6月14日、岐阜県岐阜市にある陸上自衛隊射撃場で、18歳の自衛官候補生が指導役の自衛官に対して自動小銃を発砲し、3人が死傷した銃撃事件。本誌は殺人未遂容疑で逮捕された自衛官候補生Aの小学校時代の担任B氏や周辺の人物に取材を行った。
なぜ18歳の若者は凶行に及んだのか。彼をよく知る恩師らの証言から、その人物像とそれを育んだ家庭の内情が浮かび上がってきた。
前編『【卒アル入手】陸自・自衛官発砲事件、18歳容疑者の「元担任教師」が語る異様すぎた家庭環境「家はゴミ屋敷状態」「窓からは隙間風」』より続く。
小学校の頃から「自衛隊に入りたい」
B氏は、Aが当時から「自衛隊に入りたい」と話していたと証言する。
「Aは情緒面での問題を抱えていて、当時の学力ですが、掛け算は問題ありませんでしたが、割り算になるとちょっと……という感じでした。これは長年不登校だった影響だと思います。
ただ、勉強自体は好きではありませんでしたが、興味があることにはとことん関心を示しました。そのひとつが戦争の話で、真珠湾やミッドウェー海戦の逸話に目を輝かせていました。戦艦大和やアメリカのB-25などのプラモデルを一緒に作りましたが、完成した戦艦大和を食い入るようにずっと見つめていたことを覚えています。
Aは当時から『自衛隊に入りたい』と話していました。『なぜ?』と聞くと、『国家公務員だから』と意外な答えが返ってきたので、『自衛隊に入るには試験があるから最低限の勉強はしなさい』とアドバイスしたことをよく覚えています」
不登校が目立った中学時代
不登校が続いたAだったが、B氏の献身的なサポートもあり、小学校をどうにか卒業して地元の中学に進学した。しかし、入学してすぐ不登校になってしまった。
中学1年のときの担任C氏が明かす。
「始業式には親子3人で学校に来て、お母さんから『大事な息子なのでよろしくお願いします』と挨拶されました。小学校の先生から事情を聞いていたので、心機一転かと思いましたが、その翌日は欠席……。
その後も休みがちで、吹奏楽部に入部しましたが、数回参加しただけでした。『家で何をやってるんや」と聞いたことがありますが、『ユーチューブで音楽を聴いています』という答えでした。
集中力を保つことができないなどの問題がありましたが、知力自体はあったと思います。また、友達とも問題なく接していました。生徒間でのトラブルは一切なかったと思います。
ただ、不登校が問題となりました。何度か家庭訪問しましたが、お母さんは『わかりました』と言うだけで、何ら改善されることもなかった。結局、教育委員会の判断もあり、親元を離れて違う街にある児童養護施設に移り、現地の中学校に通うようになりました」
その後、岐阜県内の高校を卒業したAは、小学生のころからの夢だった自衛隊に入隊。しかし、そのわずか2ヵ月後、凶行に及んでしまった。動機は明らかになっていないが、上官との関係に問題を抱えていたという報道も出ている。
先生に「殴ったろか」という一面も
教え子の事件を聞いたC氏は「まさか。信じられない」と絶句したが、B氏「そうした一面もあったことは否めない」と打ち明けた。
「Aはガミガミ言われるのが嫌いでした。また、カッとなると反抗的な態度に出て、Aの素行を注意したほかの先生に対して『殴ったろか』と物騒なことを言っていたこともありました。そのまま成長してしまったのでしょうか。それでも事件を起こすなんて。決して悪い子ではなかった。自衛隊に入ってから何があったのか」
今後の供述が注目される。