内科専門医試験の勉強進んでますかっ!!!
内科専門医試験には公式の過去問が少なく、勉強の際に必須の問題集、それが日本内科学会より公式に販売している日本内科学会過去問題集です。
しかし!!!!!
第1集ってただの答えだけで解説が全く載ってへん!!!
そう、なぜか2016年の「第1集」の過去問題集は解説が全く載っていないのです。
ただの、○×クイズです。笑
査読された公式の過去問題集であり優先順位が圧倒的に高いにもかかわらず、解説がないがため理解の定着が弱く、結果として時間対効果が悪く効率の悪い勉強になりかねません。
よって、今回は私自らが時間対効果の効率をガン無視して、
日本内科学会認定内科医試験(新・内科専門医試験)2016年度問題集過去問第1集の182題の解説を載せました!
※なるべくエビデンスの質を保つため日本内科学会雑誌や他雑誌の文献、ガイドラインからの引用を明記しておりますが、全ての解説に載せるのは不可能なので内科専門医試験を受けるレベルの医師なら知識として自明なものやイヤーノートや病見えで調べたような基礎的な知識はそのまま解説しています。多少の誤りもあるかもしれないので利用する際には自己責任でお願いします※
いずれ総合内科専門医試験の解説も時間あれば作ります。
ぜひ、参考にしていただければ幸いです^^
また、内科専門医試験対策記事一覧でも様々な記事を更新してます!よかったらチェックしていってくださいっ!
それではっ!レッツ解説!
- 第32回認定内科医試験問題(新内科専門医試験)過去問第1集解説
- 消化器
- 肝臓
- 胆道・膵臓
- 循環器
- 内分泌
- 代謝
- 腎臓
- 呼吸器
- 血液
- 神経
- 問題109 片頭痛
- 問題110 巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)
- 問題111 末梢神経生検
- 問題112 副交感神経
- 問題113 ミトコンドリア脳筋症
- 問題114 糖尿病ニューロパチー
- 問題115 腱反射
- 問題116 徒手筋力テスト
- 問題117 失語
- 問題118〜119 ギラン・バレー症候群
- 問題120 本態性振戦
- 問題121 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
- 問題122 Becker型筋ジストロフィー
- 問題123 遺伝性脊髄小脳変性症
- 問題124 めまい
- 問題125 下垂手
- 問題126 多発性硬化症
- 問題127 Wernicke脳症
- 問題128 半側空間無視
- 問題129 同名半盲
- 問題130 皮質脊髄路
- 問題131 パーキンソン病
- 問題132 多系統萎縮症
- アレルギー
- 膠原病
- 感染症
- 総合内科
第32回認定内科医試験問題(新内科専門医試験)過去問第1集解説
消化器
問題1 食道癌
内視鏡像が食道であることが分かれば迷わず選べる。飲酒、喫煙は食道癌のリスク。他の選択肢PPIやESDは胃潰瘍とのひっかけと思われる。
問題2 胃潰瘍の原因
ステロイド、ピロリ、NSAIDsは選べるだろう。Zollinger-Ellison症候群はガストリンが過剰に産生されるため難治性の消化性潰瘍をきたす。
問題3 逆流性食道炎
内視鏡像では縦走の赤い線状の粘膜障害を認める。逆流性食道炎と診断できれば選択肢は容易。
問題4 萎縮性胃炎
ピロリ感染の検査では迅速ウレアーゼ試験、鏡検法、培養法、尿素呼気試験、抗ヘリコバクター・ピロリ抗体測定、便中ヘリコバクター・ピロリ抗原測定など。最近では核酸増幅法によるPCR法も追加された。
厚生労働省ホームページより(引用;https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc7124&dataType=1&pageNo=1)
問題5 消化管ホルモン
セクレチンは小腸からアルカリ性の膵液の分泌を促す。ゆえに、胃酸の分泌を促すガストリン分泌を抑制する。
問題6 NSAIDsびらん・潰瘍
NSAIDsは胃潰瘍、十二指腸潰瘍以外にも小腸びらん・潰瘍からの出血もきたす。もちろん出血が疑われる場合は薬剤を中止する。
問題7 消化管蠕動薬
メトクロプラミドは胃の蠕動亢進による制吐作用がある。グルカゴンや抗コリン薬としてのブチルコスコポラミンは内視鏡検査で蠕動抑制薬として使われる。
問題8 S状結腸軸捻転症
S状結腸は後腹膜に固定されていないため軸捻転を来しやすい。eの選択肢は確かに穿孔の危険はあるが、内視鏡的整復で改善することも多く、本症例でも炎症反応上昇はなく反跳痛もないのでまずは内視鏡的に整復する。
問題9 過敏性腸症候群
過敏性腸症候群(IBS)のRomeⅣ診断基準は、
最近3ヵ月の間に平均して週1日以上、お腹の痛みや不快感があり、下記の3項目のうち、2つ以上があてはまることである。①排便によって症状がやわらぐ、②症状が排便の回数の変化を伴う、③症状が便の形状の変化を伴う
肝臓
問題10 肝硬変
肝硬変なのでdとeは容易に選べる。本文よりアルコール性肝硬変と思われるのでAST/ALT比は上昇する。(酒 SakeのaStと覚える。)
問題11 肝炎ウイルス
A型とE型ともに感染様式は多様で、経口感染もする。どちらも重症化しやすく4類感染症として指定されている。(引用:岡本宏明,日内会誌 106:433-438,2017)
問題12 門脈圧亢進症
肝硬変による症状と門脈圧亢進症による症状の鑑別的な問題。門脈圧が上がるため腸管の静脈圧もあがりhの選択肢を選ぶことはさほど難しくないが、女性化乳房やくも状血管腫など肝硬変に伴う症状(エストロゲンの代謝障害)のひっかけ選択肢にいかに飛びつかないか。
問題13 肝細胞癌の原因
HCVが最多。ただ、近年ではその比率が減少しており非B非C型肝がんが増加してきている。(Tateishi R. et al. J Gastroenterol. 2019; 54: 367-376.)
お酒はほどほどにしましょうね。
問題14 急性肝障害
劇症肝炎の診断基準でプロトロンビン時間40%以下が基準になっていることを思い出せればなんとなくでもcが重症度判定に関係することは容易に選べるだろう。
問題15 B型肝炎の治療
HBs抗原陽性のB型肝炎において核酸アナログ製剤の治療適応はまずHBV-DNA量を測定し、①肝硬変の場合はウイルス量に限らず陽性なら適応、②慢性肝炎の場合はALT31U/L以上かつHBVDNA量2000IU/mL(3.3LogIU/mL)以上で適応となる。本症例では粗雑な実質エコーなど慢性肝炎像が見られ(上記②の基準)、ALT、ウイルス量も治療基準を満たすことより核酸アナログ製剤治療の適応となる。(日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会:B型肝炎治療ガイドライン(第4版).2022.)
