天皇の弟の野心

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反乱を起こす天皇は、たいていが次男である。何らかの理由で弟に天皇の役目が回ってきた場合、「皇統を兄に戻さない」として頑張るわけである。乱を起こした代表的な天皇のほとんどが、天皇の弟である。天武天皇(天智天皇の弟)、後白河天皇(崇徳天皇の弟)、後鳥羽天皇(安徳天皇の弟)、後醍醐天皇(後二条天皇の弟)。当たり前といえば当たり前であるし、最初から長男で天皇になるのが決まっているなら、反乱を起こす理由がない。崇徳天皇は長男なのに、父親(鳥羽天皇)に嫌われて疎外されて暴れて、流された先で死んだが、これにしても、暴れる必要があったから暴れたのである。根底にあるのは、皇位継承権が複数の人間にあることであり、スペアの意味で候補が何人も用意されているわけだ。スペアには序列が有り、スペアはスペアだし格落ちだが、天皇になってしまえば紛れもなく正規品の天皇なので、継承順位が低くても潜在的には頂点に到達可能な貴種である。昭和天皇になってからテロが多発したのは、やはり弟が三人いるのが大きい。明治天皇と大正天皇には弟がいなかった。昭和天皇は、秩父宮、高松宮、三笠宮と三人の弟がいるし、2.26事件の連中も秩父宮と面識があり、(もちろん秩父宮が指示したわけではないが)昭和天皇を殺害して秩父宮を天皇にしようとした、というのはある。昭和天皇が一人っ子だったら2.26事件は起きてない。平成天皇(存命中に平成天皇と呼ぶのはよろしくないが)には常陸宮という弟がいるが、平成天皇を殺して常陸宮を担ぐという不穏な出来事はなかったし、誰も空想さえしなかっただろうから、弟がいれば必ず反乱というわけではあるまいが、これについては、日本国憲法での天皇親政が非現実的という理由で説明できる。天皇になっても不自由なだけで、メリットが少ない。仮に昭和天皇が早く死んでいればゴタゴタしたかもしれないが、平成元年の時点で平成天皇は55歳だし、浩宮は28歳であった。常陸宮をかついでどうするのか、という話である。
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