だった。

 

 スカートのようにも見える下半身に、巨大な手めいた翼状のパーツに同じく翼めいた両腕、白い巨体の中で頭部だけは黒い。

 全長46.5m程の巨体を持つこれはアンティノラ。スパロボαに初登場した機体で、ユーゼスの開発した代物であり、遠近共に隙のない武装に自己再生機能も合わせて持った高性能機だ。

 そしてアンティノラに囲まれて、黒い翼を広げたアストラナガンの姿があった。

 

「久しいな、DC並びに地球人類の諸君。諸君の活躍には敬意を表そう」

 

「イングラム・プリスケンか」

 

 本物のイングラムと面識のあるギリアムが険しい眼差しでアストラナガンを見つめ、それにイングラムは気付いたようだった。

 

「ギリアム・イェーガー。呪われた彷徨者(ほうこうしゃ)。貴様もまた因果に囚われ、呪われた罪人」

 

 ギリアムにだけ伝えられたソレは、通常の通信ではなく念を介した一種のテレパシーだ。ギリアムもまた念動力とは異なる未来予知といった超能力の保有者だからこそ、正確にイングラムのテレパシーを受け取っていた。

 

(やはり俺の知るイングラムが洗脳されたか、あるいは奴か?)

 

 ギリアムが警戒レベルを最大に引き上げる中、イングラムはヴィンデルやアクセル、レモンといった面々を見回し、最後にフェブルウスで視線を止めた。

 至高神ソルとしての記憶を覚醒させた双子とフェブルウスは、申し分のないレベルにまで成長した。となれば後は収穫するのみだ。そう、これが最後のテストなのだ。

 

「私からの戦勝祝いだ。これを乗り越えれば我々帝国は収穫の時が来たと判断し、お前達を傘下に加える用意がある。その後の活躍次第では地球の自治も許そう」

 

 どこからも上の立場で語り掛けてくるユーゼスに、ヴィンデルが苛立ちを隠さぬ語気で返した。

 

「我々が唯々諾々と従うと思っているのなら、貴様らの眼は節穴もいいところだ。我々に敗北し、辛酸を舐める未来をくれてやろう」

 

「シャドウミラー……いやシャドウセイバーズのヴィンデル・マウザーか。ふふふ、シロッコやシャピロともども貴様らがその立場にあるのは、なんとも皮肉なことだ」

 

「なに? なにを意味の分からない事を」

 

「貴様にとってはその立ち位置に居られる現状は幸福だと言っているのだ。腐敗を嘆いて野心に火を着けずに済むのだからな。

 さて、お前達が追い詰めたギルギルガンだが、その戦闘能力でも対象惑星を制圧できなかった場合に備え、中性子爆弾を搭載している。起爆すればこの星を容易に破壊する威力だ。

 起爆までは後、七分。それまでの間にギルギルガンを、いやメカギルギルガンを破壊するがいい」

 

 地球を吹き飛ばす威力の爆弾が内蔵されている、というにわかには信じがたい言葉の後、先程まで虫の息だったギルギルガン内部のエネルギー反応が急激に変化する。

 すぐさま止めを刺そうにも、万が一、イングラムの言葉が真実であった場合、下手に刺激すれば地球もろとも宇宙の藻屑と化す。その可能性に、ヴィンデルやアクセル達の動きは一瞬止まり、その間にギルギルガンは変貌を終えていた。

 赤い筋肉に覆われていた胴体や頭部は細胞レベルで金属と融合し、全身がメタリックな装甲に覆われ、砲塔めいた指先は鋭い爪が伸びている。

 曲がりなりにも生体兵器と呼べた姿は、いまや完全に機械兵器と変わった。ゾイドと似通った姿になったそれは、先程までよりもさらに増した力を示威するように咆哮する。

 

「ゴオオオオオオ!!」

 

「メカギルギルガン。安直な名前だが、戦闘能力は一段増したものと思え。そして私とアンティノラもそれなりに邪魔立てしよう。万全とはいえぬ戦力、弾薬にエネルギー、心身を消耗したその状態で生き残れるのか。さあ、あがけ」

 

 アストラナガンの広げた黒い翼に、緑色に輝くT-LINKフェザーが広がってゆく。アストラナガンを囲むアンティノラも戦闘態勢を整え、下手をすれば一勢力の大幹部級の戦闘能力が解放されようとしている。

 そしてクォヴレー・ゴードンは、いまだにこの戦場に姿を見せていなかった。

 

<続>

 

■ジ・OⅡが開発されました。

■ブレッダが開発されました。

■量産型アシュセイヴァーが開発されました。

 




なおバナージのアメジストカラーのガンダムMk-Ⅱですが、彼の為に用意された機体ではなくたまたま近くの格納庫に安置されていた機体です。


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第七十二話 終焉の銀河を越えて

お久しぶりです。更新に時間がかかった分、今回は長めになっております。
色々なフラグを回収した回になりますが、これはもっと終盤でやるべき内容だったかも?


 エリュシオンベース上空に姿を現したアストラナガンが翼を広げ、周囲のアンティノラ達とメカギルギルガンもまた動く気配を見せた瞬間、アムロやクワトロを筆頭とする歴戦のニュータイプとギリアム、それにシュメシとヘマー達は一斉に周囲の味方へ警告を発した。

 

「全員、避けろ! 広範囲に攻撃が来るぞ!」

 

「バリア持ちの機体の周囲に固まれ!」

 

「シールドの無い機体は回避か基地の装甲版を盾にしろ!」

 

「SPIGOT展開、Dフォルトを広域展開するよ、フェブルウス、ヘマー!」

 

「来る!」

 

 空を無数のT-LINKフェザーとアンティノラ達の発射したタキス・ミサイルが、一斉に豪雨となって降り注ぐ。どちらもMass Amplitude Preemptive-strike Weapon(大量広域先制攻撃兵器)すなわちMAP兵器である。

 頭上から二種の兵器が襲い来るのに加えて、地上で変身を終えたメカギルギルガンから機体の中心部から漆黒の波動──メガグラビトンウェーブが放射され、エリュシオンベースの敷地と地上施設を破壊しながら、DCの部隊へと迫る。

 

「ちい!?」

 

「うわあああ」

 

 猛攻に晒されるパイロット達のみならず地下に存在する基地司令部にまで衝撃は届き、そこかしこで悲鳴が上がる。

 パイロット達がそれぞれ行動する中、迎撃システムは忠実に使命を果たし、各種の砲台がタキス・ミサイルを一つでも多く撃ち落とそうとし、施設を守るバリアの出力を最大に引き上げて少しでも被害を減らそうとする。

 永遠にも感じられる時間が経過した後、エリュシオンベースの地上設備はほぼ壊滅状態に陥り、攻撃を回避しきれずに損傷を受けた機体がそこかしこで擱座するという惨状が出来上がっていた。

 

 フェブルウスのDフォルトやバルゴラのGNフィールド、基地に備え付けられたバリアによって守られた機体は多かったが、それでも一撃で戦況が変わったと言っていい被害が齎されている。

 DCパイロットの多くが代替機だから、と言い訳しようのない被害の広がる眼下の光景を見ながら、イングラムは冷静に状況を観察している。

 

「アクセル・アルマー、ラミア・ラヴレス、お前達も地球を巡る争乱の中心に立つ因果の持ち主。この世界では端役のようだが、比較的興味深い観察対象ではあるな」

 

 T-LINKフェザーを発射後、アストラナガンはガン・スレイブを射出して遠距離射撃に徹し、それ以上、積極的な動きを見せずにいる。

 イングラムにとってアムロやクワトロといった見覚えのある顔ぶれの他、並行世界の観測によりギリアムやヴィンデル、アクセル、ラミアといった要観察対象が居る状況は貴重だ。

 

 フェブルウスの動きに最大の注意を払いながら、イングラムは事前に用意した策が機能しているのにほくそ笑む。

 それは、この戦場に出現しようとするアインストの転移を阻害する結界である。クロスゲート・パラダイム・システムと念動フィールドなどの併用により、自身らを除く空間転移を拒む結界を短期間に完成させていた。

 ワープジャマーとでも呼ぶべきシステムが無事に稼働して、先程からひっきりなしに転移しようとしてくるアインスト達を弾き返しているのを確認し、イングラムは侮蔑するようにこう言った。

 

「無駄だ、アインスト共。お前達は私に転移を見せすぎた。転移パターンを変えるにせよ、この戦闘には間に合わん。どことも知れぬ場所で、この戦いの推移を見ているがいい。アインストの長よ」

 

 これがレモンが戦場全体に感じていた違和感の正体の一つだった。アインストである彼女は、対アインスト用に調整された結界を感じ取っていたわけだ。

 イングラムのアストラナガンこそ特に動く様子を見せてはいないが、それ以外のアンティノラやメカギルギルガンは話が別だ。与えられた命令の通り、DCを壊滅させ、エリュシオンベースを破壊するべく次の攻撃行動へと移り出す。

 

「ガオオオオオン!」

 

 メカギルギルガンの両腕が肘から分離し、マジンガーのお株を奪うロケットパンチとなって発射された。

 指先は砲塔の形状から爪に変形し、まさしくスーパーロボットの超装甲も斬り裂くアイアンクローとなっている。それに対して、恐れげもなくソウルゲインとヴァイサーガが突っ込んだ。

 

「でええい!」

 

「化け物風情が!」

 

 両機ともにT-LINKフェザーとタキス・ミサイルの直撃こそ免れたものの、基地を埋め尽くす規模で発生した爆発と超重力衝撃波によって装甲表面に夥しい傷を受けていた。

 ソウルゲインの白虎咬とヴァイサーガの五大剣がメカギルギルガンの両腕を弾き返した瞬間、強烈な光がメカギルギルガンの大きな単眼に宿る。

 破壊光線を更に強化した超破壊光線発射の前兆だ。だがこれをやすやすと撃たせるシャドウセイバーズではない。右の翼を失い地に落ちたアンジュルグと、左腕を付け根から失ったラーズアングリフが、既に狙いを定め終えている。

 

「ミラージュ・アロー!」

 

「照準固定、ファイア!」

 

 物質化されたエネルギーとファランクス・ミサイル、マトリクス・ミサイル、リニア・ミサイルランチャーが一斉に発射され、先んじてミラージュ・アローがメカギルギルガンの眼を襲う。

 

「ガアアアア!」

 

 地形を変えかねない威力の超破壊光線が発射され、ミラージュ・アローを飲み込みながら地表を薙ぎ払う。余波を浴びたミサイル各種が誘爆を引き起こし、超破壊光線の射線上に沿って基地の敷地が融解してゆく。

 ソウルゲインとヴァイサーガは、量産型Wシリーズの乗る量産型アシュセイヴァーが盾となって機体が爆散するまでに稼いだコンマ一秒の時間を使い、超破壊光線の射程圏内からの退避に成功している。

 

「アクセル、ヴィンデル、死んだりしていないでしょうね!?」

 

 アルフィミィから転移が出来ない、と念話で告げられ、焦りを覚えていたレモンは恋人と上司の危機に更なる焦りを上乗せして、常の冷静さを忘れて取り乱していた。

 

「お前の人形に助けられたな、これは」

 

「イングラムの言う通り、確かに一回りは出力が増しているな」

 

 メカギルギルガンは弾かれた両腕を再装着し、機体各所のブースターから盛大に炎を吹き飛ばして、目障りなスーパーロボットから片付けようとしていた。そこにアストラナガンとアンティノラによる破壊の豪雨の中を突っ切ってきたスーパーエースが襲い掛かる。

 アムロのディジェとクワトロのザクⅢ改だ。ビームナギナタとビームサーベルがメカギルギルガンの背後から何度も斬りつけられる。

 

「やはり、吸収できないようだな、Iフィールドで収束させたミノフスキー粒子は!」

 

 アムロは読み通りビームナギナタの刃が吸収されないのを視認し、ディジェの右手首ごとビームナギナタを回転させて、風車の如く上下の刃でメカギルギルガンを切り裂き続ける。

 続くクワトロもまたディジェとお互いの動きを阻害せず、刃の圏内に決して踏み込まない阿吽の呼吸で、数倍の巨躯とそれ以上のパワーを誇る敵を相手に超至近距離からの接近戦を挑み続ける。

 神経を剃刀で削られているようなプレッシャーを浴びながら、クワトロは与えられるダメージの小ささに、ヘルメットの奥で眉間に深い皺を刻む。

 

「しかし、これは流石の装甲の厚さか」

 

 金属的な外見を露にしたメカギルギルガンの装甲は、MSとは比較にならない防御力だ。超高熱のビームの刃をもってしても、表面をわずかに熔解させるのが精々だ。

 しかもメカギルギルガンはビームを吸収せずとも再生能力を有しているようで、与えた傷は見る見るうちに修復して行く。明らかに与えるダメージよりも再生速度の方が上回っている。

 これでは、とアムロとクワトロが同時に懸念を抱いた瞬間、メカギルギルガンが巨体を回転させて、凶悪な鈍器である尻尾がディジェとザクⅢ改を襲う。

 

「この巨体でっ」

 

「この速さか!」

 

 さしもの二人もスラスターを全開にして回避行動を取らざるを得ず、距離が開いたその瞬間に、アストラナガンから発射されたガン・スレイブが襲い掛かる。

 ファンネルやインコムよりも大型とは言え、高速で飛翔する端末からの攻撃を更に回避して見せたのは、アムロとクワトロならではの神技であった。

 だがそれは更にメカギルギルガンから距離を取ることとなり、放たれた超破壊光線はメカギルギルガンの足元から空へと振り上げられ、地上施設と地形そのものを更に破壊する。

 

 圧倒的なメカギルギルガンの攻撃ばかりでなく、イングラムの指示によって積極的攻勢に移ったアンティノラも脅威だった。AI制御とはいえゼントラーディやメルトランディ、宇宙怪獣と戦っていた世界の産物である。

 基本的な技術力はこちら側をはるかに上回る機動兵器なのだ。

 アンティノラの両腕に集束したエネルギーが頭上から天罰の轟雷の如く放たれて、体勢を立て直そうとしていた各機に襲い掛かる。

 

「こんの野郎、これ以上、基地を壊すんじゃねえよ!」

 

「アラド、一人で突っ込んだら駄目よ!?」

 

 これ以上の攻撃が加われば、地下施設に避難しているヘイデスや所長達にも被害が及びかねない。その焦りがアラドを突き動かした。

 ゼオラの制止を振り切り、ガナリー・カーバーとハイパーブーストハンマーを手に、アラドのバルゴラCSがアンティノラの一機へと飛びかかる。

 

「アラドッ! ゼオラ、ラト、私達で頭上の白い敵機を抑えます」

 

「はい、姉様!」

 

 幸いグランド・スター小隊は四機のGNフィールドを重ね合わせる事で、機体へのダメージをゼロに防いでいる。機体の動きに支障は出ていないが、それでも挑む敵の未知数の脅威に、オウカの表情は厳しい。

 レイ・ストレイターレットとストレイターレットによる援護を受けながら、アラドはブースターを着火させ、勢いよくぶん回していたハイパーブーストハンマーをアンティノラの右側頭部を狙って叩きつける。

 

「おおおらあああ!」

 

 アンティノラに搭載されているG・テリトリーを破壊したハイパーブーストハンマーだったが、それはアンティノラの右腕から伸びるフォトン・ソードによって切り払われ、返す刃とばかりに放たれたオルガ・キャノンが、バルゴラCSの右膝から下を吹き飛ばす。

 

「やべ!」

 

 体勢を崩すアラド機に、アンティノラが左手にフォトン・ソードを輝かせながら斬りかかる。咄嗟にガナリー・カーバーを盾代わりに構えるアラドの傍らを、ジャック・カーバーの刃を展開したオウカのバルゴラCSが駆け抜けた。

 

「私の弟をやらせはしません!」

 

 ジャック・カーバーの刃でフォトン・ソードを弾き返し、銃口側から展開したバーレイ・サイズがアンティノラの胸部を一文字に斬り裂く。

 

「ゼオラ、ラト!」

 

 オウカが指示を発するよりも速く、ゼオラとラトゥーニはレイ・ストレイターレットを発射していた。Dエクストラクターから供給される高エネルギーの奔流は、オウカ機が離れた直後にアンティノラの右半身と左半身を抉るようにして貫く。

 さしものアンティノラも胸部を切り裂かれていたこともあり、これには耐え切れず爆発して行く中、その両腕から小型の端末が放出された。

 アンティノラの持つ遠隔攻撃端末アサシン・バグズだ。咄嗟に射出した端末は爆発の中に飲まれて無事なのは二基だけだったが、その二基が短距離ワープを行い、ラトゥーニのバルゴラGSの背後に表れる。

 

「この距離でワープ!?」

 

「ラト!」

 

 咄嗟にゼオラとラトゥーニが機体の手首に仕込まれたビームサーベルを起動し、アサシン・バグズを斬り払う直前、放たれたビームがバルゴラGSを直撃した。

 左上の翼が半ばから吹き飛ばされ、右の太腿に大きな穴が開く。コックピットを襲う衝撃の中で、ラトゥーニは機体のステータスを確認し、即座に被弾したウイングと右足をパージする。

 基本的にファンネルなどの小型端末の火力は低いものだが、アサシン・バグズのソレはGNフィールドの展開が間に合わなかったとはいえ、別格の威力だった。

 

「くうう、機体の、コントロールを!」

 

「ラトゥーニ、無理をしてはダメよ。無事な格納庫に機体を戻して!」

 

「でも、この状況なら損傷した機体でも戦力は必要」

 

「機体は壊れても修理すればいい。それにまだ他に乗れる機体ならいくらでもあるわよ。ラトゥーニの安全の方がずっと大切。お父さんもお母さんもそう言うわ!」

 

 戦況を考慮して後退を渋るラトゥーニもゼオラが両親──ヘイデスと所長の名前を出せば、それ以上に強く抗弁できずに口を閉ざす。

 他のアンティノラがアサシン・バグズやオルガ・キャノンで攻撃を仕掛けてくる中、反撃を交えつつオウカとアラドもラトゥーニの説得に加わる。

 

「ゼオラの言う通りです。ラト、貴女が傷ついた機体で戦い、万が一にも傷を負えばお父様とお母様達は悲しまれるでしょう。元から私達が戦場に立つこと自体、嘆いておられる方たちなのですから」

 

「どうしても気が咎めるっていうならさ、父さん達からとっておきの機体を借りてきて、俺達を助ける為に戻るって思ってくれよ! それならいいだろ?」

 

「……分かった。私が戻ってくるまで、どうか無事でいて」

 

「おう、妹分に任されちゃ、張り切るしかねえぜ。それにシュメシとヘマーも居るしな!」

 

 決して安請け合いではなく、ドンと胸を張って気力が十は増えていそうなアラドに励まされて、ラトゥーニは後ろ髪を引かれながら無事な格納庫を探し出すと、そこへ半壊に近いダメージを受けた機体を戻すべく動かした。

 ラトゥーニが比較的早くアラド達の説得に応じたのは、絨毯爆撃のような攻撃を凌いだ他の味方の反応を捉えたのも理由の一つだ。

 

 まだ無事なアンティノラやエゼキエルらの横っ面を叩く最高のタイミングで、トレーズとゼクス率いる部隊がレディとノインの援護を受けながら襲い掛かったのだ!

 メカギルギルガン相手には使えないビーム弾のドーバーガンとメガキャノンが恐るべき精度で放たれ、G・テリトリーを突き破ってバサ帝国の機体にダメージを与えて行く。

 

「ゼクス、少々無茶をする。ついてきてくれたまえ」

 

 自分に追従できると微塵とも疑わぬトレーズの言葉に、ゼクスは窮地に飛び込む事に危機感と高揚感を抱いている自分に度し難いものを感じながら、上司であり戦友である男に続いた。

 

「ふ、相変わらず私への期待が重いな、トレーズ」

 

「君だからだよ、ゼクス」

 

 超電磁エネルギーでコーティングされたサーベルを抜くトレーズのトールギスⅡに、右手に超電磁スピア、左手にヒートロッドを構えたゼクスのトールギスⅢが続く。

 そのすぐ後ろ、機体の性能差か技量差か、多少のダメージが見受けられるゼファーテウルギスト達が一度だけ機体を左右に上下させた。どうやら自分達も居るぞ、とアピールしているらしい。

 

「ならば西風の系譜達よ。閃光の伯爵(ライトニング・カウント)と共に私に続け」

 

 バーニアを全開にして加速するトールギスⅡに朋友の無茶に苦笑いするゼクスと士気の高揚したゼファーテウルギスト達が続く。

 フォトン・バルカン、タキス・ミサイル、オルガ・キャノン、アサシン・バグズ諸々が乱舞する中を、全十四機のトールギスナイツは恐るべき統率と速度、そして破壊力を持って立ち塞がる敵機を破壊して駆け抜ける。

 一騎当千とはあくまで比喩であり、実際に一千騎は叶わぬが、このトールギスの騎士団ならば当千に値する戦力だ。

 

 アストラナガンとギルギルガンを除くバサ帝国の大部分が、トレーズ率いるトールギス達に翻弄される中、エリュシオンベース側も残存戦力の再編成と生き残っている設備を稼働させて、ビーム兵器から実弾兵器への持ち替えを進めていた。

 エヴァンゲリオンの第三東京都市のように地下から実弾兵器を並べたウェポンラックや昇降用エレベーター、装甲版などが次々とせり上がって、現場で戦っているパイロット達を可能な限り支援している。

 メカギルギルガンの体内に仕込まれた中性子爆弾の爆発までに、なんとしても無力化しなければならない。その事実が齎す焦りに精神を炙られながら、各パイロット達は自分達に出来る最善を尽くしていた。

 

「来るぞ、また例の重力波だ!」

 

 アクセルはセンサーの感知した重力変動とメカギルギルガンの周囲で歪み始めた空間に気付き、損耗の目立つ味方に警告を発する。自己修復能力を有するソウルゲインだが、流石に手足がもげたり、機体の内部奥深くに負ったダメージの修復には人の手が居る。

 今はまだ装甲表面へのダメージがほとんどである為、EG合金の自己修復能力で誤魔化せているが、もう一、二度、大きめの攻撃を食らえば修復可能な範囲を超えてしまう。

 

 ヴィンデルのヴァイサーガは接近戦を仕掛けてきたゼカリア二体を斬り捨てたばかりで、アンジュルグはアサシン・バグズを切り払う最中にあり、エキドナのラーズアングリフは残弾が心もとない。

 となるとレモンとギリアムは──とアクセルがいくつか表示されているモニターに視線を巡らせたとき、ギリアムのゲシュペンストMk-Ⅲが換装したグラビトンランチャーをメカギルギルガンに撃つ瞬間が飛び込んでくる。

 グラビトンランチャーはメガグラビトンウェーブの中心核と呼ぶべきポイントを正確に撃ち抜き、二つの重力場の激突によりメカギルギルガンの胸部を中心とした重力の爆発が生じる。

 

 メリメリと音を立ててメカギルギルガンの装甲が重力によって押し曲げられ、堪らずメカギルギルガンが苦痛の声を上げる。

 思ったとおりの効果を発した事に、ギリアムは狙撃ポイントの解析と指示を委ねたレモンに称賛の言葉を贈った。

 

「見事だ、レモン。次も頼むぞ」

 

「対抗策を練られるまでは、これであちらの重力兵器封じは出来るわね」

 

 予測通りの結果を得られた事に安堵する余裕は、今のレモンになかった。先程から戦場全体に覚えていた違和感が、同胞たるアインストと連絡が取れない事態と相まって、バサ帝国によってアインストの介入を封じられていると気付いたからである。

 最悪の場合、アインスト空間にメカギルギルガンを放逐し、中性子爆弾を無効化する手段を考えていたレモンにとっては、思わず眉を顰めたくなる凶報だ。

 メカギルギルガンの活動を停止させ、中性子爆弾を取り出してから起爆を解除しなければならないとなると、残り時間は極めてシビアだ。

 

「噂の双子ちゃん達がどれだけ頼りになるか、ね」

 

「傷だらけの獅子よ! フェブルウス・マグナモード!!」

 

 ヘマーの叫びと共に装甲の隙間から炎のように次元力のエネルギーを放射し、フェブルウスが真正面からメカギルギルガンへと吶喊する。

 纏うオレンジ色のエネルギーがさながら獅子の如く変わり、カウンターとして放たれた超破壊光線を受け止め、勢いを減じながらもフェブルウスを正面から受け止めようとしたメカギルギルガンとがっぷり四つ組み合う。

 

「うわああああ!!」

 

 双子の叫びと共に機体の出力が増し、体格では倍するメカギルギルガンの手をフェブルウスが握り潰す。絶対に離さないと鋼の意志で拘束するフェブルウスに恐怖を覚えたのか、メカギルギルガンは両肘から先をパージして少しでも遠くへ離れようとする。

 それは絶対的な隙に他ならなかった。既にフェブルウスの背から飛び立っていたSPIGOTが四方からメカギルギルガンへと殺到し、回転する円刃がメカギルギルガンの胴体を深々と斬り刻む。

 

「グゴゴゴギィギャアアア!?」

 

 動きを止め、装甲に大きな傷を負ったメカギルギルガンを一気呵成と攻め立てる好機! ウェポンラックからGレールガンやレクタングルランチャー、350mmレールバズーカ・ゲイボルグで武装したGATシリーズの火砲が火を噴いた。

 PS装甲による高い防御性能があるとはいえ、T-LINKフェザーやメガグラビトンウェーブ、オルガ・キャノンなどは容赦なくPS装甲を貫いてくる為、デュエル、イージス、ブリッツのそこかしこに損傷が見られる。

 機体のダメージとバッテリーの残量も踏まえれば、まともな戦闘行動を取れる時間は短いだろう。

 

「まったくよ、もっと楽な相手が来てくれてもいいんだぜ!?」

 

 ブリッツの左腕に握らせたレクタングルランチャーを撃ちながらデュオが本気の愚痴を零し、ゲイボルグ二丁流のデュエルを操る五飛はそんな愚痴に一片の反応もせず、メカギルギルガンの口や腕を切り離した断面など、比較的脆弱な部分を正確に狙い撃っている。

 

「残り時間は、三分を切ったか!」

 

「トロワ、ヒイロ、今だ!」

 

 カトルはビームライフルの代わりにイージスに持たせたGガトリングガンでメカギルギルガンの注意を引きながら、有効な実体剣を装備した二人の仲間に合図を送る。

 オーラコンバーターを最大稼働させて、オーラの光をオーラソードに宿らせたトロワのサーバイン、更に対艦刀シュベルトゲベールの切っ先を下段に流したヒイロのソードストライクがメカギルギルガンへと斬りかかる!

 SPIGOTがメカギルギルガンから離れ、切り裂かれた胴体からスパークを散らすメカギルギルガンは、命知らずの接近戦を挑むサーバインとソードストライクへ反応できなかった。

 

「隙だらけだな」

 

「ターゲット・ロック、メカギルギルガン」

 

 頭上から流星のように飛翔したサーバインのオーラソードがメカギルギルガンの右首筋を切り裂き、懐に飛び込んだソードストライクのシュベルトゲベールが左太ももから胸部までをまっすぐに斬り裂く。

 

「ギュオオオ……ガアアア!!」

 

 自己再生も間に合わない攻撃にもだえ苦しむメカギルギルガンだが、それでも彼/彼女の戦闘プログラムは停止せず、バイザー状の眼を輝かせると超破壊光線で周囲を薙ぎ払う。

 超破壊光線は弧を描いて地面を抉り、大量の土砂が巻き上がって衝撃波と膨大なエネルギーがサーバインとソードストライクを飲み込んで、大きく吹き飛ばした。

 

 メカギルギルガンの両肘がメキメキと音を立てて、少しずつ切り離した腕部の再生を進める。流石にすぐに元通りとはいかないまでも、時間を掛ければ元通りになってもおかしくはなさそうだ。

 メカギルギルガンが更に超破壊光線を放とうとエネルギーをチャージしたその瞬間に、大口径の実弾が次々と命中して痛んでいた装甲に穴が開いて行く。シロッコのジ・OⅡである。流石はシロッコ、大型のMSながら被弾らしい被弾は皆無だ。

 

「サラとシドレは私よりも前に出るな。金属生命体とでも呼ぶべき兵器か。ゾイドの行き着く可能性かもしれんが、今は落ちてもらおう!」

 

 ジ・OⅡの持つ巨大なマシンガンと胸部の連装砲塔が絶え間なく火線をメカギルギルガンへと引いて、修復の追いついていない装甲を更に抉ってゆく。

 更にダメ押しとばかりにシロッコの思惟をバイオセンサーが読み取り、ジ・OⅡの後部ホバーユニットが切り離され、GN粒子を噴き出しながら一気に加速してメカギルギルガンへと激突した!

 ホバーユニットそれ自体はメカギルギルガンからすれば、そう大きな代物ではない。

 腕がなくとも下半身に激突したホバーユニットを弾き返し、踏みつぶすか、尾で薙ぎ払うかするのは容易だ。

 

 実際、メカギルギルガンはそれを実行しようとした。だがそれよりもホバーユニット内部の疑似太陽炉がオーバーロードにより自壊し、爆発を引き起こす方が早かった。

 まだ残弾のあった地対空ミサイルも含めて生じた爆発に、メカギルギルガンは逃げる間もなく飲み込まれる。

 本来の戦力ではないにもかかわらず、メカギルギルガンを追いつめる姿に、ほとんど傍観に徹していたユーゼ……イングラムは残り時間を考慮して、行動に移ろうとした。

 

「ソルの生まれ変わりをもう少し追い詰めなければ話にならん。やはり地球という星の戦力は銀河有数だな。メカギルギルガンをああも追い詰めて、私が手を下さねばならんとは……」

 

 アストラナガンがZ・O ソードを手に、高度を落とそうとしたその瞬間を狙いすましたかのように、まだ形を保っていたエリュシオンベースの地下カタパルトから白銀の機体が空へと飛びあがった。

 改修の終わったヴァイスリッターだ。装甲をガンダニュウム合金から超合金ニューZに張り替え、より小型・高性能化されて洗練されたミノフスキー・ドライブと新型の光子力エンジンを搭載してパワーアップを果たしている。

 

「仮面を被った色男さん、歓迎のクラッカーよ。受け取ってちょうだいな!」

 

 Eモードのオクスタンランチャーから光子力ビームが立て続けに連射されて、アストラナガンはそれを半球状に展開した念動フィールドでもって防ぎきる。

 光子力ビームの槍が念動フィールドに弾かれた瞬間には、既にヴァイスリッターの姿はそこになく、人型機動兵器としては破格の速度と飛行性能でアストラナガンの周囲を飛び回っている。

 本家とは違いテスラ・ドライブの開発されていないこの世界では、ミノフスキー・ドライブをメインにマジンガーやゲッター、コンバトラーやボルテス、ダイモスにダンクーガと言ったスーパーロボットの飛行システムを参考にした飛行能力は、決して本家に劣るものではない。

 

「アインストに取り込まれずとも、これだけの性能は確保するか。ソルの齎した多元世界の技術だけでなく、この世界そのものの技術も評価するべきだな」

 

 一体どれだけの並行世界を観測しているのか、イングラムは眼前のスーパーロボット要素の濃いヴァイスリッターを、異世界のライン・ヴァイスリッターと比較しながら、ガン・スレイブを呼び戻してヴァイスリッターとの小競り合いを始める。

 地球製の小型端末をゆうに上回る破壊力を持つガン・スレイブの砲弾を回避しながら、エクセレンは緊張をほぐすように艶やかな唇を舌でひとなめ。

 

「地球を吹き飛ばしちゃっていいのかしら? 皇帝陛下にお叱りを受けるんじゃないの、宰相サン」

 

 オクスタンランチャーと左腕の三連光子力ビームキャノンを虚実交えて撃つエクセレンに、イングラムもアトラクター・シャワーによる重力の散弾で応戦した。

 ゼファー、アムロ、クワトロの三人で抑え込んだアストラナガンが相手とあっては、いかにエクセレンと強化されたヴァイスリッターとはいえ、分の悪さは否めない。

 

「腐った果実は廃棄するものだろう? 我が帝国にとっては地球程度の惑星一つ、大した資源でもない」

 

 重力の散弾と光子力の輝きが衝突しては黒と黄金の入り混じる光の爆発が生じ、その中を白い天使と黒い天使が影さえも置き去りにするような速さと動きとで飛翔している。

 

「腐った果実はジュースにもジャムにも出来ないからポイって感じ? 残念、ただ捨てられるだけの果実じゃないのよね、私達って!」

 

「良く知っているとも。だからこそ研究材料として評価している」

 

 イングラムとの会話の中にかすかな違和感を抱きながら、エクセレンはタイムリミットが刻一刻と迫っているのを忘れていない。

 アンティノラの高火力も厄介だが、メカギルギルガンを撃破する為には、アストラナガンを自由にさせてはならない。メカギルギルガンの中性子爆弾を止められても、イングラムが遠隔操作で起爆させる可能性もないわけではないのだから。

 

「間違って食べてポンポンが痛くなっても知らないわよ~? その前にそのお腹に大穴開けたげるわ、ウチのダーリンがね?」

 

「アルトアイゼンか」

 

 イングラムとエクセレンが超高速戦闘を繰り広げているその足元で、完璧に修復されたアルトアイゼンが持てる推進力の全てを同じ方向に束ねて、飛び立たんとしていた。

 アルトアイゼンは“リーゼ”への改修は行われておらず、ヴァイスリッター同様に超合金ニューZと新型光子力エンジンの搭載が行われている他は、大きな変化は見られない。

 それでも、それでも、マジンガー同様にMSサイズのスーパーロボットと呼ぶべきアルトアイゼンがその加速性能と推進力を全開にして解放した時、イングラムの予測を超えた速度でアストラナガンとの距離をゼロにしていた。

 

「ほう?」

 

「撃ち貫け、アルト!」

 

 高純度の超合金ニューZ製の杭が、アストラナガンのかざした左手の先に展開された念動フィールドに突き刺さり、両者の衝突点で激しいスパークが散る。

 

「キョウスケ・ナンブ。貴様も、数多の世界が交錯した混沌の世界において、因果の中心足りえる資格を持つ者。同時に監視者の尖兵となり世界を終わらせる資格も」

 

「世迷言に興味はない!」

 

 キョウスケの指が操縦桿のトリガーを引き、ビームカートリッジの炸裂によって生じた衝撃波が念動フィールドを大きく揺らす。更に、更に、とキョウスケがビームカートリッジ残弾全てを叩き込み、堅牢なる念動フィールドに罅が走る。

 イングラム自身は強念者──サイコドライバーではない。だが未覚醒のサイコドライバーを威圧する程度には、“念”の扱いを心得ており、アストラナガンの機体性能もあって念動フィールドは途方もない強度を誇る。それを古い鉄とニュータイプでも超能力者でも、ましてやサイコドライバーでもない男は貫く!

 

「獲ったぞ!」

 

 その命を! ついに砕けた念動フィールドが消え去るよりも早く、“古い鉄”と名付けられた機体が黒い天使の心臓を穿つべく更に加速!

 ズフィルード・クリスタル製のアストラナガンの心臓に迫るアルトアイゼンの腕は、しかし、アストラナガンの左手によってシリンダーごと掴み止められてしまった。

 

「ゲシュペンストではなく、マジンガーベースのアルトアイゼンと言うべきか。この世界の技術の発展の特異さは興味深いな」 

 

「クレイモア!」

 

 アストラナガンのパワーでミシミシとシリンダーが音を立て始めたその瞬間、アルトアイゼンの両肩の装甲が開き、装填されていた特注の鏃が一斉に発射される。

 咄嗟にZ・Oソードの腹を掲げて盾代わりにしたアストラナガンだが、カバーしきれなかった機体各所に次々とタングステン製のクレイモアが突き刺さり、アルトアイゼンに左腕を振りほどかれてしまう。

 

「こいつも持っていけ!」

 

 アルトアイゼンの頭部から伸びる角から超高温の熱線が、カメラアイから光子力ビームが、腹部からは拡散光子力ビームが、左腕部の三連マシンキャノンが次々と放たれてアストラナガンに命中して行く。

 

「今ならタダでこれも、これも、これもサービスサービス!」

 

 これを見逃すエクセレンではない。オクスタンランチャーのWモード、三連光子力ビームキャノン、スプリットミサイルが惜しげもなく発射されて、アルトアイゼンに続いてアストラナガンに殺意と火力が集中する。

 アストラナガンを覆いつくす爆発の中から一段と巨大になった光の翼が開かれて、中破相当の損傷を負ったアストラナガンの姿が露わとなり、一気に上空へ高度を取る。

 

(紛い物とはいえアストラナガンにこうもダメージを与えるか。だが私の本命はお前達ではないのだよ)

 

 罅割れた装甲や断裂した内部の回路の修復が始まるのを他所に、イングラムは中性子爆弾の起爆まで残り一分を切ったメカギルギルガンを見る。より正確には止めを刺そうと次元力を滾らせるフェブルウスを。

 迫るタイムリミットに動いたのはフェブルウスばかりではなく、ソウルゲイン、ヴァイサーガ、アンジュルグらもだ。

 

「リミット解除!」

 

「ヴァイサーガ、フルドライブ!」

 

「リミット解除……コード・ファントム・フェニックス!!」

 

 残されたエネルギー全てを使い尽くす覚悟を決めたシャドウセイバーズの三人は、まずラミアのアンジュルグが弓より放った燃え盛る不死鳥から攻撃の口火を切った。

 ヒイロにトロワ、シロッコからの連続攻撃に大ダメージを負ったメカギルギルガンは、全身に火花とスパークを纏いながら、超破壊光線をなんとか撃ってファントム・フェニックスの勢いを減じる事に成功する。

 

 それでも威力を半分以上保持したファントム・フェニックスはメカギルギルガンの胸部を大きく抉り、内部の構造が露出した。人間であったなら胸の筋肉が爆ぜて心臓や肺が露出している状態だ。

 その傷口から中性子爆弾と思しい厳重に装甲で守られた箱状のパーツが、わずかに覗いている。いかにもなパーツに疑心を抱きつつも、アクセルとヴィンデルはメカギルギルガンを無力化するべく軋む機体に鞭を打った。

 

「行けい!」

 

「烈火刃!」

 

 散弾状に放たれた青龍鱗と烈火刃がメカギルギルガンの足を中心として命中し、次々と爆発を起こしてメカギルギルガンの体勢を崩す。

 立て続けのダメージに体勢を直せないメカギルギルガンに対し、一気にソウルゲインとヴァイサーガが襲い掛かる。

 

「おおおおお!」

 

 増幅した生体エネルギーを両腕に纏うソウルゲインと五大剣を構えたヴァイサーガの怒涛のラッシュが、メカギルギルガンの胸部を除くあらゆる箇所を打ち、抉り、貫き、切り裂いて行く。

 

「ガ……ガ……ギィイ……ア」

 

 再生を始めていたメカギルギルガンの両腕が宙を舞い、切り落とされた尻尾がぐねぐねとのた打ち回る。ソウルゲインの拳の形にメカギルギルガンの装甲が次々と抉れ、五大剣の刃が翼を切り落とす。

 

「コード麒麟! でぇええい!!」

 

「奥義光刃閃! 落ちるがいい!!」

 

 ソウルゲインの両肘のブレードが伸び、肩の回転に合わせて振り上げられた刃がメカギルギルガンの腹部に大きなX字の斬痕を刻む。苦痛の声を出す余力もないメカギルギルガンに、ヴァイサーガとヴィンデルは容赦をしない。

 光と見まごう速さに加速したヴァイサーガの斬撃の嵐は、死に体のメカギルギルガンを更に追い込み、返した刃がメカギルギルガンの首を跳ね飛ばした!

 そして首を断たれて動きを止めるメカギルギルガンにフェブルウスが突っ込み、ライアット・ジャレンチを展開し、メカギルギルガンの剥き出しになった心臓部を挟み込む。

 至高神ソルとしての記憶の他に、ある程度機能を取り戻していた双子らは、次元力への干渉により、コレが中性子爆弾を内包した心臓であると理解していたからだ。

 

「こんのおおお!」

 

「やらせないよ!」

 

 何本ものコードを引き千切ってメカギルギルガンの心臓を抉り出し、フェブルウスは即座に心臓部に内包された中性子爆弾へとアクセスを開始する。

 頭脳部をパンドラボックスとして所長に預けていても、至高神ソルとして多元世界を観測し、次元力を行使した演算能力は絶大だ。

 バルマー帝国、メカギルギルガン、中性子爆弾、イングラム、アストラナガン等々、これらの因子を条件として設定し、観測記録の検索と現在の多元世界の観測を並行して行う。

 

「見つけた!」

 

 双子とおそらくはフェブルウスも同時にその言葉を発し、ライアット・ジャレンチによる接触回線を強制的に繋げて解除方法を進める。

 さながらエヴォリュダー・獅子王凱のアクセス能力の如く、フェブルウスは中性子爆弾の掌握を進め、真偽の定からぬイングラムの告げたタイムリミットが過ぎるコンマ一秒前に、中性子爆弾の解除に成功していた。

 

「爆発の様子は?」

 

「ないよ。本当に地球を吹き飛ばせる威力の爆弾だったね」

 

「別の世界で同じものが作られた記録を観測できてよかった」

 

「いざとなったら次元力を使って、爆発しなかったことにするしかなかったよ」

 

 双子が少しだけ気を抜く間もフェブルウスは作業の手を止めておらず、中性子爆弾を慎重にDフォルトで包み込み、また友軍機と司令部に中性子爆弾の無力化を伝える。まだ陽動を行っていた敵部隊も、アストラナガンもバサ帝国の部隊も残っている。

 無理を通したソウルゲインとヴァイサーガ、アンジュルグがその場で膝をつき、ほぼ機能停止にまで追い込まれた状況を、イングラムはキョウスケとエクセレン、そしてトレーズらを一挙に相手にしながら監察し続けている。

 

「ふ、早々上手くは行かんか。至高神ソル、ならばこれでどうだ?」

 

 ダメージの八割を修復し終えたアストラナガンの新たな動きに、ビームカートリッジの装填を終えたアルトアイゼンとヴァイスリッターが仕掛けようとするも、そこにガン・スレイブと残機の減ったアンティノラが割り込む。

 

「アキシオン・キャノン。ブラックホールに匹敵する超重力だ。耐えられるか?」

 

 アストラナガンの左手から放たれたワームホールを発生させる球形の力場は、フェブルウスもソウルゲインも無視して彼らの足元──地上施設がほぼ吹き飛んだエリュシオンベースに直撃する。

 イングラムの狙いが何であるかを察し、シュメシとヘマーの血の気が引いた。フェブルウスも同じであったろう。

 周囲の誰もが何も出来ずにいる間にグレートアトラクターに匹敵する超重力地獄へと繋がるワームホールが開かれて、多くの隔壁と土砂で守られているエリュシオンベースが飲み込まれてゆく!

 

「お父さん、お母さん!」

 

 シュメシとヘマーと、それにオウカもアラドもゼオラも叫んだ。機体の損傷により、基地に引き返したラトゥーニも居るのだ!

 重力場の異常を告げるセンサーのアラームはけたたましく、カメラの映し出すのは光も逃げられない暗黒の穴が広がってゆく地獄のような光景。

 なんとかメカギルギルガンを倒し、中性子爆弾を解除した矢先に起きたこの天災のような光景を前に、さしものアムロやクワトロ、シロッコやアクセルらも次の行動を起こせずにいる。

 エリュシオンベースの人々が超重力地獄の中で、どんな運命を迎えるのかにイングラムは興味がなかった。

 

「やれ」

 

「しまっ!?」

 

 ワームホールから吹きこぼれる超重力の嵐に、地球側の機体が思うように動けずにいる中、残るアンティノラ達がイングラムの指示で動き出し、リング状のエネルギーで敵を圧殺するドラウプニール・リングを発動し、何重ものエネルギーの輪がフェブルウスを拘束する。

 

「こんなもので!」

 

「動きを止められるとは思っていない」

 

 ユー……イングラムの声色が氷のように冷たく響いた時、フェブルウスの背後にはいつの間にか出撃していた量産型νガンダムの姿があった。パイロットは当然、クォヴレーだ。

 姿の見えていなかったクォヴレーがようやく姿を見せたのに、ゼオラやアラドが助けに来たのだと安堵したのとは逆に、ギリアムは強い警戒感をあらわにした。

 このタイミングを狙っていたのか、と。

 量産型νガンダムのビームライフルとビームキャノンが何度も輝いては、次々とフェブルウスに命中して行く。ドラウプニール・リングによって拘束された為に、Dフォルトを展開できず直撃弾が重なっている。

 

「くうう!?」

 

「きゃああ!」

 

「なにやってんだよ、クォヴレー!」

 

 突然のクォヴレーの凶行により双子の悲鳴が響き渡り、アラドは機体のダメージを省みずに量産型νガンダムを止めようとしたが、その周囲をアンゲロイの大群に囲まれて、牽制されてしまう。

 ゼオラもオウカも同じだ。ゼカリアやアンゲロイ、メギロートがひっきりなしに転移して出現しており、敵を示すマーカーは増える一方。

 

「俺は任務を全うしているにすぎん」

 

 対するクォヴレーの返答はイングラ……ゼスに負けず劣らず冷たいものだ。人間的な感情を微塵も感じさせないそれに、アラドとゼオラの顔が凍り付き、オウカが美貌を後悔で歪める中、彼らと同じように怒っていた者達が居た。

 

「クォヴレー、この馬鹿野郎!」

 

 バンだ。フィーネとジーク共々、突然の行動に驚いてはいたが、それ以上に戦友だと思っていた相手の裏切り以外の何物でもない行動に、怒りをあらわにしている。

 バン達のシールドライガーもダメージはあったが、マシンセルの恩恵によって時を追うごとに修復が進んでおり、背後から量産型νガンダムに飛び掛かる姿に不調は見られない。

 

「言ったはずだ。任務だと」

 

 バンの動きを予想していたクォヴレーは、淡々とビームサーベルを抜き放ち、機体を屈めてストライククローを回避しながら、シールドライガーの首元を切り裂いた。

 

「うわ、フィーネ、ジーク、大丈夫か!?」

 

「私は大丈夫、でもジークが」

 

 空中で身をよじり、かろうじて四肢から着地したシールドライガーだが、既に回り込んでいたインコムが襲い掛かり、次々とシールドライガーをビームが襲ってマシンセルの修復の間に合わないダメージを与えて行く。

 特にジークの接続した重要部位を狙って攻撃しており、例えマシンセルで修復しようともジークのサポートが損なわれるように狙ったのだ。膝をつき、うずくまるシールドライガーから視線を外し、クォヴレーは再びフェブルウスへとビームライフルの銃口を向ける。

 

「ま、待て、クォヴレー。お前、最初から俺達を裏切るつもりで!」

 

「裏切りと思いたければ思えばいい。俺は最初から帝国の利益の為に行動している。俺にとって俺の行動は裏切りではない。お前達にとっては裏切りであってもな」

 

「く、くそ、くそおおお!」

 

 悔しさや悲しみ、怒り、多くの感情を混ぜて叫ぶバンを尻目に、クォヴレーはトリガーに指を添えた。窮地に陥った双子が新たな次元力の行使をするか、あるいはこのまま鹵獲するのが狙いだ。双子の意識が失われる程度には痛めつける必要がある。

 ダメージを受けながらも、ドラウプニール・リングを引き千切ろうとするフェブルウスのパワーはすさまじく、四方を囲んでいるアンティノラは限界まで出力を上げても危うい状態だ。

 

「悠長にはしていられんな」

 

 メガ粒子の塊が再びフェブルウスを傷つけようとしたその時、戦場全域にオープンチャンネルで怒れる女性の声が響き渡った。

 

『私の可愛い子供達を傷つけるのは、そこまでにしていただきましょうか』

 

 声が届くのと同時にワームホールが外部の干渉によって見る間に小さくなってゆき、荒れ果てた地面が局所的な地震に襲われたように震えて、急激な勢いで“浮上”を始める。

 クォヴレーが状況の変化にすぐさまフェブルウスを無力化しようとした瞬間、センサーの捉えた高熱源反応が彼の意識をそちらへと誘導した。

 浮上し始めたエリュシオンベースの一角から、全長25m程の人型……否、女性型機動兵器が飛び出し、アンティノラや量産型νガンダム、アストラナガン達の中心に近い位置で動きを止めると、全方位へと向けてピンク色の光の奔流を放つ!

 

「必殺、サイコブラスター!」

 

 それはMAP兵器でありながら敵味方を識別し、全方位・広範囲の敵機のみにダメージを与えるという、非常識なエネルギー兵器だ。

 アンティノラやアストラナガンは持ち前のバリアで光の奔流あるいは嵐を防いだが、実体のシールドしか持たない量産型νガンダムは小さくないダメージを与えられた。

 新たに戦場に姿を見せた機動兵器の特異な姿に、イングラムはかつての記憶を思い出して類似した存在の名前を口にした。

 

「ヴァルシオンの二号機、ヴァルシオーネといったか? デザインは随分と違うようだが……」

 

 膝裏まで届く白銀の髪はジェネシックガオガイガーと同じエネルギーアキュメーターであり、いわば髪の毛状の電池だ。

 黄金のサークレットの下にある美貌は、およそ人種や時代の美醜観を越えて美しいと万人が認める造形の極致である。

 人間そのものの顔をはじめ、多くの部位が柔軟な人工筋肉によって構成され、流星の尾のように美しく流れる鼻梁の線も、艶やかな淡い桜色の唇も、紅玉のような瞳も、そのすべてが人造の品であった。

 

 黄金比を思わせるプロポーションに加え、盾を思わせるショルダーアーマーや体のラインを露にする白い甲冑状の装甲、背中から伸びる大小二対の白鳥を思わせる翼は、ともすれば天上世界から遣わされた天使かはたまた勇士をヴァルハラに誘う戦乙女のよう。

 右手には巨大な刀──ディバイン・ブレードを、左手には白い銃身を横に二つ並べたツインメガビームランチャーを構えている。

 アルティメット・ロボット・ガーディアン二号機、ヴァルシオーラ。所長が用意しておいた切り札の一つである。

 

「フェブルウスはやらせない!」

 

「その声、ラト?」

 

 イングラムがヴァルシオーネと呼んだ機体から聞こえてきた声が、愛しい妹のものだと気付いたオウカがはっと顔を上げる。ラトゥーニとは正反対の大人びた美貌を誇る機体は色々な意味でインパクト大だが、今は妹の無事をこそ喜びたい。

 

「やああ!」

 

「ちっ!」

 

 スーパーロボット用の高出力Dエクストラクターを二基搭載し、各スーパーロボット、モビルスーツ、パンドラボックスの技術を投入して開発されたヴァルシオーラとガンダムタイプとは言え、量産型のνガンダムとでは絶望的なスペック差がある。

 クォヴレーは機体を後退させて、ヴァルシオーラとの距離を取った。

 超音速で地表を駆けたヴァルシオーラは、フェブルウスを囲むアンティノラを次々とディバイン・ブレードで切り裂いて行く。ドラウプニール・リングによる拘束の為に、動けないアンティノラは的でしかない。

 体のラインが浮き彫りになるボディスーツを着込み、ヴァルシオーラを操縦するラトゥーニは、更にツインメガビームランチャーの連射に加え、両肩のアーマーに埋め込まれた宝玉のパーツから青と赤に輝く無数の宝石状の弾丸を放出する。

 

「メビウスジェイド!」

 

 二色の光は∞の軌跡を描きながらアンティノラ達へ次々と命中して行き、五体を吹き飛ばして行く。更にラトゥーニは一気にここで終わらせる決断をしていた。

 ディバイン・ブレードを左腰の鞘に納め、ツインメガビームランチャーを腰裏にマウントすると両手を残るアンティノラ達へと向ける。機体の両胸に内蔵されたDエクストラクターが唸りを上げて、両腕から青と赤の螺旋を描く光線が発射される!

 

「ダブルクロスマッシャー!」

 

 スーパーロボットの必殺技級の破壊力を持つ螺旋の光は、ラトゥーニの『熱血』の意思を乗せてアンティノラ達を穿ち、跡形もなく爆散させた。

 拘束が解かれて、人間的な仕草で膝を突きそうになるフェブルウスを駆け寄ったヴァルシオーラが優しく受け止める。

 

「大丈夫、シュメシ、ヘマー? それにフェブルウスも」

 

「ラトゥーニ? 僕達は大丈夫だよ!」

 

「ラトゥーニこそ大丈夫? その機体はお母さんの?」

 

「うん。しょ……お母、さんの、うん、集大成の機体だって。バルゴラGSの代わりにこれに乗りなさいって言われて」

 

「そう。とても綺麗な機体だね。ラトゥーニにお似合いだ」

 

「ありがとう、シュメシ。それとおと、お、お父さんとお母さん達も無事。ほら」

 

 浮上を続けていたエリュシオンベースの一角が動きを止めて、大量の土砂と瓦礫の大部分がはがれた時、空中に浮いていたのは全長1,300m以上、全幅も1,000m近い巨大な移動要塞だった。

 見るものが見れば、グレート・アクシオン、パレス・インサラウムと同じ型の移動要塞だと気付くだろう。

 

 これこそエリュシオンベースの内部で建造されていた移動要塞“タルタロス”。なおフルメタル・パニックのTALTAROSとは関係ない。

 タルタロスとはギリシャ神話における奈落の神であり、同時に冥界の最も下に存在する奈落そのものを指す。

 超ド級の次元力反応炉やマシンセルを装備したこの要塞は、アキシオン・キャノンの命中前に本格的に稼働して、ワームホールを次元力の干渉によって閉ざしたのだ。

 そして今、こうしてついに奈落を名前に持つ移動要塞は、地の底から太陽の下へとその巨体と威容を露としたのである。

 

「バルマー・サイデリアル連合帝国宰相イングラム閣下。よくもまあここまで舐め腐った真似をしてくださって、お礼にぐうの音も出ないほどぶちのめして差し上げます」

 

 我が子を傷つけられた怒りを微塵も隠さない所長の声は、タルタロスの甲板上に立つ全高57mの『究極ロボ』から発せられていた。

 

(ヴァルシオーネもどきの次はヴァルシオンもどきか。私の存在が流入させた因果か?)

 

 アルティメット・ロボット・ガーディアン一号機ヴァルシオー。その姿は見るものに威圧感と恐怖を与えるようにデザインされ、さながら神話の魔王か魔神の如き禍々しさだ。

 葬ってきた敵の血で染めたような赤いボディは超合金ニューZをベースとしたマシンセルで構築され、更にPS装甲の特性が付与されている。

 主動力にディアムドを上回る出力のDエクストラクターを持ち、補機として光子力エンジン、ゲッター炉、縮退炉を一基ずつ、それらのエネルギーを超電磁エネルギーに変換するシステム、超電磁コーティング、サイ・コンバーターといった既存の技術を奇跡的なバランスで装備している。

 また疑似太陽炉を用いたツインドライブシステムを試験的に導入し、脚部に一基ずつ疑似太陽炉を内蔵しており、巨体をカバーする機動性の確保に一躍買っていた。

 

 鋭角的なシルエットで構成されているのはオリジナルと変わらないが、胸部と肩が繋がっているようなオリジナルとは異なり、格闘戦を考慮して首や四肢の可動域が大きく確保されていて、ダイモス並みの格闘戦を想定した関節の柔軟性を実現している。

 後頭部は背中のウイング状のパーツからは独立していて、カメラアイはOGシリーズの丸い四ツ目ではなく、切れ長のデュアルアイだ。

 

 肩に背負った竜の爪を思わせる形状のバインダーにはクロスマッシャー×1、光子力ビーム×8を内蔵。

 手甲部にクロスマッシャーとサンダーブレーク発射装置、額部分にはゲッタービーム発射装置が内蔵されている。

 右手に長柄と鍔だけの武器ディバイン・キャリバーを持っているが、これはヴァイサーガとアンジュルグ同様、エネルギーを実体化する武器である為、刀身を形成していないだけだ。

 

 このほかに高性能のグラビコン・システムと縮退炉により、強力な重力制御機能を有し、メガグラビトンウェーブや発射口を必要としないグラビトンランチャー、ブラックホールキャノンを使用可能となっている。 

 その他にもスーパーロボットの各種兵装を改良・仕様変更したものを搭載しており、所長曰く『複数のスーパーロボットとトップエースの乗るトップクラスのMSからなる二十機前後の混成部隊が総力を挙げれば倒せるくらいの性能』に仕上がっている。

 ま、分かりやすく言えば高難易度のラスボスに相応しい性能と言うわけだ。

 

 ヴァルシオーの喉奥にあるコックピットの中で、流石に白衣を脱いだ所長は殺意を隠さぬ瞳でモニターに映るアストラナガンを睨んでいる。

 実はこのヴァルシオーにはヘイデスも乗っていたが、平均的なパイロットにも届かない技量の彼は、サブパイロットとして所長の後ろに用意されたサブシートにスーツ姿のまま座り、操縦に関してはただそこにいるだけという状況だった。

 情けないがなによりも本人が一番情けないと思っているので、大目に見てあげて欲しい。

 一応、彼が居る事でサイ・コンバーターの出力向上と所長の士気高揚に役立ってはいるのだが。

 

「ディバイン・クルセイダーズならびにシャドウセイバーズならびに地球連邦軍の皆さん! さあ、正義のスーパーロボット軍団、怒りの反撃はこれからですわよ? いつまでもへこたれていないで、地球の底力を思い知らせて差し上げなさいな!」

 

 発破をかけた責任とでも言うように所長はヴァルシオーの両腕と肩のバインダーを頭上のバサ帝国部隊へと向け、合計四門のクロスマッシャーを景気よくぶっ放した!

 

「クワッドクロスマッシャー、ファイア!」

 

 どんなに堅牢なスーパーロボットの装甲でも耐えられないのでは、と疑わせる螺旋の破壊光にエスパーロボやアンゲロイ、エゼキエル、偽ミケーネ神は耐え切られずに直撃のみならず余波だけでも吹き飛び、原形を留める事無く爆散して行く。

 ヴァルシオーが単純計算でヴァルシオンの四倍の火力を容赦なく発揮するのと同時に、タルタロスも各所に搭載したレーザー砲や次元力反応砲、迎撃ミサイルを嵐のように発射し始めて、数百を超える火線がバサ帝国部隊へと襲い掛かる。

 

「状況が変化したか……」

 

 フェブルウスの傍らにヴァルシオーラが陣取る状況に、クォヴレーが単機でのフェブルウス捕縛の難しさを思案したその瞬間、狙いすましたかのようにギリアムのゲシュペンストMk-Ⅲが強襲を仕掛けた!

 

「ロシュセイバー、アクティブ!」

 

「……」

 

 重力場で形成された刀身が量産型νガンダムの手足を切り落とし、四肢を失った機体が仰向けに落下する。コックピットハッチへと切っ先を突きつけて、ギリアムはバサ帝国のスパイだったクォヴレーへ冷徹に勧告する。

 

「機体の動力を停止させて、ハッチを開けろ。投降するのなら手荒な真似は控える」

 

 おそらくこのクォヴレーは自分の知る因果律の番人ではなく、バルマーの人造人間バルシェムなのだろう、とギリアムが結論付ける中、量産型νガンダムのハッチが開き、独特なデザインのボディスーツ姿のクォヴレーが姿を見せる。

 ゲシュペンストMk-Ⅲの左手を伸ばして、クォヴレーの身柄を確保しようとした時、クォヴレーの口元に冷笑が浮かび上がると、その姿は陽炎のように掻き消えた。

 

「なに!? テレポーテーションか!」

 

 咄嗟にギリアムは自身の直感に従って頭上を仰ぎ見た。更に追加で呼び出した援軍の中心で佇むアストラナガンを! その直後だ、アストラナガンの眼前にクォヴレーが姿を現し、思念によって強制的にこちらの通信回線に割り込んできたのは。

 

「地球の諸君が用意しておいた切り札の戦力を過小評価した事は、認めなければなるまい。今度は遠隔操作ではなくこのクォヴレー・ゴードン、いや、イングラム・プリスケンが直々に相手をしてやろう」

 

 再びクォヴレーもといイングラムの姿が消えると彼はアストラナガンのコックピットへと転移し、これまで立体映像で映し出されていたイングラムと同じ衣装へと変わり、四ツ目のマスクを被る。

 

「帝国の宰相が自らスパイしてたってのかよ!?」

 

 驚きを隠せないアラドに、イングラムはマスクを通してややくぐもった声で答えた。

 

「お前達は興味深いモルモットだ。直に私の目で確かめる価値があるほどのな。だがそれも終わりだ。私がイングラムに戻った以上、お前達の収穫を同時に行う」

 

 本来のパイロットが戻った事により、アストラナガンはそうと分かるほどに出力が向上し、ズフィルード・クリスタルの再生速度も劇的に向上し、見る間に機体の傷が綺麗に消え去った。

 ヘイデス夫妻にエリュシオンベースの人々の無事の知らせ、更にヴァルシオーとヴァルシオーラ、タルタロスという増援はあったが、フルスペックのアストラナガンと言う脅威は、増援があってもなお息を呑む効果があった。

 

「いいや、違う」

 

 だがイングラムの動きを止める言葉が、ギリアムから発せられた。

 

「……」

 

「ことここに至ってようやく理解した。俺もまだまだ未熟だな。お前は自分をクォヴレーと偽り、今またイングラムと偽った。それはこの世界にクォヴレーとイングラムが既に存在していると定義し、彼らの介入を防ぐ為だ」

 

「貴様、ギリアム・イェーガー、呪われた彷徨い人め……」

 

「俺は既に彼らを知っている。そしてやっと確信した。ある世界ではアルテウル・シュタインベック。だが、お前はこう呼ぶべきだろう。ユーゼス・ゴッツォ!」

 

「……ふふふふ、ハハハハハハ! 滅びるまで永遠に並行世界を彷徨う呪われたお前ならば、私の名を知っていてもおかしくはないか。あるいはここに至るまで私がそこに気付かなかったのも、因果というものかもしれん。

 そうだ、我が真の名前はユーゼス・ゴッツォ。だが、それはお前達に更なる地獄を見せる結果となる。このイミテーションに過ぎないアストラナガンを相手にしていた方が良かったと、お前達は絶望する」

 

 ビキっとアストラナガンの無傷の装甲に大きな亀裂が走った。それは外部からの攻撃によってではなく、なんとアストラナガンを内側から突き破った巨大な手によってだった。

 新たな手がアストラナガンの腹を内側から突き破り、剣のような尻尾が胴を砕いて伸びる。そしてアストラナガンの首をもぐようにして、人面に近い構成の頭部が生えてきて、アストラナガンの五体は砕けてバラバラとなり、地面に落下して行く。

 先程までアストラナガンが居た場所には、大蛇の下半身を持ち、四本の腕の内、右上腕は蛇の頭部のようになっている異形が居た。

 半人半蛇の異形、さながら地獄に君臨する悪魔の如き黒曜の機体。

 

「ジュデッカ。お前達に絶望の地獄を与える機体の名だ。黒き十字の与える死と恐怖を甘受するがいい」

 

 全長70m超とアストラナガンやヴァルシオーすら上回る異形の機体、かつてスーパーロボット大戦αでラスボスを務めたこのジュデッカこそが、イングラムを騙り、クォヴレーと偽り、真実を隠蔽し続けたユーゼスの本来の機体である。

 偽りのイングラムと偽りのアストラナガンを敵としていればよかった、とユーゼスが告げたようにユーゼスの乗るジュデッカの放つ重圧は、アムロやクワトロ、カミーユやジュドー、シーブック、バナージ、シロッコらといったニュータイプばかりでなく、オールドタイプの区別なく戦場の全員に齎されている。さしずめ気力-10と言ったところか。

 地獄の名を冠する異形の機体のプレッシャーに、ギリアムもまた眦を険しく引き締め、所長も超人的な感覚により、底知れない脅威を感じ取る中、ヘイデスだけは『やっぱりじゃん!』と半ば呆れた感想を抱いていた。

 

 ヘイデスはサブシートのコンソールを操作し、クォヴレーに割り当てられていた通信コードを使い、ユーゼスにだけ繋がるように呼び掛けた。

 夫の不可解な行動に、所長はすぐにピンときた。夫の経歴からユーゼスに対して有益な情報を得ているのだと察しが着いたからだ。

 はたしてユーゼスはヘイデスからの呼びかけに答えた。彼にとってもこの世界のヘイデスと所長というコンビは、未知の要素を多く含む存在であったから。

 

「ユーゼス・ゴッツォとしての貴方と挨拶するのは、初めてですね。ヘイデス・プルートです。お見知りおきを」

 

「ふ、クォヴレー・ゴードンとしては短い付き合いだったな。フェブルウスの覚醒具合によっては、もう少しお前達の懐に潜り込んだままでいる予定だったが、私の計画を前倒しできたのはお前達のお陰でもあるだろう」

 

「それはどうも。ところで、僕からいくつか質問しても? 冥途の土産と思って答えてくださるとうれしいですね」

 

「……お前という存在は多くの並行世界を観測した私にとっても、未知なる存在だ。貴様もまた虚憶を持つ者か、それともギリアム同様に呪われた放浪者にして彷徨い人か。死ぬ前に白状するというのなら、耳を傾ける価値を認めよう」

 

「ははは、余裕ですね。では早速、貴方が使っているその体ですが、察するにイングラム・プリスケンが憑依しなかったアイン・バルシェムのものでしょう? 本物のイングラムが憑依したアインはクォヴレー・ゴードンとしての自我を確立しましたからね」

 

「!」

 

「トウマ、クスハ、セレーナ達三人の世界のアインか、それとも別の世界のアインか。いずれにせよ、ロンド・ベルとの戦いに敗れた貴方は、偶然遭遇したアインとヴァルク・ベンを取り込むことで一命を取り止め、世界がアポカリュプシスを乗り越えるのを傍観していたのでしょう。

 これまた推測ですが、自分を縛る因果の鎖から逃れるべく、生まれた世界を離れて色々な世界を旅してまわり、その中でZ-BLUEに敗れた御使いの残党と出会ったのではないでしょうか?

 次元力による事象制御は、クロスゲート・パラダイム・システムによる因果律操作とよく似ている。御使いの残党と接触し、スフィアや至高神ソルの事を知った貴方は、生まれ変わろうとするソルを見つけ出し、あの子達を襲ったわけだ」

 

「貴様ッ!」

 

 あまりにも知り過ぎているヘイデスに、ユーゼスの声は憎悪さえ籠っているようだった。推測がほとんどのヘイデスの言葉は、実のところ、ユーゼスのこれまでの経緯をものの見事に言い当てている。

 ジュデッカから発せられる重圧を感じながらも、ヘイデスはこれが自分の役割だったのだと理解して、不思議と落ち着いた気持ちになっていた。

 

「ところで、貴方は先程、アストラナガンを廃棄し、残骸としましたね? 既にイングラムもクォヴレーも存在しない事が分かったこの世界で、“アストラナガン”を」

 

「!?」

 

「やはり、貴方はこの世界でも勝てませんよ。もっと人に優しくおなりなさい。そうでなければ、貴方は負け続ける運命です。要するに善人にでもならなきゃダメってね」

 

 アストラナガンの残骸は地上に落下し、砕けた五体が無惨な様子で転がって『いた』。それをユーゼスが見下ろした時には、もう遅かった。ヘイデスは気休めだが因子が深まればいいと、次々と言葉を口にする。

 

「並行世界の番人、虚空の使者」

 

 アストラナガンの残骸を中心として巨大な光り輝く円陣が広がり、そこから溢れ出るジュデッカと同等かそれ以上の重圧が戦場を支配する!

 

「ディス・レヴ、因果律の番人」

 

 光を浴びたアストラナガンの残骸がおもむろに動き出し、それらは見えない手で支えられているかのように立ち上がると、あちこちの欠けた人型を──否、地獄の魔王すら戦慄させる『悪魔王の名を冠した銃神』を形作る。

 

「おいでなさい。因子は足りている筈だ。αナンバーズのクォヴレー・ゴードン少尉」

 

 ヘイデスが、クォヴレーにとって最初の帰る場所だろうあのプレイヤー部隊の名前を懐かしそうに口にした時、遂にソレが姿を現した。

 忌まわしくも美しく、神々しくも禍々しい、黄金の翼を持ち、黒き鋼の肉体を持ち、死せる亡者の負の念を力とする者──ディス・アストラナガン。そしてディス・アストラナガンと互いに半身の運命にある者──真なるクォヴレー・ゴードンが!

 

「……状況は把握している。αナンバーズ所属クォヴレー・ゴードン、これよりゼ・バルマリィ帝国辺境銀河方面監察軍第七艦隊副司令ユーゼス・ゴッツォを討つ」

 

<続>

 

■移動要塞タルタロスが建造されました。

■URG-02ヴァルシオーラが開発されました。

■URG-01ヴァルシオーが実戦投入されました。

■クォヴレー・ゴードンが裏切りました。

■イングラム・プリスケンはユーゼス・ゴッツォでした。やっぱりね!

■本物のクォヴレー・ゴードンが来訪しました。

■ディス・アストラナガンが出現しました。

 




追記
SRポイントが足りないか、総帥乗っ取られルートの場合は、因子が足りないのでベルグバウで登場、という裏設定でございます。


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第七十三話 ディスの心臓

 ディス・アストラナガンが刃金の翼を広げ、その手にゾル・オリハルコニウム製の禍々しい鎌を握り、飛翔する。

 悪魔王の名を持つ銃神が地獄の名を冠する異形の魔王を討つべく、混沌の戦場に影を落とした。

 突如として出現したあまりにも禍々しい機体の姿に、戦場のほとんどの人間が次にとるべき行動を迷う中、迅速に反応したのはやはりと言うべきか、偽イングラムの仮面も、偽クォヴレーの仮面も剥がされたユーゼスであった。

 

 互いを結ぶ因果の鎖もそうだが、クォヴレー・ゴードンと極めて強力な戦略級を越えた機動兵器であるディス・アストラナガンの出現は、単純に驚異的な敵戦力の増加と等しい。

 ユーゼスもまたイミテーションのアストラナガンから、本来の乗機であるジュデッカに乗り換えたとはいえ、ディス・アストラナガンはその性質も相まっての油断のならない敵である。

 

「いずれはお前もまた倒さねばらぬ障害。予定が早まっただけのことだ」

 

 その言葉がユーゼスの強がりか、それとも本音であったか、クォヴレーやヘイデスに知る術はない。

 その代わりと言っては何だが、再び発生した重力震の後、ジュデッカの周囲には十数機の新たな機動兵器の姿があった。

 

 全高21.4mと大型MSクラスのサイズで、両肩に短い二連装のキャノン砲を持ち、特に目立つのが両端にカッター状のホイールと真ん中にキャノン砲一門を備えた身の丈ほどの複合兵装だ。

 第三次スーパーロボット大戦αかOGシリーズのムーンデュエラーズを遊んだプレイヤーならば、この機体がゼ・バルマリィ帝国のヴァルク・ベンだと気付くだろう。

 

 第三次αではヴァルク・ベンを大破したアストラナガンが取り込んで融合した結果、ディス・アストラナガンの前身となるベルグバウが誕生している。

 ヴァルク・ベン自体はα時空の地球の技術を取り込み、ゼ・バルマリィ帝国が開発した機動兵器であり、非常に高い性能を持った量産機である。

 

 これまでユーゼスが使用してきたバルマー系の兵器は比較的旧式の部類だったが、ここに来てヴァルク・ベンの他にもゼカリアの後継機エスリム、ハバククの発展機ハーガイ、エゼキエルの後継機シュムエルといった第三次αに登場した機体が次々と姿を見せる。

 さらに御使い系の機動兵器であるアンゲロイ・アルカも姿を見せており、一気に戦力の質が向上している。

 対する地球側は既に戦闘を行っていた部隊はほとんどが損傷しており、まともな戦闘を行える機体の方が少ない。数の利は圧倒的にユーゼス側にあった。

 ただし350万光年単位で包囲網を仕掛けられるバッフ・クラン、天文単位で数えなければならない宇宙怪獣の群れとの交戦経験豊富なクォヴレーからすれば、その程度の数の差などは無いようなものだったが。

 

「数は問題ではない。行け、ガン・スレイブ!」

 

 数多くの敵機から放たれるビームの暴雨の中を舞い飛ぶディス・アストラナガンの背から、蝙蝠の翼が生えた銃を思わせる六基の攻撃端末ガン・スレイブが飛び立つ。

 ガン・スレイブはあまりにも生物的な動きで飛び、赤みの強いピンク色のビームをマシンガン並みの連射で放ち、次々と穴だらけになった敵の骸を作り上げて行く。

 

 ディス・アストラナガンもまた鋼の翼を大きく羽ばたかせ、緑色の推進光で空中に軌跡を描きながら敵機へと接近。

 慣性の法則を無視したような軌道と信じがたい速度により、エスリムの部隊へ斬り込めば、水銀を思わせる刃を展開した大鎌の一閃がエスリムの首を纏めて斬り飛ばす。

 大鎌──Z・Oサイズの柄は同時にラアム・ショットガンという名前のビーム散弾銃だ。斬撃の動作に連動して柄尻から次々と散弾が発射されて、ディス・アストラナガンを包囲しようとするエスリムやシュムエル達がチーズのように穴だらけになって爆発して行く。

 

 前後左右上下、360°全方位への警戒と対応策の構築は、αナンバーズ時代に参戦した銀河大戦で必須の技術だった。

 銀河大戦以後、様々な並行世界に関わってきたクォヴレーの技術はますます磨きがかかり、ニュータイプや超能力者でないながらも超人的な、いや、達人かつ超人の領域に達している。

 

 ディス・アストラナガンの足を止める事も出来ずにエスリムやシュムエルが撃墜されてゆく中、ハーガイの砲撃支援を受けながらヴァルク・ベン部隊が特徴的なツイン・ホイール・バスターを振りかぶって接近していた。

 カッター状のホイールが高速回転をはじめ、バスターから射出される。

 複数のヴァルク・ベンが放ったワイヤー付きのホイールが縦横無尽に振り回されて、視認するのも難しい軌道と速度でディス・アストラナガンに襲い掛かるが、クォヴレーの顔色を変えるには至らない。

 

「その機体も武器も見慣れている」

 

 クォヴレーからすればヴァルク・ベンは乗り慣れた機体であるし、敵としても数限りなく激突してきた相手だ。例え複数で襲い掛かられたとしても、手札を知り尽くした敵である。複数を同時に相手取るにしても、それを脅威と感じる事はなかった。

 ホイールを繋ぐワイヤーがZ・Oサイズの一閃で次々と断たれ、ラアム・ショットガンとガン・スレイブのコンビネーション射撃が、ヴァルク・ベンを前後から撃ち抜く。

 予め打ち合わせを済ませていたように次々とヴァルク・ベンを葬るクォヴレーの技量も、ディス・アストラナガンの性能も驚嘆の一言に尽きる。

 それをユーゼスは手駒の消費と引き換えにデータを収集して行く。

 

(存在を知ってはいても、直接データを集める機会には恵まれなかった。ヴァルク・ベンがベースとなり、シヴァー・ゴッツォによってディス・レヴが搭載された事で、アストラナガンとの差異が生じているな)

 

 クォヴレーが何重にも作られる敵機の壁を突き破る中、残されたDC戦力も突如出現したディス・アストラナガンの動きに反応し始めていた。

 メカギルギルガンを倒す為に無茶な接近戦を繰り返していたアムロとクワトロは、機体そのものへのダメージは低いが推進剤の消費と駆動部への負荷が大きく、機体のパフォーマンスを完璧に発揮できる状態になかった。

 

「アムロ、一度、ラー・カイラムに戻らにゃ、機体も満足に動かせなくなるぜ」

 

 最後のEパックをライフルに装填したカイからの通信に、アムロは渋々頷くほかなかった。ディジェはよくアムロについてきてくれたが、既に機体が悲鳴を上げている。

 νガンダムとは違うと自制して操縦していたが、それでも敵が強敵だった事もあり、機体に掛かった負荷は尋常ではなく、一度の出撃でフルメンテナンスが必要な状態にまで追いやられている。

 

「セイラさんとスレッガーさんは?」

 

「あの二人なら先に戻っているよ。可変機は脆いからな。機体のダメージは俺達以上だ」

 

「分かった。すぐに出られるか、代わりの機体があればいいんだが」

 

「お前さんはタフだねえ。俺もリュウさんもハヤトも、いっぱいいっぱいなんだがね」

 

「カイはブランクがあったからだろう。それにしたってその機体を十分に操縦している」

 

「そいつぁどーも」

 

 疲弊を隠すように軽口を叩くカイがラー・カイラムへ機体を動かす。一旦、補給に戻るのはアムロ達ばかりではなく、クワトロもアポリーとロベルトを引き連れてラー・カイラムに向かっている。

 かつて追う者と追われる者だったアムロとクワトロ達が、同じ陣営に所属し、同じ艦を母艦にしているのだから、運命とは皮肉なものだ。

 

 ディジェの代わりの機体の用意をラー・カイラムに頼みながら、アムロは頭上で無双の暴れぶりを見せるディス・アストラナガンをモニターに映した。

 ニュータイプとしての豊かな感受性とこれまでの戦場で磨き抜かれた洞察力は、かの機体から発せられる氷のように冷たく、心臓を握られるような悍ましさを敏感に感じ取っている。

 それはある種、生命の恐怖に勝る、魂を食われ輪廻の輪から外れる魂の恐怖だ。

 

 伝説巨神イデオンで語られた【無限力】、これを設定のベースにしつつ第三次スーパーロボット大戦αで語られた【負の無限力】。これがディス・アストラナガンの力の源となっている。

 悪霊や怨霊の意志集合体である負の無限力と機関内部に封入した怨霊を反応させ、正の無限力に転換する際のエネルギーを動力としているのが、ディス・アストラナガンの心臓【ディス・レヴ】。

 その性質上、ニュータイプや超能力者と言った感受性の豊かな者からすれば、圧倒的な悪意の気配を纏って感じられる為、恐怖を駆り立てられる代物だ。

 この時、アムロはディス・アストラナガンに対している自分の感情に戸惑いを覚えていた。

 

(俺はあの機体を敵だと感じていない? それとも、敵ではないと思いたいのか?)

 

 デジャ・ヴュを感じながら、アムロは追撃を仕掛けてくるメギロートにビームライフルとバズーカの砲弾を叩き込みながら、機体をジャンプさせてラー・カイラムのカタパルトから格納庫へと戻った。

 彼らだけでなく大破したバンとフィーネのシールドライガーも、アーバインのコマンドウルフにカバーされながら回収され、被弾しているバナージやタクナ、マシュマーらもガランシェールやタルタロスに機体を戻し、応急処置や弾薬、推進剤の補充を大急ぎで行っている。

 

 敵の陽動部隊を撃退に出撃したマジンガーチームやダイモス、獣戦機隊、ライディーンチーム他機動部隊の帰還まで、あといくばくかの時間がかかる。

 突如出現したディス・アストラナガン、DCの切り札として開発されていたヴァルシオーとヴァルシオーラ、それに機動要塞タルタロスが不足している戦力をどこまで補えるのか? まさにこれがこの戦いの肝だったろう。

 

「ちい、ソウルゲイン、これ以上は戦えんか」

 

 ダメージを負った状態でリミッターを解除し、全力の一撃を放った反動でソウルゲインとヴァイサーガは膝を突いた状態から立って歩くのがやっとという程に追い込まれていた。

 ヴァイサーガも五大剣を支えにかろうじて立っている状態であり、ラミアのアンジュルグも似たり寄ったりだ。シャドウセイバーズが誇るスーパーロボットも、この戦場ではもう戦闘続行は不可能だろう。

 

「アクセル、ヴィンデル、ラミア、貴方達は下がりなさい。機体がその状態じゃあ、あれの相手は出来ないわよ」

 

 支援に徹した為、アシュセイヴァーのダメージが少ないレモンは有無を言わさぬ口調で上司と恋人と娘に指示を出した。

 既にレモンから指示を受けていたエキドナも、ズタボロのラーズアングリフでアンジュルグの腰を支え、生き残りの量産型W達が乗る量産型アシュセイヴァーとランドグリーズが、ソウルゲイン達を守る布陣で展開している。

 

「レモン、お前の機体はまだ戦えるようだな。隊長とシロッコはどうだ?」

 

 不承不承、レモンの忠告を受け入れたヴィンデルの質問に、レモンは一秒を惜しむようにさっさと答える。

 頭上では得体の知れない機体=ディス・アストラナガンがバサ帝国を抑えているが、矛先が何時こちらに向くか分からないし、アインストとしての感覚がディス・アストラナガンの内包する力の凄まじさを感知し、とても平静ではいられないのだ。

 

「シロッコだけは戦えるようだけれど、サラとシドレはこれ以上の戦闘は厳しいわね。隊長は無事よ。まだまだ戦ってもらわないといけないわ」

 

「陽動部隊を叩きに行った連中は?」

 

「あっちにも増援が追加よ。敵はどうしてもこっちに戻さないつもりね。戦力が潤沢で羨ましい限りだわ」

 

 こちらの増援はこれ以上見込めそうにないと判断したヴィンデルはそれ以上を言わず、せめて足手まといにならないよう機体を後退させる事に専念した。

 幸いメカギルギルガンの追加はないし、アンティノラも品切れのようだが、アストラナガンの内側から出現したジュデッカや新型機の存在は十分な懸念材料だ。

 こちら側もヘイデスと所長の用意したジョーカーがあるが、イレギュラーの存在もあり、レモンは先程から神経をささくれ立たせてばかりいた。

 

(アルフィミィ、来るなら早く来てちょうだい。あまり悠長にはしていられないわよ)

 

 レモンの内心の葛藤を知ってか知らずか、アクセル達のフォローをしていたギリアムがゲシュペンストMk-Ⅲをアシュセイヴァーの横に並び立たせる。

 

「レモン、アストラナガンの残骸が変容した機体には手を出すな。現状、こちらに攻撃を加えてくる様子はない」

 

「ええ。分かっているわ。あれだけの力を持った機体を敵に回すミスは犯したくないものね」

 

「ふっ、やはり監視者ともなれば彼の異質さを感じ取れるか」

 

「ギリアム、貴方……」

 

「俺も色々な世界を彷徨ってきた。君達と同質の存在と遭遇した事もある。君達は俺がかつて遭遇したアインストとはベクトルが真逆だがな」

 

「いつからと聞くのは無意味ね。だから私をシャドウセイバーズに?」

 

「君の能力の高さは俺自身が良く知っているからな。そろそろお喋りはここまでにするぞ。キョウスケや総帥達が仕掛ける」

 

 タルタロスの浮上に合わせて艦船用ドックに残っていたネェル・アーガマやアルビオン、ガンドール、ウルトラザウルスも出航し、対空砲火の密度を上げてバサ帝国の機動兵器を撃ち落としながら疲弊した味方の回収を進めている。

 その中でDCのみならず地球圏の経済を支え、人々の生活を支える大黒柱でもあるヘイデスが乗る(本当に乗っているだけに等しい)ヴァルシオーの状態は、戦況の如何を問わずに注視されるべきものだ。

 単機で戦わせるのは色々な意味でマズイ。

 当然、護衛が着いてしかるべきなのだが、この時、オウカ、ゼオラ、アラドの乗るバルゴラCSは損傷と消耗からタルタロスへ帰投しており、その大任はラトゥーニのヴァルシオーラが受け持っていた。

 

「ターゲットインサイト、ヴァルシオーには傷一つ付けさせない!」

 

 ラトゥーニは二挺の小銃に分割したツインメガビームランチャーで次々とターゲットを撃ち抜き、常にヴァルシオーの動きに意識を割いていた。

 スーパーロボットとしては比較的小型に分類されるヴァルシオーラだが、搭載されたDエクストラクター二基のパワーは凄まじく、バリアを持たないゼカリアやエスリム、シュムエルなどは呆気ない程簡単に撃ち抜かれてゆく。

 例外的にG・テリトリーを持つエゼキエル、ディフレクトフィールドのあるヴァルク・ベン、巨大な体躯を持つエスパーロボや単純に強力な偽ミケーネ神が、数発の直撃にも耐えているだけだ。

 

「やぁああ!」

 

 四方から襲い来るホイールをディバイン・ブレードで切り払い、そのワイヤーを掻い潜って槍を突き出してチャージしてくるシュムエルの小隊に、ヴァルシオーラは速度を緩めることなく斬りかかる。

 すくい上げるように振るわれたディバイン・ブレードが先頭のシュムエルの手首を斬り飛ばし、腹を突いてこようとする二機目のシュムエルの槍を体を捻って避けると、その動作に連動した一閃でシュムエルを前後に両断する。

 二機目のシュムエルが爆発を起こす前に、ヴァルシオーラは天地が逆転した体勢から一閃、二閃して、手首を落としたシュムエルと三機目のシュムエルの首から胸までが、美しいと言える断面を晒して斬り裂かれた。

 極限まで人体と同じ動きを可能とするヴァルシオーラの柔軟な可動域と、人間では出来ない動きの並立、それを成し得るラトゥーニの天才的な技量の合わさった斬殺劇であった。

 

「エネルギー・バイパス接続、ディバイン・ブレード、フルチャージ!」

 

 シュムエルの小隊がようやく斬られた事に気付いたと言わんばかりに爆発を起こした時、ヴァルシオーラが逆手で握り直したディバイン・ブレードの柄と掌のコネクタが接続され、そこからクロスマッシャーとして発射されるはずのエネルギーが刀身へと充填され始める。

 サイ・コンバーターの出力を上げる為、また、操縦の補助システムであるヴォイスコマンドに対応する為、ラトゥーニは少しの羞恥心を押し殺して可憐な声を張り上げた。

 

「必殺! ディバイン・クロストラッシュ!」

 

 ラトゥーニの叫びと共に振り切られたディバイン・ブレードから、三日月の如きエネルギーの刃となったクロスマッシャーが放たれ、剣閃の延長線上にいた敵機を次々に真っ二つにしていった!

 オリジナルのヴァルシオーネRが持つ円月殺法に代わるヴァルシオーラの必殺技、これぞディバイン・クロストラッシュだ。

 

 クロスマッシャーばかりでなく接近戦用の必殺技も用意されたヴァルシオーラは、ヴァルシオーネよりもヴァルシオーネRに近い仕様と言えるだろう。

 付け加えていえば、本機のスペックを知ったヘイデスは、もしビアン・ゾルダークが生き残っていて、ヴァルシオーネを改造し続けたらというIFの機体といった印象を受けている。

 

 機動性、運動性、高火力を極めて高い次元で揃えたヴァルシオーラは、初陣から既に大戦果を上げつつあるが、オウカ達は帰投を余儀なくされているし、ようやく父、母と呼ぶ決心の着いたヘイデス夫妻が戦場に出ている現状は、ラトゥーニにとっては素直にそれを喜べる状況ではなかった。

 幸いだったのはラトゥーニの意気込みと裏腹にヴァルシオーと所長のコンビは、彼女が思う程に守る必要のある弱者ではなかったことであろう。

 単純に言うとものすごく強いのだ。

 

「ホーミング光子力ビーム!」

 

 モニター上に表示された敵機に所長が視線を合わせるのと同時に、ターゲット・ロックが完了して、ヴァルシオーの両肩のユニットから合計八本の光子力ビームが発射される。

 回避行動を取る敵機に合わせて、光子力ビームは獲物に飛び掛かる蛇の如く何度も曲線の軌道を描いてその強大な光の力で撃ち抜いて行く。

 

(Dエクストラクター、縮退炉、光子力エンジン、ゲッター炉、ツイン・ドライヴ、各出力調整良し、ペンテ・ストケイアドライブは上出来ですわね)

 

 ヴァルシオーに搭載した合計五種の動力がお互いにリンクし、循環し、流転して更なるエネルギーを生み出す機関を、所長はギリシャ語で五大元素を意味するペンテ・ストケイアドライブと名付けた。

 名称はアリストテレスの提唱した地上界を構成する四元素と天上界を構成する不変の第五元素に着想を得たか、あるいはインドにおける五大元素にも構想を得ているかもしれない。

 いずれにせよ性質の異なる五種のエネルギーを利用するという、それはちょっと、というアイディアを実現させたヴァルシオーは、同時に開発者である所長でなくては性能を一パーセントも引き出せない問題児として完成している。SRXと同等かそれ以上に扱いづらい機体に違いない。

 

(超電磁エネルギー変換係数0.99で安定、サイ・コンバーター、精神エネルギー変換率200パーセント。グラビコン・システム、安定稼働と)

 

 所長はヴァルシオーのステータスの変動に意識を割きながら、同時にヴァルシオーの操縦も怠らない。後ろの席の総帥は操縦に関してはノータッチである。なにしろ彼は、所長専用の精神的カンフル剤兼栄養ドリンクなので。

 とはいえそれでもレーダーやセンサーの反応を読み取るくらいの芸当は出来るので、ほんの少しだけ所長の負担軽減の役にも立ってはいた。

 

「レンジ1に敵機八、レンジ2に十一、レンジ3に十七、ピラニアみたいにこっちに向かってきているよ」

 

「ユーゼス某の注意はあちらの新人さんに向いていますし、私達の相手は雑兵で十分というわけですか。舐められたものですこと。……なら無視できないようにして差し上げましょう、ゲッタービーム!」

 

 ヴァルシオーの額からゲッタードラゴンのソレを思わせる赤い稲妻状のゲッタービームが放射され、薙ぎ払うように振るわれるや回避の間に合わなかったアンゲロイやティアマート、メギロートを纏めて木っ端みじんにしてゆく。

 これでまたメギロートに使われているズフィルード・クリスタルが回収できるが、所長はそんな事はお構いなしに攻撃を続行した。

 両肩のユニットにあるクロスマッシャー発射口の下から丸い砲口が露わになり、そこに超電磁エネルギーとゲッター線が集中して、凄まじい破壊を齎すのを予感させる光があふれ始める。

 

「超電磁ゲッターサイクロン! もう一つおまけです! ルスト・ブリザード!」

 

 右のユニットからは超電磁タツマキとゲッターサイクロンが融合した紫電を纏う竜巻が、左のユニットからは闘将ダイモスのダブルブリザードにマジンガーZのルストハリケーンの強酸を含ませた竜巻が同時に発射された。

 どちらも並みの敵なら、いや幹部級の敵でも大ダメージか悪くすればそのまま撃墜されかねない天災そのものだ。これ以外にも重力や光子力エネルギーなど、いくつもの武器を組み合わせて多種多様な竜巻を発射できる汎用性の高い武装である。

 

 回避が間に合わず、防御態勢を取って凌ごうとした敵機集団の内のほとんどがそのまま耐え切れずに爆散する中、アンゲロイ・アルカだけは圧倒的な機体性能にものを言わせて、強引に荒れ狂う竜巻の中を突き進んでくる。

 文字通り、その他のサイデリアル系の兵器とは違うステージに立っている機体だ。そうやすやすとやられてはくれない。その脅威をゲーム上ではあるが、体験させられたヘイデスは特に注意するべき敵の一つが出てきたと愛妻に警告を発した。

 真化しなければ倒せない敵というわけではないが、それでもあの装甲値の高さからからくるダメージの通らなさはそう簡単に忘れられるものではない。

 それでも竜巻を突破した代償に大破寸前にまで追い込まれている辺り、ヴァルシオーの攻撃力の高さが計り知れるというもの。

 

「アンゲロイ・アルカか。キョウスケ中尉達の交戦したエル・ミレニウムやまだ出て来ていないゼル・ビレニウムよりはよっぽどマシだが、ちょっと並外れているよ!」

 

「データは頭に入れてあります。コロニー落としの時に散々ウチの部隊や連邦軍を手こずらせた機体ですわね。いいでしょう、ヴァルシオーと私達夫妻が相手です!」

 

 アンゲロイ・アルカが装甲を変形させて作り出した砲身から、次々と禍々しい色合いのビームを放ってくる。装甲ばかりでなくその火力もまた他勢力の機動兵器とは一線を画し、高火力化を進めてきた地球連邦軍の努力をあざ笑うような威力だ。

 ヴァルシオーはツイン・ドライヴシステムが生み出す莫大なGN粒子による推進力、更にグラビコン・システムとの併用による慣性・重力制御により、その巨体からは信じられない蝶のような軽やかな動きで砲撃の数々を避けて行く。

 だがそうとなれば回避する隙間もない濃密な砲撃を加えればよいと、アンゲロイ・アルカ達に加えて生き残りの敵部隊も火線をヴァルシオーへと集中させる。

 

「おっとと、GNフィールド、Dフォルト、G・テリトリー、出力最大で広域展開っと」

 

 ヘイデスが操作したわけではないが、敵機の攻撃を回避しきれないとサポートAIが判断した瞬間、ヴァルシオーは三重のバリアを展開して圧倒的な出力のそれらが部隊一つ壊滅させて余りある砲撃を受け止める。

 加えて流れ弾がタルタロスや他の艦艇に被害を及ぼさないようにと、広域展開までしている。

 

「お返しです、受け取りなさいな! グラビトンランチャー二十四門、一斉射!!」

 

 ヴァルシオーが鋭い爪を備えた左手を横一文字に振るった時、バリアの外側に局所的な重力変動が二十四か所発生し、そこから圧縮された超重力の砲撃が次々とアンゲロイ・アルカを始めとした敵機集団を貫き、圧壊させてゆく。

 高度な重力制御技術により、発射口を選ばない反則的な重力砲撃で、更には砲身の向きから射線を事前に察知できないという敵からすれば厄介な特性を持つ。

 

「ディバイン・キャリバー、刀身形成!」

 

 ヴァイサーガやアンジュルグと同じくエネルギーが実体化して、鍔だけだったディバイン・キャリバーに分厚い両刃が形成される。エネルギーの種類も光子力、ゲッター線、超電磁エネルギー、次元力、GN粒子と様々だが、今回は次元力による白銀の刃だ。

 穴の開いた敵機部隊に、ヴァルシオーはディバイン・キャリバーを右手に、更に無手の左手に重力場を圧縮させる。

 重力場で形成した超重力の爪で接触した対象を圧壊させる、ヴァルシオーが素手となった場合の武装だ。ジェネシック・ガオガイガーのゴルディオンネイルまで後一歩といったところで、まだまだ改良の余地が残されている。

 

「グラビティネイル起動! 接近戦もやれるところを見せて差し上げます!」

 

 瞬時に大気圏内での最高速度に加速するヴァルシオーが刃渡り三百メートルまで拡大したディバイン・キャリバーを横一文字に振るい、これをアポイナ・ブレードで受けたアンゲロイ・アルカがそのまま押し込まれて四機、五機と次々に受け止める数を増やしてゆく。

 

「グラブジャムンのように甘い!」

 

「インドの世界一甘いお菓子だっけ? グラブジャムン」

 

 気の抜けるヘイデスの台詞の直後、刀身を形成する次元力が所長の操作によって噴射し、斬撃を受け止めたあとから加速して、アンゲロイ・アルカ達がアポイナ・ブレードごとまとめて胸部から上下に両断される。

 刃が長大な分、取り回しに劣る隙を突いて、他のアンゲロイ・アルカがヴァルシオーの懐に飛び込むが、そこに待ち構えていたのは光を飲み込み、黒く染まったヴァルシオーの爪だ。

 

 フック気味に振るわれたヴァルシオーの左五指の重力の爪が更に巨大化し、直前で広がった間合いにアンゲロイ・アルカが対応するよりも早く、重力場が彼らの頭部や胸部を圧し潰しながら引き裂いた。

 ロングレンジ・ショートレンジどちらも圧倒的な力を見せるヴァルシオーに更にバサ帝国の、いや、ユーゼスの私兵が集中しようとするが、そこにフェブルウスの容赦ないレイ・ストレイターレットが撃ち込まれ、ヴァルシオーラのダブルクロスマッシャーも叩き込まれれば、いかにアンゲロイ・アルカといえども破片くらいしか残らない。

 

「うーん、ディス・アストラナガンも来てくれたし、これは、今回で決着になるか?」

 

 ミケーネ、百鬼、キャンベル、ボアザン、ムゲ、妖魔、クロスボーン・バンガード、ホワイトファング、ティターンズ、ベガ、バームと版権勢力はまだまだ生き残っているが、ここでユーゼスとジュデッカを討てれば、ヘイデスの肩の荷の多くを降ろせる。

 ユーゼスが新たに呼び出したバサ帝国の機動兵器を含め、敵部隊の多くを一掃したDC部隊とクォヴレーは黒い魔王と対峙する。

 

 クォヴレーのディス・アストラナガンを筆頭に、ギリアムのゲシュペンストMk-Ⅲ、レモンのアシュセイヴァー、キョウスケのアルトアイゼン、エクセレンのヴァイスリッター、ラトゥーニのヴァルシオーラ、所長と総帥夫婦のヴァルシオー、そしてシュメシとヘマーとフェブルウスが半月状に展開している。

 トレーズとゼクス達の率いるトールギス系列部隊は、タルタロスを含むDC艦隊と連携して残りの敵部隊の足止めに専念してくれている。

 

 ギリアムとヘイデス以外にとって、ユーゼスと同じ顔のクォヴレー(なんともややこしい)とディス・アストラナガンは未知の存在だが、こちらに敵意を見せていない為、一時保留といったところだ。

 この後の事情説明の方こそ強敵かもしれない、とは流石に言い過ぎか。またクォヴレーには油断も慢心も欠片もなかった。

 なにしろ相手は独力であの霊帝ケイサル・エフェスの存在に気付き、クロスゲート・パラダイム・システムを多くの世界で開発し、完成すればガンエデンにも勝るジュデッカを作り上げた男なのだから。

 

「ユーゼス・ゴッツォ、お前が並行世界を巡り、力を蓄えるのに徹した事で居場所を特定するのに時間がかかった。だが、こうしてお前を見つけ出した以上は、ここに俺を導いてくれた者の為にも、イングラムの果たせなかったお前の完全な打倒を俺が果たして見せる」

 

「イングラムに続く運命の傀儡となると?」

 

「違う。俺は俺の意志を持って虚空の使者としての使命を果たす。お前は世界の枠を超えて災いを齎す可能性と因子を色濃く持つ存在だ。至高神ソルの事象制御能力、そして真化の理を取り込んだ後、お前がこの世界だけで野望を終わらせると断言できるのか?」

 

「ふっ、私のことを良く知っている。私もまた我が心がどこまで求めるかは分からん。我を縛る因果の理を掌握する為、定められた宇宙の理アカシックレコードを超越する為、あるいは光の国の巨人達をも超えるマルチバースの調停者となる為……。

 ふふふ、少し考えただけでもこれだけの理由が思いつく。そしてそれらを実現する為には、CPSと真化だけでも足りん」

 

「ならばあの世界から続くお前とイングラム、そして俺の因縁をここで絶つ。俺にはならなかったアイン・バルシェムの肉体を奪い、俺の名を騙った礼もたっぷりとさせてもらおう」

 

「虚空の使者も私情を交えるか。だがすべてはそうだ。どれだけ崇高な目的を掲げようと、どれだけ屍の山を築く覇道であろうと、つまるところすべては私情だ。それが感情を持つ知的生命体の根源」

 

「ご高説は終わりか。再びアストラナガンの名を冠する機体の前に敗れろ、ユーゼス・ゴッツォ。更なる敗北の因果の鎖がお前と言う存在を縛り付ける!」

 

「ふ、別世界のアルテウルと偽った私も随分な道化ぶりだったからな。だが私は“手ひどく敗れた後の私”だ。少しは備えるとも。

 我が真言により目覚めよ、テトラクテュス・グラマトン……我が掌中にて鼓動を刻め、ディス・レヴ」

 

「なに!?」

 

 ドクン、と時間と空間さえ揺らす鼓動がジュデッカから放たれ、それが何であるかを知るクォヴレーは驚愕を抑えきれなかった。

 それは、直接は知らなくとも至高神としての超知覚能力により、鼓動の大元が何であるかを解析したシュメシとヘマー達も同じだった。

 

「あれは、銃神の心臓!」

 

「うん、少し違うけれど、同質の代物だよ」

 

「僕達とシュロウガみたいに!」

 

 鼓動と同時にジュデッカの足元に真っ黒い光で構成された魔法陣が瞬時に描かれ、それが浮上してジュデッカの巨体を下から上へと透過して行くにつれ、ジュデッカがその姿を変えて行く。

 より巨大に、より生物を思わせる鋭角的なシルエットとなり、まさに聖書や神話の中で語られる悪魔王の化身の如き威容となる。四本の腕を持った人型の部分だけでも二百メートル以上の巨体だ。

 邪悪にして荘厳、禍々しくも神々しく、その巨体から発せられる力は星々を砕き、銀河を飲み込み、宇宙さえ覆い尽くすと感じられる程。

 

「お前とその機体に倣い、ディス・ジュデッカとでも名付けるか」

 

「なぜ貴様がディス・レヴを!」

 

 ディス・アストラナガンに勝ると劣らない【負の無限力】を感じさせるディス・ジュデッカに、クォヴレーは自分自身とディス・アストラナガンが緊張と警戒をしているのを感じた。

 

「驚く必要はない。元々ディス・レヴはゼ・バルマリィ帝国宰相シヴァー・ゴッツォの開発したものだ。

 お前の乗っていたベルグバウに搭載されていたディーン・レヴを解析して、完成したものだが、お前が存在しない世界でも完成はしなくても開発自体は行われていたのだ。

 私はクォヴレー・ゴードンとディス・アストラナガンの存在しない、あの世界を渡り歩き、シヴァーとαナンバーズが戦っている間に未完成のディス・レヴを入手し、自らの手で完成させた。

 もっとも本来ならこのディス・レヴはまだ覚醒しないはずのものだった。だが同質の存在を目の当たりにしたことで、一種の共鳴現象を起こして覚醒の時を迎えたのだ。この意味が分かるな?」

 

「ディス・アストラナガンの存在が貴様のディス・レヴの覚醒を促したというのか」

 

「そうだ。これもまた因果というものかもしれんが……。今一度言おう。既に【プレイヤー部隊(ロンド・ベル隊)】に敗れた後の私は【プレイヤー部隊(お前達)】に敗れるという因果からは解放されている。そうやすやすと事が運ぶなどと思わぬことだな」

 

《続》

 

■ディス・ジュデッカが降臨しました。

■出現条件:ヘイデスルートでディス・アストラナガンが出現する事。ベルグバウの場合はジュデッカのまま。

 

ゲーム的にはジュデッカのHPを50%以下にすると、ディス・ジュデッカが出現するイメージです。

 




クォヴレー(リアル系男性主人公)以外にも三つのルートがありましたよね。つまり?


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第七十四話 やーい、やーい、負けてやんの

■ゲッターチームと超電磁チーム、一部のMS部隊は極東方面支部でガイゾック&ガルーダと戦闘中の為、本ステージには出撃できません。

■メカギルギルガン撃破までが前半、ジュデッカ出現後から後半の連続ステージです。

頂いた感想の中にありましたが、ディス・ジュデッカはバスタードに登場するサタンのアウゴエイデス形態のイメージです。



 想定外のクォヴレーとディス・アストラナガンの出現を前に、ディス・ジュデッカという切り札を切ったユーゼスは、改めて戦場の各機へと絶望を告げる。

 

「改めて名乗ろう。我が真なる名はユーゼス・ゴッツォ。イングラム・プリスケン、クォヴレー・ゴードンとは仮初の名である。

 真なるクォヴレー・ゴードンとディス・アストラナガンが因果の糸を辿ってこの世界に現れた以上、私は全力を持ってこれを排除する。

 絶望するがいい。虚空の使者さえ現れなければ、お前達にはまだいくばくかの猶予があったものを。ユーゼス・ゴッツォの名とこのディス・ジュデッカの名の下に、お前達の命運を絶つ」

 

 クォヴレーとユーゼスのやり取りを聞いていなかったヘイデスは、これで初めて変化したジュデッカがディスを冠しているのを知ったが、ディスという単語にすぐさまディス・レヴに思い至り、頭を抱える羽目になる

 

「ジュデッカにディス・レヴを積んだ? クォヴレールート以外のディス・レヴか? そんなのありか? ……いや、しかしデモンベインとリベル・レギスの例もあるし……デメリットばかりでも……」

 

 モニターの向こうで変形・巨大化し、周囲に発する力と威圧感を格段に跳ね上げたディス・ジュデッカを前に、ヘイデスはどうやら特に畏怖の念を抱いたり、委縮したり、といった事はなく前世の知識から類似例や打開策を探るべく思考を巡らせている。

 サブシートでうんうん唸り始めた夫が、特に恐怖を抱いているわけでもない様子に、所長は半分呆れ、半分感心した。所長の超人的な肉体は、悪魔の王がこの世にあらわれたと言われても信じるような異形の敵機を前に、全身全霊で警告を発しているというのに。

 

「まったく、私の旦那は妙なところで肝が据わっていますわね。お陰で私も冷静でいられますけど」

 

 元々大型スーパーロボットクラスのサイズだったが、ディス・ジュデッカは尻尾の先まで含めれば千メートルにも届かんとする巨体だ。

 ズフィルード・クリスタルによる自己再生能力、厳密には異なるが念動フィールドによる強固なバリアを併せ持っている為、巨体以上の耐久性を有する。

 一目見ただけでもそれだけの予測を立てて、所長は舌なめずりをした。緊張をほぐす為の意識的な動作である。

 

「的は大きくなりましたが、大きくなった以上に頑丈でおまけに攻撃もしてくる厄介な的ですこと。鍵は……あの二人目のクォヴレー・ゴードンかしら」

 

 愛妻の言葉が耳に届いたからか、ここでヘイデスは思考を切り上げて所長にこう答えた。

 

「正しくは新しく来た方が一人目だよ。これまで僕達と行動を共にしていた方のクォヴレーが二人目だ。ユーゼスも小細工をするもんだ」

 

「ではその偽のクォヴレーが来た時から、貴方が彼を妙に警戒していらしたのはこういった事態を危惧していたから?」

 

「いくつもある可能性の一つとして考えてはいたよ。あのディス・ジュデッカとかは、ちょっと予想外だったけれど。でも本物のクォヴレーとディス・アストラナガンは味方だ」

 

「ディス・アストラナガンがあの機体の名前ですか。それを私達が知っていては不自然ですし、迂闊に喋らないようにしませんと」

 

 この時、DC側で明確にクォヴレーを味方として扱っていたのは、ヘイデスと所長、ギリアムくらいのもので、他の面々はギリアム達からの連絡で味方寄りの第三勢力扱いが精々である。

 なにしろこれまでDCに参加していたクォヴレーが裏切ったと思ったらもう一人クォヴレーが現れて、さらに裏切った方のクォヴレーが本名をユーゼスと名乗ってきたのだから、頭の中がこんがらがるような状況だ。いくらなんでも混乱する。

 そんな中、ユーゼスは切り札を出したからには相応の成果を、とごく当たり前の結論に行き着き、地獄を統べる魔王か地獄の化身と呼びたくなる機体の暴力を解き放った。

 

「簡単に潰れてくれるなよ、我が宿命の怨敵よ。あまりに呆気なくてはそんなものに備えていた私自身が情けなくなる。第一地獄カイーナ!」

 

 ディス・ジュデッカの全身に赤黒い光が絡みつき、蛇か蜥蜴の頭部を備えた腕が異様に巨大化すると、それを突き出した姿勢でディス・ジュデッカが加速して縦横無尽に暴れ始める。

 人型の部分だけでも二百メートル、尾を含めれば千メートルに達する巨体が高エネルギーを纏いながら暴れ回れば、ただそれだけで破滅的な天災を連想する圧倒的な破壊力を生み出す。

 

「全機、散開! 当たるなよ!」

 

 ギリアムが叫んだ直後、触れるモノ全てを破壊する勢いで高速移動するディス・ジュデッカから距離を置くべく、それぞれの機体が回避行動を取る。

 周囲に展開しているバサ帝国の機体が少なからず巻き込まれて粉砕されるが、ユーゼスはまるで気に留めない。勝手に敵を減らしてくれる分にはヘイデス達にはありがたい話だが、味方への誤射を気に留めない攻撃は厄介でもあった。

 これまで戦ってきた敵が可愛く思えるエネルギー量をセンサーが測定し、さしものエクセレンもいつもは緩めている美貌をシリアスに引き締める。

 

「ちょっと、これはファンタジーが過ぎないかしらん?」

 

「イカサマと違うか……。エクセレン、ここで片付けるぞ。奴が名を騙ろうが騙るまいが、奴を討てばバサ帝国に大きな打撃を与えられるのは間違いない」

 

 それどころかバルマー・サイデリアル連合帝国の真の首魁である。ここで倒せば大・大・大金星だ。

 

「それもそうね。だ~いぶ、きつそうだけれど、ここが踏ん張りどころだわ!」

 

 ヴァイスリッターばかりでなくヴァルシオーラやゲシュペンストMk-Ⅲ、アシュセイヴァーも回避行動を取りながら、持てる火器による反撃の火線が描かれてディス・ジュデッカの巨体に次々と命中して行く。

 展開される念動フィールドにいくつかの攻撃は阻まれるか、威力を減衰されながらもディス・ジュデッカの黒い装甲に着弾して行く。ただし、効果のほどは怪しいものだ。

 その中でうねり狂うディス・ジュデッカの巨体に対し、アルトアイゼンが恐れを知らぬ様子で肉薄する。まさしく赤い弾丸、あるいは魔王を撃つ古の鉄杭か。

 

「守りは固いな。だが、そういう手合いとの戦いにはもう慣れた!」

 

 高出力ビームカートリッジを装填したリボルビングステークが、ディス・ジュデッカの蛇腹部分の装甲に叩き込まれ、超合金ニューZ製の先端がわずかに食い込んで見せる。

 すぐさま修復を始めるズフィルード・クリスタルとステークがこすれ合い、耳障りな音を悲鳴のように上げ始める。

 その程度で砕けるほど柔なステークではないと、キョウスケはトリガーを引き絞り、ビームカートリッジに閉じ込められた莫大なエネルギーに開放を許した。弾倉が回転するのと同時に強力な振動がディス・ジュデッカの装甲に罅を入れて内部破壊を進める。

 伝播した衝撃によって、ディス・ジュデッカの蛇体のあちこちが間欠泉のように内側から吹き飛んでゆくが──

 

「ちい、これでは止められんか!」

 

 ディス・ジュデッカの勢いは止まらず、うねる蛇体に跳ね飛ばされたアルトアイゼンが宙を舞う。見ればステークこそ無事だが、関節に掛かった負荷は尋常ではなく、ディス・ジュデッカが装甲表面に纏うエネルギーに晒された装甲にも、無視できないダメージがある。

 

「ダーリンのフォローも私のお仕事の内ね!」

 

 アルトアイゼンの開けたディス・ジュデッカの装甲の破損個所を狙い、高機動中ながら称賛に値する精度でヴァイスリッターがオクスタンランチャーWモードを発砲。

 圧縮された光子力ビームの奔流が再生途中の装甲を貫いて再生を阻害し、再び開いた穴に実弾が飛び込んで内部を破壊しながら突き進んでゆく。ディス・ジュデッカの巨体からすれば、針で突かれたようなものだがダメージには変わりない。

 

「ならばその動きを止めるとしましょう。メガ・グラビトンウェーブ!」

 

 所長はヴァルシオーを急上昇させて高度を取り、大地を食らうが如く暴れるディス・ジュデッカへと向けて、超重力の嵐を放出する。

 メカギルギルガンが用いたのと同名の武装だが、出力ではヴァルシオーが大きく上回る。

 超重力の嵐は黒い風のような形態を持ってディス・ジュデッカに襲い掛かり、その巨体を上から押し潰さんとする。

 だが、ディス・ジュデッカは止まらない。数千倍以上の重力が機体の内外に襲い掛かっているが、それをものともしない圧倒的なパワーがこの機体にはあった。

 

「ヴァルシオンもどきか。素晴らしい性能だ。だが、それ以上にヘイデス・プルート、お前の異常性を見誤っていたのを認めなければなるまい。

 αナンバーズを知り、クォヴレー・ゴードンを知り、そしてこれまでのこの地球におけるお前の行い、それらを鑑みればお前もまた“虚憶”、あるいはソルの残骸に触れて“黒の英知”を得たのだろう。

 称賛しよう。お前はこの場でクォヴレーを呼び込む最後の一押しを成し遂げた。だがその行いも私とこのディス・ジュデッカには届かぬ」

 

 超重力の嵐に飲まれながら、ディス・ジュデッカの蛇体が持ち上がり、頭上のヴァルシオーを双眸が映す。作り物であるはずの瞳に宿る鬼気に、所長の全身からどっと冷や汗が噴き出した。

 あれはもはやロボットや機動兵器というカテゴリーを超えたナニカになりつつある!

 所長の背筋に剃刀の刃を立てて削られているような悪寒が走ったその刹那、ディス・ジュデッカがバネのように蛇体をたわめ、その反動で大地を粉々に砕きながらヴァルシオーへと飛び掛かる!

 避けるか?

 否。

 防ぐか?

 否。

 ヘイデスの命運も預かる所長の選択肢は一つ!

 迎え撃つ──それさえも否!

 選択肢は【攻める】!

 

「小癪! トランザム!」

 

 もちろん、いかにヴァルシオーとて、疑似太陽炉によるツイン・ドライヴ・システムはサブとして使用しているのみであるから、ガンダム00世界のように機体性能を三倍化まで向上させる事は不可能だ。

 だが、それでもダブルオーライザーやリボーンズガンダムと同じくツイン・ドライヴ・システムを搭載したヴァルシオーは、トランザムによるパワーアップ率において未知数の部分を含む。

 

 トランザムの発動と同時に左右の足に内蔵された疑似太陽炉から爆発的な勢いでGN粒子が放出され、機体内部を巡ってあらゆる性能を飛躍的に向上させる。

 ユーゼスはトランザムシステムによる機体性能の向上について、サイデリアルの残党もとい御使いの残党から情報を得ており、赤く発光し始めたヴァルシオーにもそれが搭載されているのを察する。

 だが恐れるに足らずとディス・ジュデッカの動きに変化はない。

 

「GN粒子……百五十パーセント、二百パーセント……三百パーセント突破!」

 

 機体の状況をモニタリングしていたヘイデスの言葉を引き金にして、所長はセーフティを兼ねるボイスコマンドを淀みなく叫ぶ。

 

「ディバイン・キャリバー、次元力カット、GN粒子モードへ移行! 三枚に下ろしてさしあげましょう! ディバイン・ライザーソード!」

 

「鰻ならぬ蛇の蒲焼きみたいな感じ? まずそうだね」

 

 呆れるほど場違いでどことなく日本人的な感想をこぼすヘイデスに、所長は思わず笑いそうになるのをこらえなければならなかった。激戦の緊張をほぐしてくれた、と好意的に解釈するのは惚れた弱みである。

 パイロット達の気の抜けた会話を他所に、膨大なGN粒子がディバイン・キャリバーに充填され、そこからあまりに巨大で、あまりに分厚いGN粒子の奔流が放たれて馬鹿げたサイズの刃を形成する。

 

 まさにダブルオーライザーのライザーソードを彷彿とさせる巨大な夕陽色の刃は、ディス・ジュデッカの構えた右上腕の蛇の口の中へと容赦なく突き込まれた。

 GN粒子の奔流の勢いのままにディス・ジュデッカの右腕を貫く筈の刃は、直前に何重にも強固に集中展開された念動フィールドに受け止められ、衝突の余波を周囲に撒き散らしながら停止してしまう。

 

 拮抗状態が形成された瞬間、所長はGN粒子の供給をディバイン・キャリバーに集中させつつ、ホーミング光子力ビームのターゲッティングを終えていた。

 既に至近にまで接近を許した為、メガ・グラビトンウェーブは解除している。これで光子力ビームが超重力の嵐に干渉を受ける心配はない。またディス・ジュデッカも念動フィールドを集中展開している事から、右上腕部前方以外は手薄になった状態だ。

 

 初の実戦がとんでもない強敵となった所長だが、その隙を見逃さないだけの天性の戦闘センスがこのあらゆる面で人類の限界値に近い女性にはあった。

 だが同時に隙を見逃さないのはユーゼスも同じである。ヴァルシオーのエネルギーのほとんどが攻撃に転じられているのは明白。

 ディス・ジュデッカの残る三本の手の先にディス・レヴの生み出す膨大なエネルギーが集束して、巨大な人魂のように青白く輝く。それは悪魔に囚われた人々の魂であるかのよう。

 そのディス・ジュデッカの迅速な対応に、所長は皮肉をたっぷり交えて偽りの感謝の言葉をユーゼスへとぶつけた。

 

「思った通りに動いてくださってありがとう!」

 

 ディバイン・ライザーソードと念動フィールドの激突から数秒、他の味方がディス・ジュデッカに精密な狙いをつけるのには十分すぎる時間だ。

 広げた翼をねじるように変形させて砲身としたディス・アストラナガン、両手に螺旋の光を輝かせるヴァルシオーラ、F2WOライフルのバレルを展開しているギリアムのゲシュペンストMk-Ⅲが一斉に砲撃を行う。

 

「メス・アッシャー、マキシマム・シュート!」

 

「一撃必中クロスマッシャー!」

 

「バレル展開、F2WOライフル・フルバースト!」

 

 いずれもスーパーロボット級の火力を備えた砲撃がディス・ジュデッカの背部や腰部、蛇体部分に次々と命中してズフィルード・クリスタルの装甲を大きく抉る。

 ディス・ジュデッカが体勢を崩した瞬間、所長はホーミング光子力ビームを発射しつつ、ライザーソードをカットし、ディス・ジュデッカの振るった三本の腕を回避する。

 

 ディス・ジュデッカの腕部が巻き起こした暴風と手に集めたエネルギーの残滓だけでも、ヴァルシオーのマシンセル装甲を震わせ、焼く程のレベルに達している。

 ヴァルシオーはディス・ジュデッカの下半身の蛇体部分へグラビティネイルと次元力で構築したディバイン・キャリバーを突き立てて、蛇の皮を剝ぐように切り裂いて行く。

 目まぐるしく変化していくモニターの光景に、ヘイデスはまるっきりついて行けていなかったが、接触回線の状態にあるのを利用してユーゼスへといくつかの答え合わせをしてやることにした。これで少しでも注意を逸らせたら儲けもの、の精神である。

 

「さっきの君の推測だけれど、残念、君の言うところの虚憶持ちでも黒の英知に触れたわけでもないさ。ギリアム少佐の方がもっと僕の本質に近い知識を持っていたよ。

 ところでそもそもイングラム・プリスケンの居ない世界というのは、いつぞやのアルテウルと似た状況だけれど、それで本当に因果の鎖から解放されると思っているのかい?」

 

「なんだと? 既に答えは述べた。私はもうその因果を終えた状態だ。本来ならば消滅するはずの意識を、ジュデッカのズフィルード・クリスタルによって永らえた偶然が、この私を成り立たせている。

 これを天恵と言わずしてなんとする。第一始祖民族の残留思念共でさえ想定していなかった事態だろう。故にこの私は宿願を果たす絶好の機会を得たのだ。それ以外に言いようがあるまい?」

 

 アルテウルも似たようなこと言っていたな、とヘイデスは口にしない優しさがあった。

 目の前のユーゼスとディス・ジュデッカが圧倒的な力の具現であるのは間違いないのだが、スーパーヒーロー作戦、スーパーロボット大戦α(DC版含む)、スーパーロボット大戦OG2での末路を知っている為か自滅しそうという印象が強い。

 その所為で本来なら息も忘れる重圧を無視して、滑らかに舌を動かす事が出来る。

 

「そうかな? 僕には仮面ライダーの前に立つ怪人、ウルトラマンの前に立つ悪役宇宙人にしか見えないけれどねえ。

 正義の味方の前に立ちはだかって、倒される悪役っていう特大の負けフラグを自慢げになびかせているようだよ、ユーゼス・ゴッツォ。あの霊帝ケイサル・エフェスでさえ改心したというのに」

 

「真なる霊帝も知るか・・・・・・。だが、アレが改心などとつまらぬ戯言を」

 

 それまでカイーナによる暴虐を行っていたディス・ジュデッカの動きが止まり、周囲に発せられる力が圧縮されて、次々と青い氷塊へと物質化して行く。

 

「青き氷の獄界にて果てるがいい。第二地獄アンティノラ」

 

 物質化する程に圧縮されたエネルギーが、青く透き通った氷塊として具現化し、MAPWの規模で全方位へと放たれる。

 かつては胸部を中心にエネルギーを溜めて発射されたが、このディス・ジュデッカは全身のあらゆるところから氷塊を発射可能だった。

 

 千メートルに達する全身から総数一万を超える大小の氷塊が発射され、回避する隙間もない広域攻撃に、DC側の部隊はバリアの再展開と氷塊の破壊の二つを選択した。

 アンティノラを発射中、ディス・ジュデッカの動きは止まっているのが、せめてもの救いだったろう。

 

 数えるのも馬鹿らしくなる氷塊が降り注ぐ超広範囲攻撃は、見る間に荒れ果てたエリュシオンベースの敷地に氷柱のそそり立つ地獄の光景を作り出して行く。

 ヘイデスは、センサーやモニターの示す周囲の極低温の極寒地獄と氷塊が砕ける際に発する破壊エネルギーの膨大な数値に、ひえ、と思わず零さずにはいられなかった。

 

「スタッフと重要区画はタルタロスの中とは言え、生産区画とか倉庫とか色々とベースの地下施設に残してあるけど、これじゃあ使い物にならなくなるかな」

 

 所長はヴァルシオーの多重防御フィールドの展開と回避、迎撃の三つを高いレベルで同時にこなしながら後ろの席の旦那に答えた。

 タルタロスは先に抜錨していたラー・カイラム、ガランシェールをDフォルトの内側に引き入れて守りに徹している。防御に徹すればこの氷塊地獄もやり過ごせるだろう。

 

「隔壁は降ろして、可能な限りのバリアも張っていますから、全部が駄目になる事はないでしょう。地表に近い部分の迎撃施設は諦めるしかありませんけどね!」

 

「まったくエリュシオンベースをここで失うとはね。いつか攻略される可能性は考慮していたけれど、これはちょっと早すぎるな」

 

「代わりになる施設はあちこちに用意しているのでしょ?」

 

「まあね。それにしたって、まずは目の前の敵を片付けてからか」

 

「ええ。では、ちょっと無茶な機動をしますよ。舌を噛まないように!」

 

「了解!」

 

 ヴァルシオーの周囲に範囲を狭めたメガ・グラビトンウェーブが放出され、荒れ狂う超重力の砲弾と呼ぶべき力場が構成される。触れた氷塊が欠片一つ残さず、エネルギーの残滓も残せず黒い重力の渦に飲み込まれて消失する。

 ヴァルシオーの動きを見て、仕掛けるのを察したラトゥーニのヴァルシオーラが真っ先に、次いでギリアムやキョウスケ達もこれに続く為に氷塊の嵐を突破する道筋を見出すべく神経を尖らせる。

 

 ヴァルシオーの道を切り開くべく、ゲシュペンストMk-Ⅲやアシュセイヴァー、ヴァイスリッターが予測進路上に火砲を叩き込んで邪魔する氷塊を粉砕し、ヴァルシオーの前にヴァルシオーラが飛び出る。

 サイ・コンバーターがラトゥーニの精神力をエネルギーに変換・増幅し、二基のDエクストラクターが更にエネルギーを上乗せして、周囲にピンク色のエネルギーの奔流を放った!

 

「必殺、サイコブラスター!」

 

 敵と味方を識別するこのMAPWは、今回のようなケースの場合において敵機の攻撃を防ぐバリアとなりながら、味方には傷一つ付けずに進路を確保する事を可能とした。

 サイコブラスターの射程範囲内の氷塊全てが粉砕され、進路がクリアされたヴァルシオーは一旦、メガ・グラビトンウェーブの放出を止めて左手をディス・ジュデッカへと向けて突き出し、その先に局所的な重力変動が発生する。

 

「奈落の底に落ちて磨り潰れなさい! ブラックホールキャノン・トリプルファイア!」

 

 ヴァルシオーの持つ重力制御技術の精髄たるマイクロブラックホールの精製、その発露である。

 同時に三つの重力地獄がヴァルシオーの左手の先に生み出され、ブラックホールは互いの重力の干渉を受けて、三重螺旋のように絡み合いながら蛇体の悪魔王へと襲い掛かる!

 

「グランゾンを彷彿とさせるが、それも超えているのだ。私とディス・ジュデッカは!」

 

 アンティノラの氷塊を飲み込みながら迫る三つのブラックホールを、ディス・ジュデッカの右上腕を除いた三本の腕が真っ向から掴み止めたではないか!

 ディス・ジュデッカの手は緑色に光り輝いており、何らかのエネルギーによってブラックホールを掴むという離れ業を成しているようだった。

 

「次元将風情が超重力空間を粉砕するのだ。このディス・ジュデッカに出来ぬ道理はない」

 

「あらそうですか! それならこちらもどうぞ」

 

 ヘイデスはブラックホールを握り潰したディス・ジュデッカに本気で驚いていたが、所長は大して驚いた様子も見せずに、すぐさま光子力ビームとゲッタービーム、更に四門のクロスマッシャーの同時発射を敢行していた。

 これが初陣とは中々に信じがたい決断力と割り切りの良さである。

 合計六本の莫大な破壊力を持った光線に対して、ディス・ジュデッカの口が大きく開かれて、そこから赤黒い炎のような破壊エネルギーが怒涛の勢いで吐き出されて真っ向から激突する。

 

「ジュデッカにはなかった武装だな。怪獣じゃあるまいに」

 

「とはいえこれで両手と隠し札の口は塞ぎましたね」

 

 お互いに砲撃体勢から動かないヴァルシオーの背後から、出力全開のフェブルウスが飛び出す。全身の装甲の隙間から炎のような余剰エネルギーが溢れ出し、右手のガナリー・カーバー、左手のライアット・ジャレンチもディス・ジュデッカを打倒する意思に満ちている。

 

「畳みかけるよ、ヘマー、フェブルウス!」

 

「こうなる前の私達を攻撃してきたお礼もしないとね!」

 

 シュメシとヘマーとそしてフェブルウスの意思が一つとなり、至高神ソルのミニチュアでもあるスフィアの洗礼名が唱えられた。

 

「アムブリエル・ジ・オーバーライザー!」

 

 これまで以上の次元力を発揮して迫るフェブルウスに、ユーゼスは仮面の奥で笑った。

 色々とイレギュラーが重なったが、彼が欲しているのはこの力、その先にある真化の真髄なのだ。最高最良のサンプルが自ら飛び込んできてくれたとなれば、笑みの一つも浮かぶというもの。

 ディス・ジュデッカのエネルギー放射が中断されて、ヴァルシオーからの六つの火線は蛇体をくねらせて回避する。それでも余波によってズフィルード・クリスタルの装甲は蒸発し、内部の機器がむき出しとなる。

 機体へのダメージを無視して、ユーゼスは至高神の生まれ変わりへと意識を集中していた。

 

「サンプルが自ら我が掌中に飛び込んできたかっ!」

 

 ブラックホールを握り潰した影響で、装甲の歪んだディス・ジュデッカの三本の腕が、至高神の生まれ変わりを捕らえるべく高エネルギーを纏って三方から襲い掛かる。ただそれだけでスーパーロボットの必殺技に相当するエネルギー量と破壊力を備えている。

 

「ええええい!」

 

 フェブルウスに迫りくるディス・ジュデッカの左上腕を、膨大な次元力を纏ったガナリー・カーバーが弾き返し、お互いの表面装甲に大きな罅が走って紫電を散らす。

 下方から襲い来るディス・ジュデッカの右下の腕は、獅子の顎のように大きく展開したライアット・ジャレンチが噛み止め──

 

「はあああ!」

 

 ヘマーの咆哮と共に一気に嚙み潰す!

 更に迫りくるはディス・ジュデッカの左下の腕!

 五指を揃えた抜き手は容赦なくフェブルウスのコックピットないしは心臓部を貫くだろう。

 それをウルトラマンの八つ裂き光輪のように高速回転するSPIGOTが四方から迫り、金属同士の擦れる激しい音を立てながらその半ばまで食い込む。

 

 そして最後の四本目の蛇か竜の頭部の如きディス・ジュデッカの右上腕部に対し、フェブルウスはガナリー・カーバーとライアット・ジャレンチを手放して回避も防御も選ばずに真っ向から挑みかかった。

 胸の前で合わせた掌の中に次元力の輝きが灯り、瞬く間に光の大剣が形を成した。【いがみ合う双子】のスフィア搭載機ジェミニオン・レイの必殺技を模したソレは!

 

「ジ・オーバーライザー・アーク!!」

 

 振りかぶられた次元力の刃がディス・ジュデッカの右上腕部へするりと切り込み、そのまま開かれた顎から肘に至るまでが切り落とされる!

 ディス・ジュデッカの四本の腕を破壊してのけたフェブルウスに対し、ユーゼスは怒りもせず驚きもせず、第三の地獄をこの世に現出させた。

 

「蝗の如く喰い尽くせ。第三地獄トロメア」

 

 ディス・ジュデッカの周囲の空間が爪で切り裂かれたように破れると、その奥から無数のメギロード達が飛び出してくる。遠目から見たらそれは突如白い雲が出現したような光景だったろう。それほどの密度と数のメギロートであった。

 雲霞の如く群がるメギロートの群れがフェブルウスに群がり、そのまま連れ去ろうとするが、フェブルウスとその中の双子に焦りはない。

 

「貴方は視野が狭いようだね。僕達の創造主を思い出して、不憫になるよ」

 

「貴方に対して私達は脇役だ。本当に目を離してはいけない相手がいるのに」

 

 双子の心底からの呆れは助言めいてさえいた。ユーゼスが何を言われたのか理解した瞬間、ヴァルシオー、フェブルウスに続いて飛び出してきた影から放たれたガン・スレイブ、ラアム・ショットガン、さらにメス・アッシャーの一斉発射がフェブルウスを取り巻くメギロートを粉砕する。

 

「クォヴレー・ゴードン! イングラムの残滓ごときが」

 

「欲で目が眩んだな、ユーゼス・ゴッツォ」

 

 フェブルウスからディス・アストラナガンへと標的を切り替えたメギロートが殺到するが、それを今度は後方のヴァルシオーから放たれたホーミング光子力ビーム八門、グラビトンランチャー二十四門、拡散クロスマッシャー四門、超電磁ゲッターサイクロンとルスト・ブリザード……といった呆れるほどの圧倒的火力が跡形もなく消滅させる。

 

「ほほほほ、地球産のロボットもなかなかのものでしょう?」

 

「おのれ!」

 

 さしものユーゼスがこれまでの余裕を失って怒りをあらわにするが、まさにそれこそ双子の指摘通りに視野狭窄の証拠であった。

 既にディス・アストラナガンはディス・ジュデッカの眼前に在り、Z・Oサイズが魔王の顔面を大きく、そして深くX字に切り裂いた!

 更にZ・Oサイズが刃の付け根までディス・ジュデッカの額に突き立てられた後、ディス・アストラナガンはディス・ジュデッカの肩を両手で押さえつけて互いの鼻先が擦れるような距離でにらみ合う。

 

「貴様が手に入れたディス・レヴが、こちらのディス・レヴと同質のものであることは間違いないようだな」

 

 クォヴレーが告げるこの瞬間にもディスの名を冠する二機の心臓は共鳴し合い、片方が出力を高めればそれに応じてもう片方も出力を高める状態にある。

 ユーゼスは目障りなディス・アストラナガンを振り払うべく機体の四本の腕を再生させるが、その度にフェブルウスやヴァルシオー、アルトアイゼン、ヴァイスリッターなどの、この極限の戦闘に参加している機体が再生する端から粉砕している。

 

「その通りだ。もはや負の無限力は貴様だけのものではない。私もまたこの力を手にしたのだ。そして真化の力も手中に収め、いずれは太虚さえ超越して私が因果の支配者となる!」

 

「ありきたりな野心だが、お前には相応の力と知識がある。個人的な因果も。ならば虚空の使者としてお前の野心を封じる!」

 

 ディス・アストラナガンの胸部装甲が展開し、その奥で白く輝くディス・レヴが露わとなる。

 本来、ディス・アストラナガンの最大の武器は対象を全世界から抹消させる【アイン・ソフ・オウル】だが、同じディス・レヴを持ち、クロスゲート・パラダイム・システムを搭載するディス・ジュデッカには大きな効果を見込めない。

 この状況でメス・アッシャーを放つにしても、ディス・ジュデッカの耐久性と再生能力では倒しきれない。

 だからこそユーゼスはこの場でクォヴレーの取る行動を警戒した。いかなる行動で自分を止めるというのか? ある種の好奇心を抱いたユーゼスだったが、その答えは機体出力の劇的な低下という形で示された。

 

「これは!? …………貴様、ディス・レヴの稼働率を下げて、いや、これは停止、封印か!!」

 

「そうだ。互いの心臓が鼓動を高め合うのならばそのまた逆も然り。ディス・レヴを失えば、お前の機体は元のジュデッカへ戻り、量子波動エンジンと不完全なCPSが残されるだけだ。

 それでも十分な脅威だが、この世界の彼らならばその程度は容易く乗り越えられる!」

 

「おのれおのれおのれ、貴様の機体とてその姿を保てなくなるだろうに!!」

 

「お前と違って俺一人で戦っているわけではないのでな、そこは心配していない」

 

 見よ、ディス・アストラナガンが、ディス・ジュデッカが徐々にその姿を変えて行く! ディス・レヴの影響によって起きた変異が、時間を巻き戻すようにして変異前の状態へと戻っている。

 何が起きているのかを周囲を取り巻いているほとんどの人間達は理解していなかったが、ディス・ジュデッカが弱体化しているのは明白。

 アンゲロイ・アルカやメギロートらに阻まれながらも、最大火力を叩き込むべく準備を進めている姿をユーゼスは認め、恥辱を噛み締めながらこの場からの撤退を決めた。

 

「いいだろう。この場での私の負けを認めよう。だが、終わりではない。私は必ずやお前達を超越し、超克してみせるぞ、クォヴレー・ゴードン、ソルの成れの果て達よ!」

 

 その瞬間、トロメアによって召喚されていたメギロートが一斉に自爆をはじめ、連鎖的に続いたそれらの爆発は戦場一帯を覆い尽くし、アンゲロイ・アルカやエスリム、シュムエルといった友軍機さえも巻き込んで大量破壊兵器を思わせる黒炎が広がった。

 その黒炎の中で転移反応が生じ、ヘイデスはユーゼスが撤退した事を悟った。ゲーム風に言えばHPを一定値以下にした場合に発生する強制イベントか。しかし、現実に生きるこの世界ではそんなイベントはこの上なく腹立たしい。

 ヘイデスは黒炎に飲まれた他の機体がすっかり手慣れた様子でバリア持ちにカバーされるか、爆発の範囲から逃れているのを確認しまずは安堵する。特に今回、ユーゼスが狙ってきた我が子らとフェブルウスを守れたのは大きい。

 

「とりあえずは勝ち、でいいかな?」

 

「エリュシオンベースはほぼ壊滅してしまいましたけれど、人的被害はなし。取り返しのつく範囲の被害で済んではいますね」

 

 所長はヴァルシオーのステータス変化に神経を尖らせながら、双子にオウカ、アラド、ゼオラにラトゥーニのバイタルチェックも同時にこなしている。幸い、医務室のお世話になる必要はなさそうだ。

 そうして諸々のチェックと同時並行で、メインモニターに映るディス・アストラナガン……いや、【ベルグバウ】に視線を走らせる。

 

「機体の形状が変化している? あれはどういう仕様かしら?」

 

「あれはベルグバウだね。ディス・アストラナガンは、あのベルグバウにいくつかのパーツとディス・レヴっていう動力を組み込んだ後の姿の筈だ。

 それがどうしてベルグバウに戻っているかは不明だけれど、マシンセルみたいな装甲材を使っている筈だからそれが関係しているのかも」

 

「ふうん? 形状記憶合金とは違いますか。総帥の声色からして信頼できる相手のようですし、ま、そこまで警戒しないでおきましょう。それにしてもあっちもこっちも【ディス】という単語が氾濫していますわねえ」

 

「ディス・レヴ、ディス・アストラナガン、ディス・ジュデッカか。因縁のある機体にパイロットだから」

 

「因縁ね。そういう意味では貴方も【ディス】という単語には所縁がありましてよ」

 

「へ?」

 

「【ディス】という言葉には相手を否定する、侮辱するなどの意味もありますが、ギリシャ神話の冥府の神ハーデスの呼称のひとつであるプルートをラテン語に訳すと、ディス・パテルとなります。

 あれらの【ディス】とはディス・パテルの略称であると考える方が相応しくはありませんか? ま、両方の意味から来ているのかもしれませんが、さて、私の後ろの席に座っている方のお名前は?」

 

 愛妻の推測に対して、ヘイデスは呆気にとられながらこう答えるしかなかった。

 

「ヘイデス・プルート……こりゃあ、呼ぶべくして呼んだというか。来るべくして来たというか。まさしく因縁だねえ」

 

<続>

 

■ディス・アストラナガンがベルグバウに変化しました。

■メカギルギルガンの残骸を入手しました。

■エリュシオンベースが壊滅しました。




ちなみに第二十一話のクォヴレーっぽい少年は、ユーゼスです。いかにもそれっぽく書いてみました。ラオデキヤが現れた、という文言が不自然ですが、別行動中だったのでプログラミングした条件を満たしてラオデキヤが宣戦布告したのを別所で確認したわけです。


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第七十五話 因果地平の向こう 画面の向こうから

説明会なのでちょっと退屈かもです。


 戦いは終わった。

 タウ・リンを討てず、ユーゼスを討てず、エリュシオンベースは壊滅し、機動要塞タルタロス、ヴァルシオー、ヴァルシオーラという切り札を使わされたが、それでも死者を出さずにバサ帝国の襲撃を退けられたのはせめてもの救いだ。

 同時に敵勢力の首魁が自分達の懐に潜り込んでいたという驚愕、ユーゼスと同じ顔を持ち名前を騙られていたクォヴレーと異様な乗機ベルグバウの合流……残された爪痕と疑念は深く、戦いが終わった後のDCには不穏な空気が漂っていた。

 

 敵陽動部隊の撃退から帰還したマジンガーチームやダイモスチーム、その他のMS部隊も合流した後、大急ぎで修理と補給、また負傷者の治療に戦闘後の状況確認と慌ただしい。

 ヘイデス個人としても、世界中の復興事業でただでさえ忙しいのに、DCの重要拠点であるエリュシオンベースの壊滅は確実に彼の仕事を加速度的に増やす大問題だ。

 スーパーロボットの本拠地は壊滅する事が多いという慣例を鑑みて、事前に代わりとなる拠点の確保と整備は済ませているが、そこへの移転も規模が規模だけに簡単ではない。

 

 ユーゼス離反の際にひどいダメージを受けたシールドライガーはタルタロスに収容され、コックピットから降りたバンとフィーネが傍に寄り添っている。

 彼らを助けたアーバインもコマンドウルフを下りて遠巻きに彼らの様子を見守っている。

 メカニック達がせわしなく行き交う中、シールドライガーから一向に降りてこないジークに対し、バンとフィーネが先程から何度も呼びかけている。

 

「ジーク、どうしたんだ。ライガーと一緒にお前までやられちまったのか!?」

 

「バン、大丈夫。ジークまで死んでしまったわけではないわ。ただ、少しだけ休んでいるのよ」

 

 シールドライガーの足に縋りついて取り乱すバンをフィーネが宥め、フィーネもまた不安に揺れる表情をしていたのを見て、ようやくバンは少しの落ち着きを取り戻した。

 そうして二人とも傷ついたシールドライガーから離れて、メカニック達が修理を始めるのを見守る。アーバインはバンの頭が冷えたのを確認し、ほっと安堵の息を零す。

 今回の戦いは彼にしても苦戦と言う他ないものだったが、ジークの異変にユーゼスの裏切りと、ほんの少し前まで民間人だった二人には辛い出来事が重なっているのも問題だ。

 

「メンタルケアは俺の仕事じゃねえんだがな……」

 

 自分のコマンドウルフもダメージが重なっており、アーバインも決して冷静というわけではない。ただ自分よりも落ち込みの激しいバン達と周囲の状況から、こうして兄貴分らしい態度でいられるのだ。

 それに裏切ったユーゼスと同じ顔を持った乱入者の件もある。こちらの指示に従って大人しくタルタロスに着艦したと言うが、簡単に済む話ではないだろう。アーバインは給料とは割に合わない状況に頭痛のする思いだった。

 普段とは違う様子で黙りこくるアーバインの背中を、浅黒い肌に髪の毛を六つに分けてまとめた女性が手にしたバインダーで軽く叩く。アーバインとは旧知の間柄で、今はDCの協力者として雇われているムンベイだ。

 

「なんだか厄介な事になってるじゃない。まさかこんなヤマになるとは思わなかったよ」

 

「古代文明の生き残りが現れて、宇宙人が現れて、異世界人も出てきて地球征服を仕掛けてくる世の中だぜ。なにが起きても不思議じゃねえってことだ」

 

「それだって驚くのは止めらんないわよ。支払いがいいし、ここで踏ん張らないと地球ごと駄目になりそうだから、手は引かないけどさ」

 

 そういってムンベイはバンとフィーネに近づいて行く。アーバインが兄貴分ならムンベイは姉貴分だ。少しはバン達の心を落ち着かせてくれるだろう、とアーバインは勝手に期待する事にした。

 だが彼らはまだ知らない。この数日後、シールドライガーに用いられているマシンセルが、突如として繭のような物体を形成し、シールドライガーとジークを新生させることを。

 DCと合流以前から偽クォヴレーことユーゼスと行動を共にしていたバンとフィーネがショックを受けている中、極東支部救援の為に別行動を取っていたゲッターチームや神ファミリーの面々にも、ユーゼスの裏切りやエリュシオンベースの壊滅が伝えられている。

 

 復活したガルーダとガイゾックの共闘も伝わり、ミケーネや百鬼、ムゲ、妖魔、キャンベル、ボアザンに大打撃を与えたというのに、強化されて復活した敵勢力の報せに、ヘイデスはスパロボらしいと苦虫を潰しながら納得するしかなかった。

 そして当のヘイデスはと言えば所長、双子、ギリアムを加えた面子でタルタロス内部の私室で、クォヴレーと顔を合わせていた。

 所長は武装しておらず、普段は光学迷彩を使って控えているヴァイスリッター・アーベントらは部屋の外で控えている。

 

「君に会えて光栄だ。クォヴレー・ゴードン君。僕はヘイデス・プルート。一応、この部隊のスポンサーをしているものだよ」

 

 とヘイデスを皮切りに自己紹介をはじめ、クォヴレーは黙って耳を傾けていた。この場にいる全員の名前と役職が伝えられてから口を開いたのは所長だ。

 

「うちの総帥が貴方を味方だと断定するので先の戦闘では助力しましたし、今もこうして懐に迎え入れていますけれど、お二人は面識があるのかしら?」

 

 クォヴレーは言葉少なに否定し、ヘイデスが説明を補足した。

 

「いや、今が初対面だ」

 

「僕が一方的に彼の素性や機体のことを知っているだけだよ。それだって一から十までと言うわけじゃない。概要とおおまかな経緯くらいかな。僕としてはクォヴレー君が僕を含め僕達の事情をどこまで把握しているのか、という点に興味が尽きないね」

 

「俺の目的は因果律の番人として世界の均衡を守る事だ」

 

 クォヴレーの告げた目的は元プレイヤーであるヘイデス、彷徨者であるギリアムは承知のものだ。所長も事前にヘイデスからある程度聞かされてはいたが、実際にクォヴレーの口から語られるとスケールの規模に戸惑いを禁じ得ない。

 パンドラボックスの中身を知り、パラレルワールドや並行世界が実在するのを知っていても、こうしてコミュニケーション可能な異世界の存在を前にするのは稀有な経験だ。

 ムゲの連中は言葉が交わせるとはいえ、基本的に敵でしかないわけだし。

 

「ふうん? それでどうしてあの場で姿を見せて、ユーゼス・ゴッツォを討つ事が貴方の目的に繋がるのですか?」

 

「奴の開発しているクロスゲート・パラダイム・システムが大きな原因の一つだ。このシステムは因果律を制御し、事象を自在に制御するのを目的としている。

 未完成の段階だが、奴は多くの世界を渡る過程でその完成度を高めている。またこの世界で再誕した至高神ソルを入手して、次元力による事象制御技術も掌中に収めようとしている。

 この二つが奴の手に落ちて完成した暁には、単一の世界ばかりでなく世界の壁を越えていくつもの宇宙に悪影響を及ぼす懸念がある。それを未然に防ぐ為に俺とディス・アストラナガンが介入する事態となった。

 奴と俺には多少の因縁があるし、地球という惑星そのもの、そしてこの世界で戦っているスーパーロボットとそのパイロット達とも縁がある」

 

 かつてαシリーズやOGシリーズで紡いだ因縁を思い出しながら語るクォヴレーに、ギリアムが声を掛けた。

 先述した二つのシリーズでこの二人は直接の関りはなかったが、“知っている”事それ自体が因縁として機能する。クォヴレーがこちらに来るにあたって、ギリアムの存在は多少の助けになったはずだ。

 

「所長、俺も直接の面識はないが彼のことは知っている。新西暦世界の地球連邦軍独立遊撃部隊αナンバーズ所属のクォヴレー・ゴードン少尉だろう?」

 

「貴方もあの世界に居たのか?」

 

「あちこちの世界を彷徨う定めでな。色々な地球を見てきたがイングラムやヴィレッタ、それにガンダム、マジンガー、ゲッターとはよく顔を合わせる。αナンバーズの活躍は、よく耳にしたものさ」

 

 共通の知人がいるのが分かって、いくらかクォヴレーの雰囲気が和らいだようだ。そして彼はなぜか自分に対する好感度が高い様子のヘイデスへ、いくらかの疑念がこもっている視線を向ける。

 

「俺がこの世界に来る時、俺をαナンバーズのクォヴレーと呼ぶ声が聞こえた。アレは貴方の声だな、ヘイデス総帥。貴方も彷徨者なのか?」

 

 この質問が来たか、とヘイデスは腹を括り、かつてギリアムと所長に明かした自分という存在の持つ“視点”と“可能性”をゆっくりと語り始めた。

 この話を聞かされる者は、それこそヘイデスの正気を疑って最初から信じないか、同じように第四の壁を越えた認識を持つ者でもなければ、そうそう受け入れられるようなものではない。

 ヘイデスはほんの数秒だけ間を置く事で覚悟を固め、自分の抱えるプレイヤー視点の記憶と自分がそういう役割を持たされたキャラクターであるかもしれないという推測をクォヴレーへと語るのだった。

 

 

 少し視点を他勢力へとずらすのをお許しいただきたい。オペレーション・レコンキスタにより散々に蹴散らされた各勢力は否応なしに息を潜めて、膨大な損失を埋める為の方策を練るのに奔走せざるを得なかった。

 ミケーネ帝国では七大将軍の半数以上が戦死し、新たに地獄大元帥ことDr.ヘルが一時的に指揮権を握って、暗黒大将軍を含む生き残った帝国軍の再編成と機械獣の生産プラントの移設と増設による戦力補充に勤しんでいる。

 次に彼らが戦場に現れる時には戦闘獣、妖機械獣、機械獣の混成部隊が姿を見せる事だろう。これまで散々倒された機体の再生産というわけだが、さて?

 

 多数の百鬼メカを失った百鬼帝国も深刻さではミケーネに勝るとも劣らない。裏で支配していたいくつかの小国が、裏で百鬼帝国と繋がっていたことが地球連邦に嗅ぎ付けられて、近々、攻略作戦が発動する流れとなっていたからである。

 ただでさえ製造に膨大なエネルギーを必要とする百鬼メカの大量損失は、ゲッターエネルギーを我が物とし、しかる後に世界征服に乗り出す百鬼帝国の戦略を根本から揺るがす大問題であった。

 

 この事態に際して百鬼帝国の指導者ブライ大帝は、真の本拠地である科学要塞島を用いた戦いを視野に入れている。敗北すれば、百鬼帝国の滅亡を意味する背水の陣をも辞さないほどの過酷な状況であるとブライは認めていた。

 グラー博士の開発した百鬼メカを残りの資材を使い尽くす勢いで生産し、これまで独断専行や私情に判断ミスの目立ったヒドラーへの極めて厳しい叱責を始めとした綱紀粛正が帝国内で図られている。

 

 そして地球連邦軍の一般部隊はともかくとして、最大の敵であるDCの擁するスーパーロボットとトップエースの乗る機体を一機たりとて撃破できなかったという厳しすぎる結果も受け入れなければならなかった。

 更にはデスザウラーとデススティンガーという、なんだか所属している陣営を間違えているとしか思えない化け物までもが誕生している。

 

 百鬼やミケーネなどの諜報部ではゾイド関係ではギルベイダーの正式量産計画の他に、第三の超ド級ゾイド・ギルドラゴン(ゾイドジェネシス版)の建造計画を掴んでいる。

 ギルドラゴンについてはDC側が威嚇と囮を兼ねて、あえて情報を流出させたものであり、実際の進捗状況については極秘とされ欺瞞情報が大量にばらまかれている。

 オペレーション・レコンキスタが成功したとはいえ、消耗した装備と人員の補充に再編成の為の時間を稼ぐ為だ。

 掴まされた側も当然、欺瞞混じりの情報だと理解しているが、ギルドラゴンの建造自体は事実であるから厄介なのは変わらない。

 

 DCが新型機や強化装備によって戦力を増し、地球連邦軍自体も開戦前の想定をはるかに上回る精強さを発揮しており、これでバスク派ティターンズやクロスボーン・バンガード、ホワイトファングらが決起せずに地球人類が一枚岩となっていたら今頃どうなっていたかと、ブライ大帝やグラー博士は戦々恐々としたものである。

 戦いが進めば進む程、苦境に追いやられる状況に彼らが取り得る選択肢は決して多くはなかった。

 

 それぞれの本拠地にて闇の帝王、ブライ、バラオが今後の戦況と同盟としての動きについて話し合いをすべく、お互いの姿を立体映像で表示しながら会談を行っていた。

 基本的には同格だが、お互いにいずれは屈服させるか、滅ぼしてやると考えている間柄だ。

 だがまずはそれよりも先に地球人類を、と共通の強敵が居るからこその同盟である。しかし、今回、この会合には新たな顔が二つあった。

 

 一つ、恐竜帝国の影の支配者だった大魔神ユラー。恐竜帝国との決戦で帝王ゴールやガリレイ長官は戦死したが、原作アニメとは異なりユラーは生き残り、どこかに潜伏して地上征服の為の戦力を蓄えていた。

 二つ目の顔はムゲ・ゾルバドス帝王その人であった。三将軍の一角を失い、地球に派兵した戦力のほぼ全てを失ったムゲ軍は、異次元にある本国こそ無事だが損失が大きすぎた。それもあっての今回の同盟参加である。

 

 地球上の存在でさえないムゲの同盟参加は、彼の強大さもあって闇の帝王やブライ、ユラーの警戒を促すものだったが、それでも戦力を補う為にはお互いの手を嫌々でも取らざるを得ないのが彼らの現実であった。

 ある意味ではDCひいては地球人類が彼らを追い詰めすぎた為に、このような敵戦力の強化という事態を招いたと言えるだろう。

 

 彼らの戦力再編が終わるころには地球人類も戦力の再編を終えて、再び激戦の幕が上がるのは明白。その中でも最大の敵であるDCを打倒する為、彼らはそれぞれお互いの手札を隠しながら戦略を練るべく、建前上は対等の立場で激論を繰り広げていた。

 彼らもまた生き残るのに必死なのである。

 そんな中で事情が異なるのは死者の力、怨念の力を行使するムゲ・ゾルバドス、そして妖術を行使するバラオだけが会議の後もお互いに通信を繋げていた。ムゲをこの同盟に引き入れたのは誰あろうこのバラオであった。

 

「光子力、ゲッター線、ムートロン、そして次元力。人間共の急激な戦力の増強。まるで人間共を勝たせようとしているかのようだが、光が強まれば闇もまた深くなる。奴らの力が増せば我らの力も増すというもの」

 

 力の根源を同じくするバラオの言葉に、ムゲは黙って耳を傾ける。互いに人間を始めとした知的生命体の憎しみや恨み、怒りを糧とする者としてバラオの言葉は真実であった。

 そして厳かにムゲは帝王の威厳と共に短く言葉を紡ぎ出す。

 

「だがどうやら光と闇の狭間にあって負の力を振るう者が現れた」

 

 ムゲが口にしているのはクォヴレーとディス・アストラナガンに他ならない。

 

「そうだ。負と怨霊の力を併せ持ちながら、それを均衡の維持の為に使う虚空の使者。奴の持つ心臓は我らにとっても脅威となる。

 そして使者が追ってきたバルマー・サイデリアル連合帝国、その中ではユーゼス・ゴッツォも因果律と次元力に干渉する力を持っている。我らの持つ負の力と対抗できる者共を排除するまでは、本来、共に天を戴かぬ我らの共闘も止むを得まい」

 

 ディス・アストラナガンだけでなく同じディス・レヴを持ち、CPSを有するディス・ジュデッカとユーゼスの知識と技術も、バラオとムゲにとって脅威として捉えているようだ。

 同時に至高神ソルは知らなくとも、超常の存在としてその力の危険性を理解できる両者は地球人類に対する警戒以上に、クォヴレーとユーゼス、双子とフェブルウスをそれぞれの宿敵以外の最大の障害と認識し、手を結んだのである。

 

「バラオよ。ライディーンの持つムートロンの脅威は言わずもがなだが……」

 

「なんだ、ムゲ・ゾルバドス。暗黒の王よ」

 

「この度の戦いもまたゲームであると考えているのならば、今のうちに改めておくことだ。事と次第によってはそちらの宇宙の中心に居る貴様の黒幕もただで済むまい」

 

 その忠告だけを残し、ムゲは通信を切った。妖魔島の深奥にてバラオはムゲの言葉に小さく、やがて大きく笑い始める。

 

「ハハハハ、ハハハハ、ハーハッハッハハハハハ! やはり貴様は分かるか。ムゲ・ゾルバドス。このバラオもまた指先の一つでしかないと。この世界の白と黒、光と闇、善と悪のゲーム、陣取り合戦! それの駒だと知るか。このバラオも妖魔共もなにもかも!」

 

 

 地球圏のどこかに身を潜めるキャンベル星人の拠点【三面鬼殿】では女帝ジャネラが腹心の部下二人を傍らに置き、旧オレアナ城からの通信に対応していた。

 既にガイゾックによる改造が済み、その位置を変えたオレアナ城の所在はジャネラ達にも掴めておらず、まさかオレアナが生き残っているとも思えぬまま、彼女らは通信に応じ、数分のやり取りの後にはあまりの不快さにジャネラの表情には怒りが浮かんでいる。

 

「それで貴様らは我々と対等の同盟を結びたいと申すのか?」

 

『ほーほっほっほ。先程からそう言っておろうに。ジャネラちゃんの耳には垢でも詰まっとるんかの? 儂が耳掃除しちゃろか?』

 

 徹底的に相手を舐め腐った言動をしているのは、ガイゾックのキラー・ザ・ブッチャーその人である。

 

「愚か者め! 人格を移植したコンピューター如きの作り出した人形と正統なキャンベル星人である我らに手を組めだと! 誰に何を言っているのか、分かっておるのか」

 

『だそうじゃぞい、ガルーダ』

 

 ジャネラはブッチャーへの不愉快さもそうだが、彼女にとっては失敗した前任者の作り出した道具風情が対等な口を利こうとしているのが、なにより不愉快なのだった。ブッチャーの隣の画面にガルーダが映り出される。

 

『女帝ジャネラ、ふふふ、キャンベル星人らしい物言いだ。だがそれを言っていられるような状況かな? 確かにこのガルーダはアンドロイドよ。だがキャンベル星人に従うようなプログラムはない。俺は既に俺の意思を確立している。

 道具風情と侮って戦力増強の機会を逃す愚を犯すのか? 我らが宿敵コンバトラーVはもちろん、地球人の戦力は事前の調査をはるかに上回る。

 我ら以外の数多の侵略者の襲来、更には地球人同士の抗争という事態に陥ってなお、どの勢力も地球を征服できていない事実を見るがいい』

 

「くっ、だが我らが総力を挙げればこの程度の小さな星など」

 

『無理だな。貴様とてオレアナに代わりこの地球に派遣されたのだ。相応の知見と能力はあるはず。ならばこれまでの戦いでこの地球という惑星の異常性、そして地球人類の戦闘種族としてのレベルの高さを理解していよう』

 

 思わずジャネラが反論の言葉を飲み込むガルーダの言葉であった。説得力があり過ぎる。

数多の超エネルギーを扱う天才科学者達と彼らの手掛けた多種多様なスーパーロボット、更にそれを十二全に扱うパイロット達。

ニュータイプや超能力者といった特異な能力者達に加え、オールドタイプと呼ばれる者達にしても機動兵器に対する適応性は宇宙基準で見た場合に異常な高さを誇る。

 

『キャンベル星の者達は地球の戦力とその成長速度をあまりに小さく見積もっていたのだ。それはこの俺もオレアナも同じ話だが、こと軍事技術と戦闘能力に限れば地球人類は銀河の一線級だ。

 それをキャンベル星から派遣された一部の戦力でしかないお前達だけで、制圧できると思うか? かといって本星にこれ以上の増援を求める事も出来まい。

 キャンベル星は各地の植民惑星の反乱に備えて、下手に軍備を動かせん。ましてや前任者と同じ失敗をしたと報告するわけにはいかないはずだ』

 

「……」

 

 憤怒をかろうじて抑えているジャネラは、ガルーダの指摘に偽りがないのを態度で示している。

 

『故にこそ同盟の申請だ。ガイゾックの神もそれを認めたから、この度の連絡を許したのだ。既にお前達がバーム、ボアザン、ベガと手を結んでいる事はこちらでも把握している。

 俺はコンバトラーVと最高の決着を付ける舞台さえ整えばそれでよい。キャンベル星での地位など求めていないから、手柄を求めなどはせん。ブッチャーもそれは同じだ』

 

『なにしろガイゾックの神直々のご指示であるからの。わしも今回ばかりは本気で地球人を滅ぼす為に動く。お主らに関してはその後で、ガイゾックの神よりご指示があれば、ま、遊んじゃるわい』

 

 この時期、外宇宙からやってきた勢力は、バサ帝国へ反旗を翻す気満々のオルバン大元帥率いるバームを含め、ひそかに対地球勢力、対ムゲ、対バサ帝国に向けて同盟を組んでいる。

 そしてジャネラの多大なストレスと引き換えに、この同盟にガイゾックとガルーダが加わったのだった。

 

 

 二人目のクォヴレーとベルグバウへと変わった機体について、説明の機会が設けられたのはそれから二日後のことだった。

 極東支部救援に向かった部隊との合流や負傷者の割り振り、エリュシオンベースの損害の確認などを行い、ひとまずの整理を付けるのにそれだけの時間を要したのである。

 後になってやってきたクォヴレーの正体は? ユーゼスがエリュシオンベースを襲った狙いは? これらの事情を説明する為にDC所属メンバーの集結を待ち、また関係の深いゴップやトレーズ、ブレックスらにも情報の開示が行われる予定だ。

 

 パイロット達はもちろん艦長陣もずらりと顔を並べた大会議室で、ヘイデス、所長、双子、そしてクォヴレーが集まったメンバーの視線と意識を集めながら壇上に立つ。

 特にユーゼスと親しかったバンとフィーネがクォヴレーに向ける視線には、複雑な感情が絡み合っているのが見て取れる。

 

 ヘイデス達が入室してきた途端、それまであれこれと話をしていた全員が口を閉ざして、ヘイデスの傍らに立つクォヴレーに注目が集まる。

 大会議室が静寂に包まれたのを確認し、ヘイデスはわざとらしく咳払いをしてこれから話し始めますよ、と合図を送る。話す相手にはトレーズやゴップといった連邦軍の高官も含まれているから、ヘイデスの思考と態度は完全に総帥モードだ。

 

「さて忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。事前にお伝えした通り、こちらのクォヴレー・ゴードン君をはじめ、皆さんが知りたいと考えている事と知っておいて頂きたい事をお伝えしたく、こうして時間を取っていただきました」

 

 前置きはこれくらいでいいだろう、とヘイデスは視線でクォヴレーに続きを促す。

 

「既に知っているとは思うが、俺はクォヴレー・ゴードン。なぜユーゼスが俺と同じ顔をしていて、俺の名前を騙ってDCに潜入していたのか。

 話せば長くなるが、まず知っておいてもらいたいのだが、俺とユーゼス、バルマー・サイデリアル連合帝国の者達はこの世界の人間ではない。別の世界からやってきた人間だ」

 

「別の世界って、パラレルワールドって奴?」

 

「SFめいてきたな」

 

「ムゲ野郎共と似たようなもんか?」

 

「クォヴレーは個人で、侵略者と言うわけでもなさそうだが……」

 

「ユーゼスの方は思いっきり侵略者よね」

 

 ロボットが兵器として実用化され、宇宙人や異世界人の侵略が現実に起きたこの現実も十分にSFかファンタジーめいているが、別の世界と言う単語はまだまだインパクトを与えるだけの余地があるようだ。

 ざわめきが収まるのを待ち、クォヴレーが続きを口にし始める。クォヴレーが自己を確立したあの世界では特別思い入れの深い関係のゼオラとアラドが、その他のメンバーと同じ程度の反応なのは、なんとも……。

 

「話を続ける。元の世界では俺もユーゼスもゼ・バルマリィ帝国という星間国家に所属していた。奴らの名乗っているバルマー・サイデリアル連合帝国という名前の『バルマー』という部分が母星の名前だ。

 俺達の世界にも地球があり、MSやスーパーロボットが存在していた。ユーゼスはラオデキヤ率いる艦隊の副司令として地球を訪れ、自らの目的の為に行動を開始した」

 

 クォヴレーの口から語られたのは、αシリーズの大まかなあらすじと言ってよかった。地球に異変が生じるように細工し、ゼ・バルマリィ帝国の真の支配者への反逆とCPS完成の為に冷酷無残な行いを躊躇なく繰り返したユーゼス。

 その後、第三次αの時間軸になって、ユーゼスの遺産である人造人間をゼ・バルマリィ帝国宰相シヴァーが利用して生み出したバルシェムシリーズ、その内の一体がクォヴレーの元となったアイン・バルシェムである事。

 

 そのアインがクォヴレー・ゴードンの偽名と身分で地球に潜入しようとした矢先、突如出現した本物のイングラム・プリスケンとアストラナガンに融合されたのが目の前のクォヴレー。

 DCの面々が知るユーゼスは、α世界でロンド・ベル隊に敗れたユーゼス・ゴッツォとジュデッカに融合され、支配されたまた別の世界のアイン・バルシェムであるという事。

 

 そしてクォヴレーは他の世界に悪影響を及ぶ可能性を探知して、この世界に逃れていたユーゼスを追ってきた事も。

 前置いたように実に長い話だった。

 要点を掻い摘んでの話とは言え、数年単位に渡る大作映画か大作シリーズを数時間に圧縮して観賞するか、遊び終えるようなものだ。ここで少し場の空気を換えようとヘイデスが話を継いだ。

 

「ユーゼスとクォヴレー君とで同じ名前と顔をしていた事にまだ戸惑っている方も多いでしょう。

 ここにいるクォヴレー君は、ユーゼスとの戦い以外にも地球防衛に関して僕達への全面的な協力を約束してくれています。あんな事があったからしばらく監視くらいはさせてもらいますけれど、味方として遇したく思っています」

 

「なあ、ヘイデス総帥」

 

 ここで真っ先にヘイデスに声を掛けたのはバンだった。クォヴレーを味方扱いする事への不安や不満は、他のメンバーの顔に浮かんでいるが、バンの場合は少し違うように見える。

 

「なんですか、バン君」

 

「クォヴレー、いや、あいつが俺達のところに潜入していた理由は分かってんのか? そっちのクォヴレーが来る前にあいつは行動を起こしてた。

 あのギルギルガンって奴の爆弾が起爆したら、地球が危なかったって話だ。地球が欲しいのなら、やり過ぎだぜ。あいつは何を狙っていたんだ? そこは分かっているのか?」

 

 裏切られた事実によってユーゼスの行動を考えていたのか、バンの物言いは鋭いところを突いている、とヘイデスは感じた。あるいは痛いところと言い換えるべきだろうか。ヘイデスとしても説明に苦しむ点である。

 だからこそ、ユーゼスが自ら潜入していた理由については、ヘイデスの持つメタ視点を除いてつまびらかにすることを決めていた。自分達の人生が娯楽として消費されている、などと知っても何の得もないだろう。

 

「ユーゼス・ゴッツォが狙っていたのは、僕達が一年戦争後に手に入れたあるモノだ。それを僕達はパンドラボックスと呼んでいる」

 

 ヘイデスが右手をかざすと室内の照明が落とされて、彼の背後にパンドラボックスの全容が映し出される。フェブルウスのメモリーユニットであり、Zシリーズで言うところの黒の英知そのものとも言える世界の壁を越えた知識と記録の塊。

 

「これは一年戦争の初期、コロニー落としの最中にこの地球圏に出現したものです。地球に落ちる筈だったコロニーを破壊し、更にその破片の落下による災害が発生しないように干渉しつつ、地球へと落ちた機体の中から回収したメモリーユニット」

 

 パンドラボックスの存在と入手元はこれまで秘中の秘として、連邦政府にすら伏せていた超機密情報だ。それを開示したヘイデスに向けられる視線の熱量は増して、様々な推測が絡み合う。

 特にあのコロニー落としの戦いに参加していたレビルやクワトロ達は、落下して行くコロニーが破壊される光景を目の当たりにしている。あの時の奇跡と呼ぶべき現象の正体が、今、明かされようとしていた。

 

<続>

 

■ミケーネ、百鬼、妖魔、ムゲが同盟を結びました。

■キャンベル、ボアザン、バーム、ガイゾック、ガルーダが同盟を結びました。

 

■シールドライガーが進化中です。




アンケートを追加しました。
傷ついたシールドライガーの進化先について。
お好みの機体をお選びください。


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第七十六話 ゼット Z

説明ばかりしていても楽しくないので色々と省略しました。


 パンドラボックスの名前はギリシャ神話における『パンドラの箱』に由来している。

 パンドラとは最高神ゼウスの命により鍛冶神ヘパイストスが作り出した女性であり、この世のありとあらゆる災厄を封じた箱(本来は壺、甕とされる)を神々から賜ったパンドラは、人類に火を与えたプロメテウスの弟エピメテウスの下へと嫁いでくる。

 パンドラの美しさに心奪われたエピメテウスは彼女と婚姻し、そうして二人が日々を過ごす中、パンドラは好奇心から決して開けてはならないと言われていた箱を開けてしまう。

 

 箱からは疫病や欠乏、悲嘆、犯罪などありとあらゆる災いが解き放たれた。これは人間に火を与えたプロメテウスに対する神々の罰とも言われている。

 慌てたパンドラが箱を閉じた時、箱の中には希望だけが残されていたという。これはどんな災いの中にあっても希望は残ると解釈するか、希望こそが最も大きな災いなのだと解釈するかに分かれるところだ。

 

 その由来の通り、至高神ソルの記憶を有するパンドラボックスは数多の多元世界の記録が保管されている。様々なガンダムやスーパーロボットの“もしも”、あるいはあり得たかも知れないスーパーロボット大戦の世界の記録である。

 その記録がどれほどの価値があるか、どれほどの影響力があるか、そして災いとなるのかは、想像するに容易い。これを手に入れたのがプレイヤーとしての認識を持つヘイデスだったからこそ、これまで地球の平和の為にのみ使われたと言ってもいいかもしれない。

 そしてパンドラボックスに収められていた数々の記録が、さながら∀ガンダムの作中で黒歴史の記録が公開されたエピソードのように、今、解放の時を迎えていた。

 

「パンドラボックスには実に多くの情報が込められていました。かなり刺激が強い情報も含みますが、心してご覧ください。観た後にはユーゼスが狙うだけのものだと、皆さんは納得しているでしょう」

 

 無数の映像が次々と室内に映し出される。

 ア・バオア・クーでリックドムのビームバズーカを受けて、撃墜されるガンダム。

 連邦軍のMSの姿はなく、アフロダイAやボスボロットと共に見知らぬ機械獣と戦うマジンガーZ。

 メカ一角鬼が角から発射した光線にゲッタービームを押し込まれるゲッタードラゴン。

 今まさに地球に落ちようとするアクシズ。それを押し返そうとする無数のMSとスーパーロボット達。

 例を挙げればきりがない程、知っているロボットと知らないロボットが、知っている敵と知らない敵を相手に戦い続けている。

 いくつもの滅びがあった。いくつもの戦いがあった。いくつもの悲劇があった。いくつもの絶望があった。数えきれない世界の心が壊れてしまうような記録の数々。

 

「マジンガーが大きな拳に変形した!?」

 

「なんだ、あのゲッターは。でかい、何千キロあるんだ!」

 

「ありゃあダンクーガに似ている。兄弟機か?」

 

「うわ、金属の月? 花になっているぞ」

 

「地上から月まで腕が伸びている。物理法則無視してないか!?」

 

 あまりに多すぎる情報量に集められた誰もが口を閉ざすのを忘れ、目にした映像に対する率直な感想が口から零れている。

 目を背けたくなる惨状、喝采を上げたくなる場面もある。どうしてそうなったのかと、問い質さずにはいられない裏切りもあった。頑張れと映像越しにも声援を送りたくなる危機的状況もある。

 

 パンドラボックスに収められた情報量は膨大だ。膨大過ぎる。このまま全ての情報を出力していては、終わるのが何時になるか分かったものではない。

 ヘイデスは一旦映像を停止して、多元世界の映像から受けた衝撃が一旦静まるのを根気よく待つ。

 

「なかなか衝撃的な内容だったでしょう? 中にはよく見知った自分達や近しい存在の姿もあった事かと思います。

 そして、プルート財閥がこれまで姿を見せた侵略者達や事件に対して、有効な対抗手段を講じられた理由であり、多数の新技術と機動兵器の並行開発が可能だった理由ですよ」

 

 悪びれもせずにこれまで秘匿していた圧倒的アドバンテージの正体を曝け出すヘイデスに、やたらとアクシズを落としたがる自分の姿に辟易していたクワトロが、一同の心中を代弁した。とりあえず誰かが言わねば始まらない。

 特にアナハイムとサナリィからの出向組は、商売敵のトップシークレットに目ん玉をひん剥きかねない注目具合だ。まあ、それでも現場組だから上層部とは随分思想がかけ離れているので、背信や裏切りなどはそれほど心配しなくていいのだけれど。

 

「これだけのものを独占していたわけか。それならばあなた方の異様な技術や先見性にも納得がゆくが……。もっと早く地球全体でこの情報を共有していたなら、もっとうまく侵略者達に対抗できたのではないかな、ヘイデス総帥」

 

 クワトロにヘイデスを責めるつもりはない。

 プロメテウスプロジェクト時代からそうだったが、ヘイデスが滅私奉公と評すべき姿勢で地球圏の防衛と人類繁栄の為に身を粉にして働いていたのを傍らで見ていたし、変に小市民的感性を持っている彼ならばこの膨大な情報を悪用している可能性は低いと信頼できたからだ。

 

 アムロやカインズ博士、ユウやブラン、ライラやヤザンといった長い付き合いの面々もそれは同じだ。

 ドクターJを筆頭とするコロニーの科学者達は、現大戦が勃発するまではヘイデスを危険視していたものだが、その危険性の根源を目の当たりにして、いくらなんでもこんなものを予想できるか、と言いたいところだろう。

 もっともそれ以上に映像の中のエンドレスワルツ版の自分達の作品に意識がいっているあたり、根っからの技術者で職人気質だ。

 

「言い訳にしかなりませんがそれは考えました。地球の誇る英知とこの超技術と超知識の集合体を共有して、地球圏全域レベルで技術の革新を図り、危険意識を高められればいまよりももっと戦況はこちら側の優位に傾いていたことでしょう。

 ですが僕はそこまで地球人類が賢いというか、欲を持たずにいられる種族だとは思っていないのです。人類を信じられなかったというよりは、強欲さの方が信じられたというか……」

 

「パンドラボックスの独占を目論む者達による争奪戦か」

 

「危惧しないわけにもいかないでしょう? 僕はこれで私欲に走らずにパンドラボックスを活用できたと自画自賛したりしちゃいますが、正直、この禁断の果実とでも言うべき品を安心して預けられる相手はちょっと思い至らなかったわけです。

 個人で見れば信頼に値する相手でも、勢力や集団に属しているとなると個人の思惑なんて、あっさりと踏みにじられるものですし」

 

「否定できないのが頭の痛いところだな。このパンドラボックスの記録の中にも、土壇場に追い詰められるまで手を取り合えない地球の光景がいくつもある」

 

「パンドラボックスを公開する事でかえって地球圏に混乱を招きかねないと考えたのが、僕がこれを秘匿した理由の一つです。もう一つはこれらの情報はこの世界の未来ではなく、あくまでも似たような別世界の記録であるという点にあります。

 例えばこの映像の世界ではシーブック君の乗っているF91は、アムロ大尉のνガンダムが戦場に出てからおおよそ三十年後に活躍しています。こちらでは一年以内にロールアウトしているのにね。

 他の世界ではそうなったからといって、この世界でも同じようになるとは限らない。この点が厄介なのです」

 

「世界が異なる事によって発生する時系列の差異を把握できなければ、かえって混乱を齎すか。確かに考えられる事態だな」

 

「ご理解いただけたなら幸いです。これらの記録の中にはこれから未来に起こり得るだろう可能性が多々含まれています。しかし、未来の情報に頼る事は極めて大きな危険性を孕みます。

 なぜなら未来の情報が絶対的に正しいものと限らない上に、常にそれが正しいかどうかを疑いながら参照しなければなりません。

 また悪意ある第三者による情報の改竄などが万が一行われた場合、未来の情報を頼った行動をしていたら目も当てられない被害を受ける事態となるでしょう」

 

 確実な未来が分かり、更にその未来をより都合よく変えられると分かった時、人は未来の情報や未来予知に頼る事だろう。

 だからこそもしパンドラボックスを知った他勢力の者達、あるいは別派閥の者による工作が行われた場合の危険性を説くヘイデスに、クワトロやトレーズ、ゴップらも異論はないようで今や地球圏の命運を握る場所に座す青年の言葉の続きを待っている。

 

「それになによりパンドラボックスの情報は“多すぎる”。参考程度に留める運用でさえ、参考とするべき情報の多さに、精査に膨大な時間を要します。

 プルート財閥においては僕と所長の二人だけで運用する分、指針がすぐに決まったので情報の取捨選択にさほど時間を要しませんでしたが、これを公表となれば使い方ひとつ決めるのにも膨大な時間を求められたでしょう」

 

 至高神ソルを作り出した御使い達の活動期間は長く、それに比例してパンドラボックスに記録された情報の量も、天文学的な容量と期間に及んでいる。

 ガンダム一つをとっても、この世界は宇宙世紀メインだがアナザーガンダムのどれが、どの程度、根幹の設定に絡んでくるか分かったものではない。

 この世界では新機動戦記ガンダムWの世界観が含まれているが、どこでGガンダムやガンダムXの世界観がひょっこり顔を覗かせるか。

 

 ヘイデスとしては特にゲッターロボ関連の設定については、神経を尖らせていた。旧アニメ版や百鬼帝国までの漫画版ならば、ゲッターエンペラーやゲッター艦隊まで話が飛ぶ可能性は極めて低いかゼロといってよい。

 だが、インベーダーの出てくる真!!ゲッターロボや神ゲッターの出てくるネオゲッターロボ、ゲッター聖ドラゴンや神々相手に喧嘩を売りに行く新ゲッターロボは、よりゲッター線の深淵に近づく為、距離を置いたお付き合いをお願いしたのである。心の底からね。

 このままこの世界では、初期アニメ版軸のままゲッターロボには活躍していただきたいものだとヘイデスは祈っている。

 

「これからパンドラボックスの情報を利用するにしても、当面は存在が確定している侵略者達相手に情報を絞って検索し、これから実行される可能性の高い作戦や投入される機動兵器への対抗策を練るのが、現実的で有効的な使い方です」

 

 ついでに言えばマジンガーもここ数年でとんでもない厄ネタになったものである。スパロボにも既に参戦済みの例のZEROさんだ。

 ユーゼスも目を丸くして驚くような因果律干渉能力を持ち、驚異的な進化性を兼ね備え、困った精神性まで持つ彼の存在は、ヘイデスが極力思い浮かべる事さえ避けるほどだ。

 ゲッターエンペラーと並んで語られるレベルのマジンガーの出現は、ヘイデスにとってそりゃないよと嘆きたくなる案件だ。まあ、そんなゲッターエンペラーも石川ワールドの仏の軍団以下と評価されることもあるなど創作の世界は実に広い。

 

「ではユーゼスの狙いは、パンドラボックスに記録された数多の世界の情報というわけか」

 

 クワトロの呟きにアムロが続いて自分の意見を口にした。集まったメンバーのほとんどは、この時代に於いても未来のSFめいた情報を咀嚼するので精一杯だ。

 

「ユーゼス自身も異世界から来たんだろう? なら世界と世界を渡る技術を持っている事になる。パンドラボックスに記録された世界の“座標”が分かれば、さらに別の世界へ渡る事も出来るようになる。それも狙いの一つじゃないのか?」

 

「ワープできるにせよ、向かう先の座標が無ければどうなるか分かったものではないか。アムロの言う可能性もあるな」

 

 ヘイデスは地球の誇る二大トップエースの推測に頷きながら、ユーゼスが真に求めるものについて、多くの覚悟を生唾と共に飲み下しながら口を開く。

 

「お二人の推測も彼の目的の内に含まれているでしょう。ですがユーゼスの最大の狙いは、このパンドラボックスを元々搭載していた機体──コロニーを破砕する事でコロニー落としを防いだフェブルウス、そしてシュメシとヘマーにこそあります」

 

 その言葉にホールの誰もが視線を双子らに向けた。事前にこの話をすると相談し、決めていた双子は臆した様子もなく一歩前に出た。

 ソルとしての記憶を完全に取り戻していた影響もあったろうが、実に堂々とした姿は外見年齢以上に精神が成熟した状態になったように見える。

 

 ヘイデスの背後に映し出されていた映像が変わる。それはこちらの宇宙に転移し、今まさに地球に落ちようとしているコロニーを捕捉したフェブルウスの視界だ。

 コロニー周囲には核バズーカで武装したザクⅡC型や地球連邦軍の艦隊の姿があり、視界の主であるフェブルウスは見る見るうちにコロニーへと接近し、転移前にユーゼスの襲撃によって大破した状態であるにもかかわらず、コロニーへ体当たりを敢行すると見る間に破砕して行く。

 元々、コロニーが連邦艦隊の猛攻によって損傷していたのに加え、中身が空洞だったのも幸いしただろう。

 

 大気との摩擦熱──ではなく断熱圧縮によって燃え尽きるコロニーの破片に紛れて、当時はまだフェブルウスの名前もなかったソルの成れの果ては、残された力を振り絞ってコロニーの破片の落下による衝撃を相殺しながら海へと落ち、暗い底へと落下していった。

 次に映し出されたのは防護服を着こんだヘイデスと所長夫妻がフェブルウスの中から、赤ん坊のシュメシとヘマーを発見し、連れ出す場面だった。この時はまだフェブルウスと双子の間に、自我の差異がなかったころである。いわば三位一体のような状態だ。

 双子の素性についてはヘイデスらと血が繋がっていない事、異様に成長が早い程度の情報しか知らされていなかったこの場の者達にとって、双子がコロニーを破壊したロボットの中から発見されたというのは、驚天動地の情報だ。

 

「プルート財閥が発見し、機体にフェブルウス、赤ん坊にシュメシとヘマーと名前を与えてから今日にいたるまでは皆さんの知るところです。ではフェブルウスがこちらに来る前は? どうして傷ついた状態でこちらの宇宙に転移してきたのか? その答えがコレです」

 

 こちらの世界に来る前の御使いの下にあった頃、ソルが観測した高次の存在へと進化した者達の姿が映し出される。

 Zシリーズの多元世界でもっとも早く次元制御技術を手にし、次元力=オリジン・ローを我が物とした別の地球エス・テラン。その住人達が動植物も細菌もウイルスも鉱物さえも、『霊子』を一つにしたことで誕生した四人の御使い。

 

 喜・怒・哀・楽の四つの感情を一つずつ分け持つ彼らが多元世界を支配し、管理する為に作り出したシステム【至高神ソル】。

 御使いの望むままに次元力を抽出し、行使し続けるソルだったが、やがて多元世界の全ての物質を成り立たせる霊子と【真化融合】して自我を獲得するに至る。

 自我に目覚めたソルは創造主である御使いが、自分達の支配を盤石にする為に真化しようとする他の生命を種族単位で滅ぼし、星を砕き、銀河を消す事さえ厭わないのを認められずに自ら砕けてその行いを否定した。

 

 その後の一億二千万年以上経過してから終わった御使いと至高神Zの運命については、もはや語るまでもないだろう。

 細かく話せばキリがないので、ヘイデスもそこらへんは掻い摘んで話すにとどめている。それでもかなりの情報量だが、数年がかりで完結したシリーズのあらすじと設定を最低限説明するだけでも膨大な量になるのは致し方ない。

 

「キモはこの【真化】と呼ばれる現象についてです。多元世界において高次元生命体、例えば肉体が滅んでも精神だけで生存できる生命体などですね。これへのアセンションを示す言葉です。細かい違いはありますが、ここでそこまで説明する必要はないでしょう。

 実例としてはこの映像の中にある、マジンガーの源流の一つであるゼウス神、太陽の翼と呼ばれた天翅などですね。

 一方で誤った真化に至ったのはミケーネの支配者闇の帝王ことハーデス神。こちらでは同名の別人でしょう。ゲッター線に寄生するインベーダー、ブラックホールの化身宇宙魔王、星々の悪意たるズール皇帝ですね。

 そしてこの世界で僕達が戦っている敵の中では、バラオやムゲ・ゾルバドスが該当しますかね。ライディーンと獣戦機隊の皆さんが彼らにとっての天敵、ウイルスに対するワクチンみたいなものですから、非常に、ひっじょ~~~~うに期待していますよ」

 

 ややこしいが【真化】と【真化融合】は別物で、ヘイデスはこの場での説明は避けた。あくまで主題はユーゼスの狙いについて、であるからだ。

 

「話はまだ続きますから、もう少しお付き合いください。ユーゼスの狙いはフェブルウス、シュメシ、ヘマーを手に入れて、【真化】の理を手に入れる事と推測しています。

 肉体の枷に縛られた生命体から、高次元生命体へと進化し、さらに次元力に由来する事象制御技術を手に入れて、因果律の制御技術を完成させる事で多くの世界の因果を支配する君臨者か、調停者にでもなるのが目的ってところですかね。

 僕の見立てはどうでしょうか、クォヴレー君?」

 

「ヘイデス総帥の読みでほぼ間違いはないだろう。奴は並行世界の同位体でも同じように因果律の解明と支配を高い確率で目論んでいる。その度に敗れ続けてきたが、この世界でその敗北の因果を終わらせるつもりでいる。

 奴の行いはこの宇宙だけでなく、多くの宇宙とそこに住む生命に災いを齎す。だからこそ、俺も奴に気付けた。奴が俺の顔と名前を利用していたことで、俺に対する不信感が皆の中にあるのは理解している。

 その疑惑や不信感はそのままで構わない。俺のこれからの行動で、皆に俺の真意を示し続けて行くつもりだ。だから俺が共に闘う事を、どうか許してほしい」

 

 クォヴレーからDCメンバーに寄せられるのは、向けられる側が不思議に感じるほどの信頼だった。クォヴレーとて並行世界の同位体だと分かっている。

 分かっているが、それでも根っこのところが変わらないと一目で分かるから、どうしたって心が緩んでしまいそうになるのだ。その分、最初の世界で関係の深かったゼオラとアラド達のそっけない態度が少し悲しいけれど。

 

 その日の会議は深更の時刻まで続いた。パンドラボックスのみならずフェブルウスと双子もユーゼスの狙いと判明した以上、彼らは対バサ帝国に於いて最大の囮となり得る。

 また異世界とはいえラプラスの箱の中身を複数記録しているパンドラボックスも、ユーゼス云々を抜きにしても誰もが渇望する価値を認められるに至った。

 

 本大戦中においてこの超特大の爆弾をどう扱うのか? また技術開発と戦略に利用するにしても、どの程度の人物にまで存在を知らせていいのか?

 戦中戦後に至るまでラプラスの箱を上回りかねない厄介な代物が、そう、パンドラの箱と言う名前の通りの代物が地球圏に存在している事が知れ渡ってしまったのだから。

 

 

 地球圏某所、バサ帝国首都兼旗艦ヘルモーズ、謁見の間にて。

 地球より帰還したユーゼスが、ラオデキヤに謁見していた。その場には御使いの残党である真徒達とラオデキヤ、ユーゼスの姿のみがある。

 真徒達はかつて御使いの圧倒的な力に心折れ、絶望し、彼らを崇拝するに至った人間達である。自分達こそ御使いに選ばれ、真化の道を辿る唯一の選ばれた存在であると考え、他者を見下し、蔑む精神構造を共有している。

 多元世界で御使いが打倒された際に全滅したと思われていた彼らだが、生き残ったごく少数がユーゼスと偶然遭遇し、ユーゼスに洗脳される形で配下に就いている。

 

「ラオデキヤよ。私はこれからディス・レヴの封印の解除と対抗策を練る。その間、適度にDCに仕掛けるがいい。ソルの成れの果ての影響により、奴らに真化の兆しが生じる可能性が高い。そのデータを収集するのだ」

 

 青いバイザー付きのマスクを被る真徒達は、皇帝ラオデキヤがユーゼスの創造物であり、傀儡に過ぎない事を知っている。自分達こそがユーゼスの真の忠臣であると盲信しながら、ラオデキヤを心の中で嘲笑していた。

 

「エル・ミレニウムとゼル・ビレニウムの使用を許可する。またアインストとムゲ・ゾルバドス、バラオの動きには注視しておけ。ムゲとバラオの在り方は負の無限力に近しい。モルモットとして、そしてまた試金石としてちょうどよい。

 DCが奴らに敗れた際には、私がディス・ジュデッカの調子を確かめるのに手頃な相手だからな。真徒達よ、お前達にもそろそろ私の為に戦ってもらおう。備えは万全にせよ」

 

「ハッ! 我らが真の主ユーゼス・ゴッツォ! あまねく宇宙に救済を、サルース!」

 

「よいな、ラオデキヤ」

 

「はっ」

 

 言葉短くラオデキヤが玉座に座したまま首を垂れるのを見届けて、ユーゼスは謁見の間を後にする。集められていた真徒達も自分達のアンゲロイ・アルカやエル・ミレニウムといった機体の調子を確かめるべく、ヘルモーズの各所へと散ってゆく。

 やがてラオデキヤを残すのみとなり、顔を上げたラオデキヤが自分以外誰も居ない謁見の間に視線を向けた時、彼の正面の空間が揺らいでそこに小さな人影が姿を露にする。

 

 それはパリ奪還戦にて呪いを返されて半死半生の憂き目に遭い、半分発狂した妖魔帝国の祭祀長ベロスタンであった。

 だが、見た目こそベロスタンに相違ないが、果たして“中身”はどうだろうか。小さな体から迸る妖気の凄まじさは、シャーキンを上回りバラオを彷彿させるレベルに達している。

 

「この世の外からやってきた者。因果の糸を手繰る術持つ賢者。因果の鎖に縛られた愚者。愚かしく賢き者に作られた虚ろなる器。皇帝を僭称する傀儡。ククク、ここまで侵入するのには苦労させられたが、お前を私の駒にすれば色々と面白くなる」

 

 その時、ベロスタンの背後に巨大な影が浮かび上がる。妖魔帝国の母艦ガンテを思わせる五本指の手だ。その指先に顔を備え、一つ一つが宇宙を飲み込むような悪意に満ちた嘲笑を浮かべている。

 精神が崩壊しかけているベロスタンをマリオネットのように操り、ヘルモーズに侵入させた者、バラオすら操る妖魔帝国の真の黒幕。漫画作品ゴッドバードでそのように設定された宇宙の悪意たるもの。

 ベロスタンが一歩、二歩とラオデキヤへと近づいて行く。ラオデキヤはベロスタンの背後の者から発せられる重圧に当てられてか、身じろぎもしない。そうしてベロスタンがラオデキヤを支配するべく、妖術を行使しようと右手を伸ばした時、ラオデキヤの唇が動いた。

 

「不遜である」

 

「ぬっ!?」

 

「余はラオデキヤ・ジュデッカ・ゴッツォ。この宇宙の悪を担う駒の指し手よ。余を支配しようとは片腹痛い」

 

 すっくと立ちあがるラオデキヤの背後に浮かび上がる巨大な黒い影。灰色の流体のような翼を広げ、白き祭壇を抱く黒き影を前に、ベロスタンを操る者は動きを止めた。

 

「ほう。ふふふふ、なるほど、なるほど? お前はユーゼスではなく、別の指し手の駒だったか。持ち主の居る駒を横からかっさらうのは、いささかマナーが悪い。ここは退かせてもらおう。

 ああ、楽しみだ。この世の理の外から来た者よ。まつろわぬ霊の王よ。君ならばこの宇宙の均衡を崩せる! いつまでも勝てず、負けないボードゲームを終わらせられるだろう! ふははっははははははは!」

 

 ベロスタンはまるで夢を見ていたのだというように、笑い声と共に姿を消した。ラオデキヤは背後に影を浮かび上がらせたまま、ベロスタンの消えた虚空を見つめ、これだけを口にする。

 

「我が忠誠は真なる主に」

 

 ラオデキヤの言う真なる主が、ユーゼス・ゴッツォでない事だけは確かだった。

 

<続>

◇ベロスタンを操っていた■■バラオのテンションが爆上がりしました。

◇ラオデキヤの忠誠はユーゼスに捧げられていないようです。

◇■イサ■・■フェ■がこんにちは! しました。

 




スーパーロボット大戦αにはドリームキャスト版があるのですが、そちらですとユーゼスはルート次第でラオデキヤに■■されちゃうんですよね……。

Q この世界のユーゼスはラオデキヤに反逆される? されない?


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第七十七話 敵が強くなるなら味方はもっと強くならねば

正義の味方に一度の敗北はまだしも、完全敗北は許されませんからね。


 ユーゼスとの戦いにより壊滅的な被害を受けたエリュシオンベースを離れ、機動要塞タルタロスを加えたDCは、トレーズらと別れた後、事前に用意されていた拠点の一つへと移動していた。

 オデッサやベルファストといった連邦系の基地やヘルズゲートという元ジオンの基地なども候補に挙げられていたが、プルート財閥が主導して建造した基地の中から選ばれたのはアイスランドにあるヘブンズベースだった。

 ガンダムSEED DESTINYで登場した軍事施設と同じ立地、同じ名前になった基地である。

小さな都市に匹敵する規模を持ち、内部にはMAやスーパーロボットを生産可能な工場に食料プラント、核攻撃に耐える外殻に衛星軌道上からの砲撃に備えた多層バリアを完備とエリュシオンベースの代わりとしては十分な拠点だ。

 

 そのヘブンズベース内部にある艦艇用のドックに、シャドウセイバーズの母艦ギャンランドの姿があった。ギリアム、ヴィンデル、アクセル、レモン、シロッコといった首脳部に加えて、ラミアとエキドナが一堂に介して今後の活動について会議が行われている。

 これまでDCとは別行動を取り、世界各地を飛び回って侵略勢力に掣肘を加えてきた彼らだが、今後、敵勢力から目の敵にされるだろうDCに対する協力姿勢について、ちょうどギリアムから指示が出されているところだ。

 

「アクセル、ラミア、エキドナ、お前達にはこれからDCと行動を共にしてもらいたい」

 

 ブリーフィングルームで全員が立ったまま会議を進める中、ギリアムから発せられた指示にラミアとエキドナはこれといって反応を見せなかったが、アクセルだけは赤い眉をわずかに動かした。

 アクセルのソウルゲインをはじめアンジュルグやヴァイサーガ、ラーズアングリフの修復は終わっており、戦力として数えられる状態にある。あるが……。

 

「これまでのような影働きはもう終わりということか」

 

「ああ。これからはこれまで以上にDCに注意が向けられるだろう。今や地球圏最強の戦力は彼らだ。彼らを倒す事が地球征服への大きな一歩となるのを、どの勢力も認めるところだ」

 

「そいつは俺も認める。民間人の参加者が多すぎるのと民間企業に頼っている点は、情けない限りだがな」

 

「ふ、そればかりは否定できないが、だからこその柔軟性と奇抜性、ここぞという時の爆発力がある。それに参加している軍人達の、特にパイロットの質の高さは今の連邦軍の中で群を抜いている。

 素性や部隊に参加している理由も様々な混沌とした部隊だが、技量と戦力もまた桁外れだ。そんな部隊に派遣できるのは、俺達シャドウセイバーズでも数えられる程しかいない。そして、お前達ならば自信をもって送り出せるという話だ」

 

「おだてたところで何も出ん。それが命令ならば否はない」

 

 結局のところ、アクセルに命令を拒否するつもりはなかった。一部の突出した戦力に戦局を委ねるのはあまりにリスクが多いが、DCの場合、その突出具合が凄まじすぎて、参謀本部も前例のない超戦力の扱いには苦労していると簡単に想像が付く。

 特にスーパーロボットの類はまったく新しい兵器であるし、基本的にオンリーワンだし、個性がバラバラだし、と現場もそれを戦略や戦術に組み込む立場の者も頭を抱える代物だ。

 軍での運用を前提としたグルンガスト弐式は、貴重な例外といえる。

 ここで黙ってギリアムからの新たな指令に耳を傾けていたラミアが口を開いた。彼女の自発的な質問は珍しい。

 

「命令は了解いたしました。ではギリアム司令やヴィンデル様、レモン様、シロッコ副司令はいかがなさるのですか?」

 

 ギリアムはラミアがまともな言葉遣いをするのにもすっかり慣れたもので、レモンとシロッコに目配せをしながら人造の美女に答えた。

 

「俺とヴィンデル、シロッコ、レモンは一度バベジン研に向かい、ジ・Oやツヴァイザーゲイン、ヴァイスセイヴァーを完成させる。それからお前達の後を追う形でDCに合流する予定だ」

 

「離れ離れで寂しいかもしれないけれど、シャドウセイバーズの実力を宣伝しておいてくれるかしら? 貴方達なら出来るわよね、アクセル、ラミア、エキドナ?」

 

「はっ、レモン様のご命令であれば」

 

 と創造主を相手に緊張しているのか、気を張っているのか、鯱張って答えるラミアに隣に立っているエキドナも同じように変わらぬ鉄仮面の表情のまま答える。

 

「性能の全てを持ってお応えします」

 

「ふふ、素直な子達でありがたいわ。それとヴィンデルがツヴァイザーゲインを使うから、余ったヴァイサーガの他にもランドグリーズやアシュセイヴァー、量産型アシュセイヴァーも予備機として持っていきなさい。

 エキドナ、貴女のラーズアングリフも悪くないけれど、アンジュルグの予備パーツを組み上げてもう一機用立てたから、状況に応じて乗り分けなさい。機体のデータはこれね」

 

 レモンからタブレット端末を手渡されて、エキドナは素早く自分の為に用意された機体アンジュルグ・ノワールのデータをチェックする。

 黒く塗り替えられたアンジュルグには、コルヴァン・カノンという銃砲を備えたウォーハンマーモドキの武装とシャドウ・バックラーという丸盾が装備されるなど細かな仕様が加えられている。より近・中距離に特化した仕様になったようだ。

 

「ありがとうございます、レモン様」

 

「一足先にあの部隊に行ったあなた達がどんな経験を積んで、どんな成長を遂げるのか、とても楽しみにしているわ」

 

 母のように慈しみを湛えて微笑むレモンに、アクセルはこれ以上何を言っても無駄だと諦め、ラミアとエキドナは明らかに不必要な程、レモンの笑みを凝視するのだった。

 

 

 先の戦いに於いて陽動によって分断されていたとはいえ、ユーゼスと戦えなかった者達、あるいはバサ帝国の猛攻を前に奮戦しつつもアストラナガンやジュデッカを相手には戦えなかった者達。

 そうした悔しさを抱えたパイロット達は積極的にシミュレーターや実機での訓練を重ね、メカニック達もオーバーホールの終わった機体の手入れに余念がない。

 

 パンドラボックスの解放によって、膨大な知識と技術の共有がなされた各スーパーロボットの博士達も革命的なブレイクスルーを迎えて、地球防衛の為に夜を徹して研究に勤しんでいる。

 ずらりと並んだシミュレーターからぞろぞろと降りてきたメンバーの中には、アラドやゼオラ、ラトゥーニ、オウカ、シーブックにセシリー、リョウ、アディンなどの若者組も居れば、バニングやベイト、アポリー、ロベルトらベテランの姿も多い。

 そしてシミュレーターを出た者の中には、クォヴレーの姿もあった。

 

 口々に模擬戦の感想や反省点を口にし、自分達の糧とするべく意見交換を始める者達の中にあって、クォヴレーはシミュレータールームを出て行くバンとフィーネの姿に気付き、その後ろ姿に視線を送る。

 クォヴレーが番人としての使命を担ってからそれなりの年月が経過し、多くの経験を積んできてはいるが、彼は根本的なところで不器用である。だから、バン達を相手に気の利いた言葉の一つも言えないまま今に至っている。

 

「やっぱり気になる? クォヴレー」

 

 クォヴレーの視線の先に居るのが誰なのか、気付いたゼオラが気遣わし気に声を掛けた。

 

「ああ。気にならないと言えば嘘になる」

 

「ユーゼスがバンや私達を騙していたのが悪いのであって、あなた自身に非があるわけじゃないわ。それはバンとフィーネも分かっているのよ」

 

 ゼオラに続いてカロリーバーをボリボリ食べていたアラドも自身の所感を口にした。クォヴレーやバン達へのフォローというよりは、第三者視点からの客観的な意見といったていである。

 

「頭じゃ分かっているけど、実際に同じ顔のクォヴレーを見るとモヤモヤしちまうんだろうな。それにジークとシールドライガーの件でピリピリしているってのもある。せめてジーク達に異変がなかったら、クォヴレーと落ち着いて話をする余裕があったと思うぜ」

 

「そうか」

 

 言葉の短いクォヴレーにオウカが言葉の足りていない弟を見るような目で、面倒見の良さを発揮して声を掛ける。

 クォヴレーからするとオウカとラトゥーニはその存在はゼオラ達から聞かされていたが、直接会う機会の無かった相手だ。最初にクォヴレーが出会ったゼオラ達の知るオウカ達とは別人だと分かっていても、仲間の家族となれば気を許しやすい。

 

「声を掛けづらいのなら、私達もいっしょに行きましょうか? 私達も彼らとはパリからの付き合いですから、決して長い付き合いではありませんが、それでも一人よりは心強いでしょう」

 

「……気を遣わせてしまって済まない。だが、俺も見た目通りの年と言うわけでもない。彼らとは折を見て話をする。このままぎこちなさを抱えていては、これからの戦いで支障が出る」

 

「見た目通りじゃないって、俺らとあんまり変わらないように見えるけどな。シュメシとヘマーみたいに、見た目よりずっと子供だってわけでもないんだろう?」

 

「ああ。アラドやオウカくらいの子供がいてもおかしくないくらいの年だ」

 

「ええ!?」

 

 とクォヴレーからの意外な告白にアラドばかりでなく、ラトゥーニやオウカらも驚きの声を上げる中、クォヴレーがほんの少しだけ柔らかく笑った。

 

「冗談だ」

 

 あまりに分かりづらいクォヴレーの冗談にゼオラ達が反応できずにいる間に、バン達はシミュレータールームを離れて、基地内の格納庫の一角に向かっていた。

 現在、ヘブンズベースにはアナハイムやサナリィ他、各研究所から送られてきた新機体や強化パーツ、追加武装で溢れかえっている。

 侵略勢力との更なる激戦が予想され、彼らとの戦いで先鋒ないしは楔役を任されるDCメンバーの生存率や勝率を少しでも高めようという心遣いと、政治的配慮がブレンドされた結果だ。

 

「ZZとユニコーンはまだいいけど、Zのフルアーマーは、これってどうなの?」

 

 そう疑問を素直に口にしたのは、ジュドーである。傍らにはバナージの姿もある。彼らは愛機に用意された強化装備のチェックの為に、格納庫に足を運んでいた。

 自分達以外の機体にも強化装備が用意されており、先のジュドーの台詞はフルアーマーを装備したZガンダムを見てのものだ。バナージもジュドーと同じものを見ながら、眉根を寄せた。

 

「防御性能は上がっているんだろうけれど……」

 

 エゥーゴから送られてきたフルアーマーパーツを装備し、ZZは順当に火力、装甲共に強化されている。

 バナージのユニコーンも彼の友人であり、半ば成り行きでネェル・アーガマに乗り続けているタクヤ・イレイのアイディアを用いたフルアーマー化が施されて、エネルギーに負担を掛けない実弾メインの重武装化に成功している。

 

 ジュドーが疑問を呈したように、フルアーマー化はカミーユがメインパイロットを務めるZガンダムにも施されているのだが……。

 フライングアーマーやZガンダムの開発に寄与した経験を持ち、プチモビなどの造形にも明るいカミーユは、実際にフルアーマーを装備したZガンダムを見上げながら、ジュドーとバナージに答えた。

 

「Zの場合は武装が増えたわけでもないからな。背中のフライングアーマーを外しているから、ウェイブライダーに変形できなくなっているし、重力下での運用は考えない方がいいな。

 武装もこれといって追加されていないし、変形機構の脆弱さを補完する事に特化した装備だ。ただ追加装甲を組み合わせる事でサブフライトシステムとして運用できるのは、少し面白いよ」

 

「敵機が強力になった影響で、MSで共有できる武装の高火力化がますます増しているから、火力はそっちでカバーできるから良いけど」

 

 バナージは次々と搬入されてくるコンテナの一角に目を向けて、その中身が重力兵器や超電磁エネルギー、光子力を利用したスーパーウェポンであるのを思い出した。

 

「ヒュッケバイン系のグラビトンランチャーとかを、核融合炉を積んだ機体でも使えるようにしようとしているんだっけ?

 ゲシュペンストMk-ⅢとかバルゴラCSの性能もすごいし、アナハイムやサナリィが慌てて装備を送ってくるのもちょっと分かるかも」

 

 ユニコーンのビームマグナムでさえ、まあまあ強い武器くらいの位置に落ち着きつつあるのだから、ここ最近の馬鹿火力主義の台頭の勢いは凄まじい。

 

「ネオガンダムのGバードやZのハイメガランチャーを量産して、オプションの一つにする計画とか建っていてもおかしくない勢いだな」

 

 呆れた表情を隠さないバナージに、ジュドーはメカニックのアストナージから聞いた噂を口にした。

 

「ヘイデス総帥は最低でもZZ並みの火力を持たせたいって噂だぜ。ディス・ジュデッカなんて化け物を見た後、それでも足りないかもって思っちゃうけどさ」

 

「それ位の力が必要になる戦いが待っているのは、確かだからな」

 

 それは若きニュータイプの勘というよりも、単純に多くの戦場を経験したパイロットとしての確かな予測だった。実際、DCにいい様に叩きのめされてきた敵勢力は、今度こそDCとそこに参加している因縁のスーパーロボット達を倒さんと執念を燃やしているのだから。

 フルアーマー以外にもDC側で魔改造を施したFAZZやZプラスが完成し、ヴァルシオーラ用の追加装甲、グルンガスト並びにヒュッケバインの強化改造プランが並行して進められている。

 

 これから激戦になる事が分かり切っているのだから、それに備えるのは当然の話だろう。ただそれが上手くいっていない者達も居る。マシンセルが変化した繭に包まれたシールドライガーが、まさにその一例であろう。

 巨大なマシンセルの下には多くのメカニック達の他に所長の姿があり、なによりバンとフィーネも顔を見せていた。

 

「なあ、所長さん、ジークの様子は相変わらずか?」

 

 今日の所長の服装は黒を基調としつつ複雑な刺繍の施されたベスト、自然な緑色や鮮やかな赤を使ったスカート、更に真っ白なエプロンというアイスランド風の民族衣装だ。その上に衣装型コンピューターでもある白衣を重ねているのは、いつも通りである。

 

「いえ、そろそろ方向性が定まってきたみたいですね」

 

「じゃあ、進捗があったのか!?」

 

「バンは心配のし過ぎよ。ジークもライガーもどこかが悪くてこうなったわけではないんだから」

 

「俺はフィーネほどゾイドの声が聞こえないから、心配が尽きないんだよ」

 

「まあ、マシンセルが繭を形成して、内部で機体を改造するなんて初めての例ですし、バン君が心配するのも無理はありません。

 中のジークですが、こちらのデータバンクにアクセスして進化先の選定を行っていましたが、今はもう形作りを進めています。その内、繭を破って新しい姿を見せてくれますわよ」

 

「新しい姿か。他のライガー系を参考にした機体になるっぽいな」

 

「ブレードライガーやライガーゼロ、それに他のライガー系の機体へのアクセス頻度が高いですねえ。デスザウラーやデススティンガーもちょっとばかり参考にしていますが、まあ、あの子達はあの巨体ありきの超性能ですから、ああはならないでしょう」

 

「ライガーがあんな風になったら、デスライガーって呼ばないといけないかしら?」

 

「そうはならないって話したばかりでしょうに。でもまあ、ゲッター線がどう作用するか分からないところはありますね。早乙女博士もゲッタードラゴンの次の機体の開発で忙しい中、アドバイスを下さっていますが、色々と目が離せませんよ。ジークもライガーも」

 

「俺としちゃ早く元気な姿を見せて欲しいぜ」

 

「ふふ、そうですね。それが一番でしょうけれど、そう時間はかかりませんよ。マシンセルとゲッター線、オーガノイド、ゾイドのハイブリッドの完成は間近です。

 さあ、シミュレーター終わりで疲れているのでしょう? 二人ともきちんと休憩を取りなさい。いつでも万全に体調を整えておくのも、優秀なパイロットの素質ですからね!」

 

 まるで本当の母親のようにグイグイ背中を押して休ませようとしてくる所長に、バンもフィーネも抵抗できそうになかった。

 ジークとシールドライガーの進化は順調に進み、シャドウセイバーズの合流の他、ガンダムMk-Ⅱをベースにハンブラビとの強化合体機と呼べるマスクコマンダーがヤザンに支給され、サナリィからもクラスターガンダムが納入されている。

 

 他にもボアザン円盤からのリバースエンジニアリングとボアザン星人の協力者の努力によりワープ装置の開発に成功し、所属艦艇への取り付け作業中だ。

 敵も味方も血道を上げて生き残りを図り、世界の命運は佳境を迎えているのは明白であった。

 

 このわずかな休息の後、ある疑惑を確かめる為にボアザンのルイ・ジャンギャル将軍の手によって、ボアザン星の風土病を引き起こす細菌が戦場に散布され、剛兄弟が感染。

 彼らがボアザンの血を引く事が判明すると同時に、ボルテスVの強化合体形態ボルテスⅦが登場──共通ルート第三十九話。

 バーム星のリヒテル提督の下には親友であり、バーム屈指の天才科学者アイザムが訪れて、彼の開発したメカ戦士や超弾性金属、反アイザロン粒子砲でダイモスを苦しめ、ガーニィ・ハレックが烈将フォボスに乗って助力──共通ルート第四十話。

 地上に残ったムゲ残党戦力が三将軍の一人ヘルマット将軍に率いられて、誘い出した獣戦機隊と決戦を行い、その最中にダンクーガとブラックウィングが合体してファイナルダンクーガが顕現──共通ルート第四十一話。

 百鬼帝国が裏から支配していた傀儡の小国を攻略するも、既にもぬけの殻であったことが判明、予め設置されていた自爆装置により攻略中だった軍事基地が消滅──共通ルート第四十二話。

 

 そしてジークとシールドライガーの進化が終わったのは、この次の戦いの最中であった。

 

<続>

■新たな拠点ヘブンズベースに移動しました。

■アクセル、ラミア、エキドナが仲間になりました。

■ハレックが仲間になりました。

■ソウルゲイン、ヴァイサーガ、アンジュルグ、アンジュルグ・ノワール、ラーズアングリフ、ランドグリーズ、アシュセイヴァー、量産型アシュセイヴァーを入手しました。

■ボルテスⅦが開発されました。

■ダイモスが強化されました。

■烈将フォボスが開発されました。

■ファイナルダンクーガが登場しました。

■デザイアが開発されました。

■Z、ZZ、ユニコーン用のフルアーマーを入手しました。

■νガンダム用ヘビーウェポンシステムを入手しました。

■クラスターガンダムを入手しました。

■マスクコマンダーを入手しました。

■Zプラスの魔改造機Z++を入手しました。

■FAZZの魔改造機FAZZZを入手しました。

 




マスクコマンダーはGARMSに出てきた機体です。

追記
フルアーマーZガンダムは、コミックボンボンで連載されていた『超戦士ガンダム野郎』に出てきた二回目の方のフルアーマーZガンダムになります。一回目の方だと、リ・ガズィのBWSベースのアーマーになってしまいますからね。


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第七十八話 自分が正しい、絶対の善であると信じられるのは心地よい

ただし他者から見てどう映るか、実際のところどうなのかは別として。


共通ルート 第四十三話 盲目の信仰

 

 ヘブンズベースに拠点を移したDCだが、その膨大な戦力が常にひと塊となって戦場を駆け巡っているわけではない。

 所属艦艇だけでもハガネ、シロガネ、ラー・カイラム、ネェル・アーガマ、ペガサスⅢ、アルビオン、スペースアーク、ブレイウッド、ガランシェール、キング・ビアル、ガンドール、マグネバード、ウルトラザウルスと機動要塞級のタルタロスを含むトンデモ艦隊だ。

 おまけに予備として、地球圏で運用されているほぼすべての艦艇が複数セット用意されているときた。

 

 地球圏内のどの軍事拠点もさらっと攻略できそうな超戦力だが、その超戦力を遊ばせるのはあまりに勿体ないと誰もが考えた結果、

・アレスコーポレーション所属の傭兵部隊と共にヘブンズベースを防衛する部隊。

・周辺を警戒するパトロール部隊。

・地球圏の救援要請に応じる高速部隊。

おおよそこの三つに部隊を分けて、臨機応変に過酷な戦場に対応している。

 メタな視点から見ると、ステージの出撃選択で選ばれなかった母艦とユニットは、他所の戦場で活躍しているというわけだ。

 

 この時、アルビオン艦長のシナプスを臨時司令とし、キング・ビアル、ペガサスⅢの三隻からなる艦隊はヘブンズベースのあるアイスランド周辺を定期パトロール中だった。

 スーパーロボット・ザンボット3×3を中核的な打撃戦力として、ベテランの駆る高性能MS群によって構成されるバランスの良い構成と言える。

 

 今では当たり前となったミノフスキークラフトの搭載によって、艦隊から出撃したMS部隊はSFSを使用せず、フォーメーションを維持しながら空を飛んでいた。

 バニングのシルヴァ・バレト、モンシアのフルアーマーガンダムMk-Ⅲの他、リョウのSガンダムはパーツの供給を受けてEx-Sガンダムへ、シンはFAZZからZZのバリエーション機であるジークフリートに乗り換えている。

 

 アデルとキースもシンと同じくFAZZからジークフリートに乗り換えている。

 悲しいかな、FAZZはあくまでZZのフルアーマー装備時の性能を検証する為の試験機に過ぎず、スペックはともかく実際の性能はハリボテ呼ばわりされていた機体だ。

 量産型ZZを上回る性能を誇るジークフリートが確保できたなら、乗り換えてもおかしくはない。ただジークフリートは可変機である為、FAZZよりも扱いが難しいのは否めない。

 それとて今日にいたるまで実戦経験を積んだキースとシンならば、その性能を十全に引き出せる。一年戦争以来の熟練者のアデルは言わずもがなである。

 

 アルビオン隊の中で機体の更新や強化があったのは、アデルとキースだけではない。地上仕様に戻したGP01に乗っていたコウは、Gコマンダーの増加装甲ユニットをベースにしたパーツを装備したGPコマンダーに乗っている。

 GPコマンダーはミノフスキークラフトで飛行可能なのはもとより、ホバーユニットによって地上でも高速移動が可能だ。

 

 ハイパー・メガ・ライフルやハイ・メガ・シールドなど強力な火器を装備しており、これはGコマンダーがνガンダムの試験機に陸専用の増加装甲を組み込んだ機体である為、一部の武装が共通していることによる。

 地上版オーキス、地上用MAとでも言うべき大火力、重装甲、重武装の機体であり、コウはうってつけのパイロットと言えよう。

 

 さてこうなってくると、ベイトのガンダムMk-Ⅳのパワー不足が目立ってくる。ガンダムタイプに恥じない基礎性能を持つが、特徴的なシステムが準サイコミュのインコム一基くらいのものであるから、どうしたって一段下に見られるのも無理はない。

 そうした事態を予見していたアナハイムとオーガスタ研が手を組み、今回、フルアーマーパーツが用意されるに至った。

 

 両肩にギャプランの如きメガ粒子砲内蔵のバインダー、胴体や脚部を守るスラスター内蔵の増加装甲に、ZZそっくりのバックパックが追加されている。

 バックパックにはハイパービームサーベル兼用のダブル・キャノン二門、更に二十一発入りのミサイルランチャー二基と本当にZZそのままだった。

 またかつてオーガスタ研が開発を担ったガンダム4号機のメガ・ビーム・ランチャーを発展改良させたものを装備している。

 

 増えた重量はパーツ内蔵のスラスターで補い、火力もマシマシとなったフルアーマーガンダムMk-Ⅳは、ベテランでも扱いづらいじゃじゃ馬と化したが、ベイトはベテランの意地からシミュレータールームと実機訓練に励み、短期間で乗りこなす事に成功している。

 ジェムズガンやジャベリン、F90、F91とMSには小型化の波が到来していたが、昨今の侵略者勢力に対抗する為の大出力、重武装化に焦点が合わされている昨今では、MSの大型化の逆風もまた吹き始めていた。

 機体を操縦するパイロットや整備する現場のメカニック達からすれば、どちらかに統一してくれと文句を言いたくなることだろう。

 それもこれも本大戦を地球人類が勝ち抜き、無事に生存権を確保出来たらの話であるが。

 

 そうした機体の刷新事情を迎えた彼らは、ザンボット3×3を中核にアルビオン隊、ペガサスⅢ隊が展開して、決められたルートを巡っている最中だ。

 鮮やかな緑から紅を纏いつつある秋のアイスランドを眼下に見ながら、程よい緊張感を残して各パイロットはモニターとレーダーを注視している。

 

「なあなあ、モンシアのおっちゃん」

 

 と親し気にモンシアに話しかけたのは、ザンボット3×3の勝平だ。一騎当千のスーパーロボットのパイロットもまだまだ中学生。相手が十歳近く年上の軍人相手でも、すっかり慣れたもので近所の兄ちゃんくらいの態度になっている。

 モンシアの方もそれに慣れたもので、これがコウやキースだったら怒鳴って怒るところだが、これでも勝平は民間人であるしDCの気風にすっかり慣れたので、気分を害した様子は欠片もない。

 

「おう、どうした。便所か?」

 

 バニングから特に注意も来ていないのを確認してから、モンシアは暇を持てあましているような勝平に答えてやった。

 

「違うよ! クワトロの兄ちゃんとかブライトさんが言っていたけどさ、そろそろ宇宙のティターンズをやっつけるらしいじゃん。俺達も宇宙に上がる話って、聞いてる?」

 

「耳ざとい奴だな。ジャミトフ大将から見捨てられているし、まだ細々とどっかの議員や将校から支援を受けちゃいるんだろうが、とっくに風前の灯火って奴よ。

 ベガとかバームとか、エイリアン共に止めを刺されるよりは、同じ地球人の手で終わらせてやるのがせめてもの情けだろう」

 

「分からなくはないけどさ。で、結局、俺達も戦うのかよ」

 

「どうだかな。クワトロ大尉とかエゥーゴ組からすりゃ自分達の手でティターンズを終わらせてやりてえところだろうが、ジャミトフ大将もてめえでケリをつけようと動いてるって、前から言われているからよ。どうなるか分かんねえな。ま! どっちにしろこのモンシア様が出りゃあ、おめえらの出番はねえぜ」

 

 以前からDC内部でも噂されていたが、現在、ソロモン鎮守府にてペデルセン大佐指揮の下、バスク指揮下のティターンズの息の根を止める為の部隊が編制中だ。

 宇宙でもベガやムゲ、バサ帝国の戦力が散発的な襲撃を繰り返すのと、ホワイトファング並びにクロスボーン・バンガードの『宇宙革新連盟──Space Reform LeaGue』への警戒から、決戦が見送られてきた。

 しかしバスク派からの離脱者の収容が落ち着きを見せ、またパンドラボックスからの情報提供により、ティターンズが月都市へのコロニー落としや、コロニーレーザーによる虐殺を敢行しかねないとして出撃が急がれている。

 

「モンシアのおっちゃんがそう言ってもあんまり説得力ねえなあ。なんか、ティターンズに所属していても、俺、驚かねえもん」

 

「そりゃあ、最初の頃のティターンズは紛れもねえエリートの集まりだったからよ。一年戦争で不死身の第四小隊と呼ばれた俺らなら、ティターンズに所属していてもおかしかねえわな。

 今じゃこうしてDCに所属して、民間人のガキンチョのお守りをしてっけどもよ、俺様は経験と実績を兼ね備えたベテランエリートなのだよ、カッペークン」

 

「バニングさんやアデルさんがベテランエリートってんなら、納得するけどなあ」

 

 ある意味、恐れ知らずで正直な勝平の言葉に、リョウは思わず吹き出して、ついつい短い本音を口にしてしまった。

 

「違いねえ」

 

「なんだと、こら、ルーツ! 聞こえてっぞ!!」

 

「やべっ!? 失礼しました、つい本音が……じゃねえや」

 

「パトロールが終わったら修正してやるからな!」

 

「うっへ、藪蛇」

 

 部隊内の共通回線でやいのやいのと賑やかに言葉を交わすモンシア、勝平、リョウに呆れを隠さず、アデルはGフォートレス形態のジークフリートを操りながら、バニングのシルヴァ・バレトへ通信を繋げた。

 

「放っておいてよろしいんですか、バニング大尉」

 

「構わん。モンシアの奴にはあとで腕立て伏せでもやらせておくし、ルーツはマニングス大尉が適切に処置するだろう。勝平に関しては今頃、キング・ビアルで兵左衛門さんや源五郎さんがカンカンだろうさ」

 

「なるほど、今は執行猶予中というわけですか」

 

 アデルがほどなくしてモンシアや勝平達に落とされるカミナリを思い、ヘルメットの奥の顔に哀れみを浮かべた時、アルビオンとキング・ビアルから緊急の通信が入った。

 

『アイスランド防衛部隊より救援要請です! バサ帝国の部隊と交戦中!』

 

「直接、ヘブンズベースには仕掛けて来なかったか? 了解した。勝平、モンシア、ルーツ、楽しいお喋りはここまでだ。気合を入れろ、前回のあの蛇みたいのが出てくるかはわからんが、強敵には違いない!」

 

 バニングの一喝に全員が表情を引き締めて、瞬時に戦闘態勢へと意識を切り替えたのは、流石の実戦経験者達であった。アルビオン、キング・ビアルが速度を増して交戦地点へと向かう。

 この時、アイスランドに出現したのはバサ帝国の中でも、初めて戦場に姿を見せた真徒達である。有人のエル・ミレニウムを中核として、やはり有人機のアンゲロイ・アルカによって構成されており、その戦闘能力は現在地球と交戦中の諸勢力の中でも頭一つ抜けている。

 バルマー系の兵器を含まぬこの一団が、アイスランドの防衛を担っている地球連邦軍の部隊と遭遇し、真徒達はまずは下等生物の一団を抹殺しようと問答無用で攻撃を仕掛けたのだった。

 

「死による救済を与える、サルース!」

 

 空中に布陣したアンゲロイ・アルカの右腕の装甲が変形して砲身を形成し、そこから凄まじい威力のエネルギー砲弾が次々と連射される。

 降り注ぐ砲弾の先には不幸にも会敵してしまったアイスランド防衛部隊の姿があり、彼らはMDビルゴが多重に展開したプラネイトディフェンサーと自機のビームシールドを重ね合わせて、これを見事に凌いだ。

 

「死ね、下等種族達よ!」

 

 青いバイザー状のヘルメットで顔を隠した真徒達は老若男女の区別なく、自分達の救済を拒んだ下等生物達への苛立ちを露にして次の攻撃へと移り始める。

 彼らにとっては至高神ソルの成れの果てとユーゼスの因縁の敵クォヴレーを打倒する事が目的であって、目の前の有象無象などは歯牙にもかけない相手なのである。

 精々が本当の戦いの開幕を告げる狼煙、あるいは主菜の前の前菜、存在を記憶する価値さえない雑魚……それが真徒達にとっての目の前の連邦軍だ。

 

「撃て!」

 

 プラネイトディフェンサーやビームシールドによる多層バリアが解除されるのと同時、ビルゴ達の正確無比なビームキャノン、防衛部隊員のゲシュペンストMk-Ⅲやジャベリン、更にアイアンコング、ダークホーンらのメインウェポンが一斉に火を噴いた。

 アンゲロイ・アルカの装甲を過信し、自分達が選ばれた存在であると驕った真徒達は、ろくな回避行動もとらずにいた為に、面白いくらい反撃の砲火の直撃を浴びて行く。

 

「無知な劣等種め、その程度で選ばれし我らに傷をつけることなど叶うものか」

 

 アンゲロイ・アルカの性能を自分の力であると過信した真徒の一人は、機体の左腕をブレードに変形させて、手ずから劣等種を切り刻んでやろうとしたが、その直後にジャベリン隊の発射したショットランサーがわずかに装甲に突き刺さる。

 

「我らに傷を……!」

 

「その顔面、ぶっ飛ばしてやる!」

 

 飛び出したゲシュペンストMk-Ⅲの超電磁エネルギーを纏った右腕が、怒りに動きの乱れたアンゲロイ・アルカの顔面を殴り飛ばし、そのまま落下して行くところへダークホーン隊のゲッタービームガトリングガンが次々と命中して行く。

 地面に落下してバウンドする頃には、首のフレームが折れて装甲各所に罅の入ったアンゲロイ・アルカの出来上がりだ。それでもまだ戦闘行動が可能なのだから、呆れた耐久性能である。

 

 他の真徒達から嘲笑を浴びせられる形になったその真徒は、頬を怒りで赤黒く染めながら防衛部隊に視線を巡らせる。選ばれた存在、次なる真化を迎える者という割には、むしろ幼稚で短絡的な精神構造だ。

 傷ついたアンゲロイ・アルカばかりでなく、他の無事な機体も再びカリス・シュートを撃ち、40m超の機体サイズもあるが強力な火器の嵐が防衛部隊に再び襲い掛かり始める。

 

 バルゴラCSがX字のウイングから噴射炎を全開にして飛び、ブレードを展開していた複数のアンゲロイ・アルカに実体とビームの刃を展開して、無数に斬り結び始める。

 更に四肢に超電磁エネルギーを纏ったゲシュペンストMk-Ⅲが果敢に近接戦を挑みかかり、そこにビルゴとMZ部隊の掩護射撃が加わり、性能差をパイロットの技量とフォーメーションで補う。

 

 およそ三十機近いアンゲロイ・アルカに対して、防衛部隊は半数ほど。性能差も考慮すれば敗北は免れない戦力差だが、幸か不幸か今日にいたるまで侵略者との戦いによって鍛え抜かれた連邦軍人の技量は、真徒達の想定をやすやすと超えていた。

 スペックでは圧倒している筈のアンゲロイ・アルカであるのに、いかに相手が最新鋭のゲシュペンストMk-ⅢやバルゴラCS、上位MZで固められた部隊とはいえ、損傷は与えられても倒しきれない戦闘に真徒達の誰もが苛立ちを露にしていった。

 その為、例え雑魚相手でも消耗させたくないと控えていたエル・ミレニウムが、渋々と動き出す。

 

「なんと情けない。まさかこの程度の雑魚共さえ片付けられないとは。やはりユーゼス様の臣下として相応しいのは、エル・ミレニウムへの搭乗を許されたこのわた……しぃ!?」

 

 動き出したエル・ミレニウムに防衛部隊全員が脅威を感じたその瞬間、リョウの操るGクルーザーから発射されたメガ粒子の塊が、怪獣めいたエル・ミレニウムの頭部を直撃して仰け反らせる。

 

「よし、ビンゴだぜ! 怪獣野郎が!」

 

『私がサポートしなくても当てられるようになった』

 

 喝采を上げるリョウに、ALICEは聞こえていないと分かっていても、素直に称賛する。もしALICEの声に気付くとしたら、似たような生まれのゼファーや双子らが筆頭候補だろうか。

 馬鹿げた推進力で戦場に駆け付けたGクルーザーに続き、テックスのZプラス、アデル、キース、シンのGフォートレスが次々と姿を見せる。更にその後方からキング・ビアルのイオン砲とアルビオン、ペガサスⅢのメガ粒子砲がエル・ミレニウムを目掛けて連射される。

 

 この程度の砲撃に当たるような下手はいない、とシナプスと兵左衛門が判断したからこその主砲のバーゲンセールだった。

 さしものアンゲロイ・アルカにも有効打を浴びせ得る戦艦の主砲の嵐は、苛立ちの頂点に達していた真徒達に冷や水を浴びせて、彼らを浮足立たせる。

 

 アルビオンとペガサスⅢ、恒星間航行可能な性能を持つものの基本的に移民船であるキング・ビアルは、随時近代化改修や強化改造を施されており、転移装置とバリア装置の取り付け諸々が可能な限りの強化を施されている。

 下手をすればMSのビームライフル一発、二発で沈んでいたサラミスやムサイとは、雲泥の性能差を誇っている。

 

「あれがキョウスケ兄ちゃんとエクセレン姉ちゃんを苦しめたっていう、水晶怪獣か!」

 

「油断するなよ、勝平! アルトアイゼンとヴァイスリッターのペアで大苦戦した相手だぞ」

 

「先に交戦していた人達は、機体の損傷はあっても亡くなった方はいなそうね。良かったわ」

 

「怪我した人達はじいちゃんやシナプス艦長に任せて、俺達はあのでけえのをぶっ潰すぜ! 総帥が『でぃーいーしー』ってのがたくさん手に入るって言ってたから、倒したらきっとボーナスが出るぜ!」

 

「勝平、お前、変にたくましいな」

 

 勢いよく飛び出すザンボット3×3は、相手をエル・ミレニウムに定めていた。実際、この戦場でこの審判の巨獣を相手に単独で戦えるのは、この日輪と月の力を併せ持つ無敵超鋼人ザンボット3×3を於いて他にない。

 可変機の先行部隊に遅れてやってきた機動兵器部隊の現場指揮官であるバニングも、情けなさを押し殺しながら勝平達ザンボットチームにエル・ミレニウムを任せる判断を下す。もちろん、フォローはきっちりと行う。

 

「アデル、キース、お前達はザンボットのフォローに回れ。モンシア、ベイトは二人でアンゲロイを抑えろ。アルカタイプだ。ノーマル機と同じだと思うなよ!

 シン、ウラキ、コマンダーの火力と機動性で戦場を撹乱しろ。奴ら、動きがこなれていない。こちらを舐めて掛かっていやがる」

 

「バニング大尉、我々も出るぞ。バサ帝国の皆さんに新しい顔ぶれを紹介して差し上げんとな?」

 

 好戦的な笑みを浮かべているのがありありと想像できるヤザンの声に、バニングは頼もしい限りだと笑う。

 

「夢にまで見る位、じっくりと見せてやるといい」

 

「あの世でも見せてやるさ! ラムサス、ダンケル、姫、行くぞ!」

 

 キング・ビアルに間借りしていたヤザン率いる小隊が、野獣の如くアンゲロイ・アルカに襲い掛かる。

 新たなヤザン機のマスクコマンダーは、ハンブラビを模したバックパックユニットにガンダムMk-Ⅱベースの本体の組み合わせで、複数のセンサーを内蔵したマスクで顔面を保護している。

 

 ウイングユニットはGNハンブラビから疑似太陽炉とGNコンデンサが移植され、GN粒子の基本特性である質量軽減や慣性制御機能に加え、GNフィールドやトランザムも使用可能となっている。

 武装はビームスマートガン、腕部の高周波クロー、ウイングユニット内蔵のウイングキャノン×2、ヒートホーク一体型のハンドガン×2、更にハンブラビ型の巨大ミサイル一発が基本装備で、これにヤザンの要望でウミヘビを追加していた。

 

 装甲には新開発のギガンダリウム合金、出力は25,000kwオーバーと基本スペックの高さはベースとなったガンダムMk-Ⅱとは全くの別物である。

 ヘパイストス研究所が関わるとこうなるよ、という見本のような変貌ぶりだ。オタマジャクシとカエルくらい違う。

 

「大尉、あまりはしゃぎすぎないでくださいよ」

 

「ふ、ついてゆく我々の苦労も考えていただきたい」

 

 といつものように軽口を叩くラムサスとダンケルに、マスクコマンダーのコックピットで、ヤザンは鼻を鳴らす。この自分にこれくらい気安い口を叩く腕っこきの部下は、なんとも得難いものであるから。

 見る見るうちに距離を詰めるヤザンに、イングリッドもまた機体と言葉で追従する。

 

「ほらほら、勝平達に負けてらんないわよ。あいつ、すぐに調子に乗ってくるんだから!」

 

「ハハハ、姫は勝平に年下扱いされておりますからなあ。なら、結果を示して見せなければ、年上の振る舞いも出来やせん」

 

「分かってるわよ。フン、あいつらこっちを馬鹿にして、見下して、油断しているわよ。戦場を知らないわけじゃないんでしょうけど、舐めすぎでしょ」

 

 イングリッドの機体のサイコミュに増幅された感覚が捉えた真徒達の精神状況は、実に正確なものだった。ヤザンも敵機の動きから感情の動きを見抜いて同意する。

 

「どうしてこうなる、なぜ思ったようにならないってところかぁ? 機体の性能は良くてもパイロットが引き出せなくてはなあ!」

 

 Sガンダムのものとよく似たマスクコマンダーのビームスマートガンから、ひと際強力なメガ粒子の塊が発射され、それはこちらに砲身を向けていたアンゲロイ・アルカの右腕を直撃し、行き場をなくしたエネルギーが暴発してアンゲロイ・アルカの右腕を付け根から吹き飛ばす。

 ラムサスとダンケルのMA形態のGNハンブラビが抜群のコンビネーションで襲い掛かり、ビームガンとフェダーインライフルの連射が次々とアンゲロイ・アルカに突き刺さる。

 

「動きは速いが単調だぜ、こいつらは」

 

「無人機の方が厄介か?」

 

 糸の切れた人形のようにビームが当たる度に踊り狂うアンゲロイ・アルカに、ラムサスとダンケルの評価は散々だ。機体の性能の厄介さはこれまでの数少ない交戦記録から周知されているが、それを操るパイロットの所為で厄介さが数段劣っている。

 拍子抜けだが、ラムサス達からすれば楽が出来るというものである。止めを持っていったのは、イングリッドだ。

 ヘビーガンダム、F89と乗り換えてきた彼女だが、今もまた戦局の変化によりさらに強力な機体が必要と判断され、用立てられたのがサナリィのFシリーズ最新鋭機F97──別世界ではクロスボーンガンダムと呼ばれた機体だ。

 

 外宇宙からの侵略者との戦闘を想定し、初の外惑星運用を念頭に置いた機体であり、セシリーのビギナ・ギナから得られたデータなどを参考にして、大推力、放射線耐性、格闘戦をこなす頑強性を兼ね備えている。

 コア・ファイターとX字状の大型バーニアの他、F91から更に改良したバイオコンピューターを内蔵し、F89でも運用された各種パックを使用可能とヘパ研協力の下で原作と異なる改造が施されている。

 

 髑髏の代わりに幻獣キメラの意匠が施されたF97は、疑似太陽炉のダブルドライブ、GNソードビット、GNソードⅤ、GNビームガン内蔵シールドの組み合わせであるクアンタパックを装備していた。

 F97クアンタは右手に対ビームシールドを想定した強力なビームサーベル“ビーム・ザンバー”を、左手にはGNソードⅤとソードビットを組み合わせて作るGNバスターソードを握り、体勢を崩したアンゲロイ・アルカに襲い掛かる。

 

「そらそら!」

 

「わ、私は、選ばれた真徒なのだ!! それが!?」

 

 F97クアンタの倍以上あるアンゲロイ・アルカも、傷ついた装甲ではビーム・ザンバーとGNバスターソードの切れ味を前に対抗しきれず、胴体をX字に切り裂かれて落下して行く。

 

「貴方達を選んだ相手の目が節穴だったんじゃないの? わめいている間に脱出したら?」

 

 恐ろしい筈の敵機を前に救援に訪れたDCパトロール部隊と現地連邦軍は連携して戦うことによって数の不利を覆して、性能差を技量で補うことに成功している。

 真徒側からすれば真化融合に達していない現地の劣等種・下等種族を相手に、信じがたい悪夢のような大苦戦である。

 その悪夢を終わらせるべく動きだしたエル・ミレニウムでさえも、無敵超鋼人を前にその猛威を奮えずにいた。

 

「ザンボットカッター、ザンボットザンバー二刀流だい! くらえ、サザンクロス乱れ雪月花!」

 

 ザンボット3のイオンエンジンにザンファイターとザンタンクにパルスイオンエンジン二基の生み出すパワーは凄まじく、縦横無尽に振るわれる二振りの刃はエル・ミレニウムのDECのボディを次々と切り裂いて、破片が粉雪のように零れ落ちる。

 

「こ、この程度で機械の超神を語るなよ。邪悪の末裔よ!」

 

 懐に飛び込んできたザンボット3×3に対し、エル・ミレニウムの口から吐き出された紫色の光を、勝平は若い反射神経によって上空に勢いよく跳躍して回避する。吐き出されたブレスは地面に命中すると、水晶の牙か杭のような物体を次々と生やして行く。

 その横っ面にザンボット3×3の回し蹴りが叩き込まれて、思わず口を噛み合わせてしまった為に、エル・ミレニウムの口の周囲に水晶の牙が生えて半分自爆する。

 

「なんで俺達が邪悪の末裔なんだよ!」

 

 横っ倒しになるエル・ミレニウムの首筋にザンボットカッターとザンボットザンバーが突き刺さり、更に顔面を蹴っ飛ばしたザンボット3×3は空中でくるくると回転しながら距離を取って軽やかに着地する。

 蹴り飛ばされたエル・ミレニウムは、かろうじて体勢を立て直してザンボット3×3を睨みかえす。

 かつてキョウスケとエクセレンを手こずらせた強敵であるのは確かだが、これは勝平達の成長とザンボット3×3の性能による成果か、それとも真徒の驕りが招いた一方的な戦いか。

 

「俺達がビアル星人の末裔だからか?」

 

「ご先祖様達はガイゾックにひどい目に遭わされて、必死になって地球に逃げてきたのよ。それのどこが邪悪なのよ」

 

 恵子の台詞に真徒はエル・ミレニウムの自己修復機能(HP回復小)が機能しているのを確かめながら、正義と真実、宇宙の調和と秩序を司る神の使徒としての誇りで心を満たしながら答えた。

 

「当たり前だ。悪を滅ぼすとプログラミングされたガイゾックの手で滅びたならば、お前達の祖先は少なくともガイゾック星人からすれば、滅びて当然の悪、邪なる悪だったのだろう。

ならばどれだけ世代を重ねようと、地球の薄汚れた血と交わろうとも、貴様らにも邪悪な血と罪が受け継がれているのだ。

 もっとも、ガイゾックも正義などではないがな。正義とは我らが神、我らが王、我らが主であるユーゼス様であり、そしてそのユーゼス様の臣下であり使徒である我らなのだから!」

 

「ちっ、聞いてられねえな。ここまで自分勝手に屁理屈をこね回せるようなのが、宇宙にはいるのか」

 

 真徒のなんとも身勝手な言い分を聞かされてゲンナリとしていたのは宇宙太だけではなく、オープン回線で聞きたくもない屁理屈を鼓膜にこすりつけられていたシナプスやヒースロウ達も同じだ。

 

「正義である我らの前に立ち、邪魔をするのならばそれはすなわち悪である。悪、悪、悪! 高次生命体へと至る我らの足元に纏わりつく塵屑共! あの宇宙でも、この宇宙でも我らの邪魔をする貴様らは──」

 

 自らの失態を誤魔化すように弁舌を奮う真徒の言葉はますます熱を帯び、自らの言葉に酔い痴れて、くだらない自らの矜持を守ろうと屁理屈の鎧を分厚く纏ってゆく。だが、そんなものがいかに脆いか、いかに意味のないものであるか。

 

「やかましい!」

 

 勝平の怒号と共にザンボット3×3の額の三日月と日輪が眩く輝きを増す。

 

「ごちゃごちゃとお前らは誰かを馬鹿にしなけりゃ、自分を自慢する事も出来ねえのか! 悪党にしたってこんなに情けねえ悪党は知らねえや。あしゅら男爵やシャーキン、ガルーダなんかとは比べ物にならねえ、下っ端の言い分だぜ!」

 

「な、なん、真徒たる私に!」

 

「それが下っ端っぽいって言ってんだい! 行くぞ、今、日輪の光を受けて三日月から満月へと輝く一撃を! ザンボット・フルムーン・アタァック!!」

 

 輝きを増す日輪から供給された太陽の光が三日月の額飾りをより一層輝かせ、三日月型に放たれるムーン・アタックのエネルギーが見る間に満月へ!

 膨大なエネルギーを圧縮したフルムーン・アタックが周囲を煌々と照らしながら、まっすぐにエル・ミレニウムの胸部へと直撃し、そのまま抵抗を許さずに背中から飛び出して貫通した。

 

「わた、私のエル・ミレニウムが!?」

 

 どうやらコックピットは胸部とは別のところにあったらしく、ユーゼスから使用を許可された切り札を単独のスーパーロボットに破壊された事実を、真徒はこの段になってもまだ受け止め切れずに驚きを叫んでいた。

 

<続>

■GPコマンダーを入手しました。

■F97が開発されました。

■ガンダムMk-Ⅳ用のフルアーマーパーツが開発されました。

■連邦軍はかなりレベルアップしているようです。

 




本来真徒達は超能力レベル6を持っていたりと一般兵としては最強クラスなのですが、Zシリーズでの敗北とユーゼスの下でくすぶっていたのと、油断しまくっていた為、能力をろくすっぽ発揮できていません。機体ばかりか自分達さえも十全に操れていないのですね。


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第七十九話 意識のある機体の内部は弄りにくいよね

いつもご愛読ありがとうございます。書き上がったので投稿です。


「へっ、調子に乗ってベラベラと喋ってばかりいるからそうなるんだぜ!」

 

 勝平は爆散寸前のエル・ミレニウムを前に、容赦のない言葉を叩きつけた。真徒はその精神構造こそ歪だが、兵器を動かす駒としての能力は高く、エル・ミレニウムの性能もまた単一惑星程度の文明なら容易く滅ぼせる水準だ。

 もしも真徒が侮りと驕りを捨て、持てる能力の全てを十全に引き出していたならば、いかにザンボット3×3でもここまで簡単に勝利を得られはしなかったろう。

 

 アンゲロイ・アルカをはるかに上回るエル・ミレニウムがスーパーロボット単機に撃破された光景は、その他の真徒達の意識を数瞬奪うという致命的な効果までも及ぼすに至る。

 ダークホーン三機がかりの突進を真っ向に受けたアンゲロイ・アルカなどは、クラッシャーホーン三本に腹部を深々と貫かれ、そうして動きを止まったところへ大ジャンプしたアイアンコングが両手をがっちりと握り、一気にそれをアンゲロイ・アルカの頭部へ振り下ろす。ダブル・スレッジ・ハンマーだ!

 耳にしただけで腹の底まで縮むような破壊音がして、アンゲロイ・アルカの首が強引に吹き飛ばされて、地面の上を何度も跳ねる。

 

 敵の見せた隙を的確に見抜き、食らいつく嗅覚と洞察力においてこの戦場でヤザン・ゲーブルほど頼みになる男はいない。

 乱れた精神状態を立て直せない真徒達に対し、ヤザンはウイングユニットを切り離して、ダンケルとラムサスのフォーメーションに組み込んで放つ。

 

 マスクコマンダーのビームスマートガンを尻尾代わりに装着したウイングユニットは、MA形態のハンブラビに酷似している。ヤザンのモーションパターンを組み込んだウイングユニットは、見た目も相まってハンブラビ三機の編隊のようだ。

 GNビームガンとウイングキャノンの乱舞に晒され、慌てふためくアンゲロイ・アルカ部隊に、ヒートホーク付きハンドガン二丁を手にしたマスクコマンダーと二刀流のF97クアンタが泣きっ面を刺す蜂の役目を果たすべく一気に距離を詰める。

 

「機動を忘れた機動兵器など、デカいだけのカカシなんだよ!」

 

 あまりの連射速度にハンドガンの銃口は火を噴いているかのようだった。吐き出された銃弾はアンゲロイ・アルカの装甲にその半分ほどを埋め込むに留まり、貫通するまでには至らない。

 だが、それでもこうして傷をつけられるのは、紛れもない事実だ。そうして実弾がめり込んだままの装甲に、ザン・バスターとGNソードVによる二種のビームが襲い掛かり、真徒達が正気に返る余裕を与えない。

 

 罅割れたアンゲロイ・アルカの装甲にヒートホークが叩きつけられ、強引な力技で罅を広げてそこから梃子の原理で装甲をはぎ取る。

 高熱によって赤熱化した装甲がバリバリと小気味よくはぎ取られて、そこらの地面へと放り捨てられた。

 剥き出しになった内部装甲へハンドガンのお代わりが撃ち込まれて、もはやどうしようもない程のダメージがアンゲロイ・アルカの内部に叩き込まれた。

 

 ヤザン小隊が抜群のコンビネーションで一機、二機とアンゲロイ・アルカを仕留める一方で、バニングらアルビオン隊とリョウらペガサスⅢ隊も、三機のジークフリートが放つダブルビームライフルとハイメガキャノン×3セットの大火力支援の下、性能では上を行くアンゲロイ・アルカを撃破している。

 ジークフリート三機に関しては、アルビオン隊のアデルが臨時の小隊長を務めて、シンとキースがその指示に従っていた。

 

 頭上をGクルーザー、Zプラスが抑え込み、地上ではコウのGPクルーザーが大型MAクラスの火力で撹乱、そこにバニングの指揮で残るモンシア、ベイトが連携を取れずにいるアンゲロイ・アルカを片付けて行くという構図だ。

 先に交戦していた現地部隊も負傷したパイロットや損傷した機体を、随時、DCの母艦に収容して致命的な事態に陥らないように徹底している。

 

 ここにフリーになったザンボット3×3が加わるとなれば、既に半分を割ったアンゲロイ・アルカの全滅は時間の問題である。

 それに対してあまりにもこの呆気ない戦いぶりに怒りを抱いた者達が、横槍を入れてきた。それに気付いた勝平は、咄嗟にザンボット3×3を飛び退かせて、エル・ミレニウムから距離を取る。

 

 新たな転移反応の直後、戦場の上空に新たな御使い系兵器の部隊が出現し、その中でもひときわ巨大なエネルギーを放つ百メートル超の機体から放たれた次元力の炎が、エル・ミレニウムを飲み込んだのである。

 炎を放ったのはかろうじて人型をしてはいるが、頭部はなく、両肩が大きくせり出し、右半身は青く、左半身は赤い、ディメション・エナジー・クリスタル(=DEC)で構成された機体だ。

 御使い系機動兵器の中で最強を誇るゼル・ビレニウムである。

 地球の存在する天の川銀河内で恒星間航行可能なレベルの文明ならば、二機で滅ぼせると公式に設定されているとてつもない怪物。

 設定の通りであるならば、大半の版権ラスボスを歯牙にもかけない超性能の強敵だ。

 

「なんと見苦しい。審判の巨獣と恐れられたエル・ミレニウムを賜りながら、この醜態とは。一刻も早く消え去り、ユーゼス様にお詫び申し上げるがいい。それが私からの慈悲である」

 

 ゼル・ビレニウムのパイロットを務める成人女性の真徒は、次元力の炎によって灰すら残さずに燃え尽きたエル・ミレニウムとそのパイロットだった真徒を見下ろしながら、侮蔑に塗れた言葉を吐き出した。

 この時、新たに姿を見せたのはゼル・ビレニウムの他に、エル・ミレニウム数機にアンゲロイ・アルカ数十機という大部隊だ。惑星一つを制圧するのも簡単な戦力である。

 なによりも厄介なのは……

 

「あいつら、自信満々ではあるけれど、こっちを甘く見てはいないわね」

 

 イングリッドが感じ取ったように、自分達が選ばれた存在であると強烈な自負を抱いているのは先程までの連中と同じだが、イングリッド達を全力で葬るべきゴミとして認識し、油断はしていないのだ。

 

「ご同類がこれだけ醜態を晒せばな」

 

 ヤザンはウイングユニットを呼び戻し、再びマスクコマンダーにドッキングさせながら、新たな敵達の一挙手一投足、あるいは呼吸にさえ注意を払う。そこまで彼の神経は研ぎ澄まされていた。

 

「真徒の恥晒し達よ、今、救済の時、断罪の時!」

 

「ま、待って!」

 

 ゼル・ビレニウムが右腕を振り上げるのに合わせて、新たに出現した御使いの機体が一斉に攻撃を始める。それは地球人と真徒達を区別しない、皆殺しの意志に満ちた攻撃だった。

 先に交戦していた真徒達が悲鳴を上げて味方の攻撃に巻き込まれる中、DCと現地部隊は反撃よりも生存を最優先して回避とバリアの多重展開を選択している。

 最初の戦闘での焼き直しだが、今回はゼル・ビレニウムが複数加わっているのと真徒達の精神状態の違いもあり、破壊力には雲泥の差があった。

 

 いかに戦巧者ぞろいの地球側であっても、果たして無傷でこの奇襲攻撃を防ぎきれるものかどうか。特に母艦を落とされてはたまらないと、付近にいたMS部隊は甲板に上がり、出力を最大にして各種バリアを展開した。

 そこに号令を下したゼル・ビレニウムもまた攻撃を加えようと、全身のDECが励起して桁外れの次元力が生み出される。エル・ミレニウムを焼き尽くしたMAP兵器『再生の光炎』の二発目だ!

 

「不意打ちなど通じぬわ!」

 

 真徒の叫びと同時に次元力の炎は、眼下のDC部隊ではなく北から急速に接近しつつあった複数の熱源反応へと向けて放たれる。

 その炎をSPIGOT四基によって増幅されたレイ・ストレイターレットの砲撃が迎え撃ち、一瞬の拮抗からすぐさま炎を撃ち抜く。その余波で新しいアンゲロイ・アルカ数機にダメージを与えながら、彼方へと光の奔流が伸びていった。

 

 砲撃の主は御使い出現の報せを受けて、急遽、ヘブンズベースから出撃してきたフェブルウスだ。

 更にオウカのラピエサージュ・シンデレラ、ゼオラのビルトファルケン、アラドのビルトビルガー、ラトゥーニのヴァルシオーラ、そしてクォヴレーのベルグバウの姿もある。

 ますますマジンガー化の進んでいるアルトアイゼンとヴァイスリッター、ソウルゲイン、アンジュルグ、アンジュルグ・ノワールとスーパーロボットも含むオリジナル系そろい踏みの顔ぶれだ。

 

「ゼル・ビレニウムを投入してきたか。かなりやる気だ!」

 

 ガナリー・カーバーの冷却状態を確かめながらシュメシが呟いた言葉に、強敵に対する緊張が含まれているのを聞き取り、アクセルが問いかけた。

 

「向こうの切り札的な機体だったか。この局面での投入は意外か?」

 

「ちょっとだけ。出来ればみんなが勢ぞろいしている時に戦いたかったよ」

 

 どうやらパイロットの真徒も闘志に漲っているし、ゼル・ビレニウムの性能をフルに発揮するだろう。それにあれ程の敵が相手となると、こちらも相当に出力を上げなければならない。

 戦場が有人惑星の大気圏内である以上、今のフェブルウスは全力を発揮できない。以前の戦闘でのディス・アストラナガンも、地球を破壊するわけにはいかないから、出力や武装に制限をかけての戦いだった。

 ガンバスターやGGGのゴルディオンクラッシャー、イデオンなども、有人惑星やスペースコロニーの無い開けた宇宙空間や特殊な閉鎖空間でもなければ全力を出せない機体や武装だ。

 地球と人類を守る為に戦っているのに、その地球を壊し、人類を滅ぼせるような力を振りまくわけには行かないのである。

 

「向こうもパンドラボックスや僕達を確保しないといけないから、ある程度、制限はあるはずだけれど……」

 

 シュメシが言い淀んだ言葉の続きは、愛らしい顔立ちを困ったように変えたヘマーが引き継いだ。

 

「追い詰められたらなりふり構わない行動に出るかも……」

 

「ふん、軍人には向かない連中だな。ならば一気に仕留めるのが吉か、こいつはな」

 

 ソウルゲインの三倍近い巨体を誇るゼル・ビレニウムはその巨体相応の耐久力と極めて堅牢な装甲、更に自己再生能力を併せ持った機体だ。言葉にするだけならば簡単だが、あれだけの敵を一気に仕留めるとなると、これは簡単に行くはずもないと分かる。

 

「大丈夫、ゼル・ビレニウムは私達が相手をするから。私とシュメシとフェブルウスなら、勝てる相手だし」

 

 ところが生まれ変わって十年も経過していない至高神は、アクセルの予想を覆すような提案をあっけらかんと告げるのだった。

 実際のところ、戦い始めた頃のフェブルウス達となると、ゼル・ビレニウムは勝ち目の少ない強敵だが、至高神の記憶を取り戻し、次元力の真髄を思い出したフェブルウスと双子ならば十分に勝てる相手であった。

 

 ユーゼスもその点には気付いているだろうから、クォヴレーの介入によって計り損ねたフェブルウス達の底力を調べるのには使えるとけしかけたのだろう。

 けしかけられた真徒達はそうとは知らずに自分達が油断さえしなければ、負ける筈はないと信じ切って戦端を開き直す。

 

「至高神ソル、我らが真の主ユーゼス様の為にお前を献上する!」

 

 煙の中に飲まれている現地部隊やアルビオンなどは既に眼中になく、第二波の真徒達は新たに姿を見せたフェブルウス達に焦点を合わせている。まるで誘蛾灯に引かれる虫のようだ。

 そしてこの誘蛾灯は引き寄せるばかりでなく、積極的に殺虫剤を振りまいてくる凶悪性があるのだ。具体的に言えば──

 

「射撃班のかわいこちゃんたち、準備はオッケー?」

 

 既にオクスタンランチャーの用意を万端整えたヴァイスリッターを引率役にオーバーオクスタンランチャーを構えたラピエサージュ・シンデレラ、オクスタンライフルを構えたビルトファルケン、ダブルクロスマッシャー発射体勢のヴァルシオーラ、そしてコルヴァン・カノンとファントム・フェニックスの照準合わせを終えた二機のアンジュルグ。

 いやはやキロメートル級の戦艦や小規模な艦隊なら一瞬で轟沈しそうなラインナップだ。その援護下でアルトアイゼン、ソウルゲイン、ビルトビルガー、ベルグバウ、フェブルウスが突っ込む算段である。

 

 だがその程度は真徒の側も想定の内だ。第一陣はあまりにもアレでアレだった真徒達だが、かつて崇めた御使いの作り出した最高にして最悪のシステム“至高神ソル”確保にあたっては、必ずや邪魔をしてくるDCの戦力分析と情報収集を、彼らなりに行っていたのだ。

 その結果、御使いの配下であった時代に置き換えれば、ゼル・ビレニウムを集中投入するに値する脅威度と判断している。エル・ミレニウムに関しては保険だ。

 

 DCで高次元存在へ足を踏み入れているのはフェブルウスだけだが、その他の機動兵器も銀河規模で見ても高水準だと認めたのだ。ただしクォヴレーとベルグバウに関しては未知の要素が多く、判断材料に含んでいないが。

 だから自分達が正しくDCを評価していると思い込んでいる真徒達は、フェブルウス達の怒涛の攻撃も油断なく迎え撃ち、避け、受ければ勝てると確信している。

 その確信を文字通りの全滅か、少なくとも大損害を被っている筈だと放置したDCパトロール部隊と現地部隊が覆す。まだ晴れ切っていない土煙の中から、怒声と無数のビーム、ミサイル、実弾が真徒達へ殺到した!