問題16 非代償性肝硬変
塩分制限はもちろんのこと、肝硬変ではグリコーゲン貯蔵量が減少するため絶食中の蛋白異化が進んでしまう。このため、夜間にはLate Evening Snack療法で早朝までの絶食時間を短縮し飢餓を改善する。同様に蛋白異化が進むことにより分岐鎖アミノ酸製剤(BCAA)が不足するためこちらも補う。非代償性の肝硬変まで進行すると高蛋白食によってアンモニア上昇による肝性脳症をきたすためcは×となる。この辺りは割と肝硬変の基本の病態のため、他科専攻の先生であってもしっかり理解しておく。
問題17 自己免疫性肝炎
自己免疫性肝炎での抗核抗体陽性は診断基準にも含まれる。抗Jo-1抗体は多発性筋炎/皮膚筋炎、抗Scl-70抗体は強皮症、抗ミトコンドリア抗体は原発性胆汁性胆管炎、抗好中球細胞質抗体(ANCA)はANCA関連血管炎などで陽性となる。
胆道・膵臓
問題18 膵癌の疫学
膵IPMNからの発癌リスクを知っていれば選択肢は容易。5年生存率は全体としては10%未満程(国立がん研究センター 最新がん統計:https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html)で、例えそれを知らなくとも全癌の中でも予後の悪い膵癌が40%というのはやや違和感がある(ちなみにこの40%というのは問題20で解説している通りおそらく膵神経内分泌腫瘍とのひっかけだろう)。CA19-9などの腫瘍マーカー測定、膵性糖尿病との関連、腹部超音波では腸管ガスなどの影響を受けやすいことや技師の技量の精度にも左右される。
問題19 粘液性嚢胞性腫瘍
CT画像は「夏みかん」様を呈し発生部位(体尾部に後発)からも典型的な粘液性嚢胞性腫瘍(MCN)の所見である。中高年女性に多く、癌化リスクが高いため原則手術が行われ、発生段階で膵実質に迷入した卵巣様間質を有する。乳頭開口部の開大が見られるのはIPMNである。
問題20 膵神経内分泌腫瘍
膵NETは希少な癌であるが近年は増加傾向にある。広義の意味での膵神経内分泌腫瘍(NET)は、核分裂像とKi67指数に基づき組織学的に悪性度の低いNETG1、NETG2と悪性の膵神経内分泌癌(NEC)に分類される。問題18でも解説したが膵癌はおおよそ5年生存率10%未満なのに対して膵NETは40%ほどである。が、これも大腸癌と比べると予後は悪い癌と言える。(一般社団法人 日本肝胆膵外科学会:http://www.jshbps.jp/modules/public/index.php?content_id=21)
問題21 閉塞性黄疸
エコーでは門脈と並走する肝内胆管の拡張があり、ビリルビンや肝胆道系酵素の上昇からも閉塞性黄疸の状態が疑われる。下流の胆管の評価として胆管癌や膵癌の評価をするためには造影CT検査は欠かせない。MRCPでもある程度評価は可能だが、あえて問題文に交通外傷で腰椎プレート固定されていると記載があり金属が入っていることを示唆しているのだろう。よって正しい検査は造影CTとなる。
問題22 胆管癌
胆管癌は結石での完全閉塞と違い、徐々に胆管の狭窄が進行し、胆汁の流れが悪くなる。よって結石性胆管炎に代表されるような発熱・腹痛などの症状よりも黄疸を主訴に来院されることが多い。
余談ですが、
消化器内科医としては無症状で顔面真っ黄色で初診外来にきた患者さんを多々見かけます。
問題23 慢性膵炎
CTでは多発する膵石、アルコール多飲歴があり慢性膵炎を疑うことは容易である。消化吸収障害による体重減少や2次性を疑う糖尿病も合併しており膵機能障害を合併した非代償期の状態と考える。そうなると必然的にインスリン分泌能は下がり、PABA排泄率が落ちる選択肢は選べる。食後血糖値は確かにグルカゴンの分泌も落ちるが、インスリン分泌能低下もきたすため、結果として高血糖になる。この病態が膵性糖尿病である。γGTPはアルコール多飲歴があり必ずしも上昇するわけではないが少なくとも低値とはならない。IgG4は自己免疫性膵炎とのひっかけだろうか、ただこれも自己免疫性膵炎だとしても上昇するので結果として選びやすい選択肢と言える。
慢性膵炎は自分の受けた2023年の内科専門医試験でも出てたり、第2集過去問でも出てたりと、割と対策必須の疾患である。
問題24 消化管ホルモン
ひっかかるとすればセクレチンだろう。膵液(膵外分泌)には①消化酵素としてのアミラーゼ、リパーゼなどの他、②胃酸を中和するためのアルカリ成分(重炭酸ナトリウムNaHCO3)がある。セクレチンは②に関与する。ガストリンは胃酸の分泌を、ソマトスタチンは膵内分泌機能として同じ膵内分泌機能のグルカゴンとインスリンを抑制している。(ソマトスタチン製剤が膵内分泌腫瘍の治療薬として使われることをイメージすると覚えやすい)
問題25 胆膵発生学的異常
膵管癒合不全は本来、発生の段階で癒合するはずの主膵管(乳頭部に開口)と副膵管(副乳頭部に開口)が癒合せず、細い副膵管を通って膵液が流れる病態である。副乳頭の方がもちろん開口部は狭いため、流れる膵液を処理しきれず閉塞性膵炎をきたしやすい。遊走胆嚢は本来肝臓に固定される胆嚢の固定範囲が短いことであり、胆嚢捻転症のリスクに、膵胆管合流異常は膵液の逆流による胆管炎や胆道癌のリスクになる。Mirizzi症候群は胆嚢頸部や胆嚢管の結石が圧排性に総胆管を狭窄させる病態であり憩室乳頭は関係ない。
循環器
問題26 肺高血圧症
BNPが重症度を表す指標、と覚えていれば良いものの非専門医としてはきついものもあり。「診断確定に右心カテーテルで平均肺動脈圧≧25mmHg」であれば、心房圧を反映するBNPが関与するだろうと予測して覚えよう。
問題27 急性肺塞栓症
血栓素因となる選択肢を除外していけば容易に正解に辿り着ける。
問題28 閉塞性肥大型心筋症
硝酸薬は静脈環流量を低下させ前負荷を軽減させ左室流出路狭窄を増強するので禁忌。Ⅰa群であるシベンゾリンはβ遮断薬とともに陰性変力作用を利用し症状を改善させる。国試レベルではあるが忘れている人は復習しよう。
問題29〜31 急性心筋炎
29
心電図では主に胸部誘導で非特異的なST上昇が見られ、一部にⅠ度房室ブロックも見られる。問題文には御丁寧に3日前に感冒症状があり〜と書いてあるがこれだけでは診断確定はできない。外来ではまず心エコー検査で壁運動異常、心嚢液貯留がないかなどを確認すべきだろう。
30
問題文で両側胸部でのcoarse cracklesや頸静脈怒張、下腿浮腫も見られており治療抵抗性なうっ血性心不全兆候を示唆していたが案の定、呼吸状態が悪化した。心筋炎でよくある劇症化のパターンの問題と推測する。劇症型心筋炎では急速な収縮能力低下をきたすため機械的な補助が必要となる場合が多く、eが正解となる。
31
ここまで来れば正直病理像は出さずとも診断は確定できますが。。。病理組織像としてはリンパ球を主体とする炎症細胞浸潤がみられ病歴からもウイルス性心筋炎として矛盾しない。心筋炎の中には巨細胞性、好酸球性、肉芽種性など原因も多彩である。
