煩悩 #BornNow 開催マニュアル 1.1(2022/09/30更新)

煩悩 #BornNow 開催マニュアル 1.1

(2022/09/30更新)

目次

・はじめに

・本書の使い方

・煩悩 #BornNow とは?

・企画から実施までのスケジュール

・地域の魅力を引き出す企画実施のために

・Phase 0 実施エリア選定

・Phase 1 地域リサーチ

・Phase 2 概要企画

・Phase 3 関係各所調整

・Phase 4 詳細企画

・Phase 5 クリエイティブ制作

・Phase 6 企画公開

・Phase 7 制作(~本番3日前)

・Phase 8 制作(本番3日前~本番前日)

・Phase 9 企画開催

・Phase 10 反省・事後PR

・最後に

・はじめに

本資料は、「煩悩 #BornNow」を誰もができるようにするためのマニュアル資料である。運営陣もまだ手探りの中ではあるため、本マニュアルは随時アップデートされていく。最新情報は、GoogleDrive上に公開していく予定である。

・煩悩 #BornNow とは?

煩悩 #BornNow は、全国に7万7千箇所存在するお寺を活用した新たな「時間体験」。2016~2019年は主に音楽イベントという形式で、2022年は一泊二日の旅という形式で開催されてきた。(2022年現在)

夜間遊休資産であるお寺にいままでにない世界観を出現させ、その世界と出会うことで「生まれ変わる(BornNow)感覚」が味わえる。そんな時間体験を目指している。

「年齢や性別、出自に関係なく誰でも立ち寄れる場」という、寺が本来持っていたコミュニティの場としての機能の復活。カルチャーを通じた遊休資産活用への貢献。来訪者には新しい時間体験を提供する。

近年開催事例:

煩悩 #BornNow 2019 AfterMovie

煩悩 #BornNow 江田島 AfterMovie

・企画から実施までのスケジュール

一般的に1,000人規模のイベント実施をするとき、タイミングの1年前から企画構想をはじめる。また、会場の確保はどんなに遅くても3ヶ月前、イベントの告知は2ヶ月前にすることを推奨する。近年のイベントでは、半年近く前にイベント告知を開始して早割チケットなどを販売しながら動員数の推測をおこなう傾向にある。

・地域の魅力を引き出す企画実施のために

まず初めに、地域の魅力を見つけることが大切である。広島県江田島市で開催した際は、温暖な気候風土や牡蠣などの海産物はもちろんだが、地元のホテルのシェフを勤める男性やそのホテルのサービススタッフ、会場の寺院の住職夫婦の人柄そのものが魅力であった。絶景や有名な文化遺産がない場合でも何かしらの魅力はその土地に眠っていることが多い。我々煩悩 #BornNow チームは、地域の郷土資料館へ行って民族伝承からキーコンセプトを導き出すことも多い。

空間から魅力を定義づける場合もある。東京・表参道で開催した際は、本堂前に生えていた松の木のエキゾチックさと、ビルに会場が囲まれているために東京の騒音が境内に入ってこないギャップに着目した。キーコンセプトを「都会のオアシス」に設定したことで、ポスターやアーティスト選定のクリエイティブイメージが定まっていった。

・Phase 0 実施エリア選定

選定するエリアは広さ、電源の確保、ステージ設置、参加者の動線、安全性、騒音問題への配慮などを考慮して決定する。境内の規模や形状、電源の有無、騒音が周辺に影響しないか等を確認することが必要だが、何よりも参加者が楽しんでいる様子をイメージできるかの方が大切であることも多い。

  1. ​広さの評価:エリアの広さは出演者の数、見込まれる観客数、必要な設備と施設を収容する能力により決まる。お寺の境内の場合、本堂や多宝塔などの建物の位置、駐車場やトイレの設置場所も考慮に入れる必要がある。また、その土地の形状や地形もステージ配置や観客の視界に影響するため、確認しておくべきだ。
  2. 電源の確保:ステージの照明、音響システム、飲食ブース、チケットブースといった施設は電力を必要とする。お寺の境内であれば、既存の電源が利用できるか、あるいは一時的に発電機を設置する場所があるか調査する。
  3. ステージ設置:ステージの設置場所は観客の視界、音の広がり、アクセシビリティなどを考慮に入れて選ぶ。さらに、設置するための平坦な場所が確保できるかもチェックする。
  4. 参加者の動線:参加者がスムーズに動けるよう、エントランス、エキット、トイレ、飲食エリア、緊急避難経路等の動線を計画する。
  5. 安全性:地形や建物の安全性、天候の影響、緊急時の対応能力など、参加者の安全を確保する要素は非常に重要だ。
  6. 騒音問題への配慮:お寺の境内でのイベントなら、周辺の住民や地域への騒音影響を考慮する必要がある。音響設備の配置、防音策、音量の管理など、さまざまな観点から騒音問題に対策を立てる。