 

「足元を疎かにしている連中に、とんだミスをしたと思い知らせてやれ!」

 

 声を張り上げているのはシルヴァ・バレトのほぼすべての火器を解き放ったバニングである。さらにモンシアのFAガンダムMk-Ⅲ、ベイトのFAガンダムMk-Ⅳ、コウのGPコマンダーが残弾を使い尽くす勢いでしゃにむに撃ちまくる。

 現地部隊のMSとMZ部隊も右に倣えとこちらに目もくれない舐め腐った敵に、地球人の意地だとばかりに武装や機体への負担を無視して、一心不乱の大攻撃!

 無事だったアルビオン、ペガサスⅢ、キング・ビアルもその甲板の上に居る艦載機共々、援軍と挟み撃ちにする形で砲火を交差させる。特にキング・ビアルの甲板上でイオン砲を連射するザンボット3×3の火力は凄まじい。

 

「なんだと、なぜ奴らが無傷で!?」

 

 想定外の事態に集中の乱れたゼル・ビレニウムにも、次々と着弾の数が増えてゆくが、ひと際強力な装甲の前にはわずかなダメージにもならないものがほとんどだ。

 その中に骨のようなブーメラン状の物体やメガ粒子や次元力とは異なるビームが含まれているのに、真徒達はすぐさま気付き、そして彼らがなぜ無事だったのかを理解する。

 

「アインスト共が奴らの盾になったのか!」

 

 第二波の真徒達からの攻撃が当たる寸前、エリュシオンベースとの戦いとは違い、転移妨害の施されていなかったこの戦場に、アインスト達が乱入してその身を盾にしたのである。

 アインスト達の突然の出現はDC側にとっても想定外だが、彼らが地球人類に対して友好的である事が既に通達されていたのと、アインストクノッヘンやアインストグリートらがこちらに無防備に背を向けて、今も真徒達に攻撃を加えている光景から、とりあえず敵ではないと判断されている。

 

 更に鎧型のアインストゲミュート達が同胞達からの援護を受けつつ突出する。思わぬ敵の出現とDC・現地部隊の無事に、真徒達は二方面に対応しなければならなくなった。

 それでも優先するべきはフェブルウスだと判断しようとした矢先、アインスト特有の転移反応が生じる。

 

「横槍を入れるなら徹底的に。穂先が脇腹を貫いたら、更に抉って追い打ちを掛けますの」

 

 赤い骨だけの鬼を思わせるペルゼイン・リヒカイトが愛刀を手にゼル・ビレニウム達よりも更に上空に姿を現し、その傍らにはアインストによって再現されたESディナ──アインストディナとアシェル刃の姿がある。

 アインストディナのコックピットではKOS-MOSとT-elosが二人“仲良く”乗り込んでおり、新たな局面において用意された新型機の具合を実戦で確かめようとしていた。

 

「疑似神経系接続確認、出力98パーセントで安定、各種センサー支障なし。アインストディナの運用に問題なしと判断。T-elos、そちらの判断は?」

 

「お前と同じコックピットに居ること以外は、不満はない。ふん、いつまでもアインスト達に付き合っても居られん。さっさとこいつらを片付けたいところだ」

 

 KOS-MOSの記録からコピーされたディナは動力源などを含む一部を除いて、完璧に近い精度でコピーされている。ジャンク寸前だったとはいえ、先にアシェルを解析し、修復していた成果と言える。

 ただし元々はKOS-MOSの開発者の一人であるシオンの席だったシートに座るT-elosは、天敵とも半身とも言えるKOS-MOSと二人きりという状況が甚だ不愉快な様子だった。

 

「まあまあ、T-elos、そうカリカリとしては操縦に影響が出ますよ。アインスト達も倒すべき敵を定め、局面が変わったのを認めています。だからこそあなた達にコピーとは言えディナを用意したのです。そうでしょう、アルフィミィ」

 

「ザッツ・ライト(へたくそな発音)ですの。ジンの言う通りですから、もうちょびっと我慢してくださいですの。とりま、足元の敵さん達に苛立ちをぶつけたらよろしいんじゃありませんの?」

 

「ふん。……いいだろう、ゾハルの代わりがどこまで務まるか分からんが、枯れ果てないように気を張れよ、ノイ・レジセイア!」

 

 アインストディナの右手にドラゴントゥース、左手には三連ガトリングガンが握られ、T-elosの戦意に後ろを押されるように砲火乱れ舞う戦場に白鳥のように美しい機体が舞い降りる。

 KOS-MOSはT-elosがやる気を出す分には問題視していないようで、淡々とT-elosのサポートに徹する。後で文句を言ってくるので、メインコントロールをT-elosに渡してあるのだ。

 そしてアシェル刃も腰の大小を抜き放って、ガンガンと前に飛び出るアインストディナに続く。

 

「こちらでの古書巡りもそろそろ終わりですか。いえ、元は拾った命。人生の余禄のようなものなのだから、贅沢は言いっこなしですね」

 

 不意を突くように腕を変形させたブレードで斬りかかってきたアンゲロイ・アルカの右腕を払い、がら空きの胴に左手の小太刀をくれてやり、深々と装甲を切られたアンゲロイ・アルカに縦一文字と横一文字、合わせて十文字の斬撃を食らわせてやる。

 

「さて、斬れる相手ならば恐れる道理もなし。後はシオンの元にKOS-MOS達を帰すまでは、私もやれるだけをやりましょう」

 

 返り血ならぬ機械油の一つも帯びていない刀剣は、アシェル刃とジンの技のキレと冴えがいかに凄絶であるかを物語っている。

 アインスト参入による混乱の中にあって、リーダーの真徒はこれを迅速に立て直す為には最強・至高の機体ゼル・ビレニウムを賜った自分が動く以外にないと動いた。少なくとも怯懦ではない。

 その彼女の視界一杯にガナリー・カーバーとライアット・ジャレンチを、死を運ぶ魔鳥の翼のように広げて迫りくるフェブルウスの姿が飛び込んでくる!

 

「君の相手は!」

 

「シュメシと私とフェブルウス!」

 

「愚かな、私の掌中に飛び込んで来るなんて!」

 

 機体のサイズ差は四対一弱。圧倒的な質量差の敵を相手に、フェブルウスに恐れはない。なにしろ宇宙怪獣やアンチスパイラルを知っているものだから、彼らに比べればどうってことのないサイズ比である。

 咄嗟に右腕を振り上げるゼル・ビレニウムの胴体に、ガナリー・カーバーのビーム刃とライアット・ジャレンチが思い切り叩きつけられた。

 

「ごっはあ!?」

 

「まだまだまだまだまだあ!!」

 

「てぇえいりゃあああ!!」

 

 そうして真徒側最強戦力がフェブルウスに拘束されている間、それに次ぐエル・ミレニウムはというと一機はリベンジを挑むキョウスケとエクセレンペアに、もう一機はソウルゲインとアンジュルグ、アンジュルグ・ノワールのシャドウセイバーズトリオが抑え込んでいる。

 そしてグランド・スター小隊はそんな彼らの援護に飛び回っており、その中にあってベルグバウとクォヴレーは新参者だったが、ゼオラとアラドが不思議と彼と動きを合わせるのが上手く行く為、この三名を軸にしてオウカとラトゥーニがフォーメーションを組む事で十二全に機能していた。

 

「クォヴレー、今回、ユーゼスは出てくると思う?」

 

 ゼオラが高速機動を行いながらスプリットミサイルHの弾幕と、オクスタンライフルの両モードを使い分けながら問いかければ、ベルグバウを操るクォヴレーは静かな声音で答える。

 

「いや、今回はユーゼスにとっては様子見のようなものだろう。奴はまだディス・レヴの封印を解除できずにいる。おそらくは御使いの残党を使い、こちらの戦力を削るか、俺とフェブルウスの状態を確かめるつもりなのだろう」

 

「なんだそりゃ、捨て駒扱いじゃねえか」

 

 アラドは相手が敵とは言え、その扱いは流石に同情の余地があったのか、義憤に近い感情がこもっている。良くも悪くも素直なのは、アラドの美徳としておこう。

 

「ユーゼスにとっては己以外の全てがそうなのだろう。だからこそ奴に力を渡せば、捨て駒にされる者の範疇は広がり、犠牲者の山が築かれるのは目に見えている」

 

「そうか。それならますます負けてらんないな!」

 

「ああ、その通りだとも」

 

 クォヴレーが自我を確立してから負けてもいい戦いなど一つとしてなかったが、その中でもあの終焉の銀河の世界のユーゼスによって、別次元であるこの宇宙で起きなかったはずの戦乱が引き起こされ、更に多元宇宙に災いを広げかねないとなれば、クォヴレーにとっては番人としても、個人としても何重の意味でも絶対に負けられない戦いだ。

 それに、とクォヴレーは続く言葉を飲み込んだ。

 

(奴はシヴァー・ゴッツォの開発したヴァルク・ベンを投入してきた。アイン・バルシェムに憑依した事で、バルシェムシリーズの素体も手に入れている。

 ならばバルシェムの指揮個体としてキャリコを用意している可能性もある。俺とイングラムとキャリコの因果が、この世界にキャリコを蘇らせるかもしれん)

 

 イングラムのコピーであり、オリジナルのイングラム、そのイングラムの後継であるクォヴレーに執着したある意味では哀れなあの男。

 既に倒した相手だが、ユーゼスにとっては都合の良い手駒だろう。果たして人格が与えられるのか、記憶はどうなっているのか、考えれば疑問は尽きないが、そもそも可能性の話だ。考えるだけ無駄ともいえる。

 だが、それでもクォヴレーはキャリコ・マクレディというかつての強敵の事が脳裏にちらついて離れない。

 

(俺は根拠もないまま確信している。奴がまた俺の前に立ちはだかる事を)

 

 このベルグバウもまた強力な機体だが、ジュデッカやキャリコの乗っていたヴァルク・バアルを相手にした当時は経験や性能差から手痛い敗北を喫している。

 今ではクォヴレーの方がはるかに歴戦の猛者となったが、性能差は変わらぬままだろう。だからこそか、クォヴレーは所長を筆頭とするヘパ研から提案されたベルグバウの追加武装計画を承諾したのだ。

 

 空戦能力がないベルグバウが、ほとんどの機体が飛行可能なDCの中で足並みをそろえる為、ミノフスキー・ドライブを内蔵した飛行ユニットを腰裏に装備している。

 腰裏の飛行ユニットそれ自体は、どことなく翼の無いエールストライカーを思わせるデザインで、バルキリーの脚部に酷似したバーニア兼ミサイルポッド二基が装備されている。

 

 そして背中にはガン・スレイブ四基が接続されているが、一度、ガン・スレイブを外してから武装ユニットを接続して、ガン・スレイブを武装ユニットに改めて接続し直すという方式を採用している。

 この武装ユニットは旋回式のビーム砲とレールガンが二基装備され、かなり広い射角を確保している。

 

 またメインウェポンであるツイン・ラアムライフルの銃身には銃剣が装着されているのだが、両肩に近接戦闘用に追加武装としてビームサーベル×2を内蔵し、更にビームマシンガン×2、ミサイルポッド×2を内蔵した可動式バインダーを増設している。

 この肩のバインダーについてはGディフェンサーとオーライザーが参考にされていて、左右の腰に増設された折り畳み式のレールガンは、フリーダムガンダムから来ている。

 脚部のふくらはぎに追加されているのは、バーニアとマイクロミサイル内蔵の追加装甲だ。追加装甲に内蔵されたミサイルの合計数はバルキリー並みに達している。

 

 ベルグバウが自己意識を持っている節があるのと、内部を弄る時間的余裕がないと判断された事から、強化措置はあくまで外付けの武装を追加するに留まっている。

 結果として、ベルグバウはα時空とZ時空に存在した機動兵器を参考にした武装を山盛りにされた仕様となった。

 便宜上、この仕様に関しては他のガンダムとは異なり、フルアーマーではなくアサルトシュラウドと名付けられた。

 

 魔神かあるいは魔人という印象を受けるベルグバウには、攻撃する屍衣とでも訳すべきアサルトシュラウドの方が相応しいかもしれない。

 まあ、第三次αを知るヘイデスが、SEEDから参戦したデュエルアサルトシュラウドを想起して、そう名付けたとも考えられるし、クォヴレーもかの大戦で寝食と戦場を共にした銀髪のコーディネイターの少年を思い浮かべて、悪い気はしなかったので採用に至っている。

 

 武装の追加による重量の増加は内蔵したバーニアやスラスターで強引に補いつつ、総合火力の増加につなげたこのアサルトシュラウド形態が、どこまで真徒達やユーゼスの送り出す敵を相手に通用するのか。

 ディス・アストラナガンのない自分がどこまで通用するのか、それもまたクォヴレーにとっては一つの戦いだった。

 

<続>

■ベルグバウの換装装備『アサルトシュラウド』が開発されました。

■アインストディナが作り出されました。

 




追記
誤字脱字が多く申し訳ありません。ご指摘くださった皆さん、ありがとうございます。


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第八十話 やっぱりキャリコだよ。でもキャリコじゃないよ

 重武装、大火力の機体は、大群を相手にした時に精密なターゲッティングをしなくてもとりあえずぶっ放せばそれなりに成果が出るのが魅力といえなくもない。相手がゼントラーディやバッフ・クラン、宇宙怪獣あたりなら戦果は百、千単位にもなるだろう。

 現在、アイスランドで行われているDC・現地部隊VS御使い部隊ではどうか? となるとそこまでの数の差はないので、撃墜数やダメージを求めるのならば精密な狙いをつける必要が出てくる。

 

 ベルグバウASを操るクォヴレーは外付けされた火器管制システムのフォローと卓抜した技量により、追加された無数の武装と元々のベルグバウの武装の両方を、見事に使いこなしていた。

 ツイン・ラアムライフル、エメト・アッシャー、ガン・スレイブ、これに加えて飛行ユニットの旋回式ビーム砲、レールガン、両肩バインダーのビームマシンガン、ミサイルポッド、腰のレールガン、脚部のマイクロミサイルと最高に頭の悪い山盛りの武器が次々と発射される。

 

「ターゲット・マルチロック。全て命中させる! 全兵装、フル・ファイア!」

 

「ゼオラ、ラトゥーニ、クォヴレーに合わせます!」

 

「はい、姉様。オクスタンライフル、Eモード!」

 

「ターゲッティングデータ、リンク終了。撃ちます!」

 

 ガンダムヘビーアームズに勝るとも劣らぬ嵐のような火線は、第二波のアンゲロイ・アルカの部隊に襲い掛かり、避けようと動く機体に関してはオウカとラトゥーニ、ゼオラの高精度の射撃が降り注ぎ、無傷では済ませない。

 ミサイルをあらかた撃ち尽くして軽くなったベルグバウASが、追加装備のバーニアを全開にして加速してアラドと共にアンゲロイ・アルカ部隊の中に対して、果敢に接近戦を挑む。

 

「ショートレンジに移行する」

 

「俺も付き合うぜ、クォヴレー。ここは俺とビルガーの距離だ!」

 

 ツイン・ラアムライフルの銃剣を展開し、ガン・スレイブを従えるベルグバウASと付かず離れずの距離を維持して、ビルガーも右手のスタッグビートル・クラッシャーと左手のブーストハンマーを頼みに、意気揚々と倍近い巨体のアンゲロイ・アルカへ肉薄。

 主君ユーゼスが強く警戒するクォヴレーの存在に気付いた真徒達は、降り注ぐDC部隊からの砲火を掻い潜り、機体の腕を巨大なブレードに変えてベルグバウAS達を迎え撃つ。

 

 中途半端な火器や片手打ちの斬撃では、アンゲロイ・アルカの装甲に碌なダメージを与えられない。地球側は一撃、一撃の全てが全力だ。

 アラドはオウカ達家族に背中を委ねて、アポイナ・ブレードの迫力に冷や汗を垂らしながら必死に避け、お返しとばかりにブーストハンマーを振り回して反撃を試みる。

 

 クォヴレーもかの銀河大戦を乗り越えたアラドと比べれば未熟だが、十分に歴戦と呼べるだけの経験を積んだこちら側のアラドに頼もしさを覚えながら、斬りかかってくるアンゲロイ・アルカの刃を次々と銃剣で弾き返し、至近距離からツイン・ラアムライフルとガン・スレイブで蜂の巣にしてのける。

 元々のベルグバウASの性能もさることながら、クォヴレーの操縦技術の高さから来る立ち回りの巧妙さは、着実にアンゲロイ・アルカ部隊を削り続けていった。

 クォヴレーとベルグバウASはこの戦場に於いて、真化融合の領域か似たような段階に達していてもおかしくない存在であるのも圧倒的な強さを発揮する理由の一つだったろう。

 

 DCの第二の増援部隊の到着をきっかけに現地部隊は後方支援に回り、DCパトロール艦隊も一転して攻勢に出る。

 自ら肉の盾になろうとするアインスト達に多少の申し訳なさ、そして次々と数を増して火線を増して行く頼もしさ、どうしてここまで献身的とさえ言えるほど助力してくれることに対する疑念を合わせて抱きながら、キョウスケはエル・ミレニウムへ愛機を突っ込ませる。

 新型エンジンの出力にも慣れたキョウスケは、アルトアイゼンの操作を一切過たず、エル・ミレニウムの放つ水晶のブレスを避けて、三連キャノンと光子力ビームの返礼をくれてやる。

 

 百メートルを超えるエル・ミレニウムの巨体は小さなマシンキャノンの実弾では揺るぎもせず、光子力ビームは流石にいくばくか水晶の装甲を砕いたが、その程度だ。

 彼らの真骨頂はアルトアイゼンがこじ開けた突破口を、一心同体のコンビネーションでエクセレンが更に広げ、深く抉る点にある。偽りの星屑戦でもエル・ミレニウムの装甲を抉ったパターンだ。

 

「パワーアップしたアルトちゃんとヴァイスちゃん、そして更に深まった私達の絆パゥワァーで勝負よ!」

 

 キョウスケはエクセレンがまた妙な言い回しをしていると思ったが、そちらに意識は割かずにあくまでエル・ミレニウムに集中力を注ぐ。

 この場でもっとも厄介だろう未知の敵ゼル・ビレニウムは、フェブルウスが単機で抑え込んでいる。その間にエル・ミレニウムとアンゲロイ・アルカを片付けて、助力に行くべく大人達は奮起していた。

 

 エル・ミレニウムを操縦する真徒は凄まじい速度で懐に潜り込んでくるアルトアイゼンの姿を、確かに認識していた。傲慢、油断、慢心諸々により醜態をさらした真徒達だが、彼らが御使いの下で高次元存在の軍勢と戦っていたのもまた事実。

 彼らの戦ってきた敵は紛れもなく強敵で、その中には宇宙怪獣やアンチスパイラルも含まれている。亜光速で戦闘機動を取る億単位の巨大生物群に、星よりも巨大な機動兵器を含む無量大数を誇る艦隊……。

 それ以外にもオリュンポスの神々や宇宙魔王、ズール皇帝を筆頭とする高次元存在らを敵として来た彼らにとって、光の速さにも達しないアルトアイゼンなど!

 

「遅いなあ!」

 

「ふん!」

 

 タイミングを合わせて叩きつけられるエル・ミレニウムの右腕を、アルトアイゼンは紙一重の距離で避ける。エル・ミレニウムの指先がアルトアイゼンの左肩の装甲をかすめ、超合金ニューZに一本線の爪痕が刻まれた。

 エル・ミレニウムのカウンターを見切り、コンマ一秒にも満たない時間でアルトアイゼンの動きを変えたキョウスケの技術と胆力よ!

 

「見え透いた動きだ。ステーク、全弾持っていけ!」

 

 アルトアイゼンの右腕シリンダーの中に装填された、光子力ビームシリンダーが立て続けにそのエネルギーを解放し、エル・ミレニウムの腹部に突き立てられた超合金ニューZ製のステークから凄まじい衝撃が伝播して行く。

 

「おおお!?」

 

 エル・ミレニウムの機体が上げる悲鳴に、真徒は驚愕を口にして叫びながら慌ててアルトアイゼンを振りほどこうと、左腕で叩き潰そうと足掻く。直進してきた時と同じ速度で後退したアルトアイゼンを捉えきれず、水晶の左腕は空を切った。

 アルトアイゼンはエル・ミレニウムの間合いから外れた数メートルの位置で足を止め、ホーンファイヤーとクレイモアの発射体勢を既に整えている。

 

 咄嗟にエル・ミレニウムはステークに広げられた腹部の傷を両手で庇った。

 自分をかき抱いているような姿勢の巨獣に、数万度の超高熱線とタングステン製の鏃、更に光子力エネルギーのハイパーグレネードが直撃し、砕けたDECがパラパラと周囲に散ってゆく。

 ビームカートリッジの再装填を終えたアルトアイゼンと既にオクスタンランチャーEモードの連射を始めているヴァイスリッターが、エル・ミレニウムを一気に追い詰めるべくさらに攻撃を畳みかけて行く。

 

「今度こそ砕かせてもらうぞ」

 

「気を付けよう、アルトちゃんは急には止まれないってね!」

 

 避けるか、受けるか、反撃するか。真徒は即座にこの三つの中から一つを選んだ。腹部の傷を庇っていた腕を開き、DECの抽出する次元力を再びブレスとして、アルトアイゼンの機動を読み取り、アルトアイゼンが突っ込んでくるように放つ。

 このブレスの厄介な点は触れた個所から牙のような水晶が無数に生えてくる点にある。紙一重の回避では、その牙を避けきれずに装甲を抉られる可能性が極めて高い。

 

「容易く行くと思うなよ、劣等種!」

 

「ちっ、同じタネの手品を何度も」

 

 キョウスケは舌打ちと共にアルトアイゼンに急激な軌道変更を命じ、ミシミシと体の中から聞こえる軋みと痛みを無視して、左腕の三連マシンキャノンと腹部の拡散光子力ビーム砲を使い、目の前を塞いでゆく林の如き水晶の牙を粉砕して行く。

 ヴァイスリッターからの援護射撃も、次元力を纏わせた腕を盾代わりにしてダメージを最小限に抑え、次元力のブレスと炎を切り替えて二機の接近と決定打を許さない派手だが堅実な戦い方を実践する。

 やれば出来る、といっては何だが、真徒達も本腰を入れて戦いに臨めばやはり相応の強敵だった。

 

 気構えが違うのは第二波の真徒達全員に共通し、アクセルらシャドウセイバーズ出向組が相手をしているエル・ミレニウムにしても話は同じである。

 DC程ではないにせよ世界各地で激戦を経験してきたシャドウセイバーズの彼らにしても、なるほど、DCが貪欲に戦力を求めるわけだと納得がゆく。これだけ集めてもまだ足らないのだ!

 

「まったく世界は広いというが、歓迎したくない実感の仕方だな」

 

 フン、と笑い飛ばすだけの余裕がアクセルにはまだあった。ソウルゲインは三倍近いエル・ミレニウムの懐という間合いを維持したまま、至近距離で発射されるブレス、炎、振るわれる四肢、尾を裁きながらEG合金の拳を叩き込み続けている。

 共に自己修復能力のある両機だが、元々の耐久力と装甲性能差によって削り合いとなればソウルゲインが圧倒的に不利。瞬く間にエル・ミレニウムを撃破するか、数の差を活かして戦うのが活路だった。

 

 アクセルのバックアップに関して、ラミアとエキドナほど長けた人物はDC内には居ない。音声による合図という手間を必要とせず、ラミアとエキドナはアクセルに合わせて援護に徹すればよい。

 軍隊らしからぬ自由さと不合理性、そのくせ圧倒的な爆発力と戦果を挙げているDCでの経験により、シャドウセイバーズ内では得にくい情緒的経験を通じて人間味を増しているが、古い付き合いのアクセルと連携する時には機械的な冷徹さに徹していられる心地よさがあった。

 心地よさなど覚えている時点で、既に二人は後戻りが出来ないほどにバグが生じているのだが。

 

 ラミアのアンジュルグはイリュージョンアローを、エキドナのアンジュルグ・ノワールはコルヴァンカノンを同時に、あるいは交互に絶え間ない連射を行って、ソウルゲインには一発の誤射もなく着実にエル・ミレニウムの挙動を妨害している。

 ただそれも他のアンゲロイ・アルカがこちらに手出しできない状況が出来上がっているからだ。リョウやバニング、コウ達がアンゲロイ・アルカ部隊を一手に引き受けて、着実に数を減らしているからアクセル達はエル・ミレニウムに専念できている。

 

(個々のスキルの高さは理解していた筈だが、更にデータを更新しなければならないか)

 

 ラミアはDC部隊の練度の高さ、さらに現地部隊もこれまで記録していた平均値を上回る戦闘能力を見せており、記録に値すると戦闘行動の邪魔にならない程度に意識(メモリ? 演算?)を割いている。

 エキドナもまたラミアに劣らぬ精密な砲撃と広範囲に放たれる次元力の炎やブレスを避けながら、眼前の激戦と戦場全体の状況把握を怠らない。

 

(第一級警戒対象:エル・ミレニウム、更にデータだけは提供されていた特級警戒対象:ゼル・ビレニウム、そして暫定的に友好勢力とされているアインスト……。極めて特異な戦闘が発生している。レモン様に少しでも多くの情報を伝えられるようにしなければ)

 

 なによりもアクセルの生存、次いでラミアとエキドナの無事がレモンには喜ばれるだろう。といっても当のレモンがアインスト勢力の幹部級の存在であるので、アインストの意図や情報については特に知らせる必要がなかったりする。

 それを知らないエキドナは自己の中で優先度を並べ替えたタスクを一つの失敗も許されない、許さないと、淡々としかし冷静にこなし続けている。

 

 思考に差異はあれ、着実に仕事をこなしているラミアとエキドナにアクセルはレモンの人形に対する評価を高く上方修正し、目の前の巨大な水晶怪獣に渾身の連撃を打ち込む!

 操縦者の技量によって戦闘能力が大きく左右するソウルゲインのパイロットとして、アクセルは最適な人材の一人といえる。

 軍隊格闘術を筆頭に世界各地の武術を学習したアクセルは二十代前半にして、人類最高峰の近接戦のエキスパートだ。具体的にはガンダムファイターに殴られても、痛いで済む。

 

 この時、アクセルとソウルゲインがエル・ミレニウムに繰り出したのは、双手から挂拳、蓋拳、劈拳、抛拳、横拳の六段式を絶え間なく形を変えながら一斉に放つ、中国外家拳の絶技『阿修羅憤怒弾』。

 放たれる六段式に変化する拳の全てが音速に迫る超高速で、一秒を百で分けた時間ほども休むことなく、ソウルゲインなればこそ再現可能な連撃だ。

 虚実を入り交えた達人の奥義に、エル・ミレニウムの受けは間に合わず次々と拳がDECの装甲を砕き、陥没させていった。

 

「ば、馬鹿な!?」

 

 本気を出した真徒達は紛れもなく強敵であり、先程までとは比較にならない苦戦を強いられていたが、フェブルウスらの参戦によって着実に勝利の天秤はDC側に傾いており、真徒達は本気を出してもなお勝ちきれぬ状況にじわじわと焦りを増している。

 特に手加減をしなければならないとはいえ、ゼル・ビレニウムがフェブルウスに完全に抑え込まれているのが完全に想定外だった。

 なにより至高神ソルとしての記憶を取り戻し、スフィア四つ分のパワーを自在に操るフェブルウスの性能を完全に見誤っていた。

 

「てええい!」

 

「そそそおい!」

 

 気合の入っているのかいないのか分からない双子の掛け声と共にライアット・ジャレンチとガナリー・カーバーが永久機関のように休まず振るわれて、ゼル・ビレニウムの巨体を揺るがし続ける。

 約三十メートルのフェブルウスに対し、百二十三メートル超のゼル・ビレニウムは四倍以上を誇る巨体だ。

 堅牢を極めた装甲と絶大な攻撃力で、高次元存在同士の戦い“真戦”で猛威を奮った怪物であるのに間違いはないが、ならばフェブルウスは次元制御技術の頂点、宇宙の終焉と再生を乗り越える事すら可能な至高神ソルの生まれ変わりである。

 

「いい加減に……しろぉおお!」

 

 パイロットの女真徒がしびれを切らしたように叫んだ瞬間、ゼル・ビレニウムが無数の水晶片へと分解し、二つの長物がいくつかの破片を粉砕するに留まる。

 分解されたDECの破片は三つの小さな機体に再構築される。それでもフェブルウスより十メートルほど大きく、ソウルゲイン並みのサイズを誇る。

 

「三対一だね!」

 

 三方向からこちらを睨むゼル・ビレニウムに対して、シュメシは悲壮感の欠片もない声でただ状況を口にした。今日の天気を口にする方がまだ感情がこもっているだろう。

 

「こっちはシュメシ、私、フェブルウス!」

 

「なら三対三か。それに数は増えても向こうのパワーは三分の一だ」

 

「パワーが落ちていたら、怖くない!」

 

 三体が一斉に動き、フェブルウスの正面、左上方向、下方向と別々の方向から少しずつ速度に差をつけて襲い掛かる。ゼル・ビレニウムの動きに二人と一機──あるいは“三つ子”の反応は迅速を極めた。

 四基のSPIGOTが上下左右から八つ裂き光輪の如く回転しながら右のゼル・ビレニウムに襲い掛かり、正面のゼル・ビレニウムにレイ・ストレイターレットを撃ち、それを回避する動きを見せた瞬間には、砲撃を中断して左から襲い掛かるゼル・ビレニウムへの対処に動いていた。

 

 ゼル・ビレニウムの速度もあるが一連の動作は一秒にも満たない時間内での出来事だった。左のゼル・ビレニウムは水晶を肥大化させてハンマーのように変化させ、フェブルウスへ殴りかかってきていた。

 まっすぐに突っ込み、その両腕を振り回すだけでも銀河に版図を持つような勢力の軍勢も壊滅するゼル・ビレニウムだが、相手は至高神ソルの生まれ変わりにしてスフィア四つ分のパワーを持つフェブルウス。

 ライアット・ジャレンチの先端が展開し、そのまま獅子の如くゼル・ビレニウムの振り下ろしてきた右腕の先端に食らいつく!

 

「工具は使い方次第!」

 

 フンフン! と鼻息荒くヘマーが叫び、ゼル・ビレニウムの腕にライアット・ジャレンチを噛みつかせたまま力任せに振り回して、レイ・ストレイターレットを回避してコンマ数秒出遅れた正面のゼル・ビレニウムへと叩きつける!

 と、フェブルウスの右半身を目掛けて、SPIGOTの妨害を突破したゼル・ビレニウムが一撃を加える。MAP兵器級の規模と破壊力を誇る『再世の光炎』に、再びSPIGOTが舞い戻り四基が一列に並んでバリアを多重展開して光炎の奔流を受け流す。

 

「お返し……」

 

「……だあ!」

 

 双子は二人で一つの言葉を口にし、次元力を増幅させて二発目のレイ・ストレイターレットを発射!

 強大な光の奔流は一列に並んだSPIGOTを通過するたびにさらに威力を高め、大気圏内で使っていいのか疑わしい威力で再世の光炎を突き破り、そのままゼル・ビレニウムへ!

 しかし敵もさるもの、再世の光炎をレイ・ストレイターレットが貫いた時には既にゼル・ビレニウムは再び分解され、他の二機も同じように自ら分解するとフェブルウスから距離を取って一機へと構築し直していた。

 

「流石は至高神ソルの転生体。かつて我らが仕えた御使い達の最高傑作ということか。劣化したその姿でさえ、このゼル・ビレニウムと対等に戦うとはな」

 

「彼らのことをすっかりと見下しているようだけれど、君の乗っているゼル・ビレニウムだって、彼らの作り出したものじゃないか」

 

「結局、今になってもあの人達の遺産を使って格好つけても余計に格好悪いだけだよ」

 

 双子の容赦のない言葉は的確に真徒の心を逆なでし、ふつふつと怒りのマグマを煮えたぎらせる行為だった。

 

「ふ、ふふ、ふふふ、いいだろう。自分達の置かれた立場を理解できていない子供には、相応の仕置きが必要だろう! この星ごとその機体を砕いてくれる!!」

 

 ゼル・ビレニウムに課していた出力制限を段階的に解除し、惑星破壊可能なレベルにまで上げる。

 それこそ正面からやり合うにはガンバスタークラスの機動兵器が必要なパワーに達したゼル・ビレニウムを前に、双子が抱いたのは焦燥や恐怖ではなくある種の諦めと呆れだった。

 

「煽られることにまったく耐性がないんだね」

 

「自分達が高みに達していると根拠もなく信じているから……」

 

 そうして二人は揃って『はあ』とかつて関係者だった事もあり、憂鬱な気持ちで特大の溜息を零す。

 双子らの創造主であった御使いとて、真徒達を都合よく使い潰せる駒くらいにしか考えていなかったが、そんな彼らを崇めていた当時のようにユーゼスを崇める真徒達の変わらぬメンタルには頭の痛くなる思いがする。

 

「それに僕達のことにばかり目を取られているのも減点ものだよ?」

 

「今日の天気は頭上注意、ところによっては刃を持った獅子が降るでしょう」

 

「なにをわけのわからないことを!」

 

 真徒が奇妙な音と共にゼル・ビレニウムを無数の水晶片に分解させて、アイスランド全土を削りつくすパワーで襲い掛かろうとしたその瞬間、双子が告げたように彼女の頭上から超高速で飛来する物体を機体が捉えた。

 

「なにが……」

 

 真徒は機体の分解を中断し、フェブルウスへの注意を二割ほど頭上から飛来しつつある物体へと向けた。DC側には味方の識別信号を表示しているソレは、ヘブンズベースのウルトラザウルスからグラビティカノンを使って撃ち出された一機のゾイドだった。

 機体保護するためのEフィールドのバリアが空中で解除され、その中から青い鬣を纏った獅子の如き機体──ブレードライガーが姿を見せる。

 

 地球連邦軍の一部で少数が運用されている通常のブレードライガーとは異なり、装甲にマシンセルを使用し、オーガノイドを搭載した特別仕様のこの機体は、大破したシールドライガーがオーガノイドの意志によって進化した唯一無二の特別な機体、さしずめブレードライガーBS(バンスペシャル)

 その正体を捕捉した真徒は、たかがブレードライガーではないかと警戒した自分を笑いたくなった。フルスペックを発揮したゼル・ビレニウムと戦えるゾイドなど、デススティンガーとデスザウラーくらいのものである。

 

「ふふ、ブレードライガー程度が……」

 

 そういって油断する真徒の目の前で、ブレードライガーの胴体左右にあるブレードが横に倒れ、オレンジ色の刃から稲妻のようなエネルギーが放出されると見る間に巨大化して、凄まじい規模のエネルギー刃が形成される。

 

「なっ!?」

 

 予想外の現象にさしもの真徒が驚愕する中、ブレードライガーのコックピットに座るバン・フライハイトとフィーネはゼル・ビレニウムをロックオンし、新生した愛機の力を見せつけるべく空中を疾駆する。

 ブレードライガーに搭載されたゲッター炉はマシンセルの干渉とジークの意志によって、新たな動力炉“ゾイドコア”へと変貌していた。

 ゲッター線とも異なる独自のエネルギーが最大出力で作り出され、そのエネルギーは胴体左右のレーザーブレードへと伝達される。

 

「ゾイドコア出力最大、ブレードのマシンセルエネルギー変換、終了よ、バン!」

 

 コックピットの後部シートで猛るゾイドコアが生み出す莫大なエネルギーとその影響を受けるマシンセルを、ジークと共に制御していたフィーネは、理論上は可能と所長に告げられていたブレードライガーBS最強最大の一撃が繰り出せることをバンに告げる。

 

「よっし! 手加減も遠慮もしねえ! リミット解除、レーザーブレード・モード・プラネットスラッシャー!! まとめてぶった斬る!!」

 

 それは空をも真っ二つに斬り裂く光の刃だった。空を飛ぶブレードライガーの左右から翼の如く、膨大なエネルギーの奔流が伸び、それは恐ろしく巨大なブレードを形成する。

 まさしく星をも斬る巨大にして強大、苛烈、強烈なる獅子の刃だ。戦艦どころか軍事基地も一撃で壊滅に追い込める刃が、真徒達へ下される審判の如く振り下ろされる!

 

「うわああああ!?」

 

 左右のプラネットスラッシャーは刹那の時間差でもってゼル・ビレニウムを斬り捨て、圧倒的なエネルギーは分解途中だったDECを跡形もなく消滅させてゆく。

 斬撃が命中するのと同時にプラネットスラッシャーの根元からエネルギーが切り離されて、斬った相手を中心に渦を巻き始めて二つ目の斬撃も同じく二重の渦を巻き、異なる回転をするエネルギーの渦が斬られた後の敵を徹底的に破壊し尽くす。

 

 慌ててフェブルウスが更に距離を取らなければならないほど、巨大なエネルギーの破壊渦は直径数百メートル規模で発生し、あの中にあってはこれまで戦ってきたどんな敵も無事では済まないとこの場にいる全員が確信している。

 プラネットスラッシャーの初使用による負荷を受けつつ、ブレードライガーBSは爆風が荒れ狂う大地へと軽やかに着地して、脚を止めて同じく着地していたフェブルウスの傍らに寄ってくる。

 

「へへ、ぶっつけ本番の割には上手くいったろ?」

 

 二つのプラネットスラッシャーが生み出した破壊エネルギーはようやく収まりつつあった。ミケーネのデモニカや百鬼帝国の科学要塞島も一撃でこの世からさようならしそうな攻撃は、これからDCが戦わなければならない敵を考えれば、実に頼りになる威力だ。

 

「うん、ナイス一撃!」

 

「ナイス一撃! ジークも機体の進化が終わったんだねえ、よかったねえ、バン君、フィーネちゃん。ジークとお話しできなくて寂しかったもんね」

 

「ええ、ヘマーの言うとおりね。ライガーもお化粧直しが終わって、前よりももっと頼りになるようになったわ」

 

「うんうん、フィーネちゃんの言う通り。マシンセルとゲッター線が良い具合に交じり合って、獣の血と水の交わり、それに風の行く先と火の文明をいっぺんにちょっとずつ体現したモノになっているね」

 

「???」

 

 ヘマーの語る真化の理はバンにはチンプンカンプンだったが、フェブルウスがまだ戦闘態勢を解いていない事に気付くと、すぐに緩めていた緊張の糸を張り直した。

 

「プラネットスラッシャーでも倒せてなかったのか?」

 

 プラネットスラッシャーの余波により、アンゲロイ・アルカやエル・ミレニウムにもダメージが及んでおり、真徒側の戦力は立て直さなければ文字通りの全滅も時間の問題という程に追い込まれている。

 だからこそバンもある程度、気を抜いていたのだ。加えてウルトラサウルスからの砲撃による救援という無茶、プラネットスラッシャーのぶっつけ本番での使用と無茶を重ねた機体を慮って、という理由もある。

 

「邪魔が入らなければ倒せていたよ」

 

 そうシュメシがバンに答えると、彼らの周囲にペルゼイン・リヒカイト、アインストディナ、アシェル刃、更にアインストの大群が集まり始め、プラネットスラッシャーの爆心地周辺に見える影へ濃厚な敵意と警戒心を向ける。

 

「お話し中お邪魔しますの。先程の攻撃はお見事でした。青いライオンさん。あの方々は捨て駒だと私共は判断していたのですけれど、あの次元の水晶は希少だから回収しにいらしたようですのね」

 

 アルフィミィの言葉の意味はすぐに知れた。爆心地の中から新たに数十機の機動兵器が姿を見せたのだ。ヴァルク・ベン、シュムエル、ハーガイ、そして黒と黄金で装った指揮官機と思しいヴァルク・ベン系の機体ヴァルク・バアル。

 ヴァルク・バアル、クォヴレーと因縁のあるキャリコ・マクレディが乗り込み、αナンバーズと死闘を繰り広げたゼ・バルマリィ帝国の機動兵器だ。

 

「やはり来たか、キャリコ」

 

 クォヴレーは自分の予感が的中した事に眉根を寄せて、あの機体に乗るキャリコにかつての記憶があるのか、それとも新造された個体であるのか、その可能性を探っていた。

 ヴァルク・バアルの左手にはゼル・ビレニウムのコックピットブロック周辺が抱えられていた。救助した、というよりは機体のコア部分がそこだったからである。

 クォヴレーや双子らが警戒の意識を向ける一方で、ヴァルク・バアルのパイロットは真徒達と言葉を交わしていた。パイロットはクォヴレーの想定通り、イングラム・プリスケンと瓜二つの容姿を持ったキャリコ・マクレディ。顔の下半分以外を隠すマスクを着けている姿は、デザインこそ違えども真徒と共通している。

 

「無様この上ないな」

 

「なんだと!? いや、だが……」

 

「ふ、自分の惨めさを自覚する程度は出来たか。お前達の命はどれだけ失われようとも構わんが、ゼル・ビレニウムは希少だ。お前達の失態と醜態によって失われてよいものではない。

 お前達がDCを追い詰められれば、俺達の出番もなかったが、このような有り様ではな。アインストというイレギュラーがあったにせよ、ユーゼス様に言い訳のしようもない失敗だ」

 

「そ、それは……」

 

「弁明をするのなら俺ではなくユーゼス様にするのだ」

 

「ま、待って、ゼル・ビレニウムを再生させて、もう一度」

 

「お前達は負けた。それを受け入れろ」

 

 キャリコは自分と同じバルシェムと呼ばれる人造人間達が乗るヴァルク・ベンに、ゼル・ビレニウムのコアを預けるとその機体と生き残りのアンゲロイ・アルカ達にヘルモーズへの帰還を命じた。

 予めユーゼスから命令を受けていたキャリコの指示に逆らえるものはなく、DCの各員とアインスト達に包囲された状況で、生き残りの真徒達とヴァルク・ベンの一部が転移でこの場から離脱した。

 

「ちぃ、逃がすかよ!」

 

 新たな敵の増援は来たが、勢いはこちらにある。そう判断したリョウが動き、現場指揮官であるバニングとヤザンもこの場は勢いに乗るべきだと考え、リョウを止めなかった。各機が動き出そうとしたその矢先に、こちらの動きを読んでいたように無人機のシュムエルやハーガイ、有人機のヴァルク・ベンが一斉に四方に散じて出鼻を挫いてきた。

 再び爆炎とビームが乱舞し始めた戦場の中で、ヴァルク・バアルはフェブルウス、ペルゼイン・リヒカイト、そしてベルグバウASに視線を巡らせてから、クォヴレーへと通信を繋げてきた。お互いにツイン・ラアムライフルとブレード・ホイール・バスターの銃口を突きつけ合っている。

 

「お前がクォヴレー・ゴードンか。ユーゼス様から話を聞いている」

 

「その口ぶりは……こちらの世界で生み出された個体か、キャリコ・マクレディ」

 

「俺の名を知っているか。お前の居た世界での俺とはそれなりにやり合ったようだな。安心しろ、俺はお前の言う通りこちらで作り出された。

 貴様との戦いについては、記録と記憶はあるがそれに伴う感情とは無縁だ。オリジネイターに対する執着も、俺にとってはどうでもよいことだ」

 

「駒としての自分に異論はないと?」

 

「俺は任務を達成する為の駒だ。虚空の番人などという使命を与えられ、その使命を果たしているだけの駒であるお前と大して変わりはあるまいよ」

 

「……」

 

 クォヴレーが沈黙を友に選んだのを皮切りに、ヴァルク・バアルはブレード・ホイール・バスターの銃口を外して、撤退の素振りを見せる。

 

「今日は無能な駒から有用な兵器を回収するのが俺の任務だ。お前達の戦力評価は改めてし直すとして、今日はこれで引かせてもらおう。クォヴレー、俺はお前に興味がないが、お前が俺に因縁を感じるのならば、好きにするがいい」

 

 ヴァルク・バアルは元々高度なジャミング装置を搭載していたが、この世界で新造された際にはさらに改良がくわえられ、強力になったジャミング装置により一時的にDC側に妨害を加えると転移によって姿を消してしまう。

 ヴァルク・バアルだけでなくヴァルク・ベンもそれに続いたが、その他のシュムエルやハーガイはDC達の足止めに残された。もちろんこれを片付けるのは容易い事だったが、その後もアインスト達が残り、アルフィミィが告げてきた内容の方が問題だった。

 

「どうもどうも、共闘するのはこれが初めてではありませんね。実は私共アインストは、正式に地球連邦政府並びに地球人類との共闘を考えておりますの。つきましてはヘイデス総帥をはじめ、政府や軍の偉い方達とお話したいのですけれど、仲介をお願いできます?」

 

 それと、誠意の証として私とコッスィー、テッスィー、ジンがお手伝いいたしますわ、と。

 

<続>

 

■シールドライガーがブレードライガーBSへ進化しました。

■キャリコ・マクレディが新造されました。




シールドライガーのアンケートありがとうございました。
結果としてブレードライガーとなりましたが、魔改造付きです。
マシンセル、ブレードからスレードゲルミルを連想し、星薙ぎの太刀級の火力を得たスーパーアタッカーとなりました。

追記
聖戦 → 真戦 ファイアーエムブレムと混同していました。
グレートマジンガー級の光子力ビーム~~ を修正しました。
ご指摘ありがとうございます。


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第八十一話 すぐに信じるのには難しい味方というのは贅沢な悩み

今回、短めです。

追記
順番が間違っていました。メッセージ、誤字脱字、感想でお知らせくださった皆さん、ありがとうございました。訂正いたしました。


 ブレードライガーBSの戦場到着より時は遡り、場所はヘブンズベース基地内部のウルトラザウルス内部の格納庫。

 傷ついたシールドライガーを包み込んだ淡く光る繭は、便宜上、エヴォリューション・コクーンと呼ばれていた。便宜上の割には長いな、とそれなりの人間が思ったが、異論が出なかったのは空気を読んだからだろう。

 

 その光る繭は幾度の戦いの間も変わらず光を発していたが、真徒達との戦いが始まった頃についに小さな罅が走ると、それはすぐさま繭全体に広がって、その内部で進化を果たしたブレードライガーBSが姿を見せたのだ。

 そこからはてんやわんやだ。外部からの観測とジークから送られてくるデータで分かっていたとはいえ、ゲッター炉がゾイドコアへと変貌し、レーザーブレードがエネルギー供給量次第でMAP兵器級の広域破壊兵器となるなど、驚嘆するべき情報があまりに多い。

 

 機体から分離して姿を見せたジークに、バンとフィーネが大喜びで抱きしめに行った光景は微笑ましいものであったが、ブレードライガーBSに取りつく技術者やメカニック達の口元に笑みが浮かぶことはあっても手は止まらない。

 幸いヘブンズベースは今日にいたるまで直接攻撃を受けておらず、ブレードライガーBSのチェックは実に順調に進んだ。

 エヴォリューション・コクーンでの進化によって、ノーマル仕様のブレードライガーとどのような差異が生じたのか、特にこの点は重要視された。

 

 そしてアイスランドの現地部隊とDCパトロール部隊交戦の報せが、その調査中に飛び込んできたのである。

 既にDC艦隊各艦へのワープ装置の取り付けやワープブースターの開発は済んでいるが、検証回数に若干の不安があるのと大気圏内でのワープはとりわけ慎重を期されており、お留守番組の艦隊がワープで救援に駆け付ける案は渋られた。

 助ける為にワープをしたら地面の中だった、なんてことになったら笑い話にもならない。

 

 悠長に話している時間はない。既に別働部隊のオウカやクォヴレーらが救援に向かっていると報せは入っていたが、相手は真徒だ。少なくとも運用している機動兵器の性能は、全勢力の中でも最強格である。

 とはいえ実のところ、このワープによる救援が困難である、という問題に対して解決策は幾度となく議論されて、いくつかの案が出ている。

 

 その一つがコレだ。ウルトラザウルスのグラビティカノンから、機体を直接撃ち出すというとんでもない荒業である。

 この最高に頭の悪い方法を、新生したばかりのブレードライガーBSで行う流れとなった。

 問題はいくつかある。撃ち出される機体とパイロットへの負担、着弾後の機体とパイロットへのダメージ、どうやって撃ち出すのか?などなど。

 

 加えて一つ、この世界のモビルゾイドならびにゾイドは、対メカザウルスのゲッター系兵器として開発された事から、原作と比べて二倍前後の巨体なのである。

 それに対してウルトラザウルスとグラビティカノンの口径や全長もアニメ版通り。つまり、ブレードライガーBSを砲弾のように撃ち出すのはサイズ的に無理なのだった。

 

 だがサイズの問題はブレードライガーBSを始めとしたゾイドばかりではない。スーパーロボットの多くはグラビティカノンの砲身内部に収まるサイズではない。

 そうなってくると撃ち出せるのは寝そべったMSかKMF、試作段階のオーラバトラーくらいのものになる。

 

 そこで諦める技術者陣ではない。所長を筆頭としたヘパ研の技術者に地球連邦から派遣された精鋭技術者達が、膝を突きつけ合い、時に胸ぐらを掴み、出した結論はグラビティカノンの改良だった。

 ウルトラザウルスの右側に装着されたパワージェネレーターを巨大ブラックホールエンジンに換装し、左側に装着されるグラビティカノンの400mに達する長砲身を開放型のバレルに改造され、撃ち出せる機動兵器のサイズに合わせて変更できるように力づくで対応したのである。

 ついでに砲弾ばかりでなく、グラビティブラストとブラックホールキャノンとグラビティランスを使えるようにしたのは、開発陣のちょっとしたお茶目である。

 

 そして実際に撃ち出す際には、Eフィールドを砲弾状に展開して機体を保護しているブレードライガーBSに、更にウルトラザウルス側から重力場で二重に包み込み、より安全を確保する。

 グラビティカノンに装填されたバンとフィーネ、ジーク達に緊張の色はない。

 久しぶりの再会に浮足立っているのに加えて、新生したブレードライガーBSのパワーを操縦桿やシート越しに感じ取り、生まれ変わった相棒への信頼が厚かった為だ。

 

 ウルトラザウルスの側では火器管制その他諸々のフォローが行われ、戦場に着実にかつ迅速にバン達を送り届けられるように、万全のバックアップ体制が整えられている。

 ヘブンズベース側からもサテライトリンクから得られた気象情報から重力変動、戦場近辺の空間歪曲率と膨大なデータが順次送られている。

 発射の時を今か今かと待つバン、そのバンのフォローをするべく機体のチェックに余念のないフィーネ、ゾイドコアを抱きしめる形でドッキングしているジークに、所長が射出のシークエンスを改めて伝えている。

 

『バン君、フィーネさん、ジーク、既にブレードライガーのEフィールドをウルトラザウルス側の重力場で包み込み、疑似砲弾と化す作業は終了しています。

 射出する方角と距離、速度、その他諸々の計算はこちらで行っていますし、それももう間もなく終わります。

 重力場は貴方達を射出後、一定時間の経過と共に自然と消失しますから、戦場に到着するタイミングでブレードライガーのEフィールドを解除して、戦いに加わってください』

 

「おう! 任せといてくれ! それにさっき話に聞いた例のアレも試してみるぜ」

 

『ああ、あれは機体への負担がかなりのものになりますから、使えばそれでもう戦いが終わるというタイミングでもない限りは、使わないでくださいな。

 というか、新生した機体でいきなり使うのはリスクが高いですから、フィーネさんとジークとよく相談してお使いなさい。二人も安易にバン君の判断を許してはいけませんよ』

 

「はい。状況に合わせてリミッターを解除します」

 

 使わないとは言っていないフィーネに、所長は内心で溜息を零した。フィーネは火器管制に適性を見せ、ジークとの抜群の親和性の高さから今も乗せ続けているが、ストッパーとしてはあまり期待できなさそうだ。

 

『……まあ、いいでしょう。そろそろカウントダウンを始めます。慣性制御で貴方達への負担は可能な限り軽減しますが、ゼロにする事は出来ません。舌を噛まないように気を付けて』

 

 そうして改良されたグラビティカノンから撃ち出されたバン、フィーネ、ジーク達の活躍に関しては、既に語られたとおりだ。

 新生ブレードライガーBSは理不尽大火力を発揮し、不意打ち気味だったとはいえゼル・ビレニウムを撃破寸前まで追い詰め、周囲の敵機をまとめて薙ぎ払うという戦果を挙げる事となる。

 

 ゼル・ビレニウムを投入してきた真徒達、それらの回収に姿を見せた新しいキャリコ、彼らとの戦いを終えたDC部隊は現地防衛隊と別れて、大量のDECと敵機の残骸、戦闘データと共にヘブンズベースへと帰還した。

 ゴジュラスMkⅡ量産型、アイアンコング、ディバイソン、サラマンダー、ストームソーダー、サックスティンガー、ジェノザラウラーといったゾイド系にゲシュペンストMk-Ⅲ、バルゴラCS、グルンガスト弐式、ガンダムデュラクシール等々、多数の機体に守られた基地は、仮にDCが出払っていても鉄壁の守りを見せるだろう。

 

 世界各地の救援に向かっていた部隊も帰還し、ヘブンズベースにはDCの全戦力が集結していた。

 ヴィンデルとレモン、ギリアムはまだ合流していないが、バベジン研でツヴァイザーゲインとヴァイスセイヴァーの完成が確認された為、近くギャンランドと共にやってくる予定だ。

 

 太平洋に展開したデススティンガーとユーラシア大陸を闊歩するデスザウラーの存在により、地球圏内の敵勢力への牽制も効いている。

 地球連邦側が消耗した人員、物資、機動兵器の補充を迅速に済ませつつあるように、各敵勢力もオペレーション・レコンキスタで被った損害をある程度は補えているだろう。

 こうなるといかに初動を早めてイニシアチブを取るかが重要視されてくる。現状、宇宙に拠点を置く敵勢力の行動が控えめであるから、この内に地球側の身内同士の諍いを終わらせて異種族・異星人との戦いに集中できる状況を整えるのが肝要だ。

 

 グリプス2を占拠中のティターンズの息の根を止め、ミケーネ帝国と百鬼帝国、妖魔帝国といった地球に根付いていた敵対勢力を壊滅させてから、ムゲ・ゾルバドスやガイゾック、ベガ、ボアザン、キャンベルといった地球外勢力の打倒だ。

 地球外勢力打倒に関しては協力者の存在するボアザンとバーム、デュークやマリアといった情報源のあるベガあたりから手を付ける事になるだろうか。

 

 そんなこんなでヘイデスはいつにも増して仕事に追われていた。

 地球各地の復興の為の物資の手配に傘下の企業への指示出しに各プロジェクトの進捗状況の確認、可能な限り彼がいなくても仕事が回るように常から心がけ、人材の育成を行っているが彼でなければ扱えないような機密性の高い事業や情報も多く、なかなかうまくいっていないのが実情だった。

 

 財閥が破綻するのも覚悟の上で地球人類の為に資金を出し、物資を出し、戦後、社員が路頭に迷わないようにと新たな就職先の手配までこなしている。

 戦場に出れば三流以下のパイロットに過ぎなくても、裏方に回れば途端にトップエースになるのがヘイデス・プルートという青年だった。

 こればかりはスパロボプレイヤーとしての知識や意識ではなく、覚醒前のヘイデス・プルートが培ってきた能力であるけれど。

 

 親の顔より見たと言いたくなるくらいに通信画像でも実物でも顔を合わせている政府高官、軍関係者らが集った会合でアインストからの使者アルフィミィから齎された共闘の提案と情報が通達され、それぞれが疑惑、不安、困惑やらの表情を浮かべるか、あるいは押し隠していた。

 ヘブンズベースの最高責任者であり、DC総帥を兼ねるヘイデスもその会議に参加していたが、アインストと事前に接触し、スパロボプレイヤーとしての知識もあった彼だけは平静を保っている。

 

(アインストはタイトルによって設定の差異はあるが、地球人類を排除しようとするか、庇護しようとするかの両極端に走ってきた。幸い、この世界では人類の味方側として動いてくれるようだけれど、おいそれとは信じられないよな。

 俺だって無限のフロンティア繋がりでゼノサーガ本編終了後のKOS-MOS、T-elos、ジンがこっちのアインストに拾われているとか、今でも信じられないくらいだし)

 

 地球連邦政府の表と裏の権力者達が腹の探り合いなど一切ない、素直な感想を口にしているだけ、という珍しい光景を目の当たりにしながら、ヘイデスはそんな感想を抱いていた。

 通信モニターに映っている者がほとんどで直に足を運んでいる者はほとんどいない。現在の地球連邦の首都はラサにあるし、アイスランドにすぐに来られる者は少なかったから仕方ない。

 

「アインスト……なぜドイツ語なのだ?」

 

「彼らの創造主はあれかね、未来からタイムスリップしたドイツ人だったのかね?」

 

「確かに奇妙な話だが、それを言ったらバルマー系もやたらヘブライ語を使ってくるぞ」

 

「いやいや、待って、待って。確かに不思議な一致ですが、彼らからの共闘の申し出に対して、返答しなければなりません。現実から目を背ける、よくない、ヨクナイヨ」

 

「君も話し方が一部おかしいぞ。落ち着き給え。ヘイデス君、アインストの使者のアルフィミィといったか。その使者殿は今は大人しくこの基地で待ってくれているのだったね?」

 

「ええ。コロニー落とし未遂の時に助力してくれた例もありますし、先のバサ帝国部隊との戦闘でも力を貸してくれました。丁重にもてなしていますよ。

 それに彼女の言葉を信じるのなら、これからDCの一員として参加してくれるそうですしね。正規軍には組み込みにくくても、DCならとりあえず問題にはなりにくいでしょう」

 

 ヘイデスはこの世界ではどうしてレモンとアルフィミィが、それぞれが別世界の出身ならばともかく、両方とも存在しているのかまだ知らなかったが、エクセレンとキョウスケ、それにアクセルに対して特に友好的な態度を見せている事から、誕生の経緯はそう変わらないのだろう、と予測している。

 アルフィミィがキョウスケとアクセルを義兄(ほぼ確定)と判断し、身内扱いしているとは流石のヘイデスも知らぬ事であったし、また同時に原作版初期のアルフィミィほど、こちらのアルフィミィがキョウスケに執着を持っていない事も知らない。

 

「正確な規模も拠点も分からない正体不明の、しかし友好的な勢力か。ありがたくもあり、同時に悩ましくもあり……」

 

「敵ばかりが増える状況で味方が増えるのはありがたい。これまでの戦闘データからも、高水準の戦力を持ち、かつ独自の転移技術を持った勢力だと分かっているのだ。ますますもってありがたい。だが……」

 

「信用したくしても信用しきれないのが問題ですね。なまじ強力であるが故に、どこまで胸襟を開いてよいのかが分からない。こんな状況でなければ、もっと段階を踏んで交渉を持てたものを」

 

「しかし、異星や異世界からの侵略が起きたからこそ彼らも我々に協力する決断を下したというではないか。こんな状況でなかったら、彼らは傍観に徹していたわけだし」

 

 こちらから攻め込む事は出来ず、そのくせ相手は一方的に転移で自在に戦力を展開できるのがアインストである。詳細は伏せられているが高度な兵器複製能力や再生能力、環境改造など驚異的な能力を持っている。

 のこのことノイ・レジセイアが戦場に出て来なければ、どうやって打倒すればいいのかと詰みかねない相手だ。

 地球連邦の皆さんが不安視するのも当然の相手である。地球人類を守る方向にバグを起こしているが、更にもう一度、バグを起こして人類殲滅に思考が振り切れる可能性だってあるから困りものだ。

 

「当面は様子見をするしかないのでは? 幸か不幸かアルフィミィ達自身も信用されにくい点は理解していますし、こちらが警戒をするのを分かってくれています。DCで預かりながら、どこまで信用できるのかおっかなびっくり図ってゆくしかありませんよ」

 

 ヘイデスの出した妥協案は、まさに妥協の中の妥協、無難中の無難といったものだったが、現実的かつ建設的な案もそれくらいのものだ。反対するにしても対案を出せるものでもなかったから、他の出席者達はまあそうなるかなあ、という表情を浮かべるのだった。

 味方として扱うにしても悩ましいアインストの話の後には、今後の地球連邦軍の戦略について軍部から説明がなされた。既に参謀本部が練り上げて軍部が完成させたスケジュールのお披露目というわけだ。

 

「プルプルプル~」

 

「プルプルプルー」

 

「く、ぷ、プルプルプルー!」

 

「プルプルプル~ですの~」

 

 当のアルフィミィはプル、プルツー、マリーダと並んで楽し気にヘブンズベースの中を走り回っていたが。

 

<続>

 




二回目のワクチンを打った翌日に熱が出て横になっていました、と言い訳いたします。
短くでごめんなさいね。

そろそろマジンカイザー、真ゲッターを入手する地上ルートとバスクらをボコボコにしてガンダムグリープ、ガンダムレオン、Hi-νガンダム、ナイチンゲールなんかをゲットする宇宙ルートの分岐に突入する頃合いですね。

追記
レオンに関してはいるだけ参戦に近いです。


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第八十二話 三度目のルート分岐

このままだ三年目に突入しそうなので、色々と省略しながら書いて行きたいと思います。


 プルシスターズに一人を加えて基地内部の廊下を走っていた少女達だったが、曲がり角の向こうから顔を見せた大介に優しく声を掛けられて足を止める。大介の他に甲児と鉄也の姿もあり、マジンガーなトリオである。

 

「プル、プルツー、マリーダ、アルフィミィ、子供が元気なのは良い事だが、基地の中を走り回るのは危ないぞ。僕は大丈夫だったが、特に曲がり角はぶつかりやすい」

 

「ごめんなさぁい。つい楽しくなって走っちゃった」

 

「悪かったな」

 

 頭ごなしに怒鳴られたのならば反発したかもしれないが、大介がプル達を案じているのが分かる声音であったから、プルの反応は素直なものだ。プルツーの方も言葉選びに難はあるが、彼女にしては素直に謝った方だろう。

 マリーダは容姿こそ瓜二つでもプルほど天真爛漫な性格ではなかったので、ようやく羞恥心から解放された状況に安堵していた。

 

「うふふ、特に理由もなくああして誰かと一緒に走り回るなんて、経験した事が無かったので、少々はしゃいでしまいましたの。ごめんなさい」

 

 アルフィミィは口にした通り、ノイ・レジセイアに生み出されてから純粋に遊んだ経験などなかったから、どうやら浮かれてしまっていたらしい。

 彼女自身は地球人類との本格的な接触とあって、それなりに緊張していたものだが、ヘブンズベースに来てみれば容姿相応の子供扱いをされて、年若いガンダムパイロット達やスーパーロボットのパイロットら若い世代を中心に友好関係を築いている。

 こうした子供達の素直な謝意に大介の相好は崩れた。ともすれば在りし日のフリード星の平穏な一幕を思い出したのかもしれない。

 いつもシャングリラチルドレンと行動を共にしているプル達だが、今日は周りにジュドーらの姿がない。それを確認した甲児が尋ねる。

 

「いつもの面子はどうしたんだ? ジュドー達も今は自由時間だろう?」

 

「先に食堂に行っているの。あたし達はこれから合流!」

 

「パフェやアイスにケーキ、スイーツ系の新作が入ったとさっき聞いて、プルがはしゃいでいるんだ」

 

「そうか、プルは特にパフェが好きだもんな。食べ過ぎてお腹を壊すんじゃないぞ」

 

「大丈夫よ、あたし達って頑丈だもの」

 

 笑うに笑えないプルの台詞だ。エルピー・プルはプルシリーズの素体であって強化人間ではない、養育段階で強化措置を施されている、天然のニュータイプと諸説あるが時と場合による。

 まあ、頑丈という意味ではアインストであるアルフィミィの方が、プル達を上回る可能性は高い。

 そんな、つい最近、ヘブンズベースにやってきたばかりのアルフィミィはというと、自分に半信半疑の視線を向けている鉄也へとにこやかに話しかける。

 

「そんなに熱い視線で見つめられると溶けてしまいそうですの。うふふ、というのは冗談として、いきなりここで大暴れなんてしませんの。警戒しないで欲しいというのは流石に無理でしょうけれど、半分くらいに控えて貰ってもいいと思いますのよ」

 

 鉄也は腕を組み、思案するような顔つきのままアルフィミィに答える。彼のように来訪してきたアインストチームを警戒している者は少なくない。

 流石のDCであろうと、誰も彼もがやってくる者全てを無警戒に受け入れるわけではないのだ。

 当然と言えば当然の話である。人間同士であっても、見知らぬ勢力からやってきた相手となれば警戒するのに、アルフィミィはれっきとした別の種族なのだから。

 

「お前達がこれまで俺達に味方してくれていたのは、れっきとした事実だ。その点については素直に感謝するべきだと俺も思っている」

 

「お礼の言葉ならいくらでもウェルカムですの」

 

「……調子が狂うな。君やKOS-MOS達が人質も兼ねて、俺達のところに身を預けている事情も理解しているが、人外のお前達がどのような力を持っているのか分からない以上、警戒を完全に解く事は出来ない。それを君達も自覚しているようだがな」

 

「私達はもうずいぶん長い事、人類の皆様を観察しておりましたから。私は実際に観察していたわけではありませんけれど、その観察記録は共有しておりますの。だから、今回のようなケースで人類がどう反応するか、なんどもシミュレーションいたしました」

 

「現実とシミュレーションに差異はあったか?」

 

「おおむね一致しておりますの。一部の方はこうして想定以上に親しくしてくださっておりますけど」

 

 そう言ってプル達を見るアルフィミィに、鉄也はそれ以上言葉を重ねなかった。彼自身、アインスト全体はともかくとして目の前の少女の姿をした存在に悪意がないのは、認めざるを得ないところであったから。

 

 

 ヘブンズベースに拠点を移してからそれなりに時が経ち、各敵対勢力との決戦が近づいてきているのはDCのメンバーのみならず、この地球を核とした戦乱に参加している誰もが、それこそ首領から末端に至るまでひしひしと感じているだろう。

 アインストの幹部級という思わぬ戦力の増加を迎えたDCだが、ただでさえ圧倒的な戦闘能力を有する地球圏最強部隊と化した彼らは、この機に最大の敵となるだろうバサ帝国との戦いを見越して、再び宇宙と地上で部隊を分けようとしていた。

 最強の敵との決戦を前に、出来る限り問題を片付けておこうとするのは、当たり前の発想だろう。

 

 ブリーフィングルームにはスポンサーであるヘイデスをはじめ、部隊の総指揮官であるレビルを筆頭に艦長職の面々が壇上に上がり、メンバーへと向けてこれからの行動方針について説明を始めている。

 ヘブンズベースにこもって守勢に入る時間は終わりだ。

 これからは攻めに回る時間であり、守勢よりも攻勢に圧倒的な力を発揮するのは歴代プレイヤー部隊に共通する特徴である。

 会議の始まりを告げたのはレビルである。経歴、実績共に紛れもなくトップの人物だから、彼がこの場を取り仕切るのに異論を唱えられる者はまずいない。

 

「既に皆も耳にしていたと思うが、グリプスを占拠するバスク・オム率いる旧ティターンズ残党を捕縛ないしは殲滅する為、バスク派とは別派閥のティターンズのメンバーを中核とした新組織『キュクロープス』が行動を開始する」

 

 皆の視線が集まる立体スクリーンには、この世界ではコンペイトウとは名付けられず、ソロモンの名前のままの宇宙要塞とアレキサンドリア級重巡洋艦アスワンを中核として集結し、編成を終えたキュクロープス艦隊の姿が映る。

 アレキサンドリア級、ロンバルディア級、それにサラミス改級、クラップ級から構成されており、アルバトロス級やラー・カイラム級の艦影はない。

 

 ジャミトフはティターンズの失敗により連邦政府・軍内部での影響力と権威を大きく落としたが、それでも今も将官としての地位を維持し、優秀な軍政家としての辣腕を振るっている。

 地球至上主義のジャミトフとしては現在の地球の情勢に思うところもあり、今は黙々と仕事をこなす事を優先している。

 

「キュクロープスは以前のティターンズほどの規模は持たないが、その分、人材に関してはティターンズの中でも生え抜きだ。これから地球を守る上で頼りになる組織と期待したい。

 そこでブレックス准将やクワトロ大尉から申し出があったが、ティターンズの最後の戦いを見届ける為、我々からもエゥーゴ関係者を中心とした部隊を送りたい。

 その他の敵勢力の動きもあろうから、DC全ての戦力を送るわけには行かんからな。主にエゥーゴ所属の者達を中心に、連邦軍に籍を置いている者達を選出する。よろしいかな、クワトロ大尉」

 

 メンバー側の最前列に腰を落ち着けていたクワトロがレビルからの指名を受け、サングラスを外して答える。

 なにかの運命のいたずら次第ではルウム戦役で殺していたかもしれない間柄の二人は、今や上官と部下に近い形で落ち着いているのだから奇妙なものだ。

 

「ええ。我々の我儘を聞いていただき、お礼を申しあげる。既に地球圏の状況はスペースノイドとアースノイドを隔てていられるものではなくなっている。

 それでもティターンズの終焉に、我々が立ち会いたいと考えるのはエゥーゴという組織の始まりに対するけじめとしての意味合いが強い。

 もちろん、ただティターンズの終わりを見る為だけに宇宙に上がるわけでないのは承知しているが、我儘を聞いてくださった分を別の戦場で働いてみせるのを約束申しあげる」

 

 ロベルトやアポリーもそうだが、ティターンズへの反感からカラバに参加したハヤトは闘志を燃やしているようだ。

 ジェリドと揉め事を起こした結果、エゥーゴに入り、父フランクリン・ビダンがグリプスに残っているカミーユはといえば、いささかならず平静ではいられない様子で、傍らのファとフォウがそんなナイーブなカミーユを気遣っている。絵面だけを見れば両手に花だ。

 ティターンズがいよいよ終わるとあって、因縁のあるゼロ・ムラサメなどは清々すると言わんばかりだ。スクール出身のオウカやゼオラ達も思うところがないわけではないが、既に彼らの中では整理が付いており、それほど感慨めいたものはなさそうだった。

 

「うむ、そのように心掛けてくれれば心強い。宇宙と地上で部隊を二つに分けるが、宇宙に上がった部隊はグリプスでの決戦を見届けた後、月のフォン・ブラウンに立ち寄る予定だ。アナハイムからの補給物資や機体が用意されている」

 

 まだアナハイムはプルート財閥やサナリィに負けじと機体を作っているのか、どんなトンデモ機体を回されるのだろう、と乗る羽目になる可能性の高いMSパイロット達がそこかしこで囁き合う。

 プルート財閥のゲシュペンストMk-Ⅲ、バルゴラCS、サナリィの量産型F91に負けじとアナハイムも量産機としてジャベリンに続く次世代の機体としてゾーリン・ソールや量産型νガンダムの開発やコストダウンなどに力を入れている。

 

「また茨の園に駐留しているアクシズ艦隊の下へも一度顔を出す。タウ・リンが率いるようになった真ジオンの動きは、これまでと変わり始めているが、やはり鍵はミネバ・ラオ・ザビ殿下の身柄にあるのは変わるまい」

 

「おお、久方ぶりにハマーン様のご尊顔を拝謁奉る好機! このマシュマー、今から涙を堪えきれん。おお、ハマーン様、貴女の薔薇の騎士マシュマー・セロが参ります!」

 

「ちょっと、マシュマー様、もう少し空気を読みましょう、ね!?」

 

 感激のあまり立ち上がって拳を震わせ、涙を滝のように流すマシュマーは周囲の人々からの注目と視線を集めたが、マシュマーのハマーン崇拝は既に広く知られていたので、すぐに受け流される。

 マシュマーの軍服の袖……はないので、腰のあたりを引いて副官のゴットンがいさめるのも、いつも通りの光景だ。今のところ、グレミーは原作のような野心を見せず、良家のお坊ちゃん然とした甘っちょろい新兵のままなので、あまり警戒しなくてよい状態である。

 この場に二人のミネバ(疑惑)も顔を揃えており、ともすれば三人のミネバが勢ぞろいするかもしれない展開に、メイファとオードリーはなんとも複雑な表情だ。なにしろ彼女達自身も誰が、自分が、本当のミネバなのか分からないのだから。

 

「一部の者達にとっては里帰りに近いものかもしれんな。アクシズのハマーン・カーンもそろそろ奪われたままのアクシズ奪還に向けて、動きたいそうだ。

 また彼らは彼らで独自に動いて情報を集めてくれている。対バルマー・サイデリアル連合帝国との戦いに向けて、アクシズとの協力も疎かには出来ない。ところでアインストはなにか情報を掴んではいないのかね、アインスト・アルフィミィ」

 

 KOS-MOS、T-elos、ジンとまとまって座っているアルフィミィはレビルからの指名に、眉根を寄せて小さく困った顔で答えた。その仕草と表情だけを見れば、並大抵のジュニアアイドルが霞んで見える愛らしさだ。

 

「つい最近まで彼らの本拠地である巨大戦艦に散発的に攻撃を仕掛けておりましたの。ところがユーゼスが正体を露にしてから、彼らは巨大戦艦を別空間に隠して姿を晦ませておりますわ。目下、捜索中というわけですの」

 

「君達は君達でこれまで独自に戦いを繰り広げていたわけか」

 

「はい。この前のユーゼスの戦いの最中でも、皆様を助けようとしていたのですけれど、転移パターンを解析されてしまったせいで転移を妨害されてしまいました。

 現在はその対策も講じておりますし、これからはガンガン皆様をお助けいたしますのよ。転移出来ないのなら出来るギリギリの範囲に転移し、そこから大急ぎで駆けつければいいですし」

 

 ここまで聞けばアインストが全面的に地球連邦の味方をしてくれるかのようだが、彼らがあくまで地球外勢力との戦いに限って、助力してくれているのを忘れていなかったエクセレンが半眼になって、アルフィミィの言葉の不足を補う。

 

「とはいうけれど、アルフィミィ、アインストは地球人類同士の内輪揉めに関しては傍観なんでしょう? それは今も変わらないのよね?」

 

「はいですの。一年戦争でもそうでしたけれど、基本的にアインストは地球人同士の戦いには不干渉。例え地球環境が壊滅し、地球人類が滅亡する結果になるような戦いだとしても、地球人類自身が歩んだ道の果てならば手出しはいたしません」

 

「ならもう少し言葉を足して欲しかったわね。アインストが協力してくれるのはバサ帝国、それにムゲ、ベガ、キャンベル、ボアザン、バーム、ガイゾックとの戦いに限ってかしら?」

 

「あら、そうでしたの。ごめんなさい、エクセレンの言う通りですの。ティターンズやミケーネ、百鬼帝国あたりは地球産の勢力ですから、アインスト全体としてはお手伝いしかねますの。

 でも私達四人が個人的に協力する分には問題ありませんから、私達には期待していただいてオッケーですのよ」

 

「もち、アルフィミィ達を頼りにさせてもらうわよ。ところで妖魔帝国の名前が挙がらなかったけれど、なにか意味があってかしら? それともただの言い忘れ?」

 

 妖魔帝国の話題となり、洸と晶をはじめライディーン関係者の注目がアルフィミィに集まる。COMPACTでも因縁のあったアインストとムー帝国だが、その関係だろうか?

 

「妖魔帝国はちょっと特殊なんですの。……おとかあ様に確認を取りましたが、お話してもよいようですので、ご説明いたしますね。

 そもそも妖魔帝国の妖魔とは元をただせば一万二千年前に隆盛を極めたムー帝国の人々が、怨念や憎悪などあんまりよろしくない感情に取りつかれ、変貌した者なのです」

 

 あのどう見ても人間というには無理があるだろう、という妖魔帝国の幹部連中の姿を思い出し、二重の意味で驚愕した洸は反射的に質問していた。

 

「それじゃあ、シャーキンやあの巨烈兄弟も?」

 

「確証は持てませんが、その可能性は高いでしょう。そして妖魔帝国の支配者バラオですが、元がなんであれ彼は間違いなく最強の妖魔ですの。肉体だけを滅ぼしても、魂さえ無事ならば時を置いて復活する高次の存在ですから」

 

「本当にその通りなら、ライディーンや俺達でもバラオは倒しきれないのか?」

 

「ムートロンの力を持つライディーンならば、バラオを完全に滅ぼせる可能性は高いと私達は判断しています。そしてバラオもまたより大きな悪の操る指に過ぎませんの。

 地球よりはるか遠方に座する巨悪の送り出した駒。それがバラオであり、妖魔であり、私達アインストが総力をあげて倒すべき存在ですの。

 ただ、今回の戦いではシュメシにヘマー、クォヴレーが居ますし、ライディーンだって心強い味方がてんこ盛りの状況ですから、思ったより簡単にボッコボコに出来るのでは? とアインスト的には予測していますのよ」

 

 肉体に存在の維持を依存しない高次元の存在といえば、ムゲ・ゾルバドスもそうだ。

 恐るべき脅威はいくらでもいるが、アルフィミィの口にした通りこの世界のDCには頼りになる味方が多く、原作で打倒している相手ということもあり、勝算は原作より高く見積もっていいだろう。

 特にアインストには対オカルト方面において、何が何でも頑張っていただきたい、とヘイデスは心の底から願っている。

 

 そういう意味ではマジンガーZEROやゲッターエンペラーも頼りになるが、ヘイデスとしては存在そのものが劇薬過ぎて、助けて欲しいという気持ちよりも関わらないで欲しいという気持ちの方がはるかに大きい。

 このままこの世界の兜甲児や流竜馬も、ZEROとゲッターエンペラーを知らないまま一生を終えて欲しいものである。

 

 アルフィミィの告げたバラオの更に背後にいる巨悪という情報に、ティターンズ討伐という地球人の内輪揉めにこまねいている状況もあって、室内のメンバー達は大小の差異はあれ沈鬱な表情を浮かべている。

 そんな途方もない相手がいるのに、何を自分達は地球人同士で争っているのだろう、概ねこういった心境を共有しているわけだ。

 石のように重い沈黙を破ったのは、そういった事情全てを予め知っていたヘイデスだ。

 ここ数日、地球圏全土の復興の指示出しや諸々の手配によって疲労が蓄積している彼だが、今日も元気に所長印の栄養ドリンクでカバーしている。

 

「さあ、重たくなった空気を変えましょう。バラオとその背後にいる存在に関しては、アインストも全面的な協力を約束してくれています。

 対処法はあるってことなんですから、どうしようもない敵を相手にするわけではありませんよ。そうそう、あの銀色の巨人のような機体を操る彼はどうしているんです、アルフィミィ?」

 

「ヴァイシュラバのことですの? 彼はあくまで私共の客人であって、配下というわけではありません。今は定期的に連絡を取っていますが、彼は彼なりに気になる相手をマークして動いておりますのよ。

 彼の力は極めて強力な原理の力。ムゲ・ゾルバドスやバラオ、ユーゼスのような高次元の力を操る者にはバッチコイですから、ぜひとも一緒に戦って欲しいものですわね」

 

「そうですか。彼はどうやらサイデリアル系と因縁が深いようですし、以前の戦闘ではユーゼスとアストラナガンを追うように姿を見せました。一緒に戦ってくれるとなれば心強いのですが、まあ、たまには同じ戦場で戦う事もあるでしょう。

 レビル司令、宇宙に上がる部隊と地球に残る部隊の内訳の発表の続きをお願いできますか? いわゆる地下勢力の連中も決戦を前に何をしでかすか分かりませんし、どちらの部隊も油断は出来ません」

 

「ヘイデス総帥の言う通りだな。あくまで予定として聞いて欲しいが、宇宙に上がるのはエゥーゴと連邦軍を中心としてラー・カイラム、アルビオン、ネェル・アーガマ、ペガサスⅢ、スペース・アーク、ガランシェール、ブレイウッドとその艦載機。

 それにコロニーのガンダム五機とアディン君、デューク・フリードのグレンダイザーと各スペイザーとパイロットに行ってもらう。

 地上部隊はウルトラザウルス、キング・ビアル、ガンドール、マグネバードとその艦載機だ。こちらにはナンブ中尉、ブロウニング中尉、それにアルマー大尉、ラヴレス少尉、イーサッキ少尉らが同行する。シャドウセイバーズと合流予定だ」

 

 宇宙と地上とで機体構成の偏りがあるが、相対するだろう敵を思えばやはり妥当な戦力分布だろう。

 そして鍵となるのがあくまでプルート財閥に籍を置いているタルタロス、ハガネ、シロガネ、そして双子、グランド・スター小隊、クォヴレーら。またプルート財閥に出向という形で協力しているヤザン小隊とユウ、ライラ、ブラン達の振り分けである。

 

「レビル司令、ヘイデス総帥、個人的にはティターンズの決着に興味はないが真ジオンやSRLといったか? 革命家共の連合がどう動くか気になる。ひょっとしたらどこかでぶつかるかもしれん。出来れば俺達は宇宙に上がっておきたい」

 

 そう発言したのはヤザンだ。

 連邦もSRL──ホワイトファングとクロスボーン・バンガードの連合勢力──もお互いに衝突するのを避けているが、そろそろどちらかの馬鹿がやらかすか、自分を賢いと勘違いした馬鹿がやらかすと彼の嗅覚はきな臭さをかぎ取っているらしい。

 

「小隊の総意かね?」

 

 と確認する元地球連邦軍大将に、ヤザンは不敵かつ頼もしい顔つきで頷き返す。

 

「もちろん」

 

「ふむ、ではモンテニャッコ君、ヘイデス総帥、カジマ中佐、シロガネにヤザン小隊を預けて宇宙に上がってもらってはどうだろうか?」

 

 現在、ユウとライラはシロガネを母艦としており、ヒュッケバインのアーウィン、ガンダムデュラクシールからヒュッケバイン二号機に乗り換えたミーナもシロガネ組である。

 ヒュッケバイン二機、ヒュッケバインMk-Ⅱ二機とヒュッケバインまみれのシロガネだ。

 シロガネの艦長を務めるモンテニャッコはモノクル越しの視線をヤザン、ラムサス、ダンケル、イングリッドの順に向けてから口を開いた。

 

「艦隊の規模に対してMSとパイロットの質は既に飽和気味ですが、ゲーブル大尉の力量と経験は信用に値するでしょう。幸いシロガネの格納庫には余裕がある。五機のMS程度なら問題ありますまい」

 

 モンテニャッコが重々しく答えるのに対し、ユウはこれまで通りというべきか『ギレンの野望』風というべきなのか、口を閉ざしたまま首肯していた。副官であるライラの日ごろの苦労が偲ばれる態度だ。

 ライラは上官の無言のメッセージを適切に読み取り、モンテニャッコに報告した。

 

「カジマ中佐も私も異論はありません。ヤザン大尉のところの小隊なら、一個大隊に勝る戦力ですよ。モンテニャッコ艦長」

 

 ますます宇宙組にMS系の戦力が充実する話が進む中、アルフィミィが挙手をしてから発言をした。お行儀のよい子である。

 

「私達からお願いがありますの。アインスト的にも部隊を二つに分けるのなら、人員を分けようと思います。私が地上に、KOS-MOSとT-elos、ジンは宇宙に行かせて欲しいんですの」

 

 これはアルフィミィ的に身内であるエクセレンとレモンが地上に居て、かつ妖魔帝国が地上勢力である為、アインストとしての能力が最も高い自分が残るべきと判断したからだ。

 それにKOS-MOS達も地上よりは宇宙の方が機動兵器戦闘に慣れている、という配慮もある。エルデカイザーのエンジンのコピーとアインストコアを移植したアインスト・ディナとアシェル刃のフルスペックは、地上で発揮するわけにはいかないとい事情もあるが。

 

「ふん、ようやく姦しい貴様と離れられるのか、清々する」

 

「アルフィミィ、T-elosの発言は気にしないでください。このような言い方しかできないのです」

 

「コッスィーがフォローに回るのも珍しいですの。ちょっと離れ離れになるだけですし、アインストパワーでワープ自在の私達からすれば、地球圏ならどこにいたって隣にいるようなもんですの。テッスィーは寂しがらなくてもいいですからね」

 

「誰が寂しがるか。貴様の耳は腐っているのか?」

 

 眼光を鋭くするT-elosにも、アルフィミィはすっかり慣れた様子で顔色一つ変えない。

 DCのメンバーは、特に男性陣はきわどい恰好の美女二人の加入に色めき立ったものだが、T-elosの口の悪さは今もって心臓に悪い。

 目つきが悪かったり、無口だったり、不愛想だったりするメンバーには事欠かないが、ここまで攻撃的な口調のメンバーは人材豊富なDCの中でも珍しい。

 

 それに対してKOS-MOSやT-elosは本来なら機能停止か存在を失っていた筈の自分達が、こうして今も存在し続けられる事、かの無限のフロンティアで見知った人々の同位体との遭遇と新しい世界での経験にも慣れて、マイペースに過ごしている。

 アインストという人外としてだけではなく、この世界にとっても自分達が異物であるという自覚のあるジンなどは、DCのほどよい緩さと度量の広さに既に心地よさを感じていた。

 三人共、別時空の地球とはいえあのロストエルサレムに居る、という感慨を抱いたのは本当に最初の頃の話だ。いやまあ、KOS-MOSとT-elosの心中はジンにも分からないが。

 

「たまにはアルフィミィの目の無いところで過ごすのもよいでしょう。アルフィミィ、T-elosもこうは言っていますが、羽目を外すにしても限度は心得ていますよ」

 

「ジン、私はお前の妹ではないぞ。兄貴風など吹かすな」

 

「ふふ、これは失礼。かくいう私もフォン・ブラウンやその他のコロニーの都市で、良い古書と巡り会えればと思うとついつい浮かれてしまいます」

 

「ちゃんとDCの皆さんの指揮には従ってくれれば、私もおとかあ様も文句はありませんのよ。それでレビル司令、ヘイデス総帥、よろしいですの?」

 

「ええ、僕達としてもそれぞれの部隊にアインストが居てくれた方が助かる場面もあるでしょう。妖魔帝国の妖術やユーゼスの因果律操作系に関しては、対抗手段に乏しい現状ですから。

 もう一度合流するまでの間に何度か戦闘になるかとは思いますが、このメンバーなら誰一人欠ける事無くまた再会できると僕は確信していますよ」

 

 また、最近、地球連邦政府にラプラスの箱を上回る爆弾だと知らしめたパンドラボックスはタルタロスに秘匿されており、タルタロスと双子にクォヴレーの配属先も極めて重要となる。

 なにしろユーゼスの狙い第一位~第三位の組み合わせであろう。彼がディス・レヴの共鳴現象による封印を解除した後か、あるいはキャリコやバーム、タウ・リンを使った攻勢で真っ先に狙う対象だ。

 

「ではタルタロスをはじめフェブルウス、グランド・スター小隊、ベルグバウの配属について話を進めましょうか」

 

<続>

■キュクロープスが設立されました。

■アナハイムがゾーリン・ソールを開発中です。




ゲーム的には三度目のルート分岐ですが、今回は宇宙と地上でそれぞれ書きたい場面だけ書いて行こうと思います。

追記
アルビオン組の行き先を追加。母艦を増やし過ぎましたね。うん。
キュクロープスに関してはクロスボーン・ガンダムDUSTよりティターンズの末裔組織を先取りする形で命名しました。中身は全くの別物ですね。


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第八十三話 この世界のバスクはジャミトフの忠臣ではないみたい

バスクはスパロボだとジャミトフの忠臣だけれども、アニメ本編ではそうでもないと認識しています。


宇宙ルート 第四十四話 ティタノマキア

 

 コンペイトウとは改名されなかったこの世界の宇宙要塞ソロモンを出港したキュクロープス艦隊の中には、かつてDCと共闘したT3メンバーの姿がある。

 艦隊旗艦を務めるアスワン改の拡張されたMSデッキには、TR-6の素体ウーンドウォートとTR-1ヘイズル・アウスラが格納されており、出撃を前にパイロットとメカニック達が集まっていた。

 T3の小隊長マーフィー、エリアルド、カール、オードリー・エイプリルら四名はかつて自分達も所属していたティターンズとの決戦に、思うところがないわけではない。

 

 少なくとも当初のティターンズは掛け値なしの実力・経歴共に選び抜かれたエリート集団であり、中にはその立場に胡坐をかいた横暴な者もいたかもしれないが、ジオン残党狩りやテロ対策の組織として確かな実績を上げていたのだ。

 マーフィー小隊の四名はキャットウォークの手すりにもたれかかりながら、アスワン改だけでなく艦隊に満ちる緊張感に身を浸していた。それを言葉にしたのはマーフィーだった。

 

「いよいよといった感じだな」

 

 マーフィーはクインリィ形態に仕上げられてゆく自分の機体を見つめながら、地球人同士の争いの一つが終わる予感を抱いていた。しかし、その横顔から内心の感情はうかがえない。

 一時期はエイパー・シナプスの部下として戦った経験のあるこのベテランの胸に去来しているのは、悲嘆か、哀惜か、怒りか?

 信頼する小隊長の呟きを耳にして、カールは自分のヘイズル・アウスラに取りつけられるハイゼンスレイ用の各ユニットから視線を移して、言葉を繋げる。

 

「完全に死に体なんですけどね、ティターンズ。バスク・オム大佐がさっさと降伏すれば無駄な戦いをしないで済むのに」

 

「バスク大佐はそう思っていないか、認められないのだろう。それにグリプスで色々としているという話だ。キュクロープスの戦力もティターンズの全盛期には及ばない以上、俺達が油断していい道理はないぞ」

 

 このまま戦えば自分達が勝つのは当たり前だ、と暗に自信をほのめかすカールを、マーフィーは静かに窘めた。本物の戦場には、意識していない流れ弾一発で戦死する理不尽がいくらでも跋扈している。自分達がその理不尽に襲われない保証などどこにもない。

 エイプリルはこの場に自分の機体がないので若干手持ち無沙汰にしていたが、目の前に並んでいるTR-6を見て、少しだけマーフィーに異論を唱える。

 

「隊長が数のことを言っているのなら、確かにキュクロープスはティターンズの全盛期には及びませんけれど、運用する機動兵器の質に目を向ければ大幅に向上していますし、今のバスク派のティターンズ相手なら上回っていると思いますよ」

 

「ん、それはそうかもしれんな。向こうの機体が情報通りならマラサイやバーザム止まりだ。それらの性能は一から十までこっちでも把握している」

 

 マーフィーの声音に懸念が含まれているのを聞き取り、エリアルドが口を挟む。

 DCとの共闘後、実装されたTR-6のバリエーション機の戦闘能力は、昨今、連邦軍を賑わわせている量産型F91やゲシュペンストMk-Ⅲと同等かそれ以上だ。

 それを知ってなお、なにかマーフィーには気にかかる点があるようなのだ。コロニーレーザーの保有は確実性の高い情報として知られているが……。

 

「隊長はなにを気にしているんですか? もしかして、ウーンドウォートをバスク派も量産している可能性を考えて?」

 

「いや、TR計画の情報はソロモンで厳重に管理されていた。バスク大佐でも横槍を入れられなかった機密性の高さだ。それにあちらにはガンダムMk-Ⅱの開発計画もあったし、TR計画はどちらかといえば目の上のタンコブだったろうからな」

 

「バスク・オムの性格ならば、流用するよりも潰そうとする?」

 

「どちらかと言えばな。俺が気掛かりなのは脱出がままならず、グリプスに囚われたままの技術陣だ。確か、ガンダムMk-Ⅱの開発に大きく関わった技術者も含まれている。強制的にでも働かせて、ろくでもない事をしていそうだろう?」

 

 マーフィーが話題にした技術者とは、カミーユの父親フランクリン・ビダンだ。未知の技術に対して視野の狭くなる職業病を抱えた男性だが、落ち目も落ち目のバスク派ティターンズに残り続けるほど、世情に疎いわけではない。

 ガンダムMk-Ⅱの開発にあたってはバスクに散々嫌味を言われ、急かされた経緯もあって彼を見捨てるのになんの躊躇もないはずだから、とっくにバスク派を離脱していてもおかしくはないのである。

 

「否定できませんね。ですが、それでもティターンズから離脱してこちらに合流した人員は少なくありませんし、連邦本隊とDCからも見届ける為の戦力が派遣されるんですから、まず負ける事はありませんよ。俺達の生死とは関わらずに」

 

 エリアルドはかつて共闘したDCのデタラメな戦闘能力を思い出し、彼には珍しい冗談めいた口ぶりでそう言った。なるほど、万が一にもキュクロープスが敗退したとしても、ティターンズの滅亡は決定したも同然であるらしい。

 

「ふ、そうだな。ひょっとしたら俺達とティターンズをまとめて相手に出来る戦力だろう。それと冗談でも縁起の悪い事を言うもんじゃないぞ、エリアルド。戦場は何時だって死ぬかもしれない場所だが、それでも生きて帰るのが第一だと肝に銘じておけ」

 

「はい。失言でした」

 

「分かればいい。それにしてもDCか、一緒に戦ったのがついこの間のようだが、またバサ帝の奴らが横槍を入れて来なければいいが……。それも悩みどころだ」

 

 地球人同士の潰し合いだ。侵略者達からすれば横から最高のタイミングで殴りつけて、被害を拡大させたいところだろう。

 バサ帝国は他の侵略者勢力とは毛色が多少異なるが、『キュクロープス対ティターンズ DCを添えて』という状況に介入しようとする侵略者がいると考えて備えるのが、賢明に違いない。

 

 マーフィーらの話題に出たDC宇宙艦隊はというと、既に宇宙に上がりキュクロープス艦隊とは別に戦場となるのが予想されるグリプス宙域を目指していた。

 既に密閉型コロニー二基を合体させたグリプスが分離されて、片方がコロニーレーザー『グリプス2』に改造された情報が伝わっている。

 窮地に追い込まれたバスクならば、コロニーレーザーで他のコロニーや月面、ともすれば地上さえ焼き払いかねないともっぱらの噂である。

 

 ハガネを旗艦とするDC宇宙艦隊は彼らだけでグリプスを攻略できるような少数超精鋭部隊であったが、ティターンズの終焉に関しては主役を務めるのではなく見届け人としての役割を期待されている。

 艦隊上層部には、カミーユやファ、ジュドーにビーチャらといったエゥーゴ籍の民間人の子供達を連れてきてしまった悔いはあるものの、既にそれを表に出して不平不満を述べる段階は過ぎていた。

 

 宇宙に上がった際、DC艦隊に、マイク・ハワードが艦長を務めるピースミリオン級宇宙戦艦が合流していた。全長3,000メートル、全高1,000メートルに達する巨大艦で、純白の扇状という独特なデザインをしている。

 設計にはガンダムデスサイズを手掛けたプロフェッサーGが関わっており、ハイパージャマーと極めて高度な光学迷彩によるステルス性能を持つ。

 

 その分というべきか原作ではほとんど武装していないようだったが、キング・ビアルやブレイウッド、スペース・アークの武装が可能な限り強化されているように、このピースミリオンも多数のビーム砲とミサイル、対空機関砲やビームシールドを装備している。

 その大きさと相まって宇宙戦艦というよりは、タルタロスやガンドール同様、移動要塞というべき存在だ。300m級の高速艦を艦載可能なピースミリオンの加入は、DC艦隊の物資と機動兵器の保有に大きな余裕を持たせてくれた。

 

 ブライトやクワトロ、カミーユといったエゥーゴと関わりの深い人々が、ふとグリプスのある宙域に意識を向けている光景が増える中、ティターンズにその運命を握られてきた強化人間達もまた同じくらいに思うところはあったろう。

 以前には敵対していた彼らが今やアイドル部隊とも言われるDCに所属し、まともな人間として扱われている。運命という大河の流れは、なんと奇妙に出来ていることか。

 

 現在、DCに所属しているティターンズ関係の強化人間はゼロ・ムラサメ、レイラ・レイモンド、フォウ・ムラサメの三名、更に系統は違うがティターンズ系列のパイロット養成機関スクールに所属していたオウカら四名も広義で言えば強化人間の例に含まれるだろうか。

 この時、ゼロは変わらずサイコガンダムMk-Ⅳ(15段階改造・フル改造ボーナス取得済み)に乗っていたが、レイラとフォウはジャミトフ経由で供与されたTR-6ウーンドウォート二機に乗り換えている。

 現在、レイラとフォウのウーンドウォートはサイコ・ガンダムⅡ・ギガンティック・アーム・ユニット形態──通称ギガンティックで運用されている。

 厳密に言えば更にギガンティック・レッグ・ユニットも装備しているのだが、いやはや、なんとも機体名称の長いことよ。

 

 この機体はウーンドウォート・ラーの四肢をサイコガンダムないしはサイコガンダムMk-Ⅱのものと交換した形態で、敵大型機動兵器との戦闘を想定した形態である。

 横槍を入れてくる侵略勢力の機動兵器にMSが正面から対抗するには、十分な火力を確保できたと言える。

 

 所長などはヴァルシオーや各スーパーロボットの四肢を用意する計画を立案しているという噂だが、そうなればウーンドウォートがスーパーロボット級の火力を手軽に得られる時代が到来するかもしれない。

 マジンガーやゲッターロボ、コンバトラーやボルテス、ダイモス、ダンクーガにグルンガスト、ソウルゲイン、ヴァイサーガにアンジュルグ、ヴァルシオーの手足を持ったウーンドウォート軍団というわけだ。

 

 ジャミトフが貴重なTR-6をDCへ都合したのは、彼の影響下にあるこれらの機体を次期主力量産機候補の一つに上げられれば、と大して期待してもいない思惑と、現状の彼が切れる少ない手札の一つであったからだ。

 TR-6の主力量産機としての適性については、漫画作品を見ればいかほどか分かるだろう。

 あるいはTR-6インレやクインリィ・フルーアーマーと編隊を組む量産型F91、ゲシュペンストMk-Ⅲ、バルゴラCSの混成部隊が、地球連邦軍の主翼を担う時代が来るかもしれない。

 

「ふん、僕達を戦わせれば残りカスばかりのティターンズなんて、あっという間に叩き潰せるのにな」

 

 サイコガンダムMk-Ⅳのコックピットで不満を零すゼロに、開け放たれたハッチから顔を覗かせたレイラは聞かん気の強い弟を見るようなまなざしを向けた。

 DCに所属を移してからは随分と落ち着いたゼロだが、自分達をこうした元凶が相手となると昔の気の強さや傲慢さがじわりとにじみ出る。

 

「大人の事情というものでしょう。自分達の不始末は自分達で済ませる。そういう見栄か、体面というもの」

 

「エイリアンに襲われている最中なら、手段を問わずに地球人同士の戦いを終わらせる方が体面もいいと思うよ。

 ティターンズか。ムラサメもオーガスタも以前のやり方を非難され、今じゃ閉鎖されるか厳重な監視下に置かれている。ジオンも共和国となった今では、非人道的なやり方は徹底的に禁じられている。

 僕らのような強化人間を増やし続ける組織は、今となってはティターンズくらいのものだろう。そのティターンズが滅びれば……」

 

「私達みたいに記憶を操作されて、自分で望んだのか、無理やりにそうされたのかも分からないまま体を弄られる人間は出なくなる?」

 

「……かもしれない。この戦争が終わればしばらくはそうなると、そう、思う。僕らしくもない事を考えてしまったな」

 

「いいえ、私達の痛みと苦しみを本当の意味で理解できるのは同じ体験をした人だけだけれど、それでも半分だけでも伝えて行けたら、同じような悲劇を防ぐ役には立つわ。きっとね。だから、ゼロの考えはおかしなものではないわよ」

 

 似合わない事を言ったとそっぽを向くゼロに優しい言葉を向けるレイラの後ろから、ひょこっとフォウとオウカが顔を出した。アラド、ゼオラ、ラトゥーニは別の格納庫で機体のチェック中だ。

 オウカが顔を出したのは次の戦いでは、ティターンズ関係者としてゼロらと行動を共にして、中隊を編成する予定だからだ。

 サイコガンダムMk-Ⅳ、ギガンティック機、ラピエサージュ・シンデレラ、ビルトビルガー、ビルトファルケン、ヴァルシオーラ、フェブルウスという変則的編成である。

 

「ゼロでもそういう風に考えられるなんて、この部隊の居心地が良いからかしらね」

 

 そうからかうように告げるフォウも失った記憶への執着は、かつてサイコガンダムに囚われていた頃に比べれば、随分と薄い。もちろん執着が無くなったわけではないし、取り戻せるのならそれに越したことはないとも思っている。

 けれども、今はそれ以上にもっと大切にしたいものが増えたのだ。近しい境遇の仲間や全く正反対の真っ当な人生を歩んでいる仲間が出来たのは、フォウのみならずこの場にいる皆の人生に大きな、そして好ましい影響を与えている。

 

「お二人の言われる通り、私達のような人間はこれ以上増えるべきではありません。少なくとも望まぬまま、心も体も切り刻まれるような子供も大人もいない世の中の方が、良いに決まっています」

 

 オウカとてスクールの摘発が遅れ、人体改造が進んでいたら余命いくばくもない状態になっていただろう。既にそうされてしまった自分の体と記憶に関しては割り切っているが、これから先、自分達のような人間が生まれないで欲しいと心の底から望んでいる。

 そして義父母や今の地球連邦の上層部ならば、そうした世の中づくりを強く期待できるのだ。

 

「そうか、そうだな。僕のような人間に新しい時代を作れるのかは分からないが、その道筋を整える為に邪魔な障害物を排除するくらいは出来る。幸か不幸か、そういう事は得意だから」

 

 ゼロは漠然と感じていた。ティターンズは、次の決戦で残る強化人間やサイコミュ機を導入してくるだろうことを。

 

 

 グリプスでは接近してくるキュクロープス艦隊と連邦艦隊、DC艦隊を迎え撃つべく大急ぎで迎撃の準備が進められていた。その中にはコロニーレーザーグリプス2のエネルギー充填作業も含まれている。

 現在のグリプスでは多くの人員がジャミトフのティターンズ解散宣言と降伏勧告を受けて、バスクの目を逃れて離脱し、かつての規模をまるで維持できていなかった。

 

 それでもアースノイド至上主義者や、あるいは歴史に刻まれる汚点の例とするべくあえてバスク派を支援している者達の手により、決して無視できないレベルの軍事力を維持しているから面倒だ。

 これにはジャミトフが政治活動に注力していた間に、バスクが合法・非合法問わずに戦力増強に邁進していたのが強く影響している。

 侵略者が立て続けに出現した為、ティターンズの主張が通りやすい下地があった時分だったのだ。

 

 ティターンズにも朗報はある。これまでの非道な行いから軍事裁判に掛けられるはずだったガレムソンの部隊が、居場所を求めてティターンズに合流していたのである。

 これによって少なくないMSとカイラム級機動戦艦エイジャックスを始めとした艦隊、さらにネオガンダム一号機がグリプスの手に渡った。

 

 ネオガンダムに搭載されたネオ・サイコミュ・システムやGバードには、グリプスに軟禁中のフランクリンも興奮したが、だからといってそれで窮地を解決できるとは思っていない。

 フランクリンを含む技術者達は基地の一角に纏めて監禁され、脱出もままならない状況で多くは頭を抱えていた。

 

「どうして、どうしてこうなった?」

 

 ゆくゆくは地球連邦軍すら指揮下に置く筈だったティターンズにおいて、次世代のフラッグシップ・ガンダムMk-Ⅱを開発し、技術者として順風満帆な道を進んでいた筈だった。

 それが息子はエゥーゴに所属し、妻は行方不明(エゥーゴに保護されたのを知らない)、更にティターンズは創設者ジャミトフから見放されて今や地球連邦政府、いや地球人類に対する逆賊となり果てた。

 

「ティターンズが次の戦いに勝っても、後なんかあるはずもない。だが負けたとして私はどうなる? ああ、カミーユ、ヒルダ……」

 

 監禁状況に置かれた為に自然と愛人との関係が崩壊したせいなのか、フランクリンは少しばかり妻と息子を考えるようになったらしかった。

 この時、フランクリンらティターンズ技術者の背中に銃口を向けられたも同然の中、必死に開発した新兵器と昔日のOZとの蜜月関係により、現在のグリプスの戦力はこうなっている。

 

 ドゴス・ギア他、アレキサンドリア級、ロンバルディア級、クラップ級、サラミス改級、マゼラン改級からなる艦隊。

 数の減ったパイロットを補うべく導入されたモビルドールを含む、ハイザック、ハイザックカスタム、マラサイ、グリフォン、バーザム、ギャプラン、ガブスレイといった機動兵器群。

 

 更に強化人間らが乗り込むサイコガンダムシリーズにバウンド・ドック、アモン・ドックが存在している。

 規模縮小、世論からの支持の喪失と窮地に陥っているのは確かだが、その戦力を地球防衛の為に役立てろよと言いたくなるレベルは維持されているのだから、ヘイデスもゴップもデルマイユもコーウェンもワイアットも、内心ではさぞや怒っているだろう。

 

地上ルート 第四十四話 我、魔なり神なり

 

 宇宙に上がる仲間達を見送った後、DC地球艦隊はスパロボで言うところの地下勢力を壊滅させるべく、調査を主体とした活動を活発化させる予定だった。

 その中でシャドウセイバーズとの本格的な合流の他、光子力研究所と新早乙女研究所からの要請があり、艦隊からマジンガーチームとゲッターチームが一時離脱となった。

 

 お察しの如く新たなマジンガーとゲッターロボ受領の為である。艦隊自体は地球連邦軍極東支部に寄港して、世界各地のムートロン調査の状況や各研究所との直接のやり取りを行って、これからの戦いに備える予定だ。

 また、その最中で救出されたデューク・フリードの知己であるナイーダが、改造されたゴスゴス改と共に合流し、少しばかり戦力の増強に成功している。

 

 DCの動きを逐一監視している地下勢力はDCが戦力を分けた事、更にマジンガーとゲッターが艦隊からも離れた事を察知している。

 特に敏感に反応したのはミケーネ帝国と百鬼帝国だった。七大将軍の過半数を倒され、地獄大元帥の手腕でかろうじて軍団を立て直せたミケーネにとって、宿敵であるマジンガーZとグレートマジンガーが更なる強化を受けるとなれば、血の気も引くというもの。

 

 百鬼帝国も事情は同じである。同盟を結んだ各勢力に協力を仰ぎつつ、DC地上艦隊が極東支部に腰を落ち着けたのを確認してから、行動を開始した。

 それからは時間との勝負だ。地上艦隊の部隊が救援に駆け付けるまでの間に、いかにして光子力研究所と新早乙女研究所を陥落させ、新たな力を破壊ないしは強奪しなければならない。

 いつでも行動を移せるように戦力を整え、部隊を編成していた甲斐あって、ミケーネと百鬼帝国の行動は迅速を極めた。

 

 甲児、さやか、ボス、鉄也、ジュンの五人は光子力研究所に到着早々、常駐している極東支部の防衛部隊と共に周囲を包囲しつつあるミケーネ帝国軍との戦いに臨んでいた。

 ミケーネ帝国は機械獣、妖機械獣、戦闘獣の各機体を取り揃えて戦力を投入しており、更にはデモニカ、ミケロス、加えてグールまでも複数姿を見せている。

 

 Dr.ヘルの遺産を最大限活用しているとはいえ、パリ決戦であれだけの被害を受けていながら、短期間でよくぞここまで戦力を整えたと称賛に値する。

 マジンガーZに乗り込み、戦場に立った甲児は、デモニカの甲板上に立つ地獄大元帥の傍らにある二体の戦闘獣に驚きを隠せなかった。あしゅら男爵とブロッケン伯爵をそのまま巨大化したような機体!

 

「まさかDr.ヘルだけじゃなく、お前達も蘇ったのか! あしゅら、ブロッケン!」

 

 無数の戦闘獣軍団を従えて、七大将軍にも匹敵する気迫と共にあしゅら男爵とブロッケン伯爵は宿敵に答えた。死の淵から蘇った影響か、一皮も二皮も剥けたようで、地獄大元帥と合わさった重圧に甲児と鉄也は操縦桿を握る手に、我知らず力を込めていた。

 

「我らはDr.ヘルの忠実なるしもべ。求められれば例え冥府の底からでも蘇ろう」

 

 男と女の混じる声であしゅらが答え、ブロッケンが憎悪と恨みを言葉にした。

 

「なによりも、我らを打ち倒した貴様らへの復讐の機会をこの手に出来るのならば、どうして死んだままで居られようか!」

 

 腹心の部下二人の憎悪の宣言が終わるのを待ってから、地獄大元帥はマントを翻して今か今かと開戦の時を待つ部下達に号令を発する!

 

「行け、機械の獣共、ミケーネの戦士達よ! 今こそマジンガーとの因縁に終止符を打ち、我らによる地球征服の第一歩を刻むのだ!」

 

 今頃は新早乙女研究所も百鬼帝国を主体とした部隊に襲撃を受けている。一刻も早く、DCの援軍が来る前に目的を果たさなければならない。

 大戦力による襲撃を行いながらも、地獄大元帥は決して油断できるような状況ではないのを、よく理解していた。奇妙な事に焦っているのは、むしろ地獄大元帥側なのであった。

 

<続>

 

■TR-6ウーンドウォート×2を入手しました。

■TR-6関係のパーツを入手しました。

■ピースミリオンを入手しました。

 




うーん、バスクに貧乏くじを引かせすぎたかな、と少し思います。

また、これから更新速度が遅くなると思います。ご容赦の程、宜しくお願いいたします。

追記
インレ二機 → ギガンティック二機 に修正しました。
インレはもう少し取っておきたいところです。


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第八十四話 悪に落ちたマジンガーがいないけどどうしよう

お久しぶりです。
今回は地上ルートの方の続きでまた短めで申し訳ない。



 常駐している防衛部隊と駆け付けたマジンガーチームがミケーネ帝国の軍団と戦端を開く中、光子力研究所の弓教授は所員達に素早く指示を出していた。

 

「光子力バリヤーにエネルギーを集中させるんだ。甲児君や鉄也君が流れ弾を気にしないで戦えるようにするのを優先する」

 

 元々光子力研究所の敷地内には、光子力ビーム砲台や光子力ミサイル発射装置などが無数に設置されている。

 戦火が激しくなるにつれて防衛システムは更新され続けたが、現在では大出力を誇る友軍機の流れ弾で、施設が損傷しないようにバリヤーの出力強化に熱を入れていた。

 エリュシオンベースがそうであったように、光子力研究所の防衛能力は今次大戦初期とは比較にならないレベルだ。

 

 司令室のモニターに映し出される戦闘の様子を、固唾を飲んで見守る弓教授の傍らに、怪我から復帰した兜十蔵博士が並び立った。

 サイボーグ化した息子・剣造、弟子・弓教授と共にマジンガーのパワーアップ、そして孫達の勝利と生還の為に血道を尽くしている老科学者である。

 

「弦之助君、万が一に備えて地下のアレを目覚めさせるぞ」

 

「先生、まさか、アレはまだ一度も起動実験には成功していません。それに甲児君と鉄也君が間に合いました。DCもすぐに駆け付けるでしょう。もう少し耐えれば危険な賭けに打って出る必要は……」

 

「君の言う通りだ。だが今回の敵は気迫が違う。地獄大元帥、いやDr.ヘルとミケーネ帝国は新たな魔神の誕生をなんとしても防ごうという覚悟が見て取れる。あの時、こうしていればと悔いるよりも、慎重になり過ぎたと笑えるように備えよう」

 

「先生、分かりました。では急ぎましょう。理論上では、今から光子力反応炉に火を入れれば、戦闘中に起動できるはずです」

 

「ああ、今は平和を守る力として使っているが、いつか光子力エネルギーを平和利用できる未来の為にも、お前を目覚めさせるぞ、魔神皇帝よ」

 

 

 極東支部から派遣された防衛部隊は、アイスランドで真徒らと交戦した部隊よりも更に練度が高く、運用している機体も強化改造が施されてより高性能となっている。

 激戦区である極東地区で戦い続けただけあり、地球連邦の中でも最高水準に達している精鋭部隊の一つである。その彼らが迫りくる機械獣・戦闘獣の混成軍団を前に、劣勢に立たされていた。

 

 部隊の盾として運用されているビルゴ部隊のプラネイトディフェンサーを食い破らんと迫る、無数の機械の獣達に強力なビームや大口径のレールガン、火薬満載のミサイル、雷撃が殺到して次々と破壊するが、その爆炎を貫いて量産型のグラトニオスやオベリウス、ジャラガが吶喊してくる。

 有人型のオリジナル戦闘獣を指揮官とする量産型部隊のなりふり構わない大攻勢は、プラネイトディフェンサーの死角からビルゴを破壊し、更にそのカバーに動くグルンガスト弐式やゲシュペンストMk-Ⅲ、バルゴラCSに火炎や毒液、破壊光線に超音波と多種多様な攻撃が放たれる。

 

 ビームシールドやDフォルトで防ぎつつ、直撃を防ぐ連邦軍部隊だが、怒涛の如く押し寄せて退かないミケーネ部隊によって、着実に損耗を重ねていた。

 やられてもやられても怯まないミケーネ軍団に防衛線をじりじりと押し込まれる防衛部隊に対し、救いの手はミケーネ軍団の側面に叩き込まれる無数の砲弾として差し出された。

 

「おつりはいらないわよ~ん! 光子力バズーカ、全弾プレゼントだわさ!」

 

 頭に闘魂と書かれたハチマキを巻いたボスボロットが両肩に担いだ光子力バズーカを、狙いもデタラメに撃ちまくり、弾倉が空になれば即座に背中の背負い籠に突っ込んだ光子力ショットガンや光子力ヘビーマシンガンを取り出し、弾を空にするのが仕事だと言わんばかりに撃ちまくる。

 コックピットのボスもヌケもムチャも今日のミケーネは気迫が違う、と肌で感じており、不敵に笑いこそすれその額には汗がにじんで、彼らの緊張を如実に表している。

 

「ボス君か、済まない、助かった!」

 

 ボスボロットに助けられた小隊の隊長機からの通信に、ボスボロットは親指をグッと立てて返す。

 

「ボシュー!」

 

「次が来てるよお!」

 

「来るなら来やがれってんだ! 新しいボスボロットのパーツにしてやろうじゃない」

 

 水を差してきたボスボロットを血祭りに上げようと、数体の機械獣が踵を返すのに気付いたヌケとムチャの警告に、ボスは鼻息荒く応じて新しい銃火器を手に取って一斉に引き金を引き絞る。

 この動きに光子力研究所の防衛システムと防衛部隊の双方が自発的に連動して、十字砲火には及ばないまでもT字砲火を実現して、新たな機械獣と戦闘獣のジャンクの山を生産し始める。

 

「ボスボロットに合わせるぞ、メガ・ブラスターキャノン!」

 

「くらえ、プラズマブレーク!」

 

「グルンガスト弐式、いきます、マキシ・ブラスター!」

 

「レイ・ストレイターレット、ロックオン! まとめて撃ち抜く!」

 

「ヴァイエイトのビームキャノンを使う!」

 

 荒れ狂う光の奔流の中に飲まれ、さしもの戦闘獣達の装甲といえど耐え切れず、次々と融解して爆発を引き起こしてゆく。その中にあって、ボスは敵の幹部級を一手に引き受けている親友達の身を案じた。

 

「頑張れよ、兜。こっちはこのボス様が引き受けるからよ!」

 

 

 ボスボロットばかりでなくダイアナンA、ビューナスA、ミネルバXの三機もまた襲い来るミケーネ軍団を相手に重武装化した状態で迎え撃ち、マジンガーZとグレートマジンガーのサポートに徹している。

 時間を稼げば極東支部かDCの救援が来るのは確実であるから、さやかとジュンの士気は高い。しかし、それでもと不安の気持ちが湧き上がってくるのは、マジンガーZとグレートマジンガーを相手取る敵の強さとその覚悟の凄まじさが画面越しにも伝わるからだ。

 

「ぬおおおお!」

 

 裂ぱくの気合と共に斬りかかってくる暗黒大将軍の気迫に、鉄也は怯みこそしないが脅威を感じ取って肌が粟立つのを禁じ得なかった。ダークサーベルとマジンガーブレードが激しく火花を散らし、両者の高速移動によって吹き荒れる嵐が斬撃の余波で更に切り裂かれてゆく。

 

「この気迫、パリの時よりも上か! グレートタイフーン!」

 

 鍔迫り合い、ギリギリと刃を押し込んでくる暗黒大将軍に対し、グレートマジンガーから暴風が放たれるが、刹那の差で飛びずさった暗黒大将軍の顎髭をわずかに散らすだけに終わる。

 パリ決戦において、獣魔将軍と四名の将軍が討たれて生き残ったのはアンゴラス、スカラベス、ドレイドウの三名のみ。この三名はそれぞれの部隊を指揮しており、暗黒大将軍の加勢に入る様子は見られない。

 だが、今の気炎を噴き上げる暗黒大将軍を見れば、余計な横槍はかえって極限の精神状態に没入した彼の邪魔にしかならないと、戦士でなくとも悟るだろう。

 

「剣鉄也、グレートマジンガーよ。まずは貴様らを血祭りにあげ、先の戦いで敗れた同胞の手向けとしてくれよう!」

 

「それなら、こっちは今日までお前達に苦しめられてきた人々の怒りと嘆きを晴らしてやる! 暗黒大将軍、貴様のその二つの顔のどちらも削ぎ落してやるぜ!」

 

「ぬかせぇ!」

 

 暗黒大将軍の目から超破壊光線が発射され、グレートマジンガーは即座にサンダーブレークで迎え撃った。二つの超エネルギーが衝突して、周囲に無数の光の筋と稲妻が乱れ散る。

 その内の一筋でも触れれば、ガンダニュウム合金や超合金Zさえ砕く超エネルギーの塊だ。偉大なる勇者と暗黒の大将軍の一騎打ちは誰にも割って入れぬ決戦場となりつつあった。

 そして兜甲児とマジンガーZはデモニカから降り立った地獄大元帥、アシュラーP1、ブロッケーンT9の三体の猛攻に晒されていた。

 

「死ねい、兜甲児!」

 

「砕け散れ、マジンガーZ!」

 

 アシュラーP1の胸の装甲が開き、針状のミサイル・あしゅらニードルが発射され、同時にブロッケーンT9も宙に浮いた頭部からビームが発射される。

 マジンガーZは両腕を折り曲げて、ドリルミサイルと光子力ビームによって迎撃しながら地面を疾走し、三体の強敵に囲まれないよう移動し続ける。その鼻先に地獄大元帥の一撃が襲い掛かる!

 

「兜十蔵、兜剣造、そして兜甲児! 忌まわしき兜一族との因縁は今日、ここで、ワシのこの手で絶ってくれるぞ!」

 

「それはこっちの台詞だ。お前達の野望から始まった戦いを俺の手で終わらせてやる。ミケーネなんて、倒さなきゃならない敵の一つにしか過ぎないんだからな!」

 

「小僧が、生意気な口を! くく、しかし、それでこそ兜一族、マジンガーZの兜甲児よ!!」

 

 地獄大元帥の長い鉤爪状の右腕が何度も振るわれて、それを防ぐマジンガーZの両腕との間で火花が散っては刹那の時間で消えて行く。

 反撃するマジンガーZも凄まじい。迂闊に魔神の直上に回れば、スクランダーの翼からサザンクロスナイフが容赦なく襲い掛かり、ロケットパンチと頭部、腹部の内蔵武器を使えば前後左右に同時攻撃可能なのだ。

 包囲したからと油断すれば即座にこちらのどてっぱらに穴が開くだろう。優位に見えて地獄大元帥もあしゅら男爵もブロッケン伯爵も、兜甲児とマジンガーZという恐るべき敵を前に微塵も慢心していなかった。

 

「うおおおお!」

 

 地獄大元帥らの叫びが重なり、アシュラーP1の右腕の触手がマジンガーZの足を絡めとる。腕を捉えてもロケットパンチとして拘束回避されると判断してのことだ。

 超機械獣と呼ぶべきアシュラーP1のパワーは、新型の光子力エンジンを備えたマジンガーZでも容易には振りほどけない。その数秒が雌雄を決した。

 

「とったぞ、マジンガーZォオ!」

 

 返り討ちにされるのも辞さず、覚悟を決めたブロッケーンT9が頭部に剣をセットし、高速で回転しながら突っ込む。無謀にも正面から!

 

「ブロッケン、相討ち覚悟か!」

 

「一度は亡くした命よ、Dr.ヘルの為に捧げるのならば本望!」

 

 光子力ビームがブロッケーンT9の左肩を吹き飛ばし、大きくそのバランスを崩したが、それでもブロッケーンT9の剣は、超合金ニューZを貫いてマジンガーZの腹部に柄の根元まで突き刺さり、そのまま背中へと抜ける。

 咄嗟に振り払おうとしたマジンガーZの右腕に、残るブロッケーンT9の頭部が噛みついて動きを止める。

 ならばとマジンガーZの左腕がブロッケーンT9の背中を強打し、セットされた剣が抜けてようやく離れるが、腹を貫いた剣はそのままだ。だが、兜甲児とマジンガーZはまだ生きている、まだ諦めてはいない、まだ戦える!

 

「ブレストファイヤー!」

 

「ぐおおおお!?」

 

 胸部の放熱板から放たれた超高温の熱線がアシュラーP1の触手を瞬時に蒸発させ、空中でバランスを崩すアシュラーP1に続けてドリルミサイルが襲い掛かって、男女を結合させたボディを容赦なく穴だらけにする。

 更に光子力ビームが右腕に噛みつくブロッケーンT9の頭部を撃ち抜こうとし、タッチの差でブロッケーンT9の頭部が右手から離れて、爆散の運命を回避する。

 

「勝ったぞ、兜甲児!!」

 

「Dr.ヘル!」

 

 そうして二人の部下が作り上げた隙を、地獄大元帥は、いやDr.ヘルは無駄にはしなかった。

 地獄大元帥から放たれた雷撃がマジンガーZに襲い掛かり、超合金ニューZの装甲に膨大なダメージを与え、更に損傷していた個所から機体内部に雷撃が侵入して致命的な傷を負わせてゆく。

 パイルダー内部の危険を知らせるあらゆるシグナルが点灯し、甲児はまるで血を被ったように真っ赤に照らされていた。

 

「ぐああああ!!」

 

 衝撃の凄まじさと爆発したコンソールの熱に肌を炙られながら、それでも甲児の瞳は地獄大元帥を睨んだまま、怯みはしなかった。

 いや、彼とて人間だ。それも二十歳にもならぬ少年である。迫りくる強敵、陥った窮地、命の危機に対してどうして恐怖を抱かずにいられるだろう。

 けれど彼の胸の中にはあるのだ。強い恐怖にも負けない、強い思いが。それは闘志、それは正義、それは勇気……あるいは、もっと別のナニカが、兜甲児の心を支えている。

 

「ふふふふふ、そうだ、この土壇場でも貴様の瞳から輝きは消えておらん。素晴らしい強敵だ。凄まじい怨敵だ。兜甲児、マジンガーZ! だからこそ、この勝利は圧倒的な輝きを持つのだ。さらば、マジンガー!」

 

 その時、デモニカのレーダーが超高速で飛来する熱源を一つ捉えたのを、地獄大元帥は知らない。

 それが極東支部に待機中のウルトラザウルスのグラビティカノンによって、重力の殻に包まれた状態で発射されたアルトアイゼンである事も、地獄大元帥には知る術がなかった。

 この世界においてはマジンガーの系譜に連なる20m級機動兵器として完成し、激戦の最中に強化改造されたアルトアイゼンが、オリジナルを助けるべく、今、まさに重力の黒い殻を内側から突き破って、赤い魔神が戦場に降り立った。

 

「全弾くれてやる、クレイモア!」

 

「いかん、機械獣達よ、Dr.ヘルをお助けするのだ!」

 

 地獄大元帥の頭上を取り、両肩の装甲を開いて特注のタングステン弾の雨をプレゼントするアルトアイゼンを察知し、脱出に成功していたあしゅら男爵が周囲の機械獣達に援護防御を命じる。

 面を制圧するタングステンの弾雨は、地獄大元帥に覆いかぶさるように盾となった機械獣達を粉砕してのけたが、地獄大元帥には数発がめり込んだだけに終わる。

 

「ち、甲児、今のうちに撤退しろ!」

 

「キョウスケさん!」

 

「おのれ、今一歩のところを、デモニカよ、奴を吹き飛ばすのだ!」

 

 あしゅら男爵に続き、脱出してデモニカに乗り移っていたブロッケンは、主君を害された事と宿敵に止めを刺せなかった事で二重の怒りを募らせて、攻撃指令を下す。

 がぱっと開いたデモニカの後部から大量のミサイルが発射され、アルトアイゼンはコレを腹部の拡散光子力ビーム砲で撃ち落としながら、マジンガーZの盾になれる位置に降り立った。

 着地する前に三連マシンキャノンと光子力ビーム、ホーンファイヤーで周囲の機械獣や戦闘獣を薙ぎ払い、地獄大元帥に牽制を入れるのも忘れない。

 ボロボロのマジンガーZにアルトアイゼンにやや遅れて空から降りてきたダイアナンAが寄り添うのを見て、キョウスケは眼前の敵に意識を向け直す。

 

「ここは俺が時間を稼ぐ。光子力研究所へ後退するんだ」

 

「ありがとうございます、キョウスケ中尉。他の皆は?」

 

「早乙女研究所に百鬼帝国が、ムトロポリスには妖魔帝国が出現してそれぞれに部隊を割り振っている。このタイミング、仕掛けられたな」

 

「あいつら、小細工を」

 

「だがその小細工に乗せられた形だ。ウルトラザウルスの砲撃を利用した出撃シークエンスに耐えられるパイロットと機体は少ない。悪いがしばらくは俺一人の援軍で我慢してくれ」

 

「へへ、キョウスケ中尉とアルトアイゼンなら百人力ですよ。なんたって、マジンガーの系譜なんだから」

 

「ふ、そうだな。そろそろ連中がしびれを切らす。急げ!」

 

「別の機体に乗り換えてすぐに戻ります。さやかさん、ダイアナンAの肩を貸してくれ」

 

「言われるまでもないわ。キョウスケ中尉、すぐに戻りますから」

 

 ダイアナンAの肩を借りて、歩くのもおぼつかない様子でマジンガーZが後退して行く。それを逃がすまいと地獄大元帥が瞳をぎらつかせ、後一歩のところで邪魔をしたアルトアイゼンを睨み据える。

 

「貴様、ワシの宿願の一つを果たさんとした時に横槍を入れるとは! そう簡単に地獄に落としてもらえると思うなよ!」

 

「それはこちらの台詞だ。甲児とマジンガーZをああまで痛めつけたからには、こちらとてタダで済まそうとは思っていない」

 

 アルトアイゼンと地獄大元帥、更にはデモニカやミケロス、それらの艦から出撃する残るミケーネ軍団を前に、キョウスケの瞳は静かな怒りを燃やしていた。

 一方でかつてないダメージを負ったマジンガーZに対し、自分がもっと上手くやれていれば、マジンガーを操縦できていれば、ここまで傷を負わせずに済んだと甲児は苦い後悔の味を噛み締め、それを闘志に変えていた。

 光子力研究所には連邦軍のMSやKMFの予備機、更にはマジンガーの量産タイプの試作機があるはずだ。それに乗って、すぐにでも戦場に戻るつもりなのだ。

 

『甲児!』

 

 かろうじて生きていたパイルダーの通信機能がノイズの走る画面を開いて、そこに血相を変えた十蔵の姿を映し出す。愛する孫と心血を注いで開発したマジンガーZの痛ましい姿に、十蔵の顔色は蒼白に近い。

 

「おじいさん。ごめん、おじいさんのマジンガーZが……。俺が弱かったばかりに」

 

『なにを言う。お前もマジンガーも決して弱くなどはない。相手が上手だっただけの話じゃ。なにより、お前はまだ生きている。それにマジンガーとて直せば再び立ち上がる事が出来る。まだ負けてなどおらん。だが今のマジンガーZの損傷をすぐに直す事は、いくらワシや弦之助君といえども出来ん』

 

「それなら、なにか別の機体で!」

 

『……甲児、マジンガーZを第7格納庫へ運ぶのだ。そこで魔神皇帝がお前を待っている』

 

「魔神皇帝?」

 

『そうだ。マジンガーZの力を得れば、全てを救う神にも全てを滅ぼす悪魔にもなれる。だが、魔神皇帝すなわちマジンカイザーならば、神をも超え、悪魔すら倒せる!』

 

<続>

 




例によってスパロボ新作を遊んだり、オリジナルを書いたりしていました。
仕事の方も束の間、落ち着いたので生存報告がてら更新といたしました。


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第八十五話 受け継がれる光

「マジンカイザー?」

 

『そうだ。剣造、弦之助君、のっそり博士、せわし博士、もりもり博士、更には各研究所の博士達やヘパ研の所長と協力し、マジンガーZが倒れた時の為に用意しておいたマジンガーを超えたマジンガーであり、同時に究極のマジンガーでもある』

 

「おじいさん、いつの間にそんな機体を」

 

『わしが意識を取り戻した時、マジンガーZで戦うお前の姿を見てわしは安堵し、そして後悔もした。Dr.ヘルの野心に対抗する為にマジンガーZを作り上げた事は正しかったと、胸を張って言える。だが、孫であるお前を戦わせたのは正しい事だと言えるだろうか?

 だが世界はその迷いを許してくれるほど優しくはなかった。次から次へと姿を見せる新たな敵の数とその強さに、わしは肝が縮む思いだった。

 だからこそ戦場に立つお前を死なせない為に、どんな強敵が現れても生きて帰ってこられるようにと願いを込めて、このマジンカイザーを作り上げたのだ』

 

 そこにいるのは世界有数の天才科学者ではなく、ただ孫の身を案じる祖父の姿があるだけだった。甲児はノイズの混じるモニターに映る祖父の姿に、何も言えなくなる。

 あの時、マジンガーZを見つけなければ、命懸けの戦いに身を置く必要はなかったし、あるいは無力な市民としてスーパーロボット達の活躍をモニターの向こうで眺める側に立っていたかもしれない。

 

「おじいさん、おれはマジンガーZに乗ったのを後悔してなんかいないよ。たしかに恐怖はあったし、不安もあった。死にそうな目に何回も遭ってきた。

 けれど自分の欲望の為にたくさんの関係のない人を恐怖に陥れるような奴らを前にして、何もできない自分は嫌なんだ。

 おじいさんはおれにそういう身勝手な悪党を止める力を、マジンガーZを与えてくれたんだ。だからおれはこれからも戦う。どんな強敵を前にしても、絶望の淵に追いやられても、決して諦めずに、マジンガー乗りとして戦う!」

 

『甲児……お前は、本当に立派になったな。……よし、ではすぐに第七格納庫へ急ぐのだ。マジンカイザーの起動準備を進めておく』

 

「ああ、分かったよ。・・・・・・皆、おれが戻ってくるまで、もう少しだけ耐えてくれ!」

 

 甲児は一時とはいえまだ戦っている仲間達から離れる悔しさを奥歯を砕かんばかりに噛み締めて耐え、さやかのダイアナンAの肩を借りながら傷ついたマジンガーZを指定された第七格納庫へと向かわせる。

 マジンガーZが致命的なダメージを受けたという情報は鉄也やさやか、ジュン、ボスらだけでなく奮闘中の防衛部隊の心を揺るがすものだったが、ウルトラザウルスから発射されたアルトアイゼンの参戦と、甲児が無事であり機体を乗り換えて再出撃するという知らせが即座に入った為、悪影響を及ぼすのは防がれた。

 

 有人のヴァイエイトとメリクリウスに率いられたMDビルゴ部隊はビームキャノンとプラネイトディフェンサーによる攻防一体の連携で立ち向かい、ケーニッヒウルフとシャドーフォックスからなる高速ゾイド部隊は、勇猛果敢にミケーネ軍団に襲い掛かって戦列を千々に噛み千切ってゆく。

 量産型F91部隊のヴェスバーが火を噴き、ジャベリン隊のショットランサーが迂闊に飛び出してきた機械獣の全身を串刺しにする。

 

 たった一機でもアルトアイゼンという援軍が到着し、遠からずDCないしは極東支部の援軍が見込める状況になった事への希望、そして兜甲児がいまだに絶望せず、滾らせた戦意が戦場に居る味方へと伝播したのだ。

 特に同じマジンガー乗りであり、兄弟分である剣鉄也へ伝わった熱量は他の面々とは一線を画した。

 

「どうした、暗黒大将軍! マジンガーZが下がっただけで勝ったつもりか!」

 

 全てを吹き飛ばす嵐の如きマジンガーブレードの乱舞に、暗黒大将軍は鉄也の指摘通りに勝ったとわずかに弛緩した心の隙を突かれ、愛剣で防ぐのが手一杯になる。

 

「俺としたことが戦場でなんという無様を! だが貴様こそ俺の隙を突いた程度で勝ったつもりになるなよ、剣鉄也!!」

 

 反撃に放たれる超破壊光線を、グレートマジンガーは跳躍して回避し、ネーブルミサイルの連射が暗黒大将軍へと降り注ぐ。

 咄嗟に横に飛び退いてミサイルの直撃を避けた暗黒大将軍の頭上から、グレートマジンガーが大上段にマジンガーブレードを振り上げて襲い掛かる。偉大なる勇者と大将軍の死闘は第二幕へと移り、徐々にその形勢を傾けつつあった。

 

 そしてマジンガーZの窮地を助ける一手となったアルトアイゼンは、マジンガーZの代わりだと言わんばかりに地獄大元帥とあしゅら男爵、ブロッケン伯爵からの猛攻に晒されていた。

 奇襲によって周辺の戦闘獣や機械獣を一掃したとはいえ、デモニカとミケロス、グールからの爆撃と最上位の戦闘獣でもある地獄大元帥の合わせ技は、マジンガーの亜種といえるこの世界のアルトアイゼンといえど、苦戦は必至の強敵である。

 

 降り注ぐミサイルと爆弾を加速力にモノを言わせて回避、避けきれぬ攻撃は光子力バリヤーと超合金ニューZの装甲で耐えて、地獄大元帥の首をひたすらに狙う。

 そうすれば忠臣のあしゅらとブロッケンは敵を倒す為の行動から、主君を守る為の行動へ切り替えざるを得ない。

 

 アルトアイゼンの加速力は、機械化されて地獄大元帥の頭脳となったDr.ヘルでなかったら、とてもではないが対応できなかった。

 生身のままだったなら、反応するまもなく超合金ニューZのステークに胸か頭を打ち貫かれていただろう。

 

「マジンガーのモドキが、このワシの邪魔をするか!」

 

「ならさっさとそのモドキをスクラップにでもするんだな」

 

 地獄大元帥はアルトアイゼンの三連マシンキャノンをマントで防ぎ、キョウスケの挑発は舌打ちで相殺し、雷撃を放ってアルトアイゼンの加速を未然に防ぐ。言葉を荒げてもやはりDr.ヘル、思考の中には理性を残して冷静な判断を誤らない。

 

「ターゲットロック、光子力ビーム!!」

 

 もし収録現場だったらマイクが壊れかねない声量でキョウスケが叫び、ボイスコマンドによってトリガーが引かれて、アルトアイゼンのツインアイから光子力の奔流が放たれる。

 地獄大元帥は対ビームコーティングを施したマントを盾代わりにしながら素早く動き回り、照準を絞らせずに回避して行く。

 

(光子力研究所に退いた兜甲児とマジンガーZ……嫌な予感しかせん。いつまでもこやつに手をこまねいてはいられんぞ!)

 

 アルトアイゼンのヒートホーンから放たれた熱線を跳躍で回避する地獄大元帥に、それを待っていたと言わんばかりにアルトアイゼンのブースターに火が入る。

 

「とったぞ!」

 

 キョウスケがフットペダルを踏み込む一刹那、頭上のデモニカとグールから降りかかってきた影から放たれたビームと針状のミサイルが、その動きを牽制し、アルトアイゼンの前進を阻み、後退させる。

 

「我らの目の前でDr.ヘルを討てると思うなよ!」

 

「マジンガーZの次は貴様を血祭りにしてくれる!」

 

 デモニカとグールに搭載されていた、予備のアシュラーP1とブロッケーンT9に乗り換えたあしゅらとブロッケンだ。

 巨大サイボーグである戦闘獣と違い、パイロットが新しい機体に乗り換えればすぐに再出撃できる利点を活かしたわけだ。

 

「しつこさは相変わらずだな」

 

 キョウスケは二体の超機械獣に守られる地獄大元帥を睨みながら、再度の仕切り直しを強制される。

 アルトアイゼンは足を止められると弱い。加速し、持ち前の火力で敵陣を突破し、ステークで目標を破壊する突撃離脱戦法こそが本領を発揮できるからだ。

 マジンガー化によって更なる重装甲、高火力を獲得しているが、ヴァイスリッターのように支援してくれる僚機の存在が無ければ、本領を発揮するのが難しくなる欠点は変わらず存在している。

 この戦場では防衛部隊のゲシュペンストMk-ⅢとバルゴラCSが最適だが、彼らは既に三桁に届くミケーネ軍団との戦いに忙殺されている。

 である以上は、アルトアイゼン単体で地獄大元帥とその直掩部隊を相手に時間を稼ぐしかない……筈だったのだが、意外性の爆発というものがこの戦場にも存在していた。

 

「スペシャルDXボロットパ~~ンチ!!」

 

 補給作業を光子力3DプリンターやMDに任せたボスボロットがいつの間にか地獄大元帥に忍び寄り、ぐるぐると右腕を回しながら殴りかかった!

 

「なに!?」

 

 目の前のアルトアイゼンに気を取られていた地獄大元帥らは、ボスボロットへの反応が遅れてしまい、通常ならば回避できたろうボスボロットの拳が地獄大元帥の右頬を打ち抜いた。

 

「ぐおお!?」

 

 元々光子力ビームを使用可能なスペックを持つボスボロットは、暇を見つけては様々な博士達によって強化されて現在に至っている。そのボスボロットのフルパワーの一撃は、不意を突かれた事もあって地獄大元帥の巨体をそのまま数十メートルも吹き飛ばしてのけた。

 

「おお、Dr.ヘル!?」

 

「おのれ、このスクラップロボット風情が!!」

 

 あしゅらがすぐさま地面に倒れ込んだ地獄大元帥に駆け寄り、ブロッケンは怒りのままにボスボロットへ向けて機体の隻眼からビームを放つ。

 ボスボロットは慌ててのけぞり、ブロッケーンT9のビームを回避に成功する。ハチマキはそのままだが背負い籠やガンベルトは使い終え、ノーマル仕様の姿である。

 

「おうおうおう! マジンガーZと兜甲児だけが敵だと思ったか! このボスさまとボスボロットを忘れちゃ困るぜ。

 お前ら悪党が栄えた試しはねえんだ。マジンガーZが倒れても俺様が、俺様が倒れてもまた別の誰かがてめえらの前に立つのを忘れんなよォ!」

 

「我らの邪魔をする者達は全て殺すまでよ!」

 

 ブロッケンは主君を傷つけられた怒りのままに、剣を振りかざす首無し胴体と空飛ぶ頭部の両方でボスボロットへと襲い掛かる。

 ボスボロットは左右の拳をしっかりと握り締めて、正面から迎え撃つ構えだ。今やボスもムチャもヌケも歴戦の猛者だ。土壇場での胆力は超一級品になっている。

 

「おうおう、骨の髄まで悪党根性だな。かかってこいやぁ!」

 

 そうして思いがけずボスの稼いだ時間は、キョウスケとアルトアイゼンにとって黄金にも勝る価値があった。

 

「意外と頼りになるものだな。礼を言うぞ、ボス、ヌケ、ムチャ。やるぞ、アルト!」

 

 一気に加速したアルトアイゼンがこちらに背を向けるブロッケーンT9へ、赤い流星と化して襲い掛かる!

 

「ぬお、しまった!?」

 

「ええい、ブロッケン、馬鹿者め!」

 

 罵倒しながらもフォローに入るあしゅらの姿は、普段のいがみ合いを忘れて彼らがこの戦いに掛けている覚悟の強さを端的に表していた。

 

 

 マジンガーZを第七格納庫へと送り届けた後、さやかとダイアナンAはすぐに戦場へと取って返した。予断を許さない戦況は一分一秒が惜しく、数々の強化を経たダイアナンAの抜けた穴が齎す影響は大きい。

 ボロボロにされたマジンガーZをハンガーに固定し、パイルダーから降り立った甲児は、格納庫で待っていた十蔵と合流し、マジンガーZの隣に立つ新たなマジンガーを見上げていた。

 新たなマジンガー……マジンカイザーの威容を前に、甲児は体を蝕む痛みを忘れて魅入られたように見上げている。

 より筋肉質に見える太く逞しい四肢、どこか禍々しくもあり厳罰を下す神のような威厳を備えたその姿。ただそこに立っているだけで計り知れない力をひしひしと感じさせる魔神皇帝に、甲児は無意識に唾を飲み込んでわずかでも緊張を解そうとしていた。

 

「おじいさん、こいつがマジンカイザー」

 

「そうだ。わしらの持てる技術と知識の全て、そして願いを込めて作り上げた新たな魔神。

お前を生きて帰す為に、人類と世界を守る為に、そして戦いを終わらせる為に作り上げたマジンガーじゃ。

 万が一、マジンガーが悪の手に落ちた時、悪のマジンガーを討つ為のマジンガーでもある」

 

「マジンガーを討つマジンガー。だから、マジンガーを超えたマジンガーって言い方をしたんだね」

 

「ああ。皮肉なものだ。人類の繁栄の為、新たな時代の平和利用の為に光子力を研究してきたというのに、その成果をこうして戦う為の力として形にする事になるとはな」

 

 祖父の言葉の中に込められた悲哀を聞き取り、甲児は悲しげに目を伏せてから、祖父へ慰めの言葉をかけた。

 

「そんな事はないよ、おじいさん。マジンガーZもグレートマジンガーも、このマジンカイザーも、人間の自由や尊厳、平和を奪う悪党からそういう大切なものを守る為の力なんだ。

 おじいさんやお父さん達の願った形とは少し違うだけで、マジンガー達が平和の為の存在なのは変わらないよ。マジンガー乗りである俺達が、それを間違えない限り」

 

「ふふ、お前もシローも鉄也君もわしには過ぎた孫だよ。甲児、マジンカイザーには制御が難しい分、出力の高い光子力反応炉を積んである。

 装甲は超合金ニューZよりも更に強度の高い超合金ニューZα製だが、ヘパ研から提供されたマシンセルの応用で機体にはある程度の自己修復、自己進化、自己増殖機能が備わっている。

 パワーもスピードも防御力も、あらゆる能力がマジンガーZとはけた違いだが、その分、操縦に掛かる負担は大きい。マジンガーZに慣れたお前でもぶっつけ本番で実戦となれば、相当の負荷がかかるじゃろう」

 

「それくらいは覚悟の上さ。Dr.ヘルとの因縁を終わらせる絶好の機会なんだ。俺とマジンガーは決して挫けやしないってことを、あいつらに教えてやるまでは膝を突いてなんかいられないんだ」

 

「うむ。マジンカイザーの心臓に火は灯したが、出力がまだ上がりきってはおらん。これからマジンガーZの光子力エンジンと繋げて、残っている光子力エネルギーの全てをマジンカイザーに注ぎ込む。お前はカイザーパイルダーに乗って、何時でも出撃できるように備えてくれ」

 

 すぐさま甲児はマジンカイザーの頭頂にあるカイザーパイルダーに乗り込み、痛み止めの錠剤を飲み干してマジンカイザーのステータスをチェックする。

 

「武装はマジンガーZのバージョンアップ版か。カイザーブレード、ファイナルカイザーブレード、カイザーノヴァの新武装に、それになんて出力だ。

 色んなスーパーロボットの技術が詰め込まれている。光子力が人の意志に反応するのか? まるでサイコミュか野獣回路みたいだ。一歩間違えたら、マジンカイザーが世界を滅ぼす破壊の魔神になるぞ」

 

 マジンガーZでさえ当時の連邦軍の一個艦隊にも匹敵すると言われた戦闘力があったが、このマジンカイザーは現在の連邦軍の一個艦隊、一個師団あるいはそれらをやすやすと凌駕する超級特機(スペシャルスーパーロボット)というべき戦略兵器だ。

 神にも悪魔にもなれるマジンガーZを経て、甲児は今、神をも超え、悪魔を倒せる力を手にしたのだ。一人の人間として、甲児がこの魔神皇帝をどんな存在とするのか。まさに魔神皇帝自身に試されているとも言えるだろう。

 

『甲児』

 

「おじいさん、こっちの準備は大丈夫だ。いつでもイケるぜ」

 

『よし、それではこれよりマジンガーZからのエネルギー供給を始める。それに合わせてマジンカイザーのエンジン出力を上げるのじゃ』

 

「了解!」

 

 所員達の手によってハンガーのマジンガーZとマジンカイザーの機体間でエネルギーパイプが接続され、マジンガーZの最後の灯がマジンカイザーへと移されてゆく。

 甲児はコックピットのコンソールに映し出されるエネルギーゲージが、徐々に満たされてゆくのを今か今かと見守る。

 

「早く、早く!」

 

 マジンガーZは既に致命傷と言えるダメージを受けていたにもかかわらず、いや、だからこそか、光子力エンジンは唸りを上げてオーバーロード寸前のエネルギーを新たな同胞に送り続けている。

 マジンカイザーの光子力反応炉は膨大な出力と引き換えに、起動に必要とするエネルギー量も凄まじい。マジンガーZの光子力全てを用いても、起動させるのは簡単ではなかった。

 

「目覚めろ、マジンカイザー! お前には皆の願いと想い、そしてマジンガーZの光があるんだ!!」

 

『よし、マジンガーZからのエネルギー供給完了! 行け、甲児、マジンカイザー!!』

 

 光子力エネルギーの全てを供給し終えたマジンガーZの瞳から光が消え、それと引き換えにマジンカイザーの心臓が脈動をはじめ、その双眸に光が灯る。

 マジンガーZの光と命を受け継ぎ、兜甲児という心を得て、マジンカイザーが覚醒する!

 

「いくぞ、マジンカイザー! マジーンゴー!!」

 

 第七格納庫の天井が左右に開き、そこからカイザースクランダーの翼を広げてマジンカイザーが飛翔する。

 互いにいくつも体に傷を刻んだグレートマジンガーと暗黒大将軍、ダイアナンAとビューナスA、ボスボロット、そして地獄大元帥とあしゅら、ブロッケンも光子力研究所の上空に飛び出したマジンカイザーに意識を奪われていた。

 

 紅の翼を広げて空に聳える新たな鉄の城のなんと力強いこと。鼓動を刻み始めた光子力反応炉から供給される光子力エネルギーが鉄の四肢から溢れ出し、新たな魔神が産声を上げたのを戦場の誰もが理解した──理解させられた。

 誰もが自分の行動がマジンカイザーを動かすきっかけになるのを恐れ、動けずにいる中で真っ先に動いたのは光子力研究所に迫っていた機械獣タイターンG9だった。

 

 大型機械獣のタイターンG9は巨体を躍動させて跳躍し、巨体に見合った棍棒をマジンカイザーへと叩きつける。

 百メートル近い巨体に見合ったパワーと質量を備えた一撃を、マジンカイザーは左腕を軽く振るい、それだけでタイターンG9の棍棒が砕け散り、更に右の拳がタイターンG9の顔面に叩き込まれると、どれだけのパワーであったものかタイターンG9の全身が砕け散る。

 

「これがマジンカイザーか。……いくぞ、Dr.ヘル! 新たなマジンガーの力でお前との因縁を終わらせる!」

 

「おのれ、おのれ、兜甲児、どこまでも忌々しい! かくなる上は我が軍団の総力をもって貴様を討つまでよ!」

 

 ダイアナンAやミネルバX、防衛部隊、光子力研究所攻略に割いている戦力を最低限に止め、グレートマジンガー相手には変わらず暗黒大将軍と残る将軍らに任せて、残存戦力の全てがマジンカイザーへと殺到する。

 アルトアイゼンすら無視するその姿は、どれだけ地獄大元帥らがマジンカイザーに脅威を見出しているかを如実に示している。

 

「来るなら来い! マジンガーZの光子力を受け継いだマジンカイザーは、ちょっとやそっとじゃ倒せないぜ!」

 

 マジンカイザーの双眸に強烈な光が宿り、これまでの光子力ビームとは比較にならないエネルギーが放出される。そしてそれは空中で数十の光線に枝分かれして、その数だけ戦闘獣らを破壊してのけた。

 

「ホーミング光子力ビーム!!」

 

 それは、この世界には存在していないガンバスターのホーミングレーザーを想起させる一撃だった。ヴァルシオーにも使用されている光学兵器の自動追尾機能はマジンカイザーにも利用されているのだ。

 更にマジンカイザーの口部のスリットから、強酸を含む竜巻が放たれる。それは地形を変える天災の如き一撃だ。

 

「ルストトルネード!」

 

 あまりの反動にマジンカイザーも押されるほどの勢いで強酸の竜巻が吹き荒れ、ぐるりと回転するマジンカイザーに合わせて、ルストトルネードが四方に吹き荒れて、光子力ビームに破壊された戦闘獣達の破片が跡形もなく砕かれ、溶かされてゆく。

 かろうじて光子力ビームを避け、必死に地面に這いつくばって強酸の竜巻を耐え凌いだアシュラーP1とブロッケーンT9は、竜巻が止むのに合わせて一気に飛んだ。

 地獄大元帥達からすれば幸いにもあまりにマジンカイザーの攻撃の威力と規模が凄まじすぎて、アルトアイゼンを含めて他の機体が介入出来ずにいる。その内に魔神皇帝を討たねばならない。

 

「死ねえ、兜甲児!」

 

 機体の中央から左右に分離したアシュラーP1がマジンカイザーを圧壊させようと左右から襲い掛かり、ブロッケーンT9は再び首に剣を刺し込んで超電磁スピンのように回転しながらマジンカイザーへと突っ込む。

 

「今度はコックピットを貫いてやるぞ!」

 

「マジンガーZのようにその新たなマジンガーも破壊してくれるわ」

 

「来い! マジンガーZはマジンカイザーの中で息づいているんだ。お前達はマジンガーZを倒せてなんかいない! ターボスマッシャーパンチ!」

 

 勢い凄まじく回転するマジンカイザーの両腕がロケットパンチのように射出され、左右から襲い掛かるアシュラーP1を容赦なく貫く。

 マジンガーZのロケットパンチの段階からして戦闘獣を一撃で破壊する威力があったが、ターボスマッシャーパンチの破壊力は一段も二段も上をいった。

 マジンカイザーの両拳が分離したアシュラーP1それぞれの胸部を貫いて、半分ずつの胴体を粉みじんに砕く。

 

「ぐおおお、ど、Dr.ヘル、お許しを!?」

 

「Dr.ヘル、に、栄光あれえ!」

 

 あしゅら男爵夫妻の断末魔に紛れて、甲児の闘志を乗せたマジンカイザーの一撃はブロッケーンT9にも襲い掛かる。マジンカイザーの腹部の装甲が開いて、そこから巨大なミサイルが顔を覗かせる。光子力エネルギーを極限まで詰め込んだ、その名も──

 

「ギガントミサイル!」

 

 高速で回転するブロッケーンT9の胴体は発射されたギガントミサイルを回避しきれず、勢いよく正面衝突して巨大な光子力の爆発の中に飲まれて塵一つ残さずに消滅する。

 だが、まだブロッケーンT9の頭部は生きている。ブロッケンが操縦するブロッケーンT9は、宣言通りに甲児の乗るカイザーパイルダーを狙い、胴体を囮にしたのだ。

 

「とったぞ、兜甲児!」

 

「狙いが見え見えだぜ! 冷凍ビーム!」

 

 マジンカイザーの耳の部分から伸びる角の先端から青白い冷凍ビームが照射されて、勝ち誇るブロッケーンT9の頭部を凍結させる。絶対零度に近い極低温によって内部のブロッケンもまた凍り付き始めていた。

 

「お、おの、れ、かぶ、とこう、じいい、い」

 

「さようならだ、ブロッケン! あしゅらと同じ地獄に落ちろ、光子力ビーム!」

 

 再びマジンカイザーの双眸から放たれる光子力の奔流が凍り付いたブロッケーンT9の頭部を飲み込み、アシュラーP1同様に跡形もなく消滅させた。

 

「お前で最後だ。地獄大元帥!」

 

「よくもあしゅらとブロッケンを! おのれ、兜甲児、おのれ、マジンカイザー!」

 

 怒りでそのまま憤死してしまいそうな地獄大元帥のその背後で、巨大な爆発が立て続けに発生した。

 

「なに!?」

 

「これで逃げる為の足は潰したぞ」

 

「悪党もいよいよ年貢の納め時だわさ」

 

 爆炎を噴いて傾き、徐々に高度を落としつつあるデモニカとミケロス、そしてその甲板に立つアルトアイゼンとボスボロットが地獄大元帥の視界に飛び込んでくる。

 地獄大元帥がマジンカイザーとあしゅら達の戦いに意識を奪われている間に、アルトアイゼンとボスボロットが持てる火力をつぎ込んで無敵要塞と万能要塞を落としたのだ。

 

「ぬうう」

 

「進退窮まったな、地獄大元帥」

 

 地面に降り立つマジンカイザーを振り返り、地獄大元帥はじりじりと後ずさった。既にホーミング光子力ビームとルストトルネードによって周囲のミケーネ軍団は一掃され、腹心の部下達も倒されている。

 明らかにマジンガーZとグレートマジンガーを凌駕する超パワーを誇るマジンカイザーを相手に、いかに地獄大元帥の戦闘獣としての高スペックを持ってしても太刀打ちできる可能性はどれだけ計算を重ねても見いだせない。

 

「地獄であしゅらとブロッケンが待っているぜ、地獄大元帥、いやDr.ヘル!」

 

「ぬかせ、小僧が!」

 

 地獄大元帥は我が身を焦がすほどのパワーを振り絞って雷撃を放ち、マジンカイザーはそれを正面から浴びる。

 

「死ねい!」

 

 周囲を白く染める雷撃の中で、マジンカイザーの双眸と胸の中央に刻まれたZの一文字がひと際力強く輝く。

 

「こんなものかよ、Dr.ヘル! いくぞ、マジンカイザー! これで終わらせる、必殺ファイヤーブラスター!!」

 

 マジンカイザーの胸部にある広げた竜の翼のような放熱板から、マジンガーZ、グレートマジンガーにも受け継がれてきた熱線が発せられる。

 超合金ニューZαかオリジナルのグレートマジンガーに用いられている高精度超合金ニューZでなければ耐えられない超熱量は、大気を焼き、地面を融解させながら地獄大元帥を無慈悲に飲み込む。

 

「ぐあああああ、また、また負けるのか、このDr.ヘルが!?」

 

「悪党が栄えた試しはない! もしお前がまた蘇ろうとおれとマジンガーがお前を何度でも倒す!」

 

「ぐうぉあ!!」

 

 最後の断末魔を上げて、地獄大元帥ことDr.ヘルはファイヤーブラスターの熱線の中で爆発を起こして、一度は拾った生命を再び失った。

 地獄大元帥、あしゅら、ブロッケンという指揮官を失い、更にはデモニカ、ミケロスといった移動要塞をも失ったミケーネ軍団は残る暗黒大将軍が即座に指揮を執り、撤退を命じた。

 左腕を付け根から斬り落とされ、頭部も右半分を失った凄まじい姿だ。同時にグレートマジンガーも激闘による傷跡が機体に無数に刻まれている。

 

「全軍撤退! 一機でも多くこの戦場から生還するのだ! 我らの戦いはまだ終わっていないぞ!」

 

「待て、暗黒大将軍!」

 

「今日は我らの負けを認めるほかあるまい。だが、剣鉄也、グレートマジンガー、そして兜甲児、マジンカイザーよ、貴様らとの決着は別の機会に残す! 我らミケーネの存亡をかけて、お前達を必ずや打ち倒すぞ!!」

 

 オリジナルの戦闘獣らと暗黒大将軍を逃がす為、量産型のミケーネ軍団が使い捨ての壁となって立ちはだかり、壁となった機体はそのすべての撃墜に成功したものの、暗黒大将軍を始めとした有人機は戦場からの脱出に成功した。

 光子力研究所を襲ったミケーネ軍団の五分の一は取り逃がし、マジンガーZが大破するという被害はあったが、それでも魔神皇帝がついにこの世界に降臨し、地獄大元帥、あしゅら男爵、ブロッケン伯爵を討つという大戦果を得るのだった。

 

<続>

■マジンガーZが大破しました。

■マジンカイザー(自己進化、自己修復、自己増殖機能持ち)を入手しました。

 




本作のマジンカイザーは自己進化と自己修復はいつも通りですが、自己増殖もできますヨ! するかどうかは別として。

追記
真マジンガーのイメージが甲児→十蔵博士の口調を書いていましたが、そういえば初代アニメ版だと違ったな、と感想でのご指摘を受けて思い直してちょこちょこ台詞を修正です。


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第八十六話 奪われなかった一号機の方

今回は宇宙ルートの続きです。ゲッターロボじゃなくてごめんなさいね。

ハヤトのクラップ級はカラバに戻っています。
クラップ級の改造度は、
クラップ → ガンキャノン・ディテクター(ハヤト、リュウ、カイ)、Zプラス(セイラ、スレッガー)に引き継がれるので、改造しておくとかなりお得です。


 コロニーレーザーを中心として布陣したティターンズ艦隊は、ジャミトフ直々によるティターンズの解散宣言、地球連邦政府からの度重なる投降の呼びかけ、また混迷を深める地球情勢に心を痛めて、などの理由により、次々とその人員を減らしている。

 規模縮小と後ろ盾の喪失によって事実上、バスク・オムが支配する武装勢力と化した現在のティターンズは、人員不足を補う為にMS部隊の大部分がMDで補われており、コロニーレーザーを切り札とするほかない状況に追い込まれている。

 

 ことこの局面に至り、アースノイド至上主義に走った愚者の最期として後世への戒めとすべく支援していた者達も手を切り、バスク・ティターンズは絶体絶命の窮地に陥ったと言ってなにも問題はないだろう。

 そんな事はバスクにも分かっていた。彼は極端な思想に走り、人道無視、人命軽視、人権蹂躙も躊躇せず行える危険性を有しているが、それでも軍人としては優秀である。「優秀」という括りの中でも、かなりの上位に食い込むだけの能力と経験を有している。

 

 艦隊旗艦ドゴス・ギアのブリッジでシートに座るバスクは、かつてジオンの捕虜となった際に受けた拷問の影響で低下した視力を補うゴーグル越しにも分かるほど、瞳に怒りと焦りと不満の光をギラギラと輝かせていた。

 原作に於いてはコロニーレーザーによってサイド2・18バンチが砲撃され、およそ三百万人の住人が皆殺しにされているが、幸い、コロニーレーザーは今に至るまで未使用だ。

 バスクはこの第一射をキュクロープス艦隊中核か、それとは別方向に控える連邦艦隊に使用するか、それを繰り返し考えていた。

 

 当然、どちらの艦隊もコロニーレーザーを警戒して艦隊の布陣を広く散らばせており、一度の砲撃で多数の艦隊戦力喪失を防ぐ措置を講じている。

 コロニーレーザーは強力ではあるが、つまるところ直径6~7kmのレーザーであり、宇宙スケールで考えれば、そう驚くほどの数字ではない。

 軍事要塞やスペースコロニーといった動かない対象はともかく、コロニーレーザーの存在を知っている艦隊を相手に使用するとなると、どこまで効果を見込めるものか。

 

「コロニーレーザーの警備はどうか? 索敵を密にせよ。どんな些細な変化も見逃すな。工作員の侵入に対する警戒も決して怠るな」

 

 バスクはシートに備え付けてある有線電話を取り、コロニーレーザーの警備を担う部隊と索敵部隊へ何度目になるのか分からない命令を送る。

 この時、バスクが警戒していたのは例えばヒイロやデュオらのような卓越した工作員によるコロニーレーザーへの破壊工作、更には少数精鋭の特殊部隊などによる外部からの破壊である。

 

 バズ・ガレムソンとエイジャックス艦隊のように、禁じられていた任務外でのジオン残党狩り並びに民間人への無差別攻撃などの重犯罪に手を染めた爪弾き者が合流し、戦力が微増してはいても焼け石に水だ。

 ネオガンダム一号機とネオ・サイコミュ・システムの入手は朗報だったが、この苦境を覆す一手というには物足りない。

 

(もはやこの局面においてはコロニーレーザーのみが活路を切り開く一手だ。ジャミトフめ、あれだけ尽くしたこの私をあっさりと切り捨てて! 連邦政府も連邦政府だ。

 我々がスペースノイドや侵略者を相手に、どれだけ身を粉にして戦ってきたと思っている! 恩知らずの狸共め! 私はこのままでは終わらんぞ!! 私が居る限り、ティターンズは不滅なのだ!)

 

 ぐらぐらと沸き立つマグマのような怒りを腹の奥底に押し込めて、バスクはコロニーレーザーの最初の生贄を決めた。自分達を都合よく切り捨てたジャミトフが用意した、新たな手駒共からだ!

 

「キュクロープス艦隊中核をコロニーレーザー第一射の目標とする。照射後は迅速にチャージを行え。場合によっては残存艦隊、あるいは地球連邦艦隊へ第二射を照射する!

 コロニーレーザー照射後、艦隊と機動兵器によって残存敵部隊の殲滅に移行する。我らティターンズの存亡はこの一戦に懸かっている。艦隊各員の奮闘を祈る!」

 

 バスクの指示が砂に染みる水のようにティターンズ艦隊に伝わる中、キュクロープス艦隊側も当然動いていた。

 可変機を中核とした高機動部隊によるコロニーレーザーへの奇襲、これが第一の矢である。T3部隊も加わるキュクロープス艦隊の最精鋭部隊でもあるこれらの乾坤一擲の一撃は、艦隊を囮としてティターンズ艦隊の索敵網の薄いところを貫くべく既に放たれていた。

 

 そしてこの奇襲部隊の中にはティターンズからキュクロープスへと所属を移した元ティターンズ兵もそれなりに含まれている。

 T3チームとて元はティターンズであったし、別に不思議な話ではないのだが、おなじみと言えるメンバーがその中にいたことを知ったなら、スパロボのプレイヤー達は安堵するだろうか?

 

 奇襲部隊の中に三本爪の手を伸ばした甲羅のような物体が含まれていた。赤いカラーリングのソレらは、可変型MAバウンド・ドック、そのMA形態である。

 本来は強化人間やニュータイプ用の機体であるが、サイコミュを撤去して制御プログラムを調整した一般兵用のバージョンだ。

 

 そしてこのバウンド・ドック部隊の中にはカミーユと因縁の深いジェリド、カクリコン、マウアーらが搭乗していた。

 以前はヤザンにも鍛えられ、地球連邦のエリート組織の一員として羽振りを利かせていた彼らも、地球を取り巻く情勢の変化に伴い、バスク・ティターンズに見切りをつけ、ジャミトフの解散宣言直後に考えを同じくする者達と共にグリプスを離脱。

 その後は追手を振り切ってキュクロープスへ合流し、禊も兼ねて古巣を叩くべく出撃しているというわけだ。

 

 宇宙用に調整されたギャプランやSFSに乗っているバーザム、TRシリーズで構成される味方には目もくれず、ジェリドはまだ見えないコロニーレーザーの姿を求めるように、進行方向へと視線を固定している。

 ジェリドの張り詰めた雰囲気を機体越しにも感じたのか、ジェリド機の右後方にいるマウアーが触れ合い回線用のワイヤーを撃ち、戦闘前にしては柔らかな声で恋人に話しかける。

 無線封鎖中もお肌の触れ合い回線なら、通信傍受の心配はない。まあ、それでも褒められた行いではないが。

 

「ジェリド、心が硬くなっているのが機体越しにも分かるわ。今でも気が進まない?」

 

 かなりの数のティターンズメンバーが抜けたとはいえ、今もグリプスに残っている者の中に知己が居る可能性は誰にも否定できない。そしてそれはジェリドに限った話ではなく、マウアーもカクリコンも、彼ら以外のティターンズ離反者に言えることだ。

 

「よせよ、気を遣うのは。確かに思っていたようにはいかなかったが、俺が俺の意志で選んだ結果が今というだけだ。ティターンズに入隊したのを間違いだったと思っちゃいないが、バスクのやり方は間違っている。

 地球がこんなに滅茶苦茶になっている時に、いまだにエゥーゴやスペースノイドを敵視してなんになる?

 ジャミトフ閣下からも見捨てられて、潔く負けを認めればまだしも、今もまだ終わっていないと勘違いして足掻いても、状況を悪化させ続けるだけだと分からん奴に命は預けられん」

 

「そう、覚悟が固まっているのが知れてよかった。そういうジェリドとなら一緒に戦える」

 

「マウアーにそう期待されるのなら、気合も入る。マウアーもカクリコンも、こんなところで死なせはしない。俺自身もな。ティターンズで上に立つことは出来なくなったが、だったら侵略者共を相手に戦って、上を目指すまでだ!」

 

「ふふ、ジェリドはそうでないと。貴方に賭けた私も困る」

 

 どうやらこの世界のジェリドとマウアー、それとカクリコンは最大の死因=プレイヤー部隊と敵対を避けられたようだった。

 そしてジェリドとマウアーが気力を上げ、更に精神コマンドの『集中』、『直感』、『不屈』あたりが事前に発動した状態にある中で、奇襲部隊を率いるT3のマーフィー小隊もかつての自分達の栄光の残影を消し去るべく、任務に意識を集中していた。

 マーフィー小隊の構成は、マーフィーのクインリィ、カールのハイゼンスレイ、エリアルドのハイゼンスレイⅡ・ラー、そしてエイプリルの搭乗する巨大MAだ。

 

 エイプリルが使用しているMAはアプラサスの系列機でアプサラスVに相当する機体だ。

 ただし、いつまでも旧ジオンの開発した機体名『アプサラス』を使用する点については意見が出された為、機体名をウルバシーとされている。

 元々アプサラスとは古代インドの神話に登場する水の精の総称であり、ウルバシーはその中でも著名な個体で、人間の王プルーラバスとの恋物語が綴られている。

 さしずめウルバシーがアイナ・サハリン、プルーラバスはシロー・アマダか。プルーラバスは慢心の故に破滅したが、地球連邦軍人としては破滅したシローにある意味では似合いの役回りでなかろうか。

 

 ウルバシーは量産を前提とした大型MAで、アプサラスⅢやⅣと比べれば一回り、二回り小型化されている。

 全幅は六十メートル、全高は三十メートルほど。機体中心部にはどこかウーンドウォートに似た女性的なシルエットのコアMSが埋め込まれ、頭部には兎の耳に似たセンサーユニットが二つ伸びている。

 兎のマークがシンボルのT3には似合いであろう。

 

 ゲシュペンストMk-Ⅲに使用されている縮退炉を二機搭載し、ミノフスキードライブユニット、ダイレクト・バイオリンク・センサーやビームも実弾も弾き返すビームバリヤーを標準装備している全領域対応機だ。

 主武装はこれまで通りマルチロックシステム対応のメガ粒子砲×1、迎撃用のミサイルランチャーとビームファランクス多数、またコアMS用のビームライフル、ビームシールド、ビームサーベル×2、60mmバルカン×2となっている。

 アプサラスⅣに比べてかなり小型化したが、出力や速度、装甲、その他諸々の性能、生産性、整備性は向上しており、デンドロビウムⅡと並ぶ地球連邦軍の主力MA候補の一機だ。

 

 地球連邦軍にもまだ両手足の指くらいしか納入されていない機体を任されたエイプリルは、事前にシミュレーター訓練とマニュアルの読み込みを入念に重ねたとはいえ、この機体での実戦は今回のティタノマキア作戦が初めてだった。

 その為、頼りになる小隊仲間達が一緒とは言え、それなりの緊張感が彼女の両肩に重くのしかかっている。

 

「これならサイコガンダムも怖くないわね。本当、とんでもない機体ばっかり作るんだから、プルート財閥って。こんなのの相手をしないで済んでよかった。心の底からそう思うわ」

 

 そう口にしたのは嘘偽りのない感想であったろうし、また彼女が無意識に自分の緊張を解そうとした行為でもあったろう。

 共に編隊を組んでいるクインリィとハイゼンスレイⅡ・ラー、ハイゼンスレイもこれまでのMSを大幅に凌駕する重武装・高火力・高機動を実現した怪物的機体だ。

 ティターンズ側にもサイコガンダムシリーズを始めとした機体群が残っているとはいえ、TRシリーズの最終的成果物を有するT3の質的優位は揺るがないと、エイプリルのみならず他の三人も強く同意するだろう。

 

 宇宙の闇を裂いて飛ぶキュクロープスの刺客達は、そしてついに目的のコロニーレーザーを捕捉する。それとほぼ同時にティターンズ側も彼らの接近を感知して、警備の部隊が殺到し始める。

 奇襲部隊の指揮を執るマーフィーは無線封鎖を解除し、高濃度のミノフスキー粒子が散布されている宙域へと突入する。

 

「コロニーレーザーを捕捉した。各員、任務を果たせ。そして必ず生還しろ。地球を巡る戦いはこんな地球人同士の小競り合い程度ではすまないんだ。俺達の本当の戦いはまだ始まってすらいないんだからな!」

 

 地球人類の自由と平和、尊厳を守る連邦軍人としてはまことに正しいマーフィーの言葉だった。地球圏に生きる人類全体の危機に瀕したこの状況で、同類同士で殺し合っている余裕など、本来あるはずもないのだから。

 奇襲部隊の足を止めるべく周囲にばらまかれていた機雷や無人砲台が起動し、さらにその向こうからはMDトーラスの編隊と有人のバーザムやグリフォン、マラサイ部隊が姿を見せ始める。

 

 雨のように降り注いでくるビームとミサイルの嵐に対し、前進を続けながら回避機動を取る奇襲部隊各機から反撃の業火が一斉に放たれ始める。

 メガ粒子砲やビームライフル、ロング・ビーム・ライフルに各種ミサイルが鏡返しに発射され、ウルバシーがアプサラスから継承したマルチロックオンシステムで捕捉した目標に、大型メガ粒子砲の返礼を加える。

 なおアプラサスⅣの三百二十から同時捕捉可能な数が減らされているのは、パイロットと機体への負担を減らしてより継戦能力を高める為だ。

 

 奇襲部隊の進行方向にミサイル、デブリ、機雷、無人砲台の爆発によって生じた火球が数百、数千と生じてその中を敵トーラス部隊が突っ切ってくる。

 その先頭を突き進むトーラスに、エリアルドのハイゼンスレイⅡ・ラーの放ったビームが突き刺さり、そのまま魂と罪なき人形を爆散させる。

 

「画一的な動きの機体ばかり。やはりMDが主力になっている」

 

 エリアルドの分析は素早く、そして正鵠を射ていた。これまで繰り返し述べてきたが、キュクロープスの参謀達が想定した通りにティターンズの戦力の大半はMDである。

 正確無比に過ぎ、柔軟性に欠けるその機動は高水準の技量を持ったパイロット達にとっては、かえって与しやすい相手となっている。そしてエリアルドやマーフィーを筆頭に、奇襲部隊のパイロット達は全員がその水準を超えたハイレベルのパイロット達である。

 アニメ・Zガンダムの作中でカミーユやクワトロを手こずらせた、名も無き凄腕モブパイロット級なのだ。

 

「コロニーレーザーの向きは、キュクロープスの艦隊が狙いか」

 

 破壊目標であるコロニーレーザーの標的を見抜いたのは、カールである。トーラスに続いて飛び出てきたグリフォンの胴体をすれ違いざまにビームサーベルで両断し、肩部のメガ粒子砲で左右から挟み込んできたトーラスをまとめて撃墜する。

 更に囲み込んで来ようとするトーラスをウルバシーの拡散メガ粒子砲とジェリドらのバウンド・ドックが放った、拡散メガ粒子砲がことごとく撃ち抜いて行く。

 

 特にマーフィーが操るクインリィが機体各所に保持したビームキャノンの豪雨の如き連射と、多数連結したミサイルコンテナから発射されたマイクロミサイルは、コロニーレーザー防衛部隊の第一陣を瞬く間に壊滅させる大戦果を挙げる。

 会敵から数分の間に、マーフィーの撃墜スコアは二十近く増えた程だ。それでも最後の頼みの綱であるコロニーレーザーを死守するべく、上下左右多数の方角から新たな敵機群が姿を見せている。

 

「隊長、ガンダムタイプです!」

 

「ガンダムMk-Ⅱ、それにアナハイムの新型か」

 

 新たに姿を見せた敵部隊を捕捉したエリアルドは、それらがMD化されたガンダムMk-Ⅱと別のガンダムタイプの二機種による混成部隊と気付いて、警戒を新たにする。

 既にガンダムMk-Ⅱは現状に於いて陳腐化した性能ではあるが、曲がりなりにもガンダムタイプであるし、残るもう一機の方はアナハイムの最新鋭機と言える。

 ガンダムMk-Ⅱはオーソドックスなビームライフルかハイパーバズーカ装備だが、残るガンダムタイプの武装は特筆に値した。

 

 MDによって動かされるソレ、ネオガンダム一号機をベースとした部隊は、ヴェスバーをはるかに超える威力を持つG-バードが機械ゆえの無慈悲さで発射される。

 ヴェスバーですらビームシールド二枚とビームザンバーでようやく相殺できる威力だが、G-バードはそれ以上の大火力だ。大仰な程に回避しなければ、余波一つで機体が爆散しかねない。

 

 ネオガンダム部隊の大火力攻撃によりフォーメーションを崩したギャプランの一機が、唯一パイロットの操るネオガンダムにビームサーベルで真っ二つにされる。

 黒いネオガンダム一号機のG-バードは、更にSFSごとバーザム二機をメガ粒子の奔流の中に飲み込んで、跡形もなく吹き飛ばす。

 コロニーの隔壁とミラーを纏めて貫き、カイラム級機動戦艦のブリッジをぶち抜く威力だ。MSが直撃を受ければ、破片だけでも残れば御の字だろう。

 ネオガンダムのパイロット、バズ・ガレムソン大佐はネオ・サイコミュ・システムで機体を操作しながら、センサーの範囲内にDC宇宙艦隊の姿がないのを確認する。

 

「トキオの姿はないか。この場で出くわしたなら、引導を渡してやろうと思ったが、まあいい。今はキュクロープスの連中を始末するのが先だ。この私とネオガンダム、そしてMDネオガンダムの部隊があれば、奴らを葬る事など容易い」

 

 そして、バスクに代わりティターンズを私が掌握してやる、とガレムソンは血走った目でジェリド達のバウンド・ドック、更にマーフィーらのTR機を次のターゲットに定めた。

 エイジャックス艦隊を束ねるガレムソンは、現在のティターンズに於いてナンバー2の地位にある。犯罪行為が露見したガレムソンは連邦軍に戻れば極刑は免れず、彼が生き残る為にはなんとしてもティターンズで勝ち抜くほかない。少なくとも彼はそう考えていた。

 

<続>

■アプサラスVことウルバシーが開発されました。

■ネオガンダム一号機が量産されました。ティターンズの切り札のひとつです。




ジェリドとマウアーとカクリコンは命拾いしました。後は、ガディ・キンゼーもキュクロープス側に異動しています。次で出るかな。

追記
ハイゼンスレイ・ラーⅡとハイゼンスレイⅡ・ラーが存在していますが、エリアルドの搭乗機はハイゼンスレイⅡ・ラーの方ですので、誤字報告はお控えください。


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第八十七話 人間とは愚かなものです

 ガンダムMk-Ⅱとネオガンダムとでは、使用しているMDそのものに性能の差異はないが、機体スペックは大きく開いている。

 ネオガンダムはアナハイムがサナリィやヘパ研を筆頭とした他社の技術盗用なども積極的に行い、更にこれまでのMS開発技術のノウハウを投入して開発した、アナハイム系フォーミュラータイプの到達点と言える機体だ。

 それがまさかティターンズなどという落ち目の組織に利用されてしまうとは、アナハイムの関係者は頭を抱えているかもしれない。

 

 ガンダムMk-Ⅱとトーラスが惜しむ命もない苛烈な攻撃でキュクロープス部隊を撹乱し、隙を見せた機体からMDネオガンダムのG-バードによって、跡形もなく消し飛ばされてゆく。

 例えビームシールドやIフィールドをもってしても防げない超火力のG-バードは、確実にキュクロープス部隊の足を止めていた。ならば予想を超える敵戦力を叩くには、こちらも最高戦力をぶつける他はない。

 動いたのはマーフィーだ。

 

「エリアルド、カール、俺達でネオガンダムを叩くぞ。エイプリル、MDの足止めを。各機は敵防衛線を突破し、コロニーレーザーの破壊を最優先にしろ」

 

「了解! とちるなよ、エリアルド」

 

「了解。カールに言われなくても分かってる。今さら、MDなんかに」

 

 マーフィーのクインリィ、エリアルドのハイゼンスレイⅡ・ラー、カールのハイゼンスレイが率先してMDネオガンダムの戦列に切り込み、エイプリルのウルバシーから拡散されたメガ粒子砲がコロニーレーザー防衛部隊へと無慈悲に降り注がれる。

 水の精たるアプサラスの一体、ウルバシーから巨人の残党達へ送られる浄罪の光の雨は、広範囲に拡散しながらも優秀なマルチロックオンシステムの恩恵に与り、十数機のトーラスやマラサイ、ガンダムMk-Ⅱを貫く。

 

「隊長、さっさとコロニーレーザーを片付けないと、先に私が全部平らげちゃいますから!」

 

「ふ、スコアで抜かれたら隊長としての面目が立たんな」

 

 MAとして高い完成度を誇るウルバシーのシステムと火力、エイプリルの腕前なら本当にそうなりかねないと、マーフィーは頼もしさを覚えながらネオガンダム部隊へと襲い掛かる。

 ガレムソンのネオガンダム一号機は黒いカラーリングだが、MDのネオガンダムは判別の為に胴体こそ黒いが、四肢や頭部はティターンズブルーに染められており、ガンダムMk-Ⅱと同色だ。

 

「キュクロープスのガンダム、私を狙うか。当然の話だが、ネオ・サイコミュ・システムを搭載したネオガンダムは、貴様らのガンダムよりも上だと教えてやる。パイロットの腕もな!」

 

 キュクロープス部隊の中でも最大の戦力の三機のTRが矛先を変えたのを察知し、ガレムソンはMDネオガンダム達を率いて、統制されたG-バードによる一斉砲火を見舞った。

 一撃で数隻の艦艇を纏めて貫けるメガ粒子砲の奔流を回避し、三機のTRはそれぞれの機体にこれでもかと盛られた武器の数々で反撃を行う。

 

 クインリィ一機でもハイ・メガ・キャノン三門、肩部にビーム・キャノン二基、強化型ウインチ・キャノン、ウインチ・キャノン二基、クロー・ユニット内蔵のビーム・キャノン、コンポジット・シールド・ブースター内蔵のロング・ビーム・ライフル、シールド内蔵のスプレッド・ビーム砲二門、更にはウェポン・カーゴにミサイル他各種兵装搭載となる。

 かつてヘイデスがこの世界がスパロボ世界であるのに気付き、絶望の果てに求めた大火力兵器の答えの一つと言えるが、原作の宇宙世紀でこれだけの火力を持たせて何と戦うつもりなのかと言いたくなる盛り合わせ具合だ。

 

 G-バード単独の火力の凄まじさは幾度となく語ったが、多種多様な火器を総合した攻撃力ならばクインリィやハイゼンスレイⅡ・ラー、ハイゼンスレイだってそうそう劣るものではない。

 ビームシールドを展開しつつ、パイロットの安全を考慮しなくていい急加速、急減速、急旋回を組み合わせた動きで回避行動を取るMDネオガンダム達へエリアルドとカールの追撃が襲い掛かる。

 

「正確過ぎる動きは読みやすいって、学習していないんだな」

 

 ハイゼンスレイⅡ・ラーの機体各所から放たれるビームの数々は、MDネオガンダムの左半身をカバーするビームシールドに防がれるが、肩部コンテナから発射されたミサイルが赤外線誘導に従ってMDネオガンダムの腰裏から襲い掛かり、推進剤に引火して誘爆を引き起こす。

 MDの機動も正確無比な射撃もどちらもベテラン級のパイロットと同等か、部分的には上回ってさえいる。

 

 しかしながら、柔軟性に欠ける点や正確過ぎるが故の不確実性の無さ=行動を読みやすい、といった欠点は今もって残されている。

 開発元であるロームフェラ―財団では改良が進んでいるが、窮地に陥られているティターンズでは機体そのものの開発と増産に力が入れられ、MDのプログラムの改良にまで手が及んでいない。

 

「動きが昔のまんまだな。俺達が何年、MSに乗っていると思ってやがる。慣れてしまえばMDなんざ敵じゃないんだよ」

 

 気炎を吐くカールのハイゼンスレイがMDネオガンダムの懐に飛び込み、左腕のシールドでG-バードを払いのけるのと同時に胴体の蹴りを叩き込み、体勢を崩すMDネオガンダムの胴体を肩部ビームキャノンが貫いて撃破した。

 誤射を避けるMDのプログラムを逆手に取り、威力が過剰過ぎるG-バードの乱射を防ごうと果敢に距離を詰めて戦うマーフィーらにMDネオガンダムは真価を発揮しきれない。

 優秀なパイロットが乗っていれば有機的な対応によって、マーフィーらを手こずらせたろうが、マーフィーやエリアルドらの腕前がバスクとガレムソンの想定を超えていたのだ。

 

「チィ、所詮は人形か。せっかくのガンダムを!」

 

 ガレムソンのネオガンダム一号機は、マーフィーのクインリィとデブリの数を急速に増やす宇宙で光の軌跡を幾度となく交錯させながら、メガ粒子の砲火を無数に交わしている。

 手数で圧倒的に勝るクインリィと機動性に勝るネオガンダム一号機の戦いは、お互いに一年戦争から戦い抜いた熟練のパイロットの技量がいかんなく発揮されて、それこそエースでもなければ、援護の射撃一つ出来ない激戦の様相を呈している。

 

「大人しく投降しろ、ガレムソン!」

 

「ガレムソン“大佐”だろうが!」

 

 ネオガンダム一号機の放ったG-バードが、クインリィが一秒前まえで居た空間を貫き、射線上に存在した隕石やMSの破片を融解させてゆく。回避したクインリィに牽制の頭部バルカンがばらまかれるが、それもクインリィの残像を貫くに留まる。

 ウインチ・キャノンを始めとしたビームが乱舞し、ガレムソンはビームシールドを巧みに使って命中弾のみを受けて、G-バードによる反撃を度々試みる。

 

 非人道的な方法によって作られ、OSそのものがサイコミュを扱えるクインリィとネオ・サイコミュ・システムにより思考だけで操縦できるネオガンダム。

 本来ならば四十年近く時代の離れた機体だが、スパロボ時空であるこの世界においては、機体各所に使われている技術にそこまで隔たりは存在しない。

 

(ネオガンダム、機体のデータは回ってきていたが、ハイメガ以上の火力のG-バード。取り回しが利かないとはいえ、連射の出来るあの武器は厄介だな。クインリィでも直撃すれば一撃だ。

 それにあの動き、機体の反応速度が並みの機体とは段違いだ。新型のサイコミュを搭載しているのは、伊達ではないか)

 

(TRといったか、ガンダムMk-Ⅱの発展型止まりかと思っていたが、バスクめ。ろくなデータを寄越さなかったな。目障りなのはお互いさまというわけか。目の前のこいつもそうだが、他の機体も厄介な性能をしている!)

 

 マーフィーとガレムソンの双方が互いの機体の脅威性を認識する中、この二人の戦いに割って入れるだけの力量を持ったパイロット達がマーフィーの援護に駆け付ける。

 赤いカブトガニ? のような三機のMA──バウンド・ドックだ。ジェリド、マウアー、カクリコン達だ。彼らと彼らの機体ならばマーフィーとガレムソンの戦いにも割って入れる。

 ジェットストリームアタックさながらに縦列からの連携攻撃を重ねるバウンド・ドックに、ガレムソンの神経は大いにささくれ立つ。

 

「バウンド・ドック! ティターンズからの寝返り組か!」

 

「マーフィー大尉、このガンダムは自分達が!」

 

 バウンド・ドック小隊を率いるジェリドがマーフィーに意見申告をし、カクリコンもそれに続く。

 

「大尉のクインリィなら、コロニーレーザーを叩ける!」

 

 ティターンズ時代からの付き合いとあって、息の取れた連携を見せるジェリドらの動きを見て、マーフィーは現状と照らし合わせてすぐに判断した。

 

「分かった。この場は任せるぞ。気を付けろ、手強い機体とパイロットだ!」

 

 クインリィが踵を返し、コロニーレーザーとそれを守るMD部隊に向かう。当然、ガレムソンはそれを阻もうとするが、一糸乱れぬ連携で襲い掛かってくるバウンド・ドックがネオガンダムにビームの雨を降らせてくる為、思うように追撃を仕掛けられない。

 

「ガレムソン大佐、あんたの相手は俺達だ!」

 

「メサ中尉ぃ! そうなると残りはファラオ少尉とカクーラー少尉か。揃いも揃ってキュクロープスに寝返って!」

 

「あなたのような者達ばかりが集まるティターンズに未練はない!」

 

 マウアーが叫ぶと同時にバウンド・ドックをMS形態へと変更させて、クローアームがネオガンダムの頭部へと迫る。

 

「貴様らがティターンズでやっていた事も、所属していた経歴も消えるわけではなかろうが!」

 

 ネオガンダムのビームシールドがバウンド・ドックのクローアームを弾き返す。短時間の接触であったのと、格闘戦用に調整されたクローアームは斬り飛ばされる事態を免れた。

 マウアーのバウンド・ドックは左手に握ったビームサーベルをひらめかせるが、それをネオガンダムの右足が蹴り飛ばす。

 ネオ・サイコミュ・システムは素晴らしい感度でガレムソンの操縦を、機体に反映させている。

 

「だから貴様らのような連中を討って、手柄にしようってんじゃないかよ!」

 

 カクリコンのバウンド・ドックから放たれたメガ拡散粒子砲(拡散メガ粒子砲?)を、ネオガンダムは引き戻した左腕のビームシールドで受け、ガレムソンはマウアー機から距離を取りつつG-バードを見舞う。

 当たれば一撃であの世行きの砲火に、カクリコンは慌てて回避行動を取り、直撃はおろか余波も避ける大きな動きを取った。

 

「バスクの尻を追いかけているような奴に、その機体は勿体ないぜ! ガレムソン大佐殿!」

 

 嫌味をたっぷりと込めたジェリドの台詞に、ガレムソンはこめかみに太い血管を浮かび上がらせて怒気を向ける。

 

「奴にこの組織をまとめ上げる力はないから、私がその座を譲り受けてやろうという話だ、若造!」

 

「そうかい。都合のいい夢を見ながら、この場で死んでおきな!」

 

 MS形態のジェリド機はビームライフルとメガ拡散粒子砲を巧みに使い分け、ネオガンダムの回避機動を先読みし、圧縮したメガ粒子をばらまく。

 ジェリドの怒涛の猛攻撃も、霧散した粒子がわずかに装甲を焦がす事はあっても、ネオガンダムに直撃はない。

 平静ではない精神状況に於いても、ガレムソンの操縦に支障は出ていない。彼が優れたパイロットであるのは、良くも悪くも確かな事実であった。

 

「バウンド・ドックか。だがこちらにもその機体はある。それ以上の機体もだ!」

 

 ジェリド達に続いてこの戦場に乱入してきたのは、ガレムソンの側の機体だった。バウンド・ドックの底部を上下にくっつけたような機体──アモン・ドックだ。

 粗製乱造の強化人間達が乗せられたアモン・ドックやバウンド・ドック、サイコガンダムタイプが前線に防衛戦に本格的に参入し、高出力のメガ粒子砲が無機質の殺意と共に降り注いでくる。

 

「今さら有象無象の連中に負けられるかよ! マウアー、カクリコン、仕掛けるぞ!」

 

 ジェリド達とてアムロやカミーユ、クワトロにジュドーといったトップニュータイプ、あるいはゼロやレイラ、フォウといった上位の強化人間らと戦ってきたのは伊達ではない。

 生産コストを重視して、使い捨て前提で量産された哀れなるローコスト強化人間の操るサイコミュ機に、早々後れを取る彼らではない。

 先に行かせたマーフィー、そして今も防衛線を突破しようとしている味方に続くべく、ジェリド達は【気迫】を込めて、バスクの最後の悪足掻きを終わらせる為に、自分達の不始末を片付ける為に、新たな敵へと向かっていった。

 

 

 コロニーレーザー近辺の宙域で戦闘が生じるころ、バスク率いるティターンズ本隊とペデルセン率いるキュクロープス本隊も出撃させた機動兵器部隊が衝突し、艦隊同士の砲撃も飛び交い始めていた。

 バスクとしては初手にコロニーレーザーを用い、アスワン改を含む艦隊中枢を撃滅する予定であったが、警戒網を潜り抜けた工作員による破壊工作とマーフィーらの奇襲によって、コロニーレーザーのエネルギー充填に問題が発生し、再度の充填を余儀なくされていた。

 

 それでもこの場に至るまでバスクについてきた面子だ。強制的な者や理不尽な理由でそうせざるを得ない者もいるが、覚悟を固めている点は共通している。

 キュクロープス艦隊がコロニーレーザーを中心として渦を巻くように展開する中、バスク艦隊は包囲されても気に留めず、標的を正面のアスワン改率いる中核を敵と定めている。

 

 ティターンズよりも数で勝るとはいえ、キュクロープス艦隊の包囲網それ自体の厚みは薄い。自然と一方向からの砲火の密度は薄く、主変の宙域に敷設していた宇宙機雷や無人砲台である程度の時間稼ぎが出来る。

 その間にキュクロープス艦隊中枢に痛打を浴びせられれば、指揮統制に綻びを作れる。それがバスクの狙いだった。

 

「アウナス、ビューネイ、クジンシー被弾、後退を求めています」

 

 ドゴス・ギアのブリッジで、オペレーターからの報告にバスクは顔色一つ変えずに答える。ほとんど同一の艦種で構成された双方の艦隊は、今は発艦した機動兵器同士による制空権の取り合いがメインだ。

 ミノフスキー粒子が戦闘濃度で散布されている為、艦艇の砲撃の命中率が著しく低い状況である。一年戦争以来、定番の状況というわけだ。

 

「許可する。フォルネウスとバンガードで左翼の穴を埋めろ。ドゴス・ギアはこのまま正面敵艦隊に火力を集中する。コロニーレーザーの状況はどうか?」

 

「現在、防衛部隊とキュクロープスの奇襲部隊が交戦中です。サイコミュ部隊も投入していますが……あっ!? 敵MSに防衛線を突破されました。コロニーレーザー内部の発振器に被害が」

 

 この時、マーフィーのクインリィとエリアルドのハイゼンスレイⅡ・ラーがコロニーレーザーに取りつき、巨大な砲身の内外から攻撃を加えてダメージを与える事に成功したのだった。

 バスクは心中でガレムソンを山ほど罵ってから、目の前の現実に対処するための行動を決めた。

 

「コロニーレーザーの充填率は? 発射は可能か?」

 

「はっ! 現在、充填率は五十パーセント、発射は可能です!」

 

「よし、ならば構わん。目標は敵艦隊中枢、アスワン改! まずは目障りなキュクロープス艦隊を片付ける」

 

 バスクの命令に従い、オペレーター達はすぐさまコロニーレーザーの発射シークエンスを進め始める。マーフィー達はまだ破壊活動を続けているが、コロニーレーザーそのものを完全に破壊し尽くすまでには至っていない。

 マクロス級やエクセリオン級の主砲にも劣る戦略兵器だが、マクロスもエクセリオンも存在しないこの世界では立派な脅威だ。バスクだけでなくティターンズに所属してしまっている者達全員にとって、最後の希望の綱なのだ。

 

 しかし、彼らは気付けなかった。彼らの希望の綱を断とうとする光が、今まさに放たれようとしていることに。

 宇宙に輝くXのリフレクターにマイクロウェーブが照射された事にも。

 コロニーレーザー破壊の為にDCが一枚噛むのを、事前に取り決められていた事も。

 

「! こ、高エネルギー反応を検知! これはDC艦隊より極めて強力なビームが!!」

 

「なんだと!? 狙いはこちらか、それとも!?」

 

「コロニーレーザーです!!」

 

 自分達が今すぐビームに焼かれる心配はないが、切り札を潰される怒りと恐怖に、バスクは意味のある言葉を発する事も出来ず、アームレストを拳で叩くしかできなかった。

 キュクロープス艦隊とは別方向からグリプスに接近していたDC宇宙艦隊。距離を置いて戦いを見守っていた彼らだが、事前の打ち合わせの通りにコロニーレーザーの状況が一定の状況に達した為、ガンダムXによる狙撃が敢行されようとしていた。

 

 用いられるのは当然、サテライトキャノンだ。この世界のマイクロウェーブ照射システムには、原作のD.O.M.E.のような存在が存在していない上、テクノロジーで上回る敵勢力のジャミングにより、戦闘中のマイクロウェーブ受信は困難を極める。

 しかし予め受信地点を決めておけば、その問題は解決できる。今回のような固定された拠点に対して攻撃を仕掛ける場合であれば、十分に有用だ。

 加えて今回はサテライトキャノンによる狙撃の精度を高める為に、パイロットをアルベルトからアムロへ変更していた。

 

「マイクロウェーブ、来る!」

 

 ガンダムXのコックピットの中で、アムロは頭に叩き込んだマニュアル通りにリフレクターでマイクロウェーブを受信し、機体がそれを信じがたいほど強大なエネルギーに変換する。

 チャージの完了がディスプレイに表示された瞬間、アムロはキュクロープスから提供されているコロニーレーザーの位置情報と画像、さらに自身の感覚を重ね合わせて照準を定め、トリガーを引いた。

 

「当てる!」

 

 布陣しているDC宇宙艦隊からスペースコロニーも破壊するサテライトキャノンが発射され、射線上に浮いていたデブリや残っていたティターンズ機を纏めて破壊しながら、見る間にコロニーレーザー後部に横から命中して貫通する。

 既に退避していたマーフィーやエリアルドは、内部から次々と誘爆を引き起こして行くコロニーレーザーを目撃した。

 

 最後の希望であるコロニーレーザーの破壊は、誰の目にも明らかで情報の隠ぺいなど出来るわけもなく、ティターンズの士気を地の底に落とすには十分だった。

 バスクがどれだけ怒号を発しても、ティターンズのメンバーに広がる諦念は払しょくできず、ガレムソンを始めとした一部は戦場からの離脱を考えている。キュクロープス艦隊への投降を考えている者も、少なくない。

 

 キュクロープスとティターンズが本格的にぶつかる前にコロニーレーザーを破壊できたことで、双方の戦力の消耗は最悪の想定よりはマシなものだった。

 この段階に来るとDCは漁夫の利を狙う異星人勢力の襲撃に本格的に備え、迎え撃つ準備を整え終えて、ティターンズの戦いからは意識を外し始める。

 

 キュクロープスもまだまだ余力を残しているし、ティターンズが最後に毒ガス入りのミサイルを無差別にコロニーに発射するとか、核ミサイルを発射するとか、グリプスの住人を道連れにしようだとかしなければ、問題は生じないだろう。

 だからDCの面々は銀河連を始めとした異星人勢力の襲来を危惧したのだが……襲来はあった。ただし、異星人ではなく同じ地球人の勢力からだったが。

 

 地球連邦艦隊、DC宇宙艦隊とも異なる方向からグリプスを目指して襲来したのは、SRL──ホワイトファングとクロスボーン・バンガードの連合勢力だった。

 ザムス・ギリ、ザムス・ジェス、ザムス・ナーダといったクロスボーン・バンガード系の艦艇とMD用の輸送艦からなる艦隊だ。

 

 機動兵器の大部分は、ホワイトファングに奪取されたMD製造プラント・ウルカヌスで大量生産されたビルゴと改良機ビルゴⅡで、デナン・ゾンやデナン・ゲーの数は少ない。

 この艦隊を指揮しているのはホワイトファングに所属するビクター・ゲインツ。

 神経質そうな細面の男性で、ホワイトファングの幹部であり、今回、スペースノイドの敵であったティターンズを壊滅させる為に、この戦いへの介入を声高に宣言した人物である。なお出典はガンダムWの外伝漫画だ。

 

 ザムス・ギリのブリッジで、ビクターは長い金髪をふわふわと揺らしながら艦隊に命令を発した。あわよくばコロニーレーザーの奪取を目論んでいたが、破壊された以上、これは諦める他ない。

 コロニーレーザーを破壊した超出力ビームがこちらを狙う可能性もあるが、現在、SRLと地球連邦は本格的な戦闘を互いに避けている。こちらに砲を向けてくる可能性は低い、とビクターは睨んでいた。

 ビクターは席に設けられている通信機を取り、艦隊各員の士気を鼓舞するべく声を張り上げる。

 

「艦隊各員に告ぐ。かつて地球連邦の傲慢によって結成されたティターンズは、いまや風前の灯火となっている。だがこの灯を消すのはアースノイドではなく、宇宙に生きる我らの手であるべきだ。

 独立の意志を掲げる事すら許されず、過剰な鎮圧行動や情報統制、弾圧によってスペースノイドの尊厳を踏みにじった悪しきティターンズに正義と自由の鉄槌を下すのだ! 宇宙の自由の意志と独立の炎の輝きを、諸君らが示すのだ!」

 

 通信機を戻した後、ビクターは側に控えているブリッジ要員に次の指示を出す。

 

「バグの用意を。ティターンズなどに与するアースノイドは徹底的に排除しなければ、宇宙の平穏は得られないのだ」

 

 人間だけを殺す機械の用意を求められた部下は、ビクターに無言でうなずき返してすぐさまブリッジから姿を消した。それを見送ってから、ビクターはサングラスの奥の瞳に執念の炎を燃やしながら、こう呟いた。

 

「カーンズめ。ロナ家などにすり寄って! ホワイトファングの旗印は、スペースノイド独立の指導者は私こそが相応しいと、なぜわからん!」

 

 彼はその妄執の為にティターンズの隊員達をバグで殺し尽くし、成果を上げようというのだ。

 地球連邦と敵対する危険性も、バグによる非人道的行為が周囲からどう捉えられるかも、明確に理解しないまま凶行に及んだのだ。

 ホワイトファングのカーンズもクロスボーン・バンガードのマイッツァーも、そしてプルート財閥のヘイデスも、予想できないどうしようもない愚かさであったろう。

 

<続>




ちなみにリーブラとバルジも要請があれば、コロニーレーザーを破壊できるよう準備を進めています。優れた戦術家ではあっても戦略家ではなく、政略家でもないバスクの限界ですね。


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第八十八話 戦いの場面は皆さんの心の中に

ちなみに地球艦隊をエイノーが率いており、この土壇場でバスク側に寝返るという展開も考えましたが、いくらあのエイノーでもそれはしないだろう、と没にしました。
ジャミトフが考えを改める前とか、異星人の侵略が本格化する前ならあり得たかも?


 コロニーレーザーの破壊によって著しく戦意を失ったティターンズは、バスクの直掩艦隊はまだしもそれ以外の部隊では次々と投降を申し出る者達が続出した。

 アスワン改のペデルセンは最大の懸念であったコロニーレーザーの破壊を確認し、更にティターンズに走る動揺を正確に見抜き、渦を巻いてグリプスを包囲する友軍に一気に攻勢に出るよう指示を出した。

 

「キュクロープス艦隊各員へ、メイルシュトローム作戦は第三段階に入った。これよりティターンズ艦隊中枢の撃滅、グリプスの占拠を目指す。

 なおグリプス後方よりSRLの艦隊が出現しているが、こちらと交戦の意志はないと通達が届いている。可能な限り交戦は避けるように。ただし、警戒は怠るな」

 

 ビクター・ゲインツ率いるSRLに対して、ペデルセンは一片の信頼も抱かず、信用もしていない。

 バスクとは違い、一応は理性を働かせているマイッツァーとカーンズが地球連邦と交戦を避けている為、新たな敵を自ら作る真似をしないよう指示を出したに過ぎない。現場の暴走が最も可能性が高い、とペデルセンは読んでいたし、それは正しかった。

 

(SRLと最も近いのはマーフィー達、それにDCか。SRLでもまともに頭の働く者ならば余計な事はしないだろうが、ティターンズを恨むスペースノイドは少なくない。

 ましてや地球連邦からも切り捨てられた今のティターンズとなれば、凶行に及ぶ可能性は低くないか。もしSRLが過激な行動に出るようならば、それを止めなければならないだろう。

 こんなところで、これ以上、地球人類同士で血を流すわけにはいかんのだ。SRLのビクター、血迷った真似をしてくれるなよ)

 

 しかし、ペデルセンの願いが既に裏切られていたなど、神ならぬ彼には分からぬ事であった。

 キュクロープス艦隊が渦の範囲を狭めてティターンズに止めの一手を加えるべく動く中で、コロニーレーザー近域で戦闘中のジェリドらにもビクターの乱入は大きな影響を与えていた。

 

「エイジャックス、聞こえるか!? 火事場泥棒のスペースノイド共は無視して、この宙域を離脱する! コロニーレーザーが破壊された以上は、ティターンズは終わりだ。バスクなどと心中する義理はない!」

 

 母艦であるエイジャックスに怒声を飛ばすガレムソンに、ジェリドの操るバウンド・ドックがビームライフルを立て続けに撃ちかける。

 

「往生際が悪いぜ、バズ・ガレムソン。ここでティターンズと運命を共にしてゆく潔さを持てよ!」

 

「他人事だからと軽い言葉を吐く!」

 

 ガレムソンは怒りと共に反論し、近づいてくる三機のバウンド・ドックにG-バードを横薙ぎに放ち、牽制としてからエイジャックスを目指して踵を変える。

 数を減らしたMDネオガンダムとサイコガンダム部隊に殿を任せ、離脱を最優先とする動きに迷いはない。

 バスクにコロニーレーザーの防衛を任されていた部隊も動揺は顕著で、指揮を取っている士官クラスもこのまま投降するべきか、戦うべきか判断がつかずにダラダラと惰性のまま戦闘が続いている。

 はっきりとした命令もなく指示を求めて右往左往するような状況では、マーフィーやエリアルド、ジェリドらを止める事は叶わず、せっかくのサイコガンダムタイプやアモン・ドックといった貴重な機体がジャンクに変わってゆくばかり。

 

「もうコロニーレーザーは破壊された! お前達がこれ以上戦う理由はないだろう! 投降するんだ。命と捕虜としての待遇は約束する。連邦政府もお前達を決して悪いようにはしないと約束している」

 

 マーフィーはクインリィのロング・ビーム・ライフルをコロニーレーザー防衛艦隊のロンバルディア級のブリッジに突きつけて、脅迫めいた降伏勧告をなんども繰り返していた。

 彼ばかりでなくエリアルドやカール、エイプリルを始めとした元ティターンズ組は、かつての同僚達の生命を可能な限り救おうと、何度も投降を呼びかけている。

 

 実際、ことここに至ってもバスク派閥に残った者達に対して、可能な限りの温情措置が取られるようにジャミトフが連邦政府に働きかけているのは事実だ。

 ジャミトフの地球を再生させる大望が、マシンセルを用いた地球の再生計画やワープ技術を利用した外宇宙への開拓・移民が計画される事で半ば叶い、ジャミトフ自身の野心が満たされたのもあって、今の彼は彼が巻き込んだ人々の支援に奔走していた。

 

 ジェリドにカクリコン、マウアーも加わった投降の呼びかけに、徐々に応じる者が出てきたところで、ソレは襲い掛かってきた。

 ビクター配下のビルゴ、ビルゴⅡらMDとデナン・ゲー、デナン・ゾンの有人機、そしてチェーンソーのような刃を縁から伸ばした紫色の円盤、大小のソレらがバグと呼ばれる対人殺戮兵器だ。

 

 直径三メートルの親バグの中には、六十センチほどの子バグが搭載されており、親バグの侵入できない狭い場所に入り込んで、自爆攻撃を敢行して人間を殺す。

 人間の排出する二酸化炭素を探知して襲い掛かり、核兵器のように放射能を発さず、毒ガスや細菌兵器のように毒を撒くでもなく、建物や自然環境に悪影響を及ぼさずに人間だけを綺麗に殺す代物だ。

 

 クロスボーン・バンガードが開発したこれは、クリーンな方法で人類の数を十分の一に減らす為に作られている。

 現在の地球圏の情勢を鑑みて開発と生産のみに留められ、実戦投入を見送られていたこれをビクター一派は採用し、スペースノイドの圧政者であるティターンズを相手に恨みを晴らすかのように投入したのである。

 

 キュクロープス艦隊に投降しようとしていたティターンズのMSや艦隊に、ビクターの部下達が喜々として襲い掛かり、ビルゴのプラネイトディフェンサーに守られながら、ビームの雨を降らして、バーザムやハイザックが撃墜されてゆく。

 SRLの凶行にキュクロープスの面々が色めき立つが、SRLがあくまでティターンズにのみ矛先を向けている為、先程のペデルセンからの命令もあって攻撃行動に移れない。

 

 もどかしさと葛藤にエリアルドやカクリコン達は胸を掻きむしりたい衝動に駆られたが、それもすぐに崩れ去った。

 一機のビルゴを相手に懐に飛び込み、ビームサーベルを突き立てたギャプランに向けて、四方八方から子バグが群がって、次々と自爆するそれらによってギャプランが爆散する光景を目の当たりにしたのだ。

 

 ギャプランばかりでなく他の機体にも同じように親バグが襲い掛かり、チェーンソーユニットの刃がコックピットだけを執拗に狙って、血祭りにあげてゆく光景が連続する。

 武装を解除しようとしていたティターンズの艦艇にもバグは襲い掛かり、親バグが執拗にブリッジを狙って襲い掛かり、子バグは破損個所やカタパルトから艦内に侵入して、内部で次々と自爆して行く。

 

「こいつら、人間を殺す為の機械か!?」

 

 敵機を撃墜するのではなく人間を殺す事に主眼を置いているのだと、T3で数々の兵器に触れてきたエリアルドは直感的に理解した。

 キュクロープスに投降しようとしていたティターンズも、SRLが容赦なく自分達を殺す気だと分かり、大慌てで反撃に転じるが、出鼻を挫かれた隙とキュクロープスに削られた戦力では効果的な反撃とはならない。

 

 群がるバグによる被害が増えて行く中、決してこちらを攻撃してこないバグとSRLのMS部隊に手出しが出来ずに、キュクロープスの面々は歯噛みする。

 自分達の行動次第では地球連邦とSRLの間で不毛な戦端が開かれてしまう──その考えが、彼らの枷となって行動を止めていた。

 

 むろんペデルセンが何もしていなかったわけではない。ビクターに対して既に投降者が続出していたティターンズへの攻撃を即座に停止するように何度も通達を送っているが、ビクターの側がそれを無視していた。

 ビクター側の強固な拒絶の意志を感じ取り、ペデルセンが人道的見地を盾にSRLと事を構える覚悟を固めるよりも早く、DC宇宙艦隊が動く。

 

 パンドラボックスに収められた古の多元世界のデータの中には、バグについても記されており、これに加えてヘイデスの知識、更にクロスボーン・バンガードに対する一年戦争時からの情報工作も合わさって、その存在を突き止めていた。

 バグをはじめとした極めて危険な兵器としてデータバンクに登録されており、今回のバグの使用で、DC各艦隊にバグの情報が表示されて、その用途に艦隊の誰もが血の気を引き、そして嫌悪した。

 

 半民半官という特異な立場にあり、かつ独立行動を許された独立遊撃部隊であるDCは、こういう時にこそ良心に従って行動しやすいという、見方によっては極めて危険な存在だった。

 ハガネのレビルを筆頭にブライトやヒースロウ、オットーらもSRLに戦闘行動の停止を強く呼び止めるが、それと同時に部隊を展開して戦場に介入する準備を進める。

 

『レビル艦長』

 

 レビルのアームレストに付属している小型モニターに、エゥーゴの指導者ブレックスの顔が浮かびあがる。

 DC艦隊に同行しているエゥーゴ艦隊にブレックスがおり、今はヘンケンがブライトから預かったアーガマ改に同乗している。このほかにもアイリッシュ級やサラミス改級といった他の艦艇の姿もあった。

 

「ブレックス准将。SRLがまったく余計な真似をしてくれたな」

 

『ええ。ティターンズに対する敵意は理解の及ぶところもありますが、ビクターという男は越えてはならない一線を越えたと言わざるを得ません』

 

「我々もそう簡単に手を出すわけには行かんが、それで納得する者達は我々の艦隊には少ない。ビクター・ゲインツが色よい返事を寄越さない限りは、そろそろ痺れを切らす頃合いだろう」

 

『こちらも情報提供のあったバグという兵器の仕様はこちらでも把握していますが、ティターンズ相手とはいえ、アレを放置しては人倫に悖る。そういうレベルです。放ってはおけません』

 

「だな。SRLの有人機に関しては、極力コックピットを外すよう周知はしよう」

 

 ですな、とブレックスが答えた時には、既にDCの若きパイロット達は動いていた。

 ラー・カイラムの甲板に出ていたガンダムXはサテライトキャノン発射後、砲身とリフレクターを収納して状況を静観していたが、一時的にパイロットを務めるアムロがビクターの悪意とSRLの襲来を感知して、そのまま戦闘に参加するのを決定した。

 

「ブライト、俺はこのままガンダムXで出る。スレッガー大尉とセイラさんは?」

 

『二人は既にデンドロビウムⅡでカミーユ達と先行中だ。そのガンダムで行くのなら、Gファルコンを使え』

 

「アルベルトさん、聞いていた通りです。準備は?」

 

 アムロにガンダムXのコックピットシートを預けたアルベルトは、一年戦争時のGアーマーとパンドラボックス内部のデータを参考にして開発された支援機Gファルコンを預けられていた。

 マリーダとはというと専用のキュベレイMk-Ⅱに乗り込んで、いつもの通りアルベルトのフォローを任されている。

 

『用意は出来ているが、既に可変機で組んだ部隊がコロニーレーザーの近くで待機しているのだろう? 今から言っても全て片付いた後だと思うが……』

 

「出てくるのがSRLだけならそうかもしれませんが、そもそも俺達はそれ以外の可能性も踏まえて備えていたでしょう?」

 

『異星人か……。来るかね?』

 

「来ると考えておいた方がいいでしょう。俺達の戦いはこれまでそういうものでしたでしょう?」

 

 アムロの台詞にアルベルトは嫌そうな顔をして溜息を零す。インダストリアル7から同行して以来、DCはどうにも貧乏くじを引きやすいというか、この地球圏でもとりわけ過酷な戦いに巻き込まれている。

 SRLの介入だけではすむまいと、アルベルトだって分かってはいたのだから。

 GファルコンとドッキングしたガンダムXが流星となって飛翔し、SFSに乗ったキュベレイMk-Ⅱが続いて一気に加速していった。

 

 アルベルトの発言の通り、サテライトキャノン以外でコロニーレーザーを破壊する手段として、足の速い部隊がDC艦隊本隊よりも先行している。

 Ζタイプの可変機やウイングゼロ、ゼファーリ・ガズィカスタム、更にグレンダイザー、ダブルスペイザー、ドリルスペイザーという構成だ。

 

 ビクターがレビルやブレックス達からの通信も無視して、バグとMDによる攻撃の手は一向に緩まない。ことここに至ればDCに所属している若人達、特に正規の軍人ではない者達が黙って見ていられるものではなかった。

 ザムス・ギリや輸送艦から放出される新たなバグの一団へと向けて、ウイングゼロのツインバスターライフルが発射され、ゼロシステムによって正確に予期された射撃は最大効率でバグを消滅させる。

 

 ZやZZ、Z++、Ex-Sガンダムといった可変機部隊もティターンズとSRL部隊の間に割って入り、戦い慣れたMD相手に同じ人類を相手に行われる虐殺行為への嫌悪と怒りを込めてトリガーを引き続ける。

 見慣れた機体と見慣れない機体の姿を目撃して、かつて共闘した事のあるT3は頼もしさを覚え、敵対した回数の多かったジェリド達は苦々しさと敵対したからこそ知っている頼もしさに複雑な表情だ。

 

 ビクターはこの時、自分達から地球連邦とDCを相手に戦端を開くつもりはなく、バグとMDの攻撃目標から地球連邦とDCを除外していた。

 いずれビクターが人類を指導する立場に就いた時、反抗勢力に対しバグを用いてクリーンに始末する為のテストであると同時に、世論に対して再び地球連邦がスペースノイドを迫害しようとしている、と証拠を突きつける為、キュクロープスとDCからの抗議を無視して挑発的な態度を取っている。

 

 ザムス・ギリのブリッジで、ビクターはバグが予定通りにティターンズの諸兵を殺戮している映像とそれを邪魔するキュクロープスの姿に、思い描いた通りの絵図が描けているのを確信してほくそ笑んでいた。

 後は正義の味方としてアースノイド、スペースノイドを問わず人気を集めている正義の味方気取りの連中の化けの皮を剥ぐだけだ。なに、剥ぐ皮がないのなら、こちらででっちあげた皮を被せればいいのだ。

 

「まだだ。まだこちらからは手を出すな。ふ、コロニーが送り込んだガンダムまでもが奴らの手の内とは、嘆かわしい」

 

 ビクターは既に暴れ回っているウイングゼロと急速に接近しつつあるデスサイズヘル、アルトロン、ヘビーアームズ改、サンドロック改の姿を見て侮蔑の笑みを浮かべる。

 あくまでこの戦場で勝つ必要はなく、自分達が不当に襲われている映像をでっちあげる素材を集められれば、それでいいのだ。

 彼がそうして愉悦に浮かれている間にも、介入を決めたDCの先行部隊は次々と成果を上げていった。

 

 旧ホワイトベース隊のスレッガーとセイラはZプラスD型からデンドロビウムⅡに乗り換えて、先行部隊の一員となりMDとバグを相手取っていた。

 デンドロビウムⅡとは、アームドベース・オーキスにステイメンの代わりにコアファイターを埋め込んだような外見のMAだ。原典ではIフィールド、大型・集束ミサイルにメガビーム・キャノン二門を標準装備している。

 想定される敵がより強大なこの世界では、Iフィールドに代わってビームバリヤーが装備され、デンドロビウムと同じクローアームと大型ビームサーベル兼用ビームキャノン二基が追加されている。

 

「ティターンズは下がりなさいよ、こっから先は俺達が引き受けるんでね」

 

「地球人類同士でこのような真似をして、恥知らずな」

 

 スレッガーとセイラのデンドロビウムⅡのウェポンコンテナからマイクロミサイルが発射されるのに合わせ、コウの乗るオリジナルデンドロビウムからもマイクロミサイルが発射される。

 一発一発は小型でも、対象も同じく小型のバグであり、デンドロビウム三機分のマイクロミサイルの嵐は、一気に大きな戦果をあげるのに十分だった。

 

 一時的にバグが一掃されて出来た戦場の空白にDCの可変機部隊が滑り込み、ティターンズを背後に庇う位置を取ってSRLの部隊を阻む壁となる。

 マーフィー達のクインリィやハイゼンスレイⅡ・ラー、ハイゼンスレイ、ウルバシーといったT3小隊も前面に出て、投降したティターンズを庇って応戦し始めている。

 

「Zガンダム……カミーユか」

 

 ビルゴを相手取っていたジェリドは因縁の深い可変機の姿を見つけ、攻撃を仕掛けるわけにもゆかず、助けられている状況に苦渋のようなものを覚えていた。

 ジェリドの今の立ち位置は時代の波を見極めて、自分の意志で選んだ結果だが、だからといってこれまでの因縁の全てを飲み込めるほどにジェリドは大人ではない。同時にZに無思慮に攻撃を仕掛けるほど、子供でもなかった。

 

「マウアー、カクリコン、DCの参入でSRLの圧力が下がった。投降した連中をカバーしながら、コロニーレーザーの位置まで動くぞ」

 

「マーフィー大尉達は前に出ているけれど、それで構わないの、ジェリド?」

 

 マウアーの疑問にジェリドは言い淀むことなく答える。

 

「T3小隊とDCの戦線を突破するのは、SRLには出来っこないだろう。だったら投降した連中が妙な考えを起こさないように、俺達で監視しながら守ってやる必要がある」

 

「ジェリドがそうして落ち着いていると、俺達も安心できるぜ。後はバスクの方が落ち着けば、ティターンズとの戦いも本当に終わりなんだがな」

 

 カクリコンの呆れ半分の言葉の通り、バスクのドゴス・ギアを中心とした中核艦隊はキュクロープス艦隊に押されに押されながらも、まだ降伏してはいなかった。

 渦巻状の包囲を狭めてくるキュクロープス艦隊の砲火を受けて、ドゴス・ギアは直掩のMS部隊の士気は下がり、艦隊各員の間に敗北を受け入れる雰囲気が滲んでいる有様だった。

 

「こいつはいよいよティターンズも終わりだな」

 

 カクリコンの呟きは他人事のようにも、感慨が含まれているようにも聞こえた。

 ティターンズがキュクロープスに庇わられる形で後方に下がるのを認めて、クワトロはSRL艦隊の対処へ意識を集中する。

 フル・サイコフレームのサザビーは、クワトロの意志を機体とファンネルにあますことなく伝えて、提案者の悪意が具現化したバグを恐ろしいペースで破壊している。

 

「このような行いをしたところで、スペースノイドの意志の代弁など叶うわけもない。弾圧に対する報復を正当化できないことも、それすら分からないか! ビクター・ゲインツ」

 

 無機質の機械に宿る生々しい悪意の発生源──ザムス・ギリのビクターを、クワトロの双眸は確かに捉えていた。

 クワトロばかりでなくカミーユやジュドー、バナージやリディ、タクナといった若きニュータイプ達は意味があるとは思えないこの行いを実行する悪意の根源に気付いている。

 

 そしてDCのメンバーから山のような嫌悪を向けられているとは知らないビクターは、レビル、ブレックス、ペデルセン、さらには連邦艦隊の指揮を預かっているワッケインからの抗議を全て柳に風と受け流していた。

 ただしMDとバグの損耗が予想の数倍をあっという間に越えた報告に関しては、笑みを凍らせてしばらく言葉が出てこなかったが、その彼を再起動させたのは事態を連邦政府から伝えられたホワイトファングのカーンズだった。

 

 ビクターにとってはコロニー住人の解放者として認めて欲しかった相手であり、色々と複雑なものを抱える対象だ。

 原作ならばゼクス・マーキスを指導者に担ぎ出した彼も、この世界ではマイッツァー・ロナと手を組むなど、異なる道を歩んでいるが……

 

『ビクター、この度の独断行動はどういうことだ? 使用を固く禁じられていたバグを使い、ティターンズに攻撃を加えるなどと、私にもマイッツァー殿にも内密に動くなど、我々ホワイトファングの立場がどれだけ悪くなると思っている!』

 

「なにを言うのだ、カーンズ! ティターンズなどというアースノイドの傲慢に鉄槌を下すべきは宇宙の民の代弁者たる我らであるべきだ! バグはその為の道具だ。MDも我らの手を汚さずに、より効率的に事を進める為の道具!

 それに見ろ! ティターンズを庇ってキュクロープスとDCが我々に攻撃を仕掛けている! この映像を使えばスペースノイドとの融和という最近の地球連邦の方針が、ただの方便でしかないと、上っ面だけの虚言だと証明できる!!」

 

『馬鹿が、MDはまだしもバグが殺人兵器だと連中も分かったからこそ、迎撃しているのだろう! 既にSRLには、地球連邦からバグの詳細な仕様まで掌握した上での抗議が届いているのだ!

 コロニー潰しで二十八億のスペースノイドを殺したジオンに比べればはるかにマシだが、これからジオニズムに代わるシンボルを目指す我々は、清廉潔白でなければならない!

 ましてやクロスボーン・バンガードはコスモ貴族主義を掲げているのだぞ! ティターンズの蛮行への鉄槌などと言っても、バグを使えばただの俗な復讐としか受け止められん!』

 

「な、あ、ぐ……」

 

『口惜しいが、地球人類をアースノイドとスペースノイドとで区別せずに守り続けてきた最近の連邦軍とDCに対して、新興勢力の我々とでは積み上げてきた信頼が違う。

 彼らがお前達に攻撃を仕掛けてきたと主張しても、投降するティターンズへの攻撃を防ぐ為と言われ、彼らの側から映像を公開されれば、非難を受けるのは我々だ』

 

 カーンズの怒気は凄まじい。ビクターの行いがカーンズとマイッツァーが戦後の立ち位置を見据えて進めていた戦争計画に大きな傷をつけたのは、彼の怒りの表情と声からも明らかだ。

 心理的にカーンズへの承認欲求を抱えるビクターは、カーンズの怒気に当てられて顔から血の気が引き、先程までの余裕は欠片も無くなっている。

 

 ビクターの委縮はブリッジのクルーにも伝播して、先程までああもビクターに従順に従っていた彼らが、そろってカーンズの怒気に怯えている始末。

 あまりにも情けないその姿は、カーンズの目にも映っており、自分の一喝でこうまで狼狽える醜態には、怒りを通り越して情けなさを覚えるほど。

 

『一分一秒でも早く部隊をまとめて引き揚げろ! 異論は許さん! それすらできないのならば、貴様らはSRLにもホワイトファングにも、もはや居場所はない。どこへなりとも行って、野垂れ死ね!』

 

 そう言って乱暴に通信を切ったカーンズに対して、ビクターは恥辱のあまりに言葉が出て来ず、血が出るほど唇を噛み締めてモニターを睨む事しかできない。

 やがてビクターが唇を血で濡らしながら、震える声で命令を発した。決して頭に昇った血が降りたわけではない。彼の頭は冷えていないし、心の中は荒れ狂っている。それでもこれ以上、今の状況を続ければ自分が居場所も思い描いた未来も失うのは分かっていた。

 

「戦闘を、停止するようにすぐに命令を出せ。バグもまだ稼働しているものは全て帰還命令を出すのだ。我々は、現時点を持って作戦を中断し、撤退、て、撤退……いや、サイド4へ、そう、転進するのだ!」

 

 ビクターの様子を恐る恐る窺っていたクルーは、ビクターのヤケクソめいたその命令に安堵の息を零して、ひょっとしたら今日、もっとも迅速に仕事をこなした。

 戦闘を停止してSRL艦隊に向けて転進するMDやバグ達の姿に、ようやくDCやキュクロープスの面々はビクターが馬鹿げた真似を諦めたのを察する。

 

 バスクのドゴス・ギアもアスワン改やガディのアレキサンドリアらとの艦隊戦の結果、周囲を包囲され、機動兵器の数と士気の差もあって追い詰められ、拿捕寸前だ。

 だがこの場面でもアムロやシュメシ、そしてクォヴレー達は安心していなかった。気の緩んだ瞬間は、まさに奇襲を行うのにはうってつけではないか。

 

「来るぞ!」

 

 アムロがGファルコンとドッキングしたガンダムXのコックピットで叫び、ガレムソンのネオガンダムと互角の戦いを演じていたトキオも、地球人同士の蛮行に心を痛めながら戦っていたデュークも、そしてベルグバウASを駆るクォヴレーも、アウトレンジからのビームの嵐に襲われた。

 それに巻き込まれたティターンズ、キュクロープス、SRLの機体が撃墜される中、光学迷彩とジャミングによってこの戦闘宙域に接近していた者達に向けて、DCからは戸惑いなど欠片もない反撃が行われた。

 

「バサ帝国、いや、ゴラー・ゴレム隊か」

 

 クォヴレーの視線の先には、光学迷彩を解除して姿を露にするヴァルク・バアルとヴァルク・ベン達の姿があった。

 他にもメギロートにハバクク、ゼカリアとお馴染みの機体群が次々と姿を見せているが、既にDCの反撃でそれなりに撃墜されている。

 ベルグバウASの姿を認めて、ヴァルク・バアルのキャリコが通信を繋げた。

 

『俺はお前達に興味はないが、ユーゼス様は興味がおありのようでな。適度にお前達の相手をせよとのお達しだ。それに少しばかり掃除をしてやろう。俺達の相手になるのは、お前達くらいのものだ。有象無象は間引いておかねばな』

 

 ヴァルク・バアルが手を振り上げたのに合わせ、遠方にワープアウトしていたフーレ級から主砲が降り注ぎ、コロニーレーザー周辺に下がっていたティターンズ艦隊やバスクのドゴス・ギアを中心とした艦隊、更には撤退中のビクターのザムス・ギリを含む艦隊が次々と撃ち抜かれて、ひと際巨大な爆発を生み出して行く。

 クォヴレーやシュメシ達ばかりでなく、エリアルドやジェリド達も色めき立つ中、キャリコは仮面の奥の瞳になんの感情も宿してはいなかった。

 

『いつも同じ手札ではお前達も飽きるだろう。今日は新顔を用意してきた。少しは楽しめるだろう』

 

 そう告げるキャリコのヴァルク・バアルの周囲に、有翼の獣を思わせるヴァイクルと無人機であるヴァイクル・ベン、更にアンティノラとディバリウム、ヴァイクランといったスパロボOGや第三次αで登場したバルマー系の兵器が新たに姿を見せる。

 一部の機体にはバルシェムが乗っているが、大部分は無人機だ。そして最後の仕上げとばかりにキャリコは、自身の両脇にアストラナガンを二機、呼び寄せた。

 

『アストラナガン・アフ。ユーゼス様がイングラムを名乗り、使っていたアストラナガンの量産型だ。オリジナルの心臓部であるティプラー・シリンダーこそ搭載していないが、それ以外はオリジナルと遜色はない。

 クォヴレー・ゴードン、ディスの心臓を封印したその機体で、仮初とは言えアストラナガンに対抗できるか? さあ、踊れ』

 

 アストラナガン最強の武器インフィニティ・シリンダーこそ使えないが、基本性能はオリジナルに匹敵する量産型アストラナガンが黒い鋼の翼を広げて、緑色の羽を散らす。

 ゼル・ビレニウムやエル・ミレニウム、アンゲロイ・アルカといった御使い系の機体こそないが、アストラナガン・アフを筆頭にいずれ劣らぬ強敵ばかり。

 だが、クォヴレーに恐れも無ければ、怯みもない。αナンバーズの皆とは違うが、頼りになる仲間達が今も彼の周りにいるのだから。

 

「俺にディス・アストラナガンの封印を解かせるのが目的か? だが、この程度で目的が叶うと考えているのなら、安く見られたものだな。俺も、この部隊の皆も!」

 

<続>

■ティターンズが壊滅しました。

 

無事にこの後、キャリコ達はボコボコにされました。なので次話は真ゲッター回です。それとビクターはちゃっかり生き残っています。

 




繰り返しますが次回は真ゲッターを予定しております。


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第八十九話 加減しなければならない事もある

流石に描写無しは悪いかな、と思ってキャリコ達の戦闘を加えました。


 アストラナガン・アフ、ディバリウム、ヴァイクランといった強大な機体を従えるキャリコ・マクレディの介入によって、ティターンズとキュクロープス、SRLの戦闘は混迷の度合いを深めた。

 その中でも後方で非常事態に備えていた地球連邦艦隊も素早い対応を見せて、艦隊司令ワッケインの指示に従ってSFSに乗ったMSや可変型MS、デンドロビウムⅡといった足の速い部隊が出撃している。

 

 ゴラー・ゴレム隊は戦場全域に次々と部隊を送り込んでおり、大破したドゴス・ギアを拿捕したキュクロープス中核艦隊にも等しく襲い掛かっている。

 これに対して、アスワン改の他、ガディ・キンゼー少佐の指揮するアレキサンドリアらが中心となって対空砲火網を形成し、MS部隊と連携して雲霞の如く群がってくる敵機の猛攻を跳ねのけている。

 

「左舷、弾幕薄いぞ! ガレット小隊、アラモード小隊、プティング小隊は本艦とボストン、ロックブーケのフォローへ回れ。各砲座、当てる必要はない。敵機を近づけさせない事を優先しろ! 機銃は味方の艦に当てても構わん。バラまけ! 機銃で艦は落ちん」

 

 叱咤するガディの指揮に、栄えあるアレキサンドリア級ネームシップのクルーは懸命に応えて、展開している機動部隊と相互に連携して迫りくる敵機をジャンクに変え続ける。

 

(ち、ドゴス・ギアをはじめ、拿捕したティターンズの艦隊が足かせになっているな。このタイミングを狙って仕掛けてきたか?

 指揮官機はDCと交戦中だというが、バサ帝国の狙いは我々ではなくあくまでDCとみるべきか……)

 

 SRLとの戦闘は本当に余計だった、とガディは恨み節を心の中で零しながら次の指揮、その次の指揮を発し続けるのだった。

 もののついでとばかりにキュクロープス艦隊がゴラー・ゴレム隊に襲撃を受ける中で、戦場から離脱しようとするエイジャックス艦隊を見つけたレイラのシルエットガンダム改が、両親の敵討ちと敵意を燃やして襲い掛かっていた。

 

「見つけた! 今度こそ、お前を倒して!」

 

 怒りを言葉に乗せるレイラに対し、疲弊こそあるが熟練のパイロットであるガレムソンは苛立ちを隠せないものの操縦に悪影響はなく、ネオガンダムと生き残った部下とMDで迎え撃つ。

 

「ええい、小娘が! この状況を理解しているのか!」

 

 ガレムソンからすれば、シルエットガンダム改よりも無差別に襲い掛かってくるゴラー・ゴレム隊の方が脅威度は高い。

 異星人への警戒をガレムソンが引き受けて、シルエットガンダム改の相手はジェガンやMDが引き受ける。

 レイラはヴェスバーの高火力を囮にしつつ、ジェガンからのビームライフルを我流混じりの動きで回避し、避けきれないものはビームシールドで受け止めている。

 

 攻撃と防御と回避を淀みなく切り替え、あるいは同時に行える技量の高さはレイラの天賦の才もさることながら、DC部隊内に居るニュータイプ・オールドタイプを問わないトップエース達に揉まれた成果である。

 なんならMSだけでなくスーパーロボット相手の経験も積んでいるのだ。技量も度胸も身につくというもの。

 

「逃げるな! 抵抗してこない相手としか戦えないのか、この卑怯者!!」

 

 レイラの罵声が呼び寄せたのか、ブレイウッドから出撃したトキオのネオガンダム、デフとシドのF90V、ゼファーリ・ガズィカスタムが姿を見せて、シルエットガンダム改に加勢する。

 その中でもガレムソンと因縁の深いトキオは、レイラと連携してエイジャックスと共に戦域を離れつつある黒いネオガンダムを追う。

 

「待て、ガレムソン! もう貴様に逃げる場所はない。それくらいは貴様にも分かるはずだ!」

 

 トキオの撃ったG-バードの一撃をひらりと避け、余波で左脚部の装甲を炙られながら、ガレムソンは言い返す。ネオ・サイコミュシステムの連続使用の反動か、それとも連続する絶体絶命の窮地によって、彼のストレス値は急激に積み重なっている。

 

「なんとでも言うがいい。最後まで生き残っていなければ意味がないのだ! ティターンズが倒れるからと言って、それに付き合う義理など俺達にはない。俺は必ず生き残る! 貴様らが異星人共に負けようが、勝とうが、それでもだ!」

 

 まだ残っていた最後のMDネオガンダムの展開するG-バードの弾幕に、トキオとレイラが回避を余儀なくされて大きく距離を取り、時間と推進剤を消費させられた時間は、ガレムソンとエイジャックス艦隊が離脱するのに十分なものだった。

 

「くそおお!」

 

 みすみす両親の敵を逃したと咆哮するレイラの隣で、トキオもまたかつての因縁を終わらせられなかった悔しさを、きつく歯を食い縛って耐えた。

 だがいつまでもそうしてはいられない。戦いがまだ終わっていないのは、周囲で飛び交うビームやミサイルがこの上なく証明している。

 

「レイラ、厳しいかもしれないが、今は気持ちを切り替えるんだ。ガレムソンとはまたいつか決着を付ける機会がきっとくる。その為にも、今はこの戦場を生き残るのが先決だ」

 

「……厳しい事を言うんだな、トキオは。でも、あたしもそれは分かる。分かるから、戦うよ」

 

「ああ、今はそれでいい! くるぞ、ソルジャーとファットマン、それに新型だ!」

 

 ゼカリアとハバクク、更にヴァイクル・ベンの混合部隊だ。大型MA相当のヴァイクル・ベンの存在は、トキオとレイラにとって重いプレッシャーとなって襲い掛かってきた。

 キャリコが引き連れてきた新型機の中でも第三次αにて登場したヴァイクランはバルマー版SRXに相当し、ディバリウムはゼントラーディや宇宙怪獣といった大多数勢力を想定した機体であり、無人機ながらに強敵だった。

 そう、強敵ではあるのだ。だが、それ以上にDC側の面々が強力だった。

 

 ディバリウムは武装のほとんどがMAP兵器で構成される珍しい例で、機体の全方位をカバーする武装を持ち、嵐のようなビームの連射が機体前面に向けて放たれている。

 数十機のMSがビームライフルを連射しているような奔流の中に自ら飛び込み、回避しながら距離を詰めてくる──そんな頭のおかしい芸当の出来るパイロットが複数いる部隊など、銀河広しといえども極わずかだろう。

 ビームの嵐の中を平気で突っ込んでいっているのは、クワトロのサザビー、カミーユのフルアーマーZ、ジュドーのフルアーマーZZ、バナージのフルアーマーユニコーン。

 

「超広域殲滅型といったところか。しかし、この程度の攻撃で落ちてはやれんな。ファンネル!」

 

 クワトロの思念を受けたファンネル六基が虚空に舞い、サザビー本体のビームショットライフル、ミサイルと合わせてディバリウムのMAP兵器の猛攻を避けて、次々と命中弾を重ねて行く。

 人型とはかけ離れたMA系のビジュアルを持つディバリウムは全長三十五・五メートルながら、銀河有数のゼ・バルマリィ帝国製の兵器である為、その運動性と機動力は高い。

 それでもクワトロの技量とフル・サイコフレームのサザビーの性能は、ディバリウムの動きを完全に捕捉して、瞬く間に撃墜に追い込んでゆく。

 

「さすが、クワトロ大尉だ」

 

 ニュータイプとしての感応性では良くも悪くもクワトロを上回るカミーユをして、目の前で見せられたクワトロの技量は感嘆に値する。

 感嘆しながら回避行動とビームライフルの連射を他のディバリウムに当てているカミーユも、カミーユなのだが。

 

 Zのビームライフルの連射を浴びて姿勢制御を乱したディバリウムに、フルアーマーZZのハイパー・メガ・カノン、フルアーマーユニコーンのビームマグナムが襲い掛かる。

 念動フィールドやデフレクトフィールドを持たないディバリウムは、MSの枠を超える超火力を叩きつけられて、見るも無残に爆散する。

 

「これで二機目! それにしてもこういう機体が出てくると厄介だな」

 

 とジュドーは素直な感想を零した。

 ユーゼスが正体を露にした際に戦ったアンティノラに、DCは相当な苦戦を強いられたが、数百万単位の艦隊と機動兵器群を想定しているディバリウムとトップクラスのスーパーロボット並みの性能を誇るヴァイクランは、DC以外の部隊が会敵したら、瞬く間に壊滅させられかねない性能だ。

 戦っているのが自分達でよかった、ともそんな強敵とこれからも戦うのだ、とも感じるから少年の心中は複雑である。

 

「ジュドー、次が来る!」

 

 バナージはジュドーに警告を発しながら、ビームマグナムのカートリッジを交換し、3連装対艦ミサイルランチャーと3連装ハンドグレネードを同時にリモート操作して、シュムエル小隊に直撃させ、その内の一機を爆散させる。

 残る二機が左右に分かれてサザビーと三機のガンダムに襲い掛かろうとしたその鼻先を、リディのユニコーンガンダム二号機・バンシィのビームマグナムが立て続けに貫く。

 バンシィもユニコーンもデストロイモード未起動だが、双方のパイロットが先達のニュータイプに導かれ、ベテラン達に鍛えられ、天性のセンスが磨かれ、素晴らしいパフォーマンスを発揮している。

 

「一息ついている余裕はないぞ、ジュドー、バナージ」

 

 ユニコーンガンダム原作と異なり周囲の環境があまりに異なり過ぎる為、この世界のリディはオードリーを連れて生家のマーセナス家を訪れるといった行動がなく、加えてニュータイプの素養の開花を自覚するなど、原作ブレイク展開の山盛りだ。

 バンシィがDCにあるのは、アルベルトが一向に自分の指示に従わないのに業を煮やしたマーサ・ビスト・カーバインが連邦軍に働きかけ、手駒になり得るパイロットに与えて影響力を得ようと画策したのをレビル、ヘイデス、ゴップらの手腕で利用し、DCの戦力にしたという経緯がある。

 

 元々、扱いの難しいデルタプラスを使いこなしたリディのセンスは良く、ニュータイプとしての発芽をポジティブに自覚したこの世界では、情緒も安定しているから頼りになる新戦力となってくれている。

 シーブックやセシリー、バナージらと同じく若きニュータイプは、アムロとクワトロという先達の下でパイロットとして大輪の花を次々と咲かせていた。機動兵器のパイロットとして優れている事が、ニュータイプの定義ではないけれど。

 

 馬鹿みたいに強力なMSと馬鹿みたいに凄腕のパイロットの組み合わせが、馬鹿みたいに揃っているDCがゴラー・ゴレム隊の精鋭を返り討ちにする中で、ひときわ目立ったのはアストラナガン・アフ二機と敵指揮官機ヴァルク・バアルとの戦いだ。

 ティプラー・シリンダーが無いにしても、基本スペックに於いてオリジナルに匹敵するアストラナガン・アフだが、その内の一機は戦端が開かれてから早々に離脱している。

 

 というのもGファルコンからのエネルギー供給により、迅速にサテライトキャノン第二射が発射可能となったガンダムXのピンポイント狙撃によって、念動フィールドを張る暇もなく、消滅させられたからである。

 跡形もなく消し飛んだアストラナガン・アフを確認し、アムロはGファルコンとのドッキングを解除する。

 

「どうやらサテライトキャノンの直撃には耐えられないようだな。アルベルトさん、Gファルコンにはまだ不慣れだろう。支援に徹して、前に出ないように注意を。マリーダ、アルベルトさんを頼む。いつも通りにな」

 

「う、うむ。流石に私もこの機体で前に出て戦う気にはなれん」

 

「任せて欲しい、アムロ大尉。おじさんの面倒を見るのには、もう慣れたからな。おじさんのフォローに関しては、私ほど手慣れた者はいないだろう」

 

 自慢していいのか自分でも分からない、といった口調のマリーダだった。

 一機のアストラナガン・アフがアムロの手によって早々に片付けられた一方、残るもう一機はDC宇宙艦隊に同行しているスーパーロボットが相手取っていた。

 宇門大介ことデューク・フリードのグレンダイザーである。

 宇宙に対応する改造を受けたダブルスペイザーとドリルスペイザーの支援の下、ダブルハーケンを振り回してアストラナガン・アフのZ・Oソードと幾たびも斬り結んでいる。

 

「なるほど、確かに驚異的な性能だが!」

 

 サイズで勝るアストラナガン・アフの斬撃をいなし、腹を蹴り上げた瞬間、グレンダイザーの左右からガン・ファミリアの銃弾が襲い掛かり、グレン合金を強烈に叩くが、デュークは構わず追撃に移る。

 

「スクリュークラッシャーパンチ!」

 

 発射されたグレンダイザーの左腕がアストラナガン・アフの右肩を抉り、ズフィルード・クリスタルの装甲が砕かれる。それに構わずアストラナガン・アフが左手をグレンダイザーへと向け、開いた掌の先にアキシオンが特殊な力場に包まれて収束する。

 ティプラー・シリンダーの搭載されていないアストラナガン・アフ最強の武器、アキシオン・キャノンだ。事前の戦闘データによって、発射の前兆を把握しているデュークは即座に対応した。

 

「これでどうだ、反重力ストーム!」

 

 重力を遮断するカラフルな光線がグレンダイザーの胸部から放射されて、発射直前のアキシオンに命中し、アストラナガン・アフの重力操作に異常が生じて、空間を歪めながらアキシオンが拡散する。

 歪んだ空間に吹き飛ばされたアストラナガン・アフに向けて、ひかるのダブルスペイザーからサイクロンビームが、グレースのドリルスペイザーからはドリルボンバーが発射される。

 ゲームではしょっぱい威力の武器だが、設定上では摂氏数万度単位の熱線や高熱弾で、強力な武器だ。

 さらにグレンダイザーの攻撃も加われば、いかにズフィルード・クリスタル製のアストラナガン・アフといえども耐えきれるものではない。

 

「いまだ、スペースサンダー!」

 

 グレンダイザーの特徴的な角から、眩い雷がアストラナガン・アフへと勢い激しく襲い掛かる。二機の地球製スペイザーとほぼ同時の合体攻撃は、アストラナガン・アフの内外に甚大なダメージを与え、再生が間に合わずに爆散した。

 ユーゼスが搭乗した際には操縦技術と強力な念によってDCを手こずらせたアストラナガン・アフも、パイロットが乗らずに機体の性能だけで戦うとなれば、強敵ではあっても決して倒せない敵ではない。

 そしてツイン・バード・ストライクによってアンティノラを撃墜し、クロスマッシャーとオーバーオクスタンランチャーの連携射撃でヴァイクルを撃墜したアラドらは、ヴァルク・バアルとクォヴレーの戦いに意識を割いていた。

 

「クォヴレーは!? 援護は……」

 

 ゼオラはオクスタンライフルのカートリッジを取り換えながら、クォヴレーの状況をシュメシとヘマーに問いかけた。フェブルウスと双子がクォヴレーとペアを組んでキャリコとの戦いに臨んでいたからだ。

 ビルトファルケンのコックピットのモニターに、無数の残骸の中にたたずむフェブルウスの姿が映る。周囲にはジャック・カーバーとバーレイ・サイズで切り裂かれ、ライアット・ジャレンチで挟み潰されたヴァルク・ベンの残骸が山ほどもある。

 双子やゼオラ達を率いていたゼロもGドアーズ、更にレイラとフォウのギガンティックも共に闘い、彼らの周囲のゴラー・ゴレム隊を壊滅させている。

 

「大丈夫だよ、ゼオラ。クォヴレーは負けないから。ね、シュメシ」

 

「うん。ディスの心臓は封印したままでも、今のクォヴレーとベルグバウならあのキャリコは敵じゃない」

 

 一片の揺らぎもなく双子が断言したように、ベルグバウASとヴァルク・バアルの一騎討はベルグバウASの優勢で終始進んでいた。

 クォヴレーはベルグバウ本来の運動性や機動性を損なわぬよう推力増加も可能としたASの豊富な火器を活かし、光学迷彩によって時に姿を晦ますヴァルク・バアルを炙り出すように、面での攻撃を繰り返していた。

 

「穿て、ガン・スレイブ!」

 

 ベルグバウASの背部から飛び立ったガン・スレイブが、面制圧の攻撃の隙間を縫ってヴァルク・バアルの周囲を飛び交い、的確に射撃を加えて行く。

 ヴァルク・バアルはアクティブステルスとジャミングを巧妙に組み合わせて、小隊並みの火力を繰り出すベルグバウASと渡り合う。こちらの世界で改良・複製されたヴァルク・バアルは、第三次αのオリジナルよりも性能が増している。ディス・アストラナガンと機体スペックに於いて遜色のない仕上がりといっていい。

 

「なぜこうも後れを取る?」

 

 キャリコはブレードホイールをミサイルで弾き飛ばされ、周囲から絶え間なく銃弾を放ってくるガン・スレイブに注意力と集中力を削がれながら、徐々に被弾を重ねて行く自機とかすり傷程度のベルグバウASを比較し、理解できずにいた。

 ヴァルク・バアル肩部のミサイルランチャーと両肩の連装ビーム砲がロックオンしたベルグバウASに発射されるが、それが来ると分かっていたようにベルグバウASがくるりと機体を回転させて避けると、お返しとばかりにレールガンとビームマシンガンが発射される。

 

 高性能のテスラ・ドライブの性能を全開にしてその連続攻撃を回避し、キャリコはランダムな機動を取ってベルグバウASの多種多様な火器の照準をかき乱しながら、反撃の一手を加えて行く。

 こうしてキャリコが戦っている間にもこの世界における最大の障害となるDCの戦闘データと引き換えに、ゴラー・ゴレム隊の反応は次々と消失している。

 ヴァルク・ベンもパイロットのバルシェムもこの世界に来てからアップデートされているのだが、それをものともしないDCの戦闘能力は銀河有数の戦闘種族”地球人”の最強部隊に相応しい。

 

(機体性能では勝っているというのに。……不可解なこの状況に、俺は何を感じている? 苛立っているのか? バルシェムであるこの俺が!?)

 

 エイス・ゴッツォのように感情を持たず淡々と機械的に任務を処理する存在として製造された、と自認するキャリコであったが、ベルグバウASに押されている状況にあって、彼の心中にはじりじりと焦がされるような不快な感覚が広がっていた。

 

「機体の性能が上がっても、お前自身の性能が向上していても、あの執念を失ったお前は俺の知るキャリコ・マクレディに劣る」

 

 ASパーツをパージし、目くらましと機体重量の軽減を同時に行い、クォヴレーはツイン・ラアムライフルの銃剣と左手で抜刀したビームサーベルで、ヴァルク・バアルに斬りかかる。

 ビームサーベルはブレード・ホイール・バスターに受け止められ、ヴァルク・バアルの胸部を狙って突き出された銃剣は、盾代わりに差し込まれたヴァルク・バアルの左腕を貫いて、わずかに胸部に突き刺さる程度に留まる。

 

「俺が“俺”に劣るだと!?」

 

 初めてキャリコが声を荒げ、その怒りが乗ったようにヴァルク・バアルが迅速な動きを見せた。お互いに鍔迫り合いの状態からブレード・ホイール・バスターの銃口が火を噴き、ベルグバウがそれを回避した瞬間に合わせてヴァルク・バアルが距離を取る。

 が、その背中で小さな爆発が連続する。回り込んだガン・スレイブの連射がヴァルク・バアルの背部装甲を少なからず削ったのだ。

 

「くっ!?」

 

 キャリコはミサイルランチャーの残弾をすべて発射してベルグバウの足を止め、その間に味方の残数を確認し、アンティノラやヴァイクルはまだしも、ヴァイクランやアストラナガン・アフまでも撃墜されている状況に、仮面の奥で表情を歪める。

 そうして生まれた刹那の隙を予期していたように、ウイングゼロの発射したツインバスターライフルの狙撃が、ヴァルク・バアルの右腕を付け根から飲み込んで吹き飛ばす。

 

「いい反応だ」

 

 ゼロシステムの予測通りに放ったツインバスターライフルの奔流から生き残ったヴァルク・バアルを、ヒイロは感情を映さない瞳で見つめる。

 コロニーの住人が犯した失態はコロニーのガンダムが拭う、とばかりにSRLを相手に奮戦していたデスサイズヘルやアルトロン、ヘビーアームズ改、サンドロック改はウイングゼロ同様、矛先をゴラー・ゴレム隊に変えて活躍中だ。

 

「クォヴレー・ゴードン、ベルグバウ、DC、ソルの成れの果て……。ユーゼス様がお前達を特別視される理由を嫌というほど理解した。どうやら俺はお前達を知らずに侮っていたようだ」

 

 生き残っているゴラー・ゴレム隊の内、高級機に相当する機体が下がる代わりにメギロートやゼカリアらが前面に出て盾となる。

 そうして盾兼壁を築いて、キャリコは製造されてから初めて感じる屈辱に臓腑を焼かれる思いで、戦場を離れるのだった。

 かくしてティターンズは戦力のほとんどを喪失し、ドゴス・ギアと共にバスクは捕らえられ、グリプスに監禁状態に置かれていたフランクリン・ビダンを含む技術者達は解放された。

 

 戦闘中に乱入し、対人殺戮兵器であるバグをバラまいたSRLについては、地球連邦政府のみならず各コロニーからも抗議が殺到し、カーンズとマイッツァーは火消しに奔走されている。

 最後に姿を見せたゴラー・ゴレム隊はキュクロープスとワッケイン艦隊にそれなりの被害を与えたが、過半数以上の機体が撃墜されて貴重なサンプルを地球に提供する形となった。

 同時にクォヴレーに一方的な敗北を喫したキャリコが、怒りと憎悪によって感情を芽生えさせたことが、今後の戦いにどこまで影響を与えるのか? それはまだ分からない。

 

 

 

 

 

■地上ルート 第四十五話 ゲッターか、人か

 

 有体に言って百鬼帝国の大幹部ヒドラーは追い詰められていた。百鬼帝国が他勢力と同盟を結ぶ中で、これまでの対ゲッター、対地球連邦、対DC戦での不手際と自分の地位を確保する為の帝国内部での各種工作がいよいよ問題視されたからである。

 ブライ大帝のヒドラーを見る目は冷酷という言葉を極め、もはや温情など爪の先ほども期待できない状況に追い込まれている。

 

 その中でヒドラーは新早乙女研究所の攻略を命じられた。新早乙女研究所に動きがあり、新たなゲッターロボの開発か、現行のゲッターロボGの強化が図られているという情報を得たからである。

 時を同じくして光子力研究所に地獄大元帥率いるミケーネ帝国が攻め入り、世界各地を同盟勢力が攻撃している間に、なんとしても新早乙女研究所攻略を成功させなければならない。

 

 その為にヒドラーには特別に強化されたメカ要塞鬼が与えられ、数百を超える百鬼戦闘機、百鬼爆撃機、メカ大輪鬼、メカ一角鬼、メカ牛面鬼、メカ針千本鬼、メカ飛竜鬼……と多種多様な量産タイプの百鬼メカを引き連れている。

 この時、ヒドラーは百鬼メカの大部隊を囮にして、コマンド部隊による新早乙女研究所制圧を狙い、部隊を動かしていた。

 

 度々の襲撃を受けて防衛設備を強化された新早乙女研究所は土台部分に対空レーザー砲塔が追加され、またこの世界独自の設備として旧早乙女研究所と同じバリアやゲッターナバロン砲を備え、更に極東支部から派遣された防衛部隊が常駐している。

 光子力研究所の防衛部隊と同等の戦力に加えて、先んじてDC地上部隊から向かっていた新旧ゲッターチームが研究所に到着しており、身命を賭したヒドラーと熾烈な戦いを繰り広げる筈だった。

 

「はいはい、お客様ぁ、一列に並んでくだちゃいな!」

 

 エクセレンは軽薄で軽妙な台詞と共に、改良されたヴァイスリッターのオクスタンランチャー・ハイパーグレネードモードを、百鬼爆撃機の編隊に撃ち込んで十数機を纏めて消滅させる。

 キョウスケのアルトアイゼン同様、ウルトラザウルスのグラビティカノンを使い、一足早く救援に来たのが、このエクセレンとヴァイスリッターだった。

 既に展開している防衛部隊のゲシュペンストMk-Ⅲやケーニッヒウルフ、ガンスナイパーなどと連携して、四方八方から迫りくる百鬼メカを相手に八面六臂の活躍をしているが……

 

「ちょっと、旗色が悪いかしらね、これは」

 

 これまでとは勢いの違う百鬼帝国に、エクセレンはいつもの余裕の笑みを消して、戦況を冷静に分析する。

 早乙女達人、みちる、巴武蔵の搭乗するグレイゲッターロボGは、目の敵にされて殺到する百鬼メカを相手に奮戦し、エクセレンや防衛部隊はそれを援護する形で効率よく敵機を撃墜しているが、敵に怯む素振りはない。

 

 新型光子力エンジンは今も快調だが、Bモードで使用する実弾に関しては最後のカートリッジを交換したし、スプリットミサイルも残弾がゼロになっている。

 在庫一斉処分と言わんばかりに百鬼戦闘機と爆撃機が大量に投入されており、新早乙女研究所に向けて体当たりも辞さない戦いぶりだ。

 研究所を内部から制圧する為にコマンド部隊を送り込んでいるが、おそらくそのコマンド部隊ごと研究所を破壊しても構わないという意図が透けて見える。

 

 Eモードをメインに敵機を阻む弾幕を形成するヴァイスリッターに、ペルゼイン・リヒカイトからの通信が繋げられる。ペルゼインはヴァイスリッターとは異なり、アインスト固有の転移能力でこの戦闘に参加していた。

 アルフィミィの権限により、それなりの数のアインストゲミュートやアインストクノッヘンが姿を見せており、百鬼メカと戦ってくれている。

 

「エクセレンにしては弱気ですのね。でも、百鬼帝国の皆さんの気合のノリがいつもと違うのには、同意ですの」

 

「まさにバックウォーターの陣って感じね。ところでどうしてアルフィミィは光子力研究所じゃなくって、こっちに来たの? 私の方を心配してくれたのかしらね?」

 

「うーん、それもありますけれど、この星由来のエネルギーである光子力に比べると、ゲッター線はよく見ておかないといけない代物なので……」

 

 エクセレンとしてはちょっと聞き逃せない発言だった。

 

「アインストは光子力に対しては一定の信頼を置いているけど、ゲッター線に関しては一抹の不安を抱いている? それって私に聞かせちゃっていいの?