問題32 疾患と検査の組み合わせ
Fabry病はα-ガラクトシダーゼ活性低値。その他の選択肢は基礎の典型的な特徴のため割愛。
問題33 冠攣縮性狭心症
治療は発作時には硝酸薬、spasm予防には主にCa拮抗薬が使われます。β遮断薬で混同しがちですが、これはspasmを誘発し、禁忌。
問題34 急性心筋梗塞
サービス問題とかのレベルでなく、この問題ができない人は学生からやり直しましょう、、、
問題35 急性心筋梗塞
問題34と同様、できなかった人は学生からやり直しましょう。
問題36 閉塞性動脈硬化症
冷感、しびれ、間欠性跛行を特徴とする。末梢動脈に多発性の分節的閉塞をきたすのはBuerger病である。β遮断薬は相対的にα作用増強による血管収縮を増すため禁忌である。
問題37 Marfan症候群
僧帽弁逸脱同様に三尖弁逸脱はあるものの狭窄はない。
問題38 大動脈解離
突然の背部痛、肩から腰部に移動する痛み、無治療の高血圧症、血圧の左右差、このヒントでまずは大動脈解離を疑い、胸腹部造影CT検査を行う。問題レベルとしては国家試験でも基礎レベル。
問題39 末梢動脈疾患
コントロール不良の高血圧、糖尿病や狭心症に対するステント治療歴もあり、病歴からは末梢動脈疾患(PAD)を疑う。治療決定方針のためABIを測定し、0.90以下では有意狭窄を示し、薬物療法や血行再建などの治療が検討される。(日本循環器学会:末梢動脈疾患ガイドライン(2022年度改訂版))
問題40 心タンポナーデ
吸気時に収縮期血圧が10mmHg異常低下する現象を奇脈と言い、心タンポナーデだけでなく収縮性心膜炎などでも見られる。
問題41 失神
大動脈弁狭窄症の予後として心不全で2年、失神で3年、狭心症で5年で亡くなると言われている。国試レベルの教科書的な基礎知識である。
問題42 Brugada症候群
心電図は高位肋間記録でのcoved型ST上昇がみられ、Brugada症候群を疑うのは容易。完治させる治療法は現状ないが、本症例のように一度でも心停止や心室細動などを起こした方は最初予防としてICD植え込みが検討される。
問題43 発作性房室ブロック
心電図ではQRS波を伴わないP波が連続し発作性房室ブロックの状態と考える。失神も伴っており、一時的ペースメーカーの適応となる。
問題44 冠攣縮性狭心症
アセチルコリンは容易に選べるだろう。エルゴノビンを知ってれば良いが、選択肢的に発作時治療薬である硝酸薬やspasm予防のCa拮抗薬は除外でき、アスピリンも狭心症の治療で使用されている中で冠攣縮を誘発することは想像しにくく、除外的に選択肢は選べる。
問題45 大動脈内バルーンパンピング(IABP)
大動脈閉鎖不全症では拡張期血圧の上昇により大動脈弁逆流量増加によって更なる虚血を誘発するため禁忌。そのほか、大動脈解離や大動脈瘤は解離の拡大や破裂の危険性があるため禁忌。重度の末梢動脈疾患でも虚血を誘発するため禁忌となっている。心原性ショックだからと言ってむやみな導入は控えましょう。
問題46 糖尿病を有する高血圧
糖尿病を有する高血圧の治療としては糖尿病性腎症の発症予防や進展阻止の面からACE阻害薬あるいはARBが第一選択薬となる。降圧目標に到達できない場合はCa拮抗薬が臓器保護の面で有効かつ好ましい選択である。(引用文献:石田俊彦,日内会誌 96:55-59,2007)
問題47 褐色細胞腫
血中カテコールアミン上昇や収縮期血圧200の悪性高血圧があることから診断は容易。褐色細胞腫は特に多彩な症状を呈することでも知られる。治療はα遮断薬。本文では左側腹部に腫瘤を触知とあるが部位診断には123I-MIBGシンチでの取り込みも用いられることも抑えておく。
問題48 たこつぼ心筋症
左室造影像にて診断は容易。ピアノの演奏会という緊張ストレスが誘因となったのだろう。
問題49 収縮性心膜炎
下腿浮腫という右心不全徴候、CTでの心膜の石灰化、右室圧曲線でのdip and plateau patternより診断は容易。拡張早期過剰心音である心膜ノック音や奇脈、Kussmaul徴候なども基本なので一緒に抑えておく。
内分泌
問題50 副腎性クッシング症候群
副腎腫瘍(褐色細胞腫、副腎性クッシング症候群、原発性アルドステロン症)のうち、コルチゾール欠乏がホルモン補充を必要する。よって答えはc。
問題51 原発性アルドステロン症
高血圧+低カリウム血症に加えて、右副腎に腫瘍、おまけにアルドステロン・レニン比がARR=292/0.1=2920>200であり原発性アルドステロン症を疑う。(確定診断には生理食塩水負荷試験、カプトプリル試験、立位フロセミド試験の3つのうち2つ以上陽性)治療は片側性なら手術になるが、CTでは片側性腫大であっても腫大のない副腎もアルドステロン過剰分泌される場合もあり、治療方針決定のため副腎静脈サンプリングを行いホルモンの過剰分泌の左右差を調べる。MIBGシンチグラフィは褐色細胞腫の診断に有用である。原発性アルドステロン症には局在診断としてアドステロールシンチが用いられることもあるが精度は低い。
問題52 抗甲状腺薬の副作用
抗甲状腺薬の副作用として無顆粒球症はよく知られる。抗甲状腺薬の副作用は3ヶ月目までにみられることが多く、最低2ヶ月間は2週毎に血液検査を行う(内分泌甲状腺外会誌 35(3):152-155,2018)。もちろん選択肢はbが正解。無機ヨードは初期対応の選択肢としては不適切で、抗甲状腺薬が使いづらい場合の今後の治療薬として検討される。
問題53 甲状腺ホルモン不応症
通常甲状腺ホルモンが高値になると、甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌が抑制されるが、甲状腺ホルモン不応症では抑制ことなく血中TSHが正常または高値を示す。
問題54 原発性アルドステロン症
問題51の解説参照。アルドステロンの過剰分泌により生理食塩水負荷試験で血漿アルドステロン濃度が抑制されない。
問題55 インスリノーマ
インスリノーマは空腹時の低血糖を回避するため過食傾向となり体重増加がみられます。
代謝
問題56 SGLT2阻害薬
ブドウ糖を尿糖として直接排泄するので内臓脂肪を燃やしてエネルギー供給する。ダイエットにも使われかねず適正使用が求められてますね。
問題57 糖尿病治療薬の低血糖
SU薬が低血糖をきたすことは国家試験的な知識である。
問題58 糖尿病網膜症
高血圧が糖尿病網膜症を悪化させる。尿蛋白4+、Cr 2.2と腎機能障害もありビグアナイド薬は不適切と考える。
問題59 栄養状態
c〜eは選べるが、悩むとすればaとbだろう。低栄養状態では免疫が落ちるので免疫を司どるリンパ球も減少すると覚えよう。
問題60 1型糖尿病
1型糖尿病に対する自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病や橋本病)の合併率は2型糖尿病より高率に高いことが知られている。(大崎芳典ほか,糖尿病52(11):887-893,2009.)