・Phase 1 地域リサーチ

地域の特性や地域住民の雰囲気をリサーチする。騒音問題が発生しないよう、また地域の歴史や文化を尊重するための計画を立てるため、このリサーチは最も重要といえる。

  1. 地域の特性の把握:まずは、開催地となる地域の文化的、歴史的、地理的な特性を理解する。これには地域の人口構成、文化的背景、経済状況、地域の魅力や課題などが含まれる。これらの情報は地域のニーズを把握し、地域に適合したイベント内容を企画するために重要だ。
  2. 地域住民の反応の理解:地域の住民や関係者との意見交換を通じて、彼らの反応や関心を評価する。これは地域の支持を得るだけでなく、地域が直面する問題や潜在的な機会について理解する手段となる。
  3. 過去の同様のイベントの調査:過去に地域で開催された同様のイベントがある場合、その結果や反響、問題点を調査する。これらの情報は今後の企画の参考となり、同じ問題を避けるための指針を提供する。
  4. 騒音問題への配慮:地域の騒音規制を調査し、そのルールに従って企画を進める。また、騒音が最小限になるようなイベントのタイミングや配置、音響システムを検討する。
  5. 地域の歴史や文化への尊重:地域の歴史や文化を尊重し、それを反映させる企画を立てる。特に、お寺の境内でのイベントであれば、そのお寺の歴史や宗教的な意味を理解し、それを尊重した形でイベントを進行する。

・Phase 2 概要計画

イベントの目的とコンセプトを明確化し、そのビジョンを基に全体的な企画を行う。ターゲットとする参加者や、期待する経験を具体的に定義し、それを満たすためには何が必要かをリストアップする。また、具体的な開催日、出演者やアクティビティの内容、予算の範囲もこの段階で定める。騒音問題への初期対策もここで考慮し、具体的な手段を検討する。

  1. 目的とコンセプトの明確化:イベントの目的を明確にし、それを表現する強力なコンセプトを定義する。例えば、「お寺と音楽の融合」や「地域コミュニティの結束強化」など、具体的な目的があるとより具体的な企画が可能になる。
  2. ターゲットとする参加者の定義:参加者の年齢層、性別、音楽の好み、興味や価値観などを考慮してターゲットを定義する。これにより、より適切な出演者の選択や活動内容の設定が可能になる。
  3. 期待する経験の定義:参加者に提供したい経験を具体的に定義する。それは「新しい音楽体験」であったり、「お寺の新たな魅力の発見」であったりするかもしれない。
  4. 開催日の選定:季節、天候、他の大型イベントとの競合などを考慮して開催日を選定する。特に屋外イベントの場合、雨天時の対策も必要である。
  5. 出演者やアクティビティの内容:ターゲット参加者の好みやイベントの目的に合った出演者を選定し、その出演内容を概要化する。また、音楽だけでなく、飲食やワークショップなどのアクティビティも企画する。
  6. 予算の範囲:必要な経費を見積もり、全体の予算を設定する。これには出演者のギャランティ、設備のレンタル費用、スタッフの人件費、広報費用などが含まれる。
  7. 騒音問題への初期対策:ステージ配置や音響システムの選定、防音壁の設置など、具体的な騒音対策を検討する。また、地元の騒音規制について調査し、それに準拠した企画を行う。

・Phase 3 関係各所調整

地元の自治体や警察、消防署、お寺の関係者、近隣住民など、イベントに関与する全ての関係者との調整を行う。この段階では許可や協力を得るため、計画の詳細とその安全性、騒音対策などを明確に説明する。また、関係者のフィードバックを受け入れ、計画を改善する余地も残す。何よりも大切なのは、地域関係者を「許可を出す人」としてではなく、「一緒にアイデアを磨いて面白くしていく仲間」として扱い、運営チームに引き込んでいくことである。

