本当に自閉だと丸暗記が得意か

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世間的に、丸暗記は悪だという。そして自閉は丸暗記が得意だという。このあたりの通説は、なんとなく、低学歴への配慮(つまり高学歴は丸暗記の産物)という気もするし、あるいは逆に、カレンダーを全部覚えているサヴァン症候群のように自閉を美化しているのかもしれないが、とりあえず善悪を抜きにして、暗記とはなんぞやとフラットに考えてみたい。たとえば明日試験があるとする。そのために丸暗記したりするのだが、とりあえず理解はともかく「これが正解」というのを覚えるわけである。なんとなく思うのは、自閉にとって、これは気味が悪そうである。「これが正解」というのは他人が決めた正解だし、それを押し付けられるのは自閉が好まない気がする。内面の自閉空間から生じてきた正解ならこだわるが、明日の試験のために「これが正解」というのは、同じ正解でも真逆に思える。むしろ定型発達者のほうが柔軟に「これが正解」というのを明日の試験のために受容するかもしれない。「これが正解」というのを暗記するのは自閉の発想ではない気がするし、むしろ素直で健康な心の持ち主がやることである。いわゆる育てやすい子どもほど、「これが正解」というのはすんなり暗記して、そこで終わらせそうである。カレンダーを暗記できる自閉が、明日の試験のための丸暗記も得意かというと、そうとは限らない。ともかく、わたしの意見としては、暗記=頑固な人間という俗説は正しくないし、むしろ暗記=素直な人間という理解のほうが正しいように思う。たとえばアスペルガー症候群の鉄道オタクが鉄道の時刻表を丸暗記するとしても、おそらくそれは、彼の自閉的な視点から見て、時刻表が聖書なのだろうし、自分の内面が求めた正解なのである。決して他人から押し付けられた「これが正解」という便宜的なものではないはずなのだ。自閉的な内面とシンクロしないものについては、暗記を拒否してパニックになる可能性もある。
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