問題61 橋本病
35歳女性、甲状腺のびまん性腫大、LDL上昇、C K上昇と橋本病を想像することは容易。甲状腺ホルモンは軽症例では正常なこともあり、選択肢は甲状腺刺激ホルモン(TSH)。
腎臓
問題62 多発性嚢胞腎
常染色体優性多発嚢胞腎の患者の10〜12%ほどに脳動脈瘤はは合併する。破裂した際は生命予後に関わるため全例に頭部MRAを施行し3〜5年ごとにフォローしていくことが推奨されている(多発性嚢胞腎PKD診療ガイドライン2020より)
問題63 糖尿病治療薬
腎機能の話としてはビグアナイドに行きたくなる気持ちもあるが、ここでは「作用が減弱する」話。つまり尿糖としてブドウ糖を排出されせるSGLT2阻害薬の薬理学的動態を理解しているかが問われているのだろう。
2016年の試験というだけあってSGLT阻害薬系の問題が多い。
問題64 尿崩症
尿浸透圧低値、BUNは正常と経過から尿崩症を疑うことは容易。抗利尿ホルモンはほとんど分泌されておらず、中枢性尿崩症が疑われる。この後予想される検査として、MRIで下垂体後葉の高信号の消失の確認が挙げられる。
問題65 顕微鏡的多発血管炎
肺門リンパ節腫脹でサルコイドーシスとひっかけだなとメタ的にも選べるが、肺症状、皮膚症状、腎障害、神経障害と選択肢の消去法でも選べる。MPO-ANCAだっけ?PR3-ANCAだっけ?と迷うことはあれ、何も難しい問題ではない。ちなみに、MPO-ANCAで効率に陽性となる。
問題66 遠位尿細管アシドーシス
シェーグレン症候群の既往、尿中pH7.0と尿の酸性化障害、低カリウム血症、AG11.5とAG非開大性代謝性アシドーシスと勉強している人なら選べて当然の選択肢。
問題67 SIADH
尿浸透圧上昇、低Na血症、おまけに肺小細胞癌と診断されており、選択肢を選ぶことは容易。問題64の尿崩症と病態を比較して覚えよう。
問題68 慢性腎臓病
慢性腎臓病の診断基準でも特に蛋白尿の存在は重要で、重症度分類にも含まれる。具体的には0.15g/gCr以上のタンパク尿(30mg/gCr)以上の蛋白尿が重要である。
問題69、70 末期腎不全
経過より慢性腎臓病・末期腎不全から、アドヒアランス低下によってさらに腎機能悪化が見られ高度腎機能障害が見られていることが予想される。シンプルにAG開大性の代謝性アシドーシス(不揮発酸の排泄遅延)と考え、HCO3は低下し酸塩基平衡を保つように呼吸性代償が働きPaCO2は低下すると予想される。心電図変化が見られる高カリウム血症であり、超緊急処置としてグルコン酸カルシウムの投与をまず行う。その後カリウムを下げる措置としてGI療法を行う。
問題71 横紋筋融解症
横紋筋融解症では筋繊維に見られるミオグロビンが大量に血中に流出し、尿細管を閉塞し腎不全になる。病態のイメージができていれば選択肢は選べる。腎盂の拡大などの腎後性要素はなく、あくまで腎性腎不全(+出血による腎前性腎不全)がメインの病態である。
問題72 長期透析の合併症
透析では十分に除去しきれないβ2ミクログロブリン(アミロイド)が沈着し、骨関節症として正中神経が圧排し障害される手根管症候群は有名である。
問題73 高安動脈炎
20代女性の高血圧であり、まずは高安動脈炎を疑う。上行大動脈への炎症では四肢の血圧の左右差などが、腹部大動脈・腎動脈では腹部血管雑音が聞かれる。
問題74 腎不全
3日前と急性の経過であり、発熱や炎症反応上昇など感染症に伴う腎不全を考える。敗血症による循環動態破綻での腎前性腎不全の鑑別に尿中ナトリウム検査や結石の有無など腎後性腎不全の鑑別として腹部超音波検査は適切な選択肢と言える。血液培養では起因菌は分かれど腎不全の原因は不明であり、尿細管障害は急性経過の場合もあるが、慢性の場合も多く、特に新規薬剤導入など尿細管異常を考えさせるような記載もなく、より適切な選択肢はb,cだろう。
問題75 腎生検
明らかに腎臓に限局した活動性の感染症がある時期には通常は、腎生検は施行されない。(引用文献:乳原善文,日内会誌 109:881-885,2020)
問題76 半月体形成性糸球体腎炎
蛋白尿+血尿、腎病理で半月体形成、両下肺にfine cracklesより顕微鏡的多発血管炎もしくはGood pasture症候群を疑う。MPO-ANCAと抗糸球体基底膜抗体が正解。顕微鏡的多発血管炎はステロイド+免疫抑制薬(シクロホスファミドなど)の反応が良いが、Good pasture症候群はもちろんステロイド+免疫抑制薬も使われるが、ステロイド抵抗性のことも多く、血漿交換(抗糸球体基底膜抗体の除去)が併用して行われることも抑えておく(厚生労働省特定疾患進行性腎障害に関する調査研究 班報告.急速進行性腎炎症候群の診療指針 第 2 版. 日腎会誌 2011; 53: 509-55.)。
問題77 高カルシウム血症
骨粗鬆症として2種類の薬(おそらく活性型VitD製剤とビスホスホネート製剤だろう)が開始されている高齢者の腎不全。カルシウム上昇のリスクがある高齢者では脱水を契機に容易に高カルシウム血症をきたすことは有名であり、今回も食思不振に伴う脱水が契機となったのだろう。
