子どもが当時の私の年齢になってきて、薄々気づきはじめていた。
こんな子どもに責任があるわけない。
私は悪くなかった、ということ。でも、自信がなかった。
それが、去年のちょうど今頃、連載中の人権啓発冊子「アイユ」の
インタビューでSpringの代表山本潤さんに出会って、確信に変わった。
40年近く前、女優を目指していた時期の出来事、
私は、信頼している大人から性暴力の被害にあった。
SEXが何をすることかも知らない子どもだった。
何が起きているのかよくわからなくて、こわくて、抵抗できなかった。
この件が原因で私は夢をあきらめ、荒れた高校生活をおくることになった。
『女子アナ失格』(2005新潮社)に、当時の非行については、ある程度書いたので、
読者は、すでにご存知のこと。摂食障害や私の止められない一連の非行は、
大学に入ることを目標においたことで収まったが、
その後、大学に入り、アナウンサーになってからも、
度々、大きくつまづき、自信喪失、不安、抑うつ感、希死念慮が私につきまとった。
酒量は増える一方で、安定剤が手放せない状態だった。
これは、仕事からくるストレスか、私の性格なのか、何なのか、わからなかった。
私は欠陥だらけの人間だと思った。
生きるのが何で私にはこんなにしんどいことに思えるのだろうかと、
自分を呪い、自己嫌悪した。
結婚して、子どもができても、その感覚はしばしばよみがえってきた。
どうしても、私の中に、何か鉛のような塊があって、胸苦しさを覚えるのだ。
何をやっても、自分のことが好きになれないし、自信がない。
大学院で学位をとったり、心理士の資格や日本語教師の資格をとってみても、
自分はダメな人間だという思いがいつもある。
油断すると、死にたいという気持ちにかられる。
子ども、家族が悲しむし、迷惑をかけるからそれは絶対にしないけれど、
自分を肯定することがどうしてもできないのだ。
そうなってしまった理由がはっきりした。
これは、性暴力による後遺症だった。
去年、山本潤さんに会って、ご著書を読み、私の高校時代、その後の様々な精神症状は
性暴力被害者の後遺症としておこりうる典型的な症状だということがわかった。
私の根本にあのことがあることは何となくはわかっていたが、
そのことに向き合うのは、あまりにも苦しく、心の中に冷凍保存した状態で生きてきた。
ドイツでの調査だが、子供の頃の性被害を人に相談できた平均年齢は、
46歳だということだ。
思いだすと自分が壊れるかもしれない記憶をフリーズさせるのは当然の防御反応で、
50歳を過ぎた私が今頃気付いたというのも不思議な話ではない。
山本潤さんから紹介してもらって、弁護士に相談し、
精神科医やカウンセラーの協力も得て、ようやく、この問題に区切りをつけた。
私の中の引き出しの奥の方にぐちゃぐちゃにしまい込んだ記憶を、
一度全部洗いざらい表に出し、整理し、また入れ直すといった作業は
想像以上にきつく、毎回、泣き崩れ、数日間は気持ちが落ち込んだ。
決して、完全に回復することはない。傷はどうしてもなくならない。
でも、その傷を小さくするか、自分の器を大きくして目立たなくさせるか、
ということはできるという。
この一連の治療ではっきりと理解できたことは、
「私は悪くなかった」ということだ。
こんなにシンプルで当たり前のことを何故今まで受け入れなかったのだろうか。
性被害にあうと、自分は100%悪くないのに、自分のせいにしてしまう。
私がダメだったからだ、私がそこにいたからだ、私が抵抗しなかったからだ、
私がいけない、私の存在がいけない、私なんていないほうがよかった・・・。
倫理、道徳を育む思春期の大事な時期に、人も自分も信じることができなくなって、
自分を責め、自分を傷つける行為を繰り返し、傷を深めてしまった。
私が人権問題に関心をもち、ずっと離れられない理由はこれだった。
自分のせいではないのに、誰にも言えない秘密を抱え、劣等感をもちながら、
社会からの偏見の目におびえて生きていく姿は、私じゃないか。
これまで、ハンセン病の回復者はじめ、様々な人権問題を抱える人に、
経験を語ることで社会は変わる、あなたが動けば動くんです、と説いて
話してもらってきた。
それなのに、私が目を背けている場合か。
沈黙は性犯罪を許容する社会を黙認することにほかならない。
もちろん、言えない人、向き合いたくない人、忘れたい人、事情は様々。
沈黙することで自分を守ることも大事。それが生き抜くために必要なことだと思うから。
でも、私はもう沈黙はいや。
そもそも、沈黙させられるということ自体が屈辱であり、被害だ。
もういい加減、自由になりたい。
私の敬愛する谺雄二さん(ハンセン病国賠訴訟原告団長)は、
「せっかくらいになったのだから」という言葉を書き残している。
私もそんな境地になってみたいな、と思う。
この経験を、次の世代のために生かすことができれば、本望。
それが私の回復にもつながる。
できることから、やっていこうと思う。
山本潤さんの活動を応援します。
一人一人の力は非力でも、無力ではない。
声を届け、社会を変えていきたい。
One Voiceメッセージもお寄せくださいまし。
顔、文字があることで、力強いメッセージになることを信じて!
この件では、とりわけ、夫は、私から生々しい話をさんざん聞かされ、
二次被害に苦しみながらも、決して私を見捨てず、全力で私を支えてくれた。
二人で乗り越えることができて、ようやく夫婦になれた実感がある。
また、家族は、私が性暴力の被害当事者であることを隠さず
活動を続けることに賛成してくれた。感謝しかない。
刑法改正の見直しの時期は2020年。
私も、今猛勉強中です。
このブログにも、随時、この問題に関することを整理して載せていきます。
人生も折り返し点を過ぎました。
後半は、堂々と胸を張って、たくさん笑って生きることに決めました^^