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50年間 唯一逮捕されなかった逃亡犯…桐島聡の属したテロ組織が起こした連続企業爆破事件の真実とは

2024.02.27 公開

2024年2月、連続企業爆破事件で指名手配されている桐島聡容疑者を名乗り、入院先の病院で死亡した男が、桐島容疑者本人であると特定されたという情報が舞い込んできた。男は一体どんな罪を犯したのか?

2013年に出版された事件の裏側が明らかにされた書籍「狼の牙を折れ」や、当時の警察への取材、裁判資料を元に再現ドラマで紹介した。

1974年8月30日。東京・丸の内。午後12時20分頃、一人の男が三菱重工本社ビル前に2つの包みを置いた。それから15分ほど経ち「三菱重工ビルの前の歩道上に2つの時限爆弾を仕掛けた」という電話が交換手に入り、予告電話から僅か4分後に大爆発が起こった。

凄まじい爆風によって降り注いだガラスは4000枚以上、路上に降り積もった破片は5cm以上の層となった。死者8人、重軽傷者380人。日本における最悪の爆破テロ事件であった。

喫茶店には、コードネームで呼び合う4人の男女。大道寺将司とその妻のあや子、片岡利明、佐々木規夫。そう彼らは、日本中を驚かせた、桐島聡がいたテロ集団、東アジア反日武装戦線の主要なメンバーだった。東京・丸の内署では捜査本部が立ち上がった。

事件から約1か月後、「狼」と名乗る犯人から犯行声明が届いた。そこには「1974年8月30日。三菱爆破=ダイヤモンド作戦を決行したのは、東アジア反日武装戦線“狼”である。」とあった。そして次々と爆破テロが起きていく。

爆破テロを起こした東アジア反日武装戦線とは?
彼らは、「日本帝国主義のアジアの国々に対する「侵略」は、経済に形に変えて「今も」続いている」と思っていた。それは、「海外進出した日本の大企業が現地の労働者たちを安い賃金で労働させ、搾取している」との確信を生み、「それを阻止することが何より必要だ」と考え、日本の大企業などへの爆破攻撃を計画したのだ。
しかも、「この計画を行うには、大衆を味方につける運動をするのではなく、少数精鋭で実践的に行動することが重要」と考えた。
こうして東アジア反日武装戦線“狼”と名乗る部隊が1972年に結成された。

 “狼”は「腹腹時計」と呼ばれる冊子を密かに執筆していた。そこには爆弾の材料や製造方法、注意事項、さらにどのように身を隠すかまで記されていた。そしてメンバーは「腹腹時計」を忠実に実践。彼らは昼間それぞれが仕事を持ち真面目な市民を装った。武器弾薬、闘争資金は、自ら製造、獲得するのを鉄則とし、夜は爆弾を製造。深夜まで隣近所に聞こえるような作業をしないよう細心の注意を払っていた。

さらに、“狼”に共感した齋藤和が率いる“大地の牙”が東アジア反日武装戦線に合流。新たなテロを起こすことになる。同年10月14日、1人の女が駅のトイレで制服に着替え、包みを持って東京・新橋の三井物産本館ビルにOLを装って入り、海外との連絡の中枢である通信室の前に包みを置いた。齋藤が「社内に爆弾を設置した、20分後に爆発する」と通告。近くの警察署員が駆けつけ爆弾を捜索中に爆発した。この爆破事件で17人が重軽傷を負った。届いた声明文には、「東アジア反日武装戦線“大地の牙”」と記されていた。

警察は、冊子「腹腹時計」と三菱重工爆破の犯行声明文が同じタイプライターが使われていたことを発見。さらに爆破テロは続き、再び“狼”が東京・日野市にある帝人の研究所を爆破。

その頃、黒川芳正率いる第三のテロ部隊“さそり”が活動を始めた。桐島がいたのはこの部隊。そしてこの部隊も次々と爆破テロを起こした。

捜査本部は2年前、北海道で同時にあった2件の爆破事件を疑った。事件の前後、若者2人組が北海道を旅行していた。2人が書いた宿帳に記入された住所と名前は架空のもの。宿泊先の女将に聞くと、2人組の1人がもう一方に“のどか”と呼びかけていたと言う。捜査官はのどかと呼ばれた男について捜査を進めていく。

そんな中またも爆破事件が発生。“大地の牙”が大成建設を、桐島がいた“さそり”が鹿島建設をそれぞれ爆破。一方、警察は「腹腹時計」の思想と共通する「東京行動戦線」という月刊機関紙を見つける。購入者名簿を入手しその中に「齋藤和(のどか)」という名前を見つけた。さらに北海道出身の佐々木という男の写真を手に入れ、前述の女将に見せると「似ている」と証言が。こうして2人組が佐々木規夫と齋藤和であると判明。

1975年、佐々木の住所を割り出し東京・北区にあるアパートへ向かうと佐々木の部屋の前に大きな荷物があった。宛名は「佐々木規夫」。差出人も本人。出した場所は北海道だった。しかし、今の時点では確たる証拠もなく佐々木に直接あたることはできない。警察は拠点を作って佐々木の行動確認を進めることとなった。