問題78 ネフローゼ症候群
微小変化型ネフローゼ症候群はステロイドが有効で予後も良好である。しかし、再発を繰り返す症例も多い。
問題79 膜性腎症
中高年のネフローゼ+PAM染色より、基底膜が黒く染まりスパイク形成も見られ膜性腎症を疑う。しかし、この問題は膜性腎症がわからなくてもネフローゼ症候群では血液が過凝固になりやすい(アルブミンが低下することで肝臓でのタンパク合成が代償的に亢進しフィブリノーゲンなどの凝固因子が増加することなどにより凝固が活性化)ことをイメージできれば選択肢は選べる(Crew RJ, et al : Clin Nephrol 62 : 245-259, 2004.)。(ちなみに余談で自分の話になるが、2023年第3回の内科専門医試験でもネフローゼ症候群の問題(確か膜性増殖性糸球体腎炎)で誤答選択肢としてフィブリノーゲンの減少(本来はフィブリノーゲンの上昇が正解)といった内容が出題されて悩んだ。(その時の正解選択肢は確か係蹄壁の分葉化))
呼吸器
問題80 マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマを含む非定型肺炎の診断基準として年齢60歳みまん、基礎疾患がない、頑固な咳、聴診所見が乏しい、痰なし、末梢白血球が10000/μL未満が特徴的である。近年ではマクロライド系抗菌薬に耐性株が増加しておりミノサイクリンなどのテトラサイクリン抗菌薬が使われることもある。
問題81 肺分画症
真相は定かではないが、第96回医師国家試験の「96A14」の画像に非常に。非常に。よく似ている。肺分画症として治療は左下肺葉切除が答えだが時間があれば国家試験の問題をチェックしてみても良いかもしれない。
問題82 リンパ脈管筋腫症
胸部CTで全肺野に小嚢胞、若い女性ときたらリンパ脈管筋腫症(LAM)を考える。治療のmTOR阻害薬と乳び胸の合併など、試験対策として大ヤマ。
問題83 COPD
進行したCOPDでは呼気がスムーズに出来なくなってきた結果残気量は増加する。
問題84 ARDS
肺炎や胃液誤嚥は頻度は高いが間接でなく直接損傷である。輸血や膵炎は間接損傷であるが敗血症に比べると頻度は低い。
問題85 胸膜炎
膠原病性胸膜炎の代表はSLEと関節リウマチである。
問題86 COPDの増悪
COPDの増悪の問題。低酸素血症と肺高血圧症の合併による右心不全兆候が見られるので「まず」行うとしては利尿薬と酸素療法。短時間作用型気管支拡薬も使用はされますが症状軽減目的として必要時に頓用で使用されるため「まず」としては不適切で、ステロイドも同様に今後使われる可能性はあれど他に優先される選択肢があり「まず」としては不適切と考える。炎症反応上昇はなく抗菌薬も不適切。
問題87〜88 睡眠時無呼吸症候群
アルコールや睡眠薬は無呼吸を誘発する。無呼吸低呼吸指数(AHI)はAHI5~15を軽症、15~30を中等症、30以上を重症とされ、本症例は重症に当たり持続的陽圧呼吸法が正解。
問題89 肺胞低換気症候群
その名の通り換気障害により二酸化炭素分圧が高くなる。サービス問題。
問題90 特発性肺線維症
IPFの経過中に1カ月以内の経過で①急激な呼吸困難の出現・増強、②肺野のすりガラス影の進展、③慢性期と比べ10 Torr以上の動脈血酸素分圧の低下、これら全てが認められるときに急性増悪と診断する(引用文献:高橋弘毅ほか,日内会誌 109:94-99,2020)。
問題91 肺肉芽腫性疾患
肺肉芽腫性疾患の鑑別はサルコイドーシス、過敏性肺炎、じん肺(慢性ベリリウム肺)、感染症(抗酸菌、細菌、真菌、原虫、ウイルス)、薬剤性肺炎、異物型肉芽腫、多発性血管炎性肉芽腫症(Wegener 肉芽腫症)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Churg-Strauss 症候群)、肺リンパ腫様肉芽腫症、気管支中心性肉芽腫症、肺ランゲルハンス細胞組織球症、原発性免疫不全症、免疫再構築症候群(Immune reconstitution inflammatory syndrome: IRIS)などがある (引用文献:宮崎泰成,日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会誌 35巻Suppl号p. 38:2015)。
問題92 喫煙と関連する肺疾患
COPDは言わずもがな、好酸球性肺炎の中でも慢性型は非喫煙者が多いのに対し、急性型は喫煙との関連性が高い。
問題93 サルコイドーシス
若年と中高年の好発年齢+ぶどう膜炎の存在+肺門リンパ節腫大+高カルシウム血症、またC Tでは両側肺の広義間質に肉芽腫の集簇に対応した小結節や粒状影がありサルコイドーシスを疑う。(右肺の一部は小結節がより集簇しgalaxy signを呈している???)