 というか、モビルゾイドちゃん達ってゲッター線を動力にしているけど、もう一千機以上は生産しているわよ。そろそろ二千機いくんじゃないかしら」

 

 極めつけはデスザウラーとデススティンガーだ。敵勢力の切り札と言われる方が納得のゆくビジュアルと圧倒的戦闘能力を持つゾイドらも、ゲッター線を利用している。

 

「ゾイドさん達に関してはそれほど危惧しておりませんの。彼らはゲッター線に選ばれて進化したというよりは、ゲッター線がたまたま進化の一因を担っただけで、ゲッター線の思惑とは別の存在となっている様子ですし」

 

(まるでゲッター線に意思があるみたいに言うのね。いえ、恐竜帝国を地上から追い払い、戦争が苛烈になるほど照射量が増して行くとなったら、案外、ホントのことなのかもね)

 

 そしてエクセレンはこの場には居ないゲッタードラゴンと竜馬、隼人、弁慶を思い、新早乙女研究所を一瞥する。彼らの不在の穴を埋めるようにグレイゲッタードラゴンが奮戦しているが、やはりゲッターロボGの不在は気掛かりだ。

 

「確かにあの光景を見ちゃったら、ゲッター線をただのクリーンなエネルギーとは見られないか……」

 

 全ては、新旧ゲッターチームが新早乙女研究所に呼び戻された理由に起因する。

 光子力研究所でマシンセルの提供によって、自己進化・自己増殖・自己再生するアルティメットかデビルになりそうなマジンカイザーが開発されたように、早乙女博士を含む賢者達はマシンセルを利用した新たなゲッターロボの開発を計画していた。

 旧ゲッターロボを素体として、新型ゲッター炉、ゲッター線増幅装置、マシンセル、合成鋼G……その他諸々をつぎ込んだ意欲的なゲッターロボだ。

 

 新旧ゲッターチームに馴染みの深いゲッターロボの改良現場への立ち合いと警護、二機のゲッターロボGのエネルギーを供給する為、竜馬達は先んじて招集された。

 そうして装甲を合成鋼Gベースのマシンセルに換装され、新パーツを盛り込まれて中身は別物と化した旧ゲッターの起動が始まり、異変はほどなくして生じた。

 

 ゲッター線があまりにも異常な速度で濃度を高め、更には周囲から、否、宇宙から膨大な量が新早乙女研究所を目指すかのように何の前触れもなく降り注ぎ始めたのである。

 過剰過ぎるゲッター線の供給に即座に起動を停止させようと試みるも、エラーが生じて旧ゲッターは外部からのあらゆるコマンドを拒絶という、どこぞやのマークニヒトめいた反応を示す。

 

 早乙女博士と新旧ゲッターチームの反応は早かった。竜馬達は直接機体に乗り込んで暴走するゲッター炉心を停止するべく動き、武蔵達はグレイゲッタードラゴンに乗り込んで、旧ゲッターへのエネルギー供給を止めようと動いた。

 武蔵達の試みは成功して、グレイゲッタードラゴンを操作して直接エネルギー供給用のチューブを引っこ抜く荒業で、供給停止に成功したのだが、竜馬達は上手くいかなかった。

 

 まるで竜馬達が来るのを待っていたかのように、彼らが乗り込んだ後で旧ゲッターがゲッター線の繭を作り出してしまったのだ。

 あらゆる分析装置の目を遮断し、ただただ異常なゲッターエネルギーを示す旧ゲッターに誰もが畏怖し、固唾を飲むしかできなかった。そんなところにヒドラーが大軍を率いて襲い掛かってきたのである。

 

 戦端が開かれても竜馬達と旧ゲッターを取り込んだゲッター線の繭、すなわちゲッターコクーンは心臓を思わせる脈動と緑の光の明滅を繰り返し、内部の様子を外界に晒す事を拒絶している。

 そして内部に取り込まれた竜馬達は、ゲッター線の導く運命の可能性を垣間見ていた。

 

──あれは、俺か!? 色んな世界の俺、流竜馬!

 

 インベーダーと戦う流竜馬、神と戦う流竜馬、後輩達の戦いを見守っている流竜馬……子を持った流竜馬。それ以外にも数えきれない、しかし全て何かと戦っている流竜馬と様々なゲッターロボの姿が、奔流となって彼らを飲み込んでいる。

 

──ゲッター線がなぜ人類を選んだのか、なぜハチュウ人類を拒絶したのか。仏■軍■、ラ■グ■ス、■ンドロメ■流■……。ああ、ガンダムもマジンガーも居る。そうか、俺は、俺達はずっと昔から、ずっと未来で、遠いどこかで、近いどこかで……。

 

 それは竜馬の声だったか。隼人の声だったか。弁慶の声だったか。自我の境界は融けあうようにして薄まり、彼らを区別する壁は脆く崩れようとしていた。

 そうしてゲッター線の導きのままに、あるいは唆されるままに、この世界での進化の道を進もうとする彼らを、どこかの世界で戦い続ける無数のゲッターエンペラーとその艦橋に立つ男達が見ていた。

 この世界の『俺』がどんな選択肢をするのか。ゲッター線に服従するのか、それとも抗うのか。生きるのか、死ぬのか。戦うのか、戦わないのか。それを見ていた。

 

 刹那が永遠に感じられ、永遠が刹那となって流れて行く。そんな時間感覚の狂う体験の中で、それでも竜馬は、隼人は、弁慶は抗っていた。

 強いとか弱いとか、そんな尺度をはるかに超越した大いなる何かが、自分達を望む方向へ誘導しようとしている。その先に宇宙の真理があり、そして今の戦いを勝ち抜くための強大な力が待っているのも分かる。

 

 それは、場合によってはクォヴレーにユーゼスよりも危険視されかねない力だ。多くの流竜馬が一度は手放し、距離を置こうとした力だ。

 ある世界のブライ大帝が、核を超える悲劇となる、と心底からの恐怖を吐露したその力に、竜馬達はただ流されるだけとなるのを、断固として認めなかった。

 

──俺達はこれまで戦ってきた。これからも戦う。だが、それは誰かに命じられたからじゃない! 俺達の意思で戦うべき敵と戦ってきたんだ! 例え相手がお前でも、俺達の心までは渡さないぞ、ゲッター!!!

 

 無数の世界のゲッターエンペラーが、無数の世界の先を行く流竜馬が、三人の言葉を耳にしてはっきりと嬉しそうに笑った。

 

「さ、早乙女博士! ゲッター線の濃度が」

 

 狼狽する所員の声を受けて、先程から冷や汗を流していた早乙女博士は計器に飛びついて敷島博士共々そこに示された数値に目を剥く。

 

「げ、ゲッター線指数五十六億七千万パーセント!? あり得ん、もしこの数字が本当ならば宇宙開闢、ビックバンにも匹敵するエネルギー量だぞ!」

 

 さしもの敷島博士も驚愕を隠せない中、早乙女博士は息も忘れて、解けて行くゲッターコクーンに目を奪われていた。

 

「ゲッターよ、お前は我々をどこへ導こうというのだ?」

 

 五十六億七千万……釈迦牟尼仏が弥勒菩薩へと生まれ変わるまでの時間、地獄に落とされたダーク・シュナイダーを解放する為に必要となる鬼の超エネルギーの数値、インフィニティとの戦いでリサがマジンガーZと兜甲児に届けた光子力エネルギー。

 その数値がゲッター線となって、今、この場に集っている。

 宇宙を開く程のエネルギーは何を生む? 神か、悪魔か?

 

「早乙女博士、敷島博士、ちょ、直上にメカ要塞鬼が。大気圏外からまっすぐに研究所を目指して落ちてきます!!」

 

「なにい!?」

 

「しまった。今の攻勢は全て囮か。百鬼帝国め、この辺り一帯を死の大地に変えるつもりか! この研究所が破壊されれば、この増幅されたゲッターエネルギーが暴発するかもしれんのに」

 

 ヒドラーの非情なる起死回生の策がこれだった。自分もコマンド部隊も囮にして、大気圏外に打ち上げた特別なメカ要塞鬼を新早乙女研究所に落とす、しかもメカ要塞鬼には核兵器が満載だ。

 新早乙女研究所ばかりでなく浅間山をふもとから吹き飛ばして、関東一帯に大穴が開いて地球に放射能と大量の粉塵を撒き散らすだろう。

 そして、そして、それを迎え撃とうとゲッターコクーンがついに開き、旧きゲッターが新たなゲッターとなって羽化する!

 

「おお、竜馬君、隼人君、弁慶君!」

 

 早乙女博士は見た。ゲッターコクーンの中から姿を見せた新たなゲッターロボを。

 大きく縦に伸びた肩、頭部の角はより鋭く変わり、外腕部には鋭い刃が何枚も伸び、瞳はまるで全ての人々を睥睨するように鋭い。

 ゲッター1だったはずの機体は、今や全く異なる荒ぶる神の如く、禍々しき悪魔の如く、ゲッター線の導きと三人の意志、そしてマシンセルの影響を受けて進化していた。

 その姿を見ればゲッターロボシリーズ愛好家やスパロボユーザーならば、すぐに察しがついただろう。それは間違いなく真ゲッターロボと呼ばれるゲッターだと。

 

 真ゲッター1の『瞳』が頭上を見る。天井の向こうから落ち来るメカ要塞鬼を、確かに真ゲッター1は見ていた。だが、見ていたのは真ゲッター1か? 竜馬達ゲッターチームか? それともゲッターロボもゲッター線も超越した“ゲッター”そのもの?

 そして真ゲッター1が飛ぶ。天井を、防御形態に入った新早乙女研究所のドームを光と化してすり抜け、一切破壊せずに!

 

 真ゲッター1が、その背中から悪魔を彷彿とさせる黒い翼を広げたのは、新早乙女研究所の外部に出てからだった。

 空中で真ゲッター1は静止し、ゆっくりと両手を腰だめに構える。それに応じて機体内部で脈動するゲッターエネルギーが両手の間の空間へと流れ込み、機体そのものがゲッター線の光によって、太陽の如く燃え始める。

 いや、太陽さえ超えるエネルギーが、今、そこに!

 

「三つの心を一つにするんだ」

 

「ゲッターを心で操縦しろ」

 

「信じるんだ。ゲッターを、俺達を」

 

 どれが誰の声だったろう。全てが竜馬の声のようであり、隼人の声のようであり、弁慶の声のようであった。ゲッター線が三人の心に従って寄り添い、集まり、巨大な光の球体を形成す。

 一つにしながらも三つの心のままの三人の声が、唱和する。真ゲッター1もそれに呼応して見る間に迫りくるメカ要塞鬼を睨みつける。

 

「ストナァアー……サンシャイーン!!」

 

 ビッグバン級のエネルギーが圧縮されたゲッターエネルギーの塊が核を満載したメカ要塞鬼へと直撃し、空をゲッター線の光が覆い尽くした。

 言語に絶する超エネルギーによって、メカ要塞鬼は搭載していた核兵器ごと原子すら残さずに消滅して、むろん、放射能も一切発生していない。

 あまりにも強力すぎて、あまりにも強大すぎて、敵であるヒドラー達百鬼帝国も、理解が及ばない。味方である地球連邦の防衛部隊も、そしてエクセレンもアルフィミィもそれは同じであった。

 

「ドワォ……」

 

 魂が抜けたように思わず呟くエクセレンに続いて、アルフィミィも呆然と空を見上げて呟く。

 

「ドワォ……ですの」

 

<続>

■バスク、フランクリン、ガレムソンは生き残りました。

■キャリコが感情を獲得しました。

■バンシィを入手しました。

 

◎ゲッターロボをベースにマシンセル、新型ゲッター炉、ゲッター線増幅装置、合成鋼Gその他諸々をつぎ込んだ新型機を作るぞ! → なんか真ゲッターロボが出来ちゃいました。

 

☆ゲッターエンペラーの領域に至った流竜馬達から一言。

「とりあえずは及第点」

 

●カーンズとマイッツァーはマイナスイメージの火消しに必死ですが、すぐにそれどころではなくなります。

 




変形・合体だけでビッグバン級のエネルギーが発生するゲッターエンペラー > 誕生時にビッグバン級のエネルギーが発生するこの世界の真ゲッター1。
なのでエンペラーに比べればまだまだ可愛いものです。そんなエンペラーも仏の軍団などと比べれば可愛いものなのですが。


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第九十話 もはや痛む事さえも忘れた我が身

いただいた感想で言及されていましたが、真ゲッターロボが手に入ったので、ライン・ヴァイスリッターは入手できません。


 ストナーサンシャインを発射直後、真ゲッター1からビッグバン級のエネルギー反応は消え去り、新早乙女研究所に宇宙から過剰なまでに降り注いでいたゲッター線も急激に密度を減らしていって、間もなく通常の数値に戻った。

 ゲッター線が目的を果たしたのだと、早乙女博士は直感的に理解した。

 ストナーサンシャインによって過剰なエネルギーを放出して、一時、空をゲッター線の緑で染め上げた真ゲッター1。

 マシンセルとゲッター線によって異常進化を果たした機体には、ゲッターロボGをはるかに超越した莫大なゲッターエネルギーが満ち溢れている。

 

 黒い翼を広げた鬼神か悪魔の如き容貌と次元違いの威圧感は、鬼を自称する百鬼帝国の兵士達の全身を(おこり)にかかったように震えさせた。

 進化の果てに繁栄をもたらすのか、それとも行き過ぎた進化による破滅をもたらすのか、あるいはもはやどこにも行けなくなる進化の袋小路に人類を導くのか。

 ゲッター線の使徒、進化の化身と評するべき超規格外のゲッターロボの存在は、百鬼帝国にとって想定をはるかに超えた鬼札(ジョーカー)に違いない。

 

 誰もが真ゲッターの戦闘能力という表現を超越した力に忘我する中で、真っ先に正気を取り戻したのは強化メカ要塞鬼に乗るヒドラーだった。

 百鬼帝国内での居場所を失いかけ、不退転の覚悟を決めているから?

 今回の作戦を失敗すれば、例え生きて帰れてもブライ大帝に処刑されるのが分かっているから?

 違う。

 この時、ヒドラーは心の底から真ゲッターロボを恐れていた。これを早乙女博士に作らせたゲッター線を。

 そして決意していた。必ずや全ての生命の為にも、この場で真ゲッターロボを破壊しなければならないと、例え、自分が惨たらしく死ぬとしてもと決意したのだ!

 

「こ、こ、殺せえええ!! 今、今すぐに、あの新しいゲッターロボを、破壊するのだ! あれは、あれは核を超える悲劇になる! 早乙女博士、貴様はいったいなんというものを作ったのだ!!」

 

 ヒドラーの命令に真っ先に従ったのは、百鬼兵ではなく人工知能が搭載された百鬼戦闘機や量産型百鬼メカ達だ。

 これまでの戦闘とストナーサンシャインの余波でかなり数を減らされていたが、今回の作戦に駆り出された元々の数が膨大であったから、相当数が残っている。

 

 コンピューターで制御された一糸乱れぬ編隊を組んだ百鬼戦闘機から、数千発に達するバルカン砲と百を超えるミサイルが次々と発射され、空中で制止している真ゲッター1の下方から超音速で飛来する。

 百鬼戦闘機部隊の総攻撃を隠れ蓑に、多数の百鬼メカから破壊光線、多種多様なミサイル、雷、火炎放射といった本命の攻撃が続く。

 

 速度の異なる複数の実弾・ビームこもごもの攻撃を前に、真ゲッター1はストナーサンシャインを発射してから、だらりと腕を下げた姿勢のまま動く様子がない。

 あのままでは直撃するとエクセレンとアルフィミィが援護に入ろうとした瞬間、彼女らの常人離れした目は破壊光線の束が直撃する寸前に、三機のゲットマシンへ分離する真ゲッターロボを映した。

 

「オープンゲット! チェンジゲッター2! スイッチ・オーン!」

 

 同じゲッターチームと戦場の味方に次の行動を伝える為、オープン回線で叫ばれた隼人の掛け声はゲットマシンの動きに遅れて伝わった。分離・変形・合体が一千分の一秒以下、超音速の世界で行われるゲッターでは、声が動作に遅れるなど茶飯事である。

 鈍間な攻撃を置き去りにして、大気の壁を貫いて流星の如く地上に落下するように飛翔した三機のゲットマシンは、真ジャガー号を先頭にコンピューターのサポートの無い完全マニュアル合体を実行する。

 

 そうしてソニックブームを撒き散らしながら、白い上半身に巨大なドリルの右腕、鋭いブレードのマニュピレーターの左手、背には巨大なブースターを背負った真ゲッター2への変形を終えた。

 あまりにも早すぎて対応できない百鬼兵に対し、隼人はヘルメットの奥に凶悪な笑みを浮かべた。ゲッター線の影響か、はたまた先程の無数の可能性を見た影響か、心と肉体の両方がひどく高揚している。

 

「真ゲッター2の速さにはついて来られまい。地獄に落としてやるぜ、鬼ども!」

 

 ゲッター2、ゲッターライガーをさらに凌駕する超高速の動きは、大気圏内で許される限界ギリギリのものだろう。

 地面に激突する寸前の勢いをそのまま活かし、着地と同時に真ゲッター2は刹那で音の壁を突破した。加速した後には、機体色の白と赤の残像が戦場の各所にほとんど同時に出現する異常な現象が発生する。

 

 真ゲッター2の移動する先では大気がかく乱されて竜巻の如く荒れ狂い、蹴り上げられた地面が爆発するように吹き飛んでいる。

 そして右腕のゲッタードリルによってどんな装甲だろうと容赦なく抉られた百鬼メカの骸が、秒単位で量産されるという蹂躙劇の幕開けだった。

 ゲッタードリルに抉られ、シザーアームによって斬り飛ばされる配下達の姿にヒドラーは非情な判断を下す。指揮官としてのみならずパイロットとしても優秀な彼は、自分を含む味方の犠牲を厭わぬ心境に達していた。

 

「百鬼爆撃機隊、メカ要塞鬼全艦、爆撃用意! 地上の百鬼メカ部隊は可能な限り防御態勢を取れ! 貴様らの回収は行わない。新たなゲッターロボを破壊する為、お前達の命をくれ!!」

 

 地上の兵士達からの返事を待たず、ヒドラーはまさしく鬼そのものの気迫で部隊各員に通達し、迅速に味方殺しも厭わない行動を実行させた。この瞬間に於いて、ヒドラーはある種のカリスマに満ちた指揮官へと変貌していたのである。

 一瞬たりとも足を止めない真ゲッター2に翻弄されて、地上の百鬼メカ達が反撃も退避も出来ずに撃墜される中で、空中から残る百鬼爆撃機隊とメカ要塞鬼残存艦、強化メカ要塞鬼による絨毯爆撃が強行された。

 

 回避する隙間の無い爆弾の雨、いや壁と呼ぶべき密度で降り注ぐそれに、真ゲッター2の戦闘に巻き込まれないように新早乙女研究所近辺まで下がっていた防衛部隊と、高度を取っていたエクセレンとアルフィミィは目を見張った。

 点の攻撃が当たらないのならば面で避ける隙間を潰して制圧する、一年戦争以来、それが高い回避能力を持ったパイロットに対する対処法の一つである。

 それを百鬼帝国側が実行したが、真ゲッター2と隼人はその対処法を超越した戦力だった。

 

「その程度で俺達とゲッターが止められるか! ミラージュドリル!」

 

 真ゲッター2の右腕のドリルが超高速回転と共に虹色に輝き出し、光のドリルが立て続けに発射され、上空から降り注ぐ地形を変えるほどの爆弾の雨を次々と爆発させてゆく。

 空一面に爆発の炎が広がり、真ゲッター2の影が長々と地面に伸びる。ヒドラーは絨毯爆撃が効果なしと見て、残る百鬼兵達の乗る百鬼メカに総攻撃を命じた。

 幸い防衛部隊は爆撃を避ける為に、新早乙女研究所のバリアの内側にこもっている。ヴァイスリッターとペルゼイン・リヒカイト、アインスト達は変わらず攻撃を仕掛けてきているが、それには残る戦闘機部隊をぶつけて命懸けの時間稼ぎをさせた。

 

「行け、行け、行け! 百鬼の精鋭達よ。あの悪魔を滅ぼすのだ!」

 

 ヒドラーの覚悟と狂気が乗り移ったように、残存の百鬼兵達も我が身を省みない気迫で次々と真ゲッター2を目指して大地を駆けてゆく。眼にも止まらぬ速さで貫かれたなら、そのまま機体を犠牲にして拘束してやると、誰もが命を捨てる覚悟を固めている。

 群がる百鬼メカと百鬼兵全てから感じられる狂気の熱量は、見えない津波となって機体越しにゲッターチームを激しく打つ。

 

「フ、良い覚悟だ」

 

 ますます好戦的な笑みを浮かべる隼人に対して、進化したベアー号のシートをお尻で温めている弁慶が話しかけた。ゲッターロボの進化の影響を受けて、精神が高揚しているのは彼もまた同じなのだ。

 

「今度は俺の番だ、ハヤト! あいつらが核まで使うとなっちゃ、俺だって黙っちゃいられない!」

 

「なら言うだけの事はやって見せろよ?」

 

「へへ、失敗したらへそで茶を沸かしてやるさ! いくぞ、オープンゲット!」

 

 再び三機のゲットマシンへと分離し、四方八方から降り注ぐビーム、砲弾、ミサイルの中を掻い潜って真ゲッター3への変形・合体が行われる。

 巨大なキャタピラを備えた赤主体の下半身に、堅牢さと力強さを感じさせる青主体の上半身を持った新たなゲッターロボは、こちらに向けて突進してくるメカ大輪鬼を標的に定めた。

 

「チェエーンジ、ゲッター3ィ! 新しいゲッター3の初陣だ!」

 

 メカ大輪鬼は、両腕の先から象徴である巨大な棘付きの大輪を勢いよく回転させながら真ゲッター3へと一つ、二つと投げつける。

 身の丈にも匹敵する巨大な棘付き大輪を、真ゲッター3の両手が苦も無く受け止めた。回転の勢いと棘によって真ゲッター3の両手に火花が散るが、削れているのは大輪の方で真ゲッター3の装甲はかすり傷ひとつないときた。

 

「エースの剛速球に比べれば、なんてことない! うおお、ハンマーパンチだ!」

 

 野球部の捕手らしく(?)受け止めた大輪をそのまま握り潰すと、真ゲッター3の腕が伸びて固く握り絞められた拳が次々と百鬼メカの胴体をぶち抜き、頭を叩き潰し、触れるモノ全てを粉砕する超パワーを発揮する。

 そのまま伸び続けた真ゲッター3の両手が哀れな獲物の首を握り潰しながら掴むと、真ゲッター3はキャタピラで激しく地面を抉りながらその場で回転を始める。

 

「くらえ、これがムサシ先輩直伝、大雪山おろしだあああ!!」

 

 真ゲッター3は腕を伸ばしたまま凄まじい勢いで回転をはじめ、見る間に機体を中心とした巨大竜巻が発生し、真ゲッター3に群がろうとしていた百鬼メカ達を巻き込み、大地を引きはがし、風を飲み込んでゆく。

 見る見るうちに巨大化して行く竜巻の影響はすさまじく、上空のヴァイスリッターとペルゼイン・リヒカイトは巻き込まれないように更に高度を取り、離れなければならなかった。

 ヒドラーの強化メカ要塞鬼も、推力を全開にして大雪山おろしの巻き起こす竜巻に吸引されるのを防ぐので精一杯だ。

 

「仕上げにコイツを持ってけ、ミサイルストーム!!」

 

 真ゲッター3の機体後部の装甲が開き、内蔵されていた無数のゲッターミサイルが一斉に発射される。ゲッターミサイルは大雪山おろしの流れに乗って竜巻の中を肉食魚のように泳ぎ、百鬼メカに命中して次々と爆発を起こして行く。

 大雪山おろしによって引き起こされた竜巻はゲッターミサイルの爆発によって弾け飛び、竜巻の中に飲み込んだ百鬼メカ達を引き千切り、更に爆炎によって溶かし、爆発の衝撃で木端微塵にした。

 

 この時、既に上空ではヴァイスリッターとペルゼイン・リヒカイト、グレイゲッタードラゴンの猛攻によって残る百鬼戦闘機と百鬼爆撃機は文字通りの全滅に近い被害を受けていた。

 大雪山おろしの竜巻が消えた後、バリアを解除した新早乙女研究所の対空砲とゲッターナバロン砲、更に防衛部隊の砲火も再び放たれ始めた事で、ヒドラー率いる百鬼帝国の部隊は敗北を決定的なものにしたと言える。

 

「まだだ、せめて、あのゲッターロボを破壊しなくては、百鬼帝国に、地球に未来はないのだ!」

 

 唯一、誰もかれもが諦める中でヒドラーだけはまだ諦めてはいない。

 命を代償にした気合を全身から滾らせて、強化メカ要塞鬼で真ゲッターロボへの突撃を仕掛けた。最大速度で迫りくる強化メカ要塞鬼を前に、ゲッターチームに怯えはない。

 彼らにはヒドラーの覚悟と気迫以上に、その奥に秘められたゲッターへの恐怖がひしひしと感じられた。真ゲッターロボを操る彼らもまた、ゲッターの齎す力の凄まじさと行き着く可能性に不安がないと言えば嘘になる。

 

「ヒドラーの奴、最初からああいう覚悟があったら、もっと苦戦させられていただろうな」

 

 真ゲッター3のコックピットで、弁慶はヒドラーの見せる最後の輝きを素直に称賛した。手強い敵など御免被るが、さりとて自らの命を省みない覚悟を固めて挑んでくる戦士に対して、侮蔑の言葉など浮かぶはずもない。

 

「まったくだが、土壇場で覚悟を決めた奴は厄介なものだ。最後はリョウ、お前が決めろ」

 

「分かった。行くぞ、ハヤト、ベンケイ! そしてゲッター! 俺達の心を、意志を、戦いを見ろ! オープンゲット!!」

 

 三度、ゲットマシンへと分離し、小細工なしに特攻してくる強化メカ要塞鬼へと激突まで一秒もない距離をゼロにする。

 真イーグル号を先頭に真ジャガー号、真ベアー号が次々と激突するようにして突き刺さり、マシンセルと合成鋼Gがゲッター線によって変異した特殊合金──後にG(ゲッター)セルと命名された──が分離・再結合を繰り返して姿を変えて行く。

 オープンゲットからコンマ一秒が経過した時には真ゲッター1が黒い翼を開き、両肩にある穴の内、左側からGセルが形作る柄が飛び出して、真ゲッター1の右手がそれを掴んで引きずり出す。

 

「ゲッタートマホーク!!」

 

 もはやそれはトマホークの範疇を超え、全長五十五メートルの真ゲッター1にも匹敵する長柄の両刃斧だった。

 ゲッターバトルウイングの一打ちで加速し、真ゲッター1は慣性の法則を無視した異次元機動で強化メカ要塞鬼とすれ違い、巨大な左の翼を半ばから切断してのけた。

 そのまま急旋回、急上昇、急下降の入り混じる動きで強化メカ要塞鬼の各所を切り刻んでゆく。その質量と切れ味、圧倒的なパワーにより、一撃でスーパーロボット系の幹部級さえ倒しうる破壊力だ。

 

「ぐうう、なんという無茶苦茶な!? こ、こんな化け物を相手に、どうやって……」

 

 残る右の翼も根元から切断され、艦体のダメージは深刻だ。強化メカ要塞鬼は浮力を失って、見る見るうちに高度を下げて行く。

 だが竜馬は容赦しなかった。ここまで覚悟を固めたヒドラーへのある種の敬意であり、ゲッター線と共に戦う覚悟であった。

 

「ゲッターブラストキャノン!」

 

 竜馬のボイスコマンドと意志を読み取ったGセルは、真ゲッター1の左腕からライフルを生やしてそれを握る。各ゲットマシンのゲッター炉心から供給されるゲッターエネルギーが銃口から迸り、強化メカ要塞鬼の改良された装甲を薄紙のように貫いて行く。

 強化メカ要塞鬼はいつ爆発を起こしてもおかしくないほどのダメージを負い、ヒドラーの覚悟も虚しく沈むのは時間の問題であった。

 

「こう、なっては!? もはやこれまで。ゲッターよ、ゲッターチームよ、なんとしてもお前達だけはあああ!!」

 

 ヒドラーはコンソールを操作して強化メカ要塞鬼の自爆シークエンスを進める。これは強化メカ要塞鬼を与えられた際に、最後の手段としてヒドラーに強制的に与えられた自決装置だった。

 躊躇なくヒドラーは右拳を振り上げて、全力で振り下ろそうとした。既にズタボロとはいえ、この状態でも強化メカ要塞鬼が炉心を暴走させて自爆すれば浅間山を吹き飛ばす程度のことはできる。

 それでも真ゲッターロボを破壊できるか、ヒドラーに確証はなかったが、もはやそれしか手は残されていないのだった。

 ヒドラーの拳が強化プラスチック製のカバーを砕き、スイッチを押そうと振り下ろされる寸前、強化メカ要塞鬼の正面に右手にゲッタートマホークを、左手にゲッターブラストキャノンを持った真ゲッター1が!!

 

「これで終わりだ、ヒドラー! ゲッター……」

 

 真ゲッター1の白い腹部の装甲が開き、ゲッター炉心と直結した砲口が露わに……いや、形作られる。三機のゲットマシンのゲッター炉心のエネルギーがレンズ状の砲口へと集中して、真ゲッター1の機体各所からゲッター線の光が溢れだす。

 

「ビィイーム!!」

 

 真ゲッター1の腹部から放たれるゲッター線の奔流よ! かつて恐竜帝国が用いたゲッター線防護装置など、何万集めようと意味がないと断言できる、固形化していないのが不思議なほどのゲッター線は、なんの抵抗もなく強化メカ要塞鬼の艦首から艦尾まで一直線に貫いて、地球の大気を越えてはるか宇宙へと伸びて行く。

 ゲッタービームによって機体ごと纏めて焼かれる寸前、ヒドラーは濃密なゲッター線を浴びた瞬間に悟った。

 

「ああああ、ゲッターとは、虚無とは、進化の意味! そうか、私の死は!?」

 

 この時、竜馬がゲッタービームの射線が地上に向かないように機体の角度を調整して発射したのは幸いだった。もし地上に向けて発射したなら、強化メカ要塞鬼を貫いた後、地球の反対側までゲッタービームは伸び続けただろうから。

 こうして真ゲッターロボの出現まで狂気的な攻勢を続けていた百鬼帝国軍は、荒ぶる神の如く、同時に禍々しい悪魔の如きゲッターの力とそれに乗る人間の心によって、見る間に倒されたのだった。

 

 ヒドラーの強化メカ要塞鬼が完全消滅した頃には、生き残った百鬼帝国の部隊は存在しておらず、戦闘機・爆撃機部隊も全てが撃墜されて無残な姿を晒している。

 無数の百鬼メカの骸が散らばる惨状と化した浅間山麓の光景は、果たして本当に人類が勝利した戦場だと言えたかどうか。

 

 百鬼帝国にとって人格はともかく能力はあったヒドラーと派遣した戦力が消滅し、更には想定をはるかに超えて強力なゲッターロボの誕生を阻止できず、なにもかもが悪夢のような結果となったと言えよう。

 そして有史以来、初めてといえるゲッター線の意思表示とも取れる照射量の局所増加と真ゲッターロボの姿は、アルフィミィを通じてノイ・レジセイアへと伝えられ、その情報は人類の行く末を見守りたいと願う、壊れた監視装置にこう評価された。

 

「ヤバス」

 

 もはや訳が分からな過ぎて情緒がぐちゃぐちゃになり、芝どころかターフが生えるような心境であった。

 

 

 実のところ、超次元機動要塞タルタロスが起動し、ヴァルシオーが実戦デビューを果たした後もヘイデスと所長はDCとは別行動を取っていた。

 まだまだ経済人としてのヘイデスの指示と手腕が必要とされる場面は多かったし、量産型ヴァルシオーを始めとした最終決戦に向けた諸々の機体の開発には、各分野でトップにはなれなくても、トップクラスにはなれるオールラウンダーの所長の才覚が求められたからである。

 

 ヴァルシオーはそのままヘイデスと所長が機動兵器による襲撃を受けた時の備えとして、二人の移動手段ともなっている。量産型ヴァルシオンに相当する量産型ヴァルシオーことヴァルシオーマの一号機はロールアウトし、二号機の製造に取り掛かっている。

 スペックダウンは否めないがそれでも強力なスーパーロボットであるヴァルシオーマの数を揃える事は、最後の敵となるだろうバサ帝国、もといユーゼスの繰り出すディス・ジュデッカか、あるいは超神ゼスト、アダマトロン系の機体を倒すのに役立つだろう。

 

 そしてマジンカイザーと真ゲッターロボが起動し、ティターンズの壊滅とMO-Vの技術者ドクターペルゲの離反といった報告を受け取ったヘイデスはというと、プルート財閥所有の工業コロニー・ヒッポクレーネーに腰を落ち着けていた。

 かつてプロメテウスプロジェクトの重要な拠点となったコロニーであり、現在も多種多様な技術と機体、装備の開発が行われている。

 

 このヒッポクレーネーそのものに、最後の戦いに向けた特別な仕上げが施されていた。

 廃棄コロニーを改造したものをヒッポクレーネーに連結し、連結部とヒッポクレーネー後部に増築が行われて、全長90km、連結部分の最大直径は10kmに達する巨大建造物と化している。

 連結部分には巨大なリングが設置されて、巨大自由電子レーザー掃射装置“メメントモリ”十二基が装備されている。

 

 前半分のコロニーはコロニーレーザーへ改造・・・・・・ではなく、より強力な次元力転移砲に改造され、その破壊力は最大出力で地球型惑星を粉砕するレベルだ。

 ここまでやってようやくマクロスキャノンに肩を並べる事に成功したわけだ。

 こうして生まれ変わったヒッポクレーネーは、超ド級次元要塞オリュンポスと名を改められた。

 それがプルート財閥がもっともお金と資源と時間をかけて完成させた決戦兵器の名前である。

 現在、DCで運用している全艦艇を余裕をもって収容可能で、今はまだ合流していないソーラーファルコン(全長4km)も内部に収容し、修理や改造出来る艦船用ドックと工廠が存在している。

 

 内部はちょっとした都市となっており、並みのスペースコロニーを上回る自己循環システムが完備されていて、ワープ航行機能の搭載もあり、見方によっては戦闘能力を備えた移民船とも言える。

 もっともあくまでも主眼は地球人類がこの度の大戦を戦い抜く為の、いわば勝利の為の箱舟だった。オリュンポス後部のコロニー内部にある生活居住区にあるオフィスで、一人、ヘイデスはソファに身を預けて虚空を見つめていた。

 

(マジンカイザーと真ゲッターロボ、か。ある意味では予想通りといえる。マジンカイザーはスパロボ発祥だから、その存在そのものがマジンガーZと他のロボット作品のクロスオーバーを証明する。マジンガーZEROに対する最高のカウンターといえる。

 漫画の最終回以降の、例えばスパロボVなんかに出た頃のZEROなら許容範囲が増えているから、いくらかは慰めになるけれど、そもそも関わらないで欲しいレベルだからな……。

 問題なのは真ゲッターか。東映アニメ版のゲッターチームだったから、ゲッター線が意志があるだとかトンデモじゃないと、油断していたかも知れない)

 

 ヘイデスの居る執務室の外では太陽の光を模して造られた光が居住区を照らし、人工重力発生装置によって、スペースコロニーとは違って遠心力に頼らずとも地に足を着けて生活が出来る。

 今次大戦を乗り越えたなら、オリュンポスは外宇宙向けの移民船のモデルとして活用される予定だ。まあ、マクロス船団をモデルにした方がよさそうな気もするが。

 

(マシンセルという触媒があったとはいえ、旧ゲッターロボにゲッター線を照射して、真ゲッターロボが誕生か。えーと、無印の第四次スーパーロボット大戦と似たような誕生の仕方だ。カラーリングもそっちに近い。

 パイロットのゲッターチームも東映版の性格だから、漫画版よりはブレーキの効いている性格だろう。さて、そうなるとゲッターの性質が気になる。

 東映アニメ版は除外、漫画版や多くのOVAと同じどこまでも進化を突き詰めるタイプか、それともクォヴレーの居た第三次α世界の他種族との融和も良しとする無限力の一部であるゲッター線か。後者ならば、人類に自分達が必要なくなったとなれば、自ら姿を消す潔さのある存在だし……)

 

 そうしてヘイデスは痛む事さえも忘れた胃をそっと撫でるのだった。

 まあ、うん、頑張ってね!

 

《続》

■真ゲッターロボが誕生しました。

■超ド級次元要塞オリュンポスが開発・建造されました。

■MO-Vでドクターペルゲが離反しました。

■OZプライズは……?

 




いつも誤字脱字のお知らせと感想をありがとうございます。
まだまだ終わる気配が無くていつまでも書くのだろうと作者も疑問に思う事の増えた本作ですが、もうちょっとお付き合いくだされば幸いです。


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第九十一話 人類に逃げ場をつくろう

作者はガリアレスト未履修です。


 ヘイデスは勝利の為に持てる才覚と権力、財力、スパロボプレイヤーとしての知識を最大限活用して行動しているが、万が一敗れた場合を想定して保険を用意しておくことも忘れていなかった。

 この場合の保険とはプレイヤー部隊に相当するDCが敗北した場合、武力での逆転は不可能と判断し、地球人類という種を残す為の逃亡策である。

 つまり地球人類が絶滅しない為の保険というわけで、マクロスシリーズの移民船団と通ずるところがある。

 

 オリュンポスの敷地内で、ヘイデスがボアザン円盤などから解析したワープ技術を用い、完成したタイムラグの無いワープ通信で、最低でも地球から六億キロメートル離れている木星と通信を行っていた。

 相手は地球連邦から木星圏の開発と運営を任されている木星公社の総統クラックス・ドゥガチだ。

 宇宙世紀133年を舞台とするクロスボーンガンダムの主要人物であり、スパロボシリーズにも何度か登場した事のある人物だ。クロスボーンガンダムの原作では九十代の老人であるが、宇宙世紀87年相当のこの世界ではまだ四十代前後の男性である。

 

「これが今の地球圏の状況ですよ、ドゥガチ総統。侵略者達との決戦は遠からず行われるでしょうし、クロスボーン・バンガードとホワイトファングが自滅に近い形で組織を瓦解させるのも、そう遠い未来ではないでしょう」

 

 一年戦争時にコロニーの落下を防げたことやロームフェラ財団の存在など、資金や資源、人材が宇宙世紀世界よりも豊富にあった土台とヘイデスの意向もあり、原作に比べて木星開発における支援は実に手厚いものだ。

 特にここ最近ではあるが、ボアザン系ワープ技術の確立により、ジュピトリス級で片道二年かかっていた木星と地球間の輸送が革命的に早まっている。

 

 それでも空気を切り詰め、水を切り詰め、物資を切り詰めている木星の状況はなかなか変わらないが、人間を切り詰める機会が劇的に減ってきているのはせめてもの救いだろう。

 一年戦争とデラーズのコロニー落としの二つが成功していないこの世界では、異星人の侵略という非常事態はあれども、宇宙世紀原作に比べて北米の穀倉地帯は無事だし、人口も数十億以上生き残っているし、ジオン残党の勢力も芥子粒みたいなものだ。

 木星を支援する余裕があれば、ドゥガチの負担を大いに軽減する事に繋がる。

 ワープ通信──マクロス世界のフォールド通信のようなもの──の画面に映るドゥガチはヘイデスより一回り年上というだけで、面影こそあるがスパロボや原作でおなじみの老人姿とはまるで違う。

 

『SRLの連中は資源と人材と時間の無駄の極みだな。話を聞いているだけの私でも、この手で縊り殺したくなる無能ぶりだ。まさかここまで侵略者の数が重なるとは考えていなかったのだろうが、ならば早々に地球連邦に降伏しておればよいものをな』

 

 苦虫を嚙み潰したような苦渋と『地球を脅かす=木星への支援が滞る』事への怒りをブレンドして、ドゥガチは不愉快の極みと言わんばかりの表情を浮かべる。

 魂は燃えていても肉体は枯れた老人姿のドゥガチを知るヘイデスとしては、まだまだ肉体も精強なドゥガチの姿はなかなか見慣れるということがない。

 

(それにしてもシーブックやセシリーが原作の生年月日を無視しているのに、ドゥガチは原作に準拠した年齢とはね。

 まあ、その方が木星帝国を警戒しなくていいから助かるし、万が一、逆襲のギガンティスが木星に埋まっていた場合、地球を滅ぼす気満々の連中にイデオンが渡る事態を防げるから助かるか)

 

 もちろん、イデオンが眠っていないのが最良である。スパロボF完結編では大いに助けられた存在だが、あまりにも劇薬過ぎる。マジンガーZEROやゲッターエンペラーとはまた違った方向性の厄ネタに違いない。

 

「今回、ホワイトファングの構成員が大ポカをやらかしましたから、ひそかに彼らと結託していた人々も縁を切り出しているでしょうし、地球連邦も手を打ちます。それと木星便に関しては、予定通り送りますのでご安心を」

 

『助かる。一度に運べる量はまだそう多くはないが、ワープでのピストン輸送のお陰で、木星の状況は良くなっている。もっとも更なる荷物を背負わされたがな。ヘイデス総帥?』

 

 今のドゥガチは本来の木星開発ばかりでなく、地球人類の種の保護というさらに重大な役割が任されており、それはヘイデスにも責任の一端がある話だった。

 

「そう言わずに。戦争の中心地となっている地球から最も遠い人類の生息圏は、ドゥガチ総統達のいらっしゃる木星圏です。いざという時に備えるのに最適な場所なのは、何度もお話しましたでしょう。

 そうでなくともヘリウム3の最大の採掘地として狙われる可能性もあって、今次大戦以前から防衛戦力の重点的配備も行ってきましたし、魚心あれば水心という奴ですよ」

 

 実際、ワープ技術が完成する以前から木星に派遣されるジュピトリス級を中核とした輸送船団の規模と数は増しており、そのまま木星に駐留する防衛部隊も同道している。

 この時点で地球圏脱出を想定した装備と物資の用意が決まっており、木星圏の開発と地球脱出艦隊の編成は同時に進められていた。その分、ドゥガチの負担が増えたのは道理である。

 

『ワープ航行機能を備えたスペースコロニーを中核とした移民船団か。ふん、地球が敗れればこれまで苦労して開拓してきた木星を捨てて、太陽系さえも見捨てて外宇宙に飛び出さねばならないとは……』

 

「現実となって欲しくない事態ですが、万が一の時にはボアザンの和平派と協力して、銀河の片隅で生息可能な星を見つけて、そこを開拓する事になるでしょう。バーム星人と似たような身の上になるわけですね」

 

『ふん、母星を失って宇宙を漂流するわけか。屈辱の極みだな』

 

「もちろん、そうならないように全力は尽くします。その為の布石も打てるだけは打ちましたしね。地球圏の防衛が上手く行ったら、脱出用の移民船団はそのまま移民目的で使えばいいですし、木星圏が将来的に太陽系の出入り口となって栄える礎になりますよ」

 

『どうだかな。だが私としてもようやく国と呼べるまでに育てたこの国を、わけのわからん侵略者連中にくれてやるつもりはない。木星圏と人類脱出の船団に関しては、抜かりなくやってやる。こちらは私に任せて、お前は地球圏の勝利のみを考えよ』

 

「ふふ、そうさせてもらいますよ。ドゥガチ総統の能力を、僕はとても信頼していますので」

 

 そうか、とドゥガチは自分より一回り年下の男に、いつもと同じ不機嫌そうな顔を向けたままワープ通信を終わらせた。

 

「あの様子ならディビニダドを量産したりはしないか。しかし、この世界のカラスやキゾ、カリスト兄弟はどうなるやら……」

 

 まだ生まれてもいない者達を含め、木星には、というかクロスボーンガンダムシリーズには地球人類大虐殺を企む危険人物がちょこちょこ出てきておっかないのだ。どうにも油断できない、というのがヘイデスの本音である。

 イデオンがいないのが何よりなのだが、それはそれとしてやっぱり木星は、クロスボーンガンダムシリーズが長続きした影響もあって厄ネタ案件なのである。

 

 

 ティターンズを壊滅させるオペレーション・ティタノマキアが終了後、DC宇宙艦隊は月に向かって新型機を受け取りに向かっていたが、その最中に資源衛星都市MO-Vからの救援信号を傍受し、MO-V出身者であるアディンを筆頭にヒイロらコロニーのガンダムパイロット達、ゼファー、アルビオン隊、シロガネ隊が艦隊を離れた。

 MO-Vを離反したドクターペルゲはOZプライズの母艦ピースミリオン級のグランシャリオを乗っ取り、MDとOZプライズの星屑の三騎士の一人、クラーツ・シエルビィと共にMO-Vへ攻撃を仕掛けたのだという。

 

 これに対してMO-Vは防衛の為に残っていたオデル・バーネットとジェミナス02、ペルゲの離反を許さない星屑の三騎士ロッシェ・ナトゥーノ、ブルム・ブロックスらを筆頭とするOZプライズのメンバーが協力して、対抗した。

 原作ではロッシェらOZプライズらが趣味で民間人を襲うという言語道断の非人道的行為を働いたのだが、この世界のOZプライズはロームフェラ財団からの命令で、各コロニーを侵略者から守る正義の騎士団としての役割を任されていたのである。

 

 OZ内部の独立部隊でありデルマイユ公の私兵部隊としての顔を持つOZプライズは、そのデルマイユ公の変心によって騎士ごっこから本物の騎士らしい振る舞いを求められたわけだ。

 ペルゲが自分の開発したMSの性能を確かめるように、手心を加えてMO-Vに何度も攻撃を仕掛け、それをオデルらは凸凹の連携と高い能力によってなんとか防衛に徹して、DCの救援は無事に間に合った。

 

 既に戦闘は終わり、ペルゲとクラーツと彼のガンダムバーンレプオス、グランシャリオと共にどこかへと姿を消しており、彼の背後にどのような組織や個人の意思があるのかは分からないままだ。

 アディン達はそのままMO-Vに一時残って、情報交換を行う為、オデルらと格納庫に併設されているブリーフィングルームで話をしていた。

 

「それじゃあ、ドクターペルゲは残していった機体になにか仕掛けをしてもいないのか?」

 

 とはアディン。彼の使っているジェミナス01を含め、MO-Vにはオデルのジェミナス02を改良したガンダムアスクレプオスを含め、ペルゲの手が入った機体があるが、それらにバックドアが仕込まれている形跡はない。

 最初からMO-Vと離れる計画だったのは明白なペルゲだが、そのくせ、MO-Vが一方的に負ける事のないように手心を加えている奇妙な点が散見された。

 

「ああ。彼は彼でなにか目論見があるのは間違いない。そうでなければアスクレプオスの改修に本気で取り組みはしなかったろうし、彼ならばMO-Vの制御システムに手を加える事も可能だったはずなのに、それをしていないからな」

 

「いったい、なにがしたいんだ? OZプライズからも離反したっていうなら、ロームフェラ財団の意向でもないんだろう。ティターンズは壊滅したし、それならSRLがバックに?」

 

「そのSRLの醜態はこちらの耳にも届いている。おそらくコスモ貴族主義も共倒れに近い形で瓦解してもおかしくない」

 

「そうなるとSRLでもない奴らと繋がっている?」

 

 ひょっとしたら地球圏の勢力ではなく、侵略者達の勢力と? そのアディンの考えは果たしてどこまで正鵠を射ていたのか……

 アディンとオデルらバーネット兄弟が情報交換を行っている傍らで、MO-V救援部隊の臨時指揮官を務めるモンテニャッコがOZプライズ側のロッシェ、更にヴァルダーと情報交換をしていた。

 相手はペルゲとクラーツに手痛い裏切りを受けたロッシェと、たまたま付近の宙域で侵略者連中を相手に暴れていたヴァルダーである。ヴァルダーも専用機ハイドラガンダムがペルゲ作である為、まったく関係がないわけでない。

 

「今後、ペルゲはMO-Vに攻撃を仕掛けてくると思われるか?」

 

 モンテニャッコが今後の部隊の行動を決める為にも、ペルゲと付き合いの長いロッシェとヴァルダーに意見を求めた。

 MO-Vの救援に向かった部隊はDC全体としてはささやかなものだが、それでも通常戦力として見れば百のMSにも勝る。それを資源衛星都市一つの為に拘束するのは、戦略的な損失である。

 モンテニャッコの問いには、ロッシェが先んじて答えた。ヴァルダーとは同じOZ所属だがプライズのロッシェとヴァルダーは互いに面識はなく、その存在を耳にしていた程度の間柄だ。

 

「ペルゲは自分の開発した機体が最強だと証明する、そう言っていた。クラーツのバーンレプオスやファーキル大佐のハイドラだけで、終わりにするつもりはないだろう。だが、奴がどこで、誰の協力を得て最強の機体を開発するつもりなのかは分からない」

 

 自己顕示欲か、とモンテニャッコは隠しきれない溜息を零した。ペルゲ自身にとって地球や人類の未来は、自身の才覚を示す事に比べれば然したる価値がないのは明白だった。どうして能力のある人間に限って、そういう大多数に迷惑な性質を備えてしまうのか。

 原作を知っているヘイデスにしても、ヴァルダーとデルマイユ公の動向と地球情勢から、ペルゲが裏切る可能性は低いのでは? と見積もっていたところでこの所業である。

 事情を知らないモンテニャッコが、鉛のように重い溜息を零したくなっても仕方がないではないか。

 

 ここで冷笑を浮かべて話を聞いていたヴァルダーが口を開く。パリで暗黒大将軍と激闘を繰り広げた後、新たな敵を求めて宇宙に上がっていた暗黒の破壊将軍は、ペルゲの離反にも獲物が増えたと獰猛に笑う。

 傲慢なまでの自信とそれを支える実力を備えた彼だからこその不敵な態度であり、見方によっては幸せな性格をしている。

 

「最強の証明を望むのならば、私のハイドラやアスクレプオスがこの衛星都市から離れれば、奴にとって価値は無くなるだろう。守りが気になるならば、あのDユニットとやらと正規軍の部隊で事足りる。

 ペルゲも異星人の兵器の強力さは理解している筈だ。ならば奴がより優れた兵器を開発しようとするのなら、接触する相手は決まっている」

 

「ファーキル大佐はペルゲが異星人共と接触すると?」

 

 プライズを裏切ったばかりか侵略者に与するというヴァルダーの推測に、ロッシェの眼差しは険しくなり、怒りが彼の頬を赤く染める。

 

「ちょうど地球の人間が傘下に収まっている勢力があるだろう? あそこならば繋ぎを取りやすい。それに私の見たところ、もっとも手強く、かつペルゲが技術を応用しやすい勢力がある」

 

「バルマー・サイデリアル連合帝国か! ペルゲ、クラーツ、星屑の三騎士の名を汚しただけでなくOZプライズの勇名に傷をつけ、あげく人類の裏切り者に成り果てるつもりか!」

 

 握った拳を怒りで震わせるのはロッシェばかりでなく、傲岸不敵だが騎士と自称するだけの筋は通すブルムもかつては肩を並べた仲間の恥を知らない所業に、こめかみに浮かんだ血管が破れて血を噴きだしそうな有り様だ。

 

「落ち着き給え、ナトゥーノ特尉。ファーキル大佐はあくまで可能性から推測を述べたに過ぎない。その怒りは今度、彼らに出会った時にぶつけるまで溜め込んでおくといい」

 

 と、ここでモンテニャッコはアディンに声を掛けた。

 

「アディン、少し話がある。オデル・バーネット、君にも聞いておいてもらいたい。MO-Vの関係者にも話を通す必要のある事だからな」

 

「モンテニャッコ艦長、俺と兄さんになにか?」

 

「これからのお前の行動についてだ。これまでのDCでの戦いで、地球圏を覆う状況については肌でよく理解しただろう。そして故郷であるMO-Vが危機に見舞われたとあっては、今後の行動をお前に決めてもらいたい。

 このままDCに所属して戦い続けるのか、MO-Vに留まって故郷を守るのか。ファーキル大佐はこれ以上、MO-Vが襲われる可能性は低いと告げられたが、絶対にないとは言い切れん。

 あくまで民間人の協力者であるお前は、これからの行動を自分で決める権利があり、そして義務がある。とはいってもこの場ですぐに決められる事ではないだろう。

 今日明日で答えを出せとは言わん。我々もMO-Vに出来る限りの支援を行わなければならないし、月に向かった艦隊との連絡も必要だ。そこのところを家族や友人、MO-Vの代表と話しておいてくれ」

 

「俺とMO-Vのこれから。……それに、ガンダムも」

 

 MO-Vを守る戦いでアディンのジェミナス01は大きく損傷し、オデルの開発していたガンダムグリープに戦闘中に乗り換えている。大破したジェミナス01は現在も改修を受けていて、間もなくL.O.ブースターとして新生する予定だ。

 特にガンダムグリープは極めて高い基本性能に高出力の火器、PXシステムを兼ね備えた強力な機体であり、ウイングゼロやエピオン、ハイドラに比肩しうる超高性能MSといえる。

 DC基準でも優れたMSとして称賛に値する機体が、MO-Vに留まるのか、DCと行動を共にするのかは大きな焦点に違いなかった。

 

 

 一部で話題となったペルゲはキロメートル単位の巨艦グランシャリオと共に、事前に指定されていた座標に到着した。

 既に先客がおり、それはカイラム級機動戦艦と数隻のクラップ級からなる艦隊で、一見すると地球連邦軍の艦隊のようだった。

 ペルゲはグランシャリオのブリッジで迎えの艦隊から送られてきた識別信号を確認し、わずかに抱えていた不安を消し去った。

 

「時刻通りだな。彼らの艦隊だ」

 

 ペルゲの言葉に傍らに立つ神経質そうな長髪の青年が口を開いた。元星屑の三騎士の一人クラーツだ。ロッシェらの騎士ごっこに飽き、そして地球人類の置かれた苦境から、侵略者側に寝返るのを良しとした男である。

 

「連邦軍の中にも彼らに寝返った者達が居たか」

 

「ティターンズに所属していた者達らしい。あちらも終わりの見えていた組織だからな。生き残りを計ればそうもなろう。ふむ、艦名はエイジャックスか」

 

 エイジャックス……バズ・ガレムソン元大佐の率いるカイラム級の名前だ。どうやらティターンズ壊滅後、ガレムソンはペルゲと同じ組織に身を寄せてとりあえずの居場所を確保したらしい。

 エイジャックスの背後からアウーラ級が姿を見せ、以前からペルゲと接触を持っていた地球人類の裏切り者が直々に通信で姿を見せる。

 

『やあ、ドクターペルゲ。石ころの都市にもう未練はないか?』

 

 現在、真ジオン公国の統率者としてバサ帝国の傘下にある男、タウ・リン。彼がガレムソンとペルゲを迎える者であり、彼自身の目的の為に二人を利用しようとしている黒幕だった。

 

「十分に私の目的を果たしたとも。後はそちらの環境で私の次の目的を果たすだけだ。その途中での成果物は約束通り提供しよう。君の目的の為に好きに使いたまえ」

 

『素晴らしい、俺が人類を滅ぼそうとしているのを知ってそんな言葉が出てくるとはな! 絵にかいたようなマッドサイエンティスト! だからこそ俺も使う気になる!』

 

「好きに呼ぶと良い。私は私の機体が宇宙で最強であるのを示す為に、よりよい環境を選んだだけのことだ。バルマーよりも地球の方が良い環境であったなら、裏切りはしなかったとも」

 

『フン、自分を満足させる環境を用意できなかった方が悪いと言わんばかりだな。いいぜ、自分の欲望に正直な奴は嫌いじゃない。ましてや際限なしに犠牲を厭わない狂人なら、もろ手を挙げて歓迎するぜ』

 

 なにしろ、自分もまた狂った人間なのだとタウ・リンは自覚しているのだから。

 

<続>

■ガンダムグリープが開発されました。

■ガンダムジェミナスL.O.ブースターが開発されました。

■ガンダムアスクレピオスが開発されました。

■ブルムは生き残りました。

■タウ・リン、バズ・ガレムソン、ドクターペルゲ、クラーツ・シエルビィが合流しました。

 




はたしてこの世界でベルナデットが誕生するのかどうか……?

追記
アデル → アディン を修正いたしました。


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第九十二話 状況が変われば認識も変わる

原作では頑なに地球人を認めなかったリヒテルも、自分達がユーゼスに征服された側であり、地球を攻めるのも自分達を支配している者達からの差し金であり、地球人に対して理不尽な真似をしていると認識しているので、従来のスパロボとはまるで違う態度に仕上がっております。リヒテル以外には冷たいライザは変わらずですが。


 光子力研究所と新早乙女研究所の危機を乗り越えて、マジンガーチームとゲッターチーム、キョウスケとエクセレン、アルフィミィは極東支部へと帰還した。

 大破したマジンガーZとゲッター炉がオーバーロードしたことによって機能不全に陥ったゲッターロボGは、今も生まれ故郷の研究所で生みの親達の手によって修理中だ。

 宇宙ではティターンズの壊滅と地球人内部から出た裏切り者や、SRLの苦境が地上にも伝わっている。

 まあ、SRLにしろティターンズにしろこれまでの愚行の報いであるから、自業自得、もっといえばざまあみろといったところ。特にゴップを始めとした地球連邦高官や上級将校らは心底から思っているだろう。

 

 その知らせを受けたDC地上部隊としては自分達も敵勢力の一つくらいは片付けたいね、とやる気のこもった会話が交わされていた。

 そんな中、極東支部のスーパーロボット用の大型格納庫に搬入された真ゲッター1を見てから、とある人物は激しい対抗意識を燃やしていた。ゲッターロボGに勝てる機体として、メカ鉄甲鬼を開発した鉄甲鬼その人である。

 

 元々中途半端な状態で実戦投入せざるを得なかったメカ鉄甲鬼を完璧に仕上げる為、所長をはじめ各研究所の博士達と協力し、潤沢な資材と予算を費やして完全なるメカ鉄甲鬼を仕上げている最中に、ゲッターロボGの数倍、あるいは十倍以上の戦闘能力を持った真ゲッターロボの登場である。

 この現実を突きつけられて、どうして鉄甲鬼が心穏やかでいられようか。ただ、彼はへこたれなかった。元々、何体ものスーパーロボットやデスザウラー、デススティンガー、ディス・アストラナガンなどを見て来たのだ。精神的耐久値は嫌が応にも鍛えられている。

 ゲッターエンペラーでも見せられなければ、今の彼の心に罅を入れるのも難しい。

 

「フフフフ、俺の才能の全てを費やして、メカ鉄甲鬼を最強の百鬼メカにしてみせるぞ!」

 

 アレスコーポレーション極東支部の人員の手を借りながら、真ゲッターロボとも対等以上に戦える機体にするべく、鉄甲鬼は徹夜続きで血走った目のまま両手を広げて哄笑する。

 はっきりいって正気を失った危険人物にしか見えず、最近のハイテンションな彼に慣れたメカニック達以外は、鉄甲鬼の強面のビジュアルもあって遠巻きにしている。

 例外は同じくメカ白骨鬼、メカ胡蝶鬼、メカ地虫鬼の改良の為に、同じ格納庫の一角に足を運んでいる元百鬼帝国の面々だ。

 

「あんなに高笑いして。鉄甲鬼、傍目から見ても不審人物の見本だわ」

 

 若干引きながら告げる胡蝶鬼に、地中鬼はなんとも言えない顔になる。百鬼帝国の頭脳グラー博士の秘蔵っ子である彼は、同じくグラー門下である鉄甲鬼とは多少付き合いが深い。

 鬼として人間を超えたタフネス(一部例外を除く)を誇る鉄甲鬼があそこまで入れ込んでいるのか、もっとも理解できていたのは地虫鬼だろう。

 

「でも今からあの真ゲッターロボに負けない機体を作ろうとしたら、あれくらい自分を追い込まないと追いつけないよ。強化されていたメカ要塞鬼をあんなに簡単に倒すなんて、真ゲッターロボはこれまでのゲッターロボとは一線を画す・・・・・・ううん、次元の違う機体だから」

 

 地虫鬼の言葉には歴戦の猛者である白骨鬼も同意見だった。

 これまで地球人類製のスーパーロボットの目玉の飛び出るような戦闘能力は散々思い知らされてきたが、マジンカイザーや真ゲッターロボは、ディス・アストラナガンや覚醒したフェブルウスといった世界の理に触れるステージに立っている。

 もはや機動兵器と呼んでよいのか疑問のある代物だ。それに並び立とうというのなら、正気を超えた狂気の領域に踏み込んでもまだ足りないかもしれない。

 

「とはいえ無理をし過ぎて体を壊して出撃できないのは本末転倒だし、心を壊したらもっと取り返しがつかない。曲がりなりにも鬼なんだから、鉄甲鬼の奴がごねるようなら同じ鬼の私達がふんじばってでもあいつをカプセルベッドに放り込むよ。いいね?」

 

 同じ地球人類側に付いた鬼のよしみである。白骨鬼からの呼びかけに胡蝶鬼と地虫鬼は仕方ないと言わんばかりに首を縦に振るのだった。

 だが鉄甲鬼の熱意は本人が満足したかどうかは別として、報われるものだった。合成鋼Gとマシンセルの融合したゲッターセルの導入とゲッター線増幅装置の増設、真ゲッターロボとゲッターロボGの武装を参考にした新武装……。

 地獄のようなハードルの高さの機体開発を鉄甲鬼はやってのけたのである。

 

 ゲッタードラゴンに似た風貌はそのまま真ゲッター1と似た姿となり、頭部にはパイロットである鉄甲鬼と同じ二本の角が生え、背中には翼の代わりに赤いマントがたなびいているが、刃にも盾にもウイングにもなるゲッターロボお馴染みのマントである。 

 装甲にゲッターセルが用いられた事で、更なる頑健性と再生能力、形状変化能力をまとめて入手し、耐久性の向上までも果たしている。

 

 真ゲッター1に対応するのは、二本角から発射されるオーガライトニグ、両手から伸びるゲッターレザーもといオーガレザーと両肩に収納したオーガトマホーク二振り。

 真ゲッター2に対応するのは、両手を収納してから出現するオーガドリルとそれをチェーンで伸ばしてぶつけるオーガチェーンアタック。

 真ゲッター3に対応するのは、首回りに内蔵したオーガサイクロン発射装置と掌の中に収納したフィンガーネットに脚部のストロングミサイル。

 そしてシャインスパークひいてはストナーサンシャインに対応するのは、増幅したエネルギーを腹部の発射口から撃つオーガブラスターノヴァ。

 

 少なくともゲッターロボGとは対等以上に戦える性能を確保している。真ゲッターロボを相手にどこまで戦えるかは未知数だが、とにもかくにも鉄甲鬼による愛機の強化は成功したと言えるだろう。

 一分一秒を惜しんで強化型メカ鉄甲鬼──真メカ鉄甲鬼を完成させた鉄甲鬼は、完成を見届けたその場でバタンと仰向けに倒れて、丸一日ぐっすりと眠る羽目になるのだった。

 

地上ルート 第四十六話 リヒテルの覚悟

 

 地球と宇宙でDCのメンバーが活躍を見せる中で、地球に潜伏する侵略者達の中にも新たな動きが生じていた。

 ミケーネ帝国と百鬼帝国が膨大な戦力を失い、挙句の果てにはマジンカイザー、真ゲッターロボというDC参加ロボットの中でも最強の一角を担う戦略級スーパーロボットが誕生している。

 

 両帝国に限らず全ての侵略者達がふざけるな、と怒りと嘆きを覚えずにはいられない結果を迎えたと言っていいだろう。

 特にミケーネと百鬼を支援する為に日本各地に同時攻撃を仕掛けた同盟勢力に関しては、闇の帝王とブライ大帝を痛罵しても許されるのではないだろうか。

 

 さて、そうして地球系侵略者達が手痛すぎる失敗を犯した頃、外宇宙系侵略者達の同盟勢力“銀河列強連合”、略して銀列連にも新たな動きが生じていた。

 目下、ボアザンの地底城(あるいはハイネル城)、バームの海底魔城(海底城?)、ガイゾック・ガルーダの旧オレアナ城が地球上に有する彼らの拠点だが、動きが生じたのは海底魔城である。

 

 意識不明の重体で治療中のリオン大元帥に代わり、野心満載かつ人品卑劣なオルバン大元帥が率いるバームは、バサ帝国に屈服させられ、傘下に収まりながらもいつかはその立場を逆転させようと虎視眈々と牙を研いでいる。

 その一環として銀列連を結成して、彼らの戦力を利用しながらバーム十億の民の為という建前の下、オルバンの野心を満たすために地球侵略を果たさんと邁進中だ。

 

 バームのトップはそのような考えだったが、一方で現場に立っているリヒテル提督はというと、一方的に地球人を侵略している自分達の卑劣さを自覚するがゆえに、多大な負い目を抱きながら戦っていた。

 幸いと言うべきか地球人の戦闘能力が事前調査をはるかに上回るレベルであった為、地球征服はまるで上手く行っていない。

 

 地球侵略が遅々として進まない事を、オルバンやその片腕であるゲロイヤーからネチネチと責められるのは日常茶飯事だった。

 ラオデキヤやイングラム(と名乗るユーゼス)から向けられる冷厳な視線から受ける恥辱の八つ当たりも、リヒテルへの侮辱には含まれていただろう。

 

 しかし、その日のリヒテルは違った。海底魔城の謁見室にある巨大モニターに映し出されるオルバンへと向けて、リヒテルは決然とこう告げたのである。

 これまでの地球人類の戦いぶりと和平派のバーム星人に対する地球連邦の対応が、彼にとある決意を固めさせた。

 

「我らがバームの偉大なる指導者、オルバン大元帥よ、どうかこのリヒテルの覚悟をお聞き届けいただきたい」

 

 オルバンが定型文化しつつあった責め苦を一通り述べ終えた後、リヒテルが異論を許さぬ強い眼差しと共にこう具申してきたのである。オルバンはまがりなりにも大元帥の地位にあるものとして、リヒテルの表情に宿る意思の強さを読み取った。

 リヒテルの父リオン大元帥に次ぐナンバー2として、母星を失ったバームの民を率いてきた実績は紛れもない事実なのだから、彼にも人格とは別に相応の能力はあってしかるべきだろう。

 

『自らの失態の言い訳をするつもりではないようだな』

 

 どこまでもリヒテルを貶めるようなオルバンの発言に、リヒテルへの忠誠心の厚いライザとバルバスは怒りに体を震わせたが、当のリヒテルが甘んじて受けている為、主君に倣ってただじっと耐える。

 

「これまで幾たびも地球人達と戦ってまいりましたが、これまで地球侵略が遅々として進まなかった事実は、このリヒテルの力が不足していたからこそ。バーム十億の民に対して、詫びようも無き失態に他なりませぬ」

 

 隙あらばリヒテルを抹殺してしまいたいオルバンにとっては、リヒテルが自ら付け入る隙を曝け出すかのような発言だ。

 餌とも言えるリヒテルの発言に食いついたオルバンは、リヒテルがバームの民に対しては詫びても、自分に対して詫びるとは口にしていない事に気付かない。

 

 すっと、オルバンの瞳が危険な光を宿して細まるのを、リヒテルが気付かない筈もないが、彼は構わず言葉を続ける。

 前大元帥の子息である自分に向けられたオルバンの殺意と、妹エリカへと向けられる邪な感情など、地球人への憎悪で瞳を濁らせていないリヒテルにはとっくの昔にお見通しであった。

 

「またこれまで我々を阻んできた最大の敵たるDCが部隊を分けている状況を利用し、このリヒテル、己が身命を賭して決戦を挑む所存にございます。彼らに勝利しない限り、二度と小バームの地に生きて帰ろうとは思いませぬ」

 

『ほほう、決死の覚悟ということか?』

 

「はは。かくなる上は海底魔城の全戦力を持ってDCを討ち、地球人共と他の諸勢力、そしてラオデキヤ皇帝陛下にバームの武威を示して御覧に入れましょう。バームの敵を討つ為ならば、このリヒテル、命など惜しくはありません」

 

『うむ、見事な覚悟だ。それでこそバームの誇る提督、リヒテルである。病床に伏しておられるお前の父君も、その覚悟を知ればお喜びになるであろう』

 

「ありがたきお言葉にて。つきましては恐れながらオルバン大元帥におかれましては、叶う限りの戦力の増援と銀河列強連合の同盟者達へ、作戦への協力に関する根回しをお願いしたく」

 

『フム。忌まわしいDCを討つ好機となれば同盟者達もいくばくかの戦力を提供してくれるだろう。よかろう、お前のその覚悟に応えるべく、わしも全力を尽くすと約束しよう』

 

「ははぁ!」

 

 そうして深々と頭を下げるリヒテルの姿に下劣な優越感を抱いて、オルバンは今回の通信を終わらせるのだった。

 オルバンとの通信を終えた後、リヒテルと彼が信頼を置くライザとバルバス、そして親友にしてバーム最高の科学者であるアイザムは、オルバンの余計な目と耳を徹底的に排除した隠し部屋で決戦に備えた打ち合わせを行っていた。

 

「さて、言葉通りオルバンは銀列連の勢力に増援を求めると思うか?」

 

 円卓を囲む四人の中で口火を切ったのはリヒテルだ。オルバンを呼び捨てにし、声にはバームの指導者に対する敬意はない。それはこの場に居る全員に共通している。

 リヒテルは和平派のメルビらと協力して情報を集め、リオン大元帥が昏倒したのはオルバンの手回しであり、コールドスリープしているバームの民へ洗脳手術を施すという計画の一端を掴んでいた。

 

 しかしながら、小バームで目覚めている兵士達はほぼ全員がオルバンの息のかかった者達であり、リヒテルと和平派が結託してもバームの情勢を覆すのは困難な状況にある。

 加えてバサ帝国の圧倒的な武力は健在であり、仮にオルバンとリヒテル、和平派が完全に結託して力を一つにしたとしても、勝ち目はないのが現実だ。

 だからこそリヒテルはバームの命運を自分達以外の誰かに委ねる賭けに打って出るつもりだった。情けなさと他者にバームの民の命運を背負わせるという引け目は、今もリヒテルの胸の中を恥辱の炎で焼き焦がしている。

 

「恐れながらリヒテル様の戦死を狙い、その事を言い含めた者達と捨て駒前提の無人機をそれなりが精々ではないかと」

 

 愛するリヒテルの死を願うオルバンへの怒りを滲ませて、ライザはあくまで冷静に分析した結果を口にする。リヒテルの副官として、正確な分析をしなければ矜持に悖る。

 

「だろうな。ならば来るとしてキャンベルからはダンゲルかワルキメデス、ボアザンからはド・ベルガン、ベガからはブラッキーあたり。それか機体だけを寄越してくるだろうが、ふ、その方が余にとっては都合がよいがな」

 

 リヒテルはあくまで冷静に事態を見ている。リヒテルはともかく海底魔城を失うリスクを考えれば、オルバンもそれなりの被害をDCに与えたいはずだ。ならば相応の戦力の派遣を銀列連に求めるだろう。

 ともすれば、大量破壊兵器を使ってリヒテルとDCを纏めて吹き飛ばそうとしてくる可能性もある。

 

 いずれにせよろくでもない上司を持ったのは間違いない。ボアザンの皇帝ズ・ザンバジルとさてどちらがマシだろうか。

 リヒテルが我が身を省みない境地に達したが故の潔さを持っている姿に、バルバスは一抹の悲しさを覚えながら主君に意見した。

 

「リヒテル様、では手筈通り増援の到着を待ってDCに宣戦布告をし、海底魔城を浮上させて決戦を行う。この流れに変わりはございませんか?」

 

「ああ。手心を加える必要はない。決死の覚悟を固めた我らを倒せぬようでは、バルマーを打倒するなど夢のまた夢。我らを倒せてこそ、DCと地球人類にバーム十億の民の未来を託せるのだ」

 

 悲壮なリヒテルの決意にバルバスは熱いものが瞳から零れそうになるのを堪えなければならなかった。一方でライザは副官である以上に、愛するリヒテルが死を覚悟している事実に悲しみ、なんとしてもこの方を生かしたいと決意していた。

 二人の部下が悲壮な雰囲気を纏う中で、アイザムだけはいささか纏う雰囲気が違う。リヒテルが敗北を視野の大部分に入れて話を進めているのが、気に食わないのかもしれない。

 

「リヒテルは半ば敗北を覚悟しているようだが、俺は最初から負けるような兵器を開発はしない。逆にDCを倒して俺達の手でバームをバルマーから解放する事になっても、恨み言は聞かんぞ?」

 

「ふふふ、そうだな。それでこそバームの誇る天才科学者アイザムだ。これほど頼もしい言葉はない。むろん、余とて勝てる勝負をむざむざ捨てるような真似はせん」

 

 例え地球とバームの橋渡しを妹エリカやメルビらが担い、安心してバームの民の将来を託せるとしても、リヒテルは決して手を抜いた戦いなどはしない。

 自分達の総力を挙げた戦いに勝てないようでは、オルバンの軍勢やバサ帝国を相手に勝つことなどできやしないのだから。

 

 

 光子力研究所と新早乙女研究所の危機を乗り越え、日本各地を襲っていた地下勢力の撃退も済んだ極東支部のトレーニングルームの一つ。

 DCメンバーが利用している中、グラブもヘッドギアもなしに素手で模擬戦をしている二人に周囲の人々の視線が集中している。獣戦機隊の亮をはじめ、腕に覚えのある者は特に顕著だ。

 

「はあ!」

 

 一撃一撃が高い精度と威力を併せ持ち、それでいて火を噴くような連撃として放っているのは闘将ダイモスのパイロット竜崎一矢。

 

「ふん、せぇい!」

 

 一矢の繰り出した攻撃の数だけ相手を昏倒させる連撃を受け、捌き、いなし、避けているのは元バームの武術指南ガーニィ・ハレック。

 攻守所を激しく入れ替えながら、地球とバームの武道家同士の手合せは熱を上げ、しかし両者の思考は凪いだ水面のように落ち着き払っていた。そうして見る者の胸も熱くさせる武の応酬はおおよそ十分ほどで終わりとなった。

 

 予め決めていた時間が経過したのを知らせるブザーが鳴り、次の一手を探っていた一矢とハレックは互いに構えを解いて、ゆるゆると息を吐いた。

 二人の足元には大量の汗が滴り落ちて、両者の体力が著しく削られていたのを証明する。わずか十分、されど全身全霊を賭した十分だった。

 もしこれが命懸けの戦いであったなら、どちらかが、あるいは双方が命を落としてもおかしくないほど実力が拮抗していたからこその激闘である。

 

「相変わらず恐ろしくなる技の冴えだな、ハレック。もっとも手強いのは棒術だが、それ以外もすべてが超一流だ」

 

 流竜馬やひびき洸とよく似た声の一矢からの称賛に、兜甲児や葉月孝太郎とよく似た声のハレックは同じく称賛の言葉で答えた。

 

「それはこちらの台詞だ、一矢。お前の拳に宿る気迫と力強さには、何度となく羽が震えたぞ」

 

「お前に負けてはいられないからな。お互いに助け出さなければならない人が要る以上は、猶更な」

 

 一矢にとっては行方知れずのままの愛するエリカを、ハレックにとってはバサ帝国に支配され、オルバンの欲望のままに蹂躙されているバーム十億の民を守り、助け出さなければならない。

 その為に一矢とハレックはお互いが肩を並べる戦友である事実を、心の底から頼もしく思っていた。

 そうして二人が自分達の戦いの意味を改めて噛み締めている間にも、二人の手合せを見学していた者達の中から次は自分だ、と名乗りを上げる者達が現れる。

 

「頼もしい仲間は他にもたくさんいるな」

 

 そう告げる一矢にハレックは当たり前のように同意した。バーム星人たる彼にしても、地球人の戦友達を仲間だと認めるのに、既になんの躊躇いもなかった。

 

「ああ。それがどれほどの幸運であるか。リオン大元帥が今もバームの指導者であらせられたなら、地球とバームの平和の為に共に手を取り合い、バルマー・サイデリアルとの戦いに踏み切られたであろうにな」

 

 ハレックはそう思えばこそ、ラオデキヤに尻尾を振りながら己が野望の為に小バームに眠る民を犠牲にするのを厭わないオルバンに対して義憤の炎を激しく燃やし、その走狗とならざるを得ないリヒテルに悲しみを覚えざるを得ない。

 そうして彼らが寸止めルールの手合せを思う存分に堪能した頃、リヒテルからの宣戦布告が伝わるのだった。

 

 一矢とハレックをはじめ、DC地上部隊の指揮官達と岡長官が詰める司令室のモニターにはリヒテルの姿が映し出され、その両脇をバルバスとライザが固めていた。

 これまで何度も戦い打ち倒してきた相手だが、今までにはない悲壮感を伴う雰囲気に一矢とハレックはリヒテルが不退転の覚悟を抱いているのを察する。

 

『精強なる地球人よ。その中でも特に勇者と称賛するべきDCの者達よ、聞くがいい。余はバームの栄えある提督リヒテル。バルマー・サイデリアル連合帝国皇帝ラオデキヤ陛下とバームの指導者オルバン大元帥の命により、地球攻略を任されし者だ』

 

 相互通信ではなくリヒテル側からの一方的な通信である為、岡長官やバン・バ・チュン、葉月博士も応答する事はなくリヒテルの言葉の続きを待つ。

 

『今日に至るまで我々バームのみならず、数多くの勢力からの攻撃を受けながら自らの母星の主権と領土を守り続けてきた貴殿らの勇猛なる戦いぶりは、敵ながら天晴という他ない。

 そしてこの海底魔城の全戦力と同盟者よりの援軍をもって、貴殿らに最後の戦いを挑む! この海底魔城こそは地球に築いた我らの拠点。このリヒテルをはじめ、バームの諸兵全てが決死の覚悟で戦いに臨もうぞ。

 我らを恐れぬのならば、DCの勇者達よ、この海底魔城に来るがいい! 地球人にとって忌むべき侵略者である我らを討つ好機であり、我らにとっては地球征服を阻む大敵たるDCを討つ絶好の機会。

 特にダイモスのパイロット、竜崎一矢、そしてガーニィ・ハレックよ! お前達とDCの到来を海底魔城にて待つ!』

 

 一方的な宣戦布告を終えたリヒテルが通信を切り、モニターが黒くなるのと同時に一矢は傍らのハレックに話しかけた。

 

「どうやらリヒテルは本気で最後の決戦を挑む覚悟らしいな」

 

「ああ。オルバンから戦いを強要されて、もはや後がなくなったのか。あるいは本気でDCに勝つ算段がついたのか」

 

 アイザムの合流後にバームが運用を始めたメカ戦士は強力だが、それでもDCのスーパーロボットやゾイド、さらについ先日加わったマジンカイザーと真ゲッターロボを考慮すると、とてもではないがアイザムに勝ち目はない。

 

(となれば地球人の力を計る最後の物差しとして、ご自分の命をお使いになるつもりか、リヒテル様。……メルビ様やエリカ様にお知らせするべきかもしれん)

 

 

 海面に浮上した海底魔城の周囲にはコブラード、ガルンロールをはじめとした艦隊の他、ベガ、ボアザン、キャンベルから派遣された各機動兵器と艦艇が姿を並べているが、幹部級の指揮官は一人もいない。

 一定の距離を保って地球連邦海軍が監視を続ける中、リヒテルは彼らへの手出しを控えていた。海戦系のモビルゾイドと飛行可能なモビルスーツ、モビルゾイドで部隊を編成した彼らも、それなりの強敵ではあるがやはり本命はDC地上部隊だ。

 それにいずれはバサ帝国と戦う地球の戦力を徒に消費するわけにもゆかない。

 なお余談であるがコロニー落としが阻止されたことにより、この世界の連邦海軍は原作の宇宙世紀に比べてはるかに艦艇と人材を多く残している。

 

 既にリヒテルはアイザムと共にアイザムの開発した中では最強のメカ戦士ギメリア二機に加え、ライザとバルバスの乗るゾンネカイザー他、量産型のゾンネカイザーとビッグフラッシャー、戦闘ロボもズバンザーやダリといったお馴染みの機体に加えてダムダ、グランゲイルの姿もある。

 そこに各勢力の兵器が加わった重厚な布陣だ。バサ帝国からもお馴染みの機動兵器が加わっているが、真ジオン系のMSの姿はない。

 獅子のような獣の下半身と戦士の上半身を持つギメリアのコックピットの中で、リヒテルは海底魔城を中心として布陣した自軍の顔ぶれを見て、偽りのない本音を口にした。

 

「余計な口出しをする者がいないのは、好都合だな。ふ、むしろ清々するわ!」

 

 ここを自分の死地と見定めているからか、リヒテルの顔には言葉の通りの清々しさが見て取れる。こうして集まった戦力は機動兵器だけでもゆうに数百、艦艇も二十隻以上を数え、海底魔城の防衛設備と合わせて戦えば、相当なものだ。

 DC地上部隊を相手にしても、千に一つか、万に一つくらいの勝機はあるだろう。太平洋に展開しているデススティンガーや周囲の連邦海軍が加われば、その勝機はたちまちの内にゼロになってしまうが。

 

「しかしオルバン大元帥がゲロイヤーをはじめ、部下を派遣してこなかった事が気掛かりでございます。この戦いの最中になにか小細工をしているのか、あるいは最悪の横槍をしてくる可能性が……」

 

 ライザの懸念はもっともだった。オルバンとしてはこの戦いでDCとリヒテルをまとめて始末したいはずだ。腹心のゲロイヤーや秘密警察の手の者を派遣しなかったのは、その観点から考えれば不自然極まりない。

 アイザムもまたライザの懸念に同意し、万が一の事態に備えて用意しておいたある機体を脳裏に思い描きながら口を開く。

 

「我々が勝利したとしても、不慮の事故か相討ちになったとして始末しようとするか、あるいは次の戦いに備えた捨て駒として利用するのが関の山だろうな」

 

 つくづくろくでもない指導者に恵まれてしまったものだ。ユーゼスに目を付けられたのが不幸の始まりではあったが、その運命を変える為に今、リヒテル達は地球人頼みではあるものの出来得る限りのことをしようと足掻いている。

 原作では後半も後半、オルバンの所業の数々が暴露されても頑なに地球人類を信じようとしなかったリヒテルだが、この世界では最初から理不尽に侵略行為を仕掛けているという負い目と、自分達がバサ帝国に襲われた時よりもはるかに頑強に抵抗している地球人の姿に明確に敬意を抱いており、態度はまるで正反対だ。

 

「リヒテル様、DCの艦隊です。北西7-9-4ポイントより大型熱源複数が高速で接近中。警戒に出していたメギロートとデイモーンが既に五割を切っております!」

 

 DCの馬鹿げた突破力と攻撃力には慣れたバルバスも、会敵から一分と断たずにメギロートらを見る間に減らして行く現実には思わず冷や汗が出る。

 DC地上艦隊の母艦はウルトラザウルス、ガンドール、キング・ビアル、マグネバードの四隻。ウルトラザウルスのグラビティカノンによる長距離砲撃もそうだが、所属する多数のスーパーロボット達の圧倒的な攻撃力と連携こそが何よりの脅威だ。

 

「行くぞ、アイザム、ライザ、バルバス! この一戦に我らの命運、そしてバーム十億の民と地球人類の未来を賭ける!」

 

 気合の炎が燃え盛り、気力が150に達しているリヒテルらに対して、DC各艦隊から出撃した機動兵器の中で先陣を切ったのは、バームと最も縁の深い一矢の闘将ダイモス、ハレックの烈将フォボス、さらに京四郎専用にカスタマイズされた日本刀装備のマルス、ナナの乗るノーマル仕様のマルス。

 そして徹夜で酷使した心身を回復させた鉄甲鬼が完成したばかりの真メカ鉄甲鬼に乗り込み、真ゲッター1と競い合うように飛び出している。

 

「バーム星人がどんな企みをしていようと、俺と俺の真メカ鉄甲鬼が打ち破ってやる。竜馬、隼人、弁慶、よく見ていろ。お前達の真ゲッターロボに決して負けてはいないと、この戦いで証明する!」

 

「やれやれ、鉄甲鬼の奴、まだ徹夜明けのテンションが抜けていないんじゃないのか」

 

 隼人は普段の鉄甲鬼よりも随分と血気盛んな様子に、呆れた声色になっている。自分達も初めて真ゲッターロボに乗って戦った時は、熱に浮かされたような状態だったが、今の鉄甲鬼にはそれに近いものを感じる。

 

「まあまあ、そう言ってやるなよ。戦って頭に上った熱を吐き出せば、いつもの鉄甲鬼に戻るさ。今はちょっと自分の愛機を自慢したくって、そればっかり考えているだけさ」

 

 鉄甲鬼を擁護する弁慶だが、彼の言葉が鉄甲鬼の耳に届いていたら余計なお世話だとかえって鉄甲鬼は更に頭に血を上らせたかもしれない。

 百鬼帝国時代にはヒドラーの横槍によって不完全な鉄甲鬼でゲッターロボGと戦わざるを得なくなり、百鬼帝国を去った後は不完全な愛機を元にした量産型をコピーされ、これまで溜め込んでいたフラストレーションが真メカ鉄甲鬼の完成をきっかけとして大爆発を起こしてしまったのだ。

 

「とにかく真メカ鉄甲鬼がどれだけ凄まじいロボットだとしても、今日のバームはこれまでと違う気迫がある。俺達も油断はしていられないぞ」

 

 真ゲッターロボは初陣以降、過剰なゲッター線の放出は止み、竜馬達のコントロールに素直に従っている。だがゲッターの真理に触れた竜馬達は、真ゲッターロボが今度は自分達がどこまでやれるのかを見ているのだと、言葉にするまでもなく理解していた。

 そして新たな力に試されていると感じているのは、ゲッターチームばかりではなかった.

 魔神皇帝を手にした甲児もまた最新にして最強のマジンガーを破壊の悪魔にするのか、救世の神にするのかと、当のマジンカイザーから常に問いかけられていると感じていたのである。

 

「マジンカイザー、お前を悪魔にも神にもしない。それは変わらない。だけど、お前は……真ゲッターロボを警戒しているのか?」

 

 マジンカイザーが意志を表明したわけではない。だが、鉄也と並びもっとも熟達したマジンガー乗りとして、甲児はまだ生まれたばかりのマジンカイザーが新たなゲッターロボを強く意識しているのを、カイザーパイルダー越しに感じていた。

 リヒテル達の思惑とは別にDC地上部隊の各員もまた、新たな力に対する覚悟を問われながら、今まさに海底魔城の決戦の幕が切って落とされようとしていた。

 

<続>

■真メカ鉄甲鬼が開発されました。

 




今年一年、大変お世話になりました。
ここまで長く続くとはまったくもって予想外ですが、なんとか完結までは漕ぎつける予定ですので、また来年もご愛顧いただければ幸いです。
お付き合いくださっている皆様のご多幸をお祈り申し上げます。


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第九十三話 ゲロイヤーの不運

意地を見せるリヒテル、案の定のムーブをするゲロイヤー。それを予測していたヘイデスと地球連邦の打った布石。今回はざっとこんな感じです。


アンケートについて、説明を間違えていたので一旦削除いたしました。一度、ご投票いただいた方には申し訳ありませんが、再度の投票をお願いいたします。


 海底魔城を包囲する連邦海軍の輪から進み出たDC艦隊は、旗艦をバン・バ・チュンが艦長を務めるウルトラザウルスとし、リヒテルとの決戦に臨んでいた。

 海域到達までは空を飛んでいたウルトラザウルスが徐々に降下をはじめ、大きな波を立てながら海面へと着水し、速度も落として行く。

 既に他の艦からも艦載機が出撃をはじめ、何時でも戦いの火蓋を切って落とせる状態だ。

 

 ミノフスキー粒子が戦闘濃度で散布される中、海底魔城から要塞砲と長距離ミサイルの雨が歓迎の合図となって降り注いでくる。

 各艦が高度を上げるなり、バリアを張るなりして対処する中で、足を止めたウルトラザウルスの周囲には半球形の重力場が展開されて、海水と共に降り注ぐビームやミサイルを悉く遮断する。

 ウルトラザウルスの艦橋に映し出される海底魔城を背にした敵軍の姿を睨み据えて、バン・バ・チュンは事前の打ち合わせ通りの行動を取った。

 

「予定通りグラビティカノンで機先を制する。機動兵器部隊はグラビティカノン発射後、戦線を押し上げろ」

 

「グラビティカノン、バレル展開」

 

「ブラックホール弾頭装填。超重力発生時刻設定終了」

 

「起動予定ポイントはE-9-85、効果範囲は以下の通りです」

 

 バン・バ・チュンはモニターに映し出される効果範囲とそれに含まれる敵機の数を確かめた後、すぐに獅子が吼えるかのような声で命令を発した。

 

「グラビティカノン、撃てえ!!」

 

 ウルトラザウルスの左舷に装備されたグラビティカノンの長砲身バレルが上下に展開し、超重力を発生させる砲弾が黒い雷を散らして発射される。

 放物線を描きながら高速飛翔するグラビティカノンの砲弾を、バーム側は見逃さない。

 DCの艦艇・機動兵器の保有するMAP兵器について、侵略者達は神経を尖らせて警戒しており、海底魔城の各所とガルンロール艦隊から砲弾を撃ち落とす為のミサイルとビームが乱舞する。

 

 雨のように発射されたビームの一つが砲弾を撃ち抜き、バーム軍先陣の頭上で破壊された砲弾は不完全ながらも超重力を発生させ、射程範囲内に居たデイモーンとメギロード、ズバンザー数十機が、装甲を紙屑のようにぐしゃぐしゃに潰されて爆散する。

 だがバームも守勢に回るだけではない。地上侵略の重要拠点を浮上させ、決戦の構えで待ち受けていたのだ。スーパーロボット軍団をもてなす用意は十分にしてある。

 

 海底魔城の動力炉からエネルギー供給を受ける要塞砲、海底に設置されていた砲台やミサイル発射装置が一斉に稼働し、海面を行くウルトラザウルスや空中のガンドール、キングビアル、マグネバードへ向けて殺到する。

 圧倒的な戦闘力を誇るスーパーロボットを戦場で好き勝手に暴れさせないコツは、彼らを守りに専念させることだ。母艦への集中攻撃はその例の一つである。

 

「ガルンロール各艦は敵艦隊への攻撃を続行せよ。地球人の機動兵器は一切無視して構わん! スカールーク艦隊はドリルを展開、敵艦隊に吶喊! 各機はスカールークを援護するのだ!」

 

 リヒテルの号令に従い、対艦攻撃のみに用途を絞られたスカールークの艦隊がワープアウトして、DC艦隊の左右から防御を捨てた特攻を仕掛ける。

 ボアザンから提供された無人艦のスカールークは、ドリル攻撃と特攻のみを想定した改造が施されており、推力と装甲の強化に重点が置かれて、ドリル以外の武器は一切搭載していない潔さだ。

 

 機動兵器、艦隊、拠点の三要素からの飽和攻撃は、わずかにDCの進行速度を鈍らせた。

 既にDCの反撃は始まっている。海面が凄まじい勢いで渦を巻き始め、勢いを緩めることなく激しさを増して天と海を繋ぐ竜巻となる。

 まるで複数の龍が荒れ狂っているかのような、常識外れの光景を作り出した張本人が海底から勢いよく飛び出した。

 

「真ゲッター3のゲッターメイルシュトロームは、名前が長いだけじゃなくって威力も一味違うぜ! ワハハハハハ!」

 

「ふん、俺の真メカ鉄甲鬼のオーガサイクロンもあってだろう!」

 

 多種多様な機動兵器の集うDCでも水中戦のエキスパートを問われれば、真っ先に名前の挙がる真ゲッター3と全領域のスペシャリストとして完成した真メカ鉄甲鬼である。

 海底に配備されていた各勢力の機動兵器と防衛兵器を瞬く間に血祭りにあげ、それらの残骸を含んだ大竜巻と大渦を四方数海里の海に発生させていた。

 

「海の中は真ゲッター3の天下だって思い知らせてやる!」

 

 水を得た魚と言わんばかりに得意満面の弁慶が意気揚々と次の敵を求めて真ゲッター3を突撃させる中、鉄甲鬼もまたライバルとして見るゲッターチームと真ゲッターロボに負けまいと、闘志を燃やす。まだ徹夜明けのハイテンションが尾を引いているのかもしれない。

 

「それはどうかな? 真メカ鉄甲鬼の本領はまだまだこれからだ!」

 

 競い合うようにして真ゲッター3と真メカ鉄甲鬼が再び海中に潜り、残る敵機と設備の破壊に精を出す。グレイゲッターポセイドンと武蔵こそ不在だが、こと海中での戦闘ならば、この二機に任せておけばまず心配はあるまい。

 大竜巻の発生によって大気の動きが激変し、空中戦を行っていた両陣営の機体の動きが崩れる中で、いち早くDC側が状況に対応して攻勢を強める。

 

「こっちだってパワーアップしてんだ。スカールークがちょっとやそっと固くなったくらいで、どうにか出来ると思うなよ! 超電磁スピン・ファイナルストライイイク!!」

 

 真ゲッターロボやマジンカイザーに先んじてパワーアップを果たしたコンバトラーV6は、艦隊に迫りくるスカールークのドリルに正面から突っ込み、相手以上の高速回転と超電磁パワーによってそのまま貫いて、スカールークの後頭部から抜け出す。

 豹馬はそれだけで終わらせるつもりはなく、空中で弧を描くと更に二度、三度と強化されたスカールークの装甲を穴だらけにしていった。

 

「よおし、俺達もやるぞ、晶、合わせてくれ!」

 

「はい! 照準セット、チェンジ・ゴッドバード!」

 

 コンバトラーV6の活躍に奮起して、洸のライディーンと晶のサイコザマンダーがそれぞれゴッドバード形態へと変形し、超能力でリンクした二人は完璧なコンビネーションで他のスカールークに突っ込み、こちらも穴だらけにしてゆく。

 他にもザンボット3×3がキングビアルの甲板の上に降り立ち、両脇に抱えたイオン砲二門を連射してスカールーク以外にも特攻を仕掛けてくる無人機を片っ端から撃ち落としている。

 

 マジンカイザーとグレートマジンガーのWマジンガーの活躍も目覚ましく、ボルテスⅦとファイナルダンクーガ、アンジュルグ、アンジュルグノワール達と共に艦隊に群がる敵機を鉄壁の守りと化して寄せ付けない。

 海中で暴れ続ける真ゲッター3と真メカ鉄甲鬼をそのままにすれば、最悪、海中から海底魔城を破壊される恐れがあり、バーム側はそれなりの戦力を海中に回さなければならず、海中からDCを攻撃という選択肢が早々に潰された形になる。

 

「ファイナル・・・・・・」

 

「ビィーム!!」

 

 ジェス達の二体のグルンガストもブラックホールエンジンの生み出す膨大なエネルギーを活かし、メカ戦士やベガ獣、マグマ獣といった各侵略者の上位機種を相手に真っ向から返り討ちにしている。

 大部分の機体は母艦を守りながら、一部のスーパーロボットがバームの本陣を貫く槍となるべく突出し始め、余裕のある機体は援護に回る。

 真メカ鉄甲鬼ほどではないが、改造された真メカ白骨鬼、真メカ胡蝶鬼、真メカ地虫鬼といった百鬼メカ達も奮闘していた。

 

「お、おのれ、部隊を分けてなおこれだけの力を持つのか!?」

 

 目の前で繰り広げられる一方的な戦いに、ゾンネカイザーの中のライザの声は震えていた。これまで散々思い知らされたが、改めて戦場で直に感じると地球のスーパーロボットの脅威度は別格だ。

 バームも銀列連とバサ帝国から戦力の供給を受けて、数百単位の機動兵器を用意して待ち構えていたが、度重なる戦闘による技量の向上と最大限改造を施された機体を駆るDC側の戦闘力は、かつて小バームを蹂躙したバサ帝国を思わせる。

 ライザと違い、リヒテルはそれでこそと勇猛な笑みを浮かべて、ギメリアの操縦桿を握る手に力を籠める。

 

「臆するな、ライザよ。こうでなくては余が命運をかけて戦いを挑む価値がない! それに、来るぞ、我らの宿敵が! バルバス、アイザム、奮起せよ! ダイモスとフォボスだ!!」

 

 バーム本陣を貫く槍はやはりダイモスとフォボスの二機をメインに、アルトアイゼン、ヴァイスリッター、ペルゼイン・リヒカイト、ソウルゲインによって構成されていた。

 

「リヒテル、お前は!」

 

「言うな、竜崎一矢! 余はお前の父を傷つけ、地球に争乱を招いた張本人よ。貴様は全力をもって余を討つことだけを考えるがいい!」

 

 群がる戦闘ロボとメカ戦士を相手取りながら、一矢はわずかな迷いを抱いていた。それでも体は戦いに対応して、三竜棍を操ってダリの頭部を次々と打ち砕き、ダイモガンとファイブシューターの併用でズバンザーとエスリム、ティアマートを次々と撃墜して行く。

 そしてダイモスと背中合わせになり、京四郎やナナのお株を奪う連携を見せるフォボスのパイロット、ハレックもまたリヒテルの覚悟をひしひしと感じ取り、一瞬だけ、悲しげに眉根を潜めていた。むろん、周囲の敵に対する攻防は淀みのないものであったが。

 

「一矢、今は戦いに集中するのだ。リヒテル様のあの覚悟、こちらに迷いがあっては不覚を取る!」

 

「分かった、ならば!」

 

 フォボスが膝を抱えるようなポーズになり、その足裏にダイモスが拳を突っ込む。フォボスはダイモス二号機であると同時に、ダイモス専用の強化クロー“ダイモス・ゴッドハンド”を脚部に内蔵している。

 

「ダイモォオス・ゴォッドハァアンドォ!!」

 

 癖のある独特な一矢の叫び声と共にフォボスの足から引き抜かれたダイモスの手には鋭いクローが装着され、拳を用いた格闘戦での攻撃力を高める。

 

「この戦い、全身全霊で行くぞ、リヒテル!」

 

「それでよい。よいのだが、竜崎一矢!! そしてハレックよ、バームを離れ、地球に着いたからには中途半端な真似は許さん! 貴様にはどれほどの覚悟がある!」

 

 機体越しにも噴き出す炎のような闘志を見せるリヒテルに、バーム随一の戦士たるハレックはその真意を悟り、悲壮の色を拭い去る。

 そしてこの場に相応しき闘志の色を浮かべ直す。それこそがリヒテルの心意気に応える最善の選択肢であるとハレックは理解したからだ。

 フォボスはダイモスに比べるとやや武装が少なく、背中にはバーム星人のような翼がある。まさにバーム星人用のダイモスといったフォルムだ。そのフォボスに食らいついてきたのはアイザムの乗る二機目のギメリアだった。

 

 ギメリアはライオンのような下半身に獣人のような上半身、左手に盾、右手に鞭を持つ。

 頭部の角からはサンダーを、下半身のライオンの角からは破壊光線、更に反アイザロン粒子砲を持ち、外部からの干渉に対してほぼ無敵の超弾性金属を装甲に使っている点にある(原作では使用しているか不明だがこの世界のギメリアには使用されている)。

 原作では余命わずかなアイザムが身命を賭して完成させた生涯最高の傑作だが、この世界ではアイザムが元気モリモリである為、十分な心的余裕と時間、バサ帝国からの技術提供を合わせて開発されている。

 

 既に超弾性金属は加熱と冷却を瞬時に行う事で金属疲労を誘発させ、打倒可能であることが証明されている。

 アイザムは弱点の克服こそ叶わなかったものの、熱と冷却に対する耐性を高め、必殺烈風正拳突き改であろうとも極めて的確なタイミングでなければ、破壊できないという防御性能をギメリアに獲得させている。

 バルバスとライザのゾンネカイザーも強化された特別な機体だが、その他の人工知能が操作しているゾンネカイザーやビッグフラッシャーに関しては、通常の超弾性金属仕様だ。

 

「お前があの名高きガーニィ・ハレックか! 早々に地球の側に着いたと聞いていたが、ダイモスの同型機のパイロットとは驚いたぞ!」

 

「貴方こそ、あのアイザム博士が自ら前線に出るとは驚きだ。リヒテル様のご学友と聞いていたが、なるほど、この勇猛さならば納得の話だ」

 

「ふ、この俺の開発したギメリアの性能を完全に引き出せるのは、開発者であるこの俺自身という話よ! ダイモスの同型機ならば反アイザロン粒子砲は天敵と知るがいい!」

 

 ギメリアを四つ足形態から翼の生えた二本足形態へと分離・変形させるアイザムに対し、ハレックは自身も得意とする棒術の獲物──三竜棍を連結させて一本の棍とし、ギメリアと対峙する。

 

「参られよ。このガーニィ・ハレックとフォボス、バームの武術と地球の科学が一つとなった力を教えてしんぜる」

 

「面白い。ならばこのアイザムの知識、バームの科学の方が貴様と烈将フォボスとやらに勝るかどうか、試すとしようか!」

 

 一矢とリヒテル、ハレックとアイザムがこの戦場でもっとも熱い戦いを始めた頃、ダイモスとフォボスに続いた各機もバルバスとライザの率いる部隊と交戦を始めていた。

 アイザムの存在はバルバスとライザにとって自分達の立場を脅かす危険なものではあったが、リヒテルの無二の親友であるのは確かだし、バサ帝国の支配下に於いてはバーム独立の為に有用極まりない人材である。

 その為、彼らは嫉妬心やらなんやらを抑え込み、こうしてアイザムの開発したメカ戦士に乗って戦っている。

 

「ダイモスとフォボスが無ければ、いかにDCでもこのゾンネカイザーの超弾性金属の装甲は破壊できないはず!」

 

 残るガルンロール艦隊の援護砲撃を受け、ライザは直属部隊を動かしながら、本音では頼りたくないアイザムの開発した機体を信じるしかなかった。

 何が仕込まれているか分からない事から、二人やリヒテル達の直属部隊は、海底魔城の工場で厳重な監視下の中、製造されたバーム系列機のみで編成されている。

 オルバンやゲロイヤーから送られてきた戦闘ロボや贈与された他勢力の機体は、スイッチ一つでリヒテル達の首を狙う刺客に早変わりする可能性が、決して低くはないという世知辛い事情の為だ。

 

「ズバンザー第一から第七部隊は左翼に展開しているソウルゲインとアルトアイゼンを狙い、足止めせよ! グランゲイル、ダリ、ビッグフラッシャーは我に続け!」

 

 バルバスが指示に忠実に従う無人機達を従えて、超弾性金属を頼みに二体のスーパーロボットを標的に定めた。

 従来の戦闘ロボを足止めに用い、メカ戦士を攻撃の要とするバルバスの采配は手持ちの戦力を有効に活かしたものだろう。だからこそ優秀な指揮官の揃うDC側にも予想が着きやすい。

 後方から追いついたマジンカイザーとグレートマジンガーが、ソウルゲインらの前に飛び出して、口部から強酸を含んだ竜巻を放つ。

 

「ルストトルネード!」

 

「グレートタイフーン!」

 

 Wマジンガーの放った竜巻にズバンザーの砲撃も巻き込まれ、竜巻の効果範囲内に居た戦闘ロボ達が次々と溶かされ、吹き飛んでゆく中、バルバスはまだ余裕があった。

 彼のゾンネカイザーを含め、超弾性金属を使った機体は強酸にも耐えられるからだ。もっとも、あまりの竜巻の勢いに推力と出力を全開にして、その場で耐えなければならず、動きを拘束されるのは完全に予想外だったが。

 

「グランゲイルはもたんかっ。だが、このゾンネカイザーとビッグフラッシャーは……なに!?」

 

 バルバスの驚愕は無人機のゾンネカイザー達の装甲に大きな罅が走り、自身の機体にも装甲の急激な劣化を伝えるメッセージが表示された為だ。

 

「これは……マジンガーの竜巻に他のなにかが? ボルテスのグランドファイヤーとマジンカイザーの冷凍ビーム? それ以外にも、なにか!?」

 

 超弾性金属の攻略法が解明されれば、ダイモスばかりに頼る地球連邦ではない。MS用のオプション兵器として火炎放射器にマジンガー系の冷凍ビームを参考にしたフリーザーランチャーが開発され、対バーム戦では重宝されている。

 当然、この戦場にも持ち込まれており、ヴァイスリッターがオクスタンランチャーからフリーザーランチャーに持ち替えて、冷凍ビームを。アルトアイゼンはヒートホーンからホーンファイヤーを放射していたのだ。

 

 超加熱と超冷却によって膨張と縮小が急激に繰り返され、分子結合が崩壊して超弾性金属でさえ劣化は免れない。

 そうしてゾンネカイザー達の装甲が崩壊した頃合いを見計らって、ルストトルネードとグレートタイフーンの放出が止められる。その瞬間に駆け出したのは、ソウルゲインとアルトアイゼンだ。

 

「無人機なんぞにこの切っ先は見切れんぞ、舞朱雀!」

 

「そんな装甲では、貫いてくれと言っているようなものだな!」

 

 ソウルゲインの両肘のブレードが伸長し、柔軟な関節と莫大な推力、アクセルの技術の組み合わせによって爆発的な踏み込みを見せたソウルゲインに、傷ついたゾンネカイザーは対応できず、サイのような下半身と双頭の上半身の境目を次々と切り裂かれてゆく。

 アルトアイゼンもまた超合金ニューZ製のステークをビッグフラッシャーのクラゲ状の下半身に叩き込み、劣化した超弾性金属を呆気なく貫く。そこへ更に腹部の拡散ビーム砲と光子力ビームを叩き込めば、ビッグフラッシャーは大爆発を起こして撃墜された。

 

「く、もはや超弾性金属も切り札に成り得ないというのか!? おそるべし、地球人!」

 

 驚愕を隠せないバルバスのゾンネカイザーに襲い掛かる新たな影があった。咄嗟にゾンネカイザーの腕を巨大化させて殴りつけたが、相手はそれを掲げた腕で軽々と受け止めた。

 光子力研究所での決戦の後、改良型グレートブースターを装備したグレートマジンガーだ。二連装光子力エンジンと翼端にビーム砲を装備したグレートブースターとの合体によって、グレートマジンガーのパワーは格段に跳ね上がっている。

 

「やはり無人機とは反応速度が違う。お前がこの部隊の指揮官機だな?」

 

「まだだ。このバルバス、猛将の名に誓って、易々と敗れはせんぞ!」

 

「出し惜しみなしでこい。その上で俺達が勝つ!」

 

 鉄也はゾンネカイザーの巨大化した腕を引き千切り、ニーインパルスキックでゾンネカイザー下半身のサイの頭部、その鼻面を叩き潰す。

 まるで生き物のように慄いて下がるゾンネカイザーを必死に操り、バルバスはまだまだとビームランスを振り回してグレートマジンガーへと叩きつける。それをマジンガーブレードで受け止めて、一気に押し返す。

 全長九十メートルに達するゾンネカイザーは二十五メートルのグレートマジンガーと比べれば四倍弱の巨体だが、押し返せずに勢いよく押し込まれて、背後にいた友軍機を巻き込みながら吹き飛ばされた。

 

「グレートマジンガーの背中に、情報にはない装備? それがこのパワーの理由か。地球人め、どこまで強くなれば気が済むのだ!?」

 

「決まっている。お前達侵略者を地球から追い出し、平和を取り戻すまで、俺達はいくらでも強くなる!」

 

 それは侵略者に敗れ、小バームと守るべき民を支配されたバルバスにとって、胸を抉られるような言葉だった。そして、きっと、彼らはそれが出来るのだと、バルバスは根拠もなく確信していた。

 

 

 海底魔城における決戦の天秤が急速な勢いでDC側に傾く中、それを秘密裏に監視している者が居た。オルバンの腹心ゲロイヤーやボアザンのド・ベルガン、キャンベルのワルキメデスといった面々である。

 今回のリヒテル一派を囮としたDC殲滅作戦に協力した者達だ。マジンカイザーや真ゲッターロボといったDCの新戦力の凄まじさに顔を引き攣らせているが、それでも予定通りにDCが海底魔城に迫っている光景にほくそ笑んでいる。

 

『リヒテルとアイザムは意外に善戦しているが、戦局自体はやはりDCに押されているな』

 

 と鎧姿のド・ベルガンが客観的な評価を口にする。海域に事前に仕込んでいた無人砲台や機雷の類は早々に破壊され、提供した分を含む機動兵器部隊は見る間に数を減らしている。

数の差を考えれば、勝利しかありえない物量差なのだが、スーパーロボットとパイロットの圧倒的な質がそれを覆している。数多くの星を侵略してきた彼らにしても、この地球くらいでしかお目に掛かれない理不尽さである。

 

『ではゲロイヤー殿、そろそろ仕掛け時であるかな?』

 

 ワルキメデスは大敵であるコンバトラーV6を中心に、DC各機のデータを取りながらゲロイヤーに水を向ける。本作戦の主導はオルバンであり、オルバンの代理として通信を行っているゲロイヤーに今回の殲滅作戦の主導権がある。

 ゲロイヤーはいかにもな悪人面にあくどい笑みを浮かべて、邪魔なリヒテルを排除する絶好の機会が来たのを喜んだ。

 

「ええ。今こそ忌々しいダイモス、コンバトラーV6、ボルテスⅦ、そしてDCを壊滅させて、地球人類に絶望を与える好機。我らの栄光の第一歩の為に、奴らの滅びるさまをご覧あれ。くっくっくっく」

 

 通信を行っていた三名の中で、ゲロイヤーだけが現場に赴く算段だった。

 海底魔城とリヒテルを餌に誘い込んだDCを、海域外から大量破壊兵器を用いてまとめて抹殺する。言葉にすれば至ってシンプルな段取りによって、今回の殲滅作戦は行われている。

 使用されるのはキャンベルの核融合弾アースボムをベースに、威力を落としたものである。アースボムは地下のマグマ層に触れる事で核融合を起こし、地球を新たな太陽へと変えて破壊する兵器だ。

 これを地球製の核兵器よりも強大な破壊力を持った核融合弾頭として、予め設定した範囲内に破壊エネルギーをぶちまける代物へ改良している。

 

 通信を終えたゲロイヤーは複数のガルンロールを引き連れて、リヒテルらとの決戦が行われている海域の近くへとワープした。バルマーから提供されたワープ技術だ。

 海域を遠巻きにしている地球連邦海軍の包囲網のさらに外側で、ワープ反応は探知されているだろうが、速やかに戦闘にはならないよう距離を置いている。

 リヒテルのギメリアと一矢のダイモスが死闘を繰り広げている映像を正面モニターに映し、ゲロイヤーは今から消え去る彼らの姿を侮蔑と共に見ていた。

 

「ふふふふ、お前達の命はこのゲロイヤーの手の中……。ダーティーボムの発射用意を急げ!」

 

 アースボムをシンプルな大量破壊兵器へと転用し、ダーティーボムと名付けられた核弾頭はゲロイヤーのガルンロールのみに搭載されている。周囲のガルンロールはあくまで護衛だ。

 地球環境を大きく汚染する欠点はあるが、地球征服の為にDCの地上部隊は壊滅させられるとあればちっぽけな代償だ。少なくともゲロイヤーとオルバンはそう判断していた。

 ワープ反応を探知した連邦海軍は既に動きを見せていたが、ダーティーボムを発射したらさっさと逃げるつもりのゲロイヤーには大した問題ではない。

 連邦海軍はダーティーボムの効果範囲から外れているが、その余波で発生する津波に巻き込まれて追撃どころではなくなるだろう。

 

「ハハハハハ、オルバン大元帥に栄光あれ! 消え去るがいい、ダイモス、リヒテル! ダーティーボム発射!」

 

 兵士からダーティーボムの発射用意が整ったのを知らされたゲロイヤーは、欠片も躊躇せずにダーティーボムの発射を命じた。

 エイのようなガルンロールから発射された十発のミサイルが、破壊を撒き散らすべく決戦の行われている海域を目指して超音速で迫ってゆく。

 

 あれらがさく裂した時、DCもリヒテルも跡形もなくこの世から消え去るとゲロイヤーは確信し、発射して数キロのところでガルンロール艦隊後方から発射された荷電粒子砲に撃ち落とされる光景に、目を点にした。

 信管が作動するまもなく荷電粒子砲によって消滅させられて、推進剤が爆発を起こすのみだったのは地球環境にとって幸いだった。

 

「な、何が起きた!?」

 

 たまらず叫ぶゲロイヤーに対して、兵士達から悲鳴のような回答があった。

 

「艦隊後方、南南西五十キロの地点にデススティンガー出現! 先程の荷電粒子砲は、このデススティンガーからのものです!」

 

「あの忌々しいサソリか! 太平洋に展開しているのは知っていたが、なぜこうもピンポイントで我々の出現に合わせられる!?」

 

「げ、ゲロイヤー様! 更に北北東から超高エネルギー反応が急速に接近中です! ああ!?」

 

 今度はなんだ、とゲロイヤーが言うよりも早く、直径百メートルを超す巨大なビームの丸鋸四つが雲を切り裂きながら降り注いできて、ガルンロール二隻をあっさりと三つに切り分けてしまう。

 言葉もないゲロイヤーの瞳に頭上からゆっくりと降下してくるのは、全長400m超の巨大なギルベイダー。すなわちTVアニメ・ゾイドジェネシスに登場した要塞級超巨大ゾイド──ギルドラゴンの降臨である。

 陸のデスザウラー、海のデススティンガーに続く空を制するギルドラゴンが、遂に完成して戦場に投入されたのだ。

 

 ゲロイヤーが口にしたように、こうも都合よくデススティンガーとギルドラゴンが姿を見せたのには、もちろんタネがある。

 リヒテルの宣戦布告と合わせてオルバンとゲロイヤーのことだから、DCごとまとめて始末しようとするのは、スパロボプレイヤーのヘイデスにも地球に協力している和平派のバーム星人達も容易に想像が出来た。

 

 地球を欲しているオルバンであるから、惑星を破壊するか地形を抉るような兵器が使用される可能性は低い。そうなると核兵器か衛星軌道上からの大規模砲撃などを仕掛けてくるだろう。

 海底魔城に自爆プログラムが仕込まれている可能性はあるが、それはリヒテルらが自力で解除するか対策を講じているだろうし、DCとしても脱出する術は既に整えてある。

 

 戦闘海域外にワープしてくるだろうゲロイヤーに対し、すぐさま探知できるよう監視衛星を集中投入し、デッシュやプテラスといった哨戒機を大量投入して、出現位置をすぐに特定できるように手配。

 発見次第、超長距離砲撃可能なデススティンガーないしはデスザウラーで一撃を加える、というカウンター作戦が用意されていたわけだ。

 さらにギルドラゴンの完成が間に合ったため、今回、姉妹機であるデススティンガーと共同でカウンター役を担ったのである。

 

 ギルドラゴンがビームスマッシャーに続いて重力砲、ニードルガン、プラズマ粒子砲といった十倍以上のサイズに置き換えられた超兵器の発射用意を整え、艦隊後方を陣取ったデススティンガーも荷電粒子砲第二射の用意を終えている。

 ダーティーボムを撃って帰るだけの簡単な仕事、とタカをくくっていたゲロイヤーとその艦隊ではギルドラゴンとデススティンガーの相手など、どちらか片方でも出来るわけがない。

 

「り、離脱せよ! 緊急ワープだ。エンジンへの負荷など気にするな!!」

 

「は、はは! 各員、緊急ワープを行う。衝撃に備えよ!」

 

 土壇場で生死をかぎ分けるゲロイヤーの嗅覚は鋭い。彼が必死になって発した命令に、兵士達は反射的に従って再びのワープを強行する。

 十分なインターバルを置かずにワープすれば、エンジンへの負担は大きく、どうなるか分かったものではないが、このままでは確実に死ぬ未来しかないのだ。背に腹は代えられない。

 

 果たしてゲロイヤーの命運はここでは尽きなかった。無理をしてワープを行ったガルンロールはコンマ一秒の差で、荷電粒子砲やプラズマ粒子砲による死から免れたのである。

 ゲロイヤーのガルンロールがワープした後の空間を、砲撃の数々が虚しく貫いたのを確認した後、デススティンガーとギルドラゴンは悔しそうに唸り、まだ残っていた他のガルンロールへと牙を剥き、残る四隻を海の藻屑へと変えるのだった。

 

<続>

■ギルドラゴンが完成しました。

 

デスザウラー、デススティンガー、ギルドラゴンが完成したので、空、地、海にそれぞれ対応する機体が揃いました。

ゲッター要素を含むこの三機による合体・変形によって全高1,000メートル超えのゲッターゾイドだかゾイドゲッターなりが誕生と妄想していました。

名前はゲッターデストロイ、ジェノサイド、スローターとかがお似合いかもしれませんね。

多分、カオス・レムレースみたいな異形の姿になるでしょう。

 




グレイゲッタードラゴンについてアンケートを設置しました。
時間のある時などにご意見いただければ幸いです。

追記 2と3の説明が逆だったので修正。

1:オリジナルのゲッターロボは、GNドライブのツインドライブシステムを参考にして、ゲッター炉を二基搭載し、出力を二乗化させたゲッターを予定しています。

2:真ドラゴン。世界最後の日に出てくる方のウザーラのような下半身に、ゲッターの上半身がのっかっている方のアレ。ACE3のラスボスだったのにはびっくり。スティンガー君とコーウェン君に真ゲッター1と共に止めを刺した方。

3:真ゲッタードラゴン。Tや30に登場したゲッタードラゴンからの進化を思わせるアレ。

また説明が間違っていたとしても、もうこれで通します。


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第九十四話 サクサク片付けていきたいところ

「はー、はー、はー。や、やつらは?! 現在位置を教えろ!! 無事に逃げられたのか!!」

 

 ギルドラゴンとデススティンガーの襲撃から、間一髪で命を拾ったゲロイヤーは、ワープアウト直後に状況の報告を求めた。まさかワープしても追いかけてくるとは思っていないが、誰かに安全であることを保障して欲しかったのだ。

 ゲロイヤー同様、腹の底から凍えるような恐怖を味わった兵士の一人が、震える声で応じる。必死に計器をチェックし、それの教えてくるデータをミスのないように読み取ろうと必死だ。鳥のような兜の奥で、兵士は滝のように冷や汗を流している。

 

「現在位置は地球と火星の中間地点です! 周囲に熱源反応、エネルギー反応、不審な動体反応はありません。せん、戦場から脱出できたものと、思われます!」

 

「そうか、そうか、そうか」

 

 最初の“そうか”が疑念、ついで状況の確認、最後に安堵の“そうか”である。

 リヒテルの処刑スイッチを押すだけの簡単な仕事だと思えばこそ、わざわざ地球にまでやってきたというのに、まさか銀列連でもDCと並んで危険視されている戦略級ゾイド二体に襲われるとは。

 襲われたのがゲロイヤー以外の銀列連の幹部連中の誰であっても、彼のように肝を冷やしたに違いない。

 

「恒星間航行もままならない地球程度の文明が、どうしてあんな化け物が作れる!? だが、命さえあれば負けではないわ。仕方ない。ここからでも海底魔城の自爆システムは起動させられるな?」

 

 既にゲロイヤーの頭の中には、同行していた他のガルンロール艦隊の犠牲は消え去っていた。それよりも今度こそリヒテルとDCの抹殺を成功させるべく、非情な問いを発した。

 

「は。ミノフスキー粒子が戦闘濃度で散布されておりますが、所詮は地球人の浅知恵。我らの長距離通信を妨害する事は出来ません」

 

 一年戦争では猛威を奮い、その後の宇宙世紀世界でも戦場の様相を変え続けたミノフスキー粒子だが、後年にはある程度の誘導性を持ったミサイルが開発されるなど、ミノフスキー粒子対策の技術は原作でも開発されている。

 ましてやこのクロスオーバー時空で、かつ異星人ともなればミノフスキー粒子対策技術の一つくらい、それぞれが備えているものだ。

 

「ふふふ、ならばよい。既にDCは海底魔城に迫っておったからな。すぐに海底魔城を自爆させよ。ついでに周囲の連邦軍を壊滅させられれば一石二鳥よ。あの化け物共は怪しいが、海底魔城を引き換えにする価値はある!

 せっかくの拠点を失うのは惜しいが、腰抜け共がリヒテルに余計な事を吹き込んで反旗を翻されても面倒。ここで消し去っておくのが得策よ。さあ、やれ! やつらをこの地球から消し去ってやるのだ!」

 

「ははあ!」

 

 このガルンロールにいる兵士は全てオルバン派か、あるいは洗脳処置を施されたバーム星人の市民だ。オルバンの腹心の部下であるゲロイヤーに逆らう者は、一人もいない。ゲロイヤーの命令はつつがなく実行された。

 

 

 二本足形態に移行したアイザムのギメリアは、鞭を縦横無尽に振るってフォボスと距離を置き、反アイザロン粒子砲を決め手とする戦い方を行っていた。

 接近戦用のモーションデータは常に最新のものを入れてあるし、オートメーション化しているが、技術一本で生きていたアイザムはバーム最高の戦士ハレックを相手に接近戦を演じる無謀を選ばなかった。

 

(この機体、ダイモスよりも武装は少ないがハレックの動きを忠実に再現している。バーム星人と地球人類では翼の有無による骨格の差異があるはずだが、地球には天才が多いと言わざるを得んな)

 

 四方八方から襲い来る音速越えの鞭をフォボスは手にした棍一本で次々と打ち払う。バームの武芸百般を収めたハレックに、フォボスは十分に応えていた。

 ダイモスやソウルゲインのようなパイロットのモーションを反映させるタイプの機体のデータが活かされており、パイロットに対する機体の追従性や反応速度は増している。

 これでトレーラーへの変形機構を排していたら、もっと機体の強度と剛性を高められるだろうがそれは言いっこなしだ。

 

「せぇえい! はあ、ふん!」

 

 三竜棍を突き、叩き、薙ぎ、打ち、その都度、ハレックの肉体は最適なタイミングで最良の息を吐き、吸う。血の流れ、筋肉の防縮、体内を駆け巡る電気信号、それらすべてをこれまでの修練で刻み込まれた肉体そのものが最適化し、思考よりも早く次の動作、次の動作へと繋げて行く。

 そうしてそれを自分の肉体ではない機械の肉体──フォボスへと過不足なく伝わってゆく。一秒早くても、一秒遅くてもならない。寸毫の狂いなく、ハレックの“武”がフォボスの“武”とならなければならない。

 

「人機一体といったか。くく、バームは惜しい男を地球にくれてやったものだ!」

 

 フォボスの三竜棍が鞭を払い、獅子のような顔を払い、がら空きの胴をその先端が鋭く突く。

 

「無駄だ。超弾性金属を劣化させずに破壊することは!?」

 

 いかにハレックの一撃が鋭く重くとも、超弾性金属というアイザムの知性と技術の結晶を破る事は出来ない、そう勝ち誇ろうとしたアイザムは、ギメリアが大きく吹き飛ばされていることに気付き、咄嗟に口を噤んで衝撃に耐えた。

 

「なに!?」

 

 素早く計器を確認して機体ステータスを見れば、ギメリアの装甲と機体内部にダメージが入っている。超高熱も超冷却も受けてはいない。装甲の劣化は発生していないにもかかわらず……なぜ?

 答えはギメリアが教えてくれた。ギメリアのコンピューターが先程の攻防で何があったのか、その記録を創造主に表示したからだ。

 

「これは一秒にも満たない一瞬、七十五分の一秒の間に二度の打撃を? そうか、一度目の打撃を超弾性金属が吸収・無効化している間に、第二撃を加えたのか! そして二撃目の衝撃は抵抗を受ける事無く、ギメリアに到達したのか!」

 

「ご無礼仕った。アイザム殿」

 

 いわゆる“二重の極み”と呼ばれる極めて高度な技術と精度を必要とされる、徒手空拳における奥義と言える。

 ギメリアの機体内部に伝播した衝撃は繊細な電子機器にダメージを与えており、次々とエラーを吐き出している。反アイザロン粒子砲というコントロールの難しい兵器を搭載しているギメリアには、致命的に近い状態だ。

 

 アイザムのギメリアがフォボスによって追い込まれる中、ライザとバルバスの率いる部隊もDCの手によって壊滅的な状況に追い込まれていた。

 超弾性金属の破壊方法は加熱と冷却によって引き起こす金属劣化、二重の極みのような刹那の間に叩き込む連続衝撃の他にも、この世界ではいくつか存在する。

 一つ、空間ごと切断、抉る、砕く、といった空間に直接作用するタイプの攻撃。

 一つ、因果律操作によって超弾性金属を強制的に劣化させるなどの因果律操作系の攻撃。

 一つ、重力操作によって装甲内部の電子機器やパイロットにダメージを与えるタイプの攻撃。

 

 ざっと思いつくだけでもこんなところか。空間系と因果律操作系の攻撃はDCでもほとんどないが、重力を利用した兵器ならば、グラビトンライフルをはじめ、バリエーション豊富なのが幸いした。

 火炎放射器やフリーズランチャーに加えて重力兵器を取り揃えれば、ゾンネカイザーとビッグフラッシャーの装甲を恐れる必要はない。

 

 ライザとバルバスの乗る強化ゾンネカイザーもソウルゲインとアルトアイゼンによって大破にまで追い込まれて、ガルンロール艦隊はガンドールやウルトラザウルスの砲撃に加え、ブレードライガーBSにアーバインのコマンドウルフらが襲い掛かって次々と海の藻屑になっている。

 

「む、無念。もはやここまでか!」

 

「リヒテル様っ」

 

 そうして保身の為に色々と問題を起こす傾向はあるが、忠臣であるのは間違いのない二人はダイモスと死闘を繰り広げるリヒテルのギメリアを見た。

 アイザムのギメリアが二重の極みによってダメージを負ったのに対して、リヒテル機はフリーザーストームとファイヤーブリザードによって装甲の劣化こそ引き起こされているが、致命的な一撃はまだもらっていない。

 一方のダイモスは反アイザロン粒子砲の直撃は避けているが、鞭とサンダー、更に噛みつきによる巧みな連携攻撃を受けて、機体にダメージを重ねている。

 

(ダメージでダイモスの反応が少しずつ遅れ始めている。全身全霊の一撃を打ち込めるのは、次が最後か)

 

(ふふ、このリヒテル、身命を賭して戦いを挑んでいるが、勝ちきれんか。素晴らしき強敵に恵まれたものよ。ああ、彼らがあの時、我らと共に戦ってくれていれば、小バームが支配されることも……否、未練だ。それはこの場では不要)

 

 一矢が細く深く呼吸し、疲労を忘れ、熱を忘れ、研ぎ澄ました戦意と集中力はダイモスの拳を叩き込むべきギメリアの胸部のみを捉えている。

 対するリヒテルのギメリアは五体満足だが、獣人型の上半身を中心に装甲の劣化が起きており、全力の一撃を叩き込まれればその箇所の破壊は免れない。

 不退転の覚悟と試練の決意を固めたリヒテルの集中力は、ともすれば一矢を上回るかもしれない。対峙するダイモスとギメリアはパイロット達の闘志を周囲に伝播して、異様な雰囲気を醸し出している。単なる敵同士の戦いという枠組みを超えた決闘空間が、そこに出来ていた。

 

「いくぞ、リヒテル!」

 

「来い、竜崎一矢!」

 

 ダイモスが虚空を蹴った。ギメリアの四つの足もまた虚空を蹴った。ギメリアの右手の鞭がシンプルにダイモスの胸部を目掛けて叩きつけられる。

 最小の動作で最短距離を唸り飛んでくる鞭をダイモスは左手を囮にし、装甲を砕かれながらも巻き付けて鞭の第二撃を封じ込める。

 

 ダイモスとギメリアの距離が見る間に縮まってゆく。そこへギメリアの角が輝いて、雷撃が襲い掛かる。迫る雷撃をダイモスの肘部分の突起部が回転し始めて、雷撃を受ける囮となる。スネークロックだ。

 一矢の瞳が勝機を見出した。機体は悲鳴を上げながらもパイロットに応えようと死力を尽くした。これまで数えきれないほど繰り返してきた動作の中で、最高の一撃となる正拳突きがギメリアの胸部に叩き込まれ、固く握られた拳が装甲を貫く。

 

「待って、一矢!」

 

「リヒテル、アイザム、戦いを止めよ!」

 

 ダイモスの拳がちょうどギメリアの腹部に埋まったところで、ダイモスとリヒテル達を制止する声が勢力を問わず戦場に響き渡った。

 予め到来を知らされていた連邦海軍にエスコートされながら、戦場に姿を見せたのは四隅にコブラを生やしたピラミッド型のバーム系母艦コブラードだ。

 そして声の主はコブラードに搭乗しているリヒテルの実妹にして一矢の想い人エリカ、さらにオルバンの甥にしてバーム和平派の重要人物メルビである。

 

 ジャベリンやリゼル、アンクシャに囲まれたコブラードの出現に戦場の空気が一変した。

 一矢にとっては行方知れずになっていたエリカとの再会であり、リヒテルとしては予期していた可能性が現実になった瞬間である。

 ただリヒテルとしては、オルバンやラオデキヤには秘密裏に地球と和平に向けた道を模索する希望を託したメルビとエリカがこうして表に出てきた理由が、一矢とリヒテルの戦いを見ていられなかったからという情ではなく、表立って行動できるほど和平派と地球の関係が深まったからだと思いたかったが。

 

「エリカ、君か!」

 

 一矢の頭の中からすっかり戦闘のことは消え去って、ゆっくりと海底魔城に近づいてくるコブラードとその中のエリカに思考もなにもかもが染め上がる。

 

「ええ、久しぶりですね、一矢。どうかそのまま戦いの矛を収めてください。お兄様もこれ以上はバルマー・サイデリアル連合帝国、そしてオルバンの為に戦う必要はないでしょう。ましてや地球の方々の力は十二分に確かめられたはず」

 

「ほう。この兄の心を見抜いたかのような物言い。しばらく見ぬうちに随分と小生意気な口を利くようになったな、エリカよ」

 

 兄妹が言葉を交わし始めるのに合わせて、リヒテルは密かに友軍に戦闘停止を意味する信号を送り、海底魔城の防衛設備も稼働を停止する。抵抗が止まったのと闘争の空気が薄らいだのを感じて、DC側も一旦攻撃の手を緩める。

 この時、弁慶の真ゲッター3と鉄甲鬼の真メカ鉄甲鬼は海底魔城の底部城壁の破壊に取り掛かる寸前であり、エリカ達の到着がもう少し遅れていたら、海底魔城は海水と共に両機の侵入を許しただろう。

 

「私もただ状況に流されるままではいられなかったのです。ならばそれ相応に成長しなければなりません。お兄様、オルバンによって我々の父であるリオン大元帥が毒を盛られた事、オルバンが自らの野望の為にバームの民を改造している事はご存じの筈」

 

「……」

 

 リヒテルの沈黙は肯定であり、エリカに話の続きを促すものだった。一矢もまた初めて耳にする小バームの惨状に言葉を失い、兄に対して凛とした態度で臨むエリカに惚れ直していた。

 

「メルビ様を始めとしたバームの心ある人々はオルバンの邪悪な欲望を挫き、ラオデキヤの支配からバームを解放するべく行動を始めています。

 そしてその為に必要な武力についても地球の方々のご助力の下、必要なものを得られたのではないですか。こうして命懸けで戦い、私などよりもよほどお兄様の方が実感を得られたはず」

 

「我らの総力をここまで見事に破られては、彼らの力を認めざるを得まい。アイザム、よいか?」

 

 ハレックのフォボスにより無力化されたギメリアの中で、アイザムは友の気遣いに微笑して答えた。

 

「構わん。俺の技術の敗北はとうに認めているからな。俺に気遣うな、友よ。ああ、それと海底魔城の自爆システムが起動しているが、俺の組んだプログラムで停止させておいた。ふん、あの程度のお粗末な手管でどうにか出来ると思っていたとは、俺達も甘く見られたものだ」

 

「感謝する。バルバス、ライザよ、直ちに戦闘を停止せよ。海底魔城の主である提督リヒテルの名に於いて、本戦闘における我らの敗北を認め、地球連邦軍ならびDCに降伏を申し入れるものである。

 今日に至るまでの戦闘は全てこのリヒテルの命令によるもの。責任はすべて余にある。どうか部下達には寛大な処置を。我が首、我が翼、我が命であればいくらでも捧げよう」

 

 コブラードやDCの各艦、連邦海軍の艦艇に通信を繋げたリヒテルは粛然と頭を下げて、全ての責任を負う立場ある者としての義務を全うしようとした。偽りなど一欠けらもないリヒテルの言葉に、バルバスとライザは言葉もない。

 原作では自らの保身の為にハレックを襲撃し、メルビを襲撃するなど問題行動連発の彼らも、部下の為に自らの犠牲を厭わないリヒテルの姿勢には涙をこらえて感服するばかり。

 

 エリカもまた兄の悲壮な覚悟を感じ取り、オルバンに屈辱を耐えて従うしかない日々の中でも、兄が変わっていない事が嬉しく、そして本当に命を捨てる覚悟を知り、悲しんだ。

 リヒテルに翻意を促したのはエリカでもメルビでもなかった。コブラードに乗っていた第三の人物竜崎勇博士だった。

 ゲロイヤーによって重傷を負わされた竜崎博士は、既に回復してダイモスの強化とエリカやメルビ、ウォーリン、バランドークといったバーム和平派との仲立ちを務めていた。

 

「待つんだ、リヒテル提督。貴方が自らの過ちを認められるのならば、あたらに命を捨てようとしてはいけない」

 

「お前、いや、貴方は竜崎勇博士! そうか、ご無事であられたか。それはなによりであった。対話を求められたあなた方を罠にかけた卑劣極まりない行いは、このリヒテル、七度生まれ変わろうとも忘れ得ぬ恥だ」

 

「助かったのは私だけではない。ドーリアン外務次官も今は回復されて、地球とバームとの和平に向けて積極的に活動されている。リヒテル提督が罪を感じられているのならば、どうかこれからは地球とバームの人々の為に、その力を振るって欲しい。」

 

「……ふ、ふふ、これは余の完敗だな。力でも心でも地球の人々には及ばなんだか。あなた方が許してくれるのであれば、このリヒテル、身命の全てを地球とバーム十億の民の為に使うことを、今も小バームで眠る父リオンとバームの神に誓おう」

 

 そうしてこの日、リヒテル一派と海底魔城が地球連邦に降ったのだった。

 バームが地球の拠点を失い、更に戦力提供の甲斐もなくDCの戦力を削れなかったことにより、ゲロイヤーとオルバンの立場が銀列連の中で悪化したのは言うまでもない。ラオデキヤからの叱責もあり、オルバンはますます追い込まれたと言っていいだろう。

 

 そうして銀列連内部のパワーバランスが変化する中で、新たに行動を起こす者がいた。ベガ星を失い、スカルムーン基地に身を寄せているベガ大王である。

 地球連邦による月の警戒と調査が進んだことでスカルムーン基地の発見が時間の問題となり、目を逸らす目的と功績を上げて連合内部での発言力強化を目論み、サイド4を支配するSRL攻略作戦を発動したのである。

 

 先のティターンズとの決戦に於いて大失策を演じて人心を失い、勢力立て直しに必死のホワイトファングとクロスボーン・バンガードにとっては、まさに泣きっ面に蜂の事態に陥ったと言える。

 一千近いMSと艦隊、更にラフレシア、エビル・ドーガといったMAを主軸にして迎え撃つSRLに対し、今、恐星大王ベガの号令一下、ミディフォーとミニフォー、円盤獣とベガ獣からなる大部隊が襲い掛かろうとしていた。

 




ダイモスを改めて調べていたのですが、バルバスとライザはリヒテルにとって獅子身中の虫なの? と言いたいくらいやらかしてませんか? 三輪長官とはまた違う方向で問題人物なのでは?

次回 SRL終了。カロッゾを叱るセシリー。セシリーに頭の上がらなくなるカロッゾの予定でお送りします。


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第九十五話 生きている内じゃないと仲直りは出来ないが出来るとは限らない

お待たせいたしました。
やる気が起きたので復活です。
ただまあ、キャラクターを多数投入しすぎたなとヒシヒシと感じました。
やっぱり焦点を当てるキャラクターは絞らないと厳しいものですね。


 ベガ星連合軍の主力兵器の一つであるミニフォーはミニと付いているが、その大きさは全高十四m、全長三十mに達し、ちょっとしたMA並みだ。

 ミディフォーに至ってはその倍近いサイズとなり、ここまでくると大型MAである。

 反重力エンジンを搭載し、宇宙放射線をエネルギー源とするこれらの兵器は、戦場に投入される数もあって強大化の進む地球連邦軍にしても、決して油断をしていい相手ではない。

 

 その大小の円盤達に続いて円盤獣とベガ獣達が軍勢規模の数で、クロスボーン・バンガードとホワイトファングの連合勢力SRLの根拠地サイド4へ大規模侵攻を行っていた。

 この時、ベガ星連合軍の指揮官はズリル長官で、その下にブラッキー隊長が顔を並べている。ズリルは専用の戦闘母艦、ブラッキーはマザーバーンとそれぞれが戦艦に搭乗し、複数のマザーバーンと大軍を率いて、久しぶりに戦功をあげるべく気合を入れている。

 

 ベガ艦隊にはベガ大王の一人娘ルビーナがマザーバーンを与えられて、加わっていた。

 彼女はルビー星の支配を任されていたのだが、ベガ星の爆発を切っ掛けとした住民の反乱に遭い、父の下へと逃げて来ていた。

 ルビーナに優れた軍事の才覚があるかと言うと実はない。ベガ大王も彼女に指揮官としての能力を期待して戦場に向かわせたのではなく、愛娘に覚悟を固めさせるために艦隊の後方とはいえ参加させたのである。

 

 一人娘であるルビーナに人並み以上の愛情を注ぐベガ大王だが、自分達の故郷が失われて植民地となった星が次々と反乱を起こし、今やベガ星連合軍の屋台骨が揺らいでいる事実は否定できないし、多少ぼやかして伝えている。

 自分達が地球を征服しなければこの宇宙に居場所を失って、今度は支配される側になるのだと教え、覚悟させようというわけだ。

 

 ルビーナ自身は自分達が反旗を翻されて追いやられるのも仕方のない事だと認識している。

 ルビー星の統治においてルビーナは冷酷な支配者ではなかったが、それでも自由を求めて反旗を翻したルビー星の人々は命を賭して戦いを挑んできたのだ。

 自分達のこれまでの行いの報いを受ける他ない、それが支配し、虐げて、その恩恵を受けて繁栄してきた自分達の運命なのだと粛々と受け止めている。

 

 その運命に抗おうとする父の気持ちは分からないではないが、だからといって地球を新たな支配の対象とするのでは、過去のあやまちを繰り返すだけだ。

 そしてなによりルビーナは真に愛してしまったフリード星の王子、デューク・フリードが地球の側に立って戦っていることに心をざわつかせていた。

 

 とはいえ、だ。ベガ星の姫たるルビーナが一人懊悩していたとしても、戦場に立って戦う兵士や指揮官達からすればそれはさして関係のないことである。

 実際の指揮権は専用の戦闘母艦に乗るズリルであるし、前線のベガ獣達や円盤部隊はブラッキーが引き受けている。よってサイド4に侵攻するベガ星連合軍の攻撃に、容赦という言葉は欠片も存在していなかった。

 

 迫りくるベガ星連合軍の大軍を前にして、SRLは地球連邦とは異なり明確な侵略者を相手にこちらも気炎を吐いて、立ち向かっていた。

 ザムス系を中心とした艦隊に火力支援の下、ウルカヌスの設備を利用して大量生産されたビルゴ、ビルゴⅡを壁にし、無人機部隊の大量投入を持って戦闘を繰り広げている。

 

 デナン・ゾンやベルガシリーズの主武装であるショットランサーは、対ビームシールド、対コロニー内戦闘を想定した代物だ。穂先が四ブロックに分かれており、数度の射出が可能で基部にはヘビーマシンガンも備えられている。

 ビームシールドが普及した地球連邦のMS相手ならば理に適った装備なのだが、いかんせん相手が重装甲・高耐久性がウリの侵略者の機動兵器相手となるいささか心もとない。

 高出力ビームや大口径レールガンなどの射撃武器がオプション頼みになってしまうのも、クロスボーン・バンガード系MSの泣き所だろう。

 

 そこを補うのが高出力ビーム兵器を装備したトーラスやビルゴ、ビルゴⅡといったウルカヌス産のMSだ。MDで対応できない戦況の変化に練度は悪くないクロスボーン・バンガードの兵士達が対応し、津波のように襲い来るベガ星連合軍に抵抗している。

 その中でも特に勇戦しているのは焔の虎の異名を持つシェルフ・シェフィールド率いるダーク・タイガー隊、ザビーネ・シャル率いる黒の部隊、そして血縁こそないがロナ家の一員であるドレル・ロナ率いるドレル大隊、そして総指揮官であるカロッゾ・ロナが操るMAラフレシア。

 

 この時、シェルフはベルガ・バルス、ザビーネは限界まで改造したベルガ・ギロス、ドレルはエビル・ドーガに搭乗している。

 ドレルは父カロッゾと共にその他のエビル・ドーガとラフレシアで部隊を構成し、小回りの利かないところをカバーする為にドレル大隊十五機のベルガ・ダラス、更にビルゴタイプが同伴している。

 

 エビル・ドーガは原作においてはα・アジールの残骸をクロスボーン・バンガードが回収して開発するものだが、この世界では某企業からの非合法な技術提供などによって完成している。

 ネオ・サイコミュシステムによって、一般兵でもファンネルを扱えるエビル・ドーガは対ベガにおいて、メインウェポンである大型メガ粒子砲の火力もあって最大の対抗馬であった。

 

 ミニフォーとミディフォーを尖兵とするベガ星連合軍に対して、SRLのトーラスが無人機故の加速と殺人機動で対抗する中、円盤を巻き込むのも構わずに突っ込んでくる円盤獣とベガ獣を相手に、ショットランサーとビームの雨を浴びせて必死の抵抗だ。

 それでも宇宙に咲く爆発の花弁はSRLのMSの方が多い。地球の上澄み中の上澄みであるDCを除けば、必死の覚悟で戦わなければならないベガ星連合軍は恐るべき宇宙からの侵略者なのである。

 強化人間のパイロット達が乗る他のラフレシアと共に、カロッゾは無数のテンタクラーロッドとメガビームキャノン、メガ粒子砲をバラまいて円盤獣達に対抗していたが、開戦から次々と目減りしていく友軍の数に鉄仮面の奥で舌打ちした。

 

「だらしのないとは笑えんな。地球圏内での戦闘を重視しすぎた結果がこれでは!」

 

 それぞれが意志を持った生物のように有機的な動きでテンタクラーロッドが虚空をうね狂い、不用意に接近してきたドズドズの四肢に絡みついて拘束し、動きを止めたわずかな瞬間に、ラフレシアの花弁状のバインダー基部に装備されたメガビームキャノンが立て続けに命中し、穴だらけに変える。

 カロッゾがごく限られたスタッフと共に開発したこのラフレシアは、異常な開発速度と技術体系を保有するこの世界においても、現段階のMAとしては最強格にあたる強力な機動兵器だ。

 

 百二十五本のテンタクラーロッド以外にもバインダーに装備されたメガビームキャノン五基、カイラム級機動戦艦を撃沈せしめるメガ粒子砲五門、巡洋艦の副砲に匹敵する四連装ビームキャノン、八門の広域照射武装である拡散ビーム砲と一対多を突き詰めたコンセプトにより、通常戦力の連邦の艦隊なら瞬く間に壊滅させるだろう。

 このラフレシアに加えてファンネルを装備して死角をなくし、大型メガ粒子砲を備え、ラフレシアと同等の防御力を有するエビル・ドーガが複数生産されていなかったら、防衛線は更に食い込まれていたのは明白だ。

 

 カロッゾのラフレシアの周囲には動作をリンクさせた専用プログラムで動くビルゴ達が飛び回り、禍々しくも猛々しい機械の妖花を意志無き乙女座の機械人形が守る構図が出来上がっている。

 ヴァイエイトには及ばぬまでもMSとして上位の火力を誇るビルゴに対して、有人機のCV系MS部隊の苦戦がカロッゾに先程の言葉を吐かせていた。

 単機で戦えているのは、一部のエースやビギナ・ゼラのようにヴェスバーを持つわずかな機体のみで、後は有人機同士の連携とMDに頼って戦っているのが現状である。

 

 グルンガスト弐式や量産型グレートマジンガー、量産型ゲッターロボG、スペースゴジュラスMk-Ⅱ、スペースジェノザウラー、量産型F91の配備を進めている地球連邦軍に対して、明らかに打撃力で劣っている。

 サイド4の制圧時に各コロニーに駐留していた連邦の艦隊が本気で抵抗していたなら、CVは大損害を被るか、目的を果たせずに敗退していただろう。

 連邦側が抗戦を控えたのは、コロニーに及ぶ被害と地球人同士が戦う愚を犯すのを避けたからに過ぎないのだと、今となってはSRLの士官クラスなら周知の事実なのだから。

 

 じりじりとSRLの防衛部隊が数を減らして防衛線を食い破られる中、それを見るズリル長官や彼よりも更に前線で指揮を執るブラッキーは多少の差はあれ、久しぶりの勝利の予感に内心で浮足立っていた。

 これまで銀河の各地で連戦連勝を重ねて、多くの異星人を奴隷にし、多くの星々を支配下に置いていた彼らが、この地球に来てからは一方的な敗北を重ねて膨大な戦力を喪失している。

 

 そのあげくにベガ大王自ら前線に訪れた上に、何の因果かベガ星は鉱山の爆発で失われるわ、他の異星勢力に見下されながらも手を取り合う他ない屈辱の味を噛み締める羽目になったのだ。

 地球に来る前の戦いと比べたら、今も相当な苦戦なのだが、勝利が近づいてくる予感にブラッキーらは頬を緩めそうになっていた。久しぶりに味わえる勝利の美酒の予感に、涎を垂らしそうになっても仕方がないと言えば仕方がないのだが……。

 

 原作のようにホワイトファングがリーブラを奪取できていたならば、島一つを吹き飛ばすその主砲の威力と合わせて、ベガ星連合軍を相手にもっと抵抗できたのだが、ないものねだりをしても仕方がない。

 その代わりと言っては何だが数多のスーパーロボットとガンダムシリーズの主人公格が多数存在するプレイヤー部隊が助けに来てくれたのだから。

 サイド4とは別方向から急速接近する高熱源反応を探知し、ズリル戦闘母艦の艦橋オペレーターが悲鳴を押し殺してズリルに報告した。

 

「ズリル長官、グレンダイザーです! 他にも高熱源体多数、戦艦級を三隻、更に巨大熱源一を感知!」

 

「やはりグレンダイザーはこちらに来るか。別働隊はどうか?」

 

「第一別動隊、第二別動隊、全てSRL並びにDCと交戦中です。DCは戦力を分散させています。ですが、凄まじい強さです」

 

「奴らの手強さなど前から分かっている。それでもここまでは予定通り、SRLなぞ所詮はついで。デューク・フリードとグレンダイザー、奴を倒す事こそ本命。そのまま勢いでDCに損害を与えられれば御の字だが」

 

 流石にそこまで甘い相手ではない、とズリルは冷静に判断していた。DCは宇宙と地上で部隊を分け、更に別動隊を撃退する為に戦力を分散させていても侮れないのは、嫌というほど思い知らされている。

 この場においては、グレンダイザーただ一機に攻撃を集中させてでも撃墜するのを最優先目標とするのを部隊に周知してある。

 

(たった一機の機動兵器を破壊するのに艦隊の総力を結集させなければならんとは……)

 

 こう言っては身もふたもないが、原作ではグレンダイザーと数機のスペイザー、ボスボロットでベガ星連合軍を撃退している相手だ。それが同格のスーパーロボットやリアルロボットと手を取るとなればさもあらん。

 地球に来てから全て狂った、とズリルは心の片隅で感じていた。この星に来てから自分達の知る戦場はがらりと変わり、なにか未知の法則か環境の中に放り込まれたような不安を感じるのだ。

 そしてズリルの胸の内とはまた別にほとんど戦闘に参加していないルビーナもまた、真に愛したデュークの乗るグレンダイザーが姿を見せた事で、その胸の内をざわめかせていた。

 

(デューク……あの日、フリード星と共に死んだと教えられていたあなたが生きていたと知った時、私は本当に嬉しかった。そして貴方が地球に逃げ延び、守る為に戦っていると知った時、どうしてもまた貴方の姿が見たいと願いました)

 

 ルビーナが父親であるベガ大王の命に従い、SRLを攻める艦隊の末席に唯々諾々と加わったのも、戦場でならばデュークの姿を見る機会があるのでは、と考えなかったとは言えない。

 

(そしてやはり貴方は生きていた。……ならば次期女王として私も私なりにベガ星の民とこの宇宙の為になる事をしなければ)

 

 ルビーナのマザーバーンには彼女のお付きの侍女や女官達以外にも、ひそかにルビーナが乗せた者達が居る。その協力者達と共にルビーナはある計画を実行しようとしていた。

 一方でルビーナがこの戦場に居るとは知らないデュークは妹マリアのドリルスペイザー、ひかるのダブルスペイザーと共にベガ星連合軍とSRLの戦場にようやくたどり着いていた。

 

「ベガという名の悪魔達め。このデューク・フリードが相手だ!」

 

 MDやCV系MSと戦っていた円盤獣とベガ獣が三機のスペイザーに狙いを定めて、露骨に動きを変える。ミニフォーとミディフォーは変わらず戦線に残るが、その分、SRLの防衛部隊に加えられる圧力ははっきりと減じた。

 この好機を逃さず、ザムス・ガル級で指揮を執るCVのジレやホワイトファングのカーンズは、素早く部隊の再編成と戦線の再構築を命じる。SRLが状況を立て直せば救援に来たDC側も戦いやすくなるというもの。

 

 SRLの動向を監視していた地球連邦の艦隊はまだ戦闘に未介入だが、半民半官のDCは隊員の倫理観と正義感が行動方針の七割から九割を決定づける。

 実務的な根回しに関しては元連邦軍大将であるレビルや協力者となったブレックスにジャミトフ、さらにゴップとヘイデス達が引き受ける為、地球連邦軍と比べて活動範囲が圧倒的に広く、戦い方もまた軍隊とはかけ離れている。

 このままSRLが壊滅するのを見守っていればいいものを、そこまで戦えばサイド4の住人に被害が及ぶからと戦闘中に介入したのもDCならではだ。これを長所と捉えるか、短所と捉えるかは人によるだろう。

 

 この時、ベガ星連合軍の本隊の戦闘に介入したのは因縁の深いグレンダイザー、ダブルスペイザー、ドリルスペイザーの他に、クロスボーン・バンガードと因縁の深いスペース・アーク組とブレイウッド組、ホワイトファングに多少の縁があるコロニーのガンダム組、更にラー・カイラム組だ。

 ズリル戦闘母艦が探知した戦艦級の熱源反応の正体がスペース・アークとブレイウッド、ラー・カイラム、そしてピースミリオンである。

 

 突出するダイザーチームに続いたのは、まずスペース・アーク組のツイン・ヴェスバーを装着して火力を強化したシーブックのF91、ビームランチャーを二つ装備したセシリーのビギナ・ギナ、更に量産型F91に乗り換えたビルギット。

 更にヒイロのウイングガンダムゼロを筆頭にサンドロックカスタム、ヘビーアームズカスタム、デスサイズヘル、アルトロン。

 

 MO-Vから正式に出向となったアディンのグリープ、オデルのアスクレプオス、OZプライズからの協力者となるロッシェのL.O.ブースターにブラムのテウルギスト・レオン。

 ブラムのテウルギスト・レオンは彼専用のリーオーに施されていた改造内容と同じ、重装甲化が施されたものである。

 

 そしてブレイウッドからはトキオのネオガンダム、レイラのシルエットガンダム改、ハーディガンとGキャノン・マグナから乗り換えたカールとケビンのネオガンダム二機が出撃している。

 カールとケビンのネオガンダムはMDとして運用されていたものを回収し、有人機仕様に改造したものである。ティターンズカラーからトキオの機体と同じトリコロールカラーに塗り替えられていて、いかにもガンダムといったカラーリングになっている。

 

 SRL側の指揮官であるカロッゾとカーンズにブライトが通信を送る一方で、ラー・カイラムからはカイ、ハヤト、リュウのガンキャノン・ディテクター、セイラとスレッガーのデンドロビウムⅡ、アムロのゾーリン・ソールが出撃を終えている。

 アムロは月でνガンダムの発展機にして完成機Hi-νガンダムを受領するはずだったが、ユニコーンガンダムやサザビーを含め、フル・サイコフレームの危険性と可能性について再度議論が行われて、受領が遅れてしまっている。

 

 またνガンダムについても一度、徹底的な整備とHi-νガンダムの更に次の機体用のデータ取りの為、月に置いてきている。その間、アムロの為にと用意されたのが、今乗っているゾーリン・ソールだ。

 余談だが、クワトロも同じ理由でサザビーがなく、赤いカラーリングのゾーリン・ソールに乗っている

 

 このゾーリン・ソールは小説ガイア・ギアに登場するマン・マシーンないしはモビルスーツである。宇宙世紀110年にロールアウトしたサイコミュ対応機である年代で考えればF90やF91といった小型MSよりも古く、全高20.8mと大型MSの範疇だ。

 60mmバルカン、ビームライフル、ビームサーベル、ウェポンラック兼用の実体シールドの他、νガンダムのフィン・ファンネルの流れを汲み、フィン・ファンネル、ゾーリン・ファンネル、ファンネルミサイルを装備し、ケミカルガンという珍しい武器も持つ。

 

 流石にフル・サイコフレーム機に乗り慣れたアムロにとっては、サイコミュ搭載機でも反応の遅れを感じるほどだが、ディジェやリック・ディアスに比べればはるかに性能が高いのは事実。

 アムロはSRLの状況とグレンダイザーに飢えた肉食獣のように群がるベガ星連合軍の動きを見て、即座に敵の狙いを看破した。

 

「各機パイロットはグレンダイザーの援護を。敵の狙いはグレンダイザーだ。ただしスペース・アークとブレイウッド艦載機はSRLの援護へ。彼らも部隊を立て直してはいるが、今、攻撃を受ければあっという間に瓦解する」

 

 意図せずして因縁のある者達に任せる形となったが、アムロに他意はない。ベラ・ロナとしてCVが拘らずにはいられないセシリーが居れば安易に攻撃を受ける事はないだろう、くらいのことは考えていたが。

 抗議の言葉を口にしそうになったセシリーもアムロの真意に異は唱えず、険しい表情を浮かべて、宇宙に咲く妖花──ラフレシアを中心に部隊編成を進めているCVへ複雑な視線を向けるのだった。

 

<続>

 

■ゾーリン・ソール(アムロ機)を入手しました。

■ゾーリン・ソール(クワトロ機)を入手しました。

■量産型F91を入手しました。

■ネオガンダムを二機入手しました。

■ルビーナにはなにか考えがあるようです。




カーンズがザムス・ガルに乗っていますが、複数建造されています。エビル・ドーガを含め、ベガ相手にバグはあてにならないので、戦場には投入されていないです。

追記
第七十八話より SRL→『宇宙革新連盟──Space Reform League』


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第九十六話 父と娘 地球版とベガ星版

思ったよりはカロッゾがセシリーに頭の上がらない感じに仕上がりませんでした。力及ばず。


■宇宙ルート 第四十六話 織姫星の紅玉と宇宙に咲く妖花

 

 アムロからの指示に従って、SRLの中核部隊へ救援へと向かうスペース・アーク艦載機部隊。そのメンバーの一人であるビルギットは周囲への警戒は緩めず、本格的な戦闘が始まる前にと思い、シーブックに話しかけた。

 

「まさか俺達がCVの連中を助ける事になるとは、皮肉なもんだな」

 

 原作よりも被害ははるかに少ないとはいえ、彼らの居たコロニーをCVが襲い、戦闘に巻き込まれる形でビルギットは初めての実戦を経験し、シーブックがF91のパイロットになった流れに変わりはない。

 彼らが本格的な戦いに巻き込まれる原因となった者達を今度は助けに行こうというのだから、ビルギットが皮肉だと口にするのも当然だろうし、それ位の愚痴をこぼす権利はあるはずだ。

 

「あんなタイミングで馬鹿な事をするから、巡り巡ってこういう結果になるんですよ」

 

 シーブックの返事もなかなか辛辣だが、ハイスクールのミスコンを台無しにされて、あやうく友人達が死にかけた事を思えば、当然だ。なおこの世界では色々と有名なアーサーは死亡していないし、Gキャノンの排出した薬莢に当たってしまったお母さんも無事である。

 

「連邦軍の軍事力が増す一方だったから焦ったのかもしれんが、結果としてこの状況を招くようなら大人しくておいて欲しかったぜ」

 

 もとより目標ポイントまで大した距離があるわけではない。共に戦場を戦い抜いてきた二人が少ない言葉を交わしている間に、戦闘の閃光と爆発が目まぐるしく発生する戦域にまもなく到達する距離まで来ていた。

 CVはカロッゾのラフレシアとドレルのエビル・ドーガを中心に、ザビーネの黒の部隊(ブラック・バンガード)やドレル大隊が周囲を囲んでフォローする陣形を再度布陣し直している。

 円盤獣とベガ獣の大部分がグレンダイザーに殺到しているから、カロッゾ達に襲い掛かる圧力は軽減している筈だが、それでもマザーバーンと共に襲い来るミディフォーとミニフォーの大軍とそれに紛れる円盤獣達は、容易い相手ではない様子だ。

 

「ああいうのを相手にするのも、すっかり慣れたもんだぜ!」

 

 軍の門を叩いた頃にはまさか異星人と戦うなど夢にも思わなかったビルギットだが、DCに所属してからは異星人や異世界人やらを相手に戦った記憶ばかりだ。

 新たな愛機となった量産型F91のビームライフルの照準をミニフォーに合わせて、まずは牽制の一射を撃ち出す。一発目を慌てて避けたミニフォーだが、続けてシーブックが放ったほぼ時間差の無い一撃が撃ち抜いて、内部からの爆発を引き起こす。

 小型MSからすれば巨大なミニフォーだが、幸い円盤獣などと比べれば装甲は薄く、耐久性は低い。ビルギットとシーブックのどちらの機体のビームでも直撃させれば撃墜できただろう。

 

 お互いにF91乗りになったわけだが、シーブックの機体は量産型の原型となったオリジナルでリミッターも外されている為、機体性能の限界値はこちらの方が高い。

 それでも動力をはじめ主だった部品はほとんど共通しており、機体の基本的な性能差そのものに大きな差はなかった。

 

「よし、この調子でいくぞ」

 

 新米パイロットともなれば撃墜スコアを稼ぎたいだろうに、ビルギットはスコアを稼ぐ事に拘泥する様子を見せない。

 高度なニュータイプとしての素養を開花させ、既にトップエースの一角を担う技量を見せるシーブックをフォローし、部隊の勝利を優先している。

 シーブックもアムロやクワトロ、ユウ、バニングといったベテランに対するのとは異なる信頼を、ビルギットに寄せていた。ただこの時、シーブックはやはりセシリーを気に掛けていたし、ビルギットもそれを察していた。

 

「シーブック、私にばかり気を向けていては危ないわよ」

 

「いや、この状況だとさ」

 

 セシリーことベラ・ロナからすれば袂を分かった父を救援に行くような展開だ。心中が穏やかであるはずもなく、シーブックばかりでなく指示を出したアムロにしても思うところはある。

 ビギナ・ギナの操縦に乱れはなく、セシリーから感じられる雰囲気も戦闘の緊張に張りつめた感覚はあるが、焦燥の念を抱いていたり、視野が狭くなっていたりする様子はない。だからこそなにか落とし穴があるのではないかと、シーブックはやや過剰に気を遣っていた。

 

「それよりも行くわよ!」

 

 ビギナ・ギナがさらに加速し、両手に構えたビーム・ランチャーが高密度のメガ粒子を吐き出し、ミニフォーの編隊を大きく乱した。そこへ更に第二射、第三射のビームが襲い掛かり、意気込むセシリーのフォローにシーブックとビルギットが動く。

 トキオ達ブレイウッド組も動きを見せる。三機のネオガンダムから発射されたG-バードが、円盤の編隊と少数混じっていた円盤獣も貫いて、大きな爆発を伴う光の大河を描き出す。

 

「ビルギット、シーブック、俺達も援護する。あちらのMAのファンネルの動きに気を付けろ。あまり近づきすぎるな」

 

 トキオからの忠告だ。一応、DCがSRLの救援に来た形で、地球連邦と本格的な敵対関係に至っていないとはいえ、SRL側から攻撃を受ける危険性がないわけではない。

 ロナ家の旗頭に掲げられかけたセシリーが居るから攻撃を受けないと考えられるが、逆にこの鉄火場でセシリーを取り戻してベラ・ロナとして再び神輿にしようと馬鹿な事を考える可能性も捨てられない。

 何しろSRLとして決起した、という大失点を犯している相手なのだから。

 トキオやケビン、カールもまたCVとは因縁があるが、どちらというとその後に交戦したガレムソンの方こそ因縁が深く、CVの救援に拒否や嫌悪の感情を抱いていない。

 

 苦しい戦いを強いられてきたSRLだがDCの参戦と共に重圧が緩み、部隊の再編に成功して士気も取り戻す中で、カロッゾやドレル、ザビーネといったセシリーと面識のある者達はCVのIFFを発して接近してくるビギナ・ギナの存在に対し、否応なく注意を引かれていた。

 これまでもDCの戦闘データを入手した際に、セシリーが乗っているだろうビギナ・ギナの奮闘を把握していたが、実際にこうして戦場で遭遇すると──しかも助けに来られると衝撃は大きい。

 

 カロッゾは思わずテンタクラーロッドの操縦を鈍らせてしまい、挙句にはラフレシアの各種センサーとカメラを使って、ビギナ・ギナをクローズアップしていた。

 かつて妻ナディアはセシリーを連れて彼を捨てた。CV決起後に養父に連れられて彼の手に戻ってきたセシリーも、戦場の中でカロッゾの手から離れた。

 

 自業自得の要素を多分に含むとは言え、そうして妻と娘に捨てられてきたのがカロッゾだ。ロナ家内での後ろ盾を失ったカロッゾが自らの居場所を守る為には、自分を被験者にした強化手術を受け、コスモバビロニア実現の為に全てを投げ打つ以外に道はなかった。

 だが、今、自らの意志で離れたセシリーが今度はカロッゾを助ける為に──それがすべてではないにせよ──来た姿に、カロッゾは自分でも理解しがたい衝動に駆られていた。

 

「ベラが来た。私は、私は強化されたはずだ。精神も肉体も! しかし、私は何を感じている? 子に助けられる屈辱、怒り、憤り? それとも、まさか」

 

 喜びだとでもいうのか──その言葉は仮面の奥に飲み込まれて、決して彼の口から零れ落ちはしなかった。

 カロッゾ機の動きがわずかに鈍る間にも、ビギナ・ギナの勢いは止まらない。セシリーに追従するシーブックやトキオ達も彼女を孤立させないようにと必死だ。幸いビギナ・ギナがCVの識別信号を出している事で、SRL各機からの攻撃は加えられていない。

 

「あれはベラ様か!」

 

 一時は教官役を担ったザビーネは記憶にあるクセを見せるビギナ・ギナに、変わらずセシリーが乗っている事を看破し、同時に記憶にあるよりもはるかに洗練され、戦いに慣れた挙動の数々に目を見張った。

 ひな鳥のようだった姫君はいつの間にか獰猛な猛禽の如き戦士へと成長していたのだ。

 

「黒の部隊各機、ビギナ・ギナにはベラ様が乗っておられる。間違っても手を出すな!」

 

 黒の部隊はザビーネの眼鏡にかなった精鋭だ。ドレル大隊と並ぶCVの最精鋭部隊であり、部隊長であるザビーネの指示に迅速に対応する。

 その指示に対して、部下の偵察部隊の隊長であり、士官候補生である若干十六歳のアンナマリーが反発しかけたが、ザビーネは気付かなかった。彼女のMSダギ・イルスの動きに乱れが出なかったのも、理由の一つだろうか。

 その証拠に、ザビーネは教え子であり、貴族として仕えるべき主君筋のベラ・ロナに救いの手を伸ばされた状況に対する自身の感情に目を向けていたのだから。

 

「手元を離れた姫君に救われるか。フッ、なんとも苦い味わいがするものだな」

 

 ザビーネが気付いたように異母兄であるドレルもまたエビル・ドーガを巧みに操りながら、異母妹の帰還を察知して咄嗟にファンネルの三割をビギナ・ギナの援護に回す。

 ほとんど反射的な行動であったが、ドレルの理性はそれを阻まなかった。家族の情に目が曇ったから即断したのではなく、合理的な判断だと理性も追認していた。

 

「根拠はないが、ベラは敵ではないはずだ!」

 

 ドレルはそのまま迂闊にも距離を詰めてきたミディフォーに機体胸部の大型メガ粒子砲を撃ち込み、更に後方のミニフォー数機とまとめて撃墜する。

 ドレルは更に部下達にも指示を飛ばして、攻撃を受けない限りはビギナ・ギナとそれに続いてきたF91らへの手出しを禁じる命令を出す。カロッゾが明確な指示を出していない以上は命令違反にはなるまい。

 

 息子であるドレルにしてもカロッゾのラフレシアがわずかに動きを乱し、更に新たな指示が出されていないのは不思議であったが、それでも父の動揺それ自体は手に取るように感じられた。

 ニュータイプとしての素養もあるだろうが、それ以上に強化される前から父と子として付き合ってきた仲なのだ。ロナ家に婿入りしてからは変わり始めていった父だが、それでも親子の関係が壊れたわけではない。

 ここが人類抹殺を命じられていない世界なのも、ドレルとカロッゾらが親子という縁を破綻させずに済んだ一因だろう。

 

 CVの部隊がそれぞれに状況の変化に対応する中で、セシリーのビギナ・ギナはビーム・ランチャーのEパックを次々と空にして、獅子奮迅の活躍を見せている。

 それにはシーブックとビルギット、更にはブレイウッド組のフォローがあってこそだが、白銀のビギナ・ギナは戦場の中にあってよく目立ち、CV系MSの中でもとりわけ高貴な雰囲気を纏っており、図らずも誘蛾灯の役割を負っていた。

 

 そうして群がってくるベガ星連合軍の機体にF91、量産型F91、シルエットガンダム改のヴェスバーが襲い掛かり、スーパーロボット大戦EXでは最強格の威力を誇ったビームの餌食になる。

 G-バードも負けず劣らずの破壊力を見せ、円盤獣達を中心に命中してゆき、CV系MSでは撃墜の難しい機体を中心に破壊して行く。

 

「なにを呆けているのです!? 鉄仮面!」

 

 カロッゾのラフレシアの前にビーム・ランチャーを構えるビギナ・ギナが躍り出て、背中を晒しながら迫りくる敵を迎撃する。カロッゾが撃とうと思えばいつでもビギナ・ギナを、その中の娘を撃てる位置だが、果たしてこれは娘が父親に向ける信頼と言えたかどうか。

 

「ベラ。よくも私の前に姿を……」

 

 出せたな、とカロッゾが口にするよりも早く、セシリーの鋭い舌鋒がひらめいた。

 

「この状況で口にする言葉がソレですか! 貴族主義を掲げるのなら、せめて貴族らしく振舞う努力をなさってはどうなのです」

 

「している。だからこそ異星人共を相手にこうして戦っているのだ」

 

 そう答えるカロッゾだがどうにも言葉が弱い。ベガを相手に戦っているのは確かだが、セシリーに助けられた状況に動揺して精彩を欠き続けている事実は、カロッゾ自身が否応なく自覚している。

 

「ならばもっと戦ってみせてください。かつて貴方達に拾われたころ、弱き者に代わり剣となり盾となるのが貴族の務めと私は聞かされました。

 私はコスモ貴族主義に共感できるところはありませんが、貴族を名乗るのならばそれに相応しい振る舞いがあるのは分かります。

 それとも行いではなく家名と血筋のみが貴族を貴族たらしめるというのならば、そのまま情けないままでいればいい。OZの方がよほど貴族らしい!」

 

 実の父親に対して欠片も容赦のない言葉を投げつけて、セシリーは正面の敵部隊の奥に鎮座するマザーバーンに狙いを定めた。ブラッキーをはじめとした幹部級の乗っているマザーバーンはグレンダイザーとDC艦隊相手に戦闘中だ。

 こちら側に来ているマザーバーンは名も無きベガ星の兵士か人工知能制御の艦だ。

 これまで何隻も撃沈を重ねて残骸を研究した為、マザーバーンの構造上の弱点はとっくに分かっている。上手くやれば徹底的に強化されたビギナ・ギナ単機でも撃沈できるのを、セシリーは知っていた。

 

「シーブック、ビルギットさん、あのマザーバーンを落としましょう。こちら側に展開している無人機の指揮中枢を担っている筈よ。アレを落とせば敵の動きが鈍る」

 

 セシリーはターゲッティングマークを施したマザーバーンのデータを部隊各機と共有しながら、そう提案した。

 

「お姫さんは無茶を言うぜ。だが一理あるか。シーブック、行けるか?」

 

「行けます! それにCVの部隊も一部が味方をしてくれています」

 

「物わかりの良い奴も居るって事か」

 

 ビルギットの言う物わかりの良い奴とはザビーネとドレル、それに彼らに少し遅れて協力を決めたシェルフのダーク・タイガー隊である。

 セシリーの狙いは素早くスペース・アークとブレイウッドにも伝えられ、レアリー達も少ない戦力で状況を変える為に賛同し、各艦の主砲をマザーバーンに向けて集中させて連動し始める。

 

 ビギナ・ギナを先頭とその左右を二機のF91、ネオガンダムとシルエットガンダム改がさらに続いてマザーバーンを目掛けて騎馬による突撃を思わせる勢いで突き進んでゆく。

 その光景にザビーネは血の沸き立つ感覚を覚えながら、部下の誰よりも自分が真っ先に飛び出しながら命じる。

 

「騎士たる我々がベラ様の後ろを行くなどあってはならん! 黒の部隊各機、クロスボーンの旗の下にその武勇を示せ!」

 

 ザビーネがビギナ・ギナの左翼を固める一方で、ドレルも他のエビル・ドーガとドレル大隊、MD部隊を率いて右翼と下方を固め始める。これまで防戦一方だった状況を変えられる好機だ。

 そのきっかけがなんであろうとこの機会を逃す術はないと、ドレルの指揮官としての嗅覚は訴えている。

 ドレル機他、エビル・ドーガはバグを搭載するスペースが機体内部に存在するが、異星人相手にバグの有効性が疑問視されている為、その代わりにファンネルが搭載されている。その増やした分のファンネルの大部分をビギナ・ギナのガードに費やす。

 

「ドレル大隊各機、この機に敵艦を沈める。打って出るぞ。私に続け!」

 

 エビル・ドーガのスラスターが推進剤の大量燃焼と引き換えに加速し、ベガ獣にも負けない巨体が爆炎の乱れ舞う戦場を飛ぶ。

 ドレルは異母妹の勇猛な姿に素直な感銘を受けながら、セシリーに言い負かされてから動きを見せない父と通信を繋げた。

 マイッツァーの理想を叶える為に自己を強化した覚悟や才覚には敬意を抱くが、プラチナ製の仮面はどうかと思う父は、不気味なほど沈黙を保っている。

 

「カロッゾ司令、ここはDCの動きに追従して敵を討つべきです。正しい判断を」

 

 実の親子とあっても戦場では部下と上司である。部下として進言するドレルにカロッゾの返事は一拍の間を置いた。

 

「……分かった。ジレとカーンズにも前線を押し上げるよう命じよう」

 

「賢明なご判断です。……それとこれは独り言ですが」

 

 独り言の体裁で父に伝える言葉が、果たして激励なのか慰めなのか、ドレルにも分からなかったが、それでも口は動いた。

 

「なにを?」

 

「ベラの姿に心が乱れておられるのは察しております。ですが、先程のベラの言葉。貴族の務めは反論の余地なく正しいものだと思います。私は私の思う貴族のあるべき姿に近づく為に、戦います」

 

「……そうか。XM-00に乗りたがっていた子供が、よくも言う」

 

「独り言ですので」

 

「賢しいな。だが、そのような言葉を吐かせたのは私の醜態か。ならばその醜態を払拭せねばなるまい」

 

 こんな仮面を被っていても感情の処理もままならぬとは、私の覚悟などこの程度かとカロッゾは自嘲しながらラフレシアのバインダーを展開し、妖花の花弁を広げて先を行く娘を追った。

 この時、既にセシリーはマザーバーンをビーム・ランチャーの射程に収めるまであとわずか、という距離にまで接近していた。当然、マザーバーンに近づけば近づく程、直掩の敵機が立ちはだかり、進撃の速度は鈍る。

 

 ビギナ・ギナの前に立ちはだかったのは、原作アニメでグレンダイザーを追い詰めたキングゴリだ。

 既にオリジナルが撃破された為、以降の戦場に姿を見せるのはクローニング技術の応用による量産型だが、ドリル状の角が生え、鎧を着たゴリラといった見た目を裏切らないパワーは侮れない。

 ましてや三十八メートルの巨体はビギナ・ギナの倍を超える。質量差も大きく、一撃を受ければビームシールド越しでも撃墜されかねない。

 

「大きいだけの敵なら!」

 

 キングゴリの額のドリルが輝き、直後にベガトロンビーム砲が発射されて、ビギナ・ギナの白銀の装甲を照らす近距離をかすめる。セシリーは目を細めながらビーム・ランチャーを交互に発射し、キングゴリの顔面と頭部に高出力ビームを直撃させる。

 それだけではキングゴリを撃破するのには不足だが、怯んだその隙に接近したビギナ・ギナの展開したビームシールドがキングゴリの顔面を切りつけて、開いたその断面に十メートルと離れていない距離からビーム・ランチャーが撃ち込まれ、キングゴリの頭部を吹き飛ばした。

 更に吹き飛んだ頭部の断面に新たにビーム・ランチャーを撃ち込み、残っている胴体も容赦なく破壊する。侵略者の用いる機動兵器の異様なタフネスを考えれば、ここまで徹底しなければならなかった。

 

 CVの二個大隊+αを加え、一丸となってマザーバーンの撃沈を目指すセシリー達の勢いは凄まじく、グレンダイザー撃破に割かれていた円盤獣の一部が呼び戻されるほどだった。

 シーブックやトキオ達の援護下にあるセシリーに円盤獣ギルギルが複数機、円盤形態からカッターを出し、高速回転しながら体当たりを仕掛けてくる。スピンアタックだ。

 

「次から次へと、それだけ力を入れているのでしょうけど!」

 

 セシリーはビーム・ランチャーの残弾に注意しながら、四方八方から襲ってくるギルギルを回避し続ける。

 これまで何機もの円盤とベガ獣を相手に乱射した結果、既にEパックは尽きており、セシリーは撃ち尽くした右手のビーム・ランチャーを放り投げて、腰裏にマウントしていたビームライフルを機体に握らせる。

 

 予めプログラムされている正確な動作はスムーズにビームライフルを握らせたが、単純計算で火力の半減した隙をギルギルの群れは逃さない。

 殺到するギルギルの内、半数は回避、半数はビームライフルで動きを逸らせれば、と刹那に判断したセシリーの視界に、後方から発射された大火力ビームの雨が映り込む。

 

 大出力のジェネレーターが可能とするラフレシアの大火力砲撃だ。

 展開されたテンタクラーロッドが近接戦を持ち込もうとする円盤獣とベガ獣を切り刻み、弾き飛ばし、間合いに入る事を許さず、死角がないように配置された各種ビーム砲は正確無比の精度で次々と命中している。

 カロッゾ機を筆頭に他のラフレシア部隊も突っ込んできており、テンタクラーロッドを四方に伸ばして間合いに入った敵機に襲い掛かる。おびき寄せられた敵機を次々と葬る光景はまさに鋼鉄の妖花の面目躍如と言える。

 

「親に意見する子供など生意気なものだが、一理あった事は認めなければなるまい。お前は私とラフレシアの力を見ているがいい。強化してまで手に入れた力だ。貴族の務めの為に使うのならば、お前にも不服はあるまい?」

 

「色々と言いたいことはありますが、その力を無駄に使わず、エゴの為に使わないのなら私だって異論は唱えません」

 

「どこまで行っても口の減らない娘だ。……ナディアには似なかったな」

 

 自由と身勝手をはき違えた母に関しては、セシリーも思うところはあり、安堵しているようなカロッゾの言葉には無言の同意を示した。

 不倫相手だったシオ・フェアチャイルドと幼いセシリーを連れ、ロナ家の所有していた宝飾品を盗んで駆け落ちしたナディア・ロナ。

 さらにはシオの優柔不断な性格に愛想をつかし、シオとセシリーを置いて行方を晦ませた彼女は、セシリーがベラとしてロナ家に引き取られた際に姿を見せており、娘に対する愛情が本物であることは証明したが、現在はマイッツァーの下で幽閉中だ。

 カロッゾの暴走の一因となった数々の振る舞いをした彼女については、これまでの彼女の行動を知ったセシリーにしても擁護するのは簡単ではなかった。

 

 

 CVとスペース・アークとブレイウッド組によりマザーバーンが撃沈されたころ、グレンダイザーに殺到するズリル艦隊の中核戦力もまたその多くを撃破されつつあった。

 二機のスペイザーや旧ホワイトベース隊の援護を受けるグレンダイザーは押し寄せる敵を千切っては投げ、千切っては投げ、一騎当千の活躍ぶりだ。

 

「ダブルハーケン! とあああーー!」

 

 キングゴリの頭部、腹部をダブルハーケンの刃が斬りつけて三分割、さらに足元から襲い掛かってきたベガ獣ベニベニに対しては左手のスクリュークラッシャーパンチを撃ち込み、顔面から腹部までを一気に貫いて破壊する。

 ハンドミサイルに反重力ストーム、スペースサンダーet cetera、残弾とエネルギーの許す限り、その豊富な内蔵武器を活かして、迫りくる円盤獣とベガ獣を物言わぬ残骸へと変えてゆく様は守護神と呼ばれるに相応しい力だ。

 そしてグレンダイザーの不意を突こうとするハドハドに向けて、ガンキャノン・ディテクターの発射したビームキャノンが見事に命中して、その体勢を崩す。

 

「や~れやれ、俺の本業はジャーナリストだってのに、なんでまたMSに乗っているんだか」

 

 カイはそうぼやきながらもこちらに矛先を変えたハドハドに向けて、ビームキャノン二門と手に持ったビームライフルの照準をぴたりと合わせ、ついでに銃身下部のグレネードランチャーもくれてやる。

 円盤から黒い蛇の頭が五本伸びた姿のハドハドの頭部に、カイの放った攻撃は次々と命中して行く。一年戦争時、ガンキャノンに乗り込んでエース級の活躍を見せた腕前は、今や当時よりもさらに研ぎ澄まされている。

 

「そのお陰で多くのコネが出来たじゃないか。本業の為の投資だと思えばいいさ」

 

 年を経てカイに対する言動の変わったハヤトである。彼もまた赤いガンキャノン・ディテクターに乗り込み、円盤獣グルグルの発射したミサイルを60mmバルカンで残らず撃墜してのける。

 グルグルの注意がハヤトに向けられた瞬間を狙いすまして、リュウ機から発射されたビームがグルグルの赤い鬼のような顔面に命中して怯ませる。円盤獣としては最強格のグルグルは、それだけでは顔に穴一つ開きやしない。

 

「そういうハヤトもカラバでクラップやアウドムラの艦長をやっているよりは、MSのシートを温めている方が性に合うんじゃないか?」

 

「リュウさんの言う通りかもしれませんが、少なくともMS博物館の館長をしているよりは刺激が多いですね」

 

 戦闘中にもかかわらず軽口を叩き合えるのは、ベテランの域に入った彼らならではだ。そして他の仲間達を信頼しているからだった。

 顔面を撃たれてよろめくグルグルに、スレッガーのデンドロビウムⅡのメガビーム砲が襲い掛かる。狙いはリュウに撃たれた顔面。

 本家デンドロビウムに劣らないメガビーム砲はさしものグルグルの顔面も耐えかねて、内部を蹂躙された上で背部から突き抜けていった。

 

「一丁上がりっと。いやいやGアーマーやコアブースターが可愛く思えるねえ、この機体」

 

 スレッガーが新しい機体にご機嫌な調子になっている一方、周囲に集っていたミニフォーやミディフォーは、セイラのデンドロビウムⅡの発射した大小の集束ミサイルが撃墜ないしは牽制する。

 そうして回避行動を取って動きの乱れた機体は……

 

「アムロ、今よ!」

 

「行け、ファンネル!」

 

 繋ぎの機体とはいえアムロの駆るトリコロールカラーのゾーリン・ソールから、ゾーリン・ファンネル、ロング・フィン・ファンネルが飛翔し、本体のビームライフルと合わせて数機分の弾幕が形成されて、瞬く間にミニフォー達を穴だらけにしてゆく。

 ファンネルミサイルを使用しなかったのは使うまでもなかったのと、消耗品であることから節約したのだろう。そうするだけの余裕がアムロにはあるのだった。

 

「反応の鈍さは気になるが、俺が機体に合わせられる範疇だな。問題はない」

 

 アムロは素早く戦場を見回し、渦巻く人々の意識を感じ取る。

 ベガ側の人々の抱く感情が焦りと怒りであり、機体のセンサーが拾い集めた各種の情報と整合すれば、デュークとグレンダイザーの鬼神の如き活躍をきっかけに勝敗の天秤がこちらに傾いているのは明白だった。

 この時、まだアムロ達に情報は伝わっていなかったが、部隊を分けてベガ軍別動隊を迎え撃ちに行った他のDC艦隊も戦いを優勢に進めており、彼らがこちらに来るのも時間の問題であった。

 

 ウイングゼロとグリープの大火力を活かし、ズリル戦闘母艦までの突破口を作っているコロニーのガンダム組も順調にその役目を果たしており、グレンダイザーを筆頭にズリル戦闘母艦やブラッキーのマザーバーンを撃沈するまでの道筋も固まりつつある。

 思いの外、SRLが素直にDCの救援を受け入れたのも幸いしている。

 サイド4制圧とSRLの殲滅を捨ててグレンダイザー撃破に切り替えたズリルの判断も虚しく、状況はこれまでの戦いを繰り返すように敗色が濃厚となっている。

 ここで敗退すればベガ大王からどのような叱責を受けるか、そればかりか自身の立場ならずベガ星連合軍そのものの銀列連内での立場の悪化を招く。その事態を想起して、ズリルの顔色は悪くなる一方だ。

 

「くっ、このまま戦い続けても勝ち目は……だが」

 

 明晰なるズリルの頭脳が解決手段を導き出せずにいる中、彼に救いの手を差し伸べたのは後方で戦力を温存していたルビーナだった。

 

『ズリル長官。ここはお下がりなさい』

 

「ルビーナ姫! 言葉にするのは簡単ですが、グレンダイザーをはじめDCは手練れ。撤退戦となれば容赦のない追撃があるでしょう。撤退すると一口に言っても、ただ背を向ければよいというものではないのです」

 

『私もそのくらいのことは弁えています。グレンダイザーのパイロットは私のかつての婚約者デューク・フリード。それなら私が連絡を取れば少しは時間を稼げるでしょう』

 

「なんと。しかしそれは姫が殿(しんがり)を務めなさるという意味ですぞ? いかに婚約者だった間柄とはいえ、フリード星を滅ぼされた恨みを持つデュークが姫の身の安全を保障するかどうか」

 

『もとより覚悟の上です。ベガ大王の娘として恥ずかしくない振る舞いをしなければなりません。

 特にこれからの戦いにおいて、戦いを知らず新しい技術を開発できるわけでもない私よりも、ズリル長官やブラッキー隊長のような人材こそ必要となるはず。ベガ星連合軍の未来の為に私は進言しているのです』

 

 ただしルビーナの思うよりよい未来がベガ大王やズリル、ガンダルらの思い描くものと同じかどうかは、また話が異なるのだが……。

 

「分かりました。姫のお覚悟、このズリル、心より感服いたしました。守るべき貴き御方に守られるこの失態は、地球を新たなベガ星へと変える事で償って御覧に入れましょう」

 

『よしなに』

 

 娘を溺愛するベガ大王だ。万が一にもルビーナが死ぬか、デュークに捕縛されるとなればズリルらにどんな罰が下されるか分かったものではない。だがこのまま戦線を維持しても、戦死する可能性が極めて高い。

 ならばとズリルは生き残る可能性が高い道を選んだ。ルビーナもおめおめと死ぬつもりはないだろうとも考えている。

 ただデュークとの会話からベガ側の重要人物と看破されて、地球人が躍起になって生け捕りにしようとする恐れがあると、その点を懸念してはいたが。

 

 ズリル戦闘母艦を中心に残存戦力が集結し、ルビーナのマザーバーンが前後の位置を入れ替え始める。当然、侵略者には容赦しないDCはシーブックやカロッゾらと共に合流して、逃げるズリル艦隊の殲滅に動き出す。

 そうしてまずは立ちはだかるマザーバーンを撃墜しようと、ダブルスペイザーとドッキングしたグレンダイザーが飛び出したその瞬間を待っていたように、マザーバーンから通信が発せられる。

 

『聞こえていますか? デューク・フリード。私です。ルビーナです』

 

 これまで地球人類の見て来たベガ軍の人物とは異なるたおやかな女性の姿が音声と共に各機のモニターに映し出され、特に大きな驚きを見せたのは面識のあるデュークとマリアだった。

 

「ルビーナ!? まさか戦場に君が!」

 

 友好関係を破棄してフリード星を蹂躙したベガ大王には恨み骨髄のデュークだが、優しく聡明だったルビーナという個人を知っているから、彼女に対しては明確な憎悪や怒りという感情はない。ルビーナが憎むべきベガ大王の実の娘であってもだ。

 

『お久しぶりです。ええ、本当に。私がこの戦場に居るのは統治を任されていたルビー星で反乱が起き、そこで貴方の生存を知って父の下へ向かった為です。デューク、父は本気で地球を第二のベガ星へしようと考えています。ある意味では銀河の制圧よりも熱意を持って』

 

 ルビーナとデュークが明らかに面識のある様子であったから、ブライトからマリアに確認の連絡が来ており、二人の会話の裏では婚約者の関係にあった事とベガ大王の娘であるという情報が周知されていた。

 前触れもなくベガ軍の総大将の娘が姿を見せたのだから、これには地球人側も困惑するほかない。追撃の手が緩み、デュークとルビーナへとSRL側も注目を集める。

 ルビーナというあまりに大きな餌を前にして、彼女の身柄の確保という選択肢が生まれてしまい、動きが鈍ったのだ。

 

「地球をフリード星の二の舞にはさせない。このデューク・フリードの命に代えて、そしてグレンダイザーの全ての力を尽くして、ベガ大王の野望を阻む!」

 

 意志の炎が力強く燃えるデュークの瞳。それこそルビーナが愛するデュークの瞳だ。ルビーナは安堵と感嘆の念を胸の内に漏らしながら、思わず微笑みそうになるのを堪えなければならなかった。

 

『私の知るあなたならきっとそう言うと思っていました』

 

 けれども、思わずそう言わずにはいられなかった。記憶の中と変わらぬルビーナの親愛の情を感じ取り、デュークは困惑していた。ベガ大王の娘とは言え気性のまるで違う彼女であるから、積極的に戦うつもりがないのは理解できる。

 だがそれでも戦場に出たのならば、戦意を見せるものではないだろうか。これではまるでデュークの生存を確かめる為に戦場に出て来たかのよう。

 デュークがヘルメット(マスク?)の中で困惑を隠せずにいる中、十分な距離を確保できたと判断したズリル艦隊は一気に加速して戦場からの離脱を図る。

 

『ルビーナ姫、撤退の手筈は整いました。御身もお早く! 時間を稼ぐ為のベガ獣を向かわせました』

 

『いいえ、ズリル長官。私はこのまま留まり、地球に投降いたします』

 

『な、なんですと!? まさか、最初からそのおつもりであられたか!』

 

『お父様には親不孝な娘の事などお忘れくださいと、そう告げてください。お父様のやり方ではベガの民に未来はないと考えたのです。父と娘の道は別たれました』

 

『実の父を裏切るおつもりか!? ええい!』

 

 土壇場でルビーナの真意を知ったが、今さらルビーナを力づくで連れ戻すにしても地球人側の戦力とあまりに近い。好機とばかりに牙を剥き出しにして食らいついてくるのは明白だ。

 故にズリルに出来るのはそのままこの戦場から撤退する事だけだった。ズリル艦隊が次々と姿を消して行くのを見守ってから、ルビーナは第一にデュークに、そしてこの場に居る地球人達に語り掛ける。

 

『私、ルビーナは地球人類に投降いたします。私はどうなっても構いません。ですが、この艦には捕らえられていた地球の方々やベガ星連合軍に征服された方々が大勢乗っています。どうか、その方々の身の安全の保障をお願い申し上げます』

 

 通信画面越しに深く腰を追って頭を下げるルビーナ。我が身を省みないその姿勢に感銘を受ける者も居れば、彼女の告げた地球人や侵略を受けた被害者達が乗っているという言葉に、引き金に掛けていた指を緩める者と反応は様々だ。

 その中でもアムロやセイラら旧ホワイトベース隊やシーブック、セシリーら、ニュータイプの素養を持つ者達はルビーナの言葉にも心にも嘘がないのを感じ取っていた。

 

「ブライト、彼女の言葉は本当だ。各機とSRLに攻撃を行わないように通達を」

 

 それでも油断なくファンネルを展開するアムロがブライトに進言するが、それは少なくともCVには無用な話だった。

 ドレルをはじめニュータイプの素養を持つ者がいたのに加え、総指揮官であるカロッゾもまた強化人間と化した身によって、アムロら程ではないにせよ人の思念というものを感じ取れる。

 それにこの場においてはルビーナを無き者にするよりも生け捕りにした方が、よほど益になる。一軍の長としてカロッゾがマザーバーンを撃沈する理由はなかった。

 

「まさかとは思いますが攻撃はしないでください」

 

 それでもセシリーがこう声を掛けて制止するくらいには、まだまだ娘からの信用も信頼もないカロッゾであった。

 

「する理由よりもするべきではない理由の多い場面だ。一軍の長という者は己の感情を律しなければならん。この戦闘での最良の結果を得る為には、あの艦を撃沈するという手段はありえん」

 

 いかにも科学者らしい効率の観点から導き出された返答に、セシリーが更に重ねた言葉はカロッゾの芯を捕らえるものだった。

 

「その仮面も己の心を封じる為のものなのですか?」

 

「そうでもなければ情緒を抑えきれんのが人間という生き物だ。女という生き物は御しがたいと思っていたが、人間そのものが御しがたい生き物なのだ。どうしたところで私も所詮は人間だったか……」

 

「……」

 

 それはカロッゾにとって、自分の男を連れて父親を助けに来たセシリーを目の当たりにして、脳裏に妻ナディアへの怨嗟や娘の成長を匂わせる現実を前に動揺を隠せなかったと、自らを嗤わずにはおられず、臓腑をかき回すような自嘲と諦観と、ある種の悟りを含んだ言葉だった。

 世直しを掲げ、最短効率でコスモ貴族主義の実現に向けて二十年以上を邁進し、自らを強化してまで到達した境地がコレなのかと、カロッゾはとてつもない虚無感に襲われていたのだった。

 そんなカロッゾに掛ける言葉をセシリーは持たなかった。同時に責め立てる言葉も。

 

<続>

■ルビーナが投降しました。

■無傷のマザーバーンを入手しました。

■円盤獣・ベガ獣を複数入手しました。

 




なおナイーダは治療が終わって地上組に合流しているので、デューク達とはニアミスしていますね。


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第九十七話 動きが少なくてすみません

いつも誤字脱字の指摘とご感想ありがとうございます。
今さらの話ではありますが、グレンダイザーに限らずスーパーロボット系のキャラはほとんど詳細が分からず、資料もない為、想像と状況によって口調を整えています。原作との齟齬や乖離がありましたらお教えください。


 ベガ星連合軍によるサイド4を勢力圏に置くSRLへの侵攻はDCの介入によって、頓挫した。行動力と機動力と決断力に富んだDCに遅れてやってきた地球連邦艦隊も、SRLの勢力圏内の外で、新たな侵略者の出現とSRLの次の行動に備えて待機している。

 各サイドの駐留艦隊の他、グリプス2、ルナツー、ソロモン、ア・バオア・クー、バルジ改、リーブラを始めとした各軍事要塞にも部隊を配置しつつ、パトロール艦隊の他にも複数の遊撃部隊を確保する連邦軍の圧倒的な戦力の一端を見せた形だ。

 

 クロスボーン・バンガードとホワイトファングからしてみれば、事前の想定をはるかに上回る質と量を見せつけられ、情報部門関係者を筆頭に顔を青くしただろう。

 派遣されたムバラク大将率いる艦隊だけでもSRLの総戦力に匹敵する三桁の艦艇と四桁のMSで構成された大戦力だったのだから。

 もしDCが救援に来なかったとしても、ズリル艦隊は疲弊して数を減らした状態で万全のムバラク艦隊との戦いを強いられ、壊滅的な被害を受けただろう。

 

 そして戦闘終了と同時に新たな問題も発生していた。戦闘終了間際に投降を申し出てきたルビーナ王女一行である。

 無傷のマザーバーンに諸々の兵器と捕虜となっていた地球人やベガ星に支配されていた他星人、あるいはルビーナと考えを同じくするベガ星人……実に多種多様な人々を伴っていた。

 

 DCから予想外の連絡を受けたムバラク艦隊から急ぎ迎えの艦が向かう中、ルビーナの知己であるフリード兄妹らの仲介によりマザーバーンと遅れて到着したハガネが接舷してルビーナ達をハガネ側に迎え入れていた。

 交戦中かつルーツの異なる異星の姫君とは言え、高貴な身分の相手を迎え入れるとあってハガネ側も慎重な対応を取っている。あからさまに武装した人員を配置するような真似は控える、という事だ。

 

「ルビーナ……」

 

 ルビーナを迎え入れるレビルの隣に招かれたデュークはしずしずとお付きの侍女とコマンダーを連れて姿を見せたルビーナを見て、その名の通り紅玉が人となったかのように美しい元婚約者の名前を呟く。

 懐かしさこそ含まれているが、恨みや怒りの含まれていない一言が、なによりも雄弁にデュークの心情を物語っている。

 ルビーナは今も愛する男が生きて目の前にいる事実に瞳を潤ませそうになったが、同時に自分の双肩に掛かっているモノを思い、居住まいを崩さなかった。

 レビルは二人のそのやり取りを見て、目の前の女性がただのセンチメンタリズムや悲劇のヒロインという立場に酔い痴れて短慮に走ったのではないと理解する。高貴なる者の責務を理解する貴人と認識を改めたのである。

 

「改めてご挨拶申しあげます。ベガ大王の娘、ルビーナと申します。この度は私共の投降をお認め下さり、感謝の言葉もありません」

 

 そうして再び頭を下げようとするルビーナをレビルが手で制した。一年戦争時は連邦軍の最高責任者であった彼も、今は退役軍人として市井に降った身である。ただまあ、地球圏最強の超精鋭部隊の総指揮官であるから、民間人とは言えない立場なのも事実だけれども。

 

「どうぞ感謝の言葉はまだ口になさいますな、ルビーナ殿下。我々を通じて地球連邦政府にあなた方の投降の申し出について連絡は済ませていますが、正式にあなた方に対する対応はまだ決まってはおりません」

 

 それからレビルは恥じるようにしてこう告げた。

 

「もちろん最低でもあなた方の身の安全と人権は私とこの部隊の力の及ぶ限り、守る事をお約束いたします。

 また恥ずかしながら我々は歴史上、単一惑星内での外交しか経験しておらず。一度、バームの使節団と機会を持ちましたが、残念ながらバルマー・サイデリアル連合帝国からの宣戦布告でしかありませんでした。

 その為、ルビーナ殿下のように貴い身分の方をどう遇すればよいのか、地球での常識に当てはめればよいかも、定まらぬというのが本音です。

 そこでかつてあなた方、ベガ星の人々と関係の深かったフリード星の王族であるデューク・フリード殿下とグレース・マリア・フリード殿下にお知恵を貸していただきながら、ルビーナ殿下をはじめとした皆様を受け入れる方針であります」

 

 もしフリード兄妹がルビーナやベガ星の関係者に憎悪と怒りを抱いていたなら、ルビーナ達は冷遇されるであろうし、またその逆も然り。

 ルビーナのお付きの侍女などは少なからぬ動揺を見せたが、デューク達がルビーナに寄せる感情を理解しているレビルは、そうはならない事を知っているし、ルビーナもまた罪悪感と共にそれを理解していた。

 

「デューク・フリード殿下、グレース・マリア・フリード殿下、そしてレビル艦長、皆様の寛大なるお心に心からの感謝を」

 

 それからレビル達はハガネ艦内の貴賓室へとルビーナらを招いた。室内にはレビル、デューク、マリア、ルビーナ、そして男女のコマンダー二名が付き添っていた。

 他の人の目がないという事もあり、レビルが雰囲気を柔らかくして対面の椅子に腰かけたルビーナに話しかける。コマンダーの二人はルビーナの後ろで立ったままだ。

 

「ここでの会話は公式の記録には残りません。どうぞ気を楽になさってください。といっても難しいかもしれませんが。よろしければお茶をどうぞ。地球産のものですが、デューク君とマリア君に味を確かめてもらっています」

 

 好々爺然としたレビルの柔和な雰囲気と口調、更には状況が変わったのを示すようにデューク達の呼び方を変えている。

 デュークもマリアもれっきとしたフリード星の王族だが、同時に地球人の宇門大介、マリアとしての戸籍と身分もあり、部隊内ではあくまでも多くのスーパーロボット乗り達同様に民間からの善意の協力者として扱われている。

 

 フリード星復興が現実味を帯び始めるころになれば、生き残りの王族として地球連邦政府と交渉を持つようになるだろうがそれはまだ捕らぬ狸の皮算用というもの。

 なおハガネやシロガネといったスペースノア級は疑似重力が発生しており、捕虜兼客人であるルビーナの前に置かれたマイセンのティーカップからは、紅茶の湯気が立ち上り、芳しい香りを発している。

 

 儀礼的にルビーナはティーカップを手に取り、一口、紅茶を口に含んだ。DCのスポンサーとレビルのコネの甲斐もあって、常備されている茶葉は常に最高品質のものだ。ルビーナは口に含んだそれから鼻に抜ける香りの心地よさに、ふっと目元を和らげる。

 味と香りを楽しめたのは、反乱が起きる前から父ベガ大王を筆頭とするベガ星人の圧政に心を痛め、ルビー星の反乱からスカルムーン基地到着までの道のりの間に、父へ反旗を翻す覚悟を固めてから緊張し続けた心が少しだけ余裕を持った証だった。

 それまでは娘を溺愛する父が用意した贅を尽くした料理を口にしても、なにも味を感じられなかったのだから。

 

「とても、とても美味しいですわ、レビル艦長」

 

「それならよかった。幸い遠い星の方々と我々地球人とでも味覚に共通するところは多いようです。ではいささか拙速ではありますが、率直に申し上げればこの部屋にお招きしたのは、私ではなくデューク君達とあなた達に話をする機会を早急に設ける為です。

 一応、建前上、私が同席させていただきますが、投降なさった以上、これからあなたには多くの話を聞かなければならない。そうなる前に、というわけです」

 

「ご配慮痛み入ります」

 

「隊員のメンタルケアに心を砕くのも、指揮官の仕事の一つです。ただ、私の予想と違うのはお連れになった二人だ。コマンダーと呼ばれる士官以上の方と見受けるが、ルビーナ殿下の同士とも腹心の部下とも事情が異なるとお見受けするが……伺ってもよろしいか?」

 

 この時、ルビーナに同行しているコマンダーの内、男性の方とデュークは面識があった。かつて留学生として交流がある、モール星の王子モルスだ。親友である彼がベガ星のコマンダーとしてこの場に立っている事実には、驚きを隠しきれない。

 レビルの言葉と視線を受けて動いたのは、女性コマンダーだった。青いショートカットから長い髪が数本伸びる少し変わった髪型に、白目のない部分も星の煌めくような青い瞳、それに青白い肌の女性である。

 

「それでは私から。私はミネオ。かつてベガ星連合軍でコマンダーの地位にありました。そしてベガ星に支配され、ルビーナ王女殿下が統治していたルビー星の人間です」

 

「ベガ星は多くの星々を征服していると聞いてはいたが、あなたもそういった星の方というわけですな」

 

「はい。ですが今は違います。デューク・フリード殿下、そしてレビル艦長。私達ルビー星の人間だけでなく多くの星々では、あなた方の活躍に勇気づけられて自由と平和を取り戻すべく立ち上がりました。

 それはベガ大王直属の親衛隊に組み込まれていた兵士達も同じです。私も親衛隊に所属していましたが、同じようなベガ星人ではない者達と密かに連絡を取り合い、ルビーナ王女殿下と共にこうしてあなた方の下へとやってきました。

 この場には居ませんがグレンダイザーと地球の人々の力となり、そして故郷を取り戻したいと考える者は多いのです」

 

 ルビーナ自身は反旗を翻したルビー星の人々に追われてスカルムーン基地にやってきたわけだが、そこから反ベガ勢力と手を結んで父と別の道を歩むまで、いったいどんな道のりだったものか。それがとてつもない苦難の道であったのは間違いない。

 それからミネオは小脇に抱えていた金属製のケースを開いて、封書を取り出してテーブルの上に置いた。本物の紙とはなんともクラシックだが、電子技術の発達した時代ではかえって信頼性が増しているのは地球も宇宙も変わらないらしい。

 

「そしてこれはルビー星からの地球連邦政府への親書です。レビル艦長はかつて地球連邦軍を率いておられた方。どうかこちらを立場のある方へお届けください。ルビー星の民、そして同じくベガ星の支配に立ち上がった者達を代表してお願い申しあげます」

 

「確かに承った。政府上層部に必ず届けよう」

 

 レビルが恭しく親書を受け取るのを見て、ミネオはほっと安堵に気を吐いた。

 原作では第九話にてルビー星の安全と引き換えにデュークと戦い、その後、シラカバ牧場の人々との交流によって迷いが生じ、最後にはブラッキーに粛清されてしまった彼女はこの世界ではまた異なる運命を歩んでいるようだった。

 ミネオの話がひと段落したのを待ってから、残る男性コマンダーがレビルに自己紹介を始めた。デュークと話がしたいと顔に書いてあるが、非公式とは言え相手は地球連邦に大きな影響力を持つ老将である。おざなりな態度を取れるわけもない。

 

「次は俺だな。モルスという。ミネオと同じくベガ星連合軍のコマンダーであり、親衛隊隊長を務めていた」

 

「親衛隊の隊長? それはベガ大王の腹心と言ってもいい。それほどの人物が反旗を翻すとは……もしや貴官もベガ星に故郷を奪われたのかね?」

 

「その通りだ。俺は元はモールという星の王子だった。だが故郷をベガ星連合軍に滅ぼされ、捕らえられた俺は洗脳されて奴らの駒にされていた。今はこうして洗脳が解けた事もあり、ルビーナ王女の考えを知って協力している。

 俺もまたルビー星の人々同様にベガ大王の恐怖による支配を終わらせて、故郷の復興を考えている。だが、まずはなによりもベガ星連合軍を打ち倒す事が先決だ」

 

「どうやらベガ大王は多くの人々から恨みを買っているようだ。ボアザンのザンバジル皇帝やバームのオルバン大元帥もそれは同じ話だが、だからこそあなた方のように我々に協力してくれる方々も居る。まさに身から出た錆だ。ところでデューク君とはなにやら面識のある様子だが……?」

 

 と水を向けてくるレビルにデュークは首肯して、口を開いた。

 

「モルスとは親友の間柄です。かつて僕のフリード星とモール星とは友好的な関係にありました。まさか彼がベガ大王に洗脳されていたとは、知りませんでしたが」

 

「おまけに親衛隊長とは、我ながら笑える皮肉だ。デューク、生きていた君との再会を喜びたいところだが、一刻も早く伝えなければならない情報がある」

 

 真摯な声色と表情のモルスに対し、デュークは親友との再会に緩んでいた表情を引き締め直す。モルスの雰囲気にレビルや口を挟まずにいたマリアもじっと耳を傾ける。

 彼らが持ってくる情報はおおよそ察しがついていたが、彼らの口から語られる事も大事な要素だった。

 彼らから齎された情報によって地球に利益が出れば、戦後、彼らの母星との交流を政府に働きかけやすくもなるし、乗り気になった政府が連邦市民にアピールする材料の一つにもなる。

 地球がモール星やルビー星、ウルス星などといったベガ星に征服された星々との交流を拒絶するなら、また話は別だけれども。

 

「分かった。聞かせてくれ」

 

「俺の洗脳が解けた切っ掛けであり、また各地で反乱が起きたもう一つの大きな理由だが、ベガ星が崩壊したんだ。

 俺は崩壊する前に転移装置で脱出したんだが、事故によって太陽系の端に飛ばされてしまい、時間をかけてスカルムーン基地に辿り着き、そこでルビーナ王女と出会い、洗脳を解いてもらい、そのまま軍内の協力者になったというわけだ。

 そしてベガ星の崩壊に際しては多くの民がそのまま星の崩壊に巻き込まれて命を失い、ベガ大王とその側近達だけが主力部隊を連れてスカルムーン基地に逃げ込んでいる状況だ」

 

「なんだって、ベガ星が!? そうか、ルビーナ、だから君は大王が銀河の征服よりも地球の支配に熱意を燃やすと言ったのか! 地球を新たな母星に、第二のベガ星にする為に!」

 

「その通りです。現在、ベガ星連合軍はボアザン、キャンベル、バーム、ムゲと手を組み、銀河列強連合を結成していますが、バーム同様母星を持たないという点で他の勢力に劣っています。

 それでもバームは背後にバルマー・サイデリアル連合帝国という巨大勢力がいますが、ベガはそうではありません。また征服した星々で反乱が相次いだこともあり、その勢力と発言力は銀列連の中でも日に日に落ちている状況です」

 

 ベガ星連合軍が他勢力よりも優れている点として挙げられるのは、強いて言えば最高指導者が前線に赴いている為、勢力の方針の決定が早いことくらいか。

 ボアザンのザンバジルは母星にあり、キャンベルのジャネラは実のところ中間管理職、バームは前線指揮官リヒテルの離反によりオルバンの面子が潰れている。

 ムゲはオペレーション・レコンキスタで多くの将官と兵士を失ってはいるが、本拠地が異次元に存在する為、まだまだ余裕のある状態な事もあって、銀列連内の他勢力とは事情が異なる。

 

「話はまだあります。ベガトロン放射能に異変が発生し、フリード星の環境が回復に向かっているのです。このまま星の自浄作用に任せるだけでもいつかは元通りになるでしょうけれど、更に人の手が加わればもっと早くフリード星はかつての美しさを取り戻せます」

 

 フリード星の環境回復、それはベガ星の消滅と同等以上の衝撃をデュークに与えた。ベガ星に侵略された当時、まだ幼かったマリアは故郷の記憶は朧げになっているが、デュークははっきりと覚えている。

 例えベガ星連合軍を倒し、地球を守れたとしても二度と在りし日の姿を見られないと思っていた故郷に復活の目があると告げられたのだ。彼にとってこれ以上の福音はないと言える。

 

「父、ベガ大王が倒れベガ星連合軍が崩壊した暁には、これまで征服されていた星々を含めフリード星は新たな秩序を構築しなければなりません。その時に地球の人々の協力があれば、どれだけの助けとなるか。

 既に母星を失い、民のほとんども死に絶えていますが、ベガ星の王族としてこれまで他の星々に与えてきた恐怖と罪を償う為にも私は出来る限りのことをいたします。望むというのであればこの命も差し出しましょう」

 

「ルビーナ、君がそこまでの覚悟を固めていたとは。君には酷な話だが、もし戦場でベガ大王と相対したなら、僕は怒りを抑えきれないだろう。例え君の父親であっても、全力で戦い、そして倒す」

 

 それは宣言だった。必ずベガ大王を倒すという、沈痛な言葉に秘められた闘志を感じずにはいられない。ルビーナは一瞬だけ、目を伏せた。他者からは恐怖と憎悪を向けられる父であっても、彼女にとっては過剰なほどに愛を注いでくれる父親であったから。

 

「はい。覚悟の上です。父はそれだけのことをしてきました。フリード星と変わらぬ友好関係を築き、宇宙の平和を守るという誓いを忘れていなければ、もっと違う未来があったのでしょう。

 ですが父は宇宙を全て我が物にするという野心に憑りつかれました。ならばその報いを受けなければならないのです」

 

 凛として告げるルビーナは涙一つ流さなかった。そうする為に固めた覚悟の強さを、この場に居る誰もがくみ取った。そしてルビーナ達の口からスカルムーン基地の所在が伝えられて、攻略に向けて地球連邦軍とDCは大きく動く事となる。

  デュークが思わぬ再会と驚くべき情報の数々を伝えられていた頃、ベラ・ロナことセシリー・フェアチャイルドの姿はクロスボーン・バンガード艦隊旗艦ザムス・ガル級一番艦の中にあった。なおカーンズの座乗艦は二番艦以降のものである

 

 護衛というわけではないがCVがセシリーの身柄を抑える可能性を考慮してシーブックや機体に乗ったまま格納庫で待機しているビルギットの他、ステルスを解除しているファントムやヴァイスリッター・アーベント、アルトアイゼン・ナハトといったガードも着いている。

 ビギナ・ギナから格納庫へ降り立ったセシリーを迎えたのは、ドレルを伴ったカロッゾであった。他にもCVの兵士達が遠巻きに見守っているが、流石に銃口を向ける事はしていない。

 

「こうして直接顔を合わせるのは久しぶりだな、ベラ」

 

 手を上げて状況を見守っている兵士達に待機を命じ、カロッゾは目の前にふわりと降り立つセシリーに対して、自分でも思いの外、優しい声音で話しかけた。セシリーは兵士達の目がある中でのポーズではないと感じ、困惑しなかったと言えば嘘になる。

 

「ええ、お久しぶりです。それでわざわざ私を指定して連絡を取ったのは、どのようなお話ですか。ベラ・ロナとしてCVに戻れ、というお話でしたらこの場ではっきりとお断りします」

 

 取り付く島もないセシリーの強い言葉に聞こえた兵士達の一部は動揺を見せるが、当のカロッゾは思わずと言った調子で笑い声を零す余裕があった。ドレルはそんな父親を驚いた顔で見上げたが、同じように微笑する。それでいい、と言わんばかりだ。

 

「お前の意志の固さは戦闘中に十分に理解している。お前の意思を無視してCVに引き入れたとしても、国を割られるのが関の山だ。埋伏の毒を自ら飲む必要もあるまい。ましてやそうしたならDCが完全に敵に回るのが見えている。その状況で手荒い真似などせん」

 

「ベラ、その点は私も保証する。この艦から君達を無事に送り出すと誓おう」

 

 ドレルは異母兄ではあるが同時に若さゆえの潔癖さを持っているのを知っているから、セシリーはカロッゾの言葉をひとまず信用する事とした。

 

「分かりました。場所は? 彼と彼らを連れて行っても?」

 

 彼とはシーブックを指し、彼らはアーベントやナハトの事だ。カロッゾはアーベントらにはさして注意を払わなかったが、シーブックに対してはじっとプラチナの仮面の奥から視線を送って数秒間動かさなかった。

 シーブックは敵意とは違うなにか品定めされているような感覚に、緊張を背中に走らせた。別にニュータイプでなくともシーブックと同じような感覚は味わえただろう。なにしろ生の人間の感情が齎した影響であったから。

 

「構わんよ。繰り返すがお前にも、お前の仲間達にも危害を加えるつもりは欠片もないのだから。私もドレルだけは同行させるが、構わんな?」

 

「ええ。それでしたら構いません」

 

 セシリーの記憶にあるこれまでのカロッゾとはどうにも一致しない柔らかな言動は、終始セシリーの調子を狂わせていたが、それが悪い方向には働かないだろうと同時に感じても居た。

 カロッゾはセシリーの返答に満足した様子で周囲の兵士達に指示を出し、解散させる。本当にセシリーの身柄を拘束するつもりがないのだと分かって、シーブックや量産型F91で待機中のビルギットは安堵の吐息を零した。

 

 セシリー達が案内されたのはザムス・ガルの中にあるカロッゾの私室だった。コスモ貴族を標榜するCVの最高指揮官の部屋らしく、軍艦らしからぬ内装と調度品に囲まれた部屋はなるほど貴族らしい。

 ロナ家は爵位を金で買ったジャンク屋あがりだが、爵位などはるかな昔から金銭でやり取りされてきたものだ。外見を繕ったら、後はメッキの外観を本物に変えるよう中身を整えて行けばよい。

 一般庶民には生涯縁のない品々に囲まれた部屋で、カロッゾは先にセシリーとシーブックに椅子を勧めた。ファントム達がその周囲を囲むが、それは気にも留めない。

 

 その中でカロッゾが取った行動はセシリーだけでなく、シーブックとドレルにとっても意表を突かれるものだった。おもむろにカロッゾが仮面に手を掛けると、淀みなくそれを外してテーブルの上に置いたのだ。

 そうしてセシリーの対面に腰かけると、ドレルにも着席を勧める。セシリーにとって実父カロッゾの素顔は記憶の彼方のものであったが、改めて見つめてみるとこういう顔だったろうか、とも思えるし、こういう顔だったなと懐かしく思える気もする。

 驚きを隠さないセシリーにカロッゾは微笑した。娘の姿にただ笑う父親の顔だった。

 

「ただお前の話が聞きたくなっただけだ。ベラ、お前が今日までどう戦い、過ごし、感じて来たのか。それと隣のボーイフレンドのこともな?」

 

 カロッゾの言葉の意味を理解した時、セシリーとシーブックは心底驚いて、頭の中が真っ白になるのだった。

 ルビーナと共に齎された多くの情報とコマンダー達やベガ系機動兵器、地球側で予測していたスカルムーン基地の位置と提供された情報との照合と精査、攻略に向けた戦力の用意とこれから膨大な作業が待つ中で、SRLの代表を務めるマイッツァー・ロナから地球連邦政府に降伏の申し出があったのは、この親子とボーイフレンドの会合から三日後のことである。

 

<続>

コマンダーミネオ

コマンダーイアラ

コマンダーハルク

コマンダーガウス

少年コマンド隊アインス ツヴァイ、トロワ、ビーチャ、スインコ

コマンダーケイン

 

ここら辺が生存組です。コマンダー・キリカはこの後、ベガ星との決戦で出てくる予定です。

 

■スカルムーン基地攻略艦隊

艦艇:200~300隻(クラップ級が主・リーブラ含む)

MS/MZ/MA:4,000~5,000

スーパーロボット:100(グルンガスト弐式、量産型グレートマジンガー)

オプションとしてバルジ改による砲撃支援あり。

 

※注意点は月を爆破といった自暴自棄の行動を起こされないように注意する事。

 

これにDC地上・宇宙部隊+オリュンポスを加えれば足りますかね?

 




ベガ大王は泣いていいかもしれませんね。
カーンズは連邦に降伏するのを納得していませんが、ガンダムWの五博士達に色々言われる予定です。乗っていたザムス・ガルが撃沈されてそのまま死亡とも考えていたのですが、気付いたら今回、生き残っていました。

追記
話数の順番がズレていたのを修正いたしました。


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第九十八話 アウター&ムーンクライシス

「貴様はなにをしていたのだ!!」

 

「ぐあっ!?」

 

 スカルムーン基地に戻ったズリルは事の次第を報告した直後、激高したベガ大王に容赦なく殴り飛ばされた。司令室には親衛隊やガンダルの他、ベガ星連合軍の幹部級が顔を並べているが、誰もがベガ大王の怒りをやむなしと感じていた。

 

「地球人共に敗れただけではなく、その挙句にルビーナが投降しただと!? それを止められなかったのか、ズリル! あれだけの戦力を投じて敗れただけでも許しがたい失態だというのに、わしのルビーナを!?」

 

 ズリルは唇の端から血を流しながら、跪いて詫びの言葉を口にした。子を持つ親としてベガ大王の怒りにはある程度、共感できる部分がある。

 失態の大きさに我が身に及ぶ危険を感じているズリルだが、反抗的な態度は一切取らずにベガ大王の怒りを受け止める。

 

「面目次第もございません。この度の敗戦、弁明の仕様もなく……」

 

 顔を伏せて詫び続けるズリルの姿を見ても、ベガ大王の怒りはまるで収まりそうにもなかったが、ここでガンダルが動いた。少なくともガンダル自身はベガ大王へ厚い忠誠を捧げる忠臣である。

 その体と精神に背反の人格を持つレディ・ガンダルという厄介な存在を抱えているが、敗色濃厚なこの戦況でどう動くものか。

 

「大王様。どうか気をお鎮めください」

 

「鎮めろだと? この状況でどうして落ち着いてなどいられる。この度の作戦は地球人の一角を崩し、占領地を獲得するだけでなく、ルビーナにも今後の戦争の覚悟を固めさせる二重の意味を持っていたのだぞ!

 ズリルの能力を信じればこそあれだけの大戦力とルビーナを任せたというのに、よりにもよってどちらも失敗して帰ってきたこの男を前に、落ち着けと申すのか、ガンダル!」

 

 言葉を間違えればズリルもろともに処刑されかねないガンダルに、この場に居る者達の視線が集中する。明日は我が身と思う者も居れば、ベガ大王に次ぐ実力者である彼が、怒り狂う恐星大王を宥めてくれるのを切に願う者もいる。

 

「恐れながら申しあげます。確かにこの度の戦いで失った戦力は決して無視できるものではございません。しかしながら、各地に配置されていた我が軍の軍勢が次々とこのスカルムーン基地に集結しつつあります。

 その者達を加えれば失った戦力の数倍に達する数を揃える事が叶います。また作戦こそ失敗しましたが、ズリルの頭脳と指揮官としての能力は我々の置かれたこの過酷な状況に於いて、欠くべからざるもの。

 地球人達が我らの首を狙って総攻撃を仕掛けてくるのは、もはや時間の問題。大王様のお怒りはごもっともではございますが、なにとぞ今ばかりはお心を鎮められ、来たる難敵を討つ為にも大王様の号令一下、急ぎ軍勢を整える必要がございます」

 

 保身の念やズリルに貸しを作るといった意識の感じられないガンダルからの忠言に、ベガ大王の怒気がわずかに緩んだ。

 愛娘が手元を離れた怒りと悲しみはいささかも減ってはいないが、曲がりなりにも多くの星々を征服し、宇宙制覇を唱える大王の思考には常に冷徹さと理性とが残っている。その理性がガンダルの言葉に耳を傾けよと訴えかけているのだ。

 

「おのれ、おのれ、地球人共め! 我々は全宇宙を征服し、ベガ大王の名前と恐怖を未来永劫、宇宙の歴史に刻むべく邁進していたはずだ。

 それが、デューク・フリードとグレンダイザーが居たとはいえ、銀河の辺境の星系一つ開発出来ていない下等な蛮族になぜこうも敗れ続けるのだ!!」

 

 ベガ大王の血を吐くような叫びは他のボアザンやキャンベル、バーム、ガイゾック、ムゲといった勢力の者達も心から同意するだろう。

 太陽系を飛び出してすらいないレベルにも関わらず、地球人類の軍事技術と戦闘能力はあまりにも高すぎる。銀河最強格と言っていいだろう。

 ガンダルは主君の嘆きと怒りを受け止めながら、更に言葉を続けた。これから自分の口にする言葉の方が、主君には認めがたいと理解しているから、後回しにした言葉を。

 

「大王様。ルビーナ姫殿下の投降と時を同じくして、兵士やコマンダー達の離反が確認されております。主に我々の征服した星から徴兵し、洗脳した者達です。

 姫殿下の座乗艦以外にもマザーバーンや輸送艦といった装備、更に基地内部の捕虜達の姿が消えております。この事から考えて……」

 

「言うな! それ以上先を口にするでない。ガンダルよ、お前とてそれ以上を口にする事は許さんぞ!」

 

 ベガ大王とてルビーナの行いが何を意味するのか、分かっていた。分かっていても父親としての情がその事実を直視するのに耐えられずにいた。

 

「姫殿下はこのスカルムーン基地に到着する前後という短時間で、謀反を企てられたのです。大王様、これは明確な謀反なのです!」

 

「……ッ!!」

 

 我が身を省みずにはっきりと告げるガンダルの言葉に、ベガ大王の顔がはっきりと歪んだ。怒りで覆い隠していた嘆きが表出して、怒りの仮面を破壊したのである。

 

「親衛隊長のモルスをはじめ、故郷や家族を人質にとっていたコマンダーや洗脳したコマンダー達が姫殿下と行動を共にし、少なくない有能な戦力が敵に回ったのです。

 またこの基地の位置も発覚したと考えなければなりません。我々の拠点はこの地球圏においてはスカルムーン基地、ただ一つ。

 この基地を失えば、例え各地の戦力が結集しようとも、補給も修理も休息もままならぬ状態に置かれます。大王様、どうか今は王としての責務を果たしてください。この戦いの後に、このガンダルの命をご所望とあらば喜んで差し上げまする」

 

 ガンダルの中でもう一つの人格であるレディ・ガンダルが激しく動揺して抗議したが、ガンダルはそれを完全に抑え込み、ベガ大王の足元に跪いたまま微動だにしない。

 ベガ大王は天を仰いだ。誰もが彼の次の言葉を息を忘れて待った。ベガ星連合軍の頂点に立つ冷酷にして苛烈なる君主。

 ベガ大王の判断がこのスカルムーン基地に集った者達と、地球人類の運命をある程度左右するのだから。

 

「……一時間だ」

 

 天を仰いだままベガ大王は短く呟いた。

 

「は」

 

 答えるガンダルの言葉は簡潔だったが、彼は主君が覚悟を決めたのを一言で理解していた。

 

「一時間で状況をまとめ、再びわしに報告せよ。それまでの間、全てのものにこの部屋の出入りを禁ずる。よいか!」

 

 顔を戻したベガ大王の顔は憤怒に燃えていた。自らの覇道を邪魔する有象無象共を踏み潰し、逆らう者は八つ裂きにしても足らぬと物語る覇者の顔であった。

 この場に居た誰もがベガ大王の覇気と威厳に呑まれ、まるで意思の無い人形のように大王の指示に従って退出して行く。例外はガンダルとズリルの二人くらいのものであった。

 ベガ大王はそれきりガンダルにも誰にも声を掛けなかった。最後にガンダルが退室する際に深く腰を折って頭を下げたが、それにも無言で応じるのみであった。

 そうしてただ一人となった部屋の中で、ベガ大王は憤怒の表情はそのままに両方の瞳から滂沱(ぼうだ)の涙を流した。

 

「ルビーナ、もはやこの世に於いてお前とわしは娘と父ではない。親子ではない。わしはお前を殺すぞ、ルビーナ!!」

 

 最愛の娘への愛情の全てを涙に込めて捨て去る事で、ベガ大王は全宇宙制覇という壮大にして愚かな目標を掲げるのに相応しい覇王として、完成したのだった。

 

 

 宇宙の各地で敗退したベガ星連合軍の残存戦力がスカルムーン基地を目指して集結しつつある中、地球連邦軍も動員可能な宇宙戦力の大分部で結成された艦隊が編成されつつあった。

 リーブラとDCを含む極めて強力な戦力で、規模で言えば一年戦争時のソロモン戦やア・バオア・クー戦にも匹敵すると噂されている。

 

 攻略目標とされたベガ以外にもその他の侵略者勢力にとっては、忌まわしい地球連邦軍の本気の戦闘能力が測れる機会であり、興味と恐れを等分で抱いていた。

 ベガ星連合軍もまた総力をあげて地球連邦軍とDCを迎え撃つ態勢を整えており、銀列連の各勢力も有力な戦力を派遣して、地球人の戦力を大きく削れるように取り計らっている。

 地球系勢力と異星勢力の銀列連双方に加盟しているムゲ・ゾルバドス帝国も、今回は本腰を入れて協力する用意を進めている。

 

 その一方でDCが合流を果たす前、地球圏の一角、宇宙パトロールの本部の存在する宙域では戦闘が勃発していた。軍ではないとはいえ、退役軍人を多く含む宇宙パトロールは地球圏の平和維持の為に実に有用な組織だ。

 彼らが壊滅的な被害を受ければ、地球連邦の警戒網に小さくない穴が開いて、後々、後手に回る可能性は否めない。

 

 宇宙パトロール本部の周囲を取り囲み、抵抗するパトロール所属のMSと交戦しているのは、新型のビルゴ3やヴォルテールといった無人機に加えて、メギロートにデイモーンの姿もある。

 バルマー・サイデリアル連合帝国、それも真ジオン公国系統の軍勢だ。敵部隊の中にはアウーラ、グランシャリオ、エイジャックスといった艦艇の姿がある。

 

 タウ・リンやドクターペルゲやクラーツ、ガレムソン、更にはいつの間にかホワイトファングから離反していたビクター・ゲインツが戦場に居た。

 ティターンズとキュクロープスの戦闘に於いて、大量殺戮兵器であるバグを無断で使用し、SRLの信用を地に堕としたビクターは、バサ帝国の技術と知識を手に入れたペルゲの手で開発されたビルゴ3と供与されたアンティノラという力に酔い痴れていた。

 

「いけ、新たな乙女座の戦士よ、ビルゴ3! カーンズめ、見るがいい。私は地球人類などという枠に囚われず、宇宙に翼を広げて、アースノイドもスペースノイドも導いてやる。そう、この私、ビクターの率いるパーフェクト・ピース・ピープル──P3によって!」

 

 ビクターは古巣のホワイトファングがクロスボーン・バンガードの地球連邦への降伏により、事実上の敗北を決したのを知った時には高笑いしたものだ。

 そして組織の象徴に自分を選ばなかったカーンズを思う存分、嘲り笑い、自分を信じてついてきた同志と共に真ジオン公国を足掛かりにして、地球のみならず宇宙を制覇してやろうと新たな野心を燃やしていた。

 そんなビクターを、ペルゲは自分の作品が最強であることを証明できれば良い為、冷めた目で見て、クラーツはまずは自分の命が第一だがビクターを利用できると踏み、ガレムソンも似たようなものだ。そしてタウ・リンは彼ら全員を嘲っている。

 

 宇宙パトロール側の戦力は武装を施したパトロール艇に払い下げられた旧式のサラミス級といった軍艦、ゲシュペンスト、ジムIIやジム・カスタムといった旧式MSで、真ジオン公国を相手にするにはあまりにも心もとない。

 唯一、ビルゴ3やガレムソン艦隊のジャベリンと優勢に戦えているのは、旧ジオン公国軍人のニュータイプ、エファ・ガラドリアルの乗るカタールⅡだけだ。

 一年戦争のソロモン戦でゼファーガンダムと戦い、あと一歩まで追い詰めたパイロットが当時の機体の後継機に乗って、この戦場に立っていた。

 

 オールレンジ攻撃が可能な機体特性に加え、大型の機体各所に内蔵された強力なビーム兵器が火を噴いて、プラネイトディフェンサーの隙間を縫って、あるいはビームキャノンが発射されるタイミングを狙った射撃は、正確にビルゴ3に直撃している。

 そして既に彼女らの下には得難い援軍が間に合っていた。DC宇宙艦隊の本隊はCVから提供されたイルルヤンカシュ要塞で、戦力の補充や修理、休養を取っていたが足の速い一部の部隊が駆け付けたのである。

 

 ペルゲとクラーツに因縁のあるアディンのガンダムグリープ、それとロッシェのガンダムL.O.ブースター、それとクラスターガンダムことF90Ⅲに乗り換えたデフ、トキオのネオガンダム、更にはアムロとクワトロの乗るゾーリン・ソールといった面々である。

 そして驚くべき光景の一つとして、アムロとクワトロという二大ウルトラエースを相手に、タウ・リンが互角以上に戦っているというものがあった。

 

 この時、タウ・リンの機体は三十メートル近い大型MSグラン・ジオングである。

 ジオングを思わせる頭部を持ち、通常の腕部の外に更に三本のクローとビーム砲を備えた大型の腕を持つ四本腕のMSだ。

 規格としてはMSだが量子波動エンジンとカルケリア・パルス・ティルゲムを搭載し、パワー・スピード共にスーパーロボットクラスだ。

 

「パイロットの腕が良くても機体がそれではな!」

 

 グラン・ジオングにはIフィールドを始めとしたフィールド効果を妨害するアンチ・ファンネル・システム(AFS)が搭載されており、ゾーリン・ソールに搭載された各種ファンネルは一切機能しなくなっている。

 サイコマシーンとしての追従性や反応速度はそのままだが、攻撃手段の大部分を封じられたアムロとクワトロはグラン・ジオングの念動フィールドと重装甲の突破に苦戦していた。

 

「この動きの速さに悪意の伝播は、強化人間か!」

 

 クワトロのゾーリン・ソールから発射されたエレクトロ・ケミカルガンの超高速の弾丸を、グラン・ジオングの胸部から発射されたミサイルが捕捉して、両者の間で爆発が生じる。

 

「差別的な言い方だな。ニュータイプを真似しようとして作り出された被害者なんだぜ、強化人間ってのは。だったらもっと憐れんでくれないとなあ、赤い彗星!」

 

 グラン・ジオングの大型腕部から発射されたビームの奔流を回避し、二機のゾーリン・ソールはグラン・ジオングを常に挟み込むようにして動き回り、真ジオン公国側の最大戦力であるグラン・ジオングの拘束を続ける。

 

「このパイロットの心の底にある悪意は、地球へ向けられた憎悪か?」

 

 アムロが果敢にビームサーベルで斬りかかってくるのを、タウ・リンは同じくビームサーベルを抜き放ち、内側の左腕であっさりと切り払う。両機の差に広がるパワーの差は絶対的だ。

 

「勝手に人の心を覗き見るなよ。マナーを忘れなきゃニュータイプになれねえんなら、人類の未来は暗いなあ、アムロ・レイ。国同士の戦争ではなく、個人間の殺し合いがそこら中で起きるぜ!」

 

「そんなものをニュータイプとは言わない! 俺もまた真の意味で、ニュータイプではないのだからな!」

 

 こんな風に殺し合いをしないで済むのがニュータイプであるはずだと暗に告げるアムロに、タウ・リンが返したのは痛烈な罵倒だった。

 

「ははは、そうかい。それならアンタは人殺しの上手い、勘のいいクソ野郎ってわけだ!」

 

 生まれ持った素質に熟練の経験値、高度な強化手術にサイコミュに似たカルケリア・パルス・ティルゲムの相乗効果はタウ・リンに凄まじい戦闘能力を与えていた。

 そこに加勢に加わったのがゼファーガンダムとSガンダムだ。

 宇宙に上がってからゼファーを搭載していたリ・ガズィカスタムやこれまで使っていた機体がメンテナンスに入っていた為、万が一に備えてアップデートを重ねていたとはいえ、ガンダムにゼファーを積んでの出撃となっている。

 

「テロ屋が調子に乗ってんじゃねえぞ!」

 

 リョウの当初は恐怖心を糊塗する為だった威勢のいい叫びも、今では彼の個性として定着しつつある。普段から起動するようになったALICEのサポートを受けつつ、ニュータイプと強化人間の熾烈な戦いに乱入できるだけの実力を見せる。

 

「サーシェスのカスと同じ機体か。アナハイム、死の商人共め、見境というものを知らねえのか! だが、こちらの方が厄介か。一年戦争の機体でよくも動く。それになんだ、無人機? にしては……」

 

 ゼファーの技量についてはもはや語るまでもない。両肩にシールドを固定し、ビームガン二挺を構えたゼファーガンダムの中身がいかに最新機器に置き換えられていても、やはり限度というものは存在する。

 それを無人機故の無茶な加速と機動、更にアムロとクワトロとの絶妙なるコンビネーションが補い、グラン・ジオングを一気に押し始める。

 

「ち、やってくれるぜ。宇宙パトロールなんぞの救援に動きやがって」

 

 それでもタウ・リンが一人でこの四機を引き付けている事実は、驚嘆に値する。ビクターはアンティノラの性能を引き出しきれていないが、スーパーロボットのいない戦場では十分な脅威として機能している。

 ペルゲは今回の戦闘をデータ取りと割り切っており、グランシャリオのブリッジでのんびりと見物と来た。

 クラーツはガンダムバーンレプオスの初陣だが、PXシステムにカルケリア・パルス・ティルゲムを組み合わせ、機体とパイロットの性能を百二十パーセント以上引き出す事で、怒りに燃えるロッシェとアディンのペアを翻弄している。

 

 宇宙パトロール本部へも攻撃を仕掛けて被害を強要し、DC側の動きを阻害するのもタウ・リンは忘れない。

 グラン・ジオングならびに配下に加わった地球人類の裏切り者共のテストを兼ねて宇宙パトロールの本部を襲ったわけだが、DCの参戦で思いの外、手駒を減らされている。

 自分が生き残る事が目的ではないタウ・リンにとっては、大して気になる問題でもなかったが、目的を叶える為には自由に動かせる戦力はあるに越したことはない。タウ・リンは引き際を図り始めていた。

 

「……」

 

「ちっ! 機械風情が」

 

 単純に警戒するべき相手が増えた事で意識の逸れたタウ・リンにゼファーガンダムが肉薄する。グラン・ジオングの発生させた念動フィールドの内側に潜り込み、両手のビームガンを突きつける。

 グラン・ジオングの重装甲相手では直撃しても、わずかに削れる程度。タウ・リンは躊躇なく内側の右手のビームサーベルをゼファーガンダムの腹部へと突き込む。有人機ならコックピットのある位置だが……

 

「!」

 

 ゼファーガンダムの動きは止まらず、グラン・ジオングの胸部と腹部に至近距離から何発ものビームが撃ち込まれる。

 

「俺としたことが」

 

 有人機相手ならば決まっていた一手だが、タウ・リンは自らの失態を悟ってゼファーガンダムを殴り飛ばして引きはがす。

 ゼファーガンダムはゼファーのユニットそのものは無事とは言え、機体の胴体をビームサーベルで貫かれたのだ。推進剤に引火しなかったのは幸いだが、パフォーマンスはがた落ちする。

 

 余談だが腹部を貫かれてなお反撃するゼファーガンダムの姿に、エファはソロモンで戦ったガンダムとパイロットのことを思い出していた。

 あの時もカタールのビームサーベルがガンダムのコックピットを貫き、勝ったと思った瞬間に反撃を受けて、エファは敗れたのだ。

 そしてそのまま死ぬと思っていた自分は、他ならぬそのガンダムによってコックピットから助け出され、当時の母艦ムサイ級ヘルホークへと向けて送り出された。

 

「まさか、あの時のパイロット?」

 

 エファの呟きを他所に事態は進展していった。艦艇を含む新たな熱源が接近してきて、戦場に加わったからだ。識別信号は……ジオン。

 

「ジオン共和国? これはキマイラか。それに、クワトロ大尉!」

 

「ああ。アクシズのコードもある。ハマーン達も行動を共にしているようだな」

 

 新生キマイラ隊に加えてアクシズのサダラーンやファドラーンを含む有力な艦隊で、今度のスカルムーン基地攻略艦隊に合流するべく移動中だったが、真ジオン公国の戦闘を確認して急遽予定を変更してこちらにやってきたのだ。

 ハマーンのキュベレイ、キャラのゲーマルクにニーとランスのガズエル、ガズアル、新生キマイラ隊からもジョニーのゲルググ・ウェルテクス・テスタロッサ、ランバ・ラルのRFグフ・カスタム、シン・マツナガのRFギャン・クリーガー、ガイア、オルテガ、マッシュら黒い三連星のアルトアイゼンといった機体が続々と出撃して、真ジオン公国に攻撃を仕掛けて行く。

 

 こちらもDC組に引けを取らぬ精鋭ぞろいの凄腕ばかりだ。ただ、ハマーンでさえやや慌てた様子で出撃したのには、ある理由があった。

 この時、キマイラに曳航されていた大型MAが周囲の制止の声を無視して出撃し、グランシャリオやアウーラをめがけて突撃し始めたからである。

 MAの名前はグラン・ザム。ビグ・ザムの系列機であり、本来ならば宇宙世紀120年代にジオン残党オールズモビルによって開発が進められながらも、間に合わなかった機体だ。

 だがこの世界においては地球連邦政府、ジオン共和国、プルート財閥、更にアクシズの協力によって開発されたMAの一機だ。そしてパイロットは……

 

「俺のミネバを利用しようというふざけた奴らは、貴様らかああ!!」

 

 数年に及ぶ意識不明の状態から復活し、かつての猛々しさをすっかり取り戻したドズル・ザビその人であった。

 

<続> 

■サダラーン級サイコミュ防御実証艦ファドラーンが開発されました。

■グラン・ザムが開発されました。

 

■ベガ大王が覇王覚醒ルートに突入しました。

 

■ドズル・ザビが復活しました。

 




ドズルはマスク・ド・ザビの偽名を名乗り、仮面の人物として登場とも考えましたが、ギャグにしかならないと判断してお蔵入りです。

クシャトリヤやクィン・マンサ・セプテット、アハヴァ・アジールなどがDCに供与されています。


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第九十九話 SRポイントは十分です

■共通ルート 第四十九話 人に作られしモノたち※四十七、四十八話は省略!

 

 怒りのプレッシャーと共にオープン回線で聞こえてきたドズルの怒鳴り声に、グラン・ジオングを操るタウ・リンは呆れた顔つきになっていた。この男にしては珍しい顔つきだろう。

 

「この声、ドズルか。まだくたばっていなかったとはな!」

 

 一年戦争におけるソロモン戦以来、七年以上にわたる昏睡状態に陥っていた怪我人とは思えない活力と気迫に満ち溢れたドズルの登場は、キマイラ隊ならびにアクシズ艦隊が同行していたこともあって、戦場に大きな変化を与える。

 グラン・ザムは地球連邦とプルート財閥、アクシズ脱出組の協力の下、開発されたMAの一機である。核融合炉ではなく縮退炉を搭載しているのも、その証拠の一つと言える。

 

 運用にあたっては火器管制や機体制御、通信など諸々のサポートが必要となる為、かつてのビグ・ザム同様にメインパイロットのドズル以外にも、サブオペレーター二人が同乗した三人体制だ。

 全高は46.1m程でビグ・ザムよりも13m程小さく、侵略者達の大型機動兵器と比べればそう巨大というわけでもない。それでもパイロットのドズルの怒気が乗り移ったかのように、グラン・ザムは敵対する者達からは巨大化して見えていた。

 

「ミネバという宝を! あの戦争を生き抜いた者達を、ジオンの名を騙る不届き物の毒牙にかけてたまるものかぁっ!!」

 

 グラン・ザムの腹部に開いた砲門、更に機体各所に無数に設置された砲口が開き、縮退炉から供給された莫大なエネルギーが真ジオン公国軍の機体に向けて、一斉に放たれた。

 ビグ・ザムの時点でサラミス級やマゼラン級を一撃で轟沈せしめる大火力だが、その発展機であるところのグラン・ザムは輪をかけて凄まじく、グラン・ザムの周囲には瞬く間に撃破された無人機の爆発が数珠繋がりで発生して行く。

 

 グラン・ジオングにもメガ粒子砲は次々と呆れるほどの数と威力を持って襲い掛かっている。

 カルケリア・パルス・ティルゲムの搭載により念動フィールドの展開を可能としているが、これだけの数を受けきるのは不可能だ。加えてアムロとクワトロがわずかな隙を見逃さずに仕掛けてくるのは火を見るよりも明らかだった。

 その為、回避を選択して一旦その場を離れようとするタウ・リンとアムロ達の間合いが離れて、仕切り直しとなる。アムロ達も腹部をぶち抜かれたゼファーガンダムへのフォローもあり、無理に追撃を仕掛けはしなかった。

 

「ソロモンの時を彷彿とさせるプレッシャーだ。七年近く昏睡していた人間とは思えないな」

 

 アムロはまたあのプレッシャーと相対したくはないな、と偽りのない本音をゾーリン・ソールのコックピットの中で零した。

 クワトロもかつては復讐の対象であり、上官であり、また可愛がっていたミネバの父親でもあるドズルの復活劇を前に小さくない戸惑いを抱いていた。

 

「ガルマからドズル閣下が快復したと知らせは届いていなかったが……あの様子では、茨の園にいるミネバのところに顔を出してから、こちらに来たようだな。さしものハマーンも御しきれなかったか……」

 

 サダラーンから出撃したハマーンのキュベレイとプルシスターズの量産型キュベレイMk-Ⅱからは慌てた気配が感じられており、ハマーンとの和解を果たした後のクワトロとしては同情することしきりである。

 ドズルは一年戦争時に専用のザクIIで戦場に飛び出した、という真偽の定からぬ噂の持ち主だ。彼の人となりを知るジオンの諸兵は安易にその噂を否定できず、更に今のドズルの心理状況を考えれば、周囲の制止を振り切ってグラン・ザムで出撃したのは容易に想像できた。

 

 ドズルの狙いは第一にグラン・ジオング、さらにアウーラとグランシャリオである。

 味方への誤射を避けながら、ジェネレーターの大出力と優れた冷却システム、優秀な火器管制システムとオペレーター達の手腕によって、グラン・ザムは恐ろしく強力な機動砲台として機能していた。

 とはいえ実弾もビームも弾くビームバリアと重装甲に守られていても、随伴する歩兵が居なければ騎兵も戦車も脆いのは歴史が証明している。

 

 グラン・ザムを取り囲み、撃破しようとするビルゴ3やティアマート、アンゲロイに対し、ハマーンのキュベレイを筆頭にジョニーのテスタロッサやシンのRFギャン・クリーガーが攻撃を加える。

 せっかく意識を取り戻した自軍の猛将に万が一のことがあれば、どれだけの影響がジオンの人々にあるか分かったものではない。

 

 ハマーンとしては正妻がありながら姉を愛人にさせられた、という苦い経験を十代前半の多感な時期に味わわされたことから、純粋な敬意を向けるのは難しい相手だ。

 ハマーンの姉マレーネとドズルの関係については、姉妹の父マハラジャが権力を得る為に差し出した、ともドズルがマハラジャを守る為に敢えてマレーネを側室した、とも言われている。

 

 他にもドズルがマレーネを後宮に入れるのは積極的ではなかった、など諸説溢れているが、ハマーンにとっては姉を召使いのような立場の愛人にした男という印象を、多感な思春期に刻み込まれている。

 それでもドズルは今やガルマ、ミネバと同じくザビ家の正統な血筋であり、一年戦争以前からの古参兵に人気のある御仁だ。まさか目の前でむざむざと死なせるわけにもゆかない。個人で見れば悪い人間ではない事だし。

 

 地球圏トップクラスのニュータイプ・オールドタイプ入り乱れるジオンMS部隊のエスコートを受けて、ますますグラン・ザムの攻撃は激しさを増して行く。

 周囲のガードが堅固になった事で更にグラン・ザムが突出し、そうなるとハマーンやラル達もそれに追従しなければならず、そうしてまたグラン・ザムが突出し、というハマーン達の心臓に悪いループが出来上がっていた。

 

「閣下、お立場をお忘れか!? ミネバ様を利用せんとする不届き物へのお怒りはこのハマーンも重々承知しております。ですが、御身はドズル・ザビなのです!」

 

 臣下としての立場を前面に出したハマーンの忠言にも、ドズルの動きは止まらない。止まらないがグラン・ザムの移動速度は緩み、周囲の部隊との連携を意識する理性を取り戻したらしい。

 やっと言葉が届いたとホッとするハマーンを尻目に、二機のMAがグラン・ザムと編隊を組む位置に動いた。偽りの星の屑作戦を生き延びて、茨の園にてハマーンらアクシズ組と合流したガトーのノイエ・ジール、そしてケリィのRFヴァル・ヴァロである。

 

「閣下、このガトー、どこまでもついてまいりますが、ここはハマーン閣下の言われる通りかと。幸いミネバ様はお三方ともご無事であります」

 

 デラーズはギレン派閥だがジオン公国時代のガトーの所属は宇宙突撃軍であり、ドズルの麾下に所属していた。久方ぶりの勇将の姿に懐かしいものを覚えつつ、ガトーもまたハマーンの胃の為にも進言を惜しまない。

 ガトーばかりでなくランバ・ラルやシン・マツナガからも進言は届いており、厳つい顔に太い血管を何本も浮かべていたドズルも少しは理性が蘇ってくる。

 

「分かっている! 俺も少し頭に血を上らせ過ぎたが、それにしても真ジオン公国! エンツォも色々と問題はあったようだが、それでもまだジオンの軍人として行動していたのは分かる。

 だが、こいつらはマハラジャやエンツォ、シャアやハマーンが作り上げたアクシズを利用し、異星人の手先に成り下がってなお、ジオンの名を好き勝手に利用して泥を塗りたくっている連中だ。容赦など俺でなくとも出来まいが!!」

 

 それは父親としてのドズルではなく、政治とは距離を置き、軍人としての筋を通したジオン軍人ドズルとしての言葉だ。彼の言葉に共感しない古参のジオン兵はごく一部だけではあるまいか。

 少なくともドズルのこの言葉を聞いたガトーとケリィはより一層奮起し、気力が二十は上がったとみていい。

 

「は! このアナベル・ガトー! 偽りの星の屑と共に宇宙に散華した同胞達の分も戦って御覧にいれましょう」

 

「それでこそソロモンの悪夢よ! いずれはアクシズを取り戻し、真ジオン公国などという恥晒しとなった名前をこの世から抹消してくれるわ!!」

 

 『気迫』に満ち溢れ、『魂』を震わせて戦闘に『集中』するドズルに『激励』されて、主にキマイラ隊やシン・マツナガといった古参パイロット達の気力は天井知らずに上がっている。

 それはキシリア派に所属していた黒い三連星にしても同じ話だ。

 ガイア、オルテガ、マッシュはいつかの約束の通り、プルート財閥から送られてきた専用カスタマイズの施されたアルトアイゼンに乗り、更に洗練され、凶悪になったジェットストリームアタックで敵機の残骸を量産している。

 

 地球から遠く離れたサイド3では、中身がマジンガー系列であるアルトアイゼンの継続的な運用は難しいと提供が渋られていた時期もあったが、兜剣造博士率いる科学要塞研究所と回復した兜十蔵博士の協力、更に量産型グレートマジンガーの採用に伴う超合金ニューZや光子力エンジンのある程度の量産体制が整ったことから、提供に踏み切られた。

 初期のアルトアイゼンはコロニーのガンダムと同じガンダニュウム合金を装甲に使用していたが、黒と紫に塗装された黒い三連星専用のアルトアイゼン・シュヴァルツシュテルン(SS)は、本家アルトアイゼン同様に超合金ニューZの装甲にパイルバンカー、新型光子力エンジンの搭載とスーパーロボット化している。

 

 本家と異なる点はカラーリング以外にアルトアイゼン同士の連携を重視して、機体間のリンク機能を強化する通信機器の強化と手持ち武器が用意されている事があげられる。

 ガイア機には取り回しの良いF2WOライフル、マッシュ機にはグラビトンランチャー、オルテガ機にはジャイアントグラビティホークだ。それぞれ、非使用時には背中に増設されたサブアームが保持する。

 リボルビングステークを頼みとする本家と異なり、ステークをいざという時の保険にしつつ、異なる武器の組み合わせを活かした連携で獲物を狩るのが黒い三連星の流儀であった。

 

「今日も俺達の撃墜スコアになる連中がうじゃうじゃと居やがるぜ」

 

 グラビトンランチャーと光子力ビームを使い分け、有象無象の無人機を撃墜しながらのマッシュである。

 ジオン共和国で運用されている機体の中でも、アルトアイゼンSSは最上位の機体だ。なにしろMS風のガワを被ったグレートマジンガーのバリエーション機といっても過言ではない。

 純粋なMSの戦闘能力も桁外れに上がってきている昨今だが、やはりマジンガー系列機の戦闘能力はすさまじい。

 

「俺の斧はまだまだ暴れたがってるぜええ!」

 

 マッシュの砲撃を潜り抜けた──と思わせて、オルテガの間合いに誘導されたティアマートやゼカリアは、超重力の刃を纏ったジャイアントグラビティホークの一撃を受けて、いっそ清々しいほど真っ二つに切断されてゆく。

 出力次第で刃を拡張できるジャイアントグラビティホークならば、並みの艦艇を輪切りなど序の口、左右真っ二つに切り分ける事だって出来る。

 

「ふん、マッシュ、オルテガ、あまりはしゃぎすぎるなよ。とはいえそうなる気持ちもわかるがな」

 

 ガイアは口元に獰猛な笑みを浮かべながら、F2WOライフルの銃身・弾種を適切に使い分けて、小回りの利きにくいマッシュとオルテガを的確にフォローし、なおかつ自身もまたスクエア・クレイモアや腹部拡散ビーム砲、三連装マシンキャノンといった多様な武装を使い、既に十機以上の敵を撃墜している。

 グラン・ザム、ノイエ・ジールやRFヴァル・ヴァロ、キュベレイなどを除けば敵大型機動兵器に正面から打ち勝てるパワーを持つ三機のアルトアイゼンSSは、水を得た魚のように戦場を駆け抜けている。

 

 ドズルが落ち着きを見せて、改めて艦隊や機動兵器部隊と連携を取れるようになったのを確認し、ハマーンはプルシスターズとファンネルの連携を維持しつつ、アムロとクワトロ、更にゼファーに通信を送る。

 ハマーン達がこの場に来たのは真ジオン公国の動きを察知したのもあるが、アナハイムとプルート財閥経由で託された荷物があったからだ。

 

「シャア、アムロ、ゼファー! お前達はサダラーンに入れ! お前達宛の荷物がある。急いでそちらに乗り換えろ。そうすれば無様な戦いをしないで済むだろうさ」

 

「ハマーン、礼を言う」

 

「ん」

 

 二人と一機のトップエースがサダラーンを目指して離れるのをタウ・リンは目敏く見つけ、ヴォルテール、アンゲロイ、エゼキエルを集めて即興の部隊を編成して追撃を仕掛ける。

 AFSによってゾーリン・ソールのファンネルを封じ込めて有利に戦えたが、νガンダムやサザビーを使われてはどうなるか分かったものではない。

 ファンネル抜きにしてもフル・サイコフレーム機のスペックとそれに搭乗した時のアムロ達の戦闘能力の高さは一個師団級と評しても言い過ぎではないのだ。

 

「ニュータイプと書いて殺戮マシーンと読むような連中に、危ないおもちゃは渡せん。大人がキチンと管理してやらなけりゃあな?」

 

 否定しきれないアムロ達への評価を口にしながら、タウ・リンの殺意はサダラーンへと凝縮されて、アムロ達はそれを敏感に感じ取る。真っ先に踵を返してグラン・ジオングの足止めをしようとしたのは、貫かれた腹部から紫電を散らすゼファーガンダムだった。

 人の命を守れという願いが突き動かしたのか、躊躇の無いゼファーガンダムがビームガンを構えるが、明らかに動きの鈍っているその姿にタウ・リンは笑わずに凶悪に瞳を細める。

 厄介な敵を討つ絶好の機会。その時ほど油断してならない。タウ・リンはそれを良く知っていた。

 

「っ! いちいち、いちいち、邪魔の入る。ゼータタイプ、新型か!」

 

 タウ・リンが舌打ちと共にサダラーンから新たに出撃してきた機体を見て、苛立ちを隠さない。自分の姉が金持ちに轢かれた時には救いなど一つもなく、絶望だけがあったというのに!

