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「私のしごと館」第二の人生は(もっと関西)

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起業家集まる館に

関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)の中心に敷地面積8万平方メートル超の巨大建造物がある。旧「私のしごと館」だ。巨額の国費をつぎ込んだ世界屈指の学生向け就業体験施設だったが、開館からわずか7年の2010年に閉鎖。現在はスタートアップの集積拠点として変身しようとしている。豪華な備品や施設は今どうなっているのか。

私のしごと館は宇宙飛行士や美容師など約40の職業を本物と同じ道具を使って体験できた。厚生労働省管轄の独立行政法人だった雇用・能力開発機構(11年廃止)が雇用保険料を財源に581億円で建設。交通の便の悪さなどで集客できず、毎年10億円超の赤字を計上。無駄遣いの象徴として批判を集め、閉鎖に追い込まれた。

記者はまず、当時の館内の備品の行方を厚労省に問い合わせた。それによると当時の備品7941点はすでに競売にかけられ、今は離散してしまっているという。売却先は契約上の理由で明かせないが、それでも目玉展示品の一つだった様々な職業をイメージした人形の行方は分かった。

蓄電池を開発

約110体のうち40体が京都市教育委員会に無償譲渡され、就業体験施設の「京都まなびの街 生き方探究館」に飾られていた。

高さ40~50センチメートルの人形は10体が玄関で、30体が講義スペースの窓際にそれぞれ展示。同館の小島広行担当係長は「世の中に様々な職業があることが一目で分かる」と強調していた。場所は変わっても、当初の人形の狙いは今も脈々と受け継がれているようだ。

さて、私のしごと館の建物の方だが、14年に京都府に無償譲渡された。今は府運営の「けいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)」として、スタートアップを中心に21の機関や企業が入居する研究拠点に衣替えしている。

入居企業の多くは、旧しごと館時代に会議室などにあてられた裏方の部屋を利用。かつての体験スペースや空港を連想させる巨大なロビーはほとんど手つかずのまま残されている。

体験スペースを利用する数少ない入居企業の一つがCONNEXX SYSTEMS(コネックスシステムズ、京都府精華町)だ。次世代の大容量蓄電池を研究するスタートアップだ。

同社は3階まで吹き抜けになっている体験スペースをそのまま利用。北東側はほぼ全面が窓だ。同社の塚本寿社長は「イノベーションを刺激するような環境だ」と満足げだ。電気自動車用の電池も開発中で、広大な敷地内で車を走らせてデータを集めている。

サブカル拠点に

その隣接するスペースにはれんが調の壁で飾られた小部屋がいくつも並ぶ。かつて美容師や声優などを体験できたところで、4月からは精華町や凸版印刷が参加するコンソーシアムの「SEIKAクリエイターズインキュベーション推進拠点」が入る。アニメや漫画など若手クリエーターの創作活動の支援拠点にする。

精華町はサブカルチャーの発信を地域創生戦略に掲げている。同町の西川和裕課長補佐は「初めてのサブカル関連の拠点で、活動をさらに本格化できる」と意気込んでいた。

KICKは建物で活用されている面積は今でも全体の3~4割にとどまるが、今後は理化学研究所が子供の脳科学の研究拠点として利用する方針を示している。「ここ1年くらいで運営が軌道に乗り始めている」(京都府ものづくり振興課の西村敏弘課長)

けいはんな学研都市はサントリーやパナソニックの拠点が集まり、日本の研究開発を引っ張る地域になろうとしている。その中心施設は負の遺産から、先進性の象徴に変われるのか。行方を見守りたい。(大阪経済部 上田志晃)

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