血液
問題94 特発性血小板減少性紫斑病
破砕赤血球は血栓性血小板減少性紫斑病の所見である。
問題95 急性前骨髄球性白血病
豊富なアズール顆粒とAuer小体を有するファゴット細胞が見られ、急性前骨髄球性白血病(APL)を疑う。APLはDICの合併が多く、活性型ビタミンAであるオールトランスレチノイン酸(ATRA)の早期治療開始が望まれる。
問題96 鉄欠乏性貧血
鉄やフェリチンは低下し、総鉄結合能(TIBC)は増加する。
問題97 ヘモクロマトーシス
輸血による鉄過剰によって肝臓に鉄が沈着し起こる合併症であることがわかれば選択肢は容易。
問題98 ABO不適合輸血
「急性」の輸血性副作用であり、血管内溶血によって血圧低下や腎不全、DICの状態へ至る(日本赤十字社 医薬品情報:https://www.jrc.or.jp/mr/reaction/hemolytic/)。
問題99〜100 原発性マクログロブリン血症
IgA、IgGの抑制とIgMの異常高値や、5量体IgM形成による過粘稠度症候群によって視力障害も見られ、原発性マクログロブリン血症(5量体だから“マクロ”)と診断する。症状が見られているため血漿交換の適応となる(引用文献:飯田真介,日内会誌 106:1948-1953,2017)。
問題101 多発性骨髄腫
Bence Jones蛋白は重鎖ではなく、短鎖である。短鎖とか重鎖の意味がわからない高校物理受験の諸君はまず免疫グロブリンの構造の基礎から学ぼう。
問題102 メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患
メトトレキサートの中止のみで自然退縮する例が多い。EBウイルスとの関連が多いこともあわせて覚えておこう(引用文献:金子祐子,Jpn. J. Clin. Immunol., 40(3)174~178,2017)。
問題103 急性リンパ性白血病
予後因子は年齢、初診時白血球数、寛解までの期間、予後不良の染色体が関連する。dの選択肢が悩むが微小残存病変は結果的に寛解までの期間に影響を及ぼすと考えれば選択肢は選べる。
問題104 肝炎ウイルスの活性化
抗がん剤を始める際にB型肝炎、C型肝炎の感染状況の確認は必須である。サービス問題。
問題105 出血症状
凝固因子の欠乏は関節や筋肉などの深部出血。血友病を想起すれば選択肢は容易。
問題106 特発性血小板減少性紫斑病
血小板以外のデータに特記すべき異常がなく血小板単独減少+若年女性というところから除外的であるが最も正解の選択肢はITPとなる。
問題107 PT時間
延長or短縮でビタミンKとケアレスミスしなければ当たり前に解ける。
問題108 成人T細胞白血病/リンパ腫
HTLV-1ウイルスがCD4陽性細胞に感染し、母乳感染が多く、九州出身者に多く、潜伏期間が長く、高カルシウム血症を呈し、末梢血にflower cellが見られる。この辺は国試的な知識なのでおさらいしておこう。
神経
問題109 片頭痛
正解はスマトリプタン。バルプロ酸、ベラパミル、プロプラノールはいずれも予防薬。高濃度酸素投与は群発頭痛に対して使われる。
問題110 巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)
側頭部に拍動性の痛み、CRPの上昇など見られ病歴から巨細胞性動脈炎と思われる。内頸動脈の分岐である眼動脈の閉塞に注意する必要がある。治療はステロイドが使われる。
問題111 末梢神経生検
皮下からのアプローチがしやすく、運動神経成分が含まれない純感覚神経の腓腹神経が選択される。
問題112 副交感神経
冷静に考えれば解ける問題。他の選択肢は交感神経優位な状態である。
問題113 ミトコンドリア脳筋症
MELAS、CPEO、MERRFの3つが代表的。くも状指はマルファン症候群で見られる。
問題114 糖尿病ニューロパチー
散瞳を伴う急性動眼神経麻痺は動脈瘤や腫瘍などの圧迫による症状を疑う。
問題115 腱反射
下顎反射・・・三叉神経
膝蓋腱反射・・・L2-4
上腕二頭筋反射・・・C5-6
アキレス腱反射・・・L5-S2
問題116 徒手筋力テスト
筋トレ好きにはたまらない問題ですね、もちろん三角筋です。
問題117 失語
全失語では言語表出理解復唱全て不可。健忘失語は物の名前が出てこないが言語機能は保たれている。運動性失語は言語表出ができないが言語理解は保たれている。感覚性失語は聴覚視覚による言語理解が障害されているが言語表出はスムーズ。
問題118〜119 ギラン・バレー症候群
2週間前に微熱を伴う感冒症状があり、その後の痺れ症状とギランバレー症候群として典型的な経過。脳脊髄液検査で蛋白細胞解離と末梢神経伝導速度遅延が見られる。その他に血液検査では抗GM1抗体や抗GQ1b抗体などの抗ガングリオシド抗体もチェックする。
治療はステロイドが効かず、血漿交換と免疫グロブリン大量療法が用いられる。
問題120 本態性振戦
安静時振戦はパーキンソン病の特徴。本態性振戦では動作時の姿勢時振戦が見られる。アルコール依存症の方に見られやすく、飲酒が切れた時に症状が出るので飲酒をするとだんだん軽減するという特徴もある。だからといってお酒を飲んでふるえを抑えることは言語道断である。
問題121 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
上腕二頭筋の針筋電図では筋原性でなく神経原性の障害を示し、下位運動ニューロンの障害があるため脊髄前角が正しい。といった問題だが、そもそも筋電図の所見が読めずとも感覚障害や膀胱直腸障害は認めないということから筋萎縮性側索硬化症(ALS)を連想し、筋萎縮や腱反射の低下など下位運動ニューロン障害の症状が出ていることを想定できれば神経原性の下位運動ニューロン障害として正解を選べる。ただ、ALSの場合は上位運動ニューロン障害を受けることも念頭においておく。
問題122 Becker型筋ジストロフィー
Becker型筋ジストロフィーはDMD遺伝子の不完全欠損で発症するX連鎖劣性遺伝疾患である。完全欠損であるDuchenne型筋ジストロフィーと同様の症状をきたすが、比較すると症状は軽微なことが多い。問題文にあるような動揺性歩行は代表的な歩行障害である。近年ではエクソンスキッピング治療薬が登場するなど、進歩を遂げている(引用文献:江浦信之,日内会誌 111:1518-1554,2022)。
問題123 遺伝性脊髄小脳変性症
脊髄小脳変性症は孤発性と遺伝性に分類され、遺伝性のものは常染色体優性遺伝が多い。現時点では1型〜49型まで確認されており、世界的に見ても最も頻度が高いのはMJD/SCA3である。世代を経ることで伸長は徐々に長くなる(引用文献:池田佳生,日内会誌 111:1520-1526,2022)。
問題124 めまい
嚥下障害、垂直性眼振は中枢性めまいである。