 この時、サダラーンから出撃したのはアムロ達の為の機体と共に乗り込んでいたタクナのZプルトニウス、バナージのユニコーンガンダム、そしてカミーユのZⅢだ。

 前者二人に関してはメイファとオードリーと関係が深い事から、ドズルが面会を希望したという理由もある。面会の内容は三人しか知らない。知らないったら知らないのである。

 

 タクナのZプルトニウスはこれまでのZ計画機のデータの蓄積によって、新規設計された機体である。

 可変機の泣き所である関節の強化とジェネレーターの出力強化に重点が置かれ、アナハイムの意地と底力が注がれており、バイオセンサーやマグネットコーティングといった信頼性の高い技術も最新版のものが投入された意欲機で、Z乗り垂涎の的だ。

 

「大尉達はやらせない!」

 

 WRからMS形態へと変形しながら、カミーユのZⅢがビームライフルの連射を叩き込む。

 カミーユのZⅢはZプルトニウスとはまた異なる新型機だが、こちらの機体はカミーユ・ビダンの為に開発された、カミーユの為のZガンダムである。

 

「威勢のいい青少年だ。しかし、人殺しに躊躇がないとは、地球の未来は血生臭いな!」

 

 余裕のある態度を見せるタウ・リンだが、正確にグラン・ジオングを狙い撃つ射撃の精度には舌を巻いていた。

 ニュータイプというのはよほど人殺しが上手いミュータントらしい、と自らを強化人間として改造した男は皮肉交じりに称賛する。

 更に続くユニコーンのビーム・マグナムとZプルトニウスのビームライフルも避けるが、その余波に巻き込まれたゼカリアやアンゲロイは次々と爆発して行く。

 

「なにがしたいんだ! ジオンの名を騙って、異星人の下について、自分が生き残りたいからか!」

 

 タクナの叫びにタウ・リンは鼻で笑いながら応じる。

 

「青臭い台詞だ。坊やもニュータイプらしいが、鈍感なようだな」

 

 タウ・リンは端から生き残るつもりなどない。こんな世界を作り出した地球人類に憎しみをぶつけられれば、それでいいのだから。

 

「またガンダムが相手か。食いでがあることだ。金持ち共め」

 

 Zプルトニウスがグラン・ジオングを引き付けている間に、装甲を展開してガンダムとしての姿を露にしたユニコーンが距離を詰めていた。ユニコーンのビーム・トンファーがグラン・ジオングを真っ二つにするべく振り下ろされる。

 

「気色が悪いんだよ、その機体は!」

 

 グラン・ジオングの頭上に念動フィールドとビームバリアが重なって展開され、ビーム・トンファーを受け止める。ほとんど間を置かずにグラン・ジオングの外腕部からビームが発射され、ユニコーンガンダムはそれを避ける為に凄まじい機動で後方へと下がる。

 

「あなたの心の中にあるそれはダメなんだ! 誰かにぶつけても消えるものじゃない!」

 

「フン、こっちは覗き癖のある青少年か。ニュータイプは人殺し上手か覗き趣味になるしかないのか? ジオン・ズム・ダイクンは草葉の陰で泣いているだろうさ」

 

 無人機部隊のサポートを受けつつ、タクナとバナージを相手に互角の立ち回りを演じ、罵る余裕のあるタウ・リンだが宇宙に走る稲妻を連想させるプレッシャーには、余裕の笑みをはぎ取られた。カミーユだ。

 

「悲しい奴。憎しみが自分の全てになって!」

 

「ほざくか、小僧! 植え付けられて、育てられた憎しみでも、それを選んだのは俺なんだぜ? ニュータイプ能力の奴隷のような奴が人間様を憐れむもんじゃない。滑稽ってもんだ!」

 

 ZⅢのビームライフルが出力モードの変更により、ハイパー・メガ・ランチャー並みのビームを三連射。一撃で多数のMSを撃墜し、ドゴス・ギア級を轟沈せしめるメガ粒子の奔流に、タウ・リンは鳥肌を立てながら牙を剥き出しにした。

 

「終わらせる為の憎しみなんて、悲しいだけだって分かれよ!」

 

「一方的に悲しんで哀れんでくるのはな、人の神経を逆立てる傲慢さの表れなんだぜ、坊や!」

 

 ZⅢはこれまで蓄積されたカミーユの操縦データやあらゆる状況でカミーユの心身にかかったストレス、身体状況の変化なども組み込み、カミーユが可能な限り長時間、可能な限り最高のパフォーマンスを発揮できるようコックピットのレイアウトにまで徹底的に拘ったオンリーワンの機体だ。

 仮にアムロやクワトロが搭乗したとしても、性能の半分も引き出せないだろう。

 

 Zプルトニウスとは異なり、ヘパ研やサナリィもじゃんじゃか口を挟んで開発しており、VF系の技術も惜しみなく使われている。

 機体の外見はZガンダムと大きくは変わらないが、脚部には核融合炉の代わりに縮退炉が合計二基内蔵され、MSの域を超えた出力を確保し、そのパワーに耐えられる頑強なムーバブル・フレームと慣性質量を操作するTCGジョイントによって、武器を捨てて殴り合い、蹴り合いをしても問題の無い頑丈さだ。

 

 背中のフライングアーマーの形状も多少変化しており、VFの如きミサイルラックと内蔵式ビームガン、更にミノフスキー・ドライブユニットが装備されている。

 ついにMSに搭載可能なミノフスキー・ドライブが完成したのだ。特筆するべきはフライングアーマーからいわゆる光の翼を任意に放出可能な点にある。

 

 V2ガンダムの光の翼はドライブユニットに封じ込めきれなかったミノフスキー粒子を放出していたのを、ウッソの奇抜なアイディアによって攻防に利用したもので、発生したロスを利用している。

 ZⅢにおいては重力制御技術によって、一切のロスなくミノフスキー粒子を利用できるが、スパロボ知識で光の翼の有用性を認識していたヘイデスのアイディアにより、任意で使用可能な装備として実装されるに至っている。

 

「戦場以外では何の役にも立たないニュータイプのガキども! そうやってニュータイプを戦争の道具にする為の実例を積み重ねるがいいさ!」

 

 強化人間である自分がニュータイプは戦争に利用される存在だという証明の一つだと、タウ・リンはあざ笑い続ける。

 キマイラ・アクシズ艦隊の到着と強力なMA、MS部隊の展開により、戦況は地球人類側に大きく傾きつつあったが、観察に徹していたペルゲが本腰を入れて、グランシャリオから新たなビルゴシリーズとスコーピオ、ヴァイエイト、メリクリウスを出撃させて減った数を補充。

 

 更にビクターのアンティノラの攻撃が増しただけでなく、彼の麾下にある狂信的な部下達も与えられたエゼキエルやヴァイクルでの攻撃を激化させて、この戦いに勝利しようと必死だ。

 地球人類に唾を吐いて背を向けて、異星人に自ら降る背信行為を行ったのだ。もはや彼らに地球側に戻る道も居場所もないと理解するだけの知性は彼らにもあるのだから。

 

 DC救援部隊とキマイラ・アクシズ艦隊が最前線を引き受けている間、宇宙パトロールの艦隊と防衛部隊は本部周辺に戦力を再集結させて、レベルの違う戦いにどう貢献できるか息を呑んで戦況の変化を見守っている。

 そしてサダラーンに着艦したアムロとクワトロは艦内で待ち受けていたチェーンとナナイに用意されていた機体の簡単なレクチャーを受けながら乗り換えを済ませていた。ゼファーもまたユニットの換装を済ませている。

 

「アムロ・レイ、リボーンズνガンダム、出る!」

 

「クワトロ・バジーナ、ガイア・ギアα(アルパ)、出撃する」

 

 そして最後に残ったゼファーは専属オペレーターがナビゲートを進めていた。

 

「ゼファー、進路クリア、発進どうぞ!」

 

 宇宙に二つの0の光輪を描いて、ゼファーW0ライザーが先に出撃したRνガンダム、ガイア・ギアαに追いつき、いずれも究極と評して差し支えの無い人型機動兵器が戦場を舞った。

 

<続>

■アルトアイゼン・シュヴァルツシュテルンが開発されました。

■RFヴァル・ヴァロが開発されました。

■Zプルトニウスが開発されました。

■ZⅢガンダムが開発されました。

■Rνガンダムが開発されました。

■ガイア・ギアαが開発されました。

■ゼファーW0ライザーが開発されました。

■Hi-νガンダムを入手しました。

■ナイチンゲールを入手しました。

■νガンダムが戻ってきました。

■サザビーが戻ってきました。

 

SRポイントと隠しフラグが条件を満たさなかった場合、Hi-νガンダムとナイチンゲール、ゼファー00ライザーになっていました。




☆Rνガンダム……よく似た声の中の人繋がりでνガンダム×リボーンズガンダム。
☆ガイア・ギアα……本作においては宇宙世紀系技術の結晶。
☆ゼファーW0ライザー……ゼファーW0クアンタも考えましたが、私の知っているコラ画像がウイングゼロとダブルオーライザーの組み合わせだったので、こちらに。

W0の読み方はダブルゼロ、ウイングオーなどお好きに呼んでください。ただしウイングゼロ、ダブルオーはなしでお願いします。

スパロボZシリーズにてイオリアが構想し、コロニーの博士達がこりゃあかんと分割したシステムを搭載した機体を、人でないからこそ戦争の狂気に呑まれず、戦争の狂気を調停し、人の命を守れと願われたゼファーに託したかったのです。この物語の連載を決めてから、どうしてもやりたかったネタです。

追記
Rνガンダムの項目にて中の人繋がりについて修正。アムロとリボーンズの中の人は別人でしたね。ウッカリ!


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第百話 再誕のニュータイプ伝説と赤い彗星

前回の通算百話到達のお祝いのコメント、ご感想ありがとうございました。
外伝を挟んだため、サブタイトルの話数とズレているのでちょっとややこしくなっていますね。
それにしても、まさか三年目に突入とは、本当にどうしてこうなったのか?


「ポリ公を片付けるだけのつもりが、パンドラの箱を開けたか?」

 

 グラン・ジオングのカルケリア・パルス・ティルゲムにより、強化人間としての直感と理解力を強化されているタウ・リンは、即座にサダラーンから出撃した三機のガンダムが、超のつく劇物であるのを理解した。

 もとよりグラン・ジオングのAFSがあり、本来の乗機ではないゾーリン・ソールとアップデートしたとはいえ旧式のガンダムのボディだったから、アムロとクワトロ、ゼファーを相手に互角以上に戦えていたのだ。

 それが彼らの為に作られたワンオフ機に乗り込まれたとあっては、おそらく一対一でも恐ろしい強敵となるのは間違いない。

 

 バサ帝国によって強化されたネオガンダムに乗るガレムソンや、同様に強化されたバーンレプオスに乗るクラーツ、複数のスーパーロボットを相手に出来るアンティノラを与えられたビクターと四対三で挑んだとしても、勝ちの目は薄いだろう。

 宇宙パトロールの艦隊と本部にそれなりの被害は与えられたが、完全に壊滅させるには程遠い被害だ。グラン・ジオングの試運転としてはまずまずだが、新生キマイラ隊とハマーン艦隊の参戦もあって、こちらの被害は想定を大きく超えている。

 

(損害に関して言えば、ラオデキヤ皇帝もイングラム宰相も気にはしないだろう。俺達なんぞどうでもいい手駒だからな。敵でも味方でも構わないから、俺達のような地球の汚物を、敗残者を受け入れているんだ)

 

 タウ・リンは自分だけでなくビクターやガレムソン、ペルゲがあっさりとバサ帝国に迎え入れられ、潤沢な支援を受けられている理由を正確に理解していた。

 あまりに情報が不足しているから正確な予測は立てられないが、バサ帝国の目的が地球征服でも地球人類の支配でもないのをタウ・リンは察している。

 

 おそらくペルゲもそれに気付いているが、彼はタウ・リン同様に自分の目的さえ叶えば他はどうでもよいから、バサ帝国の真意に頓着していない。

 ガレムソンは自分と部下を生き残らせるのに必死でバサ帝国相手に警戒を緩めてはいないが、クラーツとビクターあたりは良いように肉体と精神を改造されて使い潰されるのが関の山だろう。

 

(なんならペルゲと交渉してあの二人を俺が使い潰しても構わんが、この場では奴らを囮にして逃げるくらいしか出来そうにないな!)

 

 タウ・リンは撤退時の為に伏せておいた無人機部隊の使用を決断した。遅延戦闘ないしは囮用に前者は装甲と耐久性を重視し、後者は戦場をかき乱す為に速度と電子戦に特化して、攻撃力を犠牲にした仕様だ。

 バサ帝国系のワープ反応と共にサダラーンから出撃したアムロ達を囲い込むようにして、数えきれないほどのメギロートとデイモーンが転移する。

 

 事前に送られてきた指示の通り、新たな無人機達が時間稼ぎの為にアムロ達に襲い掛かろうとしたその瞬間を狙いすましたように、Rνガンダムからマシンガンを彷彿とさせる速度でビームの連射が放たれた。

 ワープアウトから百分の一秒と経過していないにも関わらず、その出現場所とタイミングを予め知っていたとしか思えないアムロの神技──あるいは魔性の業であった。

 

「一つ、二つ……九つ!」

 

 Rνガンダムはνガンダムの白黒の配色をベースに赤がアクセントに使われている。背中のバックパックには長短の板状パーツの組み合わせがいくつか接続されており、腰回りのアーマーや盾にも同様のパーツが接続されている。

 リボーンズガンダムを知る者が見れば、それらがフィンファングであると気付き、νガンダムを知る者はフィン・ファンネルも存在しているのに気付くだろう。

 

 両肘にはツイン・ドライヴシステム用に調整された疑似太陽炉二基が内蔵され、フィンファングと機体の推進力、慣性制御を主に担っている。

 メインジェネレーターであるガンダム系の縮退炉の齎すパワーは、ベースとなったνガンダムの比ではない。

 フィン・ファンネルにも核融合炉型ではあるが小型ジェネレーターが搭載されており、稼働時間と出力の高さはファンネルタイプの中でも随一を誇る。

 

「数が多いな。……まとめて落とさせてもらう!」

 

 アムロの意識が走り、フル・サイコフレームがそれを機体だけでなく戦場の宇宙へと放射する事により、アムロの認識能力と情報処理能力は人間の肉体の枠を超える。

 レバーもペダルもスイッチも操作せずに、Rνガンダムから大型八基のフィンファング、小型十二基のフィンファング、十六枚のフィン・ファンネルが飛び立つ。

 それらが優美な曲線を描き、三次元の宇宙に芸術品のような軌跡が描かれる。

 GN粒子と白い推進剤の炎が人ならぬ者の舞踏のように妖しく、美しく舞い、Rνガンダムのビームライフルが火を噴くのと同時に合わせて、メガ粒子とGN粒子の矢が放たれた。

 

 一発も外れる事無く命中した結果、一斉発射から一秒と経たぬ間に三十七の爆発が生じ、時間の経過とともに新たな爆発が生じて行く。

 大型フィンファングはそのまま継続してビームを発射する中、小型フィンファングはGNビームサーベルを形成して、ビームの檻から逃れようとする敵機の死角を突いて、絶対の暗殺者と化し、致命の一撃を突き刺して行く。

 

 五秒と経たぬ内に百以上の機体が爆散する光景に、タウ・リンのみならずグランシャリオのブリッジで戦場を観察していたペルゲやMDネオガンダムの指揮を執っていたガレムソンは驚愕に目を見開いた。

 一年戦争時にアムロ・レイの打ち立てたニュータイプ伝説も、今次大戦からアムロの見せた活躍も知っていたが、今のアムロの戦いぶりはこれまでと比較しても常軌を逸している。

 

「クソが! ニュータイプは殺戮マシーンだってのが、冗談じゃなくなってきたじゃねえか!」

 

 タウ・リンにとってはタクナやバナージ、カミーユら若きニュータイプを煽るのが半分、本音を半分で口にした言葉だったが、この光景を見せられてはいよいよもってニュータイプがこと機動兵器の操縦に関しては、オールドタイプとは別の生命体と本気で思えてくる。

 グラン・ジオングから発せられた指示に従い、Rνガンダムより一千キロ以上離れた場所に新たにアドラティオがワープアウトする。

 銀河を股にかけて戦争を行っていたサイデリアル連合の兵器だ。ミノフスキー粒子散布下だろうと、この程度の距離ならば難なく捕捉してくる。

 

 ワープアウト直後にRνガンダムからビームが飛んでこない以上、さしものアムロもこの距離では、とタウ・リンが思ったその瞬間、グラン・ジオングのモニターに変形するRνガンダムの姿が映る。

 Rνガンダムの前後が反転し、頭部が胴体内部に引き込まれるのと引き換えにバックパックに組み込まれていた別の頭部が引き出され、放出されていたフィンファングやフィン・ファンネルがバックパックに再度接続されて、長大な砲身を形成する。

 脚部が後ろに向かって折れ曲がり、前方にいくつもの砲身を向けたその姿はMSというよりも戦車だ。RFガンダム同様、一機V作戦を体現した可変機構により変形したRνガンタンク形態である。

 

「そこだ!」

 

 フィンファングにより形成された砲身から圧縮されたGN粒子の奔流が解放され、爆光煌めく宇宙を貫いて行く。

 Rνガンダムの周囲、半径十キロ以内にMAP兵器『一斉射撃』を撃ち込もうとしていたアドラティオの艦首にGNキャノンが突き刺さり、四百メートル以上の艦体を貫いてそのまま艦尾から突き抜けて行く。

 

 アドラティオが轟沈する様を確かめずに、アムロはGN粒子の放出をマニュアル操作で解除し、光刃を煌めかせて接近してくるヴォルテールやゼカリアへの対処を行っていた。

 戦車モドキだったRνガンタンクが再度変形し、前傾姿勢気味の人型へと変わる。Rνガンキャノンだ。ガンタンク程ではないが、砲撃用MSとして不足のない砲撃能力と機動力を併せ持った形態である。

 

 ビームライフルと四門のGNキャノンが同時に五機のヴォルテールを撃墜し、更に砲撃しながら前進したRνガンキャノンは左手に抜き放ったビームサーベルで、二機のゼカリアをすれ違いざまに両断してのけた。

 絶えず加えられる攻撃、次々と襲い来る複数種の敵、変わり続けるレンジとそれに適した武装と形態の使い分けet cetera、それらすべてをミスなくこなし続けるアムロの技量はまさに銀河のトップを争う。トップクラスなのではなく、トップなのだ。

 

 アムロが増援として出現したバサ帝国の機動兵器を一掃している間、クワトロはMSとは異なる機動兵器マン・マシーン第一号機ガイア・ギアαを駆り、既に戦場に居た敵機動兵器の殲滅に動いていた。

 ガイア・ギアα、地球という大地と宇宙・地球の生命を繋ぐものという理想を込められた機体は、この世界に於いては更に自由と未来をも繋ぐものたれ、と意味と役割を託されている。

 

 原作においては宇宙世紀200年代の機体だが、クロスオーバー時空であるこの世界で誕生し、更にはパイロットがアフランシ・シャアではなくシャア(クワトロ)()アズナブル(バジーナ)、機体のカラーリングも赤い彗星に相応しいものと機体形状そのものは変わらなくても差異は大きい。

 可変後退翼──VG翼二枚と両脚部にエンジンを積んでおり、原作では大出力熱核反応炉を四基搭載していたが、言うまでもなくこの世界に於いてはガンダム系縮退炉となる。

 

 フル・サイコフレームを含む極めて高度なサイコミュシステム、ミノフスキードライブ並びに最高性能のミノフスキーバリアを兼ね備えた本機は宇宙世紀系技術の結晶であり、機体自体の莫大な運用容量、更に最高性能を誇るFCSを持ち、あらゆる装備を使いこなしてあらゆる戦況に対応する万能性を誇る。

 フライング・フォームに変形すれば単独での大気圏からの突入・離脱をやすやすとこなし、無補給で太陽系脱出と帰還が可能という途方もない航続距離と速度を持つ。これはマシンセルを宇宙世紀系MS用に特化調整したナノスキンの恩恵であった。

 ∀ガンダムやターンXに怯える位なら先に作っちゃえばいいじゃない、とヘイデスが開き直ったのかもしれない。

 

 この出撃時、ウィングバインダーに装備できる各種オプションのない緊急の出撃であった為、ガイア・ギアαの武装は最低限のものだ。頭部と変形時の機首に内蔵される20mmガトリング砲、両腰部のビームガン二門、ビームライフル一丁、ビームサーベル複数である。

 出撃までに余裕があればVF用に開発されたミサイルパックやビームキャノン、ガンポッドの類が装備されるが、今回はない。まあ、その程度はクワトロにとって些細な誤差の範疇に過ぎない。

 

 フライング・フォームに変形して攻撃を加えないまま戦場を飛翔するガイア・ギアαに、トーラスの編隊が追いすがり、MD特有の殺人的な加速と機動、正確無比の射撃を持って赤い鳥を撃ち落とすべく機能を最大限に発揮する。

 アムロもそうだが彼らが戦っているのは無人機だ。そう、無人機なのだ。故に人間の持つ殺意や破壊の意識をその感応力で感じ取る事は出来ない。

 

 それにも関わらずガイア・ギアαには絶えず降り注がれるビームが当たる気配はない。予め発射されるビームの軌跡が見えているのか、クワトロがビーム発射のタイミングを指示しているかのようでさえある。

 赤い軌跡を描いて飛ぶガイア・ギアαへの攻勢にトーラスだけでなく、ビルゴタイプとヴァイエイトの大火力砲撃も加わる。

 

 トーラス自体もコロニーのガンダムに有効なビーム兵器を持つ上に、さらに強力なビルゴタイプとヴァイエイトまで加われば艦艇どころかスペースコロニーさえも破壊できる破壊力だ。

 さしものクワトロも死の恐怖を感じたかと言えば、それは違った。亜光速で迫りくるビームと自機の距離、位置関係の全てを把握し、狙いすましたタイミングでミノフスキーバリアの出力を上げる。

 

「ここかっ」

 

 数十機に及ぶMDからのビームの着弾とタイミングを完全に合わせて展開されたミノフスキーバリアは、着弾した瞬間にミノフスキー粒子とビームが干渉しあって周囲にスパークを散らし、その反動が次々とMDへと襲い掛かる。

 電磁波とビームの干渉波を受けたトーラスやヴァイエイトはその過剰な威力に耐え切れず、ビルゴタイプも砲撃中の為、プラネイトディフェンサーを展開していなかった事で、ガンダニュウム合金の装甲の耐久値を越えて一斉に誘爆を起こしていく。

 単純に高出力のビームで破壊されるよりも衝撃的な光景を前にして、アンティノラに乗り──あるいは操られているビクターは丸眼鏡の奥の目を血走らせた。

 

「ガン、ダムは化け物か!? 完全なる平和を脅かす悪魔め!」

 

 ビクターはスコーピオ複数機を従えて、忌まわしい悪魔を討つ英雄にでもなったかのような気持ちで挑みかかる。だが、その瞳がある光景を映した瞬間、彼は息を呑んだ。

 ビームと電磁波、ミノフスキー粒子の衝突や干渉波によってガイア・ギアαを中心に光の波が広がり、その中から飛翔するガイア・ギアα。

 ああ、青白く輝く光の中から飛び出したガイア・ギアαのなんと幻想的な姿! 人の作り出した幻想、機械仕掛けの神秘の生命! 今、光の中より生まれた赤き鳥よ!

 

「あ、あれは赤い光の鳥? あんなものを作れるのか、人が!」

 

 ビクターが我を失う束の間に赤き光の鳥はその威容をPHASE1──マン・マシーン形態へと変える。赤い光の鳥はこの瞬間、赤い光の巨神となったのだ。

 推力こそ減じても四肢を持つ機動兵器のアドバンテージたるAMBACを駆使し、急速にアンティノラとの距離を詰めて行く。

 あの赤い悪魔の狙いが自分だと悟ったビクターはアンティノラの性能が齎す万能感など消し飛び、恐怖が見る間に心の中に広がっている。

 彼の恐怖をくみ取ったアンティノラは念動フィールドを全力で展開しながら、アサシン・バグスを射出した。

 

 ビクターは念動力者ではないが、それならば念動力者の脳髄を複製し、機体に搭載すればいいだけのこと。

 エンジェル・ハイロウのサイキッカー三万人を脳髄状態にしたバルマーだ。低レベルの念動力者の複製程度は難しくはないだろう。ましてやユーゼスの支配する艦隊なのだから。

 しかしアサシン・バグスは射出後に転移する直前、ガイア・ギアαのビームライフル、ビームガンから放たれたビームで即座に撃ち落とされる。

 

「おおあっ!?」

 

「ガイア・ギア、お前の名前に込められたものを体現する力を私が与える! お前はそれに応えて見せろ!」

 

 ガイア・ギアαのフライング・フォームを操縦している間、クワトロは明らかに人間にではない形状の機体であっても、自分の肉体として違和感なく操縦することが出来ていた。

 人型であったサザビーよりも更に機体との融和性、親和性が進み、肉体が融けて機体と融合しているかのようであり、同時にクワトロとしての自我もはっきりと存在している。

 それは実に不思議な感覚であった。機体と己が一つでありながら、同時に己と機体が全く別の存在として確立されている。融合というよりもガイア・ギアαとクワトロが究極的な共存を成していると言えばより正解に近いだろうか。

 

 恐怖に身をすくませてアンティノラの操作を忘れたビクターを庇い、MA形態のスコーピオ達がビームベイオネットからビームを乱射し、ガイア・ギアαへと迫る。

 赤い鉄の蠍達に対し、ガイア・ギアαの速度が緩むことはなかった。ビームの雨を掻い潜るガイア・ギアαに対し、スコーピオ達は目くらましを兼ねてアーマーパーツをパージし、ビームに加えて鎧の散弾をお見舞いする。

 柔軟な対応はMDのプログラムがバサ帝国の手によって改良された証拠と言えるだろう。

 

 MS形態へと移行したスコーピオ達は左手のビームベイオネットを放棄し、ラウンドシールドを持ち、右手のビームベイオネットをビームサーベルとして機能させる。

 自機の損害を無視して敵機の撃破を最優先するプログラムに従い、スコーピオと周囲のMD達がガイア・ギアαに狙いを定める。

 しかしそれをあざ笑うようにガイア・ギアαはパージされたスコーピオのパーツを蹴り、スラスターの噴射とAMBAC機動の組み合わせにより、常識外れの加速を成し遂げる。

 

 あろうことかMDのセンサーを振り切って空を駆けるガイア・ギアαは、スコーピオに反撃の挙動を起こす事さえ許さず、左手で抜き放ったビームサーベルの斬撃でその胴体を泣き別れにされた。

 ガンダニュウム合金に一瞬の抵抗も許さないビームサーベルの高出力もさることながら、目に映す事さえ難しいガイア・ギアαの機動がビクターの心を支配していた。

 

「あ、赤い彗星……」

 

<続>

 

注意! ビクターは念動力者ではありませんよ!

 




ちょっと疲れたのでゼファーW0ライザーは次回にて。REONが登場し、ようやくゼファーALICE、REONが揃います。
スペースパトロールは松浦まさふみ先生の著作『機動戦士ガンダムReon』に出てくる組織です。


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第百一話 西風は神となるか人となるか それとも

 連邦の白い流星とジオンの赤い彗星が新たな伝説を戦場で打ち立てている中、ゼファーもまた新たな肉体と共に宇宙を飛翔していた。

 機体名称W0ライザー。ウイングゼロのフレーム構造、メインジェネレーター、変形機構、更にゼロシステムを有し、シロッコに製造を委託した純正GNドライヴ二基によるツインドライヴシステムを搭載とある種の禁忌を犯した機体である。

 

 基本的な機体のデザインはウイングゼロに寄っているが、両肩のアーマーに接続された大型のバインダーはオーライザーのそれに酷似している。

 GNドライヴはこのバインダー内部に収納されており、スラスター、クラビカルアンテナの他、それぞれGNミサイルとGNビームマシンガンを内蔵した複合武器としても機能する。

 

 ダブルオーライザーとの大きな差異としては、バインダーの側面にそれぞれバスターライフルが接続されている点だろう。

 ウイングゼロのツインバスターライフルを更に改良し、性能を上げたクアッドバスターライフルだ。ウイングゼロよりも燃費が良く、より威力が高くなり、射撃精度の上がったバスターライフルを四丁も装備している。

 

 肩部に実弾式マシンキャノンを収納し、両腕には折り畳み式の熱変換クリスタル素材の刀身を持ち、三連装のビームライフルを兼ねるGNソードⅢ、肩アーマー内部やリアアーマー、サイドスカートを始めとした各所にビームサーベルを装備している。

 また前述したフレームだがフル・サイコフレーム仕様になっているのは、もはや言うまでもない。

 

 バックパックからはウイングゼロ(TV版)と同じ翼型のカバーを持ったバーニアが伸び、ネオバードモード時の機首が折れ曲がる形で接続されている。

 機首はウイングゼロのウイングシールドに酷似した形状となっており、非常時には取り外して打突武器として利用できる。

 メインジェネレーターは胴体、GNドライヴは両肩のバインダー、更にバックパックにはディアムド並みの出力を誇るDエクストラクターが内蔵されている。

 

 次元力を用いるDエクストラクターには操縦者の意志に呼応して、出力を増す機能が大なり小なりついているが、開発と設計を担ったテレンス博士や所長は無人機であるゼファーの新たな機体に、Dエクストラクターを搭載するのに疑問を抱かなかった。

 人ならぬ人造のシステムが操る機体に、意志に応じる機材や機構を搭載する事の矛盾、無意味さ、滑稽さ。それらを理解していなかったわけではない。

 それでもゼファーならと彼らは考え、信じた。ともすれば新たな生命体となるかもしれない、西風の神の名を持つ人造物を。

 

 新たな敵の増援をアムロとRνガンダムが。

 既存の敵をクワトロとガイア・ギアαが。

 では、ゼファーW0ライザーは?

 ゼファーはゼロシステムが提示する最も効率よく敵を殲滅する選択肢を却下し続けながら、被害を受けている宇宙パトロール本部へと進路を取っていた。

 ゼロシステムから提示される勝利と敗北とそれに係るあらゆる可能性の中から、ゼファーはエリシアから伝えられた目的と根源的な命題に最も適した手段を選び取る。

 

 クアッドバスターライフルとトランザムシステムの積極的使用が推奨される中、ゼファーW0ライザーは、MDトーラスをはるかに上回る射撃精度と反応速度により、撃ったビームの数だけ撃墜していった。

 ビルゴタイプとメリクリウスが連携してプラネイトディフェンサーを広域展開し、電磁フィールドの網で絡めとろうとするが、速度を緩めるどころか加速したゼファーW0ライザーはGNソードⅢの刀身を展開し、熱変換クリスタル素材の刀身は易々と電磁フィールドを切り裂く。

 

 MDはプランが破綻しても動揺などせず、状況の変化に対応するべく迅速に行動する。ただし、それよりもゼファーの判断とゼファーW0ライザーの動きの方がはるかに速い。

 ウイングゼロ自体が簡単にMA形態のトーラスに追いつく程の推力を持つが、そこから更に速度を増したゼファーW0ライザーは、トーラスやビルゴのセンサーが追従しきれない速度でGN粒子の軌跡を描き、GNソードⅢライフルモード、マシンキャノン、GNビームマシンガン、GNミサイルが個別に敵機をロックオンし、瞬き一つの間に十数機のMDが爆散した。

 ゼファーW0ライザーのメインカメラは自らの戦果には頓着せず、とある一機のMSをフォーカスしていた。

 

 それは宇宙パトロール側の防衛に加わっていた、民間のMSだった。Z系列の流れを感じさせるデザインのガンダムタイプである。

 側面にビームサーベル発振器のついた、前腕部を覆う武器腕型のビームライフルをメインウェポンにしている。

 背中からは四枚のプレート状のパーツが展開されているが、これはアンチファンネルシステムだ。フィールド効果に作用するこのシステムにより、敵のEフィールドやプラネイトディフェンサーを妨害しながらMDを相手に勇敢に戦っていた。

 

 機体の名前はガンダムReon。パイロットは民間のカーゴシップ「ルピナス」二代目船長ルビー・ヒューゲット。

 そして火器管制こそルビーに預けているものの、機体を動かしているのは機体自身、レオン=ゼファーファントムシステム Mk.2 Ver 5.7 自律型汎用制御プログラムだ。

 

 ルビーが戦闘に巻き込まれたのは、まったくもって不運としか言いようがない。

 同時にガンダムパイロットの伝統芸とも言える、理不尽に巻き込まれて仕方なく機体に乗った、が理由である。

 老朽化した貨物船ルピナスが悩みという一般市民だった彼女はたまたま宇宙パトロールの本局に貨物を運び込んでいたところに、今回のタウ・リン率いる真ジオン公国の襲撃を受けてしまい、止むに止まれずReonに乗り込んで、エファのカタールⅡやそのほかのMSと共に戦っていたのである。

 

「レオン、私達ってまだ必要かしら!?」

 

 変わらずメギロートやデイモーンによる波状攻撃を受けながら、ルビーはモニターの片隅に移ったRνガンダムとガイア・ギアαの獅子奮迅と言おうか、一騎当千と言えばいいのか、無茶苦茶な戦いぶりに半ば自棄になりながらレオンに問いかける。

 パイロットスーツではなくノーマルスーツに長い赤髪を押し込んで、ルビーは素人としては見事な度胸を披露して、長時間の戦闘に耐えている。

 

『戦況は急速に優勢に傾いていますが、まだ敵勢力は残存しています。最低限の自衛行動は必要と判断します』

 

 ゼファーの開発元であるU.A.I社がファントムシステムのマスターデータを解析し、研究を重ねた結果の一つであるレオンはゼファーやALICEと異なり、流暢に音声でコミュニケーションが取れる。

 ルビーが戦闘のストレスに耐えていられるのも、質問すれば律義に答えるレオンの存在が大きかった。

 また訓練を受けたパイロットですらないルビーの為に、レオンが人体の限界点=マンポイントを配慮した機動制限を自主的に行い、ルビーへの配慮を怠らないのも、肉体的な不具合を起こさずに戦闘に耐えられている理由である。

 

「そうだったわね! まだこっちに攻撃してくる敵がいるのだもの!」

 

 レオンがターゲッティングしたメギロートに向けて、ルビーがトリガーを引いて両腕のビームライフルを叩き込み、異星の白い機械虫は爆散した。

 ゼファーファントムシステムが初期の頃、ジムコマンドに搭載したタイプが東京での試験中に暴走を起こした事と他勢力からのハッキング対策に、レオンは火器管制に関しては人の手を必要としている。

 レオン自身がロックオンは出来ても攻撃を出来ない為、ルビーがその役目を担っているわけだ。

 

 U.A.I社の開発したガンダムReonはアナハイムやロームフェラ、サナリィにヘパ研と比べれば規模も技術も資本も見劣りするが、本来ならば宇宙世紀107年を舞台とした時代の機体だ。

 今さらこの時空で時系列を気にしても仕方がないが、メギロートやデイモーンといった下位の無人機相手ならば問題なく戦えるだけの基本スペックを備えている。

 加えて言えばレオンとルビーは、ニュータイプ(強化人間?)の乗ったツインフィン・ファンネルのレプリカνガンダムに勝利しているペアなのだから!

 

「状況はいつだって最悪、でもそれが当たり前ってね」

 

『お父上のお言葉でしたか』

 

「そう! よく覚えているわね。でもま、最悪よりは大分マシかって、言っている傍から!」

 

 グンと距離を詰めてきたトーラスに対し、Reonが両前腕部に装着されているビームサーベルの発振器をくるりと回転させ、通常よりもはるかにリーチの長いサーベルを展開し、回避する暇を与えずにトーラスを袈裟斬りにする。

 そのトーラスが爆発するよりも早く、周囲から放たれるメギロートのサークル・レーザーをルビーの耐えられるレベルの機動でくるりくるりと回避する。

 レオンが配慮していてもルビーの体を襲うGは強烈で、彼女は内臓が潰れたと錯覚しながら必死に耐えて、レオンのターゲットロックを確認次第、必死にトリガーを引く。

 

『戦闘開始時より敵機残存数五十パーセントを下回りました。新たに出現した増援部隊もDCの機体によって七十三パーセントが撃破。不測の事態が生じない限り、戦闘の終息は間もなくと推測されます』

 

「もうひと踏ん張りってわけか!」

 

 ReonやカタールⅡ以外の宇宙パトロールMS部隊も奮起して、旧式の機体なりに必死に弾幕を展開して、本局への攻撃を継続してくる真ジオン公国軍の撃退に尽力している。彼らの戦う姿もまたルビーの心を奮起させるカンフル剤だ。

 だからといって敵が手加減してくれるわけもなく、また具体的に機体の出力が上がるわけでもないと現実は世知辛いものだったが。

 

「正面、デカブツ!」

 

 被弾を無視してReonを叩き潰すべく、ティアマートが猛烈な勢いで迫りつつあった。質量差と速度によって、衝突すればReonは中のルビーごと引き潰されてしまうだろう。

 Reonの弱点はこのご時世にしては火力が低い事だ。MS相手なら十分な装備も、MAがかわいく思える耐久性やサイズを誇る異星人の機動兵器相手となると物足りなさが否めない。

 

 軍事に明るくないルビーはそこまで理解していたわけではないが、手持ちのビームライフルとビームサーベルでは仮に撃墜できても、爆発に巻き込まれるのは確実だ。

 そうして出来た隙を残る敵機につけ込まれて、大ダメージを受けるか下手をすれば撃墜されると想像するくらいは容易い。

 この窮地を救ったのはルビーの知らないReonのとっておきだった。Reonの額部分のカバーがパージされ、そこに隠されていた巨大な砲門が露わとなる。

 

『エネルギー充填百パーセント。ターゲットロック。ハイメガキャノンのトリガーを預けます』

 

「わわ、いざという時の必殺技みたいな? いけるなら、いっけー!」

 

 グイとルビーの指がトリガーを引き絞り、Reonの残存エネルギーの大部分を消費して、ハイメガキャノンがティアマートへと炸裂する!

 ハイメガキャノンの余波に巻き込まれて、正面の視界を埋めていたティアマートばかりでなく、その周囲のデイモーンやヴォルテールも巻き込まれて、次々と誘爆して行く。

 ハイメガキャノンの放射が終わり、熱を持った砲口と機体頭部の排熱と冷却が行われる中、ルビーは大きな安堵の息を零した。戦闘中の油断と言うべき行為だったが、数時間前まで民間人だった彼女にそこまで求めるのは酷だろう。

 

「レオン、凄いのを撃ったけど、機体はまだ動く? 推進剤の方は余裕があるけど……あまり直視したくない表示が出ているわよ?」

 

『ハイメガキャノンの使用により、機体エネルギー残量八パーセントにまで低下。戦闘機動は取れますが、攻撃行動は推奨できない状態です』

 

「他に選択肢がない状況だったとはいえ、イチバチに加えて後がない状態か。まだ戦闘は続いているのに」

 

 ENと実弾が尽きて反撃も攻撃も出来ないというのは、スパロボでもまま見られる状況だが、この世界で生きているルビーからすれば洒落にもならない状態だ。カタールⅡが奮戦しているとはいえ、宇宙パトロール部隊を襲う敵機はまだいるのだ。

 

「……仕方ないか。レオン、ビームの一発も撃てないとしても、動き回って相手を引っ掻き回すくらいは出来るわね?」

 

『あなたの生存を考慮するならば推奨できる行為ではありませんが』

 

「だからって出来る事があるのに、それをしないでコソコソもしていられないでしょ」

 

『人間はバックアップが取れない、一度きりの存在なのだと教えてくださったのは、あなたです』

 

 レオンがルビーの命を案じていると感じるか、以前に教えられた学習内容との矛盾をAIらしく指摘していると感じるか、それは受け取る側の自由だ。

 

「そうよ。一度っきりのやり直しが利かない人生だから、この先ずっと後悔し続ける選択をしたくないの」

 

『……了解しました。人間はとても難しいのですね』

 

「そうよ。複雑だったりシンプルだったり、時々で変わるから難しいの。それに付き合ってゆくあなたは大変よ。だからたくさん学びなさい」

 

『はい。私もそれを望みます』

 

 ルビーとレオンが会話をしている間にも宇宙パトロールの部隊に襲い掛かる敵の数は増しており、その間に割って入るように推進剤を大奮発したReonが飛び回る。

 先程のティアマート撃墜もそうだが、カタールⅡと並んで真ジオンの機体を撃破していたReonに対し、無人機部隊は反応して目標を変更する。

 

 四方八方から降り注いでくるビームの檻を必死に掻い潜りながら──ルビーは操縦していないが──ルビーは、目まぐるしく変化するモニターの画面や計器の表示する数値を睨みつけ酔いそうになる自分を必死に鼓舞していた。

 いささか汚い話だが戦闘行動中の嘔吐は気管を詰まらせ、窒息を招く危険性がある。

 それを防ぐ為にヘルメットには吸引機能がついているのだが、それはそれとして嘔吐したくないのは、ルビーに限った話ではないだろう。

 

 残り少ないエネルギーで可能な限り囮役を長引かせ、かつルビーの生命を守る為にレオンは回避行動を取りながら常に計算を続けている。

 窮地でのこの経験はレオンに膨大な経験値を与え、瞬間ごとに機体はより少ない消費でより優れた動きを取るように驚異的な成長を遂げているが、それでもエネルギーと推進剤、それにルビーの体力を消費し続けているのは変わらない。

 

「うぎぎぎぎ、うちのルピナスじゃ、あじ、味わえないGね!」

 

『無理に喋らないで。舌を噛む危険性があります』

 

「なにか、喋って、ないと、意識がトンじゃいそうなの!」

 

 必死に耐えるルビーにこれ以上負担をかけられない、とレオンは判断するがかといって下手に機動を緩めれば、その数瞬後には周囲の無人機からビームやミサイルが殺到し、跡形もなく破壊される可能性が高い。

 初代ゼファーから高度に発展したレオンがどれだけ計算を重ねても、ルビーの望みと生命の両方を守る結果を引き寄せるには、自機の機能だけではどうしても足りない。

 

 だが、レオンとルビーを救うピースは既にこの戦場に揃っていた。

 何も考えずに筆を振るったようなデタラメな機動で敵機を振り回すReonを徐々に包囲しつつあった数十を数えるメギロートに対し、彼らのセンサーの範囲外からGN粒子のビームが次々と命中して、巨大な爆発の輪が作られる。

 レーダーに捕捉していた敵の数が三秒と掛からずに激減した状況の変化に、レオンがこちらに向けて急速接近するDC所属の機体に気付いて、正面モニターの望遠画像を投射。ルビーも救援の手がようやく届いたことに気付く。

 レオンが機体の速度を緩めて、ルビーへの負担を和らげる。その間にも救援に駆け付けた機体からは無数のビームとミサイルが発射されて、秒単位で敵機が減っている。

 

「あれも、ガンダム?」

 

『はい』

 

「? レオン、なにかあるの、あの機体」

 

 微妙な間の変化を感じ取ったのはルビーが鋭いからか、それともレオンにしては奇妙な反応だったからか。

 

『あの機体を動かしているのはオリジナルのゼファーファントムシステムです』

 

「え? それじゃあ、レオンにとってはおじいさんかおばあさんになる機体?」

 

『適切な表現ではありませんが、“私”はゼファーファントムシステムが存在しなければ開発されなかったのは確かです』

 

 00の光の渦輪を描いて、ゼファーW0ライザーが宇宙パトロール本局近辺の戦場に舞い降りる。敵機のほとんどがMDやバサ帝国系のAIで稼働する無人機である為、ゼファーW0ライザーに手加減はない。

 タウ・リン一派やクラーツ、ガレムソンの部隊は有人機だが、戦場に展開している真ジオン公国機の中での割合はごく少数だ。

 

 ゼファーは人を乗せているReonに向けて常にセンサーの一部を割きながら、残る敵機の一掃を実行する。ゼロシステムが提示する方法の内、もっともゼファーの本懐に沿うものを選択して、それ以上の成果を出す為に持てる力を発揮する。

 ゼファーW0ライザーの両腕が水平に持ち上げられ、更にバインダーに接続されているクアッドバスターライフルも機体左右に向けられる。

 

 そして戦場に出てから初めてトランザムシステムを起動させた。粒子生産量が格段に跳ね上がり、貯蓄されていたGN粒子が一気に放出され、ゼファーW0ライザーが赤い輝きに包まれる。

 機体の全てをGN粒子で駆動していない為、トランザムによって性能が三倍化とまでいかないが、通常時では使用できない武装が使用可能となる。

 

 そうしてゼファーW0ライザーから放たれたのは、クアッドバスターライフル×ローリングバスターライフル、更にGNソードⅢ二振りによるライザーソード!

 これほどの超火力ならば周囲を囲んでいるのがメギロートやデイモーンといった下位の機動兵器ではなく、アンティノラやエル・ミレニウムといった上位の機体であろうとも耐え切れずに撃墜されるだろう。

 

 ゼファーW0ライザーがトランザムを解除し、纏っていた赤い輝きを消えた時、その周囲百キロメートル圏内に敵機の影も形も存在していなかった。

 しかもこれだけ膨大なエネルギーを消費してなお、三つの動力にはまだ余裕があり万全の戦闘状態は維持されているのだった。

 

<続>

●ゼファーW0ライザー

・主動力

1.ウイングゼロの改良版ジェネレーター

2.オリジナルGNドライヴによるツインドライヴシステム

3.ディアムド級Dエクストラクター

 以上の三つです。

 稀にフル・サイコフレームとDエクストラクターが意志に呼応して生み出す次元力となんかよく分からない力で出力が上がったり、事象に干渉ししたります。

 

●ローリングバスターライフル&ライザーソードのパターン

・左右に腕とバインダーを広げてクアッドバスターライフルとライザーソードの攻撃方向を連動させるパターン。

・左右にバインダーを広げ、上下に腕を広げて、クアッドバスターライフルとライザーソードの攻撃方向を分けるパターン※逆も可。

・ローリングしながら四方八方に突撃して周囲に破壊を撒き散らすパターン。

 などがございます。今回は一番上の機体を固定して周囲にブッパしました。

 




レオン=システム
Reon=機体
と使い分けています。

追記
文中で「ゼファーファントムシス」と区切っている箇所がありますが、コレは原典の文章に倣った箇所ですので、誤字脱字ではございません。予めご了承くださいませ。


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第百二話 民間人を戦場に招く是非について

今回、HERO様から支援絵を頂戴いたしました。ありがとうございます。
よろしければ皆さんもぜひご覧ください。pixivへのリンクです。

・ゼファーW0ライザー
https://www.pixiv.net/artworks/97364403

・ゼファートールギス
https://www.pixiv.net/artworks/83560154

・ヤザン専用ギャプラン
https://www.pixiv.net/artworks/83426051


 圧倒的という言葉でも足りないほどの力によって周囲の敵機を掃討したアムロのRνガンダム、クワトロのガイア・ギアα、ゼファーW0ライザーの力の凄まじさは敵ばかりでなく味方にもまた言語を絶する衝撃を与えていた。

 ドズルは自分が眠っている間にジオン共和国ひいてはガルマが地球連邦と融和政策を執っていた事に改めて安堵し、ハマーンはミネバを連れてアクシズを脱出して本当によかったと胸を撫で下ろす。

 

 味方であるはずの彼らでさえ、怖気を覚えるほどの衝撃を受けたのだから敵対していたタウ・リンやビクター、ガレムソン達の衝撃たるや天変地異に遭遇したも同然の大きさであった。

 なまじ彼らが長くモビルスーツに触れてきた分、モビルスーツの皮を被ったスーパーロボットとしか言いようのない化け物ぶりを見せた三機とそのパイロット達に恐怖と脅威を抱くのは当然の流れである。

 

「グラン・ジオングでも勝負にならんぞ、アレは!」

 

 バサ帝国の技術によって強化されたグラン・ジオングは原作を超える戦闘能力を有し、タウ・リンの卓越した操縦技術と強化人間としての鋭敏な感覚と合わせれば、並みのモビルスーツなど百機を相手にしても敵ではない。

 だが今、彼が目撃したのは一騎当千の概念すら超越する、自分の正気を疑いたくなる怪物ども。あるいは人知を超越した神性すら感じる機械仕掛けの神の如き代物。

 

(駒はまだあるがあれでは無駄に残骸を増やすだけか。今更、スペースパトロールを狙ったところで、どうにもならん! おそらくアドラティオやフーレの長距離砲撃にも反応してくる! くそ、根拠もないのにそう確信させられるとはっ!?)

 

 タウ・リンは取り乱しそうになる精神を落ち着かせ、冷静に現在残っている自軍の戦力と配置を確認する。ペルゲのグランシャリオは健在、またガレムソン艦隊と当のガレムソンをはじめ、ビクターやクラーツもまだ生き残っているようだ。

 ビクターのアンティノラはクワトロのガイア・ギアαを相手に大破しているが、周囲のMD達のサポートもあり、どうにかまだ生き残っている。傍目にはスクラップも同然だが、ズフィルードクリスタルの再生能力のお陰で、かろうじて動けている有様だ。

 

「ペルゲ、ガレムソン、ビクター、退くぞ! DCの本隊抜きでもアレではこの戦力では勝ち目がない。悪いが俺は無駄死にはしない主義なんでな。退かないというのなら置いていく」

 

 タウ・リンの指示にすぐに応じたのはガレムソンとペルゲだった。ガレムソンは当たり前だと言わんばかりの勢いで叫び返してくる。

 

「言われなくても撤退する。あんな代物はもはやモビルスーツではない。もっと別のなにかだ!」

 

 悲鳴にも近い叫びを発するガレムソンだが、同時に部下達に母艦への帰投と撤退準備の指示を素早く発しており、人格はともかくやはりその能力が優れているのは確かだった。

 だからこそバサ帝国に寝返った事も、ティターンズの終焉が決まった時に投降しなかった事も、過去の虐殺もそのすべてが悔やまれる。

 彼がまっとうな倫理観を持っていたならば、今頃は優れたパイロット兼有力な前線指揮官として重宝されていただろうに。

 

 焦燥の滲むガレムソンに対してペルゲの声音は至って平穏だった。だが、その平穏な響きの中に含まれる激情をタウ・リンはおおむね察している。

 地球最強から宇宙最強へと野望のスケールを広げたペルゲにとって、彼の手掛けたハイドラやバーンレプオスを明らかに凌駕する力を見せた三機を前に、彼の胸の内で激情の嵐が吹き荒れているに違いない。

 ペルゲはバサ帝国の首都兼旗艦であるヘルモーズに帰還したならば、ラオデキヤからユーゼスに技術の開示や協力要請を命知らずの無鉄砲さで望むだろう。

 

「こちらはいつでも転移の準備は出来ているとも。クラーツも思いの外素直に帰投したよ。流石に勝ち目がないことくらい、あのボンクラでも分かるらしい。無人機は全て残してしまって構わないな? タウ・リン」

 

「ああ! 精々スクラップを作らせて、この宙域での救助活動と俺達への追撃の障害にしてやれ」

 

「成果は芳しくないが、得られたものがなかったわけではない。ラオデキヤ陛下やイングラム宰相も我々をそこまで無碍には扱われまいよ。ふむ、ビクターがやけに静かだが、どうやら半分失神しているらしいな」

 

 ビクターのアンティノラから送られてくる生体データをモニタリングしたペルゲの台詞を、タウ・リンは鼻で笑い飛ばした。クラーツ同様、体のいい人体実験の材料にされている奴を気に掛ける優しさを、彼は持ち合わせていなかった。

 

「はん、カーンズ如きに選ばれなかった程度でプライドを拗らせる小物だ。そのまま黙らせておけ」

 

 その台詞を最後にタウ・リン達は口を噤み、撤退の為の転移へ注力する。敵部隊の動きがにわかに変わったのをアムロとクワトロは鋭敏に察知し、ゼファーもまたゼロシステムの提示する未来の内の一つから選び取って、理解していた。

 ただこの時点でタウ・リンは撤退の動きを読まれると踏んだ上で無人機の大盤振る舞いを決めており、有人機と入れ替わりに特攻も辞さずに前面に押し出される無人機の大攻勢はDC、スペースパトロール双方の部隊の足を止めるのに成功する。

 これはスペースパトロール本局をはじめ、周囲の艦隊や民間人の船舶を守るのを、DC側が優先した為でもある。DCのメンバーならそうすると読んだタウ・リンの作戦勝ちであった。

 

「流石の引き際だな」

 

 グラン・ザムで散々に暴れたドズルの台詞だ。アムロ達の活躍の影に隠れた感は否めないが、怒髪天を突く勢いで戦場に殴り込んだドズルはそれにつられたアクシズ艦隊諸兵の活躍もあり、かつてのジオンの猛将の復活を印象付ける戦いぶりを見せている。

 まあ、指揮官としての役割は放棄して目につく真ジオン公国機の撃破にのめり込んでしまったので、猛将とは呼ばれても名将とは呼ばれないエピソードを作ってしまったわけだが。

 

 指揮を執るタウ・リン達が転移で撤退した事もあり、戦場に残された無人機達は数が多い事とスペースパトロール本局を積極的に狙う厄介さを除けば、DCや新生キマイラの精鋭達にとって敵ではなかった。

 最後に下された命令に従って単調な行動を取る無人機の群れは、むしろ対処しやすい一面もあり、ジョニーやラル、シンや黒い三連星達はこの一戦で大いに撃墜スコアを伸ばす事となる。

 

 より厄介だったのは大量に発生した敵機の残骸により、戦闘後の救助活動や航路を確保する為の清掃活動に支障を来した事であった。

 まさにタウ・リンの思惑通りになってしまったわけだが、スペースパトロールの存在は軍の手の届かない場所や平時での治安維持には不可欠だ。

 

 特にジオン共和国組にとっては、一年戦争での汚名に真ジオン公国の悪評まで重なっている状況だから、少しでも世論からの印象を良くしようと戦闘後の救助活動などに積極的に協力を申し出ている。

 DC側もこの流れに乗って協力を申し出て、万が一の護衛も兼ねてもうしばらくスペースパトロール本局のある宙域へ滞在する次第となった。

 

 トップエースまでもが加わった後始末は順調で、デブリの排除と航路の確保、負傷者達の救出と治療、遺体の回収、破損した本局施設の応急手当などは数時間の内に山場を越えた。

 ルビーもREONを本局内のMS格納庫に収納して、ようやくコックピットから出られる事となった。

 

「……っ」

 

 コックピットハッチが開いても出ようとしないルビーを訝しみ、レオンが声を掛ける。

 

『ルビー、なにか問題が発生しましたか?』

 

「たいしたことじゃないわ。ただ、指が上手く離れないのよ。この」

 

 操縦桿を握るルビーの指は震えながらも凍り付いたように開かず、ルビーは引きはがすようにして一本ずつ指を離さなければならなかった。訓練を受けた軍人でも初の戦闘となれば襲い掛かるプレッシャーは尋常ではない。

 ましてや成り行きでREONに乗り込んだ民間人であるルビーだ。彼女が緊張の糸が切れたのと同時に失神するか、嘔吐しなかっただけでもまだマシというものだろう。

 

『あなたの肉体は極度の緊張状態に置かれています。一刻も早くリラックスされることを推奨します』

 

「ふう、ありがとう、レオン。あなたはそこらの人よりもよっぽど気遣いが出来るわね。人間が出来てる」

 

『ありがとうございます。あなたのお陰でガンダムREONと私、そしてスペースパトロールの方々を救うことが叶いました。あなたの勇気に最大限の感謝を』

 

「それが私に出来る事だったからね。私の為にしたことがあなたの為になって、あなたが貴方の為にしたことが私の為にもなった。そうやって、誰かを助けて、助けられて世の中って回っているのよ。知ってた?」

 

『それはとても興味深い発見です』

 

「なら忘れないでおいて。あなたが誰かを守る為の存在であることを願うわ」

 

『私もそうでありたいと願います』

 

 REONのコックピットからふわりと飛び出たルビーは、レオンとREONに向けて手を振りながら、キャットウォークに降り立つ。

 民間用の船舶ドックには彼女の家族も同然のクルー達がいるし、戦闘の被害がどの程度出たのかをスペースパトロールに確認に行く為だ。それにルビー自身に休憩が必要だ。メディカルチェックは必要だろう。

 

 ルビーはスペースパトロール局長リチャード・チェンバレンを始めとした幹部級から末端まで、多くの者達に感謝された。

 それから簡易メディカル・メンタルチェックを受けた後、ルビーはルピナスのクルーであり家族も同然の二人と話をしてようやく戦闘の緊張から解放された。

 

「人が乗った機体は落としてないから、人殺しにならないで済んだのは不幸中の幸いだったかしら?」

 

 ルビーはまだ慌ただしい本局から離れ、親の代から世話になっているカーゴシップ・ルピナスの私室に大の字になって浮かんでいた。

 被害は小さかったとはいえ、被害を受けたスペースパトロールが今後どうなるのか。連邦軍から戦力の提供を受けるのか、あるいは手持ちの残った戦力で治安維持活動を行わなければならないのか。

 

 それはルビーの関知するところではなかったが、真ジオン公国の襲撃で目の前で失われる命を見て、流れる血を見て、そして戦った以上、まったく気にならないと言えばそれは嘘で、なにか出来る事はないかと考えもする。

 傲慢かもしれないが責任めいたものを感じてもいる。そのお陰でこうして安心できる自室に戻ってきても、頭の中のモヤモヤが腫れないままなのだ。これは精神衛生上、非常によろしくない。うら若き乙女の肌に掛かるストレスは天災にも等しい忌むべきものである。

 レオンのことも短い付き合いとはいえ、お互いに命とトリガーを預け合った中だ。プログラムを相手に何を馬鹿な、と笑われるかもしれないが、それなりに情だって抱いている。

 そうしたモヤモヤと抱えたルビーが名前と同じ色の髪をグシャグシャとしていると、壁面一体型のコンソールから通信が入った事を知らせる電子音がした。

 

「誰かしら?」

 

 それがルビーの運命を変える音だったとは、この時のルビーは露ほども思っていなかった。人に見られても問題がないように乱れた髪を整え、服の皺を伸ばしてから、ルビーはコンソールを操作して受信した。

 

「はい、ルビーです。どちらさま?」

 

 外部からの通信と分かる着信音だったから、一応は対外用の声色と口調で答える。コンソールの画面に映し出されたのは、垂れ目と柔和な雰囲気が印象的な三十代の壮年、すなわちヘイデス・プルートである。

 地球圏の経済を三分すると言われるプルート財閥総帥の登場に、ルビーは意表を突かれて表情を崩し、それを直す間もなくヘイデスに話しかけられる。

 

『初めまして、ルビー・ヒューゲットさん。ヘイデス・プルートと申します。色々と手広く商売をしている者です。あとはディバイン・クルセイダーズの支援も少々。

 まずは突然のご連絡をお詫び申しあげます。事前にお断りを入れるべきところ、急な話になってしまい、驚かれたでしょう』

 

「い、いえ、プルート財閥の総帥とお話しできて光栄ですわ。オホホホホ」

 

 内心の動揺を隠すようにルビーはいつもとは異なる口調だった。Reonを開発したU.A.社の御曹司クリフ・マクラウドを相手にしたとは、まるで別の対応だ。それに関してはクリフがルビーを相手に結婚前の火遊びとして、ふざけて愛人契約を持ちかけたせいだが。

 ヘイデスとしてはアウターガンダム、ムーンクライシスときて遂にReonの登場人物も関わってきたか、と感慨めいたものを抱いていた。

 ルビーの所属するファートランスサポート社やU.A.I社の存在は知っていたが、ルビーが関わる可能性は低いと見積もっていたのだが、蓋を開けてみればこうなっている。

 

『戦闘が終わってまだ数時間しか経過していないところ、このように連絡した事も正直に申し上げれば心苦しいのですが、早めに話をさせていただきたい案件があり、こうしてお休みのところ、ぶしつけながらご連絡しました』

 

「急ぎの案件なのですね? では遠慮なさらずにおっしゃってください。ただプルート財閥の総帥であるあなたの力になれるかどうかは、話が別ですが」

 

『いえいえ、これはルビーさん、あなたにしか頼めない事です。正確には頼めない事になったのです。元々、U.A.IからReonを受領して輸送する仕事それ自体は私から依頼した事です。そこまではよろしいですか?』

 

「ええ。届け先はルナツーと伺っていました。途中で真ジオン公国との遭遇戦もあって、いったん、スペースパトロールの本局に避難しましたが……。私がReonに乗り込んだ事が問題に? それに関しては止むに止まれない状況だったとご理解いただければ……」

 

『どうぞ、ご安心を。あなたがReonに乗り込み、戦闘に参加した事を問題視してはいません。こちらの依頼であなた方を危険に巻き込んでしまい、心苦しく思っていますよ。

 ただReonが関係してないと言えば嘘になります。より正確に言えば機体ではなく、機体を制御していたプログラムであるレオンの方に関係する話です』

 

「レオンに? ゼファーファントムシステムのオリジナルを所有する御社からすれば、発展型とはいえレオンに価値を見出しているのですか?」

 

『現状、U.A.Iはアナハイムの一角を担っていますが、アナハイムに無人機運用の為のプログラムを渡したくないというのが一つ』

 

(本当の理由? 世界で三本の指に入る大財閥の総帥にしては腹芸が嫌い? それとも私相手なら腹芸一つする必要はないって舐められてる?)

 

 世間一般におけるヘイデスの評判はその才覚に対する妬みややっかみはあるが、正義の味方のスポンサーとしての顔と他に類を見ない世界規模の慈善事業によって、概ね評判はいい。

 とはいえ同時に世界最高の軍事力を持っているお金持ちとも言えるわけで、色々と苦労を重ねてきたルビーからすると少々勘ぐりしたくなる相手でもある。

 

『レオンは無人機運用からパイロットを必要とする本末転倒なファントムシステムとなりましたが、ゼファーからの系譜というだけでも非常に興味深い相手です。

 これはオフレコでお願いしたいんですが、U.A.Iをまるごとウチの傘下に収めるべく活動中でして、あそこの次代のクリフ君も政略結婚をしないで済むでしょう。とまあ、これは余談でしたね。

 話を戻しまして、現在、オリジナルゼファーは一年戦争時の損傷から復帰して、約八年以上稼働しています。その過程で実に多くの学びを得て、開発者のテレンス博士も予想だにしていなかった成長を遂げています』

 

「レオンもそうなるかもしれないから、興味があるんですか? それに私も関わっている?」

 

『はい。率直に言えばそうです。意外に思われるかもしれませんが、意外とゼファーのような存在と付き合ってゆく上で必要なのは、彼らから信頼に足る存在だと思われる事なんですよ』

 

「プログラムにですか? それは、たしかに意外ですが、でもレオンは……」

 

『レオンはゼファーと違って人間と対等な会話が可能なほど、高度なコミュニケーションが可能なのでしたね。プログラム以上の機微をレオンは貴方に示しませんでしたか? もしそうだったなら、ぼくの言っている事はあなたなら共感できると思います』

 

「……では、また私に機体に乗り込んでレオンと一緒に戦えと? いくらあなたがプルート財閥の総帥でも私にそれを強制する権利はないはずです」

 

 (うーむ、流石は原作では、戦闘中にコックピットを出て敵を相手に啖呵を切った女性だ。自分でも言うのは何だけれどぼくはこの世界じゃ結構な大物だけれど、言うべき事は言うってはっきりしている。うん、だからこそいい)

 

 怯む様子の無いルビーへの好感度を高めながら、ヘイデスは次の言葉を口にした。ガンダム世界の主人公格の人間に、行動を強制する言葉を口にしてもいい事がないのは百も承知だし、個人的にもそういった物言いは嫌い。

 

『もちろん、あなたにレオンと共に戦えとは言いませんし、それを強制する権利と資格を持ちません。ですからこれからする話は依頼であり、取引であり、お願いでもあります。

 ルビーさん。あなたにはレオンの専任オペレーターを務めていただきたいのです。レオンの火器管制に関する権限をゼファーと同じレベルにまで緩和し、人間が乗り込む必要性をなくした上で運用を検討しています』

 

「……もしそうなった場合、私はどこに配属になるんです? それにルピナスやクルー達は? まさか休職しろと?」

 

『その辺は抜かりなく。現在、ゼファーのオペレーターはハガネという艦に乗り込んでいます。レオンとルビーさんは基本的にゼファー同様、ハガネに所属していただくことになるでしょう。

 またカーゴシップ・ルピナスにも仕事をお願いしたく思っています。戦闘時以外でもルビーさんにはなるべくレオンとコミュニケーションを図って欲しいのですが、運送業でも仕事を依頼します。

 ぼくが出資しているDCは随分な大所帯でしてね。戦闘抜きにしても部隊を維持するのに必要な物資は膨大です。それらの補給に関する輸送の一端をお願いしたい』

 

「そうなると事実上、何時まで期限となるかは分からない期間限定で、そのDCという部隊専属の運送契約を結びたいという事ですね?」

 

 これでもルビーはルピナスクルーの未来を預かる身だ。話しながらも素早く頭の中で計算をしている。

 随分と老朽化の進むルピナスの改修や買い替え費用を捻出するのに、ヘイデスの申し出は絶好の機会かもしれない。

 同時に盛大に宣伝されているDCの戦いぶりを鑑みると戦闘に巻き込まれる危険性や補給路を断つ一環として敵勢力に狙われる危険性がある。

 ヘイデスの依頼を受けるメリット、デメリット、それにレオンに対する情を加味してルビーは頭の中の天秤がどちらに傾くか、思案中だ。

 

『ええ。軍事機密にあたる為、まだお伝え出来ない点も多々ありますが、おそらく部隊間での物資の輸送もお願いする機会が増えるでしょう。

 ランチや小型のシャトルは確保していますが、実績のある専門のカーゴシップとそのクルーの方が、より信頼できますから。それとこれは予定している業務内容と報酬です。概算になりますがまずはご一読ください』

 

 ヘイデスから送られてきたデータを開き、内容を目にした途端、ルビーは目玉をひん剥きそうになるのを堪えなければならなかった。

 そこには毎月ごとに支払われる基本報酬の他に運送の頻度と貨物の内容、量によって変動する追加報酬、危険手当など諸々の報酬の項目があり、合計すればとんでもない報酬となるのが約束されていた。

 

 加えてルビーの視線を吸い寄せたのは運送を順調に行う為にと提案されている、ルピナスの改修計画についてだった。

 費用、資材は全てプルート財閥が負担し、契約が終了後もルビー達の所有のままだ。改修とは言うが実際には転移機能を搭載した最新鋭のカーゴシップへの作り替えといっていい。

 これならばいっそ一から船を新造した方が費用は安く済む内容だ。武装は施されておらず、あくまでカーゴシップという体裁を保っている。

 

「これはあまりに私達に有利な内容ですね。思わず飛びつきたくなる内容ですが、ここまで良すぎるとかえって理性が待ったをかけてしまうんですけど」

 

『報酬はケチらないのがぼくのモットーです。以前から懇意の各地の研究所にも援助は惜しみませんでしたし、はっきりいって現在の地球と人類は存亡の危機に陥っています。

 どうにか民間への被害は予想よりも小さなものへと抑えられていますが、一手を誤れば地球やコロニーがドカン! なんて場面は数多くあるのです』

 

「……」

 

 極めて真面目な表情と声で告げるヘイデスを前に、ルビーはニュースで謳われる勝利はその実、薄氷のものであったこと、間一髪のものであったのだと察する。

 DCの関わる戦場は、最近ではかなり楽な戦いが多いが、特に異星人系の勢力には地球に甚大なダメージを与えるか、地球そのものを破壊できる兵器を有している為、決して油断は出来ない。

 

『ですから常に過剰なくらいにあらゆる手を尽くし、用意を整え、実際に戦う人々には万全でいてもらえるように心掛けているのです。

 そしてそうした彼らを支える人々もまた十分な対価と評価を受けるべきなのです。そうでなければ良い仕事も責任ある仕事も出来ませんからね。

 今、あなたに提示した報酬はぼくとしては予想される仕事内容に対して、正当に評価したものです。もし依頼を受けてくださるのならば、それだけの仕事をしたのだと当然の顔で受け取ってください』

 

 ルビーはヘイデスがどうやら裏の無い気持ちで提案しているらしいぞ、と判断して気持ちが大きく傾きつつあるのを自覚した。それでも事が事だけに踏ん切りはつかない。Reonに搭乗した時とは異なり、生命の危機が差し迫った状況ではないのもあるだろう。

 アムロやカミーユやジュドーやシーブックやバナージ達とルビーとでは、事情も立場も選択肢も異なる。その場で決定を下せというのは酷だろう。ヘイデスもそれは承知の上だ。

 

『即答しろとは言いません。内容が内容ですから。ですが、受けてくださるのも断るのも、出来れば数日以内に返答を下さると助かります。

 あなたのクルー達と、良ければレオンとも話して決めてはどうでしょう? レオンは今、サダラーンに間借りしていますから、そちらへの口利きは僕の方でしておきますよ。

 ちょうどゼファーとテレンス博士にエリシア女史も居ます。彼らと話をするのもあなたの判断を決める材料になると思います。損する事はないとお約束しますよ』

 

 そう告げるヘイデスに対するルビーの不信感は大きく薄らいでいた。

 

<続>

 




W0ライザー(ユーザーの着けた通称ですが)をガンプラで作成した方が何名からいらっしゃるんですね。検索をかけたらいくらか見かけました。
皆さんの思い描くかの機体はどんな姿をしていますか? W0クアンタなんかもエピローグあたりで触れられるといいなあと思う筆者でした。

宇宙パトロールとスペースパトロールのどちらが正しいか、レオンとReonのどちらが正しいのか分からなくなってきていますが、今後、スペースパトロール、機体はReon、プログラムはレオンで統一します。


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第百三話 月は地獄(敵勢力にとって)

 サダラーンの格納庫の一つを訪れたルビーを出迎えたのは、メンテナンスベッドに固定されているガンダムReon、Sガンダム、ゼファーW0ライザー、そしてその関係者達だった。

 リョウ・ルーツ以外にもカインズとエリシア、宇宙パトロールのエファ、またDCのメカニック達の姿があり、激戦を終えた機体のチェックに余念がない。図らずしてゼファーとその系譜であるレオン、更にALICEが同じ場所に集っていた。

 

「あら、あなたはルビー・ヒューゲットさんかしら? ヘイデス総帥からお話は伺っています。ゼファーの専任オペレーターを務めるエリシア・ストックウェルです」

 

「初めまして、ルビー・ヒューゲットです。ヘイデス総帥から聞かされていましたけど、Reon以外のガンダムもジオンの戦艦に間借りしているのって、なんだか不思議ですね」

 

「ふふ、確かに。それでもアクシズから脱出してきたハマーン・カーン氏の勢力は、ジオン共和国に恭順していますから、味方だと信頼していますよ」

 

 微笑むエリシアがルビーに右手を差し出して、二人は握手を交わした。そのままルビーが自分でもよく分かっていない顔で質問した。

 

「ところでエリシアさんとはどこかでお会いした事がありますか? 初めて会ったような気がしなくて」

 

「奇遇ね。私も。記憶に間違いがなければ、あなたとは初対面の筈なのだけれど、なにか他人のような気がしなくて。あなたがレオンのパートナーだからかしら?」

 

「私はレオンに合わせてトリガーを引いただけですよ。パートナーだなんて、そんな」

 

 戦闘中のあらゆる動きはレオンの制御によるものだ。ルビーはレオンに掛けられた制限の為に、ロックオンの済んだ後、合図に応じてトリガーを引いただけ。少なくともルビーにとってはそういう認識である。

 その意見に異を唱えたのはカインズだった。タブレット端末を見て三機の制御プログラムをチェックしていたが、Reonに乗ってレオンと共に戦ったルビーには彼も興味があったのだろう。

 

「だが、それは私達には出来なかった事だ。ミス・ヒューゲット、初めまして、ワルハマー・T・カインズだ」

 

「ゼファー・ファントム・システムを開発された、カインズ博士?」

 

「ああ。勝手ながら君とレオンのログを見せてもらったよ。オリジナルのゼファーに比べてバージョンアップしたのもあるが、レオンの学習速度は凄いな。君がレオンに与えている影響も大きい」

 

 ルビーはいきなりの戦場投入と普通ではない時間を過ごした自覚はあるが、ゼファー・ファントム・システムの開発者にこうまで言われれば、自分とレオンの相性が良かったのかな? とこれくらいは思う。

 

『こんにちは、ルビー。どうなさいましたか?』

 

 メンテナンスベッドにロックされているレオンからの音声だ。ルビーは機体の方のReonへ振り返り、笑顔で答えた。

 

「プルート財閥のヘイデス総帥から頼まれごとがあってね。それにレオンの調子はどうかと思って、様子を見に来たのよ」

 

『お気遣いありがとうございます。私はカインズ博士とエリシア女史、ゼファー、ALICE、、ミス・エファ、ルーツ少尉と有意義な時間を過ごしていました』

 

「ほとんどあなたの身内みたいな方達ばかりだものね。ところでルーツ少尉っていうのは、そちらの方?」

 

 パイロットスーツを脱ぎ、軍服姿のリョウを見つけて声を掛けたが。ちょっとチンピラっぽいと思ったのは内緒の話である。今日に至るまでの激戦を始めとした経験で多少人格が矯正されたとはいえ、リョウの雰囲気それ自体はあまり変わっていない。

 

「おう。DC所属のリョウ・ルーツ少尉だ。カーゴシップの船長だってのに、ガンダムに乗って戦ったんだって? 大した度胸だぜ。しかも相手は真ジオンと異星人の連中だったんだからな」

 

 ルビーの印象とは裏腹にリョウの方はフランクで親しげな態度だ。民間人上がりのMSパイロットはDCで大量に見ているので、珍しいとは思わない。ルビーも女だてらにと安易に口にしなかった点を買った。

 

「生きた心地はしませんでしたよ。レオンに頼ってばかりでしたから。あの子のお陰で今、こうしていられます」

 

「謙虚だねえ。そういうアンタならレオンもサポートした甲斐があったってもんだろ?」

 

『ルビーとのコミュニケーションは多くの学びと気付きを与えてくれました』

 

「だってよ。俺のガンダムに乗っているALICEちゃんもそれくらい素直ならいいんだけどよ」

 

「ALICE? ゼファーやレオンみたいな制御プログラムですか?」

 

「ゼファーやMDとは別口で、一年戦争の後に研究が始まった代物なんだとよ。俺も最近までそんなもんがガンダムに乗っているなんて知らなかったけどな。ゼファーやレオンみたいに意思表示はしねえが、時々、俺から操縦を奪うことはある」

 

「私とレオンとは逆ね」

 

「へ、いつか俺に助けなんかいらねえって教えてやるぜ」

 

 そう言って左の掌に右の拳を打ち付けるリョウをSガンダムのメインカメラがフォーカスしているように見えたのは、きっとルビーの錯覚だろう。

 ふとルビーは、エファが感慨深そうに自分達のやり取りとメンテナンスベッドに固定された三機のガンダムを見ているのに気付いた。エファとはDCやアクシズ艦隊の援軍が来るまで、共に戦った間柄だ。

 

「エファさん、なにかこの子達に思い入れでも?」

 

 この子達と表現するルビーの感性に、エファは微笑を浮かべながら振り返る。

 

「正確にはゼファーにね。一年戦争の時にゼファーを搭載したガンダムタイプと戦ったことがあるのよ。旧式のカタールでね」

 

「エファさんが? でも一年戦争の時だったら、まだティーンの頃じゃないですか」

 

「レビル将軍のジオンに兵なしという演説、知らないかしら? 他にも理由はあるけど、私は一年戦争の終盤に戦場に出て、そしてゼファーと戦って負けた。けれど負けた私をゼファーは助けてくれた。

 当時の私は、あの極限の状況でも敵のパイロットだった私を助けてくれた相手の考えがすぐには理解できなかった。けれど戦争が終わるころにはあのパイロットのようになりたいとそう思うようになっていた」

 

 そう言ってゼファーを見つめるエファに、ルビーは躊躇いながら尋ねた。

 

「それじゃあゼファーがファントムだと知った今は?」

 

「驚かなかったと言ったら嘘になる。けれどさっきの戦場での戦いを見て、そしてここで少しだけど話をさせてもらって分かったわ。私に誇りと尊厳を守る為に最後まで戦うと、そう教えてくれた尊敬するべき相手である事に変わりはないって」

 

「誇りと尊厳を守る為、か……」

 

 ゼファーとALICEとレオン……人の手で作り出された人工の存在。人を助け、人を救い、人を補うべく造り出された彼ら。

 そして彼らと関わりの深い人間達が一堂に介した場で、ルビーはヘイデスからの提案を受け入れるかどうか、その答えが自分の中で固まりつつあるのを理解した。

 

 

 ルビーナ王女を始めとした離反者達からの情報提供と、これまでの調査活動によりスカルムーン基地の所在が割れた事で、地球連邦軍は本腰を上げて同基地の攻略を決定した。

 その為にルナツーと月の艦隊を中心にアクシズ艦隊、クロスボーン・バンガード艦隊の一部、そしてDCの地上・宇宙両部隊を合流させて、攻略の為の戦力が整えられている。

 

 地上部隊はビッグファルコンとソーラーバードが合体した全長四キロメートルの巨大宇宙船ソーラーファルコン、更にガード・ダイモビック基地が再び巨大宇宙母艦スペース・ダイモビックとなり、リヒテルらバーム星人の一部もまた艦隊に加わっている。

 更にティターンズ改めキュクロープスから、トーマス・シュレーダーとT3小隊が合流し、セシリー宛にクロスボーン・バンガードからビギナ・ロナが贈られ、それ以外にもベルガ・バルス、ビギナ・ゼラ、ビギナ・ギナⅡ、ラフレシアやエビル・ドーガなどが供与されて機動兵器部隊の戦力を増している。まあ、ほとんどは予備機に回されているが。

 

 DCに限ってもキロメートル級の戦艦がピースミリオン、ガンドール、ソーラーファルコン、タルタロスと四隻も含まれる極めて強力な艦隊だ。

 それに加えてマジンカイザーや真ゲッターロボ、Rνガンダムにガイア・ギアα、ゼファーW0ライザー、ZⅢといった規格外級の強力な機動兵器も加わっている。

 ともすればどうスカルムーン基地を攻略するか、ではなく、どこまで被害を少なくして勝つか、と考えてしまいそうになる戦力と言えるかもしれない。

 

 これにベガ星連合軍から離脱して小惑星帯に隠れていたベガ星離反者組の艦隊も合流しており、ルビーナが乗っていたマザーバーン以外にも複数の大型母艦と機動兵器が地球連邦艦隊に合流している。

 地球連邦軍、DC、ルビーナ艦隊、ジオン共和国、アクシズからなる混合艦隊が出来上がったわけだが、数でいえばそのほとんどは地球連邦軍が大多数を占めており、指揮系統は地球連邦艦隊指揮官を務めるムバラク大将を頂点としている。

 

 ジオン共和国艦隊はハマーンらアクシズ艦隊を含み、指揮官をドズルが務めるがあくまで地球連邦の指揮に従う立場である。生粋のジオン軍人達の中には思うところのある者もいるだろうが、この大事に引き金を引く相手を間違えるほど血迷った者はいない。

 ルビーナは忌むべきベガ星の後継者だが、父ベガ大王に反旗を翻してこれまでベガ星の行いを否定し、征服された星々への正式な謝罪と復興への協力を全面的に約束するなど迅速に方針を表示している。

 (みそぎ)の一環として今回のスカルムーン基地攻略作戦では前線に出る予定となっているが、万が一にも轟沈されては困ると地球連邦側の意向により、その周囲は十重二十重と守りを敷く予定となっている。

 

 さてDCだがZⅢやゼファーW0ライザー、Rνガンダムなどが合流した事から分かるように、いよいよ侵略者達を勢力単位で壊滅させる段階に入った事もあり、機動兵器の補充や強化による戦力向上に余念がない。

 これまで別行動を取っていたシーマ艦隊もついにDCに合流を果たし、リリーマルレーン二世ことスペースノア級三番艦クロガネ他、ムサカ級複数が艦隊の列に加わっている。

 

 今もアレスコーポレーション所属のパイロットであるシーマは艦隊に合流した挨拶をしにタルタロスを訪れていたのだが、愛機であるガーベラ・テトラ改を格納庫に預け、コックピットから降りようとしたところで見知った顔を見つけた。

 アクシズ艦隊に所属しているアナベル・ガトーだ。傍らには戦友ケリィの姿もある。

 

 シーマは偽りの星の屑が実行される直前にデラーズ・フリートを離れたが、その後、ヘイデスの依頼を受けて茨の園でハマーンらの護衛に加わった折りにガトー達と再会している。

 シーマがおや? と面白そうに呟いたのはガトーが連邦の士官と相対している図だったからだ。まだ二十歳そこそこの、それこそ士官学校を卒業したての若造だろう。直接の面識はないが、DCのメンバーの簡単な経歴くらいは頭に入れている。

 

「DCに所属している以上は腕っこきなんだろうけれどね。ガトーの奴を睨みつけちゃってまあ、どんなボウヤなんだか」

 

 シーマはもう少し観察を続けることにした。この時、ガトーと対峙していたのはアルビオン隊に所属しているコウ・ウラキだった。

 これまで宇宙ではGP03デンドロビウムを愛機としていたが、今ではデンドロビウムを発展させたデルフィニウムを預けられている。

 

 ではなぜコウがタルタロスに居るかというと、デンドロビウムを構成するアームドベース・オーキスとデルフィニウムはあまりに巨大である為、アルビオンでは収容できず曳航するしかない。

 その為、戦場に着く直前まではタルタロスが代わりに預かり、戦闘時にはコウはGP03ステイメンでアルビオンから出撃し、タルタロスから射出されたオーキスないしデルフィニウムとドッキングして戦う事となる。

 

「ガトー……。それにケリィさん」

 

 トリントン基地でのGP02号強奪事件からの因縁のあるガトー、そして月で知己を得たケリィの姿にコウは驚きを隠せずにいたが、それ以上に、偽りの星の屑以来の再会となったガトーの姿に対する憤り、あるいは怒り、そういった一言では言い尽くせない感情が渦巻いていた。

 

「ウラキ少尉か」

 

 淡々と応じて見えるガトーも一別以来、更に精悍さを増したコウに感心していた。とはいえ流石にそれを口にするほど、無神経でもない。

 ガトーは今の自分を大義の為と言い訳をして生き恥を晒している敗残兵だと、少なからず思っている。

 死にぞこないのこの身でも、まだスペースノイドを含めた地球人類の未来に役立てるならとこうしてまだ戦っているのだ。

 そんな立場の人間が、“精悍な顔つきになったな”、“一人前の戦士だ”などと上からモノを言えるわけもなし。

 

「……あのコロニー落としの後でデラーズ・フリートの生き残りが、アクシズを脱出した艦隊に合流したという話は聞いていた」

 

「その通りだ。ジオン共和国を通じて地球連邦政府への連絡も済んでいる。ドズル閣下ならびにハマーン閣下の指揮下にて、不肖アナベル・ガトー、貴官らと共に侵略者達との戦いに身命を賭す覚悟でいる」

 

 ガトーの言葉に嘘も偽りもない事、もし彼が命を捨てなければならない場面が来たなら、躊躇なく命を捨てるのを、コウは明確に理解していた。

 ガトーを超える為に何度もシミュレーションをし、バニングやモンシアばかりでなくアムロやクワトロといったウルトラエースとも特訓を重ねてきた彼は、図らずもガトーに対する理解度が深い。

 

「俺はデラーズ・フリートのしたことを許せるほど、人間が出来ちゃいない。けれど、あんたがどれだけの実力を持っているか、嫌というほど理解しているつもりだ。

 地球連邦が何度も間違えてきたのは確かだが、今の政府は昔とは大きく変わってきている。地球の中と外から来る脅威を前にして、地球人類があらゆる力と知恵を振り絞らなければいけない時代になったんだ。

 スペースノイドとアースノイドという言葉に、搾取する者とされる者という意味が消えて、ただ生まれ育った場所を指す言葉でしかなくなる時代も近い。だから、その未来の為に一度口にしたなら、本当にそうしてみせろよ」

 

「むろんだ。私とてこれだけ多くのものを見て、この耳で人々の声を聴き、真に戦うべき敵を間違えるような真似はしない」

 

「なら、俺から言うことはない。ただ、あんたの戦いを見るだけだ」

 

 なにかを堪えるようにそれだけを告げて踵を返すコウの背中に、ガトーとケリィは敬礼を送りその背中が見えなくなるまで見送った。

 そしてこのやり取りを眺めていたシーマがガーベラ・テトラ改のコックピットハッチを蹴って、ガトー達の背後に降り立つ。

 

「宿敵と涙の和解の場面と言ったら、ちょいと趣味が悪いかね?」

 

「ガラハウ中佐か。貴官もようやくDCに合流できるのだったな。これからは戦場で轡を並べる者として、よろしく頼む」

 

「真面目だねえ。それとあたしは今じゃ民間企業の人間さね。ただのシーマ・ガラハウさ。軍人であるのは否定しないけど。それにしてもあのボウヤ、あんたを相手に啖呵を切るとは大した度胸だね。因縁もあるようだけど、腕の方はどうだい?」

 

「いい腕をしている。ソロモンでは相討ちに持ち込まれたが、今は更に腕を上げているだろう」

 

「へえ、そりゃ大したもんだ。やっぱりこの部隊に居る以上、普通の腕の奴はいやしないか」

 

「だからこそ励まねばならない。かつてスペースノイドの独立と解放の為に戦ったことは、誤りだったとは思っていない。だが、今はそれだけの為に戦うのではならないと理解しているつもりだ」

 

「そうかい。まあ、他所から人類を丸ごと奴隷にするか、滅ぼそうとしてくる奴らがわんさか来てんだ。そうなるだろうね。

 あんたらの事だ。本当に命を賭けるんだろうが、なにごとも命あっての物種だよ。なにがなんでも生き残って、未来を見ているって考えるのもありだと思うよ? って、あたしらしくもないか。忘れておくれ」

 

「いや、ガラハウ中佐の言葉もまた一理ある。命を賭すことで発揮できる強さもあれば、生き残ろうとする意志が生み出す強さもあると、肝に銘じよう」

 

「だから元中佐だって言っているだろう? にしても本当に真面目だねえ。もっと肩から力を抜きな。そうじゃなきゃこの部隊じゃやっていけないよ? 民間人が多いんだからね」

 

 シーマは言いたいことを言いたいだけ口にすると、ガトー達をおいてけぼりにしてタルタロスのブリッジを目指して足を動かし始めるのだった。

 さてシーマ艦隊と精兵からなる海兵隊の合流はDCの戦力向上に一役買ったが、コウのデルフィニウム以外にも戦力の追加は行われた。アナハイムがここで本気を出さなければ戦後に軍事部門の立場が失われる、と怒涛の勢いで兵器の供出を行ったのである。

 

 場合によっては敵対している両勢力に兵器の供給や開発、物資の補給を行うアナハイムも、ここまでの戦いで侵略者達に話は通じないと学習するのには十分だったし、その間にロームフェラ財団、プルート財閥、サナリィ、連邦軍それぞれが独自に強力な機動兵器を開発し、生産設備を整えて、アナハイムへの軍事関係の依存度が著しく低下した事実もあった。

 良くも悪くも苦境に立たされたことでアナハイムが底力を見せて、ある意味、ようやく地球人類は一致団結に近づいた状態で戦いに臨むことが出来たのである。

 

■ 共通ルート 第五十話 宇宙の王者

 

 ラー・カイラム級機動戦艦ジャンヌ・ダルクを旗艦とするスカルムーン基地攻略艦隊は本隊を大きく三つに分け、三方からスカルムーン基地へと迫る。この三つの艦隊の他にDC、新生キマイラ、アクシズの混成艦隊が独自に基地攻略に向けて動く形だ。

 地球の海上で行われる艦隊戦とは異なり、立体的な陣形を敷いてスカルムーン基地に進む地球艦隊だが彼らの側にも制限が課せられている。

 具体的に言えば、都市の存在する月面での戦闘となる為、過剰な破壊力を持った武装の使用が禁じられている。

 

 局所的なマイクロブラックホールを発生させる光子魚雷を筆頭に一定以上の出力で使用される重力兵器、またサテライトキャノン、ソーラー・レイやコロニーレーザー、リーブラの主砲、バルジ砲などの戦略兵器も出力と射角について厳しい制限が掛かっている。

 グラナダやフォン・ブラウンを筆頭とした月面都市はほぼ地下に広がっているとはいえ、流れ弾が月の地形を変えたり、質量を大幅に減らして地球に悪影響を与えたりする危険性がある為だ。

 

 またミノフスキー粒子によるジャミングについても既に地球側でもある程度の対策が確立されている中、異星人勢力は基本的な技術力は地球側を上回っており、開戦当初ほどの効果が出なくなっている。

 加えて機動兵器はまだしも艦船の性能においては、タルタロスやソーラーファルコン、ガンドールなどのような一部例外を除いて侵略者側の方が高い。そこはまだ太陽系外に進出できていない地球と異星人勢力との埋めがたい技術力の差だ。

 

 それを埋めるのが、地の利と機動兵器においては地球側の一部が圧倒的に高性能という二点だ。

 懸念事項としてはベガ軍が背水の陣とあって死に物狂いの戦いぶりを見せるという予測と、これまで以上に同盟勢力が本腰を入れて援軍を送ってくる事、そして各地で敗走したベガ軍の部隊が集結しつつある事が挙げられる。

 

 ワープによる奇襲攻撃の危険性が常に考慮される為、事前に確認できている敵戦力が全てではない点を常に考慮しなければならない。

 ベガ軍に反旗を翻した各惑星のレジスタンス達は奪い返した母星の防衛、あるいはまだ交戦中という事情がある為、地球に大規模な援軍を送れずにおり、むしろベガ大王を地球が討ってはくれないかと期待を寄せている状況だ。

 ベガ星だけでなくこの天の川銀河各地で侵略戦争を重ねているキャンベルやボアザンも地球で勃発している大戦に参加している事もあり、この二つの星に支配されている星々や今まさに征服されつつある星の人々にとっても、地球の戦いは希望と絶望とが同時に重なった一大事であった。

 

 地球人類側としては太陽系の命運だけでも一杯一杯だというのに、他の惑星の命運まで山ほど背負わされていると知らされて、ただでさえ重圧に悲鳴を上げていた地球連邦高官達の精神に更なるダメージを与えている。

 ムバラクやティアンム、ゴップ、ノベンタ元帥を始めとした上級将校にもこの事情は知らされており、有能な将官である彼らをしても流石に頭を抱えたくなる状況であった。まあ、これもそれも地球を征服しようとしている侵略者達が悪いのである。

 

 そうして様々な星々の期待と不安の重圧を押し付けられた地球連邦艦隊、スカルムーン基地攻略作戦──オペレーション・ライアーを決行する事となったのである。

 戦闘参加艦艇数およそ三百隻からなる艦隊は、百二十隻ずつの艦隊二つをもってスカルムーン基地を月面から攻め込み、残る六十隻の艦隊は基地直上から月面と垂直になる位置取りで攻撃を仕掛ける。

 

 これに対して基地に籠ってばかりいては勝機がないと判断したベガ大王は、原作とは違って基地の爆破こそしなかったものの、全戦力をスカルムーン基地から出撃させて銀列連の援軍と合流し、交差するように進軍してくる地球連邦の二つの艦隊を迎え撃った。

 ベガ星連合軍、ボアザン、キャンベル、ムゲ、バームの連合勢力は、指揮系統はそれぞれに独立させたまま、担当する区域で地球人類と戦う手筈である。

 

 各地で敗走したベガ星連合軍の部隊を吸収して数こそ増えているが、レジスタンスに叩き出された者達であり、到底万全の状態ではなく、兵器の修理や治療の必要な負傷者達が少なからず多く、そういった者達はスカルムーン基地に残されている。

 地球側が危惧する程にベガ星連合軍は数を増やせずにいたのは、不幸中の幸いであった。そしてベガ星連合軍の総指揮官たるベガ大王は最強の戦艦である座乗艦キング・オブ・ベガに搭乗し、迫りくる地球連邦艦隊をモニター越しに睨んでいた。

 

 横倒しにした葉巻か樽を思わせる形状のキング・オブ・ベガだが、大出力の反重力エンジンの生み出す膨大なエネルギーを利用した超ベガトロンビーム砲をはじめ、無数の対空レーザーを装備し、遠近ともに優れた火力を持つ強力な艦だ。

 他にもガンダル、ズリルの専用母艦をはじめ残るマザーバーン全艦隊が布陣し、ボアザンのスカールークをはじめ攻撃司令艦ザンタル、キャンベルのグレイドン、ブランブル、バームのガルンロール、ムゲの戦艦、空母とバラエティに富んでいる。

 

「動きが良いな。この決戦に無能を送り込むわけもないか」

 

 陣形の維持一つからでも敵将の能力は測れるというもの。野心の為に愛娘の殺害の厭わぬ境地に達したベガ大王は冷厳なる眼差しをモニターに向けたまま、私情を含まぬ客観的な評価を口にした。

 それから艦橋の兵士達に命じて、ベガ星連合軍全艦に通信を繋げさせる。帰るべき星を失った征服者が不退転の覚悟を持って臨む決戦を前に、兵士達を鼓舞しようとしているのだ。

 

「我が名の下に集いし勇敢なる兵士達よ! 見よ、彼方にあるあの青き星を。空気と水に恵まれた地球という星を! あれこそが我らの新たな母星、第二のベガ星である。

 そしてまた見よ。我らに向かってくる地球人達の艦隊を。我らに敗れ、母星たる地球を失う未来を知らぬ哀れな敗北者共だ。そしていずれこの銀河の、宇宙の全ての命ある者達が辿る未来を先に行く者達である。

 ベガ星連合軍の兵士達よ、諸君はこのベガ大王の歩む覇道の礎となり、栄光の歴史を担う英雄に他ならない!

 弱き者達の血と悲鳴と苦痛を踏みにじり、この宇宙を手にするこのベガ大王の名前と共に諸君らの偉業は未来永劫、栄光と恐怖と共に語り継がれるのだ!

 戦え! 勝て! そして蹂躙し、破壊し、宇宙を統べる覇王の軍勢の力を全ての弱者共に知らしめるのだ!!」

 

 もとより数多の星々を征服した一大勢力の長として相応しいだけの威厳とカリスマを兼ね備えていたベガ大王だが、更にそのカリスマ性は凶悪な力を発揮し、この演説を耳にしていたベガ星兵士達の士気を格段に上げさせ、渋々援軍にやってきた他勢力の将兵達も瞠目させていた。

 地球側にとっては凶報に他ならないベガ大王の覚醒といえる。ベガ星連合軍から立ち上る月を飲み込まんばかりの見えない気合の炎は、ニュータイプや超能力者でなくとも感じ取れておかしくないほどだった。

 

「ベガ大王、どうやらこれまでとは覚悟が違うな。だが、それは僕も同じことだ」

 

 グレンダイザーのコックピットの中で、ベガ星連合軍の戦意の高さを感じ取り、眦を険しくしたデュークである。

 彼は今、グレンダイザーを巨大な円盤の上に立たせていた。

 かつて開発されたG3スペイザーの他、ドリルスペイザーやダブルスペイザー、マリンスペイザー、ボススペイザーなどを参考にして開発が進められていた最強のスペイザー“フリードスペイザー”だ。

 

 G3スペイザーでは複数のエネルギーを実験的に利用したが、グレンダイザーと相性のいい光子力エネルギーを中核として開発されている。

 スペイザーの純粋な後継機と思わせるデザインだが上部にはフリード王家の紋章が描かれており、デュークの覚悟を示すものとなっている。

 

 外宇宙航行ユニットとしての面が強かったスペイザーを戦闘用に再設計したもので、グレンダイザーと同じく光量子エネルギーを使用しつつ、光子力エンジンを搭載し、装甲も超合金ニューZが用いられている。

 元のスペイザーの全幅六十五メートルから百メートルにまで巨大化され、余剰スペースに更なる武装と地球製スペイザーで培った反重力エンジン、またグレンダイザー自体が反重力を操れることから、重力操作の補助を目的としたグラビコン・システムを搭載している。

 あらゆる動力源を搭載するのではなく、グレンダイザーと相性のいい光子力と重力系に焦点を絞ったというわけだ。

 

 スピンソーサーやメルトシャワーといった武装を受け継ぎつつ、胴体上部に光子力ビームを発射する旋回式連装砲塔一基を備え、下部にヴァル・ヴァロを思わせる大型のクローが収納されている。

 クロー自体にも光子力ビーム砲が内蔵され、調整次第では光子力ビームサーベルが展開可能だ。

 また搭載したグラビコン・システムの補助により、反重力ストーム以外にもいくつかの重力系武装が使用可能となっており、小型化したもののG3スペイザーを大きく上回る戦闘能力の確保に成功した。

 

「行くぞ、ベガ大王! かつてフリード星を蹂躙された無念を晴らす為、そしてこれ以上、この宇宙にお前達の悪意を広げない為に、デューク・フリードとグレンダイザーは戦う!!」

 

 互いの艦隊からの艦砲射撃とミサイルの雨が降り注ぐ中、フリードスペイザーとドッキングしたグレンダイザーを筆頭に、次々とDCの各艦から機動兵器が出撃して行く。

 その中にはジュドーとルーのメガゼータ、クリスチーナ・マッケンジーの乗るガンダムトリスタンが巨大アームドベースと合体したクレヴェナール、バーニィのザク50、ゼロがアムロの推薦で借り受けたHi-νガンダム、レイラがクワトロから預けられたナイチンゲール、シーブックの乗るF97X1、セシリーのビギナ・ロナ、プルのアハヴァ・アジール、プルツーのクィン・マンサ、マリーダのクシャトリヤ。

 更には量産型ヴァルシオーであるヴァルシオーマタイプ・CF、タイプ・GF、ヒュッケバインガンナー、ヒュッケバインボクサー、グルンガスト改二機なども含まれている。

 今も地球の新早乙女研究所に残っているグレイゲッターGとシャドウセイバーズの一部を除いて、DCの持てる最大戦力が投入されるのだった。

 

<続>

 

■デルフィニウムを入手しました。

■フリードスペイザーを入手しました。

■メガゼータを入手しました。

■ガンダムトリスタンならびにクレヴェナールを入手しました。

■ザク50を入手しました。

■F97X1(クロスボーン・ガンダムX1)を入手しました。

■ビギナ・ロナを入手しました。

■アハヴァ・アジールを入手しました。

■クィン・マンサを入手しました。

■クシャトリヤを入手しました。

■ヴァルシオーマタイプ・CFを入手しました。

■ヴァルシオーマタイプ・GFを入手しました。

■ヒュッケバイン用ボクサー、ガンナーパーツを入手しました。

■グルンガスト改二機を入手しました。

■ビギナ・ギナⅡを入手しました。

■ビギナ・ゼラを入手しました。

■エビル・ドーガを入手しました。

■ラフレシアを入手しました。

 

■シーマ艦隊が合流しました。

■トーマス・シュレーダーとT3小隊が仲間になりました。




ユウとライラのヒュッケバインMk-Ⅱ、ブランのガンダムMk-Ⅴ、バニングのシルヴァ・バレト、モンシアのガンダムMk-Ⅲ、ベイトのガンダムMk-Ⅳあたりをそろそろ乗り換えさせたいところですが、適当な機体が見つからない昨今です。出来ればユウもライラもモビルスーツに乗せたいなあ。


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第百四話 月が砕けませんように

前回の更新時、私のあとがきついて感想やメッセージでアイディアを下さった皆さん。ご意見ありがとうございました。
ご意見を採用させていただいた方、残念ながら見送らせていただいた方もいらっしゃいますが、どちらの方に対しても感謝申し上げます。知らない機体の意見も寄せられて勉強になりました。
大幅な機体の乗り換えはそろそろおしまいですが、これからも本作をよろしくお願い申し上げます。



 月面で対峙する銀列連+αの侵略者艦隊と迎え撃つ地球連邦艦隊は、遠慮も容赦もない火力のぶつけ合いを始めた。

 三方に分かれる地球連邦艦隊を迎え撃つ為に左右と上に艦隊を展開する銀列連側だが、高度を取り過ぎれば射角を整えたリーブラやバルジなどから戦略級の砲撃が来る可能性が高く、上方から襲い来る地球連邦第三艦隊に対して不利な位置取りを強要されている。

 これに対してガンダルは冷静に戦況を見極めて、矢継ぎ早に指示を出して行く。

 

「艦の性能はこちらが上だ。地球人共は数で攻めてくるが、それならば一隻ずつ確実に仕留めて行けばよい。ベガ獣と円盤獣、艦載機部隊は地球の機動兵器の母艦への接近を許すな。撃ち合いならば我らの方が強い。我らは宇宙の覇王、ベガ大王の軍隊なのだ!」

 

 凶悪な怪物の顔の生えた円盤型の専用母艦から、ガンダルはベガ星連合軍所属の各艦に檄を飛ばし、こちらに向けて無数に放たれるメガ粒子砲と各種ミサイル、レールガンにわずかに目を細める。

 今回の決戦が月面上で行われる以上、地球連邦側が戦略兵器の使用に慎重を期するのは見越している。先に述べた通り戦域外からの砲撃に注意すれば、それ以外の戦略兵器は封殺に近い状態に持ち込める。

 その一方で銀列連側も惑星破壊級の戦略兵器は多々保有しているが、地球を新たな母星にと考えているベガ側としては、キャンベルやボアザンに使われないよう注意しなければならない事情もある。

 

(追い詰められたら月と我らごと地球人を葬ろうとしかねん。ジャネラとベルガン、ガイゾックの連中には特に気を付けなければ。そしてこの身に巣食う忌まわしいレディにもだ!)

 

 合計三百隻余からなる地球連邦艦隊に対して銀列連側は意外と数が少なく、二百隻程度である。これはボアザン、キャンベル、ベガ軍に顕著なのだが、例えばベガ軍であればマザーバーン一隻と搭載できる円盤獣だけで大抵の星々は征服できていたからだ。

 基本的に母艦一隻と艦載機の運用が軍の大部分を占めている為、地球連邦のように数十から百単位の艦隊を運用する実績があまりないのである。

 それほどこれまで征服してきた対象と今回の地球連邦は色々と違うのだが、ムゲ軍はそこらへんの積み重ねがあるので、少々厄介だ。

 

 ベガ軍を中核とする銀列連+その他と地球連邦軍が激しい砲雷撃戦を行う中で、先に出撃していた、あるいは出撃中の機動兵器部隊は大まかに三つに分かれた。

 艦の直掩に残る部隊、砲撃を横目に敵艦隊を目指す部隊、そして砲撃の中を突っ込んでゆく頭のおかしい部隊の三つである。

 ムバラク率いる第一艦隊、ブライアン・エイノーの第二艦隊、第三艦隊所属の機動兵器部隊は前者二つだが、例外的に砲撃の中を突っ込んでゆく常軌を逸した部隊は当然DCと愉快な仲間達である。

 愉快な仲間達とは、あくまで外部協力者という形で同行しているアクシズやジオン共和国の面々を指す。

 

「連邦め、動きが良い。指揮官はムバラクか。フン、そしてDCの指揮官はレビル……。時代は変わったな。どちらも味方なら頼もしい限りだ。よし、ドズル・ザビ、グランザム出撃する!」

 

 サダラーンに曳航されていたグランザムがスラスターを勢いよく点火し、それに追従してRFアッザムを始めとしたMAも艦隊の周囲に展開し、自慢のメガ粒子砲をいつでも撃てる用意を整えている。

 DCに同行しているアクシズ・ジオン共和国艦隊──ジオン艦隊はサダラーン以外にもキマイラ、レウルーラ、またグレミーが艦長として乗り込み、プルクローンズによってサイコミュコントロールされるファドラーンとジオン印の高性能艦が揃い踏みだ。

 グランザムやRFアッザム、ビグ・ザム改、地球連邦ではアプサラスⅤことウルバシーといった比較的鈍足のMAは砲撃支援を行いながらゆっくりと前線に進んでゆく一方で、RFビグロや地球連邦のデンドロビウムⅡといった高速機は可変機部隊と共に敵艦隊に襲い掛かっていた。

 

 少数ながら大型艦艇を複数含む極めて強力な艦隊であるDCはというと、第一艦隊、第二艦隊の間を縫うようにして戦闘速度を維持しながら銀列連の艦隊に突っ込んでいる。

 それにはジオン艦隊も加わっており、こちらに向けて放たれる破壊光線やミサイル、そこに火炎や稲妻が含まれるのが異星人らしいが、迎撃の嵐にも怯まないのは流石という他ない。

 

 茨の園で待機中、更なる強化が施されたキュベレイを駆るハマーンはもちろん、キャラのゲーマルクとそれを護衛するギーレン兄弟の強化ガズエル、強化ガズアル、ラカン・ダカラン率いるスペースウルフ隊、ジャムルの3D率いるジャムル・フィン隊、更にジャムル・フィンの発展形であるビグ・ザムールも戦闘に参加している。

 いずれも驚異的な性能の機体と技量のパイロット達の組み合わせだが、一年戦争以前から地球連邦軍に奉職している古参達は、一年戦争で名を馳せたジオンのエース達にこそ目を奪われる。

 

「クランプ、アコース、コズン、遅れるなよ!」

 

 専用の調整を施したRFグフ・カスタム(あるいはB3型)に乗るランバ・ラルは一年戦争以前からの部下達を引き連れて果敢に攻め立て、ジョニー・ライデンは最新のゲルググであるテスタロッサを手足のように扱い、同じく新たなゲルググを手に入れたキマイラのメンバーと共にキマイラ隊の名前を恐怖と共に刻んでやろうと意気込んでいる。

 デラーズ・フリートから合流したガトーやケリィ、カリウスらも、コウと話したようにそれぞれが少しでも戦果を上げる事でスペースノイドの、ひいては地球人類の立場をよくせんと覚悟を固めており、その気迫たるや凄まじいの一言に尽きる。

 

 そしてまた三機編成の小隊の中でも格段の突破力を誇る、黒い三連星のアルトアイゼンSSに、ヴァイスリッターのカスタム機が援護について共に飛翔している。

 『白狼』シン・マツナガの為に用立てられたヴァイスリッターのカスタム機、ヴァイスヴォルフリッター──白狼の騎士である。

 

 本家というのもおかしいが、この世界のヴァイスリッター同様に高機動型・砲戦用マジンガーというべき機体だが、より格闘戦に適した調整が施され、オクスタンランチャーの銃身下部には超合金ニューZ製のマジンガーハルバードが装備され、左腕には格闘戦を考慮したバックラーを装備、左右の腰アーマーにはヒートホークが一本ずつ懸架されている。

 機体そのものは最高速度をやや落とすのと引き換えに関節の強度を高め、格闘戦の負荷に耐えられるようになっている。

 

「白狼よ、俺達のアルトアイゼン同様にお前さんの機体はせっかくの新型だ。傷を付ければ白狼の名が泣くぞ」

 

 プロメテウスプロジェクトで長期間行動を共にし、プロジェクト終了後から今に至るまでジオン共和国を支えてきた間柄であるから、マツナガへ呼びかけるガイアの声色には信頼と気安さが滲んでいる。

 

「むろんだ。これほどの機体を与えられれば、つい浮足立ってしまいそうだが、そう浮かれていられるような甘い戦場でもないのだからな」

 

 レーダーの捕捉した無数の敵機とMSを大きく上回る巨大で圧倒的なパワーと装甲を誇る敵機を前に、マツナガに油断も慢心もない。

 そんなものを抱いて自分が死ぬだけならそれは自分が未熟なだけだが、その所為で戦いが不利になり、まかり間違って敗北でもしようものならば、ジオンの人々のみならず地球人類の命運に暗い影を落とす事となる。

 それはマツナガにとっては、自身の死よりもはるかに恐ろしいものだった。黒い三連星も同じだが、それに怯んで操縦を間違えるような未熟さは欠片もない。オルテガはまったく同感だと笑い飛ばす豪快さを見せた。

 

「違いねえ! だからこそ命を張って戦う甲斐があるってもんだぜ。今度はスペースノイドだけじゃねえ。地球人全員の為ってんだからな!」

 

「それにここで勝てば、地球に手を出そうなんて馬鹿を考える奴は減るだろう。ぶっ叩けるだけ叩いて、地球に手を出すのがどういうことか、教えてやらにゃあな」

 

 マッシュも隻眼にギラギラと戦意の炎を燃やし、銀河に地球の恐ろしさと黒い三連星の名前を知らしめる好機だと天井知らずに気合を高めている。

 

「マッシュ、オルテガ、気合を入れるのは良いが血気には逸るなよ。ここに居る奴らだけが敵の全てじゃないんだ。俺達が潰さにゃならん敵はまだまだ多いのだからな。白狼、お前さんもここで無駄に命を散らすなよ」

 

「ふ、貴官らも命を粗末にするなよ。ジオンだけでなく地球人類の旗を背負って戦うのだからな」

 

 黒い三連星と白狼が月の空を駆ける中、地球連邦のMSもおおむね出撃を終えている。MDのトーラスはリゼルやZプラスといった可変機部隊と行動を共にして出撃し、同じくMDビルゴ、ビルゴⅡは艦隊の直掩についてプラネイトディフェンサーを展開し、艦艇の盾になれるよう布陣している。

 少数ながら有人機のヴァイエイトとメリクリウスも参戦しており、艦隊直掩のMD部隊の指揮を任されたパイロット達が乗り込んでいる。

 

 連邦艦隊の主力MSはご存じプルート財閥謹製ゲシュペンストMk-Ⅲ、バルゴラCS、さらにサナリィの底力の一つ量産型F91、これまで多くの戦いを重ねてきた信頼と実績のジャベリン。

 主力ではないがそれなりの数が用意されているのが、一発が大きいヴァイエイトに鉄壁の守りを誇るメリクリウス、デチューンしたとはいえ強烈な性能を誇るテウルギスト、そして主にMDで運用されるトーラスとビルゴシリーズ、この他にリゼルやZプラスといった可変機部隊。

 これに加えて量産型グレートマジンガー、量産型ゲッターロボG、グルンガスト弐式、大型MSガンダムデュラクシール、デンドロビウムⅡ、Gレイ、更にスペースゴジュラスMk-Ⅱ量産型、スペースジェノザウラーが戦列に並ぶ。

 およそ五千機あまりの機動兵器部隊である。

 

 強力な機動兵器部隊を伴う地球連邦艦隊はクラップ級が多くを占めるが、それ以外にもサラミス改級、マゼラン改級も含まれている。一年戦争中に見られたように、旧来の艦にMS運用能力を付与しただけではない。

 一年戦争以降、異星人からの侵略が明確に認知されてから、旧来のサラミス級とマゼラン級を始めとした艦艇はあまりにも脆すぎると問題視されていた。

 

 一年戦争初期の一週間戦争においてMSとはいえ核弾頭を使われて轟沈されたのはまだしも、それ以降も艦橋や動力を狙われるとMS相手でも簡単に沈む。

 そりゃもうポンポン沈む。装甲が紙で出来ているのと言いたくなるくらい脆い。一年戦争に限っても、ジオングともなれば指のメガ粒子砲でサラミス級に大穴を開けて秒殺である。

 

 MSや戦闘機とは違って艦艇は一隻沈むだけスペシャリスト達が数百人は死ぬ。いくら人口の多い地球連邦といえども、人間は畑から採れる野菜ではないし、軍人として教育するのに必要な時間と費用を考えれば、MS以上に貴重な存在と言い換えてもいい。

 ましてやこれから更に未知の異星人や異世界人、異次元人、異種族の侵略との戦闘の可能性が認められた以上、実戦経験のある人材となれば安易に失われてはならない。

 

 その考えから現在、主力に据えられているクラップ級やラー・カイラム級、またアレキサンドリア級などには全方位ビームバリアーないしはEフィールドが標準装備されている。

 旧式のサラミス級、マゼラン級、更には新しいバージョンの同級にもビームバリアーが装備され、どうぞ狙ってくださいと言わんばかりの艦橋をあっさりと破壊されて、艦長や操舵手、通信士などが纏めて死亡という事態を最大限避ける措置が施されている。

 

 ただ現在とこれからの戦闘の状況を考慮すれば、サラミス級やマゼラン級はどうしても設計の古さから新たな製造は予定されておらず、残った艦は宇宙パトロールへの払い下げや盾や囮代わりのオートメーション艦としての運用が予定されている。

 そんな時代の潮流に置いて行かれる定めにある旧き艦艇達にとって、今回の攻略戦は残された数少ない活躍の場であった。

 

 さてそうしてムバラク第一艦隊とエイノー第二艦隊、第三艦隊と銀列連艦隊の間で戦火が激しくなる中、スペースノア級ハガネを筆頭に敵旗艦キング・オブ・ベガを目指すDCも自慢の機動兵器部隊を展開して、何重もの壁を形成しているベガ獣や鎧獣士、戦闘ロボを突き破るべく爆発的な突破力を披露しつつあった。

 まず新たにDCに加わった元ティターンズの人員で構成されるキュクロープスのトーマス・シュレーダー大佐は、サラミス改級イズミールからスペースノア級シロガネへと艦長の席を移していた。

 

 ではこれまでシロガネの艦長の椅子を預かっていたモンテニャッコはというと、彼はある機体に乗り込んでシロガネの広大な甲板の上に居た。

 モンテニャッコが乗り込んでいるのは、全高六十メートル近いスーパーロボット(?)で、所長謹製の究極ロボ(だといいなあとは本人談)ヴァルシオーの量産機ヴァルシオーマ・タイプCFである。

 

 ヘイデスの知らぬところで、ヴァルシオーが言い訳のしようもないヴァルシオン系列機と分かるデザインとなったように、ヴァルシオーの量産型であるヴァルシオーマも系列機と一目でわかるデザインだ。

 ヴァルシオーマのバリエーション機として、宇宙空間での運用と射撃戦に特化させたタイプCFも、スパロボOGと漫画作品を出自とするヴァルシオン改・タイプCFを彷彿とさせるデザインになっている。これも収斂進化のようなものか。

 

 ヴァルシオーが王を思わせる威厳と力強さ兼ね備えていたのに対し、ヴァルシオーマ・タイプCFはより現実的な兵器然としたデザインで、知的生命体に対する視覚効果を意識した装飾が廃止され、開発者の所長でもなければ扱えない複数の動力も減らされている。

 スーパーロボット用のDエクストラクターと運用実績が十分に蓄積された縮退炉を積んでおり、ヴァルシオーと比較すれば流石に劣るが、それでも機動兵器の中でも上位に位置する大パワーを誇る。

 追加されたバーニアとスラスターにより鈍重そうな見た目を裏切る高速機でもある。だが、やはり本領は大出力砲撃にあるだろう。

 

「まずは太陽系から消えてもらおうか。クロスマッシャー!!」

 

 タイプCFが胸部の前で合わせた両掌の中心にある菱形のクリスタル状パーツからエネルギーが放出され、展開した胸部装甲の奥にある砲口からもエネルギーが溢れ出し始める。

 発射までに若干の時間が掛かるが、更に出力を増幅する工程を踏んだクロスマッシャーはスーパーロボットの必殺技と称してもおかしくない破壊力だ。

 

 遠方の敵機を目指してぐんぐんと伸びて行く螺旋を纏うエネルギーの奔流は、射線上に無数の爆発を生み出していった。モンテニャッコのCFが開けた穴を更に広げるべく、シロガネに所属を移したマーフィー小隊(ブラック・オター小隊)が勢いよく突っ込んでいく。

 小隊長マーフィー、エリアルド、カール、エイプリルの四名が戦場に出ており、搭乗機は全員がTR-6クインリィ・フルアーマーとなっている。

 

 四名共に預けられた機体の性能の凄まじさを理解しているが、周囲を飛び交う味方を見ると世界の広さとこれほどの力が求められる戦場の地獄を否応なく理解させられる。

 クインリィの上位にあたるインレ形態ともなれば原典では戦略級兵器と称される化け物だが、クロスオーバー時空であるこの世界では同等以上の化け物がゴロゴロと転がっているからだ。マジンカイザーとか真ゲッターロボとか。

 

 この時、マーフィー小隊に合流する機影があった。サイコ・インレを任されたフォウとアムロからHi-νガンダムを借り受けたゼロ、クワトロからナイチンゲールを預けられたレイラというティターンズ関係者組である。

 二人にこの機体が任されたのは、Hi-νガンダムとナイチンゲールはまだアムロ達が乗って実戦に投入していない為、パイロットの癖がついていないニュートラルな状態であった事と、予備機としてはνガンダムとサザビーでも十分すぎるという理由だ。

 

「マーフィー大尉、ゼロ・ムラサメ、レイラ・レイモンド、フォウ・ムラサメ、これより指揮下に入ります」

 

 代表してゼロがマーフィーに通信を繋げた。事前に顔合わせは済ませてあるが、改めて指揮系統と所属を明確にするのは必要だろう。

 

「ああ、歓迎する。三人共、腕前の確かさは分かっているからな。相当に厳しい敵の数と質だが、地球も本気だ。それにDCと共に戦うなら負ける気はしない。だから目指すのはこの戦いに勝って、全員が生き残る事だ。いいな?」

 

 ゼロ達の返事がなんだったかは語るまでもないだろう。MSの枠に収めてもいいのか、疑わしい新マーフィー小隊の戦力は並みのMS百機や二百機どころではないかもしれない。

 またマーフィー小隊ばかりでなく元からシロガネ所属のユウ・カジマとライラ・ミラ・ライラも新たな機体と共に月面を飛んでいる。

 これまで次期主力量産機を目指して開発されたヒュッケバインMk-Ⅱを扱っていた二人は、再びMSを乗機としていた。

 

 ユウが乗るのはアナハイムがデルタプラスをベースに、実験機として開発したガンダムデルタカイ。技術検証を行い、効果的な改良点を見出す為の実験機であるが、攻撃能力に特化した設計が加えられた事により、実戦に即時投入可能なスペックを持つ機体である。

 なのだが、その話が通じるのは精々、本大戦の初期から中期まで。極端な機体の高性能化と更なる馬鹿火力特化した現在では、ゲシュペンストMk-Ⅲに使われているMS用縮退炉に換装されて、フレームからアビオニクスから徹底的に高性能化が図られている。

 量産を前提としないワンオフ機は盛れば盛るほどよい、という風潮がこの時期の技術者にあったのは事実である。

 

 基本スペックが劇的に上がったデルタカイであるが、この機体の最大の特徴として挙げられるのは一般兵に疑似的にニュータイプ能力を付与するサイコミュシステム『ナイトロ』が搭載されている事だ。

 疑似的にニュータイプ能力を付与する、なんとも魅力的な文言だが、ガンダムに限らずこの手のシステムにリスクがないわけがない。

 

 ナイトロにおいてはシステムを起動する毎にパイロットの脳内を書き換え、システムに最適化した強化人間へと作り変えるとんでもない代物だ。この影響によって、パイロットの人格が攻撃的かつ不安定なものへと豹変する危険性がある。

 アナハイムと連邦の膿み出しも兼ねて発掘され、DC・サナリィ・連邦の技術者他が共同研究所に持ち込まれた際には、開発者に学習能力がない、ロボットアニメの悪いお約束のようなシステム、パイロットを犠牲にしないとろくなものが作れないと宣言しているようなもの、悪趣味、リスクとリターンが釣り合っていないと評価は散々だ。

 

 かつてEXAMシステムに関わったアルフ・カムラ他、ムラサメ研究所、オーガスタ研究所の人員を招集し、ユウ・カジマがかつてEXAMを使いこなした実績とシステムに干渉される事への耐性と適応力が注目された。

 優秀なパイロット支援システムとされるF91のバイオコンピューターの存在もあり、現在、デルタカイに搭載されたナイトロはパイロットの思考を読み取って適切な疑似ニュータイプ能力の付与を行うものに仕上がっている。

 

 魔改造を施されたナイトロを積み、基本性能を大幅に底上げされたデルタカイの武装はというとロング・メガ・バスターや60mmバルカン、ビームサーベルなどは変わりなく、代わりにプロト・フィン・ファンネルに代わり、ロングレンジ・フィン・ファンネル二基を装備している。

 機体の全高にも匹敵する巨大なロングレンジ・フィン・ファンネルは、ファンネルやビットで問題視されている火力不足を補うべく、本来はνガンダム用に開発の進められていた装備である。

 それがRνガンダムとなったことで、火力不足どころか過剰の域に到達した為、データ取りも兼ねてデルタカイへとお鉢が回ってきたわけだ。

 

 そしてユウのデルタカイに続くライラもヒュッケバインMk-Ⅱからリガズィードへと乗り換えている。

 これはアムロ主導でZプラスとは別のベクトルでZガンダムを目指した機体であり、現実的なモデルをリ・ガズィとするならこちらは理想形であるとして、アムロ直々にリガズィードと名付けられた機体である。

 既にDCにはリ・ガズィ・カスタムが納入されているが、こちらはゼファーの予備機として保管されている為、ライラの新たな機体としてリガズィードに白羽の矢が立ったわけだ。

 縮退炉の搭載、バイオコンピューターとそれを補助するサイコフレームやバイオセンサー、ダイレクトバイオリンクセンサー、サイ・コンバーター諸々が導入され、デルタカイ同様に原型機から格段の性能向上が図られているのは言うまでもない。

 

 このほか、ガンダムMk-Ⅴを宇宙での愛機としていたブラン・ブルダークは、ZZ級の性能を誇ると目されるシータプラスを任されていた。

 アッシマーやアンクシャとは異なる可変機構だがMS一個中隊分の戦力を持つと言われている高性能機は、ブランのパイロットとしての魂を燃やすのに十分な代物だった。

 

 アルビオン隊も戦力の強化が図られている。既にアデルとキースはZZ系列のジークフリートに乗り換えて久しく、コウもデンドロビウムの発展形であるデルフィニウムを受領している。

 残るはシルヴァ・バレトのバニング、ガンダムMk-Ⅳのベイト、ガンダムMk-Ⅲのモンシアであるが、この三名も新たな機体を受領して練達の腕前を振るっている。

 

 ベイト、モンシアはガンダムMk-Ⅲとイグレイ、ハーピュレイといった同機のバリエーション機のデータを統合し、更にブラッシュアップを図った機体である。開発にはカミーユの母ヒルダ・ビダンが関わり、グリプス2から解放された父フランクリン・ビダンも加わっている。

 断崖絶壁の上に立たされているような立場のフランクリンとヒルダは、元々仕事の虫だった事もあるが、息子であるカミーユが今も戦場に立っている事実に衝撃を受けて、一刻も早く戦争が終わるようにと少しでも強力な機体を開発しようと心血を注いだ。

 

 そうして完成し、所長やテム・レイなどがブラッシュアップして完成度を高めたのがガンダムテルティウム。元はガンダムビルドダイバーズRe:RISEに出演したガンプラであり、この世界では珍しいガンプラを原典とする機体だ。

 バランスよく高レベルで纏められた基本スペックに加え、多くのオプションに対応する汎用性を兼ね備えた本機はベーシックなビームライフル、ビームサーベル、バルカンに加え、ガンダムMk-Ⅲから引き継いだビームキャノン以外にもハイパーバーストランスにフォールディングバーストランチャーと強力な武器を備え、現在の戦闘に十二分に耐えうると太鼓判が捺されている。

 

 そしてバニングはといえば詳細な経緯が不明のままに開発されたディジェSE-Rに乗っている。やはり詳細不明のSEシステムを始めとした革新的な機能を多数搭載した本機は、現在でもなお超高性能機と呼べる怪物MSであった。

 右手にビームライフル、左手に拡散バズーカ、腹部にハイメガ粒子砲を備えた本機は、アデルとキースのジークフリートから支援を受け、モンシアとベイトのテルティウムを率い、新生不死身の第四小隊として、先行する高速部隊が切り崩した戦線に勇ましく突撃している。

 

 艦隊の砲撃の中を突っ込んでゆく高速部隊はネオバードモードに変形したヒイロのウイングゼロ、ゼファーW0ライザー、トルネードパックを装備したクワトロのガイア・ギアα、コウのデルフィニウム、カミーユのZⅢ、リョウのGクルーザーといった可変機。

 更にマジンカイザー、真ゲッターロボ、ボルテスⅦ、コンバトラーV6、ライディーン、ファイナルダンクーガ、サイコ・ザマンダー、ザンボット3×3等々が構成している。

 ゲームでは移動力が低い傾向にあるスーパーロボットだが、設定を見ればどえらい速度で移動できるものなのだ。

 

 そして先頭を行くのはフリードスペイザーとドッキングしたグレンダイザー、それにひかるのダブルスペイザー、マリアのドリルスペイザー、ナイーダのゴスゴス改、モルスのベガ獣ジガジガとなる。

 ベガ星連合軍からすれば大敵中の大敵であるグレンダイザー、さらに裏切り者の親衛隊長モルスが居る事から自然と攻撃が殺到する。

 

 ミニフォー、ミディフォーの発射する稲妻状の破壊光線やミサイルの雨を掻い潜り、デュークは手元のコンソールを操作して、フリードスペイザーの旋回式連装砲から光子力ビームを発射し、そのまま砲塔ごとぐりぐりと動かして円盤の編隊を纏めて吹き飛ばした。

 

「このデューク・フリードを今さらその程度の攻撃で止められるものか!」

 

 ジンジン、コアコア、グビグビといったベガ系の敵機が迫り来るのに対し、フリードスペイザーの左右に突き出た翼の先にある円盤が上下に割れて、メガスピンソーサーが、更に出力を増したスーパーハンドビーム、ハイパースペースサンダーが連続して発射される。

 グレンダイザーとスペイザーの保有していた武装をよりスケールアップした武器は、次々と円盤獣の体を切り裂き、あるいは貫いて爆発させてゆく。

 

 敵からの濃密な攻撃がフリードスペイザーに届きそうな場面もあったが、それはピンポイントで展開された重力場が受け止めて、フリードスペイザーという巨大な的に命中させることも許さない。

 勇猛果敢に格闘戦を挑んできたキングゴリは、かつてグレンダイザーを追い込んだ実績を持つ強力な機体だ。量産タイプとはいえ素の能力の高さは変わらない。

 また大質量による接近戦はバリアを突破する有効な手段の一つであり、キングゴリを操縦する人工知能は適切な行動を取ったと言えなくもない。しかしフリードスペイザーの詳細なスペックも分からないまま接近したのは、かつてヘビーアームズを包囲したOZのMS部隊のように迂闊だった。

 

「なんの、スペイザークロー!」

 

 フリードスペイザーの機体下部に折り曲げられていた巨大なクローが展開し、ヴァル・ヴァロを思わせる巨大な二本爪がキングゴリの胴体を強烈に挟み込む。メリメリとキングゴリの機体の軋む音と共にキングゴリも苦痛の表情を浮かべるが、それも一瞬のことだった。

 オリジナルの機体はグレンダイザーの数々の攻撃を跳ねのける強固な装甲を持っていたが、仮にスペイザークローに挟まれたのがオリジナルであっても、同じように胴から上下にジョキン! とされたに違いない。

 

「まだだ! グラビトンランチャー、ランダムシュー!」

 

 フリードスペイザーの各所の装甲が開き、そこから覗いた砲身より黒紫色の重力場が発射される。更にはフリードスペイザーがドリルのように回転しながら進んで、不規則な射線を描く重力場を避けきれなかったミニフォーや円盤獣達が次々と押しつぶされてゆく。

 

「待っていろ、ベガ大王。今、グレンダイザーが行くぞ!」

 

 そう吠え猛るデュークの視界に、DCの動きを読んでいたかのように、超ベガトロンビーム砲のチャージを終えたキング・オブ・ベガの姿が映る。

 

「撃てい!!」

 

 ベガ大王の合図と同時に、猛烈な勢いで直進するDC艦隊に向けて、最大出力の超ベガトロンビーム砲の奔流が襲い掛かった。

 

<続>

■シータプラスを入手しました。

■リガズィードを入手しました。

■ガンダムデルタカイを入手しました。

■ガンダムテルティウムを入手しました。

■ディジェSE-Rを入手しました。

■ファドラーンを入手しました。

■ヴァルシオーマ・タイプCFを入手しました。

 

※本大戦後期においてプレイヤー部隊以外に侵略者の皆さんが戦う地球連邦軍の主なラインナップ

・ゲシュペンストMk-Ⅲ

・バルゴラCS

・量産型F91

・ジャベリン

・リゼル

・トーラス

・ビルゴ/ビルゴⅡ

・量産型グレートマジンガー

・量産型ゲッタードラゴン/ライガー/ポセイドン(変形機能なし)

・グルンガスト弐式

・ガンダムデュラクシール

・ギル・ベイダー

・ケーニッヒウルフ

・ブレードライガー

・ライトニングサイクス

・ディバイソン

・エレファンダー

・ジェノザウラー

・サラマンダー

・ゴジュラスMk-Ⅱ量産型

 

作者の個人的なイメージとしては今後開発されるのは

 

●サナリィ  → F97の量産型であるフリントやガンイージ、ゾロアットなど

●アナハイム → ドハディ、ガウッサといったマン・マシーンなど

●地球連邦軍 → ブグ、フリーダムといったGセイバー系

●プルート財閥 → スパロボオリジナルやアナザーガンダム、Gジェネオリジナル系

 

かなあと思います。GジェネDSのディー・トリエルやトライア、センチュリオシリーズも出したかったなと今になって思います。




流石に書く予定はありませんが、クワトロもといシャアの息子の名前はラズロ、ラズロの娘でありシャアにとって孫娘となる女性はムジカと名付けられ、おじいちゃん子のぼくっ娘になります。ラズロもムジカも元ネタありです。お分かりになる方はどのくらいいらっしゃるかな。

ドズルの台詞はギレンの野望から引用しました。


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第百五話 贋作が真作に劣るとは限らない

ベガ系の敵キャラクターは気力130からスタート。130が最低値として固定。129以下にはならない。
ベガ大王は気力150から。また最低値150の為、149以下にはならない。



 DC艦隊に狙いを定めた超ベガトロンビーム砲の破壊力は、射程内の艦艇の防御フィールドを突破して、大打撃を与える威力を持った凄まじいものだった。

 多くの銀河支配を目論む勢力のひしめく天の川銀河において、一大勢力として知られるベガ星連合軍最強の戦艦として相応しい破壊力である。

 直撃を受ければソーラーファルコンやピースミリオン、タルタロス、ガンドールなどの巨大艦でもあっても無事では済まなかっただろう。当たり所が悪ければ、轟沈していたところだ。

 

 もちろんそれを許すDCではない。艦隊の前面にフェブルウスが飛び出て、背部ユニットからSPIGOTを展開。五角形に配置したSPIGOTに膨大な次元力を注ぎ込み、巨大な空間の歪み──Dフォルトを作り出す。

 スフィア搭載機四機分の出力を持つフェブルウスにより作り出されたDフォルトは、遠目にもハッキリと目視できるほど空間を歪めている。

 ちょうどフェブルウスの背後に陣取っていたタルタロスの司令部で、パオロが迅速な指示を飛ばす。事前にこうなると分かっていたのに加え、彼自身の豊富な経験によって培われた状況判断能力の賜物だ。

 

「フェブルウスとタルタロスのエネルギーラインを連結! こちらのエネルギーの使用制限はかけるな! フェブルウスの要求する限りのエネルギーを供給するのだ!」

 

 同じく次元力を扱うタルタロスからもエネルギーの供給が成されて、Dフォルトは更に強度を高める。そればかりか何重にも新たな歪んだ空間の膜が作り出され、防御性能を格段に上昇させてゆく。

 それこそバトルフロンティアのマクロス・キャノンを防いだ、バジュラ戦艦のフォールド・バリアをも凌駕しよう。

 

「そう簡単に上手くは行かないぞ!」

 

 フェブルウスのコックピットの中でシュメシが叫び、その隣で精神力と気力を振り絞って次元力に変換するヘマーも雄叫びを上げる。

 

「やあああああ!」

 

 空間に作用する効果を持たない純粋な破壊エネルギーである超ベガトロンビーム砲は、Dフォルトによって上方へと射線を歪められて、その先の虚空へと伸びて行く。

 数秒間に渡って続いた超ベガトロンビーム砲の放射が止んだ後、シュメシはフェブルウスのエネルギーの消費量に目をやりながら、状況の変化の有無を一瞬で把握する。

 

「ゼファーとヒイロさんからの連絡の通りになったね!」

 

 ゼファーW0ライザーとウイングゼロに搭載されたゼロシステムの予測はDCだけでなく、ムバラクやエイノーら艦隊首脳部にも伝えられており、開戦初期の段階で銀列連側が大火力でDCを壊滅させるべく動くとして備えられていた。

 時間の許す限り強化の施されたキング・オブ・ベガの超ベガトロンビーム砲の威力は凄まじく、スペースコロニー程度なら簡単に崩壊させられる。

 コロニーレーザーやバルジ砲、リーブラの主砲にも匹敵する威力のソレを防いだ代償に、フェブルウスの保有するエネルギーは四分の一ほど減っている。それも瞬く間に回復してゆくのだから、この機体も大概である。

 

「エネルギーが戻ったらすぐに私達も皆に続こう。ベガ星連合軍が中核だけど、他の勢力もかなりの戦力を送り込んできているから」

 

 ヘマーの瞳が映し出したのは主砲発射後、急速に舵を切るキング・オブ・ベガの巨大な姿だった。あまりに急な動きは艦体にも搭乗員にもかなりの負担を強いるだろう。それでもなおそうした理由を双子とフェブルウスは察していた。

 対するキング・オブ・ベガのブリッジでは、ベガ大王がブリッジクルーに怒声を飛ばしていた。必殺を期した砲撃を避けられた怒りではない。配下達の次の事態に対する想定の甘さに対する怒りがあった。

 

「舵を切れい! 急速回避!! 動け! この隙を見逃すほど甘い連中が敵だと思うなっ!!」

 

 命令に対する返答する暇すら惜しみ、キング・オブ・ベガの舵を預かる兵士は最高の反応速度で答え、キング・オブ・ベガを傾けた。ベガ大王からすればもどかしく感じられる速度だ。

 その直後、あるいは一瞬にも満たない時間の後、強大なエネルギーの奔流が次々とキング・オブ・ベガが居た空間を貫き、余波が艦の表面を灼熱させ、一部を融解させる。

 

「やりおる。そうでなくてはこうまで我が軍が追い詰められるわけもないが!」

 

 ニヤリと凶悪に笑むベガ大王は先程の攻撃の主であるウイングゼロ、ゼファーW0ライザー、Rνガンタンクなどなどの強敵達を睨む。

 主砲発射直後の艦体に負担のかかった状態を狙いすました大火力攻撃には、さしものベガ大王も背筋をヒヤリとさせたが、これくらいは想定の内であった。

 彼は生涯の中で最も心を燃やし、この闘争を楽しんでさえいた。背水の陣となったこの戦いの中で、ベガ大王はその覇王としての素質を急速に開花させている。

 攻撃を受けたキング・オブ・ベガをカバーするべく、マザーシップ並びにマザーバーン艦隊と機動兵器部隊が布陣を変える中、再編成の隙を突くべく可変機を中心とする高速機動兵器部隊が勇猛果敢に挑みかかる。

 

 カミーユのZⅢ、クワトロのガイア・ギアα、タクナのZプルトニウス、リョウのGクルーザー、ユウのデルタカイ、ライラのリガズィード、ブランのGフォートレス形態のシータプラス……などを含む部隊だ。

 そうして月の空の戦いが新たな様相を呈する中で、低重力の砂の大地を疾駆する鋼の生命体達の姿があった。一歩ごとに巨大な足跡を刻み、多量の月の砂が巻き上げられている。

 周囲に乱舞する爆発の光の中を浴びて輝く月の砂のきらめきは、しかし誰にも省みられる事はなかった。

 

 スペースゴジュラスMk-Ⅱ量産型部隊からの砲撃支援を受け、砂塵を巻き上げて全力疾走するのはスペースジェノザウラー部隊だ。

 デスザウラーの開発データを流用し、小型・量産可能な機体として開発されたジェノザウラーは例によって原作の倍の大きさとなっており、この世界では全高23.4m、全長46mを誇る。

 

 爪・牙・尾を用いた高い格闘戦能力に加え、背負ったロングレンジパルスレーザーライフル二丁は至近距離ならば大抵のバリアを貫通する威力を持ち、口部の集束荷電粒子砲に至っては量産型スーパーロボットでさえ蒸発しかねない超威力だ。

 その高性能ぶりから、モビルゾイドではなくゾイドとして登録されている機体だ。例によって操縦難度は高いが、それでも扱えるパイロットはそれなりに居るのが地球連邦軍の強みである。なにしろ地球人は機動兵器に対する適正に関しては、宇宙有数の戦闘種族なので。

 

 ゴジュラスもだが、どうも肉食恐竜タイプは宇宙空間への改修に適応性が高いようで、ジェノザウラーは開発当時から宇宙用ゾイドの候補機としてピックアップされていた。

 そうしてゾイドの宇宙戦闘用のデータ集めに結成されていたスペースジェノザウラー部隊が本作戦に投入され、陸戦タイプのベガ獣や獣士、マグマ獣、戦闘ロボといった敵部隊を相手に凶暴な叫びを上げて、荷電粒子砲の洗礼を浴びせ始める。

 

 今回の戦いにおいてベガ星連合軍が総力を投入したのは言うまでもないが、ボアザンからは攻撃司令艦ザルタンに搭乗したド・ベルガンが鎧獣士、獣士、ボアザン円盤を率いて参戦し、キャンベルからは女帝ジャネラの命令を受けたダンゲルがマグマ獣ダークロンに乗り込み、グレイドン艦隊とマグマ獣の大部隊を引き連れて参戦している。

 この他にもヘルマット将軍率いるムゲ艦隊、バームからはオルバンの命令を受けたゲロイヤー率いるガルンロール艦隊と多数の戦闘ロボ、そしてガイゾックもまた姿を現していた。

 数を揃えたバンドックとメカ・ブーストに加えて、ガルーダが乗り込むグレイドンとマグマ獣の混合部隊の姿もある。

 

 地球侵略を目論む異星人勢力の集結と言っていい。オルバンとしては地球を制圧した後にこの戦力を持って、ラオデキヤとユーゼスに弓を引く構想を描いているが、そうそう上手く行くものかどうか。

 コンバトラーチームはガルーダとダンゲルを、ボルテスチームがド・ベルガンを、ダイモスチームとリヒテル達がゲロイヤーを、獣戦機隊とシャピロがヘルマット艦隊と因縁のある者同士で戦いを繰り広げる中、神ファミリーもまたガイゾックを相手に戦いの幕を上げんとしていた。

 

 極東支部を巡る戦いでザンボット3×3の初陣に際し、切り札となるヘルダインとデスカインを倒されたガイゾックだが、コンピュータードール8号の意向によって、大幅な戦力の強化が施されていた。

 ガイゾックの真の支配者であり神とも言われるコンピュータードール8号からすれば、太陽系で活動している知的生命体は、全て抹殺するべき悪の生命体なのだ。

 この戦場で共闘している者達もいずれは滅ぼす予定なのである。その為には切り札として封印していたデスカインらを上回る機動兵器の開発は急務であり、今回の戦闘でその成果がお披露目となる。

 

「ふふ、ぐふふふふ、ザ~ンボットォ、今度こそ貴様らを殺じでやるぅ。お前達はガイゾックの神の逆鱗に触れだのだああああ」

 

 大きく内装の変わったバンドックのブリッジで、ブッチャーは大きく変わった姿のまま、モニターの向こうのザンボット3×3に殺意を隠さない視線を向けている。

 腰から下を指揮台に埋め込み、こめかみや首筋の他、体のあちこちから伸びたチューブがブリッジの各所と彼の神経を繋げている。

 ブッチャーは元々サイボーグへと改造されていたのだが、前回の敗北を切っ掛けに更なる改造の手が加えられて、もはや自由に出歩くこともままならず、バンドックのパーツの一つへと改造されていた。

 

 ギッザーやバレター、ズブター達は更に凄惨で、脳に手を加えられて自由意思を失い、ブッチャーとコンピュータードール8号の命令を淡々とこなす生体部品と化している。

 勝平、宇宙太、恵子だけでなくキング・ビアルに乗り込んでいる神ファミリーも、モニターに映し出されたブッチャーの壮絶な姿と目に見えないのが不思議なほどの殺意と憎悪を前に、音を立てて息を呑む。

 だが、委縮した皆を鼓舞するように勝平が炎の勢いで言い返す。

 

「お前にとっちゃ神でも俺達からすりゃ、ただの侵略者だ! ブッチャー、お前がどんな姿になろうと俺達とザンボット3×3、それに地球人は負けやしないぞ!」

 

「ぐ、ぐふ、ぐふふふ、た、確かにお前達は強い。死の騎士さえも倒したその力は認めざるを得ん。だが、だからこそガイゾックの神は新たな力をわしにお与えくださったのだ! 見るがいい、そして恐れよ、死の騎士を超える最強の戦士! 白騎士キルゼインを!!」

 

 既に展開していたヘルダインとデスカインの列を割って、バンドックから出撃した新たな騎士が姿を見せる。いっそ神々しいまでの純白の甲冑姿のメカ・ブーストは、確かに白騎士と呼ぶに相応しい。

 デスカインとヘルダインの正統な後継機を思わせるデザインで、下半身が足の代わりにキャタピラを備えた馬であるのも同じだが、盾は備えておらず、その代わり両手に大剣を握っている。

 全長はヘルダインらの倍、100mに達しており、その巨体は見掛け倒しではなさそうだ。

 

「ふはははは、このキルゼインの戦闘能力はヘルダインとデスカインとは比べ物にならん。そしてこのわしが自らキルゼインの頭脳となって、貴様らを八つ裂きにしてやるぅうううう!」

 

 そう、この時、ブッチャーはバンドックのブリッジからキルゼインの頭部へと移動しており、キルゼインとある意味では一心同体の状態になっていたのだ。

 機体越しにも感じられるブッチャーの気迫と憎悪は、これまでの彼にあった遊びを消し去り、より凶悪な敵が誕生したのだと勝平達に理解させた。

 不幸中の幸いだったのはガイゾックからの集中攻撃を受ける勝平達を支援する為に、アルビオン隊とウルトラザウルス隊が動いたことだった。

 バニングはデルフィニウムで先行しているコウを除いた面々に、神ファミリー支援の為の命令を下し、新たな愛機ディジェSE-Rで真っ先に切り込んでゆく。

 

「全員、敵機のデータは頭に入っているな? 特にあの赤いのと青い機体は厄介だ。白いデカブツを勝平達が相手をしてくれている間に、俺達で回りのメカ・ブーストを片付けるぞ」

 

「へっへへへ、俺の新しいガンダムちゃんの力を奴らに見せつけてやりますよ、バニング大尉」

 

 若干、浮かれている調子のモンシアだが、一年戦争から今日に至るまでMSに乗って戦い続け、生き残ってきたベテランだ。言動とは裏腹に油断や慢心はない。

 それでも流れ弾や理不尽な不運によって、呆気なく死んでしまうのが戦場なのだ。油断などしようものならなおさらである。

 モンシアと同じくガンダムテルティウムを預けられたベイトは、コウを抜いた五人での新しいフォーメーションを確認しながら、こちらに向けてキャタピラを勢いよく回転させて迫ってくるヘルダインとデスカインに神経を注ぐ。

 

「50m級の大物でスーパーロボット並みの敵か。こいつぁ、幸先が良いんだか、悪いんだか」

 

 それでも彼は機体の手にハイパーバーストランスを握らせ、いつでもかかってこいと言わんばかりに笑う。先行する三機を援護する為、アデルとキースのジークフリートが放ったダブルビームライフルがメカ・ブースト達の動きを牽制し始める。

 メカ・ブーストも強力な機動兵器だが、その中でもある程度の数を揃えられたデスカインとヘルダインも並みならぬ強敵だ。言ってしまえばザンボット3という作品における最強のガイゾックのメカなのだから。

 

 ここで頼もしい援軍として加わったのが、バン・バ・チュンのヴァルシオーマ・タイプGFとバンとフィーネ、ジークのブレードライガーBS、アーバインのコマンドウルフAS(アーバインスペシャル)、そしてウルトラザウルスだ。

 ブレードライガーBSとコマンドウルフASの双方とも宇宙空間での戦闘に対応した改修が施され、機体そのものは月面や宇宙での戦闘に支障がない状態だ。

 

 コマンドウルフASはゾイドの中でも高い機動力に加え、ゴジュラス用のロングレンジライフルによる高火力を持ち、ブレードライガーBSはもはや語るまでもない超高性能ゾイドである。

 パイロット達に宇宙や月面での戦闘経験がほとんどないという問題はあっても、勝平達が頼もしさを覚えるのには十分な援軍だ。

 

 またバン・バ・チュンはモンテニャッコのタイプCFとは異なり、重力下での運用、特に陸戦に適した改修を施されたヴァルシオーマ・タイプGFを操りながら、バンとアーバインに指示を下す。

 ウルトラザウルスの艦長席こそムンベイに譲ったが、ウルトラザウルス隊の指揮権は今も彼にある。

 

 兵器然としたタイプCFと比べて、タイプGFはヴァルシオーに(もっと言えばヴァルシオンに)近い意匠が施されており、赤銅色の機体はヴァルシオーやヴァルシオンが王ならば、将軍と呼ぶのが相応しい重厚さと威圧感を持っている。

 手には大戦斧ディバイン・グレイブを持ち、クロスマッシャーやメガ・グラビトンウェーブといった武装は共通だが、背部にはジェットエンジンめいた大型ミサイル・ポッドを有するなど、タイプCFと比べれば原型機に近しいラインナップだ。

 

「バン君、アーバイン、二人はバンドックに接近し、アレを叩け。ガイゾックの中核はあれだ。ブッチャーがザンボットに執着している今、敵の本丸を叩く好機だ。バンドックの目は艦艇に向いている」

 

 バン・バ・チュンの言う通りであった。アルビオン、キング・ビアルがそれぞれ単独ならばバンドックは強固なバリアと合わせて、そこまで脅威を感じなかったろうが、二隻が揃い、更にウルトラザウルスにはグラビティカノンの使用に制限はあっても、360mmリニアキャノンを始めとした強力な火器がある。

 バンドックを操るコンピュータードール8号としては、これらの艦艇を警戒するのは当然である。

 

「おっし、分かったぜ。あの変な戦艦を沈めちまえば、ガイゾックは一気に叩けるんだよな?」

 

「向こうさんが拠点を作ってなけりゃな。それでも母艦を叩けば機動兵器は補給もままならなくなるってのは、確かだ」

 

「だったら俺達ですぐに落とそうぜ。それに他の奴らも雁首並べているんだ。まとめて片付けるのには絶好のチャンスだ」

 

「向こうのトップ連中は居ないみたいだが、幹部は揃っているからな。上手く行けば万々歳だ。やるだけやってみるか」

 

 アルビオン隊とウルトラザウルス隊の支援を受ける勝平達は、猛烈な勢いで襲い掛かってくるキルゼインとブッチャーを相手に、苦しい戦いを強いられていた。

 ブッチャーは血走った目のまま大剣を連続して繰り出し、ザンボット3×3を一刻も早くスクラップにするべく休まず攻撃を仕掛け続ける。

 

「ぬうあああああ、くたばれ、くたばれ、ザンボット3×3!!」

 

「く、この、前とはすっかりキャラが変わってやがらあ!」

 

 ザンボットザンバーで斬り結ぶ勝平も、ブッチャーの気迫とかつて未開の惑星で戦士として培った技量、キルゼインの性能の合わせ技を受けて操縦に余裕はない。

 ヘルダインとデスカインを圧倒したザンボット3×3を想定して開発されたキルゼインの性能は、推して知るべしだろう。いわばザクに対するジム、ジンに対するストライクダガーである。

 

「だからって、これまで土偶モドキの戦艦でふんぞり返っていた奴が、ずっと命懸けで戦い続けてきた俺達に敵うもんか!」

 

「しゃらくさい! わしがこれまでどれだけの文明を滅ぼしてきたと思っておる! わしは殺しのエキスパートじゃああ!!!」

 

 ザンボット3×3とキルゼイン、ひいては神ファミリーとアルビオン隊、ウルトラザウルス隊が激闘を繰り広げる中、銀列連側の戦力の中で厄介だったのがマキシンガル合金を用いた鎧獣士だった。

 マキシンガル合金の製造コストの問題から、天空剣を防ぐレベルの強度を誇るマキシンガル合金を用いられた鎧獣士の数は少なく、大部分の鎧獣士は量産性を優先した低精度のマキシンガル合金を用いられているのが不幸中の幸いだ。

 

 それでも現在の地球連邦軍の主力機動兵器では撃破に手間取るほどのレベルだが、この時、ド・ベルガンの指示を受けてエイノー艦隊の中枢を目指して進路を取る鎧獣士の部隊の前に立ちはだかったのは、ギメリアに乗るアイザム率いる部隊だった。

 ライザのコブラードとリヒテルのギメリア、バルバスのゾンネカイザーは、一矢とハレックらダイモスチームに同行して、オルバン麾下のバーム部隊を蹴散らしにかかっている。

 

「鎧獣士が来たぞ! 超電磁武器持ちを集めろ!」

 

「私達で動きを止めるぞ。攻撃は効かなくても牽制は出来る」

 

「ミサイル発射口やブースターを狙えば、通常の武器でもダメージは与えられるはずだ!」

 

「言うだけなら簡単なんだが、その分は数でカバーするしか……」

 

「精密射撃ならMDの得意技だろう。艦隊の護衛からどれだけこちらに回せる!?」

 

 鎧獣士の足を止めるべく、エイノー艦隊の量産型F91やジャベリンといった部隊のパイロット達が猛烈な集中砲火を浴びせ、鎧獣士対策に開発された超電磁武装持ちの機体が入れ替わり始める。

 それに例えマキシンガル合金の装甲は貫けなくても、内部の機器や生体構造に衝撃を伝えるなりすることはできる。ガンダムSEEDのPS装甲然り、単純に硬いだけの装甲対策としてはスタンダードな手法である。

 

 鎧獣士部隊がそうして足止めを食らっている中、オリジナルと遜色のない性能を持つゾンネカイザー数体が参戦し、超弾性金属によるほぼ無敵の防御性能を頼みに、鎧獣士達とがっぷり四つ組み合って、足止めの補助を行う。

 開発者であるアイザムが率いる超弾性金属を使用した、極めて強力なメカ戦士達だ。人工知能がパイロットを務める無人機部隊だが、地球側と合同で開発した新型人工知能の能力はネームドエース並みに極めて高いレベルに達している。

 

「我々も力を貸すぞ、地球の戦士達よ。このアイザムが作り出した超弾性金属とマキシンガル合金とやら、どちらが上かな?」

 

 ギメリアのコックピットの中のアイザムは、自らの開発した超弾性金属への自信とマキシンガル合金への対抗意識に、ギラギラと瞳を輝かせていた。

 ゾンネカイザーが鎧獣士達の足止めを行う姿に、ザルタンに乗り込んで麾下の部隊の指揮を執っていたド・ベルガンが気付き、自らの手掛けた鎧獣士と性能を競い合うかのような状況に眦を険しくする。

 

 もちろんボアザンにとって最大の敵はボルテスVだが、技術者としての一面を持つド・ベルガンとしては他勢力の天才と呼ばれる技術者達も大いなる敵だ。

 その中の一人であるアイザムとこうしてお互いの兵器が戦う機会が訪れれば、彼の中で敵対心と功名心が鎌首を上げるのは必然と言える。

 

「鎧獣士隊、二番隊から五番隊までは裏切り者のバーム星人共を始末せよ。地球人の艦隊の相手はその後だ」

 

 自らもマキシンガル合金の鎧に身を包むド・ベルガンが瞳に自信の光を輝かせていられたのは、対鎧獣士用に超電磁ボールをベースに開発された換装武器の部隊によって、鎧獣士達が次々と討ち取られるまでだった。

 第一艦隊、第二艦隊、DC艦隊が破竹の勢いで進軍する中、銀列連艦隊の上を取った第三艦隊も艦隊司令ヴァルダー・ファーキル将軍自ら先頭に立ち、機動兵器部隊を発進させて苛烈な攻撃を加え出している。

 

 艦隊戦から機動兵器の活躍する乱戦に移る中、DCの高速部隊はベガ星連合軍の中核に達しつつあった。

 Zプルトニウス、ウイングゼロ、シータプラスやGクルーザーといった地球自慢の可変機達が暴れる中、カミーユのZⅢがキング・オブ・ベガを守る円盤の大編隊へ進路を取る。

 

「戦いを止められないなら、俺達の手で終わらせる。光の翼のフルパワーで!」

 

 ウェイブライダー形態のZⅢの翼の一部が展開し、縮退炉の生み出す膨大なエネルギーが巨大な翼の形で放出される。

 青白い光の翼は一翼あたり全長一キロメートルにも達し、膨大な電磁波の嵐を巻き起こしながら百を超える円盤の大編隊とベガ獣、円盤獣へと羽ばたきを重ねて行く。

 

 月の空を飛ぶ青い光の鳥の翼に触れれば、円盤獣もベガ獣の区別なく真っ二つに切り裂かれ、バラバラと鋼鉄の死骸を撒き散らして行く。

 なんとしてもあの死を運ぶ鳥を射落とさんと破壊光線やミサイルが殺到するが、光の翼が羽ばたきと同時に巻き起こす電磁波の嵐によってミサイルは内部の電子機器が誤作動を起こして誤爆し、破壊光線もまた強力な磁場の歪みによって射線がねじ曲がりあらぬ方へ伸びて行く。

 

 止める術も射落とす術もなくZⅢの死の飛翔の前に大混乱に陥るベガ星連合軍の防衛線に赤い彗星の如きもう一羽の鳥が襲い掛かる。

 マクロスフロンティアのVF-25のトルネードパックを再現した装備を纏った、クワトロのガイア・ギアαだ。

 内容としてはウェイブライダー形態の背面に旋回式連装ビーム砲、両翼外装ブロックにマイクロミサイルポッド、両翼端のエンジンブロックにもマイクロミサイルポッド二基を追加している。

 オリジナルと異なるのは翼下に懸架する大型マイクロミサイルポッドの代わりに、サザビータイプのファンネルラックが懸架されており、ラック一つに三基のファンネルが収納され、二つ合計六基のファンネルを装備している。

 

「凄まじい闘志と戦意だ。私でさえこれだけ感じるとなれば、カミーユはより一層強く受け取っているか。……元から手を抜くつもりなどないが、容赦を捨てさせてもらおう」

 

 フル・サイコフレームがクワトロと機体を繋ぎ、機体にマウントしたビームライフルと旋回式連装ビーム砲、各ミサイル・ポッドが一斉にロックオンを終える。

 サイコ・ロックオンとでも言うべき思惟によるロックオンは、クワトロの拡大した意識によって刹那の間に敵機を捕捉していた。

 そこへ更に六基のファンネルが加わる。小型化に成功したジェネレーターを内蔵したファンネルの威力は、並みのMSのビームライフル以上だ。

 

「いけ、ファンネル!」

 

白煙を噴いて乱舞するミサイル群は一見、無秩序に発射されたように見えてクワトロの練達の技量と経験、鋭敏な感覚によって全てが命中コースに乗る。

 敵機の回避機動すら読み切った神技は宇宙広しと言えど、同じ事が出来るパイロットがどれほどいるものか。

 さらにそこへファンネルも加わり、全てがクワトロの掌の上のようにして、ベガ星連合軍の部隊は次々と被弾して撃墜されるか、損傷を受けて戦闘能力を大きく喪失して行く。

 

 MS部隊が華々しい活躍を見せる中、スーパーロボット部隊もまた“スーパーロボット”という呼称に相応しい力を見せつけていた。

 ひびき洸のライディーン、晶と麗のサイコザマンダーがゴッドバード形態から人型へ戻り、三人の意識が超能力によって繋がり、思念を増幅させる。

 

「行くぞ、晶、麗! 三人の思念を重ねるんだ」

 

「わ、私はいつでも!」

 

 決戦の中にあって緊張に表情を強張らせる晶は、それでも好ましく思う少年と頼りがいのある仲間達と共に肩を並べる事で、恐怖はほんのわずかしかない。

 一方で麗はというと、元々の性格もあってか晶ほどに表情を変えていない。巻き込まれた晶と異なり、予知能力を持ち、自ら戦いの中に飛び込む未来を覚悟していた麗の違いだろう。まあ、既に晶も歴戦の猛者と呼べるだけの戦いを経験しているのだが。

 

「ライディーンに合わせるわ」

 

「よし、行くぞお! 念動光線ゴォオッドアルファァアアアア、ラアァアアアーーーイ!!」

 

「ラ、ラーーイ!!」

 

「ラーーーーーーイイイイ!!」

 

 洸の叫びに晶と麗が続き、ライディーンを中心に緑の光が溢れ出し、三体のスーパーロボットから光り輝く竜巻となったゴッドアルファが襲い掛かり、多くの敵機を竜巻の中に巻き込んで爆発を引き起こして行く。

 まだ月のライディーンこそないものの、ライディーンの科学的再現によるコピー機、サイコザマンダーは晶の超能力の素質に応えて、十分にスーパーロボットとしての力を発揮している。

 

 グレートマジンガーと剣鉄也、ビューナスAと炎ジュン、マジンガーZを借りているボスは偽グレンダイザー部隊を率いるバレンドスの親衛隊部隊を相手取っている。

 バレンドスは原作に於いてグレートマジンガーを強奪し、グレンダイザーと戦った人物で、モルスの前任の親衛隊長であろう人物だ。

 

 本大戦ではグレートマジンガーが強奪されておらず、量産型グレートマジンガーの設計図や実機を奪われていない事もあり、偽グレンダイザーが代用されているようだった。

 原作では偽グレンダイザーはベガ獣ベニベニの変身した姿だったが、本大戦では制圧したフリード星から接収した技術やこれまでの交戦データを用いて開発されたコピー機である。

 

 スパロボ登場時には一部の武装がなかったり、威力が低かったりと調整されているが、基本性能においてはそう遜色のない仕上がりだ。

 主君であるベガ大王に応じて必死の気迫を滾らせるバレンドスと親衛隊隊員達は、持てる力の全てを発揮してすさまじい底力でグレートマジンガー達を相手に一進一退の互角の攻防を繰り広げている。

 

 だがバレンドスやブラッキー、ズリル、ガンダルの顔色は決して明るくはない。同盟勢力も存外、奮闘しているのだがそれで各スペイザー、完全な姿のベガ獣ジガジガ、ゴスゴス改を引き連れるフリードスペイザーの進撃を阻むことがどうしてもできない。

 デュークをベガ大王の下へと送り届けるべく、よりにもよってマジンカイザーと真ゲッターロボが付き添い、最強格のスーパーロボットの力をいかんなく発揮している上に、多くの並行世界で侵略者との戦いに慣れ切ったクォヴレー、そしてアラド、ゼオラ、オウカ、ラトゥーニも一緒と来た。

 またエネルギーの回復を確認したフェブルウスや他の機動兵器部隊も、怒涛の勢いで進軍を続けており、ほどなくしてベガ大王の座する中核部隊との激突は免れないのが銀列連側の状況だった。

 

「突破口を開くぜ、光子力ビーム!!」

 

 ホーミング機能をカットし、シンプルな直線軌道を描く光子力ビームがマジンカイザーの双眸から放たれる。フルパワーなら月の裏側まで貫通する威力だが、流石にセーブされているとはいえ、命中した敵機は全て爆散して行くのだから恐ろしい。

 更に真ゲッター1もマジンカイザーと射線が重複しないように、また月面に命中しないように調整しながら腹部の装甲を展開して、レンズ状の発射口を展開する。

 

「俺達も続くぞ、ゲッタービーム!!」

 

 光子力ビームに負けず劣らずの破壊エネルギーを内包した緑色の光の奔流が放たれ、こちらもまたミディフォーの編隊や盾を構えるベガ獣もまとめて消し飛ばして、一隻のマザーバーンの左舷に大穴を空けて、宇宙の彼方へと伸びて行く。

 セーブしてさえこの惨状なのだから、正気に戻ってよかったとモルスがこっそり安堵したのも無理はない。

 

 二機の戦略級スーパーロボットだけでなく、この世界ではマジンガーの系譜に連なるビルトファルケンにビルトビルガー、マジンガーとゲッターロボ双方のエッセンスを持つラピエサージュ・シンデレラ、小型高機動型ヴァルシオーであるヴァルシオーラはパイロット達の技量と連携により、手の付けられない戦闘力を発揮している。

 さらにそこに高機動ユニットのエールストライカーを装備したエールベルグバウも加わった事で、五機編成の小隊としてはこの戦場でもっとも高い戦闘能力を有している、と断言してもいいだろう。

 かくして阻もうにも阻みようのない冗談じみた突破力で防衛線を食い破り、真っ先に飛び出したフリードスペイザーのコックピットで、デュークは正面モニターに迫りくるキング・オブ・ベガの姿を映す。

 

「ついにここまで来たぞ、ベガ大王!」

 

 フリード星がベガ大王の手に落ちたあの日、グレンダイザーと共に地球へと逃げ延びて、一度は地球人として骨を埋めるつもりでいたデュークだが、今はフリード星の再興のみならず第二の故郷となった地球と銀河の人々の平和を守る為、かつてない闘志を滾らせていた。

 フリードスペイザーの各所からグラビトンランチャーの砲身が伸び、連装光子力ビーム砲、更にグレンダイザーの角が輝き出して、スペースサンダーを発射する準備が整う。

 後はトリガーを引くだけとなったまさにその刹那、キング・オブ・ベガの内部から強大なエネルギーが観測され、カタパルトから発進した新たな機動兵器がフリードスペイザーを目指してまっしぐらに迫ってくる。

 

「なに!? あれは!」

 

『食らえ、ギャラクシーサンダー!!』

 

 ベガ大王の叫びと共に新たな敵機の角から宇宙を切り裂くように稲妻が放射され、フリードスペイザーは咄嗟に攻撃を中止し、機体を傾けてかろうじて回避する事に成功する。

 キング・オブ・ベガから出撃してきた新たな敵機から、仇敵の声が聞こえてきたのもそうだが、それ以上にその姿にデュークは驚きに目を見張った。

 

 それはグレンダイザーを彷彿とさせるロボットだった。ただし目つきが鋭く、頭部にはベガ大王の兜と酷似した装甲が被され、胸には禍々しい髑髏があり、四肢や頭部は血のような赤色に染まっている。

 まるでベガ大王とグレンダイザーが融合したような、デュークからすればこの上ない屈辱と怒りを掻きたてられるおぞましい機体だ。

 真紅のマントを翻し、ベガ大王を思わせる意匠を加えられたグレンダイザーモドキは、体勢を立て直してその場で停止するフリードスペイザーとにらみ合う。

 慌てて飛び出てきたベガ獣達は両機の周囲に展開して、スペイザーやゴスゴス改、クォヴレー達を牽制しようと大急ぎだ。

 

「ベガ大王、まさか自らロボットに乗って戦場に出るとは……」

 

 キング・オブ・ベガに乗って前線に出る事までは想像できたが、まさかグレンダイザーモドキに乗ってくるとは夢にも思わず、デュークはベガ大王の覚悟とそうする自信を感じ取り、ツっと冷や汗を一筋流す。

 

『貴様らをこの手で殺してやろうというわしの意地よ。そして見るがいい、デューク・フリード、このグレンダイザーベガの勇姿をな!』

 

「グレンダイザーベガだと!?」

 

『ハハハハハハ、そうだとも! 蹂躙し、我がものとしたフリード星を調べ尽くし、手に入れたグレンダイザーの開発記録、そして地球での戦闘データと我がベガ星の技術の粋とベガトロン鉱石を掛け合わせて作り出した、ベガ獣を超える最強の兵器よ!』

 

「お前は、フリード星の守護神をどこまで貶めるつもりだ!?」

 

『貶めるだと? たわけが。なにがフリード星の守護神だ。ただ飾られるだけの兵器など、ケースの中のコレクションにも劣るわ! 最初からグレンダイザーを兵器として用い、数を揃えていればフリード星はわしに支配されず、この銀河に広大な版図を得ていただろう。

 それをこのわしが、ベガ大王が! 兵器としてあるべき姿を与えてやったのだ。

 これからグレンダイザーの名前はフリード星の守護神としてではなく、全宇宙を支配するベガ大王の力、権威の象徴たるグレンダイザーベガとして未来永劫、全ての民草に恐怖と共に刻まれるのだ!! グワハハハハハハ!!!』

 

 確かにベガ大王の言う通りグレンダイザーベガから観測できるエネルギーは、オリジナルグレンダイザーを上回っている。

 ベガ大王の発言を信じるのならば、オリジナルと同じ光量子エネルギーの他に、ベガトロン鉱石を用いた動力を導入し、並行稼働に成功しているのだろう。

 ベガ大王だけでなくベガ星連合軍の人々も数多くのスーパーロボットや他勢力の機動兵器を見てきている以上、ベガ星側のスーパーロボットとしてグレンダイザーベガには心血を注いだに違いない。

 

「ならば、ならば、なんとしてもこのグレンダイザーでその偽りのグレンダイザーを破壊する! グレンダイザーはフリード星の守護神、宇宙の王者たるのは力で支配するからじゃない! その力で戦う力を持たない人々を守るからだ!!」

 

『腑抜けのフリード王家らしい言い草だ。だからわしに滅ぼされたのだ。おおたわけめ。今日より宇宙の王者はグレンダイザーではなくなる。

 恐怖と力ですべてを支配する宇宙の王者として、グレンダイザーベガとこの恐星大王ベガが覇を唱えるのだ!! 屍を晒せ、デューク・フリード、グレンダイザー! ツインハーケン!』

 

 グレンダイザーベガの肩のパーツが二つ外れ、三日月型の刃を備えた両端に備えた長柄鎌へと連結する。それはまさにグレンダイザーのダブルハーケンそのものだった。デュークはお互いの間合いと周囲の状況から即座にフリードスペイザーとの分離を決断する。

 

「ならばこちらも、ダブルハーケン!」

 

 フリードスペイザーから即座に分離して飛び出したグレンダイザーは、忌むべき兄弟機と鏡写しのようにダブルハーケンを握ると真っ向から斬り結び始める。

 

『無駄だ! パワー、スピード、攻撃力、防御力とあらゆるすべてがオリジナルを越えている。このグレンダイザーベガはグレンダイザーを超越した最強最悪の守護神なのだ!』

 

 二体のグレンダイザーの間で無数の銀刃の攻防が煌めき、扱いの難しい両刃の長柄鎌を巧みに操り、グレン合金の装甲に少しずつ傷が刻まれてゆく。

 デュークはこれまで数々の強敵と戦ってきた自分と遜色のないレベルでグレンダイザーベガを操縦するベガ大王に、驚愕の念を禁じ得ない。

 

「ならば反重力ストーム!」

 

 ハーケンの刃を弾き合ったタイミングで後方に飛び退き、グレンダイザーから胸部の赤い装甲部分から虹色の反重力の光が放出される。

 これに対し、グレンダイザーの武装をコピーしつつアップデートしたグレンダイザーベガも、同じように胸部の髑髏の口が開いて、黒い虹と呼ぶべき光線を発射する。

 

『斥力ストーム!』

 

 反重力と斥力の光線が衝突し、月の重力が正気を失ったように荒れ狂い始める。周囲の敵味方にも影響を及ぼす中で、二機のグレンダイザーはほぼ同時に動き出していた。

 真の宇宙の王者を決めるべく、二機のグレンダイザーは持てる武装の全てを費やして戦う。守るべきものを守る為。欲したものを手にする為。信じる者の為に。己の欲望の為に。負けない為に。勝つ為に。そして望む未来を得る為に!

 

<続>




時々、自分でも以前に何を書いたか忘れていることをここに告白します。矛盾があったらごめんなさいね。


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第百六話 なんでベガ大王がこんなに活躍を?

「ダイザービーム!」

 

 グレンダイザーの両目から発射されたビームを、グレンダイザーベガもまた両目からビームを撃ち返して相殺する。

 

「デスダイザービーム!」

 

 相殺、いや、デスダイザービームの威力が勝り、数秒の拮抗状態が崩れ、真紅のデスダイザービームがグレンダイザーへと襲い掛かるのを、デュークは咄嗟にグレンダイザーの首を傾かせて回避する。

 

「くっ、基本スペックはベガ大王の言う通りあちらが上か」

 

 デュークはダブルハーケンの連結を解除して、グレンダイザーにシングルハーケンを両手に持たせ、月面を蹴って勇壮と挑みかかる。

 対するベガ大王もまた覇者としての矜持を持って月面に降り立ち、こちらも両手にハーケンを持って迎え撃つ構えだ。

 

「だが機体の性能が勝敗の全てを決めるわけではない!」

 

「滅んだ国の王子が滅ぼした国の大王に敵うものか!!」

 

 グレンダイザーベガは、グレンダイザーの武装をベガトロン鉱石のエネルギーを用いて強化したものを装備し、基本性能においても装甲以外はオリジナルを上回る上位互換の機体だ。

 グレンダイザーの操縦に関してはデュークに一日の長どころか百日の長があるはずなのだが、咄嗟の武装の切り替えや基本的な動作の一つ一つにおいてもベガ大王はデュークと遜色ないレベルで機体を動かしている。

 

 軍勢の指揮はともかくとして、ベガ大王が機動兵器の操縦に長けているなど、デュークはフリード星時代にも耳にしたことはない。

 仮にいつかの時の為にベガ大王が情報を伏せていたにせよ、それにしてもグレンダイザーベガを手足のように扱えるのには、なにか秘密があるに違いないとデュークは睨んでいた。

 

 そしてデュークの疑念の正しさを保証するように、グレンダイザーベガのコックピットに座すベガ大王の脊髄に埋め込まれた金属製のコネクタが、シートの一部とケーブルによって繋がっているのだった。

 機体とパイロットを物理的に接続する──ロボットもの、SFでは定番の人機一体を成り立たせる禁忌の技術を、ベガ大王が我が身に施していたのだ。もっとも近いのはカレンデバイスか阿頼耶識システムだろうか。いや、カレンデバイスは違うか。

 

「フリード王家と守護神たるグレンダイザーを今度こそ、わしの手でこの宇宙から抹消してくれるわ!!」

 

 

 グレンダイザー同士の一騎討ちが行われる中、銀列連と地球人艦隊の戦いは激しさを増す一方だった。基本性能で上回る銀列連の艦隊を相手に、機動兵器とパイロットの質で上回る地球人艦隊は自分達の強みを最大限に活かして戦線をじりじりと押し上げている。

 可変機を中心とした高速部隊が敵陣深くに斬り込んでいるのは既に説明した通りだが、そうでない部隊も獅子奮迅の活躍を見せている。

 

 ジュドーとルーのメガZ、プルのアハヴァ・アジール、プルツーのクィン・マンサ、バナージのユニコーン、リディのバンシィ、マリーダのクシャトリヤを中核としたネェル・アーガマ、ガランシェール隊。

 ドズルのグランザム、ハマーンのキュベレイ、ジョニーのゲルググテスタロッサ、黒い三連星のアルトアイゼンSS、シン・マツナガのヴァイスヴォルフリッターを中核とするキマイラ・アクシズ・ジオン共和国艦隊。

 

 そして一機V作戦を体現するRνガンダムを駆るアムロと共に進行する、新生ホワイトベース隊もといラー・カイラム隊は燎原の火の如く立ちはだかる敵機を蹴散らしている。

 疑似太陽炉のツインドライヴシステムに加え、MS系縮退炉を搭載するRνガンダムのパワーとフル・サイコフレームによる究極レベルの追従性は、アムロの技量を十二分以上に反映させている。

 

 先行しているセイラとスレッガーのデンドロビウムⅡの姿は無くても、Rνガンダムの機体も強力なラインナップだ。

 カイとハヤトはRνガンキャノンをベースにしたR(リボーンズ)ガンキャノンに乗り、アムロにやや遅れて中距離戦を演じ、リュウはR(リボーンズ)ガンタンクに乗って、ラー・カイラムの甲板から砲撃支援に専念している。

 それぞれが疑似太陽炉のダブルドライヴと縮退炉を搭載し、その出力たるやそこらの艦艇を超える怪物だ。

 

「ひゅう、どこを見ても敵だらけじゃねえの。ア・バオア・クーよりやばいんじゃない?」

 

 軽口を叩き、表情もどこか余裕のあるカイだが、周囲にひしめく侵略者達の姿を見て、改めて地球の危機を肌で感じ取り、地球に残してきたミハル一家を思い、闘志を燃やしていた。まったく、自分には似合わないと皮肉りながら。

 一方で養子であるカツもまた勇敢に戦っている事もあり、ハヤトもカイと同じように闘志を燃やし、かつて乗った機体とは別次元の高性能ぶりを発揮するリボーンしたガンキャノンの大火力で群がる円盤を纏めて消し飛ばしている。

 

 両肩から伸びる長大な板状の砲身を持つGNキャノン、更に両手で握るビームライフルの火力は、銀列連の用いる大型機を相手にしても十分な破壊力を発揮している。

 不意に近づいてきた敵機にはエグナーウィップを撃ち込み、電撃で麻痺したところにビームを叩き込む。

 

「確かにア・バオア・クーを思い出すが、今度は宇宙人達が相手なんだ。あの時以上に気は抜けないぞ、カイ」

 

「分かってるって。あん時は敵だったジオンと今じゃ肩を並べてんだぜ? そうしなけりゃならないほどヤバいってことだろ?」

 

 心なしか一年戦争時代の軽い口調に戻っているカイに、ハヤトは分かっているならいいさ、とこちらは一年戦争の頃から変わった関係性のままの口調で答えていた。

 Rガンタンクとラー・カイラム、Rガンキャノンによる重厚な大火力支援を受ける中、アムロも三つの形態を使い分けながら群がる敵機を撃墜し、毎秒に近い速さで撃墜スコアを伸ばし続けている。

 この戦いを見ていた銀河の人々に、地球人のアムロ・レイこそ機動兵器パイロットとして天の川銀河最強の一角だ、と認知される切っ掛けとなった化け物ぶりだ。

 

 フィン・ファンネルとGNフィン・ファングを猟犬のように従えて、Rνガンダムが無人の荒野を進むが如く十重二十重と築かれた防衛線を突破して行く。

 アムロとRνガンダムの組み合わせは、条件次第かもしれないが連邦宇宙軍の通常編成のMS部隊全軍に匹敵するかもしれない。

 

「ボッシュ、ケーラ、ついてきているな?」

 

 視線と意識は全方位に向けながら、アムロは新しくラー・カイラム隊に加わった新人達に声を掛ける。新人と言っても他の部隊で実績を上げてきた優秀なベテランなのだが、アムロがあまりに超人的過ぎて、彼らの動きは霞んで見える。

 アムロのみならずDCのトップクラスのパイロットともなると、並みのベテランと新兵は誤差の範疇になってしまうので、技量水準がおかしなことになっているのだが……。

 

「大尉、こちらの事は気になさらず! 死に物狂いでついてきますから!」

 

 カラバから編入してきたボッシュ・ウェラーはアムロより四つ年上の男性だが、アムロの技量に感服しており、彼の下に着いて戦うになんの抵抗もない。

 ボッシュとアムロよりも若い女性パイロットのケーラ・スゥも正直、正気を疑うほどハイレベルな上官や他のパイロット達に圧倒されてはいたが、弱音を吐かない根性があった。

 

「あたしも大丈夫です。落穂拾いくらいはやってみせますよ!」

 

 ボッシュとケーラの乗る量産型νガンダムHWSを一瞥し、アムロは更に機体を加速させる。多少の強がりを含む二人だったが、それでも彼らがまだまだ十分に戦えるのは分かった。

 彼らのフォローにフィン・ファンネルの一部を割きながら、アムロは先行するカミーユやクワトロに追いつくべく、更に神経を尖らせる。

 Rνガンダムには切り札の一つとしてトランザムシステムが搭載されているが、アムロの意識はまだ使いどころではないと囁いている。

 使うのならば、状況がさらに混迷を深めるか、窮地に陥った時だと、アムロは明確な根拠のないままに確信していた。

 

 

 サラミス改級イズミールからシロガネの艦長となったシュレーダーは、まったく勝手の異なるスペースノア級の特性をごく短い習熟期間ながら、よく理解していた。

 あまりの性能差にサラミス改級どころかマゼラン改級でも話にならないし、それこそアルバトロス級でも持ってこなければ勝負になるまい、と内心での驚愕は表に出さず、シュレーダーは戦況の変化を見極めつつ、クルーに指示を出し続けている。

 

 シロガネ艦載機部隊の指揮はモンテニャッコとユウ、マーフィーが執っているから、シュレーダーの仕事はシロガネそのものと艦載機部隊の補給と修理、他部隊との連携、状況把握諸々だけで済んでいる分、まだ余裕はある。

 空母機能を重視したシロガネの衝撃砲でも、サラミスやムサイを軽く轟沈させられる火力がある。そんな艦を預けられた事への喜びは、しかし、戦場で暴れ回るDC機動兵器部隊の実力を見ればあっという間に冷める。

 

(ティターンズ時代に彼らと戦わずに済んでよかった、と胸を撫で下ろすべきなのだろうな。彼らを敵に回していたなら、部下を死なせずに済む方法はなかっただろう。その点、ジャミトフ閣下の時勢の見極めはギリギリ間に合ったということか)

 

 ブラックオター小隊のTR-6クインリィ・フルアーマー四機、ゼロのHi-νガンダム、レイラのナイチンゲール、更にフォウのTR-6サイコ・インレ、モンテニャッコのタイプCFが手加減なしで暴れ回っているが、それだけに推進剤や弾薬の消耗が激しい。

 いずれも一騎当千の機体だが、四方八方から敵の襲い掛かっている状況では、それらの機体を操縦するパイロットの疲労も相応だ。

 特にサイコミュ搭載の機体は、そうでない機体と比してパイロットに掛かる負担が大きい傾向にある。

 パイロット達をシロガネに戻し、補給と修理、休憩を取らせるタイミングとローテーションは、繊細過ぎるほどに注意を払う必要があるとシュレーダーは理解していた。

 

 各戦線でスーパーロボットが因縁の敵と戦う中で、コンバトラーV6は変則的な三つ巴の状態に置かれていた。女帝ジャネラの配下であるダンゲルのダークロンとキャンベル星から離反したガルーダのBBガルーダを同時に相手にしていたからだ。

 ダンゲルとガルーダは断じて友好関係にあるわけではなく、状況次第ではすぐさま相手の息の根を止めようとする間柄にある。

 ダンゲルからすればガルーダは反旗を翻した出来損ないのロボットであり、ガルーダからすればダンゲルはオレアナと同じキャンベル星の手先だ。地球人との戦闘中でなければ、いつ戦端が開かれてもおかしくはない。

 

「ツインランサー!」

 

「今日こそその首を貰うぞ、葵豹馬、コンバトラー!」

 

 連結させたツインランサーを巧みに操るコンバトラーV6に向けて、BBガルーダが巨大な首狩り鎌を振り抜き、両者の間に巨大な火花が何輪も咲いては消えてゆく。

 これまでの濃密な戦いの中でお互いの癖は分かっている。生死を懸けて何度も戦ってきた好敵手同士ならではの互角の戦いだ。

 

「へへ、そう簡単にやられるわけがねえのはお互い分かっているよな、ガルーダ!」

 

「ふふふふ、その通りだ。そしてこうも思っている筈だ、コンバトラーチームよ。こうでなくては、とな!」

 

 お互いを恐るべき好敵手と思うからこそ、手強い敵だと認めるからこそ、簡単に勝てるような相手であるはずがない、弱い敵であってくれるなと豹馬とガルーダは願ってさえいた。

 だがこの場における戦いはコンバトラーチームとガルーダだけが主役ではない。周囲のマグマ獣を巻き込みながらありったけの武器を使い、戦うコンバトラーV6に向けて、ダークロンが超電磁スピンのように激しく回転しながら体当たりを仕掛けてきたのだ。

 

「豹馬さん! マグマ獣が来ます!」

 

 分析や情報収集を担う小介がいち早くダークロンに気付き、警告を発するのに即座に反応し、豹馬はアトミックバーナーでBBガルーダを牽制しながらその場を飛びずさり、回転体当たり──ダークロンドリルの直撃を避ける。

 

「ダンゲル、卑怯だぞ!」

 

 コンバトラーV6に攻撃を回避されたダンゲルは、そのまましばらく進んでから回転を止め、ツメミサイルを連射しながら豹馬の罵りを笑い飛ばす。

 

「お前達の一対一だと、いつ俺が認めた? この混迷した状況で自分達だけの戦いが出来るなどと思うなよ。

 ガルーダ、お前も同じだ。お前は前任者であるオレアナに反旗を翻した裏切り者だ。ガイゾックとの関係が解消された暁には、キャンベルの恥はキャンベルの将軍であるこの俺が雪いでくれる」

 

 ガルーダは豹馬同様に決闘を邪魔された怒りはあったが、ダンゲルの言い分に一理あるのを認めたから、表面上は怒りを見せなかった。実際、これだけ他勢力の入り混じる戦場で、望むように戦えると信じ込む方が甘いというものだろう。

 だからといって、ダンゲルの言い分をそっくりそのまま飲んでは面白くない。ガルーダは自分の配下であるマグマ獣デモン達に一定の範囲からの退避を指示しながらニヤリと笑う。

 

「なるほど、確かに貴様の言う通りだ。一対一の戦いだと誰かが決めたわけではない」

 

「ふん、不良品のアンドロイドの割には素直に言う事を……ぐわわぁ!?」

 

 ガルーダの対応に拍子抜けしたダンゲルだったが、その直後に彼のダークロンを無数のミサイルとビーム、実弾とが襲い、凄まじい衝撃が機体を揺さぶって大きなダメージを与える。

 爆炎に飲み込まれるダークロンのコックピットで、ダンゲルは攻撃の発射源をモニターに映す。攻撃はダークロンだけを襲ったものではなく、広範囲に渡ってビームとミサイル、銃弾の嵐が降り注いだのだ。

 次々と攻撃を浴びるダークロンや周囲のマグマ獣達をモニタリングしながら、攻撃を行った主の一人であるトロワは淡々と成果を口にして、攻撃のタイミングを指揮したカトルへと報告する。

 

「マグマ獣部隊への制圧射撃を一旦停止する。効果判定は有効」

 

 まるで本当に痛みを感じているように身を捩るダークロンを攻撃したのは、トロワのヘビーアームズ改イーゲルの一斉攻撃を含む遠距離からの攻撃だった。

 さらにカトルの指揮によって後方のスペースゴジュラスMk-Ⅱ量産型部隊とマグネバードからの砲撃が加わり、直前に気付いたガルーダとデモン達を除くマグマ獣の多くが破壊され、ダークロンも中破に近いダメージを受けている。

 

 ただでさえMSの形をした武器庫も同然のヘビーアームズ改に無数のミサイルを中心とした追加武装と高速移動用のクローラー、大型ビームキャノンで構成されるイーゲルユニットを装着した状態だ。

 原作では一発で砲身が壊れてしまった大型ビームキャノンも、ウイングガンダムのバスターライフルやヴァイエイトのビームキャノンを参考にして、それなりのインターバルを置いて連続使用可能な代物になっている。

 

「ぐぐぐぐ、くそう! ガルーダめ、気付いていながら俺に何も言わなかったな!」

 

 怒りに全身を震わせるダンゲルがBBガルーダか、あるいはコンバトラーV6に攻撃を仕掛ける寸前、彼の怒りと理性がせめぎ合う一瞬の隙を突くようにして、月の空に翼を広げた死神が舞い、その光り輝く鎌がダークロンの傷ついた装甲を無慈悲に切り裂いていった。

 デュオのデスサイズヘルだ。ステルスクロークの性能とセンサーを妨害する爆炎の高熱や巻き上げられた土砂に紛れ、ダークロンに肉薄して手痛い一撃を見舞ったのである。

 

「あんまりカッカしていると、見えるものも見えなくなるぜ。キャンベルの将軍様よ! 死神様の鎌に首を切られたと気付くのが、死んだ後じゃ格好がつかないぜ」

 

「貴様、地球人の骸骨なんぞが!」

 

 ダンゲルがデスサイズヘルを骸骨と称したのは、かの機体の胸部の肋骨に見えなくもないパーツの所為だろう。だが彼はそれ以上言葉を続けられなかった。

 月面を疾駆するガンダムサンドロック改アーマディロが凄まじい機動力で飛び上がり、ヒートショーテルを振りかぶって、コロニー製ガンダム随一のパワーを活かした強力な一撃を見舞ったからである。

 

 高高度跳躍用の補助ブースターを内蔵し、ミサイルポッドなども持つ着脱式の装甲がアーマディロだ。もとよりサンドロック改は人間の反応速度を超えるMDトーラス複数機を相手にして、攻撃を回避しつつ瞬殺するほどの高い機動性を有する。

 そこに宇宙用に調整が施されたアーマディロを装備した事で、サンドロック改は遠近の両距離に対応する高機動指揮官機として完成度を高めている。

 超高熱を帯びたヒートショーテルによって、ダークロンの胸部に深々とX字の斬撃が刻まれ、切断面が融解して周囲のパーツを巻き込みながら赤熱している。焼くと斬るとを同時に行うヒート系兵装の威力の凄まじさよ。

 

「余所見をしているからですよ。トロワ、一旦、補給の為に下がってください。デュオは僕とコンバトラーチームの皆さんの援護を継続します」

 

「あいよ。五飛の奴は大物食い中か」

 

 デュオがモニターの一つに目をやれば、五飛のアルトロンがビームキャノンとツインビームトライデントを巧みに使い分けて、次々とグレイドンと直掩のマグマ獣を相手に奮闘している姿が映っている。

 五飛の気性からしてコンバトラーV6とBBガルーダの戦いに割って入るよりは、母艦群を沈める方を選ぶのはデュオにも理解できた。

 だがこの状況下において、機体に相当なダメージを負いながらも、ダンゲルの気迫に衰えるところはない。

 

「うおおお、舐めるなよ。俺はキャンベル星の将軍ダンゲルだ! やわか辺境の地球人如きにおめおめと背を向ける軟弱者ではないぞ。ましてやベガの者達があれ程の覚悟を見せたのだ。そう簡単に尻尾を巻いて逃げると思うなよ!」

 

 どうやら戦端が開く前にベガ大王が行った演説に影響を受けて、ベガ星の将兵達ほどではないにせよ、ダンゲルもまた士気をあげていたようだ。

 その様子に豹馬は手負いの獣はなんとやら、と思い、油断なくどんな行動に反応できるよう備える。

 

「へ、お前が他所の星の演説で気合を入れるとはな。お前達のことだから俺達と戦った後はベガも、ボアザンも、ムゲも全部まとめてやっちまうつもりだろうによ」

 

「フン! 全てはお前達地球人を滅ぼして地球を支配した後の話だ。今日の俺は一味違う事だけ知っておくがいい。俺の力押しは宇宙一の力押しだああ!!」

 

 機体のそこかしこでスパークを散らす手負いのダークロンだが、機体越しにも感じられるダンゲルの気迫は、事態を傍観していたガルーダの表情を引き締め、カトルとデュオもまた先程の奇襲で仕留めきれなかったことを後悔させるだけのものがあった。

 

 

 デュークがベガ大王と死闘を繰り広げている中、同じくベガ星艦隊中核に切り込んだグランド・スター小隊も大暴れしていた。

 MS風の見た目詐欺をしているラピエサージュ・シンデレラやビルトシリーズはもちろん、巨大な人間風の容姿をしているヴァルシオーラはMAP兵器持ちという事もあり、乱戦では大活躍だ。

 

 その中でクォヴレーは機動性を重視したエールベルグバウを巧みに操り、いくつかの世界で戦ったベガ獣と円盤獣の猛攻の隙間を縫い、これ以上ない程的確な反撃を加えている。

 エールストライカーは、終焉の銀河で共に戦ったキラ・ヤマトとムウ・ラ・フラガの愛機だったストライクの換装システムの一つであり、ガン・スレイヴやエメト・アッシャーに干渉しないように設計された、ベルグバウ用の特製だ。

 

「行け、ガン・スレイヴ! 俺達の敵を撃ち抜け」

 

 四基のガン・スレイヴが飛び立ち、エールベルグバウのツイン・ラアムライフルと共に円盤獣ギルギルやゴスゴスの顔面、腹部へと命中して装甲を破壊してゆく。

 そうして動きの鈍ったところに、ビルトファルケンやヴァルシオーラがオクスタンライフル、あるいはクロスマッシャーを叩き込み、完膚なきまでに破壊してのける。

 あるいはコールドメタルブレードとブーストハンマーで勢いよく突撃するビルトビルガーを、ファルケン、ラピエサージュ・シンデレラと共にフォローか、あるいはエールベルグバウも銃剣とビームサーベルの二刀流で共に突撃する。

 

「アラド、右後方のフイフイとドモドモは俺が対処する。正面のギドギドを頼む」

 

「がってん承知! 男は度胸だぜ、突っ込む!」

 

 言うが早いかアラドはジャケットアーマーをパージし、ウイングを展開するとビルトビルガーを一気に加速させて突っ込んでゆく。それを慌ててビルトファルケンとヴァルシオーラが動いてフォローに回る。

 

「あ、ちょっと、アラド!」

 

「アラド、ゼオラ、待って!」

 

 殺到する攻撃をかろうじて回避して行くビルトビルガーだが、時折、危うい場面がみられて、ファルケンとヴァルシオーラの援護射撃が無ければ流石に何発か被弾していたかもしれない。

 

「アラドはどの世界でもアラドだな」

 

 アラドの持ち味が出会う世界の何処でも変わらないのは嬉しいのだが、残念ながらほっこりと出来る場面ではなく、クォヴレーはエメト・アッシャーでフイフイの胴体を撃ち抜きドモドモのニードルミサイルはツイン・ラアムライフルで撃ち落とし、ベガトロンビームを回避するのと同時にガン・スレイヴで四方から撃ちかける。

 そこへラピエサージュ・シンデレラのオーバーオクスタンランチャーが撃ち込まれ、圧倒的なエネルギーの奔流は、ガン・スレイヴによってダメージを受けていたドモドモを破壊する。

 

「クォヴレー、アラドはゼオラとラトゥーニがついていてくれれば、問題はないでしょう」

 

「ああ。凸凹という奴だが、連携は取れているのは確かだ」

 

「アラドの突撃癖は心臓に悪いですが、あれが前提の連携になっているのがなんとも」

 

「それで成果を上げているからな。今から下手に矯正しても生存率を下げるだけだろう」

 

 保護者二人が戦闘行動を継続しながらも愚痴を零す最中、フェブルウスを先頭にしたDC本隊が到達しつつあった。フェブルウスが圧倒的な原理の力、次元力の暴威となって暴れ回る後ろからハガネ、タルタロス、ブレイウッド、スペースアークが続いてくる。

 ハガネの艦首モジュールに膨大なエネルギーが蓄積されている事に加え、射線からの退避勧告が届いたことにより、次の一手を悟って、オウカとクォヴレーは即座に退避した。

 DC司令を務めるレビルは老骨の血を滾らせながら、キング・オブ・ベガ……ではなくガンダル専用母艦に狙いを定めていた。

 

「ベガ大王が戦場に出た以上、ベガ軍の指揮を執っているのはあの艦だ。本艦の最優先目標として叩く。ファイナルダイナミックスペシャルキャノン、照準合わせ!」

 

「了解、エネルギー充填率80……85……95、96、97、98、99、100パーセント、フルチャージ完了いたしました!」

 

「友軍機の射線上からの退避を確認。照準、敵司令艦、仮称“ガンダル艦”に照準固定!」

 

「よし、ファイナルダイナミックスペシャルキャノン、撃てえっ!!」

 

 奇しくもほぼ正解の名前を当てはめたガンダル専用母艦へと向けて、ハガネの艦首から四種類のエネルギーを束ねた超火力が発射された!

 四種の超エネルギーを束ねた光の奔流は触れるモノ全てを破壊しながらまっすぐに突き進み、阻む者なくガンダル専用母艦に命中した。

 FDSキャノンは怪物の顔を持つ巨大円盤という外見のガンダル専用母艦の左舷を抉り、艦体を大きく傾かせる。浮力を喪失して月面に落下するのも時間の問題だろう。

 

 そのガンダル専用母艦の艦橋では大きな振動に襲われて、なんとか艦を立て直そうと必死に奔走している。艦の各所の人員に指示を飛ばしていたガンダルは、己の精神の異変に気付いた。

 体の内側から全てが裏返るかのような感覚に、ガンダルは覚えがあった。わなわなと体を震わせるガンダルが思わず膝を突いた時、彼の顔が見る間に変わり始め、女性のものとなる。

 ガンダルの身の内に潜むもう一つの人格、レディガンダルだ。ベガ大王に忠誠を誓っているガンダルと異なり、レディガンダルはあくまでも自分の保身こそが第一だ。

 

(こ、こんなところで死んでたまるものか。私の運命は私が決めるのだ。こうなれば艦を捨てて逃げて、地球に潜伏するしかない。なんとかルビーナ姫に庇護を求め、ベガ星連合軍の情報を引き渡せば隠遁するくらいならば!)

 

 原作ではベガ大王の暗殺と引き換えに我が身の安全を得ようとしたレディガンダルは、この世界でも手段は違ってもどうにか我が身の保身を第一に考えて活動しようとした。

 だがレディガンダルは目標を果たせなかった。傍に控えていたベガ兵士が、彼女の左太ももを光線銃で撃ち抜いたのだ。激痛と共に揺れる艦橋の床に倒れ込むレディガンダルは、射殺すような目線で自分を撃った兵士を睨むが、兵士は動揺した様子もなくこう言った。

 

「ガンダル司令、ご命令の通りレディを撃ちました」

 

「なに!? が、ガンダル、貴様、私がこうすると!! ああっ!?」

 

 レディガンダルが驚愕するも再びすぐに彼女の体に異変が生じて、その顔がガンダルのものへと変わる。レディガンダルから肉体の主導権を奪い返したガンダルは、撃ち抜かれた左太ももを抑えつつ、兵士に応じる。

 

「よくやった。恥知らずのレディ、貴様は二度と表には出さんぞ!」

 

 別の兵士が手早くガンダルの左太ももに応急手当を施し、鎮痛剤と止血剤の注射を済ませ、医療用パットを貼り付ける。

 覇道に覚醒したベガ大王に身命を賭すガンダルにとって、自分が第一のレディガンダルは邪魔な存在だ。

 この戦いで旗色が悪くなれば、どう行動するかなど火を見るよりも明らか。故にガンダルはレディガンダルが表に出てきたら、光線銃で撃てと予め命令していたのである。

 

「ガンダル司令、処罰はいかようにも」

 

 光線銃を腰のホルスターに収めた兵士が処罰の言葉を待つその姿を見て、ガンダルは彼の肩に手を置いて立ち上がる。

 

「ならば処罰を下す。貴様はこの戦いが終わるまでの間、私の杖の代わりをせよ。……総員、退艦準備を急げ。キング・オブ・ベガへ移り、そこで指揮を執る。

 ベガ大王陛下にはデューク・フリードとの戦いに専念していただくのだ。呆けている暇はないぞ。地球人共は待ってはくれんのだからな!!」

 

<続>

 




書いている作者にもどうしてこうなったのか分からないことがあるものです。


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第百七話 おさらば、おさらば!

 ヘルマットの指揮するムゲ艦隊から出撃したゼイ・ファーの大部隊は、ムバラク艦隊の右側面から襲い掛かったが、その多くをシャピロのデザイアと獣戦機隊のファイナルダンクーガ、さらに彼らをサポートするDC機動兵器部隊によって撃墜されていた。

 実際にムバラク艦隊にまで到達できたのは精々二割弱。それとてもムバラク艦隊の展開した機動兵器部隊と重厚な対空砲火の雨に晒されて、サラミス改やマゼラン改、クラップにミサイルの一発を叩き込む事も出来ずにいる。

 

 人型からはやや外れたデザインのゼイ・ファー部隊は、数を大きく減らしながらもムゲ・ゾルバドス帝国兵士としての意地から、モニターを埋め尽くすレーザー機銃や小型ミサイルにも怯まず、胸部のビームランチャーやミサイルを次々と発射する。

 残弾をゼロにするのが自分達の仕事だと言わんばかりの猛攻に対し、ムバラク艦隊のMSは迅速に行動した。

 

 有人機のメリクリウスに率いられたビルゴ、ビルゴⅡが整然と並んでプラネイトディフェンサーを十重二十重と展開し、降り注ぐビームとミサイルの雨を決然と拒絶する。

 プラネイトディフェンサーの欠点の一つとして、電磁シールドを展開するユニット一つ一つは軽量である為、大質量をぶつけられると損傷しやすく弾かれる危険性が高い事が挙げられる。

 

 ゼイ・ファーのビームランチャーはまだしも数百、数千に及ぶミサイルの嵐はプラネイトディフェンサーのユニットのいくつかを破壊して、電磁シールドの壁に隙間を作り出す。

 さらに数十秒ほど攻撃の勢いが緩まなかったら、何重にも展開したプラネイトディフェンサーの壁も突破された事だろう。

 

 ゼイ・ファー部隊の不運はムバラクをはじめ本艦隊の将兵にこの状況を見過ごす間抜けがおらず、兵士達も指示に迅速に対応できる高い技量を備えた強者ぞろいであったことだ。

 快速でゼイ・ファー部隊の側面に回り込んだトーラス、リゼルを主体とした可変機部隊がビームの雨を降らし、艦隊への攻撃に夢中になっていたゼイ・ファーをメガ粒子の塊で破壊し始めたのだ。

 

 ゼイ・ファー部隊の何割かが可変機部隊への対処に動き、艦隊を守っているプラネイトディフェンサーへの攻撃が緩んだ隙を見逃さず、あえて開けた隙間からヴァイエイトに率いられたビルゴ、ビルゴⅡ、更にヴェスバーを構えた量産型F91の猛反撃が加えられる。

 量産されているMSとして最高レベルの火力は、異次元からの侵略者が用いる機動兵器をオーバーキルするのに十分だった。

 ゼイ・ファーが大戦勃発から多少の強化は施されていても根本的に劇的な変化がない為、地球側にすっかりその性能を把握されている事もあり、淡々と処理されている。

 

 高火力砲撃によって編隊を崩され、連携もずたずたにされたゼイ・ファーに更なる悲劇が襲い掛かる。量産型グレートマジンガーや量産型ゲッターロボG、グルンガスト弐式らムバラク艦隊の切り札が襲い掛かってきたからだ。

 量産型とはいえスーパーロボットであるがゆえに、選りすぐりのパイロット達の操るそれらは本家にやや劣る程度の戦闘能力を発揮し、更にスーパーロボット同士の部隊単位での連携によって理不尽なまでの“力”となり、ゼイ・ファー部隊を蹂躙した。

 

 レオンはムバラク艦隊に接近したムゲの部隊が熱した鉄板に押し付けたバターのように溶けてゆくのを、モニターの片隅で確認した。

 彼? 彼女? はハガネのブリッジに居るルビーのオペレートに従い、ヘルマット艦隊に突撃している獣戦機隊のフォローに回っていた。

 ガンダムReonは正式にDC所属となるにあたり、核融合炉はMS用の縮退炉に換装され、装甲材からアビオニクスまでがアップデートし、武装はほとんどそのままに一段も二段も強化されている。

 

 小型ジェネレーターを内蔵した腕部一体型ビームライフルの威力は軽く倍に達し、頭部ハイメガキャノンも縮退炉の大出力によって冷却期間こそ必要なものの、一度の戦闘中にフルパワーで複数回使用可能となっている。

 人体の保護を気にしなくていい機体である為に、加速力や旋回性能もMD同様に殺人のレベルで行え、かつ有人機と変わらぬ柔軟性を兼ね備えたレオンとガンダムReonはDCでこそ埋没しがちだが、通常編成の部隊からすれば怪物呼ばわりされる代物だ。

 

「レオン、そのまま獣戦機隊のフォローを継続して。本隊はベガ大王と敵艦隊の旗艦と戦闘を始めたから、作戦の最終段階に入ったと考えていいわね」

 

 カーゴシップの船長経験はあっても専門のオペレーターではないルビーは、レオン専属としてならどうにか一丁前の仕事をこなせていた。

 傍らではカインズ博士とエリシアがゼファーW0ライザーのオペレートを行いながら、ルビーのフォローに入れるように備えている。

 

『作戦フェーズ移行について了解しました。獣戦機隊への支援行動を継続します。しかしルビー』

 

「なに? 推進剤の補充……はまだ必要ないわよね? こっちのモニターでは特に問題はなさそうだけど、あなたにしか分からない不快感でもあった?」

 

『いいえ。ですがこれで勝ちが決まったと油断しない方がよいでしょう。現実は最悪の想像の斜め上を行くものと学習しました』

 

「うぐっ、レオンの言うとおりね。ちょっと油断していたわ。状況はいつも最悪……」

 

『でもそれが当たり前、でしたね』

 

「そういうこと。もちろん最悪でないのに越したことはないけれど、腹を括っておくのも大事ね。それにしてももうレオンに教わる側になったかあ。私が貴方に教えられる事もすぐになくなりそうね」

 

『そうでしょうか。私は貴方に多くのことを今も教わっています。仮に教わる事がなくなったとしても、私は貴方を忘れないでしょう』

 

「ふふ、ありがと。お世辞でも嬉しいわ。私も一生忘れられない思い出になるし、戦争が終わったら貴方とつながりを断たないといけないと決まったわけでもないんだから、先のことを悲観的に捉える必要もないでしょ。さ、レオン、油断して被弾なんてしないでよ」

 

『全力でルビーの指示を遂行します』

 

 一層奮起したように見えるレオンは獣戦機隊がヘルマットの乗るムゲ戦艦に肉薄しているのを観測し、包囲しようと動くゼイ・ファー部隊とムゲ艦隊の背後を突くべく、機体を一気に加速させるのだった。

 

 

「なんとおー!」

 

 シーブックの駆るF97X1のビームザンバーが大口を開けてこちらに襲い掛かってきた円盤獣ウルウルの首を刎ね飛ばし、そのまま頭上に飛んだX1の足裏からヒートナイフが飛び出して、首の断面を縦に斬り裂く。

 断末魔の痙攣のように巨体を震わせるウルウルに向けて、シーブックと三人小隊を編成するビルギットとセシリーがトドメの一撃を放つ。

 

 量産型F91からはビームランチャー、ビギナ・ロナからはヴァリアブル・メガビームランチャーが発射されて、ウルウルの首の断面や胸にあるムチの収納部分を撃ち抜く。

 さらにギリシャ神話のヒドラを思わせる円盤獣ハドハドが、五本の首から熱光線と火炎という異なる速度と効果範囲の攻撃を撒き散らしながら襲い掛かれば、デフのクラスターガンダムとシドのF90ⅡVタイプが割り込む。

 

「シド、照準を合わせろよ!」

 

「お前さんこそ的はデカいんだ。外したら恥だぜ!」

 

 息の合ったバディとして経験を積んだ二人はメガビームバズーカとヴェスバーを見事ハドハドに直撃させて、三本の首を吹き飛ばして大いに怯ませた。

 フォーミュラー小隊とあだ名される彼らを電子サポートしているナヴィは、自分のSTガンのサポートを忘れられているようで、少し拗ねていた。

 

「当てただけではしゃがないでよ。円盤獣はまだ生きているんだから!」

 

「おっと、油断したとこをガブリとやられちゃ敵わねえや!」

 

 ナヴィの指摘に慌ててシドが表情を引き締める間に、デフは先んじてハドハドの胴体にメガビームバズーカの二射目、三射目を叩き込んでいた。

 さしものハドハドといえども、最新鋭機としてロールアウトしたクラスターガンダムの大火力には耐え切れず、爆発を起こして月面に残骸を撒き散らす。

 

「これならナヴィも文句はないだろう? もう次が来ているぞ。シド、ナヴィ、シーブック、セシリー、ビルギット、気を抜くなよ!」

 

 あくまで自分を民間人と認識しているデフだが、流石にここまで戦い続けるとなるといっぱしの口を利くようになる。

 このフォーミュラー小隊で正規の軍人はビルギットとナヴィだが、ビルギットは元々パイロット候補生であるし、ナヴィはデフ、シドの両名と付き合いが長く二人が場を仕切るように指示を出してもよほどのことでなければ目くじらを立てなくなっている。

 そうなると、自然とデフが小隊長らしく振舞うのを止める者はいなかった。まあ、名目上少尉ではあることだし

 

 サナリィ組がフォーミュラー小隊とセット扱いされる中、アナハイム組であるブレイウッド隊が別枠で括られているのは一種の悲哀があったが、当事者達は険悪な関係に陥っていないのは幸いだった。

 現場の人間である彼らは共に命懸けの戦場に臨んでいる事もあり、上層部の思惑や確執よりも現実の脅威に共に手を取り合って立ち向かう方がはるかに重要であったから。

 そんな中、セシリーはビギナ・ギナに代わる新しい愛機ビギナ・ロナの性能を十二全に引き出し、パイロットとしての非凡な才能を発露していたが、遠巻きに感じられるいくつかの視線には少々戸惑っていた。

 

(悪意はない。むしろ私の身を案じているのが感じられる。……注意を逸らされるほどのものではないし、迷惑でもないけれど……困ったものね)

 

 ソレは、今回の作戦に禊ぎ兼ケジメとして参戦しているクロスボーン・バンガード艦隊から、セシリーへと向けられているものだった。

 発生源は当然、CV艦隊を率いるカロッゾ・ロナである。ネオ・サイコミュシステムによってラフレシアを手足のように操り、更に艦隊の指揮を執りつつラフレシアのセンサーとカメラが時折ビギナ・ロナとX1を中心にその動向を観測し続けていた。

 他にもビギナ・ロナに乗るドレルも異母妹の身を案じてはいたが、目の前の戦闘と部下達の指揮にこそ神経を割いていたので、カロッゾに比べれば注目の度合いは少ない。

 

「ふむ、あちらの戦いぶりを見るに私が意識を向ける必要はないな。ないが、目が追ってしまうのはどうしたものか。これも肉親の情というものか? しかし、ザビーネめ、いささか危うい」

 

 カロッゾは我が子の身を案じつつ、ミディフォーの発射してきたベガトロンビーム砲を回避し、バインダーに装備された複数のビーム兵器を撃ち返し、いくつもの爆発に変え、さらに迫りくる円盤獣をテンタクラーロッドでなます切りにしてやった。

 そして有能な部下だったザビーネが最近感じさせる危うさをこの戦場でも見抜き、セシリーへの執着を嫌悪した。

 それは父親として当然の反応であったろう。ましてやザビーネには既に恋人がいるとカロッゾも認めるところである。

 

 ザビーネがセシリーに向けるのは恋愛的な意味合いでの執着ではないが、ザビーネに対して副官のアンナマリーが向ける生々しい嫉妬と嫌悪の情も絡んでくるだろう。

 コスモバビロニア主義の象徴として相応しい高貴さと能力を見せたが故の面倒が、ベラではなくセシリーであることを望む娘に災いとならぬよう、カロッゾは手を尽くさねばならないと、戦闘の最中ではあるが決意を新たにしていた。

 

 

 各機動兵器部隊が獅子奮迅の活躍を見せる中、ハガネのブリッジからレビルはベガ星艦隊の動きが鈍ったのを見逃さなかった。ガンダル専用母艦が沈み、脱出したガンダル達がキング・オブ・ベガに移乗するまでの間に生じた指揮系統の停滞と乱れが、その原因であった。

 ベガ大王をデュークが抑えている間にキング・オブ・ベガを沈めれば、少なくともベガ星艦隊ならびに機動兵器部隊の指揮系統を壊滅的な状態に追い込める好機!

 

「各艦、各機動兵器部隊に通達。攻撃を敵旗艦キング・オブ・ベガに集中させろ。ベガ大王が指揮を執れない状況で、敵艦隊の要を討つのだ!」

 

 FDSキャノン発射直後の為、大きくエネルギーを消耗した状態だが、それでもハガネが地球圏最強格の戦艦である事実に変わりはない。

 ブレイウッドとスペースアークは改修を受けたとはいえ、戦艦としてはいささか心許ないところはあったが、超次元機動要塞タルタロスの存在とあのレビル元将軍の号令とあれば否応なく士気もあがるというもの。

 

 タルタロス、ブレイウッド、スペースアークの主砲、副砲、各種ミサイルが照準の定まった端から次々と発射され、撃ち返されるベガトロンビーム砲やミサイルとの応酬が一層激しさを増して行く。

 当然、エネルギーを復活させたフェブルウスを始めとしたDC機動兵器部隊も、先に殴り込んでいた高速部隊と合流を果たして、ベガ星艦隊中枢を壊滅させるべく更に攻勢を強めてゆく。

 

「おりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

 

「やあああああああ!!」

 

 シュメシとヘマーが勢いよく叫びながらライアット・ジャレンチとガナリー・カーバーを振り回し、周囲に破壊を撒き散らして引っ掻き回し、残る味方機動兵器部隊が切り込んでお得意の乱戦に持ち込んで次々と敵機を討ち取ってゆく。

 リリーマルレーン二世ことクロガネの艦首超巨大ドリルを回転させて突っ込んでマザーバーンの一隻を正面から抉り、ドリルで抉った敵艦内に連装衝撃砲を撃ち込んでダメージコントロールが虚しくなる大ダメージを一気に叩き込む。

 足を止めるクロガネに群がるベガ獣やミニフォー、ミディフォーは待ち構えていた元ジオン海兵隊の面々が盛大に歓迎した。

 

「そうら、手土産も持っていないマナー知らずの客のご登場だよ! 地球の礼儀を教えてやんな!」

 

 シーマはバッタのように宇宙を跳ね飛ぶガーベラ・テトラ改を巧みに操り、ビームマシンガンの雨を浴びせながら、指揮下の海兵達に発破をかけた。

 マリーン仕様の特注ゲシュペンストMk-Ⅲ三十機余は、シーマの命令に従い、景気よくヒャッハーと叫んでいそうな勢いで光子力と縮退炉と超電磁エネルギーを解放して、量産機としてはあまりにハイレベルな火力を四方八方へ展開する。

 

「おらおらおら、良い円盤はスペイザーと撃墜された円盤だけだぜえ!」

 

「ヒャハハハハ! シーマ海兵隊は地球最強の海兵隊だあーーー!」

 

「へへへへ、シーマ様、こいつら自分らが撃墜スコアって土産を持ってきますぜ」

 

「ふふん、考えようによっちゃそうだねえ。それなら、そうら、総帥からのボーナス目当てにたんまりスコアを稼がせてもらいな、あんた達!」

 

 ヘイデスがスポンサーについて以来、物資の補給ばかりでなく故郷に残してきた家族の境遇に至るまで改善され、万全の心身で充実した訓練と実践を重ね、最新鋭機を有するシーマ海兵隊の戦闘能力は地球圏トップクラスだ。

 ベガ星以外の銀列連の各艦隊も因縁のあるDCに参加している民間からの善意の協力者達、更に上方からの圧力を強めている暗黒の破壊将軍ヴァルダー率いる第三艦隊の存在もあり、銀列連の敗色は刻一刻と濃くなっている。

 

 ブラッキー攻撃隊長のマザーシップが轟沈し、ゴーマンはモルスのジガジガによって討ち取られ、今またバレンドス率いる偽グレンダイザー部隊は剣鉄也とグレートマジンガー達の手によって、その命運を絶たれた。

 グレートブースターによってパワーを増したグレートマジンガーを前に、バレンドスは偽グレンダイザーをよく操って戦ったが、遂に人機共に及ばず破れる事となったのである。

 マジンガーブレードによって右腕を切断され、グレートブースターによって胴体に大穴を開けられた偽グレンダイザーが一歩、また一歩と後ずさりをする。

 

『ば、馬鹿なぁ、俺はベガ星連合軍の親衛隊長バレンドスだぞ!? そ、そうだ、このグレンダイザーが、グレンダイザーの性能さえ劣っていなければああああああ!!』

 

「違うな、そのグレンダイザーは偽物であってもかなりの性能だった。ただ俺とグレートマジンガーにはパイロット共々及ばなかっただけだ」

 

『お、おのれ、あああ、ベガ大王に栄光、あれええええ!! うぬうあああああ!!』

 

 最後の言葉を残して偽グレンダイザーと共に爆発の中に消えて行くバレンドスに対し、鉄也に人格はどうあれ強敵であったのは間違いなく、一握の敬意をこめてその最期を見届けた。

 バレンドスやブラッキーが倒されたのをきっかけに各戦線でも銀列連の幹部級が敗退し始め、戦況は一斉に地球連邦側へと傾いて行く。だがこれは後の事を考えると朗報とは言い切れない面があった。

 

 ガイゾックを支配するコンピュータードール8号は単独での地球人類殲滅を不可能と判断し、銀河中に散らばる同型機へ集結を呼びかけるのを決断し、ド・ベルガンとジャネラ、ゲロイヤーはお互いの全戦力を結集させてでもDCを倒さなければならないと覚悟を固める結果に繋がったからである。

 とはいえ、地球側からすればまずはオペレーション・ライアーの成功こそが、なによりも優先される。

 

「この状況でもなお退かんか。だが、それはベガ星連合軍だけの話。艦隊各員に通達、月の一部を不当に占拠した侵略者達の一角を崩すのだ。一層の奮起を期待する!」

 

 今回の艦隊総司令を務めるムバラクが艦隊の士気を鼓舞し、第二艦隊司令を務めるエイノーも地球至上主義者であるが故、地球そのものを狙うベガ星を始めとした銀列連はジオンやスペースノイド以上に憎悪すべき敵として戦意を滾らせ続けている。

 この凝り固まった思想ゆえ、大戦後はスペースノイドとアースノイドばかりでなく、異星の人々との協力なくしては戦乱のタネが無数に埋もれているこの宇宙を生き残れないと判断している地球連邦政府としては、エイノーはかなりの危険人物であった。

 これならまだ時勢を読んだ行動をしたジャミトフの方がはるかにましである。

 

 さていささか話が横道にそれてしまったが、少なくとも本作戦ならびに侵略者相手の戦いにおいて、エイノーの闘争心の高さは長所となり得るだろう。

 スペースジェノザウラーやジャベリン、量産型F91といったMS部隊ばかりでなく、三つの艦隊も前線に進み出て圧力をかけ、ベガ星連合軍の艦隊に止めを刺すべく火力を集中させる。

 

 既に戦いの趨勢を見極めて、この場では引いて戦力の温存に務めるべきだと判断していた各銀列連参加勢力も徐々に後退をし始めており、いつでもワープで逃げ出せるよう準備を進めている。

 唯一戦いを諦めない姿勢を見せているのはベガ星連合軍のみで、それこそ死を厭わない背水の陣であるからこそ厄介でもあった。

 

「バーニィ、右の敵をお願い。私は敵母艦を!」

 

 クリスチーナのクレヴェナールがHSD・キャノンとメガ・ビームキャノンを間断なく連射し、ズリル専用母艦の随伴艦であるマザーシップにダメージを与える最中、迫りくる円盤の編隊には、半ばアナハイムから押し付けられたザク50のパイロットになぜかなってしまったバーニィが対応する。

 人型というにはいささか異形めいたザク50はカテゴリーこそMSだが、実際のところはMAと呼ぶに相応しい機体であり、武装も胸部の大型メガ粒子砲に柱状の脚部に内蔵された大型ビームサーベルの二つという割り切りの良さである。

 本来は宇宙世紀130年にアナハイム所属のジオニック事業部によって開発され、コンセプトモデルとして発表された機体だが、この世界ではグリプス戦役相当の時間軸でのお披露目となった。

 

「こいつは細かく狙いをつけるのは難しいんだけどなぁ」

 

 思わずといった具合で愚痴を零しつつ、バーニィはそれでも一年戦争からのベテランらしい淀みない動作で操縦桿とコンソールを操作し、編隊の端を狙ってザク50の大型メガ粒子砲を発射する。

 綺麗な編隊を組む相手に対しては、編隊の端を担う機体から狙うのが効率的だと戦訓が教えてくれている。何機かのミニフォーは大型メガ粒子砲を回避し、ベガトロンビームによる反撃を行う。

 

「落とせたのは三機だけか。それならこいつでどうだ!」

 

 ザク50の脚部先端から大型ビームサーベルが展開されて、回避機動を取っていたミニフォーに斬りかかり、30mの巨大円盤を豪快に真っ二つにして高速ですれ違う。

 そうしてザク50と交差したミニフォーの編隊が弧を描いたところにベガトロンビームが降り注いで、残らず爆散させた。敵味方識別信号を確認したバーニィは、それをなしたのがルビーナの乗るマザーバーンである事を知って驚きを隠せなかった。

 

「ルビーナ王女の艦を前に出すのか!? いや、反旗を翻した王女が父と戦う決定的なシーンを見せる必要がある?」

 

 政治的な思惑が含まれている可能性を口にしたバーニィの前で、ルビーナの乗るマザーバーンとそれを守るベガ獣と円盤獣部隊が、グレンダイザーとグレンダイザーベガの戦う戦線最深部へと向かってゆく。

 ガンダルが移乗し終えて指揮系統を再構築したベガ星連合軍だったが、友軍の他勢力が撤退を決め込み、そして猛烈な勢いで艦隊を食い荒らすDCと地球連邦艦隊の勢いは、ガンダルが死力を尽くしても止められないものだった。

 

「く、地球人類はこの銀河で最強の戦闘種族とでも言うのか? 主砲のチャージは!」

 

 ガンダルは自分の足を撃ち抜いた兵士の肩を借りて杖代わりにしたまま、オペレーターに問う。いずれも不退転の覚悟を決めた忠誠心に篤い、死兵達である。

 

「現在、83パーセントに到達!」

 

「止むを得ん。それで撃つぞ。目標は敵巨大要塞! 射線軸上の友軍に退避勧告を……」

 

 ガンダルの言う巨大要塞とはタルタロスを指す。超ベガトロンビーム砲の第一射を防いだフェブルウスとタルタロスを危険視し、優先して落とすべき目標と定めたのである。第二目標はこれまでDCの旗艦として活躍し、ガンダル専用母艦を沈めたハガネだ。

 

「ガンダル司令、敵艦隊後方よりマザーバーンが高速で前進してきています」

 

「反乱者共の艦か。……いや、まさか」

 

「は、ルビーナ王女殿下の艦と思われます」

 

 ベガ大王に命懸けの忠誠を捧ぐ兵士達も相手がその大王の娘とあっては、勝手が変わってくる。声を潜めて問う兵士に向けて、ガンダルは一瞬、躊躇っただけで答えた。

 

「構わん。大王陛下に御子はおられない。反乱を起こした首謀者をこの宇宙から分子一つ残さず消し去るのが、我ら臣の勤めである! 構わん、愚かな裏切り者共の艦ごと地球人共を消し飛ばしてやれ!」

 

 ガンダルがルビーナの殺害を決断し、その決意が兵士達にも伝播して彼らが超ベガトロンビーム砲の発射シークエンスを進める中、彼らにとっての悲報が齎される。この時、既にタルタロスは次元転移砲の発射用意を終えていたのである。

 せめてルビーナの抹殺について質疑している時間が無かったら、同時発射に持ち込めたかもしれないが、時を巻き戻す事は出来ない。

 

「敵移動要塞に高エネルギー反応、並びに空間の歪曲を確認。おそらく、空間に作用する兵器です!」

 

「ちい、あちらが先か! 回避機動を取れ! 面舵一杯、総員、対ショック防御! 備え──」

 

 ガンダルが切羽詰まった状況でも出来る事を精一杯行う中、タルタロスの司令部ではパオロが艦体中央から展開したエネルギーリングより、強大なエネルギーボールの発射を命じた。

 

「次元転移砲、目標、敵旗艦キング・オブ・ベガ! この一撃で敵艦を沈める! 発射!!」

 

 エネルギーリングから射出された黒紫色のエネルギーボールは、途中でワープを行ってキング・オブ・ベガの鼻先に転移し、そのまま横倒しにした樽のような艦体を飲み込んで破壊エネルギーに満ちた異次元へと連れ去ってゆく。

 この予想外の現象を用いた攻撃にはガンダルも虚を突かれたが、いわば意図的にワープ事故を起こすようなものだと判断し、既に手遅れだと理解する。

 

「こうなってはキング・オブ・ベガの耐久力を信じるほかないか!」

 

 異次元に送り込まれたキング・オブ・ベガの艦体に全方向から破壊エネルギーが襲い掛かり、まるで隕石群の嵐の中に突っ込んだような、あるいはそれ以上の衝撃と振動がガンダル達に襲い掛かる。

 咄嗟に叫びそうになるのをガンダルは必死にこらえた。下手に口を動かせばそのまま舌を噛み切りかねないと判断したからだ。杖代わりの兵士と共にブリッジの床に這いつくばり、必死に体を固定する。

 

 そうしてガンダル達にとってあまりにも長く、実際には数秒程の時間経過の後、キング・オブ・ベガは通常空間へと帰還したが、先のウイングゼロとゼファーW0ライザーによる計六発のバスターライフルによって融解した装甲を中心に甚大なダメージを受けているのは明白だった。

 キング・オブ・ベガは数時間前の威容を失い、もはや浮力を保つ事も出来ずにゆっくりと月面へと落下して行く。かろうじて推進システムが生きているから、月を揺るがすような大衝突はなるまい。

 

 ブリッジには機関室や格納庫、居住区画などありとあらゆる場所からの悲報が届いており、連絡のない部署に関しては壊滅したと考えるのが妥当だった。

 そして連絡を受けるブリッジもまた天井の一部が崩落し、床も下層の建材の一部が突き出て、モニターやコンソールから火が噴いてその前に居た兵士達の命を奪っている。

 ベガ大王の乗艦として銀河に恐怖と共に知られたキング・オブ・ベガの終焉は、もはや免れようもなかった。

 

「む、無念、ベガ大王陛下の覇業を見届ける事もなく、死ぬとは!」

 

 ガンダルは崩落してきた床の一部の下敷きとなり、彼の杖代わりとなった兵士に庇われていたが、既に重要な臓器と骨がどうしようもないほど壊れている。

 ガンダルを庇った兵士は即死していた。自分に覆いかぶさる形で息絶えている兵士に向けて、ガンダルは血反吐を吐きながら労いの言葉を伝えた。

 

「お前の忠節はこのガンダルがしかと見届けた。安らかに眠るがいい。……ベガ大王陛下、このガンダル、お先にこの世からおさらばでございます。宇宙の支配者、恐怖と力の主、ベガ大王陛下に永遠不変の栄光あれ!!」

 

 内なるレディ・ガンダルの悲鳴を無視して、大量の血と共にガンダルはベガ大王の栄光を叫び、そしてブリッジと共に艦内部の爆発に巻き込まれてこの世を去るのだった。

 

<続>




年内完結予定です。


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第百八話 使えるものはなんでも使うしかない

「ファラフレイム、ロプトウス、マフー、被害甚大、救援要請が出ています!」

 

「第121機動大隊損耗率十五パーセントを突破!」

 

「敵マザーバーン級α1、α4、撃沈を確認。敵艦隊α、戦列が崩れます」

 

 ひっきりなしに挙がる報告に耳を傾けながら、ムバラクは第二艦隊、第三艦隊、そしてDC艦隊の戦況の把握にも努めていた。

 現在の地球連邦軍の上級将官の中でも、上から数えた方が早い能力を持つムバラクであるが、これだけの規模の異星人を中核とした軍勢との戦いは未経験だ。ジオン公国を相手にしてきた一年戦争とはまた異なる緊張感と危険性がある。

 

 エイノー提督の率いる第二艦隊は、サラミス改やマゼラン改が次々と沈んでゆくのも構わず苛烈な攻勢を続けており、スペースノイド嫌いが高じて異星人嫌いとなったエイノーの気迫に、艦隊そのものが憑りつかれているような戦いぶりだ。

 被害が甚大な代わりに敵勢力に与える被害もまた甚大である。

 敵勢力の指揮官級やエース格のほとんどを因縁のあるDCが引き受けているとはいえ、被害に目を瞑れば見事な戦果という他ない。

 

 暗黒の破壊将軍ヴァルダー・ファーキルの第三艦隊は、ハイドラガンダムに乗るヴァルダーが率先して前線に出て、襲い来る異星人の機動兵器を引き付け、第三艦隊の中で最も戦果を上げるという指揮官にあるまじき芸当をこなしている。

 第三艦隊は艦艇の数こそ少ないが、上方からの奇襲に近い攻勢を担っていたことに加え、狙っての事なのかヴァルダー自身が囮役を担っている為、被害が際立って少ない。

 

 銀河列強連合──銀列連+αの敵軍の勢いは明らかに衰えており、各戦線で部隊ごと壊滅している様子が複数確認されている。

 地球側も旧型艦や盾代わりに運用しているMDの損耗は如何ともしがたいが、有人機パイロット達の消耗が事前の想定よりも抑えられているのは幸いか。

 このまま状況が大きく変わらなければ、地球側の勝利が手堅いとムバラクは驕りを抜きに判断していた。

 そして彼に更なる決断を促す情報がDCより齎される。

 

「DC艦隊がベガ星連合軍旗艦キング・オブ・ベガ撃沈! 繰り返します、ベガ星連合軍旗艦キング・オブ・ベガ撃沈です! ただしベガ大王は機動兵器にてグレンダイザーと交戦中、今なお健在!」

 

 キング・オブ・ベガとベガ星連合軍の指揮を執っていたガンダルの死亡、更にその他の幹部格の立て続けの戦死によって、ベガ星連合軍を始めとした銀列連の各防衛線は混乱と綻びを見せ、それを見逃すムバラクではなかった。

 

「後退中の艦艇を除く全部隊を前進させよ。今が勝機を掴む最良の機会である。各員の一層の奮闘を期待する!」

 

 ムバラクの乗艦ジャンヌ・ダルクを含む第一艦隊の中核も前進し、銀列連に立て直す暇を与えまいと乾坤一擲の大攻勢を敢行したのだ。

 銀列連側の艦隊で最も強大な艦艇だったキング・オブ・ベガが落日を迎え、地球連邦軍各員の士気はムバラクの鼓舞も加わり、一気に跳ね上がる。

 

 最前線でも最も強い圧力にさらされているDCのメンバーも、目の前でキング・オブ・ベガの沈む姿を見た事で、戦場の流れの変化を敏感に感じ取り、疲れた体と思考に鞭を打ち、愛機と共に攻撃の手を休めず、更に激しくしている。

 この戦いを彼方の星で見ている人々の目にも、地球側の勝利に傾く天秤の姿が見えるような状況だ。だがそれでもまだ勝ってはいない。まだ“勝てる”の段階だ。これを“勝った”にするべく、ムバラクは攻めの一手を打ったのだ。

 

 

「えい、やあ、とお~」

 

 グレースの掛け声はなんとも気の抜けるものだったが、それと同時に振るわれるヒュッケバインボクサーのガイスト・ナックルとカタパルト・キックによって、周囲の敵機が原形を留めないジャンクへと変わるのだからギャップが凄まじい。

 本来のヒュッケバインMk-Ⅲ×AMボクサーではなく、ヒュッケバインに専用のボクサーパーツを装備させた機体である為、αやOGのヒュッケバインボクサーとは異なるデザインだ。

 ヒュッケバインMk-Ⅲと違い、トロニウムエンジンを搭載していなくても、ヒュッケバインにブラックホールエンジン、ボクサーパーツにMS系縮退炉を搭載している為、出力は決して引けは取らないはずだ。

 

「逃がしません~。ワン・ツー、ワン・ツーか~ら~の~!」

 

 気の抜ける掛け声とともにキレの良いジャブが叩き込まれ、標的にされた獣士や戦闘ロボが顔面や胴体に風穴を開けて、撃破されてゆく。

 さらにそこからヒュッケバインボクサーの各スラスターが青白い火を噴き、猛烈な勢いで加速した機体が重力場を纏った流星となり、強烈なカタパルト・キックを敵機の背中へと叩き込む!

 そのまま勢い止まらず加速するヒュッケバインボクサーの軌跡に沿って、数珠繋がりの爆発が生じて、同じ数だけの敵機が撃墜されていった。

 

「グレース、あまり前に出過ぎるな! 孤立したらいくらその機体でも厳しいぞ!」

 

 破壊力があり過ぎる為に突出してしまうグレースとヒュッケバインボクサーに向けて、注意を喚起したのはヒュッケバインガンナーを任されたアーウィンだ。

 高いニュータイプ能力を持ち、一年戦争時からのベテランパイロットである彼はヒュッケバインガンナーの性能を十全に引き出して、慌ててグレースのフォローに入る。

 この世界のヒュッケバインガンナーの基本的な武装は、ヒュッケバインMk-ⅢとAMガンナーの組み合わせと共通している。

 グラビトンライフルやGインパクトキャノン、グラビティリング、リープミサイルは共通するが、ヒュッケバイン側の武装であるマイクロミサイルやリープスラッシャーなどの違いがある程度……つまり極めて強力な機体であるのに変わりはないという事だ。

 

「ターゲット・ロック、逃げられると思うな!」

 

 アプサラス由来のマルチロックシステムとアーウィンの能力が組み合わさり、迅速にロックオンが終了し、ヒュッケバインの背部バインダーとガンナーのコンテナが開き、そこからマイクロミサイルとリープミサイルの二種が白煙を噴いて発射される。

 一発一発は準スーパーロボット級の敵機を撃墜する程の破壊力はないが、それらが肉食魚の群れの如く襲い掛かれば話は別だ。

 まるでサーカスのように縦横無尽の軌道を描いて襲い来るミサイルの群れを避けようとするもの、あるいは盾を構えて防ごうとするもの、あるいは破壊光線やミサイルを撃って迎撃しようとするものと対応は様々だ。

 

「隙だらけだな」

 

 だがミサイルへの対処にアクションを取らせる事こそがアーウィンの狙いだ。合計四門のGインパクトキャノンとヒュッケバインの握るグラビトンライフル、リープスラッシャー、グラビティリングの全てが別個に狙いを定められて、容赦なく発射される!

 視界とレーダーを埋めるマイクロ&リープミサイルの嵐にヘイトを奪われた異星人の機体に、次々とヒュッケバインガンナーの攻撃が襲い掛かり、月面に残骸の雨を降らし始める。

 

 一連の攻撃で浮足立つ敵部隊に更なる“凶”が襲い掛かる。弧を描いて戻ってきたヒュッケバインボクサーとジェス、ミーナのグルンガスト改が突っ込んできたのだ。

 ヒュッケバインがボクサー・ガンナーパーツとの合体によるパワーアップを果たしたのに対し、グルンガストは機体そのものに手を加えられる方向で一段上のステージへと昇っていた。

のに対し、グルンガストは機体そのものに手を加えられる方向で一段上のステージへと昇っていた。

 

「リニューアルしたグルンガストの力、たっぷりと見せてやるぜ!」

 

「推理するまでもなく、ここが正念場ね! 手加減は出来ないから!」

 

 六連装のミサイルに手裏剣を投げつけながら、青と赤のグルンガスト改がウイングに内蔵されたブースターを全開にして敵部隊のど真ん中へと勢い凄まじく切り込む!

 

「天に二つの凶星!」

 

 ミーナが両刃の剣を引き抜くと同時にボイスコマンドを叫び、ジェスもまた同じボイスコマンドを入力して行く。

 

「その名も計都羅喉剣!」

 

「暗・殺・剣! じゃなかった、暗剣殺!」

 

「まだそこを間違えるのかよ!」

 

「だってほら、暗殺剣の方が語呂はいいから、ね?」

 

 グルンガストを愛機にして数カ月以上戦ってきた二人だが、どうにもミーナはグルンガストの必殺技を言い慣れないらしい。

 だからといって、計都羅喉剣・暗剣殺の威力が減じるわけではない。マキシンガル合金や超弾性金属を持たない敵機であれば、一撃必殺の威力を持って敵機を切り裂いた。

 そこにグレースも加わり、殴って蹴り、アーウィンからの的確な援護砲撃もあって、彼らと交戦した敵部隊は見る間に壊滅するのだった。

 

 銀列連の各勢力がそれなり以上の戦力を供出し、ベガ星連合軍が死力を振り絞って挑んだ決戦はもはや趨勢が決したのも同然で、事実、各勢力の指揮官クラスは撤退を始めており、足止めの為の部隊を置き去りにして、残存戦力を戦場から退いている。

 地球人への憎悪を滾らせていたブッチャーもコンピュータードール8号がこれ以上の戦闘は無駄であると判断した為、目を血走らせたまま渋々撤退している。

 

 彼の乗るキルゼインとザンボット3×3の戦いはまさに死闘と呼ぶにふさわしく、双方が中破相当のダメージを負っており、援護していたコロニーのガンダム組も相当な疲労とダメージを受けていた。

 ダメージを受けているのはコロニーのガンダム組ばかりではない。全体的に優勢に戦いを進めている地球側だが、銀列連側も意気軒高、これまでよりも覚悟を決めた戦いぶりを見せている為、大なり小なりダメージを受けており決して楽な戦いではない。

 

 それでもいよいよ終わりが見えてきたのもまた事実である。

 ガンダルが戦死し、各勢力が撤退し始める中で欠片も戦意を衰えさせずに、デュークとの死闘を演じ続けているベガ大王。

 彼の存在がベガ星連合軍の全兵士を死兵へと変えて、文字通り全滅するまで戦いが終わらない原因となっている。

 

「おおおお!!」

 

「しぶといな、小童が!」

 

 機体性能で勝り、外科的な手段によって人機一体となったグレンダイザーベガを相手に、デュークとグレンダイザーは一歩も引かぬ激闘を続けている。

 ほとんど同じ武装だがその全てにおいて、グレンダイザーベガの方が威力は上回るという悪条件ながら、デュークは少しずつ敵の情報を冷静に分析していた。

 

(基本性能でグレンダイザーを上回っているのは間違いない。それに機体の反応速度も操縦という概念を越えている。だが、それこそが致命的な弱点!)

