矢沢様の家のお手伝いさんになるのが夢でした
私は、売れない時代から矢沢様を神と崇め、もし「あと何ヶ月で死にますよ」って言われたら、矢沢様の家のお手伝いさんになるか、矢沢様が武道館コンサートを開催するタイミングで、武道館の掃除婦になって、「素の矢沢様と一瞬でも言葉を交わしてから死にたい」と思っていました。そうしたら、そのタワマンに引っ越してしばらくして、マネージャーが、「隣に矢沢さん、いますよね」って言うんです。「私だけじゃなくて、スタッフみんな見てますよ」って。
まさかそんなはずは……と思いながら、ある日10時ぐらいにデパートに行こうと思ってエレベーターに乗ったら、あとから「すいません」って、真っ白のGUCCIの短パンに、GUCCIの紐なしのスニーカーを履いた人が入ってきて、ペットボトルの水を一本持って、「タタン、タタン」と足でリズムを刻んでいた。そのとき私はすっぴんで、つばのある帽子をかぶっていたから、その人の足元ばっかりに目が行ってたんだけど、「このリズムの刻み方はもしや永ちゃん……?」と思って顔を上げたら、もう「うぇぇぇぇぇ!」って、心の中で変な声が出ました(笑)。
本物の永ちゃんが、上を向きながら、エレベーターの中でも全身でリズムを刻んでいて。そのカッコいいことったら! そのマンションは、ジムが2階にあったので、「あ、2階で降りちゃう」って直感したら、本当にすぐエレベーターが着いてしまったんです。
矢沢様が降りようとした瞬間、私は、なるべく平静を装って、「矢沢さん?」って声をかけました。すると、矢沢様は振り返って、「え? ああ、ピン子さん。いつも楽屋見舞いをありがとうございます」と言ってくださった。私がずっと楽屋見舞いを贈っていたことを、覚えていてくれたんですね。嬉しかったけど、そのときに頭が真っ白になった私は思わず「私、太っていてすいません! 今度コンサートを見に行くときは、必ず痩せていきます」と、訳のわかんないことを口走っていました(笑)。