福岡在住の女性Ｙ様から「牧のうどん食べながら反省会させてもらえたら嬉しいです」とご連絡をいただいた。牧のうどんは私の大好物である。Ｙ様が反省をしたかったテーマは「何をやっても中途半端になる自分について」だった。中途半端なら任せろ。私は、天下無敵の半端者である。中途半端な人は、行動だけ見ると支離滅裂だが、生まれた時から貫かれている筋がある。中途半端な自分に悩まされる。ちゃんとしたいと思っても簡単に怠ける。すぐに飽きる。意思が続かない。何かを極めたいと思っても、途中で気分が変わってしまう。そんなあなたは我々の仲間だ。中途半端は治すものではない。開き直って「俺を身晒せ」と胸を張るものだ。

何処に出しても恥ずかしい私は、音楽を愛しているが音楽を知らない。よく「お前はそんなことも知らないのか」とインテリから怒られる。私は、好きな癖に何も知らない自分をいいなと思う。知らないことを恥ずかしいことだと思って、知識を集めた時期もある。だが、やればやるほど退屈になり、嫌いになった。誤解を恐れずに言おう。知れば知るほど好きになるというのは真っ赤な嘘だ。無知なまま、好きでい続けるのが本当だ。何かを知ったと思う時、その人は知るべきことさえも知らない。女も同じだ。女を知ったと思う時、そいつは止まる。女は永遠に未知である。永遠の未知に惹かれるのだ。何も知らないまま、大好きであり続けるのだ。

Ｙ様は「ちゃんとしてる人に憧れて何かを初めても無理だってなって辞めちゃうし、自由に生きている人たちの輪の中に入っても無理だってなって辞めちゃうし、結局一人になる。私には私しかいないのだから、私は私の味方でいようと自分を抱き締めてあげられる時期もあるが、この身諸共滅びてしまえと思うこともある」と言った。なるほど。非常に共感度の高い話だ。ここで、私は重要な指摘をした。Ｙ様、あなたは人からよく見られたいと思っていませんか。馬鹿にされたくないと思っていませんか。いい人そうに見せかけて、実はめちゃめちゃ嫌な奴ではありませんかと。すると、Ｙ様はスパークした。そうです！そうなのです！と、露骨に元気になって明るくなった。昔はそんな自分を認めることができなかった。だけど、ある人から指摘されて「うわー、自分にもそんなところすごいある」と痛感して、自分を知ったのだと。

私は思う。中途半端な自分に悩む人は、ブレーキとアクセルを両方ベタ踏みしている状態だ。自分のまま自由に行きたいというアクセルと、よく思われたいのブレーキが両方フルマックスで踏まれているため、結局、何処にも行けないまま異様に疲れる。ボディがエンストを起こしている。極めて愛狂しい姿だが、本人は大変である。死にたくなるのも頷ける話だ。何を隠そう、かつての私がそうだった。それを壊した。いい子ぶっていた時は、存在として暗かった。俺は嫌な奴だと言えるようになった方が、存在として明るくなった。世の中には、間違いだらけなのに明るい雰囲気を撒き散らす人もいる。間違ったことは何もやっていないのに、暗い雰囲気を撒き散らす人もいる。さすれば俺は間違いだらけのサンシャインになろうと思った。ブレーキの壊れたポルシェになると誓ったのだ。

いい子ぶっている暇があったら、なめんじゃねえぞと言ってみろ。本来だったら「なめんじゃねえぞ」と怒るべき場面で、ヘラヘラと笑って済ませるのは最悪である。別れ際、Ｙ様は言った。馬鹿にされたくないと思っている自分は、誰よりも人を馬鹿にしていたことに気づきましたと。私は「おめでとうございまーす」と、小馬鹿にした感じで言った。Ｙ様から「何それ。めっちゃ嫌な感じ」と怒られた。怒りながら笑っていた。ムカつくとまで叫び、自分を解放した。一個一個が真の優しさに溢れていますね、私は。中途半端な諸君。言わせてもらおう。お前は嫌な奴だ。俺は、そんなお前が大好きだ。なめんじゃねえぞと言ってみろ。嫌な奴を見ると簡単に「死ね」と思ってしまうのが、自分だけじゃなくてよかった。そんなことを思うのが自分だけだったとしたら、死ななければならないのは俺だ。ホッと一安心したところで、Ｙ様の口からもっとハードな反省が飛び出したのだが、それはまた別の話。これから熊本に行く。