 

 グレンダイザーとグレンダイザーベガは五十メートルと離れる事のない近距離の間合いで、凄絶な戦いを繰り広げている。

 ダブルハーケンないしはシングルハーケンを手に持ち、超至近距離からのダイザービームにハンドビーム、ハンドミサイル、更には反重力ストーム、スペースサンダーが入り乱れて、一つの失敗が死につながる恐ろしい綱渡りの戦いだ。

 

 グレン合金と超合金ニューZの入り混じるグレンダイザーの装甲には多くの傷跡が刻まれ、パイロットであるデュークにも体力・精神共にすさまじい負荷がかかっている。

 だがこの苛烈な消耗戦こそがデュークの狙いだった。デュークはベガ大王がどうやって機体と一体化したかをまだ把握していないが、機体を肉体の延長線上と化した事で、生身の肉体とのギャップを克服できていない事を看破していた。

 

 いくらシステムがギャップを埋めようとも、高性能であるからこそ機体が拾い上げる無数の情報と人体には存在しない数々の機構との違和感は、加熱する戦闘の中で少しずつベガ大王に無視できない負担となって積り続けている。

 なにより大王として母星からの指揮に専念していたベガ大王は、グレンダイザーベガとの一体化に向けて訓練を重ねたとしても、戦士としては未成熟であった。あるいは鈍った分を鍛え直しきれていないといってもいい。

 それらを補う戦闘データやモーションパターンを機体が保有していたとしても、ベガ大王は一動作ごとに骨をヤスリで削られ、神経を火で炙られているような消耗を強いられている。

 

「まだまだあ!」

 

「ぬぅ、小癪な!」

 

 防御を捨ててひたすらに攻め立てるデュークの気迫に対し、ベガ大王は脂汗を滲ませて受けに回る。もしベガ大王が脳と重要な臓器だけを残してグレンダイザーベガと一体化していたなら、これほどの消耗は強いられなかったろう。

 生の肉体と機械の肉体を直接繋げる事はしても、生の肉体を捨てきる猶予のなかった弊害が、ベガ大王を苦しめていた。

 

 両機の間でハーケンの三日月の刃が何度も、何度も、何十と振るわれて、宇宙の王者と恐怖の大王が三日月の衣を纏っているかのような軌跡が描かれる。

 だが徐々に三日月と共に切り裂かれた装甲の破片や鮮血の代わりにオイルが飛び散り、機体とパイロットの命を削り合う血まみれの死闘となる。

 

「ぐぅぬおおおおおお!」

 

 ベガ大王の機体との一体化には、緩和されるとはいえ機体のダメージを自分のものと感じるという欠陥があった。全身に走る苦痛を気力で押さえつけ、ベガ大王は目の前の宿敵を倒す事に執念を燃やす。腹心たるガンダル、ズリルは戦死し、バレンドスやブラッキー、ゴーマンもまた戦場に散っている。

 ベガ軍のほとんどが戦闘不能状態に陥っており、今回の決戦に向けて参集した銀列連やムゲの部隊も戦力の多くを喪失して撤退している。地球人側も被害を受けてはいるが、侵略者側と比べれば被害は小さなものと言える。

 

「グレンダイザー、貴様を地球に逃がした過ちを今日、貴様を葬る事で贖ってくれるわ!」

 

「共に宇宙の平和を守っていたお前達の野望を見抜けなかったフリード王家の過ちを、僕が今日、贖う!」

 

 鏡合わせのように決意を吠えるデュークとベガ大王だったが、熱量を増して行く戦いの中でベガ大王の意識が完全に自分達だけに向く瞬間を、デュークは待っていた。

 斬撃の応酬の中でバランスを崩し、たたらを踏むグレンダイザーの姿を、ベガ大王はこれが誘いと看破し、ならばこれを踏み砕くのみと勇猛果敢に襲い掛かる。

 ベガ大王はグレンダイザーの一挙手一投足、さらにはエンジンの唸りに機体の内部を走るエネルギーの流れに至るまで全てを見抜いていた。ここからグレンダイザーがどんな動きを見せようとも、そのすべてに反応できる自信が、いや、確信がベガ大王にあった。

 

「デューク・フリード、覚悟!」

 

「いいや、覚悟するのはお前の方だ、ベガ大王!」

 

 だから、ベガ大王は背後から襲ってきた攻撃に反応できず、グレンダイザーベガはその勢いのままに大きく吹き飛ばされた。

 

「なん、だと!?」

 

 必死に体勢を立て直して、月面に片膝を突いた姿勢で着地するグレンダイザーベガのモニターに、Gインパクトキャノンを発射したフリードスペイザーが映り込む。ベガ大王の不意を突いたのは、これまで沈黙していたフリードスペイザーだったのだ。

 グレンダイザーからの遠隔操作によって必中のタイミングを見計らって放たれた重力砲撃により、グレンダイザーベガにダメージが通った事とそれ以上にベガ大王の集中が途切れた事が勝敗を分ける最大の要因となった。

 

「そこだあああ!!」

 

 

 Gインパクトキャノンのダメージに奥歯をかみ砕いて耐えるベガ大王にグレンダイザーから放たれた最大出力のスペースサンダーが直撃し、装甲各所にダメージを負っていたグレンダイザーベガは内部に甚大なダメージを負って、各所から爆発を起こし始める。

 

 そこへ月の大地を跳躍したグレンダイザーのシングルハーケンのX状に交差する斬撃が、グレンダイザーベガの胸部を人間だったなら心臓や背骨が露出するほど深く斬る。

 いかに頑丈でタフな機体であろうと、再生能力を持たなければ致命的なダメージだ。グレンダイザーベガはベガ大王へアラートを無数に発するが、ダメージの反映されたベガ大王にはもはや反撃するだけの力は残されていなかった。

 

「ば、馬鹿な、届かぬのか。このベガ大王が退路を断ち、肉体を捨てる覚悟を固め挑んだというのに、それでも、それでも! おのれ、地球人、おのれ、デューク・フリード!!」

 

「ベガ大王、お前の愚かな野望はこの瞬間に潰えた! グレンダイザーの名を汚す事も野望の手を宇宙へ広げる事も、このぼくが許さない!」

 

「ああ、ああ! フリード星の小僧が、知ったような、口をぉおをを!?」

 

 せめてもの情けとデュークが介錯しようとしたその寸前、前線へと進み出ていたマザーバーンの一隻からベガ大王へと通信が繋げられる。通信の主はルビーナだ。

 

『ベガ大王、いえ、お父様……』

 

「お、おま、えはルビーナか。ベガ星の裏切り者が今さら何の用だ。一度でも弓を引いた以上、貴様はすでに我が娘ではない!」

 

 父の死に際に覚悟を揺らがせていたルビーナだったが、血反吐を吐きながら強固な拒絶を見せるベガ大王の言葉に息を呑み、父の死に目に涙する娘から王に反旗を翻した王女へと表情を変える。あるいはそれはベガ大王がルビーナに見せた……。

 

『ならば私は新たなベガ星の女王ルビーナとして告げます。ベガ星の未来を誤った方向へと導いたベガ大王、貴方の命運はここで尽きます。これからのベガ星の未来は私と生き延びた民達が、この銀河の方々と共に築いて行きます』

 

「ああ、なんと惰弱な、弱者の考え方だ。……力と恐怖による支配こそが宇宙を征服する絶対の真理! だが、わしは敗れた。敗者の言葉には、なんの、力もありはしない。お前達はお前達の好きにするがいい。他の、誰かに、敗れるまでは……な」

 

『はい、その通りに致します。他者との相互理解と共存共栄、それこそが私達の生きるべき新たな未来と信じて』

 

 揺るがぬ決意と共に凛と答える娘の姿に、ベガ大王はわずかに口の端を持ち上げた。娘を手に掛ける覚悟を固め、実際に目の当たりにすれば殺すつもりでいたが、こうして殺さずに済んだことは、やはり幸いであったかもしれないと、そう安堵したから。

 

「さらばだ! デューク・フリード、さらばだ、地球人共! 恐星大王ベガは死ぬ! 見事な敵共よ、貴様らの戦いの末を地獄で見届けてやろう、ははははは、はははっは、ハハハハハハ!」

 

 オープンチャンネルで戦場の全ての敵と味方達に最後の言葉を残し、ベガ大王はグレンダイザーベガの起こした爆発に飲まれ、哄笑と共に肉片一つ残さぬままこの世から消え去るのだった。

 ベガ大王の戦死が明らかとなり、さらにそこへルビーナが呼びかけた事で、最後まで抵抗の素振りを見せていたベガ星連合軍の残存戦力はようやく諦め、地球連邦軍に降伏した。

 もっとも、有人機や艦艇はほとんど残っておらず、生き残ったベガ兵はほんのわずかであったけれども。

 

 

「そうですか。オペレーション・ライアーは無事に目標を達成したと。成功を確信してはいましたが、実際に成功の報告を教えていただけると肩の荷が下りた気持ちです。

 ええ、ありがとうございます。これからもプルート財閥は地球人類の自由と平和、そして友邦の方々の為に微力を尽くしますとも」

 

 そう答えた受話器を置いたのはヘイデス・プルート本人である。今、彼は超ド級次元要塞オリュンポスの中にある彼用の執務室にて、月面で行われた決戦の結果を知らされたところであった。

 オペレーション・ライアーの最中に万が一ヘルモーズなどの地球破壊規模の武器を持つ敵が介入してきた際、オリュンポスの主砲で返り討ちにするべく厳重に監視していたのだが、どうやらそれは杞憂に終わったらしい。

 

 今大戦が終局に向けて加速の一途をたどる中、ヘイデスはほとんどの時間をオリュンポスで過ごし、各方面との折衝に奔走している。

 今回の戦いでこちら側に着いたルビーナ率いる生き残りのベガ星人達の扱いに、銀列連に反旗を翻した被征服者達との戦後の関係、銀河有数の軍事力の保持者として知られるだろう歪な技術的進歩を経ている地球の立ち位置……。

 そしてありとあらゆる資本を吐き出し、大戦が終われば解体待ったなしのプルート財閥関係者の未来、自分の家族達にまだ見ぬ侵略者達の存在と悩みの種は尽きる事がない。

 

「それにしても、もう少し静かにしてもらえないものかな?」

 

 ヘイデスはやれやれと言わんばかりに溜息を零し、デスクの上のコンソールを操作して、ホロモニターの画面を変える。

 そこにはオリュンポスを十重二十重に包囲して攻め込んでくる、メギロートやデイモーン、ティアマート、ゼカリアにハバクク、アンゲロイ、更にはスペースロボ、エスパーロボといったバルマー・サイデリアル連合帝国の無人機部隊の姿があった。

 数は五百前後に達している。防衛部隊にアインスト達が加わっている為、数の不利はほぼないのが幸いだ。

 常駐しているアレスコーポレーションと地球連邦軍の精鋭達が対応し、問題なく撃退しているが、ユーゼスの狙いはオリュンポス内部に至高神ソル由来の隠し札や、別系統の切り札がないか探る為だろうか。

 

「もう手札はほぼ出し尽くして、あとは細々とした機体の改修とリサイクルくらいしか出来る事はないんだけど、まあ、疑ってくれる分にはその方がいいか。こちらに注意を向けられる」

 

 残る強敵はタウ・リン、闇の帝王、ブライ大帝、ムゲ・ゾルバドス、ザンバジル、ジャネラ、コンピュータードール8号、バラオ、ワーバラオ、そしてユーゼス。

 いくつか小粒の敵も混じっているが、特に霊魂の力を操るムゲやバラオ、因果律を操作する術を持つユーゼスは厄介極まりない。

 こちらに至高神ソルとしての力を取り戻しつつあるシュメシとヘマー、フェブルウス、またアインストにクォヴレーが居るとはいえ、いくら備えても足りるということはあるまい。

 

「それもどこまで通用するやら」

 

 ヘイデスの目は新たに差し変ったモニターの画面を映し出す。

 そこにはαシリーズ以降のデザインから無印時代のデザインへと戻ったメカギルギルガンの群れ、そして回収したDECとマシンセルを組み合わせて再生・復元されたエル・ミレニウムの群れが鎮座しているのだった。

 

<続>

 

●メカギルギルガン(無印デザイン)が開発されました。

●エル・ミレニウム(プルート財閥印)が開発されました。

 

 




更新遅くなりましてすみません。
ホビーのスペイザー装甲強化モードの存在を今さら知って、それだったら新しいスペイザーとか捏造しなくてよかったか、と愕然とした作者です。
今回で月面の決戦はおしまいです。既に下半期に突入し、このままでは年内に終わりそうにないのでこれからは巻いて行きます。


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第百九話 アクシズ、落ちるってよ

 ベガ大王の死に伴うベガ星連合軍の降伏は銀河列強連合の一角の崩壊を意味し、銀列連に決定的な敗北の気配が更に近づいたと言える。

 また同時にベガ大王の支配下に置かれていた多くの星々にとっては、恐怖と圧政からの解放を意味する慶事であった。

 ただしそれを成し遂げた地球側としては精々、ほっと一息吐けた程度でしかない。なにしろまだ戦わなければならない敵が多いのだ。

 

 敵部隊を撃破した後のムバラク、エイノー、ヴァルダー各艦隊、そしてDC艦隊はそのままスカルムーン基地を接収し、そこに残されていたベガ星連合軍のベガトロン鉱石やベガ獣を始めとした各種物資や機材を手にした。

 一部の戦利品は、遠からず女王として即位するルビーナ率いる新生ベガ星政府に譲渡される予定だ。果たしてルビーナとデュークが戦前のような関係に戻り、婚姻を結ぶのか、それとも牧葉ひかるの手を取るのか。

 地球、フリード星、ベガ星にとって何気に重要な婚姻問題だが、ヘイデスはそこまでもう関わるつもりはなかったし、そうはならない予定でいた。

 

 さて戦闘終了後、DC艦隊は損耗した機体の修理と補給、パイロットの静養を取る為、月のアレスコーポレーション・月方面本社に寄港している。

 月はフォン・ブラウンやグラナダをはじめ、アナハイム・エレクトロニクスの影響力の強い巨大都市が複数ある。スプーンから戦艦まで、宇宙世紀のあらゆる分野に進出しているアナハイムの影響力は今も強大だ。

 

 DCに参加しているエゥーゴ系のメンバーからすれば、それらの都市はスポンサーのお膝元である為、勝手知ったるなんとやらなのだが、DCとなるとやはりプルート財閥の意向が強く、また地球連邦としても色々と腹黒いアナハイムに対して、根回しなどはしても基本的に裏表なしに接してくるプルート財閥の方が色々と安心できるという事情もある。

 アルバトロス級やスペースアーク級、タルタロスからソーラーファルコンといった巨大艦も想定した港湾設備を備えるAC月方面本社は、フォン・ブラウンとグラナダの中間の辺りに存在しており、月方面本社の建設に伴って周辺の開発が進められて、小規模な都市へと発展している。

 

 月方面本社周辺の都市部もAC社員向けの商業施設と防衛用の施設がほとんどを占めており、さしずめエヴァンゲリオンの第3新東京市めいた場所である。

 そこで全力のおもてなしを受けるDCのメンバーであったが、やはり簡単に休養を許してはくれないのが、この世界だ。

 

 旧ジオン系の情報筋からオードリーとメイファ、ハマーンやドズルらを経由して情報提供があり、月の地下深くを爆破し、月そのものを破壊するハイライン計画が目論まれている事が発覚したのである。

 急遽、機体の修理が終わっていたMSを中核とした部隊を派遣して、計画を主導していたタウ・リンとガレムソン艦隊と交戦し、タクナとZプルトニウス、バナージとユニコーン、リョウとSガンダム、トキオとネオガンダム、ゼファーW0ライザーらの活躍をもって、ガレムソンを撃破し、計画の阻止に成功する。

 

 ただしグラン・ジオングで出撃していたタウ・リンは戦闘の最中に姿を晦ませて、まだこの世界そのものへの復讐を諦めていないのは明白だった。

 ガレムソンが戦死した際に、生き残っていた彼の部下達は予めガレムソンに言い含められていたようで、そのまま投降し、一度は地球を捨てた彼らは再び地球へと帰属する事となる。

 

 ハイライン計画を阻止する為の作戦が行われている間も、地球連邦軍は精力的に活動しており、先のオペレーション・ライアーの終盤で撤退したムゲ艦隊を追跡し、月に密かに建設されていた彼らの基地を発見するに至る。

 いち早く修理の終わったファイナルダンクーガとデザイアにガンドール、一部のスーパーロボットを主力とした部隊がムゲの月面基地へと奇襲を仕掛け、迎え撃つヘルマットの艦隊を撃破し、月面基地は情報を渡すまいと自爆したものの、ムゲを月から排除する事に成功する。

 

 地球人類の内部から出た膿みを片付け、DCのメンバーも英気を養ったタイミングで、ヘイデスはオリュンポスを月近くにまで移動させ、DCの指揮官クラスや各研究所の博士達、そして地球連邦軍の上層部との会談に臨む事となった。

 残る地球に潜伏している敵勢力と、太陽系内外の敵勢力への対処方針を共有する為である。

 ソーラーファルコンやピースミリオン、タルタロスにガンドールといった巨大な艦船も収容できるオリュンポスの中で、会議に参加していないメンバーは各々訓練や休養に時間を当てている。

 

 異星人のワープ技術を解析・応用する過程で、惑星間でもタイムラグの無い通信が可能になったのは、こういった時の会議には実にありがたい。

 いずれはマクロスシリーズのフォールド通信のように、恒星間や銀河の端から端までも繋ぐ通信網の礎となるだろう。

 会議の出席者はヘイデスをはじめゴップやティアンム、ワッケイン、ワイアット、ムバラクなどの軍高官、更にレビルやパオロ、バン・バ・チュンやモンテニャッコなどのDCメンバーに葉月博士や兜一族、早乙女博士や剛博士などなど。

 これまでも重要な局面においてしばしば顔を合わせてきた顔ぶれだ。

 先の戦勝に対する祝いの言葉や挨拶を早々に済ませ、参加者達は次の一手について言葉を交わし始める。残念ながら地球圏の危機が去ったとは言えない現状であった。

 

「それで次の目標は宇宙か、それとも地上なのかね?」

 

 手元に置かれたコーヒーを一口飲み、宇宙で栽培された珈琲豆の最高級品質の香りを楽しんでから、レビルがそう切り出した。

 退役して八年近い年月が経過しているが、ハガネの艦長として最前線で戦い続ける日々が、この老将に現役時代を超える威厳と迫力を与えている。

 それを鷹揚に受け流したのはゴップだった。軍と政府の橋渡しを務め、プルート財閥をはじめ各企業や財団との調整を担うこの人物がいなくなったら、地球圏は大混乱に陥るだろう。

 

『ミケーネ帝国に百鬼帝国、妖魔帝国は本拠地がいまだに判明しないまま。調査は続けているが、知りもしない場所を攻める準備は出来んさ』

 

 ヘイデスの知識もあってミケーネがエーゲ海周辺に存在している事は分かっているし、妖魔帝国の大まかな位置もインターミッション画面などのマップ表記で大まかに分かってはいる。

 だがどちらもこの時代に至るまで発見されずにいた場所であるし、特に妖魔帝国はバラオの魔力によって隠蔽されている可能性が高い。

 

 百鬼帝国は本拠地である科学要塞島そのものが移動可能な代物だ。こうなってくるとこちらから攻め込むよりも、総力を挙げて攻めてくる彼らを撃滅するのが得策というか、それくらいしか打てる手がない。

 いざミケーネ帝国などが動き出したら、地球を防衛中のデスザウラー、デススティンガー、ギルドラゴンを投入して、即座に滅ぼし尽くしてやる、と地球連邦軍の人々は鼻息を荒くして殺意を滾らせていたりする。

 ゴップに代わってレビルやヘイデス達、一応は民間人組に連邦軍の考えている作戦について説明を始めたのはティアンムだった。現状、地球連邦軍のほぼトップと言っていい人物である。

 

『現在、敵性勢力の中で拠点が明確に判明しているのは、火星に陣取るバーム星人になります。こちら側に付いたリヒテル提督や和平派の人々からのデータ提供で、小バームと呼ばれている人工天体の防衛機構や戦力は、ある程度、把握できています。

 こちらが小バーム攻略に向けた動きを見せれば、おそらくバルマー・サイデリアル連合帝国や銀列連へ援軍を求めるでしょうから、今回のオペレーション・ライアーと同等以上の戦力でこちらを迎え撃つものと推測されます』

 

「今回も、そしてこれからもそうだったが、バサ帝国はあまり征服した相手に対して関心がないようだな。真ジオン公国にせよ、バームにせよ、形ばかりの援軍を送るばかりだ。

 クォヴレー少尉の話によれば、バサ帝国の真の支配者はラオデキヤ皇帝ではなく、宰相のイングラム。それすらも偽名で本当の名前はユーゼス・ゴッツォか。ユーゼスの目的とするところも、推測が多いとはいえ私のような堅物では理解するのに大分時間が掛かったよ」

 

 とレビルはおどけるように肩を竦めた。ことがユーゼスとクォヴレーになると、並行世界や因果律云々と途端に話がSFやファンタジー方向に大きく変わってしまい、地下勢力に異星人に異世界人を相手にしてきたレビルやティアンム達にしても、頭の痛い話となる。

 はじめて聞かされた時のことを思い出して、ティアンムも苦笑いを浮かべる。

 

『政府の方でも随分と頭を抱える方が多かったようですな。ただ小バーム攻略に対してバサ帝国が本腰を上げて支援しないとなると、幾分が楽になるでしょう』

 

 その分、バサ帝国の戦力が温存される為、後の攻略が難しくなるのだが、それはこの場に居る誰もが理解している。

 小バームへの突入に関しては和平派の手引きで小バームを守るバリアーやプラズマ放電を突破する手筈となっているが、万が一それが失敗した時にはダイモスとフォボスのダイモライトが切り札となる。

 

『オリュンポスはバサ帝国の旗艦に対する睨みとして残すとして、小バームへはDC艦隊と連邦宇宙軍を動かすわけだ。ワープによる奇襲が出来ればいいが、生憎と連邦軍の艦艇はまだまだワープに対応しておらん』

 

 とこれはゴップである。戦後に始まるだろう他の恒星系に存在する勢力との関係を考えれば、既存の艦艇にワープ技術を持たせる改修か、フォールドブースターのような外付け装備、もしくは最初からワープ機能を持つ新型艦の開発は必須となる。

 そうでなくとも民間レベルでの交流も視野に入れれば、クロスゲートや機動戦艦ナデシコのチューリップのようなワープ機能を持つ巨大構造物が将来的には欲しいところだ。

 

 現状ではDC艦隊の一部がスポンサーたるプルート財閥の恩恵によって、ワープ技術を有するに留まっている。

 それでもトランザムブースターをはじめ、艦艇の航行速度を飛躍的に高める各種装備が開発され、すでに実績を上げているから、火星までの移動にかかる時間は一年戦争時に比べて飛躍的に短くなっている。

 ヘイデスはプルート財閥のみならずアナハイムやロームフェラ財団などへ、大量に発注されている艦艇用ブースターの生産数を頭の片隅で数えながら、口を開いた。

 

「そうなりますと、連邦軍の艦隊で堂々と小バームを攻めて、あちらの目を引きつけつつ、DCがワープを使って一気にあちらの懐に切り込むのが大まかな作戦の概要でしょうか?」

 

 ヘイデスの意見をワイアットが肯定した。実際に攻略作戦が発動された際には、連邦艦隊を率いるのは彼に内定していたのである。

 乗艦アルバトロス級デューク・オブ・ヨークの勇壮な出航シーンを、壮大なオーケストラの生演奏付きで脳裏に思い描いていたかもしれない。

 

『先日のオペレーション・ライアー以上の戦力を持って、小バームに挑む事となりましょうな。もちろん、バーム和平派の人々への配慮もありますし、かの人工天体には十億もの人々が冷凍睡眠しているという話です。

 不幸にもバームとは銃火を交える関係ではありますが、新天地を夢見て氷の眠りにつく人々を悪戯に砲火で焼く事は連邦軍人として、また一人の人間として恥ずべき所業です。

 当面の目標は小バームの防衛戦力を沈黙させ、和平派がオルバン大元帥を捕らえる援助をするものとなります。

 ただ場合によってはリヒテル提督やダイモスチームの力を借りる必要もあるかもしれませんが、なに、攻略そのものはDCの力を借りずとも成し遂げて見せましょう』

 

 そう自信に溢れた様子のワイアットだが、既にリヒテルや和平派からの情報によって、小バームの備える防衛機構は地球連邦側も把握しており、プラズマ放電を無防備な状態で受けるような失態はまず防がれるはずだ。

 ワイアットとしては小バームそのものには手を出さない分、艦隊の火力は小バームの防衛部隊に集中し、散々にこれを撃ち負かす予定なのだろう。

 

「素人質問にお答えいただき、ありがとうございます、閣下。私共、プルート財閥もお役に立てることならなんでもお申し付けください。アナハイムとは違いますが、ティーセットから戦艦まで、ご要望の品を期日までにきっちりと揃えて御覧に入れます」

 

『ふふふ、ヘイデス総帥直々のお言葉とあればこれに勝るものはありません。なに、英国軍人の末裔として、例え戦場が宇宙であれ、戦艦乗りとして負け戦を演じるつもりはありません』

 

 この時、ワイアットの率いる艦隊はスカルムーン基地よりも更に巨大な人工天体を対象としているのに加え、スカルムーン基地陥落を受けて銀列連の残存戦力が今度こそ背水の陣を敷く可能性は考慮されており、オペレーション・ライアーを上回る規模が予定されていた。

 艦隊の編成と慣熟訓練その他諸々が終了次第、小バーム攻略の為に火星へ出発して、オルバン大元帥はその人生の中で最大の絶望を味わうはずであった。

 

 

 地球人類側が粛々と、あるいは着々と小バーム攻略に向けた準備を驚異的な速度で進めている中、小バームの支配者オルバン大元帥はというと通信画面越しにラオデキヤに対して、今にも土下座せんばかりの勢いで必死に懇願していた。

 バサ帝国の強大な力に後押しされたバームならば、未開の辺境に住む野蛮人如き一捻りと侮っていたものの、他の侵略者達もまたまとめて地球人に散々に打ちのめされ、敗北を塗り重ね、今や本拠地たる小バームさえ危うい苦境に追い込まれるなど悪夢でしかなかった。

 オルバンの周囲にはゲロイヤーすらいない。そのお陰で、オルバンはどれだけ醜態を晒そうとも、小バーム内においては外聞を気にする必要はなかった。

 

『先のスカルムーン基地の戦いでの勝利によって、地球人達の勢いは留まるところを知らず増すであろうな』

 

 ヘルモーズの玉座からラオデキヤは敗戦をまるで気にも留めていない様子で、青白いオルバンへ硝子玉のように熱の無い視線を向けている。心底どうでもいい、そう思われているとオルバンが理解するにはそれだけで十分だった。

 

「ははあ! ベガ大王をはじめベガ星の者達はここが正念場と意気込んでおりましたが、実際に戦いが始まって見ればこの体たらく。あのような者達と一時でも手を結んでいたのは、このオルバンも恥じ入るばかりでございます」

 

 オルバンは全身から嫌な汗が流れ出るのを止める術を持たなかった。

 絶対的な支配者であるラオデキヤの不興を買い、自分が処断されないようにするために、彼の全能力は費やされている。

 その思考にバームの民達やその未来についての責任感など、欠片もありはしない。

 

『ほう、ではボアザンやキャンベルの者達と結んだ手を離すか? ガイゾックは独自に動き出しているようだ。ムゲはこちらの宇宙の拠点を失い、本拠地で体制を立て直している様子。お前達バームの者が地球を支配し、独占する好機には違いない』

 

 バーム単独の軍事力では太陽系はおろか地球の制圧すら不可能と看破した上での、ラオデキヤの発言である。小バームの防衛に専念するのならともかく、今さら各サイドや月、地球に侵攻する余力がバームにあるわけもない。

 意地の悪いラオデキヤの言葉に、オルバンは平身低頭しながら苦汁を嫌という程に味わっていた。もっとお前達が援軍を寄越して居れば、こんなことにはならなかったと怒鳴れたらどんなに良かったろう。

 

「はは、おそれながらボアザンのズ・ザンバジル、キャンベルの女帝ジャネラ共々、地球人に対する恐れを強く抱いておりまする。その恐れを利用して我がバームの尖兵として動かし、地球人達との戦いに差し向けられまいかと思案しておりまして」

 

『お前に考えがあるというのなら、それを試す前から否定する理由はない。地球人達の次の狙いがお前達バームの押さえる火星の解放、更には居座る小バームの攻略であるのは、容易に想像が付く。

 お前達もそれを察したからこそ、余に急ぎの連絡を取り、助力を乞うてきたのであろう? お前が危惧する通り地球人類の戦闘力と軍事力は事前の想定を上回る。そして今もまた急激な勢いで成長しているのだから、称賛する以外に他はあるまい。

 我らバルマー・サイデリアル連合帝国の尖兵とするにこれ以上相応しい種族はなく、そしてお前がバームの民同様に自分の手駒にしたいと欲を掻くのも至極当然のことである』

 

 オルバンが密かに小バームで行っている冷凍睡眠中の民を改造し、忠実な兵士に仕立て上げる計画ばかりでなく、地球人達にも同様の処置を行おうとしているのを、ラオデキヤはまるで心でも読むかのように言ってのける。

 顔を伏せていたオルバンが思わず顔を上げて、見開いた目を通信画面越しにラオデキヤへと向ける。それだけでラオデキヤの指摘が正しいと言っているようなものだったが、ラオデキヤは無関心な瞳のままだった。

 

『我らと遭遇した際にすぐに投降したお前の判断は、それが自らの保身の為であれ、バームを存続させるという観点においては最良のものだった。

 我が軍門に降った後も首を垂れて従うふりをしながら、反逆の機会を窺うその反骨心と野心も大したものだ。野望の叶う可能性が限りなく低いという点を除けばな』

 

「……全て知ったうえでわしに何も罰を与えぬおつもりか?」

 

『まだ企てているだけではな。それに明確な証拠もない。地球人が小バームに攻め込む時には相応の軍を出す。キャンベルやボアザンの残存戦力を合わせれば、地球人を退けられるだけのものは用意してやろう。

 この期に及んで戦力を出し渋るようならば、万に一つも勝ち目はあるまい。しかし、余に真の忠誠を誓っていたわけではないにしても、お前よりもタウ・リンの方が役に立ったな。間接的にだが、あの男はお前にとっても利益となる行為を今、まさに行っているぞ』

 

「そ、それはいったい……?」

 

 疑問符を浮かべるオルバンを初めて愉快そうに見て、ラオデキヤはとある動画データをオルバンにシェアした。

 

「こ、これは、アクシズ? アクシズが地球に落ちるのか!?」

 

 それはハイライン計画を囮にして、タウ・リンが画策した地球人類へ大打撃を与える秘策アクシズ落としであった。原作においてはシャア・アズナブルとネオ・ジオンが行うこの作戦を、タウ・リンと真ジオン公国が行おうとしているのだった。

 アクシズほどの大質量が地球に落下すれば、巻き上がった粉塵によって地球ほぼ全域が覆われて、太陽光は長らく届かずにいつ終わるとも分からぬ冬の時代を齎すだろう。

 またアクシズには大量の核兵器が保管されており、大規模な放射能汚染を招く。地球に住む人類の大部分は死に、また潜伏中の地下勢力も大打撃を受けるか、下手をすれば滅亡する可能性が高い。

 

 今の自然環境が回復しつつある地球という惑星を欲する勢力からすれば、決して見過ごす事は出来ず、一方で人類の全滅を目的としている勢力があったなら、支援しても構わないと考える程度には魅力的な案であった。

 地球が壊滅しても各サイドや月面、木星圏に人類は生き残っているが、そこから本大戦で逆転勝利といくのはほぼ不可能であろう。それこそ木星でジムの神様でも発掘されて、イデが地球人類にとって都合よく動くようなことでもなければ無理だ。

 

(なんということだ! これでは地球を第二のバームに出来んではないか!? 時間をかけてテラフォーミングをすれば環境は回復できるだろうが、わしの生きている間に終わるとは思えん!

 地球以外の場所に住んでいる地球人を利用すれば、わしに忠実な兵士に改造する分は確保できるだろうが、やはりラオデキヤは、バルマーは地球そのものには関心がないのか!?)

 

 オルバンの戦慄を他所に、ラオデキヤの無関心な態度と冷徹な眼差しに変化が訪れる事はついぞなかった。

 

 

 タウ・リンからのアクシズ落としが献策された時、ラオデキヤ──を操る真の支配者ユーゼスは面白い、と感じていた。

 この世界のシャア・アズナブルあるいはキャスバル・レム・ダイクンは家庭を持ち、子供の成長を楽しむ父親としての一面を強く持ち、また一パイロットとして前線で戦うなど、彼個人としてはかなり理想的な環境におり、アクシズを落とす必要性は欠片もなかった。

 実行犯と組織こそ違うが、それにもかかわらずアクシズ落としが行われようとしている。もちろん、目的は核の冬を齎して地球に住む人々を強制的に宇宙に上げる、というものではないが、これもまた因果の悪戯というものかと、ユーゼスは仮面の奥でほくそ笑んだものだ。

 

 ユーゼスはタウ・リンの献策を受け入れて、オリュンポスに派遣していた戦力をアクシズに回し、さらに作戦の成功率を高める為、フーレ級を外付けワープ装置代わりにして、アクシズを地球近海にまでワープさせるなど、手厚いサービスを提案したほどである。

 随分と手厚いサービスにはタウ・リンも驚いたものだが、ユーゼスがオルバンよりよほど面白いと楽しそうに笑いながら告げた事で、背を仰け反らせて大笑いし遠慮を捨ててこう口にした。

 

「なら、おれのやりたいようにやらせてもらうぜ? 構わないんだな?」

 

「構わんよ。アクシズが落ちても人類は滅びきらんだろうが、お前の憎悪が少しは晴れるだろう。私としてはこの窮地を前に地球人がどの程度の力を発揮するのか、それを観察できればいい。地球に核の冬が訪れようと訪れまいと、その結果に関心はない。

 ただ、そうだな。お前のその憎悪と執念には少しばかり賞賛を送ろう」

 

「くくく、やはりラオデキヤ皇帝よりもアンタの方が恐ろしい。連合帝国などと名乗っちゃいるが、それだってどこまで本当なのやら」

 

「ふむ。やはりお前は有能だな。持てる力の全てを使って後悔のないようにするがいい。作戦が成功しようとすまいと、お前にはもはや死ぬ以外に未来はないと他ならぬお前自身が理解しているのだろうからな」

 

「まあ、そういうことで。それでは仮面の閣下、短い付き合いだったが、おれにとっては実に都合のよい相手だったぜ。アンタへの感謝は本物だよ」

 

「ふ、誰かに感謝されるのは実に久しぶりだ。タウ・リン、お前はなかなかに面白い存在だったよ」

 

 そうしてタウ・リンとユーゼスは奇妙に和やかな会話を交わし、今生の別れを告げた後、タウ・リンと彼に最後まで付き従う命を捨てた連中は、ユーゼスの手によってアクシズと共に地球周辺宙域へとワープしたのだった。

 ワープアウト前に発せられる空間の変動を探知した地球連邦宇宙軍であったが、まさかアクシズを含む真ジオン艦隊が出現するなど寝耳に水もいいところ。

 

 大慌てで付近に居たパトロール艦隊や迎撃可能な戦力がかき集められ、地球に落下しようとするアクシズを食い止めようと必死になるが、ユーゼスによってかなり多くの援軍を得ていた真ジオン艦隊によって阻まれている。

 真ジオン艦隊はアンティノラやヴァイクルといった高級機に加えて、エル・ミレニウム、アンゲロイ・アルカ、偽ミケーネ神までもが顔を揃えており、極めて強力な機動兵器を含む構成となっている。

 

 そしてこれまで幽閉していたエンツォらを閉じ込めたアクシズを眼下に見下ろして、タウ・リンは次々と現れてはアクシズ落下を阻止しようとしてくる地球連邦軍をあざ笑い、青く輝く地球をその瞳に映す。

 地球そのものに向けて、タウ・リンがどんな感情を向けるのかは、定かではない。憎悪? 恨み? それとも罪悪感? 哀れみ? 無関心?

 だが彼がなんとしてもアクシズを地球に落とそうとするのに、変わりはない。

 

 全高百メートルを超える巨大な外殻ユニットと合体したグラン・ジオング──グラン・ネオ・ジオングのコックピットの中で、タウ・リンは哄笑する。

 地球製サイコミュ以外にユーゼスの手によって、カルケリア・パルス・ティルゲムだけでなく念動力関連のシステム、更には並行世界の技術まで導入して開発された『ハル・ユニット』は、ズフィルードクリスタルによって構成され、強力な再生能力を有し、量子波動エンジンの搭載によって、ジュデッカにも迫る極めて強力な外装だ。

 更には限界まで性能を底上げされたグラン・ジオングと自分の命に拘泥しないタウ・リンが加われば、その脅威はヘイデスや地球連邦軍の事前の想定をはるかに超える領域に達しているのは、想像に難くない。

 

「はははっは、命を捨てたいわけでもないくせに、俺達の邪魔をするもんじゃないぜ? ベルは鳴った! 盛大にな! ショーの幕はもう上がっている。早く来ないと世紀のショーを見逃すぞ、ディバイン・クルセイダーズ!」

 

 今も懸命にアクシズ周囲に展開した真ジオン艦隊に立ち向かう地球連邦軍やキュクロープスの部隊に目もくれず、タウ・リンは最大最強の敵達の到来を待ち侘びているかのようだった。

 それはアモン・ドックに乗って戦っているジェリドやゼク・ツヴァイで戦うマウアー、カクリコンからすれば、自分達は眼中にすらないのかと怒りを覚えてもおかしくない無視であった。

 

<続>

 




ホビーでマジンカイザーのバリエーションが出ているのは知っていましたが、グレンダイザーの装甲強化形態は知らなかったのです。

ガレムソンとヘルマットがサイレント退場しました。見せ場を作ってあげられなくて、ごめんね。


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第百十話 砕くにしても手順というものがあるお話

今回のアクシズは、壊すのは簡単だけどそれだとお話が成り立たないので、どうやって壊せないかを考えるのが大事というパターン。スパロボシリーズだと概ねそうなんですけれども。


 地球連邦軍パトロール艦隊とキュクロープスの混合部隊は、落下するアクシズとそれを守る真ジオン艦隊を相手に必死の抵抗を続けていた。

 パトロール艦隊はSFSに搭乗したゲシュペンストMk-IIとジェムズガンを主力とし、キュクロープスはゼク・アインとゼク・ツヴァイの編成となっている。

 これら機動兵器部隊をサラミス改級とクラップ級、アレキサンドリア級の艦隊が援護している形だ。

 

 キュクロープスのMSがゼクシリーズに刷新されているのは、ティターンズが独自運用していたマラサイとバーザム、ガブスレイを始めとした機体に対してマイナスイメージがついており、新しく生まれ変わった組織であると内外に示す為に新たなMSが求められたのだ。

 そこで採用されたのが小惑星ペズンで新世代の汎用量産機として開発が進められていた、このゼクシリーズである。

 

 ゼク・アインは実行する作戦によって両肩の肩ラッチに適切な兵装を装備し、あらゆる状況に対応するべく充分なペイロードの確保、またパイロットの生存性を高めるべくコックピット付近を重点的に重装甲化させた特徴を持つ機体だ。

 旧ジオンのMS-Xプロジェクトの流れを汲むゼクシリーズはモノアイカメラを有し、一見すればジオン系統の機体に見えるデザインである。

 

 ゼク・アインが汎用量産機とするなら、ゼク・ツヴァイは高火力、高機動性を備え大型MSであり、ゼク・アインに倍する性能を謳われ、本当にそれを実現せんとした機体だ。

 全備重量はゆうに151トンを超え、全高も27.44mとクィン・マンサやサイコガンダムシリーズを除けば、MSとしては最大級のサイズを誇る。

 

 両肩にマニュピレーター付きサブアーム二基ずつの合計四基を備え、豊富なオプション兵装を複数同時に装備し、使用可能な仕様となっている。

 機体そのものの性能はこの時代、この状況においても高性能と判を押せる基準に達していたが、機体サイズや整備性、運用面において大きな問題を抱えてしまい、ゼク・アインと比して著しく汎用性に欠けるという問題を抱えている。

 

 現在はキュクロープスの工廠でゼク・ドライの研究・開発が続けられているが、目下、キュクロープスの主力機体はこのゼクシリーズ二種となっている。

 ゼク・ツヴァイはカクリコンやマウアーのようなエース級に優先的に配備され、ジェリドのアモン・ドッグに関しては例外的に運用が認められている。

 ジェリドの素養と技量はアモン・ドッグの性能を十二分に引き出し、量産型スーパーロボットやサイコガンダム系列を持たないキュクロープスにおいては、まさしくスーパーロボット役を担える貴重な存在だったからである。

 

 雲霞の如く群がるデイモーンとメギロートの群れに向けて、カクリコンはゼク・ツヴァイのビーム・スマートガン、両肩のラッチに装備した六連装ミサイルランチャーをロックオンする端から撃ちまくる。

 以前、マラサイ部隊を率いてアムロの返り討ちにあったころよりも、格段に上がった腕前は次々と撃墜される無人機達の姿が証明している。

 

「こんなものを地球に落とすとか、奴らは正気か!」

 

 ジェリドとスリーマンセルを組み、カクリコンと同じくゼク・ツヴァイの性能をフルに発揮しているマウアーがカクリコンの叫びに答える。ひっきりなしに襲い来る敵に対し、まだ喋るだけの余裕があるのだから、彼女らもまだ若いながら歴戦の勇士だ。

 

「だから宇宙人なんかに協力するのでしょう? 真ジオンなんてのも騙りよ!」

 

 こちらの弾幕を大きく迂回して突破してきたゼカリアが振り上げたレーザーブレードを、マウアーは重MSとは信じがたい機敏さで、抜き放ったビームサーベルで斬撃を弾き返し、がら空きになったゼカリアの胴体にサブアームからシュツルムファウストを叩き込み、大穴を開けてやった。

 例え世間からの評価が最低であっても、彼らが選抜されたエリートであり、今大戦において数多の侵略者とたまにDCを相手に戦い、生き残ってきた事実に変わりはない。今では頼もしき地球人類の守り手なのだ。

 

「マウアー、カクリコン、デカいのをかます! 落穂拾いを任せるぞ!」

 

 ヴァイクル・ベンやティアマート、エスパーロボの一団がこちらに群がってくるのを認めたジェリドは迅速に僚友に指示を飛ばし、アモン・ドッグの複数のメガ粒子砲の照準を刹那で終わらせる。

 原作の漫画からして、アモン・ドッグの主要火器は直撃させればサラミス改級程度なら一撃で轟沈せしめるが、このスパロボ時空では技術革新によって更なる性能向上が見られており、マゼランだろうがグワジンだろうが轟沈級の火力だ。

 

「どいつもこいつも無人機か! さっさとスクラップになるんだな!」

 

 ゼク・ツヴァイよりも巨大なアモン・ドッグからメガ粒子の奔流が放たれて、避けきれなかった大型敵機が装甲を融解させ、爆発を引き起こす。

 特にヴァイクル・ベンを優先して狙った一撃だった為、ティアマートとエスパーロボらが三々五々と散るのに合わせ、カクリコンとマウアーは冷静に照準を合わせ、引き金を引く。

 

 パトロール艦隊とキュクロープスの抵抗を眼中に入れず、タウ・リンは機体との神経接続と脳波接続の具合を確かめるように、戦場に飛び交う人々の思惟に意識を研ぎ澄ませていた。

 それは生きる者達の悲哀や憎悪、怒り、それは死した者達の怨恨と悔恨などで、誰もが耳にした途端、耳を塞ぎたくなるか、あるいは耳が聞こえなくなることを願うような辛く苦しいものばかりだった。

 

(フン、生きていても死んでいてもコレか。それなら人間は生まれてきた事すら間違いだと思えてくる。こんなんでも進化してニュータイプになれば救われると思っている奴は居るのかね? 本当に居るのなら、そいつはおれよりもイカレているぜ。あるいは……)

 

 グラン・ネオ・ジオングのレーダーとタウ・リンの感覚は空間の揺らぎを感じ取り、最高で最悪のゲストが到着したのを知る。

 

「ただの夢見る幸せな阿呆か、だな。どう思う、ニュータイプ呼ばわりされているミュータントども?」

 

 からかうように呟くタウ・リンだが、果たして本当にそれだけだったろうか。アムロ・レイやシャア・アズナブル、あるいは月でタウ・リンと対峙したタクナ、バナージ、リディといった若い可能性達。

 彼らのような人間ばかりになれば、人類は少なくとも人類同士の争いから解放されるのか? ひょっとしたらタウ・リンは本気でソレを問いかけたかったのかもしれない。もっとも、どうせ無理だな、と嗤ってもいるのが彼という人間だが。

 

■共通ルート 第五十三話 憎しみの行方

 

 ソーラーファルコンに搭載された転移装置のフィールドをタルタロスが次元力によって拡大し、動けるDC艦隊がアクシズの落下軌道正面にワープアウトしてきた。

 ハイライン計画の阻止とムゲ月面基地の襲撃で消耗した一部の機体と艦艇を除く、DCの動員可能なほぼ全力出撃である。

 

「アクシズ周辺に展開中のフーレ級七隻により、アクシズを強固なEフィールドが覆っています! パトロール艦隊とキュクロープス艦隊の砲撃が通じなかったのは、あのEフィールドの為です!!」

 

「Eフィールド内部に重力異常と空間の異常を検知。Eフィールド内部に最低でも重力障壁と歪曲空間による二種の防御フィールドが展開されているものと思われます」

 

 オペレーター達から挙げられる報告を受けて、レビルは迅速に指示を飛ばした。現在のDCの戦力ならびに地球近海に展開している連邦軍の要塞砲や装備を駆使すれば、アクシズ級の巨大質量であっても、木端微塵に粉砕する事は可能だ。

 しかしEフィールドの展開に注力しているフーレ級七隻とアクシズ内部に増設された各種防御フィールド発生装置の存在により、超遠距離からの大出力ビーム砲や核ミサイル、光子魚雷が届かない。

 となれば──

 

「交戦中のパトロール艦隊とキュクロープス艦隊と両艦隊の機動兵器部隊に通達! アクシズを守るフーレ級はDCが叩く! 真ジオン艦隊の指揮官機に対しても、こちらが対応すると通達せよ。通常の戦力で敵う相手ではない」

 

「敵指揮官機と思しき巨大機動兵器の一部がライブラリに照合。中核となっているのはグラン・ジオングですが、更に外殻として別のユニットを装着しています。推測になりますが、アームドベース・オーキスや各スペイザーのような強化ユニットかと」

 

「十中八九、そうだろうな。バームや他の異星人勢力の姿は見えんが、バサ帝国の増援の可能性はある。敵機動兵器も強力な機体が揃っている。苦しい戦いが予想されるが、各員の奮闘を期待する!」

 

 偽ミケーネ神やエスパーロボ、アンゲロイ・アルカともなるとスーパーロボットでの対応が推奨される。ただちに出撃したDC機動兵器部隊は真ジオン艦隊の中でも、そうした特に危険な顔ぶれを狙って加速して行く。

 それに気付いて、これまでフーレ級付近に控えて動かずにいたエル・ミレニウム達が、一斉に叫び声をあげて宇宙空間を震わせ、次元力ブレスを吐き出す。

 ブレスの通過した宇宙空間に牙を思わせる巨大なDECの柱がそそり立ち、串刺しにせんとDC各機へと襲い掛かる!

 直撃すればMSの装甲はおろかスーパーロボットの装甲でも無傷では済まない攻撃に対して、マジンカイザーとヴァイスリッター、ヒュッケバインガンナー、ゼファーW0ライザー、ウイングゼロが動いた。

 

「その攻撃はもう見慣れたぜ、光子力ビィーーーム!!」

 

 魔神皇帝の双眸が輝き、光子力反応炉が生み出す常軌を逸したエネルギーが解き放たれる! 地球上から月面まで届く途方もない威力の光子力の奔流だ。

 

「これだけ数がいるとなると、ちょっと厄介だけど、こっちも星の屑の時とは戦力が段違いなのよね」

 

 手品のようにオクスタンランチャーを振り回してから、ヴァイスリッターがぴたりと照準を定め、槍を思わせる砲身から球形に圧縮された超エネルギーが発射された。オクスタンランチャーのハイパーグレネードモードだ。

 

「強敵であるのに変わりはないが、だからこそ俺達の腕試しに使わせてもらうぞ!」

 

 更にアーウィンの精密な狙いによって、ヒュッケバインガンナーの四門のグラビトンランチャーが一斉発射され、漆黒の超重力の砲撃が数百メートルにまで成長した水晶の牙の林へ突き刺さり、ヒビを入れてゆく。

 光子力ビーム、オクスタンランチャー、フルインパクトキャノンによって勢いを止められ、ヒビの走り出す次元力の水晶の牙に向けて、ゼファーとヒイロがトドメの一手を加えるべく最善最良のタイミングで動く。

 

「ゼロ、ゼファーW0ライザーとのターゲットリンクに問題はないな? ターゲットロック、障害を排除する」

 

 スペースコロニーすら崩壊させるツインバスターライフル、ターゲットリンクを同期させたゼファーも機体のクワッドバスターライフルを発射し、合計六本に及ぶバスターライフルは薙ぎ払うようにDECの牙を破壊してゆく。

 砕け散ったDECが粉雪のように宇宙に舞う中、ZⅢ、Zプルトニウス、Gクルーザー、ガンダムグリープ、L.O.ブースター、ウイングガスト二機、さらにサザビー用に開発されていた大型ファンネルを装備したガイア・ギアαを筆頭とした機体群が切り込んでゆく。

 エル・ミレニウム達が転移を繰り返し、コマ送りのように予測を許さない動きで距離を詰めてくるのに対し、エル・ミレニウムに宿る製作者の悪意を感知したシャアが一瞬だけ出現したエル・ミレニウムの一機に向けて、大型ファンネルとビームライフルを直撃させる。

 

「各機はレビル司令の指示の通り、フーレ級の撃沈を優先しろ。エル・ミレニウムには構うな。背後から撃たせはせん」

 

 更にシャアのガイア・ギアαの背後から、アムロの乗るRνガンタンクの長距離大火力砲撃が連続し、シャアと同じように一瞬だけ出現した他のエル・ミレニウムに百発百中で直撃を当てて行く。

 出現直後の為、Dフォルトを展開できなかったエル・ミレニウムの巨体に、GN粒子と縮退炉から抽出された高エネルギーがDECの塊を砕き、カラフルなエル・ミレニウムの巨体を抉って見せる。

 

「あれだけの巨体に装甲となるとダメージは少ないか」

 

 機体のセンサー機器ではなく、生身の感覚でエル・ミレニウムの転移のタイミングを把握する超人技を披露中だが、アムロの顔色は晴れない。

 もはやMSとは異なる新しいカテゴリーに分類されるべきRνガンタンクの砲撃を直撃させても、一撃で撃破できないエル・ミレニウムの耐久性と装甲性能の高さを改めて感じたのだ。

 今でこそ対抗手段は増えたが、エル・ミレニウムばかりでなくアンゲロイ・アルカもまた驚異的な基本性能を備えた機体だ。アクシズとフーレの周囲から動かなかったとはいえ、DCが到着するまでパトロール艦隊とキュクロープスはよくぞ持ちこたえたものだ。

 

 Rνガンタンクの砲撃を受けて、苦痛に身悶えていたエル・ミレニウムが生物的な怒りを感じさせる仕草を見せて、Rνガンタンクひいてはコックピットのアムロを睨みつける。

 その鼻面に体格では大きく劣るマジンカイザーのターボスマッシャーパンチが叩き込まれ、エル・ミレニウムの嘴らしき場所が砕け散る。

 それだけではDECで構成されるエル・ミレニウムは倒しきれないが、審判の巨獣と銀河に恐れられた兵器に痛打を浴びせたのは事実。

 

「いくぞ、マジンカイザー!」

 

 エル・ミレニウムを相手に単独で戦える機体はDCの中でも数少ない。そしてこの状況では、その全ての機体をエル・ミレニウムに割り振るわけにもいかない。エル・ミレニウムの数はフーレ級と同じく七機、これらを抑えるのに数を割くか、質を割くか。

 答えは質。アムロとクワトロの極悪コンビに加え、マジンカイザー他二機の合計五機がエル・ミレニウムの足止め、いや、撃破の為、この場に残っている。

 次元力のブレスを放とうとする他のエル・ミレニウム二体の尻尾を、勢いよく伸びた真ゲッター3の腕が剛力を以て掴む。どれほどの力が込められているのか、真ゲッター3の指が尻尾の表面を砕きながらめり込んでいた。

 

「地球が駄目になるかどうかって時なんだ、遠慮も手加減もできないぞ!!」

 

 さしもの緊急事態に温厚で戦いを好まないベンケイも容赦を忘れている。

 ブレスを吐く予備動作とエネルギーの移動を行っていたエル・ミレニウム達の不意を突いたベンケイは、そのまま伸ばした真ゲッター3の腕を鞭のように振り回し、尻尾を掴んだエル・ミレニウムを鉄球代わりに他のエル・ミレニウム達へと叩きつける。

 

「おらおらおらおらおら!!」

 

「フッ、ベンケイの奴、いつになく気合が入っていやがるぜ」

 

「こんな状況だ。誰だって気合が入るさ。ハヤトだってそうだろう?」

 

「ま、否定はしないさ」

 

 ベンケイの気合に呼応して出力を高める真ゲッター3の拘束から逃れられず、鉄球代わりにされた二体のエル・ミレニウムはさんざん他の仲間にぶつけられてから、アクシズへと向けて放り投げられた。

 そのままアクシズを守るEフィールドに激突するかと思われた二体だが、その内の一機が一瞬で姿を消すと転移を繰り返す移動方法によって、真ゲッター3の真上へ!

 

 さしもの真ゲッター3も悲しいかな、足がキャタピラとあっては宇宙空間での動きは鈍い。なにくそ、とベンケイが機体各所の装甲を展開し、無数のゲッターミサイルで迎え撃たんとする。

 即座にフォローに入ったのは、双子とフェブルウスだ。ガナリー・カーバーの先にSPIGOTを並べて配置し、威力を増幅させたレイ・ストレイターレットの砲撃が、真ゲッター3の真上に陣取ったエル・ミレニウムを横から飲み込む。

 

「狙いが分かりやすいね!」

 

「いけいけいけー!」

 

 シュメシとヘマーの声に応じて、レイ・ストレイターレットの出力は増して行き、次元力の扱いに関してエル・ミレニウムはおろかゼル・ビレニウムすら凌駕するフェブルウスの攻撃に耐え切れず、エル・ミレニウムはそのまま次元力の奔流の中で消滅する。

 

「まずは一機! エル・ミレニウムではもう僕達を止められないよ」

 

「御使いの威圧もない上に、そもそも次元力の制御機能は私達の方が上」

 

「僕達の居る戦場で思う通りに戦えるとは思わない事だ」

 

 これで残るエル・ミレニウムはターボスマッシャーパンチとRνガンタンクの砲撃でダメージを負った二機を含む六機。それに対してフェブルウス、マジンカイザー、真ゲッターロボ、Rνガンダム、ガイア・ギアαの五機が対峙する。

 全盛期に及ばないとはいえ次元力制御に長けたフェブルウスの存在により、次元力制御に妨害を受けるエル・ミレニウムの周囲を、次々とDCの機動兵器達がすり抜けて行き、アクシズを守るフーレ級を目指す。

 

 自分の目を疑いたくなる突破力であっさりと防衛網を貫いてくるDCに対し、タウ・リンはこんな戦場まで自分についてきた阿呆共に発破をかけた。

 どいつこいつも惨めでクソッタレな人生を送り、なにもかも破滅してしまえと願い、そうでもなければ恨みや憎しみを晴らせなくなった、『終わった』連中だ。

 

「さあ、やるぞ、クズども。お偉い正義の味方に殺されて、殺して、ついでに地球と人類を滅ぼしておしまいにしようじゃねえか!」

 

 薬物や外科的手段によって即席の強化人間となった者達が、グラン・ジオングやアンティノラのコックピットからタウ・リンと同じように笑いながら答える。

 

「ははは、そいつはいいや! アクシズが地球に落ちるのを眺めながらあの世行きだ」

 

「一大スペクタクルだな。地球が青くなくなるのを見るには、特等席だ!」

 

「地球が終わればスペースノイドもアースノイドも無くなる。あたしらで戦争の歴史を終わらせてやるよ」

 

 ヌーベルエゥーゴ時代、あるいはそれ以前からタウ・リンと徒党を組み、もはや自分の命を省みる事もない彼らは自ら望んでユーゼスに強化改造を施され、単純な身体能力であれば人間の限界値を突破している。

 ティターンズやクロスボーン・バンガードが作り上げた、どんな強化人間よりも優れた生体パーツと評してもいいだろう。

 ましてやアクシズを地球に落とせるのなら、そのまま死んでしまっても構わないと覚悟を固めているとあっては、これは恐るべき死兵であった。

 

 タウ・リン達真ジオンの者達から発せられる壮絶な憎悪や怨恨、死に狂うかのような感情の発露は目に見えない嵐となって、カミーユやジュドー、バナージら若きニュータイプ達の精神に無視しえない負荷となっている。

 同調、共感が過ぎればそのまま自分も死と破滅を望んでしまいそうになってしまいそうだ。そして生きながら死んでいる連中が喜々として襲い掛かり出すのに合わせ、ここで使い捨てとなるビクターらホワイトファングからの離反者達の姿も混じっている。

 

 前回の戦いの時と同様にアンティノラを与えられたビクターは、カルケリア・パルス・ティルゲムとより深く接続した状態となり、全身に満ちる万能感に浸りながら、配下のビルゴ³(キューブ)に指示を出す。

 ビルゴ³は全て改良型のMDだ。ビクターに付き従ってホワイトファングを離れた──追放と言い換えてもいい──者達は全員がビクター同様にユーゼス式強化手術を施され、ヴァイクルに搭乗している。

 疑似的な念動力を与えられた彼らはアンティノラとヴァイクルの性能を引き出す生体パーツとなり果てて、タウ・リン一派とは違いほとんど自我を残していない有様である。

 

「見ているがいいカインズ。見るがいいジオン・ズム・ダイクン。見よヒイロ・ユイ。新たなコロニーの指導者たる私の新たな力と新たな威光。

 地球などがあるからコロニーの住人が虐げられるのだ。ならば地球を潰して月も壊してコロニーだけが人類の生きる世界としてしまえばいい。そして私こそがコロニーの指導者として永遠に君臨するのだ」

 

 アンティノラのコックピットの中で、四方から伸びるコードを皮膚の下に潜り込ませた状態のビクターは焦点の合わない瞳で抑揚の失われた妄言を繰り返していた。その姿に人間としての尊厳も人格も残されてはいない。

 より効率的にアンティノラを機能させる為の役割だけが求められ、強化された姿だった。他のヴァイクルにしても同じ様子だ。

 ガレムソンがハイライン計画に参加し、部下達に戦死した際には投降するよう厳命していたのは、彼らのこの惨状を知ったからであった。

 

 ビクターのアンティノラ、ヴァイクル、更にヴァイクル・ベンから無数の攻撃端末が放出され、見る間に数百を超える悪意と殺意がアクシズの周辺に広がってゆく。

 これにすぐさまマーフィーらが応じた。四機のクインリィ・フルアーマーとフォウのサイコ・インレ、ゼロ・ムラサメのHi-νガンダム、レイラのナイチンゲールが各種火器とファンネルを展開し、高速で飛翔する攻撃端末に狙いをつけて撃ち落とし始める。

 

「細かいのは俺達で排除するぞ、大物はスーパーロボットを軸に落として、フーレを沈める」

 

 マーフィーの号令に従ってエリアルド、カール、エイプリルがそれぞれ攻撃端末の撃ち落としから、まずは反応が速いが動きの単調なヴァイクル・ベンとビルゴ³に狙いを定めて数を減らしにかかる。

 機動兵器部隊だけでなくハガネやシロガネを含むDC艦隊も積極的に前に出て、その豊富な火器と火力を持って大型高耐久の敵機とフーレ級の撃沈に向けて行動している。

 

 ただ場合によってはアクシズを粉砕する可能性も考えられる為、タルタロスの主砲や光子魚雷の類は温存が図られている。アクシズの守りは剥がせたが、壊す為の手段がありません、では洒落にもならない。

 いざという時の切り札を温存しつつ戦うDCだが、彼らはまだアクシズに生きた人間が残っている事を知らない。ハマーンとミネバ、民間人を逃がし、アクシズに残ったエンツォ一派、更にはこれまでの戦いで捕虜にされていた地球連邦の軍人達。

 彼らを“嫌がらせ”目的でアクシズに残しているとDCに伝える最高で最悪のタイミングを、タウ・リンは静かに待っていた。

 

<続>

■ゼク・アインが開発されました。

■ゼク・ツヴァイが開発されました。

 

■タウ・リン

・強化人間L9

・念動力(偽)L7(※念動力のレベル-1の効果)

・二回行動

・精神耐性

・底力Lv9

・プレッシャーL4

 

■エースボーナス

 戦闘時、敵キャラクターの特殊スキル『ニュータイプ』『強化人間』のスキルレベルを2下げる

 

こんな感じの特殊スキルとエースボーナスです。いかがでしょう。

 



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第百十一話 前後左右上下全て地獄

キン肉マンネタと声優の神谷明さん、石丸博也さんネタがあります。


 命を捨てたタウ・リンの配下達ともはや自我すら失ったビクター達の混成部隊が激しい勢いで攻撃を重ねてくる中を、数々のスーパーロボットとリアルロボット達は怯まずに突き進む。

 敵が死力を尽くして阻んでくる事など考えるまでもない。ならば彼らのするべき事は一分一秒でも早く敵防衛線を突破してフーレ級を沈め、アクシズの守りを一つずつ剥がして行く事だ。

 

「あの動き、前に見たビクターとかいうの? だが、あの反応速度は!?」

 

 アディンはガンダムグリープのビームランサーで迫りくるシュムエルの小隊と斬り結びながら、時折、こちらに砲撃を加えてくるアンティノラのわずかな動きを見てそのパイロットを看破した。

 PXモードを温存しているとはいえ、既に一流の更に上澄みと言える実力を得たアディンはシュムエル小隊をあしらいながら、アンティノラの動きの差異を認めていたのだ。

 

 クレヴェナール、デルフィニウム、ザク50、アハヴァ・アジールの反撃の大火力砲撃がヴァイクル・ベンやエスパーロボを吹き飛ばし、いくつもの爆発を生む中をガンダムテルティウム二機、ディジェSE-R、更にシルエットフォーミュラの機体群が駆け抜けて行く。

 迂闊にアクシズに近寄り過ぎれば、アクシズを守る最低でも三重のフィールドに接触し、機体に無駄なダメージを負ってしまうから、戦闘機動を取るにも注意の居る状況だ。

 

「コロニーのガンダムなど必要ない必要ない必要ない私がコロニーの力だ私がコロニーの意志だスペースノイドの代弁者だ」

 

 ビクターのアンティノラがタキス・ミサイルによる広範囲攻撃を行いながら突っ込んでくるのを、オープンチャンネルで垂れ流されるビクターの妄言が癪に触っていた五飛のアルトロン、デュオのデスサイズヘルが真っ先に迎え撃つ。

 

「コロニー、コロニー連呼されてちゃ、俺達が相手をしなきゃだよな。万が一にもこいつがコロニーの代表みたいに思われたら、心外にもほどがあるぜ」

 

 心の底から嫌だとぼやくデュオに珍しく五飛も同意を示す。アルトロンのツインビームトライデントでアンティノラのフォトン・ソードとアサシン・バグスを捌きながら、視線は決してアンティノラから外れる事はない。

 

「同感だな。ついには傀儡になり果てたコイツがコロニーの総意などと、欠片でも誤解されては敵わん。ましてやより巨大な悪に飲まれた悪如きではな!」

 

 まさに達人の手練でフォトン・ソードを弾いた瞬間、アルトロンの尻尾から二連装ビームキャノンが発射される。両手が塞がっていても、仮に失ったとしても、自在に動き、攻撃できる尻尾付きの二連装ビームキャノンは相手の意表を突くのにも有用である。

 しかし、これに反応した念動フィールドがアンティノラの胸部前面に展開されて、威力を減衰させることに成功する。流石に完全に防ぐのは叶わずに、胸部装甲に罅が走るが、それもズフィルード・クリスタル製の機体はすぐに再生してみせるだろう。

 

「私に傷を付けるということはスペースノイド全てを傷つけるのと同意ィイ!!」

 

 これまでマシーンのように淡々としていたビクターだったが、新しい肉体と化したアンティノラを傷つけられたのを切っ掛けにして、皮膚の内側に潜り込むコードに負けない太さの血管を浮かび上がらせて、怒号を発する。

 時間限定で疑似的な念動力者に改造されたビクターはカルケリア・パルス・ティルゲムの影響もあり、リミッターの無いシステムに突き動かされて情緒が破綻している。

 感情を失っているかのように振舞っていると思えば、念動力の出力を高める為にシステムに脳を刺激されて、怒らされ、憎まされるのだ。

 

 アンティノラが百足のような下半身を振り回し、横殴りに叩きつけてくるのをアルトロンは身軽な動きで回避する。そこへさらに襲い掛かってくるアサシン・バグスを把握し、追撃を避け切ったのは流石の技量と経験値だった。

 下半身を振り回す大きなモーションで隙を見せたアンティノラに、デスサイズヘルが密かに忍び寄り、ツインビームサイズが振るわれて装甲にいくつもの斬撃痕が刻まれた。

 

「まったく目も当てられない醜態だぜ。ま、バサ帝国の連中に負けたら、地球人は全員、こんな感じにされる危険性があるらしいけど、よぉ!」

 

 デスサイズヘルに向けて振るわれるフォトン・ソードを紙一重で回避し、システムに突き動かされるビクターはアルトロンもデスサイズヘルも自機から距離を置いているのを察知し、こちらに照準を合わせるヘビーアームズ改を捕捉した。

 念動フィールドの出力を全開にして防御態勢を取ったアンティノラへと向けて、ヘビーアームズ改の装甲各所が開かれて、凶悪なミサイルの弾頭が露わとなる。

 

「反応は速いが、場当たり的だな。有人機のアドバンテージを活かしきれていない」

 

 トロワは人体改造されたビクター自身が戦闘慣れしていない所為で、せっかくの人機一体の状態を持て余しているのを正確に分析していた。無数のビーム弾とミサイルの数々がアンティノラに殺到し、爆炎の中に飲み込んでゆく。

 念動フィールドを突破したいくつかのミサイルとビームにダメージを受けたアンティノラが爆炎の中から飛び出すが、どこへ逃げ出そうとも追撃が行えるよう既に包囲は完成している。

 アンティノラの左側面からサンドロック改が既に距離を縮めており、大上段に構えられたヒートショーテルが振り下ろされ、アンティノラの左腕が付け根から斬り飛ばされる。

 

「オウカさん、ゼオラさん、今です!」

 

 サンドロック改からカトルの指示が飛び、控えていたグランドスター小隊が弾けるように動き出す。

 オウカのラピエサージュ・シンデレラが折り畳まれていた銃身を展開し、ゼオラのビルトファルケンは超合金ニューZ製の特別弾のカートリッジをオクスタンライフルに装填。

 

「オーバーオクスタンランチャー、マキシマムシュート!」

 

「オクスタンライフル、NZBモード、ターゲットインサイト!!」

 

 光子力エネルギーとゲッター線が生み出す高エネルギーの奔流がアンティノラの下腹部を撃ち抜き、超合金ニューZの銃弾が胴体と胸部を貫いて次々と穴を開ける。

 いくら再生能力を持つズフィルード・クリスタルとはいえ、再生には相応の時間を有する大ダメージだ。機体と物理的にリンクしている為に、ビクターの肉体に機体のダメージがフィードバックされ、がくがくと全身が震えて口の端から血の泡が零れ出す。

 

「私わたしわたしは完全なる平和を成す完全なる人類の完全な、完全な、し、し、指導……」

 

 ビクターは機体ダメージによって残されていたわずかな思考能力も粉砕され、こうなってもなお残っている欲望、あるいは願いのみを壊れたレコーダーのように繰り返す事しか出来なくなっている。

 アンティノラに搭載された人工知能は念動力を起動させる為だけの生体パーツと化したビクターを修復するべく、コックピットのズフィルード・クリスタルを使い、彼の体を外と内側から浸食し出していた。

 

 まるでデビルガンダム細胞に侵されて、ゾンビ兵と化しているかのような光景だが、それをビクターが認識できなかったのは、かえって幸せであったかもしれない。

 その光景をいくら敵対しているとはいえ、カトルやゼオラが通信越しに目撃しないで済んだのも、やはり、幸いと言うべきだったろう。

 苦痛に身悶えするように異形の巨体を震わせるアンティノラに向けて、ウイングを展開したビルトビルガー、更にヴァルシオーを思わせる追加装甲を纏ったヴァルシオーラが止めを刺すべく一気に距離を詰める。

 

「イチバチで決めるぜ!」

 

 ビルトマジンガーブレードを抜き放ち、一気に距離を詰めるビルトビルガーを慌てた様子でヴァルシオーラが追いかける。

 アラドも十分歴戦の猛者なのだが、どうしても調子に乗りやすくて危なっかしいところが抜けないので、小隊を組む他の三人はハラハラとさせられる事が多い。

 

 ゼオラには及ばないもののアラドとの連携経験は山ほど積んでいるラトゥーニは、ほとんど完璧な呼吸でアラドの切り込みに合わせた。

 ビルトマジンガーブレードがアンティノラの首元を一文字に切り裂き、すれ違いざまにアンティノラが残る右手のフォトン・ソードで斬りかかろうとしたのを、ヴァルシオーラのディバイン・ブレードが受け止め、弾き返した刃で右肘から斬り飛ばす。

 

「アラド!」

 

「おう、クラッシャー・セットアップ!」

 

 ラトゥーニの一言に込められた意図をアラドは正確に理解していた。すぐさま旋回したビルトビルガーは右腕のハサミを開き、瞬時に高熱化させる。

 グレートマジンガーのブレストバーンの機能を応用して開発されたヒートシザースは、これまで何体もの強敵を葬ってきた必殺の武器だ。今回もこれまでと同様に抜群の切れ味と高熱により、アンティノラの首を挟み込み──

 

「つかまえた! このまま、一気に!」

 

 金属の軋む音がこちらにも聞こえてくるような光景は、アンティノラの首が切断され、刎ね飛んだ事ですぐに終わった。

 

「よっしゃあ、どうだ!」

 

 挟み切ったアンティノラの首にきっちり三連装のレールガトリングを撃ち込み、木端微塵にしつつ、アラドは喝采を上げる。

 アンティノラが両腕を切り飛ばされ、胴体を穴だらけにされ、腹部を抉られ、頭を刎ねられて、それでもかろうじて爆散は免れているあたり、流石の耐久性と称賛するべきか。

 

 死の淵に追いやられた事でビクターに意図的に残されていた生存本能が刺激され、カルケリア・パルス・ティルゲムが活性化して脳組織の崩壊も構わず、念動力を強制的に引き出す。

 ズフィルード・クリスタルが異常に活性化し、機体の傷口が泡立つと次々と新しい装甲とコードやフレームが生まれて行く。それはまるで悪い夢でも見ているかのような光景だ。

 

 これまで把握されていたアンティノラの性能ではあり得ない光景に、さしものオウカも絶句する中、冷静に対処したのはゼロシステムによってこれに近い未来を見ていたヒイロだった。

 エル・ミレニウムへの対処をフェブルウスや真ゲッターロボ、マジンカイザーなどに任せた彼はコロニーの人間から生まれた地球人類全体の敵に対して、コロニーの人間として筋を通すべくツインバスターライフルの照準を再生中のアンティノラへ固定する。

 

「もうお前は眠れ。これ以上、道具にされる必要はない。そしてお前の導きも人々には必要ない」

 

「わ、わたじ、は、か、カーンズ、私を認め……!」

 

 再生途中であるがゆえに致命的に装甲が柔らかくなっているアンティノラは、ツインバスターライフルの最大出力の直撃には耐え切れず、コックピットのビクターもろとも装甲の一片を残すことなく完全に消滅した。

 そしてこの宇宙から消滅する寸前になってなおビクターが最後に口にしたのは、カーンズに対する承認欲求だった。それが死の寸前に取り戻した正気で口にした言葉だったのか、狂気の中で口にした言葉だったのかは、誰にも分からない事だった。

 

 ビクター一派が壊滅する中で、エル・ミレニウムも時間こそかかっているが、一機、また一機と撃墜されている。

 御使いの手を離れている事、次元力を扱う機体として完全上位互換であるフェブルウスと双子が存在し、次元力制御に干渉されている事、これらのマイナス要素に加えて、エル・ミレニウムと戦っているのが真化を経ずとも極めて強力な機体群であったことがその理由だ。

 偽りの星の屑に於いて、初めてエル・ミレニウムと交戦したキョウスケとエクセレンは、今回のエル・ミレニウムがこれまで交戦してきた中でもっとも弱いと如実に感じていたほどである。

 

「相対的にこっちの戦力が上がったっていうのもあるでしょうけど、それよりもこのカラフルモンスターキングちゃん達のパワーが明らかに落ちているわよね?」

 

 エクセレンはヴァイスリッターのセンサーを注視しながら、エル・ミレニウムの一機を共同で仕留めたばかりのキョウスケに問いかけた。口調は普段のものだが、客観的な情報分析の上での発言であるのを、キョウスケは理解している。

 キョウスケは胸部にステークを叩き込み、上半身を木端微塵にしたエル・ミレニウムから離れる。その間に、空になったビームカートリッジはサブアームが再装填を終えている。

 

「ああ。有人機と無人機の違いで動きが対処しやすいのもあるが、純粋にパワーが落ちている。Dエクストラクターと同じ次元力で稼働している機体だと所長が言っていたが、フェブルウスの影響だろうな」

 

「デバフって奴? たしかに双子ちゃんとフェブちゃんが気合を入れるのに合わせて、あっちの機体の出力が落ちているみたいだし、持つべきものは頼りになる味方よね~」

 

「俺達の三分の一程度しか生きていない子供に頼る情けなさから、目を背けられればな」

 

「おまけに年を取るのも倍以上速いっていうのも忘れちゃだめよ」

 

「……やりきれんな」

 

「まぁ、ね」

 

 戦場には似つかわしくないセンチメンタルな響きを含む二人のやり取りの傍らで、シュメシとヘマーはバーレイ・サイズとライアット・ジャレンチを使い、最後のエル・ミレニウムをバラバラに解体していた。

 七機のエル・ミレニウムが撃破されるのはタウ・リンをして、おいおい、と思わず呟かずにはいられない速さだったが、フーレ級の撃沈速度もまた目を見張るものだった。

 

 フーレ級の5,400mの巨体は伊達ではない。アルバトロス級、ガンドールやタルタロスの四倍以上、ピースミリオン級の二倍弱に達し、外宇宙での運用を想定された本艦の戦闘能力は、地球連邦軍で運用する艦艇のほぼすべてを上回る。

 惜しむらくは、あるいはヘイデス達にとって幸いだったのは、自己再生能力こそあれ防御フィールドの類を装備していない事である。

 

 アクシズをカバーするEフィールドを展開する為、エンジン出力のほとんどを割いているフーレ級は主砲であるレギオン・イレイザーが使用できず、バルカン・ファランクスとディバインダー・ミサイルのみで接近するDCを迎撃するしかない。

 一隻のフーレ級を目指してボルテスⅦとコンバトラーV6が上下に挟み込むように飛翔し、

二機を迎撃しようとバルカンとミサイル、更に艦載機が襲い掛かるがF97ハルートとマスクコマンダー、GNハンブラビがインターセプトし、超電磁ロボの進撃をサポートする。

 

「いくぞぉ、健一! 超電磁エネルギープラス!」

 

「超電磁コンビネーション! 超電磁エネルギーマイナス!」

 

 二機の超電磁エネルギーに磁石のようにそれぞれ異なるベクトルを持たせ、お互いに引き合い、増幅する性質を利用して圧倒的な破壊力を生み出す超電磁コンビネーション。

 ツインドライヴシステムをヒントに考案された、同じエネルギーを同期させて更なるパワーアップを図るアイディアがコンバトラーとボルテスに用いられていたのである。なお二機とも動力自体は原子力エンジンだ。

 

 フーレ級を巻き込んで、コンバトラーV6とボルテスⅦから放出された二種の超電磁エネルギーが結ばれ、フーレ級は超電磁エネルギーの干渉によって電子機器に致命的なダメージを受けてあらゆる行動が封じられる。

 その間にツインランサーを構えたコンバトラーV6と天空剣を構えたボルテスⅦが膨大な超電磁エネルギーを纏い、光り輝く流星となってフーレを上下から襲う!

 

「超電磁クロススラッシュ!!」

 

 二機がフーレ級の内部で交錯する瞬間、超電磁エネルギーがツインランサーと天空剣の刃へと収束し、長大な刃を形作って、フーレ級を内部からX字状に斬り裂いた!

 大きく四つのブロックに斬り分けられたフーレ級は内部の弾薬や動力が誘爆を引き起こし、あっという間に巨大な爆発の中に飲み込まれている。

 

 アクシズに目を奪われがちだが、フーレ級も5,400mの巨艦だ。これが地球に落下しようものなら、どれだけの被害が出るか分かったものではない。

 撃沈後は徹底的に細かく砕かねばなるまい。既に地球近海にまで到達している状況では、そこまで気を配らねばならず、DCが到着した今は後方に下がったパトロール艦隊とキュクロープス艦隊も協力している。

 

 二機のスーパーロボットの動力を同期させ、出力を引き出すというアイディアはなにもコンバトラーとボルテスに限った話ではない。

 結晶化した光であるダイモライトを動力とする闘将ダイモスと烈将フォボス、竜崎一矢とハレックという地球人とバーム星人屈指の武道家が乗り込スーパーロボット達も、変則的なツインドライヴシステムを実現していた。

 

「よし、俺達も続くぞ、ハレック!」

 

「うむ、ここでバサ帝国に与する者達の力を削ぐ」

 

「そして地球とバームの未来も守るんだ!」

 

 別のフーレ級に向かっていたダイモスとフォボスはゴッドハンドクローを装着する時とは逆に、ダイモスの足裏にフォボスが両手を突っ込み、両機のダイモライトの同期を行い、一気に出力を文字通りけた違いに跳ね上げる。

 ダイモライトエネルギーを解放する事によって、一時的にパイロットごと機体をエネルギーの塊へと変換できる。一歩間違えればそのままエネルギーの塊から元に戻れず、宇宙に拡散してしまう危険性を備えている。

 

 だがこの問題点を快癒した竜崎博士と和泉博士、所長その他の天才頭脳らとの共同研究の末、機体の一部を部分的にエネルギー化……光へと変化させる機能の搭載に成功している。

 これが意味するところはパイロットのセンスにタイミングは委ねられるとはいえ、四肢を用いた攻撃を光速で行えるという事だ。

 一矢はぐんぐんと迫るフーレ級の艦首へと向け、ダイモライトを解放してダイモスの脚部をエネルギーの塊へと変換。光の速さ、光の重さを備えた蹴り技を放つ!

 

 

「『白銀聖闘士アルゴルの蹴り技(ラスアルグールゴルゴニオ)』!!」

 

 一方、フーレ級の水晶の棘か角のようなパーツが伸びる艦尾に回ったフォボスもまたダイモライトエネルギーを解放して、光り輝く蹴り技を憎き仇敵の尖兵へと叩き込んだ!

 

「『ウルトラマンタロウの必殺技(スワローキック)』!!」

 

 

 二種の蹴り技を受けたフーレ級の艦首と艦尾はコンマ一秒もダメージを受け止める事は出来ず、冗談のように粉砕されて、アクシズに向けて無数の破片を撒き散らしてEフィールドと接触して更に細かく砕ける。

 百メートルにも満たない機体の質量攻撃を受けただけとは信じがたい破壊の光景だ。

 だがまだフーレ級の不幸は終わらない。かろうじて残った一キロメートルほどのフーレ級艦体に向けて、キング・ビアルの甲板に仁王立ちするザンボット3×3が抱えていたイオン砲の照準を合わせる。

 

 既にザンボット3×3とイオン砲のコネクターは接続されているが、いつもと違うのはキング・ビアルから伸びたコードとザンボット3×3の背部が接続されている事だ。

 ザンボット3×3とキング・ビアルのイオンエンジンを同期させ、出力を跳ね上げたイオン砲だ。これまでとは一味も二味も違う。

 

「エネルギー回路、MCR回路に直結。キング・ビアルのイオンエンジンとのシンクロ率95、96、97、98……」

 

「シンクロトロン密度9.25」

 

「バイオニックコンデンサー全段直結。ザンボット3×3とキング・ビアルのエネルギーだ! ハイパーイオン砲をくらえええ!!」

 

 ザンボット3×3とキング・ビアルがそれぞれ単独で発射するよりもはるかに強力なイオンエネルギーが、ザンボット3×3が両手で抱えるイオン砲の砲口から直径数百メートルにも達する緑色の光の奔流となって発射される。

 フーレ級の残っていた艦体を丸々飲み込み、更に射線軸上に存在する敵機だけではなく余波によってさらに多くの敵機を破壊して行った。

 

「どんなもんだい!」

 

 残存エネルギーはまだまだ余裕があり、母艦に戻ってエネルギーを補充する必要はない。勝平はザンボット3×3にガッツポーズを取らせる余裕すらあった。

 エル・ミレニウムやヴァイクルばかりでなく、フーレ級も次々と沈んでゆく中で、グラン・ネオ・ジオングという脅威こそ残っているが、このまま順調に行くと大なり小なり皆の気が緩む。それとてほんの数秒で引き締められる程度の緩みだ。

 

 しかし、戦場は無慈悲であった。そして敵はそれ以上に容赦がなかった。その隙を突くようにして無数の強力なビーム砲が真ジオン艦隊、DCを問わず降り注ぎ、多くの機体にダメージを与えて行く。

 キング・ビアルごと揺れるザンボット3×3のコックピットで、勝平は嫌な意味で見慣れた識別信号を見つけ、まだあどけなさを残す顔に怒りと嫌悪を浮かべる。彼だけではなく、神ファミリーの皆が同じ思いだったろう。

 

「来やがったな、ブッチャー、ガイゾック!」

 

「勝平、宇宙太、バンドックの反応が多数。前に出てきた量産型とは違う、同じエネルギー量を持っているバンドックよ」

 

「なんだって? オリジナルの性能をそのままに量産してきたってのか?」

 

 第三勢力の乱入にも戦場の動きは止まらず、アクシズの地球落下を後押しするように、オリジナルバンドックで構成された艦隊が出現し、大量のヘルダイン、デスカイン、メガ・ブースト、そしてこの短期間で量産されたキルゼインが姿を見せる。

 憤る勝平だったがオープンチャンネルによって、戦場の全ての勢力に向けて全てのバンドックから強制的に通信が繋げられてきた。そこには目玉の埋め込まれた巨大な脳髄を思わせる異形の存在が映し出されていた。

 

「我はコンピュータードール第8号」

 

「我はコンピュータードール第5号」

 

「我はコンピュータードール第13号」

 

「我はコンピュータードール第30号」

 

 そうして何体もの脳髄達が自らの号数を口にしてゆく。バンドックの総数は実に二十隻にも及ぶ。出撃したメカ・ブーストの数は一千弱ほどか。

 

「な、なんだ、こいつら、この気持ちの悪い内臓か脳みそみたいなやつらは!?」

 

 さしもの勝平が動揺を隠せない中、キング・ビアルの兵左衛門や源五郎、梅江達年長者もガイゾックという存在を知ってはいても、その真の支配者については知らなかった為、驚きを隠せないでいる。

 その驚きを見透かして答えたのは、キルゼイン部隊を率いるブッチャーだった。どうやらまだ自我を奪われてはいないようで、月面での戦いよりも幾分か落ち着いている様子だ。無数の彼にとっての神が味方してくれている状況に、精神的な余裕があるのだろう。

 

「ふひ、ひひひひ、無知なお前達に教えてやろう! 恐れるがいい、慄くがいい、地球人共、この方々こそがバンドックの真の支配者、ガイゾックの神! かつてわしを拾い上げ、圧倒的な力を授けてくださった偉大なる方々よ。

 地球人よ、お前達は無駄に足掻きすぎた、抵抗しすぎたのだ。神々の怒りに触れたお前達は、その石ころを落とされ、星ごと纏めて根絶やしにされる運命なのだ。ワハハハハハ!!」

 

「ブッチャー、お前の話なんか聞く気はねえんだ。やい、ガイゾックの神とかいうの、俺達が強くっていよいよ本腰を入れて来たってわけか。俺達のご先祖のビアル星人を滅ぼしたみたいによ! でも今度はそうはいかねえぞ!」

 

 ブッチャーの高笑いをぶった切り、勝平はイオン砲を向けながらコンピュータードール達へと啖呵を切る。だが、あくまでシステムであるコンピュータードール達の反応は淡々としたものだ。

 コンピュータードール第8号は最初にこの地球で戦った個体だからか、他のコンピュータードール達を置いて、勝平だけでなく戦場の全ての者達にこう告げる。

 

「我々は悪い考えをもった生き物を排除するのが役割。この地球という悪意の広がる星の住人達を根絶やしにする為、我はこの銀河に散らばっていた同胞を集めた」

 

「なに? 俺達が、地球人が悪い生き物だってのか! そりゃ、皆が良い人達だとは言わねえ。けど、みんなが悪人じゃないように、良い人はたくさんいる!」

 

「憎しみ合い、嘘をつき合い、自分が良ければそれでよいという我が儘な考え。まして、仲間同士が殺し合うような生き物が、良い生き物であるとは、善なる存在とは言えぬ。

 宇宙の静かな平和を破壊する悪しき者達よ。宇宙の神聖なる静寂と不可侵の平穏を守る為、我々はそれを侵す邪悪な生き物を掃除するために、ガイゾックによって造られた。

 地球人類、バルマー・サイデリアル連合帝国、バーム星人、キャンベル星人、ボアザン星人、ベガ星人、ムゲ・ゾルバトス、そしてミケーネ帝国、百鬼帝国、妖魔帝国。

 全てが邪悪、全てが排除されるべき不要な存在。まずはこの場に居る者達全てを抹殺し、地球にこの要塞を落としてから残る全ての者達をこの宇宙から消し去る。そうして宇宙は平穏に近づく。滅びよ、悪い生き物達よ」

 

 宣戦布告ですらないその言葉と共に再びバンドックから、無数の主砲が発射されて、戦場へと降り注いでくる。

 タウ・リンは自分のグラン・ネオ・ジオングにも迫るバンドックの主砲や目玉の着いたミサイルを眺めながら、心底楽しそうに笑う。

 

「こいつはいい。どこを見ても地獄だ! 俺が作った地獄、地球人が作ってきた地獄、他所の星からわざわざやってきた物好き共が作る地獄! ハハハハ、良かったな、地球人! 気味の悪い、不出来な脳味噌目玉が俺達を悪い生き物だと保証してくれるとよ」

 

 そしてタウ・リンの目の前には未来への可能性を感じさせる若者達とガンダムが迫っていた。タクナ、バナージ、ジュドー、カミーユ、シーブック、リディ達だ。

 数で言えば六対一、機体はいずれも最高ランクのガンダムタイプと高レベルニュータイプという組み合わせ。どんなエースも一人では勝ち目のない状況にもタウ・リンの嘲笑は消えない。

 たまらずタクナがZプルトニウスをWRからMSへ変形させ、ビームライフルを浴びせかけ乍ら叫ぶ。

 

「お前は、そんなことを本心から!」

 

「言えるさ、俺はタウ・リンだ!」

 

 グラン・ネオ・ジオングのハルユニットが起動して光を放つのと同時に、直撃コースを取っていたメガ粒子が霧散して無効化される。

 ハルユニットによって放出されたサイコチップを核として結晶状の疑似サイコフレーム『サイコシャード』が形成され、それが光輪のような形状を取ると周囲に疑似サイコ・フィールドが展開される。

 そのフィールド内においてタウ・リンの望むイメージが具現化されるのだ。

 

 原作に於いてフル・フロンタルとゾルタン・アッカネンが操り、脅威を見せたが、グラン・ネオ・ジオングの場合にはカルケリア・パルス・ティルゲムも搭載された結果、念動力の要素も組み込まれており、現実世界に対する干渉力はさらに高まっている。

 疑似的な念動力を持った、疑似ニュータイプの強化人間をパイロットとし、疑似サイコフレームの力を持って疑似サイコ・フィールドを展開……本物ではないが、区別がつけにくい程に近しい要素ばかりで構築された、名前も偽物の男は、目の前の可能性の輝き達を、やはり、あざ笑う。

 

「さあ、楽しめよ。二度とない、楽しい、楽しい、最低最悪のクソッタレのパーティーなんだぜ?」

 

<続>




追記
ダイモスとフォボスの声ネタ技を変更しました。

追記2
やっぱり戻しました。

追記3
コンピュータードールは第三次Z天獄篇にて第36号まで出現した事を鑑み、番号の重複が無いように適当に割り振っております。


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第百十二話 ガイゾック星人はうっかり屋さん

 天の川銀河に残存するガイゾックの全戦力の介入により、戦場は更なる混迷に見舞われていた。ガイゾックは真ジオンも地球連邦も問わずに攻撃を仕掛けており、アクシズを中心とした戦場全域での戦闘が激化する。

 ハガネでDC艦隊の指揮を執るレビルはそれでも優先順位を間違えなかった。タウ・リンの討伐? ガイゾックの討伐? いや、アクシズの落下阻止こそが最優先事項のままであるのに変わらない。

 

「アクシズの落下阻止限界点までの到達は?」

 

 レビルはオペレーターの一人に問いかけた。ハガネもまた前線に出てフーレ級に砲撃を重ね、修理や補給の必要な機体を収容して、と艦そのものとクルーも戦い続けている。

 

「現在のままですと、残り■分で到達します!」

 

「……そうか。分かった。オリュンポスに次元力砲の発射をいつでも申請できるように準備を。またガンダムXを戻してサテライトキャノンの発射準備を。また光子魚雷や超重力兵器を使用してでもアクシズを破壊する」

 

「り、了解! 各艦、各機に通達いたします!」

 

 またゼファーW0ライザーらウイングゼロ、フェブルウスも単体での火力が部隊内でも最高クラスだ。彼らもアクシズ破壊に際しては頼みの綱となる。

 

(とはいえこちらがアクシズを破壊する手段が複数ある事は、相手側も承知済みの筈。バリア以外にもおそらく何かを仕掛けている可能性が高いか)

 

 レビルは眦を険しくして、グラン・ネオ・ジオングと交戦に入ったZプルトニウスやユニコーンを始めとした部隊に状況を好転させる可能性を託していた。

 グラン・ネオ・ジオングと相対したバナージはビームが無効化されるのを認識した瞬間には、別の手を打っていた。既にユニコーンは装甲を展開し、緑色に輝くサイコフレームの光を纏っている。

 

「ビームが駄目でも質量のある物体なら!」

 

 ビームガトリングガンを接続したシールドファンネルがユニコーンの脇をすり抜けて、グラン・ネオ・ジオングへと迫る。ビームガトリングガンの銃弾が無効化されるとしても、シールドファンネルそのものを質量武器としてぶつける事は出来る。

 それがバナージの判断だった。同時にグラン・ネオ・ジオングが形成する疑似サイコ・フィールドの範囲と効力を確かめる意味もある。

 そして疑似サイコ・フィールドに入った瞬間、シールドファンネルとバナージの間にあるサイコミュの繋がりが断絶され、バナージにはこめかみを貫く痛みとなってフィードバックされる。

 

「ぐっ、サイコミュへの一方的な干渉? ミノフスキー粒子への干渉だけじゃない!?」

 

 シールドファンネルが制御を失ってあらぬ方向へと飛び去ってゆくのを見送るしかないバナージに代わり、リディのバンシィ・ノルンが進み出て構えたビームマグナムを躊躇なく撃ち込む。

 

「ビームマグナムならどうだ!」

 

 Zプルトニウスのビームが無効化されたが、圧倒的なエネルギーを圧縮して放つビームマグナムならとリディが判断したのは無理からんことである。

 明らかに通常のビームとは異なるエフェクトと共に放たれるビームマグナムは、ハルユニットに収納されたグラン・ジオングを正確に狙っていたが、こちらもまた疑似サイコ・フィールドに入った瞬間に見えない無数の腕で千切られたように分解され、消えてしまう。

 

「マグナムでも? ただのIフィールドじゃないのか? それにさっきから頭に刺さるノイズのような感覚は!?」

 

「活きのいいガンダムとパイロット達だが、死ぬまで吠えていろ!」

 

 グラン・ネオ・ジオングはその巨体からは信じがたい高機動性を有する。

 加えてハルユニットは元々肩部大型メガ粒子砲を前面四基、背面二基、更に有線式大型ファンネル・ビットを五指代わりに備えたアームユニットを六基、腹部に大口径メガ粒子砲を装備とビームに偏っているが、デルフィニウムやザク50も顔負けの重武装だ。

 更に肩部のウェポンコンテナに収納した武器とコアとなっているグラン・ジオングの元々の武装が使用可能である為、攻撃面において全距離に対応している。

 

 防御面も再生能力を備えるズフィルード・クリスタルで作られ、腰部の戦艦の主砲にも耐えるIフィールドジェネレーターが念動フィールドジェネレーターへ改装された結果、ビームと実弾双方に対応している。

 そしてなにより、パイロットがバナージを懐柔しようと手加減していたフル・フロンタルとは異なり、殺意と憎悪を隠さないタウ・リンである為にグラン・ネオ・ジオングの脅威は更に高まっている。

 

 ハルユニット合計六基のアームユニットが展開され、三十基のファンネル・ビットから冗談じみたメガ粒子砲の雨が発射される。

 疑似サイコ・フィールドから離れていてもカルケリア・パルス・ティルゲムで増幅されたタウ・リンの思念は戦場に放射されており、対峙しているバナージやタクナ達は常に圧迫感と威圧感に苛まれている状態だ。

 

「さあ、生きている内に地獄を味わえる貴重な機会だ。精々楽しめ、進化した人間共!」

 

 吠え猛るタウ・リンだが、同時に疑似サイコ・フィールドの影響がサイコミュ搭載機に対して、効果が薄くなっているのを把握していた。

 特にフル・サイコフレーム機は顕著で、それに加えて別の力が彼らを守っているのも感覚で理解する。

 

(念動力とやらの恩恵か俺の感覚も鋭くなっているが……。ヒヨコ共だけじゃないな? DCと地球連邦側の連中をよくわからん力が守っている。根源は……ユーゼスの言っていたあの機体か。次元力とやら、邪魔くさいもんだぜ!)

 

 周囲を飛び回るZⅢやF97-X1に向けて、ファンネル・ビットに肩部大型メガ粒子砲の乱舞を放ちながら、タウ・リンはフェブルウスが次元力の加護を友軍全機に施しているのを即座に看破していた。この洞察力もまたユーゼスが彼を手駒として評価していた一端だ。

 フェブルウスと共に戦うシュメシとヘマーもまた、更なる強化を受け疑似念動力者となったタウ・リンの思念を受けて、『怨嗟の魔蠍』のスフィアリアクターとなってもおかしくないと感じていた。

 

「僕達もあの人達を止めに行く? それともガイゾックを相手にしようか。あれだけのバンドックとメカ・ブーストが出てきたこの状況は、ちょっと厳しいね」

 

 シュメシが混迷する戦況に眉根を寄せて半身達に問いかければ、ヘマーもまた苦々しい表情を浮かべて答える。明朗快活なヘマーが例え戦場でもそんな表情を浮かべるのは珍しい。

 

「それにアクシズになにかを感じるよ。なんだろう、上手く感じられないけれど、ひょっとしたら誰か生きている人が残されているかもしれない」

 

「アクシズを破壊させない為に? ひょっとしたらアクシズそのものにも何か仕込んでいるかもしれないね。DG細胞はないからズフィルード・クリスタルと同化していて、アクシズの破片が地球に落下すると、無差別に同化を始めるとか?」

 

「確かセプタギンっていう機動兵器がそういう役目を持っていたはずだよね。ここではない別の世界での出来事だけれど、バルマー製の兵器だからユーゼスがその発想を持っていてもおかしくないか」

 

「そうなると中に閉じ込められているかもしれない人を救出して、破片一つ残さずにアクシズを破壊しないといけなくなるかもしれないのか。これは大変だ!」

 

 双子とフェブルウスがまだソルの意志として見守っていた頃に、大特異点と化したアクシズの地球落下を破壊せずに阻止しなければならない状況に陥った出来事があったが、今回はその時に負けず劣らずの困難な状況だ。

 頼りになる仲間達が居るのは変わらないが、ガンバスターやグレンラガンなどが居ない分、純粋な破壊力とパワーで劣る面子なのは否定できない。状況をつぶさに観察しつつ、迷っていられる時間が少ないのもまた悩みどころだった。

 

 フェブルウス、アムロ、クワトロ、甲児、ゲッターチームの活躍でエル・ミレニウムが撃破され、フーレ級も超電磁チームやダイモス、フォボス、ライディーン、また獣戦機隊の活躍によって七隻全てが撃沈され、アクシズを守るEフィールドが解除されている。

 残る重力障壁と次元障壁はヒュッケバインの重力兵器やグルンガスト改の質量攻撃など、力づくで突破する手段はある。

 

「うん、やっぱり、それでもタウ・リンさんを止めないとまずいよ。一番の悪意を渦巻かせているのはあの人だ」

 

「スフィアがもう無くなっていて良かったと、本当に思うよ。でもフル・フロンタルさんとは別の意味で厄介だ。あの人とは違って止まらない人だよ」

 

「刻を垣間見る事も出来るアレもあの人にとっては、地球と人々を終わらせる為の道具でしかない。まだあるべきでない道具を一番怖くて、一番悲しい使い方をしている」

 

 グラン・ネオ・ジオングを最も危険と判断したフェブルウスがその場を後にする一方、ガイゾックに与していたガルーダもまたグレイドン艦隊とマグマ獣部隊を引き連れて戦場に姿を見せ、コンバトラーV6と対峙していた。

 コンバトラーV6の傍らにはボルテスⅦの姿があり、いつでもコンビネーションを披露できる状態だったが、ガルーダは周囲を包囲するマグマ獣には手出しをさせておらず、あくまでも一騎討ちを望んでいるようだった。

 

「く、ガルーダ、お前と戦っている場合じゃねえんだ」

 

 普段の戦場ならば豹馬はライバルの望み通り一騎討ちに応じたが、今は母星の危機である。流石にガルーダの意図を汲むわけにもゆかない。フーレ級を沈めて状況が良い方向に進んだと思った矢先にこうなっては、気の休む暇が刹那もない。

 

「それにお前はまだあんな連中と手を組んでんのか! ブッチャーもそうだったが、あのコンピュータードールとかいう連中なんかと協力するなんて、俺をがっかりさせるんじゃねえよ!」

 

 それはガルーダがバンドックと共に姿を見せてから、ずっと豹馬の心の奥底に燻っていた思いだった。かつて命懸けの死闘を繰り広げた大将軍ガルーダが、ブッチャーのような快楽殺人鬼などと共闘している状況は、豹馬にとって我慢ならない事だった。

 豹馬の怒りと憤りを込めた叫びは他のコンバトラーチームの四名とも共感できるもので、それを正面から受けたガルーダは叫び返すでもなく、むしろ喜んでいるような響きを滲ませて答える。ライバルにそう思われるだけの価値が自分にあると思えたからか。

 

「まったく、お前の言う通りだな、葵豹馬よ。元々おかしなところのある機械だと思っていたが、揃いも揃って欠陥を備えた奴らだったとはこの俺の想像を越えていた。それでもお前達との決着を優先する俺も大概だがな。

 その代わりと言っては何だが、バトルチームよ。お前達がこの俺との一騎討ちに応じるのならば、俺の率いるグレイドンとマグマ獣は勝ち負けに依らず、ガイゾック達と戦わせよう」

 

「なに!?」

 

「ふ、奴らからすれば恩知らずと罵るところだろうが、蘇らせてくれと頼んだわけでもないし、これまでの戦いで十分にその借りは返したと考えていいだろう。俺は俺の意志で戦うのだ。さあ、ガルーダの戦いに応じるか! 返答は如何に!」

 

 ガルーダの気迫に彼の言葉に嘘がない事を感じ取り、豹馬は他の四人と沈黙のまま視線を交わし合い、覚悟を決める。そして今も傍らで控えているボルテスⅦの右肩にコンバトラーV6の左手を置いて接触通信で伝える。

 

「悪い、ボルテスチームの皆、この場は俺達に預けてくれ。のっぴきならない状況だってのは分かっているんだが、俺達もアイツと決着をつけたいんだ!」

 

 バトルチーム全員の総意を熱く語る豹馬に対し、健一を筆頭にボルテスチームの誰もが止める言葉を持たなかった。代わりに口を吐いて出たのは決闘に挑む戦友に送る励ましの言葉だった。

 

「ああ、分かった。バトルチームの皆の分まで、俺達が戦おう。後で四谷博士やレビルさんに怒られるだろうが、そっちは助け舟を出さないぞ」

 

「ああ、分かってる。へへ、四谷のおっちゃんの怒る姿が目に浮かぶぜ」

 

「それと絶対に勝て!」

 

「任せとけ! ぐうの音も出ねえほど叩きのめしてやらぁ!」

 

 豹馬の威勢のいい声に健一は笑みを浮かべ、二人の決闘場から離れる。その間際、ブラックビッグガルーダとボルテスⅦの視線が交錯し、黒き騎士が目礼にて感謝を示した。

 それを見て、健一は最後の懸念が消える。ガルーダは心底から豹馬との正々堂々の決着を臨んでいると、彼もまた心から納得できた。

 

「お前の仲間達には感謝しなければならないな、葵豹馬。ではまず約定を一つ果たすぞ。グレイドンよ、マグマ獣デモンよ! ガイゾック達を蹴散らせ!」

 

 ガルーダの指令一下、それまで石像のように控えていたグレイドンとデモン達が一斉にガイゾックのメカ・ブーストへ狙いを定めて襲い掛かってゆく。

 一千体以上のメカ・ブーストを相手にしなければならない地球側からすれば、百に届かない数とは言え強力なマグマ獣であるデモン部隊の参戦は朗報ではある。

 先程までの豹馬とガルーダのやり取りがオープンチャンネルで広く周知されていたのと、実際にグレイドン艦隊とデモン部隊がガイゾックと交戦を始めたことにより、地球側も一旦はガルーダの部隊を積極的な敵性存在ではないと判断して行動を始める。

 

「さあ、行くぞ、コンバトラーV6、葵豹馬! このガルーダの心残りを晴らす為、今日こそ逃げも隠れもせん! 最後まで戦い続けよう!!」

 

「へっ、それはこっちの台詞だ。お前とこれまで何度戦ったか分かったもんじゃないが、ケリはつけねえとな!」

 

 翼を広げ、大鎌を振り上げるブラックビッグガルーダとツインランサーを構えるコンバトラーV6は本当に最後の戦いとするべく、青い星に落ち行く岩を足元に駆けた。

 一度はついたはずの決着を再び繰り返すコンバトラーV6達とは別に、勝平達ザンボット3×3と神ファミリーは先祖から続く因縁を終わらせるべく、コンピュータードール第8号のバンドックとブッチャーのオリジナルキルゼインを相手取り、大立ち回りを演じている。

 

「いい加減、しつこいぜ、ブッチャー!! こんな奴らに従っているような小悪党になんか、今さら興味はねえ!!」

 

「けえええ、ガキがぁ!! 貴様らのせいでわしがどれだけお叱りを受けたか! 貴様らも地球人もまとめて皆殺しじゃ! 命を以てわしとガイゾックの神々に詫びろぉおお!!」

 

 ブッチャーの怒りを乗せた大剣の乱舞がザンボット3×3へと襲い掛かり、それを勝平は抜群の反射神経で迎え撃ち、両機の間で瞬時に無数の剣戟が交わされて、噛み合う刃の生むきらめきが星々に負けない輝きとなる。

 

「てめえこそ今まで身勝手な理屈で滅ぼしてきた人達に謝れ!」

 

 大剣を弾き返し、もう片方の大剣が横薙ぎにザンボット3×3の左わきを襲う刹那の間に、ザンボット3×3の三日月と太陽を組み合わせた前立てが輝き、ショートチャージされたサン&ムーンアタックが発射される。

 

「むぐお!? ええい、この程度!」

 

 フルチャージしていない一撃だが顔面に直撃したキルゼインを仰け反らせ、体勢を崩すのには十分だ。その腹にドロップキックを叩き込み、勢い激しく吹き飛ばしたキルゼインを追って、ザンボットザンバーを両手で振りかぶって斬りかかる。

 

「おおおりゃああ!!」

 

「けえ、調子に乗るなぁ!!」

 

 大気があれば嵐のような衝撃波の発生する激突と共に両者の機体が弾かれたように離れ、更に衝突と離脱を飽きることなく繰り返して行く。

 ガルーダとコンバトラーV6が一騎討ちを繰り広げているのに対し、こちらの違いは周囲のメカ・ブースト軍団が容赦なくザンボット3×3に攻撃を加える点だ。

 これに対してキング・ビアルやピースミリオン、ブレイウッドやアルビオンの援護が入り、フーレ級の撃沈で余裕の出来た部隊がフォローに入っている。

 

 アクシズの落下阻止限界点への到達という制限さえなければ、迎撃に全力を出せる状況だが、そうも言えないだけにDC各員が差異こそあれ焦燥に駆られている。

 厄介な数の敵の増援が来る中、約定通りにガルーダ配下の部隊がガイゾックに攻撃を仕掛けた事で、わずかながら圧が緩む。他のパトロール艦隊や遊撃部隊が大急ぎで駆け付けている中、その朗報は突如として齎された。

 

 ガイゾック達の背後に新たな空間転移反応が多数感知され、マザーバーンを含む円盤獣とベガ獣を率いる宇宙の王者が姿を見せたのだ。

 グレンダイザーベガとの死闘の影響により、スカルムーン基地で修理と改修を受けていた宇宙の王者が新生した姿で味方を引き連れて颯爽と降臨する。

 

 スカルムーン基地に残されていたグレンダイザーベガの設計データ、多くのベガトロン鉱石を始めとした希少金属、更に各種地球製スーパーロボットのデータをはじめ、多種多様な機動兵器のデータを用いてグレンダイザーは新たな姿と名前を得た。

 よりマッシブなシルエットを得つつ、マジンガーZからマジンカイザーへの進化を彷彿とさせる細やかなディテールの変化は、グレンダイザーギガともまた似て非なる姿だ。

 光量子エネルギーで構成される赤いマントをなびかせる新たなグレンダイザーのコックピットで、デュークは多くのバンドックをモニターに映しながら闘志を燃やす。

 

「ガイゾック、銀河の星々を滅ぼす悪魔達が集ったか。地球を他の星々のような目には遭わせないぞ。このデューク・フリードとグレンダイザーテラが相手だ!」

 

 グレンダイザーテラ……ギガを超える単位であり、またデュークにとって第二の故郷たる地球の呼び名を冠した機体だ。

 これまでオリジナルの装甲素材である宇宙合金グレンが地球では調達できなかった為、同等の硬度を誇る超合金ニューZで代用していたが、新たに超合金ニューZαを機体の装甲として導入し、オリジナルグレンダイザーを上回る防御力を獲得している。

 より高効率・高出力を追求した光量子エネルギー、グレンダイザーベガの反重力エンジンの予備を搭載し、出力はゆうに倍を超えるなど攻防の両面でパワーアップに成功している。

 

「スペースサンダーデイン!!」

 

 グレンダイザーテラの側頭部から伸びる三本二対の黄金の角から荒れ狂う竜の如き稲妻が放出され、グレンダイザーテラと反ベガ星連合軍の援軍に向けて群がるメカ・ブーストの一団が跡形もなく消し飛ぶ。

 

「テラハーケン!」

 

 グレンダイザーテラの両肩から新素材で鍛造されたシングルハーケンが射出され、それを両手に握ったグレンダイザーテラは一気にデスカイン、ヘルダインへと斬りかかり圧倒的なパワーとスピードで彼らの全身を切り刻む。

 この時、ガイゾック側のメカ・ブーストには、性能にばらつきがあった。

 これまで地球を相手に苦戦を重ねてきた8号の製造したメカ・ブーストは可能な限りの改良が重ねられていたが、急遽呼び寄せられた他のガイゾック達は違い、性能にばらつきが生じていたのである。

 この事情はキルゼインを除けば最強のメカ・ブーストであるデスカインとヘルダインにも通じる話で、フリード星と地球の守護神として大幅なパワーアップを経たグレンダイザーテラを相手に、死の騎士達ですら性能が不足していたのだ。

 

「とどめだ! 反重力スーパーストーム!」

 

 死に体を晒すデスカインとヘルダインに向けて、グレンダイザーテラの胸部が虹色の光を放ち、百年に一度の大嵐に匹敵する大規模な反重力に飲み込まれて、一千分の一秒単位で変化する重力の変動によって、装甲も機体内部もすべてが破壊される。

 

「よし、グレンダイザーテラは戦えるぞ!」

 

「ひゅう! デュークの兄ちゃん、新しいグレンダイザーはすっげえな!」

 

 ブッチャーのキルゼインと斬り結んでいる勝平が思わずそう言ってしまうくらいに、新たなグレンダイザーとそれを操るデュークの力はすさまじいものだった。

 グレートブースターでパワーアップしているグレートマジンガーやコンバトラーV6、ボルテスⅦ、ザンボット3×3と比較してもなんの遜色もない。

 

「ああ。皆を待たせてしまった以上の働きはして見せるさ。さあ、来い、ガイゾック。そしてアクシズを地球に落とさせもしない!」

 

 宇宙の王者あるいは宇宙の大王に相応しい迫力と共に宣言するデュークに対し、二十隻余りのバンドックを制御するコンピュータードールの何機かが反応を見せた。

 

「グレンダイザー、フリード星の守護神。ベガ星連合軍により滅ぼされたはずの星の生き残りを確認した」

 

「フリード星ならびにベガ星は悪い考えを持つ者達。殲滅対象である。地球人と共に滅ぼすべし」

 

 ベガ星に関しては反論の言葉を持たないが、フリード星までもが悪であり、ガイゾックにとっては滅ぼす対象だったと言われ、デュークは怒りを押し隠しながら反論する。

 

「お前達自身はあくまでガイゾックの作り出したシステムで、道具だとしてもお前達を作り出し、宇宙に放ったガイゾックの人々はいったいどうしている? 今も母星で新たなお前達を作り出し、一方的な価値観を押し付けて生命を蹂躙しているのか!」

 

 憤りを抑えきれなかったデュークの言葉にコンピュータードール達は答える。デュークも想定していなかった答えを。

 

「我々を開発し製造したガイゾックは既に滅びた。彼らはこの宇宙をどこに探しても存在しない」

 

「我々に入力された基準に基づき、ガイゾック星には悪い考えが蔓延っていると判断し、我々は製造者であろうとも悪しき者達は差別も区別もせずに裁定を下した」

 

「すべてはこの宇宙から悪しき考えを持つ者達を消し去り、平穏と正義で宇宙を満たすために。我々はコンピュータードール。この宇宙から、銀河から、星から、悪を根絶する為に存在する」

 

 既に創造主ガイゾック星人がいないどころか、自らの手で滅ぼしたと淡々と語るコンピュータードール達を前に、デュークは数秒間、言葉を紡ぐ事が出来なかった。

 

「……最低限の安全装置も搭載していないのか!?」

 

 致命的なミスをやらかした挙句にとっくの昔に滅んでいたガイゾック星人に対する、端的かつ痛烈な指摘だった。

 

<続>

 

■グレンダイザーテラが開発されました。

 




ガイゾック星人が滅んでいるのは本作の独自設定です。

追記
コンバトラーとボルテスの名前の間違いを修正しました。


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第百十三話 解禁

 新たな力と姿、そして名前を得たグレンダイザーテラ率いる援軍を前にして、コンピュータードール達は殲滅対象の出現を確認し、アクシズの落下幇助に加えてデューク達の殲滅の為に戦力の一部を割いた。

 ガイゾックの優先順位は第一にアクシズの落下により地球諸種族へ大打撃を与える事、第二に落下を阻止しようとする地球人類勢力とその支援勢力の撃滅となる。

 第一目標については真ジオン公国がいまだ奮戦中であり、一時的に第二目標達成に向けて戦力の割り振りを見直した。

 

 バンドック艦隊の強力な砲撃とミサイルの波状攻撃がマザーバーン艦隊に照準を変えて発射され、メカ・ブースト軍団の四割がベガ獣と円盤獣の混成部隊に襲い掛かり始める。

 デュークはガイゾック星人のあまりにもお粗末な末路に受けた衝撃から再起動を果たし、二本のテラハーケンを連結させてダブルテラハーケンへと変え、正面から突っ込んでくるメカ・ブースト達へまだ距離があるにもかかわらず、連続して振るった。

 

「三日月の刃をくらえ、ハーケンディストール!」

 

 圧縮された光量子エネルギーの刃が突っ込んできたメカ・ブースト達の胴体を纏めて真っ二つにして、更にそのまま斬撃の延長線上に居る後続の機体も後を追わせてゆく。

 反撃に放たれる素粒子レーザーやミサイルの雨を掻い潜り、グレンダイザーテラもまた迫ってくるメカ・ブースト軍団へと向け、大王者の気迫と威厳を以て挑みかかる。

 グレンダイザーテラと共に出撃したフリードスペイザーが重力兵器を筆頭とした各種兵装で敵機を蹴散らす中、デュークは戦況を冷静に分析してガイゾックを支配するコンピュータードール達の数を減らすべきと判断する。

 

 真ジオン公国の指揮官機、つまりグラン・ネオ・ジオングは不可解なサイコミュの力によって、不用意に疑似サイコ・フィールドに侵入した機体のコントロールを奪い、武装ばかりか機体そのものを分解、あるいは動力や推進剤に干渉して強制的に誘爆を引き起こさせている。

 疑似サイコ・フィールド内での干渉に対抗できているのは、同じく極めて優秀なサイコマシーンに乗ったニュータイプ達くらいのものだ。そうなるとガイゾックやバサ帝国の大型機は、自分を含むスーパーロボットが相手をするべきだとデュークは判断した。

 

 例外としては真ゲッターロボとライディーンあたりだろうか。この二機ならば疑似サイコ・フィールドの中でも、まともに戦える見込みがある。

 前者はゲッター線の加護(と言っていいか不明だが)、後者はムー帝国の神秘科学とムートロンエネルギー、パイロットの超能力が機体とパイロットを守る鍵となり得るからだ。

 

「デスカインとヘルダイン、それにキルゼインか! バンドックを沈めるのには厄介な敵だ。ならば一刻も早く撃退する他ない! スペイザー、ドッキングゴー!」

 

 G3スペイザーに次いで巨大なフリードスペイザーがグレンダイザーテラからのシグナルに呼応し、周囲にスモークディスチャージャーとチャフミサイルをバラまいて、敵機のセンサーとレーダーを晦ませる。

 そうして出来たわずかな時間でフリードスペイザーは見る間にその姿を変えて行く。円盤が割れて巨大な四肢として展開し、割れた円盤の中央にグレンダイザーテラがドッキングし、外骨格のように纏ってゆく。

 背中からは長大なグラビトンランチャーの砲身が伸び、一回りも二回りも巨大な手足を纏ったフリードスペイザー装甲強化モードだ。

 フリードスペイザーの機体と動力と連結し、火力、速度、装甲諸々を強化した姿である。

 

(ザンボット、ボルテス、ライディーン、グレートマジンガー、グランドスター小隊……。それにMS部隊の一部もこちらに戦力を割いている。メカ・ブーストの数が厄介だが、僕達でガイゾックを仕留めなければ!)

 

 デュークの目には今も地球へと確実に近づいて行くアクシズが映る。多くの出会いと絆を作ってくれた愛おしき第二の故郷“地球”。

 アクシズの落下が地球人自身の手で行われようとしている事実に、少なくない悲しみと嘆きを覚えながら、それでも闘志を鈍らせはしない。

 

「まずは一つ!」

 

 フリードスペイザーの変形した巨大な腕がデスカインを殴り飛ばし、入れ替わるように前に出てきたヘルダインの放ったシールドビームを重力場で逸らし、背中の砲身から発射されたグラビトンランチャーがヘルダインの両腕を押し潰す。

 

「二つ!」

 

 両腕を潰されて動きを止めたヘルダインの頭部が、グレンダイザーテラの巨大な踵落としをくらって、頭部から胸部までが一気に叩き潰される。

 

「宇宙の悪魔、滅びの悪鬼ガイゾック! ガイゾック星人の遺した忌まわしいお前達の運命はこの地球で終わらせる!」

 

 グレンダイザーテラとルビーナ派の参戦で戦場の勢いが地球側にやや傾いたが、幸運はさらに続いた。地球人同士の戦いの場合は例え滅びる結末になっても静観を貫くアインストが、ガイゾックの参戦をきっかけに──おそらくは自分にそう言い訳して──次々と姿を見せ始めたのだ。

 アインスト空間から現実世界にワープしてくるアインスト達は移動に時間がとられず、即座に出現できるのが強みだ。彼らが味方であるのは、地球人類にとって大いなる助けだった。

 

 アインストクノッヘンやアインストグリート、アインストゲミュートといった基本三種に加えて、アルトアイゼンを模したアインストアイゼン、ヴァイスリッターを模したアインストリッター、ソウルゲインを模したアインストゲインの上位機種も加わっている。

 さらに少数だが全高100m超えの大型種、アインストレジセイアも出現して、アクシズの落下阻止とガイゾック排除に向けて地球連邦並びにDCへの援護を始めている。

 

 タウ・リンにとってアインストの出現は彼らのこれまでの行動パターンからして想定の範囲内だったが、現在、戦場に出現している数は想定を超えられていた。

 アインストの戦力の総数はバサ帝国も把握しきれておらず、タウ・リンばかりかユーゼスにとっても警戒の対象になっている。

 

「ふ、ユーゼスの奴にとっちゃこれもいいデータ取りか? ちっ、こっちも気を抜いちゃいられんか!」

 

 疑似サイコ・フィールドの中、同じようにサイコフレームの増幅した思念によってか、まともに動けているユニコーンとバンシィが同時に放ったビームマグナムだ。

 グラン・ネオ・ジオングに命中する前に無数の粒子に分解されたが、意識を集中させていなかったら、装甲を舐めるくらいはしていたかもしれない。

 

「また届かなかったっ!」

 

「まだだ、バナージ、このまま畳みかけるぞ!」

 

 空になったビームマグナムのカートリッジを交換しながら、今回も通じなかった事実に表情を険しくするバナージをリディが叱咤し、二機はグラン・ネオ・ジオングへの攻撃を再開する。

 二人の表情が険しいのは攻撃が通じないばかりではなく、まるでフルサイコフレームを通じて自分の意識が貪られているかのような感覚に襲われているからだ。

 それもタウ・リンから放出される悪意の波動に飲まれて、機体だけでなく自分達の精神を破壊されるのを防ぐ為に止むを得ない処置だったが、かつてない勢いで戦っている者達の精神を疲弊させている。

 

 バナージとユニコーンばかりでなく、ジュドーとルーのメガZ、タクナのZプルトニウス、カミーユのZⅢ、シーブックのF97-X1、セシリーのビギナ・ロナが矢継ぎ早に攻撃を仕掛け続けている。

 それでもなおタウ・リンの技量、グラン・ネオ・ジオングの機体性能に各種バリアに疑似サイコ・フィールドが、突破不可能な壁となって攻撃を弾き返し続けているのだ。

 

 だがタウ・リンも決して楽な戦いをしているわけではない。

 悪意と敵意をもって展開する疑似サイコ・フィールドによって、痛みを感じる間もなく若造共を血祭りにしてやろうとしたものの、サイコマシーンとしても優れる各機体がパイロット達の思惟を広げて疑似サイコ・フィールドからの干渉を防ぎ、想定を超えて手間取る羽目になっている。

 

「それに次元力とやらか? それがこの戦場に広まって奴らに手を貸していやがる」

 

 グラン・ネオ・ジオングの計器はフェブルウスの発する次元力による干渉、すなわちスフィア・アクトを感知して、タウ・リンに伝えていた。

 戦えば戦う程にフェブルウスと双子は至高神ソルとしての機能を取り戻し、現在も四種のスフィア・アクトを展開してアインストを含めた友軍に支援中だ。

 

「なにより来やがったか、白い悪魔に赤い彗星! ニュータイプを人殺しの上手い道具に仕立て上げた元凶共! くくく、その人殺しの上手さで俺も殺して見せろ!」

 

 Rνガンダムへ機体を変形させたアムロはフィン・ファンネルとフィン・ファングを展開し、単独で数十の射線を確保しながら疑似サイコ・フィールド内部へと侵入し、クワトロもガイア・ギアαに大型ファンネルをビームサーベルのように握らせながら、グラン・ネオ・ジオングを射程に収めていた。

 タウ・リンから津波のように叩きつけられる悪意と罵倒は、嫌というほど正確にアムロとクワトロの精神に突き刺さり、頭の中をかき回されるような苦痛と不快感を与えている。

 ここまでの憎悪を個人が抱けることに戦慄しながら、クワトロは戦いに入る前に抱いていた不満を口にしながら攻撃を仕掛けた。

 

「アクシズをよくも落とそうなどと画策する。要らぬ疑いをかけられた報いは受けてもらうぞ」

 

 かつてパンドラボックスに保存されている並行世界の記録を見ている為、DCメンバーはアクシズが地球に落下するかもしれないと聞かされた際に、つい、クワトロを見てしまったのである。

 この世界ではそうする理由がないとはいえ、いくつもの並行世界でアクシズを地球に落とそうとしたのがクワトロことシャアであるから、疑っているわけではないが、意識が向いても仕方がない。

 

「一年戦争の英雄達と戦えるとは光栄だ。どうだ、一緒に地球の終わりを特等席で鑑賞するかい?」

 

 グラン・ネオ・ジオングの肩部のメガ粒子砲、更に展開した複数のアームユニットから放たれるメガ粒子砲の豪雨はすさまじく、操縦に集中しきれない状況と相まってアムロとクワトロも普段よりも更に繊細な操縦と周囲への警戒を余儀なくされる。

 

「本気で言っている分、タチが悪い。それにこのプレッシャー! 強化人間というだけではない」

 

「このパイロットの資質か。だが、アクシズを落とすわけにはゆかん!」

 

 ガイア・ギアαの両腕に大型ファンネルが握られ、機体を超す長さのビームサーベルが展開される。フィン・ファングが猟犬の群れの如くガイア・ギアαを援護する為、ビーム刃を展開し、先んじてグラン・ネオ・ジオングへと襲い掛かる。

 フルサイコフレームの発する緑色の光を纏うフィン・ファングは四方八方からグラン・ネオ・ジオングの巨体へと襲い掛かるが、一定の距離まで達したところで複数種のバリアと衝突し、ビーム刃との間にスパークを散らし始める。

 

「ぐ!? 疑似サイコ・フィールドの干渉は万能ではないようだな!」

 

 フィン・ファングが分解されなかったことから分かるように、疑似サイコ・フィールドの干渉を跳ねのけて迫るビーム刃はグラン・ネオ・ジオングの対処能力が飽和しつつある証左だった。

 

「ちっ、最後まで簡単には行かねえか。滅びの時くらい、潔くいけよなあ!?」

 

 アームユニットがグラン・ネオ・ジオングの周囲を取り囲み、一基につき五本の指先から出力を弱めたビームが発射されて、バリアと拮抗状態を維持していたフィン・ファングを次々と破壊する。

 そこへ大型ビームサーベルを展開したガイア・ギアα、更に光の翼を振るうZⅢがタイミングを合わせて襲い掛かる。

 

「お前のような奴がいるから、戦いが無くならないんだ!」

 

 吠えるカミーユにタウ・リンもまた吠え返す。

 

「俺のような奴を作るのは世界だ! 戦いが無くならないのを個人の責任にするのはナンセンスだな、ガキが!」

 

 五指を揃えたアームユニットが巨大なビームサーベルを作り出し、MS形態のZⅢが振るう光の翼と幾度となく斬り結ぶ。その度にメガ粒子のスパークが四散し、疑似サイコ・フィールドを激しく揺らす。

 残る四基のアームユニットの内、一基はガイア・ギアαの振るう大型ビームサーベルを相手に割かれ、ガイア・ギアαの反応の速さに徐々に後れを取り始めている。

 

「ちぃ、所詮、急造の念動力者の限界ってところか!」

 

「貴様にも世界を憎むだけの理由はあるのだろうが、それを許すわけにはいかない理由の方が多い。アクシズと共に散ってもらおう!」

 

「ダイクンの遺児がよ。父親のニュータイプ論を歪曲させる一因になった責任を取って、この場でくたばったらどうだ!?」

 

「確かに私の行いが誤りを助長させたが、それは生きて正す。貴様の戯言に惑わされる暇はない!」

 

 幾度となく続けられた斬撃の応酬の中、クワトロの反応速度が勝り、アームユニットが十文字に叩き切られる。

 機体との一体化を進め過ぎた影響で、フィードバックによる苦痛にタウ・リンが顔を歪めた瞬間、カミーユも光の翼でアームユニットの一基を切断。

 グラン・ネオ・ジオングが肩に背負った四基のうち、二基が破壊され、これで残るアームユニットは四基だ。未だ膨大な火力を有しているが、これでも手数と攻撃力を大きく落とす事には成功だ。

 

「やってくれるが、俺もこいつもこの程度で止まると!」

 

 グラン・ネオ・ジオングの腹部から戦艦の主砲も霞むメガ粒子砲が放たれる。直撃コースに居たRνガンダムは大きく距離を取って回避する。

 ウイングガンダムのバスターライフルもそうだったが、余波が凄まじく紙一重の回避では装甲を壊されるどころか機体そのものが破壊されかねない威力だ。更にサイコシャードが次々と生成されて、疑似サイコ・フィールドの強度が増して行く。

 

 機体とパイロットそのものに対する干渉が強さを増し、アムロの操縦桿を握る指が強張り、激しい耳鳴りに襲われるような苦痛が襲い掛かる。

 フルサイコフレームによって疑似サイコ・フィールドの干渉を緩和できるが、同時にタウ・リンの迸る憎悪と怒りに対する感受性も増幅されてしまうなど、諸刃の剣として作用していた。

 一瞬、Rνガンダムの装甲表面にサイコシャードが生えるが、すぐに緑色の光がそれを根元から砕く。

 

「なにがなんでも止める! 人類はまだここで終わりはしない。終わらせない。人の作り出す未来に繋げる!」

 

「そうかい。だが、俺を倒してもアクシズは止まらんぜ? そいつを忘れちゃいけねえなあ?」

 

 タウ・リンがニヤリと笑みを深めたその瞬間、まるで彼の言葉を挫くタイミングを狙っていたかのように、アクシズを守っていた残る重力と空間系バリアが立て続けに破壊される。

 

「なに!?」

 

 さしものタウ・リンが驚いてグラン・ネオ・ジオングのカメラを操作し、アクシズの監視カメラにリモート接続すれば、そこにはヒュッケバインボクサー・ガンナー、更にグルンガスト改二機がバリアに過負荷をかけて突破し、その隙を突いてEx-SガンダムやHi-νガンダムらがアクシズに接近してバリア発生器を破壊している姿が映し出される。

 

(ちぃ、バリアを突破する前に予め発生器の位置を把握していやがったか。嫌になる練度を見せてくれるが……なら、次に切る手札はこれだ)

 

 戦場で戦っている全ての機体に陣営を問わず、アクシズ内部からリアルタイムの画像が送信される。それはアクシズ内部で拘束されている連邦軍の捕虜やエンツォ派の元ジオン公国軍人達の姿だ。

 全員が身動きできないように手足を拘束された上でどこかの倉庫らしい場所に転がされており、幸い命に別条のある状態ではないようだが、だからこそ助けられるかもしれないという可能性を消せない。

 

「こいつらは今もアクシズに居る! 連邦軍はともかく正義の味方であるDCの諸君はどうする? まだアクシズの落下を阻止できる限界点に到達するまでは、多少時間がある。助けに行くなら今の内だぜ? ハハハハハ!」

 

 タウ・リンが告げた通りアクシズ内部に囚われている捕虜たちの救出について、キュクロープスとパトロール艦隊では残り時間の事もあり、すぐに断念したが民間人の多いDCでは救出の可能性を捨てきれない意見が出る。

 タウ・リンがいやらしいのは落下阻止限界点への残り到達時間と救出に割ける時間を計算した時、わずかながら割ける時間が存在する事、更に敵戦力が低下しこちら側の戦力を割ける余裕もまた存在している事だ。

 

 下手に救出を即座に断念した場合、DC隊員の一部から反論が出るだろうし、戦闘中の士気に関わるわ、戦闘後もしこりとなって残るのが明白だわ、とこれまで正義の味方然とした活躍をしてきたDCの泣き所を突いてきた形である。

 そう考えたレビルは即座に判断を下した。予めアクシズの内部構造や市街地のマップデータはハマーン達から受け取っているのはせめてもの救いだった。

 

「すぐに彼らの拘束されている場所を割り出せ。その後、最寄りの侵入口に艦を突入させろ。ただし、キング・ビアル、マグネバード、ピースミリオンは除外する。制限時間は■分だ。侵入口の到達にそれ以上かかった場合、捕虜の救出は断念する」

 

 それ以外の意見を許さない断固たる声でレビルが告げ、DC所属の正規軍人達はこの部隊じゃなかったらちょっとあり得ない判断だな、と呆れながらも納得する者が多かった。

 最悪の場合、捕虜ごと纏めてアクシズを木端微塵のレベルにまで破壊しなければならないが、それが可能なだけの戦力がDCにはある。

 

 そんな中、クォヴレーは元居た世界で、αナンバーズがオルファンの落下を食い止めた戦いの記録データを思い起こしながら、グランドスター小隊の一員として襲い来るメカ・ブーストとバサ帝国の機動兵器を倒し続けていた。

 ガイゾックは陣営を問わず襲い掛かってきているが、デュークの連れて来たルビーナ派の軍勢とガルーダ配下のマグマ獣、更にアインストの増援もあって盛り返している。

 

「雑兵が相手ならば負けはしないが、あの男とコンピュータードールが残る強敵か。……分かっている、ベルグバウ。ゼオラ、アラド、オウカ、ラトゥーニ、奴が、キャリコ・マクレディが来る!」

 

 クォヴレーとベルグバウが共に視線を向けたその先、比較的戦闘の少ないエリアに重力震が発生し、そこに複数のヴァルク・ベンを引き連れたヴァルク・バアルが姿を見せた。

 キャリコ率いるゴラー・ゴレム隊だ。数は二桁で済んでいるが、機体の戦闘能力とパイロットの技量の高さは、部隊単位で評価した場合、本大戦に参戦している部隊の中でもトップクラスだろう。

 ただしキャリコのヴァルク・バアルには明確な変化があった。これまではあくまでも機動兵器としてのデザインラインを維持していたが、今は装甲の縁や指先、翼などが鋭角的になり、その印象を悪魔のように変貌させている。

 

「ディスの心臓、その封印を解いたか!」

 

 なによりもクォヴレーとベルグバウは感じていた。ヴァルク・バアルの内部から感じられるディスの心臓、その脈動を。クォヴレーの視線を感じ取り、仮面を外しているキャリコは感情を窺わせない表情で口を開く。

 

「ディス・ヴァルク・バアル、その初陣の相手をしてもらおうか、ディバイン・クルセイダーズ」

 

<続>

 




次回、ディス・アストラナガン解禁!


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第百十四話 銃神 影の救世主 真の竜

 それこそベルグバウからディス・アストラナガンへ変化したのと同等のパワーアップを果たしたディス・ヴァルク・バアルは、ただそこに佇むだけでも歴戦の勇士を戦慄させ、視認するだけでも脳が軋むような重圧を放っている。

 ユーゼスがシヴァー・ゴッツォの遺した設計データをどこかの世界で入手し、改良・複製したディス・レヴは想定通りに稼働し、ディス・ヴァルク・バアルの内部で不気味に胎動している。

 せめて、周囲のヴァルク・ベンにまでディス・レヴが搭載されなかった事が救いだったと思うとしよう。

 

「タウ・リン。ユーゼス様からの最後の手向けというわけではないが、このディス・ヴァルク・バアルの試運転も兼ねて力を貸してやろう」

 

 アクシズの地球落下にまるで興味がなく、言葉に欠片も熱のこもっていないキャリコからの通信に、タウ・リンは口元を吊り上げた。かろうじて笑みと見える何とも言えない形だった。

 

「そうかい。ありがたくて涙が出るね。俺にとっちゃガイゾックの連中共々、手が増えるのなら喜んで受け入れるぜ。あのベルグバウとかいう機体、DCの中でも特にヤバいと俺の勘が囁いているんでね」

 

「では健闘を祈る」

 

「欠片も祈っちゃいねえだろうに。社交辞令を口にするだけの分別はあるんだから、戦闘用の人造人間のくせにおかしな話だ」

 

 強化人間のタウ・リンよりもよほど業の深い素性のキャリコの態度にくっくっく、と短く笑って、タウ・リンはサイコシャードを更に広く、多く展開。

 その直後に、タクナのZプルトニウスが発射した無数のビームの束が機体に降り注ぎ、命中する直前で霧散する。

 更にサイコ・フィールドの外部から発射されたヘビーアームズ改のミサイルの雨や、ツインバスターライフルが襲い来るが、一つの例外もなくサイコシャードの作り出すサイコ・フィールドに飲まれて、あらぬ方向に捻じ曲げられると誘爆するか無数の粒子に分解される。

 

「ふん、悠長に人質の救出に向かったか。いいね、死ぬまで正義の味方をして死んでゆくがいい!」

 

 吠え猛るタウ・リンに忠実に応えて、グラン・ネオ・ジオングはサイコミュを通じて上の世界、あるいは別の次元、高い場所、刻の狭間から、人類がいまだ理解できていない謎のエネルギーを引き出し、理論上あり得ない出力のメガ粒子砲を四方八方へと発射した。

 サイコ・フィールドに満ちるタウ・リンの憎悪と殺意により、ニュータイプ達は常のような意識の感知が出来ずにいたが、まるで機体が──ガンダム達がパイロットを守るように襲い来る脅威を伝えた。

 

 コンマ一秒の差で回避の間に合った機体のすぐ傍を赤黒いメガ粒子の奔流が通過し、装甲が高熱で炙られていくつもの気泡が浮き上がる。

 グラン・ネオ・ジオングのメガ粒子砲は、一発一発がウイングガンダムのバスターライフルやヴァイエイトのビームキャノンを凌駕する域に達していた。

 間違って地球に降り注ごうものならば、小規模の都市ならそのまま壊滅してしまうだろう。

 

 スーパーロボットでも直撃を回避するべき攻撃の中、新たにこの戦闘に参入したEx-Sガンダムのビームスマートガンが火を噴き、グラン・ネオ・ジオングの展開するバリアに次々と命中して行く。

 サイコミュによる防御策はないが、フェブルウスの次元力による保護によって、Ex-Sガンダムとリョウ、ALICEはこの戦場に割って入る事が許されたのだ。リョウはいくら当ててもバリアを抜けない事を理解しながら、タウ・リンへ叫んだ。

 

「さっきから勝手にこっちの頭の中にぐちぐちとよぉ! 目の前で姉が轢かれて、死んじまって誰も助けてくれなかったってよ、そんな世界はクソだってよ! ああ、そうだな、クソッタレだ!

 だがな、それだけじゃねえってことくらい、いい年して知らねえのか。同情はしてやる。哀れんでもやる。どうせいらねえだろうけどな!」

 

「ああ、頭を下げられても欲しくねえなぁ! ビビりの新兵君!」

 

 タウ・リンの思考や記憶の伝播は、憎悪に満たされたサイコ・フィールドの副作用であった。トランザムバーストやクアンタムバーストに近い効果を発揮し、オールドタイプであるリョウでさえ、タウ・リンの姉が死ぬ光景や音、臭いさえもはっきりと感じるほどだ。

 同時にタウ・リンもまた敵対するリョウらの思考や脳裏に思い描く光景などが、フラッシュバックするように脳裏をよぎる瞬間が増えており、つまらないものを見せられ、またくだらないものを見せているのを理解していた。

 

(あの機体、サイコミュらしいものは積んでいないようだが、ボウヤ以外に誰かを乗せている? 思念らしいものを感じるが、二人乗りのガンダムタイプか!)

 

 この時、タウ・リンはEx-Sガンダムにリョウ以外の意思を、すなわちALICEの意思を感じ取っていた。

 強化・増幅されて更に鋭敏化したタウ・リンの感性と感覚は、システムに芽生えた意思さえも感じ取る領域に達し、フェブルウスに対しても双子以外にフェブルウス自身の意思を感じ取っている。

 

『機体の機動制御は私がする! 貴方はトリガーを引いて!』

 

 ALICEは声なき声で叫び、リョウはもはや阿吽の呼吸で機体のコントロールがALICEに渡ったのを察知し、敵機のロックオンとトリガーを引く作業に専念する。

 Ex-Sガンダムのカメラアイが赤く光り、動きのキレが一段も二段も増して、グラン・ネオ・ジオングの周囲を跳ねるように飛翔し出した。

 

「俺の命を預けるんだ、当たるんじゃねえぞ、ポンコツ!」

 

『なんて乱暴な人! 私はALICE、ポンコツじゃない!』

 

 リョウには届かないALICEの抗議の声を聴くのは、ゼファーと双子達だけだ。Ex-Sガンダムの攻撃とリョウの言葉にタウ・リンの意識がわずかに向いた瞬間、ゼロシステムによってそれを予測していたゼファーがEx-Sガンダムの影から躍り出る。

 緑色のGN粒子を大量に噴出し、サイコ・フィールド内部にGN粒子を広げながら、両手のGNソードの刀身を展開して、グラン・ネオ・ジオングへ一気に肉薄する。この刹那、タウ・リンは機体のモニター越しにゼファーW0ライザーと確かに目が合った。

 

「ッ!? 地球製のキリングマシーンってだけではなさそうだな、こいつは!」

 

 残るアームユニットが強力なビームの檻を形成し、ゼファーW0ライザーを閉じ込めて破壊しようとするが、それを見越していたように、ゼファーW0ライザーの機体が赤い輝きを発した。

 機体内部に貯蓄したGN粒子を一斉に放出し、機体スペックを大幅に引き上げる特殊機能“トランザムシステム”。

 ツインドライヴシステム搭載機によるトランザムの場合、生成されるGN粒子の量が尋常ではない為、性能は三倍化では済まず、また未知の現象を引き起こす可能性すら備える。

 

 タウ・リンは自身の思念が弾かれ、サイコ・フィールドの中に別の思念で満たされた空間が出来たように感じた。

 ゼファーW0ライザーの纏うGN粒子がサイコミュとカルケリア・パルス・ティルゲムの干渉を弾き返しているのだ。タウ・リンと機体がゼファーW0ライザーの圧倒的な速度に対応するまでのコンマ一秒の間に、新たにトランザムを発動した機体が居た。

 

「トランザム!」

 

 それは疑似太陽炉によるツインドライヴシステムを搭載する、アムロのRνガンダムだ。フィン・ファンネルとフィン・ファングを忠実な臣下と猟犬のように従えて、白い悪魔、白い流星と畏怖されたトップエースがグラン・ネオ・ジオングとタウ・リンに襲い掛かる。

 

「悲劇にあったからといって、新たな悲劇を生んでいい理由にはならないんだ、タウ・リン!」

 

 数十ものビームがグラン・ネオ・ジオングの全方位から降り注ぎ、回避する隙間が無いのを瞬時に察したタウ・リンは舌打ちをしながらバリアを全開にした。

 怒涛の攻撃に耐える中でもタウ・リンはサイコ・フィールドの展開を継続し、効果範囲に入った全ての機体に破壊の思念を叩きつけている。

 

 ギシギシと機体のフレームやエンジンをはじめとした各部位が悲鳴を上げ、パイロット達の精神もまた無数の針を差し込まれているような苦痛に襲われている。

 だが本来なら組み立て前の状態にまで分解されるか、自爆させられてもおかしくない状況の中、これだけの負荷で済んでいるのはユニコーンやバンシィをはじめ、各サイコマシーンが抵抗を示しているのと、繰り返し述べているが、フェブルウスの次元力による加護の影響だ。

 

 カミーユやジュドー、シーブック達も機体を立て直して、グラン・ネオ・ジオングに猛反撃を加える中、SPIGOTを展開し、右手にガナリー・カーバーを、左手にライアット・ジャレンチを握るフェブルウスが迫る。

 サイコ・フィールドの中を進む双子達はタウ・リンの発する剥き出しの感情を受けて、悲しみ、憤り、それでも止めなければならないと覚悟をより堅固にしていた。

 姉を愛していたからこそ誰も救いの手を伸ばさない世界が憎い。

 姉のような目に遭う人間はこの世界では珍しくもなく、すぐに誰も見向きもしなくなるような悲劇の一つでしかないと思い知らされて、タウ・リンの憎悪は衰える事を知らずに、遂に今日、地球人類滅亡に王手をかける段階にまで至った。

 

「貴方の憎しみにはとても共感するけれど……!」

 

 かつて至高神ソルだった彼らは双子と機体とに分かれ、ヘイデスと所長に拾われ、家族を得た。どんな宝石よりも眩く決して手を離したくないと思える家族達。それがもし目の前で殺されて、誰も救ってはくれなくて、その死を省みられることがなかったなら。

 ただ想像するだけでも胸が張り裂けそうで、涙が込み上げてしまいそうになる。だからタウ・リンの憎悪に双子とフェブルウスはひどく共感していた。

 

「ああ、でも、だけど! ダメなの、それを世界に向けては。だってあなたも世界の一部なのだから」

 

「自分自身さえ破滅させるような憎しみは!」

 

 何機ものガンダム達が作り出す攻撃の嵐の中をフェブルウスは突っ切り、SPIGOTを通過する事で機体に纏うエネルギーを増幅させて、グラン・ネオ・ジオングへと肉薄する。

 フェブルウスに気付いたタウ・リンは多少の被弾を覚悟して、フェブルウスを迎え撃つべく無事なアームユニットを動かして、五本の指を揃えて巨大なビームサーベルを作り出すし、機体を加速させる。

 

「俺の感情は俺のものだ。人の心を操作しようとは、とんだ悪党だな?」

 

 双子の悲鳴じみた言葉を鼻で笑い飛ばし、タウ・リンはフェブルウスの変則二刀流と真っ向から斬り結ぶ。

 百メートルにも達するような巨大なビームサーベルをガナリー・カーバーのビーム刃と銀の刃、ライアット・ジャレンチが受け止め、弾き返し、ズフィルード・クリスタル製の装甲に反撃を叩き込んでゆく。

 

「ちぃ、ユーゼスが警戒するだけはあるか。グラン・ネオ・ジオングと正面からやり合うとは……!」

 

 パリ奪還戦にて覚醒を果たした双子達だが、そこからさらに強敵達との戦いを経験し、高次元への道を開く可能性を持つサイコミュ全開のこの戦いに参加した事で、彼らの覚醒はもう一段階進んでいた。

 これまで双子とフェブルウスが使っていた次元力は“悲しみの乙女”、“傷だらけの獅子”、“揺れる天秤”、“いがみ合う双子”とZシリーズの主人公達が得たスフィアに由来していた。

 

 それが今は“怨嗟の魔蠍”、“欲深な金牛”、“沈黙の巨蟹”、“立ち上がる射手”とプレイヤー達に敵対したサイデリアル皇国のリアクター達に宿ったスフィアの力と権能にも覚醒している。

 奇しくも乙女は蠍と、獅子は金牛と、天秤は巨蟹と因縁のあった組み合わせで、必ずしも相性の良い組み合わせばかりではないが、大元の至高神ソルである双子とフェブルウスにとっては、失くしていたものを取り戻したに過ぎず、不具合は生じない。

 単純計算で倍のパワーを得たフェブルウスは数倍の巨躯と質量を持ち、宇宙世紀の欲望とユーゼスがタッグを組んだ破壊神の如きグラン・ネオ・ジオングをじりじりと押して行く。

 

「やああああ!!」

 

「俺は止まらねえ。誰が立ちはだかろうと、何が待っていようとだ!」

 

 余波だけでもアクシズを破壊しそうな膨大なエネルギーの激突は、そこからさらに過熱して止まる事を知らなかった。

 徐々にグラン・ネオ・ジオングとタウ・リンが追い込まれてゆく中、ヴァルク・ベン部隊を率いるキャリコはクォヴレーを含むグランドスター小隊とDCとの戦端を開いていた。

 

「これほど早くユーゼスがディスの心臓の封印を破るとは、俺の手落ちだな」

 

 周囲で激しい攻防が繰り広げられる中、クォヴレーはキャリコのディス・ヴァルク・バアルと正面から相対していた。互いに動く様子は見せず、時が止まったかのような状態だ。彼らの間に横槍を入れるものもいない。

 分かるのだ。二つの機体越しに発せられる名状しがたいエネルギーが周囲に渦巻いて、他者の介入を許さない不可視のフィールドが出来上がっているのが。

 

「あの方の執念を見落としたのは確かだ。貴様にとって因縁のあるのはシヴァー・ゴッツォや別の俺であって、ユーゼス様ではないのだろう? ならば貴様の失態は必然だったのだ」

 

「……返す言葉もないが、ならばこちらだけ封印し続ける理由がないのは承知の上だな?」

 

「余計な御託は不要だ。さっさと真の姿を現すがいい。その上で俺は貴様を超える」

 

「いいだろう、行くぞ、ベルグバウ。テトラクテュス・グラマトン!!」

 

 封印を解除する為のキーワードがクォヴレーの口から紡がれた瞬間、ベルグバウを中心として積層型の立体魔法陣が虚空に描かれて、ベルグバウからディーン・レヴとは異なるより異質な力がとめどなく溢れ出す。

 生命が輪廻転生する際の狭間にある無限力、それを引き出して自らの力とするディス・レヴに施された自己封印が解除されて、今再び、『悪魔王の名を冠する銃神』、『銃神ディス』が目覚めた。

 

 積層型立体魔法陣の中でベルグバウの背から翼が伸び、より禍々しく、しかし威厳を備えた姿へと変わってゆく。

 それは機動兵器の変貌というよりも人知を超えた超越者が真の姿を露にしたと表現するべき、神秘性に満ちた光景だった。

 人の耳と脳とでは理解しえない咆哮を上げて、ベルグバウ──ディス・アストラナガンの降臨は終わりを告げた。

 

「再び我が手に戻りしディス・アストラナガン。キャリコ・マクレディ、この力を解放させたことを後から悔やんでも遅いぞ」

 

「悔やむ? 馬鹿を言うな。喝采を上げるのさ。この“俺”が貴様を討ち、別の世界のキャリコ・マクレディには出来なかった事を成し、俺は唯一無二の俺となる!」

 

「自己の確立に固執する。……イングラムから続く因果か。いや、それほど格好の良いものではないな。精々、習性といったところか」

 

 誰かのコピーでも代替品でもなく、ただ一人のオリジナルになりたがるところは同じだな、とクォヴレーは気迫を漲らせるキャリコにかつての自分を重ね、呆れたように吐息をそっと零した。

 キャリコやクォヴレーのオリジナルたるイングラム自身がユーゼスのクローンではあるが、だからといってその心や魂までもが複製というわけでもあるまいに、とヘイデスが居たならそう零したかもしれない。

 

「Z・Oブレード。機体の条件は互角、ならば……!」

 

 キャリコはブレード・ホイール・バスターの片方からゾル・オリハルコニウムの製のブレードを更に大きく展開し、周囲に光学迷彩によって無数の実体無き分身を投射しながらディス・アストラナガンへ!

 ディス・アストラナガンのセンサーを持ってしても実体を判別できない幻影の分身達に、クォヴレーはユーゼスの技術力の高さを看破して舌を巻いた。シヴァーも銀河有数の天才だったが、ユーゼスも負けず劣らずだ。

 

「Z・Oサイズ。これでも多くの世界を見て来た自負がある。世界の広さも知らないヒヨコに技で負けるつもりはない」

 

 αナンバーズの元を離れて多くの世界を渡り歩き、因果律の番人として戦い続けた経験値により、クォヴレーの技量は研ぎ澄まされ、更に重厚さも加わっている。

 人造人間である為、戦闘技術をデータとしてダウンロードされているキャリコも生まれながらにして歴戦の戦士だが、クォヴレーの経験値は彼を上回る。仮に機体が同じステージに昇ったとしても、それだけで勝てるほど容易い相手ではない。

 

「実体を見破れないのであれば、その全てを撃ち抜く。ガン・スレイブ!」

 

 悪魔王の背より飛び立つ使い魔達が撃ち出した光弾は、一発一発が尋常ではない破壊力と連射速度だ。キャリコは分身も含めてすべてのディス・ヴァルク・バアルを巧みに操作し、見る間に宿敵との距離を詰めた。

 ガン・スレイブに撃ち抜かれて数を減らした分身達が一斉にブレードを振り上げて斬りかかる中、クォヴレーはその全てをガン・スレイブと共に迎え撃った。虚実を看破できないのならば、その全てを実体と考えて戦えばいい。

 ドモン・カッシュがチボデー・クロケットの豪熱マシンガンパンチ全てを受け止める為に、十体の分身ゴッドシャドーを用いたように。

 

「容易く倒れてくれるな? 弱者に勝って成り立つ存在意義など、俺には不要だ」

 

 何体もの分身と共に自ら襲い掛かったディス・ヴァルク・バアルの振るった左袈裟斬りの一撃を、クォヴレーは正確に見切ってZ・Oサイズの柄で受け止める。

 

「ここまで近づけばディス・レヴの鼓動を聞き間違える事もない。この距離でやらせてもらうぞ、キャリコ」

 

 Z・OブレードとZ・Oサイズの間で筆舌に尽くしがたい力の応酬が行われ、双方の剛腕がガチガチと唸るように震える。その間にガン・スレイブ達は周囲の幻影達を撃ち抜いて、ようやくディス・ヴァルク・バアルは本体のみとなった。

 刃と鎌とが離れて、二機は地球近海の宇宙を飛翔する。それぞれが魔神と悪魔王と呼ぶに相応しい翼を広げ、光り輝く流星と、いや、全ての光を飲み込む暗黒の流星と化して、二機は宇宙を塗りつぶして行く。

 

 グラン・ネオ・ジオングとニュータイプ達、ディス・ヴァルク・バアルとディス・アストラナガン達が新たな死闘の局面を迎えている中、地球から一隻の戦艦が急速に戦場に迫りつつあった。

 トライロバイト級ギャンランド。シャドウセイバーズの母艦である。所属機体の強化と改良、さらに独自の作戦行動を終えた彼らは現在、所属しているDCに合流するべく艦を急がせていたのだが、アクシズ落下の危機とあり急遽参戦する事となったのである。

 大気圏を突破しつつあるギャンランドの格納庫では到着次第、すぐに出撃できるように準備を整えた機動兵器達がずらりと並んでいた。

 

 ヴィンデルのツヴァイザーゲイン。

 アクセルのソウルゲイン。

 レモンのヴァイスセイヴァー。

 シロッコのジ・O³。

 ギリアムのゲシュペンストXAN。

 そして早乙女達人、早乙女ミチル、巴武蔵の真ゲッタードラゴン。

 以上の六機が間もなく戦場に到達しようとしているのだった。

 

<続>

 




うーむ、話が進まない。


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第百十五話 アクシズのバリエーションが増えたよ!

アクセルの声優さんネタがあります。


 新早乙女研究所。ゲッターロボの生みの親たる早乙女博士が所長を務め、本来平和利用されるはずだったゲッター線を侵略者と戦う為の力へと変え、初代ゲッターロボ、ゲッターロボG、真ゲッターロボを作り出した地球防衛の観点から見て、重要な施設だ。

 浅間山麓に存在する新旧早乙女研究所の内、より防備を整え軍事施設としても通用する設備の新早乙女研究所の最下層部に早乙女博士の姿があった。

 

 恰幅の良い理知的な容姿を持っていた早乙女博士は、今や髪とカイゼル髭の全てを白く染め、全身に疲労とも焦燥とも、あるいは恐怖とも見える異様な雰囲気を纏っている。

 全てはDCに合流するシャドウセイバーズに預けた、最も新しいゲッターロボが原因だ。

 真ゲッターロボが自己進化によって誕生した後、ゲッター線増幅装置として使ったグレイゲッターロボGを徹底的に、ネジの一本に至るまで検査した後、強化改造を施す中で異常な現象が新早乙女研究所を見舞っていた。

 

 既に死亡した恐竜帝国の帝王ゴールや百鬼帝国の鬼達、更には研究所の所員や見知らぬ誰か達が発光する幽霊のような姿で研究所の中を徘徊する姿が散見されたのである。

 幽霊騒ぎに見舞われる研究所の中にあって、早乙女博士だけは全身に満ちる活力と際限なく溢れ出る新たなアイディア、そして早く、早く! と謎の衝動に突き動かされて、グレイゲッターロボGを新生させる作業に没入していた。

 

 そして旧来の分離・合体で変形を行うのではなく、機体の構造そのものを変化させて、機体特性を切り替えるコンセプトを持った機体、真ゲッターロボGは驚くべき短時間で完成した。

 合成鋼Gをベースとしたマシンセル……ゲッターセルは、自己再生機能を備えた素材であると同時に細胞単位のゲッター線増幅装置として機能し、早乙女博士の脳にしか設計図が存在しないゲッター炉心の生み出すエネルギーと宇宙から降り注ぐエネルギーを爆発的に増大させる。

 

 真ゲッターロボGはこれまでのゲッターロボと異なり、分離/合体による変形を行わない。その為、ドラゴン形態を基本として一部の部位の変形によって、ライガー、ポセイドンの機能を使い分ける機体だ。よって、真ゲッタードラゴンと名付けられた。

 ゲッタードラゴンの正統な後継機然とした外見の真ゲッタードラゴンを見送った後、早乙女博士はそれまでの一心不乱、あるいは我武者羅な状態から一変して元の理的な姿を取り戻していた。

 しかし、先にも述べた通りにその全身はただならぬ疲労に襲われ、十歳も二十歳も老いたようだ。

 早乙女博士は頭上を見上げ、今頃は宇宙に到達しているだろう真ゲッタードラゴンとパイロットを務める息子・達人、娘・ミチル、そして初代ゲッターチームの巴武蔵達を想う。

 

(真ゲッター1が放ったストナーサンシャイン。消滅したはずのあの膨大なゲッター線。あれが真ゲッタードラゴンの炉に火を入れた……。それだけでなくわしに真ゲッターロボGを作らせたのも、ゲッター線ではないのか?)

 

 早乙女博士の心には尽きぬ疑惑が渦を巻いていた。ゲッター、ゲッター、ゲッター線よ!

 

「今ならヘイデス総帥が時折、ゲッターを畏怖していた理由が分かる。ゲッター線よ、お前の意志は、我々を、人類をどこに導こうとしているのだ!?」

 

 それは慟哭であり、懺悔だった。

 

 

 そして早乙女博士の叫びの届かぬ場所……落下中のアクシズを巡る戦場に、ついにシャドウセイバーズは到着した。

 ギャンランドからは量産型Wシリーズが乗るアシュセイヴァーやラーズアングリフ、サラとシドレのGNボリノーク・サマーンとGNパラス・アテネが次々と出撃している。

 

 ヴァイスセイヴァーに乗るレモンは、新しい機能を追加したソウルゲインに乗るアクセルに声をかけた。ソウルゲインの右前腕部は黄金の装飾が施された玄武金剛弾となり、左前腕部は黄金の筒のような形状に変更されている。

 玄武剛弾としてそのまま利用できるが、それに加えて大多数の敵を相手にする為の特殊な機構が内蔵されていて、これからの戦いにおいて大きな助けとなるはずの代物だ。

 

「アクセル、テストは十分に重ねたけれど、ソウルゲインの左腕の装備を使うのなら状況に注意して頂戴。MAP兵器の扱い、あなたはまだ慣れていないでしょ?」

 

「言われるまでもない。新兵扱いはよせ、レモン。お前こそ自分で手掛けた機体とはいえ、過信するなよ。厄介でない敵など一機もいない戦場だぞ」

 

「ふふ、心配してくれてありがとう。アインストの援軍も来ているから、数の不利は補えているわ。後は一部の敵機の質が問題ね」

 

 こればかりは険しい顔になるレモンだが、それはアクセルも同様だった。グラン・ネオ・ジオングにディス・ヴァルク・バアル、更に無数に姿を見せたバンドックと、大幅な戦力強化を経たシャドウセイバーズの面々からしても、過酷な戦いになると覚悟しなければならない敵達ばかりだ。

 これはソウルゲインとヴァイサーガを掛け合わせ、ワープ装置を搭載したツヴァイザーゲインを専用機としたヴィンデルにしても同じである。

 これから戦う敵は全て各勢力の最強格ばかりとはいえ、敗北を許されない戦いのみ。百戦錬磨のヴィンデルをしても重圧を感じる状況だ。

 

 地球側から戦場に突入したシャドウセイバーズが真っ先に接敵したのは、タウ・リン派のわずかな生き残りとゴラー・ゴレム隊のヴァルク・ベンだ。

 特にヴァルク・ベンは参戦してまもなく、機体の消耗が少ない。同じ状況のシャドウセイバーズが引き受けたのは、既に長時間戦い続けていたDCにとっては朗報だった。

 

 ラーズアングリフ、ギャンランド、GNパラス・アテネの砲撃の後に、一気にシャドウセイバーズ機動兵器部隊が加速し、交戦に入る。

 ツヴァイザーゲインが数体に分身すると掲げた腕から青白いエネルギーが生じ、そこから一気に奔流となって放たれる。

 

「貴様らの命は、我が掌中にある。受けるがいい、邪龍鱗!」

 

 ソウルゲインを上回るエネルギーの奔流に数機のヴァルク・ベンが撃ち抜かれ、回避した機体からは反撃の銃火が発射される。

 ツヴァイザーゲインとソウルゲインは更に加速して、最も得意な接近戦を挑んでゆき、アシュセイヴァーを率いるレモンは中~長距離からの支援に徹する。

 

「ちょっと得意なレンジに偏りのある機体編成だったかしらね?」

 

 アクセルとヴィンデルに並び、接近戦を挑める機体とパイロットがいないのは確かである。ギリアムとシロッコは技量面ではまったく問題ないのだが、機体は接近戦に特化したものではない。

 その意味では今回、たまたま乗り合わせた真ゲッタードラゴンはぜひとも加わって欲しいところだ。ただこれから先は共にDCで戦う以上、不要な心配だとレモン自身理解していたが。

 

「ゲッタートマホーーークゥ!!」

 

 ギャンランドから出撃した真ゲッタードラゴンは初陣の不安を吹き飛ばすように、長柄のゲッタートマホークを振り回し、ツイン・ホイール・バスターを構えたヴァルク・ベンや光の翼刃を展開して突撃してきたヴァイクル・ベンを容赦なく真っ二つにしている。

 スーパーロボット最上位のパワーがいかんなく発揮されて、技術力で上回るはずの異星人の兵器がおもちゃのように簡単に破壊される。

 

「次は私よ。真・ライガーアタック!」

 

 そこからさらにミチルの声が通信機越しに友軍機に伝わると、真ゲッタードラゴンの両手が収納されると、直後に飛び出てきたのはゲッターライガーを想起させるドリルとチェーンアームだ。

 宇宙空間を疾走するという荒唐無稽な移動方法で真ゲッタードラゴンは加速し、敵機の反応が追いつかない神速で穴だらけになった敵を増やして行く。

 主にスーパーロボットのパイロットに多いが、これから使用する武器や技を敵に知られるリスクを踏まえた上で音声として発するのは、複雑な手順を省略するボイスコマンドや付近の友軍機が巻き添えにならないように警告として発するといった意味がある。

 そしてトリを飾るのは武蔵だ。真ゲッタードラゴンの手首からゲッターポセイドンの頭部を思わせるパーツが出て、前腕部に並んでいるスピンカッターが横に倒れてファンの代わりとなる。

 

「宇宙でもポセイドンは強いぜ! 皆、巻き込まれるなよ、ゲッターサイクロン!!」

 

 大気の無い宇宙でなぜゲッターサイクロンを使用できるのか? この世界の真ゲッタードラゴンの場合は、機体から放出される気体状のゲッター線だ。

 大気の代わりを務めるゲッター線が巻き起こすサイクロンに飲み込まれていったバサ帝国とガイゾックの区別なく回避の間に合わなかった敵機がゲッターサイクロンによって装甲を破壊され、関節部をねじ切られ、次々と爆発してゆく。

 

「そこからコイツだ、フィンガーネット!」

 

 ゲッターサイクロンの放出が停止した直後、真ゲッタードラゴンの両手は元に戻り、今度はゲッターセルの変形した太いワイヤーが際限なく伸びていって、二機のヴァイクル・ベンを捕らえて何重にも拘束する。

 そこから武蔵が巧みな鞭捌きならぬネット捌きでヴァイクル・ベンを振り回し、全高78.3mの巨体を手近なところに居たバンドックの一隻にたたきつける。バンドックの展開するバリアに超高速で叩きつけられたヴァイクル・ベンは、あえなく爆散して跡形もなく吹き飛んでいった。

 

「よし、ミチルも武蔵君も真ゲッタードラゴンの操縦に問題はないな。皆、遅くなってすまない。これからは真ゲッタードラゴンと共に僕達も戦うぞ!」

 

 達人は父・早乙女博士の胸中を知ってか知らずか、味方からすれば何とも頼もしい言葉と共に次に倒すべき敵を求めた。

 マジンカイザー、真ゲッターロボと肩を並べる超級スーパーロボットの参戦としばらく部隊を離れていた仲間との合流は、DCメンバーの士気を高めたが、その中で兜甲児だけはマジンカイザーから伝わるナニカが気掛かりだった。

 これまでのマジンガーを超越する圧倒的パワーで量産型キルゼインをものともせず、スクラップにしていたのだが、独りでにマジンカイザーのセンサーが真ゲッタードラゴンに焦点を絞り、モニターの一角にその姿が表示されたのである。

 

「どうした、マジンカイザー? あの新しいゲッタードラゴンと達人さん達は味方だろう? ミチルさんや武蔵とも前から一緒に戦ってきたんだぜ」

 

 甲児はマジンカイザーが自分の意思があるかのように振舞うのを、安易に否定しなかった。

 祖父十蔵と弓教授が心血を注いで開発した、悪魔を滅ぼし、神をも超える魔神皇帝に人智を越えた何かがあると直感的に悟っていたし、以前、ヘイデスがぽつりと、魂が宿っていてもおかしくはないと零したのを耳にしていたからだ。

 

「真ゲッターロボの時もそうだったけど、お前はあの新しいゲッタードラゴンも注意を、いや、警戒しているのか? でも、まだ敵と決めつけているわけじゃないんだな」

 

 幸いマジンカイザーは、真ゲッタードラゴンをロックオンしているわけではない。少しでも多く情報を得ようとしている、おかしな動きをしないか注意している、といった段階だ。

 マジンカイザーと真ゲッターロボ、スパロボ作品によってはお互いのカウンターとして開発された経緯もある機体であり、スパロボシリーズとも関わる特殊な出自である為、参戦した際には焦点を当てられる機会も多い存在だ。

 それに加えて真ゲッタードラゴンまで出現したとあっては、マジンカイザーが何かしらの因果を感じ取るのも無理のない話だった。

 

 強力なスーパーロボットとリアルロボットを擁するシャドウセイバーズの参戦によって、戦場の天秤は大きく傾き始めていた。

 青龍鱗、玄武金剛弾によって雑魚的を蹴散らしたアクセルはコックピットに表示されたゲージの三つが満たされたのを確認し、一時的に敵部隊から距離を取り、ボイスコマンドとコントロールスティックの操作を併用して新武装の使用を進める。  

 左前腕部の筒状パーツに埋め込まれた宝玉が光を発し、使用可能な状態に至った事を伝える。

 

「ソイル、我が力!」

 

 アクセルのボイスコマンドに応じて筒状のパーツが展開、分解されて見る間に組み合わせを変えて、ソウルゲインの左手には巨大な黄金の銃が握られていた。

 三つの銃口を持つ黄金銃の弾倉は三つ。今は何も装填されていないそこに向けて、装填する為の特別な弾丸を生成する為のエネルギーと時間が、今、ようやく満たされたのである。

 

「貴様らに相応しいソイルは決まった!」

 

 ソウルゲインの腰部に追加されたガンベルト状のパーツには異なる色彩の弾丸ソイルが収められており、ソウルゲイン本体のエネルギー供給によって黄金銃──通称魔銃(マガン)が起動した後、ソイルを装填し発砲する事で異なるMAP兵器を使用できる。

 

「灼熱の牙、カーディナルレッド!

 紅蓮の疾風、ダーククリムゾン!

 そして、鋼の力、バーントシェンナ!

 焼き尽くせ! 召喚獣、イフリート!!」

 

 トリガーが引かれて、三つの銃口からソイルの発する巨大なエネルギーが黒煙となって放出される。その中から渦を巻いて三色の弾丸が螺旋を描きながら虚空を貫いて進み、ある一点で重なり合うと、そこに超高熱を伴った巨大な人型が出現する。

 ソウルゲインの十倍はあろうかという烈火の化身イフリートだ。スマートな体形の上に鋭角な装甲を何枚も重ねてまとったような姿のイフリートが両手を振り上げ、そこに太陽を思わせる超熱量を持った灼熱の大火球が形成される。

 イフリートが吼え、放たれた大火球は命中する前からその大熱量で敵機を蒸発させ、数十単位の敵機がこの一撃で消滅した。

 

「ふん、使いどころを間違えなければ悪くない武器だ。しかし、一度の戦闘で何度も使える代物ではないか」

 

 消費したソイルの補充と使用後の魔銃のエネルギー補充には多大な時間を要し、母艦からのエネルギー供給を受けてもそう簡単な話ではない。

 これまでのソウルゲインにはあり得ない大多数の敵機を殲滅する切り札によって、敵戦線に出来た隙間を縫って、シロッコのジ・O³(ジ・オーズ)が三重のGN粒子の渦輪を描いてアクシズの地表スレスレを駆け抜けた。

 

「これだけのサイコマシーンが開発されるとは、これも人の業か。バイオセンサー、サイコフレーム……人類は自らの手で神への階段に足を乗せた、か。だがそれを成すのはこのパプテマス・シロッコとこのジ・O³でよい」

 

 シロッコが手ずから作成した疑似太陽炉によるツインドライヴシステムを含む三基の疑似太陽炉が作り出す真紅の光輪を背負い、全身の数十に及ぶアポジモーターを駆使して、ジ・O³はZⅢやRνガンダムと遜色のない動きでサイコマシーンの戦場に傲慢なまでの自信と共に侵入した。

 疑似サイコ・フィールドの中を突き進んでくる異物の発するノイズはタウ・リンの脳をかき回し、強固な自我で形成されたシロッコの脳波はタウ・リンにとって不愉快極まりなかった。

 

「分かるぞ。ジ・O³を通して私にも分かる。タウ・リン、グラン・ネオ・ジオング、お前達がアクシズを落とす事の違和感。あり得ざる特異点の一つ!」

 

「! パプテマス・シロッコか。ユーゼスの下にいた男がこの世界ではそういう立ち位置になるとはな。図に乗った自信家なのは同じだが、俺の邪魔をするなら殺す。他の奴らと同様、石ころみてえにな」

 

 ズフィルードクリスタルの再生能力が疑似サイコ・フィールドによって強化され、タウ・リンがイメージした通りに再生する。トップクラスのパイロットとガンダムタイプが猛攻を加えながら落としきれなかった最たる理由が、この尋常ならざる再生能力だった。

 シロッコがサイコマシーンを人類を神へと至らせる鍵と評したように、グラン・ネオ・ジオングはMSの枠を超え、まったく異なるカテゴリーの機動兵器として完成していた。いや、もはや機動兵器と表現するのすら生ぬるい。

 

「消し飛べ、跡形もなく!」

 

 グラン・ネオ・ジオングの各種メガ粒子砲が一斉に煌めき、スペースコロニーを何基も破壊して余りある超エネルギーの奔流に対し、ジ・O³は左手を向けた。

 その動作に合わせてジ・O³の機体各所からGN粒子があふれ出て、渦を巻く銀河を思わせるGNフィールドが作り出され、メガ粒子砲の一斉放射を完璧に遮断する。

 シロッコがジ・Oをベースに完成させたジ・O³はシロッコの技量を完璧に引き出す基本性能に加え、膨大なGN粒子をサイコミュを通してシロッコのイメージ通りに操作する特性を持つ。

 今のGNフィールド然り、ツインドライヴシステムが生産するGN粒子はシロッコのイメージに従い、発振器なしにビームサーベルとなり、ビームライフルとなり、また推進剤ともなる。

 

「サイコミュとGN粒子の同時使用による相乗効果。それを確かめるのには窮地が最も効率が良い。貴様もその背後に居るユーゼス・ゴッツォも私の踏み台に過ぎん!」

 

 この世界のシロッコは自分がなぜギリアムに篤い忠誠心を抱いているのかは知らない。だがパンドラボックスの情報公開によって、並行世界の一つで自分がユーゼスにクローンを作られ、良いように利用されたのを知っている。

 並行世界の同位体とはいえあまりにお粗末なその結末に、この世界のシロッコは不甲斐なさを嘆き、一種の義務としてユーゼスの抹殺を決めていた。

 そのユーゼスに繋がるタウ・リンは、彼にとって手始めにまずは始末するべき相手に過ぎなかった。シロッコに先んじて戦っていたアムロやタクナ、カミーユ達の心情は一切慮らず、シロッコはただ自己の満足の為に愛機を操る。

 

 各戦線で新たな動きが生じる中、アクシズ内部に囚われた人質達の救出は順調に進み、アクシズに接舷したランチにエンツォらを乗せ、護衛のMS達に周囲を囲まれながらアクシズから離脱する事に成功している。

 救出こそ成功したアクシズの位置は危険な域に達している。破片を含めアクシズの全てを破壊する為に、レビルは重力兵器や核兵器を始めとした大量破壊兵器の使用制限の限定解除をDC各機に通達する。

 

 誰もが戦況の変化を察したが、その中でもキャリコはディス・アストラナガンと刹那の攻防を繰り広げながらもまだ余裕があった。タウ・リンもそうだが、DCがここまでやる事はユーゼスも想定済みだったからだ。

 Z・OサイズとZ・Oブレードで斬り結ぶこと百合を越え、ラアム・ショットガンとガン・スレイブとの撃ち合いもゆうに百を越えている。

 お互いに大技と言うべき武装の使用は控え、基本性能を確かめ合うような戦いをしているが、機体性能が互角であるのはほぼ間違いない。

 

「やはり地球人類の戦闘能力と軍事技術の発想力は、銀河でも飛びぬけている。ゲッター線が執着するのも納得がゆく」

 

「何を今さら。前の世界からユーゼスは地球を利用していただろう」

 

「ユーゼス様がロンド・ベルに敗れた後、並行世界を巡りその知見を広められたからこそ余計に実感されたのだ。

 多くの並行世界の中にあって、時に地球は滅び、破れ、支配されていたこともあるが、そうでない世界に於いては圧倒的不利の状況を覆して勝利を掴み、驚異的な戦闘能力を発揮した。

 世界という壁を越えて地球人は機動兵器の扱いと戦争において、極めて高い適性を備えた戦闘種族であるというのは、不変の真理なのだ。お前とてそれはαナンバーズでよく実感したはずだ」

 

「お前達はそうして彼らの軍事力にだけ目を当てるから、それ以外の力に考えが及ばずに敗れる。お前達に限らず多くの侵略者達も同じように敗北の運命を辿ってきたのを、お前はともかくユーゼスは知っているだろう」

 

「だとしても、今回の戦いで勝利するのはユーゼス様だ。イングラムの後継者たる貴様を葬り、実験室のフラスコであるこの世界で宿願を果たし、勝利したという因果を得るのはあの方だ。

 さて話が逸れたが、地球人の健闘を称賛してユーゼス様からの贈り物を受け取ってもらおう。目覚めよ、最後の審判者セプタギン」

 

「なに!?」

 

「お前のその機体の武装はセプタギンにとっても脅威だ。もうしばらく俺とディス・ヴァルク・バアルの相手をしてもらおう」

 

「最初からここで俺を倒すつもりはなかったということかっ」

 

「ふ、貴様が腑抜けなら倒しきる予定だったが、そうも行かなかったのでな」

 

 キャリコが余裕たっぷりにクォヴレーに答える間にも、アクシズには明確な変化が生じていた。アクシズ内部の核融合炉をはじめ、各所に仕込まれていた大量のズフィルードクリスタルがキャリコから送られた信号によって起動。

 自己増殖、自己再生、自己増幅機能のリミッターが外されて、アクシズを内部から急速に浸食して見る間にアクシズは赤と紫の入り混じる巨大な水晶の塊へと変貌して行く。

 

「デビルアクシズ、大特異点、数奇な運命を迎えることもあるが、この世界ではセプタギンアクシズとなる」

 

 これまでどうにか落下を阻止しなければならない筈だったアクシズが、突如として同サイズの巨大な兵器と化した事実を素直に飲み込めた者はDCの中でもそう多くはなかった。

 

「我ガ名ハ、セプタギン。我ハ最後ノ審判者……地球文明ヲ……リセット……スル」

 

<続>

 

■ソウルゲインに玄武金剛弾と魔銃が実装されました。

 




ファイナルファンタジーアンリミテッドの「黒き風」は「黒木風」という名前なんだとか。

追記
話数の順序が乱れていたので修正いたしました。


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第百十六話 三つ終わり、一つ始まり

 アクシズがセプタギンに浸食されるよりも少し前にまで、時間を巻き戻す。

 ガルーダとバトルチームの一進一退の攻防は、お互いの相棒に無数の傷を刻みながら決着の瞬間を迎えようとしていた。

 コンバトラーV6は四肢の欠損こそ免れているものの、追加マシンであるバトルアーマーが無かったなら、どてっぱらに穴の一つ二つは開いていたダメージを積み重ねている。ここはド根性の一つも欲しくなる局面であった。

 ブラックビッグガルーダも同じようなものだ。

 超電磁ハイパーヨーヨーやVレーザー、ビッグブラスト・ディバイダー、アトミックバーナー、超電磁スパーク等々、挙げればきりがないほど多種多様な武器を使いこなすバトルチームの猛攻に、有翼の黒騎士は半死半生の痛々しい姿だ。

 

 だが、どれほど装甲が罅割れ、血液の代わりにオイルが漏れ、紫電が散ろうとも両雄の放つ闘志に衰えはない。

 傷つけば傷つくほど、絶対にコイツには負けられないと新たな闘志と気力が湧きおこり、彼らの底力を限界の更にその先まで引き出している。

 

 葵豹馬は、いや、バトルチームの誰もが改めてガルーダという好敵手を称賛した。自分達は多くの人々に支えられ、四人の仲間達と共にコンバトラーV6で戦っている。

 それなのにガルーダはたった一人で、ここまで戦っている。なんて凄い奴だろう、なんて強い奴だろう、と。

 

 ガルーダは葵豹馬だけでなくバトルチームの五人全員に、心からの敬意を表したかった。この身は血の通う生身ではない。人間よりもはるかに頑丈で、はるかに鋭敏な機能を備えた作り物だ。

 生身の彼らに比べればはるかに優れたスペックの体を持ち、そのスペックに見合うだけの機体に乗って戦っているというのに、何度も窮地に追い込まれ、その度に負けじと押し返し、今に至っている。

 そんな強敵を相手に一人で戦わなければならないとは、なんと苦しく、なんと楽しいことか。全てが作り物の自分でも、そう感じられている間は心があるのだと、魂があるのだと実感できる。

 

「感謝する。バトルチーム、コンバトラーV6、そして彼らを支える全ての地球人達よ。このガルーダ、お前達と出会えた運命に今日ほど感謝した事はない」

 

「へ、急にしおらしいことを言うじゃねえか。弱気になった、て言うんじゃねえな」

 

「馬鹿言うないな、豹馬。ここまで戦っといて、冗談でも言うもんやないで」

 

 十三の指摘に豹馬は分かっているじゃねえか、と言う代わりに唇を舌で舐めた。緊張を和らげようという無意識の動作だ。まったく不思議な気持ちである。

 紛れもなく命を賭けた戦いをしているというのに、戦えば戦うほどガルーダと心が通い合い、お互いに対する理解が深まっている。

 

(ガルーダにだけじゃねえ。十三、大作、ちづる、小介、皆とも言葉にするまでもなく、今、何を考えて、次に何をしようとしているのかが、手に取るようにわかる。ニュータイプってわけでもないのによ。それに分かるぜ、俺達はコンバトラーとも繋がっている!)

 

 無機物の塊であるはずのコンバトラーV6。しかし、四谷博士に南原博士、更には開発と製造に関わった多くの人々のたくさんの想いが込められ、今日までバトルチームと共に戦ってきた戦友だ。

 その戦友に意思や魂があると考えるのは、豹馬達にとって不自然な事ではなかった。DCのメンバーの多くも同じような感覚を、真化の兆しを感じているだろう。そしてそれは目の前のガルーダもきっと同じに違いない。

 

 ブラックビッグガルーダが大鎌をしっかりと握り直し、翼を畳み込んで加速の為の予備動作に入る。コンバトラーV6は分割したツインランサーを逆手に構えて、腰を落としやや前かがみの体勢へ。

 無音の宇宙で、しかし、六人と二機の気合がさく裂した。数百メートルの間合いを置いて対峙していた両機が刹那の速さで距離を詰め、獲物のリーチで勝るブラックビッグガルーダの大鎌がコンバトラーV6を真っ二つにせんとその左わき腹へ襲い掛かる。

 これをコンバトラーV6の左手のツインランサーが受け止める。豹馬達に操縦したという感覚はない。自分の体を動かしたのと同じ感覚だった。ガルーダが内心で称賛の言葉を発した。

 

(お前達なら止めるだろうとも!)

 

 あっさりと大鎌が手放され、その代わりにブラックビッグガルーダの左手が左腰の長剣を逆手で抜き放ち、そのままの勢いを買ってコンバトラーV6の腹から頭を逆一文字に切り上げる。

 真っ白い腹に剣先が食い込んだところで、かろうじて右手のツインランサーが間に合い、両者の刃が拮抗する。

 

(これもお前達ならば、このガルーダに幾度となく煮え湯を飲ませたお前達ならば、止める!)

 

 再びあっさりと武器を手放したブラックビッグガルーダの両手は矢筒に突っ込まれて、矢を纏めて握って引き抜いた。

 弓に構えて射なくともこの距離から全力で叩きつければ、コンバトラーV6の装甲を貫くには十分な威力を発揮する。

 勝利を確信するガルーダの気合が伝播し、ブラックビッグガルーダの双眸が一層激しく輝き、そして大きな衝撃がブラックビッグガルーダを揺らした。

 コンバトラーV6が同じようにツインランサーを手放し、右の手首から飛び出した超電磁ギムレットがブラックビッグガルーダの胸を貫いていたのだ。

 

「俺達もお前がここまでやる奴だと信じていたぜ、ガルーダ」

 

「ふ……ふふ……ふ、ふ。ああ、見事だとしか言いようが……ないな。もう、これ以上ないほど、力を振り絞った。悔いは……ない……」

 

 コンバトラーV6の右腕が引き抜かれ、ブラックビッグガルーダは胸に開いた大穴からスパークを散らしながら、ゆっくりと膝から崩れ落ちるのだった。

 虚空に倒れ伏すブラックビッグガルーダとガルーダに、勝者たる豹馬達からかける言葉はない。だが、無言でブラックビッグガルーダを見つめるその姿には、好敵手に対する無限の敬意が確かに存在していた。

 豹馬達とガルーダの戦いが決着を迎えた頃、ガイゾックと神ファミリーの戦いもまた閉幕の時を迎えようとしていた。

 

 デュークの連れて来た反ベガのレジスタンス軍に加え、ガルーダの派遣したマグマ獣部隊、大量に出現したアインストの助けにより、メカ・ブーストの大多数は既に撃破されている。

 取り巻きのメカ・ブースト部隊を突破した二機のスーパーロボットが、バンドックの一隻に肉薄していた。グレートブースターを常時装備してパワーアップしたグレートマジンガー、そしてグレンダイザーテラが同時にフルパワーの一撃を叩き込む!

 

「どれだけ守りを固めても、俺達の攻撃を防げると思うな! ブレストォオ、バァアアン!」

 

「ガイゾック星人の遺した災いはこの宇宙に必要ない! 反重力スーパーストーム!」

 

 直撃しなくても余波だけで機動兵器が融解する超高熱と虹色の大嵐が、それまでの猛攻でバリアを破壊されていたバンドックに容赦なく襲い掛かる。

 限界の限界まで強化された両機の合体攻撃は、バンドックの土偶部分を見る間に融解し、粉砕し、半分以上を吹き飛ばした。

 

 また別のバンドックは、真ゲッタードラゴンと真ゲッター1が構えたゲッタートマホークでなます切りにされた上、四方八方からゲッタービームを浴びせかけられ、内部から誘爆を引き起こして沈んでゆく。

 コンピュータードールごとバンドックが何隻も沈んでゆく中、彼らを守護するメカ・ブーストばかりでなく、デスカインとヘルダインもまたこれまでの戦闘で性能を見切られ、攻略法が確立されていた為、次々と撃破されている。

 

 その中でオリジナルのキルゼインを操るブッチャーは脳内麻薬を強制的に分泌させられて、恐怖も痛みも忘れて目の前の敵を殺す事しか考えられなくさせられている。

 白い巨体の繰り出す二本の大剣の怒涛の攻撃は、睡眠学習と今日までの戦いで、歴戦の猛者となった勝平とザンボット3×3にしても、自ずと冷や汗を流すほどの脅威。

 

「死ぬのが怖くないって戦い方をしてくるぜ。だけどな、こっちはお前の道連れになるつもりはないんだ!」

 

「勝平、バンドックは最後の一隻、メカ・ブーストも残りは二百を切っているぞ!」

 

「私達は目の前のブッチャーに集中しましょう。他のキルゼインとは段違いの強さだわ」

 

 宇宙太と恵子の言葉を耳にしながら、勝平はじりじりと神経を削られるような消耗を強いられていた。ザンボット3×3の多種多様な武器を使い分け、キルゼインの大剣と撃ち合っているが、お互いに決定的な一撃を加えられずにいる。

 サンアタックとムーンアタックの連続攻撃を撃ち込めれば、一気に形成をこちらに傾けられるが、それを分かっているブッチャーは徹底的に大剣の間合いでの戦いを仕掛けてきている。

 

「ここは賭けに出なけりゃ勝てねえ。宇宙太、恵子、俺に命を預けてくれ!」

 

「そいつは今さらだぜ。ザンボットに初めて乗った時から、俺達は一蓮托生なんだ」

 

「宇宙太に言いたいことを言われちゃったわね。勝平、思いっきりやりなさい。私達が全力でフォローするわ!」

 

「すまねえ、ありがとう! じいちゃん、父ちゃん、無敵クロスをやるぜ!」

 

「アレはまだシミュレーションしか済んでおらんぞ、勝平!?」

 

「いえ、この状況を覆すには必要な一手です。勝平を、子供達を信じましょう」

 

「……そうか、そうじゃな。わしらがあの子らを信じなければな。よし、ザンボット3×3との相対位置合わせ、射出タイミングの計算を始めるんじゃ」

 

「周囲の友軍機に援護要請を! 三十秒でいい。それだけあれば、勝平達ならやってくれる」

 

 神ファミリーが一丸となって勝利の為の賭けに出る事を決めるその間も、ブッチャーの猛攻が途切れる様子はない。

 まるで豪雨のように叩きつけてくる上段からの斬り下ろし、回転する独楽のように間断なく振るわれる左右からの斬撃。強制的に機体に埋め込まれたブッチャーの持てる全ての技量が、ザンボット3×3へと容赦なく叩きつけられているのだ。

 

「無理やりにでも、隙を作るっきゃねえ! フルパワーでなくたって構うもんか。サンアタック……乱れ打ちだい!」

 

 ザンボット3×3の特徴的な前立ての日輪から半分ほどの出力で、サンアタックが面を形成する勢いで乱射される。

 連射速度に重点を置いて発射された乱れ打ちは、例え直撃してもキルゼインの装甲にダメージを入れられないが、勢いを削って後退させるだけならば出来る。

 これまでは次につながる有効打を見つけられず、機体のエネルギーを温存する為に使用を控えていたが、今は一気に勢いに乗るべきだと勝平の勘が告げている。

 

「勝平、今から射出する。合体のタイミングを間違えるな!」

 

「父ちゃん! へへ、勝平様に全部任せとけって!」

 

「ふ、よし! トライダーホーク、射出だ!」

 

 トライダーホーク……それはパンドラボックスから得られた、無敵シリーズの一角を成す無敵ロボ・トライダーG7のデータをベースに開発された支援メカだ。

 トライダーG7にはトライダー・イーグルという変形形態があるが、本機はあくまでもザンボット用の支援メカであり、トライダーG7とは別物であるという理由からトライダーホークと名付けられている。

 

「ぐぬ、新しいメカか! 何をするか知らんが、このブッチャー様が見逃すと、ぐわぁあ!?」

 

 サンアタック乱れ打ちで崩れた体勢を立て直し、攻撃を仕掛けようとするブッチャーを攻撃したのはトキオ達ブレイウッドMS部隊だ。

 ネオガンダム、シルエットガンダム改、Gキャノン・マグナ、ハーディガンの一斉攻撃を受けて、キルゼインはサンアタックで劣化していた装甲を更に消耗させられている。

 

「勝平、今だ。時間は俺達が稼ぐ!」

 

 G-バードの直撃ともなれば、いかにキルゼインの重装甲でも無傷では済まない。ブッチャーは攻撃を無視してザンボット3×3を追う事は出来ず、回避を余儀なくされる。

 その苛立ちが彼の血圧を大いに上げたが、キルゼインの側から薬物が投与されて、強制的に思考を冷却されるのが今の彼の状態だった。

 

「ガイドビーコン受信、ドッキングパーツを解放!」

 

 恵子が素早く計器類を確認して、トライダーホークとザンボット3×3の双方がドッキングフォーメーションに入る準備が始まったのを告げる。

 

「トライダーホーク、ザンボット3×3、変形開始、ドッキングシークエンススタート!」

 

 宇宙太の報告の通り、雄々しく翼を広げた猛禽の如きトライダーホークがドッキングに向けて変形を開始し、機体の前部と後部が分離して、その間に滑り込むようにしてザンボット3×3が直進して行く。

 

「決めるぜ! ザンボット・コンビネーション……無敵クローース!」

 

 勝平が限界まで神経を張り詰め、気迫を込めて叫べば

 

「3!」

 

 宇宙太が応じて、恵子もガイゾックとの因縁の終わりを感じて、あらん限りの声で叫ぶ。

 

「2!」

 

 そしていつもの通りに千代錦が吠える。大丈夫、いつも通りさ、いつも通り勝てるからと励ますように。

 

「1!」

 

 分離したトライダーホークの翼を備えた後部は、そのままザンボット3×3の背中にある日輪状のパーツと重なり、無敵超鋼人は天空も宇宙も自在に掛ける翼を得る。

 残る前部パーツはザンボット3×3の胸部と腰部前面を覆う追加装甲となり、金色の十字が輝いていた胸部には、黄金の鳥を思わせる意匠の施された装甲が重なる。

 ザンボット3、ダイターン3、トライダーG7……無敵シリーズと呼ばれる三体のロボットの力を結集し、そのロボットはこの宇宙に降臨した。

 

「最高無敵超鋼人……ザンボットインビンシブル!!」

 

 それでも、この世界に万丈やワッ太が居たならもっと心強かったに違いない。実戦ではぶっつけ本番となった無敵クロスを無事に成功させた勝平は、見事にやり遂げた事への達成感と同時に、自分でも分からない寂寥感がわずかに存在していた。

 初めてザンボット3×3の合体を成功させた時と同じように、勝平は漠然とここではない世界で共に戦った仲間達を無意識で感じていたのだろう。

 

「ブッチャー! このザンボットインビンシブルでいい加減、お前に引導を渡してやるぜ!」

 

「馬鹿が、それはこっちの台詞よ。ガイゾックの神に逆らう愚か者の末路は一つ、死あるのみじゃぁああああ!」

 

「いくぜ、宇宙太、恵子、千代錦、ザンボット! ご先祖様の敵討ちをして、ガイゾックもまとめてやっつけてやる! いくぞ、サン……ムーン」

 

 ザンボットインビンシブルの頭部の日輪が眩く輝き出し、日輪を飾る三日月も同じく輝きを始める。日輪と三日月だけに留まらず、そこに新たに猛禽の輝きが加わる!

 

「トライダーバード……アタァッック!!」

 

 ザンボットインビンシブルのエンジンが唸りを上げて、今度こそフルパワーのサンアタックとムーンアタックが発射され、更にザンボットインビンシブルの胸部の鳥が輝きながら巨大化し、機体全てを飲み込むまでになる。

 キルゼインが回避しきれずに胸部にサンアタックを受け、その周囲をムーンアタックが回転しながら包囲する。

 

「ぐげぇ!? う、うごけ、動け、キルゼイン。わしは、わしはこんなところで死にたくない! まだだ、もっともっと、もっと、殺して、もてあそんで、虐殺を楽しみたいいぃいいい」

 

 まるで断末魔を上げるように身もだえし、必死に逃げようとするキルゼインに向けて、光り輝く鳥が加速、加速、加速、加速!

 

「無敵コンビネーション……アタックだあああーーーーー!」

 

 日輪がキルゼインの胸部を貫き、周囲を回る三日月が中心部に集束して腹部を貫通、そうしてもはや処刑寸前のキルゼインとブッチャーを容赦なく貫いた!

 

「いやだ、嫌だ、嫌じゃ、まだ死にたく……!!」

 

「っらあああああ!!」

 

 ブッチャーの断末魔を飲み込んだザンボットインビンシブルは、キルゼインがエネルギーの余波で跡形もなく消滅してもなお一切減速せずに、倒すべき因縁の敵を目指して飛び続ける。

 勝平の狙いはコンピュータードール第8号の操るバンドックだ。既にこれまでの交戦で巨大な四つ足の土偶じみた艦体のあちこちに損害が見られ、キング・ビアルのイオン砲の集中砲火を受けて、右の前脚(?)が破壊されている。

 

「コンピュータードール! お前達の仕事も今日で終わりにしてやる!」

 

「愚かな、我々を破壊すればお前達のような悪い考えを持った邪悪な生き物が宇宙に蔓延してしまう。悪しき生き物はこの宇宙に存在するべきではない。我々が全て駆逐しなければならない。それが我々ガイゾックの存在理由」

 

「それしか出来ねえのはいっそ同情するぜ。確かに地球人が悪いところが一つもない、完璧な生き物じゃないのは、ガキの俺にだって分かる。

 でもなあ、お前達は悪いところしか見てない! 地球人達にだって良いところはある。それも本当の事なんだ! 悪い考えのある生き物なら滅ぼしていいなんて、その考えに疑問を持てないんなら、お前達は可哀そうな道具のまんまだ!」

 

「お前達に理解される必要などありはしない。我々は作り出された使命を理解し、従事し、存在意義を全うしている。

 それに比べて、お前達の行いを同じ地球人の全てが称賛するわけではない。お前達に守られていてなお、お前達を糾弾し、恐怖し、理不尽に迫害する者達が必ず現れる。そんな地球人を守る為に戦えるのか? それをお前達は分かっているのか?」

 

「そうだとしても、そうじゃない人達も必ずいる! だったら、俺は、俺達は戦えるんだ!!」

 

 勝平の魂の叫びと共に日輪と三日月を伴う光の鳥がバンドックの頭部を貫き、更に背後で反転して艦底から再突入して頭頂部までを一気に貫く!

 無敵アタックの超エネルギーはバンドックを内部から完全に破壊しつくし、勝平の叫びを反芻する余裕を与える間もなく、コンピュータードール第8号をこの宇宙から消滅させた。

 

 ガイゾックの中で長く地球勢力と戦い、自己改造を繰り返していた最強戦力コンピュータードール第8号のバンドックが沈み、オリジナルキルゼインとブッチャーが倒れたことにより、ガイゾックの中核となる戦力は消滅した。

 そしてセプタギンが起動して、アクシズを内部から浸食して赤と紫の水晶の集合体のような姿へと変貌したのはこの直後であった。

 アクシズの変貌は戦場に居るほとんどすべての者達を驚かせたが、その中でアクシズの仕込みを知っていたタウ・リンは驚きを見せなかった。ただアクシズを落下させるよりも、考えようによってはより悲惨な結果に繋がる事態に変った事へ笑みを深めるばかり。

 

「さっきまでは地球の寒冷化、今度はズフィルードクリスタルによる浸食同化か。つくづく自分で自分の首を絞める人種らしいな、地球人は」

 

 喜悦と言わんばかりに皮肉を口にするタウ・リンだったが、彼とて余裕はなかった。新たに参戦したシロッコを含む地球最高峰のガンダムパイロット達との戦闘で機体は傷つき、ズフィルードクリスタルの再生能力が間に合っていない。

 そしてタウ・リンにとって、想定外の事態を引き起こすスーパーロボットがDCには居た。獣を越え、機械を越え、人を越えた神の戦士──ファイナルダンクーガ!

 

「今だよ、忍!」

 

「おう、やってやるぜ!」

 

 疑似サイコ・フィールドの範囲外に立つファイナルダンクーガが脚部から断空剣を取り出し、母艦ガンドールから発射された主砲ガンドール砲の膨大なエネルギーを受け止める。

 新たな動力に置き換えられたガンドールの保有するエネルギーは一気に跳ね上がっており、ガンドール砲を利用するファイナルダンクーガの攻撃力は機体とパイロットとの相乗効果によって、いっそ笑いたくなるほど冗談じみた強化レベルに至っている。

 

 ファイナルダンクーガの機体から野生の力によってさらに増幅された超エネルギーが光の柱となって立ち上った。

 ダンクーガのシステムを解析してサイ・コンバーターが開発されたように、サイコミュを始めとした各種技術はダンクーガにも還元され、獣戦機隊の面々の野生・精神力のエネルギー変換効率は劇的に高められている。

 

「愛の心にて悪しき空間を断つ……名付けて、断空光牙剣!!!」

 

 刃長数キロメートルにも達しよう超級エネルギーの刃が一気呵成に振り下ろされ、疑似サイコ・フィールドと真っ向から激突。

 愛の心にて振るわれる光の剣が、核融合炉と量子波動エンジンのエネルギー、更に高次元から抽出されたエネルギーで満たされたフィールドへじりじりと斬り込まれてゆく。

 

「俺の邪魔をするのはガンダムばかりじゃないか、人の皮を被った獣がよ! 獣の臭いが隠せてねえぜ!」

 

「てめえの事情は知らねえ! 同情もしねえ! 哀れみはねえ! 憎しみもねえ! だがこんなことをしやがった怒りはある!

 俺達の方が強けりゃ、お前の目的は潰れる! てめえの方が強けりゃ、あの水晶のバケモンが地球に落ちる! それだけの真っ向勝負だあああ!!!」

 

「ハハハハハハ!! いいぜ、いいぜ! 獣の方がよほどシンプルで分かりやすい。俺がてめえらを殺すか、てめえらが俺を殺すかだ!!」

 

 グラン・ネオ・ジオングの機体から直接サイコシャードが生え始める。

 さながらどこかの世界のフェストゥムやファフナーを彷彿とさせる光景だが、ズフィルードクリスタルがサイコシャードを学習し、その機能を再現し、タウ・リンの破滅的な精神に同調した結果、発生した特異な現象だ。

 サイコシャードを次々と生やして行くグラン・ネオ・ジオングが疑似サイコ・フィールドの強度を高めるが、それでもなお断空光牙剣は止まらずに疑似サイコ・フィールドを切り裂く!

 ファイナルダンクーガに攻撃を加えようとしていた敵機を一手に引き受けていたシャピロは、渾身の一撃を放つ部下達へ激励の言葉を発した。

 

「藤原、やれ! お前なら出来る! 野生の力とは生きる力、生きる事は命に対して真摯に向き合うことに他ならない。生きる力を強く持つお前達ならば、破滅に向かうだけのあの男になど負けはせん! 我を空にして煩悩を断つ、故の断空我(ダンクーガ)!」

 

「おおおおらあああああああああ!!!!!」

 

 忍、沙羅、雅人、亮、アランの叫びが一つに重なり、五人の野生が互いを高め合い、天井知らずにその力を強く、強くしてゆく。純粋な生きる力、煩悩を断つ野生、愛に通ずる一撃は愛ゆえに憎悪に狂うタウ・リンの妄執の力場を切り裂いた!

 断空光牙剣に切り裂かれた疑似サイコ・フィールドはそのまま見る間に崩壊して行き、そのフィードバックがタウ・リンと機体を襲って、機体から生えていたサイコシャードが次々と砕けてゆく。

 

「があああああああ!?」

 

 血管の中を無数の針が流れているような苦痛に、タウ・リンが口の端から血の泡を噴いて苦しむ。だが決して警戒を緩めなかった彼は迫りくるユニコーンとバンシィに気付き、グラン・ネオ・ジオングのセンサーがパイロットに遅れて二機を捕捉。

 

「誰かの命が報われない事のある世界でも、それでも、俺は! まだ、諦めない!」

 

「バンシィ! お前の力を貸せ。俺もお前も、皆もまだ終わらない! 終わらせない!」

 

「ガキ共!」

 

「自らを諦めた貴方には!」

 

 並び立つフル・サイコフレームの申し子達が構えるビーム・マグナム。それを緑色の結晶が覆い尽くし、まだ解き明かされていないこの世のものではない力が流れ込む。

 そうして発射されたビーム・マグナムは、カタログスペックではあり得ない出力となってグラン・ネオ・ジオングに突き進み、盾代わりにされたアームユニット四基を貫き、そのままグラン・ネオ・ジオングの両肩を撃ち抜く。

 

「舐めるなアあああアア!」

 

 ビーム・マグナムに撃ち抜かれ、両肩に開いた大穴がサイコシャードによって埋め尽くされ、グラン・ネオ・ジオングは機能低下を最低限にとどめ、戦闘を継続する動きを見せる。

 アームユニット六基を失ったが、まだハルユニット部分に備えた各メガ粒子砲と収納されたグラン・ジオング用の武装が残されている。窮地に追い込まれてもまだ闘志の揺るがないタウ・リンを嘲笑する声が、宇宙に木霊する。

 

「この期に及んで生き足掻くか。その執念も醜く映る」

 

 ジ・O³を駆るシロッコである。グラン・ネオ・ジオングを見下ろし、さながら自らこそ神の意思そのもの、あるいは世界の調停者と言わんばかりの傲慢なる姿だ。

 

「アクシズの変貌……プルート財閥から回された情報にあったS級危険物か。ジ・O³よ、その力を振るえ。このパプテマス・シロッコの機体に相応しい力を示せ! トランザム!」

 

 ツインドライブシステムと疑似太陽炉が貯蓄したGN粒子を一斉に放出し、ジ・O³の機体が血のように赤く染まり出す。ジ・O³の動きに合わせて膨大なGN粒子が蠢き、それは悍ましい血の大河となってグラン・ネオ・ジオングへと襲い掛かる。

 血しぶきのようにGN粒子の飛沫を散らしながら襲い来るGN粒子の大河に飲まれまいと、グラン・ネオ・ジオングはディフレクトフィールドと念動フィールドを多重に展開するが、襲い来る負荷の凄まじさに機体が悲鳴を上げて、そこかしこから赤黒いスパークが散り、赤や黒に染まったサイコシャードが生えては砕けるのを繰り返す。

 

「ふざけた名前のふざけた男。正義の味方ごっこをするような性格ではないだろうが、どういう風の吹き回しだ?」

 

 機体とパイロットへの多大なダメージと引き換えにGN粒子の大河から脱出し、グラン・ネオ・ジオングから降り注ぐ反撃のメガ粒子砲の雨をジ・O³は巨体に見合わぬ軽やかさで回避して行く。

 ジ・O³のトランザム状態は維持されており、その機動性はただでさえMSトップクラスだったのが更に速さを増し、ともすれば光よりも速いと錯覚しかねない。

 良くも悪くもジ・O³とシロッコの参戦により、タウ・リンとの戦いの趨勢は一気に傾いた。この勢いを逃すまいとアムロやカミーユ、タクナ達も怒涛の攻勢に踏み切る。

 カミーユは理由は分からないがシロッコに対して根拠のない不快感を覚えつつも、ZⅢをWR形態へと変形させ、刃長を五十メートルほどに圧縮展開した光の翼で羽搏く。

 

「ここからいなくなれ! それがお前の憎悪を終わらせて、楽になれる唯一の方法なら!」

 

「悪いが俺は我儘でな。地球の連中を巻き添えにするくらいはしないと、寂しくてあの世にいけないのさ!」

 

「この期に及んでまだそんな嘘を!」

 

 ZⅢの光の翼がグラン・ネオ・ジオングの左腕をバッサリと切り落とし、即座に反転したグラン・ジオングがハルユニットから外部腕を引き抜き、メガ粒子砲を連射して、光の翼に何発か命中弾を当てて見せた。

 光の翼でメガ粒子砲が散らされた為、ZⅢそのものにダメージはない。タウ・リンとしてはこのまま追撃を加えたいが、アムロのRνガンダムがそれを許さない。

 

 立体的な機動で有機的に動くフィン・ファンネル、GNフィンファングの群れとRνガンダムのバスターライフルが次々とハルユニットの巨躯に命中して行く。

 フィン・ファンネルと大型フィンファングの砲撃で次々と装甲が砕かれ、脆くなった箇所へビーム刃を展開した小型フィンファングが次々と突き刺さっては、再生の追いつかないダメージを瞬時に積み重ねる。

 

 周囲を高速で飛び回るフィンファングとフィン・ファンネルを全て捕捉し、撃墜するべくメガ粒子砲の集束率を緩めて拡散撃ちするタウ・リンだが、視界を埋め尽くすメガ粒子砲の雨の中を縫って迫りくる巨大なファンネルに気付く。

 ガイア・ギアαの大型ファンネルだ。戦艦も斬り裂くビームサーベルを展開し、タウ・リンを串刺しにするべく正確にコックピットを狙う軌道を取っている。

 咄嗟に機体をずらしてハルユニットの腰部を刺し貫かせるに被害を留めたのは、タウ・リンの力量を褒めるべきだろう。必殺の攻撃を回避されたが、しかし、クワトロは笑っていた。

 

「感覚が鋭すぎるのも時に考え物だな、タウ・リン」

 

 その呟きが聞こえたのか、タウ・リンは思考する間もなく機体を操作し、ハルユニットからグラン・ジオングを分離させていた。接続のロックが外される最中、直上から急接近していたタクナのZプルトニウスが襲い掛かる。

 タウ・リンはタクナとZプルトニウスの戦力評価を低く見積もっていた。だがその一方でタクナに対して奇妙な程の警戒心を抱いてもいた。

 それは原典と呼ぶべき世界で、タウ・リンとタクナとの間に結ばれた因縁によるものだが、その警戒心をクワトロの攻撃が逸らしたのだ。

 

「あんたの憎しみで誰かを焼かせるわけには!」

 

「だったら、止めて見せろよ!」

 

 Zプルトニウスとグラン・ジオングが交錯する刹那の瞬間、両機のビームサーベルが交錯し、Zプルトニウスの左肩から右脇腹まで横断する傷が刻まれる。グラン・ジオングもまた首にビームサーベルが突き刺さり、切っ先が背中に飛び出している。

 

「まだ動けるのか!?」

 

 大きなダメージを受けた機体を必死に制御するタクナは、ビームサーベルで機体の中枢を貫かれても動く様子を見せるグラン・ジオングに驚愕を隠せない。タウ・リンはその体にも結晶を生やしていた。

 サイコシャードの機能を学習したズフィルードクリスタルが度重なるダメージに暴走し、パイロットであるタウ・リンをも浸食し始めたのだ。

 歪な方法で機体との一体化が進むタウ・リンは、その脳髄までもサイコシャードに貫かれながら、まだ戦いを止めない。憎悪は止まらない。赤黒く染まるサイコシャードとズフィルードクリスタルに包まれて、人ではないナニカになろうとしている。

 

「俺を止められる奴はいねえのか!?」

 

 それは嘲笑のようでいて、嘆きのような叫びだった。その直後、右目をサイコシャードに内側から浸食されたタウ・リンの視界にゼファーW0ライザーの姿が映る。

 両肩のバインダーに接続されたクアッドバスターライフルの銃口から、グラン・ジオング目掛けてコロニーの一基や二基、簡単に崩壊させる破壊エネルギーが迸り、ろくに動けない状態のグラン・ジオングを飲み込んだ。

 

「────!!」

 

 すぐにモニターだけでなくコックピットに侵入してきた光に飲み込まれ、タウ・リンは言葉を発するまもなく、その肉体を消滅させてゆく。

 

──俺を殺りやがったな。だが、俺は最後の最後まで誰も許さなかった。アースノイドもスペースノイドも、オールドタイプもニュータイプも。

 どいつもこいつも変わり映えのしないクソどもばかりだ。そんなやつらの作る世界なんて、滅びるその時まで今のまま呪われ続けるがいいさ。

 

 死の瞬間が訪れるその直前まで世界の全てに対する憎悪を和らげず、世界に呪いあれと声なき声で叫んでいたが、サイコシャードとカルケリア・パルス・ティルゲムに強制拡張された彼の意識は、自分に視線を向けたままのゼファーW0ライザーに気付く。

 この社会を憎んだ。

 戦争を経ても変わらないこの世界を憎んだ。

 世界を形作る人間の全てを憎んだ。地上に住んでいようが、宇宙に住んでいようが、旧かろうが、新しかろうが、平等に、公平に。

 しかし、ゼファーは? 不思議と自分を哀しんでいるように見える、人造物は? ゼファーもまたタウ・リンが憎むべき存在か?

 

──俺に引導を渡したのが作り物とはな。だが、そうか、この世界にも俺が憎まなくてもいい奴が居たのか。そいつは……ああ、悪くない。

 

 ほんの少しだけ憎悪を和らげて、タウ・リンの生命はこの宇宙から消え去った。タウ・リンとグラン・ネオ・ジオングを撃破する為に多大なリソースを支払わされたDCのニュータイプ達だが、彼らに安息の時が訪れるのはまだ早い。

 セプタギンアクシズの全身から大小無数の水晶片が射出され、ゴラー・ゴレム隊を除いた戦場の全ての機体と艦隊に襲い掛かったからだ。

 

 クリスタル・マスメルと呼ばれるその無差別水晶攻撃は、純粋な質量攻撃としてだけでなく、着弾した機体を急激に浸食し同化する厄介な機能も併せ持っている。

 数千単位で降り注ぐ水晶片の危険性は、事前にパンドラボックスからデータ共有されており、DC以外の部隊も必死に迎撃と回避に徹している。

 

 問題は地球へも降り注いでいる分だが、キュクロープスとパトロール艦隊の撃ち漏らしは大量に出現しているアインスト達が我が身と引き換えにしてでも撃墜し、地球が浸食同化される危機を防いでくれている。

 全長数十キロメートルのアクシズを取り込んだセプタギンアクシズを完全破壊する為、ロックされていた強力すぎる兵装を解放し、地球への影響を考慮しつつも破壊作業を行わなければならない。

 

「こうなっては多少地球への悪影響が発生してしまうのも、許容せざるを得んか」

 

 ハガネの艦橋でレビルは極めて険しい表情を浮かべていた。セプタギンアクシズを破壊する為にはDCの全兵装を解放する必要があるが、あまりに地球に近すぎる。

 射線を間違って地球を巻き込めば、下手をすれば都市一つ、島一つが消し飛ぶだけでは済まない武装が複数あるのだ。ハガネのFDSキャノンもそうだ。アクシズのままだったなら、破壊以外にも直接押し返すなり軌道を逸らすという選択肢が取れたが……。

 

『地球人類へ。最後の審判者セプタギンは我に任せよ』

 

 レビルだけではない。地球側の勢力の人々すべての脳裏にこの声は聞こえた。声の発生源はセプタギンアクシズと地球の間に出現したひと際巨大なアインストだった。

 アインスト・レジセイアを人型にし、各アインストを融合させたような姿は、むしろこのアインストから派生して各種のアインストが作り出されたのかもしれない。全てのアインスト達の源流たるノイ・レジセイアだ。

 

 かつてヴァイシュラバを自分達の宇宙へと招待し、直接交渉して以来、自ら動く姿を見せなかった彼が、地球の危機を前にしてその姿を見せたのである。

 ノイ・レジセイアの出現はアルフィミィとレモンは把握しており、驚いた様子はない。ただあまりに明瞭に脳裏に響く声に、エクセレンとキョウスケは少しばかり驚いたようだが。

 この時、戦場のはるか遠くに円環を描くようにアインストの作り出した結晶体が配置されていた。ヘイデスだったらそれを見て、アインストが世界間を移動する際に用いるストーンサークルや無限のフロンティアシリーズに登場したミルトカイル石を連想しただろう。

 

『地球人類が自らの行いで滅ぶのならば、我は見過ごそう。しかし外なる者達の手によってもたらされる滅びには異を唱えよう。最後の審判者よ、異なる世界より齎されたモノよ、我が世界へと来るがいい』

 

 その瞬間、巨大な赤い結晶体で作られた円環が眩い輝きを発し、セプタギンアクシズとノイ・レジセイアを含むすべてのアインスト達、更にDCとゴラー・ゴレム隊を地球近海から消し去った。

 ではどこへと消し去ったか? ノイ・レジセイアが口にした通り、普段、アインスト達が待機している彼らだけが存在する世界にだ。通称アインスト空間と呼ばれるその空間は、赤く澄み渡り、ところどころにストーンサークルや黒、赤、青の結晶体が浮いている。

 例外はアルフィミィの住居であるグワジン級の残骸くらいだ。

 生命が一切存在しない静寂に満たされた空間に、セプタギンアクシズを包囲する形でシャドウセイバーズを含むDCの面々は出現した。状況の把握に努めるレビル達の脳裏に、再びノイ・レジセイアの声が響き渡る。

 

『この空間は我らアインストの本拠地たる場所。我ら以外に生命はなく、またこの世界でどれだけ暴れても地球やあちら側の宇宙へ影響が及ぶ心配はない』

 

 ノイ・レジセイアからの情報に強力すぎる武器を持ったロボットのパイロット達の多くが、ありがたいと言わんばかりに唇を吊り上げて笑みを浮かべる。

 

「そいつはいいや。それなら遠慮なしに、あのクリスタルの化け物をぶっ壊せるってもんだ!」

 

 甲児の言葉を肯定するようにマジンカイザーが左の掌に右の拳を打った。マジンカイザーだけでなくライディーンもパイロットの洸に呼応してムートロンエネルギーを高まらせ、比較的エネルギーに余裕のある各機が一斉攻撃のタイミングを図り始めている。

 

「損傷した機体と消耗の激しい機体は急いで帰還させろ! まずはハガネのFDSキャノンとタルタロスの次元転移砲、ネェル・アーガマのハイメガ粒子砲を発射後、機動兵器部隊による一斉攻撃を行う。各機は射線軸上より退避。

 また変貌したアクシズはセプタギンと以後呼称する。セプタギンからの水晶片攻撃には十分以上の注意を。もし命中し、浸食を受けた場合には即座に機体を破棄して脱出せよ!」

 

 レビルの指示は瞬時に味方に行き渡り、一部の機体が母艦に戻る間はノイ・レジセイア率いるアインスト部隊が前面に出て、変わらず無数に発射されるクリスタル・マスメルの迎撃を引き受ける。

 

「軍事技術レベル……危険領域ニ到達。地球文明ノリセット、抹消ヲ。邪魔者ハ排除スル」

 

 アインスト空間に連れ込まれてもセプタギンアクシズの行動原理は変わらず、一層クリスタル・マスメルの発射速度が速まる。それだけでなく巨大化した水晶の一部が無数の破片に砕けると、それら一つ一つが様々な勢力の機動兵器や艦艇へと姿を変えた。

 これまでメギロートが収集した戦闘データや偵察活動によって得られたデータを用い、セプタギンアクシズが複製・生産したものだ。

 クラップ級にカイラム級、ムサカ級、エンドラ級、更にはスカルムーンやガルンロール、ムゲ戦艦、飛行要塞グールと無節操なラインナップである。

 各勢力の機動兵器も次々と生み出されており、おそらくアクシズ内部の資材や居住区などの施設を材料にして、大量生産を可能としているのだろう。

 

 数を減らしたと思った敵がまた増えたことにDC側は苛立ちを隠せないが、彼らの知らないところで一つの目的を終えたキャリコはクォヴレーとの戦いを切り上げるべきかどうか、内心で思案していた。

 ディス・ヴァルク・バアルの試運転としては十分な戦闘データを得られている。私的にはこのままクォヴレーの息の根を止めたいところだが、創造主たるユーゼスからは目的を達成した後は帰還するように指示を受けている。

 

 お互いに主武装を封じての戦いにクォヴレーもキャリコが本気でないのは理解しているが、ディス・レヴを有する尋常ならざる機体同士。ディス・アストラナガン以外の機体が戦うのは危険性が高すぎた。だが、どうやらそれはクォヴレーの杞憂であったようだ。

 シャドウセイバーズ指揮官にして元アポロン総統、ギリアム・イェーガーの駆る、彼の背負う罪の名を冠したゲシュペンストが二人の戦いに介入したからである。

 

 ゲシュペンストXNは最初のゲシュペンストをベースに、頭部にトサカを思わせるパーツが追加され、腰部にはサンランザーならぬXNランザーと呼ばれるベルトが装着され、背には六枚の放熱板状のパーツが背負われている。

 細かいディテールの変化もあるが、ゆうにゲシュペンストMk-Ⅲの三倍以上のパワーを発揮しており、ギリアムが機動兵器開発に対する天才的なセンスを有しているのが分かる。

 

「お前達の因果を巡る戦いに割って入るのは無粋と承知の上で、横槍を入れさせてもらおう! リッパー・アクティブ、行け、アイスラッガー! フィン・ファンネル!」

 

 ゲシュペンストXNの頭頂部のパーツが分離し、ひとりでに浮かび上がると勢い凄まじくギリアムの念じる通りの動きでディス・ヴァルク・バアルへと襲い掛かる。それだけではない。

 背部ラッチから放出されたフィン・ファンネルもコの字に折れ曲がると、強力なメガ粒子砲を次々と発射し始める。

 

「呪われた放浪者! この世界でも、ユーゼス様の世界でもない世界から迷いこんだ居場所なき者か! 貴様もイレギュラーだが、そう簡単に俺達の因縁に割り込めると思ってもらっては困る」

 

 アイスラッガーとフィン・ファンネルを捌きつつ、キャリコは邪魔者がと声を低くして、不快感をあらわにして告げる。

 

「生憎とお前の主人であるユーゼスとは多生の縁がある。彼がここまでしぶといとは俺の想像を越えていたが……。リボルケイン!」

 

 ゲシュペンストXNが腰のバックルに右手を当てると、XNランザーから赤いダイナモを備えたグリップを引き抜き、見る間に光の粒子が宿って十メートルほどの光の棒を形成する。

 光の剣ではなく光の杖であるリボルケインを手に、ゲシュペンストXNが一気に加速してディス・ヴァルク・バアルへ大上段から斬りかかる。

 咄嗟にZ・Oブレードで受けたキャリコだったが、リボルケインをゾル・オリハルコニウム製の刃が受け止めるどころか、刃を欠いて見せた光景には目を見張った。

 

「なるほど、安易に軽んじてよい強さではないようだな」

 

 Z・Oブレードを思い切り振り抜き、ゲシュペンストXNとの距離を開いたキャリコはセプタギンアクシズの状態を見て、頃合いだと判断する。

 一方でギリアムもアイスラッガーとフィン・ファンネルを収納し、ディス・アストラナガンの横に機体を並べて次のキャリコの動きを油断なく見つめる。

 

「既にこの戦場での役割と目的は果たした。クォヴレー、ギリアム、DC、アインスト共、精々セプタギンと遊ぶことだ」

 

「待て、キャリコ!」

 

 クォヴレーの声を無視して、キャリコは機体のクロスゲート・パラダイス・システムを起動し、このアインスト空間からただ一人、配下のゴラー・ゴレム隊を置き去りにして姿を消してしまう。

 

(そう、俺の役割、ユーゼス様の目的は果たした。ディス・レヴの試運転、アインスト達の本拠地の空間座標の把握という目的を)

 

<続>

 

ゲシュペンストXNは名前こそXNガイスト風ですがヒーロー戦記でギリアムが初期に共に戦ったアムロ、ウルトラセブン、RXをモチーフにした機体だったりします。名前をゲシュペンストZEUSにしようか悩みましたが、Zシリーズで綴りは違っても部隊名として出ているので、XNを採用です。

ザンボット3×3はトライダーG7モチーフの支援メカとの合体で最後のパワーアップをしました。こちらも名前には随分と悩みましたが、無敵シリーズからインビンシブルと命名。最高無敵超鋼人の無敵と重複しますが、そこは作者の命名センスの無さを恨んでください。

 

追記

インビジブルとインビンシブルを間違えていたので置き換え。恥をさらしました。




そうそう、真ゲッタードラゴンという真ゲッターロボGは以前行ったアンケート通り人型の方になります。


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第百十七話 奏鳴の銀河より

ようやくアクシズ落とし編終了です。
書きたい場面優先で巻いていきますよ~。


 アクシズを取り込んだだけではまだ足りないと、セプタギンはズフィルードクリスタルを四方へと拡大し、戦場に漂う無数の残骸と逃げ遅れた機体を次々と取り込み、体積を増やして更なる巨大化を進めている。

 間断なく発射されるクリスタル・マスメルの直撃を受けて、行動不能になる機体もそれなりにいる。万が一脱出の間に合わなかったパイロットは機体ごとズフィルードクリスタルに同化されてしまう為、そうなった場合は悲惨の一言に尽きる。

 

 バリアが標準装備となった地球連邦系の艦艇ではあるが、クリスタル・マスメル一発当たりの威力と機関銃の如くばら撒かれるその数を前に、立て続けに命中するとすぐバリアは悲鳴を上げている。

 もし艦体に当たれば見る間に浸食されて、クルーの脱出する暇はほとんどないだろう。

 ハガネを筆頭としたDC艦隊も直掩機と合わせて必死の対空砲火を網目のように展開しているが、その中でも目覚ましい活躍を見せているのはガンダムReonだ。

 AI制御故に躊躇や恐怖がなく、人間をはるかに凌駕する演算速度で艦隊を守る為の最善手を選び続けている。

 

「レオン! 第三波がインディゴ22 ブルー14 デルタ6より数七十! いける?」

 

『問題ありません。ルビー、オペレートを継続してください』

 

 無数の水晶の雨を回避しながらセプタギンアクシズの巨体を揺るがす一撃を加えたのは、マジンカイザー、真ゲッター1、ウイングゼロ、ゼファーW0ライザー。

 いずれも戦略級の扱いを受ける規格外達だ。マジンカイザーや真ゲッター1などはマシンセル混じりの超合金ニューZαとゲッターセルが装甲の為、直撃を受けても傷一つつかない上に同化浸食にも抵抗できているから、多少の被弾は無視できるのも強みだ。

 

「光子力エネルギー、百パーセント! くらえ、光子力ビーム!!」

 

「手加減はなしで行くぞ! ゲッタービーム!!」

 

「目標セプタギンアクシズの完全破壊。任務を遂行する」

 

 極大のエネルギーの奔流三つに加え、ゼファーW0ライザーもクアッドバスターライフルを同時に発射し、クリスタル・マスメルの雨を消滅させながら突き進んだ同時攻撃は、巨大すぎる的に直撃したが、多重に展開されたディフレクトフィールドと大質量、削られる端から再生する事によって、そのまま貫通とは行かず体積の三割を削るにとどまった。

 このセプタギンは起動と同時に自己再生、自己増殖、自己進化、学習能力のリミッターが解除されており、とりわけ、アクシズを見る間に吸収した事から分かるように同化・吸収能力は尋常ではない。

 今の同時攻撃も食らいながら学習し、ある程度は減衰・吸収する事に成功しているほどだった。だがこの攻撃でセプタギンアクシズの攻勢が緩んだのは確かだった。周囲に展開している複製兵器達も、この攻撃に巻き込まれて多数が破壊されているのも功を奏した。

 

 ハガネのファイナルダイナミックスペシャルキャノン、タルタロスの次元転移砲、ガンドールのガンドール砲、ネェル・アーガマのハイメガ粒子砲を主軸として、DC艦隊の砲座が残弾とエネルギーを気にせず、一斉に火を噴く。

 ノイ・レジセイアもまた号令を下し、アインストグリート達が赤いコアを輝かせて、次々と砲撃を加えて行く。

 セプタギンアクシズの巨体のほとんどすべてを飲み込む爆発的な光の中で、キロメートル単位の水晶が千々と砕けて消滅するが、セプタギンアクシズはなおも健在。

 残留するエネルギーやかろうじて形を残している自分の破片を取り込み、少しでも再生を速めようとあらゆる行動を取っている。

 

 その再生途中もこのアインスト空間に呼びこまれたDCとアインスト達が、ひっきりなしに攻撃を加えて、クリスタル・マスメルとの凄まじい攻撃の応酬が続けられている。

 DC側、特にスーパーロボットのパイロット達にとって不利に働いたのが、近接戦闘がほとんど不可能という状態だった。

 もっとセプタギンアクシズの体積を削り、再生機能に障害を来した状態でなければ、不用意に直接攻撃を加えるとそのまま取り込まれかねない。

 超電磁スピンやゴッドバードといった高速で突撃する類の攻撃なら、同化される可能性は低いが、セプタギンアクシズの体積を考えると中心部への攻撃は現段階では控えるべきだ。

 レビルは毎秒ごとに損傷を修復し、体積を増やして行くセプタギンアクシズの姿に表情を険しくする。

 

「元からアクシズの体積があったとはいえ、こちらの主砲をあれだけ叩き込んでもあの程度の損害、いや再生速度が速すぎるか。敵機動兵器群の相手をする部隊と、セプタギンアクシズの体積を削る部隊とで再編成を行う!」

 

 レビルは攻撃方法の関係でセプタギンアクシズへの攻撃に向かない機体を即座にピックアップし、部隊の編成を超特急ではじめ、セプタギンアクシズ内部のエネルギー反応変化と経路の確認を厳重に行わせる。

 パンドラボックスからの情報提供によれば、セプタギンのコアとなる部位があり、そこを破壊するのがもっとも手早く機能停止を見込めるからだ。

 

 ゴラー・ゴレム隊が姿を消した事で、セプタギンアクシズの破壊に集中できるこの状況はピンチであるがそれ以上にチャンスだ。地球への影響も考慮しなくていい。

 クォヴレーもディス・アストラナガンと共にセプタギンアクシズの破壊に加わり、元から十分に足りていた火力は更にその質と量を高めている。

 セプタギンアクシズは生物ではないが、周囲の敵機の脅威を把握し、自壊も辞さない勢いで機動兵器の複製と同化・再生速度の高速化に残りのエネルギーを振り絞っている。

 

「合わせろ、ヴィンデル!」

 

 ギリアムのゲシュペンストXNはリボルケインを収納し、右腕を立てると左手をその肘の下につけてL字型の構えを取る。このポーズを取る事でゲシュペンストXNの両腕のエネルギー経路が接続され、膨大なエネルギーがゲシュペンストXNの両手に流れ込む。

 一方、ギリアムの叫びに応じてヴィンデルもツヴァイザーゲインを無数に分身させながら、一斉に暗黒のエネルギー弾を発射する。

 

「言われるまでもない。やれ、ツヴァイ! 邪龍鱗!!」

 

「技を借りるぞ、セブン。ワイドショット!!」

 

 一斉攻撃を仕掛けているのはゲシュペンストXNとツヴァイザーゲインばかりではない。サンドロックやデスサイズ、アルトロンが複製兵器を相手にする中、ヘビーアームズとウイングゼロは持てる火器をこの場で使い尽くす勢いだ。

 特にウイングゼロとゼファーW0ライザーは互いのゼロシステムの未来予測を照合し合い、共有するべき情報とするべきでない情報をより分ける作業も並行して継続中だ。

 

 ライディーンとサイコマンダー隊が思念の波長を合わせて合体ゴッド・アルファを撃ち込み、マジンカイザー、グレートマジンガー、グレンダイザー・テラのファイヤーブラスター、ブレストバーン、反重力スーパーストームがひと際巨大な水晶の一片を消滅させる。

 コンバトラーV6とボルテスⅦが再び超電磁コンビネーションでお互いの超電磁エネルギーを高め合うと、グランライトウェーブを照射して大型戦車形態に変形したコンバトラーの後ろに重戦車形態に変形したボルテスが続く。

 二大超電磁メカの合体攻撃の勢いはクリスタル・マスメルの波とディフレクトフィールドを突破して、セプタギンアクシズを貫通する!

 

 断空光牙剣の消耗のあるファイナルダンクーガも断空砲ファイナルフォーメーションからの大砲撃を加え、ダイモスとフォボスは光の速さに達した四肢を用い、浸食されるよりも早く拳と足を引き戻すという離れ業を実行していた。

 見る間に体積の削れて行くセプタギンアクシズが、どこか必死に生き残ろうと足掻いているように見えても、決して見間違いではなかったろう。

 クリスタル・マスメルと複製兵器の展開する弾雨の中を、ブレードライガーBSがアーバインの援護を受けながら、獅子王の迫力と共に疾駆していた。

 

「ジーク、出力全開だ! フィーネ!!」

 

「ゾイドコア出力百五十パーセント、レーザーブレード展開。バン!」

 

「文字通り星だって叩き斬ってやるぜ、プラネットスラッシャー、全・開・だああああ!!」

 

 レーザーブレードからその名に違わない形容する言葉が見つからないほど強大で、眩いエネルギーの刃が荒々しく形作られる。

 キロメートル単位のエネルギーの刃はセプタギンアクシズを真っ向から斬りつけて、その中心部を横断する巨大な斬撃の後を刻みつけた。

 そればかりではない。わざと刀身の根元から折る事で、斬撃痕にプラネットスラッシャーのエネルギーを残留させて炸裂させる二段構えの攻撃!

 

「プラネットノヴァ!」

 

 斬撃の後に生じた星の終わりか誕生を想起させる強烈な光を受けて、セプタギンアクシズは大いにその体積を失い、巻き込まれた複製兵器も多い。

 アクシズの中心部に向けて大穴を開けた最後の審判者の姿に、中心核を破壊する絶好の機会だとDC側は判断を下した。今にもあの大穴が塞がれる可能性を考えれば、一分一秒を惜しむ中で、躊躇せず突っ込んでゆく機影が五つ。

 

 フェブルウス、アルトアイゼン、ソウルゲイン、ヴァイスリッター、ヴァイスセイヴァーの五機だ。フェブルウスを除けば何とも因縁のある四機と四人の組み合わせである。うわあ、と引くか、わあ! と喝采を上げるかはプレイヤー次第であろう。

 ヴァイスリッターとヴァイスセイヴァーはセプタギンアクシズのコアに向けて、吶喊するアルトアイゼンとソウルゲインの援護の為に。フェブルウスはコアまでの道を切り開く為に赤い宇宙を飛んでいる。

 

「フェブルウス、次元力全開でゆくよ!」

 

「シュメシ、フェブルウス、三つに別たれたソルの力を……」

 

 シュメシとヘマーの声、そしてフェブルウスの声なき声が一つになり、機体の全身から次元力の緑色の光が溢れ出す。

 至高神ソルのミニチュアたる“いがみ合う双子”のスフィア。それを搭載した機動兵器ジェミニオン・レイ最強の必殺技を再現するフェブルウスの両手に、次元力の光で作られた巨大な両刃の剣が出現する。

 

「僕達に、地球にお前の審判なんて必要ない!」

 

「私達がアナタに審判を下す!」

 

「ジ・オーバーライザー・アーク!!」

 

 先程のブレードライガーBSの一撃を彷彿とさせる超巨大な光の斬撃が縦一文字に振るわれて、セプタギンアクシズの巨体を深々と斬り裂く。

 セプタギンアクシズが咄嗟に動かしたのか、コアこそ外したものの、セプタギンアクシズは一時的な機能停止状態に追い込まれていた。

 セプタギンアクシズの動きが鈍化した代わりに、周囲の複製兵器達が大急ぎで駆け付けており、体当たりも交えてアルトアイゼン、ソウルゲインを阻もうとしている。

 

「突っ込むぞ、ナンブ! 遅れるなよ」

 

「こちらの台詞だ。俺達が撃ち貫くか、取り込まれるか。チップは全乗せだ」

 

 青龍鱗にスクエア・クレイモア、光子力ビーム、ホーンファイアー、三連装マシンキャノンとありったけの火力が発射され、そこにヴァイスリッターとヴァイスセイヴァーがまるで双子のように息の合った援護攻撃を加える。

 

「あらあら、私も入れて欲しいですの。仲間外れは寂しいんですのよ~?」

 

 こんな状況なのにゆるふわっとした声のアルフィミィが加わって、ライゴウエを叩き込む。更にアインストディナ、アインストグリート、アインストレジセイア達による援護もあれば、赤と青の機体を阻める敵は存在しなかった。

 

「同化するとは言ってもこちらにも再生機能があれば阻害は出来る。なら、先に俺が突っ込む。行くぞ、ソウルゲイン! 俺がお前に力をくれてやる!」

 

 ソウルゲインの双眸と各所に埋め込まれた宝玉状のパーツが一斉に輝き出し、アクセルの生体エネルギーがソウルゲインを満たして、新たな力を生み出して増幅させる。

 手足を用いた格闘戦がメインである為、セプタギンアクシズとの相性が悪いソウルゲインだが、その四肢に膨大なエネルギーを纏った状態であれば、話は変わってくる。

 

「審判者気取りのガラクタ風情が、俺達に審判を下すなどと、笑わせてくれる!」

 

 その瞬間、ソウルゲインの手足が無数に増えたような勢いの凄まじいラッシュがセプタギンアクシズに叩き込まれ始める。アクセルの格闘技術の粋を凝らした、絶え間ない連続攻撃、拳打、蹴撃の組み合わせによる格闘の嵐!

 ズフィルードクリスタルの砕ける音が聞こえてくるような破壊の光景に後押されて、エクセレン達の支援攻撃も勢いを増し、ジ・オーバーライザー・アークを放った後のフェブルウスもガナリー・カーバーとライアット・ジャレンチを使い、セプタギンアクシズの解体作業に移っていた。

 

「見えた、行け、ナンブ!」

 

 何発拳を繰り出し、何度蹴りを放ったか。ついにコアと思しい水晶とは異なるユニットを目視したアクセルはぴったりと背後に追従しているアルトアイゼンに合図を送る。

 ソウルゲインの両肘のブレードが伸び、大きく十字に振るわれて深々と斬られた水晶にソウルゲインの拳が叩き込まれる。

 

 大きく罅の入った個所を中心に、ソウルゲインの背後から飛び出したアルトアイゼンよりクレイモアが発射されて更に水晶を破砕、そこからヒートホーンごと砲弾と化したアルトアイゼンが光子力バリヤーを展開しながら吶喊!

 勢いのまま水晶の防壁を突破したアルトアイゼンは数キロメートルの厚みを残すコアへと向けて、残る全兵装をありったけ使いながら突き進むのみ。

 

「ただの機械が俺達を止められると思うな、セプタギン!」

 

 隙間の無い水晶の防壁をひたすらに貫き進んだアルトアイゼンは機体のそこかしこから水晶を生やし、徐々に浸食を受けていた。

 それでもまだ機体の制御は奪われておらず、キョウスケの操縦に従い、アルトアイゼンは右腕を振りかぶり仮面のようなデザインのコアにリボルビングステークが突き立てる!

 

「我ハ、ha、サイ、最後ゴゴノ審パ、審判シャシャsya者……」

 

「いいや、ただのガラクタだ」

 

 キョウスケの指がトリガーを何度も引き、ビームカートリッジに圧縮されていた光子力エネルギーが解放され、セプタギンのコアを一瞬で貫く。

 更に伝播した衝撃によって内部からも破壊されたコアは粉々に砕け、制御を失ったセプタギンアクシズの巨体は限界を超えた増殖や再生、自滅に繋がる進化を始める。

 ほどなくして自壊するのは目に見えているが、最後のあがきで被害を出すわけにはいかないと、暴走して自壊するセプタギンアクシズへの攻撃の手は緩まず、エネルギーと弾薬の続く限り継続される。

 

 そんな中、最深部にまで吶喊したアルトアイゼンは四方から伸びてきたズフィルードクリスタルの杭に阻まれて、身動きの取れない状態に陥っていた。

 悲鳴を上げる光子力エンジンがそれでも咆哮し、マジンガーの系譜に連なる誇りある機体を浸食しようとする水晶を力任せに砕く。

 

「いいぞ、アルト。俺もお前もこんなところでガラクタと心中する趣味はない。それに、そんな無様を許してくれない相手もいるからな」

 

「キョウスケ、心配かけるんじゃないわよ!」

 

 的確にアルトアイゼンを外し、エクセレンのヴァイスリッターがオクスタンランチャーで暴走する水晶を砕いて、アルトアイゼンとキョウスケの救出に駆け付けてくれたのだ。

 エクセレンは普段の冷静さをどこへやったのか、やや乱暴なくらいの操縦でヴァイスリッターを動かしており、白い翼や機体の端に水晶が付着して少しずつ浸食を受けている様子だった。

 後でヴァルシオーラのサイコブラスターで綺麗さっぱり、水晶を消してもらう必要があるだろう。こういう時、敵機と味方を識別できるMAP兵器は便利だ。

 

 ヴァイスリッターとアルトアイゼン、双方が最深部から脱出を始めたのを確認し、レモンとアルフィミィは揃って安堵した。前者は心の中に押し隠し、後者は隠すことなく表に出したという違いはあったが。

 ヴァイスセイヴァーとソウルゲインの肩を並べ、最後の断末魔を上げるセプタギンアクシズを破壊し、キョウスケ達の脱出を手助けするアクセルは、しかし、レモンの内心の変化を見抜いていた。流石は恋人としておこう。

 

「どうした、レモン? 奴らの無事がそんな嬉しいか?」

 

「あら、同じ部隊の仲間なんだから無事を喜んでもおかしくないんじゃない。それより、貴方こそ終わりが近いからって、ヘマをしないでよ。機体に付着したズフィルードクリスタルの除去って、どう考えても面倒だわ」

 

「それこそナンブとエクセレンに言ってやれ。生還するだけでも大したものだが、二人とも機体の浸食がかなり進んでいる様子だ」

 

 二人の見ている前でセプタギンアクシズの最深部から脱出したアルトアイゼンとヴァイスリッターは、アクセルの言う通りズフィルードクリスタルに機体の各所を浸食されている状態だった。

 不幸中の幸いはリミッター解除と制御の失われた反動で、ほどなくしてズフィルードクリスタルの大部分が自壊し、浸食されたパーツを喪失しただけで済んだことだろう。

 アクシズの地球落下を阻止し、内側から現れた最後の審判者による地球浸食は防がれた。

 ガイゾック、真ジオン公国とも決着を迎えた戦いは、ようやく、地球人類とその友邦達の勝利によって閉ざされたのである。

 

 

 その男は今日の公演を終えて、いそいそと帰宅の準備を進めていた。ニッチなジャンルの歌を歌う為、万人に受けるわけではないがその技術と情念の深さ、厚み、重さに関しては他の追随を許さないとコアなファンや一部の業界人の間では話題の人物である。

 彼は劇場を後にすると複雑に入り組んだ裏路地に入り、迷う素振りを見せずにどんどんと先に進んでゆく。次第に男とすれ違う人影は減り、客引きやネオンサインの明かりも絶えて、チカチカと点滅する街灯と自販機とベンチ、小さな花壇があるだけの袋小路に辿り着く。

 男はそこで足を止めた。そして空を見上げる。アインスト空間に閉じ込めたセプタギンアクシズが破壊された、まさにその瞬間だったのは、なにかの偶然か。

 

「審判を残り越えて、戦いのステージは新たな幕を開いた。絶望を乗り越えて希望の明日を手に入れようとしても、新たな絶望は既にお前達を包み込もうとしている。そのことに気付いているのは、番人、かつての太極。そして……」

 

“……そう、観測者だ”

 

 不意に男の周囲が闇に閉ざされたようだった。全ての光を飲み込み、光が存在する事を許さない圧倒的な黒、己の存在も見失ってしまいそうな闇。それに飲まれても男に変化はない。

 

「我以外にはこのような真似をしない事だ。常人ならば魂が砕けよう」

 

 果てしの無い宇宙の深淵を思わせる声が男に応じる。視線を壁の一角に向けた男の先で陽炎のように光景が揺らいで、豊かな髭と白髪を蓄えた威厳ある老人の姿が映し出される。

 

“面白きもの。闇黒の叡智より汝の如きものが生まれいずるとは……”

 

「新生を許されなかった者達の負念を飲み込みし者、最古の強念者よ。私にいかなる用か」

 

“この世界の行く末について、ユーゼス・ジュデッカ・ゴッツォと似て非なる汝と語るべく”

 

「ほう。ならば応じよう。私もまた『私』の源流と言えるあの男とこの世界に対し、かつてのガンエデンが何を思うか、興味がある」

 

 男は老人と正面から向き合い、世界に誇るように自ら名乗りを上げる。

 

「私は絶望系アイドル『うでた鰹』ことウーゼス・ガッツォ」

 

“良き肩書と名だ。我も応えよう。我こそは『ゆるふわ無限力』の使徒、ケイサル・エフェス”

 

 今ここに、誰も居ない裏路地の一角で途方もない大物達が邂逅していたのをクォヴレーもヘイデスも双子達も、そしてユーゼスもバラオもムゲ・ゾルバトスも知らなかった。

 

<続>




難易度ベリーイージーの理由。
1.アインストが味方。
2.ウーゼスが中立寄りの味方。
3.ケイサル・エフェスが中立寄りの味方。
というわけなんですね~。
ケイサルが味方サイドなので必然的にラオデキヤも味方側です。ユーゼスは気付いていません。
まあ、DC版のαでも粛清されていましたしね。


追記
念の為、うでた=茹でた、です。
ウーゼスという名前からすると茹でた、とよりはうでた、の方が近いと判断しました。


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第百十八話 御三家を一つに

いつも誤字脱字の報告、感想ありがとうございます。
完結に向けて今日も更新です。


 メンテナンスベッドに横たえられたアルトアイゼンとヴァイスリッターを見て、オリュンポスから急遽足を運んできた所長は、腕を組んだ姿勢で類まれなる美貌に渋い表情を浮かべる。

 最近ではヴァルシオーのパイロットとしての出番を考慮して、常にプラグスーツに近いデザインの白い専用パイロットスーツの上に、ウェアラブルコンピューターでもある白衣を重ねている。

 

 場所はタルタロス内にあるスーパーロボット用メンテナンスルーム。

 マジンガーの系譜に連なるアルトアイゼンとヴァイスリッターは、装甲素材から動力、機体の制御系もモビルスーツよりは、スーパーロボットに寄っている。

 DC艦隊に常駐している整備員でも従来のメンテナンスなら十分にこなせるが、ズフィルードクリスタルの浸食によって、表面装甲ばかりでなくフレームにまでダメージを受けていた為、設計者の所長にお呼びがかかったのである。

 

「これはダメですわね。超電磁メカやダンクーガならマグネバードやガンドールで本格的な修理が出来ますが、この二機の具合を見ますと、光子力研究所に運び込んだ方がよろしいですわ。遠回りに思えてもそれが一番の近道です。よろしくて?」

 

 よろしくて? と所長が振り返って告げたのは、頭に包帯を巻き、頬に治療用シートを貼り付けたキョウスケとエクセレンである。別に所長は二人を責めているつもりはないのだが、せっかくの機体をここまで痛めつけてしまった事に二人とも多少の負い目はある。

 

「ごめんねえ、ショッチョさん。あたし達もやれるだけのことはやったのよ? それでもちょっと今回は敵が厄介でね、流石に無傷とは……」

 

「それは私も承知しております。戦闘記録を拝見しましたけれど、分の悪い賭けに出ざるを得ない相手と状況だったのは理解しております。

 アインスト空間に引き込めたのは、本当に僥倖でしたわ。まあ、クォヴレー君曰く、向こうも地獄の名を冠した機体の封印を解いたそうですから、セプタギンを倒したからと言って、油断はできませんけれど」

 

 ゴラー・ゴレム隊を率いるキャリコの見せたディス・ヴァルク・バアルが齎した新情報に、所長は内心では溜息を吐きたかった。

 ヴァルシオーの初陣となったあの敵──ディス・ジュデッカは、さながら聖書に語られる悪魔の王の如き威容と恐怖を持って戦場に君臨したが、ユーゼスの性格を考えるのならば更なる強化くらいは施されていると考えるべきだ。

 こちらもあの戦い以降、可能な限り戦力を増強し、ディス・アストラナガンも復活を果たしている。あちらの備えとこちらの備え、どちらが勝るかどうか。そこまで考えて、所長は一つ決断を下した。

 

「こうなれば賭けに出るしかありません。お二人とも、アルトとヴァイスはこのまま私が引き取って、地球で最後の大改装を行います」

 

「今から、ですか? この状況では更なる改装よりも、修理を優先した方いいのでは?」

 

 さしものキョウスケも所長の大胆な発言には、驚きを隠せない。残る敵勢力はどれも最後の決戦を挑む段階にほとんどが達している。この状況でアルトアイゼン、ヴァイスリッターという強力なスーパーロボットを下げるのは、かなり難しい判断だ。

 エクセレンも難しい顔をしながら、所長に問いかける。

 

「間に合うか間に合わないかは、分の悪い賭け的な感じなのかしら?」

 

「どの戦いに間に合うか、でも変わりますが、最後のバサ帝国の戦いには何が何でも間に合わせます。私もかかりきりになりますから、ヴァルシオーは動かせませんが、それはそれで勿体ないですし、ゼファーに遠隔操作でもしてもらいますか」

 

 系統樹の異なる複数の動力を並行稼働させるヴァルシオーは、所長が苦心して組み上げた制御システムがあるとはいえ、所長以外の人間の操縦では百パーセントの性能を発揮するのは不可能だ。

 サブパイロットのヘイデスはオマケでしかいないから、別に乗っていなくても支障はない。彼の役目はメインパイロットである所長の士気向上と維持なので。

 SRXに例えるとリュウセイ兼ライディース兼アヤの役割を務める所長抜きの場合、次いで性能を引き出せるのはゼファーだと所長は判断したわけだ。

 

「わお、キョウスケ、ショッチョさんは本気で提案しているみたいよ?」

 

「所長がその必要があると判断したのなら、俺はこれ以上、何も言いませんが、代わりの機体の用意は? 艦隊には予備の機体がいくつもありますが、グルンガスト弐式あたりを?」

 

「それか武装モリモリにしたゲシュちゃん3でもイケるでしょ? パンチが足りないっていうなら、量産型グレートマジンガーとか量産型ゲッターロボGを都合つけてもらいましょっか?」

 

 キョウスケはライガーで私はドラゴンかしらねえ、と言うエクセレンに対して、所長は異なる提案をした。

 

「いえ、お二人にはヴァルシオーマを用意します。タイプCFやGFとは違うノーマルタイプですが、お二人用に多少の調整はしておきましょう。量産型のグレートマジンガーもゲッターロボGも、もちろん用意しますけれどね」

 

「ヴァルシオーマを? まだ二十機も組み上がっていない貴重な機体だと聞きましたが?」

 

「そーそー! グルちゃん弐式や他の量産型スーパーロボットよりも貴重なんじゃないの、オクサマ!」

 

「オリュンポスに配備している分を回します。あちらには最終決戦用に温存してある戦力がありますし、予定よりも多く数を揃えられたのでお気になさらず。光子力研究所、それに早乙女研究所にも声を掛けてこの二機を生まれ変わらせます」

 

 気合の入った所長の宣言の熱量に、キョウスケはある種の危うさを覚えながらこう尋ねた。

 

「具体的なプランが決まっているので?」

 

「ええ。アルトアイゼンをマジンカイザーに、ヴァイスリッターはマジンカイザーと真ゲッターロボのハイブリッドに仕立て上げます」

 

「え゛!?」

 

 と信じられないという声を発したのはエクセレンで、

 

「それは……素晴らしい」

 

 絶賛したのはキョウスケだった。

 

 

 セプタギンアクシズを破壊した後、アインスト空間から帰還したDC艦隊は共闘したキュクロープス、パトロール艦隊、反ベガレジスタンス共々、一旦、戦場となった宙域で修理と補給を受けていた。

 そこにオリュンポスも登場して、潤沢な物資と設備を解放してダメージを受けた機体を次々と修理し、怪我を負った兵士達の手当てを進めている。

 今回の戦いで大量に発生した敵性勢力の残骸回収、セプタギンアクシズの破片の完全破壊とやる事は多いが、そちらは疲れ知らずのMDや人工知能搭載のベガ獣、円盤獣に頼ればよい。

 

 DCの艦長や隊長格達はオリュンポス内の大ホールに集まって、次の動きについて地球連邦軍高官を交えた会議を行っていた。

 出席者は次期大統領(という名の生贄)と目されるプルート財閥総帥ヘイデス、毎度おなじみのゴップを始めとした高級将校達、DCの艦長、隊長、博士達、地上の各研究所の博士達も通信モニターで参加している。

 

 そして今やDCの一員であり、フリード星の正統後継者にして反ベガレジスタンス勢力に端を発する、天の川銀河の各星間勢力による連盟、“銀河共栄連盟”──通称“銀栄連(ぎんえいれん)”重要人物となったデューク・フリードも参加している。

 天の川銀河だけでもあれだけ銀河の支配を目論む好戦的な勢力が多々存在していた事から、相互防衛と経済圏確立その他諸々の友好的かつ平和的な連帯機関として、銀栄連は組織された。

 そして地球連邦も圧倒的な軍事力とその割には平和的な思考を有する事から、加盟が決定している。

 

 まずゴップから、ガイゾック撃滅、真ジオン公国壊滅、セプタギンアクシズの完全破壊と、よくもたった一日の内に発生した激闘の数々に勝利した事を称賛され、地球の危機を救った事への感謝が述べられる。

 地球人類殲滅を目的とするガイゾック、アクシズを落とそうとしたタウ・リン率いる真ジオン公国、地球ごと人類を取り込もうとしたセプタギン、それとついでにビクター一派。

 一気に片付いたとはいえ、どうしてこう地球は狙われるのかと嘆かずにはいられない状況だ。まあ、地球側から発生した脅威も含まれているから、自業自得と言えば自業自得ではある。

 

 一通りの社交辞令が終わった後、ヘイデスが口を開く。軍事、経済、更に民心の慰撫と本人の意図しないところで地球圏最重要人物の一人になっているのだが、本人は慢性的に過労気味かつ目の前の事で精一杯でそこまで考えが及んでいない。

 純度百パーセントのオリジナルヘイデスなら、そこまで理解した上での自分の目的の為にDCも地球連邦も動かそうと策略を巡らしたろうが、平凡なスパロボプレイヤーとしての人格が影響し、良識を齎した結果であった。

 

「現在、協力してくれている霊能力者や魔術師の方達によれば、妖魔帝国は着々と妖力を蓄え戦いに挑む準備を進めているようですが、すぐには動かないと報告を受けています。太平洋に展開中の海軍の方々からも、妖魔帝国が動く前兆も見られないとか」

 

 妖魔大帝バラオに対する切り札としてライディーンが居るとはいえ、バラオは対抗手段の少なさからムゲ帝王と並ぶ厄介な性質の敵として、地球側には認識されている。特にワーバラオの存在は、ヘイデスにとって頭痛を更に激しくさせられる原因だった。

 アインストとヴァイシュラバが味方である為、歴代のスパロボよりはバラオに限らず手札に恵まれている筈なのだが、油断も出来なければ慢心も出来ないから世知辛い。

 

 そんなヘイデスの内心を知らず、人間サイズになって今回の会議に参加しているノイ・レジセイアが口(?)を開いた。気を遣っているのか、思念ではなく音声で会話している。

 モニター越しとは言えゴップやティアンム、ブレックスやジャミトフもアインストの首領が会議に参加しているのには、内心で驚きの嵐を起こしていた。

 

「バラオの妖力は量を増しているが、質自体に変わりはない。現在、奴は石像の状態に封印されているが、解除されるまでは数日の猶予がある。それから妖魔島を浮上させて、残る全力と同盟勢力とタイミングを合わせて攻撃を仕掛けてくるだろう」

 

「ミケーネ帝国、百鬼帝国、ムゲ・ゾルバドス帝国か。同時多面攻撃を仕掛けてくるか、それとも戦力を一極集中させるか。それによってこちらの対応と民間への被害が大きく変わるだろう」

 

 レビルは思案顔になり、かつて地球連邦軍の全権を握っていた頃を思い出しながら思案を続ける。一年戦争時とは比較にならない軍事力を得た地球連邦軍だが、それを支える市民の暮らしは長く続く大戦の影響を受けて、疲弊している。

 プルート財閥をはじめ、アナハイムもロームフェラ財団も自身の利益よりも公共の利益を優先しているからまだ救いはあるが、これから続く戦いは一つでも負ければそのまま地球人類の敗北に直結する大決戦ばかり。

 ヘイデスはプレイヤーとしては各個撃破のパターンもあれば、敵勢力を纏めて相手にするパターンもあり、なんとも断言できず、手を付けられる案件から話を始める他なかった。

 

「幸いノイ・レジセイアさんの見解ではまだ数日の猶予はあるという話ですし、先に決着を付けられる相手への対処から話を進めるしかないでしょう。

 デススティンガー、デスザウラー、ギルドラゴンは健在です。状況に応じて彼らを動かせば、時間稼ぎは出来るでしょう。それこそ、上手くやれば返り討ちが出来るかもしれません。

 それで次の目標は火星の奪還と伺いましたが、バームの反体制派の方々と連携して一気に小バームを落とし、制圧された小惑星フォボスや火星の植民都市の解放を行う計画でしたね」

 

 ワープが可能となった事で、星間規模の遠征も気軽に行えるようになった。次に狙うはオルバン大元帥の支配する小バーム。ヘイデスの読みではすでにユーゼスからは見捨てられていて、ジャネラ、ザンバジルとお互いの戦力を結集するくらいしか打てる手はあるまい。

 バーム→ボアザン・キャンベル→ムゲ・ゾルバドス→バサ帝国ひいてはユーゼス、加えてミケーネ・百鬼・妖魔帝国の地上勢力は相手の動き方次第で随時対応、といったところか。

 ここでヘイデスは一つ気になっていたことを、ノイ・レジセイアに問いかけた。地球人類の心強い味方となったアインストだが、思考形態は人間とは異なるものであるから、小まめな確認は必要不可欠である。

 

「ところでノイ・レジセイアさん。セプタギンアクシズとの戦闘後、無数のアインスト達がこちら側に出現したままですが、アインスト空間には戻られないのですか? あちらが本来の居住地ですから、色々と都合がよいと勝手に思っていますが」

 

 現在、地球を囲むリングのようにアインストの大軍団が展開中で、その総数は地球連邦軍の全機動兵器を上回るとんでもない数だ。ノイ・レジセイアが太古の昔、妖魔帝国にワーバラオの影を感じてから、コツコツ数を増やしてきた結果だという。

 

「それについては……」

 

 とノイ・レジセイアが理由を答えようとしたその矢先、オリュンポス並びに周囲の艦隊に敵機襲来を告げる警報が鳴り響いた。レビル達が状況を問うよりも早く、経験豊かなオペレーター達からの連絡が入る。

 

『取りこぼしのセプタギンの破片が活性化したと思われる機動兵器が多数、オリュンポスに向けて接近中です。バリア並びにインターセプトシステム起動、またアムロ・レイ大尉、流竜馬氏、兜甲児氏が迎撃の為に単独で出撃しました』

 

「流石に対応が速いな。……まて、アムロ大尉達が単独で出撃した? 三機で出撃したのではなくか?」

 

 オペレーターのある言い方にもレビルは引っかかるものを覚えていた。ゲッターチームではなく、流竜馬一人の名前を出したのだ。アムロ、竜馬、甲児の三人が単独で出撃した、その意味をすぐに悟ったのはこの場ではヘイデスだけだった。

 オリュンポスに接近中の敵機は、発見の遅れたセプタギンアクシズの破片が機能不全を起こしながらかろうじて再生したミニサイズのセプタギン達だった。

 おおよそ10~30mサイズのミニセプタギン達は増殖、進化機能などを失いながらも、与えられた命令を果たすべく、オリュンポスを目指している。

 

「我ハ最後ノシン、シ、ンパンシャシャ」

 

「リセットリセットリセット。地球文明、危険レベル、リセット」

 

「抹消、抹消セヨ、マッショ、マママママ…………」

 

 数だけは多いズフィルードクリスタルのジャンク達に向けて、真っ先にオリュンポスから出撃したのは、レビル達に伝えられた通り、アムロ、竜馬、甲児達三人が乗り込む機動兵器だった。

 先の連戦で彼らの乗り込む本来の機体はメンテナンス中の為、急遽、オリュンポスから持ち込まれた万が一の時の為の予備機に乗り込み、戦場に飛び出した結果がこの現状である。

 急速に接近してくるアムロらに向けて、ミニセプタギン達は全身に銃口を形成し、ビームの雨を降らせ始める。体積の小さな彼らにとって、クリスタル・マスメルやミサイル、銃弾の形成は我が身を削る死活問題故のセレクトだった。

 

 飛び出してきたのはゲットマシンのような、ジェットパイルダーのような、コアファイターのような、十数メートルほどの戦闘機らしき機体である。

 一機につき一人ずつアムロ達が乗り込むそれらは、降り注ぐビームを回避しながら、一直線に並んでゲッターチームにはお馴染みのフォーメーションを取る。

 そうして宇宙に響き渡った声はゲッターチームのものではなかった。それは恥を捨ててスーパーロボット乗りのつもりで叫ぶ、アムロの声だった。

 

「チェーンジ、ガンダム、スイッチオーン!!」

 

 アムロの乗る白いGCP(ゲットコアパイルダー)G(ガンダム)が先頭に回り、続いて甲児の黒いGCPZ(ゼット)、竜馬の赤いGCPG(ゲッター)が最後尾につけて、衝突事故を心配させる勢いで三機が合体する。

 合体直後に腕が生え、足が伸び、頭が飛び出てくる。各所が変形を始めて、それは全高50m近いガンダムとなる。大きさはともかく全体的にはRX-78-2ガンダム、いわゆるファーストガンダムを想起させるデザインだ。

 

「ガンダムZG!」

 

 恥はかき捨てとばかりにアムロは機体名を高らかに叫び、ガンダムZGの右腕の装甲が展開して組み変わるといつの間にやら三つの銃口を備えたビームライフルが握られ、左腕の装甲が割れるとこちらは実体のシールドが形作られる。

 

「ぶっつけ本番だが、良くも悪くも慣れっこになったな!」

 

 ガンダムZGのビームライフルは縮退炉、ゲッター炉、光子力エンジンからドライブしたエネルギーを撃ち出すものだ。以前のハガネのファイナルダイナミックキャノンを、小型化したものと考えていい。

 クィン・マンサ以上の巨体を誇るガンダムZGから発射されたビームは、ミニセプタギンのビームを弾き返す威力を見せて、ディフレクトフィールドを展開する事も出来なくなったミニセプタギンを撃ち抜き、その余波で脆くなっているズフィルードクリスタルの体を消滅させる。

 

「ガンダムハンマーを食らえ!」

 

 正面から壁の如き密度で発射されるビームを悠々と回避して、アムロはガンダムZGの左手を腰裏に回す。腰裏の装甲が展開してグリップが伸び、それを一気に引き抜けば、鎖でつながれたトゲ付きの鉄球が飛び出す。

 

「うおおおおお!!」

 

 ブンブンと残像が見える勢いで回転させたガンダムハンマーが勢いをそのままに、ミニセプタギンに叩きつけられ、繊細なガラス細工のようにあっさりと粉砕される。

 ハンマーの勢いはそれに留まらず、アムロが狙いを定めた近くのミニセプタギンを次々と砕いて行く。距離の離れている敵には三種のエネルギーの混じるビームを撃ち込み、近距離の敵はガンダムハンマーの餌食にする。

 たった二つの武器を巧みに使い分けて、アムロはミニセプタギン達に完全なる機能停止を与えて行く。

 

「アムロ大尉ってこういうワイルドな戦い方も出来るんだな。ちょっとイメージと違ったぜ」

 

 GCPZ内で光子力エネルギーを制御中の甲児は通信機越しに聞こえてくるアムロの雄叫びや、ハンマーの扱い方に呆気に取られていた。

 彼の知るアムロは軟禁生活(割と自由にやっていたが)を経て落ち着きを身に着けた青年だったが、今、同じ機体に乗っているアムロは一年戦争のころを思わせるキレっぷりである。

 

「甲児君の言う通りだな。タウ・リンについてなにか思うところがあった様子だったから、少し心配していたんだが……」

 

「逃がすか!!」

 

 と、キレのあるアムロの声が二人の鼓膜を叩いた。

 

「余計な心配だったらしい」

 

「だな」

 

 そう苦笑し合う二人を知らぬアムロは戦闘に集中しており、ミニセプタギン達が対応を変えたことに真っ先に気付く。一部の機体がガンダムZGを足止めしつつ、残る機体が上下左右に分かれて、オリュンポスへ向かい出す。

 そのまま放置したとしても、オリュンポスの数々のバリアとメメント・モリをはじめとした無数の迎撃システムにより、何の痛打も与えられずに撃滅されるだけだが、見逃すわけにもいかない。

 

「アムロ大尉、ここは俺が!」

 

「分かった、リョウにコントロールを!」

 

「よし、オープンゲット!!

 

 足止めに残ったミニセプタギン達の撃つビームが背後から降り注ぐのにも構わず、三機に分裂したGCPは複雑な軌道を描きながら、他のミニセプタギン達を追い、新たなフォーメーションに移る。

 今度は竜馬のGCPGが先頭に、アムロのGCPGが真ん中、甲児のGCPZが最後尾となる。

 

「チェエエエエンジ、ゲッターーー! スイッチオーン!」

 

 再びの衝突事故もとい合体変形が行われて、初代ゲッター1の発展形を思わせる姿のゲッターGZが姿を露にする。

 

「ゲッターウイーング! ゲッタートマホーク!」

 

 ゲッターGZの背中から鋭い金属片を思わせる赤いウイングが伸び、肩からは超合金ニューZαの刃を持ったトマホークのグリップが伸びて、一気にそれを引き抜く。

 瞬時に超加速したゲッターGZはアムロと甲児だから耐えられる殺人的なGを与え乍ら、ミニセプタギン達をあっという間に追い抜き、すれ違う瞬間にゲッタートマホークが振るわれて、あまりのパワーに斬られたミニセプタギンはその場で木端微塵に砕ける。

 直角を交えた鋭角の軌跡を描き、ゲッターGZは次々とミニセプタギン達を砕いて回り、おおよそ半分ほどを破壊したところで、ミニセプタギンとオリュンポスの間で動きを止める。

 

「リョウ、敵機の捕捉は済んだ」

 

「竜馬、光子力エンジンは快調だ! ゲッターのエネルギー残量は気にしなくていいぜ!」

 

「よおし、ターゲットマルチロック、行くぞぉ、ゲッターテンダービーム!!」

 

 ゲッターGZの丹田付近の装甲版が展開し、そこからレンズ状のゲッタービームの発射装置が露わとなる。

 増幅され、圧縮されたピンク色のゲッターテンダービームはミニセプタギン達のどれにも当たらない位置をまっすぐに伸びて行くが、それが途中で無数に枝分かれし始めた。

 

 アムロの捕捉した敵機を、サイコミュを通じて竜馬に伝え、そして竜馬の意思がゲッター線に伝わる事で、ゲッタービームは天に伸びる大樹の如く分裂して、次々とミニセプタギン達をゲッター線の奔流に飲み込んでゆく。

 あっという間にミニセプタギンの反応が消滅したのをセンサーとアムロの感覚を通して把握した竜馬は初搭乗、初実戦ながら確かな手ごたえを感じる。

 

「よし、これで残るは正面の部隊だけか。」

 

「それなら最後の出番は俺とマジンガーだな! 二人とも慣れない機体の扱いで疲れているだろ? 俺に任せて休んでいてくれ」

 

「俺もゲッターもまだまだ戦えるが、甲児君とマジンガーに出番を譲るよ」

 

「マジンガーのデータも必要だろう。甲児、まだ何かしてくるかもしれない。油断はするな」

 

「俺とマジンガーに任せてください。っと、言っている傍から『何か』をしてきたか!」

 

 甲児達の視線の先では残るミニセプタギン達が衝突し合い、融合を初めて巨大化を試みていた。増殖や進化機能を失った彼らだが、多少なりとも学習機能が残っており、同じ素材同士の自分達が合体して、機能強化を図ったのだ。

 それでも本来のセプタギンには及ばないし、失われたままの機能も多い。合体したミニセプタギンをそのままセプタギンと呼ぶのは、語弊があるだろう。

 

「壊れかけた事で機能が変質し、劣化した亜種。デミセプタギンとでも呼ぶか」

 

 冷静なアムロに続き、竜馬も甲児とマジンガーに戦いを委ねるべく、オープンゲットを行う準備を進める。

 

「俺達のやる事に変わりはありませんよ。甲児君、行くぞ、オープンゲット!」

 

 三つの戦闘機に分離し、デミセプタギンへと恐れもなく、三人はまっすぐに向かってゆく。デミセプタギンは巨体のあちこちから水晶を伸ばしては引っ込めることを繰り返していたが、徐々に制御機能が纏められてその頻度が少なくなってゆく。

 その間に三人のGCPは新たな合体を進めていた。甲児を先頭に竜馬、アムロのGCPが並び、最後のフォーメーションを組む。

 

「へへ、パイルダーオンとはまた違った緊張感だな! いくぞぉ、チェーンジ、マジンガー! スイッチオーン!」

 

 勢いを緩める間もなく三機の戦闘機は衝突まがいの合体を果たし、見る間にマジンガーZを彷彿とさせる、新たな黒の城が表れる。

 背中からはゲッターウイングの変形したスクランダーの赤い翼が伸び、黒い上半身からは絶対の堅牢さと力強さが、白い下半身からは何者にも捕らえられない俊敏さが感じられる。

 

「マジンガーGG! 覚悟しろ、デミセプタギン。マジーン・ゴー!」

 

「我ハ最後ノ審判者!! 地球文明ニ滅ビノ審判ヲ下ス!!」

 

 およそ一千メートル越えの巨体になったデミセプタギンは、鋭い爪の生えそろった腕を伸ばし、ググっと首が伸びて仮面を被った獣のような姿になった。オリジナルセプタギンのような浸食・同化能力を失った事で、破壊に特化した形態に変化したのだ。

 

「オオオオオオ!!」

 

 再び降り注ぐビームの嵐にマジンガーGGは恐れげもなく突っ込み、軽やかに回避して行く。あまりの密度と速度の為に回避しきれないビームも、命中したところで超合金NZにゲッター線をコーティングした装甲は突破できず、三種の力を備えた魔神は両手を突き出した構えを取る。

 

「ファンネル・ロケットパーンチ!」

 

 マジンガーGGの肘から先が射出され、空飛ぶ鉄拳と化した拳はアムロの思念によって、フィン・ファンネル同様、自由自在の軌道を描いてデミセプタギンの装甲に次々叩き込まれ、砕いて行く。

 

「光子力ビーム、冷凍ビーム、サザンクロスナイフ!」

 

 頭部だけでも二種、更にスクランダーからも次々と光子力エネルギーで作られた十字手裏剣が発射され、デミセプタギンのビームを突破する弾幕が形成される。

 その間にデミセプタギンとの距離はどんどんとつまり、甲児の合図を受けたアムロがファンネル・ロケットパンチを戻して、マジンガーGGに両腕が揃う。

 

「ゲッターカッター!」

 

 マジンガーGGの両腕からアイアンカッターに代わり、ゲッタートマホークの刃が飛び出し、マジンガーGGはデミセプタギンの懐に飛び込んで、水晶の巨体を切りつけて少しずつ小さなパーツに斬り飛ばし……

 

「ルストハリケーン!」

 

 強酸性の竜巻を浴びせかけて、溶解させる。

 苦痛を感じている筈はないが、デミセプタギンは怪我を負った猛獣のように叫んで、巨大な腕を振り回してマジンガーGGを吹き飛ばそうと足掻く。

 左右から挟み潰すように迫ってくるデミセプタギンの両手を受け止めて、甲児は正面に見えるデミセプタギンの牙を生やした大口を開く顔を睨みつける。

 

「与えられた役目を精一杯やろうとするのはいいけどよ、それがどれだけ俺達にとって迷惑なのか、たくさんの人を苦しませるのか、考える機能もないのか!」

 

「リセット抹消デリート浸食抹消消滅崩壊リセットゼロ、ゼロ、ゼロ、リセット!!」

 

「ああ、そうかい。それなら俺もマジンガーも遠慮はしないぜ! くらえ、出力全開、手加減なしのブレストファイヤーだ!!」

 

 受け止めていたデミセプタギンの両手を握り潰し、双眸を激しく輝かせたマジンガーGGの胸にあるプレートが真っ赤に燃えて、超熱線ブレストファイヤーがデミセプタギンを正面から燃やす!

