[時代の証言者]I LOVE マンガ 水野英子<3>大好きな「兄」が理解者

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

小学3、4年生の頃、叔父の茂さん(右)と=本人提供
小学3、4年生の頃、叔父の茂さん(右)と=本人提供

 兄(実際は叔父)の茂がいなかったら、私のマンガ家デビューはもっと遅くなっただろうと思います。

[時代の証言者]I LOVE マンガ 水野英子 84<1>少女マンガ切り開く

 兄は家計を支えるため、15歳から旧国鉄の 幡生はたぶ 操車場(山口県下関市)で働いていました。私が3歳くらいの時です。よく見学に連れて行ってくれて、私は機関車や貨車のつなぎ替え作業を飽きず眺めていました。私が好んで鉄道を描くのは、この原体験があったからだと思います。

 私は手塚治虫先生の「漫画大学」に感激して、小学5年生の時からペンを使ってマンガを描き始めます。それを応援してくれたのが兄でした。兄も学校で美術部にいたことがあり、必要な画材を貸してくれたり、道具の使い方を教えてくれたりしました。

 兄は文学青年で、ドストエフスキーなどのロシア文学を読んでいました。年の離れた妹(実際は めい )が、女の子らしいことに興味を示さず、マンガにのめり込んでいるのを、むしろ面白がってくれたようです。

 当時大流行していた西部劇やターザン映画に連れて行ってくれたのも兄でした。私のカウボーイ好き、馬好き、ターザン好きはこのあたりに端を発します。

 祖母のミチは兄の母です。働き者で優しい人でしたが、何しろ明治生まれですから、まったく女の子らしくない私のことをひどく心配したようです。ある日、祖母が「英子はあのままで大丈夫なのか」と兄にこぼしているのを他の部屋で聞いてしまいました。すると兄は、「英子のことはほっとけ。悪いことしてるんじゃないんだから」と、祖母をなだめてくれたんです。

 大好きなお兄ちゃんでした。見た目もなかなかハンサムで、理想の男性と言っていいくらいです。だから、後に結婚して家を出たときは、失恋したみたいにショックでしたよ。

 《初期代表作「銀の花びら」では、血のつながらないピーターとリリー兄妹のロマンチックな絆が描かれる。ピーターには茂さんの面影が入っているのだろうか?》

 ハハハ、どうかな。でも、兄が私のこともマンガのことも理解してくれたのは、本当に心強かった。

 祖母も、私に「マンガをやめなさい」とは一度も言いませんでした。それどころか、私が「少女クラブ」の別冊ふろく「黄色いリボン」(1956年)で初めて徹夜した時、消しゴムかけを朝まで手伝ってくれたんです。私のアシスタント第一号は祖母なんですよ。2人で見た朝焼けはとてもきれいでした。

 兄も少し手伝ってくれたけれど、祖母ほど根気が続かない。「お前よくこんなことやってるな」って2時間でダウン。ハハハ。2人がいてくれて、私は本当に幸せだったんです。(マンガ家)

第1回から読む
スクラップは会員限定です

使い方
「企画・連載」の最新記事一覧
記事に関する報告
5057410 0 時代の証言者 2024/02/21 05:00:00 2024/02/21 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2024/02/20240220-OYT8I50077-T.jpg?type=thumbnail
注目コンテンツ
 
読売新聞購読申し込みキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)