その頃、“狼”“大地の牙”“さそり”の3つの部隊が初めて一堂に会していた。大道寺が「バラバラにやってきた闘争を、今後はもっと密に連携したい」と提案し他部隊も同意。そして新たな爆破計画が進みはじめた。

警察は佐々木の監視を始めた。佐々木は東京・台東区にある倉庫会社で働いていた。佐々木の監視に入って10日目、佐々木はあるアパートに入っていった。そこは片岡利明、機械加工会社に勤務する男の部屋だった。そして片岡の監視も始まった。

2月11日、昼過ぎに突然佐々木が動いた。佐々木は公園に行きしばらくして1台の車が近づいてきた。車の持ち主は大道寺将司。この時点で警察は佐々木、片岡、大道寺将司・あや子の4人を確認。

その1週間後、勤務を終えた大道寺将司・あや子、佐々木の3人が信濃町駅で合流した。3人は異常な警戒心をみせていたため、捜査員たちはやむなく尾行を断念。1時間後、東京・北青山の間組本社ビルで大爆発が起きた。警察はこの事件に3人が関わっていることを確信した。

また、警察は片岡がアパートを引っ越すという情報を大家から仕入れていた。厳重に梱包された荷物、そして今度は佐々木の荷物をトラックに積み込み始めた。片岡と佐々木の荷物を積み込んだトラックは、再び走り出し東京・足立区のアパートへと向かった。ここに引っ越したという。

2日後、大道寺将司が喫茶店で“大地の牙”の齋藤、“さそり”の黒川と会っていた。男たちを捜査官は追い、齋藤、黒川と、“大地の牙”の女性メンバーが判明。ついに謎に包まれた組織の全容を視界に捉えたのだ。

その頃、佐々木は引っ越した新しいアパートの地下に穴を掘り、爆弾工場を造っていた。そして工事の音を消すため、自ら吹き込んだお経のテープを流していた。

その後も立て続けに“大地の牙”“さそり”の2つの部隊による爆弾事件は続き、そこにはあの桐島聡もいた。桐島は鹿島建設、間組本社に続き、1975年4月18日、東京・銀座の韓国産業経済研究所爆破事件、その9日後の間組江戸川作業所爆破事件、さらに7日後の間組京成江戸川橋工事現場爆破事件と5つの爆破事件に共謀・実行で関与したとされている。

佐々木のアパートの下の“狼”の地下爆弾工場も完成、新たな爆弾造りが始まった。彼らは捜査の手が迫っていることに気づいていなかった。

捜査官が監視している中、佐々木は近くのゴミ捨て場を通り過ぎ8分ほどで帰ってきた。ゴミ袋から出てきたのは金属類、リード線、乾電池など爆弾製造の時に出たと思われるゴミだった。

これにより確信を得た捜査官。一斉逮捕の日は1週間後の5月19日と決められた。こうして一連の事件に関与した10人のうち8人を逮捕。この時、逮捕を免れた2人の中に桐島聡がいた。

逮捕された8人のうち、取調室で聴取を受けていた齋藤は隠し持っていた青酸カリを飲み、そのまま息を引き取った。また、当初完全黙秘を貫いていたメンバーたちは全面自供に転じ、連続11件に及んだ企業爆破事件の全容が明らかになった。

ところが予想しないことが起きる。逮捕から2ヶ月半後、別のテロ集団・日本赤軍がクアラルンプールのアメリカなどの大使館を占拠して政治犯7人の釈放を要求。その中に佐々木がいた。さらに1977年には、同じく日本赤軍が日航機をハイジャック。それにより大道寺あや子とメンバーの女性1人が釈放された。こうして、逮捕された8人のうち3人は日本から出国したのである。

佐々木、大道寺あや子は現在も国外逃亡中、大道寺将司と片岡は死刑が確定したが、大道寺将司は収監中の2017年、ガンのため死亡。片岡は2人の共犯者が国外逃亡中の為刑は執行されていない。また、桐島とともに逮捕を免れていたメンバーの1人も1982年に逃亡先で逮捕。この事件に関わった10人の中で桐島は唯一、一度も逮捕されていなかった。

桐島はメンバーの一斉逮捕の翌日5月20日、東京・渋谷区内の銀行で金を引き出している。そして31日に実家に電話したのち行方が一切分からぬまま。桐島の時効は佐々木、大道寺あや子が国外逃亡中のため停止したままで警察はその行方を追っていたが情報を掴めずにいた。

しかし今年「桐島聡」を名乗る男が突如現れたのだった。男は「内田洋」の名前で生活していて、自宅周辺の路上で倒れていたところを近隣の住民に助けられ、救急搬送された。その入院先の病院で「自分は桐島聡だ」と名乗ったという。

捜査関係者によると、男は家族や本籍など桐島本人しか知り得ない情報を話していたという。そして男は末期の胃ガンのため息を引き取った。「死ぬ時くらいは本名で死にたかった」と言った彼は、のちのDNA型鑑定などにより、手配中の桐島聡容疑者と特定され、容疑者死亡のまま書類送検された。

50年目にして再びニュースとなった連続企業爆破事件。二度とこのようなことを起こさせてはいけない。

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