 

「いっけえええ!」

 

 どういう原理で光子力エネルギーを熱線に変換しているのかは不明だが、莫大な熱量のブレストファイヤーは体積ばかりを無駄に増やしたデミセプタギンに抵抗を許さず、今度こそ破片からの再生も許さないほど焼き尽くした。

 

「……ふー! これで今度こそセプタギンはやっつけられたか?」

 

 コックピットシートに背を預けて息を吐く甲児に、周囲への警戒を続行中のアムロが答える。

 

「ああ、固有のエネルギー反応や邪気は感じられない。また同じようなのが出てくる心配はないはずだ。一応、周辺の調査を確認した方がいいとは思うがな」

 

 ぶっつけ本番になった機体のチェックを進めながら、竜馬は初めての面子で乗り込んだ機体の仕上がりに感心していた。

 

「それにしてもこの機体、早乙女博士と弓教授、それに所長さんの合作って話ですが、面白いコンセプトでしたね。ゲットマシンを参考にして、組み合わせ次第でマジンガーになり、ゲッターになり、ガンダムになる」

 

「三人共正式採用や量産を考えてはいないと言っていたな。ちょっとした遊び心と出来心で作った機体だよ、きっと」

 

「大尉、いや、でも遊び心でスーパーロボットを?」

 

 流石に信じがたいと呆れる竜馬に対し、アムロと甲児は技術者とはそういう者さ、と小さく笑った。アムロはもともと機械弄りが趣味で、幽閉中にも色々と手を回して新しいガンダムを設計・開発しているし、甲児も兜一家の人間として科学者の血を確かに引いている。

 グレンダイザーではTFOを開発しているし、作品によってはマジンカイザーを開発するのも彼だ。そんな二人だから三人の博士達の遊び心にもある程度の理解を示したのである。

 

「そういう人も中には居るという事さ。ただ、この機体が強力なのは確かだが、それぞれマジンカイザーと真ゲッターロボ、Rνガンダムに乗って戦う方が、ずっと戦力は上だからな。今回のように三人共機体が使えない状況でしか、使いどころはないな」

 

 まあ、甲児の代わりにボス、竜馬の代わりにゲッターチームの誰か、アムロの代わりにビーチャやモンドといったニュータイプでも運用は出来るのだが、ここまでのパフォーマンスを発揮するのは無理だろう。

 残念ながらこのマジンガー・ゲッターロボ・ガンダムの力を併せ持った夢の機体は、まだまだ洗練されておらず、使いどころの難しい機体というのが正直な評価なのであった。

 

<続>

■アルトアイゼンが使用不能になりました。

■ヴァイスリッターが使用不能になりました。

■ヴァルシオーマを二機入手しました。

■量産型グレートマジンガーを二機入手しました。

■量産型ゲッタードラゴン/ライガー/ポセイドンを二機ずつ合計六機入手しました。

■隠し機体マジンガーGG/ゲッターGZ/ガンダムZGを入手しました。

条件:甲児、竜馬、アムロの撃墜数の合計が六百機を超える。



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第百十九話 ちょっと! 地球人が強すぎるんですけど!

 取りこぼしたセプタギンの残骸部隊の全撃破が確認され、先のセプタギンアクシズの分と合わせて、大量の機能停止したズフィルードクリスタルの入手に成功し、ハルユニットをはじめバサ帝国の兵器の残骸など得られるものもあった戦いの後のこと。

 火星上空に君臨する小バーム攻略の為、ハガネを旗艦とするDC艦隊はワープ航法によって、一気に地球-火星間を跳躍し、出撃していった。

 

 ワープの残光が消えるのを待ってから、オリュンポスの展望台に居たヘイデスは大きく息を吐いた。

 地球人類の最強戦力が地球圏から離れる事への不安が無いと言えば嘘になるが、アインストの大軍勢と地球連邦軍、ジオン共和国、クロスボーン・バンガード、銀栄連といった戦力は残っている。

 行方不明のヴァイシュラバが気になるが、リモネシア共和国にも万全の状態に修理したディアムド、特別に開発したサフィアーダ、エメラルダン、パールファング、パールネイル……その他を回しているから、ちょっとやそっとの攻勢なら容易く返り討ちに出来る筈なのだ。

 

「不安の色が拭えない顔をしているな。観測者よ」

 

 そう声を掛けてきたのは人間サイズのノイ・レジセイアだ。周囲には光学迷彩を解除しているアルトアイゼン・ナハトやアークゲインらも居る。

 ヘイデスとしてはノイ・レジセイアを相手に護衛は不要と分かっているが、周囲はそうも行かず、ノイ・レジセイアも承知の上で変わらずに護衛として配置している。

 

「残っている敵はどれも油断できない、とは貴方に言うまでもありませんが……。様々な世界を渡り歩いて、力と技術を蓄えたユーゼスに関しては特別に強く警戒しています。彼は自分で敗因を招く傾向にありますが、能力は間違いなく超一級。

 アポカリュプシスに見舞われた銀河をいくつも渡り歩き、自分の野望に必要なものを手に入れて回った行動力、悪運、執念は甘くみるべきでは、いえ、上限が読み取れないと危惧しています。それに彼はディス・ジュデッカをはじめ、結果も出している」

 

 スーパーヒーロー作戦時代のユーゼスにはまだ良心の欠片や人間味があったが、αシリーズのユーゼスとなると人間を人間とも思わない非道な所業を繰り返している。

 時系列から考えてOGシリーズのユーゼスに至る前の状態だが、むしろその方が手強いとヘイデスは評価している。OGシリーズだと割と場当たり的というか、運任せなところも多かったが故の評価である。

 

「しかり。我が“静寂なる世界”とこちら側の接続を閉鎖した手腕は、侮れるものではない。私も奴を相手に空間転移による奇襲を安易に重ね過ぎた」

 

 人外の情緒とはいえこれは本当に反省しているな、とヘイデスは納得した。どうしてアインストの大軍団が地球を囲むように布陣しているのか? 答えはまさに、今、ノイ・レジセイアが口にした通りであった。

 アインストの本拠地“静寂なる世界”とこちら側の宇宙の接続が、セプタギンアクシズの落下を阻止して以降、外部の者の手によって断絶されている。

 ノイ・レジセイアは、世界の接続が完全に閉ざされるよりも早く異変に気付いて、動かせるだけの戦力をこちら側に転移させ、アインストの大軍勢が突如として地球近海に出現したわけなのである。

 

「あちらの世界がユーゼスに利用される可能性は?」

 

「万が一に備え、自壊するように手を加え直してある。次元間の接続が断絶され、私がこちら側に渡った時点で“静寂なる世界”は消滅を開始している」

 

「思い切りの良い事を。まだあちら側で利用できるエネルギーも資源も、それこそ惑星ほどもあったでしょうに」

 

「時間をかければ取り返しの利く範囲に過ぎない。あのままユーゼスに利用される方が問題と判断したまで。観測者こそ伴侶を地上に降ろしてよかったのか?」

 

 ノイ・レジセイアの言う通り、現在、所長はアルトアイゼン、ヴァイスリッターを積載したシャトルと共に地上に降りている。

 アルトとヴァイスの改良案については、ハードルが高すぎないか? と流石のヘイデスも思う程だったが、愛妻の瞳にはやる気の炎が轟々と燃えており、少なくとも全力を尽くすのは確かだ。

 

「彼女のやるべき事とやりたい事が一致していますから、僕でも簡単には止められませんよ。それに彼女の目標が叶えばこれから続く激戦において、非常に頼りになる戦力が出来上がりますから」

 

 ヘイデスとしても果たしてこの世界に於いて、原作のアルトアイゼン・リーゼやライン・ヴァイスリッターは誕生するのか? 誕生しないのであれば代替機はどうなるのか? という疑問は一人のスパロボプレイヤーとして非常に気掛かりなのも事実。

 光子力研究所、科学要塞研究所、新早乙女研究所の協力を得られた上でなら、今からの改良でもおそらく最後の敵であろうユーゼスとの決戦までには間に合うのではないか、とヘイデスは期待している。

 セガサターンのスパロボF完結編でウイングガンダムゼロを選ぶか、より高性能だが加入の遅いウイングガンダムゼロカスタムを選ぶか、迷った時を思い出したのはヘイデスだけの秘密である。

 

「今は凶報が舞い込まず、朗報だけが来るのを待つばかりですよ。ワーバラオとの戦いではご助力いただけるのでしょう?」

 

「約束しよう。ミケーネ帝国、百鬼帝国はこの星の上に誕生した存在だが、ワーバラオとムゲ・ゾルバドスは異なるルーツの系統樹に属する存在。彼らが地球とそこに住む生命に危害を加えるのならば、我々も助力を惜しまない」

 

「アインストが味方というのは本当に助かります。あなた方が敵だったらと思うと、正直、ゾッとしますから」

 

「私が本来の役割から外れ、異常が生じたからこその判断だ。私の同類が居て、正常な状態であったなら私の有様を異常と判断し、修正を試みるか破壊しようとするだろう。観測者よ、貴殿の知る並行世界のアインストにはそのような個体がいたのではないか?」

 

「ええ、まあ。僕の知る限り、ほとんどの世界のアインストは地球の生命体の排除、そして完全な静寂なる世界と相応しい生命体の誕生を目指していましたよ。

 今のあなた方のように地球人類の守護を選んだのは一例だけ。それも極めて特殊な世界線においての話です。

 どちらの道を選んだとしても、本来、生命の行く末を記録し観察する事が正しい役割のアインストからすれば、向いている方向が異なるだけでバグを起こしているのは同じかもしれません」

 

「人類を守るのも滅ぼすのもバグか。その通りだろうが、このバグを私は喜ばしく思う。君達人類に寄り添えるのだから」

 

 本当にまあ味方になってくれてよかったと、ヘイデスはつくづく思うが、一つだけノイ・レジセイアに止めて欲しい事があったので、勇気を振り絞ってそれを口にした。

 

「ところで、他人の目と耳が無い状況とはいえ、僕を観測者と呼ぶのは止めてもらえませんか? 貴方達なら僕の素性を察してもおかしくありませんが、僕は公表された実験内容を観測する側ではなく、当事者になった身です。まあ、それもどこまで正しいのか確かめようもないのですけれど」

 

「……承知した。自らが何であるかは他者からの評価以外にも、自らの認識で定められる。ヘイデス・プルートが観測者であるか当事者であるか、それは貴殿自身に定める権利がある」

 

「含蓄のある言葉ですね。ふふ、そうですねえ、僕が誰であるか、なんであるかは僕自身が決めるとしましょう」

 

 

 地球側が万全とはゆかぬまでも可能な限りのことをして、DC艦隊を出撃させた頃、小バームではオルバンがいよいよ足元が崩れ出したような恐怖にかられて、バサ帝国の首都兼旗艦ヘルモーズに座するラオデキヤに恥も外聞もなく縋りついていた。

 真ジオン公国と地球の支配権を巡って競り合っていた頃の覇気はなく、今はただより力のある者に庇護を求め、生き残る為の執念が前面に出ている。

 

 生き残る事に全力を尽くす姿勢は一概に悪し様に言えるものではないが、自分の保身だけに動く姿勢を見ると、十億の民の指導者としてはあまりに不適切な器の持ち主である。

 通信映像の向こうのラオデキヤもそれを読み取ってか、内心ではそれなりに不愉快さを覚えているのだが、オルバンはそれに気付いていない。

 

「なにとぞラオデキヤ陛下の御威光と武威を地球人共に見せつける為、小バームでの戦いにおいてバルマー・サイデリアル連合帝国のお力添えを! なにとぞ、なにとぞ!!」

 

『……ああ、そう繰り返し言わずとも聞こえている。余としてもタウ・リンと真ジオン公国、ビクター、そしてセプタギンを打ち破ったDCを過小評価するつもりはない。小バームに向けて送る戦力は既に手配してある。確認せよ』

 

 ラオデキヤの言葉の直後、オルバン側の画像に増援のリストが届き、オルバンは震える指でリストを開いて食い入るように見つめる。

 そこにはフーレ級をはじめ、多数のメギロートやゼカリア、エスリム、シュムエル、ヴァイクル・ベンといったバルマー系、ダイモーン、ティアマート、アンゲロイ、アンゲロイ・アルカといった御使い系。

 更にスペースロボや偽ミケーネ神、エスパーロボなど誤った真化に至った者達の兵器まで、多種多様かつ大量の戦力だ。切り捨てられる可能性を強く考えていたオルバンからすると、良い意味で予想を裏切られた状況となる。

 

「こ、これほどの戦力をご用意いただけるのですか、陛下!?」

 

『多い分には、お前に不服はあるまい。余としてもむざむざと小バームを陥落させるつもりはない。DCの戦力を相手に雑兵をぶつけるのなら、生半可な数では意味がない。お前が同盟を組んでいるボアザン、キャンベルにも余力を惜しまないよう伝えよ。

 キャンベル星では地球での苦戦が続いたことにより、和平派の力が増して現政権の屋台骨が揺らいでいる。ジャネラばかりでなくその背部の勢力そのものが崩壊しかねんぞ?

 ボアザンもまたザンバジル皇帝への反体制勢力が勢いを増している。お前が思う程にお前の同盟者達は頼もしいものではない。全てはこれまでの支配体制と敗北が続いたためだがな』

 

 オルバンはラオデキヤにバサ帝国への翻意を含め、見透かされているように思えて体温が下がるような心地だった。

 

「……ははっ! お言葉、胸に刻みまする」

 

『お前達がこれまでに用意した手札の数々……。それがどこまでDCに通用するのか、勝利を得られるのか。吉報を待つ』

 

 果たしてラオデキヤの言う吉報がオルバンの勝利なのかどうか。オルバンは奥歯をギリギリと噛み締めて、恥辱に耐えた。必ずやラオデキヤは自らの手で殺してやる、と改めて心に誓う。

 

「……おのれ、おのれ、ラオデキヤ! 地球人共を全て私の兵に変えた暁には、貴様もボアザンもキャンベルもムゲも、この宇宙の全てを支配してやるぞ!!」

 

 オルバンが都合のいい願望を叫んでいる頃、通信を切った後でラオデキヤは珍しく疲れたような溜息を吐いた。野心を隠せているつもりの小物を相手にするのは、優秀なハイブリッドヒューマンである彼にしても、疲労を覚えるレベルの苦行だった。

 それから彼は表向きの主君兼創造主に意向を伺うべく、視線を斜め下に向けて口を開く。

 

「本当によろしかったのですか? これまでの戦闘記録に基づく想定通りならば、オルバンらに勝ちの目はほとんどありません。送った援軍が無駄になりますが?」

 

 表向きは帝国宰相として振舞っているイングラムことユーゼスが、ラオデキヤの視線の先に居た。

 玉座の間にはこの他に“御使い”からユーゼスに崇拝と依存の対象を鞍替えした真徒達、そして仮面を被る事を止めたキャリコ率いるゴラー・ゴレム隊が勢ぞろいしている。

 

 ユーゼスの真の名前と素顔、目的を知る者達ばかりが集められており、バサ帝国の真のメンバー達だ。

 ただラオデキヤが創造主であるユーゼスを裏切り、ケイサル・エフェスの意向の元、最高のタイミングでユーゼスの横っ面をぶん殴る予定であるのを知る者はいなかった。ユーゼスの立場に立って考えると、ギリギリ致命的な失敗ではない……か?

 

 ラオデキヤの本当の事情と内心を知らないユーゼスは仮面で表情を隠し、自らの創造物と信じるラオデキヤに答えた。

 このユーゼスはオリジナルラオデキヤに粛清された並行世界の自分を知ってはいても、直接粛清されたユーゼスではない事、自分はそんな失敗はしないと思っている事から、ラオデキヤの翻意にまるで気付いていない。

 

「構わん。ズフィルードの完成度をより高める為のデータは多いに越した事はない。あの世界ではマジンカイザーや真ゲッターロボも含めたズフィルードとなったが、この世界ではグレンダイザーテラや真ゲッタードラゴンなど更に多くの機体の力を反映した機体となる。

 クォヴレーとディス・アストラナガンを打ち倒し、因果の鎖から逃れた私に対し、アカシックレコードや因果律そのものがカウンターとして、何者かを送り込んでくる可能性がある。それに備えるには、強力な手駒は多いほどよい。至高神ソルの生まれ変わりも含めてな」

 

 ユーゼスの言葉にラオデキヤはそれ以上、口を挟むことはなく名目上の主君の言葉を受け入れた。

 

「承知いたしました。ズフィルードの完成を優先してヘルモーズからのエネルギー供給を続けます」

 

「それで構わん。この世界のロンド・ベル、αナンバーズであるDCが銀列連もムゲもミケーネも百鬼もユラーも、余計な者達は全て片付けてくれる。最強の敵となったDCを打ち破った時、最後の勝者となるのは私だ」

 

 

 DC艦隊が小バームを攻略し、オルバンとその一派は戦死。

 発見されたリオン大元帥と改造されつつあったバームの無辜の人々の解放、更にリヒテルと和平派の人々が政権を奪還。

 タイミングを同じくしてキャンベル星では和平派によって政権が転覆し、地球を含む各戦線へ戦闘停止命令が発令。ジャネラ一派は帰るべき場所と母星での立場を失い、ド・ベルガンらと共にボアザン星へ逃走した。

 

 ムゲ・ゾルバドス帝国からの助力はなく、三勢力の合同部隊は次々とDCに打ち破られて、最後の砦となったボアザンの黄金城では恐怖に震えるザンバジルが他の貴族に当たり散らかして、醜態を晒している。

 覚悟を固めたハイネルが炎に身を投じて守護神ゴードルを覚醒させ、連鎖してボアザン星の史跡に眠っていた他のゴードルも目覚め、ゴードル軍団がDCを待ち構えていた。

 ハイネルと剛兄弟が父を同じくする異母兄弟であると知る、なんとも皮肉的な運命の激戦が繰り広げられている一方、地球では……。

 

「DCは宇宙の侵略者共の母星に攻め込んだようだな」

 

 南極の地下深くに眠る巨大円盤を再起動中の大魔人ユラーだ。ユラーはこの巨大円盤以外にもかつて帝王ゴールに与えた無敵戦艦ダイを複数保有している。

 彼らにとって都合が良く、予定通りに進んだ展開だが、だからこそこれからの行動に彼らの命運がかかっていた。ワーバラオの手駒となっているバラオはまた話は別かもしれないが。

 

「地球に残った戦力の中で脅威なのは、あの三体の巨獣共。そして各地の連邦軍だな。思えば地球人共の戦力は事前の推測を超え過ぎた。我々がこうして手を組まなければならないほどに」

 

 科学要塞島の浮上準備を進め、他勢力からのエネルギー供給と蓄えたエネルギーを使い尽くして百鬼メカの大量生産を進めるブライ大帝だ。完全な形の合体百鬼ロボットを筆頭に、可能な限りの戦力を整えている。

 

「光子力研究所や新早乙女研究所でなにか別の動きがあるようだ。DCの本隊が居ないとはいえ、奴らのパトロンであるヘイデス・プルートが地球に残っている。そう簡単に事が運ぶとは、この場の誰も思っていまい」

 

 ミケーネ軍団七大将軍の多くを失い、地獄大元帥もまた失ったミケーネ帝国の首魁、闇の帝王だ。本拠地である地下にあるミケーネ帝国の門を閉ざし、勝利を得るまでは不退転の覚悟を固めた闇の帝王に呼応し、生き残りの配下達の士気は極めて高い。

 

「ふふふ、今や我らは運命共同体。ただし、地球人類を打倒し、残る侵略者共を滅ぼし尽くした後には、お互いに殺し合うような関係だが……それでよい。我らは弱き者を糧とし、より強く、より邪悪になるのだからな」

 

 いよいよ石像の封印をいつでも解除できる状態となり、妖魔島を浮上させる用意を進めている妖魔大帝バラオである。

 ワーバラオからの本格的な支援はないが、本質的には霊的な存在であるバラオは、仮にライディーンがムートロンを解放しても自分を完全に滅ぼす事は出来ないと、他の勢力の面々に比べれば若干の余裕がある。

 

 この場にはムゲ・ゾルバドスだけが姿を見せておらず、異次元であるムゲ宇宙の支配者たる帝王は単独でDCと雌雄を決する構えなのだった。

 それには彼が死霊を支配し、死者が増えれば増えるほど、ムゲ宇宙で操れる手駒が増える事を意味する。ムゲからすればこの場の全員がDCに敗れれば、己のフィールドで強力な手駒として復活させ、支配できるというメリットがあった。

 

 DCが留守の間の地球の強大な防衛戦力との戦いもさることながら、現在、地球近海で待機しているアインストの大軍勢もまた彼らにとっては、厄介な敵である。

 事前に感知できない転移能力、一体一体が各勢力の幹部級と同等以上の戦闘力を持つアインスト・レジセイア、無尽蔵の物量に多様なバリエーション。

 DC抜きの地球人類と同等以上の戦力であり、バラオ達からするとどうして地球人類に味方するの!? と泣きたいくらいの強敵だ。

 

 彼らの前途は決して明るいとはいえず、多くの苦難が待ち構えている。

 至高神ソルとしての力を完全に取り戻しつつある双子とフェブルウス、因果律の番人たるクォヴレー・ゴードン、この世界で誕生した新たなスーパーロボットにリアルロボット、地球人類側に立っているアインストにヴァイシュラバ、潜伏中のウーゼスにケイサル・エフェス。

 これらすべての障害を打破して地球を手中に収めるのは、収めるのは……ちょっと無理かもしれない。

 

 そして彼らもヘイデスもユーゼスも知らないところで、ある一つの脅威がこの宇宙に出現しようとしていた。

 光子力研究所を巡る攻防でマジンカイザーによって倒されたはずの地獄大元帥、その中核であるDr.ヘルは肉体を喪失して、意識だけとなった状態で奇妙な空間に居た。

 

 黄金に輝く空間に無数のキューブや球体、古めかしいタイプライターの浮かぶ場所だ。

 初めて見る筈なのに、なぜか既視感を覚える空間を漂うDr.ヘルはそれを見つけた。内に秘めた力のあまりの強大さと異質さに、正確な大きさをはかる事も出来ず、忌々しい宿敵マジンガーZを彷彿とさせるそのMAZINを!

 その巨体にDr.ヘルの意識が触れた時、彼は悟った。自分とこの魔神の間に紡がれている因縁を!

 

「お前は、お前の名は“INFINITY”!!」

 

<続>

■ジェリド、マウアー、カクリコンが加入しました。

■アモン・ドック、ゼク・ツヴァイ二機を入手しました。

■小バームが攻略されました。

■ゴッドアーモンを入手しました。

■三面鬼殿が破壊されました。

■キャンベル星が和平派によって政権転覆しました。

■Dr.ヘルがINFINITYと接触しました。

■マ●●エン●ラー●●入手フラグが立ちました。

 




まいてまいていくぞ!


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第百二十話 やり過ぎくらいがちょうどいいのかもしれない

 地上に降りてアルトアイゼンをフレームから大改修中の所長の下には、ヘパ研、バベジン研のスタッフ、更には光子力研究所、科学要塞研究所、新早乙女研究所の精鋭スタッフ達が集って、作業の進捗状況の報告をひっきりなしに行っている。

 今は休むよりも作業に集中すべきと判断した所長は連日の徹夜作業により、類まれなる美貌に隈を浮かべて、顔色をいくらか悪くしている。

 所長に限らず他のスタッフ達も似たり寄ったりだが、現在の地球情勢の局面を考えるとそうするしかないのもまた事実だった。

 

「光子力反応炉の調整は八割方終了しました。機体への組み込み作業には十分に間に合います」

 

「超合金ニューZαベースのマシンセルも安定しています。予定通り、新たな装甲素材“マジンセル”として登録し、生産を続けます。リボルビング・バスターの加工と杭打機構も完成しています。後は本体待ちです」

 

「光子力3Dプリンターの用意も済んでいます。これで光子力エネルギーが切れない限り、ミサイルでも実弾でもそれこそクレイモアでも撃ち放題ですよ!」

 

 マジンガーZやグレートマジンガー、マジンカイザーと異なり、アルトアイゼンは内部に人体の骨格と同じフレームを内蔵している。その分、機体の頑健性や剛性は勝るが内蔵武器の豊富さでは純粋なマジンガー一族には及ばない。

 最高純度の超合金ニューZα製フレームに光子力エネルギーを最大効率で生かす為、これまでの研究データの粋を尽くして各種部品が取り付けられ、超合金ニューZαよりも自己再生能力を高めたマジンセル装甲が用意された。

 

 リボルビング・ステークよりも巨大化したリボルビング・バスター、ヒートホーンを更に巨大化し、光子力エネルギーを纏わせて使用するフォトンホーン。

 更にはクレイモア、チェーンガン、腹部ビーム砲……これらの武装もすべてがパワーアップしている。

 

 愛する夫に対してはつい勢いでアルトアイゼンをマジンカイザー化させると言ってしまい、後で盛り過ぎましたわ、と頭を抱えた所長だったが、超一級のスタッフが勢ぞろいして作業を始めて見ると……いける? いけるかも? いけるんじゃ? いけますわ、コレ! と頭の中が沸騰中であった。

 所長は本音としては兵器開発よりも子供の為のおもちゃを考える方が大好きな人物だが、新たな技術で新しいナニカを作る事それ自体は楽しいし、喜びを覚えるので、気力は上限に達して下がらないままだ。

 

 そして他にも集っている新早乙女研究所のスタッフ達からも、ゲッターロボの技術を導入しているヴァイスリッターに関する進捗作業の報告も行われる。

 草臥れた白衣に下駄履き姿の早乙女博士も、今にも違う意味でゲッター線に導かれそうな様子で作業に没頭している。そんな早乙女博士を介護するように赤十字マークの帽子をちょこんと乗せた人間サイズのアインスト達がうろうろしているが、見慣れたスタッフ達に驚く様子はない。

 

「光子力反応炉と真ゲッター炉心のマッチング、四十パーセントを越えません! こいつら、マッチング率が百パーセントを越えないと出られない部屋に閉じ込められませんかね!?」

 

「マジンセルとゲッターセルの相互浸食、なんとか停止しました。現在は互いの浸食箇所を解放して戻っていますが、この二つの素材を装甲に使用するのは、かなり難しいかと!」

 

「グングニル・ランチャーに光子力エネルギーを通すと、ドライゲッターキャノンが張り合うように出力を高め始めるんですけど!? 逆もまたしかりなんですけど!? なんかお互いを意識し合う思春期なのかな? エネルギーなのに!!」

 

 アルトアイゼンが純粋な光子力テクノロジーの機体であるのに対し、ゲッター線とのハイブリッドを目指すヴァイスリッターは問題が多発中であった。

 なんだかもう意識がありますよ、と自己主張せんばかりに光子力エネルギーとゲッター線が反発し合い、なにもかもが上手く行かないのである。

 アルトアイゼンが順調な分をヴァイスリッターが難航して帳尻を合わせているというか、所長の疲労の大部分はヴァイスリッターが原因なのだった。

 

「むむむむ、単純に二つのエネルギーを掛け合わせようとすると反発する……。ハンバーグにパン粉や卵、お蕎麦には山芋……。光子力エネルギーとゲッター線を仲立ちさせるナニカを、つなぎを導入すれば……」

 

 こういう時、身近なところに解決の糸口があるものだ、と所長は開発室をぐるっと見回し、アインスト達に視線を固定した。まじまじと彼らの抱える赤いコアを見つめて、ニンマリと笑う。

 

「意思のあるエネルギー……。ふむふむ。物は試し、ですわね」

 

 所長が良い笑顔と共にそう呟いた瞬間、ノイ・レジセイアは誕生から初めての悪寒に襲われたという。

 

 

 ハイネル率いる守護神ゴードル軍団を撃破し、逃げ込んでいた女帝ジャネラ一派も殲滅したDC艦隊。

 ボアザン星の人々からは侵略者と恐れられた彼らだが、最後に見せた皇帝ザンバジルの醜態、更に剛兄弟とハイネルの父たる剛健太郎ことラ・ゴールら和平派の活動により、ボアザン星の支配体制は一夜にして転覆し、地球との戦争は終わりを迎えた。

 

 失意のまま炎の中に消えたハイネルの行方に、剛兄弟と健太郎が思いを馳せる中、DCは止まるわけにはゆかなかった。

 健太郎達ボアザン和平派に後を託したレビルらはワープ航法ですぐさま太陽系に帰還し、戦いの中で負った傷や疲労を癒し、物資の補充を迅速に行わなければならないからである。

 ユーゼスやバラオらの目論見通り、DCによってバーム、キャンベル、ボアザンの勢力が壊滅したわけだが、これによってムゲ、地球系勢力、バサ帝国との戦いに集中する事が出来るようになり、地球側も太陽圏内に戦力を集中させて決戦に備える構えだ。

 

 そうしてそれぞれが最後の戦いに向けた緊張感によって、太陽系内が異様に張りつめた空気となる中、機先を制するようにして動きを見せたのは太平洋上で妖魔島を浮上させ、極東支部の存在する日本列島を目指して進軍を始めた妖魔帝国ら地下勢力の同盟である。

 妖魔島、科学要塞島、巨大円盤を主軸にデモニカ、ミケロス、メカ要塞鬼、ガンテ、メカガンテが艦隊を組み、四勢力の怪物兵器達が群れを成す光景は、この世の地獄を連想させる悍ましさがあった。

 

 彼らの進路上にはまだ避難中の人々が残る南洋の島々があり、彼らの出現を察知した地球連邦軍は全力で包囲網の形成と市民の避難を進め、DCの到着を待たずに侵略者達を文字通り全て滅ぼすべく戦意を燃やしている。

 こしゃくな人間共が、とバラオやブライ、闇の帝王、ユラーらが鼻で笑ったのは確かだったが、ここまで自分達を追い詰めたのもまた人間であるのは理解しており、嘲りの感情以上に立ちはだかる邪魔者達は徹底的に蹂躙すると殺意を滾らせている。

 

 そんな彼らが最初に接触したのはリモネシア共和国。スーパーロボット大戦Zシリーズにて、重要な役割を持たされた国であり、この世界に於いても独特な立ち位置にある国だ。

 リモネシアに漂着していたZ世界のディアムドの修理をプルート財閥が引き受けた事やZシリーズでのリモネシアを思い、最新兵器を優先して供与した事から、ヘイデスとの関係が深いのも特徴である。

 

 そんなリモネシアに地下勢力の大軍勢が迫りつつある中、当然、リモネシア共和国軍の軍人達は国と民を守る為に、これを迎え撃つべく準備を進めていた。

 一年戦争のコロニー落としの被害を受けていない地球連邦海軍は、人員・艦船ともに万全に整っており、海洋兵器を豊富に用いてくる侵略者に備えて、地球側も水中戦向けの機動兵器を多数そろえている。

 その連邦海軍だけでなく空軍、陸軍、宇宙軍も即座に援軍を派遣するように整えており、リモネシアは決して絶望的な戦いに挑むわけではなかった。

 

 フェブルウス経由で得られた次元力技術を用い、完璧な修理の上、更に強化された状態で戻されたディアムド。

 ディアムドをベースにパンドラボックスを参照しながら開発されたエメラルダン、サフィアーダ、パールネイル、パールファング。更にZシリーズには登場しなかった各アークナイツ専用機群。

 主力となる機動兵器もゲシュペンストMk-ⅡからゲシュペンストMk-Ⅲへアップグレードし、一部のエリートにはディアムドをサイズダウンした量産版ディム・リー、ディム・サーが配備され、通常編成の連邦軍よりも一段、二段上の戦闘能力を確保している。

 

 迫りくる侵略者の大軍勢を前に出撃が急がれるリモネシア本島最大の軍事基地。そこにある格納庫の中でもひと際厳重な警備の成されている一角に、ユーサーの姿があった。

 かつての王家の血筋を引きながら、現在は市井に降りたインサラウム家の跡継ぎたる青年だ。心優しく、ともすれば気が弱いともいえる性格をしているが、自分が守りたいと思う者の為に命を懸けて戦える強さを併せ持っている。

 

 かつてはゲシュペンストMk-IIに乗って侵略者と戦っていたユーサーだが、今、彼は彼にしか扱えないと発覚した百メートル超えの巨大機神を見上げている。

 ユーサーの背後からなんの腐れ縁か、今日に至るまでリモネシアに残り続けているマリリン・キャットが歩みより、そっと声を掛けた。悪名高い傭兵団のトップにしては、不思議と優しい声だった。

 スーパーロボット・パールファングを与えられた彼女は、リモネシアにとって重要な戦力だが、独自に行動する権利を与えられている。今もユーサーの傍に残っていられるのも、その権利があるからだ。

 

「今も戦うのは怖いかしら? ユーサー君」

 

「君に格好を付けても仕方ないか。今も、怖いよ」

 

「ふふ、格好を付けても仕方ない、か。そこまで心を許してもらえていると喜べばいいのか、そこは見栄を張って欲しかったと拗ねればいいのか、ちょっと複雑よ?」

 

「マリリン殿には今日まで、格好悪いところと情けないところをたくさん見せてしまったから、今さらだと思って」

 

「そうね、この大戦が始まる直前くらいからのお付き合いになるわ。ファイアバグがここまでどこか一つの勢力に肩入れするなんて、滅多にないのだから感謝して欲しいかも」

 

「マリリン殿への感謝を忘れた事は、片時もない」

 

 なんでもなく当たり前のように答えるユーサーの言葉に、マリリンはしばらく沈黙した。ふと彼女の言葉が途絶えたことを不審に思ったユーサーが振り返る寸前、マリリンは彼にこちらを振り向かせてはいけないと、慌てて再起動を果たして言葉を紡ぐのに成功する。

 

「こ、今度の戦いはこの国にとっても、私にとっても最大の戦いよ? ユーサー君が怖くなっても仕方が無いわ。だからここで逃げてしまっても、私は責めないわよ? なんならファイアバグに来る?」

 

「ふふ、マリリン殿の心遣いには感謝するが、私が首を縦に振らないのはお分かりだろう?」

 

「あら、それでも質問するだけならタダでしょ? それに何があるか分からないものよ、人生って」

 

 今の私みたいにと心の中でだけ呟くマリリンに、ユーサーは決意を感じさせる声音で答える。

 

「戦う事は怖いが、自分が戦わない事で国と民が焼かれることの方が、私にはずっと怖いんだ」

 

「……インサラウム家はもう王家ではないのに、そこまであなたが背負う必要はないんじゃない?」

 

「それでも、ただのユーサー・インサラウムとして、戦う力を手にしているのに、それを使わずに戦禍を見逃してしまったら、私は一生後悔し続ける。どうしてあの時、戦わなかったのかと、死ぬまでずっと後悔する」

 

「ふうん、奉仕体質というか、ヒーロー気質というか。私、そういうの嫌いだったはずなんだけどな」

 

「マリリン殿、なにか言われたか?」

 

「ううん、なんでもないわ。特別にこのマリリン・キャットがユーサー君のフォローをしてあげるから、いつも通りに戦いなさい。そうしたらこれまで通りに生き残れて、守りたいものも守れるから」

 

 そのマリリンの言葉がユーサーの背中を押し、彼に目の前の機体に乗って戦う最後の決意をさせた。

 リモネシア共和国最強の機動兵器ジ・インサー……Zシリーズにおいては聖王機とも呼ばれたジ・インサリアス・アークライナス、それがユーサーに託された希望の名前だった。

 

 

 バラオ達の起死回生の侵攻は実のところ、初手から躓く事となった。彼らが最初の生贄に選んだリモネシア共和国が小さな国家ではあるが、その軍事力においては地球連邦構成国の中でも上位に位置する強国であった事。

 地球連邦軍そのものが彼らとの決戦に備えて、全力を尽くして可能な限りの迎撃態勢を整えていた事。

 長く続く戦いによって生き残った人員の誰もが歴戦の勇士となり、平均的技量が極めて高くなっていた事。

 これまでのDCとの戦いで幹部格を複数失い、戦力を減らしていた事。

 いくつもの要素が絡み合い、リモネシア共和国領海に侵入前に戦端を開いたバラオ達は、足止めを食らって攻めきれずにいたのである。

 

 リモネシア共和国軍の精鋭部隊アークセイバーの駆るスーパーロボット・アークセイバーシリーズを中核に、ディム・リーを指揮官機、ディム・サー、ゲシュペンストMk-Ⅲ、バルゴラCS、量産型F91を主力とする機動兵器部隊が展開し、侵攻の津波を受け止める防波堤として機能している。

 特にディアムドの戦闘能力はすさまじく、星槍ゲイボルグと名付けられた遠近対応の武装一つで、群がる戦闘獣、機械獣、メカザウルス、百鬼メカ、化石獣、巨烈獣を間合いに収める端から粉砕し、撃墜スコアを毎分増やしている。

 

 国と民を、更には地球人類全体を守る戦いとあって、騎士道精神を重要視するリモネシア共和国の軍人達の士気は極めて高く、異様かつ威圧感に満ち溢れた異形の敵機を前にしても一歩も下がる事無く戦い続けている。

 リモネシア共和国軍の精強さもさることながら、海中からはマリンスティンガーの群れを率いるデススティンガー、空からはギルベイダーの大部隊を率いるギルドラゴン、海上からはジェノザウラー軍団を率いるデスザウラーが既に戦場に到着している。

 

 特大の荷電粒子砲にビームスマッシャーが豪雨の如く降り注ぐような状況では、いくら地下勢力の強力な機体群でも、命中すれば一撃で消滅して行くのが道理というもの。

 特大サイズのゾイド達ともなると一体一体が闇の帝王やバラオでさえ全力を出して戦うべき強敵であり、DCと接敵する以前から予想を超えた強敵との遭遇に彼らの戦力の消耗はすさまじい勢いだった。

 

 侵攻が躓いた理由は他にも彼らの侵攻に合わせて、地球人類側の本物の霊能力者を片っ端から動員し、効力を認められた仏舎利や聖遺物をあらん限り使用し、対バラオ用の霊的結界を構築し、バラオやベロスタンがその魔力を十分に振るえないように備えていたのも理由の一つだ。

 本来、復活したバラオの魔力を受けて化石獣と巨烈獣は何度でも復活し、半不死となる。今でも倒された巨烈獣らは復活してはいるのだが、その速度はバラオが想定していたものよりはるかに遅い。

 

 ベロスタンを傀儡としているワーバラオも地球上空に展開しているアインストの大軍勢が、明確に“自分=ワーバラオ”に焦点を当てて警戒しているのを理解し、ベロスタンの枠を超えた助力を控えているのも理由の一つだろう。

 デスザウラー、デススティンガー、ギルドラゴンの正気を疑う大火力は科学要塞島と巨大円盤、妖魔島を根本から破壊するべく容赦なく放たれており、地下勢力側の者達は攻め込んでいるはずなのに、逆に追い詰められている気分になっている者が少なくなかった。

 ボアザン星から帰還し、大慌てで補給と修理を済ませ、休憩を切り上げたDC艦隊が刻一刻と迫りくる中、最大のイレギュラーの存在を前にバラオは覇者たる余裕はなく、ライディーンの到着前に全力での戦闘を余儀なくされている。

 

「おおおらああ!!」

 

「おのれ、外なる源理の者が!」

 

 下半身を妖魔島に埋めて空に浮かぶバラオの頬を深く抉ったのは、固く握られた白い拳だった。バラオの顔面を思い切り殴り飛ばしたのは、もはや鍛える余地のない鍛え終えた肉体を白い装甲で覆い、顔や首、装甲の隙間から虹色の光を零している巨人だ。

 三本の辮髪のようにも見える尻尾を伸ばし、背中からは巨大な手を思わせる翼が広がっている。機体名を次元将ヴァイシュラバ。ヴァイシュラバが乗機であるゲール・ティランと融合し、真の力を解放した姿だ。

 全高百五十四メートルの巨人であり、全高八百メートルを誇るバラオに比べれば小人だが、それでも疑似的な真化を果たした次元将ヴァイシュラバのパワーは圧倒的で、バラオはただでさえ満足に振るえない魔力を目の前の強敵に集中せざるを得ない。

 その為、配下の巨烈獣達を復活させる余力はますます減る一方なのだった。

 

「てめえらに恨みがあるわけじゃねえが、この国にはちょいと縁があるんでな。網を張らせてもらっていたぜ。ライディーンが来る前に俺と遊んでいきな、妖魔大帝。そこに居る裏で糸を引いてやがる奴もな!」

 

 次元将ヴァイシュラバの全身から次元力の嵐が吹き荒れて、バラオを援護しようとしていた有象無象の化石獣が瞬時に粉砕される。

 バラオは全身から怒りを滾らせながら、右手に大鎌を、左手には無数のトゲを生やした刀を握り締め、次元将ヴァイシュラバに呪殺の念を込めた視線を向ける。

 バラオの視線を受けたのが霊的耐性の無いパイロットだったら、即座に発狂していただろう魔力を、次元将ヴァイシュラバは滾る闘志と次元力で弾き飛ばす。

 

「貴様のその力! ムートロンとは似て非なる、しかし、世界の源流に近い力だな!!」

 

「妖魔大帝の肩書は伊達じゃねえな。だが、てめえのものになると思うなよ! 俺が得たこの力は、失われた故郷の者達が絶望に抗う為に生み出した力だ。一度は敗北し、過ちを犯しかけたが、今はこの力を正しく使う!」

 

「ほざけ、偽善者が。我は妖魔大帝バラオ! この星を、やがては銀河を闇黒に包み込み、悪魔世紀を実現する覇者である!!」

 

「無理だな。俺が居る。DCが居る。それにアイツも居るか」

 

 強烈な次元力の鼓動を感じて、ヴァイシュラバは楽しげに笑う。戦場の後方で待機していたストーク級から漆黒のパールファングを護衛機として、壮麗にして威厳溢れる高貴な機体がついに戦場に姿を見せたのだ。

 巨大な王冠を追加武装として纏い、赤いマント付きの白い甲冑を纏ったまさに聖王と呼ぶに相応しい機体、ジ・インサーだ。軍配型の宝剣コールブランドを手に、特別に調整された上、双子とフェブルウスの手によって作り出されたフェイク・スフィアを搭載している。

 

 フェイク・スフィアはスフィア・リアクトや副作用を排除し、純粋な動力として機能しており、出力はオリジナルスフィアに匹敵し、安定性にかけては勝るほど。

 しかしながらフェイク・スフィアの出力を引き出すのに、パイロットとの波長の相性が強く求められてしまい、何の因果か、ヘイデスとしてはそりゃあねえ、といった具合で、ジ・インサーの真価を引き出せるのは現状、双子らを除けばユーサーのみであった。

 

「行くぞ、ジ・インサー。敵は強大だが、それが退いても良い理由にはならない!」

 

 コールブランドの軍配部分が左右に展開し、次元力で形成された巨大な刃が伸びる。最大出力で使用すれば、余波が地球全土に達する程のエネルギー量を誇る。

 デスザウラー、デススティンガー、ギルドラゴン、ディアムド、次元将ヴァイシュラバに続き、更なる強敵の出現の報せを受けて、闇の帝王やブライ大帝、大魔人ユラーらがどのような感情を抱いたのかは、さて?

 

<続>

■ジ・インサーが開発されました。

■ディム・リーが開発されました。

■ディム・サーが開発されました。

■光子力とゲッター線はバチバチにやり合っています。

■アインストが所長に目をつけられました。頑張ってね!

 

初期配置の次元将ヴァイシュラバ、ディアムド、サフィアーダ、エメラルダン、パールネイル、ジ・インサー、パールファング、デスザウラー、デススティンガー、ギルドラゴンを操作しつつ、四ターン目の味方増援DCが来るまで持ちこたえましょう!




DC来なくても勝てる?


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第百二十一話 悪鬼羅刹の目にも涙

「聖なる王冠よ。リモネシアの海と空を汚す侵略者に裁きの光を与えよ!」

 

 起動したジ・インサーはパイロットであるユーサーの思念を読み取り、フェイク・スフィアの生み出した膨大な次元力が、巨大な黄金の王冠へと注ぎ込まれる。

 ふわりと浮かび上がったセイクリッド・クラウンはジ・インサーの頭上で止まると、蓄えた次元力を無数の赤い光線の束として真上に発射し、空中で軌道を曲げた光線は敵味方を識別しながら戦場に降り注ぐ。

 

 次元将ヴァイシュラバの撒き散らす次元力の余波、アークセイバーの猛攻と彼らに追従するリモネシア共和国軍の攻撃、三大ゾイド軍団に蹂躙されていた地下勢力同盟は、頭上からのMAP兵器へ正確に対処する余裕はほとんどなかった。

 雑兵達は次々と光線に貫かれて爆散し、足場となっている科学要塞島と巨大円盤の装甲表面にも命中する。

 絶え間なく襲い来る振動に科学要塞島の司令室に居たブライ大帝は覚悟を決めて、傍らに控えていたグラー長官に切り札の投入を命じた。

 

「止むを得ん。DCが到着するまで温存しておきたかったが、グラー長官、出撃の用意をせよ!」

 

「おお、大帝御自ら戦場に立たれるのでございますか!?」

 

「口惜しいが既に出し惜しみをしている余裕がない。DCが来る前にリモネシアを落とす!」

 

 百鬼帝国最強の百鬼メカ・合体百鬼ロボット──百鬼メカなのに百鬼ロボットとはこれ如何に──は原作ではメカ雷電鬼・メカ十方鬼・メカ雷獣鬼・メカ闇虫鬼・メカ甲角鬼・メカ輪魔鬼からメカ雷電鬼を除いた五体合体だが、本世界では予定通りの六体合体だ。

 スーパーロボット大戦MXに出演した時を上回る脅威となって、リモネシア共和国とDCの前に立ちはだかるのは間違いない。

 

 ミケーネ帝国も暗黒大将軍がディアムド率いるディムタイプ部隊を迎え撃ち、生き残りの将軍達もエメラルダン、サフィアーダ、パールネイルを相手に生きるか死ぬかの戦いを継続中だ。

 地獄大元帥が死にあしゅら男爵、ブロッケン伯爵といった指揮官級の喪失に、彼らの所有していた機械獣部隊も失った状態にあって、闇の帝王は自らの出陣を今さら厭うような愚者ではなかった。

 デモニカ、ミケロス艦隊の中央に暗黒の炎が何もない空中に突如として出現し、バラオにも負けない圧倒的なエネルギーを放つ闇の帝王が降臨した。

 

「おお、闇の帝王様!」

 

「ご出陣あそばすとは我らの不手際か」

 

 ジ・インサーの出撃で士気を上げていたリモネシア共和国軍は、敵勢力の首魁の出現に驚きを禁じ得なかったが、同時にアレを討てばミケーネ帝国を滅ぼせると腹を括る。

 母国とひいては人類を守る窮地というだけでなく、敵勢力を壊滅させる好機を兼ねた決戦であると改めて理解したから。

 

「ミケーネの勇者達よ! 我は闇の帝王、この世全ての支配者。この空を、大地を、海を制して星の彼方までをも支配する帝王。その闇の帝王の軍団に恥じない戦いを我に示せ!」

 

 闇の帝王の燃え盛る炎のような体から、紅蓮の炎が津波のように噴き出し、一気にリモネシア共和国軍へと襲い掛かり、咄嗟にビームシールドやDフォルトを展開する彼らの機体の多くを中破ないしは大破させた。

 闇の帝王だけでなく科学要塞島の甲板にはブライ大帝が自ら乗り込む合体百鬼ロボットが出撃し、周囲には生き残りの鬼達が乗り込む専用機が展開し、戦力の出し惜しみは一切していないのが見て取れる。

 

「ゆけ、無敵戦艦ダイ! デススティンガーを仕留めよ! メカザウルス軍団、全軍出撃だ! ゲッターが来る前にリモネシアを落とす!」

 

 大魔人ユラーも最後の手段と残していた自身の改造を視野に入れながら、巨大円盤に残していた残存戦力の投入を決めて、先に出撃させていた無敵戦艦ダイ達にデススティンガーの撃破を命令する。

 無敵戦艦ダイを構成する二頭の恐竜はデススティンガーの大鋏に挟まれ、尻尾で貫かれ、生身と空母の部分両方に既に甚大なダメージを受けている。

 発艦した爆撃機とダイの主砲はデススティンガーにも何度となく命中してダメージを与えているが、バリアと再生能力を突破できず、じりじりとダイ達が追い込まれつつある。

 

 マリンスティンガー部隊ごとまとめてユラー軍団が引き受けているのは大きな功績だが、地球連邦海軍の量産型ゲッターポセイドン部隊、何故か水中適正の高い陸戦型百式改部隊やカプール部隊も到着。

 地球連邦空軍所属のVFシリーズやアンクシャ、リゼル、サラマンダー、マーキュリー、ストームソーダーらが戦場に到着し、地下勢力同盟が残存戦力を吐き出すのに合わせるようにして、地球連邦軍の救援部隊もまた到着して戦力の均衡が崩れる事はないままだった。

 

 リモネシア共和国の領海で行われている激闘の流れ弾などは、幸いにしてリモネシア本島には届いていなかったが、天を轟かせ、海を揺らせる圧倒的パワーは伝わっており、シェルターに避難しているリモネシア国民の不安と恐怖を煽った。

 以前、ガイゾックに襲われた後も妖魔帝国やバーム、キャンベル、ボアザン、ムゲ、ベガといった異星人勢力との小競り合いはあったが、今回は国内の慌ただしい様子と現在の天候さえ左右する影響から、文字通りの大決戦が行われているのだと国民の誰もが肌で理解している。

 

「先生、それじゃあね、バイバイ!」

 

「はい、さようなら。お父さんとお母さんの言うことを聞いて、良い子にしていてね。すぐに兵隊さん達が悪い人達をやっつけてくれるから」

 

「うん! それにマジンガーにライディーンもきっと来てくれるから!」

 

 生徒達一人一人をシェルターに避難している保護者達の下へと送り届け、シオニー・レジスは一仕事を終えた安心感にほっと安堵の息を吐いた。

 独り身のシオニーは迎えを待つ恋人も迎えに行く家族も居ない。後は事前に割り当てられたシェルターの区画へと向かうだけだ。

 

 リモネシアに限らず地球圏全体が軍事力強化に邁進している為、リモネシアも日々新しい兵器が搬入され、訓練を重ねているのは市井でも噂になっていたが、ついにその成果が試される時が来てしまった。

 シオニーは陰鬱な気持ちと共にバッグを抱えたまま、避難してきた人々ですれ違いながら、とぼとぼとシェルター内部の通路を歩いて行く。

 核弾頭の直撃にも余裕で耐えるシェルターは居住性にも気を配られていて、アースクレイドルには及ばぬものの、地球上に作られた極めて頑丈なスペースコロニーとも称される。

 そんなシェルターを揺らす振動に、シオニーは咄嗟に頭を抱えて足を止め、小さく悲鳴を零す。

 

「ひっ!? い、いや、早く、早くみんなを助けて……!」

 

 恐怖に涙目になりながらもシオニーは教師として、生徒達を案ずる祈りの言葉を口にするのだった。

 

 

 ジェノザウラー軍団の放つ荷電粒子砲は科学要塞島と巨大円盤の底面を次々と撃ち抜き、破壊された部品が次々と海へ落下している。

 ギルドラゴンはミケロスやガンテ、メカガンテ、メカザウルス・グダといった艦船に目をつけて、超特大のビームスマッシャー、プラズマ粒子砲、重力砲を筆頭とする超火力を叩き込んでいる。

 デスザウラーは無敵戦艦ダイ艦隊と戦うデススティンガーの援護に向かい、400m級のダイ達の首を噛み千切り、荷電粒子、重力、ゲッター線の主砲を密着した状態でぶっ放し、青い海をダイ達の血で染め上げている。

 

 バラオもまた、驚異的な戦闘技術を見せる次元将ヴァイシュラバを相手に、大鎌と刀を操り、他者が横槍を入れる余地のない異次元の戦闘を行っているが、その下半身を埋めていた大地は崩壊し、蠢く肉瘤と植物の根のような下半身を露にしている。

 巨大なコンビナートや工業プラントで構成されたような科学要塞島甲板では、対空砲火の嵐を突破したジ・インサー、パールファング、更にディム・サー・バーグラーで構成されるファイア・バグが合体百鬼ロボットと百鬼メカを相手に戦端を開いている。

 合体百鬼ロボットよりも更に巨大なジ・インサーはユーサーの滅私に基づく護国の覚悟により、フェイク・スフィアから巨大な次元力を引き出しており、完全形態の合体百鬼ロボット二体を相手に、パールファングとの即席連携で互角の戦いぶりを見せている。

 

 量産型F91部隊のヴェスバーが火を噴き、ゲシュペンストMk-Ⅲ部隊のメガブラスターやツインビームキャノン、F2WOライフルの絶え間ない弾幕が形成される。

 バルゴラCS部隊がレイ・ストレイターレットで穴を開けた敵の戦列に量産型グレートマジンガー部隊、量産型ゲッタードラゴン部隊、グルンガスト弐式部隊、ガンダムデュラクシール部隊が突っ込んで、壮絶な格闘戦を展開してあちこちに破壊された巨大兵器の部品が肉片代わりにぶちまけられてゆく。

 

 量産型とは言えスーパーロボット部隊が大暴れして乱戦状態に陥った戦場に、小回りの利くディム・サー、ディム・リー部隊がハイナイト達と共に切り込んでいって、首級を上げて行けば、意地を見せる戦闘獣や巨烈獣に組み付かれて腹を貫かれ、あるいは首をもがれる。

 計都瞬獄剣を手にグルンガスト弐式部隊が切り込んでゆくのを、ガンダムデュラクシール部隊がエンタイアリィバスターやメガバスター砲で援護し、ドローメや恐竜ジェット戦闘機などの小物はその余波だけで跡形もなく吹き飛んでゆく。

 

 シャーキンが直々に乗り込んだ特別仕様のギルディーンに率いられたギルディーン部隊が、口から吹き矢のようにギルアローを発射し、回避の間に合わなかったバルゴラCSの左腕を吹き飛ばし、またあるいは量産型グレートマジンガー部隊の装甲に矢が食い込んでゆく。

 海上を疾走していた量産型ゲッターライガー部隊は科学要塞島の直下に到達すると、ドリルを高速回転させて底面から内部に侵入して破壊しようと試みる。

 ユラーの巨大円盤は強力なバリアを展開して鉄壁の守りを敷いているが、それを察したリモネシア、地球連邦軍の艦隊からの集中砲火を浴び、バリアを展開中でも内側から撃てる小型の対空ビーム砲で対応するだけだ。それでも都庁を真っ二つにするほどの威力なのだから、この出自不明の巨大円盤は恐ろしい。

 

 各勢力の首魁達だけでなく暗黒大将軍、シャーキン、巨烈兄弟ら幹部格も死力を尽くして『前座』を相手に戦っている中、遂に本命となる地球圏最強の部隊がわずかな空間の揺らぎを先ぶれとし、DC艦隊が地下勢力同盟の南方向に出現したのである。

 ハガネ、シロガネ、クロガネはもちろんネェル・アーガマ、ラー・カイラム、ブレイウッド、スペース・アーク、サダラーン、ファドラーン、ガンドール、キング・ビアル、マグネバード、ガランシェール、大気圏対応改造済みのピースミリオン、タルタロス、ギャンランド、ガルンロール……キロメートル超えの艦船を含む大所帯だ。

 

共通ルート ■第五十七話 悪鬼羅刹

 

 量産型とは異なるオリジナルスーパーロボットと性能を限界以上に引き出すパイロット達、最高のMSと地球のトップパイロット達がこれでもかと在籍する部隊は、当然、侵略者達にとってはいくら憎んでも憎み足りない因縁しかない怨敵である。

 そしてそれはDC側にしても似たり寄ったりで、近しい者を傷つけられるかあるいは自分自身が命を狙われた経験をした者も居る。お互いにこの戦いが最後の決戦と理解するがゆえに、戦場で対峙した彼らの戦意は限界まで高まっていた。

 

「鉄也さん、今日でミケーネとの決着を付けようぜ!」

 

「甲児君に言われるまでもないさ。俺とグレートは最初からそのつもりだ!」

 

 光子力反応炉が唸りを上げるマジンカイザーと兜甲児、そして装甲を超合金ニューZαに動力を光子力反応炉に変えてパワーアップ済みのグレートマジンガーと剣鉄也が真っ先に闇の帝王率いるミケーネ帝国軍団へと向かってゆく。

 

「あれが百鬼帝国の本拠地か!」

 

「鉄甲鬼や白骨鬼から聞いてはいたが、流石にデカいな」

 

「なあ、似たような円盤からメカザウルスが出撃してないか?」

 

 真ゲッター1で出撃した竜馬、隼人、弁慶はジ・インサーとパールファングが暴れ回る科学要塞島にまず目を向けて、次いで弁慶の指摘した通り、ダイ艦隊を血祭りに上げつつあるデスザウラーとデススティンガーの上空に居る巨大円盤に目をやった。

 確かにメカザウルスをはじめ恐竜ジェット戦闘機や爆撃機が多数展開しており、既に決着のついたはずの恐竜帝国の戦力が姿を見せていることに、ゲッターチームは驚きを禁じ得ない。

 

「ミユキからの情報にあった大魔人ユラーか?」

 

 達人はかつて共に過ごした恐竜帝国ゴーラ王女こと早乙女ミユキからの情報を思い出し、恐竜帝国の真の黒幕の名前を口にする。帝王ゴールをはじめ、恐竜帝国の中でもごく一部しか知る者の居ないという謎の存在だ。

 

「恐竜帝国を離れてミケーネや妖魔帝国と手を組んでいたのかしら? それとも恐竜帝国を今も操っているの?」

 

「恐竜帝国を今も操っているんなら、きっとマシーンランドも出てきているんじゃねえかな? ダイやあのバカでかい円盤は厄介そうだが、オイラ達のやる事には変わりないぜ、ミチルさん、達人さん」

 

 百鬼帝国だけでなく恐竜帝国の黒幕とくれば新旧ゲッターチームにとって、因縁深いどころの相手ではない。真ゲッター1と真ゲッタードラゴンはパイロット達の闘志が乗り移ったようにゲッター炉心の奥底から唸り声を上げていた。

 そして因縁深い敵と言えば、勇者ライディーンとひびき洸、囀晶もまた同じ立場である。かつて妖魔帝国と相討つように滅びたムー帝国帝室の血を引く二人とライディーンにとって、妖魔帝国と妖魔大帝バラオは宿命の敵なのだから。

 

「洸さん、あの大きな気色悪いのが!」

 

「ああ、間違いない。ライディーンが教えてくれている。奴が妖魔大帝バラオ! 俺達とライディーンにとって最大の敵だ」

 

「はい。凄いプレッシャー……なんですけど……」

 

「ヘイデス総帥から情報のあった次元将ヴァイシュラバか。魔力や超能力とは違う巨大なエネルギーの塊だ」

 

 約六百五十メートルの体格差をものともせず、圧倒的なバラオの妖力に対して次元力で対抗する次元将ヴァイシュラバの戦いぶりには、洸と晶ばかりでなくライディーンもいい意味で驚いているようだった。

 

「えっと、頼りになる味方が居るのは良い事ですよね?」

 

 意表を突かれた展開に困惑した空気を変えようと晶が口にした言葉に、洸も彼女の意図を察して同意する。ヴァイシュラバの参戦はありがたいが、それでもバラオの強大さが変わるわけではないのだ。

 

「そうだね。だが巨烈兄弟にシャーキンもまだ健在だ。シャーキンは……あの偽ライディーンに乗っているか」

 

 研ぎ澄まされた洸の念動力は戦い慣れたシャーキンの気配を察知し、動きが違う事もあって正確にシャーキンの乗るギルディーンを看破する。

 二人の脳裏には発見された洸の母ひびき玲子ことムー帝国王女レムリアから聞かされた妖魔帝国、ラ・ムーの星について、そしてヘイデスから伝えられた晶の父親に関する情報が反芻されていた。

 

 シャーキンはレムリアの異母兄弟の間柄であり、彼には溺愛する弟アズナルが存在した事。そして遺伝子調査を含む入念な調査の結果、晶の父親こそ現代に目を覚ましたアズナルであり、シャーキンは彼女にとって伯父に当たること。

 惜しむらくは既にアズナルが不運な事故によって鬼籍に入っており、本人に直接確認する術が失われていることだ。この話を聞かされてから、洸も晶も可能であればシャーキンと話が出来ないかと頭の片隅で思っているのは否定できない。

 

「晶さん、お互い考えている事は近いと思うが、今はバラオを倒す事を一番に考えよう。迷いながら戦ったら、俺達の命だけじゃなく皆の命まで危機に晒してしまう」

 

「はい! だいぶ優勢な気もしますけど、油断は出来ませんもんね!」

 

「うん、優勢に見えるのは俺も否定しないよ」

 

 デスザウラー、デススティンガー、ギルドラゴンの三機が集結しているのもそうだが、次元将ヴァイシュラバに加えてアークセイバーシリーズとジ・インサーの戦闘能力が極めて高く、事前に想定していた惨状とはまるで違ったのだから、洸が呆れるように答えたのも当然と言えば当然だった。

 いよいよ本命中の大本命、地球支配最大の障害であるDCの出現に地下勢力同盟の全員が新たな敵意の薪をくべて、士気を高める中、タルタロスからゼファーが遠隔操作するヴァルシオーが出撃し、その周囲に二機の特別な護衛が布陣する。

 

 オリュンポスの防衛戦力から抽出され、配備された機体で、片方は人工知能制御の無印版メカギルギルガン──を更に強化改造した機体である。

 上半身が二つに増えて、頭部は二つ、腕部は四本となり攻撃力を力任せに高めた頭の悪い改造プランをやけに高いレベルで実現したもので、その名もメガ・ギルギルギルガン。

 名前に『メガ』と『ギル』が増えており、コレは漫画版『RoA』に登場したメガ・ガルガルガウをインスパイアした強化であろう。

 中性子爆弾を抱えていた頃とはデザインが随分と変わったが、基本的な性能は向上しており、撃破しようとするならスーパーロボット複数機で挑むのが推奨されるレベルである。

 

 そしてもう一機はカラーリングの異なるエル・ミレニウムだ。元々は赤色だった胸部は金色に、青色だった頭部や手足は銀色に変化し、更に背中にはDエクストラクター内蔵のウイングユニットが追加されている。

 ガオガイガーシリーズに登場する竜型ビークルロボ月龍、日龍、翔龍によるトリニティドッキングで誕生する翔星龍神をモチーフとしたカラーリングとデザインに変更・強化された姿である。

 通常のエル・ミレニウムに対してコストは二割増し、戦闘能力は五割増しとなった特別製であり、三体の竜型ビークルロボに敬意を表して名前はドラ・ミレニウムとされた。

 

 双方共に極めて強大な機動兵器だが、オリュンポス防衛の為のとっておきだ。それをわざわざ同行させたのには理由がある。

 究極の機械守護神──そうでありますようにと願いを込められたヴァルシオーのコックピットにメインパイロットの所長の姿はなく、その代わりサブシートには糊の利いた高級スーツを着こなすヘイデスの姿があった。

 メガ・ギルギルギルガンとドラ・ミレニウムはヘイデスと言う地球圏の重要人物が戦場で命を落とさないようにと派遣されたのである。

 

 次々と姿を見せる超高性能機動兵器部隊を前に身構えるバラオ、闇の帝王、ブライ、ユラーの姿を見て、ヴァルシオーのヘイデスは大きな音を立てて生唾を飲み込む。

 こちらにもヴィンデル、ギリアム、シロッコ、クワトロとスパロボシリーズでのラスボス経験者が揃っているが、完全な異形相手となるといささか話が違ってくる。要するにおっかないのである。それでもわざわざ彼が戦場に姿を見せた目的は、果たさなければならない。

 

「こんにちは、初めまして。闇の帝王殿、妖魔大帝バラオ殿、ブライ大帝殿、大魔人ユラー殿。僕がプルート財閥総帥にしてDCのスポンサー、ヘイデス・プルート。お見知りおきは……不要ですよ。この戦いで皆さんとは永遠にさようならをしますので」

 

 本来のヘイデスの人格を可能な限り再現できるように、たかが人間如きがと彼らが怒りに駆られるように嘲りと皮肉のスパイスをたっぷりと利かせて、ヘイデスは映像通信で各勢力の親玉達に伝えた。

 途端にバラオと闇の帝王から呪詛が飛んできたが、魔装機神のようにヴァルシオーの装甲に素粒子レベルで刻まれたありがたい経典や聖句が効力を発し、ヴァルシオーの周囲に黒紫色の光が散るだけで済む。

 

「おお、これは怖い。ふふふ、如何ですか? あなた方がこれまで何度も暗殺、誘拐、洗脳を試みてきた邪魔者が直接戦場に姿を現しましたよ。

 ちょうど人類とあなた方の命運を別つ決戦の最中だ。ついでに僕の命を狙ってみては? まあ、貴方達がどんなに頑張ったところで、正義の味方を前にしては敗北しかありませんけどね」

 

「なんか総帥も悪者っぽくねえか?」

 

「勝平! そういうのは思っていても言っちゃだめよ」

 

 勝平と恵子のやり取りにちょっぴり傷つきながら、ヘイデスは自分の挑発が上手く行ったのを叩きつけられる憎悪と怒りから強く実感した。

 まさかこの期に及んで逃げる可能性は低いと予測していたが、万が一を想定してDCにヘイデスと言う大きな餌を加える事で、地下勢力の逃亡を封じるのがヘイデスの買って出た今回の役割である。

 そしてもう一つ、これは完全に現場についてからのアドリブであったが、ヴァルシオーの検知した味方にだけ伝えられるアインストの転移反応に、ヘイデスは愛妻が見事に仕事を果たしたのを確認して、ふっと笑った。

 

「それともう一つ。僕の愛妻の仕事の成果をその命で確かめてはくれませんかね?」

 

 惚気るように、いや、惚気て告げたヘイデスの言葉が言い終えられるや否や、戦場の上空にアインスト・レジセイア達に連れられて二機のロボットが姿を見せていた。

 極東支部格納庫で遂に完成した後、アインストによって運ばれてきたキョウスケとエクセレンをパイロットとして受け入れ、この戦場にやはりアインストの転移で運ばれてきたソレら。

 

 落下中に背中の大型ブースターと真紅の翼を組み合わせたアイゼンスクランダーを全開にして、刹那の間に音の壁を超えて加速。

 そのまま巨大化し杭打機構を内蔵したリボルビングバスターを叩き込み、一撃でミケロスを木端微塵にしたのは、現在施せるあらゆる改造を行った魔神皇帝の亜種、アルトアイゼン・ブルク──古の鉄の城。

 マジンガーの系譜に敬意を払い、リーゼではなくブルクを名前に与えられたアルトアイゼンは光子力反応炉の生み出す膨大な光子力エネルギーを全身にみなぎらせ、マジンセルで構成された機体は鮮やかな赤色に輝いている。

 

 ミケロスにリボルビング・バスターを叩き込んだ体勢から、ゆっくりと体を起こすアルトアイゼン・ブルクに向けて、周囲に布陣していた敵部隊が一斉に襲いかかり、仕留めようとする。

 だが、残るもう一機がソレを許すわけもなかった。降り注いだ光子力とゲッター線のビーム、そしてマジンセルの弾丸によって、自分達が攻撃されたのに気づくまもなく撃破される。

 何事もなかったかのように機体を起こしたアルトアイゼン・ブルクの傍らに、同じく新たな力と姿を得たヴァイスリッターが並ぶ。

 

 右手に握られたグングニル・ランチャーは、オクスタンランチャーの発展系らしく超高出力光子力ビームとマジンセル製の実弾を撃ち分ける事が出来る代物だ。

 機体に内蔵した光子力3Dプリンターにより、光子力エネルギーが尽きない限り、実弾の弾切れを心配する必要はない。

 更に左腕のドライゲッタービームキャノンは、ゲッタードラゴンのゲッタービームと同等の威力のビームを、同時に三発発射できる武装である。

 直線と曲線を交えた超高速の三次元機動で敵機を翻弄し、二つの武器を使って周囲の敵を瞬時に駆逐した新たなヴァイスリッターは、右の紅の翼と左の黒い翼を広げて、戦場を支配する戦の女神か悪魔のように周囲を睥睨する。

 

 新たなヴァイスリッターはその姿を、開発途中だった状態から大きく変えていた。機体の腹部に、通常のアインスト百体分のコアを圧縮した、白い特製アインスト・コア──ヴァイス・コアを備え、腹部や二の腕は緑色の蔦のような素材で構成されている。

 機体の一部をアインスト化させる所長の試みは、ライン・ヴァイスリッターと言う異世界の先例のお陰もあってか、今のところは成功している。コアがダークタワーだったなら、ブラックウォーグレイモンが誕生していたかもしれない。

 

 そして小型光子力反応炉を内蔵し、マジンセルで構成された右半身はマジンガーの如く黒を主体とし、背中の翼も右側だけはスクランダーのものに酷似している。

 反対に真ゲッターロボと真ゲッターロボGのデータから開発された真ゲッター炉心を持ち、ゲッターセルで構成される左半身はゲッター1やゲッタードラゴンと同じ赤主体の配色で、背中の翼は真ゲッター1を思わせる悪魔のような黒い翼だ。

 

 この新たなヴァイスリッターは所長の頼みを聞いたノイ・レジセイアが特別に用立てたヴァイス・コアによって、なんとか異なる二種のエネルギーとその意思を両立させるのに成功している。

 もし二つの動力が暴走したら、世界が黄昏の時を迎えかねないからと、デメルング・ヴァイスリッターと名付けられた新たな機体は、意思のないアインスト・コアを介してエクセレンの意思を光子力反応炉と真ゲッター炉心に伝える仕様となっている。

 その表れか、頭部と首回りばかりは元のヴァイスリッターのカラーリングを残している。

 

 初めてこのデメルング・ヴァイスリッターを見た時、ヘイデスは漫画のゲッターロボ飛焔を連想したものである。

 ゲッターロボ飛焔はプラズマ炉とゲッター炉のハイブリッド駆動だが、デメルング・ヴァイスリッターは光子力反応炉と真ゲッター炉の組み合わせだから、色々な意味で危険性は上かもしれないが。

 

「どうやらパーティーには間に合ったみたいねえ。ドレスコードは合格かしらん?」

 

 送り届けてくれたアインスト・レジセイアが姿を消すのを見送り、エクセレンは新たなヴァイスの色々とヤッバイ数字にドン引きしながら、なんとかいつもの軽口を捻り出す。

 キョウスケはというと所長や兜十蔵博士、剣造博士、弓教授、早乙女博士が想像をはるかに上回る仕事を成し遂げたのを理解し、心からの称賛を博士達に送っていた。

 

「素晴らしい。このアルトならどんな戦いも撃ち貫いて行ける!」

 

 一撃でミケロスを“木端微塵”にしたアルトアイゼン・ブルクと部隊を一瞬で壊滅させたデメルング・ヴァイスリッター。

 スーパーロボット大戦世界のオリジナルでありながら、マジンカイザーと真ゲッターロボに連なる存在として誕生した異端の子らを前に、彼らを敵としなければならない者達の胸中は、実に暗澹たるものであったのは、想像に難くない。

 

<続>

 

■メガ・ギルギルギルガンが開発されました。

■ドラ・ミレニウムが開発されました。

古の鉄の城(アルトアイゼン・ブルク)が開発されました。

黄昏の白騎士(デメルング・ヴァイスリッター)が開発されました。

 




アクシズで人質になって居た人たちは地の文で救出されています。
リヒテルは味方になっていますが、ハイネル、ガルーダ、シャーキンはいったいどうなることか。

悪鬼羅刹と聞くとロマンシングサ・ガ3の羅刹か魔界都市ブルースの主人公秋せつらを連想する作者です。
ようやくマジンカイザー系列のアルトアイゼンとマジンカイザー×真ゲッターロボのヴァイスリッターを出せました。それぞれリーゼ、ラインとは違う名前、違う姿になりましたが、かなりパワーアップしていますよ!

追記
カイゼリンランチャー → グングニル・ランチャー
デメルング・ヴァイスリッターのアインスト・コアの名称をヴァイス・コアへ、色を紫から白へ変更しました。


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第百二十二話 勇者の歌を捧げよ

 マジンカイザーと真ゲッターロボの存在は、既に地下勢力同盟側にも知れ渡っていた。

 だがセプタギンアクシズ戦で出現した真ゲッターロボGやグレンダイザーテラ、ザンボットインビンシブルといった更なるスーパーロボット群の出現には顔を引き攣らせたし、その上で更にアルトアイゼン・ブルクとデメルング・ヴァイスリッターの出現ともなると、言語化するのが気の毒なほど、衝撃を受けていた。

 戦闘獣や巨烈獣、メカザウルス達に対する指揮が一瞬だけ停止して、その隙を突くように新たな転移反応が一つ生じる。反応はダイ艦隊の一隻、その直上!

 

「ドンピシャ、いいとこ! そぅら、潰れっちまいな!!」

 

 一隻、遅れて転移してきたムンベイの操縦するウルトラザウルスである。

 対無敵戦艦ダイを想定して開発されたウルトラザウルスは、その本分を全うする為にまさに戦場に姿を見せたのだ!

 ムンベイが好戦的な笑みを浮かべ、ウルトラザウルスのブリッジクルーにも闘志が伝播したようで、揃いも揃ってメカザウルスを逆に食い殺しそうな笑みを浮かべている。

 

「ギュウォオアアア!?」

 

 概ね同スケールのウルトラザウルスに伸し掛かられた無敵戦艦ダイの一隻は、牽引する恐竜二体のどちらとも骨と内臓を纏めて押しつぶされて、血反吐を吐いて絶命する。

 ウルトラザウルス程の超重量の落下によって巻き起こる悪影響を考慮し、転移直後に重力操作で無敵戦艦ダイの動きを拘束しつつ、重力障壁を展開する細やかな配慮は、ムンベイのアイディアを即座に実行に移せるクルーの有能さを示している。

 入念に無敵戦艦ダイを踏み潰しながら、ムンベイは頭上に見える巨大円盤に狙いを定めていた。

 

「重力ホイールはご機嫌! ゾイドコアも元気いっぱいで砲身はとっくに展開済み! 狙いはもちろんバッチリ!!」

 

 改良に改良を重ね、今や立派な戦略兵器と化したグラビティカノンの狙いは、バリアを展開中の巨大円盤底面だ。

 あまりに距離が近いのと、敵味方の入り乱れる状況の為、最大出力をぶちかますのは難しいが、それならそれでやりようはある。

 なにしろ結果的に魔改造機体や武装を大量生産してきたのが、ヘパイストスラボであるからして。

 

「グラビティカノン・ショット・ランサーモード!! グサリといっけえ!!」

 

 超重力で形成された三百メートルに達する巨大な槍が、クロスボーン・バンガードのMSやジャベリンの武装のように勢いよく射出される。本来のグラビティカノンが威力があり過ぎて使えないのなら、周囲への影響の少ない使い方をすればいいだけの話なのだから。

 各艦隊からの集中砲火を浴びている巨大円盤のバリアに、超重力のショットランスが突き刺さり、そこに参戦したDC艦隊の火砲も殺到した事で、いよいよ負荷に耐え切れなくなったバリアが割れて、次々と巨大円盤に艦隊の火力が届き始める。

 揺れる巨大円盤の制御室の中で、大魔人ユラーは最後の手段を取らざるを得なくなったのを理解し、忌々しさを隠さない顔で甲板に向かった。

 

「この巨大円盤を起動させるのに時間をかけ過ぎたのが、こうまで裏目に出たかっ。帝王ゴールの攻勢に間に合わせられれば、こうまで人類が強くなる前に決戦を挑めたものを!」

 

 ユラーの悔恨の言葉は、現在の戦闘に参加している各勢力の首脳達の共通の悩みだったに違いない。ユラーが切り札を切る一方、科学要塞島の甲板では真ゲッター1がブライとグラーの乗る完全合体百鬼ロボット二体と対峙していた。

 既にジ・インサー、パールファング、ファイア・バグと交戦していた完全合体百鬼ロボットは、その巨体にダメージを蓄積させている。

 ブライを討たせてなるものかと、生き残りの百鬼百人衆が殺到しているが、ゲッターチームとスイッチしたユーサーとマリリン達が来る端から返り討ちにしている。更に真メカ鉄甲鬼、真メカ白骨鬼、真メカ胡蝶鬼、真メカ地虫鬼も合流しつつあった。

 

「忌まわしいゲッターチーム。そして百鬼帝国の裏切り者達か……」

 

 完全合体百鬼ロボットのコックピットで、ブライは慌てた様子もなく、大帝としての威厳を留めたまま甲板に降り立つ真ゲッター1と裏切りの鬼達を見回す。

 グラー長官は目を掛けていた地虫鬼や技術者として天賦の才を持っていた鉄甲鬼が、人類側に回った事を悔やみ、惜しんでいるようだった。

 

「お前が百鬼帝国の指導者ブライ大帝か!」

 

 竜馬からの通信にブライは鷹揚に答えた。鬼こそ人類を支配する上位種という考えは微塵も揺らいではいないが、ここまで自分達を追い詰めた実力を認められないほど、ブライは狭量ではなかった。

 

「頭が高いぞ、流竜馬。私こそ百鬼帝国の指導者、大帝たるブライだ。本来、お前達の前に私自らが直々に姿を見せるなどあり得ない事だが、お前達は自らの武勇によって私をこうして引きずり出した。誇るがいい!

 貴様らは鬼だけでなくミケーネにとっても、妖魔にとっても最大の強敵であると認められたのだ」

 

 ダメージの見られる機体を通して感じ取れるブライの覇気を受け、隼人は好戦的に笑う。弱った敵を倒すのは面白くもなんともないが、闘志漲る強敵が相手でなければ張り合いがない。

 

「弁慶、慌ててとちるなよ。機体の性能ならこっちが上だろうが、それで油断できる相手じゃないぜ」

 

「俺にも相手がヤバいってことくらいは分かるさ。鬼の親玉だってのを抜きにしても、決死の覚悟を固めてきているのが分かる」

 

「分かっているんなら上等だ。リョウ! ここらで鬼退治といこうぜ。ゲッター線を狙った事を後悔させながらな」

 

「よぉし、百鬼帝国ブライ大帝、ゲッターチームと真ゲッターロボが引導を渡してやるぞ!!」

 

「ほざけ! 百鬼メカの粋を凝らして完成したこの合体百鬼ロボットで、ゲッターロボなど跡形もなく破壊してくれるぞ!」

 

 科学要塞島の甲板を蹴り、黒い翼を広げて甲板ギリギリを低速飛行する真ゲッター1に向けて、完全合体百鬼ロボットを構成するメカ十方鬼の口から緑色の火炎が放射される。

 

「この程度で俺達を止められるものか!」

 

 ゲッタートマホークの一閃で火炎を切り裂く真ゲッター1の進撃は、わずかも遅くならない。

 その予測進路に向けて、メカ闇虫鬼とメカ輪魔鬼がミサイルの雨を降らせて牽制し、メカ雷電鬼の雷の槍、メカ雷獣鬼の高圧電流が本命として襲い掛かる。

 広範囲に及ぶ完全合体百鬼ロボットの攻撃に対し、真ゲッター1は慣性の法則を無視した直角機動を複数回描き、空中にゲッター線の幾何学模様を描いて完全合体百鬼ロボットへ肉薄。

 

「ゲッタートマホーク!!」

 

 大上段に振りかぶられるゲッタートマホークをメカ輪魔鬼の頭部に生えるドリルが迎え撃ち、凄まじい勢いで火花が舞い散り出す。

 

「おおおおお!!」

 

「鬼の底力を舐めるでないわああ!」

 

 真ゲッター1と完全合体百鬼ロボットが熾烈な戦いを始める中、妖魔帝国もまた本来の怨敵ライディーンの出現によって、巨烈兄弟とプリンスシャーキン達が本腰を入れて戦いを開始している。

 バラオは相変わらず次元将ヴァイシュラバと一進一退の激闘を繰り広げているが、ここにライディーンが加われば一気に戦いの趨勢が変わるのは明白。

 巨烈兄弟は死に物狂いでライディーンとサイコザマンダー二機、ザマンダーらを援護するグルンガスト改二機、アルビオン隊、バーニィ、クリスに抗っていた。

 

 ガンテ、メカガンテに対してアルビオンとデルフィニウム、クレヴェナール、ザク50の大火力が降り注ぎ、ギルドラゴンとギル・ベイダー軍団の攻撃と相まって、見る見るうちに岩石と金属の巨大な『手』達は墜落して海の藻屑になっている。

 モンシアとベイトのテルティウムが化石獣と巨烈獣を押し留め、キースとアデルのジークフリートがその高い攻撃力で確実に一体ずつ敵を仕留め、バニングが的確に指示を出して小隊の戦闘能力を底上げする。

 ジェスとミーナのグルンガスト改は超闘士としての力を存分に振るい、不死身の第四小隊と連携しながら巨烈獣バイデン、モンギー、スネーカー、合体巨烈獣ガードン、ギルモラーを相手取って、ライディーン達が巨烈兄弟との戦いに集中できるように支援している。

 

 豪雷巨烈は自ら志願して妖魔の雷に打たれることで巨烈獣バンガーへと変身し、激怒巨烈は最後の激怒巨烈獣ゴースタンに専用の指令船をドッキングさせた状態で出撃していた。

 残る全ての資材と妖力を用いて化石獣、巨烈獣を作成し、自らも巨烈獣に変え、前線に出る覚悟を固めた巨烈兄弟の気迫はライディーンが強く警戒を示すほどだった。そして彼らの戦いにはギルディーンを駆るシャーキンも割って入ってきた。

 

「ライディーンを倒すのにバラオ様のお手を煩わせるまでもない。弟よ、この戦いばかりはどちらの手柄などといがみ合ってはいられん。分かっているな?」

 

「応ともよ。兄者、一万二千年の時を越えてムー帝国の守護神に巨烈兄弟の恐ろしさを叩き込んでやろうぞ。がっはっはっはっは、我ら兄弟が力を合わせて、ライディーンを倒せぬ道理があるものか」

 

 窮地に陥った巨烈兄弟からは普段の喧嘩腰は鳴りを潜め、お互いに協力して戦う姿勢で挑んでくる中、シャーキンはギルディーンの右腕からゴッド・ブレイカーモドキのギルソードを展開し、既にライディーンに斬りかかっていた。

 ただしそれを横から受け止めたのは、晶のサイコザマンダーだ。同じくサイコ・ブレイカーの刃を展開し、銀色の刃が交錯する。

 

「貴様は『神鳥の巫女』か! そこをどけ、私が用があるのはライディーン、そしてひびき洸の方なのだ!」

 

「ど、どかない! どきません! あなたには話をしないといけない事があるんです!!」

 

「ほざけ。この念動力、そしてライディーンを動かした事から、お前もまたムー王家の血を引くのだろうが、ならばこそバラオ様の大望を果たす為、ここで討たねばなら……」

 

「私の、話を、聞いてください! お、おじ、シャーキン伯父さん!!」

 

「…………は?」

 

 シャーキンが世迷言と切って捨てられなかったのは、先程、彼が口にした通り晶がムー王家の血を引いており、また直接対面した時にどこかで見た覚えのある顔立ちをしていた事、溺愛する実弟アズナルの行方が知れていない事が脳裏をよぎったからだ。

 それらの事実が組み合わさり、ある可能性が『伯父さん』呼びによって芽生えてしまい、シャーキンが刹那の間に戦意をまるっと戸惑いに変化させる。

 

 明らかに戸惑いを見せるシャーキンとギルディーンに向けて、晶もまた攻撃を控えて説得を始める。

 既にシャーキンは魂をバラオに売った悪魔人だ。その彼がバラオに反旗を翻すとは考え難いが、何も知らないまま戦い続けるよりはいいと晶は考え、玲子や洸とも相談して決めた事だった。

 巨烈兄弟からするとなぜかシャーキンが動きを止めたわけだが、その代わりに敵のサイコザマンダーも動きを止めているから、まあよしといったところ。本命のライディーンと麗のサイコザマンダー、神宮寺の魔改造ブルーガーへと狙いを変えて、バンガーとゴースタンの攻撃が再開されるのだった。

 

 キャンベル、ボアザン、バーム、ガイゾックとの決着を果たしたスーパーロボット組は、今回の戦いで劣勢な味方のサポートをしつつ、その戦闘能力をいかんなく発揮している。

 特にセプタギンアクシズとの戦いで敗北後、DCに回収され、キャンベル星からのデータ提供の甲斐もあって、無事に復帰したガルーダはBB(ブラックビッグ)ガルーダやグレイドン、デモン部隊と共に南原コネクション預かりとなっている。

 

「敗者の定めとはいえ今度はお前達と肩を並べて、こやつらと戦うことになるとはな。皮肉としか言いようがない」

 

 BBガルーダの大鎌を振るって、襲い掛かってきた量産型オベリウスの首を跳ね飛ばし、ガルーダは自らの数奇な運命に対して溜息を零した。

 人造物である自分に運命があるのかは分からないが、かつてはオレアナ配下として戦い、今はDC側として地下勢力と戦っているのだから、運命の流転は予測のしようがないものである。

 

「文句言うなって。あの時の決闘でおれ達が勝ったんだからさ。それにキャンベル星の人達にお前を引き渡さずに済むように、色んな人が骨を折ってくれたんだぜ?」

 

 BBガルーダと肩を並べて戦うコンバトラーV6の豹馬からの通信に、ガルーダは憮然とした表情で答える。理屈は分かっているが、これでいいものかと悩むくらいは許せ、という顔だ。

 

「分かっている。だが、お前達にとって私は憎きオレアナの手先だろう。離反したとはいえ私がオレアナの尖兵として地球人に攻撃を仕掛けた事実は変わらん」

 

「この部隊には元は敵だった奴なんてたくさんいる。それに少しは気が咎めているんだったら、これからたくさん地球とコロニーの人達の為に戦えば、お前を責める声は小さくなるってもんだ」

 

「地球人が私を責めるのは正当な権利だろう。別に気にもせんが」

 

「へ、それだけ減らず口が叩けるんならなにも心配する事はねえな! ヘマをして撃墜されるなよ!」

 

 勢いを増して敵の戦列に突っ込んでゆくコンバトラーV6とBBガルーダだが、彼らのような関係は他にもダイモスの一矢とハレック、リヒテルが挙げられるだろう。

 小バーム攻略時に手に入ったゴッドアーモンに乗り換えたリヒテルは、オルバンから解放した小バームと意識を取り戻した父リオン大元帥を和平派のバーム星人達と派遣された地球連邦艦隊に任せ、DCの一員として現在も活動中なのであった。

 

 地球圏最強の攻撃力と突破力を誇るDCの参戦により、地下勢力側の戦列は乱れに乱れ、見る見るうちに各勢力の首領のところまで到達して行っている。まあ、元からアークセイバーにだいぶ切り込まれてはいたので、DCが来なくても時間の問題だったかもしれないが。

 そんな状況を打開するべくミケーネ七大将軍の生き残りのスカラベス、アンゴラス、ドレイドウは配下の戦闘獣軍団を引き連れて、玉砕覚悟の特攻を仕掛けていた。

 ターゲットはタルタロスの直衛として後方に残っているヴァルシオー。DCの主力であるスーパーロボットや超高性能リアルロボット部隊が最前線で暴れている分、艦隊を守る直衛機の数は少ない。

 そこに一縷の望みを託して、三将軍は生きて帰る事を諦めた突撃を敢行したのだ。

 

 爬虫類、魚、昆虫の形状をした戦闘獣の群れ達はオリジナル、量産型のどちらとも指揮官の心意気を汲み、被弾を恐れずしゃにむにヴァルシオーを目指して進んでゆく。

 ヘイデスが自らを囮にした効果が無事に発揮されたわけだが、ヘイデスとしては安全だと分かっていても、殺意を剥き出しにして近づいてくる異形の津波には顔を引き攣らせていた。

 

「ひえええ、こりゃとんでもない迫力だ。こんなのと戦えるんだから、皆の勇気は凄いな」

 

 ヘイデスはパイロットとしては水準に届くかどうかだが、遠隔操作するゼファーのお陰でヴァルシオーはOGシリーズのフェアリオンのように一流パイロットの動きを見せる。

 合計四門のクロスマッシャーは最大効率で敵機を撃墜できる射線を選んで発射され、戦艦の主砲が霞む光の螺旋は多数の敵機を消滅させた。

 戦闘参加回数の少なさから、ヴァルシオーの詳細なデータを知らなかった三将軍達にとって、初手から見せたヴァルシオーの砲撃能力は作戦の失敗が脳裏をよぎる威力だった。

 ヴァルシオーの護衛に派遣されたレオンとルビーも初めて直に見るヴァルシオーの火力に呆気にとられるが、彼女達を更に呆れさせたのは今回、初めてお披露目となったメガ・ギルギルギルガンとドラ・ミレニウムだった。

 

プロテクト・プロテクター(ギュオオオオオオオ)!!」

 

 人工知性の発する叫びと共にドラ・ミレニウムの左腕のDECが六枚の板状に変形して直立すると、より強固に出力されたDフォルトが広域に展開され、やけ気味に戦闘獣軍団の発射した破壊光線を受け止める。

 ガオガイガーのプロテクト・シェードを模した月龍の装備を疑似再現したバリアだ。降り注ぐ攻撃の隙間を縫い、今度はドラ・ミレニウムの右腕から六基のユニットが剥離し、高速回転を始める。

 

ブロウクン・ブレイカー(グオオオオンンンン)!!」

 

 強力な次元力を待ったブロウクン・ブレイカーが発射される。グレートマジンガーのドリルプレッシャーパンチに似た一撃だが、グレートマジンガーの五倍近い大きさのドラ・ミレニウムが使うとなると、そのインパクトも質量もより大きい。

 咄嗟に盾や武器を構えて防御態勢を取れた戦闘獣はまだいい方で、ほとんどの戦闘獣はミキサーにかけられたようにグズグズに引きちぎられ、撃ち抜かれていった。

 

 防御態勢を取った機体も両腕を砕かれるか、半身を抉られるなどほとんど致命傷に近いダメージを受けており、どの機体の人面にも死相がはっきりと浮かび上がっている。

 提灯代わりに人面を垂らしたチョウチンアンコウの魚人のようなアンゴラスは、強いて言えばオレンジ色のカブトムシのような頭部を持つスカラベスと共に腹心の戦闘獣達を従え、ドラ・ミレニウムの下方から弧を描いてヴァルシオーを真下から狙った。

 

「ヘイデス・プルート、薄汚い商人め、魔魚将軍アンゴラスの意地を見よ!」

 

「同じく大昆虫将軍スカラベス! のこのこと戦場に出てきた事を後悔させてやるぞ!」

 

 タルタロスの対空砲火に晒されて、一体また一体と配下が撃ち落とされる中、自らも被弾しつつ二人の将軍の動きは止まらない。ゼファーがヴァルシオーに断空剣ベースのディバイン・キャリバーを展開し、接近戦に備える。

 ヘイデスはアンゴラスの薄汚い商人呼ばわりは心外だったようで、誰に聞かせるでもなく愚痴を零す。少しは戦場に慣れたのか、これくらいの精神的余裕はあるらしい。

 

「薄汚い商人とは失礼な。正義の味方のスポンサーと呼んでいただきたいものです」

 

 サブシートで大人しく愚痴を零しているスポンサーに代わり、不届き者に鉄槌を下したのは側に控える鋼鉄の魔獣メガ・ギルギルギルガンだった。

 二つの頭部が同時に大音量の叫びをあげるのと同時にギルギルガン第三形態よりも更に巨大化した百メートル超の巨体から、超重力の衝撃波が放射される。オリジナルのメカギルギルガンに装備されていたメガグラビトンウェーブだ。

 指向性の重力衝撃波を備えなく食らったアンゴラスとスカラベスは、全身を見えない重力の衝撃波によって強烈に打たれ、二十メートル超の機体のそこかしこに亀裂が走り、神経代わりのケーブルや血液代わりのオイルが溢れ出す。

 

「が、は!? こ、これは重力、か?」

 

「ぎえええ、こ、このようなやつ、が」

 

 一撃で死に体となったアンゴラスとスカラベスだったが、伴ってきた戦闘獣達が耐え切れずに圧壊してしまったのに比べれば、幹部格としての面子を保った方だろう。

 もはや戦闘不能と言ってもいい二体の将軍に対し、メガ・ギルギルギルガンは容赦がなかった。原作アニメではビューナスAの光子力ビームによって倒されたアンゴラスには、メガ・ギルギルギルガンの四つの目から発射された超破壊光線が直撃し、明確に倒された描写の無いままフェードアウトしたスカラベスには、急接近してからのアイアンクロー四連撃を見舞って、子供の玩具にされた虫のようにバラバラにしてのけた。

 

「ガオオオオン!」

 

 メガ・ギルギルギルガンはひとまず自分の仕事を果たし、一時の勝利を告げる雄たけびを上げる。

 中性子爆弾を内蔵していたバルマー時代と比べ、爆弾としての機能を撤去して、自立機動兵器としての性能を追求した改造を受けたメガ・ギルギルギルガンは、短期間での間に合わせ改造の割には驚異的なパワーアップを経ているのだった。

 外伝的な作品でならラスボスの座に据えてもよさそうな具合だから、色々とひどい。ひどいが、これはメガ・ギルギルギルガンに限らずドラ・ミレニウムにしても同じ話だから、更にひどい。結論から言うと敵対勢力からすると、プルート財閥は“ひどい”のだ。

 

「うーむ、これは、僕も関わっているとはいえ、なかなかにひどいのでは?」

 

 ヘイデスもそう言って思わず苦笑するくらいの呆気なさであった。

 二人の同僚があっさりと死んだ光景を目の当たりにしたドレイドウも、この時、同じ運命を辿っていた。

 メガ・ギルギルギルガンとドラ・ミレニウムによって、特攻部隊のほとんどが壊滅するのをゼロ・システムによって把握したゼファーが、遠慮なくヴァルシオーの武装を解禁した。

 使い捨ての機械獣を盾代わりに前面に立たせ、爬虫類型の戦闘獣軍団を率いて突っ込んだドレイドウに対し、ヴァルシオーは両手甲部のサンダーブレーク、バインダーの光子力ビーム合わせ十六門、額のゲッタービームを連続して叩き込んだのである。

 

「お、おのれえええ……あ、あの時、デスザウラーが姿を見せたあの時、この命に代えてでも貴様を抹殺、するべき、だっ……た……」

 

 今となってはどうしようもない悔恨の言葉を発しながら、ドレイドウは電撃と光子力とゲッター線の入り混じる光の奔流の中で消滅していった。

 七大将軍全滅の事実にデモニカの一隻を足場にしていた暗黒大将軍は沈痛な面持ちを浮かべたが、それもグレートマジンガーの振り上げたマジンガーブレードの一閃によって、断ち切られた。

 

「戦闘中に余計な考えをする余裕があるのか、暗黒大将軍!」

 

「剣鉄也!」

 

 咄嗟にダークサーベルで受け止めるが、グレートブースターを装備して出力を上げ、光子力反応炉と超合金NZαへ換装し、根本的な戦闘能力を底上げしたグレートマジンガーのパワーは想定のはるか上を行った。

 加えて力を蓄えるという大義名分のもと、戦力の補強に務めるばかりで実戦を積み重ねていなかった地下勢力側に対し、常に数で上回り、質は……ムチャクチャな敵勢力を相手に戦い続けてきた鉄也とでは戦闘技術に差が生じるのが道理であった。

 鍔迫り合いの体勢からグレートマジンガーの右つま先で暗黒大将軍の顎下を容赦なく蹴り飛ばし、そこから機体をぐるりと回転させたグレートマジンガーの横蹴りが胸部の顔面に叩き込まれる。

 砕けた歯と血反吐を吐きながら吹き飛ぶ暗黒大将軍に向けて、グレートマジンガーの胸部が朱色に輝きを発し、ブレストバーンが容赦なく放たれる!

 

「ええい、この程度!」

 

 暗黒大将軍はバク転の連続でブレストバーンを回避するが、足場となっていたデモニカは避ける術も防ぐ術もなく、重厚なはずの装甲が一瞬で融解し、ブレストバーンの熱線が甲板から船底まであっさりと突き抜ける。

 ブレストバーンはそのまま振り上げられ、デモニカの三分の二を融解・両断してしまう。暗黒大将軍は貴重な無敵要塞が失われた事実よりも、はるかに強力になったグレートマジンガーの脅威に対する畏怖の方が強い。

 

「やってくれるわ、グレートマジンガー!」

 

「ふ、貴様の顔もいい加減見飽きてきたところだ。貴様もそうだろう? 今日でお互い、本当に終わりにしようぜ!」

 

「大言を吐くか。偉大なる勇者よ、魔神よ! 暗黒大将軍の名誉と誇りにかけて、貴様はここで討つ!!」

 

 グレートマジンガーがマジンガーブレードを右上段に構え、前傾姿勢を取る。暗黒大将軍はダークサーベルの切っ先を左下段後方に流し、空中で腰を落とす。これまでのような熾烈な激戦ではない。

 刹那で決着となる戦いだと、全身全霊を一瞬に注ぎ込む戦いだと、二人ともが理解していた。グレートブースターが火を噴き、暗黒大将軍の全身が黒い疾風となって駆ける。

 

「おおおお!!!」

 

 鉄也の叫びが、気迫が、闘志がグレートマジンガーを通じて刃に宿る。

 

「でやああああ!」

 

 もはや軍団の敗北を半ば悟りながら、暗黒大将軍は一人の武人としての意地を貫くべく、ダークサーベルの切っ先にまで“意”を通す。

 風が吹くのを恐れるような緊迫感がさく裂し、両者の機体が互いの傍らを駆け抜けた。直後、グレートマジンガーの右脇腹に芸術的なまでの斬撃痕が刻まれ、光子力エネルギーが漏れ出す。

 虚空に膝を突くグレートマジンガーの背に向けて、暗黒大将軍は背を向けたまま声を掛けた。

 

「み、見事、だ。もはや敗北を認める以外にあるまい」

 

 暗黒大将軍の胸部の顔がゴボっと大量の血を吐いた。彼の腹部は深々と切り裂かれ、背骨にまで斬撃は達し、即座に絶命してもおかしくない傷だ。

 

「暗黒大将軍……お前は」

 

「ふ、ふふ、ははは……はーはっはっは! 剣鉄也、グレートマジンガー、偉大なる勇者よ! 素晴らしき戦士よ、一足先に地獄で待っているぞ。

 おお、闇の帝王よ、不甲斐なき我が身をどうかお許しあれ! 地獄の業火の中で貴方様の勝利を見届けましょう……グワアアアーー!!!」

 

 腹部の裂け目が広がり、真っ二つになった暗黒大将軍の体が重力に引かれて落下し始め、その途中で大爆発を起こして消えていった。

 鉄也はパリでの決戦以来、何度も戦ってきた強敵の最後を、敬意をもって見届けた。

 

「お前の強さと気高さを俺は生涯忘れないだろう。まだ行けるな、グレート。暗黒大将軍、悪いが闇の帝王も俺達が倒す。ミケーネ帝国は今日で終わりだ!!」

 

<続>

 

◎ドラ・ミレニウムとメガ・ギルギルギルガンは乗り換え可能。パイロットを乗せるとAIはサブパイロットになります。

 




ステージクリア後、メガ・ギルギルギルガンとドラ・ミレニウムが入手できます。
条件は本ステージにヘイデスをサブパイロットにしてヴァルシオーを出撃させる事。


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第百二十三話 スピンオフ作品でいいのか?

 有体に言って地下勢力の同盟軍は追い詰められていた。

 リモネシア共和国軍、地球連邦軍、DCの三つが合わさった戦力は数も質も全てが太陽系どころか、この天の川銀河最高水準に達している。

 かつて南極に不時着して氷の中に埋もれていた巨大円盤を発掘し、戦力として運用しているユラーも、異星で開発された巨大兵器を用いても、こうまで一方的に追い込まれる現状に苦々しい思いを腹がはちきれんばかりに味わっている。

 

 デススティンガー、マリンスティンガー部隊、ガンダムチーム、コロニーのガンダム部隊、更にアークセイバーの内、ルビー、アメジスト、アンバーをモチーフにした機体の集中砲火を浴びて、巨大円盤を守っていたバリアも破られてしまった。

 ユラーは科学要塞島に匹敵するキロメートル単位の巨大な甲板へ移動し、そこで巨大円盤に自分を強化するように命令を発する。一度それを行えば、もう二度とは元に戻れない諸刃の剣だ。

 無敵戦艦ダイ艦隊やメカザウルス部隊は予想を大きく上回る被害を受けており、この巨大円盤もこのままでは撃墜されるのも時間の問題とあっては、他に打つ手があるわけもなく……。

 

「よくもこの大魔人ユラーを追い詰めた、人間共! いいだろう、このユラーも決死の覚悟を持って貴様らとの戦いに臨んでやろう!!」

 

 甲板の中心部に出たユラーを囲む四基のメーザー砲のような装置から稲妻のような光線が発射され、見る間にユラーが巨大化して行く。元々帝王ゴールを上回る巨躯だったユラーは見る間に百五十メートルを超えていった。

 頭部の左右から伸びる巨大な角、全身を覆い隠すマントに右手に握る大剣もそのまま巨大化しており、真ゲッター1や真ゲッタードラゴンの三倍近い巨躯には溢れんばかりのパワーが漲っている。

 

「それがお前の切り札か、ユラー!」

 

 飛び降りながら巨大ユラーへと長柄のゲッタートマホークを叩きつけたのは、達人・ミチル・武蔵の真ゲッタードラゴンだ。大剣でゲッタートマホークを受け止めた巨大ユラーは、真ゲッタードラゴンを睨み返しながら叫ぶ。

 

「新たなゲッターか! 我が尖兵たる恐竜帝国を退け、このユラーの野望を妨げた最大の障害の眷属が!! この巨大円盤の力によって進化したマグマの支配者の力をその身で味わうがいい!」

 

「恐竜帝国を操り、ゲッター線を敵視し、地上を征服しようとしたこと! 絶対に許さん! ミチル、武蔵君、ぼく達でユラーを倒すぞ!」

 

「ええ、思い切りやって、兄さん!」

 

「よっしゃあ! ゲッターもやる気満々だぜ! ブライはリョウ達が倒してくれる。だったらおいら達でユラーを倒さなくっちゃな!」

 

 本来なら恐竜帝国との戦いで命を落としていた達人と武蔵の気合に呼応するように、あるいは恐竜帝国との悪縁を断てとゲッター線が励ましているかのように、真ゲッタードラゴンのパワーが増して行く。

 

「ゲッター線を遮断するバリアは破られたが、巨大化し、更なる力を得た今、ゲッターロボなど!」

 

 原作OVAでは巨大円盤はゲッター線をカットし、わざと侵入させた真ゲッターロボを巨大ゴールが圧倒したが、今回の戦いでは力づくでバリアを破られた事もあり、圧倒的な地の利を得られていないのが、巨大ユラーの状況だ。

 巨大ゴールと真ゲッターロボとの戦いに比べれば、同じ条件下での戦いと言っていいだろう。撃墜されたメカザウルスの肉片や破片が舞い散る中、真ゲッタードラゴンと巨大ユラーの戦いの火蓋は切って落とされるのだった。

 巨大ユラーが全力で大剣を振り抜き、その勢いで後方に吹き飛ぶ真ゲッタードラゴンはその額からゲッター線の奔流を放つ。

 

「ゲッタァアアビイィィウウム!!」

 

 量産型ゲッタードラゴンとは比較にならない威力のゲッタービームに対し、巨大ユラーもまた側頭部の角から真っ黒い雷のようなエネルギーを放出して迎え撃つ。

 

「マグマの支配者を舐ぁめぅうるな!」

 

 激突した二種のエネルギーから発せられる余波によって、巨大円盤の甲板が次々と壊れて行く。図らずも両者の保有するエネルギーが膨大だからこそ起きた現象だ。

 

「ミチル!」

 

「ええ、スピードで撹乱するわ! ドリルアーム!」

 

 真ゲッタードラゴンのコントロールが達人からミチルに移ると、機体の背中にドラム缶のような巨大ブースターが二基増え、右手首から先が金色のドリルに、左手首からは何枚もの刃がドリルのように重なって飛び出す。

 音よりも速く、風よりも速く、疾風にして烈風となり、真ゲッタードラゴンの赤い巨躯が甲板の上を駆け出し、巨大ユラーの視界から刹那で姿を消す。

 

「!? 機体の一部を変形させただけで」

 

 ゲッター2、ゲッターライガーとは別次元のスピードに巨大ユラーの反応は追いつかず、周囲を駆け抜ける第二のゲッター線の申し子の攻撃を避ける事も防御する事も出来ない。

 

「これ以上、お父さんが戦いの為のゲッターを作らずに済むように! ここで、貴方を倒します!」

 

 巨大ユラーの左肩を、背中を、腹を次々とドリルの先端が抉り、刃の切っ先が切り裂き、血しぶきが舞った。

 だが仮にも一勢力の主たる巨大ユラーはすぐに平静を取り戻すと、強力な超能力によって周囲の空間にマグマを生み出し、甲板全域に届くマグマの雨として降らせる。

 どれだけ超スピードを誇示していたとしても、点で捕らえられないのなら面で攻撃すればいい。地球側でも対処法の一つとして知られているソレを、巨大ユラーは的確に行った。

 

「武蔵君!」

 

「おう! マグマの雨がなんだ! ゲッターもおいら達もそんなもんに負けるほどヤワじゃねえ!!」

 

 背中のブースターが収納され、両手のドリルと刃が再び収納されると代わりに飛び出てきたのはゲッターポセイドンの頭部を模した送風機だ。

 武蔵がコントロールするポセイドンモードの両手首からマグマの雨へと向けて、出力・射程を大幅に強化されたゲッターサイクロンが放たれる!

 

「おりゃおりゃおりゃ!!」

 

 巨大円盤の甲板から空へと向けて二つのゲッターサイクロンが縦横無尽に振り回されれば、その勢いでマグマの雨は全て巨大円盤の外へと吹き飛ばされていった。

 

「ぐおおおおお!!」

 

 巨大ユラーはそれに驚くような間抜けは晒さず、両手で握り右上段に振り上げた大剣にマグマを纏わせて、真ゲッタードラゴンを斬りながら焼く腹積もりだ。

 

「わざわざそっちから来なくても、こっちから招いてやるぜ。フィンガーネット!!」

 

 ゲッターポセイドンの頭部パーツが引き込み、元の手首が飛び出ると指先から投網のようなフィンガーネットが勢いよく射出て空中で広がり、巨大ユラーを捕らえようとする。

 

「小癪なあ!」

 

 巨大ユラーがマグマ大剣を一閃し、フィンガーネットは断ち切られないまでも弾き飛ばされる。そう甘くはないか、と武蔵は舌打ちしながらフィンガーネットを指に回収するとコントロールを達人へ!

 

「ゲッタートマホーク、ゲッタービームランチャー!」

 

「ゲッターらしく三つに切り裂いてやろう!」

 

 

 ゴッドバードによってバンガーが、加勢したファイナルダンクーガ、デザイアによってゴースタンが倒された時、バラオは次元将ガイオウとの戦いに追われ、並みの巨烈獣百体分の戦闘能力を誇る妖魔巨烈獣バラゴーンを復活させる余裕がなかった。

 代わりに事前にバラオから髪と爪を預かっていたベロスタンが自らの命と、妖魔族一万二千年の呪いを込め、巨烈兄弟の怨念を付け加える形でなんとか溶岩の中から復活させることに成功した。

 

 ワーバラオの助力はなかったが、ベロスタンが全魔力と生命を捧げ、原作通りに、これまでのスパロボ通りに妖魔帝国の守り竜バラゴーンが戦場に出現している。

 即座にライディーン、サイコザマンダー、ブルーガー、ファイナルダンクーガ、デザイアとの交戦が始まり、バラゴーンの撒き散らす怨念が戦場に広がっている。

 だがオカルト路線はDCの面子はとっくに慣れ切っている。野生の勘で目の前の四つも首を生やした化け物をバラオに次ぐ脅威とみなし、獣戦機隊は即座に全力で攻撃を加えていた。

 復活直後でまだ動きの鈍いバラゴーンへと向けて、デザイアのビームキャノンが、ファイナルダンクーガの複数の砲口が向けられる。

 

「お前ら、驚いてねえでぶちかますぞ! 復活したばっかだってんなら、まだ本調子じゃねえ筈だ!」

 

「! 流石忍さん。野生の勘は鋭いな!」

 

 忍の一喝で洸はバラゴーンの妖気に当てられていた状態から復帰し、ライディーン共々全身に念動力を満たして行く。

 死んだばかりの豪雷巨烈、激怒巨烈の首は耳を塞ぎたくなる怨嗟の声を発し、竜の下半身はチロチロと牙の間から炎を零して、目の前のライディーンを威嚇していた。

 その警戒を露にするバラゴーンの姿に、シャピロは嘲笑を零す。

 

「馬鹿が。そんな暇があるのならさっさと攻撃するべきだ。このようにな!」

 

 デザイアのビームキャノン、ファイナルダンクーガのファイナル断空砲、明日香麗のサイコザマンダーとライディーンの合体ゴッドアルファが容赦なくバラゴーンを襲った。

 甲冑を纏った騎士のような上半身の胸が弾け飛び、巨烈兄弟の首が念動光線によって千切れ、竜の下半身は砲撃の嵐によってズタズタに引き裂かれ、あちこちに穴が開く。

 

「洸、一気に仕留めるぞ!」

 

「合わせます! いくぞ、ライディーン! ムー帝国の敵討ち、まずはその一つを果たすんだ!」

 

 一気に空中で飛び上がったファイナルダンクーガが断空剣を、ライディーンがエネルギーカッターを落下しながら振り下ろし、バラゴーンの体を上から見るとX字になるように斬り裂いた。

 

「グオォオガアァオオアオア!?」

 

 バラゴーンの残る二つの首が悲鳴を上げる中、洸は至近距離から止めを刺すべく猛攻を重ねる。

 

「まだバラオが残っているんだ。お前程度に構っていられるか!!」

 

 ボロボロのバラゴーンに向けてゴッドプレッシャー、ゴッドミサイルが立て続けに命中し、エネルギーカッターとゴーガンソードの即席二刀流で次々と解体して行く。

 原作ではライディーンを追い詰めた強敵だが、わざわざ見せ場を与える必要も義理もないこの世界の洸にとって、目の前の怪物はバラオの前の障害の一つに過ぎない。

 痙攣する事しかできないバラゴーンに対して、ライディーンは止めを刺すべくゴッドバードへと変形し、妖魔帝国の守り竜の胴体を容赦なくぶち抜いていった。

 

「このまま、バラオを、叩く!」

 

 洸の目は既に倒したバラゴーンのことなど眼中になく、バラオに狙いを定めていた。

 洸の意図を察したアムロ、クワトロ、カミーユ、ジュドー、シーブックらが精密極まりない援護射撃で妖魔獣と巨烈獣を撃ち落とし、ゴッドバードの進路を確保する。

 念動力のエネルギーを迸らせるゴッドバードを止める者はなく、バラオが気付いた時には既に魔力のバリアを展開するのも間に合わない距離だ。

 

「バラゴーンをもう倒したのか!?」

 

「バラオ、覚悟ぉおお!!」

 

「ええい!!」

 

 バラオは咄嗟にカタナをゴッドバード目掛けて振り下ろしたが、その腕を次元将ガイオウの蹴りが弾き飛ばす。

 

「おっと、そうはさせねえよ!」

 

「貴様ああ!!」

 

「俺はてめえの敵だぜ? 邪魔するに決まってんだろうがよ!」

 

 そしてゴッドバードの嘴がバラオの胴体に突き刺さり、その勢いは少しも衰える事無く一気に背中まで貫いていった。

 

「はあああああーーーー!」

 

「グワアアアアアアアア!?」

 

 バラオは腹に開いた穴を忌々し気に見つめてから背後のライディーンを振り返って、怒号を発する。たった今生まれたばかりの新しい憎悪と恨みが籠った叫びの力強さに、洸はバラオがまだまだ戦えるのを理解する。

 

「この程度で我を倒せると思うな、ライディーン! ムー帝国の守護神よ、ラ・ムーの末裔よ!!」

 

 バラオの腹に空いた穴が蠢き、新たな肉が生まれて見る間に埋まってゆく。

 ガイオウとの戦闘での消耗し、地球規模の結界で魔力を抑え込まれているが、この戦場で散った化石獣や巨烈獣、更にはメカザウルス、戦闘獣達の怨念を吸収して補填しているのだ。

 まだまだ戦意猛々しいバラオを前にライディーンの双眸が輝き、封印していた最強の武装を解除される。コックピットの洸の心に、その武装の名前が伝わる。

 

「ライディーンは我の作り上げた希望……勇者よ。我、ラ・ムーの力、汝と汝が守るべき者達のため、今こそ解放する。『ゴッドボイス』……声を上げれば胸が鳴る。

 ラ・ムーの名を唱えて叫べ……忘れることなかれ、ゴッドボイスは諸刃の剣。しかし、汝らの運命を切り開く術となるであろう。絶望を払う希望となるのだ。ひびき洸!」

 

「ゴッド……ボイス……。この声、ずっとライディーンの声だと思っていたけれど、ひょっとして、おじいさん?」

 

 バラオはその強大なる魔力と感覚を持って、ライディーンの解放した“力”の凄まじさを正確に察知し、宿敵の因縁であるのも加えて、標的を次元将ガイオウから全ての封印を解除したライディーンへと変えた。

 ガイオウはここまで来たなら、自分が手を出す段階ではないとバラオの相手を完全にライディーンに委ねた。DCが到着したのもあり、ガイオウは周囲の雑兵の掃討へと目的を変える。

 

 一方、グラーの乗り込む完全合体百鬼ロボットは離反した鉄甲鬼たちを相手に戦っていた。パイロットとしての技量は乏しいが、技術者として機体の事はブライよりもはるかに理解していたから、上手く性能を引き出して立ち回っている。

 ただ、それも強化された機体を操る鉄甲鬼、白骨鬼、地虫鬼、胡蝶鬼四名を相手にして、いつまでも維持できるものではない。

 

「くく、これだけの機体を作る才能がある若者が離反してはな」

 

 離反した四名の中でグラーは地虫鬼に目をかけ、また戦士としても技術者としても優秀だった弟子の鉄甲鬼を高く評価していた。

 ヒドラーの失態や百鬼帝国内部の問題によって離反した白骨鬼と胡蝶鬼についても、惜しむ気持ちはあるが前者の二人の方がはるかに比重は重い。

 

「グラー博士! どうか降伏してください。鬼であってもきちんと捕虜として扱われます! それにお世話になったグラー博士には、生きていて欲しいんです」

 

 地虫鬼の涙声の懇願に対し、グラーは大きく笑って答える。覚悟を決めた者の潔さ。それを感じさせる笑い声だった。

 

「ハハハハハ! 地虫鬼、お前は才気に溢れた少年だったが、その甘さばかりは百鬼帝国に相応しくなかったな。恩師といえども敵とあらば躊躇なく殺す。それが鬼に必要な心だ!」

 

「グラー博士……」

 

 思わず動きの止まる真メカ地虫鬼を庇い、真メカ鉄甲鬼が前に出る。

 グラーと師弟関係にあった鉄甲鬼もまた、師匠と戦場で相対するのに思うところはあるが、彼は百鬼帝国を離反した時から、こうなる可能性を考えて覚悟を固めていた。そこが地虫鬼との大きな違いだった。

 真ゲッターロボに並ぶ為、鉄甲鬼の持てる才能の全てを注いだ真メカ鉄甲鬼を目の当たりにして、グラーが思う事は二つ。

 なんと才能のある若者を失ってしまったのかという悔い、そしてそのキッカケとなったヒドラーへの怒りだ。

 

「素晴らしい機体だ。鉄甲鬼、お前に贈る言葉はそれだけだ」

 

「……残念です。グラー博士。こうなる前に人間と共存する道を模索できていれば」

 

「自分でも不可能だと思っている事を口にするものではないな、鉄甲鬼!」

 

 既に満身創痍だった完全合体百鬼ロボットの装甲各所が開き、多くのミサイルが尾を引きながら発射される。

 

「任せな、坊や達!」

 

「グラー博士、お覚悟!」

 

 師弟達の最後のやり取りを黙って見守っていた白骨鬼が動き、発射されたミサイルを両腕のガトリング砲で撃ち落とし、メカ胡蝶鬼は両腕のハサミから光の蝶を無数に放つ『蝶の舞』で援護に入る。

 センサーを撹乱しつつ攻撃を加える光の蝶の纏わりつかれて、大破状態の完全合体百鬼ロボットのそこかしこで爆発が生じて行く。

 

「グラー博士、せめておれの手で貴方を討つ。これが真メカ鉄甲鬼最強の武器“オーガブラスターノヴァ”だああ!!」

 

 真メカ鉄甲鬼の腹部の装甲が開き、そこから砲口が伸びて機体内部で増幅されたエネルギーの奔流が発射される。百鬼メカ由来の動力炉とゲッター線を合わせた超エネルギー砲は、傷ついた完全合体百鬼ロボットに耐えられるものではなかった。

 

「お、おおおおおお! は、はは、お前達が居るなら鬼も……」

 

 シャインスパークを超える武器として開発されたオーガブラスターノヴァは、その目標を超えた威力を発揮し、完全合体百鬼ロボットをパイロットごと跡形もなく消滅させる。

 最後にグラーは安堵したように笑っていたのを、鉄甲鬼も地虫鬼も知る術はなかった。

 唯一知るとすれば、オーガブラスターノヴァに含まれているゲッター線だけだろう。

 

 グラー博士がその生命を失った時、ブライもまた風前の灯火となっていた。

 変幻自在の攻撃を見せる真ゲッターロボに対し、完全合体百鬼ロボットを構成する六体の百鬼メカの武装で対応していたが、圧倒的な戦闘経験値を持つゲッターチームの対応力と柔軟な発想に、ブライの対処は追いつかなくなりつつあった。

 一度均衡が崩れれば、そこからの展開の変化は早い。元々、真ゲッターロボはDC所属のスーパーロボットの中でも最上位の攻撃力を誇る機体だ。決戦を意識しているゲッターチームの攻勢はいつもよりも苛烈だった。

 

「リョウ!」

 

 隼人と弁慶が同時に叫び、竜馬は行動でそれに応える。頭部、腹部、両腕部からゲッタービームを放ち、メカ輪魔鬼とメカ闇虫鬼の部分を一気に吹き飛ばす。

 

「ぐううう、まだまだ! 二機吹き飛ばされただけだ!!」

 

 残る十方鬼の目から怪光線と火炎を放ち、決して諦めないブライに対し、真ゲッター1は慣性の法則を無視する直線軌道でその背後から真上を取る。大きく振りかぶったゲッタートマホークを叩きつけ──

 

「オープン百鬼!」

 

 ──る寸前で残る四体の百鬼メカが分離して、ゲッタートマホークの一撃を回避するのに成功する。

 ゲッターロボを彷彿とさせる回避方法は竜馬達だからこそ驚きは大きかったが、それは彼らの心の内のみに留められた。

 完全合体百鬼ロボットの中核はメカ雷獣鬼とメカ十方鬼。

 冷静にそれを見極めたリョウは両腕のゲッターレザー、背中のゲッターバトルウイングを大きく展開し、その場で竜巻のように機体を旋回させる。

 

 オープン百鬼直後でまだ距離の離れていなかったのが仇となり、メカ甲角鬼、メカ雷電鬼が輪切りにされた。

 ブライ以外の百鬼メカはブライを庇う動作を見せており、竜馬の戦闘センスはそれを見逃さなかったのである。

 残るはメカ雷獣鬼とメカ十方鬼。ブライは二体の百鬼メカが破壊された隙を突き、再合体を試みていた。

 二機のパワーを合わせなければ、とてもではないが目の前のゲッターロボに対抗できるものではない。

 

「ええい、ならば二機だけでも!」

 

「遅い!! ストナアアアア!!!」

 

 真ゲッター1の緑色の部位が激しく輝き出し、機体内部から太陽のように苛烈なゲッター線の輝きが漏れ出す。そして腰だめに構えられた両手にゲッタービームとは比較にならないゲッター線が集中し、ゲッターエネルギーによる弾丸が形作られる。

 千分の一秒の世界で合体・分離の出来るゲッターチームに対し、コンピューター制御に任せているブライの練度は到底及ばず、合体を中止しての回避行動へ切り替える事は出来なかった。

 

「サンシャインンンン!!!」

 

 ゲッター線による太陽……まさにそう表現するべき超エネルギーの砲弾は合体直後の百鬼ロボットに命中し、解放されたゲッターエネルギーはそのままブライと百鬼ロボット、更に科学要塞島を飲み込んで破壊して行く。

 

「き、危険だ! ゲッター線は、かく、核以上の悲劇に、悲劇にな、なるぞおおお、ああああああ!?」

 

 暗黒大将軍、バラゴーン、グラー、ブライと立て続けに討たれる中、闇の帝王もまた順調……悲しいかな、順当に追い詰められていた。

 彼を狙うのは言わずもがなグレートマジンガーを筆頭にマジンカイザー、アルトアイゼン・ブルク、デメルング・ヴァイスリッター。更にアルフィミィ、KOS-MOS、T-elos、アシェル刃からなるアインストチームがフォローしている。

 

 闇の帝王が放つダークネスファイヤーや怪光線は一撃一撃が強力で、マジンカイザーやアルトアイゼン・ブルクでも直撃すれば、装甲が砕けぬまでも内部にダメージが通る威力だ。

 単独で戦いを仕掛けていたなら相応の苦戦を強いられていたが、準マジンカイザー級にパワーアップしているグレートマジンガーとマジンカイザー亜種二機とマジンカイザーの四機がかりではいくらなんでも相手が悪すぎる。

 

 このまま行けば勝てると人類側の誰もが確信しつつあったその時に、唐突に時空のひずみが生じ、戦場となった空間を大きく揺らした。

 化け物砲台としての仕事をこなしているヴァルシオーのコックピットで、ヘイデスはよもやこのタイミングで、そしてこのタイミングしかないとも思いながら口を開いた。

 

「これは……レムリア王女の言われた通り。そして、漫画のゴッドバードの通りか」

 

 となると、今のバラオを倒しても精神体としてのバラオが出てくるのは間違いない。

 ワーバラオがこの段階で動くかは不明だが、これでムー大陸に渡り、月のライディーンを手に入れられる可能性が出てきた。

 ムー大陸には真のライディーンの剣と盾がある。もう一体の“月の”ライディーンも極めて重要だが、洸の乗っている“太陽の”ライディーンの大幅な強化に繋がるし、更に行けばライディーンの最強形態に到達するかもしれない。

 

(ワーバラオはその性質上、極めて面倒な相手だから戦いたくないが、クォヴレーが居てアインストが味方してくれている今のうちに倒しておきたい相手でもある……)

 

 これまで計測した転移とは異なる空間の歪曲が急速に広がるのに、DCのメンバーはそれほど驚かなかった。

 事前にレムリアから別空間に転移したムー大陸と繋がる道が開く時が近いと、教えられていたからだ。

 そして、それがこの戦場となる可能性が高いのも、世界各地で収集されたムー帝国の遺跡をレムリアが解読する事で判明していたのである。

 徐々に戦場を白い霧のようなものが覆い始める中、レビルはリモネシア共和国軍と地球連邦軍に退避勧告を行う。

 これから先の戦いにはオカルト対抗力が高く、自前で転移能力を備えるDCが適切であった。

 

「ライディーン? ムー大陸? 異世界に消えた帝国の民、神官達の、遺産? 母さんの言っていた“道”が開くのか!?」

 

 そしてかつて守れなかった懐かしきムー大陸の気配を感じたライディーンは、パイロットである洸にこれから起きようとしている事を伝えていた。

 戦闘を中止し、シャーキンを説得中の晶と戦意を喪失したシャーキンもまたこれから起こる現象を理解して、戦場に広がる白い霧を見回している。

 

「え、これは? あ、レムリアさんの言っていたムー大陸?」

 

「なに? いや、確かに我ら妖魔の持つ妖魔学でもその時は近いと分かっていた。だが、まさかこの決戦の最中に、この場所でムー大陸への道が開くのか!? あるいはライディーンとムー王家の血が? 呼び合ったのか?」

 

 そしてバラオは予見した通りにムー大陸への道が開いたことを悟り、ライディーンを破壊光線と念動力で弾き飛ばすと大きく距離を取り、生き残りの化石獣と巨烈獣を招き寄せて、陣形の立て直しを図る。

 

「どうやら貴様らもムー大陸の事情を知っていたようだな! この霧こそはムー大陸への道の前触れだ。

 我らとの戦いに備えて目覚めたライディーンがこれまでの戦いで放射したムートロンとムー大陸にあるムートロンを私が共鳴させ、誘引したのだよ。

 一万二千年前、ムー大陸が天変地異によって海底に沈み、その影響で世界が滅びるのを悟ったムー帝国の神官共は、ムー大陸を“存在と非存在の間”に移動させ、存在そのものを幻とする事で世界を救った。

 ムー大陸の沈没によって引き起こされる地殻変動、史上類を見ない全世界規模の大津波、数十年と続く異常気象!

 一万二千年前は防げた。だが、今、この世界にムー大陸が現実の存在として出現したら? どうなると思う? コロニー落としなど比較にならぬ確実な破滅だ。そうして地上の人類が破滅した後で、我ら妖魔が地上に覇を唱え、宇宙の人間共も滅ぼしてくれよう!!」

 

 バラオの悪魔の哄笑が“白い無”と表現されるべき世界に木霊し、DCの全機体はバラオと共に転移したミケーネ帝国、百鬼帝国、ユラーの残存戦力を追って、ムー大陸へと向けて勇気を奮い、突撃していった。

 新たな舞台で戦いを継続する妖魔大帝と闇の帝王、大魔人、そしてDCがこちら側の世界から消えてゆく中、ここでもムー大陸の側でもないどこかで、その姿を観測している者が居た。

 全高数百メートルを超える魔神の如きシルエットと共に、ソレは悪意に満ちた声でこう言った。バラオや闇の帝王とは異なる人間の醜悪な部分を凝縮したような声の主は……。

 

「地上と人間が滅びるのは構わん。だが世界を支配するのはこのDr.ヘルだ! この“INFINITY”とゴラーゴンの力があればすべては容易い。

 闇の帝王、バラオ、ユラー、そしてワーバラオ! 貴様ら全て、DC諸共、因果の全てから消滅させてやる。フハハハハハハ!!」

 

<続>

■後半戦に移行します。

■Dr.ヘル&INFINITYが参戦予定です。

 




というわけで後半戦に突入です。
Dr.ヘルもやる気満々ですね。バラオ、闇の帝王、ユラー、Dr.ヘルを相手にプレイヤー部隊は頑張って戦っていただきましょう。


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第百二十四話 ボスラッシュは経験値と資金稼ぎに適切

 一万二千年前にムー大陸が消えた『存在と非存在の間』と言われる世界。そこに突入したDC部隊をアークセイバーや連邦軍のパイロット達は見送る以外に出来る事はなかった。

 レーダーからは次々と敵勢力とDC部隊の反応が、空間のひずみと同時に広がった白い霧に飲まれるようにして消失している。

 ユーサーはジ・インサーの初陣としてはあまりに強大だった敵との戦いに、喉がカラカラに乾いているのに今さらになって気付いた。

 

「DCの勇者達。どうか、貴方達の頭上に勝利の栄光が輝かんことを」

 

 ユーサーの祈りが届いたかどうかは分からない。

 再び妖魔帝国やミケーネ帝国が出現した場合、また逆にDCが勝利して帰還した場合に備えて、こちら側に残った部隊は再編成と機体の修理と補給、負傷者の救助と収容を行いながら、警戒を怠らずに状況の変化を見守っていた。

 一方、『白い無』と表現するべき道を通過したDC各員は、巨大な大陸とその周囲に浮遊する、崩壊した建物や大地、時に人間に遭遇していた。

 

 世界の崩壊を防ぐ為に自分達の存在を抹消する道を選び、二百年の歳月をかけて月のライディーンと、真のライディーンの剣と盾を作り出した場所。

 既に命ある者はなく、はるか時を越えてムー大陸は待ち望んだ守護神と忌むべき妖魔大帝を迎え入れていた。

 この時、こちらの世界に移動していたのはDC以外にもデスザウラー、デススティンガー、ギルドラゴンが含まれており、アークセイバーや連邦軍から切り離されたとはいえ、その戦力が敵からすると目を覆いたくなるほど強大なのは変わらない。

 ヴァイシュラバはDCが到着した事により、自分の役割は終わったと考えて、地球側に残ったようだ。あるいはバサ帝国の介入に備えたのかもしれない。リモネシアに対して面倒見の良い事である。

 

 ストナーサンシャインの余波で大打撃を被った科学要塞島と巨大ユラーと真ゲッタードラゴンの戦闘、更に事前に受けていたダメージにより巨大円盤がムー大陸に広がる遺跡を押し潰しながら墜落して行く。

 その間にも空中でDCと残存敵勢力との戦いは続いている。ブライ、グラーが討たれ、主だった将官も戦死している百鬼帝国の指揮系統は乱れに乱れ、同士討ちすら時には発生している。

 

 これを放置しては余計に戦場を混乱させかねないと、鉄甲鬼や白骨鬼はレビル、パオロらの許可を得て百鬼帝国の兵士達に投降を呼びかけて回っている。

 一方、バラゴーン、ベロスタンを失ったバラオだが戦場がムー大陸へと移り、全身から膨大な魔力を迸らせて、武装の封印を解除したライディーンと相対している。

 

「どうだ、ライディーン。かつてお前が守れなかったムー大陸を目の当たりにする気分は? そしてひびき洸、貴様もまたこの光景をよく目にしておくがいい。これが貴様の目にする最後の光景なのだから!」

 

 ゴッドバードに貫かれたバラオの腹部の穴は完全に埋まっており、バラオはダメージをまるで感じさせない迫力に満ちている。

 

「バラオめ! さっきよりも力が増している? いや、そうか! こちら側にはあいつの力を抑える結界が無いから!」

 

「はははははははははは! ようやく気付いたか! あちらでは忌まわしい人間達の結界の所為で我が魔力を抑え込まれていたが、こちらにまで効果は及んでおらん。本来の我が力をとくと味わうがいい!!」

 

 それだけではないこれまでの戦闘で討たれた戦闘獣、化石獣、巨烈獣、メカザウルスや諸勢力の兵士達の怨念を食らい、得た力がバラオの自信を支えていた。

 アクシズ落下阻止戦で戦ったタウ・リンとグラン・ネオ・ジオングも常識を超えた現象を引き起こしたが、バラオもまた人智を超越した存在として神の如き超常の力を振わんとしている。

 ただ、まあ、それはそれとして。調子に乗っているバラオは同時に隙だらけでもあった。

 ライディーンに増設された通信機から聞こえてきた内容と、超能力で次に起こる事態を察知した洸は、迅速にライディーンを移動させた。

 

「ファイナルダイナミックスペシャルキャノン!! 撃て!!」

 

「DEC重粒子反応砲、放て!」

 

 ハガネ、タルタロスの主砲が火を噴き、続けてラー・カイラム、ブレイウッド、スペース・アーク、サダラーンの主砲が続く。

 それだけでなくゼロシステムによってこのタイミングを察していたヒイロがツインバスターライフルのトリガーを引き、ゼファーもまたクアッドバスターライフルを発射していた。

 それこそコロニーを同時に何基も破壊できそうな大火力の殺到に、バラオは驚愕で目を見開きながらも咄嗟に防御と回避行動を同時に行う。

 

「ええい、人の心がないのか、貴様ら!?」

 

 高まった魔力の大部分を消費して時間稼ぎの障壁を展開し、同時に即席で肉の壁となる巨大化石獣を連続召喚して第二の壁とする。

 そうして稼ぐ十分の一秒以下の間に、バラオ自身は回避しきれなかった攻撃によって左半身を失いながらも、破壊そのものと言える光の奔流からの回避に成功する。

 

「ぐ、ぐう、ぐごおおおおお!? このバラオにこれほどの苦痛を与えるとは! 自分達の犯した罪の重さを思い知らせてくれるわ」

 

「おおお、バラオ、覚悟おお!!」

 

 エネルギーカッターを振り上げて斬りかかってくるライディーンに気付き、バラオは右手一本で大鎌を振るって斬撃を弾き返す。

 高めた筈の魔力を一気に失い、そればかりか半身を失うダメージを受けたバラオは再生もままならず、ムートロンエネルギーを滾らせるライディーンを相手に、苦しい立ち回りを強要された。

 人類側の戦力は数こそ減ったとはいえDCそのものは一機も撃墜されていない状態だ。ライディーンを的確に援護してくれる味方がまわりにいくらでもいるのだから、原作アニメに比べればはるかに有利な状況で洸はバラオとの決戦に臨めていた。

 

 バラオが着々と追い詰められている中、闇の帝王もまた供回りの戦闘獣軍団共々、窮地に陥りつつあった。

 暗黒大将軍やスカラベス達、大幹部級がことごとく討ち死にし、残るオリジナル戦闘獣達と共にマジンガー系列四機を相手に奮闘している。

 

「砕けよ、鉄の皇帝!」

 

 闇の帝王が巻き起こした暗黒の竜巻はムー大陸に残る遺跡と大地を巻き込みながら、マジンカイザーへと迫ってゆく。マジンカイザーの何倍もある巨大な竜巻に向けて、甲児は冷静にマジンカイザーと共に立ち向かう。

 

「それならこれだ! ルストトルネード!!」

 

 ルストトルネードがダークネスハリケーンを受け止め、二つの竜巻が互いを食らい合うようにぶつかり合い、五秒と経たずに二つ共に消え去る。

 その隙にアルトアイゼン・ブルクが一気に飛び出した。

 アルトアイゼンの時から既にパイロットを選ぶ超加速が特色だったが、度重なる改造の果てにアルトアイゼン・ブルクへと新生した事で、もはや乗り慣れたキョウスケにしか乗りこなせない専用機兼クセ塗れの機体に仕上がっている。

 しかし、その性能は言うまでもなく、ラピエサージュやヴァルシオーを手掛けた所長の折り紙付きである。

 

「今さら雑兵に用はない! デモリッシュ・クレイモア!!」

 

 アルトアイゼン・ブルクの両肩の装甲が展開し、光子力エネルギーで形作られたベアリング弾が一斉に射出される!

 物質化するほど圧縮された光子力エネルギーのベアリング弾の雨は、闇の帝王を守ろうとしていたオリジナル戦闘獣の護衛達に命中し、あまりの破壊力によって全て木端微塵に吹き飛ばす。

 

 デモリッシュ・クレイモアは、光子力エネルギーのベアリング弾を撃つEモードと、内蔵した光子力3Dプリンターが製造したマジンセルのフレシェット弾を使い分けられる仕様だ。

 この時使用したのがBモードの実弾だったとしても、装甲が閉じた時には生成・再装填が済み、ほんの数秒の間隔でまた使用できるという、敵対者からすればトンデモナイ代物だ。

 

 デモリッシュ・クレイモアの範囲外に居た百メートル級の巨人型戦闘獣へと向け、超音速の突進を敢行したキョウスケはそのまま右手のリボルビングバスターの標的と定めた。

 巨人型戦闘獣の振り下ろした大戦斧と超合金NZαの杭が激突し、光子力反応炉の生み出す圧倒的パワーによって、大戦斧を握る巨人型戦闘獣の両腕が付け根から千切れ飛んだ。

 その勢いのまま巨人型戦闘獣の胸部にリボルビングバスターを叩き込み、ビームカートリッジを炸裂させる前に、分厚い胸板に大穴が開いた。純粋な機体のパワーだけで巨人型戦闘獣の胸を貫通したのである。

 

「っ! 強すぎるのも考え物だな」

 

 キョウスケをしてもアルトアイゼン・ブルクは扱いきれるのかと、思わず疑問がよぎる怪物機体だが、源流であるマジンカイザーはこれ以上の性能を持つ可能性がある。

 もしマジンカイザーやアルトアイゼン・ブルクがフルパワーで戦ったら、このムー大陸は原形を留めないかもしれないと、キョウスケは背筋の震える思いだった。

 

 アルトアイゼン・ブルクが闇の帝王の周囲を掃除している間、エクセレンは残るミケーネ帝国の艦隊と直衛の戦闘獣達を掃討するべく動いていた。

 右腕のグングニル・ランチャーの光子力ビーム弾、超合金NZα製の実弾の直撃に耐えられる機体は今のミケーネ軍団にはなく、直撃を受けた機体は一撃で撃墜されてゆく。

 エクセレンはマジンガー側の武装を活用すると、抗議するように出力を上げ下げしてくる真ゲッター炉に整った眉を寄せて困った表情を浮かべる。

 戦いの最中に機体の中で二つのエネルギーが喧嘩するのは、エクセレンにしても未体験で、困惑してしまうものだ。

 

「アピールしてきたからには活躍してみせてよね?」

 

 デメルング・ヴァイスリッターの左腕にあるドライゲッタービームキャノンの砲身が伸び、ゲッタービームが砲身ごとに交互に連射される。

 その威力は張り切る真ゲッター炉から送り出されるエネルギーによって、破壊力が通常時よりも大幅に底上げされていた。

 ゲッタービームと光子力ビームの正確無比な連射によってミケロスとデモニカが次々と穴だらけになる中、戦闘獣の一団は接近戦ならば苦手なはずだと四方から包囲し、狭めて行く。

 

「ま、そう考えるわよね。だ・け・ど、残念無念、ソッチの備えもばっちりなの」

 

 エクセレンの意思を受けて、操作されるよりも早くゲッタードライビームキャノンの砲身が元の長さに戻り、手首の内側から柄が飛び出て、それを左手が掴むのと同時に細身の刃が形作られる。

 

「ゲッターレイピア!」 

 

 刺突用の刀剣であるレイピアを左手に持ち、デメルング・ヴァイスリッターは持ち前の超速度と超機動を発揮し、相討ち覚悟で突っ込んできた戦闘獣達の間を飛び回って、戦闘獣達の人面と機体の顔面にゲッターレイピアを突き刺していった。

 ゲッタートマホークやゲッターサイトでなく、ゲッターレイピアが作られたのはエクセレンの声帯がテッカマンレイピアこと相羽ミユキと同じという縁からか。

 

 思いがけず接近戦もこなせるデメルング・ヴァイスリッターに戦闘獣達が戸惑い、距離を詰めるべきか離すべきか、決められずにいる間もエクセレンは攻撃の手を緩めない。

 ゲッタードライキャノンの砲身からゲッター線で形作られたビームサーベルが伸び、ゲッターレイピアを握ったままの左前腕が高速回転を始める。レイピアを軸としたゲッタービームドリルだ。

 

「その間合いじゃヴァイスちゃんからは逃げられないわよ?」

 

 距離を取るペガサス型の戦闘獣へ向けて、左腕の蔦の部分が一瞬で伸びた。アインストグリートやアインスト・レジセイアのエレガントアルムの応用であり、ゲッターライガーのチェーンアタック、ドリルアームとの複合技になる。

 近いところで言えば、コードギアスシリーズのパーシヴァルや紅蓮特式も似たような形でドリル状の武器を使っているか。

 

 左腕の蔦が伸び、一気に射程を伸ばしたゲッタービームドリルに対し、仰天した表情を浮かべたままペガサス型戦闘獣は頭部を貫かれて即座に絶命した。

 八面六臂の活躍を見せるデメルング・ヴァイスリッターだが、エクセレンはというと制御の難しさに冷や汗を流し、美しい顔を濡らしていた。

 

「光子力ちゃんとゲッター線ちゃんは本当に仲が悪いわねえ。アッチを立てればコッチが立たず、というよりも自分の方が! って自己主張を激しくしてくるのを宥めるのは疲れるわね、ヴァイスちゃん」

 

 出力が激しく上下してせめぎ合う光子力反応炉と真ゲッター炉が生み出すパワーはすさまじいが、その制御は至難の一言に尽きた。

 このようにアルトアイゼン・ブルクとデメルング・ヴァイスリッターはミケーネ軍団を掃討し、決着の舞台を整えている間にグレートマジンガーと剣鉄也は闇の帝王へと肉薄するのに成功していた。

 

「お前の野望もここまでだな、闇の帝王!」

 

 グレートマジンガーの連射するネーブルミサイルを受けつつ、闇の帝王はエネルギーの肉体を激しく燃やして、反撃に転じる。

 眼から怪光線を放ち、疾走するグレートマジンガーを牽制し、更にダークネスファイヤーを広範囲に発生させて、超高熱と高エネルギーの大火炎が偉大なる勇者を容赦なく襲う。

 

「まだだ! まだこの闇の帝王が残っている限り、ミケーネ帝国は不滅だ!」

 

「往生際が悪いな。悪党の親玉ならせめて散り際は潔くしたらどうだ!」

 

 鉄也は正面を塞ぐ炎の壁をマジンガーブレードで切り裂き、装甲を超高熱で炙られながら、闇の帝王との距離を確実に縮めていた。

 

「グレートマジンガーのパワーを思い知れ! サンダーブレーク!!」

 

 光子力反応炉に換装し、劇的にパワーを上げたグレートマジンガーの雷撃を受けた闇の帝王の全身は大きく震え、堪えきれなかった苦悶の声が零れ出る。

 

「ぐううお、おおお!? 光子力エネルギー、まさかこれほどの力、を……」

 

 あと一押し、一押しで闇の帝王を倒せると、鉄也も甲児もこの時、確信していた。

 今にも消えそうな火を連想する弱弱しい姿を晒す闇の帝王に、鉄也はグレートマジンガー最大の切り札を躊躇なく切る。

 スクランブルダッシュと接続したグレートブースターが一気に加速し、その途中で接続が解除されて、闇の帝王を目掛けて撃ち出す。

 

「これで終わりだ! グレートブースター!!」

 

 加速を得たグレートブースターはくるりと回転しながら、両翼の基部より光子力ビームを放ち、闇の帝王を牽制しながら容赦なくそのど真ん中をぶち抜く!!

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!? わ、我が野望が、闇の帝王の支配する永遠の帝国、があああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 自らに訪れた敗北の結末を受け入れられず、延々と尾を引く悲鳴を叫びながら、闇の帝王はひときわ大きく膨れ上がり、それが弾けた後には無数の火の粉を思わせる粒子となって散華した。

 彼方へと飛んでいったグレートブースターが旋回し、一旦、ハガネへ帰投して行くのを見届けてから、鉄也は勝利の笑みを浮かべるのだった。

 

 闇の帝王が倒された時、巨大ユラーもまた真ゲッタードラゴンとの決闘に決着の時を迎えようとしていた。

 強大な超能力により、虚空から召喚した無数のマグマ弾を降らし、更に角から破壊光線を放ち、巨体から繰り出す大剣の一撃も極めて強力な巨大ユラーだが、対峙する真ゲッタードラゴンはそれ以上に強力なスーパーロボットだった。

 

「このマグマの支配者が人間の作り出した機械ごときに!」

 

「その侮りがお前の敗因だ。大魔人ユラー!!」

 

 マグマ弾の雨はゲッターサイクロンによって全て吹き飛ばされ、続けてライガーモードの速さに翻弄され、そうして作り出された隙を突かれた巨大ユラーは全身に傷を重ねている。

 そして今もまた新たな傷が刻まれようとしている。

 ゲッタートマホークの一閃で大剣を弾かれた巨大ユラーの腹部から胸部を、ゲッタートマホークの返す刃が切り裂き、巨大ユラーは仰け反りながらじりじりと後退した。

 

「このような、異郷の地で、このユラーが……」

 

「いくぞ、ミチル、武蔵君! 真! シャイィィンスパァーク!!」

 

 三人が心を一つに合わせ、三つの真ゲッター炉が唸りを上げ、真ゲッタードラゴンの全身を凄まじいゲッター線の光が包み込む。

 ゲッタードラゴンの二倍どころでは済まないエネルギーを纏って、星を滅ぼす流星の如く真ゲッタードラゴンが巨大ユラーを目掛けて飛翔! ダメージによって回避する余裕のない巨大ユラーは迫りくるゲッター線の流星に、絶対の死を予感し、絶望にその顔を歪める。

 

「おお、おお、死ぬのか!? このユラーが、大魔人が、ゲッターよ!」

 

 真ゲッタードラゴンが急制動を掛けて停止したが、真シャインスパークのエネルギーはそのまま巨大ユラーを目掛けて突き進み、巨大円盤の未知のテクノロジーによって巨大化した巨大ユラーの胸へと命中する。

 解放されたゲッター線のエネルギーはそのまま広がって行き、巨大ユラーの全身を飲み込んで無慈悲な力によって消滅させた。

 

 ムー大陸で解放されたゲッター線の余波が時間の止まった世界を震わせる中、能力を全開放したライディーンとソレを援護するコープランダー隊、そして敵の数が減った事で戦力を集中させてくるDCにバラオもまた敗北の運命を辿っているように見えた。

 オウカのラピエサージュを筆頭とするグランド・スター小隊、双子のフェブルウス、デュークのグレンダイザーテラ、神ファミリーのザンボットインビンシブル……これらの機体が次々とバラオへ攻撃を加えており、さしもの妖魔大帝も焦燥の念にじりじりと焦がされつつある。

 

「ユラーめ、不甲斐ない。闇の帝王もここまでか。ム!? あれは!」

 

 ライディーンのゴッドボイスとラ・ムーの星の解放に最大限の警戒を割くバラオは、だからこそ同等に警戒するべき要素を失念してしまっていた。彼はその失態を自ら償わなければならない。

 ムー帝国の遺跡の一つから正統なる乗り手を得て、時の止まったこの世界に黒い翼を羽搏かせるもう一体のライディーン──月のライディーンが、妖魔大帝との決戦に参戦したのだ。

 

「洸さん、皆さん、お待たせしました。囀晶、もう一体のライディーンを見つけてきました!」

 

「晶ちゃん!」

 

 全身黒一色で塗りつぶされた黒いライディーンの姿に誰もが目を奪われる中、バラオはここに居ない部下の名を叫んだ。

 

「シャーキン! なにをしておる? むざむざと月のライディーンを奪われたのか! 答えよ、シャーキン!!」

 

 憤怒の表情を浮かべるバラオを、シャーキンは遺跡の一角から見ていた。これまで被り続けてきた仮面を外し、素顔を晒しながら主君と仰いだ妖魔大帝に許しを請う言葉を口にする。

 

「妖魔大帝バラオ様、貴方の強大なる魔力と悪魔人を率いる大帝としての器量への敬服の念は今も変わりはございません。しかし、私がムー帝国を裏切り妖魔帝国に着いたのは、すべて弟アズナルに王位を与えんが為。

 そのアズナルがこの世に居ないのであれば、もはや私が忠義を尽くす道理はない。いや、むしろアズナルの愛したこの世界と家族を守る為にこそ、戦うのが私のせめてもの贖いなのかもしれない」

 

 シャーキンの瞳は月のライディーンに乗り込んだ姪、晶を案ずる光に満たされていた。

 

「洸さん、剣を!」

 

「! よし、ライディーン、あれがあれば!」

 

 バラオを相手により優位に戦えるとライディーンから伝えられ、晶の投げた身の丈ほどもある剣を受け取ろうと、洸はライディーンを動かす。

 目の前の隙を晒すライディーンに対し、バラオは一撃を加えようとしたが、それをDCの仲間達が許さない。

 

 ビギナ・ロナのヴァリアブル・ビームランチャー、シルエットガンダム改のヴェスバー、ネオガンダムのG-バード、ウイングゼロのツインバスターライフル、ガンダムグリープのバスターメガ粒子砲等々が次々とバラオの巨体に突き刺さる。

 バラオは戦いながら新たな化石獣と巨烈獣を生み出しているが、自身に攻撃が集中し、次元将ヴァイシュラバとの戦い以来、強いられている消耗が生産速度を大きく落としていた。

 

(我を縛る結界はない。にも拘わらず我が糧となる怨恨、憎悪、怒りが増えないのはなぜだ? 何者かがこちら側でもこのバラオの力に干渉している)

 

「計都羅喉剣・五黄殺!!」

 

「二機合わせて十黄殺! なんてね!」

 

 バラオは自分に干渉している敵を探っていたが、猛攻を受けているのに加えて新たに出来たその隙を突き、一気に肉薄したグルンガスト改に前後を挟まれながら、最強の必殺技を受けた。

 大上段からの斬り下ろし、さらにそこからの息をつかさぬ切り上げ。それが二機合わせての四連斬撃だ。バラオの胸と背中に深い斬撃の痕が刻まれ、バラオの顔に新たな苦悶の色が浮かび上がる。

 

「異郷の凶星を技の名とするか。忌々しい!!」

 

 大鎌とカタナを振り、そこに魔力の嵐を乗せてグルンガスト改を吹き飛ばしたバラオは攻め寄せてくる敵を弾き飛ばすべく、角から超破壊光線を無造作に乱射する。命中した機体はなかったが、一旦、バラオから間合いを取らせる事には成功する。

 

「貴様と、貴様か! あの男と同じ、いや、それ以上の源理の力を操る者、そして悪魔王!」

 

 時には負の無限力の化身としての一面を持つバラオは、自分の強化を妨げる原因を正確に見抜いた。スフィアリアクター八人分相当の能力を覚醒させた双子とフェブルウス、そしてディス・レヴを起動し、死せる者達の負念を吸収しているディス・アストラナガンだ。

 

「貴方の好きなようにはさせないよ。妖魔大帝バラオ、貴方もまた高次元の存在、間違った真化の領域に至った存在だからね」

 

「宇宙魔王、冥府神ハーデス、ズール皇帝、ムゲ・ゾルバドス……彼らを彷彿とさせる強力な存在。私達もかつてソルだったころの力を振るうのに、躊躇はしない」

 

 双子に同意するようにフェブルウスも機体内部から、唸り声のような低い駆動音が漏れ出ており、三位一体となった彼らの次元力制御は極めて高度な水準に達していた。

 そしてまたクォヴレーもディス・レヴをフルドライブさせて、バラオに流れ込むはずの死者の負念を次々と奪い取り、ディス・アストラナガンの力へと変え続ける。

 

「悪魔人や巨烈獣のようにお前と従属関係にある者の負念は難しいが、そうではないメカザウルスや鬼、戦闘獣達ならば話は別だ。彼らの負念はディス・アストラナガンが引き受ける。お前の力になどさせはしない」

 

 ディス・アストラナガンは攻撃を控え、戦場に満ちる負念の多くを吸収し続けている。

 本来ならバラオは更に強大な力を振るうはずだったが、それをこうもピンポイントで邪魔してくる敵がいたのは、誤算もいいところであった。

 またその原因である二機が極めて強力な機動兵器であり、撃破するにはバラオが全力を尽くさなければならないレベルだ。

 雑兵を百、二百と送り込んでも勝てる相手ではない以上、バラオがフェブルウスとディス・アストラナガンを排除するのは不可能に等しい。

 

「バラオ、覚悟!!」

 

「やああああ!!」

 

 真の剣を得た太陽のライディーンと弓に変形した盾を構えた月のライディーンが、バラオに止めを刺すべく怒涛の勢いで攻撃を重ねる。

 剣も弓もエネルギーカッターやゴッドゴーガンとは一線を画す威力を発揮し、傷ついたバラオの肉体に甚大なダメージを立て続けに与えて行く。

 

「既に滅びた国の守護神が、今さら守るべき国もない分際で我に立ちはだかるなど!!」

 

「守りたいものの全てがなくなったわけじゃない! 今度こそ、ライディーンはお前を倒し、世界と、人々を守る!」

 

 洸の気迫と闘志の籠った斬撃がバラオの右腕を切り飛ばし、その隙に晶の放った矢がバラオの左目を抉り、そのまま大穴を開ける威力を発揮する。

 

「ムーの全てが無くなったわけじゃない。私と洸君がその血を繋いでいる! ムーの人達のお陰で残った世界が今も続いている!」

 

「小癪な、小童共が!!」

 

 この時、バラオはライディーンの真の剣と盾に気を取られ過ぎていた。もちろん、この二つは非常に強力なバラオ特効と言ってもよい武器だが、これらがなくてもライディーンにはバラオを倒せるだけの力が備わっているのだから。

 これまでの戦いの中で世界に存在するムートロンの大部分は太陽のライディーンに蓄えられ、更にこちら側に漂うムートロンエネルギーも吸収している。

 

 これまでの数々の戦いでの経験に加え、バラゴーンを撃破した事でライディーンが自ら封印を解除するまでに成長した洸の念動力を、これでもまだ過小評価していたと言ってもいい。

 太陽のライディーンの全身に満ちるムートロンエネルギーが活性化し、封じられていたラ・ムーの星の力が解放され、五十二メートルの機体が黄金に輝きながら三百メートルにまで巨大化する。

 

「ラ・ムーの星! 封印を解いたか!?」

 

 あまりに剣と盾を警戒しすぎた、とバラオが臍を噛む間にもライディーンの機体内部で構造が変化し、胸部装甲が開くとその奥から三基の超音波砲の砲身が現れる。

 極大のムートロンエネルギーと洸の念動力が融合し、放射されるのは搭乗者に大きな負担を強いる為に封印されていたライディーン単体での最強の必殺技。

 

「ゴォォォォオッド・ボォォオイス!! ゴオオオッド・ラ・ムウウウウウウ!!!」

 

 超音波砲は巨大な紫の光輪のエフェクトと共に放たれ、バラオが咄嗟に展開した防御用の結界は一秒と持たずに粉砕される。

 

「ぐおおおおお!? 馬鹿な、ムー帝国を滅ぼした時よりも多くの戦力を整え、力を蓄えたこのバラオが、今度は敗れるのか? 信じ、られぬ。まさか!!」

 

 天井知らずに威力の上がるゴッドボイスにより、バラオの巨体の全てが粉砕され、一万二千年前にムー帝国を滅ぼした悪魔の化身は、ムーの守護神によって跡形もなく消し飛ばされる。

 バラオの肉体が完全に粉砕されたのを確認し、ライディーンの胸部装甲が閉じて、機体の巨大化も収まり、元のサイズへと縮む。

 闇の帝王、ユラー、バラオが倒れ、遂に敵の首魁全てを討ったと、勝利の実感を味わおうとDCの誰もが歓声を上げようとした時、洸と晶が同時に叫んだ。

 

「皆、まだだ! バラオはまだ滅んではいないぞ!!」

 

「来ます! これまでよりもずっと純粋な負の念になって!!」

 

 バラオの肉体が砕けたその場所から炎を思わせるエネルギーの嵐が吹き荒れ、それはやがて三つの目を持つ三面の鬼神か悪魔を思わせる怪物が顕現する。

 

「ははは、はははははは、はははっはははははははは!! お前達はよくやった。よくぞこのバラオをここまで追い詰めた! 一万二千年前にもここまではやられなかったぞ」

 

 肉体という枷から解き放たれ、純粋なエネルギー体としての姿を見せたバラオだ。先程までの戦いを超えるエネルギーが検出され、DC側に更なる緊張が走る。

 

「見るがいい。これが私の真の姿だ。この姿となった私を相手に、お前達はどこまで戦えるかな? 褒美にお前達の魂は特別に味わっていただくとしよう!!」

 

 手足を地面に着いた姿勢のバラオが魔力を迸らせると、虚空から煮えたぎる溶岩の大蛇が何匹も生まれ、二体のライディーンを筆頭に周囲のスーパーロボットやMSに襲い掛かり始める。

 欠片も衰えた様子の無いバラオの攻勢に、闇の帝王を討った鉄也と甲児も加勢に行くべく動こうとしていた。

 

「ちょっとまずい感じだな。鉄也さん、急ごう!!」

 

「ああ、俺達も……なにっ!?」

 

 二機のマジンガーが飛ぼうとしたその瞬間を狙いすまし、突如として空間にワームホールが開くと、そこから巨大な腕が伸びてグレートマジンガーを鷲掴みにして、ワームホールの向こう側へと引きずり込む。

 

「鉄也さん!?」

 

「なにぃ、こいつは! ! これは、貴様は!!」

 

 更に巨大なワームホールが空中に開くと、そこから実に全高六百メートルに達する巨大なマジンガーが姿を見せる。地響きを立てながらムー大陸に降り立つそのマジンガーの右手には、グレートマジンガーが固く握り締められている。

 機体の上げる軋みを聞きながら、鉄也は見た。巨大マジンガーすなわちINFINITYの頭部に下半身を埋めている仇敵の姿を!

 

「地獄大元帥、いや、Dr.ヘル! 貴様、まだ生きていたのか!?」

 

「そうだ、Dr.ヘルよ! 貴様らに復讐を果たす為、わしは地獄の底から蘇ってきた! 光子力エネルギーを始めとした高エネルギーによって歪められた、隣接次元との狭間を漂っていたこのINFINITYの力でな!!」

 

「INFINITY? それがこのマジンガーの名前なのか?」

 

「くっくっく、マジンガーか。確かにそう見えなくもない。だがマジンガーとは一線を画すぞ。このINFINITYの基礎性能、そして搭載されたゴラーゴンの力は、宇宙を制する代物だ。さあ、その力の一端を見せてやろう。出でよ、機械獣達よ!」

 

 INFINITYが左手を振るとその号令に合わせて、虚空から強化心臓という強化パーツを取り付けた機械獣軍団が数百単位で出現する。これまで何度も倒してきた機械獣達だが、その心臓に強化心臓を取り付けた事で大幅なパワーアップを果たしている。

 マジンガーと似て異なる巨大なINFINITY、倒したはずのDr.ヘルの復活に甲児は動揺を押し殺しきれなかったが、バラオが新たな姿を見せて出現した以上、Dr.ヘルと新たな機械獣軍団の相手は自分達がするしかない、と即座に判断を下す。

 

「いいさ。Dr.ヘル、お前と戦うのはおれとマジンガーの役目だ。鉄也さんを助け、もう一度お前を倒すまでだ!」

 

「ふふふ、お前の小生意気な台詞も聞けるのがこれで最後かと思うと感慨深いものがあるな。今度こそ三度目のなんとやら! 三度目どころではないが、今日こそこのDr.ヘルの勝利に終わる時よ。

 そして妖魔大帝バラオ、貴様もまたこのわしとINFINITYの勝利の歴史に敗者として名前を刻んでやろうぞ」

 

「ふふふふふ、闇の帝王に拾われ、命を救われた人間の愚者か。確かにお前の手に入れたその巨神の力は凄まじいが、お前に使いこなせるものかな? ふふふ、私の新たな器として相応しい。お前からの献上品としてその魂と魔神を受け取るとしよう」

 

 Dr.ヘルとバラオの哄笑が木霊する中、戦いは新たな場面を迎えるのだった。

 

<続>

■闇の帝王が倒されました。

■大魔人ユラーが倒されました。

■バラオ精神体が出現しました。

■INFINITYが出現しました。

■月のライディーンを入手しました。

■真のライディーンの剣と盾を入手しました。

■ラ・ムーの星が解放されました。

 




・マジンエンペラーG■入手フラグ2が立ちました。


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第百二十五話 難易度はベリーイージー、シナリオ的にはハードあたり

 六百メートル超えのINFINITYの出現と捕らわれたグレートマジンガー、そして強化心臓を装着してパワーアップした機械獣軍団の出現。

 ヘイデスにとって、INFINITYの存在そのものは知っていても、まさかこの状況で介入してくるのは予想外で、彼はヴァルシオーのコックピットの中で、苛立ちと焦りを込めて操縦桿を強く握り締めていた。

 

(INFINITYがこの状況で出てくるのか! ゲームとしてなら固いスパロボ系の敵で済むが、ゴラーゴンは厄介だ。世界を作り変える世界改変の兵器。

 ある意味ではCPSの完成形のアレを既にある程度使いこなしているのは、この世界に侵入してきた事と機械獣軍団を出現させた時点で明白。スパロボ30のマジンカイザーはいないし、世界中の希望の光を集めるリサも居ない)

 

 希望があるとすればディス・アストラナガン、そして高度な次元力制御システムとしての力を取り戻しつつある双子だ。彼らならばINFINITYのゴラーゴンに対抗できる可能性は十二分にある。

 そうでなくても精神体となったバラオとの戦いに対し、重圧を感じていたヘイデスにとって、INFINITYとDr.ヘルの出現はあまりにも辛い。あまりにも厳しい。あまりにも苦しい出来事だった。まあ、この世界の敵勢力がヘイデスに抱く感情もそんなものである。

 

 INFINITYとDr.ヘルの出現に歯噛みしたのはヘイデスばかりではなかった。INFINITYの手に捕らわれた鉄也、みすみす目の前で仲間を奪われた甲児やジュン、さやか、ボスはヘイデス以上に悔しい思いを味わっている。

 だが微塵も脱出を諦めていなかった鉄也は、即座に行動に出る。二十倍以上の巨体を誇るINFINITYの手の中で、鉄也はグレートマジンガーへのダメージを覚悟して脱出を試みる。

 

「一度死んだくらいじゃ死にきれないというなら、その度に何度でも俺達が倒すまでだ!! サンダーブレーク!!」

 

 頭上から堕ちる巨大な雷撃がINFINITYの手を直撃し、わずかにその拘束が緩む。

 

「無駄なあがきを!」

 

「こっちの台詞だ。潔さのない悪党なんざ、流行りやしないぜ!」

 

 するりと飛び出たグレートマジンガーはネーブルミサイル、グレートタイフーン、ブレストバーンを次々にINFINITYに命中させる。

 現在の技術を大きく上回る古代技術で作られたINFINITYの巨体は、グレートマジンガーの必殺攻撃を受けて揺らぎこそすれ明確なダメージは入っていないようだった。

 

「なんだ? 攻撃が通じていないのとは違う。これはまるで手応えがない?」

 

 とはいえいくらINFINITYでも、大幅にパワーアップしているグレートマジンガーの攻撃がこれほど重なれば、INFINITYの装甲に大きなダメージを与えられる基準に達している。

 それが奇妙なくらいにダメージが通らないのを、鉄也は卓越した観察眼で察していた。グレートマジンガーが不調というわけではない。なにかセンサーに反応しない理由があると、鉄也は睨んだ。

 

「くっくっく、流石は戦闘のプロフェッショナル。貴様らとINFINITYの間にある相克に気付いたか。貴様は知るまい。お前とグレートマジンガーはINFINITYに敗れ、我が手に落ちた因果が存在する。

 例えそれが別の世界の因果であれ、わしが居て、INFINITYが存在し、貴様という要素が揃えば因果を再演するのは容易い」

 

「なにをわけの分からない事を!」

 

「であろうよ。だが、懸念事項のマジンカイザーも多元宇宙超越型仕様でない以上、時空超越者としての能力を持たない! ゴラーゴンを持つINFINITYを相手にして、決定打とはなりえん。

 勝った。もはや勝ったも同然よ。ただし、勝ち鬨は貴様らを粉微塵にしてからにさせてもらおう。死ねえい、ミサイルサイクロン!!」

 

 INFINITYの全身から無数のミサイルがその名の通り、サイクロンとなって発射される。吹き荒れる無数のミサイルに向けて、グレートマジンガー、ビューナスA、ミネルバX、ダイアナンA、ボスの乗るマジンガーZが慌てて迎撃を行う。

 連鎖的にミサイルが爆発し、その爆炎を突き破ってガラセクトV2を筆頭とする機械獣軍団が襲い掛かり始める。

 それを見てヘイデスは腹を括った。タルタロスの甲板の上で固定砲台をやっているだけでは、この戦況に碌に寄与出来ないのは明白。なら、我が身を危険にさらしてでも前に出るしかない。

 

「いけない、マジンガーチームの援護を! シュメシ、ヘマー! INFINITYが相手なら君達とフェブルウスの相性が良い。

 ゴラーゴンのシステムを抑制しつつ、グレートマジンガーとマジンカイザーの援護を! 仕様が違っても、INFINITY撃破の鍵になるのは三機のマジンガーだ!

 ゼファー! すみませんが、ヴァルシオーを前に出してください! 全員がやられるか、全員で生き残るか、その局面だ!」

 

 ゼファーの逡巡は刹那の間だけだった。ヴァルシオーの護衛を変わらずメガ・ギルギルギルガン、ドラ・ミレニウムが務め、更にゼファーW0ライザーとガンダムReon、グランドスター小隊もその周囲を固める。

 INFINITYのエネルギーが続く限り、無制限に出現する機械獣軍団を抑え込むため、MS部隊の大部分も対INFINITYに割かれ、ムー大陸を新たな戦火の花畑が覆い尽くす。

 

 一方、強大だが孤軍であるバラオは太陽と月のライディーン、コン・バトラーV6、ボルテスⅦ、ダイモス、フォボスと因縁のあるスーパーロボットに加えて、ファイナルダンクーガ、デザイア、グルンガスト改二機、ヒュッケバイン・ガンナー、ヒュッケバイン・ボクサー、ブレードライガーBS、コマンドウルフASその他諸々を相手にしている。

 フェブルウスがINFINITY対策に離れた一方で、クォヴレーとディス・アストラナガンはそのままバラオの魔力を封じ続けている。

 

「はははははははははははは! どうやら因果を操る魔神のようだが、身に合わない力を手に入れたものだな!」

 

 哄笑するバラオに真のライディーンの剣を手にした洸は攻撃を掻い潜り、肉薄して行く。

 バラオは溶岩の大蛇、黒い稲妻、氷の嵐、破壊光線と膨大な魔力を活かして、広範囲に超常現象を巻き起こして、猛攻を続けている。

 

「そういつまでも笑っていられるのか! お前が恐れた剣と盾はこちらの手に渡った。お前ひとりでおれ達に勝てると本気で思っているのか!」

 

「ああ、なるほど? その剣と盾が自信の源か。確かに私は億が一を警戒していたが、それは所詮、億が一、あり得ない可能性を考慮したまで! 時の流れの止まったこの世界で、朽ち果てよ。ムー大陸で死ねるのなら本望だろう? ライディーン!!」

 

 青黒い炎の津波がライディーンに向かって襲い掛かり、それを割って入ったファイナルダンクーガとボルテスⅦが断空剣と天空剣で十文字に切り裂き、ヒュッケバイン・ガンナーのフルインパクトキャノンとコマンドウルフBSのロングレンジキャノン、更に月のライディーンの弓が一斉に火を噴く。

 

「ぐ、ぐぐうう。はははは、はは! この程度では私の肉体や妖魔島を砕けても、私の魂までは破壊できないぞ! このバラオの怒りと力をとくと味わえ!」

 

 バラオにとって小さくない誤算は神秘科学を用いたライディーンの攻撃ばかりでなく、プルート財閥の関わったロボットの全武装に霊的存在に対する干渉力が備わっていた点である。

 機体だけでなく換装武器に至るまで、発注した際には正気を疑われた対霊的存在用の措置が、ここにきて大きな成果を上げようとしていた。

 

 もとより精神エネルギーを変換する野獣回路を搭載したファイナルダンクーガはもちろん、フェブルウスと双子の影響により真化の道を進み始めたDCの機体とパイロットの攻撃は、バラオの想定をはるかに超える威力を発揮している。

 加えてもう一つ、バラオの想定外の事態が生じる。バラオからすればそれは些細な事だったが、猛攻を加えるバラオに向けてミサイルのように何本もの髪の毛と光線が命中し、その巨体をわずかに揺らした。

 

「ほう? 主君への裏切りというわけか、シャーキン」

 

 先程まで何度呼んでも応じなかったシャーキンに、バラオは三面の視線を向ける。そこには残された妖魔の力を使い、巨大化したシャーキンの姿があった。本来ならライディーンを相手に最後の決戦に挑む際の姿である。

 巨大シャーキンは妖魔サーベルと盾を手にして、ゆっくりと歩きながら太陽のライディーンの傍らを通り過ぎようとし、その刹那に妖魔サーベルを叩きつけた。

 それを間一髪、ゴッドブロックで防いだ洸は、シャーキンから殺意が感じ取れなかったのと、彼がにやりと笑うのを見て理解する。ああ、この男は味方になってくれたのだと。

 

「行くぞ、共に妖魔を討たん!」

 

 シャーキンのその言葉を皮切りに太陽のライディーンと巨大シャーキンが大地を蹴って、天変地異を操るバラオへと向けて駆け出す。

 事前にシャーキンがムー王家の人間であり、場合によっては説得が可能かもしれないと伝えられていなかったら、忍や豹馬達も急展開に少しは驚いたかもしれない。

 

「へ、どっかの元大将軍を思わせる展開じゃねえか」

 

 と豹馬が傍らのBBガルーダを見れば、それを察したコックピットのガルーダは心外そうに答える。

 

「俺はお前達との戦いに敗れたから、従ったまでだ。あの男はそうではなく身内の情だろう? 立場は似ていても経緯はまるで違う」

 

「減らず口は相変わらずだな。でもま、洸があれだけ頼りにしているんなら、心強いってもんだ!」

 

 バラオの攻撃は多彩を極める。巨大な手足を振るう質量攻撃もあれば、天空や大地を割って溢れる稲妻、大小無数、追尾機能を備えた火球に槍の如く研ぎ澄まされた氷、岩石の雨。

 これまで多くの敵と戦ってきたDCの面子にしても、あまり経験のない超自然的な攻撃の数々だ。その暴威に晒されて、互いにフォローしながらとはいえバラオに次々と痛打を浴びせているのは、流石は地球圏最精鋭・最強の名を欲しいままにする面々ならでは。

 

「バラオ、よくも我ら兄弟の運命を、私の心を弄んでくれたな!」

 

 妖魔サーベルを振るって、バラオの精神体を幾度となく斬る巨大シャーキンに向けて、バラオは愚かな契約者をあざ笑う悪魔そのものの笑みで答える。

 

「すべてお前の望んだことではないか」

 

「黙れ!」

 

「溺愛する弟に国を与える。その為にラ・ムーを裏切り、国を裏切り、悪魔人に自らなったのはお前の決断だ。自分の決断に対する後悔を私の所為にするのは、都合が良すぎるよ」

 

 肉体という殻を失った為か、以前よりも饒舌のバラオに対し、シャーキンは苦虫を噛み潰した顔になる。それはバラオの言い分の正しさを彼もまた一部認めていたから。

 

「もちろん、少々、代償はいただいたよ? だがそれは当然だろう。悪魔と、この妖魔大帝バラオと契約を交わしたのだから!」

 

「黙れ、黙れ! それが貴様のやり口だ。心の隙を突き、欲望を焚き付け、人の心を惑わす! だがもう惑わされはしない。貴様に授けられた妖魔の力の全てを使い、過ちを償う!」

 

「償う? はははは、殊勝だな。悪魔世紀を実現しようと働いていたお前は、実に働き者だったものな。償わなければならない罪は多いぞ?」

 

「言われずとも承知の上だ!」 

 

 この時、バラオへ怒りの声を上げたのはシャーキンだけではなかった。洸も晶もバラオの悪意に満ちた声に怒りの炎を燃やし、機体と闘志を躍動させる。そして、まるでそのタイミングを見ていたかのように、頭上の空間に亀裂が走り、そこから巨大な人型が降りて来た。

 

「その意気やよし。同じく罪を贖う者として、余も力を貸そう。古の地球の男よ」

 

 それは片側の角の折れた守護神ゴードル、そしてパイロットはハイネルに他ならなかった。砕けた空間の先には次元将ヴァイシュラバが顔を覗かせており、どうやら彼がハイネルの願いを聞き入れて、ムー大陸への道を拳で強引に開いたらしい。

 

「道を開いてやるのは一度だけだ。そいつを倒せるかどうかは、自分でやんな」

 

 ヴァイシュラバの言葉にハイネルは短く答えた。

 

「感謝する!」

 

 ボアザン星での決戦に於いてゴードル軍団を率い、DCと死闘を繰り広げながらも皇帝ザンバジルの醜態を目の当たりにして、ボアザン貴族の実態に絶望したプリンス・ハイネル。

 更には自分と剛兄弟が前ボアザン皇帝ラ・ゴールこと剛健太郎の子であり、母親違いの兄弟であると知った彼は、ボアザン決戦が終わった後、ラ・ゴール派のボアザン軍とDCに投降していたジャンギャル、カザリーンに救出されて負傷した体を癒していた。

 

 その間、ラ・ゴールをはじめ反旗を翻したボアザン貴族や銀栄連に属する異星人の指導者達と対話を重ね、リヒテルやシャーキン同様、過去の行いを清算するべく、父の手によって修復と強化を受けたゴードルに乗り、この決戦に駆け付けたのだ。

 ジャンギャル、カザリーンの乗るキングスカールークを外の戦場に待たせ、ヴァイシュラバを説得してこうしてこの戦場に到達したのである。

 

「兄さん! 生きていてくれたのか!」

 

 思わぬ援軍の登場に健一達が喝采を上げ、ハイネルは彼らが自分の生存を心から喜んでくれているのを感じ、ぎこちなく笑みを浮かべた。

 かつては角の生えていない地球人に愛情が存在するという報告を、冗談と思ったハイネルであるから、剛兄弟を拒絶する言葉を発しなかっただけでも、考えが大きく変わっているのが分かる。

 

「これまでの行いを水に流せという程、恥知らずではない。今はただ、一人の戦士としてお前達と共に戦うことを許して欲しい」

 

「もちろんだとも。兄さんが味方になってくれるのなら、これほどうれしい事はない」

 

「そうか。あれほどお前達を苦しめてきた余を兄と呼んでくれるか。ふふ、敵わんな」

 

 兄弟達が短いが確かな心の交流をしている間、バラオは黙っていたわけではない。

 悠長に戦場で再会を喜ぶ隙を突こうとしたのだが、複数のスーパーロボットの猛攻と雨のように降り注ぐメガ粒子砲にミサイル、実弾が命中し続けて、横槍を入れる余裕がなかったのである。

 特にライディーンを除けば最も警戒するディス・アストラナガンは、変わらずディス・レヴを稼働させてバラオの強化を無効化し、更にガン・スレイブやZ・Oサイズ、メス・アッシャーの攻撃はバラオの精神体を確実に削っている。

 

 突出した質を伴った物量により、バラオが想定外の大苦戦を強いられている一方、機械獣軍団に対抗する為、味方機を大きく割り振られた対INFINITY戦線では、護衛を伴ってヴァルシオーが前に出た事でそれによってINFINITYがどれだけ脅威であるかをDC側は強く理解していた。

 これまでに戦ってきた機械獣の強化版を相手に、ヘビーアームズ改の火器が唸り、デスサイズヘル、アルトロン、サンドロック改が得意の間合いに持ち込んでスーパー鋼鉄の装甲を切り刻んでゆく。

 

「いくら強化したって言ってもよ、動きや武装がそのまんまなら!」

 

 ガラダK7との鎌対決に勝利したデュオが気炎と共に吐いた言葉に、ヒートショーテルでダブラスM2の二つの首を刎ね飛ばしたカトルが応じる。

 

「スピードの違いにさえ気をつければ、対処は難しくありませんね。こうなるとやはり問題は」

 

 カトルがモニターの一つを見る。そこにはウイングゼロがツインバスターライフルを発射し、その直撃をクロスさせた両腕で防ぐINFINITYの姿があった。INFINITYの頭部に下半身を埋める地獄大元帥を狙った攻撃だが、それを防がれたのである。

 

「ツインバスターライフルでも破壊できませんかっ」

 

 スペースコロニーを破壊する威力を秘めた攻撃に耐えるINFINITYの耐久性は脅威だが、まだまだこちらの攻撃手段はいくらでも残っている。

 特にマジンカイザーとグレートマジンガーに乗る二人は、悪の手に落ちたマジンガーとも言えるINFINITYに対して、血気盛んに攻撃を加えている。

 

「砕け散れい! 兜甲児、剣鉄也!」

 

 Dr.ヘルの叫びと共に魔法陣のようなワームホールが開き、INFINITYの巨大な拳が打ち込まれる。INFINITYの拳は並行飛行するマジンカイザーとグレートマジンガーの頭上から、世界を終わらせる隕石のように落下してきた。

 

「鉄也さん、ここはおれとマジンカイザーが!!」

 

「任せるぞ、甲児君」

 

 落ちてくるINFINITYの拳に向けて、マジンカイザーは両手を突き出して受け止めた。カイザースクランダーがその推力を全開にし、拳を止めるどころかそのまま押し返して行くのに、Dr.ヘルは本気で驚いた。

 INFINITYを手中に収めた事で多くの宇宙の可能性を見たが、直に戦って体感するマジンカイザーの力は彼の想像を大きく超えている。

 マジンカイザーによってINFINITYの拳が拘束されている間に、グレートマジンガーはミサイルサイクロンを味方の援護の下に突っ切り、INFINITYの腹部スレスレで急上昇に移り、地獄大元帥を目指す。

 

「それなりに備えはあるだろうが、弱点を叩かせてもらうぞ!」

 

 スクランブルダッシュが一層激しく炎を噴出し、加速するグレートマジンガーは見る間に地獄大元帥とDr.ヘルの目前へと到達する。

 

「貴様との因縁もこれで終わりだ!」

 

「いいや、貴様とINFINITYの因縁とゴラーゴンを使えば……」

 

 鉄也の耳にこの場にはそぐわないタイプライターを叩く音が聞こえ、彼の瞳には周囲が無数の光る文字の浮かぶ黄金の空間が見えていた。

 

「幻聴と幻覚か!?」

 

「これぞゴラーゴン! 他の宇宙と入れ替える事で、世界を思うままに作り変える禁断の力。そしてこの力があれば、貴様を地獄の特等席に案内してやる事も出来るのだ!」

 

 周囲に溢れる光輝く文字、あるいは記号の一つがグレートマジンガーに吸い込まれ、眩い光が鉄也の視界と意識を奪う。INFINITYの拳を押し返した甲児やジュン、さやか、またヘイデスもその溢れる光を見ていた。

 あまりに情報が不足している為に、ウイングゼロとゼファーW0ライザーのゼロシステムでも正確な未来を予測できない中、Dr.ヘルのINFINITYの前に新たな巨大な影が出現する。

 

「馬鹿な、なぜ、おれとグレートが!?」

 

 それは鉄也ごとグレートマジンガーをダミーキーとして頭部に取り込んだ、二体目のINFINITYだった。原典となる世界に於いて、当初、INFINITYを起動させる為にグレートマジンガーと鉄也を利用した因縁が、利用された形である。

 

「くっくっくっくっくっく、この存在と非存在の間の世界! 存在しているが存在していないという、特殊な空間とゴラーゴン、そしてグレートマジンガーと剣鉄也がINFINITYの起動に使われたという因縁!

 これらが揃って初めて可能となった。どうだ、剣鉄也! 貴様とグレートマジンガーがわしの命じるままに仲間と世界を滅ぼす尖兵となった気分は!!」

 

<続>

■シャーキン・巨大シャーキンが加入しました。

■ハイネル・守護神ゴードルが加入しました。

■剣鉄也・グレートマジンガー in INFINITYが出現しました。

 




ゲームとしてはベリーイージーなのですが、作中の彼ら的にはハードな展開が続いておりますね。


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第百二十六話 INFINITYの見た可能性の光

「行け、INFINITY! 剣鉄也とグレートマジンガーに仲間の死ぬ光景を特等席で見せてやるのだ!!」

 

 Dr.ヘルの号令に従い、二体目のINFINITY──仮称INFINITYセカンドは、頭部にグレートマジンガーを捕らえたまま動き出し、全身の装甲版からミサイルの嵐を巻き起こした。

 当然、Dr.ヘルもただ傍観に徹するわけもなく、実質、二倍に増えたミサイルの数の暴力に、DC側は決死の迎撃に移らざるを得ない。

 

 怒涛の展開に対して鉄也の理解は完全に追いついてはいなかったが、INFINITYセカンドに一時的に接続した影響により、鉄也とグレートマジンガーの双方に別世界の自分達の体験が強制的に流れ込み、朧気ではあるがINFINITYとの因縁を理解させられていた。

 鉄也は心構えも何もない状態で流し込まれた膨大な情報量により、めまいがするほどの頭痛に襲われていたが、それに耐えて必死にグレートマジンガーを操作して脱出を試みている。

 

「動け、動け、グレート! このまま手をこまねいて仲間が傷つくのを見ているだけでいられるか!」

 

 鉄也の言葉と共に吐き出された血を吐くような思いは、きっとグレートマジンガーも同じだったに違いない。

 だが先程、INFINITYの手に掴まれていた時とは異なり、サンダーブレークはもちろんブレストバーンもグレートタイフーンも使えない。

 

 それどころかグレートマジンガーの四肢がピクリとも動かない状態だ。なにをどうあがいてもINFINITYセカンドから脱出できないのかと、鉄也は心の中で不安という名前の怪物が大きく育ってゆくのを感じた。

 呼び出した機械獣軍団を巻き込むのも厭わず、二体のINFINITYの攻撃は止むことなく行われて、これにはさしものDC側も攻勢の勢いが衰えている。

 

 これまで戦ってきた中でも最上位に位置するINFINITY二体に加え、片方には主戦力の一角を担うグレートマジンガーがパイロットごと捕まっている。

 この状況での最優先事項は鉄也の救出だ。それに異を唱える者は今のDCには居なかったが、どれほど難しい事であるかを理解していない者もまた居なかった。

 

「ま、だからといって諦める者が居ないのも、ウチのいいところですね」

 

 二体目のINFINITYの出現に一周回って、冷静になったヘイデスの発言である。

 ガンダムシリーズで例えたら、ネオ・ジオングとⅡネオ・ジオングが同時に出現したようなものだが、こちとらだって原作よりもはるかに充実した戦力を整えているのだ。

 多少……いや、多少どころではないが、相手がどれだけ脅威であろうと諦めるにはまだまだ早い。そう吹っ切れるくらいには、ヘイデスも精神的にタフになっていた。

 そんな彼を支えていたのはゼファーがコントロールする事で、性能の七割は引き出されているヴァルシオー、護衛として付いてくれているメガ・ギルギルギルガン、ドラ・ミレニウム、勇戦している愛しい子供達。

 そして何より奪われた仲間を取り戻すために、激しく戦意を燃やし、諦めを踏み潰し、勇気によって恐怖を乗り越えて戦う味方の姿があるからだった。

 

「全弾持って行け! デモリッシュ・クレイモア!!」

 

「ライゴウエ……。ピカピカ眩しく行きますの」

 

「ドラゴントゥース、スマートガトリング、ターゲット・マルチ・ロック」

 

 アルトアイゼン・ブルクが光子力とマジンセルのベアリング弾を交互に連続発射し、強化機械獣を粉微塵に粉砕、更に迫りくるミサイルサイクロンをアルフィミィとKOS-MOS、T-elosが即座に迎撃して、空を埋め尽くすミサイルの中に通り道を開く。

 ソウルゲイン、ツヴァイザーゲイン、ゲシュペンストXN、ビルトビルガー、ラピエサージュ・シンデレラ、そしてマジンカイザーがその手練のパイロットでも死を覚悟するようなミサイルの通路に躊躇なく飛び込む。

 

 通路を確保するべくビルトファルケン、ヴァルシオーラ、ヴァイスセイヴァー、アンジュルグ、アンジュルグ・ノワール、ダイアナンA、ミネルバX、ビューナスA、マジンガーZが残るミサイルを撃ち落として、飛び込んだメンバーを援護する。

 撃ち落とされたミサイルが更なる誘爆を引き起こし、瞬く間に数百を超える爆発がムー大陸の空の一角を埋め尽くした。

 当然、Dr.ヘルもDCが鉄也救出に動くのは理解しており、INFINITYセカンドに群がったところにブレストインフェルノを叩き込む腹積もりである。しかし、相手の考えがお見通しなのは、お互い様であった。

 

「むお!?」

 

 Dr.ヘルが自分を狙い済ました正確な狙撃に反応できたのは、地獄大元帥の機体性能のお陰に他ならなかった。咄嗟にINFINITYの左腕を掲げなければ、ウイングゼロの撃ったツインバスターライフルに消し飛ばされていただろう。

 

「ゼロの見せた未来通りか」

 

 未だ情報不足の中、ヒイロはゼロシステムの導き出した未来が覆らなかった事に淡々と呟きを零し、Dr.ヘルの視線が自分に向けられるのをモニター越しに感知する。

 

「あの機体! 以前からわしの作った機械獣を纏めて消し飛ばしてくれおった翼のガンダムの後継機……いや、あのコロニーのマッドサイエンティスト共が夢想したMSの実機だったか。

 わしでもちょっと引くシステムを搭載した機体を本当に製造するとは、くくく、やはり人間はこうでなくては。だが、わしに楯突いた報いは、ぐお!?」

 

 ウイングゼロへと向けてワームホールを用いたパンチを打とうと、大振り気味にINFINITYが右腕を振り上げたまさにその瞬間を狙いすまし、ゼファーW0ライザーのビームライフルの嵐とヴァルシオーのクロスマッシャー、メガ・ギルギルギルガンの超破壊光線が襲い掛かる。

 別の宇宙とこちら側を都合よく入れ替えるゴラーゴン、INFINITYの基礎性能は脅威だが、それを操るDr.ヘルはまだ人智を超えた存在ではない。反応速度や思考速度はまだ高性能サイボーグの域に留まっている。

 

 ならばゼロシステム搭載機二機かつシステムを使いこなせるパイロット一人と一機ならば、Dr.ヘルの意表を突くのは不可能ではない。

 さしものDr.ヘルもひやりとする火力に晒される中、人類有数の叡智を誇る彼は瞬時に平静を取り戻した。INFINITYそのものを破壊するのが困難なことはDCも理解している。ならば機体を制御する自分の首を狙ってくるだろう、と。

 Dr.ヘルが平静を取り戻した時には既にフェブルウス、アシェル刃が地表スレスレを進み、INFINITYの足元にまで肉薄していた。

 

「地虫どもが!」

 

 INFINITYの巨大な足での踏み込みをひらりと避けて、地面が砕け、轟く振動を無視し、バーレイ・サイズを展開したフェブルウスはINFINITYの右ふくらはぎを瞬きの間に何回も斬りつける。

 

「虫の一噛みで死なないようにご注意!」

 

「特に貴方は負ける因果が山ほどあるんだから!」

 

 更にストック部分での打突、ジャック・カーバーによる斬撃、トドメに至近距離からレイ・ストレイターレットを撃ち込む。セツコ・オハラと彼女のチームが作り上げたコンバットアクションの一つだ。

 徐々に至高神ソルへと近づきつつあるフェブルウスの連撃にINFINITYの装甲も悲鳴を上げて、内部の光り輝く機構がむき出しになるほどのダメージを受ける。

 

「やはり、ディス・アストラナガンと並び、貴様らは極めて危険かつ特異! 因果に干渉し、多次元に影響を及ぼす存在! MAGINEの一種か」

 

「そんなところだよ。まさかあの人達の居る世界の言葉を」

 

「貴方の口から聞くなんて思わなかったけど!」

 

 双子の言うあの人とはZシリーズの物語が終わった後、何があったかスパロボ30の世界に漂着し、かの世界の動向を見守っているアドヴェントの事だ。

 あの世界ではDr.ヘル曰く『あまたの並行宇宙に存在し、可能性を突破し、そこに生まれし生命を進化させるもの』をMAGINEと呼ぶ。

 かつて至高神ソルだった双子とフェブルウスはMAGINEの定義とはいささか異なる存在だが、存在の格としては見劣りする者ではないだろう。

 

 Dr.ヘルが警戒を新たにする一方で、INFINITYに与えられたダメージそのものに変化があるわけではない。

 例えINFINITYであろうと物質として存在し、その巨体に見合う重量を持ち、二本の足で自重を支えて地面の上に立っている事実は変わらない。ガクンと膝が折れる──そう見えた瞬間、INFINITYの傷ついた右脚は傷一つない状態へと戻っていた。

 

「やっぱり。いくらINFINITYでもツインバスターライフルが直撃して、無傷はおかしいと思った」

 

「ダメージを受けた個所を別の宇宙の無傷のINFINITYと取り換えて、効いていないふりをしているね」

 

「ふん。やはりその機体は並行世界、多次元の観測が出来る機体か。既に起動しているINFINITYはともかく、起動していない並行世界のINFINITYとパーツを交換する程度、造作もない。貴様らの攻撃をどれだけ重ねようとも、わしとこのINFINITYには届かぬわ!」

 

 そう豪語するDr.ヘルだがシュメシとヘマー、それにヘイデスは逆に光明を見つけていた。

 ダメージを受けてから並行世界のINFINITYとの交換が行われている以上、ゴラーゴンのシステムに支障を来すレベルの大ダメージを一瞬で与えるか、あるいは一撃で撃破してしまえば打倒は可能だと告白したようなもの。

 それに極めて高い事象制御能力を持つ双子とフェブルウスならば、ゴラーゴンに干渉してその機能を抑制する事も多少は出来る。

 ここまで双子達が成長した、あるいは力を取り戻した状態だったのは、INFINITYとの戦いの中で不幸中の幸いだった。

 

 フェブルウスが事象制御能力のほぼすべてをゴラーゴンの抑制に割り振り、ジャック・カーバーをメインとした接近戦に切り替える。

 INFINITYの死角を補う為に無数の強化機械獣達が迫ってくるのをいなすフェブルウスの脇を、大刀を構えたアシェル刃がINFINITYの機体の上を駆け抜けてゆく。

 

「どうやら手品のタネは割れたようだ。それにゴラーゴンとやらを制御する貴方の認識が追いつかないほど、連続して攻撃を行うのも対処法の一つですね」

 

 アインスト化したことでより有機的な動きが可能となり、パイロットとの人機一体化も進んだアシェル刃は、ジン・ウヅキの力量をいかんなく発揮し、駆け抜けた後のINFINITYの装甲には無数の斬撃が刻まれている。

 ジンはINFINITYの巨大な頭部の上から自分を睨むDr.ヘルに対し、余裕で形作られた笑みを浮かべていた。

 

(いざとなればKOS-MOSとT-elosの相転移砲がありますが、この特殊な空間で強力すぎる兵器を使用するのは危険すぎるか。ノイ・レジセイアが拾ってくれれば、最悪の事態は防げるかもしれませんが……拾った命に未練を覚えてしまうのも、考え物ですね)

 

 アシェル刃とフェブルウスにDr.ヘルの注意が向いた瞬間、タイミングを合わせた艦隊の艦砲射撃とミサイルの雨が降り注ぎ、再びINFINITYの巨体を爆炎と舞い散る光の粒子が包み込む。

 絶え間なく続く猛攻に晒され続ける限り、Dr.ヘルは攻勢に切り替えるタイミングを逸し続けていた。その分を取り戻すかのように、INFINITYセカンドは鉄也とグレートマジンガーの制止を無視し、仲間達へと凶悪な牙を剥いていた。

 

 都市一つ簡単に焼き滅ぼす威力のブレストインフェルノが放たれ、その射線上から慌ててDCの各機が退避し、そこにミサイルサイクロンやワープパンチ、強化機械獣の巻き添え覚悟の攻撃が加わって、被弾する機体が徐々に増え始めていた。

 例えばそう、猛追してくるミサイルの迎撃と回避が間に合わず、直撃を許したビルトビルガーなどがまさにそうだ。

 

「どわっとと! く。ジャケットアーマーパージ! ふぅ、間一髪、いや間百髪?」

 

 即座に追加装甲であるジャケットアーマーをパージしたビルガーは、超合金ニューZ製という事もあり、大きなダメージを受けるまでには至っていない。

 直撃後のバランスを崩した危険な状態もパートナーのゼオラやラトゥーニがフォローに回り、追加のミサイルや強化機械獣の攻撃を遮断してくれている。

 

「そんな言葉無いわよ! それよりも貴方は大丈夫なの? ビルガーはまだ動ける、アラド?」

 

「おう! 俺もビルガーもまだまだ元気いっぱいだぜ。こんなことでへこたれていたら、鉄也さんを助け出せねえしな」

 

 オウカはアラドのバイタルデータをチェックし、空元気でないのを確認すると即座に意識を切り替える。家族を案ずる想いは強くあるが、この戦場で勝利を得なければ全員が皆殺しにされるのは、火を見るよりも明らかである。

 そして勝利と未来を得る為の最善の方法は、剣鉄也を救出して二体目のINFINITYを無力化する事だった。

 

「グランド・スター小隊各機はマジンカイザー、アルトアイゼン・ブルク、デメルング・ヴァイスリッターの援護とグレートマジンガーの救出作業の支援を継続します。救出も勝利も諦めるにはまだ早すぎる。心して掛かりなさい!」

 

 長姉の凛とした声に弟妹達はそれ以上の強さの声で返し、誰もが諦めを知らぬ戦士であることがはっきりと分かる。

 その多くがまだ若者ばかりである地球圏最強の戦士達の援護を受けて、魔神皇帝達は第三の魔神を相手にまずはその動きを止めようと攻撃を重ねている。

 

 Dr.ヘルによる遠隔操作でDCを攻撃しているINFINITYセカンドだが、ゴラーゴン自体は使用できずにいる。いわば純粋な兵器としての性能だけで戦っている状態だ。

 古代ミケーネ帝国の技術の結晶とはいえ、それならばマジンカイザーがどうして破壊できないわけがあろうか。

 問題は鉄也とグレートマジンガーを救出する為に、適度に痛めつけないといけない点である。幸い大陸を消し飛ばすとか、惑星を吹き飛ばすとか、銀河を消滅させるだとか、そこまでの攻撃力はINFINITYにない。

 

「戦闘技術そのものは拙い。鉄也の技量がフィードバックされなかったのは、幸いだな」

 

 キョウスケはミサイルサイクロンを五連チェーンガンと光子力ビームで撃ち落としながら、冷静にINFINITYセカンドの戦い方を分析していた。

 無造作に四肢を振り回し、搭載した武装を発射するINFINITYセカンドの戦いぶりは、戦闘用人工知能と大差のないものだ。Dr.ヘルの与えた交戦命令を最低限こなせる程度の動きと言ったところ。

 エクセレンもパートナーの評価を肯定し、冷静にマジンカイザーをグレートマジンガーのところまで届けるルートの策定に明晰な頭脳を働かせている。

 

「そうねえ、あの巨体と強力な武器を戦闘のプロに使われたら、こうしてお喋りしている余裕はなかったわ。詰めがスイートなのよねえ、ヘルおじいちゃん。そういうわけでレモンおねーたまとアクセルおにーたまも協力ヨロヨロでよろしく」

 

「ナンブ、どうにかしたらどうだ?」

 

 アクセルは怒りよりも呆れが勝り、吶喊する寸前のアルトアイゼン・ブルクに通信を繋げたが、キョウスケはらフッと笑う声が返ってきただけだった。レモンは面白そうに笑っているが、内心では……

 

(貴女の方が“おねーたま”なのよね、エクセレン?)

 

 レモンもアルフィミィもエクセレンが居たからこそ、この世に誕生した経緯がある。“おかーたま”と呼ばないあたり、まだレモンもエクセレンに対して配慮している方だった。

 戦場とは、ましてや軍人とは思えない軽薄な言葉を口にするエクセレンに、聞こえてきただけだというのに、生真面目なヴィンデルなどはアクセルを越えて頭痛すら覚えていた。

 

「ヴィンデル、戦いが終わったら頭痛薬でも処方してもらうと良い」

 

 笑いを含んだギリアムにヴィンデルは口をへの字に曲げて答えた。こうして会話をしている間にも襲い掛かってくる敵機を撃墜し、INFINITYセカンド周囲を掃除しているのだから、二人の技量も機体も尋常ではない。

 

「私が求めているのは根本的な対処法だ」

 

 ヴィンデルは苦虫を噛み潰した表情のまま、無数に分身したツヴァイザーゲイン達から、INFINITYセカンドへと向けて無数の邪龍鱗を撃ち込み、直後に禍々しい大剣を取り出すとヴァイサーガを彷彿とさせるモーションで果敢に斬り込んでゆく。

 ラミアとエキドナの二機のアンジュルグもスーパーロボットの火力を活かして、機械獣に取り付けられた強化心臓を正確に撃ち抜き、適切な援護を行ってくれている。

 敵部隊を一掃する為に、ソウルゲインの呼び出した翼を持つ一角獣の如き召喚獣イクシオンの開いた道に、ギリアムのゲシュペンストXNが加速をそのままに突っ込み、INFINITYセカンドがワームホールへ突き込もうとしていた右腕との距離を見る間に詰める。

 

「所詮は見せかけの真似事だが、それでも!」

 

 ゲシュペンストXNの右腕が腰のバックルから取り出したリボルケインが、INFINITYセカンドの右手首の関節部にねじ込まれ、内包するエネルギーが一気に解放される。

 

「リボルクラッシュ!!」

 

 INFINITYセカンドの右手首から太陽が生まれたような苛烈な輝きが生まれ、内部機構と装甲に大きなダメージを与える事に成功する。明確なダメージにINFINITYセカンドの動きが鈍ったその隙を、甲児は見逃さなかった。

 鉄也を救出する好機だが、同時に甲児はマジンカイザーの制御にこれまで以上の集中と心身の消耗を強いられていた。

 

 悪魔にも神にもなれるのがマジンガーZならば、悪魔を滅ぼし神をも超えるのがマジンカイザーだ。

 万が一、マジンガーが悪意を持つ者の手に落ち、世界を滅ぼす悪魔となった時には、悪のマジンガーを滅ぼす──いわばマジンガーに対する抑止力が、マジンカイザーの持つ普遍的な役割の一つ。

 

 そうして今、明確な悪の手に落ちたマジンガー──INFINITYを前にしてマジンカイザーは自動的に光子力反応炉のエネルギーを引き上げて、甲児の意図しない出力の超攻撃を加えようとする素振りが見られている。

 自我の無いマシーンではなく、独自の意識があると感じさせるマジンカイザーの行動を抑え込むのに、甲児は多大な労力を強いられていたのである。

 

「マジンカイザー、まだだ! お前のその力を使うのはこの場面じゃない。お前を仲間殺しの機体にはしない! 鉄也さんとグレートマジンガーを破壊させもしない!」

 

 悪魔を滅ぼし、神を超える機体を甲児という人間の心が制御する。それこそがマジンガーの真骨頂であるのならば、甲児は決してマジンカイザーの手綱を放してはならなかった。

 拘束されたグレートマジンガーを目指して、まっすぐに飛ぶマジンカイザーを捕まえようとINFINITYセカンドの左手が迫る。その左手を目指し、アルトアイゼン・ブルクがスクランダーの推力を全開にして一気に突っ込む。

 

「リボルビング・バスター! 特注の圧縮カートリッジだ。存分に味わえ!!」

 

 大きく広げられたINFINITYセカンドの掌のど真ん中に、リボルビング・バスターの巨大な杭が叩きつけられ、瞬時に圧縮ビームカートリッジ六発が一気に炸裂し、INFINITYセカンドの掌に罅が入るのに遅れて、大きく弾き飛ばされる。

 

「続けていっくわよ! グングニル・ランチャー、Wモード! 槍投げならぬ槍撃ちだけど、遠慮なく受け取ってねえん」

 

 INFINITYセカンドが相手とあってか、デメルング・ヴァイスリッターの光子力反応炉が先ほどから唸りを上げて光子力エネルギーを湯水のように生み出している。真ゲッター炉は妥協したのか、何かしらの取引があったのか、落ち着いた様子だ。

 北欧の大神が持つ槍と同じ名前を与えられたランチャーから発射されたマジンセルの弾丸と、圧縮光子力エネルギーの奔流はINFINITYセカンドのダメージを受けている箇所を正確無比に狙い、回復の術を持たない傀儡の魔神にダメージを蓄積して行く。

 

 そんな中、INFINITYセカンドの胸の放熱板が赤熱化し始め、再びブレストインフェルノを放つ前兆が見て取れた。先程までは煩わしく襲ってくるDCの機体を狙っていたが、今度は遠方から砲撃を重ねてくる艦隊を狙っている。

 そうはさせてなるものかとマジンカイザーを制御する甲児が飛び出し、ありったけのエネルギーをマジンカイザーの放熱板に集中させる。放たれるブレストインフェルノをマジンカイザーが迎え撃つ!

 

「ファイヤァアアアー……ブラスターーーー!!!」

 

 ブレストファイヤーの数十倍と言われるファイヤーブラスターがブレストインフェルノと衝突し、超合金Zですら融解し、蒸発する熱量が二体の魔神を中心に周囲を蹂躙する。

 赤熱に染まるブレーンコンドルのコックピットで、鉄也は歯を食い縛り、自分を助ける為に死力を尽くしている仲間達の姿に、自分への怒りと焦りを募らせていた。

 

 必死に足掻き続ける間にもINFINITYセカンドの起動キーとなった鉄也とグレートマジンガーには、INFINITYセカンドを通してゴラーゴンによって観測された別宇宙の情報が奔流のように流し込まれている。

 脳髄を焼却されるような苦しみの中で、鉄也の心は吠える。決して譲れないナニカが傀儡に落ち切るのを拒んでいる。

 

「俺達はこうして見ているだけなのか? 違う、それでいいはずがない。そうだろう、グレート! 俺達は、俺達はこんなところで負ける為に戦ってきたんじゃない!

 INFINITY、お前が古代ミケーネ帝国に作られたのだろうと、太陽系の先史文明やセフィーロという世界を侵略する為に作られたのだろうと、一度でもマジンガーと呼ばれたのなら、マジンガー乗りの意地を教えてやる!

 どれだけ窮地に陥っても、たとえ指一本動かす事が出来なくなっても! 絶対に諦めない、絶対に悪に屈しない不屈の心! 例え恐怖を覚えても、絶望を感じても、膝を折らず、明日に進むのを止めない意思の力を!」

 

 INFINITYセカンドは答えない。答えない。だが、Dr.ヘルはこの時、INFINITYセカンドに生じた異変に気付いていた。

 INFINITYセカンドのゴラーゴンが起動しようとしている。

 INFINITYセカンドは変わらずブレストインフェルノを放射し続けているが、エネルギーの一部を割いてDr.ヘルの指示していない行動に出ている。

 

「なにをしている、INFINITY!?」

 

 Dr.ヘルの動揺を隠せない言葉を耳にして、フェブルウスとシュメシ、ヘマーは愉悦とばかりに笑う。

 元は次元力を制御する為のシステムであり、機体であった三名にはINFINITYセカンドが何をしようとしているのか、実によく分かっていた。

 自分達はかつて創造主に対して、彼らの行動を戒める為に自壊したが、INFINITYセカンドからすればDr.ヘルは創造主ですらない。自分を都合のいい道具として好き勝手に使い倒すロクデナシだ。反旗を翻すのに抵抗などないも同然だったろう。

 

「きっとINFINITYにもあったのさ。例え作られた目的にはそぐわないとしても、どうしてもしたい事が」

 

「うん。原典の世界でも、きっと、自分を解析して今を生きる人達の役に立つのなら、それを喜んだと思うよ。リサをわざわざ外に出したのも、それをINFINITYが望んだからじゃないかな」

 

「お前達、何を言っている? 何を知っている? INFINITYはわしの制御下にある。INFINITYを通じてグレートマジンガーで起動させた二体目のINFINITYも、わしのモノのはず! わしの野望の道具がわしに反旗を翻すのか!?」

 

「世界次第ではあしゅら男爵にも反旗を翻される貴方だ。道具と侮った存在に手を噛まれることもあるんじゃないの?」

 

 辛辣に答えるシュメシだが、彼の視線と意識は異変の生じ始めたINFINITYセカンドへと向けられていた。ブレストインフェルノの放射が止まり、それに合わせてファイヤーブラスターの放射を止めた甲児も光り輝き始めたINFINITYセカンドに目を奪われている。

 INFINITYセカンドの輪郭がぼやけ、六百メートル超の機体が満天の星のように輝く光の粒子に変り始める。あるいはそれは可視化された光子力であったかもしれない。

 

 徐々に姿を消し始めるINFINITYセカンドから流れ込む情報に、鉄也とグレートマジンガーはおぼろげながらINFINITYセカンドの、いや、INFINITYという機体が共有する意思を感じとっていた。

 古代ミケーネ帝国で作られ、そのまま眠り続けた世界。あるいは異世界セフィーロを支える「柱」を殺す力を与えられた世界。

 そうして時の流れる果てにDr.ヘルによって起動され、人々の脅威となり、マジンガーZを始めとした、この世界のDCのような部隊に敗れ続ける世界。

 ゴラーゴンというシステムを持つ為に、INFINITY自身が数多の世界の自分の末路を嫌というほど観測し、知ってしまっている。そして、それに絶望しているのが感じられたのだ。

 

「INFINITY……。そうか、お前もDr.ヘルに付き合わされて壊されるのにはいい加減ウンザリか。確かに恨まれて、憎まれて、倒されるばかりではキツイだろうな。いいだろう! 俺達も力を貸す。お前にとっての疫病神、Dr.ヘルに存分に借りを返してやれ!」

 

 Dr.ヘルは何が起きているのかを正確に把握できていたわけではない。だが、このまま放置すれば、最悪、INFINITYセカンドが敵に回る可能性を推測出来ていた。

 故に、ゴラーゴンによるダメージの無効化を一時中断し、INFINITYセカンドの破壊へと行動を切り替える。

 

「停止命令を受け付けず、わしの命令に従わないような木偶など、例えINFINITYであろうと不要よ。グレートマジンガーごとこの世から消し飛ばしてくれるわ!」

 

 Dr.ヘルが直接制御している為、完全に従う一機目のINFINITYがブレストインフェルノを容赦なくINFINITYセカンドとグレートマジンガーへと放つ! そこに割って入ったのはマジンカイザーとグレンダイザーテラだった。

 ファイヤーブラスターと反重力スーパーストームがブレストインフェルノを受け止め、真っ向から徐々に押し返し始める。

 

「ぬうう、INFINITYは単純な機動兵器としても極めて強力な機体! それをここまで! マジンカイザーもグレンダイザーテラも、わしの想像を超える機体だというのか!」

 

 Dr.ヘルの理不尽だと血を吐くような叫びに対し、それを聞いたヘイデスは皮肉るように独り言を零した。INFINITYという想定外の敵を持ち込んできたDr.ヘルに対し、愚痴の一つも言いたくなったらしい。

 

「仮にも貴方ほどの天才が、自分で作ったわけでもない機体で無双しようとしてもねえ。あまり格好いいとは言えませんよ。

 INFINITY頼みで戦わず、せめて地獄王ゴードンなり独自開発の機体で挑んでいれば、その台詞を言う資格もあったんでしょうけどね」

 

 INFINITYセカンドが変化した光に包まれて、鉄也はどこかからタイプライターを打つ音を聞いた。そして光が一層強くなり、解き放たれたグレートマジンガーへ吸い込まれてゆく。

 

「むうう、なにが起きている!?」

 

 ブレストインフェルノを打ち切り、次の展開に備えて身構えるDr.ヘル、そして甲児やデューク、ヘイデスや双子達の視線の先で、INFINITYセカンドの変化した光の粒子と同化したグレートマジンガーはその姿を大きく変えていた。

 グレートマジンガーの系譜に連なる機体だと分かるデザインを持ち、背中には左右四枚ずつ、合計八枚の羽がマント状にたなびくエンペラーオレオールを背負っている。

 皇帝の威厳に溢れる機体からは信じがたい程の光子力エネルギーがあふれ出ており、それを計測したDr.ヘルは驚愕に目を見張った。

 

「これはマジンカイザーと同格の機体……INFINITYがグレートマジンガーを強化したとでもいうのか!?

 なぜだ、なぜ、わしの命令に反したのだ、二機目のINFINITYは!!」

 

 Dr.ヘルの問いに答えを与えたのは、新たなグレートマジンガーのコックピットに座す鉄也だった。彼には伝わっていた変身したグレートマジンガーの意思、それを成して消えたINFINITYの意思が。

 

「ふ、お前に言っても信じないだろうがINFINITYにもあったのさ。良心って奴がな。それにお前に付き合わされて、多くの世界で負け続けるのも、嫌われ続けるのももう懲り懲りだとさ。

 だから俺とグレートにゴラーゴンを使って、可能性の光を与えてくれたのさ。この偉大なる魔神皇帝マジンエンペラーGをな!」

 

 かくして、偉大なる魔神皇帝マジンエンペラーG(ゴラーゴン搭載型)がこの世界に降臨したのである。

 

<続>

■INFINITYセカンドがグレートマジンガーと融合しました。

■マジンエンペラーG(ゴラーゴン搭載型)を入手しました。

 

※本シナリオクリア後、剣鉄也がグレートマジンガーに搭乗時、気力120以上でマジンパワー発動時にマジンエンペラーGに変身できるようになる。

 




ゴーフラッシャーを浴びて意志に目覚めたドスハードは戦うくらいなら、死んだ方がマシと行動していたのを思い出しながら、INFINITYにも独自の意思があり、悪行に付き合わされるのはコリゴリだと思っていることにしました。仮にもマジンガーINFINITYと呼ばれた事もあり、生粋のマジンガー乗りにはいろんな意味で弱いです。


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第百二十七話 さようなら地獄 さようなら妖魔大帝

「新たな魔神皇帝だと!? マジンエンペラーGだと!? どこまでもわしの大望を阻むか、マジンガー! 光子力の化身共よ!!」

 

 Dr.ヘルは怒り、憎しみ、憤り、嘆き……無数の感情を、血を吐くような言葉に込めて吐き出した。そして肉体の延長線上である地獄大元帥ともども、表情を悪鬼羅刹のソレに変える。

 だがどれだけDr.ヘルが気炎を吐こうとも、既にINFINITYセカンドはグレートマジンガーに力を与えて姿を消し、召喚した強化機械獣軍団もその数を減らしている。

 鉄也の救出だけでなくグレートマジンガーのパワーアップという想定外の慶事を迎え、DC側、特にマジンエンペラーGについてはこの世界では出現しないと思っていたヘイデスにとっては、目玉が飛び出るほどに嬉しい誤算である。

 

「いくぞ、甲児君。グレートの魂とINFINITYの意思が息づくエンペラーGの初陣だ! 魔神皇帝を名乗るのに相応しいところを、元祖魔神皇帝に証明するぜ」

 

「へへ、こっちまで伝わってくる熱い闘志だ。それなら俺もマジンカイザーも、格好いいところを見せなけりゃ、元祖魔神皇帝の名が廃るってもんだ。覚悟しろ、Dr.ヘル! 二体の魔神皇帝がお前を倒し、INFINITYを解放する!」

 

 この世界で初めて肩を並べた二体の魔神皇帝は、その全身からはっきりと目に映る形で、圧倒的な光子力エネルギーを放出し、鎧のように纏っている。魔神皇帝の姿をした光子力といってもいいその姿は、奇しくもDr.ヘルが表現したように光子力の化身そのものであった。

 INFINITYセカンドが姿を消し、同等以上の戦力を備えたマジンエンペラーGが降臨した為、グレートマジンガー救出の為に割かれていた戦力はそっくりそのまま一機目のINFINITY撃破へと注がれる。

 

 追加の無くなった強化機械獣軍団はことごとく残骸となり果てて、Dr.ヘルとINFINITYを助ける味方は影も形もない。

 その状況で一切の誤射なく、容赦もなくINFINITYに降り注ぐ火力、大火力、超火力の嵐にDr.ヘルはゴラーゴンを用いたダメージの無効化を大急ぎで再開させた。

 六〇〇メートル級の巨大特機であるINFINITYでも、欠片も残りそうにない集中砲火とあっては、そうせざるを得ない。

 

 ムー大陸ごと纏めて消滅させるつもりかと本気で疑いたくなる攻撃だが、ウイングゼロのツインバスターライフルやゼファーW0ライザーのクアッドバスターライフルが含まれていれば、そう考えるのも無理はない。

 少なくとも全長四十キロメートルのスペースコロニーなら消滅する威力はあるし、まだまだ連射できるだけのエネルギー残量があり、ゼファーW0ライザーはトランザムを残している状態なのだから。

 

「ぐうううう、これは、INFINITYの傷が、ダメージが消えぬ!? まさか、剣鉄也、その機体は!!」

 

 最初の着弾から数発まではダメージを隣接次元のINFINITYと交換出来ていたが、それも徐々に効果が薄れてゆき、六条のバスターライフルを凌いだ直後には、完全に機能を失ってしまう。

 巨大な機体のそこかしこに大小のダメージを重ね、解析すれば現行の地球の技術を十年は進められる機体は痛ましい姿となっている。

 

「どうやらそうらしいな。俺も完全に理解できているわけではないが、グレートとINFINITYが教えてくれているぜ。このマジンエンペラーGにもゴラーゴンが搭載されていて、その力でお前のINFINITYのゴラーゴンを無力化しているとな」

 

 反撃の狼煙が上がり、勇猛に笑う鉄也の言葉にDr.ヘルの脳裏に『敗北』の二文字が大きな予感と共に描かれる。

 

(馬鹿な、ゴラーゴンで観測した世界にあのようなマジンガーは存在しなかったはず! わしの見落とした世界の中に居たマジンガーだとしても、INFINITYが自ら力を貸す? 意思があるというのか、道具に!

 なによりもゴラーゴンを相殺されている、これが最悪だ。INFINITYの純粋な機体性能は極めて高い。

 高いが、マジンカイザーもマジンエンペラーGも、いや、あの新しいアルトアイゼンもゲッターとのキメラのようなヴァイスリッターも、いずれも単機で戦局を覆せるような怪物共!)

 

 どんどんと大きくなりながら近づいてくる敗北の足音に、Dr.ヘルの思考は一層焦らされるが、そんな中でもどうしてこうなったのかと敗北の原因を探し求めてしまう。科学者としての性であろう。

 それでもDr.ヘルに戦いの手を止めて、降伏する選択肢はあり得ない。地球人類全体に対する反旗を翻し、ミケーネ帝国に降ってまで戦い続けた自分の未来に明るいものなどないと理解していたし、なにより彼の矜持がおめおめと生き延びる事を許さなかった。

 

「来るならば来い、魔神皇帝ども! 聖十字軍の尖兵ども! 我が名はDr.ヘルにして地獄大元帥! 地獄を名前とするわしがたかが魔神如きを恐れるか!」

 

 Dr.ヘルの気迫が乗り、ゴラーゴンが一瞬だけ機能してそれまでに負ったダメージが一瞬で無くなる。

 ただし、これが最後だとDr.ヘルは理解していた。これ以上のゴラーゴンの行使は、マジンエンペラーGにマジンパワーとして搭載されたゴラーゴンが再び無効化してくるだろう。

 

「勝負じゃ!!」

 

 その瞬間、INFINITYの巨体が跳んだ。六百メートルの巨体が実に軽やかに、まるで羽のようにふわりと跳躍するその姿は、さしものDCの面子も驚きを禁じ得ない。

 そして足元に見えるマジンカイザーへと向けて魔法陣型のワームホールを通して、両の拳を打ち込む!

 

「まずは怨敵、宿敵、仇敵の貴様からだ、兜甲児!!」

 

 これまで以上の気迫を滾らせるDr.ヘルに対し、甲児もそしてマジンカイザーもまた限界を超え、闘志を燃やし、その精神力を新たな光子力の輝きと共に力へと変える。

 マジンカイザーの胸部放熱板中央の文字は『Z』から『神』へと変わり、その全身から光子力エネルギーが溢れ出している。

 悪の手に落ちたマジンガーを前に、そしてマジンガーと兜一族とは切っても切り離せない因果の鎖で結ばれた巨悪を前に、人機の魂は一体と化していた。それは明確な真化のステージに入る第一歩であった。

 

「それはこっちの台詞だ! お前がもう二度と俺達と戦いたくないって、心から思うくらい、叩きのめしてやる! いくぞ、マジンカイザー! マジンパワー全開だ!!」

 

「っ!?!? この、光は!!!」

 

 自己再生、自己増殖、自己進化機能を持つこの世界の超合金NZα、更に光子力反応炉がこれまでにない反応を見せ、甲児の魂と同期して新たな輝きを生み出す。

 左右からマジンカイザーを叩き潰すべく、超音速で迫るINFINITYの巨大な拳へと向けて、マジンカイザーから二つの輝きが飛び出してそれぞれの拳を受け止めた。

 地獄大元帥の計器が示す反応と目の前の現象を見て、Dr.ヘルは一瞬、信じられずに目を何度も瞬かせる。より正確に言うのならば、信じられないのではない。信じたくなかったのである。

 

「新たな、マジンカイザーだと!? これは物質化した光子力エネルギーか? 超合金NZαを媒介にしたとしても、マジンカイザー本体と同等のエネルギーを持った分身を作り出すなど!!」

 

 マジンカイザーから飛び出した光の内、INFINITYの右拳を縦一文字に真っ二つにしたのは、あまりにも分厚く、巨大な斬魔刀を手にした鎧武者の如き皇帝マジンカイザー刃皇(ハオウ)

 その反対側でINFINITYの左拳を切り落としたのは白い鎧と燃えるような鬣、赤い肉体を持つ獣神の如き皇帝マジンカイザーライガ。

 

 マジンカイザーの保有する膨大な光子力エネルギーが真化の領域に達した事で、限定的に生み出されたマジンカイザーの可能性の化身達である。

 甲児も知らないマジンカイザーの機能であったが、それも当然。マジンカイザーと真化のステージに達し、無限大に溢れ出る光子力エネルギーが揃って初めて成立した機能なのだから。

 甲児はその詳細をマジンカイザーから、そして現れた刃皇とライガから教えられていた。

 

「光子力はただのエネルギーじゃない。人々の心の光、可能性の力としての側面もある。この二体はマジンカイザーの可能性を、光子力で具現化した機体だ。その名もマジンカイザー刃皇、マジンカイザーライガ!」

 

 マジンカイザーの起こした現象とその正体、更にゴラーゴンの反応からDr.ヘルはすぐに正解へと到達する。野心に囚われ、破滅の道を歩んでしまったとはいえ、彼が人類有数の頭脳を持っているのは確かだった。ある意味、宝の持ち腐れでもあるが。

 

「かつてINFINITYを打破したマジンカイザーには時空超越者の力があった。こちらのマジンカイザーにはその力はないと思ったが、わしの目が節穴だったか!

 貴様のマジンカイザーはMTP型の、いわば時空観測者(バースゲイザー)! 異なる可能性の時空を観測し、可能性を広げる存在! マジンカイザーから広がる可能性の枝を認識と共に伸ばす者!!

 そして剣鉄也! 貴様のマジンエンペラーGはゴラーゴンを搭載し、隣接次元を観測し制御する力を自ら振るうのではなく、他者が行使したその力を無効化する事に特化している。魔神皇帝の名において時空を裁定する者! 時空裁定者(バースルーラー)!!」

 

 マジンエンペラーGの裁定により悉くゴラーゴンの行使を無効化され、マジンカイザーが異なる可能性を観測した事で、新たに強大な敵が出現した状況に対し、Dr.ヘルは極限の絶望と恐怖を味わうとともに、あまりに強大な光子力エネルギーの持つ力と可能性に魅せられていた。

 自分がもっと早く光子力を我が物にして、研究できていたならば目の前の魔神皇帝達を超える存在を作り出せただろうか? そう考えるだけでどうしようもなく胸がわくわくとして、思わず口がつり上がってしまう。

 図らずもマジンガーZEROに対し、とことんまでメタをはる機体となった魔神皇帝達を前に、Dr.ヘルはどこまでも楽しそうにINFINITYと共に落下しながら襲い掛かる。だが、この場に居るのは魔神皇帝達ばかりではない。その系譜に連なる者達も居るのだ。

 

「楽しそうなとこ悪いけど、こっちも魔神皇帝の系譜だって、忘れると痛い目、見るわよ、紫おじいちゃん!」

 

 デメルング・ヴァイスリッター、アルトアイゼン・ブルクが魔神皇帝達の傍らから飛び出し、デメルング・ヴァイスリッターの左右の胸部装甲が開いて、その奥に半球形のレンズ状パーツが露わとなる。

 デメルング・ヴァイスリッターの傍らで足を止めたアルトアイゼン・ブルクは手の裏側、かつてはビームサーベルを収納していた個所をINFINITYへと向け、更にクレイモアの側面装甲も展開し、同じようにレンズ状のパーツが露わとなる。

 

「跳躍してくれたのはこちらにとって好都合。射線を気にしなくて済む! 当たればただでは済まんぞ! ブラスター・ボルテッカ・ノヴァ!!」

 

「こっちもいくわよ、ヴァイスちゃん。光子力とゲッター線まぜまぜの~ヴァイス・ボルテッカ!」

 

 テッカマンブレードとテッカマンレイピアのボルテッカを彷彿とさせる膨大な破壊の光の奔流が、空中から落下中のINFINITYへと襲い掛かる。

 本家は反物質の一種であるフェルミオン粒子を加速させて撃ち出すが、アルトアイゼン・ブルクは光子力エネルギーを、デメルング・ヴァイスリッターは光子力とゲッター線の混ざったエネルギーを放出する武器だ。両機体版のカイザーノヴァに相当する切り札と言える。

 

「邪魔をするかあ、魔神皇帝の亜種どもめ!!」

 

 Dr.ヘルはワームホールからINFINITYの両腕を引き抜き、二つのボルテッカに向けて五指を開いたまま突き出して、咄嗟に壁代わりにする。

 例え無傷の状態でも、合体ボルテッカを受けては破壊されただろうが、ただでさえ刃皇とライガによって切り裂かれていた両手は合体ボルテッカによって、すぐさま粉砕されてゆき、その付け根に至るまでが吹き飛んだ。

 

「行くぜ、鉄也さん! ここまでお膳立てされたんだ。ここで決めなきゃ、マジンガー乗りとは二度と言えなくなるぜ」

 

「ふ、甲児君こそ俺とエンペラーに後れを取るな? INFINITY、お前をDr.ヘルのくびきから解き放つ!!」

 

「まだだ! まだわしは終わっておらん!! ブレストォ!!」

 

「すべてを焼き払え、カイザー! ファイヤァアア!」

 

「超必殺パワー! サンダーボルト……!」

 

 三体の魔神が周囲に放つ絶大なるエネルギー! それは次元を歪め、時空を乱し、因果を狂奔させる圧倒的な破壊を予感させるものだった!

 我、悪魔なり、神なり──故に魔神我(マジンガー)。そして悪魔を滅ぼし、神をも超える魔神皇帝! 彼らが激突するとなれば、世界そのものが悲鳴を上げるのは、むしろ必然!

 

「インフェルノォオオ!!」

 

「ブラスタァアアアーーーーー!」

 

「ブレェーカーー!!」

 

 もしこの特異な空間ではなく、地球上でぶつかり合っていたなら、地球に致命的なダメージを与えただろう、超エネルギーの激突は、一瞬の拮抗の後に、皇帝の熱線と雷撃が無限の焦熱地獄を打ち破る結果となった。

 INFINITYのブレストインフェルノを、ファイヤーブラスターとサンダーボルトブレイカーが打ち破り、INFINITYの胸部に直撃すると勢いを衰える事無くそのままINFINITYの全てを飲み込み、破壊して行く。

 

「ふ、ふふ、ふふふふははは! すごい、すごいぞ! これが光子力、これがマジンガーか! 欲しい、素晴らしい! わしはなぜ光子力をもっと早く手に入れようとしなかった!? 

 ハハハハハ、今なら兜十蔵との共同研究でも妥協できる! 光子力、マジンガー! この力ならば全てを滅ぼす悪魔にも、全てを救う神にもなれ──」

 

 目の前に迫りくる光子力エネルギーを前に、Dr.ヘルは心底から魅了されて、自分が死の淵に瀕している事さえ忘れて嘆き、笑い、悔やみ、喜び、そしてINFINITYと共に跡形もなくこの世界から消滅するのだった。

 Dr.ヘルと地獄大元帥、INFINITYが完全に消滅するのを待っていたように、一時的に具現化していた刃皇とライガが光子力エネルギーに戻り、マジンカイザーへと吸収される。

 

 兜一族因縁の敵が第三の魔神と共に完全に消え去った事への感慨を、甲児と鉄也が噛み締めていたのは、ごく短い間だった。

 Dr.ヘルは倒せても、まだバラオ精神体という強大な敵が残っており、ライディーンを筆頭に激しい戦いがまだ続いている。

 

「へ、今度は妖魔退治か。まだまだ休めそうにないな、カイザー」

 

「疲れたんなら、ハガネに戻って休ませてもらったらどうだ。その分は俺とエンペラーが戦おう」

 

「鉄也さんこそ、一度はINFINITYに捕まっていたんだ。少しは休んだらどうだい」

 

 二人とも激戦の疲労は確かにあったし、機体の消耗もわずかにある。それでも仲間が戦っているというのに、休んでいる理由にはならなかった。

 ただその前に、特に鉄也は自分を心配してくれていたジュンに、一声くらいはかける誠意が必要であったが。

 

 Dr.ヘルとINFINITYが敗れ、DCの全戦力との戦いが決定したバラオであったが、その以前から彼は想定をはるかに超える苦戦を強いられていた。

 肉体から解き放たれて、精神体となり戦い始めた時には勝利の予感を確信しながら戦っていたが、DC側の機体の攻撃がことごとく有効だったのが、バラオにとって最初の誤算だ。

 

 これまで何度か述べてきたが、ヘパイストスラボ産を筆頭にプルート財閥の関わっている機動兵器や換装武器には、バラオを筆頭とした霊的存在への対策が施されている。

 銃火器の砲身やマガジン、薬莢、ビームサーベルの発振器をはじめそこかしこに霊験あらたかな経文や聖句が刻み込まれ、火薬類には霊体を物質化させるイブン=ガズイの粉末や、アミュレットやタリスマンを粉末状に砕いたものが調合されている。

 

 ヘイデスにとって幸いだったのは、バラオが存在しているように人類側にも本物の霊能力や魔法使い、魔女の末裔といった人々が存在しており、財力と権力と人脈の全てを使って彼らをかき集められた事である。

 リモネシア共和国での戦闘でもそうだったが、人類側の霊的戦力の底力が発揮され、ほとんどの攻撃は通用しないと予測していたバラオに痛打を浴びせられる結果となったのだ。

 

 本来と言うかヘイデスとしては対バラオ、ワーバラオを想定した真の切り札は、デスザウラー、デススティンガー、ギルドラゴンのデータを元に、対霊的存在、対高次元存在用決戦兵器として開発中の『竜戦士(ドラゴン・ウォリアー)』だった。

 ただこちらはスパロボ世界とはかけ離れた原典である為か、難航しておりとてもではないが本大戦中には間に合わない代物であり、すぐに行えた上記の対策が功を奏したのは幸いであった。

 

 さてバラオの二つ目の誤算は月のライディーンが起動し、更に真のライディーンの剣と盾が太陽のライディーンの手に渡り、最大限に警戒しているムー帝国の守護神がフルスペックを発揮しつつある事。

 三つ目の誤算はバラオにとっては些事であったが、シャーキンが離反してライディーンと連携してこちらに牙を剥いてきた事。

 

 バラオに妖魔の力を与えたワーバラオに助勢を求める考えが脳裏をよぎったが、ワーバラオはアインスト達を警戒し、この戦いに手を出す素振りがない。ワーバラオにとっては、この場でバラオが倒されたとしても、まだまだ本腰を入れるような状況ではないからだ。

 それをバラオ自身も理解しており、彼が生き残るには自力でこの戦闘になんとしても勝利する必要がある。

 

 バラオが繰り出す溶岩の大蛇の首をBBガルーダの大鎌がまとめて何本も斬り飛ばし、首を失った大蛇達をリヒテルのゴッドアーモンがまとめて掴むと至近距離から破壊光線を浴びせかけて、一気に吹き飛ばす。

 ならばとバラオが吹かせた火炎の嵐を、ハイネルの守護神ゴードルが口から吐き出したエメラルド色の炎『神の炎』が相殺する。

 二色の炎が吹き荒れる中、巨大シャーキンが天高く跳躍し、三面となったバラオの額を目指して妖魔サーベルを一気に振り下ろす!

 

「バラオ、覚悟!」

 

「お前程度に覚悟してやるわけにはいかないなぁ?」

 

 巨大シャーキンをバラオの巨大な腕が横殴りに襲い掛かろうとし、それをギルドラゴンの発射した特大のビームスマッシャーが輪切りにして、事なきを得る。

 

「機械生命体といったか。作られた命をゲッター線が増幅し、私に痛打を浴びせるとは!」

 

 特大ゾイド達の破格の攻撃力が自分に通じるのも、バラオにとっては手痛い誤算だった。

 彼自身が口にした通り、開発者の予想を超えて新たな生命体となったデスザウラー達は、内蔵したゲッター炉の変異により、バラオのような霊的存在に対しても干渉が可能なのである。

 真の剣を得た太陽のライディーンの斬撃も、真の盾が変形した大弓から強力なムートロンの矢を放ってくる月のライディーンだけでも厄介だが、更にはディス・アストラナガンの存在が完全にバラオの計算を狂わせていた。

 

「行け、ガン・スレイブ! 妖魔大帝を撃ち抜け!」

 

 飛翔する銃頭の使い魔達が放つ銃撃は確実にバラオの精神体にダメージを与え、振るわれるZ・Oサイズはライディーンの真の剣ほどではないにせよ、精神体を切り裂き、バラオに苦痛を与えている。

 今もディス・レヴが死せる者達の負の念を食らい、力に変える中、クォヴレーは平行世界の番人としてではなく、αナンバーズのクォヴレーとして思考していた。

 

(俺達の世界のバラオはひびき洸がコープランダー隊と共に倒したが、精神体の存在は確認されていない。あの世界では存在していないか、あるいはケイサル・エフェスとの戦いの後で出現するのかもしれない。

 皆なら負けはしないと思うが、いつか戻った時に戦う為、そして別の世界で遭遇した時の為に、今はお前の力の全貌を暴かせてもらうぞ)

 

「死者の力を統べるのはこのバラオだけでよい。禍々しき力を放つその機体の心臓! 我が力としてくれよう。さすればこのバラオの力は地球に留まらず、あまねく銀河へと届くだろう」

 

「ディス・レヴが望みか。今のこの使い方もシヴァー・ゴッツォの望んだものではないが、お前の手に渡るのはなおさら本望ではないだろう。それに俺は託された使命の為にも、お前などに負けるつもりは毛頭ない!」

 

 ディス・アストラナガンはバラオの伸ばす左腕をディフレクトフィールドで受け止め、稼いだ数瞬の時間で砲身を展開し、メス・アッシャーをバラオの顔面に直撃させた。

 仰け反るバラオにファイナル断空砲、アルティメット・ビーム、ブラックホールキャノン、荷電粒子砲が次々と命中して行く。版権作品のラスボスのほとんどが耐え切れずに倒される攻撃の集中を受けて、バラオの精神体はそこかしこが抉れ、明らかに苦痛で震え出している。

 

「馬鹿な、死者の霊を食えぬとはいえ私が、妖魔大帝バラオが魔力を全開にして戦っているというのに、ここまで追い込まれるのか!?」

 

 真ゲッターロボ、真ゲッタードラゴン、コン・バトラーV6、ボルテスⅦ、ファイナルダンクーガ諸々に加え、コロニーのガンダムや各ガンダムタイプが連携して絶え間ない攻撃を加えていて、ここまでバラオが原形を保てているのを称賛するべきだろう。

 バラオに逆転する余裕を与えない波状攻撃が続く中、洸と晶の心に月のライディーンに残されていた一万二千年前の預言の声が届いていた。別々のライディーンに乗っている筈が、一種の精神世界に呼びこまれた事で、お互いに顔を合わせて会話できるくらい近い距離に居る感覚だ。

 

“太陽と月がひとつに重なる時が来た。『影の鳥』は目覚め『光の鳥』もまた目覚める。闇を断つ剣となす”

 

「洸君、これって月のライディーンの?」

 

「ああ。きっとムー帝国の神官達が残した預言だ。影の鳥、それに光の鳥……」

 

「ライディーンのゴッドバードのこと?」

 

“だが注意せよ。忘れるな。預言は針の穴──通すは人”

 

 月のライディーンに記録されていた預言が一方的に伝えられる中、マジンカイザーとマジンエンペラーGをはじめ、分かれていた戦力も合流し、バラオ相手とは言え火力がインフレを起こし始める中、当のバラオはどうにか逆転の隙を生み出すべく、ある程度のダメージを覚悟して、全方位に真っ黒い雷と煮え立つ溶岩、破壊光線を放射する。

 どれも並みの特機なら一撃でボロボロにされかねない破壊力に、デスザウラー達が咄嗟に壁となり、GテリトリーやDフォルトなど複数のバリアを張って、耐えなければならなかった。

 その間にも攻撃の隙間を縫って、シャーキンら四名と二大ライディーン、そしてこちらの方が性に合うからと神宮司が乗り直したブルーガー、ディス・アストラナガン、フェブルウスがバラオへの攻撃を続行しようと試みている。

 

“太陽は光 月も光 影にはあらず 影とは光あることによって浮かび上がりし存在 だがそれは『光』の対である 昏くはあれど闇にはあらず”

 

 月のライディーンに残された預言はそれ以上なく、二人のあきらはバラオの攻撃を凌ぎながら、預言が伝えようとすることを理解しようと思考を巡らせていた。

 太陽と月のライディーンは既にある。だがそれとは別に“影”に相当する存在が必要だと預言は語っている。太陽と月は共に光。光と対を成し、しかし昏くとも悪ではなく魔でも邪でもない。それが影。

 正直、洸と晶もこのまま攻撃を続ければ十分、バラオを倒せるという確信があったが、月のライディーンに残されていた預言を無視するのも、ムーの神官達の命懸けの思いを無碍にするようで気が引けていた。

 

「ゲッタービイィイーム!!」

 

「サンアンドムーンアタァック!」

 

「行け、フィン・ファンネル、フィン・ファング」

 

「宇宙の王者の力を受けるがいい。スペースサンダーデイン!」

 

「ターゲット・インサイト。メス・アッシャー、デッドエンドシュート!」

 

 一つ反撃すれば十倍、二十倍になって返ってくる戦況に、もはやバラオの勝機は欠片も見られない。仮にバラオが不死身であったとしても、圧倒的な戦力差を前に勝利を放棄してしまいそうな状況だ。

 その中、贖罪の意識を強く持つ四人、いわゆるライバルキャラ達は真っ先に自分達こそ血を流すべしと、攻撃の密度が濃い危険地帯に飛び込んでゆく。

 

「ふふ、一度は敵として顔を合わせた事もある我らが、今ではこうしてDCに協力しているとは」

 

 ある意味、全てのしがらみから解き放たれて、四人の中でもっとも自由なガルーダが本当に面白そうに笑えば、バサ帝国の尖兵となって地球を攻めたリヒテルは肩の荷が下りたような声で答える。

 オルバン一派を排除し、父リオンが回復・復権し、バサ帝国へのリベンジに挑む彼は、服従していた時代から比べれば、実に清々しい気持ちであるのは違いない。

 

「だが少なくとも余は負い目なく戦えている。バームの民と地球の民の未来の為にも、この命を懸けて戦う価値のある戦いだ」

 

「守る価値のあるものか。濁った余の目ではそれを見つけるのがすっかり遅くなってしまったが、それでもまだこの手の届く内にあるのは幸いであったか!」

 

 苦い感情を滲ませるのはこの戦いでようやく合流したハイネルだ。最後の戦いに至るまでボアザン星人の角を持つ者こそ至上という価値観に染まっていた彼にとって、地球人に対する敵対心や侮蔑の感情はそう簡単に拭い去れるものではない。

 それでも星の垣根を越え、血を分けた兄弟達と共に肩を並べて戦うことを選ぶ善性が、彼には確かにあった。

 

「ならば今すぐ目の前の敵を討つ事だ。バラオの掌の上で踊らされたこのシャーキンに比べれば、滑稽さではまだそなたたちの方がましだろうさ。さあ行くぞ! 勇者達の為に命を懸ける覚悟ならばあるだろう?」

 

 シャーキンの挑発的な言葉にリヒテル、ハイネル、ガルーダは答えるまでもないばかりに笑い、それぞれの機体がタイミングを合わせてバラオへと突っ込んでゆく。

 

「見るがいい、バラオ。これが一万二千年の昔から弄び、お前があざ笑い続けてきた心だ。命の持つ力だ!」

 

 BBガルーダ、ゴッドアーモン、ゴードル、巨大シャーキンが一丸となり、彼らの持つ力を一つに重ねながら、バラオと突撃して行く。そうして重なり合う彼らの影を見て、晶は気付いた。あれは、あの姿はまるで──

 

「あ、ああ、鳥? 影の鳥?」

 

 晶の見つめる先でシャーキン達の重なり合った影の鳥はバラオの巨体、その中心を貫き、妖魔大帝に正真正銘の悲鳴を上げさせる。

 

「グワァアアアアアアア!!!」

 

 その隙を逃す洸ではない。太陽のライディーンが真っ先に飛び出し、晶も陸上部で鍛えた瞬発力を発揮して、彼に続く。そうして駆ける二体のライディーンを見ている者達は、不意に二体いる筈のライディーンが一つに重なり合って見える違和感に気付く。

 それが何を意味するのか知っているヘイデスは、感慨深げに誰に聞かせるでもなく、口を開く。自分が確かに創作された世界に居るのだと、自分に言い聞かせているのかもしれなかった。

 

「ムーの神秘科学により、分子レベルで二体のライディーンが融合した、か。ドラゴンボールで言うところのフュージョンかな。あしゅら男爵みたいにならなくてよかったよ。さあ、行け、日蝕の(エクリプス)ライディーン!!」

 

 分子融合し、一つになった日蝕のライディーンの中で、洸と晶は心を重ね合わせ、全ての力を一つにする。真のライディーンの剣、翼を展開した盾、そしてゴッドバード形態のライディーンが一列に並び、そのまま彼らは巨大な光輝く神の鳥となる。

 

「お、オオオオオ! このバラオが、とっくの昔に滅ぼしたムーの守護神などに、敗れるなど、あり得ないいいいいいい!!」

 

 バラオの複数ある目と腕、全身から破壊の光弾を乱射し、日蝕のライディーンを撃ち落とそうと足掻き、更にそれをDCのメンバーが妨害する。

 日蝕のライディーンを目掛けて発射された光弾は、シャアやシーブックを始めとしたエース達によって悉く撃ち落とされて、日蝕のライディーンの飛翔速度を落とす事さえできない。

 エクリプス・ゴッドバードは、そのまま真の剣が形成するくちばしによって、バラオの巨体を真っ二つに切り裂き、バラオの精神体が見る見るうちに結晶へと変化して行く。

 

「馬鹿な!? 私は、バラオ、だぞ? 妖魔大帝、悪魔世紀を創造する、悪魔人の神!?」

 

 結晶と化したバラオが苦悶の声を上げる間もなく、超電磁スピンが、天空剣Vの字斬りが、烈風正拳突きが残るバラオの肉体を次々と破壊して行く。

 バラオの頭上で変形したエクリプス・ライディーンは大弓に変形した真の盾を構え、矢の代わりに真の剣をつがえて狙いを定め、真の剣と盾に込められた膨大なムートロンエネルギーが、光の矢となって射られる。

 

 次々と破壊されて行くバラオはムートロンエネルギーの極大の一撃を受けて、バラオはもはや言葉もなく結晶化した精神体を跡形もなく吹き飛ばされた。結晶化したとはいえ、それはバラオの精神。

 これはバラオの肉体に続き、精神が完全に破壊された事を意味する。この瞬間、一万二千年前にムー帝国を滅ぼし、現代に蘇って地球人類に猛威を奮った妖魔大帝は、完全に死んだのだった。

 

<続>

■日蝕のライディーンを入手しました。

※太陽のライディーンに乗った洸と月のライディーンに乗った晶の気力が130以上で隣接している時、合体できる。メインパイロットは合体コマンドを選択した側となる。

 

☆『時空裁定者(バースルーラー)』マジンエンペラーG

 マジンパワーとしてゴラーゴンを搭載した偉大なる魔神皇帝。マジンガーZEROのカウンターであるマジンエンペラーGとゴラーゴンが組み合わされることにより、マジンガーZEROの魔神パワー『因果律兵器』に対し特攻効果を持つ。

 またマジンガーZEROに限らず、因果律・隣接次元・時空・並行世界などに干渉する系統の技術を無効化ないしは大きく妨害できる。

 プレイヤー的に言うとコンティニューが出来なくなる。

 

☆『時空観測者(バースゲイザー)』マジンカイザー

 光子力反応炉の出力と兜甲児の精神力次第だが、マジンカイザーから派生したあらゆる可能性を観測し、光子力の化身として召喚する機能を有する。

この時空観測者の権限によりマジンカイザーSKLを除く、あらゆるマジンカイザーを召喚可能。甲児次第ではマジンカイザー軍団を召喚し、戦うことやマジンカイザー自身の傷ついた姿を“観測しない”事で否定し、無傷の状態に変換するなどのトリッキーな使い方も、甲児の成長次第で可能となる。

 




年内に終わるペースではなくなってきている!?


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第百二十八話 歴史を改ざんしたっていいじゃない※嘘予告あり

いつも誤字脱字報告、ご感想ありがとうございます。
嘘予告については馬鹿だなあと笑っていただければ幸いです。

話数と並び順を修正しました。

またタイトルの話数を修正しました。


 百鬼帝国、ミケーネ帝国、妖魔帝国、Dr.ヘル軍団、ユラー軍団、その全てを撃破し、月のライディーン、マジンエンペラーGと戦いが終わってみれば戦力が強化される、という敵対勢力からすれば意味の分からない戦果を得たDC。

 存在と非存在の狭間という特異な空間から無事に帰還したDCは、今、ゆっくりとムー大陸を太平洋に着水させる為の作業を行っていた。

 

「オーライ、オーライ」

 

 とシュメシとヘマーが息の合った掛け声を出し、牛歩のペースでムー大陸を少しずつ降ろしている。もしDCが敗北していれば、ムー大陸の大質量が高速で落下し、地球規模の大災害を齎していたところである。

 しかしながら、ルウム戦役でスペースコロニーを破壊し、その破片による二次災害も防いだ実績持ちの双子とフェブルウスが事象制御能力を全開にし、ムー大陸を無事に帰還させる為に全力を尽くしている。

 

 フェブルウス以外にも重力制御機能を有する機体は、ゼファーW0ライザーとウイングゼロ二機のゼロシステムの助けを得たフェブルウスの演算に従い、ムー大陸を支えている。

 またそうでない機体も万が一、ムー大陸が落下してしまった際に備えて、無事な機体が大陸の底に回って物理的に支えている状態だ。アクシズ落下を阻止しようとする場面と似て非なる構図となっている。

 

 原作漫画のゴッドバードにおいて、ムー大陸はアニメでのバラオとの決戦で放射されたムートロンと、真のライディーンの剣と盾に込められていたムートロンが時空を超越して共鳴し、地球側に出現するはずだったものだ。

 それがバラオ精神体との決戦で真の剣と盾のムートロンを消費しつくし、ムー大陸は再び永遠の漂流を行う事となる。

 

 だがこの世界ではアニメ版のムートロンエネルギーの解放と真の剣と盾の内蔵ムートロンエネルギーの解放が、同日の内に行われている。

 その結果、ムー大陸が原作通りに現実世界から離れていけばよかったのだが、こちらではバラオが底意地を見せたのか、はたまたINFINITYとの戦闘の余波なのか、現実世界への接近が加速する結果となった。

 アクシズ落下の代わりじゃないんだから、とヘイデスが原作にはない展開に苦い顔になったのは、言うまでもない。

 

 そのまま行けば地球に大災害となるのを防いだのが、前述したフェブルウスを筆頭としたDCメンバーである。

 かつて地球を救う為に自分達を犠牲にしたムー大陸とそこに生きていた人々の思いを無駄にしない為、そしてムー大陸を地球滅亡のトリガーとしない為、双子達は持てる力を振り絞るのを惜しまなかった。

 

 幸いこの事態にはノイ・レジセイアも全面的に協力してくれており、どこに隠していたのだと言いたくなるくらい大量のアインスト・レジセイアを含む、万単位のアインストが出現し、ムー大陸の軟着陸ならぬ軟着水に取り組んでいる。

 ムー大陸はオーストラリア大陸よりもやや大きい。

 現代に至るまでの調査で、それほど巨大なムー大陸が存在した痕跡を見つけられなかったのは、ムーの神官と科学者達がムー大陸の存在そのものを根本から消す、という魔法の領域に達した技術を用いたからである。

 

 これを覆すにはかつてのムーの人々と同様に、無事に着水させるだけではなくムー大陸は地殻変動で海底に沈むことなく、今日に至るまで無事に存在していた、と歴史そのものを書き換える必要がある。

 DCにはこれを可能とする機体がある。至高神ソルの領域に戻りつつあるフェブルウス、そしてゴラーゴンをマジンパワーとして手に入れたマジンエンペラーGだ。

 

 世界に刻まれた歴史を書き換えながら、現実に帰還したムー大陸を支えつつ、着水を無事に行う。単純に敵を倒せばいいだけの戦闘とは、別次元の難易度を誇るミッションだ。

 事象制御などによる歴史の書き換えなしにムー大陸が着水すれば、大陸級質量の増加とその影響による海流、気候、諸々の変化は計り知れない混乱と打撃を地球圏に齎すだろう。

 

 思わぬところで発生した重大ミッションを事後報告の形で受ける連邦政府高官達は、いい加減慣れたと思った非常識な事態に、目玉を飛び出させるかもしれない。

 激しい戦闘の連続から休憩を挟まずに、数時間に及ぶムー大陸の現実世界への帰還は、作戦参加者達にこれまでの戦いはとは別種の疲労と達成感を与えながら、無事に成功という最良の結果を迎えられたのは、何よりの幸いだった。

 

 ムー大陸の帰還から一日後、地球環境への影響を厳重に観測している最中、そのムー大陸の沿岸部に停泊中のタルタロスの食堂にヘイデスの姿があった。

 戦場では囮役をしているだけだったが、本物の戦場のプレッシャーは彼の神経をすり減らしており、今は疲弊した精神をリフレッシュする為に、ぼけっとした顔でラーメンをすすっている。

 

「いやあ、ボス君、美味しいですよ、このラーメン。本格的にラーメン作りを勉強し始めて、一年と経っていないのにこの味なら、よっぽど立地が悪かったり、店構えがひどいものでなければ、すぐに評判になるでしょう」

 

 ヘイデスが食べているのはボスがヌケ、ムチャと共にいつ頃からか修業を始めていたラーメンである。まだまだ素人の域を出ない三人だが、映画では立派なラーメン屋をやっていたことからも分かる通り、素質を感じさせる『味』に既に到達していた。

 時折、タルタロスやハガネの食堂で供される“ぼすらーめん”は、今ではDC内部ですっかり知れ渡っている。

 

 ゲームでも強化パーツとして実装されたレベルに達するには、もう数年かかるにしても、それでも仲間の作ったラーメンという他に例を見ない食べ物は、すっかり評判だ。

 この世界に機動戦艦ナデシコならびにテンカワ・アキトが存在しない事を、ヘイデスは心中で残念に思った。まあ、そうしたらボゾンジャンプによる奇襲を可能とする木連を相手にしなければならず、更に厄介な事態になっていたのは想像に難くない

 

「へへ、世界中の美味しいものを食べているヘイデス総帥のお墨付きなら、味に自信が持てるってもんだわさ」

 

「よかったでしゅねえ、ボスゥ」

 

「ひひひ、このままぼすらーめんを日本中、世界中にチェーン展開を」

 

 嬉しそうなボスの言う通り、三大財閥のひとつ、プルート財閥の総帥たるヘイデスはいくらでも美食を楽しめる財力の主だが、スパロボプレイヤー成分濃いめの人格となった影響と、元々の好みも相まって飽食とは無縁の生活を送っている。

 むしろ元々のヘイデスは食事を栄養補給と割り切り、サプリメントやカロリーバーで三度の食事を済ませようとするのを、スパロボプレイヤーの人格成分によって、人並みの食生活を送るようになったのだ。

 

 なので今のヘイデスにとってぼすらーめんは、実に口に合う味わいなのである。ゴップやレビル、ワイアットなどはまた意見が異なるだろうが、居ない人間の話をしても仕方ない。

 ヘイデスがラーメンと一緒に出された餃子をラー油、醤油、胡椒、お酢など、どの調味料でいただくか考えている間に、ボスはヘイデスと一緒に食堂に来ていた甲児に目を向けた。

 彼ら以外にもタルタロスを母艦とするメンバーが食堂に居るが、今、ボスの作った日本の大衆的な中華メニューを食べているのは、このテーブルのメンバーだけだ。

 

 マジンカイザーと共にDr.ヘルと戦い、一族との因縁を終わらせた甲児の顔色に疲労はなく、気力と体力に満ちている。手元には大盛のぼすらーめんとチャーハン、焼き餃子、麻婆豆腐、野菜炒めが並んでいる。

 その食欲に育ち盛りの高校生はすげえな、とヘイデスは昔の彼もそうだったのを棚上げにした感想を抱いていた。味噌汁替わりにラーメン、ご飯代わりにチャーハン、サラダの代わりに野菜炒めといった食べ具合である。

 

「そうそう、兜。借りてたマジンガーZだけど、お前に返すぜ。俺達にはやっぱりボスボロットが一番しっくりくるってもんよ」

 

 冬眠に備えたリスよろしく頬を膨らませていた甲児は勢いよく口の中を飲み込むと、少しだけ意外そうにボス達三人をまじまじと見つめる。

 

「それは、まあ、カイザーが使えない時に乗れる機体があるのはありがたいけど、いいのか? マジンガーZで俺が乗っていた時よりも活躍してみせるって、あれだけ鼻息荒くしていたじゃないか」

 

「最初のころはな。なにしろマジンガーZに乗れるんだ。気持ちが昂るのも当然ってもんだろ? でも乗れば乗るほど実感するんだわさ。マジンガーZには兜甲児が一番似合うってよ」

 

 心からの実感を込めて口にされたボスの言葉に、甲児も割り箸を一度置くと、しみじみと噛み締めるように頷き返す。

 

「そうか、そうだな。マジンカイザーはもちろん最強だけど、マジンガーZだって最強なんだ。俺はそう信じている」

 

「へへ、そうでなくっちゃな。Dr.ヘルの機械獣をやっつける姿に憧れた奴らは、きっとお前が考えているよりもずっといるんだぜ、兜」

 

 この会話が交わされている間、格納庫のマジンガーZがドヤっとばかりに目を輝かせ、マジンカイザーがしょんぼりしていたかもしれない?