  1. 地元自治体や警察、消防署との調整:イベントの計画に地元の公的機関を巻き込むことで、イベントが地域社会に積極的に貢献する活動であることを示す。この段階で具体的な計画を共有し、安全対策や法律遵守についてのアドバイスを求める。公的機関からのフィードバックを反映し、イベント計画の品質を高める。
  2. お寺の関係者との調整:お寺の関係者も重要なパートナーだ。イベントがその場所の宗教的な意義を尊重し、それを活かす方法を一緒に考える。お寺の歴史や文化、価値観を反映したイベント内容を提案し、それらを一緒に磨いていく。
  3. 近隣住民との調整:イベントが近隣住民にも恩恵をもたらすような計画を一緒に考える。例えば、地元の飲食店やアーティストをイベントに巻き込むことで、地域経済の活性化に貢献する。また、騒音対策の意見を求めることで、イベントが地域の生活にマイナスの影響を及ぼさないよう配慮する。
  4. フィードバックの活用:上記の各関係者からのフィードバックは、イベント計画の改善に役立つ貴重な意見だ。それらを活用し、イベントがより地域に根ざし、多くの人に受け入れられるものになるよう工夫する。

・Phase 4 詳細企画

概要企画が承認されたら、具体的なスケジュール、ステージの設計、音響や照明の詳細な計画、飲食ブースやトイレの配置等を行う。また、騒音を最小限に抑えるための音響設備の選定やステージの配置、出演者の時間帯の調整などもこの段階で行う。とはいえ我々は大きな音を出して踊ることが大好きなので、そのような面白い会場があればぜひ教えてほしい。

  1. 具体的なスケジュール:イベントの流れを決定する。DJの出演順、アクティビティの時間、休憩時間、開場と閉場時間等を定める。時間帯による騒音の影響を考え、ある程度の時間制限を設けると良い。特に深夜帯は騒音の影響が増大するため、適切な時間帯に活動を終えるようスケジュールを組む。
  2. ステージの設計:視覚的魅力と機能性を兼ね備えたステージを設計する。お寺の境内を使うため、ステージの設計にはお寺の雰囲気を尊重し、それを活かす工夫が必要である。
  3. 音響や照明の詳細な計画:音響と照明はイベントの雰囲気を大いに左右する要素だ。しかし、音響は同時に騒音問題も生む可能性がある。低騒音型のスピーカーや、音を特定の方向に集中させるような音響設備を選定する。また、音量の管理も重要であり、必要以上に大音量にしないようにする。
  4. 飲食ブースやトイレの配置:参加者の利便性を考慮し、飲食ブースやトイレは人々が容易にアクセスでき、かつ混雑を避けられる位置に配置する。
  5. 騒音対策:騒音を最小限に抑えるために、ステージの配置や、音響設備の選定、出演者の時間帯の調整を行う。また、境内に騒音を吸収するマテリアルを配置することも効果的である。可能な限り住民への影響を減らし、地域との良好な関係を維持する。

・Phase 5 クリエイティブ制作

イベントのブランディングを策定し、それに基づいた公式ウェブサイト、ポスターなどのデザインを制作する。また、SNSを活用したPR戦略も立案する。イベント当日の空間イメージも含めてどのビジュアルを選択すればコンセプトを参加者に伝えられるかを、絶対に妥協せず、少しでも面白い方向へと考え続ける。プロデューサーとクリエイティブディレクターの双方が腹落ちするまでどれだけオープンに議論できるかでイベントの質が大きく変わる。

  1. ブランディング:イベントのユニークなアイデンティティを形成する。これはイベントの目的、ビジョン、そして核となる価値を反映している。ブランドイメージを定義することで、一貫したメッセージを伝え、参加者にどのような体験を期待できるかを示すことができる。
  2. デザイン制作:ブランディングを具現化する視覚的な要素を作成する。これには公式ウェブサイトのデザイン、ポスター、チラシ、チケットなどが含まれる。それらはすべてブランドイメージを反映し、一貫した見た目と感じを提供する。
  3. SNS戦略:SNSはイベントの宣伝や広報に非常に重要なツールである。どのプラットフォームを使用し、どのようなコンテンツを共有し、どのターゲットオーディエンスに向けてメッセージを伝えるかを詳細に計画する。また、参加者がイベントをSNSでシェアしやすいようにする。
  4. 空間イメージ:イベントのスペースはその雰囲気や体験に大きく影響する。どのように空間を利用し、どのような視覚的な演出を行うとお寺の魅力が引き出されるかを計画する。