問題125 下垂手
下垂手は橈骨神経障害で生じる。尺骨神経障害は鷲手、正中神経障害は猿手が有名である。
問題126 多発性硬化症
大脳白質の卵円形病変(ovoid lesion)、視力障害、蛋白細胞解離が見られ、多発性硬化症と考える。その他、環境因子としては喫煙、日照時間が短い高緯度地域(ビタミンDの不足)、EBウイルス感染などが知られていることも押さえておく(引用文献:磯部紀子,日内会誌 111:1555-1559,2022)。治療はステロイド。
問題127 Wernicke脳症
ビタミンB1欠乏によって生じる。意識障害、眼球運動障害、運動失調が見られれば想起できるようにしておくこと。
問題128 半側空間無視
半側空間無視は病巣と反体側の視空間を無視するので右後頭葉に病変のあるcとなる。
問題129 同名半盲
同名半盲は視交叉より後方の障害のため、右同名半盲ということは左の後頭葉の障害である。
問題130 皮質脊髄路
内包後脚→中脳大脳脚→橋腹側→延髄椎体
問題131 パーキンソン病
MIBG心筋シンチで取り込み低下が見られ、病歴からもパーキンソン病と考える。選択肢はいずれもパーキンソン病治療薬だが、年齢や患者背景によって例えばドパミン受容体作動薬から開始したりと、第1選択薬に変化はあるものの、基本的にはパーキンソン病診療ガイドライン2018ではまずはL-ドパ主体の治療が進められている。特に本症例では高齢者でもありなおさらL-ドパから開始するのが最も適切と言える。
問題132 多系統萎縮症
多系統萎縮症は孤発性(非遺伝性)の脊髄小脳変性症の一つである(問題123は遺伝性脊髄小脳変性症)。四肢協調運動障害やMRIで小脳の萎縮、筋固縮などパーキンソン症状も見られ、本症に合致する。
アレルギー
問題133 花粉症
スギ抗原特異的IgE抗体上昇が見られ、スギ花粉をアレルゲンとしたⅠ型アレルギーの花粉症と思われる。抗アレルギー薬のほか、減感作療法としてアレルゲンに対する免疫療法が用いられることもある。
問題134 アナフィラキシー
アナフィラキシーにはすぐに発症するⅠ型アレルギーの即時型反応と、その後二峰性に発症するⅣ型アレルギーの遅発性反応がある。即時型反応はアレルゲンが体内に入ってから短時間で発症する。
問題135 花粉症
スギ・ヒノキが落ち着いてから夏から秋にかけて増えてくるのがブタクサ花粉である。
問題136〜137 アナフィラキシーショック
ハチに刺されたことでアナフィラキシーとなりショック症状を呈している。呼吸器症状、皮膚症状、消化器症状が出現しているため直ちにアドレナリンの投与を行う。抗原特異的IgE抗体が産生されており、今後もハチに刺されてアナフィラキシーを発症する可能性が高く、エピペンの携帯が勧められる。
問題138 アスピリン喘息
市販の感冒薬より使用後の喘鳴よりアスピリン喘息を疑う。男性より女性が多く、鼻茸を合併する。COX-1阻害作用に基づくため選択的COX-2阻害薬は使用できる。ステロイド投与はコハク酸ではなく、リン酸エステル型を選択する(引用文献:谷口正実,日内会誌 102:1426~1432,2013)。
問題139 薬剤リンパ球刺激試験(DLST)
DLSTはⅣ型アレルギー反応を見ており、感度は薬剤によっても変わるがおおむね約50%前後程である。ただその知識がなくとも、DLSTを提出した経験があるなら「DLSTは陰性だったが臨床的には疑いが強く、陰性だからといって除外できない」といった状況に多々遭遇するであろう。すると「感度が90%以上もある」という選択肢は自ずと誤ってるなと感覚的に理解でき正解を選べそうな気もする。
問題140 アナフィラキシー
アナフィラキシーの細かい知識を問う問題。ダニの混入によるお好み焼きのアナフィラキシー発生はパンケーキ症候群(pancake syndrome)とも表現されるほど有名であり、原因食品からも小麦アレルギーと誤診されやすい(引用文献:続木 康伸,日内会誌 104:986~990,2015)。よって迷うとしたらdだが、造影剤投与の予防は検査前決められた時間から内服して予防する。検査前の決められた時間に投与されていれば厳密に言えば内服でなく点滴でも良い気もするが、あえて「静注」というワードを使っていることから、おそらくこの問題文の意図としては「検査直前や直後の静注」で予防できるといったニュアンスなのではないかと考える。
問題141 ラテックスアレルギー
フルーツとの交差反応であるラテックスフルーツ症候群は有名である。ラテックスアレルギーがわかっているにも関わらずあえてステロイドを用いてラテックス手袋を使用するのは常識的に考えてもおかしく、ラテックスフリーの手袋を使用すれば良いだけの話である。
問題142 職業性喘息
成人発症喘息としては10-25%ほどと言われている。それを知らずとも50%が職業性というのはみんなたまたま職業選択をミスりすぎであり感覚的にもおかしいと感じる。職業性であれ薬物療法などは通常の喘息と同じである。
膠原病
問題143 混合性結合組織病
レイノー現象、手指の腫脹と皮膚硬化といった強皮症症状に加え倦怠感や関節痛といったSLE様症状、四肢の筋力低下といった多発筋炎症状があり、CTでは肺高血圧症による心拡大が見られることから混合性結合組織病を考える。抗U1-RNP抗体が正解。
問題144 多発血管炎性肉芽腫症
慢性副鼻腔炎に中耳炎が先行という典型的な臨床経過に、腎機能は正常だが尿蛋白の存在やCRPの上昇などが見られ多発血管炎性肉芽腫症(Wegener肉芽腫症)を考える。肺病変は空洞を伴う結節影が多く、半月体形成性糸球体腎炎を呈する。ANCAはPR3-ANCAが陽性となる。
問題145 リウマチ性多発筋痛症
巨細胞性動脈炎を合併することは有名であり、視力障害や側頭動脈の膨隆の有無を調べる必要がある。
問題146 シェーグレン症候群
遠位尿細管アシドーシスや間質性腎炎などの腎病変を合併する。そのほかには涙腺唾液腺疾患といった基礎的な内容だけでなく悪性リンパ腫などのリンパ腫の合併も多いことはおさえておく。
問題147 抗リン脂質抗体症候群
血栓傾向となる合併症を選べば良いため、選択肢は容易。
問題148〜149 全身性エリトマトーデス
MCVは1個あたりの体積なので、ヘマトクリット/赤血球で計算され、93.1が正解。
若年女性、日光曝露、紅斑や関節痛とSLEの診断は容易。脾腫や網赤血球増加、血小板減少、LD上昇など見られSLEに合併したAIHAによる溶血性貧血と考えハプトグロビンは低値を示す。
問題150 偽痛風
半月板に線状の石灰化が見られ、偽痛風を考える。関節穿刺を行いピロリン酸カルシウムの有無をチェックする。
問題151 成人Still病
成人Still病は下記診断基準(M. Yamaguchi, et al. J. Rheumatol.19(3):424-30, 1992)を用いて診断されることが多い。肝機能障害は小項目に含まれる。