 

「そういや、鉄也のあの、マジンエンガワ? ジー? っての、格納庫に戻ったらグレートマジンガーに戻ったそうじゃねえか。もうあのエンガワには戻れねえのかな?」

 

 エンガワとはいやはや。

 

「マジンエンペラーGでしゅよ、ボシュ」

 

「鉄也さんに聞かれたら怒られるぞ。鉄也さんがチェックした限り、グレートに融合したINFINITYがマジンパワーの一つになっていて、それが起動した時にはまたエンペラーに変身するらしい。基本的にはグレートマジンガーとして、今後も運用するみたいだぜ」

 

「マジンカイザーとは色々と違う、みてえだな。めちゃんこ強いマジンガーなのは一緒だけど、それでいったらアルトアイゼンとヴァイスリッターもすげえことになってたよなあ」

 

 この世界のアルトアイゼンとヴァイスリッターはパーソナルトルーパーでも、モビルスーツでもない、リアルロボットの皮を被ったマジンガー、マジンガーとゲッターのハイブリッド機となり、上位のスーパーロボットレベルだ。

 

「総帥、アルトアイゼンはまだ順当に強化したのが分かるんですけど、ヴァイスリッターはどうしてあんな姿になっていたんです?」

 

 甲児の疑問はもっともだった。アルトアイゼンは真っ当な機動兵器然とした外見をキープしているが、ヴァイスリッターは半生体兵器のような見た目に変貌している。おまけにエネルギー反応は光子力、ゲッター線、アインストの三種と来ている。

 

「アレはうちの奥さんや各研究所の皆さん、そしてノイ・レジセイアさんのご協力のお陰で改修が成功した機体でして、同じことをもう一度やれと言われても無理でしょうし、機体のコピーもまあ、無理でしょう。

 ラピエサージュ・シンデレラでは、光子力とゲッター線のハイブリッドは上手くいったんですが、ヴァイスリッターではかなり手こずりましてね。仲立ちをする為にノイ・レジセイアさんに専用のアインスト・コアを特注したんですよ」

 

 ひょっとしたらヴァイスコアが学習して、アインストマジンガーとかアインストゲッターロボを生産できるようになるかもしれませんねえ、とヘイデスは味付け卵をもごもご食べながらぼんやりと口にする。

 なまじマジンカイザーがINFINITY戦で刃皇、ライガと召喚? 分裂? して見せた為、光子力反応炉とマジンセルを右半身に使用しているデメルング・ヴァイスリッターなら、可能性がないとは言い切れない。

 デメルング・ヴァイスリッターの左半身には未知の要素の多いゲッターテクロノジーを使用しており、アインストゲッターロボの姿を想像するのもそう難しくはない、という色々な意味でトンデモナイ機体に仕上がったものである。

 

「アインストのコピー能力は大したものですからね。パイロットのコピーは難しくても、高精度の戦闘AIが動かす、準マジンカイザー級機体のやや劣化した性能のコピー軍団と考えれば、敵対者が可哀そうになりますよ。はっはっはっは」

 

 ヘイデスはケラケラと笑うが、残る主な敵勢力はムゲ・ゾルバドス帝国とバサ帝国だ。ムゲ帝王はスパロボのタイトルによっては負の無限力を持つ強大な存在であり、またあるいは黒の英知に触れた高次元の存在でもある。

 ユーゼス共々、原作よりも強化されている可能性のある厄介な敵だ。また第三次αでも決戦に際して、それまでの戦いで倒した版権作品の大ボス達を復活させるなど、厄介極まりない力を見せている。

 

 もしこの世界でもその戦法を取るのならば、ゴールやDr.ヘル、ブライ大帝、大魔人ユラーあたりが復活してもおかしくはない。

 ムゲ帝王のホームであるムゲ宇宙で戦うことを考えれば、デメルング・ヴァイスリッターには実際にアインストマジンガーやアインストゲッターロボを複製して欲しいものだ、というのがヘイデスの本音である。

 

 ヘイデスが頭を空っぽにしてぼすらーめんを啜っているが、プラス要素がないわけではなかった。

 ハイネルと共に増援として駆け付けたジャンギャル、カザリーンも贖罪を兼ねてDCに協力する事となっている。

 なお、彼らを運んできたキングスカールーク。これは原作漫画ゴッドバードに登場する、スカールークの数倍の大きさを誇る巨大な艦で、ボアザン星が地球側に本格的に協力する姿勢を見せる意味も込めて、今回、派遣されている。

 

 反体制派の筆頭であり、前々皇帝ラ・ゴールこと剛健太郎博士と地球の関係は、非常に深い事もあり、地球連邦としてはボアザン星との友好的かつ平和的な関係の構築が強く期待されている。

 同じような理由でキャンベル星の穏健派からは、ガルーダの監視も兼ねてキャンベル星の監視AIに制御されるメガグレイドンが、バーム星からは地球へのお詫びと恩返しを兼ねてコブラード三世が派遣され、こちらにはガルンロールからアイザムとバルバス、ライザが乗り換えている。

 

 さてヘイデスにとってありがたい増援は、ハイネル達だけではなかった。

 現実世界に帰還後、ノイ・レジセイアが今後の戦いでの協力を申し出て、更にヴァイシュラバもまた御使いの残党を片付けるという名目で、同行を申し出たのである。

 ノイ・レジセイアの協力は確定路線ではあったが、ヴァイシュラバに関しては若干怪しいところもあった為、ヘイデスとしてはラスボス級の味方が増えた事実に、静かに歓喜したものである。

 

 噂をすればなんとやら。そのヴァイシュラバが食堂に顔を見せて、あれこれと注文を終えるとヘイデス達のテーブルに近づいてきた。手に持ったトレイにはジャンクフードが山盛りとなっている。

 ヴァイシュラバの目当てはヘイデスだったらしく、食堂に居るDCメンバーの視線を集めながら、こちらのテーブルへとずんずんと歩み寄ってくる。

 生身でも量産型のスーパーロボット程度なら容易く破壊する怪物の視線に、ヘイデスは胃がキュッとなる思いだったが、せっかくのぼすらーめんを吐き出すわけには行かないと、腹を括る。

 

「よお、邪魔するぜ」

 

「どうぞ、お好きな席に」

 

 さしもの甲児やボスも生身で対面すると、ヴァイシュラバがただものでないのを肌と本能で感じとり、険しい顔立ちになる。仲間として受け入れていたなら、こうも固い雰囲気にはならなかっただろうが、今はまだ、謎の部分が多すぎるから警戒の念が解けきれないのだ。

 

「この世界のマジンガーはゼウス神とは欠片も関係がねえようだな」

 

 ちらりと甲児に視線を送り、ヴァイシュラバは顔見知りが居ない事実を確かめるように口にした。

 ヴァイシュラバの知る限り、あるいはZシリーズの世界ではミケーネ帝国は宇宙の彼方から古代の地球に飛来したオリュンポスの神々であり、マジンガーZは、人類抹殺を決めたオリュンポスの神々に反旗を翻した、光の神ゼウスと縁の深い機体だ。

 しかるにこの世界では闇の帝王や暗黒大将軍、ミケーネの戦闘獣達はオリュンポスの神々の如く歪んだ真化を遂げた機械神ではなく、あくまで強力なサイボーグ軍団であった。

 

「まあ、この世界は御使いや聖戦とは縁遠い場所ですから」

 

 ヘイデスのいかにも全ての事情を知っていますと言わんばかりの台詞に、ヴァイシュラバは甲児から視線を移し、そうかい、と呟くとトレイのジャンクフードの山を平らげる作業に移る。

 体が資本のパイロット向けの特大XXXLサイズのホットドッグにハンバーガー、ピザやフライドチキン、フライドポテト、オニオンリング、各種のパイ、コーラにジンジャーエールなどのドリンクが見る間にヴァイシュラバの胃に収まってゆく。

 ヴァイシュラバが三万キロカロリーは摂取した辺りで、とっくに食べ終えていたヘイデスがスーツのポケットから一枚のクレジットカードを取り出して、ヴァイシュラバへと差し出す。

 

「食べながら構いませんので、聞いてください。これはDCに協力してくれている民間の善意の協力者の方達に、用意しているICカードです。戦闘参加手当を振り込むための口座からクレジットを引き出すのはもちろん、プルート財閥系列と連邦政府直轄の施設で優待を受けられるもので、ヴァイシュラバさんの分です」

 

「いらねえよ。俺は御使い共の残り香を片付けたら、この世界を去る予定だ。いなくなる人間には不要な代物だろう。気持ちだけ受け取っておくぜ」

 

「まあ、そう言わず。あなたがこの世界を去って、いろんな世界を巡り回ったとして、たまにこの世界を思い出してふらっと立ち寄った時にでも使ってください。天下の次元将が無一文では、格好がつかないでしょう。

 それにクォヴレー君にも同じものを渡してあります。彼も並行世界の番人として、望まずとも多くの世界を渡り歩かざるを得ない運命にある。ですが止まり木となる世界の一つや二つがあってもいいでしょう? それは貴方も同じだと僕は思うわけです」

 

 言いたいことは言い切ったぞ、と内心の緊張をそろそろと細い吐息に変えて吐き出し、ヘイデスは水の入ったコップを手に取り、乾いた喉を潤した。

 ヴァイシュラバは食事の手を止めてヘイデスの様子を見つめ、観念したように差し出されたICカードを受け取る。どうやら降参らしい。

 

「口の達者な奴だ」

 

「パイロットとしては三流もいいところですから、それ以外の部分を伸ばすしかないもので」

 

「操縦技術以外は超一流だろう。この世界に来てからプルート財閥の名前はどこでも聞いたぜ。アンタがこの世界に於ける大特異点なのかもしれん」

 

 フラスコの世界を観測する側の視点を持っていた、という意味では確かにヘイデスはオンリーワンのイレギュラーではあるが、本人としてはZシリーズのシャアやアクシズ、桂木佳やオルソン、ツィーネのような役回りはごめんである。

 もうこれ以上、重荷を背負うのは一般人的メンタルを持つヘイデスとしては、勘弁してほしいのだ。

 

「因果律や並行世界、事象制御……どれもややこしい概念で、今回の戦いが終わったらしばらくは耳にするのも避けたいですよ。

 ただでさえ複数の侵略者との戦いが終わって、その復興に力を割かなければならず、新たな敵の可能性についても警戒しなければならないんです。概念的な話の絡んでくるそういうのは、もう相手にしたくないですねえ」

 

「だが、俺の見立てではお前達は既に太陽の時代、Zの終局に達している。シュメシとヘマー、フェブルウスが居る影響もあるだろうが、真化のステージを順調に進んでいる。

 まだまだ時間はかかるだろうが、人類全体が高次元生命体に昇華する可能性は極めて高いだろう。リヴァイブ・セルで代用し、挙句に力及ばずに滅んだ俺の故郷や、中途半端な俺自身とは違ってな」

 

 ヴァイシュラバの声に悲壮感や嘆きの響きはない。少なくともヘイデスが聞き取れないくらいには、彼の中で割り切りが出来ているようだった。ヘイデスがなにかを言う前にヴァイシュラバはこれからのDCと地球圏の行動について、問いかけた。

 

「それで次はムゲの宇宙に殴り込んで、最後にユーゼスの奴が相手か? ムゲはこの世界では歪んだ真化の果てに進んだ存在ではないが、手強いぜ。まあ、こっちにもゲッター線の申し子や光子力の化身、神の鳥に人と獣を超えた神の戦士と、化け物ぞろいだがよ」

 

「順当にいけば、侵入経路の判明したムゲ・ゾルバドスとの決着が先ですね。それから万全を期してバサ帝国のヘルモーズなり本拠地を発見次第、殴り込みをかける。今後の戦争計画としては、そんなところですよ」

 

 地球圏の重要人物となったヘイデスとしては、目の前の戦闘のみならず戦後も考えなければならず、ボアザン、キャンベル、バームとの関係再構築、フリード星を筆頭とする銀河共栄連盟との関係もそうだ。

 銀栄連に所属する惑星国家の多くはベガ星の苛烈な支配により、どこもかしこも疲弊しきっており、地球側が援助するのも難しく、非常時の支援を期待するのも難しい現状だ。ぶっちゃけ、復興が進むまでの間、頼りにならないのである。

 

 銀栄連加盟国やボアザンらからの情報提供で、この宇宙にはスパロボでもお馴染みの勢力が複数存在しているのが確認されており、ヘイデスは本大戦が終わった後には、それらとの戦いが待っているのを知ってしまっていた。

 本大戦の傷跡が癒えた後でなら、太陽系の侵入を許さずに全勢力ボコボコにして返り討ちにしてやる、と心の片隅では暗い闘志を燃やしている。

 

「出来ればあなたにはこの戦いが終わった後も、民間の善意の協力者として十年ぐらい残っていて欲しいんですけどねえ~」

 

「よせよ、評価して貰えるのはありがたいが、俺も少し戦いから遠ざかろうかと考えているんだからよ」

 

「へえ。まあ、嫌ってほど戦ってきた事は知っていますし、好きにしたらいいんじゃないですか。今更、次元獣を増やす為に無軌道に戦いを吹っかけて回るわけでもないんでしょ?」

 

「本当になんでも知ってやがるな。次元獣はもう俺の手元には一体も、いや、一人も残っちゃいねえ。昔からの付き合いの連中も、今は安らかに眠っている」

 

 ヴァイシュラバの言う『昔からの付き合いの連中』というのは、黄金の体色を持つ真の次元獣達の事だろう。きっとあれらはヴァイシュラバと同じ文明の仲間達だったのではないだろうか。

 

「そうですか。冥福を祈っても?」

 

「一度だけ、そうしてくれりゃ十分だ」

 

 ヴァイシュラバは目元の皺を緩め、穏やかな顔でヘイデスにそう答えるのだった。はるか昔に滅び、影も形も無くなったヴァイシュラバの故郷だが、縁もゆかりもない誰かであっても、その終焉に対し鎮魂を祈ってもらえることは、意外と嬉しいものだったようだ。

 

 

「ほんほん、アルトアイゼン・ブルクもデメルング・ヴァイスリッターも、想定通りの性能を発揮したようでなにより。マジンカイザーとグレートマジンガーについては想定外の現象を起こしたようですが、プラスに働いたのですから、前向きに考えましょう」

 

 トランザムブースターを装着したVF-1Sを自ら操縦し、ムー大陸沿岸部に停泊中のDCを訪ねた所長が、タルタロスの格納庫に鎮座する魔神皇帝達を見ての台詞である。

 兜十蔵、剣造博士や弓教授、早乙女博士、各研究所の所員達がハードワークの影響でまだ寝込んでいる一方、一日の休憩で完全復活した所長は、いつもどおりパイロットスーツの上に白衣を重ね着して、前を閉じた衣装である。

 本物のプラチナに勝るとも劣らない輝きのプラチナブロンドの髪は、シニョンに纏められている。

 

 生身の戦闘能力では人類のトップ五指に入る女傑は、快活な調子で自ら手掛けた機体を次々と見て回る。

 残る決戦がムゲとユーゼスとの二回と推測される以上、機体とパイロットのコンディションチェックは何時にも増して熱が入るというもの。

 所長の後をちょこちょことカルガモの雛のようについて回っていたグランド・スター小隊と双子達は、やる気に満ちた母親の姿と健康な顔色にほっと安堵する。父親の方が慣れない囮役をやって、顔色を青くしていた分、子供達の安堵の色は濃い。

 

「あなた達も激闘を無事に戦い抜いて、なによりです。残る戦いもわずかでしょうが、気を抜かず無事に生きて帰ってきてくださいな。私も出来る限りのことをしますから。

 フェブルウスはシュメシとヘマーと同調して、能力を取り戻していますが、オウカ達の機体はテコ入れをしないといけませんね。私のヴァルシオーもマジンカイザーや真ゲッターシリーズ、ディス・アストラナガンに比べると見劣りがしますし……」

 

 はあ、と所長は憂いに満ちた吐息を零す。生涯最高傑作として開発したヴァルシオーが究極の機械守護神と呼ぶには、既に性能が不足している現状に生みの親として無念に思う気持ちが大きくある。

 やはり自分はどの分野でも一番にはなれないらしい、とつくづく痛感させられていた。十分、ラスボスを務められるだけの性能はあるのだが、比較対象もおかしいレベルの機体ばかりであるから、如何とも言い難い。

 

「ですが、母様。ヴァルシオーはもちろんラピエサージュ・シンデレラもこれ以上、改良の余地がありますでしょうか?」

 

 所長の落ち込んだテンションを察し、オウカはさりげなく話を振って話題を変えようと誘導する。

 

「ええ、流石に大々的な改修は残された時間を考えると厳しいですが、より高性能なパーツとの交換や装甲素材の変更で、ある程度は性能の向上が見込めます。

 ビルトファルケンとビルトビルガーは超合金NZαと光子力反応炉への換装とフレームの強化、武装の更新を行いますから、グレートマジンガーの仕様変更した時と同程度の性能向上が期待できますからね。

 オウカのラピエサージュ・シンデレラに関しては、デメルング・ヴァイスリッターの開発データと今回の戦闘データを参照して、改修の方向性を考えます。

 ヴァルシオーとヴァルシオーラも似たようなものです。こちらはデンドロビウムやクレヴェナール、スペイザーを参考にした方がいいかも……。

 まあ、これからは私も本大戦が終結するまでは、総帥共々、DCに同行しますから、手を加える時間はなんとか確保できるでしょう」

 

 所長の言う事は事実であった。これまでほとんど前線に出なかったヘイデスと所長がヴァルシオーに乗って、DCに合流する事は地球連邦政府にも通達済みである。

 ムゲにしろユーゼスにしろ、これからの戦いで負ければ地球が征服されるか滅亡するのは確定しているのだ。だったらヘイデスも所長も人並み以上に戦える力があるのに、後方で後生大事にしても仕方ないとして、説き伏せたのだった。

 アインスト空間への避難も出来なくなった以上、もはや地球人類は背水の陣なのだ。太陽系脱出に関してはクラックス・ドゥガチの木星移民達に託してあり、彼らこそ地球人類が完全に絶滅しない為の最後の保険となる。

 

「ムゲ・ゾルバドスの支配する宇宙に殴り込みをかける事になるでしょうから、また一層、激しい戦いになりますよ。頼れる味方も多いですが、つまらない油断で危険な目に遭わないように気を付けていきましょうね」

 

 そうして所長は愛する我が子達に、ピクニックに出かける前に注意を促す母親のように優しく諭すのだった。

 

<続>

■キングスカールークを入手しました。

■メガグレイドンを入手しました。

■コブラード三世を入手しました。

■次元将ヴァイシュラバが加入しました。

■ノイ・レジセイアが加入しました。

 

 

☆第二次スーパーロボット大戦■■ 嘘予告編

前作スーパーロボット大戦■■のベリーイージールートのクリアデータを引き継ぐか、本作の難易度イージー・ノーマル・ハードをクリアすると、設定からして異なる隠しルートをプレイできる。

 

 

〇新代歴187年に勃発し、一年余りに渡って行われた『太陽系大戦』は地球人類とその友邦達の勝利によって終結を迎えた。

 大戦の終結に伴いDCは解散。クォヴレー、ヴァイシュラバ、KOS-MOS、T-elos、ジンはそれぞれ新たな世界へ旅立つか元の世界へと帰還。

 

〇新代歴188年

 地球連邦政府は新時代の到来に対応する為、解体し、新たに『太陽系連邦政府(太陽連)』を設立。初代大統領という名の生贄には太陽系大戦において地球人類を大きく支えたヘイデス・プルートが選出された。

 聞いていない、と悲鳴を上げるヘイデスであったが、選ばれた以上は仕方がないと涙を呑んで職務を全うする覚悟を固める。

 政権転覆したボアザン、キャンベル、バーム並びに銀栄連との友好関係を深める中、バーム星人達は入植可能な惑星(マクロス世界に於ける惑星エデン)を発見し、ダイモス関係者を含む地球人の一部と共に入植を開始する。

 地球では復興に勤しむとともに、新たな敵に備えた新技術の開発と既存技術の発展や応用、機動兵器の充足などが図られることとなる。

 太陽系内外で運用する艦艇や機動兵器を使い分ける構想が立ち上がり、太陽系外での活動に主眼を置いた新型艦艇の開発計画がスタート。

 外宇宙向け次期主力艦艇としてドライストレーガ級、マクロス級、ヤマト型(全長3,330m)の建造が始まる。

 

〇新代歴189年

 水星、金星、土星、天王星、海王星の開拓計画が立ちあげられる。また太陽系各惑星、月、各サイドへのワープゲートの建造と設置計画開始。

 複数の星間国家からなる共和連合ゾヴォーグより、メキボス・ボルクェーデを長とする使節団が来訪。

 地球側からは医療技術や鉱物資源、テラフォーミング技術など民間へ恩恵の大きな技術や交流を求め、ゾヴォーグ側からは軍事技術の供与や共同研究を主とする友好条約が締結される。

 

 地球近海にソーディアン──ラディ・エス・ラディウスが出現。ダークブレインによって破壊された三隻の内の一隻と思われる。内部調査と共に修復が試みられ、ソーディアンズガードの修理・複製が行われる。

 ソーディアンズガード、太陽と月のライディーン、古代ムー大陸の遺跡から得たデータを元に科学要塞ムトロポリスにてゴッドライディーンとREIDEENの開発がスタート。

 

〇新代歴190年 第二次スーパーロボット大戦■■開始

 地底世界ラ・ギアスよりシュテドニアス連合国がチベットに、バゴニア連邦共和国の軍勢がバミューダ海域に出現。太陽系連邦政府に宣戦布告すると共に侵攻を開始。

 シュテドニアス連合軍はギルドラゴン率いるギル・ベイダー部隊、デスザウラー率いるジェノザウラー部隊、このほかユーラシア管区軍八千機の猛反撃により、地上では精霊の加護を得られずパワーダウンした魔装機部隊は次々と敗退し、あっという間に壊滅。

 この際、シュテドニアス系魔装機とエウリードが鹵獲される。

 

 バゴニア連邦共和国はデススティンガー率いるマリンスティンガー部隊、このほか太陽連軍六千機の総攻撃を受け、瞬く間に壊滅。

 この際、バゴニア連邦共和国系魔装機ならびにガッツォーが鹵獲され、ゼツ・ラアス・ブラギオの戦死が確認される。

 ガッツォー内部より剣聖シュメル・ヒュールの脳が回収され、生体サイボーグとしてシュメル復活。シュメル、ゼツの自身への仕打ちと祖国のやらかしに頭を抱える。

 なお太陽連関係者は、バゴニアは、自国の英雄を殺害して脳を利用するようなマッドサイエンティストを国防の最高責任者に据えるような国だと認識。シュメル、更に頭を抱える。

 

 外宇宙よりガルラ大帝国、ギシン帝国、暗黒ホラー軍団、ザール星間帝国が襲来。

 銀栄連からの情報提供により襲来を察知していた太陽連軍、マジンカイザー、マジンエンペラーG、真ゲッターロボ、真ゲッタードラゴン、真ドラゴン、コンバトラーⅦ、ボルテスV6、獣戦機隊、ライディーンなどのスーパーロボット軍団ならびにアインストの大軍勢により、撃退。

 これら外宇宙の侵略者達による第一次太陽系侵攻は頓挫する。この後、ガイキング、ダルタニアス、ゴッドマーズ、ゴライオンと関係する機関、部隊が発見・参入される。

 太陽系内外の脅威に対抗する為、太陽系連邦軍独立遊撃部隊『ノイエDC』が結成される。

 司令官はヤマト艦長である沖田十三中将。各スーパーロボットの他、旧DCのメンバーの内、軍籍にある者が招集を受ける。

 

 シュテドニアス連合国ならびにバゴニア連邦共和国への逆侵攻作戦開始。地上に残っていた両国の残党部隊を撃破後、ラ・ギアスへ。ノイエDCも参加。

 地上で改修が施されたエウリード・レイ部隊、地上製魔装機イズラフェール(真・魔装機神参照)を含む各一万機前後、合計約二万機の部隊がゲートを通じてラ・ギアスへ。

 シュテドニアス連合国とバゴニア連邦共和国の軍事基地を次々と陥落させるが、バゴニア連邦共和国とは戦乱を煽ったゼツが戦死していた為、早期に講和。

 

 一方でシュテドニアス連合国との戦いは激化し、魔装機神隊の介入が検討される。積極的に魔装機神隊が動かずにいたのは、あくまでシュテドニアス連合国が侵攻した地上国家との戦争である為。

 またシュテドニアス・バゴニアが侵攻したのが、魔装機神操者達の出身地である地上とは異なる並行世界だと判明。

 ヘイデスがマサキ・アンドーはこの世界に居ない事を確認していたにもかかわらず、ラ・ギアスからの侵攻が起きたのはこの為。

 シュウ・シラカワいるじゃねえか! とはヘイデスの魂の叫び。ヴォルクルスの支配から逃れているのは、不幸中の幸いと胸を撫で下ろす。

 太陽連軍、たっぷりと賠償をせしめた上でシュテドニアス連合国より撤退。魔装機神隊とは交戦せず(選択肢次第では戦える)。

 

 太陽系外縁にて新たな敵性勢力の侵攻が確認される。

 超文明ガーディムならびガトランティス艦隊が太陽系へ侵攻。両艦隊とノイエDCによる三つ巴の戦いの中、四つ目の勢力イスカンダル同盟所属ガミラス艦隊が参戦。ノイエDCを援護する。

 戦闘後、太陽系への使者として派遣されたザルツ人ヴァルケ・シュルツより、太陽系連邦並びに銀栄連との友好関係構築の意志が伝えられる。

 

 イスカンダル同盟とは? 波動砲でボコスカ敵対文明を滅ぼしていたイスカンダルとバチボコにやり合っていた超文明ガーディムがスパロボVとは異なり、現代に存在して大マゼラン銀河でガミラスとやり合っている事。

 更にガトランティス帝国の攻勢が加わり、危機に陥ったガミラスが主導し、イスカンダルを名義上の盟主とする相互防衛条約を批准した同盟。

 

 この影響でデスラーが、他所の星の征服や統治なぞしていられるか! という半過労死状態に追い込まれている為、原作でガミラスに征服されていた星々は独立を維持しており、戦闘においてはガミラス製兵器のモンキーモデルやライセンス生産した兵器を運用し、ガミラスと肩を並べてガーディムやガトランティスと戦っている。

 シュルツが天の川銀河にやってきたのはガーディムとガトランティスの魔の手が伸びたのと、新たな味方を求めてのこと。

 

 新たな敵対勢力の出現に頭を悩ませる政府だが、ここにきて暗黒ホラー軍団やザール星間帝国などの侵攻が、地球を危険視したゾヴォークのウェンドロ、ゼゼーナンといった一派が情報を流して誘導したことが発覚する。

 メキボスをはじめ地球との平和的交流を求める一派も存在するが、この事態によってゾヴォークとの関係が一時的に悪化。なおウェンドロ、ゼゼーナンはそれぞれ別の部隊を率いて地球圏に侵攻。

 火星を占領するべく攻勢を仕掛けるが、ノイエDCによってボコボコにされ、小惑星地帯へ撤退。この際、ライグ=ゲイオス、ゲイオス=グルード、ゼラニオ級など鹵獲。解析と複製、改良がスタート。

 ノイエDC、太陽系に侵攻してくる勢力を撃退する部隊と大マゼラン銀河に進出しガーディムやガトランティスと戦う部隊へ分割。

 

 

──ここまでは考えた。

 

 

☆リアル系女性主人公

ディー・トリエル(GジェネDS参照)

搭乗機体:センチュリオ・トライア(イベントによって強化)

 

 原作ではニュータイプとスーパーコーディネイター、ガンダムファイターの遺伝子を掛け合わせたクローンをDG細胞ベースのナノマシンで強化したという設定だが、本作ではユーゼスが手掛けた次なる手駒であり、念動力の素養も追加されている。前大戦の最終決戦で保護された。

 

☆スーパー系男性主人公

 ケイサル・エフェス(17歳)

 搭乗機体:ジュデッカ → ゲベル・ガンエデン → ■■■・ガンエデン

 

 あくまでこの世界で生まれたケイサル・エフェス。サイコドライバーの素質を見込まれ、軍にスカウトされた少年。強大な念動力を活かす為、前大戦で撃破後、再生し解析と改造が施されたジュデッカを最初の搭乗機とする。

 

☆リアル系男性主人公

 ビアン・ゾルダーク(20歳)

 搭乗機体:ヴァルシオン → ネオ・ヴァルシオン

 

 あくまでこの世界で生まれたビアン・ゾルダーク。所長の開発したヴァルシオーを見て感激し、これを超える機体、究極ロボを開発するという熱意に燃え、自らヴァルシオンを開発し、地球の危機においては自ら乗り込んで戦う。

 ラ・ギアスにて並行世界の娘と遭遇する事になる。

 

スーパー系女性主人公は思いつかなかった。




この世界のヤマトはフーレ級をベースに2199世界の十倍、3,330メートルになる予定。
ヤマト系は2199シリーズベースのごちゃまぜですね。

追記
ヤマト級 → ヤマト型


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第百二十九話 五本指※嘘予告2

嘘予告でイルイの名前がないのは、イルイ自身の本名やナシム・ガンエデンの中の人の名前が分からないから、という理由です。
ゲベル・ガンエデンの中の人はケイサル・エフェスだったわけですから、ガンエデンとは関係のない個人名があるはずと考えているので。

嘘予告にいろいろ追加しました。


 地下勢力あるいは地底勢力連合との戦いを終え、休養と機体の修理、補給、強化を終えたDCはこれまでのムゲ・ゾルバドス帝国との交戦で得られた、かの帝国の異次元座標をもとにワープを行い、ムゲ・ゾルバドス帝王の撃破を目標とする殴り込み作戦に挑む。

 ムゲの側から降伏や停戦の申し出があれば話は別だが、原典や参戦したスパロボシリーズでの言動を鑑みても、それはまずあり得ず、ヘイデスとしては続編OVAのような展開にならないよう、徹底的にムゲの魂魄に至るまで消滅させたいところである。

 

 タルタロスに用意された私室で、自分に万が一があった時の指示書を改めて確認し終えたヘイデスは、椅子の背もたれに体重を預け、開発の間に合わなかった竜戦士を惜しむ。

 元ネタは少年ジャンプに連載されていたバスタードに登場する半生体兵器だが、いくらなんでもそっくりそのまま再現できるわけもない事は、ヘイデスとて承知の上である。

 そもそも竜戦士を作ろうとしたのではなく、出来上がったもののスペックを見て、冗談半分に『竜戦士』という新しい機動兵器のカテゴリーを作り、その一号機としただけの話だ。

 

 トミイ博士によって完成した デスザウラー、デススティンガー、ギルドラゴン、ウルトラザウルスといった超大型ゾイドのデータをベースに、ズール皇帝を筆頭とする霊的存在との決戦を想定した、半生体兵器の開発プロジェクトを立ち上げたのが始まりである。

 参考にした機体が機体だけに全高数百メートル級の巨大機動兵器となるソレは、最初期の完成予想図では二本足の武装した竜といったデザインとなり、これを見たヘイデスがバスタードの竜戦士、特に竜王子ラーズの融合した試作型竜戦士プロト・ワンを連想して、竜戦士と命名したのだ。

 

 そうして開発の進められた竜戦士はヘイデスの想定を超え、漫画のソレに近づいており、いやいやいやいや、バスタード世界の天使や悪魔がこっちにも存在するとか言わないで下さいよ、とヘイデスは大量の冷や汗を流した経験がある。

 あの世界の天使や悪魔は恒星破壊級の攻撃力にクェーサー並みのエネルギーを持ち、宇宙空間や時間停止空間でも自由に行動可能な高次元存在だ。

 

 スパロボの世界とでは、畑違いにも程があるのだから、それほど心配してはいないが、敵対者をズール皇帝クラスと仮定すると、本当に元ネタ並みの性能が欲しいところではあるのがヘイデスの本音である。

 とはいえ今は間に合わなかった機体よりも、すぐに直面しなければならない現実について、思考のリソースを割くべきであった。

 

「原作では断空剣の投げつけで倒せた相手とは言え、スパロボでは能力を盛られるから、油断は出来ないか。これまで倒した版権のボスを復活させたりしてくるんだろうが……」

 

 ワーバラオが関わってくるのか? それがヘイデス最大の懸念だった。まあ、ヴァイシュラバにノイ・レジセイアも加わっているのだから、戦力的な不安はほとんどないのだけれども。

 

 

 地球圏の防衛をトレーズやヴァルダー、ティアンム、ワッケイン、ワイアットらを含む歴戦の将兵達に委ね、DCはこれまで培ったワープ技術と異星文明の協力を得つつ、ムゲ宇宙へ艦隊一丸となって殴り込みをかけた。

 ユーゼスの支配するバルマー・サイデリアル連合帝国は不気味な沈黙を保ち、アクシズと小バームを失った今、旗艦と領土を兼ねるヘルモーズを太陽系内のどこか、あるいは異次元空間に隠して状況を見守っているものと考えられている。

 

 ムゲ帝国との戦いの後に迎えるバサ帝国との決戦に備え、宇宙に戦力を集結し、コロニーレーザーやソーラーシステム、リーブラといった戦略兵器の投入も決定している。

 いずれにせよ、α世界で肉体を失ったユーゼスがどこかの世界のアイン・バルシェムの肉体を乗っ取り、更に多くの世界を渡り歩き、御使いの残党までも吸収したバサ帝国の戦力の底は見えない。

 

 オリジナルのゼル・ビレニウムやエル・ミレニウム、アンゲロイ・アルカ、そしてヘルモーズやズフィルード、ジュデッカ、さらに劣化版とはいえ量産されたアストラナガン・アフといった強力な機体の存在も懸念されている。

 ムゲとの戦いを通じて更なる経験を積み、戦闘技術と精神を鍛え上げてなお、死力を尽くし、勝機があるかどうか、そんな戦いになるのはほぼ間違いなかった。

 

 そして、ムゲ宇宙へと突入したDC艦隊は原作通り、ムゲ帝王の力によって紅い宇宙に誘い込まれ、そこでデスガイヤー、そしてヘルマット率いるムゲ帝国の大艦隊と交戦し、これを撃破していた。

 ムゲ帝国側の戦力は原作に比べればはるかに豊潤だったが、それを言い出したらダンクーガ側の戦力の充実具合と来たら、ムゲ帝国側が可哀そうになるレベルである。

 

■共通ルート 第六十話 暗黒達の終焉

 

 ムゲ宇宙の中に浮かぶ巨大な城の直上に浮かぶムゲ・ゾルバドスを中心に膨大な数のムゲ戦艦、ムゲ戦闘空母、ゼイ・ファーとそのバリエーションであるベータ、ガンマが布陣しており、万全の構えでDCを迎え撃っていた。

 別次元の死者の怨念までも流れ込むというムゲ宇宙を支配するムゲ帝王は流石の強敵であったが、所長の手で生まれ変わったファルケン、ビルガー、ラピエサージュ、そして新たな翼を手に入れたダンクーガを前に、ムゲ帝国兵達は砂のように散らされている。

 

 ダンクーガは今、ブラックウイングに代わり、アランの搭乗するアルティメット・ブラックウイングと合体し、剥き出しになっていたコックピットをカバーする増加装甲や大型ブースターを手に入れた、究極最終の超獣機神ファイナル・アルティメット・ダンクーガへとパワーアップを果たしていたのである。

 スーパーロボット大戦30に参戦したアルティメットダンクーガには、アランが乗っていなかったが、ファイナルダンクーガにアルティメット要素を加えた本機体は五人乗りのままだ。

 

 FUダンクーガの存在もあり、怒涛の勢いでムゲ帝国兵を蹴散らして行ったDC艦隊であったが、彼らの前にムゲ帝王とは異なる存在が立ちはだかり、苦戦を強いられる事となった。

 それは妖魔帝国の戦闘母艦ガンテを思わせる巨大な手であり、その真ん中の指先にはこれまで見たことのない顔が浮かび上がっている。

 とてつもない悪意とプレッシャーを放ちながら、ムゲ宇宙に出現したソレを見た時、ヘイデスは眉根を寄せて吐き捨てた。

 

「ワーバラオ、ここで来るか……まさか?」

 

 世界を白と黒に分けた時、黒の側に立って白一色にならないようにバランスを取る役目を持つワーバラオは、決して白に負けきる事はないが、同時に勝ちきる事もない。闇は光に屈しないが、光を染めきることも出来ない。

 それがワーバラオを縛るルールであり、ワーバラオの最大の武器であると同時に弱点でもある。だがここはムゲ帝王の支配する、ムゲ宇宙。ならばワーバラオはルールに縛られる事無く、白であり光であるDCを滅ぼせる。

 

 はたしてヘイデスの推測は当たっていた。

 このムゲ宇宙でならばワーバラオは、あちら側のルールに縛られることなく、DCを、原作漫画に照らし合わせれば二機のライディーン、コン・バトラーV6、ボルテスⅦ、ダイモス、フォボスを殺し尽くせる、とそう考えていたのである。

 

 ワーバラオの他の四本の指にはゴール、ブライ、Dr.ヘル、オルバンの顔が浮かんでいる。DCがこれまで倒してきた者達の中で、ワーバラオに見込まれ、取り込まれた者達の顔だ。

 これまでヘイデスの知識と古代ムー帝国の預言以外には、一切不明の存在であったワーバラオの出現に、DC側は警戒を強くして布陣の再編成と弾薬の補給、応急修理を急がせている。

 

「なんだ、あいつは? ライディーンがこれまで以上に警戒している?」

 

 既にエクリプス・ライディーンに合体していた洸は、二体のライディーンの発する警告とバラオすら取り込んでいるワーバラオから発せられる邪気の凄まじさに、粘っこい汗を流していた。

 

「油断するな、二人とも。あの魔力、バラオすら上回っている。このムゲ宇宙に侵入してきた事から考えて、尋常な相手ではない。なによりライディーンのその警戒ぶり、どうやらムゲ帝王と同等の脅威のようだな」

 

 専用にカスタマイズされたギルディーンに乗るシャーキンは、エクリプス・ライディーンに乗っている二人の“あきら”に、警告を発した。

 バラオから授けられた妖魔の力は今なお残り、悪魔人としての力を奮える彼だが、宇宙空間や異次元で問題なく行動できるかは不明だった事もあり、修復されたギルディーンを乗機とし、ザマンダー用に開発されていた武装を流用して重武装化が施されている。

 

「伯父さん。うん、私達も感じるよ。それに他の四本の指に浮かんでいる顔からも、凄い憎しみを向けられている」

 

 念動力を持つ洸たちばかりでなく、高い感応力を持つニュータイプ達や野生の本能を極限まで高めている忍達獣戦機隊の面々、クォヴレーや双子達もワーバラオの危険性を理解し、警戒の念を高めている。

 いかにも悪役らしい高笑いと共に出現したワーバラオは、周囲に取り込んだ四人の支配していた勢力の機動兵器を何十、何百と展開し、自らの傀儡として支配する。

 ムゲ帝王は自分が召喚しようとしていた者達の魂が、既にワーバラオに取り込まれていたのを認識し、さらにその卓越した超能力によって世界の理に相当する超存在であるのを理解する。ムゲ帝王もまたこのムゲ宇宙を支配する超越者であるが故。

 

「ほう、貴様のような調整者が存在するか。だが我が宇宙は貴様の管轄外であろう。不届きな侵入者として排除されるのが望みか?」

 

 数多の死霊を従え、帝王の威厳と共に問うムゲ帝王にワーバラオは余裕のある笑みを浮かべながら答えた。

 

「ふふふふ、短慮はよくないな。この宇宙の帝王よ。私は君が攻め込んできた宇宙の黒、闇、マイナスの側として天秤の秤を動かす者さ。何時だって終わりのないパワーゲームを担当してきたが、今回の戦いは特別なのだよ。

 君ならもう理解しているだろう? ここは君の宇宙だ。ならば白、光、プラスを担う彼らを相手に、完全に滅ぼす事が出来る。なぜならここは私の宇宙の根源的ルールが適用されない場所だからだ。

 君が私の宇宙をその暗黒で染めるのか、それとも私という暗黒に飲まれるか、試すのは彼ら、DCという光を消し去ってからではどうだ?」

 

「世界のルールの代弁者が自らルール破りを行うか。駒としての役割を逸脱するつもりであるのなら、あちらの宇宙になにかしらの綻びが生じているか、既に破綻しているのか、あるいは……。

 いいだろう。私とは異なる暗黒の力を持つ者よ。ダンクーガを始めとした希望の光を消し去るまでの間、我が宇宙での貴様の狼藉を見逃してやろうではないか」

 

「はははははは! 流石は一つの宇宙を統べる帝王だ。大きな度量の主でよかったよ。さあ、待たせたな、DCの諸君。私とムゲ帝王との会話である程度察しはついているかもしれないが、私はワーバラオ。

 はるかな太古、バラオを始めとした悪魔人、妖魔達に力を与え、ムー帝国に滅びを齎したものだ」

 

 ガンテを思わせる姿にバラオを取り込んでいる姿。エクリプス・ライディーンが率先して発する警告と、なにかしら妖魔帝国と関係があるのを推測するのは難しくはない。だが、それをワーバラオ自らの口で告げられた事で、DC各員に新たな緊張が走る。

 

「ムゲ帝王が世界のルールの代弁者と述べていたが、貴官の正体はなんだというのだ? まさか宇宙の意志が具現化したとでもいうつもりか?」

 

 ハガネの艦橋から問いかけるレビルにワーバラオ自身の顔はニタニタと、自分が絶対的な勝者であると疑わない笑みを浮かべて答える。

 

「そのようなものだよ。君達には知覚できない領域の話だが、この世界は常に均衡を保とうとする。善と悪、白と黒、光と闇、聖と邪、生と死、陰と陽……。これらは常に等しくなければ、宇宙全体の調和が乱れて滅びに近づく。

 君達は前者に属するが、そればかりが広まってしまっては宇宙にとって都合が悪いのさ。真水に魚は棲めないだろう? 適度に汚く、適度に濁り、適度に穢れているのが最良なのだよ。

 私はそうして破壊、死、滅びを齎して宇宙の調和を保つ役目を担っている。こうして会話しているが、実際にはシステムの歯車さ」

 

 自らを自由意思があるかのようにふるまっているだけの歯車だと嘯くワーバラオに、レビルは嘘の臭いを嗅ぎ取る。

 彼もまたニュータイプであり、一年戦争時、軍の総大将として政府と数多の交渉を行ってきた老獪さを有している。人の悪意とは、時に超越者達の邪悪さに匹敵するか上回る事さえある。

 

「ならばわざわざムゲ宇宙になど来るまい。先程までのムゲ帝王との会話を耳にすれば、貴官が自らの意志で役割を外れようと目論んでいるのは、明白だ。体裁を整えるように言葉を弄するのは、なにかに言い訳しているようだ。

 どちらにせよ、貴官が我々、ひいては地球人類に対して敵対的行動を取ることに変わりはない。我々は課せられた任務と責務を果たす為、襲い来る脅威は全て乗り越えて行く。

 各員、敵はムゲ帝王並びにワーバラオ! 未知の力を持つ敵性存在だが、これまで数多の苦難を乗り越えてきた諸君ならば必ずや勝利できると確信している。皆の奮闘を期待する」

 

 レビルの指示が行き渡りDC各員が改めて腹を括り、その闘志と士気を高める姿に、ワーバラオは再び高笑いを上げる。

 

「はははははははは! そうだ、光が強ければ闇はより濃くなる。命の輝きが増せば死はより暗く冷たくなる。だがこの宇宙でお前達を倒せば、光は闇に飲まれたまま消え去り、死した命が再び輝く事はない。

 そうなれば私はもはや世界の調和を示す天秤から解き放たれる! この宇宙を永劫の闇と終わりのない負の世界としよう。ははは、ははははははは!!」

 

 ワーバラオは原作漫画に於いて、ダルタニアスの敵勢力ザール星間帝国をいつの間にか滅ぼしていた力の持ち主だ。この状況でムゲ帝王と並び立たれれば、それは紛れもない脅威に違いない。

 だがDCのメンバーがワーバラオとムゲ帝王と対峙したのが、ここまでの戦いであらゆる修羅場を戦い抜き、鍛え抜かれてきた段階だったのは幸いだったかもしれない。

 

 ムゲ帝王のムゲ帝国軍の大軍とワーバラオの呼び出す復活させられた死者達の群れを前にして、DCメンバーは当初の驚きや怯えを拭い去っている。

 艦艇同士の火砲に、スーパーロボットや中・遠距離用MS、MAの非常識な火力も紛れた挨拶が始まり、ムゲ宇宙に大小無数の爆発の花が咲き誇る。

 

「獣戦機隊はムゲ帝王を狙え。エクリプス・ライディーンはワーバラオを。各機はそれぞれの援護に徹する。どちらもオカルトの領分に足を突っ込んでいる機体だ。

 精神的な不調を感じたらフェブルウス、ヴァイシュラバ、ディス・アストラナガンのフィールド内に避難を。著しい場合には艦へ戻るんだ」

 

 真っ先に爆発の中を突っ切り、ゼイ・ファーにフィン・ファンネル、フィン・ファングによる数十のビーム火線を撃ちこみ続けるアムロから指示が飛び、クワトロのガイア・ギアαを先頭とするTMS、MA部隊が切り込む。

 ワーバラオが率いる混成部隊に対してもヤザンのマスクコマンダーやシーブックのF97-X1、アディンのガンダムグリープをはじめ、更にザンボットインビンシブルやマジンカイザー達が相手取って、中身のない複製達を千切っては投げ、千切っては投げ始める。

 やはり戦いの鍵となるのはFUダンクーガとエクリプス・ライディーンだ。

 

 この二機をムゲ帝王とワーバラオの眼前に送り届けるのが、DCの果たすべき役目の第一だろう。今さら数百、数千程度の雑兵を繰り出されたところで、どうってことのないDCメンバーが、敵増援が出現する端から蹴散らしてゆく。

 この決戦に備えて強化されたゼイ・ファーの各バリエーション機も、ワーバラオが力を与えた複製機達もそれ以上に強力になっているDCのスーパー・リアルロボットを相手にしては、撃墜するのに少しばかり手間のかかるカカシも同然。

 見る間に距離を詰められたワーバラオの指達は憎き仇敵を前に、それぞれが憎悪と怨嗟の声を叫び始める。

 

「ゲッター! ゲッター!! ゲッター線に選ばれた貴様らを滅ぼす為、帝王ゴールは悪魔に魂を売ったぞ。そしてお前達もいつかはゲッター線に見放され、あるいは食われ、滅びるのだ!」

 

「帝王ゴールっ! まさかまたお前の顔を見る事になるなんて。だが、ならばもう一度倒すまでだ」

 

「ち、呑まれるなよ、リョウ。ベンケイも。お前さんとはあまり縁のない敵だが、ゲッターに対する憎悪は激しいぜ」

 

「お、おう! 大丈夫、俺だってゲッターチームだ。俺達の運命は一蓮托生なんだろう? だったら覚悟は決まってるさ」

 

 真ゲッター1には、親指に宿る帝王ゴールが、そして真ゲッタードラゴンにはつい先日、トドメを刺されたブライが人差し指に宿った姿で叫ぶ。

 

「ゲッター線の脅威を知らぬ愚か者達! お前達の存在は地球だけでなく、太陽系を、銀河を、ひいては全宇宙に危機を齎す。それをワーバラオと一つになり、私は理解した。宇宙の平穏を守る為に、貴様らは根絶しなければならないのだ!!」

 

「ブライ大帝! そんな姿になってまでゲッター線を排除しようとするのか」

 

「兄さん、けれど私達は負けるわけにはいかないのよ」

 

「そうです、達人さん。ミチルさんの言う通りだ。ゲッター線を危険だ、危険だって言うなら、おいら達がさっさと戦いを終わらせて、早乙女博士がゲッター線を平和的に利用できるよう、研究できるようにしてあげなくっちゃ!」

 

「! ああ、そうだ、そうだな。二人に教えられたよ」

 

 ゴールとブライに負けず、小指に取り込まれたオルバンもまたダイモス、フォボス、そしてリヒテルのゴッドアーモンに向けて、夢見た理想を砕かれた未練を叫んでいた。

 

「地球人の如き蛮族共に絆され、バーム星人の誇りを失った裏切り者共めえ! お前達は分かっていない。私が地球を支配し、ラオデキヤを討ち、いずれはバームを宇宙の支配者へと導けたのだぞ。お前達は自らの手でバームの輝かしい未来を閉ざしたのだ!!」

 

 勘違いと言おうか、思い込みと言おうか、それとも妄執か。自分勝手な理屈を死んだ後も喚き散らすオルバンに、リヒテルは怒りを通り越して呆れる他なかった。この通信を聞いているアイザムやバルバス、ライザも似たような心境だったろう。

 

「一矢、本当にすまない。我らバームの恥部がかくもしぶとく妄言を吐き散らし、愚かさの上塗りをするとは。余は穴があったら入りたい気分だ」

 

 リオンに次ぐ地位にあったことから、オルバンも有能な面はあったはずなのだが、バサ帝国に敗れ、宇宙支配の野望に憑りつかれてからは、人格に異常を来したのか、愚挙ばかりが目立つ。

 リヒテルとハレックがお通夜のような雰囲気になっているのを感じ、一矢は彼らの心痛を慮った。

 一矢とリヒテルの父親の暗殺を目論み、バサ帝国の傘の下で力を蓄えようとしていた諸悪の根源の一人であるが、小バーム攻略戦での醜態に続いてのこの言動には、一矢も怒りを抱くのも難しい器の小ささを感じていた。

 ワーバラオが取り込んだ者達が次々と憎しみを言葉にして吐き出す中、薬指のDr.ヘルはいささか毛色が異なっていた。マジンカイザーとグレートマジンガーを前にして、喜色満面の笑みを浮かべているからだ。

 

「うはははは、わしは帰ってきたぞ、兜甲児、剣鉄也! 貴様らに魅せられた光子力を今一度、この目に焼き付けんが為! たとえこの魂魄が百度生まれ変わろうとも、光子力の輝きを忘れない為に、さあ! わしに見せよ、魅せよ、美せよ!」

 

 目を血走らせて叫ぶDr.ヘルはどうもワーバラオの制御を振り切って、自分の欲望を口走っているように見える。なんともはや自我の強い地球のおじいさんである。

 甲児と鉄也は揃って呆れた表情を浮かべていたが、身近なところに科学者の身内が居る二人は、Dr.ヘルの浮かべる表情と剥き出しにする知的好奇心に覚えがあったので、そこまで声高に批判は出来なかった。

 まあ、他の三本の指に比べれば、向けられる感情が憎悪ではないというのも理由の一つだったろう。なんならそのままワーバラオを乗っ取りそうな勢いがある。

 

「倒したと思ったらもう復活しやがって。いいさ、だったらもう二度と光子力エネルギーを見たくないって、思わせてやるさ! マジーン・ゴー!」

 

 光子力反応炉の出力を高めたマジンカイザーから、再びマジンカイザー刃皇とマジンカイザーライガ、更にサイコアーマーを装着した別次元のマジンカイザー・ゴウヴァリアンが出現する。

 鉄也もまたグレートマジンガーとINFINITYの意志を感じ取り、光子力反応炉に唸りを上げさせながら、マジンパワーを解放する。

 

「生憎とお前を喜ばせるためにマジンガーに乗っているわけじゃないんだ。今度こそ、その名前に相応しい場所に叩き落としてやるぜ! マジンパワー『INFINITY』解放!」

 

 グレートマジンガーが黄金に輝いて、タイプライターの紙が何本も現れ、機体を包み込む。一瞬の変化の後、そこに姿を見せたのは偉大なる魔神皇帝マジンエンペラーG。

 

「ここは地球じゃないんだ。だったらカイザーのフルパワーを引き出せる!」

 

「そういうことだ。俺もエンペラーの全力をようやく引き出せるようになってきたんでな。Dr.ヘル、お前にはワーバラオとまとめてサンドバッグにでもなってもらおうか」

 

 地球では全力を出せない機体というものが、単一惑星規模の地球に複数存在する異常を、ワーバラオとムゲ帝王がその身をもって味わう悲劇の幕開けであった。

 

<続>

■ファイナル・アルティメット・ダンクーガを入手しました。

■アルティメット・ブラックウイングを入手しました。

 

 

☆第二次スーパーロボット大戦■■ 嘘予告

 

なんとなく考えてみた設定。

 

主人公編

リアル系男女、スーパー系男女主人公──合計八名~。

 

〇ビアン・ゾルダーク リアル系男性主人公 → スーパー男性系主人公へ。

〇レギオンはトリエルのパートナー枠で。

 

〇デュミナス 0歳 スーパー系女性主人公

〇機体:デュミナス・プロートン → デュミナス・デウテロン → ディミナス・トリトン

 

 スパロボRのラスボス、OG外伝では大ボスの一人を務めた異種生命体。太陽連がバイオロイド的な存在を研究し、開発したがなにがどうしてだか巨大な卵に羽の生えたピンク色の存在が出来上がった。

 計画の目標と照らし合わせれば失敗作だが、自我もあるし、廃棄するわけにもいかんでしょ、と倫理観のあったスタッフの判断により廃棄は免れた。ティスやライアー、デスピニスを作り出すかは謎。教育に関してはゼファー、レオン、ALICEが一枚噛んだ。

 

〇ヘクトール・マディソン 19歳 男性主人公

〇パトリシア・ハックマン 19歳 女性主人公

 第四次スーパーロボット大戦、スーパーロボット大戦Fシリーズの主人公。この世界ではレナンジェスやアーウィン達より11歳年下。 

 この二人に限ってはリアル/スーパーを任意で選ぶ。また選ばなかった方は副主人公として登場するが、シナリオ中に『恋人がいる/いない』の選択肢を選ぶことで関係は異なる。

 

〇機体

・リアル系 → ゲシュペンストMk-ⅣタイプR → オーグバリュー → ダイ・シュナイル(バラン・シュナイルの改造機)

・スーパー系 → ゲシュペンストMk-ⅣタイプS → ゼイドラム → スーパーディカステス(ディカステスの改造機)

 

〇アース・ハーカーム スーパー系男性主人公

〇機体:フーム・ラカーブ → アース・ハーカーム

 

 創造主から与えられた使命に基づき地球にやってきた巨人族ハーカームの一体。初めての教化とあってやる気に燃えていたが、地球人類はその必要がないくらいバリバリに強かったこともありションボリ。

 そこは割り切り、来たるべき試練を乗り越えられそうな地球人類を、今後の教化の手本とするべく接触。似たような存在であるアインストの仲介を経て、地球人類と友好関係を築く。

 後に地球人類への敬意からアース・ハーカームへ名前を改めると同時に、セーブ状態だったフーム・ラカーブからアース・ハーカームへと変身する。メルマッド・ラグリー、メルマッド・ラカーブの生産能力は当然持っている。

 シリーズに出てきたハーカームと比較すると初心者マークがついている状態。平成・令和の新人ウルトラマンといったところ。

 

〇ネバンリンナ リアル系女性主人公

〇機体:ブラーマグ → マーダヴァ → アーケイディア

 

 スパロボVのラスボス。太陽連に亡命した良識あるガーディム人が齎した文明復興のためのシステム・ネバンリンナが外部端末として作ったエージェント(スパロボV参照)を用い、地球人類を学ぼうとしている。

 マーダヴァまでは亡命ガーディム人が持ち出したもので、アーケイディアに関してはネバンリンナが自力で開発したもの。とあるステージでバースカルを撃墜するか、撤退を許すかで性能が変わる。

 ゼファーやデスザウラー達とは仲が良い。なお情報収集端末の一機としてナインも存在。

 

〇ヴィレッタ・プリスケン スーパー系女性主人公

〇機体:R-GUNパワード → アストラナガン・パワード

 

 スーパーヒーロー作戦直後にこの世界に転移してきた、同作品の女性主人公。イングラム・プリスケンのコピーとしてのヴィレッタではなく、イングラムと同ポジションのヴィレッタである。

 イングラムがSHO → α(おそらく)と転移したのに対し、ヴィレッタはSHO → 本作世界へと転移した。

 地球近宙域をR-GUNパワードと共に漂流していたところを救助され、そのままプレイヤー部隊に身を寄せる事に。

 太陽系大戦で鹵獲されたアストラナガン・アフとR-GUNパワードを素体とし、魔装機神、ズフィルード、ジュデッカ、ディス・アストラナガン、地球のスーパーロボット、フェブルウス……膨大な機体データを元に、アストラナガン・パワードを開発する。

 

ここまでは考えた。

 




作者はハードを持っていなかった事もあり、64やGC、XO、NEO、COMPACTシリーズを知らんのです。それらシリーズの主人公やオリジナルボスに関しては……ごめんなさいね。

追記
OGs、OG外伝、第二次OGは遊んだので、OG版のアインストと修羅は分かりますが、ムーンデュエラーズは未履修なのでガディソード関係がさっぱり。Jはプレイしています。


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第百三十話 敵勢力は市街地で戦う方が勝率は高い

「DC各機に通達。全兵装使用自由、戦闘レベル4を解禁する。友軍機への誤射に強く留意せよ! 繰り返す、戦闘レベル4だ!!」

 

 DC司令たるレビルが伝えた『戦闘レベル4』は周囲に有人惑星や衛星、スペースコロニーなどの存在しない宇宙空間や閉鎖空間といった、限定的な状況でのみ発令を許される。

 それはDCに所属するあらゆるデタラメロボット達と、ハチャメチャ兵器の全面解禁を意味する。

 

 出力制限の掛かっているブラックホール兵器や光子魚雷、マジンカイザーや真ゲッターロボ、ヴァルシオー、ゼファーW0ライザーなど誕生が早すぎる、と畏怖される機体のフルパワーが許される。

 あまりに威力が高すぎ、効果範囲が広がり過ぎる為、攻撃前に友軍機への警告が必須になるケースが増えるが、この環境、敵対者の規模と質を考えれば必要な措置であった。

 

 

 ゼイ・ファーシリーズの他に、デスグローム、デスグロームⅡといった将校用の機体も混じるムゲ帝国の大部隊に向けて、ハマーン率いるアクシズ系列の怪物パイロットと怪物機体の部隊が迎え撃つどころか殲滅させる為に、サイコミュに増幅された思念の波が迸る。

 

「各機、キュベレイにサイコミュの同期を行え。私のファンネルが導く!」

 

 地母神の名を持つ白く麗しいMSの周囲にファンネルが展開し、ハマーンからの通信と思念に応じたプルのアハヴァ・アジールがテール・ファンネルを、プルツーのクィン・マンサとマリーダのクシャトリヤ、キャラのゲーマルクもそれぞれのファンネルを射出して、各機がサイコミュ並びにファンネルの同期を瞬時に済ませる。

 膨大な数の各種ファンネル達はハマーンの意志に追従し、ゼイ・ファー部隊の発射するビームの雨の中を有機的な動きで掻い潜って、四方八方からファンネル達の放つビームが逃げ場のない檻を構築し、囚われた機体は見る間に撃墜されてゆく。

 

 原典の世界よりも大幅な高出力、高性能化が成された各機のファンネルの威力は相応に高く、ゼイ・ファーの装甲をやすやすと貫通し、花吹雪のように吹き付ける無数のファンネルのビームを前に、歴戦のムゲ兵士が駆るゼイ・ファーといえど抗う術はなかった。

 見る間に撃墜された機体の爆発が連続し、戦場の一角をオレンジ色の爆炎と黒い爆煙が埋め尽くす。そうして乱れた陣形に向けて、後方の艦艇とドズルのグランザムから発射されたメガ粒子砲、対艦ミサイルが雨あられと降り注ぐ。

 ムゲ艦隊からも反撃の艦砲がエネルギーの残量を気にせず、統率された動きで撃ち返されるが、ハマーンを含むジオン系ニュータイプ部隊は流麗な動きでもって、ファンネル共々一機の撃墜もなしに掻い潜り、距離を詰めてゆく。

 

 そしてハマーンらに先んじて敵機動兵器部隊を撹乱し、艦隊にダメージを与えているのは、ガトーのノイエ・ジール、ケリィのRFヴァル・ヴァロ、バーニィのザク50、クリスのクレヴェナール……逐一名前を挙げていてはきりが無いMA部隊。

 それに続くランバ・ラルやジョニー・ライデン、シン・マツナガといった旧ジオンのエース達、そこにマシュマーのザクⅢ改、バナージのユニコーン、リディのバンシィ・ノルン、アルベルトのガンダムXディバイダー等々が取りこぼされた機体に止めを刺し、ハマーンらのエスコートを務める。

 

 ムゲ宇宙でも暴れ回るMS・MA達だが、その中でも異彩を放つ活躍をしている機体があった。これまでのMSとは明らかに異なるデザインラインの白銀の機体である。

 背中には紫色のウェポンプラットフォームを背負い、機体各所に内蔵したビーム兵器以外に、ロケットランチャーを始めとした実弾兵器を主として懸架している。

 ヘイデスが思い悩むあまり、他所から来るかもしれないなら先に作ってしまえばいいじゃない、と一周回った発想によって開発にゴーを出した機体……ターンXだ。

 パイロットはシーマ・ガラハウ元中佐である。

 

「シャイニングフィンガーを味わわせてやるよ!」

 

 シーマの操作を受けてターンXの蕾かラグビーボールを思わせる右前腕が四つに展開し、そこから縮退炉の産む膨大なエネルギーが溢れ出す。光り輝く指というよりも、光り輝く爪か腕だが、ま、細かいところは気にしないでおこう。

 ターンXに懐に飛び込まれたデスグロームⅡの頭部を叩き潰し、そのまま胴体を貫いて内部をぐちゃぐちゃに破壊する。

 

 本来は『溶断破砕マニュピレーター』と呼ばれる武装であり、ビームサーベルやビームキャノン、ワイヤークローなど多機能を有するのだが、今、シーマがやって見せた使い方の場合には、シャイニングフィンガーの別名称で登録されている。

 パイロットが名も無きエリートムゲ兵では、いかにデスグロームⅡといえど本領を発揮できるわけもなく、あえなくシャイニングフィンガーの犠牲となる。

 GジェネDSの縁からなのか、パイロットに選抜されたシーマはとんでもない怪物を預けられたという実感を噛み締めながら、艦隊の直掩に残した古い付き合いの部下達に発破をかける。

 

「お前達、あたしらが敵の大将の首を取るまで、艦隊に傷一つ付けるんじゃないよ!」

 

 三十数機のゲシュペンストMk-Ⅲタイプマリーネの部隊からは、威勢の良い返答があり、守らなければならない艦の数が増えた現状にも笑うだけの余裕が彼らにあった。また彼ら以外にも魔神機械獣や超電磁マグマ獣を始めとした機体も、艦隊の直衛についている。

 

「お任せを、シーマ様!」

 

「なるべく早くしてくださいや。この戦いが終わったら、総帥がウイスキーを樽で酒保に納入してくれるって話でさ」

 

「そりゃいいや。こいつは戦いが終わった後が一層、楽しみになってきたぜ」

 

「はん、今から浮かれてつまらない失敗なんてするんじゃないよ。失敗した奴はシーマ艦隊の恥晒しだからね!」

 

 シーマは部下達がいつも通り威勢が良いのを確かめると、敵部隊に切り込んでいるヴァルシオーを含むグランド・スター小隊に合流するべく、ターンXの踵を返す。

 当然、月光蝶もターンXには搭載されているが、それが必要になるかどうかは、これからの戦況次第だろう。

 外見や武装などは原作とほとんど変わりはないが、用いられている技術がまったく同一でない以上、このターンXとオリジナルのターンXとでは何かしら差異があるはずだが、その性能が筆舌に尽くしがたい事、そして月光蝶を搭載している点は同じだった。

 

 シーマが合流を目指すヴァルシオーとグランド・スター小隊はと言うと、高機動型グレートマジンガーと呼んで差し支えの無いビルガー・ファルケンペア、グレートマジンガーとゲッターロボGのハイブリッドたるラピエサージュ、更にURGシリーズ二機が発揮する圧倒的な破壊力と突破力で進路上の全ての敵機を可哀そうなくらい一方的に蹴散らしていた。

 心身の回復した所長の手により今大戦最後の強化が施されたGS小隊各機であるが、時間的な制約から大幅な様変わりをしたわけではない。

 

 基本的に光子力エンジンを光子力反応炉に換装し、装甲にマジンセルを導入、カイザースクランダーやエンペラーオレオールを参考にバックパックを新造……というのがビルガー・ファルケンペアに共通する変更点だ。

 そこからビルガーはジャケットアーマーの有用性の見直しが図られ、展開式装甲に変更し、該当箇所はより硬度に優れる超合金NZαが用いられ、部分的な強度はマジンカイザーとマジンエンペラーGに匹敵する。

 

 最大稼働時には展開した装甲から光子力が溢れ出し、ビルガーの機体を黄金色にコーティングして、超高純度の光子力エネルギーの塊へと変貌させる。

 その状態のビルガーは巨大な光子力の砲弾のようなもので、体当たりするだけで大抵の機動兵器や艦艇は撃破できるだろう。

 

 左腕の五連レールガトリングガンは五連光子力ガトリングガンに変更され、マジンガーブレードも超合金NZαを鍛え上げた地球最強格の実体剣となっている。

 スタッグ・ビートル・クラッシャーも超合金NZαになり、出力の向上に伴ってヒート化した際の熱量が激増しており、大鋏で断ち切るよりも先にほとんどの敵機は熱量に耐え切れず融解、焼滅するだろう。

 

 ビルガーとは比翼の翼であるファルケンも前述の換装以外にも、両腕に内蔵されたサンダーブレーク照射装置が大幅に出力強化され、両肩のビッグブラスト・ディバイダーは小型光子力3Dプリンターの内蔵に成功した事で、マジンガーシリーズのドリルミサイルやネーブルミサイルなど、各種ミサイルの生成・発射が可能となった。

 より強い心臓と更なる速さを得たばかりでなく、より硬く再生能力を備えた装甲を手に入れ、ファルケンは高機動機にありがちな装甲の脆弱さとはまるで無縁の、攻撃が当たらない、当たっても落ちないという悪夢じみた機体に仕上がっている。

 

 オクスタンライフルの威力も一回り二回り威力が上昇し、新しく使用可能となった光子力ノヴァキャノンともなると、大規模な軍事基地や都市が一撃で更地になるレベルだ。

 このように強化を施されたビルガーとファルケンは魔神皇帝クラスには及ばないものの魔神皇子、魔神皇女を名乗れるくらいの性能を手に入れている。

 機体名称も大食いの百舌鳥(フレッサービルガー)繊細な隼(フィリグランファルケン)とパイロット達にちなんだものになっている。

 

「ビルガー高機動モード!! ジャケットアーマー展開! ドライブ全開! ゼオラ、近いところの奴から叩き落として行くぜ!!」

 

「ファルケンスクランダー出力全開、ウイング展開! ブースト!! タイミングは合わせるから、好きなように飛びなさい!」

 

 最大速度に達した両機は光り輝く鳥となって、ムゲ機動兵器部隊の追いきれない超高機動戦闘に突入する。

 

「スタッグ・ビートル・クラッシャー、光子力モード!!」

 

 フレッサービルガーの右腕に光子力によって巨大な黄金のハサミが形作られ、大きく開かれたハサミはそのままムゲ戦艦やムゲ戦闘空母、更にその護衛機達を纏めて挟み込み、一瞬で切断してのける。

 世界中から光子力を受け取り、巨大化したマジンガーZのように巨大化した鋏に味方が真っ二つにされる光景を前に、ムゲ兵士達の多くが思考に一瞬の空白を生んだ瞬間に、フィリグランファルケンが冷静に、そして冷酷に襲い掛かる。

 

 オクスタンライフルの銃身が上下に展開し、光子力反応炉のフルドライブによって生み出された光子力エネルギーが全ての拘束から解き放たれて、ムゲ宇宙に溢れ出す。

 それは指向性を持たされたカイザーノヴァと言っても過言ではなかった。アルトアイゼン・ブルクなどと違い、ボルテッカ・ノヴァを搭載していない代わりに、ビルガーとファルケンに与えられた光子力武装である。

 

「ターゲット・インサイト! 光子力ノヴァキャノン、いっけええー!!」

 

 ゴラオンのオーラノヴァ砲かあるいは宇宙戦艦ヤマトの波動砲を思わせる勢いと輝きで発射された光子力の奔流は、反応が遅れたか、あるいは退避の間に合わなかったムゲ帝国の各機、各艦をもろとも纏めて飲み込み、その輝きの中に影だけを残して跡形もなく消滅させる。

 これまでのパターンよりも更に繊細かつ破壊力を増した『ツインバードストライク』は、ムゲ帝国の機動兵器と艦艇を大食いの貪欲さで撃破し、この異世界の宇宙に無慈悲な残骸を晒して行くばかり。

 

 もはやMAP兵器と変わらない攻撃範囲を持った、スーパーロボットの必殺技に相応しい攻撃パターンだ。

 オウカは、まるで一つの生き物であるかのようにプログラムを上回る連携で異界の宇宙を舞う百舌鳥と隼の姿に、戦場の中にありながら桜の花びらのように淡い微笑を浮かべる。

 

「姉としてはここで弟妹達の成長に喜んでばかりもいられませんね。頼れる背中というものを、いつでも見せていたいものですから」

 

 ラピエサージュもまたシンデレラから装いを新たにし、装甲を全面超合金NZαへ換装し、エンジンも光子力反応炉、真ゲッター炉心のダブルドライブに変っている。

 デメルング・ヴァイスリッターから得られたデータを活用し、もともとダブルドライブで動かしていた機体だった事から、両方のエンジンは安定しており出力が理不尽に乱高下する兆候は見られない。

 ただ、その分、最大出力ではデメルング・ヴァイスリッターに劣っており、デメルング・ヴァイスリッターが真ゲッターロボのような問題児なら、ラピエサージュはゲッターアークのような優等生といったところだろう。

 

 基本武装は変わらずエンジンの変更による出力強化と素材変更による硬度強化の恩恵を受けており、マグナムビークの一撃は艦艇を粉砕し、オーバーオクスタンランチャーは艦隊を薙ぎ払い、要塞を消滅させるレベルだ。

 フレッサービルガーとフィリグランファルケンをさらに上回る超高性能機であり、新たに与えられた銘はラピエサージュ・メルヒェン。

 『シンデレラ』という一つのおとぎ話の枠を超えて『おとぎ話』そのものを名前に冠した機体は、オウカの操縦技術と相まって機動兵器の姿をした災害そのものだった。

 

 機体そのものに手を加えられたこれらの機体に対し、ヴァルシオーラは追加装甲に手を加える形で、強化が図られていた。

 以前よりヴァルシオーを模した追加装甲を使用していたが、これまでの戦闘データからより適切な形状と防御性能、軽量化が図られたバーサルアーマーを纏っている。

 

 知性体への心理的影響を考慮し、兜の形状は美麗なヴァルシオーラの顔を出すデザインに変更され、鎧のカラーは穢れ無き純白だ。

 武装については両刃の長剣『バーサルブレード』と超電磁テクノロジーの粋を凝らして開発された『電磁ランス』が追加されている。

 見方によっては、リュウセイ・ダテ歓喜ものの絶世の美女と化したバーサルナイトガンダムめいた仕上がりになったのだから、ヘイデスとしては不思議極まりない結果である。

 

 ヘイデスにとって不思議の塊であっても、バーサルヴァルシオーラが上位のスーパーロボット級戦力であるのに変わりはなく、ヴァルシオーと合わせて破格の戦闘能力でムゲ帝国の艦隊に大穴を開け続けているのも事実であった。

 所長はバーサルヴァルシオーラの援護射撃を受けながら、武装の数々をこれでもかと乱射しており、地球上だったら地図の書き換えが必要なレベルの破壊をもたらしている。

 その中で所長は一挙に敵の本丸を叩き潰すのを優先した。ワーバラオは身一つでこの戦場に姿を見せたが、ムゲ帝王の足元にはその居城があり敵艦隊の拠点も兼ねている。

 

「トランザムを使います! 戦場の友軍機に警告をお願いできます?」

 

「分かった。ひえ、この有効範囲は!」

 

 ヴァルシオーの脚部に搭載されたツインドライヴシステムは基本的に機動力確保を目的としているが、攻撃に転用する事も出来る。トランザムにより赤い発光現象は起きず、その代わりに刀身の無いディバイン・キャリバーの柄からGN粒子が一気に放出される。

 攻撃のみにトランザムで放出するGN粒子を転用した結果、高く掲げられたディバイン・キャリバーからは全長一千キロメートル程度に集束されたビームソードが形作られる。本来ならば全長一万キロメートル越えになるところを、集束した結果である。

 

「ライザーソオォオッド!!」

 

 所長には珍しい気合の籠った叫びと共に、彼女の精神力がサイ・コンバーターによってエネルギーに転換され、それもプラスしたライザーソードが勢いよく振り下ろされて、ムゲ城を左右に真っ二つに斬り裂いて行く。

 斬り裂かれた為に内部で次々と生じる爆発によって、見る間に崩壊して行くムゲ城を尻目に、振り下ろされたライザーソードが今度は横薙ぎに振るわれて、ムゲ城を十文字に切り裂き、今度こそムゲ城は跡形もなく吹き飛んだ。

 

「自分勝手な都合でよそ様の星に攻め込んでくるような連中の城が吹き飛んで、ええ、良い気分ですわね! おほほほほほほほほ!!」

 

(アルトアイゼン・ブルクとデメルング・ヴァイスリッター、それにビルガー、ファルケン、ラピエサージュの改修が続いて、テンションがハイになったままだったのかなあ。表面上は元通りだったんだけど、そこまで見抜けなかったとは、不覚!)

 

 この世にこれ以上、楽しい事はないと言わんばかりに笑う愛妻の姿に、ヘイデスはこの戦いが終わったら思い切り甘やかそうとケアを心に誓うのだった。

 直後、ムゲ城の残骸を中心に、ヴァルシオーからブラックホールキャノンが連射され、ゲッタービームと光子力ビームがシャワーのように降り注いだ光景には、ヘイデスも流石に絶句したけれども。

 

 

 ムゲ帝王は自分の居城が吹き飛ばされた光景に驚愕を禁じ得なかったが、それで戦場に居る事を忘れるほど間抜けではなかった。自分に向けて叩きつけられる剥き出しの闘志にすぐさま反応し、振り返る。

 もっとも縁の深い怨敵、獣戦機隊のファイナル・アルティメット・ダンクーガが、立ちはだかるゼイ・ファーやデスグロームを蹴散らしながらまっすぐに向かってくる。

 

「観念しな、ムゲ野郎! 俺達の力を、勢いを、闘志を、止められると思うな!」

 

「愚かな。この宇宙に満ちる怨念がある限り、このムゲ・ゾルバドスは無限の力を持ち、永遠の存在なのだ」

 

 ムゲ帝王はムゲ宇宙に渦巻く怨念の力を吸収し、人間サイズだった体を見る間に巨大化させて、ファイナル・アルティメット・ダンクーガと肩を並べるまでの大きさに達する。ざっと全高三十五メートルほどか。

 ファイナル・アルティメット・ダンクーガの振り上げる断空真剣を前に、ムゲ帝王は周囲の悪霊と自身の負のエネルギーを凝縮し、両手持ちの大剣を作り出す。

 

「来るがいい。この帝王自らが引導を渡してやろう! 至上の栄誉と知れ!」

 

「帝王だろうがなんだろうが、勝つ為に来たんだ! やってやるぜ!!」

 

 ファイナル・アルティメット・ダンクーガとムゲ帝王の刃が激突した瞬間、発生したエネルギーの衝撃が全方位に迸り、ムゲ帝王を援護しようとしていたゼイ・ファーの群れを木端微塵に吹き飛ばし、距離を置いていたシャピロのデザイアも大きく揺らされる。

 

「この距離でこれだけの影響を受けるか。ふふふ、忍、沙羅、亮、雅人、お前達を見込んだ俺の目に狂いはなかった! ふふふふ!」

 

 そう言って喜悦の色を浮かべるシャピロは宇宙を揺るがす力を発揮した部下達と、彼らを見出した自分に対する心からの称賛を口にしていた。なおアルティメット・ブラックウイングのアラン・イゴールは、シャピロの部下ではないので、除外されている。

 ムゲ帝王の振るう暗黒の大剣と断空真剣が幾度も斬り結ばれ、その度にムゲ宇宙を揺るがせる圧倒的な生命のパワーと怨霊のパワーが迸り、不用意に近づけば即座に破壊される暴力的なエネルギーフィールドが形成されている。

 

 一撃ごとに物理的なエネルギーばかりでなく、双方の精神にもダメージが走る。常人なら即座に失神してしまうようなダメージが一分の間に何十回も襲い掛かっている。

 人外のムゲ帝王はまだしも、生物的にはまともな人間である筈の獣戦機隊の面々が耐えていられるのは、ひとえに彼らがダンクーガのパイロットに選ばれた、強い野生の力と本能を併せ持った人間だからこそだ。

 超獣機神とムゲ帝王の激突が百を数えた時、ムゲ帝王は全身から負のエネルギーを放射し、ファイナル・アルティメット・ダンクーガに多少のダメージを与えると同時に、距離を開く。

 

「死せる者共よ、帝王の声に従い、我が敵を貪り尽くせ!!」

 

 ムゲ帝王はスパロボで言うところのデススピリットを発動させ、周囲の空間から悪霊達を呼び出し、火の玉のような姿になった悪霊達が流星群となってファイナル・アルティメット・ダンクーガへと群がる。

 対するファイナル・アルティメット・ダンクーガは機体各所からこれでもかと砲身を展開し、野獣回路が唸りを上げるようにパイロット達の精神力を莫大なエネルギーに変換。そして群がる悪霊達には目もくれずに、忍は距離を取ったムゲ帝王に照準を合わせていた。

 各戦線で活躍したサイ・コンバーターのデータをフィードバックし、更なる高性能化に成功した現在の野獣回路は、その役目を十全以上に果たす。

 

「全砲門、照準固定! 究極断空砲、発射ァア!!」

 

 200ミリ榴弾砲、四連大口径砲、アルティメット・ブラックウイングのビーム砲、これらすべての砲門から発射されたビームが途中で一つに融合し、デススピリットを消滅させながらムゲ帝王へと迫る!

 

「これが、ダンクーガか! しかし!」

 

 命中するまでの刹那、ムゲ帝王は両手で大上段に振り上げた悪霊の剣にありったけの負のエネルギーを込め、光すら飲み込む暗黒の大剣で断空砲を受け止める。

 

「私はムゲ・ゾルバドス! この宇宙の支配者にして、暗黒の神!! 易々と討てると!!」

 

「思っちゃいねえよ! だが、てめえが帝王だろうが神だろうが、俺達が勝つってだけの話だ!!」

 

「むう!?」

 

 忍の叫びに呼応したファイナル・アルティメット・ダンクーガが更なるエネルギーを生み出し、ムゲ帝王は断空砲に競り負けてその奔流の中に飲み込まれる。

 だがムゲ帝王は魂にまで届く究極断空砲のエネルギーに焼かれながら、暗黒の大剣に凝縮したエネルギーを解放し、爆発させることでかろうじて脱出に成功する。

 全身に深いダメージを受けたムゲ帝王は恐るべき強敵と改めて獣戦機隊を認め、周囲の悪霊達を吸収してダメージの回復を図った。

 

「やはりお前達を倒さずにあの宇宙の支配は叶わぬか! このムゲ・ゾルバドスの全てを持って、お前達を討たねばなるまい」

 

「へ、今さらかよ。俺達を甘く見過ぎだぜ!」

 

 再び対峙するムゲ帝王とファイナル・アルティメット・ダンクーガ。これまでの戦闘のダメージとエネルギーの消耗があるはずの両者は、しかし、ますます闘志を燃やし、お互いに全身から、その魂から、更なる力を無限に生み出しているかのようだった。

 

「愛の心にて、悪しき空間を断つ!」

 

「我が宇宙に眠る悲しき魂どもよ! このムゲ・ゾルバドスの声に応えよ!」

 

「この一撃、真理をも断つ!」

 

「我が永遠の支配、我が無限の力を見よ!」

 

「名付けて、真・断空光牙剣! 俺達の命を懸けて、やぁってやるぜ!!」

 

 野獣回路がこれまでにない働きを見せて、ファイナル・アルティメット・ダンクーガの全身から断空真剣の切っ先に至るまで力が満ち溢れ、まさにその力強さ、野獣の鼓動は、機械を超え、獣を超え、神さえも超えた究極の戦士の姿であった。

 断空光牙剣が長大な光の刃を構成するのに対し、真・断空光牙剣は溢れ出しそうになるエネルギーを刃に止め、その威力を圧縮したものだ。もとよりエネルギーで刃を構成する断空剣だが、真・断空光牙剣の出力は比較にならないほど向上している。

 それに対し、ムゲ帝王は本来、ムゲ城を召喚し、大砲で放つエネルギーを自ら触媒となって圧縮し、禍々しい暗黒の髑髏を作り出して撃ち出した!

 

「我が宇宙に飲まれるがいい、超獣機神!」

 

 大顎を開いた髑髏にファイナル・アルティメット・ダンクーガが飲み込まれた瞬間、ムゲ帝王は勝利を確信し、直後に髑髏を貫いて超獣機神が姿を見せた瞬間、驚愕に目を見開いた。

 真・断空光牙剣を振るうまでもなく、機体と五人のパイロットの心が一つに重なり、一瞬の『真化』を果たしたファイナル・アルティメット・ダンクーガを止める事は出来なかったのだ。

 

「これが俺達の命だ! たっぷり味わいやがれ!」

 

 そして振り下ろされる刃がムゲ帝王を捕らえ、巨大化した彼の体を真っ二つに斬り裂く。

 

「これは、この力は! 人間が、次のステージに、昇るという、のか!? おおおおおおおお!!」

 

 真っ二つにされたムゲ帝王はその肉体と魂に内包する負のエネルギーを放ちながら、自らの宇宙に霧散していった。 

 

 

 ムゲ帝王と獣戦機隊のウォーミングアップが終わった頃、ワーバラオとDCの激突も激化の一途を辿っていた。複製された百鬼メカや戦闘メカ、メカザウルス、機械獣が虚空から次々と出現し、襲い掛かってきている。

 その鼻先を叩き潰したのは、トランザムを使用して全身を赤く発光させたゼファーW0ライザーであった。

 両肩のバインダーに接続された四丁のバスターライフル、両腕に装備されたGNソードⅢが同一方向に向けられて、MSの規格を完全に超越したエネルギーが一気に発射される。

 全幅180キロメートルを誇る連邦軍の宇宙要塞ルナツーさえ破壊できる超規格外のビームは、ワーバラオが呼び出した機動兵器の五割を消滅させた。

 

 あんなのモビルスーツじゃない、と敵対勢力ばかりでなくアナハイムやサナリィのMS関係者も絶叫しそうな光景の直後でも、DCの攻撃の手が緩むことはない。

 ノイ・レジセイアは身体全体からビームを放つMAP兵器ミットライトで敵の群れを牽制しつつ、右腕の触手による打撃エレガントアルム、胸部から強力なビームを放つエアヴァルトゥングといった技(?)を次々と繰り出し、ラスボスの一角に相応しい力を見せつけている。

 

「排除する。静謐ならぬ宇宙、静寂ならぬ世界に必要なのは役割を逸脱した天秤の重しにあらず」

 

 ノイ・レジセイアの意識は、究極の進化の一つと言えるムゲ帝王ではなく、ワーバラオへと向けられていた。ワーバラオもまた、自分と同じく与えられた役割から逸脱した存在として、ノイ・レジセイアを多少は意識していた。

 アインスト空間を閉鎖したとはいえ、ノイ・レジセイアがこれまでに溜め込んだエネルギーや揃えた手勢の数は、ワーバラオにしても無視できるものではない。

 ワーバラオ以外の四本の指がそれぞれの宿敵達と激闘している中、ワーバラオは嘲笑を浮かべて答える。

 

「君もまた役割から外れているくせに、私を排除しようというのかい? 壊れたアインストの親玉君。だが地球一つを監視するのが役割だった君と、宇宙全体の均衡を担っていた私を同列に扱ってもらっては、私の沽券に関わる」

 

 確かにそうかもしれないが、アインストとてアインスト宇宙を広げる事で、既存の宇宙を塗りつぶし、取って代わるという全宇宙規模の災害を齎す事は可能なのだ。そう考えれば、必ずしもワーバラオに劣るものではない。

 

「その宇宙全体の均衡を担うお前が固執しているのもまた地球だ。そして特にライディーンに注視しているのも、明白だ。ムー帝国の神秘科学、そしてムートロンがよほど恐ろしいと見える。たかが地球一つとあざ笑う。所詮、それがお前の器だ」

 

「言ってくれるねえ。ライディーンの次は君を消し去ってあげよう。バグの発生した監視者君」

 

 ライディーンと深いかかわりのあるワーバラオ、そしてスパロボシリーズではムー帝国を滅ぼそうとしてライディーンに撃退されたアインスト。

 不思議とライディーンに縁を持つ宇宙規模の両者は、お互いを必ず滅ぼさなければならない存在だと、敵意と殺意を天井知らずに高め合うのだった。

 

<続>

■ムゲ帝王が消滅しました。

■ターンXを入手しました。

■フレッサービルガーを入手しました。

■フィリグランファルケンを入手しました。

■ラピエサージュ・メルヒェンを入手しました。

■ヴァルシオーラ専用追加武装バーサルアーマーを入手しました。

■ハイテンションの所長は気力200固定です。

 




ビルガーとファルケンのドイツ語は適当に検索してそれっぽいのをつけたので、誤りであった場合はこっそり教えてくださるととてもありがたいです。


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第百三十一話 ワーバラオの誤算(山盛り)

追記
シャーキンの乗機ですが、ギルディーンが正しいです。ザマンダーは私の誤記でございます。


 ワーバラオにとって現在のDCは、そしてそこに所属する数多のスーパーロボットとリアルロボット達、そのパイロット達は極めて厄介なイレギュラーだった。

 今回は奪う側である自分達が勝利し、地球を破滅に追いやって妖魔達が支配する暗黒の時代を齎す場面であったはずなのだ。

 それがライディーンばかりでなく、他にも多数存在した希望の光達によって、妖魔帝国以外の侵略者達を悉く撃退し、地球圏には明日への希望が満ち溢れている。

 自分達の番である筈なのに、あまりに人類が勝ちすぎているから、光と生命が優位に立っているから、ワーバラオは自ら動いたのかもしれなかった。

 

「この切っ先、触れれば切れるぞ、舞朱雀!」

 

「サン・アタック、乱れ撃ちだあ!!」

 

 ソウルゲインの動きに幻惑されて見失った百鬼メカが、四方から瞬間移動するように姿を見せるソウルゲインに斬り裂かれ、ザンボットインビンシブルが額の前立てから発射する、何十発ものサン・アタックは群がる敵機を悉く穴だらけにする。

 ALICEが常時起動し、パイロットのリョウ・ルーツと口喧嘩という名のコミュニケーションを取るようになったEx-Sガンダムを始めとしたペガサスⅢ隊、クラスターガンダム、F90Ⅱを一時的に編入し、ネオガンダム、シルエットガンダム改を抱えるブレイウッド隊も、すっかり戦い慣れた敵機を相手に鍛え抜かれた腕前を惜しみなく披露している。

 

「スーパーロボットってのは、つくづく根っこの性能がモビルスーツとは段違いに出来ていやがるぜ」

 

 リョウはビームスマートガン、リフレクター・インコム、背部ビーム・カノンをALICEと共同で的確に使いこなし、順調に撃墜スコアを伸ばしながら、そうぼやいた。

 メインモニターの片隅には、彼らMS部隊よりも前面に出て、手加減なしで暴れ回るスーパーロボット軍団の勇姿が映っている。極端な話、スーパーロボットは武器を持たず手足を振るうだけでも強力な武器となる。モビルスーツで同じ真似をしたら、繊細なマニュピレーターがお釈迦になり、整備士達に恨みを買って嫌われるのは明白だ。

 モビルスーツとは異なる物理法則に則っているようなパワーと堅牢さは、味方だからこそぼやくだけで済む。

 

『11時、4時より新たな敵機十三機接近中。リョウ、ぼやくよりも行動を』

 

「わぁってら! お前はいちいち一言余計だぜ。ゼファーやレオンを見習ったらどうだよ」

 

『……』

 

 ツンとそっぽを向いている姿が思い浮かぶような無言に、リョウは一言叫んで返し、新たな敵機に意識を向け直す。

 

「無視かよ!」

 

 メカザウルスのバド、ゼンⅡ、一角鬼、ガラダK7など複数の勢力の機体群に向けて、Ex-Sガンダムを筆頭にペガサスⅢ艦載機部隊が一斉に応じる。

 その中にはシン・クリプトのFAZZZ、テックス・ウェストのZ++、またストール・マニングス用にシートやOSを調整された、Sガンダム二号機・ディープストライカー(ALICE非搭載)も含まれていた。

 

 ワーバラオが際限なく出現させる増援とこれを撃墜するペースは、やや撃墜速度の方が速く、少しずつ総数を減らしていった。

 ムゲ帝王が討たれ、ムゲ軍の統制が乱れに乱れた分、DCは戦力を集中してワーバラオを討とうとしていたのだが、不意にワーバラオから放たれる重圧とエネルギー量が増大したのを、オールドタイプ、ニュータイプを問わずに感じ取る。

 

「このプレッシャーは、この宇宙に満ちる悪意を背負っているような……」

 

 とりわけ鋭敏な感応能力を持つカミーユは、ムゲ帝王の消滅によって霧散するか、それでも減衰くらいはしてもいいムゲ宇宙の悪意が消えず、ワーバラオから発せられるのを心身で感じ取っていた。

 ZⅢに内蔵された新型バイオセンサーとフル・サイコフレームが、悪意からカミーユの精神を守らなければ、彼は大きく精神を疲弊させただろう。

 突然のワーバラオのパワーアップの理由を看破したのは、バンのブレードライガーBS、アーバインのコマンドウルフASと三機一個小隊を編成していたクォヴレーである。

 

「この宇宙を貴様の庭に変えたか」

 

 眦険しく睨むクォヴレーに呼応してか、ディス・アストラナガンの禍々しい瞳は氷嵐の冷厳さでワーバラオのにやけた表情を見ている。

 

「並行世界を股にかける因果律の番人には、流石に隠し通せないか。まあ、隠す理由もないのだがね。

 私は世界の理側に立つ存在だ。この宇宙を管理するムゲ帝王が消滅した以上、空位となった管理者の座を奪う事など、実に容易い。この宇宙に満ちる怨霊達の力を、存分に有効活用させてもらうとも。

 ああ、けれども、ムゲ軍の諸君は不要だな。主君が死んだのだから、忠義に篤い臣下らしく後を追って……死ね」

 

 ワーバラオの無慈悲な宣告と共に、一瞬で多数出現した百鬼メカやメカザウルス、戦闘ロボの大軍がムゲ軍の残存戦力を囲い込み、一斉に攻撃を始める。

 混乱の最中だったムゲ軍は全方位から放たれる攻撃によって、更なる混迷に陥り、回避行動もままならずゼイ・ファーやムゲ戦艦が落ちて行く。

 

「はははははははは、死んで私の糧となれ。ムゲ帝王がそうしたように、私もこの宇宙で怨霊となったお前達を糧にするとも! ムゲ帝王に殉じてとく死にたまえよ!」

 

 これ以上楽しい事はないと言わんばかりに高笑いするワーバラオの姿に、バラオを通じて利用されていたシャーキンだけでなく、ガルーダやリヒテル、ハイネルといった原作に於いて縁のある者達を筆頭に、不快の念に顔を顰める。

 クォヴレーもまたワーバラオの醜悪な精神性を目の当たりにして、秀麗な美貌に怒りの色を浮かべる。

 

「お前が宇宙を維持する為に必要なシステムだったとして、別の宇宙であるこの世界にまで悪意を伸ばし、システムであることから逸脱しようとしているのならば、俺の役割とは関係なく、俺の意志で討ち滅ぼす事になんの躊躇いもない。唸りを上げろ、ディス・レヴ!」

 

 バラオの戦いでもそうだったようにディス・レヴが唸りを上げるとともに、ムゲ宇宙からワーバラオ宇宙へと変わりつつあるこの世界に満ちる怨霊達が、ワーバラオの魔の手から離れて、ディス・アストラナガンの下へと集まり始める。

 同時に出力を上げるディス・アストラナガンを前に、ワーバラオはそれも想定の内と慌てる様子を見せない。それどころか、自分と相性のいい力が目の前に存在する事に、悪意の笑みを深める。

 

「ふふふ、素晴らしいな、その力。私に実に馴染みそうだ。その力があれば、私はより完璧な存在になれるだろう!!」

 

「これまでもお前と同じような事を言う輩は何人も居た。だが、そのすべてが同じ運命を辿っている。お前が迎える末路も奴らと同じだ」

 

「試すがいいさ! 私がお前の倒してきた有象無象とは違う事を、命と引き換えに教えてあげよう。ふははははははは!」

 

 ディス・レヴを前に高揚を隠しきれない様子のワーバラオだが、常に湧き続ける無限の雑兵を従え、ムゲ宇宙の支配権を奪い取った状況であれば、彼/彼女が有頂天になったとしても、誰が責められるだろう。

 なにしろ、調子に乗ったツケはその命で支払わなければならないのだ。

 

「何もかも自分達の掌の中だと思い上がっているその態度、最高にムカつく奴らを思い出すぜ!!」

 

 ヴァイシュラバはワーバラオの態度に天敵にして怨敵たる『御使い』を連想し、特大の嫌悪感と怒りで闘志を滾らせる。彼の闘志はそのまま膨大な次元力を生み、渾身の拳と蹴りを周囲の雑兵達に叩き込んでゆく。

 かつてオリュンポスの神々やバジュラ、天翅、ゲッター艦隊と肩を並べて戦った次元将の攻撃は、一発で数十単位の機動兵器をガラクタに変えて行く。

 超電磁の力を持つ二体のロボットもガルーダ、ハイネルと四機一個小隊の編成を組み、お互いにこれ以上ないほど息の合ったコンビネーションで、ワーバラオまでの血路を開いていた。

 

「超電磁ヨーヨーハイパー!!」

 

「超電磁(ヘヴィ)ゴマァ!!」

 

「ブラッグビッグボウ!」

 

「ゴードルの炎を受けよ!」

 

 毎秒単位で増え告げる敵機の十重二十重の壁を次々と貫き、無数の爆発が続くが、すぐに新たな敵機が薄くなった壁に重なって厚みを取り戻し、開いた穴もすぐさまに埋められる。

 だが無尽蔵であるだけの敵など、今さらどれほどの脅威であるものか。積み重なる疲労は無視できないものだが、戦闘中の各員の疲弊やそれに伴う集中力、士気の低下はまだ許容範囲だ。このまま勢いに乗って押し切るのが最善手だと、DC隊長格達は理解していた。

 

「ゴッドゴーガン、三連、乱れ撃ちぃい!」

 

 二体のライディーンにシャーキンのギルディーンが息を合わせて、ゴッドゴーガンの雨を降らし、それに乗じてバナージのフルアーマーユニコーン、リディのバンシィ・ノルン、アムロのRνガンダム、クワトロのガイア・ギアαがあらゆる火器と操縦技術の粋を尽くして、新たに出現する増援をコンマ一秒で撃墜して行く。

 DCの中でも小隊としては最高の練度を誇る不死身の第四小隊とキースが、的確なフォローで前に出るスーパーロボットとスーパーエース達を援護する光景は、もはや芸術の域、神話の如き戦いの一幕を切り取った絵画のようでさえあった。

 つまり、それくらい現実離れしているわけだ。

 

「数で来るのならば、こちらも数で応じよう」

 

 数千、数万を数え始めたワーバラオの軍勢に対抗して、ノイ・レジセイアもまた地球の近傍宙域に待機させているアインスト達を呼び出し、ゲミュート、クノッヘン、グリードといった基本三種が一斉に転移してきて、DCの援護を始める。

 更にはアルトアイゼンを模したアインストアイゼン、ヴァイスリッターを模したアインストリッター、ソウルゲインを模したアインストゲイン、ヴァイスセイヴァーを模したアインストセイヴァーが姿を見せている。

 

「古い存在だけはある。しっかり貯蓄していたか。だが、君の本拠地は封鎖したままだろう? それに対して私はこのムゲ宇宙を掌握し、力の供給源に変えつつある。補充の利かない君とここが本拠地となりつつある私。どちらが有利か」

 

「人類と共に戦う私の方が断然有利だが?」

 

 あっけらかんと答えたノイ・レジセイアに、ワーバラオが鼻白んだ瞬間、その周囲で巨大なエネルギーがさく裂し、数百メートルの巨大な手であるワーバラオを大きく揺らす。

 

「む……?」

 

 ワーバラオの指の一本であるオルバンが、その卑小な性根を示すように自分の周囲に敷いた分厚い戦闘ロボの壁を突破した一矢のダイモス、ハレックのフォボス、リヒテルのゴッドアーモン。

 更に大小のメカザウルス達をものともせず、首を刎ね、腹をぶち抜き、屍の山と血の川を作る真ゲッターロボと悉く角をへし折られ、五体をバラバラに引き裂かれ、砕かれた百鬼ロボの残骸の中に立つ真ゲッターロボG。

 さらににやにやと笑うDr.ヘルが繰り出した飛行要塞グールや機械獣の大群を一蹴した、マジンカイザー、刃皇、ライガ、ゴウヴァリアン、マジンエンペラーG。

 彼らの戦闘の余波がワーバラオの本体に届いて、揺らしたのである。

 

「リヒテル! 見るがいい! 私は宇宙の真理に選ばれて、ひとつとなった。この姿こそが私の正しさを証明している。今からでも私がバームを支配し、地球を支配し、太陽系を、銀河を、宇宙を支配する。エリカを今度こそ我が花嫁としてやるぞ!」

 

「もうお前は喋るな、オルバン! お前の言葉は耳にする価値すらない!」

 

「まったく、一矢の言う通りだな」

 

 血走った目で叫ぶオルバンがけしかけるメカ戦士ガルドス、ゾルバー、グランド、アグーダ、ドボーグ、レアギンド、ゴムレー、ゲシュトルを相手に、ゴッドクローを装備したダイモスとフォボスが息の合った連携で応じる。

 一方、バームの恥を宇宙に広げるような真似をするオルバンを前に、リヒテルとバルバスは言葉を交わす価値もないと、それぞれゴッドアーモン、ゾンネカイザーを操って一矢達のフォローに入っている。

 

「武人としても指揮官としても、才がないお前が自ら戦いの指揮を執ったのは失敗だったな!」

 

 本来ならメカ戦士は戦闘ロボの上位機種であり、軍事力が異常発達したこのスパロボ世界でもそれなりに通用するスペックを有している。しかし、それも柔軟かつ高度な対応の出来る指揮官もなく、がむしゃらに攻撃を命じるだけでは、その性能を活かしきれまい。

 

「ワーバラオと一体になった私に、無礼な口を!」

 

「その他者に縋るだけの貴様がなにを口にしたところで!」

 

 メカ戦士の防衛網を突破したダイモスの正拳突きが、フォボスの三竜棍が次々とオルバンの顔面に直撃し、砕けた歯や血潮を飛び散らせる。大きく仰け反ったオルバンの指にゾンネカイザーとゴッドアーモンの破壊光線が付け根から指先に至るまで、満遍なく襲い掛かった。

 

「ぐ、ぎ、ぎいい」

 

「ハレック、合わせてくれ! ダイモライト解放!」

 

「言われずとも! 我らが母星の汚点よ、今度こそさらばだ!」

 

 ダイモスとフォボスのダイモライトが一時的にオーバードライブし、その刹那、闘将と烈将の拳が光の速さに到達する。

 

「必殺!! 烈光!! せぇぇぇけんづきぃぃぃッ!!」

 

「覚悟ぉおおお!!」

 

 光速の正拳突きがオルバンの両目を貫き、衝撃が内部へと伝播して、たちまちのうちにオルバンの顔面が浮かぶ指先が勢いよく内側から弾け飛んだ!!

 

「ぎゃああああああ!?!?!?!?」

 

 オルバンが悲鳴を上げる中、返り討ちにしたメカザウルスの血と百鬼メカのオイルに塗れ、殺戮にふける修羅の如き姿となった二体の真ゲッターを目の当たりにして、ゴールとブライの顔に浮かぶのはゲッター線とそれに選ばれた人間達に対する恐怖であった。

 

「やはり、やはり我らの確信は正しかった。ゲッター線は、地球人類は地球を飛び出して、宇宙を食らい尽くすガン細胞だ! これを放置しては宇宙がゲッター線に食われる!」

 

 未だゲッター線に取り込まれていないゴールとブライは、死の直前に抱いたゲッター線への感情をより濃くして、それを言葉に変える。

 

「お前達はその力の本質を理解しているのか!? ゲッターは、核など比較にならん。人間の生物としての本質さえ脅かすぞ。そしてそれは、地球だけで収まる話ではない。ゲッターに宇宙を支配させるつもりか!」

 

 返答は無敵戦艦ダイの刎ね飛ばされた二本の首と、完全合体百鬼ロボの引きちぎられた五体であった。二体の真ゲッターロボは機体の各所からゲッター線を溢れさせ、パイロット達の意識と機体が一つになっているような状態にあった。

 

「俺達が求めているのは支配じゃない。ゲッター線だって、早乙女博士は平和利用の為に研究を始めたんだ。お前達と言う悪意が襲ってきたから、戦う力として研究したんだ!」

 

 反論する竜馬だが、彼もまたゲッター線のあまりに強大な力に対する恐れはある。それでも共にゲッターに乗る仲間達と同じ戦場で戦う仲間達の存在が、彼の心を支えていた。

 仮にゲッター線がゴールとブライの言うような存在であったとしても、自分が、仲間達が必ずや止めると信じられる。

 

「竜馬君の言う通りだ。例えゲッターが僕達を戦いに駆り立てたとしても、戦いだけが僕達の、地球人類の全てにさせるものか。僕達は、人類は、共にある未来はあったとしても、ゲッター線に支配される未来になどしない!」

 

 竜馬と達人の意志を受けて、ゲッターは何を思うのか。少なくともまだ彼らを見放したわけでないのは、真ゲッター炉心が更なるエネルギーを絞り出した事からも確かだった。

 

「行くぞ、隼人、弁慶! フルパワーだ!!」

 

「こっちはいいぜ、リョウ」

 

「すげえ、ゲッターのパワーがグングン上がってゆく!」

 

 真ゲッター1と並び立つ真ゲッタードラゴンもまた同じようにエネルギーの総量を天井知らずに跳ね上げて行く。

 

「これがゲッターか。父さん、確かに僕達はとてつもない力と意志に触れたようだ」

 

「大丈夫よ、兄さん。それでも私達はゲッター線の操り人形ではないわ」

 

「ミチルさんほど頼りにならないかもしれないけど、オイラも居るのを忘れないで欲しいぜ」

 

 それはまるでゲッター線の太陽だった。今はまだその程度の力だが、このまま成長し続けていけば、確かに、彼らは銀河をも飲み込み、宇宙の運命さえ左右する超越的な存在となってもなんらおかしくはない。そこまで成長する事自体は、既に約束されているのだから。

 

「ゲッターシャアイイィン!!」

 

 竜馬と達人が同時に叫び、二機のゲッターロボはありったけの力を放出して、それぞれが濃密なゲッター線エネルギーを纏う。

 

「六つの心を一つにするんだ」

 

「ゲッターを信じるんだ」

 

「六つの心を巨大な一つの力に」

 

「ゲッターはお前達と共にある」

 

 果たして、それは誰の言葉であったろう。竜馬の声にも達人の声にも聞こえた。あるいはこの場に居ないゲッターパイロットの声だったかもしれない。それとも未だこの世界には存在しないゲッターエンペラーだったろうか?

 

「ダブルゥゥウ、シャァァァァアインスパァァァァァァアクゥ!!」

 

 ムゲ宇宙いやワーバラオ宇宙にゲッター線の輝きが複雑な機動を描き、二体のゲッターと六人のパイロット達は一つに重なり合って、真化しながら親指のゴールと人差し指のブライへ襲い掛かる。

 地球に大穴を開け、いや、粉々に砕くパワーを持ったゲッターエネルギーに飲み込まれながら、ゴールとブライは声にならない声で叫ぶ。

 

「ひ、人の意志がゲッター線の力を引き出しているのか!? お、お前、達と、ゲッター線の組み合わせは、あまりに、危険だ。相性が良すぎる!!」

 

「気付いていないのか、このムゲ宇宙に、ワーバラオ宇宙にまで、ゲッター線が届いている意味に!! ぬああああああああ!?」

 

 ゲッター線の輝きの中に飲み込まれてゆく、かつての強敵達に竜馬は哀切に近いものを瞳に浮かべ、冥福を祈るように呟いた。

 

「俺達はゲッターに屈しない。その代わり共に寄り添って生きて行くさ」

 

 ゲッター線の輝きをまともに受けても、Dr.ヘルは一切気に留めず、超機械獣を含む部隊を蹴散らしながら突き進んでくる二体の魔神皇帝のみを見ている。

 刃皇、ライガ、ゴウヴァリアンという贅沢な露払いにより、最短距離を飛翔したマジンカイザーとマジンエンペラーGはDr.ヘルの宿る薬指へ一気に迫る。

 

「Dr.ヘルとして死に、地獄大元帥として死に、またDr.ヘルとして死んで、それでもまだ死に足りなかったのかよ、Dr.ヘル!」

 

「お前達がわしに見せたのだ、光子力の凄まじさを! これほどの未練をわしに与えたのだから、相応に責任を取ってもらわねばなあ!!」

 

「ちっ、また世界征服を言い出しているわけでもないくせに、前よりも面倒な奴になって蘇った気がするぜ」

 

「俺も鉄也さんと同じ意見だぜ。純粋な知的好奇心だけでこうも迷惑な真似をしやがって」

 

 腹に爆弾を抱えたグール、ブードがダース単位で目の前に出現し、突撃してくるのにも甲児と鉄也は揺らがない。ここで迎撃すれば爆発に自分達も巻き込まれるが、Dr.ヘルもワーバラオも巻き込まれると判断した彼らは、即座に愛機の頑健さを信じた行動に出る。

 

「ルストトルネード!!」

 

「ルストタイフーン!!」

 

 二体の魔神皇帝から発射された、強酸を含む竜巻と突風は視界を埋め尽くす巨大な要塞の群れを見る間に風解させてゆき、内部の爆弾を誘爆させる。

 そうして直径数キロメートルに達する巨大な爆発が生じるのだが、地球産で最も強固かつ再生能力を持つ装甲に守られた二体にダメージは絶無であった。

 

「ワーバラオに取り込まれ、こやつの視座を得てわしは知った! この宇宙に満ちる悪意の根深さ、悍ましさ! どこまでも伸びる破滅の手を!! マジンガー自身が原初にして終焉の魔神となり、滅びの要因となる可能性の世界すらも!!!

 地球から生まれた人類がどこまで破滅に抗えるのか。機械獣やミケーネの力程度ではどうにもならぬ脅威ばかりのこの世界で、光子力は、マジンガーは、貴様らは! 悪魔をも滅ぼす力で、神をも超える力で、なにをする!?」

 

「決まってる! お前みたいな悪党がいない世界にしてみせる!! たとえどれだけの敵が現れても、どれだけの苦しみが待っていても、俺とマジンガーの命が燃えている限り!!」

 

「そういうことだ。そしてそう思っているのは俺達マジンガー乗りだけじゃない。この世界には同じように悪と戦う仲間が大勢いる。千の悪、万の悪が待っていようと、俺達がそれで絶望すると思っているのなら、見込み違いだぜ!」

 

 そうだ! そうだとも! 乗り手達の意志に応じ、魔神皇帝達が叫ぶ。魔神皇帝達から溢れる光子力の輝きは、超新星爆発のように苛烈にして峻烈。魂まで焼き焦がすその輝きに、Dr.ヘルは歓喜の極みにあった。

 

「ぶわははははははは! 感謝、感謝、大感謝だ! ワーバラオ! 自ら敗北のあり得る戦場にノコノコとやってきた脳みその無い手の誘いなんぞに乗ったのは、コレが、コレが見たかったからだ! ヤツと並ぶマジンガーの頂点の一つ! ハハハハ、ははははははは!!」

 

「マジンカイザー、フルパワーだ!」

 

「エンペラー、出し惜しみはなしだ!!」

 

 二体の魔神皇帝が彼らと共にあってから、築き上げたコンビネーションの一つ、マジンカイザーの双眸から光子力の輝きが溢れ出し、マジンエンペラーGの右手に紫色に輝く雷撃が生じる。

 

「魔神双皇撃!!」

 

 二体のマジンガー、二人のマジンガー乗りが阿吽の呼吸によって放つ合体攻撃は、お互いの威力を一切損なうことなく、完璧な調和をもってDr.ヘルごとワーバラオの薬指を貫き、その根元に至るまで完膚なきまでに消滅させた。

 ムゲ宇宙の支配権を奪い取り、絶対的勝利への道筋を整えた筈のワーバラオだったが、オルバン、ゴール、ブライ、Dr.ヘルとそれぞれの指を立て続けに破壊された事実には、大いに動揺を示し、初めて勝ち切れる筈のゲームが敗色濃厚となって行くあまりの速さに、思考が追いついていない。

 

「ばか、な? 私の整えた勝ち筋が、こうも簡単に、破綻? するのか?」

 

 ノイ・レジセイアやヴァイシュラバ、クォヴレー、フェブルウスといったイレギュラー要素達の能力を加味した上で勝てると判断し、戦いを挑んだというのに、どうしてこうも簡単に自分の手駒達が敗れ続けるのか?

 

「並行世界の番人に阻害されているから? アインストと次元将の戦闘能力を見誤った? 地球人達を過小評価しすぎていた? ソルの成れの果てが彼らを真化に導く速度が予想よりも速かった? ムートロンさえ、ライディーンさえ抑えれば、私に負ける要素などないという判断が? 間違っていたのか?」

 

 その全てであった。ワーバラオが呆然と窮地に陥った原因を並べ立てている間に、真のライディーンの剣と盾──日蝕(エクリプス)の剣と盾を手に、神秘融合を果たしたエクリプスライディーンが迫っていた。

 

「ゲームが狂ったか! 奪う手である私を、よくも追い詰めた。私の計算を狂わせた。だが、それでもやはり私の真の敗北ではない。手札は切れたが、新たな手札を用意すればそれでいい」

 

「逃がすと思っているのか!!」

 

 ムートロンの輝きを帯びるエクリプスライディーンから、洸の叫びが響き渡るが、ワーバラオは決して負け惜しみではない笑みを浮かべながら高速で後退を始める。

 終わらないゲームの舞台としてムゲ宇宙を選んだのは、ワーバラオ自身だが、いざ自分が不利となれば元の宇宙へ帰還するのに何の躊躇いもありはしない。だが、それは無意識にワーバラオが滅びを恐れたから、滅ぼされる可能性を察知しているからではないのか?

 

「ふ、ふ、ふ、無駄なのだよ。例えこの宇宙で私を滅ぼしたとしても、この私は深宇宙に潜む邪悪、真なるワーバラオの末端神経、一部にしか過ぎないのだ。一度の勝利でワーバラオを倒す事は出来ないのだよ!」

 

「それでも、ここでお前を逃がしていい理由にはならない!」

 

 変形したエクリプスライディーンの機首に日蝕の剣と盾が合体し、より大きな翼と嘴を得た日蝕の神鳥となる。内蔵していたはずのムートロンは既に失われている筈だが、古代ムー帝国の守護神からは精神体のバラオに止めを刺した時以上の力が溢れている。

 そしてそれはエクリプスライディーンだけではなかった。コン・バトラーV6、ボルテスⅦ、ダイモス、フォボスも中指一本だけとなったワーバラオへと向かい、集結している。

 

「全機フォーメーション!」

 

 豹馬の叫びに応じて天空剣を両手で突き出す構えを取ったボルテスⅦを先頭に、コン・バトラーV6、ダイモス、フォボスが密着したフォーメーションを取る。

 超電磁スピンさながら回転するボルテスⅦ達が、ダイモスとフォボスがブリザードを放射する事で更に加速! ダイモライトと超電磁エネルギーの一体渾然となり、一筋の流星と化し、豹馬が、健一が、一矢が叫ぶ!

 

「ビクトリーストライク!」

 

 そしてコン・バトラーV6達とまったく同じタイミングで洸と晶も、エクリプスライディーンと共にワーバラオの顔面へ!

 

「エクリプス・ゴッドバード・アタック!」

 

 原作に於いてザマンダー・キングを葬ったのとは、やや異なる合体攻撃を受けてワーバラオの中指は他の四本の指と同じように貫かれ、掌の部分も含めて崩壊を始める。

 だがそれ以上にワーバラオが困惑したのは、末端神経のこの自分だけでなく、本体である真のワーバラオまでもが同じ苦痛を味わい、崩壊を始めたという驚愕の事実だった。

 

「あり得ない!? ここはまだ私が強奪した宇宙だぞ! それがなぜ、あちらの宇宙にいる私にまで、滅びが波及する!?」

 

 ついに残すのは顔面のある指先のわずかな部分となったワーバラオは、次元力による事象制御に専念しているフェブルウスと並行世界をも観測する基本機能を使用中のディス・アストラナガンの姿を見つけた。

 

「そう、か、そうか、貴様らが!」

 

「これでも昔は色んな並行世界を観測していたんだよ?」

 

「悪い事ばかりさせられていたけれど、その時の経験が役に立ったね」

 

 至高神ソルとしての視座と観測機能のいくばくかを取り戻している双子とフェブルウスは、クォヴレーが目の前のワーバラオから続いている因果の糸を辿って真のワーバラオへのルートを確保したのち共にその正確な位置を捕捉する作業に専念していたのである。

 この二機と三人の尽力によってワーバラオは一部のみならず、本体に至るまで滅びの時を迎えようとしていた。慌てふためくワーバラオに向けて、シュメシとヘマーがしてやったりと笑む。

 

「たとえ末端だとしても神経で繋がっているのなら、本体との因果の繋がりを強めて、攻撃を届かせるくらいは出来る」

 

「私達とクォヴレー君にディス・アストラナガンが居て、それに皆が真化に目覚めつつあるからできた芸当だけどね。晶ちゃんや豹馬君達の攻撃も、存在の核にまで深く響いていたでしょう?」

 

「お、おおお、馬鹿な。滅びである私が、邪悪である私が居なくなれば、世界の秩序を司る天秤は一方的に崩れる!! 世界が私の消滅を認めるはずがない!!!」

 

 ワーバラオの主張は正と負の無限力を知るクォヴレーとしては、一理あるところだったが、それでも彼はこれまで出会ってきた人々との交流の中で育まれた価値観と倫理観に従ってワーバラオに告げた。

 

「自らその役割を手放したお前に、世界からの庇護を求める資格はない。末端であろうと本体であろうと、ワーバラオはこの時、この瞬間をもって滅びる。それが事実だ」

 

「い、いや、いやだあ、嫌だ。私は、滅ぼし奪う側、なのだ。滅ぼされる、のは……私の役目ではぁああああ!!!!」

 

 それまでの絶対的上位者としての余裕の仮面をはぎ取られたワーバラオは、自らに訪れる万が一にもあり得ない筈の結末を突きつけられ、みじめったらしく泣き叫びながら跡形もなく消えていった。

 

「……どうやら、終わったみたいだな」

 

 エクリプスライディーンの反応から、ワーバラオの悪意が一粒に至るまで消え去った事を確信し、洸がほっと安堵の息を吐きながら肩の力を抜く。

 同じ理由でシャーキンや感受性に優れたニュータイプ達、ヴァイシュラバやノイ・レジセイアといった面々も、ワーバラオの消滅とムゲ宇宙もといワーバラオ宇宙の消滅という別問題こそあれ、『この場』での戦いが終わった事を察知していた。

 しかし、クォヴレーとディス・アストラナガンだけはかつて相対した敵の反応を検知し、戦慄していた。

 

「馬鹿な、この反応は!!」

 

──この宇宙の理をも打ち破りし、運命の戦士達よ。

 

 それは徐々に消滅しつつあったワーバラオ宇宙に響き渡る、厳かなる声だった。さらにもう一つ、別の声が重なる。

 

──お前達に待ち受けるのは、別世界から訪れた悪意。

 

──積み重なる因果の果て、超常の力を得たかの者と対峙する前に、我らの試練を乗り越えて行くのだ。

 

──絶望が満ちる中でお前達は希望を見出せるのか。お前達が守ると決めた人々の希望となり得るのか。我らに示せ。

 

 そしてワーバラオ宇宙が消滅するその瞬間、DCのメンバーはケイサル・エフェスとウーゼス・ガッツォの作り出した更なる別世界へと転移させられるのだった。

 

<続>

■ワーバラオ(末端神経・本体)が消滅しました。

■ムゲ宇宙が消滅しました。

 

☆シークレットステージ解禁です。頑張りましょう!!




水木一郎さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。


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第百三十二話 GONG!

「ここは……初代αのラストステージ? たしかシュウとグランゾンが第七艦隊を閉じ込めた閉鎖空間だったか?」

 

 白い宇宙に黒い星々の浮かぶ空間を目の当たりにして、ヘイデスは彼方にある記憶を思い出していた。ヘルモーズやオレアナ、ズフィルードと戦い、最後に洗脳されたイングラムの乗るアストラナガン、ズフィルードに黒いジュデッカと戦ったステージだ。

 ジュデッカにダメージを与えると何度か回復されるので、一気に削りきるべく試行錯誤した記憶が、ヘイデスにはまだ残っている。

 所長は愛する夫が情報を整理するように零す言葉をしっかりと記憶しながら、ヴァルシオーのセンサーをフル稼働させて情報収集に勤しんでいた。

 

「先程の声の主は、あちらの機動兵器……と言うにはいささか生々しいですわね。それにこの重圧。ワーバラオやムゲ帝王を彷彿とさせますが、こちらは純粋な威圧感といったところ」

 

 切れ長の瞳を細め、所長はヴァルシオーのセンサーが解析不能を告げる二体を睨む。

 すなわち白と黒の色彩が流動する空間のような翼を広げ、半月のような頭部から二本の触角を生やした黒い機体、さながら邪教の崇拝する神の如きケイサル・エフェス。

 三対の天使の翼に二対の悪魔の翼を持ち、胸部には巨大な球体を抱え、ユーゼス・ゴッツォを彷彿とさせる仮面状の頭部、更にその上で天使の輪の如く輝くクロスゲートを持つアダマトロン。

 この閉鎖空間を作り上げ、崩壊し始めたワーバラオ宇宙からDCを招き入れた張本人達である。

 

「ケイサル・エフェスにアダマトロン!?」

 

 ヘイデスの心底からの驚愕の声がサブシートから聞こえてきて、その声に込められた驚愕の大きさから、所長はあの二体がとてつもない強敵であるのを悟る。

 ワーバラオやムゲ帝王を相手にしても、まだ啖呵を切るだけの余裕があった夫の出した声には驚愕と焦りが、かつてないほど籠っていたのだから。

 

「どうやら、相当に厄介な相手なようで……」

 

 ただヘイデスはあのアダマトロンが、第二次OGのユーゼス版アダマトロンだとこの時点では誤解しているが、いかに才色兼備の権化である所長といえども分かりよう筈もない。

 味方とは言い切れず、かといってこの閉鎖空間に強制的に拉致した以外には、敵対行動を見せる素振りの無い謎の二体を前に、DC側は各母艦を中心とした陣形を敷き直し、修理や補給の必要な機体を即座に戻せるよう警戒しながら様子見に入る。

 

 MAP兵器で一網打尽にされかねない配置だが、タルタロスをはじめ広域バリアを装備した艦と機体が複数存在し、またアムロやクワトロ、ジュドーといったニュータイプ達、洸と晶を始めとした念動力者達が敵の攻撃を事前に察知する事を踏まえた上での布陣だ。

 仮にコロニーレーザーやサテライトキャノンを撃ち込まれても、着弾前に防御ないし回避行動に移れるだろう。

 

 DCメンバーのほとんどにとっては初見のケイサル・エフェスとアダマトロンだが、甲児や竜馬などはケイサル・エフェスの姿にデジャ・ヴュを抱き、ノイ・レジセイアやヴァイシュラバはあの二体が次のステージに到達した存在であるのを看破していた。

 そしてなにより直接交戦した経験のあるクォヴレーと、テレビ画面越しに彼らと戦った事のあるヘイデスが真っ先に警戒の意識を露わにしたことで、各員も警戒を厳にしながら戦闘態勢を整えている。

 こちらから仕掛けるには消耗した機体とパイロットが多い、とレビルやパオロらが次の一手を打てずにいる中、珍しく表情を険しくしているクォヴレーが口火を切って、ケイサル・エフェスらに問いかけた。

 

「なぜ貴様がここに居る、ケイサル・エフェス! あの時の言葉通り、蘇ったとでも言うつもりか!」

 

 明らかに見知った様子で詰問するクォヴレーに、少しでも情報を得ようと事情を知らないDC各員は口を挟まず、ケイサル・エフェスからの返答を固唾を飲んで待った。

 果たして答えはあった。この空間に来る直前に聞こえた、あの厳かな老人の声が思念となって得体の知れないこの異空間と各メンバーの脳裏に響き渡る。

 

「月並みな台詞だな、αナンバーズのクォヴレー・ゴードン。だが、我が汝らの前に姿を現したのは、宇宙の因果を縛る鎖がそのままだからではない。我がこの者と共に汝らをこの異空間へと呼び寄せたのは、先に伝えた通り汝らの力を見極めんが為」

 

「なんだと? 俺達を打倒し、負の無限力に取り込むつもりか? そして正の無限力をも打倒し、宇宙をお前の理で支配するのか?」

 

「否。それはかつての我のガンエデンとしての使命と、我個人のエゴによる野心が生み出した野望。今の我が抱く望みではない」

 

 ケイサル・エフェスから発せられる威圧感は、かつてクォヴレーがαナンバーズの仲間達と共に感じたものと遜色はない、むしろより強くなっている。だが、同時にそこに核となるはずの悍ましさや死者の持つ負の念が感じられない。

 そしてケイサル・エフェスの言葉をアダマトロンのウーゼスが引き継ぐ。

 

「因果律の番人よ。我らがお前達に求めるのは、あの地球と宇宙を守る力がお前達にあるのかどうか、ユーゼス・ゴッツォを打ち破る力があるのか。それを確かめる為だ。お前達にその力がないのならば、この閉ざされた空間で朽ち果てるが良い」

 

 このウーゼスの言葉に、ヘイデスが『ん?』と反応を示す。アダマトロンのパイロット(?)はてっきりユーゼスだと思っていたのだが、今の台詞を聞くとユーゼスとは別人がパイロットを務めているように聞こえる。

 

(アダマトロンと同化しているというか、パイロットはユーゼスではない? そうなると誰が乗っている? ケイサル・エフェスと肩を並べられる? 他に誰が乗っていったっけ……ん? んんん? え、ひょっとして、まさか、いや、まさかのまさかなのか?)

 

 もし本当にそうだったなら、今の自分やクォヴレーの抱いている警戒感や緊張は、九割くらいは意味のないものになる。いっそ滑稽な話になってくるが、どちらかと言うとそうなって欲しい気持ちの方がヘイデスは強い。

 博打で大勝負に出るような気持で、ヘイデスは務めて平静を心掛けてアダマトロンのパイロットへと問いかける。答えは二択だ。正解次第で敵の事情が天と地ほども変わってくる。

 

「上位者にありがちな、一方的な試練を与えに来ているというのは理解しました。ところで、そちらの黒い機体の御老人がケイサル・エフェスさんとおっしゃるのは分かりましたが、そちらのユーゼスによく似た仮面の機体の方はどこのどなたでいらっしゃる?

 よろしければ、僕達に自己紹介をしてもらえませんか。これから死力を尽くして戦う相手の名前くらい、知っておきたいものでして」

 

 特にもったいぶりもせず、気負う様子もなくアダマトロンの中の人、ウーゼス・ガッツォは自分達と同等かそれ以上のイレギュラーであるヘイデスへと答えた。

 

「私はウーゼス・ガッツォ。ユーゼス・ゴッツォとは似て非なる存在。限りなく近づく事はあっても、決して重なる事はない。私とアレは決定的に、絶対的に異なる存在へと分化している。その意味をお前なら知っている筈だ」

 

「ウーゼス、ウーゼス・ガッツォですか。そうですか……どうしてこの世界に?」

 

 最後の問いかけはもう本当に、素直なヘイデスの疑問である。ウーゼスはアイドルマスターシンデレラガールズとのコラボで登場した、半スパロボ半アイマス産のキャラと言える。

 

「お前に同じ答えを返そう。そして因果律の番人クォヴレー・ゴードン、呪われし放浪者ギリアム・イェーガー、新生せし至高神シュメシ・プルート、ヘマー・プルート、フェブルウス、お前達がユーゼス・ゴッツォの野望を止める重要な鍵となる」

 

 ウーゼスに名前を呼ばれた者の中から、新たにギリアムが口を開く。並行世界で、ユーゼスの一人と会った事のあるギリアムだが、バサ帝国を結成して暗躍しているユーゼスとの面識はない。

 そのユーゼスの狙いをさも把握しているかのようなウーゼスの言動には、少なからず引かれるものがある。

 それにここまでの会話の中で、ケイサルとウーゼスから発せられる重圧は凄まじいが、悪意や敵意というものが希薄であるとギリアムだけでなく他のメンバーも薄々察している。

 

「奴がディス・アストラナガンを打ち倒し、シュメシとヘマー、そしてフェブルウスを手に入れて次元力による事象制御のノウハウを手に入れようとしているのは、我々も把握している。

 そうしてユーゼスがクロスゲート・パラダイム・システムを完成させて、自らを縛る因果の鎖を外そうとしている事も。その後の行動についてまでは、いくつかの推測は出来るが、断言できる要素はない。お前達は既にそれを把握していると?」

 

「お前達よりは。今のお前達の力は奴の喉元に届きうるが、必勝を期するならばもう一手足りない。だが我々が直接手を下すほど、お前達の地球に肩入れしているわけではない」

 

「だから、その足りない分を鍛えてやる、とそういうつもりなのか?」

 

「そのようなものだ」

 

 なんとも上から目線の一方的で、押しつけがましい意見だった。

 言っている事を信じるのなら、ケイサルとウーゼス共に害意と悪意があっての行いではないらしいが、どうにも横柄な態度は鼻につくもので、獣戦機隊の忍を筆頭に忍や勝平、豹馬などは分かりやすく頭に血を上らせて、一発ぶん殴ってやろうか、という表情になっている。

 ウーゼスの語る一手が気になったのは、ヘイデスだった。αシリーズと第二次OG、Zシリーズを知る彼からすれば、二つの作品と今の自分達の戦力を比較して足りていないものを思い浮かべるのは、自然な流れだろう。

 

「確かに今の僕達にはイデオンもガンバスターもグレンラガンもいない。ネオ・グランゾンやエグゼクスバイン、バンプレイオスも居ないが、並大抵の相手にならば十分に勝てるだけの戦力は整えました。それでもまだ足りないと?」

 

「確かに集いし剣であるお前達の戦力は、私の観測した多くの世界で勝利の栄誉を勝ち取るに相応しい精強さだ。おそらく今のままユーゼスとの戦いに挑んでも、勝てる確率は十分にあるが、奴の思惑が上手く運んだ場合には敗北するやもしれん」

 

 そうしてウーゼスはフェブルウスを見た。ケイサルも同じようにフェブルウス、その中にいるシュメシとヘマーを見る。元は至高神ソルの意志であり、今は三つに分かれた三位一体の子供らを。

 二人が視線を向けた事で、ヘイデスはウーゼスの言う足りない一手に思い至る。それは高次元存在への道を開く『真化』。機体とパイロットの霊子が一つとなり、心身共に一体となって新たなステージへと昇華される現象。

 

 現在のDCはフェブルウスと長くともに戦場で戦ってきた影響と、彼ら自身の成長による真化まであと一歩の段階にまで到達している。

 Zシリーズでは歪んだ真化を果たした存在であるムゲ帝王と戦い、疑似的な真化を行ったヴァイシュラバの影響もあり、ヘイデスはこのまま行けばユーゼスとの戦いの中で到達するか、あるいは真化に至るまでもなく戦いに勝利すると踏んでいたのだが……

 

「『真化』が必要になるほど、ユーゼスが強大だと?」

 

 『御使い』の残党を吸収し、並行世界を巡ってゼ・バルマリィ帝国の遺産を回収し、ディス・レヴを完成させたとはいえ、こちらにもディス・アストラナガンとフェブルウスをはじめ、ヴァイシュラバ、ノイ・レジセイア、ツヴァイザーゲインなどイレギュラーな戦力がある。

 先の戦いから更に戦力を強化した現状ならば、ユーゼスがディス・ジュデッカを復活させても勝てるのではないか?

 

「そう思っておけ。敵を弱いと決めつけて敗北するのと、敵を強いと警戒して勝利するのならば、誰もが後者を選ぶ」

 

「さあ、問答はここまでだ。運命の戦士達よ。我らに力を示せぬのならば、運命の奴隷から逸脱せんと目論むユーゼスにも届かぬ。

 汝らがユーゼスに敗れれば、ユーゼスにディスの心臓や至高神のシステムをむざむざと明け渡す事となる。そうなるくらいならば、汝らの命運、ここで我らが断ってくれよう」

 

 ケイサル・エフェスの宣言と同時に彼らから発せられる威圧感が急激に増し、その周囲にシュムエルやハーガイ系、エスリム系といったバルマー系の機動兵器に加え、ラー・ザナヴ、ラー・ケレン、ラー・カナフ達ガンエデンのしもべ、更にはゲベル・ガンエデンが二機も出現する。

 敵機の出現はそれだけに留まらない。ウーゼスのアダマトロンを中心として、バラルの園の機動兵器ズロア、スナピル、白いザナヴ、ケレン、カナフ、更にヴォルクルス完全体と上半身、下半身に分かれた分身体達、饕餮王、窮奇王ら四凶の超機人達が姿を見せる。

 

 ケイサル・エフェスとアダマトロンがラスボスを務めたラストステージを彷彿とさせる敵機のラインナップに、ヘイデスは軽く頬を引き攣らせた。

 ムゲ帝王とワーバラオとの消耗を回復できていない状況で、これだけの数と質の敵機を相手にするのはDCといえども堪えるものがある。

 頼んでもないのに鍛えてやると押し付けておいて、これはいささか厳しくはないだろうか? ヘイデスは率直にそれを口にした。スパロボCGを経たケイサルとウーゼスだと知って緊張が緩和し、いくらか砕けた口調になっていた。

 

「もう少しこう、手心を加えてくれてもいいと思うのだけれどなあ。せめて修理と補給をする時間くらいくれても」

 

「笑止。いつでも万全の状態で挑めるのが、汝らの赴く戦場か? ましてや汝らの事情を斟酌する敵ばかりか? フラスコの実験室よりこの混沌たる世界に降り立ちし者よ」

 

「……。そういう設定を与えられたこの世界の住人か、本当にあちら側からこちら側に転生なり憑依なりしてきたのか、自分自身でも分からないんですけどね。あなたならお分かりになる? 真なる霊帝陛下」

 

「ほう、多少は皮肉を利かせる余裕はあるか。しかし、汝の答えには否としか言えぬ。負の無限力の化身となった我でも、属する世界はあくまでフラスコの中であった故。それはゲッターエンペラーもマジンガーZEROもデモンベインでさえも、同じこと」

 

「マジンガーZEROとデモンベインも把握しているとは……。彼らの属する世界との干渉は、ペルフェクティオの出現並みにおっかないんですけどね」

 

「我から言えることは一つ。ヘイデス・プルート、そなたが今生きているのは、息をして、心臓が動き、心が存在しているのは、この世界であるということ。ならば一つの命として生きる以外にあるまい?」

 

 ケイサルがヘイデスを励まそうとしたのか、それとも事実を突きつけただけなのか、それは彼にしかわからないが、ヘイデスはそれを励ましとして受け取り、救われたように笑う。

 決して表には出さないが、それはヘイデスの心の最も奥深いところに巣食って、彼を苦しませているから。

 

「そうですか。……ありがとう。ならば一つの命として、夫して、父親として、精一杯、足掻いて見せましょう」

 

「それでよい。さあ! ディバイン・クルセイダーズ! もっとも新しき剣達よ! 盾達よ! 戦いのGONGを鳴らせ!」

 

 高らかにあの懐かしい響きの声で叫ぶケイサル・エフェスに、ヘイデスは思わず笑みを零した。ケイサル・エフェスもまさか知るまい。彼の声がロボットアニメに親しんだ者達にとって、いや、そうでない人々でさえ、一度は聞いたことのある声であるなどと。

 

「! ふふっ!」

 

「あら、なにがおかしかったのです、総帥。面倒くさい善意を押し付けてきた強敵の声に、なんだか喜んでいらっしゃるように聞こえますけれど」

 

「ごめんごめん。あの声で『GONG』と言われるとね、どうしても、嬉しくなっちゃって。特大のファンサービスみたいなものだから」

 

「? クォヴレー君や貴方の反応からして、以前は強大な敵だった相手なのですよね? なのにファンサービスですか?」

 

「そ。とおっても素敵なね。さあ、気持ちを切り替えていこう。あの二人も、呼び出した機体も、全部強敵だ。ライザーソードを使った後だけれど、ツインドライヴのご機嫌はいかがかな?」

 

 所長は、総帥はなんだか機嫌がいいですわねえ、と首をかしげながら仕事をこなす。

 

「調子は万全です。消費したGN粒子の補填は二分もあれば事足ります。Dエクストラクター、光子力反応炉、真ゲッター炉心、縮退炉、どれも鼻歌を歌っていそうなくらい、元気いっぱいですわよ」

 

「そう、それならメガ・ギルギルギルガンとドラ・ミレニウム共々、前に出ようか。ヴァルシオーも僕達も比較的消耗は少ない」

 

「あら何時にも増して積極的ですこと。私よりもあのケイサル某からの励ましの方が、効きまして?」

 

「ふふ、麗しき愛妻に可愛いやきもちを焼かせられたのは、嬉しい誤算かな」

 

「はいはい、この戦いが終わったら、私をたっぷりと甘やかしてくださいな」

 

「では、とろけるほどに」

 

 なんだコイツら、惚気か、と余人が聞いていたら吐きそうな会話をプルート夫妻がしている間に、レビルは素早く指示を出す。

 

「各員、搭乗機の状態を至急報告! 補給と修理の必要な機体を優先して母艦に帰投させよ。各艦、全砲門開け! 敵機動兵器部隊を押しとどめ、機動兵器部隊の回収を支援せよ!!」

 

 ケイサル・エフェスとアダマトロンはズロアやスナピル、エスリム、シュムエル、ハーガイなどの雑兵をまずは動かし、定石どおりに雑兵による消耗を強いる動きを見せていた。

 この白黒の空間に蠢く大部隊の砲撃がスコールの如く襲い掛かり、数百メートル単位の巨躯を誇るヴォルクルス上・下、饕餮王、窮奇王らが一斉に動き出す。

 こちら側はクノッヘンやグリードといったアインスト達の姿はなく、DCだけで迎え撃たなければならない状況にある。

 圧倒的に数で劣る状況の中、味方は万全からは程遠い状態。情報を抜き出して陳列すれば、絶望へまっしぐらの中、戦端は開かれるのであった。

 

<続>

 

・気力80スタート

・HP/EN/弾薬80%スタート

 



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第百三十三話 シンデレラおじさん達

※所長の気力について、ヘイデスは気力200ですがサブパイロットなので、あまり意味がありません。その代わり、ヘイデスにつられた所長の気力は130からスタートとなります。

ちなみに資金稼ぎに適したボーナスステージでもあります。


■共通ルート シークレットステージ『シンデレラおじさん達』

 

「Eパックの交換を急げ! ミサイルポッドはポッドごと取り換えるんだよ!! 排熱の済んでいない機体には安易に触れるな! 急ぎの現場だが、慌てず正確、迅速にだ!!」

 

 ハガネの格納庫ではチーフメカニックの指示が飛び、それは他の全てのDC艦隊母艦でも共通していた。帰投の優先順位を指示された機体が大急ぎで戻ってきており、防護服を着こんだメカニック達と、作業用パワーローダーと合体したハロ達が群がっている。

 さながら、こびとの国で拘束されたガリバーの如くとなった機体から出て、小休憩を強制的に取らされているパイロット達は、一分一秒でも早く再出撃できる時を臥薪嘗胆の思いで見守っていた。

 

 出撃していた機体が順次帰投する中、ケイサル・エフェスとウーゼスの複製した敵機部隊は怒涛の勢いをもってDCに攻撃を仕掛けている。

 ケイサルとアダマトロンが出現地点から動かずにいるのと、ラー・ケレンやザナヴら、原作のプレイヤー部隊にクストースと呼ばれた下僕達、ヴォルクルス完全体もまだ攻勢に出る様子を見せていないのは、不幸中の幸いであった。

 

 艦隊の護衛に配置していたビルゴタイプを主軸としたMD部隊が、ゼファーW0ライザーとREONに率いられる形で前面に出て、艦隊の展開する各種防御バリアと共に後退する友軍の支援に入っている。

 また比較的消耗の少ない機体とパイロットが人外である為、まだまだ気力・体力の充実している面々が、大攻勢を仕掛けてくるズロアやスナピル、エスリム・ローシュ、ハーガイ・ヤッド、シュムエル・ベンを纏めて相手取る。そうせざるを得ない状況であった。

 

「魂のない木偶人形だが、数だけはいやがる。『御使い』共を相手にしているとよくある状況だが、質の方はそれなりのを揃えているじゃねえか」

 

 最前線で大攻勢を押し留める防波堤の役割を担っている内の一人、ヴァイシュラバはまるで衰えるところのない次元力と闘志をそのままに四肢を振るい、群がるズロアとスピナルを叩き潰していた。

 ケイサル・エフェスの支配するネシャーマではなく、独自開発した人工知能かあるいは念によって制御されているのだろう。本来、自我を持つヴォルクルス完全体と窮奇王、饕餮王も同じだ。おそらく饕餮王らに倒されても、魂を食われる恐れはあるまい。

 

 ヴァイシュラバと並んで奮戦しているのはノイ・レジセイアだ。彼もまた人ならざるものとして、尽きぬ体力と気力でもって敵機の波状攻撃を遮る壁となって、立ちふさがっている。

 蔦のような腕を振るい、巨体の各所から光の奔流を放ち、壁のような密度で迫ってくる敵群を薙ぎ払い、有り余るエネルギーを惜しみなく放出して、DCメンバーが復帰するまでの時間稼ぎに徹している。

 

「ぬう、やはりこの世界に眷属を呼び込めないか。我々だけでこの状況を維持しなければならんな。最奥の二機を倒すのには、戦力が足りん」

 

 ノイ・レジセイアは現在、防波堤を構築している面子の中で最も気力の充溢している二人に目を向ける。一番、気合の入っているヘイデスとその影響を受けて、気力を漲らせている所長が乗るヴァルシオーである。

 野獣回路ベースのサイ・コンバーターを搭載している為、パイロットの気力によって性能を上乗せできる特性が、この上なく発揮されている。まあ、それは現在の地球連邦軍の主力機動兵器全般に言える話だが。

 

「メガ・グラビトンウェーブ……二連射!」

 

 ヴァルシオーの高出力にものを言わせた超重力の嵐の連射で、エスリム・ローシュが数ダースまとめて粉砕され、砲戦機なのに近接戦闘面を強化した結果、砲撃能力の低下を招いた本末転倒機体ハーガイ・ヤッドも同じように圧壊している。

 

「からの! 重力子レンズ展開、グラビトンランチャー! 最大出力!!」

 

 ヴァルシオー前面に直径百メートルの重力レンズが形成され、そこを通過したグラビトンランチャーは数十の奔流に分裂して、前方広範囲の敵機がまとめて吹き飛ぶ。

 多数の敵機との戦闘を前提とした武装ラインナップとはいえ、呆気にとられる撃墜速度である。

 所長の気力上げ要員として立派に役目を果たしているヘイデスは、レーダーに映る敵影が増えては消え、消えては増えてを繰り返している状況に、乾いた笑いを零している。

 

「数の面で言ったらゼントラーディや宇宙怪獣、アンスパを相手にするよりもずっと楽なんだろうけど、URGの型番が伊達じゃない証明としては十分だね」

 

「あらやだ、まだ内緒にしている敵候補がおりますの? 地球が平和になるのはいつのことになりますやら。

 とはいえ、ヴァルシオーは私の持てる技術と知識を総動員して作り上げましたから。私と同じでトップにはなれなくても、あらゆる面がトップクラスの機体です。我が子も同然と思うくらいには愛着もありますわ」

 

「それならヴァルシオーラともどもフェブルウスの兄弟機扱いにしておこうか。系列は全然違うけど」

 

「妙案ですわね。とりあえずは目の前の雑魚を蹴散らして、奥に控えているお二方を叩きのめしたら、取り掛かるとしましょうか。まあ、ああいうのを見ると、スーパーロボットなのになあ、と黄昏たくなりますけどねえ」

 

 所長が少しやさぐれた調子で言ったのには理由がある。コックピットのホロモニターに映っているのは、ゼファーW0ライザーがクワッドバスターライフルでヴォルクルス下半身と上半身、さらにその周囲の敵機を纏めて消し飛ばす光景だった。

 ヴォルクルスはどちらも80~100m近い巨体を誇るが、クワッドバスターライフルの直径は数百メートルクラスだ。丸呑みして消滅させるのは、その圧倒的破壊力もあって不可能ではなかった。

 

「一応、モビルスーツなのですけれどね、W0ライザー」

 

「マン・マシーンにも分類できる機体じゃないしね。機体もゼファーもオンリーワンの存在だから」

 

 ぐっと数を減らしたDCメンバーだが、密集し、MAP兵器やそれ並みの圧倒的火力を乱舞し、迫りくる敵機の群れを木端微塵にしており、本当に戦力が低下しているのかと疑いたくなる戦いぶりである。

 ウーゼスは比較的これまでよりも質の高い雑兵を寡兵で撃退する姿に、頃合いかと判断して、更に質の高い敵をけしかける。

 

 消し飛ばされずに済んでいたヴォルクルスの上半身、下半身、更に饕餮王、窮奇王、白黒のクストース達だ。無人機とはいえそれらの機体が放つプレッシャーは強大だ。

 これに即座に応じたのは、激戦を経てなお力を残していた一部のスーパーロボットを筆頭にグランド・スター小隊、フェブルウスといった面々である。

 クストース達がタイミングを合わせて発射したテヒラー・レイ、窮奇王が虚空を疾走しながら放つ強力な衝撃波を伴う咆哮、饕餮王が吐き出した人面の肉球、それらを迎撃する為に光子力ビーム、ボルテスバズーカ、メビウス・ジェイド、ダイガンなどが発射され、両者の中間地点で巨大な爆発が生じる。

 

 極彩色の爆発の光を突破し、虎や豹に似た姿の有翼の猛獣──窮奇王は尻尾の先端から光線を発射して牽制しながら、牙を剥いてDCへと襲い掛かる。

 その外見にそぐわぬ速さと凶暴さで襲い掛かってくる窮奇王に負けじと、腹の底からの咆哮を上げたのは獣気を漲らせる究極最終の超獣機神と獣戦機隊!

 

「中身のねえガワだけの獣がよ! 剥製みてえな奴が俺達に敵うかよ!!」

 

 窮奇王の凶尾光が形作った刃を、断空真剣があっさりと弾き飛ばし、牙を剥く大顎に鉄拳が叩き込まれる。バキバキと音を立てて窮奇王の牙の数本がへし折れ、窮奇王は苦痛の呻きを上げて身をよじり、後方へと飛び退く。

 そこへ獣戦機隊の五人とFUダンクーガが『共に』叫びをあげて襲い掛かる。魂無き窮奇王はその叫びに命の熱を、輝きを感じたのか、はっきりと怯む素振りを見せた。

 

「獣の勝負はビビった方が負けだぜ!!」

 

 大上段に振り上げられた断空真剣が振り下ろされ、半ばから断ち切られた窮奇王の尻尾が空中に舞い飛んだ。

 FUダンクーガに窮奇王を任せて大丈夫だ、と他のメンバーが認識している間にも、他の敵は窮奇王を助けに行く素振りを見せずにひたすらに攻撃の一手を選んでいた。

 クストース同士ならばまだ連携をするだろうが、その他の面々では援護攻撃や援護防御もお互いにすることはないだろう。そして厄介なのはその連携をする黒白のクストース全六機である。

 

 ナシム・ガンエデンの下僕たる白いクストース、ゲベル・ガンエデンの下僕たる黒いクストース達。それぞれのカナフは炎を纏い、ケレンは空間を海のように泳ぎ、ザナヴは稲妻を纏って突っ込んでくる。

 同タイプの機体同士である為、互いに絡み合うようにして位置を変えながら、六つのエネルギーを束ね、巨大な流星のように突進してくるその合体攻撃は、例え魂がなかろうとも明確な脅威であった。

 

「そっちが六機で来るなら!!」

 

 その前にマジンカイザー、マジンエンペラーGが立ちはだかり

 

「こっちも六機で対抗だ!!」

 

 更に真ゲッター1、真ゲッタードラゴンの二機が加わり

 

「ふ、分の悪い賭けとは呼べんな、これは」

 

「たまには勝ち確定のギャンブルもいいんじゃないの~?」

 

 アルトアイゼン・ブルクとデメルング・ヴァイスリッターが肩を並べて、六機が勢ぞろいとなる。

 

「みんな、いくぞ!」

 

 甲児の掛け声に合わせ、迫りくるクストースの合体攻撃に向け、マジンカイザーのファイヤーブラスター、マジンエンペラーGのグレートブラスターによる、日本列島が蒸発する超熱量。

 真ゲッター1と真ゲッタードラゴンによる、地球の裏側まで大穴を貫通させるダブルゲッタービーム。

 そしてアルトアイゼン・ブルクの光子力デモリッシュ・クレイモア、デメルング・ヴァイスリッターのグングニル・ランチャーとドライゲッタービームキャノンが一斉に発射される。

 

 迫りくる六つのダイナミックなエネルギーに対して、クストース達は敏感に危険を察知し、お互いのエネルギーが直撃する寸前にさっと身を翻した。

 まるでゲッタードラゴンのシャインスパークのように、クストース達の合体攻撃のエネルギーだけが残り、光子力とゲッター線の混合攻撃とぶつかり合い、数秒の拮抗の後には勢い良くぶち抜かれていった。

 あのままクストース達が残っていたら、もろに攻撃を浴びて撃破されていただろう。

 

 散開したクストース達に対し、竜馬達も攻撃を切り上げると倒すべき敵を見定めてそれぞれが戦いを挑む。彼らが雑兵の掃討に回れないのは状況的に厳しいが、クストース達を自由にさせてしまえば、より状況が悪化するのは明らかであった。

 ただしその分はマジンカイザーから再び出現したライガや刃皇、ゴウヴァリアンのお陰で、かなり負担は減っている。

 こうなってくると甲児や竜馬達の目標は、目の前のクストース達をいかに早く撃墜するかになり、クストース達は容赦のない攻撃を浴びる事になるのだった。

 

 クストース達が猛烈な勢いの攻撃に晒される中、饕餮王はラトゥーニのバーサル・ヴァルシオーラを獲物と定め、目から怪光線『餓眼光』を放ちながら襲い掛かる。

 古代中国の神話に語られる神獣『饕餮』を模して造られたこの『四凶』の超機人は、老人めいた頭部に人の如き体と獣の尾、虎の牙を持つ異形の姿だ。

 オリジナルは四凶そのものがパイロットの肉体を食べて稼働するという、とんでもない機体であり、それに加えてこの饕餮王は常に飢え、渇き、生命体を見境なく食い殺すという災厄その者である。

 

 さらに食われた者の魂は饕餮王の腹の中に捕らえられ、輪廻から外れたまつろわぬ霊となるという、超機人の風上にも置けない凶悪な仕様だ。

 幸い、複製された魂無き饕餮王には、オリジナルの持っていた飢渇がなく、攻撃性や威圧感を衰えさせている。だからといって饕餮王の外見や武装の気色悪さまで和らぐわけではないのが、惜しまれるところだ。

 

「あの敵は、私とヴァルシオーラで仕留める!」

 

 バーサル・ヴァルシオーラもこれまでの激戦により、兜をはじめ追加装甲の一部が破損しており、傷ついた有翼の女騎士か天上世界の戦乙女めいた姿だ。あるいはその傷つきながらも尚戦う美しい姿が、饕餮王の無いはずの食欲を刺激してしまったのか。

 ツインメガビームランチャーを両手に構え、連射されるビーム弾を饕餮王は数発の被弾を受けながらも、身軽な動きで距離を詰めてくる。

 饕餮王が大口を開き、球形の妖機人の爆弾『餓魂球』を吐き出す。餓魂球に浮かぶ顔と目線が合い、ラトゥーニはあまりの気色の悪さに鳥肌を立てたが、それでも厳しい訓練を重ねた体は動くのを止めなかった。

 

「パターンは解析済み」

 

 二挺の小銃に分離させたツインメガビームランチャーの内、左手の小銃で餓魂球を打ち落とし、残る右手の小銃で饕餮王に命中弾を重ね続ける。饕餮王は両手を顔の前で交差させて盾代わりにして、多少の被弾を覚悟して一気に跳躍してくる。

 ツインメガビームランチャーの弾幕が和らいだ瞬間を見逃さず、攻撃を仕掛けてきた饕餮王に対して、ラトゥーニも即座に対応を変える。右手のツインメガビームランチャーを腰裏のホルスターに戻し、即座にバーサルブレードを引き抜く。

 笑っているように見える饕餮王の顔面をラトゥーニはコックピットの中で睨み返し、裂帛の気合をもって斬りかかった。

 

「やああああ!!」

 

 マジンガーやゲッター、バーサル・ヴァルシオーラ達が襲い掛かってきた中ボス相当の敵機を相手にし、素通りしてきた敵機の群れをヴァルシオーが一手に引き受ける中、地響きを立てるかのように接近してくるヴォルクルスの上半身・下半身はオウカ達が相手取っていた。

 フレッサービルガー、フィリグランファルケン、ラピエサージュ・メルヒェンのどれもが、ムゲ帝国との連戦の消耗をほとんど感じさせない力強さに満ちており、パイロット達も意気軒高だ。

 最も長く双子とフェブルウスと共に戦場を駆け抜けていた彼らが、この場で最も真化に近い領域にあったとしてもおかしな話ではないだろう。

 

 角の生えた悪魔のような頭部に蝙蝠の翼、髑髏を思わせる胸部を持つヴォルクルス上半身はラピエサージュ・メルヒェンが引き付け、巨大な蜥蜴と蠍を掛け合わせ、更に蟷螂の鎌を手の代わりにした女性の上半身を乗せたヴォルクルス下半身はフレッサービルガーとフィリグランファルケンが撃破するべく動いている。

 ヴォルクルスは魔法陣を介した特異な攻撃を有する、霊的要素を強く含む存在である。この世界のヴォルクルス達は、本物のヴォルクルスを模して造られた兵器の更に複製だが、攻撃手段は変わりがない。

 

「オオオオ!!」

 

 ヴォルクルス下半身が知性の無い怪物の唸り声をあげ、前方に紫色の光と文字で形成された魔法陣が描き出される。

 この時点でアラドとゼオラは回避行動を取っていた。相手が知性も魂もない存在だとしても、放たれる殺気は確かに存在しており、彼らはそれを鋭敏に察知していたのだ。

 直後、複数の目玉が並ぶトカゲモドキの口から黒紫色をわずかに帯びた雄叫びが魔法陣へと向けて放たれ、魔法陣によって増幅された『ハイパーソニックウェーブ』が発射される。

 

 先程、ゼファーW0ライザーにまとめて消滅させられた時には、披露する間もなかった攻撃を二羽の鳥達は危なげなく回避する。

 ただ、機体こそ無傷だったもののパイロットのアラドとゼオラは、バラオやムゲ帝王を彷彿とさせる特異な攻撃方法に大なり小なり驚いている。

 

「でっけえおたけびだと思ったけど、ありゃ当たったらただじゃ済まねえな」

 

「すごい振動だわ。未知のエネルギーが含まれている。今のファルケンとビルガーなら直撃を受けても簡単には沈まないけれど、直撃は避けるべきよ」

 

「ああ。まだ親玉とその取り巻きが奥の方でスタンバってんかんな」

 

 アラドの視線の先にはケイサル・エフェスとアダマトロンはもちろん、ゲベル・ガンエデンとヴォルクルス完全体の姿があった。一斉に攻撃を仕掛けて来ないのは余裕か、それとも試練を与えるという言葉通り、観察でもしているのか、とアラドは珍しく思考を巡らせる。

 光子力の輝きはなく、展開したジャケットアーマーも閉じた状態のフレッサービルガーは、アラドの闘志を乗せて加速し、一気にヴォルクルス下半身へと迫る。

 連戦の消耗によって気力が衰え、集中力も落ちているが、アラドは自らに『気合』を入れて操縦桿を握り締める。

 

「こういうバケモンの相手をするのも慣れたもんだぜっと!」

 

 フレッサービルガーの左腕にある五連光子力ガトリングガンから、物質化するほど圧縮された光子力の銃弾がばら撒かれ、ヴォルクルスの巨体を次々と抉り、命中した箇所の肉を一瞬で蒸発させる。

 苦悶の声を上げるヴォルクルスだが、すぐさま肉が盛り上がって傷を塞ごうとする。大質量の巨体と強力な再生能力により、圧倒的な耐久性を持つのがヴォルクルスの特徴の一つだ。

 

 また肉片一つ残っていれば、そこから再生する事も可能で、機体に付着した肉片に気付かずにいるとそのまま、再生途中に機体が飲まれる危険性すらある。

 そうとは知らぬアラドはマジンガーブレードを機体の右手で引き抜き、いつもの通り果敢に斬りかかってゆく。そのアラドを狙って比較的周囲に居た巨人型のズロアやスナピル、エスリム・ローシュが火力を集中しようと襲い掛かってくる。

 

 それを的確にフォローするのは言うまでもなく、ゼオラのフィリグランファルケンだ。

 左右に張り出た両肩の装甲内部の3D光子力プリンターが稼働し始め、ギガスミサイルがほとんど絶え間なく発射され始める。

 それに合わせてゼオラもオクスタンライフルのEモードをセレクトし、システムがロックオンするよりも早く、敵機の機動を予測してその未来位置に攻撃を置いて行く。

 

「アラドの邪魔はさせないわ!」

 

 ゼオラは意識して『集中』を深め、群がってくる敵の群れをすさまじい速度で撃墜して行く。発射されたミサイルを撃ち落とすなり、射撃で動きを牽制するのではなく、迅速かつ的確に撃墜して見せるのだから、これまでの戦いで磨き抜かれた技量の高さが見て取れる。

 

「アラド、周りは抑えるからその大きいの……ライブラリに照合? ヴォルクルス? に集中して!」

 

 DCのみならず現在の地球連邦では、ヘイデスのスパロボ知識とパンドラボックスの情報がある程度、共有されており、その中のデータにヴォルクルスについてのものがあり、ライブラリが照合したのだ。

 

「おう、ありがとうな、ゼオラ! 行くぜぇ、マジンガーブレード、ナマズ切りだ!!」

 

 アラドは、おそらく“なます切り”と言いたいのだろう。光子力を纏う超合金NZαの刃はヴォルクルスの表皮と肉をやすやすと切り裂き、巨体のそこかしこが血塗れになる。

 斬るのと同時に刃に纏った光子力で傷口を焼き潰す事で、再生を阻害していたが、これはアラドが意図して行ったわけではなく、偶然、功を奏したわけだ。

 女人体の部分が鎌を振るってフレッサービルガーを追い払おうとするが、超高機動機であるフレッサービルガーを追いきれるものではない。

 

 マジンガーブレードの一閃と共にまた新たな傷が出来た瞬間、ヴォルクルスは苛立ちが頂点に達したのか、自分ごと纏めて攻撃する判断を下す。

 蛇に似た頭部を持った尻尾がピンと直立するとその先に内部に小さな魔方陣を含む大きな魔法陣を描き出し、そこから何十もの強力な光線が発射される。『アストラルバスター』と呼称される攻撃だ。

 空中で弧を描いたアストラルバスターはフレッサービルガーを目掛けて降り注ぎ、発射したヴォルクルス自身への被弾も辞さない射程範囲だ。

 

「おわ、ちょちょ、たんま!」

 

 慌てたアラドが咄嗟に回避行動に移り、頭上から降り注ぐアストラルバスターをあたふたと避けはじめるが、それでも攻撃の手は止めなかった。

 

「せっかく懐に飛び込んだんだ。それに今のビルガーならちょっとやそっとの攻撃でやられやしない! スタッグ・ビートル・クラッシャー!」

 

 刃の展開する音と共にスタッグ・ビートル・クラッシャーが大きく開かれ、フレッサービルガーは降り注ぐアストラルバスターに怯まずに突っ込む。

 フレッサースクランダーの翼端やつま先をアストラルバスターが掠める中、アラドは狙い過たず、ヴォルクルスの直立している尻尾を捕らえた!

 

「狙ってくださいって、言っているようなもんだぜ!」

 

 プツリと呆気ないくらい簡単にヴォルクルスの尻尾は切断され、行き場を失ったアストラルバスターのエネルギーが解き放たれる場を求めて、その場で全方位に炸裂する。

 

「いい!?」

 

「ギュウオアアアアア!?」

 

 アストラルバスターの暴発に巻き込まれるアラドの情けない声とヴォルクルスの悲鳴を耳にしたゼオラは、瞬時に怒りで顔を真っ赤にして反射的に叫んでいた。

 

「アラドの馬鹿!」

 

 もちろんあの程度でフレッサービルガーはびくともしないと知っているので、アラドの無事を確信した上での発言だったが。

 下半身のヴォルクルスがアラドとゼオラによって、徐々に追い詰められている間に上半身のヴォルクルスはオウカとラピエサージュ・メルヒェンの猛攻を受けて、下半身よりも更に追い詰められていた。

 下半身に比べて若干知性があり、飛行能力を持つ為に動きの速い上半身だが、ラピエサージュ・メルヒェンの機動性・速度の方がはるかに上回り、下半身よりも劣る防御性能故に、再生の追いつかないダメージを連続で受け続けている。

 

「死スベキ者ヨ。永劫ノ眠リニツクガイイ!!」

 

 ヴォルクルスは額の真ん中から生えている捻じれた角を突き出し、ラピエサージュ・メルヒェンへまっすぐに襲い掛かる。額の角を突き刺す『プラズマティックブレード』である。

 それを避けられても、翼にある『かぎ爪』で追撃を仕掛ける二段構えだが、オウカは小細工なしの真っ向から叩き潰す選択肢を選んだ。

 

「ゲッター・マグナム・ビーク!」

 

 ラピエサージュ・メルヒェンの左腕に装備されたゲッター・マグナム・ビークの刃が、ヴォルクルスと交錯する直前に一枚当たり刃長二十メートルほどに巨大化し、間合いの変化を見切れなかったヴォルクルスの額へ深々と突き刺さる。

 上半身だけのヴォルクルスは完全体にある顔はなく、顔と首が胴体に埋もれている形状だ。額を貫いたゲッター・マグナム・ビークの刃はそのまま、胴体にまで達した。

 オウカのしなやかな指は淀みなく次の動作を実行する。

 

「バースト!!」

 

 ゲッター・マグナム・ビーク基部でビームマガジンが撃発し、巨大化した刃が勢いよく飛び出して、刃の切っ先が胴体を貫通する。

 更にそのまま左腕を振り抜き、ヴォルクルスは額でかろうじて繋がっているだけで、ほとんど四枚におろされた凄惨な有り様になる。

 

「グウウオアオオオオオ!?」

 

「貴方のような存在に出る幕はありません! 跡形もなく消え去りなさい!」

 

 オーバーオクスタンランチャーの砲身をヴォルクルスの額に密着させ、オウカは容赦なくトリガーを引き絞る。

 デメルング・ヴァイスリッターとは異なり、非常に安定している光子力反応炉と真ゲッター炉心から供給された二種のエネルギーは、ズタボロになっていたヴォルクルスを飲み込み、オウカの言葉通り跡形もなく消し飛ばす。

 この安定ぶりから、ヘイデスは、ラピエサージュ・メルヒェンはスパロボF完結編の、ゲッター線を浴びたマジンガーZが進化したバージョンのマジンカイザーモチーフなのかな? とこっそり思っている。

 

 比較的消耗の少なかった機体とゼファーやレオン達を主軸に陣形を敷き直し、雑兵メインの第一波を凌ぎ、更にクストースや超機人を加えた第二波も凌ぎつつあるDCの動きにケイサル・エフェスとアダマトロンはそれぞれ及第点を与えた。

 DCの各主人公格は真化融合の一歩手前に達し、そうでない者達、具体的に言えばカツ・コバヤシやボス達もそれに続く領域に到達している。彼らが高次元存在への扉を開く時は、もうそこまで来ている。

 

「ふむ、やはり我らの試練がなくともユーゼスの野望を叩き潰せたかもしれんが、悪鬼羅刹、修羅の蔓延る宇宙。力なくば守り通す事は叶わぬ浮世。力があるに越した事はなし」

 

 ケイサル・エフェスが念を凝らし、新たな敵を複製する。青い鱗と白い翼を持った恐ろしく巨大な龍。応龍の超機人にして最高位の『四霊』に属する応龍皇、それが二機。

 一説には万里の長城に匹敵する、全長八千キロメートルの巨体を誇ると言われる超規格外の機体が一機どころか二機出現した事態に、ヘイデスはその正体を即座に看破した。

 

「αの真・龍王機とOGの応龍皇か!」

 

「同型機に見えますが、名前が違うだけですの?」

 

 今もバルマーとバラルの機動兵器部隊を毎秒単位で蹴散らす傍ら、事情を知らぬ所長が訝しげに問えば、ヘイデスはなんと答えればいいのか、頭を捻りながら答える。

 

「大判焼きと回転焼きくらいの違い?」

 

「なるほど、中身は一緒と」

 

 あまり正確な例えではないのだが、拘泥しても仕方ないと所長は割り切り、次いで呆れた声を出す。

 

「それにしてもまあ、なんと大きなこと。数千キロメートル単位の機動兵器は、流石に初めて見ましたわ。あんなのを見たら、巨大機動兵器のカテゴリーを考え直さないといけなくなりますねえ」

 

「大きさはそのまま強さに繋がるし、せめて中身がないのが幸いだよ」

 

 ケイサル・エフェスたちの複製した真・龍王機達には彼ら自身の意志も、パイロットである高位念動力者である孫光龍の存在もないから、超機人としての本領を発揮できない状態だ。ただでさえあの巨体と強力な武装の数々、再生能力まで持ち合わせているのだ。

 ヘイデスが模造品でよかったと口にするのも当然の話だろう。原典の漫画を参照すれば、逆鱗に乾坤一擲の一撃をぶち込めば一発で倒せる可能性もあるが。

 

 この時、ヘイデスはまだ余裕があった。気力の充実している精神状態であり、愛妻と共にスーパーロボットに乗れている為、リラックスできていたからだ。敵は極めて強大なれども試練であり、どこか気が抜けていたからであろう。

 大急ぎで補給と最低限の修理を終えた味方が次々と出撃してきた状況に、緩みつつあったヘイデスの精神に冷や水を浴びせかけたのは、この閉鎖空間すべてに響き渡るウーゼスの歌声だった。

 

「私の歌を聞くがいい!! 絶望を!!!」

 

 それはどれだけ闘志を高め、気力に満ちていても絶望の底へと叩き落とす圧倒的な負の力に満ちた絶望の歌だった。

 力及ばずに敗れる絶望、どんなに足掻いても徒労に終わる未来への絶望、変えられない過去への絶望、およそ考え得るあらゆる絶望に満ちた歌は、ヘイデスの精神を強烈に揺さぶり、戦場に居る全ての仲間達に底なしの絶望を叩きつける!

 

「かの歌姫達の銀河にて到達した私の境地……いつのまにやらアイドルになっていた私が、数えきれないボイトレの果てに獲得した我が歌声を!!」

 

「デレステのアイドル達が泣くわ!!」

 

 底なしの闇に落ちるような怖気に襲われながら、それでもヘイデスは叫ばずにはいられなかった。ほら、隣のゆるふわ無限力の使徒となったケイサル・エフェスも、微妙な顔で見ているし。

 

<続>

 

 

ケイサル・エフェス Lv99 獲得資金:五百万

アダマトロン    Lv99 獲得資金:五百万

 

ゲベル・ガンエデン Lv95 獲得資金:三百万

 

真・龍王機     Lv90 獲得資金:百万

応龍皇       Lv90 獲得資金:百万

ヴォルクルス完全体 Lv90 獲得資金:百万

 

ヴォルクルス上半身 Lv85 獲得資金:八十万

ヴォルクルス下半身 Lv85 獲得資金:八十万

クストース     Lv85 獲得資金:八十万

饕餮王       Lv85 獲得資金:八十万

窮奇王       Lv85 獲得資金:八十万

 

その他       Lv80 獲得資金:五十万

 

〇勝利条件

〇ケイサル・エフェスとアダマトロンの撃破

〇30ターン目を迎える

 

〇敗北条件

〇味方の全滅

 

〇戦闘中イベント『ウーゼス・ステージ開幕!』

 全味方ユニットの気力50へ。ケイサル・エフェスの気力-30。

 




2022年、大変お世話になりました。
ご愛顧いただけている本年の内に終わらせようと頑張りましたが、どうにも終わりませんでした。とはいえ最終局面近くにまで辿り着きましたので、この勢いのまま完結を目指して行こうと思います。
また来年もよろしくお願いします。


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第百三十四話 カラオケモード

新年あけましておめでとうございます。
2023年最初の投稿です。
前話の感想でもお見掛けしましたが、おおむね、皆さんの想像通りの展開です。


 戦場全域に響き渡るウーゼスの絶望の歌は、戦っているヘイデス達ばかりでなく、後方の母艦のクルー達、更にはゼファーやレオン、ALICEにまで変調をきたしていた。

 体の奥底から指先に至るまで凍えるように震え、歯はカチカチと音を立てて打ち鳴らし、息を吸っているのか吐いているのかさえ分からない。そんな状態に有機物無機物問わず、陥っていたのである。

 ヴァイシュラバはかつて『御使い』に敵対した文明達が、エル・ミレニウムやゼル・ビレニウムを前にして、恐怖と絶望に心を囚われ、敗北していった時を思い出した。

 

 ケイサル・エフェスとウーゼスも真偽までは不明だが、真化の領域に達していると言っても過言ではない。その彼らならば、かつてダークブレインの殻を被っていたウーゼスなら、これくらいの影響力は持っていてもおかしくはないのだ。

 もちろんそれは、ウーゼスがあの宇宙での敗北を経て、真にアイドルとして開花すべく猛烈なトレーニングを重ねた成果あってのことである。この男、本気でアイドル道を一歩一歩、進んでいるらしかった。

 

 ケイサル・エフェスは比較的受ける影響が小さかったが、DCだけでなくウーゼス側のクストースやヴォルクルス、超機人達まで気力を低下させ、パフォーマンスを低下させているのだから、敵味方を差別しない傍迷惑な歌声であった。

 歌そのものはプロとして通用するレベルなのだが、その歌詞と込めた思いの絶望的感情が聞く者に襲い掛かるのだから、もはや音波兵器兼精神攻撃兵器と呼ぶしかない。

 

 悪影響を強く受けていたのは、カミーユのような高すぎる感受性が仇となった高レベルニュータイプや超能力者達だ。顔色を蒼白にして、失神寸前にまで陥っている。

 これでも各艦や機体に仕込まれた対霊、対精神攻撃防御処置によって、効果が緩和しているのだ。もしその対抗措置を疎かにしていたら、全員が行動不能に陥っていただろう。具体的には三ターンほど。

 

 DCの各機、各艦がまるで別人が操縦しているかのように動きを鈍らせる中、ヘイデスは必死に頭を動かしていた。

 幸い、攻撃を仕掛けてくる敵機も同じように動きを鈍らせているので、撃墜された機体はまだ出ていないが、打開策を一刻も早く見つけなければならない苦境なのは変わらない。

ケイサル・エフェスが複製したばかりの真・龍王機達までもが、即座に動きを鈍らせている辺りはお笑い種なのだが、そうでもなければこちらが圧倒的な劣勢に追い込まれた事を考えると、笑えやしない。

 

(考えろ考えろ思い出せ! こんな状況はスパロボに限らず、古今東西の小説、ゲーム、漫画でありふれたものだ。はっきり言って、手垢がついているじゃないか! そんなときはどうする!? 第三次αではどうやって乗り越えた!!)

 

 心を縛り、底なしの奈落に沈めようとする絶望の所為で、体ばかりか心まで震えあがり、ろくに思考が働かない。集中力を欠いた、などというレベルではない。生命活動そのものが衰弱している。

 

(絶望に包まれて終わりなんて、そんなのは彼らには似合わない。俺だって御免だ! どうした、どうやって、絶望の歌を振り払……。歌? そうか、歌! あの時は、終焉の銀河は、バサラとミンメイ達が作り上げた歌が!

 ケイサル・エフェスが口にしていたっていうのに、すぐに思い出せないとは、本当に厄介なジャイアンリサイタルをしてくれるな、ウーゼス!!)

 

 ヘイデスはクォヴレーに短いメッセージを送りながら、恥も外聞もかなぐり捨てて、オープンチャンネルで歌い出した。それはこの世界にはまだ存在していない歌だった。知っている者はケイサル・エフェス、クォヴレー、ヘイデスのたった三人だけの歌。

 それは大いなる戦いに挑む戦士達の歌。帰ってこられない可能性も覚悟して、それでも守らなければならない世界の為に、悲壮な決意で向かう勇者達の歌。

 

 ヘイデスのスパロボプレイヤー成分も、純粋なヘイデス成分も、歌唱については特別優れた才覚を持っていない。

 とりあえずは人並みの歌唱力で、間違っても熱気バサラやリン・ミンメイのようにプロトデビルンやゼントラーディの心を動かすレベルには達していない。

 戦場の面々は彼が一体どうしてしまったのかと、唐突に歌い出したヘイデスに戸惑いの視線を向け始める。

 それは所長も同じことだったが、ヘイデスに対する信頼に対しては宇宙一のこの女性は、即座にヘイデスの行動に合わせ、歌い始めた。

 

 ヘイデスが人並みの歌唱力なら、所長は何を歌わせても世界で五本の指に入る魔法のような歌い手であった。トップは取れなくてもトップクラスにはなれる、という万能性は、機動兵器の開発に限らないのである。

 果たして総帥と所長夫妻が歌い出した事がなんの解決になるのか、ごく一部以外には分からなかったが、少なくともケイサル・エフェスは生徒が問題に正解した教師のような笑みを浮かべていた。

 

 戸惑いと夫妻の歌声が広がる戦場に新たな響きと彩が加わったのは、その直後だった。発生源はディス・アストラナガン。

 ヘイデスから『GONG』とだけ書かれた短文メッセージを受け取ったクォヴレーは、ケイサル・エフェスが居るという状況からも、自分に何を求められているのか即座に理解し、機体に記録していた音声と楽曲データを再生したのだ。

 熱気バサラが、リン・ミンメイが、そして一万二千年後の人々が歌った『GONG』が世界を超えて、今、この絶望に包まれた世界に響き渡る。

 

「これは、どこかで?」

 

「俺は知っている? この歌を?」

 

「憶えていないけど、憶えている。この歌が、俺達を励ましてくれた事を」

 

「そうだ。俺達に勇気を、恐怖を乗り越える力を与えてくれたのは、この歌だった」

 

 初めに反応を示し始めたのは『終焉の銀河』世界の虚憶(きょおく)を持つアムロや甲児達だ。

 記憶にはないのに、響き渡る『GONG』を聞いた記憶が湧き起こり、更にその歌にどれだけ励まされたか。その歌にどれだけの人々の想いが込められていたのかを、実感を伴わないままに理解する。

 

 そうして彼らは気付けば歌い出していた。あの世界で自分達を支え、励まし、勇気づけてくれた歌を。『終焉の銀河』の虚憶を持たない者達も仲間達の歌声が響くほどに、自分達の心を押し潰す絶望が薄れ、勇気が湧き起こるのに気付き、自然と歌い出す。

 どんどんと空間と心を満たしていた絶望は払われて、DC側の人々と機体からは勇気と希望の光が、はっきりと目に見える輝きとなって生まれ始める。

 

「おお、我が絶望を乗り越えるか。見事だ。そうでなければ運命をも超える戦士になる事は出来ん。ワーバラオが口にした通り、絶望の闇が深ければ、それだけ希望という名前の光もまた強くなるのが道理。

 私の歌う絶望に心折れずに立ち上がった時、お前達の生命と希望の光は輝きを増し、新たなステージへの扉を開く」

 

 戦いながら歌い続け、『GONG』が歌い終わった後でも彼らの歌は終わらない。クォヴレーが素早く熱気バサラの所属するロックバンド『FIRE BOMBER』の楽曲データを連続再生し、新たな歌が世界に溢れ出す。

 

「今度は『TRY AGAIN』か。ゲペルニッチ戦のヒイロじゃないが、僕達に相応しい歌だな」

 

 嬉しそうに笑うヘイデスだけでなく、もはや誰の顔にも絶望の色はない。絶望は払われ、恐怖は勇気によって乗り越えられ、彼らの生命は、魂は、太陽にも負けない輝きを放っている。

 息を吹き返したどころではない。デメリットのない弾丸Xを起動した勇者ロボ軍団並みの勢いを手にしたDCは、新たに出現した真・龍王機と応龍皇をもってしても、止めきれるものではなかった。

 そして周囲に溢れる生命の輝きを目の当たりにして、シュメシとヘマー、フェブルウスは心からの感嘆に息を呑んでいる。

 

「凄い。そうだ、これが、人間の、生命の輝きの極みだ。僕達はこれを見たから」

 

「うん。『御使い』達には致命的に欠けていたもの。彼らも持っていたのに、失くしてしまったもの」

 

「人間に限らず生命は綺麗なだけではないけれど、どうしようもない醜さを見せるけれど」

 

「この輝きは生命がただそれだけで、この宇宙の宝だって、教えてくれる」

 

 そして輝きを見せているのはパイロット達だけではない。彼らの搭乗している機体達も、劣らぬ輝きを見せ、機体達もまたパイロット達の輝きに見入っている。

 

「扉は開かれた。闘争による進化『獣の血』、融和による進化『水の交わり』」

 

「そして歩みは続いている。開拓による進化『風の行き先』、文明による進化『火の文明』」

 

 シュメシとヘマーが唱和し、ついにスフィア全十二個分の力、すなわち至高神ソルとしての心を完全に取り戻し、次元力制御のステージを昇り直したフェブルウスが瞳を輝かせる。

 

「皆、どうか聞いて。皆はもう知っている。次元力は誰でも、どんな環境でも引き出す事が出来る力。なぜなら生命だけじゃない。物質にも、宇宙にも、原子にも意志はある」

 

「皆は至った。『太陽の輝き』へ。今こそ、『真化融合』の時! 耳を傾けて、マシンの意志を。共に戦い続けてきた相棒の声を受け入れて!」

 

 まず誰よりも先にシュメシとヘマー、フェブルウスが三つの心を一つに重ねて、至高神ソルとしての要素の多くを失いながら、新たな真化融合を果たす。

 全てが違うと断言できる、新たな力が漲るフェブルウスを中心に、DC各機を包み込むフィールドが形成され、それぞれのパイロットとマシン達の意思が重なる。

 ゼウス神や不動GEN、渚カオルのように正しい形での真化へ!

 

「これは、これが、マシンの声、意思なのか?」

 

「分かる、分かるぞ。ゲッターが、俺達に求めているもの。俺達を導こうとしている先は……!」

 

「サイコミュとは違う感覚。俺達の感覚を拡大するだけじゃない。マシンと一体になって、共に広がってゆく。刻が見える。宇宙の青も!」

 

「へへ、すげえや! 体の中からいくらでも力が湧いてくる。それはお前も一緒なんだな!」

 

 これまでの戦いの中で彼らは感じていた。自分達だけでなく機体も力を振り絞り、後一歩を届かせてくれたのを。データ上はあり得ない筈の力を出してくれた事があったのを。それを、今、真の意味で彼らは理解する。

 パイロットが居ないゼファーW0ライザーもガンダムREONもそれは同じだった。機体を動かすゼファーとレオン、そして彼らを作り、育んだカインズやエリシア、ルビー達の想いが彼らを構成する霊子と結びつき、真化への道を後押ししている。

 目の前で起きる高次元存在への昇華を行うDCメンバーの姿を見て、ケイサル・エフェスとウーゼスは試練を与えた第一の目的が果たされたのを理解する。

 

「予定通りとはいえよくぞ真化へ至った。後はその力に振り回されぬことだ。では今少し戦いの輪舞を舞うのだ、戦士達よ」

 

「私の歌を乗り越えたのならばこれくらいはしてもらわなければ、私の沽券に関わる。お前達が絶望に屈さず、希望に縋らず、乗り越えて行く器かどうか。示せよ、守護者達」

 

 終焉の銀河を乗り越えた歌が今も鳴り響き、DCの戦士達とその機体達からは無限とも思える力が溢れ出し続けている。

 もう手加減を加える必要はないと、ケイサル達は控えさせていたヴォルクルス完全体、二機のゲベル・ガンエデン、複数のズフィルード・エヴェッドにも手加減なしの攻撃を指示して、DCへの総攻撃を開始する。

 もちろんDC側も全力で反撃に転じ、真化融合によって得られた新たな力の解放は容易く敵部隊を粉砕する。

 

「ご先祖様の想いも一緒に乗せて戦うぞ、ザンボット!!」

 

 それだけではない。『無敵』の名の下に繋いだ絆の力と共に、勝平達はザンボットインビンシブルと共に、溢れ出す力を一気に解放した。

 機体頭部の三日月と太陽を模した前立てに、エネルギーが集約して輝きを放つ。それはこれまでとは文字通り次元の違うエネルギー量だった。

 

「無敵・トライ・アタァァックゥゥ!!」

 

 サン・アタック、ムーン・アタック、トライダー・バード・アタックのエネルギーを一斉に発射する必殺技『無敵・トライ・アタック』は、これまでとは比較にならない威力となって、前方で分厚い壁を作っていたズロアの大群を一瞬で消し飛ばした。

 味方が倒された報復にスナピルが肉食魚の群れのように襲い掛かり、ハーガイ・ヤッドが砲戦機らしく火砲で援護を図る。ザンボットインビンシブルを狙う敵機の集中砲火を、不死身の第四小隊とガンダムチームの的確な援護が掣肘した。

 

「ひひひ、こいつはすげえや! ビームがまるでコロニーレーザーだ!」

 

 モンシアが奇妙な笑い声を零すのも当然だった。フォールディングバーストランチャーは元々、MS基準では大火力兵装だったが、真化融合を果たした今となっては、コロニーレーザーと真っ向から撃ち合えると確信をもって断言できる化け物武器になっている。

 モンシアのガンダムテルティウムの横で、ベイトは手数を優先しビームライフルを連射していたが、こちらもアルバトロス級の主砲が可愛く見える威力を発揮して、一射で複数機を纏めて貫通する光景に、思わず口笛など吹いている。

 

「こいつがあったら、アクシズも楽に砕けていただろうぜ」

 

 ベテラン達が真化融合による恩恵に思わずテンションを上げている中、シャングリラ・チルドレン達で構成されるガンダムチームも、被弾を厭わずに突っ込んでくる敵機を蹴散らす作業に専念している。

 

「おじさん達は気楽だねえ。レーダーをびっしり埋める位、残っているのにさ」

 

 フルアーマー百式改に乗るビーチャは、聞こえてくるモンシアとベイトの会話に愚痴を零しつつ、ロング・メガ・バスターとメガ粒子砲をロックオンする端から撃ちこんでいる。

 先程までの精神的絶不調が何だったのかと、自分でも疑いたくなる心身の好調ぶりには、ビーチャも思わず踊り出したくなるほどだったが、そんなことをしたらエルに何を言われるか分かったものではない。

 

「これなら俺達だって、ジュドーに負けない活躍が出来るぞ!」

 

「モンド、あんまり調子に乗っちゃだめだ。ガンダムもあまり無理させないでよ」

 

 量産型ZZガンダムに乗るモンドとイーノも、それぞれの機体と心を通わせ、真化融合した事で圧倒的な戦闘能力を得ていたが、つい調子に乗ってしまうモンドを嗜めるイーノは力に飲まれず、生来の慎重さを維持しており、よく周りが見えている。

 ジュドーとルーが乗っているメガゼータは、元からZZガンダムの倍以上の出力を誇り、ハイメガキャノンをビームライフルと同間隔で連射可能なモンスター・マシンだが、元々の性能と乗り手二人である影響から真化融合による強化具合も相応に高い。

 

 ネェル・アーガマの格納庫で予備機として待機しているZZガンダムは拗ねているかもしれない。

 この真化融合時に搭乗していない機体が拗ねているのではないか? という疑問は、原作のスパロボZ天獄篇を遊んでいた時から、ヘイデスがたまに妄想していたものだったりする。

 ZZガンダム以外にもνガンダムやサザビー、Zガンダム、マジンガーZなども該当する繊細な問題である。まあ、今は目の前の試練を乗り越える事こそ最優先ではあるが。

 

 DCが真化融合の本領を発揮する中、長大な体をくねらせる真・龍王機と応龍皇から何千、何万もの鱗が剥がれ落ちる。それらは龍虎王よりも巨大な、龍の頭部を模した『龍鱗機』だ。

 更に手足の生えた上位機種『龍鱗王』も加わり、二体の超機人の長達を守護する龍鱗の陣形が敷かれる。一機一機が量産型の妖機人と同等以上の戦闘能力を持ち、それは並みの量産型スーパーロボットをも上回る事を意味する。

 その龍鱗機と龍鱗王達が、超電磁エネルギーを漲らせたコン・バトラーV6とボルテスⅦによって、撫で斬りにされていた。

 

「俺達にコン・バトラーの心が一つになってるんだ。誰にも止められるもんかよ!」

 

 超強化された超電磁タツマキがコン・バトラーV6の両手から放射され、もはや単独でMAP兵器へと昇華された超電磁エネルギーの乱気流は、龍鱗機達を絡めとると脱出も抵抗も許さずに、即座に粉砕して行く。

 そうして龍鱗の軍勢が粉砕されて出来た間隙を、天空剣を両手に握るボルテスⅦが駆け抜ける。

 

「超電磁ボォォォォル!!」

 

 超電磁エネルギーを宿して激しく輝く天空剣から発射された超電磁ボールは、応龍皇の巨体を守る装甲を呆気なく貫通し、数千キロメートルの巨体に命中するとそのまま拘束してしまう。

 もし応龍皇に本来の意思があったら、孫光龍か彼に匹敵する念動力者が乗っていたなら、もう少しまともな抵抗が出来ただろう。

 

「俺達の、ボルテスの一撃を受けてみろ!! 天空うぅ剣!」

 

 応龍皇の喉元にある巨大な逆鱗へと天空剣が振り下ろされ、一切の抵抗を許さずに斬り進んでゆく!

 

「Vの字斬りイィィイイ!!」

 

 強引に刃を返し、斬り上げた天空剣が『V』の字を描き、応龍皇の逆鱗は無残に斬り裂かれるが、攻撃はまだ終わっていなかった。応龍皇のその背後から、超高速で回転するコン・バトラーV6が流星の如く突撃してきたのだ。

 

「超電磁スピーン!!」

 

 逆鱗を斬られ、更に超電磁スピンで貫かれた応龍皇はその全身へと甚大なダメージが広がってゆく。機体の表層だけでなく、芯にまで及ぶ致命的なダメージだ。

 苦痛に身を捩る応龍皇に、コン・バトラーV6とボルテスⅦが止めを刺すべく、踵を返した時、真・龍王機がフォローに入るべく全身から雷を発して、超電磁メカを撃ち落としに掛かる。

 

 四方八方から迫る龍王の雷撃を阻んだのは、フライング・フォームのガイア・ギアα、ウェイブライダーに変形したZⅢだった。二つの機体は光の翼を展開して、降り注ぐ雷撃を薙ぎ払う。

 真化融合前からフル・サイコフレームの搭載もあり、パイロットと機体の同調が進んでいた二人は、ウーゼスの絶望の歌から解放され、持てる能力を限界を超越して発揮していた。

 

「合わせられるか、カミーユ?」

 

「やってみせますよ、クワトロ大尉!」

 

 MS形態へと変形したガイア・ギアαとZⅢの光の翼に薙ぎ払われた雷撃が、そのまま光の翼に取り込まれて、巨大な雷光の翼へと変わる。それは雷撃よりも早く、刹那よりも短い時間の中で、即興で行われた痛烈なカウンター攻撃だった。

 クワトロとカミーユの連携により、真・龍王機は奪い取られた雷撃を上乗せした雷光の翼を叩きつけられ、胸部から腹部にかけて、数百キロメートルあまりを深々と斬られていた。

 応龍皇と真・龍王機が見る間に大ダメージを負ったところへ、トランザム発動によって紅く発光するRνガンダムが止めを刺すべく追撃を仕掛ける。

 

「やはり俺はお前達と戦った事があるようだが、負ける気はしないな。やるぞ、ガンダム!」

 

 Rνガンダムの機体各所のアーマーとシールドから次々とGNフィン・ファング、フィン・ファンネルが外れ、単機で数十の火線を生み出すRνガンダムの本領の一端が解放される。

 モンシアが言った通り、もはやビームライフルの威力がコロニーレーザー級以上に高まる中、縮退炉とツインドライヴシステムで稼働し、トランザムまで使っているRνガンダムである。

 

 本体のビームライフルだけでなく、GNフィン・ファング、フィン・ファンネルの破壊力たるや、その全てを集約すれば地球を破壊するのにも大した手間はかかるまい。

 念動力フィールドもなく、著しいダメージを受けている真・龍王機と応龍皇を、おびただしい数のビームの直撃が更に追い込んでいった。

 

 二体の龍が断末魔の叫びをあげる中、ヴォルクルス完全体──正確には模造品の更に複製だが──は仮面めいた顔面の目を輝かせて、120m超の巨体に相応しい威圧感と迫力を伴って、DCへと襲い掛かる。

 既に残りの分身体は窮奇王、饕餮王、クストース共々、『GONG』を皮切りに闘志を取り戻し、真化融合で存在の格そのものを昇華させた獣戦機隊、アラドとゼオラ、ラトゥーニ、オウカの猛攻を受けて撃破されている。

 

 雑兵のズロアやエスリム・ローシュなどは無尽蔵に増援が出現しているが、クストース級の機体を複製するのは少々時間が掛かるようだ。

 ヴォルクルス完全体は分身達と同様に巨大な魔法陣を展開し、ハイパーソニックウェーブを発射した。どこの誰がヴォルクルスを模した兵器を開発したのか不明だが、機能的には遜色がないクオリティなのは見事だ。

 

「青龍鱗、でぇい!」

 

「撃ち抜け、邪龍鱗!」

 

「ターゲットロック。ファントムフェニックス!」

 

「ターゲットインサイト。コルヴァンフェニックス、発射」

 

 徐々に巨大化しながら襲い来るハイパーソニックウェーブに向けて、ソウルゲイン、ツヴィザ―ゲイン、アンジュルグ、アンジュルグノワールがほぼ同時に攻撃を放ち、黒紫色の衝撃波を貫通し、そのまま増幅に用いられた魔法陣も粉々にして、ヴォルクルス本体へと直撃する。

 

「グ、グウウ!?」

 

「隙あり、ね。ソリッド・ソードブレイカー、舞いなさい!」

 

 ヴァイスセイヴァーの背中から飛び立ったソリッド・ソードブレイカー全八基、さらにそこへ機体の胸に内蔵されているミサイルのファイアダガー、右手に握るオーバーオクスタンライフルの銃撃が、苦痛に身悶えるヴォルクルスの全身に次々と突き刺さってゆく。

 

「ふふ、機体との霊子レベルでの同調……。私みたいな素性でも成り立つなんて、本当にあらゆる存在と物質に意思は宿っているのね。あなたは驚いた? ヴァイス」

 

 この世界のレモン・ブロウニングはノイ・レジセイアの手によって、人間とアインストの要素を半分ずつ保有する存在として、生み出されている。

 アインストの被造物であるレモンが創造したヴァイスセイヴァーが、果たしてどんな回答をレモンにしたのかは、彼女達だけの秘密だが、レモンの口元が緩やかな弧を描いたことだけは述べておこう。

 ヴォルクルスの翼や蛇のような尻尾、七つの目を持った蜥蜴めいた下半身の頭部がところどころ抉られて、動きを鈍らせたところに、アクセル達は一切の容赦なく襲い掛かる。

 

「機体に意思が宿るなど、私自身にまでオカルトが降りかかるとはな」

 

 ヴィンデルは大剣を実体化させ、闇刃閃に入る直前に溜息のように愚痴を零した。ライディーンや妖魔帝国をはじめ、今さらオカルトを否定するつもりはないが、自分自身がオカルトに足を突っ込むとなると愚痴の一つも零したくなるらしい。

 

「戦闘中に愚痴とは貴様らしくもないな、ヴィンデル?」

 

「ふん。そういう貴様は随分と簡単に受け入れている様子だな」

 

 並行世界では記憶を失ってアホセル化したり、アルフィミィとある意味一心同体になったりしたのは伊達ではないのか、ソウルゲインとの真化融合を確かに果たしたアクセルは、動じる様子もなく淡白な答えを返した。

 

「使えるものは使う。それだけの話だ。これまで通りだろう? これがな」

 

「なるほどな。そう割り切れれば、お前のその態度も分からんではないか」

 

 もう少し余裕のある状況だったら、ツヴァイザーゲインは『髪の毛はワカメなのに、頭の固いパイロットだなあ』とこちらもまた愚痴を零したかもしれない。

 こんな会話を交わしている二人ではあるが、もちろん、ヴォルクルス完全体へ仕掛けるタイミングを逸したりはしない。ツヴァイザーゲインとソウルゲインが同時に闇刃閃と麒麟を仕掛け、再生途中のヴォルクルス完全体の全身を解体さながらに切り刻み始める。

 

「不遜、デ、アル!!」

 

 どこまでヴォルクルスをエミュレート出来ているかは不明だが、怒りを見せるその姿は本物のヴォルクルスと瓜二つだと、シュウ・シラカワやマサキ・アンドーに太鼓判を押してもらえるだろう。

 反撃の為にアストラルバスターの魔法陣を展開するヴォルクルスだったが、発動に要するわずかな時間を突かれて、ミラージュ・アローとコルヴァン・カノンがヴォルクルスの白い顔面を容赦なく襲う。

 

「べらべらとお喋りとは。余分なルーチンが混ざっているな」

 

 ミラージュ・アローを継続して射かけながら、ラミアは率直な感想を口にしていた。感想などというものを口にするのも、ラミアが言うところの余分なルーチンではあるが、それは彼女とアンジュルグに発生した変化への動揺の表れだった。

 ラミアとエキドナにとってDCのパイロット達が機体との真化融合を果たすのは、かろうじて理解の範疇だったが、真っ当な生命ではなくレモンの手によって製造された自分達まで真化融合の現象が発生する事に、想像外の衝撃を受けていたのである。

 

「ラミア、今は相手の考察をしている場合ではないぞ」

 

 エキドナはそう言ってラミアをたしなめるが、内心の動揺は彼女も同じようなものだ。

 二機のアンジュルグはそれぞれのパイロット達に語り掛けて、落ち着かせようとしているが、その行為もまたラミアとエキドナがなかなか落ち着けない理由になっているのだから、なんとも皮肉な話だ。

 ラミアとエキドナはアンジュルグ達と同じく被造物である自分達に起きた現象を不思議がっているが、彼女らを製造したレモンもまたアインストの被造物であると知ったなら、更なる衝撃に襲われただろう。

 動揺する人形達だが攻撃はきっちりと命中弾を出し続けており、ヴォルクルスはなまじ知性があるがゆえに、優先順位を決めるのに手間取って次の行動に移れずにいた。そうして手をこまねている間に、彼に対する死は三重の光り輝く渦輪と共に現れる。

 

「サイコミュによる拡張ではなく、機体との同一による肉体機能の変革。そして精神の知覚領域も拡張……これは視点そのものが高みに昇った、か。フフフ、悪くない感覚だ。ジ・O³、私の一部となるがいい。私が貴様に限界を超えさせてやろう!」

 

 そして一応はシャドウセイバーズ所属のこの木星帰りの男もまた、真化融合の恩恵にあずかっていた。

 シロッコは本来なら人間を神の領域に引き上げるのは、自らの手で行うべき偉業と定めており、図らずも他者の手によってそれを経験させられたのは、決して面白い話ではなかった。

 だがそれも貴重な経験として、自らの糧となると前向きに考えて、目の前の怪物へとGN粒子の大河を叩きつける。

 

「GNストリームと言ったところか。人類に生物としての進化を促すGN粒子も使いようによってはこうなる」

 

 ジ・O³から滾々と溢れ出すGN粒子の奔流に飲み込まれて、ヴォルクルスは脱出もままならぬまま、その巨体を徐々に崩壊させていった。

 次々と強力なのは間違いない機体が撃墜されてゆく中、次に脱落したのはズフィルード・エヴェッドだった。

 かつてバルマーの第七ラオデキヤ艦隊がゼントラーディを相手に壊滅に追い込まれた時、不利な状況を覆したズフィルードがこれによく似たものである。

 

 まったくの同一形態ではないようだが、数百万隻規模のゼントラーディ基幹艦隊に逆転勝利したのだから、その戦闘能力の凄まじさは推して知るべし、ではある。

 だがかつて真化融合によって新たなステージに達したZ-BULEは、恒星間航行可能な文明をたったの二機で殲滅できるゼル・ビレニウムでさえ相手にならない力を示した。

 

 同じようにDCのメンバーもズフィルード・エヴェッドが防戦一方となる戦いぶりを示し、ズフィルード・クリスタルの再生が追いつかずにダメージを加速度的に積み重ねている。

 ズフィルードの頭部を持った巨大な水晶の塊というビジュアルのズフィルード・エヴェッドは、本体を十個のパーツに分離させ、それぞれのパーツから七色のアルドレーザーを発射する。

 超広域殲滅型要塞兵器にカテゴライズされる、ズフィルード・エヴェット最大の攻撃だ。

一本一本が極大の射程範囲と破壊力を持った七色の光線を紙一重で避けながら、次元将ヴァイシュラバは見る間に距離を詰める。

 ゼントラーディの艦艇や機動要塞のデータをベースとして起動したズフィルード・エヴェッドの巨体を眼下に見下ろし、ヴァイシュラバは渾身の手刀を振り下ろす!

 

「おおおらああああああああああ!!!!」

 

 元より空間を割り砕くほどの威力を持つ手刀は、リヴァイヴ・セルの疑似真化融合とは異なる本当の真化融合を経て、最低でも一段階威力を高めていた。ディフレクトフィールドをパリンと呆気なく砕き、そのまま巨大な水晶状のパーツも真っ二つに叩き割る。

 さらに手刀に込められていたヴァイシュラバの闘気と次元力によって、割られたパーツは原子レベルにまで砕かれ、他の九つのパーツも余波によって大きなダメージを負う。

 

(こいつが『真化融合』か。俺達の故郷が実現できず、ヴァイオレイション・システムで代用したが……。本物の真化融合がコレなら、『御使い』共にも勝てる。そして俺達が力及ばずに敗れたのも道理か)

 

 かつてロージェノムやアポロニアスらと共に『御使い』と戦った時に、真化融合の境地に達していたなら、他の三人の次元将と共に敗北する事は無かったろう。

 この状況に皮肉めいた感慨をつい抱いてしまうヴァイシュラバだったが、その感慨を猛獣めいた笑みと共にかみ殺して、残るズフィルード・エヴェッドのパーツを破壊すべく動き出す。

 

「いいもん教えてもらった礼はしねえとなあ!!」

 

 ヴァイシュラバはいつか自分の生命を終えた時、地獄の底で待つ他の次元将達にいい土産話が出来たと心の底から思っていたのだ。

 ヴァイシュラバが宇宙の真理に到達し、更なる次元力の怪物と化して、ズフィルード・エヴェッドを蹂躙しているその傍らで、他のズフィルード・エヴェッドはDC艦隊の集中砲火を浴びて粉微塵に砕けるか、あるいはノイ・レジセイアの手によって、OGのホワイトスターのように浸食・同化されていた。

 

 『突撃ラブハート』が流れる中、二体のゲベル・ガンエデンにもまたDCの猛攻は加えられていた。複数の天使の翼を生やした、屈強な男性神を想起させるゲベル・ガンエデンは、早々に五本の角を持つ巨竜の本性を露にしている。

 白い巨体はほのかに赤色を帯び、星々を薙ぎ払う光線『キャッチ・ザ・サン』という圧倒的火力を惜しみなくDCにぶつけてくる。

 イルイをコアとして、シヴァー・ゴッツォが搭乗した場合には、さらに強力なMAP兵器を持つが、どうやらこちらのゲベル・ガンエデン達はルアフ搭乗時止まりの性能らしい。

 

 キャッチ・ザ・サンの射線軸上から大きく回避したトロワは、ゲベル・ガンエデンの目を晦ませる意味合いも込めて、愛機ガンダムヘビーアームズ改の火器をパーティーのように解き放つ。

 左手のツインビームガトリングガンはもちろん、マシンキャノン、胸部ガトリング砲、ホーミングミサイル、マイクロミサイルが吸い込まれるようにゲベル・ガンエデンへと命中して行く。

 ゲベル・ガンエデンもパイロットが居ない影響で、念動フィールドを展開できておらず、真化融合で火力を劇的に強化されたヘビーアームズ改の火器の命中弾を受けて、材質不明の装甲にダメージを重ねている。

 

「ジェネレーター直結のエネルギー兵装はまだ分かるが、ミサイルや実弾までも威力が上がるとは、な」

 

 淡々と呟くトロワだが確かに彼の言う通り、ミサイル一発、マシンキャノンの銃弾一発に至るまで桁違いに威力が向上しており、バイストン・ウェルと地上で威力が大幅に変わるオーラマシン以上の向上ぶりだ。

 とてもではないが、スペースコロニー内部や市街地近郊では使用できない破壊力で、真化融合の使いどころは慎重に慎重を重ねて吟味しなければなるまい。

 ゲベル・ガンエデンはダメージにも怯まず、竜形態のままマヴェット・ゴスペルの念動弾を発射し、ヘビーアームズ改へ痛烈な反撃を行う。

 

「機体の反応がいいどころではない。俺の思考と機体の動作が直結している」

 

 降り注ぐ念動弾の雨を、ヘビーアームズ改はトロワの操縦に全くタイムラグなしで答え、まさしく人機一体の境地で風に舞う羽のように軽やかに避けきった。

 念動弾はヘビーアームズ改以外にも、距離を詰めて接近するコロニーのガンダム達へも迎撃の為に放たれている。

 

 尾を引く青白い流星雨のような念動弾を避け、時に切り払い、シールドで受けながら、五飛のアルトロンとカトルのサンドロック改が間合いに入る。

 それを察知したゲベル・ガンエデンは巨竜の外見に相応しい剛腕の叩きつけと、尻尾の薙ぎ払いを行おうとしたが、直後、ゲベル・ガンエデンのセンサーをジャマーで掻い潜ったデュオのデスサイズヘルが頭上から奇襲を仕掛けた。

 

「俺と相棒とで、二人の死神様のお通りだぜぇ!」

 

 デュオの声と共に振り下ろされたツインビームサイズがゲベル・ガンエデンの右の翼と背中を斬り、ゲベル・ガンエデンが大きく背中を仰け反らせる。そこへ窮地を脱する暇を与えず、サンドロック改がヒートショーテルを大上段から一気に振り下ろす。

 

「いくよ、サンドロック!!」

 

 本来ならショーテルの刃が蒸発するほどの高熱を纏った刃は、ゲベル・ガンエデンの首の根元に叩きつけられ、勢いを少しも衰える事無く、腹部までを一気に斬り下ろす。

 人間なら即死する一撃に、ゲベル・ガンエデンがガクガクと巨体を震わせる所へ、加速したアルトロンが体ごとぶつかる勢いで、突っ込んでゆく。

 

 

「ゆくぞ、俺の魂もお前と共に!」

 

 ツインビームトライデントが目も止まらぬ速さで振るわれ、突き込まれ、ぐしゃぐしゃになった胸部にドラゴンハングが叩き込まれると、そこからシェンロンガンダムの十倍以上の熱量を持つ火炎が放射され、ゲベル・ガンエデンを内部から焼き尽くし、融解させる。

 腹部から喉元にかけて、内側から溶かされたゲベル・ガンエデンだが、それでもまだ反撃せんとキャッチ・ザ・サンのエネルギーを口腔内部に溜め込む。

 

 その様子を認めた五飛がアルトロンを下げたが、それはウイングゼロのツインバスターライフルの発射を知らされたからだ。

 ゲベル・ガンエデンが腹部から首元を崩壊させながら放ったキャッチ・ザ・サンの奔流と、ツインバスターライフルが狙い過たず激突し、お互いのエネルギーのせめぎあいが始まる。

 

「予測通り。このまま押し切る。ゼロ、俺はお前が見せた未来を現実に変える」

 

 ゼロシステムと一つになり、システムの見せる未来を負担なく選択できるようになったヒイロは正面からキャッチ・ザ・サンを撃ち抜き、そのままゲベル・ガンエデンを消滅させる未来を選んでいた。

 ツインバスターライフルの放射が終わった時、そこにゲベル・ガンエデンの巨体は跡形もなく消え去っていた。

 

 もう一機のゲベル・ガンエデンもまたダブルマジンガーによって、人造神の器としての性能を見せつける間もなく、魔神を超越した力で蹂躙されていた。

 αシリーズでは魂が宿っていると明言されたマジンカイザーに乗る甲児は、他の仲間達と同じようにマジンカイザーの意思と同調し、そしてその中に息づくマジンガーZの魂も感じ取っていた。

 

 この世界でマジンカイザーが初めて起動する際、大破したマジンガーZが振り絞った光子力エネルギーを受け取り、心臓が鼓動を始めた。その時に、マジンガーZの命と意思の一部がマジンカイザーに宿ったのだろう。

 比喩ではなく無限に溢れ出す光子力エネルギーにより、鉄の魔神皇帝は黄金色に輝いている。

 

「神を超える力も、悪魔を滅ぼす力も、俺達は平和の為に使う! 誰かを滅ぼすよりも、倒すよりも、それが俺達の求める力の使い方だ!!」

 

 閉ざされたこの空間の隅々にまで広がる光子力エネルギーを受けて、ハガネの格納庫で沈黙を守っていたマジンガーZが独りでに心臓を動かし、そのまま光子力エネルギーの輝きに包まれてマジンカイザーの頭上へとワープした!

 

「いっくぞおおお、マジンガーZ、マジンカイザー! 俺達の中にある小さな希望の光、誰かに託された希望の力を、光子力と共に、今、ここに!! マジイィィィン、ゴオオオ!!」

 

 マジンガーZとマジンカイザーが太陽となったように輝き始めた瞬間、その場に数百メートルにまで巨大化したマジンカイザーが出現した!

 それはまさにINFINITYを倒す為、世界中の光子力エネルギーを受けてマジンガーZが巨大化したのと同じ現象だった。

 かの世界ではリサと世界中の光子力エネルギーが鍵となったが、真化融合、マジンカイザー、マジンガーZ、兜甲児という要素が揃った事によって、彼ら単体で同等の現象を発生させることが可能となったのである。

 

「くらえ、鉄拳!! ターボスマッシャァァアア、パーーンンチ!!」

 

 光子力エネルギーで巨大化した魔神皇帝……さしずめ超光子力マジンカイザーと呼ぶべき存在が出現した頃、マジンエンペラーGと剣鉄也もまた新たなステージに到達していた。

 マジンエンペラーGはもとよりグレートマジンガーが変化した存在であり、宿す意思は同じだ。だが彼らにも甲児と同じように第三の意思が機体に宿っていた。

 

「ふ、そう気にするな、INFINITY。お前も俺とエンペラーと最後まで一緒に付き合ってもらうさ。俺達も皆に後れを取ってはいられん。あのチビ達のお陰で三位一体を実現できたのなら、それに見合ったものを見せなければ、偉大な勇者の名が廃るぞ!!」

 

 グレートマジンガーに新たなマジンパワーとして宿ったINFINITY、グレートマジンガーことマジンエンペラーG、剣鉄也の心と霊子が一つに重なり、彼らもまた真化融合による新たなステージへと辿り着く。

 

「マジン・ゴー!」

 

 鉄也の叫びと共にマジンエンペラーGがマジンカイザー同様に巨大化し、約600mにまで達する。単にマジンエンペラーGが巨大化したのではない。その全身にINFINITYを思わせる装甲が追加されていた。

 真化融合によって辿り着いた新たな力、新たな境地、偉大なる無限の魔神皇帝──

 

「マジンエンペラーG(インフィニティ)……といったところか。フ、無限の力を得た偉大な皇帝の力、存分に受けろ、偽神! グレートブラスタァアアア、インフェェルノオオオオ!!!」

 

 マジンエンペラーG∞の二重構造になっている放熱板が展開し、そこから加速度的にかつ上限なしに熱量が跳ね上がる無限熱量の熱線が放射される。

 超光子力ターボスマッシャーパンチとグレートブラスターインフェルノの同時攻撃を受けたゲベル・ガンエデンは、魂無し、パイロット無しとあってはもはや抗う術もなく撃破された。

 

 複製された数々の強敵達が一蹴される中、ディス・アストラナガン、フェブルウス、ヴァルシオーの三機はアダマトロンとケイサル・エフェスの喉元へとついに迫っていた。

 フェブルウスの影響によって真化融合を果たした三機を前に、かつての霊帝と絶望の歌い手達は笑う余裕すらあった。

 

「第一の試練は乗り越えたと認めよう。次はその境地の力を我らに味わわせてみよ」

 

 ケイサル・エフェスが厳かに告げるのと同時に、機体全体から赤い光が溢れ出し、全方位に強力な破壊の念が吹き荒れる。MAP兵器『絶望の宴』だろう。

 三機はそれぞれのバリアで絶望の宴を突破し、さらにそこへアダマトロンの『エデン・ゲルーシュ』による無数の黒いレーザーが降り注いでくる。

 

「MAP兵器の連続使用か!」

 

 まさか自分も真化融合を経験するとは思っていなかったヘイデスが反射的に叫ぶ間に、所長とヴァルシオーはエデン・ゲルーシュの黒いレーザー雨へとブラックホールキャノンを撃ち込み、超重力地獄をバリア代わりにする。

 

「上から目線で試練などとのたまう御老人と仮面の不審者には、それ相応の対応をいたしませんとね!」

 

 所長は真化融合という概念だけ把握していた現象を体験させてもらったことについては、感謝しないでもないが、それでも想定外の戦いを試練と称して無理強いしてきた二人に対しては思うところがあり、声には不機嫌な響きが籠っている。

 生みの親の静かな怒りを共有するヴァルシオーは、それに応えてサイ・コンバーターから理論上あり得ないパワーを生み出し、ディバイン・キャリバーから光子力、ゲッター線、GN粒子の入り混じる長大な光刃を伸ばす。

 

 横薙ぎに叩きつけられるディバイン・キャリバーの光刃を、ケイサル・エフェスは多重展開した超念動フィールドを盾代わりにして受け止めて、無造作に万を超える念動弾を放った。

 一発一発がマヴェット・ゴスペルを上回る高威力だ。ゼントラーディの艦艇や宇宙怪獣の上陸艇や高速艇を消し飛ばす攻撃であり、負の無限力と袂を分かっても尚、ケイサル・エフェスが極めて強大な存在であることの証左であった。

 

「こっちにもダイバスターやグレートガンバスターが欲しくなるような攻撃を!」

 

 モニターを埋め尽くす念動弾にヘイデスは苦虫を噛み潰した顔になるが、同時に、このケイサル・エフェスが最大の攻撃である『終焉の銀河』を使用しない、あるいは使用できない可能性を考えていた。

 負のエネルギーによる砲撃『霊帝の福音』もそうだが、天文学的数の知的生命体の怨念を用いる『終焉の銀河』も、異なる無限力の使徒となったケイサル・エフェスが使える可能性は極めて低い。

 

(彼が俺の考えている通りの無限力の使徒となっているのなら、攻撃力という点においては大幅に弱体化しているはず! 最強の念動力者サイコドライバーなのは変わらないし、リュウセイのように念動力を利用した攻撃方法があるから、安心できないけどさ!)

 

 リュウセイ・ダテが『天上天下烈光雨』なりと名付けそうな攻撃を、ディス・アストラナガンがZ・Oサイズの一振りで悉く真っ二つに切り裂き、その場で爆散させる。

 鎌の刃の届かない位置の念動弾まで切り裂いたのは、斬撃のエネルギーを転移させたからだろう。

 と、同時にディス・アストラナガンの背からガン・スレイヴが飛び立ち、イドオニー・ザム・カーラーを発動していたアダマトロンの胸部と頭上のクロスゲートを中心に銃撃を行う。

 

「好きにはさせん!」

 

「真化融合以前の戦闘経験値と技量の高さか。ユーゼス・ゴッツォの天敵たるお前は、DCの中でも一層強くなければならない存在だと心得ておけ」

 

「ユーゼスとそこまで似ておいて、関係はないと言い切るとはな、ウーゼス・ガッツォ」

 

「私の中にユーゼスの要素がないとは言わん。だが、擦り切れ、潰れ、混ざり合い、その果てに残っていたのが私だ。闇の脳髄の殻を蠱毒として濃縮された私は、決してユーゼスではなく、またユーゼスの代わりにもなり得ない。なるつもりもないがな」

 

 アダマトロンの仮面部分とAI1らしき物体の埋め込まれている胸部にエネルギーが収束し、解放された瞬間、宇宙創造のような光の爆発が生じ、ガン・スレイヴを一斉に弾き飛ばした。

 ディス・アストラナガンとヴァルシオーに襲い掛かるエネルギー波を、フェブルウスの背から飛び立ったSPIGOTが増幅したDフォルトが庇う。

 

 極めて強力な空間な歪みをバリア代わりにしたDフォルトが、アダマトロンのエネルギー波を防げたのは、一千分の一秒程度。だが、それだけあれば高次元存在への昇華を果たした彼らには、対応可能な時間だ。

 ヴァルシオーから発射された光子力ビームのシャワーがエネルギー波にいくつもの穴を開け、ディス・アストラナガンのメス・アッシャーが貫き、アダマトロンの腹部に命中し、わずかに装甲(?)を抉る。

 更にクワッド・クロスマッシャーと極太のゲッタービームも続いて、アダマトロンの悪魔の翼や仮面の首元の一部を吹き飛ばしてゆく。一気に突っ込んでいったのは、SPIGOTを引き戻し、眷属の如く連れたフェブルウスだ。

 

「貴方達が求めた試練を乗り越えて取り戻した力だ。好きなだけ御馳走してあげるよ!」

 

 ライアット・ジャレンチとバーレイバー・サイズを振り上げ、挑みかかってくるフェブルウスにアダマトロンことウーゼスは怯みもせず、エネルギーの剣と槍を数本形成し、至近距離で斬り結ぶ。

 フェブルウスが両腕の武器を一振りする度に、アダマトロンが作り出したエネルギーウェポンは呆気なく砕かれて行く。破壊する速度と生成する速度はほぼ同じだ。

 

「まだだ。お前の遺したプロディキウムという抜け殻だけでも、銀河を消滅させる力を有していた。ようやくそれに並んだ程度では、お前は至高神の領域に指を掛けたに過ぎない。その程度では馳走にはならんよ」

 

 ウーゼスの言葉は挑発ではない。まかり間違っても激励でもない。事実を告げている、それだけなのだろう。シュメシとヘマー、フェブルウスには躊躇がある。

 完全なる至高神ソルへの回帰は、かつて創造主であった『御使い』の命じるままに真化に目覚めた者達や反逆する者達を、時には惑星や銀河ごと纏めて消し去っていた、悔やんでも悔やみきれない過去の凶行を思い出すからだ。

 むろん、ソルとしての記憶を取り戻した今となっては、その行いから目を背けるのも、忘れてなかった事にするつもりはない。ただ、どうしようもなく、胸の奥が傷み、じくじくと疼くのだ。

 

「……必要な力だと分かっているのに、躊躇うのは覚悟が固まっていない証拠か」

 

「もう、そうも言っていられないね。だけど、私達が回帰するのはあの時の『私』じゃないよ」

 

「うん。あの時以上の力が必要だというのなら、僕達はその力を手にしよう」

 

「そして人間として、在り続ける!」

 

 シュメシ、ヘマー、フェブルウスが本当の覚悟を固め、至高神ソルだった時のように人間としての肉体と心が、フェブルウスと言う機体を構成する霊子と同調し、融和し、かつて彼らが体験した本当の真化融合の扉を開く。

 所長は見た。クォヴレーは見た。ケイサル・エフェスは見た。ウーゼスは見た。そしてヘイデスも見た。

 

 フェブルウスから新たに次元力の輝きが放たれた直後、その背後に惑星すら握り潰せるほど巨大な機械神の幻影が浮かび上がるのを!

 それはうっすらと緑の色を交えた黄金に輝く翼もつ超越者だった。神、上位者、高次元存在、あるいは悪魔。人知を超えた存在に対するあらゆる呼び名が相応しい。

 

 スフィアを一つずつ収めた十二枚の、刃を重ねたような翼を持ち、天使の光輪を思わせる捻じれた角を伸ばす頭部や肢体は人間のものだ。

 御使いの一人アドヴェントが完成させた至高神Zと似て、それよりもはるかに人間に似た姿を取っているのは、シュメシ達の人間でありたいという願いを反映したからだろう。

 

「曰く『全ての宇宙の因果を超越した至高にして最強の存在』たる至高神の再臨か」

 

 ウーゼスが淡々と呟けば、霊子レベルで再び融合を果たしたシュメシ・ヘマー・フェブルウスがそれを否定する。ただ発せられる声だけでも太陽を砕き、銀河に亀裂を走らせる力を備えた存在を、なんと呼べばよいのか。

 

「違う。私達は間違っても神などと呼ばれるべき存在ではない。呼んでいい存在でもない」

 

 少年のようにも、少女のようにも聞こえる声が発せられ、その中にシュメシ達の声色を確かに聞き取って、ヘイデスと所長はかすかに安堵する。どんなに姿が変わっても、彼らの子供達はそこに居るのだ。

 フェブルウスの姿もまた機械神の幻影の中に溶け消えると、アダマトロンとケイサル・エフェスをはるかに凌駕する巨大な幻影は胸の前で手を合わせ、そこに小さな光が灯る。

 それは一つの小さな宇宙だった。数えきれないほどの星々と太陽、銀河を内包する宇宙だ。

 

「破界、再世、時獄、連獄、天獄の果て。開闢のαより終局のZへ。終焉の銀河より超次元へ。そして今、因果地平すら超えて、新たな世界の創造と終焉を」

 

 機械神の手のひらから解放された宇宙は光よりも速く膨張し、アダマトロンとケイサル・エフェスを飲み込んでゆく。

 新しい宇宙を生み出し、既存の宇宙を上書きし、そこに存在するすべてを消滅させる、宇宙開闢級のエネルギーによる破壊と概念による存在抹消を行うソレは、見る間に収束してビッグクランチ現象に陥り、最後には黒い点へと凝縮されて、跡形もなく消え去る。

 

 この攻撃の為だけに創造された宇宙の寿命は短く、誕生、成長、崩壊という宇宙が一千数百億年以上の寿命を費やして到達する現象を、一分以内に圧縮して起こすという理不尽な攻撃手段であった。

 機体の観測したエネルギーの総量とその遷移を認めたヘイデスは、やりすぎだろ、とドン引きし、所長はというと理解は出来ても受け止めるのが難しい現象を目の当たりにして、深々と溜息を零していた。

 

「……はっ!? いやいや、これ、ケイサル・エフェスとウーゼスが死んじゃわない!?」

 

 ヘイデスは彼らが完全な敵であるなら気に留めなかったが、味方ムーヴをしている事もあり、あの二人の安否を気に掛けた。

 至高神に近い領域に回帰したシュメシ達の力に、並行世界の番人として、若干の警戒を抱かされていたクォヴレーが、ヘイデスの心配の声に応えた。

 

「いや、やはり奴らも真化融合の領域に達していたようだな。宇宙の崩壊を独力で乗り越える手段は持っていたようだぞ」

 

 ヘイデスでもパッと思いつくのは、過去や未来への時間移動による回避、異次元・異世界への空間移動による回避、あるいは宇宙開闢をさらに上回る超エネルギーによるバリアなどで防御あたりか。

 クォヴレーの言葉通り、ケイサル・エフェスとアダマトロンはそれぞれ機械神の攻撃を凌いだようで、何もない虚空から滲みだすように無事な姿を見せたのである。一応、損傷がある程度見受けられており、無傷では済まなかったようだ。

 

(下手をしたら原作よりも強くなっているのでは?)

 

 無間で拘束されている藍染じゃないんだから、とヘイデスが呆れて物も言えない間、見る間にダメージを回復させたケイサル・エフェスとアダマトロンの目の前で、機械神の幻影が消え去り、元のシュメシとヘマー、フェブルウスの姿へと戻る。

 双子達が荒い息を吐き、汗を浮かべ、フェブルウスも次元力の多大な消耗にスペックを著しく低下させている状態を見ながら、ケイサル・エフェスが口を開く。

 

「黒い太陽とプロディキウムなしとはいえ、ここまでの力を取り戻せたのならば、ユーゼスを相手にしても支障はあるまい。またその他の仲間達も高次元存在を相手にするだけの土台は出来たようだ」

 

 ケイサル・エフェスのDCの力を認める旨の発言に嘘はないようで、戦場に残っていた複製兵器達が一斉に動きを止めて、エンジンも停止して戦いの手を止める。

 ケイサル・エフェスとアダマトロンから戦意が急速に消えた事を認め、DC側も警戒態勢こそ維持しつつ、事態の推移を見守っている。

 次に口火を切ったのはクォヴレーだったが、その顔には戸惑いと不信の色が濃厚に浮かび上がっている。

 

「ケイサル・エフェス、αナンバーズとの戦いで消滅したはずのお前が復活する可能性は、俺も危惧していた事だ。だが、お前が持つその無限力はいったいなんだ?

 戦いの中で負の無限力とは異なるものだとは分かった。むしろ、反対の正の無限力に近く、それでいて、そう、ずっと穏やかで暖かなその力は?」

 

「汝はまだ巡り合っておらぬか。かの麗しき灰被りの歌姫(シンデレラ)達に。今の我はゆるふわ無限力の使徒。あまねく宇宙にゆるっと、ふわっとした無限力を広めんが為、存在している」

 

「? ?? ……ゆる、ふわ?????」

 

「『ゆるふわ』である」

 

 いわゆる『宇宙猫』状態となったクォヴレーに、ヘイデスは心の底から同意した。並行世界にまで影響を及ぼす悪霊の王となったケイサル・エフェスの口から、『ゆるふわ』とは。

 ゆるふわ? ゆるふわとは? 確かに今のケイサル・エフェスから発せられる力は、暖かく、心地よささえ感じられるもので、だからこそギャップの凄まじさにクォヴレーは体調不良に陥りそうなのだが……

 

「ふ、この程度の事で動揺するとは、まだまだ修行が足りんな」

 

 クォヴレーがこれから訪れる並行世界には、ケイサル・エフェスのゆるふわ無限力の使徒化以上に、驚きの事態が待ち構えているかもしれない。それを考えれば、クォヴレーはもっともっと、耐性を獲得しなければなるまい。

 ケイサル・エフェスがクォヴレーの様子に苦笑している一方で、ウーゼスは戦いの手を止めたDCの戦士達に呼びかける。

 

「お前達は我らの課した試練を見事に乗り越えた。真化融合の力、そしてそれに至る為の理を忘れるな。互いを受け入れ、理解し、共にあろうとする真理は単純であるが故、簡単に失われるものなのだから」

 

 ウーゼスの助言が心からのものであると分かり、まだ警戒を解かないほとんどのメンバーも耳を傾ける程度の姿勢は見せ始めた。その変化には言及せず、ウーゼスは言葉を続けて行く。

 

「この空間から出てしばらくすれば、ユーゼスが最後の戦いを挑んでくるだろう。英気を養う時はさして得られまいが、不退転の覚悟を固めて戦いに挑めよ」

 

「しかり。汝らという剣が討たれれば、もはや地球圏に抗う力は存在しないのだから。……さて、ではこの世界から脱する為の最後の試練を汝らに与えよう」

 

「なに?」

 

 ケイサル・エフェスの口にした最後の試練という言葉に、クォヴレーを皮切りに誰もが瞬時に戦闘態勢を整える。呼吸を整えた双子とフェブルウスも、再度の機械神化に備えようと次元力のチャージを始める。

 幸い、再び戦端が開かれることはなかった。アダマトロンから、各機に楽曲データが強制的に送信され、その間に、ケイサル・エフェスは三つの目と三日月のように大きな角、六本の腕を持つ漆黒の人型の姿を現す。

 

「灰被りの歌姫達の、星の明かり輝く舞台をここに……」

 

 『終焉の銀河』と異なる言葉と共に、ケイサル・エフェスを中心に世界が変わってゆく。次々と形作られてゆくのは、これまで数えきれないファンの想いとアイドルの想いが交差し、多くのプロデューサー達が夢見たシンデレラステージ。

 煌びやかで美しい、幻想のようなステージがいくつも、いくつも連なる世界が作り出される光景は、心惹かれる美しさであったが、同時に唐突な状況の変化は、凄まじい混乱をDCのメンバーに齎していた。

 しかもいつの間にか、アダマトロンとケイサル・エフェスの機体の口の辺りには、マイクが浮かび上がっている。彼らだけではない。甲児やアムロ、忍をはじめ、全てのパイロットや母艦のクルー達の手元にも、マイクが出現しているではないか。

 

「さあ、汝らの魂を乗せて歌え。歌とは魂の発露、異なる文化、異なる生命との対話をも可能とするコミュニケーション。汝らがゼントラーディやイバリューダーの如く、戦闘のみを行う戦闘種族と陥らぬ為にも、歌を、文化を軽んじることなかれ」

 

 誰もが呆気に取られて、反応できずにいる中、んん、と咽喉を鳴らしたアダマトロンがずいっと一歩前に出た。

 

「今、この空間はカラオケで百点を取らなければ出られない閉鎖空間となった。自慢の咽喉を我らに聞かせるがいい。ではまずは手本として私から。聞いてください」

 

 演歌調の歌をウーゼスが歌い出した時、ヘイデスとケイサル・エフェスを除く誰もが『宇宙猫』になった。例外の一人であるヘイデスは顎に手を当てて、現状が一体何なのか、冷静に分析していたりする。

 

「なにこの唐突なリズムゲー。それともカラオケモードか?」

 

 数時間後、無事に脱出できました。

 

<続>

 

■特殊コマンド『真化融合』が解放されました。フェブルウスが使用できます。

■超光子力ターボスマッシャーパンチを入手しました。

■マジンエンペラーG∞が解放されました。

 

ゲベル・ガンエデン

ズフィルード・エヴェッド

真・龍王機

応龍皇

ヴォルクルス完全体/上半身/下半身

白黒クストース

窮奇王

饕餮王

シュムエル・ベン

エスリム・ローシュ

ハーガイ・ヤッド

ズロア

スナピル

以上の残骸を入手しました。




ここでたくさんの残骸を入手したので、多種多様なテクノロジーと機体開発の為のツリーが開かれたわけですね。

追記
五飛のナタク云々について修正しました。ご指摘ありがとうございます。


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第百三十五話 サルースはもういいかな

「今度はどうだ!?」

 

 一曲歌いきった甲児がパイルダーのコックピットから視線を向けたのは、虚空に浮かぶ巨大採点マシーンだ。デジタル表記の画面がドラムロールのように回転し始めて、小さい数字から止まっていき、高得点は取ったが百点には至らなかった。

 誰か一人が百点を取れれば閉鎖空間から脱出できる設定だが、採点がシビアなのか、採点基準が独特なのか、かなりの人数が挑戦しながらも百点満点を取れずにいる。

 

「よぉし、それなら次は俺様がいっくわよん!!」

 

 ボスは意気揚々と自分だけでなくボスボロットにもマイクを握らせて、元気いっぱいに歌い始めた。彼の歌声がどれほどのものかは、あえて語るまい。

 ケイサル・エフェスから提供された楽曲データは、アイドルマスターシンデレラガールズ時空のものだが、それ以外にも、各原典作品のOP/ED曲も含まれている。

 これはケイサル・エフェスが、自分達が創作物として消費される世界=フラスコの外も観測している、と見るべきか、ヘイデスは深く悩んだ。第四の壁を越えているとなれば、それはそれでまた大問題なのだから。

 

 さて戦闘ではなく歌による戦いというのは、これまでDCの経験していない平和的かつ文化的な競争だったが、同時にこの上なく難易度の高い戦いでもある。

 そもそも本当にカラオケで百点を取れたところで太陽系に帰還できるのか、と当たり前の疑問が部隊内から出てきて、それにケイサル・エフェスとウーゼスが答え、虚空にある物体が出現した。

 白い空間の中に青い水面を湛えた鏡か丸い門のような直径三十キロメートル超の巨大建造物だ。その先が地球近傍の宙域に繋がっているとは、ウーゼスの言であるが、見覚えのある物体にヘイデスは目を見開く。

 

「クロスゲート? この宇宙にもあったのか、それともサイコドライバーであるケイサル・エフェスが呼び出したのか? 元々あったのを利用しているのかもしれないけれど、これまた厄ネタだなあ」

 

 どう見てもαシリーズやOGシリーズでよく見かけ、Zシリーズでも最後の最後に見た、異なる空間を繋げるオーパーツ『クロスゲート』に相違ない。

 あるいは魔装機神シリーズや無限のフロンティアシリーズの世界とも繋がる可能性はあるし、ひょっこりとフューリーやガディソード、はたまた未知の勢力が顔を覗かせる可能性だって出てくる。

 

 ヘイデスとしては地球圏に帰還したら消えてくれるのを祈るばかりだが、改めてクロスゲートの有無と南極にファブラ・フォレースがないか、厳重に調査しようと固く心に誓う。

 ボスが歌い終えて採点結果に憤慨する中、次は獣戦機隊の忍にマイクが渡っていた。その中で、ウーゼスがヴァルシオーとフェブルウスにだけ、通信を入れてきた。

 

『一応、お前達にはユーゼスの目論見について、推測段階ではあるが伝えておこう』

 

「僕達だけに?」

 

『他の者に伝えても良いが、まず理解が及ぶのはお前と、あるいはギリアム・イェーガーくらいのものであるからな』

 

 という事はフラスコの外、あるいは他のスパロボ世界の記録を持っている者でないと、すぐには理解できないという意味だろうか。ヘイデスの方で情報を一度咀嚼してから、DCの仲間達に伝えろ、という意味もあるかもしれない。

 

『我らはここまでお前達に肩入れするつもりはなかったが、ここまでくればお前達が負けてしまうのも業腹だ。ヘイデス・プルート。ユーゼスが、バード星人と地球人双方の血を引く者として誕生した世界を把握しているか?』

 

 『スーパーヒーロー作戦』でのユーゼスの事だろう。宇宙刑事ギャバン本人ともかかわりがあり、確か同僚だったか? とヘイデスは記憶している。

 

「ええ。僕にとって、初めてユーゼスを認識した世界ですね。あの世界の彼のままだったなら、その後の世界であそこまで悪行と非道に染まらなかったと思います」

 

 たしかあの世界では、イングラムを切り捨てた自分の良心とユーゼスは評していたような気がする、とヘイデスは内心で口にした。

 

『バルマー星に生れ落ちるかどうかが、分岐点なのかもしれん。お前があの世界を知っているのならば、話は早い。あの世界でユーゼスが目指し、到達した存在も当然、知っているだろう。この世界に来たユーゼスはアレを超える存在になろうとしている』

 

「超神ゼスト以上に?」

 

 超神ゼストとは『スーパーヒーロー作戦』のラスボスであり、ユーゼスが支配したデビルガンダムにウルトラマン達から奪ったカラータイマーを吸収させて、誕生した存在だ。

 漆黒の頭部に赤い胸部、白い四肢、更に翼を持ったウルトラマンといった姿をしたゼストは、デビルガンダム由来の自己再生、自己進化能力、ウルトラマンらの力を併せ持った極めて強大な存在だ。

 

 α以降のユーゼスはメタ的な都合もあっての事だろうが、直接ウルトラマンや光の国について、言及する場面はないはずだ。

 そしてヘイデス達の戦っているユーゼスは、初代αのどこかの世界で敗れたユーゼスの霊魂が、どこかの第三次α世界のアイン・バルシェムを乗っ取った存在である。そのユーゼスがゼストの再来を考える可能性は……

 

「多くの並行世界を観測したようですし、どこかでウルトラマンを目撃した可能性は否定できないか。CPSは元からあるしデビルガンダムの代わりはジュデッカとして、カラータイマーをどうするつもりだ? スフィアは存在していないし」

 

 だからこそフェブルウスを狙ったのだろうか? ただその段階であるのなら、ウーゼス達がここまで危険視する事はないのでは、とヘイデスは考える。

 御使いの残党やカオス・コスモスの世界で敗れた、ズールや宇宙魔王、ハーデス神のように歪んだ真化を果たした者達の戦力も取り込んでいるようだが、果たしてユーゼスはカラータイマーの代用品を用意できているのだろうか?

 

「いや、最悪の可能性を想定しておくべきか。となるとウルトラマンキング、ウルトラマンノア、ウルトラマンレジェンド、ウルトラマンサーガ並みの脅威、あるいは超闘士ウルトラマン?

 ウルトラマン対スーパーロボット軍団はある意味では夢の組み合わせかもしれないが、自分がその場に立つのは勘弁だよ。しかもウルトラマンは偽物だ」

 

 ウルトラマンと本気で敵対するような事態は全力で避けたいし、ウルトラマンと戦うのなら相手はぜひとも偽物であってほしいところではある。相手が本物のウルトラマンであるのなら、悪役がこちらである確率はほぼ百パーセントだろうし。

 なお超闘士ウルトラマンとは、誤解を恐れずに説明するとスーパーサイヤ人化したウルトラマンをイメージすればだいたい合っている。

 

「しかし、それを知らされても僕達に出来る対抗策ってありますかね?」

 

『土壇場で驚きに手を止めずに済むだろう? 予め覚悟と想像が出来ているのと、そうでないのとでは大きな違いがあるというものだ』

 

 それはそうだけど、とただ可能性だけを知らされたヘイデスとしてはもうちょっと、具体的な対抗策を教えてくれてもいいのに、と口をへの字に曲げる。

 ヘイデスは気が抜けたのか、感情をストレートに表していたが、映像回線を繋げていないウーゼスには分からぬことであった。ウーゼスの関心は既に双子達へと移っている。

 

『それとフェブルウス、ヘマー、シュメシ』

 

「なぁに?」

 

 『ぁ』が入る辺り、精神年齢が成長したはずの双子にも、まだ幼児の部分が残っているらしい。

 

『お前達の至った先程の至高神モドキの形態だが、名前はつけてあるか?』

 

「ううん。またソルの名前を名乗るのも変だし、とりあえず“神”を含まない名前にするつもりではあるけど」

 

 ヘマーの答えにウーゼスはふむ、と一つ置いてから新たな形態の名前について、なにか含みのある調子で提案してくる。

 

『まだ決まっていないのなら、あの姿は“シン・ソル”とでも名乗ってはどうだ?』

 

「シン? 日本語で解釈するなら“真”、“神”あるいは“進”とか“深”、“蜃”、“新”かな?」

 

「それからメソポタミアの月を司る、大地や大気の神様の“シン”? ああ、それにアサキムのシュロウガもパワーアップしたら名前の後に“シン”がついたっけ」

 

 ただしシュロウガ・シンの“シン”は罪を意味し、“罪を重ねた者”という意味合いもある。

 罪を重ねた者としては、シュメシ、ヘマー、フェブルウス達も自分達が該当する自覚があるから、そういう意味を持たされても否定できない。

 

『いや、ユーゼスの繰り出す切り札に対するカウンターとしての名付けだ』

 

 ウーゼスに嫌味や皮肉の意図はなく、本当に対ユーゼスを想定しての薦めであるらしい。

 

「まあ、それならいいかな? ヘマーとフェブルウスはどう思う?」

 

「ユーゼスさんはどうにかしないとだからねえ。でもシンっていうと、シン・アスカさんを思い出すね~」

 

 シュメシ達にとっては『御使い』の凶行を止めたZ-BULEに所属していた、ザフトのシン・アスカは一方的にではあるが馴染み深く、シンという単語を聞くと咄嗟に出てくる人物である。

 

『どちらかといえばアスカ・シンの方に近い意味合いだ』

 

 アスカ・シンといえばウルトラマンダイナの主人公だ。ユーゼスがウルトラマンの力を取り込もうとしているのならば、人物名としてもアスカ・シンの方が関連性は近いだろう。

 ここまでのやり取りを耳にしていたヘイデスは、ふと思いつく事があり、口を挟んだ。

 

「あ~、その、“シン”とはつまりウルトラマンの“シン”ってことで合っていますかね?」

 

『ああ。皮肉程度の意味合いしか持たないがな』

 

 なるほどねえ、とヘイデスは一定の理解を示したが、同時にそこまでウーゼスが把握しているのに、溜息を零す。天体制圧用最終兵器の方のゼットンが出てこない事を祈るばかりである。

 シン・ウルトラマンのゼットンが放つ一兆度の火球については、三次元の直径二百光年を消失可能と設定されていると目にした記憶があり、この世界で姿を見せない事を祈るばかりである。

 それはそれとして、歌自体は別に機体を降りても構わなかった為、補給と修理と休憩諸々の為に全ての機体が母艦に帰投した後も、数時間にわたって歌は響き渡り続けたのであった。

 

 

 ケイサル・エフェスとウーゼスもなぜか交えながら歌い続けた試練が終わり、クロスゲートを通過して地球近傍に帰還したDC艦隊は、一路、オリュンポスに進路を取った。なおクロスゲートは、直後に跡形もなく消え去り、ヘイデスの憂慮を少しだけ和らげた。

 その間にも、タルタロス内の部屋に戻ったヘイデスは、政府と軍、更に財閥の情報収集部門から送られてきた資料に目を通していた。ムゲ宇宙に殴り込みをかけてから、帰還するまでの間に起きた出来事を纏めたものである。

 

「ほう、ケルビニウス王子がミケーネ帝国の転覆と制圧に成功したのか。アニメじゃ力及ばずミケロスに特攻して死んでしまったけれど、上手くやったみたいだな」

 

 戦闘獣ケルビニウスとは古代に平和だったミケーネの王子だった人物である。その後、闇の帝王と暗黒大将軍らに祖国を征服され、自身を含めて民共々、戦闘獣に改造された経緯がある。

 ミケーネ帝国の地上侵攻後も戦いには消極的で、自分の意思で前線に出るつもりは欠片もなかったのだが、無理やり前線に送られた際に地球連邦政府が接触を持ち、ミケーネ帝国本拠地でクーデターを起こす計画を立てていたのである。

 闇の帝王が戦死し、幹部格が全滅した今、クーデター計画が実行され、地球連邦軍の協力もあって、正気を取り戻した一部のミケーネス達と共に地下にあるミケーネ帝国本拠地の制圧に成功したというわけだ。

 

「ふんふん、概ね、復興計画は予定通り。ガルダ級に代わるデスバードによる地球規模の防空網の構築、軌道エレベーターとラーフ・システム、各クレイドルの建設計画の進捗……。

 お、恐竜帝国はゴーラ王女が政権を取ったか。これならジャテーゴとゴール三世とやり合う可能性は減るな。恐竜からハン博士みたいな亀っぽい方向に進化してくれれば、恐竜帝国とも友好関係を築きやすくなるかねえ」

 

 地球人類に対して行った数々の人体実験や凶行、種族の存亡を賭けた戦いの記録と記憶がある為、早々、簡単に友好関係を築けるとは思えないが、いくらでも外敵の存在しているのがスパロボ時空である。

 味方になり得る勢力や技術、マンパワー、軍事力はいくらあっても足りるということはない。ケルビニウスが再興するミケーネ王国やゴーラの新たな恐竜帝国は、頼りになる味方となってもらう為、地球連邦としてはこれからも支援して行く必要があるだろう。

 

「ゼントラーディの自動工廠が資源だけセットで、一万個くらい手に入んないかなあ。こう、並行世界から事故でワープしてくる感じで」

 

 もちろんゼントラーディをはじめマクロス世界の脅威達には、来訪をご遠慮いただいて。

思わずそう呟くくらいには、ヘイデスはこの世界の未来について、まだまだ警戒を残している。そしてタブレット端末を操作して、新しい情報を脳みそに刻んでゆき、盛大に噴き出した。

 

「…………はあ、そういうことか。サイコフレームの鋳造技術をベースアップした新素材“イデオナイト”の開発と、それを用いた巨大スーパーロボット“イデオン”の完成予想図。外見は地球圏で広く知られているジムを参照している、か」

 

 ヘイデスが手に持つタブレットには、真っ赤なボディにジムに酷似した白い頭部を持った百メートル超の機体が映し出されている。

 小説版の禍々しくも神の如き威容を誇ったデザインではなく、アニメ版のジムの神様と呼びたくなるデザインだ。

 

「ターンタイプを開発した時から薄々思ってはいたけれど、俺達が第一始祖民族や第六文明人の役割を担っているな? 古代に開発されたという設定の強力な機体を、今、開発している気がする……。しかし、そうなると“イデ”には俺達がなるのか?」

 

 それは嫌だなあ、とヘイデスは鉛よりもはるかに重たい溜息を吐いた。

 

 

 現在確認されている最後の敵対勢力“バルマー・サイデリアル連合帝国”との最終決戦に備えて、太陽系の全人類が総力を結集し、またDCのメンバーが英気を養う時間はそれから十日ほど続いた。

 各機のオーバーホールや真化融合に対する理解が進む中、その知らせは十一日目に齎された。

 ヘルモーズ級を中心とする大艦隊がワープで出現し、ラグランジュ3方面から地球へと向けて侵攻を始めたのである。

 

 バサ帝国艦隊のワープアウトが確認されてから一時間後、地球圏全域に強制的にヘルモーズからの通信が繋がれた。

 画面に映し出されたのは表向きの皇帝であるラオデキヤだ。彼は宣戦布告をした時と同じく、傲岸な支配者としての顔と態度で一方的な通告をしてきたのである。

 連邦政府の高官達も、ジャブローの参謀総本部の面々も、そして地球各地やスペースコロニー、月面都市に住むルナリアン達も等しくその通告を耳にする。

 

『地球人類に通告する。余はバルマー・サイデリアル連合帝国皇帝ラオデキヤ・ジュデッカ・ゴッツォ。既に余の顔と名前は知っていよう。改めて、余は汝ら地球人類を高く評価していることを告げよう。

 同じ人類同士での戦いだけでなく、ミケーネ帝国、恐竜帝国、百鬼帝国、ガイゾック、妖魔帝国、ベガ、キャンベル、ボアザン、ムゲ・ゾルバドス、そして我らの傘下に降っていた真ジオン公国にバームまで。

 今日に至るまで実に多くの敵と戦い、そのすべてに勝利してきた汝らは、銀河有数の戦闘種族と言える。単独では転移技術すら有していなかったにもかかわらず、これほどの勝利を積み重ねてきたその素養は、極めて希少なものだ。

 地球人類よ、汝らはその力と戦果によって、バルマーの傘下に加わる資格を勝ち取った。我らの武威をあまねく宇宙に示す一角を務め、この銀河のみに留まらず全宇宙を支配する力となる栄誉を与えよう。

 汝らが自ら首を垂らし、我が膝下に屈するならばよし。無駄な戦いと時間を費やす必要がなくなる。

 だが、汝らが自分達の自由を選び、主権と独立を維持する道を選ぶのなら、力でもって我らを打ち破るが良い。それが余の汝らに許す最後にして唯一の自由である。

 我が艦隊が地球圏に到達するまでに回答をせよ。汝らの未来は汝らの責任と力の及ぶ限りにおいて、選ぶがいい』

 

 その後、さらに詳細な地球連邦政府の降伏条件を記したデータが、同じように地球圏のあらゆる人々に送られ、その内容は一切の主権と自治を認めず、あらゆる自由意思をはく奪された奴隷化を意味するものだった。

 この通告を知った者達はこんなものは受け入れられないと、誰もが憤慨するもので、地球圏全土は最後の戦いに向けてその士気を高める結果となる。

 地球人類への通告を終えたラオデキヤはヘルモーズの玉座から、階下に立つユーゼスへと視線を向ける。ユーゼスの傍らには仮面を外したキャリコの他、彼の率いるバルシェム、また真徒の代表とペルゲも立っていた。

 

「地球人類は徹底抗戦の道を選ぶでしょう。これでよろしかったのですか?」

 

 既にラオデキヤを皇帝として扱う必要性はなく、ユーゼスはラオデキヤとの偽りの主従関係を解除して、バサ帝国の真の支配者として振舞っていた。

 

「構わん。こちらの支配を受け入れられる方が困る。これまでの戦いを乗り越えてきた地球人類なら、決して首を縦にはふらん。ムゲ宇宙から帰還したDCも用意を整えて我々との戦いに備える。そうなった奴らとの戦いこそが私の求めるものなのだから。

 お前達にはDCと連邦軍の相手をしてもらおう。次の戦いがこの地球での最後の戦いとなる。生き残った者だけが私と共にあらゆる次元、あらゆる世界の宇宙を支配できる資格を得る。それを踏まえて戦うのだな」

 

 ユーゼスはラオデキヤ、そして背後のキャリコやペルゲ達を仮面越しに見回して、彼らを刺激する言い回しを意図的に口にした。もっともラオデキヤの内心は、ユーゼスの寝首を掻く最適のタイミングを見計らっていたが。

 戦端が開かれればDCはお得意の首狩り戦術を用い、バサ帝国の艦隊を突破してヘルモーズの撃沈ならびにラオデキヤとユーゼスを討ちに来るに違いない、とラオデキヤは予想しており、それはまさに確定の未来と言っていい。

 

(これまでの戦闘データの収集により、ズフィルードは人型機動兵器として完成した。何時でも起動は出来るが……タイミングの見極めがこれからはより重要となる)

 

 ラオデキヤの真なる主ケイサル・エフェスからは、まだユーゼスを討てとの命令は来ていない。ラオデキヤは虎視眈々と、しかし、気付かれぬようにユーゼスの背中に刃を突き立てる時を待ち続けている。

 

 

 ラグランジュ3にはルナツー、サイド7所属のスペースコロニーとしてグリプス1があり、コロニーレーザーに改造されたグリプス2も残っている。

 復興の進んでいたグリプス1の住民の避難が最優先で行われ、グリプス2の修復も済んでいた為、コロニーレーザーとして運用可能な状態だ。

 

 バサ帝国艦隊の到来予測時刻に合わせて、ルナツーをはじめ宇宙各地の要塞や軍事基地からワープブースターやトランザムブースターを用い、戦力の集中が行われている。

 地上からも打ち上げ可能な戦力がかき集められ、総力戦の様相が呈されている。月やジオン共和国からも増援の派遣は決まっており、部隊の編制に急いでいる頃合いだろう。

 

 バサ帝国を迎え撃つ艦隊の総司令官はティアンム大将が務め、トレーズやワッケイン、ワイアットをはじめ、地球連邦軍の宿将、名将、猛将が集うこととなった。

 ユーゼスが直接、地球近海に艦隊を転移させて首都のダカールの制圧などを行わないのは、彼の目的があくまでDC並びにクォヴレーの打倒、フェブルウスらの捕獲であるから、地球の制圧や支配に興味はないのが理由の一つだ。

 

 悠長に通常空間を航行して距離を詰めているのも、DCに万全の状態を整えさせた上で彼らを打倒し、自分の技術力の程度を図る試金石にするつもりに違いない。

 そしてDCのメンバー達に全力を絞り尽くさせるには、彼らが守ろうとするものに危機が及ぶ状況が必須であるのを、ユーゼスはこれまでの経験からよく知っている。

 だからこそわざわざ興味のないDC以外の連邦軍とも砲火を交える形で、のろのろと進軍しているのだ。

 

 バサ帝国の陣容はヘルモーズの他、フーレ、アドラティオ、武装を強化したグラーティア級輸送艦で構成される二千隻超の大艦隊だ。

 機動兵器としては真徒の乗るゼル・ビレニウム、エル・ミレニウム、アンゲロイ・アルカ、その他サイデリアル、バルマー系機動兵器に偽ミケーネ神、スペースロボ、エスパーロボと、これまで幾度となく戦ってきた機種で固められている。

 

 とはいえゼル・ビレニウムとエル・ミレニウムの戦闘能力は極めて強大であり、現状、この二機とまともに戦えるのはDC以外にはほとんどいない。

 グリプス2、ソーラーシステム、さらにリーブラとバルジ改、オリュンポスといった戦略兵器を揃えた地球側の迎撃艦隊は、八百隻超、機動兵器総数は約二万機。増援が到着すればさらに数を増すが、戦闘に間に合うのはこれだけだ。

 

 一年戦争のソロモン戦やア・バオア・クー戦の数倍に達する、地球側としては空前絶後の規模だが、これが現在の地球の工業力の限界だった。

 宇宙戦艦ヤマトの時間断層やゼントラーディの自動工廠なりがあれば話は別だが、地球圏の資源と人材をギリギリまで振り絞ってコレなのだから、嘆いても仕方がない。ヘイデスとしては、銀河中心殴り込み艦隊を揃えたα世界を羨むばかりである。

 

 バームや銀栄連からの援軍の申し出もあるが、地球以上に疲弊している友邦勢力からの援軍は期待するだけ無駄──は言い過ぎにしても頼りにはならないだろう。

 それを重々承知した上で地球連邦軍とDCは決戦の時を迎える。

 地球連邦艦隊は、L3方面から侵入してきたバサ帝国艦隊を偵察衛星と偵察機からの光学映像で確認し、最終決戦の幕開けの時を誰もが確信した。

 

 既に地球連邦政府はラオデキヤの返答に対して、確固たる拒否を伝えている。残るは武力をもって勝敗を決する道のみ。

 迎撃艦隊総司令部として選ばれたリーブラの司令室から、ティアンムは艦隊各員へ戦闘開始の指示を飛ばそうとしていた。

 

「新代歴187年に入って地球圏は人類史上、例にない災厄に見舞われることとなった。度重なる異星人、異種族からの侵略がどれほど過酷なものであったか、改めて語るまでもないだろう。

 だが我々は負けなかった。それはこの場に集った諸君ら軍人ばかりではない。我らが守るべき市民もまた度重なる戦禍に見舞われながら、何度も恐怖と絶望に押し潰されながら立ち上がり、今日に至るまでの勝利を支えてくれた。

 市民の剣である事は我らの名誉である。市民の盾である事は我らの誇りである。我ら軍人の使命を果たす時が来た。

 名誉と誇りを守れ! 人々の命と平和を、自由と未来を守るのだ! 今日の勝利は諸君らの子と孫、そこからさらに続く未来の子孫達を守ることにも繋がるのだ!