・Phase 6 企画公開

イベントの詳細情報を公開し、チケット販売を開始する。まずは、身近な友人に恥ずかしがらずにお誘いの連絡をすることが大切だ。自信をもって誘えるクオリティになるまでクリエイティブやイベントの中身を考え尽くすことが、主催者には求められる。大切なのはいくらイベントにお金をかけたかよりも、どれだけ楽しんでもらえるかを考えたかである。

Phase 7  制作(~本番3日前)

ステージや音響、照明の設備、装飾、飲食ブース等の設営準備を開始する。また、スタッフとボランティアの役割分担と調整、セキュリティ計画、緊急時の対応計画なども行う。

  1. 設営準備:ステージ、音響、照明の設備、装飾、飲食ブース等の設置のための準備が行われる。これには具体的な配置図の作成、必要な機材の確認と配送、設置スタッフのスケジュール調整が含まれる。
  2. 役割分担と調整:イベントスタッフとボランティアの具体的な役割と業務を明確にする。各個人のタスクと責任を明確にし、それぞれが何をすべきかを理解していることを確認する。
  3. セキュリティ計画:イベントの安全を確保するための詳細な計画を策定する。これには、会場内のセキュリティスタッフの配置、入場時のチェック、不審者や緊急事態に対する対応策が含まれる。
  4. 緊急時の対応計画:予期せぬ事態や緊急事態に備えるための計画を策定する。火災、自然災害、医療緊急事態など、様々なシナリオに対する具体的な対応策と連絡網を作成する。

・Phase 8 制作(本番3日前~本番前日)

全ての設営作業を完了し、最終的な調整を行う。スタッフとボランティアの最終ミーティングを開き、役割や注意事項を再確認。騒音対策として、音響システムの最終チェックや騒音レベルのテストを行う。全員の頭の中に、①当日の動きのシュミレーションができていること、②予想できないことが起こった時に連絡する相手がわかっていること、が大切である。

・Phase 9 企画開催

主催者は可能な限り実作業をせずに、来てくれた人に挨拶をしたりスタッフへ細かな配慮をすることがよい。熱中症防止用の飴玉をいつでも渡せるように持ち歩いておこう。運営ディレクターは、機転をきかせて予想だにしないトラブルを解決していくことになる。一息つく頃にはイベントが終わっていることが多いが、それも主催者の宿命である。

・Phase 10 反省・事後PR

イベント後は反省会を開催し、何がうまくいったか、何が改善されるべきかを共有する。また、イベントのハイライトや成功した点をまとめて、SNSやウェブサイトで公開する。アフタームービーを帰りの電車で見れる程の爆速で制作してくれる映像制作会社をパートナーにすると、SNSでのシェア率が伸びる傾向にある。

  1. 反省会の開催:イベント終了後に全スタッフとともに反省会を開く。この段階で各自の経験や感想を共有し、イベント全体の強みと弱点を評価する。これには具体的に何がうまく行ったか、何が問題だったか、どの部分に改善の余地があるかを明確にする。
  2. 改善点の把握と対策の立案:反省会で明らかになった課題に対して、具体的な改善策を検討し、次回のイベントに活かす。
  3. 事後PR:イベントのハイライトや成功した点をまとめ、それをSNSやウェブサイトで公開する。これにはイベントの写真やビデオ、参加者のコメント、出演者のメッセージなどを使用する。これらの内容を用いて、イベントの成功を広く共有し、次回のイベントへの関心を喚起する。

・最後に

正直なことを言うと、イベントを作ることは結構大変だ。利益もそこまででる訳ではないし、安全や騒音など気を遣わなければならないことが膨大だからである。しかし、イベント終了して撤収が終わったあとの居酒屋ではもう次の企画のアイデアが浮かんでくる。煩悩 #BornNow が日本各地で開催されることを祈ってます。宿坊をつくってみたいので、候補地があれば相談してください。

相談先メールアドレス:y.kamada@wearenewskool.com(担当:鎌田)