問題152 多発筋炎/皮膚筋炎
筋生検は複数個ある診断基準項目のうちの1つで必須ではない。骨破壊を伴わない関節炎、抗Jo-1抗体を含む抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体が陽性、近位筋の筋力低下も全て診断基準項目の1つに含まれる。皮膚症状のみで筋症状を伴わない場合は無筋症性皮膚筋炎とされる。
引用;厚生労働省難病認定のための診断基準(厚生労働省ホームページより)
感染症
問題153 感染症と媒介生物
デング熱・・・ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ
マラリア・・・ハマダラカ
発疹チフス・・・シラミ
SFTS・・・マダニ
問題154 比較的徐脈
細胞内寄生菌感染症(レジオネラ、サルモネラ、ブルセラ、腸チフス、Q熱)が有名である。
問題155 抗菌薬の適正使用
CD抗原陽性であっても毒素非産生の健常保菌者の可能性もあるため、その場合は治療対象とならず、下痢などの症状の確認が大切である。
問題156 緑膿菌
発熱性好中球減少症は免疫が落ちてるため緑膿菌感染も考慮する必要がある。セフェピムやピペラシリン/タゾバクタム、メロペネムなど緑膿菌をカバーできる抗生剤を選択する。
問題157 腸腰筋膿瘍
腸腰筋の解剖学的位置が理解できれば正解に辿り着くだろう。
問題158 気道狭窄
おそらく膿瘍などによる圧排によって上気道が狭窄し吸気性喘鳴(stridors)が聞かれる。糖尿病の既往も感染のリスクだろう。SpO2も不安定であり緊急性を要しまずは気道確保が必要である。
問題159 尿路感染症
病歴より尿路感染症を疑い、グラム陰性桿菌であることから頻度からも大腸菌と思われる。当然、レボフロキサシンへの耐性株が増加しているが正解。
問題160 感染症の届出
1〜4類の感染症と、5類の中の麻疹、風疹、侵襲性髄膜炎菌感染症は直ちに届出が必要である。2類の結核を選ぶのは簡単だが今一度確認しておこう。ちなみにb〜eは全て5類感染症。
問題161 感染症の起因菌
髄膜炎は成人では肺炎球菌やインフルエンザ菌、髄膜炎菌など、腎盂腎炎は大腸菌がほとんど、細菌性腸炎の起因菌は多彩だがKlebsiella pneumoniaeは腸管内共生菌の一つで肺炎や肝膿瘍、尿路感染症などをきたす。人工呼吸器関連肺炎は緑膿菌や黄色ブドウ球菌など、Candida albicansは中心静脈カテーテル関連性感染とのひっかけだろう。
問題162 中心静脈カテーテル
挿入経験があれば消去法的に自然に選べる問題。挿入部を剃毛しない理由は感染のリスクが高まるからである。
問題163 インフルエンザ菌感染症
頭文字をとって、ヒブ(Hib)と呼ばれ、インフルエンザ菌の一種で乳幼児の髄膜炎の起因菌として最多である。Hibワクチンなどで予防する。
問題164 劇症型溶血連鎖球菌感染症
突発的に発症し急激に進行する連鎖球菌感染症であり、治療の第一選択はペニシリン系抗菌薬である。5類感染症に指定されているため7日以内に届出が必要である(問題160と関連して覚えよう)。
問題165〜167 肺炎球菌感染症、A-DROP
高齢者、膿性痰、グラム陽性双球菌と肺炎球菌感染症を疑う。ただ、ここではそれよりも肺炎に対しての重症度分類の話、つまり2023年内科専門医試験でも同日おかわり出題された「A-DROP」について理解しているか問われている。A;年齢>70歳(男)、D;BUN38>21、R;SpO288%<90%、P;sBP88<90以下であり関係ないのは体温。ちなみに、残りのO;意識清明で意識変容がないのでスコアは4点となる。2023年の内科専門医試験では実際の点数計算をさせられ、ここまでしっかりスコア計算ができて初めて試験勉強対策になり、ただ選択肢を正解できたからといって満足してはいけない。
もちろんスコア4点なので入院してペニシリン系抗菌薬が使われますが近年ではペニシリン耐性の肺炎球菌も増加しているため注意が必要です。終了期間は明確に決められたエビデンスはないがコストや耐性化誘導の可能性などを考慮するとbが妥当と考える。
総合内科
問題168〜170 相対危険度、寄与危険度、寄与危険割合
相対危険度、寄与危険度、寄与危険割合は下画像のように計算する。統計計算では尤度比の計算と違いシンプルで覚えやすいので暗記すれば点が取れる点取り問題。
問題171〜173 原発性アルドステロン症
原発性アルドステロン症は高血圧の原因の5-10%程を示め、二次性高血圧症の代表である。低カリウム血症や治療抵抗性高血圧が見られており、スクリーニング検査として血中アルドステロン/レニン比>200が陽性であれば負荷試験による機能確認検査を行う (引用文献:柴田洋孝,日内会誌 107:1761-1765,2018)。低カリウム血症のU波、QT延長は暗記内容であり、アニオンギャップの計算(144-98-12(AG正常値)=34)も暗記内容である。
問題174〜176 脳梗塞
SAMPLEはそれぞれの頭文字をとって①E;Event(状況)、②L;Last meal(最終食事)、③P;Past history(既往歴)、④A;Allergy、⑤M;Medicationで、答えはd。2023年の内科専門医試験では論文のPICOについて問われた経緯もありこういう系統的アプローチ問題も出題される可能性がある。血栓溶解療法の適応は最終健常から4.5時間。GCSはJCSⅠ-3なので自発的開眼あり、成立しない会話、痛み刺激で払い除ける、でE4V3M5である。
問題177〜178 低血糖
ジソピラミドなどⅠa群抗不整脈薬による低血糖は有名な副作用であり、過去問(同第1集の総合内科専門医試験 問題132)でも類似した出題歴がある。特に本症ではCr2.9と腎機能障害があり、排泄遅延による血中濃度上昇が疑われる。
問題179〜182 高カルシウム血症
問題77と同様。補正カルシウム濃度は11.2+(4-3.2)=12.0と高カルシウム血症が見られる。骨粗鬆症内服+降圧薬(おそらくサイアザイド系利尿薬)内服と背景病歴も矛盾しない。問題77と違いこの問題からは食欲不振が先で高カルシウム血症となったか、高カルシウム血症の結果食欲不振が出たのか鶏が先か卵が先か的な問題に直面しているがいずれにせよ薬剤調整は必要でありかかりつけ薬局の働きかけは一助となる。甲状腺機能低下でなく亢進症の一部では骨代謝亢進によって軽度の高カルシウム血症となることはある。サルコイドーシス(問題93)、多発性骨髄腫(問題101)、成人T細胞白血病(問題108)はいずれも本過去問でも疾患として出題歴がありもちろん副甲状腺機能亢進症もしっかりチェックしておこう。
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