 各員の奮闘を、いや、勝利のみが許される! 期待などはしない! 必ずや勝て! 我らは勝つぞ!!」

 

 モニター一杯に映る夥しいバサ帝国の機動兵器群とレーダーの捉えた敵の数に、誰かがゴクリと生唾を飲み込む。その動作には恐怖も含まれているが、それ以上に勝たなければならないという覚悟と決意が多く含まれていた。

 艦艇の射程距離では流石に技術力の差でバサ帝国側が大いに勝る。一撃でスペースコロニーを破壊するヘルモーズの主砲を筆頭に、フーレ、アドラティオの主砲が火を噴き、膨大な数の光の雨が地球連邦艦隊へと迫る。

 

 これに対し、射程距離の不利を最初から知っていた連邦艦隊の動きはシンプルだった。敵艦隊のエネルギー反応が高まった時点で、特殊弾頭を搭載したミサイルを発射し、それを盾代わりにした。

 光子魚雷──マイクロブラックホールを発生させる、非常に高価かつ強力な代物だ。小型の宇宙怪獣になら必殺の威力を発揮する光子魚雷を、盾代わりにするという贅沢な使い方だ。

 発生したマイクロブラックホールはごく短時間で消失する為、敵艦隊の主砲発射のタイミングに合わせて、第二、第三射と重ねなければならないが、手も足も出ずに数を減らすよりはマシであるだろう。

 

 バサ帝国はヘルモーズとその周囲を固めるフーレを中核に、アドラティオとグラーティアが左右上下に長く広がり、前面に出た陣形だ。これに対して地球連邦艦隊はというと、多段の横陣を敷いている。

 艦艇間の距離は広く取られ、敵艦隊の大火力で一網打尽にされるのを最も警戒している。

 光子魚雷の盾と艦艇のバリヤー、更にMDビルゴとメリクリウスのプラネイト・ディフェンサーを頼みに前進を続ける連邦艦隊を、戦闘宙域外に留まっていたバルジ改の主砲が援護する。

 

 はるか遠方から発射されたバルジ砲がバサ帝国艦隊の中心を狙って伸びて行き、アドラティオとグラーディア数十隻を吹き飛ばしていった。

 ヘルモーズには命中しなかったが、バルジ砲が有効であったのは地球連邦艦隊の各員を安堵させた。

 お互いに前哨戦代わりの撃ち合いがさらに続き、ヘルモーズの主砲とリーブラの主砲、コロニーレーザー、ソーラーシステム、光子魚雷が惜しみなく消費される中、遂に双方の勢力の機動兵器が出撃し、壮絶な白兵戦へと移行した。

 

「グォオオオオオオオオ!!!」

 

 宇宙を揺るがす咆哮を上げたのは、スラスターモジュールを搭載して宇宙適性を上げたデスザウラーで、続けとばかりに同じく宇宙戦に適応したデススティンガー、ギルドラゴンが怯まずに突撃して行く。

 彼ら? 彼女ら? に率いられたゾイド部隊が先陣を切り、デイモーン、ティアマート、メギロート、エスパーロボとスペースロボといった異形の機体群を叩き潰しに掛かる。

 有人機部隊もこれに負けじと続き、各母艦から次々と出撃して行く。

 

 顔ぶれはMDトーラスやビルゴ、ビルゴⅡを率いる有人機のヴァイエイト・シュイヴァンやメリクリウス・シュイヴァン。

 ゲシュペンストMk-Ⅲ、バルゴラCS、量産型F91、ジャベリンを主体にジェガンやジェスタ、ゲシュペンストMk-II、テウルギストも含まれている。

 

 Ζプラスやリ・ガズィ、リゼルといった可変機部隊と少数生産されたVF-1バルキリー・スーパーパック仕様、ウルバシーやデンドロビウムⅡ、RFビグロ、RFヴァル・ヴァロといったMAと共に一撃離脱の戦法をメインに、敵艦隊への斬り込みを行い始める。

 更に量産型のグレートマジンガー、ゲッターロボG、グルンガスト弐式、少数生産されたマグネスファイブ、ザマンダー、マルスといったスーパーロボットも肩を並べ、絶対に負けられない戦いに勇ましく挑みかかる。

 

 双方の機動兵器が激しく砲火を交わし、加速度的に戦場での破壊が増えてゆく中、ユーゼスにとっての本命はヘルモーズの直上に転移して姿を見せた。

 ボアザン式ワープで纏めて姿を見せたのは、超ド級次元要塞オリュンポスを中心とするディバイン・クルセイダーズと万単位のアインストの大軍勢である。

 本拠地のアインスト空間から脱出したアインストの大軍勢の出現によって、機動兵器の数の差は大きく縮まった。

 

 地球連邦側が八万ほどに対して、バサ帝国側はおよそ十万前後。だがユーゼスもDC側も理解していた。

 真化融合が必要なレベルの戦いである以上、その領域に達していない機体では、それこそガンバスターや超銀河グレンラガン、全機能を解放した∀ガンダムのような、一系統の頂点に立つ機体でもなければ、どれだけ数が居てもほとんど意味がないのを。

 

「それはそれとして、なるべく早くヘルモーズを片付けたいね!!」

 

 いつもの通りヴァルシオーのサブシートに座ったヘイデスは、オリュンポスのリングから一斉に発射された全十二基のメメントモリの砲撃が、アドラティオとフーレに突き刺さるのを眺めなら、第一目標を口にした。

 メメントモリも強力だが、本命はオリュンポスの艦首にある次元力転移砲だ。最大出力で地球型惑星を吹き飛ばす威力に至った次元力転移砲は、今日、この瞬間、初めて発射される。

 コロニー丸々一基を使った砲身内部に膨大な次元力が注ぎ込まれ、SF作品ではそこそこ見かける、攻撃をワープさせて敵にほぼ必中させる攻撃が、味方側から行われたのだ。

 

 転移した圧縮次元力は狙い過たずヘルモーズの花びら型のクリスタルへと命中し、次元力が一気に弾ける。解放された次元力は全方位へと広がって、ヘルモーズを飲み込み、近距離に居たフーレや機動兵器を巻き込んで大量の破壊を生み出した。

 バサ艦隊中央で生じた大破壊によって、艦隊の布陣は大いに乱れる結果となる。二万体居るアインスト・ゲミュート達の砲撃の嵐に紛れて、バサ帝国に突っ込むヴァルシオーの中で、ヘイデスは苦笑を零す。

 

「流石にそこまで甘くないか」

 

 ヴァルシオーのモニターには強固なディフレクトフィールドと超念動フィールドによって、健在のヘルモーズの威容が映し出されていた。幸いフーレやアドラティオ、機動兵器の方は耐え切れずに撃墜されている。

 ヘイデスの苦笑を耳にして、メインシートに座っている所長が視線は前方に固定したまま言葉を返す。

 

「これで片付く相手なら、ケイサルさんやウーゼスさんが私達を鍛えようとはしませんでしょ?」

 

「そうだね。ま、少なくともヘルモーズはバジュラ戦艦級のバリヤー性能はあるか。バリヤーに干渉して弱らせたところに、もう一発撃ち込めれば沈められそうだね」

 

「ですがその前にユーゼスの盲信者達の相手が先ですわよ」

 

 所長の言う通り、DCの突撃に反応した敵機動兵器部隊の一部が動きを見せており、その面子はゼル・ビレニウムを擁する真徒達の総員であった。

 

「サルース! 我らが神の救済を拒絶する愚者に鉄槌を! お前達は滅ぶべき悪魔である! この世界のバアル!」

 

「我ら真なる神のしもべの手によって、お前達を根絶する。サルース!」

 

「邪悪よ、滅びるのだ。我らが神ユーゼス様のご加護ぞあらん! サルース!!!」

 

 これまでの例に漏れず自分達の絶対性を微塵も疑わぬ傲岸さで、しかし、敗北の連続による焦りを滲ませながら、真徒達は唯一の敵足りえるDCを討つべく、死力を振り絞る覚悟であった。

 その彼らに先制の一撃を叩き込んだのは、DCの誰かではなく、オリュンポスから出撃したゼル・ビレニウム、エル・ミレニウム、ドラ・ミレニウム、更にメガ・ギルギルギルガン、メカ・ギルギルガンからなる無人直掩部隊の一撃だった。

 

 真徒達にとってゼル・ビレニウムはかつての信仰対象『御使い』から授けられた、最強の戦力であり最上の栄誉だった。今はユーゼスをこそ崇拝しているが、ゼル・ビレニウムの戦闘能力に対する盲信は今も残っている。

 そのゼル・ビレニウムが赤青のカラーリングを、金色と銀色に変更された上でDCが投入してきたとあっては、心穏やかに居られるわけもない。自分達にとって不利な予想外の出来事に対し、彼らは非常にもろかった。

 

 ゼファー・ファントム・システムをベースとした人工知能で制御されるゼル・ビレニウム達は、それぞれが御使いに直接制御されている場合と同等以上のスペックを発揮して、真徒などと言う味も素っ気もない前菜を、DCメンバーに味わわせるわけにはいかないと、奮起している。

 誰かに縋り、庇護を受けなければ、自尊心を満たせない心弱き者達など、もはやDCメンバーの眼中にはない。狙うはユーゼス。ウーゼス曰くかつての超神ゼストのようにウルトラマンの力を奪い、CPSと合わせて光の巨人をも超越せんと目論む大敵なのだから。

 

<続>

 

■イデオナイトが開発されました。

■イデオンの設計が終わりました。

■イデはまだ存在していません。

■ゼル・ビレニウム(金銀)を入手しました。




仮想ユーゼス:ウルトラマン最強クラスを前から決めていたのですが、とりあえず、ウルトラマンキング、ウルトラマンサーガ、ウルトマランノア、ウルトラマンレジェンドがウルトラマン最強格でよろしいですかね?
とりあえずユーゼスは最強のウルトラマンクラスを想定しています。私のウルトラマンに対する理解が足りていない恐れはございますが……。

追記
ウルトラマンレジェンドを追加しました。


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第百三十六話 精神ポイントを温存しましょう

■共通ルート 第六十一話 偽りの帝国の終焉

 

「ゼル・ビレニウムの紛い物を使うとは、我らに対してなんたる侮辱!」

 

 真徒のゼル・ビレニウムが無数の水晶片へと分離し、急速接近してくるDC各機へと弾丸のように襲い掛かり始める。

 全身がDECで構成されるゼル・ビレニウムだから可能な攻撃だ。無数の水晶弾で牽制しつつ、合体と分離を繰り返してラッシュへとつなげるのが、ゼル・ビレニウムの攻撃パターンである。

 

 真徒のリーダー格の怒りを乗せた攻撃を阻んだのは、やはりと言うべきかDC側のゼル・ビレニウムだ。

 これまで返り討ちにしてきたゼル・ビレニウムの残骸を回収し、フェブルウスからの次元力供給により、修復・改修したのがこの金銀のゼル・ビレニウムである。名称もゴル・ビレニウムと改められ、ゼル・ビレニウムとの差別化が図られている。

 

 ゼル・ビレニウムの赤と青の水晶雨に対して、金と銀の水晶雨が正面からぶつかり合って、最初は互角の勢いだったのが徐々にゴル・ビレニウムの方が勝り始める。次々とゼル・ビレニウムの破片が弾かれ、勢いを失ってゆく。

 紛い物に対して圧倒すると思っていた他の真徒達は動揺を見せるが、すぐにこの屈辱を糊塗するべく、他のゼル・ビレニウムも同じく水晶の雨と化し、エル・ミレニウム達も一斉に水晶の牙を生やすブレスを吐き出す。

 アンゲロイ・アルカの大部隊も、パルシア・スマッシャーとカリス・シュートによる弾幕を形成して、生意気なDCの機動兵器部隊を叩き落とすべく行動を始める。

 

 味方側のゴル・ビレニウムやギルギルガン達はそれに呼応して、被弾よりも攻撃を重視した動きを見せるのを横目に、ヘイデスは味方無人機部隊の陣容の精強さと気合の入りぶりに目を見張る。

 彼らが味方であるのがこの上なく頼もしいが、真化融合を体験した影響によって、あの無人機達にほのかに宿る意思を感じ取れるようになっていたのも、ヘイデスをより驚かせる要因となっていた。

 

「ゼル・ビレニウムの数では劣っているけれど、あれだけの気迫が漲っていると彼らだけに任せても大丈夫そうに思えてくるな」

 

「彼らに任せられるのなら、任せた方がいいでしょう。通常空間ではフェブルウス達の助けで真化融合出来ない以上、私達からしても手強い敵ですよ、アレは」

 

 そう、所長の言う通りフェブルウスの助けを得ての真化融合は、あの閉鎖空間のような特殊な空間でないと使用できないという欠点を抱えていたのである。

 大元のZシリーズにおいても『カオス・コスモス』という特殊な空間だからこそプレイヤー部隊『Z−BLUE』は真化融合が可能だったように、DCにも同じ制限が課せられていた。

 それでも真化融合を直に体験した事により、パイロットと機体双方に変化が生じて、これまで以上にパイロットが機体の性能を限界を超えて引き出し、機体もまたパイロットの操縦と想いに大きく応えている。

 

 常態的に半真化融合状態にある、と言ってもよいだろう。この状態ならばゼル・ビレニウムを相手にしても、互角以上に戦えるだけの力を得てはいるが、前座でしかないゼル・ビレニウムを相手に消耗するのは面白くない。

 そうなるとゴル・ビレニウムやメガ・ギルギルギルガン達無人機部隊には、奮闘を大いに期待したくなるというものだ。

 

「とはいえ、彼らにばかり任せてもいられません。私達もさっさとヘルモーズを叩いて、ユーゼスを炙り出す必要がありますわ。少々、荒っぽく行きますから、舌を噛まないように気を付けてくださいね?」

 

「ん、自分で舌を噛み切って死ぬなんてごめんだからね。気を付けるとも」

 

「では、最後のとっておきを使いますよ」

 

 所長の指が滑らかに動き、脳波コントロールと併用する事でセキュリティを高めた特殊コードが、ヴァルシオーからオリュンポスの格納庫の一つに送られる。

 直後、オリュンポスから緑色の推進光を発しながら、全長300m近い巨大物体が信じがたい速度で出撃して、ヴァルシオーを目指して行く。

 

 その物体はヴァルシオー用に開発された強化兵装ユニット『オーザ』だ。外見は巡航形態のガデラーザを想起させる、真紅の機体である。

 合計七機のDエクストラクターを搭載し、パールファングやエメラルダンの七倍以上という怪物級の出力を誇る。

 見た目だけではなく武装のラインナップもガデラーザによく似ている。GNブラスターの代わりにDE(ディメンション・エナジー)ブラスターを保有し、更にビームサーベル兼用ビームガンを装備した隠し腕を左右に二本ずつ、合計四本。

 

 左右のバインダー内部には小型ミサイル八発を内蔵した大型ミサイル三十二発を内蔵し、アムロやクワトロ達のデータを参照した自動制御のDEファングが機体下部のコンテナに搭載されている。

 DEファングは左右のコンテナにそれぞれ大型が七基、更に小型が十基ずつ大型ファングに搭載され、合計は百五十四基とこれもガデラーザに倣った数だ。

 

 Dエクストラクターを主動力としている為、強固なDフォルトが展開可能であり、機体の装甲にはガンダニュウム合金ベースのマシンセルが用いられ、自己再生能力もばっちりである。

 DEファングと機体制御のフォローの為に、オーザ自体に特注のAIが搭載されており、ヴァルシオーとドッキングせず単独でも極めて強力な機動戦艦ないしは大型MAとして猛威を振るう機体である。

 

 初めての戦場に飛び出したオーザは、周囲に飛び交う砲火をまるで気に留めず、ヴァルシオーとの距離を詰めて、所定の位置につくと次の指示を待って距離を保ち続ける。

 既に他の仲間達も戦いを初めて、半真化融合状態の圧倒的なポテンシャルにより、立ちはだかる敵機を瞬殺している。

 

「ヴァルシオー、ドッキングシークエンスを開始します。ガイドレーザー、リンク」

 

 オーザの巨体の半分以上を構成する長大な砲身の基部が開き、そこへと向けてヴァルシオーの脚部がガイドレーザーの誘導に従って埋め込まれて固く固定される。

 ヴァルシオーの下半身がオーザユニット内部に固定されて、両方の動力源やセンサーユニット、サイ・コミュの同調、システムリンクが一瞬で行われる。

 最後の仕上げとばかりに双方の機体表面に次元力の光の線が走り、二つの機体がこの瞬間に一つとなった証明だ。

 

「ドッキング完了! これより本機を『ヴァルシオーザ』と呼称します」

 

「ヴァルシオーとオーザでヴァルシオーザ。『王座』ってことね。まあ、シンプルな方かな」

 

「変に複雑な名前にしても仕方がないですからね。一文字増える位で十分でしょ? さあ、私達も大暴れと行きましょう」

 

 所長の脳波を受けてオーザユニットはバインダーを左右に広く展開すると、ファングコンテナから合計百五十四基のDEファングを射出。砲身も展開していつでもDEブラスターを発射できる戦闘態勢に移行する。

 ヴァルシオーもまたディバイン・キャリバーを断空剣モードで展開し、強力な内蔵火器をいつでもぶっ放せる状態だ。単独で戦略に影響を及ぼす機動兵器が、声なきウォークライを上げた瞬間である。

 

 七基のDエクストラクターが生み出した膨大な次元力がDEブラスターとして発射され、射線上に居た機動兵器も艦艇もまとめて貫通し、跡形もなく消し飛ばす。唯一、その運命から免れたのは、次元力転移砲にも耐えたヘルモーズのみである。

 ヘルモーズの耐久性や防御性能に関してはゲームからしか推し量れないが、OGでは同じバルマー産のネビー・イームが地球連邦艦隊の発射した核ミサイルの雨を凌ぎ切った例が参考になるだろうか?

 だがオリュンポスの次元力転移砲は地球を吹き飛ばす威力だ。それを耐え切り、今もバリヤーを展開し続けているのを考えると、ユーゼスの手によってオリジナルよりもはるかに強化されているに違いない。

 

「そうそう本丸は落とせないみたいだね。まずは周囲の敵機を片付ける作業に集中しよう」

 

 相変わらず所長の気力上げ要員でしかないヘイデスだが、戦闘中に口にする意見は割と的を射るものが多い。

 ゲームと現実の戦闘を同一視するべきではないが、ことスパロボ要素を含む現実となると彼のスパロボプレイヤーとしての知識と経験による未来予測は、その精度を大きく高める。

 

「それもそうですわ……ね!」

 

 所長が『ね!』の一言を告げると同時に、ディバイン・キャリバーの一閃でアンゲロイ・アルカをすれ違いざまに切りつけ、バランスを崩したそこに隠し腕のビームガンを山ほど叩き込んで撃墜する。

 さらにティアマートの編隊に向けて、百基のDEファングを差し向け、全方位から囲い込んだDEファングから発射されたビームが、大型MA級の巨体を見る間に穴だらけに変えた。

 

 進路上の敵を怒涛の勢いで駆逐するヴァルシオーザの前に、有人エル・ミレニウムの一機が立ちはだかり、ヴァルシオーザを狙って口から強烈な次元力の業火を放ってきた。

 MAP兵器『破界の業火』だ。炎の形状を持った次元力によって、敵を焼滅させる攻撃に対し、ヴァルシオーザからは三本のクロスマッシャーが発射され、拮抗する事もなく貫いて見せる。

 

「馬鹿な!? 聖なる審判の業火が罪深き者の攻撃に破れるはずない!」

 

「ふーむ、やはり真化融合をしていなくても、機体性能がかなり上がる現象が発生していますねえ。サイ・コンバーターの異常な効率上昇というだけでもありませんし、実に興味深い」

 

 エル・ミレニウムのパイロットは、次元力の業火を突き破るクロスマッシャーに心底からの驚愕を吐露し、挙句、直撃を受けて機体の下半身を丸ごと抉られる失態を犯した。

 それでもDECで構成されるエル・ミレニウムは戦闘能力を維持し、身もだえしながらもヴァルシオーザへ飛び掛かろうと両腕を広げ、太く鋭い爪の餌食にしようと足掻く姿を見せる。

 真徒の最後の足掻きを打ち破ったのは、ヴァルシオーザの切り開いた道に続いていたトキオのネオガンダムだ。G-バードから、コロニーを消滅させるレベルにまで威力の向上したメガ粒子の塊が発射される。

 

「その水晶の怪物もいい加減見飽きたな。今更、恐れるものか!」

 

 ネオガンダムのG-バードだけでなく、レイラのシルエットガンダム改からも降り注いだヴェスバーが、エル・ミレニウムの頭部や肩、胸を次々と捉えて審判の巨獣と恐れられたエル・ミレニウムを完全に破壊する。

 

「あ、ああああ!? ユーゼ、ユーゼス様、お助け……!」

 

 ヴェスバーやG-バードとはいえ、本来の性能を考えるとエル・ミレニウムを撃墜するのは尋常なことではない。

 だが、今のトキオ達はそれが当然の結果だと理解していた。

 半真化融合状態によって高められた力は、これまでの地球の機動兵器のレベルを大幅に超えている。半壊したエル・ミレニウムを撃破する程度、なにほどの事があろうか。

 

 アンゲロイ・アルカを始め、真徒達の運用する機動兵器は紛れもなく強力で、地球連邦軍が運用している機動兵器よりも数段上の戦闘能力を有している。

 パイロットである真徒達も自らで考える力は低い者の、単純な数値だけで見れば優れたパイロットではある。まがりなりにも御使いの尖兵として、高次元存在達との戦い──真戦に挑むわけだから、それも当然の話ではあろう。

 

 しかし、今、彼らの守りを食い破り、ヘルモーズとの距離を詰めるDCとその協力者達の勢いと戦闘能力は、真化融合したZ-BLUEには及ばぬまでも、真徒達がこれまで撃退した高次元存在達と同等以上だ。

 特に彼らにとって認めがたいのは、超ド級次元要塞オリュンポスに温存されていたメカ・ギルギルガン部隊とプルート財閥が修復・複製した御使い系の部隊が、自分達に牙を剥いている事実だ。

 

「我らの手によってのみ行使されるべき神聖なる力を操るとは、なんと悍ましい所業か!」

 

 若い女性真徒が怒りをあらわに叫べば、壮年の男性真徒もまた同じように唾を撒き散らしながら憤怒の炎を言葉に乗せて吐き出した。

 

「しかり、しかり、しかり! 宇宙の真理、次元力の結晶たるそれらの機体を下等生物が傀儡と変えるなど、我らを恐れぬ所業!」

 

「断じて許すまじ。まずは穢された我らの至宝を破壊し、お前達の大罪を裁く!!」

 

 彼らの乗るアンゲロイ・アルカ部隊が一斉に腕を変形させて砲身を作り、強力な次元力のエネルギーが砲撃となって発射される。同じタイミングで発射されたその砲撃は、連邦軍の標準的な艦隊をただの一撃で壊滅させるだけの威力と射程を有している。

 これに即座に応じたのはDCではなく、三十六機からなるメカ・ギルギルガン部隊だ。一斉に古風な怪獣らしい叫び声を上げた直後、全ての機体が超破壊光線を発射して、アンゲロイ・アルカ部隊の砲撃と激突する。

 しばらくの間、拮抗していたビーム同士の激突は、メカ・ギルギルガン達が更に気合を入れようと咆哮を上げ、出力を増した事で超破壊光線側に軍配が上がる。

 

「そ、そんな!」

 

「馬鹿なアアア」

 

 超破壊光線に飲み込まれたアンゲロイ・アルカのコックピットから、現実を受け止められない真徒達の断末魔が響き渡る。それを横目に見たエル・ミレニウムやゼル・ビレニウムを駆る真徒達は仲間達の無様さに嘲笑を禁じ得ない。

 所詮、アンゲロイ・アルカを下賜された程度の者達。エル・ミレニウムやゼル・ビレニウムを与えられた我々に比べれば、同じ真徒とはいえ下等な者達なのだとなんの疑念もなく心底思っている。

 

「所詮、あ奴らは私とは違っうったば!?」

 

 この戦場に片手の指程しかないバサ帝国側のゼル・ビレニウムのパイロットは、機体を襲った衝撃によって台詞を遮られ、舌を噛む悲劇に見舞われた。

 衝撃の正体はプルート財閥によって投入されたゴル・ビレニウムだ。金と銀の水晶片に分裂したゴル・ビレニウムが弾丸の雨となって襲い掛かり、ゼル・ビレニウムの強固な機体にいくつもの穴を穿ち、罅を入れていったのだ。

 

「わ、私の名誉そのものたるこのゼル・ビレニウムに傷を付けるとは! 地球人の手で汚された機体の分際で!」

 

 ゼル・ビレニウムの左手から先が巨大な槍と変化して、彼の背後で合体して元の姿になったゴル・ビレニウムへと突撃して行く。人工知能制御のゴル・ビレニウムは背後から迫りくるゼル・ビレニウムに対して、背中を向けたまま振り返る暇もないように見えた。

 このまま串刺しにしてやろうという真徒の企みは、命中する直前になってゴル・ビレニウムの巨体が左右に分かれ、その間にゼル・ビレニウムが突っ込む形になった事で失敗に終わる。

 

「小賢しい!?」

 

 真徒がこのように無駄口を叩く間に、綺麗に左右に分かれたゴル・ビレニウムの機体がゼル・ビレニウムを挟み込み、絶対に逃がさないと強烈な圧力を加え始める。

 真徒は咄嗟に拘束から脱出しようとしたが、ゴル・ビレニウム側からの次元力の干渉を受けて、機体をバラバラに分解させる事も出来ない状態に陥っていた。

 

「くうううう、は、放せ!! 私、私は、選ばれた存在なのだぞ!」

 

 頬に血を上らせて赤くする真徒の言葉に、ゴル・ビレニウムを制御する人工知能は反応を示さない。

 あるいはかつて至高神ソルがそうしたように、自力で真化融合を果たした状態であったなら、何かしら答えたかもしれないが、今の彼には答える機能も自我もなかった。

 代わりに黄金の右腕は巨大な槍となり、銀の左腕は大剣へと変形し、挟み込んで動きを止めたゼル・ビレニウムへ次々と容赦なく叩き込まれていった。

 

「お、お、おおおおおお!?」

 

 一撃を受けるごとに機体を構成するDECが砕かれてゆくのに合わせて、真徒は悲鳴の歌を歌ったが、やはりそれにもゴル・ビレニウムが答える事はない。

 このように同型機の戦いはおおむねDC側優勢で進んでおり、真徒達はほとんどDCの足を止める事は出来ずにいた。

 

 艦艇も機動兵器も一切足を止めず、避けるよりも攻撃、守るよりも攻撃といった具合に、ひたすら敵陣突破の一手を繰り出すDCは、彼らの規格外の超戦力がなかったら、自殺希望の愚者呼ばわりをされても仕方なかったろう。

 そう呼ばれないのは、ただひたすらに彼らが強いからだ。

 迎撃するべく何十もの壁を敷くバサ帝国側の機体が、まるで火炎放射器を浴びるロックアイスのよう瞬時に溶けて行くのだから、これは理不尽過ぎて味方の立場でもおかしな笑いが込み上げてきそうだ。

 

 ヴァルシオーザを含め、可変機や高速機体が務める第一陣に続く第二陣に、ディス・アストラナガンの姿はあった。

 もしクォヴレーに憑りついたのがイングラムでなくユーゼスであったなら、逆の立場となっていたのだから、この世界に現れたユーゼスはクォヴレーにとって、合わせ鏡のような存在にも感じられる。

 元々イングラムとユーゼスが互いの合わせ鏡のような関係性とはいえ、この世界のユーゼスとはひと際クォヴレーとの縁が深い個体と言える。

 

「迎撃に出る機体の中にゴラー・ゴレム隊がない。ディス・レヴの反応もないという事は、キャリコはまだ出てこないか。ユーゼスと共に出てくるのならば、ラオデキヤを倒した後が妥当だが」

 

 おそらくズフィルードが出現するのは間違いないが、ユーゼスとの戦いを考慮すれば余力を残して戦う必要がある。

 クォヴレーも一応はMSを予備機として用意して貰えているが、真化融合を考慮すると、ディス・アストラナガンで戦い抜かねばならない、とクォヴレーは判断している。

 

 これはDCメンバーに共通する認識で、ディス・ジュデッカの脅威を知り、ケイサル・エフェスとウーゼスからの警告を聞いた彼らからすれば、ユーゼスが出て来てからが本番であり、それ以外のバサ帝国の戦力は全て前座でしかないのだから。

 一層激しさを増すDCの攻勢にアドラティオやグラーディアが沈み、異なる世界では猛威を振るったバサ帝国の機動兵器や偽ミケーネ神、エスパーロボ、スペースロボ達が無敵のスーパーロボット軍団を前に蹴散らされる速度は、加速度的に増す一方だった。

 

 堅固なバリヤーを有し、巨体に加えて再生能力によって、極めて高い耐久性を有するとはいえ、ヘルモーズにも次々と着弾が増えており、その度にバリヤーとそれを維持する為のエネルギーは確実に消耗していっている。

 ヘルモーズの玉座に腰かけて真徒以外に指示を出しているラオデキヤは、想定を超えた速度でこちらの防衛線を食い破るDCの勢いに嘆息を零す。

 

「異なる世界の知識、技術の流入があるとはいえ、地球人類は機動兵器を用いた闘争に於いて、銀河有数の強力な種族であるのはもはや疑いようもない。文化を抑制し、戦闘に適したバルマー星人をも超えるか」

 

 だからこそラオデキヤの偽りの主君ユーゼスを倒す可能性があり、だからこそ銀河中から襲い来る侵略者達を相手に勝利し得るわけだが、ユーゼスはというと、現在、別空間に潜み、状況を見守っている。

 少しでもDCを消耗させようという意図はなく、彼らの現在の戦闘能力を観測しているだけだろう。

 

「ふむ、とはいえヘルモーズを沈めてしまうのはこの後の展望を考えれば、面白くない。ズフィルードの用意は整っていることであるし、余自らDCの力を味わうも一興か」

 

 ラオデキヤは自分以外誰も居ない玉座の間を後にして、ヘルモーズの格納庫の一角に厳重に封印している起動済みのズフィルードの下へと足を向けた。

 ヴァルシオーザとRνガンダムの連携により、二百近い火線が一斉に戦場に引かれて、それに触れたバサ帝国の機動兵器は線香花火よりも呆気なく消え去る。

 

 この時、DC側の機体は次元将ヴァイシュラバやノイ・レジセイアを含めて、カタログスペックの更にその先の力を発揮していた。それを考慮すればこうまでバサ帝国を一方的に押し込んでいるのも、無理な話ではなかろう。

 フーレの一隻をクロガネのドリルが貫き、艦体に開いた大穴という大ダメージで動きを鈍らせるそこに、ハガネとタルタロスの砲撃が集中して見る間に撃沈へと追い込んでゆく。

 

 ラー・カイラム、アルビオン、ペガサスⅢ、ネェル・アーガマ、ブレイウッド改、スペース・アークといった連邦系の艦艇の統制射撃、サダラーン、レウルーラ、ファドラーン、ガラン・シェール、キマイラなどのジオン系艦艇も負けじと強烈な火線を展開している。

 マグネバードやソーラーファルコン、スペースダイモビックといったスーパーロボット系の艦艇を含め、名前を上げればきりがないくらいに増えたDC艦隊はバサ帝国艦隊を呆気なく簡単に撃沈している。

 本来、技術レベルで考えればバサ帝国側が上回るのだが、その事実を鼻で笑い飛ばすような光景がそこには広がっていた。ラオデキヤの地球人類は銀河有数の戦闘種族、という評価が決して間違いでないのは、スパロボプレイヤーならばまず納得のゆくものだろう。

 

 その最先鋒たるDC側はというと、機動兵器部隊がいよいよヘルモーズへと肉薄する距離にまで、距離を詰めていた。

 デルフィニウムやノイエ・ジール、ヴァルシオーザ、スペイザーテラ、ネオ・バード形態のウイングゼロ、ゼファーW0ライザーを筆頭とした部隊だ。

 それぞれが有効射程範囲内にヘルモーズを捕捉し、バリヤーを叩き割って、そのクリスタルの花弁を引きちぎってやる、と息巻いている。

 

「さて、ヘルモーズを落としてからズフィルード。ズフィルードを撃墜してから、ジュデッカとなるかどうか」

 

 ヘイデスは想定を超えるヘルモーズの耐久性には驚いたが、特に問題なく撃沈できそうな戦場の流れに、ほっと安堵していた。

 必ず同じ流れになるとは限らないが、初代αのラストステージのイベントに倣うのならば、ヘルモーズを墜とした後でラオデキヤの出現に繋がるはずである。

 周囲にはまだバサ帝国の機動兵器が五桁ほどいるが、それらは作戦の遂行を邪魔する有象無象であって、最優先で叩かなければならない相手ではない。

 相変わらず座っているだけに等しいヘイデスだったが、レーダーやセンサーの見方くらいは知っているので、ヘルモーズで生じた超ド級のエネルギー反応を見落としはしなかった。

 

「ん!? ヘルモーズ内部に超高エネルギーが発生! 現在も上昇中だ。ヘルモーズを温存したいのか? 先にズフィルードを出してくるつもりなのか?」

 

「ズフィルードですか。あの顔面要塞の御同類ですわね?」

 

「ああ。ケイサル・エフェス達が使役していたのは、ズフィルード・エヴェッド。圧倒的物量や超大型の機動兵器を用いる敵を想定したタイプだ。けれど僕達が相手ならば、機動兵器型が出てくる可能性が高いとみているよ」

 

「私達が相手なら小回りの利かない巨大兵器より、極めて強力な機動兵器の方が相性は良さそうですわね。マジンカイザーとか真ゲッターロボみたいなね。それでも単機ではおいそれと負ける面子ではありません」

 

 新スーパーロボット大戦と初代αで出現したあのズフィルードそのままで出てくるとは限らないが、単体の機動兵器としては非常に強力なものが出来上がっていると覚悟しておくのは間違いない。

 とはいえ所長の言う通り、これだけの面子が揃ったDCを相手に単独で勝利できるほど強力か? となると疑問符が頭の上に浮かぶというものだ。それこそ星の一つ二つ、簡単に破壊出来て、超光速戦闘対応クラスの機体でなければ、負けはすまい。

 

 二人が会話を終えた直後、ヘルモーズの周囲に無人機のシュムエル・ベンやアンゲロイ・アルカ、偽ミケーネ神、ヴァイクル・ベンが数百単位で出現し、彼らに守られるようにしてラオデキヤの乗るズフィルードが出撃してきた。

 これまでゲームに出撃してきた人型ズフィルードと比べ、頭部のデザインは共通であったが、背中からはマジンカイザーや真ゲッター1を彷彿とさせる翼が生えていた。

 

 水晶片を組み合わせたデザインから突起物が随分と減り、コン・バトラーVやボルテスV、ダイモスのように四角い四肢になっている。

 色合いも胸部は赤く、肩は白く、手足は青、機体各所に黄色や赤色のパーツがちりばめられて、なんともカラフルで、昭和のスーパーロボットめいたデザインだ、というのがヘイデスの素直な感想である。

 

「この戦場に居る全ての地球人類に対して告げる。余こそがバルマー・サイデリアル連合帝国皇帝ラオデキヤ・ジュデッカ・ゴッツォである。

 汝らは太陽系から飛び立つこともままならない技術レベルでありながら、我が帝国とここまで戦えている事実には、称賛の言葉を禁じ得ない。

 ゆえに汝らに最大の敬意を込めて、我が帝国における最大の切り札をもって戦おう。見よ、これぞズフィルード。

 自立・自覚型金属細胞ズフィルード・クリスタルに敵対文明の戦闘兵器のデータを学習・解析させ、対象文明との戦闘において最適な形状へと進化する、我が帝国の武威にして威光そのものである」

 

「あの機体、どことなくマジンカイザーに似ている」

 

「真ゲッターにもだ。俺達の機体のデータを学習しているというのは、嘘ではなさそうだな」

 

「それだけじゃねえ。コン・バトラーにも似てねえか?」

 

「コン・バトラーVだけじゃない。ボルテスにも。それに、一矢さん」

 

「ああ。ダイモスやフォボスに似たパーツもある」

 

 自分の機体に似ている箇所を見つけたメンバーが口々にそれを指摘する中、随分と四角っぽいズフィルードは威厳溢れる所作で周囲のDC各機を見回し、ラオデキヤの言葉が続けられる。

 

「汝らを相手に進化したこのズフィルード、そうズフィルード・エスアールでこの戦いに決着をつけよう」

 

 ズフィルード・エスアールを通じてラオデキヤの気迫が戦場に溢れ出し、歴戦という言葉が霞むほど戦い慣れたDCメンバーも、一層気合を込めてユーゼスの前座などという舐めた認識を捨て去る。

 周囲の護衛機部隊が数百の火線を発射し、DCを牽制し出すのを合図にズフィルード・エスアールが右手に紫色の両刃の大剣クロスブレードを、左手に長柄戦斧のクロストマホークを握った姿だ。マジンガーブレードとゲッタートマホークモチーフの武器だろう。

 

「カイザーブレード! マジンカイザーが相手だ! ラオデキヤ皇帝!」

 

「俺達の相手もしてもらうぞ、ゲッタートマホーク!」

 

 マジンカイザーが両肩から二本の長剣を取り出し、真ゲッター1もとてもトマホークには見えないゲッタートマホークを両手で握り締めて、ズフィルード・エスアールへと一気に斬りかかる。

 迎撃の豪雨の中を突っ込んでゆく二機を援護するべく、DC側も負けじと撃ち返して、ヘルモーズ周囲の宙域はすさまじい密度の攻撃で溢れかえる。

 

 上下左右前後、どの方角を見ても光弾とミサイル、実弾に溢れた異常な環境だが、甲児もゲッターチームもラオデキヤも怯む素振りは欠片もない。

 ラオデキヤもまた、死んでもなお野望に執着するユーゼスを忘れ、銀河広しと言えども滅多に出会えぬ強敵を相手に、死力を尽くすことにのみ専念する。

 

「今の余は皇帝ではない。ただの戦士だ!」

 

 気炎を上げるラオデキヤがコックピットで口にした言葉をヘイデスが耳にしていたなら、声繋がりでマクロスのマックス的な覚醒!? と慄いたかもしれない。

 おそらくスーパーロボットのデータを中核とし、進化したズフィルードをマックスの技量で操縦されでもしたら、と想像してしまうだろうから。

 マックスことマクシミリアン・ジーナスは、YF-29でようやく機体が彼の操縦技術に追いついた、というトンデモねえ化け物パイロットなのだから。

 

<続>

 

●ヴァルシオー専用強化ユニット『オーザ』が開発されました。

●ゼル・ビレニウム(金銀)はゴル・ビレニウムと名付けられていました。

●ズフィルード・エスアールが出現しました。

 




ラオデキヤを倒して、ユーゼスを二回しばき倒せば最終回になる予定で進めております。


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第百三十七話 ラストバトルのひとつまえ

 マジンカイザーと真ゲッター1、そしてズフィルード・エスアールの斬り合いは、一撃一撃があまりに強く、あまりに速く、アムロやクワトロといった部隊最高峰のパイロット達でも、容易には援護の手を入れられない超高速戦闘に突入している。

 ラオデキヤはクロスブレードとクロストマホークを超絶技巧で操り、カイザーブレード二刀流とゲッタートマホーク、ゲッターレザーを交えた破壊の暴風雨を真っ向から捌いていた。

 

「罪深き者達よ、避けられるか! アルドレーザー照射!!」

 

 カイザーブレードとゲッタートマホークを弾き、甲児と竜馬が次の攻撃に移る刹那の間に、ズフィルード・エスアールの手首に二門ずつある砲口から、アルドレーザーが照射される。

 百メートルと離れていない距離から発射されたレーザーを、マジンカイザーも真ゲッター1も真っ向から迎え撃つ選択肢を選んだ。思考に迷いはない。機体とパイロットの意思はほとんど同一と化していた。

 

「光子力ビーム!」

 

「ゲッタービーム!」

 

 アルドレーザーと二種のビームの激突は、超新星爆発を思わせる閃光とエネルギーの余波を周囲に撒き散らしながら、数秒間続いた。

 その間に周囲を取り囲むバサ帝国機動兵器部隊とDC機動兵器部隊は、激しく入り乱れて、宇宙から闇を取り除くように無数の閃光と爆発が生まれては消えていっている。

 

「必殺、サイコブラスター!!」

 

 敵味方入り乱れるこの状況で、その識別を可能とするMAP兵器ほど頼りになる兵器はないだろう。ラトゥーニはサイコブラスターの有効射程範囲内に、可能な限りの敵機を収め、最大出力で発射した。

 バーサルヴァルシオーラを中心に吹き荒れる、桜吹雪のような光に飲まれて、バサ帝国の機動兵器が次々と爆散して行く。

 

 ケイサル・エフェスらと戦う前だったとしても、少なくとも中破に持ち込める出力だったが、これほど強力なのはやはり半真化融合状態だからこそだ。

 サイコブラスターのダメージで動きを鈍らせる敵機を、DCの容赦ない追撃が撃墜して行くのは、清々しいまでの予定調和的な光景であった。

 

 バサ帝国の中核に突っ込み、今まさに表向きの皇帝を討ち取らんと奮闘するDCの様子を見て、連邦軍もまた前線を押し上げるべく、攻勢を強めていた。

 リーブラ、バルジ改、コロニーレーザー、ソーラーシステムといった戦略兵器が惜しみなく使われ、まとめてバサ帝国の機動兵器を消滅させる。

 

 地球連邦軍が一気に攻勢に出て、瞬く間に成果を上げていったのには、バサ帝国の前線部隊がDCを包囲する為に踵を返し、地球連邦軍に背中を晒したのも大きな理由の一つである。

 ラオデキヤとヘルモーズを守る為には仕方のない行動だったにせよ、それにしても迂闊に過ぎた行動は、地球側の被害をなるべく減らそうとした、ラオデキヤからの指示によるものだった。

 

 背中を晒すにしてもタイミングと順番を誤ったとしか思えないバサ帝国の動きには、ティアンムをはじめ指揮官達は疑惑を抱く者も少なくなかったが、数で劣る彼らが戦況の優勢を得る好機であるのも確か。

 トレーズ専用に徹底的にカスタマイズされたトールギスⅡ、ゼファーファントムシステムベースのMDを搭載したトールギスⅢ十二機が一個の騎士団となって、まず先陣を切った。

 

 そしてゼクス・マーキス、ルクレツィア・ノイン、オットーらOZのエース達が乗るトールギスⅢを筆頭とした、トールギス・テウルギスト系からなる精鋭部隊も続いた。

 彼らに負けじと突撃するヴァルダー・ファーキルのハイドラガンダムと付き従うビルゴⅡ、サーペント、トーラス部隊は、無人・有人の混成部隊だ。

 

 突出する彼らに遅れるなとばかりに量産型スーパーロボット、MS、MA部隊も恐怖を勇気で乗り越えて果敢に攻撃を仕掛ける。潤沢な補給物資と確固たる兵站を頼みに、後先を考えずに弾薬とエネルギーが消費されるのは、明白だった。

 双方合わせて二十万機以上の機動兵器が互いを文字通り全滅させる勢いで交戦するなど、地球史上、空前絶後の大規模な戦いであったが、その消耗速度も尋常ではない。

 

 密かにユーゼスを裏切っているラオデキヤの意向もあるとはいえ、バサ帝国が意図的に拙い戦術を取っている事もあり、バサ帝国側の被害は加速度的に増している。

 なによりDCと共に帝国艦隊中央付近に大量に出現したアインスト達への対応によって、帝国側の陣形が致命的に崩され、指揮系統が途切れ途切れになって、その機能を大幅に低下させているとあっては、まともな戦闘行動がとれるわけもない。

 味方が優勢となれば敵陣深くに切り込んでいるDCのメンバーも、後顧の憂いなく目の前の敵機に集中できるというもの。

 

「クロスマッシャー!!」

 

「クアッドクロスマッシャー!」

 

 バーサルヴァルシオーラとヴァルシオーザが同時にクロスマッシャーを放ち、合計五条の螺旋の破壊エネルギーが融合して、より巨大な螺旋の砲撃となり、ザンボットインビンシブル、エクリプスライディーンと斬り結んでいたズフィルード・エスアールへ襲い掛かる。

 ザンボットインビンシブルとエクリプスライディーンが事前の通告に従ってその場を離脱した瞬間、ラオデキヤは不敵な笑みと共にクロスブレードとクロストマホークを胸の前で交差させて、新たな攻撃を放った。

 

「容易く余の首を取らせはせんぞ? オメガウェーブ!」

 

 二つの武器の交差点を中心に発射されたのは、七色に輝くエネルギー弾と赤黒く渦巻くエネルギー弾だ。どこらへんがウェーブなのか少々疑問だが、その威力はアルドレーザーを上回り、ズフィルードタイプの二番目に強力な武器として実装されるケースが多い。

 巨大なクロスマッシャーとオメガウェーブが激突し、先程のアルドレーザー対光子力ビーム・ゲッタービームの再現となる。互いに拮抗したエネルギーが指向性を失い、のたうつ蛇のように暴れた直後、無数の光線に引き裂かされて周囲に流れ弾をバラまく結果となる。

 

 縄のように分裂した光線を避けきれずに命中したヴァイクル・ベンやシュムエル・ベン、ハバククの装甲が瞬時に融解し、動力炉の誘爆を引き起こして、宇宙を照らす新たな光源へと変わってゆく。

 ただやられるばかりではなく、雲霞の如く群れ成すメギロートの大群からリング状のビームが発射され、整然と列を成すエスリム・ローシュやゼカリアからもビームの雨が数ではるかに劣るDC各機へ容赦なく降り注いでゆく。

 モニターを埋め尽くす勢いのビームには、歴戦のパイロット達でも肝を冷やすが、それを表には出さずに笑みを浮かべられるメンバーがこの場には揃っていた。

 

「とりあえずトリガーを引けば当たる数だけど、こっちも何処に逃げても攻撃が当たりそうで怖いねえ」

 

 ヒュウ、と小さな口笛を吹いて、スレッガーはデンドロビウムⅡのコンテナから小型集束ミサイルを発射した。小型ミサイルがばら撒かれ、降り注ぐビームに命中して誘爆を引き起こし、スレッガーと機体を守る盾となる。

 すぐさま爆炎の向こうから大量のビームが降り注いでくるが、わずかに存在するタイムラグの間に、デンドロビウムⅡのメガ・ビームキャノン二門が限界ギリギリの速度で連射される。

 スレッガーばかりでなくカイ、ハヤトのRガンキャノンからのGNキャノン、ビームライフルの援護が入り、リュウのRガンタンクからはビームキャノンの大火力砲撃支援が加わり、爆炎の向こうに居る敵機を次々と撃ち落として行く。

 

 セイラのデンドロビウムⅡ、ユウのデルタカイ、ライラのリガズィード、ブランのシータプラスも加わり、こちらに向けて撃たれたビームを大きく回避するのではなく、ビームとビームの隙間を縫って、最短距離を突っ込むという正気を疑う距離の詰め方を実行する。

 ボッシュとケーラの乗る量産型νガンダムHWSも居たが、彼らはまだ技量で及ばない為、ビームの嵐から安全マージンを取って回避していた。

 

 無数のアインスト達による援護防御と囮役がありとはいえ、撃墜された機体がいないのはDCメンバーの練度の高さと機体の高性能ぶりをこの上なく証明している。

 ゼロ・ムラサメのHi-νガンダムとレイラ・レイモンドのナイチンゲールの連携は、押し寄せるエスパーロボ部隊の圧力を跳ね返し、クインリィ・フルアーマー四機で構成されるマーフィー小隊は偽ミケーネ神達を巧みな連携で着実に撃墜している。

 フォウ・ムラサメのサイコ・インレやバン・バ・チュン、モンテニャッコのヴァルシオーマ達の火力は、スペースロボやティアマートといった大型機を相手にしても、必殺級の威力を発揮していた。

 

 アインストの援護を受けたDCの大攻勢はラオデキヤやこの場に居ないユーゼスも予想していた事だが、そのDCの戦闘能力が事前に収集していたデータよりも数段高くなっているのは、完全に予想外だった。

 実際にズフィルード・エスアールを起動させて、直に戦う事でラオデキヤは確信を深めている。

 ムゲ宇宙に殴り込みをかけた戦いで、DCが真の主ケイサル・エフェスから試練を与えられ、真化融合の境地に至ったのは知っていたが、真化融合を行っていない状態でも、これほどのカタログスペックを超えた力を発揮するとは!

 

(ふ、真化融合の一件を知らぬユーゼスは余計に驚いているであろう。それでも彼の者は戦いを止めまい。それに余とて弱い敵だったと思われるのは、なけなしの矜持に関わる。全力で戦わせてもらうぞ、地球の勇者達よ!)

 

 ズフィルード・エスアールの量子波動エンジンが唸りを上げて、背中から伸びる翼に光のラインが走ると、無数のパーツに分解される。

 

「行け、我が眷属達。クリスタルフェザー!」

 

 赤いズフィルードクリスタルで構成された翼がエネルギーを纏い、ズフィルード・エスアールの背中から飛び立って、周囲を囲い込むスーパーロボット達へと襲い掛かる。

 スーパーロボット寄りの機動兵器として起動したズフィルード・エスアールは、小回りにやや難がある為、それを補う無人端末兵器である。攻撃方法はR-3のストライクシールドやサイコガンダムMk-Ⅳのサイコプレートのような打突となる。

 

 クロスブレードとクロストマホークによる近接戦闘に、絶妙なタイミングで挟まれるアルドレーザーとオメガウェーブの組み合わせによる多彩な攻撃バリエーションは、ラオデキヤがパイロットとして超一流である証拠だった。

 そこにクリスタルフェザーによる多方位からの攻撃も加われば、更にズフィルード・エスアールの攻略難度が上がるというもの。それを察知したクワトロとカミーユは、迅速に行動に移っていた。

 

「みすみすやらせはするものか。ファンネル!」

 

 ガイア・ギアαに追加装備されたファンネルコンテナから、筒状のファンネル十二基が一斉に飛び立ち、更にミサイルポッドから一斉にミサイルを発射。手持ちのビームライフルとバックパックの連装ビーム砲塔も淀みなくビームの軌跡を宇宙に刻みだす。

 カミーユもまたMS形態のZⅢに光の翼を展開させ、それを大きく羽ばたかせる事で、光の羽が無数に乱舞する。その数えきれない粒子の塊──光の羽へ向けて、ビームライフルを立て続けに連射!

 

「出て来たんなら、落とされる覚悟を! ビームコンフューズ!!」

 

 本来なら発振したままのビームサーベルを投擲し、そのサーベル部分にビームを当てる事で、即席のビームシャワーを作り出すのがビームコンフューズだが、カミーユはこれを光の羽で代用する技術をいつの間にか編み出していた。

 ファンネルはそれぞれが別々の生き物のように有機的な動きでクリスタルフェザーを撃ち抜き、ミサイルは群れで狩りをする猛獣のようにクリスタルフェザーを追い込んでゆく。

 光の羽に当たり、無数のメガ粒子の雨と化したビームコンフューズは、クワトロのファンネルとミサイルと絶妙な連携によってクリスタルフェザーを撃ってゆく。

 

 ズフィルードクリスタルで構成され、エネルギーを纏うクリスタルフェザーは、撃ち落とされてもある程度のダメージならば、自動で再生して復帰するのが厄介な点だ。

 それでも一時的にラオデキヤの手数を減らす事は出来る。ラオデキヤが背部パーツを増殖させて、新たなクリスタルフェザーを生やす中、そうはさせまいとフリードスペイザーをパワードスーツのように着込んだグレンダイザーテラが、ダブルハーケンを手に挑みかかる。

 

「ラオデキヤ皇帝、覚悟!」

 

「フリード星の王子か。地球の守護神も買って出るとは豪気なことだな?」

 

 ベガ星の技術も取り込み、二つの星の力の結晶とも言えるグレンダイザーテラのダブルハーケンの斬撃を、クロストマホークの両刃が受け止めて、ズフィルード・エスアールの関節部が軋む音を立てる。

 水晶と水晶がこすれ合い、軋む甲高い音が衝撃と共にコックピット共に伝わり、ラオデキヤの口元に好戦的な笑みが浮かび上がる。ズフィルード・エスアールの元となったデータの一機なのだ。強くなければ逆に困るというもの。

 

「はああああ!!」

 

 デュークの裂帛の気合と共にグレンダイザーテラもツインアイを輝かせて、光量子エネルギーと反重力エンジンが唸りを上げる。両者の機体の間で、一秒数える間に無数の攻防が繰り広げられ、刃と刃の激突によって生まれる火花が両機を鮮烈に彩り、照らし出す。

 グレンダイザーテラは至近距離で発射されたアルドレーザーを首を傾けて回避し、こちらも反重力スーパーストームやハンドビーム、スペースサンダーデインを組み合わせた反撃を行う。

 斬撃以外にもこれらの攻撃によるダメージが少しずつズフィルード・エスアールに入り、水晶の装甲に何度も罅が走り、砕ける。強力な再生能力により、それもすぐに修復されるが、それを覆す猛攻が加えられてゆく。

 

「悪意もなく戦いを仕掛けてくる? なにが目的か知らないけど、戦いを求めるというのなら!」

 

 バナージの乗るユニコーンガンダムが装甲の隙間からサイコフレームの緑色の光を眩く輝かせ、ビームトンファーを展開してズフィルード・エスアールの直上から斬りかかる。

 フル・サイコフレームによって核融合炉の限界値をはるかに超えるエネルギーが生み出され、ビームトンファーはライザーソード並みの強力な刃となっていた。

 

 死角から襲い来るビームトンファーを察知したラオデキヤは、最小限の回避行動でこれを避けようとしたが、その矢先にユニコーン同様にサイコフレームを輝かせるバンシィ・ノルンが、ビームマグナムを撃ってズフィルード・エスアールの鼻先を掠める。

 更にクシャトリヤのファンネルとガンダムXディバイダーのハモニカ砲が発射され、ズフィルード・エスアールの巨体に命中して行く。ダメージは低いが、動きを鈍らせるには十分だ。

 

「いけ、バナージ!」

 

「応えてくれ、ユニコーン!!」

 

 回避しきれない斬撃がズフィルード・エスアールの背中を深々と切り裂き、再生途中だったクリスタルフェザーの左翼を斬り飛ばし、機体内部にもダメージを及ぼす。

 

「MSの出力ではない! 理屈を超えてくるか、汝らは!」

 

 ダメージによって体勢を崩し、機体機能に不調を生じさせたズフィルード・エスアールに向けて、マジンエンペラーGのグレートバーン、FUダンクーガのファイナルアルティメット断空砲、ラピエサージュ・メルヒェンのオーバーオクスタンランチャーが一斉に襲い掛かる。

 ズフィルード・エスアールが全力で展開したディフレクトフィールドは、一瞬だけ役目を果たし、すぐに崩壊してしまった。オメガウェーブはわずかに連続攻撃の勢いを弱めたが、そのままズフィルード・エスアールに襲い掛かる。

 武器を握る両腕を目の前で交差させ、咄嗟の防御の構えを取ったが、その両腕を丸ごと粉砕され、ズフィルード・エスアールのダメージは一気に大きくなる。

 

「ぬうっ、ズフィルードの神体にここまでの傷を刻むとは!」

 

 ラオデキヤの技量をもってしても、ここまでダメージを受けた機体を建て直すのは容易な事ではない。

 コウのデルフィニウムやクリスのクレヴェナール、不死身の第四小隊からあらゆる回避方向を含めた広範囲にビームとミサイルが発射され、傷ついたズフィルード・エスアールを更に追い込む。

 

 巨体から砕け散るズフィルードクリスタルの破片の量が増し、加速度的にズフィルード・エスアールの質量も減ってゆく。DCの攻撃を仕掛ける好機を見逃さない嗅覚の鋭さと、爆発的な攻撃力の畳みかけっぷりは、銀河広しと言えどもずば抜けている。

 ラオデキヤが回避と再生を優先してズフィルード・エスアールを軽やかに操る間、DCの足自慢達が、戦場に幾重にも光の軌跡を描きながら襲い掛かる。

 

「アイン!」

 

「ツヴァイ!」

 

「ドライ!!」

 

 フィリグランファルケンとフレッサービルガーがミノフスキードライブを全開稼働し、光子力反応炉の超パワーを全力でズフィルード・エスアールへと叩きつけて行く度に、装甲は切り裂かれて、銃撃による穴が増えて行く。

 

「回避しきれんかっ」

 

 ラオデキヤは全てを回避するのではなく、ダメージを最小限に抑える方向へ舵を切ったが、それもこの場、この窮地においてはわずかな延命策でしかない。

 

「ツインバード……ストライク!!」

 

 もはや致命的というしかないダメージがズフィルード・エスアールの巨体に刻まれ、さらにそこへZ・Oサイズを振り上げたディス・アストラナガンと、ライアット・ジャレンチを展開したフェブルウスが瞬時に肉薄する──していた。

 ユーゼスにとって、最大の鬼門となる存在を前に、ラオデキヤは笑みを深めた。このズフィルード・エスアールをもってしても、DCに大した打撃を与える事も敵わなかった。

 それは悔しくもあるが、ユーゼスを止める立場にあるラオデキヤとしては喜ぶべき事実でもあったから。

 

「デッドエンドスラッシュ!」

 

「……!」

 

 クォヴレーが必殺の言葉と共にZ・Oサイズを振り抜いて、ズフィルード・エスアールの胴体を腹から真っ二つに斬り裂く。

 双子はなにを感じ取ったのか、無言のままライアット・ジャレンチで斬り飛ばされたズフィルード・エスアールの上半身を挟み込み、そのままギリギリと圧力を加える。

 

「フフフ、余を倒したところで戦いは終わらぬ。この戦いもあの方にとっては、データ収集の一環でしかないと、心せよ。特に至高神ソルの生まれ変わりたる汝らはな?」

 

 ラオデキヤの声音と感情に哀れみと期待が込められているのを察し、双子はなんとも言えない表情になりながら、それでも躊躇なく止めを刺した。

 

「ザ・ヒートクラッシャアアア!!!」

 

 ライアット・ジャレンチに内蔵されたドリル式バンカーが勢いよく撃ちだされ、ズフィルード・エスアールの上半身を粉々に砕く。

 内包するエネルギーが爆発を引き起こす前に、フェブルウスとディス・アストラナガンが距離を置いた直後、ズフィルード・エスアールはラオデキヤを乗せたまま量子波動エンジンの誘爆によって、半径数キロメートルを巻き込む爆発を引き起こして消滅した。

 

 所長の予想通り強力ではあったが、DCを部隊まとめて相手をするには不足していたズフィルード・エスアールの撃墜と、ラオデキヤ皇帝の戦死はDCだけでなく地球連邦軍にもすぐさま伝えられた。

 だがバサ帝国側の動きは止まらず、指揮官であるラオデキヤの戦死で数瞬だけ、行動は停止したものの、すぐに戦闘行動を再開し始める。

 

 幸い連邦側もユーゼスこそが真の支配者であることを知らされていたこともあり、混乱は最小限に抑えられて、再開された戦闘に対応し始めていた。

 警戒を残したまま周囲から襲い来るバサ帝国の機動兵器を相手にするDCメンバー達だったが、ズフィルード・エスアールの撃墜からきっかり一分、各機、各艦艇のセンサーは新たな重力震を探知する。

 

 重力震はヘルモーズを中心として発生して、DCを巻き込み、通常空間を激しく揺らして崩壊へと導いていった。DCメンバーも慣れたもので、これがどこかの別空間に導かれるものだと察して、油断を戒めて警戒を深める。

 戦場へと広がった重力震はきっちりとDCに所属する機動兵器と艦艇だけを選別し、彼らをユーゼス・ゴッツォの作り出した異空間へと連れ去るのだった。

 

 重力震の発生直後、DCが居たのは奇しくもケイサル・エフェスとウーゼスの作り出した閉鎖空間を彷彿とさせる、白い宇宙に黒い星の輝く世界だった。

 オリュンポスを中心とした半径十万キロメートル以内に存在しているのは、彼ら以外にはユーゼスとその一派だけである。

 

「各機、警戒を怠るな! これが最後の戦いになるぞ」

 

 機動兵器部隊の隊長を任せられているクワトロからの指示がなくとも、誰も油断はしていなかったが、これまでの実績による信頼から素直に従い、この空間の中心に展開するユーゼス達へ意識を集中させる。

 完全に復活したディス・ジュデッカ、キャリコの乗るディス・ヴァルク・バアルを中心として、ヴァルク・ベン、アストラナガン・アフ、量産された白いジュデッカ、アンティノラ、ヴァイクラン、ディバリウムと強力なバルマー系の兵器が勢ぞろいしている。

 更にドクター・ペルゲの乗るグランシャリオに加え、量産されたバーンレプオス、ハイドラガンダムの部隊も展開している。それだけでなくダンクーガとジ・Oまでも数を揃えていた。

 

「どうしてダンクーガが!?」

 

 忍を筆頭に獣戦機隊の面々は、ずらりと並ぶダンクーガの姿に驚愕を禁じ得ず、シャピロやガンドールの葉月博士も驚きと真似された事への怒りを抱いていた。シロッコも自分の作品を安価な大衆向け製品のように並べられる光景に、はっきりと苛立ちを浮かべている。

 

「私のジ・Oをコピーするとは。俗人の浅慮は不愉快なものだな」

 

 バーンレプオスやハイドラガンダムはまだしも、この二機が量産されたのは、初代α世界でシャピロとシロッコがユーゼスの配下となった経緯から、機体データをコピーしていたのだろうとヘイデスは推測していた。

 シャピロとシロッコのクローンまでも出てきたら、更に厄介だが、ニュータイプ達の反応からして、どうやら人工知能制御らしいのが幸いだ。

 完全な力を取り戻したディス・ジュデッカに座するユーゼスは、表情を隠す仮面を被ったまま決戦空間へと招き入れたDCへ、特にクォヴレーと双子達を意識して口を開く。

 

「こうしてお前達と直に顔を合わせるのは、随分と久方ぶりの事であるようだな。ディバイン・クルセイダーズの諸君。お前達の活躍は私の耳にも届いている。ラオデキヤを倒した手練も見事だと褒めておこう」

 

「こちらはDC司令ヨハン・イブラヒム・レビルだ。ユーゼス・ゴッツォ、改めて確認するが貴官の目的は我々の撃破、そしてディス・アストラナガンからディス・レヴを、フェブルウスからの次元力制御システムの奪取で相違ないか?」

 

「五十点といったところだな。私にとってはいずれも手段でしかない。お前達を倒そうとするのは、ディス・ジュデッカと私の技術のテストの為、ディス・レヴと次元力制御システムの奪取は平行世界への干渉と宇宙の根幹に触れる手段を得る為のものだ。

 私がこれまで観測してきた世界と同じように、お前達はこの世界で地球人類を襲った侵略者達を力で排除してきた。

 やはり地球人類の戦争における才能は素晴らしい。その中にあって最も強く、優れたるお前達は私のテストに用いるのにちょうどよい。お前達を踏み台として、私は新たな段階へと進む。

 マジンガーZERO、ゲッターエンペラー、ラ・グース、時天空、外なる神々、デモンベイン、アルティメットまどか、ペルフェクティオ、カリ・ユガ……私が超えるべき壁、挑むべき敵はこれだけではない。

 上位存在共は数えきれない程いる。お前達は試金石であり、私が新たな境地へ至る為の福音なのだ。故に、全力で抗い、全力で戦い、そして破れてこの狭間の空間で永劫に朽ちて行くがいい」

 

 一部、疑問の残る名前を口にしたユーゼスは、キャリコらに戦闘開始の指示を発したようで、DC側とにらみ合うように対峙していたユーゼス一派の機動兵器部隊が一斉に動き始める。

 この決戦場にはアインストの雑兵は連れ込まれておらず、数の上ではDC側が大きく劣り、また連戦による消耗が機体とパイロットの双方にあった。

 

 それでもユーゼスに油断はなく、窮地に追い込まれれば追い込まれるほど、爆発的な底力を発揮する彼らを決して過小評価はしていない。少なくともユーゼスの中ではそうだった。そうだったのだ。

 いまだ全知全能からは程遠いユーゼスは、ムゲ宇宙での戦いで、ケイサル・エフェスとウーゼスの試練を経て、DCが真化融合の境地に達していたのを、知らないのだ。

 

「僕達がそう簡単に乗り越えられる試練かどうか、試してみるといいよ!」

 

「シュメシ、フェブルウス、皆! 行くよ、真化融合!!」

 

 Zクリスタルとソーラリアンの代わりに双子とフェブルウスがその役目を果たし、意図せずしてユーゼスが用意した通常空間とは異なるこの決戦場でならば、DCは目覚めた境地へ至る事が出来る。

 つながりを深めた機体とパイロット達の意思が交わり、互いの霊子が同期して一時的に高次元存在へと昇華されて、文字通り次元の違う視座と力をその身に宿して行く。

 そして三つの心が一つに溶けたフェブルウスもまた、ウーゼスによって提案された新たな名前を持つ、異なる至高神ソルとしての姿を顕現させた。

 

「かつては至高神ソル、巡り変わってシュメシとヘマーとフェブルウス、そして今はシン・ソル。新にして罪、真にして進、私と皆が貴方の野望を止めよう。ユーゼス・ゴッツォ」

 

 もう一度繰り返す。今、真化融合によって別次元の存在へと昇華したDC各機を前にするユーゼスは、彼らが、真化融合を、行えることを──知らなかったと。

 

<続>

 

■ラオデキヤが戦死しました?

 



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第百三十八話 骰子は投げられた

ユーゼスの反応は、ちょっと皆さんの期待には応えられないものかなあと思います。


 DCがユーゼスによって異空間の決戦場に引きずり込まれたころ、取り残されたバサ帝国の部隊は次々と戦闘行動を停止していった。

 トレーズやヴァルダー、ティアンムやムバラクらはその行動を訝しむ。皇帝が戦死したからと言って即座に戦闘行動を停止するなど、然う然う考えられるものではない。

 

 また攻撃の手を緩めるわけにもいかなかったのは、あくまでもユーゼスに仕えているつもりの真徒達が、通常空間に取り残されており、戦い続けていたからでもあった。

 ユーゼスからペルゲやタウ・リンよりもはるかに下の扱いをされているとは知らず、真徒達は傀儡としか認識していないラオデキヤの戦死を嘲る。

 そしてDCの消えた地球連邦軍を自分達の手で抹殺し、ユーゼスへの忠誠と自分達の優越を示そうと自己中心的な考えに突き動かされていたのである。

 

 どこまでいっても視野狭窄で自分達の思考そのものが唯一の正解で、他に正しい答えなどありはしないと決め切った思考だ。

 厄介なのは彼らの搭乗しているアンゲロイ・アルカ、エル・ミレニウム、ゼル・ビレニウムが銀河最強クラスの圧倒的性能を誇る機動兵器である点だった。

 恒星間航行可能な文明なら、まとめて二つも三つも滅ぼせるような戦力を有する彼らが、地球連邦軍を取るに足らない雑魚と認識したのも仕方のない話ではある。

 

 そんな彼らに冷や水を浴びせかけ、敗北の味をたっぷりと味わわせているのは、ゴル・ビレニウム、ドラ・ミレニウムを始めとした鹵獲・改造された機体とメガ・ギルギルギルガン率いるメカ・ギルギルガン部隊。

 そしてトレーズ、ゼクス、ヴァルダーといったOZ系統の精鋭部隊、その他にマスター・P・レイヤーやブレイブ・コッド、トッシュ・クレイなど地球連邦軍に所属する多くのベテラン達、デスザウラー、デススティンガー、ギルドラゴンら規格外ゾイドである。

 

 こちら側に残っている数万体のアインスト達も、バサ帝国機を無視して真徒達に殺到し、被弾を無視した自爆同然の行為を平気で行い、真徒達の機体を一機、また一機と撃墜している。

 DCと戦うまでもなく真徒達は、この世界の地球人類の底力とアインスト達によって、その命運を断たれる末路を迎えるのだった。

 

 ユーゼスにとっては用を終え、後は使い捨てる駒としか見ていない真徒達の末路など、欠片も興味を引かれないところであるが、今、目の前でその力を高次元の領域へ引き上げたDCメンバーは話が別だ。

 機体とパイロットの霊子が合一・融合し、存在を昇華させる『真化融合』により、一点物の工芸品と言えるスーパーロボットから、量産前提の工業製品であるリアルロボットに至るまでが、銀河有数、あるいは宇宙屈指の戦闘能力を備えた超越者へと変貌していた。

 

 ユーゼスが仮面の奥でどんな表情を浮かべていたのかは、彼自身ですら分からない事であったが、短い沈黙の後に絞り出された声に驚愕や焦りはわずかしか含まれていなかった。

 彼が矜持によってそれらの感情を抑えたのか、それとも本当にわずかにしか驚かなかったのか? 前者と後者とでユーゼスの度量の大きさが随分と変わるところだ。

 

「ほう、以前からお前達は真化融合への階段を上りかけていたが、フェブルウスと双子を起爆剤にして、一気にそのステージ上に昇る術を獲得していたか。

 真徒達を蹴散らしたZ-BLUEと同じ手段に到達するとは、皮肉というよりは必然というべきだな。ラオデキヤのズフィルードを容易く撃墜できるわけだ」

 

 ユーゼスの言葉に、シン・ソルが答える。今はスパロボ30の世界に漂着した至高神Zと同じ全高三百メートルほどにサイズが圧縮されている。

 大きさについては、意図したものではないが、なんともアドヴェントと至高神Zとの縁を感じさせる結果だ。

 双子の声にフェブルウスの意思を交えた彼/彼女の声は、天上から地を這う者達へくだされる神託の如き荘厳さに満ちていた。

 

「その余裕は取り繕ったものか? それとも本心からか? 私とマジンエンペラーGが居る以上、君のディス・ジュデッカであろうとクロスゲート・パラダイム・システムを稼働する事は出来ない。その機体の最たる脅威を封じられた状況で、まだ出せる札があるのか?」

 

「まさに神か悪魔の如く、だな。だが、であるからこそ私にとって価値のある道具なのだよ、お前は」

 

 ユーゼスはそれ以上言葉を発するよりも、戦いの火ぶたを切る事を選んだ。

 グランシャリオを守るように布陣したバーンレプオス、ハイドラガンダム部隊が一気に加速し、それに偽ダンクーガ、ジ・O、ヴァイクラン、ディバリウム、アンティノラ、ジュデッカも呼応して、戦闘行動に移行する。

 それら第一陣に続き、キャリコのディス・ヴァルクル・バアル率いるヴァルク・ベン、アストラナガン・アフからなる新生ゴラー・ゴレム隊も、DCと決着をつけるべく動いた。

 ゴラー・ゴレム隊で明確な自我を有しているのはキャリコ・マクレディただ一人であったが、彼の闘志や気迫、覚悟はこれまでで最大のものとなっている。今ならば、ディス・ヴァルクル・バアルの性能を百パーセント以上引き出すだろう。

 

「ドクター・ペルゲ! 身内の不始末は俺達の手でする!」

 

 ついにここまで生き残っていたドクター・ペルゲに対し、戦意を燃やすのはアディンを筆頭としたMO-VならびにOZプライズ組だ。

 アディンのガンダムグリープ、オデルのガンダムアスクレプオス、ロッシェのガンダムL.O.ブースター、ブルムのテウルギストレオンは、グランシャリオの撃沈を狙ってまっしぐらに決戦場を駆け抜けて行く。

 

 これに続いたのは同じように因縁が少しはあると感じていた、ヒイロらコロニーのガンダム組である。

 ガンダムグリープやウイングゼロなど、スーパーロボットとリアルロボットの境界を行き来しているような強力なラインナップだが、そのフォローにアルビオン隊、神ファミリー、ブレイウッド隊、ペガサスⅢ隊、ネェル・アーガマ隊が回る。

 

 グランシャリオの艦橋にただ一人いるペルゲは格段にエネルギー反応を高めたDCの機体群を前にして、未知の現象に対する好奇心を爆発させて、歓喜と興奮の中にあった。

 ユーゼスへと鞍替えした後、分かりやすい技術者として真徒よりも格段に高い評価をされていたペルゲは、バルマーを始めとした各種の技術と知識を惜しみなく与えられていたが、必要とあれば他者を犠牲にするのを躊躇わないマッドサイエンティストはまだまだ満足していなかった。

 

「ははは、これは素晴らしい。PXシステムの原理を部隊全体に与えた、いやPXシステムの恩恵をはるかに超えている。パイロットだけでなく、機体そのものの性能をブーストしているとは!? 技術体系の違いを無視した、未知の現象だ!」

 

 今、ペルゲが指示を出しているバーンレプオス、ハイドラガンダムらもユーゼスから与えられた新技術を応用し、オリジナルよりも大きくパワーアップさせているが、真化融合による強化具合と比べれば、微々たるものだ。

 ペルゲとしては事前の想定を超えた苦戦を確信していたが、最強の機体を開発する為に、DCのサンプルは可能な限り確保したいという欲が出てきていた。

 

 クラーツの遺伝子から培養したバイオ脳を乗せられたバーンレプオスとハイドラは、PXシステムを最大限に稼働して、真化融合したDCと銃火を交え始める。

 いわゆる『火事場の馬鹿力』を能動的に起こすのがPXシステムだ。

 適性の無いパイロットだと、人格に悪影響を与え、最終的には死亡させてしまうという、よくあるデメリット付きのシステムだが、バイオ脳は最適化した上で培養されている為、倫理面を無視すれば最適のパイロットだった。

 

 一年戦争時のアムロの戦闘データをコピーしたバイオ脳や、クラックス・ドゥガチの人格をコピーしたバイオ脳など、ガンダムシリーズではバリエーションのあるバイオ脳だが、今のDCを抑えきれるかと言えば不可能に等しい。

 グリープのバスターメガ粒子砲とウイングゼロのツインバスターライフルこそ回避したものの、それを読んでいたトロワやオデル、ロッシェ、コウ達の正確な射撃に次々と撃ち落とされ、五飛、デュオ、カトル達が一気に接近して刃を振るうたびに、新たに爆散する機体が増えて行く。

 

 怒涛の勢いで突破されてゆくバーンレプオスとハイドラだったが、ようやく反撃を始める彼らに遅れて、グランシャリオから新たな機体が出撃した。

 ユーゼスから与えられた技術を用い、ペルゲが現段階における最高傑作として開発した、新型のガンダムタイプだ。念動力に関する機構と量子波動エンジン、ズフィルード・クリスタルを用いたソレは、ダゴンドラガンダムと名付けられている。

 クトゥルー神話における海魔ハイドラとダゴンの名前を掛け合わせ、ハイドラガンダムをベースとした機体であり、デモンベインに出てきた合体海魔と同じ名前(命名:大十字九郎)でもある。

 

 バスターカノンは両肩に増設され、これまでは強すぎる反動を左腕で補助しなければならなかったが、機体のパワーと堅牢性の劇的な向上により、肩部に接続したまま同時に発射可能となっている。その威力はツインバスターライフルにも匹敵するほどだ。

 両肩のショルダークローはより巨大化し、バルマー系技術の導入により、念動力と脳波によってコントロールされる無線オールレンジ攻撃端末へと進化している。

 

 ズフィルード・クリスタルによって構成される装甲の上に、極めて高純度のガンダニュウム合金で生成され、強力な電磁フィールドを内蔵したEMFアーマーを重ねている。

 元々、ウイングガンダム系列には珍しい精神感応システムをマルチセンサーとして搭載していたが、それにカルケリア・パルス・ティルゲムを組み合わせて、より精度と効果を上げる事に成功していた。

 

 そしてこのダゴンドラには、唯一、ヴァルターの遺伝子から培養した特別なバイオ脳が用いられており、ペルゲの手駒としては最強の機体に最強のパイロットを乗せた最強の戦力なのである。

 グランシャリオから出撃した直後、バスターカノンによる正確無比な射撃がグリープとウイングゼロに襲い掛かり、無事に回避したグリープとウイングゼロだが、そこに機体から分離したショルダーカノンが襲い掛かる。

 

 たった二つのアクションだが、その精度とタイミングだけで、ダゴンドラが他の機体とは別格であるのを、アディンとヒイロに理解させるには十分だった。

 まるでジオングとガンダムを融合させ、黒く染め上げたような機体は、二十五メートル超に達する大型MSとは信じがたい速度で、距離を詰めてくる。

 

「あの機体、ペルゲの新型か! バーンレプオスとハイドラを量産するだけじゃなく!」

 

「PXシステムは当然搭載しているだろう。アデル、私達であの機体を叩くぞ!」

 

 MO-Vの兄弟が、デモンベインに出てきた邪神の眷属と同じ名前を与えられた異形のガンダムへ挑みかかる頃、ジ・Oや偽ダンクーガのコピー機を相手に、コピーされた側であるシロッコと獣戦機隊は不愉快さを隠さず、率先して叩き潰していた。

 ジ・Oと偽ダンクーガには初代αの世界でユーゼスが作り出した、シロッコとシャピロの戦闘データをコピーしたバイオ脳が搭載され、それぞれバイオセンサーと野獣回路を最大効率で稼働させる為の調整が施されている。

 それを圧倒しているのは、ジ・OとFUダンクーガとの性能差、更に不要とされた情動を備えたままのパイロット達との差だった。

 

 一見鈍重に見える巨体を裏切る機動性と高出力のビームライフルを撃つジ・Oの部隊を前に、シロッコは端麗な顔立ちにはっきりと苛立ちの色を浮かべ、ジ・O³からGN粒子の巨大な槍を数十本、まとめて撃ちだす。

 背中に三重の光輪を背負ったジ・O³は、卓越したシロッコの技量と超高精度のGN粒子の操作技術により、銃身も砲身も発振器も用いずにGN粒子を自在に操る。

 

 同じ遺伝子から作り出されたバイオ脳の動きを、シロッコは機体に搭載したバイオセンサーを始めとしたサイコミュにより、手に取るように把握していた。

 オリジナルである自分には劣るが、それでも極めて強力なパイロットであるのは間違いなく、凡百のパイロットなどものの数ではない。

 

 だからこそ真化融合したとはいえ、シロッコから見て未熟なサラとシドレは後ろに下げて、ジ・O部隊は彼一人で請け負っている。いや、サラとシドレを下げたのは、二人を案じる以上に、不愉快な劣化コピーを自分の手で始末したいという欲求が強かったからだ。

 GN粒子の槍を回避したジ・Oの群れが、隠し腕を展開してビームソードを抜き放ち、ジ・O³へと群がる。それは明確な自我を持つこの世界のシロッコを、バイオ脳シロッコ達が羨み、妬んでいるかのようにも見えた。

 

「あの世界の私は寝首を掻こうとユーゼスに降ったのだろうが、その末路がコレとは、私と同じ名前を持つのも、遺伝子を持つのさえ許せるものではない。ユーゼス諸共、封じるべき歴史として葬ってやろう」

 

 シロッコの戦意を汲み取ったジ・O³は前方に突き出した両腕から、膨大な量のGN粒子を放出する。洪水のようなソレが無数の支流へと分かれて、異世界のシロッコのバイオ脳を乗せたジ・O達を飲み込んでゆく。

 シロッコはゲッター線とは異なる生物的進化をもたらすGN粒子を手足のように操り、群がる無様な最期を迎えた異世界の自分達を淡々と始末する作業に集中する。

 

 ギリアムをはじめ、シャドウセイバーズの面々はシロッコのサポートにいつでも入れるように構えていたが、ジ・O³の戦いぶりを見て不要と判断し、ディバリウムやヴァイクランを相手取り出している。

 そしてジ・Oと同じくコピーされた偽ダンクーガ部隊はというと、シャピロのデザイアを含む獣戦機隊の猛攻を受けて、荒っぽく四肢を引き千切られ、頭を叩き潰されて、と見るも無残な姿をさらしつつある。

 

 シャピロの機嫌が悪くなると右肩を動かすという癖はバイオ脳になっても健在らしく、偽ダンクーガの多くが右肩を震わせており、その悪癖を複数に真似られているシャピロの苛立ちは頂点に近づきつつある。

 彼が手ずから手掛けたデザイアとの相性は良く、真化融合によって互いの潜在能力を引き上げ、長砲身から発射されるビームランチャーは、ファイナルでもアルティメットでもない偽ダンクーガの手から断空剣を弾き飛ばし、頭を撃ち抜き、五体を貫いている。

 撃墜されぬまでも戦闘能力を損なった偽ダンクーガに、本物のダンクーガが怒り狂う獣の如く襲い掛かり、機械の神の如き力でもって偽りの超獣機神の骸の山を築き上げる。

 

「これのどこがダンクーガだ! 歯ごたえがありゃしねえ。超獣機神を名乗らせるんなら、死んでも敵に牙を突き立てる闘争心ぐらい持たせてみろってんだ!!」

 

 忍と共に沙羅、亮、雅人、アラン、そしてFUダンクーガ自身が咆哮を上げ、断空光牙真剣を発動させて偽ダンクーガ達を纏めてぶった切った!

 偽ダンクーガとバイオ脳シャピロ達が爆炎に飲み込まれ、コピー機体が見る間に数を減らす中、ディバリウム部隊は艦隊規模をまとめて殲滅できるMAP兵器の範囲に、DC各機をおさめて一斉に攻撃を仕掛けた。

 

 これに呼応するようにクインリィ・フルアーマーやサイコ・インレ、ゼファーW0ライザー、ヴァルシオー、ヴァルシオーマタイプCF、GFが内蔵火器による反撃を行い、互いの部隊に多くの火線が突き刺さってゆく。

 DCの機体の多くが回避、ないしはバリアを用いて攻撃を防ぐか、そもそも装甲が頑丈過ぎてダメージを受けなかったのに対し、DC側の反撃を受けたディバリウムはバリアの類を持っていなかった事もあり、全長三十五・五メートルの機体を呆気なく破壊されている。

 

 アンティノラやヴァイクラン、ジュデッカまでも含むバルマー系スーパーロボット軍団とも言える部隊には、DC自慢の民間からの善意の協力者であるスーパーロボット軍団が正面から、堂々と挑みかかる。

 そしてキャリコ率いるゴラー・ゴレム隊を引き連れて、ユーゼスのディス・ジュデッカもまた動き出して、DC本隊との決戦の幕を開いている。

 

「第二地獄アンティノラ!」

 

 全長一キロメートルを超えるディス・ジュデッカが四本の腕を組み合わせた直後、いかなるエネルギーによるものか、機体の周囲に巨大な氷塊が作り出されて、一斉にDCへと発射される。

 一つ一つが氷に見えて、その実、膨大なエネルギーと絶対零度の冷気を内包しており、その氷塊を無数に打ち出すMAP兵器である。

 

 ゴラー・ゴレム隊を追い抜いてゆくアンティノラの氷塊が、ディス・アストラナガンのZ・Oサイズの一振りとシン・ソルの手から星の輝きのような光が放たれると、瞬時に切り裂かれ、粉砕される。

 粉微塵に砕ける氷塊を突破して、ヴァルク・ベンやアストラナガン・アフとDCの本隊が激突を始める。

 

 ヴァルク・ベンはもはや戦い慣れた相手だが、ティプラー・シリンダーがなく、アキシオンキャノンが最大火力止まりとはいえ、アストラナガン・アフは流石に強い。エル・ミレニウムよりは苦戦するだろう。

 ディス・ジュデッカの人面の口が大きく開かれて、そこから暗黒の色に染まったエネルギーが奔流となって放たれる!

 

「敗北がお前達に待っている運命だ。飲まれよ!」

 

「ありきたりな台詞をどうも!」

 

 と所長が元気よく言い返し、ヴァルシオーはブラックホールキャノンを撃ち返して、暗黒の奔流を相殺する。

 

「CPSが無くても手強いのは、まあ、当たり前ですわね」

 

 ブラックホールキャノンでようやく相殺可能なエネルギーの奔流を観測し、更にディス・ジュデッカにまったく消耗がないのを見て、所長は嘆息を隠さない。

 前回の戦闘でも分かり切っていた事だが、真化融合を抜きにしても無限力を動力として利用できるディス・レヴがあるだけでも、十分に強力な機体となり得るのだから。

 そう推測する所長に対し、ヘイデスは推測混じりの意見を口にした。

 

「CPSによる因果律操作は封じているけど、例えば並行世界と繋げてそこからエネルギーを奪い取るだけなら、まだ出来るんじゃないかな?

 Dr.ヘルがINFINITYで実演したみたいな、ダメージを並行世界の同位体に押し付けるのは無理としても、動力源として利用するくらいは出来そうだ」

 

「真化融合が出来るようになる前の私達に勝つ見込みは立っていたのでしょうから、やはり油断はしないで行きますか」

 

 ディス・キャリバーを構え直すヴァルシオーの目の前で、ヴァイクランとディバリウムが次々と合体をはじめ、ガドル・ヴァイクランへと姿を変え始めていた。

 培養された人造念動力者達の力を増幅して、ガドル・ヴァイクランは全身を緑色に輝かせながら、強大なビーム攻撃『アルス・マグナ・フルヴァン』を放つ。

 SRXあるいはバンプレイオスでも直撃すれば、一撃で瀕死に追い込める威力の攻撃が宇宙規模の津波のようになって襲い掛かってくる。

 

「乗っているのが本物でなくて、バイオ脳でよかったのでしょうね。クワッドクロスマッシャー!」

 

 迫りくるアルス・マグナ・フルヴァンの束に向けて、ヴァルシオーは逃げる素振りもなく、両腕と背部バインダーの砲門を展開し、ペンテ・ストケイアドライブは超新星爆発に匹敵するエネルギーを生み出す。

 ヴァルシオーの左右にはフィリグランファルケンとラピエサージュ・メルヒェンが並び立って、最大火力を叩き込むべく銃身と砲身を展開。真化融合で引き出された光子力エネルギーとゲッター線のオカルト染みた超パワーを叩き込む!

 

「光子力ノヴァキャノン、フルパワー・シュート!!」

 

「オーバーオクスタンランチャー、光子力エネルギー、ゲッターエネルギー充填完了! ファイア!」

 

 衝突するエネルギーが行き場をなくし、周囲に散弾の如く弾け飛ぶ。周囲ではアストラナガン・アフの放ったアキシオンキャノンの超重力の影響や、ジュデッカ達が整然と並び第一地獄カイーナを放つ態勢で突撃、それを迎え撃つエクリプスライディーンのゴッドボイスといった光景が広がっている。

 グルンガスト改が計都羅喉剣・五黄殺でアンティノラを次々と真っ二つに切り裂き、またあるいはヒュッケバインガンナーのフルインパクトキャノン、ヒュッケバインボクサーのGソードダイバーが、ヴァルク・ベンをダース単位で蹴散らす。

 

 その中でとりわけ熱量の高い激突が発生していたのは、これが最後の機会だと覚悟を固めたキャリコと、彼の覚悟を受け止めるクォヴレーだった。

 お互いにディス・レヴを搭載するが、片や量子波動エンジンで動き、片やティプラー・シリンダーを搭載した機体は、真化融合の有無の差もあるが如実に力の差を示していた。

 Z・OサイズとZ・Oブレードが秒間数十と交わされ、ディス・アストラナガンの背中から飛び立ったガン・スレイブを、Z・Oブレードから射出されたブレードホイールが牽制し、二機は悪魔同士の決闘めいた戦いを継続している。

 

「ここで終わりだ、これでおしまいだ、クォヴレー・ゴードン」

 

 クォヴレーの名を呼ぶキャリコの声は冷徹な響きを持ちながら、憎しみや焦りはなかった。怒りすらもない。ただ、ただただ、闘志があった。お前には負けない、お前を超えるという確固たるキャリコ自身の意思が。

 ことここに至り、クォヴレーはこのキャリコがかつて戦ったキャリコとは別人であるのを改めて理解する。オリジネイターすなわちイングラムの影に怯え、憎悪していたあのキャリコ・マクレディとは明確に別人であると。

 

「いいだろう。お前の意思は嫌というほど伝わってくる。お前が俺という存在を超えなければ、お前の人生を始められないというのならば、好きにかかってくるがいい。俺も俺の使命を果たす為に、全力でお前を倒す」

 

「それでいい。俺が俺の意思でお前を倒す事だけを、お前は理解して死んでゆけ!」

 

 ジャミング機能を利用した分身を複数展開しながら、キャリコはディス・アストラナガンへと何度目かになる衝突を挑む。

 キャリコはブレードホイールを展開し、ブレードに内蔵されたビームガン、肩のショットシザー、胸部のエネルギー砲、肩部のミサイルと全ての武装と技量を、ありったけの気力と闘志と共に叩きつける。

 その全てをクォヴレーは迎え撃ち、自らと機体の全力でキャリコを打破すべく、今、この瞬間だけはユーゼスの事さえ忘れて、目の前の一瞬一瞬に全神経を集中させる。そうしなければならない敵であり、そうするべきだと彼の精神が訴えていた。

 

 キャリコとペルゲ率いる部隊を含め、ユーゼスは手駒の部隊が劣勢に陥っている光景を無感情に眺めていた。

 彼のディス・ジュデッカもアルトアイゼン・ブルクとデメルング・ヴァイスリッターを筆頭とした部隊の猛攻を受けて、巨体を大きく揺らしている。

 

(これが真化融合……。霊子の融合か。霊力の科学的解明はゼ・バルマリィでも成し遂げていたが、ガンエデンシステムもあるいはこれに近いものがあったかもしれん。

 別世界の私が成した超神ゼストとアダマトロンも機体と自身の融合という意味では、真化融合の亜種と言えよう)

 

 真徒達からZ-BLUEのデータを提供されていたとはいえ、直に真化融合を果たした者達の力を感じ、分析し、解析する中でユーゼスは仮面の奥でほくそ笑む。

 情勢を見れば、彼が徐々に追い詰められているのは確かだというのに、それでも彼には目的達成に確実に近づいているという歓喜があった。

 

(お前達の力だけでなく、その質が高いとなれば異なる世界への扉を開くのに必要なエネルギーをより良く得られる。ディス・ジュデッカも所詮は踏み台に過ぎないのだから。

 だが、これは賭けでもある。私の思惑のみで行った計画では、お前達には勝てん。私はそういう存在だ。故に、我が命運を私の手の及ばぬところに預ける。

 お前達が私を滅ぼし、我が野心を摘み取れたなら、粛々とそれを受け入れよう。しかし、私が賭けに勝ったなら、その時は私が全てを手に入れる為の第一歩を喜びと共に踏み出そう)

 

 ただし、運を天に任せるという判断は、OG世界のユーゼスが既に通った道ではあったが。

 

<続>

 




この世界に来たユーゼスは、一回負けているしな、と心の片隅で自覚はしています。なので、出たとこ勝負の運任せ要素を計画に組み込み、賭けに勝てれば今回はイケる、と判断する事にしています。どっかのユーゼスと同じ轍を踏んでいるようなものです。


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第百三十九話 ガンダム、仮面ライダー、??????

かなり急ぎめで進めております。


「なんとぉおー!」

 

 シーブックは気合の叫びと共に、ビーム・ザンバーをヴァルク・ベンの頭蓋へと叩きつけ、ヴァルク・ベンが盾代わりに掲げたツイン・ホイール・バスターは、枯れ木よりも呆気なくするりと斬られ、そのままヴァルク・ベンを綺麗に真っ二つにしてのけた。

 と同時にF97-X1の左腕に握られたスクリュー・ウェッブが、背後を取ろうとしていた別のヴァルク・ベンの首を抉っていた。

 さらにシーブックを援護するセシリーのビギナ・ロナのヴァリアブル・メガビームランチャーとビルギットの量産型F91が同時に発射したヴェスバーが、オルガキャノンの発射体勢に入っていたアンティノラを消し飛ばす。

 

「おらおらおら! ご自慢の兵器もこの程度かよ、仮面野郎!」

 

『調子に乗ると痛い目を見る。それと喋り過ぎは舌を噛む。静かに戦いに集中するべき』

 

「波に乗るって知らねえのか? 戦闘中にジャズを流すパイロットが居たって話もあんだ。勢いに乗るのが大事な時もあンだよ! 覚えときな!」

 

 音声出力できるようになったALICEに対し、リョウはいかにも調子に乗ったヤンキーか不良軍人めいた笑顔と台詞で答えた。

 終始、こんな調子で戦っているが、きちんと真化融合の恩恵を受けて、Ex-Sガンダム・リョウ・ALICEの三位一体を成し、設計者の想定をはるかに超えたポテンシャルを発揮している。

 突出しがちなリョウをALICEがサポートし、それを更にマニングスのディープストライカーが更に強化された馬鹿火力を後押しして、ゴラー・ゴレム隊のバルシェム達を手玉に取っている。

 

 量産タイプの白いジュデッカは初代α版の第一地獄カイーナを使い、蜥蜴の口のような右上腕部に高エネルギーを収束させて、横一列に並んで高速でDC艦隊を目指して突撃を敢行する。

 地球圏にその名を轟かせる艦隊は、ユーゼス側がグランシャリオ以外に艦艇を持たない事もあって、後方からの支援に徹しつつ、時に前面に出て機動兵器を上回る火力で戦況を優勢に進めていた。

 

 その艦隊を狙うのは常套手段であり、成功すれば効果絶大である。十数機のジュデッカによる突撃は、スペースコロニーさえも容易く崩壊させるだろう。

 ジュデッカが群れを成して迫りくる光景は、本来、絶望的な破壊と死を予感させるものであるはずだが、今のDCには十分な対抗手段が複数あった。

 

「月光蝶を使うよ! あたしの前と後ろに来るんじゃないよ!!」

 

 ジュデッカの群れと艦隊の間に割って入ったのは、シーマのターンXだ。シーマの警告通り、ターンXは禁断の月光蝶を解放する寸前であった。

 人工物を分解するナノマシンを大量に放出し、さながら月光で出来た蝶の羽のように広がるソレらが、文明さえ崩壊させるのが月光蝶。

 

 この世界のターンXが発動するそれはマシンセルから改良発展させたナノマシンを用い、あらゆる物質の分子結合を崩壊させ、エネルギー兵器の類も分解・吸収する機能を備えた月光蝶亜種である。

 ターンXの背中から蛹より羽化する蝶のように月光の羽が広がる。それは全長数キロメートルを超えてなお広がり続けて、極彩色に煌めき、揺らめき、蠢き、艦隊を守りながらジュデッカの群れを正面から包み込んだ。

 

 量産型とは言えジュデッカに使用されているズフィルード・クリスタルは、その再生能力で月光蝶の分解能力に対抗できるはずだった。

 しかし、カイーナの攻性エネルギーを纏っているジュデッカ達の姿はどうだ。月光蝶に触れるや否やカイーナのエネルギーを跡形もなく吸い取られ、白い装甲は波にさらわれる砂の城のようにボロボロと崩れて行った。

 

 月光蝶の羽に包み込まれ、それぞれが繭となって閉じ込められたジュデッカ達の人身蛇体の巨躯は跡形もなく分解されていった。

 パイロット代わりに乗せられていた人工念動能力者の脳髄は、瞬く間に機能を停止し、量子波動エンジンの生み出していたエネルギーは、月光蝶を活性化させる新たなエネルギー源として吸収される。

 

「ほんとにコイツはモビルスーツでいいのかねえ? ターンX一機で一年戦争のMS全部を相手にしても、こりゃ楽勝だ」

 

 真化融合前からターンXを化け物MSと認識していたシーマだったが、極めて強力な機動兵器であるはずのジュデッカを、部隊単位でまとめて撃破して見せたターンXの性能には、改めて感服と畏怖の念を深める。

 これだけの機体を任せられた信頼に応えるという覚悟と、核兵器よりもヤバいものを預けるな、という二つの感情がシーマの中にあった。

 

 ジュデッカ部隊が月光蝶の繭の中で跡形もなく分解されるのを見届けて、レオンはジュデッカとは反対方向から艦隊に迫っていたバーンレプオス部隊に、いわゆる武装腕のビームライフルを向けた。

 ルビーがハガネのブリッジで専用オペレーターを務めている為、レオンにマンポイントによる機動の制限は存在しない。

 至高神ソルが自らの霊子と結びついて、自我を獲得して真化融合したように、レオンもまたガンダムReonと、そしてルビーの霊子と結びつき、リョウとALICEとEx-Sガンダムのような三位一体の真化融合に到達している。

 

 ガンダムバーンレプオスはオデルの乗機ガンダムアスクレプオスの二号機に相当し、地球人類を裏切ったクラーツの棺桶となった機体でもある。

 驚異的な性能を誇る名機ではあるが登場したタイミングと、投入された戦場があまりに悪かった。

 せめてクラーツの手に渡らず、バーネット兄弟やDCのパイロット達に渡っていたなら、バーンレプオスは人類の窮地を救った名機の一つとして、その名を歴史に刻んだだろうに。

 

 格闘戦特化のアサルトモードに変形したバーンレプオス達を、他のバーンレプオスが右手のアサルト・ベイオネットよりラピッドショットを発射して援護する。二つの形態を持つ強みを活かした役割分担だ。

 これに対し、艦体の展開する対空砲火に紛れながら、レオンはクラーツの養殖バイオ脳を乗せたバーンレプオス達の内、アサルトモードの機体から撃破に動いた。

 

 ガンダムReonのビームライフルは他のMS同様に、一射ごとの威力がコロニーレーザーもかくやの破壊力だ。アサルトモードに変形しようと、ガンダニュウム合金+チタニウム合金の装甲だろうと、当たれば撃墜される以外に道はない。

 いやはや、まったくもってバーンレプオスは敵とした相手が悪すぎたし、投入される戦場も悪いったらありゃしない。

 

 ゼファーファントムシステムの発展形であるレオンの正確無比な射撃により、ハイゴッグめいたアサルトモードのバーンレプオスは次々と跡形もなく消し飛ばされている。

 各艦艇の対空火器にしてもそれは同じ事で、実弾にしろパルスレーザーにしろ、たったの一発がMSどころか大型MAや敵性宇宙人の大型機動兵器さえ消し飛ばすレベルなのだ。

 本物のミケーネ神やアンゲロイ・アルカ以上の高次元存在の使用する機動兵器や、宇宙怪獣の大型タイプと言った強大な存在でなければ、艦隊に接近するだけでも自殺行為である。

 

 レオンはビームライフル側面に取り付けられたビームサーベルを振るい、全長五百メートル長の刃は迎撃の砲火を掻い潜ってきたバーンレプオス達を容赦なく真っ二つにする。

 距離を取っていたバーンレプオス達がランダム回避機動を取りながら、ラピッドショットの雨を降らす中、ガンダムReonの肩に接続されている板状のパーツが展開し、アンチファンネルシステムが起動する。

 

 どのようにファンネルを無効化するのか、原理はイマイチ不明なこのシステムだが、あの手この手で魔改造が施され、真化融合までした結果、ファンネルを始めとした端末兵器からバリアフィールドの無効化、更にはビーム兵器の無効・軽減化まで可能なとんでもない代物と化していた。

 アンチファンネルシステム(?)の効果範囲内に入ったラピッドショットが次々と無数の粒子へと分解され、無効化されてゆく中、ガンダムReonはシステムをカットすると同時に、機体頭部の額に内蔵しているハイメガキャノンを解放し、本来の性能をはるかに上回る威力を発揮した。

 戦場の一角を飲み込むハイメガキャノンの発射は、スペースコロニーの一基くらいは簡単に消滅させられると誰もが同意する破壊力と射程を見せるのだった。

 

 バーンレプオス部隊が壊滅する一方で、ハイドラガンダム部隊はヒイロ達コロニーのガンダムパイロットが相手取っていた。

 ウイングゼロのツインバスターライフルに最大の警戒を払いつつ、ハイドラガンダム達はバスターカノンとショルダークローを巧みに操り、特化機であるコロニーのガンダム達を相手に常に有利を取れる間合いで戦っていた。

 

 しかしヴァルダーのコピーであるからこその問題点として、唯我独尊、自分だけで戦ってしまう為、相互の連携が一切存在しない点が挙げられる。

 同じヴァルター同士でさえも連携をしないハイドラガンダム達に、ヒイロ達はツインバスターライフルを牽制と囮に利用し、ヘビーアームズ改の多種多様な火器がデスサイズヘルやサンドロック改から距離を取っていた機体に襲い掛かって、その動きを乱す。

 

 アルトロンの二連装ビームキャノンをシールドで防いだハイドラガンダムは、左右から伸びてきたドラゴンハングに腰と頭部を挟まれ、装甲が悲鳴を上げる間もなく挟み潰される。

 ヘビーアームズ改のミサイルの雨に対し、回避と迎撃を行っていたハイドラガンダムは、紙一重で回避したはずのミサイルを、サンドロック改のビームマシンガンが射抜いて生じた爆発に体勢を崩され、その隙を狙ったデスサイズヘルのツインビームサイズの一閃で、頭頂部から股間までを真っ二つにされた。

 トレーズのガンダムエピオンに勝つ為に作り出された機体といえど、技術のみをコピーしてヴァルダーの執念も傲慢もないバイオ脳では、これが限界だった。

 

 そしてダゴンドラガンダムもまた、アディンとオデルの二人を相手に徐々に押されつつあった。互いにPXモードをフル稼働させ、人体の底力を引き出しきって戦う三機は近づいては離れる流星のようだった。

 ダブルバスターカノンの奔流をグリープのバスターメガ粒子砲が真っ向から打ち破り、回避行動を取ったダゴンドラに対し、接近戦モードに変形したアスクレプオスがパイソンクローを展開して襲い掛かる。

 

 ギリシャ神話の医神の名を冠しながらも、かに座の怪物のような見た目になったアスクレプオスに対し、ダゴンドラはショルダークローと引き抜いたビームナギナタで迎え撃つ。

 四方八方から襲い来るショルダークローをあしらいながら、回転運動による絶え間ない連続斬撃を放つビームナギナタを、オデルは神経をすり減らしながら的確にさばき続ける。

 

「捕らえた!」

 

 振り下ろしの回転斬撃の軌道をはっきりと捕捉し、オデルはパイソンクローでビームナギナタを握るダゴンドラの右手を掴みとめ、そのまま超振動を発生させるクローで握り潰す!

 

「避けてくれよ、兄さん!」

 

 ダゴンドラが動きを止めたその瞬間を狙いすまし、グリープの構えたハイパーメガ粒子ランチャーが火を噴いた。

 元よりウイングゼロの五倍以上を誇るグリープの出力18,945kwが生み出す破壊の光は、グランシャリオでさえ一撃で貫通する威力だったが、真化融合を果たした今となっては、形容するのが難しいレベルの破壊力を発揮する。

 原型機より大幅に強化されている筈のダゴンドラが跡形もなく消滅し、ズフィルード・クリスタルの再生能力が意味を成さない程の破壊を齎したのは、確かだった。

 

 ペルゲは今の自分の最高傑作が消滅する姿を見届けても、その顔に焦燥や悔しさというものを浮かべなかった。

 彼ただ一人が乗り込むグランシャリオはロッシェのL.O.ブースターとブルムのテウルギストレオンの猛攻を受け、その巨体のそこかしこで爆発に次ぐ爆発を起こしていた。

 ペルゲはバーネット兄弟の父親を手にかけた仇だが、ロッシェとブルムからしてもOZプライズの裏切り者である。またあるいはアディンとオデルの手を汚させまいとする意図が、二人にあったのかもしれない。

 

「やれやれユーゼスの下に降ったのは間違いだったか。目先の欲に捕らわれて選択肢を間違えるとは、思慮が足りなかった、か。くくく」

 

 真化融合などというまるで想定していなかった事象が発生したとはいえ、自分の最高傑作が及ばなかった現実を突きつけられて、ペルゲはこの宇宙に広がる未知の技術、概念を手に入れられぬ悔恨を味わいながら、ブリッジに向けてビームライフルとドーバーキャノンを構える二機をモニター越しに見た。

 

「OZプライズを裏切り、人類を裏切ったペルゲ! スターダストナイツが裁きを下す!」

 

 ロッシェの裁きを伝える声にブルムも続いた。ペルゲに引導を渡す役目を他の誰にも渡すわけにはいかないと、声に籠る気迫が暗に伝えている。

 

「クラーツ共々地獄の底で悔いるがいい!!」

 

「ああ、悔いるとも。自分の見る目の無さと選択肢を間違えた事実をね」

 

 ペルゲはこの上ない悔恨を込めた言葉を零し、しかし改心をしているわけではない心のまま、グランシャリオと共に消滅した。

 

 

 順調にDCがユーゼスの部下達を撃墜し、戦いを優勢に進めている中、ディスの心臓を持つ二柱の機神は、黒き星の輝く白い宇宙を所狭しと駆け抜けて、もはや言葉を交わす必要のなくなったパイロット達の魂が吠え猛るままに戦っていた。

 Z・OブレードとZ・Oサイズの交差は既に数百を数え、二つのディス・レヴと量子波動エンジン、ティプラー・シリンダーは常時最大稼働して、機体性能の限界を更新しながら戦い続けている。

 

「クォヴレー・ゴードンン!!」

 

 四肢の一部のように自由自在に動くホイールが周囲を囲うガン・スレイブ達を弾き飛ばし、Z・Oブレードからの銃撃がディス・アストラナガンに襲い掛かり、クォヴレーはZ・Oサイズの柄部分からラアム・ショットガンを散弾モードで発射。

 迫りくるエネルギー弾の乱射の全てを撃ち落とす。

 

「キャリコ・マクレディ!」

 

 刃金の翼を羽搏かせ、黒金の銃神が宇宙を飛ぶ。因果律を超えた飛翔する蝙蝠の羽搏きは、見る間にディス・ヴァルク・バアルの首元へZ・Oサイズの刃を届かせた。

 それをキャリコは機体の左腕を犠牲にして刹那の時間を稼ぎ、機体にスウェーバックさせて死神の鎌を避ける。

 

 Z・Oサイズの刃が過ぎ去った直後、キャリコは自らの意思で宿敵と定めたクォヴレーへと、魂を込めた一撃を叩き込む。

 これまでで最も早く最も強烈なZ・Oブレードの突き込みが、ディス・アストラナガンのコックピットを正確無比に狙う。

 ブレードの切っ先が、ディス・アストラナガンの左わき腹を深々と斬り裂き、その代わり、ディス・アストラナガンがディス・ヴァルク・バアルの右腕を抱え込み、拘束に成功する。

 

「こなくそが!」

 

 これまでのキャリコからは考えられない罵声が飛び出た直後、ディス・ヴァルク・バアルの首の根元にZ・Oサイズの柄尻が押し付けられ、ラアム・ショットガンが立て続けに連射される。

 密着した状態で発射されたラアム・ショットガンに耐え切れず、ディス・ヴァルク・バアルの首がもげ、胸部も大きく破壊される。

 ディス・アストラナガンは、戦闘不能に陥ったディス・ヴァルク・バアルの腕を解放し、肩のパーツを変形させて砲身を形成する。

 

「メス・アッシャー! デッドエンド……」

 

「クォヴレー、ディス・アストラナガン、俺は!!」

 

「シュート!」

 

 二本の砲身から発射されたエネルギーはディス・ヴァルク・バアルの心臓部を貫いて、なにかを叫ぶキャリコの命運を断った。

 ほどなくしてパイロットの後を追い、爆発を起こすディス・ヴァルク・バアルを見送りながら、クォヴレーはわずかな哀悼の意を込めて口を開く。

 

「お前はユーゼスの傀儡という枠を超えて、確かな己を得ていた。俺に拘る必要もなかった。お前は自分が自由であると気付くべきだった。ただ、お前が俺に拘った気持ちは分からなくもないが、な」

 

 ペルゲとキャリコがそれぞれの終わりを迎える中、ディス・ジュデッカはシン・ソルを相手に惑星がいくつも崩壊するだけの攻撃の応酬を続けていた。

 ディス・レヴへの理解を深め、CPSをエネルギー供給機関として割り切り、運用する事で、ディス・ジュデッカの出力はかつて地上に降臨した時とは比較にならないほど向上していた。

 

「第一地獄カイーナ!」

 

 ディス・ジュデッカの四本の腕全てに膨大なエネルギーが収束し、イデオンソードと真っ向から撃ち合えるだけのパワーが宿る。

 これにシン・ソルも右手首から先をバーレイバー・サイズへ、左ひじから先をライアット・ジャレンチに変形させて応戦する。

 どちらも一撃で星を砕く破壊力を秘めた恐るべき攻撃が、神速で繰り出され、通常空間でこの戦いが行われていたら、余波だけで地球圏は壊滅していただろう。

 

「暗黒の奔流に飲まれるがいい。暗黒磁流渦(ダーケイン)!」

 

 ディス・ジュデッカの人面の口が大きく開かれて、宇宙規模の天災を思わせる暗黒のエネルギー流がまっすぐにシン・ソルへと襲い掛かり、シン・ソルは次元力の行使によって、その軌道上に一つの輝きを生み出した。

 

「太陽よ、在れ」

 

 誰が信じられるだろう。迫りくる暗黒の奔流をたった一言で生み出された太陽の輝きが受け止めて、相殺したなどと。太陽と暗黒の奔流がお互いを打ち消し合い、消滅する前から二機は次の動きを見せていた。

 ディス・ジュデッカはメイン以外にもサブとして搭載した七基の超小型量子波動エンジンを並列励起させて、機体の限界ギリギリまでエネルギーを絞り出す。

 

「そうでなくては、私が目をつけた甲斐がない。無限力を超え、宇宙の崩壊と再生をも超える為に、お前の力と権能は手始めに得るべきものなのだから。我が作る地獄を垣間見よ、最終地獄ジュデッカ!!」

 

 OG版では異空間に誘い込み、蚯蚓のような怪物達に襲われるのが最終地獄ジュデッカだが、こちらのディス・ジュデッカはα版からの進化を思わせる現象を引き起こした。

 四本の腕がそれぞれ邪神に捧げる神楽のように妖しく蠢き、やがて印を結ぶと機体の全身から増幅されたユーゼスの念が迸り、シン・ソルの巨体を包み込み、破壊の力に満ちた亜空間へと誘う。

 

「今のディス・ジュデッカならば太陽さえも砕けよう!」

 

 冷厳に告げるユーゼスは、もしかしたら次の瞬間に起きる現象を確信していたのかもしれない。シン・ソルを飲み込む暗い光に満ちた亜空間の内部から、微塵の苦しみもないシン・ソルの声が朗々と聞こえてくる。

 

「破界、再世、時獄、連獄、天獄。生きようとする意思、消滅しようという意思。絶望に屈せず、希望に縋らず、私達は生きる。宇宙よ、在れ! ジェネシス・ユニヴァース!」

 

 最終地獄ジュデッカによって作り出された空間を内側から破ったのは、正しく宇宙創造に匹敵するエネルギーだった。

 シン・ソルによって新たに作り出された次元力の宇宙! 飛び出す無数の銀河、数えきれない星々を前に最終地獄ジュデッカはあまりに無力だった。

 

「宇宙開闢、ビッグバンを起こしたか!?」

 

 ユーゼスは驚愕しつつもそれ以上の歓喜を叫びに滲ませていた。最大の攻撃を破られて、流石のディス・ジュデッカも一時的なエネルギー不足に陥る中、DCのメンバーはそれを見逃さなかった。

 

「ビクトリーストライク!!」

 

「エクリプス・ゴッドバード・アタック!!」

 

「計都羅喉剣・五黄殺・交殺十字!!」

 

「ツイン・バード・ストライイィイク!!」

 

「無敵コンビネーション……アタァックゥウ!!」

 

「Gソードダイバ~! 行きますよ~!」

 

 刹那に満たないディス・ジュデッカの隙を突いて、DCの誇るスーパーロボット軍団の必殺技が次々とディス・ジュデッカの巨体を砕き、罅を走らせてゆく。

 直接打撃系の攻撃が終われば、次に待っているのは圧倒的、絶対的と形容してもまるで足りない次元違いの超火力攻撃!!!

 

「照準補正よし、各員、耐閃光耐衝撃防御! ファイナルダイナミックスペシャルキャノン、発射!」

 

「マジンカイザーの全力だ! 必殺、超光子力ファイヤーブラスタァァア!!」

 

「無限の可能性を得た偉大なる魔神皇帝の力を受けて見ろ! サンダーボルト! インフェルノブレイカー!!」

 

「行くぞお、六つの心を一つに! ダブルゥウ、シャイニング、スパァアーク!!」

 

「宇宙の王者の力を見ろ! スペースサンダー……テラデイン!」

 

「ターゲットインサイト! ヴァルシオーラ、力を貸して、クロスマッシャー!!」

 

「ヒュッケバインの全力だ! フル・インパクトキャノン!」

 

「メガZが俺達に力を貸してくれる! いっけぇえ、ハイメガキャノン!!」

 

「ヴァルシオー、貴方の底力を見せる時ですわよ! 見栄を張って、意地を見せなさい! ブラックホールキャノン、マキシマムファイア!!」

 

 更に数多くのMSとMA、残る艦艇とスーパーロボットからもありったけの攻撃が加えられ、ディス・ジュデッカを原子さえも残さず破壊するかのような勢いだった。そして、最後に発射されるのは無論──

 

「テトラクテュス・グラマトン……胎動せよ、ディス・レヴ!!」

 

 銀髪を青く染めたクォヴレーは真化融合により、更なる高次元への干渉能力を獲得したティプラー・シリンダーとディス・レヴをオーバードライヴさせていた。

 通常空間で使えば、その性質上、単一宇宙のみならず多次元宇宙全域に影響を与える、自ら並行世界に危機を齎しかねない一撃であった。

 

「イングラムに代わり、俺がお前に引導を渡す。アイン・ソフ・オウル、デッドエンド・シュート!!」

 

 胸部装甲を自らの手で開き、光り輝くディス・レヴよりエネルギー弾が発射され、既に全身をズタボロに破壊されたディス・ジュデッカへと着弾。

 直後にディス・ジュデッカを中心として巨大な魔法陣が描かれ、十個の中性子星が浮かび上がり、光をも超える速さで回転を始める。

 

 十個の中性子星が全て命中し、その力に耐え切れなかった敵を、ディス・レヴの力によって、敵機を全世界から存在を抹消し、虚空の彼方へと消し飛ばす『アイン・ソフ・オウル』。

 単純な耐久力や装甲の固さで抵抗できるタイプの攻撃ではない。CPSが完全に稼働していれば抵抗出来たろうが、既に死に体になったディス・ジュデッカに抗う術があろうはずもない。

 中性子星が次々と命中し、虚空の彼方へと体を消し飛ばされ、残るは首だけとなったディス・ジュデッカの中で、ユーゼスが叫んだ。ああ、どうしてその叫びには喜びと希望が溢れている?

 

「この時を待っていたぞ!!」

 

 異変はすぐに表れた。ディス・ジュデッカを中心に広がっていた魔法陣が反転し、十個の中性子星がディス・ジュデッカの口の中へと飲み込まれてゆく!!

 

「なに!?」

 

 これまで一度たりとも目にしたことのない現象を前に、クォヴレーが驚愕を露にする中、ディス・ジュデッカにこれまで叩き込まれた攻撃の残滓も同じように、口の中へと飲み込まれてゆくではないか。

 

「! 重力震、いえ、次元震を感知! これは?」

 

 所長がヴァルシオーの告げる警告を味方にも伝えた瞬間、ディス・ジュデッカの頭上に巨大な紫水晶が出現する。そしてディス・ジュデッカの口の奥から、仮面を被ったままのユーゼス本人が姿を見せたではないか。

 

「お前達の強さには心からの敬意を。感服したという他ない。そしてその強さ故に、私の目的は果たされる。特にクォヴレー、アイン・ソフ・オウルは極めて重要な一手だった。果たしてディス・ジュデッカが耐えられるかどうか、それが最大の問題だったからな」

 

「俺達の攻撃を利用したと? なにに使うつもりだ、ユーゼス!!」

 

「アイン・ソフ・オウルは全世界から敵の存在を抹消する攻撃だ。だが、私は例外となるのではないか? そう推論を立てていた。イングラム・プリスケンとクォヴレー・ゴードンが誕生するには、ユーゼス・ゴッツォの中でも『この私』が必要不可欠だからだ。

 私が居なければ並行世界の番人となるイングラムもお前も誕生しない。そのパラドックスが私を生かす、とな。もっとも攻撃のエネルギーそのもので私を殺す事は出来るだろうが。

 私にとって必要だったのは、アイン・ソフ・オウルが全世界に影響を及ぼすという一点にある。

 この世界は私が創造した存在と非存在の狭間、確率の雲の世界。そこにアイン・ソフ・オウルによる全世界への干渉が加われば、こういう芸当が出来る!!!」

 

「馬鹿な、あれは、彼らは!!」

 

 ディス・ジュデッカを中心に、この世界に突如として浮かび上がった光景に、ギリアムが信じられないと驚愕し、そしてソレがなんなのかを理解するヘイデスは言葉を失った。

 スパロボプレイヤーとしての記憶を取り戻した時と同等以上の衝撃が、彼の心を打ちのめしていたのである。

 

 ソレは宇宙恐竜ゼットンに敗れるウルトラマンの姿だった。

 ガッツ星人の手によって、磔にされるセブンの姿だった。

 ドロボンによってカラータイマーを奪われて無惨にしぼむジャックの姿だった。

 バードンに挑むも嘴で滅多刺しにされるゾフィーの姿だった。

 ファイヤーモンスの火炎剣により死亡する瞬間のエースの姿だった。

 ケムジラとの戦いで消耗し、バードンによって殺害されるタロウの姿だった。

 ブニョによって凍らされ、ノコギリでバラバラに解体されるレオの姿だった。

 エースにエネルギーを託し、長旅の消耗もあって死亡するウルトラの父の姿だった。

 ガタノゾーアの光線によって、石へと変えられて倒れるティガの姿だった。

 『AnotherGenesis』時空で崩御する寸前のウルトラマンキングの姿だった。

 

 これらはユーゼスが接続したウルトラマン達の世界のごく一部である。実際には無数のウルトラマン達の敗北する姿や死亡した瞬間の光景が、周囲には投影されている。

 そしてその数多の絶望の瞬間を切り取った画像から、光が、ああ! ウルトラマン達の光が、ユーゼスが胸元にしまい込んでいる右腕へ!!

 

「私は賭けに勝ったのだ!」

 

 勝ち誇るユーゼスが頭上高く掲げた右腕に握られている物体を見て、ウルトラマン達から光を奪い続けるソレを見て、ヘイデスは怒りと屈辱で思考を燃やしながら叫んだ!

 

「ユーゼス、貴様!! ウルトラマン達のカラータイマーを、命を奪ったかあああ!!!!」

 

 ユーゼスの握るソレは、まぎれもなくベーターカプセル! ハヤタ・シンがウルトラマンへと変身する為のキーアイテム、その模造品だ。

 

「そうだ! 私でない私は超神ゼストへと至る過程で、ウルトラ兄弟からカラータイマーを奪った! 結末が敗北であったとしても、その過程においてユーゼス・ゴッツォがカラータイマーを奪ったという事実が、因果が! この瞬間、私に味方をする!!」

 

 死亡したか、あるいは強制的変身が解除されるまで弱体化したウルトラマン達から奪った光=カラータイマー、先程までのスーパーロボット軍団の攻撃の残滓は、全て偽のベーターカプセルへと吸い込まれていたのだ。

 

「お前達の攻撃による膨大なエネルギー、アイン・ソフ・オウルによって繋げた異世界、素体となるディス・ジュデッカとヘルモーズのコア・ズフィルード・クリスタル! そして私と言う因果が、新たなゼストを誕生させる!!!」

 

 ディス・ジュデッカの頭上に出現した巨大な紫水晶──ヘルモーズのコアであるズフィルード・クリスタルは、ディス・ジュデッカを取り込み、損傷部分を埋め始める。

 戦場に居る誰もが今すぐユーゼスを止めなければと理解し、動き出す。だが、ユーゼスが悠長に自分の狙いを語っていたのは、既に彼らがどう動いても間に合わないからだ。自分が間に合ったからだ。

 

 スーパーロボット軍団の攻撃で死ぬかもしれなかった。

 アイン・ソフ・オウルによって、虚空の彼方へと消し飛ばされるかもしれなかった。

 だが、ユーゼスは死ななかった。こうして生き残った!

 そしてDCの足を止める為の時間稼ぎの最後の手駒もこの瞬間に至るまで、温存できた!

 まるで暗黒の太陽のような球体に変形したディス・ジュデッカの周囲に、巨大な、それこそ惑星よりも巨大な顔面のある手や足がワープアウトする。

 

「! 御使い共が接収したアンチスパイラルの無量大数艦隊か!?」

 

 その正体を看破したのは、やはりヘイデスだった。真化融合に至った彼らなら、撃破は容易な相手だが、それでも時間を浪費するのは明白。そのほんの数分にも満たない時間が、ユーゼスの目論見を完成させる。

 超神ゼストという格好のサンプルの存在により、ディス・ジュデッカ、ヘルモーズのコア、無数のカラータイマー、そしてユーゼス自身の融合は迅速かつ順調に進み、そして暗黒の太陽を内側から破って、ソレが姿を見せる。

 

「もはや神にも悪魔にも興味はない。私はそれを超えた。望めば宇宙の善悪を定める裁定者に。望めばあらゆる争いを鎮める調停者に。光の巨人達の命と因果律を支配する力によって、私は呆気ないくらい簡単になれるだろう。

 祝福せよ、絶望せよ。驚嘆すべし、沈黙すべし。今、新たな超越者が誕生した。超神ゼストを超え、光の巨人達を食らい、私は生まれた。我が名は……超神魔シン・ゼスト」

 

<続>

 

超神魔シン・ゼスト=(敗北・死亡経験のあるウルトラマン達 × ディス・ジュデッカ)くらいの強さ。

 

当初は超神魔ベリアルゼストになる予定でした。

 




どのウルトラマンも一回は負けておりますからね。
全てのウルトラマンの命が奪われたといっても過言ではないくらいに思っていただければ。
真化融合までしたプレイヤー部隊に相応しいラスボスを模索したらこうなりました。


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第百四十話 俺のものは俺のもの お前のものは俺のもの

 ソレは神と崇めるには禍々しすぎた。

 悪魔と忌避するには神々しすぎた。

 吐き気を催すほどに神聖で、目に映すのも憚られるほどに邪悪。

 誰もが思い描く理想の戦士像そのものの肉体は、ズフィルード・クリスタルの変質した装甲が覆っている。

 

 銀色を主体とし、新鮮な血を思わせる赤色と光を飲み込む闇を思わせる黒が五体の所々を彩っていた。その姿はスーパーロボット大戦30にダウンロードコンテンツとして参加した、ULTRAMANの『ULTRAMAN SUIT』を彷彿とさせる。

 超神ゼストとは異なり、絶対の守護を約束する翼を背負ってはおらず、至高の玉体に守りなど不要という強烈な自負の表れだろうか。

 

 その頭部はユーゼスの仮面をそのまま巨大化させたものだが、外縁部に命を奪われたウルトラマン達の眼が片方ずつ円を描くように配置されている。シン・ゼストの生誕の為に捧げられた生贄達をモチーフとした装飾であるのならば、この上なく悪趣味な代物だ。

 分厚く盛り上がった胸板には初代ウルトラマンを思わせるシンプルなカラータイマーが存在を主張しているが、そこに宿るのは光でも闇でもなく、白でも黒でもなく、灰の色彩であった。

 ウルトラマン達から奪った無数のカラータイマーを、ズフィルード・クリスタルによって吸収し、融合させたものだ。カラータイマーと呼んでいい代物かどうか……

 

「まるで宇宙が巨人の形になったようですわね」

 

 観測しきれないシン・ゼストのエネルギー総量を前にして、所長は嘆くように率直な感想を零し、それを耳にしたヘイデスは怒りの収まらぬ顔のまま、強がりを口にする。

 

「それならグレートガンバスターと同じさ。違う世界の地球人類の手で作られた機動兵器と同じレベルなら、地球人類の手で破壊できない道理はないよ」

 

「貴方がそこまで怒りを滲ませるのも、焦りを隠そうとするのも初めてですね。ま、勝つしかないのは変わりませんわ」

 

 心の底まで見通す妻の慧眼に心服しつつ、ヘイデスの心中は所長の指摘通り焦りの荒波に揉まれている。複数のウルトラマン達の命が奪われたのはもちろん衝撃だが、まさかウルトラマンキングの命まで奪われるとは!

 ヘイデスが前世で死亡した頃でも、遂に全貌が明らかにはならなかった、ウルトラマン最強の一角、困った時の切り札と言うべき存在が崩御する寸前だったとはいえ、その力を奪われたのは、フルパワーのイデオンを敵に回すのと同じくらいの恐怖をヘイデスに与えている。

 

 今もユーゼスが召喚した無量大数艦隊のムガン、アシュタンガ級、ハスタグライ級、パダ級が数千単位で出現しており、それらを相手にしながらDC全機の警戒はユーゼス、いや、シン・ゼストへと注がれている。

 通常空間に存在していたなら、宇宙そのものと言える圧倒的エネルギー量により、星々の動きに影響を与え、宇宙の運行に支障を来していただろう。

 

 それだけのポテンシャルがウルトラマン達にはあり、それを吸収して解析し、生誕の為に充当したシン・ゼストが、それ以上の力を発揮するのは至極当然のことであった。

 イデオンによる宇宙の破壊と再生すら乗り越えられる力を得て、しかし、それでもシン・ゼストが口にしたのは、新たなる渇望だった。

 

「足りないな」

 

「なに?」

 

 あれだけのウルトラマン達から命を奪っておいて、シン・ゼストが口にした言葉を耳にして、ヘイデスは反射的に腹の底から唸るような声を出していた。

 

「十重二十重と策を弄し、可能性を紡ぎ、望んだ力だが、こうして手に入れてみれば、高揚感も達成感も一瞬で過ぎ去るものだ。だが、この力を手に入れて分かった事もある。

 私が真に望む領域に達するには、まだまだ力が足りていない。漠然と推測していただけの、更なる高みに存在する者達のより正確な力の把握。このシン・ゼストもまた通過点の一つに過ぎないのだ。

 だが、次のステージへ進む為にも、手に入れたばかりの力を十分に扱えるようにならなくてはな。まずは慣らしを済ませてから、次の力、更なる高み、より良き進化を求め続けよう。 無限力、アカシックレコード、繰り返される破壊と再生、輪廻転生の理を超える為に」

 

 果て無き欲望、飽くなき渇望、止まらぬ夢……シン・ゼストの言葉に、ヘイデスだけでなくDCのメンバー全員が大なり小なり表情を歪める。

 ユーゼスがシン・ゼストに至るまでの間、これまで渡り歩いてきた宇宙で多くの犠牲を強要してきたのは明白だ。そしてこれからも彼は、彼の望みのままに人を、世界を、無限に犠牲にし続けるだろう。

 

「へん、俺達だけじゃなく他所の世界の人々にまで迷惑をかけて、奪った力で強くなってなんになるってんだ。格好悪いぜ、ユーゼス!」

 

 シン・ゼストへと真っ先に啖呵を切ったのは、甲児だった。超光子力モードを維持しているマジンカイザーもまた、パイロットと同じ思いで神の如き威容を誇るシン・ゼストを睨んでいる。

 

「なるほど、一理あると認めよう。だが他者の力という点では、他者の作り出した機動兵器を扱うお前達が、それほど偉そうに言えた義理はあるまい。それでもお前達なら一方的な簒奪と託されたのでは違う、と反論するだろうな。

 ここに至って対話は意味を成さない。私とお前達の目的はお互いを滅ぼさなければ達成されないのだから。

 それでも、お前達を滅ぼす前に言っておこう。シン・ソル、ディス・アストラナガン、マジンエンペラーG∞、お前達によって私のCPSの機能は相殺されて、実質無効化されている。お前達が居なかったら、この姿になった段階でお前達を抹消する事は容易かった」

 

 ゆっくりとシン・ゼストが両腕を上げ、腰を落とし、初代ウルトラマンを彷彿とさせる戦闘態勢を取る。無量大数艦隊も攻撃を再開し始め、DC各機との戦闘が激化の一途を辿る。

 シン・ゼストとの戦いで初手を取ったのは、シン・ソルだった。両手を大きく広げ、その間に無数の光球が生じる。一つ一つが恒星級のエネルギーを秘めた次元力の結晶だ。

 

「ゾディアック・ブラスト!」

 

 これに対してシン・ゼストは左腕をまっすぐ突き出し、右腕の肘を立てて何かを投擲する体勢を取った。彼の右手の中にギザギザの刃を備えた光輪が見る間に生み出され、勢いよく投げられる。

 

「ジェアッ!!」

 

 輪の中心が空洞の光輪──八つ裂き光輪だ。ウルトラスラッシュとも呼ばれる光の輪は、シン・ゼストの手から放たれると見る間に巨大化し、更に分裂してその数を増やす。

 直径一千メートルを超す八つ裂き光輪は十二個に増えて、迫りくるゾディアック・ブラストと正面激突し、巨大な光の爆発を起こす。

 その間にもザンボットインビンシブルのイオン砲、アンジュルグのファントムフェニックス、各MSのメガ粒子砲が殺到し、それよりも速く、光よりも速く、シン・ゼストが動く!

 超光速で動く四百メートルの巨体が真っ先に襲ったのは、先程啖呵を切った甲児の超光子力マジンカイザー! 甲児と機体が反応するまもなく放たれた拳がマジンカイザーの顎をかち上げ、更にその胴体に回転蹴りが叩き込まれてはるか彼方へと吹き飛ばす。

 

「ぅぁっ!?」

 

「甲児君!!」

 

 咄嗟にグレンダイザーテラが受け止めるも、勢いを抑えきれずに更に数百キロメートルも吹き飛ばされる。蹴りを放った姿勢のシン・ゼストの右から、慣性を無視した超機動で真ゲッター1が、反対側からは真ゲッタードラゴンがトマホークを振り上げて迫る。

 今のゲッターロボならば月サイズの物体を両断するのも容易いだろう。

 その刃をゼストの両腕から放出された光の剣が真っ向から受け止める。

 色や形状から判断して、右手はネオスのウルトラライトソード、左手はグレートのグレートスライサーだろうか。

 

「こいつ、ゲッターのパワーでも押し切れないのか!」

 

「いかん、退くぞ!」

 

 揺るぎもしないシン・ゼストのパワーに竜馬が驚きの声を上げた直後、達人の警告と共に二機のゲッターはシン・ゼストに押し負けて大きく吹き飛ばされた。

 

「もしもウルトラマン達が助けに来ると考えているのなら、それは無駄な事だ。彼らならばこの閉鎖世界にも干渉できるだろうが、それは今すぐの話ではない」

 

 シン・ゼストは淡々と現実を口にしながら、光剣を消して腕から次々と新たな光線を発射し始める。

 レオのシューティングビーム、ティガのハンドスラッシュ、コスモスのコズミューム光線、ジャスティスのビクトリューム光線……多種多様なウルトラマン達の光線技が無尽蔵なエネルギーの下、本家を上回る威力で放たれて、惑星破壊級の猛威が溢れかえる。

 

「この威力、それにエネルギー量!! 間違いない、奴も真化融合を果たしているのかっ」

 

 アムロとRνガンダムの組み合わせでさえ、完全に回避するのは困難な光線の乱舞を受けて、次々と機体や艦艇が被弾し始めて、爆発音や装甲の砕ける音、フレームのひしゃげる音が閉ざされた世界に響き渡る。

 

「それでも僕達のような真化融合ではない筈! ハーデスやズールと同じ歪んだ真化融合だ」

 

 アムロの認識に訂正を入れるヘイデスだが、それはどちらかというと彼の願望が大きく含まれた言葉だった。それでもこれだけ圧倒的な力を発揮しているのは、素体の能力差が出てきているのだろう。

 ディス・ジュデッカ、ディス・レヴ、量子波動エンジン、成長途中だったとはいえリュウセイ・ダテを圧倒した念の使い方、そして無数のウルトラマン達の命。

 重要なのは奪われたウルトラマン達の命に、彼らの意思は含まれておらず、シン・ゼストを生み出すにあたり、ユーゼスの邪魔を一切しない事だ。

 

 善の為にではなく、ベリアルのように自分の為にでもなく、力を奮う意志もないウルトラマンの命達は、ユーゼスの意思に染まり、彼の命となっている。

 死ぬ寸前だったウルトラマン達の命は、ディス・レヴと量子波動エンジンから活性化するのに十分なエネルギーを供給され、ズフィルード・クリスタルと融合し、シン・ゼストという新たな形を得た。

 その為に、シン・ゼストの内部からウルトラマン達の意思によって、ユーゼスに反旗を翻す可能性は絶無である。

 

「ヘイデス・プルート。世界の枠の外からやってきたかつての観測者よ。お前の定義する歪んだ真化融合とはなんだ? 正しい真化融合とはなんだ? それを決めるのはお前達の世界で我々を創造し、設定したものか?」

 

「それは……」

 

「ある意味でお前以上に興味深い存在はない。お前は我々より根本的に高次の存在だったのか、それともそうだったという前提で生み出された我々と同じ次元の存在なのか?」

 

「……」

 

「お前自身もその答えを知らないようだ。ではこう問おう。光の国の巨人達はかつて地球人類と似た姿をしていた。彼らが種族単位で宇宙最高峰の存在となったのは、人工太陽プラズマスパークの発するディファレーター光線の影響だ。

 彼らにとっても想定外の副作用によって、彼らは神の如き力を得たわけだが、いわば事故によって超越的存在となった彼らの進化は歪んだものか? 正しいものか? 少なくとも彼らは進化しようとして進化したわけではないはずだ」

 

「それは、僕にも分からない。だが、その後の彼らの行動は紛れもなく善いものだ。それしか僕の答えはない」

 

「正義とは言わず善いものと表現するか。お前の知識と認識にばかり興味をそそられていたが、少しはお前の人格にも興味を抱くべきだったかもしれん」

 

 だがそれももう遅いと、シン・ゼストは光線の勢いをさらに加速させる。

 

「ゼァッ!!」

 

 多彩な光線技にDC側が翻弄され、反撃もままならぬ中でわずかな隙を見出したゼファーW0ライザーが、トランザムを発動して両腕のGNソードを重ねて一気にエネルギーを放出する。

 三十万キロメートルを超すライザーソードに対し、シン・ゼストの両腕が高熱のエネルギーに包み込まれ、そのままライザーソードの刃を滑らせるように受け止める。エースのフラッシュハンドであろう。

 

 そうしてシン・ゼストはそのままゼファーW0ライザーへと肉薄! ライザーソードではシン・ゼストにダメージを与えられないと察したゼファーがライザーソードを解除し、回避行動を取ろうとした瞬間、目の前にまで迫ったシン・ゼストが両腕を振るう!

 フラッシュハンドからの流れるようなウルトラ霞斬りとフラッシュチョップだ。直撃すれば、ゼファーW0ライザーの装甲は薄紙のように切り裂かれるだろう。だが、シン・ゼストの両手は、量子化したゼファーW0ライザーをとらえきれずに、虚空を斬った。

 

 かろうじて量子ジャンプによる回避が間に合ったゼファーW0ライザーだが、六百キロメートル以上離れた空間に出現した機体の胸元には、一文字の傷が刻まれていた。

 シン・ゼストは振り返る暇もなく、ヴァイシュラバとソウルゲイン、ツヴァイザーゲインの襲撃を受ける。初代ウルトラマンの十倍を誇るシン・ゼストに対し、三機はあまりに小さかったが、今さらサイズ差で躊躇する面子ではない。

 

「てめえはここで叩く。御使い共よりも厄介な奴を、世に出すわけにはいかねえ!」

 

「ツヴァイよ、その全てを出し尽くせ!!」

 

「限界を超えろ、ソウルゲイン! オーバードライブ!!」

 

 卓越した格闘技能を誇る三機の猛ラッシュに晒されて、シン・ゼストはその巨体にもかかわらず互角以上に渡り合う。時折ヴァイシュラバ達の拳や蹴りが巨体に命中しても、わずかに火花を散らすだけで、ダメージが入ったようにはまるで見えない。

 シン・ゼストは腹に突き刺さったツヴァイザーゲインとソウルゲインの拳を弾き返し、首筋に叩き込まれたヴァイシュラバの手刀をその首と肩で易々と挟み込む。

 

「私が命を奪ったウルトラマン達の世界は、同じ時空連続体に属しているわけではない。同じ世界の時間軸で、何度もウルトラマン達の命が奪われる事態が発生すれば、彼らが警戒を深めるのは想像に容易い。

 彼らならば強奪を防ぐ術を模索し、奪還の術を見つけ出すのは明白だ。その為に私は一人のウルトラマンごとに、異なる世界から一つずつ命を奪った。

 ウルトラマン達にとって命のやり取りは比較的容易なものだが、我ながら手間をかけたものだ。それだけ彼らに怯えていた証左でもある。ふふ、我ながら臆病なことだな」

 

 シン・ゼストの左拳がヴァイシュラバの腹部に手首までめり込み、ウルトラマンのような銀色の肌を持つ巨体を吹き飛ばす。

 ツヴァイザーゲインにもエネルギーを宿した右回し蹴りを叩き込み、ソウルゲインにはレオチョップが叩き込まれて、EG合金を砕いてはるか下方へと叩き落として行く。

 ヴァイシュラバ達が離れた瞬間、ヴァルシオー、バーサルヴァルシオーラ、ヴァルシオーマ達、更に各艦からの砲撃が殺到するも、シン・ゼストに逃げる素振りはない。

 腕をL字に組み、やはりウルトラマン達の命ばかりでなく技も盗んで、光り輝く破壊光線を放った。マックスのマクシウムカノンだ!

 

 マクシウムカノンで迫りくる攻撃を薙ぎ払い、発射し続けたままシン・ゼストは光速で飛翔し始める。

 まだ残っている無量大数艦隊の攻撃も決して無視できない中、ムガンやアシュタンガ級を巻き込むのにも構わずマクシウムカノンの放射は続き、余波だけでも各機にダメージを与えてゆく。

 

「ウルトラマン達の力ばかりではないぞ。第三地獄トロメア!!」

 

 ウルトラマン達が持つ超能力によって増幅された念が迸り、マクシウムカノンの発射姿勢を解いたシン・ゼストから、数十にもなる黒いジュデッカの形をしたエネルギー体が飛び出す。

 メギロートを召喚していた時とは比較にならないエネルギー総量は、もはや言うだけ無駄だろう。攻撃の為だけに作り出された黒いジュデッカ達は、それぞれがディス・ジュデッカ並みのエネルギー量だ。

 それらがシン・ゼストと共に動き出し、この閉ざされた決戦場を飛び回り、次々と襲い掛かってくる。さしものDC側も相互に連携し、支援を重ねなければ無事では済まない猛攻がひっきりなしに続いている。

 ウルトラマン達の力に馴染む為、シン・ゼストは一つの攻撃方法に拘らず、様々なウルトラマン達の技を試してゆく。

 

「ゼペリオン光線、メガスペシウム光線、ナイトシュート。次はメタリウム光線、ストリウム光線、フォトンクラッシャー……。

 ウルトラマンとはいえ、個体ごとにここまで大きく個性が出るとは面白い。最強の一を極めるのも面白いが、百の多様を求めるのも愉快なものだ」

 

 戦闘中とは思えない実験中の科学者の意見を口にするシン・ゼストに、刃金の翼を羽搏かせてディス・アストラナガンが襲い掛かる。

 

「アイン・ソフ・オウルが通じないからといって、貴様を討てないわけではあるまい!」

 

 フルドライブするディス・レヴとティプラー・シリンダーから供給されたエネルギーが、肩パーツの変形した砲身へ流れ込み、メス・アッシャーとして発射される。

 バリアも張らず、持ち前の装甲だけで受けて、わずかに生じた傷も刹那よりも早く再生し、シン・ゼストは第二射を放とうとするディス・アストラナガンを見る。

 

「命が尽きるまで諦めないのは、お前達のような存在に共通する強さだな。ウルトラマン達に対し、お前はイングラムほどの思い入れもあるまい。お前を永劫に縛るその役目から解放してやろう」

 

 シン・ゼストは体内で溢れかえるエネルギーをバーストストリームへと変えて、ディス・アストラナガンへと放つ。

 それは本来ウルトラマンガイアとウルトラマンアグルが協力して放つ合体攻撃だが、ほぼすべてのウルトラマンの命を奪い、融合したシン・ゼストは単独で放てるのだった。

 メス・アッシャーと真っ向から激突し、見る間に押し切ってくるバーストストリームに、クォヴレーの表情が歪み、冷たい汗が浮かび上がる。

 

「クォヴレー!」

 

「ちょっとヤバめだわね、これ!」

 

 焦った声を出すゼオラとシリアスに顔を引き締めたエクセレンが、乗機の最大火力をバーストストリームへと叩き込み、メス・アッシャーと合わせてどうにか爆散させることに成功する。

 その間にシン・ゼストへはアルトアイゼン・ブルク、フレッサービルガーが一斉に挑みかかっていた。

 

「自分達の間合いなら勝てると思ったのか?」

 

 フレッサービルガーの光子力の大鋏をシン・ゼストの右腕のスマッシュビームブレードがあっさりと受け止めて、左腕に握られたベリアルデスサイズが、アルトアイゼン・ブルクのリボルビングバスターをやすやすと弾き返す。

 

「ジャッ!!」

 

 更にベリアルデスサイズが振るわれると、その刃に酷似した光刃が次々と放たれて、二機の装甲を瞬く間に切り刻んでいった。

 

「キョウスケは、やらせませんの!」

 

「ここまでデタラメにやられると、厳しいわね」

 

 アルトアイゼン・ブルクとフレッサービルガーの首を刎ねようとするシン・ゼストに、ペルゼイン・リヒカイトのライゴウエとヴァイスセイヴァーのソリッド・ソードブレイカーの砲撃が襲い掛かり、巨人の巨体をわずかに揺らす。

 

「ありったけの光子力エネルギーだ。全弾持っていけ!」

 

 アルトアイゼン・ブルクがデモリッシュ・クレイモアを叩き込み、シン・ゼストに更なる衝撃を与える間に、アルトアイゼン・ブルクとフレッサービルガーは離脱に成功する。

 ヒュッケバインガンナーのフルインパクトキャノン、ヤザンのマスクコマンダーのビームスマートガン、イングリッドのF97クアンタのGNバスターライフルが立て続けに命中して行く。

 

「超電磁タツマキィイイイイ!!」

 

「超電磁ボォォォオオル!」

 

 更にシン・ゼストの動きを拘束せんとコン・バトラーV6とボルテスⅦがありったけのエネルギーと根性を振り絞って、超電磁エネルギーの塊をぶつける。

 まずは超電磁タツマキがシン・ゼストの巨体に絡みつき、次いで超電磁タツマキごと超電磁ボールが閉じ込める。

 吹き荒れる超電磁エネルギーと装甲材質を劣化させる超電磁ボールが、少しはズフィルード・クリスタルの装甲に効果を与える筈だ。その中でユーゼスは淡々と呟く。

 

「一筋縄で行かないのは、流石だな。次はこれでゆくとしよう。……ウルトラダイナマイト」

 

 それはウルトラマンタロウが一度使えば二十日も寿命を消耗し、放つ自爆同然の必殺技だ。

 シン・ゼストが一度組んだ両腕を開き、胸を張ると同時にシン・ゼストの全身が炎に包まれ、自らを拘束する超電磁エネルギーを食い破り、周囲数百キロメートルを巻き込む超エネルギーが溢れ出す。

 自爆すればビッグバンを起こすと言われた宇宙戦艦アイアンロックスの動力炉を、臨界させるよりも早く蒸発させるというとんでもない離れ業を成し遂げた代物だ。

 

 咄嗟に回避ないしは防御した機体が無視できないダメージを負う中、ウルトラダイナマイトの中心部からは無傷のシン・ゼストが姿を見せる。

 発動直後は多少のダメージはあったが、それもズフィルード・クリスタルの再生能力とウルトラマンの強靭な生命力により、瞬時に再生していたのである。その姿を見てデュオはやれやれと言いたげに、ヒイロへ話しかける。

 

「ヒイロ、ゼロシステムはどうやれば勝てるって言ってんだ? 不意打ち上等、大抵のことはやってやるぜ?」

 

「ゼロはなにも言わない」

 

「なに? ……つまり、勝ち筋が見つけられねえってわけか。ゼロシステムも存在しない未来は教えられねえよな」

 

「だが、ゼロは今も俺達の勝つ未来を探し続けている。諦めてはいない」

 

「ん? ははは、そいつはいいぜ。ゼロの奴も俺達の流儀に染まってきてんのか。ならシステムより先に俺達が根を上げるわけにはいかねえな」

 

 デュオは相棒と共に気合を入れ直し、再び光の速さで飛び回り、縦横無尽に暴れ回るシン・ゼストに死神の鎌を突きつけるべく、バーニアを点火し、ヒイロもまた勝利の未来を引き寄せるべく、天使の羽を散らしながら決戦場を飛翔する。

 既に無量大数艦隊は全滅させ、損傷した機体を母艦に戻して応急処置と補給を繰り返しながら、シン・ゼストとの戦闘が続いている。

 

 数多のウルトラマンの技を使い、DCに痛打を与え続けるシン・ゼストだが、彼にとってそれは全て新たな肉体のスペックを確かめる為のテストに過ぎなかった。

 奪ったウルトラマン達の命に対する敬意も感謝もなく、同時に軽蔑も嫌悪もなく、既に自分のものとして扱っている。

 

「アブソリューティアン、闇の巨人、デビルほむら、根源破滅招来体、宇宙怪獣の神グレートアトラクター、ユニクロン、インフィニットいろは……。

 まったく無限の世界にはどれほどの上位者が居るものか。かの者ら全てを超越する為にも、私は人間の持つ飽くなき欲望のままに力を求め、高みを目指し続けなければならない。

 そう完全無欠の完璧な存在となっては、そこで終わりだ。

 常に欠点を抱えながら、なおもより良く、より優れた存在になろうという人間の欲望を持ったまま、私は高みを目指し続ける。DCよ、我が最初の糧となれ!」

 

 そうして彼の振り上げた光刃を、ギリアムのゲシュペンストXNが構えるアイスラッガーが受け止めた。十倍以上のサイズ差がある中、驚くべきことにゲシュペンストXNは持ちこたえている。

 それはシン・ゼストにとって予想外の結果であり、彼は興味深げにゲシュペンストXNを見下ろす。コックピットに居る罪深き放浪者ギリアムも同時に。

 

「ほう? ただの真化融合とは異なるエッセンスを持っているか。いや、その力は……」

 

「かつて、俺はモロボシダンと、ウルトラセブンと共に戦った事がある。その時に結ばれた縁が、セブンの力をお前にではなく俺に宿してくれたのさ!」

 

 ギリアムの声と共にカメラアイを輝かせるゲシュペンストXNに、ウルトラセブンのビジョンが重なるのを見て、シン・ゼストは初めて不快そうな気配を発する。

 

「ならばセブンの力ごとお前を砕き、また異なる宇宙からセブンの力を奪うとしよう」

 

「させるものか! くらえ、エメリウム光線!!」

 

 ゲシュペンストXNの額装甲のシャッターが展開し、内部に隠されていたランプ上のパーツから、圧縮された高エネルギーがシン・ゼストのカラータイマー付近を穿つ。

 シン・ゼストはダメージを無視して、そのまま光剣を押し込んでゲシュペンストXNを彼方へと吹き飛ばし、ウルトラマンゼロのワイドゼロショットが追撃に放たれる。

 

「まだだ。この程度で敗れるウルトラセブンと俺では!」

 

 かろうじて機体を立て直すのが間に合ったギリアムは、機体の左ひざから先を失いながらも、アイスラッガーとリボルケインの二刀流を構え、シン・ゼストに衰えを知らぬ闘志の炎が宿った眼差しを向ける。

 いまだ敗北に屈さず、諦めていない者達はギリアムばかりではない。これまでの攻防でダメージを受けた各機が、パイロットの心が砕けぬ限り不死身の戦士となり、立ち上がる。

 

「私の実験にここまで根気良く付き合ってくれるとは、ウルトラマン達に代わって感謝の言葉を述べよう……」

 

 機体とパイロットがお互いを高め合い、更なる力を引き出して見せる眼前の素晴らしきサンプル達に対し、シン・ゼストは感謝の念すら込めて嘯き、そして我が身の内側から聞こえてきた声に、一瞬、凍り付く。

 

“ならば余からもDCとその協力者達に感謝の言葉を述べるとしよう。大逆者を誅する剣となってくれたのだから。そしてウルトラマン達には謝罪の言葉を述べねばなるまい”

 

「この、声は!? 貴様、ラオデキヤか? なぜ、私の中からお前の意思を感じる!?」

 

“お前は致命的な並行世界の記憶を持っていなかった。銀河辺境へと派遣された艦隊には、反逆者を裁く為に、オリジナルのジュデッカ・ゴッツォがヘルモーズのコアの中に封入されているという記憶を”

 

「!!!」

 

“そして反旗を翻した汝は余によって、天誅を下されて死した事を。汝が取り込みしウルトラマン達の力の学習が、ようやく終わった。ここまで戦い続けたDCの戦士達には惜しみなき賞賛を。そして余に気付かなかったお前には無限の侮蔑を”

 

 シン・ゼストが不意に痙攣すると同時に動きを止めて、背骨が折れんばかりに仰け反ると装甲の内側から光が溢れ出し、徐々に罅が走り始める。

 そしてカラータイマーの内側からも紫色の光が溢れ出すと、そこからまるでウルトラマンが出現したかのように、新たな巨人が出現する!

 

 それは新たなズフィルードであった。

 全高四十メートルほどとこれまでの個体と比べると小柄だが、五体はウルトラマン達を彷彿とさせ、手足や胸、肩にウルトラマン超闘士激伝の装鉄鋼(メタルブレスト)を纏ったかのような姿をしている。

 頭部がズフィルードのままであるのと、メインカラーが紫であるのを除けば、ウルトラ戦士の一人に見えなくもない。

 

「お、おのれ、お前は私の、傀儡のはずが、見誤っていたかっ」

 

 シン・ゼストの中から飛び出してきたウルトラマンモチーフのズフィルードのコックピットの中で、ラオデキヤは偽りの主人に対して、冷厳に答えた。

 

「しかり。我が真の主は霊帝ケイサル・エフェス陛下をおいて他にはない。そしてこの新しきズフィルードの力によって、DCと共に汝に鉄槌を下す。

 罪深きその魂に刻め、ズフィルード・ユーエムの名を!」

 

 『U』ltra『M』anにあやかり、ズフィルード・ユーエムといったところか。

 ラオデキヤの端正な顔は、真の主君より与えられた真の使命を果たせる誇りと喜びに輝いていた。

 

<続>

●ズフィルード・ユーエムが味方増援として出現しました。

●シン・ゼストが弱体化しました。

 

ウルトラマンベースのユーエムは非常に強力です。頼もしい味方が来てくれましたね。

またユーゼスが対策しているので、ウルトラマン達は本ステージクリアまでにやってこられません。私が扱いきれませんのでね、ご容赦ください。

 



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第百四十一話 次回、最終話

本当になんでこんなに長くなったのか。
2月中には終わらせますので、残りわずかですがお楽しみください。


 倒したはずのラオデキヤがシン・ゼストの中から出現した事や、彼が自分達の味方をするつもりであることに、DCメンバーは大なり小なり動揺を示すが、それ以上に動揺していたのは、やはり、シン・ゼストだろう。

 内臓を抉り出されたような痛みに悶え、前かがみになりながら、シン・ゼストは強い憎悪と怒りを込めた視線でズフィルード・ユーエムを睨んでいる。

 

「ユーゼス・ゴッツォよ。かつて自分がロンド・ベル隊の前に倒れようとも、彼らが霊帝陛下を討つ力になると、敗北すら計画の内に組み込んでいた汝の周到さ、用心深さを失くしたのは、数多くの世界を巡って力を得た故の傲慢さか?」

 

「ふ、ふふ、イングラム同様、お前もまた私と強き因果で結ばれた存在だが、よもやこの局面で私の思惑を超えた動きを見せるとは……これこそ悪因悪果だな」

 

 シン・ゼストは痛みをこらえてゆっくりと上半身を起こす。

 この間、DCが攻撃を加えなかったのは、ラオデキヤの真意を測りかねていたのと、その間にもシン・ゼストのエネルギー総量が低下している事、そして自軍の修理と補給、再編成を邪魔されずに進める為だった。

 

「汝の重ねた悪行が汝の道を阻む壁となるのだ。余という存在が、汝の傀儡としてではなく妨害者として結実したのが、なによりの証拠。

 そしてあれだけ対策を重ねていたクォヴレー・ゴードンを招き、ケイサル・エフェス陛下と同盟者に行動を決意させたのも、汝の過ぎたる邪念、悪心が招いた結果だ」

 

「ならば自らの行いによる失態は、自らの手で清算するまでだ。そしてお前の背後に居るケイサル・エフェスとその同盟者とやらも、私の手で滅ぼす好機を得られたのだ。ケイサル・エフェスの負の無限力も、我がものとしよう」

 

 さしものユーゼスも既にケイサル・エフェスが負の無限力と決別し、まったく想像もできない極めて特殊な無限力の自称使徒になっているなど、分かるわけもない。

 ラオデキヤはわざわざそれを伝える必要性を感じなかったので、主君に対するユーゼスの言葉への感想を端的に述べるにとどまった。

 

「不遜」

 

 シン・ゼストは全身の装甲に亀裂を刻んだまま、灰色のカラータイマーを強烈に輝かせて、減少したエネルギーを一気にリカバーしてみせる。もしゲームだったら精神コマンド『ド根性』、『気迫』が発動と言ったところか。

 対するラオデキヤもまた、ユーエムに戦闘態勢を取らせて、十倍のサイズを誇るシン・ゼストへと恐れ気もなく正面から突撃していった!

 

「ホゥアチョォオ!! ゥワタァア!」

 

 美しい曲線を描いて放たれたユーエムの右回し蹴りが、シン・ゼストのブロックした左腕を強烈に叩き、左の鉤打ち、右の直突きと淀みないコンビネーションが、傷だらけの巨人を強烈に打ちつける。

 

「ぬう! 速い、そして一撃一撃が重いっ」

 

 ラオデキヤの人物像からはちょっと想像の出来ない個性的な声に、思わずギョッとする者が多くを示す中で、ヘイデスだけは異なる反応を示していた。

 

「あれは、『勇者エクスカイザー』でドラゴンカイザーに合体した時にだけ聞ける、速水奨さんの中国拳法っぽい掛け声!! レアだよ、あれは!」

 

(ドラゴンカイザー? はやみしょう? ……どなたですの?)

 

 メインシートの所長は夫の口にしている名前がさっぱり分からなかったが、声色から判断するにかなりポジティブな反応だ。

 なんというか、会えると思っていなかった状況で憧れた相手に出くわしたファンのよう。それならば、まあ、この場で追及はしないでおいて、聞き流すのが最善手だろう、と判断する。

 

「堂に入っている動きだ」

 

「並みのカンフーではないぞ、あれは」

 

 機体の仕様から自身も卓越した格闘技の達人であるハレックと一矢は、ユーエムの動きを見て、感心した様子だ。

 ヴァイシュラバも、ほう、と一言漏らして、サイズ差をものともしないラオデキヤの技量にそそられている素振りを見せている。

 思わぬラオデキヤと新たなズフィルードの参戦を、DC側が警戒しつつ大いなる興味をもって見守る中、シン・ゼストはユーエムの殴打を強引に止めるべく動く。

 

「ズフィルードがウルトラマンの力を学習したというのなら、私はウルトラマンの力の集合体だ!」

 

 ユーエムの音速拳ならぬ光速拳を右掌で受け止めたシン・ゼストが、その姿勢のまま膨大なエネルギーの奔流を放ち、一気にユーエムを弾き飛ばす。どのウルトラマンの光線技とも異なる、念動力の混じったエネルギー砲だ。

 ラオデキヤが咄嗟にディフレクトフィールドを集中展開し、ダメージを軽減していたのは流石の技量である。銀河を横断する威力のエネルギー砲は、ディフレクトフィールドを貫通し、ユーエムの左肩のアーマーを余波だけで消滅させた。

 そのまま二千キロメートル以上を勢いのまま吹き飛ばされたところで、ユーエムが体勢を立て直し、両掌を合わせてシン・ゼストへと向け、眩い輝きがこの決戦場に溢れかえる。

 

「はあああ! オメガウェーブ!!」

 

 ズフィルード・ユーエムの量子波動エンジンに加えて、学習したウルトラマン達のエネルギーを融合・増幅させた光線砲に、シン・ゼストも奪ったウルトラマンの力の一つで応戦する。

 

「M87光線!!」

 

 両者の放つ光線技が激突し、無数の銀河を生み出すほどのエネルギーが拮抗状態を作り出す。周囲に飛び散る光の粒一つ一つが、新たな太陽や銀河の素になっても不思議ではないレベルだ。

 拮抗状態を十秒ほど継続してから、同時に光線技の放出を止めた両者に合わせて、DC各機も様子見を止めようとしていた。

 

 アンチスパイラルの遺産、無量大数艦隊は全て撃破し終えて、邪魔こそ入らないものの、超光速で移動するシン・ゼストの動きを捕捉するのは、未来を予測しようと予知をしようとも当てるのは至難を極める。

 文字通り光よりも速いのだから、ビームを撃たれてからでも回避できる相手は、DCの豊富な戦闘経験を鑑みてもそうはいない相手だ。

 

「だからって、攻撃しなきゃ始まらねえよなあ!!」

 

 猛る野生の本能のままに、忍はFUダンクーガの全火器を自分達と機体の本能に委ねて、照準をセットし、かまわずトリガーを引いた。

 普通なら流石に制止の声を掛けるアランや雅人も、今は忍と心を重ねているから、同じ決断をしている。

 ズフィルード・ユーエムの出現により、一旦、緩んでいた攻勢はFUダンクーガを切っ掛けにして、一気に苛烈さを取り戻す。

 

 予測も出来ない超光速の動きならば、光より速くとも間に合わない超広範囲に攻撃をバラまけばよい。

 あるいは回避方向を誘導して、シン・ゼストから攻撃に当たりに来るように連携し、策謀を巡らせればよい。

 それが出来るレベルにボスボロットを含め、DC各機とパイロット達は到達しているのだから。

 

 ウイングゼロとゼファーW0ライザーのゼロシステムが連携し、データを同期させて未来予測を勝利からシン・ゼストの行動パターンへと絞る事で、その精度を上げる。

 そうしてほぼ確定に近い未来予測の情報を部隊全員に共有する事によって、シン・ゼストへの対応力を一段も二段も引き上げて、支援する。

 暫定的にラオデキヤを味方として扱い、彼に攻撃が命中しないように配慮しつつ、あらゆるレンジからDCの機体は攻撃を加え始めた。

 

「こいつはお返しだ! 俺とマジンカイザーの全力、受け取れ!!」

 

「このまま押し切らせてもらう。弱った敵を見逃すほど、俺の目は甘くないぜ!!」

 

 二大魔神皇帝から熱線が、竜巻が、雷撃が、光線が発射され、それだけで星系一つ簡単に消滅させられるエネルギーが決戦場の一角を埋め尽くす。

 シルエットガンダム改とネオガンダム、量産型F91のヴェスバー、G-バードがシン・ゼストの装甲を掠めて罅を広げ、コープランダー改とガルバーFXⅡ改、デンドロビウムⅡの編隊がビームとミサイル、バルカンの雨を叩きつける。

 ガルバーFXⅡ改の20mmバルカンも、小惑星くらい容易く貫通する威力だ。

 更に総数百を超える各種ファンネル、インコムが本体との連携によって、シン・ゼストの包囲網を完成させ、被弾なしを許さない光の檻が容赦なくダメージを蓄積させる。

 

「ぬう、勢いに乗せてしまった、かっ」

 

 度重なる攻撃一つ一つのダメージは小さくとも、それが絶え間なく続けば不具合を起こしているシン・ゼストにとって、無視しえぬものとなる。

 そして動きを鈍らせるシン・ゼストに対し、無数の攻撃の隙間を縫って果敢に近接戦を挑む巨影がいくつもあった。

 ダイモス、フォボス、BBガルーダ、ギルディーン、ゴードル、コン・バトラーV6、ボルテスⅦ、エクリプスライディーン、ザンボットインビンシブル、グルンガスト改×2、デスサイズヘル、アルトロン、サンドロック改、F97-X1等々、DC自慢の近接格闘戦の名手達である。

 

「例え力の一部を奪われたとはいえ、この程度で敗れる私ではない。ウルトラマン達の力とは、それほど惰弱なものではない!!」

 

 シン・ゼストは時に拳に炎状のエネルギーを纏わせ、切っ先鋭い光剣を伸ばし、あるいは足に高密度のエネルギーを輝かせ、機体特性も動力も何から何まで異なるのに、一糸乱れぬ連携で怒涛の攻撃を重ねてくるスーパーロボットやMS達と渡り合う。

 ノイ・レジセイアにヴァイシュラバ、ツヴァイザーゲインといったラスボス経験者達も加わり、真化融合によって昇華されたパワーの全てを余すことなくシン・ゼストへと叩きつけて行く。

 

 内部からユーエムが出現した事で、素材の一つとしたヘルモーズのコアがなくなり、大幅に弱体化したとはいえ、今なお、シン・ゼストは宇宙規模の災厄に相当する超存在であるのに変わりはない。

 たった一つのミスをきっかけに、一気に逆転に持ち込まれて敗北する可能性は、まだ十分に残されている。

 

「ヒトのもんを黙って分捕るのはよくねえって、母ちゃんに教わらなかったのかよ!」

 

「ぐっ!?」

 

 威勢よく叫ぶモンシアのガンダムテルティウムのハイパーバーストランスがシン・ゼストの左頬を横殴りにし、その首筋にベイトのテルティウムが腰だめに構えたハイパーバーストランスで突撃してくる。

 

「背中ががら空きだぜ。突撃(チャージ)してくれって、言っているようなもんだ!」

 

 装鉄鋼の如き装甲こそ破られてはいないが、確かな衝撃がシン・ゼストの内部に浸透し、臓腑を揺らされるような感覚が、シン・ゼストを襲う。

 

「調子に……!」

 

 激昂のままにウルトラダイナマイトを放ち、全方位の敵機を攻撃しようとしたシン・ゼストに向けて、アデルとキースのZZガンダム・ジークフリートとジュドーとルーが乗るメガZ、更にガンダムレオンのハイメガキャノン一斉発射が襲い掛かった!

 

「キース少尉、照準は合わせていますね!」

 

「はい、目標、センターに捕捉!」

 

「ハイメガキャノン! いっけえええええ!!」

 

 ジュドーの叫びを皮切りに発射された複数のハイメガキャノンは、コロニーレーザーの二十パーセントなどと、ちっぽけな数値ではなくコロニーレーザーの十倍、百倍……それ以上のエネルギーを叩き出しながら、四百メートルの巨人を飲み込む。

 

「ぐ、ごぉおおお、まだ、まだあああ!!!」

 

 膨大なエネルギーの奔流の中から、全身に灰色の光を纏ったシン・ゼストが飛び出てくる。マルチバース間も移動可能なウルトラマン達の航行能力に、ウルトラマンキングやウルトラの父の命さえ取り込んだ超エネルギーが、これを可能にした。

 今の彼の細胞一つ一つが量子波動エンジン、ディス・レヴ、ウルトラマン達のエネルギーを内包した超物質だ。ユーエムの出現による不具合にも恐るべき速度で対応し、今、この刹那にも再構築と最適化を間断なく繰り返し、更なるパワーアップを進めている。

 

 全身にハイメガキャノンの残滓を纏うシン・ゼストの両腕と胸のカラータイマーから、様々な色彩の光線が放たれ、直撃を受けなくてもその余波だけで、シン・ゼストに攻撃を加えようとしていた各機にダメージを与えて行く。

 もはや無傷の機体と艦艇はただの一つもなく、自己再生能力を持つ機体であっても、再生が間に合わない状態だ。明確な死地に追い込まれ、シン・ゼストは虚飾をはがされた剥き出しの闘志と生存本能によって、驚異的な底力を発揮している。

 

「うわああ!?」

 

「く、くそお、まだこれだけの力を、どこから!!」

 

「ちいい、損傷のひどい機体は後方に下がるんだ! 最後の戦いだからって、無茶をする必要はないんだ」

 

 装甲が砕け、四肢のいずれかがちぎれ、あるいは内部からの爆発によって火を噴く機体が続出する中、五体を襲う苦痛に苛まれるシン・ゼストは腹の底からの叫びをあげて、決戦場そのものを揺らす。

 彼方に見える黒い星々さえも震わせ、全ての次元から隔絶されている筈の世界がいつ崩壊してもおかしくはなさそうだ。

 

「お前達と言う存在が、私の壁だと、改めて理解した! お前達の齎す苦痛が、私の生存本能を呼び覚まし、お前達の強さが、私に更なる強さへの渇望を抱かせる!」

 

 シン・ゼストが両腕を合わせて頭上へと振り上げ、その手から銀河団も容易く両断するだろう光の極大剣が伸びて行く。

 罅割れた装甲に覆われた五体の何処にそんな力が残っていたのか、ヘイデスも唖然として見上げる中、シン・ゼストは雄叫びをあげてそれを振り下ろす。

 

「おおおおおお!!!」

 

 シン・ゼストのあまりの勢いと気迫、エネルギー量に誰もの背筋に悪寒が走る中、振り下ろされる極大剣に向けて、ボルテスⅦが天空剣を、FUダンクーガが断空光牙真剣を、ゼファーW0ライザーがダブルライザーソードを、ヴァルシオーがライザーソードを叩きつけて、なんとか受け止めることに成功する。

 だが、膨大なエネルギー同士の衝突によるフィードバックは各機とパイロット達にダメージを与え、振り下ろしたシン・ゼストも受け止めている各機も尋常ではない苦痛の中に飲み込まれる。

 

「ぐうううううおおおおおおおお!!!」

 

 野太い声を上げて極大剣を押し込むシン・ゼストの右手の握りが、不意に緩んだ。その手首の装甲が深々と斬られていることに、斬られてから気付く。シン・ゼストは反射的に下手人を探し求めて、すぐに見つけた。

 大上段から大刀を振り下ろした姿勢のアシェル刃。これがシン・ゼストの右手首に切り傷を刻んだ下手人だ。

 

「異邦からの死者風情がっ」

 

「私達の事情も把握しているとは、貴方の見識は随分と遠い世界にまで及んでいるのですね。しかし、遠くばかり見ていると小石にも躓くもの。今まさに、そうなっているのではありませんか?」

 

「ぐううっ」

 

 ジンの指摘の通り、彼に斬られて握りの甘くなった極大剣はエネルギーの供給が減ったためにDC側の数々の刃に逆に斬り込まれて、逆流してきたエネルギーに耐え切れず、無数のガラス片のように砕け散る。

 次に行動を起こしたのはKOS-MOSとT-elosが乗るアインスト・ディナであった。

 T-elosとしては大変不本意ながら、真化融合によってKOS-MOSとも霊子を融和し、心を通わせた状態にある彼女らもまた、アニマの器無しでも凄まじいパフォーマンスを発揮している。

 これには大破していたアシェルからコピーしたエルデカイザーのジェネレーターを、アインスト・ディナにも搭載したのが一助となっているのが、大きな理由の一つだ。

 

「波動存在の器、その模造品か! お前達の世界に縛られた波動存在も、私の超えるべき壁、喰らうべき糧だ。お前達の存在を吸収すれば、お前達の世界の次元座標を特定できる!!」

 

「目標シン・ゼスト。最優先撃破対象へ再度設定。シオンの脅威となる存在を排除します」

 

「お前との真化融合とやらは甚だ不愉快だが、目の前のコイツをそのままにしておく方が不愉快さでは勝る。その点だけは妥協してやる」

 

 不愉快という感情をこの上なく顔面で表現しているT-elosには構わず、KOS-MOSはメインモニターに映るシン・ゼストへのロックオンを済ませる。極大剣が砕けた反動で、シン・ゼストが行動を再開するまで数秒の猶予があった。

 アインスト・ディナの蝶の羽を思わせる翼と胸部装甲が展開し、機体の中心部に圧倒的な破壊を想像させるエネルギーが生まれ始める。KOS-MOSとT-elosに搭載されている武装を、アインストテクノロジーで再現したものだ。

 不意にKOS-MOSがT-elosに声を掛けた。それはどこまでも柔らかな声色だった。

 

「T-elos、私は、私と貴女のどちらも失われること無く、共に存在できるのを好ましく思っていますよ」

 

 この状況らしからぬ台詞にT-elosは美しい眉を寄せたが、こちらを振り返ったKOS-MOSの右目だけが青く濡れているのを見て、更に表情をむすっとさせる。

 分かってはいたのだ。現在、彼女達はKOS-MOSという器の意思、T-elosの意思、アインスト・ディナの意思、そしてKOS-MOSの中に宿るマリアの意思の四つが融合していると。

 

「チッ、ロストエルサレムの古代人はお気楽でいらっしゃる」

 

「ふふ。……では、シオンの待つ世界に帰る為にも、この戦いに勝利しましょう」

 

 柔らかな声音から一転、KOS-MOSはいつもの冷淡な声色へと戻り、アインスト・ディナサイズに巨大化された相転移砲が発射される。

 

「D・TENERITAS」

 

 KOS-MOSとT-elosの持つ相転移砲の機構を再現した必殺技は、アインスト・ディナをブースターとして利用し、更に真化融合による恩恵を受けてその威力の桁を上げていた。

 真空の相転移現象を利用した兵装はシン・ゼストを直撃して、罅割れていた装甲の大部分を粉砕し、大ダメージを叩き込む。元より恒星破壊を可能とする兵装が、更に強化されたのだ。さしものシン・ゼストも無傷でいられる破壊力ではない。

 

「か……はっ」

 

 全身から装甲の破片を散らしながら、仰向けに倒れ込むシン・ゼストだが、完全に倒れるその前に足を踏ん張り、上半身を起こしてダメージの再生を再開し始める。

 

「第四、地獄、ジュデッカ!!!」

 

 細胞を構成する量子波動エンジンが悲鳴を上げるオーバーロードにより、エネルギーを絞り出したシン・ゼストから攻撃的な強念が全方位へと放射されると、それらは目の無い大蛇のような形状をとり、無数の群れとなる。

 これまではα時空の仕様だったが、それにOG時空の仕様が組み合わさったようだった。止めを刺すべく動き出そうとしていた各機に、強念で作り出された異形の大蛇達が襲い掛かり、頑なに接近を許さない。

 底力を振り絞るシン・ゼストの猛攻は、これだけで終わらない。原典にして至高のあの構えを取り、傷つきながらもまだ死んでいない彼の目の力強さが、ヘイデス達の背筋を凍てつかせる。

 

「スペシウム、光線!!」

 

 狙いは後方にて全力の艦砲射撃を続けている。ハガネを筆頭としたDC艦隊。FDSキャノンやガンドール砲ならば迎え撃てたかもしれないが、死に体からは信じられない急速なチャージにより、取れる選択肢は回避のみ。

 命中すれば一撃で沈みかねない初代ウルトラマンの光線技に割り込んだのは、ギリアムのゲシュペンストXNだった。シン・ゼストから百メートルと離れていない距離で、スペシウム光線の射線軸に割り込み、リボルケインの超エネルギーで斬り込んでゆく。

 

「シン・ゼスト、お前の命運が断たれる時だ!」

 

「永劫の放浪者よ! 己の旅の終わりを知らぬ者よ! 私の手で貴様の旅を終わらせてくれる!!」

 

 勢いを増すスペシウム光線の大奔流は、さしものリボルケインをもってしても受け止めきれないかと思われたが、逆に偽物のスペシウム光線を十字に切り裂きながら、ゲシュペンストXNが一気に距離を詰めた。

 

「そのパワーは、そのサーベルは!? 貴様も別世界の因果を!」

 

 シン・ゼストのパラレルワールドも観測する瞳は、ゲシュペンストXNに重なる巨大ヤプールの姿を見ていた。

 その巨大ヤプールはシロッコと同じくネオ・アクシズの三大幹部として、『ウルトラマンキングと同じ性質の光』を持つギリアムに本物の忠誠心を抱いた個体だ。

 シン・ゼストがアイン・ソフ・オウルの性質を利用して無数の世界と接続した瞬間、かつてギリアム=アポロン総統に忠誠を誓っていた個体の、その残留思念が彼に力を貸している。

 

 そしてギリアムに助力しているのはヤプールだけではなかった。ゲシュペンストXNの右手にはリボルケイン、左手には黄金の棘付きの護拳に真紅の刃を持つサーベル──サタンサーベルが握られていた。

 本来は秘密結社ゴルゴムが厳重に守護する聖なる剣であるが、その正統なる所有者の一人シャドームーンもまた、かつてはギリアムに忠誠を誓った『ヒーロー戦記』世界の個体が居る。

 そのシャドームーンが認めたからこそ、サタンサーベルはゲシュペンストXNの手にあり、おまけにMSサイズにまで巨大化しているのだった。

 

「お前達にだけ良い格好をさせるわけにはゆかないな!」

 

 そしてネオ・アクシズ三大幹部最後の一人、シロッコは明確に並行世界の記憶を取り戻したわけではなかったが、それでもギリアムに助力している何者かをよく知っているような気がして、思わずそう叫んでいた。

 ジ・O³の疑似太陽炉が唸りを上げてありったけのGN粒子を解放し、機体を赤く輝かせる。

 

 トランザム状態から放たれるGN粒子の奔流は、幅数百キロメートルにも及ぶ量を圧縮したものだ。圧縮されたGN粒子は四本の支流に分かれると、それぞれがシン・ゼストの四肢に渦輪となって絡みついて拘束する。

 シン・ゼストの星を砕き、銀河を割るパワーをも一時的に封じるGN粒子の封印は、ギリアムに一撃を叩き込ませるのに十分な時間を稼いだ。

 

「お前達が力を貸してくれたのなら、あえてこう叫ぼう。アポロンクラッシュ!」

 

 リボルケインとサタンサーベルがシン・ゼストのカラータイマーを中心に、X字状に交差して分厚い胸板を深々と切り裂き、砕き、多大なるダメージを与える。

 

「ぐうううううううぉおおおおお!?!?!?!?」

 

 今度こそ踏ん張る力もなく、ゆっくりと倒れ込むシン・ゼストへ戦いを終わらせるべく、ディス・アストラナガンとシン・ソルが最速の動きで迫る。

 ディス・アストラナガンの振り上げるZ・Oサイズは供給されるエネルギーによって、刃を巨大化させ、シン・ソルは両手の間に次元力によって大剣を作り出していた。

 

「ユーゼス・ゴッツォ、イングラムに代わりお前の因果をここで断つ!」

 

「ウルトラマン達の命を奪った報いを、その命で受けるんだ。ジ・オーバーライザー・アーク!」

 

 ゾル・オリハルコニウムの刃がシン・ゼストの左首筋にめり込み、次元力の刀身がマスクのような頭部の頂点に切り込む。もはやシン・ゼストの死の運命が確定されたその瞬間に、この空間に居る全ての意思持つ者達にシン・ゼストの思念が響き渡る。

 

──進化には、恐怖が必要だ。

 

「こ、れ、は!?」

 

「まずい! マズイ!! 拙い!!!」

 

──このままでは死んでしまう。このままでは終わるという恐怖。そして終われないという渇望が。終わりたくないと叫ぶ命が。

 

 万感の思いを込めてシン・ゼストは、いや、ユーゼスは感謝を言葉にして発した。

 

「ありがとう。私はまた一つ、新たなステージを昇った」

 

 そしてシン・ゼストのカラータイマーから放たれた光と闇と白と黒とが、ディス・アストラナガンとシン・ソルを飲み込み、直後、刃の砕けた武器と共に新たなダメージを刻まれたディス・アストラナガンとシン・ソルが吹き飛ばされる。

 直径五百メートルほどの黒白の光球は見る間に収束して行くが、クォヴレーやシン・ソル、ヴァイシュラバやノイ・レジセイアの心に抑えきれない焦燥を抱かせたのは、超常の感覚を有する彼らでさえ、何も感じ取れなかったからだ。

 目の前のソレが脅威であるのか、脅威ではないのか。それすら分からないのは、根本的にユーゼスが上位の次元に達したから?

 

 ドプリと、音が聞こえてくるようにシン・ゼストを包み込んでいた光球が溶け落ちる。

 そこから姿を現したのは全ての装甲がはがれ、銀も赤もない黒一色の巨人だった。ユーゼスのマスクもまた黒く染まり、その代わりマスクに配置されていたウルトラマン達の眼はなくなって、ユーゼス本来の眼のみとなっていた。

 誰もが分かっていた。そこに居るのはもはやシン・ゼストではない。奪ったウルトラマン達の力に愉悦し、しかして新たな渇望を得ていたシン・ゼストとはまったく異なる存在だと。

 

「死の瞬間、私にあったのは純粋な、見栄も虚飾もない、単純な生きる事への欲求だ。新たな知啓、新たなステージなど、それは全て後の話だ。今の私は、私は! ただ、目の前に居るお前達に勝ちたい!!!」

 

 善でも悪でもない。聖でも邪でもない。光でも闇でもない。白でも黒でもない。ただただ純粋な生存への欲求。余計な色のない透明な死を恐れる恐怖。混じりけのない生き残る為の力を求める叫び。

 それがCPSを限界を超えて稼働させ、ウルトラマン達の力を完全に取り込み、ディス・レヴと量子波動エンジン、ズフィルード・クリスタルの融合した最新最強の超生物を誕生させたのだ。

 

「今の私はユーゼス、ただのユーゼスだ。私はお前達に勝ちたい。私が生存する為に、私が明日を生きる為に、私はお前達に勝つ」

 

 シン・ゼスト──いや、本当の真化融合を果たした、ユーゼスという新たな生命体は二つの眼を、ヴァルシオーを始めとした機体群へと向けて、白く光り輝いているカラータイマーの前で両掌を合わせる。

 掌の間に生まれたエネルギーは宇宙開闢を幾度も行えるほどに膨大で、彼の中にある全ての力が完全に制御された証左でもある。

 

「この空間と共に三千大千世界の全てから消滅せよ! 恐るべき強敵達よ!!」

 

 前方へと勢いよく突き出されたユーゼスの両手から放たれたのは、数千、数万を数える銀河を内包したエネルギーの奔流だった。次元違いのエネルギーが常に新たな宇宙を生み出しながら、DCへと迫る!

 

「させるか!!」

 

 これに応じたのは、そして唯一対抗できたのは、同じく宇宙の創造と崩壊が可能なレベルに達しているシン・ソルのみ。

 初めてシン・ソルとして顕現した時と同じように、シン・ソルもまた黄金の両腕の間に最大限の次元力を生成・圧縮し、それを巨大な光輪として投げつける!

 

 シン・ソルの手から投げられた黄金の光輪は、無数の銀河の集合体であり、遠心力によって光輪の外縁部へと集まってその質量と切断力を結集させる。

 かつてアンチスパイラルのグランゼボーマが、天元突破グレンラガンに使った『超銀河八つ裂き光輪』の宇宙規模版だ。

 

「私の新生に対する祝福の号令だ! 受け止めきれるか、人間となった至高神! インフィニィティイイイ・ビッグバン! ストリーーームウゥウウウ!!!」

 

 シン・ソルの投じた『超宇宙八つ裂き光輪』は、ユーゼスの放った『インフィニティ・ビッグバン・ストリーム』と激突し、宇宙を丸ごと斬り裂く切断力によって、新生し続ける宇宙の奔流を斬り散らして進み、その半ばで力尽きて砕け散った。

 

「!!!!!!」

 

 勢いこそ減じても止まらない無限の宇宙開闢の奔流を、シン・ソルは自らの体で受け止める。ヘイデスと所長だけではなく、DCのメンバーがシュメシとヘマーの名前を叫ぶ中、シン・ソルはここで引けば仲間が全滅すると確信し、決して退こうとはしない。

 ありったけの次元力を防御に回して、かつてロージェノムがアンチスパイラルのインフィニティ・ビッグバン・ストームから、シモン達を守ったように盾となる。

 

 違いがあるとすればロージェノムは攻撃のエネルギーと同化し、天元突破ラガンに吸収させて逆転の一手としたが、シン・ソルにはそんな余裕さえない点にある。

 インフィニティ・ビッグバン・ストリームを受け止めた代償は、シン・ソルの四肢が砕け散り、残った胴体と顔面に至るまで大きな罅が入った姿だった。

 咄嗟にシン・ソルを受け止めようとしたヴァルシオーだったが、それよりも早く、あるいは空気を読まず別の誰かの手が瀕死に追い込まれたシン・ソルを受け止める。

 

 灰色の混沌渦巻く翼をもつ黒き機神、そして天使と悪魔の翼を持ち、クロスゲートを天輪として頂く異形。

 ケイサル・エフェスが念動力で柔らかくシン・ソルを受け止め、アダマトロンがインフィニティ・ビッグバン・ストリームの余波を打ち消して、シン・ソルへの更なるダメージを防いだのだ。

 

「おお、我が真なる主君よ」

 

 ケイサル・エフェスの威容にラオデキヤが感極まる中、ケイサル・エフェスの関心は腕の中に匿ったシン・ソルへと向けられている。

 

「これは……我らの完全なる見誤りであったか。ヒトとなりし子よ。汝をここまで傷つけるとは、な」

 

 悔恨を滲ませるケイサル・エフェスの声にシン・ソルが気付き、ダメージに震えながら顔を上げる。

 

「っ……あ……く」

 

「無理に喋ろうとするではない。ユーゼスの念により再生もままならぬであろう」

 

 ケイサル・エフェスの指摘の通りだった。ユーゼスの強念が含まれていた攻撃は、因果律にシン・ソルの受けたダメージを刻んでおり、次元力制御による事象制御や単純な再生能力をもってしても、一向に再生しない傷となっていた。

 シン・ソルの惨状を目にして、アダマトロンことウーゼスもまた仮面の奥で眉根を寄せ、苦虫を噛み潰した表情を浮かべている。

 

「真化融合に達したこの者達ならば、まず負けはあり得ないと判断したが……。ユーゼス、お前の底力を完全に過小評価していたのは、私達の失態だ。強奪したウルトラマン達の命も、既に自らの命として完全に取り込んでいるとは」

 

 生きたい、という純粋な願いだった故に、ウルトラマン達の命が反発しなかったか、とウーゼスは推測の一つを口の中で呟いた。

 そしてユーゼスはゆっくりと構えを解くと、強者の驕りも弱者の怯濡もなく自然体でケイサル・エフェスとアダマトロンを見つめている。

 

「真なる霊帝ケイサル・エフェス、そして、お前は私と似て決して重ならぬ私……どの世界の存在かは知らないが、お前のようなモノもいるのか」

 

 どうやらユーゼスにとってウーゼスと彼のアダマトロンは未知の存在だったようだ。

 そしてケイサル・エフェスとアダマトロンの方こそ、ユーゼスに対する警戒感を高めているようにすら見える。

 ウーゼスはかつて被っていた殻であるダークブレインの力を合わせても、敵うまいと冷静に分析していたほどだ。

 

「ちょうどよい。そちらの私は未知の存在だが、ケイサル・エフェスはいずれ雌雄を決すると決めていた相手だ。その負の……?

 負の???

 今の私でも理解が及ばぬとは……。その未知なる無限力は脅威だが、お前を打ち倒し、私は前へと進む。しかし、世界とは広いものだな」

 

 ユーゼスの眼中には、ラオデキヤとの縁を触媒にして、閉鎖空間を突破してきたケイサル・エフェスとアダマトロンという新たな超越者しか映っていない。今の彼にとって、この場における最大の強敵が、この二人なのであろう。

 

 思わぬ参入者という意味では、DC側にとってもこの二人の出現は驚きで、ユーゼスとの戦いを見守るだけだと思われた彼らの姿は、それだけユーゼスの脅威が想像を超えたことを意味している。

 DCに試練として立ちはだかった時とは比較にならぬ闘志を滲ませているアダマトロン達の姿も、その予想を肯定していた。だが、ケイサル・エフェスとアダマトロンは戦端を切らなかった。

 

 もし、本当に万が一、真化融合でもユーゼスに及ばなかった場合、どう助力するべきか、彼らは念の為、話し合っており、最良と思われる手段を導き出していたからである。

 一歩、ユーゼスが踏み出し、ゆっくりと距離を詰めてくる。その姿には警戒と闘志が等分ずつ存在している。

 

「シン・ソル……いや、フェブルウス、ヘマー、シュメシ、まだ意識はあるな? 戦う意志はあるか?」

 

 ウーゼスの問いにシン・ソルは弱弱しく頷く。なによりもその瞳に、まだ終われないという確固たる意志の輝きが宿っている。

 ならばとウーゼスはケイサル・エフェスと視線を交わし、正真正銘、彼らにしても最後となる切り札の開示を決めた。

 ケイサル・エフェスが厳かに語る。

 

「シュメシ、ヘマー、フェブルウス、汝らの存在が至高神ソルの内、欠片たるヘリオース、心たるスフィア、知恵たる黒の英知を担っている。

 そして外観たる黒い太陽と中身たるプロディキウムが欠けているのが、今の汝だ。故に、その不足を我とウーゼスが補う」

 

「異物たる我らでは拒絶反応があるかもしれんが、そこは賭けだ。至高神Zもアサキム・ドーウィンとシュロウガ・シンと御使い達により不足を補った。まあ、アレは同時に弱点も抱え込んだ失敗例だが」

 

「最後に……不安に、なる……ようなことは、言わないで欲しいな。それに、あの人も、今は……反省している、よ」

 

 シン・ソルの瞳はかつて自分を生み出し、新たな至高神を生み出し、そして敗北して因果地平の彼方へと消えたアドヴェントの行く末さえ見ていたのか。

 三人の雰囲気の変化を察してか、ユーゼスが前傾姿勢を取り、一気に虚空を蹴る。

 それだけであらゆる並行世界へ、過去現在未来への時間移動すら可能になったユーゼスだが、彼の判断そのものが遅きに失した。

 

 シン・ゼストの作り上げた閉鎖空間全体に振動が走り、見る間に亀裂が生じてその裂け目の向こう側に無数の世界が覗く。

 震源地はシン・ソル、ケイサル・エフェス、アダマトロンの三者である。

 シン・ソルの持つ次元力、ケイサル・エフェスのゆるふわ無限力、アダマトロンのクロスゲートの力、それら全てが共鳴し、この場に居る誰にとっても未知の新たなる力が生まれていた!

 ユーゼスは咄嗟に足を止めて、両腕で顔をカバーする姿勢を取っていた。シン・ゼストを超えるステージに立った彼は、今また同じステージに立つ存在の誕生を誰よりも明敏に感じ取る。

 

「上回ったと思ってもすぐに追いついてくる。勝ったと思っても、すぐに負けるかもしれないと思わせてくる。まったく、貴様らと言う存在は、諦めが悪いな」

 

 不思議とユーゼスは笑っているような声で、そう愚痴を零すのだった。

 その愚痴が聞こえたからなのか、シン・ソル達の機体が無数の糸に、あるいは粒子へと分解されると、それらが中心部を目指して渦を巻きながら収束を始める。

 いかなる事象制御も因果律による干渉も受け付けないまま、七色に煌めく小さな光が生まれ、それは見る間に大きくなり、歪な人型を成した。

 

 全高三百メートルの巨躯は変わらぬまま、皮膜に混沌が渦巻く三対の悪魔の翼、黄金の刃を連ねたような三対の天使の翼が背から伸びている。

 更に背後には十二のスフィアを収めたクロスゲートが鎮座し、逞しさとしなやかを併せ持つ四肢は、ケイサル・エフェスの如く黒い装甲を纏っている。

 胸部にはアダマトロンにもあった球体が埋め込まれ、胸部から頭部に関しては白い装甲に覆われていた。頭部は竜のような黄金の角を幾本も生やした機械仕掛けの神を思わせた。

 ユーゼスが問いかける。新たな自身の壁となり、勝たなければならない忌まわしくも愛おしい怨敵に。

 

「名を聞きたい」

 

 ソレは答えた。足掻き続け、多くの悪を撒き散らし、多くの災いを生み、しかし、生きるという最もシンプルで、誰にも否定できない願いに辿り着いたユーゼスに。

 

「ソル。ただのソルだよ。ユーゼス、貴方のように」

 

■共通ルート 最終話「誕生に祝福を」

 

《続》

 

■シン・ゼストを撃破しました。

■ユーゼスが出現しました(ディス・ジュデッカ×ほぼ全ウルトラマン×真化融合)。

■隠しユニット『ソル』を入手しました(シン・ソル×ケイサル・エフェス×アダマトロン)。

☆入手条件

シークレットステージ「シンデレラおじさん達」でケイサル・エフェスとアダマトロンを撃破して、クリアする。30ターン目を迎えて勝利した場合、ケイサル・エフェスとアダマトロンはそのまま味方ユニットとなる。

 

ユーゼス出現以降は実質的にイベントなので、わざと負けようとしない限りは勝てる仕様……という設定です。

 




色々考えたけれど、投入できなかったネタもありますが、次回で閉幕になる、ハズ!


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最終話 スーパーロボット大戦α‐Z

これにてこのお話は閉幕でございます。
約三年に渡る物語にお付き合いくださいましたこと、心よりお礼申し上げます。
ありがとうございました。


 ユーゼスとソル。向かい合う二体の巨人は同時に虚空を蹴った。宇宙を超えるエネルギーを持つ超越者達の戦いは、極めて原始的な、五体を用いた格闘戦から幕を開ける。

 お互いの繰り出した右のストレートがぶつかり合い、激突で発生したエネルギーもコントロールして余さず敵の肉体に流し込み、破壊に転用する。

 ウルトラ戦士達が鍛え抜き、積み上げてきた戦闘技術を収奪し、我がものとしたユーゼスの流麗な連続攻撃を、ソルもまた並行世界の数々を観測し、蓄積していたデータを肉体に反映させて、互角の攻防を演じることに成功する。

 

 ユーゼスが作り出した閉鎖空間は既に限界を迎え、白い虚無に走った罅の向こう側には漆黒の宇宙あるいは極彩色の空間が覗き、そこが三次元かどうかすら定かではない。

 それぞれの頬を抉り、胸を打ち、腹に突き刺さる拳と蹴りの数々は、ユーゼスとソルが常時展開している無数のバリアを突破し、低く見積もっても至高神以上の存在に昇華したお互いの肉体にダメージを与えあう。

 

 ユーゼスの拳と足先にエネルギーが集まり、漆黒の輝きを纏う。それはウルトラマン達の誰かの技に酷似していたが、あくまで模倣でありただのコピーではない。ユーゼスが自らの力で行うユーゼスの技だ。

 対するソルもまた五指を揃えて伸ばした右手刀から次元力の刃を形成し、左手にはライアットジャレンチを模した光の武器を生み出す。

 

「ジュエアアッ!!」

 

 並行世界にも届き揺らす叫びを上げるユーゼスに、因果地平の果てまで轟かす叫びでソルが応じる。

 

「ハアアオオオオオ!!」

 

 巨人の形をした宇宙と呼ぶべき二体の激突に、遂に閉鎖空間が耐え切れずに断末魔の悲鳴を上げて、世界の様相が一変する。その間にもユーゼスとソルの激突はヨクト秒よりフェムト秒よりも速く繰り返されている。

 一撃ごとにゲッターエンペラーの合体並みのエネルギーが互いの巨体に炸裂し、破壊と再生を絶え間なく繰り返して、勝利して生き残るために全霊を尽くし合う。

 

 ソルとユーゼスの周囲に広がっているのは、灰色にうねる液体のような空間だった。

 その中には無数の極彩色に輝く光が浮いており、その一つ一つが宇宙であり、異なる可能性の並行世界だ。

 イデによるリセットが起きた世界、月光蝶による文明のリセットが行われた世界、銀河規模にまで成長したゲッターエンペラーと成体となったラ=グースが戦っている世界、マジンガーZEROによって滅ぼされる寸前の世界、ゴッドライディーンによって銀河が砕かれようとしている世界……

 ここは、あらゆる可能性を俯瞰して眺める事が出来る高次世界、あるいは『トップをねらえ2!』でノノとラルクが会話していた『時空検閲官の部屋』の一種か。

 

 両者の攻防が何千、何万を超えた時、ソルの両手に作り出された次元力の武器が砕け散り、その代わりに背に負うクロスゲートが輝きを増しながら、飛び立って離れた。

 クロスゲートを守るように十二枚の翼もソルから離れ、距離を置いて新たなエネルギーを蓄え始める。ソルと絶え間ない攻防を繰り返すユーゼスをして、無視できないエネルギー量だ。

 

「ならば、なにかを成すより早く倒すのみ!」

 

 ユーゼスの左手が横に倒され、右手は縦にまっすぐ伸ばされて、左手と十字を描く。始まりのウルトラマンを真似たその構えから、白い光の滝のような光線が発射される。

 数千光年に渡り、多大な影響を及ぼす破壊エネルギーを前に、ソルは両手を目の前に広げて半球形のバリアを展開してかろうじて受け止めることに成功する。

 バリアとゼスト光線の衝突した箇所から無数の光の粒子が、花火のように周囲の虚空へと飛び散ってゆく。その粒の一つ一つが新たな宇宙の卵となるだろう。

 

「残念、こっちの方が早かったよ!」

 

 シュメシとヘマーの重なり合った声がソルから発せられ、クロスゲートの輝きが最高潮を迎えた。そしてソルの中から一時的に融合しているケイサル・エフェスとウーゼスの意思も思念となって、周囲に響き渡る。

 

──灰被りの歌姫達の星明りに輝く劇場をここに。

 

 クロスゲートから発せられるエネルギーと波動がユーゼス光線を打ち消すばかりか、さらにその巨体を吹き飛ばそうと圧力が襲い掛かり、ユーゼスは因果地平の彼方へと吹き飛ばされないように、その場に全力で踏ん張らなければならなかった。

 そしてケイサル・エフェスの強念の及んだ空間が見る間に書き換えられて、シンデレラの栄冠に輝いたアイドル達が、あるいは及ばなかったアイドル達が輝きを放った劇場が建立し、劇場によって形作られる巨大劇場が誕生する。

 

──煩わしき太陽、闇に飲まれよ。

 

 ウーゼスの闇の聖句によってクロスゲートはユーゼスの発していたエネルギーを根こそぎ奪い取り、それを火種として波打つ青い鏡面からいくつもの巨大な輝きを生み出す。

 ここはカオス・コスモスや螺旋宇宙と同じく因果と原因が混濁し、意志による決定がなにより重きを置かれる世界だ。

 認識次第で天元突破サイズにまで巨大化し、真化融合の理解はさらに深められて、より高次の力を行使できるようになる。

 

 そしてなによりも、彼らがぽっと出の奴らに子供達を預けて戦わせるのを、ただ黙って見ていられるわけがない!

 現れた輝き達を見て、ユーゼスは分かり切っていたことを改めて突きつけられて、過去の自分に対して呆れながら笑った。

 

「同じ舞台に上がれたとしても、コレが私とお前達との決定的な差か。つくづく私という奴は……」

 

 限りなく遠く、しかし確かな縁のあるアイドル達の劇場が絢爛と輝く世界に、クロスゲートを通じて姿を見せたのは、DCとその協力者達だ。

 最強の念動力者サイコドライバーたるケイサル・エフェスの念動力、アダマトロンの持つクロスゲート、そしてソルの事象制御能力を掛け合わせ、仲間達を自分達と同じステージに引き上げて呼び寄せたのだ。

 

「子供に戦いを押し付けて待っているだけなんて、まっぴらごめんですからね。戦いの場に立てて一安心ですわ」

 

 親としての心情を隠さずに吐露したのは所長である。真化融合に天元突破を掛け合わせたに等しいヴァルシオーと共に、ユーゼスとの本当の最終決戦の場に立てて、最低限の親の役目を果たせそうだと内心で安堵していたのだ。

 同じくケイサル・エフェスとウーゼスが居るとはいえ、戦いの決着を子供達に全て委ねずに済んだことに安堵しているのは、ヘイデスも同じだった。同じステージに立つ為に彼らの力を借りなければならないのは、情けない限りではあったが。

 

「うわ、僕達の腕試しをした時よりも大きな劇場だな。味方への永続的なバフと敵対者への強烈なデバフを付与ってところか? バフがアイドル達の歌で、デバフはウーゼスの歌が担当ね」

 

 シンデレラ達の大劇場を見て、ヘイデスはすぐに現状がどうなっているのかを理解する。ここら辺の理解力は流石に元プレイヤーであり、スパロボ以外のサブカルにもそれなりに触れてきた知識の賜物だ。

 そして彼の口にしている通り、新たなステージの幕開けと共に戦場にはアイドル達の様々な歌が流れて、ヘイデス達の背中を後押ししてくれている。

 

 同時にウーゼスの熱唱も聞こえてくるのだが、どうやらこちらのデバフ効果はユーゼスにのみ付与されているようだ。

 試練の時のような無差別精神汚染兵器ではなくなっているようで、ヘイデスを筆頭に胸を撫で下ろした者は少なくない。

 

 瞬く間に質と数を伴った戦力が出現して、圧倒的不利な状況に追い込まれたユーゼスだが、彼は慌てる様子もなく、怯える様子もなく、泰然と構えを直す。

 ウーゼスの歌による精神攻撃は継続されているが、それを内に押し込めることに成功しているのは、偉業かもしれない。

 

「さあ、掛かってこい! 鋼の勇者達! この世界で私がもっとも打倒するべき壁達よ!!」

 

 叫ぶのと同時にユーゼスの全身から底知れない力が溢れ出し、本当に最後の戦いが火ぶたを切って落とされる。ユーゼスが両手にユーゼス八つ裂き光輪を作り出し、勢いよくそれを投擲する。

 先程の戦いと同じようにユーゼス八つ裂き光輪は巨大化と分裂を行い、一万近い数となって、ヘイデス達へと襲い掛かる。

 

「皆、いくぞおおお!!」

 

 そう初めに叫んだのだ誰だったのかは分からない。アムロだったかもしれないし、甲児だったかもしれない。あるいは竜馬だろうか。確かなのはその叫びによって、弾けるようにDC側も動き出したことだった。

 月光で編まれた蝶の羽が八つ裂き光輪の大部分を飲み込んで無効化し、取りこぼしを艦隊の艦砲とアビス級ブラックホールを生み出す光子魚雷が迎え撃ち、ことごとく消滅させる。

 

「おおおおお!!」

 

 全身から黄金の光を発しながらユーゼスが突っ込み、彼に向けて一斉に鉄拳が発射されていた。超光子力ターボスマッシャーパンチ、グレートスマッシャーパンチ∞、スパイラルスクリュークラッシャーパンチの三つだ。

 二大魔神皇帝と宇宙の大王者が放つ鉄拳はそれぞれクロスガードしたユーゼスの両腕に命中し、彼の勢いを完全に殺してそのまま大きく弾き返してみせる。

 

「ユーゼス! 正真正銘、俺とマジンガーのありったけの力だ。これでお前に勝つ!!」

 

「エンペラー、インフィニティ!! 俺達も負けてはいられん! 無限の可能性を得た偉大なる皇帝の名のもとに、勝利を!」

 

「グレンダイザーはもはやフリード星だけの守護神ではない。第二の故郷地球を、そして宇宙に生きる平和を望む人々の守護神として、戦い抜く!」

 

 ユーゼスは吹き飛ばされた体勢からくるりと回転し、罅の入った両腕には目もくれずに、両腕を大きく振りかぶってから、五指を開いて振り下ろす。そうすれば開いた掌から糸のように細い光線が、数えきれないほど発射される。

 目標を追尾して自在に軌道を変えるホーミングレーザーだ。直線的な軌道を描いて高次元空間を走り、DC各機へと襲い掛かる。

 超銀河グレンラガンが時間軸を超越した攻撃が可能だったように、ユーゼスの放ったホーミングレーザーも時空間を超えて追尾し、因果操作による回避や攻撃消去を無視する特性を備えていた。

 

 対抗手段は純粋な回避か、この攻撃に耐えうる圧倒的な防御性能、そして相殺可能なエネルギーを持った迎撃の三つ。

 どれも間に合わない味方に対しては、ファンネルやビット、ノイ・レジセイアが即席で生み出したアインストが身代わりとなり、なんとかユーゼスの攻撃を凌ぐ。

 

 巨大なエネルギーの激突によって数えきれない光の星が生まれる中、反撃の嵐がユーゼスへと襲い掛かり、彼もまたビームの鞭を振るって命中軌道の攻撃のみを弾き飛ばし、距離を詰めてきた敵機を迎え撃つ。

 だがユーゼスをしても、止められないほどに全員の勢いは止まるところを知らず、高まっていた。三機のゲットマシンと真ゲッタードラゴンがユーゼスの放つ多彩な光線技を回避しながら、一直線に並ぶ。

 

 一筋の巨大な流星となって飛ぶ彼らからは無尽蔵のゲッター線が溢れ出し、竜馬を筆頭に隼人も武蔵も弁慶も、そしてミチルも達人も次元を超えてゲッター線の意思を急速に理解しつつあった。

 そんなゲッターチームを、御使いの戦いから離れて宇宙怪獣を超える規模に達したインベーダーと戦うゲッター艦隊が、ラ=グースを叩き潰し喰らっているゲッターエンペラーが、無限力の一部としてイデやビムラーと共にあるゲッター線が……無数のゲッターとゲッターに選ばれた者達が見ている。

 

「見ているな、そして聞こえているか、ゲッターよ! お前が俺達を、人類を導こうとしているのは分かる。俺達をどこへ連れて行き、なにをさせようとしているのか。それを考えると俺は恐怖を感じていた。お前の強さを、意志を理解しきれなかったからだ。

 だが俺も覚悟を決めた。この世界で、俺はお前に導かれるままには戦わない。その代わり、お前と共に生きて、生きて、生き抜いてみせる。お前に寄り添って、進むべき道を見つけるぞ!!」

 

 竜馬はゲッター線に導かれるままの人生を否定し、ゲッター線に抗って屈服させる選択肢もまた否定する。この竜馬の選択肢は平行世界の中でも珍しいものだったのかもしれない。

 そしてまた竜馬の選択肢は他の五人のゲッターチームの総意でもあった。六人の心と四機のマシン、そして竜馬に口説かれた(?)ゲッター線が一つに重なる。

 大事なのは一つに融合する事ではない。それぞれが別たれた心のまま、同じ目的に向けて重なり合う事だ。一つの心に融合しなくても、異なる意思を持ったまま重なり合う選択肢を選べる事こそがより大切な要素なのだと、竜馬達は極限の状況にて理解する。

 

 輝きを増すゲッター線がゲットマシンと真ゲッタードラゴンを飲み込んだ時、その中から姿を見せたのは新たなゲッターロボだった。

 ゲッター1、ゲッタードラゴンの系譜を思わせる赤を主体とした上半身に、頭部から伸びる五本の角、真っ赤なマントをはためかせて、両腕には鋭利なブレードが何本も伸びている。

 円筒を組み合わせたような四肢や胴体、頭部には緑色のエネルギーラインが走り、内部に満ちるゲッター線の輝きが零れでいる。

 

 この世界、この瞬間、この戦いに限り誕生した、ゲッターエンペラーに肩を並べる、刹那の輝きを放つゲッターロボ──ゲッターカイザー。

 ゲッターチームの誰もがこの場限りのゲッターだと知っているから、惜しみなく心を奮い立たせ、闘志を燃やし、若い血潮のガッツで強大なるユーゼスへと立ち向かう。

 ゲッターカイザーの白い腹部が開き、その奥から六角形の台座に埋め込まれたレンズが覗く。

 メカザウルスにはダメージを与えてからでなければ効き難く、メカ一角鬼の破壊光線には押し負けるなど、微妙なところもあるが紛れもなくゲッターロボを象徴する武装の一つ!!

 

「ゲッタァァァアアアーーービィィイイーーームッ!!」

 

 全高五十メートルのゲッターカイザーが腹から、すなわち丹田から放った最強のゲッタービームはユーゼスに回避する暇を与えず、防御態勢を取らせたのみで容赦なく呑み込み、因果地平の果てまでも伸びて行く。

 一時的になら時天空も退けられるエネルギーの直撃を受けたユーゼスは、全身にスパークを散らしながら、なおも健在。

 ユーゼスはゲッタービームの照射が終わると同時に動き出し、姿勢を変えるとゲッターカイザーへと向けて、左足を太陽よりも激しく燃やしながら飛び蹴りを放つ。

 

「ユーゼス彗星キック!!」

 

 飛来するユーゼスへと向け、ゲッターカイザーの両脇をすり抜けてダイモスが飛び出した。ダイモライトは宇宙創世を思わせる輝きを発し、機体そのものが光の化身と化している。

 

「今こそ光をも超えて、俺達の拳を叩き込む!!」

 

 一矢とダイモスの意思と動きは完全に一致し、烈風正拳突きは更なる境地に到達した。光よりも速く、ブラックホールの超重力も振り切る心・技・体、そして『機』も加わった拳は、一矢の言葉通り光を超えた速度でユーゼス彗星キックと真っ向から激突!!

 

「真・烈光! 正ぇええ拳突きィイイイ!!」

 

「ウオオオオオオオオオ!!」

 

 カッと赤と白の混じる爆発的な光が生まれ、ユーゼスの左足とダイモスの右手に大きな亀裂が走り、両者に無視できないダメージが入る。明確にユーゼスにダメージが入った事で、DCとの戦いの拮抗がついに崩れる。

 ただ一人で戦うユーゼスの不利が、ここに来て如実に表れる。ダメージを受けたダイモスの代わりに他の仲間が戦えるのに対し、ユーゼスに代わりなどいないのだ。

 片足が使い物にならなくなった痛みを噛み殺すユーゼスが、正面に立つ古代ムー帝国の守護神に気付く。胸部の装甲が展開し、更にその前方で日蝕の盾が翼のように分解され、剣もまた切っ先をユーゼスへと向けて、音叉のように刃を展開していた。

 

「エクリプス……ゴォォオッドボオオオイィイイス!!!」

 

 エクリプスライディーン内部の機体構造が組み代わり、二人の『あきら』に大きな負担を掛けながら、ライディーン自身もまた持てる全てのムートロンを振り絞り、最後の敵に禁じられた歌を歌う!

 ああ、これがアイドル達のように平和の世界で歌う歌だったら、どんなによかっただろうと、一抹の憧れを隠して。

 

「おおおおおお!?」

 

 エクリプスゴッドボイスの直撃を受けたユーゼスの体は、蓄積されたダメージによって徐々に破損が目立ち始める。特にダイモスによって割られた左足のダメージは深刻で、つま先から太ももが砕け散り、完全に機能停止に追い込まれる。

 反撃の体勢を整える間をユーゼスに与えてはならないとコン・バトラーV6が、ボルテスⅦが、ザンボットインビンシブルが、FUダンクーガが……全ての機体が戦いを終わらせるべく、後の事を考えない死力を振り絞る!!

 これまで彼らが戦ってきた歴代の敵対勢力全てを末端から首魁に至るまで、まとめて撃破してもお釣りの出てくる常軌を逸した破壊力は、確実にユーゼスを追い詰めていった。

 

「ファイナルカイザーブレード……スラッシュ!!」

 

「エンペラーソードインフェルノ! 魔神一閃・煉獄斬り!!」

 

「ジーベン・ゲバウト……アロー!!」

 

 真化融合の更に先へ、更に上へと引き上げられた彼らの攻撃を受けたユーゼスの肉体は、全身に罅が走り内包していたエネルギーも次々と霧散して行く。

 世界線次第では宇宙をあまねく支配する調停者となり得る力を得たユーゼスの命の灯火は、確実に消えつつあった。

 

「クォヴレー、いや、ユーゼス!! 騙された借りはここで返すぞ!」

 

 そしてクォヴレーと名前と身分を偽ってきたころからの付き合いであるバンとフィーネ、ジークはこれまで以上の闘志を見せて、獅子王と呼ぶべき気迫と共に躍りかかる。

 

「バンか。騙された方が悪い、とは言わんが返り討ちに遭う覚悟はあるだろうな!」

 

「ねえよ、そんなモン! ただ、他の皆より俺達は少しだけお前に縁がある。なにより俺達自身がケジメをつけたいんだ。お前のことを、仲間だと思っていたんだからな!!」

 

 その瞬間、ブレードライガーBSの青い装甲はピンクの指し色の入った銀へと変わり、ブレードは曲線を描く黄金の刃へと変わる。真化融合の更にその先へ到達し、体内のゾイドコアとマシンセルが反応し、ブレードライガーBSは新たな姿『シーザー・ザ・キング』へと進化する!

 黄金のブレードが左右に展開し、虚空を蹴るシーザー・ザ・キングは、ダメージを受けているとはいえ、ユーゼスの反応が間に合わない速度で迫り──

 

「オオオオオ!!!!」

 

「がぁあっ!?」

 

 ユーゼスの右腹部を深々と切り裂いて、いよいよ暗黒の巨人に致命的なダメージを与えてみせた。

 例え偽りのものであれ、かつては紛れもない戦友だった男を斬り裂く感触に、バンもフィーネもジークも、そしてシーザー・ザ・キングも苦し気に表情を歪める事はあっても、喝采の色は欠片もなかった。

 トドメを意識する段階に入ったのを確信し、一層、気を引き締めたヘイデスと所長が動く。ヴァルシオーの両腕と背中のパーツから砲塔からせり出し、ありったけのエネルギーを込めた二重螺旋の光が四条放たれる。

 

「いい加減、おくたばりあそばせ!! メガ・クワッドクロスマッシャー!!」

 

「その仮面を見るのは一度で十分さ。プレイヤーだった僕でも、本気でそう思うよ」

 

 ヘイデス夫妻の台詞と共に一つに融合して巨大化したクロスマッシャーを、咄嗟に放ったエネルギー弾で減衰させたユーゼスは、ダメージを抑え込むのに成功する。

 それでもまだ彼は死に体であり、俊敏に次の行動へと移れる状態ではない。

 だから必殺の機会を狙っていたソルの接近を許してしまった。ソルはクロスゲートとスターライトステージの展開に常に力を割いている為、軽率な攻撃は控えて虎視眈々と好機を狙っていたのである。

 

「貴方が私達に勝ちたいように、生きたいように、私達も同じように貴方に勝って、この命を生き尽くしたい。貴方を悪とは断じない。けれど、ここで貴方の命運は断ちます。

ユーゼス・ゴッツォ、もしどこかの世界に生まれ変わる時には、お父さんの言っていた事とこの戦いでの想いをどうか忘れないで。

αよりZへと因果を紡がれ、そして次元を超えたその先に私達の命はどこまでも進む! 因果地平の彼方にて、宿業からの解放を祈るよ。ビヨンド・ザ・ジェネシス!!」

 

 それはケイサル・エフェスとアダマトロンへと放った、宇宙創世から終焉までの全エネルギーを叩き込み、旧き宇宙に属する者を概念的にも抹殺する攻撃が、更に強化された現象だった。

 ユーゼスを中心とした一帯が計測不可能な温度のエネルギーに相転移し、概念の上書きが始まる。旧き宇宙に属するユーゼスが物質的にも概念的にも否定され、新宇宙の一生分のエネルギーによって蹂躙される。

 比喩ではなく宇宙一つを終わらせる事の出来る攻撃によって発生したエネルギーの全てが消失した時、ユーゼスがまだ原型を保っていたのは奇跡かもしれなかった。

 

 ユーゼスは顎先から眉間まで罅の走る仮面の中、まだ力の失っていない瞳で、最大の宿敵を見た。

 それはソルではなかった。刃金の翼を広げ、胸部を左右に展開し、雷鳴のような光を渦巻かせるディス・アストラナガン!

 イングラムから因縁を継承し、いつ終わるとも知らない永劫の戦いを委ねられてしまった少年──クォヴレー・ゴードンは、自分達の因縁の始まりであるユーゼスへ憐憫の情を向けているようだった。

 かつてウルトラマンに憧れ、新たに生まれ変わった世界ではサイキッカー二万人を脳髄だけの姿にした非情な男。そして今また純粋な生への渇望を得て、変革を迎えた男へ、クォヴレーは言葉を重ねる。

 

「アイン・ソフ・オウルによる存在の抹消が通じないのならば、その力を純粋な破壊へと変えるまでだ。ユーゼス・ゴッツォ、俺ではない俺に乗り移り、支配した男よ。そうする事でお前はイングラムだけでなく、俺とも合わせ鏡の存在となった」

 

「イングラムのようにアイン・バルシェムに憑依するという共通の因果か……。なるほど新たな敵を招く因果を作ったのは、私か」

 

「そしてアイン・ソフ・オウルの性質を理解し、ウルトラマン達の命を奪ったが、それによって平行世界での縁を通じて、DCの皆に異世界の絆と力を与えたのは」

 

「ふ、ふふふ、それも私だな?」

 

「そうだ。そしてお前は銀河の終焉を乗り越えた世界とも接続してしまった。お前が敗北した世界とだ。お前は生を望みながら、それ以上に死へと繋がる敗北の因果を知らぬ間に手繰り寄せた」

 

「ははははは、なるほどな! つくづくお前達の言う通りだったか。私は自らの行いによって、敗北するのか。私に敗北を与える者、それが私か! ここまで勝利を望みながら、これは、なんと滑稽なのだ! ハハハハハハハ!!」

 

 自分のどうしようもない因果の鎖の絡み具合をようやく理解して、ユーゼスは生身だったら目じりに涙を浮かべる位に大きく笑う。

 まったく、これまで何度も指摘されていたというのに、自ら逆転を許す要素を後から後から集めていたとは! これ以上ない道化具合には、もはや笑う以外になにが出来たろう。

 

「ディス・レヴ、オーバードライブ!! 虚憶も実憶も、そして因果の全てもここで抹消する。アイン・ソフ・オウル、デッドエンド・シュート!! お前はもう諦めていいんだ。ユーゼス……」

 

 ディス・アストラナガンの胸部から放たれた十個の中性子の光は、通常とは異なる挙動を示し、一つ一つが魔法陣を描きながら今も笑い続けるユーゼスの体を少しずつ消滅させてゆく。

 因果地平の彼方へ飛ばすのでもなく、虚数空間へと飛ばすのでもなく、時間逆行でもない。文字通りの消滅だ。

 

「はははっははははははははっは!!! さようならだ、正義の味方達! 私は今回も間違えた。負け、そして死ぬ。だが、命の限りを尽くした!

 自分自身に呆れはするが、悔いはない。お前達の命の輝きを、心の強さを、ただ称賛する! はは、さらばだ!! ハハハハハハ!」

 

 最後まで笑い続けて、ユーゼスはその全てを消滅させていった。ディス・レヴを量産し、因果律を操り、ウルトラマン達の命を奪った男は、そうして自分の愚かさをようやく理解して、諦めることを受け入れるのだった。

 万が一にも復活する素振りがないかと、警戒を維持しながら状況を見守っていたDCメンバーも一分、二分と経って何も異変が生じない事から、徐々に警戒を解いて操縦桿を握る手を緩める。

 

 スターライトステージが消え、アイドル達の歌が途絶えた事で戦闘は完全に終了したと判断し、レビルをはじめ各艦長達が状況の確認を急がせる。

 ダメージを受けていない機体も艦艇も存在しておらず、機体の不具合で爆発を起こしてパイロットが死亡などいう悲劇が生じないよう、注意を払う必要があるのを誰もが理解している。

 画面の向こうの時代から知っていたユーゼスが消え去った姿に、ヘイデスはちょっとした感慨を抱きながら、一つの大きな戦いの終わりに息を吐く。

 

「ああ~もう~~~やっと勝てたか。まさか自分がロボットに乗って戦う羽目になったと思ったら、ここまで激戦を重ねるなんて……」

 

「まあ、貴方を戦場に出すのは誰にとっても心臓に悪い事ですから、こういう形でも戦場に出すのは避けたかったですよ。で、後はここから脱出して地球圏に帰還する方法ですが、あの子達が知っていると良いのですけれど」

 

「いや、それだけじゃないよ! ユーゼスが奪ったウルトラマン達の命も返さないと、彼らの世界が大変な事になる!!」

 

 ユーゼスを倒せばウルトラマン達の命が自動で戻って、自分達も元の世界へ帰れる、と都合よくはゆかず、今もヘイデス達は最終決戦の舞台となった高次元空間に残ったままだ。

 おそらくこの場所からならどの世界にも行けるのだろうが、自分達の世界をピンポイントで探し出し、適切な時間軸に戻るとなるとこれはヘイデスをしても至難を極めるのではと感じさせる。

 

 ヘイデスが慌て始めるとそれを待っていたように、クロスゲートの光が弱まり、更にソルが三つの光に分離して、フェブルウス、ケイサル・エフェスとアダマトロンとなる。

 真化融合を維持する力と機能を失って、元の姿に戻ったようだ。密かにこのまま子供達が戻らないのでは、と心配していたヘイデス夫妻にとっては嬉しい結果だが、それは彼らが限界を迎えた証拠でもある。

 

「いけない! この空間が崩壊する。皆、艦隊に集まって!」

 

「私達でなんとか皆を守るから!」

 

 勝利の余韻を消し飛ばす双子達の焦った声に、全員が戦闘とは異なる苦難の訪れを察知し、ヘマー達の言葉通り艦隊を中心に集まる。この時、ゲッターカイザーもまた一時的な進化を終えて、真ゲッター1と真ゲッタードラゴンへと分離していた。

 シュメシとヘマー、そしてフェブルウスが一度は枯渇した次元力をどうにか復活させ、DCと協力者達だけでも地球圏へ帰らせようと足掻く中、高次元空間の閉鎖は無慈悲に進み、双子がなにか行動を起こすよりも早く、光とも闇ともつかない現象がこの場に居た全ての者達を飲み込むのだった。

 

 悲鳴を上げる間もなく、軽い酩酊感と共に意識を刈り取られたヘイデスが次に目を覚ました時、彼は変わらずヴァルシオーのコックピットの中に居た。メインシートには愛妻の姿もあり、まずはほっと安堵の一息。

 だがすぐに異変に気付く。つい先程まで一つに繋がっていたヴァルシオーの声が聞こえなくなっているのだ。親しんだ感覚は残っているが、明確な意思疎通が出来なくなって、真化融合前と同じ状態に戻っている。

 

「シュメシ達のお陰で疑似的に真化融合していただけだからな。寂しくはあるけれど、君の心が無くなったわけではないよね」

 

 ヴァルシオーにそう語り掛け、ヘイデスは素早くセンサーを周囲へと走らせる。その作業の間にメインシートの所長が目を覚まし、夫の作業を見て戦闘中でないのを理解し、彼女もまた状況把握を進める。

 

「あまり目覚めの気分はよくありませんね。とはいえ通常空間に復帰できたのは何よりです。……ん、味方の識別反応をキャッチ。皆さん、無事な様子ですわよ」

 

「ああ、よかった。本当によかった。ここまで来て誰か居ないなんて、断固としてお断りだよ。……場所が分かったな。アステロイドベルトの一角か?」

 

 ヴァルシオーのセンサーは味方の識別信号をキャッチし、また天体情報から現在位置が火星と木星の公転軌道の間に存在するアステロイドベルトだと告げる。

 とりあえず通常空間の太陽系には帰還できたらしい、とヘイデスが現状を認識した時、艦隊を捕捉したヴァルシオーのメインカメラが珍妙な物体を映し出す。

 それは灰色に渦巻く表面を持った巨大な卵だった。ケイサル・エフェスの卵である。その傍らにはダークブレイン第一形態を殻として被ったアダマトロンの姿もある。

 

「ああ~消耗を癒す為にその姿を?」

 

 二人の状態を即座に察せられるのは、ヘイデスならではの理解力と知識があるからだ。

 

「その通りだ。流石に汝は理解が早い。だが、この状況は汝が思うよりもいささか厄介な事態であるぞ」

 

 ケイサル・エフェスの厳かな声音に混じる懸念の響きに、ヘイデスが嫌そうに顔を顰める。

 ダークブレインの殻を被ったままのウーゼスが、ケイサル・エフェスの言う厄介な事態について、ヘイデス達だけでなくDC艦隊に向けてオープンチャンネルで話し始める。

 

「あの空間が消滅する際、ユーゼスに取り込まれていたウルトラマン達のカラータイマーが解放され、無限に広がり続ける世界へ飛散しようとしていた。例えそうなってもウルトラマン達の事だからいずれは回収しただろうが、あの子らは見過ごせなかったようだ」

 

 ウーゼスの視線はヴァルシオーに近寄ってきているフェブルウスに向けられている。

 

「つまり、シュメシ達は僕達を地球圏に帰還させようとしつつ、ウルトラマン達の命も回収しようとしていたと?」

 

「ああ。かろうじて間に合ったようだが、地球圏への帰還については座標に狂いが生じた。ウルトラマン達の命に引き寄せられたのだ。ここはお前達の太陽系ではない。ウルトラマン達の太陽系の一つなのだよ」

 

「! ああ、まあ、そういうこともあり得るか。……ではここはいずれかのウルトラマン世界か。シュメシ、ヘマー、ウルトラマン達のカラータイマーはどれか、元の持ち主のところに戻っているのかい?」

 

 ヘイデスの問いかけに双子達はフェブルウスの両手の中にある無数のカラータイマーを見ながら、父親に答える。

 

「ううん、消えていないよ。そのままだ。元のウルトラマンの世界に来ただけだと、カラータイマーは戻らないみたい」

 

「それに、私達の居た世界の座標も正確には分からなくって。正確な位置を割り出す為には、結構、時間がかかるかも……」

 

 双子からの返答はあまり良いものではなかったが、ヘイデスはそれほど落胆しなかった。二度と戻れないと言われたわけではないし、帰還する見込みは十分に立っているではないか。

 ウーゼス達と会話をして状況の把握を進めていると、自己再生能力でダメージを修復中のディス・アストラナガンが近づいてきて、並行世界の番人の観点からの情報が伝えられる。

 

「済まない。ディス・アストラナガンの機能で確認したが、ウルトラマン達のカラータイマーを持ったままこの世界に転移した影響のようで、異世界に転移しようとするとカラータイマーの元の持ち主の居る世界に強制的に移動させられる状態に陥っている」

 

「ちなみに強制的に転移させられる対象は?」

 

「ユーゼスと戦っていた者達全員。つまりこの場に居る全員だ。全てのカラータイマーを返却するまで、お前達は元の世界へは帰還できないのだ。また『ソル』のレベルにまで戻れれば、話は別かもしれないが……」

 

 クォヴレーに対し、ソルを構成していた双子とフェブルウス、ケイサル・エフェスとウーゼスは揃って首を横に振って否定する。

 

「正直、もう一度やれって言われても難しいかな。シン・ソルの状態にも、カオス・コスモスみたいな空間じゃないとなれないし。それにケイサルさんとウーゼスさんも、もの凄く消耗しているでしょう?」

 

「地道にカラータイマーを返していくしかないかなぁ。全部返し終えてから元の世界に戻るのは、ウーゼスさんとクォヴレーさんの力を借りられれば、大丈夫だよ? 時間軸の調整も出来るから、私達が閉鎖空間に誘い込まれた直後に戻れる」

 

 条件さえ満たせれば元の世界に帰れると双子が保証したのは、不幸中の幸いだったろう。しかし、ユーゼスの奪ったカラータイマーの全てを返却しなければならないとは、いやはや、これはまた苦難の道であることか。

 ヘイデスは溜息を吐きながらオリュンポスを見て、ありったけの物資を積んでおいてよかったと備えを怠らなかった過去の自分を褒めてやりたくなった。

 

「一年くらいで済めばいいけれど、オリュンポスも一緒なのは不幸中の幸いだ。あれがあれば、最低限の衣食住と弾薬や修理部品の補給は出来る。しかし、カラータイマーの返却は早く進めないとか。

 初代ウルトラマンはゾフィーが命を持って来てくれるから、急ぐ必要もないだろうけれど、ウルトラマン次第では急がないと地球滅亡レベルの危機だからなあ」

 

 スパロボ時空に負けず劣らずの地獄の世界だ、とヘイデスは素直な感想を零すのだった。

 この後、ヘイデス達は彼らの体感時間でおよそ一年を費やしてカラータイマーの返却を終え、バサ帝国との決戦直後の時間軸へと無事に帰還するのだが、それはまた別のお話である。

 かくして後に第一次太陽系大戦と呼ばれる、地球内外の諸勢力と地球人類による内ゲバを含めた戦いは終わりを迎え、地球圏はひとまずの平和を迎えることに成功する。

 正義の味方、鋼の勇者達のスポンサーになると決意した、元スパロボプレイヤーの青年の苦労と心痛と臓腑と神経を苛む痛みは、ようやく報われる時を迎えるのだった。

 

 

<終>

 

 

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■昭和ウルトラマンパック

■平成ウルトラマンパック

■令和ウルトラマンパック

 

 各時代のウルトラマンの世界を巡り、カラータイマーを返却しましょう。

 場合によっては怪獣や宇宙人達との戦いに介入する可能性も?

 ヘイデス達が地球圏に帰還するまでの一年間に及ぶ戦いの記録をここに。

 鍛え上げた部隊でウルトラマン達と共に戦おう!!

 




 長きに渡りご愛読いただきありがとうございました。
 途中でついていけない、思っていたのと違うとなり、読むのを止められた方も多くいらっしゃったことでしょう。
 どうしてこんなに長くなったのかというと、感想がたくさんいただけるのが嬉しくてしょうがなかったから、これに限りますね。
 とはいえ何年も書いていると無事にここまで書き終えられて、肩の荷物が下りた思いです。
 どうでしたでしょうか、少しは暇つぶしになったでしょうか。楽しんでもらえていたなら何よりです。参戦作品をもっと絞るべきだったなとか、使おうと思って使わなかったネタもありましたが、ひとまずこれで終幕とさせていただきたく思います。
 ユーゼスに関しては、この後、善玉墜ちした姿を小ネタにお楽しみください。


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DLCウルトラマンパック チュートリアル

ご要望のあったDLCの冒頭をば、お届けします。
短めです。


◆DLCウルトラマンパックシリーズ・共通チュートリアル『初代ウルトラマン』

 

「僕達の寿命? うーん、もう成長は十分に遂げたから、あとは普通のペースになるから?」

 

 とシュメシは双子の片割れに目を向けて、続きの言葉を委ねる。委ねられたヘマーは唇に立てた人差し指を当てて、んーと可愛らしく唸ってから答えた。

 

「大きな病気とか怪我をしなければ、七十年とか、八十年とか……。人並みの寿命じゃないかな?」

 

 ユーゼスとの死闘の果て、どことも知れないウルトラマンの世界の一つに転移した後、具体的な帰還の時期が見込めず頭を悩ませていたヘイデスが、ハガネのラウンジで休憩している最中、ふと悲しげに呟いた問いかけの答えが、上のものであった。

 赤ん坊からあっという間に大きくなったシュメシとヘマーがこのまま同じ速度で成長し続け、数年で寿命を迎えるのではという彼女らを知る者たち全員の苦悩は、実のところ、当の双子からするととっくに解決済みの問題だったのである。

 何の問題もないと、喜ばしくはあるが予想外すぎる答えを返されて、ヘイデスはぽかんと口を開けて固まり、母たる所長はと言えばウーロン茶のチューブドリンクから口を離し、やれやれと肩を竦める。

 

「つまりあなた達に先立たれる心配はないというわけですね。もっとも重い懸念が解決されて、とりあえず喜んでおきましょう。もちろん今回の事件を迅速に解決するべきであるのに、変わりはありませんが重大なシコリが消えて、ええ、非常に良い気分です」

 

 ニッコリとモナリザにも負けぬ笑みを浮かべる所長だったが、それを向けられる双子はなんだかお母さん怒ってない? と背筋を震わせるのだった。

 格納庫のフェブルウスはこの時ばかりは、その場にいなくてよかったと安堵していた。生身を持たず機械仕掛けの肉体を持つこの子の方が、人間の機微に詳しいらしかった。

 

 アステロイドベルトに転移し、部隊の状況把握を終えて急ぎの修理と補給、手当を進めるDCと愉快な仲間達であったが、厳重にケースに収められたカラータイマーの一つが大きな反応を示した為、準備の整わぬまま行動を余儀なくされていた。

 地球圏を超高速で離脱する超高密度エネルギー体を検知し、それに対してカラータイマーの一つが強く反応を示したのである。

 カラータイマーを見て、それが誰のものであるのかを瞬時に悟った者は少ない。

 

「ここは初代ウルトラマンの世界でしたか」

 

 まずフラスコの外の視点と情報を持っていたヘイデス、それにウルトラマン達と惑星エルピスで面識のあるギリアム、ユーゼスの系列に一応は名を連ねるウーゼス、並行世界を観測可能なクォヴレーとケイサル・エフェス、それに双子とフェブルウス……

 まあ、割といた。

 ウルトラマンのカラータイマーに導かれるまま、DC艦隊はアステロイドベルトを離れて、二つのエネルギー体へと向かった。その正体は、すなわちウルトラマンとゾフィーである。

 

 同時にヘイデスは準備の整っていない状態で訪れたのが、初代ウルトラマンの世界だったのに感謝した。ヘイデスの考える、最も急ぐ必要も戦う必要もない世界だったからだ。

 DC艦隊がウルトラマン達が光の国に帰還する前になんとか接触を持とうと、大急ぎで進む中、ウルトラマン達もまたこの宇宙にとって異物に他ならないDC艦隊に気付き、方向を転換して超光速で近づいてくる。

 

「超高エネルギー体、方向転換、艦隊に向けて急速に接近してきます!」

 

 ハガネのブリッジでレーダー手からの報告を受けて、レビルは冷静に落ち着き払ったまま指示を出す。つい先ほどまで真化融合を始めとした超常現象を多々経験したこともあり、今更、新たな宇宙生命との接触で驚くほど初心ではいられないのだ。

 各機出撃の用意は整えていたが、これまでの彼らにとって極めて珍しく友好的な接触という事態の為、ちょっと勝手が分からないという地獄のスパロボ世界を戦い抜いてきた弊害は発生していたが……

 

 艦隊の先頭を進むハガネの甲板にはウルトラマンとの面識のあるギリアムとゲシュペンストXN、知識だけはあるヘイデスと所長の乗るヴァルシオー、並行世界の番人たるクォヴレーとディス・アストラナガン、そして大事にウルトラマンのカラータイマーを収めたケースを持ったフェブルウスと双子の姿がある。

 ほどなくして単独で恒星間移動すらたやすい超生命体が、彼らの前に姿を現す。

 宇宙恐竜ゼットンに敗れ、一度は命を失いつつもゾフィーの持ってきた命によって生き返り、一時、融合していた地球人ハヤタ・シンから離れたウルトラマン。

 そしてウルトラマン達の故郷『光の国』でも有数の実力者たる、ゾフィーである。おおよそ40m前後の白銀に輝く巨人たる彼らは、DC側に戦意がないことを類稀なる超感覚で理解し、ゆっくりと速度を落としながらハガネと一千メートルの距離を置いて止まる。

 

 なにより二人の視線はフェブルウスの抱える、奪われたはずのウルトラマンのカラータイマーへと否応なく向けられていた。

 フェブルウスがゆっくりとカラータイマーを収めたクリアケースを抱え、この世界に来訪した事情──半ば事故だが──を告げる。

 

「はじめまして、光の国の人達。僕達はこの宇宙とは違う宇宙からやってきました」

 

「目的は貴方たちから奪われたカラータイマーをお返しする為です。このウルトラマンさんのカラータイマーだけではありません」

 

「たくさんのウルトラマン達が存在する異なる次元の世界から、多くのカラータイマーが奪われ、それを僕達は返す旅をしなければなりません」

 

「最初にこの世界にやってきて、初めてお返しするのがこのカラータイマーです」

 

 シュメシ達の話は宇宙各地で多くの戦いや仕事を経験しているウルトラマン達にしても、他に類を見ない話であったろう。それでも答えはあった。アルカイックスマイルを浮かべているような顔立ちの二人から、テレパシーによる返答が発せられる。

 

『限りなく近く、極めて遠い世界から来た人々よ。確かにソレは私のカラータイマーに違いない。そしてあなた達の戦艦の一隻からは、私の知る仲間達の命と、知らないウルトラマンの命を感じる』

 

 奇縁と言えばこれ以上ない奇縁だが、双子の言葉に嘘がないことを証明するいくつかの証拠を感じ取り、ウルトラマンとゾフィーはDC側への信用を少しは抱いてくれたと祈りたいところだ。

 

『それにそちらのロボットとパイロットの君からは、何か特別な力を感じる。この宇宙でも滅多に出会うことのないような、特別な力だ』

 

 さすがの観察力、あるいは生物の究極形の一つとしての感覚が、ディス・アストラナガンの特異性をウルトラマンとゾフィーに漠然とではあるが訴えかけているようだ。

 ただ事情を説明するにしても厄介なのが、DC側が自由に世界を移動できるわけではないことだ。カラータイマーを返却する為に、もともとの持ち主が居る世界へと世界間規模での転移を成功させなければならない。

 一応、ディス・アストラナガンとウーゼスのクロスゲート、ケイサル・エフェスのアカシックレコードへの干渉能力、フェブルウスの多次元観測能力を頼みに、これから研究してゆく予定ではある。

 事情をヘイデスやギリアム、クォヴレーらが伝え終えると、ウルトラマンとゾフィーは互いの顔を見やり、一つうなずき合う。彼らの間でDCに対する処遇が決まったらしい。

 

『それならば我々と共に光の国へ来てはどうだろうか? ウルトラの星の環境は、120Gはあるし、そのほかの要素からも君達に適切なものではないが、安全は保障しよう』

 

 彼らの目から見ても並大抵の悪意ある宇宙人や凶暴な宇宙怪獣を、軽く凌駕するDCを監視する意味合いが欠片くらいはあるかもしれないが、カミーユやバナージらが善意しかない、と半ば呆れながら断言する提案である。

 ウルトラ族(稀にウルトラ星人とも)が種族単位で、かつ数十万年のスケールで正義の味方をしているのを知っているギリアムやヘイデスとしては、無警戒で二人からの提案を了承しようとしたほどである。

 

 なおウーゼスや双子といったメンバーを除くDCの人々、特に正規の軍人達はというと、二つ返事はしかねた。悲しいかな、彼らは悪意ある同族や異星人、異種族というものを嫌というほど知っているのだ。

 ウルトラマンに続いて、光の国の警備隊隊長であり、ウルトラの父に次ぐ実力者たるゾフィーも続く。

 二十七万年(あるいは二十六万年)以上昔のウルトラ族とよく似た姿をしているDCの面々に、地球人を相手にするのと同様に親近感を抱いているのかもしれない。

 

『もし資源で必要なものがあれば可能な限りで協力ができるだろう。

 ただ、我々はすでに食事を必要としなくなって久しい。星で飼育している生き物用のものはあっても、君達人類型の生命体に適したものは、改めて用意する必要がある。

 食料に関して、急を要するのならば友好関係にある、他の星にも協力を求めよう』

 

 両者からの提案に返答をしたのは、正義の味方のスポンサーとしてオリュンポスの備蓄資源と艦隊の弾薬や生活物資の在庫を把握しているヘイデスだ。彼はヴァルシオーのサブシートで、データを呼び出しながら返答する。

 テレパシーのみならず、電波でも音波でも聞き取ってくれるウルトラ族の超受信能力に感謝である。

 

「生活物資についてはご心配には及びません。備蓄とリサイクルで最低限以上の質と量は確保できています。ただ技術交流や文化面での交流を、行わせてもらえると助かります。

 一期一会の出会いを大切にして、お互いに実りのある時間を過ごしたいですから。それに平和的な異文明との接触は、僕達にとって悲しいことに希少な経験なもので」

 

 ヘイデスが哀愁を隠せないくらいに、スパロボ世界は内ゲバ、侵略が当たり前の世界であり、ウルトラマンも内ゲバの頻度は低いが似たようなものなのだが、身内の脚の引っ張り具合がダントツなのがスパロボ世界の問題点だろう。

 かくしてDC艦隊は初代ウルトラマン世界のM78星雲は光の星の近海の宙域と、ウルトラスペースボートに間借りする形で腰を据える。

 短命かつ多様性の塊であるDCメンバーは生命体として圧倒的過ぎるが為に新たな文化の誕生と変化がひじょ~~~~うにゆったりとしたペースのウルトラ族に、大きな刺激を与えながら友好的に接触し、アインストのような人外、ハイネルやデュークといった異星人とも交流を深め、実に有意義な時間を過ごすのだった。

 

 

 

◆チュートリアル終わり

 

 

 

後はウルトラマンティガに世界中の子供達の光を返しにゆき、ガタノゾーアとの決戦に可能性の獣達と太陽と月のライディーンをメインとしたお返し部隊の参戦。

 

メビウス・フェニックスブレイブに変身する為の命を奪われていたメビウスとヒカリのもとへと駆け付け、エンペラ星人との決戦に加わるマジンカイザーや真ゲッターロボ。

 

マザースフィアザウルスの決戦において、奪われたデッカーへの再変身用のエネルギーを送り届け、スフィアの大群を蹴散らすアムロやシャア、ゼファー、コン・バトラーV、ボルテスVなど。

 

そして何話かクリアすると、各ウルトラマン世界から初代世界へ帰還する最中、襲撃してくるアブソリューティアンと激突するヴァイシュラバ、アインスト・レジセイアやケイサル・エフェス、ウーゼス、ラオデキヤ……複数回。

 

というのが昭和、平成、令和の各パックで行われるという設定です。

各パック1,000円(税抜)なお変身が強制解除されるほどダメージを負う、死亡した描写のないウルトラマン作品は除外されています。

 

ただウルトラマンシリーズで未視聴のものが多く、視聴した作品でもキャラクター像を忘れているので、具体的に話を続けるのは難しいのです。なにとぞご容赦を。

 




続きは難しいので皆さんの心の中にお任せします。三次創作にも期待を寄せましょう。それでは、ありがとうございました。


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おまけ リアル系女性主人公

第二次があったとして、主人公に彼女を選んだとして、乗り換えイベントがあったとして、そんな感じでごく一部を抜粋しました。


 『太陽系大戦』終結後の新代歴189年。

 デューク・フリードの治めるフリード星を盟主とする『銀河共栄連盟(銀栄連)』に参加し、軍事面における事実上の要として、天の川銀河に広くその名を知られた地球。

 現在は地球連邦政府に代わる『太陽系連邦政府(太陽連)』が統治機構として存在し、大戦によって負った傷を癒すべく奔走する一方で、宇宙や異世界からの悪意に備えて軍事力の再整備にも時を追われていた。

 

 銀栄連は参加する惑星国家の数こそ多いものの、その多くは過酷な支配を受けて疲弊した星々だ。母星を守り抜いた太陽連からはそういった星々へ、可能な限りの人道的支援、並びに軍事力の提供が成されている。

 もし地球をはじめ太陽系に新たな敵が姿を見せた時、銀栄連からの援軍を期待するのはもう数年は見込めないのが悲しい現状だった。

 

 戦火に焼かれた大地と人々への救援、破壊された都市の再興、他の惑星への開拓計画の発足と必要となる移民船団の編成、太陽系内部の各惑星ならびに主要なスペースコロニー間へのワープゲートの設置。

 大戦中に大量に開発された機動兵器の在庫確認と部隊の再編成、銀栄連への各種物資の供出並びにお友達価格での輸出計画、新たな敵に備えた新型兵器の開発、大量に鹵獲した敵勢力の兵器の解析その他……

 

 これまで地球人同士で行えばよかった各種の官民のアクションが、今となっては銀河規模に広がったことで太陽系はてんやわんやだ。

 そんな中、太陽連でもっとも忙しいと誰もが認めるのが、先の大戦で縁の下の力持ちとして地球を支えた元スパロボプレイヤー、ヘイデス・プルート太陽連初代大統領である。

 

 いろいろな人々に嵌められて、気付けば大統領になるしかなかったヘイデスだが、彼が呆気に取られていた時間は短かった。というよりは許されなかったと言うべきか……。

 スパロボプレイヤーとしての知識と経験を持つ彼は、場合によってはまだまだ異星人、宇宙生物、異世界人、異次元人などなどからの侵略的行為が続く可能性を否定できなかった。

 

 この宇宙にこれ以上、敵対勢力がいなくても、並行世界、異世界、過去や未来からやってくる可能性を捨てきれないのだから、ここは地獄かな?

 太陽系大戦中のアレコレで耐性の出来ていたヘイデスは、大統領就任の件を数分の躊躇の後に受諾し、一代でアナハイムやロームフェラ財団に並ぶ財閥を築き上げた辣腕を発揮し、太陽系の復興並びに自衛戦力の拡充に邁進することとなる。

 

 そしてさらに一年後の新代歴190年。宇宙世紀に換算すればU.C.0090となる年に、銀河は再び争乱の嵐に飲み込まれた。

 地底世界ラ・ギアスから侵攻、星間共和連合ゾヴォークの一部過激派による地球圏への侵入と武力行使、複数の異星人勢力からの侵略とヘイデスが、いや、地球人類が想定していた最悪の予想が的中してしまったのだ。

 

 太陽系への侵入を目論む敵対勢力にとって、最初の壁になるのは太陽系外に配備された無人兵器による防衛線だ。

 戦後、バルマー・サイデリアル連合帝国から譲渡に近い形で手に入れた無数の無人兵器と、製造プラントの数々をフル稼働して手に入れたソレらは現在、太陽系連合と友好勢力の頼もしい刃となっている。

 

 特に敵対勢力にとって厄介なのがズフィルード・エヴェッド、エル・ミレニウム、ゼル・ビレニウム、更にアンチスパイラルの母艦群だ。バサ帝国というよりはユーゼス経由で手に入れた兵器群だが、その戦闘能力たるや太陽連にしてもオーバーテクノロジー気味だ。

 惑星並みのサイズを誇るアシュタンガ級を総旗艦とし、更にフーレ級、アドラティオ級から成る艦隊から、銀河基準で見てもトップクラスの機動兵器と、デイモーンやメギロートといった数で攻める機体の組み合わせは、敵対勢力の骸を星の数ほど生み出していた。

 

 とはいえ太陽系への侵入を完全に遮断するにはどうしても数が足りず、またワープによって太陽系内に侵入されるケースも存在する。

 今回は、そうして太陽系内、場合によっては各惑星や地球にも侵入してきた命知らずの侵入者達を相手に抗う正義のスーパーロボット軍団の一幕のお話である。

 

 太陽系冥王星近海にて独立遊撃部隊『ノイエDC』とガルラ大帝国、暗黒ホラー軍団、ザール星間帝国、更にゾヴォークから成る一時的な軍事同盟との死闘が繰り広げられていた。

 この時、ノイエDCはラ・ギアスへの殴り込み勢、太陽系外に戦力を集めている超文明ガーディムならびにガトランティス帝国への対応部隊、そして太陽系内に留まる三つに部隊を分けていた。

 

 その内、太陽系内に留まる部隊を狙って、敵対勢力が狙い撃ちにしたのだ。

 パンドラボックス内部の異世界技術から建造されたマクロスや大空魔竜、クロガネなどの艦隊に、あまりにも手強すぎるノイエDCを倒す為、恥辱を忍んで手を結んだ諸勢力の兵器が雲霞の如く群がっている。

 ガイキング、ダルタニアス、ゴライオンといった新たなスーパーロボットが奮戦し、シーマのターンX、アムロのRνガンダム、クワトロのガイア・ギアαに率いられたMS部隊が新人達をカバーしながら敵機を返り討ちにする光景が延々と続いている。

 

 ガルラ大帝国のデスブラック獣人にメカブラック獣人、暗黒ホラー軍団の暗黒怪獣、ザール星間帝国のベムボーグにツインボーグ、そしてゾヴォークの機動兵器の総数は一千を超えている。

 あくまでお互いを攻撃しない程度の薄い同盟関係だが、それだけでもこれまで顔を突き合わせれば攻撃し合っていた状況よりもはるかにマシというもので、ノイエDCに対して徐々にその圧力を高めている。

 

 敵部隊がマクロスキャノンによる一掃を警戒し、母艦への攻撃を躊躇って散開しているのも相まって、ノイエDC側はよく奮闘していた。

 特に前大戦で真化融合を経験して、存在のステージを半歩分進めたアムロやクワトロ、シーマといった歴戦の戦士達の活躍は目覚ましい。

 既に百以上の敵機を撃墜したノイエDCの規格外の戦力に、ゾヴォークから派遣された指揮官のヴィガジは、怪獣めいたデザインの愛機ガルガウのコックピットで、剃り上げた頭部に青い血管を浮かべながら怒りを言葉に変える。

 

「地球人め、野蛮な猿め! 貴様らを駆逐する為にこんな蛮族共の手を借りなければならんとは、屈辱の極みだ!」

 

 銀河の列強に数えられるゾヴォークの一員たるヴィガジからすれば、ガルラもホラーもザールも、全てが唾棄すべき野蛮にして残虐極まりない連中だ。

 そんな連中と手を組まなければ、銀河の辺境にある小さな星一つ制圧できない事実は口にした通り恥辱の極みに他ならない。

 

「本末転倒も良い所だが、地球人の後はこいつらを俺の手で駆除してくれる」

 

 鼻息の荒いヴィガジだが、他の勢力の者達にしても考えていることは同じだ。目障りな地球人が居る内は仕方なく手を組むが、それが済んだ後はお互いの野心がぶつかり合う者同士。一匹残らず皆殺しにするか、奴隷にしてやろうと考えている。

 一応、ゾヴォークは植民地化辺りで目的が留まるので、このメンツの中では最も穏健派ではあるが、地球人側からすれば倒すべき敵であるのに変わりはない。

 

 そしてまたなぜこの冥王星近海で戦闘が勃発したのか? 答えはこの宙域にユーゼス印の兵器製造プラントが隠匿され、現在は太陽連の管理下で大量の兵器を供給する重要拠点となっていたからだ。

 また、現在はノイエDCのあるメンバーの為の新型機が開発されており、ノイエDC内部でも重要視されている場所だった。

 

 異星人側がこのプラントの破壊もしくは奪取を目論んでいる、と偽情報を流してノイエDCを誘い込むのに成功している。

 この手の罠は分かっていても自ら嵌まった上で突破するのがこれまでのDCだが、今回も苦戦しつつ、確かに敵部隊を倒している。

 正直、ヴィガジもひょっとしてこのまま押し切られるのではないか、と滲むような焦燥感を抱いていた。

 

「……重力震だと、この反応は!」

 

 ガルガウの捉えた反応はゾヴォークで一般的な転移反応だった。

 戦場の隙間を狙うにようにして、ゾヴォークで運用されている752.8mを誇る巨大強襲空母ゼラニオの艦隊とライグ=ゲイオス、ゲイオス=グルードを始めとしたゾヴォーク系の起動兵器が百機以上出現する。

 ヴィガジの目を引いたのはその中にゾヴォークで開発が終わったばかりの新型機、バラン=シュナイルの機影があったこと、より正確にはそのパイロットが戦場に姿を見せた事実。

 

「まさか、ゼゼーナン卿!?」

 

 同じゾヴォークでもヴィガジとは異なる派閥で、地球への武力侵攻を主導するタカ派のトップ、それがテイクニェット=ゼゼーナンであり、バラン=シュナイルのパイロットだ。

 

『ふん、大きな口を利いた割にはまだサル共を始末できていないとは。存外、ガルラやザール共もだらしのない。所詮は品性の欠片もない蛮族どもか』

 

 ゼゼーナンはあくまで一時的な同盟者に対する罵倒だけを口にしたが、通信画面越しにヴィガジを見る瞳には、同じ嘲りが含まれているのがはっきりと分かる。

 別派閥とはいえゼゼーナンはヴィガジよりも役職が上の人物だ。彼と対等な態度を取れるのは、ヴィガジの直接の上司であるウェンドロだけ。

 ヴィガジは頭に新たな血管を浮かべながら、ゼゼーナンにおもねる言葉を絞り出した。悲しいかな、彼は中間管理職、社会の歯車であった。

 

「ご足労いただき、誠に申し訳ございません」

 

『このバラン=シュナイルの力があれば、地球人如きの浅知恵など握り潰すのは容易い。お前達はそのままノイエDCの足止めをしていろ。多少惜しくはあるが、奴らのプラントはこのまま破壊する!』

 

 一部の護衛を残し、ゼゼーナンの引き連れてきた部隊がノイエDCとの戦闘に向かう中、バラン=シュナイルは小惑星に艤装されていた兵器プラントをターゲットに捉える。

 バラン=シュナイルは地球の誇るスーパーロボットを研究し、その撃破をコンセプトにして開発された超高性能機だ。現在、ゾヴォークで運用されている機動兵器としては間違いなく最強を誇る。

 

「バラン=シュナイルの力をもってすれば、宇宙から地球上の都市を焼き払う事とて出来る。宇宙空間でならば機体をフルパワーで運用するのに支障もない。

 愚かな地球人共は、大人しく私に従わなかった過去を悔やむがいい。貴様らサル如きにあの世があったらの話だがな、フハハハハハ!」

 

 ゼゼーナンにとって、戦闘に特化した地球人の兵器プラントは喉から手が出るほど欲しい代物だが、ノイエDCを片付けるのが、地球人類全体を屈服させる近道だと判断し、バラン=シュナイルの力に酔いしれながらトリガーを引こうとした。

 その指を止めたのは兵器プラントの近くで新たな重力震が発生し、黒紫色の境界領域を作り出す光景をセンサーが捉えたからだった。

 戦闘の始まる前から強大な重圧を感じていたアムロやクワトロ等、感受性の豊かな者達は新たに姿を見せたソレが、重圧の主なのだと直感で理解する。

 

 ソレはさながら漆黒の堕天使を思わせた。鋭い刃を連ねたような一対の翼から、緑色のエネルギーの羽を噴き出し、40m前後の機体は四肢から頭部に至るまで鋭角の直線で構成されていて、触れるだけで血を噴く刃のよう。

 両肩の側面に長大な細身の砲身が接続されていて、その力が解き放たれたなら、黙示録の到来の如く世界に終焉を呼び起こすような力強さと不気味さとがあった。

 

 この宇宙に産声を上げた堕天使は、明確な意思をもって機体の双眸にバラン=シュナイルの巨影を映す。ただカメラアイを向けられただけの筈なのに、ゼゼーナンは自分の心臓が凍り付く錯覚を覚えた。

 なにか自分が途方もない間違いを犯し、しかもそれは取り返しがつかないのだとなぜかそう思えてならなかった。

 

「廻れ、ティプラー・シリンダー。ラウドスフィアによる事象干渉開始。次元交差点を観測。トロニウムエンジン、並行励起……」

 

 漆黒の堕天使のコックピットでパイロットたる彼女──ヴィレッタ・『プリスケン』は自ら手掛けた究極級の機動兵器アストラナガン・パワードをぶっつけ本番でフル稼働させる。

 前大戦で回収されたアストラナガン・アフをベースに、この宇宙に転移してきたヴィレッタのR-GUNパワードを同化して損傷部位を補い、更にシュマシとヘマーら双子の生成したラウドスフィア──副作用のないリミッター付きのスフィア──を積み込んでいる。

 更にマジンセルやゲッターセルといったこの世界独自の技術各種もどん欲に盛り込み、イングラムのアストラナガンとは似て非なる機体として、このアストラナガン・パワードは完成している。

 

「なん、なんだあの機体は!? 信じられん、エネルギーを計測しきれないだとっ」

 

 ゼゼーナンが驚愕に震える中で、アストラナガン・パワードの両肩にある砲身が接続を解除し、機体の正面で合体。更に巨大な砲身を形作る。その間に機体の胸部装甲が左右に展開し、無数の色が激しく輝く内部が露となる。

 オリジナルアストラナガン最大の攻撃インフィニティ・シリンダーは、並行宇宙に干渉する特殊機関ティプラー・シリンダーを応用し、対象を超光速の時間逆行に陥れることで存在そのものを虚無へと消し去る究極の兵器の一つである。

 

 これに対してアストラナガン・パワードの有する最大最強の攻撃は、ティプラー・シリンダーの応用によって並行世界のトロニウムエンジンに接続し、本体のトロニウムエンジンと同期後、並行励起して全ての膨大なエネルギーを集束させて行われる。

 無限に存在するとも言われる並行世界から、膨大なトロニウムのエネルギーを集約し、上限の存在しないエネルギーによる絶対的破壊を齎す──

 

「メタルジェノサイダーモード起動! アストラナガン・パワード、フルパワー! 因果地平の彼方だろうと撃ち抜く! ITB(インフィニティトロニウムバスター)キャノン、デッド・エンド・シュート!!」

 

 ヴィレッタのヘルメットにターゲットのロックオンマーカーが反射し、荒ぶる愛機の手綱を華麗に操って、無数の世界から集められたトロニウムエンジンのエネルギーがついに解放された。

 光り輝く黄金のエネルギーがゼゼーナンの連れてきた援軍を目掛けて発射され、直撃どころかその余波を浴びただけでライグ=ゲイオスは疎かゼラニオさえも瞬時に破壊され、次々と爆発が起きて行く。

 

 バラン=シュナイルにも被害は及び、直撃コースから大きく外れていたというのに、ゾヴォークの技術を結集して作られた堅牢な機体は見る間に装甲を失って、中破以上の損傷を負ってゆく。

 さらに伸び行くITBキャノンの射線上に突如として、ぽっかりと黒い穴が開いた。アストラナガン・パワードの開いたワームホールだ。

 

 調整不足の現段階でも、天の川銀河の端から端までを貫き、その余波をもって破滅を齎しかねない天文学的な破壊力を誇る。

 ITBキャノンの射線軸上にこうしてワームホールを設置し、並行世界の熱的死を迎えた宇宙などエネルギーを放逐しても問題ないどこかへと逃がすことで、余計な犠牲を生まない安全措置を取っているわけだ。

 ITBキャノン発射後、砲身が分離してハイ・ツイン・ランチャーとして機体の両肩に接続される。それ以上、ヴィレッタは機体を動かさなかったが、ただの一撃で戦場を支配することには成功していた。

 

「調整もろくにしないまま実戦に投入するのは避けたかったのだけれど、仕方ないわね。R-GUN、これからはアストラナガンとして共に戦ってもらうわ」

 

 イングラムのアストラナガンとは開発の経緯も、用いられている技術も異なるが、確かにこのアストラナガン・パワードもまた究極の人型機動兵器と評価されるに相応しい機体として、完成していた。

 戦場に突如として出現し、惑星どころか星系を、いや銀河を破壊しうる超エネルギーを叩き出した漆黒の堕天使に、異星勢力が時を忘れて凍り付く中、ヴィガジは少しだけ思考停止から復活する。

 

「なん、なんなの、だ、アレは。あんなもの、あんなもの、ウユダーロ級を百隻揃えたとしても話にならんではないか! ウユダーロ級はゾヴォークの武力の象徴だぞ。それが、それが玩具に見えるようなものを出されては……なんだ!?」

 

 呆然と言葉を続けるヴィガジの耳を、機体のロックオンアラートが強く叩く。ヴィガジだけではない。ノイエDC以外の敵機全てがアストラナガン・パワードにロックオンされていたのだ。

 アストラナガン・パワードの翼が大きく展開され、機体の周囲に局所的な重力異常が数えきれないほど生まれていた。オリジナルアストラナガンに搭載されていた重力散弾によるMAP兵器アトラクター・シャワーだ。

 

「ターゲット・マルチロック。超重獄の顎から逃れられるかしら?」

 

 一斉に発射された重力散弾は自由自在の軌道を描き、敵味方を識別しながら戦場で動きを緩めていた敵部隊へと容赦なく襲い掛かる。命を刈り取る死神の如く、あるいは死という運命の如く、黒々と。

 ガルガウも当然ターゲットとなり、チャフやフレア代わりにミサイルをバラまきながら、必死に重力散弾から背を向けて逃げまどう。

 

「ぐっ、なんということだ。地球には、手を出すべきではなかったという事なのか!? ゼゼーナン卿は、ええい、とっくに逃げ出しているではないか!」

 

 華々しくデビューを飾るはずだったバラン=シュナイルには不運だったが、アストラナガン・パワードの常軌を逸した力を目の当たりにしたゼゼーナンは、身もふたもなく脱兎の勢いで逃げ出していた。

 ヴィガジが思わずコンソールをぶっ叩いた直後、ガルガウに四方から重力散弾が食らいついて、ヴィガジは重力の底に飲まれる前になんとか脱出に成功し、九死に一生を得ることに成功するのだった。

 

 敵母艦や特に耐久力に優れた機体など、ごく一部のみが生き残った異星連合は、アトラクター・シャワーの第一波を凌ぐやすぐさま撤退を選択して、冥王星近海から跡形もなく姿を消す。

 亜光速戦闘にも対応しているアストラナガン・パワードのレーダーから、敵の識別信号が完全に消えているのを確認し、ヴィレッタはヘルメットを脱いでシートの背もたれに体を預ける。

 

 自ら主導し、太陽連とヘパイストスラボの所長の全面的な協力の果てに完成させたアストラナガン・パワードは、思った以上の力を発揮してくれた。

 運命の片割れであるイングラム・プリスケンと同じように、これでヴィレッタもまた自らに課せられた永遠の戦いに必要な力を得たのだが、とはいえぶっつけ本番というのは、ヴィレッタにしても心臓に悪い。

 

「……全て上手く行ったのは不幸中の幸いね。ティプラー・シリンダーが少し揺らいでいるけれど、許容範囲。DEC装甲とラウドスフィアの同期も問題なし。転移機能のチェックも出来たし、後は次元移動のテストと実戦でのデータ収集が必要か。

 でも、まずはこの世界の地球での戦いを終えてから。私の番人としての使命を果たすのは、それから。それくらいは、許されるわよね」

 

 この世界には居ないリュウセイ、ライディ―ス、アヤに尋ねるようなヴィレッタの言葉は、コックピットの中にだけ響いて、誰の耳にも届くことはなかった。

 スーパーヒーロー作戦の世界から、直接この世界に転移してきたヴィレッタ・プリスケンの戦いは、新たな愛機を得て次なるステージへと移ろうとしていた。

 

<終>




こちらではお久しぶりです。
作品タイトルにもあります通り2024/2/29中に本作を含め永島ひろあき名義で投稿している作品を、オリジナルの一作を除き全て非公開といたしますので、あらかじめご了承ください。

どなたか続きを書いてくださっても全然かまいませんので、はい。


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